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1951-03-17 第10回国会 衆議院 文部委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十七日(土曜日)     午前十一時三十六分開議  出席委員    委員長 長野 長廣君    理事 岡延右エ門君 理事 佐藤 重遠君    理事 若林 義孝君 理事 小林 信一君       柏原 義則君    甲木  保君       坂田 道太君    高木  章君       東井三代次君    圓谷 光衞君       井出一太郎君    笹森 順造君       渡部 義通君  出席政府委員         文部政務次官  水谷  昇君         文部事務官         (大臣官房綜務         課長)     篠原 義雄君         文部事務官         (初等中学教育         局長)     辻田  力君  委員外出席者        専  門  員 横田重左衞門君     ――――――――――――― 三月十六日  教職員の結核対策強化に関する請願武藤嘉一  君紹介)(第一三三九号)  同(松本七郎紹介)(第一四一〇号)  同(勝間田清一紹介)(第一四一一号)  産業教育法案中に家庭科加入に関する請願(塩  田賀四郎紹介)(第一三八一号)  教育財政確立に関する請願永田節紹介)(  第一四一二号)  同(村上勇紹介)(第一四一三号) の審査を本委員会に付託された。 同月十五日  博物館法制定促進に関する陳情書  (第三  七五号)  六・三制校舎建築費並びに老朽校舎改築費国庫  補助増額等陳情書  (第四〇二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用  図書給与に関する法律案内閣提出第九八  号)  宗教法人法案内閣提出第五一号)     ―――――――――――――
  2. 長野長廣

    長野委員長 これより会議を開きます。  まず、昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用図書給与に関する法律案議題とし、討論に付します。若林義孝君。
  3. 若林義孝

    若林委員 ただいま議題となつております昭和二十六年度に入学する児童に対する教科用図書給与に関する法律案について、自由党を代表いたしまして、賛成意見を述べたいと存じます。  憲法において、義務教育無償とするということは、厳然と国家方針として明示されておるのでありまして、国家施策は、この憲法条章従つて進められるべきでありますが、この点文教政策については、他の経済政策に比較いたしてみますときに、あまりに貧弱なのに、驚くというよりも、あきれ返るというのが、われわれの感ずるところであります。口を開けば、何人といえども、教育尊重を口にするのでありますが、それが政策具体化ということになりますと、委員各位が非常に渾身の努力を続けてくださいまして、ようやくその一縷の望みを得るに至つた六・三制の予算のごとき、終戦後日本の国内の安定を欠くとはいいながら、いかに文教政策の貧弱であるかということがわかるのでありまして、この点、文教政策並びに文教予算については、何人といえども満足を感じておる者はないのであります。また政府といたしましても、その当事者は、この憲法条章無償という線に向つて極力努力をしておることは、見えるのでありますが、その案効が上らないのを、残念に思うておるのであります。しかるところ、二十六年度から、児童に対しまして、教科書のみでも無償にするという企画が立てられまして、われわれも、政府説明をいたしましたような線に沿うて、努力を試みたのであります。当初小学校の一年から新制中学の三年までを無償にするという線で、押し進んでみたのでありますが、遂にこの法案となつて現われて来たのでありまして、わが自由党といたしましても、これで満足すべきではないのであります。  最初は先ほど申しましたように、政府説明にもあつたように、各市町村も義務的に無償給与するということの精神であつたのが、ある事情において、この法案では奨励するという意味法案となつて出て来たのでありますが、将来は、最初政府説明をし、企画をいたしましたように、国家財政の許す限りにおいて、なおいろいろなる政治的工作を推進せられまして、この義務教育無償の理想を貫徹することを、われわれとしては条件といたしたいと思うのでありまして、そういう意味において、まず貧弱なる、貧困なる文教政策の中で、この法案政府から提出されたことは、文化国家を目ざす日本文教政策が、一歩を踏み出したものだという気持を持つのでございまして、この法案基礎といたしまして、一歩、二歩、三歩と、文教政策なり、文教予算というものの拡充に努力をいたしたいと考えておるのであります。  なお、各委員からの御意見にありましたように、教科書精神的のかてであります。農林予算にいたしましても、あるいは他の経済施策としても、まず食うためにという生活の根本義に重点を置くために、厖大なる予算がこれに向けられるのでありますし、食糧増産のためにも、相当の国費がこれに費されておるといたしますならば、精神文化をねらつておるわが国といたしましては、この精神食糧に匹敵するところの教科書には、私は相当財源をさくべきであるという気持を持つておるのでありまして、将来は、わが国の国策において、食糧尊重し、増産をして行くという強い施策と相並行して、この教科書のごときものに対しても、御配慮があるべきだという感じがするのであります。  なおこれに関連して、相当発行業者、またあるいは取扱い業者金融資金面のことの議論が闘わされたのでありますが、これも、ほかの経済的の諸事業とは異にいたしておる教科書の出版あるいは配付の事業は、営利を主として目的にせざることを根本にすべき事業であろうと考えますので、金融その他の面においては、将来教科書に関する金融公庫のごときものをひとつつくられて、りつぱなよい教科書が安くできるように配慮せられんごとを希望するのであります。  先ほど申しましたように、われわれが最初企図しました義務教育の一年から新制中学の三年までというこの計画から見ますと、九牛の一毛というような感じがするのでありますけれども、今日この法案は、その一歩を踏み出すという意味において了承をし、それに賛意を表するのであります。この法案が不完全で不満足ではありますけれども、一日も早く通過することによりまして、また全国市町村が、平衡交付金で考慮せられておりますことを体得せられまして、一日も早く新しく就学しようとするところの児童教科書が渡り得ますよう——私はこの法案審議するにあたつて、もしこれが実現したときには、今まで教科書くつ、ランドセル、帽子、制服、すべてお交さんお母さん方の贈りものであつたのが、今度は教科書限つては、国家からいただいたのだ、お上からいただいたのだという感じから、おそらく今までは家庭子供であつたが、今度は、学校へ上るのは、社会子供になり、お国の子供になるんだ、そういう意味で、この御本を私たちはいただいたんだ。今までは、お父さんお母さん買つていただいた教科書である。——考え方にもよりましようけれども、今度は国家からいただいたんだという気持でにこやかにながめると同時に、勉強をしなければならぬのだ、りつぱな社会人として尽さなければならぬのだという気持を強く深めるであろうという、この姿を思い浮かべまして、金額においては、あるいは多いとは言えませんけれども、子供に与えますこの精神的の影響は、将来伸びようとする日本文化国家建設のための、大きな基礎になるという気持で、この法案に付随する予算その他はきわめて僅少ではありますけれども、大きな影響を将来の日本に及ぼすであろうということを想像しつつ、この法案審議に当つたのであります。しかしながら、欲を言えば、いろいろなりくつなり、要求がこれにもたらされるのでありますが、この神聖な、この将来大きな効果がある法案に対して、われわれは反対する政党は一つもないと思うのであります。もしこの法案にさえも、いろいろなりくつをつけて、反対意思を表明する者がありといたしまするならば——どうせ反対しても通るだろうという気持で御反対になるならばいざ知らず、精神的に、ほんとう気持からこれに反対する者があるとするならば、私が先ほど来申し述べました児童の心持を踏みにじり、また将来の文化国家を目ざす日本の発展を阻止するというような気持以外に、うかがい知ることができないのであります。この法案に盛られております精神を体得せられ、満場一致で可決を予想するのでありまして、簡単でありますが、自由党を代表いたしまして、賛成意思を表明いたします。
  4. 長野長廣

  5. 渡部義通

    渡部委員 若林君の反対論に対する皮肉なる予想にもかかわらず、私はこれに反対であります。憲法二十六条の第二項は、義務教育全額国庫負担ということを、精神としておるわけであります。義務教育全額国庫負担ということは、直接に学童生徒を預かつておる全国教員たちの強い要望であり、また父兄たち要望であり、さらにまた自治体全体の要望であるということは、これまでの国会に対する陳情請願を見ても、明瞭な事実であります。ところが、この法案方向というものは、決して全額国庫負担という方向に向けられてあるのではなしに、この政府説明内容によりましても、また法文そのもの内容から見ても、教科書給与地方負担にするということの呼び水であるということが、現実にはつきり出ているわけであります。ところが地方では、この尨大経費の二分の一を負担するというような財政状態にはない。地方財政は、御存じのように極度に困難な状態にあつて、二分の一を負担するということさえ、ほとんどできない状態にあることは、はつきりしております。それだけではなしに、平衡交付金を大幅に増大すべきであるという全国的な要望にもかかわらず、この国会において、一割方削減されようとする情勢にあるのでありまして、こうなつて来ますと、地方ではますます教科書の二分の一の負担に、耐え得ない状態になるのであります。そうしますと、一体だれが現実にこれを負担しなければならぬかということになると、結局父兄たち寄付等々によらざるを得ない結果になるかもしれません、おそらくなるでありましよう。全額国庫負担という原則が貫かれ得ない。しかも地方財政が現在の状態にあるというような状況のもとでは、これを従来のままにしておいて、しかも教科書の代金さえも払えない非常に多数の悲惨な家庭に対しては、教育保護法を徹底的に拡大することによつて、われわれはこれを実現して行かなければならぬ、こう考えておるわけであります。  さらに、地方公共団体が非常に財政窮乏しておりますときに、教科書を取入れるといたしますと、一番価格の安いものを取入れなければならぬ。価格の一番安いものが一番よいものではない。しかもまた文部省や大資本家関係から、文部省著作のものが全体的に教科書として支配的の地位を占めるかもしれない。私は、文部省著作が全体的に愚劣なものだとはもちろん考えていない。しかしながら、たとえば「国の歩み」とか「民主主義」とか、文部省が発行しておるこのような著作の例は、これは非常に科学性を欠いておる部分が多いのであり、学者が承認できないようなものが多いのであつて、しかもそれは新しいよそおいを持つた天皇制や、また民主主義という仮面のもとに、フアシズムの方向を示すような傾向を内容に含んでおる。こういう文部省著作というものが、教科書として支配的地位を占めるということになりますと、これはこのような精神に基く、国家による教育の統制になる憂いが、十分にあるのであります。われわれはこの危険を防がなければならぬ。  それから、現在国庫負担が非常に困難であるという事実はわかる。しかし二冊の算数と国語の全額負担したといたしましても、これはわずかに二億八千万円にすぎない。この二億八千万円の金が、どうして国家から出ないのか。これは十分出る。たとえば、軍用道路を一本敷く経費があつた——われわれ日本に必要のない、アメリカにとつて必要な軍用道路を一本敷く経費があつたら、こんなものは幾らでも出るわけであります。こういう意味においてわれわれは、政府が、全額国庫負担という憲法精神を、ここに実現して行くことができないばかりでなく、この教科書無償配給するという形のもとに、今申し上げたような、われわれとしては賛成できない、国民としては賛成できないところの精神が流れておる。こういう意味において、私は、若林君が非常にこれを皮肉の形で反対論を予想しておつたと同じではないが、私はやはりこれはほんとう日本教育を思い、地方財政を思い、さらに学童生徒たちほんとうりつぱな民族国民として成長して行くためには、現在の形での配給に反対であります。
  6. 長野長廣

    長野委員長 これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  7. 長野長廣

    長野委員長 起立多数。よつて原案の通り可決せられました。  なお報告及び報告書提出については委員長に御一任願いたいと存じます。     —————————————
  8. 長野長廣

    長野委員長 次に宗教法人法案について、公述人の選定を、理事と相談の上行つて参りましたるところ、ただいま読み上げろ方を選定いたしました。   文部委員会公聴会公述人  学識経験者側            安藤 正純君   学者       岸本 英夫君   学者       長瀧  武君   群馬大学講師   林  壽二君   都立大学教授   阿部 行藏君  利害関係者側   新興宗教     出口伊作男君   外国系宗教    大村譲太郎君   仏教       里見 達雄君   キリスト教    藤川 卓郎君   神社       小野 祖教君   教派神道     千家 尊宣君   僧侶       薄井 雲城君   日本宗教連盟   情報部長     眞渓蒼空郎君   宗教法人PL教団   理事       湯淺 龍起君   天理教教師    白鳥 鍖一君外一名カトリック代表として選定する見込みであります。以上十六名。  この際お諮りいたします。ただいま申し上げた方を宗教法人法案公聴会公述人に指名するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 長野長廣

    長野委員長 異議なしと認め、さように決定いたしました。  なお一名は、十九日の当日公述人に指名いたしたいと存じますから、御了承願います。     —————————————
  10. 長野長廣

    長野委員長 次に、教育職員免許法の一部を改正する法律案及び同施行法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。質疑に入ります。  都合により午後一時半から再開することとし、暫時休憩します。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後一時五十四分開議
  11. 若林義孝

    若林委員長代理 休憩前に引続いて会議を続行いたします。  午前中に議題としました教育職員免許法の一部を改正する法律案及び同施行法の一部を改正する法律案審査は、本日はとりやめ、宗教法人法案議題とし、前回に引続き質疑を続行いたします。柏原君。
  12. 柏原義則

    柏原委員 宗教法人役員に、代表役員というのがありますが、ある教団では、代表役員しろうとであつてほしいと要望する教団もありますし、教団によると、代表役員住職であつてほしいという切なる陳情も受けております。キリスト教は、信者が集まつて教会を建てて、牧師をイギリスの神学校から雇つて来た経歴がありますので、むしろ一般役員しろうとの方が力を持つておるようでありますが、一人の信念のある宗教家が、ぽつぽつ布教をやつて教団を組織した場合に、独裁者ではないけれども、どうしても指導者という形をとるということも当然であります。そこでこれによりますと、代表役員しろうとででもいいのでしようが、教団によりましては、しろうとを持つて来ては非常な不都合を来す。これは住職が横暴するという意味ではなくして、やはり教団統率者代表役員になるのが、自然の姿であるとも思うのですが、ここには何ら規定してありません。代表役品住職であるというような規定——真言宗でいえば、宗制と申しますが、そういう制度を置くとしますと、法人法精神に一種の制限を加えるかつこうになるが、それは立法上、事務上さしつかえないものか、お伺いしたいのであります。
  13. 篠原義雄

    篠原政府委員 ただいまの御質問に対しましては、代表役員あるいは責任役員代務者その他の宗教法人機関職務権限、あるいは選任方法、かかる向き規定は、宗教法人規則の中において定めることになつておりまして、たとえば仏教で申しますと、住職資格を持つている者が代表役員、あるいは責任役員になる。神道方面におきましても、一定の神職の資格を持つておる者が宮司になる。こういつた規定は、独自の、また古来の慣習等に基きまして、おのおの教宗派教団、同時に、神社・寺院の規則中において、資格の範囲、あるいは職務権限、そういつた規定をしていただければ、御説のように住職代表役員にもなれましようし、場合によると責任役員にもなれましよう。従つて、各宗各派自主性尊重において、みずからの伝統に基きまして資格要件を定めますれば、御意見のごとく、住職がおのおのお寺代表役員にもなれ得るというふうに、この法案では規定している次第でございます。
  14. 柏原義則

    柏原委員 総括的な質問でありますが、——これは私の考えではないのですけれども議員の中には、これは宗教の財産に関する法律であつて、しかも何ら社会的に宗教としての効果を現わさぬ、精神の抜けた遺骸を保護するような法律じやないか、お寺さんで碁ばかり打つて遊んでいるような家屋敷を、税金をとらないでいるのはけしからぬ、むしろつぷしたらいいじやないか、法律は取合わぬ方がいいではないかというような極論をする人も、議員の中にあるようであります。そこにも一理はありますが、私たち委員としましては、そういうなまいきなことは言えぬので、代議士の中に、議事に熱心でない人があるとすると、国会議員はなまいきじやないか、だから国会をぶつつぶせというのと同じ議論になるので、暴論だと思うのです。しかしよく聞いてみると、いらぬものをつぶすとなりますと、これはだれがつぶすかとなりましたら、教団はみずからつぶれるのであつて、だれかの権限でつぶすとなるとフアツシヨになりますし、暴力でつぶすわけには行かぬ。国会でつぶすといつても、つぶすには数できめるのでありますし、結局この法案は不必要となりますと、従来の宗教法人令で残りますので、それは単なる暴論であつて、価値のない議論考えております。さて今言われるような論理からいつて、つぶれた方がいいとするならば、この法案というものは、宗教法人をつくるという手続もありますが、解消に関する手続も含まつておるようでありまして、何もこの宗教法人宗教味方ばかりして、育成ということばかり考えているのではなくして、法人をつくれもできるし、みずからつぶれもできると、解消手続も相当うたつてあるようでありまして、何もこれが宗教を盛んにするという味方になつているわけでもないと考えます。しかし一部には、宗教味方ばかりを書いてあるというふうに誤解をしている議員さんもあるようでありますが、それは個人個人意見におまかせするとしまして、これは質問というよりか、そういう暴論を論ずる議員もありますので、そんな人の議論を封ずる意味で、私は自分意見を述べておるのであります。  自分意見は、御本人さんもここにおりませんから、その程度にしておきまして、さて先日もお伺いしましたが、宗教は、建物があつて、そうして教義を説いて礼拝するそれも非常に大事でありますが、信者教化育成ということが非常に大事なことになつて来る。そこで教化育成というのは、従来の信徒の教化育成ということもありますが、新しい開拓面も非常に大事なことであつて、開拓し切つたところでは、むしろ建物は完成するが、宗教の妙味はないので、これから切り開いて、お寺でも教会でも建てようかというところに、ほんとう宗教本来のはなばなしい生命が宿つておると思うのであります。その意味上におきまして、ここに新しく伝道開拓をしようという場合に、ようやく宗教寄付金土地だけ買い得た。建物はないが、将来の予定として土地だけ買い得た。これを境内地に準ずるものとか、何とか取扱い得る方法があるのかないのか、これをお伺いしたいのであります。
  15. 篠原義雄

    篠原政府委員 将来宗教活動をする物的基礎である境内を、現在境内建物等がなくても、あらかじめ境内地として取扱うことができるか、こういう御質問と理解いたしますれば、この点につきましては、登録税法その他の関係で、現実問題で、各府県においても、将来宗教活動をする母体である境内建物が客観的に、しかも非常に公算をもつて考えられるような向きのものにつきましては、取扱いとして登録税等免税取扱いを受けておるような現状でございます。しかしながら、一般に申しまして、かかる土地をただちに境内地として設定することは、各種各様宗教団体もございますし、あるいは他にこれを転用するおそれも考慮されますので、かたがたここで境内建物規定を設けましたゆえんのものは、現実宗教活動をする、あるいは宗教活動物的基礎を明確にするという趣旨のゆえんから、法律上の規定といたしましては、予定されるような境内地を、ただちに境内地とすることは、はなはだ困難な問題ではないかと思います。しかしごの面は、むしろ宗教法人法という面よりは、財政立法方面の面でもございますし、かつまたわれわれとしても、かかる需要は非常に多いことを了承しているのでございまして、政府機関なり、あるいは関係各省と連絡いたしまして、実情が、しかも客観的に確立しておるような場合におきましては、取扱いあるいは行政の運用の面におきまして、十分の考慮をして行きたい、かように考えておる次第でございます。
  16. 柏原義則

    柏原委員 それとよく似た形でありますが、ここに有力な教団があつて、東京にりつぱな教会がある。横濱の方に支部を置くという場合に、横濱土地買つて、将来そこに支部を置く、こういうことが明確になつておる場合には、どんなものでありましようか。
  17. 篠原義雄

    篠原政府委員 本部の所有の問題は、もちろん別問題であろうと思いますが、現実にかかる支部を設けるということが、客観的に申しまして確率が高い、また現実にかかる活動をなさんとする実情のある場合においては、それが支部宗教法人として、あるいは宗教団体活動が客観的に確立される程度のものでございましたならば、もちろん登録税その他の免税の恩典にあずかり得るのではないかと考える次第であります。
  18. 柏原義則

    柏原委員 第八十四条の中に「信教の自由」とありますが、その次に「平等」という二字を加えたらどうかという要望があるようであります。これに対して政府当局としては、どういうお考えでありますか。
  19. 篠原義雄

    篠原政府委員 ただいまの八十四条の「信教の自由」の下に「平等」を挿入したらばいかがかという御質問に対しましては、本来信教の自由という内容の中に、平等ということがはつきり理解される次第であります。ここで信教の自由という規定を設けたゆえんのものも、平等性が入つておるというように理解していただきたい、こう存ずる次第でございます。
  20. 柏原義則

    柏原委員 宗教法人審議会というのが、文部大臣諮問機関として設けられますが、地方庁にもそれに類したものが必要じやなかろうかと思うのですが、なくとも済むものか、それをひとつお伺いしたいと思います。
  21. 篠原義雄

    篠原政府委員 宗教法人審議会を、各都道府県にも置いたらどうかという御意見もございますが、本来宗教法人と申しましても、その母体である宗教団体を考慮いたしますとき、かつは宗教あるいは公益法人としての宗教法人というものを考えますときには、一都道府県内の事務として、また一都道府県限りの問題ではないのでございまして、ある府県におきまして、宗教法人の設立あるいは解散、合併その他の問題が起きましても、それはおのずから他の都道府県にも関係する向きの生ずることも考えられますし、また宗教それ自体は、非常に広汎な活動を予想されるのでございます。しかも一都道府県審議されまする場合においては、おのおのの都道府県におきまして、あるいは非常にまちまちな取扱いを受けるというようなこともおそれますし、かたがた審議会の委員の任命等につきましても、人選その他の関係において、非常に困難性もあろうかと思いますし、特に宗教団体のことは、全般的に申しまして、全国的な意味合いのものでなければならないという確信のもとに、中央に宗教法人審議会を置きまして、都道府県にはこれを置かず、一応画一的な、全面的に公平平等な判断をし得る方法を講ずるという点に主眼が置かれて、地方にそれを設置しないという方針で、この法案ができておる次第でございます。
  22. 柏原義則

    柏原委員 宗教法人に対する要件ですが、たとえば、借地とか借家で教会をやつておる、しかも教化活動をやつておる。しかし資産的なものが少い。これらも大いに意味があることで、大きな殿堂伽藍があるから、必ずしもそれがりつぱというわけではないのです。先般もお尋ねしましたように、借地借家で、そこで宗教に用いる道具があるとか、お堂もあれば、宗教行事に必要な道具もあるという程度のものでも、宗教法人として妥当に扱われるものか、相当目立つて大きなものでなければならぬものか、その点をお伺いしたい。
  23. 篠原義雄

    篠原政府委員 ここで神社や寺院、教会、修道院等の、いわゆる宗教法人法第二条第一号に該当する宗教団体につきましては、礼拝の施設を備えることを要件にしてございます。しかしながら、これは自己が所有権を持たなければならないのだという趣旨のものではございませんので、御意見の通り、借地、借家においても、現実宗教団体としての活動をなしておるならば、当然宗教法人として認証の申請をなし得る適格性がある、こういうふうに考えておる次第であります。
  24. 柏原義則

    柏原委員 この宗教法人法がきまりましたならば一年半以内に従来の宗教法人令による法人宗教法人法による法人に切りかえなければならぬのですが、切りかえにつきましては、従来の宗教法人令によつた場合には、いろいろな弊害もあるのだろうと思います。できるだけすみやかに切りかえはすべきでありますが、切りかえの申請を故意に延期しまして、まだ一年半あるのだという調子で、一年半旧法で行けるということにつけ込んで、いろいろな弊害を起すものがあるかもしれぬ、最後のどたんばであるからというので、やるかもしれぬ。それらの弊害を防止する措置が必要だと思うのですが、当局の御所見をお聞きしたい。
  25. 篠原義雄

    篠原政府委員 宗教法人法の附則におきましては、現在の宗教法人令に基く宗教法人は、一応一年半以内に、宗教法人法による宗教法人として規定の認証を受けなければならない、こういうふうな建前を持つております。しかしそれに至るまでは、現行の宗教法人令がなお有効であるということになつておりますので、あるいはお話の向きのような宗教法人にして、公益を侵害する、あるいは場合によりましては、法令に反するような行為をするとか、こういう向きのものがございましたときには、現在の宗教法人令がそのまま旧宗教法人に適用になつておる関係で、その適用下に置かれるような事態が発生するならば、それによつて解散等の方法もございますし、しかもなお旧宗教法人が特殊の機関にあるもの、あるいは特殊な法人が法令違反とか公益侵害とか、こういうことがありますれば、宗教法人として残つておるのでありますから、ほかの法令の適用がないというのではありません、刑法その他の諸般の刑罰法規も、その事柄の性質いかんによつては適用されるのでございまして、お話の向きの旧宗教法人についても、旧宗教法人が、なお法令違反等の場合には、現行の宗教法人令の適用において制裁を受けることができるということを予想される次第でございます。
  26. 柏原義則

    柏原委員 今度の法律で非常に大事なのは、認証の主体性が文部大臣にありますので、この間も共産党の諸君から、文部大臣がかつてにきめるのかというようなお話もありました。従つて文部大臣宗教に理解を持つ、持たぬということが、大きな影響を持つわけであります。その審議機関として審議会ができまして、その審議会は宗教家とか、あるいは学識経験者でもつてするのですが、これは人事のことにもなりますが、それに対して準備が進められておるのか。またこの宗教法人審議会の顔ぶれでありますが、ともすると学識家をきめる習慣がありまして、といつてあまり新しいものも危険性を持ちますし、といつてそれをも入れなければならぬと思いますから、非常にむずかしい問題だと思いますが、それに対して文部省としてはいろいろ準備をやつておるのか、ちよつとお伺いしたい。
  27. 篠原義雄

    篠原政府委員 宗教法人審議会委員の件につきましての御質問でございますが、この宗教法人審議会は、御説のように非常に重要な諮問機関でございして、われわれといたしましても、慎重にその人選につきましては考慮しなければならないと考えております。その選任の範囲につきましては、七十二条第二項におきまして、宗教家及び宗教に関し学識経験ある者のうちから選ぶという規定がされております。しかしその範囲内におきましても、現実宗教諸団体の意向というものが大切でございます。われわれといたしましても、一方的な政府意思によつて選任する意向は、毛頭ないのでございます。あるいは宗教連盟、あるいはその母体である神仏各派の連合会、あるいは新興宗教団の組織から情報を得まして、適任者であろ者につきまして選任を進めて行く。なおこれにつきましても、宗教団体の意のあるところを十分にくみとりまして、その神仏基の範囲を何名にするかということにつきましても、合理的な線においてやつて行きたいと考えておる次第でございます。
  28. 柏原義則

    柏原委員 この中に法人土地を処分するとか、あるいは合併するとか、分割する場合には、公告制というものをとるということがありますが、これは実際上どういう方法をとつて公告するのか。新聞でも大きな新聞にしなければならぬのか、謄写版刷りでまわしてもいいのか。しかも数名の人にわかつて、多数の人がわからぬというようなごまかしの方法もあるので、非常にむずかしいと思いますが、この制度の効果的な運用について、どういうふうに当局は考えておるか、伺いたいと思います。
  29. 篠原義雄

    篠原政府委員 一般的に申しまして、宗教法人の公告制を採用したということは、宗教法人、特にその財産なり、あるいは宗教活動なりは、単に一部の運営に当つておる人、あるいはその関係者のみに限定すべき性質のものでないという考えからむしろ団体として活動する合理的な運営方法考えたい、あるいはその意思尊重したい、いわゆる民主的な運営方法を意図いたしまして、その一方法として公告制度を採用したらどうかというのが、この法案の要旨でございますが、その公告の具体的な方法につきましては、宗教団体あるいは教派、教団の場合、あるいは神社、仏閣、教会の場合、あるいは宗教団体宗教事業のいかんによりましようし、非常に特殊的な場合も考えられる次第でありまして、その自主的な運営を尊重いたしまして、こういう場合にぶつかつたときにはこうしろ、こういう場合にはこういう方法にしろということを法定することは、その自主性を制約するという関係考えられますところから、新聞紙あるいは機関紙等に掲載するとか、あるいは当該宗教法人事務所に掲示する——これは一例でございます。その他公告すべき内容あるいは公告すべき事項とか、宗教団体の勢力——これには全国的な場合もありましようし、部分的な場合もありましよう。従つて、その宗教団体の置かれております現状を基礎にいたしまして、信者その他の利害関係人に周知せしめるに適当なる方法によりたいということに法定しておりますので、この点につきましては、あらためて規則で定める、あるいは登記をするとかいう方法をもつて適正に客観的に周知をせしめるという趣旨に沿うならば、その具体的な内容につきまして、法で定めるということは行き過ぎになります。この法の趣旨を十分おくみとりくださつて、各宗教団体が自主的におきめくださることが最も望ましいと考えております。
  30. 柏原義則

    柏原委員 宗教は長い間の伝統、沿革を持つて、一貫した一つの、統制と言えばおかしいのですが、精神的な結びを持つて来たのですが、終戦後、数団が二つも三つにもわかれて行くというようなことになつております。その伝統を破つて分離して行く、そのために数派というものが非常にもめて迷惑しておるそうでありますが、この法文には幾らでもわかれていいように、解放的に、分離ということが自由にできるようになつております。それはどういう思想から来たのか、お伺いいたしたいと思います。
  31. 篠原義雄

    篠原政府委員 根本的な意味合いは、信教の自由を尊重するという趣旨から生れたのでありまして、法の上におきましては、その第二十六条の後段におきまして脱退とか、あるいは加入の場合、いわゆる被包括関係の廃止の場合、こういう場合には、一定宗派の方が一定の権限を有しておる場合においても、その権限による必要はないという規定で、信教の自由という線を確保しよう。しかもそれは現行宗教法人令においても、その取扱いがなされておりますが、現行宗教法人令におきましては、その解釈が明確性を欠くというので、宗教法人法案におきましてはこれを明文化し、もつてその信教自由を確保する。一面におきましては、必ずしもここで信教自由を確保すると申しましても、ほかの手続をやらないでもよろしい、あるいは信者その他の利害関係人の意思を無視してもよろしい、こういう趣旨ではございません。なおかつ、教団の方面の意思を無視してもよろしいということを端的に言つておるものではございませんので、場合によりましては、他の宗派の方に、脱退いたした場合におきましては、申告を伴うことも用意しております。脱退しようとするときは、通知するということにもなつておりますし、なお利害関係人に対する公告の制度もとつておりますし、かたがた離脱脱退等につきましても、その自由性を尊重いたしますとともに、公共性も尊重いたしまして、平和裏に、単なる感情の問題、あるいは利害打算の問題で離脱等のことのないように、本来の規定の趣旨は信教の自由を保全するという建前からできておるのでありますので、その行為を尊重していただくとともに、かかる公告あるいは通知等の制度を利用していただいて、十分に平和裏に離脱行為ができることを、この法案では予想しておる次第であります。
  32. 柏原義則

    柏原委員 戦争中の宗教団体は、非常に統制したマル公の宗教であつた宗教法人令によりますと、解き放して、相当自由にやつておる。今度の法人法によりますと、中間は行つておらぬけれども、ある程度認証制度で締めてかかつている。こういう特色を持つているように思うのでありますが、中には、講和会議が済んだら、どうにでもなるんだから、急いでこんなものを出さないでも、ほうつておいてもいいじやないかという見解の人もあるようであります。法人令によつて解き放しておる、今度は法人法によつて多少締めてかかるというのであります。私たちは、これは国会通過必至と見ております。流してもいいという考え方の人もあるようでありますが、それに対して当局としては、ぜひ通さなければならぬというわけでしようが、法人令と法人法と、ここに違つた特色があるという一応の御説明を承つておく方がけつこうと思うのですが、当局の御所見を伺います。
  33. 篠原義雄

    篠原政府委員 先ほど問題になりましたような離脱の問題は、現在の宗教法人令第六条の解釈によつて、一応信教の自由保全の意味において、離脱は自由であるという解釈のもとにでき上つておる次第であります。従つてその法文が明確でないという点から、非常に脱退、離脱関係がふえておりまして、それがひいて宗教団体の健全なる発達の上において、なおかつ秩序維持の上から申しましても、多少行き過ぎの点も見受けられる次第であります。現在の日本経済生活あるいは社会生活の上におきまして、宗教団体活動は、非常に大きな意義を持つておると考える次第でありますが、単に財産的な感情的な問題から紛争等を生じまして、離脱したり、あるいは脱退の場合に、その方面に力を注がれるということでは、宗教団体全般の活動の上にも、影響するところがあるのではないか。そういう意味から、離脱の問題も法文上はつきりして、先ほど申しましたような趣旨から、互いに平穏裏に明朗な活動をする法的な手続をとつてもらうということにしたら非常にいいのではないか。これも宗教団体要望であるという一点と、しかもまた現在神社、寺院、教会が非常に多い。従つて教化活動をする上におきましても、ある宗教法人におきましては、合併をいたしまして、その強固な基礎の上に立つて活動したならば、さらにより大きな教化活動ができるのではないかという向き要望もありましたが、現行法においては合併規定がないために、新法におきましはその要望に沿うために、合併の規定を設けて教化活動の一端に資する。あるいはまた先ほど来御意見があります認証制の採用によりまして、現在宗教団体でないような団体か宗教法人になり、あるいは宗教法人とし、あるいは宗教団体の目的と思われるような宗教活動をしないで、もつぱら営利的な活動をする、あるいは特殊な私的な営利のなめに宗教法人を利用するという向きもある。これは行き過ぎの例でありますが、かかる宗教界全般におきまして、この法的な地位を確保することによつて、あるいは規則的な存在とし、法規的な存在として、りつぱな法規のもとに、いわゆる宗教法人法で申しますところの規則を作成した上において、その規則的な活動を予想いたしますれば、先ほど来の二、三例を申しました不備な点、あるいは行き過ぎな点を是正し、もつて宗教界全般の活動に資することが大きいのではないか。なおかつごのことは、一日遷延すればするほど、かかる向きのものが多くなり、その数の増大は、ひいて宗教全般の伸張に対するマイナスになるということとも考慮しまして、一日も早く宗教法人法が成立いたしまして、もつて宗教界の安定をはかりたいというのが、われわれの希望するところである次第でございます。
  34. 柏原義則

    柏原委員 宗教法人になるにつきまして、事務所ぐらいは持つておるが、まだ家も何もない、運動資金だけは持つておるという場合に、これは法人になり得るものであるかどうか。
  35. 篠原義雄

    篠原政府委員 この宗教法人法案の第四条におきましても「宗教団体は、この法律により、法人となることができる」「この法律において「宗教法人」とは、この法律により法人なつ宗教団体をいう」となつております。従いまして、実質的な宗教団体としての実体と申しますか、活動体を予想しておる次第でございまして、単なる企業的な面であるとか、あるいは資本金を持つていて、それを投入すれば、ただちに宗教法人になれるのだとは、考えておらないのであります。宗教団体としての活動の実質を持つ場合において、初めて宗教法人として申請ができる、こういうふうに理解している次第でございます。
  36. 柏原義則

    柏原委員 一つの宗教的な一貫した思想があつて、出版をやつて、その宗教の思想宣伝をやる。役員もあり、愛読者もあるというような形の新しい宗教運動が起つているようでありますが、それはどうでしようか。
  37. 篠原義雄

    篠原政府委員 宗教団体に対しまして、この法案においてわれわれの予想いたしますところは、第二条にありますように、教義を広めるとか、あるいは儀式行事を行う、あるいは信者教化育成することを主たる目的としておるものでありまして、この主目的がそこにありますならば、たとえば、今申しました三つのいわば要素的なものにつきましても、その重要の度合いが、教義を広めるところにあるか、あるいは儀式行事を行うところにあるか、あるいは信者教化育成するところに力点があるか、その高下軟弱はあろうかと思いますが、少くとも主目的がこの三つの目的に向つているならば、宗教団体として取上げていいのではないかというように、法においては予想しております。ただ、もちろんお説のように、各種の事業をやります場合においても、教化宣伝といつた意味合いからおやりになる向きも多うございますから、その事柄自体が、ここでいう信者教化育成するとか、教義を広めるとかいう主目的に沿つているかどうかということによつて判断されるのではないかと思いますが、具体的事情いかんによりまして、たとえば営利的な事情をやる。それが主目的のようなものが、現実の問題としてあるわけでございますが、こういう向きのものにつきましては、宗教団体とは言い得ないのではないかと考える次第でございます。
  38. 柏原義則

    柏原委員 最近、宗教法人令によつて、簡単に法人になれたものですから、営利を主たる目的としながら、宗教の仮面をかぶつたものが相当続出して来ましたが今度は次の段階に入りまして、平和主義を標傍して、宗教は平和主義であるという意味で、宗教の仮面をかぶつた左翼陣営の、平和主義運動というかつこうに展開して来るだろうと思うのであります。そういう現状に今あるようでありますが、それに対して、文部省は調査研究しておられるか、またそれに対してどういうふうにお考えになるか、関連的にひとつお伺いしておきます。
  39. 篠原義雄

    篠原政府委員 ただいまの御質問は、非常に重要な御質問でございまして、しかもその概念内容なり、あるいは具体的な事情につきまして、われわれ承知するところは少いのであります。従つて一言で申し上げることは、非常に困難だと存じますが、法におきましては、あくまでも宗教上の教義を広めるいわゆる宗教上の団体でなければ、問題になつて来ないのであります。あるいは思想団体が宗教法人としての仮面をかぶるという向きのものが、かりにあつたといたしますならば、それは宗教団体でないのであります。従つて、往々にして間違つてこれを宗教法人とした場合におきましても、あるいは認証の取消しであるとか、あるいはその後認証取消しの期間を経過して、なおかつ二年以上にわたつて宗教団体としての活動をしないような、あるいは宗教団体としての目的を逸脱するような向きのものにつきましては、裁判所による解散の命令も規定してございます。かたがた実質が宗教団体でないものは、これを宗教法人としての恩典に浴せしめることはふさわしくない、こういうように考えます。われわれといたしましても、そういう向きのものが今後あるかどうかにつきましては、想像困難でありますが、その場合につきましては、十分考慮いたしまして、所轄庁といたしましても、裁判所の申請等の権限があります関係から、そういう宗教団体でないものにつきましては、相当強く処置して行きたいと考えておるわけでございます。
  40. 柏原義則

    柏原委員 戦争中に宗教団体法で圧迫されて、公認のとれなかつた擬似宗教、または宗教団体は、公認がとれないものですから、幹部の連中が、宗教で集めた資産を実業に向けて、すつかり商売人になりかわつてしまつた。ところが、今度宗教が自由になつたので、その実業から得た有力な物力をもつて宗教運動を展開しておるものもあります。そうすると、戦争中に習い覚えた商売半分、宗教半分というので、まことに複雑な現状を呈しておりますが、審議会は、しつかり目を光らせて、宗教本来の目的を逸脱せるものについては見張つてもらいたいと思うのです。文部省にもお願いしておきますが、昨今共産党の非合法性が問題になつておるのですが、そういう形に持つて参りますと、熊谷直実がよろいを脱いでお寺に入つたように——これは精神的に坊主になつたものだから、危険性はないのですが、左翼陣営のものが、弾圧されたら宗教の門の中に入つて行く、宗教の中で動いて行こうという形をとろだろうと思うのでありまして、今までの党派は全部合法性でありますが、あれが非合法性ということになると、そこに宗教の分野につきましては、相当の動揺を来して来るだろうと思うのです。その点におきましても、文部当局は、しつかり頭を働かせて、今後調査していただきたいと思います。これは希望でありますが、お願いしたいと思います。  それから解散を請求する場合の利害関係人とは、どんなものであるか。しかも前は検事だけの命令でやつておりましたが、今度は所轄庁、利害関係人、検察官、こういうようにわくを広げておりますが、その間の事情を御説明願いたいと思います。
  41. 篠原義雄

    篠原政府委員 解散命令の規定といたしまして法案は第八十一条に用意してございますが、そのうち「利害関係人」とはいかなる意味であるかという御質問と了承いたします。その利害関係人と申しますのは、われわれの理解する点は、いわゆる一号から五号までの解散事由、こういう事由がある場合、そういう事実に対しまして、法律上利害関係あるもの——般的に申しますればそういうふうに申してよろしいのではないか。たとえば、法律上権利がある、法律上義務がある、こういう場合の権利義務関係が予想されるような場合、あるいは宗教法人規則上の問題といたしまして、規則の上に権限関係がある、あるいは権利の行使とか、あるいは権限の行使、あるいは義務の履行といつたようなことが規定されておるような場合におきまして、その権限行使等の場合の直接利害関係を有するような、そういう向きのものを「利害関係人」と申しております。あるいは特定の寺院教会の財産に個人的な権限関係があるというような場合にも、それが法定化されて、あるいは規則上の権限関係人、あるいは権利関係人としての権限が与えられておる向きのものにつきましては、やはり利害関係がある、こういうように考えております。従つて、個人的な場合に、おのずから利害関係人の範囲も限定されるのではないか。一般的に申しますれば、解散事由にあげられておるような事態につきまして、その当該宗教法人との関係において、その特定の事実に関し法律上利害関係あるもの、こういうふうに了解する次第であります。  なお所轄庁、利害関係人等、請求権者を広めた理由、これにつきましては御承知のように、宗教法人法が、一面におきましては信教の自由を保全するとともに、他面におきましては、宗教財産、あるいは宗教法人としての活動の民主化、こういつたようなねらいがありますので、しかもそれは、ひいては宗教法人が一つの団体といたしましての、団体的運営といつたものが考慮されますし、財産につきましても、必ずしも個人的な配慮のもとに管理されるものではなく、やはり公共性と申しますか、信者その他の利害関係人の全面的な委託の上において運営せられなければならない、こういつた趣旨から、いわば公共的な角度というものが予想されるわけであります。従つて所轄庁は、この法の運営につきましては、当然責任がある関係上、ここに解散事由として、解散命令の理由としてあげてある法令の違反とか、公共の福祉に反するとか、あるいは特定の恩典を与えて宗教活動を全からしめておるゆえんのものを逸脱する、あるいは宗教法人が民法の一種の公益法人の性格を逸脱する、こういう向きのものにつきましては、公益性という角度から申しまして、所轄庁も十分な関心を必要とするわけであります。従つてかかる場合におきまする配慮から、一面に信教の自由を保持するとともに、他面公共性を尊重するという趣旨から、その運営の任に当る所轄庁、あるいは実質的に団体の内部における権利上利害関係を有するもの、これに対して解散命令の請求権を持たせるのが最も望ましいという趣旨から、拡大した次第でございます。
  42. 柏原義則

    柏原委員 現行の宗教法人令第十六条におきましては、宗教法人には所得税及び法人税を課せずと明記されておりますが、今後また、宗教法人には所得税及び法人税を課さないことと考えるのです。はたしてしかりとすれば、宗教法人法または所得税法及び法人税法、そのいずれかにその旨か明記するの要ありと考えますが、御所見を伺います。
  43. 篠原義雄

    篠原政府委員 ただいまの所得税法及び法人税が、宗教法人に関する限り、免税の恩典が現行宗教法人令には規定があるが、宗教法人法案においては用意されておるかどうか、こういう御質問と了解いたしますが、現行宗教法人令におきましても、所得税法、法人税法の免税に関する規定は、昭和二十二年の改正によりまして、宗教法人令の中からは削られております。しかし所得税法並びに法人税法の規定の上において、明らかに所得税並びに法人税を課さないという趣旨の規定が存在しておるのでありまして、実質においては関係ございません。従つて現在用意いたしておりますところの宗教法人法案においては、何らこれに言及しておりませんが、所得税法並びに法人税法の改正を必要としない、すなわち現在の通り非課税をとつて行くということの了解の上におきまして、われわれはこれを規定しておらないのでありますが、その二つの法律の上において、明文をもつて非課税を規定されておるのであります。御心配ないものと了解いたします。
  44. 若林義孝

    若林委員長代理 他に質疑はありませんか。——では、この際委員長から少し質疑を試みたいと存じます。本法案においては、認証主義を採用しておられます。現行の宗教法人令においては、準則主義だと了承するのでありますが、この準則主義を廃止して認証主義をおとりになつ精神を、ちよつとお述べ願いたいと思います。
  45. 篠原義雄

    篠原政府委員 御承知のように、宗教法人は民法三十四条の規定によります宗教、学術その他の公益法人の一つとして、特別立法として、民法を母法にした特別法でございます。従つてわれわれの理解する限りにおきましては、宗教法人公益法人の一種として考えている次第でございます。従つて、公共の福祉なり、あるいは公益を積極的にもたらすというのが、公益法人の特性でございます。しかも公益法人は、民法その他の規定による公益法人も、この宗教法人と同様な特殊な国家的保護を受けている次第でございます。従つてその公益性なり、あるいは国家の保護なり、こういう面から申しましても、その宗教法人の持つところの地位というものが、非常に重要な意義を持つているわけであります。この社会公共の福祉に寄与するという面において、信教の自由が確保されている関係もございますし、従つて宗教法人となることは非常に重大な意義があろかと存ずる次第でございます。従つてその宗教法人が一つの法人として、民法の財団人あるいは社団法人の定款、寄付行為に相当する規則を、ここでは宗教法人規則と申しておりますが、その規則を明確にすることが、やがてその宗教法人社会的あるいは公共的活動の基盤になるものでございます。明確なる権限関係職務権限関係もあります、あるいは他の社会一般の取引安全の関係もございます、あるいは公共福祉の関係もございまして、かかる向きの基盤を法文の上に最も明確にするということが、ひいて社会公共の福祉にも直接関係を持つという理解の角度から、規則を法の上において法令に適合せしめるということが非常に大事なことになります。ところで現在の実情を見ますと、必ずしもかかる適合性がないので、往々にして行き過ぎ等の関係も見受けられます。少くとも公益法人としての規則であれば、法令に適合するということが、最もよいのである。単に現行法令のごとく、届出によりまして、ただやみくもに規則さえつくるならば、それで宗教法人になれるということでは、公共の安全、福祉の関係から申しましても、多少行き過ぎの点がうかがわれます関係から、この法案におきましては、規則を明確にし、しかもその規則は、宗教法人の権利、義務を定める規則でございます。この法案において用意いたしましたように、法令の範囲内において、規則の定めるところによつて、その法人の権利、能力、あるいは義務負担の能力というようなものが定められるので、これを明確にするにあらずんば、法的活動をすることは、非常に対社会的公共性の上から申しまして、安全率が少いのであります。こういう向きから一応届出制を廃止いたしまして、認証制をとり、もつて社会公共なり、宗教団体要望に沿うというのが、認証制をとつたゆえんのものでございます。もちろん現行の宗教法人令におきまする届出制を、いかに是正したならばいいかということにつきましては、あるいは届出規則について変更する、あるいはあらかじめ届出方法を定めるとか、いろいろ研究した結果、認証制をとるのが最も望ましいという結論を得ましたので、ここに認証制度を採用した次第でございます。     「若林委員長代理退席、佐藤(重)委員長代理着席〕
  46. 若林義孝

    若林委員 この認証制を今度この法案において取入れるということが、淫祠邪教に名をかりて、新興宗教を弾圧するかのごとき感を与えたのであります。おそらく新聞紙上にこの法案内容を発表せられたときの文章全体に流れております意向というものは、全部新興宗教を弾圧するがごとく誤解を招いておるのであります。ここに政府としては、認証ということの意義を明確にしておく必要があるのではないかと考えるのであります。そういう意味において、特に認証の意義、内容というものを明確にいたしたいと思いますが、認証の場合、その段階において、その教義の適格性、教義が成文化されておること、あるいは実際に布教しておるところの教義内容、こういうことについて、認証の場合、所轄官庁というものが調査する権限を予想しておられるかどうかをはつきり承りたい。
  47. 篠原義雄

    篠原政府委員 ただいまの教義に関する調査その他の権限を予想しておるかという御質疑に対しましては、宗教それ自体の問題といたしまして、この法案では教義に触れる、あるいは宗教団体ブロカーの面につきましては、われわれはそれを調査し、あるいはそれをチエツクする、そういう意味では、認証というものを考えておらないのであります。
  48. 若林義孝

    若林委員 それでは、教義内容、あるいは成文化されておるかおらないかというようなことについて、認証の申請の場合、参考資料としても添付する必要もないと解釈してさしつかえありませんか。
  49. 篠原義雄

    篠原政府委員 教義それ自体を出せとか、あるいは教義を必ず出さなくちやならないという趣旨のことは考慮しておりません。しかし、その当該団体が宗教団体であるかどうかということの関連性におきまして、おのずからそごに法人になろうとする宗教団体が、宗教団体であることを証する書類を添付することになつておりますので、これはみずからが宗教団体であるということを証するだけの証拠能力を、その文書の上に持たせればけつこうなのでありまして、教義の大要、あるいは教義みずからをその上に盛つて来なければならないということは、要請しておりません。
  50. 若林義孝

    若林委員 おそらく本法案において根本の論議となりますのは、この認証制度であろうと思います。先ほど柏原委員からも質疑があつたのでありますが、審議会が大体その認証の最後の断を下す意見を述べる機関であるように思うのでありますが、いま一度明確にしていただきたいと思うのであります。地方にこれを設けずに、中央だけにとどめること、宗教界の輿論といたしましては、二十万になんなんとするところの宗教団体ができるであろうと予想しておるのでありますが、それを各府県で少数の人間が、処理することができるかどうかという御質問もあつたのでありまして、私はそこまでの数は予想はしておらぬのでありますが、各府県に宗教審議会を設けず、中央にのみとどめたということを、もう一度はつきりしていただきたい。  次に、審議会の構成人員と申しますか、将来も相当問題になるのは、この人選であろうと考えておるのでありまして、先ほどきわめて慎重を期するということの御意見の開陳があつたのでありまして、おそらく宗教団体の各方面の意見をお聞きになると考えるのでありますが、その点当局の御意見をもう一度伺つて見たいと思います。
  51. 篠原義雄

    篠原政府委員 宗教法人審議会をなぜ都道府県に置かないかという御質問に対しましては、先ほどもちよつと触れた次第でございますが、宗教法人がその母体である宗教団体というものを考えますときには、その宗教性と申しますか、これは一地方に限定すべき性質のものでない。しかも公益法人として各方面に活動するという基盤をそれ自体として持つておる関係上、その宗教的特殊性と、それから実情から申しますならば、二十万施設がございますが、大半と申しますか、ほとんど九割までは、その教派か教団に所属しておる神社・寺院・教会でございます。従つてその数の上におきましては、教派や教団の方の認証の場合におきまして、中央の文部省において審議会に諮問するという関係で、地方におきましてはそれが少く、ほとんど神社・寺院・教会のすべてが、教派や教団に所属する関係から、当然問題が起り得る可能性が少い、こういう点。一般的には、宗教地方の問題として取上げるには、全国的な性格を持つているということと、ただいまの数の関係ということと、それから各地方宗教法人審議会を置きますれば、その審議会の意見が非常に区々になるおそれがある、こういうことも予想されますので、かたがた再審査あるいは訴願の場合の道を開いて、中央で区々にわたるのを避けるという趣旨から、中央に宗教法人審議会を組織するということになつた次第であります。  それから委員の構成については、御意見の通り、各種の団体の連合会等がございますので、かかる連合会等と密接な連繋をとり、かつまた、そういう連合会に加入しないものについても、できる限りその要望を推薦その他の関係におきまして、攻集いたしました資料に基きまして、その人選を公平に、かつまた適切に選定するようにしたい、こういうように考えております。
  52. 若林義孝

    若林委員 非常に慎重なる態度をとることについては、敬意を表しておきますが、先ほど申しましたように、認証ということと、宗教法人審議会の構成については、相当問題になると思います。この運営を誤りますならば、既成教団の利益のみ擁護して行く法案であるというように誤解を買い、また新しく興るところの宗教の圧迫法案であるというようなおそれを抱くに至るであろうと思う、憲法信教自由の精神に反することだと思いますから、この点重々慎重の上にも慎重を期した御人選を願いたいと思うのであります。  なお私は、岡委員が見えておりまして、発言を希望しておられますから譲りますが、礼拝施設ということについての解釈を、どの程度に礼拝施設というものを予想しておられるか。神道的に言えば、ひもろぎ一本あつても礼拝施設になるわけでありますから、その内容をどういうように立案者は予想せれらておるかを御説明願いたいと思います。
  53. 篠原義雄

    篠原政府委員 ここで礼拝の施設を備えるという規定がございますが、われわれといたしましては、本堂があり、あるいは本殿があるというだけのものを予想しているのではないのでああます。各種各様宗教がございますし、またその活動の規模につきましても、各種各様でございます。従つて一応われわれ理解する限りにおきましては、宗教法人としての財産上の保全をなし得る形にまで団体が構成するというその面から考えまして、礼拝施設というものを広く考えておる次第でございます。
  54. 若林義孝

    若林委員 先ほど篠原委員から、質問が少しあつたのでありますけれども、表現の仕方が少し違う方から、私言つてみたいと思うのであります。在来ここに包括団体がある、そうしてその包括団体の下に宗教法人がある。この包括団体が土地を購入いたしまして、宗教法人にその土地を貸して使わす。だから買い入れたところの包括団体の財産ではあるが、その所属の宗教法人の本来の用に供する。その土地についての登録税その他固定資産税などの取扱い方について……。
  55. 篠原義雄

    篠原政府委員 本部あるいは教団が所有名義を持ちましても、これに包括されるところの単位法人と申しますか、神社、寺院、教会現実にその建物土地を使用しているという場合につきましては、登録税並びに地方税における固定資産税等の免税はなし得るのでありまして、その非課税の方式も、たとえば固定資産税でございますれば、所有関係のいかんを問わず、現実の使用関係が設定されてあるならば、それに基きまして、所有権の名義のいかんを問わず、免税の恩典にあずかり得る。但し、かりに地方税の借地借家の場合におきまして、無償で借地借家されている場合も考えられる。たとえば所有者がこれを有償で貸しておる場合は、所有者の方に税金がかかりますが、いずれにいたしましても、その宗教法人には税はかからないのでございます。
  56. 若林義孝

    若林委員 いま一点、先ほど来柏原委員から御質問があり、また明確な御答弁があつたのでありますが、信教の自由ということに関してであります。これは国家としては、課長から御説明があつた通り、信教の自由というものの内容の中には、平等というものが含まれておるということは、明確なことだろうと思います。これに平等の二字を加えるのは、虻足のごとく思われるのでありますけれども、実際その面に当りますものが、自己の信仰の有無によつて、非常に差引待遇を受けるがごとく思うのであります。八十四条にはそういうことのないようにというので、特に取扱い方についての精神を、修身の条項のごとく、法律と思えないような懇切なるお気持が含まれておるのだと思うのでありますが、これは政府の本元においての、憲法信教の自由に平等が含まれておることは、はつきりしておるけれども、取扱い方の面において自己の信仰から、自分に反するところの宗教に対して行動を起すときに、きわめて不平等な面が現われて来る。これを特に注意をしていただかなければならぬというところから、これに平等という文字をつけ加えよという要望が、宗教界からあるわけなんでありますが、その点八十四条の精神を末端にまで徹底せしめるということが必要だと思うのであります。そういうことがあると危惧せられるが、政府としては、まつたくそういうことはないとお思いになるか、ひとつ御所見を伺いたいと思います。
  57. 篠原義雄

    篠原政府委員 ただいまの御意見のように、非常に区々な取扱いによりまして、いわゆる平等という取扱いに多少欠ける点も聞き及んでおります。しかしこれは本法が施行されるに至りますれば、十分われわれといたしましても、御趣旨の徹底には全力を尽して参り、かつ所轄庁との連絡あるいは政府機関との連絡も密に提携して行くことに内々相談いたしておる次第でございます。たとえばただいまの点においても、宗教上の特性なり、慣習の尊重といつた点も、また平等との関連において出て来る次第であります。この点につきましては、万遺憾のないように、御趣旨に沿うよう、特に関係方面との連絡を十分にして行きたいと考える次第であります。
  58. 若林義孝

    若林委員 岡委員が見えておりますので、私他に材料はありますけれども、一応留保いたしまして、岡委員にお譲りいたします。
  59. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 本法案に対する重要な全般的問題につきましては、文部大臣の所見を伺いたいと思うのでありますが、御病気でお見えになりませんので、課長より、答えられる程度というと、はなはだ失礼でありますが、そういう点につきましてお伺いしたいと思います。実は先ほども本会議において、委員長報告等のためにちよつとこの席を外しましたので、あるいは重複するところがあるかもしれませんけれども、そういうことがあり得ることを予想いたしまして、きわめて簡潔に、私見等を交えず、討論等にわたることなく、ほんの骨だけを示して、政府委員の御答弁を求めたいと思いますから、答弁者においても、簡潔にお答え願いたいと思います。  第一に、実質上宗教団体と見受けられないようなもの、または不備な規則宗教法人になつているものがあると思いますが、その事例がありましたら示していただきたい。
  60. 篠原義雄

    篠原政府委員 不備の点の一つといたしましては、現在におきまする宗教法人令による届出のありました宗教法人の中に、単に私法上の規定を置き、単なる名称、所在地、あるいは教義の大要、程度のようなものがありまして、その法人としての活動基礎の体をなさぬものがあります。これは一つの例であります。それからもう一つの、事業その他の関係から申しますれば、もつぱら営利事業を主たる目的としておる、ところのものが、たまたま宗教法人という名をかりまして、宗教法人何々組合、あるいは宿屋、あるいは料理屋、こういうものを営んでおりながら、宗教法人の名において特定の保護を受けようとするものもございますような次第でございます。
  61. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 そうしますと、第六条の公益事業というものは、どういうものを指すのでございますか。
  62. 篠原義雄

    篠原政府委員 この「公益事業を行うことができる」の事業は、もつぱら公益、慈善、あるいは学術、博愛といつたような、いわば社会事業的の面、教育事業的な面を予想しておる次第でございます。
  63. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 公益事業の收益の使途については、制限があるかどうか、その点について……。
  64. 篠原義雄

    篠原政府委員 收益につきましては、この法案におきましては、もつばらその事業から上つたところの收益は、宗教法人並びに宗教法人に関連する事業、あるいは宗教法人にその收益を使用してもらうという意味におきまする使用の目的を制限している次第でございます。
  65. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 第十条の規則で定める目的の範囲内に、事業が入るかどうかをお伺いいたします。
  66. 篠原義雄

    篠原政府委員 第十条の規則で定める目的の範囲内に、もちろん事業規定も入り得ると予想しております。
  67. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 第十一条——議決権は有しておるが、議決に賛成しなかつた者の賠償責任は、ないと解していいかどうか、その点をひとつお伺いいたします。
  68. 篠原義雄

    篠原政府委員 十一条の二項につきましては、議決に賛成しない者につきましての責任はない、こういうふうに了解しております。
  69. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 予算は必ず作成しなければならないかどうか、お伺いしたいと思います。
  70. 篠原義雄

    篠原政府委員 この法案におきましては、予算を作成することを要望する次第でございますが、社寺その他の関係もございますので、必ずしも絶対的記載事項としてはおりません。ただ規則の上で、必要あらば必ず記載してほしい、こういう意味でございます。
  71. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 宗教法人の同一名称の使用制限を設けてないようでありますが、その理由を承りたい。
  72. 篠原義雄

    篠原政府委員 宗教団体は、長い歴史と伝統がございまして、現在におきましても、御承知のごとく、仏教におきまして同じ寺号山号を持つておるものもたくさんございます。従つて、法においてこれを制限するということは、非常に行き過ぎにわたるという関係で、これを制限しなかつたのであります。
  73. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 規則の記載事項は、現行法と、どの点が違うかについて、お伺いいたします。
  74. 篠原義雄

    篠原政府委員 この最も大きいところは、信者その他の関係に関する総代とか信者規定が、今度は挿入されないのでございます。しかもそのこと自体も、宗教活動それ自体の面にタツチしないという趣旨から、そういう観点が出て来たわけでありまして、今度の規則で特に大きく出ているのは、公告の制度を用いるとか、あるいは記載事項——第十二条の十一号から十三号までございますが、第十三号において規定する以外、所轄庁の方で、必ず記載しなければならぬ、あるいは記載を要求するということはないということを予想しておるとか、その他の関係につきましては、十二号等が相互の規定性として宗派の方あるいは教団の方と相互規定するというものを予想する、こういつた面が違つておる大きな点でございまして、それ以外の点につきましては、大体現行の宗教法人の記載事項と、内容においては詳しくなつておりますが、実質においては、異ならないと思つております。
  75. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 第十三条の「認証を受けようとする者」というのは、だれを指すのでありますか。
  76. 篠原義雄

    篠原政府委員 これは宗教団体あるいはその代表者、個人あるいは団体両者を指しております。
  77. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 第十四条の「その他の法令」とは、何を指すのであるか。また「相当の期間」とありますが、その相当の期間とは、どの程度の期間を指すか、その点について御説明願いたい。
  78. 篠原義雄

    篠原政府委員 「法律その他の法令」の内容でございますが、これは当該規則内容の事項が、医療法、医師法あるいはそういつた面に関連するものでありますれば、医療法、医師法の違反というものが、当然その法令の内容になりますし、あるいは令といたしましては、団体等規正令といつたようなものも考えられます。あるいは特殊な寄附を募る、強制するというような面につきましては、あるいは軽犯罪法その他の関係もあろうかと存ぜられるのであります。具体的規則内容事項につきまして、この法令の適用法規が了解されるかと存ずる次第でございます。  それから、第二項の「相当の期間」と申しますのは、これは必ずしも一定しておりませんが、距離の観点とか事柄の観点とか、そういうような点でもつて、その内容が非常にかわつて来る次第でございますが、機会を与える限りにおきまして、それを十分ふさわしい期間ということを予想している次第でございます。
  79. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 包括宗教法人に、訴願の道が開かれていないようでございますが、その理由を承りたい。
  80. 篠原義雄

    篠原政府委員 包括宗教法人につきましては、訴願は、御承知のように行政官庁に対する上級、下級の関係がございますが、これは文部大臣につきましては、初めの拒否の場合に審議会にかける、それから再審査の場合に審議会にかけるというようなことで、再審査ということが最終になつておる次第でありまして、再審査は実質において訴願的性格を持つております。特に中央官庁におきましては、その性質が強いのでございます。従つてこれに行き過ぎがある場合においては、行政事件訴訟特例法等の救済規定も予想されますから、訴願を一応開かない次第でございます。
  81. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 宗教法人の解散事由に、現行法と異なりまして、破産という項目を加えておりますが、その理由について御説明を願いたい。
  82. 篠原義雄

    篠原政府委員 非常に重要な御質問でございますが、今までは、宗教団体が破産することによつて解散事由にあげておりません。しかし本法案におきましては、この宗教法人法の性格が、もつぱら世俗、あるいは財産の面に主点が置かれた関係上、かかる破産状況にありますれば、第三者との関係におきまして不測の損害をこうむらせるおそれがありますから、主たる性格が相違した関係から、こういう破産によつて解散する規定を挿入した次第であります。
  83. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 次に、境内地建物の件についてお伺いするのでありますが、たとえば、キリスト教におきましても——キリスト教というのは、ローマン・カトリツク、すなわち旧教と一般に言われておるもの、それから新教すなわちプロテスタント、この二つに大別できるのでありますが、仏教等の場合に、その境内地建物につきましても、テクニツク、術語が非常に違うのであります。同じキリスト教という範疇に入つておる旧教と新教との間におきましてすら、大きな隔りがあるのであります。そこで、まずこういうものを明確にしておく必要があろうと存ずるのであります。たとえばカトリツクで申しますと、聖堂というものがございますが、これは仏教でいうところの本殿とか本堂あるいは会堂に相当するものであるか伺いたい。
  84. 篠原義雄

    篠原政府委員 まさに御意見の通り、本堂あるいは本殿に相当するものと考えております。
  85. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 それからこれは新教にもございますが、特にカトリツクには修道院というものが多いのでございますが、これは仏教のいわゆる僧院に相当するものであるか承りたい。
  86. 篠原義雄

    篠原政府委員 御意見の通り僧院とわれわれは了解しております。それをそのまま日本語に訳した次第でございます。
  87. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 それから特にカトリツクにおいては司祭館、新教では牧師館と申しておりますが、これは僧院に相当するかどうか、まずそれが一点でございます。ちよつと説明を申し上げますると、カトリツクの司祭というものは、あるいは神父とも申しますが、これは絶対的に独身であります。要するに、終生純潔を誓つているのでございまして、それをまたその通りに実行しております。そこでその構造等においても非常に違う。解釈等の場合も違えて解釈してもらわなければならぬ。何となれば、司祭が、あるいは神父が求道者に教えを授ける場合に、独身者であるという立場のエチケツトとして、決して婦人を、特に一人の場合、自分の自室に入れない、そういうことがございますので、応接室なり、あるいはそういうものを教える広い部屋なりを要するのでありますが、そういつたようなものをどういうふうに解釈するか。特に東京都の場合なんかにおいても、税務署等が非常にきゆうくつに解釈しておるということでございますが、それらの点について伺いたい。
  88. 篠原義雄

    篠原政府委員 本案におきましては、それに相当するものといたしまして、僧院あるいは牧師館を予想しますところの教職舎、こういう名称でとらえておりまして、しかも御意見のその取扱いの非常に区々な点につきましては、われわれも各都道府県と密接なる連繋をもつて現実に具体的に一つ一つ事件を解決しておる状況でございます。従つてその特殊性につきましては、新しく教職舎あるいは僧侶といつたようなものを挿入いたした次第であります。
  89. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 これはカトリツクにおいても新教においても、そうでありまして、カトリツクにおいては司祭、新教においては牧師でございますが、これを養成するためには、神学校という専門的学問を教える学校を必要とするのであります。これはまさに宗教団体の主たる目的のための必要な建物というふうに解されるのでありますけれども、その点も境内建物というのに算入されるかどうか、その点をひとつお伺いします。
  90. 篠原義雄

    篠原政府委員 これはカトリツクあたりでは、通称小神学校という名前で呼ばれておりますが、われわれはもつぱらそういう教師養成のために使われる建物として、これは境内地であり、また境内建物と了解しておる次第であります。
  91. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 次に、これは特にカトリックの場合において、伝道士宿舎というものがあるのでございますが、これは仏教等におきましては、まだ修行中の、坊さんになろうとする段階の若い人たちが、カトリツクの立場においては伝道士の役目をやつておる。要するに住職さんなら住職さんのお手伝いをしつつ修行をやつておる、こういうのでありますが、カトリツクなんかははつきり神学校に收容して養成するのでありまして、そういうような一種の徒弟的な養成をやつておらないために、従つて伝道士宿舎——伝道士というものを多くの場合要するのでありまして、これは司祭の手伝い役をするわけであります。これには別に独身を守らなければならないという規則もないのでありまして、一般人のような生活様式をとりながら、実は司祭のお手伝いをしている。これは先ほど申した通り仏教等においては、まさに見習いの立場の人がやつておるようでありますが、これもどうしても境内建物に包括してもらわなければならないと思うのでありますが、その点はどうでありますか。
  92. 篠原義雄

    篠原政府委員 ただいまのお話の向きも、事実ございまして、大体われわれは、そういう向きの施設を、信者修行所といつた言葉の中に含めて考えております。これは必ずしも一般の檀信徒あるいは信者という意味でなく、われわれの信者という理解の仕方は、教師、僧侶、そういつた一種の教化面の資格を持つている人を包括して考えている関係で、信者修行所の中にも、そういつた広い意味に理解される信者教化育成のための必要な建設物、こういう限りに信者修行所を用いておる関係で、今のお話の向きの施設は、そういう信者修行所の中に包括されるものと考えておる次第でございます。
  93. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 それから、特にカトリツクの場合でありますが、あるいは権威宗教でございますと、権威者によつてずつと統制を保たれておる。そこで教区事務所、あるいは修道会事務所あるいは宣教会事務所というものが必然的に必要になつて来るのであります。これはもちろん境内建物の中に含まれるものと考えるのでありますが、その点もお伺いいたしたいと思います。
  94. 篠原義雄

    篠原政府委員 カトリツクの実情をお伺いしますと、各教区が、今度は宗教法人になるという御意見もうかがわれるのであります。従つて包括教団の中に、各司教区を包括教団の一つとして取上げておりますし、かたがた第三条の教団事務所の中に、その意味のことが含まれて書いてある次第でございます。
  95. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 先ほど申しました通り特にカトリックにおきましては、司祭が一生独身を守る。要するに妻子がなく、それから兄弟、親戚、親とはもちろんわかれて生活をする。その関係上、また特に司祭修道士というのがございますが、その司祭修道士なるものは、婦人と同じむねに居住することが許されない。こういうかたい規約があるのでありましてまあ多くの場合、まかない人というものは婦人でございますが、これを置く場合、カトリツクの特殊性にかんがみて、新教の牧師館との均衡上、附属の建物に相当するものを考えてよろしいかどうか。
  96. 篠原義雄

    篠原政府委員 御意見の通り、われわれは附属建物内容として考えておる次第でございます。
  97. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 これは私も当然と思いますが、たとえば物置とか自動車の車庫、これらも附属建物に数えてよろしいかどうか。
  98. 篠原義雄

    篠原政府委員 御意見の通り、附属建物とわれわれは了解しております。
  99. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 今度は、境内建物用地の点でございます。特に名称をつけがたいのでありますが、建物敷地を囲繞するところの庭園及び道路への通路、石段等、これらは境内建物用地と常識的に考えられると思うのでありますが、その点をお伺いいたします。
  100. 篠原義雄

    篠原政府委員 御意見の通り、今お話の施設あるいは工作物、すべて境内建物という内容を構成しておると考えております。
  101. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 この法案の中に、修道耕牧地というのがございますが、特にカトリツクのテクニツクで申しますと観想修道会というのがございます。これは祈りのほか苦行を行つております。それからまた、世間とはまつたく隔絶して、自給自足の態勢をとつておる。たとえば日本におきましても、北海道その他にあるトラピスト修道院あるいはカルメル会修道会、これらはまつたく世間と隔絶して、そうして経済的にも自給自足の態勢をとつておる。これが御承知の通り実情でございます。そこでこれらには農地法の関係等、非常にやつかいな問題もあつたようでございますが、いわゆる修道耕牧地というものを認めてやらなければ、これは結局それ自体がこの修道会の目的でございますから、その目的を達成することができないということになるのでありまして、この修道耕牧地というものは、これらの修道会として当然認めらるべきものと思うのであります。その点を……。
  102. 篠原義雄

    篠原政府委員 修道耕牧地につきましては御意見の通りでございまして、われわれも境内地の概念の中に、かかる特殊な土地につきまして尊重をいたしまして、四号に特別に修道耕牧地を含むという規定を明らかにしたような次第でございます。
  103. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 本法案文部大臣に対する一般質問及びこまかに質問も、多少心当りがあるのでありますが、これらの質疑は一応留保いたしまして、私の本日の質問はごの程度にとどめます。
  104. 若林義孝

    若林委員 本日の質疑は、この程度で打切られんことを希望いたします。
  105. 佐藤重遠

    ○佐藤(重)委員長代理 他に御発言はありませんか。——それでは本日はこれをもつて打切ることにいたします。次会は公報をもつて御通知申し上げます。  本日はこれで散会いたします。     午後三時四十二分散会