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若林委員 ただいま
議題とな
つております
昭和二十六年度に入学する
児童に対する
教科用図書の
給与に関する
法律案について、
自由党を代表いたしまして、
賛成の
意見を述べたいと存じます。
憲法において、
義務教育は
無償とするということは、厳然と
国家方針として明示されておるのでありまして、
国家の
施策は、この
憲法の
条章に
従つて進められるべきでありますが、この点
文教政策については、他の
経済諸
政策に比較いたしてみますときに、あまりに貧弱なのに、驚くというよりも、あきれ返るというのが、われわれの感ずるところであります。口を開けば、何人といえども、
教育の
尊重を口にするのでありますが、それが
政策の
具体化ということになりますと、
委員各位が非常に渾身の
努力を続けてくださいまして、ようやくその一縷の望みを得るに
至つた六・三制の
予算のごとき、終戦後
日本の国内の安定を欠くとはいいながら、いかに
文教政策の貧弱であるかということがわかるのでありまして、この点、
文教政策並びに
文教予算については、何人といえども満足を
感じておる者はないのであります。また
政府といたしましても、その当事者は、この
憲法の
条章の
無償という線に向
つて極力
努力をしておることは、見えるのでありますが、その
案効が上らないのを、残念に思うておるのであります。しかるところ、二十六年度から、
児童に対しまして、
教科書のみでも
無償にするという
企画が立てられまして、われわれも、
政府が
説明をいたしましたような線に沿うて、
努力を試みたのであります。当初小学校の一年から
新制中学の三年までを
無償にするという線で、押し進んでみたのでありますが、遂にこの
法案とな
つて現われて来たのでありまして、わが
自由党といたしましても、これで満足すべきではないのであります。
最初は先ほど申しましたように、
政府の
説明にもあ
つたように、各
市町村も義務的に
無償で
給与するということの
精神であ
つたのが、ある事情において、この
法案では奨励するという
意味の
法案とな
つて出て来たのでありますが、将来は、
最初政府が
説明をし、
企画をいたしましたように、
国家の
財政の許す限りにおいて、なおいろいろなる
政治的工作を推進せられまして、この
義務教育の
無償の理想を貫徹することを、われわれとしては条件といたしたいと思うのでありまして、そういう
意味において、まず貧弱なる、貧困なる
文教政策の中で、この
法案が
政府から
提出されたことは、
文化国家を目ざす
日本の
文教政策が、一歩を踏み出したものだという
気持を持つのでございまして、この
法案を
基礎といたしまして、一歩、二歩、三歩と、
文教政策なり、
文教予算というものの拡充に
努力をいたしたいと
考えておるのであります。
なお、各
委員からの御
意見にありましたように、
教科書は
精神的のかてであります。
農林予算にいたしましても、あるいは他の
経済施策としても、まず食うためにという生活の
根本義に重点を置くために、厖大なる
予算がこれに向けられるのでありますし、
食糧増産のためにも、相当の国費がこれに費されておるといたしますならば、
精神文化をねら
つておる
わが国といたしましては、この
精神の
食糧に匹敵するところの
教科書には、私は相当財源をさくべきであるという
気持を持
つておるのでありまして、将来は、
わが国の国策において、
食糧を
尊重し、
増産をして行くという強い
施策と相並行して、この
教科書のごときものに対しても、御配慮があるべきだという
感じがするのであります。
なおこれに関連して、相当
発行業者、またあるいは
取扱い業者の
金融資金面のことの
議論が闘わされたのでありますが、これも、ほかの
経済的の諸
事業とは異にいたしておる
教科書の出版あるいは配付の
事業は、営利を主として目的にせざることを
根本にすべき
事業であろうと
考えますので、
金融その他の面においては、将来
教科書に関する
金融公庫のごときものをひとつつくられて、
りつぱなよい教科書が安くできるように配慮せられんごとを希望するのであります。
先ほど申しましたように、われわれが
最初企図しました
義務教育の一年から
新制中学の三年までというこの計画から見ますと、九牛の一毛というような
感じがするのでありますけれども、今日この
法案は、その一歩を踏み出すという
意味において了承をし、それに賛意を表するのであります。この
法案が不完全で不満足ではありますけれども、一日も早く通過することによりまして、また
全国の
市町村が、
平衡交付金で考慮せられておりますことを体得せられまして、一日も早く新しく就学しようとするところの
児童に
教科書が渡り得ますよう
——私はこの
法案を
審議するにあた
つて、もしこれが実現したときには、今まで
教科書、
くつ、ランドセル、帽子、制服、すべてお交さん
お母さん方の贈りものであ
つたのが、今度は
教科書に
限つては、
国家からいただいたのだ、お上からいただいたのだという
感じから、おそらく今までは
家庭の
子供であ
つたが、今度は、学校へ上るのは、
社会の
子供になり、お国の
子供になるんだ、そういう
意味で、この御本を私
たちはいただいたんだ。今までは、
お父さんお母さんに
買つていただいた
教科書である。
——考え方にもよりましようけれども、今度は
国家からいただいたんだという
気持でにこやかにながめると同時に、勉強をしなければならぬのだ、
りつぱな社会人として尽さなければならぬのだという
気持を強く深めるであろうという、この姿を思い浮かべまして、金額においては、あるいは多いとは言えませんけれども、
子供に与えますこの
精神的の
影響は、将来伸びようとする
日本の
文化国家建設のための、大きな
基礎になるという
気持で、この
法案に付随する
予算その他はきわめて僅少ではありますけれども、大きな
影響を将来の
日本に及ぼすであろうということを想像しつつ、この
法案の
審議に当
つたのであります。しかしながら、欲を言えば、いろいろなり
くつなり、要求がこれにもたらされるのでありますが、この神聖な、この将来大きな
効果がある
法案に対して、われわれは
反対する政党は一つもないと思うのであります。もしこの
法案にさえも、いろいろなり
くつをつけて、
反対の
意思を表明する者がありといたしまするならば
——どうせ
反対しても通るだろうという
気持で御
反対になるならばいざ知らず、
精神的に、
ほんとうの
気持からこれに
反対する者があるとするならば、私が先ほど来申し述べました
児童の心持を踏みにじり、また将来の
文化国家を目ざす
日本の発展を阻止するというような
気持以外に、うかがい知ることができないのであります。この
法案に盛られております
精神を体得せられ、満場一致で可決を予想するのでありまして、簡単でありますが、
自由党を代表いたしまして、
賛成の
意思を表明いたします。