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1951-02-28 第10回国会 衆議院 文部委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十八日(水曜日)     午後二時三十三分開議  出席委員    委員長 長野 長廣君    理事 岡延右エ門君 理事 佐藤 重遠君    理事 小林 信一君 理事 松本 七郎君       柏原 義則君    甲木  保君       坂田 道太君    高木  章君       東井三代次君    平島 良一君       若林 義孝君    笹森 順造君       坂本 泰良君    渡部 義通君       小林  進君    浦口 鉄男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         文部事務官         (大臣官房会計         課長事務代理) 相良 惟一君         文部事務官         (大臣官房宗務         課長)     篠原 義雄君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君  委員外出席者         文部事務官         (調査普及局刊         行課長)    近藤 惟一君        專  門  員 横田重左衞門君         專  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 二月二十八日  理事圓谷光衞君の補欠として佐藤重遠君が理事  に当選した。 二月十六日  教科書発行に関する臨時措置法の一部を改正  する法律案佐藤重遠君外十四名提出衆法第  四号) 同月二十七日  宗教法人汁久内閣提出第五一号) 同月十三日  幼稚園国費設置に関する請願平野三郎君紹  介)(第五二四号)  職業教育法制定に関する請願外十九件(田中重  彌君紹介)(第五六八号)  同外七十件(降旗徳弥紹介)(第五六九号)  同(小林進紹介)(第六一七号)  同(水野彦治郎紹介)(第六一八号)  同(池見茂隆紹介)(第六一九号)  紀元節復活制定請願宮原幸三郎紹介)(  第五七〇号)  都道府県国立大学幼稚園教諭及び保育所保母  の養成機関設置請願、(辻寛一紹介)(第  五七一号)  義務教育費全額国庫負担に関する請願(星島二  郎君外五名紹介)(第六一六号)  教職員結核対策強化に関する請願柳澤義男  君紹介)(第六二七号) 同月十九日  職業教育法制定に関する請願外十一件(井出一  太郎君紹介)(第六六四号)  同外九件(井出一太郎紹介)(第七〇五号)  同(勝間田清一紹介)(第七三八号)  同外九件(吉川久衛紹介)(第七三九号)  同(小松勇次紹介)(第七六六号)  同(堀川恭平紹介)(第七六七号)  図書館法の一部改正に関する請願花村四郎君  紹介)(第七〇四号)  公民館に対する国庫補助増額請願足鹿覺君  紹介)(第七三〇号)  六・三制校舎建築費国庫補助継続等に関する請  願(足鹿覺紹介)(第七三六号)  同(坂田道太紹介)(第七三七号)  新制大学教育部学生に対する奬学資金国庫補助  の請願坂田道太紹介)(第七四〇号)  国立大学施設費国庫負担請願坂田道太君紹  介)(第七四一号)  教員免許法認定講習費全額国庫負担請願(坂  田道太紹介)(第七四二号) 同月二十四日  嚴島神社修理費国庫補助請願岡延右エ門君  外三名紹介)(第七九五号)  教育行政に関する請願渡部義通紹介)(第  七九六号)  職業教育法制定に関する請願外九件(井出一太  郎君紹介)(第七九七号)  同(砂間一良君外一名紹介)(第八三二号)  同(竹山祐太郎紹介)(第八五二号)  同外八件(井出一太郎紹介)(第九〇〇号)  松本城保存工事費国庫補助増額請願降旗徳  弥君外七名紹介)(第八三三号)  高等学校書道教員養成機弱拡充強化に関する請  願(早稻田柳右エ門紹介)(第八七〇号)  教育財政確立に関する請願羽田野次郎君紹  介)(第八七一号)  六・三制校舎建築費国庫補助継続等に関する請  願(野村專太郎紹介)(第九〇一号) の審査を本委員会に付託された。 同月十四日  六・三制校舎整備費補助金並び起債増額等に  関する陳情書  (第二一一号)  一職業教育法制定に関する陳情書外二件 (第二一三号)  職業教育法制定に関する陳情書  (第二三  七号)  教職員結核療養期間延長に関する陳情書  (第二四二号)  国立大学地方移譲反対に関する陳情書  (第二四六号) 同月二十六日  職業教育法制定に関する陳情書外九件  (第二六七号)  在日朝鮮人学生の救済に関する陳情書  (第二六八号)  教育債わく拡大に関する陳情書  (  第三〇一号)  六・三制特別教室校舎建築に対する国庫補助の  陳情書  (第三〇七号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事互選小委員及び小委員長選任に関する件  宗教法人法案内閣提出第五一号)  教科書発行に関する臨時措置法の一部を改正  する法律案  (佐藤重遠君外十四名提出衆法第四号)     ―――――――――――――
  2. 長野長廣

    長野委員長 これより会議を開きます。  委員圓谷光衞君より、理事を辞任したいとの申出があります。これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長野長廣

    長野委員長 御異議なしと認めます。よつてさように決しました。     —————————————
  4. 長野長廣

    長野委員長 次に理事補欠選挙を行います。理事選挙は、先例により委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 長野長廣

    長野委員長 御異議なしと認め、左藤重遠君を理事に指名いたします。     —————————————
  6. 長野長廣

    長野委員長 次に、去る二月八日国政調査承認を得ました宗教国体活動の件につき、調査の必要上、本委員会宗教団体活動に関する小委員会を設置したいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 長野長廣

    長野委員長 御異議なしと認めます。小委員会を設けることに決します。小委員及び小委員長を選任いたします。先例により、私より指名いたします。      岡委員  佐藤重遠委員     柏原委員    坂田委員     高木委員    若林委員     笹森委員    浦口委員     松本委員    渡部委員 及び長野長廣の十一名を小委員に指名いたします。  次に、小委員長若林委員を指名いたします。     —————————————
  8. 長野長廣

    長野委員長 次に、教科書発行に関する臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。これより提出者提案理由説明願います。佐藤重遠君。
  9. 佐藤重遠

    佐藤(重)委員 提案理由説明いたします。  新しい教科書検定制度実施以来、民間企業による教科書出版は盛んに行われ、現在では小・中・高等学校教科書発行するもの七十五社、教科書の点数一千六百六十八点、発行部数約二億五千万冊を数えるに至り、わが国の教科書は質、量ともに非常に向上いたしたのであります。ただ教科書定価は、教科書の持つ教育的な性格にかんがみまして、できる限り廉価で供給するため、厳格な定価算定方式によつて抑制されております。そこで教科書発行者経営はかなり苦しく、教科書製造資金調達には、多大の困難を感じておるような状態であります。従いまして、このような教科書発行者経営上の困難を、なるべく定価の高騰を来すことなく軽減することができるような措置をとることが必要なのであります。教科書発行に関する臨時措置法教科書需要供給の調整をはかり、発行を迅速確実にし、適正な価格を維持することを主たる目的とする法律でございまするが、同法中に教科書供給を完全にするため、教科書発行者から定価の三分、すなわち三%に当る保証金を徴するという規定が設けられております。しかしながら前にも申し上げましたように、教科書発行部数法律制定当時に比べまして激増し、また資材の値上り、色刷り教科書及び営業費増加等により、教科書定価が高騰したため、保証金金額多額となり、莫大な教科書製造資金調達に苦しむ教科書発行者に、過重な負担となつておるのであります。しかしながら一面このように保証金金額多額になつているということは、保証金の率を減少しても、保証金として十分な金額が徴収できることを意味するものと考えられるのであります。そこでこの保証金の率を減ずることによつて教科書定価に影響なく、教科書発行者経営上の困難を軽減し、あわせて教科書製造供給を一層円滑にしたいと存じまして、今回本法案提出した次第であります。  何とぞ御審議の上すみやかに本法案が成立いたしますようお願いいたします。
  10. 長野長廣

    長野委員長 次に、質疑に入ります。渡部君。
  11. 渡部義通

    渡部委員 これは文部省の方にお聞きすることになるわけですが、現に大小出版社で、どのくらいの保証金を納めているものか、具体的な数字の大きいところと小さいところという点でわかつておりますか。
  12. 近藤惟一

    近藤説明員 私文部省刊行課長でございます。ただいまのお尋ねに対しましてお答えを申し上げたいと存じます。ただいま使つておりまする昭和二十五年度の教科書保証金につきましては、小・中・高各学校教科書を全部合せますと、全国で総数約二億冊ほど出ております。それに対しまして、定価が平均して二十六円五十銭でございます。その三分でございますから、保証金総額は二億を越すわけであります。なお昭和二十六年度用教科書につきましては、前期用と申しまして、総数の約三分の二ぐらい——この四月から使われる、教科書でございますが、その教科書定価が今判明いたしているわけでございますが、全部の教科書定価を予想いたしまして、すなわち後期用として定価がまだきまつていない分を概算した定価として計算いたしてみますと、昭和二十六年度用教科書総数は約二億四千八百万冊、概数としてただいま提案理由の中にありました数字二億五千万冊ぐらいになるわけでありますが、この平均定価を三十二円と計算して、三分といたしますと、保証金総額は約二億三千八百万円の計算になると存じます。この中で発行部数の一番多い東京書籍株式会社におきましては、発行部数が約四千五百万冊ぐらいになります。従いまして、平均定価の三十二円をおかけいただきまして、その三分が保証金になる計算でございます。私ちようどその一番多い教科書会社保証金計算をいたしておりませんので、その御計算を願えば、一番多い教科書会社保証金負担金額が出て参ると存じます。失礼でございますが以上の説明で御了承いただきたいと思います。
  13. 渡部義通

    渡部委員 この提案は、主として金融関係から来ていると思いますが、金融関係は、出版界に対しては最近特にきゆうくつになつてつて、これが一般的に言つて日本出版文化の危機を来していると思うのです。その場合やはり問題になるのは、金融関係だけではなしに——教科書の場合も同様でありますが、用紙問題があると思います。用紙問題については、文部関係の方でも関連があるわけなんで、これに対する用紙のゆたかな使用方法を見出す道について、何か特別の考慮もしくははからいをされておるかどうか、お聞きします。
  14. 近藤惟一

    近藤説明員 教科書用紙のことにつきましてお尋ねでございますので、私の存じております範囲内でお答えを申し上げたいと存じます。教科書用紙は、今年度に使つております教科書につきましては、約六千万ポンド前後と考えております。二十六年度用の教科書につきまし。は、約七千万ポンド前後と考えております。この数量は、おそらく新聞紙を除きました他の一般出版物の中におきまして、ちようど同じくらいの使用量になる厖大な数量考えております。しかも教科書製造する時期は、大体におきまして十月ごろから三月までの間でありまして、一時期に多量の紙を必要といたすのであります。従いまして、四半期ずつ製造割当をいたします場合におきましては、大体今の日本紙生産状況におきまして、円滑に充足できる程度ではないかと存じますが、ただいまも申し上げましたように、教科書製造は一時期に多量の紙を要するという特殊性がございますために、この人手ということにつきましては、非常な苦心がいるわけであります。それに加えまして、一時は用紙事情がたいへん緩和されたということでありましたけれども、最近は、特にパルプ事情等からいたしまして非常にきゆうくつになつて参りました結果、一応四半期に割りまして教科書の全数量生産割当と、引取りの割当等が、ございましたけれども、教科書製造最盛期に入りましてからは、特に引取りという点につきまして、非常な困難を生ずるようになつた次第でございます。しかしながら、幸いにいたしまして、二十六年度用の教科書につきましては、この十月ごろからの割当におきまして、相当量割当をいたしまして、特に四月から使われる教科書の紙の手配は、最近の四半期までにほとんど大部分の割当を了しまして、引取りさえ円滑に行きますと、教科書製造上はさしつかえないという程度にまでこぎ着けることができた次第でありまして、非常にきゆうくつにはなつておりますけれども、幸いこの四月から使われる前期用教科書製造には、さしつかえない程度の紙の人手が、現在苦心ほされつつありますけれども、とにかく間に合う程度に入手が行われておるという状況でございます。しかしながら、ただいま私どもが見通しとして考えるところによりますと、非常にパルプ事情がきゆうくつであるので、よほど努力いたしませんと、割当はありましても、引取りが困難になりはしないかとう予想のもとに、ことに後期用教科書を引続いて製造しなければならない時期にだんだんなつて参るときでありますので、できるだけ関係官庁とも協力いたしまして、用紙割当及び引取りが円滑に参りまして、後期用教科書も順調に円滑に出版発行されて、教育上支障のないように努力いたしたいと思います。ただいまお尋ねのございました他の一般出版物用紙のことにつきましては、私ども十分に存じておりませんので、教科書面における用紙事情を申し上げた次第でございます。なお教科書用紙につきましては、どうしても計画的に必要数量を必要な時期に供給しなければならぬという、教科書における特殊性ということを考えまして、今後とも生産割当引取りも、計画的に円滑に行うような手だてが必要かと存じておる次第でございます。以上をもちまして、御了承を願いたいと思います。
  15. 渡部義通

    渡部委員 教科書検定制度ができた当時、民間学者その他から、どんどん教科書に対する検定出願があつたはずでありますが、現在でも出願が初期のようにどんどんなされておるかどうか、その点はどうですか。
  16. 近藤惟一

    近藤説明員 御説明申し上げます。私検定になりました教科書及び文部省著作教科書発行に関する仕事をやつておるものでございますが、検定状況については、詳しくは申し上げかねると存じますけれども、大体のお答えができるかと存じますので、便宜御説明させていただきたいと思います。新しい検定制度ができましたのは、昭和二十四年度からでございます、従いまして二十三年度から仕事を始めたのでございますが、そのときは全部の教科書——文部省著作教科書を従来一種検定と申しまして特に一種類だけを選びまして検定をいたしましたもの、及び新しい検定制度によりまして、小・中・高とも自由にだれでも検定を受けることができるようになりましてからのものと合計いたしまして、二十四年度用教科書総数は五百五十七点ございまして、その中で新しい制度で受けました検定教科書は六十五点でございました。これは何分早々の間に事務上の手続とかあるいは調査方法も従来と異なりまして、御承知と存じますが、小・中・高合せまして約一千人近くの調査員の方が原稿を調べるというような、いろいろ手続順序等にも従来と異なりましたくふうを加えられましたためと、それから時日もあまりなかつたという事情その他からいたしまして、また新しい検定のやり方、あるいは教科書あり方等につきましても、従来とよほど趣を異にいたしましたために、合格いたしましたものはわずか六十五点で、ございましたが、二十五年度用の教科書になりますと、文部省では新たな編修はいたしませんので、次に申し上げまする教科書総数の中で、新しい検定教科書が非常な数に上つたということをお感じになると存じます。すなわち昭和二十五年度用の教科書になりますと、九百五十七点にふえておるのでございます。そうしてその年における新しい検定制度によつて合格いたしました教科書は百四十点にふえております。それが昭和二十六年度用教科書すなわちこの四月から使われます教科書になりますと、さらにふえまして、ただいま提案理由の中にございましたように、千六百六十八点という数字に伸びて参りまして、しかも二十七年度用教科書につきましても、約千点前後の教科書検定出願数があるというふうに伺つておる次第でございます。
  17. 渡部義通

    渡部委員 そのうち文部省発行のものは、どのような率を占めておりますか。
  18. 近藤惟一

    近藤説明員 このうちで文部省著作教科書は約百七十四点と心得ておりまして、この前後が出版されておる状況でございます。なぜ百七十四点前後というかと申しますと、中には発行をやめたものもございますし、まだ発行されないものもございまして、それは採択のときまでに参りませんと数字がはつきりいたしませんために、約百七十四点前後と申し上げた次第でございます。文部省といたしましては、特殊の教科書以外は新しく編修いたしませんので、この数は、学校側需要に応じまして、維持されるかまたは少くなるという見通しを持つておる次第でございます。
  19. 渡部義通

    渡部委員 今度は大臣に聞きますが、この前検定制度を設けられた当時、非常にりつぱな科学者からどんどん検定出願をしたわけです。この科学者は、名前を言えば、大臣りつぱな科学者だと納得されるような人たちも多いのでありますが、この進歩的な団体に属する人とか、民主主義科学者協会委員会でつくつた歴史教科書が、出願しましたけれども検定をパスしなかつた。たとえば民主主義科学者協会歴史学研究会教員組合とが連合してつくつた歴史教科書というもの、は、これは当時の水準から申しまして、科学的に最もりつぱなものであり、これ以上科学的なものはできないとさえ当時考えられていたようなものがパスしなかつた。これはおそらくそれを編纂した人たちが、進歩的な団体に属する、あるいは進歩的な団体委員会によるものであつたということに関連があつたのではないかと疑われる節が十分あつたわけであります。このことは、非常に教科書の上からいつて危険なことでありまして、われわれはこれほどりつぱな科学的なものこそ、用いなければならないと思うわけですが、今後も検定の際にこのようなことがなされるのかどうか、あるいはこういうことは一切排除して、りつぱな科学者によつてつくられた妥当なものは、どしどしパスせしめるというような原則を遂行される考えを持つておられるかどうか。新しい大臣であるから、この点についての考えをお聞きしておきます。
  20. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいまのお尋ねでございますが、検定ということは非常にむがかしいことで、たとえば私らの方面でも、修身の教科書など、私らが非常にりつぱだと思つておるものが、実は落第しておるものがあります。またえらい学者ならきつとりつばな教科書がつくれるというわけには行かない。しかし客観的に見て妥当だと思えば、これを教科書に採用する。そういう客観的な立場で判定するということを今後いたす意向を持つております。
  21. 渡部義通

    渡部委員 客観的というのは、非常に抽象的な言葉で、われわれは教科書については、科学的なものこそが、客観的に妥当なものであつて科学的に正しくないものが、客観的に妥当な教科書であり得るはずはないと思います。たとえばこの前の歴史学に関する教科書の場合のように、最もすぐれておる学者を持つておる諸団体が、そのすぐれておる人たちをさらに選択して、十分会議検討した上でつくつたようなものがパスしなかつた、こういうところに問題がある。こういう場合に、正しいということを判断するのは、やはり科学者でなければならぬと思う。そういうものが始終落第するというようなことがあつては、正しい科学的な教科書というものはできないと思うので、教科書こそがりつぱに科学的なものでなくてはならぬ。科学的なもの以外の教科書というものは、科学に関する限りはあり得ないと考えるのです。しかも従来しばしばそういうことが行われたので、今後そういうことがないようにするという、はつきりした言明をされ得るかどうかということを、聞いておるのです。
  22. 天野貞祐

    天野国務大臣 もちろん、教科書として適当なものということなんです。教科書として適当なものを、だれがつくつりたとか、役がつくつたということではなくして、教科書という立場から一番適当なものを選ぶ、そういう趣旨でございます。
  23. 渡部義通

    渡部委員 この法案関連しての問題ですが、教科書検定制度出版社との関係になるわけですが、つまり教科書がパスした場合、どこの出版社から出ようとも、これに対すると同様の処理方法をとられるということになるわけですか。
  24. 相良惟一

    相良政府委員 ただいま御審議を願つております教科用図書発行に関する臨時措置法という法律によりまして、教科書発行する場合、あらゆる業者に対して平等に取扱うよう、具体的に申しますと、競争入札によつて教科書出版権を設定するということに相なつております。
  25. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 この改正案は、発行を迅速、確実にして、結局兒童のために円滑にやるという趣旨にあると思うのです。出版の方だけいかにりつぱにしましても、一般兒童にこれが公平に、確実に行き渡つて、そうして勉強の用に供するというのが、この教科書目的だと思います。この教科書供給機関について、ここに簡單説明がありますが、これではどうしても納得できないから、この供給機関についての文部省の見解なり、今までの方法なりを簡單にお聞きしたい。
  26. 近藤惟一

    近藤説明員 私から御説明を申し上げたいと存じます。教科書につきましては、文部省著作教科書といわず、検定教科書といわず、いずれにせよ、教科書発行に関する臨時措置法によりまして製造され、生徒の方の一人一人にまで供給をされるということに相なつております。この法律は御承知の通りに、戰後におきまして、新しい教科書制度に応じまして制定されたものでございまして、従来は、文部省発行するにつきましても、また供給方法及び供給に従事するものにつきましても、文部省が一々、たとえば承認というような立場におきまして、タツチいたしておつたのでございますけれども、臨時措置法が公布されましてからは、その制度がすつかり根本から改まりまして、製造から供給に至るまで、すべて発行者に課せられた義務ということに相なりまして、発行者は、その義務遂行いたしますのに、自由に自分考えをもちまして、その方法を選ぶことができるということになりまして、政府としましては、それに一々関與しないという立場をとるようになつた次第でございます。従いまして、発行者は一人々々の子供さんにまで教科書をいかなる方法によつて、まただれに頼んで送り届けるかということは、すべて発行者が自由に選択いたしまして、自分代行機関を定め、かつそれと自由な取引きをいたしまして、その課せられた義務遂行に当つておるというのが実情でありまして、これに対しましては、最後に子供さんに適当な時期に学校が求める教科書が、その数量だけ行つたか行かないかということにつきまして、文部省は多大の関心を寄せると同時に、その義務遂行に対しまして、法の定めるところによりまして、発行者を監督しておるという立場に立つておる次第でございます。法規的な立場から、今文部省がやつておりまする供給ということに対しましてのあらましを申し上げた次第でございます。
  27. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 法的立場はわかつたのですが、その法的立場が円滑に行つていない。というのは、発行者の自由だとして、発行者の定める代行機関が自由にやるのだというけれども、大体はこれは発行者の今までの関係その他で一部が独占する。独占するがゆえに、学校は自由にその教科書を選び、発行所も自由に選ぶこともできるけれども、その供給においてそれがボス的な独占になつているから、昨年度においてはある学校のごときは、一学期間教科書なしでやつているような状態です。それでその書店の資金難か何かの関係で本をよこさないから、他の本屋に頼むと、独占的の代行機関が県に一つある、それが各郡に配給するというような関係があるために、他の本屋に頼んでもそれを県の元締めが許さない、だからせつかく教科書は完成し出版しているけれども、兒童の手にはこういうボス的の独占的な関係で、一学期間も與えられないという現状が実際ある。そういう点について文部省調査されているかどうか、まだそういう結果が全国にどの程度にあつたか、その点をお聞きしたい。
  28. 近藤惟一

    近藤説明員 重ねでの御質問でございますが、教科書供給仕事は、発行者義務であり、その自由な活動にまかせられておるということにつきましては、御了承をいただいと存じまするが、ただいま例といたしまして、ある取次所か特約所が独占をしておつて、いろいろな弊害、すなわち一番困る問題として、学校へ所要の教科書が届かないという例があつたということでございます。この点につきましては、私具体的にお話を伺いませんと、よくわからないのでございますけれども、そういつた事例が今まであつたか、それに対しまして文部省調査したことがあるということにつきまして、簡單に御説明を申し上げてみたいと存じます。先ほども申し上げました通り、文部省といたしましては、子供たちに学校が希望した教科書がその希望する時期までにその希望する数量が必ず完全に供給されるということにつきまして、法の定めるところによりまして最大の関心を拂い、その促進に努めていると申しましたが、具体的に申し上げますると、全国的に見まして、従来の発行会社のやり方をかいつまんで申し上げますると、実は臨時措置法が公布される前まで、文部省発行会社に要求いたしておりました供給方法は、明治四十年以来ずつと続けて参りました供給方法でありまして、今お言葉の中にもありましたかとも思いますが、各府県に一箇所または数箇所の特約供給所と申しまして、県下の全体の学校教科書がうまく行つているかどうかということの、連絡や調整の仕事をいたしておりまするところの特約供給所というものを設けまして、さらに学校受持の取次供給所というものを設けまして、この学校受持の取次供給所というのが、直接に品物を扱つて学校へ納めるということをやつておつたのでございます。そして取次供給所におきまして、いろいろは問題、たとえば教科書の過不足が生じた場合というようなときに、いろいろあつせんをして参つたのが特約供給所でございまして、この制度臨時措置法が公布になります前のやり方であつたのでございます。しかしながら昨年措置法が出まして、まつたく自由になりましてからは、発行者はいかなる方法をとつてもよろしいということになつたわけであります。しかしながら、何と申しましても、大事な教科書を扱うものであり、またその代金の取扱いをいたすものでございまするから、各発行者といたしましては、長年の経験のある方とか、あるいは信用のある方というようないろいろな観点からでございましよう、選びましたところを調査いたしてみますると、大部分が従来の特約または取次の御関係の方と契約をして、教科書供給仕事をやつておるように、全体的にはら見れておる次第でございます。ところが、その間にやはり従来の取次ではぐあいが悪い、あるいは新しい本屋さんでぜひ教科書のことはやりたいという方も、もちろん出ております。あるいは学校の希望によりまして、こういう書店に取扱わせてほしいという希望も出ておるようでございます。これらは、すべて御承知の通り法律の定めによりまして、直接またはその他の方法をもちまして、発行者とできるだけ契約が整うように、いろいろと御相談になつておるようでございまして、それぞれ新しい供給所も、新たな出版業者あるいは古い出版社と、新たな契約が成立したというところもたくさんにあるわけでございます。ただ中には、いろいろ問題が起きまして、自分教科書を取扱う供給所に入れてくれないと困るとか、あるいは役員その他の問題で、いろいろ問題を起しまして、その問題のために教科書供給事務がおろそかになつたという例が耳に入つておりますのは、やはり一、二ございますけれども、これらはいずれも耳に入りますると、文部省といたしましては、ただち教科書発行者が組織しておりまする教科書懇話会等にさつそく連絡いたしまして、善処するよう、私どもといたしましては慫慂、督励いたしておる次第でございます。また臨時措置法の施行規則にございますように、教科書供給という立場からいたしまして、十分に行われていないというような実情がありましたときには、その規則に基きまして、県の教育委員会から文部省に報告があるようになつております。その報告かございますると、文部省発行者が明、瞭にわかつておるときに発行者発行者が不明である場合には発行者が組織しておる一種の連絡機関である教科書懇話会に通知いたしまして、早く善処いたしまして、教科書供給に支障のないようにというふうにいたして参つておりまして、今までの経験からいたしますると、大体現地の発行者と相談し、あるいは現地の方々と相談し合うことによつて、大部分が解決されておるように了承いたしておる次第でございます。今後におきましても、そういう問題が起きましたときには、発行者供給者、関係者、それぞれ懇談いたしまして、円満に解決ができて、教科書につきまして学校の方が御不自由のないようにという点につきましては、今後ともさような方法によりまして、注意をいたして参りたいというふうに考えておる次第でございます。
  29. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 今の説明を聞きますと、二、三は報告を聞いておる、そういうのがあつたならば、発行者に話をする、あるい懇話会で話をしてやつた、まことにおめでたいことだと思うのです。そういうのでは目的は達しない。だからくどくしい説明はいらぬから、こういう点を聞きたい。昭和二十四年度、二十五年度において、全国からこの問題に対して、あるいは教育委員会を通じて、どれだけのそういう苦情が出たか。またその苦情に対して懇話会なんかに通知をして、それが円滑に行つたかどうか、そういうのが幾つぐらいあつたか、それをお聞きしたい。簡單に願います。
  30. 近藤惟一

    近藤説明員 簡單に申し上げますと、実は文部省に持ち込まれた案件と申しますのは、ほとんどないと申し上げてもよろしいと思います。ただ間接に伺いましたのが、年に二、三件と申し上げてよろしいと思います。ほとんど全部解決されたと考えてよろしいじやないかと考えております。例を申し上げますと、徳島、それから長崎、姫路、これが去年ちよつといろいろな行き違いから、供給上に支障がありはしないかということが心配されたのでございますけれども、今年になりましては、ただいま申し上げましたように、少しくどくなつたかと存じますが、どうしてもそういうような方法によらざるを得なかつた次第でございまして大体解決がついておるというふうに考えておる次第でございます。
  31. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 熊本県では、一学期間教科書なしで暮した学校もあるのだが、それでは、大体解決をしたというのは、ただ代行機関発行者との間が解決しただげか、そういう問題が迅速に解決して、そうしてその教科書が兒童の手に入つたかどうか、その点まで確められた解決をしたというお話ですか。  それからもう一つは、文部省に対して持ち込まれたことは、ほとんどないとおつしやるが、教育委員会を通じて、そういういざこざの話を聞かれたのがどのくらいあるか、それをお聞きしたい。
  32. 近藤惟一

    近藤説明員 教育委員会から持ち込まれたことは、一つもございません。  それから解決と言いますのは、もちろん兒童の手に円滑に渡るようになつたということを意味するわけでございます。
  33. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 円滑に渡つた、実際持ち込まれてないと言つても、熊本県では一学期間も教科書なしで兒童が暮したところも実際あるようだが、文部省はもう少し関心を持つてやらなければ、單に教科書保証金を減らすなんということばかり考えて、こういう教科書の七十二社の資本家を擁護するだけであつては何にもならぬ。要はこの教科書というものは、兒童の手に渡つて、兒童がそれによつて勉強して初めてその効果が上る。だから單に発行についてのみ、そういう政策を講じても、何らこれに対する対策を考えずに、兒童にその教科書が渡らないということになつたならば何にもならぬ。その間の供給機関がボス的になつて、資金の関係その他によつて新しいものが杜絶する。古いものは、たくさんの量を持つていても、保証金ができないから、発行者は本を出版しても送らない、だから兒童に渡らない。單に文部省の今の説明のようにおめでたいものでなく、それが全国的だろうと思う。だから、この教科書発行者に対して、かような保証金制度を緩和して、そうして保護して完全に発行するならば、発行された教科書が完全に兒童の手に渡つて、兒童がそれによつて勉強ができ、学問ができるということにならなければ、何にもならないと思う。この供給機関か、今の説明では完全に行つておると言うが、決して完全に行つておらない。明治四十三年以来のあのつながりをもつてつておるから、一部の岩が独占してやつているという実情があると思う。この点は、もう少し文部省としても積極的に調査をされてやらなければならぬと、私は考えるのであります。  なおこれに付随して、少し別な問題になりますが、一年生に対しての教科書の無料支給ということが言われておりますが、この点に対して、本年度新学期からこの対策が講ぜられるかどうかお聞きしたい。
  34. 天野貞祐

    天野国務大臣 これは、いずれその法案提出しましたときに、詳しく御説明いたそうと思いますが、今学年、この四月から一年級にだけ、国語と算数の教科書を無償配付いたしたいと考えております。
  35. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 そうしますと、無償配給についての対策はできておりますかどうか。
  36. 天野貞祐

    天野国務大臣 できております。
  37. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 もう一点ですが、現在日本におきましては、各農村に多数の貧農がおり、また失業者は五十万人といわれ、あるいは五百万といわれておるのでありますが、この貧乏人が教科書を買えずにいる。従つて、いかに教科書をたくさん発行しましても、金がなくて買えない兒童が、全国に相当多数おると思うのであります。こういう者に対していかなる対策を考えておられるか、この点をお聞きしたい。
  38. 相良惟一

    相良政府委員 ただいま坂本委員のおつしやいました通り、全国の相当の貧困家庭の兒童が教科書を買えないという事実は、認めざるを得ないのでございます。これに対しましては、さしあたり生活保護法にまるところの教育扶助というようなことを、今現にやりつつあるのでございます。先ほど大臣説明いたしました通り、教科書を小学校の一年から、わずか二冊ではございますけれども、無償配付するというのも、義務教育無償という原則を実施しようというほかに、すべての子供たちに教科書が渡るような措置を講ずる第一歩であると考えております。
  39. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 義務教育国庫負担の第一歩の点は、われわれも非常に賛成でありますが、当面の問題として、各市町村において、そういう教科書の買えない兒童に対しては、市町村の経費からこれを出すという方法も、現在の自治制度としてはできないことでもないと思うのでありますが、これは各市町村とも——あるいは実行しておるところがあるかもわかりませんが、まだほとんど実行されていない。私は教科書発行を完全にすることに、もちろん賛成であり、しなければならないけれども、昨年度においても、三分の保証金をとつて教科書ができて、山のように積まれても、金がないために買えない兒童が全国に多数ある。私は、まず兒童の手に教科書を渡すという点を完全にして、発行がこれにマッチして、初めて日本義務教育が完全にできると思う。ですから、もう少し積極的に——市町村内において、市町村内の教科書を買えないような貧乏人に対しての保護の方法考えられると思うのでありますから、教科書が兒童に公平に全部に渡るような方法を十分考えておられるかどうか、その点を最後にもう一度お聞きしておきたい。
  40. 相良惟一

    相良政府委員 ただいま申しました通り、現行法規のもとには、きわめて不完全な方法——ただいま申しました生活保護法の適用以外にないのでございますけれども、目下内閣に設置されておりますところの社会保障制度審議会が、内閣に答申いたしましたところの、社会保障制度というものが実施されますと、ただいま御指摘のような点について、非常に改善が加えられることになるだろうと考えております。
  41. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 そういう大きな問題でなく、現在市町村において、食えない者とか、あるいは盲とかいう者には、市町村自身これを救済する方法がある。ですから、これを教科書の買えない児童にまで及ぼすように、やはり文部省当局から督励しなければ、各市町村はできない。われわれは完全雇用をし、社会保障制度を完璧にするように提案はしておりますが、なかなか現在の内閣ではできそうもない。だからその大きいところを望むということは、今すぐはできないと思う。しかしながら、児童の教育というものは、当面の問題です。ですから、市町村にはそういう生活扶助という方法もあるから、なおこれを教科書の買えない兒童にまで及ぼしてやらせる、そういうことを積極的に文部省から督励してやらなければならぬ。日本は民主主義と申しましても、まだいなかの百姓は、お上から言われるとそれをやるけれども、言わなければやらない。ですから、そういう点をもう少し督励してやらせるというようにしなければならぬ。またさつきからおめでたい教科書供給についての話があるけれども、われわれの聞いたところによると、出版社とか供給の本屋なんかは、文部省とか各県の教育委員会なんかに、しよつちゆう出入りをしておる。それは自己の利益のための販売などが目的であつて完全に兒童に書籍を渡すということについては、非常におろそかになつておる。この点はやはり法律の改革があつたにしろ、文部省は積極的にこれを調査し、そうしていけない点はこれを督励させる、これが私は教育行政の府の文部省の一つの仕事ではないかと思うのであります。かような見地から、発行者に対してこういう保護制度を設けるならば、この教科書が完全に兒童の手に渡るような措置を講ずることを考えなければならぬ、という私の考えをここに開陳しまして、質問を打切ります。
  42. 長野長廣

  43. 若林義孝

    若林委員 今日の委員会における渡部坂本両君に対しての御答弁は、今までにない懇切丁寧をきわめられたものでありますが、私はさほど懇切に伺わぬでもいいのでありますが、要点だけをひとつ……。  この御説明書の中に、イとして金融問題が書いてあるのであります。現在までの金融問題は、各金融機関なり文部省などの格段の協力によつてなされていると思うのでありますが、これに一つの法的根拠を與える必要があるのじやないかと考えておるのであります。たとえてみれば、金融公庫のごとき、貿易に関してもそういうものが構想されておる。あるいは食糧に関しては、相当国家が犠牲を拂つて食糧の確保ということをやつておる。教科書は、精神的の食糧だろうと私は思うのであります。いま少しそういう面において、金融面にむだな頭を使わさずに、低廉にして、よい教科書をつくることに発行者をして専念せしめるために、金融公庫のごとき構想を持つものであります。食糧政策その他に非常に力を入れます政策と対比して、教科書のような大切な精神的のかてに対する国家の政策が、薄いように思えてならぬのでありますが、これに対して、簡單でいいのでありますが、将来大いに考慮するかしないかというくらいの点でもいいと思います。お考えをひとつお伺いしてみたいと思うのであります。
  44. 相良惟一

    相良政府委員 まことにお説ごもつともでありまして、文部省におきましても、数年前、教科書の、ただいま御指摘のような点について、公団をつくるという考を持ちまして、研究を進めておつたのでございますが、公団をつくるということにつきましては、むしろ現在ありますところの公団というようなものを廃止しよう、少くして行こうという、そういう時代の趨勢がございますために、実現不可能となつたのであります。しかしながら、これであきらめてしまつたのではなく、ただいま非常にごもつともな御意見を伺いましたので、なお研究を進めて行きたいと考えております。
  45. 若林義孝

    若林委員 私は公団は反対なんであります。公団には絶対反対であります。私の申し上げるのは、金融公庫という金融面だけで何して行こう。これは市中銀行に何してもいいし、公団という構想を離れて、金融面だけで、ひとつ文部省としてもお考えを願いたいと思います。それで私の御返答は承らなくてもけつこうであります。
  46. 近藤惟一

    近藤説明員 今相良政府委員からの御説明に補足いたしまして、お答え申し上げたいと存じます。御承知のように、教科書制度につきましての文部大臣の諮問機関といたしまして教科用図書分科審議会というものがございまして、私どもの行政上に参考になること、あるいは重要な案件につきましては、一々この機関に諮つて仕事をいたしておる次第でございます。ただいまのお尋ねと、また坂本先生のお尋ねとも関連いたしますが、教科書発行供給ということは、生徒に学校が必要とする教科書が完全に適当な時までに必ず行かなければならぬということが、最大の目的でありまして、このことのために、私どもは極力努力しておる次第であります。従いまして従来の経験からいたしまして、これを今度どういうふうに改善して行つて新しい時代に即した、また最もよい方法、万人に喜ばれるような方法には、どういうふうにして持つて行つたらよいかということを、常に研究いたしておるわけでございます。ただいまの教科用図書審議会におきましても、この問題につきましては、各府県からの代表をもつて大部分を組織しておる審議会でありますので、各地方からの意見なども持ち寄りまして、ただいま審議をしておる次第でございますが、ただいまお話の教科書に関しましての金融の問題につきまして、たとえばただいま仰せられましたような金融公庫というような行き方も、一つの方法といたしまして、ただいま審議会の方でも取上げまして、さらに特別小委員会の方におきまして、具体的に各方面の資料に基きまして、研究を進めておるところでございます。まだ文部大臣に対しまして答申するまでには至つておりませんが、そういう状況にあるということだけを補足的に御説明申し上げます。
  47. 浦口鉄男

    浦口委員 簡單に一つお尋ねしておきます。よい教科書を廉価で兒童に配給するということは当然でありますが、それについて、今この法案に特に直接関連がありますのは、いわゆる金融の問題で、これは若林委員の御発言にも関連いたしますが、この点について特段の処置を願いたい、こう思うわけです。それにつきまして定価算定方式が改訂されたということが、この印刷物に載つておりますが、この新しい定価算定の内容を、もしお知らせ願えたら承りたいと思います。
  48. 近藤惟一

    近藤説明員 定価算定方式と申しますのは、文部大臣が、定価については、臨時措置法によつて許可を與えるということになつております。それではその許可を與えるにあたり、いかなる基準で許可を與えるかということになるわけでございますが、この算定の方式は物価庁及びその筋のESSのプライス・コントロールというような方面とお打合せをいたしました結果つくられましたのが、そもそも初めの算定方式でございまして、概要を申し上げますると、教科書の一部当りの生産原価を出すのでございます。その生産原価を出す方法は、用紙あるいは製本資材、製本、印刷、それからその資材を持ち運びいたしまするに要する小運送の料金というような要素につきまして、それぞれ協定値段あるいはマル公がございますので、それらを積算いたしまして、教科書の一冊当りの製造原価をはじき出すわけでございます。その製造原価に対しまして、事業費を従来は二〇%見る。それからさらに編修費を含む印税率というものを別に定めました。この印税率と申しますのは、発行部数によりまして税率をかえておりますので、これは別表になつておりまして、その部数によつて機械的にパーセンテージが出るようになつております。この印税率——編修費を含むところの印税率を原価に対しましてかけましたものが出て参ります。それからさらに輸送費——荷づくり発送に要する費用といたしまして、一ページ当り二銭を見積りました。それから特約手数料といたしまして、やはり原価の七%、取次手数料といたしまして原価に対しまして二五%、これだけのものを一部当りの製造原価に対してそれぞれかけたものを加えまして、定価が算出されるというのが大筋でございます。その中で、従来その定価算出方式がその筋から承認をされました当時におきましては、ちようど新しい検定制度がまだ実施される一年前でありまして、そのためにこの原価に含まれていない諸般の費用がかかつておるわけであります。なぜかと申しますと、臨時措置法が出ましてから、展示会というようなものをいたしまして——学校が採用いたすについて、目録だけではよくわからない、現物と比較研究したい、またするのが適当と考えまして、教科書展示会を毎年実施するということになつておりまして、その展示会に何点出品するか、すなわち小学校、中学校高等学校というように、学校によつて部数が違います。それは学校の数が違うからでございます。展示会に出す見本をつくる見本作製費というものは、相当厖大なものになるわけでございますが、これは実は今まで定価の算定上は認めていなかつたわけであります。そのほかに、先ほど紙のことで御説明申し上げましたように、必要なる時に一ぺんにたくさんの紙を入手することが、今の日本の紙の生産状況ではむずかしいものでございますから、各四半期にわけて入手しておるわけであります。従いまして、製造最盛期に入る前から紙の引取りをやりますために、この金利が相当額になる、わけでございます。これも見なければならないだろうということでございます。そのほか残本と申しますか、災害とか、あるいはそのほか破損いたしましたり、あるいは海外からお帰りになつて御就学になつたり、あるいは他の学校から他の学校にお移りになつたときに、学校によりまして教科書が大分違うものですから、またよけいに教科書がいるという場合に備えまして、保留分を需要数のほかに認めておるわけであります。認めておるというよりも、調節用の保存本をとつておくように仕向けておるわけであります。これが実はそういう災害等がなかつた場合には、まるまる残本になることもございます。またやむを得ず学校制度がかわるということもございます。高等学校になりますと、合併いたしましたり……。
  49. 長野長廣

    長野委員長 説明員に申します。なるべく要点を簡單にお願いいたします。
  50. 近藤惟一

    近藤説明員 そういうようなことで、残本の費用が相当にかかるわけであります。これがやはり見てなかつたということで、これらを含めまして、事業費を従来二〇%と見たものを三八%にいたしたいということで、全体といたしましては、約一割前後くらいの値上りになるのではないかというふうに考えております。
  51. 浦口鉄男

    浦口委員 一去年より約八%定価が高くなつたと書いてありますが、先ほどの説明員の話では、昨年は一冊の定価二十六円、今年は三十二円というお話があつたのです、大分幅が違つて参りますが、その点ひとつ簡單お答え願いたい。
  52. 近藤惟一

    近藤説明員 紙の値上りがその後ございましたのと、それから色刷りが非常にたくさん加わつて参りましたために、上質用紙が加わりましたので、途中におきましてそういうふうに高くなつて参つたのでございます。
  53. 小林進

    小林(進)委員 遅れて参りまして、ちよつと前後のつじつまの合わない質問になるかもしれませんが、率直に私の考えていることを伺わせていただきたい。ただいまの御説明では、教科書発行を担当している事業会社といいましようか、営利商人と申しましようか、そういう方々の仕事の苦難を代弁されているような感じがなきにしもあらずであります。昔の文部省発行の一律の計画を改めて、現在のような教科書発行制度を持たれましてから、すでに四、五年を経過いたしておりますが、根本的にさかのぼりまして、現在の方法にかわるもつといい方法がないものかどうか、こういうことをお考えなつたことがあるかどうか。願わくは、私どもは国民教育の基本たるこういう教科書は、昔のような画一的な発行方法は、もちろん賛成するものではありませんけれども、これはやはり営利の対象として、そういう商人とか事業家にまかせておくのが、どうも不安定でたまらない。できれば、いま少し国家はこれに関與いたしまして——私の具体案といたしましては、内容はそれぞれの種目にまかせておくといたしましても、文部省の付属の印刷所ぐらいなものを設けて、教科書を取扱うような方法がないものかどうか、この点お伺いしたいと思います。
  54. 天野貞祐

    天野国務大臣 今お述べになりましたことは、確かに一理あることだと、私も思つております。ただ教科書が今日のように発達して来たというのは、初めから教科書を制限してしまわないで、自由に競争させたということによつて、私は非常に発達して来たと思うのです。戰時中なんか、一つ教科書にしてしまうということには、私反対の意見を持つておりました。だから、趨勢としてみれば、やはり自由にいろいうな教科書をつくらせて、その中からよいものが発達して行くというのが、私はやはり趨勢ではないかと考えております。ただしかし、これにもまた小林さんのおつしやつたような弊害も伴いやすいかと思いますから、その点考えて行かなければなりませんが、趨勢としては、国家がこれを統制しないで、自由にさせて行く、そうすると、お互いに切瑳琢磨して教科書が発達して来る。私は現在まで非常に発達して来ておると思うのですが、これは自由にした結果だと、こう思つております。
  55. 小林進

    小林(進)委員 大臣の御答弁は私の質問を少しはずれておるのではないかと思います。教科書の内容に対しては、幾種類あつてもよろしい、大いに競争していいものをつくつてもらいたいけれども、その製造は、今も申し上げますように、一案でございますが、文部省の印刷局というなものでもつくつてそこで製造できないか。版権その他は国で買い上げる。いいものはいいものとして、高い値段で買い上げればいいのであります。製造工程は商人にまかせないで、ほかの何か営利を目的としない方法で、自由な競争ででき上つたものを、こちらで製造できないか、その方法はないかというのであります。
  56. 天野貞祐

    天野国務大臣 御質問の要点を逸したことは、私たいへん相済みませんでした。確かに小林さんの言われることも一理あることですが、しかしなかなかそれはむずかしいことではないか。競争だけは向うでさせるが、元締めはこつちだというやり方は、なかなかむずかしくはないか。しかし一つの理想として、私どもはお聞きいたしておきたいと思います。
  57. 小林信一

    小林(信)委員 時間がないそうですから、簡單にお伺いするのですが、この保証金三分という現行の法律の中の数字というものは、どういう根処に立つておるか御存じですか。
  58. 近藤惟一

    近藤説明員 前の定価の三分を保証金に定めましたのは、実は算術では出て参らないのであります。打明けてお話を簡單に申し上げますと、そのときの計算は、実は算術では出て来ないで、三分ぐらいがよかろうということで——私どもといたしましても、算術をいたしますのに、非常に困るのでありますけれども、その当時といたしましては、大体こういう見当に当つておつたのでございます。たとえば定価のうちの三割が用紙代であつたのでございますが、そのうちの一割ぐらいがちようどいいではないかというようなことで、実はその筋の方もそこらがいいところだろう、しかしながら三分以内としていただいたらどうだろうということで御相談申し上げたのであります。そうしますと、三分以内では、やはりいろいろな情実が加わつていけないから、機械的に出るように、定価の三分というふうにきめてしまつた方が、最も公平ではないかというようなお話で、ぽかつと三分にきまつたというのが裏道の話でございます。私もその当時おりましたけれども、計算上三分というのは、なかなか出て参らなかつたのでございます。そういう状況でございます。
  59. 小林信一

    小林(信)委員 とにかく、これが一番基礎になるわけであります。この三分の保証金をとることによつて、その約束、義務を履行させるというのが、きつと根拠だと思うのです。そしてこの金額が、商法上大体そういう義務を履行させるだけの拘束と、もう一つは、発行する者によけいな負担を與えないという一つの根拠になるわけで、ここには相当問題があると思うのですが、ただいまお伺いすると、いいだろうというようなところから出発されたという、まことにあぶない数字なんです。そういうことからこれを検討して行くことは、たいへん私たちとしても不安を持つわけなんで、この点次回に研究する場合は、材料を持つて来ていただきたいと思うのです。それから定価の三分であつて原価の五分二厘ですか、これは要するに保証金が非常に過重であるということを示しているわけなんです。原価の五分二厘が発行値段だとすると、その余は需要者に渡るまでのいろいろな費用になるわけですが、その利益はどんなふうに配分されているか、その点をちよつとお伺いしたい。
  60. 近藤惟一

    近藤説明員 まず第一点の、三分は非常にあやふやで、計算の基礎が算術で出て来ないという状況を申し上げたのでございますが、一度これでやつて見ようということでありましたのでやりました。ここ三年の経験からいたしまして、実は今年の保証金額をはじき出して見ますると、先ほど申しました二億三千万円ぐらいになるわけでございます。そういたしますと、各社が負担する金額は非常なものになりまして、これがちようど製造期、すなわち一番お金のいるときに、発行指示いたしましてから十五日以内に納めなければならないということは、他の金融上からいたしまして、非常に困難だということでございます。かりに一分になりますと、それは三分の一でございますから約八千万円であります。七十数社で一社約百万円ぐらいであるから、保証金としての性質もそれで生かせるのじやないかというふうにも考えられますので、できるだけ低減した一分という計算を出した次第でございます。その筋の方も、そこらが一番適当と考えられるということでございまして、内々これにオーケーをいただいた次第でございます。  それから第二点は、それでは今の保証金定価の中に占める率は、五分幾らになつておるが、その他専業費のパーセンテージーの中には、どういうものが見込まれて、利益はどのくらいかということでございます。この点は、マージンとしては、特別のパーセンテージーを見てございませんで、その事業体の経営費がすべてそれでまかなわれるということでございますので、できをだけ経営を合理化して、そこに利潤を見出して行くという方法をとるよりほか、ないのじやないかと存じます。すなわち五%を除きましたあとは、その会社が経営をする必要な経費全部を含んでいるというふうにお考えつていいんじやないかと思います。
  61. 小林信一

    小林(信)委員 今の点、なお詳しくお伺いしたのですが、大分大臣はお忙しいようでありますから、提案者にお伺いいたします。  ここに理由として「定価の騰貴、教科書製造資金の融資のひつ迫」というようなことが述べてあるのですが、教科書は、定価が高くなればそれだけ利益の歩合も多くなるので、金融の問題は何らかほかの方法でも措置ができると考えられるわけなんです。ただいま当局のお話を承りますと、これ以外に、紙の入手の問題だとか、その他資材の問題だとか、さらに諸般の費用ということで、屡示会等の費用があげられておるのですが、これは要するに検定制度の嚴格というふうなところに問題があるのではないかと思うのです。そういう点も提案者の方で御考慮なさつておるかどうかお伺いしたいと思います。提案者でなくても、文部省の方で考えがあれば、それでけつこうです。
  62. 近藤惟一

    近藤説明員 ただいまお述べになりました点につきましては、十分考慮された上で処理されておるというふうに、私どもは了解しております。
  63. 小林信一

    小林(信)委員 きようはこの程度にしておきます。
  64. 坂本泰良

    坂本(泰)委員 原価計算の資料を、ひとつ出してもらいたいと思います。展示会なんというものは、公費を預かつて飲んだり食つたりするので、発行者と代行人が校長の買收費に使うようなことがあつて非常に困る。そういうものはどんなふうに見ておられるか。金利の問題も、代行機関から保証金発行者に出している。代行機関の元締めが、またその下から保証金をとつているから、そういう点がどういうふうに原価計算に入つているか、詳しく見たいのです。でないと、文部省の知らない大きい事実があるのです。私が行つた熊本の例ですが、下つぱの方は、保証金が出せないものだから教料書がもらえないで、一学期も教科書学校へ来ないところがある。元締めが発行者保証金を出しているという実情もあるので、原価計算なんかもよく調査しなければいかぬ。なお三分を一分に下げるという基準が、まだ納得が行かぬので、その原価計算の資料をお願いしたいと思います。
  65. 長野長廣

    長野委員長 本案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  66. 長野長廣

    長野委員長 次に宗教法人法案の議題といたします。  本案は、去る二十七日、本委員会に付託された法案であります。これより政府提案理由説明を願います。天野文部大臣
  67. 天野貞祐

    天野国務大臣 ただいま上程になりました宗教法人法案について御説明申し上げます。  現在わが国における神社、寺院、教会、教派、宗派、教団等の宗教団体の数は、約二十万に上つております。これらの宗教団体は、全国の都市、農漁村、山間僻地に至るまで、あまねく存在し、おのおのその独自特有の宗風と伝統のもとに、道義、思想、文化等各般にわたつて、国民の生活に深いつながりを持ちつつ活動しているのであります。この点にかんがみますとき、宗教団体の法的地位をいかに規定するかということは、現在置かれておりますわが国の地位、実情から申しまして、まことに重大な問題といわなければなりません。しかも、日々刻々の国民の生法の基盤に関し、直接に重大な関係があるだけに、宗教団体に対する正常かつ公明な位置づけは、一日といえどもゆるがせにできない問題であります。  現行の宗教法人令は、昭和二十年十二月二十八日、勅令第七百八十九号をもつて公布された、いわゆるポツダム勅令でありまして、政治的、社会的及び宗教的自由に対する制限除去の件に関する連合国最高司令部覚書によつて、廃止を命ぜられた旧宗教団体法にかわつて宗教団体の財産の保金のための善後措置として、早々の間に制定されたものであります。従つて、民主的立法の原則にのつとつて、宗教法人制度を、法律をもつて規定する必要が痛感されたのであります。また一方におきまして、同令は現下の宗教界の実情に照しまた過去五年有余の実施のあとを顧みましたとき、不備の点も少くなく、他方におきまして、信教の自由の基盤の上に立つ新たな宗教法人制度の確立が、各方面から要望される実情にあつたのであります。ここにおきまして、政府は年来愼重な研究を続け、古い伝統を持つわが国の複雑多岐な宗教事情に即応するとともに、宗教法人の特殊性と自主性を重んずる新たな宗教法人制度について、その構想を得るに至りましたので、ここにこの法律案提出することとした次第であります。  次にこの法律案の骨子となつております主要な点について申し上げます。  この法律目的といたしますところは、宗教団体に法人格を與え、宗教法人が自由で、かつ自主的な活動をするための物的基礎を獲得させることであります。これがためには、あくまでも信教の自由と政教分難の原則を、基本としなければならないと考えます。それとともに、宗教法人の責任を明確にし、かつその公共性に配慮を拂うこともまた忘れられてはならないのであります。このような趣旨から、この法律案は、常に自由と自主性、責任と公共性、この二つの請を骨子として、全体系が組み立てられてあるのであります。  この法律案は、以上のような考えに基きまして、現行法令に比較し、かなりの制度改正を試みているのであります。第一に、宗教法人の規則の作成、規則の変更、合併等に関する認証制度を設けたことであります。現行宗教法人令におきましては、宗教法人の設立は、いわゆる準則主義、登記主義によつておりまして、宗教法人は、みずから規則を作成して登記をすれば、成立するのでありまして、公益法人の成立の手続としましては、多分に考慮の余地があると考えられます。そこで、この法律案におきましては、信教の自由に対する愼重な配慮のもとに、宗教法人の規則の作成等について、所轄庁の認証を要することとし、これによつて宗教団体でないものが宗教法人になつたり、法令に適合しないような規則の作成や、設立の手続がなされることを防止いたしたのであります。この認証は、あくまで宗教団体立場を尊重いたしまして、所轄庁に認証すべき期限を設けるとか、再審査、訴願の道を講ずるとか、愼重な手続を定めております。さらに往々にしてありがちな行き過ぎになるようなことがないように、またこの法律の公正な運営ができるようにとの配慮から、文部大臣の諮問機関として、文部省に宗教法人審議会を設け、所轄庁の認証拒否の場合や、再審査や、訴願の場合は、同審議会の意見を求めなければならないことといたしておるのであります。  第二に、宗教法人の管理運営面において、民主化をはかつたことであります。現行宗教法人令におきましては、宗教法人の執行機関として、主管者を置き、これを補助する氏子、崇敬者、檀徒、教徒及び信徒の総代三人以上を置くことを定めておりますが、この法律案におきましては、責任役員制と公告制とを設けておるのであります。宗教法人の事務決定機関として責任役員は三人以上を置き、その中の一人を代表役員とし、宗教法人を代表する者といたしたのであります。しかしながら、これらの代表役員及び責任役員の資格、任免、職務権限等は、宗教法人の特性に応じて、自由にその規則で規定できるのであります。また、これらの役員の業務執行の公明適正をはかる一方、不動産の処分等の財産管理上の重要の行為や、合併、解散等の、宗教法人にとつて重大な身の振り方に関する行為は、あらかじめ信者その他の利害関係人に周知させる公告の制度を定めて、宗教法人の公明な運営と自主性の発揮を期待するとともに、その公共性を重んじているのであります。  第三に、宗教法人の合併を認めたことであります。現行宗教法人令におきましては、宗教法人の合併に関する規定がないために、宗教法人がこうむつていた不便も少くなかつたのであります。この際宗教界の要望にこたえて、合併の制度を設けたわけであります。  最後に、経過的措置であります。まず宗教法人令による宗教法人は、この法律施行後一年半以内に、この法律の規定に基いて作成した規則について、所轄庁の認証を申請し、新らしい宗教法人となる道を開いたのであります。それとともに、長い宗風と伝統を尊重する意図のもとに、宗教界に急激な変化を招来することを避けるため、現行の宗教法人は、原則としてこの法律の規定による認証を受けるまでは、現行の宗教法人令による宗教法人として存続し得るように配慮いたしているのであります。その他、登記等の手続規定や民法等の準用規定や解釈規定を、できるだけこの法律の中に取入れて、この法律趣旨を明確にし、宗教団体の便宜をはかるとともに、宗教行政事務の円滑な運営に資していることも、この法律案の特色の一つといえるのであります。  以上、この法律案趣旨及び大要について申し述べたのでありますが、この法律案が成立施行せられますならば、宗教法人の社会性を明確にするとともに、その特殊性を確認することによりまして、宗教界の要望にこたえ、国民の福祉に寄與するところがきわめて大きいことを、確信するもであります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに議決くださるようお願いいたします。
  68. 篠原義雄

    ○篠原政府委員 ただいま文部大臣から宗教法人法案提案理由説明がありましたが、私は、その補充の意味で、この法案の大綱について御説明申し上げたいと存じます。  この法案目的といたしますところは、第一條において明らかでありますように、宗教団体が憲法で保障されております信教自由の基盤の上に、その独自、特有の宗風と伝統を存続しつつ、自由かつ自主的な活動をするための物的基礎を確保することにあります。すなわち宗教団体の財産権の主体性を明らかにすることであります。これがためには、あくまでも信教自由の原則、ひいてはそれが国政との関係において生ずる政教分離の原則を十分に考慮しなければならないと考えます。このととは、自由の尊重とともに、責任の明確化と公共性の配慮ということが必要となつて参るのであります。以上の趣旨から、この法案は常に自由と自主性、責任と公共性を主眼とし骨子として、全体系が組み立てられておるのであります。  以下、本案の大綱について、章を追つて説明申し上げます。  第一章総則第一條におきまして、この法律目的は、宗教団体法律上の能力を與えるごと、すなわち、宗教団体が法人となり得る道を開くことにあることを明らかにしております。そして、宗教団体は、法人となることによつて、その宗教団体の名において、財産を所有し、これを運用することもでき、その他宗教団体目的を達成するための業務や事業を運営する上に役立つことになり、宗教団体自体の目的達成を容易にすることともなるのであります。この法律目的はあくまで憲法の保障する信教の自由を尊重する点に立脚し、決して宗教上の行為にまで触れるものではないことを明らかにしておるのであります。  第二條は、この法律で「宗教団体」と申しますのは、宗教の教養を広めること、儀式行事を行うこと、信者を教化育成すること、この三つを主たる目的とする団体をさしておりまして、神社、寺院、教会のような、いわゆる單位団体では、礼拜の施設を具備していることを予想しておりますし、また、教派、宗派、教団のような、いわゆる包括団体では、右の單位団体を二つ以上包括していることを予想しておるのであります。  ただいま礼拜の施設ということを申しましたが、本殿、拜殿、本堂、会堂などの礼拜の施設のほかにも、宗教法人の主たる目的のために必要な固有の建物や工作物や土地がありますが、これらを、この法律では「境内建物」または「境内地」と呼ぶことにしております。  第五條は、所轄庁に関して規定しておりまして、神社、寺院、教会などの單位団体の所轄庁は、都道府県知事とし、教派、宗派、教団などの包括団体の所轄庁は、原則として文部大臣としております。  第六條は、公益事業またはその他の事業に関する規定でありまして、後者の事業に伴う收益は、宗教法人の目的に沿つて使用されなければならない趣旨で、もしこれに違反すれば、第七十九條の規定により、所轄庁からその事業の停止を命ぜられることがあります。  第七條から第十一條までにおきましては、宗教法人の住所、能力、責任などにつき民法の規定を取り入れ、また登記の効力、登記の場合の届出に関して規定しております。  第二章におきましては、宗教法人の設立に関する事項を規定しております。第十二條には、設立に関する内部的に手続として、民法法人の定款に該当する宗教法人の規則を作成して、その規則について所轄庁の認証を受けるべき旨を規定しております。  宗教法人の規則の記載事項に、公告の方法がありますが、この公告は、宗教法人の設立、財産処分、被包括関係の設立廃止、合併、解散等の場合に、信者その他の利害関係人に対して行うもので、宗教法人の公明適正な運営と自主性を考慮した制度でありまして、公告の方法は、登記事項としております。  宗教法人設立の旨を公告いたしましてから、所轄庁に規則の認証を申請し、その認証を受けた後、設立の登記をいたしまして、ここに宗教法人が成立するのでありまして、第十三條から第十五條までにその旨が規定してあります。  所轄庁は、認証の申請を受理いしまますと、三箇月以内にその規則を認証する旨の決定か、または認証することができない旨の決定をすることになつております。この場合、文部大臣が認証することができない旨の決定をしようとするときは、宗教法人審議会に諮問しなければならないことになつております。  現行法におきましては、設立の登記後に、所轄庁に届け出ることになつておりますが、本法におきましては、登記前に所轄庁から認証を受ける制度をとつているのであります。これによりまして、自由を濫用して、宗教団体でないものが宗教法人となつたり、はなはだしく不備で法令に違反するような規則をもつ宗教法人ができて、取引の安全を害したりするようなおそれを防止することが、期待されのであります。本法で認証と申しておりますことは、第十四條にもありますように、当該団体が、第二條に規定されているような宗教団体であり、また、規則や手続が法令の規定に適合しているものであることを、所轄庁において確認する行為でありまして、事実について認定して、公の権威をもつて宣言するにとどまり、それからいかなる効果が生ずるかは、もつぱら法律の定めるところによるのでありまして、その行為をした所轄庁の意思によるものではありません。この点、第三者の法律行為を補充して、その効力を完成させる認可とは、性質上の相違があると申すことができます。また、認証には、宗教そのものの正邪曲直、新旧大小の価値判断にわたるようなことは、決して伴わないものであるのであることは言うまでもありません。認証につきましては、あくまで愼重を期し、宗教団体の正当な利益が保護されるよう、宗教法人審議会の諮問その他愼重な手続に関する定めをするほか、再審査と訴願が、第十六條及び第十七條に規定せられておるのであります。  第三章は、宗教法人の管理に関する規定でありまして、宗教法人の役員として、本法で定めておりますものは、代表役員、責任役員、代務者、仮代表役員、仮責任役員及び清算人であります。  現行法では、宗教法人には総代三人以上を置くべしという規定がありますが、この総代の規定は廃止いたしまして、責任役員を三人以上置かなければならないことになつております。この責任役員は、必ずしも総代のかわりではありませんから、その資格、任免、職務等は、その宗教法人の特性に応じてみずから定めることになつております。規則に別段の定めがなければ、宗教法人の事務を、責任役員の定数の過半数で決し、その議決権は、おのおの平等とされております。代表役員も、責任役員の一人としてその責に任じますが、宗教法人の事務の総理の権限及び代表権は、代表役員にあるのでありまして、この点、現行法の主管者に相当するものであります。第十八條から第二十條までの規定におきましては、責任役員及び代表役員並びに責任役員及び代表役員の代務者に関する定めをいたしております。第二十一條は、民法第五十七條の特別代理人に相当する仮代表役員及び仮責任役員の規定であります。  第二十三條は、宗教法人のうち、單位団体が、重要財産について法律上の処分をしたり、境内建物や境内地について、事実上の処分をしたりする場合には、原則として、あらかじめ規則で定めるとこちによるほか、公告をしなければならないという規定であります。現行法では、重要財産として不動産のほかに、神社寺院教会財産登記簿に登記されている宝物と、基本財産たる有価証券とが掲げられておりますが、この財産登記制度は、従来ほとんど利用されないので、廃止いたしました。この宝物と、境内建物、境内地たる不動産につきましては、規則で定めるところによらなかつたり、または公告をしなかつたりして、これを処分しまたは担保に供しますと、その行為は無効になることになつております。このことは、従来の方針を尊重し、宗教法人の重要な財産である宗教財産の流出を防ぐ趣旨でありますが、一方、取引安全の趣旨から、善意の相手方や第三者に対しては、その無効をもつて対抗できないことといたしました。  第四章は、規則の変更に関する規定でありまして、宗教法人が規則を変更しようとするときは、まず内部的手続として、規則所定の手続を済まし、対外的手続として、所轄庁の認証を受けなければならないことになつております。第二十條から第二十八條までは右の手続を規定しております。第二十九條は、規則の変更について、認証できない旨の決定があつた場合の再審査及び訴願に関する規定であります。規則の変更は、設立の場合のように、登記によつて効力を生ずるのではなく、規則の変更に関する認証書の交付によつて効力を生ずることになつております。  ここに規則の変更の手続として注意すべきことは、第二十六條第一項後段と、同條第二項から第四項までに規定しておりますところの、包括団体との被包括関係の設定、廃止にかかる規則の変更に関する規定であります。現行法では、この点が必ずしも明確ではありませんので、本法におきましてはこれを明らかにし、当該宗教法人の規則中に、包括団体からの脱退について、包括団体が一定の権限を有する旨の規定があつても、その権限に関する規定によらなくてもよい旨を規定し、認証申請前に、信者その他の利害関係人に対して脱退または加入の旨を公告し、脱退の場合には、現在の包括団体に対してその旨を通知し、加入の場合には、加入先の承認を受けなければならないことになつております。脱退、加入に関する根本的自由を認める考えは、現在とかわりはございませんが、單に主管者と数人の総代との意思によつて決定されているのと比べて、より公明であり、より民主的であるということが言い得るのでありまして、従来往々見られたような紛議の防止に役立つものと、期待されるのであります。  第五章は、合併に関する規定でありまして、これは現行法にはない規定であります。この合併に関する規定を設けましたことによつて、現在の、解散をして清算手続を経なければ、合併と同じような結果が得られないという不便を取除き、清算手続を経ないで、権利義務の包括的承継ができることになるのでありまして、教化力を強化するための合併要望の傾向が地方に見受けられる事情から見まして、特に必要な措置考えます。  合併は、信者その他の利害関係人に対する公告、財産目録等の作成、債権者に対する催告と、所轄庁の認証とが必要とされております。第三十三條及び第三十四條の規定がこれでありまして、第三十五條には、吸收合併の場合における規則の変更のための手続、新設合併の場合における規則の作成と設立の旨の公告、また、第三十六條には、合併に伴う被包括関係の設定、廃止の場合における公告、承認、通知について規定されております。  第三十八條及び第三十九條は、合併に関する認証の申請と、認証の決定などの規定でありまして、第四十條には、合併に関する認証についての再審査と、訴願の道を規定しております。合併の効力は、設立の場合と同様、登記によつて生ずることになつております。  第六章は、解散に関する規定でありまして、第四十三條に、解散の事由として、任意解散と六種の法定解散を規定しております。任意解散の手続といたしましては、合併の場合と同様、規則所定の手続、信者その他の利害関係人に対する意見を申し述べる旨の公告、それから所轄庁の認証が必要でありまして、解散の認証に関する再審査と訴願につきましても、規定しておるのであります。解散の効力は、任意解散の場合は、解散に関する認証書の交付によつて生じ、法定解散の場合は、その車由の発生によつて生ずることになつております。  第四十九條は、清算人に関する規定でありまして、所轄庁の認証の取消しと、裁判所の解散命令による解散の場合の清算人は、裁判所が選任する点が、現行法と異なつております。  第七章は登記に関する規定でありまして、第一節の法人登記の規定は、現行の宗教法人令施行規則の定めるところと大差なく、合併に関する登記が新たに加わつた点が、異なる程度であります。  第二節の礼拜用建物及び敷地の登記も、現行法とほとんど同じでありますが、第六十九條第一項後段の規定に、礼拜の用に供する建物の敷地として登記した土地が、分筆や移築によつて礼拜の用に供する建物の敷地でなくなつた場合は、登記の抹消をしなければならないという規定などが加わつております。  第八章は、宗教法人審議会に関する規定でありまして、これは文部大臣の諮問機関として文部省に設置され、認証その他この法律によりその権限に属せしめられた事項について、調査審議する機関であります。委員は十人以上十五人以内とし、宗教家及び宗教に関し学識経験がある者について文部大臣が任命することになつております。この審議会の設置によりまして、所轄庁によるこの法律の適正な運営が期待されるのであります。  第九章、補則、第七十九條は、被包括関係の廃止を防ぐことを目的としたり、これを企てたことを理由として、当該宗教法人の役員に対して、不利益な取扱いをしてはならないとし、その役員の身分を保障する一方、被包括関係を廃止した宗教法人も、従前の債務履行の義務は免れないという規定であります。  第七十九條は、事業から生じた收益を所定の使途に使用しない場合は、一年以内の期間を限つて、所轄庁がその事業の停止を命ずることができる規定であります。  第八十條は、認証の取消しに関する規定でありまして、所轄庁は、設立または合併の認証をした場合に、当該団体が宗教法人の前提である宗教団体でないことが判明したときは、認証書交付の日から一年以内に限り、その認証を取消すことができるという規定であります。この事業の停止と認証の取消しは、宗教法人審議会の意見を聞いた上でなければできません。また、この停止と取消しのいずれの処分に対しても、訴願をすることができることになつております。  裁判所が解散を命ずることができる事由は、五つ規定されておりまして、その一は、法令に違反して公共の福祉を明らかに害する行為があつたこと。宗教団体目的を著しく逸脱し、または一年以上その目的のための行為をしないこと。三は、礼拜の施設を二年以上備えないこと。四は、一年以上代表役員も代務者も欠いていること、五は、認証書交付の日から一年以上を経過した後において、所轄庁の認証の取消しの事由に該当することが判明したこと、この五つであります。裁判所による解散命令は、職権と検察官の請求によるほか、さらに所轄庁や利害関係人の請求によつてもできるようになつた点が、現行法と違つております。  第八十三條におきましては、礼拜用建物及び敷地に対する差押え禁止の規定で、これは現行法の精神を踏襲しております。  第十章は、罰則の規定でありまして、認証申請の添附書類に不実の記載があつた場合、その地法が要求しております公告、届出、登記等一定の手続を履行していないような場合に、一万円以下の行政罰で、ある過料を科することになつております。  附則について申し上げます。この法律は、公布の日から施行され、その施行の日から、宗教法人令とその施行規則を廃止することになつておりますが、この法律施行の際、現に存する宗教法人令による旧宗教法人につきましては、この法律による新宗教法人となるまでは、旧宗教法人として存続することができることになつております。従つて、宗教法人令とその施行規則は、旧宗教法人が存続する限り、本法施行後も、なお効力があるのであります。  旧宗教法人が新宗教法人となるのには、本法中宗教法人の設立に関する規定に従わなければならないのでありまして附則の第五項にその旨を規定しております。また、宗教法人令では、合併に関する規定がありませんので、二つ以上の旧宗教法人が合併しようとする場合は、新宗教法人の設立に関する規定に従つて、一つの新宗教法人となることができる道を第六項において開いております。  旧宗教法人が新宗教法人となる場合は、合併の場合も、本法の設立の登記によるのでありまして、第六十一條第二項に掲げる宗教法人登記簿に記載されるのであります。これに反しまして、宗教法人令によつてなされた公衆礼拜用建物及び敷地の登記は、本法による登記と当然みなされます。  旧宗教法人が、もし被包括関係を廃止しようとする場合は、新宗教法人となることに伴う場合に限り、これをすることができることとし、公告と同時に通知の手続をとらねばならないことを、第十三項及び第十四項に規定しております。  旧宗教法人が新宗教法人になるには、本法施行後、一年六箇月以内に認証の申請をしなければなりません。所轄庁は、認証の申請を受理してから一年六箇月以内に、認証に関する決定をしなければならないことになつております。もし本法施行後一年六箇月以内に認証の申請をしなかつた場合には、その旧宗教法人は解散するのであります。  第二十二項では、旧宗教法人のうち、教派、宗派または教団で、新宗教法人となつたものの所轄庁は、文部大臣とする旨を定めております。  第二十三項以下は、本法の施行に伴う関係法規の改廃に関する規定であります。  以上、この法案の大綱について御説明申し上げましたが、この法律におきまして特に留意いたしました点は、宗教の自由と平等、宗教法人の特性と自主性の尊重に最大の注意を拂いつつ、現行法の長所を取り入れ、その短所を補つて、その運営が宗教団体及び一般国民の福祉の増進に積極的に寄與するよう苦心したということであります。この法案の成立につきましては、宗教界から大きな期待がかけられておる次第でありまして、何とぞ愼重御審議の上、すみやかに議決くださるようお願いいたす次第でございます。
  69. 長野長廣

    長野委員長 この法案に対する質疑は次会に延期し、本日はこの程度で散会いたします。次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後四時四十六分散会