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1951-02-08 第10回国会 衆議院 文部委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月八日(木曜日)     午後一時四十一分開議  出席委員    委員長 長野 長廣君    理事 岡延右エ門君 理事 松本 七郎君       柏原 義則君    甲木  保君       坂田 道太君    佐藤 重遠君       高木  章君    東井三代次君       飛嶋  繁君    平島 良一君       若林 義孝君    志賀健次郎君       渡部 義通君    小林  進君       浦口 鉄男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 天野 貞祐君  出席政府委員         文部政務次官  水谷  昇君         文部事務官         (社会教育局         長)      西崎  惠君  委員外出席者        專  門  員 横田重左衞門君         專  門  員 石井つとむ君     ――――――――――――― 二月七日  委員周東英雄君辞任につき、その補欠として甲  木保君が議長の指名で委員に選任された。 二月八日  岡延右エ門君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 二月七日  社会教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第一九号)(参議院送付) 同月三日  職業教育法制定に関する請願神田博紹介)  (第二七一号) 同(遠藤三郎紹介)(第三二一号)  新日本精神普及御底に関する請願内海安吉君  紹介)(第二八一号)  平和擁護に関する請願淺沼稻次郎紹介)(  第二八二号)  六・三制校舎建築費国庫補助継続等に関する請  願(柄澤登志子紹介)(第二九四号)  学校給食法制定に関する請願若林義孝君紹  介)(第三二二号)  同(中馬辰猪紹介)(第三七一号)  新暦法制定請願早稻田柳右エ門紹介)(  第三五三号)  教育財政確立に関する請願外一件(小松勇次君  紹介)(第三八九号)  標準義務教育費法制定に関する請願松井政吉  君紹介)(第三九〇号) の審査を本委員会に付託された。 同月五日  博物館法制定に関する陳情書  (第一五二  号)  職業教育法制定に関する陳情書  (第一八五号)  義務教育費全額国庫負担に関する陳情書  (  第一九〇号)  職業教育法制定に関する陳情書外六件  (第一九  二号)  職業教育法制定に関する陳情書  (第一九九号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の選任  国政調査承認要求に関する件  社会教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第一九号)(参議院送付)     ―――――――――――――
  2. 長野長廣

    長野委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選挙を行います。理事選挙はその手続を省略し、先例により委員長において指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 長野長廣

    長野委員長 御異議なしと認めまして、私から岡延右エ門君を指名いたします。     —————————————
  4. 長野長廣

    長野委員長 次に国政調査承認要求の件を議題といたします。本会期中も国政に関する調査をいたしたいと存じますので、衆議院規則第九十四條により、承認要求書を提出いたしたいと存じます。ただいま要求書を朗読いたします。     国政調査承認要求書     調査する事 一、社会教育に関する件     項           一、職業教育に関する件           一、宗教団体活動に関する件           一、文化及び教育映画に関する件   二、調査の目的 文部行政実情調査し、職業教育博物館宗教法人に関する政策を樹立し、宗教情操並びに治安関係等の訓育方針関する対策を図るため   三、調査方法 関係方面より意見聽取及び資料要求等   四、調査期間 本会期中右によつて国政に関する調査を致したいから衆議院規則第九十四條により承認を求める。   昭和二十六年二月八日      文部委員長 長野 長廣衆議院議長幣原喜重郎殿  なお文部行政に関連して、今後も種種国政調査事件も出て参ることと存じますが、それはその都度国政調査承認を得て調査し、できるだけ国政調査事件を名目的なものとしないで、結論を出したいと存じます。ただいま読み上げました承認要求書を、議長に提出したいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 長野長廣

    長野委員長 御異議なしと認め、さように決しました。     —————————————
  6. 長野長廣

    長野委員長  次に社会教育法の一部を改正する法律案参議院送付)を議題として、質疑に入ります。松本君。
  7. 松本七郎

    松本(七)委員 社会教育法が制定されました当時に、予算裏づけのない法律案というものは、実際にこの法律にのつとつて行う場合に、どこまでやれるか、現状でははなはだ疑わしいということを、各委員からも言われておつたのでありまするが、今回の改正される点でも、たとえば第九條の二の二項に、市町村教育委員会事務局に、社会教育主事及び社会教育主事補を、置かなければならぬという規定ではなしに「置くことができる」となつております。これについて、政府当局のこの間の御説明にも、やはりその理由として、市町村財政が非常な増大を来さないように考慮したのだということでございましたが、すべて現在の財政的な余力の少いときに、こういうことをやろうというのですから、非常に困難があるわけです。この社会教育法ができましてから、今日までの社会教育実情というものを明らかにしていただきたいと思います。
  8. 西崎惠

    西崎政府委員 松本委員の御質問にお答えいたします。予算裏づけのない法律ができまして、そのためにせつかくの法律運用が阻害されるというようなことがあるのではないかという御意見と拜聴したのでありますが、図書館法の場合におきましても、あるいは社会教育法の場合におきましても、また文化財保護法の場合におきましても、御説の通り予算裏づけのない法律が提出されまして、両院の可決を得たわけであります。幸いにその法律の出ましたことが、大きな原因なつたと存じますが、それから後に予算裏づけができるという現状でございまして、図書館法も成立いたしまして、おかげをもちまして来年度の予算には図書館に関する運用費補助だけで、十分とは申されませんが、一千万円が計上されるような実情になつたのであります。さらに文化財保護法におきましても、法律通りました後に、いろいろの経費がとれたのでございます。公民館のことにつきましても、社会教育法のうちに補助金を交付すると定められましたが、来年度の予算は約二千百万円くらいの運用費だけの補助が計上されておるのであります。その他予算裏づけ法律ができますときに、すでにできておるということが望ましいことでありますけれども、不幸にしてそうでありませんでしたのにかかわらず、その後逐次予算裏づけを見つつあるという現状であります。御承知のように、六・三制を完成しなければならぬという 非常に国費多端な折でありますので、なかなか予算の通過は困難でございますが、社会教育関係者も一同努力いたしまして、皆さんの御支援によつて逐年向上しつつあるということを、御報告できると存じます。  それから第九條の二の二項の、市町村社会教育主事及び主事補を置くことができるとして、置くと書いていないのも、予算裏づけがないからではないかという御意見でございましたが、できるならば、これも予算裏づけによりまして、義務設置にすることが望ましいのでございますけれども、社会教育主事及び主事補という名前はつけておりませんが、それに相当するようなものが市町村にございます。その現状を見ますと、まだ二〇—三〇%の市町村しか置いていないような現状でございまして、この残りのものに、全部予算裏づけをもつて交付金を與えるということは、時局柄非常に困難でございます。従いまして、都道府県の社会教育主事及び主事補というふうに、すでに現場におるものを義務づけまして、一応市町村というものは義務から除いた、こういう実情なのであります。これを要しまするに、社会教育方面は、学校教育と比較いたしまして、非常に立ち遅れました関係上、予算方面を見ましても、不十分と思われますけれども、終戰後社会教育法と申しますような、終戰前には関係者一同が口をそろえてその必要を説いたにかかわらず、成立いたしませんでしたところの新しい法令ができましたのも、一つの動機となりまして、逐次発達の方向をたどつておりますことを御報告申し上げたわけであります。
  9. 松本七郎

    松本(七)委員 それで社会教育主事主事補の職分についてでございますが、第九條の三に、主事は、社会教育者に対して「専門的技術的な助言指導を與える」というふうに規定してございます。これは当然なことでございますが、政府説明のときにも述べてありましたようにその対象社会教育関係団体社会教育施設学校開放関係者等から、広くは住民のすべてにわたる、そういう広範囲にわたつて專門的技術的な助言指導をすることになるわけでありますが、どうかすると、これが監督になりやすいと思うのであります。そこでそれを避けるために、助言指導の名のもとに、命令監督をしてはならぬから、これを禁ずる規定として、但し命令監督をしてはならぬという規定がしてあるのだと思うのでありますが、もしもこういう規定があるにかかわらず、命令あるいは監督をした場合にはどうなるか、この点をひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  10. 西崎惠

    西崎政府委員 社会教育方面活動は、各団体施設その他住民の自発的な活動でなければ、意味をなさないのでありまして、政府の方から命令をして行わしめるのではその効果はない、かえつて有害を考えられるのであります。従いまして、社会教主事が専門的技術的な助言指導を與える場合におきましても、前の社会教育法のときにもおきめ願いましたように、関係団体とか、あるいは公民館図書館等におきまして、その指導助言を求めて来た場合に行うということになるわけでございます。従いまして、指導助言を求めないのに、積極的に助言指導を與えるという機会はないと考えていいと思うのであります。従いまして実際の活動におきましては、命令及び監督というふうな方面に、特に走るおそれはないと考えますけれども、一応その点強調する必要がありますので、当然のことでありながら「命令及び監督をしてはならない。」と書いたのであります。従いまして、もしも命令監督社会教育主事が行いました場合におきましては、その命令及び監督は無効ということになるわけでありまして、命令監督を受けたものがこれに従う必要はないと思います。と同時に、その「命令及び監督をしてはならない」という法令に違反しましだところの社会教育主事の、何と申しますか、懲罰的な考え方につきましては、それぞれの教育委員会の方で善処されることを期待いたしております。
  11. 松本七郎

    松本(七)委員 これはなかなか実際問題としては、区別がつきかねる場合が出て来ると思うのであります。今のお話ですと、社会教育関係団体から頼んで来た場合に、いろいろな助言をした場合には、これは全部専門的、技術的な助言指導と解して、命令監督じやない。こういうふうな御解釈のようでしたが、たといそういう助言指導を求めて来た場合でも、それが実質的には監督みたいなものになる可能性は、私は多分にあると思うのであります。それですから、わざわざ政府説明にも、助言指導の名のもとに命令監督をしてはならなぬと、それを禁ずる意味でやつているのですから、これを犯した場合の規定をはつきりなさるべきではなかろうかと思いますが、この点をお伺いいたします。
  12. 西崎惠

    西崎政府委員 ただいま御質問のようなおそれが、全然ないとは言えないと思うのでありまして、数ある社会教育主事の中には、行き過ぎのものがあるいはあるかもしれません。従いまして、この法令解釈につきましては、ブロツク的な会議ないしは全国的な会議を催し、または通牒等によりまして、その趣旨の徹底をはかるのでありますが、ただいまの御意見によりまして、御意思のあるところを十分了承いたしましたので、命令及び監督の弊に陥らないように、きわめてこまやかに厳格な注意を喚起いたしたいと存じます。と同時に、これが命令及び監督というものにわたりましたり、法を逸脱した場合におきましての制裁等につきましても、厳格な解釈をするように徹底いたしたいと存じます。
  13. 松本七郎

    松本(七)委員 その次は、社会教育主事講習でございます。九條の五によつて教育に関する学科又は学部を有する大学文部大臣の委嘱を受けて行う」という規定になつておりますが、この講習の具体的な計画を述べていただきたいと思います。
  14. 西崎惠

    西崎政府委員 具体的な計画につきましては、ただいま研究中でありますが、大体のことを申し上げたいと存じます、これは現在社会教育関係のことに認識を持たれまして、社会教育関係の講座を置き、ないしは社会教育関係に非常に詳しい教授、助教授のおります大学は、非常に少数でありますが、そういうところに委嘱いたしまして、この講習をやつていただくのであります。大体の構想といたしましては、三箇月の期間で、単位は十五単位ぐらいを考えておるのであります。科目につきましても、必須と選択にわけましてやりたいと考えております。必須科目で大体十單位、選択科目で大体五単位というふうに考えております。またその科目内容につきましても、いろいろ案を持つておりますが、これはいずれ委員会等を設けまして検討の上、その案を練りたいと思うのであります。骨子は、現在の社会教育主事の方々が、いろいろお忙しい仕事を持ちながら、特に御出席を願うのでありますから、御無理の行かないような、また形式に流れないで、実質的な効果のあるような講習を実施いたすつもりございます。
  15. 松本七郎

    松本(七)委員 その講習予算は、どうなつておりますか。
  16. 西崎惠

    西崎政府委員 来年度同趣旨講習といたしまして、百六十万円計上されておりますので、この百六十万円を運用いたしましてこの方の講習に充てたいと存じております。
  17. 長野長廣

    長野委員長 ほかに御質疑はありませんか。
  18. 渡部義通

    渡部委員 先ほど松本君の質問に答えられて、社会教育は、民間が自発的にやらなければ意味がない、こうおつしやつたのです。これは確かにそうであつて学校教育外青少年及び成人教育というものが、社会教育対象であるとすれば、当然民衆自身の自発的な活動なくしては、社会教育というものは達成されないわけなんですが、こういうふうな活動民間で行われておる場合に、たとえば公民館その他の施設が利用されなくちやならぬが、しかしそういう施設に対しての利用が、非常に不十分にしかなされていない。その理由一つの中には、公民館というものが、たとえば社会教育の重要な活動をしておる民主的な科学、技術、文化団体とか、労働組合とかいうものに、なかなか自由な形で貸し與えられないというこぶが、しばしば起るわけなんです。こういう点はどうなんですか。
  19. 西崎惠

    西崎政府委員 公民館は、地方における社会教育の第一線の場として、私たちは非常に重視して、その奨励に努めておるのであります。従いまして、社会教育的な活動は、公民館において広く行われることが、非常に望ましいのでありまして、もしも社会教育的な活動公民館で行わんとするようなものがありました場合に、それを公民館が拒否するというようなことがあれば、これは当該公民館の長が、何か非常に誤解しておるか、認識を欠いておる点があると思うのであります。そういうことのないように、われわれはしばしば各府県を通じまして、公民館指導に当つておるのでありますが、往々にしてさような戸を聞くのであります。これは法令規定に、一党一派に偏するようなことをやつてはいけないということが明記してありますので、その点をきわめて神経衰弱的に考えまして、間違つてつたのではないかと考えるのであります。ことに公民教育の重要な内容といたしまして、政治教育というものがあるのでありますから、われわれは、それがほんとうの一党一派に偏しない、正しい意味政治教育であるならば、大いに公民館は協力してほしいということを、しばしば言つておるのであります。もし、それにもかかわりませず、関係者社会教育的な活動公民館で行おうとした場合に、理由なくして、あるいは間違つた認識のもとに、これを拒否するような場合がありましたならば、今後はないように注意いたしますから、その都度われわれの方にでも注意を喚起していただければ、幸甚であると存じます。
  20. 渡部義通

    渡部委員 文部大臣質問します。きようは社会教育法関係でありますので、社会教育関係についての質問を中心とするわけですが、第一にお聞きしたいことは、社会教育について当面の基本方針をどこに置かれるのか。つまり青少年及び成人教育学校外において行うということを、社会教育の一般的な通念としておるわけですが、しかしながら、こういうふうな教育が行われるためには、その時局あるいは情勢について何か重点的な基本的なものがなければならぬ。従つて当面の時局、当面の情勢において、社会教育方向なり方針なりといつたようなものの基本的な線は、どこにあるのか、どういう方針でどのような教育をやろうというところに、当面の重点を置かれるのかという、根本的な点をただしたいわけです。
  21. 天野貞祐

    天野国務大臣 社会教育をどういうようにやるかということは、社会教育法に書いてありますが、一般的に言いますと、やはりその教育の行われるような環境をつくり出そうというわけでございます。社会教育が非常に重要だということは、これは申すまでもないことでございますが、そのためには、公民館とか図書館とか、あるいはスポーツであつても、あるいは映画であつても、図書と推薦であつても、さまざまな面においてこの社会教育がよく行われるような環境をつくり出すということが、社会教育の目ざしておるところだと思います。
  22. 渡部義通

    渡部委員 要するに、それは一般的な考え方でありまして、それなれば、社会教育というものは何であるかという定義をされるにすぎないわけです。定義をお聞きしているのではなしに、政府方針としまして、どのような社会教育を、当面の時局なり事態なり情勢なりに応じて、重点的にとられようとするのか、またとつておられるのか。そういう課題をどこに置かれてどのように解決されようとしておられるのか、その点を聞きたいわけなんです。
  23. 天野貞祐

    天野国務大臣 要するに、教育ということは、人間をつくるということなんですから、社会教育も、さまざまな問題に対して、正しい判断をし、その判断したことに対しては、自分が責任をとつて行くというような、人間としての力を育成しようということが、社会教育の目ざしているところだと思つております。
  24. 渡部義通

    渡部委員 それもやはり定義をお聞きしたことになつたにすぎないわけですが、私は、社会教育とはどういうものかということを、お聞きしておるのじやないわけです。今どういう点に重点を置いた施設をし、あるいは政策をとつておられるのかという、具体的な点をお聞きしているわけです。
  25. 天野貞祐

    天野国務大臣 つまり日本の現実を正しく認識するという力が、一番の根本だと思うのです。一々のことを教えておいても、事情がかわれば、すぐ一々判断しなければならないのですから、私たちは、そういう人間としての一番根本の力を養つて行こうというのであります。だからして、あるところにおきましては技術的なこともありますし、また一般の知識ということもありますし、そういう人間としての力を養おう、そういう考えでございます。
  26. 渡部義通

    渡部委員 そういうことは、非常に抽象的であつて、具体的な政策というものをお聞きすることはできないわけです。具体的な政策がどのようになされておるかについては、文部省の、「日本における教育改革進展」という報告書の中に、概要が出ておりますが、これによりますと、社会教育には、教育を広め、かつ高めて行くために、いろいろな隘路がある、あるいは困難な諸條件があると思われるわけです。たとえば、図書館が非常に不十分であるというようなことも、その原因がどこにあるかという問題も出ておりますけれども、こういうふうな社会教育を広め、また高めて行くために、非常に困難と感じておられること、当局が見ておられる困難な諸條件は、どういう点にあるかをお聞きします。
  27. 天野貞祐

    天野国務大臣 その困難な條件の最も大きいものは、適当な人を得ることがむずかしいこと、それから人があつて予算が足りないということが問題で、そういう点に社会教育の困難な点があると思つております。
  28. 渡部義通

    渡部委員 この報告書によりますと、たとえば科学技術的な、あるいは文化的な知識を、民間に広汎に自発的に広めて行くためには、一つ施設として図書館が非常に重要である。しかし、その図書館状態は、この報告書にもありますように、全市町村の約一二%にすぎないのであつて、しかもこの千五百五十館のうち、三千冊以上の蔵書を有するものはわずかに二百二十九にすぎない。こういうふうな状態は、大臣が言われたうちの財政の困難ということにあると見られるわけだが、こういうふうな財政的な面における隘路は、現在のような状態では、どんなに図書館を充実しようと思つても、たとえば地方自治体の財政は、ほとんど破綻の状態にありますし、またこれを地方住民のイニシアチーヴや努力によつて拡充しようとしても、実際上の問題として、市民も農民も、生活さえできないような状態にあるわけなんです。従つてこの財政的な隘路を打開する方法は、政府当局が積極的に財政的な支出をこのために行うということなしには、今日の状態では、社会教育を発展させる基礎的な基盤的なものとしての財源が得られないと思う。このために、隘路があるとすれば、現在とられておる財政の中に、社会教育のためにどれだけ食い込んで行くかということが、政府の意図されておるところの意味での社会教育進展の上で、重大な問題になつて来ると思うわけですが、現在この社会教育のためにどういうふうな努力をされておるのか、この点について聞きたいわけです。
  29. 天野貞祐

    天野国務大臣 今おつしやつた通りに、日本財政というものは、非常に困難な事情にあると思うのです。この大戦を経て今日に至つておるのですから、それが困難だということは当然だと思うのです。で、あらゆる方面が非常に困難をしておる。たとえば、六・三の建築さえも十分にできない。また文教のことばかりじやない、堤防がこわれても、堤防が十分修理できないというような事情にあるのですから、社会教育だけ十分なことをやろうといつても、とうていできないことはいたし方ないけれども、財政当局の非常な御努力によつて日本財政もだんだんに私は健全になつて行くと思う。従つてまた社会教育のためにも、もつと多くの予算をもらう日も来るのではないかと思うのです。ただしかし、予算が少ければ何もできないということじやない、書物の購入というようなことも、私は冊数のことばかりじやないと思うのです。よい書物をよく読むということが根本であつて、ただ多数のいろいろな書物を持つということばかりが能ではないから、必ずしも今のところで、絶望的ということはないと思う。年々少しでもこれを拡充して行くという道をとつて行きたいという考えでございます。
  30. 渡部義通

    渡部委員 図書館の点についていえば、もちろんそれは蔵書冊数によるわけじやないが、大臣地方図書館の様子を知られないから、おそらくそんなことを言つておられるのだと思う。ほとんど大部分が雑本的なものであつて、現在の社会教育を行うに非常に重要な蔵書というものは、比較的少い状態です。しかし、これはともかくとしまして、財政の困難は、あらゆる方面にわたつておるとおつしやいますけれども、もし、学校教育なり社会教育なりを、ほんとうに真剣に発展させて行つて、その人間的な力というものを、日本の将来についての力として築き上げようとするだけの必要性を認めるならば、他の方を削つて、こういう教育、科学、芸術、文化面に充当さるべき予算は、幾らでもあるのじやないか。たとえば終戦処理費一つつてみても、そういう問題は十分に解決できるのではないかと思う。そういうことがなされないところに、やはり社会教育なり学校教育なりを非常に重視するということを口に言われても、実際はそうではなくて、教育面が従属的な、あるいは非常に軽視されたような状態に置かれてしまつているのじやないか。ほんとうに真剣に政府日本の国民教育の将来ということを重点的に考えられるならば、いくらでも他の予算に食い込んで行くことができるはずであつて、それができないとすれば、それは文部当局の力が弱かつたのか、あるいはやはり政府全体としてそういう点に重点を置かなかつたかに帰するのじやないかと思うわけです。それで問題は、こういう根本的な教育上重大な問題については、今後は文部委員会も、政府も、いわば職を賭して財政上その他の問題について、他の要求に対して闘うというくらいの決意がなければ、私は十分な教育の建設というものはできないと思うのです。そういう点について、大臣はどういうふうに考えられ、どういう態度をとつて来られたか、お聞きします。
  31. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は教育の重要性を認めることにおいて、人後に落ちないつもりであります。そのためには、できるだけの努力もして来ておりますが、しかしその努力が足らないとか、ほんとうに真剣でないというようなことは、御批評でございますから、御批評にまかせたいと思つております。
  32. 渡部義通

    渡部委員 社会教育隘路というのは、決して財政面にだけあるのでもなく、またおつしやるように、適当な人がないという点にあるだけではなくて、教育を受ける立場にある青少年たちや勤労者が、実際上教育を受けることのできないような條件のもとに置かれているという点について、私たちは非常に遺憾に思つているわけです。たとえば、定時制高等学校の人員が非常に少い。せつかく設けられたのに、定時制高等学校の高等教育を受ける人が少ないということが、この報告書にもあります。この少い原因が一体どこにあるのかということが、われわれとして関心を持たなければならないところなので、たとえば、最近労働時間が非常に長くなつたために、夜学校に行こうとする学生たちは、その時間に間に合わないということが、非常に夜学学生大衆の当面の問題になつているわけです。そういう労働の長時間から来る教育隘路ということもあります。それから、それがかりにできたとしても、交通費なり、あるいはからだが非常に過労しておつて教育を受けることが非常に困難であるというような点にも隘路があるわけです。こういうことは、やはり今日の日本の勤労者が、非常に苦しい状態に置かれておるという、環境の中から起つているというふうに考えざるを得ないわけです。従つてわれわれといたしましては、單に教育教育施設の面だけから考えるのじやなくて、勤労者が置かれておる状態を、どういうふうに改善して行くか。そうでなければ、教育方法が立てられても、それが実現しないんじやないかという点に、疑念だけではなくて、実際上の現われを見るわけです。大臣はこういう点について、その現われて見ておられないのかどうか。その現われを見ておられるとすれば、文部大臣は、單に文教という限られた面だけではなしに、そういう社会的な関連において、あるいは政治的な関連において、全体としての学問、あるいは教育の向上をはかるための努力を今後されるのかどうか、その点について見解を聞きたいと思います。
  33. 天野貞祐

    天野国務大臣 私も、今の社会が完全な社会だとは思つておりません。非常に多くの欠点を持つていると思います。だから、今おつしやつたようなことを救うためには、できるだけ育英会費を増そうとか、そういう方法も努めているわけであります。全般的にそういう環境がよくなるように、私も努力する考えでございます。
  34. 渡部義通

    渡部委員 つまり現在の勤労者等の置かれている困難な状態に応じた形で、この社会教育の道を打開して行くというためには、特殊ないろいろの設備なり、その他の考慮なりを拂つて行かれないならば、やはり社会教育というものは、どのような方針を持たれても、十分には実現しないという考えについて、大臣の同感を得たいわけなんです。
  35. 天野貞祐

    天野国務大臣 私が社会教育法を出したりするのは、今おつしやつたように、いろいろな設備をして、また人も備えて社会教育をしようという趣意なんでございます。
  36. 渡部義通

    渡部委員 次にお聞きしたいことは、先ほど西崎社会教育局長の言にもあつたわけですが、社会教育は、何よりもまず民間の人たちの自発的な力にまたなければならぬ、言いかえれば、自発性によらなければならぬということをおつしやいましたが、この点について私はまつたく同感であります。そこでお聞きしたいことは、確かに国民の中に、たとえば職場におきましても、農村におきましても、市民の間でも、科学や技術や芸術や、その他の文化に関する欲求というものは、非常に強く起きております。これは、このような日本の、あるいは世界の事態に直面していかにすべきかということに対するはつきりしたものの見方がほしいとか、あるいはこの混乱の中で、新しい秩序のためにはどうしたらよいのかというような事柄についての知見を得たいとか、あるいは現在の他の文化の面におきまして、自分自身の欲求しているような文化をつくり上げて行きたいとか、こういう欲求が非常に高まつているわけであります。高まつているがために、至るところで、工場の中でも、農村でも、あるいは市民の小地域でも、いろいろな文化団体やサークルが生まれているわけです。従つて社会教育というものは、こういう文化面における人民自身の中に根ざして、そこからわき立つて来ているサークルや団体や、そういうもののイニシアチーヴを活動の基礎に置かないでは、ほんとうに人民自身の、国民自身の教育あるいは文化というものが高まり得ないし、根を持ち得ないと思う。そういう点については、文相はどういうふうにお考えになつているか。
  37. 天野貞祐

    天野国務大臣 つまりそういう自発性を指導育成しようというのが、社会教育の目ざすところだと考えております。
  38. 渡部義通

    渡部委員 そうだといたしますと、こういうふうな活動をしておりますのは、たとえば勤労者の中におきましては、労働組合というようなものが、最も大きな社会教育の組織であり、また勤労大衆、労働階級のあらゆる活動的なエネルギーとあらゆる知能、またあらゆる欲求を代表しているところの基本的な組織であると思うのです。また民間には——天野さんもかつて全国の科学者の団体である民主主義科学者協会の創立者、つまり発起人の一人であられたことを、私は記憶しておりますし、現に私もその幹事をやつているわけですが、こういう団体も、あらゆる形で国民の中に正しい社会教育を、正しい科学的な活動行つて行こうとする運動をやつておるわけであります。しかしこういう労働組合民間のいろいろな科学的その他の文化的な団体に対する助成というものは、政府として、社会教育の立場からなされていないばかりでなくて、非常にその活動が制約を受け、ときには弾圧さえも受けているというような状態に置かれている。これでは私は民衆の中から盛り上るところの社会教育というもの、人民の中から盛り上るところの理性や、あるいはその他の文化的な新しい性格とか力とかいうものが、社会教育の中に取上げられていないばかりでなくて、逆にそれを離れ、これと対立したような社会教育が行われているのじやないかというふうな懸念を持つわけなんです。こういう点は、文相も御存じでしようが、あらゆる方面に現われております。実際こういう解決をどういうふうになさるおつもりか、この点を聞きます。
  39. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は健全だと考えるようなそういう団体は、できるだけ保護育成したい、また日本学術会議を通じて、諸方に補助をいたしておると自分は思つております。そういうお考えで、決して矯激な思想を助長するとか、そういうことは私は全然考えないところでございます。
  40. 渡部義通

    渡部委員 そうすると、たとえば労働組合なりあるいはその中のグループが、文化的な活動のために、あるいは教育的な活動のためにいろんな行動をしようとすると、至るところで、それが工場内においても、工場主から制約されますし、また最近におきましては、国民一人々々が知つているように、小さな集会さえも持つことが非常に困難なような状態になつているわけです。このような環境では、せつかく労働組合の中で、あるいは民間文化的諸団体の中で伸びようとする民衆の教養的な意欲というものを、チエツクすることになるし、また民衆自身の伸びようとするその方向をチエツクすることになつてこれは非常に社会教育の立場から不当だと思う。こういう不当なことが行われているということに対する大臣の御認識と、あるいはこれに対して大臣は、どうしたらそういう不当な制約とか弾圧とかいつたものをとりのけて、ほんとう社会教育というものを民衆自身の中から盛り立てて行く方向を見出せるか。その点について、これは非常に重大なことでありますので、大臣の見解を承ります。
  41. 天野貞祐

    天野国務大臣 私は民衆から出て来たといつても、すべて何でもそれが正しいのだ、それは何でも助長せなければならぬというふうには考えません。昨今私などの見解からすれば、非常に不健全に人を誘惑したり、非常に間違つた宣伝をしたりするということは、学校関係についてもあることでございます。だから、そういうものまで助長するというわけはないのであります。私どもが健全だと思い、これが国家社会のためだと思うものには、できるだけ助力して行きたい。どういう活動でも、社会から起る活動なら、みなそれを助長するということは、不可能でもあるし、してはいけないことだと信じております。     〔「同感」と呼ぶ者あり〕
  42. 渡部義通

    渡部委員 同感という声も起きているので、私は非常にこつけいに感ずるわけです。どれが正しいかということは、大臣の頭の中から出て来るのでなくて、これは一般民衆の動きの中にこそ、大衆の中にこそ、大衆が指向するところの方向というものはあるのだと思う。そういう大衆の方向というものが総合され、鍛えられて、ほんとうに国民の教育というものは確立するものだと思う。従つて大臣、あるいは特定の大臣でなくとも、政府当局考えて正しいとすることによつて社会教育が行われるとするならば、私はおそらく今日とられている一般的な方向からいえば、これは明らかに広汎な民衆の自発的なイニシアチーヴと活動というものと対立せざるを得ないと思う。そうなつて来ると、この社会教育というものが、かえつて官僚的な統制にかわらざるを得ないと思う。大臣は、穏健とか、公正とか、あるいは正しいと思うというようなことを言われますが、一体何を基準としてそれを言われるかに、私は問題があると思う。やはり全体の国民の動き、全体の人民こそが物事を創造して来たことは、歴史的に見てもはつきりしております。若干の指導者や、若干の政治的な支配的な位置にある人たち指導して来たのではありません。思想もそうです、あらゆる文化的なもの、すべてそうです。私は歴史の研究をしておりますけれども、日本の歴史を見ましても、すべて日本を発展せしめたものは、民衆の中から、民衆全体の力によつて芽ばえ、そこから発展せしめられて来ておるわけです。現在この混乱の中に、そういう動きが非常に強いということについてわれわれ日本人は意を強うしていいと思う。何となれば、民衆の中にそういう動きがあるからです。こういう動きを助長して行くこと、こういうイニシアチーヴと活動とを十分に持ち得ること、この中でのみ、ほんとうのものができ上るのだという立場に立たれないならば、私は、一部の人たちによつて、民衆の動きというものはかえつて押えられ、その結果、社会教育というものがだめになつてしまうのではないかという懸念を持つわけなんです。大臣は、文化なり、科学なり、あるいは民衆の創造力について、どういうふうにお考えになるか。
  43. 天野貞祐

    天野国務大臣 民衆の動きというものを、私は決して無視しようとは思いません。私どもは、民衆の動きをとらえ、民衆の声を聞こうと思つています。ただ、その聞いた声が、渡部さんと私と違うだけの話で、見解の相違ということになります。
  44. 渡部義通

    渡部委員 私は、見解の相違ということで片づけられると、問題は解決上ないと思う。見解の相違というような問題ではなくて、私は大臣人間として信用しておるからこそ言うのだが、(発言する者あり)おそらく諸君に対してなら私は言わないと思う。言わないかもしれませんが、民衆から起きている力を圧迫し、イニシアチーヴとか活動とかを、いろいろな面で弾圧されようとしているのに対して、現に民衆は反抗しているじやないですか。民衆は非常に反抗している。反抗しているのは、民衆が動こうとし、民衆が望んでいることに対して、政府当局がやられるところの方針というものが対立しておるから、そこで反撥が起きるのに違いないと思う。しかしそういう対立しているような形で社会教育がどんどん行われて行つたのでは、新しく芽ばえている、日本ほんとうに創造的に発展せしめて行くという力が、くつがえされてしまう憂いがある。だから、この力こそ伸ばさなくてはならぬのではないかという点については、私は大臣のはつきりした同感を得られるはずだと思う。その点についての……。
  45. 天野貞祐

    天野国務大臣 質問でございますか。
  46. 渡部義通

    渡部委員 いや、その点についての見解を……。
  47. 天野貞祐

    天野国務大臣 伺つておきます。
  48. 長野長廣

    長野委員長 もう御質問ありませんか
  49. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 ちよつと渡部君の発言に関連してでありますが、渡部君は、終戦処理費等が厖大なために、非常に教育予算が圧迫されている、こういうことを言われましたが、おそらく渡部君は、もう一つ言いたかつたに違いない。予備隊の費用のためにも圧迫されている、こういうことを言いたかつたに違いないのですが、終戦処理費というものは、これはわれわれの運命なんです。占領されておるのだから、終戦処理費のいるのは当然なんです。予備隊の点につきましては、これは共産党がああいう暴動を起そうとしなければ、あの費用はいらないのです。これはまことに迷惑千万。そこで私は結論を急ぎます。渡部君は、非常に教育予算が少くなつたということを言つておりますけれども、だんだん時局も安定して来まして——これは主して吉田内閣及びわれわれ與党の功績でありますが、そこで二十四年度の予算においては、これは志賀先生は御存じないけれども、国家総予算の五%になつておる。それから二十五年度は七%に上つて来たのです。今度二十六年度は、平衡交付金の中等につつ込んだ予算等もありますので、累年比較はちよつと困難でありましようけれども、大体われわれの最低の理想とするところのテン・パーセントに近いはずであります。でありますから、文部事務当局はこの累年比較、いかに教育予算が増大しつつあるかの表を、われわれの前に提出していただきたいと思います。これは答弁しなくてもよろしいですから……。  では、本法案に対する質疑はこれにて打切られんことを望みます。
  50. 長野長廣

    長野委員長 岡君の動議には、みな御賛成のようですから、さようにいたします。よつて本案に対する質疑はこれで打切られました。  討論に付する前に理事の諸君の御参集を願います。  本日はこの程度において散会し、次会は公報をもつてお知らせいたします。     午後二時四十七分散会