運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-08-10 第10回国会 衆議院 農林委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年八月十日(金曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 河野 謙三君 理事 野原 正勝君    理事 小林 運美君 理事 井上 良二君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君      小笠原八十美君    小淵 光平君       越智  茂君    川西  清君       中馬 辰猪君    幡谷仙次郎君       原田 雪松君    平野 三郎君       八木 一郎君    大森 玉木君       吉川 久衛君    木村  榮君       横田甚太郎君    中村 寅太君  出席国務大臣         農 林 大 臣 根本龍太郎君  委員外出席者         大蔵主計官   佐竹  浩君         農林事務官         (大臣官房長) 塩見友之助君         農林事務官         (農政局長)  東畑 四郎君         農林事務官         (農政局農政課         長)      土屋 四郎君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         通商産業政務次         官       首藤 新八君         通商産業事務官         (通商化学局         長)      中村辰五郎君         通商産業事務官         (通商化学局化         学肥料第二課         長)      原間 新作君         経済安定事務官         (産業局次長) 渡部 伍良君         経済安定技官  渡部 仁彦君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君     ————————————— 本日の会議に付した事件  派遣委員より報告聴取  肥料に関する件  蚕糸に関する件  農林災害対策に関する件     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  まず先般来麦の統制存廃問題、畜産蚕糸振興対策及び森林資源と木材の需給状況等実地視察をいたしておりましたが、東北北陸地方調査報告が残つておりますので、この際その報告を求めます。小淵光平君。
  3. 小淵光平

    小淵委員 東北北陸班の閉会中国政調査概要を御報告いたしたいと思います。  松浦、吉川大森足鹿の各委員並びに岩隈専門員と私、それに農林省より途中交替で小川、狩野両技官の参加を得まして、一行七名の東北北陸班は七月二十八日より八月三日までの七日間にわたりまして、石川新潟福島宮城山形秋田の六県について、主として積雪寒冷単作地帯振興対策の問題を中心現地調査行つて参つたのであります。  まず調査日程より申し述べますると、調査班一行は、七月二十八日午前十時石川県庁に集合をいたしまして、それよりただちに知事及び部課長よりあらかじめ示した要綱に基いて説明を受けましたので、午後はバスをかつて能登半島方面に至り、二十三年度以降施行中の三百五十五町歩干拓目標とする邑知潟の干拓工事と、それに附属する灌漑排水工事を視察しながら七尾市に到着、同地において付近農民より、水田を荒しつつあるざりがに被害について陳情を受けたのであります。それより金沢市に引返し、そこで投宿をいたしたのであります。  翌日は早朝金沢市を出発し、北陸線を経由して新潟県に入り、直江津市において下車、県庁の自動車を拝借して中頚城、東頚城の両郡下を視察し、積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法に基く農業振興計画作成状態地すべりによる耕地山林被害状況、いわゆるぼい山と称する不良薪炭林概貌等について現地官民説明を聞きつつ、同夜は長岡市に投宿をいたしました。  翌三十日は長岡市より新潟市に参りました。そして先ず新潟信用農業協同組合連合会におきまして、農業協同組合再建整備農林漁業資金融通食糧統制撤廃等の諸問題に関しまして、関係者意見交換を行いました。午後は県庁におきまして積寒地帯振興対策農林関係公共事業進捗状況等について詳細な説明を受け、引続いて同市郊外にある亀田郷に行きまして、口径千五百ミリ、横型軸流ポンプ十二台で約一万五百町歩にわたつて用排水を行う工事を完成し、湿田を乾田化した国営事業概要を視察し、次いで北蒲原郡南浜村において、海岸防風林濫伐による耕地荒廃と、それに対する飛砂扞止林設置計画を見学いたしたのであります。  翌三十一日は盤越西線を経て福島県に入り、会津若松にて汽車を捨て、北会津の一僻村高野村において同方面単作地帯農業振興具体策について現地意見に接し、裨益することが多くあつたのであります。それより猪苗代湖周辺発電疏水工事を見学して、磐梯山の麓を縫つて車を走らせ、途中県種畜場を見学して福島市に到着し、ただちに県庁において積寒対策農協再建整備農業共済事業林業事情等について県側意見を聴取し、かつわれわれの意見を述べたのであります。  翌八月一日には、福島県より宮城県に参りまして、まず柴田郡大河原町を訪れたのであります。この町はひとり宮城県においてのみならず、東北地方においてもまつたく模範とすべき農業地帯でありまして、農民みずからの力をもちまして裏作協同組合中心に、土地改良耕種改善自動耕耘機導入等を行い、二百八十町歩二毛作化を完成し、なお今後の発展を期しておるのであります。親しく町長、技術員説明を受け、また稲作の実況を視察いたし、これについて深い感銘を受けたのであります。次いで県庁に参り、県下並びに東北一般農業事情に関して部課長並び仙台農地事務局長説明を聴取いたしたのであります。  翌二日早朝、仙山線を経て山形県に入り、まず県側意見交換の後、午後は東村山郡明治村におもむき、同村を流れる須川及び立谷川の改修計画に並行する農業水利及び農地交換分合計画と、これらに要する融資三千万円の陳情を受け、次いで南村山宮生村に参り、鉱毒問題について地元民の説明を受けたのであります。  翌三日秋田県に移り、午前中県庁側との意見交換を行い、午後南秋田郡大平村を訪問し、農家経済実情について村長の話を聞くことにいたしたのであります。この村は秋田市近郊の代表的農山村でありまするが、東北農村においては購入餌料の地位が農家支出中きわめて重要であるという点にもかかわらず、餌料作物等導入計画がまつたくなされておらず、積寒法趣旨もほとんど末端には滲透していないということ等を知ることができ、この法の施行に関して大いに参考となつたのであります。  以上をもちまして私ども調査日程は全部終了いたしたので、秋田市において調査班をひとまず解散することといたしましたが、私と足鹿委員及び岩隈専門員の三名は、折から山形市に開催中の、積雪寒冷単作地帯振興対策東北地区協議会に出席し、農林委員としての意見を開陳いたしたのであります。  今回の調査にあたりましては、過ぐる第十国会において成立し、目下その具現化の過程にありまする、積寒地帯振興臨時措置法中心課題としたのでありまするが、経済情勢の推移とともに、自然条件の劣悪なこの地方農家経済一般窮迫に向いつつあつて、同法の効果的なる運用に寄せる期待には異常なるものがあるように見受けられたのであります。しかしながら、各県各村が当面し、解決を欲している問題には、それぞれの段階、それぞれの特殊性があるようでありまして、必ずしも一様ではありませんが、以下最も重要と思われます事項をとりまとめ御報告いたすことといたします。  まず災害関係から申し上げますと、去る七月二十一日秋田県の北部に当る鹿角郡、北秋田郡を中心として低気圧性豪雨の襲来により、河川の氾濫等による人畜家屋耕地等に約二十八億円の被害を生じた模様でありまして、早急なる復旧が望まれているのであります。  次に地すべりによる災害について申し上げますが、地すべりとは表土層が地下のすべり面に沿うてすべり出すことを言うのでありましてその原因は、雨または融雪水が絶えず地層に滲透してその凝集力を急減せしめると同時に、積雪による加重によつてすべり出すのであります。第三紀層の発達している北陸に多い現象でありますが、なかんずく新潟県はひどく、一箇所数十町歩から百町歩以上に上るものも少くなく、私ども新潟中頸城郡寺野村の地すべり現地を見たのでありますが、山林、田畑、家屋人畜被害があり、砂防工事等対策が望まれているのであります。  一般災害復旧工事財政窮乏のため進捗していないのは、全国共通の悩みでありますが、すでに認証済みのものに関して、工事の完成した部分についても、指令を発していないという理由をもつて予算の配付を行わず、そのために地方財政に圧迫を加え、結局金融にしわ寄せされている現状であり、農林省のこういう措置地方財敢に与える影響を十分検討してみる要があると思われるのであります。たとえば秋田県においては、国庫補助で十億円の未交付、起債において二億七千万円の未承認となつているようであります。  また去る第十国会で改正を行つた農林水産業施設災害復旧事業国庫補助暫定措置に関する法律によつて国庫補助を行う場合の条件として行われて来た一割の地方補助を、起債でまかなう条項が削除され、そのため地方補助が事実上困難になつている点について、中央の再検討を求むる声が山形県等において聞かれたのであります。  次に灌漑排水土地改良事業についてであります。東北北陸地方は、いわゆる積雪寒冷のゆえに単作を余儀なくせられておりますが、土地条件整備改善をはかれば、二毛作化も可能な土地が相当あるわけであります。すなわち湿田に対して排水事業を行い、同時に耕種改善を施しつつ、農繁期の労力調整を行うために動力耕耘機導入をはかることによつて相当程度二毛作化は容易であります。この地帯は今日まで米一本に頼つて来ておりますので、米価の帰趨と密接なる関係を持つているわけでありますが、国民経済の立場から割安な決定を免れず、従つて農地改革後の耕地零細化と相まつて農家経済は逐次窮迫に向いつつありまして、現在では次、三男問題等、社会問題としても現われて来ているのであります。従いまして土地改良経営改善による二毛作化家畜導入等による農家経済改善への要望は、きわめて強いのであります。今日この地帯耕地利用率は九八%ないし一一〇%前後を示し、数年来あまり増進を見ておりませんが、それは最も基礎的な条件たる土地改良自力整備する力がないからであります。従いまして、積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法が、以上のような国策の欠陥を是正して、国営県営事業と並行的に、三百町歩以下の団体営灌排土地改良事業を取上げ、これを推進いたしまするならば、その効果は絶大であろうと思われ、従つて本法を裏づける財政措置について農民関心は多大であるのであります。  ただ財政支出の方法について一言いたしますならば、同じ東北北陸地帯と申しましても、各県各地方の生産を阻害している条件は同一ではありませんので、それぞれの地方の特徴を具体的に把握して、予算もできるだけ大きな項目で流し、知事の裁量を大幅に認める、いわゆる予算の一本化の方向に持つて行くことが肝要であり、また公共事業費支出の時期も、第三・四半期までに集中し、気象上の悪条件から来る工事の渋滞を避けることが必要と思われる次第であります。また団体営のものを現在融資で行つているものと、今後国庫補助で行うものとの間に調整が必要であり、またこれらと一般公共事業との相互関係に留意しないと、バランスが失われて、工事の手もどり等のむだが生することがあるので、それに対する準備を十分整えておく必要があるのであります。さらに県営で行う公共事業については、地方債わくを倍加しないと、かえつて地方財政を圧迫するおそれもあり、今後これらの諸点について政府において十分研究を遂げられることを希望しておく次第であります。  なおここでつけ加えておきたいことは、食糧の増産を阻害する鉱毒害病虫害等についてであります。私ども一行は、山形南村山宮生村の鉱毒問題で陳情を受けたことをさきに申し述べましたが、蔵王山にある硫黄採掘のため、蔵王川によつて流れて来る硫黄を含む水によつて作物は著しい減収を来しておるのであります。また松川、渋川にも同様の問題があり、また秋田県における雄物川水系中の玉川についても同じ問題があり、いずれも鉱業法に基く適切な措置が講ぜらるべきものと思われる次第であります。さらに病虫害につきましては、いもち蔓延の徴があり、昨年の轍を踏まぬよう今から万全の措置をとるべきであり、また北陸なかんずく石川富山等におきまして、一万数千町歩水田に蔓延しておる黒椿象被害が猖獗をきわめております。この虫は稲の茎の汁を吸つて生きておるのでありまして、この蔓延する地域は三、四割の減収を免れないといわれており、石川県では四千万円を支出してBHCによる駆除をはかつておる現状であります。さらに石川県では一万五千町歩山林に発生しておる舞々蛾の跳梁に悩んでおり、農林省はいまだにその対策を立てておらないようであります。すみやかに松くい虫等その他の森林病害虫駆除予防に関する法律の第十二条に示す政令で指定し、駆除をはからねば、松くい虫のごとく全国に蔓延し、取返しのつかぬ結果に陥ることを恐れるものであります。さらに各地水田を荒しつつあるざりがに被害については、さきに述べた通りでありますが、私どもの見ました限りにおいては、国はほとんど放任の形でありまして、はなはだ遺憾とするところであります。  次に農業振興推進母体となつて働かねばならぬところの農業協同組合の現況について若干述べてみたいと思います。各地とも農林漁業組合再建整備法に基いて、再建整備について努力中であるわけでありますが、新潟県を例にとりますならば、ここでは単位農協の二割、九十八組合が要整備組合でありまして、財務基準令による要増資額は二百四十万円と言われております。単位組合増資のために農民負担する額も相当過重と思われますが、さらに県段階経済連が信連から借りている額は、約八億円と称せられ、単位組合に対する負担のほかに連合会に対する増資負担は、今日の農民経済の実勢から見てほとんど不可能ではないかと言われておるような次第でありまして、再建整備法は血の通わぬ冷酷な法律であるとの批判が各所で聞かれたのであります。福島においても連合会の要増資額一億八千万円であつて対策に苦慮している様子でありました。  石川県におきましては、キユアリング倉庫二十一棟の処置に困却している有様でありました。おそらくこの問題は全国的と思うのでありますが、政府の強力な指導によつて建設し、しかも他の用途に転用すこぶる困難で、農協ももてあましぎみでありますので、この際何らかの処置をとる要があると存ずるのであります。  かように農協経営経済の激変に敏速に順応し得ないということは、日本農業の本質から来ていることは明らかであり、一方においては農業振興中核体たる使命を持つものでありますから、積寒法の成立を機会に、単なる再建整備に忙殺されることなく、積極的に機能し得るよう、特段の措置を要するものではないかと思われた次第であります。  次に農林漁業資金融通に関する現地意見としては、融資わくの拡大、手続の簡素化に対する要求は非常に強力であります。さらに融資対象として償還期限三箇年、利率五分程度家畜導入資金取上ぐべきだという声は、積寒法の目的とも関連して、関係者の異口同音に叫ぶところでありました。この地帯においてすら無畜農家は三〇%ないし四〇%に達すると言われておりまして、これが対策としては、導入資金は言うまでもなく、自給飼料の根幹たる荒廃牧野改良、麦、れんげ等裏作奨励を行うことが必要でありまするが、政府畜産対策はきわめて不親切である。すなわち牧野法はあるが牧野改良費はきわめて少額にすぎない。導入資金のめんどうはみない。畜産物共同処理場建設資金も少い。畜産物販売価格を保障しようとしない等々の抗議を聞かされたのでありますが、一々もつともな言と思われたのであります。畜産振興上のこれらの問題について、今後深刻に反省すべきでありましよう。  次に農業共済制度について申し上げますと、東北北陸単作地帯における永年の懸案である水稲共済補償限度を五〇%より八〇%へ引上げ、同時にそれに伴う掛金増加分国庫において負担すべしという要望につきまして、今回も熱心な陳情を受けたのであります。さらに二十六年度米価は七千余円にきめられたのであるが、今年度水稲共済引受額は六千円となつたので、掛金率は低くなつても、一度災害を受けた場合は、実際には、補償限度は五〇%以下となり、単作農民に非常な苦痛を与えるので、公定米価の線まで引上げられたいという要請も行われたのであります。  次に単作地帯農村振興に深い関係を持つ養蚕業振興については、農家経済の点から最も意を注がなければならないものであります。そのためにはまず耐寒性桑苗研究、桑園の拡充改良優良蚕適品種の発見、稚蚕共同飼育による合理化経営蚕業技術員設置助成強化等の諸問題の解決をはからなければならないのであります。これについては各県とも熱意を傾けておるが、新潟県は特に五箇年実施計画を樹立して、昭和三十年に百二十万貫目標に意気込んでいる有様が目に映つたのであります。しかし蚕糸業宿命的因縁とも言われる値段の騰落の激しいのは、何としても発展一大支障となるのでこれについては、何よりもまず糸価安定対策が先決問題であるということに、各県ともすべての人の意見は一致しておるところでありました。  次に森林の問題について申し述べておきます。森林法の制定により民有林経営の基礎が確立したわけでありますが、現地意見を徴しまするに、本法趣旨の徹底にはいまだ欠くるところがあつて地方によつてはかえつて濫伐を誘発している様子を見られますので、今後は法の運用に万全を期する要があると思うのであります。特に森林組合は、他の地域の例に漏れず、この地帯におきましても三分の二以上はまつた睡眠状態にあるというも過言ではありません。経済基盤が薄弱でありますために、森林行政の切りかえの最も大切な時期にあたつて機能を喪失しましたことは、今後民有林経営中核体たるべき使命を持つ上からいつても、まことにゆゆしきことでありますので、林野庁に森林組合課を設置するとか、森林組合技術指導員に対する助成を復活するとか、再建整備を促進するとか、その他経済的援助を与えて強固なる基盤の育成に努むべきものと思う次第であります。このことに関連して、里山を休養せしめ、林力の向上をはかりますためには、ぜひとも奥地林道の開設が必要でありまして、特に奥山のぶな林の開発が急務であります。補正予算または明年度予算には、少くも本年度の三倍程度予算が計上されることが望ましいと考えるのであります。さらに里山薪炭林においても、いわゆるぼい山と称する不良薪炭林について、至急これが改善策を講ずる要があるのであります。東北におけるパルプ材買付も相当進んでいるようでありまして、坑木との競合も一向解消せられておらないということであります。常盤炭田の炭坑中には数日分の坑木をストツクするにすぎないのも相当ある由でありますので、坑木に対する適正なる措置が必要であると同時に、水中貯木場拡充人工乾燥場増設等により、ぶな材の利用増進をはかる等パルプ対策をも至急講ずる要があると思われる次第であります。  なお自作農創設特別措置法第三十条によつて買収せられた未墾地中、技術的に見ていかにしても開墾開拓に不適当なるものについては、これをすみやかに旧所有者に返還する措置はかねて各方面より要望せられておるとことろでありますが、今回の調査においても各地で強い希望が披瀝せられたのでありまして、できるだけ早い機会にその措置のとられることを望んでおく次第であります。  また先にもちよつと述べたのでありますが、東北北陸に限らず日本海沿岸には一般砂丘地が発達しておりまして、これが戦時中の樹木の皆伐によつてつた荒蕪地と化しているのであります。他の耕地への影響も相当ありまするので、すみやかに飛砂地の造林を完成し、住民の生活を安定させる要があると存ずる次第であります。  以上私は今回の調査を通じて、いかに積寒地帯の人々がこの法律期待をかけておつたかということをつくづく体験いたしました。しかしながら最初に申し述べたように、各県各様であり、末端まで浸透しておる所と全然無関心でおる所とさまざまではありましたが、ほんとうにその村なり地方なりが、みずからの手で何とか土地条件整備をしようとしておる。たとえば大河原町のような所では、非常なスピードで完成せられるごとく思われましたが、何と申しましても積寒法については、予算が定まらなければ具体的な計画も樹立困難と思われ、すみやかにこれに対しては決定してやるべきであると痛感をいたした次第であります。  次に、これもやはり予算に関するものでありますけれども農林漁業資金融通わくを拡大して、これが振興に役立たせるとともに、畜産導入資金とか、稚蚕飼育所以外の蚕糸業必要資金に役立たせるようにすることが最も肝要かと思われたのであります。私は本月四日山形市の大会の席上で、このような計画は、ともするとただ厖大な散漫な計画だけに終ることが、過去の例に徹してきわめて多いことでありますので、集約的に重点的に、しかも現実的に樹立することを希望するとあいさつをいたしましたが、よほどこれには留意をしなければならぬと考えた次第であります。  以上の諸点に注意を怠らず、予算措置がある程度なされた場合は、この不遇な雪寒地帯も、かなりの程度従来の悪条件をとりもどすことができるものと確信を得た次第であります。ただ私は、この法律雪寒地帯の不利な条件自力振興の精神と、国の保護助成によつて回復せしめるものでありますが、全国的に見るときは、あるいはこれにきわめて接近し類似せる条件地帯に対しても、何らか考慮すべきものがあると感じた次第であります。  以上を要しまするに、議員立法として立案せられた積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法は、まことに意義の深い内容を持つ法律ではありますが、その具体的な適用については、国会はもちろん、政府においても今後とも十分なる研究を遂げ、誤りなきを期する必要があると存ずる次第であります。以上をもつて私の報告を終ります。
  4. 千賀康治

    千賀委員長 小淵君の報告を了承するのに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 千賀康治

    千賀委員長 異議なしと認めます。了承に決しました。     —————————————
  6. 千賀康治

    千賀委員長 次に農林災害対策に関する件について議事を進めます。まず順序といたしまして、七月上旬ごろの豪雨による農林災害につきましては、委員を派遣いたしましてその実情をつまびらかに調査しておりましたが、最初にその報告を求めます。井上良二君。
  7. 井上良二

    井上(良)委員 私は、自由党の川西委員とともに七月二十二日から二十八日まで七日間にわたりまして、京都府、大阪府、兵庫県のケイト台風並びにその後の豪雨による水害状況調査参つたのであります。そこでその水害の実際の被害実情の結果について御報告を申し上げたいと思います。  去る七月二日九州を経まして関西地方を襲いましたケイト台風は、兵庫県、大阪府、京都府の全域にわたつて約七十ミリの降雨をもたらし、その後兵庫県、大阪府、京都府の全域にわたつて連日降雨が相当量続いたのであります。このため低湿地帯相当冠水を見たのであります。さらにその上に七月十一日の午前一時ごろから大阪北攝地方京都府山城、口丹波地方中心として最高百六十ミリから百九十二ミリに達する猛烈な豪雨があり、山腹の崩壊や林道の流失せる箇所おびただしく、また各水源や河川の大増水のため各所に道路堰堤の決壊、橋梁の流出、田畑の流失埋没を見、さらに平坦部の田畑もそのほとんど全部が冠水をしたほか、水路井堰の決壊による耕作不能田を各地に見るに至つたのであります。ところが翌十二日には再び八十ミリに達する豪雨に見舞われたのみか、以来一週間にわたつて連日豪雨が続き、大阪府においては約百五十ミリ、京都府においては百ミリという平年雨量の約六倍に達する降雨量となりましたため、各種の被害は一層増大する一方、冠水田もますます増水の一途をたどり、遂に冠水一メートルから二メートルに達する所も各所に見られたのであります。  そこでこの大阪京都両府下における被害の状況を詳細に御報告いたしますならば、まず大阪府においては第一に耕地関係被害が最も大きく、井堰決壊四百五十箇所、ため池決壊二百六十二箇所、水路決壊七万八千四百二十一メートル、農道の決壊二万九千五百十五メートル、田畑の流失六百五十九町歩等を主といたしまして、耕地関係損害金額は計七億七百二十九万円と推定されるのであります。  第二に農作物関係でありますが、このうち一番甚大な被害をこうむつたのは水稲でありまして、田畑の流失埋没のため一〇〇%の被害を受けたものは五百二十二町歩に及び、これによる減収量は一万三千七百八石、損害金額九千六百三十六万七千二百四十円、また冠水による被害は七千三百六十二町歩で、このうち一〇〇%の改植を必要とするもの四百六十九町歩、五〇%の改植を必要とするもの二百十一町歩、三〇%の改植を必要とするもの千町歩でありまして、これによる減収量は三万七千三十二石、損害金額二億六千三十三万四千九百六十円に上り、さらに連日の降雨と低温による最も重要な栄養成長期における稲の生育不良によりまして、被害面積二万三千八百三十九町歩、平均五%の減収として減収量は三万一千三百一石、被害金額二億二千四万六千三十円、以上水稲の合計は被害面積三万一千七百二十三町歩減収量八万二千四十一石、損害金額は五億七千六百七十四万八千二百三十円に上つているのであります。  次に同じく農作物のうち、蔬菜及び果実に関する被害でありますが、蔬菜は被害面積六百三十一町歩、平年作の生産量三百八十万七千貫の約四〇%を占める百四十一万貫が減収となり、損害金額は一億一千五百六十万円、また果実については被害面積三十一町歩、平年作の約半分六万四千貫が減収となり、損害額九百三十万円になつており、農作物の受けました被害合計は水稲及び蔬菜、果実を合せて三万二千三百八十五町歩、七億百六十四万七千円に上つているのであります。  第三には林業関係でありますが、林地及び治山施設の崩壊が九十七町歩、金額にいたしまして九千八百四十八万七千円、林道の被害は八方二千三百十一メートル、五千百九十九万円、流倒木四千八百五十石、二百八十二万円、炭かま、製材施設等の被害は二百八十九万円、林業関係被害は合計して一億五千六百十八万七千円となつており、以上農林関係全般の被害金額は実に十五億六千五百十二万四千円に上つておるのであります。このほか土木関係、水産関係、各種施設等を総計いたしますと、今回の豪雨により大阪府が受けました被害の総額は二十四億八千百九万四千円になつております。  次に京都府についてでありますが、第一に耕地関係におきましては、農地被害約六百町歩、その他農業用施設は二万七千メートルと二百八十五箇所、損害金額は六億九千三百万円を示しており、第二に水稲については田畑の流失埋没によるもの四百七十八町歩、冠水せるもの六千八百七十九町歩、合計七千三百五十七町歩被害をこうむり、これによる減収量は約七万五千石、損害金額五億四千三百七十九万六千円、このほかに蔬菜、果実等特産物の被害金額は一億七千八百八十八万円、さらに林業関係被害は六億四千七百三十一万五千円となつておりまして、農林関係被害合計は二十億六千二百九十九万一千円となり、このほか土木、水産、商工関係被害を総計いたしますと、四十七億四千二百四十四万円という莫大な被害となつておるのであります。  次に兵庫県について申しますと、去る七月二日来襲しましたケイト台風は、淡路島及び明石市を中心に、神戸市、姫路市地方は雨量百二十ミリを越ゆる豪雨となり、奥地渓流の氾濫はなはだしく、ため池の決潰、道路、水路の崩壊、農地土地の土砂埋没、畦畔の崩壊等はなはだしく、冠水面積九百二町歩減収見込数八千五百二十一石、農地及び農業関係施設の損害四億四千八百四十万円に達しております。ついで七月七日ごろから降り出しました雨は十五日まで続き、三百ミリ内外の豪雨となり、ケイト台風被害地はもちろん、県下全般に河川の氾濫、堤防決壊等が起り、農地の流失、埋没百九十町歩、農業用施設の流失、崩壊二百七十箇所、二万三千二百メートルに及び、これが被害額は二億一千六百二十万円に上つております。二回にわたる被害額を集計いたしますれば、農地において五千二十万円、農業用地施設において六億一千四百六十万円、治山関係において一億四千七百二十万円、林道関係において九千六百六十万円、総計九億八百九十万円となつておるのであります。  以上の通り直接的な被害のみを見ましても、まことに容易ならぬ災害であつたことがわかるのであります。これに農家家屋の損傷、人畜被害、あるいは農機具や、各農家ごとの農業用施設等にこうむりました間接的な被害を勘案いたしますと、二府一県、すなわち大阪京都兵庫の各農家の農業経営にとつては、まさに潰滅的な打撃をこうむつておるのであります。特に今回の災害の特徴は、例年の台風期に起ります災害と異なり、稲の作付直後、最も大切な成育期にこの豪雨にあいましたので、改植を必要とする水田が非常に多く、また肥料、農薬等の手当が機を逸せず行われませんと、本年度の稲作は収穫皆無にならざるを得ない実情にあるのでありまして、このことに関する中央のすみやかなる処置を何よりも切実に地元農民要望いたしておりました。大阪府においては改植用苗の集荷輸送費全額二百三十七万七千円、冠水による水稲の病虫害防除用薬剤費の半額六百六十二万五千八百円、再生産用種子購入費全額百三十九万四千九百七十七円の国庫補助と、さらに水稲共済金の全額先払いについて特別の措置を講ずることを政府要望しております。また林業関係において九千万円の国庫補助と二千万円の融資要望を罹災農家は要求しておりますので、特に政府はこの点について御考慮を願いたいと思います。  なおさいぜん申しました、まつたく緊急に改植をやらなければならぬ関係もありまして、各府県において近県の農家、あるいは近郷からそれぞれ苗の供出を願い、あるいはまた苗の特別分与を願い、またこれを輸送するには莫大な輸送費がかかり、また冠水地帯は相当厖大な排水のための電力を使用し、改値実施不可能な地域の農家は、その営農に非常に大きな支障を来しておりますので、これがために政府は特に緊急必要な対策をとられるように、地元農民は切望しておりますから、政府に適宜の御処置を要求いたしまして報告を終ることにいたします。
  8. 千賀康治

    千賀委員長 次は中馬辰猪君。
  9. 中馬辰猪

    ○中馬委員 私九州並びに山口県の水害状況調査報告をいたしたいと思います。  私どもは去る七月十九日から十日間にわたり千賀委員長並びに私それに藤井専門員及び農林省農地災害復旧課の樋上技官を帯同いたしまして、熊本、鹿児島、宮崎、大分、福岡及び山口の六県にわたり、今般の水害被害状況調査いたして参りましたので、ここに御報告申し上げます。  今般の水害は、七月初めに襲来いたしましたケイト台風並びに七月八日ごろから十五日ごろまで不連続的に多大の降雨量をもたらしました梅雨型豪雨の二つの被害が重複したのでありますが、私どもの視察いたしました地帯におきましては、前者の被害はさしたることはなく、主として後者の豪雨によるものであります。この豪雨はまことに空前の豪雨と称すべきものでありまして、隆雨量の最も多かつた福岡県朝倉郡甘木町のごときは、この間に千三百四十五ミリにも達し、平均年間隆雨量約二千ミリの三分の二近くがこの一週間ばかりの間に降つてしまつたのであります。また熊本県におきましても、最大雨量は千ミリに達し、その他の諸県も大体四、五百ミリから七、八百ミリに達しているのであります。このため河川の氾濫を来しまして、住居、橋梁、堤塘、耕地、林道等を破壊、流失、埋没せしめました上、人畜にも多大の損失を与えたのであります。今これら六県におきます農林関係だけの損失を現地側県当局の調査によつて見まするに、福岡県は、耕地関係五億四千五百万円、林業関係二億一千二百万円、農作物関係三十六億七千万円、計四十四億三千余万円に達し、熊本県は耕地関係七億三千八百万円、林業関係一億一千四百万円、農作物関係約七億円、計約十五億円余となります。鹿児島県は耕地関係六億四千余万円、農作物関係九億四千余万円、山林関係四億一千余万円、計約二十億円余であります。宮崎県は耕地関係十四億五千万円、農作物関係五億七千万円、林業関係一億一千万円、計約二十一億円余に達します。大分県は耕地関係三億五千万円、農作物関係三億二千万円、山林関係八千万円、計約七億五千万円余であり、山口県は耕地関係五十億四千万円、農作物関係八億九千万円、山林関係八億六千万円で、計約六十七億九千万円余に上るのであります。これら六県を合算いたしますと、実に百七十三億円に達する状況であります。また人命の損傷も多大でありまして、死者七十三名、行方不明四名、負傷者は重軽傷合せて五百十名にのぼつております。この人的被害の大部分は、鹿児島県と山口県の両県によつて占められ、それに次いで福岡、宮崎の両県と相なつております。この内訳を申し上げますと、死者七十三名は、鹿児島県四十名、山口県二十八名、福岡県三名、宮崎県二名となつております。行方不明は、鹿児島県二名、宮崎、山口それぞれ一名ずつとなつております。負傷者は、山口県四百二十八名、鹿児島県三十九名、福岡県二十八名、宮崎県十六名であります。  このほか橋梁、建造物、道路、港湾施設等の損害を合計算いたしますならば、その被害総額は驚ろくべき金額に上るものと想像されるのであります。私どもは熊本、鹿児島、宮崎及び山口四県下の主要災害地をつぶさに視察いたし、また大分、福岡両県下につきましては、私どもに続いて視察を予定されております島村政務次官に現地調査をお願いいたしますことといたしまして、主として県当局の説明並びに地元の陳情等を聴取いたしたのであります。その際至るところで座談会、懇談会等を催しまして、地元民との隔意のない意見交換をいたし、また災害農民諸君の奮起を促し、あるいは県当局を激励鞭撻いたしまするとともに、私ども国会議員として、また衆議院農林委員として十分なる力添えをいたすべきことを強く誓つて参つたのであります。被害状況を実地について見ますと、山口、鹿児島両県のごときは特に激烈をきわめているのでありまして、山口県佐波川の堤塘はまさに寸断の状況で、沿岸数十箇所を決壊いたし、耕地を流失埋没し、またこの地帯は林産物の産地であります関係上、伐採された木材が多量に上流から流れて参りまして、人家、橋梁、堤防等の破壊を一段とはなはだしくしたのであります。私ども現地家屋の中に突入している大きな木材や、半壊、全壊の家屋も多数に見ました。またその出水量がいかに多かつたかは、電線に流出のごみがかかつている点からも想像されるので、電柱も没せんばかりであつたといわれます。また鹿児島、宮崎両県のシラス地帯は軽石を含んだ火山灰地帯でありまして、地表水の浸透あるいは地下水の湧水によりまして土壌の崩壊を来すのでありますが、これは広さ数町歩にわたる面積の畑、または水田ないしは山林地等が、高さ五十メートル内外に垂直に割れ、土砂となつて流失するのであります。そのありさまは、宛然小コロラド峡谷を想像せしめるものがあります。シラス地帯に前に申し上げましたように、人名の損傷が多いのは、かかる崩壊しやすい性格によるものであります。これらの災害に対する応急対策は各県とも熱心に講ぜられておりました。九州各県では緊急県議会を招集して、復旧対策を講ずるとともに、他方冠水した水田で稲が流失あるいは腐蝕して再生の見込みのないところは、それぞれ県下で苗の余つているところのものを取寄せたり、または現に植えられているものの一部を供出せしめたりして補植をしたり、あるいは陸稲に置きかえる等の措置を講じております。決壊の堤防、流失埋没の耕地復旧につきましても、すでに涙ぐましい努力を続けている姿が見られたのであります。また鹿児島県下のシラス地帯におきましては、崩壊地または崩壊の危険にある場所から六十メートル以内は水田耕作を禁止する等の措置をとつておりました。さらに山口県のごときは緊急融資二億円の見込みが立つやいなや、ただちに県財政資金の中から二千万円をとりあえず支出して災害市町村に交付し、また農信連に対しましても県の財政から千五百万円を利子補給金として支出し、単協を通じ無利子で罹災農家に融資させ、営農復興資金の融資をはかつております。同様の措置は熊本県その他においても講ぜられておりますが、山口県では、このほか仮住宅をさしあたつて五十戸分をつくり、県と地元町村の負担被害者に無償で交付しているのであります。私どももこの仮住宅の建設をまのあたり見て参りました。さらに今後住宅金融公庫から資金を借り入れる場合、頭金は県において負担し、土地その他を地元町村にあつせんさせる等の応急の対策を講じておりますが、これらの措置災害農民の奮起に非常に役立つているように見えたのであります。  次に今般の災害に対し現地から寄せられました要望につきまして、主要な点を申し上げます。  一、本年度公共事業費に計上されている災害復旧の予備費を速急に支出してほしい。  二、災害復旧に関しましては、単なる原形復旧よりも改良工事に重点を置き、災害に対する予防的措置を講ずるとともに、生産力の高揚をも同時にはかるようにせられたい。  三、今般の災害に際し土壌保全対策を講じた所は被害が僅少である点にかんがみ土壌保全の対策を積極的に講ぜられたいというのでありまして、特に鹿児島、宮崎両県下のシラス地帯についてはこの要望が特に強かつたのであります。  四、団体営等の小規模土地改良に対する補助金制度を復活してほしい。  五、災害復旧国庫補助率はその災害の多寡あるいは被害の激甚さの度合いに応じて定めるよう考慮してほしい。  六、農林漁業資金融通特別会計を増額して、農林金融の道を拡大し、さらに長期かつ低利の営農復旧資金とも言うべき資金融資わくを設定して農家経済復興の方途を講ぜられたい。もしかかる資金の設定が困難であるならば、さしあたり罹災農家経済復興資金に対する利子補給を考慮してほしい。  七、罹災農家に対する還元食糧は供出価格とするよう特別の措置をとられたい。  八、今回のごとき非常災害に際しては警察予備隊を出動させて災害地援助に当るような措置を講ぜられたい。  九、材木の濫伐にかんがみこの際急速に植林を促進せられたい。  十、防災ため池のごとき出水を調節し、かつ灌漑に役立つ施設を増置せられたい。  おおよそ以上のような要望がございましたが、いずれも災害対策として緊急に対処すべき事項であろうと存じます。  なお一般的に見まして水害をこうむる地帯は、反面旱害にかかりやすい傾向があります。山口県佐波川沿岸のごときは特にその傾向が顕著で、すでに水不足となり、目下揚水機を動員して灌漑に努めるとともに、井堰、灌排水路の復旧に全力を尽しているのであります。同様の傾向は熊本、鹿児島、宮崎等の各県についても見られるのであります。  今般の災害の状況は大体以上のようでありますが、何と申しましても、このたびの水害の大きな原因は、降水量が近年まれに見る大量でありましたことが前に申し上げました最大降水量千三百ミリにも達している点からも想像されるのでありますが、なお他面におきまして、治山治水対策の不徹底、土壌保全対策の欠如等が大きな原因を来していることも否定し得ないのであります。例えば熊本県緑川上流の大矢野原二千町歩は、大部分は原野となつているが、もしこれが植林せられておつたとしたならば、あるいは堤防決潰ものがれ得たのではないかと言われているのであります。山口県佐波川につきましても、その周辺の山々が欝蒼たる森林におおわれておりましたならばかほどな災害にはならなかつたと思います。特に鹿児島、宮崎両県のシラス地帯のごときも、地表水または地下水の適切な処理方法を講ずることによりまして、その崩壊を防止し得、少くとも災害を最小限度に食いとめ得ると信ずるのであります。今般の災害で鹿児島県下における人命の損失が意外に多かつたのは、かかる特殊土壌に対する保全対策が欠如しておつたがためであつたといつても過言ではありません。  以上をもちまして、災害調査報告を終るのでありますが、この際特に申し上げたいことは、速急に公共事業費災害復旧予備費の支出をはかりまして、罹災農民災害から雄々しく立ち上りました再建の意志を助長し、その希望を達成してやることが生きた政治の要諦であろうと存じます。今般の災害は前にも申し上げましたごとく、私どもの視察いたしました六県の農林関係だけにつきましても、被害金額は百七十三億円にも上ると推定されますが、このほか山陰、近畿、中部、関東、東北の諸県にも災害は及んでおりますので、これらを合算いたしました農林関係被害総額は二百五十億円余に達するといわれております。従いまして、この際少くとも五十億円程度財政支出をいたしまして、災害農民の熱烈な再建の要望にこたえるべきであり、必要に応じては補正予算の計上をも考慮すべきであろうと思います。  さらに今後の災害復旧は、改良工事中心として十分予防対策を講じ、災害を未然に防止する措置を真剣に考慮すべきであり、特に特殊土壌その他特別の事情により、災害の頻発しやすい地帯に対する土壌保全、災害予防の措置を強化することの必要なことはいまさら申し上げるまでもありません。かような災害を防止し、天災を克服する強力な対策を講ずることが、わが国農業の基本的生産力を強化するゆえんでもあると信ずるのであります。  なおこの際私は、一言地元県会議員の方々のお礼を代弁させていただきたいと思います。実は今回の災害に対しまして、建設省あるいは農林省関係におきまして、非常な努力を傾けられたのであります。鹿児島県の県議会におきまして、今回の災害に対しては農林関係の方々の仕事が非常に早かつた。建設省に比べて約一週間から十日ぐらい仕事が早く進行したということを聞きました。さらにまた県議会の農政委員長は、農林省に対しまして非常な感謝の意を表明いたしております。農林本省あるいは熊本の農地事務局の努力に対しまして、今後ともひとつかくのごとき迅速、丁寧なる作業をしていただきたいと県議会の名前において感謝をいたしておりましたから、私からも一言御報告を申し上げて、今後一層の御鞭撻をお願い申し上げたいと思います。  以上をもちまして、私の報告を終りたいと思います。
  10. 千賀康治

    千賀委員長 この際両君の発言のほか、若干の御質問があるようでありますから、これをお許しいたします。井上君。
  11. 井上良二

    井上(良)委員 ただいま一部の災害報告をいたしたのでありますが、今回の災害は、ケイト台風並びに七月の豪雨中心にしまして、政府が応急の金融をいたしました府県だけでも十六府県にわたつております。近接被害地帯は増加の一遂にありますが、これら被害に対しまして、政府が今日までとられました対策について一応政府から説明を願いたい。その説明に基きまして質問をいたす、こういうふうにいたしたいと思います。
  12. 平川守

    ○平川説明員 ケイト台風並びにその後の豪雨に伴い農業関係の施設、また建設省方面の土木関係の損害等が相当大きな額に上つておりますので、これに対しましては、目下現地におきまして損害額の査定をいたしておるわけであります。大体の数字は、いろいろ御報告もありましたように、またお手元に資料も差上げてありますようにまとまりつつあるのであります。これを各地区につきまして査定をいたしまして、それに基いて予備金を支出するという段階になるわけでありますが、ただいままでその査定が完成しておりません。しかし一面復旧事業の方は非常に急ぐという関係もございますので、とりあえず預金部資金を予備金の支出までのつなぎといたしまして、二回にわたりまして合計十二億七千万円を各関係の府県に貸出しまして、査定が終りますと予備金の支出をもつてこれに振りかえて参るというような段階にしておるわけであります。但しこの二回にわたりました予備金の支出の当時にはまだ判明しておりませんでしたような損害も、その後だんだんと出ておりますので、その概数がまとまり次第、さらに追いかけてこのつなぎ資金が出ることになるだろうというふうに考えております。予備金の支出の方は、具体的な損害の査定終了とともに割当てをきめるという段階になつております。
  13. 井上良二

    井上(良)委員 農林省としましては、耕地災害復旧等はもちろん農地局でおやりになりますが、その他の農業被害等についての応急対策をそれぞれ検討されているのではないかと思います。そこで農林省として、今回のケイト台風並びに七月の水害について、総合的な対策委員会というか、局長会議というか部課長会議というか、そういうものをやられて、それぞれ必要な応急対策について措置をとられていないのでありますか、それはどうですか。各局まちまちに処理をしておられますか。
  14. 塩見友之助

    ○塩見説明員 これは従来とも各局間で連絡をしまして、省議でももちろん問題にはなるわけですけれども、特別に今般対策のために機構をつくつてつてはおりません。なお今農政局の方でも対策を立てておりますので、それを農政局の方から答えていただきます。
  15. 土屋四郎

    ○土屋説明員 東畑農政局長が万やむを得ない御用がございまして、本日こちらの方に参れませんので、私農政課長でございまするが、今回の災害に対しましての農政局関係対策に関しまして、御説明を申し上げたいと思います。  ただいま御報告がございましたように、去る七月初めのケイト台風並びにそれに続きまする豪雨によりまして、九州、四国、中国、近畿その他非常に広範な地域にわたりまして、短期間の間に未曽有の降雨量がありました。そのために植付間もない水田に対しまして冠水、浸水をいたしました。その被害は非常に莫大な額に上つているのであります。これに対しまして農政局といたしましては、今年度予算といたしまして、こういつたような冠水、浸水のために植付間もない苗が流されたとか、あるいは滞水期間が長いために苗が腐つて改植を要するというようなものにつきましては、ほかの地方から稲苗を輸送して来まして、そうしてこれに対しまして改植をする。この稲苗の輸送費に対しまして、本年度予算に補助金がございますので、これを活用するということ、並びに改植もきかない、結局代作をしなければならないようなところも相当ございまするので、これに対しましては、食糧庁の方と連絡をいたしまして、雑穀等の払下げの措置というものもとつた次第でございます。なおこの水害のあとにいもちとか、その他病害虫がえてして発生しやすいのでありまして、ただいままで報告がありました分を見ましても、これは当初予定しましたところの被害面積よりも相当広範囲にわたつておるのであります。本年度はこういうような水稲の病害虫の対策といたしまして、これに対する補助金も約一億五千万円ほどのものが計上してございます。病気の関係では約二十万町歩を予定いたしました。また水稲の害虫の関係では、十二万町歩ほどを予定しておきました。この病害虫の補助金は大体過去の各府県の被害の状況を勘案しまして、年度当初におきましてすでにその八割ないし九割を各県に配付済みでございます。各県の方では、配付いたしましたところの病害虫の——これは二分の一助成になつておりますが、補助金をもちまして鋭意病害虫の駆除防除をやつておいでになるのでございます。もうすでに当初の年間の病害虫の補助金の八割ないし九割を各府県に配付済みでございます。ただケイト台風の各県の被害報告並びに農林省の作報等の報告をとつてみますると、われわれの方で過去の被害統計に基きまして配付をいたしましたところの病害虫の防除費が、たとえば宮崎県とか、そのほか特に被害の激甚であつたような地方では、当初の予定よりもそれをオーバーしまして被害面積が出ておるような次第でございます。そういうような面積を考えますると、たとえば当初のいもちの二十万町歩というようなものではとうてい足りないのでございまして、この点につきましては、われわれの方で、目下大蔵当局と補正予算の計上につきまして折衝中でございます。なお病害虫の防除につきましては、これも昨年度購入いたしましたところの国の動力噴霧機、撒布器というようなものを、被害の激甚な府県に無償で貸与いたしまして、これらを使いまして目下防除に当つておるような次第でございます。先ほど申しましたところの稲苗の輸送費の関係は、大体本年度のところはもうこの程度——最近大体二万町歩程度かと思いますが、これに対する助成を今、明日中に各県の方に令達をいたしたい、かように考えております。農政局所管の関係につきましての対策事項を若干申し上げました。
  16. 井上良二

    井上(良)委員 この際特に政府に伺いたいのは、被害地区農家また農業団体等の切実な要望でありまして、また各府県からもそれぞれ要求はされておりますが、さしあたり政府は今回の災害の応急措置として、予備金を見返りとして預金部資金からの緊急融資を十二億七千万円はかつた。ところがこれを各県に配分いたしますと、実際末端へ参りますと、ほとんど問題にならぬような金額にしかなりません。一体政府は、今回の災害に対して第一回の予備金の支出を何ぼ出そうと考えておるかという点であります。われわれ従来の災害復旧について、政府がいろいろ査定をいたしましたり、あるいは金融をいたしましたり、予備金を支出いたしました点を検討いたしてみますと、大体各県から報告がそれぞれ政府の方へ参ります。これを政府は出先機関なり現地調査なりして、いろいろな機関を通して検討いたしまして、そこで査定をいたすのであります。その査定は、平均いたしまして各県の報告の大体七割程度の金額になつております。その比率から行きますと、現在農業関係、土木関係あるいは水産関係、林野関係等を全部合して、経済安定本部の公共事業課の方へ来ております数字は、大体五百億くらいの総被害額でないかと推定されております。そうしますと大体三百五十億くらいが実際は補助事業対象になりはせぬかと思うのです。そういう見地から行きますと、少くとも私は、この際予備金を相当多額に支出してもらうといいますか、もつと具体的にいいますと、少くとも五十億くらい支出してもらはないと、いわゆる復旧事業は具体化して来ないと考えておる。そこで政府は、一体この予備金第一回支出を何ぼと査定されておりますか。これは安本の人は来ておるかどうか知りませんが、経済安定本部の方で大蔵省とも話をされ、司令部とも相談をされておると思うのでありますが、一体どういう見通しでございますか。私のしろうと考えといいますか、計数の推定でございますが、十二億七千万円というのは、第一回予備金支出を大体三十億以下に押えておるのではないかとにらんでおる。たかだか二十五億か三十億どころかとにらんでおるのですが、そういうところですか、それとも私が今要求しました五十億くらい第一回出そうというのか、その点についてはつきり見通しを聞かしていただきたいとともに、そういう一つの観点から、この緊急融資というものは第二回で打切るのか、それともさらに予備金第一回支出を相当大幅にわくを広げまして、多額支出をするという前提に立つて、この際第三回の緊急融資を速急にやる意思があるかどうか、この点をはつきりお示しを願いたいと思います。  その次は、この予備金の支出は、災害復旧政府補助金を対象にするのでありますが、ところがこの補助金というのは、大体一工事十五万円以上、区間約五十メートル、こういう一つのわくがきまつております。それで十四万五千円ということになると補助対象にならない。五十メートル以内ということなら問題でないのですが、五十メートルを越すというと、全然これが一緒に計算されない。いわゆる補助対象にならない災害復旧に対して、当然政府は、特別に金融処置なり、何かにおいて、これを緊急復旧する対策を考えるのが当然であろうと思いますが、これについて、たとえば農林漁業資金融通特別会計の金を活用する。しかしあれは、すでに貸付のわくが、一ぱいになつておるから、至急に新しく資金を増額して、補助の対象にならない小規模の災害復旧の金融の道を開くというようなことについてどうお考えになつていますか。この点を第二に明らかにしてもらいたい。  その次には今農政課長からお話がございました、冠水地帯のまつたく改植不能、または改植いたしましたけれどもほとんど満足な収穫ができ得ない災害地帯に対して、農業共済の制度を私は活用する必要があろうと思います。そこでこれは、実際改植不能田はどのくらいあるかという現地調査に基いて積み上げられて来ないと、実際の全体の数字がわかりませんから、農業共済の前渡金をこの際払つてもらうというような処置をとろうとしても、緊急対策としては時間的に実際間に合わない。そこでそれらの面積の概数は各県ともわかつておりますから、その概数でわかつております農業共済の適用されます被害耕作田について、その農業共済によつて受ける金額を見返りにいたしまして、農林中金なりその他の金融あつせんをして、営農資金をこの際貸す、こういう処置をとられることが妥当であろうと思いますが、これに対して一体どうお考えでありますか。  それから第四番目は、今度の冠水は異常冠水でありまして、一日、二日で減水しない。長いのになりますと十日も十五日も、短かいので一週間も冠水したという地帯が至るところにありまして、このためにあるいは発動機を持ち込むなり、または揚水機を持ち込んで臨時の電力を使用するということで、莫大な電力料なり、油代が使われておる。農薬の面については政府はいろいろ手を打たれておりますが、これら揚水に必要なる施設及びその消耗については一向政府は考えてやられない。しかもこのことは何ら米価関係しない、全部農家の負担になるのであります。この電力料なりあるいは油代なり、使用機具料なりというものについて、米を政府が一手に買い上げておる以上は、またこれが米価に何ら計算されていない今日、当然政府はこれについて特別の処置を講ずるの手を打つのが必要でないかと思いますが、これに対する政府意見を伺いたいと思います。  以上四点についてお伺いいたします。
  17. 渡部伍良

    渡部説明員 本日建設交通局長がよんどころない用事がございまして、本委員会に出席不能と相なりましたので、私公共事業課の建部技官でございます。ただいまの第一点につきましてお答え申し上げます。ただいまの委員の方の御推定は非常に正確でございまして、敬服いたしたのでございますが、ただ実際に予備金を支出いたしまする際には、各省の査定が出そろいまして、それによりまして八十億のうち幾ら支出するかということを決定いたすのでありますが、ただ大蔵省で預金部の資金の緊急融資をいたしますに際しまして、これの大体引当てとなりますものが、公共事業費の予備費の八十億の支出する金額をもつて大体見込みますので、その際には一応の計算がしてございます。大体報告額の平均は、ここ三年—二十三、二十四、二十五年で、年間千三百億円になつておるのでございます。ことに昨二十五年度におきましては、千七百二十一億というものが報告額として提出されまして、これを各省が査定いたしましたものが安定本部に集まつて参りまして、これによりまして、当年度災害復旧費として予備金が支出されることに相なるわけでございます。この査定額の平均は、三箇年を見ますと、大体九百二十七億に相なりまして、この比率が先ほど委員の方のおつしやいました七〇・二%に相なります。但しこの査定率も年によつて非常に違いますので、今回の災害にどのような割合で査定されるかということは、まつたく予想することはできないわけでございます。たとえば二十三年度におきましては約六二%くらいに査定されております。二十四年度は八八%に査定されております。二十五年度におきましては六五%に査定されております。かく非常に年によつても、また災害によりまして査定率はおのおのかわつて参りますので、今回の災害がいかようなる査定率をもつて査定せられるかということは、ちよつとただいまのところは推定はできないわけでございますが、一応この平均をとりまして九百二十七億、七〇・二%というふうに推定いたしまして、今回の八月六日現在までに集まつております被害額の総計は五百二十六億になつております。そうしますと報告額の平均が約千三百二十億になりますので、この千三百二十億をすべて八十億の予備金でまかなうといたしますと、八十億に対しまして五百二十六億というものは、先ほど申されましたごとく大体二十五億か三十億の間でないかと思います。ただこれはあくまで推定でございまして、実際の査定額が出て参りましたら正確な数字は申し上げます。  次に第二の点の単独災害にありましては、これも実は私の方とちよつと違いますが、起債の予定額には、あるいは少し最近数字がかわつておるかもしれませんが、一応単独災害といたしまして、年間二十五億ほどと予定されておると聞いております。  以上第一、第二の点だけが安定本部の関係と思いますのでお答えを申し上げます。
  18. 塩見友之助

    ○塩見説明員 小規模の災害復旧融資についてでございますけれども、これは農林漁業資金融通特別会計の融資もやはり十五万円で切つてつて、それ以下には政令で融資できないようになつておるのでございます。やり方としましては、便法として二地区以上が共同してやるとかどうとかいう方法でないと、これには乗り得ないような形に一応なつておりますが、この農林漁業資金融通特別会計も本年度発足早々でありまして、それで一応基本的な土地改良等に対する融資予算としてはとつてつて、こういう災害に対するものは予定をしておらないわけで、金額的に大きいものを出すというわけには参りにくいという現状にありますので、先ほど委員の方々からもお話がありましたように、そういうふうな金融については、何らか別途しつかりした金融措置というものをやはり考えざるを得ないのではないか、こう考えております。その必要性は十分にわれわれの方としても認めております。  それから農業共済保険金を見返りにしての融資のお話でございますけれども、これは昨年度もありましたし、本年度も要求のあり次第これに対する融資ということは、中金の資金の余裕のあり次第できるわけでございます。ただ中金が、御存じの通りに、非常に四月以降夏にかけて農業資金が全体として逼迫いたします関係から、その資金量につきましては、ある限界があるわけでございますけれども、昨年も申請がありましたものに対しましては、要求通り出したようでございます。ことしも要求がありますれば支出できる、こう考えております。
  19. 井上良二

    井上(良)委員 まだ答弁がありませんが、一つは共済金を見返りにした資金融通、それから電力料の問題、いま一つついでに、今の第一の質問について私が問うておりますのは、第三次の緊急融資政府は考えておるかどうか。考えておるとすればそのわくは一体どのくらいか。それから今お話で詳細にわかりましたが、大体二十五億か三十億という見当であるということになりますならば、それからあまり下ることはなかろうと思いますが、そうすると十二億七千万円という緊急融資わくを少くとも二十五億ぐらいまで広げても一向さしつかえない。政府は一文も損をせずに融資ができるのでありますから、そういうことをお考えになりませんか。第三次の融資をこのわく一ぱいまで広げる……。
  20. 渡部伍良

    渡部説明員 第三次の点につきましては、これは経済安定本部の所管では実はないのでございまして、私の方といたしまして大蔵省に第三次を希望いたしております。ただいま交渉中でございます。  それからただいまの預金部資金のわくの問題でございますが、これも大蔵省関係でございますが、本日は大蔵省の方がお見えになつておりませんので、大体私の方と話合つております線を申し上げますと、ただいま申し上げましたごとく査定がきまりませんので、災害別に査定率が違うと同時に県別にもまた査定率がかわつて参ります。そこで非常に査定を強く受ける県と、それから報告額と申しますか、申請額と申しますか、それがほとんど一〇〇%に近い数字、たとえば九〇%とか八〇%とか非常に近い数字で査定を受ける県とございます。従いまして全体といたしましては、これは国が損するというのはおかしいのですが、全体といたしましては融資が返つて来ないという危険はないのでありますが、ただ県別にひもをつけずに融資をいたしますので、その間実際に予備金を配賦いたしまして、各省から流れましたその金額と私の方で推定いたしました金額に、県においては若干と申しますか、相当の差を生ずるという点が出て来ると思います。従いましてその安全を見込んであるわけで、そういう結果大体大きな災害を受けた県で予備金が行くであろうと推定されるところの約半分というものを融資の額の算定根拠にしております。
  21. 平川守

    ○平川説明員 ただいま排水用の電力料あるいは油代というようなお話でございましたが、これは例年災害に関して問題になるのでございますけれども、いろいろ財政の関係からいたしまして、経常費的なこういう——もちろん臨時的な費用ですけれども、運営の金については自弁にしてもらいたい、施設の復旧の方だけに全力をあげることにしたい、こういうことで今まで了承を得ておりません。この点もなかなか困難だと存じております。
  22. 井上良二

    井上(良)委員 共済金の方はどうですか、これは農政の方でわかりませんか。
  23. 土屋四郎

    ○土屋説明員 先ほど官房長がお答え申し上げましたところで御了承願いたいと思います。
  24. 横田甚太郎

    ○横田委員 先の答弁にちよつとありましたが、去年宮城県志田郡鹿島台村に対して、共済保険金の概算払いをされましたね。そのときの成績とか手続とか、そういうことがわかつたら、ちよつと答弁していただきたい。
  25. 土屋四郎

    ○土屋説明員 はなはだ恐縮ですが、宮城県のどこでございましようか。
  26. 横田甚太郎

    ○横田委員 宮城県の志田郡鹿島村です。
  27. 土屋四郎

    ○土屋説明員 ただいま私の方で資料の持合せがございませんので、後刻調べましてお答え申し上げます。
  28. 千賀康治

    千賀委員長 横田君にちよつと伺いますが、あなたの質問はただいまの災害に対して関係がありますか。
  29. 横田甚太郎

    ○横田委員 あります。
  30. 千賀康治

    千賀委員長 その前提ですか。
  31. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうです。
  32. 千賀康治

    千賀委員長 それならいいです。
  33. 横田甚太郎

    ○横田委員 大体書類で見ておりますとまとまるのですが、やはり災害地へ私が行つてみたところによりますと、村々の災害政府関係役人がつかんでおる点において、われわれは非常に不満なのです。それがすなわち農業生産に非常に影響している。それの一つは、大阪府に高槻市という所があります。そこに道斎という所があります。これは北攝の中で一番災害中心であつたと思うのです。そこにおきましての災害の質が非常に困つたものなのですね。たとえて申しますと、そこは下にありますところの高槻市より高い、五尺から高い、高いにもかかわらずそこに冠水の災害が起るのです。そこの村は八十一戸くらいしかないのですが、ただいま三十町歩ほどの土地を耕作しております。耕作面積が非常に小さいのです。その道斎の山水が流れて来る。その部落は水が一ぱいになつたときには、下の村との昔からの一つの約束がありまして、水をせいてしまうのです。従いまして高い所が堤防に囲まれて、道斎の山水をたたえて田をずつとつけてしまうのです。そしてこれが干害になりまして、水が足らなくなると、下の村に水の優先権があつて、切つて放してしまつて、上の村はひぼしになる。そういう習慣の中で農民は別に不服もとなえておらない。なぜそんな妙なことがあるのか知らないのですが、今度の場合におきまして、下の水がふえるからというので上が水の中に非常につかつたままで、そのままである。それは井上さんの報告にもありましたように、ことしの冠水は質が違うのです。どういうように違うかというと、ここは私が参りましたときまでに二回つかつておる。二回の間が十日ほどつかつておる。三回目に参りましたときには十日ほどつかつておる。しかもそれが長い間見込みがない。その当日下の村のひをあけてもらうようになつた。それは高槻市というのが道斎という村、いわゆる五領村と一つになつたためにそうなつた。そこにおるところの農民の考えはどうかというと、そこには社会党のまじめな市長がおりまして、その人が冠水した後でもやはり米をつくつてもらわなければ困るというので、ほかの稲をもつてたくさん植えかえる用意をしておる。そうすると農民たちはそんなことをすると損だ。災害保険金をもらつたところが、またいろいろの形におい米をとつたら税金をとりに来よる。非常に困るから、ほつておいて保険金六千円をもらつた方が得ではないか、こういうような考えを持つておる。植えかえたところが一向よくならないというので、それは信州の災害地の場合にもあつたのですが、私はこういうところに聞きたいのは、災害は十年に一回来るもの、こう思つてつたその人たちが、今度の場合には災害が十年に一回ではなくて、戦後において二回来ている。しかも冠水の中においてポンプで水をかい出すと、必ず水が早く引くにもかかわらず、非常に高い金がいる。高い金がいりますから、井上さんの報告にもあつたのですが、ポンプで水をかい出すのはやめてくれ。一本のポンプだけしか使つておらない。電気代がかなわぬ。そんなものを使つたらかなわぬというので、手のつけようがない。それで水が引いたあとで立つか、立ち上らぬかわからないところの稲をじつと見ている。  そこで私は最後に聞きたいというのは、米に供出制度がある。——しかもこの供出制度に出しました米の結果といたしまして、大体米の値段を政府が十分に払わない。日本の自由党内閣がやつとの思いで金を七千五百円くらい払うかと思えば━━━━━━━━━━━━━━━━━払うたらいかぬとぬかす。そうすると農村が大体一石にいたしまして四百五十円から損する。三千万石からの供出をいたしますと、農民の手に入るところの金は百三十五億入らない。農民のもらうべきものにもかかわらず、日本の政府が無気力であつてようもらわない。だから今度の災害の場合は、災害の補償金は百三十五億プラス災害の補償金を出すべきだが、それさえもようしないのだから、二十億とか五十億とかけちなことを言わずに、百三十五億むりに出すように交渉すべきである。日本政府が先頭に立つてこのことは要求すべきだ、私はこう思う。こういうような意味合いにおいて供出制度があるのですから米価が安い。しかも無理にとられる。こういうようなことをどうしても続けて行くというならば、供出制度がある限りにおいて、災害の補償あるいは共済金の掛金あるいは一切のそれからの耕作に対する責任は政府が持つべきであつて農民に転嫁すべきではない。そういうことをすると、かえつて農業生産が減退するのではなかろうかと思うのです。そういうような点におけるところの考えは一体どういうふうにお考えになるかということと、先ほども申し上げましたように、水の中にこれを昔と同じようにあきらめましてじつと見ている。それは大阪府だけのことを言いますと選挙区になるのでいけませんが、これは信州にもその例があります。これは今年の農業朝日の九月号を見ますと、信州に災害が起つて諏訪湖の水が氾濫したときに、初めて切れたところの人々はその水に対して闘つた。しかし前から切れているところの者はそれを傍観しておつたという例があるのです。だからそういうふうに村でもどうも解決し得ない、農民もそれを災害として毎年あるものとして見ておるような所に対して、日本の政府はどういうような対策をとろうとしておるか、農政局の意見を聞きたいのです。
  34. 平川守

    ○平川説明員 水の関係につきまして、上流の地帯と下流の地帯との利害関係がきわめてデリケートでありまして、昔からのいろいろな慣行その他複雑なる関係があるわけであります。お話のような点につきまして合理化して行くということは、これは必要だと思うのでありますけれども、両者の利害関係がなかなか複雑でありますので、一朝一夕にその慣行を打破るというわけには参りません。私どもといたしましては、できる限り土地改良事業等を行います際に、両方の利益がともに増進されるようなくふうをいたしまして、総合的な計画を立てて行こうと考えております。まだ全面的にそういう関係を一挙に解消する段階に至つておらないわけであります。その点だけお答えしておきます。
  35. 横田甚太郎

    ○横田委員 もう一点だけ。そうすると合理的に解決するというその内容なんですが、その内容を聞きたいということと、それからこの村の人々はこう考えております。合理的に解決したい、これに対して運河をつくつたらよいと思うのですが、その運河には非常に金がかかる。そういうような場合には、その地元の農民はどういうふうに陳情並びに要求並びに農民の闘争形態を持つべきかということに対して、政府の考えはどうですか。
  36. 平川守

    ○平川説明員 闘争形態等につきましては、ひとつ委員の方でお考えになつたら適切かと思います。私の方といたしましては、つまり両方の地域を合せて改良工事を施して、それによつて両方の地域がよくなるというような改良計画を立てて参るということが、私ども計画であります。ただしかしもちろん財政の制約等もございますので、非常に割高になるというものにつきましては、だんだんあとまわしになるということはあるわけであります。財政の許す範囲において効果の高い、弊害の多い所から逐次着手して参る、そうして両者とも利益を受けるような改良計画を立てて行くということであります。
  37. 千賀康治

    千賀委員長 原山雪松君。     —————————————
  38. 原田雪松

    ○原田委員 災害復旧の問題につきまして決議案を提案いたしたいと思います。以下決議案を朗読いたします。    災害復旧促進のため昭和二十六年度公共事業費予備費を急速に支出する件   ケイト台風並びに七月中下旬の豪雨は、九州、中国、近畿、東北北陸を初め、全国的に非常な災害をもたらし、農家経済に深核な打撃を与えたにもかかわらず、罹災農民は早くも復興に立ち上りつつあるが、いずれも資金不足のため復旧事業は意にまかせず、せつかくの復興熱意も挫折するおそれがある。   よつて政府昭和二十六年度公共事業費中の予備費からこの際少くとも五十億円程度を急速に支出して罹災農民の復興を助成し、農家経済の安定をはかるべきである。  右決議する。
  39. 千賀康治

    千賀委員長 原田君の提案に対しまして御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。よつて農林委員会の決議に決定いたしました。  なお農林大臣、安本長官、大蔵大臣、建設大臣に対しての参考送付は委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 千賀康治

    千賀委員長 異議なしと認めます。さようとりはからいます。     —————————————
  42. 千賀康治

    千賀委員長 次に平野三郎君。
  43. 平野三郎

    ○平野委員 実はただいま伺いました災害に直接は関係のないことでありますが、やはり農地災害の問題で農地局長にちよつとお尋ねいたしたいと思います。これは鉱害の問題であります。目下特に福岡県を中心にして、石炭の被害による農地の埋没について、政府におかれて次期国会に特別の立法措置を講ずべく準備中であるということを聞いておるのでありますが、その構想の大要を承りたいことと、あわせて伺いたいことは、これはおもに石炭の問題が重点になつておるようでありますが、当然亜炭その他の金属等もこれに包含されて行くものであると考えますが、政府はその点どうお考えになつておるか、ちよつとお尋ねいたします。
  44. 平川守

    ○平川説明員 戦時中の強行状態といいますか、その関係から、発生しております災害に対しましては、現在特別復旧措置法があるわけであります。一般の鉱害に対してもこれとある程度の連繋を持つたと申しますか、調節をはかつた立法がいるのではなかろうかということで今立案中でありまして、まだその考え方について具体的にお話申し上げる段階に至つておりません。  それからもう一つは、亜炭の採掘に伴う農地被害等も発生いたしておるのでありまして、これにつきましては、私どもといたしましては、少くとも石炭に準じて考えるべきものである。ただそれについては、やはり現在法制もできておりませんので、今後研究を進めまして石炭に準じて扱うように持つて参りたい、かように存じております。
  45. 平野三郎

    ○平野委員 亜炭は、石炭に比較すれば非常に数量は少いので、全国的に百万トン程度でありますが、その約半分が岐阜県で生産をされておるようであります。これは数量は少いけれども、ほとんど農地の地表に近い、浅いところを掘つて行くために、被害はむしろ石炭よりもひどいというような関係になつておるので、むしろ石炭以上に農林省としては重点を置いて考えなければならぬものであることを申し上げておきたいと思います。なお、ことに岐阜県の亜炭の状況は、この際特に私は農林省にお伺いしたいことは、現在の鉱業法によつて被害を生じた場合においては、当然鉱業権者に対して農民が補償を要求することができるとなつておりまするが、実情は鉱業権者というものの実体が明らかでない。あるいはまた災害がか起つた場合においては、その鉱業権者は他に逃亡するとか、あるいは行方不明になるというような状況になるのであります。ことに私どもの岐阜県の状況は、亜炭業者の約三割程度は朝鮮人がこれを経営しておるというような関係で、被害が発生しても交渉すべき相手がいないというような非常に遺憾な状況になつておるのであります。本年ならば、亜炭などというものは一回掘ればおしまいでありますが、米は毎年なるものであると同時に、これは永久的の資源でありますから、むしろこういう地帯に対しては、亜炭の採掘というようなことはしない方がよい、国家的に考えて農業本位で行く方が妥当ではないかと考えます。ことにまた現鉱業法によつて地表から、五十メートル以下を掘るということになつておるが実情はほとんど五十メートル以内の浅いところを掘つているという状況であつて、これは鉱業法の違反が行われておるのでありますが、これについて通産省の方は非常に監督が不行届きであつて、むしろ農業よりもわずかな鉱業というものを助長するということにとらわれておるという傾向があるのであります。これはちよつと委員長にもお願いしておきますが、適当な機会に通産省の鉱山局を呼んでいただいて警告を発していただきたいと思つておるのであります。農林省としてはこれらの点どう考えられるか、これは農林省としては通産省に対して、そうした不当な認可をして、被害が発生した場合に交渉することのできないというような、大体不確実な信用のできないような業者に対して、鉱業権を認可するということ自体に問題がある。そういう不当な認可をしたということのために被害が発生して、農民がこれに要求することができない。事実上鉱業法が適用されていないというような被害があつた場合には、これは認可したこと自体に責任があるから、これは当然政府が責任を持つて、その被害は国が復旧するということがあつてしかるべしと思うのです。従つて今後これらの不確実な業者に認可をする場合には、十分、通産省としては慎重に行動してもらうことが必要であつて、この点農林省から警告を発してもらうことが当然あるべきだと思う。また被害があつても交渉する相手が行方不明だという場合には、当然認可をした政府に責任があるから、全額国庫をもつて国が復旧に当るべきだというふうに考えますが、これらの点について農林省のお考えを伺つておきたいのであります。
  46. 平川守

    ○平川説明員 先ほど申し上げましたように、亜炭に関しましては法制的にも不十分なところがあります。通産省の方にも十分に申入れをいたしまして、ただいまのようないろいろな弊害の起らないように十分手当をいたしたいと考えております。
  47. 小林運美

    ○小林(運)委員 ちよつと伺いますが、緊急復旧対策について、つなぎ資金として合計十二億を一応出しております。十六県のうちの大きいものはずつと出ておるようですが、徳島県は第二次分として少し出ております。ところがこの徳島県の災害の総計を見ますと九億何千万円となつております。長野県なんかは八億六千万円ですか、わずかの差ですが、長野県にはつなぎ資金が出ていないのです。これはどういうわけですか。
  48. 平川守

    ○平川説明員 ただいまのつなぎ資金は農地だけの関係ではございませんで、土木関係その他全体の災害で、しかもケイト台風及びその後の豪雨による災害というものだけを考えております。しかし中には報告関係が遅れたりしまして、割当をいたすときまでに数字の整わなかつたもの、その後に損害の判明したものもございます。そういう点についてはおそらく引続いて調整されるものが出るのではないか、われわれといたしましては出してもらいたいという要求を出しておるわけであります。
  49. 小林運美

    ○小林(運)委員 第三次分として出すのですか。
  50. 平川守

    ○平川説明員 私どもとしてはそういう要求を出しておるわけであります。
  51. 千賀康治

    千賀委員長 午後は二時から再開いたすこととして、暫時休憩いたします。     午後一時一分休憩     —————————————     午後二時十九分開議
  52. 千賀康治

    千賀委員長 それでは休憩前に引続きまして、ただいまから農林委員会を開会いたします。  ただいま根本農林大臣からの申出で、三時にはどうしてもここから退席をしなければならない要用があるということでありますから、質問は各党に十分ずつ割当てることにいたしました。理事会もその通り御賛成でありますから、十分ずつの割当てで質問を完結していただきます。河野君。
  53. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 大臣は忙しいようですから、基本的なことだけお伺いします。  よく世間で、根本農林大臣は広川農政をそのまま引継いで、広川君のまつたくの代弁者のようなことを言つておりますけれども、とんでもない間違いであります。私が一番よく知つておりますますが、今の農林大臣のあなたが政務調査会長のときに、一般の農業政策を立案し、これをやらしめたのは広川農林大臣である。しかも現在では今度は御本人が農林大臣になつてやるのであるから、もつともつと私は徹底した自由党の農業政策ができると思う。その点について私は力強く思つているのですが、ただとかく大臣になるといろいろ変な方からよけいな注文がついて、真の国民の声が反映するのならよいけれども、大臣になると、とかく会う人が非常に片寄つて来る。国民の声が、大臣になるとむしろ反映しないで、一部の特権階級の意見によつて、せつかくの大臣の意見というものがゆがめられるのが、従来の日本の政治の歴史の上においての実際の例であります。そこで私は、まさか農林大臣にさようなことはないと思いますが、あなたが立案され、広川農林大臣をしてやらしめた農林行政、これを続いて今度はあなたがおやりになる場合、食糧政策にいたしましても、農村金融にいたしましても、その他林業の問題にいたしましても、農業資材であるところの飼料の対策肥料対策、すべてこれはあなたが大臣御就任前と、今後おやりになる御方針と寸分の違いもないと思いますけれども、この点をあらためて私はあなたの門出にあたつて念を押しておくわけであります。これをひとつ御答弁いただきたいと思います。
  54. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいま河野さんからいろいろお話ありましたが、私は現在河野さんが期待していただけるような状況に持つて行くために、渾身の力を注いでおる次第であります。この点は何とぞ今後とも御鞭撻のほどをお願いいたします。
  55. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 きようは議題が肥料問題になつておりますから、そこで具体的にひとつ肥料の問題を伺つておきます。  御承知のように大臣が政務調査会長をされておつて、昨年公団廃止にあたつて、その当時公団の統制切りかえに需給調整をもつてしなければいかぬということで、わが党では立案して、当時議員立法でこれを提出せんとしたが、関係方面意見がこれに沿わないためにはばまれて、今日まで遺憾ながらこの実現を見なかつたのですが、いよいよ来る臨時国会には、政府はこれを政府提案として出すという御決意のように伺つておりますが、この点について少しく詳細に御決意のほどを伺つておきたい、かように思います。
  56. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 肥料の需給調整の問題は、すでに昨年の硫安の肥料配給制度をやめるときから決意したことでございまして、今日もそれにはかわりございません。従いまして、現在は補正予算において予算の裏づけとともにその立法措置を講じたい。しかもこれにつきましては一部には、金融をもつてやれることであるから、事業特別会計にしなくてもよいじやないかというような考えがありますけれども、そういうふうな状態になりますれば、これはメーカーの不需要期における値下りをカバーするというだけであつて、真の農業対策としては欠陥があるというような考え方を私はしております。従いまして、これは事業特別会計をもつて、買取り、それから放出、この方策をもつて需給の調整をいたし、また価格の調整をいたしたい、かように思つております。なお輸出の問題に関連いたしましては、今案の内容の検討中でありますから、若干の変更があると思いますが、私の構想といたしましては、やはり全体として肥料は大いに増産し、増産することによつて生産の単価を下げる、そうして国内向きにはできるだけ安い肥料を確保してやる、しかも一面におきましては、肥料は輸出として好適の商品でもある、こういう観点から、一定量の増産ができたならば、国外に輸出することができるというようなごく簡単なルールをきめまして、輸出の問題にからんで常にいたずらなる紛争を起すことを避けたい、かように思つておりまして、その根本の国内需要を十分満たして、しかる後輸出にまわす、こういう方針で需給調整の道を講じたい、かように思つております。
  57. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 ただいまの大臣の御答弁によりますと、需給調整法は提案する準備を進めておる、それにかわりはない、こういうことでありましたが、念を押しますが、これは農林大臣の御意見であるか、政府全体の御意見であるか。聞くところによりますと、大臣就任前の広川農林大臣のとき、経済閣僚の間で今度需給調整法を出すということをきめられた。その後また大臣が御更迭になつて、当然この問題に触れておられると思いますが、政府全体としての意見であるか、農林大臣だけの御意見であるか、この点をひとつ伺いたいと思います。
  58. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 政府としては、大体私の意見に賛成だと私は見ております。但し閣議において、次期国会においてこの法案を政府提案として出す、しかも予算をどれだけつけるというとこまで行つておりませんから、責任をもつて政府全体の意見であるというところまで私は言い切れませんけれども、しかし従来の閣議了解事項その他からみて、私は閣内一致してこれはなし得るものと確信しております。
  59. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 それが私が一番初め大臣に念を押したことで、一番危惧した点なんです。政府に閣僚として加わつた場合に、今農林大臣としてはこうであるけれども政府全体の意見としてははつきり言えないというようなことは、もし大臣が政務調査会長として、私の立場で農林大臣に質問して、農林大臣が答弁されて、そういう答弁で満足するわけはない。政党内閣である。自由党の内閣である。党議でしかも昨年決定している。しかもその後において閣議でも経済閣僚が決定しておる。それを二、三の閣僚がかわつたからというて、その後方針に何の変化が起る理由があるか、何も変化が起る理由はない。しかも当農林委員会においても、この問題については再三再四、昨年から本年にかけて三回、四回にわたつて、なぜ早く需給調整をやらぬかということを、各党一致、満場一致で決議しておる。こういう党派を越えての要求であり、自由党は党議として一年前に決定しておる。しかもわが党内閣においても、ついせんだつて経済閣僚懇談会において決定しておる。それを通産大臣、農林大臣その他二、三かわつた、そういうことによつて、ここで明瞭に御答弁ができないということは、これは少しおかしい。私は少くとも本日ここではつきり——もしほかの通産大臣なり大蔵大臣なり異論があるならば、これを屈服しても、党議として決定したものである、これは必ずやらしめるというだけの力強い御弁明をいただきたい。そういう答弁がいただけないようなことになるということは、すでにこの一箇月の間に何かもやもやしたものがあなたの身辺にとつついたような気がする。だから心配して言つた肥料の問題だけじやない。あらゆる問題について農民があなたに期待しておるのは、純真であり、熱の人であり、努力の人であり、まつしぐらに進む人であり、いかなる勢力も排除する、いかなる権門にもこびないという、それをあなたに期待しておる。しかるに一箇月の間にどうも腰がふらふらしたかということを見るのは、一年間あなたに政務調査会長として仕えて来た私として残念だ。これをひとつはつきりしてもらいたい。
  60. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 さらに鞭撻を受けましたが、私は現在総理でありませんから、こうするということまでは申し上げられません。しかし河野さんが御期待するごとくに今努力中でありまして、また党においてもその方針がかわらない限りにおいて完全にできるものと私は確信し、河野さんほど心配しておりません。これは必ずやれる、私はこういう確信を持つておるわけであります。
  61. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 時間がありませんから、大臣に対する質問は他の諸君に譲りまして、肥料問題につきましては、本日農政局長なり、安本の肥料の権威者の渡部さんなり大勢来ておられますから、これについては後ほど私は一時間ほど時間を借りてゆつくり質問したいと思いますから、質問をそれまで保留いたします。
  62. 千賀康治

  63. 大森玉木

    大森委員 私は大臣にお聞きをいたしておきたいのは、私がこの間農林委員として各地に視察に参りましたところ、二十三年度以来の災害復旧助成金がまだ未払いになつておる。これが非常に大きな障害を来しておる。同時に地方では、貧弱な町村あるいは農村におきましては、この金の立てかえのために、金利を調達することに没頭しておる。まことに農民としては迷惑いたしておりまするので、その点に対して、いかなるわけで二十三年度災害復旧費がまだ支払いになられぬのであるか。なおつけ加えて申し上げまするならば、地方にはまだ何か災害復旧費の確定案が通知してないというようなことをいろいろ聞いたのでありますが、災害復旧費というものは、二十三年は二十三年に決定をいたしておる。また二十四年は二十四年に決定いたしておると思う。二十五年もしかりである。しからば災害復旧費が幾らということが決定いたしております以上は、それによつて地方でこの仕事にかかつておるものは、ただちに支払いをしてやらなければ困るのではないか、これに対して大臣の答弁を求めます。
  64. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいまの大森さんの御質問はまことにもつともなことでございまするが、これは例年問題になるところでございます。本来ならば、その年度内において起つたところの災害については、少くとも次年度中に完成したいということが、これがすべての人々の要望するところでありますが、予算関係上常にこれが三年ないし五年くらいに分割して支出されておる現状でございます。平均いたしまして、大体初年度中に二〇%程度しかやつて、おらぬようであります。こういう関係で非常に遅れておる。ところが農業関係は、特に一年で回復してやらなければ土地が使えない、こういう観点でわれわれも極力過年度災害の繰上げ実施については努力しているのでありますが、全体の公共事業費自身が足らない、こういう関係でまことに遺憾に考えておるのでありまするが、今後ともでき得るだけ助成を講ずるとともに、他面におきましては、長期低利の資金を出すことによつて、その欠陥を補いたい、かような考えで、今回も農林漁業融資特別会計の政府出資額を増し、これによつてその欠陥を補いたいと思つて、今折衝中でございます。
  65. 大森玉木

    大森委員 もう一言だけ、これは申し上げるまでもなく、大体今の答弁ではどうもまだはつきりした御返答を承ることができないのは遺憾でありますけれども、とにもかくにも御承知のように、災害の起きた所をほんのわずかばかりやらしておけば、それは復旧をやらないと同じことです。また元の通りなつてしまう。なおまたそれも予算関係でいたした方がないというのでありますならば、完全にでき上つたのをなぜ支払いしてやらないか、完全にでき上つてしまつて一年以上たつても、まだ農地事務局あたりがその支払いをせないということになつておりますので、どこにそうした欠陥があるのか、支払いのできない理由があるのかということに対して、私はそれを見出すのに苦慮いたしております。この点を農林大臣からはつきりと、こうした不便のないように、農民に対して損害を与えないような方法をとつてもらいたい。今申し上げましたように非常に大きな問題であります。各地にこの問題がほうはいとして起つておる。こういう問題をこのままにしておかれることは、私は非常に遺憾なことであると思うのでもう一度申し上げておきます。
  66. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 ただいまの点は多分こういうことだろうと思います。農業災害につきましては、政府の補助金が来ないからといつて、そのままにほつておけないということで、団体もしくは府県が、政府の補助対象として認証されない前に、現実にあるいは農協なりあるいは地方銀行あるいは自己出資によつてつてしまつた、こういうことだろうと思います。こういうことについては、できるだけ優先的に考えるつもりでございまするが、予算の配分は、各県ともできるだけ公平に、同じ条件のものは同じ補助率でやりたい、こういう関係になりますので、そういうふうなアンバランスが出ておると存じまするが、そういう点もできるだけ実情に即するようにいたしたいと思つております。なお詳細につきましては、そういう方面を担当しておりまする農地局長から答弁していただくことにいたします。
  67. 吉川久衛

    吉川委員 ただいまの大臣の御答弁でございますが、この災害復旧の問題は、今大森委員の言われる通りに、その年のうちに復旧をしてしまわなければ、中途半端にしておけば、かえつて元よりも、それが原因してもつと大きな損害を与える。これは今年の七月の災害を見ても明らかなことであります。これを国の財政の都合だけの理由をもつて延ばしておくということは、私はけしからぬことだと思う。今日農協の不振の原因の一つも、農協が生産資材の購入資金として使われる農手でこの災害復旧の金にまわしていることです。そうして農協の不振を招いておる。そうしてまた三年なら三年にわけているその根拠を調べてみれば、これは昔は忘れられたころに災害が来た。その後三年に一度は災害が来るという、そういう統計に基いて、安本では三年ぐらいにわけたらよかろう、根拠はそこにあるのです。ところが戦時戦後の過伐、濫伐等が原因しまして災害が毎年来るようになつた。この事情が変化しておる以上は、国の財政がどうあろうとも、その財政負担をより多からしめるところの、その根本を改めるということを勇敢にやつていただかない限り、いたずらに国家財政のむだを重ねるほかの何ものでもないのです。これは農林大臣の所管だけではないと思いますが、安本長官は、午前中委員長にお願いしておきましたけれども見えられないようですが、ひとつ経済閣僚懇談会等において、強力にこの問題を主張されて、そうして三年に一度の災害は、もう数年前までのことであつて、今日いろいろな資料に基づいて見れば、毎年災害が来るのだ。従つてその年の災害復旧は、その年に完了できるように予算的な手当をしてやる、こういう根本原則を確立していただかなければ、国家の財政が窮迫しておる上に窮迫させるようなことを、政策的にやつておるということではまことになげかわしいことだと思うのです。根本大臣はよく御存じのはずですから、どうかひとつ、この根本問題の解決に対してどういうようなお考えで今後やつていただけるか、御所信をはつきり伺つておきたいと思います。
  68. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 先ほど申し上げましたように、われわれとしましては、災害は少くともその次年には全部復旧を完了したい、かように思つておりますけれども、年々の災害がほとんど一千億を越しておる状況です。過年度災害だけでも、これまた一千億になんなんとしておる、こういうような状況で、実は予算編成にあたりましては、災害復旧が一番の論点となつておりまして、特に増産と、さらに農村の経済安定を念願するわれわれといたしましては、これに実は主力を注いでおる状況であります。ただいまの御説はわれわれの最も共鳴するところでありますので、でき得るだけ閣内において災害復旧並びに事前防止に対する予算措置に対しては努力いたしたいと思います。
  69. 井上良二

    井上(良)委員 この際災害復旧に関連して特に根本問題が一つありますから伺いたいと思います。それは先般農林大臣が東北地方の視察においでになりました際、現在国が行つております主要食糧の統制のうち、特に米の統制を二十七年度産米より解除する、そういうことを目標にして一切の準備を進める、こういう重大声明と言いますか、談話を新聞記者に伝えております。このことは、いろいろな意味でわが国農業生産の拡充、また国内食糧の自給の面から重大な問題でありますので、大臣はほんとうにそういう方針をとろうとしておるかどうかということを、この際明らかにしていただきたいのであります。これが一点。  次にただいま大森委員並びに吉川委員から御質問がありました通り、災害はその年の復旧を急速に実行しなければ、さらに一層拡大するし、国費の支出も倍加して行くという見地から、本年起りました災害に対して、すでに現在五百億を突破すると各県より報告されております。これが緊急復旧について、政府はすみやかに事業設計の査定をいたしますとともに、当面の応急処置として預金部資金から十二億七千万円の緊急融資をいたしておりますが、これをもつてしてはほんの焼石に水の対策でありまして、根本的にはどうしてもすみやかなる予備金の支出を願い、急速にこれが復旧を完成する必要があると考えますが、午前中もこの問題について事務当局にいろいろ意見を伺いましたけれども、はつきりした答弁がございません。そこで農林大臣は、本年の七月水害並びにケイト台風に対する復旧について、一体予備金からいかほどの支出を予定されており、かつ現在安本並びに大蔵省関係においていかなる折衝を行われておるか、本委員会は午前中に五十億の支出を要求することを決議いたしたのでありますが、この決議の趣旨に基きまして、政府としてこの予備金支出についての見通しをすみやかにおつけ願いたいとともに、同時にこれが具体化は一体いつごろになりますか、この際はつきりその点をお伺いいたしたいのであります。  それからいま一つは、これも午前中伺つた点でございますが、大臣にはつきりした所見を伺いたいのは、災害復旧は御承知の通り災害復旧法によりまして、十五万円未満の災害復旧工事に対しましては補助をしないことになつておる。ところが今度の災害被害地の実情を見ますと、山間地帯が非常に多いのであります。これらは非常に小規模の耕地でもつて、過小農家が非常に多い所であります。しかもその経済的実力たるやまことに貧弱なものでありまして、またこの地帯を完全に復旧しませんと、いかに平坦地帯に力を入れましても、また河川道路等の方面に力を入れましても、これは何の役にも立ちません。どうしても山間地帯の治山治水並びにその被害箇所をすみやかに復旧するの必要がございまして、そういう点から、この十五万円未満の小規模の被害に対しまして一体いかなる処置をとろうとするか、もしこれに補助金が法規その他の関係で出せなければ、たとえば金融処置によつてやるとか何とか特別の処置政府は考えてやるべきことが、今度の災害の特徴じやないかと私らは考えますが、この点はつきりひとつ御答弁をいただきたい。  第三番目は、冠水地帯が、非常に長期にわたりました雨のために非常に広汎にわたつており、しかも冠水期日が非常に長かつた。このためにせつかく植えましたところの稲がことごとく枯死する状態にありまして、被害農家は非常な迷惑といいますか損害を受け、営農の上に重大な支障を来しております。政府はこれらに対して一体どういう処置をとろうとするか、同時に冠水に対する排水の場合の電力料金その他についても、政府はそういうものを見る必要がないということを事務当局が唱えておりますが、たとえば橋一つ飛んでも道路の一角がくずれても、あるいはまた田畑が流失埋没いたしましても、それぞれ政府はその復旧について相当の補助を出しておる。豪雨による冠水地帯の、しかも主要作物である水稲が枯死しようとする場合、この冠水よりそれを助けようという努力をしたことに対して何ら政府が見ないということになりますれば、農民はどうなる。水につかつたままほうつておいて稲が腐つてしまえば、いわゆる冠水田として農業共済にあずかればいいのだ、こういうことになつて、逆にわずかの政府の手当を惜しんだために別に農業共済に多くの負担がかかつて参りますが、そういう面に対して、政府は少くともそういう非常災害あるいはやむにやまれぬ災害に対する排水の電力料の負担なり、油代の負担の一部は、政府がこれを補助するという手をこの際とつてつて、流失埋没の面に対する復旧について政府が補助すると同じ意味で、当然平等な取扱いをしてやるべきではないか、こう考えますが、これに対する大臣の御答弁を伺いたい。以上三点を明確にお伺いしたい。
  70. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 要点は三つにわたる質問でありますが、第一は米の統制撤廃に対する私の考えはどうかということのようであります。新聞に出たのを私も見ましたが、私が秋田で言つたのは、自分から言つたのではなく、こういういきさつであります。記者団の諸君が、自由党は従来から米の統制撤廃を唱えておる。特に前廣川大臣はこれをはつきり声明しておる。現大臣はこの方針をやるのかやらぬのかということが議題でありました。それで政党責任政治におきましては、党の基本政策を漸次その時期と、環境に応じて実施するのが、政党内閣の国民に対する義務であります。その意味におきまして私は基本的には米の統制撤廃の方針は堅持いたしております。但しこれを実行するためには諸条件が必要である。しかも相当長きにわたりまして、現在のように供出並びに配給制度をやつておりますために、金融の面において倉庫の面において、あるいはまた操作の面おいて、おおむねこれこれの準備が必要であるというので、それは検討しておる、かように私は言つておりました。従つて新聞でもはつきりと、二十七年度からやるとは書いておりません。但しこういう問題は、できるだけわれわれは、条件の整い次第すみやかにやりたい、こういうことで今検討中であります。従つていつからいかなる方法でやるかということは、現在私から申し上げる段階ではございません。  その次には災害復旧の問題において特に注目すべきものとしてあげられておりますのは、今度の災害に対して政府は一応つなぎ資金を出した。しかしながらこれじやなかなか足りない、すみやかに予備金支出をなすべきだ、その金額いかん、こういうことが質問の要点でありました。これにつきましては、現在各地方からの統計資料に基きまして、集計して今折衝中でございます。従いましてその詳しい点については農地局長から御説明をお願いいたしたいと存じております。われわれといたしましては、つなぎ資金は二回にわたつて出しております。この前の閣議におきましても、私並びに野田建設大臣、さらに周東安本長官からは、でき得るだけ早く予備金支出をしようではないか、われわれの目標としましては、九月早々には配分ができるようにいたしたい、こういうことで現在事務的には準備が進んでおります。この準備ができ次第六蔵省におきましても資金は必ず出す、こういうことになつております。特に今回災害を受けたところの地方は、金を早く出せば、相当早く工事ができて相当復旧が早くできる。へたをするともう一回災害を受けるということのために、これはおそらく、今の事務当局の努力の結果は、必ず九月上旬中には配分ができるのではないか、かように存じております。  その次には、現在の災害復旧法の規定に基いて、十五万円以下の小さなものに対しては、補助の対象となつていない、これについていかなる措置を講ずるかということでございますが、これは立法府においてすでにきめられたことでありますので、これをわれわれが政府の独自の見解をもつて変更することは困難だと存じております。しかし現在のところは、融資特別会計においても、これは実は規則上対象になつておりませんけれども、金融の面においてはでき得るだけ善処いたしまして、そうしたものも取上げたいと、かように考えております。従つて、いずれ補正予算の問題のときには、従来の災害の状況にかんがみまして、立法府としての国会の方において、これが非常に悪いということになりますれば、訂正その他いろいろのことができると思いますが、われわれといたしましては、これらの地方については、現在の法の許す限りにおいて、また運用の妙を発揮し得る限りにおいて、この問題を善処したい、かように存じておる次第であります。  電力料の問題につきましても、この問題は今検討中でありまして、実は従来こういうものに対して助成を出しておりません。主としてこれは公共事業費に対する補助並びに助成でございまして、もしそういうふうな私経済に及ぼすところまでもやるとしますれば、実はこの前の南海の災害の場合のように、中小企業、その他に対しあるいは生活資金の問題にも触れまして、非常に現在のところでは困難でございます。     —————————————
  71. 千賀康治

    千賀委員長 次に蚕糸問題につきまして小林運美君の発言を許します。
  72. 小林運美

    ○小林(運)委員 私は蚕糸業の安定の問題について、大臣に質問を申し上げたいと思います。先月の本委員会におきまして大臣の蚕糸業の安定に対する決意のほどは承りましたが、伝うるところによりますと、いよいよ政府具体策をもつて進行されておるようでございますが、いかなる具体策をもつておやりになりますか、その時期、方法等につきまして、大臣の御意見を承りたいと思います。特に聞くところによりますと、政府は生糸の値段、すなわち糸価の安定をはかるという方面に主力を注いで、この生糸の原料である繭の安定というような点については触れておらないようでございますが、この繭価の安定については、どんな考えを持つて臨まれるか、その点あわせて御意見を承りたいと存じます。
  73. 根本龍太郎

    ○根本国務大臣 糸価安定措置を講じたいということをこの前申し上げましたが、糸価の安定をすることによつて繭価の安定もできる、こういうようなわれわれの見方でございます。この問題についても、すでに先ほどの肥料の需給調整と同じような意味において、われわれはぜひ次の補正予算中心とする臨時国会へは出したいと思いまして、今各方面と折衝中でございます。従来に比べて大分抵抗が少くなつたのでありまして、今回はぜひやりたいものだと思つております。なおただいま運営その他の細部の点につきましては、農政局長あるいは蚕糸局の者もおりますので、そちらの方から御説明申し上げさせなおまた皆様の御意向によつて、われわれの構想にさらにくふうをこらすべき点、改善すべき点がありますれば、それをも参酌いたしまして、りつぱな法案をつくりたい、かように感じております。
  74. 千賀康治

    千賀委員長 ちよつと申し上げます。根本農林大臣はあすの十一時から一時間ぐらい都合をつけていただくことにしまして、今日は他の諸君がたくさん御出席ですから質問の継続を願います。     —————————————
  75. 千賀康治

    千賀委員長 それではあらためて議題を農林災害対策に関する件に限定をいたしまして発言を許します。井上良二君。
  76. 井上良二

    井上(良)委員 この際大蔵省の方にちよつと質問をしたいのです。災害復旧の予備金支出について、今農林大臣のお話によりますと、一応各府県からの報告に基いて、その事業対象に対する査定がはつきりいたしますと、九月上旬までに予備金を支出する。こういう大体の方針で、第三次のつなぎ資金は出さないような話ですが、大蔵当局もそういう方針でおりますか。これを一応伺いたい。  それからいま一つ大事なことは、一千億以上の被害をずつとここ二、三年來受けて来ておりますが、それに対して昨年は百億の予備金を持つておりましたが、本年はこれが八十億に減額され、しかも本年七月までにすでに五百億からの被害報告されております。そうしますと、過年度災害復旧なり、あるいはまた本年起りました災害等を勘案いたしまして、この予備金ではとうてい足らぬという見通しをわれわれは持つておりますが、大蔵当局は補正予算の場合、災害復旧に対する追加予算を計上する方針で進んでおりますか。これを第二点に伺いたいと思います。
  77. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 第一の点につきましては、先ほど農林大臣からお答えがございましたように、一日も早く金を出すということで、農林省並びに建設省で査定を目下急いでおります。私どもとしましては、九月上旬というようなことではなしに、でき得れば遅くとも八月一ぱいには片づけるということで参りたいと思つております。従いまして第三次の短期融資は、もし八月末までに査定額が確定いたしますならば、大体出さずに済むのではなかろうか、こう思つております。ただしかし、何分にも府県の財政の収支、つまり金繰りの状況を見まして、どうしても金繰りがつかないという場合には、またあらためて考慮を要するかと思います。  それから第二点につきましては、八十億の予算費では足りぬのではないか、これを補正の機会に増額する考えはないかということでございます。ただいままで一応報告が集まりました額が約五百億でございますが、これに対してどの程度の国費を充当するかという点は、査定額の確定を待つてみませんと明確なお答えはできないのでありますが、例年の支出状況等から判断いたしますと、ほぼ三十億程度じやなかろうか、こう思うのでございまして、八十億のうち、あと残るところは五、六十億ということになると思います。これをもつて九月の台風期の災害に備えるということは若干の不安があるわけですが、しかし何分にも災害が起つてみませんことには、何ともわかりませんので、補正予算の提出の時期ないしは成立の時期とも見合う問題とは存じますが、状況を見て善処する、こういうことだと存じます。
  78. 井上良二

    井上(良)委員 次に農林金融はあなたの方の所管でないかもわかりませんけれども、予備金の運用に関連をいたしてまして、農林金融の運用というものが非常に重要な役割を持つておることは御存じの通りであります。午前中からの農林当局の意見を聞いておりますと、農林漁業融資金の融通というものは、災害関係にはできるだけ利用したくない、利用したくないというよりも、そういうことを目的にしてつくつたものじやない、こういうような一つの印象をわれわれは受けるのであります。ところが実際現地におきましては、現在政府が割当てました資金額というものはすでに突破いたしておりましてあとからあとへと増額の要求がございますが、なかなかその実現が困難でありまするし、特に災害関係でいろいろな資金を必要とする面が非常に多いのであります。そういう面から、この農林漁業融資金の融通のわくをこの際相当広げる必要があると私は思う。主計局としてもこの点——これは銀行局もやつておるかしれませんが、ぜひひとつこの点を猛烈に要求をしてもらいたいと思いますが、これに対するあなたの御意見はいかがですか。
  79. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 農林漁業金融特別会計の資金を増加するということは、かねてから非常に問題になつておりまして、現在の六十億のわくをもつてしては十分需要に応じ切れないということで、この補正予算の要求にあたりましても、農林省からは相当額の増額が要求せられておるわけであります。大蔵省といたしましても、財源の許す限り、このわくの増加をはかりたい、そう思つております。
  80. 井上良二

    井上(良)委員 くどいような質問でございますけれども、私さいぜんから冠水地帯の排水の電力料の問題や油代の問題、発動機を使います重油の代金の問題ですが、そういう経常的なものについては補助対象にならぬ、こうおつしやるのですが、一度に雨が来て冠水をして、それをかい出さなければ稲が腐つてしまうのです。農家が困るだけでなしに、国みずからも共済保険その他の負担がそれだけふえるわけです。しかもそういう排水のために使うところの電力料なり石油代というものは、米価に少しも含まれていないのです。そんなものは米価のパリテイ指数の中には入らないのです。だからそれを補助してくれと言うて行つても、大蔵省がなかなか言うことを聞かぬというが、一体それはどういうわけです。あなたの方で断つておるのか、農林省の方でそんな必要はないと言うておるのか。おそらく農林省は必要ないということは言わぬでしよう。あなたの方に行つて断られておるのだろうと思うが、一方農地の埋没、流失等の復旧については補助金を出す。一方水がかぶつたやつは知らぬ顔をする。これは一体どういうわけです。同等の被害を受け、同等の復旧を要する事業なんです。ふだんの灌漑排水等について電力料金の国庫負担を要求する分と、災害による排水の場合と、おのずから私は性質が異なると思つておるのです。そうお考えになりませんか、どうです。そこらはあなたの方が金を出す一番の責任者ですから、あなたの意見をひとつ聞かしてもらいたい。
  81. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 ただいまの井上先生のお話、まことにごもつともでございますが、何分にも従来、御承知のように建設面に対しまする投資につきましては、国の補助ということが取上げられておるのでございますが、維持費でありますとか、管理費でありますとかいう面につきましては、これはやはり年年の収益で見て行くというような考え方が非常に強うございまして、従来ともそういう補助が出ておらないわけでございます。仰せのように、洪水で、これの排水のために集中的にポンプを使うということは確かに異常な出費になるとは存じまするが、ただその場合に、従来のこの電力灌漑をやりました方も、終戦直後に電力が非常に余りまして、電気は非常に安いものだという感覚で物事を考えておつた。そのために、正当な電力料金でやればなかなか採算がとれないというような所へも、相当に電力灌漑が入り込んで行つたという要素も一面においてはあつたと思うのでありますが、しかしやはり電気というものは窮極的には高いものと観念しなければならぬと思いますので、たとえば五町歩のところでやつたのでは引合わないが、それを二十町歩まで受益面積をふやせば引合うというようなことをあれこれ考えまして、設計をいろいろかえますとか、あるいは新規に計画する場合に、そういう基準でとりますとかいうことで、農家の負担をできるだけ軽くして、そのような電力料金の負担にも耐え得るところに計画を持つて行くということで調整する以外に道はないのではないか、かように存じております。
  82. 井上良二

    井上(良)委員 これで終りますが、非常にむずかしいまわり道のような意見でございますけれども、私率直に考えてもらいたいのは、たとえば冠水をいたしまして全然改植する余地がなくなつたような所に対して、たとえば豆をまきますとか、あるいはそばをまきますとか、そういう種苗の代金については、一部補助をしたりめんどうを見ておるのです。あるいはまた植えかえますところの苗の輸送費についても、一部補助をしておるわけです。そこまで政府が行き届いた手当をしてあるくらいなら、当然水をかい出すことによつて何百町歩、何十町歩という稲が助からぬか助かるかということになりますから、もしそんな費用を出さぬということになりますと、これは腐らして保険をもらつた方が得だということになつた場合どうしますか。現に私どもの方の大阪の高槻地方においては、一地区において五十万円からの電力料を負担しておる。そんなものは一部落においてとうてい負担できないので市に陳情しておる。市はそれを出した場合に、平衡交付金は一体増してくれるだろうかどうだろうかということで心配しておる現実にこれをかい出さなければ何百町歩、何十町歩というものはまつたく腐つてしまうのです。それを五十万円からの大きな金を出して、水をかい出して稲を助けた場合に、これは全然農家の負担だ。流失、埋没した所は補助金がもらえるが、一方冠水して稲が腐つておる所は知らぬということでは、これはどうも政府として片手落ちではないかと思いますが、そう佐竹さん考えませんか。ひとつそこを特に考えてやつてくれませんか。ふだんの用水並びに排水等について、経常的な面については、これはいろいろと特別な米価その他の面において考えなければならぬと思いますが、そういう異常な災害についてはやはり異常な救済補助対策というものがとられておりますから、この場合は、特に今度農林省から補正予算を出します場合に、あなた方はけらぬようにひとつ査定してもらいたいと思うが、その点どうです。あまりむずかしく考えないで、零細な農民を助けるという気持で、ひとつ考えてくれませんか。
  83. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 現にただいま仰せられましたような地区がどの程度ありますか、電力料金の負担そのものもいろいろ問題もあると思いますので、いろいろ実情その他を調べまして、十分研究いたしたいと思います。
  84. 横田甚太郎

    ○横田委員 今の電力の問題ですが、たとえば終戦当時の採算を無視した電力を農業生産のために使つてつたというような考え方があつたのです。また午前中の、あなたとは違うのですが、別の農林省の役人の中には、たとえば農村においては災害にかかつた。もらう災害の保険金が少い、しかも遅い。これではかなわぬ。そのときに、なんぼやつたところが、各省間における査定が一致しないから金は出さないと、こういつておる。これなどから見ましても、各省の査定が主であつて、農業生産が従になつておる。しかしわれわれ共産主義者の考えるところによりますと、農業生産が主でありまして各省の査定はそれに従属すべきなんです。そういたしますと、今の電力の問題になつて来るのですが、大蔵省の頭は大分とぼけておるのと違うかと思う。なぜかといえば、そういうように、安い高いの採算を度外視して、電力のいるような所にも米をつくれといつて煽動したのはあなたたちじやないか。しかも占領下におけるところの政権の一切がそれだつたのです。それがために高かつた安かつたというような問題が起つて来た場合については、それの論議は別問題といたしまして、そんな電力料金はそれ自体が全部国家負担になるのだ。なぜかといつて農民がつくつたところの米も麦も政府がきめた値でとるのだ。だからそういうようにすべきだと思う。そういう意味合いにおきまして、今後は災害復旧のために、それは普通に米がとれましても——たとえば普通の米が十とれる。あるいは災害で、努力して九とれました場合においても、十と九の比率にせずに、災害の基準をどういうところに置いておられるかということを、ひとつまず第一点として伺いたいのです。——大体こういうことを聞きましたのは、率直に言いますと、大蔵省が各所に出張所を置いておるところの税務署に反感を持つておるのです。それというのは、災害地であつても、税務署の役人どもは大蔵省から——あるいはそうではないのであつて、━━━━━━━━━━が実に監督を厳重にしまして、税金をとりに来るのであります。災害地において一番困りますのは、農民が水がつかつておる中からこの水をかい出して、ほしてしまつて、米をとるかとらぬかじやないのです。今年税務署は何ぼとりに来よりまつしやろな、災害の中におつて、税務署を気づかう。しかも外国の銀行家のそろばん玉からはじかれておる。だから私がそこで聞きたいのは、災害当時災害地に対して、大蔵省から大蔵省の末端徴税機関であるところの税務署に対して、何か適切な指令を出されたか出されなかつたか、また出す必要があるかないか、こういうようなことをお聞きしたいのです。
  85. 佐竹浩

    ○佐竹説明員 災害についての取扱いに関して、大蔵省から税務署に何か通知をしたかどうかというお話でございますが、実は私主計局におる者でございまして、税の方は関係がございません。この点まことに申訳ないのでありますが、責任のある御答弁ができませんので、お許しを願いたいと思います。
  86. 横田甚太郎

    ○横田委員 災害のことですから、あす大蔵省の税金取立ての一番きついのをひとつ……。
  87. 中馬辰猪

    ○中馬委員 私は南九州の特殊の災害の問題についての御質問をいたしたいと思います。実は今年の正月に廣川前農林大臣も視察に来ましたし、また先般の災害直後におきましては、千賀委員長、島村農林政務次官、その他安本、農林、各省関係からしばしば南九州の災害特殊性といたしまして、シラス地帯の土壌保全の問題があつたのであります。シラスというのは御承知の通り、いわゆる火山灰の一種でございまして、非常に災害の原因になつております。ところが従来におきましては、このシラスをいかにして防ぐかという問題については、暗中摸索の感があつたのでございますが、幸い林野庁におきまして全額国庫負担のもとに、一種のモデル地区として一箇所だけ災害防除のためのシラスの防禦をいたしました。そうしてまた農林省におきましても一箇所だけモデルの地区を設定いたしまして、これがしかも今日の災害におきまして非常な効果を示したのであります。われわれといたしましても、はたしてシラスのごとき猛烈な災害地区が、八百万円あるいは一千万円程度工事でもつて防げるかどうかを非常に疑問を持つてつた。ところが幸いに先般の台風にかかわらず、微動だもしなかつた。これを見て鹿児島及び宮埼県といたしましては、ますます元気を出しまして、将来これによつて大々的に災害防除のための根本的政策を実行しなければいかぬというので、非常に張り切つてつた。ところが承るところによりますれば、先般農林省におきましては、従来の通り、六割五分の国庫補助を出すことに内定しておつたのに、安本におきましてはこれを五割に削減をしたということを聞いております。とうてい五割補助ではやつて行けない。宮埼県の知事が先般もやつて来ましたけれども、これを八割にしてもらいたいという矢先に、逆に五割に削減されたということは、このシラス地帯はほとんど手をつけなくてよろしい、工事はしなくてよろしいという極端な意見の現われかとすら私は想像せざるを得ないのであります。これにつきまして農地局長または安本当局の見解を承りたい。
  88. 平川守

    ○平川説明員 シラスの対策につきましては、農林省といたしましては、農地保全の対策の一環といたしまして、試験的に行つたのであります。六割五分の補助金で始めたのでありまするが、農地保全の対策の中には各種のものがございまして、やや農地改良のような意味を持つたものもあるわけであります。安定本部の方におきましては、そういうような意味において、五割の補助でいいじやないかということを言つておられるのであります。本年度予算においては、一応五割という建前でできておりますが、農林省といたしましては、少くともすでに実行しております分につきましては、六割五分の補助という約束で出発しておりますので、これについては少くとも六割五分にしてもらいたい、なおその他のものにつきましても、ことにシラス対策のようなものと、農地保全のほかの部分、たとえば同じ鹿児島のコラ、ボラの問題というようなものと、やや性質が違うのではないか。そういうような意味において、災害防止というような意味もありますので、補助率についても再考を煩わしたいということで、目下安本が中心になりまして、この問題を検討中でございます。近いうちに解決いたします。
  89. 原田雪松

    ○原田委員 南九州の災害に関連いたしまして、私地元であるからくどくど申し上げるようにお考えになるかもしれませんが、ありのままに申し上げます。熊本の今回の水害は、きわめて甚大なる被害をこうむつておるのであります。ここにおいでの委員長、中馬委員並びに政務次官もつぶさにその状況を見ていただいておるのであります。総面積三万三千三百十二町、これだけのものが浸冠水をやりまして、ほとんど収穫皆無に近いものが半数以上である。ところが地域的に非常に九州は恵まれないところでありまして、こういうことを、ただちに報道して認識を高める点に非常に欠陥があります。そういう関係から、ややもしますと近いところのその水害程度は、きわめて僅少なものが非常に上に来て、最も被害をこうむつた、農村みずからが困つているものがどうも軽視される、こういう傾向が従来の事例にたくさんあるのであります。私どもはそういう意味からして、水害の惨状の実況を見ていただいた方々もそれぞれ報告はもたらしてあると存じますが、政府当局においてそういう宣伝等に欠陥があることを御認識いただいて、公平な立場から災害復旧費の按分をしていただきたい、これを要求したいと思います。特にきようは佐竹主計官がおいでになりますが、私の方でお尋ねしたいことは、既決予算食糧一割増産計画の中に、病虫害防除対策費というものがある。これが熊本県におきましては、大体の割当が三百三十七万二千円になつておるのでありますが、この内訳から申しますと、ただちに役立つものもあれば、どうしても先までとつておかなければいかぬという予算もあるわけです。ところがこれは普通の場合の既決予算であつて災害の場合の緊急処置としては、大蔵省は別途のわくでこれを支出して、もらわなければならぬと考えるのであります。ところが出す方はなかなかきんちやくの締めくくりがよく締められるので、まずそれがあるからそれから使え、そのあと出すのだということを往往にして聞くのであります。こういう実際に困つた緊急の場合は、困つたところの農村関係実情をよくお考えになつて、特別わくでただちにその方に緊急処置をしていただきたい。こういうことにしてもらわなければ、既決予算をまず使つてから足らぬものを出すなんということでは、とても追いつきません。しかも水害の後に来るおそるべきものは何かと申しますと、病虫害被害であります。数万町歩の田がその後いもちあるいは浮塵子その他非常発生を見ております。これに要するところの農薬、農機具、こういうものが不足で、みすみす収穫のあるものを放任しなければならないという実情にあるのであります。この点からいたしまして、どうしてもこういうものにはただちに緊急措置をとつていただかなければならぬと思いますが、それに対するところの——農地局もおいでになりますが、この処置をどういうふうにしてやつておられるか、その点をひとつお尋ねいたします。同時に大蔵省といたしましては、今いいました既決予算のその部分を差引いてやるというような考えをこの後持たれるか持たれないか、ぜひ私どもはこれは緊急対策として取上げていただきたいのでありますが、それに対するお考えはどうであるかということを、この際お聞きしておきたいと思います。
  90. 東畑四郎

    ○東畑説明員 災害等の起りました場合の病虫害の問題でございますが、おつしやいましたように、異常のものにつきましてはわれわれの方で予算がございません。そこで先般の国会で植物防疫法の改正が行われまして、異常な場合において何らかの機関で備蓄をしてそれに対して対策を講ずるというような法案が実は通つたのであります。それに即応しまして、今農林省といたしましては、次の補正予算にそういう災害等を織り込みました一定の農薬等の整備をいたしたいという予算を組みまして、目下大蔵省と折衝中であります。そういうものがかりに認められますれば、今言われましたようなものがもつと、毎年々々の補正予算に要求しなくても適期に配給できる、こういうふうに実は考えておるわけであります。     —————————————
  91. 千賀康治

    千賀委員長 次は肥料問題を議題にいたします。質問の通告があります。河野君。
  92. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 肥料はいよいよ今月一日から新肥料年度に入つたのですが、今日おいでの安本なり通産省なり農林省なり、各肥料関係の局長さんや課長さんは、過去一箇年を振り返つてみてどう思つておられるか。われわれ当委員会が過去一箇年においてきわめて正しき指導をした。しかるに政府は、無力というか不誠意というか、過去一年間においていかなる肥料行政をやつたか、こういう私の質問を受けると承知したかしないか、役所は早く人事異動をして、今日おいでの諸君は、通産省でも農林省でも安本でもみな局長さんがかわつておる。こういう方々に言つてもしかたがないのでありますが、一応知らなければ過去一年のおさらいをしなければいかぬ。すでに私がこう言う前に、あなたたちは過去一箇年のおさらいをしておられると思いますが、過去一箇年の肥料の行政が価格を中心にして、輸出を中心にして、われわれ農林委員会の注文によつてうまく行つたか行かないか、誠意を持つてつたかやらないか、こういう点について、私は一々とは申しませんが、お三人で相談の上、どなたか代表的に御答弁を願いたい。
  93. 東畑四郎

    ○東畑説明員 われわれ三人とも実は途中でかわりましてまことに申訳ないのでありますが、私かわりまして以後、速記録等を十分読みまして、前国会以来肥料問題が当委員会で重要な問題であり、また輸出にからみまして論議のありましたことは十分承知いたしております。でありますがゆえに、輸出等をいたします場合において、われわれ事務当局の間におきましても実は十分論議をいたしまして、あらゆる面から検討をいたしましてこれの量をきわめておる次第であります。今までのところ三省間実に円満に量をきめまして、輸出をいたしておるということになつております。  なお市価の値上り等がありました場合に、かりにそれが輸出によつて不合理があるというような場合におきましては、農民に相当の影響がありますことも十分承知いたしまして、単に物の需給のみならず、市価の変動というものもまた重要でございますので、そういう点等につきましても、輸出に際しましては肥料の製造業者の方々に来ていただきまして、十分三省大臣からお願い申し上げまして、御協力を願つておる次第であります。
  94. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 農政局長は比較的知つておられる方だから、私はあまり言いませんけれども、通産省の局長さん、ぼくは初めてでありますけれども、決して私はあなたに敵意を持つているわけじやないけども、あまり御存じがないと思うから、私は過去一箇年を大急ぎでおさらいしてみる。  昨年の春に当委員会で、当時外安を二十万トン輸入するというのを、その必要なしと言つた。ところがその当時政府はその必要ありということで、むだな金を使つて、補給金を払つて、国民の負担においてむだな硫安を入れた。ところがその後においてどうしたか。ちようど二十万足らずのものを結局余つて輸出しておる。これが過去一箇年間の輸出業における政府の大失敗である。しかもこれは、われわれ当委員会は別にくろうとでなくてもそんなことはわかつておる。あなた方の方でもわかつておるはずである。わかつていることをしいてやつたということは、そこに輸入にからんでのいろいろな因縁情実がある、輸出にからんでのいろいろな因縁情実があるということが第一である。その後において、価格の面においても統制の撤廃になつた後において、一体肥料の清算公団が八十万トンの肥料を持つておる。この八十万トンの肥料によつて肥料のコントロールをして行こう、過去一箇年間の肥料年度肥料需給調整の一年なんだ。決して肥料の需給調整というのは新しいものじやない。すでに先月三十一日まで肥料需給調整をやつた。八十万トンで需給調整をやるときに、政府は三省の間で需給調整をいかなる形でやつたか、輸入の標準価格が一ぺんも明示されたことはない。農林省は五割アツプ、通産省は七割アツプ、安本はその間をとつてわけのわからぬことを言つておる。そういうことをやつて、過去一箇年間において一度も肥料の適正価格がどこにあるかということを政府が明示できない、お互いにかけ引し合つておる。そういうことがまず第一に不明朗だ。また輸出の問題につきましても、昨年の秋に、あなたは御存じでしよう。あなたの方の同僚の人が、業者と結託して不正輸出をやつた。そしてそのときにもここにおいでの首藤さんは、当時まだ肥料をあまり知らなかつた。ただ自分の下僚をかばう一点張りで、持前の強引さで強情を張られたが、いまだに反省しておられない。その当時私は絶対に輸出に余力なし、もしやるなら、春になつて春の肥料が終つてゆつくり考えても遅くはないのじやないか、もともと安本を初め、肥料の需給推算なんてこんなナンセンスなものはないですよ、これをひとつよく考えてください。生産量はなるほど出ます。需要量は出ないじやないですか。昨年輸出の不正問題をめぐつたときに、農林省では二百十万トンといい、片方では百八十万トンといい、その間をとつて二百何万トンという、一つもまとまらない、まとまらないはず、景気によつて仮需要が起つていろいろになる。ところが結果において二百十三万トンなり二百十五万トンの肥料が出たではないですか。今後とも肥料の需給推算なんてできるものじやない。これはそのときどきの市価によつて数量を調節して行くよりほかに方法がない。市価が肥料需給の現われです。私は過去のことは言わない。しかし東畑さんは前任者の務めを果す責任があります。この間の輸出はだれの許可を得てやつたか。われわれ当委員会において、本年の五月までは輸出はしていけない、輸出はしませんと政府は約束をした。しかもその後において輸出する場合には、当委員会に向つて相談すると言つた。私は相談を受けたことはない。だれに相談したか、これをはつきりしてもらいたい。
  95. 東畑四郎

    ○東畑説明員 当委員会に相談をして輸出をするということは、私今初めてお伺いしたわけであります。われわれといたしましては、肥料の輸出が相当市価に影響するということは当然考えまして、業界の方に来ていただいて十分御相談を申し上げ、しかも安本でお立てになります需給推算は一つの目途がございまして、年間の目途というものはなかなかむずかしいのであります。ある程度の目途というものが立ちました場合には、その量的な余剰というものは輸出してもさしつかえないのじやないか、こういう判断で三省間円満に話合いをいたしまして、実は農林省も責任を持つて許可をいたした次第であります。当委員会に御報告いたさなかつたことは、かりに前局長がそういう約束をしておりますれば、報告をいたさなかつたことにつきましては陳謝をいたします。
  96. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 目途をつけてやつたというが、どういう目途をつけたのです。政府でこの間の輸出の御相談をなさつて、輸出の許可をするときには一体どういう状態であつたか、電力の値上げの問題は政府にその当時話題に上つてつた、材料がたくさん出ておつた、材料がたくさん出ておつた。そのときにどうして輸出の目途がつきましたか。現にあなたの方は目途がついたとおつしやるけれども、結果はどうでありますか。今盛んに先高々々です。電力がまだ上らないうちに、それが市場に反映して先高となつている。農業手形は手一ぱい肥料にかえる、その上に農業協同組合の貯金もまた全力をあげて肥料の購入資金に充てる、それでも足りないものは借金で買うということで、農家は先走つて肥料を買つている。昨年の秋に本年の春肥を買う、春には夏の肥料、夏になつたら秋の肥料と、こういうふうに農家に焦躁感を与えるのは肥料行政が悪いからだ。しつかりしてもらわなければ実際困る。しかるに過去一箇年の罪を反省しないで、いまだに需給推算だとかなんとか、たわけたことを言つている。国民は何のために終戦後肥料工業に復金の金や何かをつぎ込んで傾斜生産に同意したか。国の金をつぎ込んでよけい肥料をつくつて、安い肥料を配給してもらつて、米なり麦の生産をやろう、これが目的で昭和二十一年から昨年までは生産会社に非常にへんぱな肥料行政をされたけれども、それもこれもやみの肥料を買うよりも、一日も早く肥料の配給統制が撤廃になつて、ほしい肥料が安くなるようにということで、今まで農民は何も言わないでやつてつた。ところがいよいよ国内で需要が満されるようになつた。これはだれのおかげでもない。もちろん製造会社の努力も、役所の指導も認めます。しかし一番大きな力は政府の力であります。政府のよき施策によつて、ずつと歴代の内閣が肥料に傾斜生産の方式を用いて、国の力をそれに加えて肥料の増産をしたからそうなつた。しかるにいよいよ国内で需給のバランスがどうやらとれるという段階になつて来ると、一つ一つの現象をとらえて、ちよつと余るとすぐ輸出する。そうして輸出のあとには先高だ。過去一箇年の肥料事情は、あなた方も御存じのように、常に売手市場ではありませんか。昨年の八月から本年の現在まで買手市場にかわつたことがただの一度でもありますか。常に売手市場である。黙々と、無言のうちに働く農民の声がわからないで、あなた方を取巻くところの、いいかげんなやつらの声によつて行政をやられてはたまらない。私は日本の今の政治は、どうも国民政府の末期に似て来たと思う。浙江財閥か上海財閥か知らないが、そういうやつらの声によつて政治を行う、その間に中国の大衆は国民政府から離れた。そういうことと同じ形が日本の政治に反映している。私はそれをそのままのむわけではないが、少くともそれも一つの見方だと私は思う。これは単に肥料の問題だけではなく、すべての問題がそうである。私はここで演説してもしかたがありませんが、肥料の問題について、今後も相かわらず需給推算というあなたの方のナンセンスな数字によつて肥料の輸出をするか、しないか、今後の輸出についての方針を、はつきりと通産省の関係者からお伺いいたしたい。
  97. 首藤新八

    ○首藤説明員 河野委員から、昨年末の輸出に対して非常に辛辣な御批判があつたわけでありますが、しかしながら同時に需給推算の数字に対して、河野委員は絶対的に信頼しないという御意見であります。信頼するしないは別問題といたしまして、政府は行政を推進いたしますためには、何らかの標準というものを必要とするのでありまして、これがためにできるだけ努力をいたしまして、できるだけ信頼のできる数字を集中いたしまして、もつて需給の推算をいたすことは当然必要となつて参ることを御了承願いたいと存ずるのであります。つきまして、昨年の需給の状態でありますが、当初の肥料の生産の予想は、硫安が百七十万トン、消費が二百十万トンであつたのでありますが、その後輸出問題にからんで消費が寡少過ぎるということで二百二十万トンに上げますとともに、生産も一応百八十万トンに上げたのであります。しかるにその後台湾向けの輸出あるいは香港その他の輸出問題が取上げられて、これがために肥料の価格を騰貴せしめるというような本委員会の強い御意見がありましたので、市価に影響のないように、この分は余分に生産するということをはつきりお約束申し上げまして、その後百九十万トンの生産に引上げたのであります。しかるにさらにその後朝鮮、台湾等々の輸出がまた取上げられましたので、この生産量をさらに引上げまして、結局七月三十一日までの肥料年間における昨年度の生産量は二百七万トンに相なつておるのであります。しかるに一方需要の方は、二百二十万トンという推定を下しましたが、実際はそれ以下にとどまつていると思うのであります。従つて一方における公団の手持ち、その他の供給によりまして、十二分に昨年の供給は行き渡つているとわれわれは考えております。河野氏の御意見は、輸出をしたために市価が上る、そうして農家が非常に焦躁感を持つて先物の買付をするという御意見でありますが、われわれはそれに対しては賛成しかねるのでありまして、要するにこの農家の焦躁感を持つた買付は、昨年朝鮮問題の勃発以来、ひとり肥料のみならずあらゆる商品がことごとく上昇一途の情勢をたどつたのであります。従つてこの他商品一齊の上昇先高という考え方から、当然肥料も上るであろうという一つの思惑的見解によつて買いつけた例が大部分であるという考えを、われわれは持つておりますとともに、事実すべての原材料等々も日に日に上つておりますから、コスト自体が相当上つておることも否定できないところの事実であります。そこで輸出をしたがために昨年の市価が上つたということは、どうしても御同意できないのみならず、むしろ非常に割高の輸出をいたしますことによつてメーカーの生産意欲を強くいたし、これによつて増産する。そうして増産することによつてコストが安くなつて来る。結局内地にはこの安くなつたコストによつて漸次安い供給ができるという可能性が初めて生れて来るのでありまして、もしこの際肥料の輸出は断じて不可だというような見解のもとにこれを押えますれば、当然メーカーの生産意欲は低下いたし、また同時に内部の改編、合理的な設備の更改等が不可能に相なつて、結論的には肥料の生産が減り、コストが高くなるということを憂えるものでありまして、今日までの経過並びに将来肥料のコストをできるだけ安くし、できるだけ農家に安い肥料を供給するという建前、もう一つは外貨を獲得しなければならぬ国家経済現状、さらにまた東南アジアは、現在日本が唯一の供給源であること、さらにそういう方面に大量の消費を必要としている事情等々を考慮いたした場合、どうしてもできる限り今後は増産を奨励いたしまして、そうして国内を充足した以上の余剰生産分は、引続き今後も輸出することが、国家的にとるべき道と考えております。
  98. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 私は政務次官と議論をする勇気はありません。あなたは相かわらず政談演説のようなことを言つている。朝鮮事変で物が上る、それを上らないようにするのが政府の政策なんであります。朝鮮事変で上る、それで国民が買うのだといつてそれを放つておくなら、政府なんていらない。かりに肥料も上るでしよう、生産費も上るでしよう。しかし上るうちにも幾らかでも農民の生産意欲をそがないように、農民の増産の妨げにならないように、肥料の市価を幾らかでも押えるということが政府の政策でなければならぬ。その場合あなたの方のやつた輸出をしたということは、朝鮮事変によつて値上りが来るのに拍車をかけ、油をかけたようなものだ。どう答弁されたとしてもだめだ。農民はりこうだ。政府は輸出のことに対してきわめて態度が不明瞭である。内地の農民さえも犠牲にして、とにかく輸出の美名に隠れて、外貨獲得の美名に隠れて、内地の農民の犠牲において政府は商売をしようとしておる。こういう政府の腹である。あなた方がいかにうまい答弁をされても、百姓の方がりこうですよ。今の政府がこういうことをやり出したから、政府の信頼というものがないから、この1年間、農家はわれ先に先にと、いたずらに先物を買つておる。そうでしよう。何も朝鮮事変で値が上るくらいのことはわかつておる、これを避けるべく、たとえば今あなたの言うごとく、行政の内部においても、繊維類の問題にしても、その他万般の通産省関係の物資にしても、あなたの方は朝鮮事変の影響をいかにして少くするか、世界の物価の値上りと同様に、日本だけが飛び抜けて値上げにならぬようにすることがあなたの仕事ではないですか。それをあなたは事肥料の問題になりますと、よそさまのようなことを言うておる。あなたはあなたの選挙区にお百姓さんがいないからそんなことを言うが、そんなわけには行かないですよ。あなたと私とがお月さんとすつぽんほど意見が違うことを議論してもむだですから、そんなことは暑いからやめます。そこで東畑さんに伺いますが、あなたは輸出を許可するとき非常に値段のことをやつたんだが、しりが抜けた。輸出の許可は農林省は通産省に同意する。但し市価があまりにこの輸出によつて影響を受けたときには、いつでもさしとめると言つた。ところがいまだにさしとめていないですよ。とうとう風船玉の糸が切れたように、あれよあれよという間に飛んで行つてしまつた。あなたはそういう条件をつけられたが、あなたはそういう条件をつけられる前に、おなかの中でどこが適正な価格だとお考えになつていたか。この適正な価格を教えてもらいたい。あなたは一体幾らか知つておるでしよう。まさか今の価格は適正だとは思つていらつしやらないでしよう。あなたはそういう条件をつけられたときに、その当時どういう腹づもりでそういう条件をつけられたか。どこが適正な価格であつたかということを、私は農林省当局よりも安本の方がいいと思いますが、これはどちらでもよいと思いますから、ひとつお聞かせください。
  99. 東畑四郎

    ○東畑説明員 私が条件をつけたというか、政府がきめたのでございますが、あの当時、輸出によつて不合理に市価が上ることは農民に相当の影響があるから、そのときには適当の措置を加えたい、実はこういう考えであつたのでございます。その当時われわれは、硫安製造業界の方に来ていただきまして、輸出によつて値を上げないでいただきたいということで、安本長官からお話をされたと思います。だからその当時は、もう二、三箇月前でありますけれども、輸出によつて値は上らないのであるというふうに実は考えておりました。最近肥料が値上りをいたしております。われわれの承知いたしておる数字では八百十一円というように記憶いたしております。それがいわゆるあの当時の不合理な輸出という問題にからんで—われわれとしましては、肥料の需要そのものは、河野さんもおつしやいましたように、天候あるいは農家の所得、いろいろな条件で、また市価そのものも現在自由でございますので、若干の変動をいたしたことは当然だと考えております。従来公団等はストツクを持つております。それを放出をいたしましてある程度調節いたしたのでありますけれども、公団のストツクがなくなりましたことと、さらに石炭その他の条件等がかわりましたために、需要等もかわりまして、若干上りつつあることは事実でございます。それが輸出によつてつたかどうかという問題になりますと、実は今後の推移、過去の推移等をもう少しよく検討いしましてお答を申し上げなければならぬ、こういうように実は考えております。
  100. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 お互いに良心的にやりましよう。役所の人も私は良心の持主であると思いますから、この間やつた輸出について、それがその後の市価に影響しなかつたということは考えていまい。それさえあなたの方が反省すればいい。私はあの当時あなたが言つた市価は、適正な市価とは思えない。あの当時は市価が七百五十円か六十円だつたと思いますが、その辺のところでございますか、それを伺います。
  101. 渡部伍良

    渡部説明員 その当時の市価は、大体安い地方で七百五十円、高い地方で七百八十円だと思つております。
  102. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 そうしますと、それ以後においての主たる値上りのフアクターは電力の問題、それからその他の問題がありますが、一体電気はガス法、電解法といろいろあるのでありましようけれども、大体平均してこの平均はちよつと無理かもしれませんが、もし無理ならば、電解法で平均一かます幾ら、ガス法で幾らと、大体どのくらいにこれを見ておられるか。
  103. 渡部伍良

    渡部説明員 値上りの要素としましては、春以来石炭の値上り、コークスの値上りが相当大幅になつております。石炭なんかは四千円のものが六千円ぐらいになつておる。それからコークスは六千円ぐらいなものが九千円ぐらいになつております。それも去年の暮れごろまでは、先ほどのお話で言えば、いわゆる買手市場であつたのが、朝鮮事変を契機として売手市場にかわつておるので、取引の条件ども非常にきつくなつておるというのが、最近までの値上りというか、メーカー側のコストが苦しいという意見であります。電気の値上りはまだ実施になつておりませんので、これは今後の問題になると思います。電気の大口の需用の詳細な料金の値上りは地区によつて違いますので、今検討中で、計算しないと出ませんので、はつきりしたことは申し上げられませんが、この間の新聞の発表でごらんのように、平均して三割一分ということになつております。たとえば九州の電気化学の例をとれば、単価が一円以下だつたものが一円六十銭となり、関東、中部ではそれほどの値上りはないという中間の報告を受けております。今しらみつぶしに工場別に需用契約の電力料金の値上りを検討しておりますので、今のところ大体その程度の値上り、大体硫安で電解法でいえば、三千七百キロワツト・アワーで計算をしていただけば、御了解がつくと思います。
  104. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 まだ電力の値上りは実施しておりませんけれども、すでに実施されたと同じように市価に反映して、それを売つておるのが現実であります。先ほど農政局長は八百十円とおつしやいましたが、私の知つている範囲では八百二十円以下はありません。それは末端ではない。製造会社が売るのが八百二十円から三十円であります。農家に行つたらどのくらいになるかということは、大体御想像つくでしよう。そこで輸出をする当時の標準価格が、あなたは七百六十円であるとか七百八十円であるとか言うが、私は七百六十円くらいだと思います。かりに八十円としても、今度電気が上つた場合に、直接電力費として一かます幾ら、価格のはね返り幾らということで、一体政府はどのくらいの価格が適正な価格であるかということは、それはあなたの方は統制しているのではありませんから、それによつて必ずしも原価が騰貴するわけではありませんけれども肥料行政をやつて行く上においてあなたの方にはものさしがなければならぬ。そこでしろうとわかりのするように、大づがみの数字でいいのですが一かますに三十円電気が響くのか、四十円響くのか、それとも二十五円響くのか、そこらのところをこれは何も言質をとるわけじやございません。大づかみにひとつ教えていただきたいのです。
  105. 原間新作

    ○原間説明員 ただいまの電力料金の値上げによる硫安のコスト高を大体検討してみますと、この電気料金の値上げの率というのは、電気料金の算定が非常に複雑なものになつておりますので、将来の電気料の普通料金による量の割当というものを幾ら割当てるかによつてまたかわりますけれども、本年度と大体同じ見当で、割当量が同じというようなことでかりに算定をいたしますと、硫安は大口の丙ということになりますので、高いところは四割、五割近い、安いところで二割あまりという値上率になつております。それでトン当りにいたしますと、電解法で千円近く上る、それから安いところは百何十円程度ということになります。従つて一俵について十円から四十円程度、大体そんな見当になるんじやないかと思います。
  106. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 今の大体平均二十五円か三十円と思いましたが、四十円が最高ということですが、私も大体そうじやないかと思います。それで私も井上さんも米価審議会の委員をしているのですが、あなたたちはよくむずかしい、むずかしいと言うが、お米の計算を一ぺんやつてごらんなさい。もつとむずかしいから……。そういうむずかしいものですけれども、石二千円から石二万円までの生産費を一本の七千何百円できめておる。そういう米価をきめるのは百姓に言わせると残酷ですよ。しかも非常に複雑です。こういうことをやつているのですから、むずかしい、むずかしいといつて、こまかく計算する技術者としての良心はわかりますけれども、あなたたちは技術者であると同時に、政治をやつている、行政をやつている。であるからこそよく農民経済や日本全体の経済をにらんでやつてもらわなければならない。いつもむずかしいむずかしいと言つて、われわれしろうとを八幡のやぶ知らずの中へ引つ張り込んでわからなくしてしまう。私はそんなことは聞きたくない。一かます幾らかということなんです。そうすると、大体私はわかりますからね。そこで東畑さんのおつしやるように、あの当時七百八十円だつた。その後における値上りのフアクターが電気とかそのほかいろいろあるが、それでもしめて五十円だつたということになる。そうすると、八百三十円が最高だということになりますね。そういうことに一体あなたの方のものさしを私ども拝見してよろしいのでございますか。
  107. 東畑四郎

    ○東畑説明員 どうも河野さんの専門的御意見で私はなはだ答弁に苦しむのでありますけれども、輸出することによつて値段が不合理に上るということは、これは私の方としてもまことに困る。国内的ないろいろな要素によりまして、自由市場においてある程度肥料が流れます場合には、思惑その他のいろいろの要素のために上りますことは、それはある意味における政策の欠陥だと考えますが、電力でありますとか、石炭でありますとか、いろんな要素によつて当然上つて来るものにつきましては、これは今日の段階において、われわれとしてはやむを得ないのじやないかというように実は考えておるのであります。それが一体どの程度であるか、こうなりますと、私自身まだはなはだしろうとでございまして、その辺の今後の価格の見通しなり、今までの分析等はいたしておりませんので、ここで責任を持つた答弁はいたしかねる次第であります。
  108. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 大事な問題でありますから、私はこの際特に指定いたしまして、化学局長の答弁を得たいと思います。
  109. 中村辰五郎

    中村説明員 今東畑局長からお話がございましたが、私も今の肥料の問題については非常に重要な問題でありまして就任早々でございますが、今の問題等についてはせつかくこれを検討中でございますので、明確な数字的な御答弁のできませんことは申訳ないと思いますが、大体におきまして農林省側の御説明の東畑さんと同様に、この問題を慎重に検討して参りたいと考えております。
  110. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 私はこの暑いのに、どうもお互いにいやなことを言つておるのはつまらぬ。もう現にあなた方御承知でしようが、全国の農家が先へ先へと買いあさつておる。何が原因かというと、さつき政務次官は朝鮮事変だと言つたが、朝鮮事変も少し看板が古くなつた。結局問題は電気の値上り、電気もすつかりもう看板が古くなつて来た。あとはあなたの方で輸出をするかしないかという問題なんだ。通産省の局長のところへも次官のところへも、そこいらのくだらないやつらが、輸出をしてくれ、輸出をしてくれとしきりに言うて来るでしよう。農林省へも行くでしよう。そういう連中があなたたちの顔色を見て、今度は輸出を許すかもしれないというようなことを地方へ行つて言う。地方では幾ら輸出ができるのだというようなことで、しよつちゆう輸出々々で市場を脅かしておる。この材量によつて農家が脅かされて、常に焦躁感にかられて先へ先へと走つておる。かわいそうじやないですか。だから私ははつきりしてもらいたい。私の方は政務次官と結論は同じだ。日本では肥料工業が輸出産業に最も適したものである。これを輸出工業に発展さして、そして外貨を獲得しなければならぬということは終局の理想なんですよ。しかしそこまで行く間に農民を犠牲にしちやいかぬ。これも一致しておるはずなんだ。現にこの一年間、何と政務次官がおつしやつたつて、どういうふうに抗弁されたつて、結果において農民の犠牲において肥料を輸出をしたということに間違いはない。これは議論じやない。事実の問題が物語つておる。先ほど申し上げましたように、過去一箇年の肥料は常に売手市場で三百六十五日を経過した。この事実が一番雄弁だ。こういうことをここでやられて、われわれ与党で今の政府の責任をわれわれが負うのは迷惑だ。であるからはつきりしてもらいたい、こう言う。そこで私は、大体あなたの方でこれは大いに慎重にやるということは、もう自分でわかつた。今までのような軽率のことはやらないということはわかつたが、そこで政務次官にひとつ、私は肥料の輸出の話をしないから、さつき農林大臣は肥料需給調整の問題で、需給調整は今度の臨時国会に扱うと言われたが、あなたは需給調整の問題についてお聞きになつておるかどうか、それについての御見解を、もしあつたら——私もあなたと同じように、自由党の党員だ、昨年の春から党議で決定しておる問題を、聞くだけやぼかもしれませんけれども、一度政務次官となると、またちよつと幾らかときどきかつこうがかわつて来るから、私は伺いたい。
  111. 首藤新八

    ○首藤説明員 需給調整法が現在取上げられていることは承知しております。アイデアとしては非常にけつこうだ、こういうふうに考えております。しかしながら内容をよほど慎重に検討いたしませんと、運営後にいろいろの欠陥を発見して、そのために運営が予想に反するというようなことに相なつては相ならぬと考えますので、慎重に現在検討しておりますが、まだこれに対して是非の結論を得るところまで参つていないことを申し上げておきます。
  112. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 私ももちろんアイデアの問題を言つているのであつて実施要綱その他の一条々々の問題を言つているのじやない。アイデアのことでも、党員であるから反対なわけはないのだが、ただこの際もう一ぺん農林省に伺うが、農林省なり安本なりはこのごろ需給調整説明を方々へ行つて民主的にやつておられるそうだが、正体が何だかだんだん改悪になつて来る、だんだん正体が消えて来る。しまいにはあまり方々へ行つてこずかれて通力がなくなつて来る。だから、あまり通力がなくならないうちに、私はほかの委員の方も希望だと思いますが、本日は時間がありませんから、明日でも今まで農林省の方で手元にできております需給調整法案についての大体の説明を本委員会に説明して、本委員会の意見を聞き、そうして本委員会の修正意見があるなら、本委員会の修正意見も十分尊重してもらいたい。われわれ国民の代表がここにおるのですから、国民の代表をさておいて、そこらここらでこずきまわしてへんなものにならないうちに、早くフレツシユなものを本委員会に明日説明してもらいたい。これを委員長から、政府要望していただいて、残余の質問は暑いから明日に譲ります。
  113. 千賀康治

    千賀委員長 明日は十時から再開をして今日は散会をしますが、念のため申し上げておきます。農林大臣も明日は出席をするはずです。ただいま河野君の質問にかかわる点も試案はできておる。自分の試案として聞いてくれるならば説明はできる範囲になつておるという話ですから、これも機会があれば聞きましよう。  それでは今日はこれをもつて散会いたします。     午後四時二十三分散会