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1951-05-31 第10回国会 衆議院 農林委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月三十一日(木曜日)     午後二時十八分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君       足立 篤郎君    宇野秀次郎君       遠藤 三郎君   小笠原八十美君       小淵 光平君    川西  清君       河野 謙三君    中馬 辰猪君       幡谷仙次郎君    原田 雪松君       平野 三郎君    足鹿  覺君  出席政府委員         農林事務官         (農政局長)  東畑 四郎君  委員外出席者         大蔵主計官   佐竹  浩君         農林事務官         (農政局農政課         長)      土屋 四郎君         農林事務官         (農政局農業保         險課長)    鵜川 益男君         專  門  員 難波 理平君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ————————————— 五月三十一日  委員原田雪松君及び小淵光平辞任につき、そ  の補欠として井手光治君及び足立篤郎君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員井手光治君及び越智茂辞任につき、その  補欠として原田雪松君及び小淵光平君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  家畜共済に関する件     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  家畜共済に関する件について調査を進めることにいたします。質問通告がございますので、これを許します。
  3. 足立篤郎

    足立(篤)委員 家畜共済掛金率改訂の件につきまして、農政局長にまずお伺いいたしたいと思います。  今回、六月一日から実施予定をもちまして、農林省が、家畜共済掛金率改訂について、すでに全国主任者会議を開いて内示をされたそうでありますが、その改訂すべき掛金率算定基礎等につきまして、農林省のお考えになつておる根本方針について、まず農政局長から承りたいと思います。
  4. 東畑四郎

    東畑政府委員 農林省といたしましては、先ほどの告示をもちまして、六月一日から共済掛金率改訂をいたす予定で、いろいろ作業をいたしておつたのでありますが、その作業根本方針といたしましては、過去四年間の事故という一つの係数をもちまして、新しい次の四年の掛金率算定根拠にいたしたいのでありますが、家畜共済制度昭和二十二年に改訂いたされました当時におきましては、まだ加入頭数等も少くて、これをとりますこと自身が若干疑問があつたために、二十三年、二十四年の、この二箇年の家畜につきましての事故を一応算定基準にいたしまして、将来のいろいろの家畜につきましての事故防止施設等も勘案いたしまして、それの八割というものに保険率を落しまして、ここで一定の数式によつてはじくという根本方針で、掛金基本率算定いたす、こういうことになつております。
  5. 千賀康治

    千賀委員長 この際、お諮りいたします。委員長は、本会議において委員長報告がありますので、遠藤君に委員長代理を願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 千賀康治

    千賀委員長 異議なしと認めます。それではどうどうぞ。     〔委員長退席遠藤委員長代理着席
  7. 足立篤郎

    足立(篤)委員 今農政局長からのお話によりますれば、家畜共済農業災害補償法によつて始められた二十二年度は、見るべき実績がないので、二十三年と二十四年の実績根拠にしておやりになつたという御答弁でございました。そこで私が非常に疑問に思いますのは、保險制度の建前からいたしますと、わずか二年間の実績でその基礎を定めるということは、きわめて冒険ではないかという気がいたすのであります。ことに三十三年の暮れに農業災害補償法がきまりまして、二十二年度というものはわずか三箇月しかない。仕事も始まつてない。各町村の組合等の設立に追われており、二十三年度に入りましても、まだこの仕事を継続しておりまして、寝際の面からいたしますと、ほとんど見るべき実績がなかつたのではないかと存ずるのであります。従つてほんとう実績として取上げるとすれば、わずか二十四年度一年の実績基礎にしておると言いましても、決して過言ではないと思うのであります。そう申しては失礼でありますが、この薄弱な基礎に立つて、この実績だけを尊重して、これを今後の四年間の掛金率算定基礎になさるということは、少し冒險ではないかという気がいたすのでありますが、これに対する農政局長のお考えを、この際はつきりと伺つておきたいと思います。
  8. 東畑四郎

    東畑政府委員 ただいまの足立さんのお話、まことにごもつともな点がございます。われわれといたしましても、実は過去の保險率から将来を予測いたしますので、過去の実態というものが、比較的将来の算定の科学的な甚礎になるということが、一番大事な点だと思います。ただ、家畜保険法施行以来四年ごとに料率改訂をいたして参つたのでありますけれども、いつも最新四箇年の率を基礎にして、なるたけ現実に近づけて将来を予測しておるのが例でございまして、農業災害補償法になりまして、今回が初めての四箇年の料率改訂でありますが、遺憾ながら時たまたま終戦以来の混乱期でありまして、事故率も実は過去と違いまして非常に変化をいたしております。二十五年そのものは非常な伝貧でありますとか、結核流感等異常災害がございまして、そういうもののために、それをとりましてもなおやはり事故が相当多いし、また資料そのものも、実は三年末のデータ等がまだ集まつていないために除いたのでありますが、二十四年度と比べてそう大きな事故の変更はないように推定をされます。従いまして二十三、三十四をとりましても、おつしやいますように二十四年が主体となつておるかと考えます。さてそれでは二十六年以後の推定をどうするかという問題につきましては、思惟的な予想というものはなるたけ避けて、やはり自然的な事故保険率そのものには優勢に出すということも一つ方法かと思いまして、実は静かにはじいたのです。ただこのはじいた結果は、これは畜産奨励なり将来の見通し等につきまして、いろいろ問題が起ると思います。そういう点につきましては、なおわれわれといたしましては十分検討を加えて参りたい、こういう試みでただいまやつておる次第であります。
  9. 足立篤郎

    足立(篤)委員 農政局長は非常によく了解解くださつているようで、意を強ういたしましたが、私が主張いたしたいと思いますことは、過去十年とか二十年とかいう長い期間実績基礎にしてやられますれば、各府県の被害率もある程度平均化されて参りまして、ある年においてある県で、突発的事故のために相当大きな被害が起つたといたしましても、長い間の実績をとりますれば、これは全国的にならされて来る結果になると思うのでありますが、わずか二十三年、二十四年、それも先ほど申し上げました通り、実際においては二十四年一年間の実績主体にたつておるわけであります。こういたしますと、二十四年度においてたまたま災害の多かつた県は、これが唯一の実績なりとして、非常に高い掛金率を設定され、そうして将来四年間にわたつて家畜を飼育している農民は非常に大きな負担をして行かなければ、家畜共済に加入することができないということは、いかにも不合理ではないかと考えるわけであります。農業災害補償法に基いて家畜共済が行われます前に、長い歴史を持つております家畜保険が行われておつたのでありますから、この実績は、過去のものであるとはいいながら、やはり長い期間実績としては大いに尊重すべきものがあろうかと思うのであります。そこでお伺いしたいのは、この尊重すべき材料がここにありながら、これを一顧だにせず、あえて二十三年、二十四年のわずかの期間に基いて、ここに新しい掛金率を設定しなければならないという、何か積極的な理由がおありかどうか、その点をはつきりとお伺いしたいと思います。
  10. 東畑四郎

    東畑政府委員 先ほど申し上げましたように、家畜保険の長い歴史の過程におきまして、事故率算定は、いつも最新の四年間をとりまして改訂をいたしておりましたものを、そのままここにとろうとしたところに問題があるのであります。将来の予想はなかなかむずかしい問題でありますが、その予想になるたけ科学的な、計数的な根拠を與えるということも大事であろうかと思います。何ゆえに過去二十年間をとることをやらなかつたか、あるいはやることについて何か障害があるか、こういうお話でございますが、別段そういう障害はございません。われわれといたしましては、事故率が減ること自体は非常に希望いたす点であります。事故率が滅らないにかかわらず掛金率を低くきめますと、結局共済組合連合会の配当なり赤字が、農民に対する支払いを遅延させるというようなこと等が、今後の問題になることをおそれまして、なるだけ近似的なものに持つて行きたいということが、こういう結果にたつたのでありますが、すでに長い歴史一つの趨勢というものもりつぱな客観的な事実であります。こういうものを具体的にどう参考にするかということが、なかなか研究問題だと思いますけれども、それはわれわれとして今まで気がつかなかつた点でありまして、こういう御意見等も十分考慮いたしまして、なお検討を進めて行きたいと思います。
  11. 足立篤郎

    足立(篤)委員 具体的にお伺いしたいのですが、二十三年度と二十四年度の実績によりまして、いろいろ起りました全国的な家畜事故理由についてお伺いしたいのです。まず伝染性のもの、つまり流感とかあるいは乳牛結核とか、馬の伝貧とかいうような伝染性理由に基く被害と、その他の自然発生的な事故によるものと——自然というか、通常起る事故というか、そういうものと大別して、どのような比率になるか、パーセンテージでもよろしゆうございます。これを両方合せたものを考えるとして、どういう割合になるかという点がおわかりかどうか、これは私がぜひ知りたいと考えるのは、さつき申しましたように、わずかな期間基礎としてやります場合に、全国的にならされておりませんので、非常な危険があると思うのであります。いわば伝染性のようなものは、たまたま二十四年度にある県に起つたといたしましても、今後四年間において、そういつた種類の被害全国のどこの県に起るかということはだれも予測できない。またその県に起るかもしれないし、起らないかもしれない。かような関係にあるにもかかわらず、たまたま二十三、二十四年度にそういう被害を受けた県が、その重荷を四年間背負つて行かなければならぬということは非常な負担であるのみならず、根本的にいつて不合理ではないかと思いますので、私の考えをもつてしますれば、今申し上げた伝染性被害につきましては、これはやはり全国で背負うなら背負う、これにつきましては、国庫補償という点もこの際考えに入れていただきまして、農家の経営安定、家畜増殖奨励という政策的な意味を含んで、農家負担を軽くしてもらいたいという希望を持つているのでありますが、それは別問題といたしましても、とりあえず算定基礎といたしましては、やはりこういつた国全体として背負うべきものは、国全体でプールして背負うというような方法で、今後掛金率算定してほしいという私個人の考えを持つているわけでありますから、その資料にいたしますために、今申し上げましたことについて、もし区わけがついておりますならば、実績について伺いたいと思います。
  12. 東畑四郎

    東畑政府委員 具体的に数字について申し上げますと、乳牛結核でございますが、昭和五年から二十四年までの平均で申しますと、被害率は〇・一一ということになります。二十四年度は〇五・九、一十三年度が〇・〇三ということにたつております。牛の流感でございますが、同じく平均で申しますと、〇・〇〇九五%となります。昭和三十四年が〇・〇三六、二十三年が〇・〇一であります。馬の伝貧でございますが、平均が〇・一五となつております。二十四年が〇・一二、二十三年が〇・〇八となつておりまして、二十四年はおつしやいますように若干この被害率が高くなつておりますが、これが異常であるかどうであるかといつた問題だと思いますが、全体のことについてちよつと保険課長から補足的な説明をいたすそうであります。
  13. 鵜川益男

    鵜川説明員 ただいまの御説明につけ加えまして申し上げます。それでは乳牛結核が、たとえば二十四年の〇・五九というものが、全体の事故率の山でどの程度パーセンテージを占めているかと申しますと、六・二〇九というのが全体のパーセンテージであります。そのうち〇・五九である。それからまた牛の流感につきましても同様の率を申し上げますと、一・七四三%の中の、ただいま局長が御説明申し上げました〇・〇三六であります。馬の伝貧につきましては、四・九八〇という事故率の中での〇・三一というような次第に相なつております。なお二十五年度の点は先ほど局長から申し上げました通り非常な激発を見ております。大体ただいままでの予想を御参考までにつけ加えておきますと、乳牛結核につきましては、さらに数字が上りまして〇・七一〇、牛の流感につきましては一・〇〇以上、馬の伝貧につきましては〇・六七六、かようなふうに二十五年度は非常に上つているという見込みをただいまのところ持つております。
  14. 足立篤郎

    足立(篤)委員 ただいまの数字の問題は一応おきまして、農林省算定されました掛金率で行きますと、保険としての収支の関係がどうなるか、その具体的な見積りと申しますか、もくろみと申しますか、この目的が主体になつて今回の改訂が行われるものと了解しますが、この点について少し詳しく御説明願いたいと思います。
  15. 東畑四郎

    東畑政府委員 従来の共済掛金率が、戦後いろいろな事故激発あるいは廃用掛金率の若干の食い違い等のために、相当共済組合連合会の再保険等にも赤字を生じまして、その赤字そのもの農家支払いを遅延させるということ等のために、農林省といたしましては、相当財政当同等にも御無理を願いまして、一時彌縫的な策でこれを切り拔けつつあることは御承知通りであると思います。従いましてわれわれは農家経済、日本の畜産奬励等を勘案いたしまして、共済掛金率はなるたけ低率に、しかも適正にしたいということは努めて念願いたすところでありますが、同時にそれが保険という一つ制度でありますので、なるため保險会計が、民間の組合におきましても、政府会計におきましても、赤字を出したくないというまた一方の念願がございます。それでわれわれといたしましては、これは戦後のいろいろな事故が非常に多くたつていること等もありまして、一応八割程度にこれを押えまして、それ自体事故防止の今後の努力ということで努めたいということによりまして、まずこれで参りますれば赤字が出ない形で経営ができるのではないかというような一応の心組みにおきまして、この案を今つくりつつあつたわけであります。従いまして、まだまだ具体的にこれで赤字がどうなるか、あるいは黒字になるのかというようなことになつて参りますと、今後の掛金率事故検討等によりまして確定いたすわけでありますので、一応案をつくります心組みは、赤字をなるたけ出したくない、こういうつもりでつくつている次第であります。
  16. 足立篤郎

    足立(篤)委員 大蔵省が見えていませんので非常に不満足ですが、農政局はつきりしたお考えを承りたいのです。全頭加入と申しますか義務加入と申しますか、この制度がきめられました際に、最低掛金半額国庫負担するということになつておりました。今回相当に率が上ると仮定いたしますと、この点は当然にかわつて来なければならないと思うのであります。もし現状通り一万円の共済金に対して保険掛金額が百五十円だとすると、その半額の七十五円を政府負担するということで行くといたしますれば、その七十五円は、従来は最低掛金率半額であつたわけでありますが、改訂になりました場合を考えますと、これは半額どころではない、三分の一にも二割にも落ちてしまうという結果になろうと思います。これではせつかくきめた方針の趣旨が全うできませんので、当然にスライドして国の助成金は増額さるべきだと確信いたしますが、これについて農林省は、今まで大蔵省といかなる折衝をされたか、またどういう決意でこれに当つておられるか、これを確かめたいと思います。  なお結論的に申し上げますと、先ほど来申し上げましたように、今度改訂しようとして準備された農林省掛金率改訂案は、私どもこの道に関係します者として納得かできませんので、その根本から改めていただく必要があると思つております。しかしながら告示の時期は明日に辿つております。告示期間をブランクにするわけには行きませんでしようが、なるべく急いでいただいて合理的な掛金率改訂をしていただいて、あらためて告示をしていただくことについて善処願えるかどうか、この機会はつきり承りまして、私の質問を終りたいと思います。
  17. 東畑四郎

    東畑政府委員 最低掛金率の問題でございますが、われわれといたしましては、掛金率改訂に伴いまして、これは足立さんのおつしやられますように、当然スライドすべきものであるというので、目下実は大蔵当局と事務的な折衝をいたしておりますが、ただいまのところまだ結論には達していないのであります。農林省といたしましては、強く大蔵省に要望することによつて、実質的な切下げを避けたいという熱意をもつて交渉いたしておることを御報告申し上げます。  それから実は六月一日に告示をいたすことに従来なつておつたりでありますが、われわれといたしましては、事務的に基本率の算出が遅れましたために、やつと六月一日の数日前に資料整つて、あわてて地方の主任官会議を開いたこと等の手続について若干疎漏な点等もございますし、十分打合せするときもなかつたために、この際一応六月一日の告示をとりやめまして、ここしばらく具体的な検討を進めた上で、さらに合理的な、適正な掛金率を組みたいという努力をいたしております。一応六月一日に改訂することをとりやめるからということをはつきりとこちらから申し上げておきます。
  18. 遠藤三郎

    遠藤委員長代理 足立委員に申し上げます。大蔵省佐竹主計官が間もなく来るそうでありますので、御承知願います。  なお原田委員から質疑の通告がありますので、これを許します。
  19. 原田雪松

    原田委員 今度この告示を出されることによりまして、全国養畜農民は非常に脅威を感ずるだろうということは、多分に想像ができるのであります。こんな重要なものをお出しになるのに、これを天くだり的に押しつけて納得が行くと当局考えておるかどうか。なおついでにお考きいたしたいことは、こういうことをやるのには、少くともこれは畜産行政に関連がありますので、畜産局並びに保険審議会等にかけてこの案をつくつたものであるかどうか、その点をお伺いしたい。
  20. 東畑四郎

    東畑政府委員 畜産局と事務的な連絡はもちろんいたしていると思いますけれども、畜産局長農政局長が話し合つておらないということは率直に認めざるを得ないのであります。また保険審議会等にかけなかつたことも事実でございます。従いまして、過去におけるいろいろな事務的な疎漏な点等につきまして、私非常に恐縮いたしております。六月一日の告示を一応やめました関係上、多少時間的の余裕がございますので、畜産当局並びに農業共済審議会等の御意見等もお聞きいたしまして、最後には政府責任で実行いたすようにいたしたいと考えております。
  21. 原田雪松

    原田委員 それではこの実施をいつごろからやられる見込みであるか、これも聞いておきたいのであります。元来この保險家畜そのもの対象でありますので、少くとも畜産局とのマツチかなければならないということは、今申し上げた通りであります。しかも現在全国家畜頭数は、ほとんど戰前にかわりない増加をいたしております。乳牛において十九万八千三百八十七頭、和牛において二百二十五万四千百四十八頭、馬において百七万千百二十二頭、緬羊において三十五万八千五百三十頭、やぎにおいて四十一万三千二百六十頭、豚において六十万七千五百七十五頭、兎において百四十五万九百七十八、鶏千六百五十四万五千二百十羽、これくらいな頭数がある。これが結局保険対象にならなければならぬが、現在のところは危険率のない牛馬を対象としている。そういたしますと、なるべく損目のないものを保険にかけようというねらい等も一応うかがわれるのでありますが、将来はどうしても中小動物まで手を染めてもらわねばならぬということが、私の希望とするところであります。こんなふうで全頭加入の道まで持つて行かれた今日、一部分には非常に喜んでこれを歓迎している向きがある。しかもそういう際に非常に発病率の多かつたところの昨年の流感のごとき、あるいは結核伝貧のごとき、そういうところが、まだその上に負担をかぶらなければならぬということは、まことに矛盾きわまる話であると思います。疾病が発生いたしました当時は、いずれの農家も非常な負担を甘受している。甘受してこれでよかつたというようなときに、息つくひまもなく懲罰的なこの掛金を、倍にも三倍にもするということは、私は納得が行かない。何といつて養畜農民の側から見まして、不当きわまるやり方だと考えておるので、どうかこの点は大蔵省との関係もありましようが、全頭加入でここまで進んで来たこの家畜保険事業を、もう少し親心をもつてつてもらいたい。おそらくこの後は脱退その他でもつて、この制度を喜ぶような者はなくなつてしまうのではないか、私はさように考える。そういう意味において、この後どういうふうなことによつて、加入する者が喜んでこれにくつついて来るような方法をとつておられるか、また将来の考えはどうか、その点を一応伺いたいと思います。
  22. 東畑四郎

    東畑政府委員 終戦事故率が非常に多うございまして、従つて事故率が多いこと自体共済掛金率を多からしめる。共済掛金率が多くなること自体家畜共済そのものに対する農民負担となり、農家経済を圧迫するという一つの悪循環の現象が生じます。するとまた逆選択等との悪い結果になることも十分私は承知いたしております。ただ共済保險は同時に保険でございますので共済組合連合会なり、特別会計が初めから赤字を出すという形においては、これはまた制度自体がなかなか成り立ちにくい問題でありますのでわれわれといたしましても、事務的に説明のつく限り今後検討を加えまして掛金率合理化に十分努めたいと思いますが、畜産全体としての奨励なり、あるいは農家負担という問題になりますと、ある限度を越えますと掛金率なり、あるいは危険率という自然的な率以外の問題が派生して参りますので、こういう方面等考え方などにつきましては、また畜産当局とも十分連絡をいたしまして、ある程度の解決をはかりたいと実は思つております。なお六月一日に解決いたしません場合でも、われわれとしても、なるべく早く適正な率の改正をいたしまして、政府責任でなるたけ早い機会にこれを告示できる段取りにいたしたいと努力いたしておりますから、ここしばらくお待ちを願いたいと考えております。
  23. 原田雪松

    原田委員 それでは重ねてお尋ね申し上げます。この掛金を増すということよりも機構の問題でありますが、この農事災害補償法による部分のうちで、家畜保険共済でありますが、これをやつたために社会的にどんな影響を及ぼしておるかということを、御承知であるかどうか。これはもちろん一昨年来からいろいろな問題になつておるのでございますが、診療というものを保険事業の中に含んでやるために、ほとんどの開業獣医師が生活の脅威に追い込まれているのに、政府はこの診療を漸次ふやして行こうとする意図があるのかどうか。現在でももうたくさんだという考え方を非常に持つておる。しかも獣医師というのは一つ自由業である。今現に叫ばれておるところの医薬分業のごときも、自分の職域を守るためにいろいろな相剋摩擦を起こしてるのでありますが、しかもなお社会的地位を確保し得ないように、開業獣医師を圧迫するような法律を持つてつて、これを今後も続けて行くつもりであるかどうか。まことにこれは問題であると私は考えるのであります。全国獣医師の数は一万六千八百九人おります。しかも開業獣医師は現在四千四百三十九名おるのであります。それで国家公務員が九百三十一名、都道府県の職長が四千百九十二人、町村職員に三百八十人、団体職員に三千六百三十七人、その他が獣医に従事するとか、防疫に従事するということになつておるのでありますが、この約五千人に近い開業獣医師は非常に脅威をこうむつておる。この上に診療所をふやして、しかもその間には大なる相剋摩擦が起つていろいろ騒動しておることは、すでに当局も御承知である。この点につきましては、日本獣医師会なりあるいはその他の畜産団体なりが、中に入つて調整をいろいろやつておるのでありますが、今なおその点がすつきりいたしません。ますますできるところの施設は、やはり自由業開業獣医師を圧迫しております。そういう面から、この点には強く反対するのではないかと私は想像しております。もちろん私はその職の一員としてまだ別に陳情を受けてはおりませんが、これを聞くならば、必ず全国をあけての紛糾を来すことは、火を見るよりも明らかであると私は信ずるのであります。この問題については、そういう点から診療所をまだ増すような計画があるように聞いておるが、はたしてどうであるか。その点を一応お伺いしたい。
  24. 東畑四郎

    東畑政府委員 家畜事故防止ということについては、われわれとしても大いに努めなければなりませんし、そのこと自体がまた共済掛金率そのものを低くすることにもなりますので、家畜事故防止そのものは、政府としてもやつて行きたいという考えは持つておりますが、われわれといたしましては、共済組合診療所をつくることによつて開業獣医師さんの自由業を圧迫するという考えは実は毛頭ございません。そういう診療所をつくることによつて農民家畜の疾病について早期に治療したり、診断を求めるということの普及がますます行われたり、あるいは獣医師さんのいないような村等におきましても、なるほど家畜診療を早期にしてもらえば、非常に事故が少くなるということがよくわかる。私たちとしても、むしろそういう奨励的な意味考えておるのであります。そのこと自体がまた一般の開業獣医師さんに対する事故防止のための訓練になり、また農民に対する訓練にもなる。農民自体もまた開業獣医師さんの方に出かける回数を多くして、全体として畜産事故防止なり、危險率が少くなつて行くということになることが望ましいのであります。たまたま末端において、一応開業獣医師さんを圧迫するような言動等が個人的にあつた場合に、非常に問題になつておるようでありますけれども、中央といたしましては決してそういう考えは持つておらないのでありまして、むしろ開業獣医師さん全体が家畜共済がうまく行くように、事故防止のために一丸となつてお働き願いたいということを実はお願いいたしておるのであります。診療そのものを急にふやして獣医師を圧迫するというような考えは、農政局としても毛頭持つておらないことをはつきり申し上げたいと存じます。
  25. 原田雪松

    原田委員 御説明はまことにけつこうな御説明でありますが、事実は非常に相反しておる。しかも昨年は開業獣医師の協力がなければ、全頭加入の治療というものが完全でないという意味から、全国でほとんど四千名が嘱託として、この診療獣医師さんに協力いたしております。ところがだんだんこれがばけの皮がはがれて、そうして相剋摩擦をふやしておる。特にひどいのは、ここに書いてありますが佐賀県、新潟県、愛知県のごときは最もひどい、かつてない状態です。あなた方から来る報告はうそである。事実はまつたく異なつておる。しかも診療所をこしらえる場合は、なるべく農村の喜ぶ無医村に持つてつてこしらえようというのが一昨年来の当局説明であつた。事実はそうではない。最も開業獣医師の繁昌するところへ、最も対象としての家畜の優秀な部落に持つてつてこれをこしらえる。しかもその任命も、付近の者を持つて来れば事足りるのを、わざわざ若い者をよそから持つて来てそこにすえる。それでどうしてその間の相剋摩擦が起らないということが言えますか。むしろそこにおる開業獣医師が嘱託として協力するならば、そういう者に交代でそこの出張所でも何でも担当させて、なごやかな気分で地方の開発に従事するというならば納得ができるが、そうでなく、ただ学校を出たばかりの口ぱしの青い者を連れて来て、そこの所長などにすえつけるから、相剋摩擦が起ることは当然である。しかも死亡廃用においては最もそれが顕著に現われておる。保険赤字というのは、死亡廃用が多過ぎるから、そういうことになる。それを技術か未熟で経験がない者を雇つている、そこに隘路の大きなものがある。私は事実を知つておる。しかも役人根性を出して、ちようど何か役人のような気持ちになつて、人を見下げて、開業獣医を卑下するような、いかにも素養の足りない者を採用しておる。そういうことが摩擦の原因になつておる。しかも技術がまずいためだけでなくてこれは死亡させなくてもいいものを死亡させている。しかも廃用というようなことは、もう少し治療に経験があつて、もう少しその経験を注ぎ込んでやれば、場合によつては直るものを、もううるさいからこれは屠場はまわそうじやないかということでやつている実例が幾らもある。ひどいものになると、屠場に渡すものをその間にへんな契約をして、幾らか手数料をとつている者がたくさんある。そういうことで正しい行政と言えるかどうか。これは課長なり局長は御存じありません。しかし課長は熊本におられたから、多少知つておられると思うが、そういうことをしいて平気で言われるところに、あなたの認識不足がある。その点についてどうお考えになるか、もう一度承りたい。
  26. 東畑四郎

    東畑政府委員 開業獣医師さんといい、診療所の獣医師さんといい、りつぱな獣医さんそのもの農民が一番つき、治療を受けるということは当然でございます。実は私新任早々でございまして、根本考え方というものにつきましては、前局長からも承りましたし、また課長からも承りまして、私はその方針で実は進んでおるのであります。末端における一々のことにつきましては、実はまだ勉強が足りませんので、はなはだかつてなことを申したようでありますけれども、中央の考え方といたしましては、開業獣医師さんを圧迫するような考え方は毛頭ございません。なお具体的な事例等につきまして指導監督等不行届の点がありましたならば、私としても今後十分注意いたして参りたいと思つております。
  27. 原田雪松

    原田委員 この上とも診療所をふやす意思があるかどうか、これは重大な問題でありますから、率直にお答え願いたいと思います。  なお災害補償法に関することでありますが、私はいつかもこういうことを叫んだことがあります。動物と植物を一緒にする保険ということは、これは定義の上から言つてもどうも感違いしているのではないかと思う。つまり、農作物と家畜を一緒にして入れるということは、根本的な間違いである。こういうことをやつておられるのでありますが、結果においては、災害補償の方は、家畜が入つたために非常に赤字を出して困るというような声が最近あるようであります。保険自体もそうである。政府自体もそうである。農作物と動物とはおのずから趣を異にしているのであるから、むしろ百尺竿頭一歩を進めて、これを切り離して、昔のように畜産局の中に保険課というものをつくつてやることがいいのではないかと思う。農作物保険その他に非常に専念なさる方々は、あまり知りもしない保険事業をやつて苦労するよりも、むしろ専門家の方に移して持つて行くことがいいと思うが、そういう考え局長は持つておられるかどうか、これを承りたい。
  28. 東畑四郎

    東畑政府委員 第一の御質問であります診療所の問題でございますが、政府としてはこれを拡充するという考えは実は持つておりませんが、診療所等で整備できるところは今後ともなお整備いたしたいと思います。しかし開業獣医師さんを圧迫するような形において新しくふやすということは、政府としてはやりたくないと思つておりますので、御了承願いたいと思います。  それから、家畜保険というものを農業災害補償法から独立さして、別個にして、畜産局の中に家畜保険課というものをつくつたらどうか、昔の制度に帰つた方がいいじやないかというお考えでございますが、実はそういう問題につきましては、私から答弁することもどうかと思います。現実に農業災害補償法という單独の法律がございますので、農政局長としてはそれを実行しておるのであります。これはそういう根本問題でありますから、きようは実は私から答弁いたすのはいかがかと思いますので、御遠慮いたします。
  29. 遠藤三郎

    遠藤委員長代理 なおここでちよつと申し上げますが、大蔵省佐竹主計官が出席しました。佐竹主計官は三時半ごろにGHQに行かなければならない用事があるそうでありますから、そのおつもので御質問願います。
  30. 原田雪松

    原田委員 掛金の問題でありますが、この点につきましては私の同僚の委員から御質問がありましたので、私もよく承知いたしておりますが、しかもなお不安定なものをこういうことによつて掛金を増すということは、先ほども申し上げましたように、非常に農村が負担に苦しんでおるのであります。しかも経済的に行き詰まつている今日、かかることをやることは絶対にわれわれは反対である。その中で、家畜伝染病予防法によるところのいろいろの政府補償の裏づけをやつておるのでありますが、そういうものを勘案してこの中にはデータに入れておるかどうか。御承知通り結核に対しての処分に関するところの処置もちやんとはつきりいたしております。伝貧の方は一万頭以内でありますけれども、実際これを厳密に言う場合は、日本におるところの百九万頭くらいの馬の一割は、必ず伝貧馬がおるということは想像にかたくないと私は思う。この伝貧等にかかつたものは、政府みずからが伝染病予防法によつて補償してやるということが保険の上にはプラスになるのだが、そういうことも考えてこのデータを出しておるかどうか、その点をお伺いしたい。
  31. 東畑四郎

    東畑政府委員 今回の家畜伝貧の手当金の増加につきましては、われわれが今回つくりました危険率算定の中に織り込んでおるのであります。
  32. 原田雪松

    原田委員 流感の方はどうですか。
  33. 東畑四郎

    東畑政府委員 伝染性貧血だけを織り込んでおります。
  34. 足立篤郎

    足立(篤)委員 佐竹主計官が見えましたので、簡単に大蔵省のお考えをお聞きしたいのでありますが、この家畜共済は、過去三箇年間の実績によりますと、四億何がしかの赤字を出している。そのために支払いが滞つて、各府県の連合会も困るし、政府も困るというお考えはよくわかるのでありますが、この際大蔵省はつきり申し上げておきたいと思うことは、これは農業経営の安定あるいは家畜増殖奨励という大きな国家的な政策的な意味合いを持つたものでありまして、営利事業ならばいざ知らず、長い間において一ぱい一ぱいやればよいという国家的な制度でございますから、三年間やつて四億何がしかの赤字を出したといつても、驚くに足りないと思うのであります。こういう際こそ大蔵省は金融の道を講ずるなり、基金の設定をするなり、国家的な政策的な意味合いの裏づけをなさるように、積極的に援助されてしかるべきだと私どもは考えるのでありまして、この赤字の処理の問題、あるいは今回掛金率改訂しなければならないという現実の場面にぶつかつているわけでありますが、私が今申し上げました点について、大蔵省はどのようにお考えになつておられるか、その根本的なお考えを伺いたいと思います。
  35. 佐竹浩

    佐竹説明員 ただいまの足立委員のお言葉まことにごもつともだと存じますが、大蔵省といたしましても、農業保険関係支払いを円滑にいたしますために、御承知通り二十六年度予算におきましては、三十五億円の基金の組入れを一般会計から行つておるわけであります。そこでこの家畜関係において、今日まで出ております赤字は、今お話通り四億程度に上つておるわけです。この四億の赤字をどういう形で処理するかという点については、二つの考え方があるわけであります。一つ保険会計の内部でこれを解決する。すなわち料率の中に織り込みまして、長期にわたつて回収するという方法もございますし、一つには財政負担で一気にこれを補填する。こういう二つの考え方があると思うのでありますが、今日まだこの処理についてはつまりした結論はついておりません。おりませんけれども、二十三年以来の差引勘定の実績を見て参りますと、ただいまの足立委員お話のごとく、もちろん社会的な考えも織り込まねばならぬことも重々承知しておるのでありますが、保險の収支に現われましたバランスに、あまりにも大きな開きがありまして、このままで参りますと、保險を設けた制度根本が崩れるのではないかという心配さえも実はございますので、何とかこの際、もちろん長期にわたつて観察をしなければならぬことはおつしやる通りでございますが、あまりに開き過ぎておりますこの掛金支払いとの関係をできるだけ近づけたい、こういうことを今日考えておるわけでございます。ただいま申し上げましたように、これはもちろん長期にわたつて見なければならぬものでございますから、二箇年間ないしは三箇年間に出た赤字のために、すぐどうこうという問題はもちろんないわけでございますけれども、何分にもその差が激し過ぎるのでありまして、これはどうしてもある程度の調整を必要とする。但し二十五年度のごとき、牛の結核でありますとか、あるいは流感でありますとかいうことのために、非常に異常な事故が出ております。こういうものは、いわゆる通常的な事故に比べまして著しい事故でありますために、これまでも考えて全部料率に織り込むことは無理だと思います。今日農林省から提示されております案にも、二十五年中のそういつた異常な事故に対しては、この料率の中には織り込んで考えてはおられないはずでございます。
  36. 足立篤郎

    足立(篤)委員 掛金率改訂いたしますと、かねて方針がきめられております義務加入の面に対する国庫半額助成というものが、最低加入額の半額でなくなつて来るわけです。かりに三倍に上るとすれば、現在一万円を最低ということにきめて、その平均掛金額百五十円の半額七十五円国庫負担という平均で押えて考えておるわけですが、かりに七十五円政府が助成いたしましても、まつたく燒石に水と申しますか、これによつて家畜の奬励対策として政府がおやりになる政策的な意味合いは、きわめて薄くなつて来ると考えざるを得ない。せつかくここにいい一つ基礎をつくられたのでありますから、大蔵省もこの際先ほど来私が申し上げましたような意味合いを十分おくみとりいただいて、佐竹さん、内部で御奮闘願つて、ぜひともこれをスライドして、新しく改められるところの掛金率に基いて、やはり一万円なら一万円に対して最低加入額の半額政府が助成するという線で、この際補正予算あるいは二十七年度の予算に組み入れていただきたいということを、私は強く御希望申し上げるわけでありますが、これに対して佐竹主計官の御決心を伺いたいと思います。
  37. 佐竹浩

    佐竹説明員 御趣旨まことにごもつともと存じます。何分にもこれを改訂いたしますと、大体概算でございますが、年度内に約三億五千万円程度一般会計負担が増加を来すわけであります。なお次年度以降におきましてこれを平年化いたしますと、大体四億程度の漸増になるかと思います。今後の補正予算の編成にあたりまして、全般的な歳入歳出のバランスを見ました上で、これはいずれ決定されることと存じますが、今日の段階におきましては、ただちにこれを訂正せよというお話に対しましては、はつきりしたことを申し上げかねるのであります。まことに残念でございますが、なお十分に検討をいたしたい、こういう話を率直に申し上げます。     〔遠藤委員長代理退席、委員長着席〕
  38. 足立篤郎

    足立(篤)委員 佐竹さんの政治的な御答弁はどうもおそれいりますが、御検討なさるということではわれわれ承知できません。せつかく農村保護政策としていいことをおきめになつた。このいいことをあくまで堅持して全うされることは、この道を御担当になつておられる佐竹主計官の使命ではないかと私は考える、われわれ国会関係も、この線に向つてはだれも御異存はないわけであります。双手をあげて御後援申し上げる。もしかりにこれがスライドしないということでは、われわれ全農民に対して申訳が立ちません。われわれはいかなる改訂についても、絶対に反対をする決意であります。どうかその点をおくみとりを願いまして、御推進願うことを強く要望する次第であります。
  39. 遠藤三郎

    遠藤委員 私は今回の家畜共済掛金率改訂に関しまして、私の意見をここで申し上げておきたいと思うのであります。それはこの改訂率の定額表を見ておりますと、従来の掛金に対してあるものは三倍になり、またあるものは四倍になり、極端なものになりますと、五倍にもなつております。一挙に五倍ないし七倍の値上げをする、こういう問題にぶつかつておるわけであります。しかも一方農村の実情を見ますと、畜産農民は非常に経済的に窮迫をしておりまして、これは御承知でありましようけれども、飼料の値段は非常に高くなるし、しかも畜産物の値段はちつとも上らない。その間に板ばさみになりまして、畜産経済は現在破綻に瀕しております。その矢先に突如として三倍ないし五倍あるいはものによつては七倍の掛金の値上げをして行く、こういうことになりますと、畜産農民から見ますと、これはもう大事件であります。むしろこの共済制度そのもの根本をゆすぶるような事件だと思うのでありまして、これは簡單にただ計算をして、こういう数字が出て来たというようなことで結論を出すにはあまりに重大な問題だと私は思います。そこで私は願わくはこの料金がかくのごとく突如として上るようなことにならないように、現在の畜産経済の事情を見て、もちろん損害の事情も検討する必要がありましようけれども、可能の限度においてこの問題を措置しなければ、実際はこの共済制度そのものをゆすぶつてしまうような結果になつて行くのではないか、このことをおそれるものであります。先ほど同僚の各委員からいろいろ質問がありまして、農政局長からそれぞれ回答がありましたが、どうかこの点については根本的に検討されまして、そうして無理のない、農民がなるほどと納得のできるような線でこの問題の收拾をしていただきたい。ある場合においては、相当政府負担をしなければならぬという結論が出し来るかもしれぬと思います。これはまた政府負担をすることは当然だと私ども思います。そこで政府の財政とのにらみ合いもありましようが、特に畜産経済というものをよく考えて、この制度が将来円滑に運用できるように願いたい。この制度そのものは実によい制度であり、この共済制度農民のために非常に喜ばれる制度でありますが、今回の改訂によりまして、むしろ怨嗟の声を放たれるような結果になることを私どもはおそれるのでありまして、どうかその点を十分に御検討つて、無理のない制度にしていただきますように、特にこの際要望を申し上げておく次第であります。
  40. 東畑四郎

    東畑政府委員 遠藤さんは私に御質問でありますが、私たちも共済制度そのものを決してこわしたくない、これを守りたいと思うのでありますが、掛金率が非常に低い場合には、そのこと自体赤字を現出して、それがはね返つて農家にも迷惑をかけ、共済制度そのものも危殆ならしめるし、またこれが非常に高い場合におきましては、遠藤さんの御意見の通り、共済制度がまた崩壞するという相矛盾した現象を実は呈するのであります。その間に処しまして、最も適正なる掛金率をどう生み出すかという問題は、一つの前提なら前提に基くケースの算式の問題という非常に技術的な問題になると思います。畜産そのものの振興という一つの政策的な意図と、保險という冷やかな、経理的な計算というものをどう調整するかということに、われわれとしては非常に苦慮いたしておるわけでございます。御意見十分ごしんしやくいたしまして、いい妥結点を見出したいと考えております。
  41. 遠藤三郎

    遠藤委員 ただいま農政局長から非常にまじめな御回答を得まして敬意を表する次第であります。第一に、大蔵省関係の主計官がおいででありますから、主計官にお願いしておきたいのであります。今日財政状況が非常に苦しいことはよくわかります。政府が予算について非常に苦んでおられることもよくわかるのでありますが、農村の実際としまして、農業共済の施設は、最も端的に農民経済に響く施設であります。私どもこの農業共済制度がますます充実されまして、農民が漏れなくこの共済制度の恩惠に浴することがでできようになることをひたすら念願しておるものであります。財政の多小の負担を恐れないで、どうか思い切つてこの制度を守らるべきである。大蔵省としても一はだ脱いでいただきたい、特にこの際お願いしておきたいと思うのであります。
  42. 原田雪松

    原田委員 本年のいろいろな計画から見ますと、診療所の獸医が月給制度になつておるのであります。大体予算を見ますと、一月一万円というようなことになつておるようであります。今日一万円の俸給だけでは、その診療に従事する獣医の生活安定は、おそらく私ははかられないと思うのであります。そうすると、いろいろな兼任を認めるか、何かの兼職を認めるかということになると思いますが、その点についてはどうお考えになりますか。
  43. 東畑四郎

    東畑政府委員 現在の診療所の獸医さんは、連合会の負担で雇つております。ただいまのお話では、獸医さんが生活が苦しいために、いろいろ内職的なことをするということのようにお伺いしましたが、われわれとしましては、診療所の獸医さんがもつぱら獣医本来の職業なりその診療所に勤めているという資格において仕事に專念していただく。よけいな仕事の方に口を出しまして、よけいな摩擦を起すというようなことは決して希望しておりません。
  44. 原田雪松

    原田委員 今のお話は、専任でなく嘱託ということにみなしてよろしいわけでありますか。
  45. 東畑四郎

    東畑政府委員 なるべく開業獣医さんを嘱託にいたしまして、治療、診療をねらつている府県もあるということを聞いております。またそういう府県が円満に行つておるということも十分承知しておりますが、中央といたしましては、まだこれを根本的にどうするというところまで討議をいたしておりませんので、もう少しよくその点は私どもの方で畜産局等ともお打合せいたしまして、はつきりした態度、方針をきめて参りたいと考えております。
  46. 原田雪松

    原田委員 畜産局とお打合せになるということはまことにけつこうでありますが、これは職分の関係がありますので、畜産局農政局だけでは民主的でないと思う。おそらくこれにタツチするところの関係の最も深い獣医師協会、これが皆さん方の原動力となりますので、こういう団体と和気あいあいのうちに協調いたされまして、そうして本法の施行の上に何ら支障のないようにやられることを望むのであります。どうしても今までのような行き方では、その点がしつくり行かなくて、常に摩擦を生ずるのであります。また先ほど申し上げました全頭加入と申しましても、まだその半分も加入しておりません。こういうふうでありまして、まだ前途はきわめて遼遠だと思います。なお対象家畜というものは、先ほど申し上げました通り、ほとんど牛馬を主体にしている。そのほかめん羊、豚まで入つておりますけれども、やはり畜産行政というものは、どうしても中動物まで保險対象にしなければ、日本の農業復興の成果は期せられないものと考えます。どうかそういう点までわくを広げられて、対象家畜の種類を増すということに持つて行かれることがよろしいと思いますけれども、どういうお考えを持つておられるか。この際もう一ぺん伺つておきたい
  47. 東畑四郎

    東畑政府委員 畜産局と打合せする場合において、日本獣医師協全等の意見を十分聞いたらどうかということは、まことにごもつともだと考えます。診療所の獣医さんももちろん日本獣医師協会の会員であります以上、会のいろいろなことについては当然従うことになると思います。われわれといたしましても、日本獣医師協会の方とも十分お打合せいたしまして、つまらない誤解なりつまらない摩擦というものは絶対避けるべきであると考えますし、またそう実行いたしたいと考えております。  なお保険共済に入れまする家畜の種類等を、もう少しふやしてはどうかという問題でございますが、現在牛馬その他の家畜が加入いたしまして、現実は非常な赤字という問題で苦んでおるのであります。共済組合連合会赤字は、ある意味においては農家にそれだけの金が入ることによつて畜産に効果があつたのではないか、こう思つております。新しい動物等の加入については、現在の能力あるいは危険の度合い等をもう少しよく計数的、あるいは畜産政策上の考慮をいたしまして、愼重に検討をいたさねばならぬ点が多多あると思うのであります。今日ここで新しいものをふやすということは、なかなか申し上げにくいのでありますけれども、家畜共済本来の政策では、なるたけそういう動物等を共済組合にかけて、農家負担を軽くして事故を防止することが理想でございますので、もう少しよく研究をいたしたい、こういうように考えます。
  48. 足立篤郎

    足立(篤)委員 先日農林省が各府県の主任者をお集めになつて内示された掛金率改訂案を見ますと、先ほど来申し上げた通り、各府県の掛金率が非常に高低がはなはだしくて、実際的に見ますと、実行の可能性かないという問題と、もう一つ先ほど申し落しましたけれども、種別によつては各郡まで農林省で直接に掛金の率をきめられるような方針のように承知いたしますが、これは私の考えをもつてしますれば、非常にやり過ぎではないかと思うのでありまして、各県にはやはり担当の主任がおりますし、所管の課もきまつておりますし、連合会も直接携わつているわけであります。各府県の危険率に従つて掛金率算定されるということは、これは農林省としても当然のことと思いますが、各部までこまかい率をおきめになつて、天くだり的に押しつけられるということは、各府県の立場から申しますと、そこに無理が生じて来る。しかも農林省告示とあれば従わなければならないという、非常に困つた問題が起つて来るのであります。そこまでどうしてもきめなければならぬということならば、事前に十分打合わされて、各府県における地方的た特殊性あるいは家畜共済制度の今後の発展という政策的な意味も十分含めて談合の上、おきめ願うのが妥当ではないかと思うのであります。今日のお話では、十分再検討を加えて妥当な掛金率の設定に努力するという誠意ある農政局長お話でございますが、この面についてもお考え直しを願えるかどうか、そのやり方について特に愼重にお願いいたしたいと存じますので、この点をもう一度確かめたいと存じます。
  49. 東畑四郎

    東畑政府委員 農業災害補償制度危険率をきめます場合に、地域的にきめるようになつていることは御承知通りでございます。それで一般の牛馬等におきましても、郡単位等できめて内示いたしましたことも事実でございますが、県全体の連合会あるいは再保険全体の趣旨等から言いますと、ある一定の危険率に加重平均いたしますと、いわゆる健全な赤字は吸収できる形の危険率平均で出るわけでありますけれども、また農民の立場から考えますと、事故の非常に少い郡なり、あるいは事故の多い郡というようなものは、国そのもの責任をもちまして、なるたけこまかく危険率算定しまして、国が責任をもつてきめるということ自体も、ある意味におきまして、その郡における農家そのものの保護にもなるという考え方から、ある地域、物によつては県単位の地域もありますし、一般に牛馬のことごと郡單位的な地域を政府がきめたところのものもありますが、ある地域によつて危険率を定めること自体が、その地帶における農民のためでもおると考えていたした次第でございます。その危険率算定の結果が、たまたま郡を境にする村等におきまして非常に事故率が違うという場合におきまして、連合会全体としての赤黒は別といたしまして、加入を勤めたり、事務をとる場合に若干支障があるということも、これまたよくわかることでございます。そういう郡単位等についてある程度事故率が違うという点はお認め願わなければならぬと思います。その間に天くだり的にやること自体は決していいことではありませんので、なおこの点につきましても、われわれとしまして、なるたけこれをひどい乱高下のない形にどうしてやるかということについて、やはり保險数学の問題とその前提の問題等について、私自身が実は今なやんでいるのであります、そこの検討を実は今進めたいと思つております。
  50. 足立篤郎

    足立(篤)委員 ただいまの農政局長の御答弁の趣旨はよくわかります。しかし実際に御計画なすつた内容を見ますと、全部が全部郡単位まで下げているのではない。あるものは県単位、あるものは郡にまでつつ込んで、率をおきめになつているということは、今の論旨に反すると思う。全部やるなら、これは了解できます。そこで私はまだ時期尚早だと思う。まだ材料をとるといつても、二十三、二十四年しかない。その際何を無理をして冒険をされるか、このお気持がわからない。ですから、最も危險率の多い乳牛等については府県単位でおやりになり、役馬等について郡までつつ込んで、悪く言えば官僚的、独裁的、天くだり的におきめ願わなくてもけつこうやつて行けるのではないかというように考えられる。ですから、この際私は一応府県の掛金率というものをおきめ願つて、それを下へおろす場合には、農林省の了解を得て府県がきめるという程度でいいのではないかというふうに考えます。これについてひとつ農政局長の英断的な御回答をいただきたい。
  51. 東畑四郎

    東畑政府委員 乳牛等は頭数等も少いために、危險分散といたしましても、府県単位でいいと考えたのでありますが、一般の役牛馬等になりますと、頭数等も相当多くございまして、加入頭数も多い。従つて危險分散から考えまして、まず郡単位の危險率を出した方がいいのではないかと考えた次第でございます。またその計数等を見ますと、相当事故率が違いますので、事故の低い郡の村民は、安い共済掛金を払うし、事故の高いところは高いものを払う。また事故そのものが非常に安定していないではないかという御意見は、なるほどその御意見は十分ございましようし、またそれゆえにわれわれといたしましては、そういうような乱高下したものついてこれをどう考うるかということは、県のみならず、郡の関係におきましても、実は検討を進めておるのであります。一般の役牛馬は県におまかせして、県でやれるようにしたらどうかということを、英断をもつて回答しろというお話でありますが、実はその点についての英断はまだここで申し上げる時期にございません。もう少し検討をした上で回答をしたいと思つておりますが、ただいまのところ、ある程度郡単位に危険率を出して、政府責任で最後はきめよう、その間の経緯等につきまして、民主的な取扱いをいたさなかつたこと等につきましては重々おわびを申し上げます。こういうふうに考えている次第でございます。
  52. 足立篤郎

    足立(篤)委員 郡単位におきめにならなければならぬという考え方が、少し行き過ぎていると思います。しかしどうしても局長政府責任者としておやりになるのだという御決意ならば、やつていけないという理由はありません。これはもちろんけつこうです。しかし今までのように、何ら県に相談もなく、天くだり的にまたおやりになる御決心であるか、この点をはつきり伺いたいと思います。
  53. 東畑四郎

    東畑政府委員 天くだり的にやる気は毛頭ありません。どういう形で御意見を伺うかの方式に非常に苦労しているのでございます。この委員会でいろいろ御質問を受けることも一つの手でありますし、あるいは保険審査会で伺うのも手であります。あるいは連合会長等の御意見を伺うことも一つと思います。いろいろそういう問題につきましての形式は、私としては、まずい点は十分改めたいと思います。最後の危險分散その他のことになりますと、これはやはり保険技術の一つ根本問題に触れて参りますので、英断的な政治答弁はいたさない方がよかろうと実は考えまして、先ほどの答弁をいたしたのであります。最後はひとつ非民主的になりますが、政府責任においてやらせていただきたい、こう考えている次第でございます。
  54. 千賀康治

    千賀委員長 他に御発言がないようでございますから、次会は公報をもつて申し上げることとし、今日はこれで散会をいたします。     午後三時四十一分散会