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1951-05-28 第10回国会 衆議院 農林委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十八日(月曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 原田 雪松君 理事 松浦 東介君    理事 小林 運美君 理事 井上 良二君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君      小笠原八十美君    小淵 光平君       川西  清君    河野 謙三君       中垣 國男君    幡谷仙次郎君       平野 三郎君    八木 一郎君       坂口 主税君    横田甚太郎君  出席政府委員         食糧庁長官   安孫子藤吉君         経済安定事務官         (物価庁第二部         長)      永野 正二君  委員外出席者         議     員 森 幸太郎君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    細田茂三郎君         農 林 技 官         (食糧庁油脂課         長)      中村 義夫君         專  門  員 難波 理平君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君 五月二十七日  委員宇野秀次郎辞任につき、その補欠として  井上知治君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員井上知治辞任につき、その補欠として宇  野秀次郎君が議長指名委員に選任された。 同  理事足鹿覺君の補欠として井上良二君が理事に  当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  農業改良事業等に関する件  主要食糧の価格に関する件  油糧に関する件     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  この際お諮りいたします。本日理事足鹿覺君より理事辞任いたしたいとの申出がありましたが、これを許可するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。それではただいまの足鹿君の補欠を選任いたしたいと思いますが、これを委員長において御指名するに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。よつて井上良二君を理事に御指名いたします。     —————————————
  5. 千賀康治

    千賀委員長 次に農業改良事業等に関する件について議事を進めます。農業政策ひとりわが国のみならず、諸外国におきましても、経済政策の根底をなすものでありまして、それぞれの客観的諸条件に最も適した施策を取上げて農業の振興に努力しているところでありますが、外国における農業事情及びその国の政策を知ることは、わが国の農政上に裨益するところ大なるものがあると思います。この意味におきまして、本日は、先般約三箇月にわたつて米国の農業事情並びに農業関係立法制度を調査して来られました議員諸君より種々御意見を承り、本委員会における審査または調査の参考に資したいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 千賀康治

    千賀委員長 御異議なしと認めます。それではこれよりここに御出席を願いました方々より順次御意見を承ることにいたします。最初に森幸太郎君の御発言を願います。
  7. 森幸太郎

    森幸太郎君 本日農林委員会におきまして、先般アメリカ農業視察団として参りましたことについて、農業問題を取上げて報告しろという委員長からの御通知があつたのでありますが、実はわれわれ一行は、御承知のように井上君、小林君、足立君、坂本君、松野君、私と衆議院から六名選ばれたわけであります。出発いたしましたのが、ちようど一月の九日でありまして、休会中でありましたので、皆さんにごあいさつ申し上げることができなかつたのでありますが、帰りましたときも四月八日で、これまた休会中でありまして、皆さんにごあいさつの機会を失したのであります。われわれは一日も早く視察いたしたことについて、この農林委員会を通じて報告いたしたいと考えておつたのでありますが、今日までその機会が与えられなかつたのであります。本日幸いその機会を与えられましたので、しばらくの間御清聽をお願いいたしたいと存じます。  いずれ各議員からお話があろうと存じますので、私は概略の御報告を申し上げたいと存じますが、何分広いアメリカのことであります。多岐多端にわたつておる農業の形式でありますから、同じものを見ましても、同じことを聞きましても、それぞれ見る人の考え方によつて感得するところが非常に違つて来ることは当然であります。私は私として見ましたこと、聞きましたことを申し上げるのでありまして、はたしてそれが正当であるかどうかということは別の問題でありまして、もし誤まつておるようなことがありましたら、他の方から御修正もあろうかと存じます。  われわれのアメリカへ参りましたのは、御承知通りアメリカ連邦議会州議会農業に対していかに立法するか、その立法することに対して、いかに議会が権威を持ち責任を持つているか、そうしてその立法された農業政策はどういうふうに行政されているか、次に行政されておる結果、農民がどういう農業経営をいたしておるかということを見ろというのが、われわれ派遣の目的の主眼とされておつたのであります。  われわれアメリカに参りまして、サンフランシスコの近くの陸軍飛行場へ到着いたしたのでありますが、カリフオルニア州において約一週間ばかり滞在いたしまして、カリフオルニア州の州議会、またカリフオルニア農業状態をも一応視察をいたしました。それからワシントン参つたのであります。ワシントンにおいて初めてわれわれが派遣された正式の手続をとられまして、そこにおいてアメリカ農務省機構政府機構アメリカの成立ち、またアメリカの現在の国際的の立場等、いろいろアメリカ政策等について四日間を通じての講義がせられたのであります。それよりさらに農務省に参りまして、農務省から農務省機構なり、施設施策等についての説明がありました。  それから実際の視察に出かけたのであります。ワシントンより南へ下りまして、テネシー州の方に参りました。テネシー州は御承知TVAのある所であります。このTVAによつていかにアメリカ農業が改善されたか、あるいはアメリカ電力が豊富になつたかという原因をなしております。TVA視察いたしまして、そしてさらに南方へ下りまして、綿の主産地、米の主産地タバコ生産地等を見、それから北部の方にまわりまして、北部では酪農地帶がおもになつておりますが、この酪農地帶視察して、さらにカリフオルニア州の方に参りまして、帰つて来たのであります。  アメリカ農業と一概に申しましても、各州においてその状態が違つておるのであります。タバコを主産とする所あるいは小麦、穀類を主産とする所、あるいはまた米を主産といたしておる所、そして畜肉をやつておる所、また酪農をやつておる所、いろいろ州の事情によつてその生産条件がかわつております。かわつておるということはアメリカがいかにも広くて気候状態が非常に違うのであります。われわれアメリカから帰りまして、どうだアメリカ日本と比べてぬくいか寒いかというようなことを聞かれましても、簡單にぬくいとも寒いとも御返事ができない状態であります。卑近な例を申しますと、ニユーオルリアンスという南方の町に参りまして、そこを晩の八時半に立つて、翌る日の九時にシカゴに着いたのでありますが、それが、汽車で参りまして三百マイル。ニユーオルリアンスにおりますときは、もう夏の気候でありまして、プールにはすでに水浴びしているというようにぬくいくらいでありました。そしてその晩汽車に乗つて翌る朝シカゴへ着いたのでありますが、途中ではもう枯野原の吹雪の状態であり、シカゴへ着きますと、道は凍てて歩けないという寒さで、どうも昨夜と今朝と違うというような気候状態でありました。これほどアメリカは広いのでありますから、従つて農作物の類におきましても、一概にこれを申し上げることはできないのでありまして、これを総合的に考えて行かなければならぬのであります。しかもアメリカ農業生産力は、第二次世界戰争途中から非常に進歩いたしまして、非常に生産率がふえております。いろいろ詳しい統計表も持つておるのでありますが、実はその荷物は、どういう関係であつたか、まだわれわれの手元に送り届けられぬために、詳しい数字を申し上げることができぬことは残念でありますが、農業が戰前より非常に生産増加をいたしております。その増加いたしております原因は、役畜が機械化されたためであります。馬で耕作し、あるいはろばで耕作しておりました役畜が機械化されて、機械によつて耕耘されるということが、農作物生産状態をかえて来たように考えられるのであります。畜力利用の場合においては、畜力を養うために相当の飼料、あるいは乾草がいつたわけでありますが、それが機械化されましたために、それだけのものが人間の食べる農産物の方に転嫁される面も一つ考えられるのであります。とにかく、機械力の進歩いたしましたことと、技術の発達しておること、——その技術面におきましては、耕種栽培の方においても進歩いたしておりますが、品種の改良ということが非常な重大な役割をいたしておるように考えます。  なおまたTVAというのは、二十何箇所かのダムをつくりまして、それにおいて発電いたしておるのであります。TVAというのはテネシー河という河の河水統制をやつたのであります。テネシー河というのは非常な屈曲の多い河でありまして、ミシシツピイ河に注いでおるわけでありますが、このテネシー河が一年に何回となしに汎濫する状態にありました。それがために耕地が破壊されることは非常なものでありまして、これを何とか整理しなければいけないというので、ダムが設置になつたのであります。そうしてダムを設置して、河水を統制するとともに、テネシー河利用して運送の便をはかる、いわゆるインクライン式に、船をダムを通して河上まで物を運ぶという一つ政策、それから発電——この発電をしましたことによつて肥料生産が起つて来たのであります。アメリカは、化学肥料を使用することは近来のことでありまして、今まであまり化学肥料使つておらなかつたようでありますが。このTVAによつて電力の豊富になりましたことから、化学肥料生産も戰後非常にふえて参りまして、肥料の施用が農産物生産を高めて来たという一つ原因になつておると思うのであります。  ここで、アメリカ農業施設の上において、われわれとして特に考えましたことは、アメリカ農業技術指導研究というものが統制されておるということであります。農務省の直轄に農業大学があります。この農業大学機械大学は、各州にこれを設置する方針をとつておりますので、りつぱな農業大学ができております。この農業大学の内容は、一つはもちろん言うまでもなく生徒を教養することであります。しかしその教養の方針も、ただ所定の学課を修めさせて進学するという簡單なものでなしに、ほんとうの農業改良し、農業に従事し、農業を指導するところの人材をつくることを主眼として、州の大方の経費をもつてこれを経営いたしております。そしてその一部には、農業大学の大きい仕事として研究機関を持つておることであります。日本でいいますと、農事試験場あるいは農事研究場というような、その州に適応する事業に対して、地区を定めて相当研究機関試験機関を持つておることであります。そしてこの農業大学で学術的に研究いたしましたことを、自分試験場農事研究場で実地に研究試験せしめて、その結論を農業大学責任として農業改良普及事業に結びつけておることであります。これはどの州の大学に行きましても、この方針であります。生徒を教えることと、試験研究と、そうしてその結果を農業者に実際に指導する技術を普及する、この三つの面を持つており、しかもそれが農務省管轄区域にあるのであります。アメリカ農業がいかにも合理化され、そしてそれが日進月歩であり、駸々乎として進んで行くということは、科学の研究のとどまらない限りアメリカ農業は進んで行く。そして農業改良普及に従事しておる者におきましても、すべて大学を出たりつぱな人であり、そういう普及員再再大学に集まりまして、新しき学課と研究の結果を聞き、また自分らの体験いたしましたことともに研究を進めまして、さらに技術改良の向上をはかつて行き、三位一体となり連絡をとつておるということは、非常にアメリカ農業が発達いたしておる主因をなすものと思うのであります。     〔委員長退席松浦委員長代理着席〕  これは日本におきましても、十分研究し、学ばなければならないものとわれわれは考えて来たのであります。  なおもう一つ私の考えましたことは、日本農業生産物の問題でありますが、これは日本は足らぬのでありますから、結局生産されたものをさらにできるだけふやして行く、そして食べてしまうのでありますが、アメリカ農業は、農業生産物それ自体が区域的に偏在いたしておるので、生産されたものを全国的に配給しなければならぬ、分配しなければならないということがそこから起つて来るのであります。いわゆる生産と分配と貯蔵、運搬と申しますか、そこに加工が加わつて参りまして、アメリカ工業というものが、一に農業生産物というものを主要原料として成り立つておる。農産物の興廃がただちにアメリカの軽工業の興廃につながつておるという関係でありますので、農工商を通じて、アメリカ農業生産というものに非常な関心を持つておると思うのであります。もちろんこれは国内消費のみならず、海外に輸出するところのものも生産されておるのでありますが、一に農業生産の結果がただちにアメリカ工業関係いたしておるということを、私は見て考えたのであります。それでありますから、相当の都市における商業会議所におきましても、農業部というものが特に設けてあります。そしてその地方にあるところの農業生産状態を常に考慮いたしまして、そして地方の農業生産が進展するように、あらゆる援助をするということを考えております。つまり都会農村とを結びつけておるということを、非常にわれわれは感じたのであります。また農業機械におきましても、ただ機械をつくつて売ればいいという意味でなしに、たとえばシカゴにおきましても、インターナシヨナルというトラクターの大きな工場がありますが、その工場へ行きましても、工場を設計することについて、実際に農村においてトラクター使つてつて、どういう欠点がどこにある、また実際使用しておるところの農家はどういうことを希望いたしておるかというふうに、使用しておるものと設計する機械業者と非常に心をあわせまして、そして農具の改良に力を入れておるということは、生産する機械そのものの将来性を考えて、インターナシヨナルなんか十分に注意をいたしておるということを、私は見のがしてはならないと考えました。  いずれにしましても、アメリカ農業工業と商業が一体となつて行われておるということは、特にわれわれとして注意を払わされたわけであります。アメリカ農業は、今申しましたように気候関係で非常に違つておりますことと、アメリカの国の成立ちが、御承知の通りにイギリス、ポルトガル、イタリア、フランスあるいは原住民もおり、あらゆる諸国から集つて来た国でありまして、それぞれの人は、種苗を持つて来た者もありましようし、また自分らの考え方によつて農業を始めたというような関係から、非常にアメリカ農業は複雑しております。しかもそれが広大な地域であつて、いろいろの気候状態がかわつております関係から、それぞれ適当なものを選択することに苦心をして、今日までの農業を組織して参つたと思いますが、それにいたしましても、それをうまく統制をつけておるということが、アメリカ一つの大きい今日の農業の結果を生んだのではないかと思います。ことに技術指導の上におきましても、日本のようにわずかな補助をやつて、こうしろ、ああしろという命令でなしに、農業者自体農業経営の上において創意くふうをいたし、そして資金を必要とする場合に政府に協力を求める。政府はそういう場合におきましては、その農家資金の必要な状態をよく調べましてあるいは土地を買うとか、あるいは農機具を買うとか、住宅を建てるとか、いろいろ実際の必要な面を調査いたしまして、これが農業経営において妥当であるかということをよく考え、また調査し、そしてなおそれに対していろいろの勧告を与えて、合理的な農業経営に導くようにいたしまして、初めてこれに金を貸している、こういう方針をとつております。それでありますから、むしろ金を貸した者自体責任があるという立場でこれを指導して参りますので、いまだかつて償還を怠つた者はほとんどないといつてもいいほど、資金がうまく融通されておるようであります。アメリカ農業は、日本農業に比較して申し上げることは、ほとんどできないほど大きい農業であります。ことに今日は機械化されておりますので、麦にしましても、あるいは綿にしましても、あるいは米にいたしましても、機械で種子をまき、機械肥料をやる。大きいのになると飛行機で種子をまき、飛行機肥料もやるというような大仕掛な農業でありますから、比較することはできませんが、反当りの収量につきましては、とうてい日本に及びません。日本の集約的な農業には及びませんが、しかし何分広い耕地でありますので、土壤の保全ということを言つておりますが、土地を実際に見ますと、相当やくざな土地が多いのであります。壤土というような土地はあまりに少い、ずいぶん荒れ切つた草原地帶でありますが、これに対していろいろと改良を施しておるようでありますが、先ほど申し上げました人造肥料が加味せられるので、あるいは将来酸性土壤になるようなことがないかという心配もありますが、しかし石灰も相当使つておりまして、これに中和をいたしてその心配のないようにいたしております。しかし堆肥であるとか厩肥というものを全然使わないのでありますから、土地有機質に富むというようなことは、なかなか相当の年数を待たなければならぬのではないか、かようにも考えられるのであります。なおアメリカ農業の将来につきましては、まだまだ発展の余地がある。耕地がさらに集約的に行くことはむずかしくありましても、土地利用の面にくふうするならば、まだまだ耕地の能率を上げて行くことができると思います。  畜産方面でありますが、これは日本酪農と違いまして、酪農生産物自体アメリカ人の主食でありますから、これはどこで生産いたしましても、日本のように行き詰るというようなことはないのであります。乳牛のごときも、相当数がみな飼養されております。そしてこの搾乳のごときはほとんど機械でやつております。手でしぼるようなことはほとんどありません。しぼりました乳は都会の一部に集められまして、それが完全に消毒せられ、これがバター、チーズに加工されて行くのでありますが、その大仕掛なことは、とうていわれわれまねのできないことであります。しかし今日の畜産はまだまだふやして行くということであり、またその品種改良の上におきましても、インドにおける特殊なものを利用いたしまして、一代交雑によつて品種改良して行くということに、相当に成績をあげておるようであります。  なお馬の人工受精のことにつきましても、相当研究が進められておりまして、今では疑義を抱くことなく、完全にこれが行われるということで、相当成績をあげておるようでありますが、そのことについては、日本としましては、まだまだ精虫の運搬等について、技術研究をしなければならぬ問題が残されておると思いますが、アメリカにおきましては、人工受精相当成果をあげておるようであります。  なお食肉の問題につきましてその規模の大きいということは、御承知とは存じますが、シカゴ家畜市場へ参りまして屠殺の状態伺つたのでありますが、このシカゴ家畜市場は、アメリカ全土の六分の一をその数に現わしておると聞いております。その近くにあります加工施設を見ましたのに、豚が一時間に六百頭とか、牛が百六十頭も処理されておるというような機械的な整備が行われておりますので、その規模の雄大なこともおのずから御了察願えることと存じます。なお特に私が考えさせられたことは、農事試験場農業大学でやつております試験機関が徹底していることであります。日本の畜産試験場を見ましても、その持つております家畜の頭数は実に微々たるものであります。アメリカでは、農業大学で持つております牛にしても、豚にしても、実にその数が多いのであります。大学農事試験場かわからぬような大きいものを飼養いたしております。またその試験がいかに合理的であり、その結果がただちに農業者利用し得られる、ただ空理空論でなしに、臨床的と申しますか、農業大学研究いたしましたこと自体がただちに農業者になし得るように、相当量の、試験材料使つて試験をいたしております。たとえば牛が生れまして三日から、ただちに親の乳を離して、人工えさによつてこれを飼育する、そうして母親の乳は人間がこれを利用する。あるいは五日目がよいかあるいは七日までかからなければならぬかというような試験におきましても、相当数の牛をもつてそれを実際にやつておるという試験やり方であります。牛乳の利用加工の面におきましても、相当量の牛乳をみずから生産いたしまして、その生産によつて加工しました結果を、農業者にこれを指示するというようなやり方をやつておりますことは、いかにも農業が徹底して指導されておるということを痛感いたしたのであります。  それから農村都会との生活を、あまり隔てないようにするというのがアメリカ考え方でありはしないかと、私は見て来たのであります。都会に住む者も、農村に住む者も、生活の基準があまりかわらないという方針をもつて進んでおるのではないかということを、考えさせられたのであります。  それから第一、道がついております。砂漠の中といえども、りつぱな国道は鋪裝されております。どこへ行きましても、鋪裝道路が津々浦々に通じておりまして、しかもそれがまことにりつぱな道であります。何分広い土地でありますから、数も少く、直線コースをとつておるのでありますが、農村生活いたしておつても、町に住んでおりましても、それぞれ自動車を持つておりますから、生活上に大して不便を感じない。ただ上水道がないために、農村においては不自由をいたしておりますけれども、散在いたしておる農家あるいは十里ごとに一軒ずつあるような農家におきましても、みなトランスを一個々々つけまして、電気の施設があります、動力も来ておりますし、すべて冷蔵庫等によつて家庭の食糧を利用いたしておるということで、農村におりましても、ただ上水道がないために一面において非常な不便があるというだけで、その他においてはほとんど都会生活いたしておる者とかわらない。どこの小さい村の集団に行きましても、そこには相当娯楽機関もあり、医療機関があるということになつておりまして、アメリカの民主的な国家を形成する上において、そういう方針をとらなければならないことになつておるのではないかと私は感じたのであります。われわれも一部で二人、三人、農村に分宿をさせてもらいまして、農村ではどういう生活をいたしておるかということを、直接体験させてもらつたわけであります。  それから風俗、風土、民俗という方に入りますけれども、アメリカとしましては、あまり人のことをおせつかいをやかない。人は人でやつて行くのだから、自分自分りつぱな者になつて行くという気持が、どこの面にも見られるのであります。これは自分の観察でありますけれども、農村にとまりましても、夫は夫、細君は細君、子供は子供として、そこに独立自主的に、親にもたよらず、子供にもたよらない、ただ自分自分としての務めを完全にやるというような気持で、家庭が成り立つておるということを感じさせられるのであります。また相当の家庭に参りましても、この気持は同じことでありまして、むすこはむすことして堂々と独立しておる。あの社会学研究のレーバーという博士のお宅にも、私は伺つたわけでありますが、レーバー博士が一つの農舎をつくつておられました。これは自分で設計して自分でつくつたのだと言つておられましたが、石垣のつくりぐあいから、コンクリートの固め方から、まことに不細工なものでありました。むすこさんが二人おられます。兄貴には一日一ドル半、弟には一ドルの手間賃を払つてこれをやらしたのだ、こういうふうにレーバー博士は言つておられましたが、そういうふうに自分の子供にやらせても、一ドル半あるいは一ドルの手間賃をやるというふうに、実に日本では想像のつかぬやり方をしておられました。それは当然であるので、日本では世襲財産的に何代続いた農家だという、私も古い農家のむすこであるが、もうすでにおやじの持つておつた耕地はほかの人がやつておる。自分は広々した岡へ出て来て、ここで家を構えて百姓をやろうと今計画をしておるのだが、なかなかりくつ通りには行かぬので、こういう草も生えぬような高原だと見せられましたが、そういうふうに自分自分としてやつて行く、子供は親のものを受継いで行くという考え方でなしに、あちらこちら自分の自由な立場で動いて行くというのが、アメリカ農業の上においても見られる傾向であります。  日本からアメリカに行つておられる人は相当あります。カリフオルニア州のごときは、日本から非常にたくさん行つて農業を経営しておられます。日本農業者は、とにかく日本で集約的な農業を経営された経験がありますので、向うへ行きましても、やはり集約的な経験を持つた農家として、大きい規模の農業を経営されておるようでありまして、アメリカの従来の人たちよりは利益はよくあげておられるようであります。向うでも、日本から来られた人は非常に勤勉である、よく土地利用されるということを言うておりましたが、なかなかよくやつておられます。時期が時期でありましたので、普通の一般の農作物を見ることができなかつたので、温室栽培を見せてもらつたのでありますが、温室栽培のごときも、アメリカのばら協会の副会長をしておるというほど、相当の位置に進出した柴田という方でありましたが、ばらを栽培されておりました。それを見せていただいたわけであります。なお日本農業者の多く集まつておられるところにも参りまして、戦後における農業経営をいろいろ——戰争中はある一定の場所に収容されて、帰つてみたら、自分らの農業経営をあずけておつた人がかわつていて、非常に苦心したけれども、今日ではとりもどしができて、ようやく秩序を回復したと言つておられますが、日本から行つておる人でも相当苦労してやつておられます。しかし二世になりますと、日本から行つた人とは全然気持がかわつております。アメリカに集まつておる人は、みな二世以下が国民になつておるのでありまして、祖国を持ちながら祖国を考えない。これがアメリカの国民性と思うのであります。合衆国という名がありますが、私は合衆国という名は、まことによい適当な言葉を使つたと思います。黒いのや、赤いのや、白いのや、髪の毛の違うのや、いろいろな者が集まりながら、しかもそれが一つとなつて、手をかたく握つて経営しておるという国柄でありますので、日本から行きましても、二世になつても三世になつても、われわれは大和民族だというような考え方を持つてつては、アメリカの市民にはなれない。やはりアメリカ合衆国の国民という気持でやつて行く、こういう気持におのずからなるのではないかと思いました。われわれが二世を大和民族だというような気持で考えることは、これは大いなる間違いではないかと思いました。しかし一世の方は、どうか日本を一日も早くりつぱな国に建直してほしいというので、日本の現状を非常に心配しておられることを、われわれ目の前に見せられたわけであります。日本は近い中に独立も許されるだろうし、決して世界に劣らぬところの大和民族であるから、必ずやりつぱな国に建直しができようからと申し上げたのでありますが、非常に日本の現状について心配をしておられました。  なお最後に私一言申し上げたいことは、アメリカの人々の気持を私がどう受取つたかということであります。     〔松浦委員長代理退席、委員長着席〕 私が行きますときには、この戰争に負けたわけだし、小さい日本人が出て来よつたというので、敗戰国民として肩幅狭く、遠慮がちにアメリカを歩かなければならぬのではないかというような気持もいたしておつたわけであります。しかし行つてみますと、アメリカの人々には、五年前に戰争した日本人だ、顏の色が黄色いのだというような気持は全然ありません。どの町へ行きましても、日本人として軽蔑されるようなことはありません。そういうことを歯牙にかけず、何らわけ隔てなくわれわれを迎えてくれましたことは、われわれ非常に望外の喜びでありました。しかも連邦議会へ参りましても、州議会へ参りましても、われわれは非常な好意をもつて迎えられました。アメリカの国民諸君がみずからの税金の負担において、またみずからの節食によつて日本に食糧を送つてくれたことがもととなつて日本の食糧事情も今日漸次かわつて来ておる。しかもすべての産業が、民心の安定とともにおちついて、すでに戰前に復帰いたしております。この間いろいろ連合国等の指導もあるけれども、要するにあの戰争が終つて、どうしようかと心配したときに、アメリカの示してくれた好意があつて今日の復興ができたのだ。このことはわれわれ衷心から感謝したい。日本は共産思想と自由思想の中間にあつて、いろいろ心配をいたしておる。この思想のおちつきということは、結局民生の安定である。民生の安定は、第一が食糧の安定である。日本は人口がふえました、そうして土地は狭くなつておるので食糧が足らない。なお日本としては、アメリカからいろいろの指導も受け、われわれみずから考えて、自給度を高めるということは、一生懸命現在もまた将来も考えて行くことであるけれども、人口がふえて来れば結局それだけ食糧が足らぬのである、足らぬときは将来どうするか、人口と食糧問題は、日本の現在また将来に対して大きな問題であるから、われわれはこの問題に非常に心配をいたしておる。しかし日本は幸いに、今申しましたように、人口があり、労力があるから、この労力をうまく利用して食糧を確保いたしたいが、情ないことに日本は資材、原料に乏しい、たとえば日本からアメリカに持つて行くものは、絹糸と絹織物とその他の雑品があるけれども、それよりほかない。アメリカからもらわなければならぬものは石油があり、石炭があり、鉱石があり、綿がある。アメリカは余つておるじやないか、その余つたものを日本が買つて日本の労力で加工すれば、われわれは世界各国から食糧が確保できるのであるから、われわれの足らないところの資材、原料を日本に送つてもらいたい。そうすれば日本の人口問題は、決して世界各国に心配してもらうようなことはない、解決できるのであるから、どうか日本を今後そういう気持において見てもらいたい。日本は世界情勢の現状から申しても、一日も早く独立をしなければならない。もう五年あまりにもなるわけであるし、世界の情勢もまた日本を早く独立をさせなければならぬような情勢と、われわれは観察する、どうか一日も早く独立するように骨を折つてもらいたいというあいさつをいたしまして、これはいずれにおきましても同感でありました。ことに連邦議会農林委員会におきまして、私は特にこのことを強調いたしました。日本では綿が足らぬ、豆が足らぬ、石油が足らぬ、このわれわれの日本の食糧を救済する意味において、そういう原料、資材を日本に送つてもらいたいということを話し、また向うの農林委員の諸君も、そういう日本考え方に対しては、できるだけの協力を惜しまないということを誓つてくれたようなわけであります。ことにテネシー州に行つたときも、上院、下院であいさつしたのでありますが、知事のごときは、どうか日本で間に合うものがあつたら、どんなものでも持つてつて農業政策の上に使つてくださいということを強調いたしました。しかし私はいろいろもらつて行きたいものがあるけれども、どうも日本の国は小さくて、持つてつても入らないから、目に見えぬものをどつさりもらつて帰りますと、冗談を言つておりましたが、それほどに親切に言つてくれました。またアイオワ州のごときは、議会で私にあいさつしろというのであります。従来アメリカ州議会連邦議会も、外国語の演説はいたさせぬことになつておるそうであります。しかしどう思いましたか、アイオワ州では特に私に話をしろというので、先ほど申したようなことを演説したのであります。そうしますと一人の議員が立ちまして、自分は三十六年間議席を持つておるけれども、外国語の演説があつたのは今回が初めてである。この議会としてはまことに記録すべきである、今日本を代表されて話されたことには非常に感銘した、この州議会ではただちに満場一致の決議をもつて日本の衆参両院議長にあいさつ状を送らなければならないと思う。どうかこれに賛成しろという緊急動議を出しました。それは満場一致で決議されまして、ちようどわれわれがこつちに帰りましたときに、林議長の手元へ州議会の決議によつてあいさつ状が来ておりましたが、それほどわれわれに対して好意をもつて迎えてくれたのであります。  またある郡、ノツクス郡という郡に参つたときの話でありますが、そのときわれわれに対して、われわれを歓迎する意味であつたのでしようが、議席の前に各国の旗が立つておりましたが、その各国の旗の中に日本の日の丸の旗が一本立てられてあつたのであります。私はその会場に入りましたときに、はつと思つたのであります。当時アメリカに行きまして、そこで日の丸の旗を見ようとは思わなかつたのであります。そのときのあいさつに、私はこう申しました。あのところに立つている旗は、われわれの歓迎のために大方つくられたものであると思う。われわれは心からうれしく思います。しかしあの日の丸の旗は、まだ連合国の中に公然と立てられることを許されていない。あの日の丸の旗が一日も早く連合国国旗の中に立てられることをわれわれは希望する。世界の情勢も、そうであるようにわれわれには感じられる。どうか輿論に動く諸君は、あの日の丸の旗が公然と連合国の旗の中にまじることができるように、今後御努力をいただきたいというあいさつを私はいたしました。そうすると会の終りに会長は、アメリカの旗と日本の旗と二本拔いて、それを交叉して私のところへ持つて来て、これを記念に持つてつてくれと言つてくれたのでありまして、私はありがたくもらつてつて来たようなわけであります。  こういうふうに、至るところに参りましても、日本が早く立ち直ることについて、向うは非常な同情を持つておるのであります。ことに農務長官に会いましたときにも、農務長官は、五十年来アメリカ農業を発達さして来た、アメリカ農業については、われわれは皆さんに自慢をしたいという気持が起るのはもつともな話である、この自慢を、どうか自慢をさしてもらいたい、そうしてアメリカ農業がどういうふうに発達したかということについて、どうか皆さんはできるだけの視察をしていただきたい、どんなことでも御用がございましたら、われわれはできるだけの便宜をはかりましようということを言うてくれました。ことに農務次官補のごときは、特に長い時間をさきまして、われわれ一行とひざを合せて、いろいろ農業政策についての懇談を、忙しい中でありましたがやつてくれまして、非常にわれわれはうれしく感じたのであります。  なお国際連合の事務所に参りましたときに、日本は早く国際連合の農業委員会に加入するような手続をとるべきである。ドイツのごときは、まだ国際連合に加入してはおらぬけれども、すでにこの農業委員会には加入しておる。一日も早くそういう手続をとられて、そうして農業に対する農産物の交流、技術の交流等について、日本も国際連合の中に加入せられた方がよかろうということも注意されたのでありまして、また小麦協定のごときも、一応小麦協定には昨年の六月、日本は加入しないことに決定しておるが、しかし近く小麦協定会議も開かれるが、そのときに新しく申し込まれることが適当であろうというふうな注意もしてくれまして、われわれといたしましては、アメリカがいかに日本農業発達に対して力を入れておるかということについて、深く感激いたしたわけであります。  なお帰りには農務省の渉外局長と申しますか、何か国際的に各国の農業関係を結ぶ局長にあいさついたしたのでありますが、その方が申されるには、われわれは皆さんアメリカ農業関係の各ブロツクの紹介の役をしただけであります、あなた方とアメリカ農業の指導部との橋渡しをしたわけであります、どうか今後皆さんは、この紹介をいたしましたことによつて交際を続け、そして互いに知識の交換、技術の交換をしてくださることがよかろうかと思うというようなあいさつをいたしてくれました。まことにアメリカの人々が、衷心われわれを喜び迎え、そしてできるだけの指導をしてくれましたことは、非常に仕合せに存じました。  あまり広いところの話を申し上げたので、あつちこつち飛びましてざつくばらんなお話になつてまことに申訳ありませんが、大体以上をもつて私のお話を終りたいと存じます。なお詳しいことは御質問がありましたら他の議員の方からお答えもし、また小林君、井上君からもこもごもあると思いますので、私はこの程度でお許しを願いたいと存じます。ありがとうございました。
  8. 千賀康治

    千賀委員長 次は小林運美君に発言を願います。
  9. 小林運美

    小林(運)委員 ただいまわれわれ一行の団長として御苦労願いました森さんから、一行の三箇月にわたるアメリカ農業視察旅行に対する概括的な、またうがつた御報告がありましたので、私はその一部分と申しますか、私の見ました感じを二、三簡單に申し上げたいと思います。  私は大体一つの構想を持つて参つたのでありますが、それはアメリカは、われわれの知つている範囲におきましては、農業がかなり進歩して、しかも大規模農業をやつている。そこでアメリカ国民は、アメリカ農業に対してどういうふうな考えを持つて臨んでいるかというような、一つの疑問を持つて参つたのであります。また最近われわれ日本がGHQの指導によりまして、いろいろの農業改良等を行つておりますが、それらの方針等も見まして、われわれ一応頭に描いておつたものがあるのでありますが、それが私たちの考えが足りないと申しますか、実際はかなり違つているように実は私は感じたのであります。と申しますのは、最近日本農業政策が、自由主義の風潮と申しますか、どんどんいろいろのものを自由に農家自体の自由競争によつてやらせるという風潮になつておるのでありますが、御本尊のアメリカにおいては、さような点はもちろんありますけれども、究極いたしますところ、アメリカ農業もやはり農業という特殊な仕事に対して、相当な国の保護をやつているということを私は痛感をいたしたのであります。その二、三の例は、すでに先ほど森さんからも、いろいろの部面においてお話があつたのでありますが、特に私が感じたのは、アメリカ農家の人口が、国民の割合にいたしましてたつた、一六%ではありますが、国の立法におきましても、その他の農業施策におきまして非常な保護を与えているということが見られるのであります。これは日本がかつてやりました農村の助成政策というような簡單なものではないのであります。複雑ではありますが、しかし結論においては、農村に対する保護政策を、非常に強力に行つておることを痛感いたして参つたのであります。もちろんアメリカは、農業といえども企業として認めておりますので、採算が合わなければ、ほかのものにどんどんかえられるというような立場はあります。たとえば今まで小麦あるいはとうもろこしをつくつておつた、あるいは牛や豚を飼つてつたのだけれども、昨年来羊毛の値段がアメリカにおいても非常に上つて、すでに昨年は一ポンド五十セントぐらいであつたのでありますが、本年は一ドル以上になつております。こういうように農産物の価格が変化するのに従いまして、農家もどしどしその方にかわつて行ける、また自由にかえられるというところに、アメリカ農業の特殊性があります。そういうふうに、羊毛にどんどんかえる、羊毛すなわち羊をどんどん飼つて行くというふうに、かえることの自由がありまして、しかもそういつた特殊な農業に対して、政府相当の補助をいたしております。それから、たとえば金融の面におきましても、先ほどお話がありましたように、政府が金融機関に対して無利子で相当莫大な金を貸しております。そういつたことが末端の農家には非常な大きな利益となりまして、農家における金融は非常に楽であります。われわれ日本の金融状態に見まして、非常にうらやましく感じたのであります。また教育の面におきましても、先ほどお話がありましたように、農業協同組合あるいは試験場大学政府等直接のエクステンシヨン・サービスの係りの人たちが一体となつて農業改良普及事業を徹底的にやつておるというようなことも、この一例であります。向うの農業団体は大体三つになつておりまして、非常に大きな経営をしております農家のグループはグレンジと申しまして、相当古い歴史を持つておる農業団体がございます。これは割合から行けば非常に少いのであります。次にFBF、これはフアーマス・ビユーロー・フエデレーシヨンというのでありますが、そのかしら文字をとつてFBFといつております。これはアメリカ農業団体の首位を占めるものでありまして、そのFBFの活動は非常に活発であり、今申し上げましたエクステンシヨン・サービス、農業改良普及事業に全力を打込みまして、末端まで非常に合理的な仕事をやつております。それからもう一つ小さい農業団体がございます。これはファーマス・ユニオンと申しますか、これはほとんど一割に満たないのであります。小農経営者の団体として、相当政治的に働いておるようであります。以上三つの団体のうち、FBFがほとんど全国的に網羅されておりまして、非常な活動をしております。これらの詳細については、ただいままだ資料等が参つておりませんので、簡單に申し上げておきます。  それからもう一つのことは、私は一番重要な問題として見て参つたのでありますが、農産物の価格支持の政策であります。御承知のように、アメリカの主要農産物は六品目——小麦あるいはとうもろこし、米だとか、ばれいしよ、綿花その他のものがありますが、主要農産物の六品目に対しては、政府は価格が下つた場合には九〇%で買上げてやるというような政策を依然として行つております。われわれが参りました一月の二十七日でしたか、アメリカは賃金のストツプ令を出しまして、それに関連して各種のものが一応ストツプされました。しかしこの主要農産物についてはこれを除外しております。これに対して国民の一部から、農産物もほかのものと同じようにストツプしてはどうかということが、方々から輿論として起つておつたようでありますが、農務長官のブラナン氏がこれに対して反駁書を出しております。その反駁書によりますと、アメリカ農業の特殊性を説き、またアメリカ農産物が現在のアメリカのほかのものに対してまだまだ低位にあるのだ、従つて野放しにして、もつと高くなるのが当然だというような反駁書を出しております。これらの詳細については、別の機会にブラナンの反駁書を皆さんにごらんに入れる機会があると思いますが、さような次第でありまして、農産物の価格の支持に対しては、非常な政府が力を入れているのであります。この価格の支持の問題につきましては、農産物と他の工業生産物との関係が非常にデリケートな関係でありまして、向うのアイオワの大学の教授と、一晩ゆつくりいろいろ問題を話合いしてみたのでありますが、やはり学者の考え方は、農産物に対する価格の問題は非常に重要問題であつて、依然として農産物はほかの産物に対して低位にあるというような結論を、アイオワの大学の教授もしております。またついででありますが、アメリカの国会あるいは州議会においても、こういうような学者の意見というものを非常に重要視いたしまして、国の政策をきめるときにも学者の意見を直接聞いて、施策の上に現わして行くというような方法をとつております。先ほどお話のありましたように、農業改良普及事業におきましても、州立の大学の教授が直接この仕事に当つております。また試験場の技師等も直接にこの農業改良普及事業に当り、また学生もそういつた方面に直接に当つて、実際的な農業の指導をやつているというようなところは、特にわれわれの感心して参つた点であります。  それから土地改良でございますが、アメリカ人農業に対する開拓者精神というものがいかに強いかということの一例といたしまして、土地改良の問題を私は見て参りました。アメリカは、御存じのように各方面いろいろの土地の状況が違います。地質が違つておりまして、西部のカリフオルニアの方では非常に土地の塩分が多く、これに対して、国の試験場等もいろいろの試験研究を行つております。われわれが考えれば、もうここは不毛の土地でどうにもならぬというような所でも、何とかしてこれを開拓して、農産物を収穫できるようなふうに持つて行く、それに対しては、国も相当な金をつぎ込んでやつております。土地改良のみならず、また気候さえもかえるというような構想があることを聞きまして、まつたく恐れ入つたのであります。かようなアメリカ人の開拓者精神というものは、われわれ大いに学ぶべき点ではないかと思うのであります。先ほど森さんからもお話がありましたが、われわれは長い農村生活を続けておりまして、もう日本農業には改良の余地がないのだというような一般的な頭がありますが、アメリカでは、まだまだどんどんこれ以上の収穫を上げて行きたい、米のみならず、いろいろの農産物の反収は、日本の半分にも満たないのでありますが、これを日本の水準に持つて行くことはもちろん、またそれ以上になりはしないかというような構想をもつて、いろいろの研究をいたしているのであります。しかし私は向うの試験場に参りまして、技師の研究等も二、三見て参つたのですが、われわれの浅い経験からいたしまして、必ずしもアメリカ試験場日本試験場より、もつともつと進んでいるのだというようなことは言い切れないと思うのであります。たとえば品種改良の問題にいたしましても、これは特に私は蚕糸業の関係から申し上げるのでありますが、品種改良等については、まだまだ日本の方が試験研究においてはずつと進んでおる。また実際的にも、ものによつてはわれわれの方が進んでおるというようなことは言えます。しかしただ向うの試験場等の感心するところは、われわれ日本試験場でありますと、高邁な科学の探究というようなところにずいぶん力をいたしまして、実際にそれが、直接現在の農家にどれだけの裨益があるかというようなことは、案外うとんぜられておる。その点アメリカ試験場あたりは、実際農家がどうやれば収穫が多くなるか、あるいは災害に対してどういうような影響があるかというような、実際面について非常に深く研究しておる。これは向うの試験場のいいところであります。また試験研究そのものについては、決して日本も劣つていないというような感じを持つて参りました。  それから向うで農家を見まして、一応いろいろお話を聞くのですが、アメリカ農業で何が足りないかというと、やはり農業労働というものが不足いたしております。ほとんど大部分がそういう意見でありましたので、一行中の足立君から、こういう話が出たのです。アメリカに労働者が少いなら、季節的に日本から労働者を送ることはどうだろうというような話をいたしたのであります。これは各地でそういうような話をいたしました。ところが最後にカリフオルニアの南部、すなわちロスアンゼルスの商業会議所のある人たちが、そういう話は非常におもしろい。こういうようなことは今後研究して、日本農業労働が余つているなら、アメリカでも季節的になら使つてもいいのではないかという話をしておりました。今後日本が講和会議を済ませますと、人口問題が非常に重大な問題になります。直接移民というようなことになりますと、なかなかむずかしいのでありますが、かような季節労働というようなことについては、向うでもかなりわれわれの意見をいれてくれるのではないかという片鱗を見せられたことについては、われわれは非常に収穫であつたのではないかという感じを持つて参つたのであります。  先ほど森さんからお話がありましたように、われわれ一行が参りまして、各地で非常な歓迎を受けました。その際に森さんが、終戰当時からわれわれの食糧が足りないのに、アメリカは非常な犠牲を払つて、われわれ日本食糧を送つてくれたというようなことを述べて、ほんとうに心からお礼を申しました。それはアメリカ人の感情を非常に刺激しまして、非常にいい結果を生んだことを、われわれ一向みんな心から感じまして、今回のわれわれ一行のアメリカに参りましたことは、ただ農業の問題ということでなしに、アメリカ日本の国民の直接の外交の上に、特に裨益があつたということを痛感いたしておるものであります。特に各州議会、あるいはその他の会合における森団長の演説は、日本語ではありましたけれども、アメリカ人の心に訴えるものがあつたことを、われわれ心から信じておる次第であります。  なおわれわれがアメリカに参りまして、ただアメリカ農業の広大さ、あるいは機械農業に対して驚いたり、あるいはうらやましがつたりというようなことではなしに、向うの立法関係あるいは農業政策というような面について、もつと研究しなければならぬと考えました。先ほど申し上げましたような価格支持政策であるとか、その他アメリカの民主的な立法の方法というようなものを見まして、非常に感心をして参りました。特に農村農業関係の立法におきましては、農業団体の意見相当に強く反映いたしておることを見て参りました。われわれ日本では、役所で立法をするという状態でありますが、向うではどこまでも民主的な農業立法をやつております。農業団体がこれに全面的な協力をして、州議会あるいは国会で各種の農業立法をやつておるのであります。かような点は、われわれ大いに学ぶべき点であると感じて参つたのであります。  アメリカはそうした相当合理主義な国でありまして、感心するところも多いのでありますが、またアメリカにもアメリからしい不合理な点も、相当われわれには見られたのであります。よけいなことではございますが、たとえば黒人に対する差別待遇の問題等、その他いろいろございます。しかしこれらもアメリカ人は決してそれを知らずにやつておるのではなく、これも漸次直して行きたいという気分は十分あるようでございます。特にわれわれが感じましたのは、方々で日本の農地改革は、その後どうなつておるのだというような質問を、ときどき受けたのであります。アメリカの農地改革というようなことについて、あまり深くは研究して参りませんが、われわれ概観いたしたところでは、日本のような農地改革は行われておりません。従いまして、日本でやりました先般の農地改革については、アメリカ人も非常に大きな関心を持つておるように感じて参りました。これに対するわれわれの意見は、今ここで申し上げる必要はないと思いますが、一つの話としてお聞きとり願いたいと思うのであります。  最後に私は、日本農業一つの重大問題として、日本がこういう狹小な国土をもつて、ああいつたアメリカのみならず、その他の国の、もつともつと裕福な農業との今後の競争をどうやつて行つたらよかろうかということも、私の一つの疑問になりました。そこでアメリカのように、資材も豊富だし、土地肥料機械もどんどん使えるというような農業と、日本はどうやつてつて行くかということなのであります。われわれがテネシーの山奥と申しますか、あまり開発されていない村にとまりました百姓家のお話でございますが、私がとまりました百姓家は、八百エーカーの耕作をいたしており、それに対して農器具がたくさんありました。家族は夫婦と十九歳の男の子、それに十二・三歳の女の子で、これはもう農家の労働者としては全然数の中に入りません。この家族四人のうち、働けるのはおやじとせがれの二人であります。それに黒人を三人使つておりまして、黒人の家にも行つてみましたが、黒人は一人々々自動車を持つておりました。かような農家の経営を見まして、そのおやじに聞いたのでありますが、黒んぼを使うのと機械を使うのとどつちがいいのだという話をしましたところ、機械は一台三千ドルか四千ドル出せば買える。しかしこれは一ぺん買えば五年や七年は使える。ところが黒人一人を雇えば、どんなに少くやつても一箇年間に三千ドル以上かかる。これが毎年かかるのだということから、人間機械がかわるなら、その方がかえつていいのだ。しかし機械だけではやはりやつて行けない。人がいるのだというような話をしておりました。しかもその村では、そんなに土地は豊かでありません。石ころがごろごろしておる所を、機械でいろいろの耕作をやつておりました。このような農村の実態を見ましても、われわれは大いに考えさせられるのであります。と申しますのは、今後日本がこれ以上農産物の収穫を多くすることは困難であり、おのずから限度があります。従いまして、われわれ日本農業はどこまでも集約農業を徹底化いたしまして、土地から生産されるものに、われわれ日本人の労働力をどんどん加えて、もつともつと高価なものをつくつて輸出する。その金で、向うの比較的安いものを日本が入れて行くという方法でなければならぬというような感じを、持つて参つたのであります。その一つとして、アメリカに生糸を送つて、はたしてこれから売れるかどうかというような問題を、方々で聞いて参つたのであります。これはアメリカ農業のことではないのですが、アメリカ人がこれから生糸を実際買えるかどうかということなんであります。ちようどわれわれがニユーヨークヘ参りましたときには、日本の生糸が非常に高くなつておりまして、一俵三十万円もしておりました。われわれは通信が十分でなかつたので、ニユーヨークヘ行つて初めて日本の生糸が三十万円になつたということを聞いて驚いたのであります。そこでアメリカの生糸業者のジヤーリー氏の言うのには、こんな高い値ではとうてい買えない。一ポンド六ドル以上の生糸は買えない。ナイロンは依然として、一ボンド四ドル四、五十セントで売られている。こういう際にいくら高くなつても、せいぜい一ポンド五ドル程度ならまだまだ生糸は商売できるという意見を申しておりました。またわれわれ地方に参りまして、普通の家庭のおばさんやその他の人に聞いてみますと、アメリカ人は決して生糸を忘れておるのではない。生糸があまり高過ぎるのでわれわれは買えない、それから高いにも安いにもなかなか売つていない。ほしいけれどもどこにも売つていないということなのであります。そういうことについて、われわれはいろいろと話をして参りました。生糸の糸価の安定ができていないので、従つてたとい一ポンド六ドルであつても、ナイロンと同じように安定しておるならば、業者は使う。アメリカで絹の着物を少しいいのを買いますと、一着三百ドルもするということなのであります。ほかのナイロンやその他のものは、三十ドルか五十ドル出せば買える。ところが原糸の値段は四ドルと六ドルの違いしかない。そこにかなりの矛盾があるのであります。これはかかつて糸価安定にあるということを痛感いたして参りました。糸価が安定するならば、この値段は製品になつてからもつと下つてアメリカ人もいろいろな面において、生糸を使う余力が出て来ると私は思うのであります。さらに向うの商品の市場におきまして、いかに宣伝が徹底しておるかということを見ました。われわれ生糸の関係者は、アメリカにおいてほとんど宣伝をしていないために、生糸はどんどん忘れられて行く、年寄りは知つておりますけれども、若い人は生糸のいい味を忘れております。こういうようなことももつともつと力を入れまして、世界的に生糸の宣伝をやらなければならないということを痛感して参つたのであります。  以上私の感じました二、三の点を申し上げまして、御報告にかえる次第であります。(拍手)
  10. 千賀康治

    千賀委員長 次に井上良二君に御発言を願います。
  11. 井上良二

    井上(良)委員 皆さんのおかげで、約三箇月間アメリカへ参りましたが、私ほとんど英語がわかりませんし、話すことも読むこともできません。まつたく盲が象をなでるようなつもりで見て参つたのであります。従つて直感的な見方だけでございます。大方の問題につきましては、すでに森さんや小林さんからお話がございましたし、時間も非常におそくなつておりますので、簡單に要点だけ御報告申し上げたいと思います。  一つは、アメリカ農業をわれわれが見まする場合に、常に日本と比較されるのでありますが、一応比較をいたしてみますと、今お話がございました通りアメリカの農民は全体の人口のわずか一六・七パーセント、百人の中で十六・七人というように、非常に人口割合が少いのであります。その十六人か十七人くらいの比率で、一軒あたりの農家の反別は、平均いたしまして大体二百七十エーカーであります。これは全アメリカの大体七〇%を占めておるのであります。あと三〇%のうち、約二〇%が二百七十エーカーの耕地面績であります。三百七十エーカーと申しますと、大体日本の百八町歩という計算になります。従つてあと一〇%が大農であります。つまり農業労働力を雇わなければ経営のできない大農は全体の一〇%ぐらいしかない。農業労働力は全農家の三%ぐらいしか雇つていない。アメリカ農業は、ほとんど家族農業であるということがこれでわかるのでございますが、この二百七十エーカー、すなわち百町歩を耕作いたしております農家の所得は、一体どのくらいあるかということを調べてみますと、大体畜産と穀類と両方競合して、多角経営をやつておるのが多いのでありますが、その平均をとりますと、大体年四万ドルの農家収入であります。そこでその中で農家の直接必要といたします種子類とか、肥料とか、農機具購入代金とか、農業労働費とか、所得税とか、そういうものを差引きまして、農家の純益として残ります分は一万三千ドル、これを日本の金にいたしますと、大体四百五十万円であります。そういうぐあいに、大体全体の農家の約七〇%以上が、年間約四百五十万円の実際収益を上げておることになつております。かくのごとく農業収入が確保されておるのは何ゆえか。われわれはその裏づけを考えなければなりませんが、今小林さんや森さんからお話がございました通りアメリカの巨大な機械農業をわれわれが見て、日本のような段々耕地を見まして、とうてい問題にはならぬ。こういうことでございますが、しかしアメリカ農業が、今日かくのごとく巨大な収入を上げ得る原因は一体何かということであります。そこでアメリカ農業が今日都市商業資本に対応して成り立つております土台の一つは、アメリカの政治の動かし方、いわゆる農政の確立です。特に農業生産物の価格維持の政策、それから生産力を高めます技術と金融の面、この面に対しての政治的な手が非常に強力に打たれているということであります。それを推進するものとして、さきに話がございましたアメリカにおける有力な農業団体がある、こう私どもは考えておるのであります。中心をなしますものは、何と申しましてもアメリカの教育のやり方であり、特に農業教育普及について、政府、民間、大学が打つて一丸になつて強力な展開をやつておる。この点はわれわれ日本においても十分学ぶことができ、吸収することができはせぬかと見て来たのであります。今申しましたように、農業政策に対する強力な推進体としての、農民団体が三つある。そのうちに特に政治的に働いておりますのがフアーマス・ビユーローであります。フアーマス・ビユーローの活動のやり方は、まず組合の基礎を確立するために、組合の財政的な確保に全力をあげておる。つまり一方に組合みずからがいろいろな事業を別個に経営いたしまして、その経営において組合の財政を確立する。十分活動できるだけの財政をそこからまかなつて、組合員に大きな負担をかけないようにする。こういうやり方をとつております。その事業はまつたく普通の営利会社と同等の事業を経営して、火災保險とか、生命保險とか、自動車保險とか、購買、販売、利用等の事業を、会社組織で株を持つて経営しておる。ある州の組合のごときは、一年間に四十五ドルも払いもどしをしておる。組合費は一年間十ドルでありますから、組合費の約三倍以上も払いもどしをやつておる。従つて組合員の負担はほとんどかからない。逆に組合に入つておることによつて利益を得ておる。こういうような組合の財政的基礎を十分確立して、その上に立つて、一番重要な農業生産力向上に必要な農業改良普及事業を、州とタイ・アツプして、大学とタイ・アツプして、この三者一体となつて強力な運動を展開しておることは、すでに森さん及び小林さんからお話があつた通りであります。農業改良普及に対して非常な力を入れておるという点は、今後われわれ日本農村においても、また日本農業団体においても、注目すべきことではないかとわれわれは考えて参つたのであります。  その次に重要な点は、農家生産を高め、農業経済を安定させるために必要な法律、予算を、全力をあげて獲得しておるということであります。このためにおのおのの団体が、それぞれワシントンに政治部局員を駐在させておきまして、組合から要求されて参ります法律案、または予算案、こういうものの国会通過に非常な手を打つておるということであります。また国会でいろいろ農業関係のことが審議されることを、ことごとく末端の組織に敏速に情報として流しまして、組合員の政治的な意欲を高めるとともに、政治をして農業政策を確立させる方向への運動を、きわめて活発に展開しておる点は、日本農業団体とは違うのでありまして、この点は、われわれ大いに今後わが国の農政を確立する上において、農業団体の奮起を促さなければならぬと考えるのであります。  そこで問題は、最近のアメリカ全体の動きと農業との関係でありますが、御承知通り、朝鮮動乱を契機にして、従来のアメリカの平和政策が急激に準戰時態勢に切りかえられて参りました。そのことを最も端的に証明するものの一つといたしましては、アメリカの本年度国会にかかりますところの予算の問題であります。この一九五二年度、七月一日から来年六月末までの一年間の予算案は、総額七百十六億ドルと言われております。この七百十六億ドルのうちで、直接軍事費が四百十四億ドル、外国援助が七十五億ドル、公債利子支払いが五十九億ドル、復員者費が四十九億ドル、その他百十九億ドル、こういうことになつております。これをさらに農業関係ではどういうことになつて現われて来ておるかというと、従来電力関係に非常な金を使つておりまして、一九五一年には電力、電化の問題に約五百万ドルの経費を支出いたしましたが、本年に入りますと、これが百十万ドルに下つております。逆に農業生産品の向上、土地改良、こういう面にはそれぞれ増加されまして、一九五一年に、土地改良には四百万ドルが、本年度では四百五十万ドル、生産品を増強する必要な経費として三百万ドルが本年は三百五十万ドル、農村金融が百七十五万ドルが二百万ドル、こういうぐあいに全体的に非常にふえて来ており、特に注目すべきは、日本では行政費といいますか、農林省の役人の経費が非常に多い。ところがアメリカでは役人の経費はまつたく少いのでありまして、わずかに十一万ドルぐらいしか使つておりません。全体のわずかに一一%であります。こういうぐあいに農業予算の内容を調査いたしてみましても、非常に生産力を高め、食糧確保に全力をあげておるという点が明らかにされておるのであります。しかもアメリカの国会や州議会をわれわれが傍聽して感じましたのは、日本のように法律を簡單に可決し、きめる国はおそらくないだろうと思います。アメリカでは、法律が提案されるまで、たとえば農業関係の法律でございますと、さきに申しましたいろいろな団体から、まず村の会合でいろいろ相談をいたして、それから郡の会合へこれを持つて来て、郡の会合から州の会合へ持つて来て、そこで州に関係のあるものは州議会へ、さらに国全体の影響のあるものは連邦国会へ持つて行きますが、その持つて行く間に、たとえば農民団体なら農民団体の大会で決定されますと、そこで郡におきましては、三人から五人の專門委員にこれを付託します。さらに州においては十二人ぐらいの專門委員に付託します。また連邦においてもそれぞれの專門委員に付託いたしまして、ここで約三箇月ないし一年の長い日時をかけて、法律関係や予算関係を一切調査いたしまして、組合からは完全な一つの法律案として議員にこれの提出方を頼んで来るわけであります。そこで議員はそういうように非常に練られた、しかも組合全体の意思に基く案件でありますから、国会にこれをただちに提案の手続をとります。提案の手続をとりますと、今度はこれら関係の各種団体、あらゆる人々がその法案の審議に、いわゆる公述人として、日本でいいますと公聽会というものがしよつちゆう開かれておりまして、その公聽会にはだれでも出て来て、議員とお茶を飲んでいるような形で、法案の審議について検討し、懇談をし、やつております。まつたく民主的といいますか、法案を愼重審議しておるといいますか、あらゆる利害関係者の意見を十分聞いて、しかもその上で通るというのが——一人の議員が一国会に百幾つの法律案を出しますけれども、実際通るのは一つか二つ、なかなかそう簡單に法案が通らぬそうでありまして、それほど法案の審査に愼重であつて、また国民のあらゆる要求というものが、ちようど日本の請願のような形で法案として国会に提出されます。しかしそれが上程されますと、今申します通り、いろいろな形で、審査が非常に微に入り細をうがつて行われますから、成立いたしますのはほんのわずかしかないというぐらいに、法案というものは国民に非常な関係を持つて来るので、きわめて愼重な態度でやつておりますのと、それからいま一つ、役人や軍人というものがほとんど国会では問題にされていないのであります。アメリカの連邦農林委員会を見ましたが、ちようどこれよりももつと高いところに、楕円形に委員がずつと二十四人すわりまして、政府はその下の方に、ちようど検事、判事が上の方におつて、被告を見下げるような形で、議案審査をやつております。そうして政府委員席なんというものは全然ないのです。横の方からちよこちよこと出て来て、政府にいろいろ必要なことをしやべらせますと、今度は議員が四方八方から寄つて政府委員のいろいろな報告といいますか、答弁に対して鋭い批判を浴びせかけておりますが、国会が非常な権威を持ち、また議会が非常な権威を持つてつておるという姿を、われわれは直接見て参つたのであります。それは單に権威のための権威ではなしに、ほんとうに民衆の信頼を受けた権威として、実際の法案の審議を愼重に取扱つておるという点は、われわれも今後大いに学ばなければならぬと考えて参りました。  なおアメリカの全体を私どもが見まして感じましたのは、アメリカが今日わずか二百年にしてあれだけの大きな富と、科学と文化を築き上げましたのは、何と申しましてもアメリカの教育制度にあると私どもは見て来たのであります。州の予算を見ましても、その六〇%が教育費であります。このことはわれわれは大いに驚嘆すべきことでありますが、日本のように、予算のわずか二%か三%が教育費であるというのとはまつたく違つて、非常に教育を徹底させて、しかもその教育は、個人の特技特能を百パーセント生かして、しかも社会共同生活のできる人間をつくつて行くというやり方でもつて、実際役に立つ人をつくることに全力をあげておることは、アメリカのあの富と科学とを結びつけたときに、アメリカの将来についてわれわれは大きな関心を持つておるようなわけであります。少くとも今後わが国におきましても、平和的な文化国家をつくろうとします場合は、もつとお互いが教育に対して積極的な力を注ぎ、科学技術の点にもつと力を注がなければ、とうていこれら先進国に太刀打ちはでき得ないという点を、われわれはひしひしと感じて参つたようなわけであります。  いろいろ詳細なことについて、お話申し上げる時間もありませんし、またその必要もございません。すでにアメリカに関するいろいろな報告がされておりますし、文書、図画等も出ておりますから、それらによつて十分御存じのことであります。私は單にアメリカをかけずりまわつただけのことで、別に專門家であるようなつもりで報告する資格を持つておりませんから、以上をもつて私の報告にかえる次第であります。(拍手)
  12. 千賀康治

    千賀委員長 この際三君に対して何か御質疑があればこれを許します。
  13. 遠藤三郎

    ○遠藤委員 ただいまアメリカ調査団の三君から貴重な御報告を聞きまして、私ども非常に参考になつたわけであります。願わくは詳細な報告書をぜひいただきたいと思います。  なお少しお伺いしたい。アメリカのことしのニユー・クロツプの状況について、綿と小麦と大豆について大体の見当がついておりましたならば、ここでお話いただければ非常にありがたいと思います。  もう一つアメリカ農業経済の推移であります。今井上さんから大体のことを伺つたのでありますが、農家経済の推移について、どなたか御調査なさいましたならば、ここで教えていただければ非常にありがたいと思います。と言いますのは、アメリカの新しいクロツプが、日本農業に非常に大きな影響を持つておる。それからアメリカ農業日本が学ぶ場合に、その農家経済がやはり基本になつておる。アメリカ農業における農家経済と日本農業農家経済というものを比較対照し、そこからあらゆる問題が出て来ると思うのです。もし今日資料をお持ちでないようでございましたならば、あとでもけつこうでございますからお願いいたします。
  14. 井上良二

    井上(良)委員 さきの綿花、小麦、大豆の点でございますが、これも向うから参考資料をもらつて来ておりますから、それぞれ報告されると思います。大体申し上げますと、綿花は世界的に非常に不足をいたしておりまして、特に綿作地帶を私ども見て参つたのでありますが、アメリカ自身において綿花の需要が非常にふえて、海外に対する輸出が非常に問題にされておるときであつて、しかも綿作は畜産その他の農業生産に比較して、それほどに有利でないというようなところから、大体これは黒人地帶に多くつくられておるのであります。そういう関係で、綿花栽培に対する政府のいろいろな保護奨励というか、たとえば金融において、あるいは市場価格の維持において、海外市場の状況を迅速にとらえるというような、いろいろな角度から対策が講じられております。綿花の将来というものは、決して日本において楽観を許さないアメリカの綿花事情であると、われわれは大体にらんで参つたのであります。  それから小麦状況でありますが、最近アメリカ人の食生活の嗜好が変化して参つておりまして、従来肉、パン及び牛乳アメリカ人の主食であつたわけですが、最近アメリカ人の文化程度が高くなり、生活程度が高くなつて参りました関係で、アメリカ人の鶏卵を使用する量が非常にふえております。それからバター、チーズ、こういうものが相当ふえて来ておるという点から、小麦というものの使用が漸次減つておるという状況にあるようであります。それで小麦地帶の方は牧畜と輪作関係状態になつておりまして、牧畜の方が非常に有利であります関係から、小麦は、どつちかといえば外国相場に非常に影響される関係もあつて、いろいろ品種改良や病虫害の防除等の研究もされておりますけれども、将来非常にアメリカで大きく発展して行く農産物のようには、私ども受取れないように感じて参つたのであります。それに反して、大豆は最近新しく農作物として大きく上つて参りまして、ここ数年間大豆は驚異的増産になつております。しかも大豆の用途が非常に普及して参つたと申しますか、新しい目をつけたと申しますか、そういう点で大豆に対する関心はきわめて高い、そうして国内の需要も相当大きく伸びて参つておりまして、アメリカはどんどん大豆が増産されておるが日本に輸出するというような余裕はそう期待できないということを、ある者が申しておりましたが、大豆の生産というものは飛躍的な生産を遂げて来はせんかと見ております。たとえて申しますと、昨年は大体二百八十万トンの大豆がアメリカ生産されておりますが、本年は三百五十万トン生産されはしないかと言われるほど驚異的な数字を示しておるのであります。  それから農家経済の推移でありますが、これはもうすでに御存じの通り、終戰直後アメリカ農産物は非常に下落をいたしまして、例のブラナン・プランが問題にされるほど、農産物の価格を一体どう維持するかという問題にまでなつて来ましたが、最近朝鮮動乱を契機といたしまして、農産物の価格が非常に安定して参り、上昇線をたどつて参りましたから、最近のアメリカ農家の経済状態は、非常によい方に向いていると私どもは見て参つたのであります。ただアメリカ日本と違います点は、さきに小林さんからも、また森さんからもお話がありましたが、非常に大規模農業でありまして、市場価格が幾らで取引されているかということを敏感に各農家は関知して、少しでも高いところへ、少しでもよい値で売ろう、安ければ売らぬということで、農業協同組合の穀物倉庫というものが至るところに大組織を持たれておつて、そこへ保管されておる間は、ちやんと農林金融が短期でつけられておりまして、価格の下落を防止するとともに、適正価格で処分し、販売する組織といいますか、機動的な組織が金融的に完備しておりますので、そういう点からアメリカ全体の農家経済というものは、非常に政治面の力において保護されておるというか、裏づけされておるというか、そういう点で、私はそう簡單に悪くなるという見通しは今持つておりません。逆によくなつて行くのではないかと見ておりますし、アメリカの農民の話を聞きましても、都会の中産階級以上の生活が保障されるだけの収入がなければ、農業のような危険な仕事はやらないと言うほどに、農業の収入というものに自信を持つてつておるようであります。なお農産物の価格の動きとか、それによる農家経済の推移というものについて、農務省で出版されておるものを資料としてもらつて来ておりますから、いずれ專門員等に渡しまして、翻訳をしてもらおうと思つております。
  15. 千賀康治

    千賀委員長 他に御発言がなければ、午前中はこの程度にいたしまして、午後一時半から麦の生産者価格の追加払いの件及び油糧の件について調査を行います。  暫時休憩いたします。     午後零時四十七分休憩      ————◇—————     午後二時二十四分開議
  16. 千賀康治

    千賀委員長 休憩前に引続きまして、ただいまから農林委員会を開会いたします。  まず油糧に関する件を議題にいたしまして、質疑をお許しいたします。通告がございますのでこれを許します。井上良二君。
  17. 井上良二

    井上(良)委員 政府責任者が見えておりませんが、当面の所管課長の中村油脂課長が見えておりますから、長官が見えますまで、事務的ないろいろなことについて伺いたいと思います。先般新聞の報ずるところによりますと、油脂類の輸出を、一部緩和して輸出するようなことが新聞に出ておりましたが、これは事実ですか。その点をまずお伺いいたします。
  18. 中村義夫

    ○中村説明員 その点についてお答え申し上げます。昨年の暮れから本年にかけまして、油脂の需給状況が非常に悪くなりまして、本年の二月八日に油脂の全面的な輸出禁止をいたしたわけであります。その後政府の輸入促進、備蓄輸入ということによりまして、民貿買付の油脂の輸入が相当量進んだわけであります。数字的に申しますと、一月—三月の民貿におきまして、油換算大体十三万トンの契約ができまして、それに国産の油脂原料の増産と相まつて、本二十六年度四月から一箇年の計画を二十八万トンと出しておりましたが、油糧公団の手持ちの三万一千トンと、国産のものと、今申しました一—三月の民貿買付けによる十三万トンを合せますと、大体二十八万トンの供給見込みが立ちましたので、需給上影響の少い油脂については、輸出を承認してもよいのではないかというようなことで、通産、安本協議いたしまして、先週の二十五日に正式に輸出することになりまして、公表いたした次第でございます。輸出の対象になつておりますのは、国産として輸出した方が有利と思われます菜種油、米ぬか油、しようゆ油、いわし、にしん油を除きました魚油、蚕蛹油、国内産のものとしてはこれを輸出することが得策だというものを認めたわけであります。但し菜種油は当初三万トンの計画を持つておりましたが、戰前以上の菜種の増産を見まして、本年約五万トンの油の生産見込みが立つておるわけでありまして、大体今のところ二万トン程度のものは輸出してもさしつかえないのじやないか、こう存じております。これは数量的な制限をすることにいたしまして、こまかい数字については安本、通産省と協議することになつております。  それから生産が少くて事実上あまり影響のない油、すなわちあさ実油、からし油、とうもろこし油、え油、けし油、ひまわり油、パーム核油の輸出禁止を解除するということになつております。  それから原産地関係で、内地で加工して出した方がいいというようなもの、すなわちごま油、これも数量的な制限を条件として輸出を承認することにいたしました。それから需給上影響があるものでありまして、現在公団手持ちのもので、一—三の民貿で相当輸入契約のできておるもの、落花生油、綿実油につきましては、公団のものについて輸出を許すということで、先週の二十五日に輸出を承認することにいたしたわけでありますが、貿易管理令によりまして、あくまで許可品目でありますので、内地の需給上影響がある際には、そのときに禁止をするということで承認することになつたわけであります。
  19. 井上良二

    井上(良)委員 年間を通して二十八万トンの油が確保される見込みがついた。だからこの線より多少ゆとりのあるものについては、業界その他の要望もあつて、輸出をすることに同意をしたというお話でございますが、油脂行政を一手に担当されておるあなたは、二十八万トンの油で国民は十分需要を満たしておるとお考えですか。これが一番の問題の根拠です。それをまず伺いたい。
  20. 中村義夫

    ○中村説明員 お答えいたします。二十八万トンの計画は、食用油十万トン、工業用油十八万トン、計二十八万トンの計画であります。これは昨年の食用油八万トン、工業用油脂十二万トン、計二十万トンに対しまして、人口の増、所得の増を考慮いたしまして、二十八万トンの計画を立てておるわけでありますが、この食用油十万トンと申しますと、国民一日一人当り三グラム半ということで、これではもちろん少いと考えております。安本の国民栄養対策審議会の答申によりましても、一般油脂として、肉その他からとる油も合せて二十五グラムでありまして、單体油脂とすれば十グラムという答申が出ております。それからしますと、三分の一でありまして当然少いわけであります。国民の脂肪の摂取をよけいにするようにして行かなければならないということは当然のことでありまして、それには価格を安くするようにして、国民に安い油が提供できるようにしなければならない。現在の購買力をもつていたしましては、三グラム半程度でも消費はなかなかむずかしいように思つておりますので、油脂課といたしましては、技術の向上、経営の合理化をはかりまして、食用油脂は少くとも安く提供できるようにしたいと考えております。工業用油脂十八万トンにつきましては、これは通産省の所管になりますので、そちらの方から回答していただくようにいたしたいと存じます。
  21. 井上良二

    井上(良)委員 そうすると、食糧庁の方では、一日三グラムの油を配給すればあとは余りものとして、それ以上配給する必要はないというふうに考えられる危險が、今の輸出問題にからんで起つて参りますが、そう解釈してさしつかえないのですか。
  22. 中村義夫

    ○中村説明員 現在は配給でなく、統制ははずれて自由であります。昨年の八万トンの食用油脂におきましても、昨年は大体三グラムの計画でありましたが、統制解除直前には、配給辞退もありまして、十万トンあれば現在の状況ではさしつかえない、こういうふうに考えております。
  23. 井上良二

    井上(良)委員 問題は、自由販売になつてつて、国民が必要ならば買うであろうから、だから国民の購買力がかりに十万トンなら十万トンという一つの目途をつけまして、それだけ政府は国内に確保しておけば、あとはいらぬのだ、こういうふうに安易に考えて輸出を承認したのではないかと思う。昨年の暮れに朝鮮動乱に巻き込まれて、御承知通り、中共から入る大豆が輸入禁止になつて、このためにただちに国内の油脂資源というものは非常に重大な危機に立ち至つたことは、よく御存じの通りであります。われわれはこの日本油糧資源の不足を打開しなければならぬとして、アメリカに渡りました機会に、アメリカ政府及びアメリカ関係方面に対して、朝鮮動乱による中共大豆の輸入の杜絶に対する補填をアメリカ大豆によつて補おうとして、アメリカから日本へのガリオアその他による大豆の輸入に、非常な努力を私どもはいたして参りました。その努力が払われます前に、国内のいわゆる油糧の状況はどういう状況にあつたか。またみそ、しようゆ等の状況はどういう状況になつておつたか。まつたくどうにもならぬという見通しが立てられておつた。当時はいわゆる持越し保有をしてもかまわないから、輸入を確保しなければならぬというくらい、輸入という問題に必死になつておつた、ところが計画のない民貿その他のことからして必要以上の契約がされておるということを見越して、そこで一般の購買力が下つたということと関連して、油糧界全体が不振であるというこの現状だけにとらわれて、輸出を促進しようとされておる。これほど危險な油糧対策はないのであります。現在油脂というものは、国民生活に実に必要であり、将来わが国食糧構成をかえなければ、国民の健康は維持できないという見地から、私は油糧問題を非常に大きく取上げて来ておる。現にあなたが御指摘の通り日本人の今日の油脂の必要量は、單体食用油で十グラムであるということは、はつきり結論が出ておる、それが何ゆえ三グラム以下で消費されておるかという、その原因を突きとめねばならぬ。もちろんこれはわが国の国民の食物に対する嗜好もあるかもしれませんが、現実に油脂というものが非常に高くて、使いたくとも使えないということなんです。これを下げる政策をとることが必要なんです。その下つたことに対して必要な手当を政府が講ぜずに、野放しにしておけば、それでいろいろな混乱が油脂界に起つて参ります。現にわれわれがアメリカからの相当多くの大豆の輸入を促進して参つて、十幾万トンの大豆が入ろうとしている。この入ろうとしていることに対して、何ら政府は手当をしていない、そこでどうしてもしかたがないから、必然的に安くてもたたき売る、買手を探すということは、私企業の当然の経済であります。そういう点に対して、国策的に何らかの手が打たれていないというところに問題があるのではないかと思う。だから問題は、少くとも食糧庁としましては、三グラムでは足りないということは事実であります。だから一応五グラムにし、七グラムにし、十グラムに持つて行くという政策をとらなければならぬ、それを、購買力が下つて、年間十万トンあるならば何とかやつて行けるから、あとはいらぬ。こういうことで輸出を簡單に賛成をされたのでは、油糧行政というものは成り立ちません。これをどうお考えになりますか、そういう政策は必要ないと考えられますか、これは非常に重大な問題だから、私は特にあなたに伺いたいのです。食糧庁長官にこんなことを言うてみたところでしようがない。現実にあなたが油脂行政を一手に握つておるのでありますから、あなたの考え方が一番大事ですから、その点をまず伺いたい。
  24. 中村義夫

    ○中村説明員 十グラムの点は、これは私個人の考えになるかもしれませんが、澱粉八五%、脂肪が三%、蛋白が一二%というのが日本食糧の戰前の状態でありまして、ヨーロツパの中流農家食糧が、澱粉が七四%で、脂肪が八%、蛋白が一六%です。そこで蛋白の一二%を一六%近くまでにし、脂肪の三%を八%にするということはなかなか容易ではないので、少くとも五%ということを目標にして今まで戰前はやつて来たわけであります。それに今までの油脂原料の価格は、油にウエイトがかかつておつたわけでありますが、先ほども申し上げましたように、これに技術の改善、経営の合理化を加え、油脂原料の各成分の有効利用をはかることによりまして、油にかかつておりましたウエイトを下げて、国民に安く提供するようにして行きたいと考えております。  それから輸出の問題でありますが、一月—三月の民貿によりまして、意外にも輸入が働いたわけでありますが、年間とすれば当然必要量でありまして、政府の特別の会計によつてこれを買い上げて保管するというようなことができればということを進めておりましたが、これはなかなか容易でないことでありまして、たまたま輸入が意外に進んでおりますので、インポーター並びにメーカーの立場も考えまして、需給上さしつかえないものについて輸出の承認をするということで、余つたからやるというような考えはございません。
  25. 井上良二

    井上(良)委員 余つたから輸出を承認したのではない。そうなりますと、結局メーカーの金繰りの関係から、また油脂の価格が暴落するというようなことから輸出を承認したとすれば、メーカーの方に対する融資その他の対策を政府が親切に講じてやれば、その必要はないと思う。現に重要物資については、日銀の引受によるスタンプ手形というものが使われておる。特にガリオアその他によつてつて来る、またどうしてもこれを必要とする大豆その他の油脂原料について、何でスタンプ手形が利用できないのか。そういう面についても政府の手厚い手当がない。だから資本の貧弱なメーカーは、公団の滞貨しております三万トンや、あるいは予想され得る民貿の買付というものが入つた場合に、さらに値下りするのではないかという不安がある。そこで国内の滞貨を一掃して、いわゆる先高見越しを立てて商売をして行こうというのが、商人の考え方であります。それにあなた方が乗つてはたいへんですよ。そういう点が私は非常に危險だと考えている。現に重要な菜種油あるいは落花生油、綿実油等が輸出の対象に取上げられておりますが、御承知通り菜種は相当豊作で、相当供出もされると思いますが、しかし現実にこのまま放つておきますならば、結局生産農民がたたかれてしまう形になりますから、この菜種の買入れについても、一定の保証を政府がしてあげて、たとえば中金ならば中金の金融を農業協同組合その他につけてやるというようなことによつて、十分国内保有ができる。それを輸出にまわして行くという方が手取り早いかもしれませんけれども、それほど国内の油脂資源というものの前途が安心できない状態にあるのに、そういうわれわれの血に等しき一滴を輸出に向けるというばかなことはないと思う。これは通産省の人が来ておるかしれませんが、綿実油あるいは落花生油等の輸入をしましたときの価格と、今度輸出をします場合の価格は、一体どうなつておりますか、その点も一応御説明願いたいと思う。
  26. 細田茂三郎

    ○細田説明員 お答えいたします。今スタンプ手形なんかをなぜ考えないのかというようなお話がございましたが、実は私どもがこの問題を事務的に折衝いたしましたのは三月ぐらい前でありまして、日銀の事務当局が完全に賛成してくれまして、そういう油脂事情であるならば、融資をつけてある程度持つておることは当然だというので、少くとも担当の理事の方くらいのところまでは全部話はつきました。私どもの方では、今にもやつてくれるかと期待しておりましたところ、最近に至りまして、もつと上の方から、單なる油脂だけの問題ではなくて、スタンプ手形制度そのものを、これ以上新規なものは認めないという大きな方針から反対されたようでありまして、頓挫をして非常に残念に考えております。その点につきましては、その後われわれだけでございませんで、もつと上の方においても政治的にお考えを願いますように手続きを進めておりますので、御了承いただきたいと思います。  それから輸出につきまして、私ちよつと遅れて参りまして、よく井上先生のお話を伺えなかつたのでございますが、もちろん私どもも目先余つたからといつて、すぐそれをはいて楽をしようという、そんな考えはないのでございます。従いまして慎重に検討をいたしまして、全般的に輸出を認めたというようなかつこうになつてはおりません。個々に当りまして、とにかく当面の需要を十分にまかなつており、かつ今後もまずまず心配がないというものだけにつきまして、しかもそれは自由にかつてに輸出してよろしいというのではありませんで、御承知のような許可制でございまして、申請がありますれば、ある範囲のものだけは認めよう、こういうふうなことでございまして、御心配になるように、そのために油脂が非常に出て行つてしまうということは、まずまずあり得ないだろうと考えます。
  27. 井上良二

    井上(良)委員 根本的に日本に油脂原料が自給できる状態にあるなら問題はありません。ところが日本の油脂原料のほとんどは海外に依存しなければなりません。現に大豆その他落花生等におきましても、わが国においては相当大きな油脂原料になつておる、国民蛋白資源になつておるわけです。そういつた重要な血の一滴にひとしいようなものを海外から輸入をして相当高い価格でそれぞれ原料関係は輸入しておるのです。それを今度また輸出をするというのは、一体どういうことです。そんなべらぼうなことはあり得べきことではないじやないか。現実に必要な手当てを加えて国で保有しておくべきものであつて、ただ国民的な需要がないものならないで、それなら輸入の方も制限をして、外貨をためて、必要なものを輸入すればいい。輸入の方は野放しにしておいて、国内でダブつくからどんどん輸出して行く、そういうやり方というものはあるべきものではないと思います。また現実に輸入した原料で製油をいたしまして、これを今度海外に出します場合のコストというものは非常に違つておるのです。現実に一体綿実油なら綿実油を何ぼで海外に出そうとしておられますか。おわかりならそれをお教え願いたいと思います。
  28. 細田茂三郎

    ○細田説明員 お答えいたします。私どもはまだ一つも具体的に許可をしたものがございませんので、綿実油が大体どのくらいで出るかということは、はつきり申し上げかねますが、最近いろいろ輸出を引合つております筋の大体のうわさを伺いますと、現在の内地の市価よりは二、三割高い値段で輸出の引合いができるのではないかというふうに思われております。  それから先ほどちよつとお答えを漏らしたのですが、菜種の問題等重要なものを考えるべきだというお話がございましたが、これは私どももまつたく同感でございまして、現に非常に油脂関係がだぶつきまして、底なしのような状態になつております。そのさ中に菜種が出まわつて参りますと、生産者は非常にたたかれるという結果に相なるのだと思います。これではせつかく増産の機運に向つておりまする菜種の生産を阻害するということが非常に明瞭でございますので、何とかこれにつきましては、放任でなくて、ある程度の価格安定に資する方策をとつて参りたいということを考えまして、目下いろいろ検討をいたしております。近く成案を得ましたならば、関係のところで御協力を願いまして、ぜひ実現のできるようにいたしたい、こういうふうに考えております。
  29. 井上良二

    井上(良)委員 非常に大事なことですが、細田さんに伺つておきます。油脂課長にもちよつと聞いたのですが、政府は現在のいわゆる自由販売になつております価格は、妥当な価格だと考えておりますか。もつと下げなければならぬと考えておりますか。つまりあなた方は、われわれの世帶で油というものが、あの値でいいとお考えですか。もつと下げてもいいと考えておりますか。もつと上げてもいいと考えておりますか。これを輸出すると当然上りますよ。上らないまでも、市価は維持されて行きますよ。油糧行政を担当するあなた方としては、そこが大事な目のつけどころではないですか。下つ行くということなら、国民の生活がそれだけ潤うて行きますが、現状の価格は今日の賃金べースや今日の収入では高いのです。それをあなた方はどうお考えになりますか。これがわれわれの輸出について考える問題の分岐点です。私どもはもつと引下げて、もつと大量に油を国民生活面に消費させるような政策をとつてもらわなければならぬと考えておりますが、あなた方のやつておることは、それと逆行しておるのではないですか。それをどうお考えになりますか。
  30. 細田茂三郎

    ○細田説明員 価格を高いと思つておるか、安いと思つておるかというお話は、むずかしいと思うのでありまして、率直に申しまして、われわれはこれ以上下つたら、おそらく製油家も相当倒れるであろうし、インポーターも倒れるであろうし、それがまわりまわつて価格にも影響する。これは油脂だけに限らず、いろいろなところに関係がある問題だと思いますが、油脂だけを取上げましても、そういつた性質の問題だと考えます。なるほど消費者の家庭生活という関係から行きますれば、安いに越したことはございませんけれども、そこにはおのずから均衡点があるわけでございましようから、これ以上下がるというようなことについて、何もしないで放任をしておくということは、まつたくできないことだと考えます。従いまして、方向としましては、今おつしやいましたように、たとえば政府がこれを抱くとか、あるいは特別の金融をつけてこれを保管するとか、何らかの措置を講ずることができますならば、もちろん私どもも理想的だと考えるのでありまして、そういう意味におきまして、スタンプ手形の方も、あるいはまた公団の在庫として三万トンばかりの油を持つておるのでありますけれども、そういうものを一時たな上げをしたいということも、われわれとしては考えたのでありますが、いずれも今申しましたように、主として財政の方の当局からの反対が非常に強うございまして、実現を見ないのでございます。そこでこれを少しぐらい輸出をしても内地の実需には大した影響がないというものだけを選定をいたしまして、しかも量的にも先ほど申し上げましたように、無制限に出すわけではありませんで、そのときの需給の成行きを見まして、そう影響のない程度のものを許可をして行きたい。それからもう一つ、海外の方からながめてみますると、今油を買い得るところはイギリスでありますとか、西独でありますとか、ごく一部のところであろうというふうにくろうと筋から言われております。従いまして、これを開いたからといつて、非常に大量の油が出て行くということは、まずまず考えられないというのが大体一致した見解でございまして、そういう意味で私どもの見方では、このある程度の種類のものだけを限つて若干やるということぐらいでは、そう御懸念になるような結果にはならないのではないか、こういうふうに考えております。
  31. 井上良二

    井上(良)委員 そうしますと、大体許可輸出するという対象になつておる油は、どのくらいの数量に上つておりますか。それからこのまま放つておけばメーカーが倒れ、貿易業者が困ると言いますが、貿易業者が大事か国民が大事かということを聞かなければなりませんが、もちろんメーカーも大事であり、貿易業者も大事でありましよう。それらの人の金融その他に困る方面については、政府はあらゆるものに対して金融のそれぞれの法的措置や予算的措置を講じておるのでありますから、こういう重要な国民の栄養資源である油糧については、政府政策を立てて、そういう対策を講じておけば問題はないと思う。現にこれ以上下つたのではメーカーも困るし、貿易業者も困る、こう言うが、大体一升の油が三百五十円も、四百円も五百円もしておるというようなことでは、とても働く大衆はそんな油を使用することはでき得ない。だからもつと安くする。幸い国内に油がだぶついておるなら、多少は安く売つてやる。安く売ることによつて、高い原料を仕入れて非常な損害をするというようなものについては、それぞれまた対策を講じて行けばいいのである。この重要な油を、何かぜいたくな物のように考えて、これに手当をすることをもつて特別な人を助けるというような考え方をしては困る。これは国民全体の栄養保健に重大な問題を持つておりますから、そのつもりでもつと強力にあなた方は主張されたらいい。その御主張の仕方がその方に対して足らぬじやないか、そういうことについては議論になりますからやめておきます。そういうものを他に出すことは、実際は日本の貿易上の重大な信用に関する問題であつて、向うからいい品物が入つて来るのに支払いができない、あるいは支払いを延期して行く、またキヤンセルということになりますと、当然相手の信用を落しまして、次の契約に重大な支障を来して来る。そういう点から、特にこの油脂資源については、特別な考慮を政府は払わなければならぬ、一旦信用を落すと、今後頼みに行つても聞かれないことになります。そういうことについて金融業者の特別な手当を国際信義の上から政府は考えるべきではないかと私は考える。そういう点について、十分な手当が政府としては行われていないということを、私は政府に申し上げて、政府の努力をお願いするのであります。さしあたり今申し上げました輸出してもいいという見込みのものは、全体で一体どれくらいなものになつておりますか、これをお示し願いたい。
  32. 細田茂三郎

    ○細田説明員 お答えいたします。ともかく先ほど申し上げましたように、輸出のことを考えるに至りましたのは、油糧公団が廃止になりまして、手持ちの油が大体三万四千トンばかりあるわけであります。これは御承知のように、十何年間の油糧統制の最後のものでありまして、品物等も大分品質が悪くなりかかつておるような物も中にはありましようし、おまけにとにかく三万四、五千トンのものが、ここでだぶついておるときに、どかつと出たのでは、御議論はあるかもしれませんが、とにかくたいへんな問題であるわけでありまして、これは先ほど高い物を買つて、安い物を出すのはけしからぬというお話もございましたが、手持ちのものは安い時代に買いました原料でありまして、売れば国としてもうかるという筋のものでもありますので、その意味におきましても、出したいというのが事の起りであります。しからばこの三万四、五千トンを持つておりまする中で、まず輸出の引合いのできそうなものは何かということでありますが、落花生の原油は三千四百トンばかりございます。綿実の油は三千トンばかりございます。この二つぐらいが引合いが目先可能ではないか。あとはやつてもおそらく引合いができないだろう、こういう程度のものでございます。それ以外に民間で持つておる油をどうするかという問題でありますが、これは全然輸出しないということをきめておるわけでありませんけれども、順位としましては、とにかく公団手持ちの物を輸出したい、その中で引合いの合うものだけは出して行きたい、こういう考え方でございます。確かに方針としましては、おつしやいますことが非常に正しいのであります。われわれもまつたく同感でありますので、これをどんどん出してインポーターだけを助けたいということは考えておりませんが、目先の問題になりますと、まずその程度の少量のものでございますので、そういう事実があつたということだけは御了承を願いたいと思います。
  33. 井上良二

    井上(良)委員 あなたのお話になりました綿実とか落花生というようなものは、国内でだぶついているのではない。現実に足りないのです。ただ価格の問題で外へ出した方が公団の赤字が少いではないか、国内へ販売すれば安く売らねばならぬというのなら話は別です。しかし綿実の滯貨は二千トンくらいであろうと思いますが、その二千トンの滯貨を国内で処分できないことはない。それはいろいろな用途に使われる油でありまして、国内で十分はける油であります。また欲しがつている油であります。ただ価格の関係が問題でありますが、そういう点はもつと検討すべき必要がある。余つて出すのではない。価格関係で出すということであります。そういう点で落花生についてもその通りであります。  また私はよく公団等でも話をしたのでありますが、三万四千トンも公団の在庫があるというけれども、これは公団の帳簿の上にある数字で、実際はそんなにない。実際はほとんど現物を製造メーカーにあずけてある。製造メーカーは金繰りのために、特別な油以外はほとんど大部分は処分しております。三万四千トンのうち二万トンもあつたらえらいことです。実際はほとんど金繰りのためにそれを処分している。メーカーのところへ行つてごらんなさい。現に一緒に行つて調べてあげてもいいのですが、うそではない。そういうわけで机えの上の数字で、三万四千トンも滞貨している。これを市場へ放出したら油は下つて来る。そこへ菜種が大量に収穫される。それがまた市場へ出て来ると油が下がる。この際少しでも外へ売り出せば、多少外へ動くということで油の相場が上つて来るだろう、金融もつくだろう、こういう大体の業界の動きをあなた方はつかんでおるのではないかと私はにらんでおりますけれども、国内の消費として実際要求されておるものを、どういうわけで海外に出さなければならないのか、もう少しあなた方御検討願わなければいけません。国内に出したのでは安い、海外に出した方が公団の赤字も少くなり、それだけ公団がもうかるわけだから、そこで海外に出す、しかもその値が何千円も開いておるのならば問題ですが、ドラム千円や二千円の開きで、そのため海外に輸出するというような、そんなばかなことはありませんよ。その点をもう少し検討してもらいたい。種油が非常に余つておるのかどうか知りませんが、現実においては非常に用途の多角的なもので、しかもこれは各方面から要求されておるところの油です。それゆえに政府は、この原油の輸入をどんどんはかつておるわけであります。そのようなものを外に出すというような、ばかなことはない。その点もう少し細田さん検討を加えてください。
  34. 原田雪松

    ○原田委員 私は一点だけお尋ねしておきたいと思います。生活様式につき、あるいは保健衛生上の見地から、井上委員より詳しいお話がありましたので、私は人を離れた動物の面にこれをくつつけて少しお話をしてみたいと思います。  今輸出見込みが合計五千五百トンあるということでございますが、将来いろいろのことを考えておるのでございますが、今の日本における米ぬか油の生産量はどのくらいになつておりますか、一応お尋ねしてみたいと思います。
  35. 細田茂三郎

    ○細田説明員 お答えいたします。油は四月、五月、六月に大体月七百トンから八百トンくらいずつとれる予定でありまして、年間にしますと、約一万トンくらいになるものと信じております。
  36. 原田雪松

    ○原田委員 家畜の飼料といたしまして、米ぬかは重要なる役割を果しておるのであります。油があり余つてよけいに出さなければならないということであれば、搾油をやらずに、少くともえさの方にまわしてもらいたいと思います。何となれば家畜は、御承知通り脂肪、蛋白を肉でもつて多分に供給しておりますので、その家畜を通しての蛋白カロリーの社会に又ぼす影響というものは、きわめて大きいと私は思います。これを脱脂したものでやることによつて、飼育の状態あるいは乳牛等におきましては、搾乳の状態等に非常に影響があると思います。むしろこれを輸出しなければならぬようなことならば、今申しましたように一石二鳥の効能がありますので、この搾油をそのままやめてもらいたいと私は思うのでありますが、そういう御意思があるかどうか、一応その点をお伺いいたします。
  37. 細田茂三郎

    ○細田説明員 米ぬかの搾油の問題については、御承知のように、従来始終飼料の方と油の方と意見が対立して、問題を起しておつたのでありますが、最近は原則としてなるべく搾油をして、そうして飼料にするというようにしたい。しかしその所その事情もありましようし、千篇一律にはそれが実施できない所もあるわけであります。その辺はその現地で一番事情をよく知つておる地方庁で裁定をしてきめる、こういうことで農林省の方から通牒を出しまして、そういうような扱いになつておるのであります。従いまして、私どもの立場からいうと、これはいろいろ御意見があるかもしれませんが、できるだけ油をしぼつて行きたいと思いますけれども、やはりそのときの事情で、とても油をしぼつても立ち行かないことになると、油をしぼらぬということになると思います。その辺はわれわれは非常にやかましく制限をつけるようなことはやつておりません。別にそういう方針を考えなくとも、実際のそのときどきの事情に合つた処置がとられていいのではないかというふうに考えます。
  38. 原田雪松

    ○原田委員 たいへん私の考えとは見解が違うのであります。搾油をやるという関係から、もちろん入札制度になつて各県でやつております。ところがその価格におきましては、マル公の三倍以上に買わなければ買えない。しかもこれは会社の方は資本的裏づけがある関係で、むしろ重要なる飼料の方面には入札ができない。そういう意味でしぼりかすを余儀なく、食わさなければならぬ、こういう段階にあるのであります。そういう意味合いからいたしまして、この価格の引上げということも、これは油をしぼるためにそういう会社の方に流れやすいというよりも、ほとんど流れてしまう。このわくでえさの方にまわそうという趣旨はわかつても、それがどうしても予期通りに入らない。だから養畜家諸君は、ずつと今日まで悲鳴をあげている。こういうふうに、よそへ出すような油の残りがあれば、搾油というものの数量を、当局においては限定する必要があると思うが、どうであるか。その辺をもう一点伺いたい。
  39. 中村義夫

    ○中村説明員 先ほどのぬか油の件でありますが、国産の油脂原料とすると、ぬかが量的に一番多いということでありまして、理論的な数字になりますが、二万トンくらいであります。しかし実際問題としては、酸化の問題とか臭化の問題とかいうことで、先ほどお話いたしました一万トンということになつておるわけであります。それから先ほどの入札がえらい高い値段だということでありますが、これは三月まででありまして、四月についてはえさと油の関係が六割で、四割は自由にする。五月については六割が自由で、四割を掲精工場から飼料の実需者、あるいは油工場に渡しまして、精米のときのマージンを考慮に入れて、食糧事務所と地方庁が価格を適当に指示いたすということになつております。
  40. 原田雪松

    ○原田委員 今の説明で六対四ということは私ども存じております、しかしそれがなかなかはかばかしく進んでおりません。しかも最近ぬか油を非常にとる、高く出すということは、輸出というものによつて油が高くなるから、ああいう高い値で買うのではないかと思う。だから政府の方で輸出をやるという声が非常に反響を呼んで、そうして搾油業者が買占めにかかつたのじやないか、昨年度のごときは、私どもの方で実は油糧関係の調査をやつたのでありますが、いずれもあまり振つておらなかつた。しかも米ぬか油というものは非常に酸性化しやすいもので、不良品がたくさん山積しておる。そういうようなことで、あまりよけい割当てても困るというような同業者の声を聞いておつたのでありますが、本年に入つてからこれを入札制度で三倍か三倍半で買つたというようなことは、輸出の額を政府が高めた結果においてそういうことになつたのじやないかと思いますが、その点はどうですか。
  41. 中村義夫

    ○中村説明員 それはそうではなくして、本年初めから油の需給見通しが非常に悪くなつたために、油工場の方でよけいに製油したいという気持があつてそういうことになつておるわけでありまして、輸出の問題にはほとんど関係がないと思つておるわけであります。
  42. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 先ほど井上さんからいろいろ御意見がありましたが、私もまつたく終始同感でありまして、同時に政府の方でも細田さんは、きわめて正しい意見であると、これまた共鳴されておる。従いまして、この正しい意見によつて油脂行政をやつて行かなければならないと思います。そこで価格の問題を伺いたいのでありますが、先ほどの油脂課長のお話によりますと、栄養の向上からいつて、三%の脂肪を八%に持つて行きたいという理想を持つておられるようだが、いかに六%、八%という理想を持つてつても、売る価格が高ければそれを食べられないわけであります。であるから、この三%を六%、八%に持つて行くのには、量をふやすと同時に、価格について政府一つの正しい基準がなければいけないと思います。先ほど井上さんからもお話がありましたが、政府は将来の油について、どこに適正価格の基準を置いておられるか、これを私はこの際伺いたいのであります。  なお価格の問題に関連しまして、政府で価格の問題にかりに意見があるとしても、企業家やインポーターがつぶれた場合にはしかたがないというお話がありましたが、そこで企業の問題でお尋ねしたいのでありますが、終戰後立地条件も何も無視して、でたらめにできた今の油脂工業に対して、これの合理化ということについて政府は何かお考えになつておるか。一口に企業が引合うとか引合わないとか言われても、私は、企業家の中には種々雑多の型があつて、非常に立地条件の悪い、企業の合理性を欠いたものもたくさんあると思います。だからそういうものを基準にして、企業が引合うとか引合わないというようなことは、いつまでも言つておられないわけです。この油脂工業に関する企業の合理化について、政府はどういう御方針を持つておられるか、これをひとつ伺いたいのであります。  それから輸出の問題ですが、輸出は当然価格に影響があると思います。でありますから、先ほど申しました政府の考えておる基準の価格を標準として、今後輸出をおきめになるのか、それとも単なる企業家の陳情、金繰り等の関係によつて輸出をしたりとめたりするのか、この輸出についての可否は、どこに基準を置いておやりになつておるか、これを伺いたいのであります。私が申し上げるまでもなく、米なり、麦なり、油等は食糧関係では何も相違はないわけであります。来年度は食糧を三百二十万トン入れなければならない、あるいはストツクは一年に二箇月、三箇月持たなければならないということは正しい意見だと思いますが、同時に油におきましても、常に何箇月分かのストツクをしなければいけないと思います。今の国際情勢というものは、決して安定したわけではないのでありまして、万一に備えて米や麦のストツクと同様に、油のストツクにおいても、常にどのくらいの数量をとらなければならないという一応の腹づもりも政府においてはあると思います。これらについて、今後どのくらいの数量を常にストツクとして持つ方針であるか、この点もお伺いしたいと思います。  もう一つ油糧原料の輸入については、政府が何か指示して、政府の指導によつて輸入しておるのか、それとも政府と何ら関係なく、民間のインポーターの意思によつて輸入しておるのか、この点もお伺いしたいと思います。
  43. 細田茂三郎

    ○細田説明員 先ほどからちよつと価格が高いか安いかという議論が出ておりますが、御承知のように、油糧は大部分が輸入原料に依存するものでありますので、結局輸入原料の価格を無視して、これは高いとか安いとかいうことは言えないと思うのであります。たとえば大豆等に例をもつて見ますれば、現在A・Aで入つております輸入価格を原価としまして採算をとつて見ますれば、おそらく今の大豆油の市価というものは、ずつと採算割れをして安いだろうと思います。それはお話のように消費者、国民から考えますれば、安いに越したことはないのでありますけれども、しかし單に企業家がどうこうということではなく、おそらくそういう不健全な状態に今後油糧というものがあれば、健全な操業をして行くこともできないのではないかと考えます。従いまして、われわれは別に輸出の問題を特にインポーターの方とか、製造家とかから陳情があつたということで考えたのではございませんで、前々申しておりますように、公団在庫——とにかく国内にこれ以上しまつておいて圧迫するということのないようにいたしたいということから考えた問題でありまして、私が先ほど井上先生のお話に非常に御同感申し上げたのも、今後どんどん輸出をやつて行きたいということを言つておるのではありませんで、目先の公団の在庫をはく過渡的の措置といたしまして、しかも大豆油のごときは出しません、工業油で言えばあま油のごときも需要があるから出しません、そうでなくして、むしろこれは安くすれば売れるじやないかとおつしやいますけれども、先般公団が入札しました場合にも一つも売れないわけであります、そういうふうな現状でありますので、ごく限られたものだけをわずか輸出したい、そういう過渡的な措置として考えた次第でございます。  それから輸入について指導しておるかどうかというお話でありますが、御承知のように、現在は全然指導いたしておりません。これはまつたくの自由であります。ただしかし御承知のようにA・A・システムがみんなクローズドされまして、ほとんど油脂は入つておりません。かりにこれが七—九月の外貨予算でA・Aを開くかどうかという問題が出て来ると思いますが、かりに出て来ましても、これは私どもが指導するわけでも何でもありませんで、自由に放任されることになると思います。それから大豆油については、もし昨年の暮れまでのような状態で、非常に足りないというような事態が考えられますれば、その際には外貨を組んで幾ら幾ら買うというようなことが、また出て来るかもしれません。
  44. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 私の言葉が足りなかつたと思うのでありますが、私は将来輸入原料の値上り等によつて起るところの価格の変動について、それまでも予想を政府がつけて基準価格を示せというのではないのであります。現在入つております原料によつて、また現在の国内の労賃によつて、その他のこまかいコスト計算をした結果、それから一方消費者の生活を考えた場合に、政府はどのくらいの価格が現在において適当であるということを考えておられるかという点について伺つているのであります。というのは、すべての行政の中心は価格だと思うのです。先ほどから問題になつておる輸出の問題にしましても、輸出というものは価格に影響があるのでありますから、価格というものは、政府において腹がきまつておらなければ行政はできないと思うのです。そこで現在どの辺のところを基準としておられるかということを聞きたい。私は油脂工業が非常に困つておると言われるが、一口にそうは言えないと思う。現に豊年製油を初め隆々たる成績を上げている会社がたくさんある。また一面には危機に瀕している会社もありまして、種々雑多であります。ですから、これらの油脂工業についても、企業の合理化、企業整備等についても、政府は現在の段階になれば、当然何かお考えになつておると思うのです。このまま放つておかれるつもりはないと思う。企業の合理化についてのどういう準備をされておるか、これもひとつ伺いたいと思うのです。  それから輸入の問題について、政府はノータツチである、それなら何もインポーターがどうなろうと、こうなろうと、極端にいえば死のうと生きようと、そんなことはかつてじやないか。もちろんこれは極端な表現でありますけれども、思惑で輸入したものを、すぐ船賃が下つて、また世界的に事情がかわつて来たということで、また国内においても少しストツクがふえたわけでありますが、損をすると、これは政府責任であるかのように政府の方に押しつけるというのは、民間業者の通弊であります。こういうものについて耳をかしておられぬとは思いますけれども、もしそういうもので動くとしたら、おかしい問題である。これは政府が外貨資金のわくをとつて政府の指示によつて輸入したものならば別であります。そうでなく、まつたく政府がノータツチでした原料の輸入について、何もインポーターのふところまでのぞいて、どうだこうだと心配することはないと思う。この辺のことをもう一辺お答え願いたい。
  45. 細田茂三郎

    ○細田説明員 この問題は、たとえば大豆で例をとつて申し上げますと、今製品価格と申しましても、非常にたくさんありますからあれですが、かりに新聞なんかに出ておりますいわゆる市価と称せられるもの、これではおそらく取引されておらないと思います。ほんとうの取引はそれをずつと割つたものになると思いますけれども、かりにノミナル・レートでやつてみまして、私の方でこれを逆算して製品価格にしてみれば、大体今の白しめの値段等から考えれば、原料としての大豆がやはり百五十ドル台で入らなければ採算が合わぬだろうと思います。ところが御承知のように、大体今入つておりますのは安いので百六十二、三ドル、高いのは百七十ドル台以上で買つておる、こういう状態です。だからこういう原料をもとにして考えますと、今の市価でやつて行けるはずがないと思う。そういう意味におきまして、個々のインポーターが倒れるとか何とかいうことに必ずしも私どもは動かされておるわけではないが、とにかく輸入原料から逆算して考えてみれば、今の値段は長続きのする価格でないということは言えると思うのです。ですから政府として価格をどこに維持するかとおつしやいましても、これは御承知のように自由にしてしまつたものですから、それは直接できないわけであります。  それから、それに関連して、企業合理化を考えておるかというお話でございますが、残念ながら私は油糧企業というものにつきまして、企業形態をどうするかというような具体案を持つておりませんが、この状態が続きますれば、大分淘汰をされるのではないか、いわゆる河野先生のおつしやられました、ほつておけば死ぬのではないか、それに近いことが起り得るのではないかと思つております。今のところ私の方では、こういう方針でこういうふうに企業整備をやろうというような考えは具体的にはありません。
  46. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 企業整備の問題ですが、御承知のように、油脂工業の問題については、認可というか、許可というか、農林省がこの企業については責任がある。でありますから、これはインポーターとはちよつと意味を異にしまして、つぶれるやつはかつてにつぶれろ、くたばるやつはかつてにくたばれというわけには私は行かぬと思う。少くともそういう不親切なことではいかぬと思う。今細田さんの言われるように、そういう現象が起りつつあるということなら、少くとも今から十分企業の合理化なり整備について、何か政府が立案されることが親切であろうと私は思う。また一面、先ほど申し上げましたように、これがむずかしいからといつて、一番弱体の企業のコストを標準にして、その高いコストの企業を中心にして、政府は今後間接的にいろいろ価格の政策をやることは、これまた消費者の方が迷惑千万である。これはぜひひとつ、いつか大蔵大臣が言つたあれは、言葉のあやだつたと思うのですが、死のうと生きようとかつてだというようなことでなしに、農林省としては、ほんとうに積極的に親切な政治をやつていただかなければいかぬと思うのです。  それから先ほどの大豆の輸入価格の問題から、今の価格で行くとどうも引合わない、引合わないからここで輸出を少ししてやつて、そして輸出の関連において価格を少しつり上げてやつて、これらの企業を成り立つようにしてやろう、こういう関連においての輸出の問題のように結論が出たと私は思うのです。先ほど油糧公団の手持云々というお話がありましたが、それよりもやはり企業を保護する意味からいつて、価格のつり上げ政策として輸出をやる、これがほんとうの農林省の腹じやないですか。これはひとつ、輸出の真相をここでぶちまけてください。
  47. 細田茂三郎

    ○細田説明員 私の説明が非常にまずくて、なかなか理解していただけないのですが、実は私どもは、この輸出の問題をそれほど大きな問題として考えておらないのです。申し上げましたように、事の発端が公団の滞貨を処理したということでありますし、実際の運営も、まず公団から持つて来たやつはノー・マークで許可したい。しかしそれ以上非常に無理をしても輸出しようということは、実は考えられないのです。相手の方が買わないのです。そんなことをやりましても、だめということも言い得るのでありますし、また実際問題として、そういうものは大体大して来はしないというのがくろうと筋の見解でありまして、そんなに問題にされるほどの量の輸出はあり得ない。大体こういう見通しのもとに立てたのでありまして、これによつて非常に企業家がよくなるとか、エキスポートが非常によいとかいうことは、ほんとうに考えておらないのです。
  48. 河野謙三

    ○河野(謙)委員 それは細田さん、あなたがお考えにならぬというだけであつて、実際は輸出すれば百のものが九十になり、八十になる。従つて何と申しましても、これは国内の価格に影響のあることは間違いない。輸出がたとえ五千トンであろうが六千トンであろうが、国内の市場価格にこれが無関係であるということは言えない。であるから、細田さんのお考えになつておるのは、輸出してやつて国内の価格をつり上げてやろうというような結果まで考えずにやつておるので、それまで影響はないと思うとあなたのおつしやることは、そのまま私は受取ります。あなたの人格からいつて受取ります。しかし現実に、輸出の許可をしてそれだけのものを出せば、国内の市場に影響があることは間違いない。下るべきものが下らなくなるとか、また逆に上つたとか、必ずその結果は出るわけです。これではお話のように皆さんがよく納得が行かぬと思う。そこでこの輸出の問題については、国内の価格——あなた方が腹に持つておられる標準価格と輸出をにらみ合せて、十分ひとつ愼重にやつていただきたい、こういうことです。  それから、さつきから御答弁をいただきませんでしたが、一体油糧のストツクというものは、米や麦のストツクと同様に、政府が常に国内において、種々雑多の油がありますが、大体どのくらいの油をストツクしておいた方が一番都合がよいという考えでおられるか、ストツクについての政府の基本的なお考えを、ひとつお漏らし願いたいと思います。
  49. 細田茂三郎

    ○細田説明員 これはきわめて常識的な考えですけれども、私どもも、こういうものをいろいろ考えます際に常に考えておりますことは、油糧として、一律には言えないかもしれませんが、半年分くらいのもので、大体過去の実績から申しましても、十分だと考えておるのであります。それが最近では、今一—三で買付けましたものが、かりにどんどん入つて来ますれば、ほぼ一年分ある。まずこれはレコードだろうと思います。
  50. 横田甚太郎

    ○横田委員 ちよつと伺いますが、あなたは輸出するというのは、公団の滯貨を整理するのだと言つておられますね。そういうものが出ると、国内の市価が上るのじやないかと心配します。それに対して、実際上は、輸出すると言いましたところが、くろうと筋ではあまり出ないと言つておるのです。そうすると、滯貨を処理するために輸出するということを考えても、実際上は出ない。りくつがあわずに、実行もできないようなことをどうして考えるのですか。実際上余るのはどのくらいであつて、整理できないものはどうするつもりですか。初めから何を言つておるかわからない。その点はどうなつておるのですか。
  51. 細田茂三郎

    ○細田説明員 私がくろうと筋の見解を御紹介しておるのは、大体買つてくれる先はイギリスと西独くらいなのです。量的にも私の方が売りたいといつておるような油につきましては、そんなに何千トンもまとめて買うというようなものじやないのです。従いまして、こういうことをやりましても、たとえば一万トンも二万トンも日本から油が出るということはありませんということを申し上げているのです。全然売れないということを申し上げておるのではありません。
  52. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと、売れない油の中に公団の滞貨が残るのですか、滞貨は全部出てしまうのですか、その点が問題なんです。
  53. 細田茂三郎

    ○細田説明員 公団の持つております油の中にも、たとえば食用油でいいますれば、大豆油、工業油でいいますと鯨油というものがあります。こういうものは私どもは輸出する意思はありません。従つてこれは初めから除いてあります。それから輸出をしたいと考えておるものでも、おそらく相手が買つてくれないだろうと思われるものも少しはあるだろうと思います。
  54. 横田甚太郎

    ○横田委員 細部を調べてほしいのです。売りたくないところの公団手持ちの大豆油、鯨油、これはどのくらいあるのですか。
  55. 細田茂三郎

    ○細田説明員 大豆油は全部で原油で三千トンばかりと、精製しましたものが五千トンばかりあります。牛脂が四千トン、鯨油が八百トンあります。
  56. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは売りたくないものは残つて、そして売りたいものはみんな出てしまうのですね。あなたがお立てになつた輸出の方針によりますと……。
  57. 細田茂三郎

    ○細田説明員 大体そうだと思います。
  58. 横田甚太郎

    ○横田委員 次に伺いますが、人造バター、これは四月十六日から、食品衛生法の定めるところによりまして、一ポンド当り五千單位のビタミンを含有していなくてはならない。それが今あまり入つておりませんね。当然これは不適格品になりますね。この不適格品というものは、どういうふうに今処置されておりますか。同時にこれはどの位の量がありますか。
  59. 中村義夫

    ○中村説明員 ただいまのビタミンを入れるようになりましたのは四月一日からでありまして、これは食品衛生法によるわけでありまして、厚生省の所管になつております。大体現在の施行では一万五千單位くらい入れることによりまして、だんだんビタミンAが消耗して参りますが、消費者に渡るときに五千單位が保持されるようにはかつております。現在実施してから間もないので、消耗の状況あたりまだはつきりわかつておりません。至急調べることにいたします。
  60. 横田甚太郎

    ○横田委員 それから井上委員との質疑応答中に、驚くべきことを聞いたのです。それによりますと、油というものは今までの日本の国の行き方から行きまして、戰時戰後を通じまして、国民生活というものを非常に重要視しなくてはならないような行き方に年々なつていると思うのであります。そういうような観点からたしか井上委員は、油というものの値段が高い、これは下げねばならぬ、そういうことの論旨に立つて質問しておられると私は思うのです。そうであるにもかかわらず、このままこれ以上油が下りましたならば、製油業者も困るし、特に私の一番きらいな銀行が困るとあなたはお答えになつた。油を扱うのは銀行の利潤のために扱つておるのですか、そういう点のお答えだけを得て、私の質問を終りたい。要は油というものは、日本国民にもつと渡していいものです。それが渡つておらない。渡つておらないのにかかわらず、あなたはそれを出そうとする。出すことに私たちは反対なのです。しかも出す内容は、いろいろあなたの方では都合があつて整理しなくてはならないものが出て来るのです。私たちは整理すべきものではないと思う。大衆に購買力がないから、食いたい油が買えない、買えないから仕方なしに余つておる形になつておる。もし大衆が人間並みの生活をしておるのだつたならば、油は余らない、むしろ足りないだろうと考えている。だから油の値段はもつと下げるべきであつて、そうでなかつたなら、労働者に対する給与というものはうんと上らなくてはならない。それがどちらも解決ついていない、ついていないにもかかわらず、あなたは銀行業者と製油業者との思惑を気になさつて、そして油を輸出にまで持つて行かれるか。どういうような観点からこんなことをやつておるのですか。そんなことをしているんだつたならば農林省はいらない。  もう一つ聞きたいのは、今年産出されますところの菜種から、一体油がどれくらいとれる見込みか、その点だけ聞いておきたい。
  61. 細田茂三郎

    ○細田説明員 決して銀行家や業者に奉仕をするためのことだけを考えておりませんということを申し上げておきます。それから油の価格をなるべく安く一般消費者に渡すという方策は、大きな問題でありまして、もちろん私どもはそういうことに非常に熱意を感じております。しかしここで一々申し上げても仕方がありませんが……。
  62. 横田甚太郎

    ○横田委員 ここで申し上げなかつたならば、どこで言うんだ。
  63. 細田茂三郎

    ○細田説明員 それはちよつと私の言い方が悪かつたのですが、そういう意味じやなく、これは私どもが今ここですぐこうこうでありますという具体案を申し述べるまでに至つておりませんから、それで後の機会にしていただきたい、こういうことです。  それから最後の菜種は、大体原料にしまして二百三十万俵くらいの生産になるのじやないかと思われます。それで油にしまして約五万トン程度のものになるのじやないかと思います。     —————————————
  64. 千賀康治

    千賀委員長 引続き主要食糧の価格に関する件について調査を進めます。麦の生産者価格の追加払いの問題について質疑の申出があります。これを許します。井上良二君。
  65. 井上良二

    井上(良)委員 非常に大事な点を私は質問しておかなければなりません。つまり細田さんの御答弁を伺つておりますと、大したことはないのだ、二千トンや三千トン出すのは大して問題にしなくてもいい、こういうお考えのようです。一年分入つて来るから、ここで五千トンくらい出してもいいじやないか、こういう簡單なお考えのようですが、いずれも今度出そうとするこの油の原料は、全部外国から輸入したものです。輸入したものを、国内に需要がないならいざ知らず、国内に需要があるのです、あるものを輸出しようとしておる。ただ入札があつたのだけれども、入札が落ちなんだ。高くすれば引合わないから、そんなものは引取りませんよ。国内に需要があつても、値段が引合わないから外国へ売るというのか、国内に相当の価格で引取り手があるなら売ろうというのか、その点どうですか。
  66. 細田茂三郎

    ○細田説明員 もちろん国内で買つてくれますれば喜んで売りたいところなのです。ところがこれは別に私責任のがれを申し上げるわけではありませんが、現在油糧公団は清算に入りまして、財政当局からする一種のエステイメーシヨンがありまして、お話のように、もう少し安くしてもいい物が、安くなり得ないということはあるかもしれませんけれども、とにかく現在の指値では売れないという状態になつております。
  67. 井上良二

    井上(良)委員 そうすると、問題は価格の問題で輸出するということに理解してさしつかえないのでございますか、その点どうですか。
  68. 細田茂三郎

    ○細田説明員 非常に分析すれば結論はそういうことになるかもしれないのですが、さればと言つて、それは御承知のように、ある程度価格を下げるくらいの程度のものであろうかと思いますけれども、しかしながら私ども今油脂の事情を見ておりますと、少々ぐらい価格が安いからというので、大量の物がはけるというような状態ではないのではないかと考えます。と申しますのは、各方面におきましても、御承知のように石鹸を初めとして、あらゆるところが満腹しております。それはもちろんここに非常な金融がつきまして、大量の物を抱き得るような状態になれば別でありますけれども、こういう状態においてはそういうところも大して消化力がない。またわれわれ消費者といたしまして、油をなめる関係におきましても、確かに消費のレコードから言いますと、日本ぐらい油の消費の少いところもないと思いますけれども、さればと言つて、今油の消費が非常にふえるというようなことも——長い目で見てそういうことは考えなければならぬでありましようけれども、目先すぐそういうことが起るとも考えられませんし、どう考えましても、とにかく消費価格の値下げぐらいで大量のものが荷動きするというような状態ではないのではないか、こういうように私どもは観察しております。
  69. 井上良二

    井上(良)委員 私は今後のわが国油糧確保の上に非常に影響のある問題で、特にガリオアその他で入れておるものがこの中に相当含まれておりまして、そういう面からこれを再び外国に輸出するということは、非常な悪い印象を与えるのじやないかということを、私は一方において考えるのです。ほんとうにこれを何万トンも公団がかかえ込んで、しかもこれが実際市場でははけない、そこで生産がとまつておるというようなことで、処分をするということなら、また何とか言われるのですけれども、今あなたも御指摘のように、わずかに五千トンそこそこのものが国内でさばけないはずがないのです。さばき得るのです。ただ問題は国内の価格問題がひつかかつて来るのであつて、そこであなた方の方で、ドラムで千円高く輸出できるからその方がいいというお考えか、それとも千円安くても国内に置いておいた方がいいという考え方か、これは非常に大事な考え方なのです。その点あなた方はもう少し政治的な考慮を払つてつてもらわぬと、油脂行政をやつておる者と、そろばんを握つて清算に来ておる大蔵省の公団清算人の考えと一緒にして、これを処分しようという考え方をとられては、油糧行政は立ちませんから、その点を強くその方にひとつお考え直しを願いたい。  それからいま一つ大事な問題ですから申しますが、約一箇年分の物が入つて来る予定だという、しかもアメリカの経済に依存しなければならぬ日本経済といたしましては、予算が今国会にかかつておりますが、あの予算が通過いたしまして、これがいよいよ日本の経済に影響を持つて参りますのは、やはり九月、十月から年末にかけてのことじやないかと見ております。そうなつて参りますと、どうしてもいろいろな悪条件がございまして、国内的にもたとえば電力の値上げの問題、米価の改訂の問題、それに伴う賃金べースの引上げの問題とかいうようなことからインフレになつて行く見通しがはつきりいたしております。そういう点から、できるだけ国内における国民に重要な生活必需品は確保しておくという線を、あなた方でひとつお立てを願いたいし、多少この際輸入する油脂原料が高うございましても、この際は補給金その他を出して入れるというやり方もあろうと思いますから、そういう面でひとつお考え願いたいと思います。この点に対して特にひとつ御考慮を願つておきまして、油糧問題に対する質疑はこれで終ります。  次に引続いて食管長官に麦の追加支払いについての質問をいたしたいと思います。この追加支払いは約三十三億か三十四億ほどございますが、一体いつ追加支払いをいたすつもりですか、計算はもうできておりますか、いつから開始をされる予定ですか、これをまず伺いたいと思います。
  70. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 ちよつと内輪の話になりまして、まだ確定いたしておりませんから、速記をとめて申し上げたいと思います。
  71. 千賀康治

    千賀委員長 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  72. 千賀康治

    千賀委員長 速記を始めてください。
  73. 井上良二

    井上(良)委員 そういたしますと、かりに二十六年度の米価、麦価等の決定に関連する諸般の方針が司令部側できまりませんと、追加支払いは実際は不可能になる、いつのことやらわからぬということになります。そうなりますと、ここで内払い制度なりあるいはその間の何か金融的措置を講ずるとかいうことは考えておりませんか。それとも近いうちに、当然麦の価格も予想米価を算定して決定をしなければならぬ段階に来ておりますので、その関係が早急に解決され得るという見通しをお立てでございますか、まだなかなか向うさんとの折衝に時間を要するという見込みですか、時間を要するとすれば、何とか仮払い制度の方法をとるとか、手を打たなければならぬと思いますが、その点はどうでございましようか。
  74. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 内払いのことは考えておりませんが、実は先ほど申し上げました全般の考え方につきましては、近く日本政府意見をまとめまして、向うに提出する段取りであります。従つてバツク・ペイの問題もそれと同時、にきまるだろうと思いますので、そう長い時日は今後要さないだろうと思います。従つて内払いはしないで、できるだけ早くバツク・ペイの問題を片づけてしまつた金額で支払いたい、そういう段取りをいたしております。
  75. 井上良二

    井上(良)委員 そういうことですと、早急に話をつけてもらうより道がないことになりますが、これとまた関連しまして、麦価の決定にあたりまして、従来政府がとつて参りました特別加算額を削るとかいう話が出ておるということを聞いておりますが、そういう話がありますか。
  76. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 その辺は近く政府側の態度をきめたいと思つておりますが、いろいろ意見の食い違いがございます。去年の予算を編成いたしますときには、御承知のように、パリテイー指数一九五ですか、それではじきまして、それに一五%加算したものをもつて想定米価として予算を編成しております。ところが最近のパリテイー指数の上昇は一九五というようなものでなく二〇〇を相当上まわつております。そうしますと一五%加算したものよりもパリテイーだけはじいたつて若干高くなるというような観点から、一五%加算というものはやめたらいいじやないか、これは全廃しないまでも、必ずしも一五%という率に拘泥しなくて、ほかの物価あるいは経済現象とにらみ合わせてきめたらいいじやないかという議論も実はあるわけであります。その辺各省のそれぞれの立場におきまして、やはり考え方の相違が出て来ると思います。それを近いうちに大臣のお集まりを願いまして、日本政府としてのまとまつた意見をきめたいという段取りにいたしております。
  77. 井上良二

    井上(良)委員 次に伺いたいのは、今あなたのお話のように、本年度の予算ではパリテイー指数を一九五にはじき出してそれでこの予算を組んでおります。ところが実際はパリテイーがどんどん上つて九月には二五〇になりはせんかと言われておる。そうしますと、当然これは米の追加支払いの問題が大きな問題になつて参りまして、食管の特別会計の内容を聞いてみると、春の超過支払いに充てる金がやつとあるかないかの状態で、米のものは全然からつぽだ、こういうことが言われております。そうしますと、米のバツク・ペイに充てるところの金は一般会計から繰込まなければならぬことになりはせぬか。消費者価格を上げて、早く食管の余裕を持とうといろいろ骨を折られているらしいのですが、これが賃金その他に影響するというところから、大蔵当局はなかなか頭を縦に振らぬというので、遂に農林省の主張する消費者価格の改訂も七月にはどうもできぬという雲行きらしいのです。そういたしますと、米のバツク・ペイが実際は次の臨時国会を待たなければ支払いが不可能なことになりますね。それはどうなりますか。
  78. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 今予算でバツク・ぺイとして積算いたしましたのは、大体米、麦三十四億です。麦を今はじいて向うに出しておりますのは三十三億、九月に二五〇のパリテイーということになりますと、米のバツク・ペイが百九十億くらいになります。従つて予算から言うと両方積算したのが三十四億で、麦だけで三十三億ですから、米の分の百九十億程度は予算が足りないという結果に相なろうかと思います。しかしそれがあるいは九月末の支払いは、結局特別会計の内容といたしましては、商品費が相当大きくなります。これには米の買入れ代金等はもちろん入ると存じます。九月ごろこの百九十億支払うことができないという状態においては、結局は年度末において消費者価格をいつ上げるか、どの程度に上げるか、生産者価格をどの程度にするかという、予算編成当時の状況とかわつたいろいろの諸事情をいかに織り込んでやるかということで、赤字が多くなつたり、ぺイしたり、あるいは少かつたりするということでありまして、お話の点の米のバツク・ペイの支払いというものには、時期的に見て不足を来すということはございません。結局年度末の帳じりをどうするかという点にからんでの議論が主になつておるというふうに御了承願います。
  79. 井上良二

    井上(良)委員 そうしますと、食管特別会計の各款項目の融通といいますか、流用は自由にできることになつておりますか。そうでないと、予算ではあなたが御指摘のように三十何億しかない、そうすると、米のが全然予算上にはなくなつてしまいますね。その予算上ないものを他の費目から流用して来るならば、それはいろいろ金をたくさんお持ちでございますから、お使いになれますが、そういう流用は一向さしつかえないことになつておりますか。
  80. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 御承知のように、こうした支払いは商品費というもので支払つております。款項目の融通は禁止をされておるのであります。従つてその彼此流用はできませんけれども、商品費の中に積算の基礎として、想定米価によつてどれくらいの米の数量を買うかという問題と、麦をどのくらい幾らの価格で買うかというものと、輸入食糧をどのくらいの数量どのくらいの値段で買うかということと、バツク・ペイがどのくらいかという想定によつてはじいた値段と、早場米奨励金を幾らに見るかということの金額とこれを総括いたしまして商品費という品目にいたしております。従つて積算の基礎にはなるけれども、支払いの方では商品費という大きいわくでこれを処理いたしますので、九月ごろ支払いが現実にできなくなるという問題はないと思つております。但しその当時——麦についても同じでありますけれども、議論はおそらくあると思います。要するにそれはほかの買入れ代金を食つて支払うことになるわけでありますから、一月なり三月なりに相当不足ができまして、米の買入れ代金等にも不足を生ずるという事態が当然予想されますので、それをどうするかという問題をあわせて論議されることになろうと思います。麦のバツク・ペイについての、ただいま遅れております原因も、そうした理論から発展しておるわけであります。同様の議論は九月にも行われるだろうと思います。しかしそこで、それではこれでやろうということになりますれば、現実に支払う上には支障はなかろうと思います。
  81. 千賀康治

    千賀委員長 横田委員
  82. 横田甚太郎

    ○横田委員 私たち農民は、麦は三月に、米は九月に、金さえもらえば問題はないのです。もしそれが安ければ、それはまた後の問題です。けれどもそれが払えないから、こういうことを聞きたいのです。大体外国食糧を高く買つてつて、安く売つている。日本の米は安く買つて高く売つておる。それが計算いたしますと、一石当りの価格が、外国の米は九千円以上で、ひどいものは一万円を越えておる。ところが日本の米は、一石を五千五百二十九円に押えておつて、しかもこの国内の五千円あまりの米と、外国から買つた一万円近くの米を中間で押えて、七千円で消費者に売つておる。いわゆるこの米の三重価格制度のやり方の中に、アメリカの人たちが非常に困つて、払うべき金をちよつと待てというようなことが起るのではないかと思うのです。そこでこういうふうな三重価格によるところの日本農村の収奪を、なお続けて行く御意思があるかないかということ、そのことを承りたい。
  83. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 三重価格制度というものは、いろいろな考え方があろうかと思いますけれども、私どもとしましては、やはり生産費を償うような米価にしたいということで、できるだけ実態に即した生産者価格をきめたいと思つておるわけであります。もちろんそれには国際価格とのにらみ合せもございますけれども、何と申しましても、国内で増産をしなければならぬのでありますから、引合うような米価にいたしたいという考え方でやつておるわけです。結局は消費者価格との調整をどこにとるかという点で、先ほどの油の場合と逆な意味においての調整がどうしても必要だというふうに考えておるわけであります。
  84. 横田甚太郎

    ○横田委員 生産費を償うような米価とは、これは一体どれくらいの値段だと思つておられますか。戰争が終つてからしばらくは値段がよかつたということは認めます。しかしそれからあとは非常に落ちてしまつておる。特に昭和二十四年を境にがた落ちに落ちている。そこで非常に不審に思うのは、あなたの頭の中に生産費を償うところの米価という考えがありながら、しかも今の米価が安いように思う。それであなたに聞きたい要点は、生産費を償うような米価に近い形で、戰後ただの一回でも払つたような記憶があるのかないのかということです。もしあると思われるならば、生産費を償う米価という、その金によつて払われた額は、どれぐらいの額になつておるかということを承つてみたい。
  85. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 これも一戸々々の農家生産費の計算というもののほかに、全般的な観察も必要とします。一戸一戸の農家に当りますれば、たとえば石当り一万円の生産費がかかつておるところもありましようし、あるいは五千円で済んでおるところもありましようし、あるいは四千円で済んでおるところもあろうと思います。これは生産費調査のカーブを見ますと、いろいろなカーブがあるわけであります。その結論は、いろいろな生産費のほかに、反収の高い低いというようなことが、大きくフアクターとしては影響いたしております。その辺をどの程度に操作すれば、国民生活全体として適正な米価であるかということを、いろいろ検討してきめて行きたいというふうに考えておりますが、今は具体的な数字を報告する段階に至つておりません。
  86. 横田甚太郎

    ○横田委員 石当り一万円ぐらいするところもある、あるいは五千円ぐらいが妥当と認められるところもあるということは認めます。——五千円はちよつとひどいですが、それはあなたの言うように認めるとして、こういう凹凸がある条件のものにおいて生産される米を、どういう形において一定の米価で払つて行けば、農村がやつて行けるような農政が樹立されるか。その点に対するあなたの考えはどうですか。
  87. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 できるだけ国内の生産力を上げて行くという観点からいたしますれば、できるだけ多くの、農家が満足をするような価格をはじき出すのが適当だろうと思います。しかし全部が全部満足をするという価格は、なかなかはじき出せないだろうと思います。
  88. 横田甚太郎

    ○横田委員 国内の生産力を上げて行くということは、政府は常に言うのですが、一向上げて行くようなことをやつてはおらぬ。今度はまたほらを吹いて、米を三十万石よけいとるとか言つておりますが、これは廣川さんの最後の置みやげのほうだと思いますが、大体私が一番しやくにさわるのはこういう点です。これは農業世界に出ている記事なんです。決して赤化宣伝のための主張ではないのですが、それによりますと、「現在の農家の所得は昭和十一年当時に比べて百十六倍であるのに、租税負担は三百七十七倍に増加しておる。その結果租税公課をひつくるめた税金と農業所得との割合をとつてみると、戰前は所得のわずかに六%であつたのが、戰後は逆に二六%と実に四倍以上にはね上つておる。このため国が農民のふところから吸い上げておる農業所得の総額も、昭和二十二年の三百十億円、二十三年は三百七十億円、二十四年は五百七十億円と、年とともに増大しておる。」と書いているのです。農村に金を残すことによつて、農民は生産費、諸資材、諸機具のよいものを整えることができると考えるのです。ところが実際においてはこれをとつておる。とる形はこういう税金でとつておると同時に、あなたのからくりであるところの、パリテイー計算の中に大きな収奪がある。しかもその収奪がひどいという事実があるにかかわらず、三月に払うべきものを、もう五月も終るというのにまだ払つていない。しかもアメリカの人たちがごちやごちや言うことによつてつていない。これを非常にふしぎに思うのです。大体払うということは既定事実でしよう。既定事実のものはあなたの独断で払つてしまつたらよいではないか。日本の金を農民に払うのに遠慮はいらない。しかも米の三重価格制度のもとに、外国の腐つた米を——もみや石ころの入つたものを九千円以上で買つて来ておいて、それを七千円で売つている。日本農民の米は五千円で買つて七千円に売つておるのだから、もうかつておるのにきまつている。あなたはそんなことを言うが私は知りません。外国の米は知らないが、日本のものは決済します。こういうはつきりした考えがあるのか、ないのかということと同時に、そういうことをひとつ発表してくれれば、農村においても非常に生産力が増強されるような刺激になると思うのですが、それに対する資料がありますかありませんか。
  89. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 資料はございませんが、できるだけ早く結論を出すようにいたしたいと思います。
  90. 横田甚太郎

    ○横田委員 事務的なことで聞きますが、あなたは非常に総司令部ともみ合つておるように言われた。そのもみ合つてる点について、額の点か何かで一致点はあるのかないのか。それを参考までにわれわれは聞きたいのです。これは九月になると必ず問題になります。ことに一割五分の特別加算額によつて非常に大きく政治的に擡頭して来る問題だと思う。かりに例をとりまして、あなたは百円くらいだつたら払える。アメリカも百円ぐらいだつたらよいだろうとなれば一致する。それを百五十円と言われると、五十円の違いが出るというような形で、額において一致しない点はどれぐらいかということを、数字的にお示し願いたい。
  91. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 額の問題にはいまだ入つておりません、要するに全般の問題を明瞭にしない限り論議が進まないから、その方を早くしてくれ、こういうことです。
  92. 横田甚太郎

    ○横田委員 あなたは先ほど井上委員の質問に対して、勘定ができておると言われましたね。その勘定の内容を公表してもらうわけに行きませんか。
  93. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 先ほど大体申し上げましたが、三十四億と三十三億ということであります。
  94. 横田甚太郎

    ○横田委員 こまかく願います。
  95. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 今ちよつと総額だけを手控えております。去年の供出量にパリテイーの上昇分の差額を加えたものが総額で三十三億になる。こういうことなんです。
  96. 千賀康治

    千賀委員長 次会は公報をもつて申し上げることといたしまして、今日はこれをもつて散会いたします。     午後四時二十一分散会