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1951-05-18 第10回国会 衆議院 農林委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十八日(金曜日)     午前十一時四分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 野原 正勝君 理事 原田 雪松君    理事 小林 運美君       宇野秀次郎君    遠藤 三郎君      小笠原八十美君    小淵 光平君       川西  清君    河野 謙三君       中馬 辰猪君    中垣 國男君       幡谷仙次郎君    平野 三郎君       八木 一郎君    大森 玉木君       横田甚太郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 廣川 弘禪君         経済安定本部総         務長官     周東 英雄君  出席政府委員         国家公安委員長 辻  二郎君         農林政務次官  島村 軍次君         農林事務官         (農地局長)  平川  守君         林野庁長官   横川 信夫君         通商産業事務官         (通商化学局化         学肥料部長)  柿手 操六君  委員外出席者         專  門  員 難波 理平君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ————————————— 五月十八日  委員八木一郎辞任につき、その補欠として平  島良一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員平島良一辞任につき、その補欠として八  木一郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十七日  森林法案野原正勝君外八十七名提出)  森林法施行法案野原正勝君外八十七名提出) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  農漁業協同組合再建整備法の一部を改正する法  律案野原正勝君外二名提出衆法第四六号)  畜犬競技法案原田雪松君外百二十二名提出、  衆法第五四号)  森林法案野原正勝君外八十七名提出衆法第  五七号)  森林法施行法案野原正勝君外八十七名提出、  衆法第五八号)  肥料に関する件     —————————————
  2. 千賀康治

    ○千賀委員長 これより農林委員会を開会いたします。  昨日本委員会に付託に相成りました野原正勝君外八十七名提出森林法案及び森林法施行法案の両案を一括議題として審査に入ります。まず両案の趣旨について、提出者説明を求めます。野原正勝君。     —————————————
  3. 野原正勝

    野原委員 ただいま議題となりました森林法案及び森林法施行法案提案理由を御説明いたします。わが国森林は、敗戰による領土喪失の結果、戰前に比べまして面積で約六割、蓄積で約七割弱に減少いたしたのでありますが、これに対しまして木材その他の林産物需要は、戰後復旧資材建築用材パルプ用材等ますます増大しておりまして、戰時中からの過伐の傾向はますます強くなり、成長量の数倍のものが伐採せられ、森林蓄積はとみに減耗しつつある状態であります。一方伐採後の造林は、戰後におきまするインフレーシヨン等の悪影響によりまして思うように進捗しないで、年々の造林面積伐採面積に追いつかず、戰時中及び戰後伐採跡地造林未済のまま担当面積放置せられている次第であります。  このような濫伐並びに植伐の不均衡によりまする森林荒廃の結果、近年数次にわたる風水害により甚大なる被害をこうむつているのでありまして、このまま放置しておきますれば、木材その他の林産物の給源が枯渇して、国民経済維持発展に大きい支障を来すとともに、治山治水その他国土保全を阻害し、ために国民生活基礎を危くする誘因となつて、まことに憂慮すべき事態の到来が予想せられるのであります。ここにおきまして森林施業を改善し、合理的伐採実施し、特に幼壮齢林の保護に努めますとともに、造林の促進、奥地林分開発等措置を講じ、もつて森林の保続培養森林生産力発展をはかることが緊要と存ずるのであります。  終戰後政府におきましても、造林五箇年計画実施治山事業の強化、林業金融円滑化等の諸対策を講じ、さらにはさきに臨時立法としましての造林臨時措置法実施による造林の励行をはかつており、これらの対策は徐々にその効果をあげつつありますが、この際さらにその完全な実効を期するとともに、今後における森林施業基礎を固めるために、このたびわが国森林基本法であります森林法を再検討いたしまして、現行森林法を廃止し、新たに本法を制定いたしたいと存ずる次第であります。  この法案におきましては、現行法と比べて二つの点について根本的改正考えているのでありまして、その一つは、営林のため従来の施業案制度を改めまして、国の責任のもとに、行政庁において森林計画を編成実施し、森林施業基準を示しますとともに、その責任の所在を明らかにいたしたことであります。  もう一つの点としましては、現行法のもとでは施業案と不可分の関係にあります森林組合制度を改め、強制加入制度から協同主義組合に改組し、その民主化をはかつたことであります。この二つによりまして森林施業が的確に行われるための基礎条件を確立いたしたいと思うのであります。その他の点におきましては、おおむね現行法とほぼ同様でありますが、法律の運用上森林及び森林所有者定義を明らかにいたしましたことを初めとしまして、補足的改正を加えますとともに、その体裁におきまして最近の立法例にならつて全面的に修正をいたした次第であります。  次に森林法施行法について御説明申し上げます。先ほど御説明申し上げましたように、森林法全面的改正を行いますので、現行森林法は廃止することになります。これに伴いまして、新法施行の際におきます経過的諸規定を設けること並びに関係法律中に所要の改正を加えるため、この法律を制定いたしたいと存ずるのであります。  この法案におきましては、新法が円滑に実施せられますよりに特に二つの点に重点を置いたのであります。その一つは、現在の森林組合定款変更の手続によりまして、新しい組合に移行できることを規定しております。もう一つは、森林計画実施によりまして、幼齢林伐採の制限を受けた森林所有者に対しまして、長期で低利の資金を融通する措置を講ずることとしたことでありまして、先般成立いたしました農林漁業資金融通法を一部改正し、農林漁業資金融通特別会計からこの資金を融通しまして、幼齢林を適正な伐期まで維持することができるようにし、それによりまして可及的に森林施業合理化を期したいと存ずる次第であります。何とぞ両法案を御審議の上、すみやかに可決せられますようお願いいたします。  なお引続きまして、森林法及び施行法案に対しましての、あらましの点を申し上げまして、御参考に供したいと思います。  まず森林法改正でありますが、その中で、第一章ではこの法律目的を明確にしております。森林計画保安林等森林についての基本的事項を定め、また森林所有者団体制度としての協同組織制度を確立し、森林の保続、培養森林生産力の増進をはかり、もつて国土保全国民経済発展とを期することにあることを明らかにしたのであります。第二条は定義規定であります。森林森林所有者国有林民有林、それぞれの定義をいたしまして、その範囲を明らかにしたのであります。すなわち森林につきましては、従来現行森林法におきましては、その定義規定を欠いておりまして、その解釈もまちまちであつたのでありますが、改正森林法におきましては、これを次のように改めました。木竹が集団して生育しておる土地と、その土地の上にある立木竹を総称して森林というのであります。それから現在木竹が生育していなくても、木竹の集団的な生育に供されることが明らかである土地も、また森林範疇に入れたのであります。但しこれらの土地及び立木竹であつても、その土地農地として、または住宅地として、あるいは住宅地に準ずる土地として使われているものは、その上にある立木竹をも含めて森林範疇外であることを明らかにいたしました。なお住宅地に準ずる土地としましては、工場敷地公共建築物敷地宗教法人法第三条に定める神社、寺院等境内地のうち、その第二号、第三号に掲げる土地等がこれに含まれております。庭園ももちろん森林ではありません。従つて後楽園、六義園、偕楽園等の昔庭園であつた現在の公園であるとか、あるいは上野公園日比谷公園等の小公園は、住宅地に準ずる土地として取扱つております。森林所有者は権原に基き、森林土地の上に木竹を所有し、及び育成することができる者ということにしたのであります。所有権のみならず地上権賃借権、その他土地についての使用、收益の権利に基く森林たる土地の上に木竹を所有し、あるいはその木竹について育成することができる者を森林所有者としておるのでありまして、森林たる土地所有者範囲とは必ずしも一致しておりません。  森林法等に関する概説は、時間の都合を見て、おいおいと御説明申し上げたいと思いますが、ちようど幸い農林大臣及び安定本部長官も見えておりますので、概説の御説明は、あとから申し上げることにいたします。     —————————————
  4. 千賀康治

    ○千賀委員長 ただいま農林大臣及び安本大臣がお見えになつておりますので、野原提出の両案の審議はしばらく保留いたしまして、肥料に関する件について調査を進めたいと思います。  昨日の肥料対策小委員会において、関係当局に対し種々御質疑があつたのでありますが、本日は大臣出席を求めまして、肥料に関する現下の重要問題について、政府の所信を伺いたいと思います。小笠原委員
  5. 小笠原八十美

    小笠原委員 ただいま両大臣の御出席でありますが、願わくは通産大臣も御出席を願いたいのでありましたが、何かの都合でお二人しかおそろいになりませんが、まず第一に伺いたいことは、先般新聞に発表せられたところによると、ある一定の数量を輸出することはやむを得ぬ、これをきめよう、しかしながら国内の需要に対しては値上げをしないということに方針をきめた、こう発表された。しかしながらそれは、皆さんのもつともな御協議には相違ないけれども、われわれの心配するところは、大臣がお三人おそろいの発表であるけれども、その裏面において、どうして業者値上げをすることを押える力があるか。何か別に法律上の対策はないにしても、われわれ国民として安心するだけの予算的措置を講じておられるかどうか、こういうことなんです。従来はいろいろ政府の方で御心配なされたけれども、次から次と値上げをされた。ただ硫安については、今日製造能力相当に増加して参りましたから、それのみをもつて安心だという程度では、とても農家の方で安心ができない。これが今日いろいろなその他の不足を来して、輸入に対しても相当心配をしておる。肥料等にも影響があることと思うのでありまして、それらのこともあわせて御心配されることと思うのでありますが、この委員会を通して、どうかその内容について、安心の行く程度に両大臣からの答弁を願いたい、こういうわけです。
  6. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいま小笠原さんの御質問の点はまことにごもつともであります。肥料の問題については、私どもも非常に心配をいたしておるのであります。ただ先般硫安製造業者に集まつていただいて、今年の肥料の輸出問題に関連して、現在の需給推算から考えて、七万一千トンでありますので、法律的に、有権的にこれを押える方法のないことは、お話の通りであります。これは自由経済にいたしました結果当然でありますが、しかしそこにはおのずから私は道義があろうと思うのであります。極力業者協力を求めたゆえんもその点であります。わが党の主張する価格統制をはずすということは、特定の業者にめちやくちやにもうけさせることを目的としておるのではないので、そうすることが実際上生産の増強にもなり、国民全体から見て必要であるということでやつておりますので、現在のような復興期にある日本の現状からいたしまして、ことに農村経済から見て急激な変化を與えないようにしてもらつて行くことが、われわれの方の要求でもあり、業界もまたそれくらいの考えでやつてもらわなければ、自分だけもうければいい、はずされたからこの間にという考えでは困るので、やはり新しい自由主義のもとにおける倫理観と申しますか、それくらいの考えがなければ困る。こういうふうな意味で、できる限り道義に訴えて協力を求めるつもりであります。幸いにして、今のところ法律的に押える力はございませんけれども硫安につきましては、ただいま小笠原さんからお話がありましたように、肥料のために電力を特別に増配するというような措置もとりましたし、雨の関係もよかつたので、最近は硫安製造数量は非常にふえております。ことに昨年でございましたか、いろいろ御注意をいただいて、去年から今年の五月にかけての輸出数量をきめましたのは十一万トンでございましたか、輸出数量は当時における製造能力あるいは電力事情を勘案してきめたのですが、その結果最近の調べでは、その当時の需給推算よりも十二万トンあまりの増産を見ることになりましたし、ことに最近はそういうことも関係しまして、四月の相場は、地域によつて違いますが、大体最高七百八十五円から最低七百四十円程度でありまして、五月に入りましてからほとんど動かないような状況であります。取引も非常に閑散と申しますか、ちようど地方によつて春肥の、手当も済んだあとと思いますが、五月の上旬の工場の出荷も二万トンくらいしか出ておりません。ストツクが大分たまつているようであります。約十八万トンくらい工場たまつているような状況でございますので、幸い硫安については、価格というものはそう上らないで行くだろう、またそうしてもらいたいと私は思つております。たまたまこの際に進駐軍の方から、朝鮮向け硫安をたしか十八万トンくらいでございましたか、また過燐酸十万トンくらい出すようにというような話がありました。但しそれは命令ではなくて、そのくらい必要とするが、日本の現在の需給推算から見て、一体どのくらい出せるかという意見問い合せがありました。その後いろいろ研究しましたら、五月までということでありましたか、五月までにはとうていそれだけを出す余力がございません。そこで私ども研究した結果、答えましたのは四月の三十日、今後五月の末から六月にかけて、この肥料年度内においては、七万一千トンくらいはどうやらやれるかもしれない、とうていお話のような数字は出ない。但し今後の生産状況によりましてはまた考えてみよう、今のところぎりぎり一ぱいそのくらいであるというような御返答をいたしたわけであります。この点は業界なり、また農村方面でも理解をいただけるようであります。ただそれを出すことをきめたという反動で、せつかくおちついている今の価格が、思惑的に、また出すからということで上げられては困るということで、強く協力を求めた次第であります。幸いにして、あの話がきまつた後も、今相場は動いておらぬようであります。その点は硫安については心配はないのじやないか、あくまでも自由にした結果、法的に押えるという形を今のところはとりませんで、業界の自主的にまち、かつ増産そのもの政府はできる限りの力を盡すということで、両々相まつて極端な価格の高騰は避けて行きたいという方針が現在の状況でございます。
  7. 小笠原八十美

    小笠原委員 長官の御答弁よくわかりましたが、ただ今の状況は閑散で、売行きが悪い、相当数量蓄積されているというようなことで、とても安心できません。なぜ農家の方でそれほど肥料の獲得をしないかというと、農家経済状態が許さない。肥料を買う金がないわけであります。七月、八月になつて、今日政府の方で相当予算化している問題が地方にまわつて来る。もう一度に獲得する時期が近くにある。そういう場合に農村業者の方ではどういう手を打つかと言えば、高い方に売るのは当然なことであります。そういうときの用意対策は、法律的になくても、これは道義関係か何か——そんなゆる褌ではとてもだめだ。そのときに相当数量政府の方で獲得しておいて、それを調節する準備もないようだつたら、これはよほど考えなくてはなりませんから、その点もう一歩進めて考える必要があると思う。現に農林事務当局みな集まつて相談してみても、また小委員会においても、その事務の連中で確信のある意見を持つており、また方針を持つている者は一人もない。非常にわれわれの心配するところはそこにありますから、もう一歩進めて考えてもらいたい。それは肥料の売りさばきの時期がもう近くに来ることを予想して、それだけの準備をこれからなされることが必要だと私は考える。  それから農林大臣に伺いますが、こういう場合に、農家奨励して金肥以外の肥料畜産関係堆肥、こういうものをどんどん準備を進めるように、金肥亡国論の本まで出しておいて、その準備がないということは——あなたの方には指導の局もある。そういうふうに少し予算化して、もう少し徹底してやつてもらいたい。畜産発達をはかつて、それで自給肥料をたくさん蓄積準備するように、現に北海道でも、東北一部、静岡あたりにも、非常によくできているところがあるが、まだ多くのものはそこに進んでいない。むだな使い方をしているのですから、この問題の解決にはもう少し努力をして、そしていざと言えば金肥を求めぬでも、あるいは半分求めても、それの調節はできるほどの国内的の農家の経済問題を、もう少し発達せしめるような方法指導がなければだめだと思う。  それから無畜農家の解消、ぼくは畜産というものを自由党の政策に織り込めとえらい論議をし、またここにも畜産という字を入れろ、その金融もつけろということで大分やつたか、笑う人は言う、アメリカでも農の中には畜産が入つておらない、だから畜産というものはおかしい。アメリカ大陸農業たが、ここは五反百姓で、現に半分は無畜農家であるじやないか。それだのに、日本畜産という字を入れないというのはおかしいじやないかとぼくは論議しているのだ。もう少し畜産関係発達の方に力を入れて、そこにひとつあの六十億でも早いこと出させて、今あなた効力ある大臣が三人も四人も控えておつて大蔵大臣をゆすぶるくらいわけがないじやないか。それをやらぬことは怠慢だ。もう少ししつかりしてやつていただいて、本気に農業関係発達をはかることに御努力願いたい。その用意は十分あると思うけれども、あなた方相当研究されていると思う。今度のこの畜産関係の問題と肥料関係の問題と結びつき、また近くにあるところの硫安ことにカリの問題、これの問題は相当に減少しているのだが、これに対しては、事務当局の方ではほとんど見通しはつかない。大体のことを申し上げておくが、その御方針があればそこを御説明願つて、さらにあとは専門的に河野君に御質問を願うことにいたしたいと思います。
  8. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 金肥ばかりにたよらずに、畜産奨励してその道を開いて行けというあなたの年来の御主張ですが、そのように一生懸命やつているわけでありまして、六十億プラス六十億も、そのつもりで一生懸命実は交渉をいたしているようなわけであります。これも多分目鼻がつくと思つております。それからまた畜産局内部施策も非常に張り切つてつておりますので、あなたの年来の希望が到達するのは、決して遠くないと思います。またそういうようにしなければならぬと思つてつております。さよう御承知願います。
  9. 原田雪松

    原田委員 今大臣お話で、肥料はすべからくよくやつておる。六十億の方もその方に使うのだという話でありますが、きめられてもなかなかその金が流れないのが欠陷なんであります。いつ流れて来るのかはつきりいたしておりません。それと同時に、もう一つは、肥料問題で化学肥料の問題が非常に叫ばれておりますが、今小笠原委員お話のように、有畜営農をいたしますことによつて厩堆肥肥料というものをやるのにそこにたいへんな経済的問題が起つて来る。しかも土地改良の面では厩堆肥でなければいけないということは、これは理論的にも裏づけられておる。ところが厩堆肥増産に対するところの施策が何ら行われていない。ただ厩堆肥品評会地方においてやる、このぐらいではおそらく厩堆肥増産計画というものは成立たない。だから国が相当の金を出して、この厩堆肥利用を高度にやるように、何かの施策をやつてもらわなければならぬ。ただやることがいいくらいのことでは動きません。少くともその辺に理解のある大臣は、まず金肥の節約に向つて、何といつて厩堆肥高度利用、この面にいろいろな施策を施されて、その面には多少の助成をして、これを奨励するというお気持であろうと思うが、何らそれが現実には現われておらない。今後その点をおやりになるお気持があるかどうか、その点をはつきり伺つておきますと、われわれは非常に末端農村のために効果をもたらすことができる。その点の施策をやるかどうか。事実今は何にもございません。その点を伺つておきたいと思います。
  10. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この前もここで言つたことがあつたかと思いますが、畜産局予算の査定のとき等もそういう意見が出るのであります。どうもはつきりした資料等がそろわないので、そのままになりましたが、その後いろいろ検討いたした結果、はつきりした方策をきめなければいかぬというので、局内で検討いたしております。そうしてそういう方面奨励金なりあるいはまたその他の方法をやつて行けるように、局内準備いたしております。御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  11. 原田雪松

    原田委員 畜産局を非常に育成してもらつたことには、私ども感謝いたしますが、局の存在というのは、少くも予算裏づけがなければ高揚はできません。畜産局予算を見ますと、あの大きな全国の数百万頭のものをかかえてその奨励をやつておる局が、約八億内外の金で仕事をする。これは実に貧弱きわまる。しかもその八億内外の金のうちの、約六割八分は衛生費にとつておる。生産奨励費の方には何らとられていない。これが畜産局の動かざる原因で、畜産奨励根本をなすところの予算裏づけがないために、基本的な改良計画というものは立つておりません。その点を私どもも非常に心配いたしておるのでありますが、それはそちらにいろいろな資料を差上げますから、大臣もこの点にぜひ留意されまして、来年の予算にはほんとうに畜産局の自活のできるような、基本的な予算を組んでいただくように、この際望んでおきたい。同時にそういうお気持があるかどうか、その点をもう一ぺん伺つておきたい。
  12. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 内輪話ではなはだ恐縮でございますが、実は六十億プラス六十の細目をきめるときにこういうエピソードがあつた。畜産局から資料を出さして、それを官房長のところでひとつ大きく予算化しようと思つておりましたところが、なかなか思つたような額の予算が出て来ない。それで官房長が非常に心配して、もうちよつと君らの方に案がないのかということまでやつたようないきさつもあるのです。幸いに今度は新たなりつぱな局長参つたのでありまして、内部で十分充実いたして、あなた方の国会における気持に沿うようにしたいと思つて、今努力いたしておるところであります。
  13. 河野謙三

    河野(謙)委員 肥料問題でまず安本長官にお伺いしたいのですが、安本長官といたしましては、肥料価格を一体今後どの辺に安定させて行くというお見通しを持つておられるか、それをまず伺いたいと思います。  御承知のように、私の手元で調査しましたところでは、安本資料によりますと、昨年の五月を基準にして、農家経済收入支出は、いわゆる農家消費財、すなわち收入の面は一〇〇に対して一四六になつております。生産財すなわち支出の面は一八九になつております。かように農村鋏状価格差というものは、非常な勢いで開いて来ております。かような際において、今後少くとも農村の主たる生産資材の肥料価格について、政府はいかなる見通しを持つておられるか、これがまず第一にわからないと困るのであります。つきましては、現在の肥料価格をもつて、今後政府はこれを基準にしてやつて行かれるのか、それともその後肥料の生産費も上つておりますが、この上つた面を補給金によつてまかなつて、どこまでも消費者価格は現在の価格基準にしてやつて行くという御方針なのか、これらの点についてお伺いしたいと思います。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 お尋ねでありますが、これは硫安と過燐酸とではおのおの違つて来るだろうと思います。  硫安については先ほど申し上げたように、最近における生産事情はともかくも非常に好調であります。そういう関係で大体今高値で七百八十四、五円、低値で七百四十円程度でありますが、現在の生産費やいろいろな点から見て、八百円前後というようなところが、現在の形においては一つの目標になるのではなかろうか、こういうように思う。これも結局今度の電力の問題に関係いたします。巷間伝えられておる電力値上げ、あれがそのまま政府考えておることではないのであります。公益事業委員会と私の方の物価庁と相談いたしておりまして、できるだけ電力料金が高く上らぬことを望むものでありますが、しかし電力の開発関係、あるいはロスを防ぐというような問題、あるいは火力と水力に関係する電力料金のきめ方、基本料金のきめ方と関連いたしまして、ある程度自主的に電力料金が考えられて行くことが必要である。これは決して世間で言われておるように、電力料金をめちやくちやに上げるということではなく、むしろ日本の産業に必要な電力をいかにして確保するかということと関連して、どうしても多少問題になる。そのきめ方いかんによりまして、おそらくまた硫安価格等に響いて来ると思いますが、ただいまのところは、今の相場が大体七百八十四、五円でありますし、いろいろな事情から見て、八百円前後が一つの目標になるのではなかろうかと考えている次第であります。  過燐酸につきましては、これは御承知の通り、原料であるところの燐鉱石等を外国に仰がなければなりません。しかも今日においてはクリスマス、アンガウルというような近くの所から入るのが少くて、その大部分はフロリダから入るというような関係で、運賃の値上りが大きい。その他アメリカにおける価格が影響して参り出すので、こういう点からしての上昇はあると思う。しかしこれらにつきましては、できるだけ補給金等を継続して、値上りがあるにしても、ある程度の値上りの率に食いとめる方策を、行政施策一つとして考えて行くことがよろしいと、私ども考えておるのであります。もしこういうことができないならば、やはりこれは米麦の価格と関連がございますから、そういうことと見合つてやむを得ざるコストの上昇の範囲によつて価格はきめられて行くのではなかろうかを考えております。
  15. 河野謙三

    河野(謙)委員 私がお伺いしておるのは、たとえば硫安お話がありましたが、硫安価格が現在の農家経済の面から見て、適正であるこの価格を維持して行かなければいかぬというお考えであるかどうかということをお尋ねしておるのです。電気が上り、石炭が上り、コークスが上り、それらの生産財の高騰によつて、成行きまかせで、肥料価格は七百円になつても、九百円になつてもやむを得ないという御方針であるか、それとも農家経済の面から見て、現在の価格基準にして、過去においてとりましたように、たとえば電力が上りました場合において、電力の大口消費者であるところの肥料工業、特に硫安工業に対しましては特別価格を設定する、そういう過去においてとりましたような施策をおとりになつて、どこまでも肥料価格は、現状において農家経済の面とにらみ合せて——先ほど申し上げましたように、農家経済鋏状価格差が非常に開いておる。こり価格差をこの辺で食いとめる、むしろ今後逆に施策の面において、鋏状価格差を詰めて行くというふうにお考えになつておるのかどうか、それとも原料資材の値上りにまかせて、肥料価格の上るのはしかたがない、かようなお考えであるのかどうか伺いたい。  それと同時に、今一番関係の深い過燐酸の問題が出ましたが、過燐酸についてはいきさつがあります。それは昨年公団を廃止いたしまして、肥料の統制を撤廃したときに、司令部からメモが出まして、昨年の十二月末までに一昨年の暮れに対して七割アツプ以上になつたら政府は適正な施策をとれ、こういうメモが来ております。ところが幸いに昨年の十二月三十一日までは、七割アツプ以内で価格がとまりましたので、続いて政府は昨年の十二月の末に、司令部に対しまして、この十二月三十一日までの期限付の措置に対しまして、さらに本年の七月三十一日までこの措置を延ばすということを、たしか物価庁から回答しておるはずであります。どこまでも政府は、過燐酸につきましては七割アツプの線を維持するということを司令部に回答しておるわけです。しかしその後いろいろ諸物価の高騰によりまして、過燐酸の生産原価も上りましたので、過日政府では八割アツプという措置をとられたようであります。この問題につきましては、いろいろ複雑な事情もあるようですが、私が聞きたいのは、先ほどの硫安と同じように、過燐酸につきましては、特に燐鉱石の関係がありますので、現在の補給金をもし撤廃した場合には、一かます百六十円、七十円上ります。ところが本年度の予算には補給金は組んでおりません。しかし来る臨時国会に補給金を補正予算で組んで、引続き過燐酸については補給金をつけ、過燐酸の価格は現状を維持するという御方針であるのかどうか、これを伺いたい。
  16. 周東英雄

    周東国務大臣 硫安価格というのは、実際上のコストの計算で上れば上るでやむを得ない、ほつておくかどうか、あるいは農家経済の成り立つように価格をきめたらどうか、こういうような御質問であります。これは一応河野さんの立場から言えばごもつともだと思うのでありますが、それには私はいろいろ問題を含んでおると思うのです。りくつから言えば、肥料の製造販売は自由でありますから、これは本来のコストを切つて価格をきめて行くことは、自由経済の中においてはむりだ。それをどうして防ぐかということになれば、結局農家経済の問題に関連して当然考えられるのは、差額を政府が補給して出すか、あるいはまたその方法でなければ、農家の米、麦等の価格をそれに応じて出すかということに関連を持つておると私は思う。りくつから言えば、製造工程、製造販売が自由になることは——めちやめちやな利潤をとらせることは問題ですが、コストを割つて売らせるわけには行かない。これは農業者理解を持つわれわれとして考えて行かなければならぬと思います。そこでやり方としては、補給金と米価というものがどういう関連を持つかということであります。その点先ほどお答えいたしましたように、今後の米、麦の価格がどうなるかということです。ことに今日の米価の決定方式は、御承知のようにパリテイ方式であります。従つて肥料の上つた大きなパーセンテージはパリテイの中に織り込まれておるわけです。それとのにらみ合いを見て決定して行かなければならぬと思うのであります。しかし御承知のように、肥料のことは重要でありますので、肥料の上つただけ米を上げればよいじやないかというように簡單に行かぬのであります。農民のためにはよろしいが、そのことがまたただちに消費者価格に及んで来る。そこにむずかしい点がありますので、でき得べくんば、ある程度価格を引上げるように、理想としては肥料について研究いたすということで一応いいと思うのですが、まだそれはきめておりませんし、過燐酸の問題については議論のあることでありますから、全般的には非常に困難であります。そうなるとむしろ米の価格と見合つて、初めて硫安価格の姿はどこがいいかということが研究されて行くべきだと思いますし、どうしても特別な助成ができなければ、農民に対しては米の価格を上げて行く。しからば今度は消費者価格において二重米価的なことを考え考え方が残されておると思います。こういうことが一連の関連をもつてきめられることでありますので、ただいま何ぼの価格にきめたらよろしいかということは、ただ肥料だけをもつて考えることはできないということを、御了承願いたい。それから過燐酸の問題については、でき得べくんば私は燐鉱石等の補給金は続けて行きたい。ぜひこの機会においては補給金を出して行くようにして行きたいと、目下大蔵省とも相談をしておる状況であります。
  17. 河野謙三

    河野(謙)委員 非常につかみどころのない要領のいい御答弁でございますけれども、今はそういうわけに行かないのです。実は過燐酸の場合に、本年度補給金の予算が組んでない。ところが一般農民は、補給金が継続されるという前提でおるのです。それによつて今の市価が安定しておるわけです。今の大臣お話をそのまま外部に発表したならば、過燐酸はおそらくあしたから百円なり百五十円なり上るでしよう。現在公定価格でないのですから、従つて補給金がはずされるときの価格にただちにさや寄せすることは必然であります。だからこれから大いに研究して、ということじやない。実際問題として予算には組んでないけれども、今まで補給金が継続されるということを農民は深く信じて、また販売業者も深く信じて、今の価格が維持されておる。でありますから、この機会にこれは明瞭に——大蔵大臣は御出席がありませんけれども安本長官としては、少くとも補給金は引続き継続する、自分はその方針でおるということだけは、はつきりと御言明願つて安本長官を通じて、全国の農民に安心を與えるように、この席においてやつていただかなければ困ります。  同時に私はもう一つ伺いたい。私は生産者の方のコストを割つてまで圧迫しろということは毛頭考えておりません。肥料工業は、この席で常に申し上げておりますけれども、将来輸出工業として発展しなければならないものであります。これをどこまでも正常な運営のできるように、政府は大いに保護助成しなければならない。しかしさればといつて、上るままにまかせて、農家に高い肥料を買わせることは、農家の経済からいつてできない。従つて電力その他石炭につきまして、肥料工業について特別の措置がとれるかどうか、またそういうお考えがあるかどうかということを伺つておるのです。この補給金の問題につきましては、この機会にきわめて関連するところ重大でありますから、もし補給金をつけるような顔をしておつたけれども、実はつけないのだというのなら、はつきりとここで言つてもらいたい。それによつてもし肥料価格があしたから百五十円なり百七十円なり上つたら、政府はその責任をとるということをはつきりしていただきたい。私はいかに尊敬する安本長官であつても、この重大事項についての今の要領のいい御答弁を、かしこまりましたといつて引込むわけに行きませんから、この点についてあらためて御答弁願いたい。
  18. 周東英雄

    周東国務大臣 なかなか追求が急でありますが、私はただいま申し上げましたように、燐鉱石の補給金については、継続して行きたいというつもりで、今大蔵省と折衝中であります。
  19. 河野謙三

    河野(謙)委員 安本長官の御努力を私たちは大いに信頼いたしまして、この問題は、長官の政治力によつて補給金は継続されるということをかたく信じまして、質問はこの程度で終ります。  次に私が伺いたいのは、先ほど小笠原委員からも御質問がありましたが、肥料は今余つております。これは余るのが当然であつて、昨年肥料の統制を撤廃するときにも、公団の手持ちは、安本長官御存じのように八十万トンからの手持ちがあつた。この八十万トンの手持ちによつて、本年の春に繰越して、それを順次放出することによつて、春の肥料は順調に間に合つた、こういうことでありますが、引続き本年の夏から秋にかけまして、いかに生産がふえましても、五十万トンなり六十万トンなり——これはだれが持つか知りません。メーカーに持たせるか、あるいは中間業者に持たせるか、あるいは農業団体に持たせるか、来年の春まで五、六十万トンの肥料をだれかに持たせるのでありますが、その金融を一体どうするかということにつきまして、政府はいかなる準備をされておるか伺いたいと思います。御承知のように、昨年統制撤廃になるときに、政府肥料金融につきましては特別の措置をとる、肥料の倉入れをしたものに対しては、商人であろうが、団体であろうが、あらゆるものに肥料金融は必ず政府責任を持つてつけてやるという答弁をされておるようでありますが、その措置をもう少し具体的に、御準備があれば、この際明らかにしていただきたいと思います。
  20. 周東英雄

    周東国務大臣 その質問農林大臣にお願いした方がよろしかろうと思います。今小笠原さんといい、河野さんといい、同じ憂いを持つての御質問と思います。幸いに生産が上つてストツクがふえるものを、来春に備えて貯蔵させ、金融をつけるということはいい考えであります。これは農林当局の方でも研究されておるようであります。農業団体、全購連等に持たせ、それに金融をつけることについて、今研究中であるそうでありますから、かわつて答弁しておきます。
  21. 横田甚太郎

    ○横田委員 大臣電力のことで聞きたいと思います。自立経済審議会は硫安の生産目標を立てまして、硫安百八十一万トン、石灰窒素四十五万トン、過燐酸石灰百五十九万トン、これだけを生産するがためには、今年の電力は三十一億キロワツト時必要だと言つている。それにもかかわらず、実際に供給できるのは、日本経済新聞四月八日の記事を読みますと、二十六億キロワツト時しか供給できないと言つておる。そうすると五億の差があるのですが、この五億の差はどういう意味で減らされたか、これはどういうふうに解決つけるか、このことをまずお聞きしたい。
  22. 柿手操六

    柿手説明員 今の数字は私は実際と違つておるように存じます。今年度、二十六年度の化学肥料部門に対する電気の割当は、普通の割当が三十二億六千万ぐらいになつております。これは今年の四月から来年の三月までの一応の予定でありまして、四月、五月は確定いたしておりますが、六月以降は一応の見通しでありまして、まだ確定はいたしておらないのであります。二十六億というのは多分二十五年度の実績がその程度であつたと思いますから、この数字は違つておるのじやないかと思います。
  23. 横田甚太郎

    ○横田委員 簡單に申し上げますと、日本経済新聞の記事は間違つておる、ほんとうは三十一億キロワツト時だけれども、それよりもよけい供給できる、こういうような御答弁ですね。間違いないですね。
  24. 柿手操六

    柿手説明員 そうでございます。
  25. 千賀康治

    ○千賀委員長 他に御質疑はありませんか。
  26. 河野謙三

    河野(謙)委員 この機会に私は、安本長官の御答弁も意に満たないところがありますが、本委員会として、肥料価格の問題はきわめて重大でありますし、特に過燐酸の問題につきましては、補給金を今後継続すべきだということは、おそらく私は本委員会全員の希望であると思います。そこでこの機会に、政府の態度が未決定のようでありますから、政府に向つて、強く補給金継続につきまして決議を出したいと思います。手元に決議の案文をつくりましたので、一応私はこれを朗読さしていただきまして、委員長から委員会にお諮りいただきたい、かように思います。 衆議院農林委員会は、農家経済に至大の影響のある肥料価格について、政府に対し、屡次その適正化を要望して来たのであるが、最近における肥料市況、ことに燐酸質肥料価格が異常に騰貴し、農民に多大の不安を抱かしめる等、政府施策に適正をはなはだしく欠くものがある。よつて政府肥料価格に対する見解を明らかにし、肥料価格の妥当化をはかるととともに、思惑的価格つり上げを抑制し、肥料の円滑な需給をはかるため、左の措置を速急に実施すべきである。 一、燐酸質肥料の主原料たる燐鉱石が外航運賃の値上げ等の影響により大巾の値上げを見ており、もし本年度において燐鉱石補給金の支出を撤廃した場合は、肥料の消費者価格が急激に高騰し、農業経営を破壊し、食糧生産の減退を見る事態必至なるにかんがみ、今後も引続き燐鉱石補給金を支出するよう必要な措置を講ずること。 二、燐鉱石補給金の支出の本来の意義にかんがみ、消費者価格が予想以上に騰貴しないような適切な措置を講ずること。 三、燐鉱石の輸入については、外貨資金の割当、船腹の確保について格段の措置を講ずるとともに、既契約のものの早期輸入実現をはかり、かつ補給金支出額を節減するための廉価購入をはかるようにすること。 右決議する。
  27. 小笠原八十美

    小笠原委員 ただいまの河野委員の決議文の内容でありますが、これはわれわれ小委員会においても満場一致できめたことで、すこぶるいいこととは思うのであります。ただここにおいて予算措置の問題であります。ことに輸出問題と関係があるので、ここに通産大臣並びに大蔵大臣ともに御出席を願つて、それに質疑を重ねて、その答弁の結果によつてこれを決議しよう、決議した以上は、われわれ委員会としては絶対に実行しなければならぬ。これは重大な問題であります。関係大臣がまだおそろいになりませんから、河野君に御相談申し上げますが、もう一ぺん呼んで、答弁のいかんによつて、この決議の内容に入りたいと思いますがどうでしよう。
  28. 河野謙三

    河野(謙)委員 よろしゆうございます。
  29. 小笠原八十美

    小笠原委員 河野君の御了解を得ましたから、皆さんどうか御賛成願います。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  30. 千賀康治

    ○千賀委員長 ただいまの小笠原委員の御提議に対して、満場異議がないようでありますから、次に御要求の両大臣出席を得てさらに本案を討議いたしたいと思います。     —————————————
  31. 千賀康治

    ○千賀委員長 これより森林法案及び森林法施行法案の両案を議題といたします。野原委員説明を継続いたします。
  32. 野原正勝

    野原委員 先ほどの御説明に引続きまして御説明申し上げます。  森林土地所有者であつても、その土地について地上権者があり、その地上権者が立木竹を所有し、育成している場合は、その地上権者が森林所有者であり、土地所有権者は森林所有者ではないのであります。また杭木業者、パルプ業者、素材生産業者等のごとく、單に立木のみを所有し、その土地についてはその立木を伐採しかつ搬出する等の伐採に伴う使用権しか有していない者は、もちろん森林所有者ではないのであります。  国有林民有林の区分は、その森林所有者が国であるかいなかで定めるわけでありますが、国有林野法第三章の部分林については、部分林契約による造林者が森林所有者であると考え得るので、本来、民有林に入るべきでありますが、これは国有林として規律して行くことが妥当であると考えられるので、特に国有林である旨を明らかにしたのであります。  なお公有林野、官行造林地については、国が地上権者であるので、国が当然森林法でいう森林所有者であり、従つて国有林範疇に属するものであります。  民有林は、以上の国有林以外の森林ですから、この中にはいわゆる公有林、社寺有林、私有林のすべてが包含せられるわけであります。  第二章は営林の助長及び監督でありますが、第二章においては、森林計画に関する規定森林計画で定める伐採に関する規定、火入れ等森林についての危害防止に関する規定から成り立つております。すなわちその目指すところは、現在の施業案制度を改めて、行政府責任のもとに森林生産の保続をはかり、森林施業合理化に資するように森林施業基準としての森林計画を設定実施し、戰時戰後を通じて急激に荒廃と減耗の一途をたどりつつあるわが国森林資源の保続培養に努めて行こうとすることにあるのであります。  森林計画の設定、その内容、構成等は法案に詳しく書いてあるので、ごらんを願いたいと思います。  なお森林計画は、森林生産の保続をはかることと幼齢林保護、伐採地跡地の早急な造林、急傾斜地の皆伐作業を抑制することを旨とし、かつ施業の合理化に資すべきことを目途として作成されなければならないのであります。右のようにして決定された森林計画については、森林の現況、経済事情等に著しい変更があつた場合等においては、森林計画を変更することができますが、なお森林実施計画に異議のある者は、その公表の日から二十日以内に異議の申立てができることとしたのであります。森林計画で定められた事項については、一般的に森林所有者はその計画に従つて施業することを旨としなければなりませんが、特に植栽に関する事項については、森林実施計画で定めたところに従つて植栽しなければならないのであつて、これに違反のあつた場合は、行政代執行法または臨時造林措置法の運用によつて造林の実現を期し、違反者に対しては罰則の規定はないのであります。  次に伐採については、次のごとき取扱いとなります。すなわち森林を制限林、普通林、特用林及び自家用林に区分するのであります。  制限林は、保安林、保安施設地区の森林、砂防指定地区の森林、国立公園の特別指定地区の森林等、その立木竹伐採を制限されている民有林とするのであります。  普通林は制限林、特用林及び自家用林以外の民有林とするのであります。  特用林は、省令で定める樹種、たとえばはぜ、栗、うるし、あべまき等を主とする森林で、その立木の果実の採取その他の省令で定める用途に主として供されるもの、すなわちいわゆる特産樹を主とした森林であつて森林所有者の申請によつて指定したものとするのであります。  自家用林は、森林所有者が、自家の生活の用に充てるため必要な木材、薪炭等の林産物採取の目的に供すべきものを、五反歩以内で申請によつて指定したものとするのであります。  右の四種の森林のうち、特用林と自家用林については、その立木の伐採に関しての制限は加えません。普通林の立木のうち、適正伐期齢級以下の立木と制限林の立木については、都道府県知事の許可を受けなければ伐採できないことになつております。この場合の都道府県知事が伐採を許可し得る限度は、森林実施計画で定める伐採許容限度数量範囲内でありますが、特に必要がある場合は二割の範囲内で許容限度を増加することができることになつております。普通林の立木のうち、適正伐期齢級以上に属する立木については、伐採の六十日前までに都道府県知事にその旨を届け出れば伐採することができることになつております。この場合の適正伐期齢級は、省令において地域別及び樹種別に定められるのでありますが、おおむね成長量最多の時期を基準として定められるのであります。  なお非常災害に際して緊急の用に充てるための伐採または公共の設備に対する支障木、危險木の伐採等の例外措置を認め、また試験研究の用に供される森林等については、森林計画に関する規定伐採制限に関する規定は適用しない旨を明かにしたのであります。また普通林の立木の伐採の許可制に伴い、一部の幼壯齢林の伐採が制限せられることとなりますが、その場合にその立木の伐採を制限された森林森林所有者に対しては、その森林を担保として、原則として森林組合を通じて、平均四分の低利資金農林漁業資金融通法の定めるところに従つて融通する途を開き、この法律と同時提案中の森林法施行法で所要の改正をはかることとなつております。  第三章は保安施設に関する条項であります。この章は、第一節保安林、第二節保安施設地区にわかれておりまして、第一節は現行法第三章保安林に相当するものでありますが、第二節は新設の規定であります。  第一節の内容は保安林の指定または解除、保安林における制限、保安林に指定された場合の損失補償並びにこれらに関する手続を定めたもので、現行法とほとんど同様であります。ただ指定または解除の手続に多少の補正を加えたのと、保安林指定の事由として、新たに火災の防備及び干害、雪害または霧害の防備を追加したのであります。なお現在の保安林は、新法施行と同時に新法によつて指定されたものとするのであります。  第二節保安施設地区は従来国または都道府県が行つていたいわゆる治山工事の主体、事業の態容等について法律上の根拠を與えたもので、おおむね次の内容を含んでいるのであります。  国または都道府県が森林の造成事業または森林の造成もしくは維持に必要な事業を行う場合には、保安林の指定の場合と同様の手続によつて農林大臣森林または原野等をその事業実施に必要な限度で保安施設地区として指定するのであります。都道府県が保安施設事業を行う必要があるときは、保安施設地区の指定を農林大臣に申請するのであります。保安施設地区指定の有効期間は七年とし、必要があるときは三年を限つて延長できるのであります。なおその後十年間は国または都道府県はその保安施設事業にかかる施設の維持管理行為を行うことができるのであります。国または都道府県が保安施設事業を廃止したときは、農林大臣は遅滞なく保安施設地区の指定を解除しなければならないものとし、また地区指定の後一年を経過しても国または都道府県がなお事業に着手していないときは、その指定は失効するのであります。保安施設地区の土地所有者その他その土地に関し権利を有する関係人は、国または都道府県がその地区内で行う造林森林土木事業その他保安施設事業を行うこと、及び期間満了後において施設の維持管理をする行為を拒んではならないものとしたのであります。国または都道府県は保安施設事業を実施することによつて関係人が受けた損失を補償しなければならないのであります。国は保安施設事業によつて利益を受ける都道府県に、その事業費の三分の一以内を負担させることができるのであります。また都道府県の行う事業に対しては、その事業費の三分の二以内を国は補助することができるのであります。保安施設区の有効期間が満了したときに、森林であるもので、いまだ保安林でないものは、そのときに保安林として指定されたものとみなされるのであります。従つてそれ以後は保安林となります。  次に第四章、土地の使用の条項であります。この章は現行法第四章土地の使用及び收用に相当するものであります。この章においては、森林から林産物を搬出するため他人の土地を使用することが必要な場合における、使用権の設定に関する事項を規定しており、現行法とほとんど同様であります。すなわち使用権設定に関する都道府県知事の認可、使用に関する協議が整わない場合の都道府県知事の裁定、使用される土地所有者の、その土地の收用の請求、使用の際の損失の補償、損失の補償に関する訴訟等を規定し、さらに水の使用権の使用についてもこれらの規定を準用するほか、水流における工作物の使用等に関する規定を置いたのであります。改正を加えた点は、土地の使用権を設定し得る場合を明確にし、森林から木材、竹材もしくは薪炭を搬出し、または林道、木材集積場その他森林施業に必要な設備をする場合として、林産物範囲を明らかにするとともに、設置しようとする設備の範囲を拡張したことであります。  なお土地使用に関する規定のほかに、立入り調査の規定を置き、森林所有者、または権限に基いて森林立木竹の使用もしくは收益をする者が森林施業に関する測量または実地調査のため必要があるときは、都道府県知事の許可を受けて、他人の土地に立ち入り、または測量もしくは実地調査の支障となる立木竹伐採することができることとしたのであります。  第五章は森林審議会に関する事項でありまして、森林に関する重要事項について、農林大臣または都道府県知事の諮問に応ぜしめるために、農林省に中央森林審議会を、都道府県に都道府県森林審議会を置くこととし、地方森林会は廃止することとしたのであります。本法によつて森林審議会に諮問される事項は、森林計画の決定、保安林の指定または解除及び保安施設地区の指定に関する事項であります。  中央森林審議会の委員は、学識経験者十七人、農林省その他の関係行政機関の職員十人とし、農林大臣が内閣総理大臣の承認を得て任命するのであります。農林大臣は専門の事項を調査させるため必要があると認めるときは、委員のほかに専門委員を置くことができます。  都道府県森林審議会の委員は、学識経験者十人、都道府県その他の関係行政機関の職員五人とし、都道府県知事が任命するのであります。  第六章は森林組合及び森林組合連合会に関する規定でありまして、この章は、森林組合及び連合会の組織、事業、管理、設立等に関する事項を規定しているのであります。  組合目的といたしましては、森林組合及び森林組合連合会は、森林所有者協同組織により森林施業合理化森林生産力の増進とをはかり、あわせて森林所有者の経済的社会的地位の向上を期することを目的とするのであります。  次に独占禁止法との関係でありますが、森林組合組合員は、独占禁止法の適用については、法人たる組合員であつて、常時使用する従業員の数が百人を越え、またはその経営する森林面積が三千町歩を越えるものを除いて、同法第二十四条第一号の小規模事業者とみなされるのであります。  森林組合は施業組合及び生産組合とし、事業及び組合員に関する規定は本文にありますので、ごらんを願います。  施設組合は林道を開設し、拡張しまたは復旧したときは、都道府県知事の認可を受け、その事業の実施によつて特に利益を受ける者にその事業に要した費用の一部を負担させることができる規定となつております。右のほか、施設組合の倉荷証券の発行、組合施設の員外利用等については、一般の協同組合と同様であります。加入及び脱退は自由とし、議決権及び選挙権は一人一票とするほか、組合員の権利義務については、一般の協同組合と同様であります。  組合の管理に必要な事項として、定款、規約、総会、総代会、財務等に関し、一般の協同組合の例にならつて必要な規定を設けまして、組合員から信託を受けて森林の経営を行う施設組合について信託法の適用の特例を設けたのであります。この組合の設立、解散、清算、登記及び監督等の規定を設けておりますが、組合を設けるには、施設組合にあつては十人以上、生産組合にあつては五人以上の森林所有者たる個人が発起人となることを必要としております。その他、設立の手続、解散、清算及び監督については、一般の協同組合と同様であります。  森林組合連合会の事業及び会員でありますが、森林組合連合会は、左に掲げる事項の全部または一部を行うことができると規定しております。一、連合会を直接または間接に構成する者のためにする森林の経営に関する指導。二、会員の行う事業に必要な資金の貸付。三、会員の行う事業に必要な物資の供給。四、所属員の生産する林産物の運搬、加工、保管または販売。五、所属員の行う林業に必要な種苗の採取または育成に関する施設。六、所属員の行う林業に必要な林道の設置その他共同利用に関する施設。七、防火線の設置、病虫害の防除、その他所属員の森林の保護に関する施設。八、所属員の幅利厚生に関する施設。九、林業に関する所属員の技術の向上及び組合事業に関する所属員の知識の向上をはかるための教育並びに所属員に対する一般情報の提供に関する施設。十、所属員の経済的地位の改善のためにする団体協約の締結。十一、前各号に掲げる事業の外、会員の指導及び連絡に関する施設。十二、前各号に掲げる事業に附帯する事業。以上のような事柄を行うのであります。  連合会の会員たる資格を有するものは、連合会の地区の全部または一部を地区とする森林組合または森林組合連合会であり、また連合会の地区の全部または一部を地区として、他の法律に基いて設立された協同組合であつて、前号に掲げるものの事業と同種の事業を行うものであります。これらのものが連合会の会員として規定しております。  第七章は雑則の規定でありまして、これは一括して載せておるのでありますが、共有林分割請求の制限、林業技術普及員及び林業経営指導員の設置、この法律又はこの法律に基く命令の規正による行政庁の処分に不服のある者の訴願、都道府県の費用負担、造林、林道、試験研究に対する国庫の補助、林業経営指導員及び林業技術普及員を設置するため都道府県の費用に対する国の補助、森林区施業計画又は森林実施計画の作成、その他都道府県の事務の費用に対する国庫の補助等に関する規定を設けておるのであります。  第八章に罰則規定を置いておりまして、森林窃盗その他、森林に関する罪の特別規定と本法の規定の違反の罰則を含んでおります。前者については、おおむね現行法通りとして、時勢に応じて整備したのであります。  以上が森林法規定しております概要であります。  次は、森林法の施行法でありますが、森林法の施行に伴う経過規定及び関係法律改正規定から成つておるのでありますが、そのおもな内容は次の通りであります。  第一条は、森林実施計画の期間が開始するまでは、現行法によつて定められている施業案が依然として効力を有する旨の規定であります。  第二条は、新森林法施行後森林実施計画に基く伐採許可の制度が発動するまでの間——これは昭和二十六年十二月三十一日までの予定でありますが、これまでの間においては、森林の立木の伐採は、経過措置として、伐採の届出を必要とする旨を規定いたしました。  第三条は、森林計画の特例として、新法によりまして最初に定める森林基本計画は、明年三月三十一日までのものといたしまして、これに基いて森林区施業計画を定めることなく、ただちに森林実施計画を定め得る旨、及びその際は伐採に関する事項及び伐採許容限度数量のみを定めればよいことといたしました。かつ森林実施計画は昭和二十六年十月三十一日までに決定すべきものと定めたのであります。  第四条も、森林計画の特例についての規定でありますが、これは昭和二十七年四月一日を始期とする森林基本計画及びそれに基く森林区施業計画の期間は、五年、四年、三年、二年、一年とできるように特例を設けたのであります。すなわち四百三の基本計画区につきまして、おおむね五分の一ずつの地区は、それぞれ五年、四年、三年、二年、一年の期間の森林基本計画及び森林区施業計画を定めまして、爾後毎年五分の一の基本計画区について、森林基本計画及び森林施業計画が編成されるのであります。  第五条は、保安林についての制限に関する効力の存続期間の規定であります。  第六条から第十五条までの規定は、現在の森林組合が新森林法森林組合に移行する場合の経過の規定でありまして、そのおもな点は次の通りであります。  すなわち現在の森林組合定款変更の手続によつて、新しい規定による森林組合に移行できるものといたしました。その手続は、旧法による旧組合定款変更手続と新法による新組合定款変更手続との双方の条件を備えるごとき愼重な議決方法によるものとしたのであります。  なお、組織変更に際しての地区の変更、出資一口金額の減少等はできないことといたしまして、組織変更は、行政庁の認可を受け、登記をすることを必要としたのであります。  以下第十一条は、組織変更に伴う組合員または会員の脱退の規定、第十二条は、新組合と旧連合会との関係、第十三条は、旧組合と新連合会との関係規定で、それぞれ組織変更に際しての組合組合員、連合会と会員との関係及び経過的に混乱することを調整するための規定であります。  第十四条は、組織変更後の組合員または会員の責任についての、第十五条は、新組合の事業を旧組合の事業より縮小した場合についての経過規定であります。なお旧組合が、新森林法施行後八箇月以内に組織変更をしなかつたとき、及び旧連合会が同じく九箇月以内に組織変更をしなかつたときは、そのときに解散したものとなるのであります。  第十六条以下第二十三条までは、関係法律改正でありますが、この中で、特に第二十三条による農林漁業資金融通法改正が最も重要な問題であります。これは新森林法によつて幼壮齢林伐採が許可制度となる結果、特に零細な森林所有者森林を処分して、ある程度まとまつた金を必要とする場合に、その森林の換金が困難となるので、これらの人々に対して、その森林の立木が伐採し得るに至るまでの期間、長期低利資金を貸し付け得るように、農林漁業資金融通法改正を行うものであります。すなわち、この改正によつて農林漁業資金融通特別会計から年平均四分、貸付期間二十五年以内の長期低利資金が、いわゆる伐採調整資金として今後は融通せられることとなるのであります。なおその貸付の直接の対象としては、森林組合を原則とし、森林所有者には、森林組合から転貸する方法によるものとし、その貸付金の限度は、利用伐期齢級以上適正伐期齢級以下の森林の立木の評価額とし、かつ、その毎年の一森林所有者に対する貸付金額は、三十万円を限度とする方針であります。なおこの資金の償還は、定期一時償還の方法を採用したのであります。  第二十四条は、罰則の適用及び旧法の規定またはこれに基く命令の規定によつてした処分、議決、申請その他の行為についての当然の経過規定をあげておるのであります。  以上をもちまして、森林法案施行法案のあらましを御説明申し上げた次第であります。
  33. 千賀康治

    ○千賀委員長 午後は二時から再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。日程は同様であります。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十三分開議
  34. 千賀康治

    ○千賀委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  森林法案及び森林法施行法案一括議題といたします。両案に対し質疑なり御意見があれば、発言をお許しいたします。通告がございます。平野三郎君。
  35. 平野三郎

    ○平野委員 それではただいま議題となりました森林法案並びに森林法施行法案につきまして、若干の質疑をいたします。私も本案の提案者の一人であります。従つてもちろんこれに賛成をし、通過成立を希望いたしたいのでございます。ただこの法案の施行に関連して、同時にこの機会にわが国の林業政策全般に関連いたしまして、主に政府の方のお考えを承りたいと思います。提出者におかれましては政府の方と御相談の上、しかるべく御答弁いただいてけつこうでございます。  まず第一に、本案の施行に際して最も憂慮されることは、この法律が効力を発する前に森林の濫伐が行われるというような点がありはしないか。この法律中最も重要なのは第十六条でありますが、これがすでに一般には、森林が許可を受けなければ伐採ができなくなるのだ、従つて今のうちに切れというような声が、祖当地方に響いておるようでありまして、その結果、かえつてこの法律目的に反するような事態が、ここ近い将来に起るのではないかということを憂慮されます。そこでこの法律が、幸いに本国会を通過いたしまして施行されて、この第十六条が効力を発揮するということを、最も早い機会に考えた場合はいつになりますか。その日にちをまずお伺いいたしまして、政府がその間におけるところの何らか行政的な措置を講ぜられるお考えがあるかどうかということを承りたいと思います。
  36. 横川信夫

    ○横川政府委員 ただいまの質問の、この法律が実際動いて参るのはいつかということでありますが、明年の一月一日から実施に入りたいと思うのであります。なお法律の施行の日にちは本年の八月一日を考えておるのでありますが、実施計画等を編成いたしまするために、八月から十二月まで手続の期間を要しますので、その間に十分の手続を終えまして、明年の一月一日から実施をはかりたいと考えておるのであります。なお八月一日に幸いにして成立いたして実施をいたすことにいたしまして、明年の一月一日までの間は届出によつて伐採を調整して参りたい。届出をしたものは伐採をさせるけれども、とにかく届出の手続をするというふうにして処理して参りたいと思います。
  37. 平野三郎

    ○平野委員 ただいまの御答弁はよくわかりました。どうか政府におかれましては、届出があつた場合に、この法律が施行されるまでの間、国民道義に訴えて、決して法律に縛られることがないから今のうちに切れというような声が起らないように、十分に周知徹底せしめ、森林の荒廃を来さないようにおとりはからいをお願いいたします。  次にお尋ねいたしたいことは、第十六条に関連いたしまして罰則の点であります。森林の窃盗、放火等につきましては、相当重い罰則がある。これは刑法にも触れることでありまして、当然のことであります。一番起りやすいであろうと思われる違反は、第十六条の違反であります。これについては第二百六条に第十六条の規定に違反した場合には三万円以下の罰金に処するという規定がありますけれども、この程度規定では、私は十分にこの十六条を守ることができないのじやないか、おそらく森林伐採をいたします場合においては、立木一本でも三万円、五万円というような木もあるわけであります。おそらく相当伐採をするという場合におきましては、何百万円とか、何千万円とかいう場合も起るわけでありますから、三万円くらいの罰金では拂つてもかまわないではないかというようなことが起りはしないか。従つてせつかく第十六条をつくりましても、罰則がきわめて軽微なものでありますので、空文に終るというようなことがなきにしもあらずではないかということを心配するのであります。この点はいかがでありますか。
  38. 横川信夫

    ○横川政府委員 ただいまの罰則が軽きに失するではないかという御意見、私どももそういう見解で関係方面といろいろ折衝いたしたのであります。何分にも木そのものは所有者本人の持物でありますので、それに対してあまりに苛酷な刑罰を課するということは、他の法律とのつり合いもございまして不可能であるというような見解であります。それでこのような三万円程度におちついたわけでありまして、なお法案によつて御承知のように、一本につきまして一万円も二万円もするようなものは、適正伐期以上の立木でありまして、それは届出をすれば自由に切れることになつております。御心配になりますような事態は、私は起らないではないかと考えております。
  39. 平野三郎

    ○平野委員 罰金を拂えばいいのじやないかというような気持で、この法律を無視することの起らないように、どうかひとつ十分に行政的に御注意になつて政府の方でおとりはからいを願いたいということを要望いたしておきます。  次に、この法律が施行されますと、私ども一番憂慮にたえないことは、これは民有林に関する法律でありますが、日本民有林野の今日の行政機構というものが、とうていこの法律を行つて行くだけの、充実した内容を持つていないのではないかということを憂えるわけであります。この罰則にありますところの、許可の申請があつた場合において、各都道府県は三十日以内にそれに対する許可を與えなければならぬというような規定でありますが、当然その森林を調査するという必要が起つて参りますし、大体施業案の編成を日本民有林野にわたつて確立するということについても、相当の人員を要することになるのでありますけれども、現在の地方の府県の林政機構においては、とうていこの法律を行うだけの力が、今日ないのじやないかということを憂えるわけであります。従つて、どうしてもこれは民有林野の管理の方を相当ふやさなければならぬということになると思いますが、そういうこともまた一方においては困難であります。そこで考えますに、日本国有林につきましては、今日相当機構が充実しておるのであります。もちろんこれは不満足な点もありましようけれども民有林に比較いたしますれば、おそらく国有林野の方は段違いというほど内容が充実しておるのではないか。同時に国有林の方は、一応施業案も立つておりますし、運営が軌道に乘つて行われておるのであるが、民有林はまつたく荒廃に帰しておる。従つてこういう法律改正も必要になるのでありますから、どうしてもこれはある程度国有林の方の担当の管理の方々が民有林の方に転換するとか、あるいは少くとも、この森林法の施行について、営林局長の方面がこれに応援をする必要があるのではないかと考えるわけであります。そこでお尋ねしたいことは、国有林野の担当をしておられる管理の方々の数が、国有林野一千町歩について何人充当されておるか、民有林野の面積がどれだけあつて民有林野の方の管理の方が何人あつて民有林一千町歩について何人の割合になるか。これは逆に国有林の管理の方が一人で何町歩を受持つておるか、あるいは民有林の方が何町歩受持つておるかという数字でもけつこうであります。これは今わからなければあとでもけつこうでありますが、その数字を承つて、ただいまお尋ねいたしました根本問題について、政府のお考えを承りたいと思います。
  40. 横川信夫

    ○横川政府委員 国有林の技術陣営を民有林に応援さすという道は、昭和の初めから開いておるのであります。現在でもできるだけ国有林の技術者が民有林の技術指導をするということになつております。なおただいまお話のように、国有林は比較的優秀な技術者をたくさん持つております。民有林の技術者と活発に人事の交流を行いまして、できるだけ民有林技術者の充実をはかつて参りたいと考えております。なおこの法律を施行するにあたりまして、経営指導員を全国に二千二百九名置くことに相なつておるのであります。その資格も相当嚴重な審査を受けることになつておるのでありまして、国有林の技術者からもその方面に応募させるようにいたしております。ただいまお話国有林の技術者が相当民有林に入り得る、応援し得る道を開いて、実行に移しておるのであります。なおただいま御質問の、民有林の技術者が一人何町歩担当しておることになるかという数字は、持ち合せておりませんので、後刻取調べましてお答えを申し上げます。
  41. 平野三郎

    ○平野委員 次にお尋ねいたしたいことは、この法律を施行するにあたりましても、とにかく日本森林資源が極度に枯渇状態にあるということから出発いたしておるわけでありまして、どうしてもこれは林産物をよほど貴重に考えてやらなければならぬ。従来ややもすれば、この木材を、原始産業でありますので、浪費するような傾向が濃厚であるのではないか。従つてどうしても今後は木材を貴重品と考えて、これの徹底的な消費の節約をはかると同時に、これの利用合理化を大いに考えなければならぬと思いますが、この点について政府としてはどういうお考えのもとに、またどういう手を打とうという計画を持つておられるか、できるだけ具体的に御意見を承りたいと思います。
  42. 野原正勝

    野原委員 いずれ政府から見解の発表があると思いますが、私提案者といたしまして、この問題に二言お答えいたします。平野委員のおつしやるように、日本森林資源が非常に枯渇状態になつておるということで、森林の維持、造成、培養をはからなければならぬという点が、この森林法の主眼でありますが、それに関連して従来林産物利用状態を見ておりますと、この利用が合理的でないという面が非常に多いのであります。それに対しましては、従来政府のとつて参りました施策が、はなはだ不徹底であるということを、私ども率直に認めざるを得ない。そこでこの機会に私どもは、この法案そのものには載つておりませんけれども、実は今後の行政措置として政府に望むところは、この森林法をもつて私有林の経営を、国家目的のためにある程度伐採の制限までもやるような事態になつておる現実にかんがみまして、どうしても利用合理化を徹底的にやらなければならぬということを考えるのであります。それに対しましては、いろいろたくさんの問題があろうかと思いますが、それは今後の林業政策、林業の振興、発展、また当面した林業の問題を解決するために、並行的に考えなければならぬ問題であると思うのであります。私どもはひとり森林法改正して、それで日本森林がよくなると考えておりません。どうしても今平野君のおつしやるような、木材利用合理化という面に思い切つた施策がなされる、たとえてみれば、林産物の科学的な利用合理化のために、急速に国家は相当予算をもつて利用合理化促進のための研究施設をやる、あるいはまた従来木材によつて利用しておつた箱材のごときは、紙をもつて利用するというところまで進めることを、政府は必ずやるであろうということを前提として、こういう法案をつくつたとさえも言い得るのであります。立法者の立場からこの問題に対しての見解を申し上げておきます。
  43. 横川信夫

    ○横川政府委員 木材利用合理化につきましては、すでに数回にわたりまして、需要官庁、関係方面と連絡協議をいたしまして、具体的に利用合理化委員会を各省に設けていただいております。最近造船材等におきましては、通産省で特に熱心に取上げていただきまして、新しい規格なども考えを願つておるくらいになつておるのでありますが、私ども希望といたしまして、特に木材利用合理化をはかりますために考えておりますことは、建築部門におきましては耐火建築の普及をはかつております。それから防風、防火木材利用あるいは仕組み住宅を考えてもおるのでありますが、このごろなかなか建築もぜいたくになつて参りまして、仕組み住宅だけでは皆さん御満足が行かないような状態でありまして、あまり普及はいたしておりませんが、これももう少し体裁のよろしい仕組み住宅を研究して参りたいと思います。この仕組み住宅をいたすことによりまして、利用木材は五%以上節約になるのじやないか。なお製材機の特にバンド・ソーの普及ということも考えられるのでありますが、これは資本の関係もございまして、全国の製材業者に全部帯鋸を使わせるということもなかなか困難ではなかろうかと思いますけれども、できるだけそういうことを勧奨いたしまして、製材歩どまりの増加というようなことも考えております。  それから次に包装部門についてでありますが、ただいま包装木箱に使われております木材は一千五百万石ほどになつておるのであります。非常に濫伐の原因をなしておると言われておるパルプでも、現在一千百万石ぐらいな程度であります。それに対しまして包装材料は千五百万石にも上つておるのでありまして、目につかないのでありますけれども、この消費が非常に大きいのであります。これをボール箱にかえることによつて木材の所要量が四分の一に相なるのであります。全部、特に重量品などは、ボール箱で包装して送るということはなかなかむずかしいことでありますけれども、これはできるだけダンボールの利用によつて木材の消費節約をはかつて行きたいと思つております。  坑木部門につきましては、すでに部炭坑等で実行いたしておりまする鉄柱の問題あるいはカツパ採炭の問題等がございます。現在坑木の一トン当りの木材消費量は、平均いたしまして約二斗五升ほどになつておりますが、このカツペ採炭等をいたしておりますところでは、一斗二升ぐらいで済ましておるところがあるようであります。そういうことが徹底いたしますれば、木材の節約が相当行われるだろうと思います。  次にパルプでありますが、このパルプも従来ほとんど赤松を使つておりまして、坑木と非常に競合をいたしておつたのであります。代替資材として闊葉樹、特にぶな等を混入することによつて針葉樹材の節用をはかり、また従来はS・Pを主としてつくつてつたのであります。これをクラフト法に転換することによりまして、一トン当りの木材所要量を従来の約二十二石を十八、九石程度に引下げることができるのではないか。これはたいへん節約になるものであります。最近設立されておりますパルプ工場は、おおむねこのクラフト法によるか、あるいはセミ・ケミカル法による方法で原單位の引下げをパルプ会社自身も相当研究いたしておるようであります。なお竹パルプにつきましては、ただいま山口県の萩で一箇所やつております。わずかに一千トンほどの工場でありますけれども、これは将来性のあるものであり、りつぱな新聞紙等ができておるようであります。  次にまくら木の部門でありますが、防腐剤の注入によりまして相当節用ができると思うのであります。電柱につきましては、防腐剤の注入によりましてその耐用年度を五倍ぐらいにすることは不可能ではないような状態でありまして、国鉄ではほとんど、くり、びわ、ひのき等を除いて、それ以外のものはすべて防腐をいたしておるようであります。私鉄では、資金関係もございますか、なかなか徹底いたしておらないようであります。これもできるだけそういう方面に徹底をはかるようにいたして参りたい。  次に最も大きい問題は薪炭の問題でありまして、全体の消費量が約一億石でございますが、使用いたしております熱効力は三〇%ぐらいなものであります。私どもの係の者で非常に技術のよろしい者は、一升のめしをたきますのに百八十グラムぐらいの木炭で足りるのでありますが、一般家庭の主婦は五百グラムぐらい消費しておるようであります。これは各家庭の経済にも直接大きな響きを持つものでありますので、できるだけそういうような技術を徹底させるように講習会を開くとか、あるいは講演会を開くというようなことで努力をして参りたいと考えております。それから薪炭の節用の問題のうち豆炭の問題があるのでありますが、東北地方あるいは北海道に非常に多い亜炭を乾溜して、無煙炭とまぜまして豆炭をつくる。これは熱量も六千カロリーぐらい出るようでありますが、これをできるだけ増産さして普及をはかつて木材の節用をはかつて参りたいと考えております。  以上がさしあたつて実行にかかつておる木材利用合理化の項目でございますが、今後考慮すべきことは寒地住宅の問題であります。東北、北海道における一般の住家は、せつかく暖をとりましても、それがすぐ外に逃げて行つてしまうというような構造になつております。それをできるだけ安く、しかも熱の逃げないような構造にいたすことをただいま研究いたしておるのであります。  それから次に、闊葉樹から直接に新聞紙等の紙をつくることを研究いたしたいと思つておるのであります。これは通産省で莫大な補助金を出して本州製紙に研究を命じておるようでありますが、まだ成果は上つておらないようであります。けれどもこれはぜひ実行に移して参りたいと思つております。  さらに耐水性合板についてであります。コンクリートの型わくなどは、現在のような様式でやつて参りますと、一回か二回きり使えないのであります。それを耐水性合板にいたしますと、百五十回ぐらい使えるのであります。その技術はただいまアメリカにきりありませんが、わが国でもできるだけ早い機会にこの耐水性合板をつくることを考えて参りたいと思います。さようにいたしますと、鉄道の貨車などはその合板を使うことによりまして経費も節減になりますし、また重量も非常に軽くなりますので、牽引力を増して参るというようなことになるかとも思つております。  以上簡單でありますが、木材利用合理化について申し上げます。
  44. 平野三郎

    ○平野委員 ただいまの御答弁で、木材利用合理化につきましての御熱意のほど並びに豊富なる御識見のあることはよくわかりましたが、これは計画ではだめで、要は実行でありますから、必要があれば、法律をつくつてでも早急にこの木材利用合理化の実現に進むように、くれぐれも御努力をお願いいたします。  次に、これは提案者の野原さんにお尋ねいたします。第十六条の第二項に、伐採許可を申請するにあたつては年に一回しかできないということになつておりまして、これは非常にきゆうくつのように思われますが、これはどういう理由であるか。もう一つ、同じく第六項には伐採許容限度の二割ということになつておりますが、それ以上は絶対に許可しない方針であるかどうか。私どもは自立経済の関係から見まして、木材がいかに不足しておつても、ここ一両年は、需要に対してはやはり相当に応じなければならぬのではないか。そうしますれば、あるいは二割を多少越えるという場面があつても、今後相当長期の間にこれを調整して行けばいいのであるから、二割という絶対的な限度を設けなくてもいいのではないかというふうにも考えますが、この点はどういうふうにお考えになつておりますか。
  45. 野原正勝

    野原委員 お答えいたします。年一回といたしましたのは、実施計画を立てますためには何か基準がないと困るのであります。年数回もできるということになりますと、それぞれ計画しますのに非常に煩雑な、むずかしい手数を必要といたしますし、やはり年一回の申請でやつていただくことが事務上の点で非常に助かるわけであります。しかもこれは年一回の申請で、あと絶対に切れないということになりますと、たいへん困るわけであります。そこでこの年一回といたしますときに、許容限度の範囲内、つまり適正伐期未満のものについて伐採できる適正量というものに対しては年に一回にしたのであります。それでどうしても今日の木材需給の面から見て容易でないにしても、成長量から見ましても、これは二割程度は増伐してもよろしいのではないかというので、増伐を当分の間は認めて行くということを特に加えまして、許容限度の範囲内においては二割を越してもいいということにしたのであります。その越えた分については一応年一回で十二月の末に公表し、それから一月の末までに申請を出していただいた数字をとりまとめまして、実施計画の面と合つているかどうかそこで一応検討を加えまして、まだ余裕があるという場合もありましようし、余裕がない場合もありましようし、あるかどうかよくその辺を調べました上で、あとから二割の増伐で奉る分を適時に許可して行つた方が、むしろこれは弾力性があつていいのではないか。一回だけできめてしまつてあとは絶対できないというようなことだと、あるいは非常に困るかもしれませんが、二割の範囲内のものはあとから追加申請をして、それを許可するという形にするならば、さほど困るようなこともなかろとういうようなことで、実はそういう扱い方にしたのであります。
  46. 平野三郎

    ○平野委員 政務次官が見えておられますので、問題を大きくして、林業政策につきましてお尋ねしたいと思います。こういう法律をつくるにあたりまして、今後日本の林政における一番大きな問題は造林の問題であります。何といつてもあるものに計画性を與えるということは必要でございますけれども、それをふやさなければお話にならぬのでございますから、どうしても造林が最も必要である。さきの国会におきましても、挙国造林に関する決議案を可決いたしましたし、また前国会でも造林臨時措置法を通したわけであります。しかしあの程度のことでは、とうてい造林の実績は上らないと私ども考えまするので、木材を消費するところのいわゆる森林受益者というものが、この造林に対して投資をすることが必要なのではないか。何と言つても、造林の要は資金の問題であります。今日国家予算におきましても、相当造林費は計上されておりまするけれども、あの程度では、今日百五十万町歩の民造林すべてを元の状態にもどすことは、なかなかできないのでありまして、これはどうしても国や政府の力だけでなしに、一般の森林受益者が、それぞれ利益の一部を造林費に還元するというような根本的な方策が必要なのではないか。森林の一番大きい受益者といえば電気会社でございます。電気は、最近だんだん山が荒れて来るために水が少くなる、あるいは水が一ぺんに出るために水を放流しなければならぬということで、それだけ冗費がありまするし、またダムの下に土砂が堆積して来て、そのどろをさらい出さなければならぬという事件が、全国至るところに出て来ておるのであります。それで、どうしても電気会社が利益の一部を森林に投資するということが必要ではないか。また。パルプ会社にしても、最近非常な好況を伝えられておるのでありますが、木材価格が高くなればなるほど、パルプの繊維品のコストも高くなるのでありますから、森林相当還元をして行くということが、繊維工業のためにも必要であり、また一般の木材の素材の生産業者などにしましても、やはり相当山に還元するということが必要であつて、どうしても国として何らかの法律をつくるなりして、これらの造林に対する根本的な施策を行わなければならぬのではないかということを考えるのでありますが、こういう点についての政務次官の御意見を承りたい。
  47. 島村軍次

    ○島村政府委員 専門家の平野さんからの御意見ごもつともでありまして、森林資源の培養の点については、まつたく同感であります。現在の段階では、わが国の将来の森林資源は、非常な窮迫した枯渇の状態にあることから、各種の施策が必ずこれに伴わなければならぬのでありまして、その点から申しますと、やはりただいまお尋ねの消費の部面もさることながら、造林の面がきわめて必要なことであり、かつそれがやがては国の森林資源の培養に一番大きく取上げられなければならぬ問題であると思うのであります。従来の経緯から見ますと、御承知の通りに、造林は、経済界のかような情勢もその一つの原因であろうかと考えますが、造林をすることが、資金的に他の産業に比較して、経済界の変動により非常に困難であつたというようなことから、行われていなかつた現状にかんがみまして、将来造林に対する各種の施策が、資金面においてあるいは種苗の育成において、御指摘のような電気その他パルプ工場等の協力を求めることも当然でありまして、すでに御承知の通り、だんだんさような例もあることでありますので、これらは全体の森林法をつくることにより、さらに根本的な計画を進めまして、いわゆる総合的な開発計画をつくり、しかしてこれらの業者に対しても、相当協力を求めることは、目下いろいろ研究を進めているところでありますので、この法案の通過とともに、さような点についての熱心な御後援を得まして、積極的に施策を進めて参りたいと考えておる次第であります。
  48. 平野三郎

    ○平野委員 次に林野庁長官に伺いますが、現在の木材状態は、極度のアンバランスにあるということを客観的に承知いたしておるのでありますけれども政府では、現在どういうような数字を持つておられるか。もしこの法律を施行しないで、このままいるだけの材木を切らせる、また事業の方も少しも抑制しないというように放任しておくならば、今後十年後あるいは二十年後の日本金融状態はどうなるか、日本森林蓄積がおおむねどのくらいあつて、その需要の方は大体どうなつておるかということを、ごく大ざつぱでけつこうでありますから、数字的にひとつ承りたいと思います。
  49. 横川信夫

    ○横川政府委員 森林資源の現在の状況でありますが、皆さんに資料を差上げておいたのでありますが、本日御持参を願つておらないようでありますから、概数をかいつまんで申し上げることにいたします。  国有林民有林を合せて、森林面積は二千二百四十一万二千町歩でございます。従来二千五百万町歩と一口に言われておつたのでありますが、その差の約二百五十万町歩というものは原野でございます。蓄積は六十億二千万石ございます。その成長量は一億六千九百五十万石でありまして、従来は一億三千四百万石と言われておつたのでありますが、今回この森林法を施行するにあたりまして、全国に森林区というものを二千七十一設けることにいたしておりますが、その各森林区につきまして、個々の森林を調査いたしまして積み上げた結果、蓄積におきましては二千万石ほどの減少でありますけれども成長量は約三千万石ほど増加をいたしております。なお既開発林分の蓄積は二十四億三千万石であります。従来これは十八億と言われておつたのであります。その成長量は八千二百万石でございます。それから既開発林分中、これから林道をつくることによりまして開発し得る林分を合すれば、その蓄積は五十六億六千万石でありまして、その成長量は一億六千八百五十万石と相なつております。なおその残りの開発困難な林分の蓄積は三億六千万石であります。これは従来十五億と言うておつたのでありますが、今度調査によりまして三億六千万石、その成長量が百十万石ほどに相なるのであります。  次に木材の需給の状態について申し上げます。木材につきましては、昭和二十四年度は八千四十三万五千石であつたのであります。これを立木に換算いたしますと、一億七百二十七万三千石に相なります。それから昭和二十五年度におきましては八千八百万石でありまして、これを立木に換算いたしますと、一億一千七百三十万石に相なります。薪炭につきましては、木炭、普通まき、ガスまき等を合せまして、原木に換算いたしますと、昭和二十四年度では九千五百七十一万石、昭和二十五年度は一億石余りであります。これを立木に換算いたしますと、二十四年度は二億二百九十八万三千石、二十五年度は二億一千七百九十三万六千石であるのであります。これに対しまして最近の二十四年度、二十五年度は、何も統制があるわけでもありませんし、伐採を制限してもおりませんので、消費量がすなわち供給量であるのでありますが、二十六年度におきましては、有効需要木材におきまして九千六百四十九万石、これを立木に換算いたしますと、一億二千九百五万石余であります。それから木炭が百八十万トンでありまして、それを立木に換算いたしますと四千八百万石であります。それから普通まきが六千五百層積石でありまして、これを立木に換算いたしますと四千六十四万石に相なります。それからガスまきが四十三万トンでありまして、立木に換算いたしますと五百万石に相なります。薪炭に使用する木材の立木材積が九千三百六十四万石でありまして、丸太と薪炭を合計いたしました立木の材積が二億二千二百六十九万三千石と相なるのであります。これに対しまして自立経済上必要な数量を経済安定本部で算定いたしておるのでありますが、その材積は用材が丸太で八千百七十二万石、これを立木に換算いたしますと一億一千二百九十六万石であるのであります。それから薪炭につきましては有効需要は立木に換算いたしまして九千三百六十四万石となるのでありまして、この両者を合計いたしますと二億四百九十六万石であるのであります。一方森林蓄積及び成長量は先ほど申し上げました通りでありまして、この成長量一億六千九百五十万石と、自立経済の所要量とを対比いたしますと、約一二一%に相なりましてわずかに二割の過伐ということに相なるのでありますが、これは将来林道を築設いたしまして開発する区域の成長量も含んでおるのでありまして、既開発の成長量は八千二百四十万石であるのでありまして、その地域から伐採をいたすことにいたしますと、約二五〇%に相なり、著しい過伐をやるということに相なるのであります。しかしながら自立経済に必要な二億四百万石というものは絶対に確保しなければならない最低限でありますので、私どもといたしましては、国有林の普通林におきましては、成長量に対して一割の増伐をいたすつもりであります。また民有林の許可を要する地域の普通林におきましては、成長量の一・三倍の伐採を予定いたすことにいたしておるのでありますが、それを実施いたすことになりますと、用材において立木の材積で一億七百七十一万石で、薪炭林が九千五百九十万石と相なりまして、両者を合せて一億九千八百三十万石となるのであります。先ほど申し上げましたように、自立経済に必要な分量は約三%ほど不足するのでありますけれども、用材を伐採いたしたあとの末木枝条が二千六百万石ほど山元に捨てられておるのでありまして、これを集約的に利用することによりまして需給のバランスは十分保ち得ると考えておるのであります。なお特に坑木、パルプ等の樹齢の若い森林伐採につきましては、先ほど提案者から御説明のありましたように、許容限度の二割以上というその二割の点で操作をして参りまして、できるだけその需用面に不自由をかけないようにしたいと考えております。必要がありますれば、その二割の限度のものは用途指定というようなことも考えまして、特に需要者の方にそれが確実に入る道を考えて行く、さように考えております。
  50. 平野三郎

    ○平野委員 ただいまの御説明によりましてもわかります通り、木材は非常にアンバランスの状態にあるわけでありますが、特に最近需要の方で目立ちますのはパルプであります。今までパルプは外地に依存しておつたのが今後はまつたく内地に転向するために、特に内地の森林に対する圧迫がはなはだしいのであります。ただいま御説明になりました自立経済の安本の有効需要でも、本年は千五百万石、しかしこれはおそらく二千万石以上になるのではないか。しかも最近のパルプ会社の状況を見ますと、今後数年、あるいは十数年後の分までも確保して置こうというような見地で、めちやくちやに山を買いあさるといつた状況にありますので、おそらくパルプ方面に向けられる木材の量は二千五百万石近くに達するのではないかと思われるのでありまして、最もこれが木材の需給上におけるところの大問題であります。  そこで私ども最近遺憾にたえないことは、森林法が一方においてかように改正されるにかかわらず、最近のパルプ会社の状況というものは、まつたく濫設状態を展開しているのであつて、眼にあまるものがあるように思われるのであります。まつたく資材に対するところの見通しもなく、やたらに工場が建設されて行くというような状況にあるのでありますが、一つ工場で何十万石も使うような設備を持つている工場が、全国的に幾つもできている状況にあるかどうか。政府はこれらについて設可制度をとるのか、あるいはこれらについて協議をせられておるかどうか、これは通産省が所管でありますけれども、当然これらのパルプ会社の工場認可などについては、その森林の元締めである農林省に、協議があつてしかるべきものと思うのでありますが、それらについて通産省と御協議になつているかどうかということを承りたい。同時に最近できたパルプ会社の工場数、またそれに要する木材の各工場の量、また現在新築中のもの、計画中というようなものについて、林野庁でおわかりになるかどうか、もしおわかりにならなければ、委員長にお願いしますが、この次の農林委員会に繊維局長の御出席をお願いしたいと思います。その上であらためてまたお尋ねいたしますが、今の問題について、農林省の方はどうなつておりますか、承りたいと思います。
  51. 千賀康治

    ○千賀委員長 平野君に申し上げます。本日質問が大体終了すれば、今日あげたいと思つております。そこでこの次に答弁ということでは、それが不能になりますので、できるだけ答弁をしてもらいますから、そのつもりでお願いいたしたいと思います。
  52. 平野三郎

    ○平野委員 私もそれには賛成ですから、通産省の方は後日お願いします。
  53. 横川信夫

    ○横川政府委員 ただいまのお話、私どもまことに同感であります。ちよつと言葉が過ぎるかもしれませんが、各地にパルプ会社が濫設されておりまして、非常に困つた事態に相なつておるのであります。特に中国地方におきましては、あの辺は赤松の非常に多い地帯であります。特に大規模なパルプ工場ができまして、坑木業者と非常に摩擦を起しているような状況であります。パルプ会社の新設あるいは増設に対しましては、遺憾ながら農林省に対して何ら相談を受けたことはございません。ただ現地の報告によりまして私ども承知するか、あるいは通産省の係官と話合いをいたしておりますときに聞くという程度であります。先般私どもの方から、森林資源の維持という考え方から増設について特に愼重な考慮をして、資源のあり方とパルプ工場の位置というようなことについて十分考慮していただくように、通産省の関係局と協議をいたしておるのであります。その後最近は新設というのはなくなつて来たようでありますが、協議はいたしておりません。  次に資料についてでありますが、一応私どもの方で用意をした数字はございますけれども、なお精査をいたしましてお目にかけたいと思います。できますれば、責任ある通産省の方から出していただければ非常にけつこうなことと考えております。
  54. 平野三郎

    ○平野委員 あまり長くなりますので、この程度質問を打切りますが、委員長にお願いしたいことは、ただいま通産省の方においては、パルプ工場の認可について何ら農林省に協議がないということは、実に驚き入つたことであると思います。いやしくもかように日本森林の荒廃が問題となつておるときに、その最大消費者であるところのパルプ工場は、当然林政の根幹をあずかつている農林省に対して、通産省が協議をした上で許可すべきものである。むしろこれは本来農林省にパルプの監督権があるべきであると思いますが、パルプの問題こそ実に重大でありますから、この法案とは別に、次の農林委員会には、通産大臣あるいは繊維局長を呼んでいただきまして、この審議を進めるようなおとりはからいをお願いいたします。  さらに最後に一点だけ林野庁にお尋ねして、私の質疑を打切ります。それは森林組合の問題であります。森林組合発達することが今回の改正の重点でもあり、また今後この森林法を施行するにあたりまして、森林組合の育成強化ということは非常に重大であります。しかしながらこの法案によりますと、今後は今までの強制的な加入の方式であつたものが、加入脱退自由という、まつたく逆な組織にかわるわけでありますが、そうなりますれば、これは森林組合の育成強化に、特段の力を政府が拂わなければ、かえつて現在の森林組合が弱体化するおそれがあるのではないかと考えます。それについては、どうしても政府相当予算を計上して、森林組合に対して専従員を置くとか、いろいろな方法によつて森林組合の育成強化ということをはからなければならない。これは入つても入らなくてもいいわけでありますから、現在の森林組合でさえも、ほとんど睡眠状態にある森林組合が全国的には大多数なのであつて、さらにその傾向に拍車をかけて、せつかく法律はつくつても、一府県について森林組合二つか三つしかできぬということにならぬとも限らないから、これは政府において十分にお考え願わなければならぬと思います。この点につきまして政府の御意見を承つて、私の質問を終ります。
  55. 横川信夫

    ○横川政府委員 森林組合の系統団体は林業におきます唯一の団体でもありますので、林野庁といたしましては、極力これが健全なる発達を期しまして、できるだけ援助をして参りたいと考えております。現在の森林組合は、資金関係にいたしましても拂込額が非常に少い、あるいはまた、そのきわめて少い額が固定化してしまつておるというような状態で、別に御審議を願うことになつております農漁業協同組合再建整備法の一部改正におきましても、ようやくわずかでありますけれども融資の道を開こうというようなことを考えておりますし、また森林組合であつて相当な技術と熱意のあります所には、現在でも治山工事とかあるいは林道工事というような、林業上の仕事の請負いをさせておるような例もあるのであります。今後りつぱな技術のあります所には、そういう道をどんどん開いて参りたいと考えておるのであります。なお技術員に対する補助でありますが、昭和二十五年度におきまして、一組合五千円当りの技術員設置補助があつたのであります。それが御承知のように、関係方面意見で、団体に対する補助はいかなる形でもやることは妥当でないというような御意見が強いものですから、せつかく予算をとりながら、その予算を使わずにしまつて、ほかに転用したということもあるのでありまして、私どもといたしましては、森林組合の技術員の必要性は十分認識をいたしておりまするし、それに対する補助もいたしたいと考えておるのであります。お話のように、技術員の設置ということは、森林組合の運営上非常に必要なものであろうと考えておりますので、今後十分検討して、それらの点も実現をはかつて参りたいと考えております。
  56. 小笠原八十美

    小笠原委員 農地局長並びに政務次官がお見えになつておりますから、この法案につきまして重要な関係のある点をお伺いしたいと思います。  この法案は、もとより絶対的理想案でもない、ただあまりに古い法案を放置しておくわけにいかぬ、今日はまあこの程度でも相当改正をしなければならぬ、また旧法を廃して立法しなければならぬというわけで、ここに提案したのでありますが、これと並行したる問題として、今幼齢樹伐採の問題で一番大きな問題は、農地局長の方の関係である農地の問題、これが跋雇して、むやみに幼齢樹を伐採する、どうにもできぬということになつておるのでありまして、これを食いとめるにあらずんば、いかなる法律ができ、いかなる制限を加えても、どうも各府県の委員とか、あるいは下つ端の役人とか、むやみやたらに伐採する。まつたく手の施しようのない関係になつておる今日の現状から見て、これを立法する場合にあたりまして、政府もこの法案に同意しておられるということを聞いておるが、同意する以上は、同じ政府の農林省といたしまして、伐採の禁止、あるいはこれに制限とか何とか対策をしておかなかつたならば、これに同意した効果はないということに相なるのでありますが、その準備は今日のところどういうふうにできておるか、それの内容を御説明願いたい。
  57. 平川守

    ○平川政府委員 小笠原委員の御質問は、未墾地に対する開拓の問題であろうかと思うのであります。これに対しましては、従来ことに終戦後早々の間に開拓をされました場合に、森林を非常に荒すという問題があつたことは確かであろうと思います。そこで最近におきましては、開拓地を選定いたします場合に、技術的に農業及び林業、その他畜産の専門家がそれぞれ集まりまして、具体的の土地について、技術的な厳密な調査をいたしまして、この土地は山林として残すべきものであるという土地に対しましては、開拓をしない。そういう各種の専門家の見地から見まして、ここは開拓してしかるべきものであるという決定になりましたものだけにつきまして開拓をいたす、すなわちその土地を選定するにあたりまして、ただいまの林業の見地から、あるいは治山の見地から十分に調査しまして適用する。従つてその土地というものが非常に限定せられますので、そういう方法によつてむやみな伐採が行われないようにしたい、現在さように運営しておるわけであります。最近の適地の選定につきましては、その御心配が除かれておると考えるのであります。
  58. 小笠原八十美

    小笠原委員 それはあなた、地方の実情を知らない。そんななまぬるいことで、とてもそんな未墾地の開拓云々にかこつけて伐採することをとめるなどということはできやしない。今日やつておることはどんなことをやつておるか。山林地帯でなければ、開拓して、開拓者が入植しても間に合わぬ。山林地帯を伐採すれば、木はとれるし、これで利益がある、あとは逃げてしまつても得だ。普通の原野なんて、開拓だ、入植だなんていつたつて、だれもこれでそろばんがとれない、だから入らない。植林した所に入りたがる。それを畜産委員がどうのこうのと言つたつてだめだ。現在木のある所を見込んでやつておる。それからまた県庁の役人も、それがよろしい、ここがよかろう、適地だなんていつて、もう伐採一方をやつておる。それはそれとして、あなたから考えて、あなたより政務次官、農林省として考えて、未墾地を伐採して穀物はどれくらいとれるか。今伐採をやかましくいうが、木材の問題は国家として重大問題だ。治山治水その他一切の事業に対して、将来を見通してどつちが得だ。幼齢樹をぶつた切つたつて——木というものは十年たつてもこれくらいのものだ。それをこれから植林するのにどれくらい金がかかる。それを伐採して、そこに対して開拓したつて、二年、三年大豆はとれるかもしれないが、あとはどうする。そういうところをあわせて考えてみましたら、今日民間からも、こういう立法によつて何とかして伐採を制限しなければならぬ、植林もしなければならぬという場合に、あなた方農地局長みたいになまぬるいことを考えておつてはいかぬ。そんなこと聞いておるのじやない。これから、この法律に同意した以上、政府として、農地の未墾地の幼齢樹伐採防禦の問題に対して、これからの立法かあるいは方針を、相当の強い手をやつておかなければならぬ。それがためにはどういうことの準備をしておるか、その準備を聞いておる。あなたは相当に緩和されておるというが、緩和されておるところではない、ますます木のある所を見込んでやつておる。考えてごらんななさい、各府県も木のない所を調査しておるところは、ごらんなさい、一つもない。そうのんきなことを考えてはだめだ。これからとつて行く方針を、しつかり政務次官お答えになつて、それからあなたも考えなさい。
  59. 島村軍次

    ○島村政府委員 この問題は終戰後の緊急開拓に関連を持ち、かつ牧野の開放に関連して地方においては非常なトラブルがあつたのみならず、行過ぎが相当あつたことは、政府といたしましても認めておるのであります。そこで本委員会にもかねて御論議もあり、かつ参議院においてもその問題が強く取上げられまして、これの調整の方法をいかに解決するかということが、目下問題の中心になつておるのでありまして、その結果、さしあたり今農地局長説明申し上げましたように、選定基準というものを設けまして、その選定基準に従つて、双方了解のもとに土地を選定して、これを開墾すべきものか、開墾すべからざるものかという点を、納得の行くような方針でやつてつたのでありますが、しかし御指摘のように、まだこれでは十分でありませんので、近く林野庁とも協議いたしまして、何らかの形でりつぱな措置を講じたいということを考えております。本国会には間に合いませんが、次の国会には多分提案のように話合いがつき得ると考えておりますから、さように御承知願います。
  60. 小笠原八十美

    小笠原委員 今の政務次官の御答弁でわかりました。何か近いうちに立法措置を講じなければ、それは効果はない。ただその間において、相対的に何か適地を選定するのに御相談なさるというお話が今あつたが、だれとだれと相談する、地主と開拓者との相談だか何だか、そこがはつきりしない。今問題になつておるのは全国的伐採でありますけれども、非常に大きい影響があるから、この点は少くとも農林大臣の方で、これを認可せいということは法律にないからできないといたしましても、相当嚴重な監督をしないというと、相当立法の間において被害があることを御承知願わなくてはならない。  それからもう一つ政務次官、先刻平野君の質問に対して、赤松を見込んでパルプ工場が濫立するという話、あなたは農林省におつて、松食虫を征伐するのにどのくらいの予算を出すとか言つているが、人間が松食虫をやつている時分に、それを防禦する防腐剤をこしらえないのはどういうわけか。これではだめ、これは通産省なんてそんな遠いめがねでよそをながめるようなことではだめ、自分の頭に火がついている。大きな松食虫ができている。これの防腐剤を急いでつくる、これもひとつ何か立法の趣旨を徹底せしめることが必要なんだ。工場をやるということは高ければいい、こういう点に持つて行けばやれる、それが幼齢樹の赤松をみんな伐採する、見られたものじやない。これでは子供をひねり殺すみたいなものだ、この点少し考えれば、松食虫の手前にも立法はしないでおられますまい。何とかこれを早い機会に解決をつけていただきたい。  それから横川長官に申し上げる。この立法した結果からも、多くは官庁に権限が移るのである。また関係法案も参議院の方からまわつて来ます。その場合には私もお尋ねすることがありますけれども、官庁にまわつた以上は、官庁の方でよくこれを公平に運用しないと、ややもすれば官庁でかつて措置をして、あなたの部下の中にも従来いろいろな弊害があつた。今もまだ存在する箇所がある。よく御注意なさつて、ほんとうに国民安心のできる、官吏として尊敬し得られる立場において、ほんとうの法の運用をされたいことを希望する次第であります。これで私の質問を打切ります。
  61. 大森玉木

    ○大森委員 私も関連質問であります。先ほど小笠原委員からお話があつた地方における開拓地と、そして森林関係であります。これが同じ農林省にある。しかしながらお互いが出先へ出て参りますと、私が立会つた事件がありますが、最も優秀なすぎ林、それがわずか十五、六年経つて今ほんとうの太り盛りだというようなところを選考してそれをとろうとする。そしてこれを林務課へ行つて話をすると、林務課はこれはいかぬということで、地方にはまたそうした審議会というものがある。そこへ行つてみると、断じて許さぬというのが課長である。そしてとうとうその結果どうしたかというと、そのりつぱなすぎ林を申分伐つて半分仲裁ということで納まつたという実例がある。そこで政務次官に私が申し上げておきたいのは、一つの役所と役所の中で、何もお互いが争いする必要はない。現在の国家の方針がどの方向に向つておるかということをまず判断して、それによつて一致協力して国家のために盡さなければならぬのじやないか。しかるに一方はただ開拓というもののみに邁進しておる。一方は森林のみに邁進しておる、そこに私は中和がとれていないのじやないかと思う。農林省は自分の所管であるところの下の方の庁を、どういうふうに扱つておられるか。あなた方はこれを統一して、そしてこうした面に対しては、将来とも国家の方針に向つて協力する方に指導してもらいたいということを希望いたすものであります。  さらに私はお尋ねをいたしたいのは、開拓地として決定をいたして、まだそのままに放任されておる所、これはどうしても元の地主に返すべし、これを要求いたしたいのでありますが、政務次官どういうふうに考えておられるか、ちよつとお尋ねをいたしたい。
  62. 島村軍次

    ○島村政府委員 開拓地の問題は、お尋ねのように二つあると思います。それは将来に対する開拓適地に選ぶか選ばないかという問題と、現に開拓で許可をして、そして農地にすべき予定地になつておる土地とあるわけです。ところが同じ地方においていろいろそういうことを承りますし、先般北海道に行つて見ましたが、ただいま御指摘のような問題が山積をいたしております。そこで第一の問題は、ただいま前段にお答えをいたしましたように、これに対する適地選定基準というものによつて、これは立法化しておりませんけれども、しかしこれを現に強く地方庁なりあるいは現地の当局に流しまして、お話のような熱意のあまり、第三者から見ても行き過ぎであるというような問題に対しては、これを是正して行きたい。同時に現に許可を受けて開拓地に指定された所についても、これはまだそのままに放置されておるというような所及び林地に還元すべきであるというような土地に対しては、立法措置によつて、そのものの地目変換を——さらに元の地主なり、あるいは適当な所有区分をきめまして返還するというような措置を講じたいというので、目下せつかく研究中でありますので、あわせて両方面についての研究を進めておるということでお許し願いたいと思います。
  63. 大森玉木

    ○大森委員 大体政務次官の答弁でわかりました。なお念のために伺つておきたい。それは今のお答えによりますと、大体そうした計画があつても、行き過ぎたものを是正することは、政府方針としてはさしつかえないということが一点。さらに定めてあつてもこれが適地でない、そこで地主に返還すること、いわゆる地目の変換もさしつかえないというような御答弁であつたと聞くのでありますが、さようでありますか。それが大体今後の政府のとるべき道だというようなお答えであつたと思うのですが、それでいいですか。
  64. 島村軍次

    ○島村政府委員 御説の通りであります。
  65. 小笠原八十美

    小笠原委員 この法案は多くの同僚委員の同意のもとにここに提案したのでもあり、また有力な専門的な同僚諸君の熱心な御質疑もあり、政府もまたざつくばらんに率直な御答弁がありましたので、大体質疑応答も満足する程度に行つたと思いますから、この程度で質疑を打切ることといたし、同時に討論といたしましても、今申し上げたのと同様でありますがゆえに、これを省略してただちに採決あらんことをここに動議として提出し、皆さんの御賛同を願いたいと思います。
  66. 千賀康治

    ○千賀委員長 ただいまの小笠原委員の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 千賀康治

    ○千賀委員長 御異議なしと認めます。よつて討論を省略して採決いたしたいと思います。  これより森林法案及び森林法施行法案を一括して採決いたします。両案に賛成の諸君の御起立を求めます。     〔総員起立〕
  68. 千賀康治

    ○千賀委員長 起立総員。よつて両案は原案の通り可決すべきものと決しました。  なおお諮りいたします。両案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 千賀康治

    ○千賀委員長 御異議ないと認め、さようとりはからいます。     —————————————
  70. 千賀康治

    ○千賀委員長 次に農漁業協同組合再建整備法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては、質疑も前会においてすでに盡されておりまするので、討論を省略してただちに採決いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  71. 千賀康治

    ○千賀委員長 御異議なしと認めます。よつてこれより農漁業協同組合再建整備法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立〕
  72. 千賀康治

    ○千賀委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決すべきものと決しました。     —————————————
  73. 千賀康治

    ○千賀委員長 これより畜犬競技法案議題といたし、質疑を行います。質疑の通告がございますので、これを許します。河野謙三君。
  74. 河野謙三

    河野(謙)委員 公安委員長にまずお尋ねいたします。ただいま本委員会に上程になつております畜犬競技法案でありますが、御承知のように、この法案は、本質的には従来行われております競輪その他のこの種の賭博の法案と同様のものであります。つきましては、この法案審議にあたりまして公安委員長からお伺いしたいのは、従来の競輪その他の法案が公安に及ぼすところの影響、治安に及ぼす影響、これらにつきまして詳細に御見解を伺いたい。私の記憶では、かねて競輪が問題になりました当時に、現在御出席の公安委員長さんが公安委員長であつたかどうか存じませんが、あの競輪問題の当時におきまして、全国の公安委員会といたしまして、競輪に対する強烈なる非難攻撃をされて、さらにそれについての御見解が発表になつたはずです。これらもこの際に、ひとつあわせて伺わしていただきたいと思います。
  75. 辻二郎

    ○辻政府委員 ただいま御質問がございました通り、昨年競輪の問題につきまして、国家地方警察、公安委員連絡協議会の決議といたしまして、競輪に対する反対を申し述べた当時、私が連絡協議会の会長をいたしておりました。同時に国家公安委員長をいたしておりました次第でございますから、その当時の事情を申し上げます。公安委員会といたしましても、競輪そのものに反対をいたすという意向はないのでございます。これが前の議員提出法案でありまして、競輪によります利益も多々ございますし、自転車の振興改良等についても十分認められるのでありますが、当時の競輪場内の治安があまりに乱れましたために、治安の面から連絡協議会として反対請願をいたした次第であります。これら競輪等の賭博的な興味が、極度に観衆を刺激いたしました結果、競輪に関しまして種々の犯罪が生れたのであります。場外におきましても、特に青少年等は、競輪のために金を得たい。そのために窃盗、横領、詐欺といつたようなことが頻々として起り、また家庭におきましても、非常な悲劇が多々起つております。青少年は職場を、あるいは学校等を放棄いたしまして競輪場に参る。また競輪場内につきましては、しばしば突発的に暴行、放火等、また場内におきましても窃盗、詐欺といつたようなことがあまりに頻々と起りますので、当時特に騒擾事件に対しましては非常に多数の警察官がこれに動員をされ、競馬等に比べますと、延人員にいたしまして約三倍以上の警察官が競輪場のためにさかれた。現在でもそうでありますが、警察官、警察吏員の数が事件の増大に対して不足いたしております際に、これ以上競輪場のために警察官をさかれることは、治安の維持上はなはだ遺憾なことでありますので、そういう観点から反対陳情をいたした次第でございます。だんだんに競輪場が非常な勢いでふえて参りまして、それと同時に、いわゆる大穴と申しまするものは、その度数も多くなり、また一回の穴の金額も厖大になつて参るということから、ただいまのような不祥な事件が頻発いたしました。ときには、これはある特殊な人々による計画的な騒擾であつたこともあるのでありますが、かかる観点から考えまして、治安上警察官をこれ以上その方にさくことは困るという観点から反対をした次第でございます。競輪の場合の事情は、今申し上げましたような次第でございます。
  76. 河野謙三

    河野(謙)委員 そこで次に伺いたいのは、これはどこまでも参考としてお伺いいたすのでありますから、その意味でざつくばらんに御答弁願いたいと思います。競輪だけの問題ではなくて、大よそ競馬にいたしましても、最近問題になつたオート・レースにいたしましても、ここに出て参りました畜犬競技法にいたしましても、本質的には私は競輪と差がないと思います。ただ程度の差があるだけであつて、ウエートの差はありますけれども、本質的に差はない。そこで本質的に違いのないこういうふうなものが、次から次に出るということは、あなたの御担当の治安、公安の面からいいますと、ますます仕事の上の負担が重くなる。従つてますます警察官もふやさなければいかぬ、最後には治安の責任が持てないというところまで行くのではないか、かように思いますが、これらの点についても御意見を御参考にお伺いいたします。
  77. 辻二郎

    ○辻政府委員 ただいまの御質問に対して私見を申し上げます。競馬にいたしましても、オート・レースにいたしましても、あるいは競輪、ドツグ・レースにいたしましても、これらはいずれも欧米各国において非常にポピユラーに行われておるものであります。私かつて欧米を歩いた際に、こういう治安の対象となるような大問題の起つたのを、寡聞にしてあまり聞いておりません。日本におきましても、競輪を除く以外には、あまりこういう大事件は起つておらなかつたように思うのであります。競輪におきましても、競輪場の運営の方法等のよろしきを得れば、こういうことが起らないで済むのじやないか。これは一つには国民の節度の問題であり、教養の問題であると考えるのであります。その点につきましては、国民全体として、もちろん政府も一緒になつて、十分研究をする価値のあるものではないかと考えております。ドツグ・レースの場合も、これは英国におきましてもフランスにおきましても、非常に愉快に行われておりまして、そのために犬種の改良等も行われて、いい面は多々あると思うのであります。特にこれは私が苦しい立場にございますが、警察の捜査犬、防犯犬、警備犬といたしまして、きわめて優秀な成績を上げておりますので、日本ではおそらく現在の段階では、かなりシエパード犬が競技犬に使われるのではないかと思うのでありまするが、国家地方警察におきましても、警察犬を使用いたしておるのであります。この犬種の改良という点から申せば、畜犬の競技法案はシエパード犬の品種の改良には大いに役立つのであります。一方におきましては、ただいまの競技場における節度を失つたような状態を来すようなことでは困る。これは治安の観点からは、どうしてもこの点について十分御考慮を願わなければならぬと考える次第であります。
  78. 河野謙三

    河野(謙)委員 意外なことを伺つたのですが、そうしますと、公安委員長のおつしやるには、競輪とその他の競技とは本質的に違うというのが、私は本質的に一つのものだと思います。ばくち法案として一つのものである。程度の差はあるけれども、本質的に少しも差がないと思います。あなたの今おつしやるのは、競輪によつてあなたの職場の公安の面、治安の面に弊害を受けておる。強盗、窃盗、家庭争議その他いろいろ悲惨な社会問題が起つておる。これは認めるけれども、その他の競技には全然起つていないというふうにおつしやつておるように思いますが、そうでありますか。あなたの職場を通じて犯罪の統計その他があるのでありましようが、それをひとつ伺いたいと思います。
  79. 辻二郎

    ○辻政府委員 ただいまの御質問は、私の申しようが悪かつたのかもしれませんが、私は競輪の場合についてのみ事実においてそういう事件が起つたというのでありまして、本質的に違う、違わないということを申し上げたのではございません。本質的には——これは考え方であると思いますが、競輪、競馬、オート・レース、今度の畜犬の競技等いずれも同じであるという考え方は、十分成立すると思います。私もそれを認めます。ただ現実におきましては、日本では競輪の場合においてのみああいう事件が起つたと申し上げたのでございます。
  80. 河野謙三

    河野(謙)委員 本質的に同じであるとすれば、本質的に同じな問題は弊害も同じように出て来るし、程度の違いはありますけれども、特徴も同じだということだと思います。本質的に違つたところに結果の違つたものが出て来る。本質的に同じものなら、結果は同じに出て来るはずだ。ただそこに程度の違いがある。あなたの方の御調査にはちやんと出ておると思う。本質的に同じ競技につきまして、いろいろな弊害、悪い結果が同じ意味で出ておると思う。ただその件数が少いか多いかというだけの問題だと私は思う。私はこの際意見を申し述べさせてもらいますが、これはばくちです。ばくちというのは暴力と一つのものだ。ばくちと暴力を切り離すことは、へをたれるのに臭くないへをたれろという注文と同じで、できない注文をしておられる。ばくちを認めておいて、暴力を排撃するということは絶対あり得ないことだ。最近終戰後暴力の排撃、暴力の取締りが非常にやかましい。おかげで非常に成績を上げておるところもあります。しかしこの種の競技をやつておる町、村、ここにおけるところの暴力は絶対に取締れない。現に私は神奈川県の平塚におりますが、平塚には現に競輪が始まつた。競輪は一番悪い。これが始つたらさつそく暴力団が跋扈する。警察でどろぼうをつかまえてみれば、これはやはり競輪から始まつておる。強盗がつかまつた、これも競輪からだ。競輪だけの問題ではなく、みな本質的には同じようなばくちから始まつておる。ばくちと暴力というのは一つのもので、その次には犯罪が起る。これは一つのものであつて、おならと臭みと分析してわけるという注文ができないのと同じことだと思う。現にあなたの方にその統計がちやんと出ておると思う。これについてもう一つぺんあなたの御意見を伺いたいと思います。
  81. 辻二郎

    ○辻政府委員 私はただいま治安の観点から、御質問に対してお答え申し上げたつもりでありまして、畜犬競技法についての賛否を申し上げたのではないのであります。私は今日突然ここにお呼び出しを受けまして、御質問に答えておるのであります。この前に競輪についての反対意見を申したのは、放火、傷害というような暴行の起つたのを、これはとうてい見のがせないという観点から、政府の国家公安委員会としてではなく、国家地方警察公安委員連絡協議会の会長として、内閣の関係大臣等に陳情をいたしたのであります。誤解を受けないように申し上げておきますが、私は今度の畜犬法案について、何ら賛否を申し上げる立場ではないのであります。統計を言えということでございますが、ただいまここにそういう数字を持つて参りませんでしたが、これは後ほど詳細なものを差上げることができますが、競馬に対しては今までああいう騒擾事件が起らなかつた。絶対に起らなかつたというわけではないのでありますが、その数量的な比が、競輪において競馬と比較にならないほど多く起つたということは、これは現実であると存じます。その点についてただいまの御質問に対するお答えになつておるかどうかわかりませんが、御了承願います。
  82. 河野謙三

    河野(謙)委員 私も、公安委員長から畜犬法についての賛否を伺うつもりはありません。ただこの審議にあたりまして、あなたの方の立場から見て、今までに行われておる競輪その他この種のものが、社会にどういう悪影響を與えておるかということは、あなたに聞く以外にはない。それを伺つて、伺つたものを参考にして、この法案の賛否をきめよう。こう私たちは思つておるわけです。それで伺つておるのですが、今伺つておりますと、アメリカの例やフランスの例などいろいろ引かれますけれども、こういうことは参考にならぬと私は思う。向うの国民国民性その他生活程度も違う。また第一に違うことは、あなたも向うにいらつしやつたならば御承知でしようが、私が聞いた範囲では、向うにおけるこの種の観衆の層が違う。向うは中層、上層の人が対象の大部分になつておる。ところが今の日本に行われておりますものは、さような上層のものは、競馬には一部おりますけれども、競輪のごときは下層階級にきまつておる。そこから二割五分の口銭をはねる。首つりの足をひつ張るような、きわめて反社会的なことをやつておる。これがこの種の法案である。今度の畜犬競技法もそういうものになりはせぬかということを私は心配する。そこで参考に、今までのこの種の法案によつて起る影響を、あなたの手元でいろいろおとりまとめになつたものがあつたならば伺いたい。かように思つたわけです。あなたの方に御調査もあるでしようが、たとえば今申し上げた観覧者の層にいたしましても、競輪なり競馬なり、その他のものが、どういう観覧者の層によつて構成されておるかということも、あなたの方の御調査があれば、ひとつ伺いたい。かように思うわけです。先ほどの御意見は御訂正なさいましたが、何か伺つておりますと、競輪だけが公安の立場から見て許しがたい問題である。その他のものについては問題でない。こういうふうなことのように伺いましたが、本質的には同じだ、こういうお話がありましたからよくわかりましたが、つけ加えてこの機会に、もしお手元になければこの種のばくちによつて、あなたの方の立場でどういう弊害が出ているかという御調査、統計がありますれば、さつそくあしたにもお届け願いたい、かように思うわけであります。  なおそのほかいろいろ意見がありますが、これは公安委員長さんに伺つてもしかたがないと思いますが、あなたの方の御参考のために申し上げておきます。よくこの種の法案には、共通した問題として、地方自治に大いに寄與する、学校を建てるというのですが、学校は教育の手段であります。目的そのものはどこまでも教育であります。目的を破壊して、手段を整えても何にもならない。現にそれをやつている。学校はなるほど建ちます。しかしその町で競輪、競馬をやりますれば、その町の子供というものはこの影響を受けて、教育そのものが破壊される、こういうことです。これははなはだしくナンセンスです。こういうことをいろいろ申し上げるときりがありません。しかしいずれにしても、私はこの問題は、今までの競輪法に懲りましたから、私は真剣に審議したい、かように考えますので、この審議資料についてできるだけ御援助をいただきまして、何かとお手元にあります資料を本委員会に御提出いただきたい。かように希望いたしまして、私の質問を終りますが、この機会に重ねて何か御意見が伺えれば、さらに発表していただきたい、かように思います。
  83. 辻二郎

    ○辻政府委員 もうこれ以上申し上げる必要はないと存じますけれども、私の今まで申し上げましたことの総括を申し上げますと、競輪にいたしましても、競馬にいたしましても、畜犬競技法にいたしましても、あるいは宝くじにいたしましても、賭博であるという見方から考えれば、これは全部同一だと考えるのであります。今までただ犯罪の面から考えましても、競馬の場合あるいはその後に行われておりますオート・レースあるいは競輪も、その後私どもの陳情にもかかわらず復活いたされましたけれども、その後の競輪等におきまして、特に取立ててぜひ考慮しなければならぬという事件は、今までのところ起つておりません。昨年の秋あたりが最もはげしかつたので、その当時こんなに多くの警察官をとられるということでは困る、こういうような陳情をいたしたのでありまして、今後これが実施されました場合に、再びそういうことにならないことを私は希望いたしますが、今申し上げましたような賭博的なもの、五つ、六つのものがことごとく治安の観点から困る、こういうように考えているわけではないのでございます。ああいうような治安上重大なことを起すようになつては困る、こういう観点から私はこの種の法案がもし通過した場合には、これの運営に対して十分考慮する必要がある、こう考えている次第であります。
  84. 河野謙三

    河野(謙)委員 競輪の話が出ましたから、もう一応お尋ねいたします。そうすると、競輪については相かわらず今でも、かねていろいろ御見解を発表になつて、反対をされたその当時と御見解はかわつていないわけですね。それと同時に、この種の法案については、あなたの方では、見通しとして、競輪と違つて弊害は出て来ないという見通しのもとに御見解を発表なすつたわけですね。
  85. 辻二郎

    ○辻政府委員 競輪については、現在ではその後の情勢を静観いたしている次第でございます。またこの法案につきましては、国家公安委員会はこの法案の立案については参画いたしておりません。今日初めて実はこれを考えの焦点といたしたわけでございます。それで、この法案根本的な精神については、私どもは何ら申し上げることはございませんが、それは競輪法についても同じことであります。運営上ああいうことになつたからそう申した次第でございます。
  86. 河野謙三

    河野(謙)委員 競輪について静観されているとおつしやいますけれども、あなたのお手元に競輪についての弊害の報告がいろいろ行つておりますか。
  87. 辻二郎

    ○辻政府委員 ございます。
  88. 河野謙三

    河野(謙)委員 そうすると、次から次へ毎月のように、競輪に端を発した犯罪がふえている、しかも加速度がかかつていることにつきまして、まだ静観の域を脱しないというようにお考えですか。
  89. 辻二郎

    ○辻政府委員 御承知のごとく、昨年競輪は一時中止を命ぜられまして、そのときまでの非常に加速度的にふえた犯罪は、その後は非常に減つております。それで静観をいたしていると申し上げた次第でございます。その詳細な資料は、さつそくお手元にお届けいたします。
  90. 河野謙三

    河野(謙)委員 私はこの畜犬競技法が社会教育に、あるいは学校教育に影響を及ぼすことについて、文部大臣出席を求めておりますが、お見えにならぬようでありますから、その方面質問は保留いたして本日はこれで打切ります。
  91. 小笠原八十美

    小笠原委員 公安委員長の今の御答弁を承りましてよくわかりました。きわめて明瞭であります。その通りと私も考えますが、ただ一点さらにお伺いしたいことがある。一体ばくち行為云云と言つているが、人間にばくち根性のない者は一人もない。ところがこれを全部廃止したらどうなりますか、かえつて強盗、窃盗が多くなつて、たいへんなことになる。ここに五つか六つの公認の賭博があるから、これがために法律を犯す者もなくて、ここにやつと辛うじて生きていると私は考えているが、あなたはそうお考えになりませんか。こんなものはないとしたらたいへんだ。一歩進んでアメリカ、中国はもちろん、イギリスなどもみんな公認賭博を許している、だから円満に行つている。日本はあまりかた苦しく、なまぬるいところで取締りをするからこういうことになる。公認賭博を許して、小笠原八十美を親分にしてやつたら、決して日本国民だれも文句はなかろうと思う、私はそういうところまで考えている。この五つ、六つの問題は、何も社会に対して影響があるとか云々ということは、少しも私はないと考えているのであります。公安委員長は多分私の意見通りだろうと思いますが、御答弁を願います。
  92. 辻二郎

    ○辻政府委員 私は現在行われております五つ六つの公認賭博に対して、ただいま一向反対の意見を申し上げた覚えはないのであります。また競輪も賭博なるがゆえに反対意見を申し上げたわけでないのでありまして、これは昨年の秋のことでありますが、競輪が治安上あまり多くの犯罪の源泉になつたから、競輪を中止してほしいという意見を申し上げた次第でございます。
  93. 大森玉木

    ○大森委員 この競輪に対しての公安委員長のお考えと私どもは違つてつたのであります。あの競輪問題は、全国の人の注視の的になつていた。私はあの問題はただ單に競輪から起きた問題でなくして、あれはその場所を選んだ強盗団であると私は考えております。競輪場を選んだところの強盗団である、こうしたたくさんの人の密集した所へ、何本名かの強盗団が行つてあの仕事をしたのである。であるから私はあなたの考えておられるように、競輪によつてあの問題が起きたのではなく、あの場所を選んで、何かりくつをつけて、混み合つているときにとつて行こうという一つの手段であつたと私ども考えておつたのでありますが、公安委員長はどう考えておられるか、その点は私どもと見解の相違があつたと思います。何か競輪が災いをなした、競輪があつたからこういう犯罪が起きた、もちろん競輪場であつたからそうに違いないが、ただうちで経ているときに強盗が入つた、あるいはまつ晝間でも強盗が往来するのでありますから、そういうふうの取締りをいたされたならば、私はああした問題はただちに解決のつく問題であると考えておつたのでありますが、公安委員長はどう考えておられるか。
  94. 辻二郎

    ○辻政府委員 ただいまの御説明はまつたく同感でございまして、あれは私公安委員長意見ではございませんで、連絡協議会の会議の決議でございますけれども、その会議の席上におきましても、先ほどもちよつと申し上げました通り、ある特殊の徒輩の利用するところとなつて、放火等の騒擾事件が起つたのでありますが、その事実は十分に認めております。しかしそのほかにも特に青少年の犯罪が、競輪場をめぐりまして統計的に多かつたということは、各管区の統計に現われましたので、その点ももちろん考えておるのでございます。双方でございます。
  95. 千賀康治

    ○千賀委員長 お諮りいたします。この競犬法案は自由党の委員の大多数及び民主党全委員、農民党の方も入つておるというように、本委員会の大多数の提案になつておりまするし、大分質疑も詳細にわたつてここに実行されましたので、この程度で質疑を打切つてはいかがかと思いますが、御意見いかがでございますか。     〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  96. 千賀康治

    ○千賀委員長 賛成の御意見が多数でありますから、これで質疑を打切ることに決定いたします。  それでは討論を省略いたしまして採決いたしたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  97. 千賀康治

    ○千賀委員長 御異議なしと認めます。  これより畜犬競技法案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  98. 千賀康治

    ○千賀委員長 起立多数。よつて本案は原案通り可決すべきものと決しました。  なおお諮りいたします。本案並びに先ほどの農林漁業再建整備法案の一部を改正する法律案に対する衆議院規則第八十六条により報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  99. 千賀康治

    ○千賀委員長 御異議なしと認めます。さようとりはからいます。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後四時十八分散会