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1951-03-07 第10回国会 衆議院 農林委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月七日(水曜日)     午前十一時二十七分開議  出席委員    委員長 千賀 康治君    理事 野原 正勝君 理事 松浦 東介君    理事 足鹿  覺君    宇野秀次郎君       遠藤 三郎君    小淵 光平君       川西  清君    河野 謙三君       中馬 辰猪君    幡谷仙次郎君       原田 雪松君    八木 一郎君       金子與重郎君    八百板 正君       池田 峯雄君    横田甚太郎君       中村 寅太君  出席国務大臣         農 林 大 臣 廣川 弘禪君  出席政府委員         農林政務次官  島村 軍次君         食糧庁長官   安孫子藤吉君  委員外出席者         專  門  員 難波 理平君         專  門  員 岩隈  博君         專  門  員 藤井  信君     ————————————— 三月六日  犬伏地区水田耕地特別供出割当地区に指定  の請願大澤嘉平治紹介)(第九三五号)  農林漁業資金融通法制定に関する請願佐伯宗  義君外五名紹介)(第九七三号)  同(江崎真澄紹介)(第九八四号)  鹿又村排水改良工事促進並びに国庫補助増額に  関する請願角田幸吉紹介)(第九八三号)  戸沢村大字樽石地区国有林払下げに関する請  願(圖司安正紹介)(第九八五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  食糧管理法の一部を改正する法律案内閣提出  第七九号)  食糧政府買数量指示に関する法律案(内  閣提出第八〇号)     —————————————
  2. 千賀康治

    千賀委員長 ただいまより農林委員会を開会いたします。  これより昨日付託になりました食糧管理法の一部を改正する法律案及び食糧政府買数量指示に関する法律案を順次議題といたし、審議に入ります。  まず食糧管理法の一部を改正する法律案趣旨について、政府説明を求めます。廣川農林大臣。     —————————————
  3. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 食糧管理法の一部を改正する法律案提案理由の御説明を申し上げます。  今回の改正は、麦につきましては、新たな政府買入れ方式を設定いたします点及び、食糧配給公団廃止に関しまする点を中枢といたしまして、さらに若干の改正を加えることを目的としているのであります。  まず第一点の麦の新たな政府買入れ方式につきまして御説明申し上げます。近時食糧事情は安定して参りまして、すでにいも類、澱粉の流通及び価格統制廃止に次いで、雑穀につきましても、本年三月二日を期しまして、その流通及び価格統制が撤廃される運びとなつたわけでございます。  麦につきましては、御承知通り昨年来配給の実情、実効価格趨勢等にかんがみまして、政府におきましても、麦の流通及び価格統制について、これを修正すべく準備中でありますが、麦作農家の経営並びに消費者の生活に悪影響を及ぼさないようにするために、生産者の希望に応じ、政府は、常に麦の買入れを行うこととしますとともに、麦に対する輸入補給金の支出は、これを継続することといたしまして、さらに国際事情の推移、経済事情変動等により、万一国民食糧確保のため必要あるときは、これが買入れを確保する道を開くことといたしまして、万全を期することといたした次第でございます。  本法案におきましては、この麦の政府買入れ方式規定することといたしたのでありまして、生産者が定められたところに従つて政府売渡しを申し込みましたものについては、政府は、必ずこれを買わなければならないことといたしたのであります。さらに政府は、国民食糧確保のため、必要な場合には生産者に対し、政府に売り渡すべきことを命ずることができることといたしておるのであります。この場合には、麦作農家に及ぼす影響が大きいわけでありますので、これを発動いたしますときは、収穫見込高の判明前に政令でその旨を明らかにすることといたしておるのであります。  改正の第二点は、食糧配給公団廃止に関します点でございます。同公団は、その成立以来すでに二回にわたつてその存続期間を延長いたし、現在は本年四月一日となつておりますが、御承知通り、この期日におきます廃止決定いたしておりまして、その解散後同公団にかわつて主食の配給業務を担当いたします民営の販売業者も、営業開始を目睫の間に控えまして着々発足準備中でございます。従つて本年四月一日以降は、同公団組織規定初め関係箇所は不要となりますので、これを削除改変することといたしたわけでございます。なおその解散及び清算につきましては、必要の範囲内でそれらの規定は有効であることといたしておるのであります。  右の二つの事項が本法律案の主要な点でございますが、そのほかなお二、三の改正がありますので、以下順を追つて説明申し上げることといたしたいと思います。  第一には、いも類につきましては本年度からは本法によります管理の対象からまつたく除きますため、主要食糧として明定しておりますところから削除することといたし、従つて昨年来行つて参りました生産者売渡し申込みによる政府買入れ方式をもあわせ廃止することといたしておるのでございます。  次に米の生産者に対します政府買入れ数量指示手続は、従来の食糧確保臨時措置法によつて定められておりましたが、同法は本年三月末日をもつて失効いたし、これにかわるものとして今国会提案審議願うこととなつております食糧政府買数量指示に関する法律案によつて定めることとなりましたので、これに適合いたしますよう米の生産者政府への売渡し義務規定を書き改めることといたしておる次第でございます。  第三には、種子用米穀につきまして、必要があります場合には、農林大臣一般米穀管理の特例を開くことができることといたしておりますが、これは米の増産を促進いたしますため、種子用米穀については種子としての特別な取扱いをする必要があるからであります。これらの諸改正に伴いまして字句の修正等なお若干の改正が含まれておるのであります。  以上が本法律案提案理由の御説明でございますが、会期も切迫の折から愼重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。
  4. 千賀康治

    千賀委員長 次に食糧政府買数量指示に関する法律案趣旨説明を求めます。廣川農林大臣
  5. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 食糧政府買数量指示に関する法律案提案理由を御説明申し上げます。  主要食糧農産物政府買入れ数量につきましては、昭和二十四年産以来、食糧確保臨時措置法に基いて、事前に生産数量とあわせて政府買入れ数量指示して参つたのでありますが、食糧確保臨時措置法が限時法であり、今年三月三十一日限りで失効いたしますので、今年産以降のものにつきましては、収穫見込高がおおむね判明する時期に政府買入れ数量指示を行う方針でございます。  本法案は右の方針を実施するための手続その他必要な法的措置を講ずることを目的とするものでありますが、次にその大綱について御説明申し上げますと、農林大臣米穀都道府県別収穫見込高がおおむね明らかとなつたときに、米穀買入れ審議会及び都道府県知事意見を聞きまして、米穀都道府県別政府買入れ数量を定めて、それを都道府県知事指示いたします。この場合の米穀買入れ審議会諮問機関でございますが、政府といたしましては、その意見を十分に尊重いたして参る所存であります。農林大臣から政府買入れ数量指示を受けた都道府県知事は、その指示された数量について都道府県農業委員会意見を聞きまして、市町村別政府買入れ数量を定め、それを市町村長指示いたすこととなつておるのであります。この場合、都道府県知事市町村農業委員会代表者会議を招集した地域、この地域はおおむね郡の区域でありますが、その地域につきましては、都道府県農業委員会意見を聞き、その地域別政府買入れ数量を定め、さらにその地域内の市町村別政府買入れ数量につきましては、市町村農業委員会代表者会議意見を聞いて決定いたします。市町村長都道府県知事から政府買入れ数量指示を受けたときには、その指示された数量について市町村農業委員会意見を聞き、その市町村内に住所を有する生産者別政府買入れ数量を定めて、文書をもつて指示するとともに、これを公表いたすのでございます。都道府県農業委員会市町村農業委員会代表者会議及び市町村農業委員会はそれぞれ都道府県知事及び市町村長諮問機関でありますが、その意見は十分に尊重いたして参るよう努力する所存でございます。以上の手続を経て指示された数量について異議のある生産者には、市町村長に対する異議申立の道を開いております。異議決定その他につきましては、食糧確保臨時措置法で定めた場合とほぼ同様でございます。  先刻御説明申した通り、今年産以降は、いわゆる事後割当になるのでありますが、最初指示収穫見込高に基いていたしますため、政府買入れ数量指示した後に作況が動くことも当然あり得るので、そういう場合に、特に必要のあるときは、政府買入れ数量の適正をはかるために、農林大臣政府買入れ数量を減じ、これを都道府県知事指示することもでき得るようにいたしておるのであります。また都道府県によりましては、実収高収穫見込高を上まわることも考えられますので、農林大臣国民食糧確保するために特に必要がある場合に限り、そうした都道府県に対して最初政府買入れ数量を増して新たに政府買入れ数量指示することもでき得るよう規定いたしておるのであります。これは従来食糧確保のための臨時措置に関する政令に明定しておつたのでありますが、本法案中に織り込み、同政令廃止することといたした次第であります。  次に従来、地方補正と称し都道府県知事政府買入れ数量の適正をはかるため、農林大臣から指示を受けた数量範囲内で市町村別政府買入れ数量を増減することが事実上行われて来たのでありますが、本法案にはそうした規定を明確に設け、それを市町村長の場合にも等しく認めることとした次第であります。  次に生産者政府買入れ数量が最終的に確定した後において災害その他の事由によつて生産者政府に対する売渡しが全部または一部について困難となる場合もありますので、その場合には補正措置を講ずることといたしておる次第であります。政府買入れ数量の算定にあたつては、収穫見込高または実収高から生産者保有数量を差引いて決定いたしますが、農林大臣都道府県知事及び市町村長はそれぞれ生産者保有数量確保について、農業生産に支障のないように十分考慮して定める方針であります。  以上は米穀についての手続でありますが、食糧管理法第三条の二第二項の規定を発動して麦の生産者に対し、政府への売渡しを命じた場合には、その政府買入れ数量指示について米穀の場合の手続を準用することといたしておるのであります。政府買入れ数量決定に際してそれぞれ都道府県農業委員会市町村農業委員会代表者会議及び市町村農業委員会に諮問すべきことは前述した通りでありますが、農業委員会法案がすでに今国会提案されておりますので、この法律案の附則においてそれぞれの委員会にこの権限を付与するため、農業委員会法に必要な改正を加えております。  以上が食糧政府買数量指示に関する法律案提案理由でありますが、何とぞ愼重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願いいたす次第であります。
  6. 千賀康治

    千賀委員長 それではただいま廣川農林大臣から説明のありました両案について質疑に入ります。通告がありますのでこれを許します。なお廣川農林大臣は午後は来れないそうでありますが、ここにおれる間は一時間ぐらいだと思いますので、なるべく多く全部の政党に均霑できるように、御自粛を願い、質問時間をなるべく短縮していただきたいと思います。足鹿委員
  7. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣にちよつとお尋ねしたいのであります。要するにただいま御提案になりました二つ法案、並びに先日来審議をいたしております農業委員会法案、これは三者とも密接不離関係に立つ法案でありまして、その目的とするところは、日本食糧政策の大きな転換を企図しておるやにわれわれは見受けるのであります。政府は従来食糧国内自給度を高めて行くという基本方針を根幹にして、あらゆる食糧政策を遂行して行くのであるということをしばしば言明されておるのでありますが、ただいま御提案になりましたこれらの三つの法案をわれわれが審議いたした場合、必ずしも政府が従来考えておられたような、そういう方向にマッチする法案であると考えることはできないのであります。従つて、かような重大な食糧政策転換を企図せられるに至つた政府基本的な所見と申しますか、大臣の御所見について、この際承つておきたいと思うものであります。  第一に、今日の緊迫しております国際情勢は、ただ單に本年一年の問題であろうとは考えられません。相当長期にわたつてかような状態が続く可能性が強く、また情勢いかんによつては、突発的に、われわれがいかなる困難をも排して、食糧国内自給を断行しなければならないような事態が起きないとも断定できないのであります。従つて、現在政府考えておられる食糧輸入計画につきましても、相当大きな変化があることは、大体想定できると思うものであります。われわれの見解をもつていたしますれば、輸入食糧見通しにつきましては、なるほど最近若干小麦等輸入が好転しつつあるやに新聞紙等は報じておりますけれども、これはただ單なる当面の情勢であつて食糧のごとき重要な問題は、長期にわたつてその需給計画が完全に達成できるかどうかというところに問題があるのであります。ただ当面若干小麦輸入が好転したからといつて、ただちに長期需給計画が完全に実行されるとは断定できないのであります。そういう考え方に立ちますと、輸入資金の問題、あるいは外国食糧価格の動向との関係、また輸送問題としての船腹との関係、あるいは海外の主要食糧供給国内におけるところの供給力問題等輸入食糧の今後の見通しについては、私どもは楽観を許さない、むしろこの緊迫した情勢とにらみ合せると、非常に心配しなければならない状態にあると思うのでありますが、かような食糧政策の大きな転換を企図せられました以上、政府においてはこれに対する確たる御所見があろうかと思いますが、この機会に大臣の御所見を承りたいと思います。
  8. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 今までの統制を継続して行くという方針から、主要食糧統制の一部緩和に関して政府の所信を問いたいというお尋ねでありますが、政府方針といたしましては、すでにたびたびお話し上げておる通り、三相会議を経て閣議決定をいたしております食糧を、漸次統制廃止して行く方向には間違いないのであります。この統制を解除する基本基底は、有効に高能率に物を配分して行くというところに第一のねらいがあるのであります。それにわが党の内容が、自由主義経済基底とすることは、すでに御存じ通りであります。その基底の上に立つておるということも御了承を願いたいと思うのであります。  それから目前に横たわつておるいろいろな問題についてのお尋ねでありますが、国際間の緊迫しておる情勢は、すでに御存じ通りであります。しかしこれも、太平洋戰争のときの様相と現在の様相とは違つておるということを、第一に念頭に置いてもらいたいと思うのであります。孤立された経済内におけるこの前の統制と、今後あるいは世界がその方向に進んでおると言われておるようでありますが、その方向とはおのずと違うものであると私は思うのであります。また国際間において孤立された場合において、他のいずこの国からも食糧の入らない場合を考えての経済であるのでありますが、現在は幸いに日本を了解しておる連合軍がおるのでありまして、この方から輸入ができ得るのであります。かりに一歩を進めて、国際間において、国相互の間において食糧配給計画を立てるといたしましても、われわれは日本を認めておる——いわゆる日本友好関係を求めておるところの諸外国のあることを御了承願いたいと思うのであります。  それから、これの輸入についての資金、あるいは船舶その他のお話でありますが、これはすでにあなたも御指摘の通り、一、二両月においては非常に好転して参つておりまして、そう心配するような事情に今のところないと私は考えるわけであります。それから、船舶などにつきましても、なるほど国内で保有いたしております船舶につきましては、それ相当の御心配があるようでありますが、しかしこれも国際間で日本を認め、日本のことを十分了解いたしている外国がありますので、これも私は心配ないと考えておるのであります。  それから自給度の問題でございますが、自給度確立についてはわれわれも十分意にとどめておりまして、どういたしましても自給度を高めて行きたい、それには国資を投入することはもちろんでありますが、近ごろ私考えておりますことは、農業生産力を増強し、いわゆる自給度確立のために外資農業生産方面に入れたいと考えて、目下折衝中であるのでありまして、来年度予算案を作成する上においてたびたび予算の少いことを言われておりますが、私はあるいは補正予算のあるたびに、あるいは今後予算の変更のあるたびに、できるだけ国資を入れると同時に、外資日本の一番大事な基礎産業農業に入れたいという考えで、目下おる次第であります。
  9. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの大臣の御答弁を承りますと、輸入食糧の問題については、太平洋戰争当時と客観情勢が違うから心配はいらない。こういうきわめて楽観的な御答弁でありますが、そういたしますと、もちろん日本に対して今まで援助してくれたアメリカあるいはその他連合国との、今後の友好関係を期待していることはもちろんでありますが、何か日本食糧問題について最悪の事態があつた場合でも、ある一定最低数量連合国方面日本に対して保障するということについて何かお話合いがついておつて、かように大胆な食糧政策の大転換を企図されたのでありますか、もう少しその点を、ただ連合軍その他の友好的な援助があるから心配はない、客観情勢が先般の大戰争当時と異なつているから心配はないというような抽象的なことではなくて、事食糧の需給問題については、ただ單にこれは農村の問題のみならず、国民全層に及ぼす影響はきわめて大きなものがあるのでありまして、もし政府見通しが一歩誤りますと、すべての点にこれが波及して行くのであります。これは抽象的な言葉のみではなく、具体的に、ほんとうに安心する事態になつているかどうか、また連合国が、日本に対して従来払つた友好関係以上に、いかなる事態が来ても、輸入の問題についてはその保障を得られるという、はつきりしたお見通し政府は持つておられるかどうか、この点を重ねてお尋ねをしたい。  いま一つは、農業面に対して外資導入をはかるという重大な御発言があつたようでありますが、もう少しその点について、大臣の御構想を承りたいと思います。
  10. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 極東に重大事件が突発したときを想定してのお話でございますが、われわれはさようなものが起きると想定いたしていないのであります。万一さようなことがありましても、日本を非常に了解している諸外国がありますので、その点は私は信じて可なりと思つておる次第であります。  外資導入についてのお話でありますが、私は單にほかの産業のみでなく、日本の最も大事な基礎産業である農業外資を入れたいと思つて目下話を進めておる。その程度以上を発表する材料をまだ持つておりません。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 今私がお尋ねをしているのは、もう少し具体的に食糧輸入見通しについて、どういう事態が起きても、ある一定数量については、政府自信を持つだけではいけない。輸入については相手のある、また輸入をして行く上についてはいろいろな条件を必要としているのでありまして、それらの点について具体的な政府見通しを詳細に承りたい。それなくして抽象的な御答弁では満足はできないのです。
  12. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 現在は占領下にありますので、日本食糧は保障してくれることはあなたも御存じ通りでありますが、講和会議後において、日本が独立した場合にどうかというお尋ねでありまするが、その場合には、それぞれ友好外交条約ができて、それ相当の方途が講ぜられると信じている次第であります。
  13. 足鹿覺

    足鹿委員 大臣の御答弁はまつたく不得要領で、さようなことでは政府を支持している与党の自由経済主義につきましても、国民ほんとうに了解するかどうか、はなはだ怪しいものだと思います。しかしこれ以上押し問答いたしましても、大臣にさような具体的な数字を求めることは困難なようでありますから、その点につきましては打切ります。  次にお尋ねを申し上げたいのは、ただいま御提案になつております食管法改正等によりますと、情勢いかんによつては麦の買入れを行うことができるという方針のもとに、この一部改正法律案は立案をされ、御提案になつているようであります。すなわちこのことは、ただいま大臣がおつしやつた楽観的な見通しとまつたく矛盾した法の内容だと思う。もしほんとう輸入食糧自信があり、これに依存をして国民最低配給基準確保できるという御自信があるならば、一旦解いたものを、さらに必要情勢によつては麦の強制買入れを行うというような法律をつくるということは、矛盾きわまることだと思います。この矛盾をいかようにお考えになつておりますか。
  14. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 国民には食糧心配するなと言いながら、片方で農民を縛るような法律をつくつて行くのはどういうわけかというお尋ねのようでございますが、法は広い方がよろしいのでありまして、あらゆる事態に即応するようにつくるのが法の建前であると私は考えているのであります。かりに一般食糧生産地帶が、地殻変動によりまして、全部氷でとざされて全然なくなるというようなことがあるいはあるかもわかりませんので、私はそういつた地殻変動までも考えて、法律は幅を広くつくる方がよろしいと考えております。
  15. 足鹿覺

    足鹿委員 大体農林大臣の本会議における御答弁なり、また委員会で私の質問に対する御答弁は、われわれ国民をして失望せしめ、同時に農民に対する大きな侮辱のお言葉であろうと思う。法というものは広い方がよろしいという大臣の御解釈でありますが、必要ないという見通しに立つ以上、別にさような法律をつくる必要はないのであります。この点につきましては、水かけ論になりますからあえて申し上げませんが、もう少し真摯な立場において御判断を願いたいと思います。去年の麦の補正の場合にはどうであつたか、政府は、食確法改正の際に二度流産をいたし、これをポ政令で流し、いかような事態があつて追加割当等はやらないということを、国会で、廣川さんではなく、前の森農林大臣はしばしば言われた。内閣はその当時の自由党内閣とかわつておりませんにもかかわらず、昨年の麦の追加供出割当農民に断行されたときの情勢は、よもお忘れはなかろうと私は思う。もうそういう事態を予想しておいでになるのではなかろうか。いわゆる法は広い方がよろしい、あつても使わないというような意味のお言葉でありましたが自由党所属の森前農林大臣は、この追加割当法律はつくつても使わないから心配いらないと、しばしばこの委員会でも御説明になり、本会議でも御説明になつておる。しかも現実にはお使いになつたではないか。こういう点から私はこの点を指摘するのでありまして、決して法の解釈論やその運用の問題等について言つておるのではない。今までの事例があるから聞いておる。今の大臣のお言葉は、農民を侮辱するものであり、一般国民も納得しないものである。この点についてもつと真摯な大臣の御所見を伺いたいと思う。
  16. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 法の制定に対しては、非常に広い角度から検討する方がよろしいということは、決してただちに麦作農家を縛るようにするということではないのでありまして、現在の国際情勢は、孤立化されたこの前の経済情勢に立つておるのとは違うということで、言つておるのであります。しかしいつ何時どんな地変が起らないとも限らぬ、あるいはまた日本にはあまりないのでありますが、非常に大量な昆虫類の被害というようなことが、中国あるいはアメリカ等にありまするように、いつ何時発生するかわかりませんので、さようなことから、ここに効力を広くとつておるのでありまして、そういうときにも国民全般が困らないような法律をつくつておくのがよろしい、こう考えておるのであつて、單にこれをもつて農民を縛るというようなことは、考えていないのであります。  それからこの前の麦の供出につきましては御指摘の通りで、これはまつたくひどかつたのであります。この影響が現在まで響いておりますが、さようなことが、ありましたから、今度の米の供出は、でき得る限り農民が納得するように、ゆるやかにいたしたわけであります。あれは決して故意にああいうふうにいたしたわけではないのでありますが、悪かつたことはどんどん改めて、今度の米の供出のようにゆるやかにいたしたようなわけであります。
  17. 足鹿覺

    足鹿委員 今の大臣の御答弁では、大きな凶作を昆虫の例から御引用になつたようでありまして、さような昆虫の発生なりあるいは稻熱病その他の病虫害等、自然的な災害によつて大きな凶作が来るということをお認めになつておる。そういうことがあるかもしれないのでそのときに備えたのだ、こういうように御答弁なつたようであります。しからばお尋ねいたしますが、さような凶作のあつた場合に、政府ほんとうに責任を持つて国民に対して、現在の配給基準量——米麦で二合七勺を確保し得る御自信がありますか。
  18. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 それゆえにさような大地変大変動があつた場合に対処いたしまして、確保したいという気持で、かようなことをやつておるのでありまして、われわれの三省会談を経て閣議決定になつておりまする本年十月末日以降、二十六年度産の供米の完了後におきまする米の政府の責任配給量一合五勺を確保するためにも、こういつたことがあつてしかるべきだと考えておるのであります。その際政府は決して拱手傍観をいたしておるのではないのでありまして、われわれと最も親しい、また日本を理解しておる諸外国の援助は、むろんわれわれは期待いたしておりますが、さような際には緊急を要しますので、こういつた法律があつても決してむだではない、さようなときに役立つのだ、こう私は考えておるのでありまして、二十六年度産米の供出完了後における米の一合五勺の配給基準量はあくまで確保しなければならぬと私は考えております。
  19. 足鹿覺

    足鹿委員 そうしますと、現在配給基準量は米麦合わせて二合七勺で、どんな場合があつても、米のみの一合五勺は切らないという御確信が明らかになつたわけであります。しからば米と麦との一体化の上に二合七勺の配給量が立てられ、それが最悪の事態が起きた場合、さらに米のみの一合五勺ということになつておるのでありまして、元来日本では、米麦をうらはらの関係において見ずして主要食糧配給基準量というものは成り立つておらない。今の政府方針によりますと、麦だけを自由価格に切り離してこれが、高騰した場合には価格政策でもつてつて行こうということのようでありますが、これは最近に起きた実例から見ても、政策の矛盾が明らかに現われておる。先日もこの委員会で、大臣も御列席の上に、与党の皆さんも御心配なつた例の飼料の問題はどうですか。自由に御放任になり、マル公を撤廃して、配給も自由になさつた。そのとたんに倍額——三倍以上の飼料の高騰が来て、しかもこれに対して、あわてて緊急措置をおとりになる。現在の自由価格の構成においては、この結果畜産農家をして壊滅の底へ陷れるような事態が現実に起きているではありませんか。いわんや食糧の問題を、米のみの一合五勺に限つて、あとの一合二勺を自由価格の面においてこれを消費者にさらして行くということは、過去の実例からいつても、現在の小麦の製粉業者の操業度等の点から見ても、半分以上はその操業能力が遊ぶことになると言われている。従つて麦が自由放任にされた場合に、これらの業者が操業を充実して行くために麦の買付を行つているということは、大体において世間が多く言つておるところである。これを農林省が御存じないはずはなかろうと思う。そうした事態が起きた場合にいわゆる麦の偏在量は急激に増加して参りまして、ここに市場価格の高騰という事態が起き、池田大蔵大臣は貧乏人は麦を食えと言われるが、麦すら食えないような事態が、現実に起きて来ないとだれが保障できますか。これは現に飼料の問題にしても生々しい体験を持つおる、肥料の問題にしても生生しい体験を持つている。そういう関係からいつて、いわゆる米のみの基準量で、ほんとう国民の食生活を安定化して行くということは、今までの経験なり今後の見通しにおいて、非常に無理がありはしないか。しからばその結論として、大臣お尋ねしたい。もし米が多くの昆虫類あるいは稻熱病等によつて相当の被害をこうむつた場合に、いわゆる單作地帶その他の方面に対しても大きな追加供出割当をされたり一合五勺を確保して行くためには輸入とのにらみ合せで御解決になるであろうと思いますが、どうしても手近いところにその対策を求めて行かれることは、今までの経験からして明らかである。こういう点からして、米麦合わせての、二合七勺を遵守して行くのに、單作農家の負担過重にならないような御決心がありますか。しつこいようでありますが、これは麦との関連において、政府の確たる御方針を承つておきたいと思います。
  20. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 この法律を起案いたしました趣旨と現実の問題と、大分混線いたしておるようでありますが、法律を起案いたしました趣旨は先ほど申し上げました通りで、いかなる天災地変が起つても、それに対応する態勢を整えておき、広く安心度を加えておくことが立法の精神であります。  それから現実的に配給基準量についてのお尋ねでありますが、われわれといたしましては、麦をはずしましても、一様に偏在するようなことは決してないと思う。それでこれが非常に有効に、能率的に転換いたしまして、決して御心配をかけるようなことはないと思うのであります。飼料につきましては、これは一時的の現象でありまして、現在政府のとつた施策の結果は、一般の飼料も非常に下つて来ておるような傾向にあるのであります。異常災害あるいはまた国際間の異常突発事件というようなものを別として考える場合には、日本の内地において産する麦を——これはかりに一合五勺の米を配給する場合には麦は伏流水の形で、いつもこんこんと下を流れているようにわれわれは能率的に考えおるのでありまして、米は表を流れる表面水の一合五勺、こういうわけで両々相まつて川が流れて行く、こういうように私は実は考えておるので、決してあなたのおつしやるような極端な例にはならないと思う。また單作農家——麦作單作農家のことであろうと思うのでありますが、これも決して強権を発動しないで、現在の情勢においては、私はそういう見通しができる、こうかたく信じておる次第であります。
  21. 足鹿覺

    足鹿委員 しつこいようでありますが、なおお尋ね申し上げたいと思う。いかなる事態に備えてでも適応し得るような法をつくつておくということに相なりますと、これは当然麦の強制買入れがある場合を考えておかなければならぬと思う。この場合にわれわれが最も考えなければならぬことは、麦の価格の構成の問題についてである。これについて、政府強制買入れをやるような事態があつた場合に、いかなる価格について政府考えておるのであるか、麦の価格決定については、どのような観点から現在考えておいでになるのか。伝えられるところによりますと、麦の対米比価の再検討を政府考えておるやに伝えられておるのでありますが、その再検討の考え方は一体どういうところに基本を置いて考えておられますか。私どもは、いわゆる国内食糧自給度を高めて行くということを、価格政策にのみ求めて行こうとは考えておりません。これは大臣がしばしば言われるように、国家の資本や財政支出が——資本の蓄積の低い日本農業に対して、国家の援助政策が強く要請されて、これと適正な価格政策がうらはらの関係において確立されてのみ、食糧国内自給度が達成されて行くということは、われわれとしては一応理論的に考えるのでありますが、従来の政府価格構成の考え方に——しばしば大臣自由党内閣によつて米価を上げたんだと言つて、たいへん自画自讃をされておりますけれども、農民は決して満足しておらないのです。これはほんとうに今後の価格政策を再検討し、その基本方針が確立されない限り、農民の自発的な協力を求めて行くことはできないのである。一方この価格問題については、買入れ価格を引上げて、その価格をただちに消費者へ持つて行くということにつきましては、おそらく消費者の反撃によつてこれは実現しないと思う。国民経済的な観点から消費価格はきめられなければならぬと思いますが、この点について、二重価格をわれわれとしてとらざるを得ないという結論を持つておるのであります。もし現在の情勢によつて麦の強制買入れをやつた場合に、麦の対米比価の立て方については、どういうお考えを持つておられるか。現在の八一・三%を六四%に引下げる方針のもとに、八百八十万石の予算の單価はきめられておると私どもは承知しておりますが、これについて一点。いま一つは、大臣の御所見にある、食糧国内自給度をある程度適正価格に求めて行く場合には、必然的に二重価格制を好むと好まざるとを問わず実現しなければ、真に農民をして経営を安定せしめるような価格制定することができず、また一方消費者にとつて国民経済的な、国家再建のための一つの方向は出て来ないのであります。この点については、私どもは二重価格制をとつて行かざる限り——現在の補給金にしても、一種の形のかわつた二重価格制だとも言うのでありまして、もつとこの点大胆に二重価格制を併用して、価格政策を推進して行かれる御所見はないのでありますか。この点以外に、抽象的に食糧国内自給度を高めるというようなことを、大臣が百万遍説教されましても、おそらく農民国民も納得しないと思う。もしこれがいけない、やる意思がないとおつしやるならば、農民が満足して国内食糧自給度を高めて行くような、いわゆる価格政策の根本をどこに求めておいでになりますか、御所見を承りたい。
  22. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 一歩翻つて国内自給度を高める上において、麦作農家をして満足せしむるような価格にしてはどうかというお話であります。これは対米比価の問題につきましてだんだん論議があるのでございますが、国際間の麦価がだんだん高騰いたして参ることを考え、あるいはまたパリテイー指数の高騰等を考えて、これは農家の喜ぶ価格に直さなければならぬ時期が来るのであろうことを、私は予測いたしておるのであります。單に予算をつくるときのことに最後までわれわれこだわる意思は持つていないのでありますが、的確なる対米比価については、今日はまだ話す自由を持つておりません。しかし農家の喜ぶ価格にしたい、そうして自給度を高めて行きたいという考えは持つておるのであります。  それから二重価格についてのお話でありますが、ただいまやつておりまする補給金制度も二重価格の一つであります。しかしその他にまだ、あなたの御構想の、端的な二重価格のほかに打つべき手があると私は思つております。かりに食管会計についてこれを見ますれば、この会計の費用を国家が負担して行くという方法も一途じやなかろうかと考えております。この点につきましては考究いたしておる最中でありまして、そうして末端の消費者価格を上げないで、できる限りその間で調節して行きたいという考えにはかわりはないと思います。  それから先ほども自給度の問題でお話があつたのでありますが、自給度を高める上において、だんだんわれわれの方で作業を続けて参りますと、ささいな金、いわゆる外資基礎産業農業に入れて行く場合においては、ごく短い時間に外資基礎産業農業土木なり、あるいは農業のあらゆる方面に入れて行きますと、千九百万石の足りないものが補えるような方途があるんじやなかろうかということは、検討いたしておりまして、目下数字をまとめておるようなわけであります。あらゆる角度から、あなたの御心配のようなことがなくなるように今検討中でございます。
  23. 千賀康治

    千賀委員長 足鹿委員に申し上げますが、まだ質問の通告がたくさんあります。約束の時間が追つておりますので、すみやかに結論に入られたいと思います。
  24. 足鹿覺

    足鹿委員 では最後に一点、麦類の対策につきまして、いろいろと大臣の御構想を承つたのでありますが、もし万一、政府考えておいでになるような価格対策によつて乘り切れない事態ができた場合には——二重価格制の具体的な実施についても御確信がないようでありますが、もし今申しましたような飼料の実例、あるいは肥料の実例等によつて、乘り切れないような事態が起きた場合に対する、政府の御所見はいかがでありますか。伝えられるところによれば、いわゆる外麦を内地麦の価格において放出して、価格の調整をする基本方針であるやに聞いておりますが、もしさようなことになりますと、おそらく内地の麦作農民経済を大きく圧迫する結果が出て来るのであります。すなわち外麦の品質は、その水分なり、グルーテンの含有量なり、あらゆる面から見て、日本小麦はとうてい外麦には及ばないのである。これはもう御存じのことであると思う。こういう条件のもとに、二割程度の高い優良な品質の外麦を、内地麦の価格を基礎として価格調整をやるために放出をされるということになりますと、ここに麦価の面を通じて、政府がお考えになつておる方向とは、およそ似ても似つかぬ農家経済を圧迫する事態が出て来ないと断言はできないと思う。かようなことに対して、いかような御政策をお考えになつておるのでありますか、この点を最後にお尋ね申し上げて、私の質問を打切りたいと思います。
  25. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 政府は單に外麦の含有量の問題、あるいはまた外麦の価格問題等についてのみ考えておりませんので、内地の麦作農家のことを十分に考えてやりたいと思つております。私がいつも言つておる通り統制をはずせばある程度価格は上るであろう。要するに最低価格からはずれるようなことになつた場合には、これは政府がどんどん買い入れて、市場を刺激して価格を上げて行く。しかしあまり上つた場合には、また政府の措置をよろしいようにいたしまして、あまりに消費者に混乱を来さないようにして行きたい。しかし基本である麦作農家を根底からくつがえすようなことは、われわれしたくないと考えておるのでありまして、その操作運用は、われわれの方で十分に妙味を発揮いたしまして、実害のないようにいたしたいと考えます。
  26. 千賀康治

  27. 金子與重郎

    ○金子委員 前委員から大体の点は質問があつたと思うのですが、ただその答弁につきましては、さつぱり私にはわからないので、一応繰返すことをやめまして、簡單に三、四点、きわめて要点だけをつかんで質問申上げたいと思いますから、どうぞ率直にお答えを願いたいのであります。  まず第一に、先ほど大臣から、わが党は自由主義経済によつて統制を解いて行くのだというお話がありましたが、統制を解いた最近における肥料の問題、飼料の問題につきまして、統制を解く前と解いた今日と、肥料の生産なりあるいは消費者であるところの農民の上に、どういう点が利益になり、どういう点が損になつたか。また公団廃止をいたしますれば、今度四月から米屋を開設いたしました後に、消費者がどれだけ安く買えるか、生産者がどれだけ高く売れるか、いわゆる統制解除の利点というものが、生産の立場と消費の立場において、どれだけプラスになるかということの見通しでもけつこうでありますが、その点の御所見を伺いたいと思います。
  28. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 肥料並びに飼料に関連してのお尋ねでありますが、現在肥料生産は非常に上昇いたしておることは事実であります。しかしこれが一部中間者によつて、あるいは末端まで行かないのではないかということは懸念いたしておるのでありますが、実際まだ農家から、肥料がないという陳情は受けていないので、省内一般実にふしぎに考えておるところであります。肥料が末端に渡らないということのだんだんのお尋ねでありますが、これはどうも、直接農民からわれわれのところにその陳情がないので、省内全部がそういうような奇異の感をもつて迎えておるのであります。ただ中間におつて、糸へんなり、金へんなりがいろいろな操作をしておるということは聞いておるのでありますが、これにつきましては物価庁とも相談いたしまして、手段を講ずるような措置を考えておるのであります。  それから飼料につきましては、特殊な糸へんあたりが買いあさりに出ておるようでありますが、これに対しましては、先刻来文書をもつて委員会に報告申し上げました通りの手段を講じました結果、大分おちついておるようであります。なおまた残余の雑穀並びに燕麦等も相当大量に放出する予定でおりまして、畜産農家に実害を与えないように、懸命に努力しておる最中であります。  それから今後統制を解除いたしまして、どんな実益を得るかというお話でありますが、これはいわゆるいらないものまでもとらせるような官僚統制方式が改まりまして、今度のクーポン制でごらんになればわかるように、あの程度の自由でさえもすでに妙味が発揮されておるのであります。そこの間に非常に矛盾があることは、畜産農家の飼料となるふすまが、麦粉の辞退によつて畜産農家を脅かすというようなことまで言われておるのでありますが、大体一月の数字は、これはいつももち食い月と申しまして、あてにはなりませんが、それでも相当量の辞退が出て来ておるのであります。このように消費者があのクーポン制の限られた自由の中でさえ妙味を発揮いたしておるのでありますから、これを全般的にはずした場合にはもつと妙味を発揮いたしまして、日本国内食糧の保有が増し、しかも外国食糧輸入を防遏することができるのじやないか、私はこう信じております。
  29. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいま肥料が渡らなくて困つたという陳情は、どこの百姓からも受けておらないというお話でありますが、私のお聞きしたのは、肥料が渡らないということでなくて、統制を解除したために、その値上りで農村の負担というものは非常に莫大な金額になつておるのであります。それをただ肥料がないという陳情がないということだけでは、この問題は、私には統制を解除した利益だとは思えないのであります。しかしながらこれは、農林大臣承知の上でぼやけたことをおつしやつておるのだと思いますから、これ以上追究いたしません。  それからもう一つ、今度のこの三つの法令の改正によりますと、食確法は当然切れて参りますからして——以前の食確法には、米にしても麦にしても、これらの農村から買い上げられるものに対しては、たとい形だけにしても、農民生産に必要な肥料なり、農機具の配給の裏づけというものが条文の中には置いてあつたのでありますが、今度の新しい法案には、こういうふうな生産の裏づけというものが何も保障されていない。ただ供出を要求することだけが出ておるのでありますが、この点につきまして将来どういうふうにして生産の裏づけを約束するか。いやしくも供出を義務づけるならば、その生産に対しても、肥料が上つたらしかたがない、また飼料が上つたらしかたがない、ただできるだけのことをやるという範囲では、私は条理が通らないと思うのでありますが、その点はどういう御所見を持つておりますか。
  30. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 それは決してわれわれ等閑に付しておるのではありません。肥料の値上り等の指数は、当然パリテイー指数の上に出て来ると思うのでありまして、それを基礎として米価なり、麦価なりがおのずと出て来ると思つております。特にはなはだしいものにつきましては、含みのある答弁を池田君も、物価庁長官もいたしておるようでありますが、これに対応いたしましては、特定のものに誠意を持つて考えておるようなわけでありまして、單に値上りをそのままわれわれは黙認いたしておるわけではないのであります。現在の値上り、特に外国から輸入される肥料等につきましては、最も真劍に、愼重に、実情に即した態勢を整えようと思つて、目下苦労いたしておる最中であります。肥料等の値上りにつきまする指数上に現われたものについては、必ずこれは米価並びに麦価に織り込まれるものであると私は信じております。
  31. 金子與重郎

    ○金子委員 農業生産に対する資材の裏づけに対しては、でき得る限り誠意をもつてやるということの範囲だそうでありますが、これに対してはもう少し具体的な一つの方向を示していただきたいことを希望いたします。  次に日本食糧自給度を高めるということは、現段階において最も重要な一つの問題でありますが、その場合、日本食糧自給度を高める上において、一つには穀物生産を高めるということ、もう一つは質的に蛋白資源を向上させて行くということの二つになると思いますが、その前者であるところの穀物生産の絶対量を高めるという上から行きまして、米に依存する度合が将来性があるか、あるいは麦に依存する度合が多いか。私の考え方では、米はやや絶頂に近いとみなされる、今後高め得るものは麦類ないし雑穀にある、こういうふうに考えておりますが、その点は農林大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  32. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 今後自給度を高めて行く上に対します方向をどう考えるかというお尋ねのようでありますが、これはやはり両々相まつて行く方が一番よろしいと思います。あなたの御指摘のような、いわゆる主食と称するものは米に主点を置いておるようでありますが、米が頭打ちをしてだんだん麦その他に移行して行く傾向にあることは事実であります。そのようにいたしまして、生活改善なり、あるいはまた食生活の進歩なり進化なりをはかりまして、その方向に向けて行く方がよろしいのではないかと思うのであります。それから畜類等に蛋白源を求めるということは、水産、畜産等を通じまして、これまた重要な問題でありますので、さような点を勘案いたしまして、單に国内資本のみではなかなか足りませんので、外資をここまで導入して、万全を期したいと私は考えております。
  33. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいまの質問は、ちよつと大臣の御理解が得られなかつたのではないかと思う点がありますので、もう一ぺん繰返しますが、消費面における麦類の消費というものを、主食を米だけに依存しないような方向へ持つて行くということではないのでありまして、生産の将来性ということであります。もつと具体的に申しますと、今後、米作というものを反収なりあるいは面積の増加をはかつて行く、その自給度の高められる度合と、麦類の面積あるいは反収の増産をはかり得るような方向と、二つの場合を比較したときに、私は将来麦類の方が増産度がまだ伸びる可能性が多い、米の方が絶頂に達している感があると思うが、そうするならば、農業食糧自給政策といたしまして、麦類を相当度伸ばすような方向へ、政治的な処置を講ずべきだと思いますが、農林大臣はそれに対してどうお考えになりますか。
  34. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 自給度を高めて行く上に、比較的やりやすい麦に伸びる可能性があるかというお話でありますが、これは私両方あると考えております。なぜかと申しますと、南の方、九州の方で開拓事業等をどんどんやつて行きますれば、これにも余地があります。特に陸稻の研究がまだ万全と申されませんので、地下水を利用しての陸稻あるいは畑地灌漑等の陸稻の成績はだんだんと向上いたして参つておるのでありますが、この陸稻の奬励等によりまして、決して米の方の自給度を低めるということにはならないかと私は思います。また米について申し上げますが、北海道で本年度とれたようなあの石数を、三十年前にだれも想像した者はないのであります。しかしこれも、もつともつと北の方に行く可能性があるということをいわれておるのでありますが、いわゆる植物の適応性と申しましようか、気候の適応性が、だんだん強くなつて参りまして、そうしてしかも異常種が発達して参りますので、だんだん北の方に行く可能性があるのであります。さようなことにいたしまして、高度に土地を利用すれば、米においても私は決して劣らないと思う。また比較的安い麦作でありますが、これも裏作の奬励において、今はすでに盛岡から秋田の線、それ以上に上まわつておるのでありまして、この間も青森県からも参りまして裏作が完成したから、農林省で何とか推奬してもらいたいというところまでこぎつけておりますので、まだ自給度は、お互い決して悲観する程度ではないのでありまして、努力と研究とが両々相まつて、両方とも自給度を高めると私は思つております。
  35. 金子與重郎

    ○金子委員 私どもは生れながらにして百姓を專門にした者でありますが、大臣は職掌柄か、大分お詳しいようでありますので、その点はもうそれ以上申し上げることもできないのであります。  そこでもう一つ、これは重要な問題だと思いますので、御質問申し上げたいのですが、麦の統制を解除するというふうな方向に入つておりまして、必要により買い上げるということでありますが、全国平均いたしますと、麦類の方が米に比較して生産費が高いのであります。そこで今度政府考えられておるということを仄聞するのでありますが、対米比率を下げるという問題が出て来ると思うのであります。そうなりますと、麦類の生産に非常な影響が来ると思うのであります。将来、麦の買上げ価格は、先ほど農林大臣の申しますのには、適当な価格で買い上げるということでありますが、なお一言、くどいようでありますが、再生産を保障する価格で買い上げることを原則としての適当にと解釈してよろしいでしようか。
  36. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 これもお互い政治をやる上において、生産家が喜んで売つてくれる価格にすることが、私は政治の最終目標だと思うのであります。そこで單なる予算面に現れた対米比価ということでのみ考えていてはいかぬとい意見が、だんだん国会を通じて盛んになつてつておるのでありますが、私たちといたしましても、肥料の値上りその他いろいろな物価指数の値上り等から考えて、対米比価あるいは国際間の麦価の上り方等を考えて、これはもう少し考える余地があるのではないかということは、われわれも十分承知をいたしております。大体五月ごろに価格をきめることが適当であると考えておりますので、この辺については愼重に、考えておる次第であります。再生産ができるような線でやつてほしいということですが、あなたの御意見とまつたく私も同一であります。
  37. 横田甚太郎

    ○横田委員 大臣答弁を聞いておりますと、まるで天国で話をしているようで、非常におもしろいと思う。そこで大臣のおもしろい朗報の中から、最もおもしろいのを聞きたい。大臣の言われた匿名供出ということは非常におもしろい、それはいいことだと思うのですが、その匿名供出というもののねらいと特徴、一体匿名供出とはどういうものであつて、どういうふうにやつて行くつもりか、これを聞きたい。
  38. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 匿名は名を隠すことでありまして、これは今まで、何と申しますか、供出をいたしますと、すぐ税金をかけるので生産意欲がなくなる、あるいはまた供出意欲がなくなる、これを何とか逃げたいというのが一つ。それから来年の供出の基礎資料にしたくないという農民のねらいであります。これをなくしたい。そしてしかも食糧を中央に集めれば、外国から入つて来る食糧を押えることができる。そういうようなことで外国へ払う金を減すことなのであるから、国内を富ますので、税金をとつてもとらなくても同じじやないかということで、説得に努めておるのであります。しかし徴税吏にはこの心理がわからぬようであります。
  39. 横田甚太郎

    ○横田委員 大臣に最近の農政をちよつと報告しておきますと、今供出と税金はあまり関係ない税金は反当割でとつております。これは御存じでしよう。こういう点をごちやごちや言つておりますと十五分経ちますから小さくは言いませんが、とにかく大臣は現実をはき違える場合が多いので匿名供出論になると思います。思い切つて米の供出を全部匿名にする、耕作も匿名でつくらしたらいいと思う。  二つ目にあなたに聞きたいのは、今大臣外資農業に入れる、こう言われましたね。これは朗報も大分脱線し過ぎてやしないかと思う。たとえて申しますと——たとえて言う前に、まずはつきりしておきますが、外資というものは見返り資金のことを言つておられるのでしようか。これは外資の化けたやつでしようが、私は日本人の金だと思うのです。この点は見解が違うので、共産党と自由党にわかれて争つておるのですが、要は、あなたの言う外資は見返り資金のような性格を指すのか、それともアメリカ人のウオール街に持つておるところの、非常にもうけたい、収奪したいという搾取を対象にしてためられたところの資金を指すのですか、どちらなんですか。
  40. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 外資亡国論のあなたにこういうことを言つてはどうかと思いますが、しかし日本の資本は限られておるのでありまして、かりに外資を入れる場合に、現在の見返り資金を度外視して、私は言つておるのであります。見返り資金でなく、ほんとう外資を言つておるのでありますが、外資をわれわれは期待しておる。船であるとか、あるいは発電所だとか、固定された資本に入れるようでありますが、農業土木も、これは固定された一つの資本と私は考えておるのであります。これから年々上つて行く利益は、決して出力量に相まつ電力の売却価格、あるいは船の船賃等に負けないものであると考えておるのでありまして、これはウオール街云々のお話がありましたが、日本の限られたる資本でなく、外国から入れて、そこまで日本のいわゆる自給度を高めて行きたい、こう私は考えておるのであります。
  41. 横田甚太郎

    ○横田委員 廣川さんもかつては社会主義陣営におられたそうです。資本はあくなく利潤を追求するものだを御存知でしよう。日本農業は、あまりもうからないということはよく御存じのはずです。造船はよくもうかるのです。とにかく農業以外の産業はよくもうかるのです。従つて農業に対する投資は非常に悪くなつて日本の銀行あたりでさへ金を貸さない。いわんやアメリカのような金利ばつかりもうけるものが、どうして日本のような農業に金を貸すか。もしそんなことを期待するのだつたら、もう一回アメリカの歴史を農林大臣は読んでもらわなければならぬ。日本農民を農奴にいたしまして、そこからあくなき搾取をやらない限りにおいては、決してアメリカの資本を入れてもうける対象にならない。だから簡單に申しますと、南北戰争前のアブラハム・リンコルン以前のアメリカ人に逆転する以外には、日本には金が入らないということをお考え願いたい。これも時間がないので次に移ります。  外国食糧ですが、外国食糧は、御希望でございましたら申しますが、非常に値が上つているのです。ここで日本予算は限られておる。私が伺いたいことは、こういうふうな場合に、日本予算をふやすことにおいて、三百二十万トンの食糧確保しようと思つておられるか、それともまた予算が少くなるから、三百二十万トンを減そうと思つておられるか。食糧庁の朗報放送によると四百万トン入れられるそうですが、こういう場合にはどちらをおとりになるか、ちよつと聞きたい。
  42. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 どちらにいたしましても、国民の必要量は入れたいと考えております。決して單なる数字にこだわつて国民に腹を減らさせるようなことはしたくないと思います。
  43. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうしますと、またエジプトへ米を買いに行つて石を買うて来られますか、これが非常に疑問です。あんまりあわてて国民に食わさねばならぬ、目方をあわさなければならないというので、トンをあわせて内容が石に間違つて来ると困る。このごろ町におきましては、特に東京におきましては、あなたの隣近所においてさへ、小石の混つた米はいやだ、こう言つております。ここでたつた一つ聞いておきたいことは、この米の量もきのう農林委員会において次官に尋ねました。私がここで聞きたいことは、現在の受配者は二合七勺を三合にしてくれといつて、あなたに強要することはできないのですね。しかし二合七勺の中において、米の中にある石を断わる権利がある。これは事実あるのですね。だから受配者の権利というものはどういうふうな形においてあなたたちに、何と言いますか受配者の権利というものを一応承つておきたい。これは朗報でなく、比較的まじめな方でお願いします。
  44. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 あれはだんだん調べてみますと、民貿から入つた米だそうですが、見たところ非常に内地米のようでよろしいようでありますが、あれもやはり日本から行つた原種で、日本米がああいうふうになつて、向うで成長いたしておるそうですが、ただ石の入つたことは検査の粗漏、あるいはまた契約の間違い等で、この問題はあくまで追究するそうであります。しかしこの石の入つたものを配給された者の権利云々の問題でありますが、このあと配給する場合に、石が入つていたものは引かえるという方針のように今きめております。
  45. 横田甚太郎

    ○横田委員 こういう例があります。石を引いた場合に金はどうなるか。こまかく話を聞きたいのですが、これはあとで安孫子さんにお伺いいたしましよう。安孫子の方がまじめでしよう。  今度は全国各地におきまして、農地がよくつぶされるのです。農地といいますと、御存じのようにいもをつくる、いいところは米麦をつくる。そこで日本はこのごろ飛行機をつくつておるらしい。飛行機をおろすのです。農地がいつかしら飛行場になつておる。こういう場合におきましては、村の農業調整委員会、農地委員会の自由意思におきまして断ることができるのでございますが、断れない。なぜかといえば、ジープが来てこれを収容する。この場合にいろいろな論議もございましようが、これも時間の都合で申しませんが、要は、この場合にいかなる代金で農民たちは金をもらつたらいいか。またこの金はどういう性質の金が払われるか、これを承りたい。
  46. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 それは賠償庁の方の関係の所管だと思つておりますので、賠償庁所管の金で支払われるのじやないかと私は思いますが、しかし農民が納得行く金が払われるように私は期待いたしております。
  47. 横田甚太郎

    ○横田委員 納得が行く金の額が問題なんです。この額は一体農地の規定によつてもらうのですか。それが一つと、それともまた飛行場というような、高度な非常にもうけをふやすところの基礎になるところの、基地になるのですから、それから見ますと利潤率が非常に高いから、べらぼうに高い金を農民は要求していいのかということですね。それからまたこの金は賠償庁から出すとするならば、終戰処理費から出ておるのか。これなんです。これと同時に、また時間がないといつて委員長に切られましたらいけませんので、次のことも承つておきますが、要は農民が還元配給を受けます場合に、これは新聞にも出ておりますが、農民というものは大体四合の配給量を確保できますね。ところがこの農民が凶作によりまして米がとれない場合におきましては、町の配給所のやつかいになるときに、二合七勺しかもらえない。私は、この配給にいろいろな段階があり、多い少いがあるということは、これは明らかに仕事の性質によつてつておるのだと思います。ところが農民農業をしておるにもかかわらず、同じ作業であるにもかかわらず、配給される量が違うのですから、この場合に農民はどちらをもらうのがほんとうかということの、責任ある大臣答弁を得たい。先の一問とともにお答えを願いたい。
  48. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 不作になつた場合、あるいはその他の場合に農民がもらう米の量でありますが、これは最初きめた当時における精神は私はよく知りまんが、この配給という上から行きますと、自家保有量とはおのずと区別されて、一般消費大衆と同様に配給されるのがほんとうであろうと思うのであります。ただ価格の面につきましては、これは十分考えなければなりませんので、一般末端消費配給の大衆とそこは区別いたしまして、なるべく手数料をなくしまして、特に公団等も廃止になるのでありますから、そういう費用を除いて、なるべく生産費に近い価格農民にお返ししたいと考えております。  それから農地代金は、これはあなたの御指摘の費目から出ていると思つております。  この代金の額については、私は所管……。
  49. 横田甚太郎

    ○横田委員 農民が納得するまで要求したらよいのですね。納得しなかつたならば、抗争を続けてもよいのですね。この点です。
  50. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 私が常識的に言つていることは、農民が納得する価格で支払うのが当然であろうと考えているような次第であります。
  51. 横田甚太郎

    ○横田委員 納得するか納得しないかが問題なのですから、そういたしますと納得しない者は、たとい外国人は背が高かろうと、武器を持つておろうと、これに抗争これつとめたらよいのですか。
  52. 廣川弘禪

    廣川国務大臣 納得の限度はおのずと基準があるのであつて、それ相応の機関にかけて、その基準度は決定すると思つております。
  53. 千賀康治

    千賀委員長 午後二時から再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議
  54. 千賀康治

    千賀委員長 午前中に引続き会議を開きます。この際申し上げます。農林漁業資金融通法案に関して、大蔵委員会と連合審査会の開会日時についてでありますが、明日午後一時からの予定でありましたところ、大蔵委員会より明後日にしてほしいとの申出がありますので、これは承諾することにいたしましたが、御承知を願います。  食糧管理法の一部を改正する法律案及び食糧政府買数量指示に関する法律案を一括して質疑を行います。通告がありますので、これを順次お許しをいたします。八百板正君。
  55. 八百板正

    ○八百板委員 まず食糧管理法の一部を改正する法律案についてお尋ね申し上げたいと存じます。  この食糧管理法の一部を改正する法律案は、食確法廃止を前提としているのだと思うのであります。主として今回問題になります点は、食糧の事前供出を事後割当に改めるにあたりまして、今まで農民に対して供出を要求する政府の責任上、農業生産のために必要なる資材の確保等について、それぞれ政府の責任を明らかにして、一方において農民の供出を要求しますと同時に、一方において、政府生産拡充のために果すべき義務的なものを織り込んであつたわけでありますが、今回の改正によりますれば、そういう面を削除いたしまして、主として政府食糧の買入れをなす権限だけを強く明確にする。こういうふうな形をとつているのでありますが、この政府の果すべき農業計画に基く資材、資金、肥料、そういうふうな面において、どういう事情の変更を前提としておられますか。まずこの点をお尋ねいたしたいと思います。
  56. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 食糧確保臨時措置法は、ただいまお話のございましたように、統制経済下におきまして、資金、資材、あるいは肥料、そうしたものの確保をはかりますことと関連しまして、食糧の供出割当をいたすという建前の法律であつたのでありますが、その後経済界の状況がかわりまして、肥料その他主要な農業資材等に関しまする統制がはずれまして、自由な流通機構によつて流れることになつたわけであります。従つて食確法の建前といたしました供出と、そうした生産資材面の結びつきを一つの目標といたしております法案をやめまして、買入れの手続に関する法案のみにいたしたのであります。しかしながら農業生産確保いたしますためには、資金あるいは資材というものがあくまでも基本的なものであることは、もちろんいささかの変更もないわけであります。ただ従来のように、政府統制下におきましてそれを配給することができませんので、もう少し大きな筋でもつていろいろあつせんをし、あるいは価格相当上りますれば、それを下げるような方策を講ずる。そうした方策でもつて、こうした生産資材等の確保をはかつて行くという方向に向けられるべきであろうかと、かように存じている次第であります。
  57. 八百板正

    ○八百板委員 前提となつ考え方にわれわれは賛成することができないのでありますが、追つてその点については、別の機会にまたお尋ねするといたしまして、一応食糧管理法の一部を改正する法律案の条文にわたつて、少しくお尋ねを申し上げたいと思います。まずこの印刷物の第三条ノ二の点について見まするに、「政府国民食糧確保スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ政令ノ定ムル所ニ依リ」というふうに売渡しの命令を規定いたしておりますが、この必要ありと認める認定の機関は、どういうものを考えておられますか、これをお尋ね申し上げます。
  58. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 ただいまの状況では、その必要はなかろうと思いますけれども、世界的な大凶作とか、輸入食糧見通しもほとんど絶無に近いというような状況であつて、そのためにどうしても供出をしてもらわなければならぬという事態が起ります場合には、この第二項を適用して参りたいと思つておるのであります。しかしながら一方生産者の立場から申しますと、麦の出まわり期の中途においてこうした措置を講ぜられますことは、非常に迷惑なことでもありますので、大体これをやります場合には、収穫期前の五月ごろの状況によりまして、この方針をきめ、政令を出しまして、今年の麦については、この筋で行くというようにきめたいと思つております。
  59. 八百板正

    ○八百板委員 その認定の機関と申しますか、その認定は、だれが、どんな方法でするのか、これについて、少しお考えを聞かせていただきたいと思います。
  60. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 これは特別の機関を考えておりません。政府が認定いたしたいと思つております。
  61. 八百板正

    ○八百板委員 それに従わなかつた場合の罰則の取扱いは、どうなるのでございますか。
  62. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 供出制度が麦についても実行される場合に、それに従わなかつた場合の罰則規定は、本法の後段の方にあります。米でありますと、三年以下の懲役、三万円以下の罰金でありましたが、これは、自由の状態においてやむを得ざる措置としていたすので、体刑等はやめまして、罰金刑二万円以下としたのであります。第三十四条ノ二に「第三条ノ二第四項ノ規定ニ違反シタル者ハ二万円以下ノ罰金ニ処ス」とありまして、罰金刑だけにいたしております。
  63. 八百板正

    ○八百板委員 この法律に直接規定しないで、しかも具体的な限界を明らかにしないで、ただ漠然と一部の官僚の認定によつて売渡しが命令せられて、それが罰則を伴うというようなことになることは、法律の立て方として少し一方的ではないかと考えますが、この点はどういう見解を持つておられますか。
  64. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 法律上に根拠を持ちますので、幸いこの法案が御協賛を願えますれば、それに応じていたすのでありますから、妥当を欠く性質のものではなかろうと思います。
  65. 八百板正

    ○八百板委員 この法律でも異議の申立の道を開いているようでありますが、過去における異議の取扱いの実情等について、少しこの際御説明いただきたいと思います。
  66. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 異議申立の過去の実情は、事前割当制度におきまして、あらかじめ一年前に作付面積あるいは収量等から生産数量割当てまして、それから保有を引いて供出数量を示しております。ところが実際に収穫をいたしました結果は、それだけのものがどうしてもとれぬということで、その変更を要求されるので、それに対しては補正を実行して参つたのでありますが、その補正数量が、全体としては足りないという事情もありましたが、全体としてはありましても、それが末端に参ります過程において、最終生産者のところにその減額補正数量割当てられました際の結果を見ますと、必ずしも適正に行つておらぬという実情もありまして、そのために、ある農家はほとんど収穫がないにもかかわらず、相当大きな供出数量が残つておるというような事態がよく発生いたしまして、それに対して異議の申立てが行われるというような状況が相当つたのであります。しかし全体の国民食糧確保という建前から、生産者の方の御協力もいろいろ得まして、中央まで上つて参りました異議の申立てというものは、今までのところございません。大体府県段階あるいは町村段階において、その間は適当に調整をしていただいて、表向きに中央まで上つて来たというケースはございません。この点は見方の違いになるかと思いますけれども、事後割当制度になりますれば、そうした狂いが従来よりは比較的少くて済むのではなかろうか。食確法はいろいろの長所を持つてつたわけでありますが、減額補正が必ずしも適正に行われなかつたと認めざるを得ない。その結果、災害農家が非常に気の毒な状況にあつたということは、率直に認めざるを得ないかと思います。事後割当にいたしますれば、その点についてはよほど改善をされるのではなかろうかと存じております。
  67. 八百板正

    ○八百板委員 この二ページの七行目の買入れの価格でございます。これは食管法では——私は古い食管法しか手元に持つておりませんのでわかりませんが、前には家計費ということになつてつたように思いますが、「生産費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム」というふうに改められたのですか。
  68. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 私の記憶では、家計費という言葉を使いましたのは、米穀統制法時代に最低価格と最高価格をきめておつたわけでありますが、その最高価格をきめる基準として家計費というものを参酌いたしまして、最高価格をきめたわけであります。その際にそうした条文があつたと思いますが、最高最低価格制度をやめましてからは、消費者価格をきめますにあたりましては、家計費及び物価その他の経済事情を参酌してこれを定める。これは現在の食管法の第四条、「政府ハ其ノ買入レタル米麦等、甘藷又ハ馬鈴薯ヲ食糧配給公団又ハ政府ノ指定スル者ニ売渡スモノトス、前項ノ場合ニ於ケル政府ノ売渡ノ価格政令ノ定ムル所ニ依リ家計費及物価其ノ他ノ経済事情ヲ参酌シテ之ヲ定ム」この第四条は生きておると思います。
  69. 八百板正

    ○八百板委員 買入れの是非はしばらく別といたしまして、買入れをするということになりますれば、農民はどうしても売ることを義務づけられるのでありますから、従つて価格が問題になるわけでありますが、單にそれらの事情を参酌してその価格を定めるというだけでなく、強制的に供出せしめますからには、価格決定についても明確なる責任のあるきめ方を、法文の上に明らかにしておくことが必要だろうと思うのでありますが、一体だれがきめるのであるか、だれの責任においてきめるのであるか、この点についてどういうふうなお考えを持つておられますか。従来米価の決定等にあたりましても、その点非常に帰属が不明瞭になつておることは絶えず問題になつておる事柄でありますが、この際これをどういうふうにお考えになつておりますか、伺つておきたいと思います。
  70. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 この価格は今までと同じように、米価審議会に諮問いたしまして決定をいたしたいと存じております。
  71. 八百板正

    ○八百板委員 米価審議会に諮問いたしまして、だれが決定するのでありますか。
  72. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 米価審議会に諮問いたしまして、政府決定をするということにいたしたいと思つております。もつと官庁事務の内部にわたつて申し上げますれば、ただいま価格経済安定本部物価庁において決定いたしております。そこが主管になつております。私どももこの点には非常に関連がありますので、そことほとんど共管のような形において処理をいたしておりまして、この両者において大体案を策定し、あるいは米価審議会の御意向等もいれまして、最終決定政府の責任においてするということになると思います。
  73. 八百板正

    ○八百板委員 言葉の上では安本物価庁、政府、それぞれわかるのでありますが、実際上どこが中心になつておるかわからないというのが実情であります。この点について従来の米価決定の経緯にかんがみまして、この際安孫子さんの方でこれはどうしたらよい、これはどういうふうにすべきであるというふうなお考えはないですか、その点について考慮を払つたことはないですか。
  74. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 昨年来米価の決定等について、あるいは二十五年産米の価格決定等についていろいろな意見政府部内にあつたことは御承知通りであります。それがまとまりまして価格決定が行われておるのでありまして、そうした政府内部の各機関の意見というものがまとまつて決定をされる、この仕組みにおいてそう大きな間違いはなくて行けるのではなかろうかというふうに私は存じております。
  75. 千賀康治

  76. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいま八百板委員の質問価格決定の問題でありますが、その可否は別といたしまして、先ほど大臣の言いますのには、五月ごろというふうなお話でありましたが、価格決定をいたした後に数量をきめて発表されるのか。それが米の場合のように、農民は一方供出の割当を受けておるにもかかわらず、価格は依然として決定されないというようなことが繰返される憂いはないか、その点は価格決定を先に必ずするということが言い得ますか。
  77. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 従来価格決定がいろいろな関係から遅れておりまして、供出が進行してその中途でかわつた点もある。それで供出もほとんど仮渡し価格で供出をしてもらうということで、生産者に非常な御迷惑をかけておることは、重々承知いたしております。麦を第三条ノ二の二項で買うという場合に、これだけを出して価格はあとまわしだというわけには参らぬかと思います。従来のように、全部が供出制度に乘つております場合には、これはいろいろな関係からあとで遅れて価格が出るということも適当ではありませんけれども、やむを得ない実情にあつたかと思います。自由経済下にありましたものを、第二項によつて今度政府が供出で買うということをきめます際には、これはやはり同時に価格もきめるべきものだろうというふうに存じております。
  78. 金子與重郎

    ○金子委員 それからこれも先ほどちよつと御質問が出ましたので、関連して伺います。第三条ノ二の二項、これはたれも問題にするところでありますが、「政府国民食糧確保スル為特ニ必要アリト認ムルトキハ」というのでありますが、これは非常に漠然とした認め方なんでありますが、一体食糧事情がどの程度になつているとか、だれが認めるとかいう、もう少し具体的な押えどころはないのですか。その点私どもちよつと理解しかねるのでお尋ねいたします。
  79. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 具体的に、どういう場合に国民食糧確保をするために必要であるかという事例をあげろということになりますと、これは非常に困難でありまして、午前中に大臣からお話がございましたような線は、もちろんはつきりいたしておると思いますがかりに計数的に申しまして、持越し数量が年度の需給計算をやりましてほとんどゼロに近いというようなことにでもなれば、第二項に該当するようなことにもなろうかと思いますが、しかしそれも一応の計算はそう出ましても、国際情勢相当よくて、輸入見通しが確実であるというようなことになりますれば、その点はまたかわつて参りまするので、これはそのときの具体的な見通しによつての判断をいたして参るよりほかなかろうかと思うのであります。ここでいろいろこういう場合、こういう場合ということを列挙いたしまして御説明することは、なかなか困難かと存じております。
  80. 金子與重郎

    ○金子委員 長官は直接お仕事に当られておりますので、この麦の統制を解除いたしましたときに、現段階における政府の麦の買上げ価格よりも、かりに米を置きすえたと仮定いたしました場合に、麦の一般市場価格が上る方に予想されているか、あるいは下る方に予想されているか、その見解をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  81. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 先行きの見通しにつきまして申し上げることは、私としても非常に危険なことでありますけれども、現状から申しますと、麦価が統制をはずしました場合に暴落をするというようなことはなかろうかと存じております。若干強気な価格が出るのではなかろうかというふうに思つております。
  82. 金子與重郎

    ○金子委員 若干強気になるじやなかろうかということにつきまして、私どもの見通しといたしましては、若干には相違ないが、その若干は、市場価格相当上まわつて来はしないかというふうな心配があるのであります。それに関連いたしまして、ただいま小麦粉が一般消費者から配給辞退をされて、きらわれているような形があると思うのでありますが、そういう点がよけいに、この麦の統制を解除しなければ、麦はもうやつかいだという気分も、あなた方の方で持つておるのではないかと思いますが、その麦の配給辞退の現段階の状況は、どんなふうになつておりますか。
  83. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 前年の麦は、大体去年の四、五月ごろからでしたか、順次配給辞退の数量がふえて来ておつたのであります。配給辞退の大体の数字は、二十四年の十一月ごろから配給辞退の現象が出ましたが、これは大部分麦並びに麦製品であります。ずつと月別に申しますと、二十四年の十一月が三万七千トンでございました。十二月に二万一千トン、その翌月が一万二千トン、次が二万五千トン、三万九千トン、四万三千トン、五万九千トン、六万トン、五万二千トン、五万二千トン、五万三千トン、五万トン、それから三万五千トン、これが十一月でございます。十二月も大体そんな程度であります。三万トンから五万トンというようなところがずつと配給辞退になつております。それで、これは非常に完全な統制をいたしておりました場合の数字ですが、ちようど一月から御承知のようにフリー・クーポン制をとつております。フリー・クーポン制によるクーポンは三箇月の有効期間でありますが、一月の配給辞退が実ははつきり出て参りません。その月にこちらから割当てましたものと切符が使われましたものとの差は、二月または一月にとられるかもしれませんから、三月の末になつて参りませんと、一—三月の配給辞退の数量は完全につかみ得ませんけれども、大体一月は麦製品は、相当消費が減つておるようであります。それからこれも御承知だと思いますけれども、一月は相当もちなんかを食べますので、そうした方面の需要増のために、麦製品が比較的消化されないというのが例年の実情だつたと存じます。要するに大体三万トンから五万トン程度、昨米穀年度で申しますと、総計五十万トンの配給辞退であります。こうした配給辞退の原因は、麦のやみ価格が下つて参りまして、政府としては全国的に均一価格をとつておりますので、産地においては消費者価格が割高である。生産者価格との値開きが非常に少いというような関係から、配給辞退が相当出て来ておると存じます。この現象は、自然の流通機構を確立いたしますれば——もちろん配給がなくなれば配給辞退というものもなくなるわけでありますから、ナチュラルなものになつて参るのではなかろうかというふうに存じておる次第であります。
  84. 金子與重郎

    ○金子委員 ただいま御質問申し上げたことは、たまたま麦ないしは小麦粉のストックが非常に多くなつて来る。そして現段階でもそういう傾向があり、従つて製粉をある程度まで数量を押えておる。その結果ふすまができない。ふすまが非常に暴騰して、そうしてふすま百斤の方が原麦よりも高いというふうなことになる。統制を解除することはけつこうだ、けつこうだと申しますけれども、私どもはそういうふうな面から申しますと、ただ統制を解除するというばかの一つ覚えのような形でやることは、はたしてどうかと思いまして、非常に愼重な態度をとるべきではないかと考えておるのでありますが、ことにこの小麦粉の配給辞退が多い、あるいは小麦粉の消費が少いのじやないかということは、なるほど現在の嗜好上から行きまして、あるいは一般市場の流通性から行きまして、小麦粉が米に比べて、消費者の立場からいうと高いということが、そういう結果を来しておると思うのであります。そこでその高い理由はどこにあるかというと、生産者が高くとつておるのではなしに、それが製粉過程なり配給の過程において相当高くなつておる。現に小麦政府の買入れ価格よりも千円くらい高くなつたのならば、うどん屋が買つてもだれが買つても引合うのであります。そういうふうなべらぼうな相場が出ておるところに、今の製粉はおそらくふすまが四百円くらいを見通して工賃をきめておるのではないか。にもかかわらず実際上六百円以上に——今度の割当があれば、これは別問題でありますが、実際上市場はそうなつてつて、そのふすまの利潤によつて製粉会社は相当多くの利潤が出ておる。配給の方も相当高いコストになつておりますから、むしろ大衆の好むところの米のマージンを多くして、こういう小麦のようなものは相当中間のマージンを下げて行くようにする方が——これは統制を今度解除するという前提から行けば問題はないのでありますが、そういうふうにやるべきだと思うのであります。そうしてそういうふうな考え方から、この小麦粉の消費やあるいは麦類の消費を一般がきらうからといいましたところで、今度米一合五勺の配給であるならば、とうてい間に合わない。そういうことになると、その際に米の統制がずつと強化されまして、ほんとうに一合五勺以上全国民が食わないということになれば、そこに公平がはかれるのでありますが、私の予想としては、今後においても、依然として三度々々白米を食べるということは絶えないと思います。それだけに一方においては割高であるところの麦あるいは小麦粉を食べなければならぬという不公平が出て来ると思うのでありますが、今後一合五勺の配給をしたときに、現段階以上の公平な米の配給をするような処置を、どういうふうにとろうとしているか、その点を伺いたいと思います。
  85. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 麦の統制を撤廃いたしますれば、麦に対する自然流通機構ができて参りまして、消費者が確実にものが入るという安全感を持てば、そう消費者価格にも悪い影響を与えないで、麦の流通が行われるのではなかろうかと思つているわけです。そのためには、政府として大体現在の配給量の三分の二程度は外国産の麦、三分の一は国内産の麦として、三分の二程度の外国産のものを政府が一手に握つておりますれば、その辺のおおまかな調整はできるであろうと思つております。もちろん非常に末端までのぎりぎりした統制経済のように、必ずその人には毎日何勺というような、そういう消費形態はくずれて来ると思いますけれども、全体的に食糧に関する不安がなく、確実にものが入り、それがあまり高い値段でなく流通して行くということになれば、むしろ現在のようなぎりぎりとした配給制度よりも、円滑に参るのではなかろうかと思つております。  それから米は一合五勺であるけれども、毎日米を食つている人もある、この実情はやみ米を買つてつているわけであります。いろいろと取締りもいたしておりますが、何せ全国に散在いたすものでありますから、必ずしも完全な取締りというものはできません。そうした現象というものは、絶無を期するわけにはなかなか参らない実情にあると思つております。
  86. 金子與重郎

    ○金子委員 次に条文の問題でありますが、今度の食糧政府買数量指示に関する法律案の第五条の異議の申立ての点でありますが、先ほどの長官のお答えによりますと、国の段階まで異議の申立てが届いたことは、かつてこれと同じような前法令においてもないというようなお話でありますが、この法文を見ますと、私はないのが当然なのであつて生産者異議の申立てをした場合に、二十日間を限つて異議の申立てをしておるのでありますが、これから次の段階に行つて、返つたときに四十日、こういう形でだんだんにとつて行きますと、とうていこれだけの日にちでは、今のスローモーな役所では整理がつくはずがないと思うのであります。従つてこういう法文は実際に当てはめたときには、実行上不可能のように思う。りくつとしては成り立つけれども、一体これだけの期間で国の段階までもつて来て、また県の段階へもどす、そしてお前は正しいから、これでよろしいということにはなり得ないと思うのであります。ただ面子だけの問題ではなしに、実務の立場からいつて矛盾があると思いますが、その点はどういうふうにお考えですか。
  87. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 異議申立てのケースが少い場合には、やはりこの条項によつて処理ができるかと思います。ただ今までのように、県といたしましては、たとえば三十万石も減額の補正が必要だという主張をしているにもかかわらず、実際の減額補正が五万石とか、あるいは七万石というような状況下におきまして、これを全般的にこの期間で処理するということは非常に困難だと思います。事務の面からいたしますと、大体作況を見まして、この作況の上に立つて割当をいたしますから、事前割当当時よりはその間は相当調整ができると思つております。従つてこの五条の規定異議の申立ては、従来よりは合理的に、また行政的にも円滑に運用できるようになつたのではないかと思います。
  88. 金子與重郎

    ○金子委員 事後割当であるから、作況を見てやるから、一応妥当の割当ができるのではないかということは、一応話としてはわかるのでありますが、現実に今までやつて来た経過を、私どもが末端において、みずから供出もしておりますが、そういう立場からいつて農民異議の申立てなんということはとうてい聞かれぬものだとあきらめております。でありますから、作柄を見てといつたつて、去年の小麦のように全然とれない所にあれだけの割当をして、そしてジープでおどかしたりして、百姓は、しかたがないから豚を売つて麦を買つて出しているのであります。異議の申立てと法文にありますけれども、今まで実際に供出している農村の事情を見れば、まつたくむちでたたいた以上に——むちでたたけば痛いだけでがまんできますけれども、豚を売つた金で麦を買つて供出をすることが、今までの習わしになつておりますので、今度の法令改正においては、正しいものに対しては、高い銭で買つてまでこれを供出しなくてもいいのだということを、はつきり指導していいと思うのであります。ところがそういうことをすると反供出運動だということで、ジープや何かで飛んで来て文句を言うことが実際なのであります。この点は私どもは法律通り正しく指導するならばさしつかえないと思いますが、その点はどうですか。
  89. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 法案が成立いたしますれば、これに従つて指導されることは当然のことだと思うのであります。従来の関係につきましては、十分御承知通りでありまして、先ほども申し上げましたように、食確法の運用の経過から見ますと、現状におきましては、災害のほかに相当酷な状態にあることは、私もそうだと思つております。
  90. 金子與重郎

    ○金子委員 長くなりますから、もう一点であと譲りたいと思います。今度の法令によりますと、事前割当をしたいということになりますと、当然作付計画というものがはつきりして来ないわけでありますが、そうすると、政府が収穫数量決定する場合に、実際上どの統計機関なり、あるいはどの機関で調べるかわかりませんが、末端におきますと、実際につくつておらないのもありましようし、また麦をつくることが割が悪ければ、最近の群馬地帶のように、養蚕が有利な所は養蚕に転向いたしますし、現在の家畜の価格であるとするならば、政府がかりに対米比率を下げることがあるならば、ほかの作物に転向した方が得だという、これは自由意思だと思います。そうなつたときに、どういう機関で調査して、どれだけの作付ができて、どれだけとれるはずだということは、どの機関が調べるのでありますか。
  91. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 これは原則的には作報機関の調査によりたいと思つております。作報機関の調査のほかに都道府県の機関、それから供出になりますれば、経営規模が問題になりますから、食糧事務所で調査をしております。経営規模別の収穫見込みというようなものをつくる材料といたしまして、収集をいたすものと考えております。やはり根本は作報の通知が基本になろうと思います。
  92. 金子與重郎

    ○金子委員 私の質問はこれで終ります。
  93. 足鹿覺

    足鹿委員 食糧庁長官にいろいろお尋ねしたいことがたくさんあるのですけれども、あとで順位がまわつて来たときに落した点をお尋ねしたいと思いますので、委員長の方でよろしくその際お願いいたします。  この二つ法律案をお出しになるに至つた経過と申しますか、その考え方の基礎になつているものを、專門家の食糧庁長官からお伺いしたい。午前中農林大臣にいろいろお尋ねしたのですが、まつたく不得要領でありまして、これでは農民一般国民も満足ができないと思うのです。その点について、たとえば食糧管理法の一部改正提案理由の中に、政府考え方が若干出ている。食糧事情は安定しているというふうに見て、その安定したという認識の上に立つてこういう法案を出しているのだということですが、少くとも一般には安定しているかどうかということについては、相当議論もあるし、またその議論には相当根拠もある。その点についてどういうふうにお考えにたつているか、專門的な立場から、われわれの納得し得る御答弁をまず承りたいと思います。
  94. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 たいへんむずかしいお尋ねでありまして、その点農林大臣からも御説明申し上げておると思うのでありますが、第一点は、麦の統制をやめるのはどういう見解から来ているかという点が主題になろうと思います。食糧事情が、提案理由説明にありますように安定しているということは、私は確かだと思います。どの程度の安定をもつて安定とするかという見方はいろいろあろうと思います。     〔委員長退席、野原委員長代理着席〕  終戰直後のような一つの危機を脱却いたしまして、食糧需給の面からいたしますれば、安定期に入つているということは大体お認めを願えるのではなかろうかと思います。問題は、将来まで安定状態を持続し得る可能性があるかどうかとい点について、いろいろ見方の違いが出て来ると思います。私は現状をもつていたしますれば、ただいまの需給状況のような安定状態を、もちろん将来においても続け得るものであるというふうに考えて、その前提のもとに正案をいたした次第でございます。その前提において、それでは麦を従来のように非常にかたい統制のわくの中に入れておくことがよいかどうかというふうに考えますと、これはやはり生産者の立場から申しましても、また消費者の立場から申しましても、これを緩和する方が適切であろうというふうに思つて、こうした立案をいたした次第であります。
  95. 足鹿覺

    足鹿委員 これはもう議論になる点もありますから、あまりくどくは申し上げませんが、要するに食糧事情が安定したかどうかということについては、われわれは、相当長期にわたつてやはり考えてみなければならぬ。当面一応安定したかのごとく見えるかもしれないが、しかしそれが長期にわたつて安定しているかどうかということは、長官のお言葉から見ましても、若干の危惧を持つておられるようにわれわれは見ます。その一つの問題として、日本を対象として輸出される食糧は、今一番アメリカに多く依存をしている。そのアメリカの実情は、日本とは逆に非常事態宣言以来、またその前からもでありますが、大体すべてが統制復活で、物資を極度に切詰めて行く方向を出している。そのアメリカのいろいろな支援なり、援助を求めて行かなければならぬ日本は、しかも食糧の絶対量が足りない今日、逆に統制を撤廃して行こうという方向が出ている。われわれがアメリカの食糧に依存をして行かなければならぬ今日に、さような一つの大きな行き方としてのあやまちに立つということは、非常に危險な考え方ではないか。これ以上議論になるから申し上げませんが、少くともそういう点において、長期にわたる見通しについては必ずしも楽観を許さないと思う。そういう考え方からしますと、今度この法律にオーケーをもらつて国会に御提出になつておられますが、それについてどういう経緯があるのでありますか。たとえば情勢のいかんによつては麦類の強制買上げをやるという一項がついでいる。今政府考えておいでになる行き方をするならば、統制を残しておいて、必要な場合に自由にやるという考え方の方が、今の国際情勢なり、国内における食糧事情なりから考えてみると、政府当局はそういう、考え方をなさなければならず、また法律そのものの建前からいいましても、私はそうあるべきがほんとうではないか。あの方は自由にしておいて、しかも米は完全に追加割当の自由まで政府は持つておる、そして麦はつつぱなしている。相一致しない考え方がそこにあるのでありますが、麦の強制買上げを一項うたうことによつて、ようやく国会提出の運びになつたのではなかろうか、こういう印象をわれわれは受ける。これがあつたからようやく国会提出の日の目を見るに至つたのではないかという印象すらも持つ。その点について、経緯がありまするならば伺いたいし、誤解でありますならば解いていただきたいし、その辺のもう少し真相をお伺いしたい。
  96. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 率直に申し上げますと、第三条ノ二に強制買入れ規定、供出の規定を入れたのは、関係筋との関係はございません。政府原案でございます。自由買入れだけをかえておつて、それが関係筋との関係において第二項が加わつたというような事情はありません。その点がお尋ね趣旨つたと思いますが、見解の相違になりますから、はなはだ恐縮ではありますけれども、現状をもつて推移いたしますならば、麦については十分いいのじやないかと思います。現状でも統制をしなければならないというようなことはなかろう、将来において不測の事態が発生した場合に、三条ノ二の第二項というようなものが出て来るのでありまして、年間三百万トン程度の外国食糧が円滑に入つて来る——また議論になると思いますが、そういう前提において、なおかつ麦を統制して行くことが適当であるとは実は判断をいたしておらないのであります。はなはだ恐縮でありますが……。
  97. 足鹿覺

    足鹿委員 麦だけをおはずしになる、米は追加供出をもなし得る条項を残しておられる。国民が必要とする最低基準量は米麦合せて二合七勺、ここにおいて初めて国民がある程度平等に、基準配給量を受けて今日に来た。麦をはずしますと、いも作地帶あるいは新潟の者も、東京の者も平均して一合五勺という基準だろうと思うのですが、そうしますと、米の大産地の新潟方面においては、二合近く米を食うことになる。東京においては一合二勺しか、配給にならない。またいも作地帶においては、なおもつと一合二勺を割つておる。そういう事態が起きて、基準量に非常にでこぼこが出ることが予想されるのでありますが、そういうことは実際ないでありましようか。大体基準食糧というものを、現在の日本の国情において米のみに求めて行く。これはうどんでもパンでも、いろいろ国民の食事に対する嗜好がかわつて来た。これは戰後における窮迫の事情からかわつて来たと言えばそれまででありますが、その辺にわれわれとの判断の相違があるように思うのであります。その辺はいかがでしようか。
  98. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 米は大体現在におきましても一合五勺程度の配給になつておるわけであります。従つて新しい措置を講じましても、新潟が非常によけい食べて、東京とか何とかが非常に少くなるということはなかろうと思います。そうしたお尋ねのあります点は、あるいはやみ米が産地においては比較的入りやすく、消費地においては入りにくい、入るにいたしましても、相当価格面からの制約もあるという意味において、やみ米に依存する度合いが産地に強く、消費地においては弱い、従つて総体的には産地においては米をよけい食べておる、消費地においては少く食べておる、この実情はどうかということであろうと思います。その点は私は変化はなかろうと思います。それで麦をはずして一体基準量の二合七勺が確保できるのかということになりますと、米は一合五勺ということで配給は続けますけれども、あとの麦については、年間の需給の面から見て必要量を放出して参るわけでありますから、一人々々のこまかい基準量というようなものはもちろんくずれて参りますけれども、経済的には国民全体としてそれだけの食糧確保されて参る。それがそれぞれの好む形において、好む時期において消費されて行くというふうに見通してさしつかえないのではなかろうかと存じます。もちろんその点については、われわれとして注意を払うべき点が多々あると思いますが、方針としてはそういうふうに考えております。
  99. 足鹿覺

    足鹿委員 主要食糧の米麦の中から、麦を一応統制のわくからはずしてしまうということは、結局主食を米に求めて行くということになるのです。米と麦とは、私どもの考え方からしますと、切離すことができない関係があると思う。麦に対しても、強制買上げを必要とする事態が起きて来る。国民食糧確保の立場からその必要が生ずるというようなことを申しておられるようでありますが、しかしそういつたことをあえて書かなければならないところに、やはり問題があると思うのです。そういう面から、もし万一凶作の場合には、当然麦に対して強権の発動が起きて来ることが予想されます。これは私は非常に矛盾だと思う。一方において米の統制は存続しておいて、しかも流通面におきましては公団解散しておる。しかもそれが十分解散し切れないで、食糧管理に関する運賃、等級調整法案というようなものを用意されておつたが、関係方面の了解が得られなくて、これは存置して行く、実に矛盾撞着をきわめた政策をおとりになつておる。しかし大体としては、大きな食糧の政策を方向転換させようとしておいでになる。しかしこの食糧管理の運賃プールの調整法案が提出に至らずして、現在政府でおやりにならなければならないといつた事態が一方において起きておる。米は存続して、麦は統制をはずして行く。生産面では米は強制買上げで、流通面では商人もまじえた自由配給をやる。これは過渡期における形態として、こういう形態をとつておるのであると言われればそれまででありますが、まだ日本食糧事情が真に安定したと言い得ない事実の上に、かような複雑怪奇な姿が出て来ておると思う。そこら辺について私どもと意見が少し違うようであります。その点について、私どもは現在提案されておりますこの法案につきましては、かつての麦の補正の実例、いろいろな実例から見まして、非常に不安を持つておるものであります。  続いて価格の問題に入つてお尋ねしてみたいのです。政府が一応必要を認めて、国民食糧確保の立場から、麦の強制買上げを予想されておるのでありますが、その場合に、一体麦の価格はどういうふうにしておきめになるのでありますか、その大体のお考え、それからこれに関連しまして、いまだに麦のバツク・ペイをおきめにならぬようであります。しかもパリテイー指数は一二〇をすでに突破しておるように私どもは推算をいたしておりますが、何か政府筋ではパリテイーを一生懸命押えるために時日をかせいでおられるような印象も受けます。麦のバツク・ペイをなぜ早くおきめにならないのでありますか。また。パリティーの計算は、食糧庁としてはどういうふうにお考えになつておるのでありますか。伝えられるところによりますと、物価庁方面では、このバツク・ペイのパリテイーをどうして押えようかというような計画すらもお考えになつておるやにも仄聞しておるのであります。いわゆる食糧の大元締めである食糧庁としては、こういうような当面した問題についても、一体どういうふうにお考えになつておるか、この価格の問題についてお尋ねしたい。
  100. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 バツク・ペイは三月末日のパリテイーをもつてはじきますので、今月の末までには計算をいたしまして発表いたしたいと思います。これは故意にいろいろな関係から遅らせるということは少しも考えておりません。できるだけ早くバツク・ペイをしたい。それからまた年度の計算の基準を従来もそこに置いておりますから、まだ結論を出す運びに至つておらぬということであります。  それから価格であります。強制割当買入れをいたしまする場合の買入れ価格は、生産費、経済事情あるいは物価事情というものを参酌してきめたいというふうに考えておるのであります。これもいろいろ議論になると思いますが、麦についての生産費というものは、御承知のように米よりも大体高いというような実情もあります。従つて生産費そのもので麦価をきめるということは、米の場合よりも相当困難な事情がある。それに経済事情とかいうようなものが相当大きく加味される面も多かろうと存じます。
  101. 足鹿覺

    足鹿委員 価格の問題につきましては、従来と別段かわつた方針ではないように承知しておつたのですが、強制買上げ自体に私どもは別に異論を持つておるものではない。これは価格との関連において常に問題になつておるのであります。従つて、これは麦のみに限りませんが、米の問題にしてみましても、早く価格決定方式等がきまりませんと、もうすでに三月も過ぎておりますし、常に政府のとつておいでになる措置は手ぬるい、時期を失しておるということが一つ言えると思うのです。価格の問題につきまして、基本的に午前中農林大臣にもお伺いしたのでありますが、二重価格制ということについては、二重価格という言葉自体には当てはまらぬかもしれませんが、現在の補給金制度というようなものも一種の二重価格制度だと解してよろしいと思うのです。基本価格政策を二重価格制をとつて進めて行かれるお考えがない限り、統制方式の問題には非常に重大な問題が出て来るわけです。従つて先刻八百板氏からもお話がありました、割当と同時に一応暫定価格が発表され、そして供出の時期には必ず最終価格決定される。その決定は米価審議会において決定して行くという合理的な価格決定方式が、農民の供出意欲、増産意欲を振起して行く上においても必要だと考える。ただでき上つたものだけを、必要に応じて、国民食糧確保の立場からというので、収奪的にとつて行かれる現在の価格決定方式を、やはり存続しておいでになるお考えでありますか。この点は非常に重要な問題でありますので、御構想があり、検討を進めておられるならば、その点についてお話願いたい。
  102. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 価格決定の時期の問題でありますが、これは集荷期前に価格をきめますことは当然のことだと思うのです。それが現在までいろいろな関係上、常に暫定価格を出しまして、供出の最盛期等において本価格がきまるというような状況でありまして、この点はぜひとも改善をしなくてはならぬと存じております。いわんや麦を割当買入れするという場合には、当然前に価格をきめまして、それで買入れするということにならざるを得ないと思います。事態を想定すれば、そのときには麦が大体自由な状態にあつて、それを政府が今度一手に割当買入れするということになれば、同時に価格をきめることは当然だと思います。供出制度がずつと継続しておる場合においては、前年度の供出価格というようなものを暫定価格としての供出も、万やむを得ない場合には講じておる状況でありますけれども、麦が一応自由過程に入つたことを想定いたしますれば、その際に政府割当買入れをする場合には、当然価格をきめて行くべきものだと思います。その場合の価格のきめ方は何できめるかということになりますと、生産費、経済事情、物価事情などを加味いたしましてきめるのでありますが、結局一つの基準といたしましては、その当時の自由価格が一つの基準になろうかと思います。しかしながら生産者の立場を考えますれば、生産費もからみ合せて考えなければならぬ。この価格形成の方式については、麦だけでなく、米につきましても米価審議会に專門委員会を設けまして、学者の方々でありますとか、経験のある方々の御会合を得まして、従来はパリテイー方式一本やりで来ておつたのでありますけれども、この価格形成方式を再検討して、新しい一つの立て方を真剣に研究しなければならぬという点で、段取りをいたしております。その辺の結論も十分お聞きいたしまして善処いたしたいと存じております。
  103. 足鹿覺

    足鹿委員 価格決定方式について、米価審議会に專門委員を置いて検討をやりたいというお話でありますが、米価審議会の委員の中から、すでに政府が小委員あたりも、專門委員あたりも内定して、団体の意向等を全然お考えにならないで、かつてにおきめになつておるようであります。さような非民主的なことは、本問題とは直接関係はありませんが、少くとも是正されてよかろうと思う。こういう点は常に価格の問題についても最も大事なことである。政府に反対する団体であろうとも、批判的な団体であろうとも、ほんとうに公正な新しい決定方式をきめようという場合には、少くともその団体を代表する、あるいは代表して出て行く人については、団体の意思をまずお求めになるのが当然だろうと思う。この点はよく御注意になつて、今の方式はおやりかえになつた方が私はよろしかろうと思いますので、御注意申し上げておきたい。  そこで価格問題の根本は、先刻申し上げました二重価格制の問題、生産者からはでき得る限り適正米価で、再生産を保障する米価でこれを買い上げて行く。しかし消費者に対しては、国民経済的な立場から、できる限り主食に大きな支出を要しない価格でこれを賣つて行く。少くとも米が統制になり、麦も必要によつて統制になる空気もないではない今の空気から考えますときに、少くともそういう方式を確立して行かなければならぬと思う。その場合に一番問題になるのは、中間経費の問題であろうと思います。現在消費者に転嫁しておられるところの中間経費があまりにも大きいから、結局やみ価格よりも配給価格が上まわるような変則的な事実が、たとい米の大産地であろうとも、すでに出ておるのであります。これは周知の事実でありまして、米価審議会においてもこれが是正を答申し、政府も若干御考慮になつたことは私も認めますが、この問題について少くも食管人件費、また今度関係筋の拒否によつて政府でおやりになる運賃プールの職員の経費そういうものは少くとも政府自身で御負担になるのが当然であろうと思う。中間経費の問題について私どもが申し上げますと、協同組合の保管料や手数料にまですぐ飛ばつちりを持つて行かれるような不安を、私どもは常に持つのでありますが、さような小さな問題に目をつけるのではなしに、当然国家の財政支出として、一般会計でまかない得るものを勇敢に手をつけて行かれることが必要であろうと思うのです。それなくして、この二重価格問題、消費者価格をできる限り低く決定して行くことは、困難であろうと思うのであります。今問題になつております食糧管理の運賃プールを政府で行つて行く場合におきましても、これは予算にはないと思うのです。今後国家支出でなされて行くのか、あるいは消費者負担に転嫁されて行くのか、中間経費の問題と関連して、これらの点もお伺いしたいと思いますが中間経費の節減について、政府はどういう御方針であり、また具体的にどういうふうにお考えになつておりますかお伺いいたしたい。
  104. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 中間経費の節約について、特に食管の人件費等について——これは消費者価格に転嫁されておるわけでありますが、これを行政的に見まして一般会計で負担するという問題は、私どもその通りだと思つております。一昨年来これを一般会計に移すことについて、大蔵省と数次にわたつてかけ合つてつたのでありますけれども、一般会計の方の歳入、歳出面のバランス、あるいは財源等から申しまして、実現を見ないで来ておるのであります。しかしこの方針は今後ともぜひ続けて参つて、何とか実現をいたしたいものだというふうに存じております。  それから運賃プールの問題でありますけれども、これはお話のように、特別立法をいたそうと思つておりましたが、遂にその運びに至らないで、政府がやることになるはずであります。これは政府が直接運賃プールをするということではございません。現業面におきまして、原則として府県間の運送だけを政府がやつておりましたものを、県内における鉄道輸送を政府においてやるという意味において、そういうやり方をいたしまして、卸売同士間のマージンの不均衡等を若干是正しようという建て方をいたしたのであります。従つて数量が増加いたしますので、運送面その他において運賃の増加が出て参ります。これは大体特別会計におきましては、予備費を二十億組んでおりますが、予備費の範囲内においてまかなえるものだと存じております。
  105. 足鹿覺

    足鹿委員 この二重価格の問題について、中間経費の節減は、今の長官の御答弁では私きわめて不満足でありますが、よく食管特別会計の赤字補填というような言葉が使われ、食糧管理特別会計は、一つの独立採算制的な性格を多分に現在持つておること自体が、私は間違いではないかと思う。いわゆる国民経済的な観点から国家が行う食糧行政に、特別会計を独立採算制にして行かなければならぬというべらぼうな話は、私はないと思う。こういう考え方をそもそも改めて行かなければならぬ。それについて、実際基本的にはやはり今の考え方へ向つて行かれるのでありますか。それとも、少くともこういうふうに食糧政策を大きく転換をし、やかましい価格問題を解決して行こうというときにあたりまして、この問題に対しまして、どういうふうに基本的にお考えになつておるのか。ただ單に、大蔵省でけられた、従つて実現しなかつたという御答弁でありますが、これらの点につきましては、ほんとう農民の協力を求め、食糧を安定した立場に置くためには、どうしてもこういうような基本的な問題が解決されないと、食糧政策の推進が困難だと思うのですが、これ以上は申し上げません。  それから流通機構に関連をする問題で一つお尋ねしたいと思うのです。現在のような状態で麦を自由にした場合、考えられますことは、貯蔵、保管等の問題が必ず起きて参ります。同時に金融の問題が起きて参ります。戰争中に荒廃した貯蔵設備、そういうようなものについて、まだ政府の保護の手も十分に伸びておりません。たとえば農業倉庫の問題について見ましても、現在まことに荒廃のままに放任されておる。     〔野原委員長代理退席、委員長着席〕  こういう条件のもとに、ここに農民が直接競争の場面に立つて商業資本との販売競争をやるというような事態が起つて参りますと、必然的に金融の面からも、農民を代表する協同組合等は、商業資本との競争にたえかねるような実際が起きて来る。今までの統制撤廃の経過から見ましても、そういうことは言い得ると思う。それらの流通機構に関連するところのいろいろな施設の整備についてどのような措置をお考えになつておるのでありますか。特に今度できます、今われわれの手元に提出してあります農林漁業の特別会計の点につきまして、先般来われわれもいろいろと政府にも要請もし、実際にもやつておるのでありますが、具体的に統制を撤廃して行く場合には、これに関連した金融、流通、輸送、貯蔵、あらゆる面に共通した施策が行われて、農民も対等な立場で、自由経済にたえ得るような力なり、条件が与えられないと、その結果は、ことごとく農民へはね返つて来る結果が従来出て来ておるのであります。それらのことも考慮されないで、ただ一つの方針だからといつておやりになることは、逆な結果が出て来ると思うのでありますが、その点についてお伺いいたしたいのであります。
  106. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 前段の点は、御所見のようですが、私も実はほんとうに同感な点があるわけであります。食糧管理特別会計というものは、單なる独立採算的な機能だけで満足すべきではないということは、私もその通りだと思います。これは従来独立採算の、一つの━━━なと申しますか、ペイするような形においての運営というのではなくして、もつと広い意味においての農業政策の観点からの運用ということが加味されて特別会計は発足以来運用されて来ておると思うのであります。二年くらい前から、特別会計の採算制と申しますか、独立性というようなものが、一般経済政策と関連をいたしまして強調されて参つて来ております。現在の運営はそうした運営をいたしておりますが、私は従来のように野ほうずに、食糧管理特別会計が農業政策の観点からどういう措置を講じてもいいということも、これも行き過ぎだろうと思います。また現在のように、これは全部消費者価格にかけて、結局においてつじつまを合せなければならぬというような行き方も一つの行き過ぎではないかと思うのです。やはり両方の意味を持たせなければいかぬと思うのです。特別会計としては、特別会計の健全性を保持しますと同時に、ときによりましては政策面においての運用も行い得るようにするのが適当ではないかと思うのであります。これを実際的に実現いたしますためには、やはりいろいろ会計経理のやり方、場合によれば法案等も必要になろうかと思います。そうした線で再検討し、研究いたしておるところであります。御所見の点は私ども同感であります。  それから流通を自由にするについて各種の物的設備あるいは金融等の問題を同時に考えるべきであるという点もごもつともであります。自由経済ということになりますれば、そうしたものが並存いたしまして初めて円滑な流通が行われるのであります。農業倉庫の整備等についても、農林省といたしましては、補助金を出したいということで予算も編成したのでありますが、これも実現を見なかつた。金利の補填も実現を見なかつた。あとどうするかというようなことで行き悩んでおるのでありますが、このままの形にしておくわけには参らぬと思つております。中間経費の節約という点からただいまお話がありましたが、保管料その他についてもいろいろ御議論がありますけれども、やはり農業倉庫を整備して参りますことが、食糧政策の上においても非常に重要でありますので、その辺も十分織り込んで考えて参りたいと思つておるわけであります。  それから金融の点は、やはり自由にいたしますとすれば、協同組合系統に相当このための大きな金融力を附加して参らなければならない。しかしながら組合自体が弱体ではなかなか金融機関としての措置がつけにくいという点もありますし、この点は協同組合課とも十分連絡をとりまして、できるだけ金融をつけるということを考えて施策して参りたいと存じております。
  107. 八百板正

    ○八百板委員 関連して……。ただいま食管会計の性格についてお話が出たのでありますが、この際これに関連いたしまして一点明らかにしていただきたいと思うのであります。食管会計が独立採算制をとつておる、営利的な性格を持つものであるというような考え方が一面においてあるのでありますが、しかも今回の食糧政府買数量指示に関する法律を見ますと、先ほど来申し上げましたように、今まで政府の責任、生産農民の責任、双務責任というべきものが規定せられておつたのでありますが、これが一方的になつてつたのであります。しかしながら言葉の上から見て参りますならば、従来の供出制度が、買上げ制度、買入れ制度というふうにかわつたことを一層はつきり見るのでありまして、従つてこの買入れ手続数量、取扱い等については、商取引的な関係が以前よりも一層強くなるように私は考えられるのであります。従つて單純なる商取引による売買ではないにいたしましても、そういう性格が今までよりも一層強くなるということは考えてよろしかろうと私は思うのであります。そういう角度から、一応商取引という考え方から考えて行きますならば、品物を渡したときに代金を払うというのが通常の考え方でありまして、従つて品物を渡したときに代金を払わなかつたならば、その支払いの遅延にかかる利子は、当然に支払うべき義務があるものだろうと私は思うのでありますが、そういう意味合いにおいて、代金支払いの遅滯に基く損害利子というふうなものを支払う用意があるのかどうか、この点に対する御見解を承つておきたいと思います。
  108. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 ちよつと取消しさせていただきたいのですが、さつき特別会計の独立制の次に━━━というようなことを申し上げましたが、━━━ということは全然ございませんので、独立制ということに御了承願つておきたいと思います。━━━という考えは一つも入つておりません。独立採算制ということであります。  それから供出代金の支払いが遅れる。初めは暫定価格で払つておりますので、米価の決定が遅れるために、その間の利子の問題があります。この利子は現在中金を通じてやつております。集荷をし支払いをしておるものは、結局協同組合系統のものであります。これには実は結果的に支払いをいたしておるのであります。中金に前渡しをいたしまして、ちようどその日に遡及した形においてその間の利子を——あれは預金利子だと思いますが、預金利子分を払つております。ただ、全国で大体三%か四%の業者系統の方は、金融機関は中金を通じないで市中銀行を通じて来ておるわけであります。これに資金を流すには日銀を通さなければなりませんが、日銀では中金のような資金操作ができませんために、実は商業者系統の方にはこの利子関係相当する分が流れておらぬ、これを何とか技術的に打開いたしたいと思つて研究をいたしておるところであります。大部分の協同組合系統で集荷されるものについては、その利子を出しておるのが実情でございます。その際に議論がございますのは、預金利子ではなく、何と言いますか、もつと高い貸付利子というような利率に相当するものにしてもらいたいという御要望はございます。しかしやはり預金利子というところが妥当ではなかろうかということで措置しております。了承願いたいと思います。
  109. 八百板正

    ○八百板委員 この点について、中金等に対しては前渡し的な形で代金を支払つておるというお話でありますが、しかし生産農民の立場から申しますと、現実に品物を渡しても代金が払われないので、代金がもらえるまで、高い金利の金を借りてやりくりをしておるという実情が現実なのでありますから、この点当然に農民の側から、この支払い遅延に対する利子の請求なり、損害の請求なりが起る根処が私はあるだろうと思うのでありまして、この点について十分検討せられまして、その間どういうふうな時間的ずれが起つて来るか、そのためにどの程度の農民の損失があるかというふうなことについて、食糧長官の方でひとつ御研究を願いたいのであります。場合によりますと、これは農民の請求が何らかの形において起つて来ることが予想せられますので、念のため申し上げます。
  110. 足鹿覺

    足鹿委員 最後に私は二点ばかりお尋ね申し上げて質問を打切りたいと思います。  まずこの法案の中で一番大事なことは、今までの供出制度の運用上一番問題になつた保有優先の考え方について、いかように御考慮をお払いになつたか。これはもう理由などは申し上げるまでもないと思うのですが、その点を一点。  それから農民が供出の場合に常に要望し続けておるのですが、米麦のみによつて、あるいは穀類のみによつて日本国内食糧自給度を高めて行くということが困難である、畜産を交えた、いわゆる総合的な食糧自給度を高めて行くという議論はよく行われてるので、われわれまつたく異存はないのでありますが、それらのことをやつて行くためには、少くとも現実の農民の声がある精米供出というようなことについて、もつとこれは真劍に取上げて解決して行かなければならぬ問題だと思うのですが、この精米供出についてどういうふうにお考えになつておりますか。これをお尋ね申し上げたい。  それからいま一点、麦の統制が撤廃になる。そうすると今後の検査制度の関連は一体どういうふうになるのですか。格づけの問題あたりはどういうふうになつて来るのでありますか。地方には相当府県営を主張する声もある。政府は農産物の国営検査法を国会へ提出を予想されておるように聞いておりますが、御提出になるのでありますか。麦の統制撤廃と今後の検査制度の問題について、いかような御構想を持つておられるか、明らかにしていただきたい。
  111. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 保有優先の原則は確立して参りたいと思います。法案で申しますと、食糧政府買数量指示に関する法律の第十条に「農林大臣都道府県知事及び市町村長は、農業生産に支障のないように米穀生産者保有数量確保して政府買数量を定めなければならない。」という一項を入れております。端的に申しますと、要は運用が重要かと思います。私どもとしては、この趣旨に基いて割当の運営をやつて参りたいというふうに思つております。  それから検査法の関係は若干遅れておりますけれども、今国会に提出いたしまして御審議をお願いいたしたいと思つております。やはり国営検査の線で参りまして、農産物検査法というものを通していただきたいというふうに思つております。統制がはずれるにつきまして、やはり農産物の円滑な取引をやつて参りますためには、検査というものは相当重要になつて来ると思います。そういうつもりでおりますので、よろしくお願いいたします。  それから精米供出は、従来の実績を見ますといろいろ沿革ががございまして、やはり統制当初において精白供出というようなことが、非常に問題になりましたが、それが需給操作上から申しますと非常に問題が起りますので、一時押えたのでありますけれども、農村におきまするいろいろな飼料事情、その他からいたしまして、どうしてもぬかを還元しなければならぬということで、精米供出というようなことを認めたのであります。各県別の状況を見ますと、これまでやはり沿革その他がございまして、相当凹凸がありました。それで、これはやはり各県とも一つの基本線でもつて精米供出量をきめるということが妥当であろうということで、そういう方向に順次持つて行くように努めております。精米供出は今後とも認めて行きたいと思いますが、結局量の問題になります。従来とも精米供出だけで救われない分は、委託精米という形において、ぬかが産地に還元できるような措置を講じて来ておりますので、結局は精米供出と委託精米という二つの線で、産地の飼料その他の事情とにらみ合せて、できるだけ要望にこたえたいということで来ておるのでございまして、この点は将来ともその方向で行きたいと思います。数量の点は、先ほど申しましたように、需給操作上の面からやはり限度もございます。精米供出、あるいは委託精米されたものが、夏季において相当変質腐敗したというような実例もございます。またいろいろ地方的に問題を起しておることもございますので、相当大量に、今までよりも飛躍的に増加するということは困難だと思いますけれども、大体従来認めております程度は続行して参りたいというふうに存じます。
  112. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 簡單に御質問したいのですが、第一に、先ほど農林大臣から、本委員会で、農業方面外資導入するというお話を承つたのでありますが、食糧庁長官として、農林大臣からそういう抱負の一端でも伺つたことがありましたかどうか、その点を最初に伺いたい。
  113. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 私の方は主として買入れ、売却その他需給操作ばかりをやつておりますので、直接農林大臣からその点についてのお話を私は聞いておりません。
  114. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 次に日本食糧需給計画で、輸入食糧の占める割合は非常に多いと思いますが、その輸入食糧の最近の入荷の状況、今後の見通し価格、こういうものにつきまして、最近の状態をお知らせ願いたいと存じます。
  115. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 大体の見通しは、この三月あたりから相当入荷がふえて来る見込みであります。今までのずれと、それから相当価格が上るという見通しのもとに、私どもも買付を急いだ関係で、この四、五、六月ごろは、月月三十万トンないし四十万トン程度の入荷があろうかと思うのであります。これは大体の見通しでありますが、ほかの委員会でも申し上げておりますので、十分御承知だと思いますけれども、念のためにこの会計年度——日本の会計年度でありますが、昨年の四月から今年の三月まで、この会計年度内におきまする到着見込み、あるいは到着実績を一応申し上げておきます。これは去年の四月から十二月までに実績をとつております。それから一月から三月までは見込みでおります。今の到着実績は去年の四月から十二月までが百七十一万トン、それから一—三の到着見込みが九十八万二千トン、合計いたしますと二百六十九万二千トン、大体二百七十万トンであります。そういう状況になつております。
  116. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 今後その輸入食糧も引続き入つて来る見通しが立てられるでありましようか。それとも何らかの、たとえば米國の軍事事情というものが反映いたしまして、輸入が減るというようなことが考えられないかどうか。たとえば、二月一日にアメリカが小麦の輸出を禁止したとか、あるいは小麦協定による輸出を一時中止したとか、こういうこともありますので、今後アメリカが引続き日本に対して輸出するというようなことが、予断できるものかどうか。われわれ十分に安心してよいものかどうか、この点をお伺いします。
  117. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 今後の見通しでありますが、今申しましたのは、わが国の会計年度で申しましたが、アメリカの会計年度で申しますと、若干時期がずれますので、去年の七月から今年の六月までの推算になりますが、それで計算をいたしましても、大体二百八十五万トン程度は確実だと思つております。問題は今年の七月以降の輸入の問題であります。アメリカにおきますいろいろな事情の変化もございますけれども、大体私どもといたしましても、三百万トン前後のものは輸入ができると考えております。アメリカのいろいろな情報も入つておりますが、新聞等で見ておる程度でありまして、公式なものではございませんけれども、たとえば西ドイツなり、インドというものを優先的に考えて行く、ギリシヤをその次に考えるとか、いろいろ見方はございますけれども、大体私どもがアメリカに対して期待しておりますものは割当ててもらえるものである。こういうふうにただいまのところ考えております。
  118. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 そういう輸入食糧を懇請する場合に、日本政府としては懇請するだけであつて、何ら強い発言権というものがないのであるか、あるいはあるのか。この点をもつと詳しくお聞きしたいと思う。たとえば占領下において、アメリカとしては、どんなことがあつてもこれだけの食糧確保するのである、日本国民は安心しろ、こういうような保障を日本政府に与えておるか、それとも日本政府が再三再四懇請しなければ、なかなか食糧輸入というようなことが望めないものか、この点をひとつお伺いしておきます。
  119. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 従来でありますと、ガリオアの点はいろいろ日本の実情から申しまして懇請をいたしまして、幾らというふうに大体きまつて来ておるわけであります。民貿の関係は、これは商取引でありますから、もちろん通商協定というようなものが南方諸地域とありますけれども、その範囲内においては自由であります。今後アメリカがああいう制度をとりました場合に、ガリオアでない部分についても、やはり日本の実情というようなものをよく認識してもらいまして、日本に出すということに協力を願わなければならないと思います。手放しというわけには参らぬと思います。
  120. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 そういう場合のはつきりとした確約と申しますか、保障と申しますか、そういうものは日本政府に与えておらないのでございますか。これだけ日本食糧は足らぬ、これだけはアメリカが引受けた、どんなことがあつてもこれだけは日本に必ず入れてやるというような保障はないものなんでしようか。商取引と申しますと、たとえば外貨予算というものが大きくなるのでありますが、もし外貨が足らなければ輸入ができない。だから輸入食糧についてそういう場合に保障が与えられておるものでありますか。
  121. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 これは事務の実情を申し上げますと、大体年度ごとに需給推算を立てまして、これだけのものは足らぬという結果がはつきり出ますと、それをどこからどれだけ入れるかということを、個別的に司令部の方と折衝いたしまして、事務的にそれを進めて来ておるわけであります。結局そうしたやり方で輸入確保を期して行くことになろうと思います。單に抽象的に、日本で不足するものは必ず入れてやるということだけでは、私は解決しないと思つております。それから外貨の点もお話になりましたが、外貨が全然ゼロになつたという場合のことを考えれば、これは問題は全然別になるのであります。しかし外貨が若干減つても、現在の程度で維持して行くということになりますれば、国内的には、それを食糧に入れる分とほかの物資との割当をどの程度にするかということが問題になるわけでありまして、その部分をどこからとるかということでいろいろ司令部との交渉になると思つております。大体そうした線で解決して行くのじやなかろうかと思います。
  122. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 私たいへんくどくお聞きするようでありますけれども、たとえばフランスの農村におきましては、一時アメリカの小麦がだぶついたときに、これがたくさんフランスに入りまして、フランスの農業恐慌を促進したというような事実がある。ところが現在アメリカにおいては、軍拡計画を進めて行くので、食糧の備蓄をしなければならぬ、従つて今度は輸出を少し押える、こういうような傾向になつて来ております。こういうふうに、アメリカ自体の計画のために輸入の多少という点がかわつて来る。日本といたしましては、そういう状態でアメリカとだけ講和を結ぶということになりますと、はなはだ不安な状況になるのではなかろうか。従つてその間——日本政府としてはダレスさんなどが来たときも、アメリカと十分交渉しておるのであるから、食糧の問題については、どんなことがあつてもアメリカは必ず保障するというような何か確言があるのじやなかろうか。ないとすればたいへん不安になるというように考えるので、質問しておるのでありますけれども、大体そういう確約はまだないものというふうに了解してよろしいのでありましようか。
  123. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 私はその問題は全然知りませんから、お答えできません。
  124. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 もう一点お伺いしておきたいと思います。この食管法改正で、事前割当事後割当に変更した場合に、実際の収穫数量というもののつかみ方は、どういう方法でおやりになるつもりでしようか。これは先ほど他の委員がちよつと質問されたと思いますけれども、確実に理解する意味でもう一ぺんお尋ねいたします。
  125. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 これは御承知のように、作物報告事務所という一つの組織が全国的にできております。これでサンプリング調査をやつて、推定予想収穫並びに実収高決定いたしておりまして、この機関の決定によりたいと思つております。
  126. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 現在でも食糧庁の方では、作報が報告している資料を重視いたしまして、割当をやつておるようでありますけれども、作報の把握の仕方というようなものは、たとえば一つの模範町村をつくつて、その町村で実収高を確定いたします。それに基いて大体類推して、まわりの町村もこれくらいあるのではなかろうかというようなそろばんのはじき方をしております。従つてその確実性というものは、統計学からはこれが確実だということが言えるかもしれませんけれども、実際の場合は不確実な問題が相当たくさんあると思います。地域的に郡全体といつたような漠然とした、相当範囲の実収量は、作報が把握できると思いますけれども、個人々々の実収量というようなものまでは、作報としては把握できない。今までの事前割当では、生産数量というようなものを個人々々が申告しておりまして、これによつて農業計画というものは町村別にも立てております。こういうことは今度なくなるわけでありますから、従つて、実際に割当てる場合には相当紛糾も予期されるし、でこぼこも予想されると思うのでありますけれども、この点の御見解はいかがでありましようか。
  127. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 これは供出制度が相当長い期間継続しておりますし、その間にいろいろなバランスを失したような事態もあつたかと思いますが、やはり部落なりに入つて参りますれば、大体個人々々の取り高とかあるいは作付というようなものは、はつきりしておるものだと私ども思つております。作報の調査は、お話のように個人別ではなく、大体市町村別ぐらいまで行くところが関の山だと思います。それから先は市町村長農業調整委員の方々その他の共同作業によりまして、大体各個人別の取り高、作付面積というようなものは、はつきりするものだと思つております。その点については、あるいは食糧事務所として申告制を採用いたしまして、その作付の実態というようなものを調査しなければならぬかと思いますけれども、その辺は食確法に基く事前割当制度を廃したから、ただちに非常に不明確になるというようなことにはならないというふうに考えております。
  128. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 事前割当をやめて事後割当なつたから、そのために実収高の把握というようなことがますます困難になるということはない、こういう御答弁でありますけれども、それとは別個にいたしまして、実収高というものを確実につかむかつかまないかということが、末端の農家にとつて相当重大な問題になつて参ります。そこで政府としてはどういう程度に実収高をつかもうとしておりますか。実収高を把握するための政府のいろいろな措置があると思いますが、その点についてお答え願いたい。
  129. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 やはり作物報告事務所の調査というようなものをできるだけ完備いたしまして、その計数の上に立つて実収高というものをつかんで参りたいと思つております。
  130. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 私不敏にして存ぜぬのでありますが、作報事務所は全国に何箇所あつて、何人の人がそれに従事しておりますか。
  131. 安孫子藤吉

    ○安孫子政府委員 作報は各府県に事務所があります。総数一万六千名の職員を配置してやつております。
  132. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 一万六千名の作報事務所、これが農民実収高を把握するというお話でありますけれども、町村の農業調整委員、こういうものですらなかなか各農家の実収高というものを把握できないのでありますから、作報事務所の報告だけにたよつていたのでは、これは相当問題が起るだろうと思いますけれども、この点の論争はやめたいと思います。  次に麦の自由販売に対する農民考え方としては、今までの供出制度というものが、非常に苛酷なジープ供出であつたということから、相当ほつとしたような感じを持つておるようであります。従いまして廣川農林大臣といたしましても、麦の供出を今度はやめたのだ、自由販売にするのだということを、これは自由党の偉大な業績であるかのごとく放送しておるようであります。しかし一面今度は、先ほど食糧庁長官も言いましたように、価格の問題が起つて来ると思います。自由経済下においては、農産物価と工業生産物価との鋏状価格差という問題が、必然的に避けられない問題なのでありまして、そういう自由価格の低下の問題、これが農民にとつては大きな問題になるのではなかろうか。政府はこれに対して自由価格を織り込む、しかしながら一方においては生産価格をも考えて買入れ価格をきめたい、こういうふうに言つておりますけれども、單に自由価格考え、また生産価格考えて買入れ価格をきめるというだけでは、この問題に対してきわめて不十分な農業政策ではなかろうかというふうに考えられるわけでありますが、政府としてそのほかに考えている農業政策、すなわちこの鋏状価格差による農民の損失を救済するための政策、こういうものがあつたら承りたい。
  133. 島村軍次

    ○島村政府委員 お話の点がちよつとはつきりしかねるのでありますが、米の問題に関連して、たとえばお話のありました麦の価格については、今申し上げたようなことが一番大きな問題になると思うのでありますけれども、御承知通りに、本年度におきましては、米の価格という問題も、大臣の御指摘になつておるように、パリテイー以外に相当加えて、従来よりは生産費に近い価格をきめたということも、一つの農業政策の上の大きな現われだと思います。それから何と申しましても自給態勢を確立するという点から、いわゆる食糧の一割増産の点で、国家財政の上から、できるだけの増産対策を講じており、この細目については、たびたび当委員会で詳しく申し上げた通りであります。同時に、今回の特別融資によつて、金額は六十億ということで非常に少いようであるかもしれませんが、これは画期的な一つの長期資金の融通で、農業資本に対して、国家ができるだけ国家資本を注ぎ込むという点から行きますと、従来以上の政策が加わつたものと、かような考えを持つておるわけであります。なお具体的なことについて御指摘の点がありますれば、お答えいたします。
  134. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 私の質問の仕方が下手なのだろうと思いますが、たとえば先ほど私が申しました通り、鋏状価格差というものがある。農業生産物価と工業生産物価とは開いておるのだ、必ず開くのだ。現在の実情からいつても、肥料の値段と政府のきめておる米麦の値段というものは、非常な開きがある。だからこういう開きををだんだんつぼめるための政府の根本的な政策は一体何があるのか、こういうことを質問しておるわけなのです。
  135. 島村軍次

    ○島村政府委員 生産費を引下げるということだと思います。それに対するいろいろの政策は、各項目について考えているところであります。
  136. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 生産費を引下げることであるという御答弁でありますが、しからば生産費を引下げるためには、いかなる方法が一番よいとお考えになつておりますか。
  137. 島村軍次

    ○島村政府委員 生産費と申しまするものは、要するに粗収入に対しての生産費でありまして、一面収入を増加すると同時に、それに伴う生産費を比較的に安くするということであろうと思うのであります。そういう点から考えますと、今回の麦を自由価格にいたしますことも、ある点から考えますと、やはり農家の生産価格をある程度引上げるということにもなり得ると思うのであります。それではあなたの御質問に当らないかもしれませんが、一つの例として申し上げます。
  138. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 生産費を引下げるために、どういう政策を政府としては持つているか、こういう質問でございまして、これに対して御答弁は、収入を増加して生産費を引下げる、こういうわけでありますが、収入が増加しないというのです。麦の自由販売の結果、収入がむしろ減るようなことになるのではなかろうか。これは鋏状価格差からいつて、そういうことが当然言える。だから、その収入が増加しない日本の農家を救うためにはどうするかというのであるが、あなたはそれに対して、生産費を低下することだと言われる。生産費を低下させるには一体どうすればいいか、こういう質問をしているのでありますから、堂々めぐりにならないようにお願いいたします。
  139. 島村軍次

    ○島村政府委員 一つの企業として考えますと、土地資本と人的資本、いわゆる労力というものが当然生産の基礎であることは、私が申し上げるまでもないと思うのであります。そこで資本の問題につきましては、現在の農業経営から考えて、国家資本をなるべく多くつぎ込むということ、こういうことがやがて生産高を増し、同時に生産費を切り下げるということの結果にもなると思うのであります。また肥料については、もちろん現在は高くなつておりますが、これらの肥料価格というものについては、ある程度まで需給調整等の方法を今後講じなければならぬということは、御同感であろうと思うのでありますが、これらに対する施策も順次拡充をしまして、統制が撤廃されると同時に、ただちにこれらの問題の調整をはかるべきであるという農林委員会の御議論等に対しましても、目下政府でもせつかく研究を進めておるのであります。なお農業生産費切下げの問題は、全部を通じてごらんを願わなければ断片的に一例として申し上げたものをとつて、ただちに農業政策全体のものとしてお考えを願うことはどうかと思うのでありまして、農林省全体の政策は、以上申し上げたように、一つの企業としての農業が他の産業に比しては有利でない、農業経営が零細で困難であるという観点から、いろいろ各般にわたる政策をやつている。これがすなわち農業経営を安定ならしめる政策の現われである。かように御了解を願う以外には、個別的に鋏状価格差という一例をもつてだけでは、はつきり申し上げかねると思います。御了解を願いたいのであります。
  140. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 たとえば農地改革をやりますときに、この農地改革の最初の条文に何と書いてあつたかというと、農業生産力を発展させ、農民の地位を向上させるために農地改革をやるのだということがうたわれていたのでありますけれども、それにもかかわらず、農地改革をやつても、日本生産力は発展しないし、農民の地位も向上しないし、生産費の低下も行われない。一体これはどこに原因があるか、この根本的な原因を、農林次官はどうつかまれているのか、私はこの点についての農林次官の御答弁を伺いたかつたのでありますけれども、この次までにひとつ御答弁を用意されたいと思います。
  141. 足鹿覺

    足鹿委員 先刻来いろいろ御質問申し上げまして、その都度若干の数字的な御答弁もあつたのですが、この際資料をお願いいたしたい。さつきありました配給辞退については、その概数だけでありましたが、その内容、また地域というようなものについて、できる限り詳細なもの、それから食糧の需給の概況を数学的にお示しを願いたい。二十五年と二十六年の実績と計画についてお願いしたい。それから政府の手持ち食糧について例年の、過去にさかのぼつてその比較数、また配給の対象になつた人員、配給数量というようなもの、やみ価格の最近の推移の状況を示す何か資料、輸入食糧補給金の大体の見通しについての資料、食糧需給についての資料は、申し上げました以外にいろいろありましたならばお示しを願いたいと思います。第三に食糧管理関係の法規をおまとめになつた最も新しいものがありましたらそれを一つ、方々へ散らばつておりますので、まとまつたものがありましたらそれを一つ、最後に肥料その他の生産諸資材の指数に関する資料がありましたら、御提示をお願いいたしたい。その内容は過去、現在、将来に対する見通しについてお願いいたします。
  142. 千賀康治

    千賀委員長 残余の質疑は次会に譲ることといたしまして、本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時五十八分散会