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1951-05-23 第10回国会 衆議院 内閣委員会建設委員会連合審査会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十三日(水曜日)     午後一時三十四分開議  出席委員   内閣委員会    委員長代理 理事 江花  靜君    理事 青木  正君 理事 坂田 英一君    理事 船田 享二君       大内 一郎君    鈴木 明良君       松本 善壽君   建設委員会    理事 内海 安吉君 理事 村瀬 宣親君    理事 前田榮之助君       淺利 三朗君    小平 久雄君       高田 弥市君    田中 角榮君       内藤  隆君    西村 英一君       増田 連也君    坂本 泰良君       池田 峯雄君    寺崎  覺君  委員外出席者         参議院議員   石川 榮一君         内閣委員会專門         員       龜卦川 浩君         内閣委員会專門         員       小關 紹夫君         建設委員会專門         員       西畑 正倫君         建設委員会專門         員       田中 義一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  利根川開発法案参議院提出参法第一七号)     —————————————
  2. 江花靜

    江花委員長代理 これより内閣委員会建設委員会連合審査会を開催いたします。  本日は内閣委員長が所用のため理事の私が委員長の職務を行います。本日は利根川開発法案につき、提案理由説明を聴取した後、質疑を行います。まず石川榮一君より提案理由説明をお聞きいたします。石川榮一君。     —————————————
  3. 石川榮一

    石川参議院議員 ただいま連合委員会に上程されております利根川開発法案に関する提案理由簡單に申し上げます。  すでに御承知通り利根川わが国第一の大河川でありまして、その利害関係を受けまする人口は約千五百万余人に達しております。その人口は大略わが国人口の二〇%にも当るのであります。その流域面積は二百十三万余町歩にわたりまして、全国の六%を占めておる広大な流域であります。わが国といたしまして最も重要なる地域でありますことは御承知通りでありまして、この地域利根川中心といたします経営は数百年来にわたつて行われて参りました。遠く徳川三百年の農業、運輸、都市の経営等がいかに利根川中心として苦心経営されたかということは、歴史がはつきりと示しておるところでありまして、明治政府になりまして以来も利根川の問題はいよいよ政府の重要なる国策と相なりまして、明治七、八年ごろからこの改修には非常な力をいたして参つたのであります。特に明治四十三年の大洪水がありまして以来、政府はさらにこの改修に一段の力を盡して参つたのであります。しかるにこの努力にもかかわりませず、昭和十年、十三年、十六年、二十二年、二十四年、二十五年と水害をこうむることはますますその度を増して参りました。この事実は、もちろん治山治水の戰時中の懈怠によることがその根底ではありますけれども、一面災害は各種の施設が増大することによるともいわれ、利根川流域がいよいよわが国文化中心としての位置を確立して参つたことに従いまして、いろいろな施設がこの水辺に殺到して参りましたということが一つの原因といわなければならないのであります。かくのごとく東京中心とした関東八州はまつたわが国文化経済政治中心としての意義が非常に高いところであります。こういう文化の非常に高い、最も人口の稠密な、また首都を守る唯一のこの利根川改修は非常に大きな国家的な役割があることは申すまでもないのであります。ことに昭和二十二年九月の災害のごときは、皆様承知と思いますが、埼玉の栗橋におきまして大決懐を呼び、また渡良瀬周辺の遊水地におきましては、あの周辺が十数箇も大破堤し、さらに千葉茨城方面に大きな決懐を二箇所も呼んだことであります。水源地群馬県におきましては、九百七十八箇所という崩懐を見るに至りました。この土砂流があの洪水と一緒に流下いたしましたために、非常な惨害をこの一部五県下に及ぼしたのであります。その当時人命を損じただけでも二千三百余人といわれておる。損害高は一千三十五億余円と集計されております。さらに昨年の小貝川決懐——これは小貝川という名前にはなつておりますが、これは利根川との合流点になつておりまして、利根の逆流による大決懐によりまして、茨城県下二十数箇村にさんたんたる被害を與えたことは最も近き例であります。かような状況でありますので、この災害復旧にすら国費は十分でなく、年々歳々起る災害に追いまわされまして、利根川上下流は荒れ狂うままに放置されておるのが現状であります。かような状況でありますので、一部五県の住民一千五百万は結束いたしまして、この利根暴威を克服し、さらに高度に科学的、技術的に検討いたしまして、そうして経済自立一環としてこの施設を完遂いたし、民力の安定、経済力培養等に貸そうという考え方を持ちましてこの法案提出いたした次第でございます。かようなわけでありますので、この利根開発問題は関東一部五県全住民の血の叫びであるのであります。このように一日も猶予を許さぬような危急状態に相なつておりますので、われわれ関東に籍のある議員はこの悪化せる利根川状況を一日も等閑に付することができません。こういう見地に立ちまして、あの暴威を克服し、あの水を最高度に技術的に検討を加え、国と民とが力を合せまして素直な水の姿にし、あの資源国民経済に寄與させようという大きな見地に立つてこの法案構想をきめたのであります。  この法案のねらいといたしまするものはもちろん災害の永久的な防除であり、またその水資源といたしましては、まず第一に奥地林開発、造林、植林等があるのであります。利根上流に埋蔵されております蓄積木材は一億八千五百万石程度であります。  さらにダム建設等によりまして洪水調整をやることになつておりますが、このダムに貯留します水を利用いたしまして約六十三万五千キロワツトの電力開発しようとねらつておるのであります。またこの利根川流域の多数の用排水工事並びに土地改良実施し、約三十五万町歩土地開発いたしまして、少くとも米穀にいたしまして四百万石程度食糧増産をねらつておるのであります。  さらに東京都の水道源がここ数年にして非常な危機に陷る状況になつておりますので、この大東京の増大に伴うところの飲用水利根川の貯水池、いわゆるダムの水によりまして、これを確保し、また工業用水を潤沢ならしめようとする考え方も入つておるわけであります。  さらに千葉茨城方面のあの濕地地帶に対しましては、上流に建設いたします水力発電の豊富、低康な電力によりポンプアツプいたしまして、少くとも十数万町歩の美田をここに造成しようというねらいにあるのであります。また印幡沼あるいは霞ヶ浦周辺干拓事業もこのうちに包含いたしておるのであります。要するに利根川百里にわたります流路の沿線の水害防除いたしますと同時に発電東京都の水道源確保工業用水確保干拓、また土地改良等の大きな計画を持つておるのでありまして、現在日本の置かれております食糧緊迫下におきましては、最も食糧増産中心でなくちやならぬと思いますので、これらに対しましても、少くとも四百万石の増産を完成し得る建前をもちましての法案であります。これは一関東地方の問題にあらずして、政治経済文化中心である東京をいかなる緊急事態が起ろうとも、いかに大きな戰争が起ろうとも、水の面からも、食糧の面からも確保いたしまして、麻痺状態にならしめないような大きな構想をこの法案のうちに包含いたしておりますことをつけ加えておきたいと思います。要するに日本心臓部でありますところの東京を、時局下におきまして、水の面からも食糧の面からも確保しようとするほんとう国家的大きなねらいもこの中に包蔵しておりますので、国会の良識に訴えましてこの法案国策として実施され、今私が申し上げましたような目的を達し得まするようにすることが目下喫緊の要務であり、またそうすべきであるというような考えをもつてこの法案を提案した次第であります。  さらにこの法案内容につきまして簡單に御説明申し上げたいと思います。  第一条はこの法律目的で「この法律は、利根川流域における資源を総合的に開発し、利用し、及び保全し、もつて災害防除と産業の振興に資することを目的とする。」旨を規定しているのであります。ここで「利根川流域」と申しますのは、第二条に規定してありますように、「利根川水系を含む地域で、政令で定めるもの」であります。この目的を達成いたしますために、この法案は、第一に利根川総合開発計画に関する事項、第二に利根川開発庁に関する事項、第三に利根川開発審議会に関する事項、第四に関係行政機関及び関係地方公共団体協力助成並び利根川開発のための特別法人に関する事項の四点について規定をいたしておるのであります。すなわち第三条から第九条までは利根川開発計画に関する規定であります。利根川開発計画は、利根川流域において施行される重要な施設及び事業の総合的かつ基本的な計画とし、この基本的な計画に基く事業の中にはもちろん災害復旧事業を含んでおるのでありまするが、これを実施するための計画基本計画と毎年度の計画である年次計画の二者でありまして、基本計画に盛られます施設計画及び事業の基準は第四条に詳しく規定いたしてあるのであります。この総合開発計画樹立利根川開発審議会の議決を要するものといたし、また関係地方公共団体開発計画に関しまして内閣意見を申し出ることができることといたし、関係地方公共団体の意向を十分に反映せしめることにいたしてあるのであります。しこうしてこの開発計画に基く事業は、事態がまことに緊急を要する状態でありますので、昭和二十八年度から十箇年間で完成しなければならないことを規定いたしてあります。なお先年制定されました国土総合開発法に基く国土総合開発計画との調整は、第七条に規定いたしてありますように、内閣総理大臣利根川開発庁長官国土総合開発審議会意見を聞いて行うことといたしておるのであります。第十条から第十三条まで、及び第十六条、第十七条は利根川開発庁に関する規定であります。利根川総合開発計画樹立し、これを推進するためには、中央にこれを專管する強力な行政機関の存することを必要と考え、新たに総理府の外局といたしまして国務大臣を長とする利根川開発庁を設置することといたしておるのであります。利根川開発庁開発計画について調査立案する機関でありまするが、同時に開発計画に基く事業実施に関する関係行政機関との事務の調整及び推進に当る権限を有するものといたしておるのであります。利根川開発庁には長官及び次長以下の常勤職員が置かれまするが、別に非常勤の参與十人以内が置かれることになつております。参與関係行政機関職員のうちから長官が命じ庁務参與させるものでありまして、これによつて利根川開発庁の任務の遂行に当りまして、関係行政機関との連絡協調に遺憾なきを期そうとするものであります。  また第十四条及び第十五条は利根川開発審議会に関する規定であります。利根川開発計画調査立案等に当つては、広く各方面知識経験を活用する必要がありますので、利根川開発庁附属機関として利根川開発審議会を置くことといたしたのであります。利根川開発審議会は両議院の議員関係都県知事及び議会議長及び学識経験のある者のうちから内閣総理大臣の任命する委員三十名以内で組織することとし、開発計画樹立に関する事項のほか開発計画に関する重要事項について利根川開発庁長官の諮問に応じ、調査審議し、また関係行政機関に対して建議をすることができるといたしておるのであります。  最後に第十八条以降におきまして、利根川開発庁長官に資料の提出を求める権限及び必要な勧告をする権限を與えますとともに、関係行政機関及び関係地方公共団体協力義務規定いたし、また国有財産の無償貸付けまたは讓與をなし得るものを規定し、及び地方公共団体の経費を軽減するための必要な規定を設けているのであります。  かようにいたしまして、この開発計画はもとより多額の費用を要するものでありまして、これが負担を国の財政投資にまつこと多いことはもちろんでありまするが、それのみをもては足りるものはないということを考えまして、そのために地方民の出資に期待することは可能でありまた適当であると考えられますので、開発計画の一部を実施しまたは実施するものについて投資をする特別法人の設立を予想しておるのであります。これは第二十三条に規定いたしておりまして、これに関する法案につきましては、本法案が成立のあかつき時を得まして他日成案を得たいと存じておる次第であります。  以上提案理由並びに提案いたしました法案内容のあらましを御説明申し上げた次第であります。どうか愼重御審議の上すみやかに本法案に対しまして、御協賛あらんことを切にお願いしまして、私の説明を終ります。
  4. 江花靜

    江花委員長代理 これより質疑に入りますが、質疑通告順にこれを許します。西村英一君。
  5. 西村英一

    西村(英)委員 ただいま提案者から詳細にわたりまして本法律案提出理由を承りましたが、その理由のおもなものが、利根川災害で年々歳々困つてつた。それを防禦するために根本的な国家計画といたしまして、利根川総合開発をしなければならぬ、こういうのであります。提案者を待つまでもなく、利根川総合開発し、しかもまたその利根川総合開発をすることによつて経済的効果が大きいということは、十分私たち承知いたしておるのですが、この法案を見まして、これはおそらく大多数の議員の方々が感じられるであろうことは、ごく最近制定をいたしました国土総合開発法との関連の問題で、たれしも多少の疑義を持つものでなかろうかと思うものであります。利根川側のみならず、全国河川総合開発をしなければならないということは、これはもう古くから言われておるのでありまして、そのためにこそごく最近国土総合開発法が制定せられたのであります。しかしてその内容全国的な規模のものは全国総合開発計画とし、府県のものは府県單位総合開発とし、また地方開発であるとかあるいは特定なものにつきましては、特定総合開発計画としてやる。しかもそういう国家計画総合開発をやる場合に基本となるべきものをきめなければ、個々まちまちでやられては困るからというので、せつかく総理府にも総合開発審議会をつくつて目下その調査研究の過程にあるわけであります。こういう場合におきまして、突然この一地区單位といたしました総合開発法律として制定されますということは、国土総合開発法を非常に弱体化すると申しますか、その関連性においてやはり多大の疑問を持つわけであります。もちろん提案者石川さんもこれらのことはお考えになりましたでしようが、おそらくこれはみんなが心配をしておるところでありますが、やはり類似の法案がたくさん出るのではないかということを言われておるのでありまして、こういうような面も考えまして、全国的に総合的に考えるという面につきましてどういうお考えを持つておるのか、総合開発の行き方がこのような單独法でずつと行つてもいいのかどうか、こういう点につきまして利根川のことのみにつきましてはわかりますが、全体の開発の行き方が、こういうような單独法でどんどん行つていいかどうかというようなことにつきまして、お考えがありましたらお聞きしたいのであります。
  6. 石川榮一

    石川参議院議員 ただいま西村先生の御質疑ごもつともでありまして、私どもこの法案をつくります上におきまして、その点を非常に心配いたしまして、委員の各位と非常な愼重な研究を遂げて参つたのでありますが、私どもの見解に立ちますと、国土総合開発法は、昨年の五月施行せられましてまだ一年しかたちません。これに大きな期待を持つておるということは無理からぬことと思いますが、あの法律を見ますと、総裁都府県知事、いわゆる行政機関に対しまして、その都府県における総合開発計画、また数府県にわたる場合には数府県行政機関に対しましてその協力による総合開発計画、国は全国的な総合開発計画をするというように三段構えになつておるのであります。まことにけつこうな案でありますが、しかしこれはその得ましたところの計画建設大臣を通しまして総裁がこれを受取り、これを審議会に付しまして審議会の答申を待ちまして、その申答によつて総裁はこれに対して何らかの勧告をするということで終つておるのであります。従いまして国土総合開発法のねらいは、全国的なプランを集めるプラン・メーカーをやるというような形になつておりまして、これに推進力を持たせる、あるいはこれを実施に移すという法的な根拠がないのであります。従いましてあらゆる総合計画は、一つプランをつくる法律ができておるだけでありまして、これを取上げていかにするかということにつきましては、あげてこれは政府考え方に待つのであります。総合開発法にはその権限がないのであります。かようなわけでありますので、私どもはこの国土総合開発法の今の法律ではまことに頼りない。今全国にわたつて荒廃しきつております河川は、ほとんど降雨期には前述のような状況になりますので、そういうプランのみをつくつて、施行の熱意のないような法律は、およそ私どもは現在の危急状態に間に合わぬものである、かように考えているものであります。こういう見地から、利根川のこの流域は、すでに西村先生御案内のように、まつたく帝都を中心とする特殊中の特殊地域でありまして、国の心臓部をなす東京を守る食糧基地であり、水の基地であります、また米におきましては全国の一四%をとり、大小麦におきましては四四%を生産するこの利根川流域、これは大きな特殊的な地域であるという立場に私どもは立ちまして、そうしてこの法案を実はお願いしたわけであります。もしこの法案が幸いに両院で御協賛に相なりまして法律化した場合には、すみやかにこの公共水資源利根をめぐつて食糧増産あるいは大きな電力あるいは年々繰返しておりまする数百億の災害等考えますると、大きな国の経済自立一環をなすものである、こういう考えでやつているのであります。またこれによりまして、たくさん地方から同じような法案が出て来るであろうということも私ども予想しておつたのであります。これは私どもとして考えますれば、各地から出るように各河川とも荒れきつているということを物語るものである。どの川もどの川も現在ではもうほんとうに荒れ盡している。一日も猶予ならぬような状態にどの川もなつている。どの川もこの脅威にさらされているという現実が民の声として国会に殺到して来るということではやむを得ない。これは出るのがあたりまえで、今まで出なかつたのがふしぎだとさえ考えているのであります。失礼でありますが、利根川開発法案のこのねらいといたしますところは、一利根川改修するばかりでなしに、全国にわたつてこういうような大きな使命を持つ河川がたくさんあるであろう。しかしながら現在の状況では国土総合開発法審議会でやつています状況から考えますと、ただプランをつくるだけであつて、順序をきめることすらできない、重点をどこに置くかということができない、ただ單に勧告するということで打切つているという状況では、どの川もどの川もその見込みがございませんから出ておりませんが、あるいはこの法案をきつかけとして、私はそういう苦悩に泣いております。河川から相当に出て来ると思うのです。それを日本の国の財政状態と、置かれた国の緊迫性、その政局における重要度緊急性を勘案しまして、これに適切なる判断を下すものは、国家最高権威である国会に責任があり、義務があると私は思うのであります。いたずらに官僚の餌食にまかしておけない。国民の総意の結集されたほんとう最高権威に立つ国会が、これらの重要度を十分に御検討願いまして、そうして重点的に国のなけなしの予算を投入いたしまして、経済効果のあるものから、その深刻度のひどいものから手をつけて、着々として一連総合計画実施することが必要である。こういう考え方を持つているわけであります。でありますから、おそらくほかからも出て参ると思いますが、十分に利根川状況その他の川との比較検討皆様方の良識ある御検討によりまして、そうしてその施策のあやまちなきを期して、着々これらの線に沿うように相なりまして、相当の見通しある国土保全開発ができますように私どもはしていただくことができる。こういう点からも私はこの法案を出したことが決して間違つておらない、こういう考え方を持つているわけであります。試みに申し上げますが、二十五年度における国土総合開発法実施以来、建設省に報告して参りましたところの特定地、特に数県にわたると称してもいいこの特定地域を指定したところの開発計画の発表があつたのでありますが、十三箇所あるのであります。その十三箇所は、第一に阿仁田沢地域という秋田県であります。それから最上地域奥会津地域伊豆島嶼地域東三河地域能登地域吉野熊野地域島根大仙地域芸北地域那賀川地域四国西南地域阿蘇地域南九州地域、十三地区総合開発法による総合開発計画なるものが建設省に参つております。これらのものを一連として見ますと、その主要なる目標はほとんど水系をたどつて計画しているものはないのであります。林業あるいは農業あるいは電気あるいは畜産、ほとんど水系をたどつたところの大きな特定地域としての総合開発計画なるものは、一箇年間の中にその報告はなかつたのであります。これは何を物語るかと申しますと、この総合開発計画なるものが茫漠としたところの法律でありまして、これに実現性のないことを知つておりまするから、地方行政官庁におかれましても、大きな調査費を調達せられ、技術陣を動員して精密なる計画を立てようという熱意が起らないのじやないか。至るところ荒れ果てた川に対してもほとんど申して来るところがないのであります。その計画なるものの利益参與する人民の数等もわかつておりますが、少ないものは四万あるいは三万八千、多いところで四十七万九千、総計いたしまして十三箇所でこの利益に均霑するものは三百七十四万四千人、日本の全人口の四七%であります。三百七十万というのが十三箇所の特定地域から得た計画の全部であります。利根川はこの三百七十万に対しまして、全部を入れますると千五百万ですが、沿岸住民だけで約七百五十万と言われているのであります。かようにいたしまして、今日出ております特定総合開発地域として指定を受けたところの十三箇所のものですから、総計合せまして利根川の受益するところの人口の半分にしか達しられないというようなことでも、私どもは非常に大きな利根川利害関係がありますこともわかりますし、また重要度もわかります。またそうしなければ、とても総合開発法だけを頼つてつたんでは私どもは全然見込みはないのだ、ただプランをつくるだけでありまして、そこに推進力もありませんし、実現性も期待できない、こういう見地から私ども利根川状態考えまして、先ほどもお話がありましたように、今荒れ果てた災害防除中心とするのではないかと申しますが、その通り災害防除中心といたしますが、治山治水、利水、これを一貫したところの総合計画を立てまして災害防除すると同時に、あらゆる面から利根川のあの洋々たる水を経済自立資源といたしまして、高度に受益的にこれを科学的に検討して、日本経済に寄與しようというねらいであります。以上、若干私見を加えて失礼でありましたが、お答えを申し上げた次第であります。
  7. 西村英一

    西村(英)委員 非常に提案者の意思ははつきりいたしておりまするが、多少誤解があるように思います。と申しますのは、国土総合開発法というこの前の法律の、あれをもつて総合開発ができるということにはならないのであります。これは石川さんもあの法律はだめだ、こういうことを申されましたが、総合開発をどういうふうにやつて行くか、という基本的な問題をまとめたにすぎないのでありまして、しこうして審議会等によりまして、経験者を集めて、地方的な関係等もまつた考えずに、ほんとう国家全体といたしまして総合開発をするには、何を総合開発目的にするか、またいかなる地域をとられるか。人口の多い地域をとられるということにはきまりませんので、人口の少いところで人口の包容力があるというようなところも取上げなければならぬ。総合開発をする地域をどういうぐあいに選定するかというような、基本的な問題をきめるところの前の法律は手續法であります。いよいよこれが実際計画にあたつてある地区開発するということになれば、別の法律がいることになるのは当然であります。あの法律をもつてただちに開発ができるということは、私たちは全然考えておりません。しかしもしそうだとすれば、今回出された法律は手續法にさらに一歩を進めておるかと申しますと、前の国土総合開発法とあまりかわらぬところの条文、実施法といたしましての条件があまり整つておらないように見受けられるのであります。第一条からずつと読んでみましても、この法律の特徴といたしますところの大部分は、これは国土総合開発法にうたわれておるのであります。ただ最後に行きまして二十三条で、この法律に基いて実施の何か特別の法をつくつて実施機関を公社にするのか、あるいは政府直轄でやるのか存じませんが、実施機関をつくつてやるということをほのめかしてあることと、調査をするために、利根川開発庁を総理府につくる、そういうことの二つくらいが実際にうたわれておるので、この法律でもつてすぐ利根川開発ができるとも思われない。私から見ますと、国土総合開発法から非常に進んでおるというようなこともあまり考えられない。もし提案者の御趣旨のごとくすれば、この二十三条でどういう実施機関をつくつてやるかということが必要なんであつて、調査をするために総理府機関をつくるとか、あるいはその他総合開発法の中にいつておる条文を再び羅列するとかいうようなことは、これこそ必要がないのじやないか、こういうふうに考えられるのであります。しかも私がこれは——政府の方もいませんが、総合開発の行き方といたしまして、他の地区が出てもいいのじやないか、それも必要があれば出るのは当然であります。これも石川さんの言う通りかもしれません。しかし実際の行政機関の問題を考えますると、この総合開発だけでも現在は非常に複雑な行政機関になつておるのであります。いわんやこの法律によりまして、さらに利根川のみを考えるために、特別に総理府にまた利根川のデパートメントをつくるということになり、さらにほかの河川のためにデパートメントをつくることになりますれば、現在総合開発のために関係しておる官庁は、経済安定本部もあるし、それから国土総合開発の全体をやるために総合開発委員会が総理府にあり、北海道は北海道にあり、また今度は利根川利根川でもつてつくる。あるいはその他の河川が出た場合には、その他の河川も別々に行政機関をつくるというと、これこそ国土開発について総合性がなくなり、おのおのその関係したデパートメントでもつて自分の予算をとるということになるのではないか、こう思われて、非常に行政の複雑性を私は心配いたすのでありますが、それらの点につきまして、これは提案者より政府の御答弁が適当かと思われますが、石川さんは、現在の行政官庁がもともと建設省があり、農林省があり、あるいは通産省があつて、それぞれがいろいろなことをやつておるために総合性がない、そういう御感想をおつしやいまして、こういう総合性というものを考えるならば、今度はその反対に地域別に非常に紛淆を来すところの行政機関になりはせんかということを、私たちは非常に憂うるものでございますが、提案者はそういうお気持はありませんか。
  8. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。ただいま御指摘いただきました条項はまことに一応ごもつともであります。しかし私ども総合開発法利根川開発法案との間に、同じような条文もあり、同じような解釈もあり得るという御指摘に対しましては、その通りであります。ただ私どもはこれをつくりますときに、ほんとうに一切の調査、立案、計画並びに工事の施行全部を一貫したものにしてやるという構想を持つて研究を進めたいのでありましたが、ただいまの日本の各行政機関の立場から論ぜられるところにとりますと、非常に痛烈な反対が相当見受けられるのでありまして、その理想を貫くことはかなり非現実的な考えにならざるを得ないというようなことも見えましたので、実はやむを得ず御指摘のような施行その他に対して手をつけないで、しかく調査、立案とか推進調整というようなものに堕してしまつたわけでありまして、この点は非常に遺憾なのであります。しかしながらこの法律のねらいますところは、現在の各行政機関、たとえば建設省、農林省あるいは公益事業委員会あるいは港湾に関する運輸省あるいは道路、橋梁に関する方面、あるいは山林におきましては山腹砂防と渓流砂防とのかち合い、あるいは中小河川と本川とのかちあい、用排水事業とそれをのむところの本川の改修との連繋等が、ほとんどそこに総合性がありませんで、おのおの各省、各行政機関ごとに独自の見解に立ちましてそうしてみずから欲するままに利根川流域に工事をしておるわけであります。そこに何らの連絡総合性も見られないのでありまして、私どもから見ますると、今非常に少い予算を、今の水に関する行政は、あまりにも行政を小さく分断しておる。そこに割拠主義、セクシヨナリズムが非常に強く現われておる。これがために一貫性のない工事をして、またこのために工事に矛盾撞着をいたす。従いまして国費の濫費に陷ることは自然の勢いであります。こういうことでありましては、国のなけなしの予算を、お互いに最効率に使わなければならぬ最も重要な今日におきまして、非常に遺憾とするところであります。こういう点も勘案いたしまして、今各省にわかれておりまする水の行政と各府県が持つておりまする水の行政を一貫したところのいわゆる開発庁におきましてその権限において強力は一元化の機構におきまして、素直に上流から下流に向つて工事を施行することが最も大切である。こういう観点からこの法案をつくつたわけでありまして、ただ御指摘の総合開発法とあまり差がないではないかというおしかりを頂戴しましたが、その感は私どももあるのであります。あるのでありますが、まず最善の策よりも、やむを得ませんから現実性は比較的各省の協力を求め得るに近い次善の策をとりまして、そうしていわば比較的簡單に出せるようなこういう法案がきまつたわけでありますが、この法案がいずれ成立しましたあかつきには逐次改善することであろう、かように考えておるわけであります。以上私の考え方を述べた次第であります。
  9. 西村英一

    西村(英)委員 私はこの総合開発関係する行政機構が非常に複雑になるということを心配いたしておるのであります。それに対して御答弁がありましたが、わかつたようなわからぬような気がいたします。  それからもう一つ、これは北海道総合開発法ができまして、これの実際の運用にあたりましても、やはりこのために非常に全国相当公共事業費その他で犠牲になつておりまして——犠牲というと言葉が悪いかもしれませんが、それは北海道の方が重要であるから、その方に向けたという考え方なら、それでそういうことになるかもしれませんが、御承知のように本年度は見返り資金でやります公共事業費が打切られたために、一般公共事業費から見返り資金で着手したものに対して、多額の金を持つてつたわけであります。しかもまた北海道総合開発法ができて、北海道が後進地区であるからこれを開発しなければならぬ、しかも北海道は人口が稀薄なところだから、わが国人口の收容のためにも開発しなければならぬということによりまして、これまた一定のわけの中から非常に大きな比率によりまして北海道に公共事業費をさいたのであります。その結果全国的に非常な公共事業費の減少になつたのであります。もしかりに利根川開発法によりまして、利根川の重要性ということで、これがまた一定のわくから非常に大きい資金をそちらに持つて行くというようなことになりますと、現在でも相当全国的に窮迫しているところのこの公共事業費が、さらに圧迫されるのであります。これを要するに、資金面をいかにするかということについて、これは重要な問題であります。一定のわくから多くを利根川に持つて行く、重点的に持つて行くということは、利根川のためにはいいでしようが、現在の日本のこの段階におきましては、全国至るところに災害が起つておるわけでありまして、そういう特殊事情からいたしまして重点的にやるということと、全般的にやるということは、現在は非常に考えることにつきましてむずかしい時代であります。私はこの資金面におきまして立案者がどういう考えでおられるか。やはり一定の公共事業費のうちから多くを利根川に持つて行く、それは利根川はいいでしよう、これは二十六年度の予算をきめました場合、北海道に道路費のごときも、あるいは河川費のごときも、非常にたくさん持つてつたわけです。そのために全国的に非常に苦しんでおるのが現在の実情でありますが、総合開発をするということにつきまして、資金面を一体どのように考えておるのか、これらの点について御意見を承りたいと思います。
  10. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。私はこの資金面におきましては、今御質問のように相当大きな資金を要しますことはやむを得ないと考えておりますが、今利根川開発法案通りましたら、利根川にのみたくさんの予算が必ず来るものである、こういうふうな観点にのみとらわれることは、国会議員といたしまして愼しむべきことだということもよく自覚しておるつもりであります。私は今の公共事業費なるものが一定不変のものでない、あの公共事業費なるものは、決して私どもが満足する額ではない。六千五百七十億円の大きな予算のうち、公共事業費一千百億円、そのうちから河川費はわずかに百三十九億余円、七十三本の直轄河川があり、八百本にも近い県負担の中小河川を擁して河川費がわずかに百四十億円弱、砂防を入れましても二百億円に達しません。かりに二百億円といたしましても、そのパセンテージは予算全体から見るとほんとうにわずかのものであります。それはわずかに三・六、七%でありましよう。五分にも達しないもので全国河川改修の費用に充てようとするところに大きな無理がある。それは各河川が、私はあまりにも奮起をいたしませんから、国の予算のあんばいがかく通り、失礼ですが貧弱である。これは国論が起らないことに原因する、国を再建するためにはいろいろの費用を必要としましようが、少くとも今荒れ切つておる全国河川を見ましたときに、こういう三・五%ぐらいの予算では、全国河川改修を夢見るなどということはどだい無理だ。要は大きく公共事業費を国家の支出から求めまして、できるだけ早く全国河川中心とする総合開発を実現すべきだ、かように考えております。今は占領下に置かれておりますから、もちろんわが日本政府の自由になりませんので、遺憾でありますが、講和でも成立いたしましたあかつきには、民論は活発に私は国会に反映して来ると思うのであります。かようになりますれば、必ずや日本の財政のうちで相当程度この河川中心とする政策、あるいは食糧増産中心とする用排水事業等に、大幅な公共事業費の増額が要求せられ、また実現せられねばならぬと思います。こういう見地に立ちますれば、今私どもが與えられたあの公共事業費は、決して満足すべき額でない。これを基準にして政治を論ずべきでない。かような見地に立つておるのでありまして、明年度、明後年度の公共事業費は、相当飛躍的に増額してもらわなくてはならぬと思うのであります。こういう観点から考えましたときに、利根川のこの予算が必ずしも厖大とは考えておりません。この予算は御承知通り建設省、農林省、公益事業委員会、その他の各県等の計画をしております利根川総合開発に寄與するあらゆる資料を集めて、その集計をしましたものが二千四百五十億円という厖大な数字になつたのであります。しかし二千四百五十億円は、各省各県がかつてに出して来ましたところのいわゆる理想案であります。これは総合開発の建前からいいまして、一本化することによつて、そこに起つております各省独自の割拠的な予算の使い方をあんばい、調整いたしますれば、一割ないし二割の予算は圧縮し得る、かように考えまして、かりに一割圧縮するとしましても二百五十億円圧縮します。さらに第二十三条のは、実は御指摘になりました特別の法人の問題でありますが、一部五県の一般の住民層から投資していただこうとするこの法人の予算等をもちまして、電力事業は大体三百億を要するとしておりますが、これらの電力事業あるいは東京都の水道の確保に関する問題、あるいは干拓事業等、バランス・シートのとれますようなものは、いわゆる特別な法人の力によりまして、民間資金と府県の資金、国の資金、さらにできますれば外資の導入を考慮のうちに入れまして、これらのものをやりますならば、これによつて三百億ないし四百億の予算はこれから削れる、かように考えます。そういたしますと残りは千九百億程度であります。これは三分の一は大体県負担になりますから、財政支出は大体において一千二百億であります。さらに私ども考えておりますことは、今利根川改修計画などが、二十二年九月のキヤスリン台風以来建設省におきましてこの調査の全貌が発表になりましたが、その計画は七百六十四億七千万円ということになつております。河川改修だけで七百六十四億七千万円、この立案の根底を私どもいろいろ検討しておるのでありますが、もし利根川開発法案通り開発審議会ができましたならば、さらに再検討を加えまして、これらからも相当大幅な圧縮ができることであろうことを、私どもはある程度まで確信を持つておるのであります。これらのものをやりますのにも、やはり総合開発法案のような強い法律によりまして、そこに大きな発言権を持ちまして、国会あるいは知事あるいは県会議長その他エキスパート等が集まりまして、真劍に検討いたしますならば、その技術者がつくりましたものを、必ずしも理想ではないかもしれませんが、相当私は圧縮できるであろうという実は見通しをつけておるわけであります。従いまして大体におきまして一千億はかからない、ほんとうにうまくやりますならば、八百億ないし九百億でできるのではないか、かようにすら実は考えておるのであります。これは開発庁が発足いたしましてから、真劍に調査研究をいたしまして得ましたところの案によつて決定するのでありますが、見通しといたしましては、私どもは一千億ありますればこれは可能である、しかもそれは二十一年から二十五年までの、利根川に関する国並びに各府県が負いましたところの財政支出は、約百三十余億円になつております。年額二十五億円程度も使つております。さらにこれを農林省あるいは公益事業委員会あるいは農林省の林野局等の経費等を加えますれば、少くとも四十五億ないし五十億は今日も支出しておると思うのであります。私どもは二十八年度において大体六十億ないし九十億というふうに見まして、四、五年後に百四、五十億円の予算を必要としますが、四、五年後における日本経済相当大幅に発展するであろう、日本の財政も大きくなつて行くであろう、かように将来の望みを持つておりますので、今ただちに過分の金を要求するのではないのでありまして、昭和二十八年度において大体六十億、今と大差ない程度であります。それで逐次国の財政と地方経済力とを勘案いたしまして、大体十年を見通しまして、この法案の完結を見たいということにしておるのであります。もちろんそのときの情勢、あるいは時局の緊迫、急変等によりましては、この工事自体も打切ることがあるかもしれませんが、もし支障がなければ十年間になし遂げ得るのではないか、さまで他の地区の方々に御迷惑をかけることがなくてできるのではないか、かように考えておるわけであります。要はこれから先の財政の見通しでありますので、これは何人にもわかりませんが、しかし私どもは現在が最も困つたときでありまして、これから三年、五年の後に、日本の民力、経済力の発展は相当のものが期待できる、またそうせねばならぬ、こういう見地に立つてこの計画を立てておるわけであります。今の財政状態を十年間續けることによつて言うならば、これは意味がないと思うのでありますが、洋々たる日本経済考えつつ、この法案をその軌道に乗せて行きたいという考え方であるのであります。たいへん抽象的な言い分でありますが、考え方は以上の通りであります。
  11. 西村英一

    西村(英)委員 たいへん数字をあげてお話がありましたが、あまりはつきり数字がわかりませんので、これは委員長にお願いをいたしますが、この法案に上つておりまする第四条の計画についての、二十六年度の政府河川、砂防等について、利根川水域に関しまして投資されたところの予算がどれくらいあるか、これを政府に要求しておきたいと思います。  それから、最後にもう一つお聞きしますが、二十三条が実質的な実施計画の根幹をなすものであろうと思いますが、私はこれを進めていただくならば——国土総合開発法とは別に、あの法律だけでは総合開発はできぬのでありますから、実質的に実施計画としての法案なら、私は非常に賛成なんですが、あまりに国土総合開発法と同じようなことばかり言つてつて実施の面についてはやはり一歩も出ることができないのでありますが、この二十三条につきまして、提案者は何かもつと具体的なお話があれば、私はお聞きしたいのです。たとえば政府がかつてやりました東北振興株式会社のような会社をつくつてやろうとするのか、あるいはまた利根川開発のために、公社的なものをつくつてやろうとするのか、あるいは政府の直轄で現在持つておりまするところの関東地建あるいは土地改良局その他の政府機関を集めてやろうとするのか。おそらく別に法律の定むるところによりというのですから、そういうような法案の心構えがあると思うのでありまするが、この法律を出すにいたしましても、この法律提案者が出そうとしておるのか、政府に出させようとしておるのか、もう少しこの二十三条につきまして御計画がありますれば承つておきたいと思います。
  12. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。この二十三条は工事の全部ではありませんで、この法案は調査立案、計画推進並びに調整等をやりまして、その基本計画に基く年次計画を立て、その年次計画によりまして、予算の割振りをして政府と折衝することになりましよう。そうして得ましたところの予算を重要度に従いまして、総合計画の線に沿つて現在の現業官庁に事業はそのまま実施を移すのであります。従いまして建設省、農林省あるいは各府県も今日と別にかわりのない事業体に相なつておるわけであります。仕事の現場は現業の官庁にこれをやらせるということを建前にしております。ただ二十三条では、この大きな国家資金にのみよることは非常に困難であるということを考え、また今この利根川の問題で、東京千葉、栃木、茨城、群馬、埼玉の一部五県の知事会、各県会の議長会、あるいは自治団体等多数の、この利根に関する民衆の大きな力が盛り上りまして、非常な熱意を持つているわけであります。従いましてこの法案のねらいといたしまするこの工事の施行にあたりましては、物心両面の協力をしようと誓つているのであります。この人の和はいまだかつてない大きな人の和でありますので、この人の和をキヤツチいたしまして、この政治の面に強力に物心両面から協力させることが大きな政治である。かように考えて、この二十三条を挿入したわけであります。その構想といたしましては、まだ具体化してはおりませんが、この法律が施行せられまして、このすべり出しができますれば、なるべく早い機会におきまして、各県の知事、部長と相談をいたしまして、私ども考えておりますのは、かの東北振興株式会社のような民主的ないわゆる公の性格をもつところの特殊会社をつくりまして、これに政府資金の一部あるいは各府県の資金も、あるいは民間の広汎にわたる資金も結集いたしまして、そしてその振興会社、いわゆる仮称をいいますれば、利根川開発株式会社とでも仮称しましようか、そういうような組織のもとに、しかもでき得れば、財務当局と折衝いたしまして、債券の発行権まで許させまして、いわゆる開発債券なるものを発行することによつて、民間に今蓄積しつつありまする資金をこれに投入させまして、官民の力によつてこの工事を即行しよう。もちろんこれには国のある程度の保護を必要としますから、国の監督を要するものでありますが、なるべくその経営は民主化いたしまして、活発な活動ができますような特殊会社をつくりたい。これにはその中心の仕事は、大体電力中心とする用排水あるいは関連事業、あるいは東京都の飲用水対策等の問題も入ると思います。その金額等につきましては、まだ具体的にきめてはおりませんが、少くも十億程度の資金を一応会社の組織に加えまして、これによつて年々歳々一般民からの債券の応募を受けまして、その力を借りまして、この特殊的なバランスレートのとれるような工事はその会社にどしどしやらして参ろう。そしてどうしても財政支出でなければできないところのものを国家の財政支出によるという二本建でこの工事を即行したい。かように考えておるのであります。要するに利根川の現況から考えまして、一部五県の官民の非常な盛り上る力が澎湃として起つておりますこのときを、私どもは絶好の機会と考えまして、この法案を急いで成立をさしていただいて、そしてこの官民の強力な盛り上る力を利根開発に邁進さして行きたい、かように考えて、二十条をもくろんでおるわけであります。
  13. 西村英一

    西村(英)委員 今の御説明、長々ありましたが、ちよつと二十三条の意思がわからぬのですが、これは特別の法人をつくるわけでしようが、そうするとその法人は、開発計画のいろいろ事業がありますね、その事業実施機関になるのですか。あるいは実施機関は現在のいろいろな官庁の現場機関を使つてつて、ただ運営機関として残るのですか。その辺の意思がちよつとわからないのでありますが……。
  14. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。一般の実施機関は現業の官庁、あるいは行政機関にやつてもらいます。一部のさつき申し上げました発電事業というようなものは、これは総合開発計画のうちには含んでおりますが、この計画実施は、そういう特殊会社をつくりまして、その特殊会社に実施をやらせる、計画はこつちが持つて、その計画性の一環としての実施計画は、特殊法人にやらせるという考え方なのであります。
  15. 西村英一

    西村(英)委員 質問はこれで終ります。  最後に委員長にお願いいたしますが、経費の資料は、御提出願います。
  16. 江花靜

    江花委員長代理 ただいま西村英一君から申出がありました二十六年度において利根川河川及び河川関係する政府の経費の詳細を、政府に対して報告させるようにいたします。
  17. 石川榮一

    石川参議院議員 ただいま西村先生の御質問に対しまして、二十六年度のではありませんが、二十一年度から二十五年度までの利根川に関する大体の国家支出並びに府県支出はわかつております。これは総合開発計画の資料に載せておりますので、あとで先生のところにお届けいたします。二十六年度はわかつておりませんが、二十五年度までわかつております。
  18. 江花靜

    江花委員長代理 村瀬宣親君。
  19. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 かつてアメリカのルーズヴエルト大統領の発表せられましたいわゆるニユー・デイール政策とともに、世界に紹介せられたテネシー開発計画法は、終戰後の日本国土計画を念願するものにとりまして、非常な魅力となつていたのでありますが、今回提案せられました利根川開発法が、日本最初のTVA計画に匹敵するものであるかどうかという点に関しましては、今国民の注目を浴びておるところであります。そこで私は先ほどからの西村委員の質問に対する提案者の御答弁を承りまして、異なつた観点から二、三質問をいたしてみたいのであります。提案者のお考えは、一体日本国土総合開発、いわゆる荒廃に帰した国土を早急に再建する方法といたしましては、大国土省というような一つの統一された方向に、すべての建設工事を持つて行くのがよいとお考えになるのでありますか、あるいはTVA計画の方式によつて、ここに重点を置いて多少分裂的になつても、早くその場所場所を開発して行つた方が、国土再建が早いとお考えになるのでありましようか。建設委員会におきましては、多年の主張といたしまして、今各省に分散されておりまするあらゆる建設部面の行政一般は、一つの大きな国土省、その他大建設省といつたような部面に全部統一して行うのが、国の将来のための大方針でなくてはならないという意見に、ほとんど一致しておつたときもあるのであります。しかし今回の利根川開発法は、TVA法とは大分かわつておる点もありますし、あるいはすべての国土開発関係の行政を一本にするという点とは、さらに事務の紛淆を来すことはないかとも考えられるのでありますが、本法立案に当りまして、提案者はこれらの点にどのようなお考えを持つておられたか、お聞きしたいと思います。
  20. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。この法案を作成いたしまする私ども構想の中には、今御指摘になりましたような、大建設省あるいは国土総合開発省あるいは水源省というようなものが、実は相当ひらめいており、今でもひらめいておるのでありますが、私どもは水に関する行政は、水が高いところから低いところに流れるように、あの自然のルールに従いまして、科学を高度に利用し、そして技術的に検討を加えて、これに順応することが政治のあり方としては最も必要である。こういう観点に立ちますと、先ほどもお話のように、ほかの建設行政は別といたしましても、水資源に関する限りは、私は一本の大きな、いわゆる天然資源省のようなものが生るべきだと考えるのであります。しかしながら今の政治情勢から考えまして、理論は正しくとも、この問題はなかなか大きな難関がありますので、ただちにこれを行政刷新行政機構改革の面に浮び上らせるということは容易ならぬことであろう、かように考えて、半ば私どもはあきらめておるのであります。そこで考えますことは、やはり各水源、要するに水の資源を、水系ごとに——小さいものは別ですが、大きなものは水系ごとに、一本の行政機構の中にこれを包容しまして、そして行政一本化の建前から、建設、農林各省にわたるものを統合し、各県の水に関する割拠主義を打破しまして、あるいは地方におきましては上下流の激しき鬪争までも打破いたしまして、そしてすなおな姿の一本の行政機構にいたして、国土開発をはかるべきだと、かように考えまして——いわゆる大きな行政機構は私どものようなものには意図することはできませんので、実は拙速をたつとぶと言つては失礼でありますが、かようなものにしたのであります。もし私ども考えておりますようなこういう機構が、日本の行政機構の改革に取上げられました場合には、私どもはこれらの問題はおのずから再検討を要するときが来るのではないかと思うのですが、およそ大きな行政機構の改革は、この程度のものでも大きなトラブルが各省にあるのであります。官僚の割拠主義は相当根強いものがあります。この割拠主義を打破するものは、私は大臣にあらずして、議会の良識ある断であると思う。この議会人が断ち切る以外には、いかなる大臣といえども、みずからの省のいわゆる官僚の割拠主義を打破し得ない、こういう見地に立つて——実はこの法案議員提出の形で持つて来ましたゆえんはそこにあるのであります。この問題は、各省の大臣にも、つくるまでには数回にわたつて折衝をし、御意見を聞いておるのでありますが、明らさまには言いませんが、やはり議員の断の力以外にはあらゆる改革はできないものだということを痛切に私どもは感ぜざるを得ないのであります。こういう見地に立つて、この法案を通していただきますことは、今の官僚の独善主義、各省の割拠主義を是認するか。これを水の行政から断ち切るべきが相当であるということが、私はこの法案ほんとうの真髄をねらうものではないかと思うのでありまして、これらの問題も加えて、この法案を実は提案したわけであります。もちろん利根川の問題は、最も大きなものであり、水資源におきましては日本において最も特殊的な地域でありますがゆえに、本法案をつくつたのでありまするが、そのねらいは相当広いものがあることを、実ははつきりと認識して、この法案をつくつております。以上簡單でありますが、お答えいたします。
  21. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 ただいまの御答弁を承りますと、水系ごとに行政面を一本に統合したいという熱烈な意向を持つておられるようでありまして、このお考えの根底にこういうことを構想されたのかどうかということも承つて、この法案の審議を進めて行きたいと思うのでありますが、これはあとで質問いたしますけれども、今のお考えを最も簡單に実行するのには、いわゆる大国土省大建設省構想と場合によれば矛盾するおそれがあるかもしれない。こういう利根川開発法というような方法による前に、地方行政の地域圏の設定について、さような水系によるとか、あるいは交通圏によるとか、通信圏によるというような点をお考えになつてみたかどうかという点であります。今日の日本府県の区域はずいぶん以前に定められたものでありまして、幾たびかこの地方行政地域圏の再編ということは考えられておるところでありまするが、こういう法案をお出しになるその目的を達成する一つの方法として、あるいは水系ごとに一つの行政区域を一本にする——もつとも利根川はあまり大きいので、そういうことは簡單には実施できぬことでありましても、その立法の当時の構想の中に、さような点を一時お考えになつてみたかどうか。あるいはまた今後運営をしで行く上におきましても、これら地方行政地域圏の拡大再編によつて、この法律に定められた多くの目的が達成されることがあるとお考えになつているかどうか、お聞きしたいのであります。
  22. 石川榮一

    石川参議院議員 ただいまの御質問の要点は、水系ごとに行政区画を再編してこの目的を達し得るようにしてはどうか、そういう考えを持つたことがあるか、また現に考えておるかというようなことに伺つたのでありますが、私どもは、基本的な考えといたしますれば、いわゆる食糧基地であります日本の平野は、みな川の流れに従いまして、何千年の歴史を経て生れて参つたのであります。おそらく昔はこれほどに平野はなかつたのではないかと私ども考えておるのであります。日本は狭小なる島国でありまして、縦に一本の山系を持つており、これから走る急流があり、しかもそこには大きな雨量を伴うので、嶮峻な山から落ちる木が各地に流れまして、土砂を流下させた数千年の歴史が、今日のごとき平野をつくつたものである。またこの水のほとりを追うてだんだん住民層が稠密になつて来た。水を中心として生活を立てるということが人間の本能でありますので、さような立場から水辺を中心として住民がふえて来たと私は思う。その水流を中心として平野は開けておるという観点から考えましたときに、今の行政機構、各県の区画が必ずしも妥当とは考えません。たいへんな矛盾がたくさんあると思います。ときには小なる県にしてはほんとうに気の毒なような財政難に追われている県がある。一方には大きな経済力を持ちまして、ゆうゆうとして県政、都政をまかない得るようなところもあるのであります。行政区画による一般住民の負担の均衡は得られておりません。各府県、ことに、その県が財源に乏しいほど、その負担は大きいのであります。同じ国民でありながら、行政区画によつてその負担に非常な懸隔のあること自体が、すでに非常に大きな誤りである、円満に日本国土が発展する方向に行つていないというような観点からも、先刻来申し上げましたような、水系から平野が生れ、その水系に人間が住むということが事実であるならば、これらは大きく再検討を要するのではないか。また水系ばかりでなしに、山をかかえ、海をかかえ、この狭小なる日本に海なし県があること自体が、要するに非常な矛盾であると私は思うのであります。これを大きく取上げまして、州の政治になるかどうかわかりませんが、行政機構の大改革を意図するところの大きな計画国会推進すべきである。そういう線から国政は手をつけて行くべきではないか。そこに国土総合開発の真の意義もあり、地方特別地域の設定のごときも非常な利便があるのではないかというような考えを持つておるわけであります。しかしそういう大きな問題を私どもが言いますことは、およそ非現実的でありまして、空理、空論として一顧の価値もないと言われることが多いのでありまして、今私どもはそういう長い議論にかかわつておるわけには参りませんが、考え方といたしましては、今お話のように、全幅的な支持をもちまして機構の大改革をしてほしい、さような方向に国会が活躍してほしい。しかしてどの県民も、負担において、文化程度において、さまで高低のないような日本政治のあり方が最も適切なりという考えを、私は持つておるのであります。以上考え方を申し上げました。
  23. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 地方行政地域圏を、あるいは水系ごとに拡大して州政治をしくということは、本法案をつくる基本にはお考えなつたけれども、空理空論になるおそれがあると思つてやめたとおつしやるけれども、よいと信ずれば、たとえ万人が空論だと言つても、その実現に向つて勇気を奮い起すのがわれわれ議員の努めと思うのでります。それはともかくといたしまして、第三点として、お伺いいたしたいと思いますのは、結局こういう法律が出ました後に、いろいろまた賛否の意見があると思うのでありますけれども、最後の決定を見る重要な問題は、一体こういう法律ができてその効果が上るかどうかという点に帰着するのであります。効果が上るというのは、つまり予算の獲得にこの法律ができることによつて利益になるか。あるいは金額がふえなくとも、その運用の効果が上るか。この二点に帰着すると思うのであります。一升の牛乳はいかに器をとりかえてみても一升しかないのであります。従来一升しか出なかつた牛乳を、この法律は一升五合出せるかどうか。あるいはやはり牛乳は一升しか出ないけれども、この法律によつて一升五合の効果を出すことができるか。そのどつちかによつてこの法律案の価値がきまると思います。そこであるいは総合開発特定地域指定十三箇所のお話もありましたが、この法律ができればどういうふうに予算獲得の上に将来の見通しがあるか。計画を出すだけならば、今の総合開発法で十分計画はできるのでありまして、プラン・メーカーはすでにできております。そうでなしに、この法律ができたならば、どのように一升の牛乳が一升二合か一升五合かにふえるというお見通しであるか。また、その方はふえないけれども、同じ一升の牛乳であつても、運用、利用の面において一升二合、一升五合もの効果を発生するというお見通しがありますれば、お答えが願いたい。私は、一升の牛乳を一升五合にするという点については、地方の行政地域圏の再編による道州政治ということも当然考えられなければならないと思いますし、また財政資金以外の資金を集める方法としては、二十三条に掲げられております特別法人の御構想もあると思いますが、ともかくも国の予算が基礎になると思うのでありまして、この法律ができるならば、その予算獲得にかくのごとき利益があり、またその運用にかくのごとき利益があるという点を、できるだけ詳細に伺つてみたいと思います。
  24. 石川榮一

    石川参議院議員 しごく適切な御質問と思いますので、私の考えておりますことがたといあやまちでありましても、所信だけは申し上げてみたいと思います。  この法律のねらいといたしますところは、もちろんこれに大きく予算が投入されることを欲するのでありますが、しかしそれが目的の大部分ではないのでありまして、各省に分配しておりまする公共事業費を、総合開発の面から最効率的に予算の執行ができるようにいたしますことが、この法律による予算の有効な利用でありますので、この点に大きな期待を持つております。たとえて申しますならば、先ほど申し上げたように、利根川に平年度二十四、五億の予算が建設省あるいは都県によつてまかなわれており、農林省の水に関する資源開発に使つておりますものがかりに二十億といたしました場合、合せて四十四、五億であります。この四十四、五億のものを、若干期間のいずれはありましても、重点的に最も効率の発揮し得る急所々々からその工事を施行して全体の工事にわたりますならば、その効率は相当大きなものがある。先ほどお話になりました一升の牛乳が一升二合に、あるいは一升三合に匹敵するような効率を発揮し得るであろう、これがねらいなのであります。もちろんこの基本的な計画がきまり、経済効果実施計画によつて具体的に発揮されたといたしますれば、時の内閣はこの効率的な理想的な利根川総合開発に対して相当強い協力を示すであろう。閣僚もこれに賛意を表し、国会もその計画の堂々たるりつぱな立て方に対して、相当の敬意を拂いまして協力を惜しまないであろう。要は国土総合開発法もあり、この利根川開発法案もありますが、この実施に当りまして、真劍に最も合理的に高度の技術化が行われ、合理的な予算が生れ、しかもそれが一般の認識するとことなりますれば、これに対しては必ず相当協力が生れて来るだろう。要はこの法律ができまして、その実施都県にわたりまして、ほんとう水資源開発一元化の理念に徹したりつぱな案ができるかできないかということに帰着する。もしあやまつてどもの意図するような案にあらずして、今まで諸省がやつておるものを集めたにすぎないものであつたならば、これはたいへんな失敗であります。要は運用でありまして、その運用が適切でありますれば、閣議においても必ず相当の敬意ある協力が求められ、国会もこれに対して協力を惜しまないであろう。かようなりつぱな国土総合開発計画一環としての利根川開発計画が立案されますこと、基本方針としてきまりますこと自体は、予算が大きくとれ、これを厚くされることもここから出発するであろう。かように考えまして、この法案を出しました以上、これに対する人選に対しては非常な関心を持たねばならないと考えております。もう一つは、こういう法案をつくりましても、各省が依然として割拠主義を唱え、この法案に対して白眼視するような態度を續けるということがありますならば、この法案も非常な窮地に陷るのではないかということを心配しておるのでありますが、これはその中枢をなしまする人物の選考いかんによつて打破し得る、協力態勢を求め得るというように考えておりまして、長い間建設省、農林省の所管であつたものが、新たに利根川開発庁の所管にかえられること自体に対しましては、さしあたりは相当な冷やかな目をもつて遇されることを覚悟せねばなりませんが、この法律の意図するところが、真に私ども考えておるようなことが逐次徹底して行きますれば、おのずから時間の経つに従いまして協力態勢が整つて来る。また整わせなければならない。それにはこの利根川総合開発審議会のメンバーである国会議員の代表諸君の血みどろな活動がさようにするであろう、かように考えてこれに期待を持つておるわけであります。要はこの法案目的とする理想が、その基本計画の上において、運用の面において、役所として生れましたときに、一升の牛乳が一升二合にも、あるいは二升にもなり得るのではないかというように基本的な考えを持つておるわけであります。
  25. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 先ほど提案者の御答弁の中に、国土総合開発法プラン・メーカーをつくつただけで実施の面がない、今の状態では実行力がないから、このような法律をつくらざるを得なかつたのだというような御答弁があつたのであります。私も一面それはそのように思いますが、そういたしますと、本法案の骨子をなしておりますものについて、私は御質問せねばならないことになるのであります。冒頭に申し上げましたアメリカのT・V・Aの骨子となつておりますのは、日本の公社形態をとつておりまして、日本の国有鉄道公社にも匹敵するような非常に実施面の都合のいい組織となつておるのであります。提案者は、実施の面を急ぐがためにこのような法律を必要としたのである、国土総合開発法があるにもかかわらず、あえてこういう法律を必要とするということであつたのでありますが、本法によりますと、この組立ては第十条による開発庁の設立と、第十四条の開発審議会の設置と、第二十三条の特別法人としての開発公社との三本建になつております。これは提案者がしきりに各省の通弊であるセクシヨナリズムを打破したい、その鉄の鎖を断ち切りたいと言つておられるにもかかわらず、現実の機構との摩擦を調和せしむる一つの妥協に終つておるような感じがいたすのであります。はたして提案者が希望なされまするようなプラン・メーカーではなくして、強力な実施を望まれるがために本法案をつくるといたしまするならば、TVA法に示されたようなもつと強力な一つの体系をお考え出しになるべきではなかつたかと思うのでありますが、この点に対して提案者の御意見を承りたいと思います。
  26. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。しごくごもつともな質問であります。私どもも御所見のように、このTVAのような理想的な一本の計画、立案、施行一切が一本の線に強力に出されなければ、ほんとう総合開発法の円満なるすみやかなる遂行は困難であるということを考えまして、TVAとは違いまするが、これと似通つたような法案を実は第一取上げて検討したのであります。各省といろいろ折衝を重ね、関係大臣等の意見も聽取いたしまして、いろいろ勘案いたしましたが、今の日本状況では、先ほど来私が申し上げました各省のセクシヨナリズムを一刀両断に断ち切るということは理想でありまするが、この力は非常に強烈でありまするので、言うべくして非常な困難に逢着し、いたずらに時日を費すのみであるというような観点と、また日本ほんとうに民主主義に徹しておりませんで、ややともしますと、いわゆる官尊民卑の弊風は捨て切れない現状であります。時には一局長の言うことを非常に重視いたしまして、みずからの正とする主張も捨て去るような反民主的なことさえあるのであります。こういう日本のような過渡的の民主主義国家程度では、とうていTVAのような強力な公社制度を持つ一本の姿でやりますことは、わが国情にいまだ即さない。かように考えまして、次善の策といたしまして、妥協とは言いませんが、それらの点も勘案いたしまして、日本の現下の国情において、行政機構の中に巣食つておりまする官僚主義の重圧の中に立つて仕事をするとしまするならば、考え方はTVAのようなつもりでありましても、一歩、二歩はしりぞいた考えによる法案検討しなければ実情に即さない、かように考えて、実は次善の策としてこの法案——今指摘される妥協ではないかと言われるような法案に陷つたことは非常に遺憾であります。しかし現在の状況その他から考えまして、これ以上を望むことはいたずらに時日を遷延するにしかすぎず、あるいは功を全面的に欠きやせぬかというような心配もありましたので、こういうような幾分そこに妥協性を含んだような形の法案にかえられましたことは、たいへん遺憾に存ずる次第でございます。できますれば、TVA公社というような一本の線によつてつて行きたいということにかわりはないのでありますが、次善の策をとらざるを得なかつたというわれわれのこの苦衷を御了察願いまして、次善の策として取上げていただきたい。いずれ機会がありましたらば、TVA公社のようなものに変更し得ることもあり得るということを私ども考えておるのであります。こういうことからこの案を立てた次第でありまして、日本の民主化の程度並びに官僚の強き割拠主義等から考えまして、この程度で行かざるを得ないことを私どもも遺憾といたしますが、そういうような意味でこの法案をつくりました次第であります。
  27. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 私は各条にわたる質問は遠慮いたしたいと思いますが、ただ一つ開発審議会の構成についてお尋ねをいたしておきたいのであります。御承知通りTVA法には開発審議会規定はありません。最近提案になつておりますところのコロンビア・ヴアレー・オーソリテイあるいはミズーリ・ヴアレー・オーソリテイ等にはこの開発審議会規定があるようでありまするけれども、これは非常に大きなものでありまするにもかかわりませず、委員は十五名となつておりまして、特に国会議員の代表も加わつておりません。ひとりこの法案——これは先ほどの提案者説明によりまするならば、續々と各河川中心とした、いわゆる水系ごとに一つ開発庁ができて参るのだという立法当時のお考えのようでございますが、それらに対する最初のこの法案でありまするが、これによりますると、委員も三十名にして国会議員を八名ということにいたしておるようであります。国会議員をこういう審議会に加えること自体について、私はこれは問題点もあり、また考慮すべき点もあると思うのでありますが、特にこの利根川関係の六県にわたるところから選出されまする国会議員も多いわけであります。衆議院を五名とし、参議院を三名とした根拠、またそれより先に、その人数よりも何よりもこういう審議会に特に国会議員を加えて置かねばならないという現実の必要性または科学的根拠がありまするならば、承つておきたいと思うのであります。
  28. 石川榮一

    石川参議院議員 御指摘の、審議会の構成メンバーに両院の議員を充てたことに対しての御批判であります。私どもはこの法律国策一環として遂行いたします法律でありますので、国土開発という大きな政治的なねらいがあり、また経済的な復興のねらいがあるのでありまして、両面から検討いたします場合に、理解ある国会協力がなければ、この年次計画の予算の立て方につきましても非常な不便が起つて来るであろう。またこの実施にあたりまして起り得るいろいろの摩擦、各県ごとに起る摩擦、あるいは上下流に起ります摩擦等、この仕事をする上には非常に大きな水に関する争いが起つて来るであろう。たとえば一つダムをつくりますためには、そのダムの水の中に落ち込む村落あり、その下流にはすばらしい美田が開拓されるというような、すぐ鼻先で、一方は犠牲にいたされ、一方はその効果を満喫するという事態も起り得るのでありまして、そこに思わざる種々な紛争等も私どもは予想するのであります。金の問題よりもむしろそういう問題に非常な煩いをされるであろうことを想察するのであります。特に利根川周辺は御案内のように非常に複雑しております。全国の川におきまして、利根川ほどあらゆる施設が多く、また上下流で深刻な争いをするところはおそらく他にあまりないと私は考えます。数百年来争い續けて参りました上下流との感情等も残つているのであります。これらの解決にあたりましては、どうしてもそのときどき川における有力なる発言権を持つものはもちろん、その付近から推されております方の中から選んで、その政治的な解決によつてせなければ、解決ができないものが相当つて来るということも考えられますので、工事の円満なる遂行をするために、また国政と利根川開発法の施行による工事との連繋を緊密に保つて行きますためにも、お互いの意思を疏通するためにも、私ども国会議員がこの審議会に入ることが最も適切である。かような見地に立ちまして、衆議院五名、参議院三名程度国会議員の代表に参加していただくということに法案をきめたのであります。もちろんこれは利根川流域からのみ出す必要はないのでありまして、全国議員のうちで最も水に経験の深い、非常な練達堪能の方がありますならば、地区を選ばずして、こういう公職についていただくということが望ましいのであります。こういう観点に立ちまして、国政の運行とこの利根川開発、これがこの法案のねらいます工事を円満に遂行し得るために、また各種の紛争を解決する適任者としての役割を演ずる両院議員の方々等をこのメンバーに入れることは、この工事の遂行に寄與することが非常に大きい、かように考えて、両院からメンバーに参加するということにしておるわけであります。
  29. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 ただいまの御答弁には前後多少一貫性を欠いた点があるのではないかというふうに聞きとれたのでありますが、最初の御答弁の部分は、いろいろな紛争が起ることが想像される。水底に没するものもあれば、また美田に惠まれるところも出て来る、そういう場合にいろいろな円満な解決を出してもらうためには、その地方から選ばれた国会議員は非常に熱心にやるべきであるから、これを入れておく必要もあるというような御答弁でありましたが、そういうことであるならば、国会議員たる者、審議会委員であろうがなかろうが、必ずその職責上全力を傾注するに違いないのであります。ところが、御答弁の終りのところへ参りまして、必ずしもその地方から出すのではないのだ、全国的に見て出すのだということで、また意味がかわつてつたのであります。一体立案者としては、この五人なり三名なりは関係外の国会議員から広く取ろうという立法当時のお考えであるのでありまするか、それをまずお聞きしてみたいと思います。それから広く地域外からもとるのだということになりまするならば、これは紛争の解決とか何とかいうことでなくして、主として予算その他の、いわゆる国土総合開発計画関係を及ぼして参りまするし、むしろその場合に広く区域外からの国会議員をこの審議会委員にしておいて、いろいろな問題を解決してもらうというのであるならば、それは学識経験のある者の方が適任ではないか、その方をふやす方が目的はよけい達せられるのではないか、こういうふうに考えられるわけであります、地域外の国会議員を入れるという必要性は、いわゆる予算の一点にかかつて来ると思うのでありますが、この国会議員を特に衆参両院議員から五名と三名を選ぶということにいたしました理由をいま少しく詳しく伺つておきたいと思います。
  30. 石川榮一

    石川参議院議員 先ほどお答いたしました点が矛盾があるように御質疑になりましたから、重ねて申しますが、この審議会の構成は、御案内のように利根川総合開発基本計画を諮問し、討議し、調査するということが主要なる目的であり、またこの審議会がみずから考えておることを行政官庁に意見具申をするということもできるようになつておるのでありまして、その決定権いわゆる計画の最後の決定権はこの審議会にあるわけであります。従いまして、非常な重大な問題であります。われわれは議員立法といたしまして、これを発案いたしました責任もありますので、これに参画しております発議者多数の諸君ももちろん一半の責任を負う立場であります。従いまして、この法案われわれが意図するようなりつぱな効果をあげしむる責任がおのずから随伴するわけでありますので、この審議会に対しては無関心たり得ない、こういう観点からこれに衆参議員を入れる必要があるのと、さつき申しました地方的の紛争解決に非常な役割を演じていただくという点もあり、また国会とこの利根川開発庁との間における予算的あるいは各政府機関との間のあらゆる折衝等にあたつても、側面からとの法案がねらう工事のすみやかな竣工を促進するような役割も演じていただくためには、どうしても国会議員を入れておく必要がある。ただこれを全国的に選ぶか、その流域から選ぶかということになりますが、多くは私は流域の人がよろしいと思いますが、全部そうではなくて、中には中正な意見を持ち得る。しかも河川に対し相当な知識、経験もあり、相当りつぱな方があろうと思いますから、これらの方も、私は数は少くとも参加していただくことが、この審議会を運営いたしますのに、一方に偏せずして、中道を歩み得るような形に行けるであろうと思いますので、そういう意味合いから、全国的な面からもごく少数の者の参画を必要とするであろう、かように考えるわけであります。しかしこれは主としてこの開発長官考えてその人選をきめるのでありまして、私が今申し上げましたことは、ただ発議者としての考えを申し上げただけでありますから、私の発言は、これからこれが法律となりまして、長官が任命する場合における審議会のメンバーに何らの拘束があるわけのものではないのであります。私の希望はさように考えております。中にはこういう工事に非常な熱意とまた学識と経験とを持つておる議会人がおるならば、これに入つていただくことは、この運営を非常に中正に導くであろう、何かの問題が起つた場合等においては、その問題を解決するのに相当大きな役割を演じていただくことができるだろうということを期待いたしまして、こういう面からも出していただくことが望ましいと思うのであります。
  31. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 もう私は打切つたつもりでおつたのでありますが、今の御答弁を承りまして、もう一言申し上げておかなければならぬことがあるのであります。今の御答弁の中に、立案者としてはこう考えるけれども、しかし実際この法律が出たときには、立案者である自分の答弁が法律運用にあたつて何らの拘束をもたらすものではないという御答弁でありましたが、私はこれはそうではないと思うのであります。法律には全部いろいろなかようなことを盛れるものではありません。立案者がはつきりこの法律はこういう方針のもとに立案したのであるということが本委員会の速記に残りまするならば、それは法律的な拘束力はないにいたしましても、道義的な一つの基準にはなり得るのであります。おそらく今後すべての法律を運用するにあたつて、ただ法律が通つたから、その立法の精神がどうであろうが、こうであろうが、提案者の意向がどうであつたろうが、こうであつたろうがかまわない、ただやればよいのだという考え方は、私はよくないと思うのであります。従つて提案者の御答弁は、この法案成立後における運用上には、一つの基準たり得るものであり、たらしめねばならないと考えるのであります。そこで今国会議員審議会委員に送る理由として、最後に三つおあげになりました。第一には地方問題の解決、第二には本法律案をつくるに参画した者は、そのつくつた後の後までも見届けてやる責任があるから、そういう人々、それから特に河川行政に権威を持つておる国会議員、その三者の中から選ぶべきであるというように伺つたのでありますが、これについては私はいろいろ意見はありますけれども意見は申しません。ただ私は、提案者の意思というものは、いわゆる速記に残つた意思というものは、本法案成立後その運用にあたつて、十分道義的に尊重すべきであるという観点よりいたしまして、今の三点はさように了承してよいのでありまするかどうでありまするか、御答弁を承りたい。
  32. 石川榮一

    石川参議院議員 事人事に関する問題につきましては、いずれ開発長官ができまして、この長官がその人選をやるものであるという観点から、私はこの発案者としてこの意向を申したのでありまして、もちろん私は、それは道義的に責任をとるのでありますが、しかしそれが全部を拘束する、しかも人選にわたつてまで立案者が拘束をするということは、愼むべきであるというような考え方から、あえてこの長官が任命するであろうこのメンバーに対するこまかいことに対しては、私はくちばしを入れないということを申し上げたのであります。御指摘のように、この私の発言に対しましては、立案者といたしまして当然道義的な責任を負いますことはもちろんであります。この点ははつきりと御了承願いたいと思います。
  33. 江花靜

    江花委員長 それでは池田峯雄君。
  34. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 先ほどからの提案者の御説明を伺つておりまして、提案者熱意に対して、私も非常に敬意を表するものであります。提案者の趣旨はよくわかります。しかしながらその提案の御趣旨が幾らよくつても、その法律が提案の趣旨とまつたく反対のものに転化してしまうということは、これはままあることでございます。たとえば日本の軍国主義者を追放するという追放令が、逆に最も民主的であり、平和的である共産党員を追放するという、こういう反対なものに転化する例はままあるのでございます。  そこでそういう観点からひとつ私は質問したいと思うのでありますが、第七条であります。第七条に、利根川開発計画国土総合開発計画との調整については、内閣総理大臣利根川開発庁長官及び国土総合開発審議会意見を聞いて行うものとする、こういうふうに規定されておりますが、もし国土総合開発審議会意見が非常に強くて、利根川開発庁長官意見が通らない、こういうような場合、提案者はこれをどういうふうに打破つてつたらよいとお考えになつておるか、それをひとつ伺いたい。国土総合開発審議会の議事録がございます。これは第六回の速記録でございますが、この速記録で、総合開発計画をどういうふうに進めなければならぬかということについて各委員のまとまつた意見を、佐々木副所長がこういうふうに言つております。「各委員から強い要望がありまして、どうしても国際情勢の判定、特に軍事、政治、外交的な国際情勢をどういうふうに判断するのかということによりまして、日本経済の今後のあり方というものは非常に大きくかわつて参りますので、この問題を早く一応想定いたしまして、その基礎の上に立つて委員あるいは作業のそれぞれの頭を一本にいたしまして、その同じ頭で作業を進めてもらいたいという希望が非常に強うございましたので、いろいろ各方面の資料を收集いたしまして、事務局といたしましては、この国際情勢の判定を一応想定いたしまして、これを各委員の方たちに御披露いたしまして、若干の修正を加えた結果、そういう想定で作業を進めるというふうなことになつております。」というふうに断言しております。そしてそれ以後この想定がどういう想定かということは、速記が中止になつておりまして、このところは明らかになつておりません。しかしこれを推測いたしますのに、明らかに單独講和後の日本経済というものが、日米経済協定あるいは日米安全保障協定というようなものによつて大きく左右される、そういうことがはつきり出ておる。こういう尺度から国土総合開発計画というものが進められ、その中で利根川開発が進められるというのでありますから、あなたが先ほどから御説明になつておる提案の趣旨とは、大分かけ隔たつて来るのではなかろうか、こういうふうに考えるのでありますが、この点いかがお考えになつておるでありましようか。
  35. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。変転きわまりない国情情勢のもとにありまする現下の日本の政情、国情等から考えまして、今お述べになりました国土総合開発計画基本的な心構えといいますか——を確立して、その線に浴うて開発計画を立つべきであるという行き方は、非常に正しいと思うのであります。私もそれに全幅の賛成であります。ことに私どもが念願しているこの法案を出しますゆえんも、そこにあるのであります。私どもが今置かれております日本状態は、朝鮮事変をめぐりまして、まさに食うか食われるかの戰いが、鼻先の朝鮮で行われている。この事態の進展は、あるいはわが本土が再び朝鮮の二の舞をするのではないかとすら、杞憂ではありまするが、憂いなきを得ないのであります。従いまして今国際情勢の緊迫化から考えますると、日本をめぐる熱血の戰いが沸いて来ないということは、何人も断言できません。と同時に最悪の事態考えますれば、あるかもしれぬということを一応考えまして、その面から基本的な方針を日本は立てるべきである、かように考えております。従いましてもしそういうことが近き将来においてあるとしますならば、日本の置かれております情勢は、わずかな土地の中に八千四百万の住民がうごめいておる。そこには二千万石に及ぶ食糧難を、はつきりとわれわれは認識せざるを得ない状況になつておる。これらの食糧は、かりに大戰争が勃発した場合には、多くを外国の船に頼り、あるいは今までのように占領軍の保護下にあつて食糧をまかなつて行くということは許されないであろう、かように考えるのであります。従いまして、もしかりに予想する戰争があるといたしますならば、あるいはそれが十年であるか、二十年であるかわかりませんが、少くとも相当長い間非常な食糧難に追い込まれる日本を想像いたしましたときに、私どもは漂然たらざるを得ないのであります。数年前のあの食糧地獄がまた襲い来りまして、しかも長い間それと取組まなければならない。そこには日本の自衛はあり得ない。日本の健全なる思想の確立はあり得ないのでありまして、政治の根底からくつがえされる。これを憂いまして、食糧増産こそ今の日本の最も重大な政策でなければならぬ、かように考えております。そういう観点に立ちまして、今の利根川流域は、大小麦は全国における四三%を生産するといい、米においても一四%を生産するという大きな食糧基地であるということをはつきり自覚しなければならないと思います。これがややもいたしますると年々歳々の水害によつて、荒漠地と変貌するということを憂えまして、実はそういう基盤の上に立つて国家見地からいつて、これを緊急に提出するゆえんがあると思うのであります。御指摘になつた国際情勢、特に経済協力体制によつて変化するというお言葉はもちろんであります。しかし私どもは、経済協力ということは、食糧なしには断じてあり得ないと思います。食糧の基盤がはつきりした後、その上において経済を躍動すべきである。文化もその上に建てらるべきである。二千万石の食糧の足らざる日本、これが私どもの最も憂える大きな悩みであると思いますので、こういう点から考えまして、たとい百万石でも五十万石でも、急いで日本食糧増産国家は全力を盡すべきである、さように政治の動向を持つて行くべきであるというような観点に立つておりますので、実は緊急にはからつてこの法案提出し、御協賛を願いたいというゆえんもそこにあるのであります。お説のように、そういう基盤の上において、こういう計画はいろいろ変化することを予想しております。しかしこの法案のねらうところのものは、国家的要請のもとに立つているということを認識して、そしてこれを出しておりますことを申し上げておきたいと思います。
  36. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 吉田総理大臣は、この前の本会議における施政方針で、日本はアジアにおける共産主義国制圧の拠点として、外国から期待をかけられている、こういうようなことを言つております。これが吉田総理大臣の、日本の国をどういうふうに持つて行こうかという根本方針になつているようであります。そういう政策から割出されたものが、昭和二十六年度の予算であります。その昭和二十六年度の予算が、先ほどあなたが言つたように、非常に河川費が少い。そういう圧縮された公共事業費として現われておるのであります。道路にいたしましても、軍事的な価値のある道路だけがアスフアルトをもつてりつぱにつくられる。あるいは飛行場が建設される。そういう方面公共事業費が吸收されて、そして河川改修費というようなものは非常に少くなつている。あるいは見返り資金の運用にいたしましても、一々向うさんの言うことを聞かなければ、この見返り資金を運用することができないような状態になつている。その見返り資金がどこに投入されているかといえば、これもやはり軍事的価値のあるところに投入されている。これが吉田総理大臣の、日本を極東の共産主義制圧の一勢力たらんとして進めているところの政策なのであります。そういたしますと、そういうことにあなたが賛成いたしまして、そういう中でもつて、この利根川開発法を進めようといたしましても、それは今までに証明されているように、公共事業費などというようなものは、特にこの利根川開発であるとか、あるいは北上川開発であるとか、こういう方面には、ほんのちよつぴりしか出さないと思う。そういう政策になつて現われている以上、この中で利根川開発を進めて行こうというあなたの趣旨とは、非常な食い違いが生じて来るのではなかろうか。もし食い違いが生じないと言われますならば、どういうふうにその食い違いが生じないということを、具体的にお示し願いたいと思います。
  37. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。私はここで総理大臣の施政方針の御演説に対する批判をいたすことは好みませんから、御質問の要点に触れるかどうかわかりませんが、一応私の考え方を申し上げます。お説のように、私ども公共事業内容等に関しましては、大きな不満もあり、批判も持つておるのであります。従いまして私どもがこの法案を出します考え方は、明年度の予算におきましては、特に占領も解かれるのでありますから、自主的に、われわれ国会議員が期待を持てるような予算の編成をして、公共事業費の面に必ず計上させなければならぬし、またその一環としてこの法案を出したとも言い得るのであります。もしこの法案に閣僚が熱意なくして、これを冷眼視するようなことがあるならば、これは国会に対する政府の挑戰であります。少くとも両院を通過したものにつきましては、政府は全力を上げて強力に推進しなければならぬ政治的な責任が起つて参るのでありまして、私はこの法案を通過させることによつて、明年度の予算は相当大幅に公共事業費の配分が生れて来るであろうことを期待し、また生れさせなければならぬと考え、それに対して全力をもつて鬪い拔こうという考えを持つております。今特需物資あるいは新特需物資等によつて、緊急輸出入の問題がさしあたり大きな問題になつておりますが、これらに対する政府の大きな予算の配分等に対しては、私ども一応わかります。しかしこれらの問題は、一朝有事の際にはその日から立ちどころに分断されて、意味のないことになるのであります。そこで私どもは、日本人が生きるために食わねばならぬ食糧は、でき得る限り自給態勢を急いで確立すべきであり、これが非常時局を乗り切る根本国策でなくてはならぬという観点に立つて、この法案提出したのであります。それはもちろんこの法案ばかりではありませんが、この法案中心として活動を開始して、明年度の予算には——吉田内閣か續くものといたしまして、大きくこれらの点を強調して、特に公共事業費を大きく増額していただくように努力を續けたいと思います。その目的を達するかどうかわかりませんが、それには皆様方の御協力によつて、この法案の通過したのをきつかけといたしまして、これが目鼻があきますように、従つて全国河川が目があくように念願しておるのであります。ややもすると、公共事業あるいは河川事業は第三次、第四次的に堕しております現在の政治を急転回させなくちやならぬ、こういう考え方を持つておりますことを申し上げて御了解を得たいと思います。
  38. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 この計画土地がたくさんつくられ、一朝有事の際の食糧確保をするという御趣旨のようでありますが、土地がつくられただけでは、あるいは災害防除されただけでは——もちろんこれは大きな問題でありますが、それだけでは食糧増産は達せられない。もつと根本的な問題があると思う。それはやはり政府農業政策、農民保護政策が改善されなければならぬ。現在農地改革をやつても、ちつともその成果は上つておらない。それはなぜかと言えば、政府の農民に対する低米価政策、あるいは重策政策、こういつた收奪が、かつての地主の小作料以上に、農民にとつてはたえがたい負担になつているというところに、根本的な原因があるのであります。ここに食糧増産をはばんでいる根本的な原因があるのであります。従いましてあなたのおつしやるように、食糧の自給自足というようなことは、これは日本国民にとつて非常にけつこうなことであります。何も外国から高い食糧を買つて来る必要はありません。その食糧を買うために頭を下げる必要もありませんし、外国に食糧を依存するということは、外国に首根つこを押えられているようなもので、生殺與奪の権をとられているようなものでありまして、こういうことから一日も早く脱却しなければならないのでありますが、今までの政府食糧の外国依存政策をやつて来ております。そして農民の生産の能力を阻害しているような政策をやつて来ております。従いましてこの計画によつて、ただいまおつしやるように、日本食糧の自給自足ができるのだ、こういうことはちよつと当らないのではないかというふうに考えるのでございますけれども、この点はいかがでございましようか。さらにまたもう一つ、今利根川沿岸の人たちにとつて大きな問題になつているのは電力の料金であります。この電力料金は、灌排水等の費用が一反歩二千円もかかるというようなところがたくさんあるのでありまして、これではとても現在の米の値段で供出してはやり切れたものではない。しかも水が出たときにはこの機械は何の役にも立たぬ。その電力料金を今度は七割以上も上げさせるというような政府の方針でございます。こういうような電力料金を上げて、ますます農民を苦しめて行くような政府の政策、こういう政府のもとにおいて、その親玉である吉田内閣総理大臣が、利根川開発庁長官利根川総合開発審議会委員を両方調整するということははなはだたよりない。これではどうしても利根川開発庁長官が強力な政府の政策に屈服しなければならないような結果になつて来ると私は考えるのであります。この点についてあなたの御意見を承りたい。
  39. 石川榮一

    石川参議院議員 今日本の農村は、吉田内閣の施策が悪いために生産意欲が非常に澁滞しておる、退歩したかのように御指摘がありましたが、私どもは最近はそうは考えておりません。農民はもうかるから一生懸命にやる、あるいは損をするからなまけるというような性格ではないのでありまして、日本の農民は、自分の農業ほんとうに生業である。永久に子孫に讓る職業である。いかに世の中がかわつても、いかに利潤を追求し得るような状況になつても農は捨てまいというところに、日本ほんとうにりつぱな伝統的な農村があると私は思うのであります。最近は各農村とも非常におちつきをとりもどしまして、生産意欲は非常に旺盛になりまして、今の程度では——技術的にさらにこれを指導いたしますれば、もつと飛躍的に増産するのでありましようが、とにかく今の技術程度でもよくあることに努力をする、精農する、それが合おうと合うまいとそういうものにはあまり関心を持たないで、孜々営々として農業を生業としてこれにいそしんでおりますのが日本の農村であります。それが今の日本食糧を非常に豊かにしてくれたゆえんであると思うのであります。一つ政府のやり方が思うようにならぬからといつて怠業する、あるいはある内閣がいいことをしてくれたからといつて急に意欲が盛り上るというようないわゆる浮動性のある精神でなくて、農村精神として、農民精神として、心魂に徹して農事にいそしむということが、日本の農村の美風であります。もちろん多数の中にはいろいろの人もありましようが、多くは私はさように善意に解釈しております。しかしながら今のようにいかに努力いたしましても、年々歳々来るところの暴風雨に、一朝にして美田を崩懐されてしまうのではないかという不安焦躁にかられておりまする農村が、非常に多いのでありまして、この点は私は将来農民から恐るべき反撃を食うときが来るであろう、かように考えておるのであります。政治全般に対する食糧の値段の問題あるいは供出の問題等の技術上の問題に対しましては、いろいろの議論はありますが、そうすばらしい不満があるとは考えませんが、荒廃し切つた川をそのままに、今御指摘になりましたように渡良瀬川の周辺は、三千町歩土地をあの河底に没するような政治が、数十年前にあの用水池をつくりましたが、用水池の河底が非常に隆起したために、その用水池を提供したその提防の周辺にある数十の村々は、冠水で悩み拔いておるのであります。洪水よりも冠水は一年に何回もあるのであります。波を打つて行くりつぱな美田が、稻の穗をかぶられて全冠水する状況が各所に見られるような現実を見まするときに、私は農民が非常な憤懣を感じて、涙をこぼして耕しておることを知つております。この方が恐るべきものがあります。一般の政治面から来る農村の気分の頽廃ということは私どもは信じられません。ただ災害をこのままにして日本の農村が三年も五年も行きますならば、恐るべき反撃を食うであろうということは、私どもは認めざるを得ないのであります。こういう点等も考えまして、私どもは緊急やむを得ざるものとしてこの法案を編み出した次第であります。しかし政府はこの法案に対しましては全幅の支持をしておりません。ある閣僚のごときは、これの通過を望ましくないとさえ言われております。それにもかかわらず——私どもは自由党員でありますが、農村の現在のあり方に万幅の同情禁じ得ざるものがありますので、やむにやまれずこの法案をお願いしたわけであります。要は全国にそういうものがあるだろうということも想察するにかたくないのであります。こういう見地からぜひともこの法案に対しまして、十分なる御検討を加えていただきまして、私どもの念願するところを御了解願えますならば、ぜひとも御協力あらんことをお願いいたしまして御答弁にかえます。
  40. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 災害防除するということ、利根川の利水を達成するということは私どもは賛成でありますし、心からそういう沿岸住民の要求を支持して、今日までわれわれは政府に対して要求したのでありますけれども、しかしながら政府の政策ははなはだどうもけしからぬ。こういう沿岸住民の要求を無視してちつとも防除をやつてくれない。その原因をいろいろ追究すると、これは吉田内閣総理大臣が言つた、先ほど私が申したアジアにおける共産主義制圧の一勢力たらんとする、外国の植民地になつてアジアにおける侵略の拠点になろうというところに根本的な原因があるのだから、こういう吉田内閣をぶつつぶしてしまうことが、利根川治山治水を達成する最も近道であるというふうに考えるのであります。  そこで私はもう少しこまかい点を質問したいと思います……。
  41. 江花靜

    江花委員長代理 池田さんにちよつと申し上げます。こういう一つ法案をつくるにも、その基礎観念として雄大な世界観とか、またいろいろな政策の上に関連することは申すまでもありませんけれども、なるべくひとつ事務的にお願いいたします。
  42. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 第一条の目的でありますが、利根川流域における資源開発し、利用し、保全するというのが第一の目的になつておりまして、災害防除ということがその結果になつているのであります。ここに私どもとしてはこの法案の第一の問題点があるのであります。なぜ災害防除という方を第一の目的としてこの法案をお組みにならなかつたのでございましようか。その点をお伺いしたいのであります。というのはどういうわけかと申しますと、たとえば電力資源と灌排水のときの水資源というものとは、矛盾することがあるのであります。たとえば発電のために水がほしい。そのときに農民の方で水がほしいという場合に、ここに相剋摩擦が起るという例もあるのであります。あるいはまた発電設備が災害の原因になつているというような例もあるのであります。これは長野県の信濃川の例でありますが、発電設備が上流災害の原因になつているのであります。あるいはまた灌漑排水のために使用する水が、私が先ほど申し上げました電気料金と相当密接な関係を持つのであります。そしてこの電力料金というものが電力資本によつて決定されるということになりますと、非常に高い電力料金を灌漑排水のためにとられなければならない。農民の利益電力資本家の利益とが対立する、こういうことも考えられる。それから足尾鉱山の鉱毒の問題があります。これは足尾ばかりではございません。各所の河川に流入して行く鉱毒の問題があります。これはやはり資本家の利益を先にするか、それとも農民の利益を先にするかということによつて、対立した問題になつて来るのでありますから、こういうように資源開発ということはもちろん重要ではございますけれども、まず利根川におきましては、災害防除ということを第一の眼目として法案を練られた方がよかつたのではないかということを考えるのであります。この点についてまずお伺いいたします。
  43. 石川榮一

    石川参議院議員 お答えいたします。第一条の目的でありますが、災害防除を何ゆえに第一に掲げなかつたかというと、第一条におきましては、どれが先か、どれがあとかという解釈をつけて書く意図はないのでありまして、災害防除を先にいたしましても、開発を先にいたしましても、第一条の条文は、全部を総合的にやるということでありまして、順位をきめてやるということをうたつているのではないのであります。この第一条は、開発、利用、保全、災害防除、それがやがて産業の振興に資するという意味合いをもちまして考えていただくようにいたしたいと思うのであります。この災害防除は、災害防除だけでは私は成り立たぬと思う。なぜそうかと申しますと、今災害防除対策をかりにやりましても、応急工事をやるというような場合におきましても、常に進展いたします経済文化があります以上、あらゆる経済的な施設文化的な施設が水を頼りまして相当に起つて来るだろう。特に日本のように天然資源の乏しい国は、水に頼ることが非常に大きくなるであろう、これから百年、二百年の後には、水資源はもつともつと重要度を増して来るだろう、かように想像いたしまして、災害防除をなす場合には、将来起り得るあらゆる経済的な面から来る施設等を勘案して行かなければならぬ、かように考えておりますので、その一環として災害防除策を立てなければならぬというようにも考えられるのであります。こういう点等から考えまして、先に災害防除をうたわなくても、開発をする——これは今しなくても、この法律が通らなくても、必ず開発します。開発することが災害に非常な影響を及ぼす場合がある。また利用することも、さつきお話になりましたような電力、あるいは灌漑水をこの利根川から引きますことも、みな災害一連の連絡があるのであります。これらが適切に施設をやりませんと、災害を呼ぶ施設にならざるを得ないというようにも考えられますので、開発し、利用し、そして保全して、最後の目的は永久に災害防除に寄與させんとする開発、利用、保全に持つて行こうという意味を含めまして、実は最後に災害防除ということを入れたのでありまして、産業の振興に資するということが最終の目的であります。でありますから、第一条は、先に開発をして、災害防除をあとにするという観念でないことを御承知おき願いたいと思います。  第二に御指摘になりました電力と灌漑との矛盾あるいは撞着が起りやすい、あるいは発電設備のために非常に農民に悪影響を及ぼすような、いわゆる災害を及ぼすようなことが起り得るが、どうするかというような御質問でありますが、私どもは第二十三条にあります特別の法人をつくりますのは、これらの問題をなるべく公共性を持たせまして、利潤追求の機関たらしめないようにするために、特別の法人をつくりまして、これに公的性格を與えることによりまして、利潤追求にのみ堕さないように、この沿岸千五百万住民が安心して電力を使い、安心して電力設備をすることができますような、農民に寄與し得るような公的性格を持つ会社を意図しておるのでありますから、御心配になりましたようなことは、私どもはこの特別の法人の性格を考えましたとき、起り得ないと思うのであります。もし起るといたしますれば、もちろん私どもはこの千五百万住民のためになる政治を進めたいという考え方から出ておりますので、電力の問題も、あるいは発電設備の問題も、その線から相当に制限を加え、あるいは圧縮をするというような構想を持ちたいと思つております。特に電気料金のようなものは公共性がありますので、利根川の水源からとります電力料金は、この法人の適正な運営によりまして、もし利益がありますれば、農村から投下しました資本に対する利潤として與え、でき得る限り低廉にして豊富なる電力をこの農耕地に流して行きたいということがねらいであります。  鉱毒問題の点でありますが、最近は非常に設備がよくなりまして、その声を聞くことがなくなりました。しかしながら将来開発が各地にありますから、あえて足尾の銅山とは言いませんが、将来鉱毒の問題が起り得ると思うのでありますが、これらの問題も、要は一般の住民、農耕に従事する農民層の利益中心として施策を講じ、制限を加え、あるいはその鉱山の採掘をもさしとめねばならぬというように考えておるのであります。要は利根川流域に住む農民層を中心とする最も理想に近い境地の実現を意図しておりますことを御了承願います。そしてこれらの点から特別法人の設立を意図しており、この法律もそこにねらいをもちまして出発しておりますことを御認識願いたいと存じます。
  44. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 そういう御答弁をお聞きいたしますと、また元へもどりまして大きな問題に行かないと、なかなか納得行かないのでございますが、たとえば近衛内閣にしても、東条内閣にいたしましても、まさか日本の川はどうでもいい、日本の農民はどうでもいい、とにかく勝てばいいのだから、犠牲にしてしまえ、そういうつもりではなかつた。個人的な気持はそうでなかつたかもしれませんけれども、やはり戰争になり、それが進んで行く過程におきましては、日本の川を徹底的に荒れさせ、山林をまる裸にしてしまつた、そして今日に至るまで川が直らないという原因をつくつたのでございまして、従つて今後日本がどういう方向に行くか、アメリカとの單独講和で、日米経済協力で、そして共同安全保障協定に判を押して、日本資源をアメリカの軍需計画の遂行のために徹底的に総動員して行くという計画のもとでは、また森林もまる裸になり、それから資源開発だといつてその方に重点が置かれて、電力どもアルミニウム工場などに最大限に流れて行く。そして農民の灌漑排水のための電力は不足し、高い電力料金がとられるということが予想されるのであります。そういう点についてあなたの根本的なお考えをお聞きしたいのでありますけれども、そういたしますと、これは長い論争になるかと思いますので、その点はまたあとでお聞きいたしてもけつこうでございますが、そういうことよりも、今沿岸住民の望んでいることは、何としても利根川の氾濫を直してもらいたい、これが重大な問題だろうと思う。だから、まずあの栗橋の三本もある鉄橋を上げる、それから川床を下げる、それから河道を変更する、ダムをつくつてやる、砂防や森林対策を講ずる、これを徹底的にやつてもらえば利根川は直るのである。こういつております。この点について第一に重点を注ぎますならば、政治的な問題にせずに、とにかくこれだけがこの法案の問題なのである。この点については徹底的に政府にぶつかつて進んで行くのだということでありますならば、私どもも大いに賛成して、先頭に立つてつて行きたいと思うのでありますけれども、何しろ現在の政府の、特に国土総合開発委員会の意見というものが、日米経済協力一環としての総合開発ということがうたわれてある限り、利根川総合開発計画というものも、結局アメリカの軍事目的のために日本資源開発する、そのための利根川開発計画、こういうようなことになつてしまうおそれが十分あるのであります。でありますから、私は第一条の目的におきまして、災害防除ということをまず第一番に掲げられた方がいいのではないか。もしまたそういうことなら、何もことさらに法律をつくりませんでも、建設省や農林省でうんと予算を組みましたならば、利根川は一応は直ると思う。なぜ今日までそれをやらぬかと申しますと、先ほど言つたように、單独講和でアジアの共産主義勢力を制圧する一勢力たらんとする政策だからできない。ですから、どうしてもここのところが吉田内閣の政策、あるいはあなたたちの大きな考え方というものと、それからこの利根川開発法であなたが説明されておるものとは、どうしても矛盾しておるように受取れるのであります。この点についてあなたのお考えを承つておきたい。問題はこういう開発法を出すよりも、建設省なり、農林省でなぜ利根川の予算を出さないのか、これを突いて行くのがよろしい。だから昭和二十六年度の予算におきましても、あなたたちが先頭に立つてああいう予算を返上してしまうのが、利根川災害防除の最も近道だつた。それをやらないで、あの政策を支持しておいて、その政策の中で利根川開発法を出して、沿岸住民に対しては、この法律が通れば、いかにも利根川災害防除ができるのだというふうに言われることは、これはむしろ大衆に対して一つのでき得べからざる幻想を與えることになるのではないか、こういうふうに考えるものでございます。この点について御意見を承りたい。
  45. 石川榮一

    石川参議院議員 第一に御質問になりましたことはお互いの意見でありますので、意見意見をもつて鬪わしましても意味がないと存じます。私どもは池田さんと所見を異にしておりまして、私は今の吉田内閣の政策を支持する一人でありますから、所見がおのずから違いますのはやむを得ません。ただ災害防除だけをやつたらいいではないか、それだけで問題は解決するのではないかというお話でありますが、私は災害防除は、やはり利水を目標とする災害防除でなければならぬ。災害防除それ自体だけで利根川開発しない。それには山地における造林、植林、あるいは山腹砂防、あるいは渓流砂防、その他ダム建設等上流地の直接災害の原因をなすものを芟除する必要がある。それなくては災害は防ぎ得ない。下流、中流ばかりに金をかけるのでは意味がない。もつと深いところに原因があるのでありますから、そういう点を芟除するために、開発を伴うところの、災害の根源を断つための工事を施行するには、どうしても総合開発の線で行かなければでき得ないのであります。農林省における林野局なり、あるいはまた農地改革を意図しておる農林省農地局があり、開墾すべからざるところが開墾せられ、植林すべきところを開墾するというような矛盾撞着がおのおの起つておりまして、いやが上にも山地を荒廃させておる。これらのものをやはり政治的に解決しなければ、いつまでたつて利根の本流の真の改修はなし遂げられないというような観点から、各機構を一元化して、水に関する限り水の行政の一本化をはかりまして、そういう線で進みたい。これが根本的な災害防除の第一のねらいでなくてはならぬ。おのずから中流、下流にまでその工事は利益を寄與するのでありまして、さしあたり起る災害はもちろん防除いたしますが、根本的な、いわゆる拔本寒源的な治水治山対策を一環とする総合開発水資源の技術的な高度の経済に対する寄與をさせたいというのをねらつております。災害対策は絶対に無理でない。災害対策はそこに力点を置きませんと、およそ意味がないというような考え方で、こういうふうな条文をつくつたわけであります。御了承願います。
  46. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 最後に、資源開発ということと、災害防除関係あることは、私もよく存じております。たとえば森林資源を問題にいたします場合に、森林資源の保全ということは、災害防除にとつてきわめて大切な問題であります。しかし植林を大々的に行つて、そうして森林の伐採を制限することがはたしてどの程度可能であるかという大きな問題からの議論も出て来なければならないはずであります。まず森林資源の伐採を制限した場合に、日本の住宅問題の解決を一体どうしたらいいのか、木材の需要をどうすればよいのか、あるいは薪炭用燃料の問題をどう解決するのか、こういう問題になると、やはり政治的な問題にぶつからざるを得ない。たとえば中共、ソ同盟との講和なしには、木材資源の問題は解決できないのであります。しかるに中共やソ同盟を敵にまわすところの單独講和、戰争がこの單独講和から起つて来る。戰争になつたら勢い木材資源が枯渇する。おのずから森林は荒廃する。これは日本の帝国主義がアジア俊略戰争によつて全国の山林を荒廃したという事実によつて明らかなのであります。こういう森林資源を保全するということはけつこうである。森林資源を保全するという立場に立つて災害防除を論ずることはけつこうですけれども、しかしそれはこの一片の法律によつてはできないのだということを私は申し上げておるのであります。もしお答えが得られますならば、お答えいただければ……。
  47. 石川榮一

    石川参議院議員 この法律は特別法でありますので、今までのあらゆる法律に優先いたします観点に立ちまして、できると考えております。それゆえに、今御指摘になりました木材資源につきましては、群馬県並びに栃木県方面におきまする資源の調査をいたしたところから考えますと、奥地林の埋蔵量は約一億八千万石以上に達しておりまして、大きな森林資源が今まで眠つてつた。これらに、私ども計画するように林道の開鑿をいたしますならば、この相当に腐蝕して倒れ去るであろう森林資源が、住宅復興、あるいは経済的に使おうとする方面相当寄與し得ると信じております。山の浅いところはもちろん伐採を制限し、強い水源を保全する政策を執行いたしますが、奥地林開発は、やはりこの利根川開発計画一環として、林道の開鑿によつて奥地林の毎年腐蝕して倒れて参ります巨木をどしどし搬出して、そうして今困つております木材を緩和して行く。今人絹の材料として盛んに針葉樹が切られておりますが、最近針葉樹を使わずして闊葉樹によつて人絹の材料たらしめ得るような技術が進んでおるということも聞いております。たくさん埋蔵しております闊葉樹林を人絹工場にまわすことも可能でありますので、こういう点からも相当経済に寄與するというように考えておるわけであります。ただ御所見の中に、中ソと講和なくして日本の自立はあり得ない、戰争を巻き起すというお考えにつきましては、これはおのおの所見を異にいたします。私どもはあなたの説に同じがたいのを遺憾といたします。
  48. 江花靜

    江花委員長代理 それでは必要にして十分な程度の応酬をお願いいたします。前田榮之助君。
  49. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 私は利根川総合開発自体については提案者と同じ立場で大いに共鳴するものでありますが、ただこの利根川開発法について今同僚委員からいろいろ御質疑があつたわけでありますが、その中でなお漏れておると思われる点を二、三提案者に御質問申し上げたいと思うのでありますが、まず第一に国土総合開発法との関連の問題でありますが、提案者はこの利根川開発をいわゆる拙速主義というような、非常に急いでおられる関係から、現在の国土総合開発法では目的達成は困難であるという立場をとられる。その上に各省におけるところのなわ張り争いと申し上げますか、セクシヨナリズムが、こういう開発に支障があるという点で強調されたのであります。この点は私も認めるのでありますが、ただ今日本国土総合開発についてはきわめて重要なものがありまして、提案者の御説明のようにこの利根川開発法の成立によりまして各省におけるところのセクシヨナリズムを克服するという点は、なるほどある程度速成するとは思いますが、ただここでわれわれが心配いたしまするのは、それよりもこの後に起る問題といたして、いわゆる地域的な一種のセクシヨナリズムと申し上げますか、利根川水系総合開発については、それぞれの立場で政治的なあるいは経済的な施策を強力に推進して行くということにはなるでありましようけれども、これと同じように、たとえば只見川水系あるいは吉野川水系であるとか、阿賀川水系であるとかいうようなものについても、そういうものが当然起るのでありまして、国の総合開発の上から申し上げますと、これが水系による一つのよい意味での競争になるものならばよろしいのでありますが、そういうことから日本全体の総合的な深い立場で開発して行かなければならぬものが、順序がくずれ、あるいはまた重要なる点があとに残されるということになりますと、国土総合開発という国全体の立場の上で一大支障を来す。これは国会といたしましてはきわめて重要な問題なのでありまして、そういう点で私はむしろ提案者目的国土総合開発法の改正に求め、現在制定されたる法律の改革の上に立つて目的の達成に努められることこそが、国全体をよくし、また国全体を愛する愛国的な立場の上に立つて国会の務めではないか、かように考えるわけでありますが、そういう点での提案者の御意見をお伺いしたいと思います。
  50. 石川榮一

    石川参議院議員 御質問の国土総合開発法利根川総合開発法との関係並びに国全体の総合開発とこの利根川総合開発法との順序の点あるいは他の川に影響を及ぼすであろうという点につきましての御質問であります。総合開発法は先ほども申し上げましたように、あの法律は、経済、厚生、文化等人間の必要とするあらゆるものを総合的に勘案して、その企画を立てようというねらいがあつて非常に広汎なものなのであります。特にこれを予算面においてみますと、経済安定本部の事務所——いわゆる総合開発法の事務局に相当するのでありますが、これに対する二十六年度の予算はわずかに四百五十万六千円であります。これが国土総合開発事務局の総経費です。またこれとは別に河川総合開発調査に要する経費として七百万円を要求しております。またそれとは別に資源調査会という形において土地の調査に必要とする経費として一億六千八百三十四万円を要求しております。これらを勘案いたしますと、今の国土総合開発法を運営いたしまするあの安本にあります事務局では、主として資源の調査、土地の調査に必要なる経費を大きく取上げておりまして、河川に関する件につきましては、全国的にわたりまして、わずか七百万円であります。あれは事務局でなく事務所と書いてあります。事務所でもなく、もつと小さい事務どころであります。それが四百五十万円、こういうような予算しかとつておりません。この国土総合開発審議会並びに国土総合開発法に大きな期待を私どもは持ち得ないのであります。およそこれは各県から出て参りまする要するに政府から指令を出して出せとおつしやいますから各県が出しますが、その出したものを收集する役所にすぎない。これを比較検討する機関を持たない。比較検討するのは審議会があるだけでありまして、事務局はそのことについてはほとんど無力でありますから、審議会のメンバーに至りましては、河川に関しましてはわずかに二人であります。委員が二十七人ありますうちで、水系に関する人と思われます方は、建設技術研究理事長の内海氏等しかないのでありまして、そういう点から考えまして、およそこの国土総合開発審議会なるものの性格は、ただ広汎に理想が書いてあるだけでありまして、それを推進し実現するという性格を持つておらない。予算もそうなつておる。かように指摘するのでありまするただ御指摘になりました利根川を加えれば、あとこういうものが出て来て、その順序をくずしはしないかという御質問でありますが、今その順位をきめる機関国土総合開発審議会の中にも私はあり得ないと思う。もしこれから出ますとしますれば、これに續いて出ます川はたくさんあるかもしれません。これは日本の荒廃したる現状から見ましてやむを得ないと思うのですが、これに対して国会が愼重に審議して、その順序は国会の良識によつて決定すべきが最も適切である。これは技術者にゆだねるべきものではない。あらゆる面から勘案いたしまして、この緊急度あるいは経済的の観点等いろいろな点から御勘案願いまして、国会がこの順位を決定していただいてさしつかえない、かように考えておりまして、どうしても国策として取上げるべきだということでありますれば、逐次取上げてもさしつかえない。それならば大臣を一つ新しくつくるかと言われますが、これは利根川開発の機構を少し拡大すれば、三本や四本の全国にわたる最も必要とする水系に対する開発はできる。一大臣のもとで十分なし得る。決して官庁をふやす必要はない。ただ若干の機構を拡充整備すればよろしい。むしろそうすべき必要がある。決して利根川だけということを申し上げておるのではありません。国会できめられましたどうしても必要とするものはやるべきであるというのであります。
  51. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 私は現在の国土総合開発法日本総合開発がきわめて能率的にできると申し上げておるのではないのでありまして、この国土総合開発法の改正によつて利根川開発をあなたが意図されておることを実現されるようになぜ努力されなかつたかという点に、私の質問の重点があるわけであります。従つて現在の国土開発法が今御指摘になつたようなきわめてぬえ的なものであるということについては、大体提案者と私と同意見なのであります。しかしあなたは埼玉県の選出議員でありましても、国会議員でありまして、国全体のことを取扱わなければならない。埼玉県選出であると同時に、日本国の国会議員である。そういう立場から、利根川に非常に力添えをなすつたことについてはきわめて敬服するのでありますが、同時に日本全体をどうするかということがわれわれ国会議員の務めである。従つて私は国土総合開発法の改革が立法的にできない、こういうことであるならばこれは承服するわけでありますが、ただ問題は現在の国土総合開発法を改正いたしまして、たとえば利根川洪水敷、あるいはアメリカのTVA式の実行が部分的に、あるいは利根川水系総合開発の改革による点においてこういう方式でできる、あるいは吉野川水系はこうやつてできる、こういうように国土開発法の改革の中へ、あなたが意図されたものがそのまま利根川水系について、ただちに行われるような法文をつくつて、それを国全体とにらみ合せながら——この利根川というものは、国全体の立場から見て決して放つておけばいいということにならぬことだけは間違いはない。地域的に日本の重要性のある河川であることは間違いないのでありますから、そういう立場でお考え直してはどうか、こういう点なのであります。なぜそういう点を努力されなかつたか、あるいは立法的に不可能な問題であるかどうかというような立法技術の点があるのかどうか。あるいはまた政治的ないろいろな現在の段階におけるところの情勢、たとえば自由党内閣の方針ではそれができないものであるかどうか。こういう点を私はお尋ねしておつたのでありまして、その点が明確にならないと、われわれことに建設委員会におきましては、国土総合開発法というもので一旦日本の総合国土開発について手をつけた以上は、これは不十分であるということは国会議員建設委員会の者はそれを第一段階としてはみな承知いたしておるのでありますけれども、多少計画ができたときには、これを実施するのはどうするかという点については、この法律を改革せなければならぬ。こういう考えはわれわれも持つておるのでありまして、その点がどうもこのままで行きますると、今言うように、水系々々のいわゆるなわ張りみたいなことになつて日本国全体のいわゆるきわめて合理的な総合開発というものが跛行的な状態になるということになると、これは一大問題であります。これでもし利根川をやりますと、必ず次にはどこかでこういうものが出る、ちようどわれわれは特別都市法というものをかつてつたのでありますが、今日あの特別都市法がどういう状態になつておるかということをごらんになればよくわかるのでありまして、きわめて無意味なものになつておるような状態になつております。従つてこの開発法も最初提案者が意図されたような状態よりも、むしろ逆な結果になつた場合においては、利根川に対して申訳ない、こういう一つ熱意を持つておるのでありますから、その点ひとつ御説明を願いたいと思います。
  52. 石川榮一

    石川参議院議員 御説まことにごもつともでありまして、国土総合開発法を私ども考えておるような線に改正ができるかできないかはわかりませんが、今御心配になりますような、ほんとうに強力な国土総合開発法がすみやかに改正せられまして、そうして私どもが期待するような、相当大規模機関の設置が見られまして、その予算の裏づけ等に相当の確信が得られるようでありますならば、私どもはあえてこれを出さなくても済んだと思うのであります。しかし現在の情勢下におきましては、先ほど来申し上げましたようなわけで、非常に各省のセクシヨナリズムが強いのです。経済安定本部の建設交通局等にも参りまして、数回意見を聞いたのでありますが、はつきり申し上げていいかどうかわかりませんが、ややともしますと、安本の中核をなす審議会におきまして、各省のいわゆるひもつき意見が出て参りまして、ことごとにあらゆる部門が大きく紛糾するだけでありまして、これを收拾することがほとんど不可能であるというようにわれわれは想見するのであります。従いましてこれを何とかして強力にまとめることが最も必要であつて意見は出ましても、お互いに讓らざる意見でありまして、それの民主的なまとめ方をなかなか困難とする情勢に立つておるのでありまして、ただ法律を改革するだけではなかなかこれは思うように行かない。この各省のトラブルは牢固として拔くべからざるものである。どうしてもこれは大きな法制の力によるほかはないのである。こういう考えを私は持つておりまして、その国土総合開発法の一部の改正をたといいたしましても、この改正はいずれ限度があるのでありまして、根底からこれを改正するということはもちろん困難であります。先ほど来申し上げましたように、あの国土総合開発法はあらゆる部面の総合開発でありまして、国土と書いてはおりますが、あらゆる資源開発であります。あまりにも広汎にわたつておるわけでありまして、水資源のみに重点を置くことは一層困難になる。むしろ水資源水資源として、別に立法化しまして、強力な実施機関を置く方が適切だ、かように考えまして、この開発法案をつくつたわけであります。要は今国土開発法のねらつておりますあらゆる経済的な価値、文化的な施設等を勘案して、遠大なる計画を持とうとする、広い視野に立つたプランを立てるということがあの主張でありますので、水資源に重点を置き、特に一部五県に協力態勢を要求するなんということはさらに困難でありますので、これはどうしても特殊立法によつて解決しなければできないだろう、かように考えてこれを立法したわけであります。もちろん他の地区に対しても国会議員として決して無関心ではないのであります。要は全国河川水系の中で、失礼ですが、今御賛成の意を表していただきました利根川は、特殊地域中の特殊地域であることは何人にも認めていただけると思います。こういう意味におきまして、まず第一に利根川考えましても物笑いになることはないと思うのであります。もし第二のものをどれにするかということについては国会議員としてさらに御研究を願い、また地元の要望等を聞きましてみずから決定すべきであつて、そのあやまちなきを期するために、利根川の次にいつやるかわかりませんが、やるような場合には、国土総合開発審議会規定の改正によつてこれから先やりますか、あるいはこういう單独立法でやるかわかりませんが、私どもは、普通の河川は大体改修で済むと思います。大きく総合開発と名前をつけなくとも、普通の川は治山治水一本だけで私は全部済むと思います。しかし利根川の総合的な計画を特に意義づけるものには、東京都の問題もあり、関東の複雑した地勢もあり、一部五県にもわたるという大きな地域的な問題もあり、トラブル等のあります特殊的なものであります。こういう観点に立ちまして、利根川開発法と同じ立法がたくさん出て来るといたしましても、それが單独立法としての価値がありやいなやは愼重に考慮を拂うべきでありまして、その点こそ国土総合開発法の改正によつて目的を達し得るのではないかと思います。利根川全国における最も複雑した大きな地域にわたります自他ともに認めていただける川であるという観点に立ちまして、実はこの法案を出したわけであります。国土総合開発法に私どもの期待するようなすばらしい改正が行われ、そうしてこれに予算の裏づけが行われるというこうでありますならば、私どもは皆さんを煩わして、こういうことを申し上げなかつたのでありますが、およそ今の政治情勢下では困難である、かように考え緊急性をわれわれは非常に重視しておりますので、特にこの法案を作成したわけであります。御了承を願いたいと思います。
  53. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 立法技術の上で困難というよりも、今の客観情勢からこの方法を選ぶ以外になかつたという意味、その点は了承するわけでありますが、問題は、こういう單独立法が出まして、一つ水系別なせり合いと申しますか、国土総合開発全般に一大支障が起りはせぬかということ、これがひいては今後十箇年計画を企図されておる利根川開発に暗影を投げつけるおそれはないか、こういう点に心配があるのでありますが、この点は重ねて答弁を聞くのを避けて、次の質問に移りたいと思います。提案者説明によりますと、大体千九百億程度計画をお考えのようでございますが、かような計画の水準はどこに求められておるのか。これはむしろ今後できます審議会等で、あるいは千九百億でなく、三千億も要するものになるか、あるいは千五百億程度にとどまるかというようなことをもつと專門的に調査した結果によらなければならないのではないかとも考えられるわけでありますが、提案者は何を基準に一応の目安を立てられたか、この点を参考のためにお聞かせ願いたいと思います。
  54. 石川榮一

    石川参議院議員 御質問の提案内容の予算の基準でありますが、私どももちろん調査機関を持つておりませんから思うにまかせませんが、この法案を作成するにあたりまして、およそどの程度の費用を要するだろうということがまず頭にぴんと来たわけであります。そこで建設省の十箇年計画案、農林省の農地局におきます土地改良に関する五箇年計画案、林野庁における林野行政十箇年計画案、また群馬県、埼玉県、千葉県、栃木県等の各県が考えておりまする計画の全貌等を勘案いたしまして、資料は主として建設省、農林省に收集してもらい、そうして得たところの集計が二千四百五十億円という厖大なものになつたのであります。これは各省からいただきました根拠ある資料でありまして、今のところこれ以上の資料は安本にもないのであります。この資料にありますように、植林事業に六十億、山腹砂防に百五十億、林道に八十二億、渓流砂防に二百四十億、雨量観測に三億、林野行政、治山費等を加えまして五百三十五億と称しております。あとは利根川改修に七百六十五億、電力開発のために要する費用が三百七億、農地改良に要する費用、灌漑排水に要する費用が約五百億であります。その他を加えまして大体二千四百五十億円という数字が生れて参つたわけであります。これは各省が至急にとりまとめたものでありますから非常に杜撰なものであろうと思う。しかし根拠はある。従つてこういうふうな資料はややもしますと水増しが多いのでありますから、一割ぐらいは必ず水増しを見積らなければならぬというので、この集計に対して一割を減じまして二百五十億、あるいは二割創る必要が起るかもしれませんが、とにかく集計で一割はむろん多過ぎる、各省、各県から出します資料は相当水ぶくれがあると判断して、今までもそういう傾向がありますから、常識的に三百億円の発電計画は二割の特別控除によつて処置するという建前をとりますと残りは千九百億であります。その千九百億のうち県負担に帰属すべきものが約七百億、国家財政から支出すべきものが千二百億、この千二百億の計画開発庁の設置によりまして、総合開発の線から相当圧縮ができると思うのでありまして、必ずしも一千数億を支出せずして済むであろう、二百億程度総合開発の線で節約し得る、考慮し得る、かような見通しを立てまして、表面は千九百億になつておりますが、国の財政支出で見込んでおりますのは約一千億であります。そういうような観点から、資料は建設省、農林省、農林省は林野局、農地局計画部及び群馬県庁の調査資料等もこの中に加わつております。大体におきまして今これ以上の資料は得られない。これは信用し得る資料だとかように考えております。
  55. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 資料の内容につきましてはいろいろ検討をしなければならぬのでありまして、また現在の物価は何年を基準にしておるかということもありますから、これは詳細にわたりますので別の機会に讓りたいと思うのであります。  次にお尋ね申し上げたいのは、本法の十三条の参與の点でありますが、参與十名以内を置いて庁務参與させると書いてあるのでありますが、この参與権限というか性格、こういうものはどういう御構想なのでありますか、いたずらにただ参與とか——私はあと審議会委員についても御質問申し上げますが、この参與の性格権限、ただ役人を手伝わせるということではないように考えるのでありますが、参與とか何のへちまとかいう名前をつけることはおやめになつた方がいいと思うのでありますが、総合開発のように真劍な事業に取組まなければならぬものは、そういう不明確なものではいかぬと思うのでありますが、これはいかにお考えになりますか。
  56. 石川榮一

    石川参議院議員 参與の問題でありますが、この法案目的を達成いたしまするためには、今の各省の行政機構に関連が非常に深いのでありまするから、この行政機構の持つております技術、あるいは設備、あるいは計画の能力等についても相当なものがあると思いますので、これらの大事な技術能力、建設力、その他その省にあります相当尊敬すべき伝統があると思いますので、これらを十分にこの開発庁の中に協力態勢として取入れる必要がある。ただ各省に何らの関連を持たずしてこれが出発するといたしますと、ややもすると各省から迫害をされまして、この法案のねらいといたしますものが、この開発庁が宙に浮いてしまう法律ができましたら、その官庁は半身不随に陷るのではないかという心配があるのであります。そこでしばらくここ数年の間はつとめて各官庁と連絡を緊密にし、各官庁の強力な支持を得たい、これをねらつておりますので、この参與には各省の次官あるいは局長級の諸君を職員といたしまして、参與の形においてこの開発長官の補佐機関としてこれを重視し、協力を求めようというので、この参與を置いたわけであります。この参與協力によりまして、ややともしますれば冷眼視されるこの開発庁に対する各省の協力をスムーズに、円滑にさせる潤闊油にもなり、また技術を十分に開発庁に生かしていただく役割を演ぜられて、自他ともにいいのではないか、仕事は結局建設省、農林省、各府県がみずからその計画の中にも、少くとも代表意見として出てもらつてその意見相当重視して、いいものは取入れ、悪いものは捨て去るという態度をとつていただけばいいのでありまして、その必要があるのではないか。要は各省の協力を求めたいというのがこの参與を置く重大なるねらいであります。どうかさよう御了承を願います。
  57. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 これは補佐機関として第一に手伝わせるというようなことは、通俗的には通ります言葉でありますし、わかるのでありますが、法律的な性格と言いますか、参與権限とか責任とかいうようなものはそれではきわめて不明確なのですが、この不明確な立法ではどうかと思うのです。これをもう少し明確にできなかつた理由は何かほかにあるのでありますか。
  58. 石川榮一

    石川参議院議員 参與はこの開発庁の職員で、いわゆる補佐役でありますから、別に責任の立場に立ちません。また権限も別に與えられません。開発長官の意図する開発計画に対する重大なる進言、資料の提供、協力等をさせる機関でありまして、開発長官の意図するものを、それが実質的に各省に十分徹底し得るような意味を持ち、また各省の意見もその長官に十分認識させるという建前もあるのでありまして、要は権限あるいは責任というものを負いませんで、ほんとうのフリーの立場で各省の意見を率直にそこに反映させ、助力させるというフリーな立場で参與を置いたのでありまして、これは常勤でなく非常勤でありますから、責任も権限も必要といたさないのであります。
  59. 前田榮之助

    ○前田(榮)委員 ただいまの説明ではこの法文の上から言つてもきわめて不明確なものでありますが、質問はこの程度にいたしておきます。  最後に第十四条の審議会の問題でありますが、これは前にも同僚議員の村瀬君から質問もございましたが、この審議会というものが今の行政の上からずいぶんたくさんありまして、今吉田内閣におきましてもこの問題を閣内において取上げられているようでございまして、審議会の整理を行う單独立法でできております。いろいろな法律の中で、中のものでさえこれを整理しようとされているところがあるのであります。たとえば旧軍港市転換法における審議会を廃止するということが大蔵省の内部で、一応意見に上りながら、これは單独立法で国会できめたものをそう簡單にできないぞというようなことから折衝を續けまして、今一応はそれならやむを得ないということになつているわけでありますが、今吉田内閣審議会の整理を行わなければならぬ、こういうことになつておる。従つてこの審議会については吉田内閣のこの方針と食い違う点のあることが第一点。それから私はこの審議会の三十人というものが多過ぎると思います。この総合開発というものはきわめて真劍に取扱わなければならぬ。ことに科学的な知識の上に立つという点等を考えますと、学識経験者の十人というようなものは、人の選び方によりましては非常に有効だと思うのでありますが、各県の議会の議長あるいは知事と二様に出ておるようでありますが、これは各県の代表者一名、国会議員もこれを五名くらいにいたしまして、大体二十名くらいで、主として学識経験という科学的な点に重点を置いて、あまり多くない人で、たとえば船頭多くして舟山に上るということでありますが、アメリカのTVAにいたしましても、五人委員会でこれが執行を行うというようなことが行われておりますので、日本における、部分的ではありますが、こうした日本総合開発の先端を走る利根川のことでありますので、できればそういうことにいたして、ただたくさんの人が寄つていろいろな意見を鬪わすことも民主的であるという点ではいいのでありますけれども、こういう事業というものは、ただ單にたくさんの人が寄つて議論するということよりも、もつと大切なことは、真劍に執行して行くという点に重点がなければならない。そういう点ではきわめて科学的な技術的な点に重点を置くということで、大体今申し上げたような範囲ではどうかと思います。三十人というのは多過ぎると思うのでありますが、三十人にいたした根拠、理由をお聞かせ願いたい。
  60. 石川榮一

    石川参議院議員 審議会構成の人数が多過ぎるという趣旨では私どももさよう考えておつたのであります。しかし御案内のように、この法律東京茨城千葉、栃木、群馬、埼玉という六都県にわたつておりまして、しかも六都県知事の土木行政、農地行政、それらをこの計画の面におきましては一応この機構に吸收してしまいます。各府県の土木行政、農地行政というものは、各府県における最も大きな政治なんであります。それをほとんど開発庁に吸收するということになりますので、その及ぼす影響は非常に大きいのであります。そこで行います事業は、もちろんこの六都県の住民に大きな利益を與えることは当然であり、また及ぼす害も、あるいは施策によりましては、非常に大きな損害を與える場合もあり得るということを勘案いたしまするので、この運営を円滑にし、各県の持つ種々なる今までの伝統、希望、構想等を如実にこの審議会のメンバーの中から十分にとらえられまして、そうして十分な検討を加えて、これに技術の理想を織り込みまして、基本方針をきめて、年次計画をきめ、仕事を進めたいというようなことのためには、どうしても各都県の責任ある地位にある知事は必要とするのであります。また今は知事と県会とは、昔とは違いまして非常に性格がかわつて参りまして、県会の意向は相当に、知事の意向と同じように、県民から期待されているのであります。民主政治における県会の重要性は、最近非常に深く認識されて参つたのであります。この県民の意向いわゆる県会の意向をこれに十分に加える必要がある。要するに各県会における、各地方のこの工事に関する考え方も十分反映させまして、よろしきを得たいというので、どうしても県議会の議長を入れる必要があるということになりますと、六都県でありますから十二人を要する。この委員をある県に與え、ある県に與えないということになりますれば、この法案のねらいといたしまする六都県の物心両面の協力を求めるという点からいたしまして、この点はどうしても六都県同様の立場に置かなければならぬということになりますので、十二名の人を必要とするのであります。  それから衆参議員の数におきましては、必ずしも八人でなくても五人でもよろしいと思う。しかしながら北海道開発庁のような場合におきましても、衆議院五人、参議院三人と指定いたしているのであります。この根拠はどこにあるのかわかりませんが、当時の国会はこれを認めたのでありまして、認めたとしますれば、私どももやはりこれは六都県における広汎な大計画であり、しかもこの理想を持つ計画に対しましては、やはり前例を追いまして衆議院五名、参議院三名、この点国会が通しました北海道開発法と同じような建前をとつてさしつかえないものである。多過ぎるといたしましても、二名か三名である。実はこの点につきましては別に自信があつたわけではありません。北海道の先例を追つてきめたわけであります。  それからエキスパートの十人、これも十人と限定したわけではございませんので、あるいは五人でも七人でもけつこうです。ほんとうにりつぱなエキスパートがこの中核をなす技術面から、あるいは政治面から、あるいは財政面から必要とする場合には、相当人数がいるのでありますが、多くても十人、あるいは七、八人でいいじやないかというように考えております。ただあまりに技術者を集めましても、技術者は技術者としてのおのおの主義主張があり、また研究題目等を異にすると、ややもすると技術者だけにむしろ争いが深刻になつて来るということも起り得ると思いまして、そういう点を考えまして実は十人以内、六、七人と考えているわけであります。その数の三十人ということは、私どもから見ましても多過ぎるという感があります。ありますけれども、六都県という数が根本をなしておりまする関係上やむを得ないのでありまして、行政的な面からこの程度、並びに県会の協力を——しかも各府県に大きな影響を持つのでありますから、また府県の重大なる行政の一半をになう開発庁ができるのでありますから、そういう点に注意をいたしまして、各行政機関の長並びに県会議長というものを入れる、そういう考え方でやりましたので、数が若干多いのは六都県にわたりますために、こういうことになつたわけであります。
  61. 江花靜

    江花委員長代理 他に御質問はありませんか——御質疑がなければ、本日はこの程度にして散会いたします。内閣委員会は明午前十時半より開会いたします。さよう御了承願います。     午後五時八分散会