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1951-05-28 第10回国会 衆議院 内閣委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十八日(月曜日)     午前十時四十七分開議  出席委員    委員長代理 理事 江花  靜君    理事 青木  正君 理事 坂田 英一君    理事 鈴木 義男君       今村 忠助君    宇野秀次郎君       佐々木秀世君    鈴木 明良君       田中 萬逸君    玉置 信一君       苫米地英俊君    中川 俊思君       牧野 寛索君    椎熊 三郎君       松岡 駒吉君    池田 峯雄君       小平  忠君  出席政府委員         総理府事務官         (北海道開発庁         次長)     岡田 包義君  委員外出席者         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君     ————————————— 五月二十八日  委員岡延右エ門君、松田鐵藏君、田中元君、山  口喜久一郎君及び苫米地義三君辞任につき、そ  の補欠として田中萬逸君、坂田英一君、鈴木明  良君、牧野寛索君及び椎熊三郎君が議長の指名  で委員に選任された。 同日  坂田英一君が理事に補欠当選した。     ————————————— 本日の会議に付した事件  理事の互選  北海道開発法の一部を改正する法律案内閣提  出第一八〇号)     —————————————
  2. 江花靜

    江花委員長代理 これより会議を開きます。  本日は北海道開発法の一部を改正する法律案について、討論採決に入ります。討論通告順にこれを許します。鈴木義男君。
  3. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私は日本社会党立場を代表して申し上げます。反対であります。  わが党は、真に国家的な規模において北海道開発するために、中央開発機関を設け、遠大な構想をもつて、数百億、数千億の予算を組んで、現地開発を担当する出先機関を設けるというのでありますれば、もとより賛成を惜しまないのであります。しかしこの法案の企図しておる機構改革は、そういう雄大な構想に出ておるものではないのであります。かつて官選知事時代官選知事にやらせていた普通の開発事業は、民選知事になつてからも、やはり知事に委任してやらせてさしつかえないということで、過去四年間やらして来た程度の開発事を、予算が少しふえたから民選知事にやらせるのはおもしろくないというので、にわかに別に出先機関をつくつて、その方に回収するというのでありますから、立案動機において、すでにおもしろくないものがあるのであります。もしそうでないならば、こういう機構改革は、北海道民の利害に至大の関係がある改革でありますから、先般知事選挙が行われたことでもありますし、北海道民輿論を問うためにも、事前にこの構想を明らかにしてやられるだけの用意があつてしかるべきであると思うのであります。選挙前並びに選挙中はこれを秘しておいて、選挙が終りまするや、突如として出して来たということは、その動機において疑われてもしかたがないことであります。しかも会期ももはや尽きようとするときに提案され、われわれが各種委員会との合同審議を要求しましても、これをけり、各方面の関係者の公正なる意見を徴するために、公聴会を開く余裕もなく、僅々二日間の審議をもつてきめてしまうということは遺憾千万であります。政府は本法案説明におきまして、開発事業の取扱い方を内地並にするだけだと言われるのでありますが、北海道開発内地の場合とは趣を異にいたしておるのでありまして、自治体たる北海道開発事業民間産業発展等とにらみ合せて、総合的に、統一的に、調和的にやることが必要と信ずるのであります。さればこそ政府の委嘱によつて、国の事務地方公共団体事務との配分調整について、調査研究をいたしておりまする地方行政調査委員会議も、北海道だけは別扱いといたし、三月以来北海道関係者と協議を重ね、近く全員が現地に出張して調査を遂げて、勧告案提出する予定になつておるのであります。その結論も近く出ることがわかつてつたにもかかわらず、それを待たないでしやにむにこの法案を成立させようとするのは、理解しがたいことであります。すなわちその方向を誤つており、調査不十分であり、案施の時期が尚早であると信ずるのであります。わが党は北海道開発するための国家的規模機関を設けることに反対するのではないのであります。北海道には広大な未開地があり、厖大資源が埋蔵されておる。これらを急速に開発することが焦眉の急務であることは、何人も認むるところであります。しかしこれを開発するには、今日まで北海道に投入された予算のように僅少なものではしかたがないのであります。北海道開発庁は、もつと根本的な計画を早急に策定すべきであります。特に石狩、勇払地帯天北地帯、十勝、釧路地帯のような未開発地帯に対して、しかりであります。こういうことであれば、アメリカTVA開発に類するものでありまして、巨額の経費と高度の技術を要することはもちろんでありまして、北海道庁の現機構をもつてしては実施できないことは当然予想されるのであります。私ども北海道開発庁を設けた使命は、こういう点にあるものと考えたのであります。開発局の任務なり性格なりは、こういう計画の熟するのを待つて規定しましても、いまだもつておそしとしないのであります。しかるに過去四年間民選知事に委任して行わせておいて特別の支障がなかつたばかりでなく、自治体開発行政と調和してやれるという妙味さえあるこの行政を国に回収するということは、とうてい感心できないのであります。私はこの機構改革をしばらく延期して、根本的な企画立案にまつことを提唱する次第であります。  また本案においてこの機構改革実施に移す時期は、七月一日からというのでありまして、はなはだ適当でないのであります。北海道冬期間が長く、土木事業のごときはおおむね五月から十月までの間に実施しなければならないのであります。この事業最盛期であります七月に改革を行うということは、広汎な人事の異動、これに伴う事務の再配分庁舎等の移動、機械器具、物品の配置転換などを要し、これを完了するのにおそらく数箇月を要するでありましようし、その間事業の円滑な執行を停頓させ、経費の効率を著しく減退させることをおそれるものであります。すなわち国費道費浪費を伴うものであります。私はこういう改革がどうしても必要だといたしましても、混乱と浪費を避けまするためにも、今議決して七月から実施するというような急速なことをやらずに、十分準備機関を置いて、円滑に実施すべきものと考えるのであります。すなわちにわかに実施するということに対しても反対するものであります。  その他いろいろの理由もありますが、主として以上申し述べました理由、すなわち調査の不十分、立案の未成熟、実施時期の不適当等理由をもちまして、この法案反対の意思を表明する次第であります。
  4. 江花靜

    江花委員長代理 次は青木君。
  5. 青木正

    青木(正)委員 私は自由党を代表いたしまして、簡単に本案に対して賛成意見を申し述べさせていただきます。  ただいま社会党鈴木委員から、本案に対しまして原則的にはその妥当性を肯定しながら、何かその動機において芳ばしくないというような御主張があつたのでありますが、私どもがこの法案につきまして、先日来の質疑応答を聴取しまして、はつきりとわかりましたことは、この法案には何らさような意味はないのでありまして、まつたく本来あるべき姿にあらしめたというにすぎないのであります。申し上げるまでもなく、国の直轄事業を国の機関が直接やるということに対して、ひとり北海道だけが従来変則に置かれておつたのであります。その変則に置かれておりました北海道のあり方を、内地と同様にこの機会にかえるということは、そこに何ら疑念をさしはさむ点はないのであります。これをしてもいろいろと論じられることは、何かそこに誤解があるのではないかというふうに私どもは考えるのでありますが、先日来の質疑応答の結果、その誤解もおそらく大多数の委員各位には明瞭になつたと思うのでありまして、私どもはさような意味合いにおきまして、本案に対し、むしろこの改革はおそきに失したというくらいに考えるのであります。本来の立場に返らせることは一日も早きを望むのでありまして、時期の問題についていろいろお話もありましたが、私どもは本来の姿に返すべきものは一日も早く返すべきであるという見地から、本案提出された政府動機について、一点の疑念もさしはさむ余地がないのであります。その理由によりまして、本案賛成するものであります。  以上簡単でありますが、討論を終ります。
  6. 江花靜

  7. 池田峯雄

    池田(峯)委員 私は日本共産党を代表いたしまして、本法案反対するものであります。増田建設大臣は、北海道公共事業費をかなり増額したということを大いに自慢いたしております。しかしながら、たとえば十三億円の開拓費を投入することによつて、新規に入植する一千七百戸の農民生活がはたしてどれだけ保障されているかということは、これまで北海道に入植した開拓民がどんな悲惨な状態にあるかという現実を見れば、あまりにも明白ではないかと思うのであります。すなわち政府の一貫した農業政策、低米価、重税、あるいは高い工業生産物価鋏状価格差の問題、それらに加えまして、北海道の特殊的な気候、土質から来るハンディキヤツプを考えましたならば、開拓民生活擁護のためのもつと根本的な政策がない限り、開拓民生活はとうてい保障されないようにできていると思うのであります。こういうことに対しては何ら見るべき政策を持たないで、そうして十三億の開拓費を投じてここに入植させるというのは、これは明らかに北辺守りを固めるための、満蒙開拓義勇軍再現といつてもよいのではないかと思います。北海道開発法とは、これは今回の改悪のあるなしにかかわらず、実は北辺守りを固めるために、また独占資本による北海道資源軍事的利用に資するためにつくられた法律案なのでありまして、すなわち開発された資源が何に使われるかといえば、現在の政府の低賃金、低米価政策によつて国内市場が非常に狭隘化しておる現状におきましては、これらの資源が軍事的に利用されざるを得ないということは、資本主義社会の必然的な現実であります。すなわちアメリカ政府部内で赤といわれ、共産党だと非難されたリリエンタール氏によつて推進されましたアメリカのいわゆるTVA計画ですら、このTVA計画によつて開発された電力が、今や何に使われているかといえば、原子爆弾工場にとつてなくはてならない軍事資源として利用されているのである。こういうことを見ても、開発された資源が常に軍事的なものと結びつかざるを得ないということは、これは資本主義社会の必然なのであります。  今回の改正案は、この開発法根本目的をさらに強力に推し進めるものなのでありまして、北海道知事にまかしておいたのでは、北海道軍事基地化をより強力に遂行することができなくなる。すなわち北海道知事が委任されていた道路事業についてみますると、今回の改正案が施行されるとすれば、道の知事は、道路総延長の三八%を施行するのみとなり、国道、地方道、準地方費道の六〇%以上を開発局が掌握することになるのであります。そして北海道知事の担当する三八%の道路事業費は、国庫補助額わずかに一億九百万円、開発局の掌握する道路事業費は実に十三億七千余万円であります。このことは、北海道大衆が望んでいる大衆のための道路工事は、これを知事にまかせ、そしてその費用を横取りして、軍事道路の大々的な建設に振り向けんとする意図であることは、きわめて明白なのであります。  さらに改正案によりますと、北海道開発局は国の支弁による建物の営繕を担当することになつておるが、これまた進駐軍兵舎警察予備隊兵舎建設等治山治水などとは何ら関係のない軍事的建設を担当するであろうことも、明らかであります。  一方北海道住民が最も切実に要望している民生施設はどうなつているでありましようか。現在北海道には三十八箇所の保健所しかありません。あの広大な地域に散在する人口十一万人について、一つの保健所しかないのであります。医者は実に三万三千七百六十平方キロメートルに一人という割合であります。十万人の推定結核患者数に対して三千六百の病床しかないのであります。また小学校の校舎の不定は四十万坪といわれるにもかかわらず、北海道総合開発第一次計画書によつて見ても、昭和三十一年度までに二十七万坪を増築するにすぎず、しかも地方財政の窮迫は、この計画すら難関に逢着しているのであります。また住宅最低需要戸数は三十七万戸でありますが、これに対して本年度庶民住宅予算は、国庫補助金わずかに二億円、一千百八十戸を建てるにすぎないのであります。これでも政府北海道人民大衆のために力を入れているのだと言うことができるでありましようか。  国費北海道開発すると言つておりますが、もともと北海道から取上げた税金の一部を北海道に振り向けるにすぎないのであります。北海道の教育、文化、保健、住宅等には国費のほんの少ししか出さず、道の費用北海道知事がかつてにやれ。道路港湾は国の費用でやる。但し、それも軍事的な大道路、大港湾だけである。地方道や漁港には道の金を出して道でやれ、これが政府地方自治の正体であります。でありますからこそ、全国知事会議も、あるいは北海道道民大会も、政府の今回の措置を中央集権の強化だといつて、非難攻撃しておるのであります。こうして政府全国知事会議要望も、あるいは道民大会要望も踏みにじつて、この法案提出し、数の暴力をもつて一挙に通過せしめようとしているのであります。北海道をして対ソ攻撃前進基地とし、その資源侵略戦争に備えるために、急速に知事権限を剥奪する必要に迫られて来たからにほかなりません。この法律によつて北海道総合開発の軍事的、植民地的性格は、いよいよ明らかになつて参りました。  私どもはかような観点から、この法案反対するものであります。
  8. 江花靜

  9. 小平忠

    小平(忠)委員 私は農民協同党を代表いたしまして、本案賛成するものであります。  そもそも北海道開発の問題が戦後大きく取上げられまして、昨年実施を見ました北海道開発法の公布に伴う北海道開発庁の設置後ちようど一年目に、今回法の一部を改正して、国の直轄事業を行いますために、現地機関たる北海道開発局をつくるという問題でありますが、私は本案考え方がどこにあるか、問題は、北海道国民の期待に沿うような開発ができて、北海道民の繁栄、北海道民生活の安定ということが、ひいては日本の復興の基盤たらしめるということが、この法案改正の要点でなければならないと思うのであります。ところがこの法案は、改正動機とか、あるいは国会提出に至りました過程につきましては、地元である北海道道民初め今や中央におきましても、いろいろ問題とされておりますことは、周知の事実であります。  そこで事は長い間北海道開発問題につきましては、いろいろ研究し、勉強して参つたのでありますが、特に今回この法案国会に上程されるという段階になりましてからは、掘り下げて検討を加えてみたのであります。昨日、一昨日本委員会において主管大臣であります増田建設大臣よりいろいろ説明なり答弁願つたのであります。一番重要な問題は、冒頭に申し上げましたように、この法案改正のいわゆる主眼点、それは単に従来のやり方、これが官選知事時代の惰性を民選知事に切りかえられてもやつて来たのである。だからそれではいけないので、北海道内地並にするのに機構いじりをするのであるか、こういうのであるのか、ないのかという点を、私は掘り下げて検討してみたわけであります。ただいまも社会党鈴木委員から、北海道内地並にするという御発言があつた。そもそも北海道を今日においても外地に見ている感がある。北海道内地並にする、これはとんでもない話でありまして、決して北海道外地ではないのであります。北海道は本州、四国、九州と同じように、現在は内地であります。そういう考え方が、そもそも北海道に対するいろいろの問題を生んでおるのだと思うわけであります。かような観点から見まして、北海道開発が単に機構をいじつてできるものであるか、あるいはそうでないものであるかという点を、やはり私は掘り下げて検討しなければならぬと思うわけであります。  そこで私は簡単に結論を申し上げておきますが、要は北海道がどうしたならば国策として、国の総力をあげて開発できるかという点にあるのであります。言うまでもなく北海道は、日本全体の未開発の約四八%、日本全体の五割というものが北海道に現在眠つておる。この資源開発することが必要である。その場合に、従来のように年額四十億や五十億の公共事業費開発費北海道に振り向けたのでは、とうてい焼け石に水と申しますか、そのようなことでは、おそらく開発は不可能であります。これは国策として五箇年計画なり、十箇年計画を打立てて、国家予算のうちから第一年度は何百億、第二年度は何百億というように、国の方針として決定をして、北海道にその予算を投ずるという態勢がなければ、北海道開発はできない。その理由はそれが小さい地域ならばいざ知らず、御承知のように東北六県に新潟を合せたような厖大地域であります。人口もきわめて稀薄でありますし、河川至つて原始河川そのままでありまして、北海道においでになられた方はよく御承知の通りであります。そのような北海道開発するためには、それに対応する構想でなければならぬ。現に北海道道議会なりあるいは道庁が中心となり、民間学識経験者を網羅して、自主的な北海道開発審議会を持ちまして、長い間かかつて北海道総合開発五箇年計画を決定しました。現在中央でもそれを吸い上げておるのであります。増田国務大臣答弁によりますと、この北海道道民が結集してつくつた北海道開発計画に基いて、ただちに開発庁りつぱな開発計画を立てる、これに基いていよいよその開発計画の第一年である昭和二十七年度からは、少くとも数百億の金を投じて行くのだというその言明を私は聞きまして、問題はそこにあるのではないかと思う。単なる機構いじりであるならば、今までやつて来たのでありますから、この選挙後にやるのは、選挙に負けた腹いせである、選挙復讐であるという見方は、これはいかに弁明しようと思つても出るのである。これはわれわれも社会党友党立場でありますし、私もその点においては同感であります。しかしながらそのような機構いじりではない。また選挙に負けたその腹いせである、復讐である、そういう問題は末梢的な小さい問題であります。問題は北海道開発がどうしてできるか、その北海道開発によつて現在いろいろ論議されておる日本人口問題、食糧問題、失業問題がどうして解決するか、そういう点であります。その点から私は昨日も主管大臣である増田大臣に重要な点を八項目伺つたのであります。その伺いました結論によりますと、今度のこの改正は単なる機構いじりではない。北海道開発国策として、明二十七年度からは雄大なる構想のもとに、年額数百億の金を投じてやるんだ。そのためには自治体の長たる知事に片手間にまかしておいたのでは責任もないし、従来のゆがめられた政治やり方ではやれないという点が第一点。第二点は、このことによつて知事権限を剥奪し、地方自治体の権限を縮小し、あるいはその自主性を喪失せしむるものではないという具体的な事例をあげられた。次にこの北海道開発は、道民輿論を十分に取入れて尊重してやるということ。それには審議会道議会の代表をさらに数名追加する考えで善処したいということ。それから今後の開発計画においても住民輿論を十分反映して行きたい。現地機関人事についても、中央政府の一方的な権限によつて北海道に全然無知な、全然認識のない人をやるというようなことはない。十分認識を持つており、理解、見識のある人をやりたい。現在の白紙であるがそうすべきであるということを明言された。その他たくさんありますが、基本線において今回改正は、政府みずからが真に北海道総合開発を急速にやるためには、従来のようなやり方ではいけない、この点を明らかにされましたので、私は愼重に検討し、またわが党においても愼重に論議いたしました結果、政府説明なりあるいは本案提出趣旨に対して、われわれは絶対支持をするという結論を見出したのであります。  まことに簡単でありますが、以上の理由によりまして私は本案賛成をするものであります。
  10. 江花靜

  11. 椎熊三郎

    椎熊委員 大分論議が重ねられたようですが、私は国民民主党を代表して、一言本案賛成趣旨を申し述べたいと思います。  政府が提案しておられます北海道開発法の一部を改正する法律案反対の根拠はどこにあるか、主として北海道公選知事たる田中君を中心とする社会党一派の人々の反対のようでございまして、この反対の言論は、ことごとく文書にしたためられて要所々々に配布せられておるので、反対の論点が明確に示されております。これを要約するに、反対の第一点は、北海道総合的開発支障を来すということ、第二は、北海道自治権を縮小するものだということ、第三点は道民の負担を増加せしめる、その他にも多少の問題はあるようでございまするけれども、大体この三点に尽きているようでございます。私はこの反対論者の主張せられるおもなる三点のしからざるゆえんを明らかにしまして、本案賛成したいと思う。  北海道総合開発は、今度の法案改正によつて総合開発が二途になつて、まちまちになつて所期目的を貫徹せしむることができるかできないか、その点であります。北海道総合開発北海道自治体でやつておる問題ではありません。かつて明治十四年以来、明治大帝陛下北海道御臨幸からお帰りの際、函館市において北海道民に賜わつた言葉があります。それは、北辺地北海道未開の地であるが、日本の将来のために非常に重要な地点である。従つてこれを積極的に開拓しなくてはならぬ。そのためには将来北海道から上るところの国費の収入の一切は北海道に還元せしめて、北海道開拓をなすべし、そういうお言葉があるのであります。それ以来北海道開拓計画というものが具体的に予算の裏づけをもつて積極的に展開して参りました。沿革的にはそれ以前の明治の初年において、時の太政官は当時の太政大臣にも匹敵すべき偉大なる政治家北海道開拓使長官に任命したのも、一にかかつてこの北辺の地たる北海道開発のためであつた。爾来北海道長官というものは、今日の知事公選に至る前後は別ですが、大正の末期に至るまでは、中央政府におきましてもこれを重大視いたしまして、単なる事務官的の長官を派遣したのではない。政治力の非常に大きな、日本としては大人物と申さるべき政治家をもつて時の長官にせられた。その後時代が変化して参りまして、ただいま政府委員席におらるる岡田君のごときも北海道長官になられたのだが、明治初年あるいは明治の後期、大正の初期における長官に比べると、ただいまあなたの前でそういうことを申し上げることは失礼ではございまするけれども北海道長官はだんだん小粒になつて来ておる。事務官的になつて来ておる。このことは北海道開発のために私どもは非常に遺憾なことと感じておつた。しかしながらそれとは別個に、北海道には拓殖計画なるものを樹立いたしまして、第何期第何期とそれぞれその時勢に応じ、国家財政とにらみ合せて、しかも積極的にこれを行うて参りました。けれども満州事変以後、国内開発よりも満州その他の開発に重点を置かれた。その当時また日本国内にはこういう重大な政治論が行われた。北海道日本国内における重大なる宝庫であるから、これを開発することはいつでもできる。北海道は大事なところとして、多少未開発であつてもこれを残しておいて、外地開拓すべきではないか。国のふところの中の宝は今いじらなくてもいいのだというような議論もありました。これは北海道民たるわれわれの大反対したことで、満州もよかろう、その他もよかろうけれども、さらに北海道開発は、日本の基本的国策としてこれを積極的になさなくてはならぬということを、われわれは主張しておつたのであります。しかるに終戦後に至りましては、この北海道開発の重要性は、旧来のごとき国内開発という単なる問題、拓殖計画という単なる小規模計画ではなくして、北海道、本州、四国、九州、たつた四つの島国に八千万以上の人口を包容しなければならぬ今日の日本の実情は、国内的には北海道以外に開拓の余地がない。ありましてもそれは寥々たるものである。ほんとうに積極的の開発をして、あるいは人口の問題、食糧の問題、その他の問題に多少国策的な貢献ができるのは、われわれが住む北海道以外にないことは、日本政界万人の認めるところであります。よつて終戦後におきましては、これが開発計画を積極的になすべしというので、ちようど片山内閣のとき、官房長官西尾さんがそのころ非常に熱心な主張者でございまして、国土開発計画というものがこの内閣において終戦後最初に唱えられた。その当時の西尾さんの感覚は、われわれとまつたく一致して、北海道開発ということを主眼に置いた。当時関係方面では、北海道だけの開発ということではこれを認められない、国土開発の一環として北海道もその中に含まれるんだ、そういう構想でなければこれは許されないということで、遺憾ながら私どもが当初考えたのとは違い、やや漠然たるねらいではありましたが、国土開発計画なるものができました。しかし当時の内閣の申合せでは、国土開発計画とはなつておるけれども、この開発のナンバー・ワンは北海道である、まず北海道から始めるんだということを閣議で申し合せて、当時私どもに対しましては官房長官からそのことの了解を得られたのでありまして、われわれは一縷の望みをこれにつないだのであります。しかしながら、その後日本国内の経済上の状態は、われわれが期待したるごとく北海道総合開発が進捗しない、その結果といたしまして去年総合開発法案なるものをつくつて、内閣の外局として開発庁を置く、そうして担当大臣をきめて強力にこれを推進して行こう、そうして法律の認めるところ総合開発委員なるものをつくりまして、審議会委員によりてその計画を推進して行く、こういう建前に相なつたのであります。そうして今や北海道の総合開発計画は、北海道自治体の問題ではなくなつた。自治体ではやり切れぬ問題だ。あの広漠たる北海道に四百二十万の人口よりございません。しかも資本的には非常に枯渇しておる。よつて北海道開発をなすものは産業計画の基盤をなす計画でありまして、たとえば港湾道路、農地改革、森林の問題のごとき、北海道のような四百三十万の貧弱なる人口、貧弱なる資金をもつてしては手をつけることのできない計画であります。しかも今日の計画は、旧来何十年間やつて参りました北海道拓殖計画を無視することができない。それは完成しておりません。道路においても、農地改革におきましても、土功問題でも、港湾問題でも、拓殖計画では方々食い荒してはおるけれども完成せられてない。これを自治体が自治的に扱つたんでは、とうてい北海道道民の負担はこの責任を負い切れない。どうしても北海道総合開発は、国費をもつて開発する以外に断じてできないのです。これは遺憾なことです。私どもは、もし北海道が裕福な土地柄であつて人口も相当あつて自分の負担によつて北海道開発することができるにおいては、今日の国家財政窮乏の折から、これほど国家に迷惑をかけなくても済むかもしれない。それは理想であるかもしれぬが、そういうことでは北海道開発はとうてい望みがたい。それはひとり北海道の者のみが考えるだけではなく、中央政界においてもどなたもこれは異存がない。北海道開拓はすなわち国費厖大に投入することによつてのみこれができるのである。この国費を投入するということは、国家最高の機関たる国会を無視してはできないことです。国家最高の機関たる国会計画に対する賛成予算に対する裏づけがあつて、初めて北海道総合開発ができるのであつて北海道道議会、あるいは北海道自治体、あるいは道知事などの構想、いかにこの構想が雄大であつても、それは予算の裏づけがなければ何もできない。従つて北海道における総合開発費用のうち、公共土木費七十億、あるいは災害復旧費の二十億、合せて百億に近い厖大な金は、これ一切国費であつて、その計画の内容はだれが立てたか、もとより私ども北海道にありますところの総合開発委員会の答申等をも参考にしたことはしておりますけれども北海道知事の諮問機関たる総合開発委員会の答申がまとまつて参りましたのは、今年の三月二十日以後です。私日記を見ればわかりますが、知事がこれを携えて上京したのは、おそらく三月二十三日か二十四日であつたと私は記憶しております。しかるにこの計画は、私ども昨年以来すでに岡田次長を中心として数回の審議会を開いて、そうして案の内容を確定して、予算面におきましては、私どもの主張は百二十五億を要求しておる。当初大蔵省は四十億よりこれに充てることはできないと言つた。交渉の結果最後的段階として五十億と言う。百二十五億を要求するところに五十億もらつたのでは、旧来までやつてつた総合開発計画はみなかたわになる。かたわになるのみならず、中途半端になつていたものが退化してしまう、ぶちこわされてしまう。港湾のごときは最もそうです。道路のごときはことにしかり、しかも土地改良のごときは、今まで投入した金は何にもならなくなるという結果になるので、そのことを岡田次長並びに増田大臣を通じまして大蔵大臣とも直接私ども折衝いたしまして、国家財政非常に窮迫しておると言い条、この重大なる観点に立つて、われわれの要求する百二十五億ということは不可能ではあるけれども、少くとも今までやつた工事、今までやつた事業計画が退化しない程度、一歩でも前進する程度に食いとめるためには、しからばどれだけいるか、そこで公共事業費七十億に、私どもは泣きの涙で大蔵省の査定を認容せざるを得ない事態に立ち至つたのである。その上二十億の災害復旧費を私どもは得ることができた。これらの計画は、ことごとく審議会と内閣、そうしてその実体は国会の協賛を経たものです。そうしてこれの予算の裏づけは、ことごとく国会の協賛を経たものなのであつて北海道道議会、道自治体がこれに関与する余地はないのです。関与しても何もならない。関与すべき権限がない。自治体権限がこれに及ばないのです。しかも私どもがその予算をきめたのは、すでに昨年の十二月です。北海道知事田中君が持つて来たのは三月中旬以後なのです。それでも彼は選挙では、自分の案によつてこのようなことができるということを主張しておつた。私は立会演説会の席上において、田中君の目の前においてこのことを反駁しております。これはうそです。世の中をまどわすもはなはだしいものです。国会の記録を調べてごらんなさい、みなわれわれ国会の権威においてこれをやつておる。北海道知事が持つて来た案は三月以後で、すでに予算の確定以後なのです。そういう事態なので、この法案の成立によつて北海道の総合開発計画が乱れるということは断じてございません。その一点は明らかでございます。  しからば第二の問題たる自治権が侵害されるか、初めから及ばぬ自治権が何で侵害されるわけがございますか、自治権が何も及んでいない。国家の直轄事業には北海道自治体権限はごうまつも及んでおりません。これを分離することによつて北海道自治権が侵害せられるということはごうまつもない。ありとするならば、どの点だということを反対論者は明らかにしなければなりません。北海道知事の国家公務員四千八十五名に対する監督権、それは自治権であるかどうか。自治権ではない。内閣から委嘱せられた知事の独特の権限であつて北海道道民の権利義務に何ら関係がないものであつて、これを自治権ということは、はなはだ越権のさたである。自治権はこのために何ら侵害されてありません。  第三の問題は、この法案の成立によつて北海道民の負担が増加せられるやいなや。直轄事業たる国の事業北海道道民は一銭も負担しておらぬのです。従つて直轄事業をこういうような機構においてやることによつて道民の負担は直接には増加せられない。ただ私は先般審議会で、はなはだ不可解なる事実ではあるが、明確にしておかなければならぬ点があるので、追究してやや明らかになつた点は、国の直轄事業に便乗して北海道がこれを利用しておつた点がある。たとえば国費をもつて購入したる土木の機械を、これは当然直轄事業に使用すべきものではあるが、間々これを北海道地方費道路の建設のためにも使用を許すというようなことをやつております。これは厳密には違法行為です。違法行為ではあるが、了解の上にやつておられるならば、北海道にとつてはそれだけ非常に利益なことである。もしまた会計検査院が昨年度以来、国会にも警告を発し、内閣にも注意を促しておる国費直轄事業費用を、北海道自治体自体の事業のために流用したという点があるならば、これは偉大なる違法行為、不法行為、不当なる行為である。これがはたしてあつたかどうか。同僚苫米地さんの説によりますと、会計検査院の報告によると、これらの点も多々あつたということである。これは驚き入つた話であつて、多々あつたことは、それだけ北海道民を利益したか。自分の金を使わずして国費を流用したという利益は、不当であつても、違法であつても、利益は利益であつたかもしれぬ。けれども国家がこれを認容することができる利益であるかどうか。略奪といえども、略奪したものには利益である。しかしこれを認容することは、社会公共福祉の上からはできるかどうか。少くとも国家最高の機関たる国会の論議の対象としてこれを正当化することができるかどうか。そういう意味において、私は道民の負担が直接にこの法案成立のために増加するということは断じてないばかりではなしに、今までこの直轄事業に便乗して、不当に、不法に、違法に、北海道が不当利得をしておつたという不明朗な点が是正せられて行かなければならないという点において、国家全体としては非常に大きな利益であるとさえ私は言わざるを得ない。少くとも国家最高の機関たる国会の論議においてごまかしを認容し、不当利得を認容してこの議論の裏づけにせんとするがごときは、当国会内において通用しない議論であると思うのであります。  よつて反対論者田中公選知事中心とし、社会党一派の人々の猛烈なる反対運動、文書にしたためられたる点等を総合して、三つの論点は意味なきことにして、真に北海道の自治を解せず、北海道の事理を明白にせず、北海道に対する正しき認識を持たず、北海道に対する熱情を持たざる、党利党略の上に根拠する暴論であることを私は指摘する。(拍手)  よつて私はこの不当なる反対論を駁撃いたしまして、本案成立のために満腔の賛意を表する次第であります。(拍手)
  12. 江花靜

    江花委員長代理 討論はこれにて終局いたしました。  これより採決に入ります。本案賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  13. 江花靜

    江花委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  この際お諮りいたします。本案に関する委員会報告書の作成に関しましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 江花靜

    江花委員長代理 御異議なければ、さようとりはからいます。     —————————————
  15. 江花靜

    江花委員長代理 なおこの際お諮りいたします。理事でありました坂田英一君が昨日委員を辞任せられ、本日再び委員に選任されましたので、坂田英一君を再び理事に選任いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  16. 江花靜

    江花委員長代理 御異議なければ、さようとりはからいます。  本日はこれにて散会いたします。     午前十一時三十五分散会