○
椎熊委員 大分論議が重ねられたようですが、私は
国民民主党を代表して、
一言本案に
賛成の
趣旨を申し述べたいと思います。
政府が提案しておられます
北海道開発法の一部を
改正する
法律案に
反対の根拠はどこにあるか、主として
北海道の
公選知事たる
田中君を
中心とする
社会党一派の人々の
反対のようでございまして、この
反対の言論は、ことごとく文書にしたためられて要所々々に配布せられておるので、
反対の論点が明確に示されております。これを要約するに、
反対の第一点は、
北海道の
総合的開発に
支障を来すということ、第二は、
北海道の
自治権を縮小するものだということ、第三点は
道民の負担を増加せしめる、その他にも多少の問題はあるようでございまするけれ
ども、大体この三点に尽きているようでございます。私はこの
反対論者の主張せられるおもなる三点のしからざるゆえんを明らかにしまして、
本案に
賛成したいと思う。
北海道総合開発は、今度の
法案改正によ
つて総合開発が二途にな
つて、まちまちにな
つて所期の
目的を貫徹せしむることができるかできないか、その点であります。
北海道総合開発は
北海道の
自治体でや
つておる問題ではありません。か
つて明治十四年以来、
明治大帝陛下が
北海道御臨幸からお帰りの際、函館市において
北海道民に賜わ
つたお
言葉があります。それは、
北辺の
地北海道は
未開の地であるが、
日本の将来のために非常に重要な地点である。
従つてこれを積極的に
開拓しなくてはならぬ。そのためには将来
北海道から上るところの
国費の収入の一切は
北海道に還元せしめて、
北海道の
開拓をなすべし、そういうお
言葉があるのであります。それ以来
北海道開拓計画というものが具体的に
予算の裏づけをも
つて積極的に展開して参りました。沿革的にはそれ以前の
明治の初年において、時の太政官は当時の太政大臣にも匹敵すべき偉大なる
政治家を
北海道の
開拓使長官に任命したのも、一にかか
つてこの
北辺の地たる
北海道開発のためであ
つた。爾来
北海道の
長官というものは、今日の
知事公選に至る前後は別ですが、
大正の末期に至るまでは、
中央政府におきましてもこれを重大視いたしまして、単なる
事務官的の
長官を派遣したのではない。
政治力の非常に大きな、
日本としては
大人物と申さるべき
政治家をも
つて時の
長官にせられた。その後
時代が変化して参りまして、ただいま
政府委員席におらるる
岡田君のごときも
北海道の
長官になられたのだが、
明治初年あるいは
明治の後期、
大正の初期における
長官に比べると、ただいまあなたの前でそういうことを申し上げることは失礼ではございまするけれ
ども、
北海道の
長官はだんだん小粒にな
つて来ておる。
事務官的にな
つて来ておる。このことは
北海道開発のために私
どもは非常に遺憾なことと感じてお
つた。しかしながらそれとは別個に、
北海道には拓殖
計画なるものを樹立いたしまして、第何期第何期とそれぞれその時勢に応じ、
国家財政とにらみ合せて、しかも積極的にこれを行うて参りました。けれ
ども満州事変以後、
国内の
開発よりも
満州その他の
開発に重点を置かれた。その当時また
日本の
国内にはこういう重大な
政治論が行われた。
北海道は
日本の
国内における重大なる宝庫であるから、これを
開発することはいつでもできる。
北海道は大事なところとして、多少未
開発であ
つてもこれを残しておいて、
外地を
開拓すべきではないか。国のふところの中の宝は今いじらなくてもいいのだというような議論もありました。これは
北海道民たるわれわれの大
反対したことで、
満州もよかろう、その他もよかろうけれ
ども、さらに
北海道の
開発は、
日本の基本的
国策としてこれを積極的になさなくてはならぬということを、われわれは主張してお
つたのであります。しかるに終戦後に至りましては、この
北海道の
開発の重要性は、旧来のごとき
国内的
開発という単なる問題、拓殖
計画という単なる小
規模的
計画ではなくして、
北海道、本州、四国、九州、た
つた四つの島国に八千万以上の
人口を包容しなければならぬ今日の
日本の実情は、
国内的には
北海道以外に
開拓の余地がない。ありましてもそれは寥々たるものである。ほんとうに積極的の
開発をして、あるいは
人口の問題、食糧の問題、その他の問題に多少
国策的な貢献ができるのは、われわれが住む
北海道以外にないことは、
日本政界万人の認めるところであります。よ
つて終戦後におきましては、これが
開発計画を積極的になすべしというので、
ちようど片山内閣のとき、官房
長官西尾さんがそのころ非常に熱心な主張者でございまして、国土
開発計画というものがこの内閣において終戦後最初に唱えられた。その当時の西尾さんの感覚は、われわれとま
つたく一致して、
北海道の
開発ということを主眼に置いた。当時
関係方面では、
北海道だけの
開発ということではこれを認められない、国土
開発の一環として
北海道もその中に含まれるんだ、そういう
構想でなければこれは許されないということで、遺憾ながら私
どもが当初考えたのとは違い、やや漠然たるねらいではありましたが、国土
開発計画なるものができました。しかし当時の内閣の申合せでは、国土
開発計画とはな
つておるけれ
ども、この
開発のナンバー・ワンは
北海道である、まず
北海道から始めるんだということを閣議で申し合せて、当時私
どもに対しましては官房
長官からそのことの了解を得られたのでありまして、われわれは一縷の望みをこれにつないだのであります。しかしながら、その後
日本国内の経済上の状態は、われわれが期待したるごとく
北海道の
総合開発が進捗しない、その結果といたしまして去年
総合開発法案なるものをつく
つて、内閣の外局として
開発庁を置く、そうして担当大臣をきめて強力にこれを推進して行こう、そうして
法律の認めるところ
総合開発委員なるものをつくりまして、
審議会の
委員によりてその
計画を推進して行く、こういう建前に相な
つたのであります。そうして今や
北海道の総合
開発計画は、
北海道の
自治体の問題ではなく
なつた。
自治体ではやり切れぬ問題だ。あの広漠たる
北海道に四百二十万の
人口よりございません。しかも資本的には非常に枯渇しておる。よ
つて北海道の
開発をなすものは産業
計画の基盤をなす
計画でありまして、たとえば
港湾、
道路、農地
改革、森林の問題のごとき、
北海道のような四百三十万の貧弱なる
人口、貧弱なる資金をも
つてしては手をつけることのできない
計画であります。しかも今日の
計画は、旧来何十年間や
つて参りました
北海道拓殖
計画を無視することができない。それは完成しておりません。
道路においても、農地
改革におきましても、土功問題でも、
港湾問題でも、拓殖
計画では方々食い荒してはおるけれ
ども完成せられてない。これを
自治体が自治的に扱
つたんでは、とうてい
北海道の
道民の負担はこの責任を負い切れない。どうしても
北海道の
総合開発は、
国費をも
つて開発する以外に断じてできないのです。これは遺憾なことです。私
どもは、もし
北海道が裕福な土地柄であ
つて、
人口も相当あ
つて自分の負担によ
つて、
北海道を
開発することができるにおいては、今日の
国家財政窮乏の折から、これほど国家に迷惑をかけなくても済むかもしれない。それは理想であるかもしれぬが、そういうことでは
北海道の
開発はとうてい望みがたい。それは
ひとり北海道の者のみが考えるだけではなく、
中央政界においてもどなたもこれは異存がない。
北海道の
開拓はすなわち
国費を
厖大に投入することによ
つてのみこれができるのである。この
国費を投入するということは、国家最高の
機関たる
国会を無視してはできないことです。国家最高の
機関たる
国会の
計画に対する
賛成、
予算に対する裏づけがあ
つて、初めて
北海道の
総合開発ができるのであ
つて、
北海道の
道議会、あるいは
北海道の
自治体、あるいは道
知事などの
構想、いかにこの
構想が雄大であ
つても、それは
予算の裏づけがなければ何もできない。
従つて北海道における
総合開発の
費用のうち、公共土木費七十億、あるいは災害復旧費の二十億、合せて百億に近い
厖大な金は、これ一切
国費であ
つて、その
計画の内容はだれが立てたか、もとより私
どもは
北海道にありますところの
総合開発の
委員会の答申等をも参考にしたことはしておりますけれ
ども、
北海道知事の諮問
機関たる
総合開発委員会の答申がまとま
つて参りましたのは、今年の三月二十日以後です。私日記を見ればわかりますが、
知事がこれを携えて上京したのは、おそらく三月二十三日か二十四日であ
つたと私は記憶しております。しかるにこの
計画は、私
ども昨年以来すでに
岡田次長を
中心として数回の
審議会を開いて、そうして案の内容を確定して、
予算面におきましては、私
どもの主張は百二十五億を要求しておる。当初大蔵省は四十億よりこれに充てることはできないと言
つた。交渉の結果最後的段階として五十億と言う。百二十五億を要求するところに五十億もら
つたのでは、旧来までや
つてお
つた総合
開発計画はみなかたわになる。かたわになるのみならず、中途半端にな
つていたものが退化してしまう、ぶちこわされてしまう。
港湾のごときは最もそうです。
道路のごときはことにしかり、しかも土地改良のごときは、今まで投入した金は何にもならなくなるという結果になるので、そのことを
岡田次長並びに
増田大臣を通じまして大蔵大臣とも直接私
ども折衝いたしまして、
国家財政非常に窮迫しておると言い条、この重大なる
観点に立
つて、われわれの要求する百二十五億ということは不可能ではあるけれ
ども、少くとも今までや
つた工事、今までや
つた事業計画が退化しない程度、一歩でも前進する程度に食いとめるためには、しからばどれだけいるか、そこで
公共事業費七十億に、私
どもは泣きの涙で大蔵省の査定を認容せざるを得ない事態に立ち至
つたのである。その上二十億の災害復旧費を私
どもは得ることができた。これらの
計画は、ことごとく
審議会と内閣、そうしてその実体は
国会の協賛を経たものです。そうしてこれの
予算の裏づけは、ことごとく
国会の協賛を経たものなのであ
つて、
北海道道議会、道
自治体がこれに関与する余地はないのです。関与しても何もならない。関与すべき
権限がない。
自治体の
権限がこれに及ばないのです。しかも私
どもがその
予算をきめたのは、すでに昨年の十二月です。
北海道知事の
田中君が持
つて来たのは三月中旬以後なのです。それでも彼は
選挙では、自分の案によ
つてこのようなことができるということを主張してお
つた。私は立会演説会の席上において、
田中君の目の前においてこのことを反駁しております。これはうそです。世の中をまどわすもはなはだしいものです。
国会の記録を調べてごらんなさい、みなわれわれ
国会の権威においてこれをや
つておる。
北海道知事が持
つて来た案は三月以後で、すでに
予算の確定以後なのです。そういう事態なので、この
法案の成立によ
つて北海道の総合
開発計画が乱れるということは断じてございません。その一点は明らかでございます。
しからば第二の問題たる
自治権が侵害されるか、初めから及ばぬ
自治権が何で侵害されるわけがございますか、
自治権が何も及んでいない。国家の
直轄事業には
北海道の
自治体の
権限はごうまつも及んでおりません。これを分離することによ
つて北海道の
自治権が侵害せられるということはごうまつもない。ありとするならば、どの点だということを
反対論者は明らかにしなければなりません。
北海道知事の国家公務員四千八十五名に対する監督権、それは
自治権であるかどうか。
自治権ではない。内閣から委嘱せられた
知事の独特の
権限であ
つて、
北海道道民の権利義務に何ら
関係がないものであ
つて、これを
自治権ということは、はなはだ越権のさたである。
自治権はこのために何ら侵害されてありません。
第三の問題は、この
法案の成立によ
つて北海道民の負担が増加せられるやいなや。
直轄事業たる国の
事業に
北海道道民は一銭も負担しておらぬのです。
従つて直轄事業をこういうような
機構においてやることによ
つて、
道民の負担は直接には増加せられない。ただ私は先般
審議会で、はなはだ不可解なる事実ではあるが、明確にしておかなければならぬ点があるので、追究してやや明らかに
なつた点は、国の
直轄事業に便乗して
北海道がこれを利用してお
つた点がある。たとえば
国費をも
つて購入したる土木の機械を、これは当然
直轄事業に使用すべきものではあるが、間々これを
北海道の
地方費道路の
建設のためにも使用を許すというようなことをや
つております。これは厳密には違法行為です。違法行為ではあるが、了解の上にや
つておられるならば、
北海道にと
つてはそれだけ非常に利益なことである。もしまた会計検査院が昨年度以来、
国会にも警告を発し、内閣にも注意を促しておる
国費直轄事業の
費用を、
北海道自治体自体の
事業のために流用したという点があるならば、これは偉大なる違法行為、不法行為、不当なる行為である。これがはたしてあ
つたかどうか。同僚苫米地さんの説によりますと、会計検査院の報告によると、これらの点も多々あ
つたということである。これは驚き入
つた話であ
つて、多々あ
つたことは、それだけ
北海道民を利益したか。自分の金を使わずして
国費を流用したという利益は、不当であ
つても、違法であ
つても、利益は利益であ
つたかもしれぬ。けれ
ども国家がこれを認容することができる利益であるかどうか。略奪といえ
ども、略奪したものには利益である。しかしこれを認容することは、社会公共福祉の上からはできるかどうか。少くとも国家最高の
機関たる
国会の論議の対象としてこれを正当化することができるかどうか。そういう意味において、私は
道民の負担が直接にこの
法案成立のために増加するということは断じてないばかりではなしに、今までこの
直轄事業に便乗して、不当に、不法に、違法に、
北海道が不当利得をしてお
つたという不明朗な点が是正せられて行かなければならないという点において、国家全体としては非常に大きな利益であるとさえ私は言わざるを得ない。少くとも国家最高の
機関たる
国会の論議においてごまかしを認容し、不当利得を認容してこの議論の裏づけにせんとするがごときは、当
国会内において通用しない議論であると思うのであります。
よ
つて反対論者田中公選知事を
中心とし、
社会党一派の人々の猛烈なる
反対運動、文書にしたためられたる点等を総合して、三つの論点は意味なきことにして、真に
北海道の自治を解せず、
北海道の事理を明白にせず、
北海道に対する正しき
認識を持たず、
北海道に対する熱情を持たざる、党利党略の上に根拠する暴論であることを私は指摘する。(拍手)
よ
つて私はこの不当なる
反対論を駁撃いたしまして、
本案成立のために満腔の賛意を表する次第であります。(拍手)