○櫛田
説明員 私
国民金融公庫の櫛田であります。この
委員会へは初めてお伺いいたしましたようなわけでありまして、どうぞよろしくお引きまわし願います。
私
どものやつておりまする現状を御
説明申し上げたいと思うのでありますが、お手元まで
国民金融公庫の現状について本年の五月末現在の
資料をお配りいたしておりますので、ごらんいただきたいと思うのでありますが、かいつまんで今どういうことをやつておるかを申し上げてみたいと存じます。
国民金融公庫は、御承知のように一昨年の
昭和二十四年の六月一日に庶民
金庫と恩給
金庫とを統合いたしまして新たに
政府出資十三億をもちまして小口の事業資金を貸し出す特別の
金融機関として再発足いたしたのであります。その後経済界の激変に伴いまして、私
どものところに参りますお客さんは連日ふえる一方であります。たいへん繁忙をきわめまして、それに伴いまして
政府からも逐次御増資をいただきまして、ただいまのところは六十億の出資を頂戴いたしております。また業務所も当初は十八箇所をもつてスタートいたしたのでありますが、逐次増設を見まして現在は全国に三十三箇所の店を持つておるのでありますが、なお地域的分布から見まして、
法律上は少くとも各府県に
一つは置けるように
なつておるのでありまして、業務所の定数五十箇所に達するまでには、なお十七箇所の増設を今後必要とするというような
状況にございます。なおこのほかに全国に主として無尽
会社、信用組合でございますが、四百四十五の代理店を持つております。
仕事はどんなことをしているかと申しますと、まず貸付の現状から申し上げてみたいと思います。六月三十日末の計算でありますが、貸付が全体で七十一億円であります。そのうち四十二億円が普通貸付、二十九億円が更生資金貸付という特別小口の貸付と相
なつております。このうち
政府出資金六十億のうち六月末までにお払込みいただきましたのが五十二億円でありまして、その五十三億円と更生資金貸付金として
政府から特別に貸し付けていただいておりますのが二十八億円ございます。これらの財源をもつて七十一億の貸付を六月末までにはいたした次第であります。この貸付が二口あるのでありますが、どういう貸付かと申しますと、第一は普通貸付と称せられるものでありまして、これは
法律の第一条並びに第十八条によつて規定せられているのでありまして、簡単に申し上げますと、独立して事業を遂行する意思を有し、かつ適切な事業計画を持つ者であつて、銀行その他
一般の
金融機関から資金の融通を受けることを困難とするものに対しまして、必要な事業資金を供給するという貸付でございます。これは現在業務
方法書によりまして次のような
限度、
方法において行われております。すなわち金額でありますが、現在は個人一人の場合につきましては、普通の場合は十万円、特別の場合は二十万円までということに
なつております。このお配りしました
資料は日付の
関係で、近日中に二十万円以内まで
増額の
予定と書いてありますが、ただいままでのところは
増額の認可がございましたのでそう
なつております。それから連帯貸付であります。これは二人以上の方が共同して事業を営まれる場合、この場合には普通の場合五十万円、特別の場合は百万円までに
なつております。大体百万円までは条件がそろえば御融通ができる体制に
なつております。貸付の
期間は三年以内ということに
なつておりまして、現在におきましては平均約二年の貸付をいたしております。これはお客様のお
仕事のぐあいによりまして、そう長い金もいらず、一年くらいでよろしい方もありますし、また設備資金等になりますと、三年はまるまる必要であるというお方もありますが、平均いたしまして大体二年ということに
なつております。利率は目下一割二分、これは三銭三厘でありますが、但しこの利率の点については御了解を願つておきたい点が
一つあるのであります。私
どもの
方法といたしましては毎月の月賦をもつてお払いを願うことにいたしておりますので、前月末の残高、それが二十回賦とか二十五回賦とかでありましたならば二十分の一、二十五分の一、それと前月末の元金高の一分に
相当する額を毎月お納め願つております。利率は表面三銭三厘に当りますが、
期間が長いということ、それから後払いであるということ、他方私
どもの方では預金を一切お客さんからいただきま
せん。従いまして
一般金融機関に見られるいわゆる両建預金あるいは匿名預金、かくのごときものは一切ございま
せんので、実質裸の金利をとりますならば、長期的なことを考えますれば、どのお客さんも私
どもに申されるのでありますが、現在一等低い金利であるということを申されております。それから償還の
方法は、先ほど申しましたような月賦を原則といたしますが、もちろん設備資金、そういう場合におきましては、あるいは三箇月あるいは半年といいましたすえ置き、これをいたします。なお担保は原則としていただかないのであります。これは大多数の方が物的担保を出します能力がないというふうなこともありますが、但し保証人をいただくことにいたしております。ただ担保は、場合によりましてはもちろんいただいておりますので、全体の貸出しの中で約一割が有担保の貸出しということに
なつております。
更生資金の方は特別の貸付でありますから、これは御
説明を省きたいと思います。これは引揚者、戦災者、軍人遺家族、未亡人その他生活困窮の方に対する特別の小口の貸付でありまして、現在は一口三万円ということに
なつております。
そこで過去二年の間にどのくらいのことをやつて来たかと申しますと、申込みの
状況は、窓口でもつて私
どもの方は直接貸付と代理貸付の二
通りにわかれますが、直接だけを受入れた申込みの件数は十七万四千件、その金額が二百八億に上つたのであります。ただこれはそのほかに全国の代理所への申込みがあります。また窓口での
金融相談数を合せますと、大体この倍額見当のものが来ているということは申し上げて間違いのないところであります。これに対して資金の
関係、人手の
関係等がございまして、二箇年間に貸し付けました件数は七万二千件、金額にいたしまして六十三億円、そのうち回収いたしました件数が一万九千件、金額で約二十八億円でありまして、残高は大体五万三千件、なお先ほど申し上げましたのは六月分の貸付が入りましたので、六月末残高が四十二億円ということに
なつた次第であります。大体現状から見ますと五人に一人の割合で貸出しができておる形になりますが、私
どもの経験から申しますと十人に三人半ないし四人、こういつた
方々がりつぱに借受能力者と申しますか、適格者であるというふうに感ぜられるのであります。簡単に申し上げますと、申し込んで参りまする十人のうち大体二人の方は何か便乗的なお感じを持つておられる方であります。これはせつかく国からお預りいたしております資金をお貸付いたしまして利用していただくには不適当な方、それからあとの八人の方でありますが、まず半々見当で、そのうち四人の方あるいは四人半ぐらいのお方は
金融資金だけではどうにもならない。そのほかに、たとえばその人の技術でありますとか、あるいは経営の状態が——何と申しますか、その人の
責任で何とかできるにもかかわらず、お金だけ差上げたのでは決してうまく
仕事が立直つて行かない。その
仕事が立直りますためには、お金以外に技術的な要素でありますとか、経営的な要素でありますとか、いろいろな面においていろいろなことをしなければいけないという方でありますので、これは資金の
関係からお断りいたしまして、あとの三人半から四人の方は資金の
関係から何ともいたし方ありま
せんので、いろいろ御相談いたしまして、大体その半数の方に用立て申し上げておるようなことで、資金の
関係からいつて残念な
状況にあるのであります。
そこで
一つ御報告いたして御理解願いたい点は、私
どもの
行つております
金融は非常に小口であり、従つて危険度が高いであろうということを
一般に申されております。過般銀行
方面でも、
中小企業に対する小口
金融は社会事業であつて救済事業である、つまり
金融ベースに乗らぬのだというようなことまで申されておつたように記憶するのでありますが、私
どもの
実績から見ますと、回収状態がきわめて良好なのであります。二箇月、三箇月、月賦金の支払いの遅れます方、延滞と申しますが、この方が全体の件数で一%、金額で〇・九%。余談になりますが、
アメリカにおきましてナシヨナル・シテイがこの二十年来小口
金融をきわめて盛んにやつております。その二十年間の経験によれば、延滞率は二%ないし三%というのが最近入手した報告にも書いてあります。二、三パパーセントという延滞率はきわめて良好であるというのであります。私
どもそれに比べてなおよいのであります。ということは、逆に申し上げますと、私
どもが貸し出した資金を、貸し出した目的
通りお使いに
なつて、その
方々が事業に蹉跌を起すことなくうまくやつておられるという
一つの証拠と見られるわけであります。私
どもといたしましても回収率がよろしいということに対して非常な誇りと満足とを感じております。
なおこのような回収
状況がよい理由にはこういうことがあると思います。
一つは先ほ
ども申しましたように、平均二箇年、長い場合には三十六箇月という長期月賦の
方法でお返し願うのでありますから、きわめて支払いが容易であるという点であります。これはお客さんのお話でありますが、こういうことを申されるのであります。私のところで借りた資金はそのまま元手として残る。利潤のうちから返すことができるからであります。私のところから百万円借りたといたしますと、それを毎月物を製造して運転して行きます。それがそのまま残る。ほかの
金融機関から借りて、二箇月ごとに手形に追われるようであつては、もうけは若干残るかもしれないが、元手は残らぬ、こういうような御批判もいただく。そういう
意味で、たいへんお役に立つておる次第だと思つておりますが、このきわめて長期であるということが回収にも非常に影響を及ぼしておると存じます。また回収成績がいいということは、その
業者にとつて非常に役に立つておるということの一証拠である、こんなふうに感じております。
なおこういうことを感じるのであります。最近個人の貸付を十万円の
限度から二十万円に引上げたのであります。その理由のおもなるものは、私
どもに参りますお客さんの模様を伺いますと、一年ないし一年半前とは非常に違つております。先ほ
ども中村委員が申されましたように、
中小企業と申します私
どものところに参りますお客さんの
状況を見ますと、売掛金がかさむと申しますか、毎月の運転資金の所要量が
物価関係その他から見まして非常にふくれて来ておる、これが非常に痛感されるのであります。少くとも金へん
関係、従つて製造、ことに機械
関係等の下請をやつておられる
方々の
状況をつぶさに伺いますと、従来は二箇月くらいの運転資金をもつてやつておつた、その資金量が実は一箇月にも足らぬ、こういう
状況である。これは
物価の
騰貴に基くものであります。
それから
一つ申し落しましたが、貸付の内容でありますが、その
期間は先ほど申し上げた
通りであります。内容を用途別から申しますると、製造工業といいますか、工業
関係が四割、商業
関係が四割、それからサービスとかあるいは運輸
関係、交通
関係等その他を含みましたものが二割、こういう見当になり、また設備資金が全体の約二五%、運転資金が大体七五%というふうな割合に
なつております。割に設備資金の需要が多いのであります。そこで話がまた元へもどるわけでありますが、先般個人貸付を十万から二十万の
限度まで引上げ、それから総額として百万円の金額はそのまま一応すえ置きにされたのでありますが、この百万円をせめて二百万円ぐらいまで貸せないかという
要望が案にたいへんであります。これは
物価の
状況あるいは資金の金詰まりの
状況等から見てまことにもつともな点があるのであります。ただ現在は百万円以上お貸出しできないということのために、私
どもの窓口をたずねてそのままお帰りになる方がいかに多いことか。できればより以上のことをしてあげたい。日常多数のお客様に接しておる私たちといたしまして、まことに資金の
関係において、また
制度上の
関係において、また人手の
関係において、また店の
関係において、ときには切歯扼腕するという
状況にあるのであります。
ついででありますから入手のことを申し上げてみたいと思います。人手は大体三十三箇所の店で現在八百七十二名であります。それから先ほど申し上げましたように、貸出しの件数から申しますと、七万二千件を貸し、一万九千件を回収し、残高が五万三千件、それから更生資金の貸付け残高の二十四万件というものを入れますと、私
どもの持つておる件数は三十万件に達するのであります。ところが銀行が
日本中に約八十行足らずあります。
日本銀行の御
調査によると、その貸出先の数は八十万件に達しておりま
せん。一行平均一万件とおぼしめされてよろしいかと存じます。しかも私
どもは預金を扱つておりま
せんので、預金の預かり、またその出し入れに伴う人手はいらないわけでありますけれ
ども、それにしても大銀行では、一行で八千人から九千人の人手をお持ちであります。私のところはそれだけの貸出し件数を持つておつて八百七十人でとにかく切りまわしておるという点を御理解願いたいと思うのであります。その結果といたしまして、何と申しますか、たいへんな労働強化をいたしております。私
どもは職員一人が申込みの処理にあたりまして、一日三件の処理ができれば適当な基準労働量であると存じておりますが、現在は一日に五・七件の処理をいたしておるという計算に
なつております。ところがほかの例を拝承いたしますと、一日一件などということもありま
せん。十日に一件の処理でよろしいというようなところもあるやに承つておるのであります。それこれをいろいろ比較いたしまして、とにかく私
どもも、少し手前みそに
なつて恐縮なのでありますが、昼夜兼行で勉強に勉強を重ねておる次第であります。事実私
どもの店にお越しくださいましてごらんくださればわかりますが、最近のように日が長くなりますと、日が暮れるまで働いておりまして、家に帰つて
調査報告を書きますと十二時を過ぎる。それでまた八時半に出て来るということを繰返し繰返しやつておりますが、それでもなおさばき切れぬほどのたくさんなお客さんであります。できる限りのことをいたしていますが、ことに
中小企業の
金融問題は、ますます焦眉の急務に迫られて来ておると存じます。私
どものお客さんの
状況を見ましても、何と申しますか、売掛金がかさむ一方であります。先ほど申されましたような大
企業に対して
中小企業が貸し付けるような
状況もあるわけであります。私
どもは何とかして、身命を賭してこの窮境を打開するためにあらゆるお役に立もたいという大きな覚悟を持つて、八百七十人一体と
なつてやつておるような次第であります。どうぞひとつよろしく御指導、御鞭撻をお願い申し上げる次第であります。