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風早委員 私はこの
法案に対して何とか賛成に持
つて行きたいと努力したのでありますが、しかしながら実際にこれに対して
検討を加えれば加えるほど、また質疑を重ねれば重ねるほどますますいろいろな疑点並びに反対の根拠が加わりまして、残念ながら私は
日本共産党を代表して反対の
意見を表明するものであります。
まず第一に、この
法案のでき上るに至りましたいきさつでありますが、これは
一言にして言えば、何とい
つてもいわゆる官庁セクト主義、官僚のなわ張り、こういうふうな面が非常に濃厚に露骨に出ておる典型的なものの
一つであると考えざるを得ないのであります。たとえばこの強制検定の制度にいたしましても、結局この強制検定というものが、ほとんど必要のないような一切の微細な器械製品に及んでおりまして、実際問題としてこれをやられれば、業者も非常な不便を感ずるし、また検定をいたす者も、その数からい
つても、またこの質からい
つても、不足であり不備である
関係から、事実上追いまわされてやれるはずはない。現に現在九百三十余名も検定員がある上に、またこれをうんと増員しなければならないということまでして、何もこまかい一々の必要のない器具にまで検定を加える必要はなかろうと思うのでありますが、そういううことをやるのは、結局この検定行政の幅を広げて行くという意図がきわめて露骨に現われておると見るほかはないと思うのであります。ことにこの検定の
手数料の問題でありますが、これはただ單に官庁のなわ張りというだけでなく、そのとばつちりとして、
手数料は実際はまさに税金とちつともかわらない
性質のものである。ただこれが検定を受けたものであるということを標識するための
手数料である。つまり実際にその検定を受けるべき品物が、
技術の向上に役立つため、また不正のないために行われるというよりも、ただレツテルを張るための
手数料である、こういつたような性格が、今後はこの検定の範囲が非常に広がつたところからますますはつきりして来るということを考えますと、
業界に与える不利益は実に甚大なものであると考えるのであります。
さらにこの
法案の全体の体系でありますが、それほど
広範囲に
機器製品に対する検定をやるといいながら、この
法案において電気計量單位であるとかその他の計量單位が除外されておる、こういう大きな不備がある。このことは不備であるとしてすでに
関係当局も認めておるはずでありますが、しかもこの不備のままでこの
法案を今速急に通すということは、これまた官庁なわ張り主義の
一つの現われであると考えざるを得ないのであります。御承知のように、電気メーターであろうが
ガス・メーターであろうが、実際これをつくる者、あるいはこれを使う者にと
つては別にかわらないのでありまして、それを二つの制度、二つの
法律によ
つて二重に拘束を受けなければならないという不便は、実にはなはだしいものであると思うのであります。このことはすでに業者の間でも言
つておるだけでなく、政府部内、特に検定
関係の官庁部内におきましても、有力な反対
意見があるわけであります。こういう点を無視して、速急にこれを通さなければならないという理由をわれわれは認めることはできないのであります。
さらに計量行政
審議会の問題でありますが、これに対して民間人をなぜ入れないかという私の
質問に対しましても、それは聴聞会があるから必要がないと言われます。しかしながら計量行政
審議会を役人だけで
構成させるということは、すでに執行機関で役人だけがやるわけでありますから、まつたく二重の屋上屋を架するような制度に過ぎなくなるのでありまして、これらの点についても一向にこれを修正しようとされる意思を表明されない、むしろその反対であるということは、われわれはどういう事情があるかわからないが、この
法案を通すために通すというような
一つのなわ張り主義が出ておる証左であると考えざるを得ないのであります。
また
部分的な諸点でありますが、度量衡の販売業者の簡易修覆の権利が今まで無制限に与えられておつたのであるけれ
ども、これが今回の
法案によ
つてやはり制限せられることが事実出ておるのでありまして、これらも、この
法案がなかつたならばもつと自由にその営業がやれた業者に対して大きな不利を与える
一つであると言うことができると思うのであります。これらの点については他の
委員からもいろいろ質疑があり、注文があつたと思うのでありますが、政府当局としては
一つもこれに耳を傾けようとしない、どこまでも一応この
法案を通す、こう言われるのでありまして、われわれはそれならば結局反対せざるを得ないわけであります。
なお業者からの預かり品を損傷した場合に、これを賠償する点について十分なる保障がこの
法案や
施行令によ
つては与えられておらない。これはかりに一応形式的にそういう
規定があ
つても、事実上業者の置かれておる立場から、その損害の賠償を請求して、
あとに
あとくされを残さないということはなかなかむずかしいことでありまして、それだけになおさらこの点には念を入れて業者の利益の安土を確保する用意があ
つてしかるべきであつたと考えるのでありますが、それらの点もきわめて不十分である。これらのいろいろな欠陥があ
つて、私
どもは再度三度これらについては政府当局に対してもその修正を要求したのでありますが、すべてこれらは無効に終
つておる。なお尺貫
関係の方面からも、メートル制との併用なり、あるいはそのほかポンド制の側からもいろいろ問題が出ております。政府は日米経済協力ということを特に強調されながら、その立場からい
つてもはなはだ矛盾するような点が出ておるのであります。これは私としては特に今取立てるほどのことはないのでありますが、そういういろいろな面から不備を押し切
つて、遂に今日これを多数をも
つて押し通されることは、一に官僚主義の最も露骨な面が現われた証拠であるとわれわれは考えるのでありまして、そういう立場からもまた私は反対せざるを得ないのであります。
最後に、しからばこの計量
関係の検定につきまして、あるいは検査につきまして、今までの免許制から
許可制になり――
許可制は現在その実情に大体合
つておるわけでありますが、さらにこれを自由営業にして行くという要求も非常に強いのであります。私は自由営業にしたからとい
つて、必ずしもそれでこの問題が解決するとは思いません。しかしながらもしもほんとうにこの検定が必要である、つまりこの
法案の
趣旨にうた
つてあるように、
日本の経済
産業、特に
技術水準を向上させるに役立つということが貫徹せられるためには、特定の品目に対してどうしても国家が強制的にも検定する必要がありましよう。しかし矛盾することは、その場合については当然国家が無償でこれをやらなければならない。むしろ国家的な義務であると考える次第でありまして、その面からい
つても、この検定
手数料制度というものとこれは合致上ないものである。私
どもは今後正しく伸ばして行かなければならないきわめて特定の品目につきましては、国家が無償でやる。そうしてそのほかのものについては広汎に自由営業の制度を認める、こういうことがほんとうに
日本の
技術水準の向上、
産業水準の向上をもたらすものであると考えるのであります。その立場からこの
法案に対して反対の意思を表明するものであります。