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1951-05-22 第10回国会 衆議院 通商産業委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十二日(火曜日)     午後二時十四分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 高木吉之助君 理事 多武良哲三君    理事 中村 幸八君 理事 高橋清治郎君    理事 今澄  勇君    小川 平二君       澁谷雄太郎君    中村 純一君       眞鍋  勝君    南  好雄君       加藤 鐐造君    風早八十二君  出席政府委員         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         長)      徳永 久次君  委員外出席者         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君 五月二十二日  委員中村純一君、村上勇君及び早稻田柳右エ門  君辞任につき、その補欠として小川原政信君、  眞鍋勝君及び河野金昇君が議長の指名で委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  硫酸アンモニア増産及配給統制法廃止する法  律案内閣提出第一六六号)  ニツケル製錬事業助成臨時措置法案内閣提出  第一七七号)     —————————————
  2. 小金義照

    小金委員長 ただいまより通商産業委員会を開会いたします。  議事に入ります前にお知らせいたします。昨二十一日、本委員眞鍋勝君が委員を辞任せられ、村上勇君が補欠選任せられました。なお本二十二日、委員村上勇君及び早稲田柳右工門君が辞任せられまして、眞鍋勝君及び河野命昇君がそれぞれ補欠選任せられました。以上御報告申し上げます。  本日はまず硫酸アンモニア増産及配給統制法廃止する法律案議題といたします。本案に対して何か御質疑はございませんか。——別段御発言がないようでありますから、本案をただちに討論に付します。討論通告の順に従つてこれを許します。中村純一君。
  3. 中村純一

    中村(純)委員 私は自由党を代表いたしまして、ただいま議題と相なつておりまする硫酸アンモニア増産及配給統制法廃止する法律案につき、賛成の意を表するものであります。  本法は去る昭和十三年、当時の実情にかんがみまして、硫安国内生産を豊富にするとともに、その配給を円滑及び価格統制をはかる目的で成立したものであります。しかしながらその後これら生産増加及び配給価格等の問題に関しまする事情がまつたく一変いたしましたために、この法律でもつて期待をいたしておりまする事柄のうち、社債発行限度に関する規定を除きましてはすべて空文にひとしくなつたのであります。しかしてまたこの社債発行に関しまする規定も昨年成立施行されました資産再評価法の実施並びに商法改正によりまして、この点もまた空文にひとしくなるのでございます。従いまして今次商法改正を機といたしましてこの法律を全面的に廃止しようとするのが本法案提出理由なのでありまするが、以上申し述べました趣旨にかんがみまして、この際この硫酸アンモニア増産及配給統制法廃止いたしますることはしごく妥当の処置と考えるのでありますので、本法案賛成の意を表する次第であります。  以上簡単ながら賛成討論を終ります。
  4. 小金義照

    小金委員長 次は風早八十二君。
  5. 風早八十二

    風早委員 私は日本共産党を代表して、この廃止法案反対意見を表明するものであります。  そのことは、しかしながらこの統制法自体賛成しておるということを意味するものじやないのでありまして、われわれはかねてからこの統制法に対しては反対意見を表明しております。同じその反対の根拠をもちまして、また今回の廃止法案に対して反対意見を表明するものであります。  まず第一は、この官僚的な統制法——官僚的というよりむしろ軍事的な統制法、これは昭和十三年に出たものでありますが、そういう統制法によりまして今まで、特に戦後を通じてそれが廃止せられることなく結局この法律を種にしてどういうことが行われたか。言うまでもなくそこで肥料資本独占の進行というよりも、まつた独占助成し、促進させたという効果をあげておる。これはここに資料としてもいろいろ提出されました各社に日本硫安株式会社がわかれたとはいいながら、これらが一丸となつ日本硫安独占企業というものを形成しております。価格の面でも上げるだけは上げ、現在は独占価格ができてしまつた。また市場の面でも同様でありましてこれは内外にわたつてすでに市場独占が完了した。すべてこれらの問題がこの統制法を通じて、つまり官庁とさらにやみブローカー、これらの結托によりまして、この状態が進行したことはすでに昭和電工のあの不正事件を通じても典型的に現われておると思うのであります。この場合においてその反面だれが一体大きな犠牲をこうむつたかといえば、言うまでもなく農民であります。日本硫安工業というものはだれのためにできておるか、その趣旨は常に農業増産ということがうたわれておりながら、実は農民の手には十分渡つておらない。渡ることができない。これは価格のゆえもあるわけでありまして、事実農民は高くて買えない。しかもその値段を下げないために、まつたくよけいな輸出もやつておる。たとえば台湾に輸出し、そして値段をしいて下げない。その理由とするところは、硫安が余るからというのでありますが、実は余るからではない。買うことができない農民がたくさんあるのでありまして、そのために余る。つまり独占という立場からいつて余る。十分な利潤を上げ得る値段で売ることができないという意味で余るというだけの話でありまして、実際には余つておらない。しかも価格をつり上げるためには輸出をするということをやつて参りました。今日これらのことがすべてもうでき上つてしまつて、もはやそれは提案理由にありますように、統制法そのもの空文に帰しておる、それは言うまでもないのであります。しからばこれをこのまま、この統制法にかわつて単なる自由放任でよろしいかといえば、決してそうではない。これはいよいよ独占がこれから自由自在に大手を振つてさらに進行することができるということでありまして、そういう状態に持つて行くための廃止であるわれわれはこの意味においてこれに反対せざるを得ないのであります。  しからばわが党としては一体どういうことを考えておるかということでありますが、われわれとしてはこの大事な化学肥料工業というものは、大いに振興しなければならないことは言うまでもない。しかしこれは決して一部の独占に支配させるためのものではない。ただ値段をつり上げ利潤を上げるためのものではないのであります。これはもちろん、化学工業にも必要でありますが、また同時に農民農業生産のために、どうしてもこれは十分な確保をしなければならない。それらのことをどうしたら遂行できるかといえば、どうしてもわれわれがかねてから唱えておりますところの肥料工業国営人民管理であります。この線以外には解決の道がないというところまで現在来ておるのだとわれわれは考えるのでありまして、その問題は全面講和単独講和、こういつたような、はげしいすれすれの問題の解決を迫られておるこの情勢で、それと不可分の関係でこの問題が存在しておると考えるのであります。そういう次第で、われわれはこの廃止されるべき法案そのものにも反対でありましたが、これを廃止するこの意図に強く反対せざるを得ない。また、ましてやこの独占というものは、単なる経済的なものではないのでありまして、今日肥料工業電力を一番多く食うのでありまして、現に二十六年度におきましても四十三億キロワツトアワーもここに割当てられておる。これは昨年度の二十六億キロワツトアワーに対してほとんど倍近い増加割当なつておる。そういつたようなことは  一体どういう趣旨でなされるのか、言うまでもなく、これは結局軍事的目的、すなわちいわゆる硫安ではない。硫安工業、これは昭和電工もそうでありますが、日新化学にしてもあるいは化成にしても、いずれにしても火薬、爆薬の、あるいはその原料、そういうものの製造に急転換する、そのこととにらみ合せて、これに対して電力がどんどんつぎ込まれるのだ。これらのことを考えてみますと、この独占の道は。同時に日本を戦争、再軍備、この方向へ導いて行く大きな基礎を形づくるものでありまして、この点から見るならば、われわれは二重、に重大なものとして反対せざるを得ないのであります。われわれとしては、この国営人民管理条件として、あくまで全面講和を主張しておるのでありまして、それらの条件を成就するために闘つておるわれわれとしては、また同時にこの肥料についても国営人民管理の線で闘つておる次第であります。この立場から私どもは、この廃止に対して反対であります。繰返して申しますが、そのことは今までの法案賛成であつたのではない。これに対しても反対であつた。それはあくまで肥料独占から解放して、そうして平和的な化学産業、並びに特に農民肥料を十分に確保するという趣旨であるということを申し上げて私の反対討論を終ります。
  6. 小金義照

    小金委員長 以上をもつて討論は終りました。  引続いて採決いたします。硫酸アンモニア増産及配給統制法廃止する法律案賛成の諸君の起立をお願いいたします。     〔賛成者起立
  7. 小金義照

    小金委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  この際お諮りいたします。本案に対する委員会報告書の作成の件等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 小金義照

    小金委員長 それでは御異議がないようでありますから、御一任願つたことと決します。  ちよつとここで申し上げておきますが、明日は午前十時から本委員会を開催いたしまして、高圧ガス取締法案につきまして専門家あるいは関係者参考意見を拝聴することに過般この委員会で御決定を願いましたから、これを実行いたします。なお午後は現場の視察に行くことになつておりますので、多数御参加を願います。
  9. 小金義照

    小金委員長 次にニツケル製錬事業助成臨時措置法案議題として審査を進めます。質疑通告がございます。順突これを許します。中村幸八君。
  10. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいま上程せられておりまするニツケル製錬事業助成臨時措置法案を通覧いたしますと、鉱石原料としてニツケル製錬事業を行う者で、この法律による助成を受けるという者は通産大臣指定を受けなければならないというようなこと、また指定事業者事業計画従つて事業を実施する義務がある、事業計画を変更するには通産大臣の認可を受けなければならない、また指定業者生産したニツケル政令で定める額以下で販売しなければならない、さらにまた指定業者は、その販売するニツケル一トンごとに、政令で定むる額を特別に積み立てておいて、もし市況の変化、その他やむを得ない理由により本法施行後四年以内に事業廃止した場合、損害があれば予算の範囲内で国が補償してやるというように、かつての戦時立法に見られたようなきわめて強権的な、しかも変則的、例外的な規定に満たされておるのでありまして、この法案はあまりりつぱなものではない、いなむしろ感心しない法律であるとさえ考えるのであります。  しかしながら昨日の提案理由の御説明によりますれば、ニツケル特殊鋼電気通信機械、造船、輸出製品メツキ用、その他各種の重要なる用途に不可欠の基礎物資であるにもかかわらず、国内資源には見るべきものがなく、輸入にまつ以外に道がないのであるが、重要なる戦略物資として米国を初め各国において厳重な輸出統制が実施せられておる結果、十分な輸入が困難であり、昨年下期以降需給が非常に逼迫しておるので、今回原料鉱石輸入国内製錬を行おうとするのであるが、カナダなど諸外国に比較すると、生産コストにおいて格段な相違があるために、わが国においてはとうていニツケル製錬事業は成り立つて行かないという特殊な事情があるので、今回臨時に特殊な調整の措置を講じて、緊急にニツケルの国産をはかり、国民経済発展に寄与することとなつたのであるということを説明せられておるのであります。そこでこの法案が、政府の御説明するがごとく、はたして国民経済発展のために真にやむを得ない臨時的な特別立法であるかどうかということにつきまして、いろいろの角度からいろいろとお尋ねいたしまして、慎重に検討を進めてみたいと存ずる次第であります。  まず最初お尋ねいたしますことは、政府の御説明によると、米国を初め諸外国においては、ニツケルに対しまして厳重な輸出統制を実施いたしておるとのことでありまするが、ニツケルの国際的な需給状況は、現在どのようになつておるか。まず最初にこの点から質問に入つて参りたいと思います。
  11. 徳永久次

    徳永政府委員 ただいまお尋ねのございました、ニツケル世界的な需給状況についてでございますが、ニツケル需要がどういうことに相なつておるかということにつきましては、実はわれわれもわからないのおります。供給の最近の数字を見て参りますと、昭和二十三年までの数字が統計としては入つておるわけであります。それによりますれば、世界の全生産量が十六万五千三百トンになつておりますが、その前年が十五万三千二百トン、その前が十三万五千六百トンというような数字なつております。過去における最高を拾つてみますと、一九四三年が十八万四千百トンという数字なつておるわけでありまして、世界の全生産量は、大ざつぱに申し上げまして年間十五万トン見当であるわけであります。それが米国国防生産法の成立以来、世界的な軍拡の傾向をたどつておるわけであるますが、それによつて増産が要請されておるわけであります。それに対応します供給側の動きを新聞経済雑誌等によつて推測しておるわけでありますが、この十五万トン台の供給力のうちの八割以上を占めておりますインターナシヨナル、ニツケル増産計画は、三箇年間で三割増産ということが立てられておるようでございます。しこうして過去の数字最高が十八万四千トンという数字を示しておるわけであります。かれこれ考えてみまして、供給力は今後三年以内には十八万トンくらいには行くのではなかろうかと想像しておるわけであります。しかしながら一方需要の面におきましては、現在軍需生産関係から非常に大きい需要が出ておるようでありまして、各国輸出禁止あるいは制限いたしておりまするし、国内民需につきまして、非常に厳重な製造制限使用制限をやると同時に、その他の用途につきましても、割当の削減をやつておるというような状況を考えてみまして、この三年間の三割増産ということがかりに行われたといたしましても、民需状況はただいまわれわれが新聞紙上で拝見いたしておりますような世界軍拡状況が進行いたします場合には、そう緩和することは期待しがたいのじやなかろうかというふうに想像しておるわけであります。
  12. 中村幸八

    中村(幸)委員 外国におきますニツケル需給事情等につきましては一応それがわかりましたが、わが国国内需給状況はどうなつておるか。それからニツケル需給対策として、この法律案のほかに、生産の増強、あるいは輸入の促進、あるいはまた適正なる配分というような面において、どういう方策を今までとられておつたか。また将来とろうとしておるか。この点をお伺いいたします。
  13. 徳永久次

    徳永政府委員 ニツケルの戦後における国内需要状況は、昨年の夏以来輸入が全然ストツプいたしておりまして、その結果非常にきゆうくつな状況に相なつておりますので、日本最低需要というものをまず把握してみたいと考えまして、各省と緊密に連絡いたしまして、年間の推定した必要量という、ものをつくつているわけであります。それは参考資料として御配付申し上げてあるかと思うわけでありますが、それによりますと、最低年間必要量として千四百五十九トンという数字に相なつておるわけであります。これの基礎にとりました需要は、もつと大きな需要が各部門から出ておつたのですが、昨年なり一昨年における使用の実績、あるいはその後における変化を考えまして、ミニマムの数字として約千四百五十トンが必要ではないかと考えられたのであります。そしてこのためには、この供給力を何とかして確保しなければならぬというのが、われわれの責任に相なつて参るわけですが、しかしながらこの供給圏というものは、先ほどお尋ねがありましてお答え申し上げましたことく、その生産国はご承知のごとく数が限られておりますし、しかも八割以上が一社で占められているという状況であり、その属しております国が強度統制を行つているという状況でありますので、各国の思うように参らないわけであります。御承知のごとくただいま重要物資割当会議というものがこの春以来行われておるわけでありますが、ニツケルはそこにおきまするテーマにも相なつておるわけであります。それには通産省の通産局長がただいま会議にも列席して日本側実情を訴えておるという状況であるわけであります。またアメリカ本国自身輸出統制をいたしておりますので、それの対日輸出につきまして割当量を極力ふやしてもらうごとく、種々実情を訴えておるわけであります、ただいままでに到達しておりまする結論をかいつまんで申し上げますると、今年の十二月までの間に、対日援助資金によりまして、二百六十五トンの地金が入ることが予定されております。そのうち現物といたしまして二百トン近くのものは今月中にアメリカを船積みするというように予定されておるわけであります。それから援助資金のほかといたしまして、〇・I・Tの割当としてこの一月—三月分の割当といたしまして、ニツケル分——これはものが地金でございませんで、スクラツプとかマツトとかいうものでございますが、それらのニツケルを含んだスクラツプなり合金なりマツトなりというものについて、そのニツケル分として百六十トンの輸出許可アメリカ本国として認めてくれておるわけであります。但しこれは現物の保証があるわけでは、ございませんので、その現物の獲得につきましては、日本側アメリカ商社と連絡しまして買付に当らなければならないということに相なつておるわけでありますが、その百六十トンばかりの輸出許可がおろしてもらえるという状況なつておりまして、現物をほぼ入手し得るのではなかろうかと考えておるのが約百トンでございます。それから四月—六月の輸出許可割当量といたしまして、ただいまワシントンに行つております黄田ミツシヨンから、一昨年は百六十トンであつたが、百トンくらいでという話が実は来ておりまして、百トンでは困るので、もう少しふやしてもらいたいというふうにかけ合つてもらうように連絡をしておる状況であります。そういたしますと、かれこれ一・四半期百トンぐらいのものはガリオアのほかに入るのではなかろうか、非常に大ざつぱな推測でありますが、こう見ておるわけであります。そういたしますと、本年度需給関係がどうなるかということでありますが、三百六十五トンがガリオア資金で入るわけであります。それは但し大体特需関係に引当てられるという、ふうになりまするが、さいぜん申し上げました千百五十トンの国内最低必要量のうち、特需関係のものを二百二十トンばかり私どもは予想しておつたわけでありまして、特需を除きました需要は千二百トンばかりということになります。それに対しては一・四半期に百トンずつといたしますと、四百トンということで、八百トン足らないということになろうと思います。ではつきつめたところ、八百トンの穴をどうするかということが問題になるわけでありますが、それは私どもニツケル需要が窮迫いたしました昨年以来、国内在庫ストツクはどれくらいあるであろうかということをいろいろ調べたのが昨年の暮のことでありますが、これはメタル、地金もございますれば、地金の純ニツケル製品もございますれば、スクラツプもあり、合金の素材のものもあり、いろいろな形があるわけでありますが、それの数字を調べました結果、千トン以上のものがストツクとしてあるということが判明いたしておるわけであります。そういたしますと、先ほどの穴が約八百トンでございますので、もし順調に一・四半期に百トンくらいのものが来ますならば、この暮までの数字は過去のストツクの活用と合せて何とかやつて行けるのではなかろうかというふうに考えておるわけであります。しかしながらこの千四百五十トンという需要につきましては、いわゆる最低需要でありまして、不急用の需要は見ていないわけでありますから、その面につきましては、そういうものに流れない措置が必要になつて参るわけでありまして、その対策としては、ただいまのところはニツケル割当統制という道がとられておるわけであります。それに加えまして、日本供給いたしまする米国その他におきましても、強度使用制限をしておるという事情もありまして、日本におきましても、使用制限をやりまして、不急の用途に流れないだけの措置をとることが必要ではないかということで、ただいませつかくその案につきましても立案中でございます。
  14. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいまの御説明によりまして、ニツケル輸入が本年度ガリオア分として三百六十五トン、そのほかマツトとして百トンということがわかりましたが、今後は、先ほど来の御説明によりましてもわかりますように、非常に輸入が困難になることと思うのであります。そこでこの法案が非常に大事になつて来るわけでありまするが、そういたしますと、はたしてニツケル鉱石の方の輸入の見通しはどうであるか、この点をお伺いするのでありますが、船舶不足の現状にお。きまして、はたして予定通り鉱石輸入ができるかどうか。また鉱石輸入については外国商社等からの引合いがあるかないか、この点をお伺いしておきます。
  15. 徳永久次

    徳永政府委員 御承知のごとく、この計画輸入鉱石対象としてやつておりますわけで、従つて輸入鉱石取得見込みがございません場合には、これは成立たないということになるわけでございます。その点私どもとして非常に重要な問題でありますので、いろいろと関係貿易商社その他と折衝をいたしておるわけであります。私どもがただいま得ておりまする状況では、セレベス、ニユーカレドニアの鉱石対象といたしまして、月二百トンの供給をしてやろうというオフアーが約四口くらい現われておるわけであります。その商社はいずれも相当信頼し得るような商社であるわけであります。ところが国内で必要といたします数量は、かりにニツケル千トン分といたしまして、年間三万七千トンの鉱石があればよろしいという、ことでございます。二千トンとしましても、その倍の七万四千トンというような数字でございまするので、そのオフアーのいずれかを一つつかみましただけでも十分過ぎるというような状況でございます。ただいまの状況におきましては、国際情勢変化のない限り私どもとしてはその取得には不安はないものというふうに考えておる次第でございます。
  16. 中村幸八

    中村(幸)委員 ニツケル以外の物資についても目下需給が非常に逼迫しておるものがあるのでありますが、たとえばコバルトとか、あるいはタングステン、あるいはまたモリブデンというようなものにつきましては、何か特別な助成措置をお考えになつておるかどうか、この点をお伺いいたしまするが、実はこの法案におきましても、当初の案におきましてはコバルトを含めて助成をするという案になつておつたように聞いておるのであります。この点どうなりましたかひとつ承りたい。
  17. 徳永久次

    徳永政府委員 ただいま御指摘のごとく、私ども日本に全然あれのございませんコバルトにつきましても、ニツケルと同様何らかこの生産確保につきまして対策がいるんではなかろうかというふうに考えておるわけであります。ただこれはただいままで実は結論が出ていないわけでございます。と申しまするのは、コバルト生産対策につきまして、その計画具体化のいろいろな検討を続けておるわけでありまして、まあニツケル外国で四五十万、コバルトもほぼ同様のものでございます。国内計画を考えてみますると、鉱石の品位が非常に低いことと、その生産量ニツケルよりはるかに少いことのために、生産費が非常にかさみまして、ただいま私ども到達しておりまする額では、一トン当り六百万円くらいに実は相なるわけであります。あまりにも高価過ぎまするので、それにつきましてニツケルと同様の助成対策を講ずることが適当かどうかということにまだ十分な検討の余地があるんではなかろうかと考えておるわけであります。しかしながら何らかこの供給確保につきましては、国内生産なりあるいは輸入確保なりにつきましては政府として十分の措置をいたさなければ相ならない問題であると考えまして、今せつかく対策具体化検討中でございます。タングステン、モリブデンにつきましては、若干事情が異なるわけでありまして、これも従来からの生産不足物資ではございまするが、これはむしろ資源の開発という点に重点が向いて参るわけでございます。需給関係も、過去のストツク等の関係から、この下半期以降若干きゆうくつに相なつて参るという状況でございますが、山自身としましては、ある程度国内にこれを利用し得る鉱山はございますので、それの開発を促進する方向に考うべきではないか、従いましてその対策といたしましては、開発を助成する方法といたしまして、一つは探鉱奨励金の交付にあたりまして、そういう不足物資にある程度の重点を置くという感覚の運用と、それから第二は、このタングステン、モリブデンも国内には資源があるといたしましても、将来国際情勢がかわりました場合に、採算条件がやはり国内の品位が低いことから非常な不安もあるわけでございまして、さような意味からそういうものの増産のためには特別の免税措置といいますか、そのために設備等をやりましたものを促進するために、免税措置をやる必要があるんではなかろうかというふうに考えまして、法人税法の第何条かにございます、いわゆる重要物産の助成という方法によりまして、免税措置をやつてもらいますごとく、ただいま大蔵省と折衝いたしましてほぼ了解を得ておるようなわけであります。  その次に残ります問題は、開発に必要なる適当な企業者を選定する、あるいは資金そのものをあつせんするというような形に相なつて来るのではないかと考えまして、さような方向でわかつておりまする。山の開発を極力促進するごとく手を進めて行つておるという状況であります。
  18. 中村幸八

    中村(幸)委員 次にニツケル貨幣は、地金に換算して現在どのくらいあるものか。またニツケルの総合的な需給調整という見地からいたしまして、このニツケル貨幣を一般産業用に振り向ける考えはないかどうか。
  19. 徳永久次

    徳永政府委員 現在は、ニツケル貨幣は実はないわけでございます。ただ大蔵省におきましては、通貨政策の見地から申しまして小額紙幣をニツケル貨幣に置きかえたということで準備が進められておるように聞いておるわけであります。ニツケル貨幣と申しますと若干誤解がありますので申し上げますが、ニツケル合金、いわゆる白銅貨というものでございます。ニツケルを十七、八パーセント含んだ銅合金の貨幣が用意されておるようであります。その中に含まれておりまするニツケル分を計算いたしますると、約三百二十トンくらいの数字に相なつておるわけであります。私どもといたしましては、これを産業用に向けるのも、御指摘のごとく一策であるかとも思うのでございますが、しかし貨幣政策の面から、今の紙幣をコインにかえるという方向が健全な政策ではなかろうかというふうにも考えられますし、ニツケル需給対策といたしまして、あらゆる方法を盡した後やむを得ない場合にそれを問題にするという態度がわれわれとしてはいいのではなかろうか、それから貨幣として国内にありまする限り、それは日本に厳然として残るわけでありまして、そこらのことをかれこれ考えますと、ただいまのところは、せつかくでき上りつつあります貨幣を工業用の方にまわしてもらうというようなことは考えないというような立場でおるわけであります。
  20. 中村幸八

    中村(幸)委員 次にお尋ねいたしますことは、諸外国ニツケル製造価格に比較いたしましてわが国において、鉱石輸入して製錬いたしまする場合は、何ゆえに非常にコストが高くつくかこの点を詳しく御説明願いたい。
  21. 徳永久次

    徳永政府委員 この点は実は私ども一番最初に問題にいたしたことでございまして、いろいろとこの状況を勢いたしたわけでございます。その結論といたしまして、やはりやむを得ないのじやなかろうかというふうに考えておりますが、その理由を御説明申し上げますると、先ほど申しましたインターナシヨナル、ニツケル世界の八割を供給いたしておりまする会社の生産品が売値で四十万円くらいになるだろうということは、非常に安いわけであります。それは、一つはその鉱石の品質が、日本が今度利用しようと考えておりまするセレベスなり、ニユーカレドニヤにありますのと全然異なつておるわけであります。と申しますのは、インターナシヨナル・ニツケルの会社のものは、硫化ニツケルでございまして、精錬の際に非常に燃料が安くて済む。さらにその中に銅も含まれておるというような長所があるわけであります。それから鉱床全体が非常に大きな鉱体でございまして、露天掘りと大規模な坑内掘りを併用して、半々くらいでやつており、かつ精錬所がすぐ間近にあるという特色を持つておるわけです。もう一つ比較の問題で問題になりますのは、ル・ニツケルはニユーカレドニヤの石を対象にいたしておるわけであります。これは日本が今度利用しようとする石の性質と同じ性質のものでありまして、珪酸ニツケルでございます。これはインターナシヨナル・ニツケルの石と、先ほど申しましたように違いますけれども、しかし日本が利用しようとするものと同じであるということでありますので、それと比べてなぜ日本値段が違つて来るかということが疑問になつて参るわけであります。それを検討いたしましたところ。私どもの到透いたしておりまする結論は、ニユーカレドニヤの品位の上等な高いものが先にル・ニツケルを押えてしまつておる。しかも輸出も品位の低いものは認めないという状況に置いておるということが一つの大きな要素でございます。  それから第二の百要素は、このル・ニツケル会社は、現地に精錬所を置いておるということでございます。日本の場合は、元鉱を鉱石のまま長距離輸送して来なければならないという要素があるわけであります。  それからもう一つは、これは物理的の説明では。ございません。経済的な説明になるわけでありますが、新たにニユーカレドニヤないしセレベスのものを開発して、日本に持つて来てやろうという鉱石の原価が、非常に高いわけでありまして、ただいまの見当で、ニツケル一トン分の鉱石代が、約八十万円といわれておるのであります。その要素の中に、運賃が非常に高いということのほかに、それを開発してやる事業者といたしましても、日本事業者が、われわれが助成補助の対象といたしまするごとく、永続性のある保障のないものでありまして、その点で企業のリスクという、ものを鉱石代に織り込んでいるという事情があるものと想像いたしておるわけであります。それらの原因から非常な差が出て参るということでございまして、戦時中できました生産原価なり、そのときの原材料の原単位というようなもの等をとりまして、現在のコークス代、電力代、その他のものの価格変化というものをかけ合せまして積算してみますと、そうべらぼうな値段ではないということがいえるわけであります。
  22. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいまの御説明によりますると、わが国におきましては、ニツケルの精錬事業を行うということは鉱石の品位あるいは品質の関係から、また地理的の関係等からいたしまして、全然無理であろと思うのであります。従つて一切の償却を終つたあとでも、なお相当の保護関税をかけなければ、とうてい事業として成立つて行かない、こう思いますが、二ツケル地金外国から自由に輸入ができるようになりました際は、保護関税をかける考えかどうか、この点を伺つておきたいと思います。
  23. 徳永久次

    徳永政府委員 実はこの法案で書いておりますごとく、この事業のために予想されます危険というものを、積立金の積立基準額という形で見込んでおります。これだけの基準額というものは、いわば一口に言いますれば、この事業のリスクの額に該当するわけであります。その額を業者の積立金で積み立てさすように考えて、そしてそれがうまく積立てを完了しない前に、事業の継続が不可能になりました場合は、不足分を国で補償しようというふうに考えておるわけであります。つまりお尋ねのように、事業がうまく積立てを完了いたしまするまで継続いたしました場合には、その設備というものは、すでに償却を終つたというふうに見てしかるべきであろうというふうに考えております。そうしてそれはその期間中、国内需要はあるが、輸入ができなかつた。しかし使命は果したというふうに見てよろしいと思うわけであります。従いましてその後におきまして安いものが具体的に日本として取得できるということになりました場合は、その事業の存続ということを私らは考えて行くよりも、事業者の上場という方を考える方が賢明であります。従いましてその精錬事業の存続のために保護関税をかけるというようなことは、考えない方が健全ではないかというふうに考えております。
  24. 中村幸八

    中村(幸)委員 今の保護関税をかけない方がよろしいという御結論のようでありますが、この点は今現実の問題ではありませんので、なおよく御検討を願う必要があるのではなかろうかと思います。  次にニツケルは、先ほどマツトのお話がありましたが、マツトスクラツプからも生産が可能であるわけであります。この法案においては、助成対象鉱石からの一貫作業に限定しておるのでありますが、その理由はどこにあるか、またフエロニツケル助成の必要があるのかないのか、この点をお伺いしたい。
  25. 徳永久次

    徳永政府委員 ニツケルスクラツプなりマツトなり、あるいは鉱石を直接原料としましたフエロニツケル助成がいるのではないかというお尋ねでございますが、これは私どもとしてはそれには助成がいらないという考えをとつておるわけであります。その理由といたしますところは、ニツケルスクラツプマツト対象といたしました精錬というものは、電気分解の設備だけで済む。従いましてそれは大した資本の投下を必要としないということであります。それから鉱石を入れましてフエロニツケルをつくるということは、特殊鋼をつくります際に、従来の仕事のやり方のほかに、鉱石をチャージすればいいわけでありまして、そのために特殊の設備を必要とするわけではないというのが、この鉱石精錬との違いでありまして、鉱石精錬の場合には、鉱石溶鉱炉あるいは転炉、それから還元炉というもののために、非常に巨額の投資を必要とするというところに大きな違いがあるわけでありまして、その巨額の投資をしながら、しかもそれが十分投資額が回収し得るまでただいまのような状況が続くか続かないかということが何人も保証し得ないというところに大きな違いがあるのであります。そこの実質的な違いから考えまして、助成対象ニツケル鉱石原料といたしますニツケル製錬事業というものに限つて一向ふつり合いでもなし。さしつかえないと考えます。
  26. 中村幸八

    中村(幸)委員 この法案を実施する場合におきまして、指定事業者としまして現在何社ほど予定しておるか、具体的にはどの会社とどの会社を指定しようとするか、おわかりでしたらお聞かせ願いたいと思います。
  27. 徳永久次

    徳永政府委員 この製錬事業助成法におきましては、一定要件を備えた申請がありますれば、それを認めなければならないという構成をとり、その構成要件を備えて出したが認められなかつたという場合には、聴聞会でその理由を明らかにするというような手続をとつて、民主化の立法の体系を前例によりましてとつておるわけであります。法律は、さようにある要件を備えた人はお受けしますということに実は相なつておるわけであります。しかしながらその要件の中に、事業を確実に遂行し得る人という資格の制限が設けられておるわけであります。またその申請を認めることによりまして、供給需要に対して著しく過剰にならないというような要件も入つておるわけであります。これは第二条の三項に一から五までさようなことがあげてあるわけであります。一から五までありますが、いずれも大事な要件でございます。必要以上に余分なものを作つてもしようのないこと、それが第一号であります。それから第二号では、工事費がべらぼうに高いということは、最後の場合国の補償ということも考えておりますので、適当でないということでございます。第三号では原価が一定の額以下のものであるということ、これもべらぼうに高過ぎては意味がないということであります。それから第四で法律の施行の日から一年以内ででき上るものということもあげておるわけであります。これも今から研究してそれをつくるのだということでは、急場の間に合わないわけであります。急場の間に合わすということがねらいでありますので、困るということであります。五号では先ほど申しました事業を的確に遂行するという能力、つくりはつくつたが、ものはうまく出ないということではどうにもならないわけでございまして、ただこのニツケルの製錬事業というものは、技術的にも非常にむずかしい技術だというふうにもされておることでございます。ほかの銅や、鉛、亜鉛等の製錬と異なつた普遍性を持たない技術でもございますので、私どもとしてはこの技術能力というものに一つの大きな重点を置きまして、その確信のあるものに限定するということをいたしませんと、結果といたしまして、国に迷惑をかけるというようなことに相なつてはたいへんだということも考えておるような次第でございます。法律的にはさような考え方をとりまして、来るのを受けるという態度で実はおるわけでありますが、この法案を私どもが用意いたしておるということは、前からもいろいろ新聞紙等にも出ておるようなことでもございますし、ただいま私どものところには、直接お話をお伺いしておりますのは三社でございます。一社は別子鉱業、それから一社は日本アルミでございます。それからもう一つ日本冶金が、これは自分自身でなしに、あちらこちらと提携しながら計画をお立てになつておるということをお聞きしておるわけであります。ただいまのところではこの三社から話を聞いておるわけであります。これもそう詳細にはまだ話を聞いておるわけではございませんので、いずれこの法律が施行されるように相なりますと、詳細な計画、内容が提出されました際に、この要件に従つて内容的に十分の検討をしたしできめたい、ただいまのところ、そのうちどれとどれを選ぶかというようなことはまだきめていないというようなわけであります。
  28. 中村幸八

    中村(幸)委員 ただいまのお話で、指定条件として供給過剰になつてはいかぬ、こういうことでありましたが、先ほど説明がありましたが、国内需要が千四百五十トンというのですが、この千四百五十トンの供給を満たすためには、そのうち今の三社を全部許す余裕があるかどうか、各社別に別子鉱業、あるいは日本アルミ、あるいは日本冶金、この三社の能力がちようど千四百五十トンの日本国内需要にマツチするかどうか、その点御説明願います。
  29. 徳永久次

    徳永政府委員 その判定につきましては、こういう見方も考慮に入れなければならないのじやないかと考えております。と申しますのは、千四百五十トンというものは最低需要でございます。プラス若干のものがあつてもいいのじやないかと考えております。それからもう一つは、将来も特需関係のものは、地金アメリカその他から供給が受けられると考えていいのじやなかろうかというふうに考えておるわけであります。そういたしますと、かれこれ国内で千二百トンか、千五百トンかくらいのものを、この助成法の措置によつてつくれば大体よろしいのじやないかというふうに、大ざつぱに見当をつけて大過ないだろうというふうに考えておるわけであります。それに対応いたします計画といたしましては、別子鉱業は、月百トンといたしまして、年間に直しますと千二百トンであります。日本アルミの計画はロータリー・キルンを二本使いまして、月産五十五、トン、年間に直しますと六百六十トンという数字なつておるわけであります。その点で両方合せますと、ちよつと過剰気味だというのが大体の見当だというふうに考えでおるわけであります。第一号の需給関係の規模の点についてはただいまのような点で、正式にはどういう数字が出て参りますかわかりませんが、われわれただいま聞いておりまする数字では、数字が少しばかりですが、多いのじやなかろうかという感じがしております。
  30. 中村幸八

    中村(幸)委員 今の御説明によりますると、別子鉱業、日本アルミの能力が日本国内需要よりも少し大きいというお話でありまするが、やはり御説明の中にもありましたように、最低国内需要が千四百五十トンでありまする関係もあり、また指定業者というものは、この法案によりまして非常に厚い保護を受けることになり、いわば独占的な立場に立つのでありまするので、一社ということに限らない方がいいのじやないか、こんなふうにもわれわれ考えるのであります。しかしさりとて、あまりたくさん許すということは、やはり供給過剰になると思いますので、それはまた制限しなければならぬと思うわけでありまするが、いずれにしましても、別子あるいは日本アルミというような有力なる筋については、十分慎重に御検討なつていただきたい、かように思うのであります。  それから次には、この指定業者以外のニツケル製錬業者に対しては何か特別な保護を与えるお考えであるかどうか、この点を伺いたい。
  31. 徳永久次

    徳永政府委員 この鉱石からの製錬以外に、現在スクラツプからのニツケルの製錬という事業者が二、三案はあるわけであります。これはいずれも非一常に数量としては小規模でございますが、しかしながら、今のなけなしの供給、一トンでもほしいという際に、やはり全体のために非常に役立つておるというような状況でございます。私どもとしまして、本法によりまする指定事業者だけがこの保護の恩典に浴するということもいかがかということも考えまして、本法のような危険負担という点はないわけでございますが、せめて大いに増産してもらいたいということの助成という意味を考えまして、先ほど申しました重要物産の指定の中にニツケル地金製造業というものが入る予定であります。これによつてスクラツプからの製錬事業者でありましても、新たに増設いたしました設備によりまするものにつきましては、三年間免税ということに予定いたしておるわけであります。
  32. 中村幸八

    中村(幸)委員 次にニツケルトン当りの指定販売価格としては、政府においてはどの程度にお考えになつておるか、またこの指定販売価格国内の公定価格とする考えがあるかないか、それを承りたいと思います。
  33. 徳永久次

    徳永政府委員 この指定販売価格をほんとうに決定いたしますのは、実はもう少し先になろうかと思います。と申しますのは、現在建設工事をし、また具体的には半分以上のものが鉱石代に支配され、輸入価格に支配されるというような状況もございまして、それらのことが固まりましてからきめることでございますが、実はただいままで出ておりまする資料から私ども検討いたしておりまするのを申し上げますると、ほんとうのざつとした検討でございますが、私どもとして、この助成によつて供給確保するとしましても、せめて今の時価よりも相当安いということを大きな要素に考えるべきものであると思います。時価は三百万とか、三百五十万とか言われておるわけでございますが、それが考えなければならぬ一つの要素でございます、それからもう一つは、この法律がごらんのごとく事案問題として国の補償なしに済みやしないかとも考えておりますが、法律的には万一の場合には国が補償するというようなことにいたしておりまする関係もございまして、この仕事の続けられまする間は、なるべく事業者積立金を多くする。そうして早く積立基準額に到達するようにしておくというようなことを考えまして、国の補償の負担をなるべく少くするということがわれわれとして考うべきことではないかというふうにも思つておるわけでございます。その点から積立金というものを、トン当りの積立金をなるべく多目にしたいという要請でございます。従いましてその点では値段を上げる方の要素になろうかと思うのであります。そこらのところから、積立金としまして五十万か、七十万、トン当りに見まして販売価格を二百二、三十万、そこらの辺が一応いいのじやなかろうかというような見当をつけておりますが、もう少し、最初に申し上げましたことく、判断の前提になりまする生産費というものが固まりましてからにしたいというふうに考えております。  マル公については、これはマル公とはいたすつもりではございませんので、指定業者の販売価格、これは一種のマル公でございますが、これをもつてほかの生産者のニツケルの販売価格を押えるということにはする必要がないというふうに考えます。従いまして先ほど申しましたスクラツプから製錬しております、少量でございますが、業者の価格はこれとは別なものになるというふうに考えております。これは内容的にごらんいただきましても、マル公というのは生産者の生産費に適正利潤を加えたものできめるという考え方で、これは政策的に特別償却金を見ておるというような積立金という、そういう性質の売値でございまして、売値である点においてはほかのものと同じでありますが、内容的には相当違いがあるわけであります。これをもつてマル公にするというような考え方は適当でないのではないかというふうに考えております。
  34. 中村幸八

    中村(幸)委員 マル公にする考えはない、マル公とは違うというお話で、指定業者から二百三十万円程度でニツケルを買つたものが、さらにこれを一般市中価格の三百五十万あるいはそれ以上で転売するということも考えられるのでありまして、そこに非常に大きな利益が生れて来るわけですが、この場合に、あるいは不当利得で取締るというようなお考えがあるのか、あるいはそれは放任しておくというのか、お尋ねいたします。
  35. 徳永久次

    徳永政府委員 この助成法によりまして百トンあるいは百四、五十トンというものが月々生産され、供給されるということになりました場合に、需要との関係から見まして、自然に現在の三百万とか三百五十万とか四百万というやみ値が相当下るのではないかということも考えておるわけであります。かりに下らなくて、中間に介在いたします販売業者がそれでやみをやりはしないかということが御心配の点だろうと思うわけであります。私どもこの配給につきましては、切符統制によりまして、割当統制なつておることでもございまするし、割当業者が、この指定業者生産費を——販売業者を通したために高いものを取得して、黙つていないだろうというふうに実は考えるわけであります。法規的にはそれを制限する何ものも実はないわけでありますが、私ども最初からあらゆる構えをしまして、販売業者の口銭は幾らだということまで、マル公まできめて押えてしまう必要はないのじやなかろうか、経済法則から見まして、やみ値も少し下がるであろう、それから需要者も黙つていないだろうというようなことから見まして、適当なところに納まりがつくのじやないかという構えで一応おりまして、万一、実際やつてみました結果が、私どもの期待に反しまして、べらぼうな暴利をとるというような人が出て参りました場合に、早急にそれに対する手を打つということぐらいでいいのではなかろうかと、ただいま考えておるわけであります。
  36. 中村幸八

    中村(幸)委員 指定販売価格をお話のように二百三十万円見当にきめた場合におきまして、現在五十万円程度で輸入ができるのでありまして、この輸入値段が将来引上げられるようなおそれはないか、お伺いいたします。
  37. 徳永久次

    徳永政府委員 この四、五十万円の輸入価格の品物、これはその供給者側が世界——実はどこにもその値段で出しておる値段でもございますので、日本がこういう助成法によりまして、高い輸入鉱石で、品位の悪いものを製錬して、高い値段で売つておるからということがありましても、そうその足もとにつけ込んで動くような、日本向けの特別価格をつくるような業者ではなかろうというふうにも想像いたしております。そのほかにもう一つは、このニツケル地金そのものとしての対日供給は、先ほども申し上げましたことく、特需に限られようとしておるわけです。この状況は将来も続くだろうということを考えます場合に、特殊のものの供給価格というものが上るということは、需要者側も困る事情でもありますので、その点からもその値段はそう上らないのではなかろうかというふうに想像いたしておるわけであります。
  38. 中村幸八

    中村(幸)委員 指定業者の特別積立金の問題でありまするが、この特別積立金は、必要なコストと販売価格の差額を強制的に留保するというような意味合いになると思いまするが、この場合におきまして、会社の配当金はどういうふうに考えておるわけでありますか。配当なしで積立期間中は行けというのか、あるいは最小限度の配当はしてもよろしいというふうに御指導になるのか、この点をお伺いいたします。
  39. 徳永久次

    徳永政府委員 本法では販売価格と積立金額というものだけに触れておるわけであります。この法を決定いたします際に、考慮いたすべき問題は、生産費というものを検討しますことは当然でございますが、同時にその事業者がこの事業によりまして、適正な利潤を得るということは確保してしかるべきではないかと考えております。国の補償がついておるのでありますから、この事業については、利益金を見なくていいのではないかという感じの議論というものも実はないわけではないと思われるわけですが、しかしまともに考えてみまして、この事業はいわば国の投資によつてやつてもしかるべきような事業でございまして、それをある事業者が担当するという場合に、この積立金が完了するまでの間は、一文も利益なしで、いわばただ働きでしろというようなことは、条理に反するのではなかろうかというふうに考えまして、適正な利潤というものを与えるごとく計算しました上で、特別積立金なり販売価格というものを決定するというふうにいたすべきだと思います。
  40. 中村幸八

    中村(幸)委員 次に法案二条に定めてありまする指定基準のうちで、製錬設備の工事費の最高限度はどの程度を考えているか伺います。
  41. 徳永久次

    徳永政府委員 この工事費のきめ方といたしましては、設備の能力、大きさによりまして限度をきめるようなやり方をとらざるを得ないのではないかというふうに考えております。実はまだ厳密なこの指定省令の用意ができておるわけではございませんが、かりに月産百トンぐらいの設備といたしまして、四億円見当ということでいいのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  42. 中村幸八

    中村(幸)委員 次に法案第二条第三項第五号の「事業を的確に遂行するに足りる能力」というのは、具体的に言いますと、どういう程度の能力をさすのであるか。またこの項に特に法人に限定しておる理由はどこにあるか。
  43. 徳永久次

    徳永政府委員 事業を的確に遂行するに足る能力と申しますと、一口に申しますれば、経営能力ということに相なるかと思うわけであります。しかしながら、先ほどもほかの問題で関連してお答え申し上げましたことく、この事業が技術的に相当むずかしい仕事であるという点を考えまして、経営能力ということを考えますれば、この技術の能力を持つておるかどうか、それから技術を運営する技術陣容と申しますか、そういうものを十分持つておるかどうかということが大きな要素になろうかというふうに考えるわけであります。形式的にはいわゆる経営能力でございまして、実体的に経営能力の判断としてものを言うのは、技術陣容あるいは技術能力ということが大きな要素になるというふうに考えております。それからこの適用を法人に限りました趣旨は、この事業が数億円の設備投資を必要とするという大きな事業であるということと、またこの反対に、申し上げました、ごとく技術的に普遍性を持たない事業でございまして、その点から考えまして、わが国の現状といたしまして、個人の場合にそれに該当するものがおるということが予想できませんので、実質本位で法人に限定して一向支障がないのではないかというふうに考えております。
  44. 中村幸八

    中村(幸)委員 指定業者は、この法案によりまして、その事業の危険を国家によつて担保されておるのでありますが、指定期間中は、その事業の実施の状況あるいは積立金の積立て状況等につきまして、国家が十分なる監督を行わなければならないと思うのでありますが、指定業者に対する監督としては、政府はどのような方針で監督せられるのか、お伺いいたします。
  45. 徳永久次

    徳永政府委員 この指定業者に対する監督につきましては、実はこの法律は相当厳重に書いたつもりでございます。従いまして最初中村委員から御質問がございまして、いかにも戦時中の管理規定のような感じがするというふうにおつしやつたわけでございますが、私どもとしましても、事実問題として国の補償が起らないで済むことを希望いたしておりますけれども、しかし法律的に考えてみました場合に、国によつて担保しているという限り、国民にかわりまして政府としては、監督に十分遺憾のないような構えで当らなければならないというふうに考えまして、いろいろなところには出ておるわけであります。最初から申しまして、事業者の計画を認可事項にいたし、またその変更も認可事項にいたしておるわけでございます。また事業のための工事の開始とか、あるいは完成等につきましての届出も要求いたしておりますし、また実際上の経理と申しますか、それのごまかしというようなものがあつてはたいへんなことに相なるので、この点については十条によりまして、特別積立金、ニツケル生産に要した原価その他必要な事項について、指定業者から報告を徴する権利、立入り検査権というような規定を置いているわけであります。さらに重要な違反がありました場合に、指定の取消しということも第五条によつて規定いたしておるわけでございます。この管理監督につきましては、万全の注意を払つたつもりでございます。
  46. 中村幸八

    中村(幸)委員 この法案の施行に伴つて、予算的措置が必要でないかどうか伺いたい。
  47. 徳永久次

    徳永政府委員 この本法の第八条の補償金は万一事業廃止なつた際に初めて補償金を出す。しかも廃止になりましても、先に積立金ができてしまつておればいらないという構成になつておるわけでございまして、この補償金の限度そのものの予測もつかないことでございますし、事故が起りまして、補償金の全額がこの法律によつてかたまりましてから、補正予算なりあるいは予備金の流用なりというような、予算的な処置でさしつかえないというふうに考えております。
  48. 中村幸八

    中村(幸)委員 次に法案第十条第一項第一号から第三号までに規定してあります、積立基準額の各要素について御説明願いたいと思います。
  49. 徳永久次

    徳永政府委員 この第七条の積立基準額は、一口に申しまして事業の危険の額というものをはじき出したつもりでいろわけでありまして、その要素になるものを三つ書いてあるのであります。一つは基本設備と申しますか、本体の設備と、それから附帯設備、たとえば、この事業のための住宅施設とか、あるいは輸送施設とかいうような附帯設備、この一つがいわば建設費に該当するわけであります。この建設費が十分カバーできない間につぶれるかもしれないという意味で、これが危険な一つの大きな要素であります。それで本体の設備と附帯設備につきまして、基準額をつくる際には分別して考えたわけであります。と申しますのは、本体の設備は、大ざつぱに考えまして、大体もうだめになるということが言えるわけでございますので、いわゆる残存価格としては、スクラツプ価格的なものになるであろうということを考えまして、本体の基本設備につきましては、その建設費の百分の九十一割が残存価格というように見て、それを危険の額というふうに考えております。それから附帯設備につきましては、住宅とかあるいは輸送施設とかいうようなものでございますが、そういうものにつきましては、場所によつては住宅といえども利用価値のなくなるものもないわけでもございませんけれども、きわめて常識的に考えまして、本体の設備はほとんどスクラツプになるが、住宅その他はある程度利用もできるであろうということを考えまして、それを半分を危険の額というふうに算定したわけであります。次の三号に掲げてありますのは、これは建設費ではございませんで、この製錬事業の運転のために、どうしてもニツケル鉱石というものを、常に何がしかのものを手持いたしておるわけでありますが、その事業継続のもの、いわゆるランニング、ストツクとして必要な数量というものがありますが、その数量の鉱石というものは、先ほど最初説明で、お答え申し上げましたように、鉱石材はほぼトン当り八十万円と予想されております。その額自体で輸入地金材の倍もするということでございますので、これは百パーセント無価値になる、そういうものであります。事業継続に必要な最小限度の数につきましては、それを百分の九十とか何十とか言わないで、全額を危険の額の計算に入れる必要があるのではなかろうかというふうに考えまして、それを、三号として計上したわけであります。その単価及び数量というものを幾らにいたすかということは、もう少し数字検討してきめたいと思います。今御説明申し上げましたように、概算で考えますればトン当り八十万円というような数字をきめて、それからランニング、ストツクとして一月ないし四月のものをきめて、それにかけ合わせて金額をはじき出したいと思います。
  50. 中村幸八

    中村(幸)委員 補償金に対する課税上の特例につきましては、第九条に規定がありますが、積立金については免税の規定が見当らないのであります。それは何ゆえであるか、お伺いいたします。私は積立てをなるべく早く完了する意味からいたしまして、全額を留保するのが適当ではないかと思うのでありますが、この法案に積立金についての免税規定がない理由を御説明願いたいと思います。
  51. 徳永久次

    徳永政府委員 積立金は実は免税いたしたいという考え方でございます。この法案の中に入つておりません理由は、実は重要物産の追加指定——先ほど申し上げました指定によりまして三年間免税という適用の方で、実質的に目的を達するというふうに考えておるわけであります。この法律の中に、積立金を免税にするというきめ方をしないで、重要物産の指定によりまして免税にするという道を選びました趣旨は、先ほど申し上げましたことく、この指定業者以外にもニツケル増産に何らかの寄与をした人に恩典を及ぼしたいということを考えまして、重要物産の指定の方法で行きまするならば、三年間免税という効力が、指定業者のみならず、他のニツケル生産業者にも及ぶということになりますので、その道を選んだわけでございます。まだ実はそれが施行になつておるわけではございませんが、きわめて近々のうちに、大蔵省の方で法人税法によりまして省令が出るという予定に相なつておるわけであります。
  52. 中村幸八

    中村(幸)委員 以上私はこの法案に対しまして、いろいろな角度から種々お尋ねいたしましたが、たいへん詳細な御答弁をいただきまして、目下のわが国の現状におきまして、緊急にニツケル国内製錬しなければならないという事情もわかりました。国内において製錬事業を行う場合に、コストが非常に高くつくために、現在において何人も手がつけられぬというような現状を打開するために、この法案が真にやむを得ないという事情もわかりました。一応私の質問はこの程度で打切りたいと思います。
  53. 小金義照

    小金委員長 爾余の質問は次会に続行することといたしますが、この際鉱山局長にちよつとお尋ねいたします。あなたの答弁の中に、しばしば廉やみ値段三百万円、三百五十万円という言葉が出ましたが、ニツケル価格統制がないのにやみ値段という言葉は、輸入値段に比較してあまりに高過ぎるというような意味に私は了解するのですが、その点はつきりここでそのいきさつを明らかにしておいていただきたいのです。
  54. 徳永久次

    徳永政府委員 ただいま委員長から御指摘がございましたように、私の言葉が正確を欠いておるわけでございまして、ニツケルにつきましては昨年マル公が撤廃になつたわけであります。これは当時全部輸入品であり、しかも輸入品の価格は随時若干変動があるかもしれないし、しかも全部輸入品だから割当によつてやつておるので、不当な値段も立てられないからというような理由で、実は撤廃になつたわけでございます。従いましてただいま国内にございまする三百万円とか四百万円とかいうものは、いわゆる自由価格でございまして、ただいま正確にポイントを委員長から指摘されましたことく、私どもは事実上輸入価格がマル公みたいな扱いになるのだというふうに事務的にそう感じておりますので、その感じからやみ値というような表現をとりましただけでございます。正確に申し上げますならば、現在の価格は自由価格として三百万円、四百万円という委員長の御指摘の通りでございます。
  55. 小金義照

    小金委員長 それでは本日はこの程度にて散会いたします。明日は午前十時から開会いたします。     午後三時五十五分散会