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1951-02-14 第10回国会 衆議院 通商産業委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十四日(水曜日)     午後一時四十七分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 多武良哲三君 理事 中村 幸八君    理事 高橋清治郎君 理事 今澄  勝君       今泉 貞雄君    小川 平二君       神田  博君    澁谷雄太郎君       高木吉之助君    田中 彰治君       玉置  實君    永井 要造君       中村 純一君    福田  一君       南  好雄君    風早八十二君       今野 武雄君  出席国務大臣         通商産業大臣  横尾  龍君  出席政府委員         通商産業政務次         官       首藤 新八君         通商産業事務官         (通商繊維局         長)      近藤 止文君         資源庁長官   始関 伊平君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君  委員外出席者         専  門  員 谷崎  明君         専  門  員 大石 主計君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 二月十三日  委員江田斗米吉辞任につき、その補欠として  玉置實君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員田代文久辞任につき、その補欠として今  野武雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月十三日  電気事業再編成に伴う水力発電所讓受に関する  請願今澄勇君紹介)(第五九一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、  繊維製品検査所支所及び出張所設置に関し  承認を求めるの件(内閣提出承認第一号)  重要物資需給に関する件  肥料及び塩の問題に関し、小委員長より報告聽  取     —————————————
  2. 小金義照

    小金委員長 これより開会いたします。  議事に入ります前に御報告いたします。昨十三日委員江田斗米吉君が辞任せられまして、その補欠として玉置實君が選任せられました。  なお江田斗米吉君は地下資源開発及び合理化に関する小委員でございましたので、その補欠として玉置實君を選任することに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小金義照

    小金委員長 御異議がないようでありまするから、さよう決定いたしました。  これにて暫時休憩いたします。     午後一時四十九分休憩      ————◇—————     午後三時三分開議
  4. 小金義照

    小金委員長 これより休憩前に引続いて会議を開きます。  御報告申し上げることがございます。先刻田代文久君が辞任せられまして、その補欠として今野武雄君が選任せられました。  この際お諮りいたします。田代君は地下資源開発及び合理化に関する小委員工業に関する小委員を兼ねておられましたので、その補欠として今野武雄君を選任いたしたいと存じまするが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 小金義照

    小金委員長 御異議なしと認めまして、さよう決定いたしました。     —————————————
  6. 小金義照

    小金委員長 まず地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、繊維製品検査所支所及び出張所設置に関し承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。通告の順に発言を許します。高木吉之助君。
  7. 高木吉之助

    高木(吉)委員 ただいま議題になりました繊維製品検査所支所及び出張所設置に関し承認を求めるの件でございますが、戦後累年繊維輸出がふえて参りました。そこで各地におきまして検査所設置を要望する声は、すでに陳情あるいは請願によつてもその数を増して来ておるのでございます。わが国貿易の主要な部分を占めますこの繊維製品に対する検査を嚴格にするということは、一面産業の発展を促推し、まな貿易を増強する上に、最も必要なことと存ずるのであります。ただいま提案になつておりますところの箇所は、すべて従来よりいろいろの事情によりまして、設置を要望する箇所であります。私どもといたしましては、これに対して設置を非常に切望するものでありますが、ただ單に検査所のみを設置するばかりでなく、これに対する内容充実ということが最も必要であると存じます。従いましてただいまの提案理由にあります通り予算面においても何ら増額することなく設置するということでありますれば、勢いこの検査所設置費用は、それらの関連する団体において持たねばならないということになるのでございますが、今回支所並びに出張所はいかなる地域に置かれるのか、一応伺つておきたいと存じます。
  8. 近藤止文

    近藤政府委員 今回支所設置の御承認をお願いいたしました場所は、神戸の繊維製品検査所の管内であります福岡、福山、岡山の三箇所と、それから京都の検査所出張所といたしまして山科、金沢の検査所におきまして小松の出張所という五箇所を、御承認をお願いしたのでございます。これらはいずれも従来出張所検査をいたしておつたのでありますが、業界におきましてすでに検査をいたします場所を提供されておりまして、それをぜひそのまま使つてほしいという要望もございまして、建物その他につきましては新しく予算的な措置がいりませんのと、それから現にこれらの場所は常に出張検査をいたしておりまして、そのために所定の人間をもつて行います検査能率が非常に惡いということでございますので、現在出張いたしております検査員をその場所に常駐いたさせまして、検査をいたすということになります。それで今後は検査能率も三倍以上に上ることになりますので、この五箇所検査所につきましては、特に予算及び人の問題も増員を要さないという見通しでございます。但し検査の問題につきましては、品質不良という要素が非常に多くて、輸出クレームその他が起つておりますので、来年度予算においては相当大幅に人員増加要求いたしております。これは現在予算委員会におきまして御審議を願つておるのでございますが、これが通過いたしますれば、人員的に相当充実した検査員が持てることになると考えております。
  9. 高木吉之助

    高木(吉)委員 今度の予算によりますと、大体定員が四百三十九名、この予算が六千百二十七万四千円ということになつておりますが、これくらいの人員とこれくらいの費用では、世界の市場に出すべきところの完全な製品検査に対しまして、まつたく貧弱なきらいがあるのでございますが、将来におきましてこの製品検査所内容充実人員の補充に対しまして、どういうようなお考えを持つておられますか、伺いたいと思います。
  10. 近藤止文

    近藤政府委員 実は来年度におきまして増員をお願いいたしております人員は、相当大幅になつておりまして、ほかの検査機関増員に比べますと、繊維だけが非常によけいにふえておるというかつこうになつております。お話のようにその増員をもつていたしまして、十分に今後の輸出繊維製品検査の完璧が期されるかと申しますと、まだまだ十分とは参らないと存ずるのであります。これは今後機会を見てできるだけ急速に増員をして、内容充実をはかりたいと考えております。
  11. 高木吉之助

    高木(吉)委員 ただいま承りました人員増加はけつこうでございますが、要は検査員技能素質いかんということにかかつて参ることでございますが、今後いろいろ繊維の種類が多種多様に出て参ります。従いまして在来の知識では、とうていその範囲まで及ばないというものもできて来るだろうと思います。その結果検査員技能素質という問題に対しまして、今後いかなる向上措置を講ぜられるわけでありますか、伺いたいと存じます。
  12. 近藤止文

    近藤政府委員 だんだん製品が高級化して参りますに従いまして、検査員素質向上しなければならぬことはお話通りでございます。そこでこういつた特殊な技能を要する検査所職員につきましては、給與格付等におきましても、特別に高級の職員を採用できるように予算を組んでおるのでございまして、現に検査所長等になります者につきましては、本省におきましての庶務課長あるいはそれ以上くらいの待遇ができるというようにあんばいいたしております。それによりましてできるだけ技術的に優秀な者を今後採用して参る、かような方針でおります。
  13. 高木吉之助

    高木(吉)委員 次に通産大臣にお尋ね申したいのでありますが、繊維製品に対する素質向上をはかるために、現在政府として支出せられておりますところの予算は、ただいま繊維検査所に六千百二十七万四千円並びに繊維試験所に三千五百万円余り、両方寄せましてわずかに一億円足らずの経費でございます。かかる範囲におきましては、繊維製品向上のため検査の万全を期するということは、まつたく不可能と考えられます。従つて政府におきましては、今後この貿易のおも立つたところの製品に対しまして万全の策を講ずるために、今後この試験所の設備の経費並びに検査予算に対しまして、万全の措置を講ぜられたいと考えるのでありますが、通産大臣の御意見を承つておきたいと存じます。
  14. 横尾龍

    横尾国務大臣 ただいまのお話ごもつともであります。私といたしましては重要なる輸出産業でありますので、これによつてクレームなどの起ることは、国家としても不名誉きわまりないと思います。従つてこれに対しましては、試験所並び検査所充実を極力はかるべく、努力いたしたいと思うのであります。各位の御援助と御指導によつて、それを完成することを望む者であります。
  15. 高木吉之助

    高木(吉)委員 私の質問はこれで終ります。
  16. 小金義照

    小金委員長 別段ほかに御発言がないようでありますが、これで質疑打切つてよろしゆうございますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 小金義照

    小金委員長 御異議なしと認めます。  なおお諮りいたしますが、討論はこの際省略いたしまして採決に入りたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 小金義照

    小金委員長 御異議なしと認めます。さよう決定いたしました。  それでは引続いて採決いたします。地方自治法第百五十六條第四項の規定に基き、繊維製品検査所支所及び出張所設置に関し承認を求めるの件に対し、承認を與えるに御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 小金義照

    小金委員長 御異議はなしと認めます。  この際報告書作成の件についてお諮りいたしますが、これは先例によりまして委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 小金義照

    小金委員長 それでは委員長に御一任願つたものと決します。     —————————————
  21. 小金義照

    小金委員長 次に、炭鉱ストライキ問題等につきまして調査を進めます。本件について発言通告がございますから、順次これを許します。中村幸八君。
  22. 中村幸八

    中村(幸)委員 去る七日石炭企業大手筋四社の組合ストに突入いたしまして、今日まですでに一週間を経過いたしておるのでありますが、きのうはさらに太平洋炭鉱その他もこれに加入して参りますなど、日とともに拡大する形勢にあるのであります。これがために貯炭減少に脅かされる関連産業の不安はもとより、社会的にもまた重大なる関心事となるに至つたのであります。つきましては本件の性格、妥結に関する今後の見通し関連産業に及ぼす影響その他について、二、三政府の所見を伺いたいと思うのであります。  まず今次争議の性質についてお尋ねいたしますが、今回の争議純然たる経済的のスト、すなわち賃上げ要求のみを目的とするものであるか、あるいは何か他に目的があるのか、単なる賃上げ要求だとすれば、会社側がこれをいれない理由は、支拂い能力がないというのかどうか、これらの点についてまずお伺いいたします。
  23. 横尾龍

    横尾国務大臣 去る七日から炭鉱ストライキが始まつて、全炭鉱についてますます貯炭減つて行き、すべての産業影響を及ぼすことはお話通りであります。またこれに対しましては政府としても非常に憂慮するところであります。しかしこの争議純然たる経済闘争でありまして、他に何ら政治的意味も加わつてないことは、よく見得られるのであります。單なら経済闘争であります。争議と申しましても団体闘争でなく、個々別々なものであります。今三菱三井、その他のものと協議中であります。今のお話会社として要求を満たし得るか得ないかということにつきましては、今ここで調査をいたしておりませんので、またある程度調査がありましても、争議の最中でありますから、言明を避けたいと思います。
  24. 中村幸八

    中村(幸)委員 それで了承いたします。次に争議解決見通し、その他についてお尋ねいたします。今回の争議は結局労資自主的解決にのみ放任してよろしいと思うかどうか。七日以来すでに一週間を終過いたしておりまして、きのう十三日には太平洋、古河、その他の労働組合が参加いたしておりまして、形勢は日とともに拡大する傾向にあるのであります。政府におきましてはこのまま自主的解決に放任するつもりであるか、あるいはまた労調法第十二條による強制調停考えておるのかどうか、強制調停を行うとすればいつそういう調停に乗り出して行くか、こういう点についてお尋ねいたします。
  25. 横尾龍

    横尾国務大臣 現在の段階におきましては、政府といたしましては、自主的に解決をされるように望む者であります。但しこれが非常に険惡になつて来るという状態でありますれば、放置するということもできない場合が生ずるかと存じます。現在のところでは、はつきりした見通しはつきませんけれども、昨夜労働大臣と二人で三井三菱井華北炭というような資本家方々と、そして労働者方々にお集まりを願つて政府としては早く自主的に解決していただきたいということを強く要望しておいたのであります。今日聞きますと、やはり漸次話が進みつつあるというように聞いておりますが、しかしこれがどの程度に進んでおるかということは、はつきりしないのであります。ただいまのところは今お話しましたように、自主的な解決を要望して、その一日も早からんことを望んでおるものであります。
  26. 中村幸八

    中村(幸)委員 本件はまことに重大な問題でありますので、政府におきましては、速急にこの問題が解決いたしますように、絶大なる御努力をお願いする次第であります。  なお一般の問題についてお伺いいたしますが、一月末現在の貯炭量は二百十八万トンであつたと聞いておるのでありますが、七日以来の争議のために、現在の貯炭はどのくらいになつておるか。なかんずく、いわゆるデツド・ストックを除いた真の有効貯炭はどのくらいであるか。また現在の石炭消費量は日額どのぐらいであり、従つて常備貯炭として確保すべき標準貯炭量は、何日分何万トンぐらいであるか。さらに貯炭減少によりまして、特定の発電所あるいは大工場等で特に窮迫しておるものはないか。要するに目下の貯炭枯渇のため、特に困惑しておる消費者はないか、また今後の見透かしはどうであるか、こういう点についてお尋ねをいたします。
  27. 横尾龍

    横尾国務大臣 ただいまのお話は、数字をもつてお答えいたすことになりますので、政府委員をして説明いたさせます。
  28. 始関伊平

    始関政府委員 ただいまお話貯炭は、山元におきまして大体六十万トン程度市場におきまして百四十万トン程度、合計いたしまして二百万トンにちよつと足らぬかと推定されております。平常の貯炭といたしましては、ただいま月々の消費が三百六、七十万トン程度ございますので、三百万程度は必要ではなかろうかと思われるのでございますが、若干下まわつておるというふうに考えております。ただ、ただいま申し上げました貯炭市場貯炭でありまして、このほかに工場その他が自分のところに持つておる貯炭が別にあります。従いまして産業別に見ますと、さしあたり特に問題になりまするのは非常に局部的でありまして、日発関東地区一つの問題でございますが、これはそれぞれ入着見込みが目下ついておりますので、当分問題はないと存じております。それから九州地方、特に三池方面が若干問題でありますが、ここでは炭鉱側と確約いたしまして、ストライキ中も山から石炭を送るということになつておりまして、毎日毎日の消費量を確保するということが、現在ではまだできておる次第であります。山元貯炭もまだ若干ございますので、ここ数日は支障なかろう。ただ著明な工場といたしましては、八幡の製鉄所コークス爐用貯炭は現在まだ多くありますが、発生爐用貯炭が少々要するに引きぐあいでありまして、これがあと四、五日も続きますと、操業に若干支障を生ずるようなおそれがあります。かようなふうに集計いたしております。
  29. 中村幸八

    中村(幸)委員 今承りますと、貯炭枯渇のためにここ数日中には、ゆゆしき状態に到達するおそれもあるように観測いたすのでありますが、どうかかかる事態の起らないように、絶大の御努力をお願いしたいと思います。なお今回の争議炭価に及ぼす影響についてお尋ねいたしまするが、重要基礎物資であります石炭価格につきましては、合理的引下げということは、経済自立のために各方面から強く要望せられておることでありまするが、今回の争議のために貯炭減つて来る。また市場需給関係も非常に逼迫して来る。こういうことで炭価にどういう影響がある見込みであるか、この点を最後に承つて私の質問を終ることにいたします。
  30. 始関伊平

    始関政府委員 炭価への影響は、賃上げがまた若干でも行われますと、コストの面から来る影響と、ただいまのお話のように需給関係から来る影響と、二つ考えられると存じますが、今日までのところ、昨年の秋ごろに比べまして、大体平均して三百円程度石炭価格が上つておるのではないかと存じます。これが現在の市況あるいは購買力等と比べまして、上り詰めたところではなかろうかと一応存じておりますが、貯炭減少いたすことでありますので、若干追気がついて、炭価が強気になることが考えられます。さような面から申しましても、なるべく早くこの争議解決いたしたいというふうに存じております。
  31. 小金義照

    小金委員長 次は今澄勇君。
  32. 今澄勇

    今澄委員 この際私は労働省の方にお聞きしたいのですが、労働省としては、今度のこの石炭ストライキについては、どういうようなお見通しと、どういうふうな対策を持つておられるか、賀来労政局長から概括の御説明を願いたいと思います。
  33. 賀来才二郎

    賀来政府委員 今度の争議につきましては、先ほど通産大臣からも申し上げましたように、労働省といたしましても、純経済的な闘争と申しますか、昨年の四月から十二月に至ります賃金協定の期間が切れて、更改期に当りましたので、賃金協定を更改するという建前の交渉になつておりまして、その交渉を早く妥結しようという意味もありまして、ストライキに入つた、こういう状況であると見ておるのであります。と同時に、また労働省基本方針といたしまして、かような純経済的な鬪争につきましては、できるだけ労資の間で自主的に解決ができるような慣行の確立をはかつて、将来日本経済の安定に資して行きたい。この基本方針を持つておるわけであります。しかしてまた、この方針で参りましても、今度の争議は大体妥結に向いつつあるのではないか。特に昨晩からけさにかけまして、及び現在の交渉状況を見ておりますと、従来の一週間よりも、双方とも非常に熱意をもつて交渉いたしておるようでありますから、自主的な解決ができるのではないかという期待を、われわれとしては強くいたしておるようなわけであります。ただ将来今夜から明日にかけましての動きぐあいによりましては、第二段の策を考えなければならないのではないか、かような考え方を持つておる次第であります。
  34. 今澄勇

    今澄委員 そこで、大体自主的な争議解決ということを言うておりますが、われわれは、政府責任者としては、自主的な解決にゆだねて、二百万トンを割ろうかという貯炭の現状を默つて見ておるというのは、これはやはり無為無策と言わなければならぬと思う。そこで政府は、これらの炭鉱争議について一応の見解があろうと思うが、まず私は労働者側の問題から入りましよう。  炭鉱労働者賃金は、工業平均賃金に比べて、大体八五%下まわつております。しかもその賃金は、基準賃金の四千五百円から四千七百円という低賃金をカバーするために、一五%から二〇%の超過労働行つてこれをやられておるが、工業平均起過労働時間は六%から七%程度であるという。そこで炭鉱労働の苦しさその他を入れて、今日の炭鉱労働組合要求しているところの新たな賃金について、労働省としては一体どういうような見解を持つているか。それらの要求に対する労働省としての見解を、この際承つておきたいと思います。
  35. 賀来才二郎

    賀来政府委員 目下交渉最後的段階に入つている際でございますので、数字についてのわれわれの意見を申し上げることは差控えた方が、解決に資するゆえんだと考えているわけでありますから、数字についてのお答えはお許し願いたいと思います。ただ全体的に申し上げますならば、御承知のように炭鉱は、自由販売制度になりましてからしばらくいろいろな影響がありましたために、鉱山としましては、経営が他の産業に比して非常にいいというわけには参らぬかと考えておりますけれども、一方いろいろな條件からいたしまして、炭鉱労働者賃金は、ただいま御指摘のような数字とはやや違いますが、あの仕事の内容その他等から考えて、現在はやや低目にあるのであります。従つて組合要求している額全体、あるいはそのものについて申すわけではありませんが、もしできますれば、この際に賃金もできるだけある程度の引上げを要すると考えておるのであります。ただこれと関連いたしまして、やはり労働者能率向上ということも考え、また企業経営合理化ということもあわせて考えて行くべきではないか、かような考え方を持つている次第であります。
  36. 今澄勇

    今澄委員 大体労働省としては、この炭鉱労働者の低賃金が苛酷に過ぎるということは、認めておるという答弁であると解釈いたします。そこで坑内三百六十三円、坑外が二百十六円という、今までの賃金が非常に少いのであるが、これについて会社側は、組合要求に対して五円、六円、八円というような、いよいよもつてほんとうに数字とは言えないような金額で、強硬な態度をとつているのであるが、通産大臣としては、これらの経営者に対しては、そういう一つの重要な労働省見解基礎として、これらの問題について何らかの勧告なり反省なりを求めるような御意思はございませんか。
  37. 横尾龍

    横尾国務大臣 ただいまの段階において、私が勧告をいたすとか、あるいは幾ら増した方が適当であるかということは、この際申し上げかねるのであります。と申しますことは、交渉に非常なる影響があるので、差控えたいと思うのであります。さよう御了承を願います。
  38. 今澄勇

    今澄委員 政府は、こういう争議自主的解決を待ちながら、何らの手も打たないでずつと見送つておる。また当事者の双方も、自主的解決がしたいと言つておるのは、何らの事情もわからないで間に入つて来られて、強制的なものを押しつけられはしないかというおそれがあるから、これらの介入を阻止しているのである。かように考えられます。そこで炭鉱労働者の今までの賃金があまりにも低額に失するので、今後の石炭鉱業についても、この際やはりある程度政府の打つべきいろいろの手を経営者に示して、そうしてこれこれの線までは大体行けるものだという見通しの話くらいすべきが至当であると思うが、そういう考えもございませんか、通産大臣にお伺いいたします。
  39. 横尾龍

    横尾国務大臣 先刻申し上げましたように、最後になつて妥協できなければ、政府としての意思発表もできますけれども、今の段階は、もはやある程度交渉が進展しているという際でありますから、その他についての意見を申すことは、かえつて害になるのではないかと考えるのです。ただ先刻労働省局長の言われたように、ほかに比して安くはないかというくらいのことは考えておりますけれども、それ以上のことはここでお話せぬ方がよろしいと思いますので、さよう御了承願います。
  40. 今澄勇

    今澄委員 通産大臣の御答弁によると、大体近く妥結しそうであつて、今交渉もしているところであるから、そういう意思発表は差控えたいという御見解でございますが、そういう御見解基礎になつているこの争議解決ですが、大体いつごろ解決するというふうに通産大臣としてはごらんになつているかを、お聞かせを願いたいと思います。
  41. 横尾龍

    横尾国務大臣 いつごろと申しましても、争議のことですから常に変転いたしますので、見守つてはおりますけれども、いつごろ解決するかという見当は申し上げかねるのです。但し先刻局長の言われたように、早く解決しないといよいよ重大段階に入るから、そのときはまた政府として考えを発表することになるかと思います。さよう御承知を願います。
  42. 今澄勇

    今澄委員 この石炭争議というものの貯炭から来る影響、あるいはただいま始関政府委員から御説明のあつた日発関東地区、九州三池、あるいは八幡の製鉄所等々に起つているところのこういう非常に憂慮すべき状態、これについて一国の通産省としては、労働省と連絡をとりながら、もう少し事態に関心を持ち、これに対する手を打つべきであろうと私は思います。そこで現在のストライキをやつている炭鉱労働組合は、昨年のレッド・パージこのかた、非常に民主的な建設的な労働者組合になつているわけであります。こういうほんとうに建設的な民主的労働組合が、最後の線に追い込められて、しかも争議に入つたけれども、それが低賃金であることがわかつておりながら、政府経営者にも何らの勧告もしないでこれを見送つておる。労働省の賀来さんに聞けば、非常に安くて現在のものではどうにもならない、これは当然上げるべきであると言う。そういうふうに事態がはつきりしているにもかかわらず、通産大臣がそういう状態であるということは、今日の産業の重大な立場から考えると、少くともこれは通産大臣の御怠慢であると思う。特に私は賀来さんにお聞きしたいのであるが、こういつた民主的な労働組合炭鉱労資の今後の日本産業への協力並びに労働組合の発達の点から行くと、今度の賃金交渉については、労働省としても今少しく打つ手はないかと考えますが、これらのことに関する賀来局長見解を承つておきたいと思います。
  43. 賀来才二郎

    賀来政府委員 御指摘のように、現在の組合は非常に民主的な堅実な歩みをいたしておりますので、この歩みをできるだけ助長いたしたいという考えを持つておるわけでありまするが、さような考えからいたしましても、まずきようあしたにかけましては、やはり自主的に組合の力によつて解決するように期待をいたすのがよいのではないか、ここで下手に法律上の手を打つということは、かえつて妥結を遅らせるものだ、かように考えておりますので、明朝までは様子を見ておりたいと考えます。
  44. 今澄勇

    今澄委員 労働省見解としては、ここ一日、二日ということでありますから、私も事情考えてこれ以上の追究をやめますが、少くとも石炭産業の最も重要な熱源であつて、この重要な産業に従事している労働組合が、建設的な民主的な労働組合であるという点に思いをいたすならば、これらのことについて法的な調停をするなどということは、最も愚の骨頂である。少くとも政府の政治力というもので、この際やはり通産大臣から経営者に対して、今後の経営の目途、それから石炭に対する政府の政策のあり方その他から、大体炭鉱経営者としてはこういつた現在の状況のもとにおいて、このくらいの線までは君たちは賃金を支拂うべしというような勧告を行い、そうして労働者とも連絡をとつて、これら争議が極端に険惡にならないうちに解決する、こういう方針でやつてもらいたいと私は思います。今度の賃金に関する炭鉱労働組合要求について、労働省からそれが大体妥当のものであろうというような御答弁をいただいたことによつて、私は輿論というものが非常に大きく左右され、非常に満足でございます。一応私の質問はこれをもつて打切り、以上を希望しておきます。
  45. 小金義照

    小金委員長 次は今野武雄君。
  46. 今野武雄

    今野委員 質問に移る前に、最初に今澄君の質問に対して、きようあすのうちは自主的な解決にまつ。そうすると裏を返せば、その後は何らかの手を打つということになりますか。それは今澄君がさつき言つたような通産省から会社側に、あるいは労働省から会社側に、安過ぎるではないか、もう少し上げたらよかろうという勧告意味するのか、あるいはそれとも強力手段によるのか、そこらのところをもう少しはつきりさせてもらいたいと思います。
  47. 賀来才二郎

    賀来政府委員 先ほど申しましたのは、その後において強制的な手段をとる、とらないということについて申し上げたのではないのでありまして、全体の基本方針といたしましては、強制的な手段はとりたくない、かように考えておることにはかわりはございません。ただ自主的解決ということで見送つていると申しますか、情勢に対して非常に注意はいたしているわけでありますが、明日の状態によりまして、強制手段というふうなことでなしに、御承知のようにいろいろ政府も法律的には機関を持つているわけでございますので、昨晩労働大臣並びに通産大臣の両者から労使双方に対しまして、最後一つの示唆といたしまして、中労委の中山会長を交えて、一応自主的解決の方角についてよき方法はないか、懇談してみたらどうかという示唆を與えているわけであります。かれこれ情勢とも合せて、御判断を願いたいと考えております。
  48. 今野武雄

    今野委員 御判断を願いたいということでありますが、どうもあまり頭がよくなくてわからないのですが、きようあすということで、あさつてにすれば相当用意はできているはずでしようね。そうでなければそんなにできない。ですからもう少し具体的に話をしていただきたい。そうでないとどうも判断と言いますけれども、そういうことになると世間ではいろいろと想像するわけです。そのことはかえつて争議の前途によくない影響を及ぼすと思います。もう少し明瞭にしていただきたいと思います。
  49. 賀来才二郎

    賀来政府委員 労働争議の非常にデリケートな段階にある際の、周囲の態度いかんということが非常に重大であるということは、今野委員の方がわれわれよりも御体験を持つておられることと思うのであります。御判断を願いたいと申しましたのは、さような意味から申し上げたわけでございます。御指摘のように処置をいたしますにも時間がかかりますが、十分あらゆる方法についてわれわれは考えております。現段階におきましては、強制的手段はやはりとりたくないという気持は持つているわけでございます。
  50. 今野武雄

    今野委員 その点、現段階というのは、つまりきようあすということですか、少ししつこいようですが。
  51. 賀来才二郎

    賀来政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、現在三菱鉱山にありましては、午後二時から団体交渉を再開いたしておりまするし、三井鉱山におきましては昨晩徹夜をいたしておりまして、今朝は午前七時から再開いたして、なお目下団体交渉中でございます。その他の主要鉱山につきましては、一応使用者側からの案に対しまして、組合が検討しているという段階でございます。従いまして、今晩はさらに一応これが熱意のある交渉に入るものと期待いたしておりますので、今晩一晩はこのままの状態で、われわれはこの情勢を注視して行きたいと申し上げたわけでございます。
  52. 今野武雄

    今野委員 それではこの問題はこちらで適当に判断することにいたします。  次に先ほど炭価について質問があり、そのお答えによると、賃金の値上げをすれば、それによつて炭価が上るだろうという意味にとれる答えがあつたのであります。通産省のどなたかのお答えだつたのですが、はつきりしないところもあつたので、その点で現在の会社から提示している案、あるいはそれに近い案が出た場合に、それがはたして炭価を上げるフアクターになるかどうか、お答え願いたい。
  53. 始関伊平

    始関政府委員 石炭賃金が上りました場合に、少くともコストには若干の影響があることは誤りないわけでございますが、これがすぐに炭価に反映するかどうかという点は、需給の関係、貯炭の関係、その他いろいろな点がございますので、そう簡單には言い得ないと思います。これは会社によつて事情は違うと思いますが、たとえば最近相当自発的な退職者が出たというようなところにおいて、そのコストの増を自分で吸収することも考え得ると思うのであります。ただいまお話のコストが上ることと、石炭価格の推移を見きわめて、そう無理のない賃金を出したいのが、炭鉱会社側の立場であろうと存じております。
  54. 今野武雄

    今野委員 私はそれらのコストが上るということそれ自身に、非常な疑問を持つのです。ということは、このことがやはり争議の原因にも関係すると思うからです。たとえば会社側の案によると賃金は若干上げる。そのかわりに今度は生産の基準量を、ノルマといいますか、そういうふうに三〇%上げろということになつて来ているわけです。生産基準量を上げれば、それの賃金がこれだけということになる。それから先が超過労働だということになる。超過労働の方がずつと少くなる。そうすると労働者の收入はそれによつてかえつてふえない。北海道のある炭鉱からの話では、そういうことをされると、実質的に一日八十円くらいの減収になる、賃金の切下げになると言つて来ているわけであります。従つてこれによつてストが上るということは、ちよつと了解できないわけであります。ところが片方ではコストが上るから、これはできるだけ押えなければならない、かりに政府やその他がこういう観念でおつて調停や何かに乗り出したら、これの解決はとてもできぬと思われる、その点はつきり御答弁いただきたいと思います。
  55. 首藤新八

    ○首藤政府委員 先ほど資源庁長官から、最近この炭価が若干強含みになつているということをお答えいたしたのでありますが、それは今回の労働條件意味した炭価ではないのでありまして、ただ現実に多少最近の争議によつて貯炭が減つた、従つてそれによつて市価が多少強含みになつたという意味を申し上げたのでありまして、現在の段階におきましては、今度の争議がどういう点で解決されるのか、あるいはまた内容はどういうことになるのか、一切が争議交渉の途上でありまして、何ら決定を見ておりませんので、これが決定されない限りは、これが炭価にどう響くかということは申し上げかねる段階に現在はあるわけであります。
  56. 今野武雄

    今野委員 そうすると、ただいまのお答えのいわゆる賃金値上げが、ただちにコスト高になるのではないということは、つまり妥結内容をよく検討して参らなければわからぬ、こういうふうに心得てよいと思うのですが……。
  57. 首藤新八

    ○首藤政府委員 その通りであります。
  58. 今野武雄

    今野委員 これは石炭部門だけに限らないのですけれども、やはり炭鉱などで今まで労働者が悩んでいるのはその問題です。鉄鋼部門でもどこでもそうですが、だんだん生産基準量を上げられる、だから結局かせぎというものが少くなる。賃金が少しくらい上つたように見えても、実際の収入は少くなる。人によつては給料袋を受取つてみなければ、その月に幾らかせいだのだかさつぱりわからない、こういうような状態が出ているわけです。従つて労働者としては賃金を上げてくれなくてもよい。それよりも生産基準量を下げてくれれば、ずつと収入が多くなるから、賃金は今のままでよいという声すら、職場では出ているくらいです。この点をやはり解決しなければ、どうにも争議というものは解決できないと思うのですが、そういう点について労働省では一体どういう考えを持つておられるか、お伺いしたい。
  59. 賀来才二郎

    賀来政府委員 基本方針についての御質問のようでございますので、もう少し具体的な数字について御質問があれば、それぞれその方面からお答えいたさせたいと思います。
  60. 今野武雄

    今野委員 つまり会社側が提示しているように、三〇%の労働強化といいますか、生産基準量の引上げというような條件がある限り、このストライキはとても妥結しそうにもない、こういうふうに思われるのですが、その点はどうですかというのです。
  61. 賀来才二郎

    賀来政府委員 今度の争議で、今御指摘のように解決の非常にむずかしい点は、今の標準生産量と賃金との関連の問題でございます。お話のように三〇%上つたということは聞いておりません。大体一〇%ないし一五%くらい上つているのを基礎としたいというのが意向であるということは聞いております。しかしこの点につきましては、目下非常にデリケートな段階でございますので、意見を申し上げることは差控えさせていただきたいと思います。
  62. 今野武雄

    今野委員 そうすると政府賃金政策としては、一体どういうふうに考えたらいいでしようか。たとえばどこでも賃金のほかに、生産報奨金を出すわけです。そしてそれを目当に、労働者が生活が苦しいですから、少しでもかせごうと思つて一生懸命やる。そして生産がある程度上ると、今賀来さんからお答えがあつたように、これを一つの実績として、生産基準量にする。そうなると労働者は今度はさらに上に行かなければ、報奨金はもらえないわけですから、ますますからだを粉にして働かなければならない、こういうようなことをしてだんだんとせり上げられて来ている。だからあらゆる統計類を見ても、労働の生産性がずつとふえて来ている。労働者人員減つて来ているけれども、労働の生産性はずつとふえている。そして生産量が上つて来るようになつた、こういう結果が出ているわけでありますが、これは政府の基本的賃金政策と考えていいかどうか、その点をはつきりお答え願いたいと思います。
  63. 賀来才二郎

    賀来政府委員 所管の局長でございませんので、理論的にはお答えできませんが、われわれが主管をいたしております局の関係で、争議をサツプルするというような関係から、われわれが現在考えておりますることは、労働者賃金は今日までの経済情勢から見まして、生活給を主としたものであつた。これは一応今日までの食糧事情その他から見ましても、もつともな点があつたわけでありますが、しかしながら現在並びに将来の日本の経済復興の状況等を考えまするとともに、現在労働者の稼動能率状況等を考えますと、やはり生活給は基礎といたしますが、働いただけもらえるという、いわば高能率、高賃金と申しますか、能率に従つた賃金が支拂わるべきであると考えております。但しこの能率給が戦争前のような能率給、すなわち労働者の働く力をもすり減らすような能率給であつてはならない。この生活給と能率給との調整のとられた合理的なものであるべきだと考えている次第でございます。
  64. 今野武雄

    今野委員 たいへんりつぱな賃金理論を出されたのでありますが、しかし実際問題としてはだれもそんなにむやみに働きたくないのです。けれども実際八時間労働では食えない。つまり生活給というものは、それは生活給という名前になつているかどうかしりませんが、実際上はそれだけ働いたのでは食えない賃金だから、それでもつとかせぐ。つまり生産報奨金その他を目当にしてかせぐことが行われるわけです。そしてある程度それによつてつられて上つて来ると、今度はそれを基準のものにしてしまう。そういうようなことが次々に、ひどいところは年に三回、四回くらい行われて来ている。こういうふうになると、いやでもおうでも労働強化にならざるを得ない。現在あらゆるところで猛烈に労働基準法違反が起つておる。これは賀来さんもよく知つていると思います。とにかくそういうようなわけで、炭鉱でもその他でも非常にいろいろな障害、事故なども多くなつて来ている。このような状態に対して、政府はそれを放置して置く気か、あるいはもつとはつきりした賃金政策を立てて、こういう弊害を除くつもりか、その点をもつとお伺いしたいと思います。
  65. 賀来才二郎

    賀来政府委員 労働省といたしまして、賃金制度についてかくあるべしとか、あるいはかようにしなければならないというような態度はとるべきではなくして、先ほど申しましたように、労使の間で合理的な団体交渉によつて、合理的な賃金協定がされるということを、われわれといたしましては現在基本方針として持つているわけでございます。
  66. 今野武雄

    今野委員 それは労働省でかくあるべしというふうにきめなくても、とにかく政府としてはある方針があるだろうと思います。そうでなければ金融操作とかいろいろなものが、やはりそれに従つて行われるわけですから、会社でもつてまずい賃金政策をとれば、金融の面とかいろいろな面に実際上批判を受ける。ですから結局政府はそういうものに対して、確たる方針を持つているはずなんです。それを教えていただきたい。
  67. 賀来才二郎

    賀来政府委員 先ほどお答えいたしましたように、政府としては賃金はかくあるべしという研究はいたしておりますけれども、具体的な方針あるいは指導方針として持つているわけではございません。
  68. 今野武雄

    今野委員 その点はそのくらいにいたしまして、次にストライキの原因を少しお聞きしたいと思うのでありますが、現在石炭は、調べてみると特需関係と一般消費の値段がたいへん違うように思われますけれども、その点はどんなふうになつておりましようか。また数量の関係などもどうなつておるか、通産省の方からお答え願いたい。
  69. 始関伊平

    始関政府委員 石炭はただいま自由取引になつておりまして、炭価の関係は特に公表したがらない点がございますので、大体の傾向は承知いたしておりますが、具体的にはなかなかつかみにくいと思います。需要者のいかんによりまして値段が違うことも、自由経済のもとにおいてはあり得ると思いますが、ただいま私の方では、特需関係とそれらの関係が違うというよううなことは承知いたしておりません。
  70. 今野武雄

    今野委員 そういうことはないと思うのですが、たとえば北海道の例ですけれども、特需の場合に、これはあまり低いので、どう考えてもわからない。トン当り一千八百円か二千円という数字が報告されておる。こういうふうなことがあるのかどうか、聞いてみたいと思います。
  71. 始関伊平

    始関政府委員 そういう具体的な事情は存じませんが、かりにあるといたしましても、政府機関がそれを慫慂したとか、あるいは勧告したとか、いわんや強制したという事実は全然ございません。
  72. 今野武雄

    今野委員 私はそういうことを政府が強制したということを聞いておるのではないのです。そうでなくて、そういう事実があるかということを聞いておるのです。通産省としては当然大体のことはつかんでおるはずだと思いますが……。
  73. 始関伊平

    始関政府委員 承知をいたしておりません。
  74. 今野武雄

    今野委員 使用者によつて石炭の値段がたいへん違うということは、あたりまえと言えばあたりまえなのですが、今までも特に国鉄の石炭が、国鉄の経理にからんで非常に大きな問題になつたことがあつたわけです。あれは石炭について補給金があつた時分ですが、現在でも国連協力という名のもとに、特需関係で相当な開きがある。さつき言つた数字がほんとうであるかどうかということは、私はもつと確かめなければわかりませんが、これは石炭ばかりではなく、やはりそういうことが想像できるようないろいろな事情がある。私は神奈川でありますが、神奈川のいろいろな産業を見ても、特需関係はどうしても頭から低い値段を押しつけられて、泣き寝入りをしなければならぬ、こういうことをよく聞くわけであります。従つて支拂いが確実だからしかたがないけれども、こんなに低くてはどうにもならぬというような声を聞くわけであります。そういうようなことがあるとすると、結局生産をどんどん高めても、賃金を低くしなければならない、一つの原因にもなるわけでありますから、やはりその点は政府としては相当関心を持つて調べて、ここに報告して、そういうような圧迫がないことを国民の前に明瞭にしなければうそだと思う。具体的な例をあげろと言えば出します。石炭関係は遠くて私の地元ではないから、すぐというわけには行かないが、地元の例なら用意して出します。とにかくそういう点を調べて、はつきりしていただきたいと思うのですが、いかがでしようか。
  75. 横尾龍

    横尾国務大臣 ただいまのお話は、私はなはだ奇怪に存ずるのであります。なぜかと申しますと、特需のために非常に潤い、特需をやらしてくれというものが多数ある。但し特需を受ける時分に、その規格をよくのみ込めないで、規格に不合格のものがあつて、引取られなくて困つたという話は聞きますけれども、価格が非常に安くたたかれておるという話は、私は不幸にしてまだ聞いておりませんでした。これはお話通りであるとすれば、取調べてみたいと思いますが、私の聞いておるところではないのであります。特に今申し上げたように、各メーカーに特需を受けたいという希望者が多いのでありますから、それでないということが立証し得るのではないかと思います。価格についてあなたが御指摘のようなことは、私は寡聞にして聞いておりません。またそういうことはないと信ずるのであります。重ねて申し上げますが、規格を間違えたり、あるいは期日に間に合わなかつたために、自分が初めはもう少し簡單なものと思つていたのに、規格がむずかしかつたので値段に合わなかつたというようなことは、当然あつたかもしれないと思います。これは注文を受けるときに、規格と材質と期限とをよく照合してメーカーが受けられないと、ともすれば今のお話のようなことがないとも限らぬと思います。
  76. 今野武雄

    今野委員 その規格については、たいへん問題があるのです。私もよく知つております。それでこの問題については、いずれよくただしたいと思うのでありますが、今現に神奈川の日産などは、大体特需の自動車をやつておると十万円損すると言つておる。私の調べたところでは、一台で特需だと大体五十七万円、民需だと六十五万円、こういう数字であるわけです。日産について一台十万円でなく、八万円の損失だとしても、とにかくたいへんな違いで、そのことが労働告の賃金を上げない口実にされておるわけです。今のお話ですと、会社がうそをついておるのか、政府がうそをついておるのかどうか知らぬけれども、特需だとそういうふうに値段をうんと下げられる。だからお前たちがまんして働け、期日も急がれる、だからうんとやれ、規格もやかましい、そうするとやはり労働強化になる。こういうこととさつきの賃金政策とが重なつて労働者はさんたんたる状態になつて来ておる。これは京浜の工場ならどこへ行つてもそうです。たとえば造船所なんかへ行くと、船台から落ちて死ぬというようなことが、去年から非常に目立つて来た。これは過労でふらふらしておるからです。そういう点はおそらく政府としても承知していらつしやるだろうと思います。この点は石炭の部門だつてやはりあるのじやないか。規格の点、値段の点は承知されないというさつきあお話は、どうも受取れない話で、もう少し誠意のあるお答えを願いたいと思います。
  77. 横尾龍

    横尾国務大臣 日産の例をお話でありますが、不幸にして私それを聞いておりません。ただしこれはメーカーとして考えて、一個受けるときと、十個受けるときと、あるいは百個受けるときとは、おのずから値段に差があり得ると思います。どういう状態で日産が安い値で受けられたか、そうしてどういう事情でやられたか、これにはいろいろのフアクターがつきますので、それをここで議論することは避けたいと思います。
  78. 今野武雄

    今野委員 その点については、なお詳しく調べろと言えば、私の方でも調べますけれども、通産省としてもやはりお調べ願いたいと思います。これは産業家にとつてのみならず、労働者にとつても非常に重大な問題でありますから、ぜひそれを調べて報告願いたいと思うのですが、どうですか。
  79. 横尾龍

    横尾国務大臣 今のお話、私は初耳でありますので、これに対して非とも言えないし是ともいえません。よく取調べてみますが、いろいろな問題がありますから、簡單に表面からこれを云云することは、私は避けたいと思います。
  80. 今野武雄

    今野委員 そうすると、先ほどの争議の問題にもどりますが、私はこの争議の終過をずつと見て、非常にふしぎに思つたことがある。それは経営者の側が非常におちついておるということです。こういう大規模な争議で、経営者がこれだけ泰然自若としておるのは、何かあるのじやないかと私ども考えるのでありますが、それがきよう出てみると、やはり炭価の問題が出ている。なるほど少し名目的賃金が上つて、コストが高くなる、そういうことで炭価をつり上げる。これができればよほど経営者にとつては都合のいいことである。むしろ歓迎すべきことである。こんなふうにもとれるわけであります。しかし一方この争議があまり長く続けば、これは経営者にとつても相当大きい問題になる。それで適当なところで政府が手を打つ、こういうことになるのではないか。これでさつき御判断をと賀来局長さんから言われましたが、そういう判断も一応成り立つわけであります。そこで私政府にお伺いしたいのですが、明日以後これに対して何らかの手を打つ場合に、ただいま私がいろいろお聞きしたような事情労働者側資本家側に、いろいろと無理なことがあるのではないか。ことに労働者にとつて私は無理な事情があるというのは、先ほど賃金の面から申しましたし、また炭価に疑いがあるという点も申しましたが、そういう点をすつかり、考えて、政府はこの問題に対処するのかどうか。そうじやなくて、ただこれをほつておいたら、貯炭量減つてしまう。それで危險だから、何でもかんでもやめてしまえということで行くのか。そこらのところをはつきりしていただきたい。どういう根拠に立つて調停とかその他の行動をなさろうとするのか、その点をもう少しはつきりさせていただきたい。
  81. 横尾龍

    横尾国務大臣 資本家側が非常に冷静であり、態度がおちついておるとおつしやる、私も労働争議はたびたび経験して参りましたが、私のような者はすぐうろたえますために、打つべき手も打ち得ない、また公正なる争議ができ得なかつたこともあつたのであります。むしろ冷静に考えて、労働争議に対せられる資本家の態度を喜ぶ者であります。  それから労働争議を落着させるについて、政府が介入するときの態度でありますが、もしも政府がその間に入つて調停いたしまするならば、労資どちらにも偏せず、すべての情勢を最も公正に考えてやることだと思います。これが政府のとるべき態度であると思います。
  82. 今野武雄

    今野委員 ただいまはなかなか御名答であつたわけでありますが、ほんとうはそんなに冷静になれるものではないと思う。しかしながらここではつきり申し上げておきたいことは、すでに労働者の方からいろいろなことが出て来ております。さつき私が申したことはごく一部の問題でありますが、そういう問題についてあまりお考えにならないでとめようと思つても、なかなかとまらぬ状況に今はなつて来ている。最初はどういうつもりでストライキを始めたか知らない、あるいは組合の幹部の方はどういうつもりか知らないが、個々の労働者はほんとうに生活ができぬ状態である。先ほど今澄さんからレッド・パージ云々の問題もありましたが、あの後における労働強化というものは、実にひどくなつて来ている。だからこれは骨身にこたえた問題として、いやがおうでもこの際闘つて、ある程度要求を通さなければどうにもならぬというところまで来ておるわけであります。その点をよく承知しておいていただきたい。これで私の質問は打切ります。
  83. 横尾龍

    横尾国務大臣 私が答弁いたしたときに、資本家というような言葉を使いましたが、これは私の誤りで、経営者でありますから、訂正いたします。
  84. 小金義照

    小金委員長 これにて質問は終りました。     —————————————
  85. 小金義照

    小金委員長 次は肥料及び塩の問題等工業の問題について調査を進める予定でありましたが、本日は大分時間もたちましたので、これらの問題に関し中村委員長の報告を聞く程度にとどめて、明後十六日午後一時から委員会を開きたいと存じますが、御意見いかがでございましようか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  86. 小金義照

    小金委員長 御異議なしと認めます。  それでは中村純一君の小委員会における報告を求めます。
  87. 中村純一

    中村(純)委員 塩及び肥料の問題につきまして、輸入が促進せられるかどうか、また生産が大いに増加せられるかどうかということは、わが国のソーダ業を初めとして、これに関連いたします重要なる各種産業あるいは農業生産の面に、きわめて重要な影響を持つておる問題でございます。これにつきましては、本委員会におきまして同僚議員からの質疑によりましても、きわめて明らかなところでございます。この問題の重事性にかんがみまして、工業に関する小委員会におきましては、塩の問題については去る二月の五日、また肥料の問題については二月の九日に、それぞれ小委員会を開きまして、慎重に審議を重ねたのでございます。  その審議の経過並びに結果につきまして、時間がありませんから、ごく簡單に御報告申し上げたいと思うのでございます。まず塩の問題につきましては、今後の輸入所要量の確保の見通しいかんということが、問題になつたのでございます。本年度内の所要量につきましては、約二十五万トンが必要と思われるのであるが、これは大体において確保できる、若干は来年度に繰越すことがあつても、大丈夫であろうということであります。しかしながら問題は、二十六年度の所要量の確保ができるかどうかということであります。これにつきましてわれわれといたしましても、また政府といたしましても、二十六年度の塩の輸入所要量は、備蓄のものも入れまして、約二百万トン必要であるという見解に大体一致したのであります。その輸入を確保する上におきまして、各種の隘路がある。外貨資金の確保の問題、新しき供給地開拓の問題、あるいは決済方法の改善の問題、特に船腹の確保ということが、最大の隘路であるということが明らかになつたのであります。船腹拂底のためにフレートが高くなりまして、これがために専売公社において組んでおります予算範囲内において、はたしてこの必要量の輸入を確保できるかどうかということが、非常に重要なポイントになつてつておるのであります。そこで小委員会におきましては、まず来年度の約二百万トンと推定せられる必要量を、單に政府部内の一部局、たとえば通産省あるいは安本とかいうだけでなく、大蔵省、専売公社等の関係諸機関が、完全にその必要量は幾らであるかということについて、十分な一致した認識を持つてかかつてもらう必要があるということが、第一の要望でございました。次にはその統一されたる認識のもとに、関係諸機関があらゆる努力を拂つて、必要な船腹を確保し、その他の輸入上の隘路を打開し、この必要量をぜひ獲得すべきことを、われわれとして要望いたしたわけであります。これがために専売公社の予算がもし不足を来し、専売公社全体の幅の中においての、塩の輸入の手当が困難であるというような事態が今後生ずるならば、これは当然補正予算を組んででも、この問題は絶対的に解決をはからなければならないということが、われわれの強い要望であつたのでございまして、これに対して大蔵当局といたしましても、今後の情勢の推移によつては、さような措置をとることを十分に考慮するという答弁であつたのでございます。  以上が大体審議の経過でございます。そこで私どもはこの問題の重要性にかんがみまして、本委員会といたしましては、特に強い意思表示を盛つた決議をいたしまして、それぞれ政府の関係機関に本委員会の要望を伝達して、政府を勉励したいということを、この小委員会において出席議員の満場一致をもつて可決いたしたのでございます。以上が塩の問題に関しまする概略でございます。  次に肥料の問題に関しまして、二月の九日に小委員会を開催いたしたのでございます。この委員会におきまして、終戰以後の肥料生産の実績についてまず検討いたしたのでありまするが、これは政府提出の資料によつて見ますれば、順調なる生産増強の現象でありまして、昭和二十五肥料年度におきましては、戰前の最高生産額を、過燐酸を除いては、上まわる数字が予定せられておるのであります。この情勢はまことに慶賀すべきことなのでありまするが、この二十五年度の数字は、まだ半分近くは予定の数字でありまするので、ぜひともこの生産予定の数字を確保する。さらにそれ以上にもできれば、できるだけの増産を行うべきことを、われわれとして要望いたした次第であります。またこの生産計画を達成いたしまするためには、電力の配当を優先的に考慮いたすことはもちろんでありまするが、その原鉱石であります硫化鉱の増産につきましての政府の所見をただしたのでございまして、これの統制の解除の問題、また増産計画等につきましても、それぞれ政府の対策を伺うことができたのであります。しかしながらこれまた今日におきましては、極論すれば机上の計画を出でていないのであります。私どもは政府が全力をあげて、この所要原料の増産に邁進せられることを切望いたしたのでございます。また過燐酸につきましては、今日他の肥料に比して生産額がまだ上つておりません。この所要燐鉱石の輸入の促進につきましても、われわれは強い要望を開陳いたしたのでございます。しかしてまたわれわれがここに問題といたさなければならないのは、かくのごとく肥料につきましては、生産が順調に進行いたしておるにかかわらず、今日肥料の市場が非常に混乱状態に陥つておる、また市価がうなぎ上りに上りつつある情勢であるのであります。これは仮需要に基くところの買いだめというようなことが、むろんおもな原因でありましようが、そこにはまた公団放出の操作等の面におきまして、なお十分に改善しなければならない問題が多々あることを、私も看取いたしたのでありますが、あいにく当日は大蔵、農林関係官が出席しておりませんために、この問題につきましては、なお今後の調査に待つべき点が多々あると考えておる次第でございます。かようなわけで出席議員の愼重なる審議を重ねたのでございまするが、この肥料の問題につきましても、現下内外の情勢から考えますると、食糧の増産は喫緊の要務でありまして、そのためにも国内の需要に応ずるところの生産を十分に確保して、かつまたこれの配給を円滑にはかるとともに、肥料の生産は原料的に見ましても、大部国内において供給し得るものでありますので、国内の需要を確保した上において、その全力をもつてできるだけの輸出を伸ばして行くということは、わが国の肥料工業を振興する大きな刺激になるわけでもあります。また貿易改善の見地から申しましても、ぜひ必要なことであると考えられますので、かような見地において、特にこの上とも政府関係機関を、本委員会として強い意思をもつて督励する必要があるのではないか。従つてさような意味の決議を本委員会において行つて、関係機関を督励すべきだということが小委員会における結論であつたのであります。  以上をもちまして、簡單に小委員会の経過並びに結果の御報告をいたす次第でございまするが、二回にわたつて開きました委員会の結論、すなわち塩につきましても肥料につきましても、本委員会において強い要望を盛つた決議を行い、政府を督励するということにつきましては、ただいま申し上げましたように、出席議員全部の賛成のもとに行われた決議でありまするので、委員長におきましてよろしくおとりはからい願いたいと存ずるのであります。
  88. 小金義照

    小金委員長 本日はこの程度にて散会いたします。     午後四時二十九分散会