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梨木委員 委員長もこういうように最後だおつしや
つているのであります。「私の
質問はあなたの主義上のことをついておるわけでもなし、あなたのなされた
演説の
内容の個々の問題を取上げておるのではないのです。いやしくもいずれの国家においても、
秩序のなき国はおりません。この
秩序の維持は法によ
つてのみ生きるのであります。この法を認めないというあり方であ
つては相ならないという考え方から、再三重ねて——
川上君のこの
演説の
内容を取消せと申すのではありません。
演説になされた不穏なる
言葉をお取消しになる御
意思があるかどうかを再三勧告いたしておるのでありますが、これをお取上げになるかどうか」というのでありまして、
演説が全部うそだから、これが
懲罰にかかるということをついておられるのではないということは、
委員長自身の
質問の中に似つきり現われておるのであります。
従つてこの点からも、すでにうそだということによ
つてもう
提案者の
理由が成り立たないことを証明しておると私は思うのであります。
虚構の事実云々はもはや
理由のないということは、これで明らかであります。
第二番目に
占領軍誹謗云々の点を申し上げます。この
川上君の
演説は、これを
国会の外でや
つたならば占領
政策違反、つまり政令三百二十五号違反に該当する
内容を持つ
演説だ、こう
言つて提案者はこれを
懲罰に付さなければならぬと
言つております。
動議の
賛成者もそう申しました。ところが、
日本が
ポツダム宣言を受諾いたしました占領下の今日におきまして、われわれのよ
つて立たなければならない
行動の基準、これは
一体何に求めるべきかと申しますならば、
ポツダム宣言です。これをもう少し要約いたしますならば、
日本の民主化と非武装化、非軍事化であります。平和産業の復活であります。軍需産業の撤廃であります。これが降伏後におけるところの
日本人民の
行動の基準でなければならないのであります。そうしてこの基準に立
つておる限りば、われわれの
言論は無制限に自由でなければならないと私は信じます。
川上君は繰返し繰返し
演説の中で、現在
日本におきましては、
ポツダム宣言に違反するような軍事基地だとか、あるいは軍需工業の復活だとか、あるいは民主化を妨害するようなあらゆる
人権の抑圧、こういうものが行われておるではないか、これでは
ポツダム宣言の違反になり、
ポツダム宣言に違反をしてお
つては、これは公正な講和というものも期待することはできない、
従つていつまでも
日本は独立できないし、
占領軍の撤退を期待することはできない。このことを心配して、こういう事実もあるではないか、こういう事実もあるではないかと
言つて指摘したのでありまして、これはほんとうに
ポツダム宣言の嚴正な実施を願うからなのであります。ところが、これを占領
目的違反だと言うことは、私は普通の常識を持
つた人には、理解できない
論理だろうと思うのであります。そうしてこれを外でやるならば、これは占領
目的違反だとおつしやる。しかし諸君どうです。この
川上君の
演説は、一部分は削除はされておりますよ。しかしながら大部分は、これは官報に、また
国会の
速記録として公刊されておるのであります。これは
一体どういうことでありましよう。もしも
川上君の
演説全体が、占領
目的違反のような
内容を含んでおるといたしますならば、これは出版できないはずであります。このこと
自身が、この
演説というものが何ら占領
目的に違反するものでないということを、これは
国会の
議長それ
自身が認めている事実であります。しかるに諸君は、これを占領
目的違反だと言う。ま
つたく諸君の
政治的な感覚を疑わざるを得ないのであります。そうしてこの占領
目的違反云々の問題につきましても、いろいろな考え方があるわけであります。つまり
速記録の削られている点、これは
議長がこの点はプレス・コードに違反する、占領
目的に違反するというような感覚で判断されたのでありましよう。ところが、
川上君の
演説は放送されております。その放送されている
演説を聞きますと、
速記録ではなるほど消されておりまするが、その消されたところが放送されております。たとえば、こういう点です。「またこの予備隊は、
戰争を挑発し、
日本人民を
戰争の人的資源に提供する
政策の具体的現われであります。」こういうことを
言つているのでありますが、この点はちやんと放送されておるのであります。こういうところから見ましても、これは
政治的な感覚によ
つて、どこまでが占領
政策違反であるかどうかということは、それぞれの
政治的な感度、感覚、それによ
つて違うのであります。われわれはあくまでも
ポツダム宣言の嚴正実施の点からこの
演説をしておるのであり、またわれわれはこれをあくまでも遂行するために全努力を傾注いたしておるのでありまして、
川上君の
演説というものが占領
政策に違反するなどということは、とんでもないことだと思うのであります。この点から、以上申し述べたところによ
つて、占領
政策違反の
演説だということが何ら
理由にならないということは、
国会の当局
自身の
行動の中からも証明することができると思うのであります。
それから第三番目に、
同僚議員に重大な
侮辱を加えたということでありますが、
一体具体的にどういう言動が重大な
侮辱なのであるか。(「吉田総理が国を売ろうとしているか」と呼ぶ者あり)ところが、
吉田総理大臣に対して
━━━だと言
つたと言う。
速記録をよく見ていただきたい。(「
言つているよ」と呼ぶ者あり)いや、ないですよ。こういう
━━━という
言葉は使
つておりません。とにかく
同僚の
議員を
懲罰にしようとする場合には、もつと愼重にしなければなりません。そんな
言葉は全然使
つておりません。このことが
一つ。もう
一つ、民主党の芦田君に対しましての批判はありました。しかしこれはあくまでも芦田さんの
政治的な
行動、これを批判したにすぎない。
政治的な
行動を批判すること、これが無札な言だということになりますれば、
国会において、何ら
反対党または
意見を異にする
議員を批判することはできないじやありませんか。こういうことをとらえて
懲罰に付するということになりますならば、これは
国会自身が、みずからの
言論の自由を放棄するようなことになり、自殺行為だと思うのでありまして、この点は諸君もよく考えていただきたいと思うのであります。それから
提案者も
言つておりまするし、また今の
懲罰動議の
賛成討論の中にも、それに類似する
言葉があ
つたのでありますが、
川上君、こういう
演説をする
議員が
国会にいること
自身が、
国会の権威を傷つけ、
議院の
品位を傷つけるものであるというようなこと、また
共産党自体が罰せらるべきである、こういう
言論を承りました。これはまことにおかしなことでありまして、
川上君の
演説そのものが
懲罰に付されているのであります。ところが、
提案者や今の
賛成討論をした方々の言われるところを聞いておりますと、これは
共産党そのものを問題にしている。つまり
共産主義思想そのものを問題にしようというのであります。これは
憲法を頭から否定することではありませんか。
共産主義思想そのものの批判にな
つて来ております。これは
思想、良心の自由を否定する
言論だと思うのであります。こういうことでは、
国会自身が
憲法を否定するような
行動を行
つていると非難されても、弁解の辞がありますまい。私はこの点につきまして、
提案者にも
質問を試みております。ところが、
提案者はこういうように
言つております。私も
質問したのでありますが、
木村榮君も
質問している。これに対して、
佐々木盛雄君は「私は社会党が社会党の主義綱領の御宣伝をなさることも、わが
自由党が
自由党の主義綱領の宣伝をすることも、それは自由であろうと考えます。」こう
言つている。「ただ、その宣伝をするにあた
つて、ことごとく事実無根の捏造の事柄を流布することによ
つて、
院内の
秩序を乱し、あるいは
品位を傷つけ、あるいは無札の論議を弄するということが、法規に照して抵触し、当然
処罰の対象になると考えます。」と、こう
言つているのでありますが、無礼の言やあるいは事実無根の捏造の事柄を流布したことがないということは、私の今申し上げることによ
つて明らかであります。そこで社会党が社会党の主義綱領を、
自由党が
自由党の主義綱領を宣伝することは自由だ。ところが
共産党だけは主義綱領を宣伝してはいけない。こういう
論理になるのであります。しかもこれは吉田首相
自身が、
共産主義の宣伝だから答弁しないと
言つておる。
一体政党が
国会におきまして自分
たちの主義
政策をはつきり鮮明にさして、この観点から
政府の
政策を批判し、
政府の行政的なやり方の失態を攻撃する、これは当然じやありませんか。ところがそれは宣伝だから答えないと言う。
共産党に限
つてこの宣伝を許さないということ、主義
政策を鮮明にすることを認めないということは、これは頭から
共産党を否定する
思想ではありませんか。
思想の自由が許されているということを、諸君は認めないということではありませんか。
共産主義の
思想を持
つていること
自身が
国会の権威を傷つける、これは何事です。諸君がこの狭い
日本のここにおりまして、そうして
共産主義云々と諸君は大きな顔をして
言つておりますが、
世界の情勢はどうです。
世界は今や
共産主義の陣営と
資本主義陣営とが二大対立している。この現実を諸君は知らないで、
国会において
共産主義思想そのものを否定するような
言論をいくらやられても、それは笑いものですよ。
以上によりまして、
提案者の
提案理由並びに今の
動議の
賛成者の
理由がま
つたく根拠のないものであるということは明らかに
なつたと思うのであります。ところがかように
懲罰の
理由が何らないにもかかわらず、あえて
川上君を
懲罰にしようとする、これは
一体どういうたくらみによるものであろうかということを、われわれは考えざるを得ない。要するにこの第十
国会は
国民が最も関心を持
つておるところの講和の問題、この論議が本
国会における重要な課題であ
つたと思います。この論議をひつさげて
川上君があくまでも
共産党の立場から、
政府がやろうとしているところの単独講和や、あるいは再軍備、これらに
反対して、全面講和と再軍備
反対、戦争
反対のこの
態度を鮮明にして、
政府の施策を攻撃した、これが痛か
つたのであります。この
言論を妨害し、これを抑圧しようとするところに、この
懲罰の
理由が、
懲罰の
一つの大きな目標があ
つたとわれわれは断定せざるを得ない。しかしながら諸君、今吉田
政府のや
つているところのこういうような単独講和や、あるいは再軍備、こういう
政策を遂行して行
つたらどうなりますか。
日本が明らかに
━━の道に追い込まれることは明白ではありませんか。先ほど
賛成者の
意見の中に、
日本の国際的
信用を失墜させたというようなことを
言つております。これは現在の吉田
政府自身が、国際的な
信用を失墜させるようなことをや
つておるじやありませんか。現に吉田
政府のやろうとするところの特定の国との講和を結ぶということ、これは明らかにポツダム協定に違反しているじやないか。ポツダム協定は、連合国が
一体不可分とな
つて、
日本との間に降伏文書を通じて
一つの国際的な規範がつくられたのであります。従いましてこの
一体不可分の連合国の一国や二国を切り離して、ばらばらに講和を結ぶことは明らかにポツダム協定に
━━している。国際信義を
━━━━ものであります。そういうことみずからや
つておきながら、それではいけないじやないかというので、国際協定違反の点を追究して、こういう
方向に行かないようにやろうとするために
質問した、このことが国際的な
信用を失墜させたと言う、これは逆なんであります。こういうようなわが
川上君の
演説に対して
懲罰を加え、そうして今や
日本の
支配者は何をやろうとしているか。結局は
日本の人民を
━━━━━━━━━としている。それに
反対している人民に対してはどうや
つている。この間も「平和のこえ」弾圧に藉口して五百有余の━
━━━━━を検挙しておる。それを投獄しようとしておる。職場から、あるいはあらゆる工場からは、こういうような全面講和、再軍備に
反対し、
戰争に
反対する人々が
━━されて来ておる。こういうことをや
つて結局
日本を
━━━━━━━━としておるのであります。そうして一方におきましては、国警を二万人ふやそうとしておる、あるいは━
━━━━━を復活させようとしておる。そうしてあわよくば
日本共産党を禁止いたしまして、
日本共産党を非合法化いたしまして、そうして単独講和と
━━━━へ
日本を無理やりに持
つて行こうとしておる。この
政策の一環として
懲罰事犯が今諸君によ
つて強行せられようとしておるのであります。しかし諸君がいかにそういうことをやろうといたしましても、決して
日本の人民は東條軍閥時代のような、そういう時代に生きているんじやないのです。もはや
日本の人民は、一度は
民主主義の呼吸をいたしておるのであります。諸君のようなそういう弾圧で人民は断じて屈しないでありましよう。
大体以上の
理由によ
つて私はこの
懲罰動議に
反対するものであります。