○
川上貫一君 それではきのう申し上げませんでした点を申し上げます。私がこういうことを
質問しました。これは今申しましただけの
理由ではない、いろいろなことがありますから、ということを申し上げたのでありますが、その中で一月二十二日のニユーズ・ウイーク誌にこういうことが書いてあるのです。
日本防衛という
項目の中で、朝鮮動乱は
日本の防衛施設を非常に強力なものにするに至つた。できたばかりの
日本の━━すなわち七戸五千の警察予備隊は、意外なほど急速な進歩を逐げているものの、やはり目下編成の段階にある。その人員の半数は第二次大戰の将兵である。
日本が自国防衛に参加するということは、多分
ダレス使節団によ
つて具体化されることになろう。まず第一に
日本はできるだけ早く地上防衛施設を引継ぐだけの軍隊を集めることになろう。朝鮮動乱中、
日本は掃海艇並びにLST——これは水陸両用艇だと思いますが——を提供し、一方国連艦隊は基地から作戰行動に移つたものの、その基地における作業の多くは
日本人の手によ
つて行われている。最後に
日本はおそらく防空にも参加することになろう。もつともすでに
日本の労働者は大規模に国連空軍基地で使用されているのである。これはニユーズ・ウイークの記事であります。こういうことがいわれておる。ますます
国民は疑問を持つであろうと私は考える。これはどうしても政府の所信をお伺いしなければならぬと私は考える。また中華人民共和国伍修権代表は、国連の政治
委員会でこう言
つている。米国政府が━━━━━━を拡大しようと企てていることは、在鮮米軍の行動にもつとはつきり現われている。八月二十七日以来絶えず在鮮米━━軍の飛行機及び海軍艦艇は中国に対して━━
行為に出ている。十一月二十四日までに在鮮米━━空軍は千機以上を動員して、二百回以上中国上空を━━し、中国領内に深く突入して重爆撃と探察を行い、その際中国人民に━━━━━━━を出させ、中国の財産に大損害を與えたのである。さらに台湾、朝鮮に対して行動中の米━━━艦艇は、公海上で中国の平和的商船を不法に臨検した。有名な米誌ユナイテツド・ステーツ・ニユース・アンド・ワールド・リポート十月二十三日号は、在鮮米━━━爆撃機隊の行動を
発表しておるが、これによると、中国東北諸都市は在鮮━━━空軍の爆撃目標がはつきりつけられている、こういうことを言うております。しかしこれはこの言うた者が、中国人民共和国の代表であるからどうだとか、あるいはこれがソ同盟のあれだからどうだとかいう問題ではなくして、事実において国連の政治
委員会において公然とこういうことが述べられておるということ、これをいろいろな状況とにらみ合せまして、やはり
日本においても私は十分な
質問をして、政府の所見を明らかにして、
国民に
日本の政治のどういうものであるということを知らせなければ、民主的な政治はできない。こう考えたのが、私の
質問した点であります。そのために私ははつきりと、この点に関し内閣総理大臣の
答弁を求めるものでありますと申しております。総理大臣は、これに
答弁しないのであります。私はなぜ総理はこれに
答弁されないのであるか、不思議に思うのです。私が事実を例示した
質問に対して、政府が何の
答弁もしない。それを放
つておいて、
提案者は私を
懲罰にすると言うておる。これはどうも私は道理に合わないことであると思います。これが私が弁明したいと思う点であります。
第三点は、
提案者は、私の
演説が
連合国に対しまして不信や怨恨を招いたということを主張しておられます。
提案者は不信とか怨恨とか抽象的な言葉でも
つて私を非難しておられます。しかし私は具体的に事実をあげて
質問しておるのでありまして、これがどうして
連合国に対し、不信や怨恨を招くのでありましよう。そんなことを言うなら、
提案者の
発言それ
自体も、私は
連合国の不信、怨恨を招く危險があると思います。なぜなら、
連合国というものは、御承知のようにアメリカ、イギリス、フランス等の国々だけではありません。中国も
連合国でありますし、ソ同盟も
連合国であります。私は
提案者の
発言は裏を返せば、ソ同盟、中国の側から見ますと——
提案者のりくつから考えますと、これはやはり不信を招く
言動ではあるまいかと考えます。ことに吉田内閣が外務省から出された「朝鮮動乱とわれらの
立場」というこのパンフレツトによりますると、もうはつきりソ同盟その他
社会主義並びに人民民主主義諸国を━━しておる。それに対して
自由党の植原君は外務
委員会で、それはあたりまえだ、こいつは政府が出したものだとはつきり言え、こういうことを言うておられます。私はもちろん、だから植原君も
懲罰になるんだ、こんなばかなことを言うておるのじやありません。こんなことは
懲罰にならないと私は言うておる。
第四に
提案著は、私が大要次のように
演説したということを
指摘しておるのであります。すなわち、
日本の政治は、
日本を朝鮮に対する━━━━の道具にし、
日本人民に対して軍事的、植民地的奴隷政策を押しつけている。また、
日本人民を━━に使うことによ
つて、国際帝国主義の利益と安全をはかろうとしておる云々、これは私の
演説であります。しかし、なぜこれが
懲罰になるであろうか。これが私に理解できない点を弁明しておるのであります。第一に、朝鮮に対する干渉云々ということは、今日ではもう
世界の半分の人間がそう言うております。また
日本人民の多くの人々もそう思
つておる。ソビエト、中国、東ヨーロツパ諸国、その他
社会主義並びに人民民主主義の人民
諸君はもちろん、資本主義諸国のフランス、イタリア、その他
日本の労働者、人民大衆も朝鮮干渉反対の鬪争をしておる。半分は反対しておると私ははつきり考える。
日本人民の多くも、こう思
つておる。ことに中国やソ同盟は、朝鮮に対する干渉を国連
委員会ではつきりと抗議しておる。われわれは、ソ同盟が
連合国でないと考えることはできません。
日本は無條件降伏しております。それはただアメリカにだけ降伏したのではありません。われわれが責任を持つべきものは
連合国であります。それゆえに私は、ソ同盟その他の国々がこれをどう考え——
日本の講和をどう考え、
日本の独立をどう考えておるということを決して無視することはできません。これは
日本人民の私は義務であると思います。私はここでヴイシンスキーが抗議をした、これを読み上げたいのでありますが、
委員長もいろいろ心配して、もうこの辺でとめなくちやならぬのじやないかと考えておられるかもわからぬと思いますので、これだけを私は割愛いたします。私はこういう世論、但しここで申しておきますことは、ここでヴイシンスキーが国連政治
委員会においてはつきりと抗議しておるんだということだけは、明らかに申し上げておきたい。資料はいつでも私は提出いたします。私はこういう世論にかんがみて政府の所見をただしたのであります。私は当然のことを
質問したのにすぎません。これはいずれも
国会において当然
質問され、かつ討議されなければならぬ問題であると私は考えております。
次に、
日本を━━の道具にしているではないかということについては、私は具体的な事実をあげて
質問しております。何も抽象的に申したのではありません。もしそうでない、この事実が違うというならば、政府はそれがそうでないということを事実をも
つて明らかに
答弁していただきたいと思う。
次に、
日本人に対して軍事植民地的奴隷政策を押しつけているではないかという私の
質問も、これもまた具体的な事実で政府に
質問しているのでありまして、抽象的な言葉をいたずらに並べて
質問したのではありません。これの
答弁をなさらぬのは政府であります。してみれば、政府はこれを
認めておられるのではないかとさえ考えなければならぬ。もし
日本の労働者の利益をほんとに
ちよぴりでも考えるならば、
共産党の
宣伝だなどと言うて
答弁を逃げる態度は、これは国政を
審議する者の態度ではないと私は思う。私は言いたいです。この民族存亡のときにあた
つて、これを
宣伝だとか何とか言
つて答弁を拒否する。これは政府みずからが、ほんとうにまじめに人民とともに国政を
審議する意思がないのだと言われてもしかたがないのじやないか。
次に私は、
日本人民を━━に使うことによ
つて帝国主義の利益をはか
つている云々の点については、わが党はこれまで何度も政府に
質問をしております。現にたくさんの
日本人の遺骨が内地に帰
つて来ているという事実が報道されている。これは明らかに朝鮮の戰争に
日本人が使われているという
証拠であろうと私は思う。これを
質問することがなぜに悪い。私はこの点は
納得ができません。
第五点は、私が故意に占領軍に反抗し云々と言われております。私は
演説において故意に占領軍に反抗した事実は何もありません。
ポツダム宣言並びに極東
委員会の対日基本政策というものは、戰争の能力を
日本から奪うこと、軍国主義的勢力を除去すること、
日本の国の物質的及び政治的非軍事化の任務を完了すること、基本的人権を尊重され、特に信教、集会、結社、
言論及び出版の自由は尊重されるべきこと、戰争のために再軍備をすることを得せしめるような産業を維持することを許さないこと、平和的傾向を有し、かつ責任ある政府が樹立さるるにおいては、占領軍はただちに
日本より撤收さるべきこと、これらを要求し義務づけております。これは平和的、民主的な
日本が建設されることを
連合国が要求しておるのであります。私は現在の政治がこの要求、この義務に
違反しているのではないか、これを事実をあげて政府に
質問したのであります。これは
ポツダム宣言の完全実施を人民とともに心からこいねがうからのことであります。これはわれわれの至誠の結果だと思う。これは
連合国の占領政策に完全に一致すると私は考えております。私はこういう弁明をしておかなければならぬ。
第六点は、
提案者は私の
質問演説が
国会外ならばポ政令第三百二十五号に
違反する、こう言
つている。しかしこれは、私の
質問が三百二十五号に
違反すると言われておりますが、了解ができないのです。ダイヤモンドの一月下旬号(「昨日読んだじやないか」と呼ぶ者あり)これは読みません。違います。ここに書いてある。一月下旬号には「
日本国民の講和への待望は、煎じ詰めれば自立への待望であるとい
つてよかろう。もつと正確にいえば政治的独立への待望である。そもそも考えて見れば、戰争に敗れたという一事の故に、既にその戰争
自体が終了して五年以上にもなる今日、人事の端々から予算計数の隅々に至るまで、戰勝国の干渉を受けねばならぬという義理が敗戰国にあるわけはない。」「前回の第一次大戰の敗戰国は、條約による特定の制約は受けたけれども、行政の末端までが戰勝国派遣官吏の指示を受けねばならぬような独立の喪失はなかつたのである。然るに今回の敗戰は斯様な独立の喪失を招来し、五年以上を経てなほそれがいつ回復されるかの保証もない有様である。然も斯様な状態に対する不審も不満も、必ずしも
国民の間に顯著でなく、思うことも碌々言い得ないような形にある。」(「たれが書いたのか」と呼ぶ者あり)これはダイヤモンドに書いてある。「従来干渉行政の合理性を
説明する
根拠として常に
指摘せられることは、
日本が米国の物質的援助を受けている事実である。援助を受けているのだから細かい管理を受けるのは当然であるという議論である。しかし、その当らざるは明かである。米国から物資の援助を受けている国は
日本ばかりではない。いわゆるマーシヤル計画は英仏初め西欧諸国に対する米国の無償援助である。然るにこれら被援助国の内政に対して援助国が何らかの干渉を加えていることは、西ドイツその他の敗戰国を除いては少しも聞かぬ。そうすると
日本の場合も要するに敗戰国だからであるにすぎない。
従つて結局敗戰国は戰勝国の内政干渉を無期限に受けねばならぬ義理があるのか。敗戰国は無期限に内政の自由を失わねばならぬか。この設問に対する回答は比較的簡單である。敗戰国に左様な義理はないのである」と書いてある。(「だれが書いたのだ」と呼ぶ者あり)私はだれがこれを書いたかを言うのではありません。これが社会に通用しておるのであります。公刊されておるのであります。私はこれを言うておるのです。
提案者の考えによれば、これことごとくポ政令
違反でなければならぬと私は思う。ところが公然と出ておる。刑事訴追を受けておりません。私はあたりまえだと思う。いわんや
国会内における私の
質問のごとき、何の
懲罰にも値しないと私は確信して疑いません。これを
理由に
共産党が団体等規正令に該当するなどというに至
つては、党に対する侮辱であります。私はこれに対して抗議したいと思う。
第七に、松川事件の私の
質問に対し、
提案者は司法権を冒涜し云々と言
つておられる。私の
質問は松川事件の裁判に対する人民の
批判の声であります。裁判を
批判することは、
国民の自由な権利だと私は考えております。これは何ら司法権を冒涜しません。また侵害するものでもないと思う。
第八に、
提案者にまた、
川上君は吉田首相や芦田均君をあたかも━━━━
━━━━━━━━━━━━━
のごとく取扱
つておるが、これは
国会法第百十九條において厳禁する
無礼の言たることもちろんである云々と言
つておられる。しかし私の
演説は、吉田総理大臣や芦田均君に対する政治
批判でありまして、政治家が政治家を
批判するのはあたりまえであ
つて、こんなことが
国会法第百十九條に抵触するなら、もはやこれは
国会も何もあつたものではない、笑いを後世に残すであろうと私は考えます。ところがこの
提案者は、吉田総理、芦田均君に対する私の
演説を、無乱な言辞として
懲罰の
理由の
一つにあげておられます。ところが
提案者みずからは私に対し、精神的には完全に
日本の
国籍を離脱し、第三国に対し忠誠を誓つたものだ云々と言
つております。私も
国会議員であります。これこそ
議員に対する最大の侮辱である。私はこのことに関する限り、
懲罰にかけべき者は
提案者自身であると思う。
さらに
提案者は、私の
演説を非愛国的
言動と非難しておられますが、一体非愛国者はだれであろうかということであります。私の一般
質問の
中心点は、單独講和は戰争への道だ、再軍備への道なんだ、米、英、ソ、中の四大国の協調と合意による大国一致の全面講和こそ、
日本の独立と平和を保障し、
世界の平和の基礎を打立てるものであるということを強調して、私は政府に所信をただした。これは私顧みて恥じない愛国の主張であるという自信を持
つておる。しかるに
提案者は、私を
日本人でないように誹謗しておる。これは
日本共産党と
国民との間を離間して、これによ
つてまるで━━━━━とか、單独講和論者や再軍備論者をほんとうの愛国者のように
国民に思い込ませるにくらみであると考えても、考えられぬことはないと私は考えます。しかし大多数の
国民は戰争に反対し、單独講和に反対し、單独講和は
日本の独立を脅かすということを言
つております。どつちが
日本の平和と独立のために鬪う愛国者であるか、私は歴史が証明するだろうと考えます。
去る一月十九日から開かれました
社会党の大会では、單独講和は必然的に戰争への道であることを
指摘して、それによ
つて必然的に起る再軍備や自衛論に反対され、講和問題に対しては
社会党は、われわれは極東
委員会十三国との全面講和を強く要望し、單独講和を求むべきではないと、はつきり決議しておられる。さらに一月二十七日の本
会議では、
社会党代表勝間田氏は、
ポツダム宣言に基き全面講和を主張すると、はつきり言
つておられる。
提案者はこれもやはり
第三国人の部類に属するというのか。私が全面講和を主張し、單独講和に反対し、平和と民族の独立のためにこれを強調した、これは
国籍を離脱したものだ、これはどういうことになるのか、私は了解できません。
私は最後に申したい。この
懲罰動議は私に対する
懲罰動議と思いません。これは
日本共産党に対する迫害だ、それだけとも思いません。單独講和に反対し、戰争に反対し、全面講和を望む
日本の人民に対する
懲罰だと私は思います。これは全面講和によ
つて日本の繁栄と自由な通商、生活の安定を望む人民に対する彈圧ではないかと私は考える。私は多数党派によ
つて懲罰を宣告されようとしておる。しかし、たとい私が
懲罰に付されたとしても、ほうはいたる人民の意思、平和と独立を望む人民の意思をじやますることは絶対にできないと私は確信しておる。
私はこれをも
つて私の一身上の弁明を終ります。