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1951-03-09 第10回国会 衆議院 地方行政委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月九日(金曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 野村專太郎君 理事 藤田 義光君       大泉 寛三君    尾関 義一君       川本 末治君    田中 啓一君       吉田吉太郎君    床次 徳二君       山手 滿男君    大矢 省三君       門司  亮君    立花 敏男君  出席政府委員         地方財政委員会         委員      木村 清司君         総理府事務官         (地方財政委員         会事務局税務部         長)      後藤  博君         地方自治政務次         官       小野  哲君  出席公述人         一ツ橋大学教授 井藤 半彌君         農機具小売商  渡邊夘佐三君         日本自治団体労         働組合総連合副委         員長      泰平 国男君         東武鉄道株式会         社專務取締役  工藤 義男君         全国国民健康保         險中央会專務理         事       江口 清彦君         神奈川県総務部         長       矢柴 信雄君         関東地区鋸協同         組合理事長   松澤 隼人君  委員外出席者         專  門  員 有松  昇君         專  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた事件  地方税法の一部を改正する法律案について     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 これより地方行政委員会公聽会を聞きます。  この際公述人方々にごあいさつ申し上げます。本委員会におきましては、地方税法の一部を改正する法律案につきまして、昨日まで愼重な審査を続けて参つたのでありまするが、本日は特に公聽会を開きまして、地方税法の一部を改正する法律案について、真に利害関係を持つておられる方々及び学識経験者方々から、広く意見を聞くことにいたしたのであります。申すまでもなく本法案は、国民生活に影響するところ、きわめて大なるものがあるのでありまして、御承知通り昨年の八月、画期的な地方税制改革が断行されたのでありまするが、その施行後の状況にかんがみまして、住民負担合理化及び税務行政の効率的な運営の見地から、その改正を要すること切なるものがあるのでありまするが、その間国民各層におきましても、種々の御意見が活発に展開されておりまする現状から、本案審査にあたりましても、国民諸君の声を広く聞いて、そうしてその輿論を反映させて、本案審査を一層権威あるものならしめることを期しておる次第でございます。  本委員会としましては、本日公述人各位の熱心な、かつ豊富な御意見を承ることができますれば、今後の審議の上に多大の参考となりますことを、深く期待いたしておる次第であります。どうぞ皆さんの忌憚のない御意見をお伺いいたしたいと思います。御多忙中のところ、わざわざ貴重な時間をさかれまして、おいでくださいましたことを、委員一同にかわりまして、厚く御礼を申し上げる次第であります。  本委員会において選定いたしました公述人は十人であつたのでありまするが、そのうちで、名古屋市理財局長大原霞君、立教大学教授藤田武夫君から、都合により出席し得ない旨のお申出がありましたので、この際御報告申し上げます。  それではまず一橋大学教授井藤半彌君より御意見を承ることにいたします。
  3. 井藤半彌

    井藤公述人 一橋大学東京商科大学井藤半彌であります。お招きにあずかりまして、地方税法の一部を改正する法律案につきまして、意見を申し述べさしていただきたいと思います。  今度の改正法案は、申すまでもなく昨年の第八回国会を通過いたしました地方税法に関する根本的改正法案の、いわば追加修正とも言うべきものであります。従つて昨年通過いたしました法案に比べますと、今度の法案がとかく部分的な修正になつているのは、やむを得ないことであります。従つて理論的に申しましても、実際的に申しましても、問題はやや少いのであります。しかしながら、この法案を見せていただきますと、租税理論という立場から見ましても、やはり相当問題があるかと思うのであります。それで私の公述は主として理論的方面に限られております。手続の問題、罰則の問題等もございますが、これについては公述を省くことといたします。  まず税額でありますが、今度の改正その他によりまして税額が幾らになるか。これは申すまでもないことでありますが、まず順序として申しますと、昭和二十五年度の地方税総額は、もちろんこれは推算でありますが、千九百八億と言われております。それから今度の改正法案が通過いたしますと、昭和二十六年度は二千八十七億と言われておるのであります。差引きまして百七十九億、すなわち百八十億ばかり増税となるのであります。金額から言えば増税になるのでありますけれども、しかしこの計算では、国民所得が去年に比べて今年は約一割以上ふえるという考えが前提になつておるのでありまして、これはいわば自然増收部分が非常に多いのであります。制度として申しますと、今度問題になつておりまする法案では、法人について市町村民税所得税割を課けることになつておりますが、この部分が重要な増税でありまして、それ以外の点は割合増税部分は、少いのであります。むしろ減税になる部分が相当にあると思うのであります。そこで国税地方税を総合しての負担はどうなるか。それは当然問題とすべき問題でございますが、私自身といたしましては、今から二、三週間前に、衆議院及び参議院の大蔵委員会で、国税改正法案に関連いたしまして、国税及び地方税を総合しての負担について検討したことがございます。その結論を申しますと、金額としては今年は去年に比べて国税地方税を総合してふえるのでありますが、国民負担という、経済力との関連において見ますと、やはり減税になつておると思うのであります。そこでこれから以下地方税のおもな問題について意見を述べさせていただきます。  いろいろ問題があるのでございますが、私の公述は主として三大地方税ともいうべき附加価値税市町村民税固定資産税、この三つについて問題になるところを申し上げたいと思うのであります。  まず附加価値税であります。今度の改正法案におきまして、附加価値税について相当いろいろな点に改正があるのでありますが、最も重要な改正は次の二つであります。一つは、附加価値税課税標準算定につきまして、控除法のほかに加算法選択を認めたいということ、それからもう一つは、この税金を実施する前に取得いたしました固定資産につきまして、減価償却高を総売り上げ金額から控除するという制度を認めたということであります。以下そのおのおのについて申し上げます。  まず加算法選択の問題でございますが、これは單なる手続の問題ではなくして、附加価値税本質関係するところが多いのであります。それから——私の結論を先に申し上げますと、加算法選択を認めるということはよくないと思うのであります。これは私としては反対であります。なぜ反対するか、その理由を申し上げますが、これは結局附加価値税本質に関連するものであります。附加価値税というものは、皆さん案内通り売上税重業税の二重の性格を持つておるものであります。現にシヤウプ勧告を見ましても、第一次勧告におきましては、附加価値税というものは事業税の一種として取扱われております。ところが昨年出ました第二次勧告におきましては、はつきりとこれは売上税だといつておるのであります。私はシヤウプ勧告二つのことを述べたということは決して誤りじやなくて、税金二つの側面があるということを認めておるということを申したいのであります。しかし事業税売上税か、どちらかというと、やはり売上税的要素が濃厚なものでございます。御案内通り附加価値税日本が世界で最初に制定したものでありまして。よそにはないのであります。学界附加価値税という新しい税金を提案いたしました発生動機はどうかと申しますと、売上税にあると言われている欠陷を除去するということであつたのであります。そこで売上税、英語で申しますとターン・オーバー・タツクス、これの欠陷として次の二つがあげられておるのであります。それは、売上税の場合には取引高課税標準にするのでありますが、売上高課税標準にしても、その事業がほかの企業支拂つた金額と引きませんので、正確な取引の分量を表わさないということが一つ、二番目に欠陷と言われているものは、取引都度課けますので、税金が累積をして税金にまた税金が課かる。従つて垂直的結合企業、いわば一貫作業をやつております企業におきましては、税金の課かる機会が少い。これが売上税欠陷と言われておつたものであります。ところが皆さん案内通り附加価値税というものは、ほかの企業拂つた金額を総売上高から引きますので、今申しましたような欠陷がないのであります。しかしながら、あくまでもその性格売上税に近いのであります。現にこの附加価値税の初期の提唱者であるところのドイツ学者ユルム——ナチ時代に追放されて今アメリカにおりますが、あのユルムという人が、一九三五年に書きました論文の中で、附加価値税を提唱しておるのでありまして、附加価値税のことを精功なる売上税、エラボレート・セールズ・タツクスといつておりますが、これはやはりそういう意味言つたのであります。これが附加価値税本質及び発生動機であります。そういう立場から申しますと、いろいろほかの企業に対して拂つたものを引くとか何とか申しますけれども、やはり売上高標準にして課税するというのが、附加価値税本質であります。もしそういうような解釈が正しいといたしますならば、附加価値税課税標準算定につきまして、どうしても現在の法律できまつておるような控除式をとるべきであります。加算式をとりますと、売上高標準とする税金であるという本質は失われるのであります。私は、加算式取引高標準とする税金である附加価値税特性に反するものと思うのであります。むしろ加算式というものは、営業税をかけます場合に外形標準によつてやりますが、従業員の数であるとか、土地、家屋の賃貸価格であるとか、売上高であるとか、そういう外形標準標準として課ける営業税——これは昔、日本においても外国においても行われたのでありますが、それをやや精密化したものなのであります。私は、加算税というものをとりました場合には、限加価値税特性はなくなる——あくまでも附加価値税を課けることがよいかどうかは問題でありますが、附加価値税としてもし課けるならば、あくまでも控除式で行き一貫するのが、理論上正しいと思うのであります。しかしこれは一般の理論でありまして、納税者便宜という点から申しますと、今度問題になつております加算式便宜であります。これは多くの人が言うように、会社などで経理上法人税のための帳簿が、そのまま使えるという便宜などがありますので、併行することが認められたのでありますが、実施する場合にはあくまでも例外的措置としてなすべきものではないかと考えているのであります。それからもう一つ加算法控除法二つを併用いたしますと、この二つによつて出て来る答えが違いまして、税金高不一致となるのであります。どちらの計算によりましても一致するというのは机上室論でありまして、不一致となる。机上室論どころか理論的に申しましても、税金の金高が不一致となる危險があるのであります。と申しますのは、控除式というのは、附加価値税本質に基きまして、收入及び支出売上高及び控除高計算する場合には、その営業本来の事業関係のある收入、またその営業本来に関係のある支出、これを引くのであります。従つて社員更生施設であるとか、本来の営業に直接関係のないようなものを買つた場合、はやりそれは支出としない。それを売つた場合に入つた金收入としないことになつているのであります。これは附加価値税取引高標準として課税するという建前から申しますと、当然そうならなければならないのであります。ところが加算式の場合はどうかというと、そういうことはやらない。その営業本来の收支のほかに、その営業が従属的に行つている厚生施設その他の、たとえば社宅の收支とかそういうようなものも、みな企業損益計算の中へ入つて来るのでありまして、損益計算をしてそれに地代、家賃、利子、賃金等々を加えるのであります。従つて今申しました部分はどうしても不一致になつて来るのであります。今度の税法におきましては、加算法から控除法へかわる、または控除法から加算法への転換が認められておりますので、他へ転換の場合行政事務上、よほど綿密な注意といたしませんと、いろいろ煩雑なことが起りますし、不公平なことも起ると思うのであります。そこで今度控除式のほかに加算式を認める。ところが、これは昭和二十七年度限りの臨時措置でありますが、もう一つ課税標準を定める方法が、現在の法律で認められております。それは銀行その他金融業保險業運送業倉庫業などでありますが、こういう場合は附加価値計算するとき控除式をもとらないで、そういう企業の総收入高一定割合、たとえば銀行について申しますと、銀行の総收入高の百分の四十五というものを機械的にとりまして、それをもつて附加価値税課税標準にするということになつておるようであります。そういたしますと、このような企業につきましては、加算法控除法と、今申しましたような総收入高一定割合という三つ方法が併立いたしまして、これを各企業がどれを選んでもいいということになるのでありますので、これは負担の公平という点から見て、制度としては大いに考えるべきことではないかと思うのであります。これが加算法選択の問題であります。  次は附加価値税における第二の重要問題、それは附価値税実施以前に取得した固定資産につきまして、減価償却高計算いたしまして、これは総売上金高から控除するということ、これは実はシヤウプの第一次勧告には全然無視されておることであります。いなシヤウプが無視したのみならず、アメリカ学界においても、このことについて触れておる文献はただ一つもないのでありまして、気がつかなかつたのであります。ところが日本でこれを立法化すると、これはどうも不公平だというので問題になりまして、第二次のシヤウプ勧告ではこれを認めております。そしてそれにのつとりまして、今度の改正法案においても過去の固定資産減価償却高を総收入高から控除するという理論を認めたのでありますが、これは理論からいつて当然のことであつて正しいと思います。こまかなことでありますが、あら探しをいたしますと、これにもあらがある。それはどういうことかというと、本法実施以前に取得いたしました固定資産について、本法実施以前のたなおろし商品はどうかというと、これについては認めないのであります。この点は理論的にいうと、一貫性を欠くのでありますが、また一方たなおろし商品在庫高というものは、あまり大差がないものでありますので、これについて固定資産並控除を認めないということは少しおかしいのでありますが、便宜という点からいえばやむを得ないのではないかと思うのであります。しかしながらこの問題はここで指摘しておきたいと思います。  そこで附加価値税について、今度の税法に関連する問題点二つありますが、御案内通りこれは世界最初の新税であります。フランスなどでも実施したというような説がちよつと伝わつておりますが、あれは間違いでありまして、フランスで実施しておりますのは附加価値税にやや近いものでありますが、附加価値税ではございません。ですからまだこれはどこも実施しておらないので実施するにつきましてはいろいろ問題が起るのではないかと思います。  次に市町村民税について、いろいろ改革が行われようとしておりますが、最も重要なのは給與所得についても、源泉徴收を認めるということ、それから法人について市町村民税所得割を新たに認めようとする、この二つであります。そこで問題は、給與所得源泉徴收——法律でいう特別徴收でありますが、これは納税という立場から言うと、きわめて便利でありますので、結論的には私も賛成であります。数日前あるいは一週間前でしたか、京都で勤労者地方税を拂わないので、何でも給料の差押えをするとかしたとか出ておりますが、これというのも市町村民税が重くなつたからであります。源泉徴收を認めると、行政当局会社事務上相当めんどうな手続がいるので、これは御覚悟願いたいと思うのでありますが、納税者立場からいうと、たいへん便利であります。これについて源泉徴收をする場合に、前年度の所得基準として今年度源泉徴收をやることは、理論上一貫を欠くのではないか。理論的に言えば今年拂うべき税金でありますから、毎月々々もらう給料から市町村民税を引くということが正しいのでありますが、これは手続が繁雑でとうていできません。ことに市町村民税は、給與所得以外のものにつきましても、現在前年度の所得基準として課けております。それとの均衡を考えまして、給與所得につきましても、前年度の所得基準として源泉徴收をするということは、そういう意味において均衡を失しないと思うのでありまして、私は結論において賛成であります。  それから今度は法人所得割を新たに課けるようになる、これも私は結論において賛成であります。法人所得課税につきましては、英米式、ことに英国式ヨーロツパ大陸式二つがあることは、皆さん承知通りであります。ヨーロツパ大陸式というのは、法人税金を課ける場合に、法人独立人格を認めまして重い税金を課ける。そしてそれが個人配当された場合には、また個人に課けるわけでありまして、従前わが国でも行つてつたものであります。英国式というのは、法人独立人格を認めない、法人にあまり税金を課けない。そしてその配当個人の手に渡つたときに課けようというのであつてアメリカ式もややそれに近いものであります。これはドイツ英米の論争であるのみならず、アメリカにおきましても、大陸式英国式の論争があるのであります。そこでシヤウプ勧告を基礎とするわが日本の税制におきましては、米国式をとつておるということは、皆さん案内通りであります。そこで日本国税所得税を課けます場合に、われわれ個人会社からもらいました配当所得につきまして、二五%引くという制度をとつております。そこで市町村民税という形で、個人所得割を課ける場合に、配当部分だけが税金でとることができないのであります。これはシヤウプ勧告におきましても、第二次メモランダムにおきまして、これが欠陷である。そこでその便宜的措置として法人所得に対しまして、源泉において標準税率一%ぐらいの所得割を課けたらどうかといわれておるのであります。これは結論からいいますと、私はこれで正しいと思うのであります。きようは少しこまかな理論ばかり申して恐縮でありますが、シャウプ勧告を基礎とする日本租税制度前提として申しますと、どうもこの方法理論的に変なところがある、と申しますのはどういうことかというと、現在市町村民税個人が拂う場合にどこで拂うかというと、住所地で拂います。住所地市町村に対して拂う。     〔委員長退席大泉委員長代理着席〕 そこでもし市町村民税所得税制を、全部個人にまとめて、個人からとる場合には、すなわち法人に対する所得税割をやめて、めんどくさいけれども、配当金個人所得の中へ入れて、個人に対して所得税制を課けますと、この部分はどこの收入になるかというと、この配当をもらいます株主の住所地市町村收入となるのであります。ところが法人所得税割の場合はどうかというと、そうは行かないで、法人所在地地方団体收入となるのであります。そこで株主住所地法人所在地とが、同じ地方団体の内部にある場合は問題ないのでありますが、これはとかく別のところにあるということがあり得るのであります。その場合に、理論的に申しまして、これは不公平でありまして、所在地でまとめるのだつたら、当然住所地にまとむべきであります。ところがなぜ住所地にまとめないのか。これは理論的にへんだけれども、これは便利ということから来ておりまして、これを住所地に還元するのは非常に煩雑のために、納税課税の便利という点からいつて、こういう措置がとられておるのじやないかと思うのであります。そこで申したいことは、英米式をとるから私が今申しましたような理論上の欠陷が出て来るのであります。もし大陸式をとつて法人独立人格を認めたらどうか。そういう場合は法人として法人所在地税金を納めるのでありまして、今申しましたような理論的欠陷はなくなるのであります。去年からシヤウプ勧告に基く国税及び地方税の新しい制度が、わが国で実施されておりますが、約一年余りの実施状態を見ますと、大分いろいろ不便なことがわかつたのであります。たとえば法人市町村民税を課けることができないというのは困る。そこで日本では去年、すなわち昭和二十五年度は均等割だけを課けたのだけれども、あれはうそみたいなもので、そこで今度は所得割を課けるようになつた所得割法人に課けるということは、いかに便利だといつても、英米式法人課税を一度拒んだということであります。それのみならず、地方税でありませんが、国税等におきましても、今度の国会に出ております国税改正法案によりまして、法人積立金に対する二%の課税を廃止するとか、それから税法には直接出て来なかつたのだけれども、有価証券強制登録制度による株式譲渡所得課税を確保するという制度を実施しないこと等等、こういうことはシヤウプ勧告の本来の立場からいうと、当然行わるべきことでありまして、シヤウプ勧告が、きわめて精密だと言われておるのは、こういうようなことを実施しようとしたからであります。ところがそれが今度こわれて来たのであります。こわれて来て、今度はそういうことをやらないということになつておるのでありますが、こういうような事実はシヤウプ式の、あるいは現在日本で行われておるような意味法人課税というものが、現在の日本の国情に適せないということを、物語るのじやないかと思うのであります。私は法人課税の問題は、市町村民税に限らず、国税の場合におきましても再検討を要する問題ではないかと考えております。市町村民税の問題はそれだけにいたしまして、今度は固定資産税の問題であります。  固定資産税につきましての重要な改正は、償印資産の免税点を一万円から三万円に引上げたということ、それから使用者課税を廃止したこと、この二つであります。このうち償却資産免税点を三万円に引上げたということは、これは私は賛成でありまして、何が償却資産かという償却資産の範囲につきまして、とかく問題も多いし、それから金額の少いものにまで、税金を課けるというようなことは、どうかというような説があつて免税点引上げるという措置は、私は技術的にいつても、理論的にいつても正しいと思うのであります。ですから、使用者課税の廃止は多少問題があるのであります。本来固定資産税所有者課税でありまして、財産税の一種であります。従つて納税義務者は当然所有者であります。ところが現在の制度では、御承知のように地方団体日本国有鉄道等々の非課税団体所有者である場合には、その家なんかに住んでおるところの使用者に課けるということになつたのであります。いわば使用者課税ということは財産課税ではなくて、直接消費課税であります。すなわち財産税の中に消費税の要素を加えたのであります。その趣旨は、申すまでもなく所有者課税の場合にでも、所有者納税義務者だけれども、結局税金の金高だけ家賃などを引上げて、そうして一般借家人に対して転嫁する。だからして結局は使用者課税になるのだ。それを負担均衡上、こういう使用者課税が認められておつたのでありますが、今度はこれを廃止するということであります。そこで問題は、使用者課税といいましてもいろいろありまして、庶民住宅も使用者のあるものは、これを社会政策的に見て免税にするということは問題がないと思うのでありますが、一般官舎、ことに高級官舎の使用者の場合におきましても、この課税を廃止するということは、はたして当を得たものかどうか、私は多大の疑問があると思うのであります。固定資産税についてはそれだけであります。  それ以外の税金につきましては、たとえば国民健康保險税の創設であるとか、法人事業税について申告納税制度を採用するとか、あるいは罰則をどうするとか等々、いろいろなことがございますが、これは租税テクニツクに関する問題その他にわたりますので、私は触れないことにいたします。  私の公述はこれをもつて終りといたします。御清聽を感謝いたします。
  4. 大泉寛三

    大泉委員長代理 それでは、ただいまの公述人の御意見に対して質疑を、なるだけ簡單にひとつお願いいたします。
  5. 立花敏男

    ○立花委員 井藤さんにお伺いしますが、今度の地方税では、百八十億ばかりの増税になつております。国税の方と合わして私どもは、特に勤労階級に対しては減税になつていないと思うのです。井藤さんのお言葉によりますと減税になつているとおつしやつたのですが、これはいろいろな理由があるのでしようが、ひとつ減税になつているということをお教え願いたいと思います。
  6. 井藤半彌

    井藤公述人 それではお答えさせていただきます。詳しいことは先も申しました大蔵委員会公述の速記をごらん願いたいと思います。私が減税になつておると言いましたのは、次のような根拠によつておるのであります。それは個々の場合につきましては、減税もあり、増税もありますが、全体としてこういう計算をいたしました。それは昭和二十六年の——これは政府の予算書によつたのでありますが、国税は租税及び印紙收入が四千四百四十五億、それから專売益金、これはタバコの專売益金と、それからアルコール專売益金と合計したものでありますが、これが千百三十八億であります。以上合計いたしますと、国税が五千五百八十三億、それから地方税がさきに申しましたように、二千八十七億、両者を合計いたしますと、七千六百七十億くらいであります。これが二十六年。二十五年を同じ方法で予算書によつて計算いたしますと、七千四百八十九億になります。差引きいたしますと、百八十一億の増税になるのであります。そこでこれは国民のボケツトから出る金は、たしか百八十一億ふえるのでありますが、これがはたして負担軽減になるかならぬか、これはいろいろの角度から問題になるのでありますが、大ざつぱなやり方は、租税の国民所得に対する割合を一応の標準にするということは行われておる。もちろん租税の国民所得に対する割合というものだけによることはよくないのであります。ということは、国民の経済力というものは、国民所得もありますし、それから過去から蓄積されておる国民財産もありますし、それから外国の経済資源を国内で利用するということもございます。たとえば日本では戰争中は南方その他の資源を武力によつて徴用いたしました。現在ではこれはいろいろ解釈もありますが、アメリカから援助物資という形で援助を受けておる。すなわち国内の資源といたしまして、国民所得と国民財産がある。それから国外の資源として今の場合援助物資、こういうようなものを総合しないでは日本の国力というものはわからないのでありますが、国内の国民財産につきましては、政府その他で毎年調査がありません。御案内通りにこの調査は内閣統計局が、昭和五年末と昭和十年末の国民財産の調査をしたものがあります。それからもう一つ、新しいものといたしましては、一昨年の四月八日でありましたか、安本で戰後の日本の国民財産について、きわめて大ざつぱなものではございますが、推算したものがあるくらいでございまして、毎年出ておりません。  それから援助物資の方は、これは割合日本経済といたしまして、金額が少いので、そこで私はやむを得ず便宜国民所得というものをもつて、かりに国の経済力を代表するものとして、租税の国民所得に対する割合をとつて見ました。それで国民所得はどういう計数かというと、先月の二十四日に安本から国会に提出されたあの資料によつたのでありますが、それによつて昭和二十六年度の国税地方税を通じての租税の国民所得に対する割合計算いたしますと二〇%であります。二十五年度は幾らかというと二三%、それからさかのぼりまして二十四年度は幾らかというと二九%であります。それから二十三年度は幾らかというと二四%であります。それから二十二年度は幾らかというと一八%、ずつとさかのぼりまして、事変以前、昭和十年度は一三%となつております。ところが、これによりますと、昭和二十四年度二九%を最高といたしまして、毎年下つておるということが一応は言えるのでありますが、これは決して正しいものではない。国民所得という概念は必ずしも一致しておらぬし、それから租税という概念も一致しておらぬのでありまして、実は租税の国民所得に対する割合は当てになつて、当てにならない。その例証といたしまして、私は昭和十九年の日本の予算によりまして、租税の国民所得に対する割合をいろいろな立場計算しました。それは租税という概念を広い意味で解釈するか、狭い意味で解釈するか、国民所得という概念を広い意味で解釈するか、狭い意味で解釈するかによつて違うのでありまして、昭和十九年度の予算につきましても、最低一八%から最高三二%という答えが出たのでありますが、この通りの大きな誤差が出ますので、当てになつて、当てにならぬとも言えるのでありますが、ないよりもましだろうということも言えるのであります。ところが私はもう一つの数字を大蔵委員会で申しました。それは国民所得だけではありまりに大ざつぱだ、国民所得のうちで国民の最小生活に充てられる部分負担能力がないのだ。そこで国民の最小生活が幾らかという計算でありますが、これは実は相当綿密な計算を要します。しかし私は線密な計算の意図はございませんので、きわめて拙速主義をとつたのであります。それはどういうことかと申しますと、国民の所得のうちで食費に向ける部分は、それは負担能力がないのだ。こういう解釈で、食費に向ける部分は何かというと、これはエンゲル係数であります。全都市の一世帶の平均のエンゲル係数をとりました。これはCPSであります。このCPSを基礎としてとつて参ります。そして国民所得すなわち一人当ての国民所得高からエンゲル係数の部分を引いた残り、これを負担能力の最大限を示すものと認めまして、そして今申しました租税の負担能力の最大限に対する割合を見たのであります。そこでエンゲル係数を幾らと見たかというと、実はきのうも計算を仕直してみたのでありますが、二つ計算をしてみました。それで二十五年度のエンゲル係数は大体五五%、二十四年度は六〇%、二十三年度は六二%、二十二年度は六五%、昭和十年は三四%であります。昭和二十六は幾らかというと、それは推察を下すよりしようがないので、私は大蔵委員会におきまして一応五〇%と推察しました。しかしこれは甘過ぎると思いまして、二十五年度並に五五%という計算をきのうやつてみたのでございます。そこでそういうような計算をするとどうなるかというと、大分かわつて参りまして、昭和二十六年度はエンゲル係数を五〇%と甘く推察いたしますと四〇%、エンゲル係数を五五%として計算いたしますと五五%であります。そうして二十五年度は幾らかというと、五〇%、二十四年度は七二%、二十三年度は六四%、二十二年度は五一%、十年度は一九%、こういうふうになつておるのであります。このあとの方の数字の方が、前の数字よりはより真相に近いものだと言えるのじやないかと存じます。しかしこれまた当てになつて当てにならぬのでありまして、国民負担といつても、広い意味税金をとりましても、おそらくインフレーシヨンによる物価騰貴という形で、国民負担がふえるときもございますし、あるいは農民その他におきましては、供出というもの、これはマル公とやみ価格の差額は税金と同じでありまして、この供出とか、その他強制寄附とか、等々、そういうようなものを計算に入れますと国民負担がふえて参ります。それからその租税の国民負担に対する割合といつた場合に、国家の経費の使い方、国家の経費が国民の厚生のためにたくさん使われている場合は、国民負担が相当重くとも経費という形で国民に返つて参りますから、そういうことはいいのでありますが、はたして日本の場合はどうか、それはいろいろ問題があるだろうと思います。  それからまた考えなくちやならぬことは、同じ二%なら二〇%といつても、日本のような貧乏国とアメリカのような金持ちの国とは違う。また国内におきましても、私は金持ちか貧乏人か知りませんが、井藤のような貧乏人に対する二〇%という税金と、〇〇という大金持ちの二〇%の税金とは同じ二〇%でも意味が違う。これは貧乏国と金持ちの国とでもまた同じであります。勤労所得が多いか少いか、これは日本における計数は申し上げません。言えとおつしやるならば申しますが、現在昭和十年ごろに比べますと、勤労所得国民所得に占めておる比率は非常に多いのでありまして、資産所得国民所得に占めておる比率は現在非常に少い。こういうようなこと等に、いろいろなことを総合いたしまして判断すべきであります。だからしてちよつと軽々に数字は言えないというのも、あるいは学者的からもわからぬのでありますが、私は拙速主義をとりまして、何か数字で申し上げる方がいいのじやないかと思つて、かような計算をやつてみたのでございます。
  7. 立花敏男

    ○立花委員 そういうようなややこしいいろいろな計算の仕方がありまして、すぐ減税という結論が私どもには納得できないのですが、これは学者の立場からよく御研究願いたいと思います。  それから今度の地方税にははつきり現われておるのですが、税金の性質の上から、非常にひどい税金になつて来ておる。たとえば市町村民税で扶養控除を認めないという規定があるわけであります。今度は地方の特殊な事情によつては、財政上緊急の必要のある場合は総所得金額から、基礎控除だけを除いたものを課税対象にする、そういう規定がございまして、従来所得税法などでも、日本税法では一般的に認められております扶養控除を認めないということは、ほんとうに貧乏人の子だくさんといいますが、勤労者の家族の多い家庭にとりましては、質的に今までと違つた苛酷な税金になつて来ておるわけなんで、こういうようなものが減税だというふうには、性質の上から見ても言えないと思うのです。そういう重大な問題が、実は市町村民税にあるわけです。井藤さんが市町村民税でおあげになりました中には、課税対象に関する問題が抜けておるのですが、今回改正されました地方税の性質から見まして扶養家族の控除をやらないというような悪質振りについて、井藤さんからひとつ御説明願いたいと思うのです。
  8. 井藤半彌

    井藤公述人 今の点、いかにも御指摘の通りであります。それは今のように扶養控除をも引いて課税すれば、市町村民税は軽くなるということは事実であります。しかし御案内通り、租税というものは、たとえばこちらで減税をいたしますと、それ以外にほかで何か重い税金が出て来る、あるいは地方団体の経費を節約すべきだ。従来わが国地方税におきまして、立法上非常に進歩的な税金を絶えず実施したのでありますが、実際はどうかというと、財源がなくて弱つておるのです。そのためにとかくいかがわしい税金方々で出て来る。これは国税に比べまして、地方税におきましては、そういうような欠陷が多いということは申すまでもないことであります。それで今御指摘のことは、ただそれだけを抽象いたしますと、いかにも今おつしやいましたような説が成り立つのでありますけれども、それをもしやらないとなると、それ以外のもつと困つた形でいろいろ悪い税金が起る、そういう意味でありまして、しかもこれは今度の改正法におきましても、必ずそうせよというのではなくて、各地方団体の必要に応じてそういうものをも、課税標準とすることができるという、いわば自由になつておるのであります。そこで市町村の議会におきまして、それが不当だと思う場合には、そういうことをやめればいいのであります。ただ問題は、その場合に赤字が出て来る。その赤字をどうしてカバーするか、その場合に経費が節約できるかというと、経費が節約できない。そうすると、それ以外に何か財源を求めなければならない。そこでそれ以外に何かいい財源があるかというと、割合少い。それでやむを得ず、そういうところに税金を課けることになるのであります。今申しましたように、それだけを抽象いたしますと、ほかの事情にして変化がないという建前で行きますと、その部分だけは増税になつておる。私の計算は個々の問題について言つたのではなくて、国民負担全体を見ての減税であります。だから個々の問題について申しますと、法人負担がふえるとか、その他いろいろなことが出て来ますが、私は全般的なことを言つたのであります。ですから個々の点については御説の通りだろうと思います。
  9. 立花敏男

    ○立花委員 それでは最後にひとつまとめまして、根本的な点をお聞きしておきたいのですが、きようの産業経済でしたか、日米経済協力態勢の確立の問題が出ておりまして、非常に露骨な言葉が使われておるのですが、日本が全体としてアメリカの国防動員局の統轄下に入りまして、完全にアメリカの経済態勢の中に取入れられる、こういう言葉が使われておる。アメリカの兵器廠の日本支部になるという言葉が、はつきり使われておるのですか、こういう観点から、現在の日本の産業、経済、財政、政治が、完全にそういう方向に持つて参られると思うのですが、税制もその一つだ、今度の地方税改正もその一つだと私ども考えるのですが、井藤さんはそういうふうにお考えにならないかどうか、その点と、もう一つはそういうふうになつて参りまして、国家財政もそういうふうにアメリカの国防動員局の統轄下に入り、アメリカの兵器廠の日本支部になるのだという観点から参りますと、日本の財政は全部そういうふうに流れて参りまして、二十六年度の予算などは、どうもそういう傾向が非常に強いのですが、そういうところから、地方の財政が圧迫を受け、その結果として地方税の強化が行われる。特に今申しましたように扶養家族の控除もやらない。扶養家族族を国で養つてもらうほか仕方がないのですが、扶養家族の控除もやらないというところに典型的に現われてありますように、そういうような日米経済協力態勢——露骨に言いますと、アメリカの兵器廠の日本支部という形が、地方税の中にもずつと現われておるのではないかと考えておりますが、そういう点をどういうふうにお考えになつておりますか。
  10. 大泉寛三

    大泉委員長代理 ちよつと立花君、公述人の述べられた言葉の範囲内の程度で質疑をまとめてもらいたい。
  11. 立花敏男

    ○立花委員 だから地方税全体としてお考えになつた場合に、地方税を今度の改正に追いやつた——改正しなければならなかつたような原因は、どこにお認めになつておるかどうか。
  12. 井藤半彌

    井藤公述人 今の御発言でございますが、これはその発言をする人の政治的立場によつて、何とでも言えるのではないかと思います。それで私はその問題について、きようは公述すべき義務もないと思いますので、公述いたしませんけれども、今申しましたような物の見方をされるのも一つの見方でありまして、もう一つの見方としてそれ以外の見方もあるということも、皆さん案内通りであります。それで日本税制におきまして、アメリカの何とか等々がどういうふうに現われておるか、それは日本の現在の政治経済というものは、やはりアメリカと協力してやつておるということは事実であります。いわばアメリカの指導のもとにやつておる、これは事実でありますから、場合にいろいろそれに関連して影響も受けるということは事実だと思います。しかしながら今度の改正税法に露骨に現われたか現われないか、そういうことは私は認めません。だから、そういうものが背後にあるのじやないかと言われるものも一つの見方であり、ないというものも一つの見方である。今度の税法から言いますと、それは一番根本的な問題でありますが、あまりに根本的過ぎまして何とでも解釈できるのではないかと思います。
  13. 山手滿男

    ○山手委員 井藤さんにちよつとお聞きしたいと思うのでありますが、さつきお述べになりました今度の市町村民税で、大陸式でなしに英国式のやつで、少し法人にも所得割課税することになつたのでありますが、どうもこの市町村民税本質というようなものを私ども考えて参りますと、個人なんかとは比較にならないような活動を現に市町村でやつておりながら、市町村に対する配当があつたときには、それを通じて個人負担をして行くということで、わかるのはわかるのですが、しかし現在の日本としては、法人の活動範囲のあまりにも大きいことを思いますと、個人法人というものを、もつとバランスをとつてつた方がいいのではないか、こういう気がするのでありますが、そういう点についての御意見を伺いたいと思います。
  14. 井藤半彌

    井藤公述人 今のお言葉は、別の言葉で申しますと、こういうふうに解釈してよろしゆうございますか。現在日本では市町村民税——これは税法全体かもわかりませんが、法人税金が軽過ぎるだからもつと重くしたらどうか、そういうことでございますか。
  15. 山手滿男

    ○山手委員 そうです。ことに市町村民税本質からいつて特にそうだ。
  16. 井藤半彌

    井藤公述人 それは私も全然同感であります。現に今同感というのではなくて、去年の今ごろでございましたか、やはり大蔵委員会や参議院の地方行政委員会におきまして、地方税改正法律案に関する公述に来いと命ぜられたときに私言つたのであります。どうもシヤウプ勧告におきまして、英米式大陸式二つございますが、理論的にいいましても、それから日本の現状から申しましても、法人負担を非常に軽くするということは疑問であろうということを、私はシヤウプ勧告が出たときから言つておるのであります。結論から申しますと、私全然同感でありまして、法人負担は当然もつと重くしてもいいだろうと考えております。その場合に、市町村民税の形で重くする方がいいのか、あるいは国税法人税の形で重くする方がいいのか、これはいろいろ問題があろうと思いますが、結論的に申しまして、私はもつと重くする必要があるということは言えると思うのであります。そこで今の場合は、地方税の場合でありますが、市町村民税の形で重くするのも一つでしようし、もう一つ考えなければならぬことは、法人の場合に固定資産税がある。ことに固定資産をたくさん持つております法人におきましては、もちろん固定資産税が非常に重くなつておるのであります。法人はそういう違つた形で負担しておる事実もあります。ですが、私根本的考えといたしましては、もつと法人負担を重くせよという説には、全然賛成でございます。
  17. 床次徳二

    ○床次委員 先ほど井藤さんの御説明で、源泉課税につきましては、理論的には前年度のものを今年度とるというのはおかしいけれども、事実上やむを得ないというような御結論でありました。できるならば、やはり前年度を標準として源泉課税するという方法の方が便利かと思うのでありますが、これは何か手続上できるだけ簡便な方法をお考えになつて、何か現在の改正法案以外の方法でもつて便利な方法をお考えになつておられるかどうか、その点お聞きしたいと思います。大体納税組合のように、一時に納めるかわりに、分納しておいて、その負担を軽くするという建前でもつて源泉課税をやつて参りますならば、あるいはほかに方法があるかもしれぬと思うのでありますが、何か御研究がありますれば、お教えを願いたい。
  18. 井藤半彌

    井藤公述人 先ほど申しましたことを繰返すことになるのでありますが、理論的によくないと申します場合に、市町村民税勤労者に課かるものだけを抽象して申しますと、国税のように現年度の毎月もらう給料から引くというのが一番理論的ですが、それは日本市町村民税制度全体という点から見ると、また理論的でないとも言える部分があるのではないか。それは御案内通り市町村民税というものは、給與所得以外にも課かります。その場合それ以外のものは原則として、前年度の所得基準として課けております。だからそれについても前年度の所得基準にして課けて、それから勤労所得についても前年度の所得基準にして課ける。そうしないとこの二つの間に不均衡ができるのではないかと思います。しかし先ほど申しましたのですが、これは確かに国税所得税のように、やはり現年度によるのが一番いいのでありますが、実はこれは今度初めて問題になつたのではなくて、去年シヤウプ勧告が出た直後から問題になつておりまして、御案内通り地方財政委員会委員の木村清司さんなどが主唱されまして、どうしても今度のような方法をとれというようなことを、去年から言つております。それらにつきまして、地方自治庁や地方財政委員会、その他地方租税研究協会等で、いろいろ検討をやつたのでありますが、りくつにはかなつておるけれども、どうも煩雑なのでありまして、そうして、御案内通りこういうような事務をとつたからというので、国家や地方団体から交付金を出すということは認められないのです。そうすると、とりつぱなしですね。だからしてやはり現在考えられている方法が、少くとも現在の情勢では一番いいものではないかと私ども考えております。しかしやつてみますと、またいろいろな問題が起るのではないかと思いますが、私はこれ以外のものは考えつかないのであります。
  19. 門司亮

    ○門司委員 きわめて簡單に二点だけ先生の教えを受けておきたいと思いますが、先に聞いておきたいと思いますることは、先生の御意見の中で、これは私の聞き違いかとも思いますが、法人課税に対しては、所在地個人の場合の住所との関係で、法人に住所で課けるというようなことについては、多少の問題があるのではないかというような——いわゆる住所と言いますか、所在地でありますが——こういう御議論であつたように私は拜聽したのであります。もしそうだといたしますると、この市町村民税の税の本質が、私どもといたしては、やはりこれは応益税の形を非常に持つておると考える。従つて応益税という税金の性質を持つておるといたしますならば、やはり地方の公共団体の恩惠あるいは保護をかなり受けておると思いまするので、私は法人に課ける住民税も当然法人所在地で課ける、いわゆる所在地事業者に課けるということが正しい議論ではないかと考えるのでありますが、この点に対しまして先生の御意見をひとつお伺いしておきたいと思います。それからもう一つは、地方税全体の問題でありますが、日本の地方財政が非常に困つておりまするのは、地方税国税との間に、実は問題があるのではないかとわれわれは考えておるのでございます。それは地方税は主として固定財源がこれに充てられておると考えられる。それから国税は主として消費財源がこれに充てられているのではないかと私は考える。というのは国税の方は主として所得税を中心といたしておりますが、その他の問題といたしましては專売益金であるとか、あるいは酒の税金であるとかいうようなものが、かなり大きな部分を占めておるのではないかと私は考える。これらの税金は国民消費の関係から申し上げますると、大体全国的に均等された、一つの均霑されたものであつて割合にとりいい税金でもあり、また地方の住民全体がほとんど均霑してこれを納めておるというような形が出て来ていると私は思う。こういう税金国税がこれをとつてつて、そうして地方税は、御承知のように固定資産税にいたしましても、田畑、建物というようなものは、明らかに固定したものであつて、これはいかんともしがたい財源である。これはほとんど確定財源といつてもさしつかえない。住民税にいたしましても、所得税がはつきりきまつて参ります以上は、それに賦課して参る税金でありますので、これも一応そういう形を示しておりまして、これを算定すれば金額がここに現われて来てどうにもならない、こういうふうな財源をたくさん地方に與えております関係から、地方財政というものは、ほとんど最初から何らの彈力性を持たない財源が與えられておる。ここに地方財政のやりくりの面なり、あるいは実際的に徴收して財源すべてを勘案いたしました場合に、非常にやりにくい点があるのじやないか。そこで地方財政をどうするかということの、こういう改正をいたします根本の問題は、地方財政だけに現われたものを、どんなに税率をいじくり、あるいは方法をいじくつて参りましても、それでは地方財政というものが本質的には私は片づかないと思う。地方財政を本質的に片づけて行こうとすれば、国地方を通ずる税の総体的の大改革を、一応行う必要があるのじやないか思うが、この点に対する先生の御高見を拜聽することができますれば、幸いだと考えております。
  20. 井藤半彌

    井藤公述人 初めの方の問題であります。大体私の申しましたことを、また繰返えすことになりますが、問題を二つにわけまして、それはシヤウプ式の、どちらかといいますと英米式法人課税観を前提とすればどうだという場合と、それから井藤が別の立場で申します場合と、二つございます。そこで私が矛盾だと申しましたのは、現在日本で行われておるシヤウプ式、すなわち英米式の租税体系、法人課税体系という立場からいうと矛盾だ、なぜ矛盾になるかということは申し上げなくてもよろしうございますね。しかしこれがいいか悪いか、井藤はどう思うかというと、これは今のお説の通り私はよくないと思う。日本では今申したように国税におきましてもくずれて来ておるのです。くずれて来ておるというのは好んでくずすのではなくて、いいか悪いかは別として、日本はくずさざるを得ないような国柄です。だから私は法人課税につきましては、やはり大陸式税制の方が、日本の現情から言つてもいいじやないかと思うのでありまして、これは今の御説に全然同感であります。今の二つの点を御区別していただきたいと思うのであります。  あとの問題ははなはだ大問題でございまして、一言で答えることはできないのでございますが、国税に比べまして、地方税に彈力性がないとおつしやること、これは私ごもつともだと思います。そのために申すまでもないことを申しまして恐縮でございますが、地方財政平衡交付金がある。それで日本は地方自治などといいましても、新憲法ができたからといつても急に地方自治なんてでき上るのではなくて、それの経済的基礎づけはどうか、やはりでき上つておらないではないか、だから地方自治もいいのですが、現状からいうと経済的に見まして、地方自治能力のない貧困町村が非常にたくさんあります。そのために町村の合併とかいろいろなことをやつておりますが、そういう際におきまして、やはり地方收入のおもな部分が、国税を財源といたします地方財政平衡交付金という形で、調整されるということは、やはり日本の民主化という、ただそれだけを抽象してみますと、確かに中央集権的でございますが、しからばその前提をつくるという立場からいいますと、やむを得ないじやないかと考えるのであります。そこでその次の国税及び地方税を通ずる根本的の再検討が、必要ではないかという問題でありますが、これも結局私は程度の問題だと思います。というのは去年出ましたシヤウプ勧告というものは、根本的の大改革でございました。これに対しては賛成論もあり、反対論もあり、私自身も一部賛成、一部反対などということを言つております。やはり日本の国情に合わぬじやないかということを申し上げたのでありますが、そこでとにかく現在のような経済の動きが非常にはなはだしいときは、租税経済がよつて立ちます経済的地盤がかわりつつあるのでございますので、去年根本的大改革をやつたから、ことしやる必要はないとは言えないのじやないかと思います。そういう意味におきましてもう一度国税地方税を通ずる税制について、再検討をするということは、やはり必要ではないかと考えるのであります。
  21. 大泉寛三

    大泉委員長代理 次に農機具小売商の渡辺卯佐三公述人にお願いいたします。
  22. 渡邊夘佐三

    ○渡邊公述人 ただいま委員長より御紹介にあずかりました渡辺であります。私はここに書いてあります通り、農機具の小売商でありまして、二十万、三十万以下のいわゆる小額所得者の一人であります。特に私の立場から申しまして、所得税の場合は、われわれの占める負担のパーセントは大して問題ではありませんが、事地方税になりますと、われわれのような少額所得者の占める負担のパーセントというものは、非常に重いものがありますのは、いろいろな集計によつて明らかなところであります。まず私は理論的なことはさておきまして、実際的の面についてのいろいろな矛盾あるい実際の状況を申し上げて、議論が正しくても実際の運営がまずかつたならば、何にもならぬということを今日主張したいと思います。特に申し上げたいことは、字の通り地方税法でありまして、地方によつておのおの特色、すなわち工業県もありましようし、あるいは水産県もありましようし、また私の住んでおる福島県のように農業県もあります、その特色々々によつて非常な差異があります。まず今度の地方税法改正にあたつては、その各県各地方の特色に順応した改正をやつてもらえれば、これに越したことはないのでありますが、そうした改正の跡はほとんど見られず、ただ全国的にこうだというようにやつたのでは、実際に運用するにあたつて、はなはだ矛盾があるのであります。実際の例を申し上げますと、事業税であります今までの税法、あるいは改正法案によりましても事業税は主として商工業者に課せられまして、農民には全然課せられておりません。これが工業県のような場合はそれでいいかもしれませんが、私の県を例にあげますと、福島県のように農業県の場合は、商工業者は県税を事業税の形で分に応じて納税する、しかし一方農民の立場から考えると、農民は一銭も納めていない、他の税目によつて幾らか納めておるかもしれませんが、事業税については全然納めていない。第一この前事業税を農民に課してそれを撤廃した環境と事情を考えるならば、昭和二十六年において事業税を農民に課しても、私はさしつかえないと思います。しかし條件といたしまして、商工業者と同じように一割二分を課すということは、はなはだ苛酷であります。それは專門の委員やあるいはその方面の堪能な方に詳しい資料を集計していただいて、二ないし三%くらいの事業税を農民に課するということは、一向さしつかえないと思います。この前事業税を廃止した際においては、米のマル公はやみ値から見て非常に差異がありました。ところが昨年の出来秋あるいは現在においては、マル公とやみの値はほとんど差異がありません。東京に持つて来て差異があつても実際農民の手に入るところは、マル公とほとんどかわらないどころか、マル公を割つております。それからわれわれ小企業者、主として家庭労働を主とする小企業者が、少くとも利益という名目であげるためには、自分の家族労働はほとんど犠牲にして、ゼロとして考えて初めていくばくかの利益を計算することができるのであります。このことは農民に対しても同様なことが言えると思います。そうしたあらゆる環境を考えますときに、單に商工業者にのみ事業税を課して農民に対しては全然事業税を課さないということは、地方税本質からいつても、はなはだ矛盾があると思います。現に一部の県においては農民と県当局との間に溝ができておるということは、実際に現われておるところであります。ところがそうした環境を考えると、必ずしも農民に事業税を課することは、苛酷でないということがわかつておりながら、この改正案によると、全然農民に事業税を課し得ないという理由は、今さら申し上げるまでもなく、この解決は政治の力にまつよりいたし方がないと思います。  それから話はかわりますが、先ほど井藤先生が申されましたように、安本あるいはその他統計資料を作成しておるところで発表しておる資料、その資料は必ずしも正確であつて、正確でないということを申されましたが、この言葉は非常に意味深長であると思います。正確であつて、正確でない資料に基いて、末端の税務官庁はわれわれ小企業者に対して、そのパーセントをそつくり適用しておるのであります。すなわちそこにわれわれ小企業者が、税金に対して悲鳴を上げる原因があるのであります。現に私の近所でわれわれと同年輩のもので若干人集まりまして、そうした統計を折に触れ、機に触れて検討しておりますが、はたしてこの集計はどうした事業者を対象とし、どうした方法によつて算出したのか、とんと見当がつかないというような場合があるのであります。そうした資料をもとにして、われわれ小企業者に対して課税しておるのであります。それはこまかい徴税上の技術的問題でありますが、さらに技術的問題に関連いたしまして徴收方法でありますが、改正案によりましても、全国一律に何税は何月々々というふうになつておりますが、これは少くともその地方での実情に即した徴税方法、すなわち福島県であつたならば農業県であり、かつ養蚕県であります。そうした條件を考えますと、春繭は大体繭の形になりまして市場に出されるのが六月末から七月、田植えも大体同時期ごろであります。すなわちそのころになると、春繭を売つて農村には相当の現金收入があるわけであります。さらに続いて大きな收入は秋の供出、そうした特殊の時期をねらつて、そうして徴税するという方法も、一つ方法ではないかと思います。これを全国一様に何税は何月に徴收しろというようなことになりますと、徴收の時期が参つても、実際農家には金がほとんどない、金がないから納められない、納められなければ、期日が来れば自動的に加算税が課かるというような状態になるのでありまして、そうした農村の実態その地方々々における実態に即応した徴收方法を、府県知事なりあるいは市町村長の責任において実施させる。ただ地方税法の上においては、納期は何税については何回にわけてやるというふうにやつたならば、一層効果があるのではないかと思うのであります。  それからこれも同じく徴收の問題でありますが、今度は住民税については、給與所得者に対しては源泉徴收を認めておりますが、給與所得者に限らず、他の所得者すなわち小企業者あるいは農民に対しても毎月分納制度、これを法律をもつて正規に認めていただければ、はなはだけつこうなのであります。こう言いますと、よく税務官庁は、はなはだ煩雑であつて、現在の人員でもつてはとうていできやしないと言うのは、これはきまり文句であります。しかし地方の農民あるいは大体自分など同年輩の者の間においては、少くとも昔の隣組、あれくらいの單位として納税組合を結成する、そうして自治的にやつて行こうというような機運が高まつて来ております。そうした機運があるにもかかわらず、法規の上で縛られて実際にはできないというような矛盾も感じておるのであります。現に昨年は予定申告をする際には納税組合、納税組合ということを役場あるいは協同組合、銀行、そうしたものが音頭をとつてやかましく言いましたが、一旦結成してしまうと、はたして役場当局すなわち徴税に当る第一線の者がどれだけ活動したか、ほとんど活動していないと言つても必ず過言ではないのであります。この分納制度給與所得者のみに限らず、他の一般事業所得者に対しても、法規をもつて認めることを希望してやみません。  それから市町村民税のうち、法人に対して市町村民税所得割を課けるということは大賛成であり、現に市町村の実際の状況として、ある一つの工場あるいは会社に対しては、その市町村がそれ相当の負担を負つております。それに対して昨年度においては所得割は全然課さないで、均等割だけであつたということは、さつきも御質問になりましたが、地方税本質からいつて、はなはだおもしろくない点でありました。法人所得割を課するということは賛成であります。要するに法規がいくらりつぱであつても、この法規を運用する末端の税務官吏にその適当な人を得ないというに至つては、とうていりつぱな法律もその効力を現わせないことは、幾多の場合に示されておる通りであります。  この際特に申し上げたいことは、今まで少額所得者といえば税金はとられるものだ、とられつぱなしであるというような観念を持つていたのでありますが、ここ二、三年の一般の少額所得者あるいは農民の進歩といいますか、税金はとられるものでなく、税金は当然組めるものである。納めて初めてその恩惠を受けるのであるというように、頭が着々切りかえられつつあるということを、私はこの際特に強調したいのであります。でありますから立法するにあたりましては、特に一般大衆が税というものに対して非常に——非常にとまでは言わなくても、着々進歩的な考えを持つて来ておるということを念頭に置いて、今後税法改正あるいは制定する場合にはやつていただきたいのであります。
  23. 大泉寛三

    大泉委員長代理 渡辺公述人に対す質疑は一応あとまわしにいたしまして、次に議事の進行上泰平公述人にお願いいたします。泰平公述人日本自治団体労働組合総連合会副委員長であります。泰平国男公述人にお願いいたします。
  24. 泰平国男

    ○泰平公述人 ただいま御紹介いただきました自治労連の泰平であります。全国の県庁並びに市町村の職員の労働組合をもつて組織しました全国的な労働組合としましての日本自治団体労働組合総連合というのがありますが、この総連合を代表いたしまして、今回上程を見ました地方税法一部改正法律案について、二、三の意見を申し上げたいと思います。  御承知のように私どもの組合並びに職員は、現在約二千数百万の人々が、地方税を納めておるといわれておりますが、こういうたくさんの納税者のうちの一人であります。と同時に、私どもはまた非常に徴税の困難な地方税の徴收の任に当つておる、こういうふうな二重的な性格を持つておるものであります。従いまして今後二千億以上の地方税をとらなくてはならないというような情勢を前にいたしまして、今回のような地方税法の内容が、どのように改正されるかということについては、重大な関心を持つておるのであります。  ちようど昨年の八月、現行の地方税法改正案が出ましたとき、私どもはこの改正案が約四百億に上る地方税の増徴である、従いましてかような大衆收奪は今後の徴税を非常に困難にするであろう。従いましていうところの地方自治の確立、あるいは地方財政の自主化ということは、とうてい庶幾することはむずかしいというようなことを申し上げたのであります。その後約七箇月間の経過を見ますと、現在年度末を迎えまして、地方自治団体は昭和二十三年度以来の最大の財政危機に直面しておるのであります。申すまでもありませんが、財政危機は同時に地方行政の危機である、かように考えられるのであります。その第一点は、今、年度末をあと二旬にいたしております。しかし地方税の徴收率はきわめて悪いのであります。第二番目は新年度の予算編成を前にいたしまして、政府は昨年の知事会議を初め、各民主団体の非常に熱烈な地方交付金要求を無視しまして、あるいは地方起債の許可も十分ではなく、さらに災害復旧費につきましても、補助制にかえようとしておるのでありますが、こういうような状態からいたしまして、新年度の地方予算は、今各地で骨格予算あるいは暫定予算というような形において行われておりますが、この中で地方財政の非常に窮迫した事情からしまして、地方の單独の事業が非常に困難になつております。従いまして地方教員あるいはわれわれ地方職員の給料を削減し、あるいは定員を減らそう、こういうような予算が組まれております。そのために各地におきまして、教職員並びにわれわれ地方職員の反対運動が、北は北海道から南は九州に至るまで盛り上つておるのであります。これが今日の地方、財政並びに地方行政の危機の最も集中的な表現であると、かように考えるのであります。  こういう時期に、今ここに政府の地方税改正案が上程されたのでありますが、これにつきまして、第一に疑問に思いますのは、現在の地方財政は、先ほどから申し上げますように、決して独立し、自主化されておらないのであります。これは中央財政と一体不可分の関係にありまして、まつたく中央財政に依存いたしております。こういう情勢の中で、まず平衡交付金の増額、あるいは起債の増加あるいは災害復旧費の全額国庫負担というようなことが、まずなされなければならないのであります。しかるに政府はこういう出すべきものについては何らの手を打たずに、しかもとるべき地方税法改正案をここに出しておるという点であります。申し上げるまでもありませんが、地方財政平衡交付金につきましては、シヤウプ勧告においてさえその増額を認めております。また地方財政委員会においても、現在の政府案では少い、少くとももう少し増額すべきであるという意見を出しておるのであります。しかるに政府はわずかに十五億円の増加を、昨年に比べて認めておるにすぎないのであります。地方の起債についても同様であります。また災害復旧につきましては、三年前のいわゆるカザリン台風あるいはアイオン台風の対策が、まだ今日半分も終つていないというような状態にあります。しかも政府はさきに勧告された災害復旧費の全額国庫負担制度を一年きりで廃止して、二十六年度からは新たに補助金制度にかえようといたしております。こういう政策を通じまして、私どもは政府が出すべきもの出さずして、そうして地方財政を非常に窮迫な状態に追い込んである、従つてここから生まれますところの結論は、どうしても今後地方税をふやして行かなくてはならないという結論しか出ないのであります。こういう状態におきまして、部分的な改正がいくらなされようとも、それはやはり地方住民に対する徴税の苛酷さを加えて行くより道はないのであります。  次に今回の改正案を見ますと、この部分的な改正におきましても、私どもは二つのことをはつきりと見ることができるのであります。それはやはり地方の住民、つまり大衆の收奪をさらに強化しているということであります。と同時に、一方におきましては、資本家擁護の政策が十分に現われている、こういう二点をはつきりと見ることができるのであります。  まず第一の資本家擁護の政策であります。この点について二つの点から申し上げてみたいと思います。その一つは、附加価値税課税標準算定につきまして、従来控除法が認められておりましたが、今後加算法選択的に採用することができるようにかわりました。附加価値税につきましては、これはいかに業者に税金を課しましても、この税金分を大衆に転嫁するということが容易にできるという種類の税金であると思います。従いまして業者は物価のつり上げその他によつて、これを大衆に転嫁し得るのであります。その結果は、犠牲を負うものは結局われわれ労働者であり、農民であり、中小企業家である、こういうことになると思うのであります。今われわれの職員の中には、ベース・アツプあるいは賃上げが行われておりますが、しかしこういうような若干のベースの切上げがあつたとしましても、現在進んでおりますところの物価の騰貴あるいは首切り、賃金の切下げという方針がとられるならば、こういう成果は一朝にしてなくてしまうのであります。また加算法によりますと、いわゆる所得に労賃分その他の收益が加算されるのでありますが、現在所得税の徴收の実情は、まだ昨年度の分が全部済んでいないだけでなく、その前の年の分もまだ済んでいなというような実情であります。従いまして今日のこの物価騰貴の時代におきましては、実質上におきますところの納税の繰下げが行われたのであります。こういう点におきましても資本の利潤の確保が保障されるのであります。また加算法が許される企業は、青色申告を認められた法人に限られております。こういう企業は実際において大企業であります。大企業の收益の実態、経理の状態というものは、いかにりつぱな帳面がありましても、その内容は必ずしも捕捉に容易ではないのであります。ここにやはり利潤確保の余地が十分に残されるのであります。特に最近は国家資本の支出によりまして、特需景気が非常に広がつておりますが、こういう面におきますところの利潤は、きわめて捕捉に困難であります。こういうこととも考え合せまして、資本家擁護の政策に十分にうかがわれるのであります。第二は、附加価値税の実施される以前に取得した固定資産についての償却費を、除外するという方針であります。これはやはり青色申告を認められた法人または個人に限られておりますが、これも来年附加価値税が実施されるまでに取得された固定資産の減価償却だけを、今後の附加価値の対象から除外するというのでありまして、除外された分だけの利潤が確保されるわけであります。以上二点を見ましても、今度の改正案が資本家の利潤擁護という点において、非常に十分であるということを考えるのであります。  次にその反面でありますところの労働者の收奪が新たに強化されているが、この点についても二つの点から申し上げたいと思います。まず第一は労働者に対してであります。いれは住民税の源泉徴收であります。今日住民税が昨年から比べまして、一躍四倍から十倍以上に上つております。そのためにこの住民税に対しましては、地方住民の間に大きな反響が起きております。特にわれわれ組織労働者の間におきましては、いまだかつてないほどさまざまの形がありますが、この税金に対しまして関心と反対とが起きておるのであります。あるいは資本家から貸付をしてもらい、あるいは分割拂いをしてもらう、そういう形態から、あるいははつきり地方税反対の強い要求まで含めまして、いろいろの形はありますが、非常に広汎な労働者が、この地方税の問題について関心を示したのであります。しかし今度の源泉徴收方法をとりますことによつて、この労働者は過重な税金に苦しみながらも、税金闘争の陣列から完全に除外されてしまうのであります。そして本人の納得があるとなしにかかわらず、従来の勤労所得税と同じように、確実に徴税をされるのであります。これは給與所得者に対するきわめて露骨な收奪である、こういうふうに考えるのであります。とるべきものはびしびしとる、こういう考え方が今度の改正案のうちに、十分に看取されるのであります。  次は住民税の所得割課税標準についてであります。この住民税の所得割課税標準につきましては、三つの方式が定められておつたのであります。しかし先ほどから申し上げましたように、本年は地方税の二百億近い増徴が考えられておるのであります。そういう情熱の中で、どうしても地方住民から取上げなくちやならないという状況に追い込まれますので、従来とられました第一の方法でなくて、第二の方式が今度とられる可能性が十分にあるのであります。しかもその第二の方式につきまして、今までは課税所得金額を採用する場合においては、基礎控除、扶養控除をともに控除しておつたのであります。ところが今後は、市町村に事情がある場合には、基礎控除だけを引いたものを課税所得金額としてもよいということにかわつて来たのであります。基礎控除は今度の所得税法で三万円に引上げられました。同時に扶養家族の控除は一人一万五千円に上つたのであります。しかしこの方式を採用するならば、基礎控除の三万円だけしか所得から引かれなくて、家族一人についての一万五千円の控除は認められないということになるのであります。しかもこのことが今日の地方財政の窮乏から考えまして、今後非常に広くとられるという可能性を十分に見ることができるのであります。  次に農民に対しての收奪の強化であります。これは御承知のように、国民健康保險税というものの創設のうちに現われておると思います。現在全国で一万数百の町村がありますが、そのうちの約半分近くが現在国民健康保險制度をとつておるそうであります。しかし保險料の納入状態は必ずしも良好ではない。現に赤字三十億が数えられておると伝えられております。しかし保險料の納入状態の悪いことは、これは結局今日の農業恐慌に苦しむところの農民の生活状態の困窮から来るのであります。しかもこういう困窮の中から非常にたくさんの病人が出ておることも事実であります。従つてこういう農民、こういう地方住民こそ、国家の手によつて療養給付をなすべきことが当然であります。しかるに保險料の納付が悪いということを理由に、さらにこれを強制的に取上げるという考え方から、ここに従来の保險料制度にかわる保險税の制度を設けましたことは、これは地方の実情を無視するだけでなく農民に対するさらに苛酷な收奪になつて来ると考えるのであります。しかもこういうようにして無理じいにとつたところの保險税をもちまして、今後療養費の約五割ないし七割を支給し、そうして恩惠的な政策をとつて、地方住民を結びつけて行こうというような点が、十分に看取されるのであります。以上大体資本の擁護並びに労働者の收奪の二つの点について申し上げたのであります。その他の点につきましては、たとえば老年者の十万円以下の所得者の免税とか、あるいは法人への住民税の所得割課税というものにつきましては、それぞれ改善すべき余地が十分にあると考えるのであります。また使用者に対する固定資産税の免除があります。この点につきましては、従来所有者課税の大きな例外となつてつたのでありますが、今回使用者に対する固定資産税の免除が出ております。固定資産税は原則から申しまして、やはり所有者自身に課税するのが最も適当であるし、また現に東京における公営住宅の状態を見ましても、これは決して他の一般の家賃に比べてそれほど安くはないのであります。従いまして、所有者課税の例外をなしました現在の使用者に対する課税は、他の家主に対する均衡を欠くことになつておりますが、しかしこの点については、公営庶民住宅の現在の例から見ましても、理由は非常に薄弱であると考えるのであります。従いまして、使用者に対する課税の免除については適当であると考えております。しかし固定資産税の免除が同時に使用料の値上りになるようなことがあつては、せつかくの固定資産税の免除は実をなくするのでありますから、今後使用料の値上げにならないように努力しなければならないと考えるものであります。  以上申し述べました通り、今次の改正は二、三の点においては恩惠的な改善を含んでおるかに見えますが、全体といたしましては、われわれ労働者、農民、中小企業家の徹底的な犠牲と收奪の上に立つておりまして、それは大資本家の擁護に続いておると考えるのであります。今地方の住民は非常に苛酷な地方税に苦しんでおります。そして平和的な事業に使われない税金、自主的に使われない税金に反対と疑惑の念を持つております。これは私どもが職場をまわり、地方住民と話して常に感ずるところであります。またこの徴税に当ります職員は、東京都におきましても、昨年の八月と現在とを比べますと、徴税職員が約倍加されております。たとえば昨年の八月には二千三百三十一人でありました東京都の税務職員は、本年は約四千人を越えております。こういうふうに徴税機構は飛躍的に増大を見ております。しかし現在の徴税の実情は、これらの人員をもつてしても、なお足りないという状態であります。従いまして、繁忙期には全職員、全庁員をあげてこれが徴税に当るという状態まで出ております。昨年の四百億の増徴に続きまし、本年また二百億の増徴がなされようとしております。こういう情勢を前にしまして、私ども地方公共団体におきましては、先ごろ地方公務員法が通過しまして、私どもは政治的な自由がなくなり、労働組合をつくる権利さえなくなつております。また現在地方行政事務の再配分の形で勧告がなされておりますが、この勧告が行われますならば、現在国、県が持つておりましたたくさんの仕事が、第一次行政機関である市町村の手に移されます。しかしこの行政事務をやつて行くに必要な財源は移つて行かないのであります。現在においてもかように地方行政は危機に直面しております。今後これらの業務が移管された場合における地方財政の窮乏は、想像にあまりがあるのであります。しかもこれらの行政再配分の場合におきましても、重要な権力はすべて国または府県の手ににぎられておるわけであります。今私ども職員組合の中では、この困難な徴税に当つておる経險からいたしまして、できるだけ簡單な税法がほしい、そしてだれにもわかりやすい税制で、だれでも納められるような税金にしてもらいたいということを強く要望しております。しかし今回出ました改正案を見ますと、この考えから非常に遠ざかつておりますが、私どもは今後單一の高度累進課税という方法が、最も適当ではないかということを考えておるのであります。以上つけ加えまして私の公述を終りたいと思います。
  25. 門司亮

    ○門司委員 ちよつと議事進行で発言を許してもらいたい。公述人の方から非常に熱心な有益なお話を承るのでありますが、今日当局者がほとんど出ておりません。われわれのみの審議も必要かと思います。しかし税全体に対する各種の権威者の意見でありますため、われわれのこれからの質問いたしまするもの、さらに修正をしようとするもの等についての、当局の多少の心がまえというものが私はぜひ必要だと思う。ところが今日は大臣も来ておらなければ、事務官すら来ておらない。こういうことであつては、せつかくおいでを願いました公述人の貴重な意見というものが、半分しか効果がないと考えられますので、午後の会議には、大臣並びに関係しておりまする係官も、ぜひ御出席されるよう委員長にお願いしておきたいと思います。
  26. 大泉寛三

    大泉委員長代理 承つておきます。  それでは東武鉄道株式会社專務取締役工藤義男公述人に願います。
  27. 工藤義男

    ○工藤公述人 私私鉄経営者協会の工藤義男でございます。今回の地方税の一部を改正する法律案につきましては、業者一同特別の意見もございません。この通りつていただけばけつこうであるとわれわれ考えておるのでありますが、ただこの席を利用いたしまして、私鉄業者が一般に抱いておりますこの税制の根本について、皆さんにお聞きを願うように意見を述べろという命令がありましたので、簡單に申し上げますからして、五、六分間お聞取りを願いたいと思うのでございます。  私鉄の会社は現在百五十数社ありますが、その半数に近い会社が、今日赤字であり、もしくは無配当の状態にあるのでございます。かようにこの私鉄の経営が困難に陷つております原因はどこにあるかということを尋ねてみますならば、それは地方税制の上において、私鉄に対して国会のお取扱いが公平を欠く点があるのではないか、こういうことを業者は一般に信じておりますので、その点をごく簡單に大要を申し述べさせていただきたいと思うのでございます。  御承知通り私鉄はその機能において国鉄と何らかわるところはない。一般に国家公共の機関であるとして世間から認められておりまして、従つて政府の方といたしましても、鉄道の運賃が一般国民生活に重大な影響を持ちます結果として、運賃が押えられておるのであります。鉄道で使う諸物価は大体戰前に比べて三百倍程度、また私鉄の従業員の人件費は大体戰前に比べて、二百倍以上に上つているにかかわらず、鉄道運賃の値上りは大体九十倍程度、百倍にならないというような状態に今日おるわけでございます。ことに定期運賃などになりますと、諸外国でもたいてい三割とか三割五分の割引であるそうでありますが、日本におきましては八割から九割、ひどいところは九割二分の割引というようなことで、定期の乘客というものはまつたく採算を割つて輸送しておる。貨物の方におきましても、各産業の基礎物資は低物価政策と申しますか、インフレ抑止の政策と申しますか、とにかく貨物運賃が上ると物価が上る。であるからして産業の基礎となるものは非常に安いところの運賃がきめられておる。また運賃負担能力の高いものは高い運賃を許すからして、そこでカバーしたらよかろうというお話もありますけれども、運賃の高いものは鉄道には来ない、これはトラツクか何かに行つてしまう。引合わない運賃のごく安いものが私鉄に残されておる。こういうものを輸送するというような結果から、鉄道会社收入というものが、非常にきゆうくつな押えられた状態にある。けれども鉄道は公益事業である。公共事業であるがゆえにそれは忍ばなければならぬということで、われわれは今日まで忍んで参つたのでありますが、しかし税の上で見ますと、そういう考えがまつたくあべこべになつておりまして、鉄道事業は営利事業である。鉄道会社は一個の営利会社である。税制の上において私鉄と他の一般産業との間に、区別を設けるべき何らの理由はない。一視同仁であるということで、税制の上におきましては、まつたく私企業並に他の一般産業と同率の税を課せられるばかりでなく、今まで現在の事業税などを見ましても、一般産業は利益に対して課けられるにかかわらず、鉄道は利益が非常に少いから、その利益を基礎にして税を課けたのでは事業税はあまりとられないということで、鉄道におきましては運輸收入に税を課けるという方法をとつておられるのでありまして、国家としては一方においては私鉄は公共事業であるということで嚴重なる監督をし、押えておるにかかわらず、一方税制の上においては純然たる私企業として高率の税額を課けられておるということが現状でございまして、最近になりまして鉄道の運賃も少し上げてやらなければいけないだろうかというようなお話も承るのでありますが、しかし今日におきましては鉄道運賃を上げることによつて、鉄道会社を救済するということはできない状態になつているのでございます。それは私鉄は他に対抗機関がありまして、最も大きなものは国鉄であります。そのほかバスがございます。バスは自動車一両につき一年間一万円というような車両税がありまして、ごく低率なる税金を納めている。ところが鉄道の方では線路を自分でつくる、そうしてこれに固定資産税をとられる、さらにその線路の上に運転します車両につきましては、自動車などと比較にならない高率なる固定資産税を課せられねばならないという状態になつております。また国鉄は今日のところはまつたく無税で、こういう税金の安いバス事業もしくは税を納めない国鉄を整えておりますが、私鉄が運賃を上げればその結果は旅客なり貨物なりが、国鉄なりバスの方に流れて、私鉄の收入はかえつて減るというような状態からして、今日運賃の値上げということは、まことに実行困難な状態にある会社が少くないのでございます。それでわれわれといたしましては、無税もしくは税の軽い事業と競争をしつつ、この高率なる地方税を納めるということが、これが私鉄が不振をきわめている大きな理由ではないかというふうに考えるのでございます。先日委員会がありましたときに、ある役所の方が、私鉄はこのままで行けば行き詰まる、崩壊する、それは私は確実だと思う。しかしそれは税制の上でしんしやくすべきでなく、運賃の面において私鉄を何とかすべきである、それが本筋であるということを述べられました。それは私もそう思うのでありまして、これは税の方においては一般私企業並にする、そのかわりに入る方も一般私企業と同じように、もつと自由にするということが本筋であるとは思いますけれども、しかし今日の現状を見まするならば、国鉄は無税、私鉄は背負い切れないほどの税額を持つておる。私鉄の利益というものは、一年三百六十五日のうち、大体十日分くらいの運輸收入配当しておるのでありますが、固定資産税が運輸收入の三十日分くらいに当る会社があるのでありまして、こういう高率の税金ではとても私鉄は立つて行かぬ。立つて行かぬから、それでは鉄道がやめられるかといえば、鉄道は公益事業であるので、赤字であるからといつてやめることは許さぬ。たとえば今問題になつておるのは、草軽鉄道と仙台鉄道と二つあります。草軽鉄道のごときは足かけ三年も常業廃止の願いを出しておりますが、今もつて許可にならない。それで会社といたしましては、手当り次第に売れるものは何でも売つて、その日その日を送つておるというような状態であります。もしもこのままで進んで参りますならば、こういう会社が相当多く出るということが予想されるのでございます。どうぞ私鉄の現状をごらんくださつて、何とか税制の上で国鉄と何らのハンデキヤツプなしに、国鉄もバスも私鉄も、全部同じ立場に立つて事業を経営することができるように、皆さんにお願いして来いという協会の希望でありましたので、私今日お伺いいたしたような次第でございます。むろん私の国鉄と同一の立場ということは、国鉄に課税をしろということではございません。国鉄が無税であるがごとく、私鉄もまた国鉄並にお取扱いを願つて、そうして何とか、ここで私鉄の立ち行く道を見出し得るように、皆さんにお願いしたいのであります。  ごく大要を申し上げまして、皆さんにお願いする次第でございます。
  28. 大泉寛三

    大泉委員長代理 それでは渡辺、泰平、工藤の三公述人に対する質疑がありましたら許します。
  29. 門司亮

    ○門司委員 工藤さんにちよつとお聞きしておきたいと思いますのは、税の本質といいますか、内容にはあまり触れられなかつたのでありまして、今のは一般論だと私拜聽したのであります。一般論といたしましては大体御意見通りだと思いますが、内容としては、現行税法の中で、一番大きな問題になつております例の固定資産税については、これを廃止してもらいたいということが、最後の結論だと実は私考えております。その通りに考えてよろしゆうございますか。
  30. 工藤義男

    ○工藤公述人 よろしゆうございます。
  31. 大泉寛三

    大泉委員長代理 ほかに質疑はありませんか。——なければ、午前中はこの程度にして、午後は二時より始めます。  これで休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時三十二分開議
  32. 大泉寛三

    大泉委員長代理 それでは午前中に引続いて、再開いたします。  委員長が都合がありましてお見えになりませんから、私が委員長の職務を代行いたします。午前中に引続いて公述人の御意見を拜聽することといたします。全国国民健康保險中央会專務理事江口清彦公述人の御意見を拜聽いたします。
  33. 江口清彦

    ○江口公述人 江口でございます。今回の改正案によりますれば、国民健康保險の保險料を目的税たる保險税にする、こういうようなことになつておりますので、私はこの点に限りまして、若干意見を申し上げてみたいと存じます。  御承知のごとく国民健康保險は、昭和十三年の七月実施になりまして、十八年の末にはほとんど全国の町村にその組織を見たのでございます。その当時はいわゆる同意者を求めて組合を組織して、協同組合の形においてなされたのでございます。従いまして、保險料を徴收して、その保險料により医療の給付をし、さらにまた病気にかからないようにいろいろ予防的施設をする、この三つ事業を眼目にして運営されたのであります。ところが昭和十九年ごろ、戰争も末期になりまして、交通事情が非常に悪い。その他悪條件が重なりまして、なかなか啓蒙の方面に手が伸びず、とうとう終戰になりました。いざ終戰になつてからというものは、思想方面における非常な混乱と、それから経済方面における非常な変調、こういうようなことに災いされまして、国民健康保險の経営難、遂には事業を中止するというようなものが漸次現われて参りまして、これは何とかして再建の方策を講じなければならぬということで、その当時大いに検討されました結果、まずこの制度を強化する必要があろう。今までのような任意の協同組合のようなものでは、とうてい将来この制度を運営することができないじやないか、むしろ市町村というような協同体によつて、これを経営する方が妥当じやないか、また一面地方自治が非常に拡充されることになつて参りまして、市町村自体の当然の事業として、この事業をやるべきだという輿論が非常に強くなつて参りました。とにかくこの制度を強化するためには市町村の公営、これよりほかに道はないであろう、こういうふうになつて参りまして、昭和二十三年でありましたか、法律改正ということになつたのであります。その法律改正と同時に、これを行うからには、従来の保險料を保險税として、その当時あらためて強化しておくべきはずであつたと存ずるのでありますが、遺憾ながらこの保險料はそのままにしておきまして、従来の協同組合の精神と申しますか、形をかえないで保險料はそのまま取残されたのであります。ところが市町村がこれを行うというように公営化されまして、これでもつてとつ再建させようというので非常に努力を拂われ、その結果今日におきましては、約半数以上のものがまだ事業を継続しておる。もしその当時市町村がこれを行うという改正がなかつたならば、見るかげもない数になつて、ほとんど自滅しておるのではないかと想像されるのであります。ともかくも市町村がこれを行うように公営化され、それによつて五割程度は確保できたのでありまするが、それがさらに七割、八割ないしは全面開始というまでには、もつと保險料について検討する必要があろうという意見が、だんだん起つて参りました。と申しますのは、漸次生活が不況になつて参りまして、自費でもつて治療を受けるというようなものが非常に少くなりまして、どうしてもこの社会保險によらなければならないというようなことになつて参りました。いわゆる受診率がだんだんと上昇して参りました。また担当医の態度が最近非常にかわつて参りました。従来は、ともいたしますると、社会保險の治療は安いからというので、差別的に取扱われるではないかとさえ、想像されることがなきにしもあらずであつたのでありますが、最近はやはりこの国民健康保險あるいは健康保險というような社会保險に依存しなければ、とうていひつかかりが多くて経営が困難であるというようなものが、ずいぶん多くなつて参りました。そうなつて参りますると、受診率は増して来る。これに相比例しまして、保險料を増徴すれば別に赤字なんかの問題は起りませんが、保險料をやたらに上げることはできません。少しでも上げますと徴收はなかなか困難になつて来る。利用者はふえて来る、こういう結果からして、この二、三年来赤字にみんな悩んでおる。でありまするので、この保險料というようなものを、保險税というものにして徴收したならば、出す方の感じが、税金ならばこれはどうでも出さなくちやならぬ、こういうことになつて来るのじやないか。従つて保險料を保險税にしてくれという声が、ほとんど例外なく取扱い者の方から出ております。私たちもそれを要請しておつたのであります。しかるに今回法律案として御考慮中であるということを承りまして、会う者ごとに、あれはどうなつたかと、きようも数人の人に会つたが、みんなそういうことを言うように要望されておるわけであります。でありまするから、これはどうしてもこの機会に税化を断行していただきたいと存ずるのであります。しかしこれは徴收に便利であるからということが、その動機をなしたというものの、また一面、昨年来の社会保障制度というものを急速に実施してくれというような要望も非常に強いのでありまして、それでこの社会保障制度の根幹をなすところの医療保障、ことに国民健康保險を急速に全面施行するという方面にこれを持つて行つて、そして社会保障制度への移行を容易ならしめるということが、今日きわめて重要なことと存ずるのであります。そういう観点からいたしまして、どういたしましてもこの際保險料を保險税化するということにしなければならぬ、この二つの点からわれわれも要望をいたしておつたのであります。幸い先ほど申しました通りに、これがいよいよ法案として上程になりましたならば、すみやかにひとつ御決定いただきまして、来年早々からでも実施になるようにお願いいたしたいと存じます。  なお法案の内容を拜見いたしまして、一、二これはどうかという感じのところもありますので、その点をこの際申し上げておきたいと存じます。この課税所得割の百分の四十、資産割の百分の十でありますが、農村の実際といたしましては、この所得というものは、給與所得の方は非常にはつきりしておりますが、農業所得その他のものは、なかなかはつきりしないところがありまして、給與所得の方ではつきりしているだけに、そちらの方が負担が重いことになるという結果が、よくあるのであります。先般も神奈川県のある村におきまして、いろいろ調査いたしたのでありまするが、ちようど国民健康保險の係の人が、従来関東配電に勤めておりまして、そこを退職いたしましたので、担当多額の退職金をもらつた。それで退職金に対してただちに相当額の、二千円程度の課税をせられた。しかるにその村における郡内の一、二というような資産階級の人が、わずか三百円か四百円程度の税金であつた。こういうようなことが間々あります。従つてその点を不均衡にならないようにできないものだろうか、こういう意見があつたのであります。ここに示しておる通りに、百分の十とかあるいは百分の四十とか、きつちりときめて動きのとれないようにしてもらつては困る、少しは動きがとれるようにひとつつていただきたいとい意見が、非常に強かつたのであります。この点は運用にあたりまして、あるいはそういうことはでき得るといたしますれば別問題でありますが、もしできないということになれば、できるように考慮すべきものじやないかと存ずるわけであります。  それから保險料を保險税にいたしますと非常に都合がいいというのは、いわゆる保險料の時代におきましては、大体十階級ないし十五階級ぐらいの階級をつくつて賦課しておつたのでありますが、保險税というとこになりますと階級がなくなつてしまつて、五千戸あれば五千の階級になるわけでございます。そうなりますると賦課が公平に行くというようなことからして、他と比較するというようなことが少くなつて参ります。従つて收納率は非常にいいわけでございます。その点は隠れた効果じやないかと存じております。  それからもう一つ問題になりまするのは、賦課の最高を一万五千円で押えてやるということでありますが、これは普通農村におきましては大した問題でございません。しかるに都市方面においてはこれが非常に支障があるというのです。と申しまするのは、近い例でありますが、埼玉県の川口なんかにおきましては、これがもし一万五千円で押えられた場合においては、経営面において非常に困るというのです。それは川口市におきましては、最高の保險料を今出しておるのが四万五千円になつてりおります。一万円から二万円まで納めている階級の者が約三百九十人、それから二万円から三万円というのが三十六人、三万円から四万円が四人、四万円以上が一人、こういうような数字になりておるわけで占あります。それで今の一万五千円以上のものをずつと拾つて参りまして、保險料がどのくらいになつているかと申しますと、約三百万円ということになるわけであります。その三百万円が結局一万五千円で押えられたときにおきましては全般にかかつて来るわけであります。従つてこの少額階級の方にもそれが幾らかかかつて来ることになるわけでございます。ところが川口市におきましては、一万円以上あるいは五千円以上を納めるような階級の人はほとんど收納百パーセントであります。それが下に行くほど滞納が多くなつて来ておる、あるいは納め方が悪いというようなことでありますので、一円でも二円でも最下級の方に増したということになると、さらに收納庫が悪くなるわけでございます。それで今のような三百円を全般にひつかけたという場合におきましては、下の方の保險料がさらに多くなつて参りまして、收納率が悪くなるということになります。そうして上の方は一万五千円で押えられてしまつて、一番よく納めるところの階級に軽くなつて来ておる。こういうふうで経営する上におきまして非常に困る、こういうことを言つておるようであります。この意見はやはり都市の方面のあちらこちらにおきまして聞くようであります。農村におきましてはそういう話がないようであります。そういう点から申しまして、できれば三万円程度で押えてもらつたらどうか、こういう意見が非常に多いようでございました。またこの三万円程度というものは、今病気いたしましたならば、社会保險にかかりまして約二週間くらい入院しましても、三万円程度は拂わなくてはならぬ。こういうことから考えましても、大体三万円程度で押えたらどうかという意見が非常に多いのでございますので、御参考までに申し上げておきたいと思います。その他の点におきましては大体お示しになつた案でけつこうと存じます。ただあれをいよいよ実施されましたあかつきにおきまして、いわゆる中産以下の階級の方に、若干重みが強過ぎるのではないか。いわゆる人頭割におきまして、従来三であつたのが三・五ということになるわけでありまして、その〇・五のところが少し重いような感じがするということを、一般側が強く言つておるようでありますので、その点をひとつ御考慮いただきたいと存じます。  大体申し上げることは以上の通りであります。
  34. 大泉寛三

    大泉委員長代理 それでは次に神奈川県総務部矢柴信雄公述人の御意見を拜聽いたします。
  35. 矢柴信雄

    矢柴公述人 ただいま御紹介のございました矢柴でございます。今回の地方税法改正案についてでございますが、これに関しましては、技術的な面が多いのでございまして、大部分私どもは格別な所見を持つていないものが多いのでございます。次にごく簡單にその点を申し上げてみたいと思います。  第一に、附加価値税についてでございますが、附加価値税について加算法を採用せられたということでございます。これは納税者の方の便宜といろ点からそれが必要でありまするならば、さように改正されてしかるべきものであると考えるのであります。ただ御承知のように、府県の徴税機構というものが、まだ貧弱でございまして、その際に控除法加算法二つ方法があるということになつて参りますと、その間に若干複雑さがございまして、そのための徴税機構の方面における困難というものが、若干は予想せられると思うのであります。いずれにいたしましても、この問題についてはわれわれもまだ未経験なことでございまするし、今後の問題になるのではありまするけれども、ただいま申し上げました若干の徴税上の困難というものを犠牲にいたしましても、この法案通り納税者便宜をはかるということでけつこうであると思うのであります。  第二番目に、市町村民税でございますが、第一に法人に対する所得割を課けることに相なつたことでございます。これは先ほども御議論がございましたが、税というものに応益的な要素がかなりあります以上、特に市町村民税のごときにおいては、その要素がかなり強いものでありますことを考えますならば、当然法人もまた実質上の一つ事業主体をなしておりますので、所得割を課けるということは当然であろうかと存じます。第二番目に個人所得に関する源泉徴收制度が開かれた問題でございます。これも御承知のように市町村民税が非常に高いという評判があつたのでございます。またわれわれ自身もそのことを納税する側に立ちまして、身にしみて感じたのでございます。しかしながら実際に考えてみますると、市町村民税の税率は国税所得税の約二割でございまして、このわれわれが高いと感じておることは、逆に申しますると、一度に相当まとまつた税を納めるということが、勤労者の経済状態に合わないという点が、大きな要素であつたように思うのであります。その点がこれによつて是正されるということは、まことにけつこうであると思うのであります。またその際にこの税が考えられました当初におきまして、勤務地の市町村が全部とるという考え方があつたのでございまするが、これは私どもが極力反対したところでございまして、ほかの市町村の住民につきまして、勤務地においてその市町村が、市町村民税をとるということはあり得ないことでございます。     〔大泉委員長代理退席、野村委員長代理着席〕  今回はその点についても、その考え方を貫いていただきまして、住所地市町村にこれが送付せられるといういとになつておりますので、これもまことにけつこうであると思うのでございます。ただ問題はこの場合における徴收上の困難という問題でございます。おそらく大工場等におきましては、自分の府県だけではなしに、他の府県の相当多くの市町村からさえ、通勤者があるということもかなりあると思うのであります。これの整理ということは事務上の非常に大きな負担になるのではないか、こういうことが心配せられるのであります。一般に特別徴收義務者に対しましては、徴收交付金を出さないということになつておるのでありまするけれども、かような場合におきまして、われわれ日本人の常識としましては、ある程度の徴收交付金という問題は考えられていないのではないか、かように考えるのであります。  なおその次に、この機会に問題であると考えますのは、現在の徴税機構の問題であります。シヤウプ勧告におきましてそれぞれの自治体、それぞれの徴税主体というものが、みずから税額をきめ、みずから徴收するという原則を打立てられました。これは地方自治という考え方から、理念的にはまことに筋の通つた話であると思うのであります。しかしながらその結果はどうかと考えまするに、従来ありました附加税の制度が廃止せられ、また賦課そのものについてそれぞれの主体がみずから徴税令書を発行せねばならぬ。こういうことになつて参りましたために、市町村、府県を通じまして徴税費の非常な増大を来しておる、こういうことは事実でございます。後に出て参ります事業税の問題を考えましても、これは国の所得税あるいは法人税というものについての課税標準が、そのまま採用せられ得べきものでございます。しかるにこれを別々に調査をしなければならぬ、また相当遠隔の市町村に住んでおります納税義務者に対する賦課も、やはり県で独自の徴税機構をもつてやらねばならぬ。こういうことのために、きのうも長野県の副知事が申しておつたのでありますが、非常に莫大な徴税費がいる。大体長野県では一割になつてつたようでありますが、こういうことになつておる。シヤウプさんの理想はけつこうであるけれども、そのために現実というものをすつかり無視されておる、こういう感じがするということを申しておつたのでございます。この問題は府県、市町村というような縦の系統だけでなしに、横の問題としても考えねばならぬ。市町村相互間においてただいまございます源泉徴收についての非常に錯雑した状態ができて来るのであります。また国税との間においても、われわれがその問題だけを取上げてみますと、非常にむだがあるという感じがいたすのであります。ひとしく公の目的を持つておる団体という意味におきまして、しかもそれが、同一の目的を持つておるという場合におきまして、この徴税のために一つの協同的な機構をつくる、あるいは協同的な立場から、たとえて申しますと、源泉徴收の税につきまして、ある委員会で配分基準をきめて、ある市町村でとりまして、それをそのきめました配分基準で分配してしまう、こういつた何らか徴税機構の簡素化と申しますか、合理化といいますか、効率化といいますか、そういう意味でも根本的な改正というものがなされていいのではないか、こういう感じがいたすのであります。ただ非常に研究した問題ではございませんけれども、ただいまの徴税機構がシヤウプさんの理想にあまりに忠実であつて、現実に対してはあまりに目をふさぎ過ぎるものではないか、こういう感じがいたすのであります。徴税機構の問題は、私どもも結論を完全に持つておるわけではございません。ただ感じだけをこの際申し上げておきます。  次に固定資産税でございますが、固定資産税につきまして、庶民住宅等の使用者課税というものを廃止せられる。これは私どももこの制度ができましたときに、最初庶民住宅というようなものにぶつかりまして、非常に困つたのでございます。ただこの税を提唱といいますか、待望を、むしろ私どもは使用者課税のできる前に、いたしておつたのでございまして、その理由は、現在たとえば横須賀市というものをつかまえてみますと、これは国有財産が非常に多いのであります。その国有財産を一時使用で借りまして、多くの会社がここで工場を経営する、事務所を開くというようなことをいたしておるのであります。さような場合に、これに対して全然税が課からないということは、課税の公平という意味から考えましても、おかしいものではないか、また地方団体の財政という点から考えましても、これは何とか措置すべきものである、こういつた考えを持ちまして、さような意味で、私どもはこの使用者課税を待望いたしたのでございます。たまたま出てみますと、問題になりましたのが、この庶民住宅の問題なのでございます。これはちよつと困つたと私どもも正直そう感じたのであります。さような次第でございますから、この際固定資産税使用者課税の廃止につきましては、公の財産が個人のために使われておるというような、ただいま申しました横須賀の工場のような事例、こういう場合につきましては、これは存置していただいていいのではないか、こういうふうに考えます。あるいはこれを法定外の税として各市町村に認める、こういうお考えもあるやに承つておるのでありますけれども、なかなか特別なめんどうな手続をもつて新しく税を起すということは、市町村にとつてはまことに容易なことではないのでありまして、さような御趣旨でありましたならば、條例をもつてさような場合に使用者に対する課税をすることができるということを、初めから法律の中にうたい込んでいただくということがいいのではないか、かように考えるのでございます。なお根本にもどりまして、ただいま申し上げましたような国の收益資産、これは国鉄、專売公社の問題等を含めての問題でございますが、かような財産というものに関しまして、これに対する課税権が地方に全然ないということは、非常に不合理であると思うのであります。昔国有林野が非常に多い市町村に対しましては、国からこれに対する税の欠損に対する交付金が出されておつたのでございます。そういう点から考えてみましても、收益財産に対する課税は、これは国のものでありましようとも、あるいは各種公団のものでありましようとも、当然あつてしかるべきじやないか。この方面に何ら措置がありませんために、特にそういうものがかたまつておる地方、今横須賀市を申し上げましたが、おそらく呉、佐世保というような方面においても、同様の問題があろうと思うのでありますけれども、多くの工員をかかえて、市町村の與える利益という方面については非常に多くを受けている事業、あるいはその事業に使われている資産、こういうものについて税がないということは、これは応益原則という点から考えましてもおかしなことである、かように考えるのであります。この点をこの機会にお考えをいただきますれば、仕合せであると思うのであります。  次に固定資産税につきまして、償却資産の問題であります。償却資産固定資産総額のうちの約二割という金額になつておるようでございます——一九%ぐらいになつているように思いますが、この税は県内の市町村というものをとつてみますと、非常に偏在税種でございます。山奥の小さな村に千万円を單位にして勘定するような税額が、すつぽりと入つて来るというようなこともありますれば、また工業都市というようなところに、非常に多くの固定資産税が課かつて参りまして、ところによりまして、税收総額に比べましてこれが四割、五割というような金額になつているところすらあるのであります。さようなところになりますと、これは当然標準財政需要というものを上まわつた税收になるのであります。平衡交付金を受けない市町村というものが、そこにできるわけであります。その場合におきまして、その市町村の得ました税收というものは、本来の計算から申しますれば、全地方自治体の税金として、平衡交付金法によつて計算されておりますはずのものが、これが一つ市町村のために逃げてしまうのであります。少い税をもつて日本中にできるだけレベルの高い行政をしようという考え方を持ちますならば、当然かような税というものは、あまりに偏在のために不公平の起らないような範囲において、徴收するということに改めていただいていいのじやないかと思うのであります。かような意味におきまして、私は、現在の償却資産に対する固定資産税というものは、府県税にしていただくのが当然である、妥当である、かように考えるのであります。特に償却資産に関しましては、評価ということが非常に問題になりまして、しかもこれは市町村間の統一ということは非常に困難なことでありまして、非常に不均一なものになつて来る、こういうことも当然考えられるのであります。ただいまの制度では著しく固定資産税のあるような市町村につきましては、これを付近のその仕事に何らかの関連のある自治体に対しまして、配付をするというような制度が設けられておりまするけれども、この制度もおそらく全国的にスムーズにその目的が達成されるということはないであろうと、かように考えるのでございます。  次に事業税でございます。事業税に関しまして申告納付の問題と、それから分割基準の明確化ということが行われました。これは非常にけつこうなことなのであります。私神奈川県でございまするが、神奈川県のようなところでは、大部分法人というものは、その本社を東京に持つておるのであります。さような場合におきまして、東京都の税務の吏員がサボつておるなどと申し上げるのではございません。一生懸命でやつてくれておるとは思いまするけれども、その大部分の税收を他府県に持つて行かれるといつたよろな税につきまして、非常にめんどうな帳簿の検閲をいたしまして、適当なる否認額を算出するというような大骨はなかなか折れるものではないのであります。この配分の問題は、昔府県が中央集権のもとに、完全な統制された一体でありましたような時代におきましては、それほど弊害も目立たなかつたと思うのであります。現在のように府県が自治体として公選知事のもとに、それぞれ独立して仕事をやつております場合に、ここで他府県の徴税吏員が自分の方にあまり関係なくて、よその府県に非常な利害関係があるというような問題につきまして、大骨を折つてくれるということは、期待することが困難なのでありまして、これは従来の私どもの非常に大きな悩みでありました。これが今回の改正によりまして相当改善をせられるということは、非常に善ばしく思つておるところでございます。ただしかしながらこの際におきましても、なお問題に残つておるのであります。この種の税につきましての徴税機構というものについての根本的の考え方というものは、いま少しく新しい地方自治の姿に応じまして、研究し直す必要があるのではないか、かように存ずるのでございます。なお事業税につきまして、これは本年一年だけの税ということに相なつておりますので、必ずしも強く主張するわけではございませんけれども、この税がいわゆる累進課税の税でございませんために、零細な業者にかなり重い点があるということは事実でございます。かりに所得税が千円という業者を抽出して考えてみますると、その業者の所得金額というものは、各種の工場の問題を考えてみますると、大体八万円程度になるわけです。すなわち八万円程度の所得のある者は千円の所得税を納めるということになるわけでありますが、それに対しまして事業税は幾ら納めるということを考てみますと、これは九千六百円納めるということになるのであります。ただいま事業税に関しましては、二万五千円の免税点が設けられておるのでありますけれども、これは免税点でありまして、基礎控除でありませんために、かような問題が起つて来るのでありまして、この際ある程度の基礎控除事業税に考えていただくならば、その点の欠陷がかなり是正できるのではないか、かように考えるのでございます。  次に国民健康保險税でございますが、これについてはただいまお話がありました通りでございます。格別な所見を持つておりません。それからその他一般的に今度の税法改正案は、字句の整理あるいははなはだしい罰則等についての若干の修正が行われたのでございまして、これでけつこうであると私どもは考えるのでございます。なおこの際現在の税法について技術的に考えてみまして、これは何とかしていただかねばならぬ、こういうふうに私どもが考えておりますものを申し上げてみますと、船舶税の問題でございます。これは市町村の税でございまするが、船舶に対する固定資産税あるいは船舶税の問題でございます。こういつたような問題に関しまして、こういう移動を非常にやります資産というものについて、どの程度にこの標準をとるかということは、非常にむずかしい問題でございまして、かつて不動産取得税のありました時代でございますが、船舶についても取得税がございました。その当時に私どもはよく談判を受けたものであります。一体あなたの方はおれのところの税を幾らにしてくれるか、東京はこう言うておる、静岡はこう言うておる、安いところへおれは船籍を持つて行く、こういうことを申すのであります。同様な問題が現在市町村税として船舶について残つて来ております。これらの課税標準の決定というものに関しましては、何らかの統一した措置というものを講ずる必要があるのじやないか、かように考えるのでございます。  以上現在の税制につきまして、改正の必要というようなものを、この税法そのものに即して申し上げたのでございます。  しかしながらお許しを得まして、根本的に地方税法あるいは地方税制全般の問題として御考慮をいただきたい点を申し上げたいと思うのであります。御承知のようにただいまの地方税法、これによりまして、府県は非常にはなはだしい窮迫に陷れられたのであります。御承知のように現在の税制をもちまして、府県が自分の税收をもつて義務費中の義務費であります義務教育費をまかない得る府県が幾つあるか、大体義務教育費に自分の税收が足りないという府県が、七割以上になつておるのであります。少し広く考えてみますと、ほとんど全部と言つていいほどの府県が、税收を全部ぶち込んで、やつと教育費がまかなえるか、あるいはわずかにその一部分に達するか、こういつた状況にあるのでありまして、換言いたしましたならば、ただいまの税制といろものは、府県に対しまして税をとつて義務教育費だけはまかなえ、あるいは義務教育費の半分だけはまかなえ、残りの仕事はすべて平衡交付金を国がきめてやるから、それでその範囲内でまかなうようにすればよかろう、こういつた税制なり、平衡交付金制度に相なつておるのであります。ことに税額が過小であります結果、すべての府県が平衡交付金を受けるということに相なるのでございまするが、平衡交付金は、シヤウプさんも、最大限の徴税努力をもつて、最小限の行政を行わせるように配分をするのだということを言つておられるのであります。これは全体の府県がその状態に追い込まれることになるのでございまして、ことに税につき直しては、このたび平衡交付金法の改正をせられまして、基準税收として八〇%をとるということを申されております。かように考えて参りますと、徴税成績の非常に悪い昨今におきまして、八〇%を基準税收として標準財政需要から差引きまして、その残りを平衡交付金として與えるということになりますると、税というものはもうその府県が徴收の義務を有する、そして滞納についての危險を負担するというだけの意味しか考えられない、それに近いものになつて参るのであります。かような状況では、自治というのは、はなはだ愚かなことになつて来ると思うのであります。特に平衡交付金の総額が、ただいまのように根本にさかのぼつて、常に金額としての査定が行われておる、またその配分の基準というものも、決して客観的なうまい基準というものは認められるものではない、こういう状況になつて参りますると、地方財政というものは中央まかせ、人まかせのものになつて、自治というのはまつたく名ばかりになると思うのであります。現に私どもは二十六年度予算の編成を、ただいまやつておるのでありますけれども、私どもは自分の金が一体幾らあるのか知らないのであります。税につきましては、各種の資料からある程度の見通しもつけます。またそこに若干のインフレによる増額もあるだろう、これも見通しをつけます。けれどもそれをつけてみたところで何にもならぬのであります。その分平衡交付金が減つて来るであろう、こういうことを考えてみますると、中央で一体自分のところの税收を幾らに見てくれ、自分のところの標準財政需要というものを幾らに見てくれるか、それがきまらぬことには、われわれは自分がどれだけの金を持つておるのかわからぬのであります。いわんやそれを基礎にいたしまして、仕事の計画をするということは不可能であります。またかりにそれをある程度の見通しをつけて始めるといたしましても、途中で、法律によつて大きな義務費がわいて参ります。あるいは今回のべース改訂のような問題が出て参ります。そのたびにそれだけの金額が中央から與えられるのでございましたならば、問題はございません。けれども、そのときになつて、その分として全然くれなかつたり、ごく一部をくれたり、まるでどういうことになるのか、見当がつかぬということでありますると、不安でいたし方がないということになるのであります。何よりも申し上げたいのは、こういつたことはりくつではございません。現実に各府県がただいま與えられました税收と、平衡交付金というものをもつては、自治体としての運営をやつて行くことができないというはめに、陷れられておるということでございます。これを救うために、根本の問題としましては、どうしても地方税、ことに府県税をふやしていただかなければいかぬ。特に普遍的な税をふやすということが、平衡交付金を受ける府県を、少しでも少くするという意味においていいのでありまして、これは市町村についても同様かと思いまするが、現在の府県のように、特に普遍的税收が與えられておりませんところにつきまして、その配慮が切に望まれるものであります。酒やタバコの消費税でありますとか、ガソリン税でありますとか、あるいは府県民税でありますとか、こういつたものをお考えいただくことが、まことに必要であると思うのであります。近来教育関係で、教育税ということが言われておりますが、どこの府県に行きましても、一般財源について申しますならば、教育費がほとんど全支出中の五〇%以上、五五%というような比率を占めておりますときに、これに対する最もいい税として、普遍的な税種である府県民税というものが考えられていいのじやないか、かように考えるのであります。  なお、この際当面の問題としてお願いを申し上げたいのでございまするが、現在の平衡交付金の問題でございます。現在の平衡交付金を算定するにあたりまして、政府が非常に大きな、ほとんど常識をもつて考えがたい誤りを犯しておるということを皆様方に訴えまして、その是正をお願い申し上げたいのでございます。  すなわち平衡交付金の今回の算定にあたりまして、給與ベースの改訂について、大蔵省は一律に一人千円ということで計算をいたしておるのでありまするが、神奈川県だけを考えてみましても、今度のベースの改訂だけで、四億六千七百万円という大きな金がいるのであります。また教員について考えてみますると、教員の俸給というものは、比較的高いのであります。私どもが昭和二十四年に文部省から神奈川県のべースとして示されました基準そのままをとりまして、切りかえをやつてみましても、一人当り二千八十円ばかりの金額に相なるのであります。結局政府はこの問題について、百六、七十億の金しか予定いたしておらぬようでありますけれども、実際はこれが倍いるということであります。これらの問題は、実地について少しく検討されたならば、ただちにわかるはずの問題であります。これをいたずらに耳をおおうて、千円で計算をせられたというところに、その意図がどこにあるのか、私どもは非常に遺憾に存ずるものでございます。  さらにまた先ほども申し上げましたように、法令改正に伴つて、地方に義務負担というものをかけまして金額についても、大きな算定の誤りがございます。また、これは非常にはなはだしい問題として、地方に雑收入が百八十億あるという計算を、大蔵省はしておられるのであります。それでベース改訂をまかなえ、こういう計算をされたようでありまするけれども、これはまことに大きな間違いでございまして、神奈川県で計算をしてみましたところ、雑收入昭和二十五年度予算で、ちようど五億円ございます。けれどもその中でほんとうに一般財源を見得るような雑收入は二、三千万円、そのほかに競馬、競輪等の益金が六千万円、その程度あるだけのものでございます。その他の雑收入というのは、各種の特別会計に支出いたしました運転資金でありますとか、あるいはたとえば水産試験場で漁をやる指導船を持つておりますが、これが外へ出まして水産指導をするかたがた、魚をとつて参ります、こういつたような費用、それぞれ收支とんとんと申しまするよりも、むしろマイナスになつておる一部なのであります。そういつた状況でありますにかかわらず、これを百八十億と見るというようなことをいたし、平衡交付金の総額を減らす改訂にかかわらず、ほとんどしないというような状況に追い込まれ、さらに起債のわくにおきましても昨年を下まわる一方、事業の方は公共事業費もふえておれば、また災害に関しても多くの負担を地方に課そうとしておる、こういつたような状況にあるのであります。これでは府県はほんとうにやつて行けないのでありまして、私どもは人権費と事務費というものをまかなうこともできない、こういつた状況に追い込まれて参つております。さきに予算委員会に知事がこの点については資料を差上げておりまするので、くだくだしく申し上げることを省略いたしまするが、ただいまの状況ではどうしても事務費すら支出に困難を感じ、いわんや一般の行政というようなものは考え及ばない。また公共事業についても、これを全額遂行するということはほとんど不可能に近い、こういうのが全国の府県の現在の状況でございます。  以上たいへんくだくだしく申し上げましたが、かような平衡交付金の状態というものを、すみやかに是正していただきまして、当面の府県の危急をお救いいただきますると同時に、また市町村についても、その財政の窮迫を緩和していただきますとともに、根本的な問題といたしまして、今回出ましたような地方税法改正案でなしに、さらに根本的な地方自治を真に地方自治たらしめるための地方税改正を御企画いただくように、切にお願いをいたす次第でございます。
  36. 野村專太郎

    ○野村委員長代理 次に松澤隼人君より御意見を承ることにいたしたいと思います。
  37. 松澤隼人

    ○松澤公述人 私は中小企業を代表する立場から、国の産業経済の中心であつて、国の税收の六割五分を負担しておるところの中小企業が、昨今の税の攻勢で危機に瀕しておる現状から、徴税が法の改正によつて強化されることは、にわかに賛成できないのであります。昨年の地方税改正で、中小企業負担が加重され、破産の一歩手前まで追い込まれておる実情で、非常な苦しみにあえいでおるというのが事実でございます。今回の改正附加価値税の実施が合理化を名目に強化されることとは、附加価値税そのものが中小企業にむりな税金で利子や給料まで課税の対象として、赤字経営であつても何でも課税されるというので、本質的にこの税には反対であります。このたびの改正は進歩的なものがあることは一応認めますが、附加価値税そのものの実施をさらに延期し、超過所得制度を復活して、担税力のある特需景気の大会社からとる道を講じてもらいたいのであります。延期が認められるならば、本改正は進歩的なものでありますので賛成でありますが、同時に免税点の現行九万円を、現在の物価指数からしても三倍に引上げ修正していただいて、弱小零細業者を救う道を開いていただきたいのであります。かつて取引高税の免税点が月売上げ三万円までは免税されておりましたのに例をとりますが、これが年額にして三十六万円までいわゆる免税点であつた例によつても、現行の九万円というのはまことに少いのでありまして、この免税点を少くも三倍の二十七万円まで引上げ修正をしていただきたい。この例からぜひともこれを実現していただくならば、弱小業者は附加価値税の実施によつても、ある程度救われるのであります。この点特に注意を喚起したいのであります。  次に市町村民税については、本改正は進歩的であるが、徴税の強化を内容としておる点で、これまたにわかに賛成できないのであります。年齢六十五歳以上を免税点としておるが、これは六十歳まで引下げる。これは生活保護法において六十歳以上を老人として取扱つておる、こういう例からいつても六十歳が適当である。さらにそれに不具者あるいは病弱者、これに準ずる者というのも、あわせて免税の対象とするように修正していただくことが好ましいのであります。これは社会政策的見地から見ても適当と存じますので、この点も考慮に入れていただきたいのであります。所得割法人に課することは、大企業には当然と思われますけれども、赤字を続けておる中小企業等の会社にはむりであつて、これは少くも三百万円以下の資本の法人は、除外するというふうに修正を願いたいと思うのであります。  次に源泉徴收制度の強化については、これは根本的に反対であります。現在民間の中小企業者は賃金の支拂いに困難しておつて、十分な給料が拂えないのに、市町村民税まで差引くようなことは、とうていできないのでありまして、これは現行の通りでやつていただきたいと思うのであります。しいてやるならば、これも三百万円以下の中小企業工場には適用しないということに考慮して線を引いていただきたいのであります。従つて特別徴收制度はできれば現行の通りにしておいていただきたいという趣旨であります。  次は固定資産税についてでありますが、先ほど神奈川県の総務部長から、地方税の大元締めとしてやつておる立場から見ての、いろいろな御意見がございましたが、使用者税、いわゆる庶民住宅程度に住んでおる方々使用者税というのは適当でないので、これは今回廃止に考えられておるので非常にけつこうだと思いますが、一応やはり今のお話にもございましたように、公共物を借りておつて大きな企業をやり、相当な利益をあげておる例が多々ございますので、そういう点はやはり一線を引いて、実情に即して実施するように考えていただきたいと思うのであります。償却資産免税点が三万円に引上げになりたのでありますが、これはやはり物価指数その他を勘案しても少きに失する感がございますので、倍の六万円程度まで修正していただきたい、かように存じます。  事業税については、これはもうこの前の公聽会でも、私ちよつと意見を申し上げたのでありますが、免税点をどうしても二十万円程度まで引上げて、中小企業を救う道を開いていただきたい。本改正事務上の整備ということがありますが、さしたる影響がないのでありますので、この事業税に関する改正につきましては反対意見を持つておりませんが、この免税点引上げについては、どうしてもこれを中小企業の現状から引上げていただくように、特に御考慮を願いたいのであります。次は国民健康保險税についてでありますが、これは社会政策的見地から賛成であります。一家に病人が一人できれば、現在のような余裕のない生活をしいられておる国民大衆は、たちまちそうした臨時の出費のために、つぶされてしまうような事態が起きるので、全般的にこれが施行されることが望ましいと思うのであります。この実施によつて——生活保護法で医療扶助というのが相当高まつて参りまして、一般の生活扶助のほかに生活保護法で医療扶助をやつておるのでありますが、その医療扶助が最近非常に多くなりまして、地方財政を悩ましておる大きな原因であり、また国家としてもこれに八割負担するので、相当な金額になつておるのであります。本二十六年度の予算の面に現われておる生活保護費は二百十二億であります。二十五年度は百六十三億であつて、四十九億が上昇されておるのでありまして、社会保險の分についても二十五年度は二十億であつたものが今度は、二十六年度の予算面においては三十八億が計上されておる、これも十七億上昇しておるというふうな現況でありまして、これが国民健康保險税の制定によつて、非常にこの数字が助かつて来ると思うのでありまして、これに対してやはり国家が平衡交付金等で、特にこれを助成する、補助するという建前をあわせて考えていただいて、社会保障制度の叫ばれておる今日、十分一般の国民が、この制度によつて恩惠がこうむられるように、そうして負担の面においても、十分国家がこれを助成するように考えていただきたいと思うのであります。  次に本案の最後に「その他」というので、まことに軽く扱つておるのでありますが、これがすべからく大きな問題と思うのであります。この「その他」の分で、国と県と市のこの三者が、いわゆる順位の点を同順位にする、この結果どういうことになつて来るかと申しますならば、国、県市町村の三者が、担税力のないところの大衆に競争して差押えや、競売をどんどんやることになるということであります。現在滞納の数字は、残念ながら非常に国にしても地方にしても大きくて、これががんになつておるのでありますが、おそらくこれの滞納を整理するために、こういう法律を書いたのじやないかということさえ私は考えておるのでありますが、現在だれも無理に滞納を喜んでするものはないのでありまして、実際に担税力がないのに、無理な税金を課けられており、それがだんだんたまつて来て、今しわ寄せて、一ぺんに年度末で苦しめられているというのが、今の実況で、非常な危機をはらんでおるのであります。これもこの法の改正によつて、国と同じ順位で、従来であれば国税はおつかないから先に納める。県とか市の方は少し待つてもらおう、こういうようなことで、いくらか甘えるような気持があつたのでありますが、これが同じ同列に扱われて、しかも先着順ということになつて来ると、これはひとつ早い方が勝つというので、まず競争して差押えをやることに、結局なるのであります。たまつておる税金が一ぺんに三人で競争されて押えられたら、これはもう処置ないのであります。そういう点で、私はこの「その他」でちよこつと書いてあるのは、これは重大問題だと考えておるのであります。これはもう絶対にひとつやめてもらいたい、私は強くこれを要望してやまないのであります。むしろ滯納に対する利子税や加算税をやめて、実情に即して、担税力の実際にない者、無理な課税であつたものは減免し、あるいは延納の道を開いて、中小企業の立ち行く道を講じてもらいたい。税は喜んで納税できるものでなければならぬのであります。つい最近までは納税組合が各地にあつて、楽な気持で納税し、そうしてその奨励金で年に二回くらいは、春、秋旅行を楽しんだものであります。税金が苦にならなかつた。むしろ親しい感じであつたのであります。しかるに昨今は、税金と聞くだけでも神経衰弱になつてしまうのであります。現に税のために自殺した者、発狂した者、一家心中の悲惨事を引起した者等は枚挙にいとまないのであります。かかることは為政者の責任であり、政治の貧困であるといわなければならないのであります。税はとれる者、力のある者からとるのが本則であります。正直に夜の目も寢ずに働いて、帳簿をつける力もない中小業者は、無理な税を課けられても否認する根拠がない、また工作する、あるいは運動する力も持つていない、そうしてまる裸にされて行く、かかる無情な政治があつてはならぬのであります。大資本を持つ大企業は、合法的な脱税を平気でやられるが、中小企業者はそんな力は絶対にないのであります。正直者がばかを見てつぶされて行く現状に対し、政府の、特に当事者の反省を促してやまないのであります。以上をもつて私の公述を終ります。
  38. 野村專太郎

    ○野村委員長代理 それでは午後の会議におきまして、公述をいただきました江口、矢柴、松澤の三公述人に対しまして、御質疑がございますれば御質疑願います。
  39. 床次徳二

    ○床次委員 江口さんにお尋ねしたいのですが、私先ほど中座しておりまして承らなかつたのでありますが、今度の健康保險税を課することに対しまして、先ほど松澤さんは、相当国の補助を増してもらえばという條件付で御賛成のように承つたのでありますが、現状のままでもつて健康保險税をとるということが、はたしてよかつたかどうか。その点あるいは重複して御説明願うことになるかもしれませんが、お話願えればけつこうであります。
  40. 江口清彦

    ○江口公述人 ごもつともなお尋ねでございまして、実は税制改革ということだけについて申し上げたのでありますが、国民健康保險をほんとうの正常なものに仕向けるには、この保險料を保險税とすること、同時に給付面におきまして、国家が相当の負担をするということは、これは申すまでもないことでございまして、私たちは懸命に両者をもつてこれの再建ということに臨んでおるわけであります。社会保障制度審議会におきましても、給付費の二割を出せというような勧告があるのであります。これは当然のことでございまして、さきに申上げました、終戰後この再建運動の眼目といたしましては、経済補強という意味におきまして、事務費は全額国が持つてもらいたい、また給付費に対しましては、少くとも一般は二割、結核においては五割程度を出してくれ、こういうような要望、それと合せまして、直営診療所を必ず持つ、この三面に向つて進まなければ、税だけでもつて、それが起死回生するということは望まれないだろうと存ずるのであります。でありますので、今回はまず一応金のかからない地方の保險税にやつていただきまして、来年度におきましては、必ず給付量に対する国家的支出と申しますか、負担を懇望しておる次第であります。
  41. 床次徳二

    ○床次委員 あるいは先ほど御説明があつたかと思いますが、これまたちよつと伺いたいのです。今日各府県の受診率を見ますと非常に差があるので、一〇〇%に近いところもありますし、五〇%にも足りないところもありますが、この差がどこから来ておるか、その原因につきまして、重複しておるかもしれませんが、お答え願います。
  42. 江口清彦

    ○江口公述人 国民健康保險の受診率が七〇ないし八〇%をもつて、これが大体のところではないかと従来考えておつたのでありますが、昨今の状況を見ますと、一二〇ないし一三〇%が普通のようになつております。これはほんとうに活動しておるところはその程度に行くのではないか。ところが五〇%ないし六〇%というところは、これはほんとうに活動しておらない、利用しておらないところでありまして、従つてそういうところでは保險料が比較的安く、赤字も大して出てない。一〇〇%以上のところがほんとうに活発にやつておるので、受診率の低いところは結局あまり仕事をやつていない、こういうふうに私たちは見ております。
  43. 床次徳二

    ○床次委員 ただいま御答弁がありまして、一〇〇%以上活動しておりますところは同時に赤字を相当出しつつあると思うのでありますが、その負担の苦しさの状況を御説明いただきたいと思います。
  44. 江口清彦

    ○江口公述人 大体保險料は一世帶当り千五百円から手八百円というのが普通であります。それで受診率が八、九〇%というところで大体バランスがとれるのではないかと思つております。しかるに今申しましたように、一二、三〇%ということになりますと、保險料が一世帶当り二千円以上となつて参ります。ところが保險料が一世帶当り二千五百円あるいは三千円というのは受診率が一三〇%前後というところのバランスになつておりますが、二千五百円ないし三千円の保險料は非常に高率の保險料でありまして、もうこれ以上はとれないのではないか。今全国的にこれを見まして、保險料の收入の歩合は約七五%程度ではないか。過年度に收入いたしまして昨年は九〇%近くなつたのでありますが、今年は一〇%だけ低下しておる。こういう現状でありますので、せいぜい今年度並びにそれが過年度に加えまして八〇%まで行けば大成功ではないか、こういうふうに考えておるわけであります。それで保險料を受診率に応じてどんどん上げたらいいが、上げることはとうていできない、天井をついておるというのが、現況ではないかと存じております。大体の状況はそういうふうになつております。
  45. 門司亮

    ○門司委員 国民健康保險税のことですが、税率その他の問題については大体お話を伺いましたが、一つ聞いておきたいと思いますことは、今年の法案によりますと、最高が一万五千円で、それ以上とつてはならないという規定になつておるわけであります。先ほどお話のように、均等割と家族割と数字は多少狂つては参りましたが、大別して二つ、つまり一つ所得と資産に課けたものと、個人に課けたものであるが、大体この前と比例は同じだと思います。だから数字を少し置き違えてあるだけであつて、五〇%ずつの割ふりは同じだと思います。従つて従来は制限額がなかつたために、資産のある人、所得のある人によつて相当大きな負担がなされておつたのでありますが、これを今度は一万五千円にする。そこでこれは政府の意見を聞いてみたいと思うのですが、こういうことで一体保險の金が足りるかどうかということと、上を一万五千円に制限してそれ以上とれないということにしたために、財政上多少の狂いが出るのではないかと思うが、そういう心配はないかということ、それからもう一つは、この保險が成功である、成功でないということには、医師がこの保險に十分協力するかしないかということか一番大きな問題だと思う。この医師の保險に対する協力を得るということが、従来は比較的なされていなかつたのではないかと考えますが、これを專門にやつておいでになりますあなた方の見地から見て、医師の協力を得るということが、今日より以上非常に必要だと私どもは考えますが、そのことのためにはどういう方法を講ずればいいかという点について、もしお気づきの点がありましたらお教え願いたいと思います。
  46. 江口清彦

    ○江口公述人 お答えいたします。一万五千円で押えられては実際困るということが、自然生じて来るのではないかということは、先ほど申し上げた通りでございまして、結局一万五千円でちよん切つたら、それから上のものは全般にかわつて来ることになるわけでありまして、そういうところは保險経済には非常に困るということを痛切に言つておりました。しかしこう見まして、一万五千円以上の課税をするというところは少いのではないかと思いますが、ただ都市方面においてそれが非常に顯著でございます。だからできることならば三万円程度にひとつこれを上げていただきたい。三万円に上げたから、しいてみな最高の三万円に持つて行くというわけではございませんが、そういうところはぜひひとつ申し上げてくれということを言つてつたようでございます。  それから第二の医者の協力でございますが、従来の医者が社会保險をきらつたという時代は、実はもう昔の話のような感じでございまして、昨今ではむしろ、社会保險でやつたらひつかかりがない、多少遅れても必ずもらえるものだというところから、非常に関心を持つておられまして、どうかしますと、これに便乘しまして超協力的になるおそれがありますので、これに対しましては十分に審査をやらなくてはならない。国民健康保險法の改正におきましても、今回はできることならば審査をはつきりとやつてほしいという要望もいたしております。この審査をうまく適正にやることによつて、正しい請求に対して支拂いができるわけでありまして、私たちはいつも申しておりますが、いよいよ今度保險税として取立てるからには、請求の点においても、医師は準公法人として正しいところの請求をしてほしいのであります。だから医療費の方面におきましても、審査を巖密にやりますれば、それによつて保險経済にも、ずいぶん影響するところがあるのではないか。それで町村ごとに運営協議会委員というものを設けまして、これにはお医者、被保險者代表、公益代表、この三者がいつも寄合いまして、この医療運営面においての連絡をとつて行くというふうにしておりますので、その委員の活動を旺盛ならしむるために、いろいろとめんどうを見ておる、こういうわけであります。
  47. 門司亮

    ○門司委員 なおその点について、もう一つつつ込んでお聞きをしておきたいと思いますことは、医者の協力、非協力ということは、比較的收入が容易に入るから健康保險の医者というものは、非常に健康保險に対して親切のように見える一面もあるかと私は思うのでありますが、これは健康保險だけではありません。工場に働いております者の保險にもやはりそういう形が現われております。たとえば工場労働者をたくさん持つておるところの医者は、健康保險をやらなければ、一般の人もなかなかかかつて来ないというようなことで、悪く言えば、経営技術の中に入つてつて、広く自分の名前を知られ、広く自分の営業の地域というものを獲得するというために、一つの宣伝の機関のような形に使われておつて、実態はなかなかそうではない。どうせ健康保險でかかると薬があまりよくないとか、あるいは保險できめられた範囲の治療というものが、割合に悪くなつて来るというようなことが、実際面で行われておるのが現状ではないか。この国民健康保險の問題は掛金の問題がありますが、医者がほんとうに協力してくれますならば、その保險が成り立たないりくつもありませんし、また保險組合の数自体が減るということも、私はおそらくないと思う。この一番大きな原因は、組合としては経済的な問題が考えられるでありましようが、被保險者としては何といつても、医者の協力以外にこれを食いとめる方法がないと思うのであります。一部の人に考えられておりますように、この国民健康保險を取扱います医者は、普通の開業医よりも、そのとつております費用が非常に少いということは、大体一口に言えると思う。それが妥当であるかないかということは、一応別の問題といたしまして、一応そう言えると思う。そこでもしできるなら、この国民健康保險を取扱いまする医師に対しては、所得税あるいは事業税というようなものを何らか免除するような規定を設けていただいて、そうしてやはり社会が医者を保護するという形をとつていただくならさつきのお話のように、監督も十分できるし、また被保險者の方からも言い分は十分言えて、協力が得られるじやないかという一部の意見のあることを私は聞いておりますが、こういう意見に対して今何かお考えがありましたならば承りたいのであります。
  48. 江口清彦

    ○江口公述人 医者に対する課税の問題でありますが、これは医療保護担当者の方から、強く要望されるところでありまして、私たちもその点においては同感でございます。と申しますのは、給付費に対して二割ないし三割の国庫補助を出してくれと、盛んに要望しております。かりにそれが通過したといたしましても、結局はお医者の方にそれが流れて行くわけであります。むしろこの補助金がどうしてもできないということになれば、医者の方には大体医療費の三割ないし四割の程度の課税がある。だから課税だけとつてしまえば、補助金はなくてもこちらの方としては拂わなくてもよい、こういうわけでありますから、できることならばそういうことをやつてもらいたい。なるべく課税についても過当なものを課けない。ことに社会保險における実際治療いたしました医療費の請求額がはつきりいたしますと、税務署といたしましては、それには堂々たるあたりまえの税金を課す。ところがこの社会保險を取扱われぬところの人は、收入がやはり公ではない、はつきりいたしませんから、ともいたしますと、社会保險で收入のはつきりすることをきらうという傾向があります。税務署あたりと交渉いたしまして、社会保險のものは公正なるところの請求をしておるのだから、少くとも開業医より少く税金を課すようにしてくれという陳情もやれば、また大分協力もいたしておるような次第であります。最近は先ほどお話のありました受診率の五〇%内外というところは、多分お医者の非協力のところじやないかと思います。一〇〇%のところはほとんど全面的に協力していてくれる。ところが受診率が一〇〇%に近づきつつあるということが、最近の趨勢でありまして、だんだん医者の協力がよくなりつつあると、私どもは考えておるのであります。なお超協力が出て来ることをおそれております。というのは、つけ増しとかいろいろなことが現われて来るのじやないか。そこで先ほど申しました審査ということにお互いに力を盡して行き、医師会も一はだ脱いで相協力して行こう、こういうことで行かないと、われわればかりでいかにやつても是正できないのじやないか、これは別の問題になりますが、そう考えております。
  49. 野村專太郎

    ○野村委員長代理 ほかに御質疑はありませんか。——なければ、本日公述人に選定いたしました日本農民組合総本部中央委員の中村迪君は、まだお見えになりませんので、これをもつて地方税法の一部を改正する法律案についての公述人方々の陳述に、全部終了いたしました。  この際公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多忙中にもかかわりませず、本委員会のために御出席くださいまして、あらゆる角度から貴重かつ豊富なる御意見をお述べくださいまして、本案審査に権威を加えるとともに、多大の参考となりましたことを、委員会を代表いたしまして、ここに厚くお礼を申し上げる次第であります。  それではこれをもつて地方行政委員会公聽会を終了いたします。     午後四時七分散会