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立花委員 日本の新しいフアシズムは、
民主主義の仮面をかぶ
つて出て参
つておりますが、ただいま提案されました
警察法の
改正も、やはり
民主化という名前のもとになされております。このことは、今
自由党の
大泉委員が
賛成討論をなさいました中にも、この
改正法案は民主的な方向をたど
つているから、
賛成だと言われましたことによりましても明らかであろうと思います。ところがこの出された
改正法案は、まつたくただの一条といえ
ども民主化の線に沿つたたものはございません。すべてが実は反動的な改悪であります。また新しいフアシズムの特徴といたしまして、
民主主義と同時に国際主義の仮面をかぶ
つておりますが、実際上は
民主主義じやなく、反動的な諸政策を行うことによりましても、
民主主義の仮面と同時に第二の仮面として国際主義の仮面も、完全にみずからの手ではぎとられつつあるということを、
最後に御証明しておきたいと思うのであります。
まず第一に、
民主主義を標榜いたしまして実は反動的であるという点を、逐条的にひとつ説明したいと思うのです。このことは、今度の
法案に対しまして
全国的な反対が巻き起
つているという事実、これによ
つて何よりも雄弁に証明されていると思うのです。田中東京警視総監あるいは鈴木大阪警視総監の反対を先頭といたしまして、
全国の
警察署長あるいは
公安委員会あるいは
公安委員会の連合会、あるいは
全国の
自治体警察を持
つております
自治体の議会等が、続々と反対をいたしております。この事実は何と申しましても、
警察法案が非民主的であるということを最も雄弁に物語
つていると思う。先般の当
委員会におきましては、
自由党の
委員の川本
委員からも反対の
意見が述べられておりますし、新聞を通じて見ますと、
政府自身がこの
法案の通過に対して、何ら期待し得ないということが現われておりまして、まつたくこの
法案は反動的なものであるということが、
全国的な反対の事実によ
つて証明されていると思うのであります。
まず第一に十二万五千の
警察定員の
わくをはずすことでございますが、この十二万五千の
警察定員の
わくは、これは決してマツカーサーが個人的に決定したものではございません。
日本の戰後の
警察力に対する世界の民主勢力の
一つの決定としての
わくだと思うのです。この
わくが今度の
改正案によりまして、まつたく実質的にはずされているということは、何と申しましてもこれは国内的だけではなしに、世界的な民主勢力に対する裏切りではないか、そういうように私
どもは
はつきりと
考えます。しかもこの十二万五千人の民主的な
わくをはずしまして、拡大強化されます
警察力につきましては、実は
日本の人民は非常に大きな恐怖を感じております。現在におきましても、すでに差押えあるいはストライキに対しましても、
警察官が続々と動員されておりますが、それの
一つのはなはだしい例は、この間のメーデーにおきまして、数千あるいは一万に近い
警察官が動員されまして、労働者のデモであるか、
警察官のデモであるか、まつたくわからなかつたような状態を呈しておりますが、人民は、現在におきましても、すでに
警察の十分なる威圧を感じておりまして、これ以上の
警察の
増強は一人といえ
ども望んでいないのであります。また世界的に申しましても、十二万五千人の
わくをはずされまして、無限に増大いたします
日本の
警察が、完全なる装備を、あるいは武装を持ちますことは、世界にとりまして大きな脅威でありますと同時に、世界の平和を乱すものといたしまして、世界の平和を愛する力は断じて十二万五千人の
わくをはずことには
賛成し得ないと
考えます。
さらに第二点といたしましては、
知事に対しまして、戰時中
知事が持
つておりましたところの出兵請求権とまつたく本質的に同じであるところの
国警の出動請求権を與えておりますが、このことは非常に重大な問題でございまして、まず第一には
警察力を
中央集権的に統括するという問題、さらに第二番目には
地方の
自治体の
公安委員会をまつたく無視するという点。
公安委員会は御
承知のように
警察民主化を最も保障する
機関といたしまして、人民のための
警察にするという建前からつくられました。現在の
制度のうちでは最も
警察民主化を保障する
制度だと思いますが、これを完全に無視いたしまして、
知事が自由に
国家警察の出動を請求することができる——出動を求めることができるということは、まつたくこれは反動的でありまして、人民の
警察あるいは
警察の
民主化の線を
根本的に否定するものであることは疑う余地はございません。さらにこのことが、実は
地方行政全体に対しまして、フアシヨ的な集中支配が行われる糸口になるであろうと
考えます。
警察力を
知事が掌握いたしますことによりまして、その府県のもとにあります
地方自治体の行政に対しましては、おそらく今後
知事が掌握いたしました
警察権力を利用いたしまして、
市町村の行政が大きなフアシヨ的な影響をこうむるであろうことは否定できないと思う。これらのことが最も明白に私たちに教えますことは、現在の
地方自治、これは新しい憲法のもとにおきましても、
日本の行政の
民主化の
基礎といたしまして、新しく一章を設けてつくられておりますところの
地方自治というものが、完全に否定されておる現在の吉田
内閣の政策のもとにおきましては、
地方自治の存立すら危ぶまれるに至
つているということが、最もこの事実によ
つて示されていると思います。
第三番目に私
どもが指摘いたしたいと思いますことは、
警察相互間の情報の交換の問題でございますが、大橋法務総裁は五千の
国警の増員のうちの何千名かは諜報の仕事に従事せしめるというふうに言われておりますが、これは言葉をかえて申しますと、
国家警察の
政治警察化であり、か
つての特高
警察化でありまして、このことはおのずから全体としての
国家警察の行き方を暗示するものだといわざるを得ないと思います。しかもこれと並びまして、
国家警察を
自治警察の上位に置いておりますことは、明らかにマツカーサー元帥自身が固く禁止しておりましたところの
国家警察と
自治警察との連関あるいは
警察国家の
再現ということを、今度の
改正案は明らかにねら
つておると申しても過言ではないと思う。
さらにこの問題に関連いたしまして、
国家警察の
自治警察に対する援助の問題がございますが、これも非常に
条文上はあいまいに
規定されておりまして、
条文の解釈いかんによりましては、
自治警察を絶えず援助の形で、
国家警察の指揮下に置くということが可能でございまして、こうな
つて参りますと、まつたく実質的に
日本のすべての
警察は、
政治警察化いたしました
国家警察の支配下に入らざるを得ないという状態が現出することは、火を見るよりも明らかであろうと
考えます。しかも以上述べましたような、
知事がとりますいろいろな非常的な
措置であるとか、あるいは
国家警察の
自治警察に対する援助であるとか、こういうものに対しましては、
地方の議会に対しまして、單に報告でよろしいということにな
つておりまするが、これは明らかに
地方の民主
機関でありまするところの
地方議会の軽視、あるいは無視と申しても過言ではないと思うのでありますが、單に報告にとどめておきまして、その承認を求めていないという点は、明らかに
地方の民主政治の
根本であるところの
地方議会の無視ではないかと
考えるのであります。こういう重大な問題につきましては、あくまでも執行
機関といたしまして、
地方の決議
機関に対しまして、事後の承認を求めるのが当然であり、それに対しまして
責任の所在を明白にすべきだと思います。
さらに
住民投票の問題でございます。これは
民主党の
修正案にもございますが、
住民投票、なるほど形式的には
住民投票の道を開いておりますが、
住民投票によ
つて住民が選びます道は、ただ
国警移管の道だけである。
組合警察の道は全然とざされているということは、この
警察法改正が明らかに
国家警察への一方的な吸収だけを
考えておりまして、
組合警察すなわち
組合民主化の線をさらに拡充強化するという点はまつたく
考えていない、その道を完全にとざしているという点が、この
条文で最も明白に私は言い得るのではないか、こういうふうに
考えます。
さらに次には
警察費用の問題でございますが、
警察の
費用につきましては、これは
自治体がそれをまかない得るに至るまでは、
国家がそれを
負担すべきであるということは、連合国の
日本に対する指示の中に明白でございまして、現在のような
地方自治体の
財政の窮迫のもとにおきましては、当然
国家が
自治体警察の
費用を
負担せねばならないことは明らかでございますが、これが何ら明白にされてない、その結果
住民といたしましては、
警察の
費用を
国家でまかな
つてくれるならば、
自治体警察で行
つてもよいのだが、これは
国家警察に
負担してもらつた方が、経済的に有利であるというような
考え方をもちまして、そういう欺瞞的なやり方で
国家警察への
自治体警察の吸収を、
住民投票によ
つて民主的な仮面のもとに実施しようということは、非常にこれは悪辣なやり方であるといわざるを得ないと思います。
さらに第七番目には北海道に対しまして、非常に重点を置いておられるようでございますが、特に北海道の
一つの
自治体に対しまして、十四の
公安委員会を持つというようなことが
規定されておりますが、北海道以外の
日本のいずれの
自治体におきましても、ただ
一つの
公安委員会しか持
つていない、ところが北海道だけは
一つの
自治体の中に十四の
公安委員会を持つというようなことは、これはまつたく北海道を特別扱いにしているといわざるを得ないと思うのですが、北海道の特別扱いの問題につきましては、すでにこの
警察法の
改正の中にも
警察学校をつくるとか何とかいう問題がありまして、明白でございますが、さらにこの
改正案以外に、すでに予備隊を北海道に集中する、あるいは先般の朝日新聞によりますと、北海道の二つの港がすでに軍港に
なつた、アメリカの州兵も参
つておりますし、北海道が非常に重点的に
考えられておりますのは、私
どもの
考えでは吉田総理大臣は、おそらく北海道を第二の沖縄とする
考えを持
つているのではないかと思われます。これは思うだけではなしに、事実
改正案がその方向を示しておりますので、これは
国民として特に注意しなければならないと思います。
それから以上のような反動的な内容を持つ
改正案が、実は
警察を
民主化するのだという名目のもとに出されて参
つておるのでございますが、これが出されます以前におきましても、
日本の再武装、
日本のフアシヨ的な行政のあり方の事実につきましては、これはもう世界周知の事実でございまして、たとえば昨年の十一月ポーランドのワルソーで行われました平和擁護世界大会におきましても、やはり一番問題になりましたのは、
日本の再
軍備の問題であり、そこにおきましては
日本の再
軍備反対の決議が明らかになされております。さらに本年の二月ドイツのベルリンで行われました世界平和評議会におきましても、最も大きな問題は、両ドイツと
日本の再
軍備の問題でありました。
日本問題の平和的な解決に関しましての決議の中で、
日本の再
軍備再武装絶対反対、世界第三次大戰の糸口になるであろうところの
日本の再
軍備、再武装絶対反対という決議がなされまして、これが国際連合に対しまして要請されております。またその席上で中国代表の郭沫若さんが行いました演説の中には、明らかに現在の
日本がすでに持つおりますところのいろいろな武装力につきまして、事実に基いて指摘しております。郭沫若さんの演説を少し引用しますと、東条軍閥が持
つておりました、世界が最も恐れました
日本の無敵陸軍は、十七箇師団二十三万、ところが戦後
民主化されまして非武装化されました
日本におきまして、三種類の
警察が生れまして、その員数が二十万、そのほかに一万六千の海上保安隊というものがありまして、さらにこれに加えまして、鉄道公安官の武装であるとか、
警察官吏の武装であるとか、あるいは、
全国おそらく百万以上に達しますところの警防団に対する防火、防空訓練の実施であるとか、こういうものを加えますと、
日本の武装力は実に厖大なるものになる。これに対しまして、世界の平和勢力が、すでに現在におきましても、重大なる関心を払
つておる次第でございます。しかも現在の
日本の状態は、さいぜん述べましたように、北海道に二つの軍港ができたということを、最近の朝日新聞が報道いたしております。それ以外におきましても、私
どもは
日本の
全国至るところに軍事基地があり、航空基地があり、航空網がくもの巣のまうに張られておるということは、よく知
つております。また
日本の重要なる港の大部分が軍事的な目的に使用されているということも
承知しております。か
つての陸海軍の工廠が、軍需品を生産しつつあるということも、そこで働いている労働者はもちろん、
国民全体が知
つておることであります。これと、今申し上げましたような現在すでに
日本が持
つております武装力とが合体しまして、アジアに対しまして、また世界に対しまして、大きな脅威を與えていることはまぎれもありません。しかもこの現在の
日本の武装に対しまして、さらにこれを積極的に
増強しようと申しますのが、今回提出されております、ただいま審議いたしております
警察法の
改正でございまして、これに対しましては、おそらく国内だけではなしに、大きな国際的な反撃が起ることは、間違いないと思います。また
日本がいくら新しいフアシズムの仮面であるところの国際主義を唱えましても、国際的に孤立することは明らかであります。何となれば
日本のこの政策を押し進めますことは、おそらく世界に対しまして、第三次世界大戰の脅威を現実のものとして與えることでございまするから、これに対しましては世界の平和愛好勢力は、おそらく一大反撃を加えるであろうことは、もちろんだと思います。
さらに私
どもが注意しておきたいと思いますのは、この
法案が何らの
予算的裏づけなしに出されたということは、国会に対しまして大きな悪い先例を残しますことになりますので、この点は特に皆様の注意を促しておきたいと思います。人事
委員会におきましては、地域給の改訂
法案の
勧告をするということを言
つておりますが、これに対しまして財源はどうだということを、労働
組合が追究いたしますと、いやこれは
警察法改正の前例があ
つて、
予算措置は必ずしも必要でないのだということを、すでに人事
委員が申しておりますので、まつたくこれは
予算措置の伴わない
法案の通過という点で、国会の一大悪例を残すことになると思いますので、私
どもといたしましては、この点どうしても納得できません。
それから第二にこの
改正案と関連いたしまして、
国民が重大なる関心を持
つておりますのは、
政府が極力やろう、あるいは
民主党の方でも、これの至急拡大実施を要望されましたところの戰犯の追放解除であります。この戰犯の中には多数の
警察関係、特高
関係の戰犯が含まれておるということは明らかでございまして、これがあたかもこの
改正案とほとんど時を同じくしてやられますことは、
国民といたしましては、この
改正案の本質がどこにあるか、またこの
改正案によ
つてでつち上げられますところの武装
警察力というものは、どういう
性格のものであるかということを明らかにいたすことができると思います。
以上要約いたしますと、私
どもは、現在までもすでに
日本の武装化の問題につきましては、世界の平和を愛する人民とともに、強く反対して参りましたが、今回のこの露骨な、まつたくフアシヨ的な
警察法の
改正が出されましたことによりまして、いよいよ吉田
内閣の政策が、いかなるものであるか吉田
内閣の単独講和の政策というものは、いかに人民を弾圧し、あるいは戰争への道であるかということを、ますます確信せざるを得ないのであります。そういう
意味から吉田
内閣の人民弾圧の道であり、
日本の植民地化の道であり、また戰争への道である単独講和の
一環としてのこの
警察法の
改正案には、断固として共産党は反対であります。
また
民主党の出されました
修正案に対しましては、三つの点で、共産党は遺憾ながら
賛成いたしかねます。
まず第一には、
知事の請求権の発動に対しまして、
公安委員会の
勧告を求めた点でございますが、現在の
公安委員会が、実質上は
知事の任命によ
つて生れているということを
考えますと、また実際上の構成は、まつたく反動的な構成であるということを
考えますと、これは決して
改正ではなしに、むしろやお
ちよう的な、自分が選びましたものによ
つて、自分が
勧告を受けるというのでありますから、実質的にはやお
ちよう的な
改正にすぎないのではないか、こういうように
考えます。
さらに第二には人民
投票によ
つて、
組合警察への道を開いたことでございますが、この点に対しましても、さいぜんも
民主党に対する
質問の中でも述べましたが、これは明らかに
民主党自身の政策の
矛盾を現わすのみならず、さいぜんの
床次委員の
賛成討論の中の言葉を借りて言いますと、
地方を兵糧攻めにしておいて、
地方の
自治体警察を
国家地方警察に集中するのだということを言われましたが、兵糧攻めにしている
根本原因は何か、
地方財政を困窮に陥れて
地方を兵糧攻めにいたしまして、
地方自治体警察の返上論を起させております
根本原因は、
日本の再
軍備であります。
日本の再
軍備を主張される
自由党が、
組合警察の道を開かれたといたしましても、これは
民主党自体の大きな
矛盾をみずから暴露されたものであり、
自由党に対し、あるいは
政府原案に対しますこの非難は、
民主党自身が最も大きく受けられなければならない、こう思いますので、反対せざるを得ないのであります。
それから第三は、
公安委員会の
協議会の問題でございますが、
公安委員会の
協議会をお
つくりになること、これは表面では非常にいいように見えますが、さいぜん申しましたように、
地方自治体自身が、県とその県下にあります
市町村との間に、何ら
法制的な
協議会を現在持
つていない。そういう頭同志持
つていないのに、下の
警察関係の
公安委員会だけが、
法制上のある権威を持つた
協議会を持つということは、明らかに
地方の行政自体が、
警察行政になるおそれが多分にあると思うのであります。これは
民主党の再
軍備のための
警察強化という点から申しますと、まことに理論首尾一貫いたしておると
考えますが、われわれ再
軍備に反対である人民の
立場に立ちますものといたしましては、
地方行政がこのような形で
警察行政となることは、絶対に承服できません。
一括して申しますと、
民主党の
修正案は、本質的には、まつたく
原案と同じでございまして、むしろ蛇足をつけ加えたという感がございますので、本
修正案に対しては強く反対いたします。