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1951-05-23 第10回国会 衆議院 地方行政委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十三日(水曜日)     午後三時六分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 龍野喜一郎君 理事 藤田 義光君    理事 門司  亮君       池見 茂隆君    大泉 寛三君       川本 末治君    佐藤 親弘君       田中 啓一君    吉田吉太郎君       鈴木 幹雄君    床次 徳二君       山手 滿男君    久保田鶴松君       立花 敏男君    大石ヨシエ君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     溝淵 増巳君         国家地方警察本         部警視         (総務部長)  加藤 陽三君  委員外出席者         專  門  員 有松  昇君     ――――――――――――― 五月二十二日  委員石原登辞任につき、その補欠として福永  一臣君が議長指名委員に選任された。 同月二十三日  委員久野忠治君及び福永一臣辞任につき、そ  の補欠として生田和平君及び石原登君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十二日  公立病院建築費起債認可に関する陳情書  (第七七七号)  消防力強化に関する陳情書  (第七八八号)  警察法改正に関する陳情書  (第七九二号)  国会議員解職権に関する陳情書  (第七九八号)  を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四二号)     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  警察法の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を続行する前に、去る二十一日お手元に配つておりますような警察法の一部を改正する法律案に対する修正意見法務委員会から正式にお申し出がありましたので、御報告申し上げます。  それではどなたか御質疑がありますか。
  3. 河原伊三郎

    河原委員 質疑打切つてただちに討論に入り、議事の進行をはかられんことを望みます。
  4. 前尾繁三郎

    前尾委員長 河原君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なければさようにいたします。  これより討論採決に入りたいと思いまするが、ただいま国民民主党床次徳二君外三名より修正案委員長手元に提出されておりまするので、まずその趣旨弁明を求めます。     —————————————     —————————————
  6. 床次徳二

    床次委員 それでは法文の順序に従つて御説明申し上げたいと思いますが、第一点は、二十条の二の修正であります。今度の二十条の二というのは、改正案に盛られましたところの新規定でありまするが、これは治安維持上重大なる事案に対しまして、やむを得ない事由があると認められましたときは、府県知事都道府県公安委員会に対しまして、国家地方警察の発動の処置を要望することができるようになつておるのでありまするが、府県知事平素治安に対しまして直接の責任に任じておらない立場からいたしまして、むしろ平素から都道府県治安に関して、責任のありまするところの都道府県公安委員会勧告に基きまして、その勧告基礎のもとに、冷静なる立場で、しかも公平な判断を府県知事にさせるという意味におきまして、都道府県公安委員会勧告に基きて府県知事が発動するように改めたいというのであります。なおこの点に関しましては、第三点におきまして、都道府県公安委員連絡協議会というものを設けられました関係上、さらに都道府県公安委員会治安に対しましては広い意見を持ち得ることになつたのでありまして、都道府県公安委員会から、まず積極的な態度をとるということが、時宜に適したものと考えるのでありまして、この趣旨により改正を加えたのであります。  第二点の修正点は四十条の二でありまして、これは今度の改正案中におきまして、いわゆる人口五千以上の自治警察は、住民投票によりまして、これを国家警察にすることが認められたのでありまして、弱小自治体警察をこの際整理統合すると申しまするか、警察力の薄弱なるものをより強化するという立場において、政府のやられましたところの改正につきましては、一応理由を認めるのでありまするが、しかしながら弱小自治体警察を單に国家警察に移すというのみをもちましては、必ずしも警察力増強にならないということを言うのでありまして、今回の修正におきましては政府の認めておりまするところの弱小自治体警察国家警察に移すということと相伴いまして、現在警察を維持しておりまするところの市または町村におきましては、近隣の町村と共同いたしまして、警察を維持することができる道を開いたのであります。これによりまして自治体警察が積極的に警察力を強化することのできるような道を開いたのであります。関係条文は長くなつておりまするが、これは組合の場合その他の個々の場合に関しまして、それぞれ必要な規定を置きましたためで、趣旨はただいま申し上げましたところによつて盡きておると存じます。  修正の第三点は、第七章の二という新しい条項を設けましたところの公安委員協議会に関するものでありまして、今日提案せられましたところの政府の案の中には、地方自治体警察国家警察との間に、両方の連絡あるいは相互援助義務あるいは関連犯に対する捜査権の拡大と、いろいろと両者連絡によりまして、警察力を強化する規定が設けられておりますが、公安委員そのものに関しましては、大体連絡というものが法文上においては認められておらないのでありまして、実際においてこれとかわるべきものを、あるいは協議会その他等において行つておりまするが、今後公安委員の間における連絡、すなわち国家公安委員都道府県公安委員、また地方市町村公安委員との連絡を十分いたしまして、もつて治安上遺憾なきを期するために、特に中央地方にそれぞれ公安委員中央協議会公安委員地方協議会の二つの連絡機関を設けんとするものであります。その性質は中央におきましては総理府に置きまして、国家公安委員二名、全国都道府県公安委員連合組織が推薦しました都道府県公安委員三名、全国市町村公安委員連合組織が推薦しました町村公安委員五名をもつて組織するのであります。なおこの事務部局につきましては、これは連絡事務にすぎませんので、大した仕事がありません関係上、国警本部に設ける予定にしております。なお議事手続その他の詳しいことに関しましては、これは政令をもつて定めることを予期いたしております。  第六十六条の三は、ただいまの連絡協議会地方協議会に関する規定でありまして、人数は六名、都道府県公安委員が三名、市町村公安委員が三名、これをもちまして組織して、やはり連絡に当らしめる趣旨であります。  なお附則以下等におきましては、関係いたしました条文の整備でありますから御説明申し上げません。  以上はなはだ簡單でありますが、修正案の骨子を申し上げたのでありまして、どうか皆様方の御賛成を得たいと思うのであります。これによりまして今回政府が提案いたしました趣旨が、自治警察並びに国家警察両者におきまして、警察力増強ということになつておりまするが、なお一層民主警察の進展を期するという意味におきまして改善を加え得るものと信ずるのであります。皆様方の御賛成を要望いたしまして、提案の理由といたします。
  7. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この際本修正案に対して質疑があればこれを許します。門司君。
  8. 門司亮

    門司委員 ちよつと一言だけ聞いておきたいと思います。この七章の公安委員協議会の問題でありますが、「公安委員中央協議会は、必要がある場合には、内閣総理大臣その他の関係機関に対し意見を申し出ることができる。」と書いてありますが、これは最後に書いてありまする総理府設置法の一部を次のように改正するというので、総理府の中に設けるという行政的な措置は一応できておりますが、この機関性格をもう少しはつきりとお聞かせを願つておきたいと思います。ただ單に関係機関に対して意見を申し出ることができるというだけの規定であつて内閣がこれに対して法の改正あるいは機構の改革を行おうとするときに、必ずしもこの意見考えなくてもいいように、大体条文から見れば見られるのでありますが、その点の関係をひとつお聞かせを願いたい。
  9. 床次徳二

    床次委員 ただいま門司委員からお尋ねがありましたが、お尋ね通りこの機関は六十六条の二の第一項にありまするごとく「国家地方警察自治体警察及び自治体警察相互連絡を図るため」というふうに書いてありまするが、連絡をはかるのが主眼でありまして、單に積極的な指揮命令あるいは協議以外のことに対しまして、何ら機能考えておらないのであります。なおかかる問題に関しましては、将来の警察法改正につきましては、あるいは問題が出て来ることと考えておりまするが、ただいまの場合におきましては、今日公安委員連絡協議会というものはこの程度におきまして、その目的を達し得るものと考えておるわけであります。
  10. 前尾繁三郎

  11. 立花敏男

    立花委員 この採決の前に討論をやるのだと思つておりましたが、別にやらないで一括しておやりになるということなので、ちよつと聞いておきたいのです。最初の知事の問題ですが、知事が独断でやらずに「都道府県公安委員会勧告に基き」とおつけになつたのは、なるほどひとつの修正だと思いますが、この場合やはり公安委員会性格というものは、知事の任命ということが基本になつて構成されておりますので、こうされる以上は公安委員の公選もお考えになるのが、論理に即するのじやないかと思いますが、その点はどうですか。
  12. 床次徳二

    床次委員 今日におきましては、公安委員会委員選任方法そのものに対しまして、ただちに修正を加えるところまでは私ども考えておらないのでありまして、なお知事が処置いたしました場合の可否の問題に関しましては、規定にありまするごとく、都道府県民の批判というものが将来ありまするので、それをもちまして公平な立場を維持し得るものと、この点は政府原案と同じ立場において考えておるのであります。なお政府原案に対しまして、先ほど申し上げましたが、公安委員の間の連絡協議会というものが設けられましたために、より一層都道府県会安委員会勧告というものが視野が広くなつて参れば、一部国警に偏した勧告をするということが少くなることを、私ども期待いたしておるわけであります。
  13. 立花敏男

    立花委員 次に組合警察の問題でありますが、これも私ども共産党といたしまして、政府との質疑の際に述べましたように、当然組合警察の道を開くべきであると考えておりましたところが、民主党修正案にこれが加えられておりますのは幸いだと思いますが、もう一つどもふしぎに思いますのは、民主党の話に承ります御方針と、この修正案とは多少違つて来る点があるのじやないかと思います。その点は警察費用の問題で、現在自治警察国警に吸収されることを、自治体が要望しています基礎は、何と申しましても地方財政の困難ということでありますが、地方財政の困難はせんじ詰めますと、日本軍事予算ということになつて参ると思うのであります。その点でせつかく民主党修正の中で組合警察の道を開かれましても、結局地方財政中央の軍事的な予算のために、困憊いたして行くあり方が改まりませんと、いくら組合警察の道が開かれましても、その道は実質上閉ざされまして、結局国家警察に行かざるを得ないということになるのじやないかと思うのです。この点で根本的にどういうようにお考えになるか。それから市町村自治体警察を維持するに足る財源を得るに至るまでは、国家がそれを全部負担しなければいけないということは、連合国側の指示によつても明らかなのですが、費用の問題でもはつきりと自治体警察に関して国家責任を明示する条文をおつくりにならなければ、この修正は結局空文に終ると思うのですが、こういう点をどういうふうにお考えか承つておきたいと思います。
  14. 床次徳二

    床次委員 ただいま費用の点に対して御質問がありましたが、警察費に関しましては、すでに当委員会において数回にわたつて、各委員から政府に対して質問があつたのであります。自治体警察に対して、警察費負担国家において少な過ぎるということは、ほとんど全会一致意見であると思つておるのでありまして、この点は政府においても、いわゆる標準警察費用を増額するということに対して、今後積極的な努力をし、善処することを答えられておるのでありますが、現在の警察法を実施して参ります場合におきましても、当然警察單位費用を増額し、財政窮乏陷つて、そのために自治体警察の運用がまずくなるということのないようにいたしたい、この点は私ども同じ意見であります。ただ弱小警察、別の言葉で申しますれば署員が非常に少い、単位の非常に小さい自治体警察は、いずれにいたしましても、地方団体に対する費用が多くありましても、結局弱小である、人数が少いという点におきまして、警察機能に障害があるということを認めておるのでありまして、でき得る限り弱小自治体警察を大きくするという方針において、この道を開いたのであるということを御承知願いたいと思います。費用の点に関しましては、さらに一層平衡交付金等において、政府は善処すべきものと考えておるのであります。
  15. 立花敏男

    立花委員 その点につきまして私ども承るところによりますと、民主党は再軍備賛成である、少くとも民主党の中には、積極的な再軍備賛成意見が非常に強い。そうなつて参りますと、勢い国家予算軍事予算にならざるを得ないと思うのですが、その結果、結局自治体警察国家警察に吸収せざるを得ないような状態が引起されておりますので、その点をもう少し深くお考え願わないと、民主党自体のお考え方の中に非常に大きな矛盾が、私あるのではないかと思いますので、これを機会に、ひとつ警察法改正わく内でのお考えじやなしに、そういう大きな観点から、警察民主化の素材がどこにあるかということを、もう少しつつ込んで御研究していただきたいと思います。  最後お尋ねしておきたいと思いますのは、公安委員会連絡協議会の問題ですが、現在都道府県都道府県内にあります市町村とは、別に法制上の連絡協議会は持つていないわけであります。警察に限りまして法制上の協議会をお持ちになるということは、ちよつとおかしいのじやないか。自治体といたしましてすら、何ら独自の法制上の協議会は持つておりませんのに、警察に限りまして特に法制上の協議会をおつくりになるということは、少しおかしいのじやないかと思うのであります。この点どういうふうに御説明なさいますか。
  16. 床次徳二

    床次委員 第一の問題でありまするが、私ども警察力を整備するということは、やはり日本自衛力を増す一環であるというふうに考えまして、警察法の内容の充実を期待いたしておるのであります。従つて先ほど申し上げました警察費の増額ということに対しましても、十分なる関心を持つておるのであります。国家財政を破壊して、国の自衛というものを別途に考えておるのではなしに、警察を別個にいたしまして、軍備を別に考えておるというのではないのでありまして、これは十分関連いたしました一環として私ども考えておる次第であります。  それから第二の御質問でありまするが、今日地方自治体に関しましては、自治庁初めいろいろの機関があることは御承知だと思いますが、公安委員に関しましては、ほとんどこの連絡関係のものがないのでありまして、特に治安というものを重視いたしました場合におきましては、国家公安委員あるいは都道府県公安委員市町村公安委員、それぞれが有機的な動きをもつてと申しますか、他の管轄の治安に関しましても、十分認識を持つておることが必要であるということを感じまして、ここに連絡協議会をつくつたのであります。今までなかつた方がむしろ非常な欠陷であるというふうに、私ども見ておるのであります。
  17. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは、これより本案並びに修正案を一括して討論に付します。久保田鶴松君。
  18. 久保田鶴松

    久保田委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま出されました警察法の一部改正案に反対するものであります。  およそすべての物事は、一つ根本的な意識はつきりして、それにのつとつて行われなければならないと思うのであります。いやしくも国政においてその根本理念を忘れ、そのときどきの情勢にのみ合して左右されるような迎合意識を持つてなされては、とうてい国民の生活の安定を期し得ることはできない、かように思うのであります。もしこの点を再考されるならば、かかる改正案はおそらく出されなかつただろうと思うのであります。そのために目下わが国民は、ポ政令による至上命令として、民主主義の浸透をなしつつあるのであります。また地方自治確立のために懸命な努力もしていることは、いまさら言を要しないところであります。政府は、このリ声明にありますように、民主化根本を乱すようなことはしないと、しばしば述べられております。今回出されました警察法改正法案は、いかに詭弁を弄せられましようとも、明らかに国警に偏重し、自警を軽視するうらみを持つのであります。そのことは去る三年前のことでございますが、すなわち昭和二十三年に改正されました警察法の重点は、警察国家制度再現の防止を主眼とし、さらに警察民主化自治体警察を持たすことによる地方自治確立を促進するにあつたことは、各位もよく御承知通りであります。ゆえにその主体性を自警に置き、その力の足りない点を国警に補足させることでありました。これこそが真の民主主義理念を全うする姿であり、かくしてよりよき自警強化育成に、その力を注ぐべきであると信ずるのであります。ところが今回改正されます改正案は、まつたくこれに反しまして、国警自警の上に置き、内務省時代再現をはかるの感が非常に深いのであります。わが社会党が反対いたしまする理由は実にその点にありまして、これはまつたく民主化を妨げ、地方分権化に逆行するといわざるを得ないのであります。たとえば人口五千以上の町村は、住民投票によりまして国警に委譲することができる。これでは現在財政窮乏に悩んでおりまする町村は、ほとんど利用するでありましようが、それは警察消防とともに町村住民のものであるという、この観念を破りまして、そうして地方分権は、事実上停止せざるを得ないようになるのであります。部分的にわたりまするならば、自警わくをはずすといつておられますが、その予算的裏づけがなされていない点、また知事にその権限を委譲する点、大きくは警察予備隊法制化せずして、單に国警自治警関係のみを取上げておる点、数うるに枚挙はございません。またすでに同僚門司委員より詳細なる質問によつて開陳されております関係上、省略いたしますが、特に平衡交付金基準算定額たる警察官一人当り十八万円足らずのこの決定、このきめ方は、きわめて不合理といわなければなりません。少くともこの経費につきしましては二十万円以上に変更されなければならないと思います。特に財政的な困難なる点に対しまして、町村に対しては組合警察を認めて、それを法文化すること、このことが自治擁護の誠意を示すものと思うのであります。特に現行警察法は、制度上の欠陷というよりも、財政の困難に起因する欠陥が多いと思うのであります。私は特にこの点を強調いたしたい。そのためには、大幅な国庫補助が行われなければならない。自治警察国庫補助を受けるということは、矛盾ではありますが、しかし現在の地方財政の実情よりいたしますと、やむを得ないことと思われます。そのため暫定的な措置といたしまして、これを行い、また平衡交付金測定單位増加等によつてなされることの方が、従来の中央集権にもどるよりは、はるかにまさると信ずるのであります。かりに国警にもどる経費自警に増額いたしまして、その財政的な裏づけを行い得るといたすならば、自警といたしまして、科学的犯罪捜査、あるいは技術向上、設備の充実等に当らせ、また警察職員志気高揚のための身分保障の道を講じましたならば、住民民主的意思向上をはかることにもなると思うのであります。  なおこういう意味から考えますと、七万五千の警察予備隊を持つわが国といたしましては、国警の必要はむしろないのでありまして、どうしても国警を残したいと思われますなら、国警という文字を取りまして、農村警察と名前をかえて認めるべきだろうと思うのであります。  また一方警察職員に対しましては、公務員の受験の奨励をいたしまして、随時適地に転出させる道を開くべきであると思います。そのため犯罪の検挙あるいは治安維持等について、国警自治警、あるいは予備隊等の障壁を設けずして、能率主義を原則として、互いに協力援助するようにすべきだと思うのであります。  こういう意味から考えますと、今回出されました改正案は、政府の企図するところは、国際情勢に藉口し、自治体財政難に乗じて、改正すべき点を改正せず、法の改正によつて警察地方分権並びに民主化を抹殺して、従来の中央集権的な政治警察へ逆行せんとするものであつて、われわれは民主主義擁護立場より、これに絶対反対し、昭和二十三年に行われました警察制度根本的改革である民主的精神趣旨を、あくまでも堅持するものであります。  なおこの問題を最も具体的に申しますならば、国家警察は、東京の場合は銀座に出て来たいのだ、大阪の場合は心齋橋に出て来たいのだ、こういうようなことにほかならないと私は思うのであります。その例は、ここに出されております国家地方警察統計書、あるいは自治体警察統計書を見ても、九万五千の警察吏員を持ちます自治体警察統計書に使われております紙は十七枚でありますのに対して、三万の警察官を持ちます国家地方警察統計書は六十八枚あります。はかりにかけて見てもよい。実際紙の質まで違うのである。これはまさに旧内務官僚復活へのあがきの現われであります。私はこういう点を見ます場合、いかに自由党議員各位といえども、われわれは公平な国民立場に立つて、この法案を審議しなければならないと思う。そこに露骨に現わされたかようなものを出されて、私たちはこの問題をそう簡單に、国家警察考え方がいい、出された法案がいいというようなことは考えられません。自由党議員各位も、おそらくそう思われるだろうと私は思うのであります。こういう意味におきまして、ただいま出されました修正案も、遺憾ながらその基本的相違によりまして反対せざるを得ないと同時に、原案に対しまして反対いたしまして、私の討論を終りたいと思います。
  19. 前尾繁三郎

  20. 大泉寛三

    大泉委員 私は自由党を代表して、今回政府の提案した警察法の一部を改正する法律案に対し、賛成の意を表せんとするものであります。  賛成の要旨は、結論的に申せば、改正法案現行警察法の不備欠陷を是正して、総合的警察力充実を期し、もつて現下の地方行政に即応して、治安確保の全きをはからんとしておるのであります。これを具体的に申せば、国家地方警察自治体警察、また自治体警察相互のそれぞれの間に、技術的連繋をはかる、必要な場合においてはよく協力の実をあげて、警察本来の使命の遂行に遺憾なからしめるとともに、でき得る限り地方自治体警察費負担の軽減をはかり、その規模の小なるものは、これを住民の選択によつて廃止し、または設置し得る道を開いて、地方の要望に沿うているからであります。  そもそも新警察制度は施行以来三年、民主警察の長所もあるのでありますが、一面において急激な改革はわが国情に沿わない点もあり、時の推移とともに、その欠陷や不備が感じられ、警察法改正について、朝野の間に盛んに論議せられてから、すでに久しいものがあるのであります。警察法改正の必要なことは、権威ある公の機関あるいは諸団体から、提出されたこれに関する多くの請願、陳情、あるいは私どもの国政調査の結果についてみても明らかであります。特に昨年来の国の内外の情勢から、また実際の治安事件の経験に徴して、喫緊の要務と感じられるに至つたのでありますが、問題の要点とするところは、次の二点となると思うのであります。  その第一点は、自治体警察の創立は、もとより警察民主化の上からけつこうなことであるが、その單位はあまりに小さ過ぎるため、財政上の面からはもとより、運営機能の面からも、とうてい健全な発達は望まれないから、その單位を引上げねばならないとするものであります。  第二点は、国家地方警察自治体警察とが並び存し、かつそれが多くの独立小單位となつて散在しているのは、地方分権理由からは可なりとするも、いずれの警察もかえつてその完全な機能を果し得ない。他の警察の協力援助も期待しがたい。このような状態では、警察地方自治体にとつても、国家にとつても、非能率かつ不経済なものとなつてしまうから、自治体警察創設の精神に反しない限り、両警察の協力をさらに円滑にするよう、運営及び財政の面から十分の改善をなすべきであるということであります。政府提案の今回の改正案は、もとより警察法根本改正ではなく、またこの改正のみをもつてしては、よくその所期の目的を達し得るとは思いませんが、現下の情勢に照し、近年の経験に徴して、この程度の改正は、右に述べました地方の要望にこたえ、警察力の強化充実のために必要であると思うのであります。  申すまでもなく、新警察法根本としては、警察制度民主化あるいは地方分権の理想とともに、強力な警察力による公の秩序維持と、国民の権利自由の確保という要請があるのであります。この二つの要求は一見相反するものであり、両者の具体的な調整は困難でありますが、政府は本法案の立案にあたつては、この点に十分な考慮を拂つたことは、当局の説明にも明らかなところであります。民主警察の精神を尊重しつつ、警察力の強化と能率化をはかるために、現行法の欠陷を是正するについて、苦心の跡がうかがわれるのであります。私が本案に賛意を表するのは、おおよそ以上の趣旨によるのであります。  民主警察の本旨は、もとより大切でありますが、いたずらに過小の自治体警察を、多くの不利と不経済をしのんで存置すべきでなく、また国家地方警察自治体警察が相並び立ち、それぞれの分野があるとともに、国警にある程度の補充的、調整的な任務が與えられていることが、警察法上の建前とすれば、それ相当の人員や権限の整備は必要でありまして、また情勢の変化に即応する必要もあると思うのであります。また警察が国の事務であるか、地方団体の国有の事務であるかの論議はともかくといたしまして、私の考えとしては、地方分権の理想は没却すべきでないが、国家地方警察自治体警察と区分して、全然別個のものと見る見方はとるべきでない。少くとも警察の作用それ自体としては、双方の機能を一体として見るべきであると思うのであります。この意味において、現在の情勢下では、両者の相当な協力関係を整備することが必要であり、特に国家地方警察は、自治体警察と違つて住民との関係は薄く、その協力も求めがたい事情もあり、また今後自治体警察は人員の減少を相当量予想せられるから、一方それだけ国家地方警察の機動力の増大を期すべきであると思うのであります。これは決して自治体警察を軽視するのでなく、また国警優越を認めるのでもなく、警察中央集権化をはかるものでもありません。互いに協力補充して、全体として警察機能の有機的一元化をはかり、もつて治安確保の万全に寄與するものと思うのであります。  以上の理由をもつて、私は政府提案の本案に対して賛成するものであります。また先刻民主党から提出されました修正案に対して反対するものであります。
  21. 前尾繁三郎

  22. 床次徳二

    床次委員 私は国民民主党を代表いたしまして、ただいま提案いたしました修正案賛成、並びに修正案を除きました原案賛成の意を表するものであります。  私ども警察力を拡充するということは、現下の内外情勢より見まして、まことに必要だと存じておりまして、一日も早くその実現を要望しておるのであります。これに対しましては警察法根本改正も準備をいたしておるのでありますが、提案せられました時期がおそく、なお今日においてこれが審議を続けることは、むしろ警察力の拡充を遅らすことをおそれましたので、案は持つておりますが、残念ながら応急の案という意味におきまして、修正を加えまして、そうして政府案を成立せしめんとするものであります。修正をいたしました理由につきましては、先ほど申し上げましたから、重ねて申し上げることを省略いたします。  なお改正案に対しまして、少し要望をいたしたいと思うのであります。なおわが修正案に対しまして、ただいま自由党の方から御意見がありましたが、いろいろお述べになつておりますることを聞きますると、修正案の根拠がないということを指摘されるよりも、むしろ修正案の必要があるということをお示しになつたように考えるのであります。  なお案によつて数点申し上げますると、私ども自治体警察というものに対して、もつと能率の向上をはからなければならぬと思う。このためには平衡交付金の増額が必要である。同時に警察費の増額が必要であるということは、ただいまも仰せになりましたが、この点は絶対必要と考えておるのであります。自治体警察国家地方警察が、一人当り職員に対しまして四、五万円も金額に開きがあるということは、今日私どもは納得できない。しかも自治体警察におきましては、これが地方住民負担になつておる。国家地方警察に移したならば、警察に対する負担をまぬがれることができるということは、何と申しましても非常に大きな矛盾であり、この点はすみやかに解決せられなければならない。今自由党討論においても言われたし、また門司委員から社会党を代表して言われたことがありますが、今日の政府原案をもつていたしましたならば、政府の方ではいたずらに自治体警察窮乏に陷れ、兵糧攻めにしておきまして、これの存立を許さない状態にしておきまして、これを国家地方警察に吸収するというかのごとき印象を與えておるのでありまして、私どもは今日の警察法立場上、自治体警察並びに国家地方警察両者ともども健全な、しかも能率的な運営を要望しておる。かような立場におきまして、今後平衡交付金の増額を一日も早く実現せられたいのであります。なおこの際自治体警察も遺憾なく能力が発揮できまするような処置を当然とるべきものであるということを考えておるのでありまして、この点政府におかれましても、過般答弁せられましたごとく、十分この点は誠意を持つて実行していただきたいと思うのであります。  第二点は、予算の問題でありますが、今回の改正に伴いますところの政府予算措置というものが、事後になつておる点ははなはだ遺憾であります。なおこれに関連いたして二、三申し上げてみると、平衡交付金におきまして、自治体警察を廃止しました場合、あるいは自治体におきましては交付金を減少してもさしつかえないという議論もあろうかと思いますが、これは決してさようなものではなくして、平衡交付金そのものにつきましては、すこぶる不足を告げておりますので、たとい自治体警察を廃止したからといつて、この費用平衡交付金から取上げることがありましたならば、これははなはだしく不当なことでありまして、重々かかることはなかるべきことを、私ども確信いたしているのであります。なお政府においては、国家警察の増加費用に対しましては、今日予算措置をしておらぬ。また定員増によりまするところのものに対しましても、予算措置が遅れておりますが、すみやかに追加補正をいたしまして、警察の運営に遺憾なきを期していただきたい。これが地方団体に対して累を及ぼすことのないよう、ひとつこの際はつきりしていただきたいと思います。  第三点は、今後警察能力の向上また警察職員の質の向上という立場から見まして、自治体警察国家警察の人事に対しまして、ある程度まで交流を考えることも必要であろう。この点に対しましては、もつと積極的な配慮を要望するものであります。元来動かないのが、それぞれの独立した特色であるという意見考えられますが、警察能力の向上、互いに練磨し視野を広くし警察能力を上げるという点から見ますると一部の交流ということは当然必要になつて来ると思うのでありまして、この点は積極的にお考えいただきたいと思うのであります。  第四点は今後におきまして、警察官の質の向上、さらに装備の充実ということを一層考えていただきたいのであります。相当経費の不足は感じておりますが、しかしその経費をもちまして、この方面に向けていただくということが特に必要だと思うのであります。なお今回定員増加が行われまして、国家警察がある程度まで人数はふえて参りますが、この増加定員の配置ということにつきましては、現実に即して十分に考えていただきたいのであります。なお今回の改正によりますところの、自治体警察があるいは住民投票の結果廃止せられるという場合につきましては、相当職員において身分の動揺があり、一応国家警察に吸収されると思いますからいいわけでありますが、何どき移転が行われるかというような状態にありますことは、自治体警察機能の発揮上はなはだ遺憾なことであると思うのでありまして、この点も実際に即しまして遺憾なき方法を期していただきたい。なお先ほども申し上げましたが、自治体警察に対しましては、その機能の発揮できるように、特に財政的におきましても十分の配意をせられるということが、今日警察職員の大部分を占めるところの警察官機能を発揮せしむるゆえんであるのであります。国家警察はまだ数からいつて少いのでありまして、自治体警察の職員がほんとうに能率を上げるということは今日の治安維持責任上から申しますると、その方が部分が多いのでありまして、国家警察政府考え方が偏重しているという誤解を與えましたならば、これはすこぶる遺憾であります。国家警察並びに自治体警察ともどもにこれを十分進展助長せられ、もつて民主警察の実を上げられるように努力せられることを要望いたしまして、私の討論趣旨とする次第であります。
  23. 前尾繁三郎

    前尾委員長 立花敏男君。
  24. 立花敏男

    立花委員 日本の新しいフアシズムは、民主主義の仮面をかぶつて出て参つておりますが、ただいま提案されました警察法改正も、やはり民主化という名前のもとになされております。このことは、今自由党大泉委員賛成討論をなさいました中にも、この改正法案は民主的な方向をたどつているから、賛成だと言われましたことによりましても明らかであろうと思います。ところがこの出された改正法案は、まつたくただの一条といえども民主化の線に沿つたたものはございません。すべてが実は反動的な改悪であります。また新しいフアシズムの特徴といたしまして、民主主義と同時に国際主義の仮面をかぶつておりますが、実際上は民主主義じやなく、反動的な諸政策を行うことによりましても、民主主義の仮面と同時に第二の仮面として国際主義の仮面も、完全にみずからの手ではぎとられつつあるということを、最後に御証明しておきたいと思うのであります。  まず第一に、民主主義を標榜いたしまして実は反動的であるという点を、逐条的にひとつ説明したいと思うのです。このことは、今度の法案に対しまして全国的な反対が巻き起つているという事実、これによつて何よりも雄弁に証明されていると思うのです。田中東京警視総監あるいは鈴木大阪警視総監の反対を先頭といたしまして、全国警察署長あるいは公安委員会あるいは公安委員会の連合会、あるいは全国自治体警察を持つております自治体の議会等が、続々と反対をいたしております。この事実は何と申しましても、警察法案が非民主的であるということを最も雄弁に物語つていると思う。先般の当委員会におきましては、自由党委員の川本委員からも反対の意見が述べられておりますし、新聞を通じて見ますと、政府自身がこの法案の通過に対して、何ら期待し得ないということが現われておりまして、まつたくこの法案は反動的なものであるということが、全国的な反対の事実によつて証明されていると思うのであります。  まず第一に十二万五千の警察定員のわくをはずすことでございますが、この十二万五千の警察定員のわくは、これは決してマツカーサーが個人的に決定したものではございません。日本の戰後の警察力に対する世界の民主勢力の一つの決定としてのわくだと思うのです。このわくが今度の改正案によりまして、まつたく実質的にはずされているということは、何と申しましてもこれは国内的だけではなしに、世界的な民主勢力に対する裏切りではないか、そういうように私どもはつきりと考えます。しかもこの十二万五千人の民主的なわくをはずしまして、拡大強化されます警察力につきましては、実は日本の人民は非常に大きな恐怖を感じております。現在におきましても、すでに差押えあるいはストライキに対しましても、警察官が続々と動員されておりますが、それの一つのはなはだしい例は、この間のメーデーにおきまして、数千あるいは一万に近い警察官が動員されまして、労働者のデモであるか、警察官のデモであるか、まつたくわからなかつたような状態を呈しておりますが、人民は、現在におきましても、すでに警察の十分なる威圧を感じておりまして、これ以上の警察増強は一人といえども望んでいないのであります。また世界的に申しましても、十二万五千人のわくをはずされまして、無限に増大いたします日本警察が、完全なる装備を、あるいは武装を持ちますことは、世界にとりまして大きな脅威でありますと同時に、世界の平和を乱すものといたしまして、世界の平和を愛する力は断じて十二万五千人のわくをはずことには賛成し得ないと考えます。  さらに第二点といたしましては、知事に対しまして、戰時中知事が持つておりましたところの出兵請求権とまつたく本質的に同じであるところの国警の出動請求権を與えておりますが、このことは非常に重大な問題でございまして、まず第一には警察力中央集権的に統括するという問題、さらに第二番目には地方自治体公安委員会をまつたく無視するという点。公安委員会は御承知のように警察民主化を最も保障する機関といたしまして、人民のための警察にするという建前からつくられました。現在の制度のうちでは最も警察民主化を保障する制度だと思いますが、これを完全に無視いたしまして、知事が自由に国家警察の出動を請求することができる——出動を求めることができるということは、まつたくこれは反動的でありまして、人民の警察あるいは警察民主化の線を根本的に否定するものであることは疑う余地はございません。さらにこのことが、実は地方行政全体に対しまして、フアシヨ的な集中支配が行われる糸口になるであろうと考えます。警察力知事が掌握いたしますことによりまして、その府県のもとにあります地方自治体の行政に対しましては、おそらく今後知事が掌握いたしました警察権力を利用いたしまして、市町村の行政が大きなフアシヨ的な影響をこうむるであろうことは否定できないと思う。これらのことが最も明白に私たちに教えますことは、現在の地方自治、これは新しい憲法のもとにおきましても、日本の行政の民主化基礎といたしまして、新しく一章を設けてつくられておりますところの地方自治というものが、完全に否定されておる現在の吉田内閣の政策のもとにおきましては、地方自治の存立すら危ぶまれるに至つているということが、最もこの事実によつて示されていると思います。  第三番目に私どもが指摘いたしたいと思いますことは、警察相互間の情報の交換の問題でございますが、大橋法務総裁は五千の国警の増員のうちの何千名かは諜報の仕事に従事せしめるというふうに言われておりますが、これは言葉をかえて申しますと、国家警察政治警察化であり、かつての特高警察化でありまして、このことはおのずから全体としての国家警察の行き方を暗示するものだといわざるを得ないと思います。しかもこれと並びまして、国家警察自治警察の上位に置いておりますことは、明らかにマツカーサー元帥自身が固く禁止しておりましたところの国家警察自治警察との連関あるいは警察国家再現ということを、今度の改正案は明らかにねらつておると申しても過言ではないと思う。  さらにこの問題に関連いたしまして、国家警察自治警察に対する援助の問題がございますが、これも非常に条文上はあいまいに規定されておりまして、条文の解釈いかんによりましては、自治警察を絶えず援助の形で、国家警察の指揮下に置くということが可能でございまして、こうなつて参りますと、まつたく実質的に日本のすべての警察は、政治警察化いたしました国家警察の支配下に入らざるを得ないという状態が現出することは、火を見るよりも明らかであろうと考えます。しかも以上述べましたような、知事がとりますいろいろな非常的な措置であるとか、あるいは国家警察自治警察に対する援助であるとか、こういうものに対しましては、地方の議会に対しまして、單に報告でよろしいということになつておりまするが、これは明らかに地方の民主機関でありまするところの地方議会の軽視、あるいは無視と申しても過言ではないと思うのでありますが、單に報告にとどめておきまして、その承認を求めていないという点は、明らかに地方の民主政治の根本であるところの地方議会の無視ではないかと考えるのであります。こういう重大な問題につきましては、あくまでも執行機関といたしまして、地方の決議機関に対しまして、事後の承認を求めるのが当然であり、それに対しまして責任の所在を明白にすべきだと思います。  さらに住民投票の問題でございます。これは民主党修正案にもございますが、住民投票、なるほど形式的には住民投票の道を開いておりますが、住民投票によつて住民が選びます道は、ただ国警移管の道だけである。組合警察の道は全然とざされているということは、この警察法改正が明らかに国家警察への一方的な吸収だけを考えておりまして、組合警察すなわち組合民主化の線をさらに拡充強化するという点はまつたく考えていない、その道を完全にとざしているという点が、この条文で最も明白に私は言い得るのではないか、こういうふうに考えます。  さらに次には警察費用の問題でございますが、警察費用につきましては、これは自治体がそれをまかない得るに至るまでは、国家がそれを負担すべきであるということは、連合国の日本に対する指示の中に明白でございまして、現在のような地方自治体財政の窮迫のもとにおきましては、当然国家自治体警察費用負担せねばならないことは明らかでございますが、これが何ら明白にされてない、その結果住民といたしましては、警察費用国家でまかなつてくれるならば、自治体警察で行つてもよいのだが、これは国家警察負担してもらつた方が、経済的に有利であるというような考え方をもちまして、そういう欺瞞的なやり方で国家警察への自治体警察の吸収を、住民投票によつて民主的な仮面のもとに実施しようということは、非常にこれは悪辣なやり方であるといわざるを得ないと思います。  さらに第七番目には北海道に対しまして、非常に重点を置いておられるようでございますが、特に北海道の一つ自治体に対しまして、十四の公安委員会を持つというようなことが規定されておりますが、北海道以外の日本のいずれの自治体におきましても、ただ一つ公安委員会しか持つていない、ところが北海道だけは一つ自治体の中に十四の公安委員会を持つというようなことは、これはまつたく北海道を特別扱いにしているといわざるを得ないと思うのですが、北海道の特別扱いの問題につきましては、すでにこの警察法改正の中にも警察学校をつくるとか何とかいう問題がありまして、明白でございますが、さらにこの改正案以外に、すでに予備隊を北海道に集中する、あるいは先般の朝日新聞によりますと、北海道の二つの港がすでに軍港になつた、アメリカの州兵も参つておりますし、北海道が非常に重点的に考えられておりますのは、私ども考えでは吉田総理大臣は、おそらく北海道を第二の沖縄とする考えを持つているのではないかと思われます。これは思うだけではなしに、事実改正案がその方向を示しておりますので、これは国民として特に注意しなければならないと思います。  それから以上のような反動的な内容を持つ改正案が、実は警察民主化するのだという名目のもとに出されて参つておるのでございますが、これが出されます以前におきましても、日本の再武装、日本のフアシヨ的な行政のあり方の事実につきましては、これはもう世界周知の事実でございまして、たとえば昨年の十一月ポーランドのワルソーで行われました平和擁護世界大会におきましても、やはり一番問題になりましたのは、日本の再軍備の問題であり、そこにおきましては日本の再軍備反対の決議が明らかになされております。さらに本年の二月ドイツのベルリンで行われました世界平和評議会におきましても、最も大きな問題は、両ドイツと日本の再軍備の問題でありました。日本問題の平和的な解決に関しましての決議の中で、日本の再軍備再武装絶対反対、世界第三次大戰の糸口になるであろうところの日本の再軍備、再武装絶対反対という決議がなされまして、これが国際連合に対しまして要請されております。またその席上で中国代表の郭沫若さんが行いました演説の中には、明らかに現在の日本がすでに持つおりますところのいろいろな武装力につきまして、事実に基いて指摘しております。郭沫若さんの演説を少し引用しますと、東条軍閥が持つておりました、世界が最も恐れました日本の無敵陸軍は、十七箇師団二十三万、ところが戦後民主化されまして非武装化されました日本におきまして、三種類の警察が生れまして、その員数が二十万、そのほかに一万六千の海上保安隊というものがありまして、さらにこれに加えまして、鉄道公安官の武装であるとか、警察官吏の武装であるとか、あるいは、全国おそらく百万以上に達しますところの警防団に対する防火、防空訓練の実施であるとか、こういうものを加えますと、日本の武装力は実に厖大なるものになる。これに対しまして、世界の平和勢力が、すでに現在におきましても、重大なる関心を払つておる次第でございます。しかも現在の日本の状態は、さいぜん述べましたように、北海道に二つの軍港ができたということを、最近の朝日新聞が報道いたしております。それ以外におきましても、私ども日本全国至るところに軍事基地があり、航空基地があり、航空網がくもの巣のまうに張られておるということは、よく知つております。また日本の重要なる港の大部分が軍事的な目的に使用されているということも承知しております。かつての陸海軍の工廠が、軍需品を生産しつつあるということも、そこで働いている労働者はもちろん、国民全体が知つておることであります。これと、今申し上げましたような現在すでに日本が持つております武装力とが合体しまして、アジアに対しまして、また世界に対しまして、大きな脅威を與えていることはまぎれもありません。しかもこの現在の日本の武装に対しまして、さらにこれを積極的に増強しようと申しますのが、今回提出されております、ただいま審議いたしております警察法改正でございまして、これに対しましては、おそらく国内だけではなしに、大きな国際的な反撃が起ることは、間違いないと思います。また日本がいくら新しいフアシズムの仮面であるところの国際主義を唱えましても、国際的に孤立することは明らかであります。何となれば日本のこの政策を押し進めますことは、おそらく世界に対しまして、第三次世界大戰の脅威を現実のものとして與えることでございまするから、これに対しましては世界の平和愛好勢力は、おそらく一大反撃を加えるであろうことは、もちろんだと思います。  さらに私どもが注意しておきたいと思いますのは、この法案が何らの予算的裏づけなしに出されたということは、国会に対しまして大きな悪い先例を残しますことになりますので、この点は特に皆様の注意を促しておきたいと思います。人事委員会におきましては、地域給の改訂法案勧告をするということを言つておりますが、これに対しまして財源はどうだということを、労働組合が追究いたしますと、いやこれは警察法改正の前例があつて予算措置は必ずしも必要でないのだということを、すでに人事委員が申しておりますので、まつたくこれは予算措置の伴わない法案の通過という点で、国会の一大悪例を残すことになると思いますので、私どもといたしましては、この点どうしても納得できません。  それから第二にこの改正案と関連いたしまして、国民が重大なる関心を持つておりますのは、政府が極力やろう、あるいは民主党の方でも、これの至急拡大実施を要望されましたところの戰犯の追放解除であります。この戰犯の中には多数の警察関係、特高関係の戰犯が含まれておるということは明らかでございまして、これがあたかもこの改正案とほとんど時を同じくしてやられますことは、国民といたしましては、この改正案の本質がどこにあるか、またこの改正案によつてでつち上げられますところの武装警察力というものは、どういう性格のものであるかということを明らかにいたすことができると思います。  以上要約いたしますと、私どもは、現在までもすでに日本の武装化の問題につきましては、世界の平和を愛する人民とともに、強く反対して参りましたが、今回のこの露骨な、まつたくフアシヨ的な警察法改正が出されましたことによりまして、いよいよ吉田内閣の政策が、いかなるものであるか吉田内閣の単独講和の政策というものは、いかに人民を弾圧し、あるいは戰争への道であるかということを、ますます確信せざるを得ないのであります。そういう意味から吉田内閣の人民弾圧の道であり、日本の植民地化の道であり、また戰争への道である単独講和の一環としてのこの警察法改正案には、断固として共産党は反対であります。  また民主党の出されました修正案に対しましては、三つの点で、共産党は遺憾ながら賛成いたしかねます。  まず第一には、知事の請求権の発動に対しまして、公安委員会勧告を求めた点でございますが、現在の公安委員会が、実質上は知事の任命によつて生れているということを考えますと、また実際上の構成は、まつたく反動的な構成であるということを考えますと、これは決して改正ではなしに、むしろやおちよう的な、自分が選びましたものによつて、自分が勧告を受けるというのでありますから、実質的にはやおちよう的な改正にすぎないのではないか、こういうように考えます。  さらに第二には人民投票によつて組合警察への道を開いたことでございますが、この点に対しましても、さいぜんも民主党に対する質問の中でも述べましたが、これは明らかに民主党自身の政策の矛盾を現わすのみならず、さいぜんの床次委員賛成討論の中の言葉を借りて言いますと、地方を兵糧攻めにしておいて、地方自治体警察国家地方警察に集中するのだということを言われましたが、兵糧攻めにしている根本原因は何か、地方財政を困窮に陥れて地方を兵糧攻めにいたしまして、地方自治体警察の返上論を起させております根本原因は、日本の再軍備であります。日本の再軍備を主張される自由党が、組合警察の道を開かれたといたしましても、これは民主党自体の大きな矛盾をみずから暴露されたものであり、自由党に対し、あるいは政府原案に対しますこの非難は、民主党自身が最も大きく受けられなければならない、こう思いますので、反対せざるを得ないのであります。  それから第三は、公安委員会協議会の問題でございますが、公安委員会協議会をおつくりになること、これは表面では非常にいいように見えますが、さいぜん申しましたように、地方自治体自身が、県とその県下にあります市町村との間に、何ら法制的な協議会を現在持つていない。そういう頭同志持つていないのに、下の警察関係公安委員会だけが、法制上のある権威を持つた協議会を持つということは、明らかに地方の行政自体が、警察行政になるおそれが多分にあると思うのであります。これは民主党の再軍備のための警察強化という点から申しますと、まことに理論首尾一貫いたしておると考えますが、われわれ再軍備に反対である人民の立場に立ちますものといたしましては、地方行政がこのような形で警察行政となることは、絶対に承服できません。  一括して申しますと、民主党修正案は、本質的には、まつたく原案と同じでございまして、むしろ蛇足をつけ加えたという感がございますので、本修正案に対しては強く反対いたします。
  25. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。まず国民民主党床次徳二君外三名より提出の修正案について採決いたします。  本修正案賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  26. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立少数。よつて修正案は否決されました。  次に政府原案について採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  27. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立多数。よつて本案は原案通り可決されました。  この際お諮りいたしますが、衆議院規則第八十六条による報告書の作成につきましては、委員長一任に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  28. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十二分散会