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1951-05-19 第10回国会 衆議院 地方行政委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十九日(土曜日)     午後二時三十一分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 龍野喜一郎君 理事 門司  亮君       大泉 寛三君    川本 末治君       小玉 治行君    鈴木 幹雄君       床次 徳二君    山手 滿男君       久保田鶴松君    立花 敏男君       大石ヨシエ君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部次長     溝淵 増巳君         国家地方警察本         部警視         (総務部長)  加藤 陽三君  委員外出席者         專  門  員 有松  昇君     ————————————— 五月十八日  委員高橋權六君及び丸山直友辞任につき、そ  の補欠として川本末治君及び佐藤親弘君が議長  の指名委員に選任された。 同月十九日  委員梨木作次郎辞任につき、その補欠として  立花敏男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十七日  地方公務員法の制定に伴う関係法律の整理に関  する法律案内閣提出第一六七号)(予) 同月十八日  地方財政確立に関する請願小澤佐重喜君紹  介)(第一九八六号)  警察法の一部改正に関する請願久保田鶴松君  紹介)(第二〇九一号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四二号)     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  警察法の一部を改正する法律案を議題として質疑を続行いたします。河原伊三郎君。
  3. 河原伊三郎

    河原委員 今度の改正案によりまして、自治体警察国家地方警察に返上せられました場合の職員の処遇につきまして、先般の合同委員会で、国家地方警察におります警察職員と、自治体警察から参りました職員との任用の時期等の問題もあるけれども、なるべく国家地方警察へ参つたために減俸にならないように考える方針であるという意味の御答弁を得ておるのでありますが、單に給与の問題だけでなく、階級の問題はどういうふうになるか。聞き及んでおるところによりますと、これは全国的であるか、もしくは私ども地方だけかは存じませんが、自治体警察から国家地方警察へ参る場合には、一階級下げられるのが普通であると聞き及んでおるのでありますが、本改正法によりまして、自治体警察から国家地方警察へ参ります場合は、階級の点はどういうふうにせられるお考えてあるか、お伺いいたしたいのでございます。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 原則といたしましては、自治体警察から国家地方警察へ編入がえになりましたものは、現在の階級、現在の給与を標準といたしまして、これを引きとるということにいたしたいと存じております。大体におきまして、今日自治体警察に勤務しておられる諸君は、昭和二十三年の制度切りかえ当時に、国警に残つておる人たちとともに、古い府県警察部に勤務をいたしておつた。これが双方にわかれておるというのが実情でありますので、この両者がまた一つところへ勤めるということになるわけでございますから、この間にやはりある程度の均衡考えることが必要であろうと思うのであります。従いまして階級給与等におきましても、自治体警察に参つている間に、特別の事情によつて非常に進級あるいは昇給いたしたというような特殊の人々につきましては、これはそうした考慮の上から申しまして、ある程度の調整を加えられるということもあり得るとは存じますが、しかし原則といたしましては、できるだけ現在の階級、現在の給与というものを基準にいたしまして、それらの例外的な調整というものを頭に入れながら、均衡のとれた措置をとつて参りたい、こう考えておる次第であります。
  5. 前尾繁三郎

  6. 立花敏男

    立花委員 最初にお尋ねしておきたいと思いますのは、民主警察法ができましたのは、マツカーサー書簡に負うところが多いのですが、そのマツカーサー書簡は現在生きているのか、死んでいるのか、これをひとつ承りたい。
  7. 大橋武夫

    大橋国務大臣 マツカーサー元帥書簡は、一つの歴史的事実として残つておるばかりでなく、その内容といたしましては、日本警察制度の改革ということについての総司令官としての占領政策という意味におきまして、日本政府に対して要請された、そういつた規範的な事項を含んでおるわけでありまして、これらの規範的な事項というものは、やはり日本政府に対して要請された一つの指示、あるいは命令というような意味合いにおきまして、今日なお効力を持つものである、こう観念いたしております。
  8. 立花敏男

    立花委員 規範としては示されておりますものの中で、やはり数が一応大きな規範一つとして示されておる。その数を今度ははずすことになつておるのですが、それはその規範なり、命令なり生きておるといたしますと、それは無視してもいいものであるかどうか。
  9. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回の改正案内容というものは、これは総司令部打合せ済みでございまして、従つて今回の案において、従来の規範的な部分改正されておる。その限りにおきましては、従来の規範的なものの効力は変更せられておる、こう考えるべきだと思います。
  10. 立花敏男

    立花委員 総司令部打合せ済みだとおつしやられますが、私どもはその内容をつまびらかにしていないわけでありますが、その点つまびらかにしていただけるかどうか。それからマツカーサー書簡といたしましては、公的に発表されまして私どもつておるわけでありますが、その内容のどの部分がどのように変更されているかということが、はつきりしておりませんのでわからないわけであります。それを一応はつきりされた上でこの法案は審議さるべきものではないかと思います。その点どういうふうにお考えになりますか。
  11. 大橋武夫

    大橋国務大臣 書簡内容となつております規範的な部分は、原則的に維持されているのでありまして、今回の改正案に盛られた内容に属する部分のみが明らかに変更せられておるのであります。そしてそれも国会において成立するということが、もちろん前提となつての話であると思います。
  12. 立花敏男

    立花委員 それでは法案として出されました以外には、根本的に修正された部分はないということに承られると思うのですが、十二万五千というものは、これは何と申しましても大きな規範ではないかと思うのですが、そういう規範だけが改正されて、ほかの問題はそのまま生きている、どうもその点はつきりしないのですが、これはやはり新しい書簡の形とか、あるいは打合せ内容とかを、国民はつきりする必要があるのじやないかと思います。その点はお考えになつておられませんか。
  13. 大橋武夫

    大橋国務大臣 新しい書簡は頂戴いたしてはおりません。
  14. 立花敏男

    立花委員 そういたしますと、国民としては、非常に疑惑と申しますか、はつきりしない部分がありまして、さきの書簡などは、さいぜん申しましたようにはつきりしておりまして、国民一般に知つているのですが、それの重大な修正が、ただ政府との任意的な交渉でやられて、しかもそれ自体が発表されないで、法案の形で部分的に出て来ておるということになりますと、非常にあいまいなんです。そういたしますと、マツカーサー書簡が生きておりまして、実際どの部分修正なつたのかということは、この具体的な法案と突き合せて見なければわからぬということになつて来るのですが、そういう重大な日本行政に対する命令規範あるいは要請というようなものが、そういう形であいまいにされることは、国民にとりまして非常に迷惑であり、これはどうしてもはつきりなさる必要があると思うのですが、政府の方でははつきりなさる必要がないとお考えになるのか。どういたしましてもこれははつきりしていただきたい。その点はつきりなさるおつもりはないのか。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 あるいは私の先ほどの答弁が誤解を生じたかもしれませんが、マツカーサー元帥警察制度に関する書簡そのものは、一言一句も変更されずに今日残つておるわけであります。そしてその内容として示されてあるところの警察制度を実現いたしたものが、今日の警察法でありますが、これに対しまして、その後の経験を生かして修正をいたしたいという希望を、日本側としては持つておるわけであります。その旨を先方に申し出たわけでありまして、この改正案についてオーケーをもらつたという形になつておるのであります。従いまして、この改正案内容となつております事柄が、幸いに国会におきまして可決せられた場合におきましては、これを法律として実施することについては、当然司令部としては許可を与えられる事柄だ、こういうように考えておるのであります。それによつて手紙内容事柄が変更されるのは当然である、こういうことになるであろうということを考えておるわけであります。
  16. 立花敏男

    立花委員 そのわくの問題で、もう一つお尋ねいたしておきたいのは、国警わくは非常に厳密に考慮されておりますが、自治警わくは無条件的に限度をおはずしになつておる。なぜ国警わくはそういう重大な考慮を払われて、自治警わくは簡單におはずしになるのか。自治警わくをおはずしになる結果といたしまして、結局国警わくも実質上はずされた形になるのですが、そうとつていいかどうか。何となれば、自治警わくをおはずしになるとすれば、自治警幾らでもふやしておいて、それを国警に編入するという決定がなされると、自治警わく幾らふやしてもいいのであるから、編入される国警の方の数も幾らでも増加できるわけだ、こういうことが結果として出て来る可能性があると思う。そういうことについていかにお考えになりますか。
  17. 大橋武夫

    大橋国務大臣 なるほど、りくつといたしましては、自治体警察廃止いたします直前におきまして非常な増員を行い、そしてこれを廃止したことによつて国警にたくさんの人を入れる、こういうことも考え得るわけでありますが、しかし政府といたしましては、むろんそういうようなことを奨励する意図もなければ、またそういうふうなことがあるであろうということも予想はいたしておりません。従いまして、これによつて非常にたくさんの警察官が入つて来るというようなことは、まずないものという考えのもとに、この立案をいたしたわけであります。
  18. 立花敏男

    立花委員 政府では、大体市以下の自治警を吸收したといたしましても一万六、七千とお考えのようでありますが、それは現行においてでございまして、幾らふやしてもいいという建前なんですから、これが二万になるか、三万になるかわからぬと思うのですが、そうなりました場合でも全部吸收なさるのか、その点をひとつお伺いしておきたい。  もう一つあわせて定員の問題ですが、警察事務関係職員も全部吸收なさるのか、それは別に考慮なさるのか、その点もひとつ……。
  19. 大橋武夫

    大橋国務大臣 大体今回吸收が可能となりますところの自治体警察は、最も小規模なる町村警察のみでございまして、ことにこれらの町村警察国警移管になるということは、自治体廃止をするという場合でございますから、そういう場合に必要以上の定員が置かれるということは、まずあり得ない。現在これらの町村警察警察官の総数は、約一万九千ばかりでございますが、全部が統合せられましても、これと大差ない人員にすぎない、こういうふうに考えております。
  20. 立花敏男

    立花委員 それらを総合いたしまして、結局自治警わくをはずしたということになるのですが、たとえばそうなつて、結局警察全体の十二万五千のわくをはずしたということと実質的には同じなんですが、そう考えてよいのかどうか。そういたしますと、最初に問題になりましたマツカーサー書簡によりまして——マツカーサー書簡と申しますのは、決してマツカーサー個人のものではなく、連合国日本警察に対する総意だと思うのですが、十二万五千というわくが、とにかく一応はずされてしまつたということになると思うのですが、マツカーサー書簡が生きておると言われながら、しかも十二万五千というのは最も重大な規範だと思う。このわくが実質的にはずされたと同じようなことをやることが許されるのかどうか。またこれは占領行政一般に関することだと思うのですが、今までの政府に対する書簡なり、何なりの重大な問題を、こういう形でこれから続々と国会で自主的にやつていいのか、政府はそういうお考えなのか、その点を承りたい。
  21. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この自治体警察九万五千人というわくは、書簡に基いて現在の警察法ができました当時から、これは永久に自治体警察警察官定員をこれ以下に制限しようという趣旨ではないのでありまして、その当時からすでに、将来自治体財政その他の点が許すようになりましたならば、自治体の保有する警察官定員を、自主的に自由にきめてしかるべきものであるということが、法律に明らかにせられておるのでありまして、今日はその時機が到来をいたしたという次第でございまして、当初から予定せられた範囲内の事柄であります。
  22. 立花敏男

    立花委員 しかしその場合は、やはり十二万五千というわく修正が、公式な文書ではつきりとなさるべきだと思うのですが、今回はそれがなくてやられておる。今までは政府としては少くともそういう形をとつてつて、一旦書簡か何か発せられますと、その原則はどこまでも守つて、私ども幾ら反対いたしましても、政府はむしろそれを墨守して行く形をとられておるのですが、今回の警察法改正だけに限つてそういう形がとられている。今後そういう形で、GHQからお出しになりました書簡なり、示唆なり、規範なりを国会で自主的にかえ得るという見通しを持つておられるのかどうか。
  23. 大橋武夫

    大橋国務大臣 他の事柄については私はよく承知いたしておりませんが、警察法につきましては、この改正案国会において成立をいたしました場合には必ず実施することが許される、かように考えております。
  24. 立花敏男

    立花委員 その問題はそれくらいにしておきまして、予算の問題なんですが、聞くところによりますと、法案だけは今回の議会で通しておいて、予算措置臨時国会だというふうに言われておるのですが、これはどうも従来の法案の審議とは根本的に違つた考え方だと思う。一体政府はいつごろ臨時国会をお開きになるつもりであり、それに幾らくらいの予算をお出しになるつもりであり、またそれが必ず通るという見通しをお持ちになつておるか、それを承つておきませんと、私ども予算措置を伴わない法案を審議いたしましても、これは事実空文にすぎないのでありまして、やる必要はないと思うのです。政府は、十月一日から自治警を吸收するのだ、それまでに臨時国会が開かれるからいいのだという御説明のようですが、しかし法案を見ますと、公布の日から施行するとなつておりまして、自治警の問題以外の解散に含まれておる問題は、やはりおやりになるのだ、国警の問題もおやりになるのだ、こういう問題の予算措置は一体どうなさるおつもりか、資金のやりくりの問題だけではなしに、正式な予算措置としてどういうふうにお考えになつておるか、ひとつ聞いておきたい。
  25. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回の改正案のうち、補正予算あるいはそうした予算的措置ができなければ実施することができないという個所は、第一は、国家地方警察の五千人の増員という点、第二は、自治体警察廃止いたしました場合において、これにかわり、国家地方警察警察権の責任をかわつて引受ける。この二つの項目だけは、予算的な措置を当然必要とする事柄であります。その他の事柄につきましては、予算的措置が必要でないものばかりでありまして、すなわち特別な経費支出を必要としないもの、あるいは現行予算範囲内において、経理できるというものでございます。従いましてこれらの条項につきましては、当然施行いたしまするならば、ただちに実施する準備を持つておるわけであります。ところで残りました二つの点につきましては、予算的措置を必要とするものでありまするが、自治体警察廃止ということは、十月一日からこれを国家地方警察で引受けるということに相なつておりますので、それまでの間に臨時国会が開かれ、また必要な補正予算について御承認を願い得ると、かような前提のもとにこの法案を提案いたした次第であります。
  26. 立花敏男

    立花委員 吉田総理大臣は、よく仮定の上に立つた論議だというのですが、臨時国会がそれまでに開かれて、必ず予算も通過するという建前なんですが、これはどういたしましても、私は原則的に間違つておるのじやないか。仕事をどんどんやつてつてしまつて予算がどうなろうと、あとで事後承認の形になりまして、幾らでもいるだけ初めからとつてもいいという形になつて参りますので、それじや費用負担する国民の方ではたまらないと思うのですが、その点はどうお考えでございますか。少くともこの自治警を吸收いたしますと、国家負担は、百億近いような金になるのではないかと私は思います。これを法案だけを通しておいて、法案が通つてしまつたから、予算をどうしても承知しろという形になつて参りますと、これは負担する人民の側ではたまらないと思うのですが、こういう行き方は、私従来国会予算を重視して先議して参りました建前から申しますと、どういたしましても逆じやないか。その点で非常に悪例を残すと思う。この点どういうふうにお考えになりますか。  それから大橋総裁説明では、自治体警察の問題と、五千人増員予算以外には、予算の問題は伴わないとおつしやいましたが、これは違うのじやないか。たとえば応援規定がありまして、応援に参りましたものは国家費用負担するという場合があります。情報交換規定がございますし、これらにはやはり費用が伴わなくて応援もやれるわけでもありませんし、情報交換にいたしましても、義務づけられますと、やはりそれだけの費用がいるわけであります。この点を費用がいらずにおやりなさる見通しは一体どこから立てられますか。これをひとつ聞いておきたいと思います。
  27. 大橋武夫

    大橋国務大臣 予算編成の実際上の問題といたしまして、問題となりますのは、十月一日からはたして自治体からの警察官移管がどの程度必要となるかという問題でございまして、これには、その前提といたしまして、市町村における住民投票というものが必要となるのでございますが、こういうことはやはりあらかじめ法律根拠はつきりいたしませんと、試みにやつてみるというわけにも参りませんので、やはり予算見通しを立てる上から申しますと、まずもつて法律制度を固めておいてやるということが、実際予算編成の上からいつても適当である、かように考えるのでございます。一般事業についての予算は、大体事業をやるということになりますると、予算はおのずから立て得るわけでございますが、かように法律を実施しなければきまつて来ないという要素が、予算内容となつておるのでございますから、これは従来の他の例とは違つて来るのもやむを得ない、こう考えておるわけであります。さような意味におきましてこれは特殊な例であります。何事についてもかようなやり方をするという意味ではございません。この事柄限つてやむを得ざる一つやり方である、こう考えるわけであります。  それから応援あるいは犯罪情報というような点について、費用がかかるであろうということでございまするが、実を申しますると、応援等につきましては、従来とも地方自治体が現実に負担の能力がないために、国家地方警察支出をいたしておつた例が多いのでございまして、これははつきり申し上げますると、現行警察法趣旨から見ますると、これは法律に違反するというような結果になつておるわけでありまして、そうしたことで相当応援というものについて国費の支出ということも行われておつたというような関係上、特に現行予算以上に特別にたくさんの経費を要求しなければならないというふうには見ておらないわけであります。それから犯罪情報の問題でございますが、これにつきましても、国家地方警察といたしましては、法律根拠を持たずに、事実上警察運営の必要から見て必要であると思われるような情報は、自治体警察に対しても流しておるのであります。これもまた国家地方警察として特別に多額の経費を見積らなければやれないというふうには考えておらないわけでございます。
  28. 前尾繁三郎

  29. 門司亮

    門司委員 私はきようは条文について少し聞きたいと思いますが、この前の会議で大体十九条から二十条までを一応聞いておりますので、それから先を少しお聞きしたいと思います。最初に聞いておきたいと思いますることは、住民投票関係でありますが、住民投票の意義について、ひとつお聞かせを願いたいと思います。それはこの四十条とその次にありまする四十条の二のところで、多少矛盾したことが書いてあるようでありまするので、これを一括してお聞きしたいと思います。なるほど警察制度財政的あるいはその他の関係から、自治警察として持つて行くことができないという場合には、これを一方的にやめるということでなくして、住民意思でこれを決定することができるということは、一面民主的のようにも聞えまするが、この前も総括論のときに申し上げましたように、その原因を十分探究しないと、そしてどうして自治警察でやつて行けないかということについて、もし欠陷があるとすれば、それを補うというようなことが考えられないで、ただちにこれを住民意思だから返すというのが、民主的であるというような考え方は、やはり警察法をこしらえた精神に非常にもとるのではないかということは、この前申し上げた通りでありますから、それは申し上げませんが、この四十条の二の中に、組合警察の場合に、その組合を形づくつております市町村一つ町村が、住民投票によつて反対を決議すれば、国家地方警察へこれを編入することができるように解釈のできるような条文が、ここに書いてあるのでありますが、この点は非常に重大でありまして、このページから申し上げますと、八ページでありますが、八ページの四行目に「警察事務を共同で処理する市町村組合を組織する町村のいづれかが、第三項の規定による投票によつて警察を維持しないことを決定したときは、その町村は、地方自治法第二百八十六条又は第二百八十八条の規定にかかわらず、警察を維持しないものとなる。この場合の措置について必要な事項は、政令で定める。」こう書いてあるのであります。これがはたして住民意思であるかどうかということは、御存じのように自治法の中には、ここに条文が書いてあります通りに、行政を行いますことのために便利であれは、組合によつて町村を形づくることができるということになつておる。今日日本の国では、この組合によつて行政をやつております町村は相当あると私は思う。ことに多いところになりますと、四箇町村あるいは五箇町村ぐらいがまとまつて参りまして、行政を行つておる。ところがその中の一つ住民投票によつてこれができない、国家に返上する方がいいという決議をすれば、ただちにそれは町村組合規定にかかわらず、これを国家地方警察に編入することができる、その措置については必要なことは政令で定める、こう書いてあるのであります。これはまつた住民投票というものの考え方と反するものの考え方であつて、もし住民投票ということでありますならば、やはり地方の円満なる行政を行いますためには、組合を組織いたしておりまする町村が、全部これを住民投票に付して、その結果でないと、非常に少数の人が、何かの感情で、もし組合警察廃止しようじやないかというようなことになつた場合には、きわめて少数の人の意見で、これが決定づけられるような結果になりはしないかと考えられる。この点についてこの政令内容その他等が、もし御発表ができますならば、この機会にひとつつておきたいと思います。
  30. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この規定は、町村組合によつて警察事務を共同に処理しておりまするいわゆる組合警察に加入しているそのうちの一つ町村が、自分の町村ではもう警察を維持しないことにしたい、こういう意思を決定をいたしました際に、組合からは、当然に脱退する、こういう趣旨規定であります。この場合に、組合から脱退する地方自治法の特別の処置を講じなくてもよろしい、いわゆる二重の手続を省く、こういう意味規定であります。このために、他の町村警察を持たなくなる、あるいは四箇町村組合をつくつておりまする場合、一箇町村がやめたという場合に、他の三箇町村は当然組合を解消する、そういうことにはならないのでありまして、やめるときめたところだけが当然に脱退して行く、これをさらに組合会議にかけて、そうして脱退をする措置を講じるという地方自治法による手続を、二重に踏む必要はないというだけのことであります。
  31. 門司亮

    門司委員 もしそうだといたしますと、そこで問題になりますのは、この裏づけをするものが何かなければならないと私は考える。というのは現行法によりますと、大体自治警察を持ちます範囲というものが、きめられております関係から、もし一つ組合に加入いたしております町村が脱退することによつて、その範囲がくずれて来る危険性が私は多分にあると思う。その場合には必然的にその組合は崩壊せざるを得ないのであります。その場合にその処置を一体いずれにこれをするかということが、私は残された一つの問題だと思うのであります。この規定は、一応今齋藤長官が御説明になりましたことは、説明書か何かの中で拝聴いたしておりますが、私はそういうところに必ず危険性が出て来ると思う。そうすると現行法のいわゆる人口五千という線を、ある程度まで修正しておきませんと、その住民意思にあらざるにいたしましても、自分たちが投票して、存続することがいいか悪いかの賛否に加わらないものまでも、これによつて強制される危険性が出て来ると私は思う。この点はどういうふうに補うことになつておりますか、その点をもう一度伺つておきたいと思います。
  32. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 町村警察を持ち得る資格のある町村のみが、共同して警察組合を持つことができるのであります。従いまして、四箇町村を合せて、その規模によつて警察を持ち得るかどうかという基準にはなつておりませんので、一つあるいは二つが脱退いたしましても、元に残つておりますものは、すべて警察を持ち得る資格を初めから持つておるのでありまして、これには影響を来さないのであります。
  33. 門司亮

    門司委員 だんだん問題が出て来ると思いますが、もしそうだといたしますと、残された組合は、ことさらにだんだん財政上の逼迫も出て来ましようし、おそらく一つ町村だけが財政負担しておるわけではございませんで、全部の町村負担しておりますので、財政的の逼迫というものがだんだんここに生まれて来るという事実上の問題が起つて来ると私は思う。理論ではなしに、事実上に四つの組合でやつてつたものが、一つが脱退することになると、三つになる。三つではことさらに組合の維持が困難になつて来るであろうということで、この警察法修正案の大体の骨子はそこにあると私は思う。従つてだんだんそういうことで、何といいまするか、平たい言葉で申し上げますると、裏の方から、からめ手の方からこれをくずして行つて自治体警察が成り立たぬようなことに私は必ずなると思う。従つてこの条項は、私どもの意見といたしましては、その組合を形づくつておりまする組合全体が、国に返上することがいいという考えを持つたときに、これをするようにいたしておきませんと、さつき申し上げておりまするように、何かの感情で一つ組合が脱退いたして参りますると、残つておりまするものだけでは、とうてい維持することはできない。そこでこれは強引に不本意ながらも、一つ町村が脱退したことのために、残りの町村も勢い自治体警察をやめなければならないようなはめに追い込まれる危険性を持つていると思う。これを防止することは、さつきの齋藤長官の御説明によりますと、おのおのが持つことのできる組合であるから、任意に持てばいいじやないかという理論でありますが、そういう理論は、りくつとしては一応そういうりくつは成り立つかもしれませんが、実際上の問題としては、ここに町村の自治を破壊して行く一つの大きながんといいまするか、原因が私は出て来ると思う。そういうことについては、ひとつわれわれとしては、今の御答弁だけでは、実際上の問題としてはとうてい処理はできない。自分たちは自治体警察国家警察に返上することは好まないが、しかし組合を形づくつている一つのものが脱退したことのために、やはり維持ができなくなつて来る。従つて不本意ながら自分たちもそれにならつて、やはり国警にこれを委譲して行こうじやないかというようなことが、現実の問題として必ず出て来る。りくつでは通らぬと思う。しかもその現実の問題を巻き起すものが、もし感情等であつたとすれば、せつかくできた隣接町村との融和というものは、ここからくずれて来る可能性を持つておると私は思う。こういう危険な条文については、これをできるだけ避けて行きたい。そうしてやはり組合警察組合警察全体の意思の上に、これを廃止するなり、あるいは存続するなりをきめることができるようにしておく必要があるのじやないか、こういう考えを持つております。こういう点についての御意見をひとつお聞かせ願いたい。同時に住民投票によつて自治警察国家警察に委譲することができるという条件は、無条件でこれを取入れるというようなことでなくして、それにはやはり一定の、十分それをやつて行けるかどうかということについての何らかの次の処置を講じ得る段階が、この際必要ではないかということを私は申し上げたいのであります。それはなぜであるかと申し上げますと、先ほど申し上げましたように、ことに組合もそうでありますが、あるいは一つ自治体の中におきましても、何かの感情の行き違いというか、そういうことで作為的にこういうことが行われ、そうして実際は住民にとつては不利益であるが、しかし勢いのおもむくところ、そういうことができたということがないとは私は限らぬと思う。自治体警察としてやつて行けるならば、十分やつて行けるのだ。しかしそういう感情を抜きにしても、経済上の問題から国警でまかなつた方が負担が軽くなるのだから、国警に持つて行こうじやないかということになると、警察法施行のときにこの前も朗読いたしましたようなマツカーサー書簡趣旨に反する形が、ここに出て来やしないかというように考えるが、この点についてのお考えは一体どうであるか。
  34. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 ただいまの第一点の方の御心配は、一応ごもつともと思うのでございますが、組合警察をつくつております町村が、自分のところは組合から脱退したいんだ。またさらに進んで廃止したいんだという意思表示をいたしました場合には、この組合から脱退する手続をとり、そうして住民投票をさらに行う手続をしなければならぬわけであります。しかしながら組合は脱退をした、それから今度は住民投票をやつてみたところが、そうは行かなかつたということになりますと、また今度は独立して持つか、あるいはもう一ぺん加入をするかという手続をしなければならぬと考えます。一番の基本は、その町村警察廃止したいという住民意思が決定をいたしましてから、さらに組合を解くという手続をとるのが、順序ということに相なりましようが、警察を持たないという意思決定をいたしました以上は、さらに地方自治法に基いて、その組合から脱退をするという手続をとることが、これは当然むだなことではなかろうかというのが、法律上の見解なのでございまして、実際上の扱いといたしましては、おそらくその組合をつくつております各町村と相談をいたしまして、自分のところは持たないことにしたいと思うというような話合いがあり、その上で住民投票ということになるのであろうと思うのでありますけれども、これを法律にいたしまして、ひとたび組合をつくつた以上は、そこの住民の全部の意思廃止をしたいと思つても、組合に加入しておるということのために束縛されるということに相なつては、かえつて民主主義的な考えにも反するのではなかろうか、かように考える次第であります。さような意味から、このように当然の二重手続をどこか一つの手続で済まして、他を省略した方が事務処理上も便宜である、かように考えた次第でございます。
  35. 門司亮

    門司委員 私はさつき申し上げましたようなことで、もしできれば政令で定めると書いてありますが、その政令内容を十分検討して行きたいと思います。私はさつき齋藤長官からも話されましたように、手続はやはり十分ふんでおきませんと、そういう形で何かの感情の行き違いで、一つ町村が脱退することによつて、他の町村は好むと好まざるとにかかわらず、これに引きずられて行つて、解散をせざるを得ぬ状態に、必ず追い込まれると思う。ことに自治警察の一番困難な問題は、財政の問題であります関係上、私は必ずそこへ行く。むしろこの条項は逆に弱小の自治警察組合を組織して、それによつて完全に自治警察の実をあげるようにするということが、私は望ましい行き方ではないかと考えておる。この警察法改正いたしましたときの趣旨、さらにマツカーサー書簡によります精神を生かそうとするならば、組合警察を組織しておるところが、一つ町村がかつてに脱退ができるという、こういう脱退すること、あるいは自治警察を返上することを一面しいるような形よりも、自治警察が十分にやつて行けるような形、弱小な自治警察はできるだけ隣接の町村と合併して、組合警察をつくつてつて、そうして組合が完全に、警察自治警察としての実をあげ得るようにすることの方が、私は民主的警察の今日のあり方としては正しい行き方だと思う。この条項はまつた警察法政令施行の趣旨と逆の行き方を、ここに示しておるということをはつきり申し上げても、決してさしつかえないと思う。日本の今日の行政企画の上から申し上げますならば、御存じのように小さな町村、あるいは市と町がつながつておるところがたくさんある。二つの市を一つにし、二つの町を一つにすれば、自治警察としての十分の実をあげ得ることができる。そういうことを一方において奨励しないでおいて、せつかく組合として自治警察が発足いたしておりますものを、その町村だけの意思で、自治警察廃止せしめて、そうして残りの町村をも必然的に廃止せざるを得ないような運命に落して行こうというようなことは、これはまた警察力を收奪する陰謀だと考えております。警察法の改悪は、ここに最も大きな原因が現われて来ておるのではないかと私は思う。もしほんとうにあなた方が自治警察というものを、育てて行こうという意向があるならば、私が先ほど申し上げましたような制度こそ望ましい制度である。それを慫慂しないで、逆に自治警察を崩壊の方向に導いて行くというような法律案考え方はどうかと考えております。従つてとつ政令内容をできるだけ早くお示し願いたい。  それからその次に聞いておきたいことは、次の四十六条であります。四十六条のしまいに「市町村警察吏員の定員は、地方的要求に応じてその市町村が条例でこれを決定する」と書いてあります。ここで九万五千のわくがはずれることになるのでありますが、この地方的要求というのは、一体何をさして言われておるか、これの内容をひとつ説明願いたいと思います。
  36. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 地方的要求という言葉を使つておりますのは、その町村の実情に応じて、こういう程度のものなのであります。別に他から何ら制肘をされない、その市町村が自分の見たところで、このくらいが必要だという、そういう実際の実情に応じてという程度の意味でございます。
  37. 門司亮

    門司委員 至つて軽い意味のようにお考えになつておると思いますが、これは非常に大きな問題だと思う。もしこの地方的要求ということの正しい認識ができないで、これを誤つて地方議会等で決議したならば、私は治安上ゆゆしい問題が起りはしないかと考える。この条項は今齋藤長官の言われるような軽い意味で、もしきめられておつたとするなら、この警察法改正されまする中で、きわめて重要な問題だ。これは私はもう少し考慮を払うべき問題じやないかと思います。ただそれだけの理由で、それを自由にとることができるということになつて参りますと、非常に危険ができると思いますので、でき得ればわれわれはやはりこれを何らかの形で——許可認可という形はどうかと思いまするが、しかし国の治安の総元締めというものは、憲法で示されておりますように、政府が持つておることは間違いありませんし、総理大臣がその責任者であることも間違いない。しかし警察制度の上からいいますならば、国家公安委員というものが、また運営管理に当つておるということも事実であります。従つてこの地方的要求に応じてというようなことだけで、市町村がきわめて自由に取捨選択ができるということになつて参りますと、治安の上では非常に危険ができて参りますので、これはやはり指揮命令をするというのではなくても、一応国家公安委員会あるいは内閣総理大臣というような責任を持つておりまするものの意見というものが、十分これに反映することのできるような仕組みにしておいた方がいいのではないかと考えるが、この点はどういうようにお考えになりますか。
  38. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 警察法建前といたしましては、自治体警察の区域内における警察活動並びにそれによる治安の維持というものを、全面的に自治体警察を信頼するという建前にできておるのであります。このたびの第二十条の二の規定におきまして、さような場合における万一の場合の救済規定を設けてあるのでありますが、それ以外におきましては全面的に信頼をし、その信頼の上に立つて設けておるのであります。従いましてその警察定員にいたしましても、装備にいたしましても、さような面はすべて当該自治体法律上はまかしておく、そうして自主的に決定してもらうということが、私は一番自治体警察の本旨を生かすゆえんであろう、かように考えておる次第であります。
  39. 門司亮

    門司委員 私はあらためて言つておきますが、一体政府は、今の日本の治安状況というものが、そういうことで事足りるとお考えになつておるかどうかということであります。この法律改正するにあたりましても、これは明らかに警察の強化であります。一方においては強化をしなければならないような状態になつておりまするときに、ことに警察官増員しようというようなときに、地方自治体地方的要求に応じてというような言葉だけで、これは条例で定めると書いてありまするから、おそらく地方の議会で決定することだと思いますが、地方の議会で自分の所はこれだけの警察があつて、これだけの装備さえあればそれでいいのだというようなこと、また実際上の問題として考えて参りますると、これだけの人員がいり、これだけの装備を必要とするということを考えて参りましても、経済上の実情からそれが許されないというような場合、これがただちに財政平衡交付金にも関係を持つて参りますので、そういう経済的の関係から、できるだけこれを縮小するということが、経済的な立場からのみ考えれば考えられる。しかしそのことが治安の上には危険があるということになつて参りますと、国全体の治安を考えて参りまするときに、必ずしもこれは——今齋藤さんのお話のように、地方自治体を尊重することがいいということになれば、全部地方自治体を尊重されたらいいと私は思う。そうして国家警察とか、地方警察とか、自治警察とかいうようなわくをはずして、自由におのおのの公共団体が、單位ごとに自治警察にするものはしてもいいし、国警にするものはしてもいいということにするか、あるいは全部これを自治警察にしてしまうということの方が私はいいと思う。国で警察の人員の数がきめられ、あるいはいろいろなものがきめられておりまする今日の段階においては、これを單なる地方的要求というような言葉で、地方の議会にまかす、あるいは町村会にまかせるということは、少し時期が早いのではないかということと、同時に先ほどから申し上げておりまするように、これにはやはり何らかの一定の規格というようなものは、しいるわけではございませんが一応示して、そうして治安に遺漏のないように仕向けることが必要だと私は思います。しかしこの点は先ほどの御答弁で、それ以上お聞きはいたしません。  もう一つこの条項で聞いておきたいことは、警察官の九万五千のわくがここではずされて参りますと、たとえば現行制度、いわゆる政令の二条で定めておりまする人口比率によつて、昨年の十月一日の国勢調査の数によりますることを勘案いたして参りますると、非常に警察官はふえることになる。これを全部勘案して参りますと、大体三万二千人余りふえることになる。そうすると、この条項で九万五千がはずされれば、大体三万二千というような数がふえるような見込みを一体政府は立てられておるのか、これが減るようになつておるのか。それから同時にあの政令廃止されるのかどうか。その点をひとつお伺いしておきたいと思います。
  40. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 あの政令は九万五千のわくから出ておる政令でございますから、当然廃止になると考えております。どのくらいふえるであろうかという御質問でありますが、なるほどただいまおつしやいましたようにあの政令の基準通り最近の国勢調査の人口に当てこみますと、おつしやる通り三万二千ふえるということになつておるのでありますが、私は実際はそんなにはふえないだろうと考えております。当時九万五千を千六百あまりの自治体警察定員を割り振るという意味から、実際は人口基準を設けたという点も勘案をしなければならぬのでありまして、あの政令通り、人口がふえたからさらにふやして行かなければならぬということには——人口がふえればそれに応じて必ずしもふやさなければならぬかという実質問題には、相当研究の余地があると考えております。現実にただいままで定員増加の要望のありましたところは、六大都市よりもむしろ中くらいの都市でありまして、この政令通りに人口に当てはめまして最もふえるのは六大都市であります。これで約二万三千が六大都市でふえるのでありますが、六大都市は、たとえば警視庁におきましては百三十人に一人という定員になつておりますから、人口が倍になつたからさらに倍の二万近くふやさなければならぬかというと、そこは疑問であります。さような意味から六大都市ではそうふえるとは考えられません。中小都市で若干ふえるであろうと考えております。ただいままで増加の要求の熾烈でありましたものをそのままに認めまして三千人あまりであるかと考えております。中小の中であるいは人口が減つたとかいうので、部分的には減る部分もあるかもしれません。
  41. 門司亮

    門司委員 警察官定員のことでもう一つ聞いておきたいと思いますが、大体今の数字でお話のように、八大市がふやすとすれば二万三千ばかりふえる。中小都市では大体三万二千くらいしかふえない、しかし問題になつて参りますのはこの二万三千ふえる見込みになることになつておりますが、政令廃止されれば、これは現状のままで大体四万八千名にとどまつて、七万一千にはならないという一応の見通しがつけられる。その次の中都市が現在六千七百が、九千九百くらいにふえて行くということは一応想像される。そういうことになつて参りますと、大体ここで三千人ばかりの人間がふえるということは、私ははつきり言えると思う。それからその次のいわゆる二十万から十万までの間の都市も、やはりこれはふえるということになりますと、これは現行政令通りにふやして参りますと、二千六百ふえることになる。さらに市以上の警察がふやして参りますと、これもやはり千八百という数字がふえて行く。大体こういうふうに数字を現行政令通りにふやして行つて、たとえば八大市の二方三千がかりにふえないといたしましても、八大市を除いた残りの市以上全体が現行通りに大体ふやして行くという勘定をして参りますと、約七千ばかりの警察官がどうしてもふえなければならない、こういう形が出て参るのであります。従つてこの条文で九万五千がはずされますと、八大市を除いた市の警察官増員というものは、約七千人ばかりがふえると私は思う。それからさらにもう一つ問題になつて参りますのは、町村警察がかりに全部国警に委譲されるという形が一応出て来るといたしますと、これもかなり大きな数字が出るのではないか。現在一万八千五百という数字を出しておりますが、現在の一万八千五百が必ずしも全部一ぺんに国家地方警察に收容されるとは考えられません。しかしこの中の半分がかりに国家地方警察に来るといたしましても、約九千あるいは一万の増員が必ず国警に行われると考える。そうなつて参りますと、五千の警察官をこの法律国警がふやすということになつておりますが、実質的には、この五千に加えるに、さらに一万ぐらいの人間が必ずふえるだろうと思います。そういたしますと、それだけは地方自治体経費が一応節約されますので、経費関係から申し上げますと、国家の総合的な関係から見ると、大した違いはございませんが、実際国家支出いたしますものは、今度新たに十九条で加えられた五千と、さらにこの町村以下の自治警察が、かりに半分がやめて、これを国警に委譲するといたしましても、約一万の増員になりますので、合計一万五千の国警増員がこの際行われると思う。この予算的措置は一体どういうふうにお考えになつておるのか、われわれはこの点を一応明らかにしておきたいと考えておるのであります。  それからもう一つ確かめておきたいと思いますことは、先ほど申し上げましたように、八大市を除く他の市以上の警察官で、大体七千人内外のものが増員されるであろうということは、私どもの見方が違つておるのかどうか、当局はどうそれをお考えになつているか、その点をもう一つお聞かせ願いたいと思います。
  42. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 私が申しました三千人くらいというのは、すべてを合せまして、その程度以下であろうと、かように申し上げたのでありまして、二十万以上の市では三千人というのではありません。ここに数字は三千という数字が合つておりますが、たとえば福岡市からは、かねがね増員の要求がこの法律改正前にも出ておりましたが、それは二百五十七人の増員という要求でありました。もちろんこれは当該市の財政当局と打合せた数字であるかどうか疑問でありますが、一応警察の方の要求があつたわけであります。これがこの計算によりますと、人口基準で同じようにふやすということにいたしますと、約四百人ふえる。それを二百五十七人でよろしいということになつております。大体市の十万から二十万までの警察官一人当りの人口と申しますものが、四百人に一人ということになつておりますから、この割合でそうふえて来ないであろう。今まで要望のありましたものを集計いたしましても、三千人に満たない。しかもそれも警察の方の要求であります。当該地方議会あるいは財政当局とマツチした要求となれば、もう少し下まわるのではなかろうか、そのように考えておる次第であります。  それから国家地方警察増員に伴う予算措置でございますが、これは先ほど大橋法務総裁から御説明がありました通り。五千の増員については、さしあたりましては募集に要する費用がいりますが、これは既定の経費から一応支出することができると考えております。また一万九千の約半数が国警の方に移管されると仮定いたしましても、それは十万以下のことでありますので、補正予算がその以前に提出が可能であろうと考えておりまするし、若干遅れましても、既定予算で、その間は処置ができる、かように考えております。
  43. 門司亮

    門司委員 どうもはつきりしないのであります。私は今の議論になりますが、斎藤長官のように三千人しかふえないということはないと思う。この表にあります通り、大体七千人内外のものがふえると思つておりますので、私は相当大幅の警察官がふえて来ると思う。同時に地方自治体から国家に委譲されるものを含めて参りますと、相当数の大きな国家地方警察増員が行われて参りますので、先ほど申し上げておりますように、警察官費用としての国家的な負担は、だんだんふえて来るのじやないかというように考える。それの補正予算は、いずれ次に出すということでありますれば、一応それでおいておきます。  その次に聞いておきたいと思いますことは、警察の財産の委譲の問題であります。第六十七条の二であります。この財産の委譲を読んでみますと、「国家地方警察に不必要で当該市町村警察を維持するために必要なものは国が無償で当該市町村に譲渡するものとする。但し、土地は譲渡しないものとし、」ということが書いてあります。これと同じように、また自治警察が新しくできる場合には、国の持つておるものは、これは土地以外のものは無償で譲渡する、土地は譲渡しない、こうなつておりますが、私の聞いておきたいと思いますのは、ここに土地だけ譲渡しない、そして無償でこれを使用させるという字句であります。これは齋藤長官も十分御記憶かと思いますが、日本のかつての法令の中に、地方警察の持つておりました財産を、国が無償で没收した法律があります。そのときには土地が含まれております。そういたしますと、政府は各都道府県からかつて警察財産であつたものを国に没收するときには、一切を取上げておいて、そうして今度地方自治体がこれを使用するように再びなつたときには、土地だけは返さぬ、無償でこれを使わせるというふうな、国有財産というものの取扱いが、多少私は片手落ちじやないかと考える。当時われわれはこの法案に反対をいたしまして、無償でとるということは困るじやないか。大体国の費用で各警察に対する設備をしたというのは、警察の署長官舎くらいのものであつて、あとは交番の敷地から、あるいは駐在所の敷地、家屋に至るまで、一切土地の寄付でできているに違いない。ことに自動車などは大体そういうことでできておる。そうすれば、これは当然有償でこれを買上げるということが正しいのではないか。憲法の中には個人の財産を無償で取上げてはならないということが、はつきり書いてある。同時に地方の公共団体を一つの人格と見て参りますれば、私どもはこれを無償で国が取上げるということは、その当時から違法であると考え、反対をして参つたのでありますが、今度はそれを逆に地方で使わせる場合はこの土地を返さない。そして無償で貸してやるということでは、われわれはちよつと承知がしかねるのでありますが、なぜ一体こういうふうな法律にしなければならなかつたのか。その点のいきさつをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  44. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 今回の場合は自治体警察を持つていました町村が、その警察廃止する。そういう場合に今まで当該町村警察として使つてつた土地、これは国に譲渡しないで、そのまま町村有財産として警察がこれを無償で使わしてもらう、こういうことでありまして、大体御趣旨に沿うようにいたしたつもりでございます。それで今度またこれを所有したいということもできるわけでありますから、警察を再び持つことになりました際には、そのまま所有権は前通り町村の所有にして、使用権が回復できる、こういう考え方であります。前には府県有財産でありましたものを国の警察町村警察にわける場合であります。この場合には将来府県が警察用の財産としてその土地を使うということを考えませんでしたから、それは町村に行くもの、国に行くもの、こうわけたわけでありますが、こうきまつてしまいました後に、町村が現にその土地を持ち、そこを自治体警察が使用しておる。それをやめた場合に、今度はそれを国が取上げてしまうというのではなくて、所有権は町村有にしておく。また町村警察を持ちたいときはそのまま使用権だけを認める、こういうことにいたした次第であります。
  45. 門司亮

    門司委員 私にはその間の事情はわかりませんので、もう一つ聞いておきたいと思いますが、そうしますと、この法律の適用の範囲というのは、新しい自治警察のできましたときは、これは適用しないというお考えでございますか。
  46. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 六十七条の二で、それも当然入ることになつております。
  47. 門司亮

    門司委員 そうなつて参りますと、さつき言いましたように、六十七条の二の一番先に書いてありますように、国家地方警察の区域であつたものが、自治警察なつたときには、当然やはり前の法律で没收した建前から行くならば、土地は返してやつた方がいいと私は思う。一ぺん取上げた土地であることには間違いございませんから、大体私は返した方がいいのではないかと考えるのですが、その点私の考え違いであるのか、あるいは当局のお考えは、それでも土地は一ぺんきめた以上は、これから先無償で譲渡するというようなことは避けたいというお考えであるのか。それをもう一応聞かしていただきたいと思います。
  48. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先ほども申しますように、この前の場合は全部府県の所有であつたものを、国のものと、町村のものとにわけるときでありまして、そのときもただいま門司委員のおつしやるようなやり方にいたした方が、あるいはよかつたのかもしれないと思うのでありますが、今後は国と市町村の間で互いに持つたりあるいはとつたり、行き来の関係に相なりますので、土地のごときは所有権を移す必要はなかろう。事実使用ができればよろしい、かような考えに基いてやつたわけであります。
  49. 門司亮

    門司委員 これ以上押し問答いたしませんが、国は非常に都合のいいことを考えるもので、この前取上げるときは県有財産だと言つておりますが、市町村警察がなかつた当時でありまして、全部都道府県の警察の指揮のもとに置かれておつたのは間違いないのであります。従つてとるものだけとつてしまつたら、あとは貸してやるという程度で、あるいはいいのかもしれませんが、私は今までのいきさつから考えて参りますと、国が使つておりました警察の土地も、地方市町村がこれを使うようになれば、さつき申し上げましたようなこの前の法律をこしらえた建前から行けば、これをやはり地方に委譲するということの方が私は筋が通ると思う。この前は取上げたが、これからはそういうことのやりとりをしないようなことにしようという虫のいい考え方には、われわれとしてはちよつと承服ができないのであります。  大体各条文につきましては以上申し上げましたことで、私の質問は終りたいと思いますが、もう一つこの際に聞いておきたいと思いますことは、この法律のすべてを見て参りますときに、先ほどから申し上げましたように、自治警察を育成助長して行こうということでなくして、自治警察を大体少くしようというものの考え方の上に立たれたように見えるのであります。従つて聞いておきたいと思いますのは、この自治警察を当然持ち得る資格といいますか、人口五千以上の町村が持ち得る資格になつた場合には、これは当然法律建前から地方自治体が持たなければならないのか。あるいはこの法律にありますように現状のままでいいのか。その辺がこの法律全体の上でははつきりしていないと思う。従つて人口五千以上の市街地を形づくつておる町村は、自治警察を持つというようになつているこの警察法の、もう一つ改正が必要でなかつたかと考えておりますが、その辺のお考えはなかつたのでありますか。——つけ加えて申し上げますが、現在自治警察のありますものを廃止する場合には、住民投票でこれを廃止することができるようになつております。ところが現行警察法の中には、人口五千以上で市街地を形づくつておるものは、自治警察にするということになつておる。そうすると一ぺん自治警察にして、都合が悪ければまたこれを国家地方警察に返上するような形を、住民投票でとらなければならないのか。あるいは人口五千以上になつても、これは警察法から行けば、当然自治警察になり得るのだが、現状のままで放置しておいていいのか。その辺の法律的処置が明確になつていないように思いますが、これはどういう考え方でありますか。
  50. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 五千以上の町村が、警察廃止いたしました場合には、これを廃止いたしましても五千以上の市街地的町村ということにはかわりがないわけでありますから、これが再び持つときには住民投票が必要だということに相なると思います。今まで持つていなかつたところで、新たに五千以上の市街地的町村になりました場合には、これは告示をすることになつております。この場合には持つことが法律上の一応の建前になつておりますので、そう認定をいたしました以上は、廃止住民投票をしない以上は持たなければならないというふうに相なるわけであります。しかしながら実際問題といたしましては、五千以上になりましても市街地的町村であるかないかという認定は、当該町村自治体警察を持ちたいが、そういう認定をし、告示をしてもらいたいという要望に基いて、認定、告示をいたしたい、かように考えておる次第であります。
  51. 門司亮

    門司委員 どうも私はその間に何か法律的に処置がはつきりしていないと、そういう二重の迷惑を町村にかけるのではないか、こういうふうに考えるのでありますが、その町村の認定をする場合に、政府は、こういう法律があるんだということで、その二重の手数を省くようなことのないように、何かこれに示唆されるようなことがあつては、私は自治の建前から行けばおもしろくないと思います。また実際上の問題として、自治体でありますから、おそらくそのくらいのことは十分考えてやるから、そう間違いはなかろうというお考えなら、私はそれでもいいと思いますが、しかしいずれにいたしましても、何らかの法的な処置を講じておかないと、必ずそういう二重的なものが、ここに出て来るということが一つ考えられること。それからもう一つ警察組合をこしらえることのために、たとえば今までは組合警察でなかつたが、組合警察によつて先ほど申し上げましたように十分やつて行けるという見通しがついたところでは、これを国家公安委員会の方といたしましては、何らの慫慂をすることなくして、ただちに自治警察住民投票に訴えることについては、政府は何らの示唆もしなければ助言もしないというお考えであるのかどうか、これは少し行き過ぎた考え方かもしれませんが、その辺をもう一応承つておきたいと思います。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察法改正案の精神は、自由に表明せられた住民意思によつて自治警察を持ち、あるいはこれを廃止する、こういうふうにすべきであるという考えでございまして、特に住民投票をやるべし、あるいはその住民投票に際して、その自治体は持つべきであるとか、廃止すべきであるというごとき、住民投票内容に影響を与えるがごときやり方は、住民投票をなす趣旨からいつて避くべきである、こういう考えを持つております。
  53. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 先ほどの門司委員の御質問に対して、私はちよつと間違つたことをお答えいたしましたので、訂正をいたしておきたいと思います。この前の都道府県の所有に属しておりました警察用財産を処理いたします場合の法律によりますと、土地はやはり譲渡をしないで、そのまま無償で使用するということになつております。私も門司委員と同じように感違いをいたしておりましたので、(笑声)御訂正申し上げておきますから、御了承願いたいと思います。
  54. 前尾繁三郎

  55. 川本末治

    川本委員 私はこの警察法改正案につきましては、つとめて好意的に解釈をいたしておりまするが、しさいにこの改正法案を検討いたして参りますと、遺憾ながら先刻来門司委員が諄々述べられました御意見に賛成をしなければならないような点が、多々出て来ることをはなはだ遺憾に存じます。  まずそのうちの一つをあげてみましても、四十条の今度の改正では、五千以上の人口のある自治体警察廃止することは認められておる。一方におきまして廃止することだけを認めて、なぜもう少し公平に自治体警察を育成することについて意を用いなかつたかという点であります。たとえて申しますると、人口五千以下の町村におきましても、市に隣接しておりまするようなところでは、実際は市の自治体警察などと組合警察を組織して行きたいというような意見を持つておるところも相当数あるのでありまするが、これにつきまして、何かそこに法的措置を講じられなかつたことについて原因があるか、それを一応承りたいと思います。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 根本的な問題といたしまして、現行警察法の精神は、人口五千を單位といたしまして、それ以上の市街地的町村についてのみ、原則的に自治体警察をつくるとなつておるわけであります。そうして今回の改正案におきましては、この点については触れておらないのでございますが、五千以下の町村に、自治体警察を認めるかどうかという根本的な問題は、確かに問題としてあるのでございまするが、これについてのただいまの私ども考え方を御参考に申し上げたいと存じます。一体五千以下の自治体警察を認めることが適当かどうかということにつきましては、私どもは今日の警察法の根本的な建前と照応して考えて行かなければならぬ、こう考えるのでありまするが、今日の警察法建前といたしましては、すべての警察は、自治体警察でなければならないというふうな原則を立てておるものではないのでありまして、この警察法警察の運用というものは、一方において相当数の自治体警察があると同時に、他方において国家地方警察が各府県ごとになければならない。このことが相表裏いたしておるわけであります。すなわち自治体警察につきましては、必要な場合においては、国家地方警察に対して応援を求めなければならない、援助を求めなければならない、それからある種の事柄については、自治体警察警察法上のいろいろな機能を担当せしめおるのであります。すなわち、自治体警察だけでは国の全体の警察力はうまく動いて行くものではないのであつて、この補充的な作用を営む国家地方警察があつて、初めて自治体警察がその自治体の中の治安の維持をなして行くことができる、これが今日の警察法の根本的な考え方であります。そうなりますと、自治体警察をこの警察法によつて維持いたして行く限りにおきましては、国家地方警察を全廃することは、とうていできないばかりでなく、やはり警察法上期待せられておる任務を、完全に国家地方警察が遂行いたして参りまするためには、国家地方警察としてある程度の規模を持つことが、当然考えられなければならぬわけであります。すなわち相当な規模を持つた国家地方警察があることを前提にしてのみ、今日の自治体警察は成り立つわけであります。そこで五千以下の町村は、この警察法上絶対に必要欠くべからざる国家地方警察のよつてつて基盤といたしておるところのものでございまするから、自治体警察の区域に全部をしてしまつて、都道府県のすべての地区から国家地方警察の区域をなくしてしまうことは、警察法に必要な国家地方警察の基盤がなくなることになる。従つて国家地方警察の規模を非常に小さくする結果は、当然警察法国家地方警察に要求いたしておりまするいろいろな機能を、国家地方警察が十分に営んで行くだけの力を失うことになるわけです。これは現行建前をとる限りにおきましては、十分に警戒をして行かなければならぬ事柄である。こう私は考えておるわけであります。すなわちこの警察法においては、どうしても国家地方警察がなければ、警察というものは運用できない。従つて国家地方警察がその力を不当に小さくしないように、やはり国家地方警察の基盤となるべき区域というものは、必ず残しておかなければならぬ、そうなりますと今日人口五千以下というものは、自治体警察の区域ということにきめてありますから、そうしてそれを基盤として今日の国家地方警察ができておる。しかもこれを多少強化したいと言われておるような時期でもありますので、国家地方警察の規模を小さくするおそれのあるような、そうした管轄区域の変更ということは原則としては避けるべきだ、こう思います。従いまして私は五千以下の町村につきましては、あるいはこれが相寄つて一つ組合警察をつくるとか、そういうことによつて自治体警察を持つということが、今日の警察法の基本を危くするという意味において、絶対に避けるべきであると考えております。ただし特別の例外といたしまして、特別な地理的な関係、あるいは従来の縁故関係、そういうことによりまして、例外中の例外といたしまして、特に自治体警察を持つ他の市町村と特殊な関係にありますそうした町村が、たまたまその従来の特殊な関係を生かすという意味において、他の自治体警察を持つ町村組合警察をつくろう。こういう点は全体の根本をかえるという意味ではなく、きわめて例外的な、特殊的な、そういう個別的な場合に、その問題を処理する方法といたしまして、例外的にそうしたことを認めることがいい場合もあるいはあるのではなかろうか、こういうことは否定できないと思うのでございまして、この例外的な考え方といたしまして、この問題につきましては、ただいま研究をいたしておるところでございます。将来ともこの研究を続けまして、何とか改正をいたしたい、こう考えております。しかし原則といたしましては、五千以下の町村組合をつくる場合においても、自治体警察をつくつて行くということは、現行警察法の上からいつて好ましくない。こういう考えを持つております。
  57. 川本末治

    川本委員 私は大橋法務総裁とここで論争をしようという考えは毛頭持つておりません。御説明を聞いておりますと、どうも国警自治警というものに対して、総裁の御意見は国警を常に優位におくような感じを与えておりますことを、はなはだ遺憾に思いますが、私は国警、自警ともに同等な立場であるように考えておりますので、この際せつかく四十条をかように改正いたされまするならば、必ずしも国警を縮小するということにはならないと思いますることは、單独に三千、四千というものが、自治体警察を持つというのでなく、お話の後段にありましたように、特殊な地域にありますものについては、この際もはや研究の余地がないと思いますので、そうしたものは隣接の市の大きな自治体警察組合警察を持つことができるというように、一歩進めて修正をせられるような方向に持つてつていただくことが、一番いいのじやないかという考え方をいたしております。私の住まつている愛知県にありますが、周囲が全部鳴海町、大高町、大府町、東浦町というふうに、全部自治体警察なんです。そこのまん中に知多郡の有松町という人口二千数百名の町がある。これは周囲が全部自治体警察で、ここに駐在巡査が一人だけおる。しかもこれを管轄しておりますのが、知多地方警察でありまして、これが半田署にありますから、約十里に近いところから応援に来なければ、現行の状態としてはこれに対していかなる方法を持つこともできぬというので、町民全体が、非常にこれに対しては困つておる。こんなところは全国に相当数あると思いますが、こういうようなことを考えてみますると、今の総裁の原則論にのみこだわらないで、せつかく改正をせられるときでありますから、そうしたものについてはぜひとも認められるような方法を講じまして、一般からこの改正法国警を優位におくような方向だという疑いをもつて見られておるようなことは、この際避けられたいと私は考えております。  さらに続いてお尋ねいたしたいと思いますことは、四十条の改正の結果、先ほども門司委員からの御意見によりましても、数千名の人員が国警に帰属することになつて参りますが、この帰属いたして参りました人員は、国警にそのままその自治体警察の任地において全員を使用せられるものであるか、またはそれは場合によつて、その所属を他に移されるようなことがあるかという点を承りたい。
  58. 大橋武夫

    大橋国務大臣 五千以下の町村の場合におきまして、今川本君のお述べになりましたごとき例は、私が先ほど申しました例外として考えるべきであるというのの一例と存じます。今川本君のお述べになりましたような事案については、原則的に五千以下の町村組合警察を認めるという問題ではなく、実際上の便宜のため、例外的な処置を考え得る十分な理由のある場合と考えておるのでありまして、この問題については現に研究をいたしておる次第であります。  なお私の根本的な考えというものは、国警が優位なりや自治警が優位なりやという問題ではございませんので、私の申し上げましたところは、現行警察法のいろいろな事項考えました場合における自治体警察並びに国家地方警察法律の予想をいたしておりまするあり方を、單に率直に申し上げたつもりでございます。優位とかどちらが劣つておるとかいうような事柄ではないということを、御了解を願いたいと思う次第でございます。  それから自治体警察から国家地方警察に引継がれました職員というものの今後の職場でございますが、これは国家地方警察といたしましては、これらの人員を引継ぎました以上は、他の国家地方警察の従来よりの職員と一視同仁に、何ら差別せずに、将来国家地方警察職員として使用をいたして参るというのが、根本的な考えでございます。従いまして必ずしも現在の職場にいつまでもいなければならないという扱いは考えておりません。しかし最近におきます実際の警察官の異動の方針その他から見まして、特別の必要がないのにもかかわらず特にそれらの人たちが新しく国警に入つたというだけの理由によつて、みだりに転任させられるというようなことは、これは実際問題としてもなかろうと想像いたしますが、また警察官は元来が——ことに下級の多数の警察官は、長く勤務いたしておりました人が、やはりその地方の実情に精通をいたしておりまするから、できるだけ事情の許す限りそうした所に使つて行く、これが使うことが非常に特別の支障があるという場合は別といたしまして、地方警察の運営上支障のない限り、できるだけそこで使つて行くということは、国家地方警察の運営から申しまして、当然の考え方であると存ずるわけであります。
  59. 川本末治

    川本委員 続いてお尋ねしたいと思いますのは、四十条に関連をいたしまして、最近小さい自治体警察におきましては、この改正法が成立いたしますると、自分たちは一体どこへ帰属して行くのだというようなことで、非常に下級警察官におきましては精神上の動揺を来しておる、これをこのままに放置しておくことよりも、むしろこの際一応存廃を各町村について決定させて、これらの人々の人心の安定をはかり、安んじてその職につかせるような方法を講ぜられた方がいいということを考えておりますが、その点につきましては何かお考えがございますか。
  60. 大橋武夫

    大橋国務大臣 自治体警察の存廃につきましての住民投票は、いつまでにやらなければならぬということは法律においてはきめてないのでありまして、ただ今年の十月一日から切りかえまするものは、九月末日までに住民投票をやらなければいけないという手続上の理由から、そういうことがきめてあるだけであります。しかしながら現在現実の問題といたしまして、町村におきましては自治体警察の存廃ということが、各自治体においてそれぞれ問題になつておるように伺いますから、この法案が幸いに成立いたしましたならば、なるべく早い機会に存廃についての地方の態度というものが決定し、またそれに対する国家地方警察の受入れ態勢というものも決定し、そうしてそれぞれ個々の警察職員も、将来どういう勤務になるということも早く決定するということが、当事者にとりましては非常に安心の行くことであろうと考えるわけでありまして、できるだけそうしたことのできるような用意を怠らないようにいたしたいと存じます。
  61. 川本末治

    川本委員 ずつと先の方へ行きまして、国警の五千名の定員の増加は、管区学校並びに警察学校の生徒の五千名のほかということですが、これは現在の国家地方警察は、いわゆる農村警察といわれておりまして、私どもが今日まで観察して、しろうとの目から見ましたところでは、これだけの人員をここでふやさなくも、自治体警察の方からまわつて来る人員もありまするし、この際好んで五千人の人員をどうしても増員しなければならないという理由につきまして、あるいはこの問題は今まで他の委員の諸君からすでに聞かれておるかもしれませんが、次にお尋ねする順序といたしまして、一応お尋ねいたします。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実は国家地方警察は、御承知の通り比較的警察上の事件も少いところの農山漁村といつたような区域を担当いたしておるのでありまするが、しかし何と申しましても、人口数に比しましてその地域は広大でございまして、なかなか現在の数をもつて十分なる警備の網を張るということが不可能な実情にあるわけでございます。また実際問題といたしまして、今日約五千人が継続的に学校の方にとられておりまするが、その後は部署がそのままになつてつて、補充してないというところが大多数でございまして、全国の農山村等におきまするいわゆる派出所等におきましては、学校へ行つておりまする間家族のみが派出所に寝とまりをいたしており、警察官がおらぬというような所が多数あるわけでございまして、これにつきましては、やはり地方住民におきまして、長い間駐在の警察官がいないということが、いろいろ不安を与えておるというようなこともあるわけであります。また少いといつても、事務が皆無ではないのでございまして、やはりこれらの所には、かわりの人を置くというくらいのことはしなければならない。そうしてみますると、約五千人くらいをまずふやして行くということが必要である、こう考えておるわけであります。もちろん自治体警察が統合されますると、その方から数千人の人がまわつて来るわけでありまして、これらの独立の自治体警察から相当数の人員が入つて来、しかも独立の警察署というものは小さな警察署でありまするから、これは国警の地区警察と一緒になります。そして、いわゆる行政事務にとられておつた人というものは自然に浮いて参ります。そういう意味において、多少警備力に余裕を生じて来るということはあるのでございますが、しかしこれとても、実際問題としてどの程度町村警察廃止するかということも、今見込みが立つておりませんし、また五千人を増員いたしましたところで、やはり今日の国家地方警察というものが、自治体警察に対して、いろいろ応援もしなければならぬ、そういう任務を考えますると、決して十分であるということはできないのでございまして、かたがたこの際五千人だけは増員をいたしたい、こう考えた次第であります。
  63. 川本末治

    川本委員 そういたしますと、五千名の増員を行うことによりまして、教養は安んじてできるという結論でありまするが、そこで現在一番問題になつておりますることは、警察官の教養の程度の低いことであります。これがために一般住民が非常に迷惑をしておりますることは、重ねて私がここに申し上げるまでもなく、よく御承知のことと思いますが、この増員によつて十分な教養ができるようになりましたので、この教養につきましては、どういう方法を講ずるおつもりであるか承りたい。
  64. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 まことにごもつともな御意見でありまして、まず採用いたしまする際に、できるだけ素質のいい、そうして学校も中等学校、できるならば新制高等学校を卒業した程度の学力の者をとつて参りたい。初任の教養といたしましては、最初六箇月の教養をいたしまして、そして一度現地の仕事を若干見習いまして、それ以後は毎年二箇月程度は、必ず管区学校に入つてそこで教養を続ける。そのほかにできるだけどこかの教養あるいは講習というものを積んで参りたいと思います。また日常勤務に従事しながら、監督者がそれらの巡査の指導教養に日常の事務を通じてさせまするように、努力をいたしつつあるのでありますが、今後とも、これをもつと強化いたしたいと考えております。
  65. 川本末治

    川本委員 御答弁のところは現在教養をしておいでになる点でありまして、それは現在のような人員の不足しておるところであるから、早急にやらなければならぬという点もあつたでしようが、増員後におきましては現在の教養過程をもつて、十分とお考えになつておるかどうかということを、私は承りたかつたのでありまして、少くとも現在の警察官の教養程度におきましては、現在の日本の人を取扱う面から行きまして、その職務柄からいつて、むしろ取締りの任にある者として、あれではきわめて不足した教養であるということを、われわれは痛感いたしております。最近特にまた警察官の素質が粗悪になりまして、えてこれはひとり共産党の諸君の言うだけでなく、われわれが見てもはなはだ心外にたえないような言語動作をなし、また一般の人々を取扱う上におきましても、はなはだ不愉快な態度が見受けられる点が多々ありますが、こういうことについて今後十分教養期間というものを延長して、少くとも初任教育というものは、一箇年くらいの教養過程を設けるような方法にして行かれなければ、ただいたずらに人員をふやしただけでは、国家地方警察費用を増すだけでありまして、人員をふやして、しかもこれを生徒にのみ限られたという趣旨と、相反するようにわれわれは考えられますので、人員をふやされるなれば、後顧の憂いがなくなつてあき家でなくて行けるのですが、その点について何らの方法が講ぜられていないのは、緻密な政府案としては、欠くるところが大きいように感ぜられまするが、これにつきまして早急にいかなる方法を講ぜよというような具体案を、お持ち合せになつておりましたら承りたい。
  66. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 現員の教養を今ただちに引上げようという計画は持つていないのでございまするが、ただいまの御意見はまことにごもつともと存じまして、十分人員の増加と、実務の点を勘案いたしまして、ことに自治体警察から国家警察に入つて来る人員が相当多くなりますれば、われわれの予定いたしておりまする以上に、教養面に向けられるわけでありまするから、これらを勘案いたしまして、できるだけ御趣旨に沿うように教養の強化に努めて行きたいと思います。
  67. 川本末治

    川本委員 さらにお尋ねいたしまするが、現在の国家警察としましては、装備の点はいかようになつておりますか、現在で十分な装備はできておりまするか、またそれに対して相当な装備をする必要があるかということを、簡單に承りたい。
  68. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 装備といたしましては年々強化をいたしておりまするが、しかし今日の段階におきましてまだ十分とは申せません、ことに通信関係あるいは車両関係等におきまして不足を感じておるのであります。今後も財政当局の御理解を得まして、その強化に遺憾のないようにいたしたいと考えております。
  69. 川本末治

    川本委員 装備が不十分であるのに、ただ人員だけをふやすことにきゆうきゆうとしておられるというこの政府案に対しまして、いささか疑念を持つてつたのでありますが、私は意地悪く申し上げるわけではありませんが、なぜ装備を完備してから人員をふやすことについてお考えにならなかつたかという点であります。先ほどの御説明を承つておりまするに、人員はふやすけれども、教養の点については何にもお考えになつていない、これから研究をするというようなことでは、この改正法案のうちの国家地方警察五千人の増員ということが、どうも本末を顛倒しておるような感を深くいたしまするが、その点はなぜ人員を先にふやして行こうと、あせつておられるかということを一応承りたい。
  70. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 われわれといたしましては、装備と人員と両方完備いたしたい、かように考えておる次第でございます。もちろん装備によつて人員の不足を補い得る点はあるわけであります。われわれは装備を完備いたしますことを前提といたしまして、さらに人員というものを同時にお願いをしておるのでございます。このたび人員は五千ということに相なりましたが、大蔵大臣におかれましても、装備の方に今までより以上に力を入れようというお話がございましたので、私はこの装備の強化によつて、人手の足りないところを補つて参りたい、かように考えておる次第であります。
  71. 川本末治

    川本委員 最後に希望をいたしておきたいと思いますことは、平衡交付金のうち、自警に対しまする單位費用をこの際増額をしまして、国警との均衡を得られるように追加または補正予算において、十分これを確保するように法務総裁においても御努力を願いたいと思います。同時に自警が国警移管せられた場合、その他今回の改正に伴いまして、国警の所要経費などについても、追加または補正予算によつて十分これを確保せられまして、ただ龍頭蛇尾に終らないように、十分この改正法の精神を生かして行くように、最善の御努力を願うことを希望いたしまして、私の質疑を打切りたいと思います。
  72. 門司亮

    門司委員 もう一つ私聞いておきたい。この前二十条のところで、大体よく聞いておりますので、わかつていると思いますが、その際には意見だけ申し上げて、当局の意見を聞いておりませんので、あらためて聞いておきたいと思いますことは、特別重大な事犯のあつたときに、あるいはやむを得ないときに国家地方警察を出動させて、その案件を処理することのできるような権限が知事に与られることになつておりますが、この前も意見のうちに申し上げましたように、知事は現行法では、おそらくこの改正法案によりましても、警察に対する日常の捜査の情報を集めなければならないというような何らの規定もございませんし、また知事は実際の問題として手足を持つていない現状でありますが、一体手足を持たない知事が、治安上重大な事犯である。あるいはやむを得ないような事犯であるということを認定するのは、一体何によつてこれを知ることができるのか、この規定がここに欠けているようでありますが、これは何らか特別の権限を知事に持たせることが、ほかの法でできるようになつているのか、私は現行法並びにこの改正法案だけでは、知事がこの権限を与えられても、実際の運営において、知事はいずれの根拠に基いて、そういうものを收集して行くのか、私にはちよつとわからぬのですが、その点をもしはつきりしたものがあるとするならば、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  73. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 これは治安上重大な事案でありますような場合におきましては、さように特にスタツフがいて、ふだんから研究しておらなければわからないというような事柄ではありません。大体知事でおられるような人たちの常識で、判断のできるような事柄だと思うのであります。実際問題といたしましては、府県の公安委員会と話合うことも十分できまするし、あるいは府県の公安委員会が万一ぼんやりしておりましても、検事正その他から事実上話があるということもあるだろうと考えます。知事がはたしてどうであろうかと思つた場合に、あるいは今申しましたのと逆に、府県の公安委員会あるいは検事正あるいは自治体警察等にちよつと意見を聞いてみて、大体自分の考えは間違つていないということで判断ができるものだ、かように考えております。
  74. 門司亮

    門司委員 その考え方ですが、常識的には一応そういうことが言えるかと思います。しかしそうだといたしまするならば、やはり知事がある程度の事案に対しまする調査あるいは報告を十分に掌握することのできる仕組みが他の方法によつてないと、せつかくこういう法律ができましても、処理の上あるいは判断に間違いのあるようなことが、私はありはしないかと実は考えるのであります。それは県の公安委員と言つておりまするが、県の公安委員がありましても、県の公安委員自治体の公安委員の管轄の区域内では、そう綿密にこれを知るということは私は困難だと思いまするし、同時にまた現在の公安委員の組織は、御存じのように警察に対しまして運営管理は、ある程度できるかと思いますが、事案の捜査あるいは事案の見通し、それから性質というようなことに、必ずしも私はくろうとばかりがお集まりになつていないと思います。大体公安委員というものは、しろうとばかりが集まつておる。警察の運営管理においては、あるいは十分できるかと思いますが、こういう治安維持上重大な案件であるとか、あるいは事案であるとか、あるいはやむを得ない理由とかいうものについては、私は県の公安委員の諸君では、万全を期することができないと思いまするので、今の御答弁だけではわれわれはこの項では承服しがたいのであります。  それからもう一つ。これはここまで言つては、少しうがつて言い過ぎるという話があるかもしれませんが、一応こういう法律ができて、この次には知事が完全に警察権を持つて、だんだん警察の中央集権的な形ができる一つの伏線ではないかと私考えられるのですが、そういうお考えがあるとは御答弁ができないでしようが、一応知事に対してこういう権限を与えたことについても、実際上先ほど申し上げまするように、どういう手足を持つて、どういう諜報機関を持つて、事案の処理に間違いがないと言えるのか、今の御答弁だけでは承服しかねるのですが、ひとつ伺いたい。
  75. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これを知事に与えました趣旨は、要するに国家地方警察が一方的に入つて行くというようなことになりますと、自治体警察に対する不当な干渉というようなことが行われやすい。それでそうしたことを避けたいのが主眼で、こうした第三の機関に要求をさせるということになつたわけであります。そこで国家地方警察自治体警察で活動しなければ処理できないような事案というものがあることは、これは間違いない。その場合に、国家地方警察がそう認めたら、かつてに入つて捜査するというようなことではおもしろくない。そこでだれか、どちらにも関係のない公平な立場にある者から、これはなるほど国家地方警察が処理しなければむずかしかろうということを認定してもらわなければならない。その認定の機関として最初検事正のごとき者はどうであろうか、こういうことも考えたわけであります。しかしいろいろ研究をいたしました結果は、検事正はなるほど平素から犯罪に関する情報については、比較的とりやすい立場にはありまするが、しかし何分にも独任制の官庁でありまするので、その決定が必ずしも自治体あるいは地方住民が納得し得るかどうかということが保証できない。やはりそれには自治体警察警察権に関する干渉というような形になりますから、できるだけ地方住民が納得し得るような機関が要求することが適当である。それについては府県知事というものは公選された機関でもありまするし、また府県知事の行政措置につきましては、民主的な都道府県議会というものがありまして、これがそれについて報告を受け、そうして民主的な立場に立つて批判するという機関であるわけでありますから、やはりそうした議会によつて批判を受けるところの、そういう機関に要請を行わせるということが、地方民の納得のもとにこうした例外的な措置を行うという上からいつて適当であろう、こう考えまして府県知事の権限にいたした次第であります。従いましてこの都道府県知事に警察についての請求の権限を付与したということは、特に警察権関係させるという意味合いではなく、自治体警察国家地方警察の双方に対して、中立的な立場にある第三者という意味合いにおきまして、この府県知事を選択いたしたわけであります。決してこれは将来府県知事に警察の全権を掌握せしめて、中央集権化をはかつて行こうというような底意は、毛頭あるわけではないということを申し上げたいと存じます。
  76. 門司亮

    門司委員 私はその点がはつきりしないと思います。われわれはかつてここでも申し上げましたように、事件の内容によつては、検察庁直属の方がいいと考える事件がある。知事はなるほど公選はされておりますが、現在地方自治法建前からいいますと、必ずしも上級機関ではありません。知事といえども市町村長といえども、私は地方の公共団体の建前からいえば、ほとんど同じような資格に行政事務の上ではなつていると思いますので、従つてこれを上級機関であるというようなものの考え方から、私はただ單に、十分手足を持つておらない都道府県知事の認定だけでやるということは、相当大きな危険を持つているのではないかと考えると同時に、先ほど申し上げましたように、こういうことになつて参りますると、やはり何か地方市町村の公共団体に対して、知事が上級機関であるというような感じを強く与えさせる。従つてさつきから申し上げておりまするように、もし知事にこういう権限を与えるとするならば、やはり何らかの法的の根拠を与えておかなければいけないんじやないか。私はそれに賛成するわけではありません。そういうことになると、なお悪いと思いますが、何か含みのあるようなものになつておるので、その点を聞いておるのであります。今の大橋さんの答弁のように、将来そういうことをする考えを全然持つておらぬというお考えなら、私はそれでいいと思いますが、そうなつて参りますると、もう一つ念を押しておきたいと思いますることは、この警察法修正は、大体世間で今伝えられておりまするような暫定的の修正ではないということを、いつかの新聞に総裁は発表されたようでありましたが、もう一度念を押しておきたいと思います。これがまず前提となつて、そしてさらにこの次にこれよりもつと中央集権化した法案を出す暫定的のものであるというように考えないで、現在はこれ以上警察法修正考えておらないというお考えであるかどうか、この点をもう一度聞いておきたいと思います。
  77. 大橋武夫

    大橋国務大臣 重ねてお答え申し上げますが、私どもは府県知事の権限というものは、府県知事が上級機関であるという意味は全然考えておりませんので、むしろ自治体警察国家地方警察双方に対して、中立的な立場にある第三者という程度の意味考えたわけでございます。この点は、決して上級というようなことの意味考えておらないのであります。  それから、今回の警察法改正というものが、この次にやる根本的改正のまず手始めではないかというような風評があるが、この点はどうかというお尋ねでございます。私どもは、今回の改正案を実施いたしますと、今日の警察制度欠陷はある程度是正されまして、そしてこれによつて、さしあたりの治安問題についての十分な警察力を持ち得る、こう考えております。むろんこれはただ法律だけ改正ができればいいというのではなく、改正された法律によりまして、真に国家地方警察並びに自治体警察が緊密に協力をいたし、そしてこれによつて国全体の警察力を全体として強化するためには、努力がいると思います。これは国家地方警察の側においても、自治体警察の側においても、広くすべての関係者がいろいろな面から努力をして、そうあらしめるということが必要であるとは存じますが、その努力が行われまするならば、相当効果をあげ得る。そうなりまするならば、続いて改正をしなければ、どうしても治安上不適当であるというふうなことはなくなるであろう、そういうことを考え、またそうしたいという十分な熱意を持ち、またそうなし得るという確信を持つての提案であるということを、お答えいたします。
  78. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは明後月曜日午前十時から開会することにいたしまして、本日はこれにて散会いたします。     午後四時四十四分散会