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1951-05-16 第10回国会 衆議院 地方行政委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十六日(水曜日)     午前十一時十一分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 藤田 義光君 理事 門司  亮君       大泉 寛三君    角田 幸吉君       門脇勝太郎君    久野 忠治君       高橋 權六君    田中 啓一君       丸山 直友君    鈴木 幹雄君       床次 徳二君    山手 滿男君       久保田鶴松君    砂間 一良君       大石ヨシエ君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部警視         (総務部長)  加藤 陽三君     ――――――――――――― 五月十五日  委員砂間一良辞任につき、その補欠として立  花敏男君が議長指名委員に選任された。 同月十六日  委員川本末治君、佐藤親弘君、堀川恭平君、及  び立花敏男辞任につき、その補欠として高橋  權六君久野忠治丸山直友君及び砂間一良君  が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十五日  地方自治法の一部を改正する法律案野村專太  郎君外四名提出衆法第五五号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  連合審査会開会要求に関する件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四二号)  地方自治法の一部を改正する法律案野村專太  郎君外四名提出衆法第五五号)     ―――――――――――――
  2. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたしまするが、昨十五日地方自治法の一部を改正する法律案野村專太郎君外四名提出衆法第五五号が、本委員会に付託になりましたので、日程を追加して本案審査に入りたいと思いまするが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認め、日程を追加し、地方自治法の一部を改正する法律案議題といたします。まず発議者野村專太郎君よりその提案理由説明を聽取いたします。野村專太郎君。     ―――――――――――――
  4. 野村專太郎

    野村委員 ただいま議題となりました地方自治法の一部を改正する法律案につきまして、提案者を代表しまして、便宜私からその提案理由を御説明申し上げます。  御承知通り地方自治法の第百五十八條には都道府県知事の権限に属する事務を分掌させるために、都道府県に置くことのできる局部の定めがございます。  今回の提案はこの規定の一部に変更を加え、東京都における税務行政港湾行政能率的処理をはかろうとするものでおりまして、任意設置の部に既存の建築局のほかに新たに主税局港湾局二局を掲げて都は必要に応じ、條例をもつてこれらの局を置くことができるようにいたそうというのであります。  現在東京都におきましては、税務行政は財務局の主税部が管掌しております。港湾行政建設局の所管に属し、その港湾部において処理しておるのでありますが、いずれもその行政の性質、分量、人的組織事務機構等、各般の実情にかんがみまして、その円滑な処理目的達成ためには、独立の局を設ける必要が感ぜられるのであります。  すなわち税務については、地方税法改正に伴い、新たに固定資産評価員を設置するとともに、二十三箇所に都直轄税務事務所を設置し、税行政の完全円滑な遂行と、都税收入の確保をはかつて来たのでありますが、都税收入都財政上に占める地位と、三千数百名の職員を擁する税務機構を、一層効率的に運営するためには、その機構独立整備する必要があるのでありまして、これがために現在の主税部主税局に昇格せしめ、税務行政の強力な中枢機関となし、徴税機関を一元化し、税務職員人事管理予算執行等迅速化をはかろうというのであります。  また都の港湾行政は、昭和十六年東京開港の当初から、港湾局制をもつて運営したのでありますが、たまたま終戰後港湾の一時的衰勢に基因して、局を廃止したのであります。しかしながら最近の目ざましい海運復興の現状に対応して、港湾緊急整備を必要とするとともに、港湾法によつて東京港は重要港湾に指定され、都がその管理者なつたので、重要港湾としての管理体制を確立し、もつて行政責任を明確にするため港湾部を昇格して、独立港湾局としようとするものでありまして、この必要を満たすため地方自治法の一部に所要の改正を加えようとするものであります。  以上が本提案理由であります。何とぞ御審議をお願い申し上げます。
  5. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは本案に対する質疑は、後刻行うことにいたします。     ―――――――――――――
  6. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより前会に引続き警察法の一部を改正する法律案議題として、質疑を続行いたします。  なお本日よりは昨日の委員会決定により、本案に対する質疑は総括的なものを含めまして、逐條的に質疑をされるようお願いいたします。それでは通告順により、質疑を許します。大泉寛三君。
  7. 大泉寛三

    大泉委員 大臣説明政府委員説明では警察民主化をきわめて言葉強く言われておりまするけれども、その実態にはなかなかどうも触れておりませんので、自治警察自主性について二、三お伺いしたいと思います。今度弱体自治体自治警察に対しては、地方住民投票によつて存廃が決せられるということでありまするが、まだこの警察法が実施せられて三年しかたたないので、地方住民自治警察実態を味わう期間がなかつたのに、しかも財政上これが弱体であるから、あるいは運営に困難であるからというので、地方柱民にこれを訴えて、その住民投票によつて存否決定するということは、あまりにも行き過ぎではないか。むしろこうしたことは地方自治体議会において、存否を決して行かなければならぬと思うのでありますが、大臣のお考えはどんなものでありましようか。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 地方自治体におきまして、自治体警察を廃止できるようにいたしたいという趣旨でございます。これがため自治体におきまする意思決定方法としましては、御説の通り法律それ自体の規定に基きまして、国会において存廃を決する、これも一つの方法であると考えられるわけであります。また自治体機関によつて意思決定いたします際においても、本案のごとく自治体住民一般投票によりまする方法のほかに、代議機関でありまする町村会議決という方法、場合によつては特別の議決というような方法考え得られるのでございまするが、何分にも現在の警察、特に自治体警察についての考え方といたしましては、自治体というものの本来の自治権範囲に、当然自治体内におきまする治安を確立しようとする警察権、これは本来自治体自治権の本質的な一部をなすものであります。またそれが自治体警察の基本的な理念でございますから、この自治体警察存廃自治体決定するということは、地方自治体によりましては、きわめて重大な問題でございまして、これは住民において十分にその自治体におきまする警察権の放棄ということの意義を理解し、またその地方々々の実情というものを十分に考え合せた上で、愼重に決定すべきものである、こういう意味におきまして、この案におきましては一般投票というような方法によつて、この自治体につきまして最も重大な問題を決定しよう、こう企図したわけであります。なおこれにつきましてはすでに憲法におきましても、公共団体においてその個々の公共団体にのみ規定されるところの特別な法律につきましては、国会議決のほかにその自治体における一般投票の必要があるという趣旨規定もあるわけでございまするし、かれこれ考え合せまして、この問題につきましては、一般投票によることが最も適当であろう、こういうふうに考えたような次第でございます。
  9. 大泉寛三

    大泉委員 政府としては一旦與えた権利を廃止せしむるには、やはり自主的にそれを求めた方がよいのだ、また警察行政一般民衆ためだから、民衆一般投票によつて決せられるということは、理論上まことにけつこうでありますけれども、今日各国政調査その他行政調査の点からいつて、どうも自治体警察市單位にしてもらいたい、あるいは町であつたならば、人口三万以上でなければいかぬというのが圧倒的な意見のように私は思うのです。けれども本法を施行をして以来まだ三年しかたつておらぬので、住民自治警察ほんとうの味わいというものをまだ味わつていない。まだ食つてみもしないのに味がわかるかと言われても、おそらくその答は正確なものは求められないと思うのです。おそらくこれは各自治体としても、財政上の立場から、あるいは警察行政能率あるいは強化というような建前からいつたならば、理事者とかあるいはその自治体責任者範囲内は、そういうふうな考えであるけれども、一般人民自分の町の警察なつたというような漠然たる考えを持つているかもしれないけれども、ほとんど実質的には理解していない、こう思うのです。それが二十年も三十年もたつたならば、一般投票ということにもなりますけれども、どうも現段階においては、そうしたことはあまりにも無理な要求じやないか、こうしたことはやはり地方自治体議会で適当にやらせるがいい、こう思うのであります。それから地方行政調査委員会議勧告案によると、町村を適正な單位自治体にするには、人口一万以上の町村をもつて適正とするというような案もありますが、そういたしますと、将来町村の合同が行われ、あるいは合併が行われると、そうした合併が行われる町村においても、やはり住民投票をやるのでありますか。そうしたいまだ人口五千以下の町村合併によつて一万以上になつた場合には行わないのであるかどうか。これは当然今までの既得権立場から、これを放棄するには一応投票をやるけれども、今後人口一万以上の町村なつた場合にはやるのかやらないのか、これを伺いたい。
  10. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 私からお答えいたします。現在警察法第四十條は市及び人口五千以上の市街的町村はその区域内において警察を維持することになつているのでありまして、この市街的町村は政令をもつてこれを告示する、こういうことになつております。従いまして、人口五千以上の町村ができました場合に、市街的町村であるということを認定いたしまして、それに基きまして置くことになりますれば、警察法を施行することができるということに相なると思います。
  11. 大泉寛三

    大泉委員 それからこれはまた別でありますが、国警自治警察に対する立場は、警察行政においては、そうかわりはないでしようけれども、どうも検察当局態度は必ずしも同じでないように私ども見られるのであります。これに対する検察当局自治警国警立場においての臨み方は、大体同じであるかどうであるかということを大臣にお伺いしたい。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 はなはだ失礼でございますが、初めの方におつしやいましたのは……。
  13. 大泉寛三

    大泉委員 国警自治警に対する検察当局のいわゆる行政上の取扱いは同じであるかということです。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 検察ですか。
  15. 大泉寛三

    大泉委員 検事局ですね。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 建前といたしましては、自治体警察国家地方警察も同じ法規に基きまして、運用をせられているのでありますから、犯罪捜査あるいは検挙につきましての自治体警察及び国家地方警察というものは、方針とかあるいはやり方すべて同じであるというのが、これは当然の建前と思います。但し現実には犯罪の種類によりましては、国家地方警察は積極的であるが、自治体警察が消極的な傾向があるというようなものもあるわけでございます。たとえば選挙違反等の取締りにつきましては自治体警察はきわめてその態度が消極的であるというようなことが、最近におきましても一般的な傾向として言われているところでございます。これにつきましては自治体警察国家地方警察によりまして、同種の犯罪検挙についての熱意に差があるというようなことは、検察当局といたしましては好ましくないことでございますので、検察庁におきましては、常にかような点について、自治体警察の側に注意を促すというような方法を講じまして、でき得る限りすべての犯罪についての捜査上の熱意あるいは態度、こういうものに自治体たると国家地方警察たるとによつて相違のないように、指導をいたすように努力をいたしている次第であります。
  17. 大泉寛三

    大泉委員 犯罪捜査あるいは犯人検挙に対しては、検察行政を通じてあらゆる自治体もこれを行うことができるのであるから、国警警察官自治体区域内にやはり活動するということは、結局同じ立場になるのじやないか、いわゆる検察当局を通じて行えば完全に捜査遂行犯人検挙も何ら支障なく行われるように私は思うのでありまして、ここに互いに警察官並びに警察吏員が他の地域に侵入して、自分職権行使をやる場合には、摩擦が生じたならばかえつてどうも非能率的な結果に終るのじやないか、むしろ検察当局を通じてそれを完全に遂行した方が能率的じやないか、あるいはまた統制的じやないかと私は思うのであります。これに対するお考えをお伺いしたい。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知通り刑事訴訟法規定によりまして、検察庁警察に対して犯罪捜査検挙について指導的な役割を果すということは可能でございます。但しこれにもおのずから限度がございまして、特殊な犯罪等につきましては、これに対する情報等に極秘の扱いをしなければならないものもあるわけであります。さような場合におきまして、多数の自治体警察の多数の係官に、すべて犯罪についての詳細な情報を熟知せしむるというようなことは、事実上も困難でありまするし、また捜査上の機密の保持という上から行きましても、いろいろ弊害も想像される場合がございます。そういう場合には、むしろあらゆる情報を熟知しておるところの国家地方警察の特定の係官がありましたならば、それにむしろある地域について、全般的な捜査を担当せしめるということが、捜査上適当な場合もあるわけでございます。また一面から申しまして、最近捜査の上におきましては、科学技術あるいは特殊の経験知識というようなものの必要なものもございますけれども、かようなものは、すべての小さな自治体警察に、ことごとく期待をするということのできかねる現在の実情にありますがゆえに、さような特殊の捜査上の技術なり、あるいは知識経験なり、そういうものの必要な場合におきましては、そういう技術を持つた、あるいは経験者を持つたところの警察に、ある範囲捜査を担当せしめる、これがかえつて能率上適当であるという場合もあろうと思います。さようなる場合におきまして、国家地方警察がある事案について、自治体警察管轄区域内に活動するということを認めたいというのが、今回の改正趣旨になつておるわけでございまして、これは当初内輪の考えといたしましては、犯罪捜査の問題でございますから、いかなる場合に、自治体警察に出かけて活動するかということを判定する機関として、むしろ検察庁あたりの請求によつて自治体警察区域国家地方警察活動する。こういうふうにしてはどうであろうかということも、考えたこともあるわけであります。但しこの点はやはり見方によりましては、地方自治警察権に対する侵害と見られないこともございませんので、かような重大な自治権関係ある行動というものは、官庁の一方的な要請によつてやるよりは、やはり都道府県知事のごとく、民主的に選出せられ、また民主的な都道府県会に対して責任を負うところの、そうした機関に担当せしむることが、地方自治の破壊を守るという上からいつて適当であろう、こういう見地をもちまして、この判定機関として、都道府県知事ということになつたわけでございます。ありようはさような次第でございます。
  19. 大泉寛三

    大泉委員 警察ほんとう自主性を認めるならば、私は警察官もしくは警察吏員の適当な人物に対して、検事行政権というか、行使権というか、検事起訴権を委譲するということでなければ、完全な自治体警察機能を発擦し得ないと私は思うのであります。これに対して検事起訴権警察官に付與するような考えはありませんか。
  20. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま刑事訴訟法につきまして、改正案等研究をいたしておりまするが、ただいまのところでは、公訴権検事の專権に属すべきもの、かように考えておりまして、警察官に対してこれを行わせるということは、考えておらない状況であります。
  21. 大泉寛三

    大泉委員 私もあまりむやみに警察官起訴権公訴権を與えるということは不安でありまするけれども、完全な自治体という立場からいつて、せつかく自治警察が設置されたけれども、検察吏員の手先になつて、何ら自主性を発揮し得ない、いわゆる自治体の首長または公安委員自治制ためにあまりよろしくない、あるいは自治の円満なる運営に対して支障を来すと思うような点に至つても、遠慮仮借なく検事活動をやり、その検事活動は、しかも自治体警察吏員によつてかえつて将来に禍根を残すような行動にまでも立ち至るというようなことになつてはならぬと思う。ある程度簡易な問題は、むしろ自治体警察公訴権を認めてやつた方が、自治性を発揮するのではないか、こういうふうに私は考えるので申し上げるのだが、何らかこれに対してもう少し自主性を発揮し得られるような警察行政運営を、自治体希望とマツチするような方法考えられないのですか、これに対する大臣の御所見を伺いたい。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知通り公訴権というものは、これは個人の基本的権利侵害ということに関係のあるきわめて重大なる事柄でありまして、現行制度といたしましては、特にこれがためには、検事というものに責任を負わしておるのでありまするが、検事は御承知通り特別な法規に関する試験をいたしまして、その後二年間実習をいたしておるのでありまして、その実習の後に、第二回目の試験に合格したということによつて、初めて検事に任命される、この検事の資格及び任命の方法は、非常に手厚くなつておるのでありまして、かような手厚い手続によつて任命いたしまして、初めて人権に重大な関係のある公訴権を安んじて運用せしめることができるわけであります。従いまして、現在の警察におきまして、検事と同様な法律上また技術上の能力を期待するということは、これは個人的には絶対にないとは考えられませんが、一般的な水準といたしましてはちよつと無理ではないか、こういうふうに思われるのでございまして、現在のところといたしましては、やはり人権の尊重という立場から申しまして、公訴権検事に限ることが適当ではなかろうか、かように存じておる次第であります。
  23. 大泉寛三

    大泉委員 私は大臣のお考えと大体同じでありますが、自治体の自主権を尊重するという建前から、それを申し上げるのでありますが、特にこの機会に申し上げておきたいと思うのは、簡易裁判所ができてから、そこでおもに事件処理に当る副検事なるものは、元警察官出身が多いために、むやみやたらにふんじばることばかりやるくせがある。今の大臣のおつしやるように、人格ががつしり整つた者でなければいかぬと思うのでありますが、しかし自治体立場がこの検事、特に副検事立場から、いつも蹂躙をされる結果になつては、やはり自治体としても一応考えなければならぬので、こう申し上げるのであります。特にこの大都市、大阪とかあるいは東京とかいうような大都市においては、やはりその自治体独自性を相当認めてやる必要があるのじやないか。そうしたならば、問題は大きくなりまして、司法権までも分與しなければならないということになりましようが、これに対する今のような小さな自治体警察は別としても、大都市における検察行政の一部を委譲する考えはありませんか。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在のところ公訴権というものは、国家に專属するという考えをいたしておりますので、さしあたりまして公訴権自治体に委譲するという考えはございません。
  25. 大泉寛三

    大泉委員 それから各委員から質問あるいはまた政府から答弁されました、今度の改正にはありませんけれども、警察吏員人事交流に対して、あるいは自治体警察人事の行き詰まりに対して、何らかの打開策を要望せられておるようでありますが、私は自治体警察を真に住民警察にするには、人事交流ということはあまり考える必要はない。どこまでも自治体警察吏員で、いわゆるそこに職務上安定せしめる、土着せしめる。そして長く警察吏員として職務に安心してつくことができるようにすることを、第一條件にしなければならぬ。いわゆる出世主義とか、あるいは本人一人の都合のために、一般住民が迷惑をこうむるような処置をとるべきでない、こういうふうに私は考えておる。まあほかからずいぶん意見もありまするけれども、そうした考えで私はよく答えてもおります。この自治体警察に対する人事の問題については、今度国家地方警察に吸收されるという場合においては、これはやむを得ませんけれども、それ以外の問題については、大臣のお考えはどうでありますか。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 人事交流ということが、警察界におきましては非常に大きな問題になつております。これは御承知通り、現在自治体におります警察官の大多数というものは、自治体警察の創設された際に、従来の府県警察部からそこに配置がえをされた、あるいは従来の勤務地にそのまま引続き自治体吏員としてとどまる、こういうような人たちが多いわけであります。これらの人たちは、本来、従来の府県警察部というものに入つておるようなつもりでおりますが、制度改正によつて自治体警察吏員なつた、しかも府県警察部におりますると、たえず定期的に転任の制度もございまして、必ずしも同一のところにいつまでもいなければならぬというようなことではなかつたのであります。従いまして今日の自治体警察警察官の大多数の者は、――本来自治体警察というものは、ただいまお述べになりましたような趣旨であるべきものと存じますが、そういうものであるということを、よく承知して入つた人たちでないのでありまして、いわば今まで自分考えておつたことと、まつたく違つたような環境に投げ込まれたというような気持の者も相当あると思います。しかしむろん自治体警察育成発展という上から申しますと、ただいまお述べになりましたように、一切の出世主義というような考え方を排しまして、生涯をその自治体警察に捧げて行く、そういう人が多ければ多いほど、その自治体警察ほんとう自治体警察として伸びて行くものであると、かように存ずるのでありますが、不幸にいたしまして、今日の警察官というものは、警察界に入つた出発点からして、そういつた考え方とはおよそ相当かけ離れた心境で入つた人が多いのでありまして、過渡的の現象といたしまして、これはやむを得ざるものと思うのでございます。従いましてそうした問題の解決方法といたしまして、国家地方警察あるいは他の自治体警察との間に、ある條件のもとに人事交流を許されたいという希望は、警察界においては相当あると思います。これは事実でございまして、この事実がまたいろいろな意味合いにおきまして、今日の自治体警察強化発展を阻害しておるということも事実でございまするから、この現実の問題を解決する方法といたしまして、ただいま私どもといたしましても人事交流という問題をどういう程度において認むべきか、またどういう場合において認むべきかというような点について、研究をいたしておる次第でございます。しかしなお研究の時期でございまして、それによりましてある程度の方針がきまりましたならば、これを実行することによりまして、多少この問題の解決の一助といたしたいという考えはいたしておりますが、要するに段階といたしましては研究中という段階でございます。
  27. 大泉寛三

    大泉委員 大臣は、全国の自警連いわゆる全国自治体警察長連合会の意思よりも、全公連いわゆる全国自治体公安委員連合会の意見をたいへん重く考えておられるようでありまするが、この自警連と全公連というものは、もうほとんど同じ考えでもつて進んでいられるように私は思うのであります。そこで自警連即全公連の行動になつておるような傾きがあります。私は再々申し上げておるようでありますが、自治体の首長の意見、すなわち住民意見を代表しておるところの自治体の首長の意見を特に尊重していただきたい、こういうふうに大臣に期待しておりますが、今度公安委員の選任に対して相当緩和されるようでありまするが、この選任、選考について、同一の政党に対して二名以上出してはいけない、一名しか出してはいけないというような制限もあるようでありますから、この制限を撤廃する意思はないかどうか。一自治体がほとんど八割までも一政党に属しておるような場合もある。こうした場合に、人物を選定するにきわめて不適当な人物を選定しなければならないというきらいもありまするので、政党に所属するということは、政治活動に、政治に関心を持つ者の常でありますから、私は政党そのものに対して、これは制約すべきものでないと私は思う。これに対するお考えはどうでありましようか。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公安委員の資格といたしまして、同一党派に属する者が公安委員の過半数を占めないようにという見地から、政党の所属、政党の党籍についての制限がございます。これは御承知通り警察というものが人の基本的人権というものに関係いたしまする問題でございまして、かような事柄は政党政派という意味から、警察が発動されることを極力避けなければならぬということになつて、それと相照応した規定であると考えております。この事柄は自治体警察たると国家地方警察たるとを問わず、今後の日本の警察制度の運用といたしましては、十分に考えなければならぬ大切な事柄である、かように存じておるのであります。このたびの改正におきましても、この制限は引続き維持いたして参りたいという考えでございます。
  29. 大泉寛三

    大泉委員 昔よく請願巡査というのがありましたが、今は見当らないのですが、この請願巡査というか、請託巡査というか、こういう一つの制度も、私はある場合には必要じやないか、こう考えているのです。たとえば千人も二千人もいる工場とか、あるいはまた東北地方の同じ村にしても、一里も二里も離れているような部落に対しては、今は駐在しているところもありますけれども、国警としても全国にわずかに三万か三万五千人の人員では、とうてい各部落にまで駐在するというようなことはなかなか困難ではないか、こういう建前から、その村なり部落なりに対して、請託巡査の要請があつたならば、これに対する処置を認めてやるというような方法が必要じやないか。特に遠く離れた大きな工場なんかには、そういう場合は自分の体験からいつても必要のように思うのでありますが、これに対するお考えはどうでありましようか。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 請願巡査という制度は旧警察時代におきまして、すでに相当早い時期において廃止せられた。この廃止せられるに至りましたる趣旨は、やはり費用負担者と警察官との特別な関係というものが現実の問題として生じやすい、このことは結局国家に属し、あるいは公のものであるところの警察権が一個人あるいは一私的な団体というもののために專属しておるというような感じを與えるわけでございまして、これは警察制度の精神から見まして、警察権の適正なる行使について民間に誤解を生ずるおそれもございますし、警察権というものはやはり警察の経営主体がその公の見地に基きまして、必要なところに必要な警察官を配置する、こうあるべきものであつて、個人の希望によつて、しかもそれが恒久的な配置をなすというようなことは適当ではない、こういう考えで旧警察時代において廃止をせられたのであります。結局この問題は経費の負担というだけでございまして、その他には何ら経費負担者が警察官をさしずするとか、あるいは警察権の運用に干與するということはないのでございますが、しかし公正な上にも公正でなければならないところの警察権の行使という立場から申しましていろいろ弊害が生じやすい、あるいは弊害が生じておるのではないかというような誤解を生じやすい。この弊害なり誤解なりというものは、警察権の全体の信用に関係する点が、非常に重大な問題でございまするので、かれこれ利害を勘案いたしました結果廃止いたしたのでありまして、かような趣旨で廃止せられたものでありますから、この点は現在におきましても、やはりさような誤解を生じ、あるいは弊害を生ずるおそれは絶無とは考えられませんが、ただいまのところ復活しようという考えは持つておらない次第でございます。
  31. 大泉寛三

    大泉委員 それでは警察権を特定の人に付與するというような考えはどうですか。口では民主警察民主警察と言うけれども、国民の善良なる人あるいは適当なる人物に警察権を付與しておつたならば、ほんとうに不都合な人間を町から村から一掃することができる、こういうふうにまでも考えておるのです。たまたまどうも不都合な者を押えるだけの権限を持つていないという場合に往々ぶつかりますが、しかしこれは特定の人に限り、無報酬的な立場において、消防団長とか、あるいは町村における人物選考の上に、こういう人物に警察権を與えておく必要がある、特別な経費のかからない、無報酬でこうした人物を設けるということは、非常に民主警察建前からいつても必要ではないかと思うのですが、こうしたお考えはどうですか。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 従来の警察法におきましては、警察権の行使、特に執行力に関係ある職務につきましては、警察官に限つてこれを行わしむるという建前になつております。この趣旨は、基本的人権関係しまする重大な国家権力ないしは自治体の公の権力の行使に携わる人でございますから、その資格、教養におきまして、十分これを行使するにふさわしいだけの人であるということが必要である。またその行使につきましては、公にどこまでも責任を持つという建前にならなければならぬわけでございまして、これがためにはやはり公務員といたしまして、そういう最高の警察長の指揮監督のもとに奉職しておる、こういうことが必要となるわけでございます。これによつて初めて公安委員会という公の機関として、公に責任を負うておるところの機関が、安んじて警察の執行の事務を委任させることができる、こういう建前になつておるわけでございます。従いまして、特定の個人に対しまして警察権を付與するというような事柄は、なるほど個々の人につきましては、十分に警察権を行使させて間違いないというお方も多数あろうと思いますが、しかしその人が警察権を行使して間違いないということについての法律上の保障の方法がないわけでございます。またそれに対して公に責任をとるということも困難でございます。やはり現在の建前といたしましては、警察官でなければ警察権を與えられないという考え方がよろしいのではないか、かように考えます。
  33. 山手滿男

    ○山手委員 私昨日お聞きをいたしましたことに引続いていろいろお伺いをいたしたいと思うのでございますが、提案されましたこの法案の中をよくかみしめて読んでみまして、いろいろまた自警連、自公連、そういう立場の人人の意見も聞いてみたり、陳情書なんかを読んでみましても、どうも私はこの改正案というものが新しく要請されております警察力の強化というものに、どれだけ役立つて行くものか、あるいは根本的にどれだけこれが解決の道を開くものであるかということについて、非常に疑問を抱くような気がするのであります。どちらにいたしましても、警察制度が今日のように国警自治警、そういう二本建てになつているというところ、いろいろな問題が出て来るのじやないか。今度の改正案からいたしますと、むしろ私は問題の複雑性を今後に持ち越したような、かつこうになつて行くきらいがあるのではないかという気がするのでありますが、総裁にお伺いをいたしたい第一の問題は、はたして今日のように自治警国警というふうな二本建てで行くことを、総裁はいいと思つていらつしやるのか、あるいはこの問題について、もつと別個な角度からこれを検討しようとしておられるのか、根本的な問題でございますが、御心境を伺いたいと思います。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 マツカーサー元帥の警察制度改革に関する書簡にもありまする通り、現在の日本の警察制度といたしましては、従来の警察国家的な旧警察を打破いたしまして、警察民主化をはかりまするためには、地方分権ということが必要である。この地方分権ということを考えますると、どうしても自治体警察ということに相ならざるを得ないわけでございまして、この意味において、新しい警察制度が、自治体警察というものを創設した、これは警察民主化の端的な表現として正しいことである、かように私は考えております。一方におきまして、治安のため能率的にして強力なる警察を持たなければならぬ、こういう考えを押し進めて参りますと、それがためにはどうしても警察單位というものをできるだけ大きな單位にしておく、そうしていろいろな装備あるいは施設、かような事柄について考えましても、警察の規模が大きければ大きいほど、その間におきまする分業なり、あるいはそうした科学的な装備、設備等の利用においても、経済的にこれが利用が行い得るわけでございます。そういう点から考えて参りますと、どうしても警察單位をできるだけ大きな單位にして考えて行く、これが警察強化の上から行きますと、能率的である、こういうことに相ならざるを得ないのでございまして、いかにして能率的な警察を持つかという治安上の要請、一方におきまして、民主的な警察をいかにしてあらしめるかという民主主義的な要請、これは明らかに矛盾した方向をたどると言わざるを得ないと思います。そこで現実の問題として、現在の警察制度をどういう形において立てるかということが、この矛盾した二つの原理をどの点において調整するかという一つの政治的な考慮以外には、これのよりどころとなるものがない、こういうふうに考えられるわけでございまして、その一つの政治的解決というあり方といたしまして、このたびの改正案を提案いたした次第でございます。
  35. 山手滿男

    ○山手委員 総裁の言おうとされるところはよくわかるのでございますが、実際の実態を見てみますると、たとえていえば、大阪とかあるいは神戸とか名古屋方面、そういうところの自治体警察あたりの警察力の強化ということが、まずもつて一番大きな問題になる。あるいは関東でございますると、東京、横浜というふうな大都市近辺の警察力の充実ということが、最も重点的に考えられなければならない問題ではないかと思う。ところが自公連や自警連人たちに言わせると、今日の都市警察あるいは都市周辺の警察のことを考えておりますると、国家警察の力よりか、はるかに自治体警察の力の方がまさつておるし、実力があるのだという自負心を持つておることは事実であります。また人員の点において、そのほかの点においても、十分実力を持つておることを、私ども認めて行かなければならないと思うのでありますが、この改正案を通しますると、府県知事、そのほかの例の応援要求権というふうなものも出て参りまして、むしろ国警関係の弱い方の力が動いて行くというふうな響きになつて来まして、そこには心理的に国警関係自治体警察関係というふうなものに、微妙な、むしろ摩擦的な動きができて来て、警察力の強化ではなしに、むしろ逆の弱体化の方面に行くおそれがありはせぬかということが懸念されると思うのでございますが、その点についてどういうふうなお考えをお持ちでありますか。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まことにごもつともなお説でございます。私といたしましては、この警察力の強化という問題について、特に根本的な自治体警察国家地方警察というものについては、次のような考えを持つておるようなわけでございます。御承知通り自治体警察というものが、新しい警察法によつて創設をせられまして、これは従来の中央集権的な内務大臣を中心といたしましたる警察制度に対する一つの改革的なあり方として創設をせられている。そこにおきましては、地方分権ということ、中央政府の指導を離れて自治体が独自の警察として、独自の警察のあり方をする、こういう点がおのずから、沿革的に見まして、強調されたのはやむを得ないところであります。この自治体警察がそういう独立性を強調して参ります結果として、当然に自治体警察の側といたしましては、自治体警察独立のものである。従つてこれは国家警察とはまつたく平等のものである。その間に指揮命令の関係はない。この指揮命令の関係はないということは、明らかに警察法にも規定いたしてありますから、その限りにおいて、その考え方は正しいと思うのでございます。しかし一面におきまして、国の警察というものが国家地方警察自治体警察にわかれて参りましたる以上、国民全体の立場からいたしますると、国の治安は、このわかれわかれの数多くの警察が相寄り相助けて守つてくれるものである。この間には常に緊密な連絡協調ということがあつて、初めてこのことが可能になるわけであります。従いまして国民の側から言いますと、警察はできるだけ一本となつて動き得るような態勢をとつてもらうことが必要なのであります。おそらく現在の警察法の精神といたしましては、全国の国家地方警察並びに多数の自治体警察というものは、それぞれ独立で、相互に指揮命令の関係はありませんが、しかしながら警察国家的な使命から考えまして、それぞれ自主的に協力連絡の関係を設定して、そしてかような国民的な希望に即応ずべきものである、こういう根本的な考えがあるに違いなかろう、こう考えるのでありまするが、不幸にいたしまして現在までの段階におきましては、かような連絡、協調という面よりも、むしろ自治体警察独立性という面が強調せられ、またその面が強調されますと、国家警察の側におきましては、逆に反動的にこれに対して連絡協調あるいは統一という面を強調して行くのも、これは立場上やむを得なかつたと思うのでございます。かようにいたしまして、片方は独立性を強調し、片方は連絡統一という面を強調する結果としまして、そこに関係者の間におのずからなる感情的な対立というものが、自然発生的に起つて来たのであります。これは確かに国民的な立場から申しますと、克服されなければならぬ事柄でございまして、私就任以来この点を深く痛感いたしまして、国家地方警察及び自治体警察相互に独立であつて、相互に指揮監督すべき関係にはないのであるが、しかしながら双方が自発的に相寄り相助けて、初めて国の全体的な警察力を形成するのであるという基本的な考え方のもとに協調して、そしてある種の治安上重大なる事案に対しましては、統一ある、また連絡のとれた活動をする、そういう方向に自主的にお互いが進んで行くということが望ましい、こう考えまして、さような面にできるだけ努力をいたしたいと考えておる次第でございます。  今回の警察法改正に関連いたしまして、はしなくもかような従来の関係が、今までは暗々裡にあつたものが、社会的に表面化するという機会を持つたのであります。私はこの問題が、幸いにこの一つの警察法改正という問題を契機といたしまして表面に出た、表面に出たということは、これは同時にこれに対する解決策というものを表立つて論議し、お互いに論争するいい機会だと思います。かような意味におきまして、私はこういう機会に、むしろこの問題について根本的な解決をはかる可能性がありはしないか、こう期待をいたしておる次第でございます。幸いに今日までの状況を見ますると、警察法改正ということを契機といたしまして、やはり双方が国家全体の警察力というものの運用について、協力しなければならぬということを、双方の立場から考えていただくことができた、こう信じておるわけでございまして、今後はこの機会をできるだけ将来に活用いたしまして、国家地方警察並びに自治体警察の連絡協調ということをはかり、そして民主的な地方分権の警察でありながら、しかも必要なる事案に対しましては、能率的な活動のできるようになるように努めて参りたい、かように考えております。
  37. 山手滿男

    ○山手委員 この改正案のねらつておられまするところは、昨日の御説明にもありましたように、自治体警察の非経済性あるいは非能率性とか、今お話がございましたような横の連絡とか、統一とかいうふうなものの欠如という欠陷を補うことにあるのだ、こういうふうなねらいのようでございます。これはなるほど自治体側にもそういういろいろな欠陷があるということを認めざるを得ない点も、私は多かろうと思うのでございまするが、しかしよく考えてみますと、この自治体警察というものをつくりましたところの、いわゆる民主的警察制度を確立するという、あの建前がくずれておらない限りは、やはり自治体警察というものを主体にして考えて行く必要があるのじやないか。あの民主的な警察制度を打立てて行くという、このわくといいますか、基本的な考え方がくずれているのであるならば別でありますが、あのわくがくずされておらないといたしますならば、どうしても自治体警察というものを主体にお考えつて行く必要があるのではないか、こう私は考えるのです。ところがこの警察法改正は、むしろ国家警察側の意見を多分にお取入れになつたような形で改正がされておるのでございまして、そういう総裁のねらつておられます効果を上げるために、自治体警察の方は、むしろ権限の縮小あるいはいろいろな面での萎縮というふうなことが起きて来るように私は考える。今日国家警察が持つておられますところの、科学的捜査能力といいますか、いろいろな特徴、あるいは強力なる施設、そういうものについては、これは十分わかるのでありますが、この国警の持つておられるそういうもの、あるいは要求して使つておられる予算というふうなものを、全面的に自治体警察の方におまわし願つて自治体警察というものを中心に一本化をして、これが全面的にまた有機的に連絡をつけて、国家の治安を確保できるような態勢というふうなもの、むしろ自治体警察を小さくすることによつて警察力の維持をはかるというふうなお考えでなしに、自治体警察というものを、当初考えた民主的警察制度の確立を期するというわくがくずれておらないのでありますから、そういうものを強化をし、国家が庇護いたしまして、十分目的を達するというふうな意図に出られることも必要じやなかつたか。そういうことが、むしろ現在企図されておりますところとは逆の方向で、この警察法改正というものが、まじめに考えられる必要があるのじやないかということを私は考えるのでありますが、その点についてどういうふうにお考えでありますか、
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま山手委員のお述べになつた説につきましては、私もまつたく同感でございます。この警察法改正ということは、自治体警察というものを維持して行くということが、警察民主化の上から言つて望ましい、またそうあるべきものだという考えのもとにできたものなのであります。それをさらに申し上げてみますと、今日自治体警察というものをできるだけ育成助長いたして参る、これがためには、一方におきまして財政的な面におきまする国家の助成ということは、むろん必能なことであると考えます。たとえば財政交付金のうちにおきまする警察費としての、市町村の負担に対応する交付金の部分を、できるだけ増額して行く、これはむろん必要なことでありまして、これがためにも、もとより公安委員会といたしましては、年々努力を重ねておるわけであります。それからこの自治体警察を育成強化という方向に進めて参るということになりましても、何分にも先ほども触れました通り自治体警察には非常に小さな自治体警察が数多くあるわけでございまして、現に手数百の町村において一万九千の警察官を持つておる。かような小さな單位自治体警察というものを考えて参りますと、いろいろな面におきまして救うことのできない欠陷があるわけでございます。まず第一に、かような小さな自治体警察におきましては、現在の実情として、優秀な警察官を多数採用するということについても、困難があるわけであります。また機械設備その他装備等を充実して参る、これは今日警察の機動力を増す、あるいは犯罪捜査能率を上げて行くという上からいつて、非常に必要な事柄でございますが、しかしこのことを実行しようという場合に、わずか七人から十人、あるいは十数人程度の警察が多数を占めておりまするところの小さな自治体警察において、ほんとう能率的な機動力を備えようとすれば、やはり現在の状態では自動車の二台や三台はなければ役に立たない、こういうことになるわけであります。また通信にしましても、やはりそういう小さな單位があれば、そこに一つ一つ高価な通信機械を設備しなければならない。これらのことは、無限の財源があればもちろん可能でありますが、今日の国家並びに地方財政から見ますと、近い将来において理想的な完備をはかるということはとうてい不可能である、こう見通しをつけざるを得ないような部分があるわけでございます。かようなことを考えますると、できるだけ小さな單位というものは大きい單位にして行かなければ、時勢の要求しまする設備、装備というものはできない。それからまた、一つの特殊な事案を想定いたしましても、相当数の人が集まつた集団的な一つの事案が発生する、この場合において、七人や十人の警察ではいくら取締ろうとしても、事実上やつて行けるものではないわけであります。それともう一つ考えなければならない点は、小さな自治体がそれぞれ独立警察を持つということになりますと、そこにはどうしても全体の指揮官になるべき署長を一人置かなければならぬ。また会計については特に会計係の巡査を置かなければならない。それからいろいろな庶務的な事務の整備のために、また人を置かなければならぬ。こう考えて参りますと、小さな自治体におきましては、その警察官の半ば以上というものがかような警察の内部的な事務ために忙殺されます。このことはその警察が百人であろうが七人であろうが、とにかくそれだけの手をとられるということは大してかわりありません。そう考えて参りますと、警察力の能率的な運営という面から申しまして小さな自治体警察の非経済性ということは免れがたい。また警察力を強化しようとする場合においても、規模の小さいものについてはおのずから限度がある。これはどうも否定することができない。そこでこれらの事柄がいずれも警察という上から申しまして致命的な欠陷でありますから、何らかの対策を立ててこれを救済しなければならない。この改正案において盛られております救済方法といたしまして、できるだけ国家地方警察の力を、その面に補充的に向けるということによつて自治体警察の欠陷を救済する、すなわち応援の必要のある場合におきましては、国家地方警察が従来からも応援をいたすことになつておりましたが、その際の経費は政府で負担する。従つて必要な際には経費の点を心配せずに応援できる。また小さな警察においてとうてい自力でもつて備えることのできない特殊な技術とか機械、そういうものの必要な種類の犯罪につきましては、国家地方警察が府県知事の要請によつて、その事案のために主体警察として活動する。こういう方法を認める、これは自治体警察の権限を縮小したように見えますけれども、私どもの意図しておりますところは、自治体警察の致命的な欠陷と考えられる点につきまして、これを国家地方警察に肩がわりさせて行き、このことによつてその致命的欠陷が救済され、この致命的欠陷が救済されるということによつて自治体警察が存続の可能性を持つことになるわけであります。この改正案で国家地方警察に新しく仕事を課したということは、決して自治体警察の仕事を奪うということではございません。これによつて自治体警察の権限は何ら失われたのではございません。ただ国家地方警察が余分の仕事を與えられておるのであります。かように自治体警察の致命的な欠陷を救済されるということによつて警察に対する今日の要請にこたえ得るような自治体警察にしよう、これがこのたびの改正の眼目でございまして、これは民主的な自治体警察、しかも小さな單位自治体警察でも、これを残しておくということが可能であるために、できるだけの方法を講じて行こう、こういう考え方であります。
  39. 山手滿男

    ○山手委員 総裁のおつしやることは、どうもまだ私どもにはよくわからないのでありますが、話をかえまして、治安維持の万全を期しますために、自治体警察区域内におきまして、治安維持上重大な事案についてやむを得ない事情があると認めるときは、府県知事は応援を要請することができる、こういうふうなことに今度堂堂と改正をされるわけでありまするが、この治安維持上重大なる事案、それからやむを得ない事情、この二つの事柄の具体的な内容を御説明願いたいと思います。これはきわめて漠然とこういう條文が出ておりまするが、これが漠然とこういうふうに抱括的にどうにでも解釈できるような條文として、現われておりますると、これはいろいろ今後に自治警国警の協力という面において疑義を残すであろう、こういうことが考えられる。この点について御説明をお願いいたします。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは今回の改正の眼目となつておりまする重要な点でございまするので、特に政府委員からお答え申し上げることをお許し願いたいと思います。
  41. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 この点につきましては、一番御心配になつておられまする点は、今後自警と国警の上に運用上がんを残さないかという最後にお尋ねになつた点だと思います。われわれもその点が一番重要な点だと考えております。さようでありまするから、この点につきましては、自警連の方ともこの條文の根本の内容につきましても十分連絡をいたし、了解をし合つておる点でございますが、治安上重大なる事案と申しまするのは、当該自治体自身にとつては、あるいはその住民あるいはその指導者という方々からはそう大した事柄ではない、これは当該自治体自身には大した問題ではない、こう考えておられましても、場合によれば当該自治体にとつてこの事実は放つておく方がよろしい、こういう判断でありましても、その当該自治体よりもさらに広い範囲におきまして、府県全体あるいは国全体にとりまして、そういう状態に放置されることは、広い意味の治安維持上、どうしても放置ができない、こういうふうな場合におきまして、これを何らかの方法によつて当該自治体警察がみずから処理をし、または他の警察に応援を要請して処理をするというようにでき得ますならば、その方法によつてやるべきであります。しかしその方法がどうしてもつかないというような場合には、何らかの方法によつて公安委員の解職問題あるいは警察署長の解職問題というようなことも考えられましようが、日時を費しているいとまがない、緊急にその事件処理しなければならない、こういうような場合に、他に施す方法がありませんから、知事が国家地方警察活動を要請する、こういう建前にいたしておるのであります。具体的の例をたとえて申し上げますならば、ある国家にとつて重要な人が、ある政治目的で、ある所で暗殺された、これは当該自治体としては関知しない、あるいは自分処理をする意思は持つておるが、しかし捜査方法は緩慢である、たれが見ても不満足である、にもかかわらず他の警察の応援を要請しないというような場合におきまして、知事がこれは国の治安上放置することができない、こういう場合に国家地方警察をして処理をせしめる。また相当な規模の集団暴力行為が行われておる。しかしその集団暴力行為は、何らかの理由によつて当該自治体警察活動をしない、そのため住民が非常に戰々兢々としておる。知事はこれはその自治体の一事件として放置して置くわけには参らない、その場合に先ほど申しましたように国家地方警察の応援を要請するよりほか道はないというときに、国家地方警察処理せしめる、こういうように考えております。
  42. 山手滿男

    ○山手委員 今の齋藤長官のお話で、治安維持上重大な事案についてということのねらつておられるところが、ややわかつたような気がいたしますが、しかし治安維持上重大な事案ということに藉口いたしまして、自治体警察がその事案を処理しようとしている方向と違つた方向に、国家警察が動いて行くというような場合が起きたときは、その間に重大な摩擦が起きるのではないかということが考えられるのです。自治体警察区域内において起きた問題は、地元の警察がまずいろいろ手を染めて捜査方針を立て、優先的にやるということが考えられるのですが、そうしてやつておるのとは別個に、その地元の事情とは違つた感覚で、国家警察が乘り込んで行つた場合、それは円満にといいますか、その事態の收拾が効果的にうまく処理できるものかどうか、そういう点についてもう少しお伺いいたします。
  43. 斎藤昇

    ○斎藤(昇)政府委員 通常の場合に地元警察熱意を持つてつておる。そうして虚心坦懐にあらゆる專門的な知識を受入れるような場合には、そういうような事態はおそらく起らないであろうと考えておるのであります。捜査方針に関する問題というよりは、むしろ捜査意欲、捜査能力に関することだと考えます。捜査能力というよりも、むしろ捜査意欲に関する問題でありまして、何らかの理由によつてことさらその事柄の捜査をしない、ただ捜査をしておるといつて捜査をしておると見えないというような場合の事柄であります。ただいまお述べになりましたようなさような心配の事柄は私は起らないと考えておるのであります。先ほど法務総裁もお述べになりました通り警察上の治安維持と申します点は、自治体警際も国家地方警際もお互いに連絡協調を保つてつて、初めてとられるのであります。従いましてたまたま一つの事件について、それが今後自警、国警の感情の齟齬を来すというようなやり方になりましては、かえつて大きな意味における治安の維持に欠陷を生ずることでありますから、かような点は特にお互いに留意しなければならぬと戒め合つておるのであります。先ほど申しますような理由によりまして、さような例は、私は事実上は起るまいと考えておる次第であります。
  44. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは本案に対する質疑は、後刻続行することにいたします。     ―――――――――――――
  45. 前尾繁三郎

    前尾委員長 これより、先刻提案理由説明を聽取いたしました地方自治法の一部を改正する法律案議題として質疑に入ります。御質疑はありませんか。――別に御質疑がありませんければ、本案に対する質疑はこれにて打切り、討論を省略して、ただちに採決をいたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  これより採決いたします。本案に賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  47. 前尾繁三郎

    前尾委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決されました。  なおこの際お諮りいたしますが、衆議院規則第八十六條による報告書作成に関しましては、委員長一任に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決します。     ―――――――――――――
  49. 前尾繁三郎

    前尾委員長 この際連合審査会開会に関しお諮りいたします。すなわち、本委員会において目下審議中の警察法の一部を改正する法律案について、法務委員会より連合審査会を開きたい旨の申入れがありましたので、法務委員会と連合審査会を開会するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  50. 前尾繁三郎

    前尾委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  なお開会の日時につきましては、両委員長協議して定めることになつておりますが、あすの午前十時より開会いたしたいと思つております。  それでは暫時休憩いたしまして、午後一時半から開会いたします。     午後零時四十三分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十一分開議
  51. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは再開いたします。  休憩前に引続き、警察法の一部を改正する法律案議題として、質疑を続行いたします。山手滿男君。
  52. 山手滿男

    ○山手委員 午前中の質問の続きでございますが、例の改正案の二十條の二の問題点であります。どうも「治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由があると認めるとき」ということは、さつき法務総裁の方から御説明もありましたけれども、その字句に盛られておりまする本質というものが、ああいうふうな御答弁では、きわめて漠然としておつて、疑義を今後に残すであろうと考えられるのであります。治安維持上重大な事案ということ、それからやむを得ない事由ということ、この二つがどういうふうにからんでおるかということも問題でありますが、私どもは治安維持上重大な事案というような特殊な規定を設けるということは、地区的にでも非常事態の宣言をするか、あるいはそれに類似するような重大なる状態をさすものでなければいかぬ、その程度にまで来たときにこの條項を発動さすということであるならばこれはなるほど了解ができるのでありますが、そうでない、さつき国警長官の方から御説明がありましたように、漠然として、しかも單にちつぽけな問題をとらえて、みだりにこの條項を発動するということになりますと、これは極端に地方自治体警察を圧迫することになり、あるいは問題を紛糾さす原因になるのではないか、こういうことを考えるのであります。この治安維持上重大な事実ということの質的な内容といいますか、本質というものを、どういうことを具体的に見ておるか、もう少し総裁から具体的に御説明を願いたいと思います。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この治安維持上重大な事案、これはもとより通常ありふれた事件について、都道府県知事がかような請求をするというわけではないのでありまして、やはり一種の非常な事件というわけでございます。その非常な事件というものを、どういう観点から見るかということになりますと、これはやはり單にその事案が未解決のままあるということではなく、その事案を未解決のままに放置しておくということが、相当広い範囲にわたつて、治安維持上の障害をなすという場合でなければならぬと思うのであります。ただしかしそれは事案の性質でございまして、その事案の性質上そういうふうな事案、こういう意味でございまして、非常事態のごとく非常事態の宣言をなしまするのは、それは事案でなくして、その当時の一般的な事態が非常事態の宣言をしなければならぬ、こういうことであります。そういう意味ではなく、これは個々の事案そのものについての性質という点から見るべきものであります、この点は非常事態の場合とは標準と申しますか、考え方が違つておるわけでございます。
  54. 山手滿男

    ○山手委員 この治安維持上重大な事案ということ、これはみだりにそういうふうな事態が起きるとは、もちろんわれわれも想像しないのであります。よくよくのことでないと、自治体警察の持つておりまする自主性というものが失われて来るし、きわめて愼重な配慮がその間になされなければならないと思うのでありますが、特にこういう條項を掲げて、しかも国家警察の方から乘り込んで行くということになりますから、この明らかな限界と申しますか、紛議を残さないような、だれにでもわかるような解釈が、下されておらないといかぬのじやないか、こういうことを考えております。そういう事態と、しかもやむを得ない事由というものは、まだ具体的に説明されておらないのでありますが、やむを得ない事由というのはどういう意味か、重大な事案ということと、下のやむを得ない事由ということとの二つの関連は、どういうふうに解釈したらいいか、その点を伺いたいと思います。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは運用上よくよくの場合でなければならないという山手委員のお考えについては、全然同感でございまして、私どもはさような意味において、治安維持上重大な事案、こういう表現をいたしたのでありまして、これの運用がもし濫にわたるということになりますれば、当然自治体警察に対します不当な干渉ということになるわけであります。従いまして実は二十條の二というものにおいて、かような非常の活動を要請する機関といたしまして、一時かようなものは主として犯罪に関連するものでありまするから、検察機関が要請することが適当ではなかろうか、こういうような考え方もいたしたのでありますが、しかしいろいろ検討いたしました結果、検察機関というのは、上司に対して責任を負うべき機構になつておる。しかるに都道府県知事いうものは、公選された機関であるばかりでなく、その行動に対しましては、民主的な都道府県議会というものがありまして、これを批判し、監督するという作用を持つております。従いましてそうした民主的な監督のもとにあるところの知事に、この要請の権限を付與し、そしてこの要請をいたしました場合においては、遅滯なくこれを都道府県議会に報告せしめまして、その民主的な批判の機会を有せしめるということによつて、この不当な濫用を十分に予防できる、こういう考えのもとに都道府県知事に與えたわけでございます。濫用を戒めなければならぬという点は、この案を立案する際におきましても、最も重要な事柄として、考えの中に入れた事柄なのであります。そこで治安維持上重大な事案というものについての一定の解釈ということになるわけでありますが、これは相当広い範囲にわたりましての治安について重大な関係を現に持ち、あるいは関係を生ずるようなそうした性質を持つたところの事案、こういう意味でございまして、その事案をそのままに放置しておくということによつて、当然相当広範囲にわたつて治安上おもしろくない状態が発生するであろうと認められる、事案の客観的な性質としてそういうことが認定される、そういう種類の事案に限りておるわけであります。従いましてこのことは、一つには犯罪の種類、性質等から見て、そういうふうなことが言い得るであろうと思われるのでありまして、一時はこの二十條の二につきまして、ある種の犯罪を限定いたしまして、そういう犯罪についてだけ、都道府県知事がこの要請をすることができる、こういうふうにしてはどうであろうかというようなことも考えてみたわけであります。しかし相当広範囲にわたつて治安上に重大な影響を生ずるであろうと認められるような犯罪の種類を、漏れなく列挙するということも、技術的になかなか困難でございますので、そこでかような表現を用いたわけでございまして、これは事案と申しまするか、つまり主として犯罪捜査あるいは検挙の問題になります。発生をしたる犯罪、あるいは発生を認められる犯罪の性質によつて、きまるものが大部分である、こういうふうに考えております。  それから次に「やむを得ない事由があると認めるときは、」このやむを得ない事由というのは何であるか。これは国家地方警察処理するのでなければ、事案の解決は他に方法がないというふうなことを十分に推測されるよう々、十分な理由のある場合というような意味でございまして、自治体警察が独力をもつて解決し得る、あるいは自治体警察を管理いたしております公安委員会の権限によつて、十分に解決できるであろうという予測をつけられておるような場合においては、発動すべきではない、こういう意味であります。従つて技術的にあるいは能力的に見まして、とうていその自治体警察が独力で解決することは不可能であろう、こういうことが相当の根拠によつて認められる場合、こういう意味に解釈いたしております。
  56. 山手滿男

    ○山手委員 今の御説明で大体わかつたのでありますが、わかりましたのは、きわめて抽象的に漠然とお考えになつて、この條文を書かれておるということが、わかつたわけであります。どちらにいたしましても、この治安維持上重大な事案、そういう事案でありますが、それがやむを得ないというふうな事由が、具体的な根拠によつて、そういう応援をし、あるいは国家地方警察が乘込んで処理しなければならないようなふうに認定される、こういうことをお考えになつておられるのでありますが、そこで今御説明になりましたところの、都道府県知事というようなものがその要請をいたし、発意をするわけでありますが、御承知のように、都道府県知事というのは、警察法上は何ら権限がないものである。今度初めてこういうところに頭をつつ込んで参つております。今までもしありとすれば、都道府県公安委員を任命するということだけの点であつた。現在総裁のお話のように、変なことをするならば、あとからこれは民主的な制度であるところの府県議会によつて、公正に批判をされるであろう、こういうことで、民主的な運営がされることを保障しているのだというお話でございますが、実際的には都道府県知事というのは、警察関係において何ら地位を占めておるものではない。法制上何ら手足を持つておらない。情報も持つておらない。そういうものがぽかんと乘り出して行つて、こういう重大な事案あるいはやむを得ない事由が、具体的な根拠においてこういうふうにあるのだということを認定してかかるということは、私は都道府県知事では困難ではあるまいか、こういうことを考えるのであります。それで今後いろいろな事態が起きるであろうと思いますが、この一々誤りなきを期さしめようとするならば、都道府県知事のもとに事務局なり、情報機関というふうなものを設けるか、あるいはさもなければ、国家地方警察というものの中に、今のような單に公安委員を任命するというふうな任命しつぱなしのかつこうの連絡でなしに、もつとその中に都道府県知事というものの地歩を築かすような法制面での変更がなければ、現在のようないわば警察法上はまる腰の都道府県知事が――しかも都道府県知事の中には、いろいろな立場があつて、その起きた事件、政治的な問題、あるいは思想的な問題、そういうものについても、いろいろな立場の人があるであろうと思う。それが單なる一時的な情報の入手、あるいは自己に不利、あるいは有利な事実を認定したようなことにすぐ動かされて、こういう規定を発動して行くというふうなことになると、その自治体警察というものは、これは何をしているか、これはもうたいへんな問題が起きるのではないか、こういうふうに私は思うのであります。この点について法務総裁は、事後において府県議会において民主的に批判をされる、こうおつしやいますが、その前において、現に発動する時期において、ことさらに平地に波乱を起すような事態が相当起きるのではないか。つまりこの二十條の二というのは、もう少しこれは嚴格な規定を設けるなり、あるいはわくをはめて、こういうものがおかれるならば、これはまだ考える余地があるのでありますが、今御説明のような、漠然としたわくで、この規定を施行されて行くことについては、われわれは十分納得行かないのであります。その点につきましてはどういうお考えでありますか。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御趣旨についてはまつたく同感でございまして、何か技術的にそういうわくが考えられれば、それに越したことはない、こう考えるのであります。しかしいろいろと工夫をいたしてみましたが、やはりこの規定といたしましては、多少漠然とはしておりますが、あらゆる事態を漏れなく網羅するという意味においては、かような表現がかえつて適当であろう。そうしてこれの運用といたしましては、解釈といたしまして、相当具体的なわくを適当な方法によつて設けて、誤りなく運用するようにいたして参りたい、かように考えておる次第であります。
  58. 山手滿男

    ○山手委員 どうもこの二十條の二という條項は、今後いろいろな問題を起すであろうと思いますし、ことにこの府県知事の警察権という問題、これは今後いろいろな形で重大な事態を引起すのではないかという気がするのであります。法務総裁のこの案の立案当時お考えになつておられることは、自治体警察というものを、うんと欠陷の多いものであるというふうな先入主で見て行かれるから、できるだけわくを広げて行くというふうなお考えである。従つてそれを具体的に網羅して行くということが、非常に困難になつたのではないかと思います。やむを得ない事態というのを最小限度のものにのみ限るということで行くならば、私はそう大して技術的にも不可能じやないように思うのでありますが、この点はあとからもう少しわれわれも研究をしてみたいと思います。  それからその次の二十一條でありますが、公安委員につきまして、従来以上この任用のわくを広げられたことについては、われわれも全面的に賛成でございますし、むしろこういうふうな形式的なわくのみならず、私どもは実質的にまだまだうんと早急にわくを広げてもらいたいというような気がいたすのであります。というのは、これは警察法改正にも直接間接関係があると思うのでありまするから、お聞き申しておきたいと思うのでありますが、今日治安維持の問題が非常に重大化しておるのでありますが、地方におきましては地方ほんとうの実力者といいますか、地方で最も信頼をされておるというような人が相当追放になつたり、いろいろ終戰直後のごたごたで独占禁止だとか、経済統制の問題そのほかいろいろな問題にひつかかつて、遠慮しなければならないような立場に置かれておる。こういう実質的にその地方の指導者であるような人たちが、積極的にこの地方の治安維持に乘り出して来る措置をとられることがきわめて必要じやないか。單にこういうわくの広げ方のみならず、現に追放解除という問題についても、積極的なそういう措置がされなければならないと私は考えておるのでありますが、先般来この追放解除の問題については、個人の申請なんかは必要とせずして、わくによつてこれを全面的に解除するという説が、新聞なんかにも報道されております。ところがその反面に、やつぱり個個の人々が具体的に自分を解除してほしいというふうに申請をして行かなければいけないというような説も行われておる。この際いろいろな問題もあろうと思いますが、どういうふうに追放のわくを解除して、こういうふうな面にも積極的にそういう人たちが動いて行く措置をとられるか、この際明らかにしていただきたいと思います。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 追放の問題につきましては、実は私所管でございませんので、詳しく事情は承知いたしておりませんが、リツジウエイ大将の今月一日の声明によりまして、占領政策の結果でき上つた各種の現在の法律制度につきまして、日本政府に再検討の権限を認められたのであります。これに関連いたしまして、いろいろと政府部内におきまして相談をいたしておりますが、その空気といたしましては、まだ確定的なお話を申し上げる段階にはむろん参つておりませんが、しかしおそらくは今お述べになりましたような、ある種のわくについては、それを解除するというようなことになりますと、個人の審査、ことに申請という手続を用いずして、相当の多数の人が解除されるというようになる場合が多いのではないか、かように思つております。
  60. 山手滿男

    ○山手委員 ほかにも同僚の質問がありまするから、私はこの辺で打切つておきたいと思いますが、もう一点今の点に関連して法務総裁にお聞きをしておきたいと思うのであります。追放令違反とか――追放という問題は、日本の敗戰直後の混乱状態、それから民主化の過程においてああいう特殊な措置がとられたのでありますが、追放令違反、あるいは経済統制違反、そのほか終戰後の混乱期を克服するためにのみ特につくられた諸法令の違反という問題で、ずいぶんたくさんの人が日の目を見ないような状態にある。しかもそういう人たち、かつて終戰前の日本では非常に大切な人、地方行政においても非常に重大な役割を果しておつた人が、そういう問題でいろいろ遠慮させられておるのであります。どうしてもこれは、講和も接近をいたしておりますから、そういう人たちに早くカムバツクしてもらつて、新しい地方行政の確立という問題に立ち働いてもらわなければならないと思う。それは私はずいぶんあると思つております。講和ができますと、政府あるいは司法部の方では、そういう経済統制の問題、あるいは追放や独禁法の違反というような問題でひつかかつて、公民権の停止とかいろいろな処罰を受けておりますのを、これを大赦とかあるいは特赦という形で、キヤンセルするというようなことをお考えになつておるかどうか。あるいはそういうことを現に司法部では考えておられるかどうか。研究しておられるかどうか、私はお伺いしたいと思います。この問題は一見警察法の問題と関係がないように思われるのでありますが、地方の治安においてはそういう人たちが発言をすることが、非常に重きを加えるゆえんであります。その反対の結果もあるかもわかりませんが、とにかくそういう大赦あるいは特赦という形で、終戰直後の混乱時期の日陰者を、一応わくをはずして行くお考えはないか、この際御所見を承りたいと思います。
  61. 大橋武夫

    大橋国務大臣 講和に際しまして、追放令達反あるいは経済統制の違反等によりまして権利に制限を受けておる人たちに、社会的に有力な活動をしていただきますために、何らかの措置を考えてはどうか、こういうお話でございますが、この点は私もまつたく同感に存じますので、まだ講和までは多少の時日もございますから、十分誠意をもつて考えまして、できるだけそういうはからいができるものならば、そうした道を開くように努めたいと存じます。
  62. 前尾繁三郎

    前尾委員長 門司亮君。
  63. 門司亮

    ○門司委員 私はきのうお聞きをいたしましたことについて、さらにつけ加えてお聞きをいたしたいと思うのですが、まず逐條の質問をいたします前に、もう一応大橋総裁の意見をよく確かめておきたいと思うのであります。きのうも申し上げましたようにこの改正法案というのは、どう考えてみても、自治体警察に対しては非常に不親切な行き方だということが言えると思う。それはきのう申し上げましたように、自治体警察の悪い面だけを取上げていて、これを育成助長して行こうという考え方がちつとも現われておらない。むしろわれわれは現行の警察法が実際において悪いというのではなくして、これを運営する面について、ほんとうに助長されて行くならば、私はある程度の効果を発揮し得るものではないかということは、きのうも申し上げた通りであります。さらに私はそれにさかのぼつてお聞きをしておきたいと思いますことは、現行の警察法を施行いたしまする当初におけるわれわれの考え方と、最後にいろいろの関係から出て参りました法案との間には――これは私ははつきり申し上げておいた方がいいと思いますが、多少の食い違いがあつたということは、私ども認めざるを得ないと思うのであります。それは自治体警察範囲の問題でありますが、これが現行の五千でいいのか、あるいはわれわれの当初考えておりました経済的あるいはその他住民等の関係から考えて二十万、あるいは最小限度五万までくらいに、これをすることが妥当であつたというように考えておつたということが、一応現在考えられるといたしましても、もしそういうことでこの自治体警察單位が、非常に小さくなつたことのために、先ほど大橋さんの答弁の中にありましたように、小さな警察にどういう大きな機動力を持たせたところで、それは実際の問題として運営が困難である、だからそういうものについてはこういう制度の方がいいのだというお考えで、もしこの警察法を修正される意思であるとするならば、この際むしろ思い切つて警察運営のできる範囲に、これを限定すべきではなかつたかということであります。ただ何か見殺しにして、悪く言えば餓死させておいて、そうしてどうせお前たちは餓死するんだから、それを救つてやるというような態度じやなくて、餓死しないような方法を先に講じて、そうしてあるいは五万以下の自治体警察はやめさせるというような、私はもう少し明確な線が大胆率直に引かれるべきだと思います。しかしそういう線が引かれないで、やむを得ないものは住民投票によつてこれを行うというようなきわめて不親切な――ちよつとこれは親切のように見えて、実際は私はきわめて不親切な行き方だと思う。政府は何か胸に一物あつてものを処理するような印象を、必ず国民に與えると私は思うが、この点に対する大橋さんの考え方を、もう一応聞かせておいていただきたいと思います。それを私が聞かせておいていただきたいと思いますことは、大臣も御承知通り昭和二十二年の九月十六日のマツカーサー元帥の内閣総理大臣あての書簡の内容の中には、全部書簡を読むわけには参りませんが、その中にこういうことが書いてある。根本目的は、憲法に盛られた地方自治の原則にのつとつて警察制度を完全に地方分散することによつて、最もよく達成することができる。各都市及び町はその管轄区域の治安維持の責任に任ずべきである。それがためには中央政府より独立した自身の地方警察を有すべきである。こういうふうに大体書いてあるのであります。さらにそれを要訳して申し上げますると、中央集権的国家警察が、再び形をかえて出現することを防止するために、国警自治警との間にいかなる形においても、指揮命令の関係を設けてはならない、こういう意味のことが実は述べてあるわけであります。従つて警察権地方に分散させることは、おのおのの地方自治体、いわゆる市区町村自治体責任において治安は維持すべきである、こうはつきり書いてあるわけであります。従つて警察制度の根本の趣旨は、私はどこまでも自治警察が本来の趣旨であつたと思う。またそうでなければならないと思う。同時にいかなる形においても、これを再び中央集権的国家警察にもどすようなことがあつてはならないという同じような意味のことが、ここに書いてある。この二十二年九月十六日のマツカーサーのきわめて強い示唆によつてできた警察法であることには間違いはございませんので、この精神から申し上げますると、さつき申し上げましたように、自治体警察が小さなところでは困るというなら、その困るようなものに対しては、便宜的に運営上これをこういうふうに切りかえて行く、しかしそれについてはどこまでもはつきりした態度で臨むべきである。もしそうでなくてこの書簡をそのまま生かすとして、これが尊重されるならば、さつき言いましたようにどんな小さな自治警察でございましようとも、それはやはりおのおのの市区町村責任の上において、治安を守つて行くという精神から、これを育成助長すべきであつたと、私はこう考えるのでありまするが、この間の事情をもう一応はつきりさせていただきたいと思います。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 当初政府といたしましては、主として治安の観点よりいたしまして、小さい自治体は原則的に廃止した方がよろしいのではないか、ことに町村のごときは全廃した方がいいのではないかという考えを持つてつた時期もあるわけであります。しかしながら、その後いろいろ検討を重ねました結果、自治体警察が今日の警察法の根幹をなしておるものであつて、そうしてこのことは、従来の警察国家警察民主化するために、警察地方分権をはかつて行かなければならぬ、この根本的な要請に沿うものでありまして、そうして市街的町村における自治警察は、現状のまま不十分なものについては、政府の力によりましてできるだけこれを育成助長強化をはかりまして、存続維持して行くことが必要である、こういうふうに考えて参つたわけであります。そうしてそれがためには、現状のままにおいて治安上遺憾の点の多いことは争いがたき現実でございまするから、政府の力によりまして育成助長する、こういうことにしなければならない。そうしてそれにはどういう措置が必要であるか、もちろん財政面におきまして、地方財政交付金において警察費のための部分をできるだけ増大をはかつて行く。これは財政的な基礎を十分ならしめる面におきまして、自治体警察の育成強化の上からいつて適切でございまするから、これについて従来とも努力をいたして参りましたが、今後とも努力を続けることはもちろんであります。と同時に非常に小さい單位におきまする自治体警察につきましては、一性質上どうしても能力の限界があるわけでありまして、この限界につきましては何らか他の側から肩がわりして、それによつて負担を肩がわりするという方法によつて、治安上の要請を果して行く以外にはないわけでございまして、その措置といたしまして、今回の警察法改正におきましては、治安上重大な事案についてやむを得ない場合においては、自治体警察が当然しなければならぬ事柄について、府県知事の要請に基いて国家地方警察の肩がわり的な活動を認めて行く。それから国家地方警察の援助を自治体警察が必要とする、これは当然想像されることであり、現行法におきましても援助を要請するという趣旨規定があるわけでございますが、その際におきまする費用の負担を、国庫の負担にすることを今回の改正案において定めたわけでありまして、これも費用の点を顧慮せずして、十分に国家地方警察の協力を要請できる、このことはやはり小自治体警察の治安上の欠陷を是正する有力な方法である、こういうふうに考えた次第でございまして、政府考え方といたしましては、できるだけかようなあらゆる方法を講じてでも自治体警察、ことに小さな自治体警察にまぬがれがたいいろいろな欠陷を補う方法を講じたい。これは明らかに自治体警察を維持して行く上から言いまして、治安上どうしても必要な事柄でございまして、これを用意するということは、これによつて治安上の要請とにらみ合せまして、小自治体警察を存続せしめる上からいつて、必要欠くべかざることであります。これはとりもなおさず自治体警察に対する育成強化の手段である、こう考えておるわけであります。こういう考え方でございまして、この案におきましての根本的な精神というものは、あくまでも自治体警察を育成強化して行くという方向において、いろいろな処置を講じてあるわけであります。しかしながら何分にもきわめて規模の小さい自治体警察というものは、経済性においても、能率におきましても、よほど国家地方警察の援助というものに依頼しなければならぬ部分があるわけでありまして、そうなつて参りますと、非常に規模の小さい自治体警察は、独立して存続するという実益も非常に稀薄になる可能性があるわけでありまして、それらの点を考慮された結果、住民において自治体警察は廃止したい、こういう希望がありましたならば、その希望を入れるということもまた適当であろう、こういう意味におきまして自治体警察住民投票による廃止ということをも、この中につけ加えたわけであります。考え方の筋道といたしましては、あくまでも自治体警察と育成強化する、こういう考え方であつたわけでありまして、ただいま申し上げたような趣旨をもつて立案をいたした次第であります。
  65. 門司亮

    ○門司委員 私にはこの改正の條文の中に、そういうものははつきり見出すことができません。ただそういう気持だというだけでは受取りにくいのであります。  その次に聞いておきたいと思いますることは、今山手君からも再三聞かれたことで、十分意を盡しておると思いますが、なお聞いておきたいと思いますのは、二十條の重大なる事案であるとか、あるいはやむを得ざる事由であるとかということでありますが、さつき大臣は一応こういう事案に対しては、というようなことで事案の種類等も考えたというようなお話でありましたが、私はむしろ事案の種類というものをはつきり考えて、たとえば国家全体に及ぼす犯罪、あるいは有価証券あるいは通貨の問題、あるいは密輸入の問題というような、この国家全体に及ぼす犯罪に対しては、やはり国警が、その事案がたとい現われたものはきわめて小さくても、一応これを全体的な立場から捜査し、あるいはこれを検挙することができるというのは、一応考えられるのであります。従つて私は法規の内容といたしましては、そういうものをやはり十分明記することが、この法律の内容としてはよかつたのではないか。もしこれが明記されないで、ここに重大なる事案ということと、やむを得ざる事由ということで書いてある、しかもそれを認定するものはだれであるかというと知事である。知事は、先ほども山手君が言いましたように、何らの権限を持つておらない、足を持つておらない。それでこれを一体だれが知事に要請するのか。一体知事を補佐するのはだれであるか。これはデリケートな問題である。と同時に警察法の法制上からいつておかしいのじやないか。警察権を何ら持つておらない知事が、ある場合にはこれの指揮権ともいえるものを持つということである。これは法制上私は非常に疑義を持つておりますので、もう少し私は重大なる事案とか、やむを得ざるものである――たとえばやむを得ざるものであるとするならば、おおよそ想像のつくものは選挙に対する違反であるが、いろいろな情実関係自治体では検挙が困難である。これはやはり国警がやるとか、あるいは検察庁みずからがこれを指揮してやるというようなことが、われわれ常識的に考えられる。従つてそういうものを、やはり明記しておくことの方がいいのではないか。そうすれば何ら権限を持つておらない知事が、ある場合において指揮権を持つような形はなくなる。この知事の警察権と、知事がそういうことの――これはある意味における指揮でありますが、指揮ができるということは、どの法律によつて一体これが與えられるのか、その辺をひとつ明確にしておいていただきたいと思います。
  66. 大橋武夫

    大橋国務大臣 治安維持上重大な事案というのは、先ほど申し上げましたる通り犯罪の性質によつておのずから限界がある。そういう意味におきまして、犯罪を列挙できるものならば、列挙して、この権限が不当に濫用されないような措置を講ずるということはきわめて適切である、こう考えるのでありますが、この案をつくりまする経過におきましては、いろいろ研究いたしましたけれども、なかなか網羅的に各種の犯罪を列挙することは困難であつて、これは法文の規定としてそういうふうな列挙をするよりは、むしろ法文の解釈としてそうした列挙を考え、これを関係者に周知させる、こういう方法によりて濫用を防止するということが、実際上は適当であろう、こう考えた次第であります。  それから警察についての指揮権を、都道府県知事が持つのではないか、こういう御質問でございますが、これは都道府県公安委員会に対しまして、ある具体的な事案の処理を、府県知事が要求するだけでございまして、この要求によりまして都道府県公安委員会が、管轄内において国家地方警察職権行使を促す、そういう権限を與えられるだけでございまして、この與えられたる権限は、当然都道府県公安委員会の運営管理、その指揮のもとに運用されるのでございまして、知事の指揮によるということは予想をいたしておらないのであります。ただそういうふうな権限を国家地方警察に附加する行為自体、すなわち請求それ自体が警察の指揮ではないか、こういうふうな御質問と相なるかもしれませんが、その点は解釈のしようでございまするが、私どもはあくまでも警察は府県知事と、独立運営されるべきものであつて、たとい府県知事がかようなる要請をいたした場合においても、警察運営について指揮を行うということは、予想しておらないわけであります。そしてこの要求についての法律上の根拠ということになりますが、この二十條の二は、これによりまして都道府県知事に新たにかような要求をする権限を付與したものでございまして、これ以外の法令に基くものではございません。この條文によつてこういう権限を都道府県知事に新しく附加された、こういう趣旨でございます。  なおまたこの都道府県知事の権限を、都道府県知事が行使するについて、いかなる機関の補助を受けるかという問題でございますが、これはこの法案におきましては、格別制限をいたしておりませんから、都道府県知事は、必要と認め、その支配下にあるあらゆる機関の補助を受けて、この権限の行使をいたすことができるであろうと考えております。
  67. 門司亮

    ○門司委員 私はその権限をこの法律で與えたといえば、なるほど法律でありますので、他の法律になくても、この法律で與えれば、それで法制上の問題は終ると思いますが、今最後に御答弁になりました知事は警察権を與えられましても、実際の警察の内部に対して情報を集めるとか、あるいは諸般の事情を知り得ることは、何も機関を持つていないから、これは助言の仕手がないのであります。助言することのできないような仕組みになつてつて、ただ県知事が、重大な事案だとみなしてこれを指揮し、あるいはこれを指揮するといいますか、公安委員会に要求する。公安委員会は、この法律によりますと、必ずこれを処理しなければならない、こう書いてある。そういたしますと、これは明らかな指揮であり、命令であるということが、ある程度言えると思う。ただ公安委員会にこれを要求するというだけであつて、それの取捨選択については、公安委員会が取上げるとか取上げないとかいうことは、公安委員会権限だということになつておればいいのでありますが、この條文をこのまま読んでみますと、「都道府県公安委員会は、前項に規定する要求があつたときは、当該都道府県国家地方警察に当該事案を処理させなければならない。」こう書いてある。はつきり義務づけられております。義務づけられております以上は、知事は一つの権限でこれを命じたことになると、私は解釈すべきだと考えておる。そうなつて参りますと、大橋さんのさつきのお話では、権限を與えたのだと言いますが、この権限を執行いたしまする前提になる何ら力も持つておらない知事が独断でやる、こういう解釈になつて参りますから、非常に危險だと私は思います。知事がはたして重大な事案だということを十分に即断できるかどうか、やはり民選知事ではありますが、こういう知事の独断で警察権を行使することのできるような仕組みというものは、法文の取扱いの上においてはどうかと考えておるのであります。しかし大体今の御答弁で――私ははなはだ解釈に苦しむのでありますが、一応それを置いておきまして、その次に聞いておきたいと思いますことは、公安委員会の関係であります。それは都道府県公安委員会は、知事の要請がありました場合には、国家地方警察処理させることができますが、その事案の起つた当該地区の公安委員会との関係は、何ら規定されておらない。そういたしますと当該公共団体公安委員会というものは、この場合に一体どういうことになるのか、この事案については、この法律をそのまま読んでみますと、都道府県公安委員会の運営管理のもとにこれが行われる、こう書いてある。さつきの御答弁のように、これもこの條文で権限を付與したんだと言えば、それは言えるかもしれませんが、しかし残るものは私は感情だと思う。他の公安委員会の運営管理にまかされる場合に、やはり当該公安委員会にも何らかの話合いをする機関というものがなければならない、あるいは通知をするとか、必ず通知をしなければならないとかいうような連絡というものが、必ずなければならないと私は思う。この連絡がなければ犯罪捜査には――私はあつてはならないと思いますが、人間でありますから、いろいろな非協力な態度が出て来やしないか、当該警察官の非協力な態度がありますならば、これはいかに国家地方警察といえども、なかなか事案を容易に処理することはできないと思う。この間の規定が何も設けてないが、これについてどう考えておられますか。
  68. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まことにごもつともな御質問でございますが、この規定といたしましては、特にあらゆる事項を規定したというわけでございません。法律でございますので、最小限度の事柄を規定いたしたわけでございます。これらの事柄を実際実施いたすにつきましては、お説の通り府県知事が要請するにあたつては、関係の地区の公安委員会の、この事案に対する能力、態度、こうしたことについても、十分な調査も必要でありますし、またいよいよ都道府県会委員会要求をいたす場合におきましては、事後これに対して当該地区の警察官都道府県公安委員会に対する協力ということが、当然なければならぬわけでありますから、そういう協力が得られるような十分な心づかい、またその心づかいを具体的に現わすような、いろいろな手続、これは当然に必要となるものと思います。これらの事柄につきましては、十分関係者におきまして考えてするような、そういうことを公安委員会といたしましても十分研究いたします。そうして格別法律規則というようなものを出すような、具体的な考えはただいまございません。しかしできるだけそうした場合に必要な心づかいというものについては、研究をいたし、そうしてそういう手続にのつとつて誤りなく運用できるような措置を考えて参りたいと考えております。
  69. 門司亮

    ○門司委員 それは非常に重大なことでありますが、事業の内容は内容といたしまして、先ごろのマツカーサーの指令の中にもありますように、事案の責任は当該地区町村住民がこれを負うべきであるということが、自治体警察の本旨であるといたしますならば、その自治体警察の中に起つた事案のいかんにかかわらず、私は当該地方公共団体が、やはり責任をもつて解決すべきである。しかしただ事案のいろいろな関連性から、国家地方警察がこれを処理することができるという場合に、国家地方警察がこれを処理するということは、これは一つの便宜上の法律だと思う。便宜上の法律にすぎないものが、今の大橋さんの御答弁でありますと、当該地方公共団体公安委員に相談をするという規定が、何ら設けてないということになつて参りますと、明らかにこれは知事の地方公共団体自治権に対する干犯だと思う。これは容易ならざる問題である。現在の地方自治法規定によりますと、知事は上級監督官庁ではございません。これは地区町村とほとんど同じような形に置かれていると私は思う。上級官庁でない知事が、同じ地方公共団体の事案について、たといここに重大なるというようなあいまいなというか、あるいは漠然とした文字でこれを区切つておいて、そうして地方公共団体公安委員会にも、あるいは長にも相談しないで、そうして国家地方警察が自由にその地方に入つて捜査ができ、あるいは仕事ができるというようなことは、私は見方によつては一つの干犯だと思う。この点に対して総裁はどう考えるか。
  70. 大橋武夫

    大橋国務大臣 地方警察権を干犯するような仕方において、この権限が運用されるということは、これはもとよりこの條文の予想しておるところではないのでございます。これはあくまでも事案の処理ということにつきまして、当該自治体警察が独力で解決できないということを推測すべき合理的な根拠のある場合において、これを解決するやむを得ざる方法として、かような措置を規定しようという趣旨でございます。従いまして通常の事案につきましては、おそらく事前に関係警察と打合せをするなり、十分に地元警察の納得を得て、そうしてまた事後における協力のできるような、そういうことが十分期待できるような手続を経てやるというのが、これが普通のあり方であろうと思います。ただしかし事案によりましては、非常に急を要する場合もございますし、事前に打合せをすることができない、事後になつて通知をするというようなこともあろうかと思うのであります。
  71. 門司亮

    ○門司委員 私はどうもその点は釈然としないのであります。それはなぜかといいますと、さつきも私が申し上げましたように、この法律の第二十條というもの自体が警察法の本旨でなくて、ただ犯罪検挙、あるいは治安の維持のための一つの便宜の方法である。警察法の従来の精神から言いますならば、あらゆる犯罪はやはり自流警察でこれを処理すべきだ、またしなければならないことに私はなつておると思う。ところがそれで処理のしにくい問題、あるいは事案の性質上、自治警察より国家警察の方が都合がいいという、單にこの條文は便宜的に犯罪捜査あるいは治安の維持のために設けられた條項だ、こう解釈する以外にないと私は思う。従つて私はこの條項は警察法の根本に触れる問題ではないと思う。警察の持つております職務というものは、警察法の二條に書いてある通りでありまして、これが完全に遂行できるというものは、やはり自治警察においてもそれは遂行できるはずである。ただ、何度も繰返して申し上げますが、便宜上こういうふうにしておいた方が、治安の維持上都合がいいという解釈をこの際すべきであると私は思う。根本からこれは国家地方警察地方自治警察よりも有位である、上位にあるのだというような考え方でなされたものではなかろうと私は思う。もしそうだとすれば、なお重大な問題になると思う。従つてこの法律の中に、当該地方自治体の公安委員との密接な連絡のもとに、やはりこれが行われる仕組みにしておきませんと、ただ大橋さんの言われるような言葉だけでは、私は断じてこの法律運営は完全に行えないと思う。見方によりますれば、さつき言いましたように、知事の行政権に対する干犯だとも言えましようし、あるいは具体的に申しますならば、事案の内容が示されておりませんので、当該地方公安委員なりあるいは警察地方住民から、無能呼ばわりされるようなことが出てきやしないかと思う。自治警察がまごまごしておるから、国家地方警察がこれを処理したのだということで、自治警察に対する一つの不信の声が、地方住民の中に起つて来ないとも限らない。そういうものは必ずしも地方自治の円満なる運営には役立たないと思う。この間の事情は、この條項を入れます場合には、私はぜひはつきりしたものを入れておいて、そういう点遺漏のないようにこれをしておきませんと、事案の内容がここに書いてないだけに、いろいろな問題に対して、知事は神様ではありませんので、あるいは感情あるいは物の考え違いというようなことで、問題を引起さないとは、だれも保障しがたいと私は思う。こういうことでこの二十條については、もう少し当局ははつきりしたものをひとつ出してもらいたい。そうしてやつておきませんと、さつき言いましたように、大橋さんは干犯にはならぬというようなお考えでありますが、私は必ずしもそうではない、これは都道府県知事地方公共団体に対する明らかな一つの権限の行き過ぎが、数多く行われるというようなことに考えるのでありまするので、もう一応聞いておきたいと思いますが、そういう條文にこれを修正されるお考えがあるのか。あるいは他の方法だというならば、條文の解釈にそういう文字をつけるか、あるいは政令を出すことができるかどうかと思いますが、そういう形でこれを具体的に解決される何らかのはつきりした御答弁をお願いしたいと思う。
  72. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この第二十條の二というのが、ある性質ないし種類の事案については、国家地方警察処理することが便利である、そういう便宜上からやるのではないかという御趣旨のことがございましたが、これは私どもといたしましては国家地方警察処理することが便宜であるという便宜上の趣旨ではなくて、実際その自治体警察の現状から見て、自治体警察としては独力で解決することはむずかしかろうという合理的な根拠のある場合、やむを得ない事由がある、それ以外ではちよつと解決ができない、そういうようなやむを得ない場合にやろうというのでありまして、その方が解決上便宜であるからというような理由で、都道府県知事がこの要求をするというようなことは、予想いたしておらないわけでございます。それからこの要求をする際におきまする地元自治体警察との関係につきまして、門司委員のお述べになりました事柄につきましては、私どももまつたく同感でございまして、さような趣旨を十分に普及徹底いたしまして、運用上誤りなきことを期して行きたい、こう考えていることをお答え申し上げます。
  73. 門司亮

    ○門司委員 私はますますそこでわからなくなつて来るのでありますが、便宜上の問題でない、根本的の問題だということになつて参りますると、なおこの條項を私は明記しておいていただきたい。そしてこれこれこういうものについては、これは国家の治安上必要だということを、ここに明記しておいてもらいたい。それはこの警察法の中に、御存じのように、自治体警察自分の手に余るものについては、応援を要求することができる規定がちやんと書いてあります。何も知事からさしずを受けなくても、自治体警察の中で処理できないと思えば、国家地方警察なりあるいは同じ地方自治体警察に応援を求めることができる、これは当然やり得るのであります。ただ、こういう規定を設けなければならないというのは、さつきも何度も申し上げましたように、具体的に国家的事案である場合には関連性を持つておる。いなこれは国家地方警察が手をつけた方が、情報の收集にも全国的に手配をする場合にも都合がいいのだという場合、あるいは悪く言いますれば、自治体警察の小さなところでは、いろいろな固縁情実で、たとえば選挙違反等のごときは、なかなか検挙がしにくいであろう、こういうものについては、因縁情実を持たざる国警が行つてやる方が、公正が期せられるというようなことについて、私はこういう條文があるならばけつこうだと思いますが、これが警察法の、そういう便宜的といいまするか、便宜的という言葉を使うと、あまり便宜過ぎるかもしれませんが、とにかく運営上の関係からできておるのでなくて、根本の問題ということになつて参りますと、これは明らかに国家地方警察に中央集権的な行き方が現われて来ておると思う。上級機関でない知事が、警察権に対しては上級機関のような形がここに出て来ておる。私はこれは明らかに、今の大臣の答弁は、そのまま受取りまするならば、再びこの警察の中央集権にもどる一つの大きな原因が出て来ておるのではないかというように考えられる。この点については私の言つておりますることが正しいのである。大橋さんはどこまでもこれを警察法運営上の関係から、こういう問題を設けるのでなくして、警察法の根本の問題で、こういう條項を置かなければならないということでありまするならば、もう少しこの二十條の二の條項について、ひとつ詳しい説明を、私はこの機会にお願いしたい。
  74. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これはもちろん運営上の問題であることは確かでありますが、私の申し上げましたのは、治安維持上重大な案件につきやむを得ない事由がありと認めるときにおいて、この要求都道府県知事がする。それはいかなる場合にするか。これはある種の犯罪につきまして、国家的な広範囲にわたる犯罪について、あるいは国家的重大な犯罪について、国家地方警察が全面的に捜査ないし取調べを行うことが便利な場合が多々あります。しかしその場合において、すべてこれを国家地方警察にやらせようというのが、二十條の二の考え方ではないのでありまして、国家的な重大な犯罪でありまして、これは原則としては市町村自治体警察の本来の責任であり、また一応の原則的な立場においては、自治体警察処理することを希望する。しかし現実の場合におきまして、いろいろな事情によつて当該市町村自治体警察では、独力で処理できない、こう認められるような根拠のある場合においてだけ、きわめて例外的な措置として、この都道府県知事の要請が行われる、こういう趣旨を申し上げようと存じた次第でありまして、これが警察法の本来の精神であるとかないとか、そうした問題ではございません。もちろん現行警察法の運用の便宜のために、かような制度を認めるものであることは、これは間違いないところであります。ただ私がこれを便宜的な理由からではないと申し上げましたのは、国家的な重大な案件について、捜査国警が行う方が便利である、そういう事柄を全部国警にやらせようという趣旨ではなく、そういう事柄でも原則としては自治体警察がやるべきものである。ただ具体的の場合において、自治体警察では解決が至難である、こう認められるような場合においてのみ、例外的にこういう措置を講じて行く、こういう意味であるということを申し上げようと存じたわけであります。
  75. 門司亮

    ○門司委員 言葉じりをとるようでありますが、そうなつて参りますと、この機会に私は聞いておきたいと思うのですが、そういう重大な事案の例を、ひとつなるたけ詳細にこの機会に発表していただきたいと思います。この後のこの法律運営について私は非常に必要だと思います。
  76. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま政府委員から申し上げます。
  77. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 この事例につきましては、けさほども国警長官が一、二御説明になりましたが、たとえば相当規模の集団的な暴力行為があるのにかかわらず、当該自治体警察が何らかの事由によつて活動しない。しかもその事態がその町村のみに影響するにとどまらず、さらに拡大するおそれがある。――ここでやむを得ない事由と書いてありますのは、さような場合におきましても、あくまでも警察法の本旨に従いまして、あるいは当該町村から国家地方警察への援助の要求をなし得る場合はこれをしてもらう。また公安委員なり警察長なりの責任者の処置によつて処置できるものはしてもらう。しかもこれができない場合におきましても、現在の警察法上は何ら適切な対策が講じられておらない。これに対処するためにこの二十條の規定を置いたということを、この前の、政府委員の御説明のときも申し述べておられたのでありますが、さような場合を考えておるのでありまして、主としてやはり刑法に言いますところの内乱とか外患とか国交、騒擾、通貨偽造の罪、大臣その他の政府要路の暗殺、発電設備、主要鉄道路線、橋梁等の損壊というような事柄が考えられるものでございますが、しかしながら必ずしも犯罪の種類によつて区別ができるとは思つておらないのであります。その犯罪の態様とか、影響力、波及性というようなものによりまして、判断せらるべきものであろうと考えておるのであります。
  78. 門司亮

    ○門司委員 私はその範囲では実は承服しがたいのであります。今お話になりましたのは、主として治安維持の関係で、騒擾に関係する問題である。そういたしますと、この條文は大体そういう騒擾に関係した問題を主として対象とされてこういう形になつておるのか、私はそういう騒擾に関連するような事案については、知事がこれを全県的に見て、これはけしからぬというようなことではないと思います。今お話になりましたような事案でありまするならば、必ず当該所轄警察なり、あるいは自治体がこういうものは十分察知し得るはずであります。何らの捜査の足を持つておらない、情報網も持つておらない県知事が、私はそういうことを十分知り得るとは考えられない。事犯が起つて、そうして大きな騒擾になるというような場合においては、さつき申し上げましたように、自治体警察は援助を求めることができますので、おそらくこれらの問題は、私は解決し得るのではないかと思う。そのほかに、今のお話よりも、むしろ私はさつき申し上げましたように、国家犯罪とみなされる通貨の偽造犯罪、あるいは証券の偽造というような大きな国家的にどこへ行つても、それが関連性を持つて来るような、国家的に捜査網を張らなければ犯罪検挙が困難なような問題が、ここで実際問題として、こういう形で処理された方がいいのではないかというふうに、実は考えられるのでありまして、むろん大きな騒擾罪その他が起りますならば、これは知事の要請に基くというよりも、当該地方公安委員会の方が、よほど先にこれは知らなければなりませんし、また知つておるはずである。ただその場合に当該の公安委員会では事態が大きくならないと見ておつても、国家的見地から見て、これは非常に大きな事案に発展性を持つておるのではないかという認識の相違が多少出て来るかもしれない。その場合にこういう処置がとれるというのなら、一応われわれは応援というもので、やはりそれを処理して行くような形にするなり、あるいは知事は一応これを当該の公安委員会に勧告をするということの方が、あるいはこの処置としては穏当ではないか。  ただちにこれが、さつき申し上げましたように、当該の公安委員会にも知らせないでおいて、国警に命じてこれをやらして行くというようなことになりますると、県の公安委員会は私は非常に迷惑だと思いまするが、これは今の加藤さんのお話の範囲に限られておるのか、あるいはそれ以外に、私はもう少し何らか含まれたものがあるのではないか。私がこういうことを強く要求しておりまするものは、ここまで言いますと少し言い過ぎるかもしれないと思いまするが、警察法改正に対する今日までの経緯を考えてみますると、この條文が一番大きな問題になつてつて、そしてこの條文を政府考えておるような明確なものにできなかつたというところに、私はこの今日までの警察法改正の全公連あるいは自警連あるいは国家公安委員あるいは国家警察との間のいろいろな問題が、ここにすべて織り込まれて来たのじやないか、私はこういうふうに考える。従つてそういうことを考え、そして何か割り切れないもののうちに、これを見のがすというわけではありませんが、これを通過させてしまいますと、後において必ず問題をひき起す。私はこのことを懸念いたしますので、さつきの加藤さんのお話よりも、できればもう一歩進んだ具体的な説明がもう一応願えたら、ひとつしていただきたい。
  79. 大橋武夫

    大橋国務大臣 門司さんのお話には大体私も同感でございまして、ことにただいま加藤政府委員から申し上げましたような事案について、一応考え方としては、府県知事が国家地方警察活動要求する前に、むしろ適当な方法をもつて当該公安委員会に対して、この国家地方警察の援助の要請を勧告することが適当ではないか、こう申されましたが、この点は私もまつたく同感でございます。そして実際の場合におきましては、そういうふうな措置をとることの方が、かような知事が一方的に要求して国警から乘り込むという行き方よりもはるかに望ましく、また事態を円満にまた有効に処理する上からいつて、その方がはるかに効果的である、こう考えます。むろん運用上は、原則的には今仰せられたような趣旨に運用すべきものである、またそういうふうにしなければならぬ、こう考えております。しかし特にさようなこと以外に、知事の要求という立て方をとらなければならなかつた理由は、いろいろな事由によりまして、当該地方公安委員会が、国家地方警察の援助協力を要請するということが、妨げられるような場合がございます。これは地元に対するいろいろな思惑、あるいは事実上援助が何か外部の力によつて妨げられる、こういうような場合もあるわけでありまして、実際問題として、援助を要求したらどうだ、こう言いましても、援助は要求できないが、援助してもらえるようなことがあれば、かえつて都合がいいのじやないかという場合もあり得るわけでありまして、そういう場合を予想いたしまして、それを国家地方警察が一方的に援助するといつて乘り込むのは適当でない。従つて地方一般的な情報ということについて、絶えず関心を持つておる都道府県知事というものの要請に基いて、応援に行くという形をとるのが適当ではないか、こう考えたわけであります。もとより原則としては、公安委員会の応援の要請という行き方が原則であり、またできるだけそういう原則的なやり方によつて解決するように、努力しなければならぬという考え方は、私どもとしてももとよりそう考えております。ただいろいろな事情によりまして、応援を要求することすら、事実上困難であるというような場合を予想しての規定である、こうお考えを願いたいと思います。
  80. 門司亮

    ○門司委員 だんだん話を聞いておると、わからなくなるのですが、そうなつて参りますと、お互い感情の問題であつて、議論は私は二つにわかれると思います。一方は要請することがいい、こう考えていても、何かの事情で要請しない場合は困るから、こういう規定が必要だ、こう私には受取れるのであります。そうなつて参りますと、それを反面から解釈いたしますと、要求をしなくても、援助を求めなくても、自分の方で十分やれるということであるにもかかわらず、知事はかつてにこういうことができる。しかも当該公安委員会には相談しないでやれるのですから、かつてにやられる。ここで摩擦ができる。こういうふうに解釈の仕方によつて両方の解釈ができると思う。それが一体どつちがいいかという議論になるけれども、私どもはそういう間違つたものの考え方をすることを避けて、基本的にはさつき申し上げましたように、やはり知事は当然公安委員会に、一応事案の処理については、こうしたらどうかという勧告をすることができる。そしてなおそれでも地方自治体がどうしても処理することができないというような場合においては、第二義的に知事はこういう処置をとつてもいいという考え方を持つことの方が正しいのではないか。それでもなお事案の処理ができなければ、国家非常事態の要請をすればいいのでありまして、そこに行く道程の処置として考えて行くなら、私はやはりこの法律に書かれておりますものは、第二義的のものであつて、第一義的にはやはり当該公安委員会にこれを一応了解を求めるといいますか、勧告をするというスムーズな行き方に、これを改めた方が私はいいと思いますが、大臣はそういうふうに改められる御意思があるかどうか。
  81. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実際の運用につきましては、まつたく門司君のお考えと、われわれの考えとはかわつている点はないと思います。それを法律規定に現わす場合におきまして、実際に動かすその通りをすべて法律に書いたらどうか、こういうことになりますと、ただいま門司さんの言われたような趣旨に改めなければならぬ、こうなると思います。実際そうすることについて、われわれとしては反対する理由はないわけでありますが、しかしこの案を書きました気持といたしましては、これは最後において行われるところの、どうしても法律規定がなければ行うことのできない事柄だけを、法律によつて書いておけばよかろう。その前の第一義的といわれます事柄は、現行法のもとにおきましても当然そうすることができるわけでありまして、たとえば府県知事がそういう勧告をしたいと思えば、国家地方警察の応援を求めたらどうかという勧告は、現行法のもとにおいてもできることでございます。そこで現行法のもとにおいてできないことだけ、すなわちどうしても法律規定を設けなければできない事柄、それだけを法律に書くことにしよう、こういう考えのもとに二十條の二というものをこしらえた次第でございます。従いまして運用上においては、まつたく門司委員のお考えとわれわれの考えとは一致をいたしておることと確信をいたします。
  82. 門司亮

    ○門司委員 非常におそくなりましたので、二十條だけで議論をすればまだこれからもあると思いますが、一応このくらいで私はやめておきますが、ただ私どもの気持といたしましては、さつき申し上げたように、やはりこれを第二義的なものとして、第一義的には、当該地方公安委員会を十分尊重する。これは自治権の尊重だと思います。この條文は自治権の尊重ということでなくして、見方によつては、自治権の干犯だとわれわれは見ておる。こういう條文についてはぜひひとつ最後までお考えを願いたいことは、あらためて出し直していただきたいということを申し上げておきます。  もう一つ今日聞いておきたいと思いますことは、警察官の増員の問題でありますが、ここには警察学校に入つて知る警察官が大体五千人ぐらいあるので、それが実際上の問題として使えないから、そのかわりに五千人の者をふやす、こういう解釈のように私は聞くのですが、もしそうだといたしますと、非常に悪い言葉を使えばごまかしであつて警察大学あるいは警察学校に行つておる者もりつぱな警察官であります。教習所におる者とは違いまして、りつぱな警察官である。これはいつでも出動ができるわけであります。出動ができないという規定はどこにもないのであります。従つて警察官警察学校あるいは大学に五千名ぐらい常時おるから、それを補うために五千名ぐらいふやすということは、われわれは受取れないのでありまして、むしろそういうりくつよりも、五千名がいかなる理由をもつて必要かということが解釈に苦しむのであります。従つてこの五千名を増員されることは、この理由書に書いてありますようなことは、悪く言えば、ごまかしみたいにわれわれには聞こえるのであります。そういうことでなくして、ほんとうに五千名どうして必要なのか、それはこの説明書に書いてある以外の理由がなければならぬと思います。それをはつきり御説明つておきたいと思います。
  83. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいまおつしやいました通り、実質的には五千名の増員になるわけであります。ただ考え方といたしましては、この五千人ふやすのは、現在三万人の定員のうちで、約五千人の者が常時警察学校及び警察大学に入つておりますので、その第一線の勤務から常に抜けておるわけであります。その欠を補つて、第一線の勤務に従事し得る者を三万人にしたいという考え方を、ここに條文で現わしたのでありまして、実質的には、第四條のところを三万五千人としたのと同じことであると私は解釈しております。
  84. 門司亮

    ○門司委員 大体はつきりしましたが、四條を三万五千人にすればいいのであつて、何もしろうとをごまかすようなりくつをくつつけて、五千人をふやす必要は毛頭ないと思います。私はほかに意図があると思いましたが、今の加藤さんの率直な御答弁で了解いたしました。そうすると、これの予算措置もありましようし、いろいろな問題が付随して来ると思いますが、これはあしたかあさつてにしておきまして、もう一つ定員の問題について聞いておきたいと思いますことは、自治体警察の中で国家警察に吸收されると思われる増員が、一体国家警察でどのくらいふえるかということ、これの見通しがありますならば、一応この機会に発表しておいていただきたい。それからもう一つは、九万五千のわくが従つてくずれて参りますので、今警察の法令で定められておりまする人口比率によつて、日本の自治体警察が増員されるとすれば、自治体警察の数は一体どのくらいになるか、この二つの数をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  85. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 お尋ねの第一点でございますが、どの程度自治体警察町村警察住民投票によつて廃止されまして、国警の方に編入になるであろうかということは、実はわれわれといたしましても、はつきりした見通しはないのでございます。これからこの法律改正趣旨が徹底をするに従いまして、各町村におきましてこの点については大いなる関心を持つて、どういうふうな成行きになるであろうかということは、われわれ自体も予測に苦しんでおるような状態でありまして、まことに申訳ないでありますけれども、申し上げかねるのであります。  それから九万五千のわくがはずれることになりますと、各市町村でそれぞれその地方的な事情、実際の犯罪発生件数であるとか、あるいは財政の事情等によりまして、その定員をきめることになるのであります。これもどの程度のものになるであろうかということは、申すまでもなくそれぞれの市町村の方でおきめになることでありまして、われわれにははつきり申し上げかねるのでございます。ただ現在の警察官の定員で、増加いたしました人口に応じてきめれば、どのくらいになるであろうかということは、ただちにここで計算をいたしかねますので、明日でも書面をもつて御通知することにいたします。
  86. 門司亮

    ○門司委員 どうもそれがはつきりしないと法律の審議をしておつても、仮定の事実に基いた法律をこしらえるようなことで、一向はつきりしないのですが……。それではあとでさつきの数字がわかりましたならば、概略お知らせ願いたいと思います。その他の各條項につきましては、もう少し実はまだ聞いておきたいことがあるのであります。それは住民投票に対するいろいろな見方でありますが、これは明日に譲ることにいたしまして、さようはこの程度で私の質問は打切りたいと思います。
  87. 前尾繁三郎

    前尾委員長 砂間委員
  88. 砂間一良

    ○砂間委員 実は先ほどから問題になつております第二十條の二についてでありますが、山手さんの質問を聞いておりましても、また門司さんの質問を聞いておりましても、非常に詳しく質問者の方では相当つつ込んで質問をされておるのでありますが、どうも御答弁は、腹の中では一つのきまつた考えを持つておられるようでありますが、それをなるべく質問者にわからぬような遠まわしといいますか、婉曲な表現をしておりまして、一向納得が行かないのであります。今度の警察法一部改正法案の一番根本の点が、この第二十條の二だろうと思うのでありますが、そこがはつきりしないわけでありまして、はなはだ不満に思うわけであります。先ほど加藤政府委員の御説明によりますと、例の「治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由」この問題の言葉でありますが、これは集団的暴力行為、内乱だとか、外患だとか、政府の大官を暗殺するとか、騒擾だとか、あるいは発電所をぶつこわすとか、あるいは主要な橋梁を破壊するとか、いろいろな例をあげられたのでありますが、そういう事態が今日の現在の段階におきまして頻繁に起るということを、政府は予想しておられるのかどうか。まず現在の事態に対する政府のお考えを聞かしていただきたいと思います。私どもの考えとすれば非常事態というか、そういう大きな騒擾というような事態が起つた場合には、これは国家非常事態宣言もできますし、そのときには鉄砲をかついだ警察予備隊もすぐ飛び出ることができるわけでありますから、わざわざこの改正案のように、知事の要求によつて国警が市町村まで乘り込んで行くというようなことまでも、きめる必要がないように思われるのでありますが、特にこういうふうな改正をしなければならぬという切迫した事態について、一体政府はどういう事件の発生を予想されておるのか。ひとつ率直に聞かしていただきたいと思います。
  89. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この改正につきましては警察法施行過去三年間の経験に基いて、かような事案については、こうした特別措置が必要であると、経験上判断をいたしたのであります。さような過去の経験というものは、今後においてもやはり同様であろうという予想のもとに、かような案を出したのであります。
  90. 砂間一良

    ○砂間委員 過去三年間における経験上からと申されますと、これは非常に具体的な経験をされておられると思いますが、平事件でも朝鮮人の騒擾事件でもけつこうでありますから、この三年間におけるどういう事件のときに、こういう必要を痛感されたかという、二、三の例をひとつ具体的にあげて説明していただきたいと思います。
  91. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは過去三年間のいろいろの事案につきまして、かような必要性を感じたわけでございまして、特に具体的などういう例といつて、今取立てて申すべきものもございませんが、しかし過去の経験の全体に徴してこれがきわめて必要である、こう考えておる次第であります。
  92. 砂間一良

    ○砂間委員 先ほどからの大橋法務総裁の御答弁を聞いておりましても、これは犯罪の性質によるとか、あるいは政治的な性質の犯罪だとか、こういうふうなことも申しておられましたが、普通の訴欺やどろ棒や火つけや人殺しをつかまえるのには、今の警察制度で十分できると思います。集団強盗とかいうふうなものも間々起つておるようでありますが、しかしそういうのもたいていつかまつておるようであります。また自治体警察がそういう事案について手が及ばない、力が及ばないというときには、それはすなおに国家警察に応援を依頼するでありましようから、特にこういう規定を設ける必要はない。そうしますとどうしてもこれは犯罪の性質ということは、何か階級的な政治運動あるいは労働者の運動とか、そういうふうなものに関連した一つの彈圧の措置として、あらかじめ計画しておるというふうな――これは必ずしも邪推ではございませんが、そういうような感じが、答弁の言葉の間からふんぷんとしてかおりがして来るのであります。過去の三年間の経験と申しましても、私どもに大体想像されますことは、やはりそういつたふうなことではないか。たとえば具体的な例をあげて申し上げますと、もしこういう例が該当しないということであれば、そうおつしやつていただけばけつこうでありますが、たとえば吉田内閣の悪政によりまして、非常に苛斂誅求をやられて、とても人民が生きて行けないような悪税を取立てる。その税金を納めてないと、もう差押えにやつて来る。そうしてトラツクを持つて来て、武装警官が出動して来て家財道具をみんな持つて行く、こういうふうなことは政府の悪政の結果でありまして、こういう悪政をしきますと、全国的に大きな反税闘争が起つて来るのはあたりまえであります。個々の場合火つけとか、どろぼうとかいうのは個々の不心得者がありまして、偶発的に起つて来るのでありますが、こういう悪政の結果起るところの一つの民衆の反抗運動は、相当全国的に起つて来る可能性があるのであります。あるいはまた、労働者に対しまして低賃金で徹底的に超過労働でしぼり上げる、こういうふうなことをやりますと、労働者は当然労働組合をつくつておるのでありますから、大きなストライキの波が全国的に上つて来る、それからゼネストというふうな事態も起つて来る可能性は幾らもあるのであります。しかしながら、一方においてこの自分の失政の結果、そういう事態が発生するような要因をつくつておきながら、それから起つて来た運動を、これは国家治安維持上捨てておけない自治警なんかにはとてもまかせておけないということで、国家警察で断圧しようということになりますと、これはとんでもない間違いでありまして、本来種をまいておりのは政府の政治のやり方が悪いのでありますから、自分の悪政をたなに上げて、ただ警察力をもつて、暴力によつて人民を断圧する、こういう結果になるわけであります。最近の事例といたしましても、たとえば平和の声という新聞がありました。これはその内容から行きましても、私どもは何ら治安上不穏当というふうなものは感じないのでありますが、それがいけないということになつて、多数の人が検挙されておるのであります。しかしこれがいけないものであるならば、それは発行をさしとめておけばいいのであります。それを合法的に十号も二十号も出させておきながら――合法的に出ておるのでありますから、地方人たちは朝日新聞や読売新聞を取継ぎしたと同じように営業行為としてこれを発売頒布しておる。ところがそれを二十号も過ぎたあとで、あれはどうもアカハタの後継紙だと認定したという口実をあとからつけて発行停止し、それ以前に配布したものまでも検挙し投獄しておる。しかもその検挙や家宅捜索の場合、不法なやり方をやつておるのでありまして、必要もないような多数の武裝警官を出動させて、そうして立会人もつけないで屋内に不法侵入いたしまして、――捜査令状を持つて来ておるのでありますから不法侵入ではありませんが、必要以上の多数の者が押しかけまして、そうして立会人もつけずに、かつてにそこらをひつくり返しまして、探しまわつておるというようなことをやつておるのでありまして、そういうふうなやり方は、これは政府としてどういう言い分があるかしれませんが、少くとも人民といたしましては、はなはだけしからぬ政府の断圧だというふうに、一般人たちが感じておることであります。こういうふうに何かの政治的な意図によつて、たとえば戰争を推し進めようというふうな政策を、政府がひそかにやつておるときには、戰争に反対する言論機関や、あるいはそういう平和の運動をする人を不法に断圧する。その場合に自治体警察なんかではなかなか手ぬるい、むしろ自治体警察の署長や警官の中には、平和の声に賛成し、講和投票に署名しておる人もたくさんあるわけでありますが、従つてそういう者も取締る、それを中央の政府方針によりまして、こういうふうな者まで断圧しろという場合には、自治体警察だけではなかなか思うように行かないので、こういう第二十條のこの規定を設けまして、そうして府県知事をそそのかしまして、国警の方から手をつけて行く、こういうふうにするため改正ではないかというふうに、私どもには解釈されるのであります。と申しますのは、特に大橋法務総裁のごときは、この一月以来におきましても、共産党の非合法化、あるいは共産党の解散というふうなことを、何べん新聞に声明発表して来ておるかしれません。ところが今の事態では、なかなか多数の共産党員は、一挙に解散彈圧することができないので、予備隊を増強したり、いろいろ警察力の増強をはかつている。しかしそれも国際関係もありまして、表面目に立つような方法ではできないので、自治警国警の下に従属させて、国警自治警を使つて、市町村まで踏み込んで行く。あるいは住民投票によつて自治警財政的に非常に窮迫しておりますから、そういうところに廃止の決議をさせて、それを全国の国警に收容して行こう、こういうふうな形で警察力の増強をはかつて、十分自信がついたところで、共産党の非合法化、解散をやるんだというふうな動機が含められておるのではないかというようなことが、先ほど来の山手君や門司君の質問に対する政府委員の答弁を聞いておりますと、これは私は邪推ではないと思いますが、そういうふうな臆測ができるような可能性が、非常にたくさんうかがわれるのであります。しかしもしそういうことを目的としておるのでない、労働運動の彈圧や、ほんとうの正しい意味での平和運動、あるいは特に共産党の彈圧のために、警察力の強化というふうなことを考えておるのではないというのであるならば、その点をひとつここで明らかにしておいていただきたい。そうしてここにいわゆる治安維持上重大な事案につき、やむを得ない事由ということについて、たとえば集団暴力行為というのは、どういう場合のことをさすのであるかというようなことについて、これをもつと率直に具体的に明確にしていただきたい。
  93. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま砂間君より長い御質問をいただきましたが、これは決して自分の邪推ではないという前提のもとに、御質問になつたのでございまするが、私の側から申し上げますと、ことごとく邪推でございまして、われわれの考えとはまつたく違つておる次第でございます。従いまして、この第二十條の二について、邪推でなければ具体的に答えろ、こういう御質問でございますので、具体的にお答え申し上げますると、二十條の二につきましては、今朝来山手君並びに門司君の御質問に対しまして、るる具体的に申し上げた通りでございます。
  94. 砂間一良

    ○砂間委員 るる説明したということは一向要領を得ぬ。まるでかんじんなところを隠して何かなでまわしておるようで、ちつともわからないのですよ。だからさつき門司さんも、たとえば有価証券偽造、通貨の問題、あるいは密輸入のことだとか、罪名をはつきりあげた方がいいと言つておられるのであります。それもできないと言う。そうして何か集団暴力行為と言われるが、集団暴力行為が現に起るような危險性があるかどうか。政府は、警察法改正をしなければ、次から次からと集団暴力行為が発生して来て、とても治安の責任が持てないという状態になつている、それほど切迫した事態というふうに、現在の段階を認識しておるのかどうか、それらの点についてひとつ政府考えをはつきり聞かしていただきたい。
  95. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、私が先ほど申し上げたのは、主として内乱、外患、騒擾というふうなことだけ申し上げたものですから、そういうふうなお尋ねをいただいたかと思いますが、先ほど門司委員もおつしやつたように、通貨偽造の罪でありますとか、あるいは有価証券偽造の罪でありますとか、あるいは関税法違反の罪でありますとか、こういうふうな事柄につきましても、もちろん考えられ得るのでございます。ただ一々こういうような犯罪に限定してやることにつきましては、立法上なかなかむずかしいこともございまするので、犯罪の態様、影響力、波及性というふうなものによつて判断することにいたしまして、罪種によつては区別しない方がよろしかろうと思つておるのでございます。特に集団暴力行為のごときものを考えて、二十條の二が書いてあるというわけではありませんので、その点御了承願います。
  96. 砂間一良

    ○砂間委員 きのう大橋法務総裁は、今度の警察法改正は、かつて警察国家を再現するような方向に行くんではないかという私の質問に対しまして、決してそういうわけではない、警察国家ということは、政治警察として警察を政治的な目的のために使つて行くということであつて、單なる犯罪捜査、その技術上の援助、あるいは運営管理というふうなことからいつたならば、たとい国警が若干強化されたとしても、決して警察国家の再現ということではないというふうに答弁されたのであります。しかしながらきようの説明を聞いておりますと、明らかに政治的に警察運営している、その犯罪の性質といいましても、政治的な犯罪であるということを言うておるのであります。この政治的な犯罪ということの意味には、もう明らかに階級的な平和の運動だとか、あるいは戰争反対の運動だとか、あるいは講和の運動にする彈圧、あるいは労働者の労働組合の運動だとか、そういう階級的な政治運動に対する彈圧ということが含まれておるのであります。これは現に実際今の警察運営という面からして含まれておる。そうしますと、自治警の領分まで侵略して行つて、そうして国警を不当に強化して行くという行き方、これはもう明らかに警察国家の再現という方向へ動いておるということは、たとい言葉の上ではどういうふうな言いごまかしをされましようとも、明らかにきのうの答弁ときようの答弁との間で、はつきり出て来ておるのであります。きのう、きようの政府委員の御答弁を聞いておりますと、あたかも、平清盛が下によろいを着て、そうして上に法衣をまとつて、その法衣をあつちへひつぱつたり、こつちへひつぱつたりして法衣の下からよろいがちらちら見えておる、こういうかつこうの答弁であります。また現に今日の警察運営を見ましても、これはきのうも申したのでありますが、この警察法の前文に言われておるところの「人間の尊嚴を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、国民に属する民主的権威の組織を確立する目的を以て、ここにこの警察法を制定する。」こういうふうに、「人間の尊嚴を最高度に確保し、個人の権利と自由を保護するために、」というふうにうたつてあるのでありますが、これが個人の権利と自由を保護するためでなくて、個人の権利と自由を彈圧するために今の警察は使われておる。また警察法の第一條の第二項にいたしましても、「警察活動は、巖格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本国憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない。」という明確な規定があるにもかかわらず、今の警察がまつたく人民を彈圧する機関に化しておる。それは無数の例をあげることができる。ストライキに対する不当なる干渉、あるいはさつき申しました平和の運動の問題にいたしましても、あるいはメーデーの彈圧にいたしましても、静岡県のごときにありましては、十分に警察の了解を得て、そうして主催団体の了解を得て参加しているにもかかわらず、これを公安條例でひつくくる。しかも三百人、五百人の武裝警官を待機させておいて、いきなりおどりかかつて計画的にぶちなぐる、そうして重傷を負わせたというような事例もあるのでありますが、こういう労働者の一年一ぺんの祝祭日に際して、しかも十分警察の了解を得てやつている、そういうようなことに対してまでも、不当にたくさんの武裝警官を出動して、解散命令を出さずに有無を言わせず、棍棒をもつていきなり猛獣のごとくに襲いかかる。こういうような事例を見ましても、またこういう例をあげて行きましたならば無数にあるのでありますが、こういう事例を見ても、個人の自由と尊嚴を守るとか、あるいは個人の自由と権利を保護するというものでなくして、まつたく支配階級が勤労大衆を抑圧するところの暴力機関に化しているということは明白であります。そういう警察の今日の実態が、そういう役割を演じているときに、ことさら国家地方警察強化して行くという方向は、これは明らかにますます国家の暴力組織を強化いたしまして、そうして今後勤労大衆を徹底的にしぼり上げる、そしてそういう運動を彈圧して行くという意図を持つたものとしか解釈できないのであります。もしそうでないならば、そうでないということをひとつはつきりここに規定すべきである。ことに二十條の二の、こういう抽象的な「治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由」とかいうような、まるでわけのわからぬような、雲をつかむような抽象的な言葉をもつて法文を巧みにごまかして、実際の運用の面では、共産党の彈圧や、あるいは労働組合運動の彈圧や税金闘争や農民運動の彈圧ということに持つて行こう、そういう意図はこれは自由党内閣のいつもの常套手段、やり口ではありますけれども、こういうやり方に対しましては、私どもはどうしても納得が行かない。もしほんとうにそういう意図があるならば、それはもう正直にはつきりと法文の中に出したらいいと思うのであります。大橋法務総裁のもう一ぺんひとつ御所信を承りたい。
  97. 大橋武夫

    大橋国務大臣 きのうの答えはたいへんよかつたが、きようの答えはどうも政治的犯罪について二十條をやろう、こういうのでけしからぬ、こういう御質問でございましたが、私は二十條の二というものは、別に政治的犯罪をこれでやろう、そういう意味のものであるというお答えはいたしておりません。そういう答えを聞かれたそうでありますが、それは私でなく、だれかほかの声を間違つて私と誤解されたのではないかと思いますが、さような誤解を前提にされまして、いろいろと御批判をされますことは、私としては迷惑しごくであることをお断りいたしておきます。  それから次に、警察制度の現状が、警察法において前文で個人の権利と自由とを保護するためのものである、そうして警察法第一條においてはいやしくも憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない、こういう明文があるにもかかわらず、現在は共産党を彈圧いたしている、こういう趣旨をお述べになつたわけであります。御承知通り、現在の警察はまつた警察法のもとに行われているのでございまして、従いまして憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等権能の濫用をすることは、もとより許されないところであります。そうして警察はあくまでも国民の生命、身体、財産の保護に任じ、犯罪捜査、被疑者の逮捕及び公安の維持に当るという、その本来の活動に限局されているわけでございます。かような性質のもとに活動をいたしております警察権の作用というものが、共産党の諸君の側から見まするというと、これは共産党の彈圧になつている、こう言われているのでありますが、はたしてそうであるといたしますと、これはひつきよう共産党の諸君が、いろいろな犯罪を犯し、犯罪によつて検挙をされている。これは共産党の諸君自身の犯罪的な性質というものを自白されるにほかならぬのでありまして、それは共産党みずからが非合法的な種々な行動が行われつつあるものであるということを示すものであつて、何ら警察が特に共産党に対して、不当なる彈圧をいたしているということを示すものではない、こう私は確信をいたしております。
  98. 砂間一良

    ○砂間委員 ただいまの大橋法務総裁の答弁は、聞き捨てならない言葉があると思います。共産党員自身が犯罪的な性質のことをやつているから、それだから検挙されるのであつて、それが共産党の活動犯罪的性質を示すものであるというような意味のことを言われたのでありますが、どこに共産党が犯罪的性質があるか、たとえば私どもの平和擁護の問題は、平和憲法の戰争放棄という精神からいつて、戰争に反対する平和の運動をやるのは当然なことである。それを平和の運動をやるのは、占領政策違反だといつてどんどん投獄しているのではありませんか。これはむしろ政府の方が憲法の精神を蹂躙して、ポツダム宣言の精神を蹂躙して、政府の方が違法行為をやつている。政府の違法行為を共産党の犯罪行為だなんてすりかえた答弁をしている。これは全然本末転倒していることであります。こういうような例をあげたら切りがありません。今の大橋法務総裁の答弁は、まつたく、どろぼうが逃げながら、どろぼうをつかまえようとしている普通の何でもない人を、あれがどろぼうだと騒いでいるような、そういう逃げ口上としか、私どもには受取れないのであります。  その次にもう一つお聞きしておきたい点は、第五十八條でありますが、国家地方警察及び市町村警察は、その管轄区域内で行われた「犯罪又はその管轄区域内に始まり、若しくはその管轄区域内に及んだ犯罪並びにこれらに関連する犯罪」について、その鎭圧、捜査または被疑者の逮捕のため、その管轄区域外にも職権を及ぼすことができるということになつておりますが、この管轄区域内で行われた犯罪、このことはわかりますが、「又はその管轄区域内に始まり、若しくはその管轄区域内に及んだ犯罪並びにこれらに関連する犯罪」というのは、たいへんややこしくなつておりますが、ここでは具体的にはどういう事案をさしておられるのか、これは一見して詐欺や強盗にいたしましても、いろいろ管轄区域外と関連しておるという事案もあることはあるでありましようが、私どもの何か直感的に感ぜられるところによりますと、かりにこういうふうな広い地域的な連関性を持つている犯罪ということになりますと、政府は今日労働組合運動なんかを、ある場合には行き過ぎであるとか、ある場合には犯罪だとかいうように取締つておるのでありますが、そういう政府立場から見ますと、全国的組織を持つている労働組合等が、一つの共通の運動を起したというような場合に、それを特に取締るということを目的にして、わざわざこういう改正案を出されたのではないかというふうな疑いを抱くわけでありますが、もしそうでないとするならば、そうでないということを、はつきり明言していただきたい。そうして具体的にはどういう事案をさすかということを、二、三の例をあげてひとつ説明していただきたいと思います。
  99. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この「管轄区域内に始まり、若しくはその管轄区域内に及んだ犯罪」、これが一つの観念でございまして、これは犯罪行為を形成いたしまする多数の行為が集まつて、一つの犯罪をなすという場合におきまして、その行為の一部分がある管轄区域内において行われている場合においては、その一箇の犯罪全体をその警察において管轄する、こういう意味でございます。たとえば今日刑法上連続犯は一罪として観念せられておりますが、しかし一罪たる連続犯の成立いたしまするその個々の行動というものは、連続犯でありますから、たとえば窃盗の連続犯ならば犯意を継続いたしまして、数回窃盗の行為が繰返されておる。その場合において、甲の自治体の管内において、一つの窃盗行為が行われたという場合に、その連続犯としての全体の犯罪について、その自治体警察捜査取調べをなす権限を持つておる。こういう意味でございます。従いましてその連続犯の中の一箇の行為が甲という自治体区域内において行われ、他の行為が他の警察区域内において行われておる場合において、それについても捜査、取調べをすることができる。こういう意味でございます。  それから次に関連する犯罪の中の一つの部分がその自治体警察なり、国家地方警察なりの管轄区域内において行われた場合においては、その関連する犯罪を全体としてその警察捜査取調べに任ずることができる。こういう意味でございますが、それでは関連する犯罪という観念は、どういう観念であるかと言えば、これは刑事訴訟法の第九條におきまして、関連事件という観念ができておりまして、「数個の事件は、左の場合に関連するものとする、一一人が数罪を犯したとき。」この場合には必ずしも連続犯という一罪に限らず、数罪を犯した場合に、その数罪中の一部が、ある警察管轄区域内で行われたときは、その一人の犯したる数罪全体について、その警察捜査及びその後の手続を行うことができる。こういう意味でございます。  それから「数人が共に同一又は別箇の罪を犯したとき。」これは一罪を数人が協同して行つた、あるいは別個の罪を数人がともに行つた。こういう場合におきましては、その数人について他の人が他の土地で行つた場合におきましても、それが共犯関係にあります場合におきましては、全体について管轄権を持つ、こういう意味であります。  それから「数人が通謀して各別に罪を犯したとき。」これは刑事訴訟法の第九條におきまして関連事件という観念がございまして、これらの犯罪につきましては、裁判所において併合審理を認めておるわけでありまして、その際の関連事件というのと同じ扱いで、この関連する犯罪という観念を解釈いたす、こういう意味でございます。
  100. 砂間一良

    ○砂間委員 どうもそういう抽象的な法律論の説明では私どもにはわからないのです。私は具体的に例をあげて申しますが、たとえばAという市の自治体警察管轄区域内に発電所があつたとする、電産の労働組合がありまして、そうして労働争議を起した、労働者は資本家に対して雇用契約でありますから、労働力を売る、売らないというのに労働者の権利であります。そこで要求が通らなかつたので出勤しなかつた、つまりスイライキをやつたわけであります。そのために労働者が管理しておりませんものですから、かりに発電所がいろいろな故障を起して壊れた、しかもこの労働争議の賃上げの要求なら要求が、ほかの本部の指令においてやつたというような場合に、今の自由党政府のやり方とすると、これは行き過ぎであるとか、あるいは発電所の破壊であるとかいうふうなことで、たちまちこれを犯罪と見なして、彈圧して来る可能性がきわめて強いのであります。そういうふうな場合に、たとえば東京に本社があつて東京の組合の本部から指令が出されたというような場合には、これまでの場合にはそこのA市の自治体警察がすぐ突込んで行つて東京の組合の本部の役員までひつくくることができるということになるのか、あるいはそういう争議の場合に、附近の労働組合が応援してビラを出したというような場合に、これに関連する犯罪というので、そこの自治警が他の自治警や、あるいは国警管轄区域内に出かけて行つて、そして多数の人を逮捕したり、あるいは検挙することができるような、そういう場合をさしておるのかどうか。あるいはそういう労働組合運動の彈圧というふうなことを、ここの第五十八條では意図しておるのではないというのであれば、それでけつこうでありますから、そういうことをねらつておるのかどうか、あるいはもしそうでないならば、他のどういうような犯罪の場合に、こういうことが起つて来るのかということを、ひとつ刑事訴訟法の九條の條文の説明解釈でなくて、具体的な事例をあげて、私どもしろうとにもよくのみ込めるように、説明していただきたいと思うのです。
  101. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 関連する事件について具体的に申し上げますと、たとえば今国務大臣のおつしやいました一人が数罪を犯したというのが一つのケースでございますが、たとえば配給切符の横流しの事件につきまして、ある警察が他の管内に居住する被疑者を取調べましたところが、自分の管内ではわずかの横流ししかしておりませんでしたが、その人が他の管内で莫大な枚数の横流しをしておつたという場合は、一人が数罪を犯した――従来の法律によりますと、自分の管内でやつておりました事件についてしか捜査はできないのであります。今度これを関連する事件ということになりますと、同じ人が他の管内でやつてつた事件につきましても、初めに手をつけた警察ができるということに相なるのでございます。これが一号でございます。第二号は数人がともに、または同一、または別個となつて犯罪を犯したときとございます。たとえば、ある警察管轄区域内に居住しておりまする業者が、他の管轄区域内に住んでおる公務員に対しまして贈賄をした。その事件をその警察で調べましたところが、その公務員がさらに別の管内に住んでおりまする業者から贈賄を受けておつた。こういたしますると、本来の警察は、その公務員がさらに別の管轄区域内に住んでおる者から贈賄を受けました事件については捜査できないのでありますが、関連する事件ということになりますと、第二号に該当いたしまして、その事件についても第一に手をつけた警察捜査ができるということに相なります。第三号は数人が通謀して罪を犯したという場合でございますが、たとえば自分の管内で窃盗をやつておりました被疑者を取調べましたところが、その者が事業資金の不足から資金の獲得のためにその被疑者と通謀して、他の管内で強盗をやつてつた、こういたしますと、この他の管内で強盗をやつてつた者につきましては、関連する事件を加えませんと、最初に窃盗の被疑者を調べた警察では手がつけられないのであります。関連する事件ということになりますと、最初に窃盗をやつた被疑者を取調べたところから、その被疑者と通謀して他の管内で共同の目的で強盗をやつてつたという被疑者にまで、手がつけられるということになるのでございます。
  102. 砂間一良

    ○砂間委員 時間もおそくなりましたから、簡單な質問だけ申し上げます。警察官の人数、定員の問題でありますが、これまでは国警自治警を通じて十二万五千という一つのわくがあつたと思います。今度は警察学校の生徒五千人をふやすということになりまして、それだけは明らかにふえたのであります。他方自治警の方は、これは地方自治体の事情によつて、増減できるということになつておりますと、これは減員することもできますが、増員する場合もあり得るわけであります。そうなりますと全体の数が、無限にふえるということにもなるように考えられるのでありますが、自治体警察の九万何千人というわくをはずすということが、全体としての警察の定員を幾らでもふやす、あるいは減らしてもよいということになるのかどうか、あるいは全体としてのわくは十二万五千、あるいは十三万にきまつてつて、そのわく内で各地方自治体が増減するということになるのかどうか、その点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  103. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 ただいまお尋ねの自治体警察警察吏員の定数でありますが、今までは九万五千人というわくがありましたので、御承知かと思いますけれども、施行令をもちまして大体の基準を設けまして、人口どのくらいの市町村においては、何百人当り一人というような基準をきめておつたのであります。今度は九万五千人というわくがとれますので、市町村自分財政の都合を考え犯罪の状況等を考えまして、適当な数を定め得るということになるわけであります。
  104. 砂間一良

    ○砂間委員 そうすると九万五千のわくを全体として八万にすることもできれば、あるいは十五万にふやすこともできるということになりますと、国警自治警を通じての全体の定員というものは、これまで総司令部ですか、極東委員会ですか、知りませんが、十二万五千という全体のわくがあつたのでありますが、あのわくが一応なくなつたということになるわけでありますか。
  105. 加藤陽三

    加藤(陽)政府委員 初めのマツカーサーの書簡に示されました員数の点についての制限は、なくなつたと解釈していいと思います。
  106. 前尾繁三郎

    前尾委員長 それでは本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十七分散会