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1951-05-15 第10回国会 衆議院 地方行政委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十五日(火曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 前尾繁三郎君    理事 河原伊三郎君 理事 野村專太郎君    理事 藤田 義光君 理事 門司  亮君       石原  登君    大泉 寛三君       小玉 治行君    吉田吉太郎君       鈴木 幹雄君    床次 徳二君       山手 滿男君    砂間 一良君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         国家地方警察本         部警視         (総務部長)  加藤 陽三君     ————————————— 五月十五日  委員河田賢治君辞任につき、その補欠として池  田峯雄君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  警察法の一部を改正する法律案内閣提出第一  四二号)     —————————————
  2. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 ただいまより会議を開きます。  警察法の一部を改正する法律案内閣提出、第一四二号を議題といたします。昨日に引続き質疑を続行いたします。砂間君。
  3. 砂間一良

    砂間委員 大橋法務総裁質問をいたします。このたびの政府提出警察法改正案の内容を見ますと、国家地方警察を非常に強化いたしまして、自治体警察をこれに従属させ、かつて警察国家を再現するような反動的意図が、きわめて露骨にうかがわれるのであります。その二、三の点を指摘いたしますと、まず第十九条の改正国家地方警察警察学校生徒等五千人を定員外に加えることによつて国家地方警察定員を非常にふやしておるということ。それから二十条の二の規定を新たに設けまして、都道府県知事は、治安維持上重大な事案につきやむを得ない事由があると認めるときは、国家地方警察に、その都道府県内の市町村警察区域内における事案処理させることを、当該都道府県公安委員会に要求することができるように改正いたしまして、自治体警察国家地方警察に協力させる、そういうふうな改正であります。それから、その次には警察応援のことにつきまして、これまでは自治体警察の方で手が足りなかつた場合に、もつぱら国家地方警察の方に、応援を頼むことができるようになつてつたのでありますが、今度は自治体警察国家地方警察要請に応じて応援できるようにしたというふうなこと。それから市街地的町村におきまして、自治体警察廃止したときには、そこの定員国家地方警察で補うようにした点、あるいは国家地方警察自治体警察との連絡を非常に緊密強化したという点、さらに自治体警察財産やいろいろな建造物土地等を、自治体警察をやめた場合に、国家地方警察の方に無償で移すというふうにした点、これらの点を通じてみまして、総じて国家地方警察を非常に強化している、こういう点がこの改正案の全体の中心をなしておる分であります。こういうことになりますと、これはきのうの他の委員諸君質問の中にもあつたことと思いますが、まつた地方自治精神が破壊されてしまいまして、ことに警察建物等建造につきましては、自治体警察を置くことになつ市町村等におきましては、税金だとかあるいは警察の寄付というふうなことで、莫大なる負担を負つておるのでありますが、そういうふうなものを国家地方警察の方に無償で委讓する、これは地方自治体が莫大な費用をかけてつくつたものを、ただでとるというのでありますから、財政的にも非常に不当なやり方だと思うのでありますが、その他の警察運用の面におきまして、まつた自治体警察国家警察に従属させるという点が、きわめて需骨になつておるのであります。こういうことは一見してかつて警察国家を再現する方向に、政府施策が動いておるということの端的な現われでありまして、日本民主化あるいは非武裝化、あるいは地方自治の発達という点に、まつたく逆行しておると考えるわけであります。これは大きく申しますと、ポツダム宣言趣旨にも違反するばかりでなくて、一九四七年に新しい警察法を制定いたしまして、警察制度を改革したのでありますが、当時マツカーサー元帥が時の内閣総理大臣にあてた書簡趣旨にも違反することは、明らかだと思うのであります。  マッカーサー元帥書簡の点につきましては、過般来公聽会等におきましても、いろいろ論議されたことと思うのでありますが、その書簡の要点を一、二読んでみますと、警察力を現在の中央集権的形態に保存することは—現在というのは、つまり従前の中央集権的形態に保存することは、新憲法精神に反するので、警察力はすみやかに地方に委讓しなければならない、これがこの前の警察法改正の根本の点であつたのであります。さらに各市や町には、中央政府より独立した地方警察を設けるということも、はつきり書簡に表われております。また国家地方警察自治体警察とのうちには、何らの指揮命令関係はなく、指揮命令関係をつくつてはいけないというふうなことも、はつきり書簡に表われておるのであります。  こういう書簡精神をまつたく蹂躙されているというふうに考えるわけであります。ことに最近の警察の実際の運営を見ますと、警察法の前文に言われておる「人聞尊巖最高度に確保し、個人権利と自由を保護するために、」というふうなことや、あるいは警察法の第一条の第二項には「警察活動は、巖格に前項の責務の範囲に限られるべきものであつて、いやしくも日本国憲法の保障する個人の自由及び権利の干渉にわたる等その権能を濫用することとなつてはならない。」というふうなことが、はつきり言われているのでありますが、こういうふうな点が、現実に事実において完全に蹂躙されておる。警察は国民の生命財産等を保護するというふうな役割を越えて、まつた人民弾圧機関と化している。これが今日の実情であります。たとえば二、三日前の前進座の捜索にいたしましても、あれほど多数の警官を動員する必要はないと思うのであります。新聞には三百七十人というふうに出ておりましたけれども、実際あそこで目撃した人の話によりますと、少くとも千名を下らない非常にたくさんの人が武裝いかめしく行つたようでありますが、しかもその捜査状況等は、立会人もなくて勝手気ままにあの広い前進座の中を勝手に探しまわつている、ああいうふうな捜査状況を見ますと、これは犯人が、あるいは被疑者がいるかいないかを探すというのでなくて、いるかもしれないという單なる嫌疑によつて、不当に個人住居や、あるいは家宅を侵害して行くということが明らかに言えるのであります。また以前の特高と同じような尾行をつける。これはこの一、二月ころのことでありますが、私の地方におけるいなかの住居なんかにいたしましても、三人、五人の人を朝晝晩と監視している、こういうふうなことをやつておるのであります。ことに労働争議だとか、あるいは税金の問題についてのいろいろな紛争があつたときなどというものは、まつた警官人民を保護するのじやなくて、人民彈圧のために出て来て、めちやくちやにこん俸や何かでなぐつたり、あるいは殺傷しているという現状になつているのであります。ことしのメーデーなんかにいたしましても、芝公園に集つた労働者よりも警官の方がはるかに多いこういうふうな現状でありまして、警察人民を保護するのでなくて、人民彈圧機関と化しておる。そういう現在の警察運営状態を見た場合に、国家地方警察を強化するという行き方は、これは明らかにかつて警察国家を再現する日本の反動的な行き方でありまして、これはポツダム宣言趣旨に反するばかりでなく、また新憲法精神にも違反し、また地方自治をも破壊するものであるというふうに考えているわけでありますが、この点につきまして大橋法務総裁の御所見を伺いたいと思うのであります。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 砂間君の言われたことについて、私は全然反対意見を持つております。今回の改正におきまして自治体警察国家地方警察に従属せしむる意図が露骨に現われている、こういう御見解でありまして、その証明といたしまして、たとえば十九条の改正によつて定員外の五千名を増員する、あるいは自治体警察管轄に対して、国家地方警察活動する場合のあること、それから国家地方警察要請によつて自治体警察応援に行く場合がある、こういう点を指摘せられておるのでありますが、この十九条の改正というものは、現実に現在国家地方警察がその職責を遂行いたします上から申しまして、人員が非常に欠乏して困難をいたしております。これに対応する措置として、学校行つて欠員になつておる部分を補充しようというのでありまして、これは別に自治体警察を従属させるというようなものではございません。  次に管轄外に対して国家地方警察が出動いたします場合、これは国家地方警察の一方的な発意によつて行われるのではなくして、民生的議会の批判を受けて、民主的に選出せられたところの都道府県知事というものが、その発意によつて治安上やむを得ざる事由ありとして要請をいたしまして、その要請をせられたる事案に限りまして、国家地方警察自治体警察管轄区域において活動するわけであります。従つてこれは当該事案処理という限られた目的のために、国家地方警察活動するのでありまして、何ら自治体警察を全体的に国家地方警察のもとに従属せしめるというのではございません。これはまつた警察上の一時的の便宜のための措置にほかならない。またその場合におきまして、自治体警察警察官都道府県公安委員会運営管理に服する。これもまた事案処理いたします上からいたしまして、技術的に必要やむを得ざることでございまして、これは決して自治体警察国家地方警察に従属せしめるというがごとき意図であると考えるべきものではないのでございます。  そもそも警察制度民主化ということにおきまして、警察地方分権を唱えられておりますものは、これは警察権の全体的な行使というものが、中央によつて統制される。その結果中央機関政治的意図をもてこの警察権運営をなすという場合におきましては、全国的に警察全体がそうした意図のもとに動くという、それをおそれての地方分権でございまして、かくのごとき個々の実際的な事案について処理する場合、こういうことは、地方分権というものを何ら阻害するものではないのでございまして、これは治安を確保するという技術的な要請にとどまるものでありまして、何らそこに政治的な意図とか、あるいはまた地方分権を破壊するというような意図がある、こういうふうな筋合いのものではないのであります。これをいかにもさような意図がある、こう言われる砂間君の感覚なるものが、何かそこにわれわれと違つたものがありはしないか、こういうことをおそれるわけであります。  それからまた自治体におきまする営造物の不要なもの、そしてそれはかつて警察に用いられておつた、これを国家地方警察におきまして無償で使用をするという制度を設けておりますが、これは自治体において不要なものを無償で使用させてもらうという趣旨でございます。決してただで取上げるというようなものではございません。きわめて民主的、かつ合理的な根拠に立つて、でき上つておるものであるということを、虚心担壊にお読みとりを願いたい、かように希望する次第でございます。
  5. 砂間一良

    砂間委員 重ねてお伺いいたしますが、ただいま大橋法務総裁が何か私の感覚に異なるところがあるというふうに言われたのでありますが、私はむしろ法務総裁感覚が少しおかしいというふうに考えるわけであります。と申しますのは、今現に警察がやつておることが、明らかにもう政治的に動いておる。たとえば共産党の彈圧とか取締りとか、あるいは労働運動彈圧というふうなことは、これは單なる治安の問題ではなくして、明らかに政治的な意図をもつて動いておるということは明らかであります。そういうふうな実際の今の警察のやつておることを見ました場合に、これは決して單なる国内治安というふうな警察本来の領域を越えて、政治的な意図をもつて、民主的な労働運動や、あるいはいろいろな政治活動彈圧しておるということは、これはもう実際の状態を見れば、一番明らかなことであります。しかも單なる犯罪捜査や何かの上における技術的な上で、国家地方警察に協力させるというだけにとどまつておらなくて、実際においては自治体警察政府施策、あるいは政治的方針によつて運営されて行きつつあるし、またそれが特に今度の警察法改正によつて、強化されるであろうということは、十分予想されるのであります。そういうふうな点につきまして、今の法務総裁答弁というものは、まつたく白を黒といつてごまかすような答弁としか、私には受取れません。  さらにその次にお伺いしたい点は、きのう他の委員からも御質問があつたかと思いますが、自治体警察廃止になり、そこの廃止なつあとへ、国家地方警察を増員する場合に、その予算についてでありますが、大体国家地方警察警察官一人についての平均の費用は、一年どのくらいのものですか。また自治体警察を今度の改正法によつて廃止されて、何名くらいの国家地方警察官がふえるだろうという見込みでありますか。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま重ねて、現存の自治体警察政府意図を受けて、政治警察的な行動をやつておる、あるいは一部の人々に対して彈圧をやつておるということを言つておられますが、政府といたしましては、さような意図は毛頭持つておりませんし、またさような指示をいたしたこともないわけであります。またただいま彈圧と言つておられまする事柄は、おおむね法律の執行によつて当然なすべき警察の発動を、一方的な見地からこれを彈圧と言つておられることが多い、こう私は考えるのであります。他の御質問につきましては、便宜齋藤政府委員からお答えすることを、お許し願いたいと思います。
  7. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 一人当り費用の比較は、お手元に表にしておまわししてございますから、それによつてごらんを願いたいと思います。人件費は、国家地方警察におきましては一人当り俸給が八万八千七百七十六円、扶養手当が一万八千六十円、勤務地手当が五千三百四十二円。自治体警察は大小によつて違いますので、ここに二つの例をあげておりますが、警視庁におきましては、俸給が十万千八百三十二円、扶養手当が一万二千八百三十円、勤務地手当が三万八百九十円、東京都の福生町の警察におきましても、俸給が十万三千五百八十円、扶養手当一万八千四百円、勤務地手当一万七千七百七十八円ということになつております。全国平均いたしますると、自治体警察の方が人件費が高く支拂われております。もちろん中小の小さいところでは、国家地方警察よりも低いところもありまするが、低いところの方が少いという状況でございます。
  8. 砂間一良

    砂間委員 国家地方警察は、大体何人ぐらいふえそうなんですか。
  9. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 この予想が、私の方ではだいまちよつといたしかねる次第であります。多分町村警察を置いておられる町村の住民投票によつてきめられる事柄でありますから、それをただいま予測をするということは、非常に困難な状況でございます。ただ町村警察定員の全員が一万九千人弱であります。全部廃止するといたしますと、一万九千人弱になりますが、この何割が廃止になりますか、予測を申し上げる段階にはございません。
  10. 砂間一良

    砂間委員 そうしますと、この改正案通つた場合に、十月一日からその異動をやるわけですが、その実施する場合の予算は、補正予算かあるいは追加予算なんかで出すのですか。あるいはまたその財源はどう調達するのですか。
  11. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 将来補正予算によつて御承認を得るように、大蔵省では大体計画を立てておるわけでございます。
  12. 砂間一良

    砂間委員 今地方自治体警察を、実はもてあましておるところもあるようでありますが、それはもつぱら地方財政の窮迫というふうな財政の点が、最大の悩みになつておると思うのであります。地方自治精神を生かすという意味におきまして、自治体警察はむしろこれを育成して行くという立場から、自治体警察をやめたあとで、また国家地方警察を持つて行くというふうな改正でなくて、むしろ平衡交付金を増額するとか、あるいは地方財源をゆたかにしてやるというようなやり方によつて地方財政負担を軽くして、そうして自治体警察を発達させて行くというふうなことを、政府としては考えておらないものかどうか。ことに自治体警察の方から来た請願書等を見ましても、組合警察というふうなこともいわれております。自治体警察は必ずしも人口五千以上の市街的町村だけに限定しなくて、もつと小さな市町村にも置けるようにして、この場合は数箇町村寄つて組合警察でやつて行けるようなふうに改正していただきたい、そういうような請願書等も出ておるようでありますが、それらの点も合せまして、この自治体警察を育成して行くというような点について、政府考えたことはないかどうか。それらの点について大橋法務総裁の御意見を伺いたいと思います。
  13. 大橋武夫

    大橋国務大臣 砂間君のただいまの御質問は、まことにごもつともでございまして、政府といたしましてもその問題を取上げて十分研究いたしたことはございます。但しこの点につきましての私どもの考えといたしましては、自治体警察を真に実力ある警察として仕立て上げまするには、裝備の問題あるいは施設の問題、こういつた点におきまして相当改善を要する点が多いのでございまするが、これを理想的に実行いたすということになりますると、何分自治体警察、ことに町村におきまする警察というものは、少数警察官の集合いたしました多数の單位になつておりまするので、これらのそれぞれについて十分なる裝備施設をやつて行くということは、経済性の上から申しまして非常な困難がある、さような点からできるだけこれを住民において希望があれば国家地方警察に改変する、国家地方警察となりまするというと、これはもう少し大きな單位警察でございまするから、その裝備等を進めて参るという点におきましても、すこぶる経済的に処理をすることができる、こういうふうな実情にあるわけでございまして、自治体に対する財政交付金の面におきまして、警察費負担の軽減ということは、もとより必要なことでございまして、政府といたしましても極力考えてはおりますが、これと並行いたしまして、全体の警察力の強化をはかるために、奬備施設等を十分行う、このためにはやはりあまりに小さい單位自治体警察というものは、できるだけ経済的な單位の方へかえて行くということが適当である、こういう考えのもとに本案を立案いたした次第でございます。
  14. 砂間一良

    砂間委員 ただいま国家地方警察自治体警察の場合におきまして、国家地方警察裝備施設の点においてまさるというふうな御説明があつたわけでありますが、国家地方警察裝備は、こん棒を持つたり、ピストルを持つたりしておるようでありますが、どういうふうな裝備施設を現在持つておられるか。またそれらの費用予算というものはどれくらいかかるか。あのピストルなんか、聞くところによりますとアメリカから借りておるのだというふうな話もあるようでありますが、あれは日本政府で調達してやつておるのか、あるいは外国から借りておるのか、あるいは地方自治体警察にも、国家の方でそういうふうなものを調達してやるとか、トラツクだとか、そういういろいろな交通機関、あるいは電信電話だとか、そういうふうなものも国の方で援助してやるとかいうふうなことができないものか、あるいは考えておられるかどうかというふうな点を、もう少し詳しくお伺いしたいと思います。
  15. 大橋武夫

    大橋国務大臣 裝備といたしまして御指摘になりました、たとえば警棒でありますとか、あるいは警察官ピストルでありますとか、かようなものは現在自治体警察もほとんどかわらないところのものを持つております。ただ国家地方警察と小さな自治体警察との間において、特に裝備の上で格段の違いのありますのは、後段にお述べになりましたような、機動力のための車輛でありますとが、あるいは通信でありますとか、こういつた面でございます。この方は自治体警察、特に小さい單位自治体警察については、非常に不十分でございます。これをまた十分にするということは、なかなか経済の面から見まして、国家地方警察の場合に比べまして、警察單位が多数にわたつておりまする関係上、困難が大である。それと同時に、もう一つ経済性の面で考えなければなりません点は、自治体警察というもの、ことに小さな自治体警察におきましては、その一つ一つ独立警察として單位をなしておりまする関係上、いわゆる内勤と申しまするか、庶務的なあるいは会計的な、そういつた警察力の外部に対する行使でなく、警察部内の家事的な作業は、やはり小さな警察でも大きな警察でも、同じだけの手数を要するものであります。そういう面にとられる人員というものは、全体の能率的運営という面から申しますると、非常に不経済になつて来る、こういう自実もあるわけであります。なお経費等につきましての詳細は、齋藤政府委員から申し上げますることをお許し願いたいと思います。
  16. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 裝備施設等経費幾らであるかというお尋ねでございまするが、たとえば車輛のごときにいたしましても、年々新車を買つて更新して参りますもの、あるいは修繕費等いろいろございますので、また種類もいろいろございますので、総括して幾らというわけには、ちよつとただいま手元にこまかい資料を持つておりませんが、通信関係費用といたしましてはおよそ年額十八億、これは裝備施設通信料金等全部入れましてそのくらいであるといわれます。車輛費は器材と油、修繕費等を入れまして九億くらいになつております。それから先ほどのお話ピストルには、自治体警察国家地方警察両方を通じまして、全部アメリカから無料で拝借をいたしております。このたま無料であります。ただたまにつきましては、再生弾はこちらで再生いたしておりまするから、この費用は大した額にはなつておりませんが、二、三百万円だと思つております。それから鑑識施設につきましては、施設費維持費を入れましてこれも二億以内にとどまつております。大体そういう次第であります。
  17. 砂間一良

    砂間委員 これは小さいことですが、ただいまピストルアメリカから無料で借用しておるというお話でありましたが、そうすると、借りておるものだとあとで返さなければならぬと思うのですが、返すことになりますと、日本警官はまる腰になつてしまうわけでありますから、そのあとは一体日本政府としてはどういうふうにされるつもりなんですか。ことに講和条約ができますと、今は占領下でありまして、ピストルを借りるというようなことも、占領下特殊事情としてできるかもしれませんが、講和会議でもできまして、日本独立国家になるという場合には、警官ピストルまで外国から借りておるというようなことは、実際上できないでしようし、また面子の上からいつても、あまり人聞きのいいことではないと思いますが、これらの点政府としてはそういう将来のことを、どういうふうに考えておられますか。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在借りておるわけでありまするが、この問題は講和会議におきまして、なるほどそういつた現在借りておるものが将来どうなるかということはきまると思います。それによつてむろん政府としては措置をすべきものであります。ただいまのところその大本がきまつておりませんので、どうするということは考えておりません。むろん借りておるものを返すということになれば、それに対しましてかわりを手当するということは当然でありまして、そのあとはまる腰にしてしまうというようなことは、とうてい考えられないことと思います。
  19. 砂間一良

    砂間委員 借りておるというと、何か借用証書でも入つているのですか、あるいは契約か条約か知りませんが、そういうふうなものでもできているのですか。それとも單なる話合いか何かでやつておるのですか。
  20. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 政府対GHQという関係借用証書というようなものは入れてありません。われわれの方といたしましては、責任管理者がただいまこれだけを管理していますという報告を、向うに出しておるわけであります。
  21. 砂間一良

    砂間委員 ときどき新聞なんかで見ますと、電車の中で乘つていた警察官ピストルをとられたというような話も聞きます。そうかと思うと、交番に立つている巡査のピストルを奪うために、しかも強盗が目的で奪うために、飛びかかつてとりに行くというようなことも、よく新聞に出るのでありますが、ああやつてとられたり、紛失したり、あるいはいためたりした場合には、あとで返済するときに、たいへん困るのではないかと思うのですが、そういうような場合はどうなんですか。
  22. 斎藤昇

    斎藤(昇)政府委員 紛失をいたしましたり、とられたりいたしました場合には、その旨を報告をいたします。
  23. 砂間一良

    砂間委員 別の点について質問をいたします。政府は盛んに治安維持上、大いに警察力を増強しなければならぬというようなことを言われておるのでありますが、国家地方警察自治体警察に比べて、施設装備の点においてまさるから、なるべく国家地方警察を増強するような方向へというようなお考えのようでありますが、しかし国家地方警察自治体警察をいじらなくても、あの警察予備隊という軍隊まがいのでつかい予備隊があるのでありますから、特に警察法を今ごろ改正しなくてもいいのではないかと思うのでありますが、予備隊との関係は一体どうなんですか。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 予備隊につきましては昨日も御質問にお答えいたした次第でございますが、これは日常の警察事務というものは、できるだけ警察において担任すべきものだ。警察予備隊は、非常の暴動、そういうような場合におきまして、通常の警察力をもつて処理できないというような事案について出動を見る、こういう考え方でございます。従いましてここで警察法においていうところの警察力の増強というのは、日常の警察事務というものを眼目に置きまして、それについて必要な強化の措置を講ずる、こういう趣旨でございます。
  25. 砂間一良

    砂間委員 日常の治安上のことについて、警察の方でやつて行くというお話でありますが、この十二万五千の警察というのは、あれはピストルを持つてほんとうに出かけて歩いている警官の数だろうと思うのですが、そのほかに警察署の中にはいろんな事務をとつたり、電話をかけたり、いわゆる警察関係の職員と言いますか、吏員と言いますか、そういう人があると思うのですが、それら十二万五千の定員外の人たちは、国家地方警察の場合は、何名くらいになつているのですか。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察官のほかの警察職員の数は、国家地方警察自治体警察と合せまして、約三万二千ということになつております。
  27. 砂間一良

    砂間委員 今度の改正案によりまして、警察官の職権行使の規定についてでありますが、第五十八条の改正によつて、これまでは、国家地方警察及び自治体警察は、それぞれの管轄区域内で行われた犯罪またはその管轄区域内に始まり、もしくは及んだ犯罪についてのみ、管轄区域外においてその職権行使を認められておつたのでありますが、それを今度は改正いたしましてもつとその範囲が広くなつた。これらの犯罪のほか、これらに関連する犯罪についても、各警察はそれぞれ管轄区域外において職権を行うことを認めることとなつておるのでありますが、これらに関連する犯罪と申しますが、これは解釈の仕様によつては、非常に範囲を広げて行くことができると思うのであります。大体これらの限度と申しますか、できれば二、三の実例を引いて、ひとつ御説明願いたいと思うのです。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この関連する犯罪という用語でございまするが、これは刑事訴訟法第九条におきまして関連事件というものが規定をいたしてございます。それは「数個の事件は、左の場合に関連するものとする。一 一人が数罪を犯したとき。二 数人が共に同一又は別個の罪を犯したとき。三 数人が通謀して各別に罪を犯したとき。」従いましてある容疑者を逮捕いたしました場合におきまして、その者がある警察の管内において一つの犯罪を犯した、その容疑をもつて逮捕した、取調べ中に、他の警察管轄区域におきまして他の犯罪を犯しておる、しかしそれは同一人によつて犯された数罪でございまするので、これを関連事件として、この取調べを、逮捕いたしました警察署において行うことができる。こういつたような趣旨でございます。  それからなお第九条の第二項によりますと、「犯人蔵匿の罪、証憑湮滅の罪、偽証の罪、虚偽の鑑定通訳の罪及び臓物に関する罪とその本犯の罪とは、共に犯したものとみなす。」つまり共謀したというふうにとる。この共犯などがやはり関連事件として取扱うわけであります。これはすべて刑事訴訟法第九条に限定をいたしてございます。それと同一に解釈をし、この趣旨によつて取扱つて参るつもりでございます。
  29. 砂間一良

    砂間委員 一応法的な解釈は、刑事訴訟法の今読み上げられたようなことでやつておられるかもしれないのですが、実際に地方警察が出かけて行く場合には相当広く解釈されて、たとえばストライキをやつたとか、あるいは税金闘争をやつたというふうな場合には、関連したということで、広く捜査したり検挙をするというふうなことが、実際に行われているのでありますが、こういう点は今後職権濫用にならぬように、特に注意していただきたいと思います。  それからもう一つは、第二十条の二の規定を設けられた理由についてでありますが、せんだつて政府委員の提案理由の説明の中には、自治体警察がその措置すべき事案処理せず、またはその処理が適切でない場合、これをそのまま放置するときは治安上憂慮すべき事態であるのにかかわらず、警察法に定める当該自治体公安委員会の国家地方警察への援助の要求が、何らかの理由によつてなされない場合においても、現行法上は適当の対策が考慮されていないので、こういう規定を設けて、治安の万全を期することにしたということになつておりますが、第二十条の二の規定によりますと、これを悪用いたしますと、これは非常な自治体警察に対する干渉が行われるということになると思うのであります。たとえば、ある市におきまして、そこの市の公安委員会はまあこれくらいのことは何でもないというのでじつとしておつた場合、これがたとえば示威行進であるとか、あるいは屋外大衆集会であるとかいうふうな場合に、これを当然の市民の権利として、その自治体警察あるいは市の公安委員会ではこれを黙過している、そういう場合におきましても、県の公安委員会なり、あるいは国家地方警察の方で、あれはけしからぬ、あれは彈圧してやれというふうになりますと、自治体警察や、市の公安委員会では何ら干渉する意図がなくても、すぐ国家地方警察の方が出かけて来て、あるいはその指令によつて彈圧させられるという事態が頻々として起ることになると思うのであります。こういうような点について、そういうふうに濫用されないという保障があるかどうか。そういう場合の心配の点について、大橋法務総裁の御説明を聞きたいと思います。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この点は私どもといたしましても、自治体警察に対する国家地方警察の無用な干渉というような事案は、とうてい忍ぶべからざるところでございますので、十分心配をいたした点でございますが、この出動の要請というものは、御承知の通り都道府県知事要請によつて行われるのでありまして、しかもその要請の行われる条件としましては、都道府県知事治安維治上、重大な事案についてやむを得ない事由があると認めるときでなければならぬ、こういうことに規定をいたした次第でございます。そして都道府県は御承知の通り民主的な公選によつて都道府県の有権者から選出せられた機関でありますし、またその職権の行使につきましては、民主的なる都道府県会というものがありまして、たえずこれを批判いたす機会があるわけでございます。この出動を要請いたしました場合においては、後日必ず都道府県知事法律上の義務として、都道府県会にその再案を報告しなければならない。この報告に対して、都道府県会におきましては、十分批判の機会があるわけでありますから、従いましてこれが警察民主化を阻害する、あるいは一方的な彈圧、干渉というような点は十分に予防され、また是正される道が開かれておるもの、こういうふうに考えておる次第でございます。
  31. 砂間一良

    砂間委員 都道府県知事が公選されて出ているんだから、これはもう民主的だというふうな御意見ですが、それは今の実際の政治の現状を見ておられないと思う。それは形の上では公選されて出ておるのでありますが、また各府県議会というものも、公選によつて構成されておりまするけれども、実際におきましては、もう中央政府に完全に牛耳られているという実情でございます。中央政府の言うことを聞かなければ、平衡交付金の割当を減してやるとか、あるいは災害復旧だとか、公共事業等でいろいろ要望があつてもやつてくれない。あるいは供出の割当を多くする、いろいろな面を通じて、完全に中央政府に押えられているというふうな現状でありますから、單に公選されて出て来たというだけでは、その保障にはならないと思うのです。そういうような点について、今の法務総裁の御答弁は、何か詭弁を弄しておるというように、私には聞かれるのであります。しかしその点は、それだけにしておきます。まだあとこまかい点もありますけれども、一応以上で打切つておきます。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、單に公選されておるからということを申したのではございません。公選されておるということも、一つの理由であると同時に、この事案については、事後遅滞なく都道府県会に報告しなければならない、その場合におきまして、民主的な機関でありまする都道府県会において、十分これに対して批判をする機会が與えられるからして、従つて御心配のような誤つた不当な運用は、十分に予防され、また是正される措置が講じられておる、こういうことを申し上げた次第であります。
  33. 藤田義光

    ○藤田委員 ちよつと議事進行……。昨日から警察法の本格的な審議に入つておりますが、ごらんの通り與党諸君の出席が非常に悪い。これは全国民が注意しております警察法改正に関しまして、審議を忌避しておるというような誤解を起しやすい。従いましてきようは野党の方が今人数も多いというような状況でございまするので、ぜひとも委員長から嚴重に注意されまして、この委員会の運営に支障がないようにしていただきたい。採決の日だけ出て来て、内容を無批判に賛成するというような誤解がないように、ひとつぜひともい注意していただきたい。
  34. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 門司亮君。
  35. 門司亮

    ○門司委員 大体警察法の修正の点については、各委員からおそらく聞かれておると私は考えておりますが、多少重複する点があるかと思いますが、その点はひとつ同僚各位に御了承願つておきたいと思います。  最初にこの法案を審議いたします前に、予備知識として一応聞いておきたいと思いますことは、警察予備隊の関係でありますが、この警察予備隊の関係は、しばしば聞かれることでありまして、性格がいまだにはつきりしておらない。政令の第三条を読みますると、警察予備隊の任務その他については別の政令でこれを定めるという規定があるのであります。ところが警察予備隊ができてから、今日まで相当な日にちがたつておりますが、依然としてこの警察予備隊の任務がはつきりしておらない。一体いつごろ政令を出す御予定なのか、あるいはその任務は、一体どのようなことが構想されておるか、これを私が聞きますのは、この警察予備隊の政令の附則の第四項には、明らかに、内閣総理大臣は、国家警察をして警察予備隊の事務の一部を遂行させることができる、こういう規定になつておる。そうすると、どうしても国家警察警察予備隊の事務の一部を当分の間遂行することができるとなれば、国家警察の性格というものが、はつきりしていなければならないはずである。これは一体いつごろはつきりした政令をお出しになるのか、それから現在この警察予備隊の政令の附則の四項というものは、一体どういうふうにお考えになつているのか、その点をまず最初にお伺いしておきたいと思います。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊令の附則第四項におきまして、「内閣総理大臣は、当分の間、国家地方警察機関をして、警察予備隊の事務の一部を取り扱わせることができる。」とありますが、これは実は警察予備隊の創設に際しまして、全国から多数の隊員を募集いたさなければならなかつたのでありまして、この隊員の募集の事務というものは、本来警察予備隊の事務でございます。しかしながら警察予備隊それ自体の機関が、まだ完成いたしておりませんでした関係上、全国的な組織を持つておりますところの国家地方警察機関に、この募集の事務を一時取扱わせる。こういう必要があつたわけでございます。それで警察予備隊の隊員募集に関する事務の一部を取扱わせた次第であります。  それから警察予備隊の任務に関し必要な事項は政令で定める。こうなつておりまするが、これは警察予備隊令施行令におきまして必要な規定をいたしております。それは警察予備隊令施行令の第十三条の第一項におきましては、「警察官のうち部内の秩序維持の職務に従事する者は、左に掲げる犯罪について司法警察職員として職務を行う。  一 職員の犯した犯罪又は職務に従事中の職員に対する犯罪その他職員の職務に関し職員以外の者の犯した犯罪  二 警家予備隊の庁舎、宿舎その他の施設内における犯罪  三 警察予備隊の物件に対する犯罪 2 警察官は、警察予備隊令第三条第一項の規定による警察予備隊の行動に際し、司法警察職員として、現行犯人の外、刑事訴訟法(昭和二十三年法律第百三十一号)第二百十条の規定により被疑者を逮捕することができる。この場合においては、当該現行犯人又は被疑者をすみやかに(被疑者については刑事訴訟法第二百十条第一項の規定による逮捕状を得た後すみやかに)権限を有する国家地方警察又は市町村警察警察官又は警察吏員に引き渡さなければならない。……。3 前二項の規定により司法警察職員として職務を行う警察官のうち、警査長以上の者は司法警察員とし、その他の者は司法巡査とする。」  こういう規定を警察予備隊令第三条によつて設けてございます。これ以外に、任務に関し必要な事項は政令としてはただいま定めておりません。  他は第三条第一項並びに第二項によつてその任務はおのずから明らかであろうと考えます。
  37. 門司亮

    ○門司委員 今政令の範囲を読み上げられたので、私も一応の了承はしておりますが、そうすると警察予備隊というもののこまかい規定は、大体いつごろお出しになる予定であるのか、私の聞きたいのはその時期でありまして、問題は今度のこの改正法案によりましても、五千の増員が大体認められている。それからさらに九万五千のわくをはずすということになつておりますので、警察官は相当ふえると考えます。そうすると一方には七万五千の国家警察官があつて、それがちようど昔の憲兵と同じような組織だと思うのであります。現行犯に対しては司法警察職員の任務ができるということになつておりまして、それをただちに当該警察官に引渡すことができるという事項は、昔の憲兵と同じような仕事をするのだというふうに考えますが、そう考えて参りますと、警察官の増員の必要が考えられない。従つて予備隊の性格をもう少しはつきり出してもらいませんと、この法案を審議いたしまする上に、われわれは非常に支障があるのでありまして、大体この三条に定めております、政令で定める範囲は、どの程度にされるつもりか、あるいはいつごろこれがはつきりして出て来るものであるか、その点をもう一度ひとつ伺つておきたいと思います。  それからもう一つの問題は、やはりこの改正法案と関連がありますが、予備隊の出動の時期であります。政令によりますると、予備隊は大体国家非常事態にのみ出動するように、われわれは解釈できるのであります。ところが今度の警察法改正では、さつきも砂間君から聞きました第二十条の条項によりますると、府県知事は事態がきわめて険悪な場合等に対しては——府県とは書いてありませんで、單に国家地方警察と書いてありますが、国家地方警察の出動を要請することができる、こういうことになつております。この問題は予備隊の規定から行きますると、内閣総理大臣の布告した国家非常事態の時だけしか出られないように、われわれは解釈しておるのですが、今度の改正法との関連で、府県知事がそういうものを要請した場合にも、この警察予備隊というものが出動できるかどうか、この点をひとつお伺いしたい。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊の警察官の任務に関して必要な事項は政令で定める、こういうことになつておりますが、政令はただいま申し上げました予備隊令施行令第十三条だけでございまして、このほかには別に特に定める必要を認めておりません。それで、どういう場合に出動するかということでございまするが、これは治安維持のため特別の必要のある場合に、内閣総理大臣の命令によつてのみ出動するということに相なつておりまして、別に他の機関からの要請ということは予定されておりません。むろん事実上情報といたしまして、かような事態になつておるので、従つて出動の必要を認める、どうか出動をしていただきたいというような要請は、そういう場合におきましては、関係のいろいろな機関からあろうと思いますが、しかし要請法律上の必要にはなつておりません。  それから警察予備隊が憲兵のようなものではないかというふうなお言葉がちよつとございましたが、警察予備隊全体といたしましては、これは憲兵のようなものではございません。と申しますのは、従来憲兵というのは、陸軍あるいは海軍の部隊内部の規律の維持ということにつきまして、特別な司法警察的な権限を持つており、そのほか一般の市民に対しましても、ある条件のもとに司法警察的な任務を持つてつたのでございますが、今回の警察予備隊におきましては、もちろんその中にかつての憲兵のごとき、予備隊の中の犯罪を扱う者はおります。しかしこれはきわめて少数でございまして、七万五千のうちで正確に記憶はいたしておりませんが、一千名足らず、これが全国の予備隊内の犯罪につきまして、排他的ではなく、一般警察と相並んで、特にそういつたために司法警察の仕事を行つておる。そういうものを設けておるのでございます。しかしその他のもの全体は、平素は警察権を持つていないのでありまして、ただ総理大臣の命令によつて出動いたしましたる場合において、出動現場において発生した事件を、その現場において処理するために逮捕する、あるいはある程度の取調べをする、こういつた司法警察の職務を行う、こういう考え方でございまして、全体として憲兵のごとき司法警察を行うというふうな構想ではございません。
  39. 門司亮

    ○門司委員 だんだん問題がはつきりして来たような気がするのであります。憲兵のような性格を持つていること、これはさつき大橋さんのお読みになつた政令の中に、はつきりそういう事態がありまするし、それから今の大橋さんの御答弁では、私は警察予備隊の性格というものが、まだはつきりわからぬのであります。今の大橋さんの答弁をそのまま受取つて参りますると、まつたくこれは軍隊であると申し上げてもちつともさしつかえない。その構想は、国家非常事態が宣言されますると、ちようど以前の戒巖令がしかれたのと同じような形でありまして、その戒巖令がしかれた際に出動して参りまする軍隊は、現地においてやはり司法権を持つてつたと私は記憶いたしております。そして同じように、現行犯その他に対する取締りはやはりやつてつた。いわゆる戒厳令治下に出動した軍隊というものは、補助憲兵というものがたくさんできて、これが警察官にかわつて治安維持に当つてつたということは、私ははつきり言えると思う。従つてただいまのような施設が、やはり警察予備隊の内部に必要だということは、その間の事情をはきつり示しておるものだ、こういうふうに私は考えておりまするが、ほんとうの警察予備隊の性格というものを、この辺でもう少しはつきりしておいていただきたい。私はどちらでもいいと思う。政府意図が、そういう意図でこしらえたんだといえば、そういう意図でもけつこうだと思います。それはいずれかに、はつきりしておきませんと、さつき申し上げましたように、一方においては七万五千、嚴密に言えば七万五千百名でありましようが、七万五千百名の職員を含む警察予備隊があつて、その上にさつき申し上げましたように、今度五千の人間がふやされる、さらに九万五千のわくがはずされるということになつて参りますると、警察官の数が非常にふえて来る。戰争前にありました九万三千の警察官が十二万五千にふえて、その上に七万五千の警察予備隊ができて、その上に今度また五千ふやして、そうしてわくをさらにはずされるということになつて参りますると、戰争前における日本警察官の一体何倍になるのか。戰争前九万三千で、とにかく治安の維持ができておつたのに対して、今日のように警察官を非常にふやさなければならないという事態は、一体どこにそれらの目的があるのか。私のもう一つ聞いておきたいと思いますことは、この警察予備隊の性格を、もう少しはつきりしてもらうということと、それから今度の改正法案で、さつき言いまするように人がふえて参りますが、人をふやさなければならない理由が一体どこにあるのか。この二つの点をもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 なるほど戰争前におきましては、九万三千という警察官で、これに対しまして現在は警察官が十二万五千名、そのほかに警察予備隊が七万五千名、非常に多い、これは一応はそうは考えられます。しかし戰争前におきましては、警察の背後におきまして、この警察力というものを最後的には補充する保障となつておりました軍隊というものがあつたわけでございまして、これは常時国内におきまして数十万あつたわけであります。またこれが国内の非常の場合におきましては、現実警察のために出動をいたしておつたということもあるわけであります。これに比較いたしますると、現在の警察力というものは決して多きに過ぎるというふうには考えられない、私はこう思う次第であります。
  41. 門司亮

    ○門司委員 それからもう一つ基本的なものとして一応聞いておきたいと思いますことは、警察法全体に関連した問題でありますが、現在の警察運営について、実は自治警察の連合会いわゆる自警連というものがあるのであります。これは御承知のようにときどきいろいろな問題を起こし参りまして、たとえば今度の警察法改正等につきましても、何か自警連と国家警察あるいは政府との間に話合いがついたから、これがまとまつた両方の案であるというようなことで伝えられておつて、また私も確かに、いろいろ御心配をかけたが、そういうことになつたという意味の書類を受取つたように記憶するのでありますが、はつきりは覚えておりません。一体これは自治警察連合会というようなものが、政府との間に話合いをして、そうして警察法改正することに大体意見がまとまつたからということに——まあ出て来るといいますか、くちばしを入れるような組織が、一体現在の警察法の中に認められるかどうか。私は今日の日本警察制度というものが、御存じのように自治警察にいたしましても、おのおの運営管理をするものは公安委員会である。公安委員会というものがあり、さらに上に自治体の長がおつて、そうしてすべてを政治的に運営しておるのに、一つの行政官でありまする警察官がおのおの団体を組織して、それがこういうような政治的に、法律の改廃等に対しても、何か自分たちが直接これに関連して、自分たちのものとして、これの改廃が行われるのについて、何か了解を得たというようなことは、私はこの点は少し行き過ぎじやないかと考えておりますが、総裁としてはこの点どういうふうに考えておりますか。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 自警連と申しますのは、自治体警察警察長が、警察関係の事務の共同研究あるいは共同的に事務能率を向上させる、そういうことのためにさような団体を持つておるというふうに考えております。今回の警察法改正にあたりまして、私といたしましては、これは自治警察にも、国家地方警察にも、双方に関係のある事柄でございまするから、公聽会的な意味におきまして、関係者各方面の方々の意見を聞くという意味において、自治警察警察長等の意見も、やはり立案上参考に聞いたことがございます。しかしながらこれは参考に聞いたというだけでございまして、もとより話合いをつけるとか、あるいは了解を得るとかいうような、そういつたものでございません。
  43. 門司亮

    ○門司委員 私のお聞きしておりますのはそういう内容でありませんで、実際の問題としてそういうことが言われ、またそういうことになつておると思う。もう少しはつきり言いますと、自治警察連合会というものが單に総裁の諮問といいまするか、お尋ねに対して、実際上の事務を取扱つておる者として意見を開陳することには、私は何らさしつかえないと思う。しかしその範囲を越えて一つの団体としての行動として警察法改正に対して、片方には当面の責任者である公安委員会というものが存在しているにかかわらず、言いかえれば、一種の行政事務に携わつておる諸君が、この公安委員会というものを全然無視したような形で、警察法改正その他にいろいろ政治的に動いて来るということ自体が、私は実際上の問題として、必ずしもよいことではないというふうに実は考えておりますが、この点についての大橋総裁の考えを承つておきたい。
  44. 大橋武夫

    大橋国務大臣 門司君のお話につきましては、私もまつたく同感でございまして、單に求められて意見を述べるという範囲を逸脱いたしまして政治的な動きをする、全国各地から集つて団体的に行動するというようなことは、いやしくも責任ある警察官としては愼しんでいただくことが望ましい、かように考えております。
  45. 門司亮

    ○門司委員 これも大橋さん十分御存じのことと思いますが、自治警察がおそらく現状のような形で、自警連というものを組織して、いろいろな意見を持つて来るということも、私は制度の上の一つの大きな欠陷ではないかと思います。今度の改正法案の要旨といたしましては、自治警察は、いわゆる地方自治の建前を決して壊すものではないということが考えられており、またそういうことが言われておる。しかしながら自治警察の非常に弱いという面について、これをどういうふうに強化して行くかということについては、ほとんどこれは考えられていない。その考えられていないという点は、いろいろこれから先の問題として質問したいと思いますが、一つの大きな政治的問題としては、この自治警察の連合会というものができなければならなかつた一つの経緯というものが、政府には考えられていなかつたのではないかと考える。これは従来中央集権的でありました日本警察制度というものが急に改められ、自治警察になつて現われて来た。これは確かに法の上では公安委員会の運営管理にまつということになつておりますが、公安委員というものはできるだけ警察官あるいは官吏としての経験のないような者で、しろうとがよいという解釈で、ほとんどそれらの経験のない人がこれに携つておる。従つて警察行政自体に対しては、まつたくしろうとといつてもよいくらいの人たちである。そういう人たちの運営管理のもとに、毎日起つて参ります幾多の犯罪というものを、現実処理しなければならない警察官としては、やはり何らかのよりどころというものが私は必ずなければならないと思います。従つて技術的な指導を受けたり、あるいは技術的な助言をしてもらつたりするような場所が必ずなければ、おそらく今の公安委員会の制度だけでは、実際問題として自治警察の諸君はやりにくかつたと思います。この点が今度の改正法案の中にも忘れられておる。そうして單に地方自治警察の弱い面、悪い面だけ出されて、ここに集約しようとしておるところに、改正法案の一つの大きな欠陷があるのではなかろうかと考えております。従つて自警連の今までの行き過ぎ等を是正するというためには、やはり第一線で働いておりますこの警察官諸君の何らかのよりどころをこさえる、そうしてこれは決して中央集権的なものではなくして、さつき申し上げましたように、あるいは助言を與え、あるいはものを十分研究するというような機関をこさえるというために、たとえば今ありますように、国家消防庁のような形——御承知のように消防庁の権限は、全部市町村長に移されておりますが、やはり中央国家消防庁というものがあつて、各自治体に移されております消防の実際的指導というものは、ここで命令はいたさないでございましようが、いろいろなことを示して来ておる。ここにやはり消防制度というものが、現在の段階では、ある程度円満に行つておるのではないか。言葉をかえて言えば、警察制度というものは、親から突き放された子供が、めんどうな、ことに戰後の複雑した社会に立つて行くためには、一人立ちのできない形のままでほうり出されておる。これによりどころあるものをこさえてやれば、今の自治体警察の機構でも、私はそんなに弱体でない行き方ができるのではないか。同時にまた自治警察連合会というものをこさえて、政治的に動かなくても、ある程度済むのではないかと考えるのでありますが、こういう点についての総裁としての御意見を伺つておきたい。
  46. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま門司君のお述べになりました意見は、まことに適切な御意見として傾聽いたしたのであります。御説の通り消防につきましては国家消防庁というようなものがございまして、全国の独立しておりまする消防に対しまして連絡、指導あるいは国家としてのサービスといつたような機能を果しておるのでありまするが、これに対応する機構といたしましては、現在のところ警察におきましては、国家公安委員会が教育あるいは鑑識といつたきわめて限られたる範囲において、さような機能を営んでいるわけでございます。一般的な警察運営、指導というような面につきまして、そういう面が欠けておるのでございます。これはもとより大きな自治体警察等につきましては、その必要性はそれほど多くないかもしれない。しかし必ずしも絶無ではないでありましようし、ことに中小以下の自治体警察になりますると、そういつたよりどころを求めるということは実際上にも、また気分の上から申しましても、考え得られるところでありまして、ただいま拝聽いたしましたる御意見は、そういう意味から申しましてまことにごもつともでありまして、きわめて適切な御意見である、こう傾聽いたした次第であります。この問題につきましては、なお政府といたしまして今後十分に研究をいたしまして、できるだけ御趣旨に沿つたような方法を実現いたすように努力をいたしたい、かように存ずる次第であります。
  47. 門司亮

    ○門司委員 それからもう一つ聞いておきたいと思いますことは、これはちよつと法務総裁にお聞きするのは、実際はどうかと思いますが、もし御意見がございましたら、ひとつお伺いさせていただきたいと思います。それは今の法務総裁としての大橋国務大臣の地位であります。これはもちろん三権を分立することが正しい民主主義の行き方であると考えておりますが、司法権としての法務総裁の権限と、警察行政に対する権限というものが、同じ法務総裁が兼職されているということは、事務の連絡その他について、非常に都合はよかろうと思いますが、今までの形から行きますと、やはり警察行政に対しては、司法行政を担当されない国務大臣の方が、行政事務の取扱いの上から行けば、非常に都合がいいのじやないかというように考える。これは大橋さんに聞くのはあまりよくないと思いますが、ほかに聞くのは総理大臣以外にないのですから、一応大橋さんに聞いておきたいと思います。
  48. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まことにごもつともな御意見でございます。この点は憲法の運用といつたようなことから考えましても、政治上また憲法上きわめて重大な問題だと思います。私といたしましてもさような点について、いろいろ考えてみたこともあります。それを申し上げますと、主として憲法的あるいは法律的な見地から申しますと、法務総裁というものは、官制に基きまして固有の権限を持つておるわけでございます。ことに検察庁に対しましては、一般的な指揮権を與えられておるわけであります。ただ警察についての私の地位というものは、何ら官制に根拠のないものでございまして、法制的に申しますと、御承知の通り警察法によりますと、警察については国家公安委員会が全責任を負うのでありまして、しかもこれは内閣総理大臣の所轄に属してはおりますが、その指揮監督を受けるものではない、こういう解釈になつております。そうしてまたこれは内閣総理大臣の所轄に属してはおりますが、内閣総理大臣国家公安委員会との間には、何ら中間的な機関というものは法制上規定されておらない。そこで国家公安委員会に関する私の仕事というものは、大体内閣総理大臣自身が、單に公安委員を任命するという際に、閣議において発案する以外に、何ら権限がないわけでございます。ですから公安委員会あるいはその所属部局に対しては、権限によつて行動するということは、内閣総理大臣みずからとしてもない。従つてその事実上のお手伝いをするという仕事をお引受けいたしております私としても、そういうことはあり得ないわけでありまして、要するに国家公安委員会は、国務大臣によつて国会に代表され、あるいは閣議に代表されるということはございませんので、さような閣議との連絡を事実上つけるという意味におきまして、国家公安委員会の、閣議に対し、あるいは国家に対して説明をし、あるいは要請をするという場合に、事実上私がそれをお取次するという程度でございます。従いまして、憲法上から申しましてこの点について混淆すべからざる権限を、一人でやつておるというような疑念をさしはさむ余地はない、こう考えておるわけでございます。また実際上政治上の点から考えましても、この点は今日まで私のやつて参りましたことを自分で言うのは、はなはだその立場にないとは存じますが、これがために支障を生じておるとか、あるいは警察権、検察権の運用について、その運用上不当な結果を生ずるというようなことは、少くとも現在までのところなかつた、こう考えておる次第でございます。
  49. 門司亮

    ○門司委員 支障があつてはたいへんでありまして、支障があつたらとりかえしがつかぬので、私は支障がないように秩序というものはできるだけきちんとしておきたいという考え方で、お話を承つたのでありますので、それ以上追究をいたす考えは持つておりませんが、しかし今日までは支障がなかつたと思いますが、やはり人でありますから支障がないとは限りませんので、一応御心境を伺つたわけでありまして、その程度にしておきます。しかし問題は司法権というものは何といいましても非常に大きな権限であり、同時にきわめて綿密な、あるいは密接な関連性を持つた所管でありますので、われわれといたしましては、相当この点について将来ともあるいは研究をし、さらに意見を申し上げることがあるということを、一応申し添えておきたいと思います。その他の問題につきましては、大体概括的な法案の審議をいたします予備的なものといたしましては、一応お聞まいたしてありますので、これから実は逐条に入ります前に、同僚各位にきわめて御迷惑であつたと思いますので、簡單にもう一言聞いておきたいと思います。  今度の改正案を見ますと、実際は悪い面だけが取入れられておつて、今まで警察法を内容的に充実するという考え方が、ちつとも織り込まれていないと思う。今までの警察法の悪かつた点をどういうふうに直して行くか、最初の説明にも書いてありますように、警察民主化というようなものを阻害するものではないという意見が、はつきりいたしておりまする以上は、やはり現行の制度の中で、自治体警察をそのまま存続するということを大体主眼において、その欠陷を補うというのが、今度の警察法の修正でなければなならないと思う。ところがこの中にはほとんどそういうことが考えられておらない。たとえば自治体警察が弱いと言われておるが、その弱い原因というのが、一方には今まで議論されたわけでありますが、財政的な問題もございましようし、あるいは機動性の非常に欠けているという面もございましようし、あるいは犯罪の科学的捜査の欠除というものがあると思う。それらの面についてはちつとも触れられておらない。それらの面を考慮してやれば、現行の警察制度にいたしましても、必ずしもこういう悪いところだけを考えて、これが見方によると中央集権にまた逆もどりするような改正でなくてもよかつたのじやないかと思う。従つて総括してお聞きしておきたいと思いますことは、そういう事態でありまして、さつき申し上げました三つの、科学的の捜査を十分にすることのできない一つの大きな欠陷を持つておるということ、それから財政上の一つの困難があるということ、それからさらにもう一つ言いますと、平たい言葉で従来の立身出世といいますか、警察官のいわゆる昇進の道が比較的とざされておる。これらの面を十分考えてやれば、現行の警察制度を悪いからこういうふうにするのだというようなことでなくして、まだ改正の方法はあつたのじやないか。私がこういうことを聞きまするのは、きのうの同僚の質問に対して、警察法の根本的の改正をする意思がないということが、けさの新聞に出ておりました。警察法改正はきわめて簡單であつて、そういうものの補いだけをされるのであつて警察法の根本的の改革としては、たとえばそういうことを全部やつても、実際の問題として、弱小の自治警察というものの運営ができないのだということで、当初、昭和二十三年でありましたか、警察制度ができまするときに、われわれが考えておつた、たとえば自治警察單位を二十万にするとか、あるいはせいぜい五万あるいは十万にするとかいうような根本的の改正は、次の段階で行わるべきではなかつたかと考えておりました。ところがこういう問題が、今度の警察法改正では、悪いということを前提として、そうしてどうしてもお前たちができないのだろうから、必然的にこれを国家に吸收してやるのだという物の考え方で、警察法改正されているのじやないかと思う。警察法の欠陷をついて、そうして警察法改正すべき点を改正しないでおいて、自治体警察が十分に機動性を持つておらないのに、これに対する援助の方法も考えておらない。犯罪の科学的捜査に対する施設というもののめんどうも見てやつていない。財政的な問題も考えていない。そうしてお前の方では満足に動けないから、希望があればおれの方に吸收してやるんだという物の考え方自体が、私は誤りじやないかと思う。この点に対する改正されます本旨を、もう少し明らかにしておいていただきたいと思います。
  50. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まことにごもつともな御質問でございます。この点についてお答え申し上げます。政府といたしましては、自治体警察の小さいのが悪いからやめる、こういうのではないのでありまして、やはり根本といたしましては、できるだけ自治体警察というものを育成いたしまして、そうして自治体警察としての機能なり、使命なりを十分に果し得るようにこれを指導助長して行く。そうすることが現在の警察法精神から見て、また警察民主化という上から言つて必要である、こういう根本的な考えを持つております。今回の改正案におきましても、たとえば従来自治体警察国家地方警察に援助を求める、これはどうしても自治体警察單位というものが小さいのでございますから、非常の場合において援助を求めるのは、当然の裏柄でございます。この際におきまして、従来は費用については何ら規定がなかつたのでございますが、今回の改正案におきまして、援助を求められた場合の応援に対する費用というものは、国庫で負担をするという趣旨を明らかにいたしているわけであります。それからまた自治体警察管轄内におきまして、国家地方警察都道府県知事要請によつて活動するという規定を入れておりまするが、これなども現在の自治体警察というもののあり方から見ますと、どうしても国家地方警察がその自治体の公安委員会の要請をまたずして、ある種の案件については活動するという必要が治安上どうしても必要である、こう認められているわけでありまして、これにつきまして国家地方警察の側から活動をして行くという何らかの方法を設けるということは、これによつて自治体警察に伴う、また伴いがちの現在の欠陷をそれだけ是正する。このことはそれによつて自治体警察の機能の不完全なところを補うわけでございまして、やはり自治体警察に対する一つの育成的な考え方、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。悪いからそこを直すというふうに言われましたが、決してそれだけではないのでありまして、悪いところを直すということは、結局悪いところを直すことによつて自治体警察というものの悪いところをなくして行くわけでございます。それは結局自治体警察をして真に現在の治安のために役立たしめる、そういうものにするということになるのでございまして、考え方といたしましては、自治体警察は悪いからこれを圧迫するという考え方ではなく、悪いところをできるだけ国家の力によつて補うことによつて自治体警察の機能をできるだけ十分にしに行きたい、こういう根本的な考え方に基いておるのでありまして、この点を御了解願いたいと思うのであります。  なおその他に、たとえば科学的捜査の面であるとか、あるいは財政の面であるとか、あるいは警察官の昇進の問題、こういう問題についてどう考えるかというお話でございました。これは一々まつたく同感でございまして、科学的捜査につきましても、各自治体においてその單位が小さいために、個々に維持することのできないような施設は、これは国家地方警察が維持いたしまして、各自治体の使用にまかせる、こういうことはむろん必要であると思いまして、予算の許す限りさような方向に、ただいま進めておるわけであります。  それから財政の問題でございますが、応援費用につきましては、特に警察法の問題でございまするから、この改正の中に入れてございます。しかしそれよりも、一般的な警察費に対する財源としての平衡交付金、これは決して現在で十分という考えではないのでございまして、国家公安委員会といたしましては、あらゆる機会にできるだけこれが増額をはかりまして、これによつてできるだけ地方負担を軽減いたしますと同時に、自治体警察の強化をはかつて行きたい、こういうことを心がけておるわけでございまして、警察法施行以来数年でございまするが、この間多少の増額も認められておるような次第でございまして、この点は、今後においても引続き努力をいたす考えであるということは、もとより言うまでもないところであります。  それから警察官の昇進の問題でございますが、これは何分にも小自治体警察というものの範囲が小さいために、すべての警察官をして適当なる機会に、適当なる昇進の道を開くということはむずかしいのでございまして、これを可能ならしめるためには、どうしても人事の交流という道を開かなければならぬと思つております。これは現在警察法自体によつて制限をされておるのではございませんので、実際上の慣行として制限をされておるような次第でございます。公安委員会といたしましては、できるだけかような方法によつて昇進の道を開くことが、小さな自治体に優秀な警察官を迎え入れる適切なる方法である、こういう考えのもとに、できるだけさような道を開きたい、こう考えていろいろな機会に努力をいたしておるわけでございます。この点は今後とも努力をいたしたいと考えておるのであります。しかし警察法自体の規定から来たものではないのでございまして、それで一応改正案には何ら関係なく、入つておりませんが、そういうことが適当なる方法であり、また必要な方法である、これに努力をいたしたいという考えは、別途に持つておることを申し添えておきます。
  51. 門司亮

    ○門司委員 もう一つ聞いておきたいと思いますことは、今のお話の中で、一番重要な問題が忘れられておると私は思います。今日の自治警察のいけないという点で、もう一つ最も大きな欠陷をいいますと、警察單位が非常に小さくなつておりまして、従つて公安委員がおりましても、やはりこれが地方のボス勢力といいますか、限られた独裁者の勢力によつてこれが左右される危険性が多分にあるということが、大体一般に考えられておると思いますし、またそういう実例が私はあつたと思う。しかし問題は、そういうことがありましても、それを是正することのためには、いわゆる警察がほんとうの民主警察になり切るかどうかということであつて、国民と警察との間が、密接に結ばれて行くかどうかということが、この警察法を完全なものにするかしないかということの一番大きな問題だと私は思う。たとえばどんなに小さな自治警察でありましても、地方の住民が全部警察に協力するという建前が十分にできますれば、運営はかなり円滑に行われると思う。そういう面がおそらく今度の警察法改正の中には全然考えられていないのではないか、ただ成文だけを改廃して行けば、それでいいものになるという考えがあるのではないかと考えられる。われわれが考えております、この説明書の中にもありますほんとうの民主警察をこしらえようとするならば、やはり警察が民衆から信頼される警察になるということが、治安維持の一番大きな問題だと思う。ことに現在の日本状況から考えて行きますと、たとえば一例をあげてみましても、大分古い例ではありますが、平の警察事件のごときは、警察が占領されても、平市の人はそれに何ら関心を持つておらない。一体平市の人はどれだけ応援したか、自分たちの生命財産を守る警察署が襲われて、警察署が占領されておつても、その地方の住民が、これにほとんど無関心であつたというような事実は、明らかに、私は警察というものが民衆から離れている一つの大きな示唆だと思う。警察力によつて日本治安を完全に保持して行こうとするには、どうしてもわれわれはこの民衆と警察との密接な結びつきというものが一番大きな問題だと思う。従来のような、天皇の警察官ではない今日の警察官では、ことさら私はそういうものが必要だと思いますが、この警察法改正を見てみますと、やはりそういう点が割合に考えられておらないで、ただ権力のみによる治安の維持を考えられておるように、私は見受けるのであります。これではどんなに改革をして参りましても、なかなかわれわれが考えておる民主警察というものは、ほど遠いことだと考える。この点についても改正案に何ら織り込んだ点がないのでありますが、そういうことをお考えになつておられたかどうか、これに対してお伺いしておきたいと思います。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまのお説につきましても、全然同感でございまして、民主警察の根本といいますか、やはり警察と民衆との結びつきをできるだけ緊密ならしめ、そうして警察というものが、ほんとうに国民の生活に即したまたそれに溶け込んだものになつて行く、また一般の国民の感じの中に親しいものとして考えられる、そういうことが必要であると、こう考えておるのでありまして、さような方向にできるだけ持つて行きますためには、警察運営におきましても十分に考えなければならない。また警察をできるだけ国民に知らしめるというような方法を考えなければならぬ、こう思つております。しかしいずれにいたしましても、それは現在の制度改正、すなわち警察法改正という問題とは、並行して別途に進むべきものである。こういう考えのもとに改正法案それ自体には、その問題は取上げないという次第でございます。
  53. 野村專太郎

    ○野村委員 警察法改正に関しましては、その重要性にかんがみましても、今国会休会前にあたつては、本委員会においても愼重に討議されたわけで、大体において非常にこの案の重要なポイントに対して、委員会から御質疑があつたのですが、何といつても実体に入りまして、審議をして行かないと、とかく抽象的に流れると思いますので、本日の委員会はこの程度にいたしまして、明日の委員会におきましては、包括質問を含めながら逐条審議——法務総裁も本日は参議院の方に御出席の予定だそうでありますから、委員各位の御了解を得まして、明日から逐条審議に入られんことを動議として、提出したいと思います。
  54. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 野村君の発議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  55. 前尾繁三郎

    ○前尾委員長 御異議がないようですから、さようにいたしたいと思います。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後零時五十八分散会