○神宅
参考人 自治体公安
委員連絡協議会の
意見の大体は、今
小畑会長が申されたのに盡きるのでありますが、
政府が
改正案として御発表にな
つておるまする
條文の順序を追うて、私補足したいと思います。
国家地方警察の
定員を二万人ふやされるというのでありますが、
国家地方警察は、
小畑会長がお話になりました
ように、本来の治安維持
警察事務を取扱うのは、
人口五千以下の農漁山村、いなか
警察であります。それで私がこの前大橋法務総裁にお目にかか
つたときに、農漁山村の治安を維持するのに二万人もの増員が必要なのですかとお聞きしましたところ、農漁山村すなわち
国警の――これは普通地区
警察と言うておられるのですが、地区
警察の治安は市
町村自治体警察の治安よりいいのだとおつしやる。そこで、それじや二万人をどこに配属せられるのかと伺いましたら、
国警の本部、管区の本部、都道府県の本部要員としてお使いになるというのであります。私
どもは現在でも本部要員の中堅以上の人たちが多過ぎて困
つておるのじやないかと、ひそかに
考えられますのにかかわらず、まだその上に本部要員を増加されるというお話でありました。これを辻
公安委員長、斎藤長官にお聞きしますと、必ずしもそれは大橋総裁のおつしや
つたようではなか
つた。管区の
警察学校に入学するものに五千人くらい、北海道に三千人ほど増員したい、駐在所の巡査の欠員が二割くらいいあるから、それを補充するのだ、その余が幹部というか、本部
委員になる
ようなお話でありましたが、これでも二万人の数と合わぬのであります。配属の詳細な
関係は、
政府なり
国家公安委員会、本部長官からお聞きすることを得なか
つたのであります。この二万人ふえるということは、
小畑さんが言われました
ように約四、五十億の国費が使用されるのであります。国費で支弁しておるのだからとおつしやいますけれ
ども、これはわれわれ国民が負担した税金であります。外国から援助をもら
つた金ではないのであります。私
どもは相当税金の重圧に苦しんでおります。その上になおか
ような
方面に四、五十億という金が使用されることについては反対であります。ほんとうの治安を維持し
ようとするのならば、
自治体警察の費用の足らないというておるところの方へ、この金はおまわしを願えば、国家の治安を維持するのには十分であろうと思います。これは後に説明を申し上げまする五十八條の二の特殊
犯罪の検挙の方に向けられるのではないかと思いますが、これなればなお
混乱を来すことは、
あとで申し上げます。
それから五條の国家
公安委員の欠格條項中、御
改正にな
つて検事を入れられると言われておる。それから職業的
公務員の前歴を十年になさる、これは構成であります。ところが国家
公安委員にはそうお困りではないので、実際は
町村の
公安委員にその人を得ないというのが実情であるとするならば、
警察法の二十一條の都道府県の
公安委員の資格を、都道府県の場合には、詳細に書いてあります。官公庁における職業的
公務員の前歴ある者はいけないと書いてある、この点を御
改正になると、ついで
自治体警察にこの
條文は第四十四條で準用にな
つておりますから、むしろ五條の
改正というのは、二十一條の
改正も同時に
行つていただきたい。あるいは五條の方は
改正しなくてもいいのじやないか、こう私
どもは
考えるわけであります。
それから北海道の
公安委員がふえるという二十條、これは私
ども異議ありません。
それから五千以上の
町村警察を、その住民の
意思によ
つて廃止することができる。これを議会にするか、あるいは直接一般投票にするか、これは議論がありまし
ようが、私
どもまず一般投票の方がいいのじやないかと思います。といいますのは、最近大阪の布施市という所に、ここでは
地方自治庁で問題にされる
ような
警察に関する決議を、全会一致でや
つております。
町村会も必ずしも住民の
意思を代表しない場合がある。こういうことを
考えますと、一般投票の方がまだましじやないか、こういうふうに
考えるのであります。
それから九万五千の
わくをはずして、その
財政能力に応じて増減ができる。これはけつこうだと思います。
それから
自治体警察と
国家警察との応援の
関係であります。
現行法によりますと、五十四條、五十五條が多少明確を欠くのでありまして、
改正せられるのは賛成でありますが、もう一歩を進めて、
自治体相互間においても、応援ができるということにしていただいたのであります。それは、一々
国家地方警察へ通報をしてやるということになりますと、緊急の場合には間に合わぬことがあります。あるいは将来相当な動乱があ
つて、交通機麻痺させる、すなわち電信電話の線を切断しておいて、ある
地方で騒動の起ることも
考えられますときに、直接隣の自体
警察に応援を求めた方が、
国警を通じて、
国警から他の
自治体警察の署員を出動さすというよりも手取り早く参ります。それから現在の
国家地方警察の
地方に配属せられておりますものは、たとえば大阪府にしましても六百三十六人という数字です。それが各地にばらまかれ、本部職員とな
つておるのでありますから、応援に出られる人は非常に少いのです。それよりは大阪市でありますならば、八千六百の
警察がおりまして、平常機動力も相当持
つておりますので、他府県同様に、
自治体警察に直接応援を求めた方が、非常事態を鎭圧するのに便宜なことがあろうと思います。現在三万の
国家地方警察の職員は、全国にまかれると、各府県では少いのでありますから、
国警を中心とした応援の規定は、不十分であると
考えるのであります。
それから五十八條でありますが、五十八條の
犯罪の発生し、及んだという規定の中に、関連
犯罪について
管轄区域外で職権を行う
ように――
犯罪が始まり、終
つた、こういうのを拡張しまして、これに関連のある
犯罪まで
捜査ができるという規定にし
ようとする案でありますが、現在でも
自治体警察と
国警との間に、権限争議が見受けられます。たくさんではありませんが、あるのであります。これに関連する
犯罪という
ようなことになりますと、非常に広い範囲においてなされることになりますから、相当な
混乱が予想される。
小畑会長が言われました
ように、
犯罪捜査の衝に当る者には功名心がありまして、証拠の
関係を
自治体がとる、
国警がとる、こういう
ようなことになりますと、ほんとうの証拠固めができない。
犯罪の鎭圧ができない場合があろうと思うのであります。でありますから、この
現行二十八條に但書でもつけていただいて、か
ような場合によく緊密な
連絡をと
つて、そうして
自治体なり
国警なりが、相手方の了解を得てこれを処理する
ようにする、こういうふうにするのが正しくはないか、こう思うのであります。
それから一番問題になりますのは、五十八條の二というので、国家的な特殊
犯罪について
国警が
自警内に自由に立ち入
つて活動ができる
ようにする規定であります。これは
マツカーサー元帥の五月十六日の
書簡に、まつこうから反対するものでありますのみならず、
警察法、憲法の
精神に反するものであります。この
犯罪の種類として書いてありますもの及びこれに関連する
犯罪というふうにな
つておりますから、非常に広汎なものであります。これは法律がなくても
自治体警察を侮辱するものだと私は
考えるのでありますが、
マツカーサーの
書簡、憲法、
警察法の
精神にま
つたく相反するものでる。しかも
犯罪の種類に通貨の偽造、有価証券の偽造、銀行その他金融機関に対する
犯罪、信用組合の
犯罪まで、
国警は
自治体警察に自由に入
つて行けるということになります。国有または国の使用する財産及び施設に関する罪というのであります。これでありましたならば、給仕がタイプライター
一つぬすんでも、これが国有財産である限り、
国警が
自警の中へ入
つて来て、御活動になるということになります。それから国家
公務員の
犯罪及びその職務に関する
犯罪、国家
公務員は
自治体の管内に相当お住まいにな
つておりますが、この
犯罪を
国警が全部おやりになることができる
ような規定は、すこぶるその当を得ないものでありまして、
警察法の
地方分権の
精神に反することはなはだしいのであります。それからそのほか内乱、外患、国交に関する罪及び
騒擾罪、団体等規正令違反及び占領目的に反する行為、阿片煙その他という国家的な
犯罪です。この点は
騒擾罪等について実情を承りますと、
自治体警察の貧弱なものは、その土地における大勢のために
公安委員も軟禁されるとか、よそへ旅行してしまうとか、
警察がその機能を失
つてしまうという
ようなものが、労働争議に
関係して起るらしいのでありますが、そういうものは、
小畑会長が言われました
ように、
自治体警察が麻痺しておる事態に対して、
公安委員会が
国警の援助を要求しない。すなわち人手が足りないのにかかわらず要求もしない、要求できないという
ような場合には、直接
国警が入るのではなくして、知事にまず権限を與えて、知事から府県の
公安委員会に対して
国警の援助を要請する。そうすると府県会安
委員会が
国警にやらす。この場合には知事の援助要請をも
つて、当該
自治体公安委員会の応援要請があ
つたものとみなしてつじつまを合す規定にする、こういうことがいいのじやないか。
それからポ政令違反で問題にな
つておる相当有名な人が出て来ないからというので、国論は沸騰しておる
ようでありますが、これは
小畑会長が申されました
ように、
特審局の権限を拡大いたしまして、現在の
特審局の
地方要員は少いそうでありますが、これを拡大しまして、そうしてこれも
特審局を中心として、但し
特審局は
捜査はやらない、
情報を收集する。それに
国警なり
自警なりが緊密な
連絡をして、そうして全般的な協力をするならば足りるのでありますから、時局重大に名をか
つて、
自治体警察の権限を侵す
ような一般的なこの五十八條の二の
ような規定をせられることは、絶対に反対するところであります。
それから
情報の交換でありますが、
情報の交換は
現行法五十四條の後段の「これらの
警察は、相互に協力する義務を負う。」ということにな
つておりますから、この
情報交換ということは、この協力任務の現われの
一つです。これを
條文化して義務づける
ようにする、あるいはこれに罰則をつけるというお話もあ
つたそうですが、そういうことをしないで、五十四條後段の活用として、原則規定があるから、これを活用して
国警と
自警相互間にとりきめをするならば、これで十分足りるのであろう、こう
考えるのです。
それからこの法案には出ておりませんけれ
ども、この
警察法改正の根本思想とも
考えられるものは、当初もう少し重大なものだ。東京都を
国警の
管轄区域、すなわち警視庁を
国警の
管轄区域に入れ、国家
公務員の中に大臣を入れて、それが
委員長になる、こういう
ような思想もあるのでありまして、この
警察法改正の
改正の根本思想は、
警察の中央集権化、
国家警察への逆転の一歩でなかろうか、この現われております点は、さほどのものは出ておりませんけれ
ども、これは氷山の一角であるとか、鉱山の露頭の
ようなもので、内部に包蔵されておる思想は、だんだんこの
自治体警察と
国警の分立でなくして、
国家警察への進展であろうと思うのでありまするから、現在時局重大に名をかりて、か
ような
改正を企図される
政府のお
考えは私
どもに了解できない。四十億、五十億の国帑を貧弱
自治体の方へおまわし願い、その相互間に緊密な応援、援助の規定がありまするならばえれで、十分に足りるのであります。そこで
国警の方はこう言われる、こういう
ようなことがあると、辻
公安委員長が言われたのですが、御参考のために申し上げたい。
自治体警察の十人やそこらのところでは、ひまで困
つておる。それで魚つりにも行
つたりする、あるいは
警察が多いから道のはたで小便したやつも検挙する。多過ぎて困る、こうおつしやるのであります。ところがこれらの
警察官は、だれが養成しておるかということをお
考え願いたい。これは巡査の採用のときから
警察学校、管区学校、
警察大学、いずれも
国家公安委員会管理のもとに
国警でおやりにな
つておるのであります。
警察吏員の素質が悪いということであるならば、これを改めるのは国家公案
委員会及びその管下の人の
責任であります。
自治体公安委員は
警察長を任命しまして、そうしてその輩下に署員を置きましたが、これは自分が自由に選択をして置いたのでありません。全国の
自治体公安委員会は、元の
警察部が配属したそれを承認して、形式的には
公安委員が
警察長を選任し、それが署員を任用したということにはな
つておりますが、現在の
警察官に不適当なものがありとしますならば、これは一に
国家地方警察あるいは
国家公安委員会の
責任であります。そのことを十分御了承になりまして、
警察官の素質、常識の発達をはかり、円満な公僕としてはずかしくないものにし
ようと思われるのでありましたならば、人事院が御採用になるとき、それを各府県の
警察学校に初任教養をするとき、それから中堅幹部を管区で養成されて、
警察大学で御教育になるときに、十分の御配慮をたまわるならば、りつぱな
警察官ができると
考えるのであります。はなはだ簡單でありましたが、
改正案に対する
意見を終ることにいたします。