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1951-03-13 第10回国会 衆議院 大蔵委員会農林委員会水産委員会通商産業委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十三日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員   大蔵委員会    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君       清水 逸平君    島村 一郎君       三宅 則義君    宮幡  靖君       宮腰 喜助君    松尾トシ子君       竹村奈良一君    深澤 義守君   農林委員会    委員長 千賀 康治君    理事 野原 正勝君 理事 松浦 東介君      小笠原八十美君    小淵 光平君       池田 峯雄君    横田甚太郎君   水産委員会    委員長 冨永格五郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 林  好次君       石原 圓吉君    小高 熹郎君       川村善八郎君    田口長治郎君       田渕 光一君    永田  節君       平井 義一君    原 健三郎君       水野彦治郎君    井之口政雄君   通商産業委員会    委員長 小金 義照君    理事 阿左美廣治君 理事 中村 幸八君    理事 高橋清治郎君 理事 今澄  勇君       今泉 貞雄君    小川 平二君       高木吉之助君    福田  一君       田代 文久君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      石田  正君         通商産業政務次         官       首藤 新八君         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         長)      徳永 久次君  委員外出席者         大蔵委員会専門         員       椎木 文也君         大蔵委員会専門         員       黒田 久太君         農林委員会専門         員       難波 理平君         農林委員会専門         員       岩隈  博君         農林委員会専門         員       藤井  信君         水産委員会専門         員       杉浦 保吉君         水産委員会専門         員       徳久 三種君         通商産業委員会         専門員     谷崎  明君         通商産業委員会         専門員     大石 主計君         農商産業委員会         専門員     越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した事件  関税定率法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六六号)     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより大蔵委員会農林委員会水産委員会通産委員会連合審査会を開会いたします。  前例によりまして、大蔵委員長であります私が委員長としての職務を行います。  本日の議題は、関税定率法の一部を改正する法律案であります。まず政府より提案理由説明を聴取いたし、引続き質疑に入りたいと存じますが、質疑通告順によつて、大体各委員会交互にいたしたいと存じます。それではこれより政府提案理由説明を求めます。平田政府委員
  3. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいま議題となりました関税定率法の一部を改正する法律案につきまして、提出理由を御説明申し上げます。  今回、この法律改正しようといたします目的は、国内的には、戰後経済事情に対処して、関税率を合理化するとともに、国際的には、わが国関税及び貿易に関する一般協定、すなわちGATT、及び国際貿易機関すなわちITOなどの国際協定に、いつでも参加できる態勢を整えておくためであります。  改正の要点は、次の四点であります。まず第一の点は、戰後わが国の通貨の価値が著しく下落したことに伴いまして、従量税率はほとんどその意味失つた反面、従価一〇〇%の高率な奢侈品関税が依然として存在しているなど、きわめて不合理な体系になつておりますので、これを是正いたしまして、従価税率に統一することにいたしたのであります。  第二の点は、GATT並びにITOに表明されておりまする関税障壁引下げ国際的動向に即応し、内外産業及び貿易事情考慮して、従価税率を最高五割から最低五分までの間において、妥当と認められる税率といたしました。  第三の点は、わが国天與資源に恵まれず、人口が過剰である点を考慮して重要産業維持育成による雇用の増加をはかるとともに、輸出、加工、貿易保護振興するため、輸入原材料無税または低率の課税とすることにいたしました。  第四の点は、わが国の農業の特殊性考慮いたしまして、これを保護するため、輸入主要食糧に対して適当な関税率を設けましたが、一面国民生活安定の絶対的要請をも考えまして、海外の市価が高騰する場合は、国内における凶作等の場合と同様に、関税を減免することができることといたしました。  その他、課税価格の決定につきまして詳細な規定を設け、内外輸入業者などに関税額算定の基準を明らかならしめ、また不当廉売品関税につきましても、国際慣行に合致するように、規定改正をいたそうとするものであります。  以上が本法律案提出いたしました理由であります。何とか御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  4. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより質疑に入ります。水産委員長冨永格五郎君。
  5. 冨永格五郎

    冨永水産委員長 ただいま関税定率法の一部を改正する法律案につきまして、政府提案理由説明を拝承したのでありますが、私ども、この法案政府部内におきまして取上げられておるということを承りました当初から、水産委員といたしましては、全面的に反対を表明いたして来た次第であります。委員会におきましても、政府当局に、それぞれそうした提案になるであろうということの構想のもとにおける説明を承りまして、またわれわれの反対理由も述べて参つたのであります。この法律案の内容を検討いたしました場合に、少くも水産業関係原油重油は、おそらく無税、減税になるところの案が提案されるであろうと考えておつたのでありますが、遺憾ながらそういう結果にはなつておらないように拝見する次第であります。端的に申し上げましても、この法案のおそらく骨子と考えられているだろうと思われるのは、国内石油関係における業者保護するためにというふうに、実は承つておる次第でありますが、そうした面を取上げて簡單考えてみましても、帝石が一割二分の配当をいたしておるのに、これを使わしてもらつている漁業会社が、非常に大きな惨禍をなめておる。たとえば株価などを見てもはつきりいたしておる現実を眺めました場合に、私どもはおそらくこうした提案はあり得ないものと考えておりましたが、遺憾ながらこの法案提出されることに相なりましたので、本案が大蔵委員会提案されました以上は、水産委員といたしましては、本日ここに合同委員会を申し込みまして、質疑をいたしたいと考えた次第でございます。  最近における石油類の部門別的な割当を見ましても、水産業が御承知通り第一位でありまして、全量の約三〇%を占めておるのであります。今般の関税定率法の一部改正によりますと、炭化水素油の項目中、原油重油及び粗油に、はつきり一割をかけるというふうになつておるのでありますが、これによりまして、ただいま申し上げました率から見まして、水産業が非常に大きな困難に当面するわけであります。たとえば綿網について見ましても、二十三年に比較してみますと、大体五倍以上に高騰いたしておる次第であり、またその他の漁業資材を平均してみましても、約四倍に高騰いたしております。その反面におきまして、漁獲物の魚価という面を見ますると、これまたこれとほとんど逆比例的な低落をいたしております関係から、先般ヘリングトン水産課長日本を去るに及びまして、大蔵委員長を御承知通りに、私ども一堂に会しまして、数日間協議をいたしまして、司令部から日本政府に対し、日本沿岸漁業危機に見舞われているということを勧告されたような次第で、閣議でもこれを取上げ、委員会も、全面的にこの危機を打開いたさなければならないと決議いたしたことは御承知通りでございますが、まさに水産業は、今や崩壊の一歩手前にあるといわなければならない状態にあるのでございます。この場合に、さらにその人件費に次ぐ重要な支出面をなすこころの燃油に、一割の関税をかけるということは、こうした趣旨にもまつたく背反することにもなり、崩壊の一歩手前にあると断ぜざるを得ないのであります。資源庁の本年度の計画を見ましても、輸入原油及び重油が約四百万トンであり、国内産油は四十万トンと承知いたしておるのであります。でありますから、その比率はまさに一割でございます。この一割そこそこの採油業者保護するために、九割を占める輸入原油及び重油関税をかけようとすることは、私どもはあくまでも、その理由は根拠きわめて薄弱であり、ことに国民生活に最も大きな影響を及ぼす水産業を、非常に大きく圧迫することになるという点を、政府当局にとくと御勘考を願いたいと思うのであります。沿岸漁業危機を救わなければならないという意味勧告においてもそうでありますが、さらにまたこの原油関係につきましても、関係方面からの勧告で、関税をかけないようにもなつており、また輸入重油にだけは五%だけ関税がかけられていたように考えておるのでありますが、それらを度外視いたしまして、今度政府が一割をかけようとすることは、まつたく暴挙ではなかろうかとわれわれは考えるのであります。こうしたいろいろな面等から加味勘案されまして、政府当局答弁を承りたいと思います。
  6. 平田敬一郎

    平田政府委員 この重油原油並びに石油類に対する関税課税の問題でございますが、この問題につきましては、御指摘のように影響するところは非常に広汎であるというので、政府におきましても、実は愼重審議を遂げたのでございます。これは鉱山局長がお見えになつておりますので、後ほど説明があるかと思いますが、やはり日本国内原油保護し、さらに増産をはかるということが、石油重要性から考えましても、何と申しましてもきわめて重要なことではなかろうかということを、一方においては考えたのでございまして、この見地だけから参りますと、実は一〇%程度課税ではまだ低い、戰前におきましては大体重油原油につきましては一五%ないし四〇%程度——物によつて若干違つておりますが、大体二割前後の保護関税を設けておつたのでございます。現在定めておりますところの一キロリットルにつき何円という税率は、その当時におきましてはそのような効用を営んでいたのでございますが、御承知通りインフレーシヨンによりまして貨幣価値が下落いたしましたために、この税率が自然に下つて来て、現在はきわめて低い、わずか〇・三%程度関税率になつておる。これはもともと最初考えました当時は、大体二割前後の関税をかけまして、それによりまして国内石油保護しよう、こういう意図のもとに実はできていたのでございまして、それがインフレーシヨンによつてかような結果になつておりまして、この際、先ほども説明いたしましたように、全面的に改訂しようという考えでございます。そういたしまして、関税十分保護して育成をはかるためには、実はまだ一〇%でも十分でないという議論があつたのでございますが、御指摘のように大分影響するところが広汎でございますので、いろいろ愼重審議いたしました結果、一〇%ということにおちついたのでございます。しこういたしまして、特に重油につきましては、これは原油からの一種の——製品だとは思いますが、製品でございますので、普通の原則から行きますと 原油を一〇%とするならば、重油は一五%といつたような権衡論が出て来るのでございますが、御指摘のように漁業に及ぼす影響考慮いたしまして、重油原油は同じく、石油類で一番低い一〇%の関税にとどめることにいたしたのでございます。御指摘のように漁業方面にある程度影響があろうということは私ども考えまして、そのような処置を講じておるのでございますが、かつて漁業用につきましては、全部免税した時代も御承知通りつたのでございます。ございますが、その当時、大分横流れの事実が多くて、ついに廃止せざるを得なくなつたというような事情もございまして、私どもも、漁業用につきましては特に考えをめぐらしたのでございますが、税率を一〇%という程度にとどめますれば、何とかやつて行けるのではないかということを考えまして、このような提案にいたしておる次第でございます。石油類日本国内資源開発という点から行きましてもきわめて重要であり、かつ一〇%ということでも、その数量は全体として少いようですが、しかしこれはほんとうの中立的な専門家意見を聞きましても、日本国内において一〇%ないし一五%程度原油が算出するかしないかによつて、非常に国際競争強みが多いということは一致した意見でございまして、そのような点を考えまして、関税といたしましても、ほぼ最低に近い一〇%の関税率を見まして、日本石油資源の今後の開発に資しよう、そういう点を特に考えたような次第でございます。  大体一通り説明いたしまして、また足らないところがございましたら補います。
  7. 冨永格五郎

    冨永水産委員長 ただいま主税局長の御説明もありましたが、私どもは必ずしも国内産油保護反対するものではありません。国内産油保護してこれを助長せしめ、ますます産油の多量になることをこいねがうものでありますが、関税によつて保護しようとする考え方を是正していただきたい。もちろん私どもは、ただいま御説明もありました通り、従来やはり輸入原油に対して免税しておつたというような事実等も勘案されまして、水産委員会におきましてもしばしば議論いたしましたことをまたここで繰返し申し上げる意思はございませんが、しかしながらただいまの説明だけによつて納得するのではないのでありまして、いま一度政府当局説明を承つて、この法律案があくまで通過するというような場合には、重油原油課税することを延期するという点に対する考慮が拂われるかどうかという点について御質問しておきたいと思います。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 石油類に対する保護関税の設定の必要性につきましては、詳細は通産省から御説明願つた方がよろしいかと思いますが、今御指摘関税政策で行くか、あるいは補助金等財政支出で行くかという点も実はたびたび論議いたしたのでございますが、結論といたしましては、いずれか一つで行くというよりも、やはり関税といたしましては最低限の関税をもつて保護する。と同時に、できる限りの補助金を出すという方向が一番よいのじやないか、現在の国庫状況から申しますと、多額の補助金石油業に出しまして、それで保護助長をはかるということだけに徹底するわけにも行かない。さればといつて関税率を著しく高くいたしまして、それによつて日本石油資源開発を十分にするということも、これまた他産業に及ぼす影響考えると妥当でないということ等の点につきまして、十分議論いたしまして、結局関税といたしましては一〇%程度、そのほかに試掘、開発助成金等を、国庫から必要な限度において出すことにいたしておりますが、両々相まつて日本石油資源開発に力をいたすようにいたしたい、こういうことで結局この案がまとまつたのでございます。  なお御指摘の暫定的な問題についてどうかという考え方でございますが、関税政策といたしましては、やはりこの際石油業開発につきまして、将来といえども採算の基礎と申しますか、開発基礎を與えるためには、どうしてもこれはやはり必要な措置を設けておく必要があるのじやないかということを考えたのであります。ただ先ほど申し上げましたように、漁業油につきまして非常に御心配のようでございますが、この点は私どももさらに第二段の問題としていろいろ研究してみたのでございますが、問題は横流れ防止等技術的方法をどうするかという点が主たる問題のようでございます。私どももその点につきまして十分な措置がとり得るということでございますれば、漁業界の最近の状況等から見まして必要な措置考えてもよいのじやないかということを考えたこともあるのでございますが、現在までのところそのようなことにつきまして、いまだ十分な自信がないので、先ほど申し上げましたように、比較的低い関税率でこの際臨もうという程度におちついているのでございます。大体そのような考え方でございます。
  9. 冨永格五郎

    冨永水産委員長 時間の関係がございますから簡單に申し上げます。答弁簡單でけつこうですから、そのつもりでお願いします。通産省に伺いますが、国内産油保護して行かなければならないということには必ずしも反対するものではありませんが、現在の実例といたしまして、先ほど述べました通り帝石が一割二分も配当しているという現実の事実もあることでございます。通産省におきまして、保護政策に関連いたしましての答弁を願いたいと思います。
  10. 徳永久次

    徳永政府委員 原油に対しまする保護関税考えまする必要性は先ほど来主税局長からも御答弁があつたのでありますが、私ども生産管理庁といたしまして、もう少し敷衍して御説明申し上げたいと思います。  日本石油資源につきましては、比較的昔から日本には大した石油がないのだというふうにいわれておつたわけであります。ところがその後におきまする、ことに終戰後におきまするアメリカ、イギリスの石油関係専門家指導援助によりまして、資源的な日本価値というものも相当高く評価されておるのであります。資源全体といたしまして、埋蔵量として一千五、六百万トンのものがあるということが、大体学者としての意見のまとまつたところに到達しておるわけであります。さらに石油生産関係考えて見ました場合に、先ほど来申し上げました技術的な指導を、石油産業は他の産業に比べまして非常に多く受け、またその受けた効果が相当顯著に出て参つておるのであります。それがどのように数字的に出て参つておるかと申しますと、生産レベルから申しまして、昭和二十一年、終戰の翌年でありましたが、生産レベルは年二十万キロをちよつと割るというところであつたのであります。それが順調に成育して参りまして、昨年では、三十二万キロという生産に到達して参つたということであります。  さらに鉱業基礎的な問題になります地下の確定埋蔵量の把握という面、これは先ほど申しました推定埋蔵量として千五百万見当ということに相なつておりますが、実際の生産といたしましては、確定埋蔵量の一番正確なものをつかむということが大事なのであります。そのつかみ方——地質調査、あるいは探鉱の仕方というものの科学的、技術的な進歩は顯著に現われて参つたのであります。その結果といたしまして、昭和二十一年確定埋蔵量が百五十万キロくらいのところでありましたのが、ただいまのところ約五百万キロくらいのレベルに来ておるわけであります。そういう状況を一口に考えてみますと、日本石油産業は、今までそう大したものでないというふうにいわれておつたのと違いまして、私どもとしては資源的にも、また技術的にも、経済的にも考えまして、日本石油鉱業保護に値いする産業であるというふうに実は考えておるわけであります。終戰後保護に値いする産業として十分に順調に成育して来ておる、これを今少しの期間保護するならば、十分に国際的な競争にたえて一本立ちできるところまで来るのだということを確信いたしておるわけです。しからばここに、一本立ちできるまでのところをどの程度考えておるかということでございますが、私どもといたしまして、いろいろな要素考えてみまして、年の生産規模を五十万キロのレベルに置くというのが一つ目標、しかしてその背景になりますものとして、確定埋蔵量は、その十五倍に相当する七百五十万キロのレベル保護目標として考えておるわけであります。その目標に比べまして、現在は生産が三十二万キロ、確定埋蔵量が約五百万キロということでございますが、終戰後の経過を考えてみました場合に、その保護目標点に到達するのはほど遠くないというふうに私ども考えておるわけでございます。従いまして、日本石油鉱業保護しますために関税保護を與えることによりまして、消費面に若干の影響を與えるということもあろうかと思いますが、これが單に一石油鉱業の問題としてでなしに、日本経済全般の問題として考えまして、いましばらくの御猶予をお願いしますならば、日本石油鉱業は健全に育つて行くということになりますので、その利益は相当高いのじやないかというふうに考えるわけです。期間的に考えまして、あと二年、三年というはつきりした予測を申し上げかねまするけれども目標点に達するのはそう遠くないということだけは言えるのじやないかと考えますので、いましばらくの猶予を與えてもらうことが全体のために——石油鉱業ばかりでなしによいのじやないかと考えます。そこで全体のためということでございますが、私ども石油鉱業につきましては、若干ほかの産業と異なつた要素というものも考慮の中に入れてお考えいただく必要があろうかと思うのであります。と申しまするのは、御承知のように、石油軍需品としての色彩の非常に強い品物でございます。従つて日本が戰争のらち外に立つということを考えたといたしましても、国際的にあふりが来ることは当然に予想されるのであります。さような意味からいいまして、ただいままでのところ、石油は順調に入つておるわけでございますが、これが将来どういうことになるかもわからない。そういうことのあることは望まないことでもございまするけれども、しかし品物自身の性格から考えまして、そういう際における日本自給度も当然考えなければいけないのじやないか。あらゆる商品のうち最も軍需品的な色彩の強いものだという点を考えなければいかぬと思うわけであります。戰争中も石油関係の方は消費制限を受けまして、産業界のみならず、国民一般に苦労したのでありますが、日本経済規模から見ましてどう切り詰めても百万キロくらいのものは見ておかなければならぬということを考えました場合に、その際において、日本国内における石油生産量が少くとも五十万キロになる可能性を持つだけの力を與えておくということが、大きな強みをなすものではないかと思うわけであります。  なお石油特殊性といたしまして、石油の国際的な色彩と申しますか、ほかの品物と若干違いまして、綿花とか羊毛とかいうものの国際的な取引状況と、石油の国際的な取引の姿というものは、資本的な特殊性等から見まして、若干の相違があるわけであります。これは日本に全然石油資源石油生産がない場合に、日本に受けられる原油を含めた石油製品は、他の国に比べて割高なものが供給される危險がなしとしないということも、考慮の中に入れてしかるべき品物だと思うわけであります。万一のさようなことを考えました場合に、石油国内資源保護のために、一時的に日本全体が失うところの犠牲に比べまして、保護のない場合の日本経済全体の受けるマイナスというものははるかに大きいものではなかろうかということを実は私ども感ずるわけでございます。さような石油特殊性というものも考慮に入れ、また先ほど申しました日本石油資源十分保護に値いする産業であり、またこれが順調に成育しつつあるという事実を考え、さらにまた先ほど主税局長からもお答えがございましたように、過去においてもある程度の、今度の一割よりも相当高い税をかけられておつたというような事情等考えまして、関税保護を実はお願いしたわけであります。  ただ関税保護をお願いするにしましても、すべてを関税にお願いするということを考えますときに、その消費面に及ぼします影響ということも考えまして、関税だけで目的は達しない。そういえば不徹底だということもいえるかもしれませんが、消費面影響考えて、関税による保護と、それから財政支出による保護と、両建で適当に調節して行くという考えのもとに、今回御提案になりました原油一割というような案が生れて参つたわけであります。この案が成立するについては、政府内でも相当愼重な意見も行われたのでありますが、多角的ないろいろな角度からの検討の結果といたしまして、政府としてはこの辺が最も妥当なところではなかろうかというようなことできまつた次第であります。従いまして、石油鉱業だけの見地から見ました場合に、なおかつ不十分だという点もございますが、若干の不十分な点は他の方策に期待するというような考え方を持つたのでございます。
  11. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 ちよつと委員及び政府委員に申し上げますが、質疑及び答弁も何分簡單にお願いします。中村幸八君。
  12. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 石油需給の関係につきまして御質問いたしたいと思います。  石油鉱業保護育成するということは、国内資源開発促進、また輸入が杜絶いたしました場合の対策といたしまして、あるいはまた季時における輸入原油の独占価格に対する調節というように、いろいろの面からいたしまして非常に大事なことである。これにつきましては適切なる保護政策をとる必要があると思うのであります。保護政策をとるとすれば、ただいまいろいろ御議論があつたように、輸入関税を課するということも最も有効な手段であると思うのであります。しかし輸入関税だけが唯一無二の方法とは思わないのであります。このほかにもいろいろと適切なる方法もあろうと思います。現在御承知通り石油は需要量の一割五分程度を国産でまかなつておりまして、まことに稀少なものであります。しかもこの石油というものは簡單には出て来ないのでありまして、将来事業経営をする上におきましては、常に探鉱、試掘というものをして行かなければならない。ところがこの探鉱、試掘というものは、百本試掘してその中で一本か二本しか当るものがないというような従来の実例でありました。石油鉱業というものは非常に危險性があり、不安定な事業であると思うのであります。従つてこの石油鉱業に対しまして、格段の保護助成を加えなければならないことは申すまでもないことであります。明年度の予算を見ましても、試掘奨励あるいは地質調査費というようなものに一億一千万円ほど計上しているようであります。ところが昨年におきましては一億四、五千万円あつたと思います。この点においていささか疑義があるのでありまして、私たちといたしましては、過般通産委員会におきまして、重要鉱物の供給確保に関する決議をいたしているのであります。この趣旨によりまして、政府におきましては今後格段の御努力を願いたいと思うのでありますが、政府の、特に通産関係の方から、原油あるいはこの燃料資源に対する保護助成政策はいかなる御構想を持つているか、この点まずお尋ねいたしたいと思います。
  13. 首藤新八

    ○首藤政府委員 石油の輸入が重要でありますことは議論の余地がないのであります。従つて政府といたしましては、今日まで関税の上におきましては、できる限りの助成をいたして来たのであります。幸いに現在におきましては、輸入品が非常に高値になつております関係上、一応これには関税をかけなくても内地の石油に対して採算上無理がないという状態にありますので、当分の間輸入品に対しましては免税にしたいという考えを持つているのであります。なお探鉱あるいは試掘という面におきまする助成金が昨年度より若干減少いたしておりますが、これはこの石油製品を軽視したいというのではなくして、先ほども鉱山局長から最近の生産高を詳細に申し上げました通り、順次順調に成績を上げて参りまして、各社の基礎も漸次強固に相なつて参りましたので、大体明年度はこの程度で行けるのではないかという考え方から若干減少いたしたのであります。しかしながら、これはあくまでも現在の状態を基礎として検討した結果でありまして、この石油製品重要性がますます強くなつて参ることは十二分に認識しておりますので、将来も財政の許す限り、この面に対する助成は強力にやつて行きたい、かような考え方を持つているのであります。
  14. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 ただいま政務次官から将来とも強力に石油に対する保護助成策を講ずるというお話でありました。この言に信頼いたしまして、一応この点につきましては私質問はいたしませんが、どうかひとつ今後とも一層御努力願いたいと思います。つきまして、先ほど冨永委員から御質問があり、またただいま首藤政務次官からも承つたのでありますが、漁業方面に対する原油関税というものが非常に影響がある。また漁業だけでなく、あるいは運輸業に対しても同様である。その他原油消費面に対する非常な苦痛がここに起るのであります。従つてどもとしてはこの原油に対する一割の課税というものは、差控えなければならぬというふうに考えるのでありますが、ただ現在国産原油のコスト等を考えてみますと、わずかに最近の船賃の値上りというようなことによりまして、国産原油のコストが輸入原油とおつつかつのところである、こういう事情であります。ところがこの船賃の値上りというものも、いつ何どき平生状態に返らないとも限らない。こうなつて参りますと、国産原油輸入原油に引合わなくなつて来る。そういたしますと国産原油はここに壊滅しなければならない。一度壊滅いたしますと、この石油鉱業というものは他産業と異なりまして復活することがとうていできなくなるのであります。従いまして消費者等の立場を考えまして、無税とするということが可なりといたしましても、これはほんの暫定的の処置としていただきたいと思うのでありますが、この点に対しまして平田主税局長からは、先ほど、まだ免税にするかどうかということについては非常な疑問があるというような御答弁でありましたが、国産原油保護の立場から申しましてごもつともであり、またわれわれ通産委員の立場といたしまして軽々に無税論を主張すべきではないのでありますが、しかしまた一面消費者の立場等を考えまして、暫定的にこれを無税とするということも可なりと思いますが、この点に関する大蔵当局の御答弁をお願いいたします。
  15. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいますでに中村さんのお話の通り、私どももこの関税政策というものがあまり瞬間的な現象だけに強く考え過ぎまして、それですべてを動かして行くということになりますと、なかなか所期の目的を達成しきれないのではないか。しからばといつて長期の考え方もこれまたどうかと思いますが、やはり若干の期間にわたりまする産業政策を確立し、そのための適当な関税政策いかんということが基本的な関税率を定める場合の考え方にいたしております。従いまして石油につきましても、今御指摘通り、ごく最近の事情だけから考えますと、あるいは今までほとんどゼロに近い関税率を無理に一割に引上げるという必要はないではないか、こういう議論も一つの議論として相当成り立つと私は思います。しかしはたしてそれでいいかどうかということになつて来ますと、私は軽々にはなかなかそのような結論に賛成するのはいかがであろうかということを考えるのであります。及ぼす影響が非常に甚大であり、かつそのために他産業なり、あるいは国民生活に重大な脅威を與えるということでありますならば、あるいはそういう場合におきましては、減税の道を考えるということは、これは確かに一つの方法ではないかと思いますが、影響程度の感知の問題に結局帰着すると考えるのでありまして、その程度がそれほどでもない、何とか消化できる、またどうにも困つているものに対しましては適当な救済策を、場合によりましては考えるというようなことを考えてやりますれば、むしろこの石油業の将来のためにやはりある程度税率でこの際課税するという方針を明らかにしておいた方が非常にいいのではないかということを考えている次第でありまして、今お話のごく暫定的な免税の問題につきましても、私ども原案を提出いたしたい者といたしましては、どうも今ここでただちにその方がいいだろうということは申し上げかねることを御了承願いたいと思います。
  16. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 次にお尋ねいたしますが、今回の改正案によりますと、原油等に対しましては一割、それから石油製品に対してはそれぞれ二割ないし三割を課税することになつております。この税率の差等は、加工の程度基礎としておるものであると考えるのでありますが、先ほど来の、もし、原油関税無税になつたというような場合には、従つて製品についても二割、三割が一割、二割というように下るものであるかどうか、この点ちよつと架空の御質問になるようでありますが、承つておきたいと思います。
  17. 平田敬一郎

    平田政府委員 同じ石油製品の中でも、原油重油、燈油、ガソリン、あるいは潤滑油等それぞれ製品の加工度の程度によりまして税率に差等を設けておりますことは、御指摘通りでありまして、それはそれぞれやはり加工するに必要なコスト等を考えまして、少くとも関税としていずれが妥当であるかということを検討しまして、そのようにきめております。従いましてあとでかえなければならないものも出て来ると思いますが、中には相当高率な関税をかけまして、それによつて特に国内の自給をはかるというような点を織り込んでいる部面もありますので、一概には言いにくいかと思いますが、お話の通り若干再検討を要することになるだろうということは、申し上げることができると考えるのであります。
  18. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 次にお尋ねいたしますが、銅だとか、アルミニユームその他の金属類につきしまては、原鉱石は無税、地金につきましては、五分あるいは一割の税を課することになつています。ところがアンチモニーの地金だけは無税となつております。国内資源開発保護という面から申しまして、当然同一に取扱われるべきであると思うのでありますが、アンチモニーだけを別扱いにするという理由はどこにあるか、この点をお尋ねします。
  19. 徳永久次

    徳永政府委員 ただいまアンチモニーのメタルについて無税にしておるのは、他とのバランスをとつていないではないかというお尋ねがあつたわけであります。これは率直に申しまして、実は私どもの手落ちでございまして、何分いろいろな広汎な問題でございまして、最後の仕上の際に私どもがしくじりをいたしまして、メタルは一〇%鉱石は無税ということにするはずのところ、間違いを起したような次第でございまして、提案するまでに十分修正するいとまがなくて、非常に申訳ないと思つております。
  20. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 ただいまの御答弁でよくわかりましたが、さつそく手落ちであつたら、ひとつこれを御訂正願いたいと思います。  次に機械類の関税の問題でありますが、改正案によりますと、一割五分となつております。従来は従量税でありまして、これを価格に直しますと、五分程度であつたと思うのであります。これは国内の機械工業を保護する見地からいたしますと、是認することができるのでありますが、わが国が将来アジアの工場として日本産業を画期的に向上せしめますためには、産業近代化の一環として優秀な機械をどしどし輸入しなければならないと思うのであります。これがためには、この近代化に必要な機械の関税につきましては、これを無税とする必要もあろうかと思うのでありますが、この点についてのお考えを承りたいと思います。
  21. 平田敬一郎

    平田政府委員 機械の関税につきましては、従来は大部分が従量税率になつておりまして実際非常にノミナルになつておりました。しかし機械の中では、相当な部分が従価二〇%で課税されているものもあるが、特別にはつきりした機械等につきましては、従量税率で最初は二〇%ないし二五%程度税率できめた税率が、インフレ等の結果非常に下つているわけであります。これを最近の事態に応じてかえろということでありますが、大体前よりも幾分低目にいたしております。戰前に二〇%でありましたのを今回は一五%ということにいたしまして、レベルは若干落しております。それによりまして、日本の機械産業は、国産品も大分出て参つておりますので、保護を與えたいという考えであります。その中で今特に日本の近代化に必要な機械について考える余地はないかというお尋ねがあつたのでありますが、この点はいろいろ検討してみたのでございますけれども日本国内において生産できるような機械は、やはりできる限りこれを国内において調達すべきではないかということを強く考えるのでございます。ただどうしても日本国内生産されないもの、現在も生産されていない、将来も生産の見込みがほとんどない、非常に不確実であるというようなものにつきましては、特別の見地から関税を免税するかどうかということも確かに一つ問題であろうと思います。別途に近代化に関する特別措置等を内国税につきましては将来考えておるのでありますが、そういう問題の一環としてどの程度考えて行くか、そういう問題につきまして検討してみたいと考えている次第であります。
  22. 中村幸八

    ○中村(幸)委員 産業近代化法案というのが近く議員提出で国会に提案になる予定となつておりますが、そういう面から申しましても、近代化に必要な機械類につきましては、ぜひとも無税というような保護政策をとつていただく必要があろうと思いますので、十分御考慮を願いたいと思います。  最後にお尋ねいたしたいことは、この関税定率法改正案の実施期は四月一日となつているようでありますが、メーカーといたしましては、すでに輸入業者と先物契約をしておるのであります。従つてこれを可決せられて実施せられました場合に、この関税額に相当する負担は、メーカーが負担する、あるいは輸入業者が負担するという問題につきまして、メーカーと輸入業者との間に相当なトラブルが起る可能性があると思うのであります。従いまして、この法案の実施期を三、四箇月延ばすというお考えはないかどうか、この点最後にお尋ねいたしておきます。
  23. 石田正

    ○石田政府委員 関税率改正をいたします場合に、従来既契約のものをどうかするという問題は、強く考えなければならない問題でございますが、これは大体各国で関税率改正いたします場合には、何月何日からやるというふうなことになつておりまして、契約がすでにあつたかどうか、その契約の内容がどうであるか、こうであるかということを考えないというような建前になつております。  それからもう一つは、日本の現在の関税定率法というのが、まことに体裁の悪い不合理なものであるということは御承知通りであろうかと思いますので、これをかえますことは非常な急務であるというふうに考えておりますので、四月一日ということで参りたい、こういうように考える次第であります。
  24. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 次は農林委員の池田峯雄君。
  25. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 今回の改正理由として「戰後の激変せる国内経済事情に対応し、且つ、関税引下げの国際的動向に順応するため、」という理由がうたつてありますが、しからば農産物輸入に対して、この方針のもとに改正されたその根本的理由をまず第一に承つておきたいと思います。
  26. 平田敬一郎

    平田政府委員 今お読みになりました点につきましては、今回日本関税定率法の大体の高さをきめます場合における一つの重要な判断基準にいたしたのでありまして、戰前の税率にいたしますと非常に低くいたしております。それから世界各国の関税率の中でも、今度定めます日本関税率は、どちらかと申しますと低い方に属する——もちろん最低ではありませんが、高い方ではなくて、中かあるいはそれ以下の部類に属するものが大部分である。そういうような頭で今回関税率を定めるということにいたしたわけであります。ただ結果におきましては、関税率が従量税になつておりまして、定めた当時からしますと物価が二百倍も騰貴しておる。従つてそのまますえ置くことによりまして、実は自然に二百分の一に引下げになつておるのでございまして、これを是正するのが目的でございますので、今からいたしますと引上げになるということでございますが、従来の大体の沿革あるいは世界の関税率の高さから申しますと、先ほど申し上げたようなことに相なるのでございます。そういたしまして農産物につきましてもやはり基本的には同じ頭を持つておるのでございますが、食糧の類につきましては二つにわけて考えております。一つは近き将来と申しますか、あるいはその近きというのがどの程度の将来になりますかは問題でございますが、世界の情勢が平和の方に向うという場合における情勢といたしましては、これはやはり日本の農業を保護するという見地からこの程度関税率は必要じやないかということを考えまして、基本的関税率を定めております。そういたしましても、その際におきましても、どちらかと申しますと、あまり高くない関税率という考え方をとつておりまして、一〇%ないし二五%——小麦粉が二五%、普通の米類につきまにつきましては比較的低い方を適用いたしまして、それで日本の農業の保護をはかろう、こういう考えであります。しかし現在のところは非常に食糧が不足しておりまするし、国際価格よりも日本の食糧の国内価格が低い、こういう場合におきましては、これはやはり実際において関税を課するのは妥当でないという趣旨からいたしまして、そういう場合には食糧に対する関税は免除するという法律案にしておるのでございまして、すこぶる概括論でございますが、それだけお答えいたしておきます。何か具体的なお尋ねがございましたら、またお答えいたしたいと思います。
  27. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 それで政府提案理由説明書の第四点に先ほど主税局長説明のようにわが国の農業の特殊性考慮いたしまして、これを保護するため、適当な関税率を設ける、こういうことがありますが、しからばわが国の農業の特殊性というものはどういうふうにお考えになつておちれるのか、その点をまず、伺いたいのであります。
  28. 石田正

    ○石田政府委員 お尋ねの点は農林省の方にお答え願うのが本筋じやないかと思いますが、今おりませんので関税率に関する限りの点から申し上げたいと思います。前に答弁があつたかと思いますが、米とか麦とかいうような主食は消費者の面から申しますと、すべての人間が食べなければならないものでありまして、またそれが産業の経費の中に入るわけでありまするから、できるだけこれは無税であることが望ましいということがいえるかと思うのであります。またたとえば主食の問題にいたしましても、戰前のごときにおきましては、大体国内で自給ができるという状況に相なつておりました。それが現在では遺憾ながら八割くらいしかできないということになりますれば、二割くらいはどうしても輸入しなければならぬ。そういうふうに輸入しなければならないものに対して税をかけるのは何事であるか、こういうような議論もあるわけであります。これに対しまして、そこにわが国の農業の特殊性ということが出て来るわけでありますが、日本の農業の特殊性としていわれておりますことは、現在農地というものもそう広いわけでもございませんし、またその経営といたしましても機械を使つて非常に能率的にやつているのでもありません。非常に集約的な農業を営まざるを得ない。それからまた人口の点から申しまして、大体国民の四八%は農村に依存して生活しなければならない。こういう点から日本産業考えた場合に、農業というものは一番大きな産業ではないか、こういうこともいえると考えられまするし、また自然に放置して置いても非常にとれるとか、機械を使つて非常に能率的につくれるとかいうようなほかの国の農産物と比べました場合に、日本の農産物というものがある程度高価であることもやむを得ないことになります。そういう場合にこれを関税をいうものなしに置くということになりますれば、非常な影響を受けるであろう。そういうことがあつては、これはいかに低関税が理想でありましても、日本の農業を無視するわけに行かないというふうな点を考えまして、輸入関税を配慮したのでありまして、大体そんなふうな気持でおるわけであります。
  29. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 私が質問したい趣旨はこうなんです、わが国の農業の特殊性というのは私はこう考えておる。農地が狭く、経営規模が小さく、生産力が発展しておらない。そうなれば生産費が非常にかかるのだから、日本の農産物価というものは非常に高くなければならないわけである。外国の農業は機械で生産し、大農経営でやつておるから生産費が低い、安い農産物でなければならない。ところが日本の農産物価は、小規模経営で手工業的にやつておるのだから、生産費が多くかかつて高物価でなければならないはずです。この日本の農業を保護するために輸入主要食糧に対して適当な関税率を設けなければならない、この根本的な欠陷はどこにあるのか、これをひとつお伺いしておきたい。
  30. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまの問題は、私もしろうとでございまして、あるいは農林省の政府委員からお考えする方が適当かと思いますが、将来はもちろんお話のような傾向に行く可能性が多いのじやないか。そういう場合におきましてはこれはやはりそういう條件を保護するために適当な関税率が必要である、そういう基本的な考え方に立つておるわけであります。日本では零細農が多くて、生産費が高い、それにもかかわらず農民の生活水準が低い、そういう場合におきましては農業の保護ということを考えますと、国際物価に比較しまして関税率だけ日本の農産物の価格が高くなつてもよいのじやないか、そうして初めて日本の農業が維持できるのじやないか、こういうことは考えられるわけであります。それが基本的に関税率を定めたい根本の理由であります。ただ現在の事情は御承知通りいろいろな変態的な條件のもとに置かれておりまして、なお国内経済価格水準、物価体系等もまだ平常的な姿に至つておりません。その間におきましては、これは先ほど申し上げましたように、主食の点については特別に関税を免除いたしまして、現在に応ずる措置をとりたい、こういう考えでございます。しからばそのパリテイー価格いかんとかいろいろ問題があるかと思うのでありますが、その問題は私あまり責任がございませんので、さらにその点につきましては農林省の政府委員に来てもらいまして御答弁つた方がよいのじやないかと考えます。
  31. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 私が質問したい要旨は、要するに日本の農産物価が非常に安い、生産費が非常にかかつておるにもかかわらず、その売却する値段というものは非常に安い、そういう低米価政策を一方においてとつておいて、農村の機械化、生産力の発展というような根本的な農業保護政策を全然とつておらない。そうして一方において外国では農業恐慌の結果余剰米ができる、そういう余剰米を日本に押しつけて来る、そういう場合政府がいろいろな措置考えておる、それだけでは根本的には日本農業の保護にはならない。日本の農業の保護というものは、要するに日本の農業の生産力を高めるために、現在の米価政策を政府が根本的にかえることだ、そういうことを私は申し上げたいのです。  そこで第二に、関税をかけるかかけないかという論議については、一方においては農民を保護するため、一方においては政府のいわゆる国民生活安定の絶対的要請、この一つの問題のどちらに重点を置くかということでいろいろ問題がかわつて来ると思うのでありますが、これは輸入補給金の場合もやはり同様な意味であります。日本の農民としては再生産を償うだけの米価にしてほしい。要するに食糧の生産価格を上げてもらいたいのです。消費者の方としてはもつと安くしてもらいたい、安くしなければ米が買えない、配給物も買えない、こういうような消費者の立場と、農民の立場と、矛盾する二つの要求があると思うのであります。しからばこの矛盾した二つの要求の根底に横たわつている問題は一体どこにあるのであろうか。大蔵省としてはこれをどう考えておられるか、この点をお伺いしたい。
  32. 平田敬一郎

    平田政府委員 御質疑の点はなかなかむずかしい点でありまして、食糧の関係の問題に関しまして今お話の点が実は中心点になつて来るのであります。日本の今の農業の実際を考え、また将来のことを考えますと、どうしてもやはりある程度保護関税を設けて保護することでなければうまく行かぬのではないかということが一方において強く考えられます。しからばそういう見地から、国際的な農産物の価格に対しまして日本の農産物の価格を関税率だけ高くして、はたして国民生活の安定が維持できるか。あるいはそれによつて賃金水準等に及ぼす影響が出て来ると思うのでありますが、日本産業自体——輸出貿易を中心といたしますところの産業の発展がはたして庶幾できるかどうか。こういう点は非常に多く実は議論いたした点でございますが、しかし基本的に考えますと、やはり日本産業の中におきまして、農家というものは、人口数から行きましても非常に大きい数になつておる。基本的には零細な経営でありますし、生活水準も現在なお相当いい方ではない。そういう点を考えますと、やはり基本的には農業の保護ということは強く考えなければいかぬのではないか。そういたしまして、それによつて食糧の価格がある程度高くなると思いますが、高くなりましてもなお日本の今の賃金水準等から考えますと、国際的な見地におきまして、日本産業はある程度それに耐え得るのではないか。産業におきましても、機械化、合理化、能率化等の措置をとることがうまく行きますれば、そういう方向に行きましても、日本産業は十分国際的な競争力に耐え得るのではないか。むしろやはり農業の一定のところまでの保護というものはどうしても必要ではないかというふうに考えまして、基本的には提案いたしましたような関税率にいたしたのでございます。ただ当面の問題といたしましては、先ほど申し上げました異常な事態でありますので、食糧の関税は実際にはしばらくかけないということになるかと思いますが、将来の方向といたしましては、今申し上げましたようなことに行くのがわが国としては正しいのではないか、こういうことでこの関税率を織り込んで提案いたすことになつた次第であります。
  33. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 この問題は非常に重大な問題だと思う。私は議論をするつもりはありませんが、要するに内外独占資本の労働者、農民に対する収奪というものが非常に強く、そのためにこういう二つた矛盾が出ておるのだ、私はそう考えます。でありますから、政府がどうこういいましても、根本的には少しも農民の保護にも消費者の保護にもならない。日本の労働者の賃金水準は世界一安い。ここに植民地的収奪が行われておる。ここに根本的な問題があるのでありまして、これを解決することなくしては何も解決にはならない、私はそう考えます。  もう一点お伺いしたいと思うのでありますが、政府は、当然アメリカあるいはイギリス圏内との貿易ということだけを考えてこういう税法の改正をやつておられるのだと思いますが、将来においても、たとえば大豆の輸入であるとか、こういう問題についてはどういう見通しを持つているか。先ほどの局長のお話から参りますというと、現在においては国際情勢がたいへん緊迫しておりますけれども、食糧問題としては、日本の農民の保護のために関税も設けなければならないというふうに、そういうふうな平和的な発展への方向も一応考えているようでございますが、しからば中共貿易であるとか、あるいはソ同盟との貿易であるとか、こういうことをどういうふうに考えておるか。これを日本の農民あるいは一般消費者階級との利益の関連においていかに考えておられるかということをお伺いしたいと思います。
  34. 首藤新八

    ○首藤政府委員 御指摘通り、中共あるいはソ同盟という国々との貿易が正常の姿に復しますることは、まことに好ましいことではありますけれども現実の政治問題としてはこれは許されないと考えて現在の措置をとつていることを御了承願いたいと存じます。
  35. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 これははなはだ重大な問題だと思う。大豆その他が中共から輸入されて来ないために、みそ、しようゆの値が上るというようなことはきわめて重大問題でありまして、従つて、国民大衆の生活をいかに向上発展させるかというきわめて大きな立場から、ただいまの御答弁に対しては私はきわめて不満足であり、遺憾に存ずる次第であります。しからばそういう中共との貿易、あるいはソ同盟との貿易がいかなる理由において困難であるか、不可能であるかという政治的原因について、もつと精細なる御答弁を願いたいと思う次第であります。
  36. 首藤新八

    ○首藤政府委員 中共及びソ同盟との貿易が現在の情勢になつている理由につきましては、私から詳細申し上げなくても、国民大多数の方はよく御承知くださつていることと存じます。
  37. 池田峯雄

    ○池田(峯)委員 ただいまの御答弁では私はきわめて不満足でありますが、国民大衆の目の前では答えることができないのは、政治的陰謀があるからだということを了承いたしまして、私の質問を終ります。
  38. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 通産委員今澄勇君。
  39. 今澄勇

    今澄委員 私は重複を避けまして簡單に二、三点お伺いをいたします。  まず第一点としては、このたびの関税は最高五割ということになつておりますが、この五割という数字は、どういうところから割出して最高を五割とされたのかという点。  第二点は、日本と最も国情のよく似ているイギリスの産業保護政策並びに関税政策というものは、わが国関税制度の上においても、もつて学ばなければならぬ点が非常にあるが、これらのものと比較検討してみるというと、非常に懸隔のはなはだしいものがあるけれども、こういう点については当局は十分研究され、またそれからの検討を経られた結果できたものであるかどうか。この二点について御説明を願いたいと思います。
  40. 石田正

    ○石田政府委員 第一点は、税率の最高をなぜ五〇%にしたかというお尋ねですが、五〇%というのは、ある計算から出て来たというわけではございません。結論に申しまして、一つの勘であるということを申し上げ得るかと思うのであります。今度の税率改正というものは、ただ財政収入を上げようという点に重点があるのではありませんので——もちろん財政収入という点、あるいは輸入抑制というか、統制というか、そういう観点も加味してございまするが、大きな流れといたしましては、保護関税という立場をとつているわけでございます。そこでわが国の過去におけるほんとうの意味保護関税の率はどのくらいであつたのかということが問題になるわけでございますが、これはソーダその他の場合から考えましても、大体二五%程度というふうなぐあいにわれわれは見ているわけでございます。それから日本関税率の最高は、その点から申しまして五〇%といわれますならば、今の二五%という点は、要するに二〇%とか何とかいう最高を押えるものと違いまして、その保護関税という趣旨を達成する上においては大体支障がないのではないかと考えられると思うのであります。また保護関税以外の意味におきまして、いろいろぜいたく品その他不要不急品の輸入に対しまして、ある程度関税上でチエツクを加えますというような点から申しまして、どのくらいがいいかという点でありますが、国際的な情勢とか、あるいはその国柄というようなものによつてそれぞれ違うわけでありまして、一概によその国がこうだから日本もまなこうであつてしかるべしというわけに行かぬと思うのであります。日本におきましては、現在の関税率の中にはかかる不急不要品を押える意味におきまして、一〇〇%関税がありますことは御承知通りであります。しかし日本がよその国といろいろ経済行為を行いまして、そして自立をはかつて行くという点から申しますと、やはり日本の輸出を考えなければならぬ。従いましてその点から申しまして一〇〇%というのは何といつても高過ぎると考えられるのであります。そういうような点を考え、またいろいろよその国の事例等も見まして、大体五〇%くらいを一応最高としたわけでございます。これはひとりアメリカだけを見たわけでございませんので、各国の関税率を参考にいたしたのであります。なおイギリスの点につきましては、いろいろ比較参照いたしまして、もちろん非常に参考になる点もありますが、しかしながらイギリスと日本とは必ずしも状況が全一であるわけではないのでございまして、それからまたイギリスの政策にいたしましても、最近とそれから二、三年くらい前とは違うわけであります。二、三年くらい前におきましては、世界経済に参画いたしまして貿易を自由にしようという思想が強かつたのでありますが、最近におきましては、自分の都合のいい方面においてはなるだけ貿易を進めますけれども、しかしその反面おきまして、相当保護色彩が強くなつているという点もあるかと思うのであります。それらの点から、いろいろとまたわれわれが率をきめる上においては考えなければならぬと考えている次第でございます。
  41. 今澄勇

    今澄委員 この関税の問題は、国内産業保護わが国の自立経済日本国民生活全般に及ぼす影響が重大であるから、こういつた関税の率をきめるような場合においては相当愼重に審議を盡して、あらゆる部面から検討される必要があると思うのであります。そこでわが国の将来の自立経済その他を考えると、関税というものは、そうきめて朝令暮改というわけに行かない。今度出された関税の全体を流れている根本的な思想をわれわれが見てみると、確かにこれは便宜主義な、当面の輸入をやらなければならないという、わが国貿易上の特徴から輸入重点主義、しかもそれは原材料重点主義の思想が関税全般に流れていると思うのであります。そこでただいま長々と御説明がございましたが、私はこういつたような現下の関税の、原料第一主義という考え方は、あとで通産政務次官に聞きますが、これは長い聞にわたつて見ると、今も非常に輸入の問題があるが、将来これは他国からダンピングを受ける状態になることも考えられる。将来他国からのダンピングというようなことで、日本産業崩壊しなければならないというような場合が来たときには、この関税制度というものをお改めになるのか、それともこれでどうにか対抗してやつて行く考え方であるかどうかということを、主税局長に第一点として伺います。  第二点は、わが国の自立経済のスタートにおいては、国内産業関税で完全に保護するということは国民生活に非常に大きく響くという場合が考えられる。そのような場合には、政府保護助成という形で行かなければならない。石油については大分先ほど来意見が述べられましたから私は重複を避けますが、完全な国内産業保護関税をやるのには、国民生活に及ぼす影響があまりに大きいという場合において、通産省国内的な産業擁護のあり方と関税とがにらみ合つて行かなければならないが、この点について大蔵、通産両省の打合せと、並びに通産政務次官の見解を承りたい。以上二点をお伺いします。
  42. 平田敬一郎

    平田政府委員 まず最初の点でございますが、お話の通りでございまして、私ども関税率をきめる場合におきましては、先ほども申しましたように当面の、非常に短期の事情だけを考えているわけではございません。ある程度の期間にわたる事情考えてこの案を作成いたしたのであります。案を作成するにつきましては、率直に申しまして二年越しと申してもいいくらい相当長時間を要したのでございます。その間各省の間において数十回、課長あるいは専門家の会合を重ねております。もちろん経済安定本部、通産省、農林省その他産業官庁並びに経済の計画官庁とも十分な連絡打合せをとげまして、この関税率を作成いたしたのでございます。従いまして基本的には当面の、たとえば原材料輸入第一主義といつたような点だけに重点を置いているわけではございませんで、たとえば農業の問題についても先ほど若干触れましたが、ある程度将来にわたる日本産業をどうするかといつたような問題は、常に頭に置きつつ全体のことを考えているということを御了承願いたいと思います。事情が非常にかわつた場合はどうするかというお話でございますが、もちろん事情がいろいろかわりますれば、それに応じてその都度妥当な修正を加えて行くことは当然な話ではないかと思います。その点については十分検討いたしまして、時期に遅れないように十分勉強いたしたいと考えております。
  43. 首藤新八

    ○首藤政府委員 ただいま主税局長から御説明申し上げた通りに、今度の関税法案は現在の情勢並びにさらに将来にわたつての見通し、できるだけの範囲内において一応構想をつくつて、その範囲内で決定いたしたのでありますから、将来情勢が非常にかわる、そして現在の日本経済にマツチしないというような情勢に参りますれば、適当にその際に修正することにいたしたいと考えております。
  44. 今澄勇

    今澄委員 次に各品目別に簡單なところを、二、三お伺いします。今回の関税で銑鉄が一割、鋼塊が一割二分五厘、鋼材は一割五分となつておりますが、少くともわが国の鉄鋼業を将来育てて行く上に、基本産業である日本の鉄鋼事業について、このような程度関税でいいのかどうか。それから鉄の輸入については鉄の輸入税免除に関する法律というものがありますが、これはこの関税とどういう関係になつているか。この法律はいつまで続いてどうなるかという点について、明快に御答弁を願いたいと思います。
  45. 平田敬一郎

    平田政府委員 あとの御質問から先に申し上げますが、免除に関する法律はごく最近の鉄鋼事情に顧みましてしばらくすえ置く、そのままにするということにいたしております。問題は基本的な関税率をどういうふうにして定めたか、こういう問題でございますが、この問題につきましても、実は油の関税と同様に非常な熱心な論議を闘わしたのでございまして、結局おちつきましたのが提案いたしましたこの案でございます。御指摘のように、鉄鋼業をほんとうに保護育成する——單に関税率としても、もう少し高い関税率を決定すべし、その際に銑鋼一貫メーカーの場合と、平炉メーカーの場合どういうふうな格差をつけてどういう保護をすればいいか、こういう問題につきましても、通産省関係の団体その他各方面と非常な熱心な議論を闘わして、提案いたしましたような案におちついた次第であります。基本的には、私どもはやはり保護関税の必要は十分認めておるのでありますが、しかし何と申しましても、日本は将来輸出産業でなければならないという事情でございますので、鉄の製品の原価があまり上りますと、産業全体に影響するところが大きい。しかも鉄製品自体の輸出ということも相当考えられる段階になつておる。その際におきまして、あまり高い関税を設けまして、それによつて鉄鋼を保護する、その方面だけ強く考えるということはいかがであろうかと考えまして、やはり鉄鋼等につきましては、保護する意味におきまする必要最小限度の関税率を判断の基準にいたしまして、提案いたしましたような率をとることにいたしたわけであります。そういたしまして、昨年の夏、秋ごろまでの情勢でございますれば、私どもはむしろ鉄鋼の輸入税の法律を廃止いたしまして、この四月からそれが有効になるようにいたしたいと考えていたのでございますが、その後情勢の変化に著しいものがございますので以上申しましたように、免税等の規定はさしあたりそのままにいたしまして、将来の基本的な関税率関税定率に盛り込みまして、業界の向うべき方向だけははつきりしておきたい、こういう趣旨で提案した次第であります。
  46. 今澄勇

    今澄委員 次は改正法第十條の規定による船舶の建造または修繕に使用する鉄鋼材または機関、機関部分品等で大蔵大臣の認可したるものは輸入税を免除すると規定してありますが、最近鉱山用の新しい機械がぼつぼつ輸入されておる。これらの新しい式の日本の鉱山開発の機械が入る場合には、これは一六八六、その他適用品目の中に該当して一割五分の関税をかけられるのか、それともさきの特免條項の規定で、これらの機械類については一応無税にするというのか。われわれは生産増強、企業合理化、日本の地下資源開発の建前からは、これは今までの特別な規定の援用があつて無税になるべきではないかというふうに解釈しておりますが、これに対する明快な御見解を承りたい。
  47. 石田正

    ○石田政府委員 改正関税定率法の第十條の問題でございますが、これは現在の関税定率法にもありましたものを、憲法、司令部その他の関係から申しまして直したということで、言葉の上では違つておりますが、実質上は課税権者が大蔵大臣になつたという点以外には、かわつていないはずであります。  それから鉱山用機械をどうするかというお話でございますが、これは新しい問題でございまして、その点につきましては、先ほど主税局長から設備近代化につきまして所見を述べてございますので、私繰返すことを避けたいと思います。
  48. 今澄勇

    今澄委員 これらの鉱山機械等設備近代化の問題につきましは、先ほどの主税局長答弁では不十分であつて、この鉱山用の開発機械はどうなるかという点について、もう一度主税局長の御答弁を煩わしたいと思います。  なおもう一つ、これの一六四二項の自動車の問題であるが、自動車の輸入関税は乗用車が四割、その他が三割、こういうことになつております。しかしながらわれわれは今の米国その他における自動車工業の規模わが国内のこれらの工業の規模とを比べてみるときに、何ゆえに五割に関税率を押えたのかという私の先ほどの質問は、少くとも将来わが国の伸ばすべき大きな産業であり、しかして諸外国の大規模な工業に太刀打ちのできないこのような自動車等については、五割でもむしろ低きに失するのではないか。もつと高い関税をかけて、国内の自動車工業のために保護すべきであるという見解をわれわれは持つておるがこの二点を主税局長から御答弁を願いたいと思います。
  49. 平田敬一郎

    平田政府委員 先ほど産業近代化法に関連して申し上げました点は、繰返すことになりますが、日本において現在もできてない、将来もできる見込みのないような特殊な機械、しかもその機械がその産業の合理化なり近代化に非常に顕著な貢献をなすというものにつきましては、先ほど申し上げましたような法案の進行に関連いたしまして、十分検討いたしたいと考えておるのでございます。鉱山用機械の中にそういうものがありますかどうか、私はしろうとではつきり判断できませんが、大体そういう際に検討してみたいと思つております。  それから第二の点でございますが、これは御指摘通りの点を実は私ども考えまして、関税率といたしましては相当高い関税率を盛つておる。最高五割でございますが、この五割は大体ぜいたく品と申しますか、関税の適用を受けますものの中でも特に奢侈品的な性質の強いものを五割に持つてつておりまして、実用性のあるものはむしろ相当低いのであります。大体普通のレベルは一割五分ないし二割くらいが関税率の中心であります。自動車工業は御指摘のような点がございますので、少し高目にきめたのでございますが、御趣旨のような点も考えまして、このような税率を定めたということを御了解願いたいと思います。なお不十分であるかどうか、これはいろいろ意見がございましようが、しかし実際のところ、自動車は相当まとまつた値段で高いのでありまして、この程度に低めましても、相当な影響があろうかと思います。実行の上で、どうしても不十分ということでありますれば、また再検討が必要でございますが、まずお話のような点を考慮いたしまして、今度の関税につきましては高目の関税率をきめたということを御了承願いたいと思います。
  50. 今澄勇

    今澄委員 あと一問で私は質問を終ります。これは、ごく小さな問題ですが、非常に不当に高くなつたということの例を一つ申し上げます。大体輸出用の綿、絹、人絹の製織用ののりとして使われているコーンスターチの輸入の関税を見ると、今度は二割五分になつております。従来は一ピクル当り、百斤ごとに三円十銭という税率がかかつてつたのが、改正法によると一躍従価二割五分ということで、従来の税率に換算してみると、約二百七十倍というようになつております。これは、必要な綿や絹や人絹に対しては相当に大きな脅威を與えておるのであります。このほかにもこういつた品目がありますが、これは特に今の物価から見て不当に上り過ぎており、さらに将来の輸出にも影響する品目の一例であります。こういつた品目については、今後十分御検討されて喜処していただきたい。このコーンスターチの二割五分は少し高きに失すると思うが、これに対する見解は一体どうか。  それからなおこれらの関税を決定されて、今の局長の答弁によると、今後もいろいろ各方面意見を聞いて修正しなければならぬし、いろいろ考えるところもあろうということでございましたが、日本関税わが国産業経済並びに国民の立場からこれをきめるべきものであつて業者一つ意見を過大に評価して、これらの業者意見によつてのみ動くというようなことでは、日本の完璧な関税制度は望まれないものであるということを最後に御忠告を申し上げて、御善処を願いたいと思います。私の質問はこれで終りますが、御答弁願います。
  51. 平田敬一郎

    平田政府委員 コーンスターチの税率でございますが、内容の細目は後ほど申し上げてもよろしゆうございます。二百何十倍になりましたことは、非常に引上げておるというお感じでございますが、実は率直に申しますと、むしろ定めた税率が二百何十倍に下つた。これはインフレーシヨンと物価騰貴の結果でございますが、もとにもどすと申しますか、インフレーシヨンの間に関税率をほつておいたことが、おしかりを受けるような事情であると逆に私は考えておるのであります。従いまして倍率から御判断願いますのはいかがであろうかと思います。二割五分の関税が、はたして妥当であるかどうかということから判断されるべきではないかと考えます。そういう見地からすべてきめておりまして、コーンスターチのみならず、従量税につきましては大体大多数がそういうようになつておりますので、その点は御了承願いたいと思います。このコーンスターチにつきましては、必要でございますれば説明いたしてもよろしゆうございますが、最近これを使う業界の状況等から申しましても、この程度関税率はほかの税率のバランスから申しまして、適当ではなかろうかと考えるのでございます。  それから最後に御指摘の、ひとり業者意見だけを聞いておるのはいけない、これはまつたくごもつともでございまして、業界の意見はもちろん聞かなければなりませんが、全体として日本産業をどうするか、それから国民生活にどういう影響を及ぼすか、将来の経済がどうなるかということを基本的には中心点に置きまして、個々の産業の実情等につきましてはよく業界の意見を聞きまして、妥当な関税率を出すということに将来とも勉強して参りたいと考えております。
  52. 石田正

    ○石田政府委員 コーンスターチの点につきまして簡單にお答えいたします。  コーンスターチは、大体今のお話では二百倍、三百倍になるのではないかというお話でありますが、これは従量税が非常に低下いたしましたためにそうなつたものでございまして、大正十五年設定当時の時価で換算いたしますと、三〇%に相なつておる次第でございます。われわれとしてはそれを上げたいというような気持は持つておりません。なおコーンスターチにつきましては、これは国内生産があまりなかつたものでありますが、昨年からそういう工場が日本にもできて参りまして中京方面におきまして、大体国内の自給ができる程度生産を見るようになりつつあるわけであります。その点を考えまして、先ほど申しましたように二五%にいたしたような次第であります。
  53. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 休憩いたします。  午後は本会議がありますが、本会議の終り次第連合審査会を再開することにいたします。     午後零時四十二分休憩     …………………………………     午後三時五十一分開議
  54. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。田口長治郎君。
  55. 田口長治郎

    ○田口委員 関税定率法一部改正につきまして、石油の問題のつきましては水産常任委員長の冨水氏が、全般的にお伺いいたした次第でございますが、その際に、改訂の理由について大蔵当局からるる御説明になりました点を承りますと、結局、国内石油保護政策の見地から改訂するのだというような御説明のようでございますが、私らの見解によりますと、昨年の十一月三十日ごろまでは、輸入原油が内地原油に比べますとやや安かつた。しかしその後、四、五箇月経過した今日におきましては、輸入原油の方がはるかに高い、こういうような実情でございます。物価庁におきましても、運賃その他の経費の諸掛りを加算いたしました、さらに新しいマル公を決定しようとしておる次第でございますが、これを数字的に申し上げますと、昨年の十一月未までは、内地の原油一トンが八千四百五十円、これに対しまして輸入原油は七千九百円でありましたから、多少内地の方が高かつた。こういう場合におきましては、内地石油保護するという意味におきまして、関税を課せられることも意味があると思うのでございますけれども、今日におきましては、われわれの計算によりますと、内地原油は八千四百五十円に対しまして、輸入原油が一万七百四十七円になります。これは原油価格から運賃及び輸入諸掛り、保険を加算いたしますと、一万七百四十七円になります。この数字からいたしますと、午前中から大蔵省でいろいろ説明されました、内地石油保護する意味において関税を課するのだという理由は、全然ないと考えるのでございますが、かくのごとき間違つたことが起ることは、年前中御説明になりましたように、この問題については二箇年間各役所間において協議をされたという話であるし、またおそらく今回の案を立てられたのは昨年の十月かと思うのでございますが、十月には、御説明になりましたような理由があつたのでございますけれども、ただいまでは、この見地に立つて、全然理由がなくなつた、こういうような観点にあるのでございますから、当然午前中首藤政務次官が申されましたように、実施を延期するということに対して、大蔵当局も釈然としていただきたいのでございます。ただいろいろな関係もありますから、ここでさよういたしますというようなお返事はできないと思いますが、すでに提案された理由がないのでございますから、その点をよくお含みくださいまして、もう一度よく研究していただきたいのでございます。  さらに大蔵当局の午前中の答弁で、非常に含みがあるような答弁を承つておるのでございますが、それは漁業用の油につきましては、横流れを防止する方法さえあれば何とか考えてみる、こういう意味に解釈いたしたのでございますが、御承知通り大正九年から昭和十二年まで、漁業用の燃油につきましては免税になつてつたのでございますが、その間に多少そういうような点がありましたがために——私らははつきり存じないのでございますが、かりにそういうことがあつたという場合におきましても、今日の実情とその当時の実情とは非常に異なつております。その当時は、漁業関係が使用する油の総量もはつきりわかりませんし、また漁業種類別の必要量もはつきりしていない、あるいは府県別の油の量もはつきりしていない、こういうような実情であつたのでございまするが、この戰争以来、油の消費統制を非常にまじめに、強くやつて参りました結果、今日ではこの油の必要量というものがはつきりと、全国的にきちつとわかつておる、総量もわかりますし、あるいは漁業の種類によつてもわかりますし、あるいは府県別によつてもわかります。どの漁業がどの程度の操業時間を費しておるから、どの程度の油を使うのだ、そういうようなこともはつきりわかつております。さらに漁船につきましては、司令部からのいろいろな指令によりまして漁船登録というものも明確にやつております。油を使用する漁船は、馬力及びトン数がはつきりしておりますから、この点につきましても、前の状態とははなはだ事情が異なつております。さらに絶対量が、現在は非常に少いのでありますから、自分がもらつた油をほかの方に流すというようなことをする人は、おそらくないと思うのでございます。この点、水産庁と大蔵当局と、現在の使用についてよく御研究になりますと、午前中御心配になりましたような免税油の横流しというような問題は、私は絶対に起らないと思うのでございます。大蔵当局としては、今日まで課税をするというような建前でおられましたから、その方法については、まだ水産庁と十分な研究をしておられないと思いますけれども、どうか今日ある資料をよく御研究になりまして、そうして前の状態とは著しく違うという、この点をひとつはつきりと認識をしていただきたいのでございます。以上の点から申しまして、私は午前中首藤政務次官が言われましたように、この問題については実施を延期する、しかもこの実施を延期するのには二つの條件がありまして、内地の石油に比べまして、輸入石油が著しく価格が安くなつた場合、この條件が一つと、もう一つは、この関税をかけるがために重要なる日本国内産業が大きな圧迫を受けない環境になつた場合、こういうような二つの條件が満足される場合におきましてさらに再検討をし直す、こういうことが最も妥当な処置と考えるのでございますが、この点に対しまして、大蔵当局といたしましてはいかがお考えでございますか、御意見を伺いたいと思います。
  56. 石田正

    ○石田政府委員 関税国内産業保護を目的とするということはその通りでございます。また外国の価格の方が低くて、国内の価格の方が高い場合に保護の効果を生ずる、これもお話の通りだと思います。この関税というものは、もし外国価格が一定して相当安定しているという状況でありますならば非常にやりいいのでありますが、かりに外国価格が始終動いている、国内価格も始終動いている、こういうときに関税を毎日々々動かすことができるものであるかといいますと、関税というものはそういう性質のものでないと私たちは理解しているのであります。従いましてこの関税率の問題につきまして、その点が非常にむずかしいのでありまして、われわれは終戰後三年半にわたりましていろいろと考えておりますが、ある場合には相当の関税を設けなければならぬという状態も起つているのであります。またそう大して保護しないでもいいではないかというような時期もあつたのであります。しかし関税率を定めます場合には、そう十年先、二十年先ということを見通すわけには行きませんが、やはりある期間というものを置きまして、そのときにいろいろの動きがありましようが、まずこのくらいのところが、関税としてはいろいろの経験や、ある程度の見通しからいつて妥当であろうというところに基きましてきめるべきものだと考えまして、今度の関税率原油に対する一〇%というものを設定しようといたしているわけであります。お話のありました去年のある時期と比べまして今日は違つておりますが、しかし今日の状況がこのまま続くものであるか、またこれがさらにいわゆる外国価格が上り、国内価格は依然として低いところにとどまるかということは、われわれとして断定することは非常に冒険ではないかというように感じている次第であります。  なお漁業用の油の問題につきまして、これは先ほど主税局長が過去の実例を述べられたのであろうと思いますが、過去の実例におきましては、そういう横流しというような困つた時代があつたことは事実でございます。それからその当時と今日とは非常に事情が違つている、これも同じようにその通りであろうかと思うのであります。しかしそうなれば絶対に横流しがないということを確保できるかどうかという問題になりますと、この点につきましては、いろいろのことにつきましてまだ遺憾ながら全然統制がその通り行われているということは、むしろなかなか例が少いくらいの状況であろうかと思われるのでありまして、われわれといたしましては、絶対にそういうことがないのだというように安心しているわけには行かない点もあるのではないだろうかというように感じている次第であります。  なお水産庁等のお話がございましたが、われわれはひとり水産庁ばかりではございません。どこのどの物品につきましても、できるだけその関係省のの方と御相談をいたしまして、いろいろの点を常時研究いたしておるのでございまして、特にこれは御相談をしないとか、あるいは急に相談をし出すというようなことでなくやつてつております。今後とも、そういうことを続けて参りたいと存じている次第でございます。  なおこういう状態でありますから、ことに石油類につきましてはいろいろな問題もありますから、その時期ではないのではないかというようなお話でございますが、われわれは関税率改正というものを、全般的としてどうしても早くしなければならぬと考えておりまして、その方のことを考えまして、個々の品目につきましては議論の点があるかもしれませんが、できるだけの配慮をいたしまして本法の改正を実施いたしたい、かように心得ております。
  57. 田口長治郎

    ○田口委員 ただいまの御答弁によりまして、外国油が高くなつたり安くなつたりして安定をしない、従つて目先だけでわれわれは考えておるのではないというような御意見のように承るのでありますが、この国産油と外国油との価格の線を時間的にずつと見てみますと、非常に外国油が国内油に比べて安かつた。それがいろいろな国際情勢によりましてだんだん値段が高くなりまして、昨年の十一月末ごろはほとんど接近をして、十二月に入りまして大体同じ価格になつて、それから一月、二月、三月と今度は反対に外国油の方が高くなつておりますが、この状態から考えますと、そう常に不安定なもの、きようは外国のものが高くなり、あすはまた外国のものが安くなるかもしれない、こういうような想像をされることは、今の国際情勢からいたしまして、どうも私は想像に苦しむ次第でございます。     〔委員長退席、島村委員長代理着席〕  当分の間はこの状態が続くというふうに常識的に考えなければならないと考えるのでございます。この国内産業が非常に危殆に瀕している。経営がすべて苦しい状態になつている。ここに一押しされたら、重要産業はつぶれてしまう。こういうような重大な問題を、さような見通しのもとに実施をされるということは、私はどうかと考えるのでございますが、その点大蔵当局のお考えと私らの考えとは格段の相違があります。少くともきよう高くなり、あす安くなるというような性質のものではなしに、今の国際情勢が続く間は、外国油の方がずつと高い條件にある、この状態は当分継続するのであるというような前提のもとに、ひとつぜひお考え願いたいと思うのでございますが、この点につきまして、もう一回大蔵当局の御所見をお伺いしたいと思います。
  58. 石田正

    ○石田政府委員 非常にむずかしい質問でありまして、国際情勢はどうなるかということに関連いたすのでありますが、私らといたしましては、国際政局及び国際経済関係が、何と申しますか、現在相当異常状態にあるということは認めなければならぬと思うのでございます。それではこれがもつとひどくなるかどうかということにつきましては、予言をいたす自信がないのでありまして、われわれといたしましては、国際関係がなるべく平常に返つて行くようなことを希望せざるを得ないのであります。あるいはそういうふうにごらんになるかもしれませんが、われわれといたしましては、大体現在の国際情勢は一応かくのごとくであるけれども、なるべくこれが平常状態に返るということを要望いたしておる次第でございます。
  59. 田口長治郎

    ○田口委員 私は、大蔵当局の希望がどうありましようとも、さようなちよつと常識的に考えられない希望のもとに、必要もない、理由もないこの関税によつて日本の重要な産業が破滅に瀕する、そこまで理由のない関税でもつて行かれるということに対して、ぜひお考えを願いたい、こういう意味でございます。かれかれといえども国際情勢が安定することを希望してはおりますけれども、現在の実情からいたしまして、その希望が希望に終る。われわれは実情に即してすべての施策をして行かなければならないと思うのでございますが、その施策が結局重要な産業をつぶしてしまう結果になるから、その点をひとつさらによく研究してもらいたい、こういう意味を申し上げておる次第でございます。それから以前の実情と今の実情と、はなはだ違つておるが、しかし横流しをするようなことが絶対にないとは言えない、こういうようなお話でございますが、これは御意見通りでございまして、あらゆる方面にやつてはいけないという規則がありましても、また教育を受けておる者が悪いことをする実例が多々あるのでございますから、最善を盡されても一人、二人の心得違いの者があるかもしれませんが、それは枝葉末節の問題でございまして、根本の問題につきましては、前に横流しがあつということでございますけれども、今の資料をもとにしてくふうしますと、ほとんどそういう問題はなくなるだろう。こういうことをわれわれは考えておりますから、ひとつ現在の資料をぜひ十分に御研究になりまして、そういうことがないようにして、重要なる産業を生かす道をとつていただくことを希望いたして私の質問を打切りたいと思います。
  60. 島村一郎

    ○島村委員長代理 田代文久君。
  61. 田代文久

    ○田代委員 簡單に二、三の点を質問いたします。今度のこの法案は、大蔵省などの御説明によりますと、三年前からいろいろ考案されて来たということになつておりますが、先ほどの通産政務次官の説明によりますと、現在の国際情勢、つまり国際的な再軍備態勢が当然日本経済に響いて参りまして、その情勢を基礎としてつくり、それがこの法案を勘案するに重要な基礎となつておるわけであります。従つてそういう事態というものが将来かわることになりますと、これは当然修正されるであろうというような御答弁もありましたし、私たちも大体この法案提出されましたその重要なモメントとしましては、いわゆる国際情勢の特殊的な状態、なお申しますと日米経済協力態勢一体化というような問題とこの法案とがマッチしているように思われるのでありますが、そういう日米経済協力態勢というような面とこの法案とが、大体どういう関係を持つているか、協力態勢に対してこの法案はいかに役立つようになつておるかというような点につきまして、まず質問したいと考えます。
  62. 首藤新八

    ○首藤政府委員 田代委員は、この法案が日米経済の協力態勢を整えるための法案だという御意見でありまするが、これはまつたく間違つておるのでありまして、日本貿易全体から考え、さらに日本産業というものを考えてこの新しい法案がつくられたのでありまして、一アメリカを対象としたものではないのであります。要するにアメリカというよりも日本の輸入品、日本産業という観点に重点を置き、現在の客観情勢を対象といたしまして改正したのでありまして、根本的な改正の要点は、従来量税であつたのを従価税にかえた。と申しますのは、現在の物価は終戰前に比較し、さらに戰前に比較して何百倍と騰貴しておる。従量税でいたしますならば、量そのものは何らかわつていないのでありますが、価格のみが、ただいま申し上げました通りに何百倍と騰貴いたしておるのでありますから、各般の情勢から考えましても、これを従価税にいたす、そうしてこの程度改正するのが適当である、かように考えました結果がこの法案となつたのであります。
  63. 田代文久

    ○田代委員 ただいまの御説明は、午前中に次官が述べられました点と幾らか違つておるようでございますが、その点は修正されたと認めるとしまして、明らかに現在の情勢を基礎としてつくつた、将来それは修正するという意図も持つておるということを明確に言われたのであります。とにかくそういうことと関連するので質問いたしますが、現在国際的な戰略あるいは軍拡物資の国際割当というものが問題になつておるようでございますが、この割当が日本に現在来ておるかどうかを伺いたい。
  64. 首藤新八

    ○首藤政府委員 まだ国際割当の品物一つも参つておりません。
  65. 田代文久

    ○田代委員 ここ二、三日来の新聞によりますと、大体日本経済がいわゆる西欧陣営の方へ一辺倒になつてつて、アメリカにおきましては、日本に軍需物資、特需物資を生産するための原料を思い切つてどんどん入れるということが書いてあり、それに対しまして、実は私たちは驚くくらい幅が広げられたということを感じておるのでございます。無制限に近いほどそういう形でどんどん入つて来て、結局日本が東洋における特需物資の生産工場になるという危險も感ずるわけなんです。最近、特に数日来書かれておりますそういう西欧陣営への一辺倒、東洋における西欧の軍需工場という形から、どんどん原料を入れて来るというような新聞報道を政府はどんなふうに解釈しておられるか、全然そういうことはないかという点の質問をいたします。
  66. 首藤新八

    ○首藤政府委員 御指摘通り、最近新聞紙上ではさような問題が非常に報道されておりますが、政府に対しましては、いまだ正式に何らの通知もないのであります。従つてかれこれこれに対する批判はできないのでありますが、ただ日本の現在の立場が国際連合軍に協力するという立場をとつておりますので、さようなことが絶無とは考えられないというふうに考えております。ただしかりにさような事態がありましても、日本の民政に圧迫を加えるというような生産態勢には、断じてならないと考えておるのであります。
  67. 田代文久

    ○田代委員 ある品物によつて——なお申しますと、平和的な産業、平和的な生活物資というものに対する原料が非常に安く入つて来ることはたいへんけつこうでありますが、軍需物資というようなものがどうどう流れて来て、先ほど申しましたような形で軍備を拡張するための手段として日本の全経済機構が使われるということになりますと、これはゆゆしい問題であります。そういう点からわれわれ心配するわけなんですが、日本でできましたところの、たとえば陶磁器であるとか、あるいは生糸というようなものが、アメリカならアメリカ——むろん主としてアメリカでしようが、そういう方面に輸出されます場合に、向うの国においてかけられる関税率は大体どのくらいになつておりますか。
  68. 首藤新八

    ○首藤政府委員 陶磁器がアメリカに輸出された場合、アメリカの輸入関税は、品物によつて異なりますけれども、大体七〇%前後になつております。なお絹織物は五〇%内外が中心になつております。生糸に対しましては、現在数字が判明しておりませんので、いずれあらためて御報告いたすもりであります。
  69. 田代文久

    ○田代委員 今の御説明によりますと、たとえば陶磁器とか生糸というものは、日本の平和産業にとりましてはきわめて重要な部面を占めておるが、これらの製品が向うに参りました場合に、非常に高いということになりますと、それだけ日本経済を圧迫することになるのであり、反対に向うから来るものは非常に安い、またあるいは無税にするということになりますと、ここの均衡がとれなくなる。結局その面からも日本経済がアメリカの経済から非常に圧迫を受ける。まつたくそれに従属化して、そうして日本のうまいしるが吸われるというような面が出ておるように思いますが、これに対してどういう見解をお持ちでありますか。
  70. 首藤新八

    ○首藤政府委員 ただいまのお説は、私は事実と相当相違すると思うのであります。御指摘の点は、日本に入れる場合に、安い関税率をかければ日本産業を圧迫する。また向うに輸出する場合に、高い関税をかけること自体が日本経済を圧迫するという御意見でありますが、日本に輸入する場合の関税は、先ほど申し上げましたごとく、原則といたしましては日本産業保護することが建前になつておりますので、いついかなる場合にも、日本内地におけるその産業の値段というものが対象になる。さらにその産業生産原価というところまで検討しまして、そうして最終的な決定を見るのでありますから、その関税率が安くても日本産業には何ら影響はないのであります。同時にアメリカに輸入される場合の関税が高い。これもアメリカの物価が非常に高い関係上、安い日本のものがそのままアメリカに輸入されれば、アメリカのそれぞれの産業に圧迫を加える。これはアメリカの国内における産業並びにその価格を対象として決定したのでありますから、これをもつて必ずしも日本産業に重大な圧迫を加えるということにはならぬのであります。しかしかりにアメリカに輸入をされます場合に、それが不当に高い関税をかけるということに相なりますれば、この場合は日本の輸出品に相当の影響があることは、これは否定できないのであります。しかしながら今日の実情から申しますと、さような不合理な関税はかけられていない、かように考えます。
  71. 田代文久

    ○田代委員 次官の見解とわれわれの見解とは非常に開きがあります。これは午前中も御説明があつたのでありますが、たとえば蓄音機があるとか、あるいは乗用車、毛皮というようなものに対しましては、向うから入つえ来る場合には大体四〇%から五〇%くらいの輸入関税である。ところが以前には大体一〇〇%ぐらいであつた日本の自動車産業にしましても、あるいは蓄音機産業にしましても、こういうものを保護する立場からいいますと、これは非常に安きに失すると感ずるわけでありまして、なぜそういうものに対してはうんと高くかけないか。実際われわれから申しましたならば、日本産業育成という面から当然そうならざるを得ないと思うのでありますが、次官の説明を聞いておりますと、われわれ日本経済は非常に不利な立場に立つている。どうしてもこれはアメリカの経済に従属している。また従属の方向へ持つて行かれようとしている。また向うの圧力によつてこちらがついて行つておるというような印象しか受けないのであります。蓄音機にしましても、乗用車、毛皮というようなものにしましても、そういうものに対してなぜもう少し思い切つてかけられないのか。はつきり自主性を持つて関税の率を決定されたりであるかどうか、この点を質問いたします。
  72. 首藤新八

    ○首藤政府委員 今回の関税は最高五割となつておるのでありまするが。毛皮のごときはまつたくぜいたく品でありますから、これは内地の産業というものを考慮せずして、ぜいたく品の輸入をなるべく防ぎたいという見地から、かような高率の関税率ができたのであります。自動車に関しましては、田代委員の御指摘通りなるほど過去においては相当高い関税をかけておりましたけれども、最近日本の自動車産業も非常に発展いたしまして、さらに原価が安くなつてつたのであります。従つて過去のような高率を課すること自体が、かえつて日本の自動車産業の安易な経営を誘導いたしまして、真劍な業界の発展を阻害するおそれがあるのであります。従つてこの面におきましては、自動車産業生産に十二分にマツチする値段を対象として関税を決定いたしたのであります。同時にもう一つの事実といたしましては、この関税をかけましても日本の自動車産業に何ら影響がないということと、さらに一般の物価——要するに自動車の価格そのものの点から考えましても、この程度にするのが適当ではないか、かように考えているのであります。蓄音機もおおむね自動車と同様な見解のもとに決定いたしたわけであります。
  73. 田代文久

    ○田代委員 この点も私は非常に考え方が甘いと思う。先ほど申しましたように、アメリカの方では陶磁器などに対しては七〇%かけているが、日本では、今申しましたようにどうしても保護育成し、どんどん生産を高めなければならないものに対しても最高五〇%しかかけない、こういうような点でもわれわれは納得できないのでありますが、議論になるようでありますから先に進めます。  第六條で、「左ノ物品ニシテ輸入ノ日ヨリ一年以内ニ再ヒ輸出スルモノニハ輸入税ヲ免ス」ということになつていて、その第一項で、「加工ノ為輸入スル物品ニシテ命令ヲ以テ指定シタルモノ」ということが第一番に出ておりますが、これはどういう品物になるのでありますか。
  74. 石田正

    ○石田政府委員 これは加工貿易の助成ということを考えてやつておるのであります。たとえばレースの糸を入れて、それをちやんとして輸入するようにする。そういうふうなものは税金をとらないようにいたしまして、輸出する場合には税金がかからなかつたと同じようにする、こういうことであります。
  75. 田代文久

    ○田代委員 具体的になおはつきりいたしませんけれども、大体私たちには、日本産業がいわゆる植民地的な賃加工産業に追い込まれてしまうということが非常に危惧されるのでありまして、結局これは現在問題になつているようでございますが、こういう特需物資の強行生産、あるいは日米経済協力態勢というようなもの、それからまたこの関税方面から来ますこういう政策の行き方というようなものは、当然私は日本の国民の生活水準が引下げられる形に追い込まれるのじやないかという点が危惧されるのですが、これに対する御見解はどうですか。
  76. 首藤新八

    ○首藤政府委員 先ほども申し上げました通り関税の率は国内産業主として個々の製品の価格を対象として決定いたしたのでありますから、関税を課することによつて国民生活が非常に低下するというようなことは考えられないのであります。
  77. 田代文久

    ○田代委員 これもやはり、政府は非常に楽観されていると断言をせざるを得ないのでありまして、実際は日本の最近の経済、また産業の実態というものは、これは労働者諸君が身をもつて朝夕体験しておるのでありまして、ちようど東條内閣時代におけるような、ああいう労働の強化あるいは低賃金、農村においては低米価というような形が強行されつつあるのであります。従つて私は、一面においては世界の再軍備計画というものが、先日も次官は日本産業を非常に発展させるモメントになるといつて非常に喜んでおられたようでありますが、われわれはこれを長い目で見るならば、日本産業を破壊することになるし、実際の生産に当り、またそれを引受けます国民、特に勤労大衆にとつては生活水準の低下になる、結局ひいては日本の民族的な産業の発展、平和産業の発展というものがすべて犠牲にされる。直接的な影響としては、国民生活の水準が切り下げられるということが現実に現われておるのであります。これは單に関税問題だけではなく、生産からあるいは労働、他のあらゆる面に出ていることはもう隠すことのできない厳然たる事実でありますが、これまた討論にわたつて、楽観論で逃げられそうでありますから打切りたいと思いますが、特に私は全国民の立場から、この点に注意されるよう警告を発して質問を終りたいと思います。
  78. 島村一郎

    ○島村委員長代理 宮幡靖君。
  79. 宮幡靖

    宮幡委員 私は與党という立場からあまり質問をいたしたくありません。しかしながらこの連合審査会において先般来質疑応答されている中においてあまり満足のできないものがありますが、私は、この関税定率法の一部改正法律案をこの形態で本国会の審議に備えました大蔵当局及び関係経済省の努力というものは、ことごとく認めている一人であります。もちろん賛成の趣旨というものは、討論のときに申し上げますのでこの際これを差控えますが、よく現在の国情のもとにおいて、これまでに仕上げたこの努力と熱心さについては敬意を表するものでありますが、どうも根本的に考えて、まだ相当お伺いいたさなければならない点があります。そこで今まで質問にありますところは避けまして、要点について二、三伺つてみたい。先刻首藤政務次官の御答弁の中において、今後国際情勢が変化して来た場合等におきましては、この定率法を改正する用意があるというような御答弁がありました。しかしながら私の考えますところにおきましては、この関税定率法というものは、一たびきめますと短期間に容易に改正の運びになり得ない性質を持つていることは、政府当局が御存じのはずであります。従いましてきめすについては十分愼重なる検討を要すべきでありまして、大蔵省及びその他の行政庁が中心となつて昭和二十三年以来今日まで苦心して参つたのはそのためであります。ことに今回の低関税主義をとつておりますものは、御承知のような国際貿易憲章に基きますところのギヤツトの制度から割出されたものでありまして、先ほどの田代委員の御質問に御答弁もありましたが、日本の輸出品に対し相手国が輸入に関税を高率にかけて一つの報復的な関税政策をとつた場合、かようなことは私ども考えておりません。御答弁もまたその趣旨には出ておりましたが、現在すでに最恵国待遇を受けている国が、占領下においても米国ほか六箇国あるはずであります。これらの点の資料をお示しになつて説明があれば、今の田代委員の御質問に対しても釈然たる御答弁ができるだろうと思う。こういう意味において、ぜひとも関税定率というものはそうむやみにかえるべきものではない、またかえようとしましても、国際貿易憲章その他国際情勢におきまして容易にかえられないものであると私ども考えておりますが、この点について政府のお考えはどうでありますか。はつきりお答えいただきたいと思います。
  80. 石田正

    ○石田政府委員 関税というものは、一方国内経済保護ということも考えなければなりませんけれども、これはどちらかといいますと、国際的なものでございまして、これを目途といたしまして、国内業者も輸入をするにそれを考慮している、外国の業者もそれをもとにして輸出を考える、こういう性質のものでございまして、これは明確であり、なるべく動かさないということをもつて根本義とすることは、御承知通りだろうと思つております。
  81. 宮幡靖

    宮幡委員 さような意味から見ますと、なかなか原案はすぐれているわけであります。もしこれが時期と場合によつて簡単に改正されるものならば、むしろかようなものは一時間か三十分の審議でもつて見送つてもかまいません。しかし国際通商の上に固定的な一つの指針となるわけでございます。御説明によりましてようやく納得行きますが、現在占領下にありますのでギヤツトの協定には入つておりません。これは独立後には当然入られますが、現在すでに最恵国待遇を受けておりますところの米国ほかドル・ブロツク、トルコ、ギリシヤ、アイレ、アイスランド、ノールウエー、韓国、これだけあるはずであります。あるいはこれ以上ふえておるかもしれませんが、これらとの関税の最恵国待遇の実情はどんな程度であるか、これを御説明願いたいと思います。
  82. 石田正

    ○石田政府委員 今お話のありました国々は、日本貿易に対しまして一方的に最恵国約款を與えてくれておるものでありまして、これは現状といたしましては、好意をもつて考えなければならぬかと思うのでありますが、他面におきまして、こういう一般最恵国約款を日本に適用する趣意といたしますれば、日本といたしましても何らかこれに報いることがあつてもしかるべきではないかと考えるのが常識ではないかと思います。しかし遺憾ながら現在までの定率法というものは、御承知通りまことに不体裁なものでございまして、これを基礎としてどうこうするというのでは、まことにナンセンスな状況にあるということを考えなければならぬと思います。なお現在、たとえばアメリカのごとき国が日本に対して最恵国約款を與えてくれております。この点は先ほど田代委員からも御質問があつたのでありますが、たとえば陶磁器のごときものにつきましては、最恵国約款を日本に供與してくれております。その供與してくれておるのはどういうところからかと申しますと、イギリスがアメリカと交渉して、そこでアメリカの率を引下げたものを日本に適用してくれておるわけであります。これだけを見ますといいようでありますが、しかし日本から出しますところの陶磁器と、イギリスが輸出します陶磁器とは価格その他において違つて来るのであります。イギリスにおいては交渉上有利になつておりますが、日本から見ました場合においては必ずしも満足の行くものではない、こういう点があるのでございまして、講和以後においてギヤツト等に加入できるという態勢ができまするならば、そういう点についても改正せられる。幸いに御承認を得られますれば、改訂せられました率を基礎にいたしまして交渉をいたさなければならぬ、かように心得ておる次第であります。
  83. 宮幡靖

    宮幡委員 その点まことに明快な御答弁でよくわかりました。陶器の問題につきましては、先年ドイツ製の硬質、陶器と日本製の硬質陶器との間に、市場においてはかなりの競争状態が現われまして、これが輸入関税の面と相交錯いたしまして問題になつたのでありますが、その後アメリカの趣旨が——たとえばイギリスとの交渉の中に生れました副産物的なものではありましても、日本に最恵国の待遇を與えようというところにありまして、不満足ながら一つの道が開けたと私どもは確信いたしております。現在のギヤツトは、一般協定といたしましては締約国の軍事占領地域は除外ということになつておりますので、日本はこれに参加することはもちろんできませんし、その恩沢も、当事者が個々に認めてくれた場合にも認められないわけであります。これもよくわかつております。そこでわれわれが独立国家になつた場合、この定率法をそのまま持つてつて不合理なものがあつたといたしました場合に、国際連合の規定と申しますか、方式といいますか、それによりますと、ギヤツトに加盟いたしたいということに対する拒否権の行使はないはずであります。従つて入りたいという意思表示をすれば一応入れる。国際連合の一員となりさえすれば入れるわけでありますが、この点に対する大蔵当局のお考えはどうでありますか。
  84. 石田正

    ○石田政府委員 国際連合とギヤツトとの関係は、必ずしも今のお話のごとく一貫しておるものではございません。国際連合へ入つておりまするところの国の中で、有志の国がギヤツトを締結してやるというのが現状でございまして、ギヤツトに入りますにつきましては、これは国際連合と別の、ギヤツト構成諸国が構成いたしておりますところの締約国会議というものに加入の申入れをいたしまして、その三分の二の多数を得ませねば加入できない、こういう状況になつておるわけであります。
  85. 宮幡靖

    宮幡委員 その場合におきまして、拒否権を行使することができるかどうか。
  86. 石田正

    ○石田政府委員 申し落しましたが、一つの国といたしましては拒否権はございません。
  87. 宮幡靖

    宮幡委員 それではつきりして参つたわけでありますが、こういう状況において、ただいま一応関税定率というものは、みだりに変更すべからざる原則を持つておると思います。日本が独立国家となつて、ギヤツトの協定に参加を許されるという一つの権利、というと大きくなりますが、さような資格があるといたしまするならば、これに応じて改正もできる。従つてこの場合においてのみは、やや固定的な税率でありますが、先ほど首藤政務次官のお答えくださいましたような改訂が加えられるものと私ども考えております。その点間違いありませんか。
  88. 石田正

    ○石田政府委員 ギヤツトは、できるだけ締結いたしましたところの率は変更しないということが原則になつておるのでありまするけれども、しかしながら予期せざる事態が起りました場合におきましては、たとい約束いたしました率といえどもこれを変更することができることに相なつております。従つて協定に参加いたしました後に、おきましても、法律上そういう條文を援用することは可能でございます。ただ実質上それを援用した方がいいか悪いかという具体的な問題につきましては、その事態が起りましたときに考うべきものと考えております。
  89. 宮幡靖

    宮幡委員 今度の関税定率法の適用は、外国からの輸入、こういうことになるわけでありまして、その外国の定義でありますが、相当むずかしかろうと思います。昨今問題になつております奄美大島の件、ここはまだ旧憲法が実施されておるのではなかろうかという心配もあるし、家の制度もあれば、戸主もあり、あるいは婚姻にも戸主の承諾を要するということが残つておるようなことも聞き及んでおります。これと一連の関係がありまする琉球の問題でありますが、貿易方式はすでに御承知通り準内国貿易として、純然たる外国貿易とは認めがたい方式で行われておるわけであります。そういう場合におきまして、この関税定率法を琉球の輸入に全面的に適用せられるおつもりか、あるいは現在原案にはないようでありますが、琉球に対しましては全面的な除外か、一部緩和するような御用意があるのかどうか。もちろんこれは、原案として提出せられております大蔵省にそういう質問をするのは妙な言い方でありますが、心構えとして、できたならば琉球に適用するのは除外した方がいいではないか、こう考えておるかどうか聞きたい。
  90. 石田正

    ○石田政府委員 講和條約後においてどうするかということは、ここではつきり申し上げられませんが、現在の状況のもとにおきましては、関税法の中においていわゆる外国扱いをする地域はどこであるかということがはつきりいたしておりまして、奄美大島、沖繩は、関税関係によりましては外国扱いをすることになつておるわけであります。しかしながらこれは沖繩、奄美大島の特殊性にかんがみまして、そう関税法一本やりでも行かぬということがございます。われわれといたしましては、すでに沖繩から入りますところの上布、つむぎにつきましては特別の率を設けておるわけであります。なおその品目を拡大するかどうかという問題につきましては、われわれといたしましても終始検討いたしておるのでありまして、適当な時期において適当に善処いたしたい、こういう気持を持つております。
  91. 宮幡靖

    宮幡委員 次は、われわれ自由党として考えておりまするところの修正意見があるのでありますが、これは必ずしも出さなければならないとも思つておりません。しかしながらこれをまじめに検討してみまするに、大いに議論のある品物がたくさんある。これを記録の上にはつきりとどめておきたいと思いますので、多少長くなるかもしれませんが、品目を掲げてお尋ねいたします。輸入品のうちで、おおむね奢侈品的な傾向を持ちまして、しかも国内産業競争的の立場に立つ品物が相当あります。これらにつきましては、ただいまの低関税主義から生れました今回の税率には若干の疑問があります。具体的にいえば、化粧石けんが、かつて一〇〇%であつたのが今度三〇%から二〇%程度になつている。これは一体下げる必要があるのか。ジヤム、ゼリーというようなものは三〇%でありますが、旧関税は七〇%であります。こういう品物につきましては、たとえば銀座街頭に氾濫しております外国製の菓子、これはおおむねOSSのカード所持者に対する販売を目的としておるものが、国内に流れまして、日本の製菓業者を圧迫しておるというのが現実になつております。こういうものに対して三〇%という低い税率をあてがうよりも、でき得べくんばやはり五〇%というふうに持つて行くべきではないか。歯みがきの二〇%も現行は一〇〇%であつたはずであります。それから花火——花火というのは日本の純粋の国産品でありまして、外国の容易に模倣することのできないものでありますが、こういう国粋的産業はやはり保護すべきである。前に一〇〇%であつた花火を二〇%にするということはどうも私ども得心が行きません。合成繊維についても二五%という課税をいたしておりますが、国内の合成繊維産業は、ただいま発達の過程にあるわけでありまして、いよいよもつてこれを保護育成しなければなりません。従つて外国品の侵入を、報復的な関税でなくて、合法的にこれを押えるということが当然の措置であり、二五%は低過ぎはしないか。絹織物及び絹交織は、一〇〇%でありましたものが三〇%ないし二〇%に今度なつておりますが、これも国内の特殊産業である、絹、人絹等の織物を保護する上においていかぬではないか。手袋の三〇%から一五%、これも日本のメリヤス工業に対しまして保護的の関税とはいえない。現在一〇〇%であります。靴下においても同様のことがいえます。ネクタイについても、外国製のネクタイをむやみに締めまして、非常に進んだような顔をしておるよりも、国産のネクタイを安く買つてもらうという立場におきまして、三〇%は低いと思います。現在の一〇〇%ということとも思い合せなければならないと思います。その他寝台、金庫、こういうものも日本で相当よいものができます。国産品を愛用する立場から、外国品をむやみに買つて、外貨を失うような思想にならないようにするためには、現在の三五%くらいが適当であり、今回一五%に軽減したということは、はなはだもつて当を得ないのではないか。キヤツシユ・レジスターは、日本品は非常に優秀でありまして、今まで外国品に五〇%を課税いたしておりましたものが二〇%に下げてあるのも得心が行かない。楽器も現在の四〇%を二〇%というふうに下げております。自転車は、現在三五%のが二〇%、今度アジア大会におきましても、日本から携行した自転車の、声価はかなり上つたはずであります。従つて輸出促進の面において奨励はよいわけでありますが、外国車をもつて日本産業が圧迫されるような税率を置くことは、まことにもつて当を得ないものだと私は強く感じております。写真用フイルムは、一〇〇%から三〇%、これも言葉をわかりやすく申しまして、けしからぬ税率だと思います。日本です白黒の映画から天然色に今切りかえられておるときでありまして、国内のフイルム生産には特別の配慮をいたさなければならない。それに対して外国製品に圧迫されるような関税はおもしろくない。そのほか室内遊戯品についても、一〇〇%であつたものを三〇%にした。その他あげてみるとまだたくさんありますが、これはほんの一例でありますが、こういうふうにわれわれ国会として、また自由党として考えております。そこで原案を提出せられました大蔵省の立場及び関係各省の立場から行きますならば、なるべく原案を支持されたい、これは当然のことだと思います。けれども実情はただいま指摘しましたように、もう少し高い税率を設けることが妥当であるという面で、もし関係方面の御了解が得られるとすれば、かようなものの税率引上げ等を志してよろしいかどうか、これはもしお答えができなかつたならば、後日において——といつてもあまり長い時間がたつては困るのでありますが、明日か明後日あたりに御意向を承つてもよろしいが、でき得ますならば、この際記録にとどめておきたいと思います。
  92. 石田正

    ○石田政府委員 非常にたくさんの御品目をおあげになりまして、おしかりでございましたが、いろいろな観点から御検討をいただかなければならぬかと思うのでありますが、一番大きな問題といたしまして、現在外国人の使用いたしますところのものについては、関税がかかつてないという点をひとつ御留意願いたいと思うのであります。たとえば先ほどお話がございましたところのいろいろな外国品でございますが、この中の大多数のものは関税がかかつていない。それからいたしますならば、三〇%、三五%というのはぜいたく品としては非常に低率ではないかというようなお話でございますが、ないものから急にそれだけ上げるのでございまして、相当の率であるというふうにわれわれは考えているわけであります。それからなおいろいろの品目につきましても、たとえば石けんのごときものは、われわれは大正十二年の大震災の後におきましては、ぜいたく品だと考えて一〇〇%の課税をいたしたのでありますが、その後の情勢も、三十年近いものがたちますと、これは奢侈品であるといえないような事情を生じているものもあるわけであります。また自転車等のごときものは、これは通産省の方からお話があるかと思いますが、日本が輸出しようというような意気込みにまでなつて参りましたものにつきましては、これはある意味から申しますれば、関税をかけること自体がおかしいではないか、こういう議論もあるわけでありまして、そこらを勘案いたしまして、できたものであるということを御了解願いたいと思うのであります。
  93. 宮幡靖

    宮幡委員 この際通産省の方から御意見を伺いたいと思います。
  94. 首藤新八

    ○首藤政府委員 御説のように関税が今までの率に比較しまして、非常に安いというお考えはごもつともな点もありますが、総じて先ほど御指摘の、最近日本のそれぞれの産業は相当発達しておりまして、原価も過去に比しまして相当安くなつておるのであります。もつとも最近の物価から見ますれば、指数そのものは高いのでありますが、過去に比較しますれば、いずれの産業も非常に発達しているのであります。従つてこれがために輸出を相当増進いたしているというような現状になつておりますので、関税を高くすること自体がかえつてそれぞれの日本産業を不健全にするというような不安も一面にあるのでありまして、ある程度安くしまして、そうして競争にたと得るというような方針に進むことも一つの見方ではないか、かようにも考えております。
  95. 宮幡靖

    宮幡委員 その点は大蔵当局も一つの御見解をお持ちになつているし、通産省としての御意見にもごもつともな点を認めます。しかし表面をながめますと、私がきわめて具体的に指摘しましたような感じが出るのでありまして、この点につきましては、今まで占領下にありまして、外国人の使いますものは無税で入れたという観念は、敗戦国民であるということを前提といたしますれば納得いたします。しかし国際経済へ正常に参加した日本人はなかなかそうは納得行きません。ここに大衆相当の政治のむずかしさであります。従つて事務的な過去の経過から考えますと、議論はありますが、でき得べくんばかようなものは再検討いたしまして、適当の時期にその事情に合いますところまで引上げて、国内産業の合理化、その助成をいたすべきであると存じておりますが、それぞれの御観点においての御説明は一応この際納得いたしておきます。その他まだ石油とか、あるいは砂糖等についても議論がありますが、これはおおむね各委員からお尋ねがあつたことであると思いますので、お考えの点もそばで聞いておりまして大体わかつておりますから、この際これは省きます。ただ先刻通産省鉱山局長からお話のありました酸化アンモニーは鉱石でありますから、これは無税でしかるべきでありますが、製品としてのアンチモニーは銅並みに一〇%課税してもらいたい。これは各省間の打合せの不徹底であつたというようなことがはつきりと記録に残つておりますので、これはぜひともかえなければならぬと思うのですが、頭のよい徳永局長がはつきり言のでありますから、それが言い方が間違つたという説明にならぬのでありまして、あまりに明瞭でありますので、これは何らかの形で修正していただきたいと思つておりますが、この点につきまして大蔵省の忌弾ない御意見をひとつ聞かしていただきたい。
  96. 島村一郎

    ○島村委員長代理 ちよつと速記をとめてください。     〔速記中止〕
  97. 島村一郎

    ○島村委員長代理 それでは速記を始めてください。
  98. 宮幡靖

    宮幡委員 次は小さな問題でありますが、コークスの問題をひとつ続いてお伺いいたしたい。最近超粘結炭の輸入が、いろいろ指摘されますように困難になつてつた。しかもアメリカから参りまする超粘結炭は灰分が少くて品質はよいのであります。フレートの関係ももちろんありますが、ただ距離的に考えれば東海岸の生産品でありまして、コークスの方は西海岸でありまして距離が近接しておる。それだけ今すべての原価に及ぼしまするフレートの関係がかなり緩和されるわけで、これをコークス及び製鉄用コークスの中に混入いたしますと非常によいことだ——私は技術屋でございませんから技術面は知りませんが、通産省の鉄鋼局長あたりの意見を聞きますと、しかるべき説明があるわけであります。こういう意味におきまして、このコークスを課税の対象からはずすべきだと思うのでありますが、この点につきましての大蔵省のお考えはいかがでございましようか。
  99. 石田正

    ○石田政府委員 石油コークスの問題は非常に複雑でございまして、石油コークスの方の用途を大ざつぱに申し上げますと、今お話がありましたようなぐあいに、鉄鋼工業で使う面もございます。それからまた窒素肥料をつくりますところの燃料といたしまして重要な役割を果しておるわけであります。もう一つ、これは電極とピッチ・コークスとかち合うことがある。そのような点からは、ピッチ・コークスとかち合う点を強調いたしますならば、これは相当な高い率を盛らなければならぬ、こういうことも考えられるわけであります。これは他面におきまして、窒素肥料の関係あるいは鉄鋼の超粘結炭をまぜるというような問題もございます。そこらも考えなければなりません。そこでなるたけこれは低い税率の方がいいではないかということに一応考えられたわけであります。なおこれは、本来の性質から申しますと石油製品でございます。従つて原油を一〇%といたしますならば、体系上から申しましても石油コークスはもつと高い率であつてしかるべきである。こういうことも考えられるのでありますが、われわれはコークスの中にこれを一本に入れまして、そうして五%を適用して行くというふうな考え方をとつたわけであります。
  100. 宮幡靖

    宮幡委員 その気持はことごとく了承できます。しかしながらこの石油コークスも一種の石油製品であるということになりますと、当連合審査会におきましても、炭化水素油の問題がしきりに論ぜられておる折柄でありますから、やはり同列に考えなければならぬようなことになりますが、少くもこの範囲はやはり製鉄用の原料、こういうわくの中に入れて考えるべきだと思う。ピッチ・コークスとの間の競争関係というものは、当然重点的に考えて処理するのが妥当ではないかと思つておりますが、その点につきましては、われわれもむちやくちやに考えておらないのでありますが、これらの問題も、こまかい問題でありますけれども、相当議論があるようであります。  なおせつかく主税局長さんもお見えになりましたので、一言だけお伺いいたします。もう本日でこの連合審査会を打切ろうという努力のためであります。先ほど税関部長さんから伺いましたが、琉球の貿易の問題、これに対します関税——原案はわかつておるのですが、腹としまして、これを全面的な、あるいは一部的な除外例を設けて考慮したいというような御意図があるのかないのか、これだけ簡単に伺つておきます。
  101. 平田敬一郎

    平田政府委員 琉球との交易に関しましては、現在も、御承知通りつむぎ類等に対しまして、特別な関税の処置をいたしております。その他のものにつきましても、おそらく類似の事情が相当あろうかと思いますが、ただこれはある程度具体的に検討しませんとなかなか簡単に結論が出ないかと思います。たとえば泡盛等の税金をどうするか、その他黒糖等の問題もあるかと思いますが、そういう問題もよく実情を調べまして、その上で、もしも必要な処置があれば考えたい。つむぎその他のようなわけにも簡単に参らないかと思いますが、そのような問題はわれわれも承知しおります。
  102. 宮幡靖

    宮幡委員 もはやより以上質問をする勇気がなくなりましたので、この程度にいたしますが、最後に一つ委員長にお願いいたしておきます。合同審査会もこれをもつて終ることになるであろうと思います。別に動議を出して打切るなどという煩瑣な手続もいらなかろうと思いますので、この程度で終ることにしていただくものと考えて、申し上げますが、税関部長その他の方方にお尋ねをし、お答えをいただきました。     〔島村委員長代理退席、委員長着席〕  その中に若干修正をいたしたいという意図が自由党としてあることを申し上げまして、これをただいま検討を加えつつありますので、この法律案は一日も早く通過、成立させなければならないことはよく存じておりますが、その準備ができますか——委員会におきましての審議というものは質疑打切りのまま、時間のお見はからいを委員長においてしていただきたいと思います。これは急速に修正意見をまとめまして、おそらくその範囲はきわめて小範囲で、大した時間もかからぬと思いますが、その意見の出ないうちに委員会が終るということがありますと、ただいま質問いたしました各方面からの要望、またわれわれが常識的に考えました気持というものが反映しないことになります。この点ぜひおとりはからいをいただきたいことをお願いいたしまして、私の質問を終ります。
  103. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 承知いたしました。あと御質疑はありませんか。——これで全部終了いたしました。  連合審査会はこれをもつて散会いたします。     午後五時九分散会