運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-05-25 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十五日(金曜日)     午前十一時十二分開議  出席委員    委員長代理理事 小山 長規君    理事 西村 直己君 理事 内藤 友明君    理事 田中織之進君       有田 二郎君    大上  司君       佐久間 徹君    清水 逸平君       高間 松吉君    苫米地英俊君       三宅 則義君    水田三喜男君       宮幡  靖君    宮腰 喜助君       竹村奈良一君    深澤 義守君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      泉 美之松君         大蔵事務官         (管財局長)  内田 常雄君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君         証券取引委員会         事務局長    吉田 晴二君  委員外出席者         参議院議員   山本 米治君         大蔵事務官         (銀行局総務課         長)      福田 久男君         大蔵事務官   近藤 道夫君         大蔵事務官   大島  弘君         大蔵事務官   細川 俊三君         証券取引委員会         事務局次長   篠塚  繁君         証券取引委員会        事務局総務課長  亀岡 康夫君         参議院法制局参         事         (第一部第二課         長)      堀合 道三君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 五月二十四日  委員大野伴睦君及び今村長太郎辞任につき、  その補欠として有田二郎君及び西村直己君が議  長の指名で委員に選任された。 同月二十五日  西村直己君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 五月二十五日  証券投資信託法案参議院提出参法第二〇  号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  連合審査会開会要求に関する件  有価証券処分調整等に関する法律廃止に  関する法律案内閣提出第一七六号)  商法の一部を改正する法律施行に伴う銀行法  等の金融関係法律整理に関する法律案内閣  提出第一七八号)  船主相互保険組合法の一部を改正する法律案(  内閣提出第一六八号)(参議院送付)  外国保険事業者に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一六九号)(参議院送付)  保険業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一七〇号)(参議院送付)  証券投資信託法案参議院提出参法第二〇  号)     ―――――――――――――
  2. 小山長規

    小山委員長代理 これより会議を開きます。  議案の審査に入ります前にお諮りいたします。一昨二十三日、理事西村直己君の委員辞任に伴いまして、理事が一名欠員になつております。この際理事一名の補欠選任をいたしたいと存じます。前例によりまして、委員長において指名いたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小山長規

    小山委員長代理 それでは西村直己君が昨二十四日再び本委員となられましたので、西村直己君を理事に指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 小山長規

    小山委員長代理 次に有価証券処分調整等に関する法律廃止に関する法律案証券投資信託法案、及び商法の一部を改正する法律施行に伴う銀行法等金融関係法律整理に関する法律案の三法案一括議題といたしまして、質疑に入ります。できれば証券投資信託法案から先にお願いいたしたいと思います。
  5. 深澤義守

    深澤委員 提案者に御質問申し上げますが、この提案理由に、長期産業資金調達に資するために、この制度を確立するのであるということがありますが、長期産業資金調達内容についての御説明を願います。
  6. 山本米治

    山本参議院議員 御承知通り終戰後証券民主化が叫ばれまして、一般大衆がかなり直接に証券投資をするようになりましたけれども、その後株価の変動の関係もありまして、大分大衆がかえつて懲りたような風も見えるのであります。かくては株式投資による証券界への資金の流入が心細くなりますので、この際こういう証券投資信託という制度によりまして、大衆個々に直接に証券を買うことなく、これを証券投資專門家にまかせるということによつて大衆個々としては安心して有利に証券投資ができる。これを国民経済的に見ますと、大衆から――この場合はサブユニツト一つの單位が五千円となつておりますが、五千円を大衆から集めまして、五千万円なりあるいは一億なりという金を集めまして、この金が証券投資に向うわけでありますから、国民経済的には、この制度なかりせば集まらない金が相当集まるのではないか。そして、これが株式界に流れ、産業資金に向うのではないか、こういうふうに考えます。
  7. 深澤義守

    深澤委員 そういうことではなしに、長期産業資金を調達するためであるという、その長期産業資金内容です。つまり現在の日本産業の上において、長期資金を必要とするところの産業種別はどういう種別であり、そしてどういうところへこの資金を集めて、注入しなければならぬということを考えられたのか。その点を明らかにしていただきたいと思います。
  8. 山本米治

    山本参議院議員 それはこの証券投資信託を募集する場合に、あらかじめこういう株式投資する、これは委託者のかつてなさしずを制限する、そして投資者保護をはかるという趣旨があるのでありますが、あらかじめ株式等銘柄を指定するわけであります。株式に限りませんで、一部分は公債もありましようし、社債もありましようが、今までの経験その他によりますと、大体株式ユニツトの七割くらい、たとえば一億なら、七千万円以上は株式投資をしてはならないということが、約款にきめられるのが普通となると思います。その株式銘柄をきめるわけでありますから、その種の株式が買われるわけでありまして、その中には既発株式もありましようし、今後新たに発行される株式を買う場合もありましよう。産業種類別も必ずしもきまつておりません。ただ投書の安全の原則から行きますれば、なるべくいろいろな産業に分散投資する。あるいは業種別にも、あるいは地方別にも、あるいは証券別にも分散するのが、安全投資原則でありますので、いろいろな種類用業投資されると考えております。
  9. 深澤義守

    深澤委員 もちろんこの内容によりますれば、委託者のさしずによる投資という方向が決定されるのでありますが、しかし今日の段階におきまして、政府金融政策については、一応傾斜金融方式というものが考えられて発表されており、あるいはその方向に実行されておるのであります。従つて法案作成者がやはり一応の前提をもつて、この長期産業資金を調達する場合においては、この資金の流れて行く方向というものを、法案作成者は期待していると思うのであります。その法案作成者の期待するこの資金の流れる方向は、大体どこへ流れて行くのかという期待がおありになつたならば、そういうことについでもう少しお伺いしたいと思います。
  10. 山本米治

    山本参議院議員 今日資金調整法というものもありませんし、資金に関する直接の統制はないのでありまして、この証券投資信託の場合に、どういう種類株式投資するかということは、もつぱら投資する大衆保護という点が、主眼とならなければならないと思うのであります。それでなければ大衆受益証券の買手がないということになりますので、もつぱり有利安全ということが目安になるわけでありまして、他日あるいはまた昔のような資金調整というものが行われれば、これはその法律によつて制約されるわけでありますが、今日のところそういうことはありません。今日投資目標はもつぱら安全、有利ということであろうと思うのであります。従つて業種別にどうとかいう国家的目的は、これには入らないと考えております。
  11. 深澤義守

    深澤委員 しかしながら現在やはり金融政策といたしましては、一定の政府方針が定まつている。従つて委託者のさしずによつて、それが何らの制限監督を受けずに資金が流れるということは、われわれにはちよつと考えられないのです。やはり結局証券取引委員会等監督、あるいは政府方針の指示というものによりまして、この資金が現在の金融政策に沿つて流れて行くのではないかというぐあいに考えられるのであります。従つて委託者自由意思による資金の流れ方というものは、私はあり得ないと考えております。この点は提案者はどういうふうにお考えになつておりますか。
  12. 山本米治

    山本参議院議員 先ほども申しましたように、今日のところ株式投資について国家的制約はないのであります。たとえば私がここに一万円の金を持つていて、これでいかなる株式を買おうとも自由でありまして、どの産業株式であろうとも、自由に買えるわけであります。これを今度証券投資信託という制度に入れます場合には、先ほど申しましたように、十なら十の銘柄株式、なるべく今日有望で高配であり、将来も株式の価格が下ることなく、配当率も維持されるであろうというようなことが目標で、投資されるのでありまして、国家的制約を受けることは――少くとも資金調整法という法律ができるまでは、まつたく自由に投資できるものと思つております。
  13. 深澤義守

    深澤委員 今日の日本産業におきまして、資金枯渇ということは重大な問題です。特に中小企業あるいは農村関係等事業におきましては、資金枯渇のために非常な苦しみをしているのであります。従つて今日の金融政策においては、われわれはそういう方面にこそ金を流さなくちやならぬと思います。しかもこれが全然委託者のさしずによつて流れるということになりますれば、やはり今日の経済事情におのずから制約されて来ると思うのであります。そういたしますと、結局その方向というものは、日本の現在中心になつておるところ産業あるいは特需、そういう方面にこの資金が流れて行くということが予想せられるわけであります。またそういう方面投資することによつて委託者一般投資者に対する利益を確保する、こういう結論になると私は思うのであります。従つて今日の経済事情におのずから、この資金の流れ方は制約されて来る。そうすると、日本における大産業あるいは特需産業等方面に、この資金は流れて行くのじやないかというふうに考えられるのですが、その点は提案者はどういうぐあいにお考えになつておりますか。
  14. 山本米治

    山本参議院議員 先ほども申しました通り、今日長期資金について、特に株を買うことについて、どういう種類の株を買えとか、買つてはならないとかいう制約はないのであります。この証券投資信託を結成するにつきましても、もつぱら安全有利ということが目標になるのであります。従いまして、大体過去の経験に徴しましても、東京、大阪のような大市場に上場されるような名の通つた一流の株が対象になると考えるのであります。ただいま御指摘の特需産業に行くかどうかということですが、それを安全有利と認めれば一部行くこともありましようが、そちらの方に国家の意思によつて流されるということは今のところ絶対ありません。安全有利と認められればそちらの方に行くということも考えられます。
  15. 深澤義守

    深澤委員 私は、こういう証券関係の問題についてはしろうとでありますが、提案者は、今日の日本経済事情の中において最も投資者利益を確保するところの安全有利の産業というものは、どういうものと考えておられるか。その点をひとつお示し願いたいと思います。
  16. 山本米治

    山本参議院議員 それは株式関係の雑誌や新聞に出ておる通りでありましで、糸へんがもうかるとか、金へんがもうかるとかいうようなことで、そういうような株がよろしい。それからまたこの証券投資信託を結成する時期といたしましては、株式のまだ安いときが有利でありまして、株価上つてしまつてはうまみがないのであります。そういう意味において、この制度をつくるのは今が時期であると思います。将来株価配当率が上る見込みがある、こういうことがもつばら投資の標準になるものと考えてあります。
  17. 深澤義守

    深澤委員 そうすると提案者は、現在の株価が将来においてもつと上る、こういうような見解を持つておられるのでありますが、その点はまだなかなか認定できない問題ではないかと思うのです。現在は株価が安いときであり、今後この株価上昇する機会があるという経済情勢見通しについて、提案者の御意見を拜聽したいと思います。
  18. 山本米治

    山本参議院議員 株価先行きにつきましては、何人もわからないのであります。これがわかつていれば私はただちに大金持ちになれるわけであります。遺憾ながら先行きは確定的には申し上げにくいわけでありますが、終戰後株価は非常に安いものの一つとされております。世俗には、物価は百倍、二百倍、三百倍になつたが、今日安いものは株と金利だと言われている。物価がただいま申し上げましたような倍率になつておりますにかかわらず、株価は戰前の二、三倍とかせいぜい五、六倍程度で非常に低いのであります。これには終戰に伴ういろいろな特殊事情がありまして、たとえば終戰後財閥が解体され、財閥の持つてつた株式、その他財産税による株式もありますが、こういうものをSCLCが国家的に保管しておりまして、今日の金額は知りませんが、当初は二百億前後と言われておつたのであります。そのほか再建整備に伴いまして各社が増資するようになるというようなことで、株式市場は非常にもたれておるのであります。また一時証券民主化の声におどりまして、大衆株式市場に相当零細な金を持ち込んだのでありますが、一昨年五月ごろを峠として、その後株価が一向さえないというようなことで、その方へ資金が向かないというようないろいろなことで株価が、不当かどうか知りませんが、非常に安くなつているということは事実であります。今後の日本経済界が常道に乗つて行き、そうして今言われておりますような日米経済の協力問題とか、概論いたしまして日本経済前途は、今後もう少し立ち直つて行くのではなかろうか。ひいては株価も――むろん下る場合もあるかもしれませんが、大体の傾向としては、もう少しよくなつて行く方向にあるではなかろうかというのが、常識ではないかと考えるわけであります。これも先ほど申し上げましたように、株価前途というものは的確に申し上げ得るものではありませんので、あるいは下ることもあるかもしれません。むろん波を打つでありましようが、今より以上悪くなることは少いではないかという意味でありまして、確実な傾向として必ず上ると申し上げるわけではございません。
  19. 深澤義守

    深澤委員 しかしあなたの、大体現在が底である、従つて将来は上昇する見込みがある、こういうときこそ一般投資者投資を誘発いたしまして、投資をさせることによつて投資者利益を確保すべきで、今がその一番よい時期である、こういう趣旨からこの法案を出されたこと自体、将来における株価上昇を予想せられておるということは、これは明らかであります。そこで私は、今あなたの御説明になつておりました、日本経済の状態が軌道に乘り、そうして今後好況を呈するであろうという根拠の一つとして、日米経済協力の問題を出されております。しかしこの日米経済協力の問題につきましては、私は相当問題があると思います。マーカツト声明によりましても、新しき日米経済協力は、商業的採算の基礎の上に立つてつて行くのだということであります。ところが入つて来ます原材料は必ずしも安く来るのではないのであります。日本の業界からも、そういうことによつて日本経済上昇するというような意見は、あまり聞いていないのであります。ところがあなたの方では、日本経済上昇発展するであろうという見解の上に立つてこのときに一般投資者投資を誘発して、その利益を確保しようというのでありますが、そういうことに対して、あなたはほんとう責任を持つことができるかどうか。必ず日米経済協力は、日本経済の繁栄をもたらすものであるという確信を、ほんとうに持つておられるのかどうか。私は確信の問題について、提案者に具体的な見通しというものをお聞きしたい。
  20. 山本米治

    山本参議院議員 日本経済前途いかんというたいへん大きな問題でありまして、これにつきましては私も確たることは申し上げかねる。従つて株式前途につきましても、はつきりしたことは申し上げかねるのでありますけれども、これは証券投資信託という制度をつくるわくをなす法律でありまして、アメリカにもありイギリスにもある。元はイギリス産業革命後発達した制度でありまして、大戰後アメリカにもたいへん起り、さらにこれはイギリスに逆輸入されたユニツト・トラストを範にとつたものでありますが、そういう外国におきましても株価上り下りと別個にこういうわくがあります。でありますから、今証券が今後上るであろうからこの制度をつくる必要があるというのではなくして、こういう制度制度としてつくり、そうしてただこの制度の上に証券投資信託を結成する。普通の原則としては株価が上るであろうというような場合に、やりやすいということを申したわけでありまして、今後株価が下るかもしれないから、この制度はつくる必要はないということは別問題であります。
  21. 深澤義守

    深澤委員 そこで私はなおお伺いしたいのでありますが、もちろん投資者利益保護するということは、これは一応引受けた以上は重大な責任があるのであります。しかし今申し上げましたように、間違いなく日本経済上昇し、そうして投資者に対してその利益を確保することができるという、はつきりした見通し確信がおありになるならば、これはもうだれも安心して投資するわけです。しかしながら、今あなたもおつしやつているように、必ずしも上るばかりではない。上り下りの波があるであろう、こういうことを言われている。そういうときに、もちろん利益を得た場合にはいいのでありまするが、もしも損害を受けた場合の危険負担を、どこによつて補償されるのか。その点をひとつ……。
  22. 山本米治

    山本参議院議員 株式投資をした場合にもうかる場合があるかもしれぬ、損する場合があるかもしれぬというのは、株式投資本質でありまして、そこでその投資信託ユニツト投資信託財産というものが、株価の値下りによつて価値が低落した。たとえば当初決定した株価が一億であるものが、一年なり二年なりの後に八千万になり七千方になり得るということもあり得るわけでありますが、その場合に受益者配当が少くなる。これはやむを得ないことであり、それが一億五千万円になれば五千万円もうかるのでありまして、これは個人が持つていた場合でも同じである。百円で買つた株が八十円になれば損をする。百五十円になれば株を買つた人はもうかる。これが株式投資本質でありまして、確定利付証券本質的に異なるところであります。ところが日本証券というものは、確定利付証券というものを中心として発達したのでありますから、戰時中行われた投資信託におきましては、信託約款において元本損失に対しては二割を保証するという保証條項が入つていたのであります。しかし今度の中にはそれがありません。でありますから何割下ろうと、極端にいえば株価がゼロになつた場合には、やはりゼロしか価値を持たぬということになりまして、だれも損失を補償しない。これが株式投資本質であり株式信託本質であります。ただ戰時中にありました元本の二割補償というようなものは、信託本質を離れることはなはだしいものでありまして、われわれは絶対反対しているところであります。
  23. 深澤義守

    深澤委員 そこでこれはもちろん日本経済上昇発展ということが間違いなく保障されるならば、投資家も安心して利益を得るのでありますから投資をする。だがしかし今後の日本経済の上において、はつきりした見通しがつかないとすれば、投資者も非常な危険負担が、みずからの負担によつて解決せられなければならないことになりますから、ここに大きな問題があると私は思うのであります。先ほども申し上げましたように、結局日本経済がどうなつて行くかということが、この法案の重大問題であるということになつて来ると思うのです。従つて、この日本経済の全体の中で、これは解決さるべき問題であると考えます。そこでなおひとつ提案者にその意図をお聞きしたいのでありますが……。
  24. 山本米治

    山本参議院議員 ちよつとお待ちください。そこで一ぺんお答えいたしますから……。深澤委員はややこの制度趣旨を取違えられておるように思うのであります。これは個人株式投資をする場合も同じであります。今ここに一万円の金がある。これは個人が直接株屋さんに行つて株を買うという場合でも、日本の将来の経済いかんによつて、上ると思つた株式が下るかもしれない。この制度というものは個人投資したのでは、ことにまあ地方の人だとか株式市場になれない人は知識が薄い。そこでそれを專門家にまかして、みんなの金を集めて專門家投資してもらう。そうして危険分散原則によつて投資してもらうというのが趣旨でありますので、個人投資する場合でもその点はちつともかわらないのであります。その問題はこの制度には関係ないように思うのであります。
  25. 深澤義守

    深澤委員 それは私は大いに違うと思う。つまり個人投資した場合においては、個人はこれがよかろう、あれがよかろうといつて個人選択によつて自分投資をするわけです。従つて自分個人見通しの誤りによつて損害する場合においてはやむを得ない。ところがこの場合においては、投資の方法は投資者自身が決定するのでなくして、結局証券会社が今度はそのさしずをするわけであります。従つて投資者自身がどの産業投資しようという意思表示は全然ないわけであります。そこが違うのです。だから個人が株を買つて損をしたという場合にはあくまで個人責任であり、それは自分見通しの誤つた結果損害したのでありますから、これはいいわけです。
  26. 山本米治

    山本参議院議員 その点もやや誤解があるように思うのでありますが、この株式投資信託制度ができます場合に、その受益証券個人に押しつけるわけでは決してないのであります。個人で直接投資したい人は、依然今後も株式個人買つていただいてけつこうなんであります。ただこの投資信託を結成する場合には、委託会社がこうこういう証券を買うというようなもくろみ書を出しまして、これでよろしい人はこの受益証券に応募なさいということなんでありますので、それがいやならば投資しなければいいのであります。それがこういう範囲の株を買うならば、そうして今後二年なり三年なりの間の投資、あるものを売つたりあるものを買つたりということは、專門家である委託会社に全部おまかせしようという人だけが、受益証券を買うのであります。やはりそこにある人が自由選択によつて、こういう範囲内で買うからどうだと言われて、それならよかろうといつて株式を買うわけでありますから、株式個人が買う場合と、やはりまかせたという点では同じでありますし、個人で買いたい人は今後も個人買つてもらつてけつこうなんです。
  27. 深澤義守

    深澤委員 もちろんそのことは個人投資する自由を、この制度の確立によつて妨げるものでないということは、私もよく承知をしているのでありますが、先ほど個人選択によつて投資した場合の損害は、当然個人が持つのである。こういう制度を確立しましても、結局個人投資と何らかわることがないというばかりでなく、結局投資者自由選択というものは、はなはだ間接になるのではないかということを、私は言つているのであります。  そこでもう一つ私のお聞きしたいのは、この法案意図についてでありますが、前の戰争のときに初めて野村信託がこの信託ということを行つたのでありますが、そのときにはいわゆる軍需産業目当にやつたのであります。どうも戰争が起つて来ると、こういう制度が出て来るというのが通例じやないかというように、われわれは考えているのですが、そこで問題はこういう問題が出て来ること自体が、やはりかつて大東亜戰争のときに野村信託が出まして、あの信託行為をやつたと同じように、いよいよこれは日本戰争状態に入つて来た、こういうところからこの法案を出して、とにかく資金を百パーセントにかき集めなけりやならないという軍需産業方面の要請によつて一般大衆の金をかき集めて、それで日本におけるところの日米経済協力の名による戰争態勢を確立する、こういうような意図がこの法案にあるのではないかというぐあいに、われわれは考えているのでありますが、その点は提案者はどういうぐあいに考えておられますか。
  28. 山本米治

    山本参議院議員 戰争中に行われました投資信託については、私は当時ヨーロツパにおりましたのでよく承知しませんが、当時は確かに戰争遂行の目的に寄与する目的をもつて行われたのだろうと思うのでありますが、今日私はそういうことは全然考えておりません。しかもただいま深澤委員のおつしやる論法をもつてすれば、この制度イギリスにはもう百年も前からありますし、アメリカにももう何十年あるのでありますが、そうするとイギリスアメリカはしよつちゆう戰争準備態勢をしておるということになるのであります。しかしそういうこととこの制度とは全然関係のないことを、御承知願いたいと思います。
  29. 深澤義守

    深澤委員 イギリスアメリカの例をとりまして、日本にもそういうものがなければならないという前提なのでありますが、しかしイギリス日本経済状況は非常に違いまして、資本主義が正常に発展いたしましたイギリスアメリカの例を、ただちに日本にとつて参りますと、これは決して日本において正常には発展しないわけであります。しかも今日資本主義は末期の状況にあり、そうして資金枯渇し非常に苦境に陷つた場合において、どうしでも大衆から資金をかき集めなくてはならぬところに、日本経済本質が私はあると思います。従つてアメリカイギリスの例をとつて、ただちに日本に押しつけることは、非常に無理があるのではないかと考えるのです。  以上私は本法案に対する疑問の点を質問いたしまして、一応これで打切りたいと思います。
  30. 西村直己

    西村(直)委員 提案者に二、三お伺いしたい。この資本金を五千万円以上と一応された根拠はどういう根拠ですか。
  31. 山本米治

    山本参議院議員 資本金五千万円以上ということは、この制度によります委託者株式会社でありますので、必ずしも証券会社意味しないのでありますけれども、実際問題としてはいろいろな関係上、証券会社の兼業とならざるを得ない今日の情勢なのであります。委託者証券会社がなるということを考えますと、何といつてもこの制度に一番大切なものは社会大衆の信頼ということであります。信用ということでありますので、資本金もなるべく大きな方がいいのではないか。これが根本であります。ほかにこの種の、たとえば受益証券を売り出すということに対しましても、全国に相当支店網がないと、なかなか一箇所だけでは売り切れないのであります。まずこの支店綱、従つて各支店における人員、それからこういう方面に專門の者、それから結成いたしました後も、いろいろな点で專門家がいりますし、相当大きな資本金を有する証券会社でないとできない。かりにやりましても非常にコストが高くなります。ことに專業の会社などを今後新設いたすなどというと、そうして支店がなければ代理店を通じてやるというようなことになりますれば、自然そこに手数料を払わなくてはならぬ。非常にコストが高くなる、信託報酬が高くなるということは、結局これが大衆に転嫁されることになりますから、大衆の受益率が悪くなる、こういうことになりますので、第一は、根本には信用ということ、第二は、その支店網その他の技術的関係から、資本金を相当大きく制限して、ことに初めてやろうということでありますので、何よりも社会大衆の信頼というところから――あるいはこの点について多少議論があるかとも思いましたが、大きな社会的の信用のある証券会社の兼業が実際問題として一番よかろうと見て、五千万円に制限したわけであります。
  32. 西村直己

    西村(直)委員 御趣旨はよくわかります。ただ具体的に言いますと、現在五千万円以上の株式会社、これは登録でありましたね。
  33. 山本米治

    山本参議院議員 今後登録します。七社であります。
  34. 西村直己

    西村(直)委員 登録になると、大体今度公布されまして施行なつたあかつき、該当して来るような、またやるだろうと想像されるようなものは、証券会社としてはどういうものが上つて参りましようか。
  35. 山本米治

    山本参議院議員 資本金五千万円以上の証券会社は今日七社でありまして、前回もそうでありましたが、まず第一に非常に熱心に着手するであろうと思われるのは野村証券でありまして、そのほか山一証券等もこれに追随するものと考えております。しかし五千万円以上の証券会社が全部一斉に始めるという模様は今のところなく、まず野村、山一あたりが始めて、ほかは模様を見て、これに追随するのではないかと見ております。
  36. 西村直己

    西村(直)委員 さしあたりこれを開始しました場合の、もちろんこれは民間にされることで、長期資金の民間吸收になるわけですが、提案者とされてというよりは、政府としては、資金量が近い将来においてどの程度に動員されて来るかという、何かそういうようなお考えがあつたのでしようか。
  37. 山本米治

    山本参議院議員 これももちろん見込みであります。やつてみなければわからぬことでありますから、見込みにすぎませんが、その試算を二、三してみたのでありますが、たとえばごく簡單に申しますと、前回の戰時中の投資信託におきましては、当時こういう單独立法はなかつたのでありますが、昭和十六年十一月に始めまして、昭和二十年の八月末、戰争が終るころまでに五億二千数百万円結成されたわけであります。四年間に約五億結成されたわけであります。この割合をそのまま引伸ばしまして今後に当てはめてみますと、かりに物価が百倍と見れば、今後四年間に五百億、物価が二百倍と見れば千億結成されるだろうということも一つの数字であります。なおもう少し詳しくこの点を――むろん有力な数字ではありませんが、別な角度から見れば、昭和十七年一ぱい、月から十二月までに金融債、事業債、株式個人消化分という数字を見ますと、三億八千九百万円になつております。昭和二十五年の一月から十二月までのただいまに該当する数字すなわち金融債、事業債、株式個人消化分を見ますと、百七億になつています。つまり昭和十七年と昭和二十五年とを比べると、数字は三億八千万と百七億になつておりますが、この倍率は二十七倍半になります。この引伸ばしによりまして、過去一箇年の投資信託の場合における結成額を見ますと、一億二千二百万という平均になつておりますので、それにただいま申しました二十七倍という倍率をかけますと、三十三億六千万円という数字が出ます。でありますから一箇年間に三十三億ぐらいな信託投資の結成ができるのではないか。これも一つの参考数字であります。なお証券会社などに当つてみまして、第六感といいますか、感じを聞いてみますと、まず初年度二、三十億は結成されるだろう、こういうようなことも言つております。これらが一つのよりどころで、いずれも将来の見込みに属しますので、確たるものではありませんが、大体こんな見当を考えております。
  38. 西村直己

    西村(直)委員 そこでもう一つお伺いしたいのは、もちろんこれは先ほど御議論がありまして、株式投資の、いわゆる危険分散の形態でやつているのだから、損失というものもある税度考えなければならぬ。しかし財産信託ですから、その性格からいうならば、実際の投資者株式よりははるかに安全有利であるという考え方である。従つて前の野村証券がおやりになつたときの投資信託でも、おそらく大部分の人は確定利息ではないにしても、ある程度の保証をやつておりますから、それで安心してやつて行ける。敗戰の結果ああいう状態でそれぞれ清算したわけですが、今度の場合でもある程度配当というものをにらんで来る。おそらく各投資信託株式会社の手先の宣伝員は、非常に上手なことを言つて、農村資金なりを集めて行く。その場合に私どもが心配するのは、もちろん政府保証ということはないわけですけれども、ある程度配当の安定性がないと、途中で今のような吸收すべき資金も吸收できないと同時に、全体の証券政策に対してむしろ逆効果を生ずる場合をおそれる。ことに日本経済前途については、深澤君の御意見と私どもとは非常に違つてはおりますけれども、いずれにしても、まだ安定期として立つていない場合において、配当というものを目当に、しかも都会資本より農村資本がふえて行くだろう、そういうような場合において、これがある程度安定されておるかどうか。具体的に私がお聞きしたいのは、たとえば相当な配当をしておるある株をずつといじつてつた場合に、現在であればどのくらいの辺に配当ができればいいとお考えになりますか。
  39. 山本米治

    山本参議院議員 経済的に最も問題となりますのは、ただいまの御質問の点でありまして、配当はむろん過ぎ去つてみなければわからぬわけでありますが、見込みにいたしましてもいろいろ條件によつて違います。次から次へと多額の金額が結成されれば配当も多くなります。また期間にいたしましても、期間が二年の場合と三年の場合とでは違いましようが、一応期間三年ぐらいでもつて元本五十万円として考えた数字があるのでありますが、投資利回りが一三%の場合に受益者の利回りといいますか、配当は八分四厘ぐらい、一四%の場合に九分四厘という数字が出ておりますが、これもまだ信託報酬に関して詳しいことがきまつておりません。そのいかんにもよりますから、何とも申し上げられませんが、方針として考えられますことは、一面株式に直接投資すれば相当高利回りになります。それからまた社債などにいたしましても、今日本に資本がありませんので、かなり利子も高い。こういうことで相当の利回りになりますから、それよりあまり低いのでは、こういう制度を始めてみたところで、大衆がついて来ないというので、配当は当初の見込みは八、九分見当――結果としては一割以上に行くかとも思いますけれども、八、九分見当の配当のできるようなものでなければ大衆に魅力がない、こう考えております。それには先ほど申しましたように、結成額とか期限の問題とか手数料の問題、いろいろな関係がありますが、方針としてはそうすべきじやないか。なお税金の問題についても、大衆に対する魅力いかんは大分違うわけでありますが、ただいまお話のうちの第一点の元本保証をしないと大衆が困るのではないか、こういうのでありますが、投資者の安心感からいえばその通りでありますけれども、先ほど申しましたように、それは株式投資の本旨と異なるのであります。また証券信託の本旨とも異なるのであります。これも先ほど申し上げたところでありますが、日本では利つき投資ということに、明治以来ずつと大衆がなれて来ておりますので、どうも元本そのものを割るかもしれないというような投資には、大衆が食いつきにくいのでありますけれども、信託の本旨から申しましても、株式の本旨から申しましても、大いにもうかることもあれば、元来も割るということもあるのがほんとうでありまして、前回の場合に元本の二割保証を野村証券約款にうたつておるということを申し上げましたが、今度の場合はそういう元本保証はしないつもりであります。しないのがこの投資信託の本旨でありまして、そういうことをするのは信託の本旨にもとります。それでは大衆元本の保証がないから非常に不安がありますが、これは個人で直接株式投資する場合と比較していただけばよろしいのであります。百円の株を買う。これが九十円になり、八十円になることもあるのであります。それと少しも違わない。ただ大衆の直接投資はあぶないので、大勢が集まつて專門家投資してもらう。これだけの機構であります。
  40. 西村直己

    西村(直)委員 その点はもちろんそうでもありましようが、一面におきまして、やはり配当の安全性ということとの関連性において初めて成功する。この前大蔵大臣が施政方針演説において、たしかこの投資信託制度を実施するという公約もあつたのであります。趣旨けつこうでありますが、これの実効が上るように運営されて行かなければだめだ。もしこれが財界の大きな変動によつて危険負担であるならば、あえて投資信託といわんやでありますけれども、これ自体がうまく行かない場合においては、せつかく証券対策の一翼としてこれが行われている場合に、それにも響いて来る。それは別としまして、受益証券原則として無記名としてありますが、これは記名の場合もあるわけですね。
  41. 山本米治

    山本参議院議員 そうです。
  42. 西村直己

    西村(直)委員 もう一つ受益証券が無記名の場合においては、流通関係はどうなりますか。
  43. 山本米治

    山本参議院議員 それはやはり信託約款の問題でありまして、信託約款に一部解除というようなことを認めるかどうかということが、一つの問題であります。五千円で一枚受益証券を買つたが、どうしても金がほしくなつた場合には、個人の間で甲から乙が買つてくれれば一つの流通でありますが、そうでない場合、会社が契約解除を認めてくれるかどうか。あるいは買いもどしをしてくれるかどうか。その場合にどういう価格で買いもとしてくれるかどうか。こういうような問題があるわけでありますが、この約款につきましては、今政府当局において研究中のようであります。理論としてはユニツトの価格というものは、証券相場の動きによつて毎日はじき出されるわけであります。一億円なら一億円買つたものは、きようは九千八百万円ということがそろばんではじき出るわけであります。それをサブユニツトの数で、口数で割るわけであります。そうすれば、きようは当初五千円のものが五千百円だつた、きようは五千百十五円だというようなことが出るわけでありますから、そういう価格に多少の手数料的なものをとつて買いもどすかどうかというようなことは、約款の問題として今後研究されるはずであります。
  44. 西村直己

    西村(直)委員 実はその点についてお聞きしたのは、やはりそれも大衆保護という面と、資金吸收の面と関係があるのではないか。言いかえれば、これは大きな会社がこれをまとめて買う場合もありましよう。また農村の零細資本を吸收して来る場合もあるが、流通性いかんによつては大分違う。これは意見であります。そうするとそれは信託約款できまるのでありますか。
  45. 山本米治

    山本参議院議員 むろん将来は受益証券というものが市場に上場されて、毎月相場が立つて取引されることを希望するのであります。アメリカ等ではその通りつておるのでありますが、日本ではまだ戰時中一回の経験があるというものの、あれは單独法もなくやつたことであります。今度いわば單独立法をやるのが初めてでありまして、また日本証券市場、資本市場の状況が英米とは比べものにならぬのでありますから、受益証券がただちに非常に大きな流通性を持つ見込みは、今のところ私は実際問題として望まれないと思います。換金性、流通性というのは今の程度かと思いますが、将来は私は大いに流通するということを希望し、期待しておるわけであります。
  46. 竹村奈良一

    ○竹村委員 先ほど深澤君の質問で大体明らかになつた点でありますけれども、提案者山本君の説明によりますと、欧米にもこういう制度がある。従つて日本においてもこういう制度をつくる。そうして投資家利益保護してやる。そうして産業資金を調達する。大体目的はわかつておるわけでありますが、日本の現在の投資家利益保護することになれば、やはり現在のいろいろな政策から考えまして、これは大企業の面は一応安定性はあると一般に考えられておるわけであります。従つてそういうものに投資が集中して参りますと、さなきだに日本の中小工業、そういうものの資金が今枯渇しておるわけであります。従つてそれが少くとも一般大衆の五千円から集められた資金が、しかもそういうところに流れて行くというのは、これは一応の利潤を確保するという面からいうと、常識のようになつて来る。そういたしますと、こういう制度がなければあるいは安全性が非常に精薄だから――大衆はいろいろ前の証券民主化等の例によつて投資をしているわけでありますが、こういう制度をこしらえるということによつて、さなきだに資金枯渇しているときに、中小工業者に対する資金というものが、勢い大企業の方に集中されると考えるわけであります。しかしそれでも英米等にあるから日本にこしらえるといえば、それまででございますけれども、日本全体の産業の発展等から考えて、單に大企業だけがそういうふうになることは、日本の現状においては私は遺憾な点が多いと思います。それに対する新たな何かの対策を提案者は持つておられるかどうか。その点をお伺いしたい。
  47. 山本米治

    山本参議院議員 中小企業の金融枯渇の問題はお話の通りでありまして、これは金融政策として日本の大問題であります。しかしこの制度は一応それとは別個の問題でありまして、大衆が株を買う金を集めて共同で投資しよう、專門家投資させようというのが趣旨でありますから、もしこの制度がなかつた場合でも、今大衆が一万円金を持つておる。五千円金を持つておる、この金で株を買うという場合には、おそらくこの制度によつて選ばれるような株を買うだろう。やはり安全な株を買うだろうと思うのでありまして、これをまとめてさせるのでありまして、この制度によつて特に大資本には金が集まるが、中小企業の方には金が行かないというのは、ちよつと別個の問題のように思うのでありまして、この制度の可否ということとは違うように思います。
  48. 竹村奈良一

    ○竹村委員 これは意見の相違になると思いますけれども、しかし問題は、かつて証券民主化等によつて大衆が株買つた。それでいろいろ損失を招いて、株には懲りたというようなものを、今度はまたこの新しい制度ができることによつて、株に対する興味を持たせて行くというところが、この制度をこしらえるねらいであつて、そうでなかつたならばこの制度は必要ないわけです。従つて今までもうあきあきしている大衆に五千円でもまた株に投資させようというところにこれのねらいがある。そうすると提案者は別個の問題と言われましたが、最も関連した問題であつて、これがなかつたならば、おそらく株には懲りたのだから株には手を出さぬ。あるいは農村等においてはいろいろ小さい工業というような方面考えるでしようけれども、しかしそうでない限りにおいては、この制度ができると、勢い投資の気持はこの証券に対して注目が集められると思うのであります。それは別個の問題ではなくして、むしろやはりこの制度をこしらえるという場合においては、先立つて中小企業の金融の問題を立案するのが、私は当然なことと考えるのでありますが、この点は意見にわたるので、いたし方ないと思います。  もう一つお伺いいたしたいのは、先ほど深澤君の質問ではつきりしたわけでありますが、たとえば利益の場合は当然均等で割りますが、そのかわり損失の場合も全部当事者が負担する。ここで問題になりますのは、現在の日本産業界が、結局において最も危険をはらんだものであるとわれわれは見ているのです。これはそうではないという見方とそうであるという見方と、これも見方の相違がありますが、最も危険をはらんだものである。たとえば日本日米経済協力から見ても、日本が東洋の兵器廠としての役割を果すような役割において日本産業を発展させる。つまり平和的な産業発展の方向には向いていないわけです。従つてそれは最も危険の多い、かつて戰時中において行われたような形における大衆の金を集める役割を果すような制度に、転化するのであるというふうに考えるのでありますが、この点についてはあなたの方はどういうふうに考えますか。
  49. 山本米治

    山本参議院議員 それは先ほど深澤委員からすでに御質問がありまして答えたところでありますが、大衆から集めた金を、あなたの言われるアメリカの兵器廠たる種類産業に向けて行くという意思は毛頭ないのであります。もつぱら有利、確実、安全ということを標準にして投資する組織でありまして、また日本産業が非常に危険を含んでおるという御意見でありますが、これは意見の相違でありますし、またもし危険を含んでおるものならば、こういう制度をつくるとつくらないとにかかわらず、株式市場に向う金がないということになるわけでありまして、その点はどうも意見の相違のように思うわけであります。
  50. 竹村奈良一

    ○竹村委員 提案理由の第七の説明にあるのですが、私的独專禁止法の株式の取得またはその所有に関する規定を、排除することとしておる意味をどういうふうに……。
  51. 山本米治

    山本参議院議員 これは独占禁止法には、金融機関は他の会社の株を五%以上持つてはいかぬという規定があるのであります。そういたしますと、証券信託投資をやつた場合に、ある会社の株を五分以上持つことができないということになれば、非常に制限になりますので、この独占禁止法の規定にかかわらず一割持つてもよろしい、あるいは二割持つてもよろしいという趣旨でありまして、但し株主権を行使する場合はそういうことはできない。こういうふうにしておるのであります。独占禁止法の規定があるままですと、一億なら一億集めた金でいろいろな会社の株を買うのでありますが、五分以内ということをいつも頭に置いておかなければならぬ。そうするとある会社の株は有利である。一割に相当するものを買いたいという場合も買えないわけでありますから、そこでこの規定を排除したわけであります。もつとも別の角度からある特定の会社の株だけをよけいに持つということは、危険分散の上からおもしろくありませんので、あるいは約款で、先例によりますと、ある特定会社の株の二割以上をもつてはならぬということを、規定した場合もあるわけであります。
  52. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういたしますと、これが排除された、適用されないということになりますと、たとえば日米経済協力の下に日米の合併会社というようなものもいろいろできまして、しかもそれが強大な資本を擁して、日本でむしろ独占的な参加をして、先刻問題になつたような兵器廠的ないわゆる軍事的な産業、その株をある程度持つても、約款で二割以内ときめられればいいが、きめられない場合は五割あるいは六割持つてもよいということになるわけですね。
  53. 山本米治

    山本参議院議員 これは投資先ほど申しました投資原則である危険分散の建前から申しまして、おそらく約款にはある特定会社の株を二割以上持つてはならぬということが、規定されるだろうと思います。投資の安全の原則から当然そうなるだろうと思います。それがなければ五割、十割、全部持つてもよいわけでありますが、それは証券取引委員会の承認した約款を要しますので、証券取引委員会がそういうある会社の株を半分なり全部を持つという、そういう約款は承認しない方針であります。ですからそういうことはないであろうと考えております。
  54. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この法律ができれば、約款の問題はどういうふうな形で今の場合規定されるお考えですか。証券委員会の方にちよつと……。
  55. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 ただいまのお尋ねの点でございますが、大体信託約款に規定すべに事柄といたしましては、ただいまわれわれの方で考えておりますのは、一面に出すべきユニツトの金額、期限どういうふうにするか、信託手数料をどうするか、あるいはまた利益分配をする場合に、どういうふうに分配するかというようなことを考えておるわけであります。それと同時にただいま山本議員からも御説明のありましたように、いかなる銘柄投資さすかということについて、また投資方針について約款に記帳する。そういう規定がなければこの約款は認めない、こういうふうに考えております。その場合今の投資方針の問題でございますが、一応われわれといたしましては先ほど説明がございましたように、同一会社の株を二割以上持たないというようなことを中に入れる。あるいはまたできれば大体規格銘柄ということで銘柄を登記する。大体十なら十の会社の銘柄を登記しまして、こういう銘柄投資するのだ。ただある場合には次の銘柄にも変換し得るということで、その変換し得る銘柄をこれまた登記する。そういうような方式も考えておりますので、ただいまお話のような点に対する御心配はないと考えております。
  56. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もう一つお尋ねいたします。先ほど西村委員の御質問で、たとえば五千円の投資をしたような少額投資者が、たとえばこの証券を売買するのではなしに、売れなかつた場合に、その信託を受けた者がこれを払いもどすような制度は、どういう形で考えておられるのか。
  57. 山本米治

    山本参議院議員 先ほど申しましたが、これも信託約款に買いもどしの制度をあらかじめ規定しておくのであります。そうしてその買いもどし価格もこれは研究中のようでありますけれども、理論から言えば当然やはり毎日そのユニツトの金額は上つたり、下つたりするわけでありますから、その総数で割つたものが価格の基準となろうと考えております。
  58. 深澤義守

    深澤委員 今の約款にあらかじめ投資方針として、銘柄を十社なら十社きめるということでありますが、その銘柄の決定はどこがきめるのですか。それはやつぱり委託者のさしずによつて、その銘柄が決定されるのかどうか。その点を証券取引委員会の方に……。
  59. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 それはもちろん受託者がきめるわけでありますが、そのことを受益証券を出すときに当然もくろみ書の中に入れて参ります。受益証券を買う人がそれを見て、これは何何証券投資されるということをはつきりして、受益証券を買うわけであります。
  60. 深澤義守

    深澤委員 そういたしますと経済事情の変化によりまして、あらかじめ信託約款にきめられた銘柄以外のものに、委託者投資したいという希望が起つた場合、これが変更されることができるのかどうか。その点はどうですか。
  61. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 そうなりますと、これはつまり信託約款の変更の問題になつて参ります。その場合は証券取引委員会の承認を得た上でやることになるわけであります。
  62. 深澤義守

    深澤委員 そういたしますと、あらかじめ信託約款において十社なら十社の銘柄が決定し、これに投資しようと思う者は投資してくださいといつて投資するわけですね。そうするとその銘柄に終始しなければならないのか。もちろん信託約款の変更という問題がありますが、その変更ができるのかできないのか、そういう点をひとつ……。
  63. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 それはただいま申し上げましたように、証券取引委員会の承認を経れば、約款の変更はできることになつておりますが、もちろん承認をする場合は、変更しなければ著しく不利になるというような場合を考えております。つまり受益者保護になるというような場合を考えておりますので、それ以外の点においては、大体従来のものが継續されて行くという場合が多いというふうに考えております。
  64. 深澤義守

    深澤委員 そこで私は一応委託者のさしずによつて、その投資の先がきめられるのであるということが、証券取引委員会監督権のもとに制約されて来るのじやないかというぐあいに考えるのです。そういう弊害が起る可能性があると思うのですが、どうですか。
  65. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 制約という意味がはつきりいたさないのでありますが、実際の問題としてその信託約款の変更という意味において、その範囲内におきましては、委託者の方の自由にはならない。信託約款そのものが、何といいますか、これが委託者のさしずに基く一定の限度を規定することになつております。投資者保護意味において、その制限があるということは当然のことであります。
  66. 深澤義守

    深澤委員 どうもはつきりしないのでもう一ぺんお聞にしたいのでありますが、信託約款投資銘柄を決定するという場合、それはまつた投資がされない前に一応決定されて、この銘柄投資するつもりであるから、受益証券をひとつ買えということになるわけでありますか。そうすると先ほどから提案者が、あくまでこれは投資者利益保護のために、そして委託者のさしずによつてその投資の先が決定されると言われておりましたが、やはり信託約款によつて、あらかじめ投資される先が、その銘柄の決定によつてきまるわけでございますね。だから結局この法案意図するところは、ある一定のものに投資を集中するという意図があるということが、われわれは想像できるのであります。従つてこの銘柄を決定するのは、これはもちろん受託者が決定することになる。そうすると、受託者はあらかじめ現在の日本の情勢に基いて、これこれのものが投資者利益を与えるものであるという選択によつて決定される。それを証券取引委員会によつて承認する、こういう形になる。そうすると、やはり投資者の意思というよりは、結局はどこへそれが投資されるのかということが、この証券取引委員会並びに受託者の意思によつてきまるのである。最初そういう前提をもつて投資というものが行われるという結論になるのですが、そういうことになるのですか。
  67. 山本米治

    山本参議院議員 先ほど申し上げましたように、その委託者はどういう株式投資したら有利だろうかという点から考えまして、十なり二十なりの範囲を選ぶわけであります。そしてそれをもくろみ書に公表するのでありますから、大衆から見てあんな選び方では不利になるというのならば、他の乙の投資信託の方へ行くかもしれませんし、あるいは少し知識のある人ならばむしろ直接投資するかもしれぬ。もくろみ書を出すのであります。そこで証券投資專門家たる委託者が選ぶのであります。その選ぶ意図はもつぱら有利安全であることは、先ほど申し上げた通りであります。
  68. 深澤義守

    深澤委員 もう一点だけ……。手数料はどれくらいを予定されているのか。その点をちよつと……。
  69. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 ただいまのところ委託者並びに受託者の手数料を合計いたしまして、大体百分の三以内にとどめたい。これはなるべく低い方が受益者の方に有利なのでありますから、なるべく低くしたい。ただしかしそのために全然受託者が引合わないというのでも困りますので、そういう点を考慮いたしてただいま研究中でございます。
  70. 小山長規

    小山委員長代理 午前中はこれをもつて休憩いたします。午後は一時半より再開いたします。     午後零時二十分休憩      ――――◇―――――     午後二時二十一分開議
  71. 西村直己

    西村(直)委員長代理 休憩前に引續き会議を開きます。  船主相互保険組合法の一部を改正する法律案外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案、及び保険業法の一部を改正する法律案一括議題として質疑に入ります。
  72. 竹村奈良一

    ○竹村委員 現在日本において外国の保険事業を営んでおる会社、その資本額、これらの会社の契約している契約高について御質問いたします。
  73. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 ちよつと今調べておりますから、あとの質問をどうぞ。
  74. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは今度はここに出ておるものに該当する日本における保険会社、その資本総額、契約高がわかればお聞きしたいと思います。
  75. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 現在国内の保険会社につきましては、生命保険と損害保険がありますが、まず最初に生命保険会社について申し上げますと、会社数は現在二十社であります。その資本金または基金――相互会社につきましては、資本金に当るものを基金と申しておりますが、これは非常に金額が少いのですが、合計は約五百七十五万円ということになつております。それから固有の契約件数でありますが、これは千九百三十七万八千件、固有の契約金額は五千五百二十三億、資産の総額は三百三十九億、こういう数字になつております。それから損害につきましては、あとで調べてお答えいたします。
  76. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それでは今度改正される中で、新しく工事等の損害について契約ができることになつておりますが、これに対する保険料率あるいは危険率の負担等をこの保険会社によつてやられるについては、相当困難性があるとわれわれしろうとでも考えるわけですが、そういう点についてはどういうように考えておられるか。
  77. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 今般新しく保険の事業として認めようとしております保証保険事業につきましては、今お話のように一般の損害保険と性質を異にいたしておりますので、その危険率と申しますか、損害発生の率等につきましては、現在正確なる計算の基礎を持つておりません。従いまして、今後この料率をきめて参ります場合には、外国、ことにアメリカ等におきましては、これは非常に普及した保険の種類になつておりますので、これらの実情等も十分参酌し、また本邦におきまする他の損害保険事業の危険の率等も、類似のものについては参酌いたしまして今後きめて参り、毎年の経験によりましてこれを修正して参りたい、かように考えておる次第であります。お話のように危険率が非常につかめないという点もありますので、今後保険会社としての保険事業が、この保険種類についてうまく参るか参らないかという問題につきましては、いろいろ問題があると思います。しかしこれはだんだん経験によつて修正して参ることによつて、そう無理なく支障なく進めて参ることができると考えております。
  78. 竹村奈良一

    ○竹村委員 その問題はこのくらいにしまして、国内の保険会社が投資しておる方面は、一体どういう方面に多く投資されておるか。
  79. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 これは保険業法によりまして、その保険会社が持つております資産の運用につきましては、相当嚴格な規定を持つております。その規定によりまして運用されておるのでありまして、貸付金、有価証券株式等、それぞれ危険分散及び資産の内容の保全のために、必要なる適当なる方法によつて投資しておるわけであります。もし種類別に必要でありますならば、二十五年十二月末における数字がございますので、申し上げてみたいと思います。二十五年の十二月末におきまして、国債に投資いたしておりますものが約五千三百万円、地方債に投資いたしておりますものが六百八十万円、社債が一億八千八百万円、株式が四十七億七千六百万円、信託有価証券が約千六百万円、その他が三百五十万円、これが有価証券投資内容であります。それから貸付金につきましては、これは各種の担保、たとえば有価証券担保の貸付、不動産担保の貸付、財団抵当の貸付、その他いろいろありますが、これらを合せまして総額十六億六千八百万円、かような数字に相なつております。
  80. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういたしますと、新たに今度の法案で工事その他の保証保険事業をやられるわけですが、そういう場合にもし危険負担が非常に多くなつて、会社が経営上非常に危険だというような感じをした場合においては、国家においてそれに対する何か救済策をお持ちになつておられるか。そういう考えがあるかどうか。
  81. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 政府が補償をしてまでこの保険を進めて参るということを、別に考えておるわけではないのであります。各保険会社といたしましては、従来の長い経験からいたしまして、その保険について必要なる措置をとつて参ると思います。たとえば当初予想されましたよりも危険率が非常に大きいという場合には、やはり保険料率を改訂して行くとか、いろいろな方法が考えられると思います。特に保証保険事業というものが、保険会社の営業として認められたといたしましても、今にわかに非常に多くの需要なり、保険契約の成立なりということは、予想はいたされておらぬのであります。この制度は逐次各会社が経験によりまして、だんだん需要者の側におきましても、保険会社の方におきましても、適当なる発展ができるという余地が見出されるに応じまして、発展して行くものと思いまして、この制度を認めたからといつて、ただちに非常に大きな契約ができる。従つてそのために保険料率が当初予想したよりも危険率が大きくなつて、非常に大きな損失を保険会社がこうむるというようなことは、現在のところ予想いたしておりません。
  82. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この外国保険事業者日本人と契約しておりますところの保険契約と、それから日本の保険業者の契約している被保険者との性格的な、あるいはまたそういう事業的な関連性は同じであるかどうか。かわつておるのかどうか。ちよつと承つておきたいと思います。
  83. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 現在の法律の建前といたしましては、外国の保険会社も日本の保険会社も、公平と申しますか、同じ立場において経営をいたすことになつております。
  84. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そうすると資本金などについてこれから伺うわけですが、資本やその他の面あるいは契約の実情等から言つて、大体国内の保険業者が、外国の保険業者に圧迫されるようなきらいがあるかどうか。この点をお伺いしたいと思います。
  85. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 保険会社にも御承知通り損害保険をやつておりますものと、生命保険と二つあるわけであります。生命保険につきましては、これは競争と言いましても、やはり主として外国保険会社が、日本の中で経営いたします保険というものは、大体において外国人及びそれに関連のある人々が、実際問題として多いと思います。もつともこの損害保険、ことに海上保険につきましては、国際的な性質を相当帶びて参りますので、これらにつきましては、外国保険会社も、たとえば日本の船会社とか貿易会社等につきまして、損害保険の対象として相当日本人が、あるいは日本の商社が入つて来ることがあるかと思います。現在のところでは、外国保険会社の資本力が非常に強いとかいろいろな点から、日本の業者が圧迫されることはないと思います。ただ今後むしろ外国保険会社がこちらへ出て来ることによつて、今後損害保険につきものの、ことに海上保険等についてはつきものであります再保険等の交換等が、むしろ円滑に行くというような点におきまして、再保険等におきます危険分散が円滑に行くというようなことが期待できるのであつて、程度によりますけれども、現在程度の外国保険会社の進出でありますならば、むしろそういう点から言いまして再保険等の関係から、その交換等が便宜に行くというふうな利点があるかと考えております。
  86. 竹村奈良一

    ○竹村委員 日本国内で外国保険会社が契約いたしました保険契約、それによるところの保険料金の投資額等は、やはり日本の国内にそのままされておるのか。または本社のある本国に持つてつて行くというような形になつておるのか。その点をお伺いします。
  87. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 この点は現在御承知のように、外国為替管理法の関係から、国内においてたとえば保険料收入として、外国保険会社が收入いたしましたものを、外国へ送金いたすという点につきましては、日本全体の外貨予算と申しますか、そういうふうな外貨の関係のポジシヨンをよくにらみながら、個々について送金を許したり、あるいは向うから取寄せることを認めておるわけであります。それがすべてそのまま外国へ持つて行かれるということはないわけであります。これは特に外国為替等理法の運用にかかつておるわけであります。現在のところはそういう観点から、外貨のポジシヨン等とにらみ合せまして、適正なる調整を加えておる次第であります。
  88. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大体根本的には外国保険業者に対する法律と、それから日本の国内保険業者に対する法律とが同じようにやられておる。もちろん現在は占領下にあつて、いたし方ないとは考えますが、しかし日本が実際講和條約締結等によつて独立した場合においては、おそらくそれが改められると考えておられるのかどうか。この点を伺つておきます。
  89. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 これは戰前は、外国の保険会社にしても銀行にしても同じ問題でありますが、これと国内の銀行なり保険会社というものが、原則としてイコール・フツテイングに立つて仕事をするという建前になつております。今後講和條約ができた後におきまして、私今的確には申し上げられませんが、大体の方向といたしましては、講和條約ができたからといいまして、外国の保険会社とか、外国の銀行の取扱いを特別に虐待して行くとか、あるいは特別に巖格な措置をとつて行く、圧迫するというような措置は講じて参るべきでもないし、また講せられないことと考えております。     ―――――――――――――
  90. 西村直己

    西村(直)委員長代理 ちよつとこの際お諮りいたします。ただいま運輸委員会において審査中の、戰時中政府が買收した鉄道の譲渡に関する法律案につきまして、本委員会の所管とも関連がありますので、本委員会より運輸委員会に対し、連合審査の申入れをいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  91. 西村直己

    西村(直)委員長代理 御異議なしと認めます。それでは運輸委員会に対し連合審査の申入れをいたすことに決定いたします。なお右連合審査会の日時につきましては、運転委員会審査の都合もあると思いますので、この点委員長に御一任を願います。     ―――――――――――――
  92. 西村直己

    西村(直)委員長代理 それでは質疑を継續いたします。有田二郎君。
  93. 有田二郎

    有田(二)委員 銀行局長にお尋ねしたいのですが、保険会社が、ひもつきでいろいろな金融をやつておるという事実がすでに出ておりますし、また実際に表面に出ていなくても、行われている事実があると仄聞しておるわけであります。これに対する銀行局長の所見を承りたいと思います。
  94. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 今お話のひもつきという意味がよくわからぬのでありますが、保険会社がいろいろ貸付等につきまして、あまり適当でない方法でやつておるというようなことを一、二私ども聞いております。これらにつきましては十分監督を嚴重にして参りたい。検査等につきましても、十分これを励行して参りたいと考えておる次第であります。現在お話の点に当つておるかどうか知りませんが、一、二不正行為として起訴されて、訴訟になつておるようなものも実はあります。はなはだ金融機関としての立場から、監督上私ども責任を感じております。今後検査を嚴重に励行いたして、こういうことのないように極力努めて参りたいと考えております。
  95. 有田二郎

    有田(二)委員 極力御盡力なさることはけつこうでありますが、まず根本的に日本銀行は銀行であつて、保険会社ではそういう融通をしないというような考えを日銀は持つておられるようですが、これに対する銀行局長の御所見を承りたい。
  96. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 この点はなかなかむずかしい問題であります。現在の日本銀行は、保険会社だけでなくして、無盡会社でありますとか、信用組合等につきましても、日本銀行は実は取引をいたしておらぬわけであります。これについて取引を開いて行くことがいいか悪いか、いろいろ問題があるかと思います。ことに日本銀行は非常に短期の金融の調整をはかつて行く機関であるという観点から、特に主たる内容は少くとも銀行であろうかと思いますが、今後無盡会社等が相互銀行になつて参るというような場合におきましては、必要に応じてこれらの相互銀行との間に取引を起して参るということも、当然考えて参らなければならぬと存じます。保険会社等についても、実ははなはだ申訳ありませんが、私も就任早々でありまして、的確に最近の情勢をつかんでおりませんけれども、十分事情を確かめまして、保険会社との間に日本銀行が取引を開くべきであるという結論に達しましたならば、そういう方向に向つて参りたいと思つております。しかし現在のところ私としてはまだ結論を出しておりません。
  97. 有田二郎

    有田(二)委員 保険会社のそういう問題が、あちらこちらから起つて来ておるのでありますが、これは同時に脱税行為にもなるわけであります。いろいろな犯罪が生起して来る。従つてこの保険のあり方も、ただ取締りを嚴重にするというだけでなくて、息を拔くようにする。それには日本銀行は、日本銀行という名前でいけなければ、日本国立金庫法案というようなものを出して、公務員にして、單に市中銀行あるいは地方銀行だけに貸し出す銀行、日本銀行という名前がかえつて災いするようであれば、あれを名前をかえてしまつて、そうしてもつと大きな観点で日本銀行のあり方があるべきだ、こう思うのでありますが、その根本的な問題を解決せずして、ただ單に取締りを嚴重にすると言つてみたところで、私の見た現状の銀行局の検査部というのはまつたく無力、検査の仕方についてこつちもいろいろ調査しておりますが、私の現在まで調べた範囲内では、検査部の検査の範囲、やり方はまつたく手ぬるい。従つて今の検査部のやり方では、局長がいかように嚴重に監督をいたしますと言うたところで、不可能なのです。従つて検査を嚴重にすると同時に、そういつた三百何十億、生命保険だけでも非常に大きな金額のものを持つておるのでありますから、この根本的な方針を決定しなければならぬ、こう私は考えておるのであります。日本銀行を日本国立金庫法というようなもので、金庫という名前にかえて、銀行でなくするというような考え方に対して、銀行局長の御所見をひとつ承りたい。
  98. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 この点も私かねがねいろいろ検討いたしてみたことはございますが、はなはだ申訳ない次第でありますけれども、私銀行局長に就任いたしましてまだ日が浅いので、公式な銀行局長としての立場から、今この問題について御意見を申し上げることは、しばらく差控えさせていただきたいと思います。研究は十分いたしております。
  99. 有田二郎

    有田(二)委員 なかなか上手に逃げられるから、ゆつくりひとつこれから伺いたいと思います。とにかく今の日本銀行のあり方なり、それから今の保険業界のあり方なり、あるいは無盡会社が今度は相互銀行になりました。信用組合も信用金庫法案が出て参つておりまするし、いろいろと問題が山積しておるわけであります。日本銀行のあり方についてもすみやかに決定して、就任早々だからというようなことでは、こつちはほんとうは納得できないのです。就任したらただちに銀行局長銀行局長心得ならば別ですけれども、銀行局長という発令がされておる以上は、そういう無責任な答弁では絶対納得できない。すみやかに勉強してこのあり方についての方法を決定していただきたい。特に保険業界にはいろいろと問題があつて、さらにそこに信託なりまた銀行についても、地方銀行の支店、市中銀行の支店、あるいは中央銀行の支店はいろいろと脱税行為がある。こういつたことが、白晝公然と行われておるというような状態であつて、それに対する銀行局の検査部というのは、まつたく無力きわまるものであつて非常に甘い。たとえば先般の早船公団問題の調査を見ましても、金融検査官の山崎という人が検査をした報告を見ましても、まつたくなつておらぬ。起訴された者はいけない。起訴されない者は悪意がなくつてこうなつたのだ。少くとも早船の問題については銀行が片棒をかついでいるわけなのです。しかもそこにやみ金融が行われ、いろいろな事実が行われている。それに対して銀行局の検査部は何らの手を打つていない。従つて現状のままならば、銀行局の検査部を廃止してもいいのではないか。廃止したところで大して弊害はなかろう。銀行局の検査部がある以上、もつとはつきりして、少くとも脱税行為に対しても、やみ金融に対しても、どんどん摘発してしかるべきだ。何ら摘発してない。この点から言つて銀行局の検査部というのは、あつて必要のないもの、給料だけむだになる、こう私は思いますが、銀行局長の御所見を伺いたい。
  100. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 いろいろおしかりを受けまして恐縮であります。検査につきまして手ぬるい。手ぬるくないの問題はいろいろあると思いますが、私どもといたしましては、能力が非常に微力で皆様の御期待に沿い得ない点は、非常に申訳ないといたしましても、検査に手心を加えたり、いろいろかげんをして問題を処理しているということは、少くとも主観的にはないと考えております。今後におきましても、能力の足りない点は十分能力をつけて参るようにいたして参ります。検査等につきましては、お話の点は十分くみ入れまして、公正に嚴格に処置をして参りたい、こう考えております。
  101. 有田二郎

    有田(二)委員 時間がありませんから、大体この程度で終りますが、近いうちにこれらに対する総合的な結論をひとつつくつていただいて、保険業界のあり方なりその他のあり方なり、特に日本銀行のあり方なり――今銀行課長がアメリカ、英国へ行つておるのですが、これが七月にはこちらへ帰られるということでございまするし、すみやかに政府としても方針を御決定を願つて、国会においても意見を聞いて方針を立てたい、かように私ども考えております。どうかひとつ、ただ悪いからほうつておくというのでなくて、日本銀行の横暴をぜひ封じなければならぬ。銀行局長が日銀監理官を兼務しておるということがよくない。すみやかに適切な日銀監理官をこしらえて、阪田君のようなりつばな人を若干でいいから出していただいて、日銀監理官は專任を置いて、銀行局長の指揮のもとにいろいろやる。私がこの間行つて調べたのでは、家賃が公務員が一坪六十五円、日本銀行は一坪六円、給料だけはめちやめちやに高いが、家賃はめちやめちやに安い。そのようなことにしておつたことはまつた銀行局長責任であつて、大蔵大臣の責任なのです。なぜかというと、日銀監理官が一年有半空席のまでおかれておつたというような事実を見ましても、銀行局長は非常に忙しくて、新任早々で、銀行局長の仕事すら勤まらぬさ中に、日銀監理官を兼務するというようなことは妥当を欠く。若手のしつかりした者を日銀監理官に置いて、日本銀行をぎゆうぎゆう締め上げるというような点に対する銀行局長の御所見を最後に承りたい。
  102. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 別に所見を申し上げることもないと思いますが、お話の点はよく承つておきます。  先ほどお話のございました数字がわかりましたから、ちよつと申し上げておきたいと思います。先ほどは生命保険会社について申し上げましたが、損害保険会社は昭和二十五年末におきまして十八社であります。資本金は五億八千八百万円、契約高は一兆六千五百億、それから外国会社の保険契約の收入保険料は、最近の一年で約八億ということになつております。これに対して日本側の保険会社の收入保険料は約三百億、こういう数字になつております。
  103. 田中織之進

    ○田中(織)委員 保険業法の一部を改正する法律案につきまして、一つだけお伺いしたいと思います。今度の保険業法の改正で、例の保証保険事業を新たに営むことができるようになりました。これは主として損害保険会社がこの事業をやることになるのだろうと思いますが、大体この種の保険事業を始めることによつて、大体どの程度の事業の量を予想せられておるか。一般から要望されておるという説明がついておりますが、今度の改正で追加いたしました場合には、この種保険事業はどの程度事業量において予想せられておるか。それからいわゆる保証保険事業という正式のものが、今度の業法の改正でできるわけでありますが、従来実質的にこの種の保険が行われていた面があるのじやないかと思います。また外国の保険会社等で、この種保険を日本の国内で取扱つて来た実績があるかどうか。この二点について伺います。
  104. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 今お話の第一点のこの保証保険事業というものが、保険事業として認められた場合に、どの程度の需要が起るであろうかという点でございます。今のところ実は私どもいろいろの観点から研究いたしてみましたが、どうも的確な数字を実際は押えることが、見通しをつけることができないでおります。先ほどちよつとお答え申したのでありますが、当座は危険率というものが実ははつきりいたしません。これは御承知のようにこの保険の性質からいえば、やはりだんだん経験を積んで、危険率というものを経験によつてはじき出して、これによつて適正な保険料率というものができて、初めて需要も供給もだんだん増加して参るのだというふうに考えますので、当座といたしましては、そう急にこの保険契約が非常にふえるということはないかと考えております。  それから第二点の、現在この種の保険として認めておりますのは、国内におきまして最近信用保険という立場で、東京海上に対してある種の保証保険的なものを認めております。これは一種の損害保険として実は認めておるわけであります。  それから外国の保険会社につきましては、今のところ私どもは、この種のものは保険種類としては特に認めておりません。従つてそういうことを何かくぐつてつておるようなことは、実は耳にいたしておりませんが、何かお気づきの点がありましたら、お伺いいたしておきたいと思います。
  105. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま議題となつております船主相互保険組合法の一部を改正する法律案外国保険事業者に関する法律の一部を改正する法律案、及び保険業法の一部を改正する法律案につきましては、すでに質疑も盡されたことと存じますので、この際三案については質疑を打切られんことを望みます。
  106. 西村直己

    西村(直)委員長代理 ただいまの宮幡委員の動議のごとく決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 西村直己

    西村(直)委員長代理 御異議ないと認めます。それではただいま議題となつております保険関係法案につきましては、以上をもつて質疑を打切ることといたします。     ―――――――――――――
  108. 西村直己

    西村(直)委員長代理 次に有価証券処分調整等に関する法律廃止に関する法律案証券投資信託法案、及び商法の一部を改正する法律施行に伴う銀行法等金融関係法律整理に関する法律案の三法案一括議題といたしまして、質疑を継續いたします。
  109. 田中織之進

    ○田中(織)委員 有価証券処分調整等に関する法律廃止に関する法律案について、二点ばかり伺いたいのでありますが、大体持株会社整理委員会その他の政府が持つておりました証券は、現在まで大部分を整理しておるから、この法律の必要がなくなつたというのでありますが、なお若干処分未済の部分が残ると思うのであります。それは金額にしてどの程度のものであるか。それからおもなる銘柄がわかれば、示していただきたいと思のであります。
  110. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 御承知のように証券処理調整協議会にかけて、有価証券処分をいたしております機関は三つでありまして、その一つ政府、他の一つは特殊会社整理委員会、もう一つは閉鎖機関整理委員会であります。  持株会社整理委員会の方は、当初は約一億五、六千万株を保有しておりましたが、現在ではその約九十五、六パーセントの処分を済ませまして、あとに残つております部分は、わずかに六百万株程度、すなわち三、四パーセントしか残つておりません。しかしこれも六月三十日までに全部の処分が可能になる見込みでありまして、従つて持株会社整理委員会のものは、この法律施行されるまでには一株も残らなくなります。  次に政府の持株でありますが、政府は当初九千万株持つておりまして、従来までにこの協議会を通して約二千万株余りを処分いたしましたが、まだ七千万株ぐらいは一応残る形になります。しかしながらこの政府の持つております七千万株のうち、五千万株以上というものは、証券処理調整協議会があるなしにかかわらず、当分処分は困難な株式でございまして、今後この処分を進めて行き得るものは二千万株足らず、おそらく千数百万株程度でございましよう。政府が持つておりますもののうち、五千万株程度が処分が困難であるというのは、大体が在外会社すなわち満鉄でありますとか、北支開発会社であるとか中支那振興会社であるとか、そういう在外関係会社、あるいは閉鎖機関に指定せられておつて、現に強権的な精算が進められておるような会社、その他日鉄のように一応再建整備の結果、他の第二会社ができました後の旧会社のもぬけのからになつておるような株式等であります。これらは処分もできませんし、またにわかに処分を急ぐ必要もない。自然に清算が進むにつれまして、残余財産の分配として金が入つて来る、こういうものであります。従いまして政府の手にありますものも、現実的には処分し得るものは大部分の処分を了して、あとすでに千数百万株しか残つておらない。しかもこの千数百万株というものは、大体財産税の物納等の関係政府に納付されたものでありまして、中には市場相場が立つておるものもございますが、その多くのものは地方の小さい会社の株式でありまして、市場相場もないし、これは売れば売れるものでありますが、みな小口のものでありまして、従来でも証券処理調整協議会の特別の承認によりまして、各地方の財務局が地方ごとに直接処分というものをやつて来たような株でありますから、これも今後一年くらいの間には処分ができるという形のものでございます。  それから閉鎖機関整理委員会であります。これは当初約九千九百万株程度ありましたものの八十四、五パーセントを今まで処分して参りました。あと十五、六パーセントのものが残つておりますが、この残つておるものも、ちようど政府が持つております株式と同じように、そのうちの半分程度のものは、やはり在外会社の株式とか、あるいは清算会社の株式とか、また閉鎖機関の株式とかいうようなものでありまして、今ただちに処分ができない。漸次清算の進むに従いまして、残余財産の分配として金が入つて来るというものでありまして、実際今後処分を進めて参りますものは、全体の数パーセントというような形でございます。残つておりますもののおもなものは、たとえば政府のものについて申し上げますと、先ほども申し上げましたような満鉄あたりが一番大口でありまして、満鉄一社でありましても二千四百万株残つておる。そのほか中支振興が百万株余り、北支開発が五百万株余り、またこれは在外会社ではございませんが、いわゆる財閥会社として指定されました三井、三菱、住友など財閥本社の株式を、物納株式として現在政府が持つておりますが、これはごく近い間に全部清算が結了いたしまして、残余財産の分配として国に金が入つて参る、こういうものでありまして、売れないでも自然に換価されて参る、こういう種類のものであります。一般会計で持つておりますものは、わずかに二十七銘柄であります。財産税の方では二千銘柄ばかりありますが、先ほど申しましたように非常にこまかいものでありまして、こまかいものもこまかいものといたしまして、一年以内に漸次処分ができるものと、さように御承知を願いたいと思います。
  111. 田中織之進

    ○田中(織)委員 未処理の部分が少いのでありますから、この法律がなくても、経過規定を含んでおるわけでありますから、賛成いたしますが、株式会社整理委員会が従来持つてつた株式処分の問題については、終戰後の特殊な現象として、幾多の問題を残しておるので、これは別途決算委員会等で検討することにいたしまするが、今後この法律廃止されましても、主として大蔵省の責任において、残つておる未処理の部分を、できるだけ換価し、処分しなければならぬと思う。今までの過程で、たとえば持株会社整理委員会の持株の整理等にまつわるような問題は、相当売れ行きのいいというか、足の早いものは出て行つてしまつておるので、なかなかそういうはなやかな場面が、今残つておるものにはないだろうと推察せられますけれども、十分戒心していただきたいと思います。  それからこの法律によりまして、協議会が解散になつてから清算が完了するまでの間、なお経費がいることは当然でありますが、二十六年度の予算は、大体現在どの程度残つておるのでありますか。大体この協議会に関する二十六年度の予算は、この法律が出るということを見越して、たとえば六月末あるいは九月ごろまでしか予算を組んでおらないものかどうか。もし年末まであるものが、突然廃止せられるというようなことであるといたしまするならば、二十六年度の予算、これも嚴密に言えば、法律がなくなるわけではありませんけれども、引續き清算機関が二十六年度の予算をそのまま使つて行くということになれば、これはちよつと問題があろうと思いますが、その点はいかがでありますか。
  112. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 お答えを申し上げます。この証券処理調整協議会は、もちろん政府機関といたしまして、予算がございまして、国会の議決を経ております。その金額は、本年度二千六百万円でございますが、これは当初の見込みでは、このような廃止法律が出されまして、年度の途中においてこの協議会がなくなることを、必ずしも想定いたしておりませんために、この二千六百万円という金額は、一年分の金額であります。しかしながら、この証券処理調整協議会の昨年度の予算を申し上げますと、昨年度は八千七百万円という予算になつておりますから、本年度はその約三分の一程度になつておる。これは先ほどの御説明とも関連いたすのでありまするが、すでにこの協議会が三年目に入りまして、大体二年目ぐらいまでに株式を売つてつた。本年度に残されたものは非常に量的にも少くなつて来ておりますから、その状況に応じまして、かりにこの協部会が一年續くにいたしましても、昨年度予算の三分の一程度で足りるだろうということで、予算がぐつと減つております。しかしながら、この法律が御協議になりまして、三月以内に施行されて、協議会がなくなるといたしますならば、もちろんこの二千六百万円の金額は、相当額が不用に立つてつて来るわけです。但しこの証券処理調整協議会の予算は、他の政府機関の予算あるいは国の予算と違いまして、実はこの金は証券処理調整協議会が働くに従つて、この協議会を使つておるところの三つの機関、すなわち国と持株会社整理委員会と閉鎖機関整理委員会が、手数料として証券処理調整協議会に振り込む仕組みになつておりますために、この協議会がなくなりますと、国を初め三つの機関はこの協議会に金を振り込みません。従つて自動的にこの協議会には金が入つて来ない。歳入も自然に減つて来るし、出るものもない、こういうふうに自動消滅的になつて来る。その反面国の方では、この協議会に振り込む予定になつていた金は、今度はこの協議会の予算としてではなしに、国の、大蔵省所管の予算の一部が不用に立つて参る、こういう仕組みであります。大体この協議会は、この法律通りますと、われわれの今の想定では、六月三十日ぐらいをもつて解散いたしまして、あと清算期間として、せいぜい三箇月、すなわち九月末日までには一切の清算を完了する。そういたしますと、多くても第一、四半期と第二、四半期言いかえると一年の半分だけでありますから、原則としては国等がこの協議会に交付する金額は、半分ぐらい余る。但しこの協議会にも若干の職員がおりまして、その退職手当等、これはきわめてわずかでありまするが、そういうもので出て行くものがございます。またこの協議会の仕事の一つで、株式の登録事務をやつておつだ仕事がございます。これはこの協議会が終るにあたりまして、相当力を入れて今までの仕事をまとめ上げさせたいと思う点もありまするから、半分までは余りないが、半分近いものが当然不用に立つて参りまして、わずかな金額ではありまするが、一つの流用といいますか、補正といいますか、振りかえ得る余剰財源になるわけであります。
  113. 竹村奈良一

    ○竹村委員 一点だけ質問いたします。大体この持株会社整理委員会、こういうものができたのは、ここに説明されているように、証券民主化の立場から、財閥その他華族が持つていたものを分散する、こういう形でできたのでありまするが、今まで処理された経蹄から考えると、そういう目的が達せられたと言つておられるのでありますが、それには幾多の問題があります。けれども、それを問題にしようとは考えておりません。しかしこういう民主化の見地から、広く国民に渡すような形に処理されたかどうかということが、後日問題になつた場合に、この法案廃止して、もしそういう責任問題が起つた場合に、一体だれが責任を持つのか。たとえばそれは大蔵省がお持ちになるのかどうか。この点を伺つておきます。
  114. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 この協議会はもちろん民主化のためにあつたのでありますが、その結果、どの方に処分したかということにつきましては、この協議会は登録部というものを設けまして、資本金一億円以上の会社につきまして、五千株以上の株式の動きをキヤツチしたしつかりした記録があるのでございます。従いまして先ほどもお話がございましたように、あるいは決算委員会等の参考資料として差上げることも、可能であろうと思いますので、それらをお調べくださればわかります。株式は転々流通いたしますから、協議会を離れました後、二回、三回と動いてはおりましようが、少くとも処分の直後あるいはそれに近い間、この協議会が優秀な成績を果したものであることは、おそらく御理解願えると思つて、われわれは安心いたしております。
  115. 竹村奈良一

    ○竹村委員 あなたの方ではそういうふうに考えておられるが、しかしまだ残つておる株の処分もあるわけです。従つてこれを廃止されるという場合には、その後売つて将来何年かたつた後のことを問題にするのではありませんが、その当時のことで問題が起つた場合に、その責任の所在をはつきりしておきたいと思う。それは大蔵省が持つのかどうか。
  116. 内田常雄

    ○内田(常)政府委員 もちろんこの協議会廃止後残りました株式処分、またその処分のあり方が民主化の方向処分されたかどうかにつきましては、今度は大蔵省みずから処分し、また大蔵省の監督下にある整理委員会処分せしめるのでありますから、その責任はもちろん、大蔵省が直接負うことに相なります。またその処分の仕方につきましても、先ほども田中委員にお答えした通りでありまして、きわめて少いものであります。大部分は処分しないでも清算分配金で入つて来るものでありますが、なお若干の財産税のため残されたものの処分の仕方につきましては、相当この法律が生きておつたときと同じ精神でやつて参り、従つてこの法律の附則の第五項にこの協議会がなくなつた後においても、この法律の第一條に掲げる目的の趣旨従つて処分しなければならないということで、政府が拘束されておるわけでございます。
  117. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいま議題となつております有価証券処分調整等に関する法律廃止に関する法律案については、すでに質疑も盡されたようでありますから、この際質疑を打切りまして、討論を省略し、ただちに採決に入られんことを望みます。
  118. 西村直己

    西村(直)委員長代理 ただいまの宮幡君の動議のごとく決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  119. 西村直己

    西村(直)委員長代理 それでは有価証券処分調整等に関する法律廃止に関する法律案については質疑を打切り、討論を省略し、ただちに採決に入ります。  本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  120. 西村直己

    西村(直)委員長代理 起立総員。よつて本案は原案の通り可決されました。  なお本案に関する報告書の作成等の件につきましては委員長に御一任を願います。
  121. 西村直己

    西村(直)委員長代理 この際申し上げますが、証券投資信託法案につきまして、提出者の参議院議員山本米治君並びに証券取引委員会事務局長吉田晴二君お二人が見えております。田中織之進君。
  122. 田中織之進

    ○田中(織)委員 証券投資信託法案について山本さん並びに事務局長に一、二お伺いをしたいと思います。  大体この証券投資信託制度によりまして、どの程度の証券がこなし得るというお見込みを持つておられるか。まずこの点を……。
  123. 山本米治

    山本参議院議員 まつたく同じ質問が午前中にありましてお答えしましたから、速記録をごらんいただけばたいへん幸いだと存じますが……。
  124. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それではそれは後ほど速記録を拜見することにいたしまして、証券取引委員会事務局長にお伺いします。これはほんとうは大蔵大臣からお答えを願つた方が適当だと思うのでありますが、この証券投資信託制度証券振興政策の一環として今度お考えになられたことは、当然考えられるわけでありますが、私は現在のこの長期の産業資金の調達という面から、証券振興政策については、相当積極的な施策を講じなければならない段階に来ておると思うのであります。そういう場合に一つの方法として、この証券投資信託制度が今度立案せられたわけでありますが、これだけでは当面必要とされている証券振興対策のほんの一部分であつて、その他の分野における証券振興政策というものについて、これは政府当局として考えなければならないのではないか、かように考えるのでありますが、この法案に関連をいたしまして、政府として証券市場の振興と申しますか、そういう問題について最近何か特別に手を打とうということを、お考えになつているかどうか伺つておきたいと思います。
  125. 吉田晴二

    ○吉田(晴)政府委員 ただいまの御質問の点でございますが、これは根本的にはやはり日本経済全般の問題に関連する問題で、証券の問題もやはり経済の基盤に立つておりますので、單なる証券だけの政策で証券市場は振興するというわけには参らぬだろうと思います。ただいまのお話の通り、この証券投資信託もその一つの政策として行われたわけでございますし、また最近考えられておりますいわゆるレギユラー・ウエイの問題でありますが、これなども一つの振興政策として考えております。また業者の間では最近アメリカの方を視察いたしました結果、いろいろ経営の合理化あるいは手数料の問題というようなものについても、相当真劍に検討中であります。そういうものを総合いたしまして、振興政策ということに相なつたのであります。
  126. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点については、たとえば先ほど有田委員から指摘をされました保険会社が、一種のやみ金融をやつているとようなことも言われておるのでありますが、そういう貸出しの対象になつておるのはやはり証券関係だ。そういう点から見るならば、証券関係方面ではかなり高率な金をやりくりしてやつておるわけでありますが、私はそういうこと証券市場としては健全なやり方ではないと思うのであります。問題はこれも一つ証券振興政策の一助にはなりますけれども、もつと根本的な点について考えなければ、いろいろ講和も間近くなつて日米経済協力マーカツト声明が出たということで、各経済大臣はうちようてんになつているというようなことが、新聞紙等に報道せられておるのでありますが、マーカツト声明内容を検討すれば、これはたいへんなことが日本の国民に、日本経済界に要求されているということになるのでありまして、決してその点は私はあの言葉の表の文字だけで、酔うておるべき時期ではないと思うのであります。当然あれを現実に経済活動の面で果して行かなければならないということになれば、その資金調達の面において大きな役割をになわなければならないのは、私は証券市場だと思うのであります。そういう意味でこれは根本的にひとつ考えてもらいたいと思うのであります。いずれ別な機会に大蔵大臣からお答えを願うことにいたしまして、あと二点ばかりお伺いをしたいのでありますが、この証券投資信託によりまして、これは受益権をできるだけ広汎に分割するということがこの信託の目的であるのでありますが、こうした形によつていわゆる信託財産の委託者が受ける証券投資によつてつて来る受益率、そういうものとこういう信託の方法によらないで投資家株式投資して得る利潤、もちろん安全性の点においては確かに投資信託制度の方が安全性を持つて来ると思うのでありますが、受益者が受ける受益率、そういうものは大体直接的な証券投資の方法よりも、やはり率の上から見てもうまみがあるということでなければ、この制度が伸びて行かないじやないかということを考えるのであります。大体そういうようなことはわが国においては初めてのことでありましようが、外国等の例から見ても日本で従来やつている直接的な証券投資よりも、こうした形による方がむしろ安全性が一段と加わるという利益の点は認めますが、それ以外に利益率の点で何か目ぼしい開きが考えられるものですかどうか。山本さんかどなたか……。
  127. 山本米治

    山本参議院議員 この点も大体午前中御質問がありましてお答えいたしましたが、この配当見通しと言いますか、もくろみはまだはつきりわかりません。これは信託報酬等をどの程度にするかということにもかかつて参りますが、大体八、九分くらいを今考えておるのであります。それで直接有価証券とか株式投資をするという場合には、現在一割以上――むろん会社にもよりますが、いい会社は平均すれば一割以上と思いますが、その場合に比べて、收益率が低いのは当然でございます。というのはこの機構によりますと、委託者、受託者という関係になつて、間へ他人が入りまして、それに運用をまかすことによつて安全かつ有利に行くが、他人を介在するだけ、それだけ收益率は低くなるわけであります。しかし先ほど申し上げましたように、直接投資すれば、うまく当ればいいかもしれませんけれども、投資知識の少い一般大衆としては、悪い株をつかまされたり、いろいろ安全性の上において非常に次けるところがあるのでありますから、專門家にまかす。その專門家に対する報酬を出すだけが減るわけであります。
  128. 田中織之進

    ○田中(織)委員 午前中実は私参議院の大蔵委員会提案者の立場で出ておりまして、行き違いになつたダブつた質問で、山本さんに非常に恐縮に存ずるのでありますが、それではもう一点だけお伺いいたします。この証券投資信託委託者は、取引委員会に登録されたものに限定されて来るわけでありますが、ここにこの投資信託の対象になつて来る証券というようなものは、およそ限定されて来るだろうと私は思うのであります。大体その範囲というようなものは、ここでこれまた確実性というような問題から、やはり信託財産の委託者からの希望もあることと思いますけれども、大体おのずから範囲がきまつて来ると思いますが、そういう点についての見通しはいかがでしようか。
  129. 山本米治

    山本参議院議員 その点も午前中に御質問がございましたが、委託者があらかじめ十種類なり二十種類の間で、株式なら株式というものを選択いたしまして、こういうものに投資するから、その受益証券を応募してくれ、こういうわけで募集するのでありますから、一般大衆はあらかじめどういうものに投資されるかということがわかるわけであります。それはなお詳しくは信託約款にきめる條項でありまして、その約款には、過去の例などによりますと、たとえば公債には信託財産の一割を投資する。社債には二割くらいを投資する。あるいは株式には七割以上は投資しない。そういうことが一々信託約款に書かれるわけでありますから、大衆はこれを知つて、大体どういうように投資されるかということを知つた上で、希望すればこれに応募するし、そういうものに投資するのはいやだということになれば、その受益証券は買わないということになります。
  130. 宮幡靖

    宮幡委員 これはやはり重複するかもしれませんが、古いような新しい制度でありますので、念のために一応お伺いしておきます。これはたしか戰時中昭和十六年あたりに野村証券野村信託の間で契約が結ばれたことが、日本としては最初のことだと思うのでありますが、当時これは民間の一つの任意行為によつて行われておつたのであります。その結果としましては戰時中の混乱と申しますか、いろいろ特別な事情がありまして、有終の美を收めたかどうかは必ずしも一概には言えません。と同時に最近ようやくその跡始末もついたわけであります。再びこの制度が発足するということは、資本蓄積の積極策としてしかるべきものだという理論にはなるわけであります。そうしてまた投資家から言わしめますれば、気安く投資ができるという問題でいい面も相当ありますが、なかなか田中委員その他の委員からも御質問になりましたように、運用上の問題としては容易ならざる問題がある。そこでまず第一番に伺つておきたいのは、こういう制度は戰時中のようないわゆる統制時代とでも言いますか、その時代でも民間の任意契約というような形に放置しておいたのでありますが、これをことさら今回法制化しなければならないという有力な理由を二、三お示しをいただきたいと思うのであります。
  131. 山本米治

    山本参議院議員 戰時中に行われたものは、昭和十六年十一月に野村証券のやつたのが、ただいま御指摘の通り初めてであつたのでありますが、当時はいよいよ戰争が起るかというような非常にあわただしい空気の中で、立法化する時間もなかつたのであります。そこで既存の信託法及び信託業法というようなものに準拠して、この制度をとりあえずやつたのでありまして、足りないところは民法で補充したという、法律的に見れば非常にずさんな形であつたのであります。従つてたとえて申しますと、委託者の報酬というようなものは、どういう根拠に基いてもらえるかというようことが、なかなか法律的に明らかでないのでありますが、それは信託約款に基きまして、受託者が受けた信託報酬の一部を割りもどしするというかつこうになつている。そのほか法律的に幾多のはつきりしない点があつたのでありますから、今度は單独立法として新しく出直したのです。
  132. 宮幡靖

    宮幡委員 その点は了解いたしました。次にお伺いいたしますが、これは証券取引委員会事務局長の方からお答えを願います。この制度を実施いたしまして信託契約、信託投資と申しますか、その形のでき上つて参ります見込み、今のところ契約の成立する件数というか、大体どの程度できるか。もつと具体的に言えば何々会社から何々証券へ、こういう構想がありますかどうか。
  133. 山本米治

    山本参議院議員 これは先ほど御質問がありまして、午前中私がお答えしたと申したその問題であります。詳しくは午前中に申し上げましたが、二、三十億というのが証券会社方面のくろうとの直感というか第六感の数字であります。それから昭和十七年一年間と昭和二十五年一年間の株式、社債等の民間所有分、個人所有分の比較によりまして、当時の信託結成額にその倍率をかけました数字が三十三億になります。でありますから二、三十億程度、こういうように一応考えているのでありますが、たとえば野村証券のごときはこの制度ができ次第、さつそくやるといつて今意気込んでいるわけであります。毎月五千万円、これは一つユニツトが五千万円が最低になつている。五千万円ずつやつて一箇年間に毎月やれば六億になりますが、五、六億円をやりたいものだと、こういうことを言つております。そのほかにも山一証券などもほとんど同時に始めるのじやないかと思うのでありますが、それらの証券会社がさしあたり五、六億ずつ程度ということにしますと、まだほかにも資本金五千万円以上の証券会社は八つほどございますので、結局最初のときは二、三十億はできるじやないか。それからだんだん成績がよければその後結成額はだんだんふえて来る。こういうようなことになるじやないかと考えているのでありますが、前回の昭和十六年十一月に出発しまして、昭和二十年八月終戰までに百二十九のユニツトが結成されまして、総金額が五億二千数百万円になつたわけであります。
  134. 宮幡靖

    宮幡委員 その点は質問が悪かつたでしようが、その額というわけではないのでありまして、大体現在の見通しで、ただちに契約が成立する見込みのある会社、対象となるものが一体幾つあるのか。そういうことをお聞きしたいのでありまして、全体の契約額が幾らになるということは、これは証券の動きから、投資力、金融の状況等によりまして、今聞くのは無理でありますから、そうでなく今さしあたつて実施したら、この法律に乘つて来るものはどれだけあるか、こういうことであります。
  135. 山本米治

    山本参議院議員 さしあたつて意気込んでおるのが、先ほど申しました野村証券、山一証券、その他いわゆる四大証券というものは大体やるのではないか、こういうふうに考えております。
  136. 宮幡靖

    宮幡委員 そこでその場合、証券会社委託者となるわけでありますが、一般の証券会社それ自体の本来の業務と、受益者から委託されました資金、これとの経理区分は、これはお感じの上でけつこうですが、どういうふうになすつて行きますか。
  137. 山本米治

    山本参議院議員 この信託財産は信託会社に預託されるわけであります。一億なら一億というものを証券会社が集めまして、これを信託会社もしくは信託を営む銀行に預託されるわけでありまして、そこに保管されるわけであります。そうしてそれらの信託財産は委託者委託会社のさしずによつてつたり買つたりされるわけであります。それらの帳簿、経理等は一切その信託会社がやることになつております。その帳簿も大体こういう帳簿を保有すべしというようなことも、これは直接おそらく証券取引委員会の方から指示されると思います。が、そういうふうにして受託会社はカストデイアンとしての任務、つまり善良なる保管者、善良なる管理者としての地位をもつて信託経理をやることになつております。
  138. 宮幡靖

    宮幡委員 そこでもう一つ、これはちよつとむずかしいのでありますが、ごく悪い言葉で言いますと、証券業者、委託者が――もちろん公募いたしましたものによつて投資家資金を集めるのでありますけれども、もしもやみ行為ということをいたした場合に、証券取引委員会はどういうことによつて監査をし、どういう監督をして行くのか。その点に対して、むしろ信託会社の経理内容ではなくて、証券会社自体の行います本法による投資家の操作、その投資家資金との経理区分は、これらのやみ行為等がもしあつたといたしましたならば、それを取締つた監督したりするのはどういうふうにしてやるのですか。
  139. 山本米治

    山本参議院議員 この委託会社が、この組織におきましては大体主役を勤めるわけでありまして、その信託財産に対して、あれを買え、これを買えということはみな委託会社がさしずするのであります。受託会社はこのさしずを受けて財産を運用するだけであります。この主役を勤めるだけに、それに対しましては、それから起る弊害というものを十分警戒しなければなりませんので、委託者の行為に対しては十分法律上の制限が設けてありまして、たとえば第十六條の「有価証券の引受等の指図の禁止」、第十七條の「委託会社有価証券の取得等の指図の制限」というようなことで、委託者たる証券会社があまり自分つてなことをしないようにできております。なお証券取引委員会受益者保護の立場から、受益者保護に欠けるような行為はしてはならないということを、監督する義務を持つておりますので、その点はあまり御心配のようなことはないんじやないか。特に委託会社の資本金を五千万円以上と制限したようなことも、やはりもつぱら中小投資家保護という建前からできておりますので、最後にはこの委託者法律の制限もありますけれども、委託会社の信用、信頼にまつよりほかにはないと私は考えております。
  140. 宮幡靖

    宮幡委員 これは提案者山本議員も同じ国会議員でありますから、私どもはここでこれ以上話合いを續けることは本来ではないかもしれないのですが、法律の規定にあることはもちろんわかります。それでもある程度の取締りもできるし、円滑なる運営ができることも私にもわかります。けれども実際それだけでできない状態がしばしば起る。銀行局長さんもおいでになりますし、とにかく金融機関に対する預金というものは預金者保護のためには万全の策を講じておる。万が一にも取付というようなことが、言葉は悪い言葉でありますが、あつた場合には、おそらく日本銀行は相当の信用額を供与いたしまして、その銀行の破綻を防ぐにきまつております。これはかねがね公表された現在の金融政策でなければならない。そういう立場において委託会社が五千万円の資本くらいは、現在の段階においては微々たるものです。もし投資家利益保護しないような財産状態になつた場合に、それを未然に防ぐことはもとよりでありますが、そういうような危険が絶無だとは私どもは思えない。そこでぜひともこの点については、証券取引委員会におきましても十分な監督をせられまして、せつかくできました制度でありますから、運用にも間違いのないようにしていただきたいということを私は言うのであります。一体投資家保護制度法律の間にどれだけ充実しておるかということにつきましては、これはお互いに議員でありますので、ここでこれ以上申したくありませんが、金融の元締め、証券の元締めたる大蔵省等でもしかるべくお考えいただいて、また将来の適切な方向に持つて行かれる方がよいのではないか。あるいは私の老婆心的な言葉かもしれませんが、投資家保護ということでなければ、この制度は決して円満に遂行されないものだ、かような観点からお伺いいたしたわけであります。  さらにその次は、これが資本蓄積の積極策であるということは、英国の経済史の上においてもはつきりしているわけであります。受益証券は大体無記名証券ということになりますが、この配当に対しまする課税上の処置等はどんなふうになつておりますか。ことに早晩廃止されるかもしれませんが、富裕税等の対象の場合にどういうふうな方針でやられるようになつているか。これは大蔵省の方からでもけつこうであります。
  141. 山本米治

    山本参議院議員 この投資信託の受益の分配に関しました配当所得ということになりますと、大体無記名を原則としておりますので、源泉において二〇%徴收することになつております。むろんもし純粋にこれが株式配当所得であるならば、課税は今はされないことになつておりますが、それは源泉で二〇%とつております。というのは、無記名のために、実際上は総合がなかなか困難でありますから、まず源泉においてそれだけとる。そして総合課税の場合におきましては、それが株式の場合は二五%の控除であるに反しまして、一五%の控除としております。と申しますのは、純然たる株式配当所得ばかりでなくして、この中には社債や公債の利子もありましようし、また株式の場合には、証券そのものの値上りというようなものに基く、つまり譲渡所得的なものも含まれておりますので、それらは過去の経験等に徴して、二五%の六割ということで、一五%控除ということにしているのであります。それでただいまの所得税につきましては、源泉において二〇%引いておりますから、これを利用して所得税の脱税をするということは、やはりできないじやないかと考えておりますが、富裕税等に関しましては、問題は違うわけであります。これはやはり嚴重なる資産調査ということによつて相續税の場合も同じでありますが、相續税、富裕税等の課税につきましては、そういう受益証券を持つているかどうかということの調査によつて、脱税のないように期するよりほかないと考えております。
  142. 宮幡靖

    宮幡委員 その点は現在の制度ではその程度でやむを得ないと思いますから、これ以上お伺いしませんが、その点がどうもはつきりしておらない。何とかこれに特別な緩和をなすべきである。むしろ二〇%の、過去で言えば分類所得税式なものをとりましたならば、これは一応総合せぬという原則を確立して、むしろ資本の蓄積を積極化せしめるという方向に向けるべきである、これは私の感じでありますので、あえて強調するものではありません。またかかる部分はあるのだけれども、脱税をしろというのではないのだが、相手がつかまえにくいだろうということになると、これはずいぶん妙なことになりはしないか。そこでこれは近く新財政金融政策も大蔵大臣は二、三週間のうちには何かものにして見せるということでありますから、それについてまた少し時間をかけてお尋ねをいたしますが、ただ一つこれに関連しまして、大もこの投資信託というような制度は、東南アジア圏の未開発地域の開発などを勘案いたしますと、将来海外投資にこの制度を使うということが連想されるわけであります。これはただいまの提案者にお伺いするわけじやありませんが、銀行局長さん等のお考えにおいて、将来海外投資にもこういう信託制度というようなものを利用したいというような芽ばえが、大蔵省の内部にあるかどうか。これをひとつ承つておきたいと思います。
  143. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 お話のように、信託制度をこういうふうな海外投資の立場から利用して行くということは、非常にいいことだと実は思います。ただ現在のような国際情勢のもとにおきまして、この制度が今の海外投資、ことに未開発地域に対する関係におきまして、どういう形でこれが乘つて来るかという点につきましては、今にわかにそれを期待できないんじやないか。今後におきましては、一つのおもしろい考え方として十分検討に値する、かように考えております。
  144. 大上司

    ○大上委員 ただいま議題となつております証券投資信託法案については、すでに質疑も盡されたと思われまするので、この際本案に対する質疑を打切らんれことを望みます。
  145. 西村直己

    西村(直)委員長代理 ただいまの大上君の動議のごとく決定することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 西村直己

    西村(直)委員長代理 御異議ないようでありますから、本案に対する質疑は打切ることといたします。  これより本案を議題として討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。田中織之進君。
  147. 田中織之進

    ○田中(織)委員 日本社会党は、ただいま議題になつております証券投資信託法案に対しましては、一つの希望條件を付して賛成をしたいと思います。と申しまするのは、この案自体、これからの真の運営によりまして、どれだけの成果を上げられるかという未知数の問題でありまするが、ある意味において証券投資者の保護になり、これを通じて若干の産業資金の調達の面においても貢献することと思うので、わが党は賛成するわけでありますが、最初の本日の質問において私申し上げましたように、現在日本経済の再建をやるという意味において、証券振興政策については拔本的な対策を考えなければならぬ段階に、私は来ておると思うのであります。その意味において、これもそのほんのわずかの一部分にすぎないのでありまして、残されておる証券市場の振興に関する拔本的な対策を政府としてすみやかに立てる。この法律案は議員提出で出されて来たものでございまするが、政府の方としては、法律案によるとよらないとを問わず、現在の証券市場の萎靡沈滯した態勢を一日も早く活気を盛り返すような意味の対策を、至急法律制定と同時に政府は講ずべきであるということを強く要望いたしまして、本案に賛成いたします。
  148. 西村直己

    西村(直)委員長代理 次は竹村奈良一君。
  149. 竹村奈良一

    ○竹村委員 私は日本共産党を代表して、本案に反対するものであります。まず本法案は小投資家保護ということが目的にされておりますけれども、現在の日本経済から考えてみまして、また現在日本日米経済協力の名のもとに、これはもう好むと好まざるとかかわらず、諸外国の新聞もそのことを報じておるように、日本がちようど東洋の兵器廠の役割を果させられるがごとく産業が発展せしめられつつあることは、これはもう火を見るよりも明らかなことでありまして、一々具体的な例をあげることは避けますが、しかしながら問題はその面に対しまして、いわゆる小規模な資産家をもこれに動員して、その中に資金を集中せんとする方針であることは、これはその意図いかんにかかわらず、遺憾ながらその方向をたどらざるを得ないことは、火を見るよりも朗らかな事実であります。たとえば本法案制度としてできましても、これは直接に当然これに着手できる得るところの証券会社は、現在においては二、三社であり、あとは大体五大証券会社だけが、そういう業務を扱い得るというような点が言われておるごとくに、この少額投資家利益保護いたそうとするならば、勢い当面するところのそういう産業投資するという方向に向わざるを得ないことは、はつきりしているわけであります。しかも問題は、かつてわれわれは戰時中におけるところの野村信託が、少額投資者に対してかけた当時の迷惑等を考えますならば、今日こういうような形におきまして制度ができて、そこに勢い今まで証券をあまり考えなかつた人々をもこれに動員して、ここに持つて行くことが今日の日本の状態から考えて好ましいことではないと思うのであります。従つて法案は、結局において先ほど申しましたように、小所得者をしていわゆる大資本の動員の中に巻き込もうとするものでありまして、結局日本の一番大きな問題になつておりますところの中小企業に対するところの資金の問題が考えられずして、こういう制度ができますならば、ますます中小業者の資金の調達の面が困難になると考えまするがゆえに、本法案に対しましては、反対するものであります。
  150. 西村直己

    西村(直)委員長代理 討論は終局いたしました。  これより本案について採決に入ります。本案に賛成の諸君の御起立をお願いいたします。     〔賛成者起立〕
  151. 西村直己

    西村(直)委員長代理 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願います。     ―――――――――――――
  152. 西村直己

    西村(直)委員長代理 田中君、それでは商法の一部を改正する法律施行に伴う銀行法等金融関係法律整理に関する法律案についての質問をどうぞ。
  153. 田中織之進

    ○田中(織)委員 商法の一部を改正する法律施行に伴う銀行法等金融関係法律整理に関する法律案について、一点だけ質問しておきたいと思います。  この法律の改正の第一点に、銀行、無盡会社、信託会社等の無額面株式の発行は、特に金融機関をして資本の金額を不確定にするものであるから、これを廃止するということが目的のようになつておるのでありますが、私この趣旨には賛成するのであります。そういたしますと、先般国会を通過いたしました日本開発銀行につきまして、この規定が私同時に適用されなければならぬと思うのです。銀行、無盡会社、信託会社とありますが、大体開発銀行は、法案審議のときに私も指摘したのでありますけれども、資本金は政府の米国対日援助見返資金特別会計からの出資金百億円と、あとはこの法律の四十七條第一項または第三項、すなわち復興金融金庫から回收して来た政府へ納付するもののうち、一般会計から出資したものと認めた額ということで、これは金額が確定していない。見返り資金からの百億だけは確定しておりますけれども、さらに開発銀行法の四條の三項にありますように、開発銀行は必要があるときは、大蔵大臣の認可さえあれば、いつでも資本金をふやすことができるとなつておりまして、それはあとの條項で政府からの出資でなければいかぬし、政府はまた予算の範囲内でなければならぬという一つ制約はありますけれども、私はこれは開発銀行のときにも、この新銀行の資本金というものが非常に不確定であるということを指摘したのであります。私この今度の商法の改正に伴いまする金融機関等の法律の一部を改正するためにあたりましては、当然これは無額面株式だけの発行を認めないことになつておると思うのでありますが、私は何らかの形において、開発銀行のようなこういう資本金の額を確定しないことも、改めさせなければならぬと考えるのであります。銀行局長の御所見を伺いたいと思います。
  154. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 ただいまの点にお答えいたします。まず第一に、これははなはだ実体論でなくして、形式論でありますが、日本開発銀行は御承知のように、銀行法に基く銀行ではありませんので、この銀行法の規定とはまるで性質の違つた特別銀行ということになつております。従つて今ここで御審議を願つております銀行法に関する規定の適用はないということになります。形式的にはそこは矛盾いたしておりません。それから実体論でありますが、お話のように、開発銀行といえども銀行でございますので、資本金はなるべく明確にした方がいいということは、私も同感であります。但しこの開発銀行は御承知のように、全額政府の出資によつてできるものであります。形はいろいろありましようが、結局において政府資金が出資になつておるのであります。一般の金融機関におきましては、あるいは預金を預かるとか、いろいろな債務を負つて大衆から預金を集め、その預金を運用するという形になりますので、その銀行の信用という点からいいまして、資本金を確定しなければならぬという、強い実体的な要請があると思うのであります。しかしながら開発銀行におきましては、実体的に、今申しましたように、すべての資金のもとは政府資金である。もつとも今後債券を発行いたすということになりますと、その場合に若干外部の資本が入つて来ることもありますけれども、現在におきましては、債券を発行することは別に考えておりません。従いましてその間におきまして、実体上も開発銀行と一般銀行とはおのずからその性質を異にしておりますので、資本金はなるべく開発銀行におきましても確定した方がいいとは思いますけれども、一般の銀行と同じように、その点は考える必要はないと考えております。
  155. 西村直己

    西村(直)委員長代理 本日はこれにて散会いたします。     午後三時五十三分散会