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1951-05-16 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月十六日(水曜日〕     午後二時六分開議  出席委員    委員長代理理事 西村 直己君    理事 奧村又十郎君 理事 内藤 友明君       川野 芳滿君    佐久間 徹君       島村 一郎君    清水 逸平君       高間 松吉君    苫米地英俊君       三宅 則義君    武藤 嘉一君       宮腰 喜助君    松尾トシ子君       竹村奈良一君  出席政府委員         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局調査課         長)      泉 美之松君         大蔵事務官         (国税庁税部         長兼主税局税制         課長)     原  純夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁徴收部         長)      田所 正幸君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      原  三郎君         大蔵事務官         (国税庁調査査         察部長)    忠  佐市君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 五月十二日  委員江崎一治辞任につき、その補欠として竹  村奈良一君が議長指名委員に選任された。 同月十五日  委員稻田柳右エ門辞任につき、その補欠と  して河野金昇君が議長指名委員に選任され  た。 同月十六日  委員宮幡靖辞任につき、その補欠として武藤  嘉一君が議長指名委員に選任された。 五月十五日  租税債権及び貸付金債権以外の国の債権整理  に関する法律案内閣提出第一五九号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一六〇号) の審査を本委員会に付託された。 二月五日  在外公館等立替金即時返還に関する陳情書  (第一  九六号) 五月十二日  漁業権証券に対する課税免除陳情書  (第六八四号)  水産業協同組合に対する法人税免除に関する  陳情書  (第六八九号)  漁業権証券に対する課税免除陳情書  (第六九三号)  証券業者の貸倒準備金に関する陳情書  (第七〇九号)  富裕税財産評価方法に関する陳情書  (第七一〇号)  証券会社のあつ旋による債券投資貯蓄組合組成  に関する陳情書  (第  七一一号)  フエルト輸入関税率改正に関する陳情書  (第七三二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  租税債権及び貸付金債権以外の国の債権整理  に関する法律案内閣提出第一五九号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第一六〇号)     ―――――――――――――
  2. 西村直己

    西村(直)委員長代理 ただいまより会議を開きます。  昨十五日本委員会に付託に相なりました租税債権及び貸付金債権以外の国の債権整理に関する法律業及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の両法律案一括議題といたしまして、まず政府当局より提案趣旨説明をお願いいたします。
  3. 西川甚五郎

    西川政府委員 ただいま議題となりました租税債権及び貸付金債権以外の国の債権整理に関する法律案提出理由を御説明申し上げます。  租税債権及び貸付金債権を除く国の債権で、債務者が無資力のために当該債権にかかる收入金を納付することが著しく困難であると認めるものにつきましては、従来の租税外收入金整理に関する法律規定によりまして、これを分賦弁済方法による定期債権または資力回復のときを弁済の期限とするすえ置き貸債権として整理して参つたのであります。しかしながら同法は明治四十四年に制定されました法律でありまして、その規定によりましては、当該債権の処理に万全を期しがたいうらみがありますので、これらの国の債権を保全するとともに、その納付を容易にし、もつて当該債権管理適切を期する目的をもちまして、この法律案提出いたした次第であります。  次にこの法律案内容の概略を申し上げますと、第一に、租税債権及び貸付金債権以外の国の債権で、債権者が無資力のために、その債権にかかる収入金を納付することが著しく困難であると認められるものにつきまして、分割して定期に返済させる定期債権または債務者資力回復したときを待つて返済させるすえ置き貸債権として整理することができることといたしたのであります。  第二に、定期債権またはすえ置き貸債権といたしましたものにつきましては、従来これを大蔵大臣に引き継ぎ、その債権回収等管理事務都道府県知事に行わせておりましたが、管理事務大蔵大臣が行うこととするとともに、その債権特別会計に属するものでありますときには、大蔵大臣に引き継がずに、当該特別会計管理する各省各庁の長においてもその管理を行うことができることとし、またこれらの定期債権またはすえ置き貸債権大蔵大臣または各省各庁の長が管理する場合におきましては、その事務の一部を他の官吏に委任することができることといたしまして、一層回収事務円滑化をはかることといたしたのであります。  第三には、定期債権またはすえ置き貸債権整理適切をはかりますために、その債権管理者が特に必要と認めました場合には、その債権貸付條件を変更することができる道を開きましたこと、また定期債権につきましては、その最後の返済の期日から十年を、すえ置き貸債権につきましては、すえ置き貸債権にした日から二十年を経過いたしましても、なおかつその債務者資力回復の見込みがない場合におきましては、その債務免除することができることといたしたのであります。  次に租税特別措置法の一部を改正する法律案について御説明申し上げます。  本改正案は、漁業権消滅に伴つて交付される補償金及び土地収用等に伴つて交付される補償金について、課税上の特例を設けようとするものであります。すなわち一昨年以来漁業法改正によつて行われております漁業制度根本的変革に伴い、本年八月及び十二月の二回にわたり従来の漁業権消滅せしめ、旧漁業権等に対上補償金を交付することとなつているのでありますが、現行税制のままでは相当多額税負担となり、漁業制度改革実施を不円滑ならしめるおそれがありますので、その負担軽減をはかることが適当と認められるのであります。また土地収用法等特別の法令の規定により土地その他の物件収用される場合におきましても、同様の課税上の問題が発生しますので、同様に負担軽減をはかつて土地収用等の円滑な実施に資することが必要と考えられるのであります。政府はこれらの目的のため、租税特別措置法の一部を改正することを適当と認め、ここに本改正案を提案いたした次第であります。  以下本改正案についてその概要を申し上げます。  第一に、漁業権消滅に伴つて交付される補償金に対する課税につきましては、個人の場合と法人の場合とで異なつております。  まず個人の場合について申し上げますと、漁業権は原則として事業用資産でありますから、現行法におきましては、個人行つた評価額財産税調査額または財産税調査時期後の取得価格との差額について再評価税が課せられ、補償金額と再評価額との差額譲渡所得として所得税の対象となるのであります。しかし漁業権財産税調査価格が比較的低く定められたことと、漁業権について再評価した個人がきわめて少いこととに基き、相当多額譲渡所得が発生する実情にありますので、漁業権消滅のときにおいて補償金額を再評価額として再評価が行われたものとみなし、六%の再評価税のみを課税し、譲渡所得に対する課税を行わないこととしたのであります。  次に法人について申し上げますと、現行法の場合におきましては、補償金額と再評価額との差額に対して法人税が課せられ、再評価前の帳簿価格との差額について再評価税を納めることとなるのでありますが、個人の場合と同様再評価行つた法人はきわめて少く、また漁業権が半永久的な権利でありましたため、記帳価格がないかまたはきわめて低額に記帳されておるため、法人税負担が相当多額となりますので、記帳価格のあるといなとにかかわらず、また第一次再評価行つたといなとにかかわらず、補償金額限度額として第二次再評価を行い得ることとしたのであります。従つて補償金額まで再評価を行うことにより再評価税のみを納付すればよく、法人税課税されないこととなるのであります。  第二に、土地収用等に伴つて交付される補償金に対する課税上の特例について申し上げます。現行法におきましては、個人が有する土地その他の物件収用された場合におきましては、収用のときにおいて再評価したものとみなされることになつているのでありますが、その再評価額が特に農地等について統制価格がありましたため低目になつておりますので、譲渡所得が相当多額に生ずることになつております。そこでこの場合における法定再評価額を引き上げ、補償金額を再評価額とすることにより、譲渡所得を生せしめないこととしたのであります。  また法人がその有する土地その他の物件収用された場合におきましても、同様の問題が生じますので、収用された土地等帳簿価格が付されているかどうかにかかわらず、また再評価行つたかどうかにかかわらず、収用の日の属する事業年度開始の日現在において、補償額を再評価限度額として再評価を行うことができることとし、その負担軽減をはかつているのであります。  何とぞ御審議の上すみやかに賛成せられんことを切望してやまない次第であります。
  4. 西村直己

    西村(直)委員長代理 次にただいま提案趣旨説明を聴取しました右両案を一括して質疑に入ります。  本日は大蔵省主税局調査課長国税庁徴収部長国税庁間税部長国税庁調査査審部長がお見えになつております。御質問がありますか。
  5. 武藤嘉一

    武藤(嘉)委員 私は最近の大蔵省酒類についての御方針を伺いたいので、特にきよう一日だけ委員をさしてもらつているわけでありますが、国税庁でもよし、あるいは主税局でもよろしいが、ひとつ御答弁願いたいのは次の点であります。  御承知のない方もありますが、最近まで酒類については配給という制度があるのでありまして、これは普通の価格よりも安く、農村であるとか鉱山であるとかあるいは工場であるとかいうところへ、税を幾分低目に出しておつた。その理由は、要するに工場の能率を上げる、あるいは農業の増産意欲を高める、あるいは炭鉱の出炭率を高めるという意味において、戦時中から行われている制度であります。これについてはあるいは大蔵省では、戦時中のよう制度であるから、こういうものはやめたいので、いろいろの意見もあるのでありましようが、大蔵省はどういう点で最近これをとめられておりますか。その理由をひとつ承りたいのであります。
  6. 原三郎

    原説明員 お答え申し上げます。配給酒の沿革はいろいろございまするが、現在配給酒につきましては全部中止の状態に置かれておるのであります。理由はいろいろございまするがおもなるものを申し上げますると、まず第一に配給酒が、末端によつて横流れその他の弊害を伴つていることがいろいろの方面から話題に上り、また酒類業界の一部におきましても、その弊害を指摘しているというような点もあるわけであります。第二の問題といたしましては、御承知ように一部減税等考えて、その見返り財源考えているわけでありまするが、その中に、酒税をある程度増収したいという構想もあるのでありまして、配給酒を減らすことによつて若干税収を上げ得る、そういう範囲もあるわけであります。いろいろありますが、そうい考え方に基きましてやつておるのであります。なおそのほかにたとえば冠婚葬祭用のための配給酒、これは現在実際的にはあまり真の利用者に利用されておらないようにも聞いておりますし、そういうものはこの際やめたらどうか。いろいろの部面にいろいろの問題を生じているので、一応再検討するために中止をしたわけでございます。これをどういうふうにするかということは、最終的にはまだ経済安定本部との関係もありましてきまつておりませんけれども、現在の私たちの抱いている構想を中間報告的な意味において申し上げますと、大体鉱工業用及び農林水産用進駐軍用、こういうものに限定して、かつその数量をある程度削減したところに置いて、配給制度を今年度も実行しようというふうに考えておるのであります。それでは清酒はこれによつてどれくらい浮くかということになりますか、約二十億見当のものであります。配給酒は御承知よう加算税だけが安くなつている関係もありますし、また先般御審議を願つて成立しました酒税法改正につきましても、加算税金額は大分少くなつておりまするので、税収としては一応二十億でありますが、少くともその程度のものはこれを確保することができようというようなことで、現在そういう案によつて政府部内で決定が済み次第、これを実行に移したいというよう考え方でおります。それに関連して若干こまかくなりますが、生産業者自家用というものが従来あるわけであります。これはやはり自分たちがつくつておるものを、若干なりとも配給しなければ、その工場に従事する人たちがどうしても飲むために、脱税その他のおもしろくない現象を来すというわけで行われておるのでありますが、これは今後も、相当数量的には下まわりますけれども、こういう制度はやはり客観的に見て必要であろうということを考えまして、制度としては残して参りたいというふうに考えております。以上簡単でありますが……。
  7. 武藤嘉一

    武藤(嘉)委員 ただいまの間税部長お話では、二十億税収入が入りそうだということでありますが、ただ私の言いたいのは、業者の側から申せば、おそらくはかの税でとれないから、その穴埋めに酒を使うということは、ただでさえも大蔵省に御奉公しているのに、この上またわれわれの犠牲においてほかの税の欠陥をここで補うということは、業者が聞いたならばたいへん憤激するだろうと私は思います。それから今お話のありましたことについて申し上げたいのは、この配給酒を減らすことによつて業態が成り立たないものが出て来るのであります。それは大蔵省全国にわたつて指定卸と名づける、あるいは一名甲機関と申しますが、指定卸と名づける機関と申常に奨励した時代が三、四年前にあつたのであります。これを大蔵省は慫慂するといいますか、優先的な立場で、非常に設立を慫慂したのであります。従つてこれらの機関は、先ほどの部長お話ように、今急に配給酒が廃されたならば、経営が非常に困難になつて来るきらいが全国的にありはしないかということを、特にお考え願わなければならぬと思います。  それからまた第二に、全国に今あります米の酒以外の業態は、配給酒という制度がありましたために、今までどうにか品物が売れておる。聞けばその売れ行きの数量の六割は、配給制度に依存しておるということであります。かような場合において、しかも二十六年度の始まつた四月早々に、かようなことを大蔵省が抜打ち的にやられることによりまして、業者は今後の経営方針が立たないというよう心配が起つて来ておるのではないかと思うのであります。その結果はどういうことになるかと申せば、業界の波乱と同様に非常に危険なことは濫売をする、あるいは貸し付けて売る、いわゆる掛売りを盛んにするというような点が起つて来はしないかと思うのでありますが、これらに対して大蔵省は絶対に心配がないとおつしやるのかどうか、御返事が承りたいのであります。
  8. 原三郎

    原説明員 お答え申し上げます。いろいろ御質疑がありましたが、順を追つて申し上げますと、酒造家犠牲において税収をはかるというような話がありましたのですが、そういうことはもちろん考えられもしないことでありまして、大蔵省酒造関係者との間の密接な関係は、武藤委員が一番よく御存じのはずであります。この政策はちつともかわつておらないのであります。それで理論的に申しまして、間税でも直税でもそうでありますが、税というものは法律にすべてきちんと書いたものを、これを忠実に実行して参るべきはずのものでありまして、またすべてそういうふうにやつておるのでありますが、酒税の問題になつて来ますと、配給酒におきましては、行政措置によつて、ある特定のものに対しては加算税というものがなくて済む。つまり税金を負けてやるというような結果になるのであります。法律上そういう制度はつきりはしないけれども、あるようなものでありまして、特にそういう点では、たとえば官庁特配とかいろいろな特配関係もありますが、そこに非常にいやな事情を持つているというような、理論的な面もひとつお考えおきを願いたいのであります。できるだけそういう弊害のないようにこれを運用して参りますけねども、観念的に考えますと、やはり若干あと味の悪いものを残しておるのであります。配給酒を減らしましても大体半分程度になろうかと思うのでありますが、その場合に業界立場考えて、具体的な内容をつくつているのであります。たとえば今御指摘になりました合成酒におきましては、六割くらいが配給酒に依存している。従つて今これを急激に減少するならば、業界としては非常に困るだろうということが当然予想されるのでありますが、この点につきましては、配給酒として制度が残りますので、そういう残つた向きに対する配給酒としては、合成酒を重点的に充てて行くというような配慮が、裏に十分あるわけであります。業界としていろいろお困りの面は出て来ようと思うのでありますが、まあ指定卸の場合もそうですが、全体の酒類取扱量から見ますと、決定的な割合を占めるものでもありませんし、その中の一部分が削減されるということになるので、これによつて業界が非常に大きな混乱をするとは、実は考えておらないのであります。  なお金融の問題につきまして、特にメーカー方面にもいろいろ問題が現在ありますが、これはこの制度とは一応切離しまして、別途の観点から別に研究を進めておるよう実情でございまして業界混乱は、とりもなおさず酒税確保を念願とする大蔵省立場とも非常に密接に関連しておりますので、円満な業界の発展については、あらゆる手を打つて参るということについては、今後もちつともその方針にかわりがないということだけを、さらにつけ加えておきたいと思います。
  9. 武藤嘉一

    武藤(嘉)委員 先ほど、業者がどこも自家用を持つているのですが、これはついては全廃はなさらないと大蔵省におつしやつたので、この点は大いに了とするところでございますが、ただここで問題は、税務署その他の官庁にあつた官庁用の酒、これはわれわれ大蔵委員会も過去においてその恩典にあずかつたのでありますが、この酒が全廃されるということになると、はたしてそれで行けるかどうか。私の非常におそれるのは、その用途指定酒がなくなつたことが、結局また業者のところへ、なくなつたところのしりが来て、業者に、ただでさえも今度の命令か指令で非常に減るそうでありますが、そこへまた役所から、おれたちの方の酒がなくなつてしまつたのだ、今まであつた宴会用の酒も何もみんななくなつてしまつたのだ、だからお前たちの方のをよこせと言つて、今度は業者の方へ各方面役所が来られては、業者としてはたいへんたまらないことであろうと思うのであります。  それからなお、これは大蔵省を攻撃することになるのでありますが、この酒の用い方について、私の知るところにおいては、大蔵省役所が相当この恩典を受けており、同時にまた税務署方面においても、相当これを必要としているのであります。それで業者方面におきましては、これを著しく減少され、さらに官庁はそういう集会用の酒は全廃ということになつて来ると、業者が今後受けて参りまするところの圧力というもの——圧力といいまするか、だんだんに世が苦しくなるということは、非常に莫大なものであろうと思いまするが、これに対して大蔵省は何とお考えになり、またそれに対してどういう御処置をおとりになる御方針であるか、伺いたいと思います。
  10. 原三郎

    原説明員 きわめてあり得るような、真剣な御質問なのでありますが、これにつきましては、確かにそういう問題は末端において出るであろうということを、私たちも実は心配しておるのであります。実はこちらの席に参るとききめて参つたのでありまするが、今の問題につきましては、税務署員末端の人にまで、長官名で厳重なる通達を出すことになつております。同時に、御承知だと思いますが、大蔵省には監察官制度というものがありまして、税務職員の身上その他について十分監視をして——これは長官直属官吏でございますが、そういう監察官にも、この問題について十分監視をするようにということも同時に並行して参り、そういう点について世間の顰蹙を買うというようなことは断じてやりたくない。従つて業界に対しましても、むしろお願いをしておきたいと思つておるのでありまするが、そういう目に余る行動のあつた場合には、率直に役所なりあるいは主税局なりに報告を願いたいということを考えておるのであります。そこまで私たちとしては腹をきめて、この制度をやつて参りたいというふうに現在考えておるのであります。
  11. 武藤嘉一

    武藤(嘉)委員 最後にもう一つ伺いたいと思います。そこで業者の製造するもの等に対する用途指定と申すものは残して行く、なおこの際非常に削減されたから、大蔵省としてはそれに対して何か弊害が起りはしないかということについて、万全の処置をとるという部長お話でありまするから、部長の心情を深く察しまして、私はこれ以上追究は申し上げません。ただここに申し上げたいのは、最近の大蔵省酒行政に対する方針が、どうも私どもから見ると、始終ぐらぐらしておるようであります。たとえば終戦後四、五年は、税収入確保について、非常に強く統制もしくは監督主義ということを言われておつたようであります。そしていまなおその残滓といいまするか、相当残つておりまして、末端の方へ参りますと、役所が一般の営業免許に便乗いたしまして、相当に干渉をいたしておるのであります。ところがそれでははつきり統制主義であるか、監督主義であるか、酒の税は国税の二三%を占めるところの重要な国家の財源であるから、どこまでも非常に強く監督をして行くかというと、また反対の面が現われております。それはどこにも最近ありますように、小売免許を非常にたくさん出している地方があるのであります。そのために末端へ参りますと、著しく濫売をいたしておるのであります。小売掛売という形で無理に消費者品物配給する。結局品物の代金の回収が非常に遅れて参りまするために、生産者は遂に大きな滞納問題を引起しておるというような問題もある。それでは乙には許すかと思うと、また監督主義を一部においては残しておるというようなことでありまして、一体徹底的に監督主義で行くのか、あるいは自由放任主義で行くのか、これらがどうも私どもから見ると一定していないように思う。それからまた営業免許についても、過去は相当厳重であつたかと思うと、今は免許をどんどん許していて、弱小の工場でも許している。そしてまだこれでいいかと思うと、大きなメーカーから言われると、また大きなメーカーの威力に押されると言うと語弊があるかもしれませんが、大きなメーカー陳情を入れて、いろいろな営業免許を許しおるのであります。賢明なる原部長でありますから、この際ひとつ大蔵省方針はどつちか、はつきり確立をして、一定の方針でやつてただくのがよいのではなかろうか、こう思うのであります。合成酒とか、あるいはしようちゆうというものについては、非常に濫売が行われる。このために大蔵省は非常に苦労されておるのでありまするが、一方ビールなんかを見ますると、ほとんど独占事業の程度でありまして、ビールの販売というものは、ほとんど過去の少数のもの以外はビールは扱うことのできない現状になつておる。ビール会社は幸いに独占禁止法で三つに分解しましたけれども、現在においてはビールの扱いというものは非常に困難な状態である。普通の者の自由競争は全然ないのであります。特定の者しかビールは扱えない。しかも一方蒸留酒なんかについては、そういうようにどんどん小売免許あるいは卸売免許を與えられるがために、非常に濫売の弊がある。かような点は何かもう少し、私ども考えるのには一貫した政策、たとえば製造免許についても、あるいは卸、小売免許についても、ある一定の基準とか何か、大蔵省においてお立てにならなければいけないのじやないか。熊本からおかわりになつた原部長は、きわめて最近でありますから、まだ準備中であられることとは思いますが、何かこの機会に、全体に対する酒税の政策をお考え願わなければならぬと思う。酒税は非常に莫大な国税のパーセンテージを占めており、また大蔵省としても、実際滞納されたり、これが最後に至つて税収入が入らないということになると、非常にお困りである。この大きな酒税政策に対して、どうもまだ私は確立していないと考えるのでありますが、これらに対する部長のお考えはいかがでありますか、承りたいのであります。
  12. 原三郎

    原説明員 お答え申し上げます。いろいろの方針が時とともにぐらぐら動いているのではなかろうか。従つて業界としても帰するところを知らぬと申しますか、将来の計画を立てにくいというような御趣旨の御質問考えるのでありますが、私たち考え方の基本は現在どうであるかと申しますると、できるだけ業界の自主的な公正取引でやつてただきたい。それがいろいろやつているうちに弊害を伴つて来て、業界としても、ひいては酒税管理のためにも弊害を伴つて来るという場合に、若干時期的に遅れることになるのでありますが、それに応じて手を打つて参るというような、どちらかといいますと、受身の行政的な面が多いかと思うのであります。従つてものによつて見ると、非常に物足らぬというような面が出て参りまするし、また相当弊害を伴つているときには、ある程度強力な手を打ちまするので、今度は非常に行き過ぎではなかろうかというような感想も、あるいは一部に出るかとも思うのであります。大体今までのところ、こちらの国税庁として手を打つ場合は、業界の各方面の意見を十分聞いて、そういう線は尊重して参つておるつもりであります。ただその結果が、わずかばかりの十分訓練されない税務官吏がおりまするので、あるいは末端において若干の行き違いを生ずることがあろうかと存ずるのでありますが、作業の中心はそういうところに置いておるわけであります。  それから免許の問題につきまして御質問があつたのでありますが、過去においては新しい免許はほとんど出さないというようなことでありましたが、終戦後公正なる自由取引というような気持もありまして、ある程度これを緩和して参つておるのが実情であります。但しそれが経営として成り立たないとか、あるいは脱税その他の不正な行為が行われた場合には、免許を取消して参る。しかし比較的免許取消しというものが行われなかつたのであります。最近それはどうもおかしい一定の資格峰件に合致すれば、大体そこに免許を與えるかわりに、悪いことをしたものは当然脱落すべきであるという気持から、免許取消しの建前もあわせてとることにして、大体免許行政というものをやつておるのであります。これは見方によりますると、若干かえても、いいのじやなかろうかというような空気と申しますか、実情の変化があるようにも考えるのでありますが、そういう点ついては現在いろいろ研究はしておるのであります。しかしまだ方針として表面的に切りかえるという段階までには全然至つていないので、今まで大体そういう気持で参つておるということだけを申し上げておきたいと思います。
  13. 奧村又十郎

    ○奧村委員 原間税部長にお尋ねいたしたいと思うのであります。最近税の懇談会において政府に、所得税その他約八百億の減税案を答申しております。その減税の財源は、主として酒類の増石による増収ということに重点を置いておるようであります。従つて昭和二十七年度の予算編成については、まずこの酒類の増石による増徴、これがどのくらい見込めるかということが、相当大きな問題になろうと思うのであります。  そこで私のお尋ねしたいことは、消費面から考えて、一体この上酒はどのくらい増石されて、無理なく消費されるかという点のお見通しをお尋ねして見たいと思うのであります。現在の市価、つまり現在の酒税の率で行つて、昭和二十六酒造年度ではどの程度造石して無理なく消費されると考えておられるか。まずその点をお伺いしてみたいと思います。
  14. 原三郎

    原説明員 お答え申し上げます。実は非常にむずかしい問題でありまして、業界内部にも今の問題についていろいろ見方があるわけでありますが、御承知ように二十六年度におきましては、清酒百二十二万石、しようちう百二十五万石、合成酒五十二万石、ビール百二万石、こういう数字になつております。清酒につきましては、本年度において米の関係もありまして、これ以上ふやすということは事実上できないのでありまして、あと増収としましてはしようちゆう、合成酒、ビールということになるのであります。まずしようちゆうから申し上げますと、御承知かと思いますが、現在市場がかなり荒れておるのでありまして、これの安定ということに官民あげて苦心さんたんしておるよう実情であります。現在の実情及び近き将来の見通しをもつてしますれば、この百二十五万石が一応の限度と考えてよろしかろう、従つてようちゆう面から増収を考えることは業界を撹乱するので、プラス面はあまりなかろうというふうに考えるのであります。合成酒につきましては、先ほどの問題の配給酒の減少とも関連するのでありますが、そういうマイナスの面のほかに、逆に今度は外来米の含有する割合を従来三%であつたのを、これを五%に引上げて品質を相当に改善し得る見通しがついておりますので、そういう面から消費量とマイナスの面とを考え合せますと、五十万石というところが大体よかろうというふうな感じを持つておるのであります。そうしますと、残るところはビールであります。ビールは百二万石の生産見込みを立てておるのでありますが、これは現在の市場を見ますと、相当安定しておりますし、むしろ商品として強い段階にありますので、ある程度増石しても売れるということは期待できるのであります。業界の方及び私たちもそうではないかという大体一致した意見としての石数は、あと二十万石程度は増産しても売れるという見通しがつきます。それ以上になりますと、どの程度増産して欄乱作用が起るかということは、かすに時日をもつてしないと、はつきりしないというよう実情ではなかろうかと思つておるのであります。かりに三十万石ビールを増産し、よけい販売すれば、約八十億円の増収が可能であるということで、今年度としてはまだ最終的にきまつておりませんが、一応私どもの作業としましては、百億円の増収というものを一応頭に描き、なお市場の撹乱作用もありますので、密造の取締りをもつと強化するとか、そういうことに並行する政策もとつて、なお一番撹乱しやすいしようちゆう界について、金融措置を何とか考えるということによつて業界全体を安定して参りたい。そういういういろいろの施策を並行條件として、一応今年度さらに百億くらいのものを何とかして捻出することはできないかというふうに考えておるのであります。来年度の問題になりますると、現在申し上げたよう実情にございまするので、今ここでにわかに答弁するほどの自信は実はないのでありまして、これは目下研究中という以外になかろうかと実は考えておるわけでございます。以上お答えいたします。
  15. 奧村又十郎

    ○奧村委員 今年度としてはビールを中心にして約百億円の増収が考えられる、こういうことでありましたが、実は来年度のことももう少しお尋ねしたいのであります。これは少し無理かと思いますが、四月末の税収を見ますると、大体酒税は予算通りに入つておりますので、この線がこのままで行つて百億円の増収ということになるわけです。来年度のことは見通しがわからぬということですが、つまり一番問題になるのは清酒であります。清酒が現在の値段で密造をもつと防止して行くならばどのくらい消化され得るか。これのお見通しは莫然としてでもつけてもらわなければならぬと思うのです。そうしなければこれはもう一、二箇月で来年度の予算編成にかかるのですが、それについての相当大きな資料になりますから、私どもではもう今までは原料の手当その他を考えるよりも、むしろ増石してもそれがはたしてほんとうに消化されるかどうか。むしろ消化の画から問題を考えて行かなければならぬと思う。それで現在密造がなおまだどのくらい残つておるか。これをうんと防止するならば、密造と置きかえて清酒がなおどのくらい消化されるか。消化の見通しがなくてむちやにつくつても、これはただいまのお話よう業界を撹乱するだけになります。その点もう一つお聞きしたいが、一般ではたとえば酒類は平均三割増石するというような莫然たる意見がありますが、私はそういうことは無責任に言うべきではない。消化の点をもう少し考えてみなければならぬと思うが、その点でもう一つ御答弁があれば幸いだと思います。
  16. 原三郎

    原説明員 来年度の問題はただいま申し上げたように、実は見通しが立たないのでありますが、傾向として申し上げますと、しようちゆうに対してはそう大した期待は実は持つておりません。合成酒は若干品質の改良もありまするので、若干伸びるという関係もありますが、しようちゆうは大して期待は持つべきではなかろう。合成酒が非常に高級化して来れば別ですが、にわかに高級化するというふうに現在予断するのは、少し軽卒ではないかと考えておるわけであります。ビールはなお若干三十万石ふやしても、計画的に伸びて行くという形になりますので、なお来年度においても、ある程度伸ばし得るのでないかというふうな感じを持つております。清酒につきましては原料の事情もありますが、現在の売れ行きはたいへんよろしい。先般の減税措置及び密造取締りをある程度強化しておりますので、地域によつて違いはありますが、密造酒も過去の実績からしますると、三分の一ないし四分の一は確実に現在食い込まれているのではなかろうかと考えております。従いまして清酒の売れ行きも特に二級酒の売れ行きが非常にいいのでありまして、これはいなかにおいてもかなり売れているということは、密造酒の中にも相当食い込んでおる証左でもありますので、こういう面が今後も続くことを前提としますれば、なおある程度の増石は可能であり、また販売も可能であるというふうなことは言えると思うのであります。数量的に何割とかあるいは何万石というような段階は、現在研究中でありまして、いろいろの見方が成り立つわけでありまして、まだこの委員会において間税部長として責任をもつて御答弁を申し上げる段階に、実は至つておらないということを御了承願いたいと思います。
  17. 奧村又十郎

    ○奧村委員 まだ答弁する段階に至つておらないということを実はお尋ねしたいのですが、これは無理でありましようから、それならお聞きの仕方をかえましてかりに清酒三十万石を増石するということにした場合、アルコール転化などの率をもう一つふやして、たとえば今年やられた三倍増醸というものをもつとふやして、極度にそういう方法をやつて行くならば、米の使用はかなり押えて、しかも三十万石の増石ができる。そこで極度にそういう方法をとつ行つた場合、米は実際どのくらいいるか、その点をお尋ねしたいと思います。
  18. 原三郎

    原説明員 三倍増醸の問題と関連しておるのですが、三倍増醸というのは最近始めた製造方法でありまして、これの品質について実は技術的な研究は十分完成しておらないのであります。今年のできばえは大分いいようでありますけれども、これが秋になつて秋落ちしないかどうかというような問題、あるいは利酒した場合に若干舌が荒れるというような面においても、なお研究を要するというようなことで、これを成功したからどんどん増産し得るというようなところには、実はまだ至つていないのでありまして、従つて今のような問題の結論を前提としてどういうように言われても、実は困るという段階にあるわけであります。
  19. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 私は今の質問に対する関連はないのでありますが、ただいま提案になつております租税特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、二、三お尋ねしたいと思うのであります。そこで委員長にお願い申し上げたいのでありますが、このための資料をひとつお願い申し上げたいのであります。それは漁業権補償金額の資料でありますが、これは海面漁業と内水面漁業とこの両方の個人法人の持つているもの、それをこの次までに、これは大蔵省ではなく水産庁であろうと思うのですが、いただきたいと思つております。
  20. 西村直己

    西村(直)委員長代理 了承いたしました。
  21. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 そこでお尋ねしたいのですが、漁業権補償金額は百七十八億と前に聞いておるのでありますが、これを現在の租税法によつて課税いたしますと、その課税金額は総額どれだけになりますか。それをひとつお聞かせいただきたいと思います。改正法によらず現在の法律課税するとどれだけになりますか。
  22. 原純夫

    ○原(純)政府委員 先ほど政務次官が御説明いたしました提案理由にもありますように、今の法律で行きますと、相当部分が譲渡所得になるということになりまして、譲渡所得になると、税率の最高は五割五分かかつて参ります。低いところでも二割五分、三割というのは必ずかかつて参りますし、地方税の方にもそれが響きますので、それらを達観して考えますと、まず半分近くは税金になりはせぬかという感じがいたします。一応いろいろな前提を置きましてわれわれの持つております資料からはじきました現行法下における税額の合計額というものを申し上げますと、八十一億円余りという計算をいたしております。これはもちろんただいまの譲渡所得にかかるのであります。譲渡所得ばかりでなくて、再評価税もありますし、それから市町村民税ないし法人は事業税の対象にもなりますので、そういうものを入れましてのことでありますが、そういう計算をいたしております。
  23. 内藤友明

    ○内藤(友)委員 八十一億ということを承つたのでありますが、そこで今度の改正法律によりまして課税いたしますとそれがどれだけになるか。それをお聞かせいただきたい。
  24. 原純夫

    ○原(純)政府委員 大体今度の改正によりますと、ほとんど全部が六%の再評価税で進むということになりますので、百七十億の六%、もちろん百七十億から取得価格帳簿価格を引かなければなりませんが、言うに足りませんから、達観して約十億というものが再評価税額になる。ちなみに妙な反作用でありますが、再評価税になりますと、地方税の方はかからないことになるので、それは入つておりません。
  25. 奧村又十郎

    ○奧村委員 国税庁の徴収部長さんにお尋ねいたしますが、実は大蔵委員会としては今年度の租税徴收状況に非常に関心を持つてつたのであります。ことに申告所得税の成績が昨年来非常に悪かつたので、どうなるかというふうに不安を持つておりましたが、年度末の締切りで、大体予算に対してどの程度まで行くかお見通しをお尋ねいたします。
  26. 田所正幸

    ○田所説明員 簡単にお答えいたします。四月下旬の数字におきましては、大体予算の千百七十億に対しまして三百二十億くらいまだ不足がございます。しかしながら五月——本年に限りまして五月分の收入につきましても、二十五年度の収入とするというように、会計法に基いて政令を出しております。目下これが徴収に懸命の努力を拂つておるのでございますが、申告所得税で五月中に五十四億程度大体確実に収納されるのではないか、こういうふうに考えております。従いまして申告所得税を見込み通りに五月中にとりますれば、予算に対しましては二百七十億程度の減少で済みます。こういうふうに思つております。但し法人税並びに源泉所得税におきまして、相当特需景気を勘案しておりまして、あるいは先物買いの傾向が多かつたせいでございましようか、予想以上に増収いたしまして、国税庁負担いたしまする予算そのものに対しましては、総額におきまして五月末には大体六、七十億程度の予算超過を来すのではないか、こういうように現在では見通しを立てております。
  27. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこでただいまの御答弁にもありましたように、特に今年度に限り、しかも申告所得税に限つて五月三十一日までの分を昭和二十五年度分の歳入とする、こういうふうに会計法第一條に基いての政令を出されたということでありますが、これはどういう事情で本年度に限りそういう政令を出されたか、また今後においてもそういうことを継続してやつて行かれるか、お尋ねいたします。
  28. 田所正幸

    ○田所説明員 お答えいたします。昨年は確定申告の時期が一月末でございました。本年は正確なる申告を出していただくとともに、税務署側の調査を徹底的にやる。そして適正な税務行政を執行するという建前から、一箇月確定申告の時期を遅らせまして、二月末、こういうふうにしたのであります。従いまして、確定申告の時期がつまり納入の正当なる法定期限になりますから、その意味におきまして、一箇月ずらした関係で、申告所得税に限りまして一箇月延ばして五月末、こういうふうにお願いしたわけであります。本年度でございますが、それにつきましては、これは直税部長さんの所管のことにも関係がありますが、漸次申告納税に対します納税者の協力もふえて参りましようし、なお青色申告も、関係方面で相当進歩も見えることでありましようし、税務署の調査能力にいたしましても相当増大して参るのではないか。また減税がある程度行われますれば、納税の対象になる数字も若干減少して参る。これを反対に言えばさらに調査が充実する、そういうようなことで、この徴税がうまく行くのではないか。そうすれば本年はそこまでやらなくて、二十五年度分通りにやらなくて、従前通りしなくて行つてもさしつかえないことになるのじやないかというような期待を持つております。
  29. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そこでこれは打砕いて御説明をお願いしたいのですが、要点は特に申告所得税について、当初予算の見積りをつくつた際の主税局の見積りと、それから二十五年度の決算による実績と、今のお話ように一月延ばしても、なおかつようやくにして昨年度の歩合までこぎ着けておるが、予算と比べて二百七十億ばかり赤字が出ておる。しかもこれは当初予算から昨年度の補正予算において大幅に見積りを減らしておる。あの見積りを減らしたときも、われわれはそれでは当初の見積りというものは、架空なものであつたというような不安を持つてつたのでありますが、今度は二百七十億も減つておるということは、主税局の見積りというものがほとんど当てにならぬということに感じられるのでありまして、来年度の予算審議の際においてわれわれの大きな参考になろうと思うので、主税局の方の歳入見積りの根拠と、それから今度の実績との食い違いはどういう理由によるものか。それをかたくならずに打砕いて御説明をお願いしたいと思います。
  30. 原純夫

    ○原(純)政府委員 これはわれわれといたしましても、主税局国税庁を通じまして、一番大きな問題と思つておる点でございます。全部申し上げます。問題がいろいろございますから、ひとつ一緒にお考えただきたいと思います。  まず予算の見積りでありますが、千百七十一億円という申告所得税収入を見積つております。これは例年の通り、前の年度つまり昭和二十四年度からの繰越し滞納額の収入が相当ある。これが二百七十五億であつたと思うのです。それと新たに二十五年分の課税が行われる。そのうち年度内収入幾らかという見積りであります。千百七十一億から二百七十五億を引きましたところの九百億近くというものが二十五年分の課税額であつて、年度内に収入されると見積られたものであります。その際課税額といたしましては、千百九十四億、約千二百億という課税額を見込みました。実績はどうか。まだ最終実績まで申し上げる段階ではありません。そこで先ほど徴收部長から申されました程度の見通し等をも入れまして、実績を考えてみますと、最初の繰越分、二十四年度からの繰越分の収入が予算の二百七十五億に対しまして二百十六億ということで終つております。ここで約六十億足らないということになります。それから次は二十五年分の課税でありますが、これが予算の課税額見込み千百九十四億に対しまして、実績見込みが目下のところの計数では九百億を切れる八百七、八十億という見込みであります。税収滅の大きな原因は、従いまして課税額の減にある。その課税額に対します徴收歩合、これはむしろ予算を相当上まわつております。大体総体的な計数的のことをまとめて申しますとその通りでありますが、それではわれわれはそれをどう分析するかという問題であります。  その前に先ほど予算の信用の問題を言われたわけでありますが、今回の二十五年分の申告所得税課税事務につきまして、われわれが非常に大きく展開を行つたという点を申し上げたいと思います。これは通常国会の当時におきましても、機会があります場合に、長官なりあるいは局長なりから申し上げたと思うのでありますが、つまり申告所得税制度なつたとはいうものの、実際はほとんど大部分の申告が不満足であるということで、毎年々々何百万という更正決定をいたして来ております。それがまたそれだけ更正決定が多くなりますと、もう日本の納税者はほとんど全部が悪いのだという意思表示を政府がしたことになります。納税者としても大挙反撥するということで、御存じの通りかなり血なまぐさいケースまで出るような実態であります。しかし根本的に申告所得税制度というものはいいものでありますので、これをわれわれは何とか本来あるべき姿に持つて参りたいということの必要を、非常に強く痛感したわけであります。そこでことしこそは、在来のいわば地獄、修羅場の状態をやめたいというふうに考えまして、各般の施策を立てまして、今回の国税申告の事務に当つたのであります。それはどういうわけかといいますと、まず抽象的に申しますれば、申告所得税制度がしつかりするということは、納税者の申告が正しくよくなるということ、税務署の調査なり仕事も、正確な適正なものになるということであります。これは一朝一夕をもつてしてはできないのでありますけれども、その方向にとにかく大きく一歩踏み出そう。それで一方で納税者が現在の程度の記帳なり、あるいは所得の計算なり、あるいは申告なりということが、従来程度しかできないということに対しては、やはり政府として極力お手伝いをしなければならぬ。所得の計算にあたつてお手伝いをしなければならぬという義務を痛感いたします。同時にそのお手伝いをするにしても、お宅はまあ幾らくらいでしようというようなことを、いいかげんに言うようじやあいけない。やはり帳簿をよく調べてやる。それから事業の実体も見てやらなければいけない。それが在来非常にうまく行きませんでしたのは、何と申しましても去年は一月がその確定申告期でありますが、一月に確定申告がある。そうすると七、八百万人に上る納税者に対して二月一ぱいに更正決定通知を出さなければいかぬということが、財政の要求であつたわけであります。それをやらないで年度を越しますれば、年度收入は落ちるというので、やむを得ずやつたわけです。一月の間に何百万という事案について更正決定といういかめしいかつこうの通知を出さなければいかぬということが、いわば大きなボトル・ネックであつた。そこでただいま申し上げました大きな展開を行いますについても、中心的な課題は、そう短かい間に、神様でもなかなかむずかしいような仕事であります。これをやらなければいかぬという事態を何とか切りかえて参りたいということが中心であります。理想的にいいますれば、二十五年分の所得税課税は二十五年のうちに調べるのがよかろうけれども、やはり年が過ぎてから一年間はたつぷりかけてそして十分調査をして、その都度必要があれば更正決定をするというふうな仕事の運びにならないと、うまく行かぬわけであります。同時に納税者の方も、所得が大体においてしつかりはじけて、申告が大部分いい申告だ、更正決定する必要はもう何パーセントにすぎないというような事態に持つて行かなければ、申告納税制度というものはうまく行かない。そこで、そういう理想状態を実現しようという考えを立てまして、それはただいま申しました通り、年度内課税というものにあせつて。めちやめちやなことをしないということが第一であります。従つてそれだけ年度収入はずれるということがございます。それから第二に、そうは申しましても、最初の年から申告は納税者の思う通りにしていただいて、あとで調べるということでは、率直に申してほとんど全部を更正決定しなければならぬことになりますので、非常に手もかかりますし、また官職もいろいろ御非難があるようでありますが、やはりしつかりした調査をやつて、それを納税者に率直に話して、それを判断してもらつて申告をしてもらうというふうにしなければならぬと思いましたので、昨年の九月、十月以来非常な努力をして、実額調査というものをいたしました。それによつて、言葉を何と言つたらよろしいのですか、申告の指導というとかたくなりますが、申告のお世話をするということを、二月の申告期に全力をあげていたしまして、この辺が何と申しますか、申告指導で申告をとるということになりますと、やはり前のように必ずぽんぽん更正決定するという場合と比べて、実際問題としては、どうしても税額が下ることになります。これを御了承願いたいと思います。今度は調べた結果二十五万と出たといつた場合に、うちはそれより多いと言つてくれる人は少い。なぜなら去年の大雨で店の戸がこわれて、こういう修繕をしているというようなことは必ず言う。そういうようなわけで年度がずれるということ、それから、やはりそういうような事情で、課税が低くなりがちであるということ、その辺が課税額の減少の大きな原因であろうと思います。なおそのほかに、数え立てますといろいろございます。そのうち大きいと思われるものを一、二申し上げたいと思います。その第一は、これは相当大きいものでありますが、先ほど申し上げました補正予算の見込みの際には、七月予定申告の結果を資料といたしました。なぜかどいいますと、御存じの通り七月予定申告は、前年実績所得で申告すればよろしいということで、前年の一応コンクリートに固まつたものをもとにして行つておるというわけで、それをもとにしたわけであります。当時七月予定申告のもとになりました前年実績、昭和二十四年分の課税実績が税額で千七百億円であります。ところが、それがその後じりじりと減つて来ております。最近の三月末現在で集めました計数によりますと、千七百億円が千五百八十四、五億、百十何億という減少を示しております。つまり予定申告をもとにして補正予算を組んだ。その予定申告はその前の年の実績をもとにしておる。そのもとが七%、八%落ちたわけです。そうすると、もとが落ちていますから、当然結論も落ちなければならぬということになります。それが非常に大きなフアクターだろう。これによる課程の減が、見当でありますが、八、九十億にはなろうというふうに私は考えております。  そこで若干長くなつて恐縮でありますが、大事な点でありますから、なぜそれが落ちたかということをちよつとつけ加えて申し上げたいと思います。いろいろありますが、大きく二つあろう。一つは例の審査の請求ですね。課税は受けたけれども、自分はこれでは不服だといつて再調査の審査請求を出しておる人が非常に多かつた。去年はその人数だけでも百六、七十万といつておりますが、それがなかなか一、二箇月で片づくものではありません。補正予算を組む時分にはまだ未決の関係が残つております。それがあとになるに従つてだんだん審査が確定される。前よりも多く決定されるのはほとんど例外なので、どうしても下るというのが一つございます。もう一つは前年は課税なつたけれども、その時分からどこへ行つてしまつたかわからない。妙な話でありますが、かなり営業者が居所を移すことによつてわからなくなるというケースが多いのであります。税務署は七月の際には予定申告が出て来ない。その人のところへ手紙で例の税額通知をやるわけであります。それが行き場所がなくて帰つて来るというのが相当あります。これはあとをトレースするということをやつておりますけれども、なかなか完全に行かない。そういう点が大きな原因で、そういう大幅の減が予算の見積りの基礎となつたものに、実際上出て来るということが非常に大きいと思います。  それから第二としては法人成りでございます。これは予算もある程度見ておつたわけでありますけれども、やはり法人成りの傾向は毎年のことでありますが、予期以上、顕著なものがあるということがやはり相当響いておる。
  31. 奧村又十郎

    ○奧村委員 その金額はわかりませんか。
  32. 原純夫

    ○原(純)政府委員 これはただいままだわかりません。法人成りの数字はもう少したちませんとまとまつて参りません。やはり一月か、一月半くらいたちませんと、まとまつて来ないと思いますが、企業組合というものも、あれは一種の法人成りで、あの中に法人としての課税規定されるものもありますけれども、そういうものはやはりペンディングになるということで下つて参ります。その他扶養親族、これの予算の見込みが、実際に当つてみると、扶養親族の申告が非常に多い。見積りが間違いだつたのか、これは具体的に例があるわけでありますが、扶養親族の申告が多過ぎる。不当に多いというような場合もあります。この辺は一々チエツクして見なければならぬと思いますが、そういうような点も相当大きく響いて来ておるように思います。これは案外ばかにならない数字で、その一つだけでただいまのところやはり五、六十億違つて来ておるような感じがいたします。はなはだまとまらない話でありますが、われわれのこの問題に対する見方が、それの原因の分析というようなものは大体そういうことでございます。
  33. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの原さんのお話は、主税局の税制課長さんのお立場で最初お話になつて、今度国税庁の直税部長立場で弁解のようお話になつたので、一人二役で結局どうもぼやけた話に受取れるのです。そこをねらつてお一人で二役を受けさしたのかなと思います。しかし私はやはり大蔵省として歳入見積りを立てたその所管の立場と、それから国税庁の直税部長としての、一応その見積りに対してどこまで実積をあげるかという責任と、これは二つはつきしておかなければならぬ、こういうふうに思うのです。ただいまのお話で大体わかりましたが、一番大きな原因は課税金額が非常に下つた、九百億になつたことであるというのは、私も非常に同感に思います。その九百億に下つたという一番大きな原因が、これまた従来の税務行政を大転換したということ、これも私は同感に思うので、実は長官が今回初めて勧告という処置をなさつたということに対して、それは納税者としては非常に喜ぶところであるが、政府の所期するところの税収が上ればいいが、その勧告のやり方によつてはおそらく税収はぐんと減るだろう。減つた場合にまたあらためて御意見を承ろうということで保留になつておるのですすが、私もそのときに九百億はとれまいということまで断言した、約九百億近くまで来たのです。そこで勧告という今回の税務行政の非常な大転換については、これは一つの大きな冒険だつたと思うのですが、これは補正予算を組む当時に、国税庁としては大体そういう行き方を考えておられたはずである。そこでそういうことを考えておられて、これほどの歳入欠陷を来したということは、やはり大蔵省全体としては責任があると思うのですが、これも原さんにお尋ねして明快な答弁を得られるかどうかわからぬが、その点どうですか。
  34. 原純夫

    ○原(純)政府委員 補正予算を組みました当時、その考え方は結論的には固まつておりませんでした。これは言い逃げのように聞こえると非常に心苦しゆうございますけれども、そういう考え方を希望として持つてつたことは確かであります。しかしそれを予算に織り込んでやるについては、申告所得税収入が八百億か九百億になる。それをこれでカバーするというまでの見通しをつけることは、率直に言つてできませんでしたが、その後決定的に何いたしましたのは、法人税あたりの税収が年末に至つて非常にふえて来ております。そのような経過がだんだん固まつて参り、一方酒税の方は当時悲観的な見通しでありました。そのようなことで歳入総体についての財政上の需要の圧迫がありましたために、希望意見としてはわれわれいろいろなところでそういうことを言つてつたわけでありますけれども、結論的にそういう態度をとるというまでは行き得なかつたわけであります。もちろんこれには関係方面の注意というようなものもございます。それらを説得しながら政政需要の帰趨を見て、結論を下さなければいかぬというので、実はそういう結論を下し得たのは、もう申告指導に入る時分ぎりぎりになつてやつときまつたというようなわけで、その点ではもつと早く申し上げ、またそういう数字が固まつておれば、それで組みかえるというようなことをすれば、一番堂々としておつたと思いますけれども、何分それまでのゆとりがなかつたという点を、まことに申訳なく思つております。
  35. 奧村又十郎

    ○奧村委員 あとは、ごく簡単に御答弁を願えばけつこうですが、その補正予算で申告所得税税収見積りを主税局がはじき出したときに、国税庁の直税部長として一緒にこの作業をなさつたと申しますか、この見積りに同意してやられたのかどうか。その点を伺いたい。
  36. 原純夫

    ○原(純)政府委員 もちろん国税庁直税部長は関與いたしております。同時に私個人としては当時も兼税制課長というわけで責任者でもございます。
  37. 奧村又十郎

    ○奧村委員 補正予算では予定申告の実績等を資料として歳入見積りをはかつたが、当初予算ではそうではなかつた。これは課税総所得金額をはじき出してそれから実際に課税金額が幾らになるか、また税務署としてどこまで捕捉するかというところで、これははじき出しておるわけです。そうすると、そういう見方からしての歳入見積りに対して、実際これだけの歳入欠陷を生ずるということになると、これはやはり国税庁の方で歳入所管の官庁として、そこまでにこぎ着けなかつたということについては、相当責任があるのじやないか。そこまでこぎ着けなかつた事情はどういう点にあるかという、公の席における答弁は今のような御答弁で通りますか。あまり四角ばらずに、歳入見積りとこれだけの歳入欠陷とに対する理由として、今のような答弁で成り立つかどうか。
  38. 原純夫

    ○原(純)政府委員 申告所得税が予算見積りに対して非常に減つて来ておるということは、もちろんわれわれの責任であると思いまするが、同時に日本の責任であるということも考えます。といいますのはわれわれ決して怠つてこれを減らしたといふうには考えておりません。ただいま申しましたように、いかにも人情を無視したと申しますか、地獄のような形の税が動いているということは、何としても考えなければならぬという考え、それをいい方向に持つて行こうという考えで始めたのでありまして、率直に申せば、ああやつて申告のお世話を申し上げました金額にいたしましても、納税者の多くはそれでは多過ぎると言われますけれども、実際はまだまだ所得があるということを率直に考えます。それがそうできなかつたというあたりにつきましては、やはり国民納税者一般の方々もお考えただかなければならぬ。われわれとしてもこれは決して二十五年分の課税実績を言い訳をするというような態度だけでなしに、これらからいかに問題をつかんで、いかに将来の税務行政に織り込んで行くかということこそが、問題であろうというふうに考えます。これを先ほど申し落したのでありますけれども、われわれといたしましては本年度の仕事の方向を——これは所得税に限る問題ではございませんけれども、各税にわたりまして課税の基礎を確実につかまえるということに、もつぱら力を注ぐという考えでおります。これは申告所得税でもただいま御指摘のありました通り、またある意味では予算に掲げました数字くらいのものではない、所得はもつと多いという声がいろいろあります。われわれ現に特別な実額調査というのをやらせますと、かなりよけいに出ます。そういうようなことを考えますと、しつかりした所得をつかまえる。法人税の方も大体同様な問題と考えます。やはり国際情勢その他いろいろ考えまして、減税は相当望ましいと思いますけれども、ある時期に財政需要が相当増すというような可能性も、われわれとしては考えねばなりません。そういう場合に、従来のように基礎がいい加減で、また納税者の方も正確にそろばんをはじく習慣がつかないというようなままでありましたならば、非常に恐ろしいことになると思いますので、本年は力をあげて課税の基礎を正確に把握する。もちろん役所の把握だけでなくて、納税者の方々もそれを正確にはじく。そして申告納税をするというふうにやつてただくことに全力をあげて参りたい。現にもう第一線の連中をそれに訓練いたしますために、実額調査を局なりあるいは署の上級幹部なりが手をとつて教えるというようなことを、全国的にただいま始めております。その結果として出ます数字も、なおやはり申告額が実際よりも低いというようなものが相当出ております。これはもちろん御存じのように、それではほんとうに所得が五割多いという場合に、それを全部つかまえて今の税法で課税したならば、所得が五割多いと税額は倍をはるかに越えると思います。そういう場合にどうするかという問題がございます。そういう面でもちろん立法的な手を打つてただかなければならないと思いますが、そういう必要が起るということを覚悟しつつ、われわれ課税標準の的確な把握は何にもかえがたい大事な仕事だというので、二十五年分の言い訳をするよりも、その方をがんばろうというのでやつております。これにはただいま申しましたような問題が非常につきまとつて参りますが、特に初めに一緒にお考え願いたいと申しましたのは、そういう税務行政、申告納税制度の将来についても、問題は実はわれわれは考えながら考えあぐねておるところでございますので、せつかく皆さんの御示唆をお願いしたいというわけであります。
  39. 奧村又十郎

    ○奧村委員 最後に申し上げておきますが、主程局の方の当初の見積りにおいては、申告所得税ばかりでなしに、源泉所得税法人税のすべての見積りの際において、その見積つた時期から今日までの経済界の情勢を見ると、朝鮮動乱による特需その他の相当の好影響もあつて、源泉徴収の面においても、あるいは法人税の面においても、予算よりもうんと増収になつておる。特に源泉徴収の所得税は、同じ減税の法律実施しながら、なおかつ一方源泉徴收はうんと成績を上げておるし、申告所得税はうんと歳入火陷を生じておるということになれば、この申告所得税の歳入欠陷はどういう原因か、責任はどこにあるかということになれば、やはり主税局税制課の見積りが誤つてつたということになるか、あるいは国税庁の所得の捕捉が十た行われなかつたということか、このどつちかをはつきりしておかなければならぬ。その間の事情はいろいろありましようが、そこに帰着する。その点は部長からもいろいろお話がありましたけれども、過去二、三年続いて申告所得税の成績が悪いということについては、これは大きな問題であり、また来年度の予算を編成するについても大きな問題であろうと思いますので、いずれまた機会を改めて長官にもお尋ねし、また要望する点もありますが、きよう事務当局としての御答弁はよくわかりましたので、私の質問はこれで終ります。
  40. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 時間の関係上二つばかり簡単に申します。幸い国税庁から原さんがおいでになりましたから申し上げておきます。私どもが議員に当選して以来ずつと長らく税の改正に努力して参りました。ことに終戦直後、二十一年、二年、三年というのは一番税の高いときでありまして、私が申すまでもなく、今までの公債、すなわち借金政策がなくなつて、わかわかの経済は全部国民の負担でやる、租税でやるということになつたのですから当然でありますが、その当時から憂えていたのでありますけれども、税務官吏が経験年数も割合少く年齢も少い者が、徴税の第一線に立つてはいかぬというわけで、大分改革に努力したのでありますが、その後大分上昇して参つたかどうかということを第一に伺います。  第二には、われわれが地方に対しましての課税状況をずつと見て参りますと、二十四年度よりも二十五年度、二十五年度よりも二十本年度というふうに、だんだんと税務行政の運営の面が楽になつたように思つております。これは納税者の方にも徴税官吏の方にも理解ができたわけでありますが、私の今考えております点は、大蔵大臣考えておられた通りであります。八割までは大体申告通りの納税にするという原則は守りたい。あと一割ないしは二割は更正決定するけれども、それもまた実額調査によつて、かつてには更正決定しないという方針をとつておられたようでありますが、今日も国税庁はそういうことを浸透しておりますか。各税務署あるいは下の方の官吏に対して徹底して、民心に溶け合つて、そして円滑な徴税をしてもらいたいと考えておりますが、これに対して国税庁の原さんの率直なる御意見を承りたいと存じます。
  41. 原純夫

    ○原(純)政府委員 第一のお尋ねの税務官吏の経験年数という問題でありますが、ただいま最近の資料を持ち合せておりませんが、御存じの通り大部分の税務官吏が、終戦後新たに若い年齢において採用されたということでありますので、税務署をまわりましても、非常に若い人が多いという事態はまだ続いております。ただ二十二年、三年、四年あたりが大幅に採用した時期でありますが、その時分の人は、経験年数が一年から二年になり、二年から三年になりというように、経験年数の増加割合の非常に多い時期なのであります。そういう意味で訓練、指導のしようによつては、全体の能率は相当改善する。もちろん戦前のああいう練達な長い経験を持つておる者がおつた時分に比べますと、はるかに落ちるということは事実でありますけれども、われわれに與えられた人員を、若いからといつて首にしてしまうわけにも行きませんので、そういう希望をもつて毎年々々訓練を続け、また納税者に対する態度等についても、ずいぶんうるさく言つて努力いたしております。  それから第二のお話の申告と更正決定の問題でございますが、これは先ほどの奥村さんに対する問題とも関連いたすのでありますが、お話の御希望のありましたような線にまさに進んでおることは、はつきり申し上げていいと思います。計数的に申しますと、昨年は八百万の申告納税者に対しまして、四百十五万という更正決定を出しております。これは五十何パーセントという数字でございます。その更正決定を出しました人たちのうち、半分に近い四三%——これは先ほど申しましたが、百何十万、二百万に近い数字でございます。これが再調査の請求、審査の請求が出てやつさもつさやつたわけでありますが、今年は先ほど来申し上げましたよう方針で、申告納税制度だと言いながら、一度出させておいて、ほとんど全部にいわば横づらをひつぱたくような更正決定をやることはいかぬ。極力実調に基いて申告をお勧めするというので、第一線もこの関係では注射を打ちながら非常に苦労してやつてくれました。結果として出ました数字は、ただいまの四百十五万の昨年の更正決定数に対しまして、今年は年度内更正決定は七万五千程度でございます。もちろん先ほど申し上げましたように、年度内に全部やつてしまおうと思うからいかぬというので、すでに今年から改めておりますから、年度経過後更正決定をいたしておるもの、またはこれからするものがまだございます。それを全部合せてみましても、まず私は二十万くらいのものだろうと踏んでおります。昨年の二十分の一であります。納税者総数四百二、三十万でありますが、これに対してはわずかに五%にすぎないという数字に相なつております。この辺はなおその実際を検討いたしまして、さらにもつと更正決定を要するものがあるという場合には、もう少しふえるかもしれませんが、おつしやつた通りの線は、まさにその通りに出て参つておるという点をお答えいたします。
  42. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 次に異議申請というものに対しては、今度再調査ということにかわつたわけでありますが、これは今度たいへん少いと思います。従つて法律で定めた通り、三箇月以内に必ず一ぺん税務官吏が見る。もし見なかつた場合には当然上の方の国税局にまわるという線は、堅持しなければならぬと思います。私ども考えるところによりますと、国税局にまわるものは非常に少いと思いますが、どのくらい現実にまわりつつある傾向でありますか。国税庁において調べておりますか。もし国税局の方にまわつた場合においても、協議団においては三箇月以内にこれを片づける。この線をわれわれは法律でつくつたわけですが、実際はどういうふうに運用しておりますか。私はこれを乗り越えて裁判になるというものはほとんどないと思いますが、今どのくらいありまするか。これらについて、事実あなたは調査をしておられると思いますから、これも率直に意のあるころをお示し願いたいと考えます。
  43. 原純夫

    ○原(純)政府委員 再調査の件数は、先ほど申した四十五万でありますが、それが再調査の段階に片づかないで、協議団の手にかかるというものの数字は、実はただいま持ち合わせておりませんが、私の記憶では、たしか千件余りであつたように思います。もちろんこれは去年の七月からスタートいたしましたから、去年の大部分のものはその前に片づいておるので、平年度とは申されません。一方で、ただいま申しましたように、更正決定自体が相当減るわけで、協議団の仕事量をやはり根本的に再検討してみる必要があるかというよう考えております。
  44. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 裁判になるものは今までは例年二百件ずつあつたということですが、このごろではなくなつておりますかどうか。円満なる徴税という点から見まして、国税庁はますます奮闘して、円滑を期していただきたいと思いますが、この際その件数について承りたいと思います。
  45. 原純夫

    ○原(純)政府委員 まことに申訳ございませんが、件数は後ほどお目に入れたいと思いますが、大体において裁判になりました件数が、従来よりも少いということはその通りであります。ただこの裁判の件数が少いということにつきましては、われわれ少くしたいと考えると同時に、多くしたいとも思つております。と申しますのは、更正決定で再調査を請求する、やつさもつさで片づかないで裁判に行くというよう意味で、裁判に行くというのは望ましい事態ではございません。話合いがつくのがいいのでありますけれども、同時に税法ないしその執行というものは、皆さんからもあらゆる機会に御質問がありますように、かなり判断のむずかしい、いわば境目のケースが出て参ります。その場合に、われわれはわれわれとして考えまして通達もいたし、解釈をして運用いたすけれども、これについて納税者の方が、どうもそれは非常識だと思われるようなケースは随所に起つておると思います。こういうケースについては、税務署にあまりたてつくと、あとがつまらないというようなことでなしに「やつばり納税者が見て利でないと思われる点はあくまでがんばつてただき、最後は裁判に持つてつて黒白を争うというところにまで行つてただく方が、日本の税務の大局から見ましてよろしいことで、そういうような論点のはつきりした裁判というものは、われわれといたしましては、むしろ多くなつて、法廷で第三者も入れて明るく討議されて、常識的な結論が出るという方向に持つて行きたいと思いますので、御趣旨に反するとは思いますが、お耳に入れておきます。
  46. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今度大蔵省税制課長の忠佐市君が国税庁の査察部に行つたようです。査察部は各局にもあると思いますが、査察部は各局に置かないで本庁にだけ置くようにし、調査は税務署に移した方がよろしいかと思います。この辺の構想を再検討する必要があるのではないか。調査関係税務署、査察関係は国税本庁ということに整理した方がよいと思いますが、これについての構想を承つて質疑を打切ります。
  47. 原純夫

    ○原(純)政府委員 御指摘になりました査察関係の本庁直轄、調査関係事務税務署移管ということは、まさに問題でありまして、税務関係の者がいろいろ議論を出しております。従つておつしやる通り慎重研究を要するものと思つて考究を進めております。
  48. 西村直己

    西村(直)委員長代理 本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時五十七分散会