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1951-03-26 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十六日(月曜日)     午前十一時二十五分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君       大上  司君    川野 芳滿君       佐久間 徹君    島村 一郎君       高間 松吉君    苫米地英俊君       三宅 則義君    宮幡  靖君       内藤 友明君    竹村奈良一君       深澤 義守君  出席政府委員         大蔵事務官         (日本専売公社         監理官)    久米 武文君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         国税庁長官   高橋  衞君  委員外出席者         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ————————————— 三月二十四日  委員田中不破三君、尾関義一君及び小平久雄君  辞任につき、その補欠として大上司君、島村一  郎君及び塚田十一郎君が議長の指名で委員に選  任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  八九号)  復興金融金庫に対する政府出資等に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第一一四  号)  たばこ専売法の一部を改正する法律案内閣提  出第一一八号)  国税徴収法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二一号)     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 これより会議を開きます。  国税徴収法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案たばこ専売法の一部を改正する法律案、及び復興金融金庫に対する政府出資等に関する法律の一部を改正する法律案の四案を一括議題として、質疑を続行いたします。小山君。
  3. 小山長規

    小山委員 物品税について二、三質問いたします。この物品税法改正内容を見てみますと、ズルチンサツカリンについて徴収方法をかえるということと、それから特定商品証紙を貼るということがその内容でありますが、この証紙を貼らせるということは即時やるのでありますか。あるいは一定期間を置いてやるのであるか。それから証紙を貼るという法律が施行されたあかつきにおいては、証紙を貼らないものは販売させない趣旨であるか。これをまず伺つてみたいのであります。
  4. 平田敬一郎

    平田政府委員 証紙制度を新設いたすのでございますが、これは政府で印刷いたしまして交付するという事情もございますので、大体六月ごろを目当実行に移るようにいたしたいと考えております。それからこの証紙を貼らないものは販売させないのかというお尋ねでございますが、そのようなきつい措置までやりますのはどうかと考えますので、手持品等につきましては最初は貼らなくてもいい。あとは大体取引状況等を見まして、一定のときまでには証紙の貼つてないものが店頭に出ましても、そのゆえに証紙取締りをきびしくやることはない。一定のときがたちますと、証紙の貼つたものが出まわるということになると思います。最初から手持品全部に貼らせるということは差控えたいと思います。
  5. 小山長規

    小山委員 証紙を貼らせるのは、店頭に出ておるものではなくて、製造業者あるいは卸売業者が、物品税を納めるときに貼らせるという趣旨であろうと思いますが、その点はどうですか。
  6. 平田敬一郎

    平田政府委員 さようでございます。製造場から移出する際に証紙を貼つて出せ、こういうことに相なるかと思います。
  7. 小山長規

    小山委員 そういたしますと、勢い何箇月かの後には、その特定商品については証紙を貼つたものでなければ脱税品とみなす、こういう効果が出て来ないと、証紙を貼らせることが意味をなさないじやないかと思いますが、その点はどうでございますか。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話通りでありまして、ある期間証紙効果が十分現われない。これはやむを得ないと考えます。全部一ぺんに製造場にもどし入れさせまして、証紙を貼らせるというか法も考えられないことはございませんが、そのようなことをやりますのは、あまりにも取引影響がございまして、適当ではないと考えますので、むしろ経過期間取締ることができなくてもいたし方ないという考え方で、実行したらどうかと考えております。
  9. 小山長規

    小山委員 その経過期間は一体どういうふうに考えておりますか。法律上それを表わしていないのでありますが……。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは別に法律経過期間を設けましてどうするという問題でございませんで、一定期間がたちますと、おのずから大体証紙を貼つたものが大部分になるでございましようし、そういうようなことになりますと、貼つてないものにつきましては特別に調べる。ただ調べるということになりましても、ただちにそれが脱税品であると認定を下さないで、よく調べまして取締りに資するようにする。さらに少し時がたちますと、これは完全に取締りができて来る。こういうように段階的にやつて行くよりほかないかと考えております。
  11. 小山長規

    小山委員 その点に私は若干の疑義を持つておるのでありまして、法律趣旨からいうと、証紙を貼つてないものは脱税品なりとして取締るというところに、この法律目的があるのであろうと思う。ところがたとえば化粧品のような委託販売方式をとつております品物は、自由に返品をするという商慣習があると思う。そうしますと、この証紙を貼らせるということを機会にして、一どきに返品が起るであろう。ところが化粧品は御承知のようにいろいろな種類があります。水ものもあれば油ものもある。固形したものもある。またガラスびんに入つたものもあれば、セルロイドのものに入つたものもある。こういうものを小売業者が詰め合せて、その販売元である卸売業者あるいは製造業者に小包で返す。かりにその中の一つびんが割れると、中にある商品商品としての価値を失うことになつてしまう。そういうような問題が起りますと、おそらく卸売業者あるいは製造業者は、そういうものが一どきに起つて来た場合には、破算状態になつて来はしないだろうかというような心配があるのでありますが、こういうような事情にある商品というものは、必ずしも化粧品だけに限らないで、それ以外のものにもあるのではないかと思う。それらについては政府はどういうように考えておられるのか。ことに証紙は何に貼るかということが法律一つも書いてない。法律上何も書いてないで、しかも先ほど申しましたように何箇月かたつた場合には脱税品として取締る、こういう趣旨であるとすれば、法律上何も書いてないものについて政府がかつて品物を定めて——いわば国民権利義務に関することが法律上書いてないということは、これは法律体裁としては、民主国会がとつておるところの慣例に相反する法律ではないかと考えておるのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになつておりますか。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 もともとこの証紙制度は、法律で定められました納税義務を果したということを証明する紙片を、物品等につけるということでございますので、取締り上必要があります場合におきましては、当然適正な徴税という見地から、私ども実行してもいいのではないかというように考えておるのでございます。ただ目的はやはりそういう効果を現実に発生し得る場合であることと、それから業者にあまりに著しい手数をかけたり、あるいは商品の売れ行きをそれがために阻害したり、非常に重大な影響があるような場合におきましては、これは実行するかしないか愼重考えなければならないことだと考えておるのでございます。従いまして何でもかんでも証紙を貼るというようなつもりではないのでございます。ことに最初のうちにおきましては、実行の結果等をよく見きわめた上で、必要に応じて拡張するという方法もいいではないかと考えておる次第であります。ただいま御指摘化粧品等につきましては、大分研究してみたのでありますが、やはり品物相当零細なものが多い。それからお話のように水もの等がありまして、破損等の場合の問題が相当多いのじやないかということを考えまして、最初化粧品等につきましても実行するかしないか研究してみたのでございますが、現在のところにおきましては、さしあたり化粧品につきましては実行しない方がいいのではないかという考えでございます。現在のところ考えておりますのは嗜好飲料カバントランク水あめサツカリンズルチン清涼飲料のうちのサイダーとかラムネ、こういうものにつきまして証紙制度実行してみたらどうか。その結果によりましてどうするかをよく検討しました上で、慎重に決定したらどうであろうか。これはもちろん徴税官庁たる国税庁だけの意見でなく、業界等意見もよく聞きまして、大蔵大臣が個別的によく審査しまして品目を指定して、御指摘のような非難がないように政府としては十分努めるつもりでございます。
  13. 小山長規

    小山委員 化粧品については特殊なそういう事情があるので実施しないということは承りましたが、それ以外にそういうふうな混乱を起す業態はないかどうか。そういう確信があるかどうかということが一つ。  それからもう一つは先ほどから何度も申しますように、この法律目的脱税品取締りであります。何箇月か期間はわかりませんが、その経過後においては、証紙を貼つてないものについては、脱税品として取締るということでありますから、いわば広い意味における国民権利義務に関する問題であろうと思う。それを法律上何にやるかということを何ら明示しておかないで、ただ大蔵大臣が政令できめるというような法律体裁がいいのかどうかという問題であります。それについて所信をお伺いいたします。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 さつきも申し上げましたように、何箇月かの余裕期間を置く。置いた後においてただちに脱税品にしてしまうべきかと申しますと、やはり私はそうすべきでない。証紙を貼つてないものにつきましては、どういうわけで貼つてないかをよく調べまして、その結果によつて脱税品になるか、あるいは前からの残品であつて脱税品でないか——これはもちろん調査にあたりまして愼重に注意すべき問題だと考えます。ことに実行いたしました初期の段階においては、そのことの実施にあたりまして特に注意しまして、單に貼つてないからというのでただちに脱税扱いにするということは、当然趣旨から申しまして避くべきものであろうと考えておるのであります。ただ相当長期にわたりますと、おのずから証紙を貼つたものが大部分、あるいはほとんど全部になろうかと思われるわけでありまして、その後におきまして初めて証紙制度がフルに効力を発揮する。その前におきましてただちに効力を発揮するような強い制度にまでするということは、最初にも申し上げましたように、そこまでの必要はない。そこまでいたしましてこういう制度実行するのは、どうであろうかと考えておるわけでありまして、その辺のところは今申し上げました趣旨運用しますれば、御指摘のような結果にはならないものと私どもは考えておるのでございます。  しからばこういう制度は、法律に一一品目を列挙しまして、嚴密に吟味して規定した方がいいのではないかという御意見、これは一つの御意見だと思います。しかしこれはもともと徴税取締り上の必要に基きます関係もございますし、それから今申し上げましたようなことを運用上注意いたしますれば、それほど大きな影響はない。むしろ結果といたしましては、まじめな業者はこれによつて救われ、脱税して不正なことをやつている業者が締め出される。こういう結果に相なりますので、建前といたしまして特に法律で限定するというのもいかがであろうか。これはやはり必要性とこの立法趣旨とをよく考えまして、政府におきまして妥当なものを指定して行くということで、運んで行つてしかるべきものじやないか、かように考えておるわけでございます。しかし御趣旨の点、あるいは国会における御意見の点は、政府におきましても十分尊重いたしまして、御指摘のような弊害のないように、運用上十分注意いたしたいと考えておる次第であります。
  15. 小山長規

    小山委員 こういう証紙を貼る制度そのものについては、私はまつたく御趣旨通り脱税を防ぎ、正当な納税者を保護するという意味においてまつた賛成なんであります。ただしかし品目をあげていないのが非常に不安である。何でも証紙を貼らせることを政府は命令できることになつておる。たとえば極端な場合を仮定してみますと、蓄音機の針にも貼らせることができるし、あるいは碁石に一枚々々貼らせることもできる。それから紙であります。用紙の原紙に貼らせることもできる。その紙のような場合には、截断して売れば一体どこに貼つてあるものを正当なる証紙と認めるかどうかというな問題が起るのであつて、要するに先ほど申されたように政府嗜好飲料あるいはカバントランク水あめサツカリンズルチン清涼飲料中のラムネサイダーこういうふうに申されておるが、主税局長の答弁はそうである。しかしこれを実施するのは大蔵大臣で、大蔵大臣が実施するときはこれ以外に拡張し、かつ業界が非常な混乱に陷つたり、あるいは不測の損害をこうむつたりすることを防止する何らの議会側からの発言なり、議会側の監督の機会はない。それが非常に不安なのであるが、その点をどう考えて何も書かなかつたかということなのであります。
  16. 平田敬一郎

    平田政府委員 私が申し上げておるのは、主税局がこういう制度につきましては、大蔵大臣代理としまして責任を持つておりますので、申し上げておるのでありまして、これはおそらくさしあたりといたしましては、これで政府方針を決定するということは間違いないと思います。なお御指摘のような点がいろいろ運用上出て来る危險性が全然ないかと申しますと、それはないとは法制上は言えないかと思いますが、そういう問題につきましては、国会等におきましてもよく私ども御意見をしよつちゆう伺つておりまするし、それから要望の事項も十分尊重いたして従来も参つておりますので、今後におきましてもそういう点につきましては十分注意いたしたい。これは私は証紙のできた制度から申しまして当然なことだろうと思います。ただその書き方としまして、そういうこまかい注意的な規定を置きまして、こういう場合に限つて証紙を使わせることができるという字句を入れるか、入れないかという問題だろうと思いますが、これは証紙制度の本来の性質、それからまたこの制度が上げ得る効果と申しますか、それは決して万能ではないのでありまして、私ども実はそれほどこの制度に非常な重きを置いておるわけではございません。しかしこれによつて相当効果を生じ得るという前提考えておりますので、結果は相当いい成績を上げ得るかと考えますが、何でもかんでもこの制度を利用してやつて行くということは、この制度自体性質上おのずから限界が当然出て来るのじやないか。そういうふうな意味のものとしてこの制度を立案し、あるいは国会におきましても、そういうものとして御賛成を得たということで行きますれば、御指摘のようなことがなく行き得るのではないか、かように考えております。私特に立案の責任にあたりまして、御趣旨に沿うようにいたしたいことをつけ加えておきます。
  17. 小山長規

    小山委員 私が申し上げている趣旨はよくおわかりであろうと思います。法律では何と何に適用するかということが書いてないのであるから、大蔵大臣はやろうと思えば何でもできる。こういう前提のもとに法律ができ上つている。それが心配なのでありますからお尋ねしたわけでありますが、     (委員長退席奥村委員長代理着席〕 ただいま主税局長のお答えによると、大蔵大臣代理者としての主税局長は、さしあたり先ほど申されたように嗜好飲料カバン及びトランク水あめサツカリン及びズルチン清涼飲料中のラムネサイダーに限つて施行する、こういうふうに了解いたしましたから、それでよろしいのでありますが、なお念を押しておきたいことは、ただいまのような不安がありますから、議会閉会中にはとりあえずこれで行くんだ、もしさらに商品を拡張するというふうな場合には、議会開会中に議会に発言の機会があるときにおいて実施するのである、こういうことをお約束できますか。
  18. 平田敬一郎

    平田政府委員 よほど特別の事情がない限りにおきましては、通常の指定の方針といたしましては、お話のような趣旨でさしつかえなかろうと私は存じます。
  19. 小山長規

    小山委員 それで了承いたしました。ついでに伺つておきますが、これだけの手数のかかることをやつて、先ほど来何度も上つているようなこれらの品目について、どのくらいの物品税を見込んでおられるのか。またその費用はどのくらいかかりますか。
  20. 平田敬一郎

    平田政府委員 先ほど申し上げましたように、手数商品性質添付表示は比較的可能であるということと、しかも実効が上るという点をねらつて、今の品目をさしあたり選定したわけでありまして、この税額が全体で大体二十二億七千万円であります。その費用が二千七百万円、証紙の作製その他一切の費用を含みます。やつた結果、これは正確なものはございませんが、少くとも五、六億円程度増収を期待できるのじやないか。もちろんこの増収につきましては一つの観測でございまして、はたしてそこまで行くかどうか問題であると思いますが、五、六円くらいは少くとも、今の証紙を貼りました二十二億円の税額の分について増収ができる。増収ができるということは、同時に一方におきましては会社にとりましても企業にとりましても、公正な競争が確保されるということに相なるものと思いますが、この程度のことは申し上げることができるかと思います。
  21. 小山長規

    小山委員 証紙政府がこれを作製して納税者に配付するというのでありますが、これを貼るについては相当手数がかかるものがありはしないかと思うのであります。たとえば嗜好飲料だとかラムネサイダーというものは工場製品でありますから、びんのレツテルを貼るときにそのまま機械的に貼れるかもしれませんが、トランク水あめというようなものは相当小さな業者がやつているので、相当費用がかかりはしないかと思うのでありますが、この費用政府が補償する趣旨法律は出ておりませんが、この点についてはどう考えておられるか。
  22. 平田敬一郎

    平田政府委員 証紙につきましては若干手数がかかりますので、費用の点で政府から補助金でも出すかどうかは研究してみたのでございますが、どうも考えてみますと、納税義務者が正しい納税義務を履行するための一つ方法でございますし、現在たとえば源泉徴収義務者等にも相当手数がかかりますが、これも別に徴税交付金等を出しておりません。徴税交付金につきましては、一般的に現在のところ支給することは差控えるという方針にいたしておりますので、本件につきましても支給しないということに、さしあたりいたしたのでございます。しかし考えてみますと、大体におきましてこういう品物につきましては、それぞれ何らかの方法業者も適当の表示もするというような場合が大部分でございますので、そういうものに証紙政府が作製して配つてやる。これは相当費用がかかりますが、あとの点は大体何とかやつて行けるのじやないかというように考えております。はたしてそれでうまく実行できるかどうか。さらに実行の上、御指摘のような点は再検討してみたいと思いますが、さしあたり今申し上げたような趣旨に従いまして、交付金等交付いたさないということにいたしたいと考えます。
  23. 小山長規

    小山委員 これはおそらく将来実施されたあかつきにおいては、特に小さな業者から非常に手数がかかる、費用を何とかしてほしいというような希望が出て来はしないかと思います。その際においては、政府としても寸分考慮してほしい、かように希望するものでありますが、さらにその一つの手紙として、近く議員立法納税貯蓄組合法というものかできることになつているのでありますが、これらの業者がこれらの物品税証紙を貼るために一つ組合をつくり、証紙を貼るような人たちがその地域的な納税組合に入る、そうしてそれから間接に証紙を貼るための費用を出して行く、こういうような方法考えておられませんか。その点を伺います。
  24. 平田敬一郎

    平田政府委員 貯蓄組合と関連しまして、何か組合等でやることにつきましては、どうも必ずしも適切ではないのではないかと考えております。貯蓄組合は、御指摘通り地域団体並びに勤務先、つまり雇用員である場合の勤務先を中心とする団体、この二つに限りますのが、今の趣旨から行きますといいのではないかと考えておるのでございます。同業者団体が集まりまして貯蓄組合を結成し、同時に物品税納税について証紙に関連して、そのことによつて補償等交付を受けることは、ちよつとむずかしいのではなかろうかと考えております。
  25. 深澤義守

    深澤委員 国税徴収法の一部改正に関して質問をいたしたいと思います。このたびの改正は、分納及び徴収猶予制度を確立し、さらに滯納処分猶予制度を新設し、あるいは滯納処分の停止の制限を設けたというのが内容でありますが、これは徴税が非常に不円滑であるという一つの現われであると私は考えるのです。政府当局がこの国税徴収法を今度改正いたします具体的な根拠はどこにありますか。それをまずお聞きしたいと思います。
  26. 平田敬一郎

    平田政府委員 その点については先般もお話しましたように、相当大きな滯納が現在も残つておりまするし、それから将来におきましても、なかなか一ぺんには納めにくいというような場合が全然ないとは言えない、そういうことを考えまして、こういう制度を設けまして、極力適正な処理をはかつて行こうという趣旨でございます。
  27. 深澤義守

    深澤委員 それではもつと具体的にお伺いいたしますが、昭和二十四年度の收入未済額が約千三十八億円あるということが、会計検査院によつて指摘されているわけです。この千三十八億円の収納未済額の整理は、今どういう状態になつておりますか。
  28. 平田敬一郎

    平田政府委員 先般たしかお手元に資料をお配りいたしておるかと思いますが、昭和二十四年の年度末現在における滯納総税額は、全部入れまして千二百五十八億三千六百万円ほど残つていたのでございますが、そのうち昨年十二月末日までに現金で入りましたのが三百四十六億五千二百万円、それから再調査の結果訂正処分いたしましたのが二百八十二億四千六百万円、それから結局納める資力がないために、あるいは行方不明等になりまして不納欠損になりましたものが十五億一千三百万円、合せまして六百四十四億一千百万円処理いたしまして、十二月末現在で六百十四億二千五百万円ほど残つております、なおこのうち最近までさらに若干処理が促進いたしておりまして、最近は五百五、六十億くらいの分が残つているのではないかと見ております。
  29. 深澤義守

    深澤委員 この滯納額の内訳でありますが、大体これは百万円以上の滯納者がどれくらい額としてあるか、それからそれ以下のものはどれくらいあるかという大づかみのことはわかりませんか。
  30. 平田敬一郎

    平田政府委員 今額の階級別のこまかいことは、なかなか調査がやつかいなものですからございませんが、大体税目別に申し上げますと見当がおつきになると思います。残つております六百十四億二千五百万円のうち、源泉所得税が四十四億六千四百万円、それから申告所得税が四百十九億六千九百万円、法人税が七十八億三千百万円、物品税が十八億円、その他が五十三億五千五百万円となつておりまして、申告所得税が大部分を占めております。額から申しますと、どちらかと申しますと中以下の滯納相当多いのではないかと見ております。
  31. 深澤義守

    深澤委員 その中で源泉所得税滯納額四十四億六千四百万円というのがありますが、大体源泉徴収は、納税者が俸給、賃金から天引きされるのでありますから、私はほとんど滯納はないと思うのです。結局徴収義務者が税務署への納税を怠つておるという結論になると思うのですが、その点はどうですか。
  32. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは深澤さんも御承知と思いますが、会社がつぶれかかりまして賃金も不払いしておる。給料でさえ一部払つてない。払いますと少くとも税金がかかるのですが、その税金は同時に滯納しておる、こういうようなのが勤労所得税の焦げつきの相当多くの部分を占めておるのではないか。もちろん経営的なものといたしましては、お話通り給料から差引いて納めるわけでございまして、納め得ないわけはないのでございますが、会社がどうにも経営が困難になりまして、資金にどうしても困窮しているようなものが、滯納として残つておるというふうに考えておるのであります。
  33. 深澤義守

    深澤委員 これは納税者から天引きでとりまして、会社が税務署に納入する期限と申しますか、徴収したときからどのくらいの間に納めなくちやならぬという規定になつておりますか。その点私よく知らないのですが……。
  34. 平田敬一郎

    平田政府委員 毎月払いました給与に対する源泉所得税は、翌月十日までに払い込むことになつております。滯納になりますのは、要するに給料だけ払いまして、税金を払う資金に困りまして納めてないというのが、焦げついておる勤労所得税の大部分であろうと思います。
  35. 深澤義守

    深澤委員 ただいまの説明によりますと、事業不振あるいは破算状態になつておるところが多いというのでありますが、これは相当大きいところもやつおるんじやないかというわれわれの資料があるのですが、それはどうですか。
  36. 平田敬一郎

    平田政府委員 大きいところも一時納税資金に困りまして、翌月十日までに納めるのが、一月遅れたとかいうような例はままあるようでございます。たとえば二十四年度分の焦げつきでございますが、これはどつちかと申しますと、大きいのは——大きいと申しましても、いわゆる会社といたしまして普通の成績を上げている、また悪いと言いましてもそれほど顯著に惡くないというようなところは、どつちかと申しますと比較的少い。そういうものに対しましては相当嚴重な督励を加え、差押え等の処置をとりまして督励をはかつておりますことは、御承知の通りだろうと思います。
  37. 深澤義守

    深澤委員 二十四年度の会計検査院の指摘によりますと、税務署は大体とつていない。ところがそれを指摘してとらしたものがこれだけあるということで、ここへ一億八千百何十万円かの具体的な数字が出ているわけです。そうすると、これは大体徴収すべきものにかかわらず徴収不足であつた、税務署がとらなかつたというものが、会計検査院において指摘されているものが非常にたくさんあるわけですが、その中で国際興業株式会社という一つの会社だけでも、滯納しておつたものが四百五十万円もあつたという問題があります。さらに国策パルプの百七十万円、その他いろいろなものがあります。もう一つは、横浜市の交通局が所得税の徴収不足があつたということになつております。おそらくこれも源泉所得税の問題だろうと思うのでありますが、これらは当然徴収すべきものを徴収しないような事務処理になつてつたのを、会計検査院が指摘して徴収さしたのである。こういうことがあるわけですが、これはどういう事情になつておりますか。
  38. 平田敬一郎

    平田政府委員 今手元にその書類を持つておりませんので、具体的にお答えいたしがたいのでありますが、徴収すべきものを徴収しなかつたというのは、おそらく本給のほかにいろいろな手当類を出しておりまして、その手当類等に対する税額調査が不十分であつたために徴税をしないでいた。それを検査院が検査の際に調査しまして税務署に知らせまして徴収したというのが、源泉徴収につきましては、徴収不足の税額の大部分ではないかと見ております。大体そういうものが多いようでございます。全体の滯納額といたしましては、先ほど申しましたように、二十四年度末の源泉所得税滯納額が九十一億八千六百万円、そのうち三十七億七千五百万円は昨年の十二月までに片づいておりまして、四十四億六千四百万円残つておる。これは、さつき申しましたように、相当督励をいたしておるにかかわらず、会社の成績かどうもよくないためになかなか納まらないというのが大部分であろう、かように見ておる次第であります。
  39. 深澤義守

    深澤委員 会計検査院の二十四年度の指摘の中にこういうのがあるわけです。当初徴収決定の際の調査が不十分のため、あとになつて誤謬訂正として減額しているものが、相当の額に達しておるという指摘があるのですが、これらは今末端において、納税のために非常に苦しんでいる一つの原因になつておるのではないかと私は思う。つまり具体的な調査もせずに、上からおつかぶせて税額をきめて来ておるという事実がたくさんあるわけです。従つてこれが指摘しておるように、徴収決定の際の調査が非常に不十分であるために、誤謬訂正をして減額したものがたくさんある。こうなつておりますが、こういう事実は全国的に相当あるのではないかと思うのですが、この点について主税局の方ではどういうぐあいに考えておりますか。
  40. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話の点が相当つたことは事実でございまして、私どもこれを否定するものではございません。ことに従来申告所得税につきましては、年度の関係で申告の成績がよくない。よくないで、そのままほつておきますと非常に入つて来なくて、全体の歳入にも影響を及ぼしますし、勤労所得税をまじめに天引きされているものとの負担のバランスの関係もございまして、放任するわけに行かないというので、年度末までに急いで調べて決定しているのが相当多かつたのでありまして、その中には御指摘のように調査が十分徹底しないで、あとで直さなければならないというものが大分ございまして、さつき申しましたように、訂正処分をいたしたものが相当ございます。しかしその点につきましては、二十五年度からは特に国税庁におきまして、新しく方針をきめまして、できる限り申告でやるように努めて参りまして、そのために申告期限も一月延ばしたのでありますが、それによつてできるだけ税額が申告されるようにする。どうしても申告が出なかつたものにつきましては、よく調べまして相当自信のあるものを更正決定して行くということに、本年度からは特に方針を改めましてその方針を徹底してやるように努めておるようでございますので、従来に比べますと、私は相当の改善を期待し得るのではないかと考えております。
  41. 深澤義守

    深澤委員 そこで国税庁長官にお伺いしたいのは、今申しますように、主税局は自主申告を十分尊重してやるのだという方針を明確にされておるのでありますが、昭和二十五年度の確定申告にあたりまして、この自主申告制度を無視されたようなやり方が行われておる事実を、われわれは聞いているのであります。たとえて申しますれば、確定申告の提出について、税務署がこういう印刷物を末端に出しております。これにはこういうことがあるわけです。かねて署員を伺わせて当署で調査したところの昭和二十五年度分調査所得金額は幾ら幾らになつておる。この金額があなたの御計算に合致し、これにより確定申告を御提出願えるようですと、更正決定などの必要もなく、万事好都合と存じますが、もしこの金額があなたの御計算と相違する場合には、一度お目にかかつてお互いの違いを突き合せてみることが、将来のめんどうを避ける道かと思われますから、お手数ながら何月何日何時に、この書面及び印鑑を御携帶の上御足労を願いたい。こういう文書がずつと行つているわけです。これは全体として見れば、なるほどあなたの方ではこれは強制ではない。間違つておるならば来て十分相談するのだといつておられるが、しかし自分の方の調査ではこれこれになつておる。これに合致するような申告をしてもらえば更正決定はしないけれども、もしこれに違うような申告をするならば、更正決定をせざるを得ないという、一つのおどかしの内容を含んでいると思う。こういうものをあなたの方では、全国的に納税者に対して税務署から発行させてやつておられる。われわれはそういうぐあいに解釈しているわけですが、この点について国税庁としてはどういうぐあいに指導されているか。この点についてお伺いいたします。
  42. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいまお読みになつたような文書を各納税者の方に差上げまして、そうして一々税務署に御足労を煩わして、税務署で調査しました内容について十分御説明申し上げて、それに御納得が行けば申告を出していただくということにとりはからつている次第であります。しこうしてこれは私どもは、むしろ納税者に対して非常に親切なやり方というふうな見地から、そういたしておるのでございまして、税法によりますれば、期間経過して申告が出ないとか、またはその申告額が著しく実際の所得よりも低いというような場合におきましては、どうしても更正決定をせざるを得ないのでございますが、そういう場合におきましては、たとえば無申告加算税とかまたは過少申告加算税、その他扶養控除、合算控除等の特典が得られないことになりますので、現在の税法のもとにおきまして、なかなか税法が難解でもあり、また所得の計算等についてもふなれの方が相当多いという現段階におきましては、こういうような方法によりまして、できるだけ税法についても御了解を願い、そうして事前にそういう罰則の適用を受けることがないように出していただくことが、最もよい方法でありまた親切な方法であるという建前から、非常にめんどうなことでもございますし、また税務署も非常に苦労をしておるのでございますが、そういうような趣旨をもつて申告の指導をいたしておる次第であります。
  43. 深澤義守

    深澤委員 税務署の方では親切と称せられるのでありますが、この確定申告の御提出についてという文書には、自分の方で署員を伺わせて調査したら、あなたの所得は幾ら幾らというふうに頭からきめてかかつているわけです。しかもこれは自由申告とは非常に開きのある数字なんです。これによつて税務署へ行つて相談したところが、税務署が調査したこの数字をそのまま自主申告にしなければ絶対にだめだといつて、これを拒否している。そういうものが何十人、何百人あるわけです。証拠があります。従つてこれは親切のためにやるのでなくて、天くだり的な申告を押しつけるためにやつているのだというぐあいにしか、実際の末端においては行われていないのです。あなたが親切にやつているのだと言われることは、納税者の方にとつてはもつてのほかであるというぐあいに考えております。その具体的な例を申し上げますと、これは江戸川の小岩の問題でありますが、たとえて申しますれば日暮という魚屋さんに対しては、二十四年度は二十八万円であつたものが、この確定申告の税務署からの通知は五十五万円になつておる。同町上田という魚屋さんに対しては、二十四年度は二十四万円であつたが二十五年度は三十二万円、大野という魚屋さんに対しては、二十四年度は二十三万五千円であつたのが二十五年度は三十六万円、井熊という魚屋さんに対しては、二十四年度は二十四万円であつたのが二十五年度は三十六万円、宮崎という魚屋さんに対しては、二十四年度は十五万五千円であつたのが二十五年度については二十一万円、吉田という魚屋さんに対しては、二十四年度は五十五万円であつたのが二十五年度は八十五万円、宮川という魚屋さんに対しては、二十四年度は十八万円であつたのが二十五年度は二十九万円、渡邊という魚屋さんに対しては二十四年度は二十三万円であつたのが二十五年度は三十六万円、そういうぐあいにべらぼうな開きがあるのです。こういう確定申告の指導をされて、この通りにやらなければ——つまり昨年度よりも五割増しもの金額を押しつけておいて、この通りに申告しなければ受付けないという態度は、決して親切な態度ではない。やはりこれは税務署が、ある一定の予定顏をどうしても消化しなければならぬという前提の上に立つて、こういうことをやつているとしかわれわれは考えられないのですが、その点は一体どうですか。
  44. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいまお読み上げになりました二十四年度との所得額の比較は、おそらく事実だろうと思いますが、それは税務署の調査した結果、二十五年度の実際の所得がその程度あるというふうに、調査が出て参つたわけであります。しかしながら所得については、当然税務署の見解が誤つている場合もございますので、必ずしもそれでぜひお出しにならなければならないというふうな、強制的なものの考え方は絶対にいたしておりません。従つてもし正しい所得がそれ以下であるならば、それ以下の申告をなさつて少しもさしつかえない次第であります。しこうして税務署がその金額でなければ受付けないということは、絶対にいたしておりません。たとい過少申告でありましても、申告は申告として受付けておいて、しかもその調査について不十分な点があれば再調査をしまするし、税務署の調査が自信があると申しますか、十分に行き届いた調査ができているということでありますれば、そのままその金額によつて決定するのはやむを得ないというふうに考えております。しこうして今年度は先ほどお話しましたような方法によりまして、それぞれ税務署においでを願つて、いろいろとお話し合いをいたしたのでございますが、その結果納税者側の非常な御協力を得まして、われわれの見当では大体九割までも税務署の調査した額に対して、是認できる程度の御申告をいただいておると見ておるのでございます。
  45. 深澤義守

    深澤委員 それでは税務署が、たとえば二十六万円の確定申告の指導をしておる。ところが、実際は十五万円しかないという自主申告をした。ところが税務署では何としても税務署の指示したものでなければ受付けない、こういう態度をとつた場合においては、その税務官吏は、自主申告をまつたく無視したやり方をやつておるわけです。そういうものが具体的にあつた場合には、長官としてはどういう処分をされるか、その点をひとつお伺いしたい。
  46. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 申告を受理しないということは、あり得ないと存じます。これは郵便であつても何であつても、ちつともさしつかえないのでございまして、正式な申告書として御提出になれば、必ず受理いたします。
  47. 深澤義守

    深澤委員 それはあなたが机の上で考えられておる考え方なんです。実際の末端においては、いや応なしに、これでなければ承知しないというふうに、強制されておる事実があるわけです。もしもそういう態度をとつた税務署員があつたとすれば、あなたはどういう処置を——具体的な例をあげます。税務署員の名前も申し上げます。そういう場合には、どういう処置をされるか。その点をひとつ明確にしていただきたい。
  48. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 おそらく申告を是認するかしないかということは、全然別個の問題になりますが、いやしくも正式にお出しになつたところの申告書を受理しないということは、あり得ないと存じます。しかしながら、もしそういう具体的な事実がありましたとすれば、調査しました上で、いかなる事情に基いてそういうことが行われたかということを、十分に検討いたしまして善処したいと考えます。
  49. 深澤義守

    深澤委員 すでに本年度においても、そういう多数にわたる事実があげられているわけです。この事実を、私は後刻長官の手元へ出しますが、これに対して十分な調査をしていただいて、もしもそういう事実があつた場合においては、税務行政の上から、十分適正な処置をしていただきたいということをお願いしたいと思うのですが、その点はどうですか。
  50. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 私ども税務署をいろいろ指導しおりましたり、また税務署の実情を見ておりまして、そういうことは常識的にはあり得ないと考えておりますが、もしもそういうふうな事実がありといたしますれば、十分に調査をいたしまして、善処いたしたいと考えます。
  51. 深澤義守

    深澤委員 それから税務署の方は、非常に完全無欠なようなことを言つておられるわけです。しかし幾多の問題はあります。税務官吏に不正がないといつても、不在の事実どんどん暴露されておるという事実は、否定し得ない事実です。もちろんこれは長官としてもお認めになると思うのですが、そこで会計検査院が、こういう指摘をしているわけです。帳簿書類の整理が不備であり、ことに所得調査簿と、徴収簿とが符合しないもの、または徴収簿自体の記入が正確でないものが多いこと、その他収税職員が、税金等をほしいままに濫費したものが多いことなどがあつて、このおもなものは後述の通りであるといつて指摘しているわけですが、こういう事実を、会計検査院自体も指摘されているわけです。従つて税務行政の上に是正すべき大きな欠陷があるということは、会計検査院自体もこれを指摘しているわけです。従つて私は謙虚な態度をもつて、税務行政の上に長官がひとつ対処していただかなければならないということを考えるのです。従つて、後日この具体的な資料を差上げますので、ひとつ税務行政の是正の上において、十分に御盡力を願いたいと思うのであります。  そこで今度の国税徴収法改正にあたつて主税局長にお伺いしたいのでありますが、税の分納及び徴収猶予制度を新設したということになつております。そうして以下、こういう場合には「徴収ノ猶予ハ分割徴収ノ方法ニ依ルコトヲ妨ゲズ」ということになつて、第七条で説明されておるのでありますが、この第七条の具体的な解釈を、一ぺん伺つておきたいと思いますので、それをお願いしたいと思います。
  52. 平田敬一郎

    平田政府委員 第七条につきましては、比較的条文に詳しく書いてあつたと思います。前の法律と違いまして、最近の法律は詳細に書いておりますので、特につけ加えて申し上げることもあまりないと思いますが、要するに、ここに列挙してありますように、「納税人其の資産ニ付震災、風水害、落雷、火災若ハ此等ニ類スル災害ヲ受ケ又ハ盗難ニ罹リタルトキ」こういう災害とか盗難にかかつたという場合は、やはり一つの条件にしよう。その次は、病気になつた場合、その次は事業を廃業したとか、やめたとか、これは概しておもしろくなくなつてこうなつたと思いますが、そういう場合、それから廃業または休止までは至らないが、事業につきまして相当大きな損失を受けまして、なかなか納税資金の調達が困難になつた、こういうような場合、その他具体的には一々列挙いたしかねますが、こういうものと類似の事由があります場合におきましては、一年間徴収の猶予を認める。猶予する場合におきましては、全部一ぺんに一年猶予してもよろしいし、状況によりましては、三分の一ずつを三期にわけて納めさせるというようなやり方をとつてもいいというのでございまして、この法律相当詳細に条件等を書いておりますので、大体条文によつておわかり願えると考えておる次第であります。
  53. 深澤義守

    深澤委員 この条文によりますと天災地変、病気、災害というものが大体骨子になつているようでありますが、ここで事業を廃止しなくちやならぬ、あるいは事業について甚大な損害を受けたということは、当然経済上の問題だと思うのです。社会情勢の変化というような問題だと思うのです。あるいは政府の施策というものが、急激に経営に影響を及ぼすというような問題が含まれていると思うのですが、そういう点を認められるのかどうか。單に具体的に現われて来た現象形態として、このものは事業を廃止した、休止した、あるいは甚大な損害をこうむつた、こういう具体的な、何か証拠になるようなものを出さなければ認めないのか。それとも経済界一般の不況というような、そういう事情によつて非常に事業が不振の状態にある、こういうことでも認めるのか。その点をひとつお伺いしたい。
  54. 平田敬一郎

    平田政府委員 これはむしろ原因は別といたしまして、各納税者の個々につきまして、このような事情が発生したときということでございますから、その中には自分がやはりやりそこなつて失敗したときもあると思います。それからもちろん一般的な動向によつて、このような結果に陷つた人もいると思いますが、その原因のいかんを問うておりません。ただ問題は、廃止、休止した場合におきましても、失敗するにあらずして單にやめたような場合は、必ずしも徴収猶予の必要はないかと思いますが、概して一般的に猶予すべき理由に該当するということで、列挙いたしておるわけであります。原因は、お話のような場合によつて企業がほんとうにこういう事情に該当した場合と、そうでない場合と、両方とも入つておるわけであります。
  55. 深澤義守

    深澤委員 つまり経済状態の変化その他の条件によつて、事業が不振になつたという場合も、これを認めるということで了承できるわけであります。  第二の点は、滯納処分猶予制度でありますが、この滯納処分の猶予の問題についての御説明を、ひとつお伺いしたいと思います。
  56. 平田敬一郎

    平田政府委員 今のお尋ねは第十二条の三の規定であろうと思いますが、これはここにも書いてありますように、滯納処分の執行によりまして、納税者の事業の継続を著しく阻害するおそれがあるとき、たとえば今公売を実行するとなりますと、企業としてはつぶれてしまうおそれがある。しかしその事業の将来は必ずしも見込みがないわけではない。むしろそういう場合におきましては、公売処分を猶予して、事業に十分な仕事をやつてもらう。結局その方が事業としても継続できるし、あるいは長期にわたつて見ますれば、税金も公売で一ぺんにやるよりも、かえつてよけいに入つて来る可能性がある。こういう場合が、実際問題といたしましても会社などの場合はあると思いますが、そういう場合におきましてはこの規定を活用して、そういうような結果を得ることができるようにいたしたい、こういう趣旨でございます。従いまして、この規定はあまり広汎に適用するのはいかがかと考えておるわけでありましで、こういう条件に該当する場合をはつきりいたしまして、運用上適切を期したいと考えておる次第であります。
  57. 深澤義守

    深澤委員 そうすると、この規定は会社等の法人にのみ適用して、個人的な経営の一般商工業者には適用しないということになるわけですか。
  58. 平田敬一郎

    平田政府委員 一般の商工業者に適用しないわけではございません。適用するのでございますが、ただ会社等の場合は、今度別に会社更生法という法律ができまとて、こういう類似な場合におきまして、特別の整理手続をいたすことができるように聞いておりますので、そういう制度とあわせ運用しますれば、この規定の運用が比較的円滑に行くだろう。もちろん個人の場合におきましても、これにはつきり該当することが認められる場合においては、適用する方針でございますが、ただこの規定は、ここに書いてありますように、条件が若干広くなつておりますので、流用にあたりましては、あくまでも適正な運用をするという意味において、運用して参りたいと考えておる次第であります。従いましてこの規定は、政府が職権をもつて猶予するということにいたしておる次第であります。
  59. 深澤義守

    深澤委員 この国税徴収法改正の根拠は、特に納税成績の上つていないところの申告所得税、この問題が一番悩みの種であると考えられるわけです。従つて滯納処分猶予制度も、この申告所得税を対象として重点的に考えなければ、私は意味をなさぬと思う。従つてこの滯納処分猶予制度というものが、広汎に中小の商工業者あるいは農業に適用されなければ、ほとんど意味をなさぬと私は考えるのですが、その点はどうですか。もう一ぺんお聞きしたい。     〔奥村委員長代理退席、小山委員代理着席〕
  60. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話通り申告所得税滯納を適切に処理するという必要性がありますことは、まつたく同感でございまして、私どもも考えておるのでございますが、ただ額の比較的少いものにつきましては、どつちかと申しますと分納、一年の徴収猶予制度、それからあるいは資力が比較的少くなつたようなものにつきましては、別にありまする三年間の停止の制度、こういう制度の方がむしろ活用の余地が多いのじやないか。この十二条の二の方は、運用にも相当むずかしい問題がございますので、最初からあまり手広くやりますのは、いかがなものであろうかと考えておるのであります。もちろん条件に該当するものにつきましては、この規定を適用いたしまして、目的を達したいというふうに考えております。
  61. 深澤義守

    深澤委員 それではその滯納処分の停止の問題でありますが、この提案理由には、滯納者が無財産の場合、または著しく生活困窮に陷るおそれがある場合ということを条件として、三年間の滯納処分を停止することができるというぐあいにいたしたのでありますが、これを広く一般の申告所得税に苦しんでおる人々に適用するという、ただいまの御意見でありますが、滯納者が無財産の場合、または著しく生活困窮に陷るおそれがある場合という認定の問題ですが、これはどういうことを基準として認定するか。この認定の問題は、個々の税務官吏がやるのか、あるいは何かそういう審議制度でも設けてこれをやるのか、そういう点についての御説明を願いたい。
  62. 平田敬一郎

    平田政府委員 この規定は、御承知の通り一応停止処分をやりまして、中間で資力が回復しない場合におきましては、三年たつと自然に納税義務がなくなつてしまうというので、そのときすぐそれを欠損処分にするわけではございませんが、一種のそれに近い処分をやるということに相なるのでございます。従いましてこの条項に該当するかどうかは、税務署におきましてもよく取調べまして、相当詳細な調査を経てこの処分を実行するようにいたしたい。ただしかし小さい納税者で比較的はつきりしているものは、比較的簡單に片づくと思いますが、やはり大きい認定の困るようなものにつきましては、むろん国税局の徴収官の制度等がございますが、そういう点においてもよく調べまして、適切なる処理をはかつて行くことに相なろうかと考えております。
  63. 深澤義守

    深澤委員 そうしますと、もう一ぺんその点を確かめておきたいのでありますが、この滯納処分の停止の問題については、小さいものについては個々の税務署に場おいて、またその担当する税務官吏が認めた場合においてはそれをやる、こういうことを承知していいのですか。
  64. 平田敬一郎

    平田政府委員 少額のものにつきましては大体税務署限りで処理する。ただ担当官限りというのは語弊がございまして、むろん署長の責任でやるわけでございます。
  65. 深澤義守

    深澤委員 少額のもということで漠然としておりますが、これはどの程度のものを大体目安にされておるのか。その点をひとつ御説明願いたい。
  66. 平田敬一郎

    平田政府委員 具体的に額を幾らにするか。その辺は将来国税庁等におきまして、事務処理方法といたしまして研究される場合があろうかと思いますが、今のところはつきり幾らからどうするというところまでは、きまつておらないと思います。その点は必要でございましたら、高橋国税庁長官からお答えがあると思います。
  67. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 金額について、どの程度の金額まで完全に税務署にまかしていいかという点は、まだ未決定でございます。大体一定金額以下のものは税務署において決定できる権限を与え、それ以上のものは国税局において稟議をせしめて、国税局においてもよく調べた上で処置いたして行きたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  68. 深澤義守

    深澤委員 この停止処分あるいはその他の猶予制度というものを新設いたしまして、納税者はこの制度が円滑に適用されるならば、現在の徴税の問題から、ある程度その苦しみを避けることができると私は思うのです。ところが、前年度の問題についてはそういう制度を適用された。ところが新たにまたこの滯納というつまり新しい年度の税金について、また納められないという問題が起ると、結局そういう猶予あるいは停止の処分が、おのずから効力を失うという結果になるのであります。ところが、そこで問題になるのは、そういう猶予制度やあるいは滯納処分の停止を受けた者に対して、また前年度と同じような税金を課して行くようなことになりますと——従来ともそういう傾向があつたのでありますが、前年度幾らであつたから、今度はそれに増して来るというような、そういう形です。実際の具体的の経済状態やその営業の状態というものが具体的につかまれておらないために、やはり前年度を基準としてやつて来るということになりますれば、また新しい年度における滯納問題が出て来ると私は思う。従つて国税庁長官にお伺いしたいのは、そういう猶予あるいは停止の制度の適用を受けた者に対しては、具体的にこれを調査いたしまして、それに適応するような課税を考えなくちやならぬと思うわけですが、何でも前年の例に対して何割増しということでやられたのでは、せつかくのこの制度が全然無意義になると思うのですが、その点の運用の問題について、長官の意見を拜聽したいと思います。
  69. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 停止処分に関しましては、資力が回復した場合には停止処分を取消すということに相なつておるのであります。従つてその年度の所得を新たに調査いたしまして、その年度において十分に所得があり、また資力があるという場合におきましては、前の停止処分を取消すと同時に、新たに申告を出していただきますなり、または申告が出ない場合には、更正決定の措置をとることをせざるを得ないかと考えておる次第であります。
  70. 深澤義守

    深澤委員 それから十六条の問題で、差押えをすることのできない範囲を少し広げたようであります。この差押えることのできない物件の中で衣服、寢具、家具及び廚具、これが第一項にありますが、大体その営業に必要な器具、機械あるいはそれの用品というようなものは、これは差押えることができないことは常識判断で当然なのであります。ところが、たとえばミシンの加工をやつておる者が、ミシンの差押えを受けておるという事実がたくさんあるのであります。あるいは農業をやつておる人々が農器具を差押えられておるという事実が、たくさん全国にあるわけであります。さらに生活必需品と申しますか、たとえば少くとも時計とかあるいは茶だんすくらいは、これは憲法に定められた最低生活の必需品であると私は考える。そういう意味で、これは非常に漠然としておりますが、当然営業あるいは業務に必要なもの並びに最低生活に必要なるもの、そういうものは差押えることができないということにならなければ、まつたくそれは国民生活の不安を助長するものでありますので、この一項目の規定では、どうもまだ非常に不十分であると思うのですが、この中に、私が今申し上げましたような業務に必要なもの、最低生活に必要なものの差押えはできない、こういう解釈ができるかどうか。その点についての御意見を承りたいと思います。
  71. 平田敬一郎

    平田政府委員 お尋ねの点は少しどうも漠然としているような感じがするのでございますが、大体その考え方の動機と申しまするか、動機は同じような点を考えまして、具体的にはこの法律で規定しておりますような要件に該当する場合において、差押えはできないということにいたしております。それぞれやはり「滯納者及其ノ同居ノ親族ノ生活上欠クベカラザル衣服、寢具、家具及廚具」、それから「滯納者其ノ同居親族ニ必要ナル六箇月間」——今までは三箇月間でありましたが、六箇月間に延長いたしましたが、「六箇月間ノ食料及薪炭」、それからその次の十六条の三号、四号は、今まではほかの品物を提供すれば押えないという、相対的の禁止物件だつたのでありますが、こういうものの中におきましても、主として自家労力、つまり自分が働いてその事業なり、農業をやつている場合におきまするその働くための必要な器具は「欠クベカラザル器具」、これは同じく今度は差押えが一般的にできないようにしようということにいたしております。なおその他「欠クべカラザル」ということにいずれもされておりますが、その他のものにつきましても、十七条はやはり生かしておりまして、欠くべからざる程度までは至らないが、やはり農業なり営業に必要として使つているものにつきましては、ほかの物件を提供いたしますれば、やはり差押えはしないという二段構えに、今回はかえることにいたしたのであります。これによりまして、よほど運用上円滑に行き得るかと、私ども考えている次第であります。
  72. 深澤義守

    深澤委員 そういたしますと、主税局長の解釈はそれでいいと思うのですが、実際面をやられる国税庁長官の御意見を拜聽いたしたいのであります。第一項の「滯納者及其ノ同居ノ親族ノ生活上欠クベカラザル衣服、寢具、家具及廚具」ということになつておりますが、たとえて申しますれば、茶だんすであるとかたんすであるとかいうものは、一体生活上欠くべからざる家具の中に入るかどうか。その点をお伺いしたい。
  73. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 そういう場合におきましては、具体的にその人にはたして欠くべからざるものであるかどうかということを検討いたして、決定いたしたいと考える次第であります。
  74. 深澤義守

    深澤委員 それは具体的な問題でなくて、一般的な問題であると私は考える。たとえば衣服が、ある場合には、それがいいタンスにしても惡いタンスにしてもタンスがいる。あるいはいろいろな炊事道具がある場合には、それを入れておくところの茶ダンスがいる。こういうことは一般に共通する問題であると思う。そういう場合において今までは茶だんすも、たんすもなかつた。全部やられたわけです。そうするとこの解釈では、われわれは生活上欠くべからざる家具の中に、そういうたんすとか、あるいは茶だんすとかというものが含まれると解釈するのです。その点は非常に小さい問題でありますが、実際の徴税にあたつては重大問題でありますので、明確に一応お伺いしておきたいと思います。
  75. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 個々の場合につきましてはなお十分に検討いたしまして、法律施行までに具体的な指示をいたしたいと考えております。しこうしてこれらの指示につきましては、やはり通牒を公開いたしまして、皆さんの御批判をいただきたいと考える次第であります。
  76. 深澤義守

    深澤委員 そうするとまだこの施行に関する具体案を持つておられない。後日研究して明確にしよう、こういうことでございますか。
  77. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 お話通りでございます。
  78. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 すでに同僚諸君から種々御質問があつたわけでありますが、私は、二、三点だけ補充的に質問いたしたいと思います。国税徴収法の一部を改正する法律案についてでありますが、ダブつた点がございましたならば、簡單に御答弁願いたいと思います。今度の改正によりまして盗難、疾病あるいは廃業等によりまして、非常に減収になる分に対しまして、御承知の通り今回の改正によつて猶予することは、まことにけつこうな話でありまして、われわれは賛成を惜しまざるものであります。また延滯加算税を免除したり、また利子税等について免除する規定は、まことに当を得た規定であると考えております。この適用につきましては、かなり実情を調査いたしまして、御研究の上その制度を適用されることと思いまするが、ことに私どもの考えておりまする点は、二年もしくは三年というふうに長くなりますと、情勢もかわつてよくなる場合もあるし、惡くなる場合もあるわけであります。これに対しまして、何か先ほどもお話があつたと思いますが、審議会のようなものを置かなくても、かつてに税務署長がおきめになるのでしようか、その点を簡單でよろしゆうございますから、承りたいと思います。
  79. 平田敬一郎

    平田政府委員 こういう制度は、個別的にあくまでも納税者の実態をよく調べました上で、処分することでございますし、やはりそれぞれ責任のある官吏が調べまして、それを税務署でします場合には税務署長の裁断できめて行く。重要事項は国税局も同時に研究する。さらにまた非常に全国的な重要な事項は、国税庁におきましても見る場合があると思います。そういう方法によりまして、正しい処理をして参るようにしたらどうかと思つております。
  80. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今の主税局長お話によりまして大体了承いたしました。  第二番目に伺いたいのは、はなはだとつぴな例でございますが、今までは会社の設立によりまして、従来の営業を急に廃止いたしまして、会社に転籍いたしたために脱税になりましたり、徴収ができなかつたということを防ぐために、今回の改正によりまして、同族会社のごときは、その会社の方にもこれを徴収し得られるというふうに規定がなりましたことは、最も進歩いたしましたる筋合いであると思うておるのであります。これにつきまして、ある会社のごときは何か防戰的に出るおそれがあるのではないかということを考えておりまするが、この法律によりましてどこまでもとるというふうに考えますが、その辺の運用についてはどういうふうに考えて行われますか。簡單でけつこうでございますから承りたいと思います。
  81. 平田敬一郎

    平田政府委員 従来から若干こういう例がありまして、今回新しく規定を設けたわけであります。ただあまりさかのぼりまして、何でもかんでも該当するということになりますと、これはまたそれほど悪意でない納税者にも影響が及ぶおそれがありますので、それぞれ年限を切りまして一定の制限をつけております。それで十分かどうかという問題かと思いますが、この程度で行きますと、ほんとうに調べられかかつて脱税にかかりそうな場合に、会社にかわつてあと徴税をうまく逃げる、こういうようなものがまず防げるのじやないか。大体相当計画的にやります質のよくない者には、今度の改正によつて相当目的を達成し得るのではないかと考えております。
  82. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今の局長のお話によりまして、大体脱税するような気分のやつだけはとる、あまり古いものには手をつけぬというふうに、私は了承するのでありまするが、その説に私は賛成です。どうか脱税の目的をもつて、あるいは少しく税金を安くせしむる目的をもつて、急に組織がえをしたようなものにつきましては、とつていただきたいと考えます。  次は保証人についてもとり得るというのでありますが、事実上保証人についてはなかなかとり得ないかと思つております。今までの実績等によりまして、それがどういう状況であるか承りたいと同時に、ついででありまするから、もう一つ申し上げておきまするが、差押えをいたすにあたりましては、割合に若い官吏、二十歳か二十二、三の官吏が行つております。そこで国税庁長官にも相談いたしたいのですが、もう少し経験のある者をいわゆる総務課の方にまわして、そういう若いのは署内におつて、補助的事務に従事せしめた方が納税者の方は喜ぶと思うのですが、これに対してどういう感想を持つておられるか。この二点について承りたいと思います。
  83. 平田敬一郎

    平田政府委員 この保証人に関する規定と、その保証した場合の徴税方法に関しまして規定を設けておるわけでありますが、前者はまず分納を認める場合に、一定額以上の場合は担保を出させる。その場合には、物的担保でなくても保証人でもよいということにいたしております。それに関連いたしまして、そういう保証人を提供した場合に、本人が納めなかつた場合において、保証人からどういうふうな手続で税金をとるかということを、規定いたしておるわけでございます。  それからあとお話でございますが、これはまことにごもつともなお話でございまして、私どもひとり滯納だけでなく、全部の税につきましてなるべく経験者を多くいたしまして、規定の処理ができるようにいたしたいと考えますが、国税庁においてもすでにその方針でやつておるようでございますので、日を追うて私は相当いい成績を上げ得ることと考えております。
  84. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 時間がありませんからもう一点だけ伺います。ただいまの主税局長の御答弁によりまして、私も了承いたしたのであります。どうか今後の徴税方法におきましては、この法律に示されたるがごとく、なるべく穏健にして妥当なる、合理的なる、また納得の行く徴税をしていただきたい、かように強く要望いたします。  次は専売局になりまして恐縮でありますが、ごく簡單に御答弁を願いたいと思います。タバコは今度下ることになつておりますが、これについて何かもう少し構想を込められまして、今後対策を練り出される予定がありますか。その点だけを承りたい。
  85. 久米武文

    ○久米政府委員 タバコの値下げにつきましては、この委員会におきましても申し上げております通り、四月一日からピース及び光を各十円ずつ値下げをするということに考えております。  なお将来の構想につきましては、タバコの価格というものは、他の物価との関連あるいは財政上の専売益金の確保の観点、あらゆる点を総合的に判断して、適正な価格に持つて行くという考えでございます。
  86. 大上司

    大上委員 国税徴収法の一部を改正する法律案について二、三お尋ねをしたいと思います。本法案が公布になつた場合に、いわゆるこれが有効になつた場合に、国家における歳入額として見込まれた額が入らないといいますか。歳入減と申しますか、この金額を大体幾らくらいに推定なさつておられるか。もちろんこの法が動いて見ぬとわからぬが、大体の計数は主税局でお持ちであろうと思いますから、その計数を承りたいと思います。  次にこの法律が出ました動機といいますか、これについては深澤委員から少し突いておられましたが、いわゆる滯納が非常に多い、これを救助しなければならぬ、このように解釈をしておるわけですが、ついては直税なら直税、間税なら間税法規において、法規一点ばりにたよつて徴収面は考えておらない。一例を申し上げますると、今月の二十四日の毎日新聞に記載になつておりました大阪地区における利根無線会社、あるいはキング・レコード等の滯納、これは一方における法の強行といいますか、当然徴収ができ得ないのを見越して決定しておる。この間において何らかの法の救済策があるのかないのかというのが第二点。   いま一つは、今度は逆に税金をたくさん納めて誤謬訂正になつた、いわゆる過誤納はちようだいしなければならぬというのがありますけれども、この支払いが現在幾らくらいたまつておるのか。あるいはそれと同時に、先般ここを通過しました政府支払遅延防止法というのがありますが、過誤納に対してこの法律によつて利子をつけてやつた額は幾らであるか。   それからもう一つは、本年度末のいわゆる欠損処分に落さなければならないと見越されておる金額は、一体どのような金額になつておるか。これは大きな実例として、どういうふうにして本年度の欠損処分に落さなければならぬという金額が出て来たのか。これだけをお尋ねいたします。
  87. 平田敬一郎

    平田政府委員 この制度につきまして、あとどういうふうになるかという見通しの問題でございますが、これは個別的に調べ上げまして、その上で適正な処理をするということでございますので、今はあまり確たる見通しは実は立てにくいのでございますが、しかし現在二十四年度以前の分の滯納としまして、先に申し述べましたように五百六、七十億残つておると計算しております。そのうち本年度中に約百億前後は、現金納付あるいは訂正して欠損処分で片づくのではないか。そうしますと残額は約四百七、八十億になるかと思いますが、そのうちやはり停止処分と徴収見込みとそれぞれございますが、停止処分にせざるを得ぬのが百億前後あるのじやないかと見ております。しかしこれはまだ確たる見通しではございません。個々の調査をいたしまして個別的に適正を期するのが目的でございまして、総体の額につきましては、私ども責任あるお答えができないのは残念でございますが、そういう見当でございます。  それから徴収できないのを賦課するのかどうかというお尋ねでございますが、これは賦課はもちろん法文に基きまして、適正に賦課すべきものであつて、賦課されたのを適正に徴収するということになるわけであります。この間徴収見込みがないから賦課を適当にしろということも、どうもやはり税務行政の本筋から行きますとどうかと思うわけでありまして、両者はやはり理論としましては、それぞれ別々に適正な措置をやつて行くということに、進むべきものではないかと考えられるのであります。税法におきましても、ことに所得税等につきましては、二十五年度からは大体改正を加えまして、損を生じた場合には青色申告さえしておけば、繰りもどし、繰越し、控除等の制度もつけております。災害、盗難等の場合におきましても、それぞれ控除する規定を設けておりますので、将来は賦課自体も相当納税者の担税力に即応するようになり得ると、私は考えておる次第でございまして、あまり徴収のことばかり考えまして、賦課を適当にやるというのは、少し方向としましてはいかがであろうかと私は考えておるのでございます。  過誤納の問題は、今相当つておるのもあると思いますが、しかし最近ではこれは返すという方針で、国税庁はもつぱら督励しておるようでございますし、そういう方向につきましては、将来はだんだん改善されて行くものと信じております。今政府支払遅延防止法に基く利息の資料が手元にございませんのですが、直接関係がございませんので、別の機会に主計局からでも説明させていただきたいと思います。
  88. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 現在過誤納による払いもどしの金額で、未払いになつているのはどの程度つているかという御質問でございますが、御承知の通り昨年の臨時国会において補正予算で増額いたしまして、十五億円の予算に相なつたのでございます。これでもつて本年度内はそう遅延を生ずることなしに、払いもどしができるものと予定しておる次第であります。しこうしてこれが手続等に対しましては、払いもどしについて、実際にその払いもどしの当人であるかどうかということについて、やはり印鑑証明その他の手続を、現在の段階においてはどうしても必要といたします関係上、非常に事務の促進をはかつておりますが、ある程度期間がかかることは、現在の段階においてはやむを得ないものと考えるのであります。しかしながらこれも漸次改善いたしまして、できるだけ早急に払いもどしのできるように進めて行きたいと考えるのでございます。  いま一つ、本年度の欠損処分がどの程度になるかという御質問のようでありましたが、これはまだ見当がつきません。しかしながら本年度の方針といたしましては、欠損処分という安易な方法によつて滯納の整理を進めるということは、できるだけ避けて行きたいという考えでありまするので、そう大きな金額にはなるまいと考えておる次第であります。
  89. 大上司

    大上委員 本法案の提案理由の説明を読みますと、内容は非常にきれいな文字を使われておりますが、その中の三ページに「滯納処分の停止の制度を設けたこと」この中の最後のところに「以上の三つの措置によりまして、滯納につき特別の事情がある納税者につきましては、その実情に応じ、つとめて合理的に且つ適切な徴税を行う」こういう言葉が出ているのであります。また本委員会において、主税局はもちろん当局の者にも私よくお尋ねするのですが、「つとめて合理的に且つ適切な徴税」という具体的な実例があるはずと思います。それをひとつ聞かしてもらいたい。いま一つは、督促手数料は徴収しないと言つておりまして、なるほどこれもしごくけつこうと思いますが、これによつて事務経費の分担額は一体どのくらいの程度になるか。あるいは今まで通り、これは督促ですから国家の権利として当然徴収して、さらに税務行政の一資料その他のものに充当すべきでなかろうか。  最後に国税と地方税との間の徴収の順位を同一にしたということであります。これはたまたま各委員からいろいろ質問があつたと思いますが、現在の国税の徴収機構面から見、人員の割当から見まして、とてもじやないが、順位をつけてやらないと国税の徴収は至難じやなかろうかと思います。一例をとつてみますと、われわれが国政調査で八月に出た折に、これが一番大きな問題であつた。なるほど原則上は、各府県の副知事あるいはこれに当るべき相当の人と税務署長の話合いがあつても、実際に現場においては国税の方が手数料が下である。一例をとりますと、大阪の東区においてはこの地方税をとるために、相当のりつぱな庁舎と同時に百人余りの人を配置している。ところが税務署におきましては、腰弁で走るのがたつた十五人くらいしかおらない。しかもその人は朝早く弁当を持つて行く。そして次々にまわると、弁当が途中で暑いから腐つてしまうというような実例を聞いております。とてもじやないが、同一順位にした場合に、徴収上非常に不可能じやないかと考えますが、当局はどういうふうに考えておりますか。この三点をお尋ねします。
  90. 平田敬一郎

    平田政府委員 一番最初の質問は、どうも大上さんにお答えするのははずかしいくらい、大上さんの方が御承知だと思いますので、あらためて申し上げる必要はないかと思います。いろいろ本委員会において問題といたしておりますことも、もつぱらそういう方向で実はすべて物事を処理する考えであるのでございまして、すべての行政をやります場合の一つの憲章であると考えているのであります。  それから第二の督促手数料でございますが、これはお話通り手数をかけるのだから若干の手数料をとつたらいいじやないかという議論も、率直に申しましてあるわけであります。でありますが、わずかの手数料をとるのに、また手数がかかつておるというのが現状でございまして、いかにも手数倒れになつておる手数料という感じがいたしますので、今回むしろやめたらどうかということにいたしたのでございます。二十四年度におきまして督促手数料を決定いたしましたのが一億二百五十四万六千円、そのうち入つて来ましたのが三千三百三十二万四千円、結局本税と一緒に出したのが一千百七十九万九千円、なお十二月末で五千八百万円というのが不納になつてつておるような状態でございます。このような状態から考えましても、督促手数料を廃した方がいいだろうということで、廃止することにいたした次第でございます。
  91. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 お話のように、地方税と国税との徴収職員の数において、地方税の方がずつと多数であるために、国税の歳入に相当大きな影響がありはしないかという点は、私どもも同様心配しておる点でございます。しかしながら大上さんも御承知の通り、今年から申告所得税はもつぱら指導に重きを置いて、納得の行く方法をやつておりますので、滯納の金額も今後は激減して行くものであるというふうに、実は期待を持つておる次第でございます。従いまして一方税務官も漸次なれて参りますし、またその方法も納得の行く合理的なものになつて行くことによつて、能率を上げることができるのではないかと期待いたしておりますので、何とかしてこの程度の人員をもつて、歳入の確保をやつて行きたいと考えておる次第でございます。
  92. 深澤義守

    深澤委員 差押えの際に非常に問題が起つております。具体的な例もあるのでありますが、この差押えの場合においては、当事者がいなかつた場合には、成年以上の者もしくは市町村吏員、または警察官吏を証人として立ち会せるという問題があるのでありますが、これを事実やつていずに、しかも差押え調書は、その場で当然作成すべきものであると考えるのでありますが、差押えをしたのかしないのかわからないような状況の中で、あとから差押え調書が送付されて来る。その差押え調書が送られて来て、初めて差押えされたということが明確になつたという事実すらあるのであります。そういう問題は各所にありますので、これは非常に不当であるとわれわれは考えているわけでありますが、そういう事実があるにかかわらず、今度の改正では第二十一条の二を挿入いたしまして、そうして差押え物件の搬出をなす場合において、本人あるいは同居の親族、代理人等にかかわらず、許可を得ずしてその場所に出入することができないというふうに禁止して、これを罰するという条項を挿入しておるわけです。これは日本の一般の習慣として、不幸があつた場合には、隣近所あるいは親戚友人が集まつて、その不幸をお互いに慰め合うということは、普通の常識です。火事の場合であつても、差押えの場合であつても同じだと思う。ところがそれを二十一条の二の規定を挿入することによつて、この不幸にあう者を全然孤立させてしまつて、そうして差押え物件を持ち運ぶようにされたのは、どういう趣旨であるか。その点をひとつ承りたいと思います。
  93. 平田敬一郎

    平田政府委員 この規定を新しく入れましたのは、差押え処分をやります際に、あまりに大勢の人が押しかけましては、適正な処理がなかなかむずかしい、こういう場合が若干ございましたので、こういう規定を入れまして、差押えにつきましては、あくまでも公正にできるようにいたしたい、こういう考えからであります。
  94. 深澤義守

    深澤委員 私はこういうことで差押えの適正を期するよりも、税額を決定する場合や、あるいは指導する場合に十分の努力をすべきであつて、そうしてその結果として起つて来る差押えの問題について、附近の人が同情して、この差押えに対して抗議したり、あるいは反対したりするような行動を取締るということでなしに、こういう事態に立ち至る前に、税務署自体がこの税務行政の円滑を期するための努力をしなければならないと思う。何ゆえにこういう不幸な立場にある者を孤立させて、そうして差押え処分をするような条文を入れたかということについては、前のいろんな猶予の処分とか、あるいは停止の処分という、この税務行政の円滑を期するという趣旨に沿つたかのごとき規定をきめておりながら、この二十一条の二を挿入したということは、前の改正をまつたく抹殺して余りある結果になると私は思う。こういう法案はまさに一般の納税者の税務当局に対する反感を買うばかりだと思う。こういう点は、まつたくわれわれは削除すべきであると考えるのですが、どうですか。
  95. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話通り、申告の指導をうまくやり、それから調査も十分親切丁寧に徹底してやりまして、納税に関する紛議は少しでも少くなるようにする必要がある。この点につきましては、まつたく私どもも同意見でありますが、ただ最近の例から見まして、あまりにも多くの人が押しかけまして、結局正しい差押えができないというような例も若干ありますので、こういう規定を設けまして、そういう際におきましても公正な執行を期したいというのが、本条の趣旨であります。
  96. 深澤義守

    深澤委員 最後にもう一点だけお聞きしておきたいのですが、こういう問題が紛糾すること自体は、結局税金が正当に課税されていないというところに問題があると私は思う。従つて先ほどもここで問題にいたしましたが、確定申告の指導にあたつても、親切な立場からやるのでなくて、どうして税務署の予定したところを割当てるかというところに問題があると思う。そういう意味において、税務当局が円滑にやりたいということ自体の中に、結局課税の根本にさかのぼつて考えるべき問題があると私は思う。こういう点については資料を提供いたしまして、国税庁長官に私は御相談申し上げたいと思うのですが、結局紛糾する根本は、課税の根本に、税務当局が考えておることと、国民の実態というものに非常に大きな開きがある。ここに問題があるということを、私は強調しておきたいと思います。
  97. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は動議を出す前に一点だけ申し上げたいと思います。先ほど主税局長の御説明でたいへんよくわかつたのでありますが、ただ国税庁長官の御答弁がないので、お願いいたしたいと思います。というのは、ほかでもありませんが、特に私の関係の深い愛知県の方から陳情が出ております。農業所得について、反当りの収穫率もしくは所得率が愛知県が一番高い。たとえていいますと、愛知県は豊穰県であるという点もあるかもしれませんが、そういう点ははなはだ不穏当であると思うから、よく長官に聞いてくれという陳情を受けたのですが、各県の反当りの収穫もしくは所得率等につきまして、参考資料がもしありましたらお示し願いたいということを申し上げて、これに対しまする答弁を要求いたします。
  98. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 先般愛知県から相当多数の方が見えまして、農業所得の反当り収穫率がたいへん高いという御調査をいただいたのでありますが、その御調査の根拠になる愛知県の数字をいろいろ検討してみますと、いろいろ不都合な数字になつておる向きもありました。必ずしもあの表によつて判定するということは、妥当でないのではないかと考えておりますが、しかし全面的に負担の公平をはかるということは、私どもの信念とするところであります。十分に諸般の資料を収集いたしまして、全国的に公平をはかつて行くということにいたしたいと思つております。
  99. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今のお話によりましてわかりました。どうかひとつ各府県等をよく調査をいたしまして、合理的な方法にお願いいたします。  この際動議を提出いたします。ただいま議題となつております物品税法の一部を改正する法律案、及び国税徴収法の一部を改正する法律案の両案につまきしては、すでに質疑も十分盡されたと信じまするので、この際右両案に対しましては、質疑を打切られんことを望みます。
  100. 小山長規

    小山委員代理 ただいまの三宅君の動議のごとく決するに、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  101. 小山長規

    小山委員代理 御異議がないようでありますから、物品税法の一部を改正する法律案、及び国税徴収法の一部を改正する法律案の両案に対する質疑は、以上を持つて打切ることといたします。  午後は二時より開会することにいたしまして、休憩いたします。     午後一時十一分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた