○酒井
政府委員 それではただいま提案されております資産再
評価法の一部を
改正する
法律案、及び再
評価積立金の
資本組入に関する
法律案につきまして、若干の補足的な御説明を申し上げたいと思います。
御
承知のように資産再評価は昨年実施いたしたのでございますが、その結果は、実はわれわれが当初
考えておりましたところよりは、やや低調であつたのであります。これを
数字について見ますると、
法人の総数が全部で四十四万でございます。もつともこの中には民法上の
法人が十七万、組合、金庫等が五万一千
ばかりございますので、これらを差引きまして普通の会社企業といたしましては、二十一万五千ほど現在あるのであります。そのうち再評価を実施いたしました会社は二万
程度、会社の総数に比較いたしますと、一四%
程度の会社が再評価をいたしております。
申告といたしましては、十三万五千社
ばかりが
申告いたしまして、全体の七七%が申込をいたしたのでありますが、そのうちで再評価をいたしましたものが、ただいま申し上げましたように一四%
程度しかなかつたのであります。この資産再評価の状況を見ますると、まず対象となり得るところの資産の帳簿価額総額が七百十億、これはただいま申し上げました会社企業について申し上げました。七百十億円に対しまして、われわれの計算によりまするところの最高限度は、六千三百十九億という
数字であるのでありますが、これに対して実際に行われました再評価額は、四千二百六十億ということに相な
つております。従いまして帳簿価額七百十億との差額三千五百五十億が、大体再評価差額ということにな
つておりまして、これに六%の再評価税がかかりまして、再評価税といたしましては、二百十三億
程度税がかか
つて来るわけであります。再評価の実施率と申しますか、全体の最高限度に対する実際に行われた再評価の額は大体六七・四%、帳簿価額に対する再評価の実際に行われました倍率は約六倍でございます。なぜこのように限度まで行かなかつたかということにつきましては、いろいろ原因があると思いますが、ただ当時はいわゆる経済が下向いておつた。ややもすれば先行きデフレになるのではないかというような懸念もございまして、企業は将来の改益率等に不安を持ちまして、実施を手控えたというようなことも、
相当大きな原因にな
つていたのではないかと
考えます。ところが最近経済界は御
承知のように
相当活況を呈して参りまして、将来に対する
収益の
見込み等も、この前に再評価をいたしました当時よりはかなりかわ
つて参
つております。そこでこの際さらに第二次の再評価を認めまして、新しい条件のもとにもう一度資本の是正をやるという道を開くことが適当であろうというのが、今回第二次再評価を提案いたしました
理由でございます。
なお昨年行われました再評価におきましては、当時株式市場の景況等もそれほどよろしくございませんので、一時に再評価をいたしました額を全部株に組みかえますと、
相当株式市場を圧迫するのではないかというような懸念もございまして、それらを
考えました結果、資本に組み入れる額といたしましては、
昭和二十八年まで資本化させない。つまりそれまでの間は再
評価積立金の形で、社内に留保させておくということにな
つておつたのでありますが、最近の状況から見まするならば、それらの懸念も大体ないようでございます。むしろこの際資本金をはつきりさせまして、今日の貨幣価値ではかつた正しい資本金を表に出すことによりまして、会社の経理状況を合理的ならしめるということが、必要ではなかろうかと思いましたので、再
評価積立金を早期に資本に組み入れることを認めるということで、再
評価積立金の
資本組入に関する法案が提案された次第でございます。
これの要旨を申し上げますと、再
評価法の一部を
改正する
法律案におきましては、再評価はいつできるかということでありますが、第二次再評価は
昭和二十六年一月一日、または一月一日から本年九月三十日までに終りますところの事業
年度の期首につきまして、
法人は再評価をすることができる。ただ本年三月三十一日までに事業
年度の終ります会社につきましては、四月以降の事業
年度について再評価をしていただくことにな
つております。そうして再評価の
申告の
提出期限は、本年の十一月三十日までということに区切
つております。
個人につきましては
昭和二十六年の一月一日現在をも
つて評価をいたしまして、
申告期限は九月三十日までということに相な
つております。但しこれは原則でありまして、たとえば電力でありますとか、鉄道でありますとか、ガス事業等も入りますが、そういう公益事業で、料金等が公定されておるものにつきましては、これはただちに再評価をしろと申しましても、公定価格に再評価後の適正な償却金額が織り込めるという状態にならなければ、実際問題として再評価は無理でありますから、従いましてこれらの企業については、さらに一年間再評価の時期を
延長して、明年の七月三十日まで
延長することにいたしております。
第二に再評価資産の範囲でございますが、これは原則は
昭和二十五年の一月一日すなわち基準日現在に持
つておりました資産のうちで、大体前回の再評価におきまして最高限度まで再評価をしなかつたもの、全然しなかつたもの、あるいは最高限度まで達しないで、中間的な再評価を行いましたものをも含んでおります。大体その範囲は前回の再評価と同じでありますが、ただ株式だけは今回の再評価からは除外いたしております。これは前回実施いたしてみました結果、非常に問題のむずかしい点もございますし、なお今日の状況で、さらに株式について再評価をするという、それほど実質的な意義もございませんので、この際株式については適用を除外いたしております。
それから次に再評価の基準でございますが、これはおおむね前回と同じ基準によ
つております。すなわち当該資産を取得したときから今日までの、大体の卸売
物価倍率というものを基本にいたしまして、再評価の基準といたしております。ただ昨年の基準から今日まで約一年ほどた
つておりまして、その間に企業は実際に償却をいたしておりますので、償却資産につきましては、その間に前年の再評価時から今日までに実際に償却をいたしました額だけは、基準から落してございます。
それから再評価税でありますが、これも前回と同様六%の再評価税を課することにいたしております。この再評価税につきましては、いろいろ論議のあるところでありますが、しかし前回の再評価におきまして六%と
なつた
理由が、要するに再評価というのはインフレーシヨンによる貨幣価値の変動によ
つて、会社の資本を是正するというねらいでありまして、再評価によりましてそういうインフレの不合理が除かれるわけでありますが、しかし今日まですでにインフレ過程において譲渡所得税をとられましたもの、あるいは終戦後に持
つておりました金銭、債券の価値が減少いたしましたもの、それらとの均衡を
考えますときは、やはりある
程度の税を課することは公平であるという見地で、前回は六%課税したのでありますが、今回も同様の
理由により六%の課税をすることにいたしております。ただ再評価税の納付につきましては、延納の
規定があるのでありますが、これは再評価税を納付することによ
つて、従来よりも
法人税が重くなるというような場合には、従来の計算によつた
法人税の限度で再評価税を納めまして、それ以上負担を重くしない。それ以上の分は従来五年間延納を認めておつたのでありますが、同様今回の第二次再評価におきましても、さらに五年間延納を認めようということにいたしております。そういたしますると、同じ企業で昨年も再評価し、今年も再評価をしたというような会社につきましては、同じ資産につきまして一方は昨年から五年間、今回の分で今年から五年間ということで、再評価延納の時期がまちまちになりますので、一律に今回の再評価をいたしました場合にはこれから五年間、すなわち昨年から
考えますと、六年間延納ができるという結果になりますが、要するにそういうものにつきましては、一年延
納期間が延びたことにな
つております。
それから再
評価積立金の
資本組入れでありますが、これは
先ほど申し上げましたように、今日の状況では、これをいつまでも積立金に置いておく
理由もございませんし、再評価のねらいそのものは、そもそも再評価をいたしまして、これを資本に組み入れて資本の正しい姿に直すということが、この法案の目的でございますので、
改正商法の実施いたされます本年七月以降、積立金の四分の三までは資本に振りかえることを認めるということにな
つております。なおこの資本の組入れに際しましては、登録税は従来の千分の七を特に千分の一・五というふうに軽減をいたしております。また社債発行限度の問題でありますが、社債発行限度には一年について四分の一ずつ算入して行く
規定でございましたが、ただいま
資本組入れの項について御説明申し上げましたように、今日といたしましてはもう一挙に資本に組み入れてもさしつかえないという状況に相な
つて参
つておりますので、社債の発行限度といたしましても、再
評価積立金の四分の三まではただちに限度に入れられるということにいたした次第であります。その他商法の
改正に伴いまして若干の法文の
修正がございます。
次に再
評価積立金の
資本組入に関する
法律案でございますが、これはただいま申しました資本に組み入れるにつきましての手続、方法を
規定した
法律でございまして、要旨を申し上げますと、
資本組入れは株主総会の特剔抉議による。資本を増加いたした場合に、新商法ではこれは資本準備金におきましても、あるいは株式にいたしましても自由なのでありますが、株式にいたします場合には、やはり特剔抉議によ
つて株主に交付するということにいたしております。この株主に交付いたします新株は、新株と申しますか、再評価によ
つて振りかえた株でありますが、これは原則として無償で交付することにいたしております。しかしあわせて若干の増資をするということがあるいは便宜な場合もありますので、額面以下の金額で特に払込みを認める。これは無償でありますか有償でありますかは会社の自由であります。それからただいま申し上げました有償で交付いたします場合に、株主といたしましては有償ではいやだと言
つて、新株を引受けたくない株主が出て参りますので、そういう株主につきましては引受権の譲渡を認め、あるいは払込み額を越えて会社が交付いたしました場合には、その越える部分についても当然株主として取得し得べかりし部分を、たとえばプレミアムと申しますか、その金額を請求することもできるということにいたしております。なお資本に組み入れます場合に、
一般に有償で交付をいたしました場合には、これは今申しましたように引受権のない、引受けなかつた株主に対して金銭を交付する等のこともございまして、たとえばそれは資本に超過する部分は資本に組み入れないとか、そういつたような商法の若干の特使を設けております。なお金銭交付請求権等がございますために、
法人税の所得計算につきましても支障のないように、若干の特例を認めております。法案の内容は大体以上のようであります。