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1951-03-22 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十二日(木曜日)     午前十時五十六分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君       川野 芳滿君    佐久間 徹君       清水 逸平君    高間 松吉君       西村 直己君    苫米地英俊君       三宅 則義君    宮幡  靖君       内藤 友明君    宮腰 喜助君       川島 金次君    竹村奈良一君       深澤 義守君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (主税局税関部         長)      石田  正君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君  委員外出席者         公正取引委員会         委員      横田 正俊君         公正取引委員会         事務局総務部企         画課長     竹中喜滿太君         大蔵事務官         (主税局税関部         業務課長)   木村 秀弘君         大蔵事務官         (主税局税関部         調査統計課長) 藤田  茂君         大蔵事務官         (銀行局保險課         長)      長崎 正造君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君 三月十九日  委員田中織之進君辞任につき、その補欠として  川島金次君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 三月二十日  旧令による共済組合等からの年金受給者のため  の特別措置法の一部を改正する法律案夏堀源  三郎君外二十 三名提出衆法第一九号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  関税定率法の一部を改正する法律案内閣提出  第六六号)  資金運用部資金法案内閣提出第七一号)  郵便貯金特別会計法案内閣提出第七三号)  会計法の一部を改正する法律案内閣提出第七  五号)  資金運用部特別会計法案内閣提出第七六号)  資金運用部資金法の施行に伴う関係法律の整理  に関する法律案内閣提出第八六号)  関税法の一部を改正する法律案内閣提出第一  一七号)  旧令による共済組合等からの年金受給者のため  の特別措置法の一部を改正する法律案夏堀源  三郎君外二十三名提出衆法第一九号)  保險募集取締に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一二三号)(予)     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 これより会議を開きます。本日はまず保險募集取締に関する法律の一部を改正する法律案議題として疑質に入ります。佐久間君。
  3. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいま議題となりました保險募集取締に関する法律の一部改正案の上程に際しまして、私は関連質問をまず第一にいたしたいと思うのであります。  それは公正取引委員の方々の御出席を求めておりましたから、その方を先にしたいと思うのであります。前国会におきまして、私は住宅金融公庫の担保物件保險するに際しまして、入札制度によつたということにつき、かつまた保險料率が同一であつたということに対しまして、公取のとつた態度に疑問を持つたのでありまして、その筋質問をいたしたのでありますが、その当時の回答はなおよく研究してということであつたのであります。その後相当の時日もたつておりますので、研究も多分積まれておることと思いますので、この機会に重ねて質問をいたしたいと思います。  第一点は保險料率独禁法及び事業有団体法との関係でありますが、現状におきましては料率算定会がある。あらゆる資料に従いまして公正妥当とする料率を算出し、これを各社が採用することによつて健全なる経営が行われておる。のみならず再保險の授受も、円滑にしかも能率的に取運ばれておるのであります。従つて料率算定会というものは、独禁法及び事業者団体法のほかに置かれておるように思うのでありますが、さらに一歩進めて、これが料率決定いたしましたことについて、一般にこれを遵守する権限を與えておらないのでありますが、これに対してはどういうお考えを持つておられるか、所見を承りたいと思うのであります。
  4. 横田正俊

    横田説明員 ただいま申されましたように、前国会におきましていろいろ佐久間委員から御質疑がございまして、公取としての一応のお答えを申し上げたのでございますが、ただいまの保險料率の問題につきましては、御承知のようにただいま保險料率算出団体の特別な法律がございまして、この法律に基いて一定の保險率が出まして、それを各事業者が遵守する、こういう実際の動きになつておると思います。     〔委員長退席小山委員長代理着席〕 ただあの法律算出団体の算出いたしました料率を守らなければならない、そういうふうにはできておらぬわけでございまして、その点におきましては、守らなければならないという法制をつくることも一つの行き方と存じます。なお御承知のようにこの算出団体につきましては、その団体に入る入らないということの自由があるわけでございまして、それらの点から考えますと、ある団体に入つております以上は、それを遵守するということが一つの成り立ち得る考えかと存じます。なおその点におきましては、公正取引委員会としましては、今度の保險業法改正などにもからみまして、なお研究をいたしたいと存じておりますが、そういうただいま御質疑になりましたような考え方一つの行き方として、確かに考え得るということをお答えいたしておきます。
  5. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいまの御答弁によりまして考え方を二つお持ちのようであります。一つ団体に加入することが自由であるということ、もう一つは加入した以上はその定めたるものを守るということ、これも研究の材料としたいという答弁でございましたが、これについては将来起り得る問題だと思うのであります。公取考えといたしましては、保險料率自由競争にまかせた方がいい、こういうお考えであられるのかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  6. 横田正俊

    横田説明員 私たち立場といたしましては、これは保險のみならず、すべての事業につきましてはできるだけ自由競争余地を残して、そこに事業者としての創意くふうを盛つていただく、こういう観点からいたしまして、いろいろその方向から考えております。従つて保險料率につきましても、でき得ればそこに若干の競争が残る余地があつてよいのではないかということも、考えておるわけでありますが、これは私から申し上げるまでもなく、保險につきましては、過度の競争がいろいろな弊害を伴うということもよくわかつておりますので、業態健全化というような意味からいたしまして、保險料率がある程度固定して、そこに一つラインができて行くということは、保險業の当然の結果であろうと思いますので、その辺はまた他の事業とはたいへん違つておると思います。ただ先ほどから申しますように、私たち立場といたしましては、なるたけそこに多少なりとも競争余地を残して行きたいということを考えておる次第でございます。
  7. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいまの御答弁によりますと、多少競争余地を残しておきたい。であるから全然自由のままにするのが本質のように受取れるので承りますが、その反面に多少は特殊事情を勘案して、認めようというような御意思があるように承つたのでありますが、両方を均等に考えて、一つの線を引こうという意思であるのかどうか。その点を重ねて質問いたします。
  8. 横田正俊

    横田説明員 両方を均等に考えるということは、非常にむずかしいことと存じますが、結局保險事業特殊性を考慮しながら、自由競争の線は保持して行きたいというのが、私たち考え方でございます。その特殊性に対するわれわれの認識のいかんによりまして、今申しました自由競争に対する是正と申しますか、その原則に対する是正ラインが非常にかわつて来るのではないかと思います。私たちしろうとでございまして、保險事業についてはなはだ不案内でございますので、その点は前国会でも申し上げましたように、今後ますます勉強いたしまして、その特殊性というものについての認識をますます深めたいと、考えておる次第でございます。
  9. 佐久間徹

    佐久間委員 保險料率が自由にまかされた時代もございましたのでありまするが、そのために会社経営の面が危殆に陷つたという過去の歴史があるのであります。従いまして一世紀間にわたつて、この事業社会公共の面からも大きく取上げられまして、相当監督が嚴重な立場に置かれて、今回の発展を来して参つたのであります。そこでそういつたような過去の事例を勘案いたしますと、これは考えなければならない。いわゆる今も申された特殊事情というものを、十分考慮しなければならないのじやないか、こう考えられるのであります。その特殊事情については、まだ十分な御研究もないようでありますが、とにかく大蔵省監督下にあるので、いわゆる業法の監督下に一面置かれておる。他面におきましては、そういつたような自由競争にまかせなければならぬというような御意見も出て来る。そこで非常にそこの問題がむずかしくなるわけなんでありますが、大体米国あたり事業に対する監督というようなものを、われわれは多少研究して来ておるのでありますけれども公取はこの方面の御研究をなさつたことがあるのかどうか。もし御研究であるならば、どういうぐあいに先進国においてはやつておるのかということを、ひとつ説明願いたいと思います。
  10. 横田正俊

    横田説明員 ただいま米国保險のやり方について、どれだけ勉強しておるかという御質問でございますが、その点は私先年公取から、わずかに三箇月でございましたが、向うへ参りまして、ごくあらましの研究はいたしたつもりでございます。こまかいことは省略いたしますが、アメリカにおきましては、相当保險に対して反トラスト原則適用除外する面が相当ございます。それらの点は一応見て参つたのでございますが、なお非常にアメリカ制度は複雑になつておりますので、この点に関しまして、現在公正取引委員会から一人研究に行つておりまして、その者がおそらく今月の末に向うから帰つて参ります。その結果またいろいろ最近のあちらの事情等もわかることと存じますので、その研究の結果を資料といたしまして、大いにますます研究いたしたいと考えております。
  11. 佐久間徹

    佐久間委員 御研究をしていただくことはほんとうにけつこうでありまして、われわれも切にそれを希望しておるものであります。しかしわれわれの知つている範囲内におきましては、この独禁法あるいは事業者団体法法律というものは、元来日本がつくつたものでなくして、向う法律をまねてやつておるわけなのであります。それであえて米国事例を私は求めたのでありますが、われわれの承知しておる範囲内におきましては、米国においては、保險業法なるものによつて、これを監督しているというようなぐあいに考えておるのであります。その意味から申しますと、わが国におきましては、大蔵省監督があり、かたがた公取の方のそういつた面の強力な意見がここに加えられている。こういうような二重の監督を受ける立場にあるのじやないかという感を深くするのであります。そうなると、業界はますます混乱するばかりでありまして、どこへついていいのか、ちよつとそこのところにむずかしい問題が出て来る、こういうように考えるのであります。そういつた方法をいつまでも続けて行くというわけに参らぬと私は思うのでありまして、いずれかに決定をしていただきたい、こういう考えを私は持つておるのであります。それらについては、十分将来御研究くださるそうでありますから、これに大きな期待を持つて行きたい、こう思つておるのであります。保險とか銀行のように、公共性を非常に多分に持つておる企業に対しましては、一般産業を対象としておる独禁法のようなものの適用は、相当愼重を期さなければならぬ問題じやないか、こう思うのであります。しかしどうも公取人たちは、これに興味を持つてつて、弱い者いじめでもするかのような観があつて、どうもこれをもてあそんでいるようなきらいがある。そろそろ引込まなければならぬ時代に、非常に線を強く出して来て、喜んでおるというような印象を與えつつあるのであります。保險事業のごとき、あるいは銀行業務のごとき、もう少し能率的な運営をいたして行かなければ、日本産業に対して、はなはだ申訳ないのじやないかと思うのでありますが、ともするとこれにひつかかつて行く、こういう感を一般が抱いておるのであります。これらのことについてどういう御考慮を拂おうとするのであるか。なお御意見伺つてみたいと思うのであります。
  12. 横田正俊

    横田説明員 ただいま私どものやつております仕事につきまして、たいへんおしかりの言葉ちようだいいたしました。はなはだ恐縮に存ずる次第でございます。われわれも先ほど申し上げましたように、業界に対する認識の不足の点からいたしまして、時に行き過ぎの面もあるかと存じます。この点は一つは御承知のように独占禁止法、ことに事業者団体法等法律が、かなり法律そのものがきつくできておりまして、あるいは日本国情に合わない面が多少あるのではないかと思います。この点は今後特に議会方面の御活躍によりまして、適当の線に是正されることを、むしろわれわれとしても期待いたしておる次第でございます。  なおその運用の面につきましては、われわれ微力ではございますが、今後多少情勢もかわりますので、業態の実態に合わないような運用は、できるだけ遊げるようにいたしたいと存じます。この点は、まことに各界にいろいろ思わぬ御迷惑をかけておることは、私どもとしてはなはだ遺憾に思い、今後ますます注意いたしたいと思つております。  なお保險の問題につきましては、先ほども申しましたように、アメリカ法制も非常に参考になるのでございますが、ただ御承知のように、向う法制は、保險に対する官の監督というものが、非常にきびしくできております。これは何も現在の大蔵省監督がよろしくないと申すわけではございませんが、制度といたしまして、非常にそこら辺の点がりつぱにできておるのであります。なおもう一つは、向うの反トラスト法は、ある点においては適用除外になつておりますが、この保險のいわゆる不公正な競争を防止するという面において、非常に法制的に完備しております。われわれといたしましては、その保險特殊事情に基きまして、これを適用除外するにつきましても、やはりこれと一環の問題といたしまして、国家の監督機構の問題なり、あるいは不公正競争取締る面の強化というような面も、あわせて考えたいと存じております結果、いろいろ皆様のお考えになりますようなラインにまで、われわれがもつと後退したらどうかという、皆様の御希望に沿わないような面があるように存じます。この点は大蔵当局とも今後ますます密接な連絡をとりまして、研究いたしますが、なお業界あるいは議会方面の強い御協力を、私たちの方からむしろお願いいたしたいと考えておる次第であります。  なお先ほども申し上げましたように、特殊の業態に対しまする独占禁止法その他の関係法令適用につきましては、今後ますます愼重なる態度をもつて、善処いたしたいと考えておる次第でございます。
  13. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいまの答弁は非常によろしいと思うし、自分としてもそういつたような気持で事に臨もうとし、あらゆる面から総合的に研究を進めて行こうという気持、これは官吏のあるべき姿であると思つて、むしろ私としても敬意を表すると同時に、われわれ議員といたしましても、立法の重大な責任を持つておるのでありますから、今後も十分客観的方面に対しても、日本国情をよく理解してもらつて、これにそぐわないようなものは、是正してもらうことに努力すべきであるということも、かえつて私が教えられたような結果になつて、まことにこの識見に対しては感謝する次第でございます。われわれもそういう気持で今後行くつもりであります。  さらに私はプール関係についてお尋ねしたいと思う。私は危險分散の見地に立ちまして、保險会社が行うところの共同保險及び保險プールは、独禁法及び事業者団体法適用から除外するのが至当ではないか、こう思つておるのでありますが、この点に関しての御所見を承りたい。
  14. 横田正俊

    横田説明員 ただいまプールお話でありますが、お話のごとく、危險分散ということは保險の基本の問題でございますので、その見地から申しますと、プールということは当然に、また必然的に考えられて参るわけであります。ただ先ほども申しましたように、このプールと申しますものは、よい面がございますその反面におきまして、やはり独占禁止法の精神から申しますと、おもしろくない面もありますので、われわれといたしましては、このプールにつきましてもそこに若干の制約を加えながら、保險必然性からいたしまして、これをある程度認めたいという気持があるのであります。この点はほかの保險に関する問題と結局同じことになりまして、その線の引き方と申しますものは非常にむずかしいのでございます。この点は、私の方の事務当局大蔵関係事務当局の方と、研究を続けて来ているように聞いておりますが、まだ満足すべきラインができておらぬようでございまして、その関係から私どもといたしましては、なおこの問題について非常に関心を持ちながら、満足すべき解決に至つていないというのが偽りない事情でございまして、この点もほかの問題とあわせまして、急速にかつ鋭意研究いたしたいと考えております。     〔小山委員長代理退席委員長着席
  15. 佐久間徹

    佐久間委員 しからば、昭和二十四年度の再保險プールに対して審判決定をしたということであるが、これは事実であるか。同時にそれに対してどういう決定を下しているのか。それをお尋ねしたいと思います。
  16. 横田正俊

    横田説明員 お話審判開始決定は確かにございまして、これにつきましては、ことしの三月でございましたが、保險会社の方の御了解を得て、いわゆる同意審決という形で事件が落着いたしております。主文はいろいろのことが書いてありますが、要するにああいう形の協定は、現行独占禁止法の面から申しますと違反ということになりますので、ああいう非常に広範な、打つて一丸としたような特殊のプールは違法であるということを申しまして、今後同種の協定をしてはならないということが、審決主文になつているかと思います。
  17. 佐久間徹

    佐久間委員 その審判決定公共利益に反するということであつたろうと思うのでありますが、昭和二十四年当時は外国再保險取引ができなかつた時代で、内地においてこの危險を消化するために、やむを得ずとつた措置であると思うのでありますが、それも公共利益に反するということ——あれはこれに反していないという考えをもつてつたことだろうと思う。むしろ公益の利益を守る意味から、危險の分散を内地で適当に処理するという意味合いからやつたものと思うのでありますが、公取の言う公共利益というものは一体どういうことであるのか。これをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  18. 横田正俊

    横田説明員 実は独占禁止法にございます公共利益という言葉は、非常に漠然としておりまして、これにはいろいろな解釈のしようがあると思うのであります。前議会でもたしかその問題について何か申し上げたような記憶がございますが、ただいまの公正取引委員会をいたしましては、要するに競争が不当に減殺されることによつて、いろいろな社会的不利益が怒ることをもつて公共利益に反するというふうに解釈をしておりますので、その意味からいたしまして、先ほど保險プールも、あの段階におきましては、やはり日本のための公共利益に反するのではないかと思いまして、ああいう審決なつたものと考えております。
  19. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいまの御説明によると、公共利益ということについての定義は、はなはだ漠然としているということでありますが、はつきりしているならばこれはともかくとして、漠然としているようなものに対する解釈を下す上において、むしろ現在の国情に照し合せて、業種業態をよく把握して、それにマッチするように解釈してしかるべしと思うのでありますが、あえてこれを否定するような解釈を下さなければならなかつた事情、これをなお重ねてお尋ねいたし「ます。
  20. 横田正俊

    横田説明員 ただいまの公正取引委員会解釈につきまして、何か特殊の事情でもあるかのごとき御質問でございましたが、この点は、御承知のように独占禁止法は、先ほども申し上げました通りアメリカ制度を継受いたしたものでございまして、アメリカ法律は、考えようによりますと、日本法律よりもなおもう少し漠然とした面がございますが、あちらの法制におきましては、その点幾多の判例によりまして、ほぼ解決をしているような次第でございます。この点につきまして、われわれの法律解釈につきましても、やはりアメリカ法制というようなものが、かなり参考になるわけでございます。もちろん日本国情アメリカ国情とはよほど違つた面もございますので、その点についてはわれわれといたしましても細心の注意を拂つておりまするが、やはり母法たるアメリカ解釈というものは、かなり参考になるわけでございます。大体今申し上げました公共利益というようなことにつきましても、アメリカ判例動きというようなものが非常に参考になつているわけでございまして、その点はあまり広過ぎるという解釈が一方には確かに成り立つと思いますが、現段階におきまする公正取引委員会においては、大体先ほど申し上げました解釈で進んでおりまして、その点は重ねて申し上げますが、何か特殊の事情があつて、特に保險について厳格な解釈をとつたというようなことは全然ございません。
  21. 佐久間徹

    佐久間委員 しからばさらにお尋ねいたしたいのでありますが、共同保險ブールについての公取所見はいかがでありますか。
  22. 横田正俊

    横田説明員 公取意見をここでちよつと私から申し上げることはどうかと思いますが、この点は先ほども申し上げましたように、いろいろなやはり考え方もございましようし、私個人気持といたしましては、先ほど申し上げましたように、そごに適当な線を引いて、できるだけ必要なる限度において競争の面を残しつつ、ある場合はある程度共同保險の妙味を適当化するということについて、そこに大いに研究余地もございまするし、適当な線があるのではないか。私個人としてはそういうふうに考えております。なお私個人としてのみならず、その点につきましては先ほども申しましたように、なお大蔵当局その他実際の仕事に当つておられる方面とも折衝いたしまして、日本保險としましては、適当なあり方をきめて行きたいと考えておる次第でございます。
  23. 佐久間徹

    佐久間委員 私は別に個人意見を聞こうとするのではありません。ここは議会でございまするので、公取所見伺つておるのでありますから、どうか今後そのつもりで、公取を代表して責任ある答弁をするというお気持で答えてほしいと思うのであります。ただいまのは概念的な答弁で、依然として核心に触れておりません。  そこで重ねて私はこまかくこれを砕いて質問いたしますが、かりに二社の共同保險であつたならばどうするか。それから十社のプールではどうか。さらにまた十五社のプールにした場合にはどうか。この点に関して御答弁をいただきたい。
  24. 横田正俊

    横田説明員 ただいまの二社、十社あるいは全保險会社というふうに数量的に御質疑がございましたが、これはどうも土台として申し上げますと、現行法の四條なりあるいは三條の取引制限の問題にいたましても、結局帰するところはそのよつて来る影響、度合いの問題になるだろうと思います。その二社にもいろいろございまするし、その会社の数というような形式的な点だけでははつきり申し上げられません。要するにそのプールによつて、いわゆる自由競争の面に及ぼします影響の度合いというものが問題になろうかと存じます。
  25. 佐久間徹

    佐久間委員 どうもその場限りの問題を処理しようというお考えであるように思うのであります。もとより事態がここに出て参りませんと、それに対する判断がいたしかねるということ、これはやむを得ないことであろうと思いますが、あらかじめ大体の限界をお持ちになつて、これを指示、指導してこそ、初めてその立場におる人も責任が果せる、こう私は思うのでありまして、ここに出て来たものをいろいろの解釈を下してそのときに審判して進んで行くというやり方は、あまり私は感心しないと思うのであります。いろいろの面から研究がまだ足らないということであるようでございますから、十分ひとつ研究してその尺度を示してもらつて、これによつてやれというくらいにまで進んでもらいたいと思うのであります。業者はプールによつて保險の国内消化をはかつている。このプールがなくなつてしまう。さらにまた外国会社の再保險の拒否されたような場合におきましては、とうていこの事業は成り立つて行かない。こういう特殊事情に置かれておるということも、十分考えてほしいのであります。  さらにお尋ねしたいのは、外国会社は共同保險、再保險プールをやつておるのであるかどうか。その点知つておられたら御返答願いたいと思います。
  26. 横田正俊

    横田説明員 外国の保險会社がだんだん国内に進出して参りまして、イギリス系、アメリカ系といろいろ活発な活動を見せて来ております。この問題につきましては、公正取引委員会としましてただいまはつきりしたことを申し上げる段階にまだ至つておりませんが、いろいろ前々から研究を続けております。これは日本保險会社だけを目のかたきにいたしまして、私たちが取上げたようにお考えになるかとも存じますが、外国会社につきましてもいろいろ研究を鋭意続けており、なおこれにはいろいろ法制上の問題もございまして、外国会社を内国会社と同様に、独占禁止法その他の関係法令で規律し得るかどうかという点につきましては、法律上の問題もございまするし、なお技術関係並びにその法律関係につきまして目下大いに研究中でございまして、申されるようないわゆるプール共同保險がありまするかどうかは、この研究の結果によつて出ることと思います。
  27. 佐久間徹

    佐久間委員 外国保險会社共同保險もやり、再保險プールも現にやつておると思うのであります。内国会社に対してはこれはいかぬ、こういうことになるのでありますが、内外の同一に見てやつてこそしかるべきであるのにかかわらず、片方には何か恐れおののいておるようなかつこうである。片方はびしぴし押えて行くというようなぐあいにも見えるのであります。してみると日本産業というものは、みずからの手によつて首を絞めて行かなければならぬというような、奇態な現象を生ずるやに考えられるのでありますが、さようなことはないかどうか。これをお尋ねしたい。
  28. 横田正俊

    横田説明員 ただいま御質疑のような御疑念をお持ちになる点につきましては、確かに私たち仕事の上で至らぬ向きがあることと存じますが、ただいまお話のような、内国事業者と外国の事業者との間に特別な差別をつけるということは、われわれといたしましてはそういうことは全然考えておりません。もちろんほかの保險以外の問題につきましても、たとえば映画の関係にいたしましても、あるいは運賃同盟の問題等にいたしましても、われわれとしては内国事業者と外国事業者とまつたく同じ面におきまして考えて、いろいろ処理いたして来ているのであります。
  29. 佐久間徹

    佐久間委員 近き将来に商法の改正が行われようとしております。引続きそれに関連する幾多の法律改正されるでありましようし、保險業法あるいは料率団体法のごときも改正が目前に迫つている。しかし今までのやり口から見ると、公取のおやりになつていることはどうも事情の御理解がなさ過ぎるのじやないかと思う。いやまた知ろうともしないのじやないかというようなことも考えられる節があるのでありますが、そういう建前から今後公取が容喙して行つて、事態がもしうまく行かなかつた場合、いわゆる悪化した場合、公取はどういう責任をとろうとするのでありますか。今のところは、何か責任のないものがいろいろ口出しをして行くように思われるような感じがあるのでありますが、この点を明確にしていただく必要があるだろうと思うのであります。どうかひとつこれに対して御所見を承りたいと思います。
  30. 横田正俊

    横田説明員 公取が無責任にいろいろなことをいたしておるような御発言がございまして、私どもとしても非常に残念に思うのであります。しかしこの点は、先ほど申しましたように、われわれといたしましては、独占禁止法並びにその関係法令を忠実に実施いたす責務を持つております。この点からいたしまして、独占禁止法なり事業者団体法なりの法律そのものが、はたして日本国情に合わない面があるかどうかという点にいろいろな問題があると存じますが、これが法律としてございます以上は、法律を守ることはわれわれの責務でありまして、もちろんその運用につきましては、及ばずながら日本国情考えまして、できるだけの努力はいたして来ておりますが、不敏にして御期待のような線まで行つておりませんことを遺憾に思います。しかしわれわれの職務というものがそこにありますことを十分御理解いただきまして、もし法律の面からいたしまして、われわれのやりますことが行き過ぎであるという面がございましたならば、この法律日本国情に合うように適当に是正していただきたい。これはまさに国会にやつていただきたいことであります。この点は先ほども申し上げましたように、どうぞわれわれの仕事に対する十分の御理解をいただきますとともに、日本国情に合いませんような面がもしございますならば、その法制自体を適当にかえていただきますこと、並びに今日のようないろいろの苦言を、われわれにどしどしお聞かせいただきたいと思います。われわれも微力ではございますが、なおこの独占禁止法の中に盛られております競争を促進することによつて事業を非常に活発にし、それは結局日本の全体に利益をもたらすという、この反トラストの根本の精神だけは、今後も十分に伸ばして行きたいものと私は考えております。その点につきまして、むしろわれわれを大いに鞭撻をしていただきたいと考えておる次第でございます。
  31. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいまの御答弁によりまして、われわれにも協力を求められ、またわれわれの責任も反省しなければならぬと思うのでありますが、一体こういつた日本人に親しめない法律、いわゆる独占禁止法とか、事業者団体法というようなものはわれわれも非常に親しめない。何だか国情にぴたりと来ないような気持がする。それでこれは財閥に対する特殊法であるのではないかというような気持が、いまだにしているのでありますが、どういうものでございましようか、御説明をいただきたいと思います。
  32. 横田正俊

    横田説明員 ただいま、独占禁止法は財閥を解体することが主たる目的であるかのようなお話でございましたが、御承知の財閥の解体、あるいは集中排除法によります巨大企業の解体というようなものは、これは一つの過渡的な問題でございまして、独占禁止法はそれに反しまして、結局現在の日本の基盤としております。いわゆる私企業自由主義経済の根本でございますところの、事業における競争というものをあくまでも促進して行こうというのが、この反トラスト考え方でございます。これはもちろん。まつたくの計画経済、社会主義的な経済に移れば、問題はまつたく別でございますが、少くとも現在のような経済組織を日本がとつております以上は、この競争を促進ずることによつて事業を盛んならしめるということは、これと不可分の関係に立つと思います。もちろん事業にもいろいろございまして、先ほどから本日の議題になつております保險業のごとき、いたずらなる競争がかえつて企業の健全なる発達を害するというような面を持つたものもございますが、しかしおしなべて申し上げますと、結局私企業につきましては、競争を促進することこそ世界によいものをもたらすという、この根本思想に基きまして独占禁止法はできておるわけでございます。しかしこの線をあらゆる問題についてそのありのままの形で進めますことが、かえつてまずい面がございますので、ご承知のように、いろいろな適用除外というような緩和規定もございますが、根本精神はあくまでも今申しましたところにございまして、この考え方は、日本の現在の経済の組織がかわりません限りは、今後残るべきものであると私は考えておる次第でございます。ただ何分にもこの考え方を取入れましてなお数年しかたちませんので、法律のきつ過ぎる面と相まちまして、われわれの運用の面もはなはだふなれでもございますし、また一般国民が、これがほんとうに消費者大衆なり、国家の経済の運行の上に欠くべからざる一つ考え方であるということについての認識が、非常に足らぬようにも思いますので、これらの点は今後に残された一つの非常に大きな問題であると考えておるのでございます。その面につきましても、議会方面におきまして何とぞこの独占禁止法の真の精神というものを御理解いただきまして、ちようどアメリカ議会には反トラスト関係の非常に有力なるいろいろな委員会もございますし、この思想が国民全般の中に非常によく溶け込んでおることを私実地に見て参りましたが、ぜひああいうような形に日本のすべての機関がありたいというふうに私は考えております。そういうふうになりますと、結局そういう根本が定まりましてあと、さてこの適用について、保險事業についてはこういう是正をする、銀行業その他の金融業についてはこういうふうにするというような、いろいろな適用の度合いの問題が出て参ると考えるのであります。それらについてますますわれわれも勉強いたしたいと存じますし、議会方面の格別の御協力を切にお願いいたす次第であります。
  33. 佐久間徹

    佐久間委員 御説明によりまして、自由競争の過程に入つて行くものであるということは承知したのであります。日本は財閥の解体が完了したと言われておる。それで財閥というものはなくなつてしまつた。さらにまた進めて、自由競争にまかせてすべてを自由にしてやつて行く。それが公共利益であるというようなぐあいに解釈して行かれるのでありまするが、しからば全世界がすべてそういう方向に進んでおるかというと、そうでもないように思う。たとえば関税の障壁だとか、そういうようなものはどうしても取除くことはできない。またいろいろの事業においても満ち足りておるものもあれば、不足しておる場合もある。その事情事情によつて、非常に異なつた現象を呈しておる姿でありますが、その中でこの独占禁止法をあくまで強行して行くということは、まことに見ようによつては毒薬のような感じも與えるのじやないかと思う。またそのような効力を持つ要素があるのじやないかと思う。日本産業状態を考え合せてみましても、大きな木はほとんど切り倒されてしまつた姿であります。そしてわずかに春の惠みで芽が出て来たというような形であります。その芽を今度つんでしまうと、一ぺんは芽をふいたけれども、今度根が枯れてしまう。根こそぎ枯らしてしまわなければやまないというような気持を国民に起さした場合、この及ぼす影響というものは、非常に逆効果になりはしないかということを、われわれは懸念するのでありまして、いろいろの特殊事情を勘案してということを、強力に私が申しておるのはここなのであります。将来枯らしてしまつてはいけないのである。あくまで滅ぼしてはいけないのだ。再建しなければいけないのだ。こういうような気持を持つていただいて、そこにいわゆる各種の事情を勘案して、この適用に対して考えていただかなければならないということを申し上げておるわけであります。私の言わんとする真意を十分おくみとりくださいまして、今後緩急よろしきを得られ、法の生きた使い方を私は特にお願い申し上げて、公取に対する私の質問を終りたいと思うのであります。いろいろ熱心に私の質問に対して気持よく御答弁くださいましたことに、感謝の意を表する次第であります。     —————————————
  34. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 次に一昨二十日本委員会に付託に相なりました旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案議題といたしまして、まず提出者より提案趣旨の説明を聽取いたします。西村君。
  35. 西村直己

    ○西村(直)委員 ただいま議題となりました旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案の提案理由を御説明いたします。その前に一言お断り申し上げておきたいのは、この旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法は“先般の国会において通過をいたしたものでございますが、その該当すべき一部の者が漏れておるような形でありましたので、先般来この委員会におきまして準備委員等を設け、再三にわたりまして研究の結果、さらに関係方面との折衝を始めたのでございます。幸いにいたしましてごく最近これが了承を得られましたので、今回ここに提案申し上げ、御審議を願う次第でございます。御承知のように、第九国会におきまして、日本製鉄八幡共済組合の年金受給者の年金額につきましては、さきに国家公務員共済組合の年金額が改訂されましたのにかんがみまして、昭和九年一月三十一日以前、すなわち官業共済組合時代の退職者の分に対して、国が、その年金額の改訂に伴いまして必要となる責任準備金の増額分に相当する金額を、同共済組合に対し交付する法律的措置が講ぜられたのてありますが、官営時代からの在職者で、民営後受給資格の発生するものの分に対しては、何らの顧慮がされてないのであります。  考えまするに、八幡製鉄所が日本製鉄に移管されましたとき、従業者のうち官吏に対しましては、恩給法の定めるところにより、官営時代の清算が一切国庫負担により行われたのでありますが、雇用員及び職工に対しましては、遺憾ながら——実質上官業共済組合の形態をそのまま存続させまして、政府は移管後の待遇につきまして、従来とかわらないことを保障いたし、官営時代の清算を一挙に行うことがなかつたのであります。また当時従業者の退職手当につきましては、官営在職期間に相当する部分を、移管後におきましても政府が責任を負う趣旨の規定を、法律をもつて設けておるのでございます。従いまして、退職手当につきましては、第八国会において、日本製鉄株式会社法廃止にあたりまして、政府がこれを補償する措置の講ぜられましたことは、すでに御承知の通りであります。共済組合年金につきましても、かつて官業に在職しておつた以上、官営時代の退職者のみならず、民営後に退職しまたは退職すべき者の年金増加額のうち、官営在職期間の増加部分を国庫が負担することとするのは、以上のいきさつ並びに趣旨に照し、かつて事業主の立場にあつた政府の当然の責任と考えられるのでありまして、現行法が官業共済組合時代の退職者の分のみに限定しているのは、きわめて理由薄弱であるばかりでなく、公平の観念にももとることが明らかであります。  従いましてこの改正案におきましては、受給事由の発生が官営時代であると民営時代であるとを問わず、年金増加分のうち、官営在職期間に相当する部分の二分の一を国庫負担とすることといたしまして、その交付方法といたしましては、一時交付をとりやめまして、毎年四半期に交付するようにいたしたのであります。  なお本改正法の施行期日は昭和二十六年五月一日でありますが、その適用は一月一日にさかのぼることにいたしまして、旧法の規定によつて交付いたしました金額は、改正法の規定によりまして、二十五年度及び二十六年度に交付すべき金額の金額とみなすことといたしました。  以上がこの法律案の趣旨並びに内容でございますが、この法案は特に予算措置を伴なわないような形においてくふうされ、提案されておりますので、はなはだ御多用のところ恐縮でございますが、願わくば本会計年度内に皆様の御審議が終りまして、国会において成立するよう希望いたしたいのでありまして、何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたす次第でございます。
  36. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 ただいま議題となつております旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、質疑はございませんか。     〔「なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 小山長規

    小山委員 ただいま議題となつております旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法の一部を改正する法律案、この法律案におきまして、第七條の八幡共済組合の年金に関する部分を改正しようというのでありますが、この法律案改正につきましては、当委員会において小委員会を設け十分に審議し、この法律案ば練りに練つたものなのであります。そしてこれは自由党、民主党、社会党、共産党各党を共同提出者として出されておるものでありまして、審議も十分に済んでおりますので、この際は質疑を省略し、かつ討論を省略して、ただちに採決に入られんことを望みます。
  38. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 ただいまの小山君の動議のごとく決定するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 御異議なしと認め、本案については質疑を打切り、討論を省略し、ただちに採決いたします。  本案につき賛成の諸君の御起立を願います。     〔総員起立〕
  40. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 起立総員。よつて本案は原案通り可決いたしました。  なお本案に関する報告書の件につきましては、委員長に御一任を願います。  午後は一時半より会議を開きます。暫時休憩いたします。     午後零時三分休憩      ————◇—————     午後二時六分開議
  41. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  関税定率法の一部を改正する法律案、及び関税法の一部を改正する法律案の両案を一括議題として質疑をいたします。三宅君。
  42. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私はただいま議題となつております関税定率法の一部を改正する法律案につきまして、せつかく池田大蔵大臣がおいでになりましたから、二、三質疑をいたしたいと存ずるのであります。今度の改正によりまして、政府といたしましては、生活必需品及びわが国の経済復興に重点を置きまする諸原料品に対しましては、相当思い切つて関税を安くいたしまして、わが国の生産を増加することに努力せられつつあると私も信ずるのであります。この表によりますと、ことに鋼材その他につきましての関税定率があるわけであります。もしでき得べくんば、そうしたような日本の基礎産業であり、わが国の経済の復興に最も必要であるところの鉄鋼品等につきましては、もう少しくお下げになつた方がよろしかろうと思うのでありますが、政府といたしましては、今のお気持はどういうふうでありますか。この際本委員会を通じまして、全日本の国民にお示しを願いたいと思うのであります。まず第一点はさようなことに対して質疑をいたします。
  43. 池田勇人

    ○池田国務大臣 今回の関税定率法改正は、大正十五年以来の大改革でございまして、従来の定率法がおおむね保護政策のもとに、従量税を主としてきめてありましたのを、われわれは根本を自由貿易主義に基きまして、ただ国内産業の保護育成という点で、必要な最小限度に保護関税をかける、こういう建前で行き、また従量税を従価税に直して、今の国際経済に沿うような観念に立つているのであります。そういう考えのもとに、お話の通り原材料につきましては、努めて低率の税をかけると同時に、またできるだけ無税の制度にいたしておるのであります。わが国の産業の状況を見まして、また国民生活の上から見まして、そのあんばいを適当にいたしたいという念願で立案いたしておるのであります。
  44. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁によりまして、重要産業に属します基礎産業の原材料につきましては、相当これを考慮いたしまして低率にした、こういう答弁でありますが、私どもはもちろんのこと、鉄鋼とか銑鉄とかいうようなものは、相当われわれといたしましては重要視しておるのであります。ことに鋼塊及び鋼片等につきましては、一割二分五厘というように二分五厘だけよけいになつておりますが、もう少しそういうふうなものにつきましても、お下げになる気持があれば下げてもうつた方がよろしい、かように思つておりまして、むしろ鉄材、線材等におきましても、一割五分ということになつておりますが、これも一割くらいにお下げになつた方がよくはないかと思つておりますので、もしおさしつかえなければもう一度御答弁を願います。  それからついでに申し上げますが、ことに私どもに必要であります小麦というものにつきまして、あるいは世界の小麦協定というものを勘案いたしまして、わが国の農産物ことに米麦等につきまして、相当考慮すべき余地があると思いますから、世界的の小麦協定に入らなければならぬかと思いますが、これに対しまする大蔵大臣の御構想をこの際承りたいと存じます。
  45. 池田勇人

    ○池田国務大臣 鋼材等につきましては、従来よりもある程度下げておるのであります。一割二分五厘というようなことを言わずに、一割にしたらどうかというお話もございましたが、今の産業の状況から申しまして、一割五分を一割二分五厘に下げておるのであります。こういうのはほかの種目と関連性を持つているのでありまして、これをきめる上におきましては、各関係者並びに財界、学界の方々の意見を十分取入れて、先ほど申しましたような方針でやつておるのであります。  次に米麦の問題でございまするが、従来は従量税といたしまして石幾ら幾らと課税しておつたのであります。わが国の農業の育成の点から申しまして、私は原則として一定の率を設けておく。しかして今は国内の米麦価格よりも外国の方がはるかに高いのでありますから、建前は課税する建前にいたしまして、当分のうち免税する、こういう建前がよかろうというので、そういたしておるのであります。しかして小麦協定に入る問題と関税定率法の問題とは別個の問題であります。小麦協定に入るということは、ただいま買つておりまする小麦の値段が相当安くなるのでありますから、わが国の食糧を安く買い入れるという点から、ぜひともその協定に入りたいという念願で、ただいま交渉を進めておる次第であります。
  46. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 ただいま大蔵大臣の御答弁がありましたが、日本の機械工業が米英その他の諸外国に比べまして、二十年以上、はなはだしきは三十年も遅れておると言われておるのであります。私どもはこの遅れておりますところを開発せしめるには、相当精巧な機械を輸入いたしまして、わが国の産業の開発に貢献しなければならぬと思つておる。つきましては、これにつきまして一割五分というような関税がかかつておりますが、もう少しくこれと関連性のある相当精巧な機械等につきましては、税を下げてやつて早く国内に輸入いたしまして、基礎産業の開発に貢献せられることが最も必要であると思いますが、大臣の御構想をこの際承つて国民諸君に知らさしめたいと思うのであります。
  47. 池田勇人

    ○池田国務大臣 お話の通りにわが国の産業は遅れております。ことに機械工業についてみますと、よほど先進国に遅れておるのであります。従いまして外国から優良な機械を入れる場合に、ただいま予定いたしておりまするところの一割五分の関税をやめてはどうかということも、議論のあるところであります。遅れておりますが、しかし保護育成のために、国内の機械工業にあまり打撃を與えない方がいいだろうという説が強いのであります。そこで私は日本の機械工業の育成のために、外国から入つて来る機械につきましては税をかけて、日本の工業を育成する。しかし特別の場合すなわちわが国の工業の近代化のために特に必要な、日本ではとうていこしらえることのできないというふうなものについて、関税を安くすることは考えられないか、こういう問題があると思います。そういう問題は大いに研究しなければならぬ問題と考えております。
  48. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この際大臣にお伺いしておきたいのは、この関税の問題は、従来の歴史から考えましても、各国におけるその国の独立性を保持しているかどうかということが、この関税をきめる場合における重要なポイントになつて来ているわけであります。ところで従来よりももちろんいろいろ改正されるという気持はわかりますが、しかし私たちの今考えておりますのは、現在日本は講和條約を前にしておるわけでありまして、現在では占領下にある。完全にわが国が独立しているとは言えない占領下にあるわけであります。この占領下においてこういう改正法を出されたところの理由は、一体どういうところにあるか。たとえば講和條約を前にしておるといいながら、しかも占領下にあつて、完全なる独立が保持されていない今日において、この関税定率法を出された理由、この点をひとつお伺いしておきたい。
  49. 池田勇人

    ○池田国務大臣 講和を前にして、講和受入れ態勢のためにも、従来のような今の国際経済事情に合わないような関税定率法を置いておくということは、好ましくないと考えておるのであります。従いましていつでも講和に入り得るように、国内の法規を整備しておく必要があるということを認めまして、各国の事例その他を勘案いたしまして、われわれの手元で作成をいたしておるのであります。
  50. 竹村奈良一

    ○竹村委員 ところでこれは大臣もすでに身をもつて体験しておられることだと思いますけれども、たといいかなるものにしても、現在においてこういう法律を制定する場合においては、日本の政府独自の考えであるとは言つても、しかし一方においてある程度の制約を受けることは周知の事実であります。もしこういう意味において、成立したところの関税定率法というものは、講和が成立した後においてただちに改正する意思をもつて出されておるのか。あるいはもうこれを基礎として改正意思はないのか。この点をひとつお聞きしておきたい。
  51. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この関税定率法改正の問題は、今から二年前からやかましい問題として起きておるのであります。しかしてその当時におきましては、よほど自由貿易主義——主食等には現在においても課税すべきでないというような議論が強かつたのでありますが、われわれは独自の考え方から、ただいま御審議願つておるような案をつくり上げたのであります。従いましてこの案は、各国の関税定率法と大体似ておるのでありまして、講和後におきましても私はかえる必要はない。今の情勢ではかえる必要はないと思います。しかし何分にも関税定率法は、ほかの税法と同じように国内産業の状況を見てから、いろいろ考えなければならぬ問題があるのでありまするが、原則としてただいまはこの法案が通過すれば、当分のうち改正する必要はないという確信を持つております。
  52. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この問題につきましては、後刻事務当局からいろいろ詳細を承つた上でもう一度聞きたいと思うのですが、その前に根本的なことをひとつ聞いておきたいと思うのです。この関税定率法によつて日本が輸入する場合における課率と、日本が現在諸外国に輸出しております場合において、向うでとられておるところの関税と比較いたしまして、それが対等の立場において率がきめられておるかどうか。たとえば日本が輸出した場合には、向うにおいてはあるものには相当高い関税がかけられておる。ところが日本が輸入する場合には、その国へ輸出する場合より特に安い率をかけておるというような場合がないかどうか。つまり平均されておるかどうかという点だけお聞きしたい。
  53. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この問題はやつかいな問題でありまして、その国の経済事情によつて違うと思います。たとえば日本から出します陶器につきましても、アメリカにおける関税の率と、フランスにおける率と、またインドにおける率は違うのであります。従いましてわれわれのところでこの率の比較として見ます場合におきましては、全体の輸入量に対しまして、関税收入がどれだけあるかということが一つの標準になりましよう。また次には無税のものも相当ありますから、有税品の中で平均の税率が算術的にどうなるか、あるいは実質の分量、価格等を入れてどうなるか、こういう見方もあると思います。従いましてただいまの御質問に対しましては、なかなか答えが事務当局でもできないのじやないか。ただおおむね自由貿易主義をどの程度とつておるか、あるいは保護政策をどの程度強く入れておるかによつて違うと思いますが、私の見るところでは、有税品全体を通じての課税の率というものは、外国に比べましてある程度日本は安いのじやないか。イギリスなんかは相当高うございます。アメリカは安うございます。フランスはその間ぐらいをとつているのではないかと思いまするが、なかなかこういう計算は、輸入量に対する関税收入の割合でとるか、あるいは有税品の実質平均で行くか、これによつてよほど違つて来まするから、ここで数字を申し上げることもなかなか困難であるし、数字を申し上げてもぴんと来ない。ただこの品物について、どこはどうとつているか、それに似たものをその国から日本が輸入するときにはどれだけにきめているか、こういう技術的の問題になりまして、個々の問題と思いまするが、私が先ほど申し上げましたように、日本はどうしても原材料を輸入して加工して出す国でありますので、予想よりも低いくらいの税率の方が、国際貿易に参加する日本の建前としてはいいのではないかという考え方で、進んでおるのであります。     —————————————
  54. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 次に資金運用部資金法案会計法の一部を改正する法律案資金運用部特別会計法案資金運用部資金法の施行に伴う関係法律の整理に関する法律案を一括議題といたします。小山君。
  55. 小山長規

    小山委員 ただいま議題となりました法律案につきましては、先般郵政委員会と合同審議の際に、大蔵大臣の答弁を聞いたのでありますが、非常に断片的でありまして、統一された大蔵大臣の思想というものを聞き取ることができなかつたのであります。そこでこの際あらためて大蔵大臣の所信を伺いたいのでありますが、先般の合同委員会における議論を聞いておりますと、大体四つの点に反対の理由があつたようであります。第一は、資金運用部に簡易生命保險あるいは郵便年金の資金を集中いたしますと、地方還元ができない。元来地方で集まつた簡易保險あるいは郵便年金というものは、地方に還元すべきものであるにかかわらず、預金部にこれが集まると、地方還元ができないというのが第一点であつたように思います。はたして資金運用部に一元的に運用されました場合には、郵政省が運用しておる場合と異なつて、地方還元ができないかどうかということが聞きたい第一点であります。  第二は、資金運用部に簡易生命保險その他の資金が一元的に運営されるということになりますと、それを取扱つておるところの逓信従業員に張合いがなくなつて来る。その結果資金が十分に集まらない。資本の蓄積が非常に重大なりとされておる今日において、この張合いをなくするということは、いかがであろうかということであつたようであります。この面において張合いがなくなつた結果、簡易生命保險の伸び方が少くなる。その結果資金の政府に集まつて来る分量が減つて来るであろうかどうか。この点についての大臣の所信を伺いたいのであります。  第三は、運用利率を一定の利率に固定されると、保險事業が成り立たない、こういうふうな意向であつたようであります。つまり簡易生命保險特別会計が独自の運用をするならば、さらにさらにたくさんの運用利回りが得られ、従つて従業員に対する福利施設であるとか、そういうようなものにも十分な手が届くのであるけれども、五分五厘というような利率に固定されると、その十分な利益を従業員に均霑させることができないというようなことであつたようでありますが、現在の法案によりますところの預金部証券でもつて、簡易生命保險は生命保險として十分成り立つて行くかどうか。あるいは従業員に対する幅利施設その他のものができるかどうか。あるいはそれ以外の方法でそれらのことはできるかどうか。これが伺いたいところの第三点であります。  第四点といたしましては、これは根本的なことでありますが、資金運用部に、日本の財政資金を一元的になぜ集中して運用しなければならぬか。これはGHQの覚書なりないしは指令があつたからそうされたのであるか。あるいはこうしなければならない国内事情によるところの積極的な理由があるのであるか。この点をさらに積極的な理由として明確にしていただきたい。  以上が私の伺いたいところでありますが、十分な御説明をお願いいたしたいのであります。
  56. 池田勇人

    ○池田国務大臣 御質問の第一点は、資金運用部資金特別会計に郵便貯金並びに簡易生命保險、郵便年金の金を一元的に運用することになると、地方への還元が困難になるのじやないかというこの前の質問に対してどう考えるか、こういうことであると思います。御承知の通り、従来の預金部資金というものは、国債と地方債に限られておつたのであります。地方債のわくは、自治庁その他の申出によつて一応きまつております。しかるところ一方では郵便貯金、簡易保險が非常に多くなつて参りまして、地方債の引受だけでは金が余つて来る。そこでわれわれは、これをできるだけ一般経済界に還元しようという意図のもとに、関係方面と話をいたしました。しかるところ、この簡易保險とか郵便貯金というものは、国民大衆の零細な資金でありまするから、よほど運用を確実にしなければいかぬ。そこでりつぱな運用委員会を設けると同時に、簡易保險とか郵便貯金という特別会計を設けて、資金運用部から、国がはつきりした借用証文を出す制度に改める。そうするなら、ば、地方債、国債以外のものにも運用してさしつかえないだろう。しかも確実を期する意味から、運用部資金から各会計に出す。こういう制度に改め、そうして金融債を引受けようということに相なつたのであります。そうして金融債を引受けた場合におきましては、地方への還元がどうなるか。これは地方に還元するのであります。ただそれがどの程度農林中央金庫の債券を引受け、あるいは商工中央金庫の債券を引受け、また勧銀、興銀の債券をどの程度引受けるかによつて違いまするが、いずれにいたしましても、今国債はまだ発行しておりません。ただ国鉄とかあるいは電気通信省の方に投資をいたします。これは国の仕事でありまするから、優先的にやります。その次には地方債の引受でございまするから、これが動きまして、地方に相当還元できると思うのであります。しこうしてその余つた分を金融債として農林、水産あるいは林業あるいは中小企業の方に出し、また国のために必要な長期資金にこれから出すということでございまして、資金運用部になつたからといつて、地方への還元がおろそかになるどいうことは私は考えておりません。地方に還元するようにするためには、こういうふうにはつきりした制度を置いて、しかも国民大衆が安心して貯金ができ、保險に入れるようにすることが適当であると考えたのであります。  次に、こういうふうにいたしますと、郵政従業員は自分らが集めた金が地方に還元されずに、大蔵省所管の資金運用部資金特別会計に集まるので、集めた金を自分らで使えないから、集めてもあまり効果がないというので、熱意が少くなりはしないか。これがこの前の第二の考え方であり、質問であつたと思うのであります。しかしこの集まつた金は、今までとは違いまして、総理大臣を会長とし、郵政、大蔵両大臣を副会長とする委員会運用をきめるのでありまするから、私は何も自分で集めた金を自分で運用するというようなことは考えなくても、国家目的に適合するように運用されることが最もいいことではないか。これが各省各省でえてかつてなやり方で行くよりも、金融の問題でありまするから、財政金融をあずかつている大蔵省で、これを適当にあんばいして使うのが、一番国家目的に沿うのじやないか。こういう考えで、とにかく郵政大臣も副会長とし、総理大臣を会長として運営委員会を組織して、そこで諮つて行けば、何ら意気沮喪するものではないと思います。国民大衆の預金あるいは保險金を、郵政省が日本の財政金融ということを離れて、個々別々に使うことがいいか悪いかということは議論のあるところでありまするが、これによつて簡易保險を募集勧誘するのに、意気が非常に沮喪するということはどうか。沮喪しないようにして、そうして国家目的に適合するように使つて行くのが、適当ではないかと考えておるのであります。なお意気沮喪するがゆえに簡易保險が集まらぬというふうなことは、私は今のところないと思います。大蔵省で一手に引受けて運用いたします事柄は、戰争中から始まつたことでありまして、その後もずつとやつているのであります。ことにマーケット指令が昭和二十一年に出ましてから後は、非常に簡易保險の伸びもいいのでございまして、幾何級数的とまでは行きませんけれども、相当ふえているのであります。今年なんかも百数十億円、おととしの倍以上になつて来ておるのであります。しこうして、これはやはり今までも大蔵省に集中してやつてつたのでございます。私は今後も相当伸びて行くと考えておるのであります。  次に資金運用部資金特別会計に一手に集めてしまつては、運用利益が少いから、従業員その他の福利施設がどうがという問題でありまするが、今までは簡易保險の建前といたしましては、大体三分五厘か四分程度の運用利回りを予定して、料率を計算しておつたと思うのであります。しかるところ、今回は三年以上は五分五厘ということになつておりますので、今までよりも相当の高收益に相なつて来ると思うのであります。あるいは、いや自分らでかつてにしたならば、相当利回りもよく、いい運用ができるだろう、こういう考え方も起るかと思いまするが、これは先ほど来繰返して申し上げますように、国民大衆の零細な血の出るような金でございますので、運用利回りの方ばかりを考えて、損をするような危險なところに運用することは、絶対禁物だと思うのであります。従いまして運用部資金特別会計に預け入れ、しかも従来の三分五厘とか四分というよりももつと高率に、長期の資金でありますから、五分五厘程度に金がまわつて行くならば、これは相当正確に積立金がふえて行くと思うのであります。しこうしてこの金の運用利回りにつきましては、まず第一に、やはり契約者等に還元すべきものであります。これを従業員の福利施設にまずまわすというようなことは行き過ぎでございまして、まず契約者に恩典を十分施すように考えて行かなければならぬ。また従業員の方もないがしろにするわけではございませんが、とにかく確実で、今よりも有利であるということだけは言い得ると考えるのであります。  第三に、何ゆえに資金運用部資金特別会計に郵便貯金その他を吸收して集中してやるか。これは司令部の指令に基くものかどうか。こういうのでありまするが、これは従来簡易保險その他の資金の分量が、国の資金計画から申しまして非常に小さく、この金がどこへ使われようが、日本の経済金融におきましては大して影響がないというふうな場合におきましては、大蔵省へ何も集中する必要はなくて、昔の逓信省独自の考えで、ある程度おやりになつてつたのであります。しかるところ、戰争中から資金を特別な計画のもとに集中して、有効に使わなければならぬという要請が強くなつて参りました。しかも最近におきましては、敗戦後非常な金詰まりで、国もあるいは民間の方にも金が非常に少い、こういう場合におきまして、集中津川ということは経済再建に最も必要なことであるのであります。しかし片一方では、保險の本質として、やはり金を集めた人が使うことが理想的だという考え方もあります。私は両方の議論が立つと思うのであります。郵政省の方に資金を置いて、そうして大蔵大臣その他と相談の上使うことも一つの方法でありましよう。しかしこれを相談の上使いましても、今のところでは地方債と金融債以外に——あるいはごく小部分として契約者の貸付もありまするが、大体の方針としては国債、地方債、金融債以外にはなかなか運用できぬのじやないか。今株の値段がいいからと言つて株へ貸したり、あるいは役所の建物を建てることに使うことは、いかがなものかと思いまするから、たといこれが郵政省に残りましても、やはり大蔵大臣その他と話合いをしてやらなければならぬ。しかも金詰まりの今日でありまするから、やはり効果的に使うという議論が相当立つて来ると思うのであります。そこで私はいろいろ考えました上で、あるいは国会の決議を尊重して、郵政省においておやりになることも一つの方法かというので、賛成もいたしましたが、その後の事情考え、とにかく資金を有効に一元的に使うということが、ただいまの場合では適当であるという結論に到達いたしましたし、片一方では指令もあることでありますし、また予算編成におきまして、関係方面の強い指示もありましたので、両方から考えまして、御審議願つておるような法案を提案いたした次第であります
  57. 小山長規

    小山委員 ただいまの御答弁でよくわかつたのでありますが、もう一、二点伺つておきたいことは、ただいまの大臣のお議論は、現在国債、地方債あるいは金融債以外に運用ができないということが前提で、結論されたようでありますが、将来国債とか地方債というものに、一定のわくを設けないでもよろしいような情勢になつて来た場合にも、なおかつこのような集中的な運用が、日本国情として正しいかどうかという点についての積極的な理由を、ひとつ伺つておきたいのと、もう一つは、この簡易保險あるいは年金に対する預金部証券の利率は、三年以上は五分五厘でありますが、もう少しこれを引上げた場合に、国内金融上どういう影響を来すか。たとえて申しますならば、その場合に地方債あるいは国債の利率の引下げということを、かねがね考えておるのでありますが、それに対してはどういうような影響を来すであろうかということ、この二点を追加して伺つておきたいのであります。
  58. 池田勇人

    ○池田国務大臣 将来国債、地方債のわくがはずれた場合におきまして、この預金部資金の金を、その方面すなわち国債、地方債以外のものに貸す余地かあるかないかという御質問であると思いますが……。
  59. 小山長規

    小山委員 たとえば地方債は四億なら四億に限る、国債は、一定の国債以外には発行してはいけないというのが現状でありますが、将来、たとえば国債は国の必要に応じては幾らでも出す、あるいは地方債も国の必要に応じては幾らでも出せる、いくら発行してもよろしいというような情勢が来た場合に、なおかつ資金は集中して使わなければならぬかどうかという点であります。
  60. 池田勇人

    ○池田国務大臣 将来国債が幾らでも出せる、また地方債が幾らでも出せるという状態が来るかどうかということは、なかなか問題でございまするが、昔からも建設公債ということが問題になつておりまして、また昔から地方債のわくにつきましては内務省、大蔵省がよほど嚴重な監督を加えておりましたことから考えまして、将来そういうのがいつ来るかもわからぬ状態であるのであります。しかしかりにそういうふうな場合が参りましたときに、集中して資金を運用する必要があるかどうかという問題は、私は国債、地方債のわく自体から来る問題よりも、日本の経済の大きさに対してどれだけの資金があるか。しかしそのうちどれだけ簡易保險、郵便貯金が占めておるか。これによつて違うと思うのであります。すなわち資金量の方が第一義的の問題になるかと思います。昔のように郵便貯金なんかがたとえば百億円であつて、そして銀行預金が七、八百億円、千億円というふうな場合におきましては、大した問題じやないのです。しかし今のように郵便貯金関係が二千億円を越えて、銀行預金が一兆億円というふうな場合におきましては、それが国際、地方債が発行されようがされまいが、やはり資金の分量からいつて、相当運用については考えなければならぬ、こう思うのであります。従いましてアメリカのように資金量の多い所におきましては、簡易保險、郵便貯金というものはほとんど金融上の問題になりませんから、向うでは郵政省がやつておるのであります。これが私は原則たと思います。そこで日本の預金その他のいわゆる資金蓄積が十兆億円にもなつて、しかも簡易保險、郵便年金というものが、郵便貯金を合せて二千億円程度とか三千億円程度なら、あまり大して問題でないと思います。国債、地方債がわくなしで出せるというふうなことも、この運用に対しましては相当の問題になるかと思いまするが、問題は資金量のところから来ることだと思つております。  次に三年以上の簡易保險の預金につきましては、五分五厘をつけております。これは今の状態から申しますると、大蔵省といたしましては五分五厘をつけましても、地方債の方で六分五厘に運用いたしておりまするから、大体とんとんで行けるのであります。しかし郵便貯金の方はこの五分五厘の利子を郵便貯金特別会計で拂つたのでは赤字であります。従いまして今年も十五億円か十七億円、その程度の赤字を国民の税金でもつて埋めておる、こういう状態であるのであります。われわれは片一方で地方債はできるだけ安くしなければ、府県や市町村がお困りになりますので、昨年の八月、九分一、二厘の利率を六分五厘に下げたのであります。六分五厘でやつて行く場合におきましては、郵便貯金の方は赤字だから国民の税金で負担するけれども、簡易保險の方は大体五分五厘なら今までの利回りよりいいから、相当積立金もふえて来ると思います。従いまして保險契約者のためにこの五分五厘の預金利率を上げるとすれば、片一方反対的に地方に貸し付ける金利を上げなければならぬ、こういうことになつて痛しかゆしになるのであります。しかして今一般の定期預金も五分の状態でありますので、まあ五分五厘くらいならばそう安い利子ではない。今までよりもよくなつたので、簡易保險としては相当の責任準備金もふえて行く、こう考えておるのであります。これは地方債の金利を上げないようにし、また簡易保險契約者に対しましての責任準備金を多くするという意味で、五分五厘程度ならば適当ではないかと考えております。
  61. 小山長規

    小山委員 将来地方債とかあるいは国債というようなものは、何百億出さなければならないというような制限がなくなつた場合、その場合においても、この簡易保險積立金あるいは郵便年金の積立金の資金の分量が非常に多くなれば、国内の金融の問題からして一元的に統一しなければならぬ。私は大体そうであろうと思つております。むしろ将来このわくがなくなつた場合にこそ、これらの資金は一元的に一つの所で統一しておかないと、いろいろな混乱が起つて来はしないかというふうに考える一人でありますが、さてここにわれわれが一抹の危惧を持ちますことは、大蔵省という一つの独占——共産党の言葉をかりて言えば独占金融機関の手に、この資金が一元的に運営されます場合に、大体金融というものは競争している方がいいのであります。それを一所に集めますと、とかくその一つ意思でもつていろいろのものがきめられるおそれがある。その点については資金運用委員会というもので、それを適当に調節して来るのでありましようけれども、これに対して民間の、あるいは地方の自治体なり、宿りようという団体が、割合に気やすく大蔵省に相談に行けるような態勢になるのかどうか。行きました場合に、木で鼻をくくつたような形で断られるのか。あるいは——これはわくがなくなつたときの話をしているわけです。そういうときに、その地方の必要に応じて、大蔵省は親身になつて相談ができるような態勢をとられるのかどうか。その点をひとつ最後に伺つておきたいと思います。
  62. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大蔵省といたしましても、この資金の運用につきましては、将来地方債の四百億というふうなわくがはずれました場合におきましては、第一義的には国と地方のことを考えなければならぬと思います。しこうしてそれから余つた分——余つた分と申しますと語弊がありますが、余る予定のものにつきましては、それ以外の経済金融界の方に流すということが必要だと思います。従いまして地方公共団体から借入れの申込みがありましたときには、木で鼻をくくつたようなことは今でもいたさないつもりでおります。地方自治庁の方のわくがあれば、大蔵省はそれに乘つかつて参ります。地方自治庁の方にわくがなくて、大蔵省に先にお入れになつたときには、大蔵省から地方自治庁の方に連絡いたしまして、ともどもに手をつなぎまして、金融に努力いたしておるのであります。わくがあるときでもそうでございますが、わくがないときにはまず地方債の方をやることにいたします。それから地方債の方を十分出してもなお余裕がある場合におきましては、これは私は第一義的には農林水産とか、農林中央金庫とか、あるいは商工中央金庫の方に第一義的に考える。その次が勧銀、興銀であるというふうな気持を持つておるのであります。国民大衆の零細な血の出るようなお金でありますから、確実に使わなければならぬということが第一点、第二点が地方のため、国のためになるようにしなければならぬということが、第二点に相なると思うのであります。
  63. 宮幡靖

    宮幡委員 いろいろ小山委員からお尋ねをいたしまして、きわめて丁寧なる御答弁がありました。資金運用部に資金を集中する点につきましては、大方の疑問が解けたと信ずるわけでありますが、ただ私は先般の合同審査の席におきまして、與党といわず野党といわず御発言になりましたことを聞いて、非常に不可解に思うことがあるのであります。一体資金運用部資金法案というものが、きようやきのうに青天の霹靂のごとく、この国会の審議に備えられたものでないということを、ます第一に知らなければならないと思います。少くとも予算審議の過程におきましては、それぞれの議論もありました。ただ委員会の討論等におきまして、この問題を反対討論の中にも強く指摘しておりません。かような点から見まして、予算案はすでに通過いたしましてその裏づけとなるべきこの法律案について、いまさら疑義が生ずるということは、私はただいまの国会の審議の方法といたしましては、どうかと思うのであります。これが反対討論の中にも大きくにじみ出しておりまして、これあるがために総予算案に反対だ、あるいは特別会計に対しても反対である、かような意思表示があつたといたしますると、非常に重大問題として考えなければなりません。現段階におきましては、すでにそれは過ぎ去つたことでありまして、單に予算に対します法律の裏づけをすればよい、こういう事態であろうと思うのです。もし実施が四月一日に迫つております現在におきまして、この法律案の審議が延ばされたといたしましたならば、郵便貯金に対します特別会計はすでに設けられることになつた。少くとも衆議院から見ればそういう状況にありますが、一体四月一日からのまかないを何によつてやるのか。またこの方面に当つておられる方々に給料も拂えないような場合には、これは大きな社会問題ではなかろうか。なるほど先般来取上げられておりますところの簡易生命保險の積立金の運用等につきましては、時と場合によりましては幾多経済のまにまに、それぞれの経済事情に沿う方策が講ぜられて当然でありますが、現段階におきましては原案に考えられました方法がよいと、少くとも宮幡は信じておるわけであります。その理由につきして、何と申しましようか、大臣を前に申し上げてははなはだ恐縮でありますが、われわれは大蔵省がその原案を支持するに若干勇気に乏しいではないか、かように思うものであります。なぜかと申しますと、この問題はいまさら発生したことではありません。昨年十月あたりを回顧いたしてみますならば、金詰まり経済という問題で、金詰まりの打開が急務である。けだし朝から晩まで、大蔵大臣は金詰まり打開のために攻められておつたことだと思います。何と申してももう過ぎ去つたことであるから、当時の苦しみは忘れたと仰せられるかもしれないが、金詰まりを打開しなかつたならば、とうてい日本の経済が、せつかく安定から復興へ、復興を基盤とする真の再建へと、少くとも経済は進行しないではないか、こういうことを強く攻められたわけであります。従いましてその内容を見れば、御承知のように銀行は貸出し超過、オーバー・ローンと申しますか、企業の方面から申しますとオーバ一・ボローイングと申しますか、言葉は適当かどうかわかりませんが、とにかく債務超過、自己資本を上まわります負債を持つておる。これを打開いたしまして、しかも各企業の短期資金の名目において調達いたしました資金が固定しておる。この固定化しました資金を、正常なる長期資金のベースに乘せるということが急務である、こういうことを大蔵省としても考えられ、少くとも財政経済に対して関心を持つ者の言われたことであります。従つてこれを打開する方策といたしましては、なるほど第五国会におきまして、われわれが発案いたしました、ぜひとも郵政省の簡易生命保險の積立金は、ずつと昔のように郵政省独自の運用にまかしたい、こういう希望の意思を決議として表明し、また閣議においても、昭和二十六年一月一日からその運用に返したいということを考えられたことも事実でありますが、状況が急テンポに変更いたしまして、ぜひともこの金詰まりを打開しなければならぬ。それには日銀資金の固定貸しを正常なる長期資金に転換する方法、せんじ詰めて申しますれば、預金部資金を見返り資金にしわ寄せを行いまして、資金運用の質的転換をはかる、こういう方針をとらなければならなくなつたのであります。あえてドヅジさんからの示唆がなくても、総予算その他の交渉の過程において、大蔵大臣はこの点を強く、自主的な立場からドツジさんに進言せられたと私は信じておりますが、その点の真相についておさしつかえない点を、この際解明せられたいと思います。
  64. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この前の合同委員会のときに、突如としてこの法案を出したというお話があつたのでありますが、宮幡委員お話のように、突如として出したのではありません。たしか臨時国会においてもこういう構想は話しておりましたし、それから衆議院におきまして議決になりました予算案も、この分で行つておるのであります。衆議院の方は全部御了知であると私は考えております。お話の通り三月三十一日までにこの法案が通過しなかつたならば、郵便貯金の利拂いもできませんし、郵便関係職員の俸給も拂えない。抑えぬよりももう予算ができておるのであります。突如として出したものではないということは、宮幡委員お話の通りであります。そう考えておるのであります。なおこういうふうに相なりました経過につきましては、この前申し上げましたように、私といたしましては国債、地方債にばかり預金部の金を使われるということでは、日本経済の金下足の緩和ができない。金下足を緩和するためには、預金部に集まりました金を有効に使わなければいかぬ。有効に使う場合におきましては、大衆の安心するように、がつちりしたところに預け入れておるのだという制度に改める必要がある、こういう考えのもとに、前の国会の決議もありましたし、閣議決定もあつたのでありますが、気持をかえまして今回の法案のようにいたしたのであります。これは昨年の十月ごろに決議いたしたことであるのであります。その後におきましても、それによつて議会質問に対します答弁をいたしており、予算もそういうふうにごしらえたのであります。
  65. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁を伺いますと、ただいま討論でありませんから適当の言葉ではありませんが、どうも反対する理由が少々おかしいと私はこう思います。特に提案理由の中にも説明は出ておりまして、私は少し物足らなさを感じておりますが、この資金運用部というものは、言葉はあるいは不適当かもしれませんが、私の観念から申すといわゆる信託金制度を採用した。こういうことで国家の財政資金というものは、もしこれが産業資金面に投下せられるとするならば、見返り資金と預金部資金の二本建以外にない。これははつきりしておる。しかも見返り資金の将来の依存性というものは、御承知の通り少いものでありますので、唯一の預金部資金をもちまして、投資特別会計として運用しよう、こういう精神が流れておると思います。この点は残念ながら今まで御説明はありませんが、私はそういうふうに考えて、この法律案なり資金の運用をながめておるのでありますが、さように考えて間違いないのでありましようか。
  66. 池田勇人

    ○池田国務大臣 その通りであります。集まりました金を資金運用部資金特別会計に信託いたしまして、そうして政府が信託せられた資金を国家目的のために使う、こういうことであるのであります。
  67. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 その点がはつきりしました以上、国家の資金というものはこれを一本に集中するということが、将来のことはしばらく別といたしまして、現段階においてはきわめて適切な方法であると私は信じます。さような意味におきまして、この問題はぜひとも大蔵省としましては、あるいはドツジ書簡だとかあるいは指令があつたから、政府の自主性がないというような横紙破りの質問に屈することなく、原案に対しましてドツジさんと総予算その他を御交渉なさいました経過にかんがみまして、現段階においてはこの法案を除いて、他に政府資金の運用ということに万全を期する方針がないという強い所信の表明を、今日ただいまでなくてもよろしゆうございますから、適当な機会において適当な方法で御表明をいただきたいことを希望してやみません。特にドツジさんの帰国に際しまして声明いたしました声明書の一端を、私のつたない頭で考えてみますとこう書いてあります。長い文章でありますから要約しますと、日本経済は従来見返り資金に過度に依存して来た。国内にインフレ要因がある限り、見返り資金運用の主目的はインフレ抑制と債務償還であり、投資は従である。見返り資金は近い将来確保できなくなるかもしれないから、長くその使用を計画に織り込むことは許されない。日本経済の復興は国内資本源の動員にある。すなわち資金を集中し動員するということも、ここにはつきり現われております。しかも資本蓄積にならないような減税をしてはならぬ。こういうことが強く示されておりまして、その他にもまた要点がありますが、直接今のに関連がありますところのドツジさんの帰国声明にもかようなことがありまして、大蔵大臣が主として交渉に当られました苦心の結晶も、これによつて証明ができると存じます。  本日は時間がありませんので、細目についての質問は、もし時間が許されたならば他日いたしまするが、かような原案に対しましては、あるいは司合部の指示に屈したとか、あるいは自主性がないとかいうような誹謗的なものに対しましては、ぜひともその信念をもつて説明あらせられんことを希望いたしまして、本日は時間の関係で、これでやめておきます。
  68. 池田勇人

    ○池田国務大臣 他の機会というお話でございまするが、せつかく御意見の発表がありましたので、ちよつと申し上げておきたいと思います。私は先ほど来、あるいは先日の委員会におきまして申し上げましたように、固い信念をもつてつておるのであります。ただどうも池田の表現は少しきつ過ぎる、こういう先輩の忠告もありますし、また前でありますが、国会の決議もありましたし、また非常に熱心な御質問でありますので、少しやわらかに申し上げた方がいいというので、信念にかわりはありませんが、表現はやわらかくやつたのであります。これよりほかに案はただいまのところないという確信を持つておるのであります。
  69. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 深澤君。簡單にひとつお願いします。
  70. 深澤義守

    ○深澤委員 ただいま長々と池田大蔵大臣の信念が明確にされたわけであります。先般の合同委員会で池田大蔵大臣が申されたことは、国会の決議があり閣議の決定もあつたけれども、二十六年度の予算の関係方面との折衝の過程において、この資金運用部をつくることがよろしいという信念を私は持つに至つた。だが私が言うよりも、ドツジ書簡という形において出してもらつた方が、説得するのに非常に都合がよろしいから、出してもらつたのである。こういう経過の説明をされたわけであります。従つて私はもちろん突如としてそういう信念になつたのではないということもわかるのですが、国会の決議もあり、また閣議の決定があつたにもかかわらず、予算折衝の過程において、こういう信念が出て来たのだという、その出て来た根拠を、もう一ぺん明確にお伺いいたしたいと思います。
  71. 池田勇人

    ○池田国務大臣 これは先般来の速記録を読んでいただくとよろしいのでありますが、金が余る、それを運用する必要がある、しかる場合におきまして、これを確保するがつちりした制度を設ける必要がある、こういうことであるのであります。将来の問題はさておきまして、ただいまのところ、そういうふうな制度に一応改めて、しがも運用面におきましては、内閣総理大臣が運用委員会に諮問してやることがよいということになつたのであります。その経過につきましては、この前の連合委員会並びに今日お聞きの通りであります。
  72. 深澤義守

    ○深澤委員 今までの御意見を拜聽いたしますと、現在日本の置かれております立場として、こういう財政資金はこれを集中し、統一して運営することがよろしい、こういう意味において大蔵省にこれを集中し統一したのだ、こういうぐあいにわれわれは理解できるのでありますが、そういうように理解してよろしゆうございますか。
  73. 池田勇人

    ○池田国務大臣 大体その通りであります。
  74. 深澤義守

    ○深澤委員 これはしからば過渡的な方針なのか。それとも恒久的方針であるか。その点をひとつお伺いしたい。
  75. 池田勇人

    ○池田国務大臣 経済財政状況の変化によつて、何もこだわる必要はないと思います。
  76. 深澤義守

    ○深澤委員 もう一つお伺いしたいのは、今まで見返り資金によつて、電通あるいは国鉄等の貸付が行われて来たのでありますが、今年度からは見返り資金からの融通はやめて、これをもつぱら資金運用部資金からやるということになつたのは、どういう根拠によるのか。その点をひとつお伺いしたいと思います。
  77. 池田勇人

    ○池田国務大臣 預金部の運用が制約せられておりました関係からであります。しこうして見返り資金の方は、将来どんどん積み立てるということもなくなつて来るわけであります。向うの方に余裕を置いておいた方が、臨機応変といつては少し甘過ぎるようでありますが、経済の実情に沿うようにできるという考えのもとにやつたのであります。
  78. 深澤義守

    ○深澤委員 それからもう一つの点は金融債の問題であります。先般もちよつと御質問申し上げたのでありますが、昭和二十五年度において、千二百億の金融債を出しておるわけであります。今年度も四百億出すということになりますと、今度この制度改正されたその根拠は、結局金融債に非常に大きなウエートを持つて運営される、こういうところに大きな目的があるのではないか。ここにこの制度をかえられましたところの大きな根本的な原因があるのではないかと考えられるのでありますが、その点はいかがでありますか。
  79. 池田勇人

    ○池田国務大臣 そういう点もあるのであります。     —————————————
  80. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 それでは次に保險募集取締に関する法律の一部を改正する法律案議題といたしまして、質疑を続行いたします。佐久間君。
  81. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいま議題となりました保險募集取締に関する法律の一部を改正する法律案について、二、三お尋ねして、保險行政の一般質問に入りたいと思うのであります。  第一点といたしまして、生命保險募集人と会社の役員及び使用人との登録の区別を廃止した理由、さらにあわせて下請生命保險募集人の届出制を廃止した理由、これについて一応御説明を承りたいと思います。
  82. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 保險の募集取締りに関する法律案につきまして、従来は生命保險会社の役員及び使用人、これも登録制を実施いたしておつたのでありますが、委託に基きます募集人との取扱いを別にいたしまして、登録簿等も別であつたのであります。しかしこれは事務上煩瑣でもありますし、わけても大して意味がございませんので、これを同じ扱いにしたという趣旨でございます。それから募集の下請をいたします者に対しましては、届出制にいたしておつたのであります。この趣旨は、そのウエートを軽く考えておつたのでありますが、実際の取扱いを見ますと、登録をなすべきものが届出制を利用して、もぐつておるというような事例も認められますので、保險募集取締りを強化いたします意味において、これも登録を必要とすることにいたしたのであります。
  83. 佐久間徹

    佐久間委員 御説明によりまして、業務の簡素化と、不正募集を取締り、保險契約者を保護し、保險事業の健全なる発達をはかろうとする意図によるものであると思うのであるが、そう考えてよろしゆうございますか。
  84. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 お話の通りでありまして、取締りの強化と、それからこれに対しまして事務の簡素化をはかつたわけであります。
  85. 佐久間徹

    佐久間委員 会社の使用人と損害賠償関係に対しましては、民法の不法行為に関する賠償規定によつてさしつかえないと思うのであるか、特に本法に規定した理由はどういうわけでありますか。
  86. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 現行法によりますと、会社の使用人等が、募集にあたりまして契約者に損害を與えました場合には、会社は使用人の行為に対しまして、民法上の不法行為に対する経営者の責任を負うのであります。しかしこれでは取締りの徹底を期し得られませんので、あわせて会社の無過失責任というところまで引上げたわけであります。
  87. 佐久間徹

    佐久間委員 それから乘りかえ契約禁止の規定を設けた理由は、どういうわけでありますか。
  88. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 保險募集の際の弊害の顯著なるものは、実は乘りかえ募集であつたわけでございます。せつかく保險に加入いたしまして、契約関係が成立しておりますのに、さらにいろいろの話法を用いまして、これを新規契約に乘りかえさせるということが行われて来たのでありますが、これは申すまでもなく、加入者にとつて非常に損害を與えるものでございまして、この弊風を改善いたしたい趣旨から、今回改正をいたしたのであります。
  89. 佐久間徹

    佐久間委員 続いて保險行政の一般質問をいたします。損害保險会社の代理店未收勘定の増大に関しまして、いかなる対策をおとりになられましたか。この点を御説明願いたいと思います。
  90. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 損害保險会社の代理店に対します掛金未收、代金の回收というものが非常に遅れる傾向にあつたのでございます。これは代理店が契約者から掛金を徴收することが、なかなか困難であるということもございましようし、また代理店がこれを知らず知らずの間に流用いたすようなこともあつたかと思うのであります。しかし申すまでもなく、損害保險会社といたしましては、代金が入つて来ないのに、保險の責任だけを負うということは好ましいことではございません。この代理店に対する掛金未收高というものも相当ふえて参りましたので、これを何とかして取締りたいと考えたのでございますが、昨年の冬に通牒を出しまして、原則といたしまして代金の入つておらないものは保險契約を成立せしめない、こういう措置をとることを指令いたしたのであります。これは大蔵省の通牒といたしまして、各社ともに励行いたすように言明しておるのであります。特に大蔵省と損害保險会社との連名をもつて、新聞広告等をもつて周知徹底せしめておるのであります。これによつて損害保險会社の收益上改善するところも少くないと考えております。     〔委員長退席小山委員長代理着席
  91. 佐久間徹

    佐久間委員 代理店未收勘定の回收について、業務命令を出してこれを強行している。それは万やむを得ない。現況に照し合せて当然であると思いますが、どの程度まで回收することを目標としておるか。この点をひとつ明示されたいのであります。
  92. 長崎正造

    ○長崎説明員 保險会社と代理店との決済は、大体代理店契約書によつて、翌月未決済になつておりますので、理論上から申しますと、一月分の收入保險料が代理店に止つてよいわけであります。しかしいろいろな点で、急速にこれを行いますのは無理かとも思いますので、二月くらいのところでとめたい。そこの点まで改善したいということでやつております。昨年の暮れごろは、三箇月から、ひどいのになると四箇月くらいに上つておる会社もありました。
  93. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいまの御説明ではつきりいたしました。続いて本法における外国保險会社の状況を御説明いただきたいと思います。
  94. 長崎正造

    ○長崎説明員 従来連合国関係者、または輸出入積荷の外貨建を行う外国保險会社というものが、司令部の免許で進出しておつたわけでありますが、昨年の七月以降、これは全部外国保險業者に関する法律で、日本政府の免許を受けなければならないということになつておりまして、現在日本政府が免許を行つた会社は、外国の損害保險会社三十二社、生命保險会社一社、なお申請中のものが生命保險会社三社があるという状況でございます。これらは主として連合国関係、あるいは輸出入積荷の外貨建保險契約、あるいは日本保險会社との再保險取引に当つておるわけでありまして、火災保險とかそういつた円建契約の面で、そう日本保險会社と競合しておる点はないわけであります。ただ海上の積荷保險、つまり輸出入積荷の保險の面では、相当競争が行われておりまして、また将来日本人契約に対する進出も予想されるので、日本保險会社と公平の條件で監督をいたしまして、日本保險事業の健全な発達に資するように持つて行きたい、かように考えておるわけであります。
  95. 佐久間徹

    佐久間委員 次に戰争保險の対策について御所見を承りたいと思います。
  96. 長崎正造

    ○長崎説明員 戰争保險のことでありますが、海上の戰争保險につきましては、これは保險会社一般の海上保險証券で、現在すでに戰争保險の担保をいたしておるわけであります。しかしながら金額の非常に大きな船とか、輸出入積荷で金額の多いものにつきましては、再保險の消化が困難であるということがありますので、現在政府と東亜火災海上再保險会社との間に締結されております再保險の特約の中に、戰争危險を包含せしめることによりまして、金額の非常に大きな戰争保險の引受があるときには、今の機構を通じて政府で再保險ができるというふうに改善いたしまして、海上の戰争保險の円滑を確保するような措置が講ぜられております。
  97. 佐久間徹

    佐久間委員 非常に事態が悪化しつつある際、その配慮は適切であると思うのであります。続いてお尋ねしたいことは、損害保險会社の行う共同保險、再保險プール等の協定について、独禁法事業者団体法適用を排除して、保險事業監督の責任を明確にする必要があると思うが、御所見を承りたいと存じます。
  98. 長崎正造

    ○長崎説明員 損害保險事業においては、危險の平均化をはかつたり、あるいは経費の節約をはかるという意味合いから、保險契約の共同引受あるいは再保險プールということが必要とされるわけであります。それでこれが独禁法事業者団体法のもとに、あまり嚴密な適用を受けて参りますと、かえつて保險事業経営能率を害するというような点がありますので、かねがね私どもとしましては、保險業法独禁法との調節をはかる必要があると考えておりますから、最近の機会におきまして、その方向で一面においては独禁法の精神を尊重するとともに、合理的な共同引受行為というようなものについては、そういつた法律適用を排除し、保險業法一本で監督できるようにするということで目下研究中であります。
  99. 佐久間徹

    佐久間委員 午前中にこの点に関しては公正取引委員会の責任者の出席を求めて、こまかく私から質問もし要望もして参つたのでありますが、これは非常に重大な問題でありまして、業者の健全な発展のためには、どうしても一本化するということを考えてもらわなければならぬのであります。その意味からいたしまして、将来政府当局におきましても、ことに監督立場にある大蔵省保險課といたしましては、十分腹をきめて折衝をして、そういう方向に進んでもらいたいと思います。  さらにお尋ねしたいのは、保險料率算出団体の算出した料率を、各社に遵守せしめるように規定する必要があると思う。これは健全経営の建前からこの点を痛感する次第でありますが、御所見を承りたいと思います。
  100. 長崎正造

    ○長崎説明員 損害保險料率につきましては、現在損害保險料率算出団体という団体がありまして、いろいろな資料を集めて適切な料率算出に努めておるわけでありますが、これを規定している法律によりますと、現在その料承算出団体の出した料率には拘束力がないということになつております。しかしながらこの料率団体制度を一層権威あらしめるためには、一面において料率団体の算出した料率を大蔵大臣の認可にかける。同時に大蔵大臣の認可を受けて料率団体の定めた料率は、会員が遵守するという方向に持つて行くことが必要であると考えられますので、目下そういうような線で公正取引委員会の方に折衝を進めているような状況であります。なおもちろんそういうような制度をとります以上、少数者の異議申立請求権、あるいは特殊な事情のある会社については、特別の保險料率を使つていいというような制度もあわせ行つて、全体としてこの料率算出団体というものを、大蔵大臣の監督のもとに適切な料率を算出するようた方向に持つて行く必要があると考えております。
  101. 佐久間徹

    佐久間委員 最近類似保險の続出に際しまして、監督立場にある政府の今後の方針を伺いたいのであります。その一点は、小規模のものは保險業法の規定によらないで、共済的方法をとつておるのであるが、いずれも健全なものとは言いがたい。従つて将来に禍根を残すものと思うが、この取締りについては政府に確信があるのかどうか。この点を伺いたい。
  102. 長崎正造

    ○長崎説明員 類似保險の問題でありますが、実は保險業法で、保險事業は免許を受けなければ行つてはならないということになつておりますが、保險事業でないものについてはその間の規定が欠けておるわけであります。従いまして共済というような形で保險類似の事業を行うものがあるわけでありますが、これが保險事業か共済事業であるかということは、非常に判定が困難であるわけであります。他面ある程度組合的な組織で保險類似の仕事をやつて行くということの社会的な要請も、無視することができない面もあるのであります。結局今後の問題といたしましては、一面において保險組合というものを認めてそのような要請に沿うとともに、他面保險事業とそうでないものとの、保險事業の定義というものを明確にいたしまして、類似保險の横行を取締るということが、一般大衆の利益に沿うゆえんではないかという方向で、目下研究中であります。
  103. 佐久間徹

    佐久間委員 保險は由来入りやすく行うにかたしといわれておるのであります。従つてしろうと考えで入りやすいだけに、しかも保險料に魅力があると見えまして、各方面で計画しておるのであります。地方自治体とかあるいは協同組合とかで、民営の形はとつておりますが、実質的には公営保險と異ならない保險類似事業を行う準備を進めておるのであります。これが取締りに事欠くようであつては、経済上の混乱を来すばかりでなく、民業の圧迫ともなり、事業の健全な発達を阻害すると思うが、御所見はいかがでありましようか
  104. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 損害保險会社は戰前四十社くらいありましたが、現在は、最近免許をいたしましたものを加えて二十社くらいであります。その反面外国保險会社は、戰前は二十二、三社でありましたものが三十一社になつております。まずお尋ねの点につきましては、この上損害保險会社を免許する余地があるかどうかという点になると思うのであります。政府といたしましては、現存の保險会社だけに営業を認め、これ以上は免許しないという方針をとつておるわけではございません。しかし損害保險会社はその営む業務から見まして、非常に公益性の強いものでありますから、これを嚴選しなければならないことは申すまでもございません。従つて免許にあたりましては、資本の充実とかあるいは営業基盤の確立とか、特に損害保險につきましては再保の前借りということについて、確たる見通しをとつておかなければならないのでございます。この点はあらためて御説明申し上げるまでもないと思うのでありますが、こういうふうな営業面におけるいろいろな注意すべき点がございます。さらにただいま御指摘になりましたような公共団体等が実施をいたしまして、民間保險会社をつくることにつきましては、現内閣の方針といたしまして、民業は民業として十分これを伸長せしめて行く。ただどうしても民業でできないところについてのみ、国の力あるいは公共団体の力で、これを補つて行くという建前をとつておるのでございます。この意味におきまして、公共団体等が、單に民間にまかしておいて十分事足りる場合に、その分野に出て行くということにつきましては、これは認めない方針であるわけでございます。特にこの公共団体等が計画いたします損害保險会社につきましては、こういうような政策的の問題のほかに、冒頭に申し上げましたように、営業基盤の問題、すなわち損害保險会社にありましては、十分に損失の危險分散ができなければならないというような技術的な問題がございます。これと関連いたしまして、再保險の見通しというようなことかございます。これらにつきまして、事務的にも十分存続し得る会社でなければ、これを認めることはできないと考えております。
  105. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいまの御説明の中に、戰前におきましては保險会社が四十八社、現在約二十社に圧縮されておるような話でありましたが、その裏面にはまだ余裕があるかのようにちよつと受取れたのであります。戰前の保險会社の四十八社も、おおむねこれを見ますと、同系いわゆる資本系統を同じうしておるのが多いのでありまして、これらが一つのもとに圧縮された、こういうぐあいに解釈される姿であつたのであります。従いまして数が減つて圧縮されたが、力はある程度一本になつて経営体が強化されたというようなぐあいに見たいのであります。しかし経済上の情勢が非常に急激な変化を来しておりますので、保險会社もこのらち外にあり得ないで、この混乱の中に巻き込まれて、戰時中非常な損失を受け、さらにまた戰後の消防機関その他の弱体化によりまして、損害をこうむつておることは事実でありまして、今のままこれを放置して参りますことは、非常な危險があるというくらいにまで考えられておるのであります。その点に関しましては相当政府におきましても、この公共性ある事業、しかも国際性を多分に持つ事業を育成し、強化するという方針に考えていただかないと、さなきだに外国保險会社が三十何社も日本に出ようとして出ておるのでありますから、結局はそういうものに太刀打ちができないで、ころんでしまうのじやないかというようなことも考えられるのであります、一段とひとつその点に関しまして監督立場にある政府が留意していただきたいと思うのであります。私は現在の大蔵省の、いわゆる政府の監督制度では、今後多岐にならんとする各種保險取締る上においても、また指導し育成して行く上においても十分ではない。従つてもつと監督機関あるいは指導機関というべき現在の保險課を、保險庁または保險局というようなものに昇格せしめて、もう少し力を持たせると同時に、整備強化する必要があるように考えられるのでありますが、その点に関しては、この前も私が質問したのでありますけれども、明確な御回答を得られなかつたので、さらに重ねてその点をひとつお聞かせ願いたいのであります。
  106. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 ただいまの前半の御意見につきましては、政府といたしましてもまつたく御同感でございます。私が損害保險会社の社数を戰前と比較して申し上げましたのは、何も今後まだ新規会社設立の必要があるという意味で申し上げたのではございません。單に数字を比較いたしたのでございまして、社数は減りましたが、その内容につきましては、御指摘のごとき変化があることはその通りでございます。損害保險会社は、先ほどお話に出ましたような代金未收に現在苦しんでいる。これも事業界あるいは個人におきまして損害保險に当然入るべき場合であつても、なかなか入る余裕がないということに帰着するわけでございます。損害保險会社の経理としても、なかなか苦しい面があるわけであります。そういう場合に新規免許を引続いて行つて行くというような気持は、持つておらないのでございます。  それから損害保險、生命保險を通じまして、現在保險業界にはいろいろな問題がございまして、監督官庁といたしましてもこれらの問題を解決し、また監督を嚴重にして行かなければならぬ面が多々あるのでございまして、現在の大蔵省保險課の陣容をもつていたしましては、手がまわりかねる面がありまして、この点は恐縮に存じている次第であります。戰前商工省にありましたころには、ずいぶん厖大な機構を持つてつた。その昔に返せとは言わぬまでも、保險課の陣容拡張ということにつきましては、私ら当面の責任者といたしまして、特にその必要を痛感しているところでございますが、予算編成のときにあたりまして、どうも大蔵省は卒先して人員の増加というものを主張できない。また私どもといたしましては、それを主張いたしましても、予算当局でまず各省に範を示す意味において、これが査定をされるのでありまして、今日まで監督機構の拡充を見ておらぬことは、はなはだ私どもとしては遺憾にたえないところであります。今後機会あるごとにこの機構の拡充、従つて機能の強化ということに努力いたしたいと考えております。
  107. 佐久間徹

    佐久間委員 次に住宅金融公庫法の一部改正法案中に、災害補償納付金制度を設くるやに聞いているのでありますが、この点に関しましてお尋ねしたいのは、名称は災害補償納付金制度でありますが、その行うところは随時保險であります。従つて制度の実施は、将来民営保險事業と同一の事業分野において、中央または地方政府機関が、官営または公営保險事業を行おうとする計画や機運を、刺激する先例を開くことになるおそれがないかどうか。さらに政府は民営保險事業に対して、これと競争関係に立つ官営ないし公営保險事業を創設し、民営の保險事業の営業に干渉を行う考えを持つているのかどうか。さらにまた将来官公営保險事業の進出によつて、民営の保險事業の全部または一部を、国営化ないし公営化しようとする意図を持つているかどうか。この三点についてお尋ねしたいと思います。
  108. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 住宅金融公庫法を改正いたしまして、災害補償納付金制度を取入れることにつきましては、目下研究中でございます。またこれをぜひ実施しなければならぬという結論を得ておりませんので、同法の改正案も提案になつておらぬ次第でございます。しかし御質問もございましたので、この問題に対します当局の考え方を申し上げておきたいと思います。この問題は大体住宅金融公庫が家を建てる金を貸す、住宅抵当貸付をするわけでありますが、こういう際には当該物件を火災保險に加入せしめまして、これを担保にとるということは、経済界において行われておることでございます。そこで住宅金融公庫の場合にも、これをいたしたいのでありますが、元来住宅金融公庫から金を借りておる人は、乏しい中にも金を借りて家を建てようという人でございまして、火災保險に入るというようなことは、あまり気が進まない。なるほど第一年度においては、無理をしても火災保險に入りまして、金を借りるのでありますが、次年度以降については、とうていその火災保險料を支拂う余力がないと称しまして、これに入つて来ない傾向があるのでございます。一面住宅金融公庫と申しますか、あるいはこれに出資しております政府の財政の立場におきましては、もしそれらの住宅が災害にあいまして、貸金が回收不能になる。その見返りとして火災保險金も受取ることができないということになりましては、国庫にまるまる損をかけることになりますので、資金借入者には、何かごく軽微な形におきまして、実質的に保險に入つたと同じような効果を收めたいという要望があつたのでございまして、その問題といたしましては、まことに無理からぬことと考えるのでございます。そこで災害補償納付金という制度にいたしまして、一定のごく軽微な納付金を納入せしめまして、災害がありました場合には、その積立金で国庫に対する損失を補填して行くということは、国庫の立場としてやむを得ないところであろうと存じております。この制度考えるにあたりまして、私どもとして非常に苦心いたしましたことは、これが民間保險会社に対する圧迫にならぬかということであります。そこで名称もかえましたのみならず、その仕組みも、損害保險の形をできるだけ遠ざかるように仕組んであるわけでございます。大体住宅金融公庫から金を借りまして家を建てますと、長い将来には、その家は資金借入者の所有になるのでございますから、こういうふうに借入れの限度において災害補償納付金を納めさせる。借入金が返済されて行くに従つて、その納付金も減つて参ります。その半面だんだんと自己の所有に移つて参るのでありますから、資金借入者としてはぜひとも火災保險に入らなければならぬし、入る意欲も出て参るのでございます。こんなような意味におきまして、決して民間火災保險の圧迫にはならぬと考えております。政府の配意はこういうようなことでございまして、将来損害保險事業を公営にするというような考えは、もちろん持つておらないところでございます。
  109. 佐久間徹

    佐久間委員 では重ねて質問いたしますが、政府は官営あるいは公営保險事業を創設し、またはこれを認めて民営保險事業の営業に干渉しようとする考えはない、こう解釈してよろしいか。同時にまた官営または公営事業を認めようとする意図は持つていない、こういうぐあいに解釈してよろしゆうございますか。
  110. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 この点は、先ほども申し上げましたように、現内閣の方針といたしまして、そういう事業はすべて民間事業として奨励もし、助長もして行くわけでございます。万やむを得ないときには、たとえば戰争保險その他のような場合に、民間保險では背負い切れないものがありましたときには、政府といたしましてこれを補完するということはいたしますが、政府事業あるいは公営事業を、不必要に民間事業界に進出せしむるということは、考えておらないのでございます。
  111. 佐久間徹

    佐久間委員 次にお尋ねしたいのは、東京都が母体となつて計画中の火災保險相互会社新設のことについてお尋ねしたい。自治体が都民から徴收したところの税金をもちまして、起伏の多い損害保險事業のごときものを経営することは、私は好ましくないと考えるのでありますが、政府はどういうお考えをお持ちになつておられるか伺いたい。
  112. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 東京都から若干の出資をいたしまして、損害保險会社を設立したいという申請の出ていることは事実でございます。形は公営と言い切れますかどうですか、とにかく都が出資いたしまして、形は民間人が経営するわけでございます。この問題につきましては、目下いろいろの材料から審議中でございますので、結論を申し上げることはこの際差控えたいと存じますが、審議の過程において問題となつておる点を申し上げますれば、この保險会社保險の対象とする物件は、東京都内にのみ存在するということになるのでございます。こういたしますと保險損害の分散ということにつきまして、十分の分散がなされるかどうか、これに多大の疑問がございます。それでこの保險会社は再保をとりまして、危險分散をしなければならないことになるのでありますが、それにつきましては現在のところ民間のほかの損害保險会社との間に、再保に対する特約がどれだけできるかということについて、まだ見通しができておりません。私どもはある程度の再保の特約ができる見込みができませんと、この会社は将来危險負担に耐えて行けないのではないかというふうに考えておる次第でございます。  次に公営か私営かという根本問題につきましては、先ほどから申し上げておるのでございますが、これは保險事業の内容の審査ということは別になりますけれども、現在財政に非常に苦しんでおる。資金があればたとえば水道施設の改善とか、あるいは六・三制に伴う校舎の新築とか、財源が幾らあつても足りないといつたような財政下において、こういうようないわば利益を捻出することを目的とする会社に出費することについては、相当研究を要するのではないかと思うのでございますが、ただこれは保險事業申請の内容の問題ではないかもしれません。それから大体そういうようなことが一応問題となり得ると思うのでありまして、なおこの会社特有の目的としてうたつておりますことに、この会社が利益を上げましたならば、たとえば消防施設の改善とか、そういうような一定の目的のために使いたいということもうたつてあるのでございます。しかし私どもはその点については相当疑問を持つておるわけであります。利益がありますれば保險料率の引下げとか、そういうことに使わなければなるまい。また火災保險料もどの会社も一律に引下げを慫慂しておるのでございますので、それほどの利益をあげ得るかどうか。これについて多大の疑問を持つております。審議の途中でございますので、結論は出ておりませんけれども、私どもの問題としておる点を御紹介した次第でございます。
  113. 佐久間徹

    佐久間委員 ただいまの御説明は、技術の面からお考えを述べられたのでありますが、その点には私も同感であります。しかし根本といたしまして、その経営者がその特殊の地位を利用して、民営事業競争をいどむようなことをするということが、自由主義経済体制下で許さるべきことであるかどうか。この点が問題だと思うのであります。これに対して政府はどういうお考えを持つておられるか、お聞きしたいと思います。
  114. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 ただいま申請になつております会社の形態は、地方自治団体の出資はございますが、一応形は民間の会社になるかと考えます。しかしその裏に相当強い公的な背景があるということも申せるかと思います。これらを深く論ずることは差控えたいと存じますが、先ほど来再三申し上げました現内閣の方針というものから申しますと、いささかおかしなものであろうと考えておる次第であります。
  115. 佐久間徹

    佐久間委員 その点はよくわかりました。なお監督権の強化拡充、こういうことについては、特に業者からも陳情の書類が出ておるわけであります。この点をわれわれも推進して参りたいと実は思つておるのであります。今後ひとつ十分御研究を願つて、早急に実現して、安心して業務が営まれるような強力なものをお持ちになつて、指導育成に專念せられるように、特にお願い申し上げまして、私の質問を終ります。
  116. 竹村奈良一

    ○竹村委員 この際一、二点だけ伺つておきたいのですが、たとえば農村における農業協同組合等が、火災保險事業等を行いたいというような希望があつた場合におきましては、政府はどういうふうな取扱いをなさるか。その点をお聞きしたい。
  117. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 農業協同組合はその行為能力から見て、そういうものは行えないのではないかと考えます。
  118. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それではもう一つお聞きしておきたいのですが、たとえば農業共済保險組合のやつておりますところの損害火災保險等の最高契約金は十万円だつたと思いますが、そういうふうに押えられた根拠は一体どうなんですか。
  119. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 農業災害共済保險は、これは国の特別会計で行つておる特殊の保險でございますが、それをおさしになつておるのでしようか。
  120. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それはもちろんその通りでございますが、その農業災害共済組合が今度火災保險を扱うようになつたのでしよう。農家一戸当り十万円以内の火災保險としてやつておるはずなんです。あるいは災害補償とか何とかで、その点は十万円だつたと思いますが、十万円に押えられた根拠を伺いたい。
  121. 長崎正造

    ○長崎説明員 お尋ねの点は、おそらく農業災害補償法に基く農業共済組合が農業用の建物について任意共済ができる。その任意共済のうちに火災損害も入つておる。火災損害担保の制度も入つておる。その点かと思いますが、その金額につきましては危險の平均化をはかるという意味合いから、ある程度押える必要がある。それからなお民営事業との調節をはかる。この両面の必要から、農林省においてさような制限を設けて運用しておる、こういうふうに考えます。
  122. 竹村奈良一

    ○竹村委員 それを最高十万円で押えられたのでは、現在の経済事情からして合わないのではないか。農家の損害にしても、また災害にいたしましても、少くとも今日では最高十万円では実際その目的を達することができない。だからこれを少くとも二十万円以上に拡大するような、いわゆる最高限度を上げるような考えはないかどうか。この辺だけを伺つておきます。
  123. 長崎正造

    ○長崎説明員 それは先ほど申し上げましたように、結局危險の平均化というような点からいいまして、再保險制度のない事業体におきましては、やはり十万円程度で現在のところは押えておく方が、平均がとれて事業の安全がはかられるのではないかというふうに、一応考えられるわけであります。
  124. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 たつた一点ちよつと伺つておきますが、第八国会で、木造船の保險が、一般保險の対象にならないということで除外されまして、特別な保險制度ができておつたのですが、ごく最近いろいろなところから情報を持つて参りますと、大体保險をつけない船舶が多くて、沈没の結果大損害を来すものが相当あります。その後どういう経営状態になつておりますか。その辺をちよつと伺います。
  125. 長崎正造

    ○長崎説明員 木船の保險につきましては、この前の国会で成立いたしました船主相互保險組合法というのによりまして、木船保險の所有者が相互に保險し合う組合の設立が認められることになり、それに基きまして、現在申請中のものが二組合ございます。その一つは、若松に本部を予定しております。木船保險組合は主として瀬戸内海、北九州の方の木船を対象として行うもの、もう一つは東京に本拠を置きまして、船会社、個人業者でなく、全国の相当大きな会社の持つておる木船を対象とするもの、この二つのものが目下設立の認可を申請中でございますから、大体四月ごろから二つの組合が発足して、木船保險事業というものが支障なく行われると考えております。
  126. 高間松吉

    ○高間委員 二、三点お伺いしたいのですが、乘りかえ募集ということが最近行われているようですが、これは完全に満期になつた場合に延期になるものですか。
  127. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 乗りかえ募集と申しますのは、すでに保險に入つておりますのを解約せしめまして、さらに新しい保險に入らすことでございます。前の契約が解約せられまして、加入者には解約返戻金がもどされますが、それは掛け込んだ金額からいろいろなものが差引かれまして、ごく少い金額になる。この乘りかえ募集というものが行われますのは、結局募集員が新規契約を獲得いたしますと、そこで新規契約手数料というものが入る。それだから保險加入者の利益というようなものを考えずに、つまり次から次へ新しい契約を進めて行く。そのために掛金がないと言えば前の契約を解約なさい。そうすればその解約返戻金が幾らか入りますから、これで新しい保險に入りなさい。こうして勧めるのであります。
  128. 高間松吉

    ○高間委員 それで大体わかりましたが、戰争後に金融機関再建整備法という法律つたか、よく覚えておりませんが、生命保険を一万円で全部きまりをつけてしまつたことがあるのです。その後の生命保險会社の状態、あるいはその後の金は返つて来るのか来ないのか。その辺のことを政府はどういうふうな処置をしておるのか、それが一つ。それからもう一つ、戰争に出た者が三千円ならば無診査で、生命保険が出征したあとにもつけられるという保險があつたことがあります。それを一年くらいやつておりますと、次に他の会社の勧誘員が来まして、今度は三千円が一万円になつたのだが、無診査でも入れるということを盛んにとなえて、一万円限度の生命保險を無診査でつけさせたのが地方にたくさんあります。それは勧誘員の話術によつてしてやられたのだからしかたがありませんけれども、その保險は、一万円のは無診査の保險はなかつたのだから、それは戰死しても返すことはできないということで、一万円は返さないでもやむを得ませんが、しかし掛金も返さない。これは実に不当だと私は思うのです。その被保險者はたいてい戰死した者に限られております。この点大蔵省の方ではどういうふうに生命保險会社に向つて処置しておりますか。ひとつお伺いしておきたい。
  129. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 戰前の生命保險契約で一万円を越える部分は、保險会社の再建整備のときにたな上げになつており、その最終的決定は、実は保險会社には調整勘定というものがございまして、一万円までは政府補償をいたしてまでも保險金を支拂つたのでございますが、一万円を越える部分につきましては、調整勘定の最終的解決のときまで、まだ未解決のままで置いてある現状でございます。それから三千円を越える部分につきましては、古いことで私承知いたしておりませんので、説明員から御説明申し上げます。
  130. 長崎正造

    ○長崎説明員 ただいまのお話は多分こういうことだと思うのでございます。この無診査保險の限度というものが一万円まで上つたというときに、そういう新しい保險ができたからといつて、従来の保險を解約させて、それに乘りかえさせる。こういうことであつたかと思うのでありますが、結局それは募集員が非常に契約者を迷わせるような話法で、そういつたようなことをいたしたわけで、こういうようなことは、ことに戰後保險会社が小口契約の整理というために、大口契約をとるという状況において盛んに行われて、保險の信用を著しく傷つけた。また放置できない状況になつて来て、そこでこの保險募集取締りに関する法律というものができまして、登録とそれから不正募集行為の取締りを、この法律によつて行うということになつたわけであります。この法律によりまして不正な悪質な募集員というものに対しましては、業務の停止とか、あるいは登録の取消しとかいうようなことを行い、また一面数百名に上る不良社員のブラック・リストを作成して各社に配付する。あるいは悪質募集の実態を新聞、ラジオで発表して一般の啓蒙をするというようなことで、最近ではだんだん是正されて来たわけであります。要はこの外務員の素質の向上ということに帰着するので、なお保險会社の方にも嚴重に外務員の監督ということをするように、申し渡しておるわけであります。なおいろいろ契約者から出ます苦情につきましては、大蔵省においても契約者、保險会社との双方の言い分を聞き、保險会社のあるいは保險会社の外務員の非であるものにつきましては、契約を解除させて、そうして既拂いの保險料を返還させるというような処置をとつて、契約者の保護に努めておるような次第でございます。
  131. 高間松吉

    ○高間委員 銀行局長にもう一度お伺いしたいのですが、その最終決定ということは、最終といいましても、十年たつても二十年たつても最終ですからわかりませんが、大蔵省の方では何らそのことについての処置はしておらないのですか。今その過程にあるのですか。
  132. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 保險会社にとどまりませんで、銀行にも調整勘定というのがあるのでございます。これは早く結末をつけたいと思つておるのですが、金融機関が持つております対外債権債務、たとえば外地の特殊会社の社債とか株式とかいつたようなものが入つて来るわけですが、この結末がつきませんことには、調整勘定の最終の締切りができないわけです。そうしますと、外地に対しまする債権債務の関係はいつ片がつくかという問題になりますが、どうも講和條約によりまして最終的にきめられるまでは、いかんともしがたいのではないかというふうに考えておるのでございます。早く結末をつけたい気持は持つておるのでありますが、そういうことから処置が遅れているようなわけであります。
  133. 高間松吉

    ○高間委員 課長さんに今のお話の続きをお伺いしたいのですが、一万円の保險に引上げたときに、それは今課長さんもおつしやる通り、話術にかかつたのだからしかたがないが、その保險の掛金を拂わないでいるのですから、大蔵省の方ではこれに対して何らかの処置をとるおつもりはありませんでしようか、どうでしようか。
  134. 長崎正造

    ○長崎説明員 それは詐術的方法によつて意思に反した契約をしたという場合につきましては、苦情を受付けまして、その実情を調査いたしまして、不当なものについては保險契約を解約させて、保強料を契約者にお返しするというような処置をとつております。
  135. 高間松吉

    ○高間委員 そのことは、あなたのおつしやることはよくわかるのですけれども大蔵省でそういう苦情相談を受付けられても、日本全国でそういうような、保險掛金も五百円か、せいぜい一千円未満のものですから、何らそういう方法を知らない。ただ泣くだけなのであります。その掛金もとれない。三千円であれば無診査でも、みな戰死したのであるから保險金はとれたのです。それが保險金が一万円であるからそういう規則はないと称して、一万円くれないのは当然なのでありますが、しかしあとの自分のふところから出した掛金も返さない。大蔵省ではそれを言つて来れば処置しますといつても、そういうようなことは、日本全国のそういつた話術にかかつた契約者は知り得ないのであります。その点を大蔵省の方から、保險会社は拂つてやれとか、あるいは急速に処置してやれというようなことを——指令とは申しませんけれども、処置してやることが私は当然だと思うのです。その点ひとつ保險課長の御意思を承りたいと思います。
  136. 長崎正造

    ○長崎説明員 そういうような事例につきましては、検査等によつて保險金の支拂いが適切に行われているかどうか、常に調べておるわけでありますが、なお一般的な通牒によりまして、そのような解約保險掛金の返還をしないもの、あるいは不当に保險金の支拂いをしないものについては、さらに注意をいたしたいと思います。そして支拂い漏れとなつているようなものについては、これを整理するように指示いたしたい、かように考えます。
  137. 高間松吉

    ○高間委員 そこで問題になつて来るのは、保險の掛金は、第一回ならば返さないという保險会社の方の規則があるそうですが、一回の掛金では返さないんだ、こういうふうな保險業法をたてにとつて、哀れな保險の契約者を泣かしているのがたくさんあるんです。だから、ただここでおざなりな答弁でなしに、切実に自分のふところから出た金だと思つて処理していただきたいということを、私は大蔵省にお願いするのです。
  138. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 不正な話術で契約をとりました場合に、その不正であるという事実がはつきりしましたものは、契約を取消させまして、掛込み保險料も拂いもどさしております。それにつきましては、大蔵省の苦情処理の係まで、具体的な例を持つてお申出いただかなければならないのでございます。ただいま問題となつておりますのは、戰時中の不正なる勧誘方法によつて勧誘したものということになります。これは今から考えますと、保險の金額も少い。もつともそういうことを問題にされる方でありますれば、小さい金額のことが問題になるわけであります。こういうことは十分わかつていますけれども、そういうことであまりお申出がないかと存じます。具体的な事例によりましては、何らか救済方法を大蔵省が会社との間に立ちまして、あつせんいたしたいと思つております。最近では不正な募集によりましたものは取消さして、掛金も返さしております。
  139. 高間松吉

    ○高間委員 銀行局長のおつしやることもよくわかる。郵便貯金の五十銭残つているのと同じであります。ここまで来れば話しますが、私自身がそういう目に会つた。野村生命で、とにかく三千円のが今度一万円に増額されたのであるから——身体検査はしたかしないかわからないけれども、入つてくれというので入つた。私の長男は戰死しましたが、一万円のならとれるんだというからとりに行つた。ところが四の五のいつてどうしても拂わない。いまだに掛金さえ拂わないから、保險の勧誘員が来るたびにその話をする。私だけのことならば別に問題はないのですが、あつちこつち聞いてみると、たくさんそういうふうな事例があります。しかし、わずかなことで大蔵省の相談所まで来れば、汽車賃だけで終えてしまうのです。そこで何とか一般のそういつた哀れな契約者に知らしめる方法を講じていただきたいのが、私のお願いなんです。
  140. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 お話によりまして大体そういう事態もあるかと思います。私ども気持といたしましてはただいま申しましたように、最近の事例につきましては問題を取上げまして、会社にお灸をすえる意味においても解約を励行させております。ただ戰時中及び戰後の混乱時代と申しますか、そういう時代のことにつきましても方針は同じ方針をとつてよいと思いますが、数も多いし、そういう古いことを洗い立ててもきりがないのではないか、收拾がつかぬじやないかということも考えられます。と申しましても、私はそのこと自体がよかつたのであるということは決して申し上げません。救済を要する事態は救済しなければならぬと思いますが、大分古いことにもなりますから、それはさしあたつての問題にはせず、最近の事例については保險会社の不正勧誘ということは十分取締る。そのためには会社にはやや痛いことでありますけれども、契約を取消さすという手段をとつております。
  141. 高間松吉

    ○高間委員 局長さんのお答えはよくわかりますが、私が申し上げることは、大きいことならばそんなに大とた問題はないのであります。零細なことでありますから、何らかの方法を講じていただきたいということを私は申し上げておるのでありまして、古いことであるからいいじやないかというような、そういうお気持は私はほんとうに不可解なのであります。それは一人一二人のことではないのであります。保險会社は何百万の金をかけて印刷して、いろいろの保險を募集しておるような事業でありますから、何らかの方法を講ずれば、そういう零細なところへ手紙一本でもつて返してやれるような方法が講ぜられはしないか。その点を何とか考えていただきまして、そういう事例がお前の言う通りないじやないかという御議論ならば、私も一生懸命そういうふうな被害者を探し出します。幾らでもある。だから、そこのところを何とか——零細なものではありますけれども先ほど申し上げる通り、郵便貯金の五十銭残つている金と同じでありますが、保險会社のためにもなるし、またそれは戰死者に多いのですから、そこのところを銀行局長さんの方でも考慮していただきたい、こういうふうにお願いして、私の質問を終ります。
  142. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 私も古いことであるから、あるいは金額が小さいことであるからどうでもいいじやないかという気持は、全然ないのでございます。先ほど申しましたかと思いますが、そういう小さい問題をあえて問題にしなければならぬような人こそ、同情すべき事情が多々あるのじやないかというふうに考えるのでございます。なおお示しの問題につきましては、最近の事例がどうなつているかということも、ひとつ調べてみたいと考えております。
  143. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 動議を提出します。ただいま議題となつておりまする保險募集取締に関する法律の一部を改正する法律案につきましては、すでに午前午後を通じまして、質疑も盡されたと思いますので、この際本案につきましては、質疑を打切られんことを望みます。
  144. 小山長規

    小山委員長代理 三宅君の動議に御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  145. 小山長規

    小山委員長代理 御異議がないようでありますから、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時十九分散会