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1951-03-06 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月六日(火曜日)     午前十一時十四分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君    理事 天野  久君       大上  司君    川野 芳滿君       佐久間 徹君    島村 一郎君       清水 逸平君    苫米地英俊君       三宅 則義君    水田三喜男君       宮幡  靖君    内藤 友明君       宮腰 喜助君    竹村奈良一君       深澤 義守君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      佐藤 一郎君         国税庁長官   高橋  衞君         通商産業事務官         (大臣官房会計         課長)     伊藤 繁樹君  委員外出席者         通商産業事務官         (通商局物資調         整課長)    榊原 二郎君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ————————————— 三月五日  資金運用部特別会計法案内閣提出第七六号)  の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付し事件  徴税問題に関する件小委員長経過報告聴取     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより会議を開きます。  本日は議案の審査に入ります前に、まず食糧配給公団経理調査等に関する小委員長より、同小委員会における審査状況について中間報告を求めたいと存じます。食糧配給公団経理調査等に関する小委員会の小委員長奥村君。
  3. 奧村又十郎

    奧村委員 ただいま議題となりました鉱工品貿易公団に関する小委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  鉱工品貿易公団経理調査等に関しましては、二月六日、さきに設置されました食糧配給公団経理調査等に関する小委員会に併合されて、爾来昨五日に至るまで、小委員会を開くこと四回にわたり、その間通産省振興局経理部長石井由太郎君、同じく通産省監査第一課長馬郡巖君、鉱工品貿易会団総裁斎藤大助君、副総裁仙波健君、総務課長佐藤節夫君、鉱工品貿易公団経理部次長大脇章君等に対しまして、質疑を続行して参つたのであります。  本公団損失金見込みは、保有輸出物資及び国産資材売買差損十四億九千百五十七万七千円、売掛金回収不能金九千八百二十七万二千円、不正事件等による被害未収金五千五百二十四万六千円、昭和二十六年度清算経費四千四百九十八万二千円、合計十六億九千七万七千円に達するのでありまして、小委員会におきましては売買差損を生じた理由、売掛金回収不能の原因被害未収金内容及び根拠、その他公団経理の細目にわたりまして詳細な資料を要求して、徹底的にこれが究明を行つたのであります。その結果、売買差損につきましては、当時の貿易事情としてやむを得ずめくら貿易によらざるを得なかつたこと、インフレ期から安定期への経済事情変動等、不可避的な外部条件に左右されざるを得なかつた点に、根本的原因があることが明らかにされたのであります。また売掛金につきましても、ほぼ同様のことが言えるのでありまして、これが回収につきましては、政府として本訴を提起する等、鋭意努力しておることが明らかになつたのであります。被害未収金発生は、まことに遺憾なことでありまして、不在事件発生原因にはいろいろありましようが、要するに公団業務運用及びその経理面に適切を欠いたことに、その原因の一半があるのでありまして、またその根因は公団機構不備にも横たわつているものと察せられるのであります。  以上今日までの審議によりまして、損失金原因は大体判明したのでありまして、御報告申し上げる次第であります。  なお売掛金回収見込みに関連いたしまして、特に自転車関係などの売掛金に関連いたしましては、なお関係各省担当官その他適当な参考人を召喚されまして、さらに本委員会において審議を尽されるよう、委員長に御配慮を要望いたしまして、私の報告を終ることにいたします。
  4. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 参考人のとりはからいは、理事会に諮つて決定するようにいたします。
  5. 奧村又十郎

    奧村委員 さようお願いします。     —————————————
  6. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 奥村君、何か御発言がありますか。
  7. 奧村又十郎

    奧村委員 高橋国税庁長官がお見えでありますので、去る二月末に実施されました確定申告に際しましての国税庁の方の勧告につきまして、二、三お尋ねをいたしたいと思います。  申告納税制度において、確定申告以前にその申告額に関して勧告をせられるということは、今回初めての試みでありまして、これの成行きは、申告納税制度に対して、将来よかれあしかれ相当の影響を生ずるものと思うのであります。そこで勧告をするにつきましては、税務署側において各納税者所得を十分御調査になり、それぞれの資料があろうとは思いますが、しかし一旦勧告をし、つまりお知らせをして、その勧告従つて確定申告納税者が出したとする場合は、その勧告従つた申告に対しては更正決定をするかしないか、これは一番大きな問題と思いますので、その御方針をまずお尋ねいたします。
  8. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいま奥村委員の御説の通り申告納税制度においては、理想的な形になれば、申告期限前に納税者所得調査することは、将来はとりやめたいと考えております。しかしながら従来長年賦課課税制度になれて来ておりまするわが国の現状といたしましては、どうしても事前に相当調査をして、そうして大体この程度所得があると思われるから、ぜひひとつ申告について御協力願いたいという趣旨指導をやらない限り、いい申告を期待するということは、現状においてはなかなか困難であると考えられるのであります。従いまして私といたしましては、今年度は特に申告期限も一箇月延長していただきまして、調査の期間も相当余裕を持ち、また幸いにして二十五年度から取引高税等の仕事もなくなりましたので、ある程度税務官吏にも余裕ができて参りましたから、鋭意調査の充実を期しまして、そうして税務官庁として大体調査をいたしました結果を納税者お知らせをいたしまして、その金額について御意見なり、御質問なりまたは御見解を十分にお聞きしてそうしてもしもそれに御同意ならば、申告をしていただきたいという趣旨のことをいたしたのであります。幸いにして今年度は各納税者の非常な御協力を得まして、今日までの経過を見ますると、昭和二十四年度の場合と比較いたしまして、非常な成績の向上を見ておるのであります。こういうふうないわば相当民主的なと申しますか、このやり方によつて期待以上に納税者の御協力を得られるというように考えておる次第であります。従いまして、そのお知らせについて御同意くださつて申告を出してくださいました方につきましては、今後原則として更正決定をするような考えは持つおりません。
  9. 奧村又十郎

    奧村委員 私どもも現在の状態から、税務行政あるいは納税者納税思想その他の状態から行きまして、勧告という今回の措置はまことにけつこうと思つておるのでありますが、ただ勧告をしてそれによつて確定申告を出された場合は、原則として更正決定をしないというからには、税務当局の方でよほど徹底した所得調査が行われておつて、それに従つておるというその自信確信がなくてはこれはやれぬ。よほど確信があつておやりのことと思いまするから、この点は追究いたしませんが、いずれこの制度によつて税収実額、結果を見た上でお尋ねいたしたいと思うのであります。しかしその次に勧告を受けとつたが、なお勧告に従わずに相当低い価格納税者がみずから申告をした場合、税務署側としては勧告額が正しい所得と見て勧告をした以上は、勧告以下に申告した人に対しては、一応原則として税務署更正決定をせざるを得ないという立場になるのでありますが、その点はいかがでございますか。
  10. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいまの奥村委員勧告という言葉はいかにもきつい感じがいたしますが、私どもはそういうふうなきつい感じでものを処理しているのではないのでありまして、むしろ非常に謙虚な気持で、われわれの調査しましたところではこの程度に出ております。しかしながら何と申しましても、所得について一番知識を持つておられるのは納税者本人でありますから、本人の御説明その他によつて、それが間違つていれば、いつでも私ども考えを改めるという考えを持つているのであります。従いまして、お知らせと申しまするか、税務署調査した事柄について御不満があつたり、または各自でもつて申告なさらない場合におきましても、必ずしも更正決定をするというふうには考えておりません。ただその中で調査をしました内容にも、非常に精密な調査ができた方の場合と、相当推定部分を入れてその調査額算定しております場合と、その調査の質においていろいろ段階があるのであります。しかして相当調査ができており、それが真相に近いと思われるものにつきましては、その期待された金額申告額が達しない場合におきましては、更正決定をいたしたいと考えますが、その点についてなお調査を要するものも相当あろうかと思うのであります。従いまして、年度内にそれらの残つた人について全部更正決定をするというふうなやり方はしませんで、調査について、ある程度と申しますか、相当真相に近いと認められるものについては、この際できるだけすみやかに更正決定をいたして、しからざるものにつきましては、もう一度調査をいたしまして、その調査の結果によつて年度が過ぎてからでもぼつぼつと更正決定をして行く、こういうふうにいたしたいと考えている次第であります。
  11. 奧村又十郎

    奧村委員 そういたしますと、勧告よりも低い所得申告した場合でも、必ずしも更正決定をなさらない。更正決定の場合は今回は従来のような推定決定するのじやない。全部実額更正決定をなさるのかどうか。その点をお尋ねいたします。
  12. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 御承知通り納税者の中には、完全な帳簿を備えてない方もありますので、ある程度推定の入るところの調査にならざるを得ないかと思いますが、推定にいたしましても、その推定根拠を十分に突きとめてやつて行く。いわばそういうふうなものにつきましては、調査自体があるいは不完全であるという場合も考えられますが、もう一度調査をやり直してみて、今までの調査が誤つているならば、われわれの考え方もかえる。そして相当真相に近いと認められる段階至つて、その個々の納税者について更正決定をして行く。従つて今までいたしましたように、年度内に全部更正決定措置を一応終るというふうな考え方はこれからは捨てまして、相当時間がかかりましても、とにかく最終的に必ず公平にやつて行きたいという考え方でやつているのであります。
  13. 奧村又十郎

    奧村委員 それで大体勧告に対して国税庁のお考えはわかりました。勧告というのはあまり強い意味のものではない。それはまことにけつこうでありますが、そういたしますと、私はこういうことが案ぜられると思うのであります。それは将来はともあれ、今回の勧告に対しての税務署のお調べ程度、これは実際お調べになつたの納税者の二、三割でなかろうか、あとの七、八割はやはり推定じやないかというふうに私ども考えておるのであります。たとえば糸へん、金へん関係事業は非常にいいので、三十割増しとかあるいは七割増しというようなことで見当をつけて、税務署はやつておられるのが実情ではないか。そこでその中にはかなり捕捉漏れ所得もあると思う。一応勧告従つた場合は、原則として更正決定をしないというので、案外に勧告の少かつた人は、その勧告によつて更正決定を免れる。今度勧告よりもぐつと少く申告した人に対しても、これまた実額調査して決定をすると、結局今回の措置によつては、税務行政のまだ十分行き届かぬうちは、相当税収が減るのじやないかという不安があるが、この点はどうですか。
  14. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 調査徹底に関しましては、今年は特に調査徹底に留意したのであります。その方法といたしまして、まず九月中に間接資料収集ということをいたしました。これは大体年度内に本年度約四千万件くらいの資料収集をいたしました。各納税者についてある程度取引資料その他の帳簿がはたして正確であるか、売上げについて漏れがないかということを知り得るところの資料を必ず持つて調査に臨むということをいたしたのであります。しこうして調査はその後ずつと引続いて一月末まで鋭意いたしたのでありますが、大体局または地方によつて違いますけれども、たとえば東京局を例にとつてみますと、東京局においては、約七割五分程度の人について調査ができたのであります。しかもその内訳を考えてみますると、ほんとう実額と申しますか、収支の確実な調査のできましたものは約二割ぐらいであります。その他の方につきましては、外形標準でありますとか、大体の売上げであるとか、またはたなおろしの商品の金額であるとかいうふうないろいろな所得の、確実な推定の基礎となるところの事実を調べるということで、これは能率から申しますると、大体一日に三件ないし四件程度調査をするという程度のものになつておりまするが、その程度のものを加えまして、七割五分ということに相なつておるのでございます。その他の方については、現実にそのうちに臨んできたというものはないのであります。これはきわめて少額の所得者が多いのでありまして、簡単な推定にいたしましても、ある程度ほんとうに近いものが得られるというふうに考えておりますので、指導段階におきましては、本年度調査相当徹底して来たと考えておるのであります。もちろんこれをもちまして満足しているのではないのでありまして、二十六年度においてはいま少し充実して行きたいというふうに考えております。  それから先ほど原則としてとお答え申し上げましたのは、もちろん些少の差がありましても、あつたことが事後において調査の結果はつきりいたしましても、更正決定をするようなことはいたしませんが、相当大幅な差があるということが発見できました場合においては、しこうしてそれが調査した際に隠された帳簿によつて行われておるというふうな場合におきましては、これは明らかに脱税行為でありますので、こういうのは追究して行きたいというふうな含みをもつて、お答え申し上げた次第であります。
  15. 奧村又十郎

    奧村委員 どうもそこが少し微妙な点でありまして、この前大蔵委員会京橋税務署長が参りまして、この勧告に対してお尋ねいたしましたところ、原則として更正決定しないということは、たとえばその所得者業種でなしに、別に家を売つたとか、あるいは株式譲渡所得があつたという場合の隠れた所得はとる。しかし呉服屋なら呉服屋としての所得調べたのであるから、多少所得が出て来てもこれは更正決定をしないということで承つた。それで長官の御答弁によりますと、その調査された業種によつても、隠れておればまた更正決定があるといえば、この勧告というものが納税者によつて非常に信用されないことになります。しかしこれ以上つつ込んで行つても、十分の答弁が承れぬことでありますから、今後の成行きによつてなおあらためて御質問したいと思います。
  16. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいま私が申し上げましたのは、もちろんその他の貸家、貸宅等の別の所得として出て来たものは、これは御申告がなかつた場合においては、それに基いて更正決定いたしますし、またその他の調査したものにつきましても、一応調査をしたからと申しましても、査察対象に全然ならないというものではないということを申し上げたのであります。つまり査察を、一旦調査したからやらないのだという建前ではないのであります。これは調査課調査しましたものと、査察課調査したものとの場合の関係も同じでありまして、調査課でたとい調査しておりましても、その後別の関係、別の資料から、調査課が認めた帳簿が明らかに不正であるということが、十分に証拠をもつて権威づけられるということになれば、やはり査察をいたしまして、公平を期するということに考えておるのであります。
  17. 奧村又十郎

    奧村委員 これはかなり思い切つた答弁を承りましたが、私のお尋ねしたのは税務署長が、つまり同一の官吏所得調査して勧告して、それに従つて確定申告を出した場合は、同一業種相当所得が新たに現われて来ましても、これは査察部対象にはなるが、同じ税務署更正決定対象にはならぬ、こういう意味ですか。
  18. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいまのお尋ね通りであります。
  19. 奧村又十郎

    奧村委員 これはそうであるとすればまことに大胆な今回の試みでありまして、なお税収の実績その他もう少し成行きを見まして、あらためて御質問をいたしたいと思います。  最後に青色申告についてお尋ねをいたします。青色申告を積極的に促進させようという国税庁当局の御態度はよくわかるのでありますが、地方にはその本庁の精神が十分に徹底していないところがあると思うのであります。たとえば四国高松国税局管内では、青色申告が非常に勧められて、納税者の二割以上にも普及しておる税務署管内もある。ところが東北方面のある税務署の話を聞きますと、税務官吏がみずから青色申告を非常にきらつておる。そういうめんどうくさいことは税務署も困ると言わんばかりの取扱いをやつておる。そこで少くとも納税者青色申告を希望して、その許可を申し出る場合に、どの帳簿のどの書き方がまずいから、これをこう訂正しろ、あるいはこの書類が不足するから、こういうぐあいにつけろと、御親切に御説明があつて指導なさるのが当然であるが、頭からめんどうくさいからやめろという官吏があれば、そういう官吏はやめさせなければなりませんが、そこまでは言わずとも、少くとも青色申告について帳簿不備があれば、ここがまずいからこう直しなさいと、なぜそこまでの親切な指導がないかということで、東北地方の一部では、納税者税務署態度に非常に不満を持つておるのであります。これが長官の耳に入つておるかどうか、お伺いいたしますことと、もしそういう事実があるとするならば、長官としてどういうふうに御指導なさるつもりか。今日かなり納税者が進んで来たのにもかかわらず、税務当局が不熱意であるという不満が全国的にかなりあるので、この点をあらためてお尋ねをしておきたいと思います。
  20. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 私の昨年来考えておりますことは、何とかして善良な納税者を見つけ出してそうして信頼申し上げたい。そういうことによつて納税者政府との間の関係を、円滑にして行きたいということが私の考えであります。しこうして青色申告をなさる方は、納税者のうちで、何とかして正直になりたい、善良な納税者として完全に自分の責任を果して行きたいと考える方であると考えますので、これらの方ができるだけ多数になることが望ましいことであり、また記帳能力その他の点において多少の不備がありましても、指導的な立場でこれを育成して行くということを、ぜひいたしたいと考えておるのであります。ただいまお尋ね東北地方の問題につきましては、私も耳にいたしましたので、すぐさま電話等でもつて連絡をしてみました、今実態を調査しているところであります。私の考えとしては、もしもそういうふうなことがあるとすれば、これはただちに修正して行かなければならないというふうに考えております。しこうして今年は法律では十二月末までが申告期限になつておりますので、特に先般法律において御審議願いました通り、五月末まで期限を延期して、その間に鋭意青色申告の方の数をふやして行きたい、またその間において講習会その他各種の宣伝を、極力やつて行きたいというふうに考えておる次第であります。
  21. 小山長規

    小山委員 高橋国税庁長官ちようど見えになりましたので、かねて問題になつている点をお伺いしてみたいと思うのであります。それは富裕税に対する資産評価基準の問題であります。これは主税局の所管ではなくて、国税庁所管であろうかと思うのでありますが、これについて一般的な基準をまずお聞きしたいのであります。不動産、立木、株式については、富裕税算定基準をどんなふうに立てておられるか。まずそれを伺つてみたいと思います。
  22. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 富裕税の基本となるところの資産評価は、時価によるということに相なつておるのであります。しかしてその算定方法につきましては、先般通達を全部公開いたしておりますので、非常に複雑な規定になつておりますが、それによつてごらん願いたいと考えておるのであります。
  23. 小山長規

    小山委員 問題になりますのは不動産時価であります。この時価が、たとえば賃貸価格の九百倍とか千倍とかいうような処置をとられておるのでありますが、これは非常に実情に沿わないという非難がある。これに対してはどういうふうな考え方を持つておられるかということが一つ。それから最も不均衡なのは株式であります。これは一例をとつてみますと、公開されておる株式と公開されていない株式の場合でありまして、最もはなはだしい例をとつてみますと、たとえば資産評価法によつてきまつた資産——純資産株式の数で割つたものが時価であるとするならば、公開されておる株式の場合には、現在の時価は非常に低い。一例をとりますと、日本毛織というような優良な会社の場合、純資産株式数で割つてみますと、おそらく一株当り七千円から八千円になる。ところが時価は二百数十円であります。それで富裕税における株式時価というものは、今上場されておる株式においては、その当時の実際に売買されておる時価ということであるならば、何百分の一の評価になるわけであります。ところが公開されていない株がある。これは主として同族会社でありますが、そのような毛織物会社は非常にたくさんある。あるいは紡績会社も非常にたくさんある。これらの会社は、資産評価法によるところの純資産株式で割りますと、五十円払込みのものがおそらく二千円あるいは四千円となるようなものはざらにありますが、この間の不均衡をどうするかという問題が一つある。ところが株式会社相互間においてはそうであるが、今度は個人同族会社の場合はどうするか。個人の場合には、やはり不動産その他の純資産によつてやるのであるが、同族会社という株式会社になつて来ると、上場されている株式との間の不均衡がまたある。この三つの間に考え方によつては非常な不公平が出て来る。そこでこの時価、ことに株式の場合の時価算定は、会社の価値によるか、あるいは収益力の還元によるか、いずれかによつてこの評価方法を統一することが、必要なのではなかろうかと考えるのでありますけれども、実際問題としてはこれはなかなか困難な問題である。そこで国税庁は、この問題についてはどの程度の研究をし、どういうような方針で臨もうとされておるか。それをことに株式評価の問題に限つて考え方伺つておきたいのであります。
  24. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 お話のように、純然たる個人の場合におけるところの資産評価同族会社資産評価、しかしてまた公開されて取引所に上場された株の評価、この三つの間に公平を保つということは非常に困難な問題であります。しかしてこの公開された株、取引所に上場された株の評価につきましては、御承知通り十二月一箇月間の平均相場をもつて時価算定いたしておるのでありまするが、同族会社並びに個人につきましては、従来の資産評価方法純資産価格によるというのが原則であります。またそれが公平なやり方ではないかと考えまして、大体そういうふうな考え方評価をやつてつておるのであります。しかし極端な例を申し上げますれば、百パーセント同一人が持つておられる会社の場合、これは個人と実質において何らかわりがないと言つていいかと思うのでありますが、そういう場合には個人評価と同じような評価によるというのでなければ、やはり公平が保たれぬのではなかろうかと考えます。しかしながら、それがたとえば五割以下である、あるいは七割以下であるという段階になりますと、おのずからその同族会社の支配権を持つている人の支配権の範囲がかわつて来る。従つてその段階に応じて、公開された株式評価との間に、厳に公平を保つて行かなければならぬという問題ができて来ると思うのであります。従つてどもはそういう点をいろいろ考えまして、商法等の規定からいたしましても、過半数株式を持つておればいつでも解散の決議ができるというところからいたしまして、大体五割以下、七割以下、七割以上という三段階にわけて評価基準を一応つくつておるのでありますが、その場合におきましても、支配権を持つている人の株の評価と、端株を持つておられる人の株の評価とは、おのずから差がなければならぬ。端株を持つておれば売買価値としては非常に低いものにならざるを得ぬのであります。従つて基準価格によることが妥当であるというように考えておるのであります。しかしながら、こういうふうに一応方針を立てて通達を公表しておるのでありますけれども、その間にも、なお現実の問題に直面してみますると、必ずしも当を得ていないと思われる面も多少ありまするので、ただいまお話のように収益還元の方法とか、または類似会社基準価格方法であるとか、またはその他経営規模の問題、主として労務者の数その他の問題とか、各種の観点からなおいま少しく研究をして、現実に更正決定を担当の際には、現在の通達についてある程度再検討を要するというように考えましてただいま検討中であります。
  25. 小山長規

    小山委員 この問題は、行政措置としてよほど負担の公平その他を考えておやりになりませんと、富裕税そのものに対する批判になります。富裕税をむしろ廃止した方がよくはないかという考え方は、おそらくこの評価の適、不適から出て来はしないかと私は思う。この株式評価の問題につきましては、ただいま伺いますと、五割以上の株式を持つて会社を支配している人の評価と、それ以下の株を持つている人の評価との間に、基準を違えるというようなことをおつしやいましたし、また収益還元、あるいは経営規模の大小、あるいは類似産業とのつり合いを考えでおられるということで、その点方向としては私は満足するのでありますが、これは非常に急ぐ問題でありまして、決定するまでに時間が限られている問題でありますから、その結果はでき次第六蔵委員会報告され、何とかしまして批判を受けるような方法をとられるお考えはないか、ちよつと伺つてみたいと思います。
  26. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいま公表しておりまする通達におきましても、たとえば遊休施設のようなものについては、その評価方法をかえるというふうにしまして、ある程度収益還元の要素も、抽象的ではありますが、見えておるのであります。その他非常に抽象的な文句になつておりまして、実際に申告をなさる方にある程度不便ではないかというふうに考えますので、実情に沿つたようにもう少し詳しいものをつくりたいと思つて、ただいま研究しておるのでありますが、何分にも同族会社状態が非常に千差万別でありますので、いろいろなデータをただいま集めておりまして、その各般の場合を彼此検討いたしまして、そうしてできるだけ公平なまた実情に適合するような措置をとりたいと考えるのであります。しこうしてそれが結論を得られました際においては、もちろん通達等によつて公表もいたしますし、納税者並びに一般国民の御批判をぜひ仰ぎたいと考えております。
  27. 大上司

    ○大上委員 国税庁長官が来ておられますので、二、三お尋ねしたいと思います。例の水増しと言いますか、目標額と言うか、あれを取扱つた時代から見ますと、税の執行面から見て格段の進歩があつたように思われます。その中で特に協議団の問題なのですが、あれを見せていただいておりますと、いわゆる過去に税務署長の経験があり、なるほどその道の達人とは思いますけれども、構成が、どうも間税または総務と言いますか、今の総務課です。この出身の経歴をお持ちの方が多いようであり、感覚的に見ますと、あの協議団へ行くのは姥捨山と言いますか、そういうふうな感じがするように思うのです。それでいま少しあれの構成と言いますか、エキスパートと言うか、直税は直税の専門、間税は間税の専門、あるいは徴収に当る今の総務は総務の専門、こういうふうな専門家をいま少し補充する必要がないか、このように考えます。その一例はたとえば私大阪局だけしか見ておらないのですけれども、いま少し刷新して、それのよりよき使命を達成する方がいいのではないか、このように考えておりますが、監督あるいは執行の長官としてのお考えを承りたいと思います。
  28. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 協議団は実は設置早々でありまして、しかも昭和二十六年の七月一日以降に残つた事件についてのみ、協議にかけられるという建前になつておりますので、二十五年度におきましては取扱い件数が非常に少いのであります。少いにもかかわらず相当の職員をあれに充てておりました上に、また同時に非常に先輩の方に協議団に行つていただきました趣旨は、二十六年度になりましてからは相当実際のケースが出て来るに違いない。そういう場合にそれに十分対応し得るように、現在はその能率がそう上らぬかもしれないけれども、一件々々について十分な審査をして、そうしてほんとうに公平な決定をするという、いわば一種の訓練機関のつもりで、わざわざある程度多数の職員を配置いたしたのであります。しこうして今日までの経過によりまして、協議団に任命いたしました者の中にも、必ずしも協議団に適当でないと思われる者もございます。またおそらくは今後更正決定相当なさざるを得ないと思うのでありますが、それに基いて今後審査の件数がどの程度出るかという見当もつきますし、またその点についても大体見当がつくと思いますので、その際にあらためて人事の配置がえをして、これはそう大幅にするつもりではございませんが、お話のような欠点もなくするような方法にいたしたいと思います。
  29. 大上司

    ○大上委員 よく了承いたしました。次にこの間新聞紙上でちよつと拝見したのですが、これは間違つておるかもしれませんが、審査と申しますか決定の事後審査でございますか、そういう機関を設ける。このように新聞紙上で拝見したのですけれども、もしもあの記事が正当なればどういうふうなお取扱いをなさるか。すなわち協議団とやや似たような行き方になるのではないか、あるいは協議団との事務の分担の割合、あるいはこれの構成のいわゆる着眼と言いますか、どういうふうな御構想でおやりになるか承つておきます。
  30. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 事後審査制度はこれは監督の一つの作用でありまして、以前税務の手が相当にありました時代においては、各国税局ともやつてつた制度であります。それを二十六年度からぜひもう一度始めたいというように考えておるのであります。その事後審査を必要とするという趣旨は、各税務署、各国税局の取扱いを統一する具体的ケースをとつておりまして、そのケースについてはたしてそのケースが通牒の通り行われておるかどうか、また通牒に書いてない事項であつて、各局の間に統一がとれておるかどうかということについて、審査をいたしますると同時に、その調査がどの程度徹底しておるかということについての判定をいたしたい、そう考える。従つて協議団についても、協議団で決定した事項を一応本庁に送つていただきまして本庁でその事後審査をいたしたいと思うのでありますが、これも協議団で決定した事項が法律的に、また適、不適の問題としてはたして当を得ているかどうかという事後の批判をして行くという趣旨でありまして、協議団の権限とかいうものには全然関係のない問題であります。
  31. 大上司

    ○大上委員 最後に一点だけお尋ねいたしたいのであります。例の調査査察部というか、特に査察官の制度をこしらえている。これに従事せられている収税官吏は、相当法の解釈なり運用なりについてはエキスパートと申しますか、その域に達したと考えます。従つて現在いわゆる法務府の所管に属しておりますいわゆる租税検事というのがございますから、もちろんこれが脱税その他において刑量の審査というか、測定というか、これについては特別なるところの、いわゆる検事の感覚ということが職務上必要であろうと思うのであります。租税の場合に限つてはこれは一つの技術でございまして、特に計数が伴う。さすれば現在税法なりあるいは計数を取扱う査察官におきましては、十分租税検事のやり得るだけの能力ありと私はこのように考える。従つていわゆるその租税検事の告発それ自体につきしても、もう告発あるいはこれの刑の起訴という面になりますとおのずから分野が違うが、単なる通達事項くらいにして、それほど租税検事を動かさないでもいいじやないか。言いかえれば納税というか、あるいは査察部の機能をもう少し十分に伸ばしてやりたい、また勉強もしてもらいたい、このように考えまして単なる刑量の問題については向うにおまかせするというような方向で行つた方がいいのではないかと考えますが、長官のお考えはいかがでありますか。
  32. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいまの御意見はちよつとはつきり聞きとれなかつたのでありますが、査察官の権限として起訴まできるというふうにした方がいいのではないかというお考えでありますか、その点お伺いいたします。
  33. 大上司

    ○大上委員 起訴手続ということになりますと、これは非常に問題になるのですが、告発ということになればたれでもできるのであります。告発ということに対しまして、それを起訴する際にはこれは検事の所属になりますから、告発権まで持たして、現在もそうだと思いますが、実質上の運営はそうでなく、いわゆる地検と租税検事と査察官の打合せ事項に属しておるのでありますが、それをもう一歩伸ばしてやるというような方向がとれないか。これをひとつ説明願いたい。
  34. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 租税事件査察につきましては、制度開始後御承知通りまだ時間がそうたつておりません。税務官吏も犯罪捜査という面についてはあまりなれておりません。また検事の方々につきましても租税事件については非常にふなれであります。従つて実は先般も法務府との共同主催で検事、査察官相互を訓練するという意味で、一方には簿記会計その他税務の実際というものについての講習をいたしましたり、査察官の方には犯罪捜査に関するところの講習会をいたしまして、しかも相互に討論をいたすという方法によりまして、鋭意訓練をはかつておるのでありますが、いま少しく訓練が積みまして、十分に犯意がありまた悪質である者は必ず告発できる、またしからざる者は告発しないで済まして行けるという判定がつく段階になれば、お話の通り税務官庁だけの判断によつて、どんどん告発して行くことにいたしたいと考えますが、ただいまの段階においては、やはり現在のように非常に緊密な連絡の上に事を運ぶことの方が、適当ではないかと考えております。
  35. 大上司

    ○大上委員 大体長官考えと私の考えは似ておるので満足なのですが、さすればいわゆる執行の監督者といたしまして、大体これの速度というか、期間はどの程度に見ておられますか。あなたの部下としての素養、素質あるいはこの法の解釈上から見て、非常にむずかしい問題だろうとは思いますが、たとえば一年後あるいは二年後という例が出て来るが、大体どのくらいたてば長官の満足し得る査察官の養成ができるか。その期間をちよつとお尋ねしたい。
  36. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 査察官の制度といたしましては、それと関連していま一つの問題があるのであります。それは現在調査査察部として一つの部長のもとに調査もやり、査察もやつておる。しかも各課長の監督のもとにそれぞれしておるという制度でありますが、御承知通りアメリカでは、査察関係だけは完全に独立した組織になつておりまして、本庁の査察局のもとに地方に独立の出先機関を置いてある。そこにおいてやつております。ところが日本の現実といたしましては、別の官庁にいたしますと、どうしても相互の連絡が非常に困難なのであります。査察課で手をつけたものでありましても、途中で査察に値しないという場合におきましては、すみやかに調査課に移して行くというのが妥当な措置であり、また調査課で手をつけたものといえども、それが悪質であれば、一日も早く査察課に引継ぐというのが望ましいのでありますが、同じ官庁の中におきましても、それがなかなか円滑に行かないという実情でありますので、それらの問題と兼ね合せまして、今後ある程度の時間的余裕は必要かと思うのであります。何年ということはちよつと見当を申し上げかねるかと存じます。
  37. 天野久

    ○天野(久)委員 ちよつと一、二点お尋ねしたいと思いますが、政府は国民所得三兆八千億といわれておるようでありますが、その算定の基礎はどんなところを基準としてやつておられるか。どういう調査によつて国民所得を三兆八千億ということに見たのですか。その点をちよつと承りたい。
  38. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 国民所得算定は、御承知通り経済安定本部でやつております。もちろん税制の基本といたしまして、主税局においてもこれに対してある程度調査はしておるかと思うのでありますが、私どもの方といたしましては、国民所得算定を実は責任を持つてつておりません。また国民所得が幾らになるかということを念頭に置いて、税務行政はいたしておりません。
  39. 天野久

    ○天野(久)委員 国民所得を念頭に置かないということですが、しかし予算を立てるという建前から、やはり国民所得を基礎といたさなければならぬと思います。それはあるいはあなたの方で基礎としないということも一応認めますが、そこでもし国民所得が三兆八千億円といたしまして、今の税率をかけて参りますと、非常にたいへんな収入になりはしないかと考えます。そこでわれわれが考えますことは、国民所得三兆八千億で二〇%とれば税金は足りるのだ、こういうことも聞いております。ところが現在におきましては、税金の徴収方法が、目に見えるところの税金がどうしても過重であつて、目に見えないものが割合にのがれておるというようなことがある、いわゆる中小企業あるいは農村等の税金は、細大漏らさず徴収されるが、他にどこにか漏れているものがなければならぬ、こういうことですが、そういう点について長官はどのようにお考えになつておられますか。
  40. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 もちろん予算として税収の見積りを立てます際には、国民所得基準にとて算定いたしておるのでありますが、これは御承知通り主税局の所管でございますので、主税局の方からその点については御答弁  申し上げるのが適当かと思うのであります。しかしてただいま御指摘になりました、現実に捕捉しやすいところの所得についてとつて、その他に漏れているものが多いから、負担が重くなつておるのではないかというお尋ねでございますが、われわれもその点は最も懸念いたしておりまして、何とかしてそういうふうな漏れているものに対して最大限の力を集中して、そういうものの捕捉に努めたい。いつもお答え申し上げております通り、正直な善良な者については将来はむしろ調査を省略して、そうして調査対象をもつばらそういうふうなところに集中して行きたいと考えております。
  41. 天野久

    ○天野(久)委員 高橋長官のお考えも私の考えと同じですが、なお一層部下の方によくお示達願いたいことは、今の農村などは、ほんとうに精算をしたら収益などは浮いて来ないのです。それにもやはり所得税がかかる。また中小企業者などが店舗を構えてやつておりますが、これなども——私も営業を幾つかいたしておりますが、これらに課しておる税金は、税金を納めたら店が立たないという場面にまで今取立てられておる。これが現実であつて、自分のみならず他の中小企業者の話を聞きましても、このように税金を課せられたのではとうてい立たない。また現実に年々借金がふえて行き、このままふえて行つたら店を締めねばならぬ。こういう店がたくさんある。国民所得が三兆八千億ありますならば、二〇%で十分足るべきものである。また中小企業者にしろあるいは農村にしろ、実際の収入に対する二〇%の税金を納めることは易々たることであつて、決してそう嘆くべき、また実際に経営に支障を来すべきものでははないが、実際においてはもつと高率な税金を納めなければならぬ。しかもその収入を過大に見積られる。長官などは一々その調査にお歩きになつたことがないから、おわかりにならないと思うのですが、われわれが聞く範囲においては、その基礎調査なるものにおいても、非常な無理があるということを、調査された人たちからよく聞いております。どうかひとつ税の公平という建前から、国民所得と税率と相マッチするようにやつていただくことが、望ましいことではないかと考えておりますが、いずれにしましても、現在におきまして国民の所得相当あるでしよう。しかしやはり収入の発見漏れ相当あるということも考えなければなりません。その捕捉についてひとつ御努力を願いたいと思います。
  42. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 私どもが最近よく苦情を聞きますのは、地方税の関係からいたしまして、従来相互に所得額がよくわからなかつたのでありますが、所得税でもつて一八%近くとられるのでありますから、それぞれ隣接の関係でよくわかつて来る。そういたしますと、俸給者の方が負担過重になつてつて、むしろ中小企業と申しますか、その他の事業者についての調査が不微底であるというふうな御鞭撻を受けておる次第であります。しこうして、しからばなぜ勤労所得税において滞納がきわめて少いが、事業者において滞納が多いかと申しますと、それは納付方法が、一方は天引きでありますから、残つた所得でもつて生活せざるを得ない。そこで予算生活をするというところから滞納がない。ところが事業者におきましては、どうしても税がまとまります関係上、ある程度金が入りますと、その金をどんどん費消してしまうというふうなことからいたしまして、いざ納税をするという段になると、納税が非常に苦しいというようなことではないかと考えるのであります。従いまして私どもといたしましては、何とかして納税の準備貯金をしていただく、または納税組合というようなものをぜひ結成していただきまして、そういうふうな方法によつて、あらかじめ準備していただくということによつて、ただいまのお話のような難点は除かれるのである、不公平というようなことはないであろうと考えておるのであります。
  43. 天野久

    ○天野(久)委員 長官としては不公平があると思つて課税をなされておるということは、おそらくないでしようが、事実において不公平があります。それは中小企業者に今の税金をこのままやられてはいかぬ。とにかく地方税というものがここに出たということにおいて、非常に苦しいであろうということは、これはお説の通りでありますが、しかし地方税もやはり大体国の税金を減らすので地方税を課す、こういうことなんで、これはやはりどちらからかはとられるということになるが、要するに先ほど申し上げた目に見えた大きな店舗を持つておる。そうしてその店舗で商いする者は、どうしても実際の収入以上の決定を受けている事実は幾多あります。従つてそういう面にひとつもつと留意願いたいことと、それから一面において、ちよつと表に見えないで相当の収入がある。いわゆるどこにかそこに誤差がなければならぬ。誤差がなかつたならば、それはやはり税金が国民所得に倍率をかけたものでなければならぬはずなのです。ですからそういう点について、ただ単に納税貯金をしたならば税金が完全に納まるだろう、こういうお考えは少しまだ現実から離れておりはしないか、こんなふうに考えます。
  44. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は国税庁長官高橋衛氏がおいでになりましたから、特にたびたび質問いたしておりますが、確定申告を出しました時期でもありますからして、一言御忠告かたがたお聞きいたしたいと存ずるのであります。  二月末日までに確定申告を各税務署に出したわけでありますが、まだ早々でありますから、最高幹部である国税庁長官のところには来ていないかもしれませんが、私どもの観点からいたしますならば、今度の十国会で、基礎控除を三万円にし、扶養控除一人一万五千円に上げましたからして、大体農村におきましては九万円までは、まあ国税は免税ということになつたわけであります。さて考えてみますると、各納税者の六〇%というものは、人数において中小企業もしくは零細農民ということになるかと私は思いますから、この全管内において、どのくらいのパーセンテージの確定申告があつたかということが、もしわかりましたら、この際われわれ議員にお示し願いたいと思います。
  45. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 お話の通りまだ調査がまとまつておりませんので、御答弁申し上げる段階至つておりませんが、ただこれだけのことはお話申し上げることができるのであります。すなわち今年度は、先般法律の御改正を願いまして、申告期限を一箇月延長いたしたのであります。その一箇月の延長によりまして、調査の時間も十分に与えられましたし、また御指導申し上げる時間も相当ございましたので、今年は原則として納税者の方に税務署においでを願つて、そうして税務署調査しました内容をよくお話いたしまして、御同意であれば申告書を出していただくということをお願い申し上げたのであります。大体おいでを願う手紙を出しましたのに対しまして、いい税務署におきましては八割までおいでを願つておる。しかもそのうち八、九割までの者が、税務署調査に御同意されて、その場で申告書を出していただいておるといういい成績のところが相当多数ありました。私自身も税務署相当多数、一々見てまわつたのでありよすが、そういうふうな観点からいたしまして昨年度よりは非常な成績の向上を見た。私どもは何とかして——これは非常に悪い言葉で申し上げますならば、たぬきときつねのばかし合いといいますか、そういうふうな感じが従来ずつとあつたのでありますが、そういうような悪い感じを除きまして、何とかしていい納税者を信頼して行くという建前をぜひとりたいというところから、私ども調査したところをぶちまけまして、誠心誠意お話申し上げるという態度をとつてみたのでありますが、納税者の非常な御協力を得ているように考えまして、喜んでおる次第であります。
  46. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 本年の第十国会の早々において、吉田総理は、施政方針の演説に、今年は講和と納税の適正である、こういうことを言われましたし、また大蔵大臣池田勇人氏も、本委員会におきまして、特に国税におきましては基礎控除を引上げたい、扶養控除を引上げまして、また一般の納税者諸君の納税組織を高揚いたしますとともに、大体の見積りでありますが、納税申告申告を八割程度まで是認いたしまして、やむを得ず一割ないし二割は更正決定をするような意思でありましたが、しかし最高の立場にあられます高橋長官は、一体どういう方針でやられておりますか。大体私ども申告をほとんど是認するやむを得ないものに限つて更正決定をする、こういうふうに了承しておりますが、今のお考え御所見を承りたいと存じます。
  47. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 大体お見込みの程度までは達成できるのではないかというふうに期待いたしておる次第であります。
  48. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 そういたしますと、皆さんの御努力によりまして、納税者諸君も納税意識を高揚し、また徴税官吏であります方々も、二十四年度よりも二十五年度至つて大分よくなつて参りました。二十六年度にはますますよくならなければなりませんが、中には多少行き過ぎの点もありましたり、間違いの点もありますから、そういう点については、異議申請または再調査の請求を出しましたならば、法律に定められた通り三箇月以内にぜひやつてもらいたい。そのことを強く要望いたしますとともに、もう一点税務署に対して納税組合をつくれということを、本委員会においても考えておるわけでありますが、これは私の観点では、一納税地域、いわゆる税務署ごとに、もしくは町村ならば町村単位というような方法が納税組合はよろしいと思いまするが、場合によりますと、業種団体と申しまして、同じ業種でありますれば五つも六つもかけ持つたところの税務署管内の納税組合をつくつてもよろしいということ言つた人もあるかと思いまするが、これは不便でありまするから、ぜひわれわれといたしましては、一税務署管内もしくはもう少し下に下げまして一町村、こういうふうな単位に納税組合をつくつたらよろしいと思いますが、長官の御感想はいかがでありますか、承りたい。
  49. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 納税組合につきましては、皆さんよく御承知通り、ただいま関係方面とも折衝を続けておる際でありますが、あの納税組合が禁止されました根本の理由が、ボスの排除ということにありますので、ボスが発生するような危険のない方法によりたい。しこうしてそれはやはり原則として地域による組合というものが、そのおそれがないのではないかというふうに考えられておる次第であります。     〔委員長退席、小山委員長代理着席〕
  50. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 一人で長くやりますといけませんから、もう一、二点伺つてやめます。  高橋長官国税庁庁報によつて、各税務署の末端に至りますまで、親切丁寧に取扱えという報告をやつたことも了承しております。そこで私ども地方税務署等をまわつてみまして、はなはだ愉快に考える点もあります。しかし二十三年以前のものに対しましては、この前も委員会でちよつと質問いたしておきましたが、善良にいたしましたものについては、追徴ですか、加算税をかけないというふうに、ここで答弁せられておるのであります。そういうふうにいたしまして、早くこの納税者の滞納を一掃することが必要であると思いますから、ここで英断をもつて二十三年以前のものにつきましては、ひとつ何とが緩和をしてこれを打切るとか、もしくはそういうふうな加算税等をかけないで、整理するという方針を確定されたいと思いますので、この前も承つたと思いますが、最後でありますからひとつ承りたいと存じます。
  51. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 追徴税、延滞金に関しましては、法律の規定によりましてやむを得ざる事由があるという場合には、私ども税務官吏に権限があるのでありますが、加算税については法律の御改正を願わないことには、これは私どもの手には何とも負えない問題でありますから、御了承願いたいと思います。
  52. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 さきに仰せになりました通り税務署員の年齢も、私の調査によりますと二十三才でありましたが、だんだん年数がたちましたから二十三才半とか二十四才とかいうふうに、年齢も向上したことと思います。主税局長もここでよくお話になつたのでありますが、このごろの税務官吏は大分よくなつて来ましたが、たまには行き過ぎの点があるということは、われわれも了承しております。こういうものに対しては、常に国税局あるいは税務署等に対しまして、査察と申しますか、税務官吏自身を査察する必要がある。納税者諸君を査察いたしましたり調査することは最も必要でありまするが、税務官吏自身を取締るということが最も必要でありますから、それに対しましては、高橋長官も常に鋭意進行しておると思いまするが、その程度を、どういうふうになつておりまするか、もう一度この際お話し願いたいと存じます。
  53. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 税務官吏の監督指導につきましては、特に非違の点につきましては、昨年の国会で御協賛を願いまして、特に国税庁に監察官を置きまして、その監察官に警察権を与えて、税務職員に対してはその警察権をもつて、監督して行くという制度にいたしたのであります。しこうしてその施行の成果を見てみますると、非常に顕著でありまして、相当多数の人を指導しまたそれぞれ処分をして参つておるのであります。もちろん私どもといたしまして、非常に苦労して働いておる私どもの職員でありますから、これは懲罰いたしますことは忍びぬところがあるのでありますけれども、従来のように臭いものにふたをするというような態度でなしに、どこまでも非違は非違として剔決するという積極的な態度が望ましい。現在の情勢においてはそうあるべきであるという信念からいたしまして、相当積極的にこれが摘発を続けて参つておるのであります。しこうしてなお現状をもつてども決して満足しておるのではないのでありまして、近いうちに設置法の改正もお願いたしまして、監察官も現在の六十名を倍の百二十名に増員を願いたいというふうに考えておる次第であります。
  54. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は高橋長官が部下を監督し、また適正なる納税をいたしますために、最善の努力を払うことについては了承いたしております。ただこういう点があります。各税務署に異議の申請をする。今日は再調査と名前はかわつたのでありまするが、再調査をいたしましたものに対しましては、私どもの観点からすると、自分で取扱つたものを自分自身でまたもう一ぺん見るということよりも、むしろ他のかわつた系官、たとえば甲が見たものに対しましては乙もしくは丙というように、かわつた人がこれを再調査をして、もし税務署の観点が違つてつた場合には、いさぎよく直してやるこういう制度を私は力説いたしておるわけでありますが、現在は人間が足らぬとかあるいは熟練していないという意味合いにおきまして、そうどうも全部はかかれぬかもしれませんが、大体趣旨においては、自分の決定したものは別の者によつてもう一ぺん見てもらう。たとえばもう一つ上の人によつて見てもらうという制度にいたしますれば、再調査も円滑に行くのではないかと思つております。これが一つ。  もう一つ、再調査に対しまして訂正されて、承服すればいいのでありますが、もし承服できなかつた場合においては、上の国税局に対していわゆる審査請求ができるわけでありますが、その審査請求に対しましては、御承知通り各地におきましては、国税局ごとに協議団があるわけであります。本年はその協議団が充実いたしましたから、相当活発にそうしたような異議申請に対しては了承せしめられ、または理解せしめられると思いますが、それについては第三者の——弁護人というわけではありませんが、たとえば税務代理士というものがありますから、そういうものの意見も聞いて、しかる後に最後の断を下す。こういう線を強く出してもらいたいと思いますが、今国税庁長官はどう思つておりますか承りたい。
  55. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいま御質問趣旨にもございましたが、昨年までの実績によりますると、審査の請求、再調査の請求が非常に件数が多いのでございまして、それを一々別の人をもつてするということにつきましては、事務的にとうてい間に合わないというふうなことからいたしまして、やむを得ず協議団に付する場合を、審査の請求の段階において認めたわけであります。しかしながら今年は割合に更正決定の数も少くて済む見込みでもありますし、また今後の情勢によりましては、事務的に十分なし得るという段階に行きますれば、その点は考慮すべきものであろうと考えます。しこうして協議団が決定をいたします際には、必ず納税者に意見を申し述べる機会を与えなければならないという法律の規定になつておりますので、そういう際におきましては、そういうふうな特に権限のあるところの専門家の方がお話くださることは、非常にけつこうなことであるというふうに考えております。
  56. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 高橋長官のお話によりまして了承したわけでありますが、私は全納税者諸君にかわりまして申し上げたいことがあります。われわれは確定申告を出しまする場合におきまして、それにつきまして再調査をいたしまするまでには、いわゆる請求を出すわけでございますが、今までの観点からいたしますと、一旦出したものを半年もうつちやつておくということが往々あつたのであります。今度は法律で三月、こういうふうにきめられましたから、今たとえば三月に更正決定が来るといたしますれば、四、五、六で六月までには大体片づいてしまつて、七月以降には国税局の方に審査請求ができる、こういう線になるのであります。政府といたしましてはこれに対しまして早く片づけるということを常に言つておるわけでございますが、大体のお見通しは、再調査を出した何パーセントくらいが国税局の方にまわつて行きますか。審査になりますか、私の観点ではおそらく数は少いと思いますが、その見通しがわかりましたら承ると同時に、もう一つ訴訟になりまする問題は、全国を通じましてどのくらいありまするか。その三点についてわかりましたら、国税庁長官からお示しを願いたいと存じます。
  57. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 先ほども奥村委員に御答弁を申し上げたのでありますが、今年は更正決定も十分に調査ができてあるものにつきましては、いたしますけれども、しからざるものについてはもう一度調査をして、ぽつぽつやつて行きたいというふうに考えておりますので、三月中にそう大量な更正決定をやることはおそらくあるまいと考えます。従つて何月ごろということはなかなか言いにくいと思いますが、反面更正決定の数が期間的にばらまかれます関係上、事務処理も割合に円滑に行くかと思います。従つて期間内に大体なし得るのではないかというふうに考えておるのであります。しこうして再調査の請求の件数がどの程度になりますか、またこれに対して審査の請求が何件、また訴訟件数がどれくらいになるかという見通しについてのお尋ねでありますが、これは今のところ全然私ども見込みを持つておりません。
  58. 深澤義守

    ○深澤委員 長官にお伺いしたいのであります。先般の新聞によりますと、四国の高松の裁判所が、脱税を告発いたしました税務署の告発事件に対しまして、やみ価格による算定間違いである、マル公の算定でなければいけないという判決が下されたということが報ぜられておるのでありますが、この問題は今後所得の計算について、非常に重大なる影響を持つものと思うのであります。農村等におきましては、税務署との折衝の過程において、非常に不当な所得決定がなされた場合に、それに抗議しますと、いや、お前のところはやみで売つておる部分があるじやないかということで、常に撃退されておるのでありますが、こういうふうな問題が農村には事実上あるのであります。これと四国の高松の裁判所の判決とは、重大な関係を持つておると私は思う。従つて所得の計算においては、マル公の価格において計算すべきであるというこの裁判所の決定に対して、国税庁としてはどういう見解を持つておるか。この点を承りたい。
  59. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいまお尋ねの件に関しましては、実は私も新聞で読んだだけでありまして、判決の全文またその理由等について研究をいたしておりませんので、確実なお答えはいたしかねるのでありますが、新聞の報ずるがごとく、ただやみ所得であるというゆえをもつて所得にあらずとする考え方に対しては、これは負担の公平から行きまして、絶対に賛成ができないと考えておるのであります。
  60. 深澤義守

    ○深澤委員 そういたしますと、結局所得のあつた場合においては、それはやみ価格であろうとマル公であろうと全所得をその所得としてそれを課税対象とする。たとい裁判所がどう決定しようとも、国税庁の意見はかわりない、こういうことに承知してよろしいですか。
  61. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 法律の解釈の最高の権限は最高裁判所にあるのでありますから、もしも最高裁判所におきまして、そういうふうな決定がなされた場合におきましては、法律の改正をいたしますか、その解釈に従うか、いずれかより方法がないかと思います。
  62. 深澤義守

    ○深澤委員 もう一点お伺いいたしますが、高橋長官はいろいろな御説明の中に、善良なる納税者に対しては、できる限り寛大の処置をとるというような意見を言われたのであります。つまり納める、納めないということ、そういうことを道徳的に善良であるかあるいは不良であるかという観点から、あなたはお考えになつておりますが、そうでなしに、現実の問題は税金が非常に重くて、一般の生活は非常に苦しくなつておるというのが問題なんであります。政府の方では所得が非常に増大したと見るが、しかしこれは一部の特需関係の人たちの所得の増額であつて、全般の国民はむしろ物価高騰によつて非常に苦しんでおるわけでございます。従つて税金を納める、納めないは、道徳的に善良、不良という観点から考えるべきではなくて、国民生活の実態を私は考えなければならぬと思うのであります。この点はどういうふうに考えておられるか。ややもすれば納めない者は不良である、納める者は善良であるというような言葉が出るのでありますが、私はそういうところへこの税金問願についての基準を置かれると、非常に実情に即さないやり方になるのではないかと思うわけです。私の聞きたい焦点は、国民所得は全般的には五、六千億増加したという観点を持つておられるのですが、しかしそれは国民のごく一部の人々であつて、国民全体はかえつて賃金はくぎづけになつておる、物価は上つておる、こういう状態の中で非常に苦しんでおることは間違いない事実であります。従つて税金が今度の税法改正によつて多少免除されたといたしましても、これは大蔵大臣がこの席上で御説明になつておるように、国民生活が安定するか安定しないかということと、税金が安くなるかならないかということは、関係はないのであります。とにかく国民生活がたとい苦しかろうとも、今度の税法においては減税ということには間違いない。しかしそれによつて国民生活が楽になるか、あるいは非常に苦しくなるかということは、別な問題だというふうに言われておるのであります。私はまず国民生活の実態は、国民所得が上つたとは言いながら、個々の特に中小企業あるいは農業等の一般の人々については、物価高と収入がくぎづけされておるというような状態の中で、生活は苦しいのだ、だから税金が納められない者は全部不良である、納める者は善良であるという観点から考えられると非常に間違つておるのではないかと考えておるのですが、その点についてはどのようにお考えになりますか。
  63. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 御承知のように申告所得税におきましては、全部を調査するということは理論的にはあり得ないのであります。申告所得税というのは、申告に信頼して行くというのを根本の精神としておる制度であります。従つてわれわれは調査をいたしまする対象を選定いたしますのについては、どこに漏れがあるかということを標準として調査をする。また善良であるか善良でないかという判定は、その人が正直に申告をしているかいなかということによつて判定するのでありまして、道徳的という言葉を言つておられますけれども、やはりどこに漏れが多いかという観点でもつて、選択をせざるを得ないのでございます。私どもとしては何とかして善良な納税者を一人でも多く見出して、そういう人には全幅的に信頼して、しこうしてしからざる漏れがあると思われる者には、全力をあげてこれが調査を遂行いたしまして、そうして負担の公平を期して行きたい、そういうふうに考えております。
  64. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 簡単に三点だけお伺いいたします。私はこの前の税法審議委員会ときの討論にも、富裕税の廃止をとなえ、また本会議のときにも、富裕税の廃止論をとなえておつた一人でありますが、これはどう考えても、こんな悪税はないというような考えを持つております。全部とつても大した税ではありませんし、また昨年の暮れの状態を見ると、富裕税調査に現金を調べるということでどんどん予金が引出された。また今度現金を調べないということになると証券を投げ出す。ところがまた全体の財産を調べて来年度においてまたこの富裕税をかける。たび重ねて行くに従つてその財産が正確に現われまして、税はどんどんとつて行かれる。従つてもう今度は利益があつたら、飲んだり食つたりしてみんな金を使つた方がいい、こういうような気持を持つて来る方が非常に多いように考えられます。従つて資本蓄積だとか、あるいは証券対策、あるいは銀行の預金引出しというようなことから考えまして、私は富裕税を廃止して、そうして現在の百万円まで五五%をいま五%ぐらい上げて、百分の六十ぐらいにして、この富裕税を廃止する方が、税務署としても仕事がやりいい。また末端の税務官吏に聞いてみても、こういう法律は大いに廃止すべきだということは、だれでもとなえているところであります。これについて今年一ぱい施行してみて、これは悪税であるということを認められたら、廃止する意思がありますか、それを伺いたい。
  65. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 ただいまの御質問は税制に関する問題でありまして、私どもは公布された法律の執行についての責任を持つておるものでありますから、他の方から御回答申し上げるのが適当であると考えますので、遠慮申し上げます。
  66. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 これは税制の問題でありますが、長官の御感想を伺つておきたい。それとあわせて、裁判所でたとえば脱税事犯があつたという場合に、間税にしても直接税にしても、倍額なり相当額の制裁を加えておるにもかかわらず、また訴追されまして、裁判所が罰金として莫大な金をとつておる。それがために事業が成り立たないでつぶれ、職工が失業したという場合がずいぶんある。長官は、これは税制上の問題であつて、税執行に関連のないことだとおつしやいますが、これについての簡単なる御意見を伺つておきたいと思う。従つて富裕税廃止の問題と、裁判所で重複の税をかけられるということ。第三に、所得税法の六十二条の三に、三百万円以上の所得があつたものについては、貸借対照表とか財産目録を出せということになつております。これも私は今の税法上ではどうもあまり過酷ではないか、こう考えるのでありますが、この三つの点について簡単な御意見を伺つておきたいのであります。
  67. 高橋衞

    高橋(衞)政府委員 御質問の中にもありましたように、これはすべて税制上の問題でありまして、私からお答えするのは適当でないと考えます。
  68. 小山長規

    小山委員長代理 それでは午前中はこれにて休憩いたします。午後は二時から開会いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかつた