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1951-02-22 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十二日(木曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 小山 長規君 理事 西村 直己君    理事 天野  久君 理事 田中織之進君       尾関 義一君    久野 忠治君       佐久間 徹君    高間 松吉君       田嶋 好文君    清水 逸平君       福井  勇君    苫米地英俊君       三宅 則義君    宮幡  靖君       内藤 友明君    宮腰 喜助君       松尾トシ子君    竹村奈良一君       深澤 義守君  出席政府委員         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      佐藤 一郎君         大蔵事務官         (中計局給與課         長)      磯田 好祐君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君         国税庁長官   高橋  衞君  委員外出席者         国民金融公庫理         事       最上 考敬君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ————————————— 二月二十二日  委員塚田十一郎君、大上司君、有田二郎君及び  川野芳滿君辞任につき、その補欠として久野忠  治君、尾関義一君、田嶋好文君及び福井勇君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号)  登録税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二八号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三〇号)  骨牌税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三一号)  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第三二号)  開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源  に充てるための一般会計からする繰入金に関す  る法律案内閣提出第三三号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三五号)     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 これより会議を開きます。  議案の審査に入りまする前に、共産党の深澤委員より、給與問題に関しての発言を求められております。これを許します。深澤君。
  3. 深澤義守

    深澤委員 しばらく時間を拝借いたしまして、給與問題に関しての若干の質問をいたしたいと思います。  国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案提出理由の中に、恒久的退職給與制度実施準備という問題が、現在政府において行われているそうでありますが、われわれもこの問題につきましては、マイヤース勧告によものを仄聞しています。ところがこの方針によりますと、国家公務員退職給與という問題が、従前よりも非常に惡い條件になるということを、われわれは聞いておるのであります。こういう問題が公務員の間から相当な不安な気持となつて現れているように、われわれは伺つているのでありますが、この際この恒久的退職給與制度を、何か準備しておられるところの腹案がございましたらば、ある程度それをお聞きいたしまして、そうしてどういうものが今後実施されるかということについての大体の概要を、われわれは知りたいと思います。その点をひとつお伺いいたしたいと思います。
  4. 磯田好裕

    磯田政府委員 ただいま御質問のありました恒久的な退職手当制度に関する政府の案の進行状況は、どういうふうになつておるかという御質問と承つたのでございます。この点につきましては、今御質問の中にありましたように、昨年の年末に米国から参りましたマイヤース勧告が出まして、その勧告に基きまして現在人事院が中心になりまして、マイヤース勧告に基くところの恩給制度を立案いたしております。しこうして退職制度に関しましては、公務員恩給制度不可分関係にあるのでございまして、マイヤース勧告の中では、いわゆる退職手当というような制度はあまりいい制度ではない。むしろ恩給制度一本で行くべきである。しかし退職手当制度をしいてつくるならば、大体三、四箇月程度退職手当を支給したらよろしかろうというような、ごく簡單なことに触れておるだけでございます。しかしながらこの退職手当の問題は、先ほども話しましたように、その基本となりまするところの公務員恩給制度基準がきまりまして、その関連において全体の公務員給與制度、それから退職後におきまする生活條件、いろいろな点を考えまして、彼此勘案して研究すべきものであります。しかるにマイヤース勧告に基きまする恩給制度自体が、今日に至るまで人事院から何ら勧告もされませんし、また人事院の案もまだきまつていないというふうに聞いております。従いまして政府といたしましては、この退職制度自体につきましては、まだ成案を得ていないというのが実情でございます。
  5. 深澤義守

    深澤委員 そこで今お話になりましたマイヤース勧告によりますと、退職手当制度というものについては、これは適当な制度ではない、こういう趣旨が盛られているのであります。ところが日本の現在の政府機構の中には、公団関係あるいは政府関係機関というように、非常に短期間の勤務で終るところの機構があるのであります。ところがこの機構に携わつておる人々は相当の数があるのであります。この人々退職手当という制度がなくなつてしまいますと、この短期間政府に雇われて、そしてそれが閉鎖になり解散なつた場合においては、失職するという結果になるのです。その場合において、そういう退職手当制度というものがなくなるならば、非常にこれは苦しい立場になると思います。特に公団並びに政府関係機関職員は、失業保險法等適用からも除外されているのであります。ところが現在の失業の時代におきまして、一旦失職いたしますと、非常に職を求めるのに困難であります。従つてこの退職手当というのは、食いつなぎ資金と申しますか、そういうような大きな意味をもつているのであります。こういうような状況の中で、この退職手当制度というものがなくなるか、あるいは非常に低額のものになるということになりますと、公団並びに政府関係等短期間職員は、非常に大きな打撃を受けると同時に、不安の念に襲われると思うのでありますが、こういう問題について国家はどういう対策を講じられるお考えでありますか。その点をひとつお伺いしたいのであります。
  6. 磯田好裕

    磯田政府委員 先ほどお話しましたように、マイヤース勧告では、退職手当制度に関しましては、ほんの二、三行程度簡單な文句を書いて勧告しておるだけでございまして、それもほんとうの勧告思給制度自体にあるので、退職制度の問題は一応別個の問題である、無醵出の制度のもとにおいては、退職手当制度というものは支給すべきでない、あまり好ましくないというような形で逃げておるのでございますが、この点は現在並びに今後におきまする公務員給與制度、並びに恩給制度不可分関係において、日本政府自体で愼重に考慮すべき問題だと私どもは思つております。従いまして当然に退職手当制度が今後においてなくなるべきものとは、政府としては考えておりません。  それからなおただいま公団とか政府関係機関のような暫定的な機関については、どうしても退職手当制度がいるではないかという御質問と承つておるのでございますが、今お話のように、政府関係機関につきましては、現在恩給法適用がありません。従いましてかかる機関に対しまして、その職員のために退職手当制度考える必要のあることは、政府としても十分その必要性を認識しておるわけでございます。
  7. 深澤義守

    深澤委員 マイヤース勧告は、ある程度社会保障制度の完備を前提としているのであります。そういうような條件の中で、日本事情は相当違うと思うのであります。従つてこれは日本政府自主性を発揮いたしまして、実情に即したところの制度を確立することを私は希望いたします。  それからもう一つこの際お伺いしたいことは、大体この退職手当につきましては、公共企業体労働関係法立場から申しますれば、この法規がある以上、これが団体交渉対象にならないということに一応解釈できるのであります、しかし特に短期間政府関係機関並びに公団等の廃止の場合において、この退職手当の問題についての一応の規定は、この法律によるのでありますが、なおこれが閉鎖解散というような場合においては、特に団体交渉等によつてこの法律以上の支出をすることが、これは可能であるかどうか、こういう問題については、政府はどういう見解を持つておりますか。この際お伺いしたいと思います。
  8. 磯田好裕

    磯田政府委員 公共企業体労働関係法並びにこの退職手当臨時措置に関する法律規定によりまして、特に政府関係機関等の場合におきまして退職手当団体交渉対象となるべきものかどうかという問題につきましては、現在のこの法律のもとにおきましては、団体交渉対象にならない。すなわち現在の退職手当臨時措置に関する法律におきましては、これは強行法規ということに相なつております。従いましてその範囲内におきましては、この基準通り退職手当が支給されるということになるわけでございます。従いまして団体交渉対象となるべきものではない、かように考えております。
  9. 深澤義守

    深澤委員 もう一点お伺いいたします。これは本年一年延期するのでありますが、政府としては、今準備されておりますところの恒久的な制度というものが、いつでき上つて実施される予定であるか。またそうなりますれば、現在この法案がさらに延期されるというような場合もあり得るのかどうか。この点をお伺いすると同時に、もし延期されるとするならば、現在の物価上昇等によつて、現在の法律内容にあるところの退職手当では非常に額が少な過ぎる。失業の今日の状態の中で、先ほども申しました、この退職給與が食いつなぎ資金ともなるべき性質のものでありますから、今後なおこれを継続するとすれば、この内容を改善する必要があるのではないかと考えるのであります。その点についての御意見を伺いたいと思います。
  10. 磯田好裕

    磯田政府委員 まず第一の問題といたしまして、この退職手当の恒久的な制度はいつできるかというお話でございます。この点につきましては、先ほど来御説明申し上げたように、公務員の恒久的な恩給制度ができ、その恩給制度基準にいたしまして、退職手当金額なり基準なりを、どうしたらよいかということを考えるべきだと思うのであります。従いまして新しい恩給制度勧告人事院より政府に対してなされまして、その上において恒久的な退職手当制度考える、さようになるかと思います。従つていつできるかという問題は、人事院から勧告がありまして、その上においてきまるわけでございます。その勧告が出て、それに基くところの政府の恒久的な恩給制度に対する法律案提出されるときと同時に提出する、さように相なろうかと思つております。それからなおこの法律の効力を一年間だけ延期するということになつたならば、その後の物価状況というものを反映す。べきではないか、この基準を引上げる意思はないかというお話でございますが、この法律に基く退職手当基準は、現在のところ公務員給與基準にいたしてあります。この給與は御承知のように、本年の一月以降改善したばかりでありまして、その給與月額というものを基準にして算定される以上、その給與の中に、おのずからその後の事情というものは反映されておる、さように私ども考えるわけであります。     —————————————
  11. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 では次に所得税法の一部を改正する法律案外七税制改正案、及び国民金融公庫法の一部を改正する法律案一括議題といたしまして、前回に引続き質疑を続行いたします。
  12. 竹村奈良一

    竹村委員 私金融公庫のことについて、少し昨日に引続いてお伺いいたしたいのでございますが、昨日は大体今年度いろいろ支所等増設されても、まだされない県をお聞きしたのでございます。そこで常に問題になりますのは、結局こういう支所の末設置の県に対する資金割当であります。従つてこれは前々の国会でも説明を聞いたのですが、その点はいろいろな点を勘案して、代理所があるならそこへ割当てるのだ。まあ説明としては一応こういうふうに伺うわけですけれども、それだけではどうも納得が行かないわけであります。従つて資金割当をされるところの基礎としては、單なる勘案でおやりになるのか。あるいはどういう点で各府県に対するところの資金を融通する基準をきめられるのか。そのきめられる基準を承りたいのであります。
  13. 舟山正吉

    舟山政府委員 地方別割当につきましては、支所及び代理所を含めました業務所所在都市、その周辺の人口及び中小企業の数、また現実にその業務所に対してどのくらいの申込みがあるか、そのうち現実貸付をいたしたものはどのくらいあるか、こういうようなことを勘案してきめるわけであります。そのほかに、なお業務所の実際の処理能力ということも、実際の問題として考慮すべき一つの要素になつて参る次第であります。なおこの資金にリザーヴをとつておくというわけに参りませんので、たとえば災害がありました場合に、予備費的なものを設けておくわけには参りませんけれども、実際上はやり繰りのできます限り、その地方資金を多くまわすといつたような配慮をいたしておる次第であります。
  14. 竹村奈良一

    竹村委員 災害等があつた場合に、資金をその方面に多くまわすということは、実に納得が行くわけであります。ところが今の説明の中で、問題になりました申込み状況などを指摘されておりますが、その中、事務処理能力資金割当の大きな一つのわくの中に入つておるということであります。しかしこうなりますと、代理所だけ置かれて支所設置されない県にあつては、処理能力が一応少くなる、従つて資金割当も少くなるという結果になるわけでありまして、こういう点については、やはりこの公庫性質上から考えても、国民一般を潤すという建前から考えても、未設置の県を置くということは、こういう原則に反するのじやないかと考えるわけです。しかも代理所を通じてやるのだとおつしやいましても、代理所なるものがそもそも組合員にだけしか貸さない。しかも費用やその他の関係で貸さないといつた状況にあるわけでありますから、この際ひとつ思い切つてこの未設置の県にも設置する、しかも設置するための資金を増額するということを、二十六年度から必ずやるために努力する考えはあるかどうか。またこれはぜひ努力してもらいたいと思うのですが、その点はどうですか。
  15. 舟山正吉

    舟山政府委員 二十六年度におきましては一応八箇所の支所増設、百五十人の増員ということを見込んだのでございます。これをさらに広げまして支所設置たい県をなくしたいということは、政府においても希望いたすところでございますが、来年度の予算等から見ますると、現在ではこれが精一ぱいのところかと考えますから、今後財政の都合のつきます限り、支所増設と機能の拡充に努めて参りたい所存でございます。
  16. 深澤義守

    深澤委員 ちよつと関連して——もちろん予算上非常に困難のあることではあろうと思うのですが、政府中小企業対策としてこの金庫を設けられた趣旨は、私は全国の中小企業者が非常に期待しておると思うのです。ところがこの政府方針では、ある県は恩恵に浴さない、ある県は恩恵に浴されるということになつて、まことに不公平であると思う。政府はこの制度を宣伝して、こういうことをやつて救済しておるのだということはやつておるのですが、これによつて恩恵を全然受けていない県は、から宣伝ばかり多くて、われわれには全然恩恵が感じられないじやないかと思うでありましよう。もちろん設置されておる県でも十分には行かぬといたしましても、とにかく各県に設置するということが、政府方針を生かして行く方法であると考えております。ところが予算関係もありましようが、現在各県に設置されていないということは、これはりくつから言つてもわれわれにはどうも納得が行かないわけです。従つて政府はどういうふうな努力をしても、各県にただちに設置するということでなければ趣旨に反すると思うのですが、その点はどうですか。
  17. 舟山正吉

    舟山政府委員 二十六年度の予算では、ただいま申し上げましたようなことでやむを得ないと思うのでありますが、これをさらに拡張して参りたいという気持は持つておるのでございます。
  18. 深澤義守

    深澤委員 各県に設置する場合、地元の要望が強いところへやるのですか。それとも、こういう制度があまり底されずに、こういう問題に対して関心のない県に対しては、設置しないということなんですか。その基準は、今竹村君が言われたのですが、各県ともいろいろな事情が違いますが、強い要望のある県には設置して、要望のない県には設置しないという方針をとつておられるように考えますが、その点はどうですか。
  19. 舟山正吉

    舟山政府委員 当該地方要望というのは、いろいろの形で現われて参りますけれども、政府におきましてはそれにとらわれませず、その地方における資金必要性、あるいはたとえば府県を異にいたしましても、交通関係その他でほかの県の支所を利用していただけるというようなところは、さしあたつてはそれを利用していただくことにするといつたような、大局的な見地から決定いたしております。
  20. 深澤義守

    深澤委員 支所のないところには代理所設置されておるようですが、この代理所というものには相当の資金割当があるのかどうか。支所代理所資金割当関係は、どういう比率によつておやりになつているのか。その点をお伺いしておきたいと思います。
  21. 舟山正吉

    舟山政府委員 二十五年度の実績におきましては、直接貸しが七割、代理所扱いが三割くらいの見当になつております。
  22. 深澤義守

    深澤委員 それから貸し出して回收が順次行われていると思うのですが、回收の率はどんな状態になつていますか。
  23. 舟山正吉

    舟山政府委員 延滯の割合につきましては、昨日も申し上げたのでありますが。普通小口貸付につきましては、件数にして〇・八%、金額にして〇・七%でございますから、回收状況は良好と申すことができるのであります。但し更生資金貸付につきましては延滯率は四〇%を越えております。
  24. 内藤友明

    内藤(友)委員 私は税金のことについて二、三お尋ねいたしたいと思います。昨年の臨時国会のときでありましたか、私から大蔵大臣にお尋ねしたことがあります、すなわち五十億の見返り資金からの勧業銀行興業銀行、農林中央金庫、商工中央金庫その他の銀行優先株式、並びに優先出資引受のことにつきまして、その配当に対して国税地方税がかかる、これが非常に重い負担になつているということを申し上げ、近き将来その国税並びに地方税をやめるというお約束をしていただきましたが、それが今度御提案になりました租税特別措置法の一部を改正する法律案に出て参りまして、これはまことにありがたいことだと思うのであります。ところでひとつお尋ね申し上げたいのは、実はこれは国税についての規定でありまして、地方税につきましてもここに書いてありますように、おのずから「これを損金に算入する。」という言葉をそのまま援用なさるのでありますかどうか。これを一応確かめておきたいと思うのであります。
  25. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話の点は地方税の專業税の課税の問題だろうと思いますが、事業税につきましては大体法人税の場合と同様でありますが、またそれぞれさらに所得計算に関する規定がございますので、その規定を改正しなければ同様なことには参らぬのではないかと思います。ただ細目の問題にわたりましては、まだその辺は最終的に打合せていないのでありますが、目下地方税法案につきましては打合せ中でありまして、よく研究いたしましてお答えいたしたいと思います。
  26. 内藤友明

    内藤(友)委員 それではこれは地方税関係でありますから、平田さんにお尋ねするのは御無理かもしれないと思いますが、政府委員でありますから確かめておきたいと思うのであります。国税でこれを損金とみなされるということになつたのでありますから、この精神を地方税にも延ばされる御意思であるかどうか、それを伺つておきたいと思います。手続はあと先があるか存じませんけれども地方税もやはりやめられるのかどうか。それをひとつはつきりと承つおきたいと思います。
  27. 平田敬一郎

    平田政府委員 課税標準計算に関する原則は、できる限り国税地方税とも同一歩調で行くということを今までの原則といたしておりますので、私といたしましては、できる限りお話趣旨に行くようにいたしたいと考えております。
  28. 内藤友明

    内藤(友)委員 ありがとうございました。それはそういうことにいたしておきます。  次は所得税の問題でありますが、所得税につきましては今までいろいろと各委員から御質疑がありまして、大体盡きておると思うのであります。しかしただ要は、この所得税の問題が起きますゆえんは、所得把握が問題でありまして、最も明確に所得計算されるものと、その所得が何とかごまかされるというふうなものとの間の不公平が、この所得税の問題になつて来る大きな一つのことだと思うのでであります。そこでお尋ね申し上げたいのは、具体的な例を一つ申し上げますと、農家がつくつております葉タバコでありますが、これはもう一葉も残らず全部公社に納めますので、これは最も明確なものなのであります。普通の農作物はやみ売りといううものをやらぬでもない、やりますし、普通の営利事業でありますと、相当これはごまかし得るのだと思うのであります。そういうところにこの所得税のいろいろな問題が起きて参ります。そこで葉タバコ收入見積りにおきまして、現在の見積り方が非常に正直な見積り方であります。しかしこれは逆から考えますと、農家にいたしましては他に比較して非常に苦しい状態になつておるのであります。現在の計算方法はまさにあの通りかも存じませんけれども、とにかく葉タバコというものは一葉も残らず公社に納めますから、ピンからキリまで計算の上に出て来るのであります。そういうものに対して、これは税務官吏の手心ではなしに法的措置として、つまりしつかりと把握のできるものは法的に何とかこれを少しゆるめる、中ほどのものはゆるめ方を少し緩和するとか、あるいは普通の営業のように非常に把握のできないものは、これはまた率において何かくふうをするとかいうふうなことができることになれば、これは所得税に対する不平が一掃されるのじやないかと思うのであります。そういうことに対して政府はひとつ具体的ないろいろなことにつきまして、御研究してみられるような御意思があるかどうか。それを伺つてみたいと思います。
  29. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話趣旨は常識的に考えますと相当ごもつともな点があるようにも私ども見受けるのでありますが、所得税法建前といたしましては、タバコの葉のごとくはつきりした所得ははつきり申告してもらいますし、政府においてもよく調査いたしまして、税法従つた所得金額計算するというのが、実は大前提と申しますか、そういう方に行くべき性質のものでございまして、むしろ私はそれが原則になるように将来しなければいけない。今すぐ全部そうは行つておりませんけれども、そういうようなものが原則であるべきであると考えるのでございます。従いましてそういうものに対して特例を設けるというのは、いろいろ考えたこともあるのでございますけれども、制度として設けることはなかなかむずかしいじやないか。ただ葉タバコの場合におきましては收入がはつきりしますから、経費もよく調べまして、引漏れのないようにという点につきましても、同時に十分注意するようにということをやかましく言つております。そうして正しい所得でありますれば、これはそれぞれ税法に従いまして納税していただくということで行くよりほかないじやないか。それがまた正しいじやないかと考えるのであります。ただお話のような事情も実際問題として大分ありまして、一例を申しますと青色申告者に対して何か特別の控除でも設けたらどうかということにつきましても、実際問題として少し研究してみたらと思いますが、これもやはりそういたしますと、所得税の最初に申しました本旨と申しますか、本来行くべき姿に逆行するような点にもなりますので、私どもは制度としてそういう制度を設けることにつきましては、実は躊躇せざるを得ないという実情でございます。それから営業者の中におきましても、お話通り全部漏れておるわけでございませんで、よく收支調査ができまして、はつきり所得を申告して、そして税務署におきまして査定しておるのも相当あるのでございます。また将来はすべてそういうように行くべきである。そしてその上で全体として税率を引下げ、控除を引上げまして負担の公平をはかつて行き、税の実際の負担の軽減をはかることが、税制の将来行くべき道じやないかと考えております。実際問題として、実情からごもつともなところがございますけれども、どうも制度の上で特別の制度考えますことは、率直に申し上げまして、将来のことを考えると躊躇せざるを得ないというのが、私どもの今の考えでございます。
  30. 内藤友明

    内藤(友)委員 大原則にだんだん近づけしめる考え方だとおつしやるのでありますが、それはそうかも存じませんけれども、「所得税法に関する基本通達」というものが出ておりまして、その中に第十條関係のものがこまごま書いてありますが、この中の二一〇というところに現物支給に関するいろいろなことを書いてあります。こういうふうに、なるほど大原則はあるかもしれませんけれども、大原則に漏れるものがあるのだから、こういうふうにやるのだというお示しだと思います。だから今局長のおつしやるようなことは、必ずしもそうではないのでありまして、現にこういうものをきめておられる以上は、こういうことがあり得るということを認めなければならぬ。そこで私は具体的に一つお尋ね申し上げるのでありますが、第一に「通勤費の名目により金銭で支給する場合においては、その金額の多少にかかわらず、すべて課税する」。それからその次には、乘車券を交付する場合は三百五十円まではかけないけれども、それ以上はかけると書いてあるのであります。なるほどこれは一つ考え方でありますが、こういうふうなことになつて来ますと、私はこの而も皮肉なことを申し上げたのでありますが、高級官吏の自動車は一体どうなるのか、こういう問題が起きて来るのであります。これは平田さんも自動車に乘つておられるのでありますから間違いないのでありますが、あれを一日幾らと計算して、もし三百五十以上になれば、現物支給だから当然とらなければならぬ。もしあれをとらないのならば、ここへもつて来て、高級官吏の自動車は課税しないということを書いておかなければならぬ。ああいうことなどはどうなのですか。小さな労働者が通勤するためのものには税金をかけるけれども、皆さんの場合はかけないのだ、それは習慣なのだということなのでありますか。一体どういうことなのでありますか。ひとつお伺いしたいと思うのであります。
  31. 平田敬一郎

    平田政府委員 現物給與に対する課税は実際上なかなか問題がございまして、評価に関する問題とか、あるいは非常に零細なものの争いになりますと、いかにも煩瑣にわたるというような弊害がございますので、一応今御指摘のような趣旨でしいて調査しないんだ、そういうこまかいものは、そういう意味合いにおきまして通牒を出しているわけでございます。そういうあまり実益のないこまかいものを一々調査しましてトラブルを起すのは、どうも適正な執行をするゆえんではない、こういう趣旨でかような通達を出しておるわけでございますが、御指摘のような自動車等につきましても、建前はこういうのはやはり官庁要務の都合と申しますか、そういうのが主たる趣旨でございますので、側人に対する給與として見るようなことはいたさない。官舎の場合も同機でございまして、無料官舎などはやはり官庁事務の都合で無料官舎になつておりますので、そういうものは課税上ないということにいたしておるのでございます。ただ非常にこまかく言いますと、そこに私用のために使う場合もあるじやないか、それは見てもいいじやないか、こういう議論も出るかもしれませんが、その辺のところは、内藤さん御承知のようにあまり実際問題としまして、実益のないよころに問題を起すような愚なことはしない方がよろしかろう、こういう趣旨で運用を正しくして行つたらどうか、こういうふうに考えておるわけであります。先般鶏の課税の問題も出ておりましたが、あれもこまかく税法で行きますと、もちろん課税いたしましても絶対に違法ではないのでございますけれども、あまり実益のないものにつきまして調査の徹底をはかるというのは、今の状況から見て適当でないという意味におきまして、かような通達をいたしておる次第でございます。実際問題としてなかなか問題のあるところだと思いますが、運用の妙と申しますか、それを若干発揮せざるを得ぬのじやないか、そういう余地はあると考えます。
  32. 内藤友明

    内藤(友)委員 だから私は所得把握のできるものは少し負けてやる、把握のできないぼんやりしたものは、何か率でも少し上げるという制度考えられてしかるべきじやないかと申し上げるのであります。そこで今私はあなた方の自動車のことを申し上げましたけれども、電気会社でも、従業員が電気を使つても、それが安い電気料になつておるのであります。これは舟山さんも御存じでありますけれども、銀行などに行きますと、行員の預金は特別な利息をつけているものがある。これは普通だろうと思いますが、そういうところで行員の優遇をはかつている。あるいはデパートへ行きますと、デパートの使用人はついておる札よりも二割か三割安い値で買えるというふうな恩典が実はあるのであります。これは一種の所得税の脱法行為なんであります。こういうふうな仕事をやつておる各会社、工場の人は、どんな脱法行為があるかというのが、それらの人の何と申しますか一つのお仕事で、何とかひとつうまいぐあいに触れないように脱法行為をやろう、こういうことになつて来ておる。これがいわゆる納税思想に非常にまずい影響を與えますので、正直な者がいつもばかを見ているということになつておるのであります。そこで私はやはり所得税というものは、所得把握できるものとできないものと、おのずから業種が違うのでありますから、それらに対して把握のできるものは率を安くするとか、把握のできないものは率を高くするとか、そういう制度をひとつまじめに取上げて考えてみる必要があるのじやないかと思うのであります。現在におきましては、税から申しますと給與所得者が一番惡い立場になつておると思うのであります。その次は農業者くらいで、一般の営業者は非常に楽な状態になつておるのでありますが、こういうこともなるほど原則はあるか存じませんけれども、すでに通牒などでその原則を破つておられるのでありますから、そういうようなことにつきましてもお考えを願いましてこの所得税に対するいろいろな問題を一掃せられるように、この上ともお願い申し上げたいと思うのであります。
  33. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまの点は確かに実際問題になりますと、いろいろ問題のある点でありまして、なかなか税法で十分盡せないことがございまして、そういう点につきましてある程度疑問のある場合におきましては、常識的に妥当な結果を得るような通達を出して、運用をよろしくはかるということにいたしておるわけであります。ただ制度といたしまして、今お話のようなものに境をつけて、たとえば営業所得につきましては控除しない、農業所得については控除するというような制度を一般的につくりますにつきましては、どうも私どもいかがであろうかと考えるのでありますが、お話の御趣旨は、常識的には確かにもつともなところがあると考えられますので、運用等におきましては、でき得る限りさつき私が申しました原則等との関連をはかりつつ、妥当を期するように努めて行くようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  34. 竹村奈良一

    竹村委員 実は国税庁の人に伺いたいのですが、しかし局長さんも何ですからお伺いしたい。実は先ほどから内藤さんも話しておられましたが、所得税の、つまり農民課税の問題なのですが、こういう法案ができましても、実際税務署でやつておる実例は、どうもわれわれが納得でき得ないような計算方法をとられているわけであります。しかもこれは二十五年度の実例でありますが、全国的にそういうことになつておる。それは一体政府方針であるか。こういうものは所得税法のどこを見てもないと思うのです。そこで実例をあげて伺いたいのです。これは栃木県でありますけれども、どうしておるかと申しますと、水稻の收穫高を二石三斗と見、わらを百十五貫と見て收入計を出しておるわけです。これはその通りであろうと思います。その次には苗代、肥料代、用人費等必要経費を差引いて、その差引き残りが所得だ、こういう計算でやつておる。ここまではいいわけなのです。しかもこれは事前割当で出しているわけです。それから米の値段は、三等米標準で出しておるわけです。これが標準として農家に指導されておる——あなた方の方から言えば指導だが、受ける方から申しますと割当てられたように思うのですけれども、しかしそういうように指導されておる。そこまではいいのですが、それで申告いたしますと、税務署ではそれはいかぬと言うのです。どういうわけかと申しますと、先ほど申しましたような形で必要経費を引いて、それが石当り何ぼになる、だから実際そうなると四千円くらいになるわけです。ところが税務署ではそれではいけない、一石四千三百円割だ、こういうふうに指示するわけです。そうするとどうしても計算が合わぬから税務署でいろいろただすと、君のところは事前割当は二石三斗であつたけれども郡平均、いわゆる地方事務所平均の割当は二石一斗である。従つて一番初めに收穫高は二石三斗と考えてそれに対して米価をかけ、わらの收益をかけ、そうして片方においては必要経費を引いた残りのものを二石三斗で割つたとするならば、大体四千二十一円か何ぼになるわけです。ところがそれでやるといかぬと言う。つまり個人にはそういうふうに指示しておいて、今度は変な地方事務所の郡平均の二石一斗という数字を持つて来て郡平均の收穫高は二石一斗だから、二石一斗でこの金を割るんだと言う。そうするとどうなるかというと、一石当り四千三百円になる。どうしてもこの計算法には農民は納得が行かないから、私の方はこうだからと言つても、郡平均は、大体必要経費を引いたら一石四千三百円に決定になつたからというわけで、所得税をかけて行く。これは栃木県の例ですが、全国至るところにある。変なところに個人の数字でない郡平均の数字がひよつこりどこからか出て来て、一石に対して三百円だけ多くの負担をかけるということになります。こういうふうにして所得税をとろうとしておる。またこれを強制している。事実が必要ならば、全国至るところにありますからお出しいたしますが、とにかくそういうことがある。これに対して税務署はどう言うかというと、まあ大体あれは予想收穂高よりも実收は多い、だからこういうふうにやつても、大体実牧と違わぬじやないかというような説明をするわけです。これは私ははなはだ納得が行かないと思う。そうなると、政府機関でやつている農業調整委員の事前割当でも、しかも政府が減收だと認めたところの、いわゆる補正におけるところの減收も一切無視して、税務署はできていないかいるかわからぬけれども、かつてなところの数字を持つて来てとる。これが今日の所得税に対して税務署がとる全例なんです。所得税法が改正になるとか何とか言つておりますが、こういうような根本的な、大体われわれから見たならば割当と見えるようなことが行われているのですが、これを改めない限り、いかに所得税法をりつぱに改正いたしましても、事実上の問題といたしましては、決して納得の行く課税ではない。つまり多くとろうと思えば、変なところでとんでもない数字が出て来て、これが基礎になるということになると、私は何にもならぬと思うのです。こういうことがやられているのですが、こういうことを即刻政府は改める意思があるかどうか。この点をひとつお伺いいたしたい。
  35. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の具体的の問題につきましては、よく調査した上でないと、お答えすることはちようとむずかしいかと思いますが、原則だけ申しますと、やはり私どもとしては、所得はあくまでも実際の收入から実際の経費を差引いて計算するというのが、正しい行き方でございますが、実際の收入が一体幾らであるかということを調べるについて、なかなかむずかしい問題があると思います。この調査につきましては、あくまでも現実に即してよく調べまして、妥当を期するようにしなければならない、妥当を期すべきだ、こういう御意見でございましたら、私どももそうでございましてできるだけ調べまして正しい收入をつかむことに努力すべきである、かように考えます。ですけれども、お話の点につきまして具体的の問題につきましては、よく事情を調べた上でないとお答えしがたいので、もしその点必要でございますれば、別の機会にお返事させていただきたいと思います。  なおこの機会に、田中委員より先般お尋ねの資料について申し上げておきます。一つは松尾さんのお尋ねだつたかと思いますが、生命保險に準じまして強制的な社会保險、こういうものについて二千円を限度として控除するということにいたしますると、減收額が三十三億五百万円程度、今の案に対しましてさらに減る。そういう計算になり得る。これは先般松尾さんでございましたか、あるいは竹村さんでしたか、お尋ねがありましたのに対するお答えでございます。社会保險全部でです。  もう一つは、所得税の税率の下の方を少し低くしたらどうかという意味で、二十のところを十にして、以下順次四十万円程度のところまで上にずらして行く、こういう場合に税收入がどうなるかという御質問でございますが、かりに税率を五万円以下一〇%、五万円超一五%、十万円超二〇%、十五万円超二五%、二十万円超三〇%、三十万円超三五%、四十万円超四〇%、五十万円超四五%、あとは政府の案と同じ、こう見まして減收額を計算いたしますと、源泉所得税で四百八十億四千五百万円、それから申告所得税で三百五十一億八千七万百円、両方合せますと、約八百三十二億三千二百万円程度の減收になります。しかもそのうち大部分の減少額は五万円以下であります。但しこれは五万円以下の所得者だけではございませんで、たとえば十万円の人の所得も、最初のブラケツトの段階は五万円の刻みでありますので、影響は特に大きいのでございますが、源泉で五万円以下は四百二十億一千五百万、申告では百十八億二千二百万、五万円以下の税率を二十を十にすることによつて、それだけ減るという数字になります。  なお税率の点につきましていきなり二十は高いじやないかというお気持を外部では一応持つのでございますが、ただ控除した残りの所得金額でございますので、控除前の所得金額に対しますと、御承知の通り非常になだらかなカーブになつているわけであります。五万円以下というのは課税所得金額でございまして、それぞれの所得金額から、基礎控除、扶養控除、不具者控除、あるいは保險料等の控除を行つた残りの所得五万円以下というのが、最初のブラケツトになります。従いまして、もとの所得金額に対しまして、所得税の負担が一体どういうふうになるかということを、おわかりいいように、先ほど出してある資料によりましてもわかるのでありますが、負担率の調べを本日お手元にお配りいたしておきましたので、これをあとでごらん願いたいと思うのでございます。たとえば給與所得の場合でありますと、五万円の場合では、独身者の場合は現行法によりますと六・八%の税の負担ですが、今度の改正法によりますと、控除が上りました結果、税率はすえ置きでございましても四・八%に下る。それから扶養親族が一人ありますと、現在は二・二%の負担が今度はかからなくなる。それから七万円の場合におきましては、現在は独身者が九・七一%の負担ですが、それが改正案によりますと八・二八%の負担になる。扶養親族が一人ある場合には、六・二八%が四%に下る。扶養親族が二人、つまり奥さんとお子さん一人でございますと、今の税法では二・八五%かかつておりますが、それが今度はかからない。さらにその間の六万円の刻みでございますと、ちようど中間ぐらいの負担率になります。五万円以下の独身者、たとえば四万五千円くらいの独身者でございますと、四・八%よりももう少し低い負担率というふうに、所得に対しましてはある程度なだらかな累進率になつておるのであります。その辺よく私ども一般から、いきなり二〇%はひどいということを聞かされまして、全体の所得に対しまして二〇%かかるがごとき印象を與えているのでございますが、実際は基礎控除、家族控除の結果、総所得金額に対しましては、下の方の負担はもちろん非常に低いものであり、所得がふえるに従つて順次負担率が上つております。そのカーブを描きますればはつきりすると思いますが、急いでつくりましたので、とりあえずこういう資料を御参考までにお配りした次第であります。
  36. 竹村奈良一

    竹村委員 そういうあとからいろいろお答え願つたものについては、またあとからお尋ねするとしてさつきの続きでございますが、具体的なことが判明しなければと言う。従つて具体的なことは別に国税庁等で調べていただきたいと思うんです。しかし今おつしやつたように、これは実際の收穫から実際の必要経費を引いたものに課税するという、その通りであります。従つてその通りにやつていない場合、これは具体的なことになると調べなければわからんと言われますが、たとえば実際に一石三斗の收穫高があつて、それから必要経費を引いた残りに税金を賦課するのじやなしに、税務署がかつてに見込んで先ほど申しましたように賦課した場合には、そういう事実があるとするならば、これは完全にお取消しになる用意がありますか。これを一点お聞きしたい。そういたしますと、これは農業所得が全国至るところで問題になる。だからその点は事実であるならば、おそらく税法から行くとお取消しになるはずなんです。従つてこれは軽減されるはずなんですから、その点だけまずはつきりして、いただきたい。
  37. 平田敬一郎

    平田政府委員 これも私からお答えするまでもないと思いますが、不服がありましたら再調査の請求、その決定に対して不服があれば審査の請求、その決定に対して不服があれば訴訟という方法によつて、納税者は幾らでも争い得るのであります。
  38. 竹村奈良一

    竹村委員 その点は、私はそういうふうにお答えくださるだろうと思つた。ところが実際問題として農家が、たとえば一軒がそういう形で計算されて、九百円あるいは千円くらい多くかけるということになつた場合に、はたして訴訟までできるかどうかというのが、今日の現実なんです。現実の百姓の姿です。これに対して一人々々では、とてもこれは手数もかかるし、税務署に行つても、何とかかんとか言われますから、どうしてもこれは農家自身が出て行つてやることはできぬ。まあええ、じやまくさいだめだからというて泣き寝入りしておるのが今日の現実なんです。だから所得税は高い、農業所得税は得に高いという声が起るわけですが、こういう場合には、たとえば政府が承認している機関——承認している機関といいますと、農家の協同組合とかあるいは承認するような団体等が、これに対する異議の申立てを一括してするということに対して、そういう道をお開きになる気持はないかどうか、その点はどうです。
  39. 平田敬一郎

    平田政府委員 誤解のないように申し上げておきますが、そういう争う道が残つておるから、税務署あるいは行政官庁はいい加減なことをしてもいいという意味では全然ないのでありまして、もちろん政府といたしましては、でき得る限り事業に近い所得を、まつたく事実通り所得把握するということに、非常な努力をいたしておるわけであります。従いまして、できる限り私どもとしましては、そういうようなことにならないで、所得が円満にきまつて行くということが望ましいと、実は考えておるのであります。しかしそれでもどうも見解の差等があつて不服がある場合におきましては、これはそういう道が開かれておることは、今話した通りであります。その場合におきましては、もちろんこれは納税者がみずからする。できない場合におきましては代理制度がありまして、その代理人等に頼んでやることもさしつかえないと思いますが、ただ集団的に行うということにつきましては、ややもすると行き過ぎになりまして、理由のない人まで一緒に入つて来るというのが実例上相当あるのでございまして、そのような方法制度として認めるのはいかがであろうか、適当ではあるまい、かように考えております。
  40. 竹村奈良一

    竹村委員 もちろんこれは制度として公然と認められないと言われ、あるいは他人が入つて来て、ややもすれば騒動になると、こう言われますけれども、しかし私が申し上げておる団体とは、政府が承認しておる団体、こういうようなものを指しておるわけです。これはおそらく政府が承認する協同組合その他の団体がそういうことを行うということは、結局そういう騒動が起るというようなことにはならないというように考えるわけですが、たといそれが少々行き過ぎがあり騒動になつたといたしましても、問題は税務署の方で税法を無視して課税したところに原因がある、私はこういうふうに考えます。それは税法通り今おつしやつた答弁通りのことをやられたならば、だれも何もあえて好んで税務署に行きたくない。行くというのは、公然と納得できぬような割当をやられるからだ。これは栃木県の協同組合連合会の説参明書ですが、これも協同組合連合会ですから、おそらく政府は承認し奨励している団体だ。それが出したところにおいてもこうなんです。こういうことが全国にやられるから、いろいろな問題が起るわけです。問題の根本は税法通りやられれば、たといそれが高くても泣く泣くしんぼうするのですけれども、実際どうも日本のそろばんでは、勘定のできぬような勘定の出し方をされるから問題が起るのです。その起るところの原因、責任というものは政府にあり、税務署にあるわけです。従つてそういう点については、今後起らないように、政府は特に留意してやつてもらいたいということと、そうしてもう一つは、そういう場合においてはその団体が団体的に交渉することは、これは承認すべきじやないか、こういうふうに思うのであります。
  41. 平田敬一郎

    平田政府委員 竹村さんは、違法なことをやつているということがわかつているということを前提にして、お話になつておられるようでございますが、そこが問題だと思うのです。これがはつきりいたした場合には、もちろん税務署は取消しますが、しかし見解の差があり、よくわからぬ——納税者の主張には、中にはことに集団的にやつておる全国の例をたくさん知つておりますが、そのような理由が、第三者から見て全然相立たぬようなことを相当集団的にやつております。そういうようなものに対しまして当然違法なことをやつておるのじやないかときめてかかつておられるようですけれども、私はそこに問題があると思うのであります。従いまして、もちろん私どもとしましては、さつき言いましたように、なるべく正しい所得顔を調査して決定をして、そういう紛争が起らぬようにということで努力いたしております。どうしても見解の差があつてうまく行かぬ場合には、法的手段があるということを申し上げた次第でござまいすので、その点御了承願いたいと思います。
  42. 竹村奈良一

    竹村委員 それではもう一つ実際に申し上げます。これは現実なんだから……。大体二石三斗の收穫高があつて、それから必要経費を引いて、残りのものを今度は二石三斗で割つて、一一石当り何ぼの必要経費を引いたら、どれだけの米の收入だということにして、郡内でとるのならいいのですけれども、たまたま郡内の平均の一石一斗を見て、初めは二石三斗で計算して、今度は二石一斗で必要経費を引いたもので出すということは、これは事実上私は違法だと思うのですが、どうなるのですか。そうなりますと三百円違うのです。三百円現に多くとられておる。これは税上間違いですか。
  43. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の点は事実の問題でございますので、先ほど申し上げましたように、よく事実かどうか調べました上でお答えいたします。
  44. 竹村奈良一

    竹村委員 その問題は事実を調べてからでいいですが、事実そういう計算方法があつたらどうかということです。もしここでそういうことをやられたら、その計算方法は間違いだということをお認めになるのでしよう。
  45. 平田敬一郎

    平田政府委員 そういう計算方法をとつておるかどうか、これもよく調べてみないとわからぬということです。
  46. 竹村奈良一

    竹村委員 とつたらどうです。とつたら間違いでしよう。どうです。その点ははつきりしていただきたい。
  47. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の計算方法とおつしやるけれども、私には実はよくわからないのでございます。もう当然所得の標準というものは、農業所得につきましては、先日もお話しましたように、石当り幾らかという標準をつくりましてその標準を個々の農家適用して行く。但し農家の中で標準よりも比較的状態がいいもの、それから非常に荒地等で状況が惡いもの、こういうものにつきまして、若干の差等をつけて適用をするというようなこともあると思います。従いまして、お話のように一律にそういうようなことをやつておるのかどうか、これもよく調べてみないとわかりませんが、事実問題については、よく調査した上でお答えしたいと思います。
  48. 竹村奈良一

    竹村委員 私は局長に対しては、これ以上このことで問答いたしませんが、ひとつ国税庁を呼んでもらいたいと思う。これは事実全国的にやつておる。この点をはつきりしたいと思いますから、国税庁が来てから質問したいと思います。
  49. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 午後国税庁長官を呼びます。——田中君。
  50. 田中織之進

    ○田中(織)委員 若干お聞きしておきたいと思うのであります。ただいま同僚松尾委員から要求いたしました社会保險に関する保險料を控除する場合に、大体どの程度の減收になるかということで、三十三億五百万円ということでありますが、この数字を出していただいただけではわれわれ不満なんです。この程度のものならほかの調査を十分にやることによつて、税收を確保できると思うのでありますが、この際大蔵当局といたしましては、今度は生命保險の二千円までの部分については課税しないことに相なつたのでありますから、社会保險の社会政策的な意義にかんがみまして、これらの保險掛金に対する課税についての考慮をしていただきたいと思いますが、その御用意があるかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  51. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の点につきましては、実は先般松尾委員にお答えいたした通りでありまして、今回生命保險料の控除を認めましたのは、主として任意貯蓄の奨励をはかるというところに、非常に重点を置いているわけでございます。従いまして当然法律的に強制的にかけるものにつきましては、今回は考慮しない。但しそういうものにつきましては控除した方がいいかどうか、これは確かに一つの問題が残つていると思います。しかしその場合におきまして勤労控除の一割五分をどうするか、あるいはその他の人の場合におきまして、医療費の控除等が今の制度ではたしていいかどうか、これはなかなか問題が多いのでございます。従いまして今回といたしましては先般も申し上げましたように、主として生命保險の増加に資する、こういう意味におきまして、生命保險料について考慮をすることにしたらどうか、こういう趣意でありますことを重ねて申し上げておきたいと思います。
  52. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大蔵大臣は財政演説ではつきりと、今度の税制改革にあたつては公平の原則にとらわれることなく、資本の蓄積を強行するという言葉を大胆率直に言つておられる。おそらくその大蔵大臣のもとの主税局長として、ただいまのような御答弁はやむを得ないと考えられますけれども、資本の蓄積をやらなければならぬことは、経済自立の建前からわれわれもこれを認めるにやぶさかではないのでありますけれども、少くとも課税の根本原則である公平の原則を蹂躙してまでやるような税制改正に対しましては、われわれは絶対に反対です。  そこで私はその次に、先ほど説明を願いましたいわゆる課税所得最低五万円以下に対しまする百分の二十を十に下げる場合、以下ずつと五万円刻みで五%ずつ大体五十万円まで行くという場合の減收の予想をあげられたのでありますが、そこでこの減收予想を立てられました五万円以下の階層の所得の全体の見積り、これを五万円、十万円、十五万円と刻んでひとつ説明を願いたいと思います。
  53. 平田敬一郎

    平田政府委員 これは御承知の通り先ほども申し上げましたように、五万円以下の所得の部分については、全部の納税者の所得が実はそこの部分にあるわけでございます。その部分に二十の税率が適用になる、そういう意味における所得の税率適用別の階級区分の課税所得金額でございますが、それによりますと——もちろんこれは従いまして基礎控除、扶養控除を控除した残りの所得でありますが、申告所得税の方が五万円以下が所得が千百八十二億七千百万円、五万円を越え十万円までの金額が七百二十二億五千百万円、十万円を越え十五万円までが四百九十五億五千万円、十五万円から二十万円までが三百四十一億円、二十万円から三十万円までが三百九十二億四千五百万円、三十万円から四十万円までが二百二十億三千五百万円、四十万円から五十万円までが百四十五億五千五百万円、五十万円から七十万円までが百八十二億七十万円、七十万円から百万円までが百三十一億五百万円、百万円を越える金額が二百十一億一千百万円、合せまして課税所得で四千二十四億円であります。それから勤労所得の方はもつと下の方が実は多いのでありまして、大体五万円以下が五千三百八十四億一千五百万円、これはもちろん基礎控除、扶養控除を引いた残りの金額が五万円以下でございます。五万円から十万円までが一千九十六億一千四百万円、十万円から十五万円までが六百六億七千六百万円・十五万円から二十万円までが三百八十九億五千百万円、二十万円から三十万円までが四百三十三億二千三百万円、三十万円から四十万円までが二百三十八億七千八百万円、四十万円から五十万円までが百五十八億千五百万円、五十万円から七十万円までが百十一億四千九百万円、七十万円から百万円までが百三十八億七千五百万円、百万円を越える金額が二百十七億一千六百万円、課税所得の総額が八千八百五十四億千二百万円、大体こういうふうになつております。
  54. 田中織之進

    ○田中(織)委員 もちろん課税所得五万円はそれ以上の所得者の場合も全部共通した部分になりますので、非常に大きな金額になるということでありますが、この所得見積りにつきましても問題があろうかと思うのであります。局長の説明せられるように、源泉、申告ともに合せて八百三十二億三千五百万円の減收予想になるということになりますと、所得税の総額二十六度の二千二百二十七億の約三分の一の厖大なものが、結局減税されることに相なるので、この内閣としてはおそらくそういうことはできないだろうと思いますが、私はやはり今説明されましたような各階層別の所得額というものを見て参ります以上、より以上にわれわれが主張するように、この所得の低い階層に対しまする課税率というものについての思い切つた引下げが、なされなければならないと思う。これはいきなり現在の二〇%を一〇%に引下げるということが無理だといたしますならば、その間を一五%という刻みにすることによりましても、相当の軽減がはかられ得ると思う。一面高率所得に対する累進率をもう少し考えて行くことによつて、税收の少くなる部分は他の累進課税によつてカバーするという方向に向つて、努力をすべきではないかという考え方から、御質問を申し上げておるわけでありますが、これ以上は意見になりますので申し上げないことにいたします。  それから次に今回の改正で基礎控除並びに扶養控除につきましては、それ万円まで引上げる。あるいは扶養控除が今度一万五千円になつたのでありますが、これを三万円程度まで引上げて行くというような形によつて、全般的にやはり控除によるところの、いわゆる課税上の公平の原則を貫いて行く面における配慮というものが、さらに一段と進められてしかるべきだと思うのでありますが、その点について、立案にあたりました大蔵当局として、そういうことをお考えなつたかどうか。
  55. 平田敬一郎

    平田政府委員 ちよつと補足して申し上げておきますが、先ほど、後に申し上げました数字は、勤労所得税と申告所得税と合算した数字でありまして、従いまして勤労所得の分は、それを差引きましたのが該当しますことを、修正いたしておきます。その勤労所得の分を申し上げてもよろしゆうございますが、大体差引きますれば出て来ますので、御了承願いたいと思います。勤労所得の分と申告所得の分とを合計した数字を、二度目に申し上げたのでございます。その点御了承願いたいと思います。  それから今の基礎控除と扶養控除の問題でございますが、これは率直に申し上げましていろいろ意見のあるところだと思います。大分今度も上げましたが、もつと上げたらどうかという主張があるようでありまして、先日大蔵大臣も財政事情との兼い合いできめざるを得ないので、将来財政事情が許せば、引上げることについても考えたいというような話もあつたようでございますが、私ども今回といたしましては、実は基礎控除五千円の引上げで約百八十億円の減收になります。それから扶養控除三千円の引上げで二百四十億円の実は減收になります。大体基礎控除は千円引上げることによりまして三十四、五億、それから扶養控除は千円引上げるに伴いまして七十四、五億、約八十億近く減ることになりますので、これはやはり所得税に対する税收の全体をどういうふうに持つて行くかということと関連して来ませんと、計算だけいたしましてもなかなか具体案にならない、こういうところが多いことを御了承願いたいと思います。もちろん今の千円当りの数字は、上の方になるに従いまして少しずつは逓減して行くのでありますが、相当大きく所得税收入に響くものであるということを、御了解願いたいと考えておるのでございます。従いまして税率の点につきましても、控除額の点につきましても、現在に比較いたしますと、今度の改正は相当な改善になりますので、昭和二十六年度といたしましては、この程度の改正案でやるのが妥当であろう、このように考えておる次第でございます。
  56. 田中織之進

    ○田中(織)委員 午後国税庁長官はおいでになりますか。
  57. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 参ります。
  58. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そうすれば、同時に中小企業庁の長官か振興部長でも呼んでいただきたいと思います。それは企業組合に関しまする課税の問題について、新たなる資料が出て参りましたので、質問いたしたいと思います。  それでは、この点は一昨日でありましたか、同僚松尾君から御質問を申し上げたのでございますけれども、退職金に対する課税についての、少くとも免税点を設けてやる配慮を、この間松尾君は質問したのであります。たとえば現在勤労控除が一五%になつておるというような面等を、考えなければならないのじやないかという主税局長の御答弁でありましたが、少くともそれによつて今後生計を確保しなければならない人たちが多いのであります。そういう意味において、私はこれの課税の問題については、少くとも一定の免税点を設けてやることが必要だと思いますが、主税局長に重ねてこの点についての御答弁をお願いいたします。
  59. 平田敬一郎

    平田政府委員 退職給與に対する課税につきましては、先般もお答えいたしたかと思うのでありますが、以前は御承知の通り五割を控除いたして、半額を総合して課税するということにいたしたのでありますが、昨年から全部総合課税という趣旨を貫きまして勤労所得であるから一割五分の控除を認めて課税する。なお一時にある年に多額の所得がまとまることによりまして、累進税率の高い負担を受けますので、それはどうも公平の原則に反するから、これは五箇年間平均課税をすることを認め、額の少額なものについては一年限りで、五分した金額を加算いたしまして、その税率を求めまして、残余の金額にも乘じましたものを税額とする、こういう方法課税することにいたしたわけであります。しかし計算してみますと、前より若干負担がふえるようでございますが、若干減る面もあるようでありまして、それがはたしていいか惡いか、それも議論のあるところだろうと思いますけれども、昨年改正いたしましたように、山林所得、譲渡所得退職所得、こういう一時的な所得につきましては、そのような課税方法がいいだろうということで、実施いたしましたような事情もございますので、今すぐこの制度をさらに改正するのはどうであろうかという意味で、本年としてはそのままにいたした次第でございます。一割五分の控除は、勤労所得の控除としまして、額の制限を設けないで、これを控除するようにいたした次第であります。
  60. 田中織之進

    ○田中(織)委員 これは昨日質疑を打切られておるようでございますが、たとえば国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律で、これまた一年間延期しなければ——公団その他閉鎖機関等の残務整理が遅れておる等の関係から、また今年度において新たに公団等の廃止せられる人たちの退職規定についての法律が、本委員会に付託されおるわけでありますが、これらの点を考えてみましても、退職金というものは現在一旦退職いたしますと、いわゆる顯在五十万、潜在四百万の失業群のただ中に追い込まれて、再び就職することが非常に困難になつて来ておる段階におきましては、私は一時的にもらいますわずかに二箇月や三箇月分もらう分についての課税ということについては、特に考慮しなければならない段階に来ておると思うのであります。この点は取扱いの上で相当程度の考慮もされ得ることと私は考えるので、その点についてはなお大蔵当局に御研究を願いたいと思うのであります。  そこでその点に関連いたしまして私今度政府の方が国家公務員等に対する退職手当臨時措置について、一年間だけの延期についての提案をなされたのでありますけれども、一年延期することによりまして、勤続年限が従来は三年、せいぜい四年どまりでありましたものが、五年、六年にわたるような勤続年数を持つて来るものが出て参つておると思うのであります。そういう点については、現行法の勤続期間三年以上のもの一律三箇月という形で、これらの勤続年限の長い人たちに対する配慮というものが十分になされておらない、こういうように考えるのでありますが、この点について、もちろんそういう勤続期間の長期にわたる人の数の点が問題であり、同時に予算の裏づけの問題も生じて来るかと思うのでありますが、大蔵当局としてこの法律の作成にあたりまして、そういう点についての考慮を拂つていただけたでありましようかどうか。この点を関連してお答えを願いたいと思います。
  61. 磯田好裕

    磯田政府委員 ただいま御指摘になりました、今度の改正法律案におきまして、勤続年数の長くなつた者に対する配慮をしたかどうかという問題でございますが、国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律と申しますのは、実はこの前にはポツダム勅令によりまして政令で行つていたのであります。それで昨年この法律を制定いたしまして、その、制定する際におきまして、昭和二十六年度以降におきましては、恒久的な恩給制度並びに退職制度をつくるという建前のもとにできました、暫定的な法律ということになつておるわけであります。従いまして今度の改正法律案におきましては、実は先ほど説明したのでございまするが、恒久的な恩給制度に関する人事院勧告がまだ出ない。従つて今度の国会中においてこれを制定することは非常に困難である。従つてそれと不可分関係において研究さるべき退職手当の問題につきましても、恒久的な制度をつくる機が今熟していないというような関係におきまして、さしあたりこの効力を一年間延長する。その支給基準につきましては、従来の基準をそのまま踏襲するという建前のもとにやつておるわけであります。先ほど御指摘になりました効力を一年間延長することによつて、一年間勤続年数のかえる者があるはずであるから、従つてそういうものに対する特別の配慮を行うべきではないかという問題につきましては、この法律国家公務員全般に対して適用さるべき基準でございますので、従いまして基準としては現在の通りでよろしいのではないか。すなわち二十五年度中にやめたところの国家公務員につきましても、一応現在の基準によつて支拂いがなされておるわけであります。すなわち昭和二十五年度までにやめた者でも、四年勤務しておる者も五年勤務しておる者もあるわけであります。そういう者に対しても、現在の法律による基準によつて支給いたしておりますので、ただ一年効力を延長する場合におきまして、そういう効力延長によつて新たに勤続年数の長くなつたというようなことは、特に取上げる必要はないのではないかということで、政府としては研究はしてみたのでございますが、特に問題としては取上げなかつた、かような状況に相なつております。
  62. 田中織之進

    ○田中(織)委員 しかし私考えるのでありますが、他の諸君はそれぞれ転職している。しかし公団並びにこういうような出先機関等の問題で、残務整理のために従来からこれらの仕事に従事していた者のうち、当然何人かは残らなければならない。いわゆる残務整理のために、公共の仕事のために犠牲的な立場で、他に就職の機会があつて公団に残らなければならぬような人も出て来ると思う。そういうような人に対して、整理期間が延びたというような関係から出て来るそういう人たちについては、私はやはり特別の配慶をしてやらなければならない点があると思う。今お答えになりましたように、公務員全体に対するいわゆる恩給法の改正の問題は、この国会には間に合いそうもないということは、人事院の慶徳君の方でも、各組合の代表者に話をされておるような状況でもありますので、私が特に取上げるのは、公団及び閉鎖機関等の関係でありますけれども、これらの公団の諸君は、これは存続期間も最初から短かいということも考えられておりますけれども、いわゆる恩給制度あるいは共済組合というような、福利厚生施設の恩恵も受けておらない。さらに民間産業の場合には、いわゆる会社所定の退職手当をもらつたほかに、失業保險法の適用があるわけでありますけれども、これらの諸君については、たしか失業保險法の第七條及び施行令の一條によつて適用を除外されておると思う。そうなればここで二箇月半か三箇月分もらうこの退職手当というものが、これら約一万二千の人たちの、まさに次の就職を確保するための食いつなぎ資金であり、また現実の生活資金であるということに相なると思います。特に期間を延長しなければならないということは、そういう仕事が継続されるということの前提の上に立つてのことなので、むしろ予定の通りにされて、適当な就職を心配してもらえば、その方に行きたい人たちも私はたくさんおるだろうと思いますが、しかしそれはいろいろの事情で行かれない。そして本年度中にやめる公団の仕事の残務整理の一段落とともにやめなければならぬ人のためには、それを考慮さるべきではないか。ことに私は、最近における物価事情というものを考慮いたしまするならば、できれば二年以上三年未満の方、これは現在では二・五箇月分ということに相なつておるのでありますが、これを〇・五箇月分くらい引上げると同時に、三年以上四年未満の方、これにつきましては、四箇月程度のものを支給していただくようにしてもらいたい。現実に、たとえば閉鎖機関及び公団等の経理の関係を見ましても、人件費においても予算にゆとりを生じて来ている。その他物件費の関係においてもゆとりを生じて来ている。それが会計法の関係で、こういう規定がないと、それを流用するわけには行かないという現実の悩みに、経理上直面しておるのが実情だと思う。しかしその意味で、現在の予定されておる人件費のわく内で、退職されて行く人たちの退職手当を、若干増額をしたところで確保され得る、私はかような計算をもつておるのでありますが、この点について大蔵当局としては、さらに御考慮を願う余地はないでしようか。
  63. 磯田好裕

    磯田政府委員 ただいま御指摘になりました点は、国家公務員等に対する退職手当臨時措置に関する法律の附則第五項並びに第七項に関連する問題かと思うのでございますが、この点につきまして、ただいまさらにこの基準を引上げたらどうかという御意見の御表明があつたのでございますが、この点につきましては、国会におかれまして、従来の退職基準並びに一般退職の場合の基準というような点を、いろいろと十分考慮されて決定せらるべき問題だと、かように政府としては思うわけであります。
  64. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点については、大体政府の意向がわかりましたので、私らの力で若干の——これについては質疑を打切つておられますけれども、政府提案に対する修正について御相談したいと思いますから、この点について後ほど、午後の委員会の前にでもちよつと御相談に乘つていただきたい、かように存じます。なお国税庁長官がお見えになりましたならば、税制の問題について若干の補足的な質問をいたしたいと思います。これを保留して一応午前中の私の質疑は打切ります。
  65. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 了承しました。  午後は二時より会議を開くこととし、これで休憩いたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後三時二十七分開議
  66. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 それでは午前に引継き会議を開きます。  税制改正八法案外国民金融金庫法の一部を改正する法律案を議題といたし、質疑を許します。竹村君。
  67. 竹村奈良一

    竹村委員 午前中主税局長にお尋ねしたのですが、この件についてひとつ国税庁長官からお答え願いたいと思うのです。それは所得税の問題でありまして、これは農業所得の問題でありますが、実は栃木県におきましての農業所得の現在かけておるかけ方というのは、どうも税法とは違う、こういうふうにわれわれは考えるわけです。というのはどういうかけ方をやつておるかと申しますと、收穫高が一石三斗、これは個人の事前割当でありますが、それにわら等を入れた総收入から、御承知のようにいろいろ必要経案を差引いておるわけであります。ここまではその通りでありまして、われわれは異議はないのであります。ところがここで奇妙なことには、その税務署管内の各地方事務所の郡全体の割当が平均して二石一斗になる。従つて今度こうして先ほど申しましたやつから、必要経費を引いた残額に対して、これを二石一斗で割つて、そうして一石のいわゆる所得、つまり必要経費を引いた後の所得と、こういうように計算して、各農家に、君のところは何石だからこれだけの所得があるということで、割当てておるわけであります。これを見ますならば、結局において一石三百円というものは、はつきりと所得のないものを、あるとして税務署はかけておる。こういうことは結局税法が改正されましても、こういうふうに税務署でかけられ、こういうような取り方をされること自体が、税法と矛盾した形においてやられておるのじやないか。だからこういう問題については、すぐこれを改めて訂正される意思があるかどうか。この意見をお伺いしたいと思います。
  68. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいまの御質問の点には、計数上一見お話のような、誤解を生ずるような方法がとられておるかと思いますが、御説明申し上げれば完全に御了解を得られるものと考えるのであります。もちろんこれはその後になつて、私ども十分に調査をしてみなければ事実関係は判明いたしませんが、大体の筋道をただいまのお話によつて考えてみますると、こういうことになるかと思います。御承知の通り農業関係につきましては、各農家の記帳が必ずしも正確でない。従つて勢い標準率によらなければならないというところが非常に多いのであります。しこうしてその標準率の算定をいたすにあたりまして、ただいまお話の反当り二石三斗收穫があつたというふうに見ておるのでありますが、その二石三斗に対して総收入が幾ら、それから反当りの経費が幾ら、差引の所得幾らというものが出て来るわけであります。それを二石一斗で割れば問題はないのでありますが。それを二石三斗で割つておるというお話のようであります。それはどういうことかと申しますと、この地域につきましては税務署で実際の收穫量の調査をしてみました結果、二石一斗じやなしに、二石三斗の收穫があつたというふうに大体結果が出ておるのであります。従つて二石三斗で割つて、それをそれぞれそれだけの増收のあつた部分についての数量にかけて行けば問題はないのであります。ところがそういうふうな計算方法、つまり二石三斗で割らないで二石一斗で割つて、しかも收穫数量は二石三斗とらないで、二石一斗をとつたということなんであります。計算をどちらにしてそろばんをはじいてごらんになつても、結果は同じだということはすぐわかると思います。もう一度申し上げますと、收穫量は二石三斗であつた。ところが事前割当の数量は二石一斗であつた。ところが実際の経費を計算する際には、二石三斗として收入も経費も計算しておるのであります。従つてその純所得に対して一反分の所得を二石三斗で割り、それをさらに二石三斗にかければ同じ結果が得られるのであります。ところがそれを二石一斗で割つて、さらにまた二石一斗でかければこれまた同じ結果を来すのであります。そういう意味でありまして、計算の過程において誤解を生ずるような計算の仕方をしてあることはあり得るかと思うのでありますが、結果においては何ら不当なことはないのであります。適正な計算に相なつておると考えるのであります。
  69. 竹村奈良一

    竹村委員 ややこしい説明ではどうもわからない。大体二石三斗できた。そうして割当がこれこれ来た。そうしてこれに対する收入金額が一万三千二百五十九円になつた、こういうふうに計算しているわけです。そしてその他の部分は必要経費でありますが、必要経費は三千九百七十八円かかつた従つてこの收入計から必要経費三千九百七十八円引いたものが、結局九千二百八十一円、これが差引の所得となつているわけであります。ここまではその通りですよ。これは税法通り問題はないわけなんです。ところが今度はこれを個々の農家にかける場合に、この人が今二石三斗ですから、これが四石、五石となる場合に、九千二百八十一円というものを二石三斗で割つたならば、われわれの勘定では四千三十七円になるわけであります。従つて一石四千三十七円として十石とつたものに十石をかけられる場合においては、われわれは何ら異議はないわけなんです。これはいろいろ根本的な問題はありますけれども、しかし計算の仕方においてはその通りなんです。ところがこの九千二百八十円を二石一斗で割られたならば、一石が四千三百円とこういう計算になるわけです。この四千三百円として十石にかけられるのと、四千三十七円にして十石にかけられるのとは、おのずから私は違うと思う。そう私は考えるのですが、一石一斗で割られたというのは、結局その村の地方事務所の平均をとつて割られるというところに、個々にかけられる場合と相違があると私は考える。従つてお説のように、單に同じだという理論は私は成り立たぬと思うのですが、これはどうですか。
  70. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 この場合には大体税務署で実收を調べてみますと、事前割当に対して大体一割の増收があつたといつております。従つてきわめて簡單計算の例を申しますとおわかりになると思いますが、十かける十一と十一かける十とは同じ答えが出て来ます。と申しますのは、二石三斗で割つて、さらに二石三斗でかければ、ただいまお話の反当りの実際の收入高、ただいまお話の九千二百八十一円というものが出て来る。ところがこれを二石一斗で割つて一石一斗をかければ同じ九千二百八十一円が出て来る。結局一割の増を單価で計算した場合と、数量で計算した場合と同じ結論が出て来る。十かける十一と十一かける十は同じ答えが出るのと同じわけなんです。ただ計算の過程が誤解を起しやすい計算方法をとつておるということは、あなたはおもしろくないと思うかもしれませんが、結論的には何ら不当なことはないということを申し上げたのです。
  71. 竹村奈良一

    竹村委員 問題はそこにあると思うのです。私もそうだと思つておるのです。しかしそれは正当論にはならぬと私は思う。これはもちろん実際税法から申しますとお説の通りなんです。割当は二石三斗であつて、いわゆる予想收獲高一石三斗であつても、実收において二石四斗あり五斗あつた場合には、これをとるわけです。そうでしよう。しかしそれならばそれで、そのものを計算される。あたかも二石三斗割当はそのままのごとくにして、計算方法において一割の何を見るということは、これは私は正しいが、いわゆる税法に基いて納税を奨励される当局の政府のやり方としては、はなはだ私は納得が行かない。たといそれが二石三斗であつても、二石五斗あれば二石五斗としてこれをとるのです。それをまず計算方法で割つておられるというところに問題があると思うのです。と同時にもう一つは税務署の調査で、一割のやみ米があると見たとこうおつしやいますが、そういたしますと、政府みずからお認めになりました、いわゆる補正割当等は一体どうなんだ。これは政府機関で、一方の農林省関係においてはできないからといつて、補正を見ておられる。しかも法的な機関において、法的に農業調整員というもので見ておられる。それに税務署は実際それだけあるんだからといつてかけられる。これの矛盾はどうか、これを聞きたい。  もう一つはその計算によりますと、平均米価というものは大体三等で全部計算しておる。これはおかしいと思う。これは日本政府が拂つておるところの等級米を見ましたところ、先般も少し私は申し上げたのですが、これは農林省の統計がはつきり出ている。つまり今日三等を標準にして、米価が税務署できめられるような等級ではないわけです。これは詳しく申し上げることは時間の関係もありますので申し上げませんが、実際において今四等がおもなものです。そういたしますと、結局におきましては、この三等で計算されるということ自体もこれは納得できない。もし税法から言うならば、一等のものは一等で計算し、四等のものは四等米の価格で計算されるのが当然なんです。ところがこれはもちろんわかりにくいんだという形で、こういうふうにやられるということについては、われわれは納得できないのです。これに対していつでも食糧事務所等をお調べになればすぐわかるわけですから、そういう点についてもしやられるならば、その村の平均は一体どこにあるかということを見ておやりになるのが当然なんです。県下一律に三等米にされるということは私は納得できない。こういう点については、どういうように処置されるか、お伺いしたい。
  72. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 徴税当局といたしましては、実際の收穫が幾らあつたかということにつきましては、十分に調査してその結果に基いて、実態に即するように收穫量を見ておるのであります。しかしながら同時に農林省の調査その他のものは相当権威のあるものですから、それらのものは十分に尊重し、参酌しながら課税いたしておるのであります。そうしてただいま標準の米価を三等米にするというようなお話であつたのでありますが、この標準の米価につきましては、もちろん時期的なずれがありまして、供出が完了した後に初めて何等が平均であるかという、完全な標準米価というものが出て来るわけであります。しかしながらこれは時間的な関係がありまして、普通の段階において最終までとるということはとうていできませんから、標準をつくりますまでの資料は、農林省関係の官庁から資料をいただきまして、それによつてその地方々々の適切な標準米価というものをきめているわけであります。
  73. 竹村奈良一

    竹村委員 そういたしますと、食糧事務所というよりはむしろ政府の方から補正をされた分は、やはり補正を一応十分参酌すると言われるのですから、これは認められるという理由を持たれると思いますが、そうしますと、先ほどの一割やみ米を加算されたいということは、一割はやはり多くとつているということになるわけですが、こういう場合におきましては——單なる議論はしたくないのでありますが、結局、この補正を認める政府のそれを一応の重要参考資料としてとる、こうおつしやいますと、現に一割やみをかけられたという場合においては、これは当然これによつて生じた差額だけは取過ぎでありますから、私は納税者に対して返還しなければならないと思うのです。そういう場合には、朝からの質問によりますと、これは税法に基いて異議申立てもあるし、あるいは返還交渉をやつたらいいとおつしやいますけれども、農家は一々わずかなものにそうは参らないわけでありますから、こういう問題については一体どういうふうに処置されますか。
  74. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 これは事前割当の数量によつておるのですが、補正割当は大体三割以上の減收の田畑に当ると思うのでありますが、そういう田畑につきましては全部別途に標準率をつくつておりますので、ただいまの御疑問はなくなるのではないかと考えておるのであります。
  75. 竹村奈良一

    竹村委員 それは違うと思う。補正は結局出来高から保有米を引いて補正をとる。何割が減收したからというわけじやない。それ以上出すわけです。従つて事前割当よりも一割でも少かつたら、補正をやらなくては保有米が切れるから補正をしておる。三割とは限定されていない。従つて税務署の税法からいいましても、一割少かつたら一割減らす。一割多かつたら一割よけいとる。こういう税法の理論からいいますと、そういうわけで一応補正されておるということがはつきりしておるのに、一割のやみ米を見られたということについては問題がある。こういうやみ米を全国で一率に見るということはどうかと思う。おそらくこれは全国的にやられておる例なのです。私は農村出ですけれども、おそらく與党の諸君もこれにはずいぶん困つておられると思う。農家所得には一割のやみ米があるとか、二割のやみ米があるとかいうので、みなかけられる。この点を問題にしておるわけです。
  76. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 私どもはやみ米を見ておるじやないのであります。もつばら実收高の調査をいたしまして、税務署として自信のある調査に基いて標準率をつくつておる。こう申し上げる次第です。
  77. 深澤義守

    深澤委員 その標準率をつくる場合において、どういう方法でもつて標準率をつくつておられるか。その点をひとつお聞きしたい。
  78. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 標準率の作成につきましては、非常に技術的な問題になりますが、全国の各農村につきましてランダムに農家を摘出して、その農家について收獲量の調査その他経費の調査を全部いたしまして、そしてその地方々々で別々の標準率を作成しておるのであります。
  79. 深澤義守

    深澤委員 これはおそらく中国——広島の国税局であると思うのですが、岡山県の標準率をつくるについては、県下十二箇村の調査を設定して、そこを調べて標準率をつくつているわけです。その標準率を全部の町村に押しつけておるわけです。これは現に栃木県でもそれをやつておる。ところが御承知のように農家は具体的に調べますと、実に複雑な耕作の状況があるわけです。ところが農村の具体的な複雑性を全然考えずに、一律に標準率で押しておる。現に栃木県では税務署からこの標準率で申告してもらいたいといつて、各戸に全部通知が来ておる。その標準率でもつて申告しなければ更正決定が来る。こういう結果、実情を無視されておるというのが今日の実情です。税率が高い安いの問題もありますが、どうしても納得の行かない税の計算をやつておるというところに、農村における税の問題の紛糾があると思うのです。だからあくまでわれわれは具体的に農家実情というものを把握して、その基礎の上に立つてなぜ課税しないか。この問題の解決は数年来われわれが主張しておるけれども解決できていない。税はあくまで納得して納めさせるようにするのだというのが政府方針だ。ところが農村ではそれがやられてない。それをどうして解決する方針を持つておられるか、それを伺いたい。
  80. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 御承知の通り農家において完全な記帳をしている人はきわめてまれであります。従つてまたある程度の記帳をしておられるといたしましても、現在の税務署の人員をもつてして、各農家について個々に調べるということは不可能であります。やむを得ざる方法といたしまして、さような標準率をつくつておるのでありますが、しかしながらこの標準率につきましては、相当早期にこれを一般に公表いたしまして、そして各方面の御意見を伺い、大体妥当であるという線でもつて御申告を願つているのであります。もちろん申告納税でありますから、御本人が十分に記帳をしておられて、十分にその所得について御存じであれば、必ずしも標準率による必要はないのでありますが、そういうふうな事例が割合に少いというところからいたしまして、また御本人自体もおそらくは十分に自分の所得を御計算なさるのが困難であろうというのが、実情じやないかと思うのであります。そんな関係からいたしまして、やむを得ず標準率によるのであります。しかしながら標準率作成自体については、そういうふうな官庁内部の秘密文書ということではなしに、あらかじめ公表いたしまして、十分御意見を伺つて、それによつてつて行くという方針をとつておるのであります。
  81. 深澤義守

    深澤委員 そこに問題がある。日本の農村で完全な記帳を期待してもそれはできない相談です。日本の農村の実情は、今までほんとうに貧乏な生活をしていられて来て、そういう記帳をするという能力が失われておるという現状を、われわれは無視してはならないと思います。その記帳が完全でないから、この税務行政がうまく行かないというところに責任を持つて行くとすれば、それは政府の回避と私は考える。そこで記帳というものはまつたくうまく行かない。どんな指導をしても、どんな努力をしてもできない。だから実情をよくしんしやくするためには、これは非常に不充分ではありますが、米の事前割当の数字があるわけです。あれすら税務署は全然採用していない。そうして標準率で全部押して行く。ところが個々の実情を調べるには、今の税務署の陣容をもつてしては不可能であると言われる。だから個々の農家を全部調べることはできないにしても、なぜあの事前割当の数字を正当に受取つてやらないか。現に一割加えたり二割加えたりしてやつておる。そこに問題がある。その事前割当の数字を全然無視しておる税務署の態度というものは、われわれは非常に不満である。あれは政府機関が決定したところの数字なのです。その点をひとつ明確にしてもらいたい。
  82. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 私どもは事前割当の数字はそれほど見ておりませんが、農林省の調査によるところの実收高の調査と申しますか、これは十分に尊重し参酌しておるのであります。しこうしてわれわれの方では、收穫が相当程度下まわつておる、減收があつたと認められる地域は、標準率の適用と別個にいたしておるわけであります。従つて減收地域を差引けば、全体としての標準は、これは農林省等の数字より上まわるのは当然であります。しかしながら減收地域に適用されたものと総合して考えれば、大体一致するのではないかというふうに考えます。
  83. 深澤義守

    深澤委員 それで税務署は、非常に適法にやられておるということを常に主張されておるが、私ははつきり具体的な例をあげてもよろしい。山梨県の加納岩税務署が、昭和二十三年度の麦の超過供出に対して、一俵当り六百三十六円の源泉課税をやつておる。つまり総合所得にすべきものを、協同組合の超過供出額を調べて、その超過供出の麦一俵に対して六百何十円をちやんとかけてとつておる。これは明らかに所得税法の違反だと私は考える。税務署がそういう違反をやつておりながら、今度は一般の納税者に対しては非常にむずかしいことを言う。これはどうですか。その超過供出の麦一俵に対して六百何十円を源泉課税することは、これは適法であるかどうか。その点をひとつお伺いしたい。
  84. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 私はただいまの話は初めてお聞きするのでありますが、おそらくは、察するところそれは農業協同組合において納税準備積立てとして、協同組合として積立てさせておるのではないかというふうに考えます。もちろんそういうふうな超過供出について、源泉徴收をするところの権限もありません。従つて税務署でそういうことを権限に基いてやつたというふうなことは、全然考えられないわけであります。     〔「自発的にやつておるのだろう」と呼ぶ者あり〕
  85. 深澤義守

    深澤委員 それは自発的ではない。個々の農民が全部六百何十円集めれらたわけであります。それは加納岩税務署を調べてください。事実です。それが事実であるとすれば、これは重大問題だと私は考える。税務署は適法にやつている、やつていると言われるけれども、末端においてはそういう事実がある。そこに税の問題の混乱があるわけです。
  86. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 私どもにはどうしても事実とは信じられませんから、そういう仮定に基いてはどうもお答えできないと思います。
  87. 深澤義守

    深澤委員 だから調べてください。私の方には証拠があるのです。
  88. 竹村奈良一

    竹村委員 先ほどから深澤君のお話もありますが、それを私は押してあまり言いませんが、これは朝から伺つたのですけれども、もう一度国税長官にお聞きしたいと思います。  現在食確法がしかれましてからは、大体の收穫高というものは個々の農家にもわかるわけです。それから補正さされましてもわかるわけでありますが、そういうものがわかつて問題になるのは必要経費だと思います。この必要経費につきましては、議論を進めてもいたし方がないが、しかしこの收穫高において、もし政府がはつきり承認し、あるいは地方長官も承認しておる收穫高よりも、それ以上に見積つた場合、これを税法から行けば、一々返還訴訟までやつたらいいじやないかということもありますけれども、農家は一々そういうことはできない。また必要経費の記帳々々と言われますけれども、日本全国の農民が必要経費を全部記帳して、自分の農業の收支決算を明らかにするようになるならば、おそらく米や麦はつくる者はなくなると思う。生産費を償つていないと、これは農林大臣もはつきり言つておるし、專門家の安孫子長官すら、戰前から現在まで、生産費を償うて麦をつくつている壁はさらさらないということを言つておるごとく、もし全国の農民がそれを正確に記帳するならば、農業はできませんよ。だから、おそらくしない方が政府のためになると私は思つているのですけれども、しかしそういうよりなことは別問題としても、收穫高をはつきり政府が承認しておるにもかかわらず、それに対して一割ないし二割いて、この多くかけられたものに対して返還してもらう道は、税法にははつきり示されておりますけれども、そういうことはなかなか個々の農民はできない。できない場合には、政府の奨励機関等が、団体でこれを訂正してくれというような申込みがあつた場合に、受付けられるかどうか、この点をお聞きしたい。おそらく税法からいつたら、そういうことはないということをおつしやるでしようけれども、それであつたならば、一切税法に基いて、個々のものをはつきりしておかけにならないと問題が起ると思うのですが、その点はどうですか。
  89. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 竹村さんもよく御承知の通り所得税は個人々々の問題であります。従つて個人以外の団体がそういうことをなさるということは、権限なきものの行為であると考えざるを得ないと思います。
  90. 竹村奈良一

    竹村委員 そう言われるから問題になる。それでは聞きますが、しからばかけるときに、なぜ標準率でかけるか。これは個人の申告に基いて、その申告が間違つていたならば、個人の所得の精細なる調査の上に立つてかなければならぬ。それを団体で一つの標準をこしらえてかけるということ自体、あなたの方のかけ方の間違いであります。それを政府が手が足らぬからといつて、そして法律にないことをやつておいて片方では、それは法律にないからごめんこうむるということはできない。これでは、実際税法に暗い者は、いつまでたつても、いろいろ間違つた課税をされても泣寝入りするよりしようがない。このことを私は言いたい。それであつたら、個人々々におかけになるところの税は、実際個人々々の所得をよく調査しておかけになるがいいので、こういう農業所得に対して、団体とか平均とか、そういう標準率などでおかけにならないようにされるかどうか。これをお聞きしたい。
  91. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 この標準率はどこまでも推定の一つの材料であります。その一つの推定の材料に基きましてただいまもお話通り、具体的な確実な資料はなかなかつかみにくい。従つて全般的なその地方におけるところの個々の、できるだけ真実に近いところの推定材料をとらえまして、そして個々の人について更正決定をいたすのであります。従つてそれはどこまでも団体に対して更正決定したのではないのであります。個々に対して更正決定をいたしたのであります。
  92. 竹村奈良一

    竹村委員 その推定に異議があるのですよ。個々の農家は、その推定の基準通りにやられる場合には、納得しないのです。
  93. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 田中君。
  94. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大体質疑を終了しようという目標でありますので、あと二三の質問といたしたいと思います。  今竹村委員と高橋長官との間で問答のありました点でございますが、私は竹村委員先ほど質問趣旨をこういうふうに理解したのであります。もちろん標準率というものは、できるだけ現実に真実に近い推定資料をとる。ところがそれに対して共通したような欠陷があるということが明らかになつた場合に、たとえば農業協同組合とかあるいは町村役場であるとかいうもので、その村なり組合の中で、これこれの農家についてはこういうような共通した條件があつて、この標準ではいけないのだというような資料が出された場合には、その意見なり資料を取上げて、そういう対象になつておる個々の農家なり個々の業者なりについて補正をするとか、そういう措置を私は講ずべきだと思うのです。当然行政官庁、ことに町村役場というようなものが、税務署と協力的な態勢においてそういうふうにすることが、私はやはり徴税の円滑を期する上にも効果的であろうという考えを持つておるのであります。そういう場合には、税務署と町村役場なりあるいは農協との間に、十分話合いを進めらるべきが至当だと私は思うのですが、その点はいかかがですか。
  95. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 私どもも標準率を決定する際におきましては、そういうふうな地方事情に精通した方、またはいろいろな資料を持つておられる方の意見は、十分に聞かしてもらつておるわけであります。そして標準率を決定しました後におきましても、ただいまのお話のような共通的な欠陷があるような資料が出ました場合には、法律問題というようなむずかしいことではなしに、とにかくそういうふうな御意見は十分に伺つて、できるだけ少しでも真実に近からしめるということに努力を惜しむものではないのであります。
  96. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私はそういうようにやつていただきたいと思う。それで問題は、たとえば団体交渉権の問題がたびたび税制政正のときに問題になりますが、これは認むべきだ。ほんとうに民主化された民主主義の態勢のもとにおいては、そういうものが打立てらるべきが民主主義政治の原則だ。私らはそういう見地から考えておるのでありますが、現在あります同業者団体その他については、必ずしも民主主義のルールに適合しておるかどうかという点について、問題の点が残されておると思いますから、そういう内容を現地第一線の税署等が日ごろから十分調査されまして、税務署の方で、平たい言葉で言えば手を握つて行ける、あるいはもつと極的な言葉で言えば利用できるというような面で、私は積極的にやつていただきたいと思います。  そこでこの間の企業組合の税務署による診断の結果が、私らの日本企業組合連盟の方にも時々刻々入つて来るのであります。ところが非常に査定が辛いために混乱を引起しておるのであります。東京都内の関係を見ましても、大体税務署のおめがねにかないますところの組合はまず四十六・七パーセントしかない。残りのものは全部だめだということで、たとえば源泉課税の形で納めて来ておるもの、これはこれから問題になるのでしようけれども、そういうものは問題外として個人別の更正決定をやつておる。しかもそれらについては、御承知のように高橋長官から出されました通達の十四項には、税務署はあの九つの條件を具備して、しかも二十五年度の年初にさかのぼつてこれこれの條件を整備すれば、十分認めるということがあるにもかかわらず、九つのあの原則に基いて経理の面におけるいろいろの修正、訂正等も行われておるということを税務署側が認めながらも、結論的にはやはりお前のところは企業組合としては認められない、こういう形で突き放されておることが相当出て来ておるのであります。この点については最近その通達以外に東京国税局のあれを見ますと——あの通達の解釈のようなものがさらに出ておるようでありますが、それを見ますと、やはり少くともあの基準に基いて親切な取扱いをしろという意味合いがにじみ出ておるのでありますが、何か別の指令が出てそれに基いててきぱき処理されているのではないかというような印象も受けるのであります。その間の事情は議会でも問題になつておる点でございますので、この間も私が申し上げましたように、二十五年度の分につきましても、二十五年の中途からできた組合も相当数に達するので、そういうような点から二十五年度は全面的に、企業組合としての完全なる法人格を、経理の面に打立てられた組合であるという断定ができないということになりますならば、勢いいわゆる給與所得としてもらつておると思われる以上のものに対する、結局個人所得の更正決定というものは、私はやむを得ないと思うのですが、二十五年度はそういう取扱いで、二十六年度についてはこれこれの点を確実に守ることによつて企業組合としての完全なる態勢をとらしめることによつて、源泉徴收いわゆる税の面における法人としての完全なる取扱いをやつていただけるものだと、われわれは期待するのであります。最近議会で私が問題にしてからも、時々刻々私らのところへそういう報告が参るのでありますが、おそらく秘密の指令が出ているとは私は考えないのでありますけれども、何かこの取扱いについて、もし二十五年度当初にさかのぼつて方針が是正されておるという場合には、あの通牒の趣旨に基いて、企業組合として生かしてやるような御措置を十分願えるものと私は思うのですが、いかがですか。
  97. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 前段の市町村等とは常に協力したらどうかというお話については、まつたお話通り考えております。特に住民税等が所得税を基本にして賦課されておりますような関係もありますので、十分にその土地の事情なり資料なりの裏づけの面において、協力をお願いしておる次第であります。  企業組合に関しましては、ただいまお話のような別な秘密の指令とかなんとかいうものは全然ございません。むしろ田中さんが手に入れられましたような東京国税局のあれのように、親切のにじみ出ているような取扱いをしておるのであります。私どもの気持は全部そういうふうな気持でもつて指導しておる次第であります。しかしながら田中さんもこの前に御指摘になりましたように、この企業組合の中には、はしにも棒にもかからぬようなものが相当あるのであります。それでどの程度までは指導できるかという問題は、具体的な問題になるのでありますが、もしも具体的にこれははなはだけしからぬというものがありましたら、私どもにお聞かせ願いたいと思います。どこまでも根本精神はその通牒に書いてあります通りに、親切にやつて行きたいと考えております。
  98. 田中織之進

    ○田中(織)委員 これは特に管下の末端の税務署に、あの通達ないしは通達の説明のようなものが出ておるわけですから、ああいうものの趣旨を徹底させていただきまして——当然企業組合の中にはずいぶんいかがわしいものもあります。私も現実に和歌山県の約三十の企業組合の連合会の指導に当つておる立場がありまするので、特に現金管理の面等につきましては、一種の組合によるところの監査制度が設けられておるような指導を実はやつておりますので、私らのところは直接問題はありませんけれども、たとえば岐阜であるとか愛知の局の管内であるとかいうところからは、相当仮借なき何が来ておるようであります。なお調査にあたりまして、企業組合で経理が一本であるということであれば、個人の預金があるべきはずはない。これは一応建前上そうなると思う。しかし過去の蓄積を預金に持つておるというような場合もあり得るので、ただ企業組合の預金だけではなくて個人の預金をどんな名目の預金であるか、それは銀行等について調べてみればわかるのでありますけれども、個人名義の預金があつたということだけで、あるいは前の個人営業当時の看板の取残しがあつたというようなことで、組合員のうちにそういうものがあつたということで、全体としての組合を否認するような傾向が出て来ておるのです。今長官のお話にもありましたので、私らの方で調べて、もしそういうふうに非常にむりだ、これではあまりかわいそうだと思われるようなケースにつきましては、私らの方で経理の指導もいたしておりまするから、そういう具体的な資料を持つて御相談にも上ろうと思いますけれども、今ようやく中小企業者の活路として、特に金融的なめんどうも見る協同組織をつくろうということで、これはわが党のみならず各政党ともに中小企業者の組織いかんの問題については、苦心を拂つておるのでありまするから、徴税上につきましても特別な御配慮を願いたいのであります。なおそういう関係からいたしまして、二十五年度は企業組合としての十分なる自党を備えていないという点で、少くとも企業組合で源泉で納めた以上の部分、いわゆる給與所得と認められない部分に対しまする更正決定は、やむを得ないと思うのですけれども、そういうような場合には十分従来納めておる源泉徴收との関係ではつきり線が引けると思うが、同時にそういう点について、二十六年度において完全に給與体系を改めさせるということによつてつていただきたい。大阪のある税務署の管内におきましては、税務署と企業組合の方で、二十五年度はどうしても個人の所得として申告してもらわなければならぬ。二十六年度においては、これこれの條件にとにかく適合して来れば、完全に企業組合として認めて行く。しかも二十五年度の申告については、企業組合をつくるためにいろいろの経費もいつておることであるから、更正決定の問題については、十分企業組合と税務署側とで、すでに団体的に経理の内容が明らかになつておるのだから、税務署の方でも十分そういうものを見せていただくなら、話合いできめて行こうというように話してくれておる税務署等もあるわけなんです。私はこいねがわくはそういう形で企業組合の育成について考えていただきたいということを、要望するものでございます。  それからこれは主税局長にお伺いしたいのでありますが、本年度の税收全体を見ますと、関税及びトン税の收入予想が例年よりもうんとふえておるのじやないかと思うのですが、これは講和会議も間近いということも言われておりまするけれども、これだけの顕著な増收を見込むについては、何か特別の根拠がおありだろうと思いますので、伺つておきたいと思います。
  99. 平田敬一郎

    平田政府委員 関税の点につきましては、先般実は宮幡さんからお尋ねがありまして、相当詳しく御説明を申し上げておいたのですが、近く関税定率法の一般的改正案を提出いたしまして御審議を煩わすつもりでおるのでございます。お話通り貿易状況がよくなつておりますのと、そういう点をあわせ勘案いたしまして、この程度の関税收入を見込むのが妥当であろうというので、五十億程度收入を見込むことにいたした次第でございます。
  100. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それからこれも松尾君が先般お尋ねをしたのでございまするが、私はどうも今度の政府の減税という説明に対しまして、いまだに実は納得の行かない部分があるわけでございます。たとえば安本の数字によりますと、生産指数は昨年末にすでに戰前の数を突破しておるという面も出ておるのであります。しかし私は同時に最近における物価の高騰の面を、二十六年度における国民所得を算定する上におきましては、これは相当大きな要素として考えなければならないと思うのでありますが、七百四十三億の減税になるというそろばんをはじき出したにつきましては、本年度における物価の趨勢をどういうように見ておられるのか。この点主税局長から伺つておきたいと思います。
  101. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話通り生産が非常に伸びておりまして、私ども最近の各種経済事情の傾向には非常に注目しておるのでありまして、先般も松尾さんのお尋ねに対してその趣旨のことを申し上げたのですが、最近の数字を見ましても、鉱工業の生産指数が一番上昇率がはなはだしく、二十四年平均に対しまして昨年の十二月の指数は一四八・五くらいのところまで行つております。これに対しまして消費者物価指数でございますが、これはこ十四年を一〇〇といたしますと、これは六月以降若干上りましたが、なお十二月におきましては九七・五くらいのところでございます。その他いろいろ指数の動きがあります。たとえば賀金は、これは生産に伴つた現実の賃金の増加と思いますが、金産業の名目賃金、すなわち実物給與を含めましたいわゆる貨幣賀金ですが、この数字がこれまた相当にふえておりまして、土十四年平均を一〇〇としまして一二六くらいのところまで来ております。このような点からしまして、先般も申し上げましたように最近までのところ、相当堅実な歩みを続けて来たということは言えると思います。従いまして今度の租税收入見積りにおきましても、生産の増加を見込んでおるのが大部分でございます。物価はもちろん最近まで上りました程度のものは、すでに見込んでおりますが、これ以後高くなるものについては、これは将来の問題でありまして見込んでおりません。数字に書いておりますように、農業所得は米価の引上げがはつきりしておりますので、これは九・三%来年は上る。営業所得の方は消費者物価指数は横ばいでありますが、生産者物価指数が上つておりますので、それをつき合せますと、二十五年の平均に対しまして来年は五%上つております。生産は個人の方が中心でありまして、法人と違いますので、一割程度は上る、こういう計算で歳入を見込んでおります。税制改正をしない場合の歳入を見込みまして、その見込んだものに対しまして改正税法適用いたしまして差額を計算いたしますと、全部合せまして七百四十億の減税になり、ベースは両方とも合せて計算しておるのでございます。従いまして全体といたしましては、法人所得等ももちろん生産の増加による増が大部分でございますが、生産の増加による所得の増を見ておるということを申し上げることができると存じます。
  102. 田中織之進

    ○田中(織)委員 確かに收入の面における——従つて農民にいたしましても米価が上つておる。それから本年度において物を生産しておる、あるいは販売しておるという者の場合に、従つてある程度物価高、値上げが見込まれるということは当然だと思う。私は同時に国民所得という面から見まするならば、総收入に対して総支出を引いたものが純所得ということに相なるわけでありますから、そういう観点から見まするならば、支出の面における物価高というものをどの程度見て行くかということが、一つの問題だと思うのです。たとえば本年度における四兆二千億でありますか、国民所得の問題にいたしましても、これは一つの腰だめ的なものでありますけれども、現実に生計費の上に出て参りますところの物価高というものは、本年度においては私これは軽視するわけに行かないと思う。ある意味から言えば、われわれは国内における、たとえば原材料の枯渇その他の問題が出ており、資材の輸入が意のごとくならぬというような問題から見まして、物の面から来るところのインフレ、従つて物価に現われて来るところのインフレ傾向というものは、ある意味から見れば終戰直後のインフレよりも、本年度においては惡性化したものが出て来るのではないかということを、われわれはむしろ懸念するのであります。そこに現に予算が今予算委員会において審議されて、ここ一両日中にこれに対する衆議院の態度が決定されようという時期に、それは講和会議というような大きなエレメントがあるかもしれませんが、本年度中にさらに補正予算をしなければならぬというようなことを、まだ本予算が通らぬ前に大蔵大臣がそういう言明をするというか、含みを残さなければならぬということ自体が、物価に対する見通し、それはある意味から言えば甘く見ておるという面があるかもしれませんが、相当深刻に考えておる一つの現われであるとも見られるのであります。そういう点が、ともすれば結局個人所得に対しましては、所得の面における水増し的な水準というものがいつもつくられる。そうしてそれを税法に基いて、国税庁の方が克明に取上げなければならないというような結果に相なつて来るのであります。そういう問題が出て来れば、今われわれがここで論じておるような、なまやさしい問題でなくなるという意味において、われわれの生計費の中に今予想され懸念される物価高というものが、どう響くかということについて、はたして十分織り込まれておるか。生計費指数の関係は、どつちかといえば横ばいしている——賃上げをしてもらいたいという要求に対して、資本家はそれをしたくないものだから、生計費の指数は横ばいじやないかということをよく言うのでありますが、そういう感覚で、少くとも税務当局が、物価の趨勢を見ていたんでは、私は間違いだと思うのでありますが、生計費の面について、はたして物価の影響というものをどこまで考慮されているか。私はそういうことが、一応午前中に質問しました、たとえば基礎控除の点についても、当然考えて行かなければならない結果になると思うのでありますが、この点に対する主税局長の所見を伺つておきたいと思います。
  103. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の問題は大分たびたび申し上げたのでございまして、若干反復になるかもしれぬと思いますが、生計費の指数を統計的に一番よく表わしておる指数は、田中さんも御承知のCPIだろうと思います。内閣統計局が五、六千世帶について嚴密に家計費調査をいたしまして、それに基いて消費者が購買する物資の価格を、配給、自由全部をつきまして総平均で出した指数でございます。この指数が生活費の状況を示す一番いい指数でございまして、私ども常によりどころにしておるのでございますが、その指数について申しますと、先ほども言いましたように昭和二十四年平均を一〇〇といたしまして十二月にちよつと上りましたが、まだ九七・五くらいの高さにある。一昨年の八、九月ごろに比べますと、それよりもさらに低いところにある、こういうのが実際でございます。六月よりも若干上つておりますことは、先般も申し上げた通りでございます。この指数が将来どういうふうになつて行くかということは、やはり生活費の関係において一番問題になる点だと思いますが、私は、田中さんが今お話になりましたように、結局今後経済がどうなるかという問題に関連して来ると思います。それは一にかかりまして輸入がどの程度確保できるか、この辺が一番大きな要素になるのではないかと考えます。しかしその辺はいろいろ見方の差もあるだろうと思いますが、同時に政府が計画を立てる場合において、今からあまり物価が上りそうだから、上るという前提で計画を立てるということは、どうも私どもとしては妥当ではないのではないか。一番最近に現われました事態をもとにして物価については極力安定策を考えることにいたしておりまするので、顯著にこれが上るということを当然の前提にしてすべての計算をなし、すべての計画を立てて行くことは少しどうであろうか、そういう意味において大体最近の事態に基きます計数をもとにして計画を立てて、予算を編成いたしておるのでございます。ただしかしいろいろ国際情勢がかわつておりまして国内的要因だけでは、どうも物価の問題その他を解決しがたい要素がございますから、大蔵大臣も絶対に今後問題にならぬというところまでは、なかなか言い切れないのではないか、私どももそうだと思います。従いまして、万が一そういう事態になれば、またそれに応じました適正な政策を考えて行こう、こういうようなことだろうと考えるのでございます。従いまして今まで現われましたいろいろな事実、最近までの傾向に照しますれば、今御審議を願いまして、本年度の税法としてきめていただきますものとしましては、今回提案しましたものでまず妥当ではあるまいか、かように考えておるのでございまして、今後非常に激変があるかどうか、これは私どもなかなか簡單に、確実に申し上げかねるところではないかと思うのでございます。
  104. 田中織之進

    ○田中(織)委員 もう一点お伺いしておきたいのでありますが、予算説明の二十六年度の減税の内訳によりますと、旧法による收入見込みが、源泉が千三百六十一億五千二百万円で、今度の税制改正によつて三百十億減じて、千五十億五千四百万円の收入見込みである、こういうように出ているのでありますが、二十五年度の本予算に現われました源泉徴收分は、九百八十三億三千二百万であつたと思う。その意味において、その後における若干の賃金ペースの引上げというものがございますし、それから二十五年度はすでに中途からではありますけれども、いわゆる勤労控除の面も一割五分に落された段階かと私は思うのですが、それでいて二十六年度は今度の基礎控除あるいは扶養控除の引上げ等による減税を行つても、二十五年度の当初の九百三十八億よりも、約十億近く源泉徴收の面における増徴ということに、数字の上から相なつて来ると思うのですが、これはどういう食い違いなんでしようか
  105. 平田敬一郎

    平田政府委員 先般御審議を煩わしまして成立しました補正予算によりますと、源泉所得税は千百八十三億一千六百万円を見込んでおるのでございます。これも高橋長官がいつかお話になりましたように、最近の実績からすると、あるいはもう少し増收になる可能性が多いようでございますが、それと比較いたしまして、来年度の現行法による收入を千三百六十一億と押え、それに新税法適用いたしまして計算しますと、千五十億五千四百万円になるわけでございます。従いまして二十五年度の補正予算と比較しましても、勤労所得税は百三十二億ほど減るということに相なつておりますが、当初予算と比較しますのは、もちろん当初予算見積り後におきまして賃金が大分上つておりまして、その上つた結果このような差が出て来た。全産業の平均賃金におきましても、大分生産の増加に伴いまして、毎月除々ながら上つておりますことは、田中委員も御承知の通りかと思います。
  106. 田中織之進

    ○田中(織)委員 二十五年度の補正予算の面から見ますると、今度の改正案による減税分を入れると、差引してそれだけの減税になるというただいまの御説明でありますが、当初予算の九百三十八億と、高橋長官の言われる千二百八十億、これは補正予算のとき、あるいは若干それより上まわるかもしれぬというものと、現在ここに出ておる申告納税分との間において本来ならは位置をかえるべき——源泉徴收の分がはるかに申告納税を上まわつた形における自然増收が現われて来るということ自体、これはやはり現在のたとえば勤労所得に対する課税率というものが、適正ではないという結論をわれわれは持つておるわけであります。かりに今御説明されるような形においても、私はまだこの源泉徴收分、すなわち勤労所得に対する税率の面において、特にたとえば勤労控除の控除率を現行の一割五分から、われわれは旧法の二割五分までただちに引上げてもらいたいという要求を持つておりますが、これが二割五分まで行かないにしても、二割までにするとか、そうすればこの間主税局長が言われたように、農民なり漁民なりあるいは中小企業者に対する一〇%程度の勤労控除は、認めてもいいのじやないかという段階まで来ているけれども、一方勤労所得給與所得者が一五%ではちよつとつり合いがとれぬというような形で、そういう形で均衡をさせられることはわれわれは反対なんです。それだからむしろその場合には農漁民、中小企業者の一〇%の勤労控除に基準を置いて、現行の給與所得者の一五%というものは低きに過ぎるのでありますから、それを二〇%なり二五%なりに上げるという形において、両者の間の均衡をとつてもらいたいと思うのです。しかしこの点については、本年は研究の期間にしたいというような主税局長の先般の御返事でございましたが、税制についても、あまりたびたびいじりたくないという含みが、今度の税制提案の説明の中にあるようにも見受けるのであります。私は、これは非常な平田善政に相なると思うのでありますが、ひとつ大蔵大臣の方からして、勤労控除の二五%へのアツプがむずかしいとすれば、二〇%へのアツプ、及び農漁民、中小企業者に一〇%程度の勤労控除を行うということについて、政府提出されてある原案を、政府みずからの手によつて修正するための努力を試みられる意思ありやいなやを伺つておきたいと思います。
  107. 平田敬一郎

    平田政府委員 実は先般田中委員からの農漁民の一割控除をどうしたかという質問に対してお答えしましたことを、今田中委員から反復していただいたような次第でございますが、これはやはり農民に一割控除するということだけでは一なかなか問題は解決しない。こういう下の方の控除を動かすことによつて、利害関係のある納税者のほとんど九五%までは、実は勤労所得者か農民か中小企業者なんです。あとの下の所得者は、所得から行きましてもわずかでございますし、頭数からいつても大した利害関係はないのです。従いまして勤労控除の問題は、主として低額所得者、しかも低額所得者のうちの大部分を占めるところの勤労所得者と農民と中小企業者所得税の相互の負担関係をどうするか。こういう問題に実は帰着するわけでございます。従いまして、シヤウプ勧告は、農民についてだけ一割控除したらどうかということでございましたが、これはそういうことだけで簡單に解決すべきじやない。今お話のように勤労控除をどうするか、あるいは中小商工業者についてどうするか、これを全体としてよく考えた上で、正しい結論を出さなくちやならぬ。かりに農民あるいは中小商工業者につきまして控除を認め、それから勤労所得に対してさらに控除を上げますと、相互の比率関係を同じにしておく以上は、大部分の納税者に対しまして全体として基礎控除を上げたり扶養控除を上げたりして軽減するのと、実は非常に大きな差は出て来ない。そこで問題は勤労者の一割五分控除、農民、中小商工業者には一つの控除もありませんが、その間差をどうするかという問題が、実際は一番大きな問題になるのであります。従いましてそういう点を考えまして、今お話のようなことをやると、先般申し上げましたように、さらに大きな減收にもなりまするし、これは基礎控除を引上げた方がいいか、扶養控除を引上げた方がいいか、あるいは今お話のような方法をやつた方がいいか、この問題はなかなか簡單でないのでございます。従いましてこういう点につきましては、私ども所得税制度の根本とは申しにくいかと思いますが、大多数の納税者の所得税の相互負担額の負担の比率をきめる重要な問題でございますので、そういう点につきましては、財政事情等ともにらみ合せ、一方負担の公平ということも考えまして、やはりその時々に応じまして妥当な解決をはかるように、今後も研究してみたいということは、申し上げていいかと思うのであります。田中委員お話のように、基礎控除も四万円に上げる、扶養控除も一万五千円に上げる、勤労控除も二割か二割五分に上げる、中小商工業者と農民に一割控除をする、税率も最低は一〇%にする、こういうことになりますと、これは今の財政事情では、所得税がとうていまかない切れないという点があるわけでございます。もちろん一つ制度の正意見として、そういう案が私は成り立たぬわけではないと思いますが、しかしこういうのは現実の今年の問題、来年の問題でございますので、そのときの問題としてやはり各般の事情考えまして、妥当な控除をして行くということにすべきではないかと考えるのであります。かような意味におきまして、私は将来研究の余地はあると思いますが、今の段階、今年の段階といたしましては、今回の改正案が一番いい、かように考えておる次第であります。
  108. 田中織之進

    ○田中(織)委員 どうも最近の税制は、かなり根本にわたつての改正も行われておることは事実でありますけれども、何しろ日本所得税というものは、税制の上における封建的な一つの遺制だという考え方を私は持つております。そこで結局大衆の間における一番頭数の多い者の間で、お互いにつつき合せ牽制させるというような形で、非常にうまく仕組んだ税制だと私は見ておる。問題は、先ほど午前中に伺いました所得別、階層別の所得の押え方というところにも私は問題があると思う。それからさらに高額者は所得の中でパーセンテージは少い。それは結局現実に貧乏人の方が多いのですから、それを集めて数の多い方——九五%のものを集めたら、五%のものより多いのは当然でありますけれども、そういうものがいわゆる課税所得として捕捉されないものがあるから、そこにべらぼうな成金が飛び出して来る結果になる。一方そういうようなちよつと気のきいた者は、おかかえの税金係を雇つて法人組織にする。そうすると資本蓄積の名において、法人税は毎日すぐ軽減するというような形で、結局高額所得者をうまく逃がすやり方をしておる。それを私はあえて意識的だとは申しませんが、現在の資本主義体制のもとにおいては、それは一つの社会的な本能として当然なことだと思うのであります。私がきよう各階層別の所得について、政府の持つておる数字を伺いたいというのは、私らの方でつくりつつあるものとの比較対照の意味で、今後研究して、その面から私らの言う税率の引下げと基礎控除、そういうものではたして現在程度の税收が確保できるかどうかということを、そろばんをはじき出した上で、また別な機会に、われわれは政府の所信と比較してみたいと思うのであります。問題は今度のことにつきましても、そういう点についての配慮が欠けておる。これが根本的には公平の原則というのが、今度の税制改正に、どちらかといえば置き忘れている。これを大蔵大臣がはつきり言つておるところに、根本的な欠陷があるということを指摘せざるを得ないのであります。  なお最後に私一点長官にお伺いしておきたいのであります。それは徴收の方法についての問題でありますけれども、滯納整理のために差押えをやり、それを公売するという方法を最後の手段としてとらなければならないことは、私は決して否定をいたしません。しかし問題は相当その人の資産、生活態度から見て、そんなものまで押えなくてもいいようなものが押えられて、ある意味で相当金目のものが目こぼしになつておるというような面があるかと思うと、同時にこれは民事訴訟法の関係から見ましても、適例また税務署の国税徴收法の方から見ましても、税務署が差押えをいたしましても、公売までの間は本人にいわゆる管理を命ずるということは、これは従来からの建前だと私は思うのであります。もちろん差押えと同時に物件を引揚げるということも、これはできないととはないと思うのであります。しかし私は差押えというものに関する通例の常識的な判断からいたしますならば、差押えたものについて公売までの間に金をつくつて来れば、差押えを解除するというような方法を民訴においても認めておるのです。公売をして所期の税收を確保できるかどうかということが問題な現在の段階においては、金をつくらせることが、私はむしろ先決問題だと思うのでありますが、最近の各税務署の執行にあたりましては、差押えと同時に物件をトラツク等で税務署に引揚げる。もちろん差押えた物件を転売したりなんかすれば、刑法上の犯罪になることもこれははつきりわかつておる。私はやはりこの滯納した者については、人格なんか認めなくてもいいという議論をすれば別問題だと思いますが、やはり差押え物件は公売までの間は本人に保管をさせて、その間に差押額に相当する金をつくらせる解決のための努力をさせる、そういうような措置を講ずることの方が、税收を確保する上においても、むしろ効果的だと考えるのでありますが、この点についてはただちに差押えて、物件を税務署等に引揚げて行くという今のやり方は、ある意味からいえば、品の惡い者は、税務署を、トラツクで荷物を運ぶ強盗か何かのように惡口を言う者も出て来るのであります。私はそういうことを避けて、やはり納税に対する恐怖心を起させないことが、むしろ賢明な徴税吏のやり方だと思うのでありますが、この点についての国税庁長官の御意見を伺つておきたい。
  109. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 滯納整理にあたりまして、どの程度差押えをし、また差押えをした物件をどの程度公売するかという問題は、具体的なケースとしては非常にむずかしい問題であります。私どもとしましては、納税者の中にもやむを得ざる事情で、ほんとうに善意ではあるけれども、どうにも業態が非常に惡かつた、または病人があつた、または災難があつたというふうな事柄のために、遅れておるというふうな、非常にお気の毒な状態の方が相当あるのであります。そういうふうな方につきましてよ、できるだけよく事情を見てあげて、適当な措置をとるようにということにいたしたいと思うのであります。この後におそらく国税徴收法の改正案を御審議願うことになるかと思うのでありますが、そういうふうな場合におきましては、そういう方々につきましては、特別な措置を講ずることができ得るように、御考慮を願いたいと思つておるのであります。しかしながら滯納者の中には、どうにも——簡單に申しますと完全に非協力的であつて、相当に惡質であるという方もあるのであります。そういう方につきましては、私どものやられんとすることは、差押えをしましたらできるだけ早くこれを引揚げてできるだけ早く公売に持つて行くという方法が、正しいやり方であるというふうに考えておるのであります。最近になりまして、全国の税務署のうち三十二の税務署を選びまして、実は新しい方式を試みておるのであります。アメリカの滯納整理の方式の一部を取入れて試験的にやつておるのであります。日本語の訳がありませんで恐縮でありますが、インターナル・コントロール・システムという式を採用いたしまして、実際的にやつております。相当にいい成績を上げております。これにおきましては、まず滯納者に税務署においでを願つて、そうして税務署の首脳部が直接その滯納に至つた状況、または現在何ゆえ納められないかということをよく聞きまして、そうしてその能力の範囲において、とにかく納税の誓約をして、しかもその誓約が果せない場合においては、特別な事情がない限り、確実にその翌日には差押えをし、さらにその翌日には引揚げをするという方策をとつておるのであります。こういうふうに事前に十分に首脳部がその事情をお聞きし、資力の状態、その他各般の事情が判明いたしておりますれば、完全に非協力な方または惡質な方というものはすぐ判明いたします。そういう方につきましては、時間を待ちますことは決局また転売をされたりいろいろしますので、もちろんこれに対しては刑法上のいろいろの罰則がありまして、措置はできるのでありますが、そういうふうな措置をとるという事態が起る前に、まず引揚げてしまうということの方が正しいやり方ではなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。
  110. 平田敬一郎

    平田政府委員 先ほど田中委員の御意見かと思いますけれども、ちよつと補足して申し上げておきます。一つは今度の改正が法人とか大所得者に非常に軽いというような御意見もございます。なるほどそういうこともございますが、しかし事柄といたしましては、  一方においては未亡人控除、勤労学生の控除、それから老人控除というような制度も同時に設けて、全体の減税額は私ども精密には所得階級別の算定もやればできるわけでありまして、できましたならばあとで資料として参考材料に適当なときにまたお配りしてもいいと思うのでありますが、基礎控除、扶養控除の引上げによる減税は、大部分中以下の所得者の減税になるのであります。税率の引下げに上る減税も、総額から行きますと主として中産階級と申しますか、中位どころの所得者の減税になるのでございます。従いまして所得税の減税は、大部分最も田中さんの御関心の深い大衆費の減税であるということを一点つけ加えておきたいことと、もう一つは、非常にいいところをお話なつたと思うのでありますが、所得構成が非常に戰前と現在とかわつておるのでありまして、先般大臣もお話になりましたように、中から以上の所得が非常に全体として少くなつておる。インフレと戰後のいろいろな社会改革の決果、非常にフラツトになつております。それで最高の所得者も——、たとえば戰前の財閥の所得は、私ども大体毎年注意して見ておりましたが、三百万円から五百万円くらい、こういう人が全国に十人くらいございました。名前を申し上げるのは差控えますが……。しかしこういうのはホールデイング・カンパニーから佛いますところの配当などもあつて、非常に担税力の豊富な層であります。年々上から十番目くらいまでとりますと、そういう人は上に行つたり下に行つたりしますが、そうかわらない。確固たる所得税を納めておつた。かりにそれを四百万円といたしますと、今日ではこれを二百倍に直すと年八億円の所旭税でございます。そういう人が相当所得税を納めていたのでありますが、最近は、最高所得者の所得をごらんになればわかりますけれども、事業所得あるいは二、三年前ですとやみ所得をよく調べまして査定してみると、どうもなかなか税金が納まらぬというので、今の大滯納の番付にも、その大所得書の二、三番の人が入つている。これは差押えておりますが、現実問題としてなかなか税金が入らぬ、こういう例がございまして、所得構成が非常にフラツトになつておりますので、その辺に所得税の負担の公正を考える重大な問題があるように思います。その際に、しからば現実に少いのか、あるいは調査すればもつているのじやないか、この問題は確かにあると思うのでありますが、この点につきましては、前々より申し上げておりますように、最近は相当嚴正な調査をやることになつておりまして、調査官、査察官の制度、それから税制といたしましては、所得税の税率は表面的には軽くしましたが、実際は所得を的確につかまえるという意味におきまして、富裕税を一方に設け、それから先般もお話いたしましたように、所得の申告に財産状態をくつつけて申告させる。先般参議院に行つて来まして、皆さんから非常に質問を受けたのですが、そういうようにいろいろな方面から調査を的確にしまして、はつきりした所得を申告してもらい、はつきり査定いたしまして公正をはかる、そういう方面で行きますから、徐々にそういう点はよくなつて来るのではないかと思います。しかしお話のありましたように、確かにこれは税制土も考うべき重大な問題でございますので、私どもいろいろな資料もつくりつつございますから、できましたらまた御参考までに提出してもいいと思うのでありますが、概況はそういうようなことになつておりますことも、あわせて御参考までに申し上げておきたいと思います。
  111. 宮幡靖

    宮幡委員 税制の改正法律案については、ほとんど質疑も盡されておると思いますので、もう私より伺うことはありません。ただ私はずつと出ておればよかつたのですが、ときに予算委員会その他とかち合いまして欠席の場合もありますので、一つ念のために伺つておきたいと思いますのは、確定申告の期限が一箇月延期されておりますが、大体この申告納税の制度を採用いたしました趣旨は、所得発生の時期と納税の時期をきわめて近接せしめる、こういうことを理想として採用したように考えるのであります。従つてこの一箇月延ばしたことが、所得発生の時期と納税の時期を遠ざからしめる、こういう一つの時間的なずれになるわけであります。これがため徴收上支障がないという御確信を、大蔵省及び国税庁ではお持ちになつておるのか。この点をひとつ確かめておきたい。
  112. 平田敬一郎

    平田政府委員 確定申告の期限を延ばしましたのは、宮幡さん御存じの通りなるべく期間を置きまして、正しい申告を出してもらうというのと、それから政府の調査期間をできるだけ長くしまして、更正決定をやるにしましても正しい更正決定をやる、こういう趣旨で一月延ばしたわけでございます。従いまして申告がよくなつて来ますと、今までの実績から申しましても、納税成績が自然にいいのでございます。申告でされた所得税の納税割合と、それから更正決定をいたしました税額に対する一定期限までの納税割合と比較しますと、はるかに申告による税額の方が成績がいいのでございます。従いまして私どもお話の懸念は確かにあると思いますが、こういう制度によつて結局においてはプラスになる面が多いのではないかという点を考えまして、年度末少しぎりぎりに迫るのでございますが、このような制度を採用することにいたした次第であります。
  113. 小山長規

    ○小山委員 質疑打切りの動議を提出いたしたいと思います。すなわち所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案通行税法の一部を改正する法律案登録税法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案印紙税法の一部を改正する法律案骨牌税法の一部を改正する法律案国民金融公庫法の一部を改正する法律案、及び租税特別措置法の一部を改正する法律案、以上の法律案は長時日にわたつて審議もほぼ盡されたようでありますから、質疑を打切られんことを望みます。
  114. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 ただいまの小山君の動議のごとく決定するに御異議ありませ  んか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  115. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 御異議なしと認めます。右九法案につきましては、質疑を打切ることにいたします。     —————————————
  116. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 次に昨日質疑を打切りました開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案を議題として討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。小山君。
  117. 小山長規

    ○小山委員 私はただいま議題となりました開拓者資金融通特別会計において貸付金の財源に充てるための一般会計からする繰入金に関する法律案につきまして、自由党を代表して賛成の意を表するものであります。  この法律案は毎年出て来る法律案でありまして、要するに開拓資金融通特別会計は借入金ができないために貸付ができないのでありますが、一方開拓者に対してはいろいろ資金の融通をしてやらなければならない必要が生じておるのであります。その差額を一般会計から繰入れようとするのでありまして、現在借入れ金のできない状態においては、まことに時宜を得た法案でありますので、自由党を代表して賛成の意を表するものであります。
  118. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 天野君。
  119. 天野久

    ○天野(久)委員 ただいま議題となりました法案に対して、民主党を代表して賛成いたすものでありまするが、これに対して二、三條件をつけて申し上げたいと思います。実は先日、私はこの問題に対して質問をいたしておりましたが、農林省の方々が見えないので、質疑を途中中止いたしたのであります。そこでこの條件質疑にかえて申し上げて賛成いたしたいと思います。  食糧が絶対不足をいたしておりまするわが国におきましては、開拓が必要であることは論をまたないのであります。従つて開拓に十分力を入れた政策が行われなければならないことは申すまでもありません。そこで考えなければならないことは、開拓地に入植する者は、国民のうちで大体不遇の人と申しましようか、あるいは資力の少い人が多いということを見のがしてはならぬと存じます。現在の開拓地においては、あるいは資金が少いために、途中において開拓地を放棄して、引揚げを余儀なくせなければならないような者がある事実があるのであります。これは国費の面から見ましても、また不遇の人たちが玉の汗を流して開拓に努力していながら、それを放棄しなければならない場合があるとしますると、人道上もゆゆしい問題であると存じますがゆえに、入植地に対しては、入植前に国において調査を完全にいたし、開拓目的達成の見込みがあるところに入植させた以上は、資金の面においても十分にこれを援助いたして、完全に農業経営が成り立つように国で見てあげるべきだと存じます。以上の條件を付しまして、本案に賛成いたすものであります。
  120. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 田中君。
  121. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私は社会党を代表して、本案に賛成の意見を申し述べるものであります。  講和会議を間近く控えまして、経済の自立の見地から見まするならば、食糧生産についての構想を新たにしなければならない時期だと思うのであります。終戰直後の食糧事情の非常に逼迫したときは、開拓政策が非常に大きくクローズ・アツプされ、またこれに対して、相当国の援助の手も差延べられて参つたのでありますが、最近外国からの食糧輸入という安易な方法によりまして、国内の食糧増産確保の基礎としての開拓政策についての態度が、ともすれば薄らぎがちなことは、非常に遺憾に思うのであります。国営開懇を初めといたしまして、現在手をつけておりまする開拓政策というものは、一日も早く完成をしなければならないのであります。さらにまだ相当開発を行うべき未懇地が残つておるのでありまして、私はその意味にのいて、当局は現在引続いておる開拓地の完成のために、最小限度お義理にその資金等のめんどうを見るということではなくて、もつと積極的な開拓政策を確立することと、そのためには現在でも輸入食糧のために、本年度においても二百二十五億の補給金を注がなければならぬことを考えて、それだけ開拓に力を入れまするならば、国内における食糧生産の確保ということができるのであります。それがいわゆるわれわれの自衛態勢を確立することにもなると考えるのであります。政府においては特に開拓政策の積極的な推進と、そのためには惜しみなく国が資金の援助をすべきであるということを、強く希望意見として付しまして、本案に賛成をいたします。
  122. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 竹村君。
  123. 竹村奈良一

    竹村委員 私は日本共産党を代表いたしまして希望を付しまして、本案に賛成するものであります。  元来、日本政府のとつて参りました開拓事業というものは、各地におけるところの——終戰後各地に行われた開拓が、現在芳ばしい成績をあげていないということは、これまた周知の事実でございます。その原因を探求いたしまするならば、まず先ほどから各委員の討論にもありましたように、入植する人は大体無一物にひとしい形で入植するのでありますけれども、入植後におけるところの生活の保障というものは、ほとんどなされていない。これがまず第一の原因であります。従つて開拓地に入植いたしましても、生活ができ得ないがゆえに、遺憾ながら一年のうちの午数以上は開拓に従事するのではなしに、自分の生活費をかせぐために、いろいろな形におけるかせぎをやる。これが開拓不振の第一の原因であります。  第二の原因といたしましては、少くとも日本政府は、開拓に対しましては従来とかわらない最も封建的な開拓の方法をとつておるのであります。一例を申しますれば、開拓に対してはたして機械がどういうふうに購入されておるか、先般も本委員会におきまして問題になりましたが、たとえば北海道において新しい機械を購入したけれども、これは使用に耐えないような機械であつてこれはいたずらに機械製造業者の利益をむさぼらせておるにすぎなかつた。開拓にな何らの役に立たなかつた。しかもこの開拓の方法は、單なるくわと人力だけにまかされておるところが、第二の原因であります。  そういたしまして現在国内におきますところの食糧の自給というものは、重要緊急の問題であるということは言をまたないのでありますけれども、開拓に対する政策というものは、先ほど申し上げましたような政策から一歩も出ていない、ここに問題があるのであります。もちろん本法案に出されておりますところのいろいろの資金の融通方法にいたしましても、その融通を受けるものが、開拓者団体のいわゆるそれを牛耳るボスといわれるような連中のふところにころがり込む危險も、なきにしもあらずと私は考えるのであります。これは二、三年前からの二、三の例によつても明らかなごとく、政府の補助金というものはいたずらにそのボスのふところにころがり込んでおつて、その不正が白日のもとにさらされておる事実もあるわけであります。従つてわれわれといたしましては、開拓は重要である。しかもこの開拓に対しましては、高度の機械力を政府はもつと積極的に導入すること、そうしてその次には開拓者自身の生活を積極的に援助する。そうしてまた国民の血税によつて融通されておるところのこの資金を、一人のボスの利益のために使われることを十分監現するということを條件といたしまして、本案に賛成するものであります。
  124. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 討論は終局いたしました。  これより本案を議題として採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を願います。     〔総員起立〕
  125. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。なお報告書の作成、提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと思います。     —————————————
  126. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 次に先刻質疑を打切りました国民金融公庫法の一部を改正する法律案を議題として討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。小山君。
  127. 小山長規

    ○小山委員 私はただいま議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案につきまして、自由党を代表し希望條件を付して賛成の意を表するものであります。  国民金融公庫は開設以来、一般金融機関対象とならない国民大衆に対する小品貸付のために、非常な貢献をして来たのであります。そして昨年十二月末においては、四十二億数千万円の貸付を行つて来ておるのでありますが、この国民金融公庫資金量については、まだまだ足りないものがあるのでありまして、現在四十二億数千万円の貸付をやつておりますけれども、貸付を受けたいという希望者の総額をとれば、百億あるいは百四、五十億に上ろうかと思うのであります。そこで今度のこの増資案は、二十億円を増資しようというのでありますが、この二十億円は国民大衆の希望からはまだはるかに遠い、はるかに少いと感ぜられますので、近き機会において、あるいは預金部資金からするところの金融債の発行を認めるような措置とか、あるいは機会を見てさらに増資をするとかいうような措置を、政府においても十分に考究せられんことを希望しまして、本案に賛成をいたすものであります。
  128. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 宮腰君。
  129. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 私は民主党を代表しまして、本案に希望條件を付しまして賛成するものであります。  今日の経済状態を見るに、大企業においては金融が比較的楽にできるのでありますが、中小企業に至つてはそう簡單には入手できない。これは見返り資金状態を見てもわかります。一千億に近いところの見返り資金が大企業に流れまして、中小企業にはわずか一箇月一億というような資金を貸し出しておるような状態になつております。現在この中小企業者が一般の業者であるところの銀行あたりに金を借りに行つても、新規な取引には全然金を貸さない。こういう意味で、新しい科学的発明をしたような場合でも、資金を出さないというような状態では、日本の経済状態はかえつて退歩的な一途をたどる。こういう意味合いで、私は今後政府においてもこういう新しいものを発明された場合には、特に金融審議会のようなものをつくりまして、銀行なりあるいはその他の金融機関なりについて、特にその審議会が金融あつせんに対して協力するという態勢をつくる必要があるのじやないかと思うのです。従つてこの中小資金をいかに解決するかという問題が、今後に残されるわけでありますが、今回増資する国民金融公庫の融資の問題については、これは国民待望の融資の機関でありまして、今後ぜひともこの拡大をはかつて行かなければならない。現在政府には、今回二十億だけの金を出すということになつてはおりますが、しかし二十億だけでは、とうてい国民の要望にこたえるだけの資金をまかなうことは不可能であります。そこでわれわれはこの案について修正案を出したいという考えで、百五十億の金を考えてみたのでありますが、ただわくだけ広げておいてやつても、現実予算の処置が伴わなければ、これは財政法上非常に不可能でありますので、この問題は今後ぜひ百五十億に修正していただきたい、こういう希望を申し上げておきます。  また見返り資金あるいは預金部資金を金融債の形において出せる方法がありましたら、今後ぜひこれについて適当な処置を講じていただきたいという希望を持つておるのであります。先ほど小山さんも話されました金融債の問題でありますが、これも直接に金融債の発行を許すということになつた場合には、あるいは国債のような形になるのじやないかという心配をしておるのであります。この点は政府もこの次の議会までにはぜひこういう問題を検討していただきたい。もしこれが国債のような性質のものでなく、單なる金融債で行くのだということであるならば、ぜひともこれを許してほしい。  それから現行法の公務員適用でありますが、これなどもいろいろ出張旅費だとかなんとかで遠くへ出張できない。遠距離の人はこの金融の機会を得られないで、とうていこういう民主的な金融機関恩恵を受けられない方がたくさんあるのでありますが、ぜひともこの公務員適用を排除しまして、輸出銀行法と同様に、公務員とみなすというような規定適用するような改正も必要であります。もしこれがいけなかつたら特別職の規定適用するように改正してほしい、こういう希望を申し上げまして本案に賛成するものであります。
  130. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 松尾君。
  131. 松尾トシ子

    ○松尾委員 ただいま議題になりました国民金融公庫法改正法律案に対しまして、社会党を代表して賛成をいたすものであります。  現在の経済情勢から見まして、中小企業及び零細企業者の資金繰りはまことに困難になつております。なぜならば問屋価格は上昇しているところへ、購買力が非常に落ちておりますので、製品は比較的安くさばかなければならない状態でございます。それゆえ小資本の上に余分にキヤピタルを食つているという状態なのでございますから、この法律規定してありますところの金庫に借入希望をする人が殺到しているのです。その人々は死にもの狙いで申込みをしているにもかかわらず、今の状態ではなかなか満足行かない。というのは、今度増資をしました金額があまりにも少いので、将来もつと適当な方法でどしどしふやしていただきたいと思います。今日の様子を見ますと、わずかに小希望者の二割にしか満たないというふうにも聞いておりますから、国家より一層の増資をはかつていただきたいということをお願いするのであります。  なお小口調査にあたりましては、公務員の旅費規程が災いをいたしております関係から、潤沢に参りませんので、宮腰さんもおつしやいましたように、これらの役職員の待遇を公務員からはずして、旅費をどんどん使つて迅速に調査をし、満足を與えるようにしていただきたいことをお願いいたしまして、賛成の意を表するものでございます。
  132. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 竹村君。
  133. 竹村奈良一

    竹村委員 私はただいま提案されました法案に対しまして、共産党を代表いたしまして、希望條件を付して賛成いたすものであります。  第一点といたしましては、先ほどから各委員において問題を指摘されておるのでございますが、現在の日本の経済状態から見まして、しかもその最下等にいる人たちに対するところの金融を目的とするこの公庫性質からいたしましても、いろいろな国の財政的な面からいたしましても、この二十億の増額だけでは非常に不足でありまして、少くとも今宮腰さんが百五十億と言つておられるのでありますけれども、いろいろな事情から見ますと三百億くらいにふやすのが適当じやないか、私はこういうふうに考えるものであります。しかしそういうようないろいろな増額の問題につきましても、国の財政的ないろいろな面から見ましても、当然見返り資金あるいはその他の方法によつて増額できる方法があるのでありますから、すみやかにこれを増額することが必要だと考えるわけであります。  それからもう一点といたしましては、この増額いたしましたものを国民のこういう層に均等に貸し出し得る、いわゆる借り得る機会を與えなければならぬ。その機会を與える方法政府においてはとられていない。その一つの例といたしましては、たとえば全国におけるところの支所が、今度増設されましても、未設置になるところの支所がいまだに八箇所もある。従つてこの八箇所の府県は代理店によつて補われている。代理店は公庫からまわつて参りましたところの貸出し資金というものを、おおむね組合員に貸しておる。組合員以外の人はこの恩典に浴していないのが現状であります。これはすみやかに克服する必要がある。これを政府において改善されなければ、国民のうち一部分だけがその利益に浴しないというところの不均衡を生ずると、私は考えるのであります。  第三点といたしましては、松尾さんも言われましたが、こういうような未設置のところがあるにもかかわらず、旅費その他の調査費用というものは実に僅少である。だから、たとえば府県からの申込者が遠方であつた場合には、その旅費や調査費用の不足を理由といたして全然貸付の要求すら受付けない現状であります。しかも一方において貸付を申し込んでもこれを受付けずして、なお申し込んだ者に対するところの金融すらが、わずかに二十四、五パーセントないし三〇%といわれている事実から見ても、いかにこの資金が不足しているかということがはつきりわかるわけであります。またこういう点において、政府はその他の面におけるところの予算の使い方は、実にわれわれが見て国民の血税を使うに際しましては、寒心にたえないような使い方が至るところでされておるのであります。その実例は、たとえば公庫の問題あるいは食管問題いろいろな面において十分これは実証されている事実でありますから、こういう点を徹底的に政府は粛正いたしまして、こういう国民の血のにじむような必要とする資金に対しましては、もつともつと大胆に増額されんことを要望いたしまして賛成するものであります。
  134. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 討論は終局いたしました。  これより本案を議題として採決に入ります。本案に賛成の諸君の起立を願います。     〔総員起立〕
  135. 夏堀源三郎

    ○夏堀委員長 起立総員。よつて本案は原案の通り可決いたしました。  なお報告書の作成、提出手続等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じます。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時二十三分散会