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1951-02-20 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月二十日(火曜日)     午後一時四十八分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 小山 長規君 理事 西村 直己君    理事 天野  久君       大上  司君    川野 芳滿君       佐久間 徹君    島村 一郎君       三宅 則義君    宮幡  靖君       内藤 友明君    松尾トシ子君       竹村奈良一君    深澤 義守君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君  委員外出席者         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ————————————— 二月十九日  江戸川沿岸土地買收代金に対する免税の請願(  青木正紹介)(第七〇三号)  水産業協同組合及び各種漁業機関に対する課税  減免の請願鈴木善幸紹介)(第七一二号)  たばこ民営反対請願竹山祐太郎紹介)(  第七三四号)  同(田中織之進君紹介)(第七三五号)  清涼飲料及びし好飲料に対する物品税撤廃の請  願(塚田十一郎紹介)(第七六四号)  絹人絹織物に対する物品税課税反対請願(星  島二郎君外一名紹介)(第七六五号)  陶管及び粘土かわら焼成用工業塩引下げ請願  (江崎真澄紹介)(第七七六号) の審査を本委員会に付託された     ————————————— 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号)  登録税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二八号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三〇号)  骨牌税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三一号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三五号)     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 それでは、これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案外七税制改正法律案を議題といたしまして、引続き質疑を続行いたします。  この際委員長より大蔵大臣簡單にお伺いしたいことがあります。東京銀行債券発行の問題で、予算委員会では大分問題を大きく取上げているようであります。こうした問題がもし遺憾の点があれば、当委員会においてこれを取上ぐべきは当然であると思いますけれども、私どもとしては、これは大した問題として取上ぐべき筋合いのものではない。こう考えておりましたので、そのままになつてつたのであります。ところが予算委員会においては何か含みがあるか、この問題を非常に大きく取上げて、しかも野党の方から声明書までも発表し、この内容を新聞紙上において見ますると、東銀債発行問題は、大蔵官僚銀行当局との間に何か微妙な関連を含んでいるばかりでなく、日銀総裁政策委員会反対を押し切つて強行した云々と、何かしら大蔵大臣及び大蔵官僚に対して、非常に含みのある発表をしておるのであります。なお政策委員会の方で、中山日銀政策委員としての発言のうちに、短期金融債発行については、大蔵大臣は、発行の余力のあるところは今後も発行を認めるというが、預金の多いところが発行できないという不公平が起るということを述べておりまするが、この問題に対しては、私らはむしろ反対考えをもつております。預金のあるところは預金によつて、いわゆるその運用をまかなわなければならぬのであつて預金のないところが金融債によつて調整をとるということに考えていいではないか。そして公平を期するという線に持つて行くべきではないだろうか。ところがそういう方法をとつた方が不公平が起るということを、中山日銀政策委員が申し述べられておりまするので、こうした問題を、当委員会においてそのまま不問に付しておるということもどうかと思いまするので、この際に大蔵大臣から、この問題についての見解を明らかにしてもらいたいと思いまするが、この点大蔵大臣より説明を承ります。
  3. 池田勇人

    池田国務大臣 昨日の予算委員会におきまする討議状況は、速記録でごらんいただきたいと思います。しこうして大蔵当局東京銀行の間にいろいろなことがあるやに揣摩臆測されておりまするが、これは心外きわまるのでございまして、討議の間におきましても、臭いというような言葉が使われましたから、即座に私はこれに対して反駁いたしておつたのであります。しこうして日銀当局大蔵当局とが非常に食い違つておるということを言われておりまするが、私は一万田総裁から、これについては反対であるという申出は聞いておりません。ただしばらく時期を待つたらどうか、自分帰つてからにしてくれたらどうかという申出はあつたのであります。しかし預金吸牧並びに資本の蓄積は焦眉の急でありますので、東京銀行から相談を受けましたとき、十億円程度ならば適当であろうという答えをしたのであります。御承知通り日本銀行を除きました他の銀行は、全部昔とは違いまして普通銀行に相なつたのであります。しこうして先般御決議をいただきました金融機関債券発行等に関する法律によりまして、各普通銀行法律の制限のもとに債券発行し得る建前になつておるのであります。債券発行し得る銀行自分つてにできる建前になつておる。ただ大蔵省は全般的に監督しておりますので、届出でも何でもございません。ただ非公式の交渉を受けたので、私ども意見言つた次第であるのであります。しこうして今委員長のおつしやいました公平、不公平につきましては、私も昨日答えておつたのでありまするが。資本金が少くて薄金をたくさん持つている。すなわち自己資本の二十倍以上に預金を持つているところは出し得られませんが、自己資本の二十倍以下のところは、この際ある程度金融債発行して、たんす預金その他隠れたる預金を吸收するととは、現下の経済金融情勢からいつて、私は当然の措置考えておるのであります。ただ地方銀行の方々が心配せられておるように、預金横流れが行われて金融界混乱に導くようなことがあつてはいけませんので、そういうことのないように、発行條件発行の額あるいはその他応募する人の暦を見ながら、適当な金融債発行は、私は今の情勢から申しまして、委員長のおつしやるように当然なことと考えておるのであります。御承知通りに今の日本金融制度は、ほんとうに学問的でも何でもございません。單なる終戰後のどさくさをある程度直して行く道行きであるのであります。しこうしてその間に早急の資金吸收という大問題が起つた場合におきまして、私は源泉選択課税を認めたり、あるいは法律でできることになつておりまする銀行債発行は、過渡的措置としてやむを得ないと申しまするか、適当な措置という確信を持つておる次第であります。なお本来ならば大蔵委員会において御論議いただくのがけつこうかと思いまするが、予算審議の過程におきまして質問が出ましたので、予算委員会で審議されるように相なつたのであります。私は日本銀行あるいは各金融機関意見も十分考慮いたしまして、東京銀行が二月の十五日から十億円の金融債発行することは適当であろうという固い信念確信を持つておる次第であります。
  4. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 もう一点簡單にお伺いいたします。今後もあることですから、この点をはつきりしておきたいと思います。政策委員会性格、これは私ども考えとしても、当然法律に示されてありまする通り、やはり日本銀行内にこの政策委員会を置くということであると思いますが、その政策委員会が、大蔵大臣のいわゆる監督権と申しますか、これをさしおいて反対意見を発表するということになると、非常に何か政策的に矛盾した面が現われて来るのではなかろうか。そこで金融政策最高方針大蔵大臣がこれを持たなければならず、そうして日本銀行監督権は当然法律に示す通り大蔵大臣がはつきり握つておりまするので、そのために政策委員会大蔵大臣かこれを監督するということに、解釈してよろしいかどうかということに対する御答弁を承りたいと思います。
  5. 池田勇人

    池田国務大臣 大蔵大臣日本銀行並びに各種銀行につきまして、全般的の監督権——全般的の監督権と申すと語弊があるかもしれませんが、相当程度監督権がございます。しこうして金融面に関しまする大蔵大臣権限と、日本銀行政策委員会権限とは、おのずから違つておる点があるのであります。たとえば金利の問題をきめるのは、これは一応政策委員会がきめまして、そうして大藏大臣に報告することに相なつておるのであります。銀行監督権はわれわれのところにあるのであります。従いまして金融債の問題につきまして、政策委員会で論議されることは適当であろうと思いまするが、その結果を大蔵大臣にしいることはできません。大蔵大臣大蔵大臣職権でやるのであります。しかも私は政策委員会でこういう結論に相なつたということを、直接に大蔵大臣として聞いていないのであります。中山君が参考人として意見を述べられることは、これは中山君のことでございますので、私はとやこう申しませんが、大蔵大臣金融情勢を見て、法律に許されたる範囲内におきましての金融債について相談を受けた。——これは許可しとか認可の申請ではございませんが、一般的の相談を受けてやつた。これに政策委員の人がとやこう言おうとも、大蔵大臣自分職権としてやつて行く考えでありまする
  6. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 わかりました。宮幡君。
  7. 宮幡靖

    宮幡委員 委員長の特別な御配慮により、たまたま予算委員会で問題視されました東銀債発行について、適切なお尋ねがあつたわけであります。従いまして直接この問題につきましては、これ以上お伺いする必要もないかと思います。私も昨日予算委員一員といたしまして、本件に関しまする質問を詳細に聞いておつた一員でありますが、残念なことには財政金融政策と申しますか、国の重要なる施策に関しまする問題を離れまして、あたかも検事廷か、法廷におきましての質問のようなことが繰返されました。われわれは與党であります関係上、なるべく平穏なるを希望いたします関係で、默つてつたわけであります。少々これに対します考え方が違つておろうかと思いますので、大蔵委員会としましては、もしかような問題を取上げるとするならば、進んで当委員会話合いをいたすべき問題であります。委員長もその点については十分お気づきのことのようでありますので、これ以上申しませんが、適当な時期におきまして予算委員会等にも話合いをいたしまして、当委員会理事にあまり心配をいたさせないようにいたしていただきたいことを申入れをしておきたい。  次にこの際大蔵大臣お尋ねいたしますが、先般当委員会大蔵大臣の御出席を煩わしました際に、まず私かお尋ねいたしました冒頭の問題は、いわゆる二軍通貨制というようなことが、一万田さんがアメリカにおいていろいろ放言せられますことによつて、どうも国内に流れて困るが、一体こういうことを考えておるのかどうか、こういうことが行えるのかという趣旨のお尋ねをいたしました。こういう事例を見ましても、一万田さん個人意見は、残念ながら現在の大蔵大臣の意向とは違つておるわけです。ことに臼取近UP通信の伝えまするところのアメリカにおきまする一万田さんのお話は、再軍備の線において経済政策を修正したい。——これはほんとう言つたかどうか、アメリカと距離がありますのでわかりませんが、UP通信の伝える報道が真実であるならば、現在の吉田内閣は、少くとも再軍備には愼重を期すべきである。再軍備に要する予算的な彈力等についても、いまだその基礎をとらえることができない段階であるので、再軍備の問題は軽々にこれを取止ぐべきでないということを明らかにしております。しかるにかかわらず一万田さんは、再軍備の線で経済政策を修正するのだということを言つてつたUPは伝えている。これくらい一万田さんの言うことは現在の政府考え方と違つておる。もちろんこれは一万田さん個人意見だと私は思う、御帰朝の上は適当な時期において、これをただすことをはばからないものでありますが、とにかくそういう方向でありますので、大蔵大臣違つた考え方をもつて個人意見として各方面に流す。たとえば東銀金融債を出してもらわない方がよかろうというような、希望的な意見を述べたということは当然でありまして、これを大蔵大臣がさような必要なしと考え東京銀行に対し金融債発行——承認というものではありませんが、さしつかえなかろうという常識的な承認を與えたということは妥当である。私はかように考えておるものであります。ことに東京銀行性格なるものは、御承知のように沖繩との取引は内国貿易の形態をとつておりまして、アメリカドル資金、おもにECA勘定でありますが、これを東京銀行ドルで拂い込みまして、沖縄との貿易はすべて東京銀行を通じて円決済をしておるわけであります。促つて東京銀行普通銀行と違いまして、沖縄というものを対象として考えますれば、りつぱなるところの為替銀行である。特に最近は琉球銀行との間にコルレス契約の締結があつたとか、そういう契約が結ばれそうな段階にあるということも伺つております。この点についても先般大蔵大臣お尋ねをしたが、まだそういうことは聞いておらぬ、こういうお言葉でありますが、とにかく従來沖縄貿易におきまして、東京銀行の果して参りました役割から考えますると、当然コルレス契約が成立すべきである、LC開設の煩瑣を避くべきであるというように常識的に考えます。こういう特殊な性格を持つておるところの東京銀行は、当然円資金を他の銀行にまさつて調達しなければならないことは理の当然でありまして、こういう意味におきまして、東銀——法律で定められた特殊な性格ではありませんが、現在の経済事情が生みました特殊性格認むるということが、これまた当然の常識であろうと思います。旧來の債雰発行をいうなら、興業銀行勧業銀行の特権だと考える。しかるに大蔵大臣は、この方面発行については、それを発行しない方がよかろうという干渉がましいことをした、こういう質問さえありました。しかしこれこそ私は妥当だと思つています。普通銀行性格を持つた以上、金融債発行することができる法律が一般的にできております以上、あえて勧業銀行興業銀行割引債券が特権化して、これの発行の自由があると考えることこそ間違いでありまして、さようなものはむしろ押えて、しからざるものを條件さえ整えば、金融債発行はどの銀行がしてもよかろう。しかし昨年四月以來計画を立てて來た東京銀行金融債発行の問題は、その銀行特殊性格から考えまして、当然これは優先的に認めていいのだとお考えになつたことが、私はむしろ進んだ考えであり、よき大蔵大臣の一つの行政施策だと信じております。かような意味におきまして、重ねて私は大蔵大臣にただ一言お尋ねいたしたいことは、東京銀行に対しまして私どもが感じていますような、一種の貿易銀行としての特別性格が現在あるということを認みてよいものかどうか。この点についての大蔵大臣の御所見を一言承りまして、当委員会として感じました、また委員の一人として感じました債券に対しまする問題を、補足いたしておきたいと思う次第であります。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知のごとく東京銀行と申しましても、これは今の銀行構成人員から申しますると、昔の正金銀行の方が多いのであります。しこうして正金銀行は御承知のごとく国際的の銀行でございまして、内地にあまり支店がございません。その跡を受けて立つた東京銀行でございますので、資本金は十億余りを持つておりまするが、支店が非常に少い。従いまして支店が少いと預金がそれだけ少いのであります。で私といたしましては、今の東京銀行業務状況は、宮幡委員のおつし直る通りに、ほとんど外国為替手形の過半は東京銀行が取扱う。これは昔の経験があります。あまり経験のない銀行へ横文字のものを持つて行くと、なかなかはかどらない。東京銀行へ行けばすぐはかどる。こういうので民間の人は、どしどし東京銀行へ行くのであります。しかるところ割引しようにも預金が少いので、非常な支障を来しております。貿易手形等は再割引を認めおる関係上、日銀にどんどん行くのであります。そうすると日銀の方では、東京銀行では自分のところへ持つて来過ぎるとか、あるいは再割引でない貸付にいたしましても、東京銀行は他の銀行よりも貸付が多いとか、こういうふうなことがあります。しこうしてまた貿易が盛んになるにつれて東京銀行業務はどんどんふえて行く。こういう実際を私は見ておりますので、この際預金がまだ十分集まらないのでありまするから、貿易金融の方から申しても、東京銀行がこういう願出をするととはやむを得ない、当然なことではないかという考え歩つたのであります。しかし当初は二十億円の発行相談に来ましたから、初めてのことであるから、十億円ぐらいに減らして様子を見たらどうかというので、実は十億円に減らすべしという意見は申し述べたのであります。東京銀行は、そういうことならば十億円でやつてみましようというので、私はもちろん大蔵大臣として、預金横流れが盛んに行われというふうなことのないように、あらゆる方面から考慮をめぐらしまして、申出の二十億円を十億円にして出発させた。そして東京銀行の今の業務状況は上述の通りでございますので、理論からいつても実際からいつても、私は当然の措置であるという確信を持つておるのであります。
  9. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの大蔵大臣の御答弁はまつたく満足に値するものでありまして、それでこそ戰後における混乱経済の中の金融政策が細々ながらも継続して行ける、かような段階になるだろうと私は考えます。なお先ほど申し残しました一点をこの際記録にとどめまして、将来の御考慮に資し、またわれわれ委員といたしましては、あるいは議員立法の形をとりまして、これを強く推進する機会をとらえるかもしれません。それは何であるかと申しますと、日本銀行法の一部を改正する法律審議に際しまして、日本銀行総裁政策委員会ボードチエア・マンと同一人では、将来必ず弊害があることをわれわれは力説して参りました。おそらく本日の段階においては、もし個人万田さんの批評を避けた言葉で申しますならば、この制度が断然惡い従つてどうしても次の機会においては、日本銀行総裁はポリシー・ボードチエア・マンになり得ない、こういうことにするか、それがなれても、もう少し嚴重なる隔壁を設けた制度にしなければならない、かように考えております。もし政府当局に適当な時期に御勘案をいただけないとするならば、われわれ委員会におきましては委員長を中心として協議いたしまして、議員立法に訴えましてもぜひこの制度を改正いたしまして、日銀総裁政策委員会委員長なる両性格から流れます誤謬というものを訂正して参りたい、かような信念を持つておることを、この際ぜひ記録にとどめておきたいと思います。
  10. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 それではこの問題はこの程度に打切りまして、税制の問題について……。内藤君。
  11. 内藤友明

    内藤(友)委員 ただいまの東銀問題につきましても尋ねたいことがありますが、封じられましたから、いずれまた他の機会に譲りたいと思つております。それで私税制の問題についてお伺いしたいのであります。これは所得税に関することであります。ちようど大臣出席でありますから、重大な問題でありますので、お答えいただきたいと思います。  それは政府が昨年の三月に漁業法を制定いたしまして、漁業者が持つております漁業権を全部消滅させまして、その代価に漁業証券を交付するということになつておるのであります。それが約百七十億交付されることになりまして、目下各地方ではこの補償委員会を開きまして、適当なる補償価格をとりきめいたしております。従つてこれがきまりますと、近くその漁業権に対する等価の漁業証券が交付されることになるのであります。ところがこの補償金に対しまして、所得税法の第何條でありますかによつて所得税を納めなければならぬのであります。私ども計算によりますと、百七十億の漁業証券が出るのでありますが、所得税は百億ほどの計算になるのであります。そうしますと現実に漁業者はこの制度の実施によりまして、わずか七十億しか手に残らない。こういう問題が実は起きて参つたのであります。この漁業証券というものは決して財産の譲渡ではないのでありまして、これは漁業権とその補償金とを交換されたものでありますので、それに税金がかかつてそれが少くなるということは、結局補償金を減じたという結果になるのだと思うのでありまして、非常に矛盾しておるのではないかと思うのであります。先般農地改革のときに、農地証券が交付されたのでありますが、あのときは、法人だけは所得税をとられたのでありますけれども個人は免れておるのであります。今度は聞くところによりますと、大蔵省内部と水産庁の事務当局との話合いがまだついておらないそうでありますが、この際大蔵大臣の御所見をお伺いいたしておきまして、もし私の申し上げたことが正しいとするならば、ただいま出ております租税特別措置法の一部を改正する法律案、この中にひとつこれを盛り上げて、適当に漁民の希望をいれたいと思うのであります。大蔵大臣はこういう補償金に対する所得税を、やはり税制にきめられた通りおとりになる御意思があるかどうか、それを一点伺いたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 漁業法に基きまして、漁業権が他のものに強制譲渡になると申しますか、あるいは漁業権が一旦消滅して、新たに漁業権が発生するとか、いろいろな法律的な問題はあると思います。問題のもとは、鉱業権と物権の譲渡に対しましては、讓渡所得税をかけておるのでありますが、今内藤君がおつしやつたように、交換というようなお言葉をお使いになりますと、交換譲渡のうちに含むと考えますから、課税になりそうでございますが、これが交換であるかどうかということにつきまして、今検討を続けておるのであります。いずれにいたしましても百七十億の漁業権のうちで、百億円も課税になるということは、なかなか出て来ないのではないかと考えます。しかし課税額のいかんにかかわらず、これは漁民あるいは漁業組合の方方の利害休戚に、非常に影響があると考えますので、ただいま検討をいたしておる状況であるのであります。
  13. 内藤友明

    内藤(友)委員 御研究中のようでございますが、早急にひとつきめていたたきたいと思います。そこでひとつお尋ねいたしたいのは、この百七十億の補償金に対しましての税金を百億と申しましたが、あるいはそんなにならぬという大臣のお言葉でありました。私百億か八十億か知りませんが、これは二十六年度の租税收入予算の中に入れてお考えなさるのですか、それを伺いたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田国務大臣 租税收入予算に入れておりますかどうか、私は知りませんが、こういう特殊のものにつきまして、予算を組むときに考えているかどうか、これだけくらいのものは予算のときには考えないのが、昔われわれがやつたときの状況であります。主税局長が幸いおりますから、その辺どうであるか、主税局長からお答えさせたいと思います。
  15. 平田敬一郎

    平田政府委員 今大臣お話通り、そういう事項を一々こまかく調べまして積み上げ計算という方法は、今やつていないのでございます。ただ毎年そういつた類似のものはございますが、今度のは二十四年をもとにしております。二十四年度にあるいはそういう特別の所得があつたかと思いますが、そういうものが一定の指数で伸ばされておりますから、入つていると言えるかもしれないし、入つていないと言えるかもしれない。その辺は特別に一々こまかく計算しまして、これが幾ら幾らというようには計算いたしておらないのであります。そういうふうにお答えするほかにないと思います。  なおこの税額でございますが、かりに課税になると申しましても、もちろん再評価法の適用を受けますし、それから小納税者の場合には免税になる点も多いと思うのでございます。組合の場合にもいろいろ違つて参りますし、私はかりに課税しましても大した税額ではないと思います。ある特別の個人所得から見ますと、たとえば相当多額の漁業権を持つておりまして、賃貸しているという人の中には、課税になると相当の税額になるということはあり得ると思います。大体そういうところではないかと思います。
  16. 松尾トシ子

    ○松尾委員 実はきのうも半田さんと税金の問答をやつたのですけれども、まことにあざやかな数字一点張りで、どうしても納得ができないので、きようは大臣がおいでになりましたから、少し時間を余分にさいていただきたいと思います。  今回大臣がおつしやられておりますところの七百四十三億一千六百万円の租税及び印紙收入予算額の数字は、税法上の減税になると思います。それは言葉の上ではわかりますけれども、私が考えるのに、むしろ予算面からの国民負担の軽減には絶対ならないような気がするのです。この七百四十三億一千六百万円は、私はこういうふうに考えるのです。朝鮮動乱後から生産の活動も上昇いたしましたし、それに伴つて国民所得もふえたので、二十五年度の税率でかけてみると、ばかにとり過ぎる。そして二十六年度の支出面を見ますと、そんなにお金が必要ではないから、こうした税法処置を講じて、この数字が出たのではないかというふうに考えますけれども、昨日中田さんとお話をいたしましたときに、未亡人にも特別控除をやつたじやないか、あるいは大十五才以上の老人にも特別控除をやつているとか、その他税率を引下げたところもあるとおつしやいます。これはよくわかります。けれども近い将来に、昨年と同じようにタバコの予算上の金額もとれるのはむずかしいだろうし、昨年の例を見ても、收入見込みが八十億も足りなくて補正で切つた例もある。  その上、今年はタバコは四月一日から各種価格を引下げる。その割に製造本数もふやしておりませんし、また諸外国の物価の上昇とともに、国民生活は苦しくなつて、米は買わなくてはいけませんけれども、タバコの売れ行きも惡くなるのではないか。こんなふうに考える面もあるし、また国際事情にかんがみまして、警察予備隊の増強もはからなければならないだろうし、こうしたことが出て来ると、どうしてもこれは国民負担の予算面の軽減にならないと思います。なおくどく説明いたしますれば、租税收入の面を見ても、二十五年度と二十六年度とはわずかに五億六千百万円ですか、そのくらいしか差額がございませんから、結局予算面から見た国民負担ということになると昨年と同等である。同時に、ただいまお話したような事情が加味されて来ますと、むしろ上つて来るのじやないか。それで国の予算も計画を立てておやりになるのがほんとうですし、個人の生活も計画を立ててやつていないで、突然に税金が増微というような調子でぶつかけられて来ると、非常にあわてますから、私はお聞きをしたいと思うのでございます。
  17. 池田勇人

    池田国務大臣 最近になつて税法上の減税とか、予算上の減税とかいう議論が多いようでございますが、大蔵省といたしましては、しかもまた各国の大蔵省でも、日本の割合と同じような減税とか増税を行つておるのであります。生活が苦しくなつたり、国民生活が非常に低下したから、こういう議論が起つて来るのもやむを得ないかと思いまするが、学問上はわれわれの言つているのが、古今東西を通じての減税であるのであります。それでもし予算上について、数字であなたがおつしやるのならば、酒は本年の予算は千四十億であつたかと思います。しかるところ来年の酒の分は、千七十二億円、こうなつております。あなたの議論から見れば、收入が多くなつて、非常に増税じやないかということになります。しかし国民皆さんに聞いてごらんなさい。酒は減税になつている。それから法人税を見ましようか、法人税は補正予算をつくつて五百七十億円の税金をとつておる。しこうして来年は五百七十億円が六百三十億円と六十億円ふえております。そうすると、御審議願つておる法人税法には、特別償却をやるとか、積立金の課税をやめるとか、こういうように減税しても、收入は増になつている。これは増税とはだれも言わぬと思います。またたとえば今年度のいわゆる事業所得税でも、初め予算は千五百億円見込んでおつた。それを補正予算で三百三十億円減じて千百七十億にした。あなた方減税とは申されぬでしよう。それで千百七十億円の予算が決算では千億円程度になるのじやないか。しかし大蔵省としては、当初予算の千五百億円が千億円になつても、今年度事業所得税を年度の途中で五百億減税したとは申しません。しかし收入は減つて来るのであります。国民所得がふえて、それに対して税金がふえるのは、当然です。国民所得がふえて、税金が当然ふえるのを、ふやさないのが減税なんです。私の減税というのはこれでございまして、古今東西を通じて誤りない理論だと考えます。
  18. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大蔵大臣は学問上とおつしやるのですけれども、実際の政治は学問ばかりではやつて行かれないと思うのです。現実に一個人の生活の上に現われた現象をとらえて、私は申し上げておるのです。それで大蔵大臣の観点と、私の観点とがたいへん違います。それでこの一致点はなかなか見出せないと思いますし、あまりつつ込んでもこれはだめですから、それでこの点はこのくらいにいたしますけれども、ただいまお話のありましたように、国民所得の増大ということを、どんなふうな方法によつて、はつきりおつかみになつたのでしようか。それをひとつお伺いしたい。
  19. 池田勇人

    池田国務大臣 私は他の機会でも申しておきましたが、減税、増税という問題と、国民の生活が苦しくなるならぬという問題とは、これは別個の問題であります。それは減税はしましたが、物価が非常に上つて来た。しこうして物価が上つてもうけた人はよろしゆうございますけれども、物価が上るほど所得がふえない人は、これは生活が苦しくなつた。そこを減税してあまり苦しくないようにしよう、こういうわけです。ところが減税とか増税の問題でなしに、国民生活をどうするかという問題になりますと、これは別個の問題、これははつきりわけてもらわなければいけない。物価が上つて苦しくなつたじやないか、減税しても楽にならぬ、こういう議論はありましよう。しかし減税は減税なんです。そこを認めてもらわなければいけません。それで減税問題をお聞きになりましたから、私もそう申したのですが、来年の国民所得がどうなるかということにつきましては、安本が專門で検討いたして、大体三兆七千億程度に見込んでおります。この国民所得計算というものは、各国とも非常にやつかいであります。先般もシヤウプ博士が来て、日本の国民所得計算方法検討して、さじを投げて帰られたのでありますが、なかなかむずかしい問題であります。昭和二十五年度の国民所得も、当初は二兆七、八千億と言つておりましたが、大体三兆二千億になつた。この三兆二千億が三兆七千億になぜなるかと申しますと、まず第一に生産の増加であります。そうしてこれに対してある程度の物価の上昇を見込んでおります。そこで生産の増強はこれはよいしかし物価の上昇があつた場合において、減税をして国民生活がどうなるかという問題は、これは問題だと思います。物価が上るから減税にならぬというのではない。減税は減税なんで、国民生活が向上したかしないか、こういう問題になつて来る。それでありますから物価は、生産をうんと増強して国民所得をふやすとともに、あまり物価を上げないように、いろいろな処置をしておるのであります。昭和二十四年中は国民生活の指標でありますところのCPI、消費者物価指数は大体一三七、八だと存じます。しかし昭和二十五年は吉田内閣の財政経済政策が奏功いたしまして、二十四年の一三七、八のCPIが一二七、八でとどまつておるのであります。これは減税をして、消費者物価指数が下つたというので、これは二重によくなつた。しかし今度は来年はどうなるかと申しますと、昨年の十月、十一月はCPIが一二八程度で、おととしに比べますと、よほど下つておりますが、昨年の十二月は一二八が一三四に上つております。今後このCPIがどんどん上つて来ますと、減税はせつかくやつたけれども、国民生活は楽になつて来ないという議論が出て来ます。減税、増税の議論ではありません。そこでわれわれは物価ができるだけ上らぬように、生産資材の上るのは国際関係でしかたがないが、少くとも消費者物価指数は、国民の生活上影響が来ないように、あらゆる施策を講じて行つておるのであります。
  20. 松尾トシ子

    ○松尾委員 その点は大臣が減税と切離して、国民の生活のことだつたらお考えになるというのですから、よい施策をとつていただきたいと思います。ところでただいま大臣も申されましたように、国民所得の二十五年度と二十六年度の開きはいささかございまして、その差額が四千五百九十億ばかりになつておりますが、この国民所得の増をなしたところの暦は、国民のいかなる層にあるかをお伺いしたいと思います。
  21. 池田勇人

    池田国務大臣 こまかい問題は政府委員から答弁いたさせることにいたしますが、国民所得のうちの大部分を占めておるのは勤労所得でございます。しこうしてまた事業所得のうち、農業所得もありますし、工業所得もあります。各部門においてふえて参りましよう。だから今年の所得におきましても、国民所得計算する上におきまして、二兆七、八千億が三兆二千億になつたというのは、米価が五千五百二十九円になつたということも国民所得の増になります。それから賃金は昨年の一月から十二月までにかけまして、七、八百円の平均賃金の値上りがあると私は見ております。また年末におきましても、特殊産業には相当な年末賞與が出ました。賃金の増加もあります。それからいろいろな生産物が大体一割程度ふえるのであります。こういう各部門におきまして、全体的に国民所得の増があります。農業でどれだけ、勤労でどれだけ、あるいは工業でどれだけということは、政府委員から答弁をさせます。
  22. 松尾トシ子

    ○松尾委員 そう大臣はおつしやるのですれども、どうも勤労者が七、八百円くらいふえたといつて、生活が楽になるということは、私はうかがわれないと思うのです。ただそれが数の上で大勢ですから、国民所得に対する増加の面を幅広く占めるかもしれませんけれども、個々の生活からいうと、決して七、八百円の昇給でよい生活になるとは思いません。  ところで税法の税率についてちよつと苦情があるのです。というのは、実は十万円を越える人に百分の二十の課税、百万円以上の人には五五を課税する。百万円以上の人には五五%の課税をいたしましても、残りは四十五万円あるのです。十万円の人に二〇%をかけると、その残りはわずかに八万円です。そしてその残りの八万円と四十五万円を比較すると、非常な開きの大きい数字です。けれども金を持つてる人も持たない人も、一度にお米を一升も二升も食べられません。そしてまた一ぺんにくつを三足も四足もはけないと思いますから、こういう点で大臣も、国民の生活云々でしたらこれは税金とよく別に考えるとおつしやるのですからこの税率を下にはもつと軽くして、上にもつと厚くして税收入をはかるようにしていただきたいのです。そうしないと非常にここに不均衡を来すというふうに私は考えるのですけれども、どうでしよう。
  23. 池田勇人

    池田国務大臣 そういう議論は昔からあつたのであります。そこでイギリスなんかは九十何パーセントの税をとつてつたのであります。日本でも九〇%以上の税率を使つたことがあるのであります。しかし日本の国民所得所得暦を考えてみますと、昔は富士山のようなこういうかつこうをしておりました。しかし今の日本の国民所得というものは、何というか剣山のように急に下へ下つてこうなつておる。ですから上をいくらとつても、財政收入というものはまかなえない。アメリカやイギリスのように富士山のようであつたら、五合目から上がたくさんありますからよろしいのですけれども、人が登れないような剣山のようなところはいくらとつてもとれない。こうして、今五五%とつて四五%残るとおつしやいましても、これに住民税がかかつたり、あるいは所得の多い人は寄付が、いやでございますが来ましたり、こういうことになりますと、上の人もそう楽ではございませんし、そうしてたくさんの負担力がある人はごく少いのであります。昔の日本所得と申しますと、アメリカやイギリス流に富士山の所得、今はまるでほうきを立てたような所得暦であります。私も下の方の分はできるだけ減らさなければならぬという考えで、扶養控除の引上げとか基礎控除の引上げをしておりますが、何分にも所得税をこれくらいとらなければならないということになると、遺憾ながら下まで行かなければならないのであります。しこうして今年からはわれわれの歳費もふえましたが、とにかく税金が高いことは私が最もよく知つております。歳費が上りましても、相当の税金があるのであります。四、五十万円の所得といつたら、これは国民所得の中以上でありましよう。しこうしてまだ五〇まではかかつておりませんが、かなりの負担でございます。しかし今の財政状況から申しますと、まあこの程度は、遺憾ではあるが、やむを得ないんじやないか。そこで私はできるだけ歳出を減らして、そうして税負担の軽減をして、資本蓄積、再生産に向わそうという方針をとつておるのであります。
  24. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大臣の心境よくわかりましたけれども、一体所得税が大衆課税方法をとる今の法規であるから、しようがないのでそういうふうにして行くとおつしやられるのですけれども、どのくらいの時期を待つていたら、うまく行きそうにお思いになりますでしようか。
  25. 池田勇人

    池田国務大臣 所得税が大衆課税とおつしやいますが、所得税は税法の理論から言うと大衆課税でなしに、酒とかタバコの方が大衆課税であるのであります。従いまして今のような状態では、とにかく所得税に力を入れて行くべきだという税法の理論家と、もう所得税はなかなか調査もむずかしいしするんだから、間接税の方に力を入れて行くべきだという議論もあります。この前新聞を見ますと、ある有名な方がある有名な方に意見書をお出しになつたときに、間接税中心に行くべきではないかということを言つておられたようですが、私は間接税というものは大衆課税で、やはり税の理論としては所得税で行かなければならぬ。私は所得税は早い機会に安くしたいとは思いますけれども、何分にもどれだけあなた方が予算を創つてくださるか、どれだけ公共事業費用減らし、あるいは政府の仕事も減らし、役人の数も減らし、あなた方がどんどん政府予算をお削りくださいましたら、進んで減税をいたします。一にかかつてあなた方におまかせしておるのであります。国会でおきき願えれば、その時期に軽くなると思います。
  26. 松尾トシ子

    ○松尾委員 今のお話を伺つていると、もう一つ聞きたくなつたのですが、いわゆる予算をどのくらいまで減らすというお話ですけれども、一体今の物価指数と諸外国の様子あるいは労働賃金から為わせ考えまして、日本予算はどの程度ほんとうは妥当なんでしようか。その数字をお示しくださいますれば、それになるように私も議員の一人として奔走します。
  27. 池田勇人

    池田国務大臣 お話申し上げましよう。大体予算のスケールというものは国によつて違います。一応一般会計をとつて見ますと、日本の一般会計の歳入歳出は、三兆八千億に対しまして六千六百億円に相なつております。二割足らずであります。イギリスの予算は百億ポンドの国民所得に対しまして、歳入歳出は三十四億ポンド、三割四、五分でございましよう。アメリカ予算は二千二百五十億ドルに対しまして、歳出が四百二十三億ドル、歳入が三百七十二億ドル。これで大体スケールがおわかりでございましよう。この四百二十三億ドルアメリカの歳出は、今度の軍事費増加によりまして七百億ドルまで参りました。これは一九五〇年から五一年の予算で軍事費を四百億ドル、しかもまた対外援助を相当に見込みまして四百四、五十億ドルの軍事費を使つたために、七百億ドル程度になつた。国民所得に対して二割五分、日本は国民所得の一割何ぼ、こういうような財政スケールであるのであります。これだけ国民所得に対しては財政が少いから、税も安かろうと思うとさにあらす、ことにアメリカより日本は税が高いと苦しんでいる。それは国民所得が今のほうきを立てたようで、下の貧乏人が多い。それが税を負担しなければならぬからそうなる。だから国民所得に対して税が何ぼだというようなことは、一概に言えないのでありますが、幸いに日本は国民所得に対しまして、去年は一般会計の歳入は二兆三千億のときに七千四百億円の予算、ことしは三兆二千億円のところで六千六百六十億円、来年は三兆七千億円のところで、ことしよりも減らしたのでありますから、よほど財政はよくなつたのであります。しかして財政の規模はどういうようになるかと申しますと、これは国家が発達して所得が多くなつて来れば、多くなるのは当然であります。しかし来年は国家の生産がふえて国民所得はふえるのだが、われわれは歳入歳出は減らした。これが私が議会でいばつている一つなんであります。りくつから言つたら、国民所得がふえて来れば財政の規模もふえて来る。これを私は本年も縮めた。だから予算の形がどうなるかということは、そのときの情勢考えなければならぬ。あくまで私は歳入歳出を減らすのに汲々としているのじやない。国民所得、国の経済を大きくする、予算がふえるよりも経済を大きくするのが先なんです。経済をほんとうに大きくするためには安定した土台をつくらねばならぬというので、過去二年間やつて来たのであります。大体いつも言つているようによほどよくなつて参りまして、目鼻がついた。これからは一生懸命に、あと先を見ぬというわけには行きませんが、自信を持つて、ひとつ経済の復興に邁進するときだと思います。だから予算のスケールとか何とかいうことにあまりとらわれる必要はございません。これは相対的のことと考えております。
  28. 松尾トシ子

    ○松尾委員 中央の方は大臣のお骨折りでたいへんよくなつたようにも、その御説明で受取られますけれども、これが地方税の方に非常にかかつていると思うのです。それで制度の上から申しますと、教育も消防もあるいは警察も地方財政にまかされておつて、ほんの一部の税を地方の方にとる権限を與えられているだけで、お仕事とバランスがとれておらない関係から、なかなか地方は中央が楽になつたかわりに苦しくなつていると思う。けれども民主化の徹底をはかるためには、もつと中央の財源を地方に與えなくては、ジリ貧になつてしまうような関係があるし、せつかくの民主的な制度も廃案にしなければならないというようなことも、なきにしもあらずと思うのですけれども大蔵大臣は中央から地方へもつと財源の委譲をおはかりになる努力をしていただけないでしようか。
  29. 池田勇人

    池田国務大臣 金の出るところは国民のふところ一つでございます。国でたくさんとり上げて地方へ出せと申されますが、国もたくさんとるということはいやです。地方もやはりいやでありましようが、今の地方のとり方が、国でやつておるように合理的にやつておるかというと、地方の財政についてあなた方がわれわれを監視なさるほど監視しておるかどうか、こういうことをひとつ考え願いたいと思います。私としてはできるだけ平衡交付金をふやそうとしておりますが、ほんとうに地方団体の財政をだれが握り、だれが監督し、だれが指導しておるかということを考えますと、非常にいやな点があるのであります。最近のこの議会を見ましても、非常にたくさん傍聽に来ておるようでありますが、こういう原因はどこにあるかということを考えないと——国の方は安くなつたということを社会党のあなたは認めてくださいますが、地方の方も安くするように、国民が監視しなければならぬと思います。ほんとうに合理的に節約して、国民の血であるという気持で使つているかということを再検討しながら、われわれとしてはできるだけの交付金の増額ははかりたいと思うのであります。一概に国の方から出せとおつしやつても、出すのだつたらまた所得税をたくさんとらなければならぬし、酒の税金を上げなければなりません。それからやはり地方々々のやるいろいろな事業も、国から出すということになると、したがりますが、それを節度なくやるということは、これはみんな国民が出すのですから、国民が国の財政に関心を持つと同時に、地方の財政にも関心を持つてもらわなければいかぬ。あるところで、国の歳入歳出は六千億とか七千億とかと批評を加えておりながら、東京都の予算は幾らになるかということを知つている人がだれもいない。これでは私はいかぬのだと思います。国の歳出一億、二億のことをとやこう言つておりますが、東京都の歳入歳出の予算が何ぼということを聞いたら、二十人くらいおりましたけれども一人も知らぬ。大蔵省の局長でも一人も知らぬ。これではいけないのであります。みんなに地方のことをわかつてもらつていなければいかぬ。私は大蔵省の人のことを非難するわけではありませんが、あまり関心がなさ過ぎると思うのであります。
  30. 松尾トシ子

    ○松尾委員 それでも私たち地方の人から思うと、制度だけはいいけれども、金も地方にとられてしまつたのでは大蔵省官僚の仕事がなくなるし、顏にもさわるからというので、金だけは押えておこうというような感じがするのです。制度は向うにお渡ししたけれど、金までやつてしまつたのでは、監督力がなくなるからというようにも考えられますので——もちろんなかなかお骨折りのことと思いますけれども、どうぞ地方の財源をもつとふやすように努力していただきたい。  それからもう一つ御質問申し上げたいのは、さつきのほうきでまわり中貧乏人だからというので、大臣は結局今度資本の蓄積をお叫びになつたのだと思うのです。このほうきだけを非常にかわいがりなさいまして、税法だのその他いろいろ関係から、こればかりに恩典を與えているように思うのですけれども、私は資本の蓄積というものは結局のところ、必ずしも大資本家をつくり上げるということではないと思うのです。もしあまりにこれを極端におやりになるといかがかしらと思うのです。この資本の蓄積というものは健全性を保つて行かなければならないから、配当の制限とかあるいはそれ自体の冗費の節減とかということでやつて行く方がいいのじやないかと思うのです。大臣はこの点についてどうお考えでしようか。また日本に金がなくて貧乏人ばかりの税金をとつてやるということでなしに、他の方法で金をつくつて蓄積ができるように、あるいは産業資本の注入をするとかいう方法を、お考えになるおつもりはございませんでしようか。
  31. 池田勇人

    池田国務大臣 資本の蓄積は金持ばかりという考えは持つておりません。どうしても全体として蓄積しなければ、一人や二人の蓄積では間に合うものではございません。従いまして全般がうまく行くようにし、また集まつた金をできるだけ有効に使つて行くようにいたしておるのであります。何といつても資本の蓄積はなかなかできないから、どこからか金を持つて来てという考えでありますが、これを誤りますとたいへんなことで、敗戰直後のように、金をどんどん出して物をつくればインフレはやむのだということは、ひとつのりくつではあるけれども、世の中はその通りに行かないのです。物と金とのアン・バランスだからというので金をどんどん出しますと、先にインフレになつて生産ができない、こういうことに相なるのであります。そこで私は金もほどほどに出さなければいけない。しかし金を先にたくさん出したら生産はできない。それでどうしても今のところでやつていただく。見返り資金や預金部にたくさん置いておるじやないか、この金に困つておるのになぜあれを使わぬかと言われますが、見返り資金や預金部に千数百億円私がためておるのは、日本銀行から輸入促進のために二千四、五百億円出ておる。それが出ておるから政府が調節をしておる、こういうかつこうでありまして、今輸入のために二千四、五百億円も日銀が出しておる、国も見返り資金なんかどんどん出して行つたら三、四年前のインフレが出て来るのであります。これは全体としてよほど考えなければならぬのであります。金だけが不自由なのじやない。金が不自由であると同時に物も不自由なのです。だから金が不自由だというので金だけやつたのでは、物がますます不自由になつて来るのであります。従いまして急激に資本の蓄積をはかりますが、足りないところはやはり外資導入よりほかにありません。しかし外資導入といつても、ドルが来たつて意味をなさない。ドルにかわる物が来ることが主眼であります。だから物が来、ドルも来、来たドルでいるものを買つて行く、こういうことで行かなければいかぬので、金ばかりにとらわれるべきではありません。金より物、物より金と、こうちぐはぐに来るようでございますが、金も物も常に一体をなしておるものと考えております。
  32. 松尾トシ子

    ○松尾委員 大臣なかなかお骨折りで私もよくその心情はわかります。ちようどこれは隣の金持の坊やのいいおもちやだとか高級な菓子を、貧乏人の子供が金のないお母さんにねだつていると同じような苦しみがあると思うのです。けれどもこの賢明なお母さんは、一応近所のみえもあるだろうし、また子供をひがませないでよく指導して行かなければならないという教育心も持つているだろうし、なかなかのお骨折りだろうと思うのです。どうか大臣もこのよい賢明なお母さんになつていただきたいと思うのです。貧乏人をあまり犠牲にしておきますと、半死半生の体で水を飲んでがまんしていられる間はいいのでありますけれども、それが不平とかわつて来ると、自由党の大臣に、また日本の国民思想というものに、不満から大きな火がついて来るのだと思うのです。單なる貧乏経済をつかさどるという問題だけで終らずに大きな世界的な問題まで発展するということもあり得ますから、どうかいい指導をしていただきたいと切望する次第でございます。
  33. 池田勇人

    池田国務大臣 ありがとうございました。
  34. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大臣に一つ税制問題でお尋ねいたします。それで減税の点で松尾さんに続いてお伺いしたいのですが、重複することを避けまして、簡單にお聞きしたいと思います。大臣は一月二十九日の本会議におきまして、今度の税金予算よりも以上にとれるというふうに言明されておるのでございますが、これは源泉課税あるいは申告税、法人税いろいろな点からでありましようけれども、どういうような点で予算よりも多くとれると考えられたのか。そうしてどのくらい多くとれると考えておられるのか。その辺からお伺いしたい。
  35. 池田勇人

    池田国務大臣 ごく最近の数字は存じませんが、一月の二十八、九日ごろ私が本会議で申し上げたときの気持は、源泉課税所得税で四、五十億くらい増收が出るのじやないか。それから法人税で百億程度、補正予算以上にとれるのではないか。それからお酒の方で二十億余り増收があるのではないか。しかるところ片一方の事業所得の方で先ほどもちよつと触れましたが、千五百億円を千百七十億円に減らしておりますが、これがやつぱり百億以上の減收になるのではないか。物品税もある程度の減收が出ましよう。こうやつてみますると、非常にとれるのもありまするが、事業所得税のようにとれないものもありますので、全体としては大した増收にはなりますまい。
  36. 竹村奈良一

    ○竹村委員 そういたしますと、勤労所得税では四、五十億円ぐらいは源泉所得の方でふえるという御説明でありますが、源泉所得の方でふえるという分は、結局におきましては給與の値上げ、あるいは賃金の値上り等によるところの、つまり勤労者所得の増額による税金がふえるのである、こういうように考えられるのですが、賃金の値上げというような考え方は、結局は生活物資いわゆる消費物資の値上り等による賃金の値上げ、あるいは給與ベースの改訂——はつきりした給與ペースの改訂ではないでしようけれども、そういうようなことになつてつて、こういうところからふえるんだ、こういうように考えられておるのかどうか。結局消費物価が少し上るということを、大臣考えておられるのかどうか。この点を伺いたい。
  37. 池田勇人

    池田国務大臣 消費物価の方は最近上つてつております。詳しく申しますと、先ほど触れました消費者物価指数は、昨年の一月ごろ一三二、三であつた。それガ昨年の四、五月ごろ一二四、五、昨年の十月が二一八、十一月一三四、三こうなつて来ておりますので、高低はございまするが、昨年の十二月はかなり上つて来ました。それまではずつと横ばいだつた。かるがゆえに私は、勤労階級の分はおととしに比べて苦しくなつたとは考えません。消費者物価指数が真なりとすれば——私はこれを信じております。そうだとすれば勤労階級全体としては、おととしの平均一三七、八だつたということになれば、一〇程度つておりますから、苦しくなつたとは思いませんが、賃金はかなり上つております。去年の一月は平均賃金が九千七百円、一月は特殊な例でございまして、二月は平均が八千七百円、それが十一月には九千五百円になつておる。一月、十二月は特例でございますが、二月と十一月を比べたら、七、八百円上つておるわけです。しかし消費者物価指数は横ばいである、こういうことであるのであります。私は物価が上つたから、賃金が上つたということには持つて行きたくない。持つて行きたくないというのも希望ではございませんで、生産が非常にふえて、所得が全般的に上つて参りました。そこで昨年の暮れなんかも、繊維関係の年末賞與は、当初は一箇月半といつておりましたが、結局紡績なんかでも二・二箇月分とか二・一箇月分とかに上つて来た。こういうことで昨年の十二月の賃金は、相当上つておるのではないか。もちろん一万円を突破しておると思うのであります。だから物価が上つたから賃金が上り、賃金が上つたから勤労所得がふえたんだ、こういうことよりも生産がふえて賃金が上つて来た。しこうして物価がある程度つたけれども、賃金は非常に上つたので、生活は去年の十一月ぐらいまではまあまあというところである。そこで勤労所得は上つた、こうなると思うのであります。
  38. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大臣は、物価が上つたから賃金が上つた、そういうふうに考えたくない、一応物価は横ばいで賃金が上つた、こういうように言われるのですが、この問題について議論をいたしましても、おそらく大臣と私との考えは一致しないだろうと思います。私は現在では物価は非常に上つておる。昨年の十二月と現在と比べるならば、消費者物価は相当上つておる、こういうふうに考える。しかも消費物価の上りと賃金の値上げとは、物価が上つただけ賃金が上げられているかというと、必ずしも上げられていない。たとえば給與ベース一つにいたしましても、私はその通りであろうと思う。おそらくこの三月、四月になりますならば、このままの賃金、このままの給與ベースでは、おそらくその人たちの生活は非常に苦しくなる。従つて私は、当然給與ベースも改訂されるべきものである、あるいは賃金も上るべきである、こういうふうに考えるわけですが、その場合におきましても、今大臣が源泉所得で四、五十億予算よりも多くとれると言われましたが、むしろもつと多くとれるのじやないかと考えるわけでございます。そういたしますと、たとえば勤労所得で、予算上におきましては、昨年度と比べまして百三十二億減税になつておる、こう説明されております。しかし税法上から見たならば、政府は三百何億か減税になる、こういうように言つておられますが、これはこの間平田さんともずいぶん問答をしたわけでありますけれども、たとえばかりに物価は二割上つた。二割上つたといたしまして、この二割だけの賃金が上つたとしますと、一万円の給料取りは一万二千円とれるようになる。そうすると今まで一万円の給與所得者は、現在の改正税法によりまして四百五十円の税金を払う。つまり夫婦と子供二人で四百五十円払うことになつておる。ところが今度物価が上つたがゆえに、一万二千円の給料をとるようになると、結局改正税法によりましても、七百九十円の税金をかけなくちやならぬ。一万円のものが一万二千円になつて、これはもちろん二千円多く給與をとるようになつたんだから、税金は改正しても七百九十円かけるのがあたりまえで、前の税法では一万円で六百八十三円であつたものが、今度は一万二千円で七百九十円になる。つまり百七円多く税金をかけなくちやならぬことになるのでありますが、そういたしますと、税法上でとかその他の問題でなしに、実際上労働者の生活から見ますと、一万二千円とつたならば二千円所得が多くなつた、こういうように考えますけれども、結局と考えますと、物価の上つただけ給料がよけい上つて、税法では改正されても、改正しないところの一万円もらつたときよりも、百七円税金を多くかけなくちやならぬ。もちろん税法上には七百四十何億か減税になつておると、先ほどから言つておられますけれども、実際勤労者の面から行きますと、物価が二割上つて賃金が二割ぐらい上つたといたしましても、実質上には減税にはならぬ。税金は安くならぬ。これが議論の中心なんです。先ほどから松尾さんにもいろいろ御答弁されておりますが、つまり減税とは、政府がこの予算書でも説明なれておるように、あるいは税制改正の提案理由の説明にもありますように、結局国民負担の軽減である。これが減税の根本である。そうして資本の蓄積ということになつておるのですが、実際は国民負担を軽減するというものが減税でなければならぬ、こう政府言つておられる。そういたしますと、私が先ほど例を引きましたように、これは実際上には減税にならぬ、実質的な減税でないと考えるのでありますが、大臣は一体どういうように考えられますか。
  39. 池田勇人

    池田国務大臣 また松尾さんの議論を繰返すようでありますが、それじや今度改正税法案を出さなかつたらどうなりますか。これでおわかりでしよう。減税法案を出さなかつたらどうなりますか。物価は上り、賃金は上り、国民生活は非常に苦しくなります。そこで減税法案を出して減税しておこうこれでおわかりと思います。あなたの前提の、物価は二割上る、賃金は二割上る、こういう架空の数字では議論になりません。だから減税ということと、物価が上つて生活が苦しくなるということは別個の問題で、理想としては物価を上らぬようにして、減税をうんとやつて、生活水準を上げようというのが理想であります。だから、減税という問題と生活問題とは、別個にわけてお考えくださらなければいけません。負担というのは、個々の負担というのじやありません。全体の国民経済上の負担を言つておるのであります。それから勤労者の生活が苦しくなつたとかなんとかおつしやいますが、昭和二十四年を一〇〇といたしますと、大体十一月までの統計がありますが、それを見ますと名目賃金は二割五分上つております。そうして物価は、消費物価指数を一〇〇といたしますと、十一月は九七、十月は九三で、物価は下つております。かるがゆえに実質賃金は昭和二十四年平均を一〇〇といたしますと一三四・一となつておりまして、物価は横ばい、賃金は二十四年平均より三割四分向上しているという数字を、主税局長が今持つておわりましたのでもらつたのですが、この通りであります。減税じやないと言われますが、減税法案を出さなかつたらどうなりますか。
  40. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 大蔵大臣は他に会議の約束がありますので、また次の機会にいたしたいと思いますが、あと一点だけ簡單に願います。
  41. 竹村奈良一

    ○竹村委員 大臣は、税法の改正を出さなかつたらどうなるかと言われる。これは国の全体の予算から見て、金が余つてお困りになると思う。従つて金が余つていたし方がない、ほかの物価も上つてとれるし、そう予算もいらぬ、だから改正しよう、これが政府のねらいであつたということが、大臣の今の答弁からはつきりした。減税々々と国民に言われますが、改正せずにそのまま税金をとつた予算が余つて困る。いたし方ないからこのくらいにしておこう。そのついでにこの改正案のねらいとして、いわゆる法人税などにおける資本蓄積をおやりになつて法人に対しては、もつぱら資本蓄積の名において減税をされておる。たとえば積立金に対するところの課税の廃止、こういうことをされておる。時間がありませんので、また後ほどやりたいと思いますが、とにかく改正案を出されるということは、つまり予算が余るから、いたし方ないからこういうふうにしよう、そのついでに法人に対して、資本の蓄積の名においてひとつうんと減税してやれ、こういうことだと私は考えておることを申し上げて、これで打切ります。
  42. 宮幡靖

    宮幡委員 輸入関税のこと、について、ちよつと伺いたいと思うのであります。これは関税率審議会で政府に答申される段階になつておると聞いておりますが、石油の原油の輸入関税問題は、今後定率法の改正のときに再度出されることになると思いますが、一応この問題について、非常に急を要する問題でありますので、伺つておきたいと思います。  石油の原料であるこの原油が、多量に外国から入つて来るということになります場合に、国内の業者の救済から考えて、一〇%の保護関税をかけようという計画を進められておるということを聞いておりますが、日本の今の経済状態、この窮迫状態において、工業原料であるところの原油は、相当多量に備蓄をしなければならないような状態になつてつております。しかるに今回政府で、原油に対して一〇%の税をかけようという計画を進めておる。ところがこの石油の総数量の約九〇%は、外国から輸入しておりまして、全使用量の一〇%が国内で生産されておる。もしこの一〇%の国産原油を保護するために、九〇%の輸入原油に対して一〇%の課税をして行くということになると、これは結局物価の問題にも大いに影響しますし、また緊要な原料をどんどん輸入しなければならないという段階になりまして、一〇%の高率税をかけるということは、非常に不合理だと思うのであります。政府は別にこれについて意思表示もしておりませんが、審議会で上申しまして、政府が採択しようということにきまつたということを聞いておりますが、その点についてお伺いしたいと思います。
  43. 平田敬一郎

    平田政府委員 石油の関税の問題は、御指摘のように、相当重要な問題だと私ども考えておりまして、実は昨年来この問題につきましては、大蔵省としましても、各省とたびたび会合しまして研究を重ねたのであります。そうしまして、最後に到達いたしました結論が、結局におきまして、主として国内産の原油の保護という見地をこの際考えることにいたしまして、一〇%程度の関税率を盛り込むという考えでおるのであります。その内容につきましては、また後刻関税定率法を出します際に詳しく御説明いたしたいと思いますが、関税率審議会におきましても、この問題につきましては活発な議論があつたのでありまして、結局結論から申し上げますと、かりに日本におきまする原油の生産が、全体の需要量の一割強で非常に少いとしましても、やはり国内で原油を生産するということは、非常な経済上の強みと申しますか、意義があるのでございまして、外国からの輸入が減少したような場合、あるいはその他の場合におきまして、非常に重要な意味を有すると考えておるのであります。そのような意味におきまして、日本の石油資源の開発、石油の増産ということにつきましては、やはり国家的見地におきまして、この際私どもは相当これを推進する必要があると考えまして、少くとも一〇%の関税はこの際賦課したらどうか。一〇%でも、率直に申しますと保護関税としましては低いのであります。戰前はむしろそれよりも高くて二〇%、二五%という関税をかけておつたのでありますが、今いきなりそういう高い関税をかけますと、御承知のように一般にも相当影響がありますので、石油の増産につきましては、適当な対策を講ずることにいたしまして、関税率としましては一〇%程度で行きたい、こういうことで、大体政府といたしましては、関税率審議会の意見等も聞きまして、案をまとめたような次第であります。しかしこの問題は相当ほかにも影響するところもございますし、問題がございますので、関税定率法が本国会にかかりました際に、さらに関係省の御意見等もよくお聞き願いまして、適当な決定をお願いいたしたいと思います。また原油に一〇%課税いたしましても、ガソリンの値段の方は一〇%よりも少し低い影響しかないようであります。それらの点も適当な機会に、さらに詳細御説明申したいと考えて曲る次第でございます。
  44. 宮幡靖

    宮幡委員 世界の現状を見ますと、原油生産の自給率の非常に低い国は、大体原油に対しては無税のようであります。これと同時にまた戰争状態、いわゆる国際不安の状態になつて来ると、いろんな材料、いわゆる生産原料を日本の国内において備蓄しなければならない。こういう意味合いから考えても、この税の一〇%の引上げ方は非常に不当じやないか、こう考えるのです。またこれに対しては各種団体の方方も、非常な反対陳情を盛んに議会側にしておられます。この国際不安の折柄、こういう原油というようなものは、どんどん日本の国内に輸入しなければならない。こういう意味合いで、われわれは一〇%は高過ぎるようにも考えられますし、また外国の原油の自給率の低い国は全然無税になつておる。そういう意味からいつても、わずか一〇%の精油業者のために、これだけ産業に影響を及ぼすような税のかけ方はどうも不合理に思うので、今後関税定率法改正のときにも、一応これをお願いしたいと考えておりますが、政府の方で、ぜひ善処方を御研究願いたいと思います。
  45. 平田敬一郎

    平田政府委員 なお詳細は将来に譲りたいと思いますが、日本の石油資原は、やはり相当開発の余地があるということと、それから数量は少くとも、国内に原油の生産があるということは、いろいろな意味におきまして非常にいいことでございますし、また強みであるという点は、関税率を定める際におきましても、私ども考慮に入れた点でございます。もちろん需要者側が多うございますから、それに伸つて値上りということになりますので、反対論が相当多いことも事実でございますけれども、同時に将来における日本の石油資源をどうするかという問題と関連いたしまして、御決定願いたいと実は考えておるのでございます。なお詳細は関税定率法の御審議の際に、十分御説明申し上げたいと考える次第であります。
  46. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私の質問いたしたいと思いますのは、通行税のことについてであります。航空機が発達いたしまして、将来は日本の国土を縦横無盡に通行できる、こういうことになるだろうと思いますが、現在ではあまりたくさん使つてないように思います。もちろん外国人には適用はないと思いますが、航空機による通行税はどのくらい見積つておられますか。またその状況等について、主税局長から承りたいと思います。
  47. 平田敬一郎

    平田政府委員 航空機による国内の通行が始まる可能性がございますので、今回法律案を出しまして、汽車の一、二等と同様な課税をする、こういう提案を実はいたしておるのであります。まだ今のところあまり確実なことは申し上げにくい点もあると思いまするが、一応私どもの見込みましたところによりますと、これはまだ料金等も実ははつきりいたしておりませんので、一応の予測にしかすぎないのでございますが、航空機による二十六年度の收入見込み額を八千五百万円程度と見積つております。これは先般お配りしてあります歳入予算の説明の中に書いてございます。それによりまして御了承願います。
  48. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 通行税の問題でもう一つ伺いまするが、汽車の一等、二等にかけて汽船にはかけない。これは常識であろうと思います。この通りになると思いますが、従来は汽船に相当かけておつたわけであります。つまり汽車は三等、汽船は二等というのが常識だつたわけです。この二等廃止によりまして相当減りましようか。その辺をちよつと承りたいと思います。
  49. 平田敬一郎

    平田政府委員 その点も説明書に記載してございますが、約五千九百万円の減少を見込んでおります。
  50. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私の想像を述べて恐縮でありまするが、民間人が自由に乘れるには、二十六年度ではまだ十分とは言い得ないと思いまするが、これは何か政府としては手を打つておられましようか。この航空機に自由に乘れるということに対しまして、何か方法がありましようか。この機会に承つておきたいと思います。
  51. 平田敬一郎

    平田政府委員 その点は最近新聞紙等にも出ております通り、国内の航空が司令部から許されまして、日本に航空会社ができまして、その会社の経営で、飛行機その他を外国から借りまして、それによつて運行が開始される。それには日本人も利用ができるということに相なつております。
  52. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 あまりつつ込んだ質問は省略いたしまするが、およそ通行税というものは、われわれといたしましては、なるべくない方がいいというように考えておるのです。しかし一等客や二等客とかいうものにつきましては、税金をかけるようになつておりますが、将来におきましては、これは廃止した方がよろしいと考えるのであります。これに対して政府はどういうふうに考えておりますか、承りたいと思います。
  53. 平田敬一郎

    平田政府委員 これはやはり私は消費税の課税システムの一環として考えなくちやならぬと思います。たとえば物品税等は、ある程度ぜいたくなものには課税するという考え方をいたしております。旅行も一種の消費支出でありまして、従いまして旅行の中で特別に高い料金を払つて旅行するという者に対しましては、若干担税力があると考えられますので、全体の消費税のシステムとしてどういうふうに考えるかということになるかと思います。もし将来物品税等を全廃するということでありましたら、あるいは通行税等もやめた方がいいかと思いますが、まだなかなかそういう状況に参らないということでございますと、やはり課税の対象ということに相なるかと思うのであります。その辺のところは、今の段階ではちよつと確定的な意見は申し上げにくいのであります。
  54. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 主税局長お話によりまして大体は了承いたしました。私どもは今後国民経済の復興と同様に、流通経済というものも考えられますから、通行ということも盛んになるだろうと思うのでありますが、当分の間は今度改正になられましたようにして行きたいと思います。つきましては、この前奥村委員から御質問がありまして、すでに主税局長から答弁があつたことでありますが、相続税につきまして一応明確にするために、もう一ぺん御質問いたしたいと思います。十万円まではどのような名義であつても、受取るときにこれに課税しない、こういうことになつておるわけでありますが、何べんどなたから受取つても、十万円まではさしつかえないということに了承してよろしゆうございますか。もう一ぺんお伺いいたします。
  55. 平田敬一郎

    平田政府委員 相続人ごとに、保險契約者一人ごとに計算しまして、十万円ずつ特別控除をするということであります。
  56. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 時間も参りましたから長くはいたしませんが、私ども考え方をちよつと申し上げます。印紙税ということが考えられるのですが、印紙税は登録税等から考えまして、安過ぎるということもあつたのですが、商品切手というものがまた出て来たわけでございます。これにつきましては、デパートにおいては今後相当発達するように見られておりまするが、政府としてはどういうふうに考えておりますか。もしおさしつかえなければ承りたいと思います。
  57. 平田敬一郎

    平田政府委員 商品切手の方は、現在も課税しておりますが、課税の最低限が低いので、今度上げようという改正を行つておるわけであります。もちろん商品が豊富になりますし、販売の競争が相当行われるということになりますれば、商品切手等も自然に相当盛んに相なるかと思うのであります。これに反しまして戰時中のように割当制、配給制がしかれまして、一般の自由販売の物資が少いような場合には、商品切手はおのずから少くなるという傾向になると思うのでありますが、自由販売が多くなつて参りましたので、やはり商品切手はある程度増加するの  ではないか、こういうふうに思います。
  58. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 ちよつと伺いますが、商品切手というものはなかなか利用価値があつたのでありまするが、自由経済がなくなつて統制経済になつたときに、これが中止されると思うのです。しかしその後統制経済がはずれまして、だんだんと自由経済になつて来ております。今のデパートの経営等を見ますると、現金取引というものがデパートの本質であると思います。から、商品切手というものは将来発展はいたしますが、今のところはあまり活発でないように考えておりますが、政府はどういうように考えておりますか。
  59. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話通りでありまして、統制時代にかなり衰え七いたのが、最近復活しまして大分盛んになりつつあるのが現状だろうと思います。
  60. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 いろいろありますが、本日はこの程度にしておきます。
  61. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 本日はこれをもつて散会いたします。     午後三時三十一分散会