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1951-02-16 第10回国会 衆議院 大蔵委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十六日(金曜日)     午前十一時二十八分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君    理事 西村 直己君 理事 田中織之進君       大上  司君    川野 芳滿君       佐久間 徹君    島村 一郎君       高間 松吉君    三宅 則義君       水田三喜男君    宮幡  靖君       宮腰 喜助君    松尾トシ子君       竹村奈良一君    深澤 義守君  出席政府委員         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         国税庁長官   高橋  衞君  委員外出席者         議     員 並木 芳雄君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 二月十四日  委員橋本金一君辞任につき、その補欠として早  稻田柳右エ門君が議長の指名で委員に選仕され  た。     ――――――――――――― 二月十四日  漁業権補償金に対する課税の特免措置に関する  陳情書  (第二二一号)  退職積立金及び退職金の免税に関する陳情書  (第二二三  号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二六号)  通行税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二七号)  登録税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二八号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  二九号)  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三〇号)  骨牌税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三一号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第三五号)     ―――――――――――――
  2. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案外七税制改正法律案を議題といたしまて、質疑を続行いたします。竹村君。
  3. 竹村奈良一

    竹村委員 私は少し政策的な面もありますので、実はできれば大蔵大臣あるいは政務次官にお願いしておつたのでございますが、先般本委員会において同僚宮幡委員からの一応政策的な面についても、局長がお答えされておりますので、そういう点にわたるかもしれませが、ひとつ御答弁を願いたいと思います。  まず第一点として、これはもうわかり切つたことであつて、こういうことをお尋ねすること自体がどうも愚問でありますけれども、しかし一応お伺いしておきたいと思うのであります。今度出されました税法改正案説明によりましても、少くとも減税とは、結局におきまして、説明書にも言われておりますように、国民負担軽減をはかる。すなわち実質的には国民税負担軽減にならなければいかぬ。真に国民負担軽減をはかつて、しかも国民生活を向上せしめるところの意味を持つのが減税である、こういうふうにきわめて明瞭に説明されておるのであります。そういたしますと、今度の減税は、国民負担軽減することが主眼であり、実質的にもそうである。このことが政府において確認されなければならないと思うのであります。従つて私はこの愚問に似たような質問をいたすわけでございますが、この国民負担軽減するという点については間違いないかどうか。これをまず最初にお伺いいたしたいと思います。
  4. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまの竹村さんのお話の点は、一昨日でございましたか、宮幡委員のお尋ねにお答えいたした通りでございまして、私ども実質的に負担軽減になるというふうに考えております。
  5. 竹村奈良一

    竹村委員 それはその通りで、そういう意図でなされたと思うのであります。それではひとつお伺いいたしたいのでございますが、たとえば政府は声を大にして七百四十三億余円というものが減税になる、こういうふうに言つておられるわけでございます。ところで昨年度予算に比べますと、実質的にはわずかに五億五百五十万円、それだけの減税にしかならぬ、こういうふうに説明されておるわけでございますが、これは改正しなかつたならば、七百四十三億円が多くとれるのであつて改正したから結局七百四十三億余円というものが減税になるという説明でありますけれども、しかし予算と比べましたならば、事実上における税収入の面におきましては、五億五百五十万円だけが減税になるのであります。そういたしますと、結局政府の意図するところは、物価値上り等から見て、当然改正しなければ実質的には七百四十三億余円とれるものをとらない。従つて去年から見たならば五億五百五十万円というものが減税になるだけだが、実質的には改正しなかつたならば七百何億とれるやつをとらないのだから、それだけ減税になる、こういう説明だと思います。そういたしましても、そこで問題になりますのは、つまり物価値上りというようなものが、はたして国民生活の向上になつておるかどうか。そのことが議論の中心だと思うのであります。この点で政府は一体どういうふうに考えておられるか。
  6. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話の点の中で、物価関係を考えるべきじやないかという考え方、これは私非常に大事な考え方だと思います。そういう点私どももよく研究いたしておるのでありまして、ことに一番問題なのは給与所得なんかにつきまして、減税になるかならぬかということだろうと思いますが、そういう場合につきましては、結局今の物価指数で一番一般的でありますところの消費者物価指数が、私どもは公中に購買力を示す一番代表的な指数だと考えております。これがどういうふうになつているかということが、今のお話のような場合における中心問題じやないかと思うのでございます。それでこの指数につきましては、前国会でも竹村さんにたしかお話いたしたと思いますが、皆さんの常識とやや違うのかもしれませんが、率直に申し上げまして非常に安定している。昭和二十四年の平均を一〇〇といたしまして、消費者物価指数動きがどうなつているのかということを、私ども非常に注目をもつて見ているのでございますが、朝鮮動乱後若干上りましたが、十一月の水準が九三・五%でございます。十二月には年末で少し上りましたが、それでもなお九七・五、二十五年の一月が九八・三、従つて十二月は少し上りましたけれども、二十五年の一月に比べますと、まだ少し下まわつている、こういう状態でございます。これに対しまして貨幣賃金相当ふえております。二十四年の一箇年を一〇〇にいたしまして、全産業の貨幣賃金というものは十一月現在で一二五・三%、つまり貨幣賃金の方は二割五分だけ上つている。十二月はもう少し上つていると思いますが、これはまだ統計がございませんので、十一月の数字を申し上げたのでございますが、十一月は一二五・三に上つている。それから申しますと、例の物価指数貨幣賃金を割りました実質賃金というものは、相当よくなつておるわけであります。従いまして私どもはこの消費者物価指数の動向ということが、将来の非常に重要な問題とは考えますが、最近までの傾向、あるいは今後政府においていろいろ物価について対策を考えておりますような事項等を考えますと、大体安定に近い状況を示しておる。若干上つたり下つたりするかもしれませんが、それほど顯著な動きはないだろう。そういうことを考えて税法のことを考えますと、私は竹村さんはおそらく御理解願えるかと思いますが、基礎控除家族控除等引上げはただちに実質的減税になる、こういうふうに解釈いたしております。それで消費者物価指数が今後どうなるかということは重大な問題でありまして、これについてはいろいろな政策等を考え、極力安定の方策をとることになつておるわけでございますので、そういう点もあわせて御判断願つたらどうであろうかと考えております。なお米価が一月から上りました。その関係消費者物価指数はある程度上つて来ると思います。この点は先般の国会でも申し上げましたように、減税である程度カバーする。米価上つたために減税が食われる。私率直に申し上げまして、その部分は実質的減税米価引上げによつて食われるということになりますので、この点に関する限りにおいては、やはりマイナス・フアクターとして考えなければならぬのは当然のことだと考えます。大体一番勤労所得関係の深い物価税軽減との関係については、そのような点を申し上げることができるのではないかと考えております。
  7. 竹村奈良一

    竹村委員 今いろいろ統計を引かれて言われましたが、それは政府のどこの統計ですか。私の方の参考資料としてちよつと持つて来るのを忘れましたが、安本などの出しておるのでは、大体現在では平均して二六%他の物価上つておる、こういうふうに言つておるのを見ておるわけでありますが、そうするとちようど先ほど説明されました実質賃金がその間に二一%上つておる、こういうように当局は説明されておるのでございますが、そういたしますとやはりこの税法は、もちろん今説明されたように基礎控除がつまり三万円に上る。あるい扶養控除が一万五千円に上る。これはよくわかるわけでありますけれども、ところでそういうふうになりましても、結局実質賃金が今後上昇して行く。たとえば安本の言つているようにほかの物価指数が二六%であつた。ところがその物価の上る指数に応じて、本年度給与ベースが改訂され、あるいは賃金が改訂されるといたしますならば、これに対して改訂されて上昇した賃金、あるいは給与ベース税金をとられる。このことは間違いないと思います。そういたしますと、たとえば本年度かりに二〇%の実質賃金上つて、これで税金をとられたならば一体どうなるかと申しますと、私あなたの方で出されました税額で見ますと、たとえば夫婦及び子供二人で今まで月一万円の給料であつた。これが御承知のようにここに出ておりますように、現行であつたならば六百八十三円であります。そして改正法によりますと四百五十円に下つておる。これは確かに下るわけです。ところが先ほどおつしやつたように二〇%物価が上昇したとしまして、給料等が二〇%上るわけでありますから、従来一万円もらつてつたものは、月に一万二千円の給料取りになるわけであります。そうまで政府はお上げにならぬだろうけれども実質上二〇%上つた仮定しますならば、そうすると今までの一万円の給料取りは、一万二千円になるわけであります。そういたしますと、一体一万二千円になつたらどうなるか。今まで一万円であつて現行改正しない場合は六百八十三円の税金を払う。ところが一万円ですえ置きされた場合におきましては、改正後には四百五十円になるのでありますから、少くとも二百三十三円というものは減税になる。これは確かにその通りであります。ところが実質的に二〇%給料が上ると、一万二千円になるのでありますから、その場合においては一体どれだけになるかと申しますと、改正された税金におきましても七百九十九円払わなければならない。つまり夫婦及び子供二人で七百九十九円払わなければならぬ。そういたしますと結局物価が上らなかつたならば一万円であつて改正されると四百五十円になる、減税になる。こう言つておられるが、実際物価上つたからいたし方ないので、国民生活負担軽減されることにはならないわけです。物価上つたから賃金が二〇%上るのであつて、そして税金は結局どれだけになるかと申しますと、七百九十円出すということになりますから、一万円のときは改正前に六百八十三円であつて、今度改正されましても、実質的に賃金が二〇%上つたから七百九十円である。そうすると結局においては百七円ふえるわけであります。このりくつはよくわかると思うのです。実質的には物価が上らなくて、すえ置きの場合においては減税になる。これは物価上つて給料上つた場合に、今日東京はいろいろ言われますが、実際事変後物価上つて給料を改訂しなければならぬということは目に見えておる。その場合におきましては、結局百七円の実質的にはこれは増税になる。そうするとあなたの方から申しますと、それは今まで一万円の給料が一万二千円に上つたじやないか。一万二千円になつたのだからこれを改正してやつても百円、百七円くらい上るのは当然じやないか、こう言われるのでありますけれども、実際労働者生活物価指数が二〇%上つておるから、それで給料が上げられたのであつて、決してこれは国民負担軽減には私はならないと思います。この点は一体どうですか。
  8. 平田敬一郎

    平田政府委員 竹村さんは二〇何%物価が上るということを前提にして、議論しておられるようでありますが、今申しましたのは、私の方は内閣総理府統計局で調べました例の消費者物価指数——この指数はおそらく竹村さんも御存じだろうと思いますが、日本では一番権威のある消費者の購買する物価指数でありまして、何人世帯でありましたか、労働者代表的世帶を選びまして、そして家計調査をやつて、それを物価指数指数化したものであります。それでマル公とやみとの関係を、それぞれ実効価格を出してやつておるわけでありまして、この指数現実におきまして、消費者の購買する物価の代表的な指数だ、私はこう見ておるわけであります。これは何人も異論のないところだと思いますが、その指数のことを私申し上げたのであつて、この指数は今申し上げましたように、昭和二十四年平均を一〇〇といたしまして、十一月が九三・五、十二月が少し上つたということは先ほど申した通りでありますが、九七・五というようになつておるのであります。従いまして私どもこの指数が将来どうなつて行くか。これが一番問題にすべき点であつて、もしもこの指数お話通り二〇%も三〇%も上つて来る。その上つたに伴いまして、賃金物価上つただけしか上らない。そういうような場合におきまして、税の負担が間接に少しふえて来る。それは私さも率直に言つて否認しておるわけではありません。そういう場合におきましては、それによるそれぞれに応じた減税を行いましても、それは元通りということは言い得ると思います。ただ私どもはあくまでも最近まで現われております実数に基きまして、実は議論しておるわけでございまして、こういう点から考えますと、私ども実質的な減税になる、このように考えておるのでございます。将来物価が上ることを予測するかしないか、これは問題だと思いますが、極力政府は一方においては減税もやると同時に、他方においては問題の為替会計インヴエントリー・フアイナンス等一般会計から繰入れまして、極力通貨の増発は防いで、それによつて物価の高騰を抑制しようという政策をとつておるわけであります。従いまして今から消費者物価指数が、さらに二割上るというようなことを考えて、計画を立てるのはいかがであろうか、私どもかように考えておるわけであります。  それから今安本指数お話になりましたが、卸売物価、なかんずく生産材物価朝鮮動乱の直前と比較しますと、相当上つておるようであります。しかし現実には消費者の、ことに給与所得者との関係において重要なのは、そういう指数にあらずして、全体を総合して現実に家庭において購買する物資価格、それを表現するところの消費者物価指数、これが一番よりどころになるいい指数だというふうに見ておりますので、その点そういう基礎の上に立つて私立論しておるのでありますことを、御了承願いたいと思います。
  9. 竹村奈良一

    竹村委員 もちろんそれではまあこういうところから推し進めましても、技術的な、十二月の指数が九七・五である。一月が九八・三である。そうすると、一月と現在とでは比較にならぬほど生活物資小売価格、あるいはその他にいたしましても上つておることは事実であります。しかし私の申しましたように、かりに二〇%上つたといたしまして、これが二〇%上らないで、一〇%上るにとどまるかもしらぬし、あるいはまたどうなるかもわかりませんが、しかしそういうことは別問題としましても、たとえばかりに私はこういうあなたの方から出されました税制改正の要綱の表をとるのに便利だから、一応二〇%と申したわけでありますが、かりにこれが一〇%上つたとしても、現在の見通しにおいては、実際十二月と現在と比較いたしますと、織物類あるいはその他の生活物資にしましても、相当上つておることは事実です。しかも賃金がそれに件つていないということもこれは事実です。つまり各地に起つておるところの賃金値上げ要求、あるいは給与ベース改訂要求等から考えましても、実質的にはいわゆる消費生活生活費相当する、あるいはその他の物価指数相当するだけの給料値上げが、一応行われていないというのが今日の常識でありますが、そういうことは別問題としましても、かりに一〇%上つた。それだけ給与改訂したといたしましても、私の先ほどから申しました論からいいますと、実質的にはひとつも減税にならないのじやないか、私はこういうふうに考えます。もちろん二〇%上つた場合においてはこれは簡単に、先ほど申しましたように、実質的には百七円の増になるわけでありまして、この点は私ははつきりしていると思う。しかももう一つはそういうような立論だけの裏づけじやなしに、一昨日長官はどういうように言われたかと申しますと、国民税金負担割合は二十四年度では二四%であり、二十五年度では二三%であつた、今度の改正案では二〇%になるのだ、従つてそれだけ負担軽減するのだ、こういうふうにおつしやいますが、しかしこの税法の全体を通じて見まして、これははつきり政府説明されておりますように、いわゆる法人所得法人に対するところの大幅な軽減をやつておられる。これは後ほど法人の問題について、お伺いいたしたいと思うのでありますけれども、しかし法人所得資本蓄積意味から大幅な減税をやつておる。これはいろいろあるわけです。従つてその点から申しますと、たとえば全体から見ましても、税金割合国民負担の点からいつて二〇%に減つておる、こういうように言われますけれども減つたの法人所得の方でありまして、一般勤労者やその他の面からの減税というものは行われていないというのが、先ほど申しましたように、この表から見ましても実質的には私は減税にならないと思う。この点は一体どうでありますか。
  10. 平田敬一郎

    平田政府委員 どうも竹村さんは私の申し上げている事実を認めておられないと思うのですが、もう一ぺん申し上げますと、消費者物価指数は二十四年を一〇〇にして、二十五年の一月が九八・三、二十五年の十一月が九三・五で、十二月が上りまして九七・五、十二月が上つていますけれけれども、去年の一月に比べますとまだ低いのです。これに対しまして賃金の方は二十四年の平均を一〇〇にいたしまして——これは十二月はまだわからないのですから、十一月を申し上げますと、一二五・三というふうに上つておりまして、従つて実質的賃金は三割程度よくなつている、こういうようなことが言い得ると思うのであります。こういう事実を前提にいたしまして考えます限りにおきまして、所得税控除税率等軽減を行いますると、これは実質的軽減であるということを申し上げているわけでありまして、その事実は少くとも竹村さんは認めていただいても、いいのじやないかと思うのであります。それからさらに仮定の上に立つての御議論でありますが、これは率直に申し上げまして、私もさつき言つたように、かりに消費者物価指数が二割上つた。それに伴いまして貨幣賃金が単純に二割上つた。その場合において控除等を二割ほど上げまして、結局税としては前と同じ所得に対する割合負担になるということでありますれば、これは実質的減税というよりも、大体前の負担と同じになるということが言い得るだろうと思います。そのことは何も私は否定していない。ただ問題は、二割上ると仮定するとかいうその仮定が問題なので、私ども仮定の上に立つて議論はいたさないということを、重ねて申し上げておきたいと思います。もう一つ、二割上つた場合におきましても——今の場合見方ですが、百円ほど実質的増税になるとおつしやるのですが、そういう見方は、これまた私は正しくないと思います。所得が二割ふえたために税金お話通り——さつきの一万円のところが一万二千円になりますと、六百八十三円が七百九十円になりますが、これでも所得税額増加は百七円で、所得増加よりも少いわけですね。六百八十三円に対する二割の増加でしたら百三十何円、この百三十何円ふえるということは、それは負担の増でも何でもないと私ども思いますが、以下でございますから、かりに竹村さんが考えられました二割の場合を考えましても、実質的に若干の減税になつていることは事実であります。しかしあなたのような考え方をしなくてはならぬということにおきましては、私も別に否認しているわけではない。ただ百七円が実質的に増税だとおつしやるならば、これは反対である。私はそうはならぬと思う。むしろこの場合におきましても、二割程度物価が上り、二割程度名目賃金上つたような場合を考えても、なお実質的に若干の減税にはなつております。しかし三割程度物価上つて、三割名目賃金上つた場合を考えますと、これはおそらくふえて来る、減らないということに相なると思います。従つてそういう物事の考え方をする必要のあるということにつきましては、私何も否定いたさないのでありますが、その場合におきましても、かりに二割上つた場合を仮定して、今度の改正実質的減税にならないとおつしやいますと、それはやはり若干の実質的減税にはなる、フルにはならないということは申し上げておきたいと思う。これはまた討論におきまして、適当に引用をされては困りますので、特にそのことを明らかにいたしておきたいと存じます。  もう一つ国民所得に対する問題でございますが、これは法人だけの減税になつて、個人の減税にはなつていないということでございますが、そうではございません。法人収入はむしろ予算上もお話のように増収になつておりまして、竹村さんの御議論をもつてしますと法人税五百七十億、来年は減税にもかかわらず六百三十億、差引き六十億の増収を計上しておりますが、これはおそらく増税お話になるのですか。先ほどの論法で行くと、法人税はおそらく増税する、こういう議論にもなりかねないと思いますが、私は法人税については利益がふえるに伴いまして、収入がふえる分は自然増収としてそれぞれ計上する。その半面資本蓄積等に伴いまして必要な措置はそれぞれ講じまして、それでもなおかつ去年の予算に比べまして法人税は来年はふえる、こういうことになつておるわけでありまして、この点増税増収関係を、いろいろ簡単ではありませんが、御理解願いたいと思います。国民所得に対する税の負担割合お話通りでありまして、二十四年度は二七%、二十五年度二三%、本年度は二〇・三—五%くらいのところだと思います。これはまさに実質的な税の負担がふえるか減るかの有力な一つ数字である。ただ先般も申し上げましたように、国民所得というものはやはり私は完全な調査ということは言いにくいのですが、一応調査しております国民所得をもとにすると、そういう議論が言えるということだけは、留保をしてもらつてもけつこうですが、まずそのことは問題はないことだと思います。
  11. 竹村奈良一

    竹村委員 今いろいろ答弁されましたが、法人のことについては、後刻その点は明らかにして行きたいと思います。もちろん予算上は昨年と比べて増税である。その点は間違いはない。しかし私の考えでは、予算上ではそれは増税であるけれども、しかしながら現在法人所得というものがどうなつておるか。昨年と比べてのあれだけの増税だけで、問題はたとえば予算上かりにいいますと、六十三億の増税になつておる。わずか六十三億だけの増税で、法人というものがこれ以上の利潤を上げておるということを扱きにするならば、今あなたのおつしやつた通りでございますが、そうではなしに数十倍、近来日本の企業始まつて以来の大きな利潤を上げておるということは、経済学者全部が指摘しておることでありまして、それがわずかに六十三億であつては、これは私は法人減税であると、こう考えておりますが、この点については後刻伺うことにいたします。  さて次にもう一つはつきりしておきたいのは、先ほど私が申し上げましたように、かりに二〇%の場合に百七円の増税になる。これは先ほど説明されましたが、私は納得行かない。やはりそうなると思う。なぜなら、もつとはつきり申しますと、改正前において一万円であつた場合には六百八十三円かけるわけです。これは仮定議論ですが、かりに二〇%物価指数上つて給料も二〇%上つたという場合には、改正されて一万二千円になつた場合に、七百九十円というものをともかく税金として払わなければならない。一万二千円になつた場合、物価はやはり二〇%上つておるのだから、一万円のものが一万二千円になつても、これは実質的には一万円と同じである。ところが七百九十円というものをいわゆる税金として払わなければならぬ。今まで物価が上らなくて一万円であつた場合には、改正してもらわなくてもやつぱり六百八十三円で済んだものを、七百九十円払わなくちやならぬということになりますと、労働者のほんとうの負担給料者のほんとうの負担からいいますと、やはり一箇月には実質的には百七円の増税である。私はこの点はやはりいなめない事実だと思う。それにはもちろん一万二千円になつたそのときには、二〇%も上つた。だからこれは税法改正して、それから基礎控除をもつとふやすのだ、あるいは扶養控除をもつとふやすのだ。だから現在言われるような七百九十円はとらない。もつと税制を改革するのだ。こういう御議論ならけつこうです。政府が、実質的にそういうふうになつた場合には、かりに二〇%上つて給料が二〇%上つたという場合には、やはり税法というものをもう一ぺん改正するのだ、こういうふうにおつしやられるのならば別でありますけれども、このままやはりとつて行くということになりますならば、私はやはり百七円の増税である、こう思うのでありますが、この点はどうでありましようか。
  12. 平田敬一郎

    平田政府委員 非常にいいところを御質問でございましたが、重ねて申し上げます。たとえば一万円の所得物価が二割上つたために、一万二千円になるということは、つまり一万二千円の貨幣の購買力と、一万円の貨幣の購買力が結局同じだ、こういう前提に立つと思います。そうしますと、今お話の一万円から六百八十三円引きました手取りの所得購買力と、一万二千円から七百九十円を差引きました所得購買力のどちらが大きいか。これによつて私は判断がきまると思うのです。それは一万二千円を一万円に還元してもらつても、また一万円を一万二千円に還元して比較してもらつてもいいのですが、手取りは一万二千円で七百九十三円税金を納める場合がふえるのです。これはひとつよく計算してみてください。よくおわかりにならなければ、計算例を差上げてもいいですが、わずかですがふえる。それはもちろん全額ふえるわけではございません。そこでさつき申し上げましたように、私はこれでもなお二割程度まででしたら、まだお話の指摘された所得階級については、実質的には若干減税になるということを申し上げたのは、そういうことを申し上げたのです。これは竹村さんの言われるように、單に所得税額が百七円ふえるから、実質的増税になるのだということにはならぬと思う。これは物価が五割もふえて、それから名目賃金がそれに応じて五割ふえておる、こういう場合でしたら、おそらく完全に竹村さんの議論が正しいる完全にではございませんが、額は違いますが、そういう傾向になつて来る。またこの税法改正でも、二割程度でございましたらなお実質的減税になる。ただ全体が実質的減税になつておるとは申しませんが、実質的には重くならないということは、はつきり言い得ると思います。この点なお必要でございましたら、精密な計算をいたしまして、もつとわかりいいような御説明を申し上げてもいいと思いますが、その点に関する限りは、そうでございます。将来さらに物価上つた場合において、租税政策をどうするか。これは私は今その問題と関連しては触れていないわけでございますが、ただ実質的増税になるかどうかという議論でございますから、そのことを申し上げて、はつきりいたしておきたいと思います。
  13. 宮幡靖

    宮幡委員 ちようど一昨日の減税という問題について議論がありますので、簡単に局長さんにお尋ねしたことについて、竹村委員から綿密なお尋ねがありますので、本来なら竹村委員に継続して御質問を願う心組みでありましたが、ちようど一昨日関税について少し質問を始めまして、それがそのままになつております。何とかまとまりをつけたいと思いまして、特に竹村委員の御了解を得て発言を許していただいたのであります。  そこで関税の方について少しお伺いいたしたいのでありますが、もちろん関税法改正と申しますか、関税定率法の改正と申しますか、これは本国会に出していただける御準備があるように承つております。従いまして法律案の細目につきましては、その節においてお伺いしても決しておそくはないと思いますが、関税法は国内の税法に比しまして、そのウエイトの点では軽重がなかろうと思うくらい重要な時代になつて参りました。ただに税収の面だけでなく、日本の産業復興という立場から考えまして、あるいはウエイトが重いかとも思われるわけであります。そういうときに、提案せられまする関税定率法の改正というものが、ある程度コンクリートのものになつて参りまして、われわれの考えております思想や方針というものが、もし盛り込まれていない。そのときになつてぐちのようなことを申し上げてもかいがないことだと思いますので、この際、現在御検討になつております関税定率法の改正の内容につきまして、どういう方針を盛り込まれておるか、こういうことを伺いたい。  そこで質問は簡単に申し上げますが、まず現在におきましては、先日もちよつと触れましたが、従量税率というものがまつたく無税になつたような物価変動の影響をこうむつておるのでありまして、むしろ関税定率法の改正は、従価税率に変更の要のあるということは、これは議論のないところであろうと思います。また日本の中にありまする関税審議会等の意向は、どんなふうに動いておるか。このことの大要を伺いたい。  さらには国際協定への参加の見通しでありますが、ITOと申しますか、あるいはGATTと申しますか、戰後に関税及び貿易に関する一般協定が結ばれておりまして、各国はこれに参加いたしておりますが、日本は入つておりません。各国がやはり貿易政策上関税を重視いたしまして、自己の貿易振興のためにいろいろな面で活動しております。日本はこれに入つておらぬ。やはり関税定率法を改正いたします以上、この協定に参加ができるかどうか。すぐにできなくても近き時期にできるか、こういう点についてのお見通しをいただきたい。今回の関税定率法の改正につきまして、国内産業に関税上から見ました保護政策をとるのか、とらないのか。ことには輸入食糧に対しまする課税の問題は、どういうふうに処理せられて行こうと思われるか。この方針を、大体この五つでけつこうでありますが、お示しをいただき、それについてさらに附加的な御説明がありましたら適当にお話をいただきたい。
  14. 平田敬一郎

    平田政府委員 お尋ねの関税定率法の改正の問題は、相当重要な問題でございまして、今政府におきましても細部的に案をとりまとめ中でございます。実は率直に申し上げまして、関税定率法の税率が、大分最近の事情に合致しないものになつておりますので、今少しく早く成案を得て、国会の御審議を煩わすつもりでいたのでございますが、各方面と関連が深くてなかなかまとまりがつかなくて、今まで延び延びになつて来たのでございます。しかし何としましても不合理が多いので、私どもとしましては今度の国会にはぜひ提出いたしまして、できる限り最近の事態に即応した新しい関税率にいたしたいということで、目下とりまとめ中でございます。そういたしまして、その中でどういう点がおもな改正事項かと申しますと、今宮幡さんから御指摘があつたような点が、私ども重大問題と考えておるのであります。  まず第一は関税定率法で今定めております従量税、これはインフレの結果非常にノミナルなものになつておりまして、関税率としての意義をほとんど果しておりません。物価が二百倍近くになつたに伴いまして、関税率が実質上二百分の一に下つておる。こういうような結果になつて、ほんとうの意味におきまして関税率としての効果を有しておりませんので、これを最近の事態に応じまして、妥当な関税率に修正するというのが第一点でございます。  それから第二点は、その反面、今の関税定率法並びにぜいたく品等に対する特別課税といつたようなものがございまして、最近の世界の関税率の傾向から申しますと、高過ぎるものが実は一方においては相当あるのでございます。これは従価税方面において特にそうでございますが、そういうものにつきましてはこの際相当引下げる。最高今まで一〇〇%ぐらいでございましたものを、五〇%ぐらいにするというつもりで引下げたいと考えております。  それから第三点といたしましては、一般的に最近の産業の実態等を考えまして、日本の産業の保護ということをやはり中心にいたしまして関税率を考えたい。その際におきましては、もちろん保護を要する産業と保護を要しない産業、それから保護育成をはかりましても見込みのあるかないか、そういう点を各品目ごとに検討いたしまして、それぞれ妥当な関税を定めたいと考えております。その際におきましても最近の世界の傾向が、やはり関税率はなるべく低くするという傾向に戦後なつておりますので、でき得る限りそういう方針に従いまして、日本としては、しんぼうしきれる限りの低い関税率でもつて産業の保護育成をはかつて行こう、こういう考え方でそれぞれ各品目につきまして妥当な税率を定める考えで、案をつくつておる次第でございます。  それから次は、その中で食糧の問題でございますが、食糧は御承知の通り日本の食糧事情が戦後まだ十分回復しておりませんで、むしろ食糧の価格は公定価格等の関係もございまして、国際価格よりも日本の価格が低くなつております。と同時に、外国からは相当多量の食糧を入れなければならぬ、こういう事情でございますので、ここ当分のうち、実際上関税はかけない方が妥当じやないかということで、大体こういう趣旨の取扱いにいたしたい。つまり日本の主食に属する米麦等でございますが、そういうものの国内価格が国際価格を下まわつている間は、関税を免除または軽減するというような規定を、関税定率法に入れまして措置いたすようにいたしたい。そういうようなことを主食につきましては考えておりますが、将来の問題といたしましては、つまり基本的な問題としましては、やはり日本の農業は相当保護の必要があるのじやないかという考え方で、それぞれ物によりまして一割ないし二割、小麦と粉とは二割ないし二割五分程度の基本関税率は、一般関税定率法に織り込んで行きたい、かように考えておる次第であります。  最後に各種の関税率に関連いたします国際協定との問題でございますが、これは率直に申し上げまして、いま少しく講和條約等の問題がはつきりいたしませんと、私ども具体的にどうということは申し上げにくいと思いますが、気持といたしましては、なるべく早くそういう協定に日本としても参加し得ることが非常にいいのじやないか、そういうふうに極力進めて行くようにいたしたい。御指摘の通り今関税及び貿易に関する一般協定、いわゆるガツトと称しておりますが、その協定と国際貿易機関に関する協定がございますが、そういう機関にでき得る限り早い機会に参加し得るように希望いたしております。そのためには関税定率につきましても、最近の事態に即応する合理的なものになつていなければ、非常に不合理が多うございますので、何といたしましてもそういう前提といたしましても、この際関税定率法を全面的に改正いたしまして、入りやすいように措置いたすことが、当面の問題としては重要ではなかろうか。このように考えておるのでございます。
  15. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの根幹的御説明によりまして、政府の意図いたしまする関税定率法の改正というものについては、大体御賛同申し上げることができるのではなかろうか、かように考えます。どうぞその方向にお進めをいただきたい。これは私の個人の希望であります。そこでただ一つ、これは確め的な言葉で悪い言いまわしになるかもしれませんが、食糧の問題につきまして、二五%か二〇%程度の率を設ける。これはよいのでありますが、凶作の場合とか、あるいはその他いろいろ国内食糧事情の変動のありますごとに対応いたしますよう、あるいはこれを減免するというような規定を附加しておかれる御用意がありますかどうか。この点をちよつとお伺いいたします。
  16. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいま申し上げましたように、関税定率法の中に規定を設けまして、日本の主食の国内価格が国際価格に比べまして低い間は、関税を減免することができる規定を、はつきり法律に設けておきたいと思います。
  17. 宮幡靖

    宮幡委員 そこでこの関税のことの方針が明らかになりましたので、次いで資本蓄積の一方向になりまする税制改正、特に償却の問題を取上げておられるようでありますが、今度の臨時措置法の改正で、特別償却ということをお取上げになつたことは、これは一大進歩であり、また日本の資本の蓄積を助成する上において有効なる手段であると思います。ただ残念なことには、これだけでは足りないようであります。別に通商産業省の肩を持つて陳弁するわけではありませんが、どうもまだちよつと足りない。そこでこれを軍に通商産業省の声として聞くと、セクシヨナリズムの考え方になりまして、おもしろくありませんので、経団連とかあるいはその他の民間の七、八の団体につきましていろいろの意向を聽取いたしまして、おおむねまとめてみますると、次のようなことが出て参ります。たとえば特定の機械を指定いたしまして、その機械設備については、取得価格の七割を損金に算入する。これに該当するところの法人税——法人税一本で考えると、法人税を積立金として、それをみだりにとりくずさないと  いう意図のもとに資本の蓄積をさせよう、さような方針をとつておりますし、また国内のいろいろな事情あるいは国際経済の動きに連れまして、特に活発なる産業の活動を開始いたしまして、所定の生産ベースよりも三割以上の増産があつた場合には、それだけ機械設備も浪費が多いのであるから、こういう三割増産を断行する場合においては、増産部分に対する増収に対する法人税を三年間免除してもらいたい。ちようど重要産業に対しまする、創業から三年間免除いたしますと同じような観念をとなえております。あとは地方税の問題で、固定資産税の問題がありますが、これはここで取上げたくありません。  最後に輸人税の免除ということがあります。これはただいまの関税定率法の改正に関連があることでありまして、指定機械の輸入をいたしたものは、その指定された時期から三年以内に輸入いたしましたものについては、関税の免除をしてもらいたい、こういう希望が非常に強いのであります。おそらくただいま伺いました食糧でも、ある程度の税率を設定しておくと同じように、機械といたしましても一五%となりますか、一〇%となりますか、とにかく従来より低い税率には相違ないと思いますが、必ず設けられるだろうと想像される。これらにつきましても、輸入指定機械というものについて、減免の特例等を設けていただきまするならば、これは民間の希望に合うのでありますが、これらの点につきまして、簡単でけつこうでありますから御説明をいただきたい。
  18. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいま宮幡さんのお述べになりました点は、産業政策に非常に重きを置かれますると、確かに一つ考え方だろうと私ども考えるのでございますが、まず償却につきましては、実は今度の改正によりましても相当な恩典になるのでありまして、先般も申し上げましたように、十五年ぐらいの耐用年数のものでございましたら、三年目までに半分償却する。しかもお話がありましたように、なかなか初期には利益がないから、償却できぬ場合は二年間繰越して償却できる、そういう措置をいたしております。これはむしろ化学工業等の、もつと耐用年数の短い機械でございますと、三年目には六割ぐらいまで実は償却できるというようなことにもなりまするし、私どもとしましては、租税特別措置法の今回の改正というものは、そういう点から行きまして、相当実は思い切つた措置のようにも考えておるのでございます。これはまたあまり短かくいたしますと、利益のずいぶん上つたものだけは非常に優遇されまして、それほど上つていないものは一向恩典に浴しない。また他面におきましても、所得税の重い負担と比較しましてあまりにも軽くなりまして、おもしろくないというような点もございますから、やはりいろいろ総合勘案まして、妥当な線でとどめるよりほかないのじやないかというように考えまして、このような案を作成いたしたわけであります。  それから第二の問題につきましては、増産部分に対しまして免税したらどうかというお考えでございますが、これは御指摘の通り、重要物産につきましては開業の年、設備増強の年から三年間免除する制度がございまして、これを実行いたしておるのでございます。相当基礎的に重要な石炭、石油、電力、それから最近振興をはかる必要のある合成燃料、こういうものはいずれも品目に最近指定いたしておりますので、この方面で相当目的は達成し得るのじやないか。品目につまして、なお最近の事態に顧みて、あるいはやめたり、あるいは拡張したりするような必要のあるものにつきましては、なお少し研究してみたい。現在も若干検討いたしておるのでございますが、最近の事態に即応するように、そういう点を改めるのはいいと思いますが、一般的に増産をいたす場合においては、増産部分の所得に対する税金軽減するというのは、課税から行きますと、最も担税力のある所得を免税するというようなことにも相なりますし、なかなかそこまで行きますのは、あまりにも一般の税の負担関係とかけ離れ過ぎますので、いかがであろうか、かように考えます。  それから最後に輸入機械につきまして関税を免除したらどうかというお話、これも確かに相当強い希望がありまして目下大蔵省でも検討いたしておりますが、この問題は結局関税免除という方式でやつた方がいいのか、あるいは補助金の交付という方式でやつた方がいいのか、その辺相当問題があるようであります、関税免除の方式によりますと、ややともすると何と申しますか、必ずしも必要でないものまでついどうも入つて来るというような傾向があるようでありまして、むしろ必要ある場合におきましては、補助金等を明らかに示して厳重に国会の審査を経、あるいは会計検査院等の審査も経て、適正に実行するといつた方がいいのではないかと考えておりますが、技術的に申し上げましても、関税免除いたしますと、個々の認定その他につきまして、相当めんどうな問題があるようでございます。従つて率直に申し上げまして、あまり関税免除の手段を広範に利用するのは、少しいかがであろうかと考えておりますが、しかしなおこの問題につきましては、いま少しく研究してみたいというふうに考えているわけであります。
  19. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまのお答えでけつこうでありますが、ただ三割増産という言葉に私の言葉が足りなかつた。これは全産業を言うのではありません。特定産業で、その名前をここで申し上げなくとも局長さんにはわかるのでありますが、全産業でないということだけ訂正さしていただきます。  そこでなお償却の問題につきましては、耐用年数、償却方法について少し検討を加えたいのでありますが、これは本日の場合次会に延期いたしまして、もし時間がありましたならばやらせていただきます。  そこで本日は国税庁の長官がお見えでありますが、特に出席をお願いいたしたような関係もありますので、一、二点お尋ねいたしてみたいと思います。昨年の夏の休会を利用いたしまして、当委員会夏堀委員長が先頭に立たれ、当委員会理事である奥村代議士が主任的な役割をいたし、全国的な国政調査をいたしまして、その結果につきまして、シヤウプ博士に報告書を提供いたしたわけであります。あるいは報告書と申すより意見書であつたかもしれません。その中で大きく取上げられた問題は、まずもりて滞納の整理であります。当時過年度分まで加えまして、およそ一千億近い滞納金額があつた。これはどうしたらよいかという問題で、行政当局であります国税庁としても、その後差押えとかあるいは公売だとかいう点につきましても、かなりの苦心を現地に払われておる跡がわかつたわけでありますが、さらにこれを、こういう滞納整理をしなければならぬということについては、一つのメソツドを示して行くべきだ。ただ單に、こういうことは何とかひとつ国税庁だけでやつたらよかろうと、こういうような言い方は何か不満足な点がありますので、どうしても民間納税者みずから、納税の義務としてこれを果すべきだという、信念的なものを植えつけると同時に、実行方法についてもこれに伴う表現がぜひほしいのであります。そこで民間のことでございますが、たとえば青色申告の組合というようなものもあるようでありますが、こういう新しく発生したものはしばらく別としまして、昔から納税日掛というような観念で、町内をぐるぐるまわしまして、そうして世話人がこれを集めて告知書に対して納税をして、それを年間まとめてお手元にやるという制度は、すでに早くから発達しておる日本であります。そこで一層これを法制化しまして、納税組合というようなものを結成せしめまして、しかもこれに適当なる事務費を補助いたし、そうして個別的な一つの納税整理の世話をする、こういう機関を設けるべきだと思います。これはもう民間でやりますと、個人の預金通帳に一本にまとめてしまいまして、銀行に集めておく。そういうことは、法人でもないのでありますので、それらの財産は一応個人の所有に帰属するわけでありまして、いろいろそこにまた不愉快な事態が発生いたしますから、それらのことがないように、ある意味におきましては、個別的な預金通帳の取扱い、あるいは法人格を与えまして、代表者がその組合の財産を管理するという、通常民法の観念にぶつかるような組合にする、こういう立法をぜひやりたいと考えておりますが、国税庁の長官としてのお考えはいかような方向にありますか。一応お示しをいただきたいと思います。
  20. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 昨年夏大蔵委員会において国政調査を行われまして、その結果を私どもちようだいいたしまして、よく検討いたしました。非常にりつぱな数々の要件が多数盛られて、私どものやり方について重要な指針をいただきましたことを、この機会に厚くお礼申し上げたいと考えるのであります。ただいまお話の納税組合につきましては、申告所得税の現在の滞納が非常に多いのでありますが、その原因はどこにあるかと申しますと、源泉徴収によるものにおきましては、税をとられました残りの所得でもつて生活せざるを得ないというように相なつております関係上、あまり滞納がないのでありますが、申告所得税におきましては、申告時期においてみずから所得額を計算し申告される。それに対応するところの税金を納める。しかもそれが多くの場合に年度末に集中する傾向を持ちますがために、あらかじめ計画的な生活の設計を立てて、きちんとやつておられるという方におきましては、それも可能なのでありますが、しからざる方々が大部分である現状におきましては、どうしてもそのときに一時に納め切れないという、一つの大きな原因になつておるかと思うのであります。従いまして、今年の初めから計画的にある程度の金を積み立てて準備しておかれるということが、納税成績を向上し、また滞納を根本的に少くするということについて、一番いい方法であるというふうに、私どもも考えておるのであります。従いまして、ただいまのところ納税組合に関するところの法制はないのでありますけれども実質上は何とかしてそういうふうな日掛とか月掛というふうなことによりまして、あらかじめ準備するというようなことをやつていただけることは、非常に望ましいことであるという趣旨をもちまして、あちらこちらでそういうふうな計画をなさる際におきましては、私どもの方もできるだけの御援助と申しますか、指導を申し上げておる次第でございます。従いまして、今後もしもそういうふうな納税組合に関するところの法制ができ上り、それが法律的にある程度の監督ができ、また時にこれに対して相当の補助金が支給できるということになれば、この制度の発達は相当急速になし得るのではないか。これが今後の滞納を未然に防止し、ほんとうに税務行政を円滑ならしめる上におきまして、非常に大きな力になるのではないかというふうに、期待いたしておる次第であります。
  21. 宮幡靖

    宮幡委員 ただいまの御答弁で、国税庁の意図もよくわかりましたので、当委員会において超党派的な協議の上に、ぜひ立法化する努力を払つてみたいので、何分の御協力を賜わりたいと存じます。  ついでに、これは当委員会と申しますと、はなはだ専断になりますので差控えますが、大蔵委員である宮幡に対しましての訴えであります。その内容を見ますと、ただちに取上げてよいかどうかということに、私の考えとしてはまだはつきりいたさぬのでありますけれども、何しろ取上げてあります問題が、税務行政上やはりこういうことがもしあつたとするならば、おもしろくない問題でありますので、一応国税庁の御意見を聞きまして善処いたして行きたい、こう考えております。それでは陳情の要旨を申し上げますと、国税の課税適正化に関する意見という表題でありまして、これは岐阜県の官庁といわず、民間団体といわず、いわゆる岐阜県総合の意見であります。昭和二十四年度における本県の国税営業所得額は、別表に示すごとく——別表の説明は省略いたしますが——全国の第十四位であるが、安本の調査の分配国民所得調査によれば、本県は全国の第二十七位である。他の府県においては分配所得と課税所得が、大体において均衡を保つているのに比して、本県のみは著しく不均衡の状態である。納税者の負担の不公平なる結果になるほか——この事柄は、政府の割当課税が岐阜県に強いのだという声を大きく持つて来ております。——国税所得基礎として地方財政平衡交付金が算定される結果、県民は二重の不公平なる措置を受けることになるのであるが、これが適正化を払われたい。こういうことで、この運動をこのままに展開いたしました場合においては、本問題をはずれました派生的な事態が起ろうと思います。そこで書面は後刻お手元の方へさし上げるようにいたしますから、御検討願いまして、当委員会にその結末についての御報告を賜わりたいと思います。
  22. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいま宮幡委員から御質問になりました点につきましては、実は先般岐阜県出身の方々から相当詳細に伺つたのであります。今まで私どもそういうような比較をしてみたことがないのでありまして、きわめて興味のある一つのデータであると考えまして、検討してみたいと考えている次第であります。同じような陳情と申しますか意見が、栃木県の栃木市並びに長野県の飯田市から出ております。いずれも国民所得の推定と申しますか、税額の一世帶当りの平均をそれぞれ各都市ごとに比較をせられまして、そうしていかにも高いのじやないか、この町だけが、またはこの県だけが、非常に高くなつておるじやないかという趣旨の御意見であります。しかしながら概略的に申し上げますと、それのみをもつて推断することは、非常に危險が多いということを申し上げたいと思うのであります。と申しますのは、あすこで比較をしておりますものは、ただ單に事業所得のみをもつて、全世帯数を割つて計算をしておるのであります。その府県において、またはその都市において、たとえば勤労所得者が相当多数あるということになりますと、そういう人の所得が計算されませんので、事業所得だけで全体の世帯数が割られるという結果になります。また法人になつておる人の数がどの程度に多いかということによつても変更を来しますので、従つてそれらのいろいろな数字を比較検討してみて、善処いたしたいと考えるのであります。  なお先ほどその意見の中にもありましたが、割当課税の結果、岐阜県が非常に重くなつておるのじやないかという御意見でございます。私どもといたしましては、前々国会ころから強く御説明申し上げております通り、現在割当課税ということは全然いたしておりません。むしろ過去におけるところの目標額の指示というものの余燼が、いやしくも残つては困るという考え方をもちまして、本年度等におきましては、各国税局から本年度内におけるところの収入の見積り額の提出すら求めていない状態であります。もつぱら国税庁において直接各種の資料を基礎といたしまして、どの程度入るだろうかという見当をつけておる程度であることを、この際つけ加えておきたいと思います。
  23. 竹村奈良一

    竹村委員 先ほどの問題でありますが、これはあまりむし返すことはどうかと思いますから、先ほど詳しい資料で説明するとおつしやつたので、よく納得の行くように資料を出していただきたいと思います。私の考えでは、二〇%上つた場合においては、やはり依然として百七円は多く負担しなければならぬ、こういうことに考えるわけですが、この点ひとつ資料で説明願いたいと思います。  もう一、二点だけ伺つておきたいことは、先般宮幡委員に、大体源泉所得所得人員について、二十四年度と二十五年度と比較して九十七、八万人の課税人員が減つている。こう説明されたと思いますが、それは一体現行法の課税から改正した場合に減る、こういう概括的なものであつて、もし給与ベース等の改訂が行われ、あるいは賃金等が上つた場合においては、この課税人員は二十五年度千六十二万何ぼよりもふえるのであるかどうか。この点を伺いたいと思います。
  24. 平田敬一郎

    平田政府委員 給与所得の納税見込み人員は、先般申し上げたように二十四年度の実績が千六十万一千人でございます。今年の見込みが一千九十九万三千人、これは給与がふえましたけれども、昨年の改正で納税人員は少し減る、こう見ております。それから改正後の見込みが千六十二万二千人、今の税法そのままで行きますと、千百二十九万九千人、これは給与の増加によりまして、お話通り二十五年度よりは来年はふえそうでございます。しかし改正によりましてそれがまた減りまして、一千六十二万二千人になる見込みでございます。これは先般予算説明の際に申しましたように、二十五年に比べまして二十六年は給与所得所得金額で八%、雇用で二%ふえ、合せまして一割くらい給与所得がふえるということを前提にして、計算いたしたものでございます。
  25. 竹村奈良一

    竹村委員 もう一つ愚問でございますが、あとの問題があるので念のためだ聞いておきます。大体予算上昨年度と比べて百三十二億六千二百万円の減である、こう説明されておりますが、これも結局実際における賃金べースあるいは給与所得等が上つた場合においては、この予算における予算の減というものは、やはりさらにその減がだんだん減つて来る。つまり百三十二億の減だと予算上言つておられますけれども、いろいろ給与ベース等が上りますと、そうではなしに、あるいは五十億くらいが減になるかもわからないし、あるいはまた百億くらいの減になるかもわからない、こういうふうに考えるのですが、この点はいかがですか。
  26. 平田敬一郎

    平田政府委員 どうも仮定に立つて議論は、なかなか議論として問題でございますが、さつき申しましたように予算では大体給与の金額で八%、それから雇用で二%くらいふえるという見込みを立てておりまして、その見込みがいいか悪いか、これは問題でございますが、そういうことを前提にして立てますと、まあこういうことになる。それで給与がもつとうんと見込みよりふえますと、おそらく納税者はもつとふえて来るのでございましようし、あるいは反対に給与が減りますと、これより減るかもしれない、こういうことだと思います。
  27. 竹村奈良一

    竹村委員 そういたしますと、源泉課税におけるところの勤労者のいわゆる減税というものは、こういうことになつて来ると私は思います。たとえば給与所得が現状のままであつたならば、仰せのごとく改正されましたならば、予算におきましては百三十二億の減税になる。これは確かであります。しかし現状がかわりますと、そうではない。このことがはつきりするわけです。そういたしますと、勤労者がほんとうに減税の恩典に浴するのは、給与ベースがそのまますえ置きであり、賃金というものが、そのまますえ置きであつた場合においては、これだけの減税になる、こういうふうに承知していいのですか。
  28. 平田敬一郎

    平田政府委員 それはもう問題なく当然そうでありまして、現状という言葉はどうか知りませんが、私どもが見込みを立てておるその通り行かなかつた場合、違つた影響が出て来るということは当然だろうと思います。大体こういう見方をしているもとにおいて、こうなるということを説明いたしておるわけでございます。
  29. 竹村奈良一

    竹村委員 もう一つ、これはだめを押すようになつてはなはだしつこいのでありますが、そういたしますと、勤労者の減税は現状のままであつたならば減税になる。ところがほかの物価が上り、そして生活指数が上り、それに応じ給料値上げになつたならば、減税にはならぬ。従つて今日の勤労者に対する減税の構想というものは、賃金ベースを改訂しない、あるいは給与ベースを改訂しない前提の上に立つた減税であつて、実際の上において生活指数上つて給与がふえると、これは減税にならぬ。そうするとこれはやはり実質的には、現在の経済状態から申しますと、非常にいろいろ物価上つている。だから減税してもらおうと思つて、給与改訂を要求すると減税にならぬ、こういう結果になるので、あまりありがたくない。これは絵に描いたもちの減税案だと思うのであります。
  30. 平田敬一郎

    平田政府委員 すぐ一足飛びにお話になるのはちよつと早いと思いますが、問題は上り方だと思います。さつき話しましたように、かりに二割程度上りましてもまだ減税になる。ただ減税額が減つて来るというだけです。それを越えまして上つて行きますと、これはこのままの税法では必ずしも減税にならぬ。それはそう言えると思います。政府といたしましては、物価について極力安定策をやることになつておるわけであります。従いましてその安定策がうまく行かないでどんどん物価上つて行き、あるいは給与が上りて行くといつた場合にどうするか。これはこの際にもちろん私は大いに考えなければならない問題だと思います。ただ現状と現在見通される程度のものでございますれば、私は相当減税になる、こういうふうに御説明申し上げておるわけであります。
  31. 竹村奈良一

    竹村委員 午前はこれくらいでとどめておきますが、とにかく私は先ほど申しましたように、しつこいのですが、給与ベースが二〇%上つた場合には当然そうなると考えておりますが、その点の資料をいただきまして、その点についてはまた別に質問したい。午後はひとつほかの点で質問したいのですが、御了承願いたいと思います。
  32. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 休憩いたします。午後は二時より開会いたします。     午後零時四十六分休憩      ————◇—————     午後二時三十六分開議
  33. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  税法各案に対する質疑を続行いたします。竹村君。
  34. 竹村奈良一

    竹村委員 少し法人税のことでお聞きしておきたいと思います。一応説明はありましたが、たとえば社内留保に対しては、今度から税金は免除されるということになつておりますが、この法人の社内留保を二十六年度においてはどのくらいに見ておられるのか、それを伺いたいと思います。
  35. 平田敬一郎

    平田政府委員 積立金に対する課税は、御承知の通り昭和二十五年度以後の積立金に対して、課税をするごとになつておるのでございまして、それ以前の積立金の分は、昔の税制の時代にでき上つた積立金でございますので、課税しないことにいたしております。従つて二十五年度以後の分の積立金の額ということになりますと、減収額を予算説明書に五億四千万と出しておりますが、それは二%に相当するものでありますから、それを五十倍にした額の約二百五十億が、二十五年度以後の積立金課税の対象になる積立金、このように見ております。
  36. 竹村奈良一

    竹村委員 それも少し詳しくお聞きしておきたいのでありますが、大体二十五年度の九月の各法人会社の決算等を見ますと、たとえば繊維とかあるいはその他の面については、従来に見ないような利益を上げておるのが目につくわけであります。そこでたとえばこれは一応のざつとした統計でございますけれども、紡績業なども大体二十八割の利潤を上げておる。そうしてこれに対する配当が三割ないし四割ということになりますと、四割としても二十四割の利益というものが、積立金あるいは裏役の手当等いろいろになつておると思うのであります。こういう積立金制度に対するところの課税を廃止するというのは、資本蓄積意味からそうすることになつておるのでございますけれども、そうなりますと、各法人会社がいろいろな形において、いわゆる税金のがれのために積立金をするという形になつて来るのではないかと考えるのですが、そういう点についてはどういう方法で積立金をお認めになるのか。その点ちよつとお伺いしたい。
  37. 平田敬一郎

    平田政府委員 一部の産業が特に最近いい利益を上げておりますことは、お話通りであります。私どもの調べによりましても——ごく最近のをつかむために調べたのでありますが、二十五年の八月から十月までに終つた事業年度のおもな法人四百十六社について調べた実績によりますと、払込資本金の六百八十二億三千九百万円に対しまして、利益が六百五十五億二千五百万円で、九割大分五毛という利益率になつております。その中で紡績工業を四十一社調べておりますが、それに上りますと百二十五億の資本金に対しまして二百四十億八千二百万、つまり一九六万という利益率でございます。これらは相当成績のいい方だと考えております。ただこの際におきまして考えなければならぬのは、これは払込資本金に対する利益率でありまして、実は払込資本金はほんとうの資本に対してまだ少くなつております。最近大分増資がございますが、昔の資本の再評価の部分は、まだ資本に組み入られていないのでありまして、再評価積立金を組み入れた後の資本金に対しますと、紡績などの利益率はおそらく四分の一くらいになりましよう。つまり再評価積立金が資本余の約西倍くらいあるようでございますが、そういうようなものを修正してみますと、それほどいい成績だということには参らないと私は考えます。しかし最近九月の決算以後相当成績がいいことは、竹村さんのお話通りだと思います。そして配当率の方も三割はいかにも高率配当じやないかというお話かもしれませんが、再評価積立金がたとえば払込資本金の二倍ありますと、三割の配当というものはほんとうは一割の配当ということになるわけでありまして、そういう点を考えますと、むしろ配当率の点は、ほんとうはまだまだインフレによる修正が行われておりませんで、率だけでは高率配当かどうかよく批評はできない。もう少し決算の内容に立ち入つて判断すべきものではないかということを考えております。その点一点申し上げて御参考に供したいと思います。  それからもう一つは、積立金の非課税が今後相当ふえる積立金に対して、担当な課税猶予になりはしないかというお尋ねかと思いますが、これはまつたくそうでありまして、初年度としましては五億四千万でございますが、今後積立金が増加するに従つてこの軽減額は多くなると思います。しかしそれによりまして会社の利益歩社内に利用されまして、設備の拡張に充てるとか、あるいは新規の原材料の仕入れに充てるということになりますと、それに伴つて生産がふえて来る。生産がふえるとおそらく雇用もふえて行きますし、また労働者賃金等もふやすことができるということになりますので、この際このような政策をとることが、広い意味におきまして結局妥当ではないか。私といたしましてはこういうように考えておる次第であります。
  38. 竹村奈良一

    竹村委員 もう一つお聞きしたいのは、そうすると今後積立金はふえるかもしれないが、今後この積立金をどの程度に押えて行くのか。あるいはもう会社が自由に積立金をいろいろな形でやつてもいいのか。その点をひとつ伺いたい。
  39. 平田敬一郎

    平田政府委員 これはできるだけ経営を合理化して利益を上げて、そうして積立金をできるだけ多くして、それにつて先ほど申しましたように資本の拡張に充ててもらうことが、非常にいいことでありますから、別に制限をするつもりはございません。
  40. 竹村奈良一

    竹村委員 そういたしますと、各会社でどんどん積立金をふやして利潤が上れば積立金にする。そうすれば全部課税の対象にならぬ。これは私は一つも了承しませんが、一応そういう政策をとつておられるということだけははつきりしたわけです。そういたしまして、なおこの上に積立金制度零税金をのがれさす。これもまあ資本の蓄積になるのは当然です。しかし税金のがれの資本蓄積も行われると思うのですが、それ以外になお新規購入の機械類に対しては特別な減価償却を認めておられる。これも資本蓄積の一部だと言われれば、それまででありますけれども、しかし新しく購入いたしました機械に対して、特別な率で減価償却を認めるということが、どうも納得が行かないのでございますが、この点についての事情を詳しくお伺いいたしたい。
  41. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の点も、竹村さんすでにお話はおわかりのように、なるべくこの際有効と認められる設備の新設、拡張をはかつてももらいまして、生産をふやすということに資するのが目的でございます。そういたしまして、企業としてここに新しく機械を購入する、船舶等を取得するという場合におきましては、なるべくその投資を早く回収するということが、何と申しましても企業の将来のために必要でございますので、その償却をよけい認めるということになりますと、非常な新規投資の促進が期し得る。それによつて資本の蓄積ができて、生産が大いにふえて行くということになりますと、これは單に資本家だけでなくて、労働者等もよくなつて行く、国民全体もよくなつて行く、こういう意味におきまして、この際にはこういう政策が妥当ではないかという考えでございます。
  42. 竹村奈良一

    竹村委員 もう一つは、見返り資金等によりますところの投資に対しては、これを損金として課税しないということになつているように考えるのですが、この辺はどういうような考え方でやつておるのでありますか。
  43. 平田敬一郎

    平田政府委員 この点は提案理由にも説明いたしましたように、見返り資金としましては、今銀行、農中等の優先株を引受けまして、それをもとにしてさらに債券等を発行して、融資のわくをできるだけ広げるということになつておるわけでございますが、その見返り資金を優先株という形にいたしましたために、貸付金の場合には当然金利を払うわけで、その場合においては、それぞれの会社の計算上損金になりまして、経費に落し得るわけですけれども、優先株になりますと一応利益になつてその中から配当されるということになりますので、法人税を課税されるという結果になるのでございますが、そういたしますと、実は法人税だけ資金コストが高くなりまして、高い利率で貸し付けなければ、見返り資金で優先株の資金で優先株の資金の供給を受けた金融機関が、貸付ができないということになりますので、できるだげ資金コストを安くするために、こういう特別な措置を講ずることにいたしたのでございます。
  44. 竹村奈良一

    竹村委員 そういう点については議論は別として一応伺つておきます。もう一つは、資産再評価をもう一ぺん行うというのは、一応行われた資産再評価を、どういうわけでもう一度おやりになりますか。
  45. 平田敬一郎

    平田政府委員 再評価は御承知の通り昨年一斎に実行したわけでございますが、再評価をやりまするころは、おおむね朝鮮動乱前の状況に基いて企業はやつているのが多いようであります。ところが動乱以後状況が違いまして、会社によりましても収益状況が大分かわつて来た。もつとも紡績等はその前から相当よかつたので、これはほとんどフルにやつておるようでございますが、たとえば機械工業、造船工業、それから製鉄その他の重工業あるいは化学工業の一部、こういう産業はまだ十分な成績を上げておりませんで、どちらかと申しますと、むしろ先行き不安のような状態のもとにおいてやつたのが多いのでございますが、大分状況がかわつて来ましたので、最低の状況に基いてもう一ぺん再評価をやるチヤンスを与えるということになりますと、さらに相当再評価をやるのではないか、そういう考え方で、この際もう一ぺんやることを認めることにしたらどうか、こういう考えでございます。主たる点はそのような点であります。つまり企業の収益状況が、前回やつたときと最近とかわつて来たので、最近の収益状況に基いてもう一ぺんやることを認めまして、できる限り適正な再評価をいたしまして、それによつて償却等も十分やつて行けるようにする。こういう趣旨でございます。
  46. 竹村奈良一

    竹村委員 いろいろ伺つておりますと、結局この法人税においては、これは午前中も問題になつたわけでありますけれども、昨年度予算と比べましては、六十三億六千七百万円が一応増加しておる、こういう形になつておるのでございます。もちろん昨年と比較いたしまして、予算上では六十三億の増税であることは確かでございますが、しかし先ほどからの説明をずつと聞いておりますと、その改正される内容から見ますと、これはいわゆる法人に対するところの、いろいろな形における減税であると考えるわけです。それはもう先ほどから申されたように、朝鮮事変後においてでも、一応いろいろな形において資産再評価を行うという点からも、うかがえるわけであります。これは結局大きな国の政策的な面になるわけでありますけれども、これだけの増税では、実際においては、先ほどから申しましたように、勤労者との負担の面において、法人はあまりにも安過ぎるのではないか、こういう考えを持つわけであります。従つて昭和二十二年あるいは三年、四年、五年の法人勤労所得者に対する負担割合等がもしわかつておりましたら、お知らせ願いたいのでありますが、わかつてなければ後日資料としてでも知らせていただきたいと思います。
  47. 平田敬一郎

    平田政府委員 法人につきましては、二十五印度の改正相当負担を軽くしましたことは、先般も御説明申し上げた通りであります。すなわち超過所得税があつたのをやめたのと、配当所得に対する二重課税をやめてしまつた。その結果法人所得に対しましては、二十五年度の税制改革は相当減税になつておりますことは、申すまでもないことであります。ただ普通所得に対しましては、三五%という課税はあくまでもそのまま存置することにいたしております。従いまして私どもは、大体においては個人の所得法人所得とのつり合いは、とれていると思つておるのでありますが、なお同じ、たとえば百万円ぐらいの個人の事業が、法人になつたような場合を計算してみますと、若干法人の方が有利な点がありはしないかという点が考えられますので、今回は地方税の方におきまして、市町村民税は、法人所得に対する法人税の一割を標準税率として、課税するという改正案をつくりまして、不日国会に提案することで進めておるのでございます。そういう点と、それから所得に対する負担の率から申しますと、これはもちろん簡単な見方ではいけないのでございますが、法人が全体として相当負担をしておることは間違いございません。勤労所得相当重いのでございまして、ちよつと御参考までに数字をここで申し上げてみます。国民所得の中における勤労所得に対する勤労所得税の負担割合を見ますと、二十四年が一番高くて一〇・五%の負担率になつております。二十五年は減税の結果七・七%、それから二十六年度は六%に下る、こういう状態になつておりますが、法人は三五%フラツトの税率であります。そういうことでございますから、大まかなところを申し上げますと、法人相当重くなつております。ただそういうのはラフな見方でありまして、同じ事業で法人と個人とどうなるかということになりますと、大体さつき申し上げるような傾向がございますので、市町村民税を若干課税するごとにいたした次第であります。
  48. 竹村奈良一

    竹村委員 それからもう一つ、源泉選択制度をしかれました場合におきましては、これは特別な形でもちろん法的にそういうものが認められれば、それが不当というわけではないが、こういうような形におきましては、これを用いる方が非常に有利な條件になると思うのです。この点についてはどういうお考えですか。
  49. 平田敬一郎

    平田政府委員 源泉選択を認めますと、この間も申しましたように、課税所得三十万円以上の人が選択を認めた方が有利だ。つまり課税所得三十万円を越えますと、所得税で三五%の限界税率になる。それに市町村民税が一八%かかりますから、それを加えますと五三%近くの税率になるわけであります。従つて五三%の税を負担するよりも、五〇%で源泉で選択を受けた方が有利である、そういうことでありまして、大体その辺のところを押えまして五〇%の税率をきめ、選択課税を認めることにいたしたのでありますが、これは前から言つております通り所得税一つの総合課税の重大な例外を認めたことになるわけであります。これは一にかかりまして、預貯金等の増加をこれによつてできる限り促進しよう。ことに課税がかかります結果、たんす預金と称されておりますが、結局預金もしないでわけのわからぬ形にしておく。それよりもやはり銀行預金等の形で資金化するということが、国民経済的考えから見ましても、この際としては妥当ではあるまいか、こういう考え方でこの制度を認めることにいたしたのであります。
  50. 竹村奈良一

    竹村委員 今度の法人税を見てみますと、これは政策的な面になると思うのですが、結局こういうふうにしていわゆる重点産業の機械設備における資金を蓄積して、見返り資金によるものを損失として課税をしない、あるいは社内保留には課税をしない、あるいは新規購入の機械に対しまして五%というふうな減価償却を認めるというふうな形になつて参りますことは、これは政策的な面になつて、ここで議論するのはどうかと思いますが、結局はいわゆる重要産業、従つて軍需的な産業を再建するための方策だと、こういうふうにわれわれは考えるわけです。これは議論になりますから議論はしたくはありませんが、しかしそういうような形で行われておつて、そうしてこれはまた議論になつて来るわけですが、結局前と比較いたしましての、つまり改正税率によるところの、国民所得の利益によるところの五%から行くと、昨年度と比べて三%の負担軽減ということは、結局こういう法人負担軽減するということになつて、実際上におきましては、負担の方は、個人の負担においてはあまりかわらないのじやないか、こういうふうに考えるわけですが、それについて、たとえば申告所得の面でもはつきりお伺いいたしたいのでありますけれども、申告所得にいたしましても、結局予算の方におきましては、大体五億八千二百万円の増加になつておる。ところがいろいろ物価上つて、そうして商売をしている人なんかが、物価上つたからそれだけ多く利益になる、こういう考え方のもとにやられたと思うのですが、しかしたとえば商売人にしましても、仕入れ価格が上るから売上げ価格も上るわけであつて、それだから必ずしも利益が多くなつたとは考えられないのであります。こういう面については一体どうです。
  51. 平田敬一郎

    平田政府委員 減税お話についてちよつと御参考に申し上げておきますが、実は減税の大部分は所得税でありまして、これもよくおわかりかと思いますが、基礎控除引上げで百八十五億の減税をはかつておる。それから扶養控除引上げで二百四十三億の減税をはかつておる。これは竹村さんの最も御関心の深い勤労所得者、農民、中小営業者、この方面の減税でございます。従つてもちろん資本蓄積のためにも、ある程度の減収を覚悟いたして措置しておりますが、減税の大部分は勤労所得者、農民、中小企業者等の部面に割当てられていることを、はつきり御認識願いたいと思います。そういうことがわかつていただくために相当詳細な資料、ことに二十六年度予算説明という相当とさいな資料、内訳等も出しまして、御批判を仰いでおるのであります。特別に何か考えればいいのですが、私どもつたく事務的に考えまして、そのように実は考えておるのでございます。それからまた單に資本蓄積のための減税ではなくして、未亡人控除とか老人に対する控除とか、こういう控除も同時に行いまして、それによつて極力社会政策的な、力の弱い人に対する減税ということもあわせ行つているということを、御認識願いたいと考えるのであります。  それから、もう一つは申告所得税の問題でございますが、これも私どもは大体申告の所得は、生産と物価がどうなるかということによりまして、所得を計算いたしておるわけでありますが、これもこの資料に詳細に示しておりまするように、実は主たる所得の増は生産の増によるものであります。十ページに掲げておりますが、営業におきましては、生産が約一割増、物価は、消費者物価卸売物価とを適当にウエイトにつきまして乗じまして、二十五年に比べて来年は五%の増、こういうふうに見ておりますが、一割五分の営業所得の増、それをもとにして計算いたしておるわけでありまして、物価上つたから利益率がよくなつた、それで所得がふえておるというところまでは参りません。お話のように仕入れと売上げと両方ふえると思いますが、ふえたのに応じまして所得がふえて来るというような計算をいたしておるのであります。主たる点は、営業所得税の場合は、生産がふえることによつて物の取扱量がふえる、それによつて所得がふえるというのが、課税所得増加の主たる部分でございますので、お話のようなことにはなつていないということを御了承願いたいと思います。
  52. 竹村奈良一

    竹村委員 局長さんと議論を闘わして、私が減税にならぬということに、さようでございますという答弁をいただこうとは、私は決して考えておらないのでございます。しかしそう言われると言わざるを得ない。というのは、これは絶対的な面ですが、結局国民所得上つた従つて国民所得はふえた、それだから税金はその面について考えると七百四十三億の減税だ、こういうようにおつしやいますが、ここに問題があります。つまり国民所得上つたが、これが一体だれに渡されておるかということが一つの問題です。これはここで議論しても問題にならぬと思いますが、国民所得がそれだけ上つたから、はたしてそれだけ勤労者の生活がよくなつたか。あるいは農民にそれだけ行つておるか。これは決して行きません。これは統計の上でいろいろ言われていますが、しかし実際の面としては、給料とりが貯金できるだけの金ができているかというと、決してそうじやない。また農民の所得がそれだけふえて、どんどん再生産に必要な分だけのものが確保されておるかというと、そうじやない。これは事実をもつて判断すればわかると思います。そこで私たち実質的な面で考えますと、あとで詳細な資料を出していただくことになつておりますけれども、物が上り給料上つたが、しかし物が上つただけ給料上つていない。その上つた給料から税金をとられる。そうすると今までよりも税金負担が多くなる。これは個人になりましても当然そうなるわけであります。この点については議論がわかれるところで、今後物価上つて、それだけ給料が上らないのに——それだけは給料は上らないが、幾分か上る。上るけれども税金はその上つた面においてとられる。従つて実質的に物が上つて、もし所得がふえたとするならば、それだけ多く税金がかかるのは明らかな事実だと思うのです。これは国民が判断するよりいたし方ないと思います。こういう点は議論はいたしません。  そこでもう一、二点だけお聞きしておきたいのは、農民の負担の問題で、たとえば米価上つた従つて所得がふえた、そこで必要経費だけ引いて税金をかけるんだ、こういうことに理論的にはなつておるわけでありますけれども、実際面になりますと非常に相違しているわけであります。各農村に行きますと、一等田、二等田、三等田という等級があつて、一等田一反歩に対する課税が一万五千円であつたならば、二等田は一万三千円とかいうように、大体等級で税をかけて来るわけでありますが、それもかける基準となるものは供出石数、つまり事前割当石数を基準にしてかけて行くわけであります。ここで議論いたしますと、必要経費だけ引いてするんだということになりますが、実質的にはなかなか必要経費は引かれないのです。たとえば土地について農民に税金をかける場合におきましても、やはり土地から上る石数を基準として、そうして必要経費だけを引いて税金をかけられるのかどうか。依然として同じような形でやられるのかどうか。この点をお伺いいたします。
  53. 平田敬一郎

    平田政府委員 竹村さんの重ねての御質問でございますが、資料をごらん願いたいのです。租税に関する参考計表というものをお配りしておりますが、その後の方に主要経済指標をお示しいたしております。ひとつこの資料によつて、最近物価賃金と生産がどういうふうになつているか御判定願いたいのですが、最近まで生産が相当上つています。  それから消費者物価指数は、さつき言いましたように大体安定、むしろ去年の十一月は、おととしの平均に比べましてなお下つている。十二月は若干上りましたが、それでもなお下まわつている。これはすべて後の資料についておりますが、賃金はふえている。それだけ賃金がふえて物価は上らなかつた従つて実質賃金がよくなつている。これははつきりと資料によつて出て来ると思うのでございます。そういうことを基礎としまして判断いたしますと、私どもやはり実質的な減税になるという点を先ほどから申し上げておりますことを、ここで重ねて申し上げておきたいと思います。  なおこの際午前中の点をちよつと補足して申し上げておきますが、仮の議論でありますので、仮の場合として計算しますと、今まで月額の給与一万円の人が、物価がかりに二割上つて、給与月額がそれと一緒に一万二千円になつた。その場合にどうなるかということですが、この場合に税額竹村さんお話通り、一万円の場合は六百八十三円、所得に対して負担割合が六・八三%になります。それが一万二千円になり、改正税法を適用しますと、七百九十円になつて負担割合は六・五八%、やはり下る。それから私が申し上げましたのは、税引手取りがどうなるか、そこが実質上の減税かどうかの境目になると申したのですが、一万円から六百八十三円を引きますと、税引手取額が九千三百十七円になるわけであります。一万二千円になつて七百九十円払いますと、その手取り額は一万一千二百十円になり、名目的に相当ふくらみますが、私もその全額が、物価上つたということを前提にしますと、減税になるとは申し上げていない。結局一万一千二百十円を一万円時代の購買力に換算すると、つまり一・二で割るわけであります。そうしますと、税引手取りが九千三百四十一円になりまして、まだやはり手取りがふえる。従いましてこの限界ならば、まだ若干減税の効果は残つているということを私申し上げたのでありまして、この点ひとつもう一ぺん御研究願いたいと考える次第であります。しかし物価がうんと上つて来た場合は、必ずしもそうならぬと思いますが、二割程度でございましたらなお若干の減税になる、増税にはならないということを御了解願いたいと思います。しかし物価賃金関係は非常に重要な問題でありますので、少し詳しくいろいろな場合を御説明申し上げた次第でございます。  もう一つは農業所得の計算のやり方でございますが、これは収入金から必要な経費を差引いて課税するわけでございます。米価等が上りまして、収益がふえますれば収入金が増加します。その反面肥料とか農機具等が値上りしまして、これによつて経費がふえれば、その部分も当然ふえたところで計算して所得を出すべきものだと思います。そうしまして、最近はお話のように、反当りの所得というよりも、むしろ収入の石当りの所得でございますが、それの方が標準としてより妥当でございますので、そういう標準率をつくつておりますが、これはもちろん、お話通り、いいところと悪いところと相当差をつけまして、収入一石当り経費が幾らかかるかを調べて、それを差引きますと、残りが所得として、その部分をもとにして収入行当りの所得を出し、それから所得金額を算定する、こういうことにいたすわけでございます。これは実数によつて、それぞれ正確なところをつかんで行くということにいたすべきものがございますし、またそれはそうすることに相なると思います。
  54. 竹村奈良一

    竹村委員 そこで石数によつてお出しになるというが、それが一番正確で非常にけつこうだと思います。ところがそこに問題があるわけです。というのは、最近に至りましては、非常に米価あるいは麦の価格というものを上げた関係と思いますが、農林省におきましては大体食糧事務所に指令したのか、しないのか知りませんけれども、検査規格というものを非常に厳重にしておる。従つて米価上つたけれども実質的には農民の手取りというものは、実際においては上つただけ手に入つていない。そういう現状なんです。ところが税務署における査定というものは、やはり標準価格つまり三等米を中心としておる。米で言いますと三等米を中心にして、一石できるとか三石できるとか、三等米の値段を中心にして所得とか収入の方に見積られる。しかもそれに対する必要経費はいろいろな資料から出されるわけでありますが、あまりかわらない。その例を一つ詳細に申し上げておきたいのでございます。たとえば昭和二十一年度における大麦から申し上げたら一番いいと思うのですが、二十一年度の大麦の等級はどうかと申しますと、全体を百といたしまして一等では五二%、二等では三四%、三等では一三%、四等では一%であつた。ところが二十五年度には一体この等級はどうなるかと申しますと、一等ではわずかに一%、二等ではわずかに五%、三等では三一%、そうして四等では五四%、五等米制度ができて九%、従つてこれが全体の統計からいつて、いわゆる三等米を基準にやられますならば、実質上における農民負担というものは、大麦等ではそうなつている。それから米で参りますと、米は非常にはなはだしいのであります。一等米が二十一年では一体どうかといいますと六五%、二等米は二七%、三等米は七%、四等米は一%であつたのが、二十五年度では一等米は〇%、なしです。二等米ではわずかに八%、三等米では四六%、四等米では四三%、五等米では三%、こういうように二十一年度と比較しますならば、比較にならないところの等級が出ているわけであります。これは農林省の全国平均統計ですが、こういうような統計が出ておつて従つて農民の手取り、いわゆる米の石数よりも値段におけるところの手取り収入は、非常に少くなつておるわけでありますけれども、こういう点について税務署は全然考えていないわけであります。依然として三等米基準でとつておるのでありますけれども、こういう点については、今後は実際において、税務署に対して改めさすような方法でおとりになるかどうか。この辺をお伺いいたしたいと思います。
  55. 平田敬一郎

    平田政府委員 国税庁の長官が見えましたから、あるいはまとめてお答えになるかもしれませんが、お話の点がもしも事実であるとすれば——もちろん地方におきましては、格づけによりましてそれぞれ収入を見る。それに対しまして必要な費用を見て、妥当な所得金額を算定すべきものと考えます。ただ私どもはあくまでも実収本位と申しますか、実際の収入、実際の支出を本位に考えておりますので、そういう見地から、お話のような点をできる限り正確につかまえまして、適正な農民の所得を計算するようにいたしたい、これは当然なことだと私は考える次第であります。
  56. 竹村奈良一

    竹村委員 それからもう一つ。朝からの私の質問に対して、今詳細な資料で御説明つたわけでありますが、そういたしますと、これは朝からのむし返しの仮定議論になりますけれども、二〇%物価上つて生活費が二〇%上つたから、二〇%給料を上げるという場合におきましては、実質的にはちようど二十九円の減税となる、こういう形になるわけであります。二十九円でも減税になるのだから減税でしよう。しかしここが問題の中心なんです。つまり、はつきり申しますと、政府税法国民所得をふやして、いろいろやつて、そして七百四十三億の減税になるのだと大きく言つておられます。しかし実際にそのふたをあけてみるならば、結局実質的な面から言いまして物価上つているということは——いろいろ昨年の統計を出されておりますけれども、昨年の十二月と現在とは比較にならぬ。おそらくそういうように説明なさつておる局長さん自身が生活しておられるのだから、実質的によく御存じだと思う。実際は物価は非常に上つているわけです。ところが給与ベースの方は政府はあまり上げていない。給与ベースの改訂なんかは去年きまつている。物価はどんどん上つている。給与ベースの改訂はあまりやつていない。こういう面では勤労者は非常に損をしている。給料上つたならば、この表にも出されておりますように確かに減税です。しかし実際は、消費資材が上つて給料上つておらないのだから、ときに三百円や五百円の減税になりましても、実質的には減税とは申されない。ところが、かりに今後二〇%消費物資上つて、その分として給料をやはり二〇%上げた、そういう仮定のもとに立つて計算したならば、あなたのお説によりますと、結局において二十九円の減税である。これだけはつきりすれば、いわゆる減税の正体というものがはつきり見られたので、私はいいと思うのです。これだから実質的には減税にはならない。つまり今の説明にあるように、あるいは予算上において政府説明しているように、減税は少くとも国民生活安定のための国民負担軽減であると言つておられるのが、実はいわゆる一万円級の給料取りで月に二十九円である。こういうことがはつきりしたわけでありますから、あとはまた後日の機会に譲りまして、本日はこれで打切りたいと思います。
  57. 平田敬一郎

    平田政府委員 ちよつと申し上げておきますが、今竹村さんも仮定すればという話でございますから、私もそのつもりで聞いておきます。こちらはすべて最近までの統計に現われた実数に基いて意見を言つているし、竹村さんは仮定の場合を現実なるかのごとくお話になつておられますが、そこの差だということは明らかにしておいていただきたいと思います。
  58. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 ただいま並木議員より委員外の発言を求められております。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 異議ないようでありまするから、同君の委員外発言を許可いたします。並木芳雄君。
  60. 並木芳雄

    ○並木芳雄君 西村委員のお口添えにより、委員長その他の委員各位の御了解を得て、委員外発言を許されました  ことを感謝いたします。実はこの前の日曜日に東京の医師会館で、東京都歯科医師政治連盟というものの結成があつたのでございます。またこの十八日には、その余勢をかつたかどうか知りませんが、東京都の医師会の総会が開かれるという通知を私どもは受取つております。この間の日曜日に、私も東京都選出の議員でございますから、御招待を受けて列席したのでございますが、そのとき各政党からも代表者が来ておりまして、たまたま緊急動議によつて採決されました決議について、各政党とも大いに協力して努力するという発表があつたのです。その決議と申しますのは、いろいろ大事なことがありますけれども、特に本日お伺いしたい点なのですが、歯科医師は社会保険によるところの保険診療を強制的にやらされておる。この所得が非常に低額であるにもかかわらず、税金はまともにとられるので、非常に苦しい立場に置かれておる。これを何とか免税してほしい、こういうような趣旨に私は承つたのであります。従来どういうふうないきさつにこれが置かれてありますのか、おそらく陳情もあつたことと思います。しかし当日の政治連盟という政治という字までつけて発足した趣旨の説明の中には、従来医者というものは眠つてつたが、これからはどうしても政治力を結集して、われわれこういう弱い立場の者、不当な取扱いを受けておる者は、強く当局あるいは国会に臨んで行かなければ、所期の目的を貫徹できないのだというようなことを言つてつたのです。そういう点につきまして、私どもの党でもさらに各機関で検討し、当局の方に要望することになると思いますけれども、今までどういうふうないきさつになつてつたか。当局としてどういう措置をとられたか。そして今後こういうものに対してどういう配慮をなされるか。その辺のところをお伺いしたいと思います。
  61. 平田敬一郎

    平田政府委員 ただいまの問題は、歯科医の場合についてお話のようでありますが、健康保険全体の問題につきまして、実は私どもお話のような点について、前々からときどき意見を承つでおるのでございます。問題はいろいろあると思います。税法上健康保険による収入、健康保険による所得を特別に扱つて、それを免除するとか軽減するとかいうようなことをやつてもらいたいというのが一つございますが、どうもこの方は少しいかがであろうか。やはり健康保険といえども、健康保険としてそれぞれ収入があり、所得がある場合におきましては、これは一般の職業によつてそれぞれ所得があります場合と、特別に差をつけるという十分な理由がないのじやないかと、私ども考えておるのでございます。特に免税するというようなことは、むしろほかの所得者との負担の権衡上いかがであろうかと考えます。  もう一つは、健康保険の方は同じ医業なり歯科医の場合でありましても、割合所得か少い。つまり値段を押えられておりますので、それ以上はとれない。経費はこれに対しまして相当かかる。つまり収入金当りの所得率がほかの収入に比べまして少いのじやないか、こういう点に一つ問題があろうかと考えます。私どもも前々からそういう事情は確かにあるだろうということを考えておりまして、昔主税局から地方に言つてつたこともありますし、おそらく国税庁におきましても、去年あたり会議その他の際にそういう点は十分注意いたしまして、できる限り実情に即した所得を調べてそれで申告してもらい、さらに査定するようにということは、徹底をはかつておることになつておると思います。なおしかしそういう点につきまして、今まで不十分な点がございますれば、さらに十分そういう点につきましては注意をしまして、実際の所得をかまえるように注意してもらいたい。こういう点は十分注意をしてもいいのじやないか、このように考えますが、実際問題としましては、むしろ大体あとの問題が解決しますれば、大部分の問題は解決するのじやないか、このように考えておるのでございます。
  62. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 小山君。
  63. 小山長規

    ○小山委員 局長にちよつと一、二点お伺いしたいのですが、所得税法を見てみますと、放送協会が免除されておるのはどういきさつですか。
  64. 平田敬一郎

    平田政府委員 放送協会は特別な法律に基きます特別の法人になつておりまして、最終的には、現在のところ利益の配分にあずかる出資者というのはないのでございます。それから最後に財産が残つた場合においては、自由に処分することができないような規定に、たしかなつてつたかと思いますが、これは鉄道公社とか専売公社といつたようなものと同様に、課税上扱つた方が妥当ではないか、こういう意味で、所得税法人説等を課税しない取扱いにいたしております。
  65. 小山長規

    ○小山委員 そうしますと、残余財産の分配ができない規定になつておるからという点でありますか。
  66. 平田敬一郎

    平田政府委員 実質上国有であるのと同じ結果になつておると申しますか、国が出資して持つているわけではございませんが、結局その財産、それから現われる収入の最後の帰属、これが国有の場合と同様な法律関係になつておるようでございます。なおこれは、今回法律改正をしましたのは條文整理でございまして、すでに向うの放送法で、今まで同様の規定があつたのでございますが、免税等の問題は、なるべく所得税法法人税法に統合して行つた方が公正を得るゆえんだというので、最初遅れましても、その次の機会からは、それぞれ各税法を改めて入り込ませるようにいたしておりまして、その趣旨で今回改正をいたしたのでございます。それで前回盛り込んでございましたのを、法律案提出の時期が、若干実は基本法よりも放送法の方が遅れましたので、とりあえず向うで非課税にしておきました。ことしは間に合いますので、各税法の中に盛り込んだ、これが今回の改正法改正の趣旨でございます。
  67. 小山長規

    ○小山委員 次に資産再評価の関係で、資産再評価法と関係はあるのでしようが、一定の期日以後に、現在あるいは今後において、株主に資産再評価積立金を分配します場合に、所得税法上譲渡所得税を課するとか、何とかいう考え方はありますか。
  68. 平田敬一郎

    平田政府委員 再評価積立金は、大体私ども株主に帰属すべきものだと考えまして、單に積立金を資本に繰入れるというだけでございますから、その際は所得税は課税いたさないことにいたします。この点は再評価法の現行法にもすでにそのことが明文でうたつてあるのでございます。
  69. 小山長規

    ○小山委員 次に伺いたいのは、寡婦いわゆる未亡人の特別控除と老年の特別控除をしたわけでありますが、老人でありかつ未亡人である六十五歳以上の未亡人の場合には、両方控除いたしますか。一方だけでありますか。
  70. 平田敬一郎

    平田政府委員 その点は研究してみたのでございますが、両方まで行く必要はないと思います。その際は一方だけにしておきまして、老年者としての控除、これは機械的にはつきりしておりますから、老年者控除を行うということにいたしております。
  71. 小山長規

    ○小山委員 その次に伺つておきたいのは、今度未亡人の控除をいたすことになつたのでありますが、シベリアに抑留されておる人たちの生死は明らかでないという人の場合には、法律上規定してあるようでありますが、たとえば手紙が来ているというような場合には、これは課税する方針なのでありますか。課税しない方針なのでありますか。これは速記録に明らかにとどめておきたいのであります。
  72. 平田敬一郎

    平田政府委員 結論を申しますと、その場合も生死が朗らかでないものとして控除を認める考えであります。りくつは手紙を出したときはなるほど生きていたかもしれぬが、しかしそれは向うにおるものでございますので、現に生きているかどうかわからないものとしまして、そういうところは政令でさらに明らかにしまして、特別控除は認める考えでございます。
  73. 小山長規

    ○小山委員 国税庁長官が来ておりますので「ちよつと伺つてみたいことがあるのでございますが、国税徴収法の第三條でありましたか、国税でもつて財産を差押えた場合に、その財産に対して抵当権あるいは質権を持つている人が、一年前に抵当権あるいは質権を設定したことが、公正証書で明らかとなる場合には、その公正証書による債権の方が優先する、こういう規定があります。この場合の公正証書ということの中には、私の解釈によれば、これは一年以前に償権が発生したということを明らかにした文書ならばいいのであろうと思いますので、いわゆる債権の内容までの公正証書でなくてよろしい。公に証明されるのであればいいのであるから、確定日付もまたその公正証書の中に入つてしかるべきものではないか、こう考えますが、現在の取扱い、あるいは国税庁のお考えはどうでありましようか、伺つておきたいのであります。
  74. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいまの取扱いといたしましては、確定日付をもつて認めるという解釈をしております。
  75. 小山長規

    ○小山委員 確定日付でよろしい…。
  76. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 そうでございます。
  77. 西村直己

    ○西村(直)委員 老人控除と未亡人控除は、條文上はつきり重なつた場合でもわけるようになつておるのですか町法律的にそのダブつた場合はダブつて恩典が行くようになつておるのですか。あなたの解釈によれば違つて来るわけですが、一般の受ける印象は、おそらく要綱だけを発表された場合には、老人と未亡人と両方いただけるように世間では思つておるというふうに、私は解釈しておるのですが、法文上の解釈ははつきりダブつた場合には片方落す……。その点はつきりお願いします。
  78. 平田敬一郎

    平田政府委員 所得税法改正法案の新旧対照表の七ページでありますが、そこの第八條第四項において、「この法律において寡婦とは、つまり未亡人ですが、「寡婦とは、左に掲げる者で、扶養親族を有し、且つ、老年者でないものをいう。」と法律で明らかにいたしまして、老年者の場合には老年者の方に行くということにいたしてございます。
  79. 小山長規

    ○小山委員 それからこれは今度の法律上出て来なかつたのでありますが、租税リーエン制と申しますか、シヤウプ使節団の中にそういう制度をとつてみたらというようなことがあつたことが、当時新聞に載つたのでありますが、これについては政府当局はどのように考えておられるのか。つまりこの制度を今日本に導入してさしつかえないと考えておられるか、あるいは非常な混乱を来すと考えておられるか、これを伺つておきたいのであります。
  80. 平田敬一郎

    平田政府委員 この制度は政府部内におきましても、自治庁、大蔵省、厚生省等で大分研究いたしたのでございますが、今の段階におきましては、やはりこの制度を採用することが適当ではなかろうというので採用しない。少くとも本年度は採用しないことにいたす予定でございます。将来やるかどうか研究する必要があろうかと思いますが、相当一般の私的取引に重大な関係がございますので、よほど徴税が困難であつて、その制度ができなければ、固定資産税なんかはどうにも納まらぬというような事態があれば別ですが、それほどでもない限りにおきましては、あまりこういうむずかしい制度は設けない方が、今のところいいではないかというふうに考えております。本年度としては採用しないことに決定いたしております。将来につきましては今申し上げましたように考えております。
  81. 小山長規

    ○小山委員 それでは伺います。いかなる点がやらない方がよかろうという結論の原因になつたのか。つまりどういう点にいろいろな混乱が起るからやらないというような結論になつたのか。その経過をお聞かせ願いたい。
  82. 平田敬一郎

    平田政府委員 一番問題の点は、やはりリーエンの制度を設けますと、不動産の上に物状担保としてずつとくつついて行くわけでございますが、不動産の買主に税金がよく納まつているが、よく納まつていないかわからせる方法を考えなければならない。そういうことになりますと、登記、登録あるいは市区町村の役場等における公示の方法等を考えなければなりませんが、そういうことにつきまして相当難点がある。かりにそういう制度につきましても、一般の取引をなす者が善意に買つたような場合において、非常な不測の損害を及ぼすようなおそれもございますし、そういう点が一番この制度を設けるにつきまして難点であろう。そういう問題につきまして将来何かいい方法でもありますれば、これは一つの方法ではあろうと思いますが、今のところまだ私ども自信のある結論に到達をしていないのでございます。それともう一つは、そこまでしなくても、固定資産税は相当徴収できるのじやないかという点でございます。二つの点をあわせ考えまして、さしあたり採用しないということにいたしたのでございます。
  83. 小山長規

    ○小山委員 これは主税局長に聞くことですか、あるいは国税庁長官に聞くごとですかわかりませんが、富裕税法第三十六條の預金者報告と申しますか、昨年の十二月に例の問題を起した報告があります。あれは二十五年度つまり去年の十二月はあとでお取消しになつて、官報から抹殺されたのでありますが、これは私は非常に重大な点であろうと思う。あれはなぜそういうことになつたかと申しますと、富裕税法によつて一般的な預金の調査をするということが新聞紙上に発表されまして、非常に利にさとい大阪方面において非常な恐慌を来した。聞くところによると、当時一日で十億とかいう預金が逃げた事実があつたので、大蔵省としても捨て置けないということで、あの取消しをなされたのであります。ところが私の推定によりますと、この一ぺん逃げた預金はまだ非常にこわがつて、銀行の手元に入つて来ない。と申しますのは十二月はあの調査をやめたけれども、いつ拔打ち的にまた調査をするかもしれないという心配があるので、おそらくこの逃げた預金はほかの形で財界に流れておつて、預金という形に容易にもどろうとしないのではないかと思いますけれども、二十六年度つまり今後もああいうような一般調査をしないのかどうか。あるいは今後も場合によつてはやるのか。これをひとつお聞かせ願いたいのであります。
  84. 平田敬一郎

    平田政府委員 富裕税の完全な調査をするためには、やはり預金等につきましても一定の時を押えまして、現在高を税務所に報告してもらうことが、課税の適正ということをはかる上においては必要なことだ。そういう意味法律にもそういう権限を認めてもらつているわけであります。ただ今お話のように、最近まだ預金の状況が非常に異常な状態である。課税につきましても、率直に申し上げましてなかなかどうも全般的に適正をはかられて来ておらなかつた。こういう際におきまして、これを強行するということになりますと、御指摘のような弊害も他面出て参りまして、また課税の適正を期するより以上におもしろくない結果もございますので、まず富裕税につきましては、申告納税の本旨に従いまして、できる限り本人の申告によつて課税するというような考え方で行きたい。それと、それから個別的には富裕税は納税者の数も比較的少うございますので、やはり疑問がある場合におきましては、これは個別的に、その人につきまして財産の内容を調べれば、比較的調査をしやすい。そのような場合におきましては、もちろん必要な場合に私ども銀行の預金等の調査も、個別的にはいたすつもりでございますが、そういう方向にいたしますれば、まず相当な目的を達成し得るのではあるまいか。また一面所得税等によりまして資料が集まつて参りまするし、そのような資料も富裕税に利用できますので、そういつたような点からやりますれば、何とか相当の調査ができるのじやないか、こういう意味で、この資料を出させることを実は見合しておるような次第であります。従いまして将来は、富裕税の納税者が少うございますから、今申し上げましたような方法で相当成績は上ると思いますが、できる限りそういう方向で行くことにいたしたい。ただしかしその結果あまりにも富裕税の脱税が多いというような場合におきましてどうするか。これはその際にもう一ぺんよく検討してみなければならぬ問題だと考えております。
  85. 小山長規

    ○小山委員 それではこういうふうにお伺いいたします。富裕税のために、さしあたり一般的な預金調査はやらない。ただ個々に預金を調べなければならぬ場合には、これはやむを得ない。一般的につまり預金者をおどかして逃げられるような政策はとらない、こういうふうなお答えと了解いたすのであります。その問題と関連して、国税庁長官にお伺いしたいのでありますが、今の預金というものは非常に臆病なものである。何かというとすぐ逃げたがるものであるということを、国税庁長官が頭から知つておいていただかないと、私の議論は通じないかもしれないのでありますが、最近方々に——東京ではあまり起つておりませんが、地方に行きますと非常にこの問題が起つておる。一つは預金の問題でありますし、一つは株式取引の問題であります。つまり国税庁が個人の所得を調査して行かれることの忠実な余りであるかもしれませんが、不必要な範囲まで調査を広げておる。もう少し具体的に申しますと、たとえば甲という人の預金を調査するために、全般の調書を出せということを金融機関に要求しておる。あるいは甲という人の株式取引を調べるために、全般の取引状況の申告をやらしておる。これが非常に預金の取引を阻害し、あるいは証券取引を阻害しておる。これは隠れもない事実であります。そこでこの調査方法については、これは戦時中の歴史をお調べになるとよくわかるのでありますが、戦時中には預貯金を確保する国家目的のために、預貯金を拡充するという意味から、わざわざ銀行に対しては預貯金の調査をやつていけないという閣議決定でありますか、あるいは政令であるか知らないが、出たことがあるくらいである。現在においてもその資本の蓄積、ことに金銭資本の蓄積という立場から言うと、戦時中と大差ない。このときにあたつて徴税当局が、片方において負担の公平あるいは徴税の確保という点でやられるのはいいのでありましようけれども、これを不必要に拡大されて行くというこの方針は誤つておるのじやないか、かように思うのでありますが、これに対する一般的な考え方を、まず国税庁長官に伺つてみたいのであります。
  86. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 租税の負担の公平を期し、かつ徴税の確保を期するために、ある程度の特定の人につきましては、預金の調査をせざるを得ない場合があるということは、ただいま小山委員からお話通りであります。しかしながら私どもといたしましては、同時にそれが納税者と申しますか、一般預金者に刺激をする結果になり、資本の蓄積に悪影響を及ぼすということは、できるだけ避けるようにということを、常々注意をして参つておるのであります。ことに先ほど例としてお示しになりましたように、何某の所得の状況を調査する必要がある。脱税の調査をするという場合に、これを機会に一般的な調査をするというふうなことは絶対いたしておりません。またやらしてもおりません。個々に何の何がしの預金について、どうしても調査をする必要があるという場合に、個々のケースとして調査をいたしておる次第であります。
  87. 小山長規

    ○小山委員 長官のその根本方針は非常にわれわれも賛成するのでありますが、実際問題としてそれをやつておる。このやつておるという事実に対して、長官としては何か指令を出されたことはありますか。ありますならば、何月何日にどういう指令を出したということをお知らせ願いたい。
  88. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 具体的な指令の目附をただいま記憶しておりませんが、そういうふうな趣旨のことは会議の席上でも注意しておりますし、またたしかそういうふうな注意を特に最近二、三箇月前にいたしたように記憶いたしておるのであります。ただこれは先ほどもお話いたしましたように、どうしても預金の調査をしなければ、その人の所得の全貌をつかみ得ない、また脱税の真相をつかめないという状況がありますので、そういうような際におきましても、できるだけ一般の銀行の仕事におじまにならぬようにという方法でもつてつておりますが、間々受けられる方で騒がれるというようなことのために、思わざる一般の評判になるという場合がありまして、そういう点につきましてはむしろ金融機関側の十分な御協力をお願いして、そういう事態の起らぬようにということを期待しておる次第であります。
  89. 小山長規

    ○小山委員 十分の訓辞をされ、あるいは指令を出されておるということでありますので、一応それは了承いたしますが、預金の調査をする場合には、われわれはそのために脱税をはかれと言つておるのではなく、不必要な危惧の念を一般預金者に与えてはいけない。大体預金というものは祕密であるから預金がふえて来る。預金の秘密性というものが認められなかつたならば、預金というものはそうふえるものではない。これは経済原則といいますか、社会通念といいますか、人情と申しますか、そういうものなんです。でありますから徴税の必要上、預金の調査をすることはさしつかえないと思うけれども、不必要な危惧の念、あるいは自分の財産が何かのぞかれているというような懸念を預金者に与えないということが、資本蓄積のためには一番重大なことであろうと思う。その点についてはよく御了承のようでありますが、さらにこれを徹底して、預金の調査をする場合には、こうこういう條件が備わつていなければいけないというような一つの條件を示して、その場合に限るというようなことを、天下に声明されるお気持はありませんか。
  90. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 いかなる場合にいかなる條件が備わつた場合に調査するというような問題は、具体的な認定の問題でありまして、明確な一線を画することは非常に困難であります。勢い取扱い官吏の認定にかかる点が、非常に多いかと思うのであります。従つてどもとしては、このやり方によつて預金の資本蓄積を、いやしくも阻害するようなことがあつてはいけないという注意はいたしておりますが、同時に税は公平を生命といたしますので、できるだけ公平を保つて行くということを念願いたしておりますので、そういうふうな一般的な條件を掲げて、そうして基準をつくるというようなことをいたしますのは、いかがであろうかと考えておる次第であります。
  91. 小山長規

    ○小山委員 それではこういうことは言えますか。たとえば預金の調査をする場合に、十数人あるいは何十人と並べて調査を依頼するということが、非常な影響を及ぼしているであろうと思うのでありますが、     〔委員長退席、奥村委員長代理着席〕 そういうふうなことでなくて、個々に特定した人の調査をやつて行く、こういうことならやれますか。
  92. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 もちろん銀行の預金者全部について調べるというようなことは絶体にしておりません。個々のものについて調べるという方針であります。
  93. 小山長規

    ○小山委員 いや二、三十人並べて来るのです。一人というのは、数十人ということですか。
  94. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ときに重なる場合はありますけれども、一挙に数十人連日やるというふうな事柄は、妥当な処置ではないと考えておるわけであります。     〔奥村委員長代理退席、小山委員長代理着席〕
  95. 奧村又十郎

    ○奧村委員 先ほどの小山委員の御質問に関連して、私もお尋ねをいたしたいと思うのであります。小山委員の御質問によりますと、銀行預金の調査については、これこれこういう條件のそろつた場合のみ銀行預金を調査し得る、こういうふうな條件をつけるようにして指令を出したらどうか、こういうような御質問のように承つたのでありますが、しかし税法上でははつきりとほとんどあらゆるものは調査し得る。これは所得税法の、何條の何号ということまでは私覚えませんが、ほとんどあらゆるものは調べ得るという規定がしてあるにもかかわらず、行政上の処置としてそういうことはできないと思うのでありますが、その点は平田局長はどうお考になりますか。
  96. 平田敬一郎

    平田政府委員 法律上一定の事項を調査することができる。今の富裕税の規定でございましても、三十七條に「国税庁、国税局又は税務署の当該職員は、富裕税に関する調査について必要があるときは、左の各号に掲げる者に質問し、又は第一号に掲げる者の財産若しくはその財産に関する帳簿書類を検査することができる。」ということになつておりまして、必要があればできるというわけでございます。この必要があるかどうか。それからはたして実益があるとして、やるかやらないか。その辺は私は運用にまかせておると思う。従いまして、国税庁といたしましては、先ほど長官からお話になりましたように、課税上の必要性、それからそのことによるいろいろな影響等も考えられまして、必要な調べをいたして行く、こういう方針をとるのは、これは税法上認められておる行き方じやないか、かように考えます。
  97. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この銀行預金の調査ということは、最近非常に全国的に大きな問題になつておると思うのであります。それで小山委員から主として、預金は非常に臆病なものである、これに対する取扱いはよほど愼重にして行かなければならぬ、こういう御意見でお尋になつたのでありますが、私はまた国税局の方のいろいろな話を聞きますと、最近廣島、四國方面に参つてみますと、金融機関が税務当局の調査に対して、非常にその態度が冷淡になつた。調査に対して素直に応じない。それで所得の調査に非常に困難を来しておる。こういうことを実は聞かされておる。これははたしてどういう向きからそういうふうな気分を持たして行つたのかどうかということを、私は調べてみたいと思つておるのでありますが、こういうことを国税庁の方へ申し出ておるかどうか。同僚議員とこれはお尋の仕方が違うのでありますが、しかしこれは大きな問題であつて、いろいろな立場から検討して行かなければならぬことでありますから、この預金の調査上、税務署及び国税局の方として非常に支障がある、そういうようなことを聞かされておるかどうか。この点をひとつお尋ねいたしたい。
  98. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 二、三の各局からの報告によりますと、ある程度非協力であるというふうな報告にも接しておるのでありますが、この問題は非常にデリケートな問題でありまして、どの程度必要があるか、またどの程度に調査すべきかという点につきましては、ことにその必要の程度いかんに関しましては、非常に見解のわかれるところであります。私どもといたしましては租税の公平を保つためには、ある場合にはどうしても調査を必要とする。また先ほど奥村委員お話通りに、税法には税務官吏に対する完全なる権限が与えられております。しかしながら私ども考え方としては、その権限を振りまわして、権限があるからいつでも調べるのだというやり方でなしに、できるだけお互いに話合いでもつて、協力を得てやつて行くという建前をとりたいというふうに考えておるのであります。必要がある場合におきましては、たとえばどうしても調査を必要とする。しかしながら協力を得られないという場合においては、やむを得ず権限を行使せざるを得ない場合があり得ると思うのであります。しかしながらわれわれとしては、そういうことはまずいことであるから、できるだけ避けて、協力を求めて行くという方法で行きたいと思つておるわけであります。
  99. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 三点ばかりお伺いいたしますが、政府は今回親心から閉鎖勘定というものを設けて、その滞納を調査するというような考え方、並びに滞納したものを分納させようという考え方を採用されようということになりつつあります。これに関連いたしまして一つの事例として、本税を全部納めたのでありますが、なおかつ追徴税、加算税が残つておる。追徴税の問題は税務署にお願いしまして、これは免除された。そこでまだ免除の通知は来ておりませんが、加算税の方を納めることになりまして、追徴税の方は目下申請中であるから、ぜひ差押え物件を解除してくれ、こういうお願いをしたところが、全部を納めなければこれは解除できぬ。追徴税の方が免除という決定をしなければ差押え物件は解除しない、こういう事例があるのであります。しかしこれは公法上の問題でありまして、私法上においても、民事上の債権債務の場合において、少額債権については普通一般の催告によつて納められる可能性があるにもかかわらず、少額債権のために全財産を差押えたということに対しては、前の大審院の判例で、権利の濫用である、そういう場合には、差押えだとか強制処分をしないで、一般の任意の請求をして行くことが常識である意味合いから、判例上ではこれは権利の濫用ということになつております。それからこれと関連しまして、この公法上の債権債務の場合でも、一応本税が納められ、そして加算税を納めたら、追徴税のささいなものについては、これは普通の請求によつて将来納められる可能性がある。しかもその資産状態が何千万持つておるというような会社に対しては、追徴税全部納めなければ、差押え物件を解除しないということは、法の精神からも、民法上の一つの判例からいつても、やり方が非常にまずいのではないか。今の産業界で資金を調達することが、事業面について重大な一つの仕事でありますし、またそれでなければ経営ができないという場合に、この追徴税のみのことで差押えをしておくということは、資金調達について重大な障害であると考えるのでありまして、政府は局長さんにも、長官におかれましても、そういう場合は適当な処置でこれを解除させまして、資金調達をさせることが、事業上妥当でないかと考えるのでありますが、政府はそういう場合はどういうふうなお考えを持つておりますか、伺いたいのであります。
  100. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 国税の徴収につきましては、差押えをいたします際には、未納税額相当する財産を差押えるという建前になつておるのであります。従つてきわめてわずかの未納税額のために、莫大な財産を差押えるというふうなことは、いたしておらないつもりであります。もしもそういうような事例がありますれば、これはすみやかに正すべきであると考えております。
  101. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 そういう具体的事実がありまして、私が国税庁のある係のところへ参りましたら、全部納めなければこれは解除できぬということで拒否しております。これは法の上からは当然でありますが、民法上の判例からいつても越権行為である、権利の濫用であるということも出ておる関係から、これは大いに解除しまして、自由に金融措置を講じて行きまして、事業の積極的運営に協力すべきである、こう考えるのであります。具体的事件の会社の名前は発表しませんが、そういう事実が絶対あるのです。わずか五十万円のために、約一千何百万円に相当する工場を差押えておる実例がありますから、ぜひこの点について今後御注意願いまして、でき得る限りこういうふうな便宜を与えてもらいたいと思います。  もう一つは、二十五年度法人税自然増収ですが、この点は一昨年十一月あたりに聞いたところの報告によりますと、二百二十七億くらいにあつたと聞いております。その後の二十五年度法人税自然増収がどういう程度になつておるか。本税がどのくらい、あるいは加算税がどのくらいになつておるか。その点をちよつと伺いたいと思います。
  102. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 一月末までに納入済みになりました法人税の金額は、五百九十二億三千四百万円であります。補正予算で増額になりました予算が五百七十二億七千八百万円であります。予算に対しては約一〇三・四%の収入になつております。従つて今後なお二月、三月と二箇月を残しておりますので、私どものほんの見込みでありますけれども、大体の見当といたしましては、予算を百億円程度上まわる収入が得られるのではないかというふうに見通しておる次第であります。
  103. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 それから個人所得税の現在の状況ですが、大分滞納があるようでありますが、どのくらい滞納になつておりますか。
  104. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 十二月末までの統計が出ておるのでありますが、十二月末現在におけるところの個人所得税の滞納税額は、五百八十七億九千百万円と相なつております。
  105. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 それから物品税の自然増収があるはずでありますが、物品税総体としての自然増収を伺いたいと思います。どの点が一番自然増収がありましたか。その点を伺いたいのであります。
  106. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 物品税は一月末の収入済み額が百十五億三千百万円であります。予算が百六十二億六千七百万円でありますので、予算に対して七〇・九%という収入割合になつております。しこうして今後の見込みでありますが、今後の見込みとしては、物品税はわずかながら予算に満たない金額になるのではないかということを、懸念しておる次第であります。
  107. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 これと予算上の問題に関連しまして、だんだん物価上つて参りますし、おそらく将来補正予算を組まなければ、財政上非常に困難な事態が生じて来るように考えられます。こういう場合に、大蔵大臣は約五百億ばかりの減税をするということを説明されましたが、現状のままで行けば、おそらく減税はできなくて、あるいはかえつて増税しなければならぬ場合もあり得るように考えます。もしこの五百億ということを確定的に減税できるということになれば、おそらく将来に行つたらいろいろな行違いが生ずるのじやないかと思いますが、政府はどこまでもこの五百億の減税を断行する御意思がありますか。それともこの国際情勢を考えながらこの五百億の減税を見合せる考えがありますか。それを伺いたいと思います。     〔小山委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 平田敬一郎

    平田政府委員 私は大蔵大臣が五百億さらに減税するとお話になりましたのを、まだ実は聞いていないのでございますが、どういうときの話でございますか。今にわかになかなか予断はできないのじやないかと感じておる次第であります。
  109. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 そうすると、これは局長は減税はできないというお考えですか。それとも将来はできるというお考えでございますか。
  110. 平田敬一郎

    平田政府委員 どういう意味のお尋ねでございますか。今とにかくこの案を出して、七百四十億の減税をしようというわけでございますが、それ以外にまた別途のお話でございますか。どういう問題でございますか。よくわからないのでございます。なおお尋ねによりましてお答えをいたしたいと思います。
  111. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 実はこの間大蔵大臣が出席したときに、七百何十億かの減税をするのだが、何か差引いて五百億ばかりの減税になるのだということを言われておつたのであります。
  112. 平田敬一郎

    平田政府委員 その話でございますと、提案理由でいたしたわけでございまして、実は七百四十億の内訳を説明いたしたわけでございます。七百四十億のうち、今提案しておりまするこの改正によりまして、減税になる金額が五百七十一億五千八百万円になるのでございます。これに前国会におきまして、今回の減税計画と一環をなすものとしまして行いました酒税の引下げ、揮発油税、砂糖消費税の引下げ、物品税の引下げによりました減税額百七十一億五千八百万円を加えますと、七百四十三億一千六百万円になる、こういうわけでございまして、その五百億でございますれば、まさに今回提案しましたものによるだけの減税分であります。それに前の国会の、今回の減税計画の一環をなしましたものを加えまして、二十六年度として七百四十三億一千六百万円になる、こういう趣旨でございます。
  113. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 私は関税の問題についてちよつと伺いたいと思いますが、今までの第一次世界戦争でも、第二次世界戦争でも、結論は経済上の機会均等、たとえば資源の機会均等を破つた、こういう意味合いから戦争が起つたのじやないかと考えるのであります。そこで日本貿易は現在非常に順調であります。紡績業なんかも英、米の九億何千万ヤールに対して、日本はわずか四百万錘で七億ヤールも生産しまして、大正八年以来の好景気を呈して参りました。このようにわが日本の紡績業者は世界に貢献をしておるのであります。私はこの紡績事業でどんどん発展することを期待するものでありますが、英国の考え方によれば、一つのブロツク経済を形成しまして、英国の諸連邦の貿易については、なるべく輸入をしないで輸出を原則とするというような、ブロツク的な考えを持つて来ておられることを新聞や雑誌で見ております。こうなつて参りますと、おそらく英国等における考え方とすれば、今後保護貿易だとか、あるいは関税障壁というものを考えはしないか。そこで日本の関税に関して特に考えて行かなければならないことがあります。輸出奨励の今後の障害であるところのいわゆる保護関税のために、日本の商品が外国へ輸出できないという事態の生ずる危險がありますので、今の場合そういうような通商條約もありませんし、あるいはアメリカの御援助も頂戴しなければなりませんが、今後この貿易問題について、諸外国に保護関税をかけるとか、あるいは差別関税を設けるとか、いろいろな問題が起つて参ると思います。日本としてはこの関税に関する問題を今後論議しなければなりませんが、政府はこの関税問題について研究されたか。また何か資料がありましようか、ちよつと伺いたい。
  114. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の問題につきましては、実はけさほど宮幡委員のお尋ねがございまして、関税改正に関する大体の方針を御説明申し上げておいたのでございます。要点は、今の関税率が従量税はインフレの結果非常にばかげたものになつておりますので、これを妥当な税率に改めるというのと、それから他面従価関税で非常に高いのがございますが、これは最近の関税の世界の情勢から見まして適当でございませんので、適当なところに引下げる、そうしまして必要最小限度の関税で産業の助長をはかつて行こう、こういう趣旨からいたしまして、目下関税定率法の全面改正案政府において作成いたしております。近くこの大蔵委員会提出いたしまして、御審議を煩わす見込みでありますことを重ねて御説明申し上げておきます。
  115. 宮腰喜助

    ○宮腰委員 それに関する資料がありましたならばぜひ拜見いたしたいと思います。米国は自由貿易態勢を確立しようといろいろ政策を考えておるようでありますが、日本も将来そういう自由貿易態勢に加盟して、日本の貿易が発展するかどうかという問題があります。現在の状況では、産業の合理化施設が不十分なために、外国資本によつて倒れる業者も相当できて来るのではないか。そういう意味合いで日本の産業保護のために、関税の方法か何かで保護を与えなければ、おそらく日本の経済の将来は外国商のために圧迫されることがあると思います。今のうちに自由貿易態勢に対する検討をしなければならぬと思いますが、政府ではそういう関税貿易と日本の産業育成の上の研究をされておるかどうか。それも伺いたいと思います。
  116. 平田敬一郎

    平田政府委員 お話の問題につきましては、もちろんひとり大蔵省だけでなく、むしろ通産省、安本あるいは各省におきましても十分研究いたしまして、それぞれ必要な措置をとることにいたしております。今の関税定率法もそのようなことを前提にいたしまして、この際として妥当な関税率を盛りまして、日本の産業の保護育成をはかつて行こうという見地から、全面改正をいたすことにいたしておるのであります。これは相当厖大な案でありまして、いずれ大蔵委員会提出すると思いますが、その際にはなお十分御審議の機会があるだろうと思いますので、その際にお譲り願えますと好都合かと存じます。
  117. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は過日来質疑の通告をいたしておきましたが、この税制の改正に伴いまして、ことにこれに関係の深い法案を近日議員立法として提出しなければならぬと考えております。幸いに本日は平田主税局長並びに高橋国税庁長官二人おいででございますので、この際認識を改めておきたいと思います。と申しますのは、法人税、個人の所得税を初めといたしまして、わが国財政の根幹をなすのは租税であります。租税の公平を期し、また国民の納得の行きます租税をいたしますのには、お互いに税に対する了解が必要であります。それには今日のごとく複雑多岐にわたる税法でありましては、やはり税務代理士という戦時中の昭和十七年から今日まででき上つておる制度は、私どもといたしましてはむしろこれは官僚の独善と申しますか、統制経済のさ中にできたものでありまして民主的でない、こういう点から考えまして、ぜひ民主的な納税、民主的な代理士に切りかえたいというのが多年の念願でございます。それにつきまして弁護士と税務代理士、これに公認会計士、こういう三つの税務代理士の業をなすものがある。私どもといたしましては弁護士でも公認会計士でも、今度できます税理士会に加入して、国税庁がこれに通報を流し、またこれを監督というよりは連絡をとる、こういう線をとることが必要であると考えておるのであります。今度われわれといたしましては十分これを考えまして、弁護士、税務代理士も今度できます税理士会に入つてやるという、こういう線を出したいと思つておりますが、一体国税庁並びに大蔵省では、どういうような観点から今日これを持つておられるか、この際承りたいと存じます。
  118. 平田敬一郎

    平田政府委員 税務代理士の制度につきましては、大蔵省といたしましてもこの際全面改正を実は希望いたしておつたのであります。国会で御提出願います際におきましても、もちろん政府の意向を十分御参酌願いたい、よく意見のあるところを申し上げたいというふうに考えておりまして、目下いろいろな角度から検討いたしまして、最終案をとりまとめ中でございます。その際におきまして、今の会の加入の問題でございますが、やはり私ども一応今のところといたしましては、公認会計士、弁護士、これはいわゆる筆記試験等の試験は免除してもいいだろう。ただやはり税務代理士の業務を行うにつきましては、登録と申しますか、登録をしていただきたい。それ皆登録をしていただいた方は一定の会の組織に入つてもらいまして、そこでいろいろな自治統制みたいなことをやつてもらうように願いたい、このように考えております。ただこの会を全部一本のものにするかどうか。あるいは場合によりましては、別に会をつくつて、それに加入してもいいようなことにするか。その辺のところは若干問題がございまして、大蔵省としましてもまだ最終意見を固めておりません。実情をよくお聞きしまして、大蔵省の意見も決定しまして、その上で御意見を申し上げたいと存じておる次第でございます。
  119. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私はこの際国税庁長官もおいでになりますから、お聞きしてみたいと思います。東京には弁護士会が三つある。東京弁護士会、第一弁護士会、第二弁護士会、こういうふうにあるのでありますが、かりにこういたしますと、弁護士のみの税務代理士会、たとえば公認会計士もしくは計理士あるいは税務代理士等を含めた税務代理士会というものをつくるか、この二つの線もあると思います。願わくば私ども一つの單一会にいたしまして、ほんとうに国税庁の意見がずつと浸透する、こういうふうにいたしますならば、非常に監督上にもまた実情にも便宜であると考えております。これに対しまする答弁を求めますことが一つと、それからもう一つは今度は国税庁長官に申し上げたいのです。代理権ですが、われわれはこれに対しまして、弁護士さんの方はほんとうにこの代理士と言いますと、告訴人なりあるいはその本人にかわりまして、すべてのことを代理しておる。ところが税務代理士の方は名は税務代理士でありますが、実は決定する場合におきまして、税務代理士を呼び出さなくてかつてにきめておる。これが今日国税庁の管内においては往々に行われておる。どこにも税務代理士というものは、ほんとうの権益がないというように考えられるのでありまして、もし私どもの観点からいたしますならば、会社が署名し税務代理士が署名したもの、両方が署名したものに対しましては、必ず弁護士と同様に代理人の意見を聞いて、調査する上においても、また決定する上においてもこれらの意見を勘案、一致させてから決定するのが順序である、かように思つておるのでありますが、国税庁長官は一体どう思われておるか。この二点について主税局が一つ、国税庁の長官一つ、こういうふうにはつきりと答弁を願いたい。
  120. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 先ほど主税局長からも答弁を申し上げましたように、この問題はまだ政府内でもはつきりした意見のとりまとめができてないのでありますから、しつかりした意見のとりまとめができました上で、必要がございましたら私どもの意見をその際に申し上げたいと思います。
  121. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 もう一つつつ込んだことを伺いますから、これはほんとうのことを伺わせていただきたい。やはり地方をまわりましても陳情を受けたことでございますが、税務代理士というものは相当貢献しておるのであります。大部分は、九九%まではしつかりした人物がやつておる。それにもかかわらず、税務計理士をさしおいてかつてに更正決定をする、あるいは調査するということになりますと、これはほんとうの親心というものが通じないわけであります。でありますから税法改正をするときには、もちろんこれを考慮の中に入れなければなりませんが、今意見がまとまらぬというならば、あしたでもよろしゆうございますから、ひとつ研究をしていただきたいと思います。  次に一つ申し上げておきたいのでありますが、私どもの観点から申しますと、弁護士さんでも、訴訟に対しましていわゆる商標権でありますとか、あるいは特許権等につきましては、弁護士さんと共同いたして代理して訴訟できる、こういう線があるわけであります。してみますと、税に関します知識を持つておると言われる今度の新しい税理士については、ある程度まで弁護士さんと共同いたしまして訴訟代理ができる、あるいは陳述ができる、こういう線を開いた方がしごく穏健であろうと存じますが、これにつきましてはどうお考えになつておりますか、承りたい。
  122. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の問題も私ども一つの問題として取上げているわけでございますが、ただ訴訟になりますとやはり弁理士については例はございますけれども、弁護士という特別の制度がございまして、これも弁護人になるという原則になつております。これに対する一つの例外を設けるということになるわけでありまして、はたしてそこまで必要があるかどうか、その辺のところにつきましてはよく検討する必要がありはしないか。大蔵省は必ずしもそのことについて反対というわけではございませんが、それぞれのところにおきましてこれについても相当意見があるようでございます。従いましてその点につきましてもよく関係の方とも打合せまして、最終的な意見を近く申し上げるようにいたしたいと存じます。
  123. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 ただいま主税局長並びに国税庁長官の御答弁がありました。われわれといたしましても近いうちに案を重ねまして政府当局とも打合せまして、この税務代理士法の改正なりあるいは公認会計士法の改正法なり出すのであります。してみますると、われわれといたしましてもでき得るべくんば国民大衆の意見を聞いて、そうして円満な納税、またある点まで了解のできまする税法の普及、こういう点を主眼に考えているわけでありますが、また明日にも続行してやることになりますから、どうか政府当局も資料等を出していただいて、われわれと協力して、この戦時体制から切り拔けて講和体制に至る今日におきましては、最も民主的納税機関であり、補助者であり、また代理人であるこの権益を擁護し、また国民大衆諸君とともに完全なる納税を進行いたしたいと存じますから、これに対して偽らざる告白を聞きたい。
  124. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 米国の例等につきまして申告納税がほんとうに完全に運用されるためには、單に納税者のみならず、それ以外に会計士と申しますか税務代理士と申しますか、納税者の補助的な役割をするところの機関が、十分にその機能を発揮することが必要であるということを、痛感している次第であります。ことに税が相当負担が重い場合におきましては、公平の見地からいたしまして、税法が漸次難解になることは避け得ざる傾向であります。従つて何といたしましても、その面について非常に明るい専門家の相当多数がおられまして、納税者の申告等に際しまして誤りない申告をする手助けになつて行くということが、税務行政上非常に望ましいところというように考えておる次第であります。従いまして現在の税務代理士は、もちろん今後新しくなられる税理士と申しますか、そういう方々につきましても何とかしてその地位も向上していただいて、またその識見も向上していただきまして、ほんとうにそういう権利として認められぬまでも、一般の納税者並びに政府の両方から尊敬される人々になつていただくということを、衷心から望んでおる次第であります。
  125. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 私は主税局長さんのおいでになるときには聞いたことでありますが、国税庁長官がおいでになりますから重ねてお伺いいたしたい。税法は千何百條からありましてなかなかむずかしい。そこで一般の大衆諸君はこれを見る人は少い。これではほんとうの税の徹底を期し得ないと思いますから、どうか大蔵省並びに国税庁におかれましては、普及版と申しますか、わかりやすいもの、たとえば法三章とは申しませんが、かりに十分の一の百條くらいでわかるように、あるいは例を示したりいたしまして、普通の納税者はその普及版を見れば大体に納税はできる。むずかしい問題、審査、再調査、あるいは訴訟になつた場合はとらの巻の千何百條を見る。あとふだんの事柄は百條くらいの簡単な條文によつて、すべて一般の納税者が理解できるという制度を講じたいと考えまして、主税局長に申し上げておきました。国税庁としての最高責任者である長官はどう考えておるか。早くこれを徹底させるために普及版でも出して、納税者の便益に供することが必要であると思いますが、これに対して長官の所見を承りたいと思います。
  126. 高橋衞

    ○高橋(衞)政府委員 ただいま三宅委員のお示しになりましたような、つまり税法そのものではなくして、法律の言葉を離れたところの、われわれにわかりやすいところの言葉で説明されたものが必要であるということは、私どもも非常に痛感しておるのであります。従いまして何とか近い機会に権威のあるそういうものをつくり上げまして、出すことにいたしたいと考えております。ただ遺憾ながら当初からそういうようなことを考慮しておりましたが、本年はまだその運びに至らなかつたわけであります。しかしながら同時に申し上げておきたいと考えますことは、実は申告書の書式、これがやはり今まで法律の條文等にとらわれまして必ずしも容易ではなかつた。それを今回は相当思い切つて簡易化しまして、特に法律用語等も全部除きまして、おわかりになりやすいような画期的な改正をいたしたわけであります。それに付随する説明書等についても、何とかして税法をお読みにならぬでも、あれだけお読みくだされば、正確な申告書をお書きになれるという目標をもつてつくつたわけであります。なおあれらについても御批判をいただきまして、なお今後改正いたしたいという方向に向つて行きたいと思います。
  127. 三宅則義

    ○三宅(則)委員 今の国税庁長官お話に私も賛成です。ぜひ近いうちにそうしたようなわかりやすいものを出じていただきたい。また前々国会から申しておることでありますが、そうしたような農業者には農業者にわかるような説明書、商工業者には商工業者にわかるような説明書、こういうことを主張しましたところ、幸い大蔵省並びに国税庁におきましては、その解説書と申しますか、注意書ができたわけでありまして、これはたいへんに進歩いたしたものであると思いますからして、それのみならず一般の税法についても、今私が申したような趣旨をなるべく二十六年度内に完成するような意味合いにおきまして、あなた方の十の係等を督励いたしまして、早くそういう普及版を発行せられんことを希望いたします。  次に私は税務代理士法の提案者にならなければなりませんから、私どもも十分資料を集めまして、政府に対して協力いたしますから、どうか大蔵省におきましても国税庁におきましても、勇猛果敢にわれわれの意見を取入れられんことを特に希望しておきます。
  128. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は相続税の改正で、生命保険金を特に十万円まで控除する、この規定に関連してお聞きいたしたいと思います。この規定は特に資本蓄積のために、多少公平の原則を欠いてでもやろうということでありますが、しかしまだ私ども疑問に思いますことは、現在の生命保険会社が、はたして相続税法で公平の原則を欠いてまで、こういう規定をつくるまでに資本蓄積に協力し得るかどうかということであります。おととしの年末の考課状を見ますると、全国の生命保険会社の保険料収入が八十五億、それに対して事業費が六十一億、保険料収入の約七割以上を事業費つまり経費としてとつている。積立てになるのはわずかに十七億、そういうようなことで、これは資本蓄積にならぬと思うのであります。それからまた終戦後、いわゆる臨時措置の名のもとに、保険会社によつてはかなり保険契約者にいろいろな意味で迷惑をかけております。それを今度は特にこの法律で生命保険に限つて十万円特別の控除をするということは、私はまだ少し時期が早いのではないか、こういうふうに思うのであります。そういう健全な経営の保険会社ばかりになつたとは私思えぬのでありますが、その点主税局の方で十分お調べになつたかどうか。お調べになつたとすれば、その資料をひとつお願いいたしたいのであります。
  129. 平田敬一郎

    平田政府委員 確かに奥村委員の御指摘になつた点は、最近——最近と申しましてもインフレがとまる前の保険の実態を示しておるところだと思います。しかしその後私どもの情報によりましても、保険の金額も相当ふえておりますし、保険料等も相当増加しておるようでございます。私どもの調べましたところによりますと、二十五年の九月末現在でございますが、生命保険の保険契約金の総額が五千百五十八億三百万円になつております。保険料が二十四年十日から二十五年九月までの一箇年の収入保険料でございますが、それが百六十八億八千三百万円程度になつておりまして、相当増加の傾向にあるようでございます。営業費もおそらくある程度ふえておると思いますが、蓄積された部分は相当増加しておるのではないかというふうに思います。それは何と申しましても、インフレによりまして一番犠牲を受けましたのは、実は保険——それは保険会社というよりも、むしろ保険契約者であつたと思いますが、そのために非常に保険思想がこわれておる。しかし保険の形で資金が蓄積になり、保険によりまして事故等が発生した場合には保険金をもらう。これは私は非常に社会的にも大きいところがあると思うのでありますが、そういういうものの再建をはかることは、何と申しましても重要なことではないかという点を考えまして、今回特に所得税におきましても二千円の控除を認め、相続税におきしても各相続人ごとに十万円まで非課税にする、こういう措置をとつたのでありまして、私はこの措置によりまして、保険の形による資本金の蓄積が相当ふえると同時に、保険による社会福祉の増進ということも期し得るのじやないか。そういう点から考えますと、率直に申しましてこの措置相当いい措置じやないか。何人も入ればこの恩典に浴し得ますので、実質的には相続税の基礎控除をある程度上げたのと同様になります。所得税におきましても、すでに二千円以上の払込み保険に入つている場合は、基礎控除を上げたのと同じになりまして、負担の点から行きましてもそう大きく公正の原則には反しない。むしろ保険の増加ができますれば、その効果の方がきわめて大きいじやないか。このような意味におきまして提案いたした次第であります。
  130. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私はただいまの保険会社の経営内容などについては、非常に健全な保険会社とありますが、中には非常に悪いところもある。ところが今度の相続税法改正を盛んに宣伝してまわつて保険の勧誘をする。その間に不健全な保険会社がこれに介在して来たらたいへんだ。それでどの程度主税局の方で保険会社の内容をお調べになつたかということをお尋ねしておるのでありますが、その具体的な御質問は資料をいただいてからにしたいと思います。  それから第二番目に、大して公平の原則を害しておらぬ、こういうお言葉でありますが、これもまたお受取りすることはできぬと思う。この相続税法は、申すまでもなく相続人に相続税をかけるのである。それで相続人ごとに保険金として十万円ずつ控除されるというわけです。そういたしますと、かりに甲という人が配偶者と子供を五人持つているとすれば、六十万円というものは保険金の名のもとに控除になるということになつて、これは非常に公平の原則を欠くのではないか、こういうように思う。同じように六十万円の山林を持つている人は、どういうぐあいにして相続することができるか。とうてい保険に加入するような有利な控除を受けることができないということになりますと、かねて長い間の懸案である山林に対する相続あるいは山林の譲渡所得税、これは何とかしてやらなければならぬということから考えますと、私は多少生命保険の控除を考えられるなら、せめて山林の方をもつと先に方法を考えていただいたらどうかと思うので、特にこのことをお尋ねするのであります。そこで、こまかいことでありますが、第三條第一項の一、保険金の合計額の十万円ということになつておるのでありますが、これは被相続人の合計額の十万円ということになるのでありますか。相続人の受取つた保険金の合計額十万円ということになるのか。相続人の受取つた合計額十万円ということになれば、被相続人が何人もできる、あるいは保険でいえば、被保険者が何人もできる。それを一生通じて受取つた保険金の合計額十万円、こういうことになりますか、この点をお伺いいたします。
  131. 平田敬一郎

    平田政府委員 新しい相続税法は、奥村さんもよく御存じのように、相続人つまり財産をもらつた人ごとに課税するという原則にいたしております。基礎控除十五万円でありますが、相続人がたとえば五人おりますと、平等に分割した場合を考えますと、十五万円の五倍の七十五万円までは、実は相続税はかからないという結果になるのです。それが昨年の相続税法改正のうちの一番大きな点であつたと私どもは思いました。基礎控除改正前が五万円でございました。それを十五万円に上げたのでございますけれども、相続人の多い場合は、もつと基礎控除を上げて行くということを繰返し御説明申し上げたのでありますが、これは新しい相続税法の特色と称すべきものでございます。従いまして保険の場合におきましても、特別の控除は同様に考えておるわけでありまして、相続人ごとに十万円ということでございます。従つてこれは相当大きな恩典じやないかとおつしやいますが、それは私ども相当な恩典であるということは感じております。ただ今申しましたように、あくまでも保険はだれでも入り得るし、入ればそのチヤンスにあずかり得る。しかも額が非常に多額な保険のものはいたしませんで、下の方の保険を非課税にするということにいたして、十万円ずつに限つておりますから、非常に大きな金持の人が保険の形で非課税になろうと思いましても、それはおのずから限界がついて来て、それほど不公平にはならない、こういう意味合いにおきまして、私はこういう控除の制度は公平の原則にもそれほど反しないということを申し上げたのであります。それに関連して、それならばほかの方ももつと考えたらどうか、こういう御意見かと思います。これはそれぞれ理由があります場合におきましては、私ども考えてもいいと思うのでありますが、ただ山林という場合におきまして、特別に控除することがいいかどうか。それはすぐ簡単にはなかなか結論が出ないのではあるまいか。農地の場合もございますし、それから中小の工場の場合におきましても、相続の機会に工場を分割しなければならぬといつたような場合も、あるいは出て来るかもしれませんし、これは全体の問題でございまして、それは一にかかつて相続税の控除の税率がはたしていいかどうか、そういう問題として検討すべき問題ではあるまいか、かように考えます。それからもう一つ、山林の場合は譲渡所得税の問題があるわけで、これはちよつと山林が長期にわたつて所得を見ます関係上、少し問題があろうかと思います。ことにこの前の財産税の課税の際においても、山林の評価がなかなかむずかしいので、なるべく高い評価にならないようにという配慮を加えました結果、財産税の評価額というものは、実際上少し低くなつております。その結果再評価いたしましても、相当な譲渡所得税が出て来る場合があるのでございます。この山林の評価につきましては、現実に処分しないで処分をしたと同じようにして課税する場合の評価につきましては、もちろん適正を期さなくてはなりませんが、やはりそう無理は来さないような措置をするということに、結局においてならざるを得ませんし、また最近におきましても、そのような実物に関する評価は原則を立てることにいたしておりますので、その辺で結局極力実情に即するようなことをやりますれば、そう山林に対してだけ酷だということにはならないのではあるまいかと考えております。物納の制度もございますし、いろいろ問題もございますが、今山林についていろいろ希望はありましたけれども、特に特例を設けるというところまでまだ実は研究が積んでおりません。しかし山林の問題は複雑な事情もあるようでございますから、よく研究してみたいと思つておりますが、簡単に山林について特例を認めることは、なかなか問題が多くあるようでございますから、その点も御了承願いたいと思います。
  132. 奧村又十郎

    ○奧村委員 保険金の合計額というのは、一生を通じて相続人の受取つた保険金額の合計額か。あるいは同一被保険者から受取つた合計額かどちらか。
  133. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の点は條文によりますと、十二條の第一項に「第三條第一項第一号に掲げる保険金の合計額のうち」こう書いておりますが、第三條第一項第一号に掲げる保険金、このままの規定からいたしまして、同一人について受取つた保険金であります。
  134. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そういたしますと被保険者が死亡した。その被保険者の保険金の合計額である。そうするとたとえば保険金の受取人の立場で言いますと、父親から十万円の保険金をもらう。母親からも十万円の保険金をもらう。あるいはおじからも十万円の保険金をもらう。それが十万円ずつ全部控除になるのかどうか。その点をお伺いします。
  135. 平田敬一郎

    平田政府委員 第三條第一号で「被相続人の死亡に因り相続人その他の者が生合保険契約の保険金を取得した場合においては」その場合に適用するのでございますから、それはもちろん被相続人が違いますれば、違つたことに十万円ということに相なると思います。
  136. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そうすれば、これは当然法文の解釈からいつて、相続人の立場で行きますと、父親からも母親からも、あるいはじいさんからも、一生を通じて保険金としての相続は、これは何人からも受けて、何十万円もある。それを被保険者から一人に十万円ずつ控除されるということになるわけです。そうすると、これはたいへんな公平の原則を害するということに私はなつて来ると思う。しかしこれは法文上の解釈になりますから、議論にわたる点はまた追つて別の機会にいたしたいと思います。  そこで三万円の少額控除があります。かりに甲なる者が自分の配偶者及び子供五人おりますと、六人に対して毎年三万円までずつを少額贈与いたします。そしてこれには相続税はかからぬ、こういうことに持つて行こう。この場合に一番手軽く考えられるのは、保険に入ることです。保険に入つてその保険料をやる、つまり贈与する。その形式で行けば一番いい。これはだれしも考えつくと思うのであります。そこで被保険者を本人にしまして、そして保険金の支払人をその子供にいたしまして、その保険料金はつまり贈与の形で子供へやる。こういうふうにいたしますれば、その保険料の支払いは、その子供の名義で支払つたということに認められるかどうか。この点をお伺いします。
  137. 平田敬一郎

    平田政府委員 今の名義というお話でございますが、実質子供が保険契約者になつて、その子供が払う保険料を、おやじさんから現実に贈与でもらつておる、こういう場合は、もちろんその贈与に対しましては、年額三万円以下でございますと課税いたしません。ここに相続人の相続が開始した場合に、相続人の保険金に対して課税いたしますのは、その保険契約に対して被相続人が負担した保険料に対応する分であります。その場合におきまして、この保険金の課税をいたすわけでございます。それについて同時に十万円の控除が認められる、こういう関係に相なるかと思います。
  138. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの御答弁によりますと、三万円までの金なら現金で子供へ贈与して、その受取つた子供がそれを保険料として払うならば、これは子供が保険契約者になり保険料の支払人になる。この場合はそれで保険金を受取つても、これは相続にはならなぬ、こういうことになるわけなのですか、その通りですか。
  139. 平田敬一郎

    平田政府委員 保険金を生存中に子供が受取りますと、これはもちろんその子供所得になりまして、保険金としてもらつた金額から保険料として払い込みました金額を差引いた残りが、雑所得として課税になるということになると思います。
  140. 奧村又十郎

    ○奧村委員 これは所得税の方であつて、相続税としてはかからぬ、こういうことがはつきりいたしました。そういたしますと、そういうつまり三万円までの少額控除の面からいたしまして、それぞれすでにもう保険に加入して、それだけの金は相続ということでなしに贈与することができる。そういう道があるにもかかわらず、また別に十万円の控除を認める。もちろん子供については所得税はかかる。しかし払つた、つまり保険金を差引いた残りの雑所得だけにかかるのであるからして、これはまた全然別問題だ。そういたしますと、この保険などを利用しての相続税をのがれる方法というのは、私はいろいろあると思う。ところがただいまの局長のお話によると、山林などについては、その相続の場合の評価は、できるだけ何と申しますか、穏便に見て行こう、こういうことを言われるが、これは主税局長の御答弁では言い過ぎではないかと思う。法律をつくる方であれば、これは確かにはつきりと時価ということをお書きになる。時価ということが、何をもつて時価で行くか。これは国税庁長官の方でおやりになる。特に山林ということになると、いろいろな評価の仕方がありましようが、山の出しぐあい、運搬その他すべての條件から行きまして、いろいろ問題があろうと思う。しまする以上は税務当局のやり方によつて、ひどいのもあれば軽いのもある。従つてただいまの主税局長の御答弁は当らないことである。われわれはそういうことは受取れないと思います。そこで相続の場合に、一応譲渡所得税が山林にかかる。それからまた相続税がかかる。この二重に税がかかるのを何とか控除の方法はないか。これは私がずいぶん前からお話をしておることであります。そこで相続税の場合は、ただいまもお話通り、それぞれ十五万円ずつの基礎控除がある。少額控除その他の特別控除がありますが、所得税の場合はこれは相続人一人に対してかかるのでありますから控除は少い。しかも一旦譲渡したものとしての所得税がかかるのでありまするから、おそらく今後山林の所有者が死亡しました場合には、山林を売らぬことには相続という手続はできぬことになる。今後日本の山林はほとんどはげ山になるというので、非常に心配して緑化運動その他植林の運動をやつておるわけであります。これを何とか法律に盛り込むことができないか。先ほど申し上げた生命保険についてはいろいろ方法があるにもかかわらず、なおこの上に今度特別の控除を認める。これと比較すると、私は非常に山林については当局の御考慮が少いと思うのでありますが、どうもこれは議論にわたりますので、なおもう少し私資料を調べた上で、また別の機会に追つてお尋ねいたしたいと思います。
  141. 平田敬一郎

    平田政府委員 少しお答えし過ぎますが、その三万円の少額贈与の控除があるというのは、これは何も保険には限らないのでありまして、年々株でも三万円以内の金額を子供に贈与しておきますれば、これはかからないのでございます。もちろんその場合におきましては、保険料として贈与した部分も、株の名義をかえて株を贈与した部分も、あるいは銀行預金の形で子供の名義で財産を移しておくというのも、全部含めまして三万円になるのでございます。これは何も保険料に限つたことではない。やはり三万円の少額控除、その結果としてさようなことに相なると思うのであります。山林の場合もこまかく分割すれば、従つて同様なことになり得る。ただ山林の場合はわけにくい。農地の場合もわけにくい。それからさつき申しましたように、町工場の場合もわけたらあとなかなかうまく行かぬ、こういう事情がありますので、あるいは保険の形あるいは預金の形あるいは株式の形で贈与し分割するのと比べてはかりにくい、こういう事情が確かにあると思いますが、私それは別に特に保険に限つて有利にしている点ではないと考えます。  それからもう一つは評価の問題ですが、これは私は実際のことを言つておるのであつて税法お話通り時価でございます。時価の評価はなかなかむずかしいのが通例でございまして、相続税の評価の際におきましても、これはどういう評価が現実に行われているか、それを奥村さんよくお調べ願えばわかると思います。そういう点から行きまして、大体そうせざるを得ぬ、そういうふうなことになる実情だということを私は申し上げたのであります。  それからもう一つ譲渡所得税と相続税の問題でございますが、これは譲渡所得税を一応差引きました残りに対しまして、この相続税を課税するということで、税法の理論はやはりはつきり貫いております。たとえば、山林を売つたとたんになくなつた、こういうような場合と、山林を持つておりましてなくなつて相続を開始した、こういう場合と課税上差をつける理由に乏しいのではないかということで、かような制度にいたしておるわけでございまするが、実際の問題としてなかなか負担に耐え切れぬ。結局ある程度物納しなければ納まらぬだろうと思う。これは相続税全般としまして、相当高率な課税をいたすことにしております結果として、場合によりましてはそういうことになつて来ざるを得ない。しかしそれほどまとまつた山林の所有者でなくて、中位の所有者でありますと、年賦延納その他の方法で納め得る場合もあるだろうと思います。しかし相当多額の所有者でありますと、相続税の税率は五千万円を越えますと九〇%になつて参りますから、これはどうしても物納によらなければ納まらぬだろう、そういうところだろうと思います。しかしその場合問題はひとり山林に限りません。あるいは相続税につきましてこういう高率課税がいいかどうか、これはいろいろ問題があると思います。しかしこれは昨年実行したばかりでございますから、もう少し実施の状況等を顧みまして、将来は研究してみたいと思います。
  142. 宮幡靖

    宮幡委員 関連質問です。たまたま相続税の問題に及びましたので、この際省の方針をただ一言確かめておきたいと思いますが、現行相続税法は、御承知のように昨年であつたと思いますが、始まつたのでありますが、一体相続税法の、とると言いますか、課税すると申しますか、その根本理念は時代によつて相当変遷して参つたのであります。最初相続税が戦時の補完税として設けらいたのは、たしか日露戦争のときであつたとただいま記憶しておりますが、そのときには課税の方針はいわゆる恩情主義と申しますか、おおむね人生最大の不幸、当時家の制度がありまして、家督相続人の死亡、家督者の死亡、戸主の死亡、親の死亡、こういうことが中心になりまして、家の最大不幸のときに課税する税でありますので、わかりやすい言葉で申せば、きわめて恩情をもつて、できるだけ負担を軽くしてやるような方向に考えた方がよいではないか、こういうような意味で立法されておつたと思います。当時の国会の記録等を読みましても、さように拝承できるわけです。その後時世がかわりまして、金持の子供が財産家になり、不動産をたくさん持つておるものの子供が大地主になるということは、これは労せずして宝の山に入るようなものであり、いわば不労所得のようなものである。ちようど賭博に類似して、えてして偶然に利益を得る、こういうことになりますから、こういう点からできるだけ高率の税をとる、これが正しい、こういうような理論が生れて来たように考えておりますが、現在の相続税法を中心とし、また将来に考えて行きます相続税の課税の方針というものは、ただいま申し述べました恩情主義と申すものか、あるいは偶然主義というものか、いずれに傾いておるのか、あるいはその半ばを行くものであるか、どういう方針でおやりになるのか、この理念と申しますか、課税理念をひとつお示しいただきますならば、相続税の評価とかあるいは課税の程度がどういうふうになつたら安くなるか、どういうふうになつたら高くなるかということの考え方が、おおむね了解できるのではないかと思いますが、この点について将来の変更は別として、お話をいただければけつこうでありますが、お教えを願いたいと思います。
  143. 平田敬一郎

    平田政府委員 課税の実際の運用ということになりますと、これは私は実情に即しまして公平を期するということに盡きると思いますが、評価がなかなかむずかしい点もございますので、むずかしい場合におきましては、できるだけ実際に即しまして、妥当な結論が出るように努力する。その結果山林の評価等非常に困難で、ややもすると実際より高くなりがちのような場合におきしては、あまり無理をしないというようなことに自然になるのが、結論じやなかろうかということを申し上げたのであります。しかしこれはあくまでも実際に即しまして、公平をはかるということで考えるべきものじやないか。相続税の全体の制度の問題として考えますと、新しい相続税法相当進歩的と申しますか、相当進んだ税法一つでございまして、ある意味におきまして進歩的あるいそれが今の日本の経済の実情に即するか、即しないか問題があると思いますが、すべて所得税の方におきましては、あまり高率課税はしない、最高税率も五五、市町村民税を入れまして大五くらいになるのでありますが、この税率は実は世界のどこの所得税よりも低いのであります。大体文明国の所得税は九〇以上、イギリスは九七・五、アメリカが九一、それからドイツもたしかこの間調べてみましたら、九五の最高税率を所得税で課税しておるようであります。しかし所得税であまり高く課税するのは、いろいろな意味において妥当じやない。一つ所得の正確な申告と把握に阻害がある。それからいま一つは正しい働きをしたり、相当正しいもうけをした場合におきまして、根こそぎ税を納めていただくのは、勤労意欲なり事業意欲の妨げになる。そこでこれはある程度にとどめておきまして、極力財産の蓄積をはかつてもらう。その反面ある個人が財産を蓄積しまして死亡した際におきましては、これは相当高い財産課税を行いまして、それで必要な公平をはかつて行こう、こういう趣旨に実はできておるのであります。それと同時にその財産を相当多数の人に分割した場合におきましては、これは相続税の負担は軽くなる。富がある一人の人に相当まとまつて、代々引続いてたくさん蓄積されるというのは、どうもいかがであろうかという点は、確かに相続税の中に入つているようでございまして、従つて同じ一億円の財産でありましても、それを五人に二千万円ずつ相続いたしました場合と、それからそれを一人の人が相続した場合には、負担が大分違うのでございまして、なおなくなりましたときに公益事業等に寄付いたしました場合には、その部分に対しては相続税はかからない、こういうようなことにいたしておるのでございまして、昨年つくりました相続税は世界の直接税の立法例といたしましても、ある意味において相当進んでおる。ある意味においては実情に即しないという非難も受けるかもしれませんが、そういうようになつておりますことを御説明申し上げておきたいと思います。なおしかしこの点は、相続税というものについては、私はあまり根本はたびたびかえぬ方がいいのじやないか、実情に即してもやはり実情に即しないということでありますれば、またそういう際におきまして実情に即するように改正するということにつきましては、研究を怠るべきではない、かように今のところ考えておる次第であります。
  144. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 この際御報告しておきます。明十七日の公聴会における公述人選定の件についてでありますが、理事会におきまして次の七名を公述人に選定いたしましたので、御了承願います。なお明日の公聴会は、午前十時より開会の予定でありますので、委員諸君の御出席をお願いいたします。  学識経験者一橋大学教授井藤半彌君、東大経済学部助教授武田隆夫君、京橋税務署長中村末藏君、十條製紙常務取締役金子佐一郎君、大阪銀行副社長堀田庄三君、全日本中小工業協議会副委員長中島英信君、総同盟法律対策部長前田正次君、以上七名であります。  本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時十分散会