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1951-06-02 第10回国会 衆議院 水産委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年六月二日(土曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 冨永格五郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 二階堂 進君    理事 松田 鐵藏君 理事 林  好次君    理事 上林與市郎君    石原 圓吉君       小高 熹郎君    川村善八郎君       田口長治郎君    田渕 光一君       永田  節君    小松 勇次君       水野彦治郎君    井之口政雄君  出席政府委員         水産庁長官   藤田  巖君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整第一課         長)      高橋 泰彦君         農林中央金庫理         事長      湯河 元威君         專  門  員 杉浦 保吉君         專  門  員 徳久 三種君 五月三十一日  委員川端佳夫辞任につき、その補欠として高  田弥市君が議長指名委員選任された。 六月一日  委員高田弥市辞任につき、その補欠として川  端佳夫君が議長指名委員選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員及び小委員長補欠選任  閉会中の審査小委員及び小委員長選任に関する  件  水産金融に関する件  漁業経営安定に関する件  小委員長より報告聴取     —————————————
  2. 冨永格五郎

    冨永委員長 これより水産委員会を開きます。  去る五月三十一日川端佳夫君が委員辞任され、昨一日再び同君が委員選任されました。この移動によりまして、漁業制度漁業経営安定、水産金融水産資源及び沿岸漁業基本的復興対策に関する各小委員、並びに漁業制度に関する小委員長がそれぞれ欠員となつておりますので、この際その補欠選任を行いたいと思いますが、選任方法につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 冨永格五郎

    冨永委員長 御異議なしと認め、川端佳夫君を従前通りの各小委員並びに小委員長に御指名いたします。     —————————————
  4. 冨永格五郎

    冨永委員長 これより水産金融に関する件を議題といたします。  この場合委員各位にお知らせ申し上げます。本日は農林中金理事長湯河元威君、水産庁長官藤田厳君が出席せられております。質問の通告があります。これを許します。松田委員
  5. 松田鐵藏

    松田委員 水産長官湯河理事長質問をしたいのであります。実は小部分にわたる問題でありますが、北海道オホーツク海区における本年度のにしんは、皆無の状態でありまして、零細漁民はまことに困つておるのであります。ところが年々漁場の開拓から、夏場のすけそうがオホーツク海区の主要な魚族になりまして、幸いにして本年は非常な豊漁に恵まれておるような状態なのであります。実は例年におきましても、すけそうの塩蔵開きたらをやつて、そして海外に輸出せんという試みを、一昨年あたりからやつてつたのであります。それからまた例年は、このすけそうをちくわに製造しておつたのが主でありました。ところが本年は、ちくわが非常な暴落をしております。この原因というものは、六大都市における冷蔵庫のスペースが皆無でありまして、中央に持つて来て保管をしておくというようなこともでき得ないのであります。しかも鮮魚として出しました場合においては、今日の市場価格というものは、十貫目二百五十円から三百円程度価格に投売りされておるような状態になつておるのであります。運賃諸掛というものが、十貫目に対して百五十円くらいかかります。こうしたことになつて、ほとんど漁業者も困つておるような状態であつて経営困難の状態であります。しかも先ほど申したように、にしんが一匹もとれないというような現状におきまして、何とか零細漁民が一致団結いたしまして、この大量にとれるすけそうを塩蔵開きだらとし、俗に言うぶわとして冷蔵庫乾燥のできるときまでこれを保管しておきたいという希望を持つており、またそうすることによつて、初めて零細漁民の人々が、委託加工なりまた工賃なり、そうした方法によつて生活ができ得るような状態になるのでありまして、これはオホーツク海区一円の問題であるのであります。そこで昨年もこうした問題を取上げておりましたが、その基本政策がわれわれの不熱心のために逐に今日まで実現しておらないのでありますが、ここに農林中金及び水産庁で、どうかこうした問題を零細漁民救済ということから、仕事を与えるということから、また魚価維持対策の面から行きましても、まじめな営業をさせるためにおいても御考慮を払つていただいて、秋になつて乾燥のできる、または市場において市価が生産者の引合う程度になるまでの間の、一時の金融方法を御考慮願えないかという考え方を持つものでありまして、簡単でありまするが、かような意味合いから、水産庁及び農林中金においても、もしそうした救済方法が講ぜられる道があつたならば、御意見を承りたいと存ずるものであります。
  6. 藤田巖

    藤田政府委員 実は私まだ係りの方から詳しい話は承知しておらないのでございますが、やはり現在何と申しましても魚価維持と申しますか、できるだけ経営の安定のための施策をして行かなければならぬと考えております。従いましてこういう問題は、直接これを水産庁なりあるいは農林中金というふうなお話もございますが、私どもといたしましては、まずできるだけ段階的には、まず道庁でよく考えていただき、なおあるいは信連なり北拓等考えでできるかどうかということもよくやつていただく。なおそれについて、どうしてもできないというふうな場合に、初めて中央においてこれを何とかしようというふうな段取りで考えたいと思つておるわけであります。なお具体的な問題は、また詳細お伺いをいたしまして、できる限りのことはいたして行きたいと思つております。
  7. 湯河元威

    湯河説明員 ただいま松田さんから、北海道のすけそうの冷蔵について金融の問題の御質問がございました。御事情をだんだん承つておりますと、北海道にしん凶漁の影響ないしは消費地事情等のために、北海道漁村方々が非常にお苦しみになつていらつしやる御様子でございます。これは大事な問題だと思います。これは毎年のことかとも思いますが、特に今年は、ただいまのお話のような事情で差追つておるようであります。農林中央金庫水産業協同組合のお世話をしておりますが、北海道の方には実は相当重荷になるくらいなお仕事もさせていただいております。この問題は実は今までまだぶつかつておりませんので、よく研究いたしまして、何とか処置ができますならばぜひお役に立ちたい、かように考えております。ただ申し上げておきたいことは、乾燥の時期までというお話でありますが、農林中金はこれから秋口までが金に詰まつておるときでありますので、もう手一ぱいになつておる。この事態におきまして、この操作をいかにするかというようなことは、ちよつと難物でございます。しかし金がないというだけでお困りになつていらつしやるのをそのまま見過すということも私どもの意ではございません。何とかくふうをいたしまして、できますことならばお役に立ちたいと思つております。ただいま水産庁長官お話のございましたように、北海道金融機関等においていろいろ処置をとつていただくことも当然でございます。われわれとしても、その背後におきましてできるだけのくふうをこらしてみたい、かように考えております。
  8. 川村善八郎

    川村委員 私は中金湯河理事長に、漁業制度改革に件う漁業権証券資金化並びにその他漁業資金等の問題について、一応御所信を承りたいと存ずるのであります。  漁業制度改革は、御承知の通り世界でもまだやつたことのない、日本で初めての画期的な大事業であることは、申し上げるまでもないのであります。漁業民主化漁業生産力発展並びに漁業者の利益の均霑、かようなことを目標といたしまして漁業制度改革をすることに相なりまして、現在実施の途上にあるのであります。この制度改革につきましては、われわれは全面的にこれを支持し、推進をしなければならぬことは万々承知しておりますけれども、この漁業制度改革の完遂を期しまするには、何と申しましてもこれを裏づけする財政資金並びにその他漁業経営等資金がなければ、せつかくこの制度改革をやろうといたしましても、絵に描いたぼたもちのように、食べることもできなければ味あうこともできない。われわれも当初から心配をして、それぞれ手を盡して参つたのであります。水産庁におきましても、当初水産銀行をつくるとか、漁業金融金庫をつくるとか、あるいは漁業特別会計をつくるとかいうことで、いろいろ心配をして参つたのでありますけれども、今日その実現は一つもできないために、各漁村では漁業制度改革を中心といたしまして、いかになるかということについて相当心配もし、本委員会等におきましても、それぞれわれわれがその漁民心配を、何とか実現化いたしまして解消してやろうという努力を続けておるのであります。しかし今日に至りましては、もはや水産庁案というものでは、先ほど申されましたような事情では、とうてい資金化が不可能であるということがはつきりしたのであります。しかしながら何といたしましても漁業法を制定し、漁業制度改革昭和二十七年四月一日から完全にこれを実施して行かなければならぬので、できるだけ早く資金化して、漁業制度改革を軌道に乗せて行かなければならない。われわれもその責任があるのであります。そこでわれわれといたしましては、万全を毒して今日までやつて参つたのでありまするし、水産庁もあらゆる手段を講じましてその獲得に邁進したのでありますけれども、大体今の見通しでは、漁業制度改革ということははつきりうたつてはおりませんけれども農林漁業資金融通特別会計におきまして、若干の設備資金等の出ることが明らかになつたのでありますし、さらにもう一段と関係方面並びに大蔵省その他関係官庁と折衝しますというと、これも若干ではありますけれども漁業制度改革という点からばかりでなく、今後の漁業生産のために施設をしなければならぬ、魚価対策等もしなければならぬということから、資金の出ることがわかつたのであります。しかしそれだけの資金ではとうてい漁業制度改革推進されるとは考えられないのであります。そこで大蔵当局に本委員会漁業権証券資金化についていろいろただしましたところが、この資金化については十分考えておると言うが、その考え方であります。われわれの方では、もし買上げ償還が過分にできないとするならば、漁業権証券担保にして、しかも金利等も、国債についております率とあまり差のないように貸し付ける方法考えてもらわなければならぬということで一語もしさらにわれわれが本委員会質問したのでありますけれども、これについても確たる答弁が得られなかつた。従つてわれわれ委員会としても、大蔵大臣並びに銀行局長等個々に折衝して、何とか獲得しなければならぬというようなことでいろいろ運動を進めた結果、結論においては、中金が少しく今までの考えを譲歩してくれるならば、その見通しがあるというふうなことが明らかとなつたのであります。すなわち漁業権証券買上げは、今年大体二十億から二十五億であるけれども、できるだけ早く償還をしたい。当初は二十五年償還というような計画を立てておりましたけれども最大限度五箇年くらいに償還をしたい。従つてその償還すべきところの漁業権証券を財源に、市中銀行なりあるいは中金等担保に入れて金を借りることも、漁業制度改革資金の一端になるのではなかろうか、こういうことも言つております。そこで私たちは、かような方法がやむを得ないといたしましても、先ほど申しましたように、漁業権証券についております利率は年五分五厘であるが、市中銀行なりその他中金から借入れをする場合においては、年一割なり一割二分なりというように金利が高くなる。そうしますと、結局売つた場合と金を借りた場合、すなわち漁業権証券銀行等売つた場合と、それから銀行から漁業権証券担保にして金を借りた場合とでは、かえつて借りた方が不利になる場合もないとは限らない。これではせつかくの漁業制度改革に伴うところの資金を、完全に漁民の要望するだけ安い金利で何とか政府心配してもらおうというような考えも、まつたく踏みにじられてしまうことになるということから、この際あなたにこの委員会においでを願つて、腹蔵ない意見を聞こうじやないか、かようになつた次第であります。漏れ承るところによりますと、中金といたしましては、漁業権証券資金化してもやるが、さらに旧債も何とか措置しなければならないと考えているというようなことを聞いております。そこで漁民は、この旧債ももちろん払わなければならぬ義務がありますけれども、現在の漁民窮状では、漁業権証券が引渡された場合に、旧債に全部とられてしまうというと、これまた漁業制度改革ができない。つまり旧債漁業制度改革の中に狭まれて、まつたく動きがとれないというような実態に追い込まれるのであります。そこで私たちは、できるだけ漁業制度改革推進いたしまして、漁業生産力発展をはかつて漁民の福祉をまずもつてはかろうじやないかというような趣旨から、私が端的に中金理事長湯河さんに訴えたいことは、まず旧債漁業生産の拡充をはかつてその中からとつていただくようにし、もしそれができないとしても、最後の漁業権証券償還の場合にこれをとつていただきたいということであります。さらに金利の点におきましては、政府でもそれぞれ中金等に手を打つとは言つておりますが、でき得るだけ安くしてもらいたい、はなはだ虫のいい話ではありまするけれども、かくしなければ、かりに額面百円の漁業権証券を八十円に売つた場合と、さらに今日銀行等から借り入れいたしまして、一割二分なり一割四分なりの金利をとられますと、年に一割くらいの差が出て参ります。そうすると、三年借りておると三割とられる。百円が七十円よりならないということになりますと、自然漁民銀行その他、いわゆるブローカー的存在にどんどん安く売つて資金化して行くというようなことになり、漁業制度改革に使われないで、かえつて一般の生活費等に使われて行く。われわれの方ではこれをしようちゆうにすると言つておりますが、漁業方面へは少しも使わないで、やはり飲み食いに使われてしまうのではないかという心配もありますので、これを何とか押えなければならぬのでありますから、漁業系統団体であります中金に、この際われわれ漁民窮状を訴え、そうして漁業制度改革もにらみ合せ、推進するための資金について、特段の御配慮を願いたいという考えで、お伺いしているようなわけであります。もちろん湯河さんには、農林省官房長であります鹽見さんからそれぞれお話もあつたことと思いますけれども、私の話しているところと、鹽見さんのお話とは同一ではなかろうか、かように考えておりますので、一応これに対して中金理事長湯河さんより、理事長であるという立場において、漁民を救い、さらに漁業制度改革推進を背負つてつてもらいたいというようなわがままな考えで、むしろ質問というよりお願いでありますが、はつきりこの際お考えを御発表願えれば幸いと存ずる次第であります。
  9. 湯河元威

    湯河説明員 ただいま川村委員から、漁業権証券資金化につきましてお尋ねがございましたが、農林中央金庫におきましては、この問題は非常に大切な問題だと思つて考えておりますし、また農林省からもときどき御指示をいただいて、御相談にも乗つておりますので、まことに恐れ入りますが、いい機会を与えていただいたと存じますから、ただいまの御質問にだけお答えするのではなく、この問題についての、われわれの考えでおりますことを申し上げさせていただきたいと思うのであります。  実はただいま川村委員仰せのごとくに、漁業権証券資金化の問題は、漁業権改革を完成する上におきまして、実に大事なバネになつておるということをよく承知いたしております。それでこの漁業権証券を、何とかして漁業権改革趣旨に合致するように資金化するためにと思いまして、従来水産銀行であるとか、あるいは水産金融公庫であるとか、特別会計であるとかいろいろな御案がありましたときにも、それぞれ意見を申し上げておるのでございます。私たち考えといたしましては、政府において、やはりこれを買上げ償還でございますか、そういう道をおとりになるというお話を伺いましたときに、それはけつこうではないか、むしろそうしていただいて、財政の方で御都合のつく限り漁業権証券を完全な金額において資金化するということがいいのではないか。私個人の考えといたしましては、そのときにただ資金化するということだけで、その資金をどう組合の方がお使いになるかということがはつきりさせられないと困るなということは考えております。そういう場合におきましては、むしろ担保にして貸して行くという方がいいのではないか。貸せば必ず償還ということがおつかけて参りますから、渡つた金漁業権改革趣旨に合致するごとくにお使いになつていらつしやるかどうかということをあとづけすることができる。しかし買上げ償還をするとあとづけができないのではないかということの懸念もありましたけれども、そこは漁業権改革を遡行していらつしやつて漁業生産力を高めて行くということについては、行政の裏打もあるわけでございますので、行政の方でそういうふうに十分御指導なり御督励があれば、すぐ漁業権証券を現金化して、貸付のごとく償還というふうなあとづけをしないでも、漁業権改革の御趣旨は通るであろうというふうに存じまして、買上げの御処置は適当であろう、かように存じておるのでございます。しかしそれとともに、漁業権証券個々組合に交付いたします際に、その組合漁業権改革趣旨に即応いたしまして、協同化等設備をなさいます際に、必要とする額と漁業権証券の額との食い違いがございます。場合によつては余るところもございましようし、足りないところもございましよう。ぜひ必要な協同化設備等をなさいますときに、漁業権証券買上げわくが不十分にして、残念ながら御希望通りに参らないところにつきましては、漁業権証券担保として融資が行われるということが必要であろう。その場合におきましては、協同化のために必要なる施設等資金は、これはどうしても中期、長期の資金を必要とされるのでありましようから、この面につきましては、普通の金融条件では不都合である。どうしてもただいま実施になつておりまする農林漁業資金融通制度、あの程度くらいな、またあの中に盛られております御趣旨資金が供給される必要があるのではないか。そういう買上げ担保貸付の両者があつて、そうして相当金額がここに準備され、それによつて漁業権証券資金化して行きまするならば、相当のところまで行くであろう、かように私たち考えてみたのでございます。しかしそういたしましても、そういうふうな措置はいずれも財政の裏づけがないのでございますから、今日の国情からいたしまして、それではたして全部の漁業権証券資金化ができるとも思いません。そうすると、そのわくから漏れましたものにつきましては、これは先ほど川村委員仰せのごとく、あるいはどうにもならぬということからいたしまして、漁業権証券が値下りをするということになつたり、あるいは好ましからざる条件においてそれが担保に入つて、それが担保流れなつたり、そしてまた相当高金利を御負担になるということになつたら、これはまたおもしろくない。かように考えまして、買上げ償還の問題あるいは担保貸付の問題、いずれも財政資金を背景としておりますこれらの御措置のほか、に、なお漁業権証舞政府の方でも発行条件等相当配慮もあることでありますので、それが市場において不当にたたかれることのないような価値維持をする。価値維持ができておりますれば、それは必要に応じて売却されても、またそれを担保に入れても、そのときの値合いは漁民の方に御都合がよかろう。かように考えまして、買上げ償還の問題と担保貸付の問題と、それからそのあとに残つた価値維持の問題、かような御施策があるといいというようにわれわれは存じておるわけでございます。  それで買上げ償還の問題につきましては、これは政府財政の御都合国債償還基金特別会計の問題、あるいはこれを御実施になりますには日本銀行にあらず、資金運用部をお通しになるのではないかと思いますが、これにつきましては漁業権証券資金化なさるわくがとにかく制限されておるといたしますれば、どうしても重点的に、ぜひとも漁業権証券資金化して、協同化を実現することが絶対に必要なところからそれをして行くということも必要でございましよう。かような意味をもちまして、政府としてそういうことをなさるこつきましては、たれのものでも買つていいのだということをなさらぬ方がよかろう、かようにも思つてつたのでございます。そこでこの買上げ償還の問題につきましても、われわれは水産業協同組合のお仲間でございますので、もしおさしつかえがなければ、われわれの方でそのお仕事のお手助けをしたらばどうかというふうに、実はわれわれの方からも申し出ておるのでございます。その意味は、あらぬ金融機関あるいは証券業者等がこれに参加いたしまして、いたずらなる甘言をもつて漁村方々に何かその間に不都合なことでもあつてはいけないのではないか、むしろわれわれの方はこの漁業権改革ないしは水産業協同組合がよくおなりになるように、日ごろ心がけておるものでございますし、われわれの方でお預かりするときには、少くとも漁業権改革趣旨をよく理解し、ないしは政府資金化なさろうとする御意図も十分理解しておるつもりであるからというふうに申し上げておるのでございます。そういうふうにして、われわれの方でもしもこのお仕事に全部であるか一部であるか、関係いたすといたしますれば、どこから漁業権証券買上げ償還をすべきであるかということにつきましては、やはり漁業権改革を遂行して行かれる計画に基きましてやる、その御指示を受けて、その通りわれわれの方としてはやつて参りたいという考えを持つておるのでございまして、おまかせいただいたといたしましても、中金がかつてにやるという意図は毛頭ないのでございます。従いまして御要請が各漁村から参りましても、それを中金は独自に左右することなく、漁業権改革を遂行する責任者であられる政府の御意図通り、その計画に載つたものを買上げ償還をして行くお仕事に加わりたい、かような考えを持つておるわけであります。  それからもう一つ担保貸付の問題でございますが、ただいまの農林漁業資金融通特別会計は六十億で発足しております。これは将来当然拡張さるべきもので、あるいは担保貸付の問題は、この拡張した資金の中で実現した方がいいと思いますが、この場合におきましても、やはり従来の建前からいたしまして、農林中央金庫は大部分のものについてのお扱いをすることになつております。それでわれわれといたしましては、担保貸付の問題につきましても、ただいま買上げ償還につきまして御説明を申し上げました通り農林中央金庫の独自の見地で、気に入つたところにやるというつもりは毛頭ございませんので、漁業政策上必要なる、それに合致したものが融資貸付のお申出がありますときに、はたしてお貸しして御償還ができるかどうか、政府に御迷惑の起ることがないかどうかということを、金融機関の専門的な判断において検討して、そしてお手伝いをするというつもりでありまして、何にお貸ししたらいいか、どこにお貸ししたらいいかということにつきましては、これは政策上の問題である、そして金融機関は、その中において金融ベースに載らないものは、いかに政策に合致しておつてもやめた方がいいでしようということを申し上げるというつもりで、このお仕事に参加しようとして、今すでに参加しておるのであります。さような意味をもちまして、買上げ償還も、担保貸付の問題も、農林中央金庫が独自に積極的にやるというものはございません。御委託の御趣旨を尊重いたしまして、金融機関金融機関の立場において、もしも御注意を申し上げることがあれば御注意をして行くという態度で臨みたいと思つておるのでございます。従いまして、買上げ償還にしても、担保貸付にしても、そのような意味におきまして、政府の方で御計画ができた上におきましては、農林中央金庫がそれをお扱いいたしましても、先ほど川村委員の御懸念のございました部分につきましては、農林中央金庫旧債を相殺するようなことは全然考えていない次第でございます。この点につきましても、あからさまに申し上げますが、問題のわかりませんときには、あるいはいろいろなことが端摩臆測されるかもしれませず、またわれわれの部内におります者が、不遠慮なことを申したことがあるかもしれません。しかし問題がはつきりして参りまして、ただいま申し上げた、われわれの希望しておりますような姿において問題が与えられるといたしますれば、さような言葉を何かはいたことがございましても、それは全部抹殺されておるわけでございます。政府の方から御委託の条件において、さようなことをしてはならぬということをおつしやることも当然のことだと思います。もしそうでなければ資金化、あるいは担保貸付買上げ償還趣旨が通らない、農林中金が過去の旧債と棒引きするということでは、漁業証券買上げ趣旨が通らぬのであります。これは当然御委託のある場合の本旨にもとるものだと思います。もし政府の方で御指示がございませんでも、農林中央金庫理事長といたしましては、この御委託の趣旨を尊重して、部内にこのことを徹底し、厳重に戒飭する意思を持つておることを申し上げておきます。  それからこれでどれだけのことができますか、これは財政上の都合もございましようが、政府の方の財政上の御都合でおできになります範囲のことから考えますればこういうことでありますが、その以外において漁業権証券価値維持のために必要な措置があるのではないか。あるいは漁業権証券を、償還買上げのほかにおいても何ぞ利用して、そうして漁業権改革趣旨に即応するようになさり、ないしは水産業協同組合が将来御自分の生産力を高めて行く、あるいは組合の基礎を堅実ならしめるというふうにお動きになるときに、漁業権証券資金化するということが、財政上に盛られてあるもののほかに御必要があると思います。それにつきましては、せつかく漁業権改革をかようにやつて行こうという国の御方針でございますので、われわれ金融機関といたしましては、当然それに即応することをやりたいと考えております。われわれの方といたしましては、そういう場合のことをいろいろ考えておりますが、先ほど川村委員仰せのごとくに、とにかく今の金融機関金利というものは、相当漁民としてはつらい金利だと私どもも思うのであります。ことにこれが設備資金に充当されますときは、その感が深いだろうと思います。しかし運転資金にお使いになるときでもやはり御同様ではないだろうかと察せられるのであります。さような意味におきましては、これを金利を払う形において担保に入れて、普通金融機関から普通金融ペースでお借りになるということよりも、むしろ金融機関が買い取つてしまつた方がいいではないかというふうな気もするのであります。しかし担保をとつてお貸しいたしましても、金融機関独力をもつていたしますことは、これはやはり金融機関の力に限りもございますので、農林中央金庫といたしましては、一面に沸いて農林債券の発行もお許しいただいておりますし、また先ほどお話のごとく、農林漁業金融については資金コストをできるだけ下げて、低金利で御融通するのが本旨であると考えておりますので、われわれとしてできるだけ努力いたしまして、ただいま申し上げました価値維持を中心とする財政の裏打ちのないというものにつきましても、漁業権証券資金化に寄与したいという考え方をいたしております。政府の方においてあるいは利子補給であるとか、何ぞその他においての資金的御援助をしていただきますれば、われわれとして問題はより一層進展するかと思うのであります。私どもといたしましては、お話のごとくに低金利であることが必要だということでございますれば、できればいつそ金融機関が、不当に八十円などという値段でなくお買取りできるような仕組みが生れ、漁業権証券を交付価格において資金化できるような道が開かれていいじやないか。それが一番いい。しかしそれで足りない分についての貸付という場合においても、何とか低金利になりますように金融機関としても努力いたしますが、しかしこの限度を越えます分につきましては、国または地方公共団体等からの御援助をいただきまして、せつかく漁業権改革を完成なさるための絶好の機会であると思いますので、金融機関の側からも十分の御協力を申し上げたい、かように考えておる次第でございます。  つけ加えて申し上げておきますが、私はかような意味をもちまして、漁業権改革のための漁業権証券資金化の問題を考えて来たのでございます。農林中央金庫漁業権証券を集中するというふうなことを私は一度も言つたことがございませんが、われわれの部内の者がさようなことを申したことがあるかもしれません。また地方でも世間でもさようなお話がちよつと出たことも伺つておりますが、それは私といたしましては、さような実情はないと考えております。漁業権証券は、何も中央なりあるいは地方の中心となるものが、それをまとめてどうこうするということよりもより、一層末端の漁村において組合の方がそれによつて協同化等設備の充実をおはかりになつて漁業権をお引取りになるときにお役に立てるようになさることだと思う。さような意味をもちまして、農林中央金庫に集中するということは全然ナンセンスだ、意味がないことだというふうに思つておるのでございます。さりながらこの漁業権証券という大事なものが、もしもよく理解されない方等にむざむざとされてしまうということは非常に残念なことだと思つておりますので、私はむしろ集中ではございませんが、分散を防止するということについては、協同組合の系統の方々と御一緒に、そのことについては十分趣旨を徹底して行くべきものというふうに存じております。そういうことを考えて参りますと、漁業権証券を交付するお仕事、このお仕事についてもわれわれはそれに関与した方がいいものというふうに考えております。これは決して先ほど当初に申しました通り中金が従来の旧債と棒引きするためにそういうことを申しておるのではございませんで、協同組合のよき発達のためにわれわれとして御協力申し上げるのに、その趣旨を徹底させ、漁業権証券が分散しないように、あらゆる方向にそれが濫用できませんようにいたしますためには、農林中央金庫がこれに関与した方がいい、かように考えておるのでございます。私の方で扱いますつもりといたしましては、お渡しするときに、一々これは大事なものだから分散をなさらないようにといつたような、いろいろな御相談に乗つて行きたいというつもりであります。それを機会に、旧債と棒引きするという考えでは毛頭ございません。ここらはわれわれ十分御理解いただかないと、われわれの申しておる本旨が通らないと思います。私はさような意味におきまして、もしもこうした事務のお扱いを受けるときに、やはり先ほどと同じように政府からその御計画趣旨を明確に指示していただく、あるいは御指示がないでも農林中央金庫としては、そのことを十分理事長として徹底させまして、御懸念をなからしめて参りたい、かように考えておるのでございます。そこでこういうことにつきまして、農林中央金庫法自身の不備がございます。農林中央金庫法改正の機会にそれを御改正していただくということで、いろいろお願いしておりましたが、残念なことには今日まだ実現しておりません。これらのことは水産委員会の方で、もしも私の申すことが御理解いただけるならば、さような意味の御盡力をいただきたいと切に考えておる次第でございます。  申し上げましたことが多岐にわたりましてお答えにならないかもしれませんが、また何か足りないところがございましたならば補足いたします。
  10. 川村善八郎

    川村委員 ただいま私の質問に対しまして、湯河理事長漁業制度改革を非常に御理解くださいまして、漁業権証券資金化その他農林漁業資金融通特別会計法によるところの問題についても、その他各般にわたつて説明していただきましたことについては、まことに感謝する次第であります。  そこで湯河さんは非常な御理解を持つて、襟度を示されておりまして、政府指示その他地方公共団体等の援助を受けまして漁業制度改革がりつぱに成り立つように、漁業権証券買上げとか、あるいはそれで足らない分は漁業権証券担保貸付等について、理解のあるお言葉を述べておるのでありますけれども、なかなか末端ではそういうふうに参らないことがたくさんあるのであります。私もかつて北海道水産業会の常務理事を長くしておりまして、中金といろいろ折衝して参つたのでありますが、今日でもまだそのきらいが残つておるというのが非難の的となつております。ところで、ぎようそういうことについて不備があるならば法律を改正して、すなわち中金の法律を改正してまでも、今度の漁業制度改革に沿うような資金化をはかつて行きたいということも申されておりますので、非常に私たちは喜んでおるような次第であります。  そこで私も湯河理事長の言われるごとく、証券の買上げだけによりますると、必ずこれは漁業制度改革について沿わないものにも使われるのじやなかろうか、これは各委員とも心配しておる点であります。そこでやはり買上げよりも金利が安ければ厳選に厳選を重ねて、そうして漁業制度改革推進するという協同組合その他それによるところの漁業者等に貸し付けて行つた方が、これが一番いいことなのですが、しかしなかなか厳選をいたすといたしましても、現在の漁業協同組合並びに連合会等では、御承知の通りばらばらになつてつて、形式は団結しておるように見えますけれども、なかなか内容はそうは参りません。従つて今日までの運営が非常にまずく行つて、赤字を出しておるというような現実であるのであります。そうしたような、つまりまだ混乱から脱却し得ざるところの協同組合等の申入れをそのままに受けた場合には、おそらく今現在中金さんだけが理解を持つて旧債から引かない、こう言われましても、他の商人等の人たちが黙つていないのじやないか、また他の市中銀行等もおそらく黙つておらないのでございます。この機会こそ借金を全部とつてしまわなければならないといつたような方法に出るやにも——もうすでに行動を起しておるといううわさも聞いておるのであります。もちろんこれらについては中金は干渉すべきではないかもしれませんけれども水産庁当局においてはこれらも考えて、中金同様、政府においても措置をとらなければやはり漁業権証券買上げなり、あるいは一方においては中金の理解によつて担保貸付を受けても、その方へ流されてしまつたのでは、これまた漁業制度改革が完全にできないという心配もあるのであります。そこでこうしたようなことについては、もちろん先ほども申します通り水産庁でも手を打たなければならないし、われわれも政府に向つてその手を打つよう進言するのでありますが、とにかく今中金理事長考えておりまするような線に持つて行くといたしましても、これら厳選するためには何か一つの機関をつくらなかつたならば、個々漁業協同組合の申入れというものは相当莫大になるのでなかろうか、かつ資金化後に漁業制度改革の問題に使われないで、別な方に使われるというような考えも起しておるのであります。と申しますのは、私も三十数年間組合運動をやつて、今日では何も協同組合にタッチしないで、外から第三者的立場で見ておると、漁業協同組合のやり方は、全部とは申しませんけれども北海道におきましては、多数の協同組合は、すでにもう協同組合精神というようなものが失われておるというような感じがするのであります。こうしたような組合に、はたして一体これを信じて中金資金化なりあるいは証券の買上げなりについて、政府にこれがいいとか悪いとかいうようなことが言えるかどうか。むしろ第三者的な立場で、ある意味においては指導もできる、ある意味においては監督もできるというような機関をつくることも必要でなかろうか。また一面には、漁業制度改革にマッチして行くようなやり方をしておるかいないか、計画はどんなふうかということを十分きわめるところの機関も必要でないか。さらにまた、それらによつて資金のあつせん等をした場合に、これを高度に利用すること、端的にいいまするならば、漁業制度改革を中心として、その資金の高度の利用をして行くというようなことをさせる機関も必要でなかろうか。いろいろこうしたことを考えますときに、特に私らの地元である北海道の問題を取上げて申しますと、北海道漁民は現在どうなつておるかというと、すでに御承知の通りであります。親と子とけんかして、水産協同組合を現在の会長であります米澤君がつくつておきながら、米澤君自体がそれを告訴しておるという新聞記事も出ております。借金も八億もあるということを聞いております。こうした団体がはたして公平な判断をし、はたして正しい方向に漁業制度をやらせて行くような指導ができるかどうかという不安もあるのであります。他の府県は私は知りません。しかし他の府県でも、おそらく北海道に似ておる点が多いのではなかろうかということを考えまして、私ら委員会で先般大蔵大臣とも相談し、また銀行局長にも昨日その書類等も提出して参つたのでありますが、大蔵大臣の申されるには、どこまでも漁業権証券については、漁業制度改革を中心として資金化をはかつて行かなければならぬから、他の方面には出さない考えをしなければならぬ。従つて委員会ではこれに対して何か考えないかということを言われましたので、ここに実は各道府県ごとに漁業制度改革資金融通組合というものをつくつて、それが正しい判断のもとにいろいろな資金化の問題なり、指導の問題なり、それからさらに資金化する場合、一体どういう事業にどう使われるのかというような細部にわたるまで、正しい見方でやつて行つた方がいいということから、こうした組合をつくるということで、委員会では申合せて大蔵大臣に折衝したのであります。大蔵大臣はこれを了として、事務的にもう一歩進んで考えてみなければならぬので、銀行局長に折衝するということで、昨日銀行局長に当つたようなわけであります。まだイエスともノーとも来ておりません。そこで中金理事長であります湯河さんにお伺いすることは、もちろん漁業協同組合なり協同組合連合会なりは尊重して行かなければならぬのでありまするけれども、一体この漁業制度改革という問題は、現在の漁業協同組合並びに連合会等でこれがどこまではつきり推進できるかという見通しについては、おそらくお考えになつておると思うのでありまして、私は北海道だけの問題で、非常に範囲が狭いかもしれぬけれども、少くとも全国の三分の一を生産するところの北海道には、いろいろ先ほど申し上げたような事情もありますので、われわれはかような組合を道府県ごとに、あるいは北海道は支庁単位につくられるかわかりませんけれども、そうしたものをつくつて、かつて漁業共済組合というものをつくつたような姿で行きたいという考えを持つておるのでありますが、この点について理事長はどういうお考えを持つておるかお伺いし、かつまた理事長が言われたように、決して前借の天引きをしないというようなことがあつたのでは、そういう考えを持つてわれわれ仕事もいたしますので、政府がそうした手を打ちましたならば、理事長から厳重に通達をして、そうしたことを繰返さないようにお願いしたいと同時に、理事長におかれましても、政府に対して、でき得るだけ安い金利漁業証券を担保にして貸出しができるように、われわれもその方法をとるように要望いたしますから、今後最善の努力を払われたいと思います。  そこで最後の一点は、融通組合のように正しい判断のできる組合をつくつて、なおこれに対する中金のお考えを承われれば幸いだと思いますので、御答弁をお願いしたいと思います。
  11. 湯河元威

    湯河説明員 いろいろお話がございましたが、前提として先ほど申し上げましたように、前借等を棒引きすることは、これはもうまつたく意味をなさぬことでございます。中金がそんなことを言つたつて、ほかの金融機関や商人などがやつてしまうではないかというお話、これを私ほんとうに心配しておりますので、現にそういうふうな青田売り的な傾向はうかがえるのであります、そこで、私さつき申しあげましたように、交付事務を農林中金が扱うということが、そのために適切だと申しましたのは、しかも決して農林中金に集中するのでないということを申し上げましたのは、もう少くともほかの人があらぬ方にこの漁業権証券を甘言をもつてつて行くやつを、農林中央金庫は決して集中するのではございませんけれども、保護預かりのような形で、むしろ証券というものを組合がかつてに御処分になれない、組合で御処分が御自分でなくても、はたからとつて行くというようなことのないようにするために、保護預かりというような制度もございますので、そういうふうにしてでも組合の証券を保護する、分散したりあるいはほかのものにさらわれたりしないようにするという保護預かり等の制度も、これは金庫がしつかりしていなければならない、入れ物がしつかりしていなければなりませんが、そういうようなことをいたしてでも、漁業権証券が令散しないようにして行こう。あるいはほかの人にさらわれないようにすることが大事だと思つておるのでございます。これを一旦お渡ししてしまいますれば、これはどうなさいますか、有価証券でございますから、お売り払いになるとか、お渡しになればそのままになるかと思うのであります。これをお渡しするときに、よく大丈夫な方ならお渡ししてもいいのですけれども、むしろ保護預かりにして行つた方が、少くともそれだけでも心散したり、ほかにさらわれたりすることが防げる、これをほかの交付機関が扱いますれば、それほどの心配りはしてくれぬのではないか、かように思いまして、先ほどのことを申し上げたのであります。もとより川村委員仰せのごとくに、政府の方においても、また水産業協同組合の指導者であられる方々におきましても、その趣旨を十分御徹底になり、他の金融機関その他にも、政府の方から十分御監督、御監視をなされることと相まつて、この趣旨は通るのではないかと思います。それから私先ほど中金に集中しないということを申しましたが、処分権をとるという意味におきまして集めることはいけない。でありますから、県なら県において、個々漁業単位組合協同化のために使おうと思つていらつしやるものを、あらぬ人が来て、それは全体の水産のためだからといつてつて行くのは、やはりいけないのではないかという感じを持つておるのであります。  それからただいま川村委員からお話のございました融通組合でございますが、あの御構想は私は実は初めて伺うのでございます。十分研究してみないと何とも申し上げられないのでございます。そのいろいろお考えになりました御懸念の点は、私も全然御同感でございます。私先ほど申し上げましたように、多数の組合から買い上げろ、買い上げろというお話がございましても、私としては中央金庫独自としては何にも動かない。やはり買上げ計画——どこの組合のものを買つたら漁業権改革趣旨にかなうかという判断をして、お申込がどんなにございましても、農林中金ではいたさない、少くとも計画的に漁業権証券資金化計画、これはわくが小さいのでございますから、そう大きくはなりませんでしようから、やはり重点的にやつて行かなければなりませんので、それを農林中金がかつてにやりますと、必要なところが漏れて、必要でないところを買うようなことになりますと、農林中金としては相済まぬという気持を持つておりますので、さような意味をより確保なさいますお気持につきましては、私全然御同感でございます。ただ、今おつしやられましたその組合の内容等につきましては、初めて伺うのでございます。われわれもせつかくの御構想でございますので、またよく聞かせていただきまして、いろいろ政府の方と御相談いたしたい、さように考えております。
  12. 川村善八郎

    川村委員 もちろんこの組合の内容等につきましては、まだ詳しい御相談も話もしておらないので、おわかりにならないのは当然でございます。ただ先ほど申し上げたような事情もあり、さらにこの漁業協同組合が他の債権者、すなわち中金以外の債権者、こうした者に責められるということは火を見るよりも明らかなのであります。そうしてせつかく中金から資金化したものを、市中銀行なり商人等にとられて、漁業制度改革に使われないということになりますので、そういう場合にもこういう組合がよく話をして、そうして何年かの年賦償還にしてやるとか、あるいは今後漁業の証券が来た場合に、これはそのうち何割いるとか、あるいは漁業生産発展して、いわゆる増産ができて、利益があつた場合にはこうするというようなこともきめてやるということも、ひとつ第三者的な立場でやつてやらないと、いわゆる漁業協同組合の役員と商人と銀行とぶつかつた場合に、過去のいろいろないきさつで、おそらくわれわれの考えているようなところまで折衝できないのじやないかと思います。それからさらにあつせんのことは、もちろんこれは中金を主体とした場合に、中金に対して、この協同組合を保護しなければならぬ、あるいはこの施設についてはこういうふうなのであるからというようなことの裏づけもして行かなければならぬ。そうした意味におきまして、さらに今水産庁考えておられますのは、ほとんど漁業協同組合を中心に考えておる。ところでほんとうの漁業経営という面になりますと、個人がほとんど多い。内地方面では自営するところもありましようけれども、特に北海道はただいままでのところでは、協同組合が自営するということはほとんどありません。従つて北海道では個人の漁業経営者が非常に多い、ただ内地方面にも今後新たな漁業権の交付を受けまして、個人で漁業経営する者もたくさんあるのではなかろうか、その時分に、個人の持つた漁業権証券がせつかく資金化されましても、漁業制度改革実施面において、中心となる漁業者が非常に窮乏に陷つて漁業制度改革がほんとうに実施できないということになりますので、これらについても、この組合がすべてそれをまとめて個々に借入れをするというようなことでなく、一つの団体をつくらせるとか、あるいは協同組合に包含させて借入れをさせてやるとか、そういういろいろな世話をしたい。漁業制度改革をあくまで完全に実施に持つて行こうという線でこの組合をつくりたい、こういう構想でありますので、後ほどこの委員会が終りましたら、この内容について私から個人的に説明してもよろしゆうございますから、何とか御研究をなすつて漁業権証券資金化されて、そうして完全に漁業制度改革に使われるような方向に行きたいと考えますので、どうぞその点はよろしくお考えを願いたいと思います。私の質問はこれで終ります。
  13. 冨永格五郎

    冨永委員長 質問の通告者がまだ多いのでございますから、質疑応答はできるだけ要点のみをお願いいたします。
  14. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 委員長の御注意もありましたから、きわめて簡明にお尋ねいたします、まず湯河理事長にお伺いしたいのでありますが、理事長のただいままでの御答弁によりまして、制度改革に対して、中金当局としては非常な御理解と御熱意をもつて、できるだけの協力をしようという理事長の御意思ははつきりいたしました。そこで具体的にお伺いしたいのでありますが、中金におきましては、漁業権証券を自主的に買上げをなさる御用意があるかどうか、これは国債整理資金なり何なりから政府買上げをする以外に、中金独自の財源によつて自主的に買上げをされる御用意があるかどうか。その御用意があるとすれば、どれくらいの限度で、どういう目標額をお持ちになつておるか、また買上げ条件はどういうぐあいに考えておられるか。また中金としての財源等につきましても、こういう財源があつて買上げをするというようなこと等が、具体的にお伺いできれば幸いだと思います。
  15. 湯河元威

    湯河説明員 先ほども申し上げたのでございますが、政府買上げ償還以外において、中金漁業権証券買上げに努力したいということを申し上げましたが、財源等も今すでに持つてつて、そうしてこれだけの範囲でということを申し上げますことは、今ちよつと困難でございます。しかしこれは全般の計画とにらみ合せまして、われわれとしては考えて参る必要があるということを痛切に感ずるのでございます。それとともに、何らかこれにつきましても、政府の方と御相談をして参りたいと思つております。
  16. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 さらにお尋ねしたいのでありますが、中金の農林債券の発行状況、現在どの程度の農林債券が資金化されておるか、その農林債券の発行状況、それから中金国債相当所有されておるということを承知いたしておりますが、この国債買上げなり、あるいは資金化なりにつきまして、大蔵当局と御折衝なさつておるかどうか、その折衝の経過及び将来の見通し等についてお伺いしたいと思います。
  17. 湯河元威

    湯河説明員 農林債券はただいまたしか四十一億発行いたしております。しかしそれは市中の金利よりは相当高いのであります。それをもちましてこの漁業権証券買上げるということは、金融機関としては逆ざやになりますので、あるいは適当ではないかと思います。国債中金はただいま三十数億持つておりますが、これは過去におきまして百億以上もあつたものであります。それを漸次減らして参りまして、この折衝は政府ももとよりでございますが、主として日本銀行との関係においてわれわれは努力をして来たのであります。今後におきましても、これは減らして行きたいという気持を持つておりますが、どういう程度でできますか、それはやろうと思つております。
  18. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 今の理事長お話によりますと、農林債券による財源は、金利が高くて非常に不利であるというお話がございましたが、そういたしますと、農林中金が今後制度改革のために御協力なさる財源としては、重点をやはりお手持ちになつておる国債資金化の上にお考えになつておりますかどうか、この点を念のためにお伺いしたいと思います。これは国会側としても大きな関心を持つておる点でありまして、中金制度改革のために積極的に御協力なさる、その財源を造成される面につきましては、国会側としてもできるだけの協力をなすべきものである、こういう観点からお尋ねいたしておるのでありますから、できるだけ腹を割つたお話が伺えれば幸いだと思います。
  19. 湯河元威

    湯河説明員 農林中金の持つております国債が処分できますならば、それは確かに有力な財源だと思つております。その方法一つ方法だと思います。
  20. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 いろいろ理事長はその他にも財源をお考えになつておるようでありますが、証券の自主的な買上げなり、あるいは先ほど来お話になつております証券担保金融なり、その財源について、今私が申し上げました農林債券及び手持ち国債資金化以外に、中金プロパーのほかの有力な財源をお持ちになつておるのかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  21. 湯河元威

    湯河説明員 実は総合的経営をいたしておりますので、特にこのための財源が保留されておることもございません。われわれといたしましては、先ほど来申し上げました漁業権債券の買上げなり、あるいは担保貸付なりの計画とにらみ合せまして、われわれの方としてできるだけのものを運用して参りたい、農林債券につきましては、少し金利が高うございますので、これにつきましては何らかの措置をいたしたい、かように考えております。
  22. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 先ほど川村君の御質問に対しまして、理事長からの、証券担保金融のもう一つ方法であるそれは特に証券の買上げ償還と違つて、金の使い道をトレースすることのできる利益があるから、そういうことも制度改革を円滑に、効果的に推進する上から必要であるという御見解はごもつともであります。そこで証券担保金融条件等は、どういうぐあいにお考えになつておりますか。これを買上げ償還中金独自の買上げをなさる場合との条件と比較して、どういうぐあいになりますか。お考えがあれば承りたいと思います。
  23. 湯河元威

    湯河説明員 具体的には考えておりません。先ほど申し上げましたことは、買上げすれば、現金がすぐ渡つて、これは金利も期間も何もない。貸付の方でございますれば、金利の取引をきめなければならず、期間もきめなければならない。買上げの方が完全資金化だという意味で申し上げました、具体的には恐れ入りますが、まだ検討はできておりません。
  24. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 この制度改革には、証券担保金融あるいは証券の買上げ償還、これらをかりに考えて参りましても、政府買上げ償還わくなり、あるいは農林漁業融通特別会計わくなり、またかりに中金が独自に買上げをなさつて協力をされるとか、これらを全部ひつくるめて考えましても、制度改革の途行には多分に資金的な不足を来すことは明らかであります。また個個の漁業組合等に見ますると、平均三百万円程度の補償ということになるでありましようから、漁業協同化なり、経営協議会なり、あるいは共同施設なり、そういうような施策を進めます場合に、当然個々にこれを見ると過不足がそこに生じて来る。そこで制度改革を円満に遂行しますためには、どうしてもこの証券を対象としたもの以外の金融措置ということが、当然並行して考えられなければならぬことであると考えるのでありますが、そこで中金沿岸漁業団体の金融の中核団体とされまして、この証券を離れて制度改革推進するために、中金プロパーの資金の面から、特に制度改革のために、漁具、漁網あるいは運転資金、あるいは漁船建造資金、そういう面につきまして、従来も相当沿岸漁業に御協力はいただいておるのでありますが、特に制度改革という画期的なこの事業を推進するために、中金は一段の御奮起をお願いしなければならぬわけでありますが、そういう面について制度改革との関連において、中金プロパーの金融の面で、将来積極的な具体的な御計画をなさる御用意があるかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  25. 湯河元威

    湯河説明員 水産金融の問題につきましては、過去においても努力して参つたつもりでございますが、せつかく漁業権改革がここに完成しようとしておるとき、われわれは漁業権改革自体のために御協力をいたしますとともに、その以外におきましても、われわれは全力を盡してやつて参りたいと考えております。水産業協同組合自身の方におかれましても、御金融の受入れ態勢を考えていただきたいと思います。
  26. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 ただいままでの理事長の御答弁によりまして、中金御当局としては、制度改革について全幅の協力をなさるという理事長の腹構えだけは明らかになりましたが、具体的なこれに対する協力方針なり、具体的な案というものは、いまだお出しになつておらぬように存ずるものであります。私どもは今国会を通じまして、特にこの会期末に、集中的にこの制度改革の裏打ちとしての資金化の問題を、大蔵省、農林省、その他関係機関を総合的に検討いたしておるわけであります。そこで私どもとしては、ここに制度改革の裏打ちとしての資金対策に総合的な検討を加え、早く見通しをつけたい、こういう念願に燃えておるわけでありまして、国の買上げ償還わく、あるいは農林漁業融通特別会計わく、さらに中金の御協力を得ますれば、その中金の方の具体的な言、こういうものを総合的に把握したいというのが私ども意図であります。本日はその輪郭だけでも伺えますれば、総合計画を立てる見通しをつける上に非常に便宜であつたのでありますが、理事長の腹構えだけを伺つた程度でありまして、具体案の御明示がなかつたことは、非常に残念でありまするけれども理事長の先ほど来の言明に対しまして、私ども非常な力強さを覚えるものであります。そこで早急に具体的な案を当委員会にお示しをいただきまして、そうして、政府機関の計画と相まちまして、その制度改革推進できますように、御協力を切望いたしまして、私の質問を終ります。
  27. 冨永格五郎

  28. 松田鐵藏

    松田委員 本日湯河理事長に対するわれわれの希望また質問したいと思つた要旨は、川村委員からの質疑によつてはつきりしたのでありまして、この点は私それだけでけつこうなのであります。ところで何のために今日われわれがこの問題を取上げて、今日の苦しみをいたしておるかということに対して一言したい。それはあまりにも感覚が小さなところまで行つているがためであります。要するに水産業者に対する農林中金及び市中金融業者の金融の裏づけというもの、金融というものが、あまりにも微弱である、かような点からいつて、この漁業証券の百八十億という証券を、廣川農林大臣の構想によつて、これを資金化することによつて、初めて水産業に対する大きな期待が持たれることからして、百八十億の資金化が、ただちにまたあらゆる努力を持つて行つたならば、その二倍になろう、三倍になろうということからして、日本の金融業者の水産業に対する金融の不理解というものを、われわれはここに打破して、初めて水産業のりつばな建て直しを来さなければならないという構想から、水産銀行の設立をわれわれは念願しそれができ得ざるときにおいて、特別金庫の問題がある。これも遂に龍頭蛇尾に終つたような結果になりつつあることを、われわれは憂えておるがゆえに、毎日この委員会を開いて、しかしてこの金融の跡始末をせんと努力しておるのであります。そこで具体的に私は一つの例を申し上げたい。その例というものは、まず現在日本の水産に対して、これは官房長水産長官も、よくお考えをなすつてもらわなければならぬ問題だと思うのでありますが、重油の値上りは今日どこまでに来ておるか。われわれは第五国会、第六国会において、この重油の値上りというものは、日本が外貨をいかに獲得せんとしても、その貿易を振興せんと努力をする国民の真意はわかるが、外国から輸入される物資をできるだけ節約することが、逆に言つて外資の獲得と同じことである。かような点から言つて、日本の漁船が使用されておる重油は、今日セミ・デイーゼルの機関をほとんど使われておる。これを一日も早く消費の節約をすることは、戰争によつて敗れて企業もでき得ざるようになつておるこの日本の工業も鉄工業者も、これらにデイーゼル機関をつくらせ、またそれに対するあらゆる金融の援助を与え、またこのセミ・デイーゼルをデイーゼル化することによつて、津々浦々にある漁船がどれほど消費の節約また漁業の合理化ができるかということを、われわれは主張したものであります。その主張で、水産庁から農林中金に対して、その金融についてずいぶん努力をしたのであるが、今日になつても遅々として進まないのであります。そうした事柄は、農林中金及び各金融業者は水産に対する理解がない、かような点からいつて、この水産銀行ができたならば、こうした消費の節約、漁業の合理化、かような点をまず第一に取上げて行く。この制度改革によつて得た百八十億というものを、ほんとうに漁民のために有利に使うことであり、国のために最も必要な方法であるとわれわれは考えておつたのであります。こうした点が今や龍頭蛇尾に終らんとするこのときにあたつて、われわれの考え方、農林大臣の考え方は、農林中金に対する、水産にあまりに協力が薄かつたということを、私どもは口では言わないけれども、腹の中で考えておつたものであります。この点に対し、今後における——われわれはもはや敗れてしまつた。龍頭蛇尾に終らんとしつつあるのだ。そのときにあだつて、われわれの考え方、農林大臣の考え方は、農林中金理事長においてもまた水産庁においても、官房長においても、どうか理解を持たれて、こうしたものはたつた一つの例ではあるけれども、また私が先ほど理事長に対して申した、たらの塩蔵の一時の融資というものも、真に漁民を救うべきものであり、こうした事柄が、もし水産銀行が立つておつたならば、容易にでき得ることだろうと私は考えるのであります。(「ヒヤヒヤ」)こういうことをよく理解されて、農林中金及び水産当局、農林当局として、十分にわれわれの意のあるところをお考えになつて、これからの政策を研究していただきたい、かようにお願いするものであります。
  29. 冨永格五郎

    冨永委員長 石原委員
  30. 石原圓吉

    ○石原(圓)委員 湯河理事長よりるる御意見を承つたのであります。私どもは、古い前から水産金融の独立ということを心掛けて、努力して参つたのでありまするが、今回の漁業権の補償金を基礎として水産銀行をつくるという農林大臣の方針には、満腔の賛意を表して、それが実現を強く希望し、協力を辞さない態度をとつたのであります。しかるに中金理事長は、おそらく水産銀行はできまい可能性がないということを新聞に発表されたのであります。これは直接発表されたのか、あるいは新聞の第六感であつたのか、そういうことはわからないのでありますが、とにかく湯河理事長水産銀行はできまい可能性がないという記事がたしかあつたのであります。それと相呼応したか、参議院の水産常任委員長の木下君も、これには反対であるという意思が新聞で表示されたのであります。このことは私ども衆議院の側の最も遺憾とするところでありまして、その結果は、農林中央金庫のうちより水産に関係する部分を切離して、水産だけの中央金庫をつくろうでないかという説まで出たのであります。これは何を物語るものであるか。中金漁民に対する漁業金融について理解が——理事長そのものはありましても、枢要な地位の立場にある者が、それに共鳴しないところの一つの思想があるということは明らかであります。こういう状態で進むということは、絶対にできないと思うておつたのでありまするが、本日理事長お話を聞きますると、何らの具体的な構想はないのであつて、ただ中金は非常な同情的な理解を持つて、この補償金のいわゆる消化に努めようという意味、それを、もし水産銀行設立当時の中金理事長としての反対意見から考えますと、この百七十幾億円を、要するに農林中金本位で取扱つて行こうという、一つの自分本位の考え方が作用しておるものでないかという疑いまで起るのであります。とにかく今日は、この補償金は、漁業権を一時国家が取上げたから、そのために起つた問題であつて、そのために漁民は苦しんでおる。それにかかわらず、その金融の道が確立しないというときにおいて、私はこの補償金の問題は枝葉末節であると思う。大蔵省は五箇年の間に大体買い上げる、場合によつたら、それを繰上げてでも、情勢によつては買い上げるかもしれないということは、これは大蔵大臣がここで直接われわれに言明しておるのであります。幾ら長くかかつても五箇年の間の問題だ、こういう枝葉末節の問題に貴重な時間を費してお互いに努力するということよりは、水産金融の根本を確立する問題に重点を置かなければならないのであります。しかるにかかわらず、中金理事長としての従来のお話の経過を総合すると、そこに何らの理解を持たず、理解は持つてつても、いわゆる中金本位の意思より働かない、こういうように私はとるのでありますが、こういう誤解を残すことは中金のためにもよろしくない。また日本の水産金融のためにもよろしくない。従つてこの機会にあからさまに湯河理事長の明瞭なる御意見を、ここにさらに承りたいのであります。
  31. 湯河元威

    湯河説明員 水産金融が疏通しておりませんことは、まことに残念であります。私はこれでも従来水産のためにできるだけのことを盡して来たのであります。まだ行き届きません点はこれから先努力をいたします。それから水産銀行につきまして、当時私の腹の中にあつたものはどうかというお話でございますが、私は水産金融のために、金庫でも、銀行でも、特別会計でも、できていただくことはけつこうだ、但し水産銀行という案が出ましたときに私の疑念を持ちましたことは、それは銀行法に基いてああいうものをつくるならば、どうしてもそれが必要だということならば、その監督権を農林大臣に分担さしてくれということであります。これのない水産銀行大蔵大臣専管の銀行ができるということは、これはどうも金融機関にわれわれ職を奉じておる者から見ましても、どうも適当でない。農林中央金庫は現在農林大臣と大蔵大臣の共管になつておりまして、煩わしいことでございますが、しかし水産金融状態が今日のようなときに、これはどうしても農林大臣の監督権がなくてはいけない。そういう意味におきまして、公庫の案のときには私はそれでけつこうだ、銀行の案が、普通銀行でありますがゆえに、その点に懸念ありと思いまして、水産銀行ならばどうか監督権を、特別法をもつてでも、農林大臣に留保していただきたいということを申しただけであります。それ以外におきまして、ああいう構想が出ますことを、われわれ何も中金本位に考えまして、——中金はそれができていただくことによつて楽になるのであります、決して中金本位に考えまして、それを阻止しようというような意思は全然ございません。
  32. 石原圓吉

    ○石原(圓)委員 私はまだ理事長の誠意を認めるわけに行かないのであります。なぜならば、農林省においては、公庫でもよろしい、また特別会計方法でもよろしい、いかなる方法でもこの金融の円滑をほからなければならぬという、ことに非難を受けたけれども水産庁内でも、久宗君のごときは晝夜睡眠をとることもなく、最近は努力していることは、湯河理事長も幾分か認めているだろうと思う。今日まで水産金融が確立しない、また水産銀行に反対である、そういうような意見をはかれるならば、あなたの事務所に漁村経済協会——漁業者の団体の集まりであるところの経済の機関があるはずであります。この席において、よく御意見のあるところを発表して、全国の漁業組合連合会の代表者のいるところで、これに対する意見を交換して、漁村を救う道をおはかりになつて、そうして善処されるという道もあると思うのであります。そういうような点もあれば、今日の補償金に対する具体的の案の片鱗でもここで説明ができるはずだと私は思うのでありますけれども、その構想も、ただ漠然としたる同情的な言葉だけで、今日の漁民は救われないのであります。であるからして、もう少し具体的な案をお立てになり、さらにこの席において御説明をなされたい。また中金なるものは日本の原始産業になくてはならぬものでありまして、われわれはこれに破壊的な考え方をもつて臨んでおるものではございません。とにかくこの際水産金融がなめらかに行つて、今日ただいま出漁のできないような漁業者を救うということの端緒がつけば、それでよいのであります。この点につきまして、なお一段の御研究御立案の上で、再びこの席で質疑応答するように、おとりはからい願うことを委員長希望いたしまして、私の質問を終ります。
  33. 冨永格五郎

    冨永委員長 承知いたしました。
  34. 小高熹郎

    ○小高委員 ただいま石原委員より、本問題について農林中金湯河理事長に対する希望意見があつたのでございまして、その点私も同感でございますが、この漁業改革に要する画期的な百七十何億、これが現金化されないということは、現在のわが日本において、政治も、政治家もないのか、こう言われても一言もないのであります。なぜかならば、先般農林大臣あるいは大蔵大臣、または河野銀行局長が臨席せられました際に、私から釈迦に説法のきらいはございますけれども昭和二十二年以来のわが国の財政経済の変化、飛躍というものを説明いたしまして、ただいまの百七十億を倍額出しても決してよけい過ぎない、安過ぎる、全国の漁業権を百七十億で買上げろということは、今日の情勢になれば、それは安過ぎる、そういう感覚から言うならば、せめてわれらは漁民の味方として、百七十億そつくり現金化せよ、そうしてこれが合理的に漁業制度改革に役立つように、あらゆる検討を集中することが一けだし当然のわれわれの責務でなければならないということから説き起しておるのであります。そういうことから申し上げますると、今まで先輩各位からるる質疑応答がございましたが、答えが出ておらない。松田委員はすでに敗北として、このレースを投げんとしておる。私は断じて投げません。どこまでも政府とわれわれ国会議員の共同連帶責任において、解決するまでこのわざをはずさないつもりで闘つておるのであります。さようなことから考えますると、先ほど来の質疑応答中に現われました具体的の問題に、一つ二つ立ち至りたいのでありますが、農林漁業資金融通法という法に現われましたこのわくを、現在の段階において、湯河理事長はどの程度とれるお考えを持つておられるか、その点を第一番に伺いたいと思います。この数字がもし少いとするならば、これから第二段に移るのでありますが、この数字の点について、一応御承知のところをお伺いいたしたいのであります。
  35. 湯河元威

    湯河説明員 農林漁業資金融通法の施設は、これはとりあえず本年六十億の新わくを設定していただいたのであります。これは農林中央金庫もこれに大きく参加いたしまして、その他の金融機関とともに農林漁業のための長期資金を御融通するわけであります。このわくは、決してこれで足りるものとは思つておりませんので、政府の方においても、その点は御理解があり、われわれはぜひともいろいろこの農林漁業のために、必要な長期資金は充実していただきたい、かように考えております。金額につきましては、今政府の方においていろいろ御計画があるようであります。われわれはそれをできるだけ多く獲得していただきたいと思つております。
  36. 小高熹郎

    ○小高委員 今お伺いいたしますと、農林漁業資金融通法に基くところのそのわくから、これを現金化したいということでありまするが、この点につきましては、どうもある程度わかつたようなわからないような、実はこれから聞くとか、あるいはこれから数字を求めるのだというようなことでは、非常に心細いのでございます。私どもは、本問題については、委員長と後刻協議をいたしまして、場合によつては、休会中といえども、本委員会を開きまして、全国漁民のために、講和条約後において、わが国が水産経済をもつて国際的に国の経済を立てなくちやいかぬ、そういう大局から見た立場において、さらにあなた方と協議をいたしまして、この問題を解決せんとしておる次第でございまするから、さようなことをお含みの上、この審議はさらに休会中といえども続けてほしいという私の希望を、委員長においてはしかるべくおとりはからいを願いたいのであります。
  37. 冨永格五郎

    冨永委員長 了承いたしました。
  38. 小松勇次

    ○小松委員 水産金融の問題につきましては、これは根本的に解決しなければならないことでありますので、ここで湯河理事長にこの問題を尋ねるよりも、私は国会と政府によつてこの問題は解決しなければならぬと思つておるのであります。  そこで私は、今漁業権証券金融に対する具体的問題についてお尋ねしたいのであります。御承知のごとく漁業制度改革によりまして、新しい経営体が発足いたすのでありますが、この新しい経営体の発足によりまして、漁業制度改革を完遂し、それの効果を高めて行くためには、いろいろなすべきことがたくさんあろうと思うのであります。たとえば漁獲物を完全に利用する方法とか、あるいは魚価維持するために、製氷をつくらなければならぬ、冷凍をつくらなければならぬというような問題もあろうと思います。いずれにいたしましても、その再生産を大いに高めて行かなければならないのであります。それについて最も重要な問題は、原始産業と言われるこの水産事業を普通の産業ベースに乗せて参りますためには、その貴命の要ることはもちろんでありますが、その金利の安い高いということが、大きな響きをなすものと私は糾うのであります。そこだわれわれは、きわめて低利な融資でなければならぬということを主張するものであります。中金としてこのたび漁業権証券担保として融資する場合に、その担保漁業権証券の額面は幾らになるか存じませんが、かりに百円の額面とするならば、それに対してどのくらいの担保価格としてこれを扱うのか、また中金として独自の立場において融資する場合に、その金利はどの程度になるか、かつまた中金の今日の扱い方法として、協同組合がその対象であろうと思いますが、その漁失権の解釈によりましては、ひとり協同組合だけでなく、個人にも漁業権証券を交付しなければならないものもあるのでありますが、そういうものに対する融資方法はどういうぐあいにお取扱いをなすか、まずその点をお尋ねいたします。
  39. 湯河元威

    湯河説明員 漁業権証券担保といたします掛け目は、普通の国債と同じつもりでございます。たしか日本銀行において百円のものは九十八円でやつておりますから、できるだけ普通のものと違わないように、これはまだきまつておりませんが、これは当然やるべきものだと考えております。  金利の点は、これは先ほど来申し上げました特別会計資金が出ますれば、これには特別の低金利が出るのであります。しかしもし特に農林中金独自の資金をもつて融資いたします場合には、残念でございますが、どうも今の金利の水準が高いのでございます。これを安くする方法いかんとなりますれば、結局預金の金利を下げる必要がある。もとより金融機関としての経営は合理化して参るといたしましても、その大きな響きは預金の金利でございます。われわれは預金の金利をできるだけ下げるように、上げないように努力しておりますが、残念なことには、協同組合金融機関銀行に誘惑されまして、どうしても金利が高くなる。そのために農林中金として非常に苦境に立つております。われわれはできるだけ将来におきまして貸付金利を下げるためには、預金の金利を下げる動きをしたいと思つております。それにもかかわりませず、最近金利は上ろうとしております。この点に非常な悩みを感じておりますので、もし特別に安い資金が必要であります場合には、金利の補給であるとか、あるいは元から金利の安い金を別途に調達する必要がある、かように考えております。  それから個人に対する金融の問題でございますが、これは農林中金の現在の制度におきましては、法律上できないことになつております。これは銀行等融資にたよるほかなし、かように考えております。それをもし法律改正でそういうことができるようにするということになりますれば、これは基本的な問題だと思います。
  40. 小松勇次

    ○小松委員 今の金利の問題等につきましても、中金の現在の状況では、理事長お話通りだと私は思うのであります。だからこういう問題の解決のために、水産庁は大蔵省と財政的ないろいろの措置について、どういう折衝を今日までして来たか、この点をまず伺いた。
  41. 藤田巖

    藤田政府委員 従来の経過はすでに再三ここで御説明をいたしておりますので、市複するように考えておりますが、私どもといたしましては、従来とも財政施設について別個の特別会計を設け、しかもそれに対して一定の財政資金を導入するということで、折衝をいたして参つたのでありますが、それは遺憾ながら現在の段階においては実現できない、こういうことになつております。
  42. 小松勇次

    ○小松委員 だから私は特別の会計を設けろということを主張しておるのでありますが、大蔵大臣はこれを拒んでいるようであります。しかし水産委員会の力、国会の力によつて、どうしても特別の会計を設けるということに、われわれは努力しなければならぬと思うのであります。特にこの漁業制度改革資金融通組合をつくつても、問題は金利の問題です。こういう点から解決しなければなりません。どうかひとつこういう点についても、委員長初め諸君のお力によつて、この問題をすみやかに解決することに御努力願いたいということをお願いいたします。
  43. 冨永格五郎

    冨永委員長 承知いたしました。井之口委員
  44. 井之口政雄

    ○井之口委員 湯河理事長漁業金融全般に対する抱負を伺いまして、これに対して石原委員並びに小高委員の痛烈なる不満の意の表明がありましたが、これは与党側として出るくらいでありまして、最も戦闘的な野党として、われわれ満腔の賛成を表明する次第であります。あのお返事では、何を育つているのかとんと見当がつかないくらいです。しかるにこれに対して、まつたく満足している、ありがたいことだというふうな意見を持つていられる委員の方もいらつしやろと思いますが、家へ帰つて、今戸の漁民の姿をもう一ぺんとつくりとお考えになりましたならば、その点が不当であることをみずからおさとりになるだろうと思います。  さて湯河さんは何をおつしやつたかといいますと、あの長い表現の中で一番大事な点は、漁業権証券を集中して持つのだ、集中して農林中金の方で管理してやるのだ、つまり親心を持つてやるのだということがその中心点であつた。そのほかには、漁業関係に融資するわくを広げるということもなければ、あるいはまたこれを自主的に買い上げる方針についてこうこうこういうところを考えたいというふうな表現もないし、あるいは担保貸付の場合に対しても、結局は経営のいいようなものに貸されるというふうになるような表現以外に何らない。そうして片方においては、公庫制度というものはむしろ賛成であると一応おつしやつていますが、それならば、その賛成であるということに対してどういう努力をされたかということも、われわれは聞くことを得なかつたわけであります。そういうふうであります以上は、今の説明に対して、私たちが不審の念を抱くことは当然であります。ぜひともそういう点を改めてもらつて、もつと漁民の今日の状態考えて、この原始産業の遅れた部分、これをもつと引上げて行く。しかも引上げて行く部分に対しては、今漁業権証券資金化という問題が起つておりますからして、この契機をつかまえて、これをいかにして引上げて行くことにするかという根本方針に着眼されなければならぬと思います。そのためには、まず漁業権証券を持つている人の層を第一番にごらんにならなければならぬ。これは漁業権証券の性格に照して、それが真に漁業に使われるものに対しては、徹底的にやらなければならぬ。しかるに不在地主的なふところ手でやつていたふところ漁師、そういう者が持つているところの漁業権証券に対しては、融資する必要もなければ、買上げの必要もないのであります。しかるに湯河さんは、これを一般的に集中して、そうして親心を持つてつて行くというふうなことを言つておられましたが、戰時中、軍閥がやつたのもみな親心でやつたし、警察でも親心と称して、拷問するやらぶんなぐるということをやつておる。これが日本の政治の従来のやり方である。湯河さんの主観のいかんにかかわらず、客観的に現われて来るものは違うのである。どういうふうな自主的買上げ並びに貸付方法をやるのか、そのわくはこれくらいになる、今のわくでは足りないからこれを倍にする、それにはこういうことを考案しつつあるというふうに言つていただきましたならば、これは明瞭にわれわれも理解することができると思うのであります。それがない。従つてあなたが集中的にこれを集められるということになりましたならば、たとい主観のいかんにかかわらず、結局今度は中金やいろいろなところから経営上負債を負うているような漁業協同組合なんかには、買上げもやつてやらなければ、あるいは担保としてこれを融資してもやらぬということに立ち至るでありましよう。現にわくがはなはだ狭い。この狭いものを重点的にやるということを告白されているのでありますから、重点的に選択するという点になると、結局負債を持つているので、負債を早く払つてくれということになりまして、負債取立てということが行われて、せつかくの買上げ資金並びに担保貸付資金漁業方面に流れて行かないで、銀行のしりぬぐいということになつて来るのは当然だとわれわれは思うのであります。この点に対して具体的に防止する方針があれば聞かしていただきたい。なければないでいい。今の資本主義の銀行制度をもつてしては、原始産業を救済することはとてもできない。もしこれを救済するということになつて、多額の財政資金をもつてやるとすれば、税金はまた叩くなつて来ます。そうして原始的な蓄積をやらなければならぬ。原始的な収奪をやつておいて、一部の漁師ボス、漁業ボスを育成しなければならぬということに立ち至ります。これはできないならできないということを、明瞭に表明してもらいたいのであります。  なおそれから、その協同組合の経済状態に対しまして、農林中金の方では今これの負債や何かについてどういうふうな見通しを持つておいでになるか、将来これをどういうふうにしたならば始末して行くことができるだろうか、この根本的な方針を伺いたいと思います。  第三番目に、これは参考になるからお尋ねしておきたいと思います。農地証券が今日農民に渡つておりますが、湯田理事長は、この農地証券に対しても、漁業権証券に対すると同じように、農林中金においてやはり集中する方針をとつておられるか、言葉が悪ければ親心でこれを保管する方針をとつておいでになるのか、また将来やられようとするか、かつ農地証券の場合と漁業権証券の場合の差異が現われるといたしましたならば、どういうふうにその差異が現われて来るだろうか、その三点についてお尋ねいたします。
  45. 湯河元威

    湯河説明員 先ほど私は集中することはしないということを申し上げましたので、その点は速記録でお調べいただきたいと思います。  それから親心とおつしやいましたけれども、さようなものは私は持つておりませんことを申し上げます。親心ではございません。先ほど来申し上げましたように、当委員会でもいろいろお考えになつておることもあり、政府でもお考えがあろうと思います。私の方としては、政府の方針をきめていただきますれば、漁業改革趣旨に即応するようにやつて参りたいかように申し上げたのであります。どうか速記録でよくお調べ願いたいと思います。  漁業協同組合の今日の経営の行き詰まりということは、まことにわれわれも悩んでおります。これは過般の国会におきましても、農林漁業協同組合の再建整備の御計画をいただきましたし、なお協同組合の皆様方が、経営刷新対策協議会等もせつかく結成して御盡力いただいております。われわれも及ばずながら背後におりましてそれに十分の御協力をいたしまして、今日金融取引の相手方の弱つていらつしやるのを何とか正道にもどして行きたいと思います。  それから農地証券と漁業権証券との差異は、これは委員会で御検討済みと思います。性格的に違つております。われわれは農地証券につきましては、そういうようなことは実は考え得ないのでございます。
  46. 井之口政雄

    ○井之口委員 結局この漁業権証券の自主的な買上げ担保貸付に対しては、何にもやらぬということでありますが、さつきのあの長い表現の中から、具体的に何をおつしやつたか。
  47. 湯河元威

    湯河説明員 漁業権証券資金化につきましては、るる申し上げました方法また措置によりまして、私はできるだけの御協力をいたしたいと申し上げました。農地証券は別であります。
  48. 冨永格五郎

    冨永委員長 田淵委員
  49. 田渕光一

    ○田渕委員 約二時間にわたる質疑応答を伺つておりますと、ただ唖然とするだけです。第十国会ももう本日で終らんとするそのときに、農林中金法でも改正しなければできないというような湯河さんの御答弁には、私は誠意あるとは思えない。少くとも今日ここへ追い込むまでに、農林中金として、何とかこの漁業制度改革が出たときに、なぜ案を自発的に立てなかつたか。少くとも私の言わんとするところは、今日ここまで追い込んだということは、われわれが水産銀行あるいは水産公庫法というものを構想してずつと進んで来ているうちに、先ほどの石原委員のような話があつた。少くとも伺つているうちに、この漁業権証券の発行に対しては関与したいという思想が現われて来ておる。ただ渡してしまえばどう使うかわからぬから、まるで準禁治産者扱いに漁民をしておる。無礼千万なことで、かような親心らしく見せているけれども、その裏というものは、やはり農林中金に最後は泣き込んで来るだろう、最後は何とかしてやらなければならぬだろうということを大きく見ていたような謀略があつたように私は思う。少くとも何ができるもんかという気持で、今のあなたの答弁のうちに、漁業権証券を発行するのに、ただ渡してしまつたのではどう使うかわからぬから、何とか関与したい。すでにここに大きな思想があつたのだ、ここらが今日まで追い込んでしまつた原因だ。そうして各委員が、具体的にあれだけ熱心に聞く案に対して、あなたは案がない、何ら具体的方法を示さない。こういうようなことでは私は満足できません。次の国会はいつになりますか、少くとも七月、八月はできないことになる。臨時国会が九月に開かれるとしたならば、漁業権証券は八月から発行することになつておると、遅れて、すでに証券はどんどん出ておるが、何らここに金融対策が立てられなくて、水産金融の確立ができなかつたとするならば、第十国会で一体水産委員会は何をしたか、この責任をわれわれはどうとるかというところへ来る。ですから農林中金から、実際そういう体裁のいいような話を承るけれども、率直に、水産金融はあぶないから、貸さないのなら貸さないとはつきりおつしやるのがいい。まずこの水産金融の確立という問題に対して、湯河さんといくら押し問答しても、のれんに腕押しで、ちよつとも徹底しない。私は休会と同時に選挙区へ帰つて、これを漁民に何と言うか。証券は出るけれども資金の裏打ちがない。一体第十国会であなた方は何をしておつたかと言われるのにきまつている。これに対して、少くともあなたがこういうようなでたらめな答弁を私に向つてするならば、私は夜を徹して、今夜十二時まで、閉会になるまでやる。もつとはつきりしてもらいたい。ほんとうに日本の漁民を救うために、農林中金としてどうするか、これをはつきり具体的に出してもらいたい。
  50. 湯河元威

    湯河説明員 お言葉でございますが、われわれ不行き届きな点は申訳ないと思つております。ただ先ほど来申し上げましたように、漁業権証券資金化の問題は、金融機関だけで措置し得ますことは、資金のコストなり資金金利なり、あるいは資金の分量なりにおきまして制約を受けておるのであります。しかたがございませんので、政府御当局から財政上の裏打をぜひ得て、そしてわれわれもできるだけの御協力をいたしたい、こう申し上げていたのでございます。それがもつと具体的に御満足行くところまで、今日時期的に行つておりませんことをまことに相済まぬことと思つております。さりながら、先ほどもお話がございましたが、あるいは中金が集中して、親心でどうこうということだけは、ひとつ先ほど来御説明したことをもう一度お調べいただきまして、われわれの意思がそこにございませんことを御理解いただきたい。
  51. 田渕光一

    ○田渕委員 私はそれでは満足しません。少くとも協同組合の実態を把握していないというようなお言葉も伺つております。北海道はともかくとして、全国はどうか知らぬが、これは漁業だけではありません。あらゆる協同組合で、持つている者が理事長になつて、無能ないわゆる持たない者がたくさん組合に入つて主張すれば、食われるにきまつておる。こういう協同組合であるから、一方に個人の大きな水産業者がある。それに対して現在の農林中金の機構では貸すことはできない。これは私が聞かなくとも、あなたは理事長の資格ではつきりわかつている。それならなぜこの農林中金法をこれより前に改革して立法措置をとつて受入れる態度をとらなかつたかということを伺いたい。これは農林水産業だけではありません。ない者をみな組合に入れて、発言力だけ多くして、結局ある者はみなとられてしまうということだから、完全な者は入らない。入らない個人には貸さないという規定になつている。なぜこれに対して本会期中に貸せるような立法的措置をとらなかつたか、これをひとつ伺いたい。
  52. 湯河元威

    湯河説明員 農林中央金庫は協同組合組織に基きます金融機関でございまして、協同組合と申しますものは、結局どこにも金融機関との取引のおできにならないような、いわば中小業者の方の集団でございます。それを本質としてできました協同組合でございまして、その協同組合組織に基きます農林中央金庫でございます。従いまして、水産につきまして必要なる大資本漁業等に対する融資は、われわれのところでは扱うべきものではございません。また個人に対する融資は、中金が連合体でございますがゆえに、これはすべきものでないのは、中金というものの性格上きまつたものでございまして、法律改正でも、それをおやりになれば、中金というものの性格の根本的な変革になります。そういうことは現在の中金理事長としては申せません。しかしこれを客観的にごらんになります国会等におきましては、それに対して御検討をいただきたいと私は思つております。
  53. 冨永格五郎

  54. 林好次

    ○林(好)委員 いよいよ第十国会も本日終了せんといたしておりますので、時間もございませんから、水産庁長官にきわめて緊急を要する問題につきまして、簡單に要点だけを述べて、御答弁をいただきたいと思います。  最近東京市場に入つておりまする魚の状態を見ますると、四月も五月も数量的には大体同じくらいのものが入つておるわけであります。しかしながら、四月と五月の魚価の関係を比較検討いたしてみますと、大体四月よりも五月は二割方安くなつておるのであります。しかしながら御承知のように、漁業資材というものは非常に古くなつておりますし、また労働賃金においても、現在の社会情勢におきましては、賃金は上つておるような現況であります。従いまして漁業経営というものはまことに困難を来しておる、すなわち安定をしておりません。従つて水産庁としては、この魚価対策についていかなるお考えを持つておるかということを、まず一点お伺いしたい。  さらにまた現在の荷受け機関、及び荷受け機関から現在仲買い制度が復活いたしておりますが、現在の荷受け機関あるいは仲買い制度というものは、もちろん万全とは申し上げませんけれども、一応その段階まではよろしいといたしましても、その仲買人から分化いたしました小売価格というものは、市場価格が非常に安くなつておりましても、私どもが家庭で魚を貝つてみますと、ほとんど下つておらぬ。品物によつては倍にも三倍にも行つておるような現況であります。従いまして、これはいくら漁民が犠牲を払つて安く売つても、庶民階級は非常に高い魚を食つているということであつて、従つて生活面にも非常に大きな影響があり、また消費も非常な減退を来しておると私は思うのであります。しかしながら、現在の日本の水産の生産の状況におきましては、再び統制をするようなことはおそらくない。私はこのように考えておるのでありまして、今日市場法もすでに改正せんと水産庁では考えておられるときでありますので、私は自由経済の建前から考えますならば、やはり戰前のように、六大都市と申しますか、大きな消費都市におきましては、東京都で申しますならば、都庁が相当の犠牲を払つて、そうして公共性を帶びた末端の施設、すなわち公設市場——公設市場は戰前には東京市におきましても、主要な場所には数箇所を設置されておつたのでありますが、しかしながら戰争中統制経済によりまして、そのような姿は全然なくなりまして、現在一箇所もないような状況であります。私どもは、水産庁ではそれぞれ東京都庁なりあるいはその他の大きな消費郡市の各機関に連絡をされまして、すみやかに公設市場施設をすべきである、このように考えているわけでありますが、この二つの問題につきまして、水産庁長官のお考え方を伺いたいと思います。
  55. 冨永格五郎

    冨永委員長 林委員に申し上げます。午後委員会を続行いたしますから、その機会に御答弁を申し上げます。大体午前中の各委員の御質疑の水産金融に関しては、この程度で打切つておきたいと思います。  湯川理事長に申し上げます。今日あなたの御出席を求めて、水産金融について種々意見を伺いましたが、漁業権証券金融については、現実的には必ずしも満足すべきものがなかつたので、委員各位から具体的な意見を承りたいと要求されておりますが、近い機会に委員会を開きますから、よく御検討なされまして、御意見を発表していただきたいと思いますから、この機会に私より希望を申し上げておきます。  午前中の委員会は大体この程度で一応休憩いたしまして、午後二時から再開いたしたいと思います。     午後零時五十二分休憩      ————◇—————     午後二時二十分開議
  56. 冨永格五郎

    冨永委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  午前の林委員に対する答弁を水産庁より願います。
  57. 藤田巖

    藤田政府委員 林委員から御質問のございました点についてお答えを申し上げます。  第一に魚価対策いかんということでございますが、これは、御承知の通り、現在は魚については統制がすべてはずれておりますので、これを統制的措置によつて維持するということはできないのであります。私ども考え方といたしましては、やはりこれは協同組合の力によつて、でき得る限りこれを有利に売る、あるいはまたその魚の高度利用というふうなことを考えまして、魚価を安定させるということにして行くほかはないと考えておるわけであります。さような方向に向つて、私どもといたしましては現在研究を続けておるわけであります。  なお第二点の、東京都に公設市場的なものを設けてはどうかという御意見でありますが、御承知の通り、従来も東京都においてこの試みはあつたのでありますが、大阪の消費者と東京の消費者は大分その考え方が違うのであります。いわゆる魚の買い方についても大分違うという点があるように考えられますので、従つて東京においては、消費者も公設市場的なものを盛り立てこれを利用するというふうな点が非常に薄い関係上、なかなか伸び悩んでおる点があるのでありますが、私どもといたしましては、これはけつこうなことだろうと思いますので、今後ともこの方向に向つて研究して行きたいと思つております。
  58. 松田鐵藏

    松田委員 関連して申し上げますが、先ほど林委員からの質問の問題は、けさほど私が農林中金理事長質問したことに関連があるのであります。要するに魚価というものは、いつが一番高くて、いつが一番安いかということである。これは日本の経済面ばかりでなく、慣習からいつて、一番安いのは五月、六月、七月なのであります。二月と八月が魚屋の最ももうかるときであり、一番魚の安いのは五月、十一月なのであります。これは長い間の日本の経済また慣習から言つてかように決定づけられておるのであつて、この六月、七月というものは、全国の定置漁業でものべなわでも、あらゆるものの盛漁期であつて、今日文化が発展して、冷蔵庫なり加工工業ができて、これを各地において保存されておるのが五月、六月の魚である。そして全国で一番漁獲高の多いのがこの時期であるがために、安いことはきまつておる。秋口になつて十月から十一月にかけてまた全国に漁獲がふえるのであつて、この時期も安いことはきまつております。しかしこの時期の価格と夏場の価格というものは、同じ安いにしても單価が違うものであります。そこで高度利用——冷蔵庫をつくるなり、加工工場をつくるなりということの必要性が、これを調整するために必要なのであつて、かつて統制経済の当時、夏期対策として国が補助まで出して集荷をしたということは、八月になればあらゆる漁場は切り上げられて、沿岸で魚は取れないときである。かようなときにおいて魚が足りないから、ないもの高が原則であつて、物が一つでもなくなればいかなる物でも足りなくなる、一つでもふえて来ればすべての物がふえて来る。これは経済の常道なのであります。ゆえに高度利用の必要があり、安いときにこれを保存し、加工するということが、今日の漁業経済の安定に資するということになり、これが今までの投機的な漁業として、一般国民から軽視されておる漁業を、まじめな軌道に乗せ、経済の安定した漁業経営ということになるがゆえに、ゆれゆれは高度利用の必要性をも説いておるのでありますが、今日まだその普及が全国的に行かない。そこで農林中金なり水産庁のあつせんによつてその経済を安定させ、また幾分なりとも零細漁民を救う方法を立てなければならない。これは一年や二年でなく、相当長い間續く問題であると思います。こういうことを十分に考えていただかなければいけない。それからまた小売問題に対しては、これは第五国会から常にわれわれが申し上げておることであり、あなたの次長当時においてもこの問題が論議されておる。しかしてわれわれの希望が実現することは間近かにある。間近かにあるということは、今まだその成立を見ない三億五千万の市場に対する融資が論議され、今着々その方向に進んでおるが、かような方法ではとうてい市場改革なんかできるものではありません。六大都市は全国の漁獲の四割を消費するのでありますが、長い間の統制経済当時からの焦げつき、また荷受機関の赤字を整理することが一番肝要であるがゆえに、通常国会においては、国が三億、各都市が三億または二億、業者一般が四億五千万補償する。たとえば東京都の三億五千万に対して国が一億、東京都が一億、業者は一億五千万を補償して、あの整理もつともつと嚴重に行うという方針を立てなかつたならば、とうてい市場の整備などはでき得るものではないと考えておるのであります。それからまた小売問題に対してはなおさらのことであつて、私どもがこの前から申し上げております市場口銭の七分の値上というものは、水産委員会においてあまたの人々が反対しておりまするけれども、私はこの七分というものは反対する理由がないと思う。何のためかといえば、その一分なら一分というものを業者がとつてはいけないけれども、これらによつてその資本の蓄積をし償還の財源にして、現にあの京成電車のデパートにおいて一日六百貫も七百貫も、市場価格とほとんど大差のない価格で販売しておるが、これは先ほど林議員が言われたように、三倍も四倍もの商い値段で販売しているのと違つて、真に良心的に、昔の薄利多売式の方法をもつて販売しておる。そのようなことを行う機関にして行けばいいと思う。要するにあそこのデパートでとつておるような方法を、東京都内において三十箇所・五十箇所でもやつて行つたならば、二千人か三千人かの人々がたとい失業しようとも、五百万、六百万の東京都民がこれによつて幸福を来し、消費と販売と相まつことができる、かように考えておるのでありまして、軍なる感情とか、それからまた行きがかりとかいうことを排して、真にまじめに論議して行かなければならないという考えを、常に私は持つておるのであります。この点水産庁においても十分御研究を願いたいと存ずるのであります。     —————————————
  59. 冨永格五郎

    冨永委員長 この場合、小委員長各位の御報告を求めます。永田委員
  60. 永田節

    ○永田委員 漁業経営安定に関する小委員会の小委員長といたしまして、第十回国会中における所管事項の主たる審議の経過並びに動きにつきまして御報告申し上げます。  私の所管は漁業法の一部改正、魚類中央卸売市場法、輸入資材、水産増殖、漁業監督取締りに関する事項であります。  まず第一の漁業法の一場部改正の件でありますが、二月十日、十三日、三月八、九、十、十二日と六回にわたり連続して小委員会を開き、漁業法中の、ます網漁業については、定置漁業に該当する水深二十七メートル以上のものであつても、瀬戸内海に限り共同漁業とすること、及び入漁権は漁業協同組合及び同連合会のみに限り享受できること、並びに有毒物の使用制限、内水面漁場管理委員と都道府県の議会の議員の兼職禁止を主たる内容とする漁業法の一部を改正する草案を起草して、三月二十八日議員提出の法案として本会議で可決したのであります。但し漁業法を改正して、小型底びき網及び旋網漁業の整備が、現在水産問題として最大な関心が寄せられているのでありますが、GHQスケンク氏の勧告もあり、小委員会も、前後六回の小委員会と、数度の協議会を開いて愼重審議いたしたのであります。そしてこれに対する整備計画は一応完了まで行つたのでありますが、相当大きな予算を伴うため、現在当局と折衝中にて、未解決のままであるのであります。  第二の中央市場法の問題でありますが、昨年九月市場卸売人側より販売手数料の五分を七分に値上げを要求したのに端を発し、生産者側の現下の漁業不振、魚価低落の機に手数料値上げは不当として反対を主張し、開設者より水産庁、最後に国会へと本問題は波及し、その事態解決に懸命の折、開設者の手数料七分に決定するという一方的指示があり、紛争はますます高まり、最後に農林大臣の強権発動による六分で一応終りを告げたように見えましたが、市場法を改正すべきであるとの意見が卸売人、生産者双方より出たため、本委員会においてもこれを取上げ、冨永委員長は、六大都市の立場を専門員室をして調査せしめた結果、ある程度改法の必要を認められたのでありますが、諸般の事情により当分の間現行法で行くことになつたのであります。  第三の資材の問題でありますが、皆様の御努力によりまして、重油等石油類は一年間の免税となりましたが、価格調整公団の廃止により、石油類の価格に地方差ができたのであります。  第四の水産物の高度利用の件でありますが、本委員会で特に私と松田委員がたびたび発言し、証人も喚問した旭冷蔵工業に対する見返り資金の不正融資の件は、いまだ結論が出ていないのでありますから、さつそくに事件のてんまつを明瞭にすべく、本委員会に要望いたしておきます。また海藻の高度利用の委託試験費の配分の件も、依頼工場の選定は非常に不明瞭であり、疑念を持つところが多いのであります。それは審議会のメンバーに左右されているように思われるのでありまして、国民の血税による国費の使途を正当にならしめるためには、この問題も白紙に返して、再調査して計画選定されるように要望いたす次第であります。  第五の水産増殖につきましては、昨年北海道の鮭鱒孵化事業は道庁より国営となつたのでありますが、内地のこの種の孵化事業も、水産資源増強の点より国管にする必要があると考えるのであります。また浅海増殖、特に浅海干潟の点でありますが。小型機船底びき、旋網の整備の転向の一手段と、漁村の更生的漁業の見地より、水産庁は積極的に浅海の広大なる利用に乗り出すよう要望いたしましたところ、松任谷部長より、来年度より相当予算を編成・本格的に乗り出すことの言明があつたような次第であります。引続き委員会でこれが達成まで努力されるように希望いたします。  最後に漁業取締りに関する件でありますが、水産資源保護の立場から、さんま漁業の取締り規則の改正が一箇月前から提案され、この問題をめぐつて北海道と千葉以西の両端地域をどのように規正するかは、非常にむずかしい点でありますが、回遊魚のため採捕時期の地区的考慮に愼重を要する問題で、適正なる解決によらねば改悪となるおそれがあり、紛争のもとになると考えられますゆえ、各関係者の打合せの上で善処を望みます。  以上私の所管事項に関する本国会中の動きと、未解決事項の本委員会への引継ぎ審議の要望を簡單に述べ、御報告を終ります。  次に、先般の本委員会において、水産庁から御提示になりました「昭和二十六年度補正要求額一覧表」の総額五十七億二千五百余万円の中に、真珠養殖事業振興費として一億一千八百万円の予算が出されていることであります。もちろんこの真珠事業は国策としてわれわれも関心を深くするものでありますが、巷間伝えられるところによりますと、遺憾な問題あるいは不法行為等幾多忌まわしき風評があるのであります。これはまだオーケ治も参つておりませんし、法案も通過しておりませんのに、堂々と本委員会に出されているのは、水産庁といたしまして多少行き過ぎではないかと考え、あらかじめ警告を発しておく次第であります。
  61. 冨永格五郎

    冨永委員長 川村委員の御報告を求めます。
  62. 川村善八郎

    川村委員 私は水産資源に関する小委員会委員長とし、さらに沿岸漁業基本的復興対策に関する小委員会委員長として、二つの問題を御報告申し上げます。  まず第一に、水産資源に関する小委員会の経過及び結果を申し上げます。  御承知の通り、日本の漁業資源というものは、あらゆる資源が今日減少しておることは事実であります。この委員会は第九回国会より引続き設置されまして、私が小委員長をやつて参つたのでありますが、この資源の調査を十分きわめまして、漁業制度改革並びに今後の漁業経営の資料にしなければならぬということから、数回にわたつて会議を開き、さらに委員長みずからがその資料を集めて検討して参つたのであります。その結果におきましては、特に底びき資源が非常に不足になり、すなわち枯渇に近いところまで参りましたので、まず小型底びき漁業の大整備をしなければならぬ。同時に、さらに中型並びに大型の機船底びき網の整備も必然的に行われなければならぬということをやり、さらに先ほど永田小委員長より申されました通り、さんまの漁業にいたしましても、また旋網漁業にいたしましても、どうしても回遊魚に関する漁業の整備もして行かなければならぬということで、それぞれ関連性を持つところの委員会において法律の改正をしなければならぬ、漁業法の一部改正もあり、さらに漁業資源に関しては、現在行われておりまするところの資源の枯渇防止法だけでは、とうてい漁業資源についての問題の解決ができないから、これをさらに一歩前進をいたしまして、保護育成をはからなければならないというので、鈴木小委員長とも連絡をいたしまして、水産資源の保護培養に関する法案を立案いたしまして、関係筋に提出させておるのでありますけれども、いまだにそのオーケーが参りませんので、まだ本委員会には提出の運びになつていないというようなことに相なつておりますことは、まことに遺憾でありまするけれども、結論的に言いまするならば、漁業資源は非常に減つておるのであるから、今度の漁業制度改革におきましても、またさらに漁業法によらざるところの漁業の問題につきましても、全面的にこれを再検討して整備をして行く。漁業資源の枯渇にならないように、むしろ一歩進んで保護培養育成等をして行かなければならないということの結論に達しておるのであります。以上は漁業資源に関する小委員会の経過並びに結果であります。  さらに沿岸漁業の基本的復興に関する小委員会といたしましては、御承知の通りダレス特使が参りまして、関係当局から二月の十四日に日本の漁業に対して五ポイントの強い勧告があつたのでありますが、これらも先ほど申しましたように、日本の漁業資源が非常に不足になつたので、漁業経営安定ができないから、どうしても大幅な日本の漁業に再検討を加えて、あるいは転換させ、あるいは沿岸漁業の増産のために、それぞれ相当の立法もし、あるいは相当の予算化もして救つて行かなければならぬ。さらに漁業資金についても、それぞれ整備並びに育成強化のために、どうしても相当な予算を計上しなければならないということで、それぞれ会議を開きましてその結論を出そうといたしたのであります。しかしながら一方には漁業法の改正をしなければならぬということになつており、あるいはその改正に伴つて国家も財政の裏づけをなして整備をして行かなければならぬというようなことになつておりますので、なかなかその結論を出すことができなかつたのであります。従つて今期国会の終末の後において、それぞれ各委員が手わけをして調査した結果において結論を出さなければならないことになりまして、今や本小委員会におきましては、完全に執行するにはかくしなければならぬという結論には至つておりませんことは、まことに遺憾であります。御承知の通り、先般以来漁業制度改革資金についてはいろいろ議論をしておりますけれども、まだ結論を得ておりません。  それからさらに瀬戸内海の小型機船底びき網の整理をして、転換せしむべきものはさせ、あるいは漁業を継続せしめるものは、安心をして漁業経営せしめるような方法も講じなければならぬ。あるいはさんま漁業の問題にしろ、旋網漁業の問題にしろ、それぞれ沿岸漁業を基本的にどう復興して行つたらいいかというようなことも議論にはなつておりまするけれども、いかんせん国家財政の裏づけが今日確立しておりませんので、本委員会としてはその結論を見出すことができないのであります。しかしながらわれわれは閉会中といえども、この沿岸漁業の復興をはからなければ日本の漁業の将来に非常な暗影を残す、と同時に、これと並行いたしまして、漁業制度改革による漁業経営の安定を期さなければならないことに相なつておりまするから、今後本委員会も継続いたしまして、所期の目的を達成しなければならないという考えがあるのでありまするから、委員長におかれましては、今後とも本委員会は、どうしても五ポイントの線に乗つて沿岸漁業の基本的復興のために何らかの処置を講ぜられんことを、特に私からお願いする次第であります。  以上両小委員会の小委員長として御報告いたした次第であります。
  63. 冨永格五郎

    冨永委員長 石原委員に報告を求めます。
  64. 石原圓吉

    ○石原(圓)委員 水産行政充案に関する小委員会の小委員長といたしましてこの、第十回国会において検討いたしました諾件について簡単に御報告申し上げます。  私の担当いたしましたおもなる問題は、講和問題に関する件、水産省設置に関する件、真珠養殖事業振興に関する件。水産資源保護に関する件、以上四件であります。  まず第一の講和問題につきましては、国民の最大の関心事でありまして、本年一月、ダレス特派大使の再度の来朝により、いよいよ具体化して参りましたので、講和条約締結にあたつて漁業協定等に関して鋭意検討いたしました結果、御存じのように、去る二月五日、ダレス大使に対し、本委員会の決議を経て、講和条約の内容としての漁業問題については、公海においては原則的には絶対的に自由であるという根本理念を確立すること、及び漁業協定締結の基本的趣旨等について懇請したのであります。このことにつきましては、その直後の二月七日、吉田首相とダレス特使との往復文書及びその後のマグナソン上院議員の来訪により、一応のアウト・ラインは得られたと存ずるのであります。  次に水産省設置に関してでありますが、大問題は、その重要性にかんがみ、第八回国会以来愼重に検討して来ている問題でありまして、すでに水産省設置賛成署名者は六十九万五千五十一名の全国津々浦々の漁民はもちろん、衆議院におきましては、各党各派の議員を含めて二百八十九名の過半数が署名しており、参議院におきましても百五十九名の絶対過半数の署名を得ているのでありまして、水産省設置法の成案を得ましたので、衆議院に正式提案する考えでありましたが、種々の事情からこの提案を差控え、参議院より同一内容の法案が三月七日議員提出として八十七名の議員より提案されたのであります。本法案が付託になつた参議院内閣委員会におきましては、愼重審議を要するとして本国会においては結論を得られず、継続審議のやむなきに至つた次第であります。  最後に真珠養殖事業振興及び水産資源保護に関しましては、たびたび小委員会を嗣ぎ、愼重に検討した結果、立法措置をとることに決定を見、その成案を得、三月十二日及び五月四日、それぞれ関係方面のオーケーを得べく仮提出いたしたのでありますが、予算関係にて関係方面の了解を得るに至らず、数次の交渉にもかかわらず、本国会には提案することができない状態であります。この二法案は、いずれもわが国水産関係の司要法案でありますので、次期国会には各位の御協力を得まして、ぜひとも成立を期したいと、存じている次第であります。  なお特に水産資源保護法案につきましては、日睫に講和を控えるわが国水産界としましては、大国会においての成立を期したのでありますが、それが達し得られなかつた次第であります。つきましては去る五月二十八日、委員長並びに小委員長である私との連名をもつて、総司令部マーカツト経済科学局長あて次のような趣旨の書面を送つたのであります。書簡の内容を朗読いたします。  一九五一年五月二十八日   衆議院常任委員長 冨永格五郎君   同委員会委員長 石原 圓吉君  連合軍最高司令部  マーカツト経済科学局長殿   衆議院常任委員会水産委員会は一九五一年五月四日連合軍最高司令部に対して水産資源保護法案のオー・ケーを求めたが、今日に至るまで未だオー・ケーに接しません。   元来この法案は一九五一年二月十四日天然資源局ヘリントン水産部長が、「日本の漁業は重大なる危機に武面しており、これを打開するためには五項目の対策を案行せねばならない」として水産資源の保護に重点をおいて日本政府に勧告されたが、この主旨は更らに吉田総理大臣に対して改めて勧告されたのであります。   この勧告により当水産委員会は、現下本邦水産界の実情、特に講和会議の開催目睫に追まる今日、国際漁業の秩序を守り国際間における日本漁民の信用を恢復するためにも水産資源保護政策の緊急確立を痛感し、急遽本法案の成案を得たものであります。然も本法案に関連する経費約四億円はすでに国会の決議を経たる二十六年度の確定予算に計上されております。   これ等の予算を総合的に且つ最も効果的に実施するためにも本法案の速かなる制定を必要とするものでありますが、三週間を経過して未だ連合軍最高司令部よりオー・ケーを与えられず、このために第十回国会に上程することを得ざるに立至りましたが、何卒、勧告に忠実ならんとする国会の意思を諒察せられ速かにオ一・ケーを与えられるよう切望する次第であります。  (資料)昭和二十六年度予算案に計上されている軽輩の中、本法案と関連する費目を示せば次の通りであります。これはあとより説明して附加します。  以上が私の報告とするところであります。
  65. 冨永格五郎

    冨永委員長 なお水産金融に関する小委員長田口委員漁業制度に関する小委員長川端委員は本日欠席に相なつておりますので、適当な機会にその報告を求めることにいたします。  以上をもつて大体委員会の質疑は終了いたしたもののように思われるのでありますが、この程度で散会……。     〔「さんまをやろう」と呼ぶ者あり〕
  66. 小高熹郎

    ○小高委員 先般来問題となつておりまするさんま問題につきまして、私どもは鋭意これが研究に当つて参つたのでありまするが、あくまでもさんまは全国的にこれを見るべきものであつて、局部的に重点を置いて判断すべきものでないというような観点から、これは私どもの府県の業者の意見を聴取しあるいはまた私個人の研究をも加えたのでございまするが、解禁日は大体において十月一日とすることが妥当であろうという件と、いま一つは全国一本の見方をするということ。しかしながら現在北海道の状況を見ますと、十月一日以前にさんまが北海道周辺にいる、とれるではないかというようなことを考えますとき、北海道には一応特例を認めることはこれは妥当であろうと考えるのでございますが、その際北海道のトン数は十トン以下とすることを希望いたすのであります。同時にこの数量におきましても、おおむね先般数字がいろいろ検討されましたが、私は百四十四万貫程度にしていただきまして、さらに最終日は一月末日とすること。十二月十五日という案もあつたのでありますが、十二月十日ごろから月夜に入りますので、実際問題としては十二月十五日ということになつても十日近所で終漁してしまう。これは茨城、千葉及び三重、和歌山にかけます状況を思いますというと、あまりに漁師の期待を裏切る結果に相なりはせぬかということから、私は一月末日を終漁日と、主張いたしたいのでございます。これにつきまして水産庁当局はいかなるお考えを持つているか、一応伺いたいのであります。
  67. 松田鐵藏

    松田委員 関連して……。ただいま小高委員から御意見がありましたが、さんまの問題については今までいろいろと論議されているのでありますが、まず私はどういう意味合いで北海道に十トンというトン数をきめられるかという、その理由がわからないのでありまして、千葉県にも十トンの船以上の船はないのか。千葉県は十トンでやはりやられるのか。こうした事柄にただいまの小高委員の御発言の中で私一番疑念を持つものでありまして、この占ひとつ小高委員から御説明を願いたいと思います。
  68. 冨永格五郎

    冨永委員長 これは委員各位にお諮り申し上げますが、一応委員の御所目を委員会の速記にとどめて承ることにいたします。ただいま松田委員からお述べになりました点等につきましては、協議懇談の席上でお話合いを取進めて行きたいと思います。そういう取扱いをすることはいかがでございますか。     〔「賛成と呼ぶ者あり〕
  69. 冨永格五郎

    冨永委員長 そういうことにいたします。次は田淵委員
  70. 田渕光一

    ○田渕委員 さんまの漁業取締規則要綱というものを水産庁からお示しになつているのであります。この要綱をそのままとするか、あるいはこれに修正を加えるかという問題につきましては、後刻懇談会できめたいと言いますから、これに対しては修正を要することを希望いたしておきます。ただ小高委員からもお話がありました通り、ここ数年間というものは、三陸以南でさんまがとれていないにもかかわらず、漁船がふえ、水揚高がふえていると、こういう反対の資料が出て参りましたので、これに対する科学的な研究ももちろん必要であり、またいろいろ検討を加えなければなりませんが、現在さしづめわれわれの観測するところ、想像するところでは、少くともこの北海道と三陸の間において、集魚燈による棒受け漁業、ほとんど魚族の繁殖保護と水産資源の確保というような大きな水産政策と相反する漁業が行われているということを発見したのであります。これに対してこの要綱では棒受けを禁止するというようなことは出ておりませんので、これを率直に申し上げたい。これが一点であります。それから北海道に特に特例を設けるのならば、三陸以南においても特例を設けるということをお願いしたい。そういう点。それから特に北海道に対してひとつわれわれとして重大な注意といいましようか、水産庁が現在北海道庁に対して行うところのわが党政策が、北海道知事によつてさえぎられているというかつての四年間の歴史を見まして、はたして北海道知事の許可を要するというようなことで中央政府政策がほんとうにできるかどうかという点を疑うのであります。かような点から、北海道の知事の許可漁業とするというような点に対しては、相当地方で詳しくこの範囲をきめておかないといけないのじやないか、こういうふうな点も考えるのであります。またこの水揚高を小高委員から百四十万貫で一応北海道に要望するという御意見もありましたが、はたしてこの水揚高が百四十万貫で北海道に取締り規則でやらして行けるか、守れるか守れないかという問題であります。今日沿海漁業をやつておりますところのまぐろが、無線電信で通信をし合つて、何百尾とれたというのが、その一部分のものが沖でやみに流れて、水産業者は実際利益を上げておらないということを聞いております。これらの点から見ましても、あるいは水揚高を北海道に百四十万貫としても、それ以外に沖でやみに流れるという危険性があります。現在の海上保安庁などの機構によつては、とうていわれわれはこの取締りに安心をして行くことはできないのであります。かようないろいろなことがありますので、大体主たるところを申し上げましたが、爾余のこまかい問題につきましては、懇談会で十分打合せをして、ひとつこのさんま漁業の問題をまとめたいと思うのでありますが、ともあれこの数年間三陸以南はとれない。福島以西、茨城、千葉、神奈川、静岡一三重、和歌山、この水揚高の少いという点は、少くともこの棒受集魚燈による濫獲によつてとれないと思うのでありますから、これはどうしてもこの際に——科学的の調査では逢うございますから、科学的調査をする前に、まず本年はこの棒受集魚燈による漁業を禁止する。そうしてみるならば、あるいは海潮により、あるいは黒潮その他潮流関係で、回遊魚がどんなぐあいに来ておるかという、科学調査以前にこの実績が現われて来ると思うのであります。かような点を強く要望いたしまして懇談会に譲ります。
  71. 川村善八郎

    川村委員 さんま漁業の取締り規則制定につきましてずいぶん長い間水産庁でも苦労され、あるいは関係官庁でもいろいろ苦労され、業者はそれぞれ今日非常な関心を深めて、どうなるかということで霊そらく心配をしておるだろうと思います。本委員会におきましても、数度これを取上げてまだ結論に達しておりません。しかし漁期はまさに刻々と迫つておりますので、これはどうしても解決をつけなければならぬと思うのであります。そこでさんく、太平洋岸におきますところの北海道から和歌山県までの問題であります。従つて非常に大きな問題でありまして、これを一律に期間なり漁獲量なりを定めるということは、おそらく容易でなかろうと思うのであります。北海道には北海道の特殊事情があり、千葉県には千葉県の特殊事情があり、和歌山県方面においてはまた特殊の事情がありまして、その特殊事情というものは、もう多種多様にわたつておると思うのでありますが、しかし一応の基本の線を立てて、どうしても基本の線だけで行かない部面に対しましては、特殊な事情を勘案いたしまして期間なりその他漁獲量の制限等も付して行かなければならぬというようなことを私は考えております。たとえて申し上げるならば、北海道には毎年八月になると、もう根室、釧路方面の沖合いには群集しておる。これをはたしてとらずにいるかどうか、またとらせないことがいいか悪いかといつたようなことも、北海道のさんま漁業経営している人の立場に立つてみると、これは相当考えなければならぬ問題である。さらに、しからば期間において、千葉方面において十一月までにかりに制限したとしたならば、千葉県沖合いに行つた時分には、もうすでにさんまをとられない時期に入る。従つてやはり小高委員が言われたように、ある程度まで、終漁期を北海道に早めるという特殊事情と同様に、おそめるというようなことも考えなければならぬでありましよう。いわんや和歌山県方面におきましたならば、それ以上の延長もまた必要ではなかろうか、こうしたようないろいろの特殊事情があるのであります。ここにわれわれが本委員会において速記をとつて議論をしておつたところで、とうていこの解決を見ることはできない。幸いに本日この委員会が終りましてから、懇談会を開いて決定するということに至りましたことは、私はまことに時宜を得た処置だと考えております。  そこで私はまず大局的に申し上げますと、十月一日から一斉にさんま漁業の解禁をするということにつきましては、これは反対するものではありません。さらに漁期の終末は十二月二十五日ごろ、これ以後は禁止するということについても異論はありません。しかしながらそれのみではいかない部面があります。たとえば北海道の漁期の問題、さらに今小高君が言われたように、十二月一ぱいでかりに漁期を制限して、その後魚が来た場合にはすでにとれないということになりますと、漁民相当困る問題もできますので、いろいろ御意見がありましようけれども、これを原則といたしまして、まず最も早い漁期のところと、最も漁期のおそいところと、期間の制限を緩和して行くべきではなかろうかと考えるのであります。さらに北海道の問題を申し上げますと、小高君から、十トン以下は八月十五日からこれを認めてもいいというようなことを申されておりましたが、しかし北海道は、御承知でもありましようが、小型手繰り漁業の転換、すなわち内地でいいますれば小型機船底びき網の転換は約千隻ほどあるのであります。これらの転換漁業に、政府は要綱を出して、資金あるいは資材を心配してやるから転換をしろ、道庁でも、資金なり資材なりは十分心配してやるから転換しろ、こういうふうに言われて、業者も、またわれわれもそれを真実に受取つて転換するよう指導もしたのであります。ところで今や転換いたしました船には、政府は何らその援助がない。道庁はわずかに四万円というのをついせんだつて交付したというような実態であります。従つて今の小型機船底びき網の転換漁業者はまことに困るわけであります。もちろんこれらはほとんど大半は十トン以下でありますが、中には十五トン以上、また二十トン以上のものも、実は違反船としてあつたのであります。こうした違反をさせたくないから、整理しなければならぬというので、その整理をしたのでありますが、現在は行先がございません。転換漁業はありません。さけ、ますの流し網をいたしますのにも、資材は多大にかかりますし、また資本的にも容易でないということから、転換されておりません。従つてこのさんまの漁業に転換させることは、使う資材も少くてしかも船も適当な船が多いのでありますから、この場合北海道に限つては二十トン以下であるならば、これは許していいのじやなかろうか、私は転換ということを中心にいたしまして、さように考えておるのであります。これらについてもいろいろ議論がありましようが、いずれにいたしましても、皆さんの御意見を聞いて、水産庁はその決定を与えるでありましようから、後刻細部にわたつては、懇談会もしくは協議会でもつて意見を述べたいと思いますが、要は大局は解禁日を一緒に、それから終漁期も一緒にすべきである。それからトン数に驚きましてもそれぞれ相当の検討を加えて、濫獲にならないようにすべきである。従つてある一定量の漁獲制限もやむを得ないのじやなかろうか、こうしたような議論の上に立つて、さらに特殊の事情を勘案して、やはり地方の特殊性を若干認めて行くべきじやなかろうか、かように思いますので、私の意見を申し述べておく次第であります。
  72. 小松勇次

    ○小松委員 さんまの問題につきましては、後刻いろいろ打合会があるそうでありますから、この際私は水産庁の方にちよつとお尋ねしておきたいのであります。この要綱を見ますと、七のところに出漁証明制度を設けるということになつておりますが、この出漁証明制度というのは、具体的にどういうようなことをするのか、具体的な行政方針をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  73. 高橋泰彦

    ○高橋説明員 この七番目に書きました出漁証明書と申しますのは、かつてさんまの取締りについて戦前に経験したことでございますが、これは解禁日に出て行く船に対しまして証明書を出しまして、沖合いにおいて解禁日前に操業することを防止したいという趣旨の証明書を出したいということでございます。従いまして、解禁日後当分の間は出漁証明書を持つていない漁船の水揚げは禁止するというような考え方から出発した証明書でございまして、なお出漁証明書を交付する際には、いろいろな禁止事項、たとえば何トンといつたような線を設ければ、それがはたして守られているかどうか、それから先ほどいろいろ問題になりました光力を制限しておりますが、その光力が、はたして守られているかどうかということをもあわせて検査をした上で証明書を差上げてやつたらどうかというふうに考える次第でございます。
  74. 小松勇次

    ○小松委員 では元通りなのですね。
  75. 松田鐵藏

    松田委員 私の意見を簡単に申し上げます。まずさんま漁業に対する私の意見は、何のためにさんまに対して、かように各府県において、その利害得失のために議論を闘わして今日まで来たかということであります。これは自己の漁業を完全に遂行したいがためであります。これに盡きることだろうと思うのであります。しかして今や日本の漁業に対して、五ポイントの勧告がある。この勧告案なるものをお互い水産委員は納得しておるかどうか、また業者に対して納得さしておるかどうか、この問題だろうと私は考えるのであります。しかもこの要綱から、また皆様方のお話から行きますと、あらかじめ農林大臣が水揚げの数量を定める、そうしてその数量が一定の限度まで来たならば、これを期間内といえども禁止する、かような案にも、なつておるようであります。まずここにおいて、今日のさんまの実態は。しからばどういうことになつておるかということを、よくお互いが知らなければならぬ。これは一も二もなく、南京さんまというような小さなさんままで漁獲されておる。そこでその価格というものも非常に下落をしなければならないような状態がある。さんまの大漁のために、そのさんまのみが漁獲が下つておるかといつたならば、そうでなく、その他の漁業に対してもそういうような影響がある。あらゆる日本全国の漁業に対して、さんまの漁獲のいかんによつて影響がある。これはまつたく周知の事実であります。しからばそれによつてこの数量というものが定められる、かように私は判断するものでありますが、何のためにかようにまで考えて行かなければならないか、簡単にこれを解決する点があるじやないか、しかも今や沿岸漁民というものは非常な窮地に陷つておる、その沿岸漁民救済ということも、常にお互いが議論を闘わしておるところである。こうした事柄を総合して考えてみるときにおいて、さんま漁業の現在行つておる漁法というものは、どういうものであるかといつたならば、先ほど田淵委員の言われた棒受網である、しかもこの案にも百トン以上の漁船は禁止する。百トン以上の漁船もこのさんま漁業に従事しておつたものである。また五十トンなり七十トンの船も従事しておつたものである。こうした船は大資本漁船をもつてつておる。そうしてかつおつり漁船であつたりあるいはまぐろ漁船であつたり、機船底びきの漁船であつたり、かような漁船であるのである。決してその他の漁業を営んでなかつたものではない。その時期になつて、副業としてこれが有利であるからさんま漁業に棒受網の漁船として出漁するものである。これがお互いの漁業の経済に成り立つように、適当なるその漁期によつてさんま漁業を営まんとするものである。しかも最も簡易なる棒受網をもつてこれを漁獲せんとするものである。ここに私は論点があると思うのであります。何のために北海道に、十トン以内の船でなければならないか、また百トン以上の船を禁止しなければならないか。要は南京さんまを何のためにとるかということは、棒受網なるがゆえにとるのであります。明らかに天然資源局から五ポイントによつて警告を発せられておるではないか。われわれは資源維持法をも次の国会に論議しなければならないではないか。こうして法案も論議する、勧告案が出ておる。しかるにわれわれが何のためにこの稚魚である二年生である南京さんまをとるべく棒受網をもつてこのさんま漁業をやろうとするか、ここに私は非常な疑惑を持つものであつて、お互いが水産委員という国民最高の立場の機関にあつたならば、選挙民にこびてはいけない、真の日本の漁業に立つて行くべきである。日本の漁業の行くべき道をわれわれの手によつてきめて行かなければならないのであります。たとい次の選挙に、われわれがそのために落選しても、あえてそれをわれわれは懸念すべきものではないと思う。何のために勧告案が出ておる、何のために魚価維持対策を論議するか、また沿岸漁民の今日の苦しい立場をわれわれは常に議論しれおります。かような点を考えて行つたならば、この五ポイントというものの終結というものは、私はきまつておるものだと思う。私が先ほど申したように、魚の価格というものは、八月からは高くなるものである。魚が一番不足なときである。そのとき自己の沿岸の沖合に魚群が来て、その魚をとらずに見ておるというようなことは、一体漁師としてできることであるかどうか、またわれわれ水産委員会政策としても、魚価維持対策高度利用ということで、各地に対して冷蔵庫の設置、その資金の貸出しをも研究し、政策に現わしておるではないか。水産庁はもつともつとその方法を立ててやつたらいいじやないか。私は八月一日から十二月三十一日であろうが、一月であろうが、二月であろうが、漁期を制限することは必要ないと思う。但し七月、八月以前は、先ほど申したように、魚の一群安いときでおり、とつて何の意味をなすものではない。こうした観点かち見ても、八月一日から、二月なり三月なりの間に漁期の制限をする必要はどこにあるか。そうして昔とつた流し網漁業をもつてやつたならば、十一トンなり、十二トンなり、十三トンの船で営業をやつて行けるではないか。何のために百トンの船を禁止する必要があるか。五十トン、七十トンの船で流し網をやつて行けるかどうか、実行できないものではないか。そうした大型の漁船というものは、他に漁業を持つておるではないか。その漁業に邁進して行けばいいのである。今や一番資源がない。網に対しては、——綿糸は暴落であります。底知らずの暴落であります。もつともつと暴落しましよう。網をつくることは、あえて心配はないと私は考える。こうした問題から行つて、何のためにあの稚魚を濫獲するか。棒受網をあえて許さなければならない理由があるか。簡単に今まで漁業を棒受網でやつておつたから、この棒受網でやることが一番都合がいいことは、わかつておる。また漁業の進歩であり一ましよう。この漁業の進歩は進歩ではあるが、掠奪的な、侵略的な進歩である。ここに漁業法の精神というものを没却していることを、お互いがよく感知しなければならない。簡單でありますけれども、これまでの私の議論というものは、漁業法の精神資源維持法を出さなければならない今日、零細漁民の失業を救済し、いな小さな漁民の生業を全うするという建前から、時期を八月から二月なり三月まで限定する必要はない。しこうして棒受網を禁止しておる一般漁民の——先ほど川村委員の言われたように、北海道でも千そう以上、千五百そうの小手繰より転換の船もある。かようなものがやつて行つたところで、今までの漁獲の半分よりとれないものであろうと私は考える。船の隻数も何ら制限する必要がなく、そして今までの漁獲の半分に足らない漁獲でもつてやれることだろうと思う。それからまた油の消費量から言つても、棒受網をもつてやるものは魚群を見つけるために、あらゆるところまで行つて、まわつてまわつて歩き、何回となくまわつて、一晩中機械をかけてやつておるものである。流し網をやるのであつたならば。何の機械をかけて置く必要があるか。その網について一緒に潮に流れて魚を漁獲すればいいのである。かような点からいつて、私は田淵委員と同じ意見をもつて、棒受網を禁止して、漁期を八月以降定めずに、日本の零細な漁民全体の営業の立つて行くようにして行くことが、このさんま漁業問題の解決の一番のポイントでないかと考えるのであります。次にもしそれで悪かつたならば、明年度になつてからまたおのずかち別な方法が現われて参りましよう。今日のあらゆる法律案をつくつたその精神からのつとつて、私の議論を進めるものであります。
  76. 冨永格五郎

    冨永委員長 いろいろ御意見があるようでございますが、いかがですか、先ほどからお諮り申し上げました通り、この場合散会して、御懇談をしては……。意見をお述べになつておれば、みなおありのようでございますから……。
  77. 田渕光一

    ○田渕委員 ぜひもう一点……。先ほど松田委員から棒受集魚燈の廃止論を強調されました。この点は私は同感であります。御説の中に、われわれはもちろん水産委員でありまするから、沿岸漁民また水産方面の利益の擁護もしなくてはなりませんが、私は水産委員会においても、政治家として国会に出ておる以上は、もつと大きな観点から臨んで行かなければならぬと思います。私がこれを論ずるのは、決して三陸以西の、あるいは茨城県、千葉県あるいは和歌山県、三重県の利益擁護のために言うておるのではありません。人口の密度というものをたえず施策の中心に置かなければならぬ。そこにおきまして、どういたしましても——小高委員の真摯な論点もそこにある。京浜聞を中心とするところの一千万に近いところの人口の密度、京阪神を中心とするところのやはり一千万に近いところの人口の密度に対する施策を講じて行くということは、沿岸漁民の利益となることはもちろんでありまするけれども、沿岸漁民よりもなお数百倍の、消費者大衆というものの利益をわれわれは擁護して行かなければならぬ。しからばどこにその点を置くかといえば、先ほど松田委員からもお話のあつた通り、油あるいはこの漁期に向つて貨車賃を三割も値上げをしようと国鉄がもくろんでおります。社会党内閣で二倍になり、わが党内閣になつて八割も上げ、さらにまた三割も上げる。このようになつておる。電力料金も上り、石炭も上りして、また貨車賃が上る。こういうような際に、何を好んで棒受集魚燈でとつたものを、高い貨車賃を使つて、この京浜地区あるいは近畿、京阪地区の大衆の密度のある市場に送らなければならぬか。そこらに、われわれは決して沿岸漁民の利益を軽視するものではないのでありますけれども、政治家とするならば、大きく日本国、少くとも大衆の利益擁護して行かなければならぬ。一般大衆、消費者の家庭に、一銭でも安く、十銭でも安いさんまが食膳に上ることをわれわれの理想としなければならぬ。それが大衆の幸福であり、われわれも、ともに福祉を受けるものである。ただ一部の沿岸漁民の利益のために、私は言うておるのではありません。かような意味からして、どうしても私は漁期の問題については一つ考えがある。歴史がはつきり示しております。徳川幕府時代に、あの頑迷な徳川幕府のある将軍が、目黒のさんまはうまかつたということがいまだに残つておる。また考えてみても、目に青葉、山ほととぎす初かつお——五月にかつおのとれることはきまつておるのである。さんまという字から見ましても、秋の魚と書いておる。これが八月の土用しとれるのだつたら、何で秋の魚と書くのだ。歴史的に考えて……。おそらく私はこれが北海道で土用にとれておつたならば、さんまと呼ばなかつたろう、盆魚と呼んだろうと思う。それがゆえに、私は大衆の利益を擁護するために言うのであつて、沿岸漁民の利益はもちろんでありまするけれども、それよりももつと隠れた大きな、人口の密度の多いところの大衆消費者に、安い魚を食膳に供しようという大きな理想を持つておる政治家でなければならぬと思う。ここらでもつと大きな観点からお願いしたいと思います。
  78. 小高熹郎

    ○小高委員 ただいま棒受網すなわち集魚燈漁法による漁法の禁止論が出ておるのでありまするが、私は来年度の意見としては一応これを取上げるものでありまするが、本年差追つた、われわれが論議しておるこの対象は、集魚燈の禁止というようなことを持ち出すならば、これは根本的にこの要綱を御破算にしてかからなければならぬという観点におきまして、現在漁民が非常に窮乏しておるということは各委員意見が一致しておるのでありまするが、十キロの集魚燈を五キロに直してさえもなかなかこれはできない問題であります。いわんやこれを禁止するということになりますと、それにかわるところの漁具を——いくら漁網が安くなる見通しとはいえ、当然これはなし得ることではない。そこで本年は現行の漁法において、先ほど田淵委員が言われる通り、どうしたらこの要綱によるところの、紀州沖においてりつぱなさんまがとれる結果か生まれるかということが力点でなければなりません。さようなことからしますると、私が先ほど申し上げました十トン以下の議論がどこから出て来たかということでありますが、これは零細漁民の単位を十トン以下と私は推定したのでございます。二十トンの漁船を持つ漁民はすでに零細漁民の域を越えておる。零細漁民の定義いかんということに考えを及ぼしますとき、定義を十トンに置いたのであります。さようなことから考えますと、北海道の周辺の顔も一応は立てなければいけない。顏を立てるのみか、これは現在目の前におるところのさんまは、十トン以下の船で、零細漁民を助ける意味においてとつていいでありましよう。しかしそこであまりとり過ぎると、育ててとるという新精神、またさんまのみとるという新精神に反して行くというところから、私は申し上げているのでありまして、そういう点からいたしますと、一応今のこの制度で、よりよき結果がどうして生れるかということになりますと、北海道周辺の小さいさんまをとるのを少しお控え願うことによつて、大きいさんまが三陸から房総半島あるいは紀州沖に来るならば、やはり北海道の船もこつちへ追つかけて来てとればよろしいのでありますから、そういう意味において、先ほど松田委員お話の五ポイント勧告による繁殖保護をはかる場合、北海道周辺の南京さんまを濫獲することは、五ポイント勧告の趣旨に反する意味において、私は強調いたしているのであります。その意味においてしかるべくおとりはからい願いたいと思います。
  79. 冨永格五郎

    冨永委員長 大体質疑は終つたようでありますから、暫時休憩いたします。     午後三時四十四分休憩      ————◇—————     午後五時三十一分開議
  80. 冨永格五郎

    冨永委員長 休憩前に引続いて会議を開きます。  閉会中審査のため小委員選任の件についてお諮りいたします。運営委員会の申合せにより、委員会の開会をなるべく可能ならしめるため小委員選任して、閉会中の審査に当らせることになつたのでありますので、本委員会といたしましても小委員選任いたしたいと思います。選任方法につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが一御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  81. 冨永格五郎

    冨永委員長 御異議なしと認めまして、ただちに御指名申し上げます。    川村善八郎君  石原 圓吉君    鈴木 善幸君  松田 鐵藏君    永田  切君  田渕 光一君    二階堂 進君  小松 勇次君    水野彦治郎君  上林與市郎君    冨永格五郎君以上十一名を御指名いたします。なお小委員長の職務は私が行いたいと思います。
  82. 川村善八郎

    川村委員 漁業制度改革に伴う財政資金の裏づけをわれわれは今日まで強調して参つたのでありますけれども、遺憾ながらこの財政資金は未だに見通しがつかないのであります。見通しのついたのは、水産庁案ではできないということだけは見通しがついたのであります。従つて水産庁責任はまことに重大であるということをわれわれは申さねばなりません。この次の委員会におきましては、ぜひ水産庁長官を招致し、さらに水産金融の衝に当りましたところの久宗連絡官も招致して、ぜひともこの問題の解決をいたしますと同時に、われわれのこれまで主張して参つたいわゆる金融措置ができないとしたならば、責任をとつてもらわなければなりませんから、次の委員会にはぜひこの両者を招致せられんことを、私どもはこの際特に委員長に要望いたしておきます。どつかに出張するということを先ほど漏らしておつたのでありまするから、あるいは逃げを打つかもしれません。従つて法規に基いて、書面をもつて出席方を通告せられんことをあわせて要望いたしておきます。
  83. 冨永格五郎

    冨永委員長 了承いたしました。御要望の通りとりはからうことにいたします。  暫時休憩いたします。     午後五時三十四分休憩      ————◇—————     休憩後は開会に至らなかつた。