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1951-03-14 第10回国会 衆議院 水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月十四日(水曜日)     午前十一時二分開議  出席委員    委員長 冨永格五郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 二階堂 進君    理事 林  好次君       石原 圓吉君    小高 熹郎君       川村善八郎君    田口長治郎君       永田  節君    平井 義一君       小松 勇次君    水野彦治郎君       井之口政雄君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         水産庁長官   家坂 孝平君         農林事務官         (水産庁次長) 山本  豐君  委員外出席者         農林事務官   久宗  高君         参  考  人         (北洋丸船主) 島倉與三松君         参  考  人         (北洋丸船長) 出口 仁三君         参  考  人         (幸丸船長)  高岡 米吉君         專  門  員 杉浦 保吉君         專  門  員 徳久 三種君     ————————————— 三月二日  委員角田幸吉辞任につき、その補欠として久  野忠治君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員森幸太郎辞任につき、その補欠として田  渕光一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月十二日  小型機船底びき網漁業整備に伴う転業資金交付  に関する請願井之口政雄君外一名紹介)(第  一一八一号)  同(堀川恭平紹介)(第一二三五号)  海区漁業調整委員会費増額等に関する請願(井  之口政雄君外一名紹介)(第一一八二号)  栖原漁港防波堤修築促進請願早川崇君紹  介)(第一二三二号)  由良村に漁港築設の請願大石ヨシエ紹介)  (第一二八三号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  漁船拿捕問題に関する件  水産金融に関する件     —————————————
  2. 冨永格五郎

    冨永委員長 これより水産委員会を開会いたします。  漁業経営安定に関する件を議題といたします。  この場合お知らせ申し上げます東支那海において拿捕された漁船の問題につきまして、本水産委員会は、二月二十四日と三月一日の二回にわたり参考人の御出席を願いまして、詳細に調査いたし、政府関係当局に対しまして、強くその善処方を申し入れていたのでありますが、三月十三日に報国水産専務取締役上田哲夫君より次のような報告を受けたのであります。すなわち昨年末に五隻、本年二月に八隻、その後またも七隻とあとを絶たず、東支那海において拿捕されているのでありますが、その中で国府側拿捕された漁船中川南水産所有の第三雲仙丸、第十八雲仙丸と、南星水産所有和美丸及び報国水産所有の第七十五報国丸、以上四隻は大陳島で、三月十一日十六時十分に無事釈放され、十四日午後には長崎港に帰る予定とのことであります。この帰還に関しましては、中国海軍部の御丁重なるあつせんにより解決を見たのであります。  以上簡単ですが、御報告いたしておきます。  なお先にただいま報告いたしました東支那海における漁船拿捕問題について参考人より聽取いたしたのでありましたが、北海道方面拿捕問題についても参考人より意見を聽取するために、委員各位の御同意を得ておりましたところ、いろいろの事情のために一応参考人意見を聽取することを取消したのでありましたが、本日幸いに北海道方面から北洋丸船主島倉與三松君、北洋丸船長出口仁三君、幸丸船長高岡米吉君が本委員会にただいま出席いたしておりますので、漁船拿捕問題について一応参考人として意見を聽取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 冨永格五郎

    冨永委員長 御異議なしと認め、さように決します。  まず北洋丸船主島倉與三松君より御意見を聽取いたしたいと思います
  4. 島倉與三松

    島倉参考人 それでは申し上げます昭和二十一年十一月上旬ごろ、船名北洋丸トン数は十九トン余り、馬力は六十馬力乗組員が十二、三名だつたと思いますが、一そう羅臼沖合いから根室への帰航拿捕されました。ソ連拿捕されまして、ことしの一月の上旬に船員も船も無事に帰港いたしました。それから昨昭和二十五年三月十七日に、根室沖合いにおいて、船名は三号北洋丸、これはトン数は十四、五トン、馬力は四十馬力つたと記憶しておりますが、根室沖合いにおいて拿捕されまして、それが船は未帰還であります船員は八名だつたと記憶しておりますが、帰つて来たのは、五月の末に船員だけ帰つて参りました。それから六月の十日、船名号北洋丸、これは鮭鱒流し網漁業であります。これはまあ太平洋でございますが、根室沖合いにおいて出漁拿捕されました。それは漁夫も船もいまだ帰つて参りません。  それから十月の二十一日に、船名は一号北洋丸ですが、いかつり漁業出漁中、羅臼沖合いから根室帰航の途次拿捕されました。それは十一月の二十二日だと記憶しておりますが、船も人も無事に帰つて参りました。私の漁船拿捕された状況は以上であります
  5. 冨永格五郎

    冨永委員長 それでは北洋丸船長出口仁三さんから伺います
  6. 出口仁三

    出口参考人 私が北洋丸船長出口仁三であります。昨年十一月の二十一日に羅臼の半マイル沖合いでもつて漁業しました。それからその次の朝一時に根室へ出発して来たのであります。それから野付沖合い自分は二マイル半のコースをとつて来たのであります。それで向う拿捕船夜明けにつつかかつたのであります。そうして向う自分の般へ向つて来て、すぐ鉄砲を打ちましたから、自分もしばらくは黙つてつておりましたが、あまりに近く寄つて来るものですから、自分はエンジンをとめて、それからすぐ野付沖合い二マイル半でつかまつて向う行つて日本とすれば牢屋の中へ入れられて、そうして小便するのも何するも目隠しされていたのです。それからいついつかに羅臼行つたか、そう言われまして、自分は日にちは二十日に羅臼に向つて根室を出発しました、そうして一晩いかをつつて、それからその朝二十一日の一時に羅臼を出帆したと答えました。そうしてつかまつたのはちようど朝の五時だつたのです。そういうふうに弁解しておりまして、それからマツカーサー・ラインを越して来ている、自分は絶対越して来ていません、そういう議論でもつて二、三日ひまをとつたのであります。それからまた若い者の調べもありまして、若い者もいろいろと思つたよう自分で話をしたのです。それから裁判にも何もかかりませんで二十三日目に船と一緒に帰つて来たのです。
  7. 冨永格五郎

    冨永委員長 次に幸丸船長高島米吉君より伺います
  8. 高岡米吉

    高岡参考人 私は幸丸船長高島米吉であります。私は鮭鱒流し網拿捕されました。それは花咲沖合いに出ていまして拿捕されたのであります。長年私も船頭をやつておりますが、今まで普通は三十マイルくらいの所でますがとれていたのですが、昨年初めて五、六十マイルくらいの所でますがとれて、ほかではとれなかつたわけであります。それで私は花咲沖合い六十マイルのますをとろうと思つて、一日帰りはできないから、二日がかりでそのますをとりに行つたわけであります。その出たときはマツカーサー・ラインを越して行つたわけではないのです。私たちで言いますと、納沙布燈台サウスイースト線より向うへは船頭としてだれも行く者はないのであります。それで漁にかかりまして、五十マイルくらいのところに二日がかりで網を流しておりました。それで二日で帰る予定のところ、もう帰らなければならないけれども、そのときに漁がなかつたため、若い者と、遠いところは何回も出られないから、もう一日漁をしようと相談の上一日漁をしたわけであります。それで向うで三日とまつたわけになるのでありまして、三日目に岡へ入つて来まして、岡へ入るにつけましても、網を上げるのが遅かつたために、日暮れまでは山が見えるのですが、山が見える時間までには入れなかつたわけであります。それで山もわからず、そうして私らのところは霧と潮がありまして、私の拿捕された一つの原因といいますと、前は三十マイル沖くらいでしたら、潮は南の方にしか通つていなかつたのですが、昨年初めて五十マイル、六十マイルのところでますがとれまして、皆がそこへ出ていまして、その地点では北の方へ潮が通つておるということはだれしもわからなかつたのです。私らは六十マイル以上になりますと、潮が北の方通つているということがわからなかつたわけです。私は十何年船頭をやつてますが、三十マイル沖合いますをとつていました。そしてたいていは南へ潮が通つているのであります。それで今度拿捕された原因としまして、大十マイル地点に行きまして北の方に潮が通つていましたために、いつもの方針で行きましたけれども北の方へ落されたわけであります。大体自分らの陸へ着く時間が来まして、日が暮れたのです。そうなると自分らは動くことができないのです。暗い中に霧がかかつて動かれないため、そこで明るくなるまで船を休めなければならないのであります。それでアンカーをやつて休もうと思つて深さをはかつてみましたけれどもアンカーが全然きかなかつたわけであります。それで自分らは網を百反持つておるとすれば、船を移動させないために十反くらい流して夜明けを待つたわけです。待つておりましたけれども自分らはどこへ来ているかわからない。もう陸が近いだろうと思つておりましたとたんに、ソ連監視船が来たわけです。自分らはまだそんなところへ行つていないだろうと私つておりましたけれども、そのときつかまりまして、ソ連監視船に乗つてから聞いてみました。これはどこどこの地点ある、多楽沖地点にきみの船がいるということを私は地図で示さたわけです。それからソ連監視船に連れられて行きました。私らは色丹島に連れられて行きまして、そこで二日いました。それから二日後に船をそこへ置いて勇留島という所にからだだけ運ばれたわけであります勇留島に来まして自分らの行動、それが裁判問題になりまして、私はその漁に出た針筋と入つて来た針筋とを説明させられまして、向うでも自分の話をよく聞いてくれまして、それは迷つて来たということに一時なつていました。それで船をもらつて帰れると思つておりましたところが、その後裁判になりまして、私がふかしものをしておりましたために、そのふかしものは、魚がかかつたらとる、密漁ではないかいうことを言われたわけです。自分らは魚をとるつもりで網をふかしたわけでは絶対にないのです。ただ霧が深くてどこかわからないために、船が移動しないようにふかしものをしておつたのです。ところがそれが密漁だとされまして、向う裁判を受けて船をとられ、からだだけは帰されたわけであります
  9. 冨永格五郎

    冨永委員長 大体参考人からお話を伺いましたが、委員各位において御質疑があればこれを許します
  10. 川村善八郎

    川村委員 高山さんにちよつとお伺いします。私も実は漁師で長年船に乗つたので、北海道の海でさけ、ますのとれる所は、いわゆる根室釧路支庁管内沖合いだということはもちろん承知しております。そこであなたの拿捕された原因を聞いてみますと、これまでは三十マイルくらいの沖合い十分魚がとれた。最近は六十マイル、七十マイルに行くと非常に魚動があつて、そこで魚がとれるので、そこに行つたところが、潮がかわつてつた。これはもう海の場合には必ずあり得ることです。そこであなたの考えは、南に向つておる潮、いわゆる本州方面に向つておる潮だと考えて網を流した。ところがあにはからんや、それは逆に北の方へ流れておつた。私もあの方面を知つておりますが、その通り流れております。そこで南へ流れておると、針路をまつすぐとると釧路花咲方面に来るということは、大体私もわかります。そこで北の方行つたために、いつもとつておる針路行つたから、いわゆるラインを越したのがわからなかつたことも、これもわれわれは十分わかります。ただ問題は、流した綱が、いわゆる船を移動しない——アンカーをやつてとめるのは当然でありますけれども、海が深いためにふかしものをして船を移動しないようにした。そうしてこれが密漁だと見られたというようなお話でありますが、漁師にはそれは十分あり得ます。あの方面の霧から行きますと、ちようど流し網の最中のときは、霧の最も深いときであることは、これも私らはよく承知しております。そこであなたにお伺いしたいことは、つまりラインがどういうふうに広がれば、あなた方が現在北海道でやつておられる流し網支障がなくなるか。つまり少しぐらい北に流れる潮に乗つても、根室方面の航路に支障がないか、今のラインの中に入らないためには、どの程度ラインを変更してもらえばいいか、たとえて言いますれば、現在歯舞諸島の問題が取上げられておりますが、根室からわずか五海里半かそこらです。私も二回ばかり行つたことがありますが、その孤島でラインを引かれたのでは航海ができないとわれわれは見ております。そこで、そのラインは現在そうなつておりますが、どういうふうに変更してもらつたらあなた方の航海支障がないか、つまり現在のライン相当に北に出るようになつておるが、航海上あの方面では非常に不便を感じておるというふうに考えておりますが、どういうふうにラインを変更してもらえば、あなた方が根室なりあるいは花咲なりに入るのに支障がないか。つまり霧も考え潮流も考て、多年経験のある船頭さんからお聞きしたいと思います
  11. 高岡米吉

    高岡参考人 私たちとしましては、現在の区切られたところは、花咲港より納沙布燈台のところを通つて根室にまわるのにも、実際霧の深いときは、何ぼ自信がありましても、航海ができない。それで納沙布燈台の所がもう一海里でも広いとすれば、それは自分たちにとつて大した利益であるということを、あそこを通るたびに頭に入れておるわけです。またもし色丹島までの海を、私たちに自由に漁をさせてくれたならば、今の十倍も、百倍も漁ができるだろうと思います
  12. 川村善八郎

    川村委員 高岡さんに再びお伺いしますが、今私が略図を示して、航海支障があるかないかということだけ伺いましたところが、歯舞諸島を許してもらえれば、漁業上今までの何十倍の漁をすることができるというお話でありました。これはもつともなことであります。これらは、あなたも御承知かと思いまするけれども、現在領土関係は国際問題になつていて、そう簡單には解決がつかないと思います。ただ私たちは、千島というものに歯舞諸島は入つていないということだけは、われわれは長い間北海道漁業に携わつて参つたのでありまするし、さらに北海道会議員もやつて参りましたので、はつきりわかつております。そこで漁業の問題になりますが、千島はとにかくとして、歯舞諸島日本領土にして、あそこで操業すれば相当漁獲があることもよく承知をしておりますし、潮流関係から行きまして、現在のラインの内側は通れないということも私たちも十分承知しております。それであなた方は今根室半島のどこから出ておられるかわかりませんけれども、あの方面濃霧のために相当航海にも困難しておりますし、操業にも困難しております。そこで漁業航海というものは不可分の関係がありますが、私たちはせめて色丹島までラインを延ばしていただくならば、航海にはもちろん支障のないこともわかりますし、さらに漁業も今の漁業の三倍くらいも漁獲が増すということもわれわれは考えております。あなた方は、つまり船頭という技術屋からいたしまして、現在の漁場のラインをどの程度に変更していただきますならば、根室支庁省内漁業者諸君は十分に漁業をすることができるかという、感想でもよろしゆうございまするし、さらにあなた方は、ここまで延ばすのが領土関係で当然だという主張をしてもよろしゆうございます、どちらでもいいから、あなたの任意におまかせいたしますから、一体どういうふうにラインを引くことがほんとうだ、あるいはこうすればこういうふうな漁業の発展があるのだということを、率直に承つておきたいと思います
  13. 高岡米吉

    高岡参考人 私もお話したいこともありますが、どうもこういうところへ出るとしやべれなくなつてしまうのですが……。
  14. 川村善八郎

    川村委員 高岡さんは、そう聞かれると、漁師言葉で言うとどぎましてお答えができないようですが、私も船頭を長くした経驗があるが、なかなか言えないでしよう。そこでどなたでもよろしゆうございますから、今日参考人として来られておる方から、自由意思に基いて私の質問にお答え願いたいのです。
  15. 島倉與三松

    島倉参考人 私船主といたしまして意見を申し上げたいと思います。現在のマツカーサー・ラインでは、ただいま船頭がるる申し上げましたごとく、またここへ来ない船頭ども、種々このマッカーサー・ラインではきゆうくつで、操業航海等において常に拿捕事件を繰返し、いろいろと上の方々におせわになつておるということは、恐縮でもあり、私どもいつも痛恨事と感じておるのであります。さてどうしていただいたらよかろうかということでございますが、第一案といたしましては、色丹島以南歯舞諸島、これの日本帰属従つてマツカーサー・ライン色丹北の方に線を引いていただくということが、私どもとしては、とりあえず一番希望いたしておるのであります。つまり国後島と、それから色丹以南歯舞諸島の中間の海にマツカーサー・ラインを拡張していただくということを、現在の私どもとしましては、第一案として非常に熱望しておるのであります。第一案といたしましては、国後擇捉島であります国俊島と擇捉島は、すでに私が説明申し上げるまでもなく、皆様方は御存じかと思いますが、南千島であります。南千島日本貧慾によつて得た領土ではない。従つてこれはいろいろと御意見も、これから講和会議を控えて出るかと存じますが、南千島日本帰属と相まちまして、この拿捕事件の解消ができると考えるのであります。それは御承知通り知床半島国後とは海が入り込んでおります従つて根室から網走航海する船、網走から根室航海するところの船、これは漁船に限らず、運搬船に限らず、常に事故を起しやすい場所であります。将来の日本の平和ということを考えまするときに、この狭い海を航海する船、あるいは漁業する船は、今後とも拿捕事件が絶えないのではなかろうかと私は想像いたすのであります。そこででき得るならば、擇捉島国後島を日本帰属にしていただく。こうするならば、将来ともソ連日本との拿捕摩擦その他の摩擦が解消されるのではないかと考えるのであります地図でごらんになればよくわかりますが、三哩と申しましても、御承知通り根室は四月の上旬から九月の下旬まで、激しい濃霧に襲われるのであります。いかに達者な航海者であつても、濃霧により、また潮の変調によつて船針路を誤ることがしばしばあるのであります。これはまつたくの実情であります。なおソ連監視船のごときは、濃霧のためにマツカーサー・ラインに入つて来ることがしばしばございます。従いまして日本漁船も、運搬船も、ソ連の監親船も、自分の船の位置がわからないということが常に繰返されておる状態であります。かくのごとき状況から行きまして、将来は擇捉国後、これを日本帰属にお願いしたい、これは将来の希望であります。とりあえずの希望といたしましては、歯舞諸島千島と離し、色丹の以北にマツカーサー・ラインの拡・張を願う。その次には擇捉国後日本帰属していただく。これは今後の北海道とそれからソ連との摩擦を避け、平和を愛好する今後の日本としての正しい姿ではなかろうかと私は考えております。従いましてかようにお願いしたいと存じます
  16. 川村善八郎

    川村委員 ただいま参考人方々から、非常に有益なお話伺つたのであります。私も北海道出身者であり、かつあの方面漁業についてはよくわかつておりますので、参考人方々の御期待に沿いたいと思つております。さらに委員各位におかれましても、ぜひとも今日の参考人のお言葉参考とせられて、北海道歯舞諸島の問題、将来は国後擇捉その他南千島の問題について、御善処くだされんことを希望するとともに、水産庁においても、本日はほんとうに魂の入つた参考人の御意見を拝聽いたしましたので、その意を体しまして、水産庁としてそれぞれ関係方面に折衝せられんことを特に希望して、私の質問を終る次第であります
  17. 冨永格五郎

    冨永委員長 これにて参考人に対する御質疑は打切りたいと存じますから、御了解願います
  18. 冨永格五郎

    冨永委員長 次に水産金融に関する件を議題といたします。この場合皆さんに御通知申し上げます水産庁長官家坂孝平君、水産庁次長山本豐君水産庁久宗説明員大蔵省主税局長平田敬一郎君、主税局税制課泉美之松君、以上の方々出席いたしております質疑を許します鈴木君、
  19. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 平田主税局長漁業権証券課税問題についてお尋ねをしたいと思います漁業権証券が今回の漁業制度の改革に伴いまして、旧漁業権者に交付されるわけでありますが、これに対して現行税法に照して、いかなる取扱いをなさる御方針であるか、まずこの点からお尋ねをしたいと思います
  20. 平田敬一郎

    平田政府委員 漁業権課税問題につきましては、事情が大分錯綜いたしておりますので、主税局といたしましても、水産庁の御説明をよく承りまして、研究して参つたわけでございます。なるべく早く結論に到達するつもりで研究をいたしておるのでありますが、なお若干の点で未決定の事項等がございまして、まだ本案の最終的の意見を申し上げることができないのでございますが、前提といたしまして、お話一般の原則通り行くと、はたしてどうなるかという点をまず御説明申し上げて、それからさらにどのような特例を講ずる必要があるかというような問題を考えた方が、話がわかりいいと思いますので、一般的な点を先に御説明申し上げたいと思います。  一般的な問題といたしましては、個人漁業権を持つている場合、それから会社が持つている場合、それから漁業会組合等のいわゆる漁業者の団体が所有している場合、この三つの場合におきまして、それぞれ若干違つた課税関係になるということでございます。まず個人の場合でございますと、第一にこれはほんとう損失補償だけにすぎないので、漁業権一種の譲渡ではないという見方もあると思うのであります。その辺は純粋法律的な見地から行きますと、いろいろ議題があると思いますが、まず一般の常識でさらりと行きますと、これはやはり一種強制讓渡と申しますか、それに類似のような関係がよほど強いのじやないかということも考えられますので、一応強制讓渡としてどういうふうになるかということを考えますと、結局所得税の問題と再評価税の問題と二つにわかれます。いずれも財産税課税時期におきまして、つまり昭和二十三年の三月一日現在で漁業権というものが財産税法によりまして評価されております。これはその当時、財産税を納めた人も、納めない人の場合におきましても、一種財産税評価額があるとみておるのであります。たとえば立木とか家屋にしても同様な考えでおるのですが、同様に権利につきましても、その当時におきまして一種財産税評価額がある。この財産税評価額に対して一定の倍率を乗じます。これが漁業権の場合は十倍の高さになります。そこで少し説明を補足いたしますと、財産税評価額と今度の讓渡した場合の讓渡価格、この差額が問題になるわけでございますが、例について申し上げますと、財産税評価額としてかりに一万円に評価されていたものが、それが今度は十五万円に評価されて補償を受けた場合、再評価税の問題と所得税の問題とがある。そのうち再評価法によりまして、財産税評価当時から一般物価水準の値上りによりまして、所得が名目的にふくらんだ分は、再評価税だけで済ますという形でできておる。その倍率を再評価法によつて十倍と定めるわけであります従つて一万円と評価されたものが補償にあたつて十万円と評価された場合をかりに考えますと、この場合におきましては、再評価税がかかりまして、十万円と一万円の差額の九万円に対しまして六%の税率でかかつて来る。その場合にはそれでおしまいでございまして、所得税はかかりません。これは單純にインフレによる名目的な価格の増加にすぎないと見て、その部分に対しましては、本来の讓渡所得税課税しないで、名目的な再評価税だけを課税しよう。こういう考え方からそのようにいたしております。これは、ひとり無体財産権だけではございません。家屋等不動産の場合もすべて同様でございます。さらにそれを十五万円で評価されたということになると、十万円を越える部分の五万円、これが実は讓渡所得税課税の対象になる。土地、家屋あるいは営業権、賃借権等、倍率はものによつて若干違つても、すべて同様な方法で課税することになつております。そこで問題は、この場合におきましては、結局前の財産税評価額がはたして幾らであつたか、今度の補償を受ける額が、それに対してどの程度の高さであるかということによりまして、負担が大分違つて来る。十倍までの高さでありますれば、これもその財産税評価額補償を受ける額との差額の六%を納めればいい。補償額の六%ではございません。財産税の当時において評価されました額は、すでに財産税として課税済みと見て、その差額を課税対象にするということでございます従つてこういう際におきまして、特別な強制讓渡で行われました関係上、それに対してどういう特例を設けるか。それから最初に申し上げましたように、補償一種の讓渡と見るべきか、見るべきでないか、これは法律問題として若干問題があると思います。今度の讓渡所得税は、相続によつて財産権が移転した場合も讓渡所得とみなして課税しておるのでございますが、そういうような原則になるのが通例でございます。  それから会社の場合でございますと少し問題が違いまして、再評価の問題と会社の税金の課税の問題と二つございます。再評価の問題を一応拔きにして計算しますと、会社の場合において漁業権を幾らに評価していたかというのが一つの問題でございます。たとえば会社が十万円で漁業権を買収して帳簿価格に十万円を計上している。それに対しまして百万円の補償をもらつたということになりますと、これは解釈の余地なくその差額の九十万円は当然会社の益金なんであります。この場合、もらう対価というものが金銭であれば何らの問題はないのですが、有価証券の場合におきましては、その有価証券を取得したときの時価で評価して、その時価と帳簿価格との差額が当然会社の益金を構成するということになりまして、特例を設けませんと、この際に三五%の法人税並びに事業税がかかつて参ります。それと再評価の問題がございますが、会社の場合においても、やはり再評価ができることになつておりまして、帳簿価格の十万円の漁業権は昨年の再評価によつてやはり十倍まで——これは会社の任意に再評価できるのでありますが、再評価をやりますれば、やはり再評価をやりました限度までは六%納めればいい。その再評価をやりました額を越えて補償を受けた額、その部分だけが法人税の益金に算入されて来るということになるのでございます。再評価と合せまして、さらに今回再び評価をやることを認めておりますので、もしも前回なされなかつた場合は、さらに今回同様な恩典にあずかることになります。もちろん帳簿価格がゼロの場合におきましては、再評価やりようがございませんし、わずかな額しか計上してなかつた場合は、十倍いたしますと差額がほとんどまるまる利益になつて来るので、これは原因の何たるとを問わず、すべて益金になりますので、法律上の解釈の余地はございません。補償高を特別に扱うというような立法措置をしなければ、当然そうなつて参ります。もちろん会社の場合におきましても、あとで免許料を払う場合におきましては、この免許料は会社の所得の計算上損金に算入します。そして経費に見ますが、一応補償を受けて漁業権証券をもらつたときの証券の時価と帳簿価格の差額が事業年度の益金になつて、あとで免許料を払います際に、その支払う金額が会社の損金に落ちて来るという関係に原則としてなつて来る。それから漁業者の団体の場合も、原則としては大体会社の場合と同様でございます。ただ問題は、会社の場合と違いまして、いろいろ聞いてみますと、帳簿価格のほとんどゼロの場合がおそらく大部分のようでございまするので、再評価をすることにいたしましても、ほとんど再評価の実益にあずからない。従いまして、そのままほつておきますと、現行税法ではもらつた全額が補償を受けました事業年度の益金になつて来る。ただそれはあくまでもさつき申しましたように、漁業権証券のその際の時価で評価する。時価をどうきめるかという問題があると思いますが、その時価で評価しました額は会社の益金になつて来る。ただその場合におきましても、あとで、免許料を支払いますれば、その支払い分につきましては、その支払つた年度において、その組合の所得の計算上これは損金、経費に算入いたしますが、課税の時期と経費で引かれる時期が違つて来るということになろうかと思うのであります。これが大体何ら特別な考慮を加えない場合の一般原則であります。従いまして、帳簿価格がどうなつているか、財産税評価がどうなつているかによつて、いろいろ個別的には負担関係が違つて来ると思いますから、人によりましては相当な負担を受ける場合も出て来るかと考えられるのでございます。  そこで、今回の処置は、一般的に行政的に相当きびしい措置でありますことは、先般懇談会で承りましたところによりましても明瞭でございまするし、また水産庁からも特にそういう面についての強い要望を受けておりますので、これに対しましてどういう特例を設けるかという問題を実は研究いたしておるのでございます。それでいろいろ調べてみますと、個人の場合におきまして、財産税評価額に対して今度の補償の金額が大体十倍くらいの差額のかないということでございますれば、この問題の解決は割合に簡單でありまして、差額の六%を納めればいい。この六%はさつき申しましたインフレ利得に全面的に課税するという趣旨のものであります。再評価課税するかどうかは非常に問題でありまして、再評価税課税すべからずという議論もあるのでございますが、この税金は、インフレによりましてとにかく損をしなかつた、非常に実質的に得をしなかつたかもしれないが、預金者なり債権者なりと違いまして、あるいは給料等遅れて上つたものと違いまして、とにかくそういう一種のインフレに伴つて価値の増加する資産を所有することによつて損をしなかつたいうことに対する一つの税金でございますから、これは私どもどうもいたしかたなかろうと思いますが、問題はそれを非日常に飛び越えて高くなつたものがどうなるかという問題でありまして、その点について、目下財産税評価額と今度の補償の高さがどうなるか、その辺のところをよく取調べておりまして、十倍の倍率でいいかどうか、あるいは今回やつたこの措置に関連しましては、何か少し違つた倍率を適用するかしないか、その辺の問題をなお具体的に少し研究いたしております。  それからもう一つの問題は組合の問題でありますが、これが実際上は一番多いと聞いておりまして、問題はなかなか簡單ではないようでございます。ただこの問題は、いろいろ案を研究してみたのでございますが、かんじんな漁業権証券の発行の條件と、あとの免許料の基準がまだきまつていないので、なお若干よく研究しておられるようでございますが、それと一緒にきめないと、なかなか問題の解決がつかない。一つの方法としましては、一応漁業権証券をもらいました際には、いわゆる圧縮評価と称しておりますが、その漁業権を前に会社なり団体なりがつけておりました額の限度まで評価を低く補償することを認めまして、その後その金利なり償還を受けた都度益金に算入する一方、免許料は支払つた都度損金に算入するという方法も、一つの方法として、いいか悪いかまだ結論に至つていないのでありますが実は今研究しております。しかしその方法がはたしていいかどうか。最初考えられたように、二十五箇年か幾らかならして毎年定期に償還して行くという場合ですと、これも一つの方法ですが、途中で換価処分をしたらどうか。あるいはもう少し発行條件をかえまして、一定のときには金額を償還し得るようにするかしないか。この辺も目下水産庁で研究しておられるようでありまして、いずれの方法によつたらいいかは問題だろうと思います。ただ長期にわたつてますと、免許料は経費として差引きます。一方漁業権証券が益金になりますが、その辺の時期があまり違つたために、益金に入つた際一ぺんに課税されて、あと損金になる際には赤字にされてしまうといつたようなことのないようにしますならば、あまり無理なことがなく、結果において妥当なところに来るのではないか。再評価の問題等もございまして、今回やるにいたしましても、どういう再評価として参るか。再評価をして参りますと、再評価の限度までは六%が課税される。従つてその辺のところは相当問題が錯綜しておりますので、漁業権証券の発行條件、あとの免許料の基準などと、問題を一緒に考えてきめたいという趣旨で、水産庁側の御意見等も承りまして、妥当なところはどこかという結論が見出し得るのではないかというように考えているのが現在の段階でございます
  21. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 現行税法をそのまま行つた場合についての平田さんの御見解を伺つたのですが、今の御説明を承りまして、財産税当時の評価額を、かりに政府が国家補償しようとする額と同額程度に再評価なさるだろうということになりますれば、結局六%という課税になるというように承知いたしたわけであります。ただそこで問題になりますのは、漁業会が所有しておる專用漁業権であります。これは局長も御承知のように、漁業会の会員、つまり漁村の人たちが、そこに入会つて專用漁業を営んでおるいわば浦浜制度時代からのそういう関係というものに一応考えられるわけであります。そこでこの專用漁業権につきましても、定置漁業権あるいは区画漁業権、特別漁業権等々と同様に取扱うということは、ちよつと当を欠くように私ども見ております。かつまた今回の制度改革で浮魚等が專用漁業権の中からはずされて、根つぎ、いそつきのものが今度は共同漁業権という形で免許されることになるわけであります。そういうような関係からいたしましても、かりにそのまま従来の專用漁業権が共同漁業権と名称がかわつて漁業組合に免許されるにいたしましても、その中味におきましては、今申し上げましたように、浮魚関係がはずれて行く、根つぎ、磯つきのものだけになつてしまう。こういうような関係も專用漁業権の場合にはあるわけでありますが、そこで專用漁業権の取扱いにつきまして、水産庁ともいろいろ御検討を加えておられることと思うのでありますが、もし局長におきまして、專用漁業権の特殊性というようなものを認めておられますならば、その他の漁業権との税法上における取扱い方というものについての御見解を伺いたいと思うのであります
  22. 平田敬一郎

    平田政府委員 專用漁業権の特殊性につきましても、水産庁から大分いろいろ話を伺つておるのでございますが、率直に申し上げまして、課税の見地から考えまして、どうすべきかということにつきまして、まだ結論を得ていないのでございますが、問題はやはり組合という形になつておりまして、それが組合の計算という形になつておりますので、そういう関係漁業者個人としてはあるかと思いますが、組合という形になつて参りますと、普通の計算通りの方式で、結論がそれぞれ自然に出て来るというような結果に相なりますので、その辺は特殊性に応じて、はたしてどういうふうにしんしやくしたり、あるいは特別に考慮する意図があるか、その辺をもう少し私どもは研究してみたいと考えております
  23. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 政府は今回の漁業権強制讓渡にあたりまして、おおよそ百七十億程度の国家補償をする、漁業権証券を交付する、こういうことに大体考えておるようでありますが、この百七十億の漁業権証券を、二十五箇年で一応均等償還をするというような建前で参りました場合に、政府ではその金利として一箇年に十二億程度かと思うのでありますが、その程度の金利部分を含んでいる、こういうぐあいに私ども見ているわけであります。これを二十五箇年に分割して資金化して行くという政府の一方的な都合によつて、そういう措置を講じながら金利部分をもその中に含んでいるということは、非常に漁業者の立場からいたしますと不合理なことと言わなければならぬ。こう私ども考えておるのであります。この金利部分につきましては、当然課税にあたりましては控除されるものと思うのでありますが、平田さんの御見解を伺いたいと思います
  24. 平田敬一郎

    平田政府委員 金利部分を含めて、あとの免許料の総額を徴収することになるのか、あるいは金利部分はそうでないのか、その辺のことは、率直に申し上げまして、まだ私どもはつきりした御説明を伺つていない、ただ課税の見地から申しますと、はつきり金利になりますとこれは確定的な収入でございますので、そういうものに対して特別な措置を講ずるということは、よほどまた何か特別な顯著な理由がなければむずかしいのではないかというふうに考えられております。ただ免許料のきめ方その他はどうなるのか、その辺はまだはつきりいたしませんので、もちろん結論的な意見を申し上げるわけには参らないと思うのでありますが、一般的な課税の原則から申しますと、金利とか地代、家賃その他の確定的な所得になりますれば、その部分につきまして特別な措置を講ずることは、貯蓄政策その他の何か大きな目的があれば別でございますが、そうでない場合におきましては、これを認めるのにどちらかと申しますと困難なものであるというふうに、私の一般の今までの考え方から申しまして考えられるわけでございます
  25. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 今の金利の面につきましては、漁業者側としては今回の補償が一ぺんに全額現金をもつて交付されるということが望ましいわけであります。これを政府が、政府の都合によつて二十五箇年にわけて金にかえよう、こういうことから生れる金利の打算、こういうことになつておるのであります。これは漁業者にとりましては、その程度の金利をもらいますよりは一ぺんに資金化したい、特に今回の漁業制度の改革によりまして、今まで漁業権に結びついておつた漁業者が一国家の意思によりまして、一ぺんに漁業権から離れる。ある者は適格性という優先順位によりまして、再び免許をされる場合もあると思うのでありますが、一般論といたしましては、一応漁業権から離れてそして経営の手控えをしなければならぬ、こういう事情にあるわけであります。そこでどうしてもここでまとまつた資金が漁業者に入らなければ、漁業者は生産手段を確保することができない、あるいは転業することができない、こういう事情にあるわけであります。それを政府の一方的な都合によつて、これを二十五箇年というような長い年月に分割して資金化する、こういうわけでありまして、そのために政府がつけるところの金利、こういうものにまた税法上の建前とはいいながら課税されるということは、漁業者にとつてはまつたく迷惑千万ということになるわけでありまして、この点につきましても、特にその実情を勘案されまして、局長におかれましても、十分漁業者の納得し得るような税のお取扱い方を願いたい、これは希望だけを申し上げておくわけであります。  次に根本的な問題になりますが、先ほど局長の御説明にもございましたように、現行税法をそのまま適用するか、それとも今回の国家の強制讓渡という形で行われる漁業権制度の改革であるから、別途の特例を設けるかということについて、今御研究中とのことでございますが、それにつきまして、私どもの見解、いな全国の漁業者の立場からいたしますならば、私が先ほど申し上げましたように、今回の制度改革によつて漁業者漁業権から例外なしに、全部一応切離されるわけであります。農地改革の場合におきましては、農地を買上げされる者は、いわゆる地主でありまして、これらの地主は、農業生産の確保の面からいたしますと、全然脱落して行つても国家的には問題がない、漁業権の場合におきましては、現在漁業権に結びついて漁業をやつております漁業者諸君は、全部漁業生産の第一線に活動しておる生産漁民であるわけであります。これらが国家意思によつて漁業権から離れて、新しい漁業法によつて、優先順位と適格性というものによつて免許を申請する、それがはたして免許されるか、免許されないか、ある者は漁業権からまつたく離れて、漁業権漁業以外の許可漁業その他に余儀なく転換せざるを得ないというものが多数できて来るのであります。特に定置漁業等につきましては、適格性、優先順位の面からいたしまして、漁業協同組合が申請をいたします場合には、漁業協同組合に全部漁業権は免許される、また漁業協同組合の次に漁業生産組合の申請にかかりましても、第二順位として免許されるというような形で、従来の定置漁業経営者は漁業権の免許については非常に弱い立場に置かれておるわけであります。こう考えて参りますと、一応今度の制度改革を通じまして、わが国の漁業の再編成が行われて、漁業者はそれぞれ新しい立場において経営の切りかえをやらなければならぬという事態に立ち至つておるわけであります言葉をかえますならば、今回の大きな改革によつて漁業生産は損失を受けた、今まで持つておる生産手段は他に讓渡するか、あるいは補修を加えるかしなければなりませんし、漁業転換をする場合には、新しくいろいろな資材、漁船、漁具その他を入手しなければならない、こういうような事情に置かれるのでありまして、経済上非常に甚大な損失をこうむる、こういう結果に相なるのでありまして、今回の国の補償は、漁業権そのものに対する補償ということよりも、この漁業経営の切りかえを新漁業法によつて強制されるという漁業転換の損失に対する国家の補償という部分が、非常に大きなウエートを持つておると考えておるのであります。こういう損失補償に対して、現行税法をしやくし定規に当てはめるということは、非常な不合理であり、かつ漁業の再生産がこれによつてできないという結果に相なると思うのであります。この点につきましては、平田局長も十分大きな関心と深い同情を持つて、これを掘り下げて御研究をなさるという御意思であつたのでありますが、こういう漁業の実態にありますことは、お考えをいただきまして、今回の制度改革が円満に進行し、しかも日本漁業の再生産が遅滞なく、円滑に進み得ますように、税法上においても万全の御措置を願いたいと思うのであります
  26. 川村善八郎

    川村委員 漁業制度の改革に伴つて漁業権補償をされるということになつたことはすでに御承知通りであります。そこで私たちはこの漁業制度改革の場合に、補償の問題その他いろいろの問題もありますけれども、現行法では必ずこうした混乱は起きるということを考えまして、大幅にこれを修正しようと考えたのでありますけれども、遺憾ながら事実は許されなかつたので、現行法におちついたのであります。そこで大体この漁業制度改革に伴つて漁業法の改正をする前に、日本全国を四班にわけて、それぞれ漁民の意思も問い、あるいは水産庁当局から、十分内容の説明をして納得させるような方法をとつたのであります。もちろん国会でも数回にわたつて説明をされております。当時説明された方々は、いずれもこの漁業権補償に対しては、税の対象にならないということを説明されております。もちろんわれわれは立法者といたしまして、税の対象にならないということを前提に漁業改革を考え、さらにこの補償の問題につきましては百七十億で納得して、将来どうしても百七十億の線を固守しようということに考えて、政府に協力を申し上げて来たのであります。ところが今日になりましてから、いよいよその補償が、漁業権証券が交付される間近に至つて漁業権補償に対しては税の対象になるということを申され、さらにその内容について久宗君からも説明を受け、さらに大体きよう主税局長からもそういう意向を聞いたのであります。まことに私は遺憾だと思つております漁業制度の改革の目的といたしましては、申すまでもありませんが、総合的に漁場を活用して、漁業経済の向上をはかるとともに、漁業の民主化もはかろうというのが目的でありまして、その漁業経済の向上をはかられなければ、漁業制度の改革は何ら意味をなさないのであります。そこで鈴木君が先ほどからるる申し上げたような事情で、漁業者が今非常な不安を感じておるこの際、補償の問題ばかりでなく、また税の問題ばかりでなく、今後の経営の問題について相当に苦慮しておることは事実であります、でありますので、われわれはまず当初政府が説明された通り、税の対象にならないということで漁民に普及して参りましたし、私たちもそう考えて参つたのでありますから、根本的には税の対象にするということは反対であります。そこで税の対象にならないように、現在の税法の不備を、この漁業制度改革による漁業権補償に対して、税をかけないような特例を設けてもらいたいということがまず第一点であります。しかしながらいろいろの事情もありましよう。水産庁としては水産庁の立場がありましよう。あるいは大蔵省としては大蔵省の立場がありましようから、私は税の対象になるという場合においても、いささかでも漁業経済の向上ということを忘れてはたりません。従つて漁業者が経営の不安が除去でき、しかも将来に向つて負担が軽くなつて漁業経済の向上をはかるにいいとするならば、あえて税をかけるということには絶対反対をするものではありません。先ほど委員から言われておる通り、利息を今度の免許料、許可料に加算して、漁民の負担にさせないというようなこともありましよう。あるいは專用漁業権の問題については、特に税の考慮をするという問題もありましよう。幾多そうしたような問題もありましようから、これを十分に研究して、税を納めても将来漁民の経済の向上ができ、負担が軽くなるならば、漁民も納得ができましようから、その点を水産庁並びに大蔵当局は十分留意されまして、今後研究を続けられんことを希望すると同時に、われわれ委員会といたしましても、十分その点を研究して、三者一体となつて、私がただいま申し述べたような趣旨の貫徹をすることが妥当ではないだろうかと、かように考えるのであります。  そこで一点特に伺つておかなければならぬことは、漁業制度改革によつて、全面的に漁業権というものは個人もしくは団体から離れるのであります。先ほどから鈴木君が言われたように、もちろん漁業経営には、全面的な改革なりあるいは切りかえなりしなければならぬということになりましようけれども漁業権証券直接の問題といたしまして大体三種にわかれております。その一つは、まず漁業権を持つておられる個人といわず、団体といわず、これらがいずれも補償される、つまり相当評価をして補償されるということになつておるのと、さらに漁業権を持たなくとも、経営の面、すなわち賃貸借をいたしまして経営をしておる者にも大体評価の二割程度のものが補償されるという面、さらにもう一点は、漁業権を持つて休業しておる者、つまり形があるけれども実際にやつていないというような者も、それぞれ評価をして補償されるというふうな三つの点があげられるのであります。その第二の点について、水産庁当局に伺つておかなければならぬことは、当時の下説明すなわち賃貸借をして経営をしておる者は、今度の改革では実際問題としては漁業権を持つておらないのであるから、これは補償の対象にならないのだ、それでは今後漁業権がその人に免許あるいは許可されればいいのであるが、いわゆる優先順位あるいは適格性等があるので、免許されない場合も考えなければならぬ、従つて今まで経営しておつた、つまり長い間漁業権を持つておる者から多額な賃借料を出して経営をしておる者にはまことに気の毒である、であるから、権利は持たないけれども経営面における損失だという点で、二割の補償をしてやろうということを説明されたのでありますが、今でもその説明通り、趣旨にはかわりがないか、つまり商業であるならば、のれん料とかあるいは店舗料というようなことも普通使われておるが、漁業にはそういうふうなことはありません。特に久宗君は説明の中に、先ほど私が申し上げたように、もし賃借をして経営しておる者が、その経営を離れる場合には非常に気の毒であるから、これを二割程度補償するのだという説明があつたのでありますが、この点において久宗君の御意見は今でもかわりがないかどうかということを、まず久宗君にお願いしたいのであります
  27. 久宗高

    久宗説明員 ただいま川村先生からの御質問でございますが、この説明の中に、損失の補償だからということにつきまして、つまり経営から離れるということについて、作離料と申しますか、そういう御説明をしたことはございます。ただその際に申し上げたことは、財産税評価の際に、この賃借権の問題もやはり財産権として評価されたのであります。当時は財産税評価でございますから、賃借権を評価いたします場合に、大体大蔵省の当時の御説明では、漁業所得漁獲高の大体二〇%と推定いたしまして、賃借分はまた六%である。そこで二十から六を引きましたその残りの十四の部分が残るわけでございますが、それの大体三分の一程度が賃借権による所得考えられる、こういう御説明があつたわけでございます。その場合に、実際の計算方法といたしましては、財産税評価でございますから、賃借権の期間によりましてそれに倍数をかけて、たとえば五年というような賃借契約の残りがございますと、その部分をかけて賃借権の計算をしたわけでございます。すなわち数字的に申しますと、十四の部分に三分の一をかけまして、それがつまり賃借権による所得になるわけで、なお契約期間が五年あるから、五をかけるという措置をとられたわけであります。また契約期間が四年のものは四をかけるという形になつております。こういうような形ですでに賃借権の評価方法がきまつておりますので、漁業権補償の場合にもこれを踏襲したわけでございます。ただいつ切るかという問題はこちらが一応御相談の上きめるわけでございますので、たまたまその時期に賃借契約の期間が来ないという点は、もしこの制度改革がなかつたら、当然更新その他の問題もあつたろうというふうに考えられますし、また現在法律の上におきましてもこの期間二年間、大体契約関係その他も凍結しておるような形でございますから、これを一律に計算すべきだということで、大体三年平均に見たわけでございます。こういうふうに大体三年平均と考えますと、さつきの十四に対する三分の一ということが消えてしまつて、大体十四そのものが、賃借権の思い切つてここでしつかり切つてしまうという場合の評価方法になる。財産税の場合にはそれからもずつと続いて行くものを、ただそのときにおいて財産として評価するわけでございます。今度の場合にはそういうものがはつきり切れてしまいますので、その期間を大体全国のものを調べまして、三年平均くらいのことを考えれば妥当ではないかということで、そういうことを基礎にして計算したわけでございます。ただそれを裏から申しますと、そういう経営から離れます場合、実際に経営している方は、経営権が切れた場合、そこから資本を拔いて他にそれを転換して行かなければならぬわけであります。そういつた場合に、作離料というような考え方が出るわけでありますが、そういう場合にはたいてい一年分のその権利による所得というものが見られるのが通例でございます。わかりよく申しますと、たまたまそれと計算が合いますので、こまかい計算をしますと今のような形になりますが、それの考え方としては、その期間に経営権が切れてしまうから、この資本を拔いて、他に投下して行く場合の損失というものを見るという考え方がそこに出て来るわけであります。つまり数字的に申しますと、十四と十三・二くらいの違いでございます。これが大体金額といたしましては、総補償額の元の方の権利の二割程度と推定いたしますと大体これが合いますので、計算を便宜にいたしますために、本件がきまりました場合に、その二割程度ということで補償額をきめたわけであります
  28. 川村善八郎

    川村委員 ただいま私の質問に対して久宗君は、もちろん当初は漁業権の賃貸をして経営しておるものは漁業から離れるということで、損失の補償ということは、説明をただ財産税の場合において、賃貸権というものを財産権に認めて評価をしておる。それに対する財産税も納めておる。つまり補償するようにしたのだ。わかりやすく言えば、二割程度というものは補償される、これはもちろん現在そうなつております。ところが漁業を借りるということは必ずしも続いておるものでありません。大体長くて五年あるいは三年、二年、はなはだしきに至つては一年の賃貸借の契約になつて、それぞれ漁業を経営しているのが実態であります。そこで財産税をかけました当時の漁業権をもうすでに借りておらない。であるから結局現在まで漁業を借り、そうして経営をしておるけれども、実際に別の漁業だ。こうなつた場合におきましては、一方にはすでに財産税はとられておる。今度は一体何を基準にして賃貸権というものを認めて、そうして二割程度の今度の補償の対象とするかということを、私は聞きたいのであります。申すまでもなく、貸賃をとつて暮しておる者は、比較的欲のかたまりの人が多い。であるから、自分の都合が悪くなると人に貸さない。次に有利な者に貸す。従つて失業者ができておる。いたし方ないから他の漁業権を借りておる。他の漁業権を借りておる者が現在に至つた、こういう場合においては、何を一体対象にして今度の漁業権証券評価による二割を区切るか。その点をもう少し明らかにしてもらいたいと思います
  29. 久宗高

    久宗説明員 この点は先ほど主税局長からお話がありましたように、制度改革の実際面と、現行の税法をそのまま適用するところに一つの不合理があるわけであります。そこでこの問題につきつましても、先ほどお話のございましたような、たとえば貸与額というものをどういうふうに考えておるか。たとえば財産税と再評価補償を、今の賃借権のようなものと直接比較してはいけない問題もあろうかと思います。そこで今言つたような実態に即した、最も適当な方法ということがここで考えらるべきだと思うのでありますが、私の方で今経過的にお願いしておりますことは、そういう点から、前に全面的に切りかえという問題ではなしに、行われた財産税評価、こういつたものと現実の再評価の問題と補償というものをくつつけて行きます場合に、いろいろの矛盾が出て来るわけであります、たとえば帳簿に載つてないものもありますが、むしろ現在の状況におきまして、補償はいかなる考え方で行われたかということから逆算して考え行つた方が、実際の処置としては妥当な形になりはしないか。それがおそらく主税局長もおつしやつたような特別な措置というような中で、具体的に考えらるべきだと思うのであります
  30. 川村善八郎

    川村委員 もちろんいろいろ具体的に例を取上げて、そうして税の対象にするとか、あるいは評価の対象にするとかいうようなことは、そう答弁があるものと私は考えていましたが、実際問題として非常にめんどうなのは、現在の漁業権証券の対象にする年次はすつかりきまつております。ところで昭和二十四年あるいは五年、大体対象になる日限後において賃貸したもの等におきましては、一体どういうふうな評価をするかということについてもめんどうであり、さらに賃貸権の二割というものをどういうふうに計算するかということも、相当めんどうでなかろうか、実際問題を述べるとそうなります。そこで漁業権が安く評価された。つまり今まで多年休業しておつた事業が——いわゆる甲という者から取上げられてしまつて、乙という漁業を借りたために、その漁業昭和二十四年まで休んでおつたけれども、その後において今度は初めて賃貸者が出て、経営をしておつたという場合は、相当評価が安くなるのではなかろうか。そういう場合に二割の評価を受けて税をとられる場合においては、相当税が高くなるのではないかという心配があるのであります。そこでこの対象をどういうふうにするか、もう少し具体的に申し上げれば、二十三年が大体基準年度になつております。それが二十四年とやつたために、実際に漁業の形がないとして評価を安くされた、二十三年のとき評価された財産税の対象になつたものであれば、二割でも相当金額はあつた。ところが今度は二十四年、五年の漁業評価の対象というものはまことに安い、こうしたような場合においては、いわゆる今度は収入が非常に不足になるというが、税金は多くなるということになりはしないかという心配を持つものでありますから、こういう点を一体どういうふうに評価をして行くか、あるいは同じ二割でどこまでも行くか、すなわちさきに同じ二割でも百万円に評価された、今度は率は同じ二割だけれども、わずか十万円に評価になつた。その場合において相当の損失をこうむるというようなことになるのですが、これに対して水産庁としてどうお考えになるか。それからさらに税務署関係では、その安く、つまりあとの方の問題で考えるときには、漁業が違うのであるから、まるまる収入になつたということになりはしないか、そうなりますと税の対象になるものが相当に大きくなるという場合も考えなければならぬので、それらの点においてどういう見解を持つておるか、承りたいのであります
  31. 冨永格五郎

    冨永委員長 この場合川村委員にお諮り申し上げます。ただいまの質疑はきわめて重要でございますし、なおその他にも問題が重要でありますだけに質疑があることと存じます委員長の手元に現在質疑の通告をいたしております方々は、小高委員、田口委員鈴木委員、石原委員、永田委員、なお出席のそのほかの方々からも質疑があることと存じます。実は本日この問題を委員会にかけましたゆえんは、大分長らくの間大蔵省、農林省の間に話合いがまとまらなかつた点がありまして、延び延びになりましたが、延び延びにいたしておけないと考えまして、しいて本日議題に供した次第でございます。従いまして次会にさらにこれを続行いたしまして、その間大蔵省、農林省の妥結点、話合のまとまる点を見出そうといたしておる次第でございますので、本日はこの問題は一応この程度にとどめ、ただいまの川村委員からの御質問に対する答弁は次会に讓つて、さらに質疑の通告がありますので、その順を追うて質疑をお認めすることを條件として、延期いたしたいと考えますが、御異議ありませんか。
  32. 川村善八郎

    川村委員 ただいま委員長からなかなか容易でないと言われましたが、これはわれわれも承知しております。そこで私は大蔵省と水産庁に申入れをしておきます水産庁と大蔵省は、いつも事務的な折衝はされておると思います。しかしずいぶん長くかかつておる。漁業計画というものはもう目前に追つており、着々準備をしております。もちろん漁業計画を完全に遂行するということになる前に補償しなければならぬという建前であります。また補償した以上は、税がかかるかどうかという問題も片づけなければならない。そこで本委員会において質疑応答をするのが悪いとは申しません。非常にいいことではあるけれども、もう一歩突き進んで、委員会の中に小委員会がありますので、大蔵省と小委員会水産庁と三者一体になつて、この問題の研究を進めた方が結論が早く出るのでなかろうか。いわゆるひざを交えて隔意のない意見の交換をして行つた方が早いのではないか。実情に沿うべきものは沿うてやる。どうしても実情に沿わないものはどういうふうにして操作するというふうに、具体的に相談し合つた方が結論が早いのではないかと思いますので、そういう御意思があるならば、むしろここで質疑応答して長い時間を費すより効果的でなかろうかと思いますので、委員長においてこの趣旨を了とせられまして、適当にはからつて、ひとつそういう機会をつくられたならば、たいへんけつこうではないかと思います
  33. 冨永格五郎

    冨永委員長 ただいまの川村委員の御趣旨には全面的に賛成いたします。  先ほどお諮り申し上げました点は御同意願えますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  34. 冨永格五郎

    冨永委員長 それではさようとりはからいます漁業経営安定に関する質疑は一応これで打切ります。  井之口委員らか緊急質問があるということでありますが、ごく簡単にお願いいたします
  35. 井之口政雄

    ○井之口委員 水産庁長官ちよつとお尋ねいたします。千葉市の中を放水路が通つておりまして、印旛沼の干拓事業の一つの作業として、沿岸幅約八百メートル、長さ数キロにわたる土地が埋立てになるというのが先からの計画なんでございますが、もしこれが八百メートルも埋め立てられまして、その土地が農地が何かに使用されるということになりますと、沿岸漁民——これは千戸以上に上ると思うのですが、それらの人たちが今日やつているところの生業を失うという問題が起つて来る。千葉市会等においてもこの問題に反対して、設計を違えてもらいたい、あるいはどうしてもやるのだつた補償をもらいたいというような問題が起つておる。これに対して進行状態がどうなつておるのか、どうしても漁民の生業を奪うようなことでなければこの干拓事業はできないのかどうか、もしそうだとすれば、これに対する補償という問題も考慮されておるかどうか、この点をちよつと長官にお伺いいたします
  36. 家坂孝平

    家坂政府委員 まだ具体的な事情説明をよく聞いておりませんので、この点陳情者の方がおられるならば、よく説明を聞きまして問処したい、かように考えております。     —————————————
  37. 冨永格五郎

    冨永委員長 この際お諮りいたします。去る十日森幸太郎君が委員辞任されましたので、漁業制度漁業経営安定、水産金融、水産資源及び沿岸漁業の基本的復興対策に関する各小委員が一名ずつ欠員となつておりますが、同日田渕光一君が委員に選任されましたので、この際委員長において以上の各小委員に田渕光一君を補欠選任いたしたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  38. 冨永格五郎

    冨永委員長 御異議なしと認め田渕光一君を漁業制度漁業経営安定、水産金融、水産資源及び沿岸漁業の基本的復興対策に関する各小委員に選任いたします。     —————————————
  39. 冨永格五郎

    冨永委員長 なおこの場合お諮り申し上げます。先ほど参考人からの陳述を承りましたが、島倉参考人よりなお一言皆様に申し上げたいという申出がありました。これを許したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 冨永格五郎

    冨永委員長 さよう決定いたします島倉参考人
  41. 島倉與三松

    島倉参考人 実は根室国一円の船主の常に悩んでおる問題でありますが、これは漁船拿捕に関する損害であります。一たび漁船拿捕されました場合は、漁船、漁網具などの損失はまことに大きいのであります。資本漁業家の力のある方々と違いまして、根室国の漁民は、漁船と漁網とがほんとうの財産であります。この全財産を失つたときは、再び立つことが不能であります。生業をまつたく断たれる状態にあるのであります。現在までに拿捕され、未帰還の船も相当数に上つております。もちろん漁船、漁網ともに失つておるのであります。しかもその間漁夫の未帰還の者に対して、不在の給与をしなければならない。中には借金をしても、やりくりのできる人は払つておりますが、借金のでき得ない人、やりくりのでき得ない人は、これに対して大きな悩みを持つて苦労をしておるのであります。今日まで漁船、漁網を失つた者で、保険金をもらつた人は一人もおりません。これは法律に定めてありますので、いただくことはできないのだそうであります。そこで私どもとしてはこれに対する国家補償がお願いできないものか、お願いできるものであるならばお願いしたいと思うものであります。それからこれは今後の問題でありますが、今後漁船拿捕があつた場合は、拿捕保険に対する保険の料率は高くてもやむを得ませんが、何とかして漁船保険に対する保険金がいただきたいというのが大きな要望でございます。  根室国一円の漁業者としては、先ほども申し上げましたように、海域が狭く、濃霧もはげしく、また潮流の激変がありますために、常にこういう事故を繰返しておるのであります。今後もこういうことが繰返されるのではないかと苦慮いたしておりますが、漁船保険の問題と漁夫に対する不在中の給与の措置、これらの大きなねらいにつきましては、はるばる北海道根室から上京いたしまして、親しく歎願申し上げるのでありますから、私どもの熱意と苦衷とをお察しくださいまして、本委員会でもぜひともこれを取上げていただいて、法律の改正その他漁業に対する再生産ができるように、また漁師が安んじて生業につけるように御支援を賜りたいということを、特に根室漁民一同の船主にかわりまして、一言委員長初め委員各位に歎願いたす次第であります
  42. 川村善八郎

    川村委員 ただいま島倉君から拿捕に関しての漁船並びに漁網その他漁夫に対する保険をしてもらわれないか、いわゆる国家補償をしてもらわれないかという陳情が親しくあつたのですが、これらにつきましては、ひとり根室方面漁船拿捕の問題ばかりではありません。南方にもこうした拿捕の問題が相当あるのであります。そこで政府もこれを考えまして、また議員もそうしたような意見が非常に強いので、三月の八日に大体一つの要綱ができて、そうして拿捕、襲撃、捕護あるいは抑留、そうしたようなものに対する損害に対しましては、国家補償をしてやるべきだという意見だけは一致して、目下それぞれ法の改正もしくは法律案立案に努力を続けておるのであります。確定したことは申し上げられませんが、拿捕されておる事業者諸君には非常に気の毒であるということで、保険制度の確立をはかつて、これを救済して行きたいという趣旨によるところの立案をされておるのでありますから、あなた方も十分それはお考えくださいまして、たゆみなく今後御努力されるよう、一言お願いを申し上げて、お答え申し上げる次第であります
  43. 冨永格五郎

    冨永委員長 次会は土曜日午前十時に開きまして、漁業権者課税問題を続行いたしたいと思いますから、委員諸君におかれましても、政府委員諸君も、問題がきわめて重要でありますから、ぜひ御出席を願いたいと思います。なお先ほど川村委員からの意見もありましたが、小委員会におかれましても、意見をとりまとめるよう御盡力を御要望申し上げて、本日はこの程度で散会いたします。     午後一時二分散会