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鮫嶋法制局参事 先般第九国会において
改正になりました
水産業協同組合法によりますと、共済会の
理事は、共済会の会員であります
水産業協同組合を直接または間接に構成する個人でなければならない。言いかえると、会員たる協同組合の、いわゆる組合の個人たる組合員なり、あるいは個人たる孫会員でなければならないということにな
つているのであります。この
理事の定員の少くとも四分の三以上は、そういうものでなければならないということにな
つているのであります。この場合におきまして、もしも共済会の
理事の定員の少くとも四分の三以上が、今申し上げました者以外の者から選任されていたとするならば、そういう資格のない者から選任された
理事、その
理事の選任は、当然法律上無効になるというふうに解釈せられるのであります。ただ今回の
改正法の附則におきまして、会員たる組合の
理事たる者も、共済会の
理事になり得るということになりまして、それは法律施行前に選任された
理事についても、遡及して適用するということにな
つております。無効である選任行為をこの際遡及して有効にしようという附則の規定にな
つておりまして、これは立法的に申しまして可能なことであろうかと思います。言いかえますと、前に無効であ
つたことも、この附則の規定によ
つて有効になる、こういうふうな解釈であります。
それからこういう無効な行為をあとから有効にするというような立法例が今まであ
つたかどうか、早急にいろいろ調べてみたのでございますが、よい例も見当らないのでございます。ただ私の記憶にございますこれに似ている例としては、旧帝国憲法時代のことでございますが、陸軍
関係の給与令におきまして、その給与は現金でなければならないというふうにな
つておりましたのを、いろいろな財政上の都合で、現物給与をして、その後にな
つて、この給与は特定の給与でございますが、特定給与は現物給与でもよろしい、そうしてそれはその現物給与でや
つてもよいという規定を遡及させるということによりまして、前に現物給与をしてお
つたのを、後にな
つてから、その現物給与も適法な給与とするというような立法例が、旧帝国憲法時代にあ
つたのを記憶いたしますだけで、ほかにはこういう立法例は今
ちよつと思い当らないのでありますけれ
ども、法律的な解釈といたしましては、この無効な行為を遡及して有効にするということは、可能であろうと存じております。