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上田参考人 私は去る十八日から、
会社業務連絡のために、
福岡県の戸畑へ出張いたしまして、昨夜遅く東京にもど
つて参
つたものでございますが、現地に滯在いたしておるときに、たまたま私の
会社の第七十五報国丸が拿捕せられたという事件が起きました。さらにまたこの不法拿捕の問題に関しまする
福岡、佐賀地区の業者の集りがありまして、その
対策を現地で協議したのでございますが、その席にも連なる機会を得ましたので、現地におきまする業者の緊迫いたしました動きと、非痛な状況をここに御報告いたしまして、本問題に対する当
委員会各位の御援助を切に切にお願いいたしたいのでございます。
第一に、私どもの所有いたしております第七五報国丸と一緒に
操業をいたしておりました南星水産所属の和美丸が、どういう状況で拿捕せられたかについての概要を御報告いたします。
同船は
農林五百二十四区におきまして
操業をしてお
つたのでございますが、今月の十八日の夜の十時に武装
ジヤンクに襲撃せられまして大陳島方面に二隻とも連れて行かれたのでございます。そのときには、ただちに無線を封鎖されました関係か連絡がなか
つたのでございます。たまたま前から発電機の故障のために十分無線連絡がきかなか
つたので、無線連絡の故障ではなか
つたかと
思つて心配したのでございますが、二十一日の午前七時三十分に至りまして、初めて無線の連絡があ
つたのであります。それは
兵隊が何か監視のために船に乗
つて来ていたらしいのですが、その監視のすきをねら
つて会社に無線をしたのであります。それによりましてわれわれは初めて両船が拿捕され、大陳島、南岐島方面に連れて行かれたことを承知したのであります。それが拿捕されてから四日目でございますが、その目の午前十一時半に再び連絡がございました。やはり拿捕されておるその位置などを申して参
つたのであります。その後二十六日には、依然として監視が嚴重で通信ができないけれども、ひまを見てやるのだ。場合によ
つてわれわれは返してもらえるかもしれぬというようなことを申しておりまして、一体どこの船にやられたのか、どこへ連れて行かれるのか、台湾に行くらしいということを
言つておりましたが、その程度の連絡でありまして、詳細は一切がわからないのが事実であります。以上申し上げましたのが拿捕の概要でございますが、このような事件が頻発いたしますことに対して、現地の業者はどういうようなことを考えているか。これを皆様にお訴えいたしたいと思います。
まず緊急
対策でございますが、拿捕船並びにその乗組員をなるべく一日も早く返すようにしていただく。これを全業者はこぞ
つてお願いしたいのであります。これは不法拿捕と申しますか、拿捕が不法と申しますか、いずれにいたしましても、拿捕されるということに対して、全然われわれとしては納得がいかぬのでありますから、何といたしましても一時も早く返していただくようにお願いしたい。これをお願いしているのであります。
それから今後こういうような事故が起きないように、どういうような
対策を考えたらいいかということに相なるのでございますが、このような拿捕が起きます根本の原因は、何といたしましても
マツカーサー・ラインというものがあるがためだ。従
つて狭い漁場に集中して
操業をするような事態を現在続けておりますから、そういうような無為な
操業を避けしめるというような意味から、あるいは
資源を保持しなければならぬというような意味から申しましても、何としても根本としては
マツカーサー・ラインを撤廃していただかなければ、安心して
操業ができない。こういうことをお願いしたいのでございます。
その次には、これもまた急速にはとうていお願いできかねかるもしれませんけれども、
日本海、東海、黄海は
日本の
漁船だけが
操業しているのではないのでありまして、
中共の船も、国民
政府の船も、あるいは朝鮮の船も
——要するに
国際的な漁場の性格を持
つているのであります。従いまして講和の締結前、あるいは後を問わず、そういうような漁場でございますから、そういうような
国際漁業協定というものがなるべく早く成立しないと、やはりこのような不祥事が続発することも考えられるのであります。これはやはりなかなか急速には成立できないかもしれませんけれども、このことを、やはり恒久
対策の一つとしてお取上げ願いたいと考えているのであります。
その次には東海、黄海における漁場には、御承知のように
水産庁の
監視船が出動しております。この監親船は違反行為を監視するとともに、業者の船を保護していただく、こういう二つの任務を遂行しておられることとわれわれは想像いたしております。
監視船は非常に熱心にや
つていただいておりますので、業者はこれに対して常に非常な感謝の念を捧げているのでございますが、このように嚴重な保護をしていただいているにもかかわらず、こういうような事故が頻発するということでは、とうていこのまま事業を継続することが困難である。現場ではこのような結論に到達しつつあるのでございます。理由は申し上げるまでもございませんが、われわれが所有いたしております船は国家の貴重な生産財である。それを不法に外国に持ち去られるということは、とうていたえられないのでございます。
それからまた乗組員の不安の念がやはり刻々増大しておりまして、もし何ら適切な
対策が立てられないならば、その面からい
つても、とうてい事業の継続が困難になると考えられるのでございます。
それから第三には、この四月、五月になりますと、海上が漸次平穏なるのでございますが、そういたしますと、
ジヤンク船の行動範囲が広がりまして、この種の事故は、ますます頻発するであろうということが予想されるのございます。それからまた、この種の事故によりまする経済的な打撃の大きいことも、むろん皆様よく御承知の
通りでございまして、保險その他の方法によ
つて、現在においては、何らの
危險もカバーすることができないのでございます。全部業者の損害にな
つてしまうのでありまして、これはきわめて甚大なものでございまして、こういう
危險にさらされながら、事業を継続するということが非常な困難に直面しておるわけでございます。
今申しましたように、実情は、とにかく事業の継続困難というようなところにまで追い込められておるのでございますが、一面以西底びき業者の使命というものは、六大都市、特に京阪神市場方面におきましてその五〇%の魚類を以西業者によ
つて供給しておるのございます。従
つて、このような
危險に直面しながらも、今ただちにこの事業を全部やめてしまうということはできないのでございます。そこで講和が締結されまして、一切の不安が除去され、安全に
操業できるまで、全部というわけには参りませんけれども、一部の船をつないでしまう。それは單に経済的な理由からではなく、今申しましたいろいろの理由により、真にやむを得ない敗戰国に残されたた
つた一つの自衛の
措置ではないかと思うのでございます。この点をよく御了解願いまして、繋船に要する費用は、講和までの短期間でよいのでございますから、どうか国においてごめんどうを見ていただきたい。こいうことが現地業者の血を吐くようなお願いの叫びなのでございます。この事業に携
つております者は、直接間接を含めますと、二十数万と言われておりますが、その眼はひとしく国会における、当
委員会の御活躍を期待しておるのでございますから、窮迫をいたしました現状緩和に、どうか一臂のお力をお願いいたしたいのでございます。
私は昨夜おそく帰りましたために、何らの準備もなくここに参りましたのでございまして、はなはだお聞き苦しか
つたことも多いと思うのでございますが、どうぞよろしくお願いしておきます。