○井之口
委員 吉田総理と
ダレス特使との間に往復された
書簡は、
日本の
漁業問題のみならず、
日本の将来置かれるところの独立の問題、それに到達する
講和の問題へこれに対して非常に深い
関係を持つものとわれわれは
考えております。
日本国民は、非常に大きな注意を持
つてこれに臨んでおる点であります。これにつきまして四点、簡單に
質問を申し上げたいと思います。
まず吉田さんは、
国際的な摩擦が将来
漁業問題において起ることを非常にここに懸念して、その意を表明されております。実際に今
日本の
漁業の
状態を見ますると、海岸は、底びき
漁業によ
つて小さくみな接近して参りまして荒されて、ほとんど
資源が枯渇しておるという
状態、がつそれは一方においては生産力の増強でありますから喜ばなければならない。しかるに現実においては、それをむしろ悲しまなければならないような
状態にな
つておる。外への
方面は限られておる。また外へ行くためには、相当大きな資本を必要としておる。零細
漁民に対する
金融方面の政策というものも立
つていない。こういう
状態で
漁業行政それ自体も行詰
つておりまするが、これを打開するために、将来もしも以前のような侵略的な
漁業政策に推し移るということになれば、またまたこれ戰争というふうな危機が切迫して来る。そこで
吉田総理大臣においても、
国際間の摩擦ということを懸念されて、将来
日本の完全な主権の回復の後には、でき得る限りすみやかに他の国々と
日本との間にもいろいろなとりきめをしたいということを、ここで申されております。また
ダレス氏からの
返事にいたしましても、他の国々からもいろいろ交渉を
日本とする用意があるであろうというようなことを言うております。そこで
吉田総理大臣は、この点につきまして、中国並びにソ同盟との
関係をどう
考え、この交渉の行方において、はかどらせたいというお
考えでございますか。もし現在のように單独
講和の
方針で進み、そうしてぼちぼち賛成するところだけを入れて来て、多数
講和で行こうというふうなことをや
つて行つたならば、はたしてこの
目的を達するかどうか。たとえば、以前に
日本の近在に満洲国というのがございました。この満洲国も独立国であつた。
日本も独立国であつた満洲国は喜んで
日本の安全保障を受ける、
日本は喜んで満洲国を
保護してやる、こういうふうなとりきめをや
つて、どつちも独立国という形ではあつたが、その実、満洲州国をだれしも事実上独立国と思
つておる人間はなかつた。もし
日本にああいうような
講和が実現するといたしましたならば、ソ同盟並びに中国との間に、はたして摩擦なくして、いろいろな
漁業協定とかその他のとりきめができるかどうか。その点に対して
首相は全面
講和の線を強くやられようと思うのか。これをやらない限り
日本の
漁民の生活、
漁業問題の困難性を打開することはできないと思いますが、
ダレス氏との間にこの点はどう
お話に
なつたか。この点を一つ。
第二番目には、
講和が成立するまで、それまでの間に一九四〇年に
操業していなかつた漁場では、自発的な
措置として
日本の船舶の
操業を
禁止する、但しこれは
日本政府が有する
国際的な権利の放棄を
意味するものではないという但書を入れております。この但書をもつと具体的に
説明してもらいたい。どういうことを具体的に
意味するものであるか。しかもその例としては、べーリング海の
水域の云々ということを指摘されておりますが、ここに指摘されていないような所、たとえばカムチヤツカ沿岸とか、あるいはオホーツク海、あるいはその他の樺太沿岸というふうな所に対しては、いかなる意図を
総理大臣は持
つておられるのか。この点をひとつ聞いてみたいと思う次第でございます。それが第二点。
第三点は、
講和條約に到達しない前に、すでに
委員会を設置して、この
委員会に諸外国の正当に任命された代表者がオブザーヴアーとして出席することを期待するということを言
つておられますが、これに対しては、ソ同盟並びに中国、あるいは今日朝鮮で内乱を起しておりまするが、統一
政府というふうなものが、ここにオブザーヴアーとして参加することも構想のうちに入
つているかどうか。その点についてもひとつ
お尋ねをいたします。
それから第四番目には、
吉田首相から特使へあてたこの
書簡の中には、
日本海並びに朝鮮沿岸、さらに東支那海、こういう
方面のことについては何ら言及されておりません。先ほど
委員の方からも仰せがありましたが、また当
水産委員会においても、
資源枯渇防止法案による以西底びきの
禁止というふうなこともや
つておられますが、これは非常に重大な問題である。従来の行きがかりを見てみましても、
日本漁船がマツカーサー・ラインを越えて西の方に入
つて、蒋介石政権に上
つて拿捕された事件も以前に大分あつた。最近またこれがちよくちよく現われて来ておる。もしこういう具体的な問題について、吉田さんが
ダレス氏と打合せをしていないとするならば、将来の
講和問題においても、何ら
漁業問題について具体的な解決に当
つていないと思うのであります。非常に重大な問題がこの特使との
書簡の間には拔けておる。これについては、さらに
書簡以外の協議においてなされたものかどうか。もし将来以前として
日本が軍国主義時代のあの政策を続けて、密
漁船その他のものをどしどし西の
方面に繰出すということになりましたならば、それこそ今
官房長官が仰せになられた辿り、海のあなたには人民大衆の
政府が打立
つておる。そういうところにどしどし入
つて行
つて、そして密漁をするということに
なつたならば、両国の間に摩擦を生じ、そうして
日本がたまたま
侵略主義を採用したということが、アジア
方面の近隣諸国において反対されることは明かであります。こういう点につき著して、
日本は民主々義の国として、あくまでも近いソ同盟並びに中国あるいは朝鮮等との間に、真に平和を実現し、真に
日本の
漁民が、りつぱな
協定のもとに安心して
漁業ができるような
方針をとるためには、これらの国々とやはり一緒に
講和をするところの全面
講和の方式以外にないと思う。これをやらぬ限りは実際ためなんだ。こういうことについて、
総理大臣はどういう努力をなされていらつしやいますか。また
ダレス氏との
書簡の間に、この
方面が含まれておるものかどうか。含まれていないものとするならば、その間に何か相談でもあつたか。その点をひとつ
お尋ねしたいと思います。この四点についてお答えを願いたいと思います。
〔発言する者多し〕