運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1951-02-13 第10回国会 衆議院 水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年二月十三日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 冨永格五郎君    理事 鈴木 善幸君 理事 二階堂 進君    理事 松田 鐵藏君 理事 林  好次君    理事 上林與市郎君       石原 圓吉君    角田 幸吉君       田口長治郎君    永田  節君       平井 義一君    福田 喜東君       小松 勇次君    井之口政雄君  出席政府委員         水産庁長官   家坂 孝平君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁漁政部         長)     松任谷健太郎君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整第一課         長)      高橋 泰彦君         農林事務官         (水産庁生産部         水産課長)   水野  榮君         通商産業事務官         (通商繊維局綿         業課長)    佐橋  滋君         專  門  員 杉浦 保吉君         專  門  員 徳久 三種君     ————————————— 二月十日  水産業協同組合法等の一部を改正する法律案(  木下辰雄君外六名提出、参法第一号)(予) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  水産資材に関する件     —————————————
  2. 冨永格五郎

    冨永委員長 これより水産委員会を開会いたします。  この場合委員長から水産庁長官に対して次の諸点をお尋ねいたしますから、御答弁を願います。  第一点は、ダレス特使は十一日羽田飛行場出発の際、対日講和に関する漁業問題はどうなつておるかとの記者団質問に対し、漁業問題に関しては今週中に声明が出ることになつているが、この問題は順調に進んでいると語られたが、その際、この発表はどこから出るか明らかにされていないが、水産庁としてはこれについて何か委員会に報告することはないかどうか。  第二点は、シヤトル在外事務所長ト部敏男氏からの八日付外務省あての公電によれば、米領アラスカ議会は、漁業條項を含まない対日講和條約は拒否する旨の合衆国上院要請する議案を、去る六日に可決したと報ぜられておりますが、それについて、水産庁はその内容を入手したかどうか、入手していたら委員会に報告せられたい。もし入手せられていないならば、水産庁のこれに対する観測について承つておきたいと思います。
  3. 家坂孝平

    家坂政府委員 過日ダレス特使記者団お話されたという問題でありますが、実は昨日もNRSのヘリングトン課長に会う機会がありましたので、その点の内容を尋ねてみましたけれども課長も全然関知しておらない、発表されるまではわからない、かような返事でありました。それでこの問題の内容がいかようなものであるかということは、全然今のところわからないのであります。大体漁業協定に関するものをあるいは発表されるのではなかろうかというような見方をしておるのでありますが、もちろんこれは司令部から出されるのではなかろうかという想像をしているのみであります。なおこの点につきましては、発表される事前に、できるだけ内容を周知するように努めたいと考えております。  それから次のアメリカ州議会におきまして、漁業條約を含まない講和條約は拒否するという報道は、たしか新聞紙上で私は読んだだけでありまして、これについては外務省方面からも何ら連絡に接しておらないので、内容は少しもわからぬのでありますが、この点につきましても、できるだけ外務省あたりの情報を今後も説けて探りたいと考えております。
  4. 冨永格五郎

    冨永委員長 次に第三点でありますが、港則法及び海域法漁業との関係についてお尋ねしておきたいと思います。横浜、神戸、高松、函館等におきまして現在問題化いたしております。港則法第三十五條漁撈制限によりまして、一定港内の場所においてはみだりに漁撈をしてはならないという規定があり、一方港域法におきましては港の区域を広範囲にわたつて規定しているのでありますが、この場合、港内において直接船舶交通妨害となる漁業権は別といたしまして、その他の漁業権につきましては、漁業法趣旨にのつとり、当然将来とも認めるべきであると考えますが、水産庁当局は本問題に関し、いかなる見解を持ち、運輸当局といかなる折衝をしているか、この場合伺つておきたいと思います。なお港則法によりまして漁業権が取消された場合におきましても、漁業法第三十九條の都道府県知事による漁業権取消しの場合と同様、当然政府は補償すべきものと考えられるのでありますが、この点も明確に御答弁を願いたいと思います。
  5. 高橋泰彦

    高橋説明員 第一点の船舶航行にさしつかえのない港内における漁撈及び漁業権は、将来認めるべきであるということ、これに対して関係方面とどういうふうに打合せをしているかという点についてお答えいたしたいと思います。この件は二十六年の一月十六日付で、水産庁長官名をもつて海上保安庁長官に対して照会しておるのでありますが、その趣旨は、今度の改正によりますと、港則法第三十五條漁撈制限規定とかなり抵触する点が多いと考えられるが、これは結局港長の理解のある運用にまたなければならないが、できれば港域の指定及び拡張にあたつては、あらかじめ現地都道府県知事及び関係海漁業調整委員会意見を聞くようにしていただきたい、こういうような申入れをいたしております。これに対しまして、昭和二十六年一月十八日付でもつて海上保安庁長官より水産庁長官あてに回答がありますが、その要旨は、港則法規定する漁撈制限は、港内における一般船舶交通の安全を妨げる場合を除くのほか、漁業法に基く合法的な作業まで禁ずるものではないと解する、こういうふうな公文をいただいております。従つて第一点のお答えといたしましては、船舶航行を妨げない場合は、たとい港内であつて漁業権の設定もできるし、また将来漁場計画によつて漁業権を設定すべきである、航行を妨げる場合は別でございますが、それにさしつかえない場合にはかまわないというふうに運用して参りたい、こう考えております。  第二点は、港則法取消した場合は補償すべきがどうかという問題でありますが、港則法規定しておりまするのは三十五條漁撈制限でございまして、この漁撈制限規定は、船舶航行に妨げある場合にはみだりに漁撈をしてはいけないという趣旨規定でございますので、港則法自体漁業権を取消すという場合はまずないのではないかというふうに考える次第でございます。ただ、もし港則法関係で事実上漁業権を取消さざるを得ないような場合、たとえば船舶航行に非常にさしさわりがあつて漁業権取消しをせざるを得ないような場合は、やはり漁業法第三十九條の趣旨にのつとりまして、損害に対して相当額の補償をすべきであるというふうに考えて参つております。
  6. 冨永格五郎

    冨永委員長 第四点についてお尋ね申し上げます。わが国重要水産輸出物であるたらばがに刺網漁業について北海道においては長い間第二種共同漁業とするか、許可漁業とするかについて紛争されてありましたが、去る一月二十六日、水産庁からも係官が出席し、関係者札幌において協議して本問題解決の一応の結論を得た模様でありますが、その内容及び経過について、簡単に御説明願います。
  7. 高橋泰彦

    高橋説明員 それでは去る一月二十六日、札幌において、漁業者側とがにカン詰製造業者側とにおいて行われました協定についての御説明を申し上げます。  一番問題となりました点は、かに刺網漁業、これはいかりどめの刺網漁業でありますので、漁業法趣旨に基きまして共同漁業権とすることができるのでありますが、一応カン詰業者側といたしましては、共同漁業権にすることに対して相当懸念を持つてつたのであります。従つてこの問題を円滑に解決するために、漁業権の問題を中心といたしまして、協定のあつせんを私どもとしてはいたしたわけであります。その骨子は、かに刺網漁業共同漁業権にするか、または許可漁業にするかということは、海区漁業調整委員会意見によつて知事の決定によつて運用しようという点が第一点であります。これは漁業法の性質から参りますと、当然のことではありますが、その点相当誤解もありますので、特に協定した次第でございますが、漁業権にするか、許可漁業運用するかということは、現地情勢によつて海漁業調整委員会意見を聞きながら判断して行つてはどうか、こういう趣旨でございます。  第二点は、もし共同漁業権にいたしました場合は、その運用については、事前協定して参ろうということであります。この趣旨は、許可漁業でございますと、大体従来の方式従つてつて行くわけでありますが、これが共同漁業権に切りかわりますと、かにカン詰製造業者側が不当に圧迫されるのではないか、漁業権者たる漁業協同組合が、不当にカン詰業者を圧迫するのではないかという懸念がありましたので、この点も協定に盛り込むことにいたしまして、漁業権にする場合には、ともかくそのやり方について事前協定しようということが第二点であります。  第三点は、漁業権にした場合のやり方の問題でありますが、これは大体委員会をつくつて、資源の問題その他の問題について、委員会意見を聞いて運用して参ろう。この委員会漁業法趣旨にのつとつて北海道を一円にした海区漁業調整委員会連合会、これの専門部会という形の、かに専門部会という名前になるかと思いますが、これを置きまして、この意見を聞きながら知事の方で運用して参りたい、こういうことであります。  その次の漁業権行使方法でございますが、これはやり方といたしましては、漁業者側からも操業候補者名簿を提出する、それからかにカン詰製造業者の方からも操業候補者名簿を提出する。そこで両者がその名簿を突き合した上で相談して、大体一工場については大型船一隻の見当になると思いますが、そういうふうに名簿両方で出し合いまして、両方で相談しながら一隻については決定して参る。残りの船については漁業協同組合側カン詰業者側と相談してやろう、こういう趣旨であります。要点は漁業権を設定する前に、漁業権者側と将来漁業権者となる協同組合側カン詰製造業者側と円満に相談してやつて参ろうという趣旨協定ができましたので、今後はその協定趣旨に沿うて円満に操業ができるものと、私どもとしては期待しておるような次第でございます。
  8. 冨永格五郎

    冨永委員長 この場合質問の通告があります。これを許します。松田委員
  9. 松田鐵藏

    松田委員 通産省綿業課長がおいでになつておるので御質問申し上げたいと存じますが、大体水産庁の現在までの漁網需給調整やり方につきましては、理論的にはもつともああやるべきである、正しいものであるという考え方を持つておりまするが、その現実の場面に行きまして非常に齟齬が来されておるのであります。現在まじめな漁民の網の入手は、券が配付されまして、それからメーカーにその券をやつて、自分の手に入手されるまでには、約三箇月かかるというような現状であるのであります。またメーカーにおいても、券を入手してからわざわざ通産省に配給の券をとりかえに行つて、それから糸を注文して、現金を持つて行つてから初めて網につくるというような行き方になつておりまして、この問漁期を控えて非常な齟齬を来すような場面が多いのでありまして、理論上から言つたら非常なりつばな行き方でありまするが、そういう場面及び最も忌まわしい券の横流れというようなこともたまたま聞くのであります。かようなことがあつて漁民は今非常に困窮しておる。この点から行きまして、国内においては民需として大体五万梱出されておる。水産関係に対しては約一割を割当てられておるような現状であるのでありますが、将来この面も民貿になる場合においてどういうような操作によつてこの一割なら一割という漁網用の綿が確保されるかということ、及び現在の需給調整の仕方で行つてはたして満足な方法をとり得るかどうか、いな私は現在の需給調整の仕方では、なかなか今の段階を打破することはでき得ないのじやないかという考え方を持つております。この点に対する綿業課長考え方に、もし何かこの点を打開する方法があるのならば、われわれも喜ばしい次第である。かように考えておりまするが、水産当局といたしましてどのようなお考えを持つておられるか、この点に対して、綿業課長の立場から、できるだけお話を承ることができればたいへんけつこうだと思うのであります。
  10. 佐橋滋

    佐橋説明員 松田委員の御質問に対してお答えいたします。先ほど民貿に切りかわる云々というお話がありましたが、現在のところ、ほとんど全部もう民貿に切りかわつております。わずかに政府買付済み米綿が、まだ政府で若干輸入しておるという程度でありまして、全部民貿に切りかわつておるわけであります。それで現在政府が持つております綿は、内需用に放出し得る数量は、九万俵そこそこの綿しか持つておらないのであります。この数字は、この一—三月の内需用割当に対しまして約七割の数字でありますが、これだけのものを今まで政府一定値段紡績に拂い下げておりました関係上、その原綿値段ベースにして糸値あるいは漁網値段がきまつておりました関係上、この九万俵につきましては従表のようなやり方で行けるわけでありますが、それがなくなつてしまいましたあとは、紡績がかつてに買いました民貿綿ベースにして価格も構成される、こういうことになりますので、今までの統制方式は、何らかの形において変更がされるのではないかと考えておるものであります。  一応綿の需給状況について簡単に御説明を申し上げたいと思いますが、御承知のように、昨年の七月に、紡績につきまして設備制限司令部から撤廃されたのであります。それまでに平和産業設備制限を受けておつたの紡績だけであります。これが四百万錘のわくに押えられておつたのであります。それが解除を受けましたあと増錘計画は順調に進捗しておりまして、現在までにすでに四百三十万錘以上の設備になつております。今年の秋口には大体五百万錘の線に達する、こういうふうに考えております。設備かくのごとく非常に順調に増錘計画が進んでおります。これに対して、はたして原綿がくつついて来るかどうかということが一番の問題になるわけでありますが、現在までのところ、この設備をフルに動かすだけの原綿の手当は十分に可能ある、こうわれわれは確信いたしておるのであります。と申しますのは、この設備を大体フルに動かしまして、年間百七十万梱くらいの生産になるわけであります。これに要します綿は、ランニング・ストツクを加えますと約百九十万俵くらいいるわけであります。これに対しまして、昨年の十二月末のストツクは四十二万八千梱、これが紡績及び日本の港に着いている綿であります。これに対しまして、現在までに買い付けました綿が八十一万九千梱あるわけであります。綿花は一月以後自動承認制で輸入しておりますが、その後アメリカ日本に対する綿の割当がふえまして、それに四月以降のブラジル、パキスタンあるいはビルマインド、その他からの買付を入れますと、六十七万三千梱は大体今後買付見通しがついておるのであります。それでその数量を全部寄せますと約百九十万梱という数量になるのでありまして、本年度増錘に見合う生産計画は十二分に達成できると考えております。なおこの数字の中に若干のゆとりが持たしてありますのは、昨年は、日本で使いました綿の大体八割までを米綿に依存しておつたのでありますが、本年は大体六割以下の数字アメリカに依存しまして、そのほかは世界中のあらゆる国から買付をしております。中南米、インド、エジプト、パキスタンビルマ、その他であります。アメリカへの綿の依存度が非常に減つているのは、アメリカは昨年は非常に綿が不凶でありまして、一昨年千六百万俵とれましだのが昨年は一千万俵を割つたのであります。これは一昨年の豊作に対しましてアメリカ作付面積制限いたしまして、生産制限したのであります。本年は綿花作付制限しないことになつておりますので、本年度生産はよほど天候その他の状況に激変がない限り、少くとも千三、四百万俵の数字はとれるのじやないか、こういうふうに考えております。今年の綿花の予想は、アメリカが来年度に繰越すために二百五十万俵くらい国内に使わない綿をストツクしておるのでありますから、アメリカの今年の作付状況によつては、これを売つて来るということは十二分に予想されます、この数字もまだわれわれの方としては見込んでおりませんので、こういうのがまたプラスになる。それから、アメリカにおいては九月ごろから新しい綿がとれるわけでありますが、これがまた本年度かなり数量つて来る、これもほんの内輪にしか見ておりませんが、昨年あたりも約三十五万俵ばかりその年の新綿が入つて来ておりますので、今年もそれくらいの数字はとれる。こういうことになりますと、原綿見通しについての数字は今のところ少しも心配はない。ただあれば、国際情勢の変化によりまして船腹がとれるかどうかという問題がありますが、一月、二月あたりには、神戸の埠頭へ月々約二十万俵以上ずつ入つておりまして、これが工場へ送りつけられないようなうれしい悲鳴をあげておる。そういう状況になつておりますので、現在のところ綿の見通しについては一応心配がいらないとしまして、百七十万梱の生産が本年度にできますと、一体どういう糸が振当てになるかと申しますと、大体在われわれの方から司令部に交渉しておりますのは、月々内需へ五万五千梱出してくれ、こういう要請をしておるわけでありますが、御承知のように現在までの国内への売渡し数量というのは三万七千五百梱というふうに押えられておるわけであります。国内への綿糸の放出を押えまして輸出に振り向けておるのでありますが、今申しましたように、昨年度に対しまして五割以上、六割ないし七割の増産ができるということになりますと、輸出も十二分にいたしまして、なおかつ国内相当数量出してもさしつかえないというわれわれの見通しでありますので、この三万七千五百梱に押えられております数量を五万五千梱にふやしてくれ、こういうことを申し入れております、今司令部折衝中であります。この百七十万梱の生産のうち、内需に約五万五千梱月々出して参ります、そうしますと六十五万梱くらいの数字になるかと思いますが、そういたしましてもなおかつ輸出に対しましては十四億ヤード近くのものが出るのであります。そのほかに綿糸あるいはメリヤス雑品といつたような、綿布以外で出るものを十二万梱見込み、さらに発展いたします特需の要請に応ずるために九万五、六千梱のものが保留できる、こういう状況になつておるのであります。  輸出見通しでありますが、御承知のように綿は全貿易量の約四割近くのものを綿製品輸出しておりまして、これで外貨をかせいでおるわけでありますが、昨年の輸出が約十億五千万ヤードであつたわけであります。これは世界の全輸出量の二割三、四分に当るかと思います。それだけの数量輸出しまして、世界一の輸出国になつておるわけでありますが、十億五千万ヤード輸出いたしまして、すでにイギリスあたりから日本綿布輸出が多過ぎる、イギリスの販路を侵しておるということでお小言をちようだいしておるような現状でありますので、一体どこまで日本が売つて行けるかということについては、いろいろ疑問がありまして、われわれの現在の見通しでは、十四億出し得たならば、これは最上の数字ではないかというよう気がいたします。その数字をとつて、なおかつ内需に五万五千梱確保できるわけであります。五万五千梱の数字は、ポンド計算にいたしますと、二億六千四百万ポンドという数字になるわけであります。この中から、いわゆる衣料にまわるものと漁網その他の生産資材にまわるものとがあるわけでありますが、また委員の御質問のように、一億六千五百万ポンドから漁網だけの必要な数字だけをとられても、一割になるか、ならぬかの数字であります。やみに流れるということは、御承知のように、内需で月三万七千五百梱というような限られた数字を出しましても、生産資材につきましてはほとんど一ぱいの数字が見てありまして、国民の衣料にまわるものを圧縮いたしておるわけであります。内需へ放出いたします数量がふえれば、ふえた分は一般衣料にまわわる。だから衣料の方はその割に潤沢になりますので、生産資材の方から衣料の方に流れるケースも従つて少くなるのではないか、こういうふうに考えられておるのであります。一番問題になりますのは価格の点であります。私は漁網年間二千六百万あるいは二千万という数字を確保することは決して困難ではないというふうに楽観をいたしておりますが、問題は今言いましたように、値段の問題であります。現在綿糸値段はニマルが一梱八万一千円であります。これは今まで政府が手持ちまておりました綿を拂い下げまして、それでつくらしておつた。今までの政府の綿は大体四十二セント・ベースの綿を拂い下げておつたのであります。綿糸が八万一千円といたしますと、そのうちの七万円が綿花値段でありまして、一万一千円が工質、こういうことになつておるわけであります。この八万一千円の綿糸が一体どこまで上るかということであります。政府の綿がなくなつてしまいました現状においては、全部紡績がかつて買つた綿でつくらせることになるわけですが、この綿がその後異常な値上りをいたしておりまして、安い綿で四十七、八セントから高いのは八十セントまでの綿を買つておるのであります。八十セントの綿で原価採算をとりますと、綿価だけでも十四万円ぐらいになるわけであります。今われわれが安本あるいは物価庁司令部折衝いたしておりますのは、こういうふうに綿値が異常に高騰いたしておりますので、いずれにしろ改訂をしなければならぬのでありまして、マル公をきめるとかあるいは国際価格で押えるというようなことにしようじやないかというようなことで、司令部と話を進めておるわけでありますが、綿布輸出した場合、その綿布から逆算をいたしました綿糸価格内需綿糸値段を押える、こういうことでありまして、おそらく十三、四万円ぐらいのところになるかと思いますが、これにしましても現在の八万円ベース綿値からいいますと、やはり六、七割ぐらいの高値になるわけでありまして、そういうふうにやむを得ず綿花上つたために綿糸が上る。そのために綱の値段も上るということになるわけであります。今の漁業の実情からいつて、一体十二分にこなせるかどうかということになるわけでありますが、この値段漁業者の方で買うことができれば、必要なだけの数量を確保することは決して至難のことではないこ考えております。われわれとして、はでき得れば、今のような国際価格値段になつて、しかもなおかつ国内へ月五万五千梱以上のものが出せるということになりますれば、こまかい統制はやめまして、漁業者等  へその輸出ベース値段で買い得ないというような状況につきましては、われわれの方からあつせん切符等を出して、必要量だけを確保するという方法を考えたいと思うのであります。先ほど松田委員からの質問の中にもありましたように、現在の受注制度は理論的にはきわめてりつぱでありますが水産庁から発券されました切符が漁師の手元に行きましてから、その切符網業者が集めまして、その数量だけわれわれの方で切符を切る、こういうことになつておりまして、どうしてもほかの需要部門に比べますと、切符の発券が握れざるを得ないのであります。そのために従来のように割当量が少い場合にはどうしてもあとまわしになり、そのためにせつかく漁期を失するおそれもあつたわけでありますが、今言いましたように、国内向け数量が非常に出まわれば、漁師の方でも、あるいは漁網業者でもいいが、適当な時期になつて綿糸を十二分に見込み生産をしておくということができることになるわけであります。ただわれわれが心配いたしておりますのは値段の点だけであります。一つ御研究おきを願いたいと思います。
  11. 松田鐵藏

    松田委員 非常に原料に対する明るい見通し意見を承りまして、われわれも非常に意を強うするものであります。そこでただいまの需給調整というあの制度は、もはやいかに続けようと思つても、政府手持ちの九万俵に限られることになるわけであります。たとえばどのようなことがあつて需給調整をいかに続けようとしても、政府手持ちの九万俵以外には続けるわけには参らないのであります。現在の漁業者の困つておることは、内需の三万七千五百という数字があまりに僅少なるがためです。この価格が高くなれば、当然入つて来る原料によつて漁網をつくるのに心配のないような、明るい見通しの御意見であつたように承つたのですが、それならばこの時期はいつごろになりますか、お知らせを願いたいのであります。
  12. 佐橋滋

    佐橋説明員 この九万俵の手持ちの綿がなくなつてしまえば、自注制度を維持できるかどうかという御質問でありますが、必ずしもそうとばかりは言えないのであります。と申しますのは、五万五千俵内需で放出いたしまして、それがかりに一俵十四万円だといつた場合に、なおかつ国内の需要は五万五千俵では足らぬのだ、六万俵でも七千俵でも使うのだということになりまして、十四万円の値段をはね上げ、やみ値でも買おう、こういうような状況になりますれば、受注制度、いわゆる切符制度存続の必要があるわけであります。ただわれわれの見通しとしましては、現在の状況で五万五千俵という数字は、十四万円をベースにしてはじきますと、月に七十億の糸代になるわけであります。そうしてこれが製品になりますと、大体倍以上の金になりますので、一体今の国民所得からいつて綿製品に——漁網資材を全部つくる意味において、百四十億以上の金が綿製品に集中できるかどうか。こういうことにつきましては、今のようなドツジ・ラインが堅持されておる限りにおいては、それだけの需要は出て来ないと考えておるわけであります。  第二点の御質問の、政府手持ちのなくなる時期でございますが、これは現在の生産計画から行きますと、三月の中旬に紡績から引き切つて、三月一ぱいにメーカーの手元へ渡りますので、四月以降には民間の綿をベースにする、こういうことになるわけであります。
  13. 松田鐵藏

    松田委員 重ねてお尋ねいたしますが。日本国内の需要というものは、どの程度にあるものでありまするか。
  14. 佐橋滋

    佐橋説明員 戦前におきまして日本には千三百万錘の紡績設備がありまして、そのころは手拭あたりを名刺がわりに出しておつた。さらし一反が三十銭というようなころにおいての日本中における綿の需要量は、大体十万俵ちよつとくらいだつたと思います。それからして、現在の状況で約その半量近いものが出て来るということになりますと、今のような国民の所得状況から行けば、相当大きな数字だというふうな感じがいたすわけであります。
  15. 松田鐵藏

    松田委員 貿易価格国内価格の差はどのようにあるのでしようか。
  16. 佐橋滋

    佐橋説明員 現在、特に衣料につきましてはマル公があるにかかわらず、小売の段階においてはやみ——いわゆるナシヨナル・プライスになつておりまして、ほとんどマル公は維持されておらないのであります。このマル公が大体系値で申しますと、二マルの標準番手で八万一千円で、輸出値が大体十四万円、それからやみ値が二十二、三万円。綿布におきましても大体そんなふうな状況になつております。
  17. 松田鐵藏

    松田委員 現在漁網を製造しておるメーカーの軒数は、どのくらいでありますか。
  18. 佐橋滋

    佐橋説明員 現在、いわゆる漁網関係しておる業者は五百くらいであります。
  19. 松田鐵藏

    松田委員 そこでこの前も非公式に綿業課長お話申し上げたとき、現在の姿で行けば、この漁網関係しておるメーカーがあまりにも多いために、一流メーカーはやみをやるようなことはほとんどでき得ないし、また切符を発せられたものは必ず渡すというようなやり方をやつておるために、この一流メーカーに対する券の集り方が非常に不足である。戦後にできたメーカーが非常に大きな券を集めておつて、それが三流になり、二流になつておるという姿である。かような事柄を考えておつたようでありまするが、日本において三分の一を製造しておつた平田製綱だとか綱勘だとか、北海道にある函館製綱というような一流のメーカーが、今日最も困つておるという姿は、実際において券の入手困難というところから参つておるのであつて漁業者みずからは、今日五百もあるメーカーを相手にして網を買つておるような姿です。どこへ注文したらいいものかわけがわからぬというような現在の姿である。また一流メーカーはそのようなことで、結局が漁網に専心して行くわけには参らぬような現状であるから、あり余る生産設備を持つておりながら、その三分の一なり五分の一なりを動かしておるような姿である。ただいまはこれが直接の影響はないが、将来漁網を使う漁民の立場からいつたならば、大きな問題となることであろうと考えるのであります。ただいまの御説明による、五百という漁網を専門につくつておるメーカーを、昔のように整理する方法はないものでしようか。
  20. 佐橋滋

    佐橋説明員 現在の受註制度をやりました当初の考え方は、漁業者に渡りました切符は優秀なメーカーに集中して、粗悪なメーカーは淘汰される、こういう考え方で進んだのでありますが、現実においてはその逆の状況になりまして、弱小のいわばインチキな漁網業者が水産業者から切符を集めて、その切符を横に流す、切符でもらつた糸はやみに流す。たとえばある水産業者が百玉の切符をもらうと、そこで話合いをするのかどうか知りませんが、五十玉なら五十玉を渡して、あとの五十玉はやみに流すというようなことで、非常に運動資金ができ、それが切符を集めて来るというような形になりまして、優秀なメーカーは結局マル公で売り、マル公で買わなければならぬ。それでこういうところへ切符が集まらないということで、むしろ優秀なものが非常に苦しいという状況になつておりますので、現在のような受注制度をそのまま存続する限りにおいては、いわゆる粗悪な業者の淘汰はできない。これがフリーになりますれば、一応工賃が安くて、しかも優秀な製品をつくつてくれるところへ漁業者の注文が集まるということになると思いますが、現在のままではこの状況はちよつと調整するわけには参らぬと思います。
  21. 松田鐵藏

    松田委員 現在の需給調整の姿が、制度からいつてメーカーの調整というか、整理ができ得ない段階になつておる、かような御意見と承りました。こうした場合において、規則によつてこれを整理することはできないが、何らかの方法をもつてこの優秀なメーカーのみ残しておくことができ得ないか。まず一例を申し上げると、これらに対してある程度の一時的の援助をする、要するに国が現在の綿を買う資金というものを裏づけする、かような方法によつて優秀なメーカーに対する援助というような方法が考え得られないかどうか、御意見がありましたら、承りたいと思います。
  22. 佐橋滋

    佐橋説明員 現在のところは、各地区地区で優秀なメーカーが寄りまして、自主的にそういう金融方策を考えておられます。これは必ずしも今の問題ばかりではなくて、糸値が逐次上つて来ておりますので、運転資金が非常に厖大な額になつて来ておりますから、この点も十二分にやつておるようでありますが、優秀メーカーと目される者でも、現在製品を売つてからの金の回収状況が非常に悪いということで、現在のところでは、市中銀行ではほとんど手一ぱいまで貸しておりますので、今後この受注制をはずして、優秀なメーカーならば幾らでも製品が売れるのだということの見通しがない限り、今の状況では、市中銀行あたりは、現状以上に資金わくをふやすということは考えられないと思います。
  23. 松田鐵藏

    松田委員 次に水産庁にお尋ねいたしますが、ただいままでの私と綿業課長との質疑応答によつて、大体においてこの概要がおわかりのことと存ずるのでありますが、また水産庁としても、十分今まで御研究になつておられることだろうと考えておるのでありますが、現在の水産庁の立場において、この需給調整をおやめになる御意思があるかどうか。
  24. 水野榮

    ○水野説明員 お答えいたします。需給調整規則は、私どもとしても必ずしも満足なものとは思わないのであります。最初はいわゆる設備割当ということから進んで行きまして、その後設備割当の欠陷が露呈いたしましたので、現在のような受注制度となつたのであります。しかしながら内需用綿のわくがふえ、従つてまた漁網割当てられるであろうところの綿がふえるということになりますれば、統制をいたしましても意義がないのじやないかと思うのであります。しかしこの統制を今すぐにはずすということにつきましては、非常に混乱を来すのじやないか。たとえば、量の問題はこういうふうに確保できたといたしましても、先ほど綿業課長からも説明がありましたように、価格の面でその利用者であるところの漁民は非常な打撃を受けるのではないかと思うのであります。従いまして、価格の面において補給金が出ないとするならば、何らかの意味において長期の購入資金というものが考えられないかというふうに私どもは考えておるのであります。統制をはずすにいたしましても、そういう面を考え合せて、価格統制はある程度置いておくというふうなことで考えてみたらどうかと、現在のところ考えております。
  25. 松田鐵藏

    松田委員 この点は現在水産関係に対しての必要数量が、月二千六百万ポンドあればよい。しかもこれは五万五千梱の約一割であるという点からいつて、この点に対する確保ということについては、現在安本と通産省司令部に当つて御努力をなさつておるというお話であるので、これをできるだけ早くその線に持つてつたならば、国内の需要に対する調整というものは十分であろうと考えるのであります。今日漁業のわれわれに対する陳情というものは、実に熾烈な叫びを持つておるのであります。たとえば北海道のにしん網にしても、とうてい今日の間に合わぬという現状であつて、それがために漁期を失うということさえある。また瀬戸内海の小さな漁民にしても、ほとんどわずかの券しか行かないために、その割当というものがまちまちである、かように訴えられておるのであります。この原料の調整さえでき得れば、やみの網を買つて漁業を営むよりも、幾分は安いものが買い得るのじやないかという考え方も持つのであります。わざわざ十玉か二十玉を確保するために上京しなければならぬような事柄がひんぴんとして今日起つておるような状態でありまして、この点に対する水産庁の御意見は、何とか安いものを漁民に與えようというお気持ちはよくわかりますけれども、現在の姿からいつたならば、もはやそうした消極的なお考えよりも、この統制を早くはずしてしまつて需給調整の姿をかえつて、あらゆる手段をもつて内需要を多くすることによつて、いまわしい横流れなども防ぎ、またりつぱな設備を持つておるよいメーカーに対して援助する方法についても、われわれ努力したいと考えておるのであります。こういう点から言つて委員会通産省水産庁、安本が一致してこの点に努力をして行かなければ、漁民はまつたくどうにもならないような現状であるのであります。私の質問はこの程度にいたしますが、当局がこれに対し急速に善処されることを御期待申し上げ、また私どもも、場合によつては、資金の面に対しては及ばずながら御努力申し上げ、早く漁民の立ち行く姿を見たいと考えておるものでありまして、どうかこの点に対する御努力のほどをお願い申し上げ、私の質問を終ります。
  26. 井之口政雄

    ○井之口委員 ただいまの綿網の点について御質問申し上げますが、もうすでに貿易は民間賀易となり、価格はやみ値になつたということをおつしやつていらつしやいます。しかも政府で持つているのは約九万梱で、これも出してしまう。こうなつて来ますと、今までの券というようなもので割当てていたことは、まつたく意義がないことになつて、しかも自由党の一切の統制をはずすという方針とも齟齬するものでありますが、そういうことを政府においてはやられるつもりですか。また今の方針を維持するとすれば、当然価格というものに対して何らかの操作を加えることをし、あるいは価格補給金を出すとか、あるいはこれに対して独占的ないろいろな操作をするようなことになつて、結局少しやり出せば社会党、民主党がやつたような官僚統制になり、自由の方向には行かない。こういうように今の政府の方針は中途半端で悩んでおるように見えますけれども、それはどちらの方向を将来とつて漁民の生活安定、原料の確保をさせようという方針に進んで行かれるのか、伺いたいと思います。
  27. 佐橋滋

    佐橋説明員 ただいまの御質問でありますが、現在までに出ております切符は綿の裏打ちがありますので、この分だけは従来の方法で現物を確保させて行く。これがなくなつてしまつたあと、ただいまの説明にありましたように、われわれとしては、有効需要に見合うだけのものは国内に放出し得る自信を持つておりますので、今後については統制をはずして自由にして行くように考えておりまして、漁業者等につきましては、今水産庁の方からも御答弁がありましたように、金融の道をつけて行くという方向で進んで行きたいと考えるのであります。
  28. 井之口政雄

    ○井之口委員 そうすると、ほんとうの自由経済に移つて行くわけでありますが、その結果として結局現われて来るものは価格の高騰、もしこれに供給するところの原料が制限されて来るとすれば、価格は非常に上つて来る。その価格の上ることによつて、むしろ需要の分量を減らして行つて、需給関係を見合せなければならぬということになつて来て、漁民はなるほど自由になつて、金さえあれば網は手に入るようになりますけれども、実は非常に高いものになつて、魚価は上らない、資材は上るというはさみ状の苦しみに陷つて来ることになります、これは自由経済の必然の弊害であると思うのでありますが、それに対して、政府の方では今から十分な考慮を拡つておられるか伺いたいと思います。
  29. 松田鐵藏

    松田委員 関連して申し上げますが、井之口委員はよくわからぬで、りくつだけでお話をされているのではないかと考えているのであります。今のまじめな漁民は、綱がなくて漁ができ得ないというのが現在の姿で、価格というものは民貿に持つて行つて十四万円よりも上まわらないようにと、先ほど御説明を受けたのでありますが、網がなくて漁ができない、またいろいろの操作によつて非常に経費がかかつている今日であるから、十分に網を與えることによつて漁業も盛んになつてそこに経費の負担というものも少くなるのではないか、現在のような姿では困るのではないかという考え方で、私どもはいるのでありますが、少しぐらい高くなつてもやむを得ない、現在の段階ではないかと考えているのであります。この点私ども意見はそう考えているのですが、両方合せて御答弁を願いたいと思います。
  30. 冨永格五郎

    冨永委員長 本日はこの程度にとどめたいと思います。次会は明後十五日木曜日午前十時半より開会いたします。なお十時より漁業制度の小委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時十四分散会