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1951-05-23 第10回国会 衆議院 人事委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十三日(水曜日)     午前十一時四十四分開議  出席委員    委員長 田中伊三次君    理事 田中 重彌君 理事 藤枝 泉介君    理事 淵上房太郎君 理事 平川 篤雄君    理事 松澤 兼人君       有田 二郎君    加藤隆太郎君       塩田賀四郎君    西村 直己君       福田 篤泰君    成田 知巳君       林  百郎君    岡田 春夫君  出席政府委員         人事院総裁   淺井  清君         人事院事務官         (事務総局給與         局長)     瀧本 忠男君         人事院事務官         (事務総局給與         局次長)    慶徳 庄意君         人事院事務官         (事務総局法制         局長)     岡部 史郎君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房人事         課長)     大山  正君         運輸事務官         (大臣官房人事         課長)     山内 公猷君         郵政事務官   篠崎義三郎君         電気通信事務官         (大臣官房人事         部長)     山岸 重孝君         建設事務官         (大臣官房人事         課長)     町田  稔君         專  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 五月二十二日  委員藤枝泉介君及び林百郎君辞任につき、その  補欠として片岡伊三郎君及び苅田アサノ君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十三日  委員片岡伊三郎君、星島二郎君、大野伴睦君、  今村長太郎君、小林信一若及び苅田アサノ君辞  任につき、その補欠として藤枝泉介君、福田篤  泰君、有田二郎君、西村直己君、芦田均君及び  林百郎君が議長の指名委員に選任された。 同日  藤枝泉介君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 五月二十二日  宇都宮市の地域給引上げ請願外一件(尾関義  一君紹介)(第二一五六号)  兒島市の地域給引上げ請願星島二郎君外八  名紹介)(第二一五七号)  八浜町の神域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一五八号)  高梁町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一六〇号)  福田町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一六一号)  総社町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一六二号)  足利市の地域給引上げ請願小平久雄君外一  名紹介)(第二一六三号)  富田、吾妻両村の地域給指定に関する請願(小  平久雄君外一名紹介)(第二一六四号)  連島町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一六五号)  井原町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一六六号)  妹尾町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一六七号)  琴浦町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一六八号)  勝山町の地域給指定に関する請願大村清一君  外八名紹介)(第二一六九号)  林野町の地域給指定に関する請願大村清一君  外八名紹介)(第二一七〇号)  茶屋町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外六名紹介)(第二一七一号)  笠岡町の恥域給存続請願星島二郎君外八名  紹介)(第二一七二号)  早島町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一七三号)  新見、上市両町地域給指定に関する請願(星  島二郎君外八名紹介)(第二一七四号)  牛窓町の地域給指定に関する請願星島二郎君  外八名紹介)(第二一七五号)  備前町の地域給指定に関する請願大村清一君  外八名紹介)(第二一七六号)  勝間田町の地域給指定に関する請願大村清一  君外八名紹介)(第二一七七号)  西大寺町の地域給指定に関する請願星島二郎  君外八名紹介)(第二一七八号)  山辺町外六箇町村の地域給指定に関する請願(  小平久雄君外一名紹介)(第二一七九号)  小俣町外三箇町村地域給指定に関する請願(  小平久雄君外一名紹介)(第二一八〇号)  久野、筑波両村の地域給指定に関する請願(小  平久雄君外一名紹介)(第二一八一号)  大洲町の地域給指定に関する請願中村純一君  紹介)(第二一八二号)  瀬戸町の亀城給指定に関する請願大村清一君  外八名紹介)(第二一八三号)  焼津市の地域給指定に関する請願西村直己君  紹介)(第二二一二号)  鹿島町の地域給指定に関する請願北川定務君  紹介)(第二二一三号)  小城町の地域給指定に関する請願三池信君紹  介)(第二二一四号)  横須賀市の地域給引上げ請願岩本信行君紹  介)(第二二一五号) の審査を本委員会に付託された。 同日  茨城県下の地域給増額に関する陳情書  (第七五三号)  静岡県下の地域給引上げに関する陳情書  (第七六〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件 理事の互選  国家公務員災害補償法案内閣提出第六八号)  (参議院送付)     ―――――――――――――
  2. 田中伊三次

    田中委員長 これより人事委員会を開会いたします。  議事に入る前にまず理事補欠選任についてお諮りをいたします。昨二十二日午後、理事藤枝泉介君が委員を辞任せられましたので、理事一名が欠員となつております。この際理事補欠選任を行いたいと思いますが、これは先例によりまして選挙の手続を省略して、委員長において指名をいたすことに異議はございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中伊三次

    田中委員長 御異議なしと認めます。それでは藤枝泉介君を理事指名をいたします。     —————————————
  4. 田中伊三次

    田中委員長 ただいまより国家公務員災害補償法案内閣提出第六八号、参議院送付、これを議題として質疑を継続いたします。平川君。
  5. 平川篤雄

    平川委員 簡單に二つの問題だけただしておきたいと思います。一つは、常に公務員給與の問題で問題になつております例の——妙な言葉でありますが、常勤的非常勤職員、いわゆる日給制のでき高払い制の労務者のごときものの災害補償、こういうものについて、はつきりとどういうふうになつておるか聞きたいのであります。第二に、これはもう同僚委員から質問があつたかと思うのでありますが、一番問題になりますのは、いわゆる結核病棟等勤務しておる職員以外の結核の際の認定でありますが、これについては非常にむずかしいところもあると思いますけれども、どういうふうになつておりますか、ことに共済組合制度との関係について特に明らかにしていただきたいのであります。この二点について御質問いたします。
  6. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 第一点の非常勤職員についてお答え申し上げます。この災害補償は、きのうも申し上げましたように国たる使用主損害賠償という観点において考えられておりますので、常勤であろうと非常勤であろうと、あるいは日々雇い入れるようなものでありましようと、あるいはその日に雇い入れましてその日に公傷上の傷害を受けたというようなものにつきまして、も、全面的に適用されることになるわけであります。  その次に、そういう場合においてどういう具体的の適用方法になるかというような御質問でございましたが、もちろん全面的に適用になりますので、療養補償はもちろんのこと、休業補償傷害補償遺族補償葬祭料、一切のものが常勤とまつたく異ならない條件適用になるのでありますが、ただそのうち休業補償についてのみ若干違う点があるのでございます。休業補償につきましては、この第十二條規定しておりまするように、給与を受けないときは、平均給與額の百分の六十を休業補償として補償するという建前をとつておるわけであります。給与法におきまして俸給表適用を受けまするものにつきましては、公務災害によりまして休んでおりまする期間、その全期間を通じまして、俸給その他の給与全額を支給するという建前をとつておりますので、実質的に休業補償のいわゆる第十二條規定適用されないということになるわけでございます。それに反しまして俸給を受けておりませんところのいわゆる非常勤職員につきましては、ただいま申し上げましたような制度ができ上つておりませんので、休業補償といたしまして、経常的給与の百分の六十を受けるということになるわけでございます。一見常勤者非常勤者との間におきまして、常勤の者は百分の百の給与を受け、非常勤の者は百分の大十の補償を受けるというようなことになりますので、いかにも差別待遇を受け、あるいは大きなアンバランスがあるのではないかというような問題があるわけでありますが、一方百分の百の支給を受けまする方はもちろん給与として受けますので、税金がかかります。ところがこちらの方は補償として受けることになりますので、税金が全然かからないという点が一つにございます。それからもう一つ、百分の百と申し上げました方は、本俸、扶養手当勤務地手当が百分の百でございまして、超過勤務手当あるいは特殊勤務手当等はその対象にならないのでございます。ところがこちらの百分の六十の方につきましては、補償額の算定の基礎平均給与額によりまして計算いたしますので、当然超過勤務手当あるいは特殊勤務手当寒冷地手当石炭手当、一切のものが計算の基礎になりまして、その百分の六十の補償を受けるというようなことになりまするので、個々人からいいますると、部分的には問題があろうかと思いますが、全体的に見ますと、あまり大きなアンバランスはないのではなかろうか、かように考えておる次第でごいす。  第二点の御質問のありました結核性疾病の問題、なかんずく共済組合との関係という御質問でございましたので、この点につきましてお答え申し上げたいと存じます。昨日も成田委員からの御質問に対しましてお答え申し上げたのでございますが、この災害補償法によりまして補償し得る結核性疾病につきましては、基本的には公務に起因する問題、公務相当因果関係があると確認されたみのにつきましては、もちろんたとい結核性疾病でありましても補償対象になるわけでございます。さらにまた巷間伝えられておりますごとく、結核病棟等勤務しておりますところのお医者、あるいは看護婦のみに限定いたしましてこの補償法適用するというような限定的な考えは、こうまつも持つておらないのであります。人事院といたしましては、健康管理の面からいたしまして、人事院規則細則等を制定いたしまして、結核性疾病につきまして、各人ごとの容態を明確に記録いたしまするところのカードをつくることにいたしてございます。さらにまた常時一定期間にいわゆる集団検診をやるという方策もとつておるのであります。従いましてこれらの記録に基きまして、少くとも公務に起因する、あるいは公務相当因果関係があるというふうに認められましたものにつきましては、あまねく結核性疾病につきましても災害補償対象として救済して行くというふうに考えておる次第でございます。ところが何分にも災害補償の問題につきましては、何回も申し上げまするごとく、公務に起因する問題、あるいは公務相当因果関係のあつた問題というような一定基準といいますか、わくがございまするので、災害補償のみによりまして結核性疾病の全部を補償対象とすることができない場合も相当あることは、事実であると申し上げざるを得ないと思うのであります。従いましてこの補償対象になりませんものにつきましては、御承知の共済組合法がございます。その共済組合法によりまして、少くとも共済組合組合員につきましては、三年間療養補償全額を受ける建前に相なつております。さらにまた同じく五年間傷病手当金百分の六十を受ける建前に相なつております。従いまして災害補償共済組合との両者の適正な運営によりまして、結核の問題につきましても相当効果的な運営が期待されるのではなかろか、かように考える次第でございます。
  7. 成田知巳

    成田委員 ただいまの平川委員質問に関連してお尋ねいたします。最初に適用範囲でありますが、ただいまの御答弁によりますと、使用者側であるところの官庁とその職員対象として救済することが本法の目的であるから、すべての使用人に対して適用する。こういう御答弁があつたのですが、この條文を見ますと、一般職に属する職員というものが対象になるらしいのであります。そこで問題は特別職であります。特別職大臣だとか政務次官はいいのですが、たとえば国家公務員法規定しておりまする「連合国軍の需要に応じ、連合国軍のために労務に服する者」とか、あるいは失業対策事業関係で国に雇用された者、こういう者に対しまして適用があるかどうか、この点を明確にしていただきたい。
  8. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 まことにごもつともでございます。実は当初の計画といたしましては一般職のみに限定せず、特別職をも含む全体につきましてこの法案をつくりたいという考えとつたのでありますが、いろいろの関係からいたしまして、さしあたりの措置といたしましては一般職に限定するというふうな形に相なつたのでありますが、実質的に申し上げますると、現在昭和二十二年法律第百六十七号という法律がございます。従来は一般職特別職を問わず、ただいま申し上げました法律百六十七号によりまして実質的にこの補償に相当する給与をやつてつていたのでございます。もちろんその内容は、労働基準法に定めますところの補償とまつたく同様のものをやるという、いわば三くだり半的のきわめて簡単な法律でございます。従いまして特別職につきましては、諸般手続その他の関係からこの国会に間に合いませんでしたので、ただいま申し上げました昭和二十二年法律第百六十七号によりまして、補償に相当する給与を実行する。でき得れば、この次の国会あたりまでには少くとも特別職に対する法律を出したいという方針でございます。
  9. 成田知巳

    成田委員 次に結核患者の問題でございますが、これは昨日も私質問したのですが、さらに明確にしておきたいのであります。今の御答弁によりますと、人事院では厳重な体格検査をやつて疾病カードをつくつておる、従つて結核患者を明確化することはできる、こういうことを貰われたのですが、問題は結核なつたかどうかという問題ではなしに、その結核疾患公務に起因しておるかどうかという判定の問題だと思います。単に結核患者であるという診断をやつただけでは、問題の解決がつかない。結核患者が発生した場合に、それが公務に起因しておるかどうか。そこで慶徳さんの御答弁にもありましたように、すべての結核患者公務災害と認めることは、補償の性質からできない。これはごもつともなんですが、しかし現在の状況から行きまして、やはり低賃金労働強化公務員が続々と結核なつておる。こういう諸般の情勢を見ました場合に、やはりそこに公務結核との間には相当因果関係があるのだという大前提を立てまして、一応勤務中に結核になつた者は、結核公務に起因するものだ、こういう推定をされまして、逆に公務に起因しないという反証があがつた場合に、初めてこれを公傷病取扱いから除外する、こういう方針でお進みになるのがほんとうじやないかと思うのですが、一々の場合に、これは公務に起因するかどうかということを判定するとなれば、勢い従来の官庁のやり方から行きまして、公傷病取扱いというものは少くなるんじやないか。当然公傷病取扱いであるものが公傷病取扱いを受けられないという結果になるおそれがあると思うのですが、その点についての御方針はどういうようにお考えになりますか。
  10. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいまの御質問は、要約いたしますると二つに分類いたしましてお答え申し上げた方がよろしくはなかろうかと思うのであります。一つには公務災害の場合における結核性疾病認定方法二つには結核性疾病に対する国家公務員に対する、いわば結核対策一つ方法というようなことになるんじやなかろうかと思うのであります。まず第一の結核性疾病に対する公務災害であつたかどうかという認定の問題でありますが、ただいま成田委員から御指摘になりましたように、従来は結核性疾病に対する各人ごとカードのようなものが備えつけられておりませんでしたために、はたして公務相当因果関係があつたかどうかといろ、いわば認定基準となる何ものもなかつたのでございます。従いまして、何ものもなかつたと申し上げますることは、別の面からいたしますると、公務傷病認定することがきわめて困難であるということに因果関係が結びつくのではないかと思うのでありますが、幸いにして健康管理の面から、先ほど申し上げましたような各人ことの病歴のカードができ上りますために、それによりまして、客観的にはつきり把握し得る基本的なものができる。その基本的なものを元にいたしまして、結核性疾病公務に起因するものであつたかどうかということが、従来に比較いたしまして、より容易にでき得る段階になつたということをまずお答え申し上げたいと存じます。  それから第二の問題の結核性疾病に対する今後の方針につきまして、成田委員はあとうべくんば結核性疾病全部を公務傷病対象にいたしまして、全部救つてしまえというような御趣旨のごとく伺い得られるところもあつたのでありますが、私どもの方の考えといたしましては、やはりこれは損害賠償責任制の確立であります以上は、一定の限界は求めなければならないであろう。しかしながら結核対策自身は決して等閑に付すとか、あるいは不問に付するというような軽い気分でおるべき問題でありませんので、きわめて重要な問題と考えておるのであります。従いまして公務障害に相ならないようかものにつきましては、共済組合制度内容拡充整備、あるいはまた国庫負担金の増加というような方法によりまして、この問題を解決し得る方法があのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  11. 成田知巳

    成田委員 共済組合を並用することによつて、この問題を解決したいと言われるのでありますが、現在共済組合赤字が出ているその大きな原因が結核患者療養費用、そういうところにあると思います。従つてこの問題を共済組合に転嫁されるということは許されないと思います。むしろ法律建前から行きまして、結核疾患に対しては、法律規定するところにより、完全に救済するというのが建前であろうと思うのであります。この肺結核をすべて公傷病にしろと言つておるのではないのであります。問題は公務肺結核の間に相当因果関係があると思うのでありますが、因果関係ということになりますと、どこで打切るかという問題になりますが、これはやはり危険性があるかどうかということで、この問題は解決しなければならないと思います。そうしますと、現在の公務員就業状態から行きまして、あるいは賃金の問題から行きまして、特にまた昨日の慶徳さんの御答弁にもありましたが、現在採用するときには厳重な体格検査をやつておる、結核については特に厳重な綿密な検査をやつておる、こういうことを言われておるのでありますが、一応採用された方は結核性疾患のないもの、こう考えるべきだと思います。こういう健康体の人が官庁に入つて、その後結核なつたといたしますれば、一応公務に起因するものと推定する、こういう大原則をお立てになりまして、りつぱなカードもできるのでありますから、そこで科学的に御調査になつて、これが公務からではないというはつきりした証明ができたならば、これを公傷病取扱いにしないという原則をまず打立てていただきまして、一応公務に起因する肺結核であるという推定をして、そして反証をあげる、こういう方向に持つて行くのが正しいのではないか、こういうことを申し上げるのでありますが、それについての御意見を承つておきたいと思います。
  12. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 私の先ほどのお答えにちよつと間違いがあつたようでございまして、成田委員結核性疾病をすべて公務にしろという意味の御質問でなかつたにもかかわらず、さながらそうであるごとき口吻を漏らしたことをお許し願いたいと存じます。それはさておきまして、ただいまの問題でありますが、私ども考えの根本は同じでありまするが、ただ方法論につきまして、いささか違うのではなかろうかと思うのであります。申すまでもなく国家公務員法の第一條におきましては、国家公務員厚生福祉というような問題につきましても、当然人事院の権限といたしまして、人事院はこれら全般に対する完全な実施を確保するために設けられたということになつておりますので、ただいま問題になつておりますところの結核性疾病につきましても、きわめて重大な関心を持つておるわけであります。私ども考えといたしましては、国家公務員に対する結核対策といたしましては、ひとり災害補償のみではないのでありまして、たとえば現在におきまして、休暇制度において思うような完備した制度がございませんで、かつて戦争時代におきましてつくりました国家公務員結核対策要綱というような、きわめて陳腐な制度を活用いたしましてやつておるような現状でございます。さらにまた結核によりまして休業していますときの給与自体につきましても、今申し上げました次官会議の決定によつてつておるというような、陳腐な材料をもちまして糊塗しているというような現状でございます。ところがこれに反しまして、教育公務員におきましては、教育公務員特例法によりまして、二年間は当然休職いたしますが、しかしその間においては経常的給與全額を支給する。それをまた改正するというようなことで問題になつておるようでありますが、この間におきましても、教育公務員一般公務員とのアンバランスのある問題も何とか解決をはからなければならない問題であろうと考えております。さらにまた先ほど御指摘になりました共済組合赤字のことにつきましては、結核性疾病に起因するという事実も私ども十分承知しておるつもりでございます。従いまして、たとえば健康保険等においてやつておりまするがごとく、全費用の少くとも三分の二までは事業主が負担するというような方法もあるのでありましよう。さらにまた公務員特殊性からいたしまして、その他の方法も研究いたしますれば、いくらでも方法はあろうかと思います。従つて基本的な考えといたしましては、成田委員とまつたく同様でありますが、ただこれの解決方法論といたしまして、まず休暇の問題、これに対する裏づけとなる給与の問題、あるいは災害補償の運用の問題、あるいは共済組合の問題、さらにこれを実効あらしめるところの財政的裏打ちの問題、これらを総合いたしましてやることによりまして、初めて完全な結核対策が成立上得ると思うのでありまして、人事院といたしましては、先ほど申し上げました健康管理の面との関係もありますので、健康課長が中心となりまして、この結核対策全般を取上げまして、目下きわめてスピードをかけまして検討中でございます。
  13. 成田知巳

    成田委員 どうも御答弁の様子によりますと、厚生委員会に出ているような気がするのでありますが、なかなか雄弁でいらつしやいまして、能弁なものでありますから聞きほれておりますと、だんだん問題の重点がはずされて、どこかに飛んで行つてしまう。私のお聞きするのはそんなことではないので、もちろん結核対策は必要でありましようが、問題は官公吏結核なつた場合に、これを公傷病認定するかどうかという、この法律の解釈の問題なんです。できれば私ども法律にはつきり、官公吏結核疾患にかかつた場合には、これは公務に起因するものと推定する、こういう明確な規定を置いていただきたいと思うのでありますが、それができないといたしましても、運用の面でこれを解決しなければならない。何度も申し上げましたように、最近の事情から行きまして、国家公務員結核なつた場合には、一応公務に起因したものと見るのが妥当だ、こういうような解釈を私たちは持つておる。もちろんその中には、例外的に公務に基因しないものもあると思います。本人の不養生その他があると思いますが、原則的には一応これは公務に基因したものと考えまして、その後例外的なものにつきましては、官庁側から明確な反証をあげた場合に例外扱いにする。こういう運用方針にしていただかないと、この法律の精神は生きない、そういう考え方で御質問申し上げておるのです。その点いかにお取扱いになるのか、一応明確に御答弁願いたい。
  14. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 重ねて申し上げますように、この法律におきましては、公務上負傷しまたは疾病にかかつた場合には、それぞれの補償をするというのが、法律の根本的なものをなしておるのであります。成田委員からも先ほど、一切の結核性疾病をこの法律によつて補償することは困難であろうというお話もあつたのでありますが、ただいま申し上げますように、公務上負傷しまたは疾病にかかつた場合において補償するという法律であります以上、どうしてもそこに一つの限界があるということは、それは当然肯定せざるを得ない点であろうかと存じます。従つて問題は公務上の疾病であつたかどうかという認定の問題になろうかと思いますけれども、これはやはり何回も申し上げますごとく、事業主損害賠償的観点に立つて立法されております以上、やはり何でもかでも認めるというようなわけには行かないと思いますので、公務上に基因し、相当因果関係のあつたものについて、運用面において考えたいという結論にならざるを得ないというふうに考えております。
  15. 成田知巳

    成田委員 理論が逆にまわつて行くのですが、私の聞くのはそうじやなしに、相当因果関係は認める、しかしながら日本の官庁職員特殊性から行きまして、現在非常に賃金も安い、またどんどん首を切られてオーバー労働をやつておる、こういう状況、また日本に結核の非常に多いということ、こういうあらゆる條件から考えまして、勤労中に肺結核になつた者公務相当因果関係があるんだという一応の前提を立てまして、せつかく人事院の方でりつぱなカードをおつくりになつておるので、全部が全部私は公傷病とは申しませんが、そのカードによりまして、公傷病でないというはつきりした認定のできるものはこれを公傷病取扱いから除外する、こういうことによつて本法の精神を生かしていただきたい、こう御質問申し上げておるのです。人事院カードによつてやるんだと言われますけれども、その人事院カードというものは私どもあまり信用できないのであります。一応法律の精神を生かすためには、公務に基因する肺結核として推定する、そうして反証があがつた場合にはこれを公傷病取扱いしない、こういう運用方針が正しいじやないか、こう御質問申し上げておるのです。その運用方針を御答弁願いたいと思う。
  16. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 どうも私の答弁がまわりくどいために、おしかりをいただいたのでありますが、反証があがつた場合に即時公傷病取扱いにしないということは率直に申しげまして、運用の問題として困難であろうかと考えております。あくまで公務相当因果関係があつたかどうかという認定の問題でありまして、その認定に基いて補償するというふうにならざるを得ないのではなかろうか、反証があがらなかつたというだけをもつて公傷病にするという取扱いは困難ではなかろうかというふうに考えております。
  17. 成田知巳

    成田委員 この問題はきのうも御質問申しました重大な過失の補償責任の問題になるのですが、岡部法制局長はさすがに法制通でございまして、重大な過失の補償責任は使用者側にあるということを言われた。それと同じでありまして、この労働立法の完全な運用と申しますか、法律の精神を生かして行くためには、肺結核患者につきましても重大な過失の場合と同じように、補償責任は政府側にある、こういうように運用方針をおきめになることが、法律をほんとうに生かすゆえんだと考えますが、その点についてもう一度御再考願いたい。
  18. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 どうも同じようなことをお答えをするようで恐縮でありますが、私ども考え方といたしましては、反証があがらなかつた場合に、すぐ結核性疾病公傷病にするということ自体が困難であると考えておりますので、先ほど申し上げました休暇の問題、給与の問題、共済組合の問題、つまり個々の補償とそれ以外のものを総合的に勘案することによりまして、全体的に結核対策をより合理的に推進するという方法をとるべきであろうと考えておる次第であります。
  19. 田中伊三次

    田中委員長 成田君にちよつと申し上げますが、今厚生省から大山人事課長、運輸省から山内人事課長が見えておりますから、その方の質問をやつていただきたい。
  20. 成田知巳

    成田委員 運輸省に御質問申し上げます。この法案をごらんになつておると思うのでありますが、御承知のように私どもこの法案に反対なのは、労働基準法をそつくりそのまま持つて来ておる。労働基準法は民間企業を対象にしておりますが、わが国の民間企業は中小企業というか、町工場が非常に多い。そういう最低限度のものを対象にしておられる。これを国家公務員適用するということは、私は間違いであという考え方を持つておる。国鉄の場合は、私どもの聞きましたところでは、団体協約によりまして、労働基準法に定めており、本法に定めておる以上のものを傷害扶助料その他で獲得しておられる。その点についてまずお尋ねしておきたい。
  21. 山内公猷

    ○山内説明員 私参議院の参考人に呼ばれまして、ただいまのようなお話を申し上げたのであります。それは参議院の記録に残つておりますが、国鉄が今御指摘になりましたように、労働基準法に定めておる以上のものを出しておりますということは事実であります。国家公務員につきましても、労働基準法に定めておるのが最低であるのに、これより低額にするということは少しお考えを願いたいということは、私はそのときに証言をいたしたわけであります。
  22. 成田知巳

    成田委員 国鉄としてこの法案に対しまして非常に不満を持つていらつしやるということはわかつたのでありますが、そこで問題は国有鉄道法の六十條だつたと思いますが、国有鉄道の職員災害補償の問題は、国家公務員災害補償法ができた場合にはそれを準用する、こういう規定があつたと思います。準用でございますから、そつくりそのまま持つて行かれるとは思いませんが、やはり準用するというその法律の趣旨から行きまして、非常に内容の悪い災害補償法ができまして、国有鉄道法の六十條で準用するという結果になりますと、せつかくいい補償職員が獲得しておるにもかかわらず、非常に内容が低下されるという結果になると思います。それについて運輸省当局はどういうお考えを持つておられるか、その点を明らかにしていただきたい。
  23. 山内公猷

    ○山内説明員 私直接それにタッチしておりませんので、責任持つてお答えすることはちよつとはばかりますが、法的解釈といたしまして、国鉄があの條文を入れましたのは、補償法のできる前でありまして、内容がないものの準用になつておりますので、準用にはならないという法律の解釈になるのではないかと思います。
  24. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 成田委員のただいまの問題につきましては、参議院でも問題になつた点でございまして、政府側といたしまして明確に答弁いたしておりますので、関連する事項でありますから、お答え申し上げたいと思います。  御承知の通りに国鉄法に、国家公務員災害補償法を準用するというふうに書いてあるのでありますが、あの括弧の中の法律の番号は空文であります。昭和何年法律第何号と入りましてからこそ、初めてこの法律法律的に正確に準用されるということになるのでありますが、括弧内がブランクであります。そのブランクの中には、年月日も、法律の番号も入つておりませんし、入る改正案も今のところ何も出ていないのであります。そういうことになつておりますので、従つて政府としましては、当然の法律解釈といたしまして、この法律が公布になりましても、この法律の公布の月日及び法律番号を、空文とされておる括弧内にぶち込む改正をしない限りにおいては、準用にならないものである。これと直接にも間接にも因果関係がないものであるということをはつきりお答え申し上げておりますので、この際あわせてはつきりお答え申し上げておきたいと思います。
  25. 成田知巳

    成田委員 現行法の解釈として準用できないのである、そういうことを政府としてはつきり御答弁なつておる。それはけつこうなんですが、問題は、そういう法律をつくつたということです。六十條のねらいといたしまして、やはり国家公務員と国鉄職員を同じ取扱いにする、こういう大きな考え方があると思うのですが、そういたしますと、せつかくいい補償規定を獲得しておるにもかかわらず、この法律の精神から行きまして、——今空文になつておりますが、この法律ができますと、政府の方で番号を入れまして準用されるおそれがあるのではないかと思います。現行法の解釈としてはそれでいいと思いますが、この点について政府はどういう方針を持つていらつしやるか、それをお尋ねいたします。
  26. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 国鉄なり専売なりは、公社法によりまして、まつたく独立的な立場になつておりますので、ひとり災害補償ばかりでなく、一般の給与の問題につきましても、独自の立場において処理し得べきであろうと考えております。従いまして現在ブランクになつておりますところの補償法を準用するという規定がございますが、この問題につきましては、とにもかくにもこの法律は準用にならない。国鉄なり専売において独自の立場において、必要とあれば法律を出すであろう。法律を出す必要がなければ、現在団体協約できめられておるような方法等によつてやるであろうという考えをとつておるわけであります。
  27. 成田知巳

    成田委員 慶徳さんが運輸省のお役人でしたら、そういう御解釈をされて私たち非常に安心するのでありますが、問題は運輸省の考え方だろうと思います。国鉄、専売は、国家公務員法と別個に独立の法律規定されているのだから、当然別個な取扱いをされるのだ、こういうことを言われたのでありますが、今までの政府のやり方を見ますと、政府の都合のいいときにはそういうことを言つて、都合の悪いときにはまた逆な解釈をするのであります。決して終始一貫していない。従つてこういう法律が出ますと、この六十條をたてにいたしまして、現在のいい補償規定をこの法律並みに落してしまう。こういう危険が私たち予想されるのでありまして、この点についてもし運輸省の方で政府の方針をお知りならば承りたいと思います。
  28. 山内公猷

    ○山内説明員 その問題につきましては、今言いましたように、国鉄の法制が国家公務員からはずれておりますので、政府がそれを強制することはないと私は信じております。
  29. 林百郎

    ○林(百)委員 いろいろ問題がありますが、先ほどの第十條の問題です。公務上負傷し、または疾病にかかつた場合は、原則として無過失として使用者側に賠償の責任があるのだ。もしそれが公務上の負傷または疾病として相当因果関係がないから、補償責任がないのだということになれば、やはり立証責任は一応使用者側にあるというようにわれわれは考えますが、その点はどうですか。
  30. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 その立証責任の考え方の問題になろうかと思うのでありますが、公務上の疾病であるかどうかという立証自体は、当然賠償責任に立つところの使用者たる国であるというふうに考えております。
  31. 林百郎

    ○林(百)委員 公務員が一応公務上負傷または疾病にかかつた考えられる場合には、原則として使用者側は賠償責任があるので、もしもそれが公務上と相当因果関係がないのだということでその補償責任をのがれようとする場合には、その相当因果関係がないということの立証の責任は使用者側が買うべきものである。われわれは公務員公務上いろいろの仕事をして補償を得るような事態が生じた場合には、大体原則として補償の請求ができるのであつて、その補償の責任をのがれようとする場合には、使用者側が立証の責任を負うべきではないと思います。もう少し具体的に申しますと、内部疾患というような場合が具体的に出ているわけなんですが、たとえば国立病院で伝染病の患者を専任して看護するというような場合、特別の規定があるならば聞かしてもらいたい。それから電話の交換手は、いつも口を交換の道具につけているわけですから、非常に結核になる可能性も多いわけです。それから郵政省の帳簿の整理、札の整理というようなものも、非常に結核になる可能性が多いのでして、問題は手を切られた、足を切られたというような場合より、むしろ公務員としては、内部的な疾患なつて長い間療養を必要とするというような場合が、パーセントからいつたら非常に大きいと思うのですが、そういう場合に、今あなたの言われるように相当因果関係だとか何とか、法理論が出て来てしまつて、相当相果関係がない、もともとお前のからだが弱いのだから、お前の因縁だということで補償を受けられないということになれば重大な問題だと思う。こういう場合は相当因果関係があると思う、こういう場合は相当因果関係がないと思うというように、具体的な事例で説明してもらいたい。
  32. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 御指摘になりましたように、公務上の疾病につきましては非常に問題がある点であります。労働基準法におきましても、法律自体には規定してございませんけれども労働基準法施行規則におきまして、公務上の疾病とみなすところの條項を、数にいたしますと三十七、八に分類いたしまして規定いたしております。たとえば代表的に申し上げますと、「粉塵を飛散する場所における業務に因る塵肺症及びこれに伴う肺結核」というようなことも、これは一つの例でございますが、明確に規定してございます。従いまして私どもの方といたしましても、公務上の疾病につきましては、労働基準法において定められておりますのと同じように、いわゆる一つの職業的疾病というようなものは、むしろ当然公務上に基くところの疾病であるというふうに、疑いのないように明確に人事院規則において規定して行こうというふうに考えております。従いまして労働基準法施行規則において定めています以外の、いかに認定することが妥当であり公正であるかという問題が、先ほど来から問題になつておる点でなかろうか、かように考える次第であります。
  33. 林百郎

    ○林(百)委員 ですから、そういう場合の相当因果関係かあるないという具体的な事例、こういう場合は相当因果関係はないと思う、こういう場合にはあると思うというように——相当因果関係論をここであなたといくらやつても、抽象的なりくつはきりがないわけですから、具体的に一つ基準を示してもらいたい。そうするとはつきりすると思います。
  34. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいま一つの例として読み上げましたごとく、当然考えられるものにつきましては、先ほど申し上げました労働基準法にありまするところの三十七、八の種類にわけて明確に定めて行こうという方針でありますことは、先ほど申し上げた通りであります。それ以外の、具体的にこういう場合にはどうする、ああいう場合にはどういう扱いをするかという問題になりますと、これは認定の問題でありまして、林さんからの具体的に例をあげてという御質問でありますけれども、一々例をあげて申し上げることはちよつと困難な点があろうかと思います。ただ基本的な問題といたしましては、損害賠償の責に立つところの国が認定をいたしまして、その場合それにつきまして不平不満、不服があります場合は、この法律の第二十四條によりまして、当然苦情処理という方法によつて救済し得る問題になろう、この法律自体もそういう建前をとつているわけであります。
  35. 林百郎

    ○林(百)委員 これは現場の公務員の声なんですが、職業病というより、やはり問題は公務員給与ベースが非常に安くて、十分人間らしい生活ができないために、肺病になんかかからない條件を持つてつても、つい給与ベースが安かつたりいろいろして肺結核になるとか、あるいは胃腸障害ができるとか、あるいは内部疾患ができるということになると思う。ですから基本的に言うと、日本の公務員給与体系が非常に安くて、文化的にして健康な最低生活の保障ということが憲法上あつても無意味になつておるというところに、やはり公務員が非常に内部疾患なつておるという大きな原因があると思う。ところがそれが相当因果関係があつても、給与の安いということは第十條にいわゆる公務上の負傷または疾病にかかつた原因にならないというようなことになりますと、これはほとんど入つて來ないし、また公務員の置かれておる基本的なべースが悪いのだから疾病になるということになると——公務員が病気になるということは、例外はあつても、原則としてはやはり公務員の基本的な給料が安いということが原因しているからであると思いますから、これは相当広い範囲な解釈をしなかつたならば、ほとんどこれでもつて実質的な療養の保障を除外するいい口実になつてしまう危険が非常にあると思う。その点を十分注意して運営して行かなければならないと考えるのですが、この点はどうですか。
  36. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 再三申し上げますごとく、公務上の疾病認定いたし得るものを、ことさらに公務外に持つて行くというようなさもしいことは、もちろん絶対にいたさない方針でございます。ただ給与ベースが全体的に低いから、それに関連いたしまして、この問題についても相当一般的に、普遍的に取扱うような方法をとりませんと、仏つくつて魂入れずというようなかつこうになるのではないかというような御質問でありましたが、われわれの方といたしましても、給与ベース自体につきましては常に調査研究をいたしまして、なかなか思うように行かぬ点も今までもずいぶんあつたのでありますが、今まで思うように行かなかつたからといつて手をこまねいて待つておるのではないのでありまして、今後も十分調査研究をいたしまして、随時必要に応じ、公務員法第二十八條の規定による勧告を行う方針であるわけであります。
  37. 林百郎

    ○林(百)委員 それと関連して第十四條ですが、ここにもやはり免責の規定があるのですが、これは立証責任はどちら側にあると考えておりますか。これは明らかに政府側だと思いますが、それでいいですか。
  38. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 そうです。
  39. 成田知巳

    成田委員 相当因果関係の問題はどうも結論が出ないと思うのですが、具体的にもう少し掘り下げて、一つだけお聞きしたい。肺結核患者が出ましたときに、いろいろ調査したが、公務に基因するものか、しないものか明らかでない、どちらとも判定がつかない、疑わしい場合には、人事院としてはどちらをおとりになる方針でしようか。
  40. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 たいへんデリケートな問題でございますが、従来も労働基準法なり、災害保険法なり、あるいは恩給法なり、また従来の雇員扶助令、傭人扶助令——あえて先例のみにとらわれて申し上げるつもりではございませんが、もちろん先例のありますものにつきましてはその先例に準拠いたしまして、さらに先例のないような問題につきましては、この法律の第一條に書いてありますごとく、公正という原則に立ちまして、きわめて公正妥当な結論を出しまして決定をいたしたい。ただあくまでもその決定に対しまして不服のありますときは、第二十四條の規定による苦情処理というふうにお答え申し上げざるを得たいと思うのでありまして、公正な見解いかんということになりますと、率直に言いますと、人間がやることでありますから、私情の入る場合もありましよう。それはなかなかむずかしい問題と思いますので、この程度でごかんべん願えますれば幸いと存じます。
  41. 成田知巳

    成田委員 公正におやりになるというのですが、私がお聞きしているのは、この肺結核公務に基因するかどうかというのは、現在の科学の限度では判定が非常に困難である、どちらにもとれるという場合に、どちらをおとりになるのが公正であるかということを私はお聞きしておるのです。
  42. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 公正と申し上げますことは、ただいたずらに損害賠償の責を持つところの事業主のみに片寄るという意味でもなく、また必要以上に権利の保護をはかるという意味でもなく、不偏不党、どちらにも片寄らず、きわめて公正に判定をするという意味であります。
  43. 成田知巳

    成田委員 私は具体的に申し上げておるのです。具体的な疾患が発生した場合に、現在の科学の限度ではそれが公務に基因するものか、あるいはしないものか、どちらとも判断がつかない、どちらともとれる、こういう具体的な事例が出た場合に、これを公務に基因するものと判定されるか、基因しないものと判定されるか、どちらをおとりになるのが公正か、こういうことを私は聞いておる。私たちの解釈では、労働立法というものは——、先例ということを言われましたが、どういう先例があるか知りませんが、疑わしい場合には、被使用者である労働者側の利益のために解釈をくだすのが先例だと思う。これは労働立法の解釈として、日本においても、世界各国はもちろん、当然の解釈である。従つて具体的な疾患でどちらによるか判断するのに疑わしい場合には、当然公務に基因するものとして、職員に有利な認定をくだすのが妥当だと思いますが、どうですか。
  44. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 たいへんどうも一つの大きな方針論でありますが、不偏不党、公正と申し上げましたことは、片方によるとか何とかという意味ではなくして、病歴なり、そのときの事故の起りました客観情勢なり、あるいはその原因なり内容なりをつまびらかに審査いたしまして、ただいたずらに使用主根性を出しまして、疑わしきは軽きにつけるなどという考えはごうまつも持つておりませんが、疑わしくとも、あくまでも公正に認定をいたしたいということであります。
  45. 成田知巳

    成田委員 それでは私は答弁にならないと思います。これは法制通の岡部さんにひとつ答弁願いたいと思うのですが、現在の科学の限度でどちらにも判定できるという場合には、どちらに判定されるか、こういう質問であります。
  46. 林百郎

    ○林(百)委員 大体私は、使用者側は無過失の責任を負うべきだと思うのです。こういう近代的な大きな企業をやつておれば、どんなに注意をしても、使用者側に過失がない場合でも、こういう危険は起きて来るんだ。かりに使用者側に過失がなくとも責任を負わなければならない。これは近代的な企業に対する賠償の責任の原則なんです。ですから使用者側としては、公務員の、被使用者の傷害に対しては補償をとるんだ、これが原則的な立場である。使用者側補償の責任を負わない場合は、特に明瞭に因果関係がない、あるいは使用者側がそれを明らかに立証した場合ということで、原則としては、やはり無條件というか無過失責任といいますか、一々使用者側が注意し切れませんから、企業自体の中に使用者側補償ということを含んで、近代的な企業というものはやつている。政府企業でも、やはりそれは当然と考えて一切の企業をやつているわけですから、責任を負うのは当然だ。しかし、明らかに因果関係もないし、こういう資料からいつた公務上の原因でないということが、使用者側によつて、国によつて証明された場合に責任をのがれるというのが、私は原則だと思うのです。公正というけれども、公正というのはどつちにもつかないということで、やはり原則としては国は責任を負う。こういうのが、あなたの先ほどから言う公正妥当な立場だと私は考えるわけであります。
  47. 岡部史郎

    ○岡部政府委員 私から簡単に成田さんのお尋ねにつきましてお答え申し上げますが、この法律案は申すまでもなく公務員保護の立法であります。従いましてこの運用につきましては、公務員を保護するためにできるだけ有利に解釈し、運用すべき根本方針はきまつております。
  48. 成田知巳

    成田委員 そういたしますと、具体的な事例で、疑わしき場合には当然公務員の利益のために、公傷病としてお取扱いになる、こう解釈してよろしゆうございますか。
  49. 岡部史郎

    ○岡部政府委員 疑わしき場合とおつしやるわけでありますが、問題になりました場合におきましては、これは一定方針が立つわけでありまして、公務上であるか、公務外であるかということを判定いたしまして、公務上あるいは公務に起因すると決定した場合におきましては公務上の扱いをするわけであります。公務上でないと決定した場合におきましては、公務上でないと判定するわけであります。
  50. 成田知巳

    成田委員 私が申し上げているのは、具体的に肺結核が起きた場合、疾患が発生した場合に、公務に起因したものか、公務に起因しないものか、現在の科学でわからない場合がある、どちらにもとれるという場合がある。そういう場合に労働者の利益のために、公務に起因するものとして取扱うのが労働立法の性質じやないか、こう御質問申し上げておるのです。
  51. 田中伊三次

    田中委員長 岡部局長にちよつと申し上げますが、御質問の趣旨は、疑わしき場合をいかに認定するか、それは有利な認定をしてやるべき筋のものであるというので、ごもつともなことと思いますが、あまりむずかしく考えないで、簡単に答弁してください。
  52. 岡部史郎

    ○岡部政府委員 簡単に申し上げますが、これは抽象的に方針を申し上げますと、公務員保護の立法でありまするから、できるだけ公務員に有利に解釈すべきものであります。それ以上具体的に私から申し上げる立場でないだろうと思います。
  53. 田中伊三次

    田中委員長 林君、建設、厚生がお待ちになつていますから……。
  54. 林百郎

    ○林(百)委員 ちよつと参考までに聞きますが、第三條の実施機関というのは各行政庁の課長、次長が指揮者になるわけですか。
  55. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 実施機関につきましては、給与の場合における実施機関と同じように、各省長及び相当大きな外局の長官というふうに考えております。
  56. 林百郎

    ○林(百)委員 これはやはり具体的に指示、明記しなくていいのですか。どこかに明記してありますか。
  57. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 この法律の第三條第一項に書いてありますように、人事院規則によりまして今後指定する考えでございます。
  58. 林百郎

    ○林(百)委員 その次は、今の因果関係について、厚生省、運輸省、建設省の方がおいでになつておりますから、掘り下げてお聞きしたい。実は当委員会でいただいた資料を見ますと、公務員療養補償の中の件数は運輸省、建設省が非常に多いのでありますが、そのほかは全部零か、一単位なのに、運輸省が四一一、建設省が四五二、郵政事業が三〇八、通信事業が三二六でありますが、運輸省、建設省の方に、その内容がどんなものであるかということ、ことに内部疾患との関係がどんなふうになつておるかということをお聞きしたいのです。
  59. 山内公猷

    ○山内説明員 今手元に持つておりませんので、ただちにお答えすることはできません。
  60. 林百郎

    ○林(百)委員 内部疾患については従来どういう取扱いをしておりますか。公務上か、公務上でないかという問題で、その判定で困難したような事例がありますか。もしあつたら具体的な事例を聞かしていただきたい。
  61. 山内公猷

    ○山内説明員 今までそういう点で問題になつたことはございません。
  62. 林百郎

    ○林(百)委員 問題にならないということは、大体公務上ではないということで処置をなされたのですか、大体公務上と因果関係がないということでこれを処理されて、問題はなかつたのですか。
  63. 山内公猷

    ○山内説明員 従来内部疾患肺結核としての問題が多いのでありますが、肺結核の問題につきましては、一年間給料を出しまして、休養できるという規定がありますので、具体的にまだそれほど突き詰めた話が出たことは聞いておりません。
  64. 町田稔

    ○町田説明員 件数につきましては、お手元の資料に載つておると思いますが、件数の原因別につきましては今資料を用意しておりませんので、ただちにお答えできませんけれども、特に運輸省、建設省におきましての件数が他の省と比べて多い原因は、現場の仕事が多うございますので、傷害等を受ける機会が他の省と比べて非常に多い関係で上つておるのでございます。それから今の内部疾患の点につきましては、運輸省の方からお答えになりましたのと建設省も大体軌を一にいたしております。
  65. 大山正

    ○大山説明員 厚生省の分についてお答えいたします。従来厚生省の公務災害補償取扱いました件数の大部分は、結核の医療施設におきまして結核関係の治療に当つておる職員が大部分であります。その他一般の事務職員結核の問題につきましては、ただいま他の省からお話がありましたように、あまり従来問題となつておらないような次第でございます。
  66. 林百郎

    ○林(百)委員 厚生省の方にお聞をいたしますが、結核療養の方に勤務しておる人などの内部疾患たとえば結核が発生したような場合、それが業務上と因果関係があるかないかというようなことは、どういう判定をしておりますか。
  67. 大山正

    ○大山説明員 その施設の長の意見を徴しまして、大体その意見によつておるものであります。
  68. 林百郎

    ○林(百)委員 そういう場合に、これは業務上と因果関係がないというようなことではねられて問題が起きたとかいうようなことがありますか。大体業務上と因果関係ありと認定されて補償がされているわけですか。
  69. 大山正

    ○大山説明員 大体業務上と関係ありというふうに認定してやつておりまして、別段従来問題になつたことはございません。
  70. 林百郎

    ○林(百)委員 長がその意見を出すまではこれはどうにも処置なしということなのですが、長が意見を出すまででなく、身体が障害を受けて十分な勤務ができないというような状況のもとで問題が起きているような場合はないですか。
  71. 大山正

    ○大山説明員 従来そのようなケースについて別段問題になつたことはございません。
  72. 林百郎

    ○林(百)委員 大体問題にしないのだ。あるいはあきらめているのかもしれないのですね。  その次にこの法案で問題になりますことは、この條文の中には非常に逃道が多いと思うのです。口実でどうにもなる部分が非常にあると思う。たとえば十一條に「相当と認められるものとする。」この相当という認定、それから二十一條は「補装具を支給することができる。」とあつて、義眼、義肢、補聴器とあるわけです。それから二十二條には「努めなければならない。」ということがありますが、こういうように相当と認められたものをやるとか、あるいは支給することができるとか、義眼、義肢、補聴器等の装具を支給することができるとか、あるいはそこに必要な施設をするよう努めなければならないということがありますが、これに対しては義務違反だとか、あるいはどういう義務を具体的に課するとかということは、どうやつてこれを監督し義務づけるようにするわけですか。たとえば、努めなければならない、努めたけれどもこの程度しかできない、あるいはすることができるとあつて、別にしなければいかぬとないからいいだろう、相当と認めらるべきは、この程度が相当だろうという場合には非常に問題が起きて来る。こういうような問題の処理はどうするのですか。
  73. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいまの第十一條の相当という点でございますが、これは労働基準法、労災保険法にも同様な規定があるのでありまして、要するに極端なぜいたくなものはやらない。要すれば社会通念的な補償を全うするという趣旨以外何ものもございません。それから補装具の支給と福祉施設の問題でありますが、これの方はいわゆる損害賠償所見とはおのずから質が違うのでありまして、努めなければならない、できるという條項がありまするが、実施機関の長と総合調整の権限を持つ人事院と相協力いたしまして、これの裏打ちとなるだけの予算の計上、施設一切につきましてますます最善の努力をするという意味合いでございます。
  74. 林百郎

    ○林(百)委員 ますます努力をするのもけつこうですが、努力をするというだけで、具体的にこうしたければならない、またそれに反する場合はどうかというようなことがなければ、これではまつたく努力はしているのだが、この程度しかできないということでいくらでも逃げられると思います。それからことに二十一條ですが、義肢、義眼、補聴器等の補装具を薄給を公務員、ことに疾病あるいは負傷したというような不幸の続いておる公務員に、支給することができるという程度では十分な保護にならないので、これはぜひ支給しなければならないということにならないと、これでは表面は国家公務員の災害を補償してやるようなことになつているのですが、むしろこれは逃道を教えているようなものであつて、水の漏れて行く穴が方々にあいているので、水を入れたところで水がたまりつこないというような感じがわれわれ非常にするのですが、二十一條などは、どうして支給しなければならないというようにできないわけですか。
  75. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいまのは無制限にやるということになりますると、どんな場合にもやるということになりまするので、傷害補償を受けたものに限定してやるというのが基本的考えでありまして、それがためにここでは適用をできるというふうに規定したわけであります。
  76. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると一体どのくらいの経費がかかると見ているのですか。これをやることによつてそんなに大きな負担になるということですか。
  77. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 冒頭に私申し上げましたように、従来各庁ばらばらになつておりまするので、統計的な資料その他において完備したものがございませんで、これからやつて行こうというのでございまして、補装具の分につきましても、具体的にどれだけの件数があり、どれだけ支給されたかという統計実績という資料は遺憾ながら持ち合てございません。
  78. 林百郎

    ○林(百)委員 あなたの言うように、予算上非常に制限があるからやむを得ず支給することができるということにしたいというならば、従来人事院の研究によれば、それがこれだけの膨大な費用なつているのだ、だからこれは支給し切れないのだというならわかりますが、幾らだかわからないけれども、負担になりそうだから支給することができるとしたというのは、実際あなたの誠意を私は疑いたくなるのです。やはり人事院として各省の補装具やらいろいろ検討した結果、これだけの厖大な費用なつておる、これを日本の国家の現状として負担させるというのは過重だからというのはわかります。全然資料も何もないのに、過重になりそうだから支給できるということにしておこうというような程度では、われわれは納得できません、どういうわけなのですか。
  79. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 決してないがしろにするというような、林委員のおつしついますようなさもしい考えはごうまつも持つておりません。努めなければならない、これはきわめて積極的に大いにやろうというふうに考えておる次第でございます。ただ問題は、今まで申し上げましたように、本来の補償は当然の賠償責任の補償でありまするので、これはいわゆる予備金支出をもつてどんどん出す。ところが二十一條、二十二條という問題につきましては、現在のわが国における他の例といたしまして、いわゆる損害賠償の範囲外になつておりますので、こういう條項を立てまして、言うまでもなく国が模範的使用主といたしまして最善の努力をもちまして、大いに努力しかつ努めて行こうという趣旨でございます。
  80. 林百郎

    ○林(百)委員 その賠償の補償が十分ならよいのですよ。各委員より話がありますように、各民間の企業では、団体交渉あるいは労働協約によつていくらでも最低の労働基準法を上まわる協定ができるわけであります。ところが公務員というのは団体交渉権も何もない。これできめられれば、これが労働基準法規定されている最低のところで規定されるわけです。あなたの言うように補償が十分しまつているならば、労働基準法よりこれだけ上まわつているのだから、これだけの義肢とか義眼とか補聴器というものは、当然自分で何とか調達すべきだというならば、これはわかりますが、全労働者のうちの最低の労働基準法補償にして来て、そうして義眼、義肢、補聴器などは、これはもう補償の範囲外なのだから、ほしいものは買つたらいいだろう、できるものはやつてやろうというのでは、公務員の十分の災害の補償にならぬと私は考えております。この点をもう一度お聞きしたいのです。それからもう一つは、二十二條に関連して三十三條で「人事院の統計的研究の結果に基いて、予算に計上されなければならない。」というようにありますが、これは人事院の統計的研究の結果に基いて予算に計上されなければならないというのと、努めなければならないというのと、これはどういう関係になるわけですか。
  81. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 まず先に第二の点を申し上げます。予算計上の問題につきましては、従来きわめて僅少な予算しか計上しておりませんし、各庁ばらばらになつておりますので、この法律の施行と同時に、総合調整の権限を持つところの人事院の調査研究に基いて予算を計上いたしまして、より補償の実効をあらしめようという趣旨で定めたものでございます。  それからもう一つの最低基準——労働基準法とまつたく同じものをやつて、あとはほつたらかしてかまわぬというようなことはけしからんではないかという、たいへんおしかりのお言葉でございまするが、この点につきましては、先日も成田委員にお答え申し上げましたように、なるほど形式的には労働基準法とまつたく同じでありますけれども平均給与額その他の計算等につきまして、実質面におきましては、相当よくしている点もあります。  さらにまたもう一つ国家公務員特殊性から来るところの問題につきましては、別途新しい恩給制度等において考えることが適当というふうに考えましてこれはあくまでも損害賠償責任という観点においては、むしろ原則的に同じであろう、また同じであることが損害賠償責任理論からいつて当然であろう。しかしながら国家公務員特殊性を無視する考えはごうまつもないのでありまして、その国家公務員特殊性につきましては、新しい恩給制度等において十分考慮いたしたいという考え方のもとに進めた次第であります。
  82. 林百郎

    ○林(百)委員 大分能書を聞かしていただいたのですが、実は賠償責任からいつて、民法上の規定からいつても普通の民間でその人が不具になつた場合には、ホフマン式で計算して一生の生活の補償をやる。本件で規定されているような一時金で打切るというようなことはないわけなのです。この点は民間の損害賠償責任よりむしろずつと軽くなつているので、これは比べものにならないと思う。私は民法の原則に基く損害賠償の責任より、この補償法の方がずつと下まわつているというように考えているわけなのです。ことにそれが民間の非常に財力の乏しい者でも、法律的には相当大きな額の責任を負わされるのに、国家事業の国家公務員がこの程度の補償で、もう補償はしていると言われるのは、かえつて公務員として迷惑だというように私は考えるわけです。そういう意味で、この法律はむしろ民間の使用者に対して、国家でもこの程度なのだから、お前たちはあまり親切にしてやらなくてもいいのじやないかというようなことを教えるような、そういうことに使われる危険が出て来ると思うのです。そういう点で私たちは、この法案公務員災害補償ではなくして、むしろどうしたら責任を免除されるかという、使用者の責任免除法と名づけた方がいいくらいだというようなきらいがあるように思われる。それで方々に責任をのがれる規定があるわけだ。  そこでもう一度あなたにお聞きしたいのですが、三十三條で「人事院の統計的研究の結果に基いて、予算に計上されなければならない。」というのですが、そうすると人事院の統計的研究の結果出ておる数字は、予算にどうしても計上しなければならないのか、あるいは計上するように努めればいいのか、この点はどうなのです。
  83. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 財政法との関係でありますが、ここにおきましては人事院の調査研究に基きますところの資料に基きまして、財政法に基いて予算に計上するという趣旨でございます。  なおまた最後にもう一つだけつけ加えさしていただきたいのであります。私は先ほど新しい恩給制度と一口に中したのでありますが、新しい恩給制度につきましては、マイヤースの勧告も出ております。マイヤースの勧告の線で行きますると、公務上の傷害者、あるいは公務上の死亡者等につきましては、当然年金を支給するという建前をとつております。従いましてこれは事業主損害賠償を忌避するというような意味の規定ではございませんで、要すれば恩給制度におきましても、年金制によつて十分考慮いたしたいという考えは、依然としてかわりがないのであります。
  84. 林百郎

    ○林(百)委員 いつできるか知りませんが、マイヤース勧告とかで十分の恩給制度ができるそうですが、それではそういう恩給制度ができたとき、これと並行しておやりになつたらいかがか……。(「それまでほうつておくのか」と呼ぶ者あり)今のままでもできているわけです。それができるまでは結局のがれる道が開かれていることになると思う。  それともう一つ、三十三條の規定があなたの説明ではどうしてもよくわからないのです。「人事院の統計的研究に基いて、予算に計上されなければならない。」この予算に計上する額というのは、努力したという程度でいいのか、あるいは人事院の科学的な研究によつて出た数字というものは、義務づけられて来るのか、その点がはつきりしないのです。
  85. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 これは財政法との関係になりまして、義務づけられているとは考えておりません。
  86. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、人事院統計的研究の結果に基いて努力すればいいわけですか。
  87. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 努力という言葉の内容にももちろんいろいろあると思うのでありますが、こういう法律ができ上りました以上は、この法律損害賠償の精神に立脚いたしまして、やはりこの精神に沿うように財政法との調整をはかりまして、十分な予算を計上するという当然の義務が政府にはあると考えます。
  88. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、二十二條の「人事院及び実施機関は、公務上の災害を受けた職員の福祉に関して必要な左の施設をするように努めなければならない。」とありますが、この「努めなければならない」というのは、三十三條によつて人事院から具体的な数字が出た場合には、その予算は計上するように義務を持つて来るわけですか。
  89. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 福祉施設の問題は、建物その他の問題もございますので、あまり徹底的に義務づけますと膨大な予算を必要とする。限界がございませんので、あくまでもこれは努めなければならない。同時に予算の面におきましても、この精神に立脚いたしまして、これがなし得るように大いにやらなければいけないというふうに考える次第であります。
  90. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると予算をなるべく計上しろということなんですね。
  91. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 つまりこの條文が若干明確を欠いておるようでありますが、直接の補償関係するものはほんとうに計上する必要があるのでありますが、福祉施設等につきましては、この二十二條にありますごとく、努めるという條項が完全に実現をいたしますように努めなければならないということになるわけでございます。
  92. 林百郎

    ○林(百)委員 結局努めなければならないことになつたそうですから、それでやめます。  それからもう一つは、これは別に人事院を攻撃しているわけじやなくて、人事院としてはやむを得ぬと思うのですが、しかし條文の体裁上どうなるのか聞いておるわけです。それは二十六年度予算に計上される二億七千万円、これは何か根拠があるのですか。
  93. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 これは、私どもの方の調査研究の統計資料を持つておりませんので、労働者災害補償保険法における保険料率を基本といたしまして、それで計算をいたしまして計上したわけでございます。
  94. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、これは二十五年度はどのくらいだつたのですか。
  95. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいまはつきりした計数を持つておりませんが、二十四年度は一般、特別両会計を通じまして三千万程度でございました。それから二十五年度からこれを実施する予定でありましたので、二十五年度二億二千万円。本年度二億七千万円であります。この二十五年度の二億二千万円と本年度の二億七千万円は、いずれも労働者災害保険法の保険料率を基本として計上したわけでございます。
  96. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとこの法案ができても、この後補正予算を組まないとすれば、昨年度と比べてわずか五千万円程度ふえるということでこれが実行されるということになるのですか。
  97. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 この経費は、予備金支出が可能な経費になつております。従いましてこれで足りません場合におきましては、予備金をお出し願うということになつております。
  98. 林百郎

    ○林(百)委員 これは二億七千万円そのものが予備金支出の可能性も入れてあるのではないですか。
  99. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 二億七千万円は、もうすでに実施されていまするところの本年度の予算に計上されております。二億七千万円で足りない場合に、なおかつ予備金支出が可能であるということであります。
  100. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、この法案を実行して行くとすれば、二億七千万円にどのくらい上まわる計算になりますか。
  101. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 ただいまのところは、かつて各省における補償の実績を明確に把握しておりませんので、上まわるか、下まわるか、ちよつとはつきりわからないのであります。
  102. 林百郎

    ○林(百)委員 それではこの法案が実行されることによつて、昨年度より保護されるのか、されないのかということも、数字の上ではわからぬというようにわれわれ解釈していいのですか。
  103. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 数字の上と申し上げますると、わずか五千万円というようなりくつになるわけでありますが、形式的な数字の面から見ますと、昨年よりは五千万円ふえるということになるわけであります。ただ足りない場合においては、予備金支出ということになりまするが、一面において、従来は各省てんでんにやつておりましたのを、人事院の総合調整のもとに実施いたしまする関係上、大体見通しといたしましては、二億七千万円では足りないのではなかろうか、かように考えております。
  104. 林百郎

    ○林(百)委員 わかりました。人事院をあまり責めたところで、人事院の限界がありますから、これでいいと思います。  もう一つ労働基準法と比べまして、労働基準法の七十八條によりますと、重大な過失があつて免責になる場合は、やはり行政官庁認定を受けなければならないということで、やはり重大な過失による免責をする場合の認定について、もう一つ判断の機構があるわけですが、これは一方的に使用者が重大な過失がお前にあつたのだから免責だというようなことで、それ以上の審議する機種がないわけです。これは基準法の七十八條と比べて、その点いささか不公平になると思うので、この点はやはりこれは参議院でも問題になつておりますが、何か免責の場合等を審議するとか、あるいはさつき言つた相当因果関係があるかどうかということを認定するというものに対して、やはり何か審議会か何かをやつたらどうかという意見があるが、これはこの法案をかりに実行する場合を仮定しても、そういうものが必要だと思いますが、その点はどうか。  それからもう一つ労働基準法ですと、補償の審議会があつて、やはりいろいろ検討するということになつておるわけです。ですから直接使用者とそれから補償を受ける者のほかに、第三者が入つて来てそこを調整するようになつております。これですと、直接国と公務員という形になつて来て、そこを調節するものが、ただあなたの言うように人事院に要求するとか、裁判するという形になつておりますが、具体的に問題を審議する場合に審議会か何かあつて、それが調整するような方法を講じなくていいかどうか。一方は国という強い立場にある。一方は公務員という立場にある。それが一方的な判断で免責事由を判断する、相当因来関係を判断するということでは、基準法と比べていささか不公平な感じがするが、その点はいかがですか。
  105. 慶徳庄意

    慶徳政府委員 苦情処理の問題につきましては、人事院規則で定めることになつておりますので、人事院規則におきまして、第三者の学識経験者の入る審議会をつくろうと考えております。
  106. 田中伊三次

    田中委員長 それでは別に質疑もございませんね。本法案に対する質疑はこれをもつて終了をいたします。     —————————————
  107. 田中伊三次

    田中委員長 ただいまよりこの法案を議題として討論に入ります。討論は通告順によつてこれを許します。まず藤枝君。
  108. 藤枝泉介

    藤枝委員 自由党は本法案に対しまして、賛成いたすものでございます。  公務員の災害の補償につきまして、従来非常に法令が不統一であり、しかもその精神でも、補償と申しますか、損害賠償と申しますか、そうした精神が不明確でありましたが、今回のこの法案によりまして、公務員の災害に対しまする補償の問題につきまして統一した法令ができ、しかも使用者たる国の無過失賠償責任の原則が確立されましたことは、これはまさに公務員にとりましても喜ぶべき現象であろうと思うのであります。ことに使用者たる国家の責任となりますと、従来あるいは恩恵的な観念もなかつたではないのでありますが、これがはつきりと使用者たる国家の無過失損害賠償の責任、国家の責任としてきめられたということ、一面におきましては、公務員が権利としてこの補償を受けるということになりましたことは、公務員の保護の立場から考えましても、十分納得のできることであろうと思います。従いまして公務員の権利としてこれが補償の権利が獲得されました結果、この法案の中にもありまするように、苦情処理の手段を求めまして、実施機関のやりました仕事についてのさらに上級の一種の請求ができまするようになりましたことは、当然ではあろうと思いまするけれども、これも従来の不統一な、しかも各省ばらばらにやつておりましたこの問題に対しまして、一歩前進いたしましたものと考えるのでございます。さらにこれは法案に直接の関係はございませんけれども、この法律案が施行されるのと並行いたしまして、従来各省でばらばらに予算を組みましたこの補償の額につきましても、十分人事院の研究に基いた補償の予算が組まれたということも、この法律案の施行と伴つた一つの進歩であろうと私ども考えるのでございます。  補償の額につきましては、いろいろ同僚議員からも御意見があつたのでございまするけれども、この法案建前が無過失損害賠償責任という建前をとつておりまする以上、その無過失の損害賠償責任というものの限度というものはおのずからあろうと思うのでありまして、その限りにおきましては、本法律案が規定いたしまする限度が、わが国の実情においては、無過失賠償責任という限度におきましては妥当なものであろうと私は考えるのでございます。  さらに参議院の修正の問題でございますが、これは施行期日の問題並びに恩給法との関係でありまして、当然の修正であろうと思いまして、これまた賛成いたす次第でございます。  ただこの法律案が施行されるにあたりまして、ただいまこの委員会におきましても、同僚の委員の方々からいろいろと御意見がありましたように、いわゆる国のなすべき福祉施設の拡充というような点につきましては、これはもちろん内閣といたしましても十分考えるべきでありまするが、また人事院といたしましても、この福祉施設の拡充につきましては十分なる努力を払われる必要があろうと思うのであります。  またこの実施機関の怠慢の問題でございます。この法律案につきましては、補償を受ける側の公務員側につきましては罰則を設けてあるのでございまするけれども、実施機関の怠慢、過失等によりまして、この補償を受けるせつかくの権利につきまして、それが延引いたすというようなことが従来行われがちでありました。この実施機関の過失あるいは怠慢等につきましては、国家公務員法原則に基きまして、懲戒処分その他が行われるであろうと思いますけれども、総合調整の機関でありまする人事院といたしましては、実施機関が敏速に——せつかくこの補償を受ける権利につきまして、それが敏速に実現できまするように、大いに人事院としても督励される必要があろうと思うのでございます。私はその福祉施設の拡充の点と、実施機関の敬速なる処理の点につきまして、人事院の一層の努力を希望いたしまして、本法案に賛成いたすものでございます。
  109. 田中伊三次

  110. 平川篤雄

    平川委員 民主党は、政府原案並びに参議院の修正案に対して、賛成いたすものであります。  ただいま藤枝委員から申されましたように、各種の点につきまして、まだ不十分なところがあると思いますが、一応一歩前進したものとして了承をいたす次第であります。ただいま申された希望條項は、重複いたすものがありますので申し上げませんが、特にこの災害補償基準というものにつきましては、従来とも種々問題を起した点でありまして、昨日来問題になつております、ことに結核等の疾病の場合については、常に問題の絶えなかつた点でございまして、こういう点につきましては、同僚委員からもありましたように、団体交渉等の権利を持つておりません公務員の立場を考えまして、どこまでも公務員本位に、有利な解釈に立つて運用せられんことを望むものであります。またその基準並びに補償の程度を審議いたします場合も、いずれ人事院におかれまして、それぞれ審議会等を設けられるというふうに聞いておるのでありますが、このような場合におきましても、できるだけ公務員諸君の中の代表をこれに加えることによつて、実際に民主的な運営をはかるように努力をせられたいと思う次第であります。その点を含めまして、将来にわたつて完璧を期せられることを希望いたしまして、賛成の意を表する次第であります。
  111. 田中伊三次

  112. 成田知巳

    成田委員 日本社会党はもちろんこの法案に反対でございます。  ただいま自由党の藤枝委員あるいは民主党の平川委員から、本法案一つの統一的なものであり、あるいは進歩の跡を見出すことができる、こういう賛成意見を述べられておりますが、この法案を一読してだれでもすぐ気がつくわけでございますが、従来の関係法令の単なる機械的な、モザイック的な結合、寄せ集めにすぎないのでありまして、何ら進歩の跡もありません。創意くふうの跡も見出すことができないのであります。また藤枝委員は賛成理由として、また政府の提案理由の説明にもありましたが、本法案の特長としか、使用者である官庁と、被使用者である国家公務員との間に、無過失損害賠償責任の大原則を確立した、そのために労働基準法の精神並びにその定めるところを取入れた、こういうことを言つておるのでありますが、ちよつと聞くとまことにもつともらしいのでありますが、私たちがこの法案にまつこうから反対いたします直接かつ重大な根拠というのは、実はそこにあるのであります。政府の考え方とはまつたく逆に、そこに私たちは反対の理由を持つておるのであります。申すまでもなく、労働基準法は多種多様の民間企業を適用対象にいたしております。わが国の産業の構造的な特徴と申しますか、民間企業は大部分中小企業、町工場に類した中小企業がその大半を占めておるわけでありまして、その結果労働立法、この労働基準法もその最たるものでありますが、労働立法は勢い企業中の最低線を基準とする、そうならざるを得ないわけであります。現にそのために比較的大きな工場とか、比較的内容のいい工場におきまして、労働者は自主的に労働協約によりまして、最低基準である労働基準法に定むる補償規定よりは有利な規定を獲得しておるということは、周知の事実なのであります。この最低限度の補償規定しております労働基準法をば、民間労働者とは異なり罷業権と団体交渉権を持つておらない、この罷業権、団体交渉権をたてにして有利な補償規定を闘い取る道が全然奪われておる国家公務員に、最低限度の補償規定である労働基準法をそつくりそのまま適用するということがいかに誤りであるかということは、賢明な皆さん方、多く言わずしてわかると思うのであります。特に政府の方とか、あるいは自由党の諸君は、口を開けば。こう言つておるのです。国家公務員は、単なる雇用契約に基いて労働に従事しておる民間労働者とは違つておるのだ、公務員は、国民全体に奉仕するものである、こう力説しておる。さらに国家公務員に特別の忠実義務を要求しておるのであります。国家公務員法におきましても「すべて職員は、国民全体の奉仕者として、公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」こう規定してあります。政府みずから公務員に対して、一身をささげて職務に専念することを要求しておりながら、一方公務員がその要求を忠実に守つたがために生じた傷害疾病に対しては、単に民間労働者に与えられておる補償規定、しかもその最低限度の補償しか与えないというに至つては、はなはだしい片手落ちでありまして、政府はこの不合理、この矛盾を、本法案の形で公然と行おうとしておるのであります。このことがいかに不都合な結果をもたらすかは、一例を申したらわかると思いますが、警察官が治安維持のために兇漢に向つて死ぬことを覚悟して逮捕に向つて、そのために殉職したという場合においても、最低限度の見舞金しか出されない。こういうことを見ますと、いかに不合理であるかということがおわかりになると思います。この法案が上程されたことを知りまして、聞くところによりますと、国家警察官の間におきましては、こんなことではとても自分の死んだあと不安でたまらない、こういうことで警察官の間で一人当り十円醵出しまして、三万人の警察官として三十万円でありますが、その見舞金を出そうというような議が期せずして起きておるということさえ聞いておるのであります。こういうことで、はたして国家治安の維持というものができるかどうかということを私たちは聞いたいのであります。  次に、本法案の重大な欠陥として指摘しておきたいことは、今も問題になりました公務に起因する疾病としての、結核疾患に対する補償規定の問題であります。最初政府は、結核疾患に対しましては、たとえば国立療養所で勤務しておる医師だとか看護婦等が結核なつた場合、これを公務に起因するものとして取扱い得るというような、非常に偏狭な解釈をとつてつたようでありますが、委員会における質疑応答の結果しぶしぶながら、結核疾患公務との間に相当因果関係があれば、公傷病と認めるというところまで折れて来たのであります。慶徳さんなんかの御意見によりますと、公務員採用のときには、結核については特に厳重な身体検査をやる、また採用後も定期に綿密な体格検査をしておるから、公務に起因する結核疾患かどうかは科学的に判定できる、こう言つていらつしやいますが、この人事院の科学的というのが、まことに怪しいのであります。特に私たちが心配するのは、従来の政府だとか官僚のやり方から見まして、この科学的という言葉を逆利用して、この科学的という言葉の美名のもとに、低賃金労働強化で続々と倒れて行つております公務員に対して、何ら補償をせずして、これを見殺しにするという無慈悲な取扱いが行われるだろうということを、本法案を審議しておる際に当つて、私たちは感じた次第であります。人事院の言うがごとく、採用時に嚴格な採用試験をやつて、そしてパスした、こういう人が勤務中に結核なつたとすれば、当然原則としてこういうものは公務に起因するものとみなしまして、国家が万全の補償をなすということが当然でありまして、この点に関する明確な規定あるいは運用方針というものが明らかにされていないということは、本法案の重大な欠陥だと私たちは考えております。このまま本法案が通過いたしましたならば、安い貸金とオーバー・ロードのために、結核の病の床に坤吟する多数の公務員が出る。その遺家族は、はなはだしい生活苦に陷ると思うのでありますが、その姿、その声が今から私たちの目に見え、あるいは耳に聞えるような気がするわけであります。この委員会の審議におきましても、本日は督戦隊の勇敢な方がたくさん出られましたが、人事委員会において、自由党の諸君がこの結核の問題についてだれ一人も触れることがない。やじは盛んに言うのでありますが、この深刻な問題について何一つ自由党の諸君が取り上げなかつたということを考えますと、こういう事態が発生したことは、一こかかつて自由党に責任があるとこうようなことを私たちは指摘したいのであります。この点におきまして、形式においても非常にずさんであり、内容においても非常に公務員に不利をしいておりまする本法案に対しては、私どもはまつこうから反対するものであります。
  113. 田中伊三次

    田中委員長 林君。
  114. 林百郎

    ○林(百)委員 日本共産党もこの法案については、公務員の災害の補償公務員の利益を保護するという立場ではなくして、むしろ公務員に一般の労働者に対する災害補償の最低の線を押しつけて、その公務員に押しつけた災害補償の最低の線を、さらには民間労働者諸君にもこれでいいのだ、政府ですらこの程度の補償をしないのだから、お前たちはそうする必要がないのだということのお手本を示すことになると私は思う、むしろそういうところにこれが利用される危険が多分にある。しかもこの法案内容を見ますと、使用者側の、責任を負う側の立場からいいますと、たとえば十一條の「相当を認められるもの」だとか、あるいは二十一條の「支給することができる。」だとか、あるいは二十二條の「努めなければならない。」というような、まつたくあいまい模糊として、むしろ責任をのがれることのできる、のがれ道を親切に教えてやるという点が見られるのであります。また十一條の相当因果関係、十四條の重大な過失による免責の規定、こういうものは使用者側に、これこれこういう点で免責の規定もあるし、この程度でいいのだということの、むしろ、補償の責任をのがれることを親切に教えてやるというようにわれわれは考えられるのであります。しかも打切り扶助料によつて、民法による一般の、ホフマン式による損害賠償の額よりはずつと下まわつて打切りをするということ、それからたとえば時効の点につきましても、わずか二年でこれを打切つておるということ、それからなお重要な点は、使用者側ではただ、努力することとか、あるいは何々することができるだとか、努力すればよいという程度であつて、この罰則の規定を見ますと、この使用者側の責任に対する責任追究の規定は何らないにもかかわらず、被使用者側については、補償のために調査した質問に答えなかつた質問に陳述しなかつたということだけで六箇月以下の懲役、三万円以下の罰金であります。しかも職場は調査することはできるわ、帳簿を調査することはできるわ、これでは災害の補償ではなくて、まさに公務員の人権蹂躙である。少しの親切心も何もないというように考えられるのであります。こういう意味で、私たちはこの法案は決して公務員の真の災害を補償してやるのではなくして、使用者側の免責の規定、責任の最低の限度をむしろ親切に教えてやつて、これを民間の事業にも推し及ぼそうとしている。今後戦時態勢に自由党の政策が切りかえられるに従つて労働強化はますます起きて来、民間の災害というものは幾何級数的にふえて来ると思うのでありまして、民間の労働問題におきましても、この労働者の災害の補償という問題については、非常に重大な問題が起きて来るにもかかわらず、政府がこうした国家公務員災害補償法としてこのようなまつたく責任をのがれる道を教えているような補償法をつくることによつて、民間の労働者諸君に対する労働強化による災害の補償の道もまつたく、むしろとざされるという危険があると思うのであります。この点が第一点であります。  それから反対する第二の点でありますが、第二の点は、先ほど社会党の諸君も言つておりますが、基準法の最低の限度をむしろ下まわつておる。基準法ではまだ政府というような機関があつて、これが調整をするのでありますけれども、もう政府の一方的な認定、で、因果関係、あるいは免責規定、あるいはそのほかの規定で一方的に認定で、因果関係、あるいは免責規定、あるいはそのほかの規定で一方的に認定し、決定されるのでありまして、この点はむしろ民間労働者の最低の災害補償規定しておる基準法より下まわる法案である、こういう意味でわれわれ賛成できないのであります。  第三点は、自由党の諸君がこれによつて無過失責任が貫かれた、あるいは国家公務員の福祉の点で一歩前進したというようなことを盛んに言うのでありますけれども、しかし公務員の災害の根本的な原因は、やはり非常に賃金が安いということ、労働が強化されておるということ、それから国鉄、電気通信のごときは、まつたくこの政府の予算的な措置が切り詰められておるために、施設が老廃して来ておるということ、こういうような基本的な労働者が置かれておる労働條件、ことに公務員賃金体系、こういうものが、少くとも憲法で保障されている人間に値する健康な最低の文化的な生活ということは、夢にも思われないような状態にあるということ、だからこそ災害が起きて来るのであります。たとえば電気通信の従業員の諸君なんかに聞いてみますと、大体一日の副食代が百円に満たない。一日平均百円の副食物をとつておる者はむしろぜいたくだ、大体聞けば、塩か醤油をかけて飯を食べている、こういう状態であります。独身者が一人平均五千円、そのうち地方税やいろいろとられてしまいますから、一日平均百円の副食物もとれない、こういうところに内部疾患も出て来れば、また思わざる災害も出て来るのであります。この労働者が置かれておる基本的な條件をかえなくて、しかもこんな彌縫的なものを、その彌縫的なものも、むしろ政府が責任をのがれるようなことを親切に教えているようなところの非常に多い、こういう法案を通すということは、むしろこれによつて基本的な賃金体系を改善する道をごまかすことになると思うのであります。地域給の問題、あるいは災害補償の問題、こういう枝葉の問題によつて基本的な体系を改善するという、最もわれわれが現下なさなければならない問題を、目をそらし、ずらすことになる危険が私は多分にあると思うのであります。こういう意味で、第三点としては、基本的な賃金べースの改訂、給与体系の改訂という道をこれによつてそらしてしまう。あたかも政府は親切に公務員のことを考えているような身振りをして、基本的な問題に対しての責任をのがれさせるという点があると思うのであります。こういう意味で私は第三点としてその点を加えまして、本法案はむしろ欺瞞的な法案であつて、ない方がましであるという点で、私は反対するものであります。
  115. 田中伊三次

    田中委員長 これにて討論は終局いたしました。引続きこの法案を議題として採決をいたします。原案通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  116. 田中伊三次

    田中委員長 起立多数。よつて法案は原案の通り可決いたしました。  この際この法案に関する委員会の報告書について、お諮りをいたします。先例によりまして、委員長に御一任を願いたいと存じます。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  117. 田中伊三次

    田中委員長 御異議なしと認めます。よつて委員長に御一任をいただいたものと決しました。  それでは本日はこれにて散会いたします。     午後一時四十一分散会