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1951-05-26 第10回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十六日(土曜日)     午前十一時六分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 島田 末信君    理事 塚原 俊郎君 理事 内藤  隆君    理事 小松 勇次君 理事 猪俣 浩三君    理事 山口 武秀君       大泉 寛三君    岡延右エ門君       鍛冶 良作君    田渕 光一君       福田 喜東君    八木 一郎君       柳澤 義男君    大森 玉木君       藤田 義光君    坂本 泰良君       梨木作次郎君    高倉 定助君  委員外出席者         証     人         (国家地方警察         本部長官)   齋藤  昇君         証     人         (法務府特別審         査局長)    吉河 光貞君         証     人         (出入国管理庁         長官)     鈴木  一君     ————————————— 本日の会議に付した事件  不正入出国に関する件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。  前会に引續き、不正入出国に関する件について調査を進めます。ただちに斎藤昇証人より証言を求むることといたします。  ただいまから不正入出国に関する件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣言した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が、職務上の秘密に関するものであるときは、その旨を申出願いたいと存じます。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読を願います。     〔証人斎藤昇朗読〕    宣誓書   良心に従つて、直実を述べ、何事  もかくさず、又何事もつけ加えない  ことを誓います。
  3. 篠田弘作

    篠田委員長 宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長の許可を得てなさるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておりますときはおかけになつていてよろしいですが、お答えの際は御起立を願います。  密入国者で未検挙の者の数及び未検挙原因について述べていただきたい。
  5. 齋藤昇

    齋藤証人 密入国者の未検挙者の数は、これをつかみますことがきわめて困難でございまするが、すでに検挙をいたしました者の供述、あるいは逮捕せんとして逃走せられた者の数から判断することしか、ただいま資料がないのであります。それによりますると、昭和二十一年度、四月から十二月までの統計でありますが、三千六百八十二名、昭和二十二年度——以後一月から十二月まででありますが千四百六十七名、二十三年度におきましては二千四十六名、二十四年度におきましては二千七百十名、二十五年度におきましては千七十名、二十六年度に入りまして四月までの計が三百十四名、計一万三百八十九名と相なつております。このほか全然わからない未検挙者がどれくらいあるかは、これは他に的確な資料がないのでありまして、われわれといたしましては、この倍あるか、あるいは三倍あるか、はつきりしたことは申し上げられません。
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 密入国者または登録令違反者関係した騒擾事件があつたならば、それについて述べてください。
  7. 齋藤昇

    齋藤証人 その前に未検挙理由を申し述べます。未検挙理由といたしましては、これに関係いたします機関相当数が多くあります。この間の連絡を十分にいたすよう努力はいたしておりまするけれども、ともすると不円滑になる場合が多いのであります。こういう関係機関が多くて、連絡必ずしもうまく行かないという点が一点あると思います。それからわれわれの方を含めまして、関係機関の陣容が必ずしも十分でない。ことに国警におきましては、船舶を今日持たないという建前に一応なつておるということも、一つの大きな原因であります。いま一つは、出入国管理庁が設けられましたが、まだ出発早々でありまして、十分の成績が上げられていないうらみがあるという点であります。もう一点は、外国人登録証明書の問題でありまするが、これが依然偽造あるいは変造せられるおそれが多分にある内容を持つておりまするので、この登録証明書を発行いたしまする市町村役場等におきまして、この取扱いが必ずしも十分でない場合があるという、この外国人登録証明書の扱いの問題であります。これを完全にいたしますことは、国内にすでに不正入国してしまつた後の発見上、非常に重要なことだと考えます。  それからただいまお尋ねになりました、密入国者その他外国人登録令違反者関係した騒擾事件でございますが、かよう事柄も想像され得る事柄ではありまするが、具体的に今まで騒擾事件として検挙をいたしました関係者の中に、外国人登録令違反者は一件もないのであります。これは騒擾事件関係して逮捕した者について調べたわけであります。逮捕をまぬがれた者、逮捕できなかつた者、あるいは背後関係者等において、こういう者が関係しておるのではないかということは想像できるのでありますけれども、逮捕をいたしておりませんので、現実にそういう調べはできておりません。騒擾事件に関しては、今まで逮捕いたした中にはこの違反者はございません。
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 弱小自治体警察は、密入国などという地方的でない国家的な犯罪に対しては、経費並びに人員が非常に不足であるという関係から、捜査上の意欲あるいは活動が十分でないということを聞きますけれども、これに対するあなたのお考えはどうですか。
  9. 齋藤昇

    齋藤証人 お尋ねの件につきましては、さようなことも考え得られるのでありまして、また自治体警察側公安委員集まり等において、そういう声を聞く場合もあるのでありますが、しからば現実にいつどこでこれを証明し得る事件があつたかと聞かれますと、さよう具体例はただいま記憶にないのであります。自治体警察公安委員連合会等におきまして、やはりそういうよう理由から、自治体警察の行う密入国取締り、あるいは密貿易取締りは国費を支払つてもらいたい、この経費のためにおのずから捜査意欲がにぶるというような陳情を受けたこともあるのであります。
  10. 篠田弘作

    篠田委員長 それからさつきちよつと申されましたけれども、密入国者の未検挙原因一つとして、国家地方警察船舶の所有を認められていないということを言われましたが、これは当然壱岐とか対島とかいつたよう島與を管内に持つておる場合には、船を持たなければぐあいが悪いということは常識的に考えられますが、船舶は認められておらぬということは、海上保安庁との関係において認められておらないのですか。
  11. 齋藤昇

    齋藤証人 海上保安庁ができまする際に、国警の持つている船舶を全部海上保安庁に譲るという問題が起りまして、いろいろ折衝いたしたのでありまするが、この際一応はさようにせざるを得ないであろうという結論に達しました。しかし海上保安庁もだんだん整備されて参りましたから、今後それらの点について努力をいたしたいと考えております。
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 努力という意味は、国家警察も持つという意味ですか。
  13. 齋藤昇

    齋藤証人 さようでございます。あるいはお述べになりましたように、島與交通機関としても必要なのであります。ことに対島壱岐のごときにおきましては、島與内の道路も十分でありません。従つて警察官を緊急に派遣するという場合にもそれに不便を感じております。ましてこういつた密入国取締りということは、海上保安庁だけではとうてい不可能であります。保安庁の出張所のあるところは数が限られておりますので、われわれが持つということは、單に密入国取締りのみならず、一般犯罪の防止、検挙においても必要だと考えております。
  14. 篠田弘作

    篠田委員長 予算関係はどういうふうになつておりますか。
  15. 齋藤昇

    齋藤証人 さようなわけでありますから、予算関係はただいま船に関しては一切ございません。
  16. 篠田弘作

    篠田委員長 計上される考えですか。
  17. 齋藤昇

    齋藤証人 国警におきましては一切ございません。従つて今後持ち得るというように話がつきましたならば、予算を計上するように要求をいたしたいと考えております。
  18. 篠田弘作

    篠田委員長 持ち得るように話がつくというのは、別に法律がとめられているわけじじやないのでしよう
  19. 齋藤昇

    齋藤証人 法律ではとめられておりません。
  20. 篠田弘作

  21. 齋藤昇

    齋藤証人 国内的にはさようでございます。
  22. 篠田弘作

    篠田委員長 海上保安庁との話合いがつけば、船をもどしてもらうか、あるいは船を新しくつくるかすることができる、そういう場合には予算を計上してやる、こういう意味ですか。
  23. 齋藤昇

    齋藤証人 さようでございます。
  24. 篠田弘作

    篠田委員長 密入出国取締り見地から、国境警備というものは大体人口を基礎として定員の配置を行つておる。この間も根室の署長が見えまして、ここで証言をされたのでありますが、そのために非常に広汎な地域を受持つて、わずかな人間でやつておられるようでありますが、こういうことはもつと重点的に、人口だけではなくて、地域とか、地域の持つ重要性というものにかんがみて、人員配置するというふうにはできないものですか。
  25. 齋藤昇

    齋藤証人 お尋ねの通りさようにいたすべきであります。また若干はさような配慮をもつて配置をいたしておるのであります。対馬のごとき、あるいは北海道におきましても、できるだけさよう見地から配置をさせるようにいたしておりますが、何分国家地方警察警察官の数が非常に少いので、所要のところにまわす余裕がないというのが今日の状況でございます。北海道等におきましても、あの海岸線相当数の、少くとも駐在所というものを配置する必要があると痛感いたしております。今回警察法改正が成立をいたしまして、五千人の警察官の数が増員できまするならば、若干はその方向に主力を注いで配置いたしたいと考えております。
  26. 篠田弘作

    篠田委員長 その次は武器携帶集団不正入国者があるかないか、あるいはそういうことを計画しておることがわかつた場合に、警察法による非常事態の布告がなされたとき、警察予備隊あるいは自治体警察との間で指揮命令任務分担、そういうものについて何かとりきめがありますか。
  27. 齋藤昇

    齋藤証人 非常事態宣言の発せられました際には、警察はその必要に応じまして、自治体警察国家地方警察を一元的に統制できる仕組みになつておりますが、警察予備際との関係におきましては、法律上はまつたく独立いたしておるのであります。しかしながら警察予備隊指揮権総理大臣にありますから、これと事実上密接なる連絡をとり、場合によりましては本部一つにしてやることもできると考えております。しかしこの際に警察予備隊一般警察とどちらが指揮権をとるかということは考えておりません。どちらの指揮権にも入らないで、それぞれの分担において緊密な指揮のもとに両者を運用して行けるよう考えております。その他の機関との連絡海上保安庁警察との関係は、応援を要請いたしました際には、その応援を要請したものの指揮下にあつて働くという法律なつておりますから、これはさようで行けると思つております。あとの点は事実上の連絡で十分やつて行けるのではないか、かよう考えております。
  28. 篠田弘作

    篠田委員長 またかかる事態が発生しました際に、検察庁、海上保安庁電波監理総局、あるいは運輸、通信の諸機関とどういう関係を持ちますか。
  29. 齋藤昇

    齋藤証人 ただいまは法制上は何もさよう関係を規定したものがございません。実際問題といたしまして、日常におきましても絶えず必要な部局同士連絡をとり合つておりますが、実際の場合におきましてもまずまず普通の連絡で行けるのではなかろうかと考えております。しかしさような際に臨時にこれを総括して指示するよう部局ができることが望ましいと考えております。
  30. 篠田弘作

    篠田委員長 委員の諸君からどなたか御質問ありませんか。
  31. 藤田義光

    藤田委員 この機関に私は主として北海道方一面の治安問題に関して二、三お尋ねしたいと思います。     〔委員長退席佐々木(秀)委員長代理着席〕  まず第一点は北海道海岸警備状況、大体どの程度の警察官が長い北海道海岸線配置されているか。
  32. 齋藤昇

    齋藤証人 北海道海岸警備でありますが、警察といたしましては、これらの警備一般住民方々とよく連絡をとりながら、こういつた仕事に従事するという建前をとらざるを得ないと考えます。従いまして警察署あるいは駐在所等の配置状況が問題になると考えるのでありますが、北海道海岸は非常に長いにもかかわらず、これらの配置が非常に疎であります。私は正確な数字記憶をいたしておりませんが、十里くらいの間駐在所一つもないというところが相当あるのであります。従つて住民の方がおられても、警察連絡してもらうというのに時間もかかり、また事実上不可能であるというよう事態があるのであります。われわれといたしましては先ほども申しました通り、もし警察法改正が通過をいたしますならば、百余り——当初はもつと持とうと考えておりましたが、減りましたので、はつきりした数字は申し上げられませんが、百ないし二百ぐらいは駐在所を増設する必要があると考えております。
  33. 藤田義光

    藤田委員 東西南北方面に海を控えておりますが、どの方面が一番手簿になつておりますか。今回の警察法改正で、道一本の公安委員会が十四地区に分散されまして、こういう法律の改廃によつてかえつて治安の一元化が阻害されはしないかという懸念がございますが、この点に関しましても齋藤さんのお気持をお伺いしておきたい。
  34. 齋藤昇

    齋藤証人 北海道海岸で注意をいたさなければなりませんのは、根室中心といたしました南北、それから稚内を中心としました両側というところであります。今度の警察法改正北海道公安委員会は十四以内のものを置くということになつておりますが、これは御承知よう北海道五つ方面隊を設けております。その五つ方面隊に即応するように置きたいと考えております。一般住民との協力という関係からいたしましても、この各方面隊ごと公安委員会が置かれることが、かえつて警察住民との連絡関係がよくなり、いい結果を来すと考えております。
  35. 藤田義光

    藤田委員 現存の五つ方面隊に即応した委員会の態勢を確立して、住民との連絡を密にするというお気持はわかりますが、この五つ方面隊内におきまして処理できないような、海上からの集団的不正入国がありました場合、非常に連絡が遅れ、いろいろ支障を来すというおそれがあるよう考えられますが、この点に関しましてはただちに横の連絡をするような政令その他規則等による御準備がありますかどうか、この点をお伺いしたい。
  36. 齋藤昇

    齋藤証人 問題は公安委員会を各方面隊に設けるかどうかというのではなく、むしろ北海道方面隊制度を置くのがいいか悪いかという点にかかると考えるのであります。北海道は御承知ように以前は一つ警察でありましたが、先ほどもお話がありましたように、人口に比して非常に広漠たる地域を持つておりまするので、相当警察の多くの中心を持つておく必要が現実にあるのであります。さよう趣旨から五つ方面隊を置きまして、大体府県本部と同様の組織人的配置、その他の装備等配置をいたしたいと考えておるのであります。まだ十分その域に達しませんのは残念でありますけれども、逐次さよう方向に向つておるのであります。このことはあの広い地域事件が起りました際に、一々札幌から出かけるというよりは、その各方面中枢部から出かける方が迅速でありまするので、その方が利便が多いと考えております。北海道全体として統一しなければなりません事柄は、すべて管区本部で統轄いたしております。これは通信その他を利用いたしておりますが、その意味におきましては北海道一つ警察であるがごとくに現実は動きをいたしておりまするから、私は御心配はないと考えております。
  37. 藤田義光

    藤田委員 海上よりの不正入国者は、当然常識として特殊な訓練あるいは特殊な教育を受けて、不正入国に対して巧妙な手段を講ずることが予想されるところでございますが、これに対する沿岸駐在所巡査は、これを圧倒するだけの訓練常識を持つていることが必要でございます。この意味からしまして、全国の主要なる沿岸、特に北海道沿岸駐在巡査につきましては、格別の訓練あるいは連絡方法教育等が喫緊の要務であるというふうにわれわれは考えます。この点に関しまして、国警長官は現在の予算のわく内で何か特別の措置を現在実施されておりますかあるいは将来何とか考えたいというお気持がありますかどうか、この際お伺いしておきたいと思います。ひどいところでは駐在巡査が三十里に一人というようなうわさも聞いておりますが、こういう隔たつた距離を置いて一人だけの駐在巡査、しかもその巡査一般巡査と同様の訓練しか受けていないということに対する不安が相当深刻であるようでございますので、この際お伺いしておきたいと存じます。
  38. 齋藤昇

    齋藤証人 ただいまのお尋ねの次第でありまするが、武装して集団的に上陸して来るという場合には、おそらく予備隊任務になる場合が多いと考えます。われわれといたしましては、むしろ散発的に特殊の意図を持つて、しかも武装はせずに、あるいは武器は持つているかもしれませんが、隠してひそかに入つて来る者を発見し、これに対して措置を講ずるのがわれわれに与えられた一番大きな任務であると考えておりますが、そういう見地からいたしまして、先ほども申しましたよう駐在所の数もふやしますし、またこれに配置いたしまする警察官には、特にさよう意味教育、頭の働きが十分であるよう教育をして行くことが必要だと考えております。集団武装者の上陸に対しましては、ただいま警察として現在持つておりまする装備以外の点は考えておりません。これは予備隊にお願いをしなければならぬと思つております。
  39. 藤田義光

    藤田委員 従来日本の治安関係者は非常に種々雑多でございまして、予備隊国警自治警を加えまして二十万のほかに、約九万五千のいわゆる警察権を持つた役人がございます。これがために非常に取締りの紛淆を来しておる。従つて犯罪検挙能率にも重大な支障を与えておることは常識でございます。この混乱した中に最近出入国管理庁ができまして、この混乱に拍車を加える結果になつております。海上保安庁出入国管理庁と、それから海岸にたどりついてから先の国家警察あるいは自治警察、この連絡と申しますか、何か問題があつた場合の取継ぎの実際はどういうふうに行われておりますか。出入国管理庁はすみやかに廃止して、国家地方警察あるいは海上保安庁に包含した方が最も治安の現状に即した措置であるというふうにわれわれは考えておりますが、この点に関しまして国警長官の御意向を拜聴しておきたいと思います。
  40. 齋藤昇

    齋藤証人 警察官密入国者を発見いたしました際には、これを逮捕いたしまして、すみやかに出入国管理庁警備官に引渡すことに相なつておるのであります。しかしまだ出入国管理庁はそこまで十分整備されておりませんので、ただいまはむしろこちらの手で処理する場合が多いというよう状況でございます。出入国管理庁が設けられましたのは、成規手續をもつて出入りする出入国者と、その成規手續によらない者と、これを一つのところで行うというのが設けられた趣旨だと考えております。まだ出入国管理庁出発早々でありまするから、この際にこの成果いかんを判断いたしますることは、まだ早きに失するかと考えております。もちろんすべての機関一つでありますることが能率の上からよろしいには違いはないのであります。しかしまた別にわかれて設けられるについては、それ相応の理由があると考えまするので、これらの理由能率主義をどう調節するかの問題であると考えます。われわれといたしましては一日も早く出入国管理庁が十分な能率を上げられまするようになられますとともに、これらと十分の連絡をして参りたい、かよう考えております。
  41. 藤田義光

    藤田委員 先ほど篠田委員長質問に対しまして、国家警察も将来船舶を用意して沿岸取締りに万全を期したいという意味の御答弁がございましたが、そうなりますと、現在海上保安庁が行つておりますいわゆるコースト・ガードと重複する危険がありまして、さなきだに混乱しております取締り官庁の権限の限界というものがさらに複雑になるというふうな気持がいたしますが、この点に関しましてはどういうふうな調整をやられる所存でありますかお伺いしたいと思います。  最後に、いわゆる警察電話所管官庁がかわつております。ところが北海道のごとく警察官の手薄なところにおきましては、通信連絡が生命でございます。従いましてこの警察電話というものは、どうしても国家警察が持つておりまして、全道一斉に即刻手配ができるように強力な通信綱を確立することが焦眉の急務ではないかと思います。電話所管官庁の変更に関しまして特例を設けても、治安の完璧を期すべきであると思いますが、この点に関しましては現在の所管官庁で十分でありますかどうか。この点を最後にお伺いしておきたいと思います。
  42. 齋藤昇

    齋藤証人 国家地方警察におきましても船を持ちたいということを申し上げましたが、船舶といいますと大げさでありますが、われわれといたしましてはそう遠くへ出かけてそうして大きな船を追つかけるというよう考えはありませんし、またさようなことはわれわれの警察ですべきではないと考えております。従いまして小さな何といいますか、陸上をわれわれが自動車あるいはその他の交通機関を用いますと同じよう意味におきまして、海上における交通機関海上もわれわれが歩けるというようにいたしたい。職務範囲海上における普通の犯罪、あるいは小さな舟で方々にわかれて上陸するような、そういう密入門者取締りというようなことをいたすべきだと考えております。大きな密貿易船あるいは不法に侵入して来る大きな船、こういうようなものは、海上保安庁でやるというふうにいたすべきではないかと考えております。
  43. 藤田義光

    藤田委員 電話は。
  44. 齋藤昇

    齋藤証人 警察電話電通省に移管されたことをお述べになつたんだと考えますが、移管後の成績を見ますると、警察電話補修改善というものにつきましては、やはりその專門の、しかも大きな組織と資材を持つておられるところでやられるわけでありまするから、以前よりも非常によくなつておることは事実であります。臨時に急に必要とする場合、あるいは風水害等によつて破損をした場合の応急修理という場合には、自分の方でやつた方が早いと思える場合もあることは事実でありますが、しかしこれらの点はできるだけ電通省連絡をとりまして、われわれの方でもやれるという道を順次開きつつありまするので、それによつて解決をいたすと考えております。秘密漏洩の点につきましては、これは向うに移管をいたしたから多くなつたのではないか。これも絶対否定はできませんけれども、しかし自分の方で以前のように管理をいたしましても、有線はどこからでも聞かれるわけでありますから、秘密漏洩防止のためには別途の方法を講じなければならぬわけで、有線ではこれは方法がありません。また秘匿装置その他の装置を用いますならば、これは電通省に移管されておりましても、秘匿の方法があるのであります。秘密の方式、秘匿の方法ということは、これは所管関係と離れて考えければならぬ問題でありますので、さよう方向に進みたい、その方がよろしい、かように私は考えております。
  45. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 密入国の問題でありますが、現在の段階においては御承知の通り、密入国というとほとんど朝鮮人が大部分でございます。その朝鮮人の入る場所、これは私は対島に昨年参つたのでありますが、対島密入国者のたしか三分の一、これは海上保安庁の係官が言つたことでありまして、違つているかもしれませんが、その点は長官が御存じでしようからお聞かせ願いたいと思いますが、非常にたくさんの密入国者があそこを足場にし入つている。そのことは去年の一月に本多国務大臣が経理関係それから開発関係の係官を同行して視察に行つたとき、私も実は同行したのであります。佐須奈という小さな警察署が対馬の北端にございますが、その一つ警察にわれわれが行つたその日だけでたしか八十四名つかまつたというように、非常にたくさんの人が入つている。それに対してあなたの方からもあなたの部下の山口という人が同行されたのでありますが、それを目撃された。そこでわれわれとしましても、これはよほどあの方面警備を強化しなければならぬ。御承知ように地理的関係におきましても、博多から対馬の南端までは七時間かかるのに、朝鮮から対島の北端までは四時間しかかからない。こういう地理的関係にありますので、よほどその整備機関を充実しなければならぬということをわれわれは痛感したのでありますが、その後何か強化の方法がとられたかどうか、お聞きしたい。
  46. 齋藤昇

    齋藤証人 対島密入国者の入国地点といたしましては、今お話になりましたように最も重要視すべき地点でありまして、この数字が三分の一というようなことは私はいかがかと思つておりますが、それほどもなかろうかと思つておりますが、はつきりした数字は今記憶しておりません。いずれにいたしましても今お述べの通り、非常に重要な地域であることは申すまでもありません。長崎県の国家地方警察警察官の数はそう多くありませんけれども、できるだけそちらの方にさきたいというので、現在あそこは以前の定員の二倍、百名の配置をいたしております。
  47. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 それから船舶の問題でありますが、これは委員長及び藤田委員から質問されましてそれに対して齋藤証人交通機関としての船舶云々と申されたでありますが、実はやはりこれも対島の問題であります。私はおそらくあの辺のことを頭に入れてそういうお答えをされたのではないかと思いますが、対馬には自動車の通るような縦貫道路はもちろん、人の通う縦貫道路さえないのであります。そこである地点は馬の背を借らなければならぬ、こういうよう状況のところにたくさんの朝鮮人が入り込み、しかも山間あるいは人里離れた部落等に——大体北鮮系が多いそうでありますが、二千名くらい潜入している。そうとしますと、一旦これが妙な状況になりますると、それらが一斉に蜂起するおそれが多分にある。こういう状況下にあつて、しかも人が通ることのできる道路がない、そういう状況ではとうてい治安の確保をなすことはできないと思うのでありまして、齋藤証人の言われる交通機関としての船、これらをも至急に持つてもらいたいと思うのです。それのみならず壱岐あるいは五島列島それから平戸を中心とする島々、この辺は数十の島々があるのでありまして、そのうちには町制をしいた島も数個ある。ちよつと荒れますと、まつたく交通が途絶してしまう。こういうように朝鮮に非常に近いところにそういうよう状況がございます。これは日本ではほとんど例のない特異な状況でございますので、ひとり対島だけでなくて、それらの島々との間を連絡する交通機関としての船舶等の整備を至急にやつてもらいたいと思うのでありますが、その点をひとつ。
  48. 齋藤昇

    齋藤証人 お述べの通りの実情でございます。現在は船を必要といたします際は、海上保安庁の船を優先的にまわしてもらつて乗せてもらうという約束をいたしておりますが、しかし海上保安庁の船も、そう随時随所にわれわれ利用できるわけではないのでありますので、現実の問題といたしましては、漁船を借り上げるという契約をいたしております。しかしながら漁船につきましても、あるいは経費の問題、これ機関士の問題、いろいろな点がありまして、なかなかうまく行かない点が多いのであります、先ほど申しますように、以前のように船を持つという原則を、できるだけ早い機会に確立いたしまして、御趣旨に沿うようにいたすべきだと私は考えております。努力いたしたいと思います。
  49. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 長官に二、三お尋ねいたしたいと思いますが、先ほど委員長質問のときに、国家地方警察船舶の所有を認められておる、国内的にはとおつしやられましたが、何か意味があるのですか。
  50. 齋藤昇

    齋藤証人 国内的には、海上保安庁との話合いができ、予算がとれたらということでございます。これができます際に——海上保安庁の出発、国家地方警察の出発というのも連合国の管理下にあるわけでありますから、その御方針に基いて打立てられた方策だと考えております。
  51. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 先ほど密入国の問題で持ち切つておりまするけれども、密出国の方はどこが一番多いのでございますか。
  52. 齋藤昇

    齋藤証人 失礼でございますが、どこが、そのあとがちよつと……。
  53. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 つまり北の方でございます。先ほど来、前の委員会においてもソ連領に脱出したというようなことが問題となりましたが、台湾行き——台湾のいろいろな計画に日本人が参画するという話が新聞紙等に伝えられておりますが、そういうことが、いわゆる国警本部のアンテナにひつかかつて、台湾行き等の場合に集団出国というようなことがあるかどうか。
  54. 齋藤昇

    齋藤証人 ただいま裁判所に係属中の事件だと思いますが、三浦半島、静岡それから和歌山等から、これは連絡をとつた一つの計画でございますが、台湾に渡航を試みんとした若干の集団がありますけれども、今たしか和歌山検察庁、和歌山裁判所で係属中だと思います。
  55. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 その背後関係におきまして相当大がかりな何か計画等が感知されるものがございましようか。
  56. 齋藤昇

    齋藤証人 まだ大きな確たる背後関係は明瞭になつておらないのでございます。
  57. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それから北海道国後島のような場合におきまして、ああいうふうな、つまり一衣帶水の接讓地帶におきましては、長官承知ように、外国におきましては、これは陸路の場合でございますけれども、よく家事使用人至るまでおのおのパスポートを持たせて、その出入国については平素から非常な注意を怠らぬというような処置が、諸外国等におきましては講じられておることは御承知の通りであります。ああいう場合におきまして、これは單に外国人登録あるいは住民一般につきましての登録——ああいう地帶におきましてはそういうふうなパスポートに類するものを持たすとか、あるいはその船舶——船舶と申しましても北海道の場合におきましては五、六トン未満の船で渡つておるよう状況でございまして、その乗艦等にあたりましても、まことに気軽に乗せておる。こういうふうな状況から考えますると、身分認明書、あるいはまた船の船頭、伝馬船の船頭——これは船長といつておりますけれども、実際船頭さんみたいなものに毛の生えたくらいのものであろうと思いますが、こういう連中の船舶の乗艦等、船を使用する場合において、相当監視の目を光らせなければ、外国との連絡というものがいかなる手段によつて講じられておるかということは、これは予断を許さないものがあるだろうと思いますが、こういう場合におきまして、いわゆるパスポート類似のものを持たせるとか、あるいは現在の取締り規定の欠陷あるいはその船舶の運営に当る者、船の実際運航に従事する者等につきまして、もう少し身分的な監視の目を光らすという必要がないのでございましようか。
  58. 齋藤昇

    齋藤証人 外国におけるパスポートのような例というお話でございましたが、現在ではあそこの地域において往来は許されておりませんので、従つてパスポートという問題は現在起り得ないと考えております。むしろ逆に、あそこの住民であるという証明書、外国から入つて来たというのではなくて、ここに正規にいる、従来から住んでおる住民だという証明書を、みなに渡しておく必要があるかどうかという問題になるかと思いますが、これは非常に大きな問題でありますので、現在といたしましては、われわれ考えてはおりません。しかしながら港における漁船の乗組員、あるいは漁船が発着する場合の、言葉は適当でないかと思いますが、監視というようなことについては、今後一層周密に監視の目を張らなければならぬと考えております。これは警察だけではございませんので、当該地方の住民の人たちの協力を得てやつて行くように指示をいたしておる次第でございます。
  59. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 今長官が言われたように、パスポートはなるほど両国間の交通を前提としたものでございまして、北海道等におきましては交通を禁止されておる、まことに御説ごもつともでございますが、私が申し上げるのは、今長官がお答えになつよう意味でございまして、身分証明書あるいはそれに類似のものの携帶が必要で、それがなければ乗船できないようにしなければ、あれはごく簡單に向うに渡られるようなその土地の状況であります。そういうふうな方法を講じなければ、つまり国外、ソ連との連絡がきわめて手取り早くやれるのだ。今みたいな取締り方法では、その禁止というものは実効をあげておらぬということは、過般来の本委員会における証言によつて暴露されておるのでありますから、その点につきまして長官の御意見を承つたようなわけでございます。
  60. 齋藤昇

    齋藤証人 ただいまの点は、お述べになりました理由からはまことに適切な施策だと考えます。しかしながらこれの及ぼす影響は非常に広汎でありますので、私といたしましては、ここでどうということをお答えいたしかねる次第であります。新聞で見ますると、根室町であつたと思いまするが、町の條例で何かそういつた警備的な面を強化する意味の條例をつくつたように新聞で拝見いたしましたので、ただいま照会中でありまするが、現地の実情に応じて、さよう措置かどういう措置であるかわかりませんが、適切な措置がとられたのではないかと考えておりますので、これらも参考にいたしまして、今後研究をいたしたいと存じます。
  61. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 これは法律上の問題でございまするが、御承知のごとく、現在においては共通法が生きておる取扱いになつております。従いましていわゆる密出入国の場合におきましては、あれは二重国籍の扱いだろうと思いまするが、この点について御不便はお感じになりませんか。
  62. 齋藤昇

    齋藤証人 ただいま二重国籍の問題で不便という点は感じておりません。
  63. 島田末信

    ○島田委員 先ほど藤田委員質問に関連しておるのでありますが、長官は不正出入国に対しては管理庁が発足以来まだ日なお浅いから、今少しく整備されれば十分機能を発揮できるだろうというようなお答えでありましたが、私はむしろ、こういう密輸とか不正出入国の検挙取締り等に関して、おのおのの治安機関というものは、おのおのの特殊性もありまた任務もありますけれども、その検挙取締りのいわゆる根幹的な存在は、あくまでやはり国家地方警察ような総括的な治安機関というものが当らなければ、とうていその完璧を期することはできないと思います。もとより、そのいろいろな治安機関は独立しておるので、おのおの使命もあり、また格式においても、お互いに異なるとか、上下があるとかいうことはないのでありますが、ただその任務を果す上において、たとえば管理庁のごときものをいかに整備されてみたところで、検挙とか取締りにおいて完璧を期することはもちろんできないと思います。その場合、国家地方警察がその補助機関ような役割を果すという程度では、とうてい満足な活動はできないと思います。ここで、おのおの治安機関が自分の使命なり任務なりというものを十分自覚し合い、格式に上下などを持つべきではもちろんありませんが、要は、検挙とか取締りの根幹はあくまで国家地方警察にあるということで、他の治安機関犯罪を発見するとかあるいは検挙するとかいうことについては、国警との連絡上、もし急ぐ場合があれば独立の立場で大いにやつてもいいと思いますが、事後の行動については、国家地方警察にすみやかに権限を委讓するというところまで、緊密な連絡のもとに国家地方警察というものが、すべて根幹的な活動をやるというところまでお互いに認識し、また連絡し合うということに一つ考え方を持つて行かなければ、とうてい満足な活動はできないということを私は深く感ずるのでありますが、長官の御見解をひとつ承りたいと思います。     〔佐々木(秀)委員長代理退席、丙藤(隆)委員長代理着席
  64. 齋藤昇

    齋藤証人 お説の通り検挙とこれの事後の取扱いという点から申しますると、ただいまおつしやられました通り、一元的な機関が一番能率的であり、望ましいと私は考えております。ただ密入国者ということがはつきりいたしました場合に、今後どういう手續でどういうようにして送還するとか、いろいろなそういう行政上の面もありまするから、さような点で出入国管理庁というものができ、そういう事柄をそこで扱うということに相なつたのかと考えておりまするが、能率主義から考えまするならば、お説とまつたく所見を同一にいたすのであります。
  65. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほど委員質問に対するお答えのうちで、密出国の問題が大分あつたわけでありますが、三浦、静岡、和歌山などにおいて、一連の事件として密出国事件があり、それが今裁判になつている、これはどういう内容の事件でありますか、ちよつと伺いたいと思います。
  66. 齋藤昇

    齋藤証人 船を雇い入れまして若干名の人間が台湾に渡航せんとした事件であつたと私は記憶をいたしております。もう半年よりも前の事件であつた、さよう事件でございます。
  67. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それはいわゆる第八丸良丸事件とかいうので、元陸軍中将の根本博、これらの旧軍人が台湾への義勇軍を募集しまして、そうしてこれを送り込もうという計画の一端が露見したものだというあの事件と違いますか。
  68. 齋藤昇

    齋藤証人 さような風説の伝わつた事件であります、しかしただいまおあげになりましたような背後関係があるかどうか、私は明らかに聞いて、おりません。
  69. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そのほかに鹿児島あるいは南九州あたりから台湾への義勇軍を送るための密出国というものが雑誌などでちよいちよい散見するのでありますが、さような事例についてあなたの方にわかつておるものがありましたら伺いたいと思います。
  70. 齋藤昇

    齋藤証人 ただいまおあげになりました雑誌あるいは新聞等で散見いたしまするものは、私の承知いたしております限りにおきましては事実でない、かよう承知いたしております。
  71. 梨木作次郎

    ○梨木委員 しかしこの元陸軍中将であつた根本博氏外数名の者が一日台湾へ渡航いたしまして、また帰つて来て、さらに募兵をしたという——一度台湾へ行つたということはわれわれ法務委員会で、私の記憶では法務総裁もそのように答えておつたと思うのですが、この点あなたの方は御記憶ありませんでしようか。
  72. 齋藤昇

    齋藤証人 私の方はさような点についてお述べをしたよう記憶はございません。
  73. 梨木作次郎

    ○梨木委員 もう一点お伺いいたしますが、外国人登録証の問題で、つまりこれは携帶しなければならぬことになつておりますが、この外国人登録証をたまたま忘れて来るというような場合、これは決して悪意でなく、たまたま忘れて来たという場合に、それを根拠に非常に強く——つまりたまたま外国人登録証を持つておらなかつたということで逮捕する、検挙するというようなこと、そのことのために非常な摩擦、不必要な混乱を起しておるような事例、たとえば神戸騒擾事件などで役所の方へ陳情に行つた。そのときにたまたま着物を着かえて行つたために登録証を持参しなかつた。ところが登録証を持つておらないというので一斉検挙をされたというようなことで、非常に混乱を起したような事例を私は知つておるのでありますが、この外国人登録証を持つておるかおらないかということは、やはり取締り当局におきまして、明らかにこれは忘れて来ておるものだ、事実今申した事件の場合に、家にあるから、すぐ持つて来るからといつて子供をつかわしておるような事例があるのでありますが、そういう忘れて来たので今取寄せるというような場合は、逮捕するようなことをやらない方が私は至当であると思うし、それがまた法の精神であろうと思うのでありますが、運用の面においてのあなたのお考えを伺いたいと思います。
  74. 齋藤昇

    齋藤証人 外国人登録証明書を常時持参するということは非常に重要な法の命じておりまする要件でありますので、登録証明書を持つておられない場合には一応、あるいは不正入国者ではないか、あるいは登録令違反でないかということを疑われましても、これはやむを得ないのじやないかと考えております。ことにただいまお述べになりましたような、多勢押しかけて陳情するというような場合には、お互いに気が立つておりますから、さようなこともあるであろうと考えます。明らかに忘れて来たということがそこで立証されません限りは、ある程度疑われましても、これはやむを得ないのじやないかと私は考えます。しかし一時間、二時間の間の逮捕というのは、どういう意味合いかわかりませんが、家に置いて来たんだといつて、さつと逃げられては困るという場合は、逃げて行かれぬだけの措置はやはりしなければならぬかと思つております
  75. 梨木作次郎

    ○梨木委員 こういうのであります。つまり神戸騒擾事件の場合、これは外にも始終そういう事例にぶつかるのでありますが、神戸騒擾事件の場合、われわれが聞いておるところによれば、区役所に陳情に行つた。それで帰りがけに一々登録証を持つておるかどうかということを調べられた。ちようどその日は役所に出て行くので、着かえて行つたらしいのです。朝鮮服でそれにはポケットがないらしい。気を配れば常識的に理解できるような状態にあつたらしいのですが、みな登録証を持つていないのだからといつて逮捕して、自動車に積み上げ始めたわけです。そこでそこにおつた子供たちが、登録証なら家にあるかといつて、子供がとりに行つたわけです。待つておれば持つて来るわけです。そういうときに即坐に逮捕してどんどん警察署に持つて行くというようなことは、行き過ぎじやないかと考えるのでありますが、その辺の考慮は十分に常識的にとられるべきではないかとわれわれは考えております。その点をひとつ伺つておきます。
  76. 齋藤昇

    齋藤証人 なかなか微妙な問題でございまして、ただいまお述べになりました通りの状況で、そのほかに何ものも加わつていないという状況でありますれば、あるいは十分、二十分間待つておれなかつたかという問題もあるだろうと思います。当時の警察官の判断、周団の状況というよう事柄から、何か必要上、さよう逮捕のいたし方をしたのじやないかと思います。
  77. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 他に御発言はございませんか。——ほかに御発言がなければ、齋藤証人に対する尋問はこれで終ります。  証人には御多用中御苦労様でした。     —————————————
  78. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 引續き吉河光貞証人より証言を求めることにいたします。不正入出国に関する件について証言を求めますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相成なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読を願います。     〔証人吉河光貞君朗読〕    宣誓書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  79. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  80. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を超えないこと また発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、これから証言を求める場合はおかけになつていてけつこうですが、お答えの際は御起立を願いますか。吉河証人は現在法務府の特別審査局長でありますか。
  81. 吉河光貞

    ○吉河証人 そうであります。
  82. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 特別審査局の監視または観察の必要のある個人または団体の所属員中、密出国を企て、または密入国を行う者があることが想像されておりますが、その事実はどうですか。
  83. 吉河光貞

    ○吉河証人 私どもにおきましては、所管の法令であります公職追放令及び団体等規正令によりまして、個人または団体の観察をいたしておるのであります。この所管事務の運営に際しまして、従来私どもが情報または調査の対象として取扱いました密出入国の事件につきましては、以下申し上げるようなものがあるわけであります。まず元海軍中尉三上卓が関与した海烈号事件、次に元陸軍中将根本博、及び陸軍大佐吉川源三等数名が関与した台湾渡航事件、またいわゆる第八丸良丸事件として旧陸海軍将校が数名関与した事件、また第三旭丸事件、北日本丸事件、ごく最近におきましては、本年二月ベルリンで開催された世界平和協議会第一回総会に川村一雄なる人物が出席しております事件、また本年四月下旬、北京で開催された国際学生連盟執行委員会にトヤマ・ススムなる人物が出席しております事件、こういうよう運用といたしまして、ただいま申し上げたよう事件に関する情報を入手した場合におきましては、それぞれ刑事事件の容疑を持つものにつきましては、関係治安機関に通報し、またみずからこれを調査する必要のあるものにつきましては、これを調査し、最後措置をとつておる次第であります。
  84. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 時別審査局は政令第三二五号の違反、すなわち占領軍の占領目的に違反する文書が密輸入された上、頒布を行つた場合、その密輸入者に対してどういう措置をとつておりますか。
  85. 吉河光貞

    ○吉河証人 政令三二五号に違反する疑いのある文書、こういうようなものが海外から日本国内に流入されておるのは事実であります。これらの多くの文書は、特定の個人が国外から携行搬入するのではなくて、むしろ郵便によつて国内に送られておるような状態であります。わが国といたしましては、検閲制度がございません。全般的に海外から輸入されるこれらの図書につきまして、その内容を検討する態勢になつていないのであります。これらの文書を入手したものが、これを頒布した場合におきましては、もちろん政令三二五号違反の行為となりまするので、私どもといたしましては、団体等規正令の運用上、こういう事実あるいは情報を認知または把握した場合には、それぞれ関係治安機関にこれを通報し、または告発する措置をとつております。
  86. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 おもにそういう文書は外国のどういう方面から参りますか。
  87. 吉河光貞

    ○吉河証人 大体私どもが知り得た範囲におきましては、中共関係から香港経由で入つて来るものが、非常に多いと考えております。先般日本中国友好協会関係事件が、大阪の軍事裁判所において裁判処断されました。私も証人としてそこに出頭を命ぜられた事実があります。
  88. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 特審局はその所管事項を実施するために、警察当局その他に協力を求める場合が多いと考えますが両者の協力提携は満足すべき状態に行つておるのでしようか。
  89. 吉河光貞

    ○吉河証人 私どもといたしましては、公職追放令、団体等規正令の運用につきまして、関係治安機関、特に国家地方警察並びに重要な自警当局と、不断に常時連絡をしております。さらに私どもが行つております各種執行上の警備につきまして、応援要請をいたしております。また私どもがその所在を調査しておりまする特定の個人の捜査につきましても、相協力しております。これらの協力は、昨年来中央におきまして特審並びに国家地方警察本部、警視庁、それから検察庁間に緊密な連絡が設定せられました。續いて全国各地方におきましても、特審各支局を中心といたしまして、緊密な連絡をとるように進めております。遺憾ながら地方駐在官の数がきわめて少数であります。しかしこの駐在官を通じまして、所在の国警及び自警当局と緊密に連絡しおります。だんだんこの連絡は整備強化されつある段階でございます。
  90. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 満足すべきではないけれども、だんだん整備強化されて行くという段階である、こういうのですね。
  91. 吉河光貞

    ○吉河証人 はあ。
  92. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 それから特審局として、北海道芦別油谷炭鉱の工員である江川文彌という者が、北海道新聞または西日本新聞等に発表した記事について、同人より事情を聽取したことがありますか。
  93. 吉河光貞

    ○吉河証人 あります。今年の三月十日過ぎだと記憶しておりますが、特別審査局の北海道支局から本局に通報がありました。その通報は三月九日付でありましたか、北海道新聞に江川交彌の談話が発表されておりまして、その談話のてんまつにつきまして、本局に通報がありました。本局といたしましては、ただちに本局員を現地に派遣いたしまして、この談話がはたして信憑すべき筋のものであるかどうかにつきまして、裏づけの調査をいたしました。三月の下旬になりまして、その調査員が本局に帰りまして報告をいたしました。私どもといたしましては、そういう供述がありますと、供述者本人の従来の経歴、それからこういう供述をなすに至つた動機、またその供述のごく大ざつぱな外形的事実といふものについて、裏づけ調査をいたします。その調査の調査員は、現地に参りまして江川文彌君を取調べまして、事情をいろいろと聽取し、なおそれのみならず、いろいろ関係人にも当り、若干の資料なども收集して本局に帰りました。かようなわけで、特審局といたしましては、江川文彌君を取調べた事実があります。
  94. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 特審局から調査員を北海道のどこへ派遣したのですか。
  95. 吉河光貞

    ○吉河証人 北海道の札幌、芦別、小樽その他に派遣しております。
  96. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 その派遣された調査員は何という人ですか。
  97. 吉河光貞

    ○吉河証人 現在名前を記憶しておりません。私は局長といたしまして、こういう調査を主宰する調査部長からの報告を聞き、全般的な指揮判断をいたしておりまして、詳細調査の主任者として統轄いたしておりません。具体的な調査員の名前を記憶しておりません。後日調べればすぐわかります。約二、三週間現地におりまして調査して帰つております。
  98. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 直接に調査した人でなければわからぬことでありますが、江川文彌君は何か健康でも害しておつたというようなことは聞きませんでしたか。
  99. 吉河光貞

    ○吉河証人 そういう報告は聞いておりません。それからまた、調査員の報告事項中に、そういうことを疑うに足るような報告はありませんでした。
  100. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 もちろん精神状態もそうですね。
  101. 吉河光貞

    ○吉河証人 そうです。
  102. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 その江川文彌なる人を、先般証人として当委員会は喚問したのですが、その江川証人の言によれば、江川は共産等の椎野悦郎の指令によつて密輸を企てたことがあつたというが、あなたの方ではその事実を調査したことがありますか。
  103. 吉河光貞

    ○吉河証人 私どもといたしましては、ただいま申し上げたように、北海道から派遣した調査員が帰つて来まして、江川の陳術は、われわれが調査を開始する端緒として相当確度あり、そういう認定をいたしました。爾来、本局並びに関係支局を動員いたしまして、全国的に全般的な調査を進めておるようなわけであります。しかしながらまだ調査の段階でございまして、結論は出ておりません。しかし江川がただいま委員長質問ようなことを供述したことは事実であります。しかしその供述内容の真偽につきましては、全体の調査の一環として、これはやはり調査しております。まだ結論に到達しておりません。現在の調査段階は、事案の捜査全般が消極的な結論に傾くような段階ではございません。逐次進行はしております。
  104. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 そうすると、特に椎野悦郎の指令によつて密輸を企てたということについては、特別には調べてはおらぬが、その密輸の一環として調べておる、こういうわけですね。
  105. 吉河光貞

    ○吉河証人 全般の調査の一環として調査中であります。
  106. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 それからあなたは、日本共産党が海上区を持つておることをお知りですか。
  107. 吉河光貞

    ○吉河証人 私どもの調査の内容の詳細は申し上げられませんが、日本共産党の所属組織としていわゆる海上区なる組織がはたして存在しておるかどうか、かつて存在したかどうか、もし存在するとすれば、その組織の実体的な内容はいかなるものか、またその具体的な活動はいかなる活動であるかということにつきまして調査しております。団体等規正令によりますと、ただいま申し上げました通り、政治団体はすべて届出をしなければならぬことになつておりますが、これらの組織として届出たものはございません。もし実在するとすれば、それは未届団体と認めざるを得ない。また日本共産党員の方々が、こういう組織に所属しておるというような届出を受けた事実もありません。従つてもしそういうふうな組織がありとすれば、これは未届の党員の方々によつて行われておるのではないかと想像されるのであります。
  108. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 先般この江川証人は、海上区というものがあるということをここではつきりと明言しておるのであります。この証人証言によれば、われわれもあるということを想像し得る。また他の者も、海員の中で昨日来た者は、海上区があるということをりつぱに証言しておるのでありますから、あなたの方でもさようなものがあるという現実の上に立つて調査をお進め願いたいと思います。
  109. 吉河光貞

    ○吉河証人 承知いたしました。
  110. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 他に御質疑はありませんか。
  111. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 江川を調べられたというならば、その江川証言の中で重要なことを言つておりましたから、その点お調べになつたかどうか。第一番に聞きたいことは、大安丸という船の事務長をしておつた有馬敬なる者が樺太から秘密文書を携えて来て、共産党の北海道地区の西館とかに渡したということを言つておりますが、さような事実はお聞きになつたか。
  112. 吉河光貞

    ○吉河証人 ただいま御質問の案件につきましても、先ほど質問の密貿事件と同様に、全体の捜査の一環としてただいま調査中でございます。まだ結論は出ておりません。
  113. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それではそういう事実があるかないかはまだここで証言できない段階なのですね。
  114. 吉河光貞

    ○吉河証人 そうです。
  115. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで有馬なる者をお調べになつたと思いますが、調べられたとすれば、かりに身元についてわかつておるところだけをお聞きしたいと思います。
  116. 吉河光貞

    ○吉河証人 実はどういう証人をどういうように調べたか、詳しいことの報告をまだ聞いておりませんので、ここでちよつと記憶にありませんし、お答えできません。しかし当然取調ぶべき人物であることだけは、私はここで断言できます。
  117. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 共産党員であつたか、また商船管理委員会から去年の暮からことしにかけて馘首されておるが、その原因はどうであつたかわかりませんか。
  118. 吉河光貞

    ○吉河証人 御質問事項についても調査中であります。
  119. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 これは私の希望として、わかりましたら、さしつかえない時期に委員会へ報告を出していただきたいと思います。  その次は、椎野悦郎はお調べになつたかどうか、現在椎野は姿をくらましておるのか、それともそうでないのか、どうなんでしようか、
  120. 吉河光貞

    ○吉河証人 特審局におきましては、椎野氏をまだこの事件につきましては調べてはいないと思います。今後椎野氏を取調べる必要があるかどうかということは、今後の問題であろうと考えます。実は椎野氏とは、昨年の十二月私が共産党本部へ出かけましてお会いしてからはお会いしておりません。今どこにどうやつて住んでおられるか、確認しておりません。
  121. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いわゆる地下にもぐつておるといううわさでもお聞きになつておりませんか。
  122. 吉河光貞

    ○吉河証人 そういううわさは聞いておりません。
  123. 山口武秀

    ○山口(武)委員 吉河証人の一番初めの証言に、海烈号事件、台湾渡航事件、それから丸良丸事件といろいろあるわけですが、今年に入りましてから、大分の保安部で海上保安庁の巡視船が大分港の付近を巡視中、第二福生丸が密輸を行つておるところを発見した。それを調べてみましたところ、団長は元南支派遣軍の参謀部勤務の者であつた。そしてこの団長らは鎌倉市内に住んでおりまして約十名が一団となつておりまして、左翼の情報收集隊というのをしている。これはどういうことになりますか。おそらく政治活動的なものになつて来るのではないかと考えられますので、お聞きしておるわけなんです。それからさらにこの十名の一味という人たちが、右翼団体関係の資金かせぎのために密輸をやつておる、それから台湾の義勇軍の募兵計画大佐などが関係しておることが述べられているということを新聞でわれわれは見たのですが、このことは現在どういうふうになつておりますか。
  124. 吉河光貞

    ○吉河証人 御質問事項については、目下関係機関連絡して調査中であります。しかしただいま資料を持参いたしませんので、詳細な内容につきましてはちよつと御答弁できないのであります。
  125. 山口武秀

    ○山口(武)委員 詳細なことがわからないというならやむを得ませんが、ただいま言われました調査中ということの結論ですが、これは現在どのよう方向に進みつつあるか、調査の進行は消極的なものであるか、それとも積極的な発展を見ておるか、この点だけお伺いしておきたい。
  126. 吉河光貞

    ○吉河証人 その点につきましても、まだ詳細な進行状態を、こういうふうになつていると申し上げる段階になつてないと思います。ただいま御質問がありましたので、でき得る限り事情を調査して、機会がありましたら御報告したいと思います。
  127. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それではなおお伺いいたしますが、やはり密輸船で琴平丸というのが鹿児島県の保安部の手で逮捕されておる。これは本年の四月三日に、逮捕された人たちは函館の保安部に身柄を移されておる。ところがその調べの結果によりますと、この琴平丸の船長というのは元海軍中尉の友成俊作という者である。そしてその調べの結果の自供によると、やはり右翼団体の資金かせぎの密輸、それから台湾の義勇軍に関する募兵計画というものが同じように自供されておる。しかもさらに砲弾や薬莢というものも輸入しておるというようなことを聞いておるのでありますが、この件はいかがでしようか。
  128. 吉河光貞

    ○吉河証人 琴平丸事件につきましては、刑事事件として検挙され、関係機関において捜査されておる案件だと記憶しておりまして、関係機関連絡してその情報を收集し、あわせて背後関係を調査中であると考えております。しかし具体的にどういうふうなつておるか、資料を持ち合せませんので、ただいまここではお答えできません。
  129. 山口武秀

    ○山口(武)委員 砲弾や薬莢を元の軍人が輸入しておるということになりますると、少々穏かならないものがありますし、しかも一昨日以来、台湾の義勇軍の問題が何回か問題として出て、話題にも上つておる。そうしますとこの流れがかなり計画的に行われております。しかも元陸軍の幹部がこれに関係しておるというようなことから見ましても、相当背後関係を特審局の方でもお調べになつておると思うのですが、その背後関係の調査を進められて現在わかつておる範囲内のことをお聞きしたいと思います。
  130. 吉河光貞

    ○吉河証人 現在の段階におきましては、重大な背後関係はまだ発見されておりません。ただいま御質問の各種事件につきましては、検挙された被疑者たちが、いろいろな大義名分の理由のもとにこういう密航、密輸の事件をなしたりと供述しておるような報道がされておるのですが、それに照応するような背後関係はまだ把握されておりません。鋭意調査中であります。
  131. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この問題に関しまして、大分根本中将の問題が出ておるのでありますが、根本中将についての調査は、その後どのようなつておりますか。
  132. 吉河光貞

    ○吉河証人 根本中将につきましては、現在渡台しておる、台湾におるというような情報を得ております。
  133. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この台湾の募兵計画というものが——まずいずれにいたしましても、このようなことのもとにかなり密輸、密出国あるいは密入国が行われておるわけですが、このような軍人が関係しておる、あるいは右翼団体が関係しておる密出入国は件数としてどのくらい特審局の方でつかんでおられますか。
  134. 吉河光貞

    ○吉河証人 ただいま私から申し上げ、また御質問にもありました程度のものであります。非常に微力ではありますが、できるだけ調査は進めております。
  135. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それから先ほどの琴平丸の船長の元海軍中尉友成俊作、しかもこのおじいさんというのは廣岡宇一郎といいまして、田中内閣当時逓信政務次官をしておる。そして某政党の幹部にも相当深い関係をもつて見られておるというふうに思うのでありますが、この点どうでしようか。
  136. 吉河光貞

    ○吉河証人 ただいま御質問ような情報はまだ得ておりません。御注意がありましたので、その点も十分注意して調査することにいたします。
  137. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それから第八丸良丸事件でありますが、この事件につきまして静岡の地検でこの事件の全貌が発表されておる。ところがこの事件の真相というものは、実際は国際的な性質から一部は極秘に付されておる。国際的な関係から一部が極祕に付されるということになりますと、われわれといたしまして、あるいは一般の国民といたしましても、これは当然台湾の募兵問題にからんで、あるいは蒋介石政権との関係というような問題があるのだろう、あるいはまた、これが現在の占領軍の関係か何かによりまして、発表ができないことになつておるのではないかというような疑問が持たれるわけでありますが、この点について御説明が願えたらひとつお話いただきたいと思います。
  138. 吉河光貞

    ○吉河証人 ただいまの御質問ような事実はまだ聞いておりません。もしそれが事実であるとすれば、私の方でも調査したいと思います。
  139. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それから、昨年朝鮮の事変が起りまして、当然その前に、元右翼団体の人たち、あるいは元軍人の人たちが、台湾の問題で募兵計画をしておる、そこでともかくその動きが出ておるというようなことがありまして、朝鮮事変が起りましてから、こういう元軍人の人たちあるいは元右翼団体の人たちが、朝鮮事変に参加して、あるいはそれと何らか自分たちの計画に結びつけて、朝鮮へ密出国を行つておるのではないかというようなことも考えられるわけでありますが、この点はいかがでしようか。
  140. 吉河光貞

    ○吉河証人 御質質のような情報は今まで得ておりません。また国内の追放者である旧陸海軍軍人の動向につきましては、でき得る限りその動静を観察しておりますが、朝鮮へ渡航して従軍しようというような動きは、まだこれを把握しておりません。
  141. 山口武秀

    ○山口(武)委員 最近になりまして、特に憲法で禁止されておるはずの再軍備問題が議論になりましたり、あるいは再軍備を進めるというような風潮が強く出ておりましたり、そたから太平洋の防衛協定というようなものの計画が進められておるようなときにおきまして、当然元軍人というふうな人たちが相当動きを示しておるのではないかと考えられるわけであります。これが蒋介石政権と結びついて、何らかの動きを始めるのではないかというようなことも想像されますので、そういう質題にからんで最近特に積極的な動きが出ておるかないか、この点をお伺いしたい。
  142. 吉河光貞

    ○吉河証人 御質問ような点につきましては、私どもとしても非常に警戒しておりますが、現在いろいろ伝えられているほど、具体的な動きとしては大きな動きはないのでありまして、御質問ようなことにつきまして、顕著な動きはまだ把握しておりません。
  143. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それでは先ほど委員長質問と関連しての問質についてお伺いしたいのですが、ここで証言いたしました江川文彌君のことでありますが、この江川君は船員でありまして、長い期間船員生活をしていた者でありますが、船員はよく陸へ上ると遊ぶというようなことが、大体相当長い習慣になつているのではないかと思うのですが、そういう関係で江川が病気になり、それが原因して精神に異常を来しているというようなことは、あなた方のお調べの結果はなかつたでしようか。
  144. 吉河光貞

    ○吉河証人 現地に行きまして、直接江川を調べた調査班の報告にも、そういうふうな事実はありませんでした。また裏打ち調査をした報告事項の中にも、精神異常者ではないかと疑うよう事項は発見されませんでした。
  145. 山口武秀

    ○山口(武)委員 江川君が入港してかなり遊んだというようなことについては、調査はできなかつたでしようか。
  146. 吉河光貞

    ○吉河証人 江川君個人の素行の問題は調査しておりません。
  147. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それから江川君の新聞発表の記事を、特審局の方でもお調べになつて、かなり詳細に検討をされたはずでありますが、この新聞発表の記事が相当食い違いを来しておる。ちよつと常識考えられないような食い違いもあつた、そういうような点につきまして、特審の方で江川君を調べた際に、あるいはその後の経過におきまして、どのようなことになつておりましようか。
  148. 吉河光貞

    ○吉河証人 私どもといたしましては、江川君の供述全般について、証拠としての価値判断をまだ下す段階にもなつておりません。それからまた下してもおりません。私自身の二十年の捜査経験といたしましても、記憶違いとか、錯誤のない供述というのはほとんどないのでありまして、私どもといたしましては、江川君の供述だけが調査の端緒になつておるのではありません。江川君の供述も一つの調査の端緒として相当の確度あるものと認定しまして、これを一部として捜査を委めたわけでありますただいま申した通り、個々の事項についての正確、不正確は、一々これを認定する段階に立ち至つていないのであります。
  149. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先だつてここで江川君の証言を求めたときに、あの新聞の発表の談話に違いがあるということをここの委員会で指摘されて、初めて気がついた、こういうことを言つておられる。一つの例をあげますと、江川君は昭和二十年の夏に椎野悦郎氏に会つている、こういうわけである。おそらくその当時はまだ共産党はそれほど活動していなかつたはずであります。椎野君は獄中にあつたのではないかと思う。このようなきわめて明白な問題について、しかも文の半はごろではなくて、初めの方にこのような問題が出ておる。それを本人は気がつかなかつた。ここで言われて初めて気がついた。それからその中にありまする幾多の問題につきましても、あの発表とここで言われたことが食い違つている。しかもここで初めに聞いたのとあとで聞いたのとまた違いが出て来ているわけです。ところが江川君のお話によりますと、私はこの新聞発表を行うについて、自分が共産党に入党させた人もあるんだ、これくらいの人に対して責任があるんだ、それらの行為に対しても責任があるんだ、そういうところから、積極的に大衆の目を開かせようと思つてこの発表を行つた、こういうことを言つている。だとしますと、江川君はかなり責任感を感じて責任を持つて活動したはずなんだ、ところがそれにもかかわらず、そういうような誤りについて見てないとすれば、これは少々おかしい、気がついていないとすれば、当然これは疑う節が出て来る。自分が新聞談話の発表をしていれば、当然その発表がどうであるか、誤りがあつたかないかということは、だれにしても見るはずだ。しかも江川君は新聞発議を行つたというようなことは、おそらく珍しいことで、江川君にしてはこの間の事件は、新聞発表というよう関係は、おそらく最大の事件ではなかつたか、それについてその点は見ていない、しかも新聞記事も読んでいないという、そういうようなことから考えてみましても、これは少々常軌を逸しているものではないか、こういう点が出て来た、こういう点は特審局の方で調べられた結果どのような点が判明しておりますか。
  150. 吉河光貞

    ○吉河証人 江川君の陳述そのものを客観的事実と認定しておりません。先ほどから申しました通り、相当長期にわたる過去の事実の供述につきましては、錯誤、記憶違い、申し落し、いろいろなものが混入して来ることが捜査の通例であります。私どもとしては、その一々をきずがあるからといつて、これをどうこうするというような取扱いをしておりません。ただ江川君が自分の発表した新聞を見たか、見ないか、このことも実は御質問を得て初めて知つたようなわけでありますので、私どもは調査の端緒として相当確度あり、これを一つの端緒として全般的な箇々の事項、箇々の日時、場所についての記憶違い、そういうようなものは、それにとらわれることなく、私どもは調査によつてこれを確定しなければならぬというので、各般の資料や証拠を收集しております。
  151. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私は箇々の陳述の違いというようなことを聞いたのではなかつたのです。私の聞きましたのはそういうような大きな間違いをしている、しかも普通では考えられないような、自分で新聞発表を行つていながら、それを見ていないというようなことを言つている。このようなことになると、これを事件の端緒にするにしろ、あるいは江川君の発表というものの確度というようなものを検討する場合におきましても、当然これはおかしなことだ、これが問題にならなければならないことではないだろうか。この点が特審局の方で問題にならなかつたのですかと、私は聞いている。
  152. 吉河光貞

    ○吉河証人 ただいま申しました通り、先般の供述にはしばしばいろいろな錯誤、記憶違い、申し落し等があり得ることが捜査の通例でありますので、これを捜査の端緒に取上げるのにそれにとらわれてこれを捨てるというような取扱いはしておりません。
  153. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうじやないのです。私の言つているのはあなたたちが捜査の端緒にしようとか、しないとかということをよいとか、悪いとか、そういうことを言つているのではなかつたのです。端緒にする場合にこのような江川君の、われわれから見ればきわめてふしぎな行動、態度、これが検討されたのですか、されないのですかということを聞いている。あるいはこれに気がついたのですか、気がつかなかつたのですかということを聞いている。
  154. 吉河光貞

    ○吉河証人 ただいま申しました通り、江川君の供述には相当検討すべき供述上の錯誤もあり得る、ですから愼重にこれを端緒として今後調査を進めて行かなければならぬという態度をとつて進めております。
  155. 梨木作次郎

    ○梨木委員 先ほど出国の問題について、あなたの方で今記憶している点について述べられましたが、このうちで五・一五事件の三上卓氏が海烈号事件という密貿易をやつた事実をあげておられますが、当時の新聞によりますと、これは三上氏の談としてあげられておるところによりますと、今回の密輸の目的はかねての所信を実現するための資金調達のためであつたというようなことを語つたということが伝えられているのであります。こうなつて来ると、明らかにこれら旧軍人がかねての考え、つまり軍国主義的な考え方を実現するその手段としての資金集めの密貿易であつたことを裏づけるものであると思うのでありますが、これは関係者はどの程度であつたでしようか。
  156. 吉河光貞

    ○吉河証人 御質問の点につきましても、鋭意調査したのでありまするが、その企図を裏づけるような背後関係、団体結成の事実、それから背後の共謀の事実は、これを把握することができませんでした。
  157. 梨木作次郎

    ○梨木委員 今この事件はどうなつておりますか。
  158. 吉河光貞

    ○吉河証人 私の記憶で、三上卓君は横浜の刑務所に服役中であるというふうに報告を得ております。
  159. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そのほかこれに関係した坂田機関といわれておる坂田誠盛とか、こういう人たちはどうなつておりますか。
  160. 吉河光貞

    ○吉河証人 おそらくみな入つておるものと考えております。一度保釈になりましたが、またみな收容されまして引續き受刑中じやないか、確かではございませんので、もし御必要とあれば調査した後に正確にお答えいたします。
  161. 梨木作次郎

    ○梨木委員 その次に台湾渡航事件の根本博元中将は、現在台湾におるという情報を受取つておるということでありましたが、この台湾渡航事件、つまり台湾へ義勇軍を送り込もうとした事件、これは数回にわたつて計画がなされ、また実行されたようにわれわれは情報として受取つておるのでありますが、何回くらいやつたのでしようか。
  162. 吉河光貞

    ○吉河証人 現在もなおそういう企図のもとに、いろいろ密航が繰返されておるような情報が飛んでおりますが、私ども調査の範囲では一回であります。
  163. 梨木作次郎

    ○梨木委員 一回というのは、二十四年の十二月、十九名ぐらいが南九州から台湾へ渡つたというこの案件でありましようか。
  164. 吉河光貞

    ○吉河証人 事案の具体的内容を正確にお答えできないのが残念でありますが、当時は七人ぐらいでなかつたかと思いますが、これは後に、もし必要ならば調査して正確にお答えいたします。
  165. 梨木作次郎

    ○梨木委員 元中国に派遣されておりました陸軍大将の岡村寧次、この人はどういう経路をたどつて日本へ帰つて来、今どういう生活をしているのかを伺いたいと思います。
  166. 吉河光貞

    ○吉河証人 非常に残念でありますけれども、具体的な情報資料を今持ち合せておりませんので、もし御必要とあれば後日お答えしたいと思います。
  167. 梨木作次郎

    ○梨木委員 岡村寧次元陸軍大将は蒋介石政権の最高顧問として中国においても活躍し、その後いろいろの情報によりますと、日本においての募兵計画についての大きな密令を帶びて日本へ来ているというように伝えられております。従つてこれにつきましては、この岡村寧次元陸軍大将がどこにおるかぐらいのことはおわかりだろうと思いますが、それがわからないようではこれらの旧軍人の人たちの諸活動というものがほとんどつかまれておらないようにも思われるのでありますが、全然どこに住んでおるかもおわかりでありませんか。
  168. 吉河光貞

    ○吉河証人 特別審査局として、確実な御報告をする資料を持ち合しておりませんので、お答えの限りではないのでございます。愼重を期して、もし必要とあれは次の機会にお答えしたいと思います。
  169. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは次の機会にお答えを願いたいと思いますが、さらに岡村寧次元大将が日本に帰つて来た後において、台湾から呉鉄城氏という人が来まして、この岡村寧次元陸軍大将を訪れたということを雑誌などでわれわれは散見するのでありますが、こういう点についての情報はいかがですか。
  170. 吉河光貞

    ○吉河証人 御質問でもありますが、岡村さんについてはいろいろな情報がありまして、私一々その情報がこういう内容、こういう内容と申し上げる資料を持ち合せてないので申し上げられませんが、呈鉄城さんについても情報は得ておりますが、呉鉄城が岡村寧次氏と会見されたという情報につきましては、これを得ているかどうか、私ただいまここで御答弁の限りではないと思います。
  171. 梨木作次郎

    ○梨木委員 横山雄偉という人がおられますが、この人も台湾募兵計画に相当参与したということ、またそれに関連いたしまして、大きな詐欺事件を起しておるというようなことを聞いておるのでありますが、この点はいかがです。
  172. 吉河光貞

    ○吉河証人 横山雄偉氏なる人物につきましての情報は若干得ておりますが、その情報の具体的内容につきましては、先ほど申しました通り詳細申し上げる用意をしておりません。
  173. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それから潜行三千里とかいうよう出版をしまして、なかなか有名になつております中国へ派遣されておつた元日本陸軍の参謀の辻政信氏、この人はどういう経路で日本へ帰つて来て、今どういう活動をしておるか聞きたいのです。
  174. 吉河光貞

    ○吉河証人 辻政信氏はいろいろ戰記物などの出版をされておるように聞いております。その所在につきましても、覚書該当者としての登録をされております。本人がいかなる経路を経て日本に帰つて来たか、その点については今御答弁する資料を持つておりませんので、お答えの限りではございませんが、これは必要とあれば私の方で一応得ている資料に基いて後日御答弁申し上げます。
  175. 梨木作次郎

    ○梨木委員 ではそういうことにしていただきたいと思います。  さらに二十四年の十一月に首相官邸におきまして創立総会を開いたといわれ、国会においても問題になりました新亜通商株式会社、これは密貿易を大体主眼とするところの会社であるというようにわれわれ聞いおるのありますが、との新亜通商株式会社の創立総会はどこで開いたか、そしてこれに関係している主たる人物はどういう人たちであるか、あなたの方にわかつておつたらお聞かせ願いたいと思います。
  176. 吉河光貞

    ○吉河証人 その点につきましても一度調査したことがございますので、局に資料があると思います。ここではちよつと記憶がありませんので……、
  177. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 梨木君、ちよつと聞きますが、大分個々の問題について質問されておるようですが……。
  178. 梨木作次郎

    ○梨木委員 これは密入国また出国関係があると思います。これは密貿易の会社になつておるというので……。もう少し簡單にやりますから。  第三旭丸のことをおつしやいましたが、これは委員会でこの間証人として呼びました江川文彌君も、その新聞発表の中であげておる事件でありますが、この内容を御承知でありましようか。
  179. 吉河光貞

    ○吉河証人 第三旭丸事件は大分古い事件でございますが、これは判決がございまして、当時の被告は今受刑中であると聞いております。判決の写しは局に用意されておると考えております。
  180. 梨木作次郎

    ○梨木委員 この第三旭丸事件に、江川文彌君というのは関係しておつたのじやないかとわれわれは疑つておるのでありますが、この点あなたは何か御調査をなすつた事実はありませんか。
  181. 吉河光貞

    ○吉河証人 そういう調査をした事実はありません。多分その当時の被告で一人である才門君ですか、北海道の刑務所に受刑中であるように聞いております。
  182. 梨木作次郎

    ○梨木委員 江川文彌君というのは昨年中札幌の刑務所に入つておつたという情報をわれわれは得ておるのでありますが、このは点は御調査になつておりましようか。
  183. 吉河光貞

    ○吉河証人 聞いておりません。
  184. 梨木作次郎

    ○梨木委員 聞いておらないというのは、御調査になつたのですか、ならないのですか。
  185. 吉河光貞

    ○吉河証人 一々個々の調査は私は命令しておりません。全般的な調査の進行状態を総括的に調査部長から報告を聞いておりますが、その事実は報告を聞いておりませんので……。
  186. 梨木作次郎

    ○梨木委員 もう一点伺いますが、昭和二十三年中に江川文彌君というのは舞鶴でClCに逮捕されたという事実をわれわれは聞いておりますが、この点はあなたの方でおわかりになつておりますでしようか、どうですか。
  187. 吉河光貞

    ○吉河証人 そういう報告は聞いておりません。
  188. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それからさらにこの江川文彌が北海道新聞に発表した——先ほどあなたは健康を害しておつたというような報告は聞いておらないというお話でありますが、これを見ますと、江川君がからだのぐあいが悪いというので、入院加療を勧められたところがそれを自分は強制入隊をさせられるのじやないかということで、身辺の危険を感じた云々ということがここに書いてある、だから一応調査をお進めになる場合には、健康状態、精神状態——われわれの情報ではどうも彼は異常な行動をやるので、頭がどもおかしいのじやないかということで入院加療を勧めたということで、江川君もこの委員会におきまして、そういうようにからだが悪いなら入院しなさいと勧められ、それは非常にありがたいことだと思つたけれども、どうもふに落ちないことがあるので云々ということを言つておるのであります。本人もからだのぐあいが悪かつたことは認めておるようであります。だからこの点につきまして、これを見ましてもそういう点がうかがわれるし、現地へ行けばそういうような情報が得られたのではないかと思うのでありますが、その間の事情で、もしあなたの方へ何か報告が来ておるようでありましたら、もう一度念を押して承つておきたいのであります。
  189. 吉河光貞

    ○吉河証人 過去において江川君が、ただいま御質問ような健康を害した事実があつたということは、江川君の供述に出ておつたように聞いておりますが、陳述を聴取した当時におきましては、本人の健康状態、精神状態については別に疑う状態はなかつた。別にそういうような報君は聞いておりません。
  190. 梨木作次郎

    ○梨木委員 いろいろな新聞や雑誌の記事から見ますと、いわゆる再軍備問題に関連しまして、右翼あるいは旧軍人が最近非常に動いて来ておるようでありますが、この点に関連いたしまして、私たちが特に露骨に感ずるのは、追放されておるととろの赤尾敏という人ですが、赤尾敏という名前で盛んにポスターが支柱に張られております。この点についてあなたの方はどういうような調査を進められ、その行動について監視されているかを伺います。
  191. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 梨木君、赤尾敏君はこの密入国の問題に関係ありますか。少し飛躍し過ぎると思うが、その点はどうですか。
  192. 梨木作次郎

    ○梨木委員 そういう右翼的な活動と結びついてこの密貿易というものが始まつている。もうちよつと、一点で済むのだから待つてください。
  193. 吉河光貞

    ○吉河証人 よくその動静は観察しております。どうですが、私ども一時は間遠えて、本人のビラだと思つてつて来たところが、本人のでなく、おやじのだつたということで、先生の行動についてはよく検索を加えております。
  194. 梨木作次郎

    ○梨木委員 それでは最後にもう一点。かつてこの委員会で問題になりまして取上げるようにわれわれから要求した政界、財界、官界に金をばらまいて不正腐敗の根元をつくり出したといわれている金相哲、別名金子相一、この人は密出国をして、韓国へもどつたらしいのでありますが、この点あなたの方でおわかりでありますか。
  195. 吉河光貞

    ○吉河証人 いろいろ御質問ではありますが、特別審査局は密出入国一般を取扱う役所ではございませんで、この密出入国の事態が、公職追放令違反とかあるいは団体等規正令に抵觸する場合にこれを取上げて、これに関連する事項を調査するというようなつておりまして、金相哲の問題は、実は私どもの方の所管としては取扱つておりません。
  196. 大森玉木

    ○大森委員 簡單にお尋ねをいたしたいと思います。昨年国会から追放されました徳田球一ほかが、今日までどこへ行つたかわからない。これらもやはり密航でないか。この問題に対しては国民が非常に関心を持つておるので、これらに対しまして何か調査ができておりまするか、どういう方向に向つておるかということをお尋ねいたします。
  197. 吉河光貞

    ○吉河証人 徳田球一氏その他の追放幹部の方々が国内から脱出されて海外に渡航したのではないか、こういう情報がいろいろあることは事実であります。私どもはそういう情報につきましては、その出所並びにその内容の事実を検討することに努めておりますが、現在までに得ましたそういう一連の情報によりましても、これらの方々が海外に脱出されたという事実を確認しておりません。こういうような状態であります。
  198. 大森玉木

    ○大森委員 それならば国内におりますか。
  199. 吉河光貞

    ○吉河証人 国内におられるものと思つて、その所在を探しております。
  200. 大森玉木

    ○大森委員 国内におるといたしまするならば、一人や二人でなく相当の人数でありますので、その行先がわからないということは、あなた方の局において、これを調査することのできない欠点はどういうところなのでありましようか。(「関係がない」と呼ぶ者あり)どこに欠点があつてこうした者を捜し出すことができないのか、また密航したなら密航したということがはつきりしないのか。この点が欠陷があるならば欠陷があるとして、これに対しての捜査方法等について何か考えなければならぬと思うので、もう一応お尋ねをいたしたいと思います。
  201. 吉河光貞

    ○吉河証人 いろいろ海外渡航説が伝えられておりまして、いまだにその所在を発見できないことは何とも申訳ない次第であります。その原因につきましても、第一は、われわれ調査に当つておる者の能率が十分でない、さらに機動力連絡上の施設も十分でない、また関係機関との連絡につきましても、大いに努力しておりますが、完璧の状態に達していない、かようなもろもろの欠点があるものと考えております。鋭意これを改善して、所期の目的を達成することに努める所存であります。
  202. 大森玉木

    ○大森委員 そこで私はもう一言申し上げておきたいと思う。この問題に対しまして、全日本国民は徳田ほかというのはどういう忍術使いか、一体どこへ隠れたのか、こういうふうに実は考えておる。日本は戰争後、もはや今日は治安も相当回復いたしておる。しかるにどこへ行つたのか、密航したか、国におるかわからない。しかしながらわれわれ一面から聞くところによると、これがやはり地下にもぐつて指導しておるというようなことであります。また今やもう朝鮮に行つて、朝鮮方面において一部の運動を續けておるという流言も聞くのであります。こういうことを聞いておりますると、国民が非常に不安である。不安というのは何であるかというと、私は強盗段人罪を犯して逃げたのでないから、まだ幾分か安心ができると思うのであるが、しかしながらこれは思想上いかぬということで国家から追放された。その人たちが今日まで地下にもぐつて、それがもしも日本の国内において、嚴然として思想方面を指導しておるというならば、これほど危険なものはないといわなければならぬ。こういう点に対しましては、万全の努力を払つて、これらを一日も早く逮補するようにしなければならぬ。また行先がどこそこへ行つておるというならば、それによつて国民は安心いたすのでありますから、この点を一言申し述べて私の質問を終ります。
  203. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 ほかに御発言がなければ、吉河証人に対する尋問はこれにて終ります。  午後は二時半より再開して、引續き鈴木証人より証言を求めることにいたします。暫時休憩いたします。     午後一時二十九分休憩      ————◇—————     午後三時一分開議
  204. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 休憩前に引續き会議を開きます。  不正入出国に関する件について、引續き鈴木一誠人より証言を求むることといたします。  鈴木さんですね。
  205. 鈴木一

    ○鈴木証人 さようです。
  206. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 ただいまから不正入出国に関する件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの昔の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  なお証人が公務員として知り得た事実が職務上の秘密に関するものであるときは、その旨をお申出願いたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読を願います。     〔証人鈴木一君朗読〕    宣誓書   良心に従つて、直実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  207. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  208. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 これより証書を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておる場合はおかけになつていてよろしいですが、お答えの際は御起立願いまする  鈴木証人は現在出入国管理庁長官をやつておられますね。
  209. 鈴木一

    ○鈴木証人 その通りであります。
  210. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令の違反による密航者数及びこれが取締り状況をひとつ述べてもらいたいと思います。
  211. 鈴木一

    ○鈴木証人 南西諸島におります人たちが、現在本州その他内地に参ります際には、司令部の許可がいるのでございます。司令部の許可なくして入りました者は、海上においては海上保安庁、その他陸上におきましては、国家地方警察あるいは自治体警察等におきましてつかまえまして、出入国管理庁の職員に引渡しをしまして、われわれの役所の手におきまして、強制送還の措置をとることになつております。  ただいまの御質問では、一応の状況ということでございましたので概略の数を申し上げますと、昭和二十四年には、密入国、いわゆる司令部の許可なくしてわが方に入りました数が大体三百、二十五年度、昨年におきましては四百、本年に入りましては、まだはつきりした数字がわかりませんが、ごく少数でございます。
  212. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 取締り状況はどうですか。
  213. 鈴木一

    ○鈴木証人 われわれの役所におきましては、取締りと申しましても、海上あるいは陸上におきまして、直接逮捕いたすというようなことは実際にはやつておりません。それは主として海上保安庁警察方面でやつていただくことになつておりまして、警察の手、あるいは海上保安庁の手に参りましてからあと、出入国管理庁の方において引受けまして、それを送還するという手續なつております。
  214. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 昭和二十四年には三百名ほど、二十五年には四百、百もふえておるようですね。今年度は大分減じておるようでありますが、要するにこの措置令に定めてある連合国最高司令官の渡航承認というものは、早くても三箇月、おそければ一年もかかるというのですね。そうすると事実上そういう認可を受けておれないので、いわゆる密航の形にならざるを得ないのである、こう聞いております。その点どうでしようか。
  215. 鈴木一

    ○鈴木証人 ただいまのお話の点は、まさにその通りのことがあるのでありまして、二十三年でございましたか、一応南西諸島に対します引揚げが完了いたしまして後に、司令部の方の命令によりまして、一切交通はできない。特別に気の毒な者というようなものについては、特別な許可をもらつて入るという道が開かれておりまして、その際に司令部の方へ、自分はこういう理由で日本に行きたいという申請をいたします。それが出まして、司令部の方では——もちろんそれは沖縄の司令部でありますがそちらからこちらの総司令部の方に、こういう者について身元引受人——内地におきますどこのたれという者に身元引受けをさせる、その身元引受けの調査を、日本政府の方に司令部から依頼をして参るわけであります。その調べが、あるときには早く、あるときにはなかなか手間取るということもあるようでありますが、それは警察の方を通じまして調べておるようであります。それが一応調べ終りまして、しつかりした身元保証人があるということに確証を得ますれば、本人に許可が参る、こういう順序になつておりますので、おそらく調査が手間取るのではないかと思います。普通は一月くらいで大体調査ができなければならぬように存じますが、場合によりましては、三月ということがあり得ると思うのであります。
  216. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 そういう不便を除去するために、最高司令官の方へ何かあなたの方から方法を講ぜられましたか。
  217. 鈴木一

    ○鈴木証人 実はこの問題は、直接には私の方の役所としましては、不法入国で入りました者についての処置をいたします関係で、それまでの手續につきましては、権限を持つておらないわけでございます。従つて特別に司令部に出まして懇請するとか、あるいは手續について申し出るとかいう正式なことはいたしておりませんけれども、ごく私的の話合いのときには話したことはございます。
  218. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 公式にはそういう手段を盡したことはない、こうおつしやるのですね。
  219. 鈴木一

    ○鈴木証人 はい。
  220. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 それから外国人登録証明書に関しまして、何か改正する必要のある点をお述べ願いたいと思います。
  221. 鈴木一

    ○鈴木証人 外国人登録証明書、これは外国人登録令というポツダム政令によりまして、外国人がわが国におります状態を把握し、外国人を一面保護すると同時に、またそういう人たちが不法な退去というようなことのないようにする意味で、公正な扱いと同時に、そういう人たちを正確に知つておくという意味で登録いたしておりますが、その外国人登録の実際の状況を見ますると、はなはだおもしろくない点があるのであります。たとえば現在日本内地に外国人が何人いるかという質問を受けるのでありますが、われわれは即座に六十万ということを申します。これは外国人登録令によりまして、各市町村で登録原簿を持つておりまして、それに登録しました数字を集計しますと、六十万、詳しくは六十万五千幾らでありますが、これは毎月われわれの手元に集計が出て参るのであります。しかしそれがはたして正確な数字であるかどうかという点につきましては、多大の疑問があるのであります。だれでも外国人は登録しなければならない規定になつておりますが、なかなか実行ができない。たとえば密入国で内地へ入つて参りますその人たちは登録を受けない。なお登録を受けました人たちも、各人が外国人登録証明書を携帶いたすことになつておりますが、それの偽造が行われる、場合によりましては、それの売買も行われておるというようなことで、外国人登録証明書には、御承知ように本人の写真も張つてあり、年令その他、それを見ますれば本人であることがわかるようにできておりますが、違つた写真を張りましたり、年令のおそらく違つたような証明書を持つておりましたりいろいろある。そういうような点につきまして、登録証明書とそれを持つております本人というものとを常に一致さしておかなければなりませんが、これが非常にむずかしいのであります。密入国で入りましても、登録証明書を偽造しましたり、あるいはだれかから買い取るというような事実もあるようでありまして、本人と登録というものがなかなか一致しない場合がある、それをどうして検査するか、これはなかなかむずかしいのでありまして、その点におきまして、ただいまわれわれの方で考えておりますことは、指紋をとることであります。指紋をとりまして、その登録証明書に指級を入れさしておく。これは写真よりも確実性がございますので、この方法をぜひ実現したい、かよう考えておりますが、これは言い出しましてすぐ二、三箇月でやれるという問題ではないのでございまして、予算と相当の人数がいるわけでありますが、この点につきまして、目下計画を立てておる次第であります。そのほかいろいろ詳しいことを申し上げますればたくさんあるのでありますが、登録証明書は現在三年間有効ということになつておりますが、これは少し長過ぎる、一年有効ということで、毎年証明の切りかえをいたしますれげ、よほど登録というものと外国人というものが、同一性においてはつきりして参るのではないか、そのほか地方長官においてもう少し積極的に登録証明につきましても権限を持つていただいて、監督していただくというような面も改正して参りたい。こまかいことは種々ございますが、大体大きいところはそういうことでございます。
  222. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 要するに指紋を付すること、有効期間の短縮というようなことがおもだつたことですね。
  223. 鈴木一

    ○鈴木証人 そうです。
  224. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 出入国管理庁は外務省の外局ですか。
  225. 鈴木一

    ○鈴木証人 外局もあります。
  226. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 この国内治安に重大な関連を有しておる密入国を所管する場合、外務省の外局となつておるよりも、むしろアメリカのように法務系統の機関が取扱うことがいいのではないかと思われる節もありますが、その点についていかがでしようか。
  227. 鈴木一

    ○鈴木証人 現在は外務省の外局ということで、昨年の十月から出発したのでありますが、アメリカではただいま仰せのように法務総裁の直轄になつております。アメリカにおいてわが方と少し違いますところは、アメリカでは出入国管理を移民及び帰化局で一緒に扱つております。日本では帰化の問題は法務府でやつておりますが、そういう関係もありまして、アメリカでは帰化と移民ということがつけ加わりまして、法務総裁のもとで一つなつて仕事をしておる。これは十年くらい前からこういう制度になりましたので、それ以前には、移民の方は労働局の所管であつたとか、いろいろ沿革はあるようでありますが、最近そういう制度になつたために、日本もこういう制度にすべきではないかという意見もあるのでありますが、出入国管理庁ができました当時考えられた考え方が二通りあるのであります。一つは出入国管理という面の中に、横浜であるとか羽田であるとか、いわゆる日本の表玄関から直接入つて来るお客さんたちは、やはり観光なり、日本の姿をよく理解してもらいたいという意味から、外務省の方で扱うのがいい仕事ではないだろうかという見方が成立つのであります。もう一つは、出入国管理の中の不正入国という面でありまして、裏口からこつそり入つて来る。これに対しましては相当な取締りが必要になりまして、多少警察というようなにおいがして参る。その面から見ますと、法務府が適当ではないかという議論も出たのでありますが、結局日本におきましては、現在の段階においては外務省でよろしいのではないかという結論で、外務省の外局となつように聞いております。
  228. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 さいぜんの証言の中にありましたが、現在外国人で登録を受けておる者が六十数万おるということでしたが、その中には、密入国の数はないけれども、登録証明書の不正をしておる数も入つておるのですか。想像ですが……。
  229. 鈴木一

    ○鈴木証人 密入国入りました者は、それがわかりますれば、私の役所の手で強制退去をいたしまして送り帰すという段取りになつておりますので、登録には上つて参りません。
  230. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 そこで密入国のまだ検挙にならない数はどれほどあるとお思いになりますか。
  231. 鈴木一

    ○鈴木証人 これは先ほどちよつと触れましたが、把握できますれば非常に薬なのでありますが、これはいかんとも把握できない数字でありまして、單なる想像にすぎないのですが、国警方面では大体五万前後ということを申されております。これは実際に兵庫県の神戸付近あるいは大阪を中心としまして期鮮の人たちが集団で生活しております。兵庫県は十万、大阪は五万ありますが、それらの集団しておる方面に相当接触を持つた人たちの第六感によつて、この中には一割くらいはどうしても密入国者がおるようであるという大体の推定で、それが六十万について一割ということで五万前後というふうなことに聞いております。ただ十万というようなことをいう人もありますが、これは何を中心に、何を根拠にはじき出すかということはわからないことで、單に想像にすぎない。
  232. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 しかし想像にしても、五万前後という数は相当に大きい数ですが、こういうものがいまだ検挙されない原因はどこにあるでしようか。
  233. 鈴木一

    ○鈴木証人 六十万の外国人登録を受けました者の中で、九割強の五十万というものが朝鮮人であります。従つて外国人の大半は朝鮮の人であります。また密入国も大体朝鮮半島から入るのがほとんど大部分である。これはどういうわけでそんなに多いかと申しますと、われわれの方で扱つております中で、三分の一は対馬を通つてつて参ります。対島のごときは、島に行きますれば向うの韓国が見えるわけでありますから、非常に近いのでありまして、夜陰に乗じ、あるいはわが方の警備の手薄なところに上陸して参るわけでありまして、なぞそう密入国者が多いかというお尋ねに対しましては、もつばら警備が足りないという一言に盡きると思います。
  234. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほど証人証言で、北緯三十度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令に定めてある連合軍最高司令官の渡航承認が、大分遅れるということは証人も認めておられるようですが、この承認がそれほど遅れるということは、一体どのようなところに原因があるのか。先ほど証人は、本国に身元引受人を定めて調査して確証されれば承認されるのだということを言つておりましたが、このようなきわめて厳重な、しかも煩瑣な手續がとられているのは、どのような事情のためにこうされているのですか。     〔内藤(隆)委員長代理退席、島田委員長代理着席
  235. 鈴木一

    ○鈴木証人 ただいまのお尋ねは司令部側の意向を聞いてみないとわからないのであります。われわれの方でははつきりしたことはわかりません。
  236. 山口武秀

    ○山口(武)委員 はつきりしたことがわからないといいますが、そうすると何かぼやつとしたものがわかつている、あるいは想像できるというように受取れますが、そういうあなたの想像し得る範囲内においてでも御答弁願いたい。
  237. 鈴木一

    ○鈴木証人 これは外国人登録令第三條にありますように、何人も日本に入れないという大前提を総司令部が命令しておるわけであります。その原則は西南諸島にもおそらく適用されているのだろうと思います。
  238. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それは一般外国人の場合にはそういうことが言われるとも思いますが、この場合には特殊的な事情にある。それから今あなたはそういうような法令的なものがあるというようなことを言つておりましたが、私はそういう特殊な立場にある人たちに対して、しかも本国に帰つて来るということがかなり必要であるというような立場に置かれておる人に対して、それほど厳重な処置がとられておるというのは、何か特別な事情があるのではないのだろうか。しかもあなたは先ほど公式にはこの問題について連合国の最高司令官関係筋と話したことはないが、私的には話しておる。だとすると、どういう事情でそうなつておるかというくらいは当然話に出るはずです。あなたも聞かれなければならぬはずですが、いかがですか。
  239. 鈴木一

    ○鈴木証人 今の御質問の要点がちつとわかりかねますが、もう一度お願いいたします。
  240. 山口武秀

    ○山口(武)委員 たとえば西南諸島に特別な軍事上の機密でもある。これが漏れては困るのだというよう一つの事情でもあつて、このように特に手續がむずかしくなり、嚴重な制限というものがあるのではないのだろうか。こういうような事情をあなたが想像ができるかできないかということを聞いておる。
  241. 鈴木一

    ○鈴木証人 私の感じでは、別段そういうことにこだわつているとは考えられません。
  242. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、あなたの感じ方で、そのほかに何か特別の事情というものは考えられませんか。
  243. 鈴木一

    ○鈴木証人 別に考えられません。
  244. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、あなたがこの渡航承認が大分遅れている問題について、総司令部最高司令官の関係と話をしたというものも、きわめて断片的な話であり、それほど熱心な話ではなかつたのだ、こういうことになりますか。
  245. 鈴木一

    ○鈴木証人 それは御想像にまかせます。
  246. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私は聞いておるのです。私が想像していいものならあなたに聞きはしません。それでもなお答えられないというのですか。
  247. 鈴木一

    ○鈴木証人 ただいま申し上げた通りであります。
  248. 島田末信

    ○島田委員長代理 やはりそのことですか。もうその辺でどうですか。
  249. 山口武秀

    ○山口(武)委員 答弁が不満ですから……。それではあなたはこの問題については答えられないということになつたのですね。
  250. 鈴木一

    ○鈴木証人 その通りであります。
  251. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それからこれは昭和二十四年に東京地方裁判所に起訴された事件の問題ですが、帝銀や東銀などを舞台といたしまして、一億何百万というような金融の詐欺をやつて、その金を自由党の代議士諸公にもばらまいたというようなうわさが出ていたところの金相哲の問題ですが、この裁判が開かれまして、第二回目の裁判がありましたときに、弁護人の方から裁判長に書類の提出があつた。それによると、金相哲は特殊任務に服しているために帰宅することが困難であるから何分よろしくという、韓国情報監海軍中将咸明珠という人から東京にいる某韓国将領あての文書が裁判所あてに出されておる。そのために公判が延期になつておるという事件が起つたのですが、この件についてあなた御承知ないですか。
  252. 鈴木一

    ○鈴木証人 その件については存じません。
  253. 山口武秀

    ○山口(武)委員 全然話も何も聞いたことはないのですか。
  254. 鈴木一

    ○鈴木証人 全然存じません。
  255. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、あなたはこの件に関する新聞記事も見たことがないのですか。
  256. 鈴木一

    ○鈴木証人 あまり覚えてないことであります。
  257. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この件について全然知らない。新聞記事も見てないと言われるのですが、私は出入国管理庁長官としてはいささかおかしなあり方だ、かように思う。と申しまするのは、裁判所にこういう文書が出まして、それから裁判所の方では在日韓国代表部に対して、金相哲の行方を照会したが、回答がなかつた。それから四月の六日に裁判所の係員が同代表部に調査に行つたが、本国政府に問合せ中でまだわからぬ、こういうことになつておる。しかも検察庁では、この金相哲は特殊任務を帶びて朝鮮に渡つたのではないか、こう疑惑しておる。しかもこの問題はなお日本の政界に対しても大きな腐敗の種をまいたといわれておる。それが特殊任務というような特別な関係で、また再び向うへ帰つておるのではないかというような疑惑を持たれておるとすれば、当然あなたの所管の官庁では、このことに対しても十分注意を払わなければならない。あなたが普通新聞を見る場合にも、この問題については特に新聞にあれば当然まつ先に気をつけなければならないことであつたろう、あるいはあなた個人としても、この新聞記事を忘れたということを言われるかもしれませんが、当然そういうようなきわめて重大な、あなたの官庁から見て関係を持つておることに対して、記憶がないということはないはずだ。そういうことを考えてみますと、私はこの事件に対してあなたが知らない、覚えていないと言われたことは、どうにも納得がいたしかねるわけなんですが、やはりあなたはこのことについて知らない、覚えてない、こういうふうに言われるのですか。
  258. 鈴木一

    ○鈴木証人 その事件につきまして、私の役所に問合せその他そういう問題はなかつたように思います。私自身としましては、どうも新聞を雑に見るくせがございますので、見落しておつたのではないかと思います。
  259. 山口武秀

    ○山口(武)委員 いやしくも管理庁の長官ともあろう者が、新聞も見ていない、新聞を見落しておるというようなことは——私はそういうような態度の人こそあらためてこれは行政監察委員会で監査をする必要があるのではないかと、こう考える。このことはまたあとで私の方から委員会にあらためて意見を出したいと思います。  なお質問を續けますが、去年の十一月に東京都港区の第一漁業会社の船でありまして、第三伸洋丸というのが、安藤船長が乗つて出かけたまま行方不明になつております。ところがそれが本年の四月七日になりまして、保安庁の巡視船八丈丸が、潮岬において漂流している機帆船を発見して、これを助けたところが、これには池上ほか二名が乗つておりまして、これが行方不明になつた第三伸洋丸の乗船員であるということがわかつた。ところがその池上の話によりますと、その船は密輸の関係で香港へ行くつもりで船を進めておつたところ、国府軍に拿捕されて、台湾に連れて行かれた。そうして国府軍によつて強制労働に付さていた。それをやつとすきを見て逃げて帰つた、このような自供をしているというのですが、こういうような密輸の関係で蒋介石の海軍関係の者につかまつて、その結果強制労働にまわされたというようなことはあり得ることなのでしようか、いかがですか。
  260. 鈴木一

    ○鈴木証人 ただいまの問題は出入国管理庁の所管外でございままので、お答えいたしかねます。
  261. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それでは出入国管理庁長官職務というものを伺いたい。
  262. 鈴木一

    ○鈴木証人 外国人の出入国に関します問題を扱いますが、日本人の出入国には、直接には権限として管理はいたしません。
  263. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、日本人の出入国については、あなたたちは関係がないと言われるのですね。
  264. 鈴木一

    ○鈴木証人 全然関係がないというわけではなく、たとえば日本人がアメリカから横浜に着きます際に、正規のパスポートを持つているかどうかというようなことは一応見るのでありますが、それは外国人の中に入つて参りますので、そういう意味で見るわけでありますが、出入国管理庁の官制には日本人ということはないのでありまして、外国人の出入国に対する管理ということしかないのであります。
  265. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、日本人が外国に密出国した、あるいは密出国した日本人が日本に密入国して来る、こういう問題についてはあなたの方には関係がないと言われるのですね。
  266. 鈴木一

    ○鈴木証人 権限としては関係ないのです。
  267. 大森玉木

    ○大森委員 ちよつとこの際お尋ねをしておきたいことがあります。先ほど外国人が六十万五千人ばかりだということを仰せられておる。その中の一割は大体密入国者だというようなお話であつたのでありますが、これはやはり日本に渡つて生きております以上は、食糧に対します問題がありますが、つまり食糧の証明書というようなものから調査をいたしますならば、こうした問題がはつきりいたすのではないかと思う。この点をお尋ねいたしたい。
  268. 鈴木一

    ○鈴木証人 ただいまの御質問はまことにその通りでありまして、われわれの方で発行いたしております外国人登録証明書と食糧の配給券とを照し合せまして、それによつて配給をするように食糧庁とも連絡をとつておりますが、一人で何枚も登録証明書を持つている人がある。そういうのがそういう機会に発見されたこともございまして、そちらの面かち見ましても、相当数おるということがわかるのであります。
  269. 大森玉木

    ○大森委員 その点であります。非常に考えられないような問題でありますが、五万人からの食糧になるとたいへんなものです。大体今日では転出証明等がなければどこにも移住できないような状態になつておる。これはやはり長官の職責ではないでありましようが、しかしこれは戸口調査などにおいて証明書と外国人の身分証明書とがはつきりと一致するように調べ、そうして一致さすよう方向に持つて行くということに対しては、何か難色があるのでありますか、そこまでやらなければ、私は食糧事情から考えても、不明朗な五万人の人というものが明らかになつて来ないのではないかと考えるので、なお一応お尋ねをいたしておきたいと思います。
  270. 鈴木一

    ○鈴木証人 その点につきましては、再三食糧庁と協議を進めておりますが、その引合せますこちらの登録証明書を、一人で何枚も持つております場合は、食糧庁としてはわからないのだろうと思います。あの人は五枚持つておるということはわかりませんから、五人分配給してしまうことになる。それをまず切るためには、やはり先ほど申しました指紋制度を一せいにやつて、一人で登録証明書一枚ということがはつきりしないと、完全には行かないのではないか、それを今計画いたしておるわけであります。
  271. 大森玉木

    ○大森委員 そうすると何枚も一人で持つておるから、要するに転出証明なんというものは皆一人で持つておらなければならぬものでありますけれども、そういうことがはつきりしないから、今はつきりさすべく考えておられるのですね。
  272. 鈴木一

    ○鈴木証人 さようでございます。
  273. 島田末信

    ○島田委員長代理 他に御発言はありませんか。——他に御発言がなければ鈴木証人に対する尋問はこれにて終ります。証人には御多忙中まことに御苦労でありました。  次会は明後二十八日午前十時開会、海上保安庁長官柳澤米吉君、椎野悦郎君及び法務総裁大橋武夫君よりそれぞれ証言を求めることといたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十九分散会