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1951-05-23 第10回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十三日(水曜日)     午前十時五十二分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 島田 末信君    理事 塚原 俊郎君 理事 内藤  隆君    理事 小松 勇次君 理事 猪俣 浩三君    理事 山口 武秀君    大泉 寛三君       岡延右エ門君    鍛冶 良作君       川本 末治君    志田 義信君       田渕 光一君    中川 俊思君       中村  清君    野村專太郎君       福田 喜東君    八木 一郎君       石田 一松君    大森 玉木君       椎熊 三郎君    加藤  充君       高倉 定助君  委員外出席者         証     人         (日本国有鉄道         東京鉄道管理局         長)      白木 龍夫君         証     人         (日本国有鉄道         運輸総局長)  小西桂太郎君         証     人         (運輸省鉄道監         督局長)    足羽 則之君         証     人         (日本国有鉄道         総裁)     加賀山之雄君     ————————————— 本日の会議に付した事件  桜木町国電事故に関する件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。  引續き桜木町国電事故に関する件について調査を進めます。ただちに白木龍夫証人より証言を求むることにいたします。白木龍夫さんですね。
  3. 白木龍夫

    白木証人 はい、白木です。
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 あらかじめ文書をもつて御了承を願つておきました通り、証人として証言を求めることになりましたから、さよう御了承願います。  ただいまから桜木町国電事故に関する件について、証言を求むることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりましてそれ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかし証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読を願います。     〔証人白木龍夫朗読〕    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  5. 篠田弘作

    篠田委員長 宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておりますときはおかけになつていてけつこうですが、お答えの際は御起立を願います。  今回の桜木町事件について、事故発生原因はどこにあつたかということをひとつ……。
  7. 白木龍夫

    白木証人 事故発生原因は、関係者の取調べを昨夜もやりましたが、現在までに東京管理局といたしましては、実はまだ完了いたしておりません。特に信号掛電力工手長との証言と申しますか、陳述に、まだ幾分の狂いがございますので、これらがはつきりすることができれば、責任内容がもちろんはつきりいたすと存じますが、それは本日あるいは明後日くらいまでに、対決その他の方法で取調べて行きたいと思います。現在までにわかりました直接の原因と申しますものは、すでに御承知と思いますが、二十四日の十三時三十分から大船電力工手長事故修繕を始めまして、その際電力工手が誤つてメツセンジヤー・ワイヤー、吊架線と申しますが、それにスパナをさわらせましたために、吊架線が切れました。そのために横浜方また桜木町方架線にたるみを生じまして、それにたまたま当時の事故電車が進入して参りまして、運転士は十一号の渡り架線垂下しておるということの認定ができなかつたために、架線をパンで引つかけまして、御承知のような悲惨な事故を起したのであります。ことに申訳ない次第でございます。その原因といたしまして、そのとき電力工手長事故を起しますやいなや、すぐ信号所へ走りまして高原信号掛と、下り線はいいが、上り線は悪い、あるいは下り電車はいいが、上り電車はいけない。ここに信号掛から聞いたことと、電力工手長が申したことが、一方は上り下り線と言い、一方は上り下り電車ということを申しております。この辺のことは検察庁でもまだ明確になつていないようでありますが、この言葉の行き違いがございまして、調べておるのでありますが、その第一段といたしまして、昨日までわれわれ鉄道関係として結論いたしておりますことは、いずれにいたしましても、十一号の渡り架線がたれ下つていたことを、電力工手長運転危險なりと確認しておつたならば、上りへ通るにしても、下りへ通るにしても、とりあえずあの電車はあそこまで入れない手配を講じてから、あるいは手配を講ぜしめてから信号所へ行くべきではなかつたかというふうに考えまして、第一段の直接の原因は、電力工手長が十一号のイ、ロの渡り加線——これは工手長は確かに垂下があつて危險だと認めたということを言つておりますが、おの点もわれわれ專門家から見ますると、幾分の疑念があるのでございますが、本人の供述によりますると、危險を確認したということでございますので、そういう前提に立ちますれば、第一段責任線路工夫長が、先ほど申しましたように、列車停止手配をおろそかにしたということが、直接の原因だと判断しております。
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 交通の頻繁な場所で、そういうような架線工事を施行するというような場合、危險防止についてどういう方法をとつておりますか。
  9. 白木龍夫

    白木証人 すべて電力工事といわず、架線工事といわず、ああいつた頻繁な場所でやりますときには、常に必要にして十分な——あの場合は働く者が六人に対して三人の見張員をつけておつた、こういう手配をとつております。
  10. 篠田弘作

    篠田委員長 しかし実際において、ここで証人を調べたところによりますと、工手長信号所連絡をとりに走つて残つてつた工手長ほか八人の人が全部架線工事にかかつてつて、見張員は一人もついておらなかつたのですね。証人をこの委員会で調べました結果ではそういうふうになつておる。
  11. 白木龍夫

    白木証人 しかし見張りについておらなかつたと申しますが、私らの聞いたところでは、地上にその人間がいた。ただ見張りには立つてつたけれども、私らの調べたところでは、中澤電力工手長危險を認めたと申しておりますが、地上におりました副工手長、それからもう二人のかつて工手長をやりました臨時人夫、これらの人は十一号の架線危險は認めておらなかつたわけでございます。そして中澤工手長が行くときに、あとは頼んだよと言つて信号所へ去つた。そのときに架線危險だから防護してくれという言葉は、中澤工手長は申し述べておりません。従つて中澤工手長が十一号のイ、ロのポイント危險だということを判断しておつたならば、当然そのときに列車に対して防護をしてくれ、赤旗を出してくれ、こういう言い置きをして行くべきでなかつたか。従つてそういう言い置きがなかつたから、上り線におりました二人の地上監督と申しますか、付添人という方が間違いがないでございましようが、副工手長及び臨時人夫付添人は、列車防護ということよりも、あとを頼むということは、おそらく早いところ架線を直してくれというふうに想像したのじやなかろうか、こんなふうにも考えられます。しかしそれは想像でございます。
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、工手長はその架線工事責任を持つておるのだから、工手長が、列車が来たらとめてくれというふうな行き届いた注意を与えて行けば、もちろんそれが一番最善ではあるけれども、そのほかに工手長が去つてもまだ二人の見張りがおつたのだから、その場合工手長あとを頼んだと言つた意味は、架線工事ももちろんであるけれども、その他の一切の附帶的危險その他についても頼んで行つたというふうには、あとの人は受取つておらないのですか。
  13. 白木龍夫

    白木証人 受取つておりましたら、当然電車が来るまでに赤旗を出すべきであつた……。
  14. 篠田弘作

    篠田委員長 受取るべきじやないですか。
  15. 白木龍夫

    白木証人 受取ると申しますと……。
  16. 篠田弘作

    篠田委員長 そういうふうに受取るべきじやないのですか。あとを頼むというのは、架線工事を頼むということだけでなくて……。
  17. 白木龍夫

    白木証人 いや、それは無理じやないでしようか。というのは、その架線が切れたということは知つておりますが、この架線が切れたために十一号の渡り危險だからというようなことを言つて行けばいいですけれども、架線が切れてたいへんだ、だからおれば信号所へちよつと行つて来る、あとを頼むぞと言つただけでは、列車防護してくれというまでの意味が、実際は働いておりません。だから十一号のポイントがあぶない、反対電車があぶないのだということならば、これはあるいはそういうふうに受取れたかもしれませんが、これはまあ解釈の問題になるのでございますけれでも、少くともわれわれ現場仕事をする者としては、十分な言葉ではない、非常に不完全な言葉ではなかろうか、こういうふうに考えます。
  18. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは何のために見張りを置いておくのですか。
  19. 白木龍夫

    白木証人 見張りは、たとえばその場合想像できますことは、見張り工事見張りと、自分らの上に上つております作業員危險を与えない、ああいつた事故が起つた場合は別でございますが、大体軽微な仕事をやる場合には、保線あたりで、たとえばつるはしでついておるときも見張りがついております。こういう頻繁なところでは、作業員電車にひかせまいというようなことが非常に大きな仕事になつております。線路工事などでは、電車が来たぞ、仕事をやめろということが見張員のかなり大きな仕事になつております。むちろん下におります者は、電力工手長副長でありますから、作業についての監督もいたしますけれども、ああいつた場合に、下におります者は、工事監督と、それからもう一つは上に作業している者を電車に触れさせないという二つの目的をもつて見張りについております。
  20. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたのおつしやることは、それは確かにもつともだと思います。作業監督をするということも必要、作業に従事している者に危險をなからしめるということも必要、と同時にまた一方から言えば、向うから来る電車にはお客さんがたくさん乗つておるのだから、その電車にも危險をなからしめるということも、また当然の責任じやないですか。
  21. 白木龍夫

    白木証人 それは当然の責任です。見張員は……。
  22. 篠田弘作

    篠田委員長 それに対して見張員はどういうふうな……。
  23. 白木龍夫

    白木証人 ただあの場合は、故障を起しました十一号のロというところでございますね。この下から上に渡りましたあそこのスパークを起しました事故のところ、あそこから現場は約百五十メートル横浜方へ寄つております。従つて百五十メートル離れておりまして、私ら夜間切断試験いたしましたときにも、横浜方架線垂下は非常に大きいのでありますが、桜木町方の吊架線の切れ方が反対側で切れておりますから、こちらは短かいためにあまり下つておりませんでした。それで地上員を調べましたところ、たとえば下におりました副長、それからかつて電力工手長をやつておりました臨時人夫、この地上にいた二人を調べたのですが、向うはだめだけれどもこつち側は危險は認めなかつた、こう言つております。従つて頼むぞという言葉は、あれがあぶないということを知つておりますれば、あるいはその人たち列車防護しようという気になつたかもしれませんけれども、この地上の二人の人は、あのポイントのところの渡りがあぶないということは認識しておりません。だから中澤君がそのときに、あれがあぶないからということを言わなければ、あの下の二人はあそこへ信号を出すという気にならなかつたろう、こういうふうに当時の実情は、調べた結果なつております。
  24. 篠田弘作

    篠田委員長 工事をしている人はそう思つたかもしれないが、きのう警察の捜査課長検察庁の検事の証言を求めたところによると、運転手とそこへ乗り合せておつた検車掛の金子といいましたか、という二人は架線垂下していることを認めて、どうだろう、大丈夫だろうかという会話をそこでしておる。大丈夫だろうということでつ込んだと言つているから、二人は認めておるのです。
  25. 白木龍夫

    白木証人 二人は、切れたやつをロープでつていましたから、ある程度たるんでいるのは認めているわけです。ところが十一号の渡りのところへ、当時二十号のポイントにかかつたころ、自分渡り架線はどうだろうかといろときに、運転手中村は、十一号のポイント架線危險だということを認定できなかつた、こう申しております。
  26. 篠田弘作

    篠田委員長 従来そういう交通頻繁なところの架線工事は、深夜作業をしておつたというように私たちは聞いておるのですが、実際はどうであつたか知りませんけれども、そういう突発事故の場合はもちろん深夜作業というわけには行かないでしようが、大体深夜作業がやめになつて晝間に直したそうですね。それは一体予算関係ですか。それとも労働基準法とか、あるいは組合関係とか、そういつた人間関係ですか。
  27. 白木龍夫

    白木証人 この作業夜間やる、晝間やる、活線でやる、死んだ線でやる、いろいろ作業がございますが、何と申しますか、従来晝間やる方が一般に能率がいい、仕事がしやすいという点もあり、それからわれわれの生活上一般夜間やるより晝間の方が仕事も正確にできて都合がいいということもある。また夜やるか、晝間やるかの問題につきましては、もちろん予算の問題も幾分はありましようが、そういつも夜間ばかりの作業ということもできませんし、逆に活線作業に対する研究というものが進んで、私たち鉄道に入りました二十年ぐらい前からだんだん絶縁体というようなものがよくなつて来ましたし、これは私が聞いたことでよく知りませんが、電気の技術もだんだん発達しまして、大体活線作業でみなやるのだ、二十数年前から大体そういう方向に向つた。それで最近では防護その他がかなり発達して、戰前、特に戰時中夜間空襲警報がやられるものですから、晝間でなければできない。夜の作業はできないということから漸進的に、大体そう無理して、勤務を不自由にして夜間にはやらなくてもいいじやないかというふうに、特に戰時中夜間に火が使えないということから、晝間作業がふえて来たというふうに聞いております。
  28. 篠田弘作

    篠田委員長 この場合、桜木町駅の惨事の状態を見ますと、どうもいわゆる工手長といいますか、保線関係と申しますか、そういう方と信号関係、あるいは信号手と駅の関係といつたようなものの連絡が非常に悪いですね。これはたとえば電力区であるとか、電車区であるとか、車掌区であるとか、あるいは駅であるとか、そういつた業務運営の横の連絡というものは大体どういうふうについておるのですか。
  29. 白木龍夫

    白木証人 この業務運営架線工事関係ですが、特に今度の事故について、架線工事電力区がやつているが、電力区と駅と事前に連絡がなかつたのでありますが、従来架線工事架線作業というものから大きな事故が起つたということは、鉄道の過去の事故から見まして非常に少いのでございます。大きい事故架線事故からほとんど起つておりません。大きい事故線路を切る保線作業あるいは乗務員の居眠りその他によつて起る信号暴進ということから従来起つておるのであります。そういつた架線事故からそう大きな事故は起らないという認識が、従来歴史的に、経験的にあるものですから、従来ずつと架線工事をやる場合に、局報に出して全部に周知せしめてやるという方法をとつておりません。大きな、長区間、数百メートルにわたる電車線、その吊架線、メツセンジヤー、ワイヤ、それから饋電線というような、相当大きなもの、あるいは長時間にわたつて、横につております柱あるいはビームがありますが、そういう大きなものをやる場合は、停電もし列車を押えて作業をやるのであります。この間のように碍子をとりかえることですとか、つてありますハンガーのとりかえをやるというような場合には、従来は電力区が自由にやつてつたのでありますが、今度の事故にかんがみまして、ああいう大きな事故を起したについては、従来の方法を改めなければならぬと思いまして、東京鉄道局管内では事故の直後すべての取扱いを改めまして、従来線路をいじる場合にやるような取扱い手續にいたしましたが、それ以前は歴史的にそういうことになつておりました。  それから第二段の各機関連絡という御質問でございますが、これは駅関係では、駅連合会というものがございまして、毎月ある一定の範囲の駅が集まりまして連絡会を持つております。それから機関区、車掌区その他こういつたものは、大体隔月かあるいは毎月くらいに、たとえば電力区長会議車掌区長会議電車区長会議というようなものを、局に集めまして会議を開いて、同系統の区同士の事務上の指導連絡に関すること、あるいは修繕に関すること等連絡をしております。それから次には電力区と車掌区、駅等の総合した現場機関連絡ということになりますれば、これは地区連合会というものがございまして、これは大体その都度やることになつておりますが、実績は各月あるいは一月おきくらいには、特定の地区連合区長というものがおりまして、会議を開催して、その地区内における各機関の長並びに責任者を集めまして横の連絡をとつております。その会合はその地区連合区長が主催いたしますが、それには議題があらかじめわれわれの方へ予報されまして、それに対する関係の、われわれの方の言葉で言えば主幹と申しておりますが、皆さんにぴんと来る言葉では何々課長というものが出席いたしまして、提出されました議題あるいはその他についての説明に当つております。
  30. 篠田弘作

    篠田委員長 先ほどあなたの御証言では、工手長が第一の責任者であるというふうに言われましたが、それは見方によつて工手長が第一の責任者と見えるかもしれぬ。しかしこの委員会で調べたところによると、責任を果したと見られるのはわずかに工手長一人のように見える。とにかく架線が切れたとたんに二百メートル走つて行つて連絡した。それから大船かどこかの電力区へ電話をかけて、電力を切らせるとか、そういうようなことをやつたの工手長一人、これももちろん不十分であつて責任を果したとは言えぬか知らぬが、責任を痛感してとにかく働いたのは、われわれが委員会で調べたところによると、工手長が一番よくやつているようにぼくらは考えている。そういう面から見て行つて、ふだんの職員教育訓練がいかにも不十分だが、そういうことは一体どういうふうにしてやつておられるのか、第一にまず職員養成所教育目的内容教育年限、そういうものについて一応御説明願いたい。
  31. 白木龍夫

    白木証人 全部に対してでございますか。
  32. 篠田弘作

    篠田委員長 ええ。
  33. 白木龍夫

    白木証人 養成所教育年限というのは、御質問でございますが、すべての職員に対して私残念ながら期間は知りませんので、後ほどまた調べて御返事いたします。
  34. 篠田弘作

    篠田委員長 これはだれの係になつておりますか。
  35. 白木龍夫

    白木証人 局内ではですか。——厚生職員長であります。
  36. 篠田弘作

    篠田委員長 職員養成所というか、教習所は今各管理局内一つぐらいありますか。
  37. 白木龍夫

    白木証人 ございます。
  38. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは、たとえば関係信号掛でありますとか、あるいは車掌、こういつたものはありますか。
  39. 白木龍夫

    白木証人 職員全般に対してのいわゆる養成期間、科目の御質問でございますので、それは私現在お答えしかねる、こうお答え申し上げたわけであります。
  40. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは職員の平素における実務訓練といいますか、そういう危險な際にどういう訓練をしているかということはおわかりですか。
  41. 白木龍夫

    白木証人 先ほどの問題にもどりまして、信号掛とか車掌とかならわかつております。養成期間、それを申し上げてよろしうございますか。
  42. 篠田弘作

    篠田委員長 ええ、いいです。
  43. 白木龍夫

    白木証人 いろいろ車掌なんかも卒業した学校とか何かありますが、大体現在で言いますと、車掌につきましては、中学校を出ました者は、職員養成所へは入りませんで教習所へ入ります。そうして現場仕事を二年間やつた者車掌試験を受けますが、試験を受ける前に車掌見習を三箇月やりまして、そうして試験を受けて車掌になります。
  44. 篠田弘作

    篠田委員長 三箇月ですか二箇月ですか。
  45. 白木龍夫

    白木証人 三箇月でございます。車掌見習期間が三箇月で、それから採用試験を受けて車掌になります。
  46. 篠田弘作

    篠田委員長 車掌は二箇月の教育を受けたということを言つていますがね。
  47. 白木龍夫

    白木証人 それはあれじやございませんですか。養成所で何かこのほかにやつておるのでございませんでしようか。
  48. 篠田弘作

    篠田委員長 わかりました。
  49. 白木龍夫

    白木証人 それから先ほど現業を二年と申しましたが、現場仕事をやつていない者は二年でなく二年半やらなければなりません。半年ふえるわけであります。  それから同じく中学校を出ました者で運輸関係現業を一年やつた者は、教習所普通部車掌科試験を受ける資格ができて試験を受けてそこで四箇月の養成期間——先ほど申しました二箇月というのはきつと普通部を出た者でございましよう、それは車掌見習を二箇月やつて最後車掌採用試験を受けて車掌になります。
  50. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと運転士などは……。
  51. 白木龍夫

    白木証人 運転士について、やはり中等学校を出ました者を申し上げますが、中等学校をでました者は、見習を六箇月やりましてそれが済んでから採用試験をいたしまして電車運転士になる、こういう道もございますが、これはかつて戰時中等に極端に不足した場合にやつたので、現在ではほとんどございません。普通は採用試験をやりまして必ず教習所へ入れる建前をとつておりますので、高等小学校を出た者と大体同じような採用方法をとりまして、採用試験をして運転士見習を三箇月やり、教習所電車運転士科で六箇月やり、それから出て来ましてさらに運転士見習を四箇月やつて電車運転士になる。大体現在ではこの形が普通になつておると思います。
  52. 篠田弘作

    篠田委員長 それでけつこうです。次に桜木町駅の国電事故運転士車掌電力工手信号手、こういう者のとつた行動について、監督者としてあなたはどういうふうに見ておりますか。
  53. 白木龍夫

    白木証人 初めに運転士から申し上げます。私横浜検察庁現場立合いにも参りましたが、当時十一号のロの事故が起きたところで架線が切断した結果、実測の結果は架線が約三百ミリ——約一尺垂下いたしましたので、そのとき三百ミリも下つておれば運転士信号の前に目で当然わかるのではなかろうかと思つて初めは参つたのでありますが、当時夜でございましたが、下からわれわれ見まして下つておることの認識が困難でございます。それから今度は電車に乗つてつたらわかるだろうというので、試運転電車に乗りましてそこへ皆と一緒に参りまして、蒸気機関車に押させてかなり徐行して入つて行つたのでありますが、立会つている者は全部どうもわからなかつた。われわれ机の上では一尺も下つておれば当然わかるはずだと思いますが、事実はわからないというように考えました。従つてあの当時、乗務員上り線の四号柱のところで架線が波を打つてつたのを知つてつたと申しておりますが、先がいいように見えたので入つて行つたというのでありますが、われわれの試験の結果と合致しておりますので、われわればかりでなく試験のときに立会つたすべての專門家は、当時あれをとめろという判断は無理じやなかつたろうかという結論に達しました。ただこの乗務員につきましては、火事が起りました以後の行動については、われわれもまだ考えておるところもありましてその事後の旅客の措置その他についての問題はございます。  次にやはり事故が起りました原因までのことを信号掛について申し上げますと、信号掛は、いろいろな試験では及第点をとつておりますが、われわれの見るところでは、何と申しますか、非常に実直と申しますか、鈍いと申しますか、そういう点が感得されます。しかしわれわれの従来のあれから見ますと、大体構内に育つて来ました信号掛というような職名の人の大部分は、ああいつたふうで、気のきくというするどさのある人は非常に少いのでございまして、実直な人が多うございます。これは間違いかどうかは別として、実際には多うございます。しかしあのときにわれわれとしましては、信号掛上り電車はいいか、下り電車は悪いかということよりも、番線を、一番線がいいのか、二番線がいいのか、信号掛としてはそういう聞き方をすべきではなかつたか。そうすればおそらく電力工手長も、番線で聞かれれば明確なことが言えたんじやないか。ただ信号掛は、先ほど申し上げましたように、敏活な判断を持つていない男なものでありますから、助役から聞かれましたときにも返事に窮しておる。いい説明ができない。また電力工手長に聞き直そうとかかつたときに、すでに電車が入つたということに、調べましたところの供述ではなつておりますが、そういつた点から見まして、もう少し正確な注意をし、いい判断をしてもらつたらよかつたんじやないか、こういうふうに思つております。  それから車掌でございますが、車掌で一番考えられますことは、なぜもつと早くドアを開かなかつたかということなんですが、われわれがきのう最後の調べをいたしましたときに、車掌電力工手地上からこういう合図をしたという供述をいたしました。電力工手でそういう供述をした者はございませんし、調べましたところが、それは電力工手ではございませんで、ホームにいます半田という駅手でございます。その駅手が信号掛から岩田助役のホームの部屋に、架線が切れて事故が起つたからという電話を受けたので、何か現場事故が起つたんだろうというわけで、その電話を半分聞いてすぐ岩田助役に渡して、半田という駅手はその線路の方へ走つて行つたわけでございます。走つて行きながらどこの架線が切れてるかを見た。ところがその四号柱のところへ行かないうちにすでに電車が入つて来まして、ひつかかつて火を吹いた。彼は地上でそれを見たものだから、ドアをあけろという合図をしたのでございます。その合図を車掌が見て、これは電車をとめろという合図だと思つた地上のは電力工手ではなくて駅手の半田がドアをあけろという合図をしておつたのでございます。それで車掌は何か前の方でスパークしたというので、飛びおりて途中まで見に行つて、そうしていよいよこれはたいへんだというので、帰つて来てスイツチを押した。そのときすでにあかなかつたということでございます。その間時間を食つておりますので、もう少し機敏であれば、ある程度ドアがあいたんじやないか、スパークしたとたん、二十秒ぐらいの間にスイツチを押せば、従来の例ではスパークして二十秒以内ならば、まだ発電機の惰力がきいておりますので、開けたんじやないか。しかしこれも実際突発の場合には、車掌はすぐ地上へ飛びおりますので、もどつて来てスイツチを扱うということになれば、われわれはまあ欲を言えばそういうことが言えるのでございますが、現地においてはあるいはこれを求めることも無理だろう、こういうふうに思つております。
  54. 篠田弘作

    篠田委員長 今度の事故を通観して見まして、大体座席の下にある三万コツクというのを引けばあく、これは座席のところまで車掌運転手も行けなかつたのだから、お客がやらない限りはできない。しかし車外に備えつけてあるDコツクをあれすれば戸があくということは運転手も知つていた。それから乗つていた金子という検車掛はもちろん知つていた。これは二人ともそれをやつていない。あと車掌とか駅員はだれも知らない。起つた事実については、これはほんとうの不慮の災難、いろいろ不注意もありますけれども、結局において不慮の災難と見られるところもあるわけですが、その後の処置が適当であればこんなことはない。しかるにだれもお客を助けよう、まず優先的に一番最初に人命を助くべきであるという考え方がだれにも来ないのですね。その運転手にしても、客をまず第一に助けなければならぬということになれば、ドアを開くのが普通常識です。お客として乗つている立場に立てば、事故が起つたとき一番最初に飛び出したいということはあたりまえである。それをふだん教えておつても気がつかなかつた、あるいは全然それを教えてなかつたということは、重大なる当局の手落ちである、私はそう思うのです。要するに、いずれも客に中心を置かないで、電車に中心を置いた——これは少し言い過ぎであるかもしれないけれども、しかしそういう印象を受ける。これは戰争中あるいは戰後、客を並べて詰め込んだ、十五、六の駅手がお客をどなりつけても、それでもお客が言うことを聞いておつたというようなときから、公共企業体にかわつたが、その切りかえが依然として頭の中に、上の方も入つていないし、下の方も入つていないと思うのですが、こういう方面に対する事故発生の場合の教育あるいはこれに対するふだんの心構えというものが、どういうふうになされておるかということをひとつつてください。
  55. 白木龍夫

    白木証人 ただいまの、運転手がスイツチを扱わなかつたということ、お言葉を返しては悪いのでございますが、われわれの調べたところでは、運転手は火を吹いたとたんに外に飛びおりた。そうして見たところが屋根から火を吹いておる。見ると車掌がドアをあけていない。それでもう一回中にもどりましてドア・スイツチを扱つた。それから同じように両側にありますので、もう一つ向うのスイツチを入れた、こう申しております。しかし事実はあかなかつた。それからまた外に飛び出て、どうしようかというので海側を走つて三両目のところに行こうとしたところが、熱くて通れないので、前をまわつて、山側へまわつて、三両目と一両目のところに上つたということは申しておりましたが、その間に一回上つてスイツチを扱つたが、ドアは事実あいておりません。
  56. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたのおつしやることは、運転手を調べましたが、そういうふうには供述していないのです。運転手は発火と同時にパンタグラフを下げて電気を切ろうとしたわけです。それでうしろを見たところが、火を吹いておるということがわかつたので、これはたいへんだと思つて車掌スイツチか何かを押した。押したけれどもドアがあかない。そこで電流が来てないからだと考えて、またパンタグラフを上げて、またスイツチを押したけれどもあかない。これはたいへんだと思つてすぐ飛びおりて裏へまわつて、裏の車両の一両目と二両目の連結台の上に上つてドアをあけようとしたがあかない。そこでお客が足を出したり、顔を出したりするから、それをひつぱり出した。飛びおりてからまた上つたということは一つも言つておらない。
  57. 白木龍夫

    白木証人 それは乗務員が私の方で初め供述したのもそうでございます。しかしわれわれは火が吹いたあと、運転台にすわつてつて、ドアがあいておるかどうかわかるか、おそらく普通だつたら火が吹いたときやはり飛びおりるのが常識ではないかということが專門家の考え方でありまして……。
  58. 篠田弘作

    篠田委員長 火が吹いたら飛びおりるのが常識ですか。
  59. 白木龍夫

    白木証人 いや、火が吹いたというのは運転台にいてはわかりませんから、どうなつただろうと外へ出て見る、それで飛びおりたのじやないかというふうに見たわけです。それから普通車掌なんか何か事故がありますと、すぐおりて走りますから、乗務員あたりも自分の運転台にいるよりも、すぐ外へ顔を出すか、あるいは飛びおりるのじやないか、調査をいたしました結果、一回外へ出たのは確からしい。当人も、誘導尋問を私らいたしましたが、そういうことも当時のことから記憶が確かでないかもしれませんが、私の方で調べたところでは、今申し上げた通りであります。
  60. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたはこの運転士をいつ調べましたか。
  61. 白木龍夫

    白木証人 私らではございません。私らの方にはきのう報告が全部集まりまして、調書が全部集まつておりますから、その報告であります。
  62. 篠田弘作

    篠田委員長 それはいつですか。この委員会で調べたよりも前ですか、あとですか。
  63. 白木龍夫

    白木証人 十八日でございます。
  64. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、運転士がここへ来て違つた陳述——言いかえれば虚偽の陳述をしたことになりますね。
  65. 白木龍夫

    白木証人 それはわかりませんが、私の方の調べはそうなつておることを申し上げただけであります。昨日のこちらの運転士の供述は存じません。
  66. 篠田弘作

    篠田委員長 この問題は運転士の供述に関するものですから、あとで速記録を調べまして、あなたの調べとこつちの調べと対照しますが、必要があればもう一ぺん呼ばなければならぬと思います。それでは全然違つた供述をしていることになります。  もう一つ、私らの常識から言いますと、とにかく雷のような音がした、同時に非常なものすごいスパークをしたわけであります。これはいけないと思つて事故が起つたということは直観的に感じますから、パンタグラフをおろします。それでうしろを見たら火を吹いている。火を吹いているということは、何も外へ飛びおりないでも、自分が振り向いたせつなに火を吹いているのだから、これはあぶないというのでドアをあけて、お客を助け出さなければいかぬというのがぼくらの常識だが、あなた方の常識では、大きな事故も小さな事故も外へ出て調べなければならないのか。私らの常識とは違います。
  67. 白木龍夫

    白木証人 それは誘導尋問で調べましたときに、飛びおりたのではないか、火が吹いたので一旦飛び出したのではないか、こういう疑問を持つたのであります。誘導と申し上げますか……。
  68. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、あなた方は運転士の供述をそのまま聞いたんじやなくて、誘導尋問によつて供述させたのですか。
  69. 白木龍夫

    白木証人 誘導という言葉は撤回いたします。われわれはいろいろ想定をいたしまして、そうじやなかつたかというようなことを言いましたので、誘導と申しましたが、そのことは取調べの結果と申します。
  70. 篠田弘作

    篠田委員長 それで部下に対する災害が発生した場合の乗客に対する処置、あるいはふだんの乗客に対する心構えというのは……。
  71. 白木龍夫

    白木証人 まことに申訳ないのでありますが、先ほどの床下にありますコツクでございますね、元締切りコツク、Dコツクと申しておりますが、あれにつきましては先ほど申し上げましたように、国鉄としては従来架線からこういつた大きな事故が起るということを想定しておりませんでしたので、実は車掌に対してもこの取扱いについて言い聞かしておりません。
  72. 篠田弘作

    篠田委員長 想定しないのになぜDコツクなんというものをつくつているのですか。何かの場合の危險が予想されて、内部からあかなくて困つたときがあつたら外からあけられるようにDコツクというものをつくつたのじやないか。つくつて教育しないというのがおかしいじやないか。
  73. 白木龍夫

    白木証人 私は專門家ではありませんからよく知りませんが、專門家の使つたあれを聞きますと、Dコツクはふだん修繕のときに、下でもつて検査をしながら、上のドアをあけたり閉めたりするとき、ドアの閉まりがいいか悪いかというときに、中へ行かぬでできるように現場で使つているのだ、検査のときに使つているのだ、こういうふうに聞いております。專門家からそういう報告を受けております。
  74. 篠田弘作

    篠田委員長 今回の原因は、架線を切つたことも信号が悪かつたこともいろいろありますが、とにかくスパークをしたせつなに運転士が飛び出してDコツクをあけておれば、お客はほとんど大部分は、けがくらいはしたかもしれませんが、助かつているのですよ。百何人と殺す必要はない、それをただ、Dコツクというのは検査用につけてあるというのは、われわれとしては受取れないのですが、管理局長としてあなたはそういう專門家の意見、Dコツクを検査用のためにつけてあるということを是認しますか、否認しますか。
  75. 白木龍夫

    白木証人 是認否認ではございませんで、事実がそうであつたということ……。
  76. 篠田弘作

    篠田委員長 そうであつたということはいいですか、悪いですか。
  77. 白木龍夫

    白木証人 今度の結果からいえば悪いと思います。われわれは非常に責任を感じております。
  78. 篠田弘作

    篠田委員長 そのほかに何か試験だけのためにくつけてあるものがありますか。そういう重大なもので、Dコツクのほかに。
  79. 白木龍夫

    白木証人 私は電車の方は專門家ではありませんから……。
  80. 篠田弘作

    篠田委員長 試験だけのためにDコツクをつけてあつて、そういうときに使うことはだれにも教えてないということは、車掌に聞いたら、消火についても消火器はあるけれども、消火器の使い方も何も知つておらぬ、どこにあるかということも注意しておらぬ、しかしふだん火事があつた場合には消火をしろということは教わつている。消火をしろということは教わつているけれども、消火器がどこにあるかということはわからないし、その使い方も教わつていない。それでは火事があつても、消火器のありかを探して、どういうふうに使うかということを聞いていれば、たいていのものは燃えてしまうのじやないか、消火をするひまはない、これが車掌の率直なる陳述なのです。その点について教育というものがまつたくなつていない。普通われわれの常識から見ればまつたくなつていないというふうに考えられるのですが、どうですかあなたは。
  81. 白木龍夫

    白木証人 今度のことはまことに申訳ないことでございます。電車の火災ということについてのわれわれの経験の未熟あるいは不勉強から、この点は確かに結果から見てまことに申訳ないと思います。
  82. 塚原俊郎

    ○塚原委員 これだけの大事件についてあなた方の責任を私はここで追究しようとは思いません。しかしながら禍を転じて福となすという意味からも、今度の事件であれだけなくなられた方方の霊を慰める意味からも、国鉄は大いに反省をしてもらいたい。あの事件が起きた後、あなた方は至急に臨時局長会議というものを開かれて、出された結果というものをわれわれ新聞で拝見した。しかしこれはわれわれにとつてははなはだ満足できないものがたくさんある。今度の事件というものは私たちしろうとから見ましても、連絡の統一というものが全然なかつたということが一番大きな原因つたと思います。それから今までずいぶん証人を調べましたけれども、まことに失礼な言い方かもしれませんが、責任感というものを全然感じていない。国鉄は一体精神教育をどの程度にやつておるのか、大いに疑問なきを得ないのであります。この間局長会議の結果、あるいは三万コツクのあるところを矢じるしで教えるとか、通路に幌をつけて汽車のようにするということで、その結果を発表しておりますけれども、私はそれよりも大事なものは、こういつた事故を起して何の責任も感じないし、責任のがればかりを考えておる、しかも連絡の統一が全然ない。こういう第一線に働いておる人たちに対する再教育というものが絶対必要になつて来ると思いますが、これに対する対策というものが、局長会議の結果何も出ていない。一体三万コツクのありかを教えることもけつこうですが、その根本をなすところの再教育というものをどういうふうにするのか、この間運転士の話を聞いてみると、月二回実務訓練というようなことを八人か十人で教わつたことがあるというけれども、これはいかに運転士が言おうとも、実に形式的な——軍隊的にいえば員数にすぎない。そういうものはいくらやつて意味がない。あなた方は幌をつけたり、矢じるしを示したりするよりも、再教育について一体どういうことをこれからやらんとするのか、実務教育、精神教育、再教育、これについての対策をはつきりお聞きしたいと思います。
  83. 白木龍夫

    白木証人 お答え申し上げます。実務教育では、おしかりを受けるかもしれませんが、とりあえずDコツク、消火器、その他につきましては関係職員に全部周知させております。それから今後の再教育の問題でございますが、これは東鉄管内といたしましては、われわれ初め非常に悩んでおる問題でございまして、現場職員からは、あの問題が起きましてから、非常な責任を痛感したという気持ちを、われわれのところへ、現場長が申し伝えて参つております。今度の事故は、実にこれは現場責任だ、もちろん上の人の指導も悪かつたかもしれぬが、少くとも現場の心がけが悪かつた、これを起した東鉄の職員六万人はまことに申訳ない、それでわれわれ現場といたしましても、上の方からものを言つてもらわぬでもよろしい、これから事故を起さない運動ということのために、あらゆることをやろう、ひとつ見ていてくれ、そうしてこの運動が成果を結ぶことにつきましては、東京鉄道管理局管内ばかりでなく、ほかの管内にも呼びかけて、これを全国的な運動に持ち上げて行こう、そういうことをしなければ、今度生じた事件に対して鉄道としての責任は果すことができない、それがせめてものおわびである。またそういつた心の現われから、罹災されました方々に管内の職員がみな醵金いたしまして、約百数万円集まりましたので、実は遺家族の方にも贈つたのでありますが、われわれといたしましても、この間からも連續現場長を集めまして、技術的な指導はもちろんでございますが、ただいまお話がありましたように、われわれはこの事故で考えなければならぬことは、今御指摘されましたような根本の問題に触れなければならぬのじやないか、もつと真劍に、いわゆる鉄道人としての考え方を掘り下げなければならぬ、ただいままだ具体的に、教習所期間を延ばすとか、そういつた面には行つておりませんけれども、われわれといたしましては、この際特に事故を直接起しました東鉄の職員は、これをもつてとつあらゆる面に、旅客扱いの面、あるいは貨物扱いの面、そういつた面に、今までの贖罪といいますか、そういう意味であらゆる努力をしようじやないかということが、各現場機関から持ち上つて来ております。またわれわれもこの問題で、たとえば先ほど御指摘にありましたように、幌をつける、矢じるしをつける、あるいは防火塗料を塗る、あるいは二重天井にするというような、物理的なこともこれは当然でありますが、これによつてわれわれ関係職員がほんとうに心を入れかえるという運動を、何とかしてつくり上げて行こうということが、現場から起つております。われわれもそれを盛り上げて行きたい、こう考えております。
  84. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それはあなた方のお気持は私も十分察せられます。しかし私がお聞きしているのは、そういう抽象論じやないのです。あの事件が起つた翌日からでも、それについての根本的な問題というものが出て来なければならぬはずなのです。それは現場その他一体になつてやるからというから、それは実績でいずれお目にかかりましよう。しかしそれよりも、私が聞いているのは、実際にどういうことをやろうかという対策がもうすでに立つていなければならぬと思う。教習所の数をふやすことがきまつてないとか何とかおつしやいましたけれども、そんなことよりも、実際に具体的に再教育でこういうことをやる、こういうことをやる、ということは、すでにできておると思う。私はそれを聞いておきたいと思う。できてないならできてない、研究中なら研究中、どちらでもけつこうです。もしそういう御答弁があるなら、私は国鉄に対して完全にあいそをつかします。あるかないか、それだけ伺いたい。
  85. 白木龍夫

    白木証人 車両対策は確然としております。また現在職員仕事のやり方というものに対しての指導監督を強化するということは考えておりますが、教習所教育をどうしようかということまでに至つておりません。
  86. 篠田弘作

    篠田委員長 ちよつと塚原委員に関連しますが、この事件は車両の欠陥というよりも、乗つている、あるいは事業に携わつている人間の欠陥が大きかつたということを、あなた方考えておりますか。
  87. 白木龍夫

    白木証人 はい、これはわれわれ十分に考えております。これは教習所で行くか、教育制度で行くかという問題は、非常にむずかしい問題でございまして、われわれとしては先ほど申し上げましたように、そういう贖罪と申しますか、そういつた一大運動を盛り上げて行こう、そしてたとえば上野の駅とか、ああいつた大きい駅では、毎朝一分間は桜木町事件に対して黙祷をささげる、そういうようなあの事故を身にしみて考えて、荷物を扱うにも、お客を扱うにも、そういつた気持ですべての仕事をやろうというふうに考えておりまして、教育制度の期間を延ばすとか、そういつた問題につきましては、まだそういうことに至つておりません。
  88. 塚原俊郎

    ○塚原委員 教習所の数をふやすとか何とかいうこともたいへんでしよう。しかし私が言うのは、毎日々々業務に携わる者にいくらでも実務教育はできると思うのです。あなたは現に現場の人を集めて話し合つたというのですが、一分でも二分でも時間があれば、精神教育も実務教育もできると思うのですが、それをまだやつていないのですか。
  89. 白木龍夫

    白木証人 そういう実務教育はやつております。今教育機関というか、制度のお話がありましたから……。
  90. 塚原俊郎

    ○塚原委員 具体的にどういうことをやつておりますか。
  91. 白木龍夫

    白木証人 たとえば、命令を出しまして、電力作業を与える。教育につきましては、点呼のときに、従来は点呼は全部現場でやつておるのでございますが、これは点呼の巖正ということで、あらゆる管内に起つた事故、あるいは部外に起つた事故なども、細大漏らさずたたき込め、それから会議も、指導関係会議というものを、あの後全管内の指導関係の全部にわたりまして関係、ことに会議をいたしまして、今度の事故から、今後はそういつた実務教育を強力にやつて行くように指示いたしております。
  92. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 各証人に今日までおいで願つて、この事件の真相、あるいは今後の対策等についての証言を願つておるのでありますが、われわれ委員といたしまして非常に残念にたえないのは、今日までおいでくださつた証人が、各自申訳ないということは言つているが、その証言自体にほんとうの申訳なさと、責任感というものが受取れないのであります。たとえば先ほどあなたが言いました通り、中澤工手長証言とあなた方が調べたところとが違つたり、あるいはまた運転士証言とあなた方の調べたのが違つたり、というようなことでは、これはいかに金を集めて遺家族を見舞うとか、あるいは黙祷をささげたところで、ほんとうにすまなかつたということが、まだ受取れません。それから東鉄全管内を初めとして、全国に国鉄のいわゆるまじめさをやろうという運動をしているというが、それに対しても、私らはまだ——これはよそのことになりますが、この事件が起きたあとにおいて、全国の知事選挙なんかを見ると、やはり国鉄の自動車を走らして、選挙には一生懸命だが、職務の方の今後の対策については、そうわれわれは感じられない。言葉においては一生懸命やるというが、他の方面には一生懸命だが、仕事の方面は一生懸命でないという結論に達するのです。たとえば証言の中の一つ、二つを拾つてみますと、先ほど九人からなるいわゆる架線工事、それでいわゆるメツセンジヤー、ワイヤが切れたので、中澤工手長連絡行つた。そうするとあとに残つた八名のうち、少くとも二人の見張人がいるわけです。三名が一組ずつになれば、その六名が仕事をして二人が見張りをしているということになるのですが、今までの証言を見るとそうじやない。その八名全体が、その切れたところの線をロープや何かでつないで、全部仕事にかかつていた、こう証言している。一人も見張りをしていなかつたこういうのですが、あなた方の言う二人の見張りがついていたというのがほんとうなのですか、それとも全員が、いわゆる切れた線をロープや何かでつないで仕事にかかつていたというのが真実なんですか、どちらがほんとうなんですか。
  93. 白木龍夫

    白木証人 その点は明確ではございません。
  94. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 先ほどあなたは二人は見張つていたということでしたので、私はそれがほんとうかどうかということを開いているのです。
  95. 白木龍夫

    白木証人 見張りはついておりましたが、先ほど私が申し上げたのは、当時列車はあぶないということさえあのとき言えば、本人たちは旗を出したろう。しかしあとを頼むぞというのでは、例の線路は違つているものですから、早くつなぎたいということに勢力を奪われて、しかし片方その下にいた連中の供述を聞けば、あの渡り危險と認めなかつたというのですから、勢い自分の方に上り電車が入つて来ない以上は、自分の身に危險がなかつたわけであります。ですからあの渡り危險だ、この電車をとめなければならぬというのであれば、見張りも必要だつたのですが、この渡り危險でないと二人とも認識しております。だからあのときには、あるいは実際は見張りをしておらぬと思います。
  96. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そうすると二人の見張りがすべきものであつたが、見張りはしておらなかつたというように解釈してよろしいですか。
  97. 白木龍夫

    白木証人 いや、従来などでは見張、りはすべて仕事を手伝つてはいかぬというものではございません。もう電車が来るというようなときに見るというようなものでありまして、何も見張り見張りだけやつておるというものではございません。
  98. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それから見張りの考え方ですが、先ほどからあなた方は、見張りというものは工事に着手しておる人たちの身の危險ということをおもに見張つておるような証言でありましたが、私らの考え方によると、常にそこは電車が通る。しからば事故が発生したならば、当然その事故発生というものは、その通る電車にも及ぶ。その及ぼす危險の大きいか小さいかの想定は、おそらくその人たちには薄かつたろうと思いますが、通る電車にも危險が感じられるということになれば、工事をしておる人たち見張りばかりでなく、電車の中には何百人という乗客があるんだということを考えるならば、当然電車に対しての見張りということもわれわれは考えられるのですが、先ほど委員長から、あなたに証言を求めたことに対して、どうもぴんと来なかつたのは、工事をしておる人たちの身の危險だけを見張りするようなことにわれわれはとれた。その点をはつきりしていただきたい。工事をする人たち見張りか、それとも何百人乗つておる電車の運行に関する見張りか、両方であるかどうかということをはつきりしてくれないと、非常にふに落ちないと思う。
  99. 白木龍夫

    白木証人 それはおつしやる通りでございます。たとえば線路閉塞工事をやりますときの見張りは、仕事の方より列車をとめるということが主体であります。もちろん技術的なことも指導監督する。線路をやるには、ヒーターと申して機械をもつてつておりますが、これなんかは本人に対する見張り仕事ではありますが、線路において脱線させてはたいへんだということが見張りの本質的な仕事であります。
  100. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そうあるべきだと私も思つていた。ただ先ほどの証言ではつきりしなかつたから……。そこで今度、中澤工手長連絡行つた。そうすると一般には赤と青の信号旗を持つていたはずです。それを中澤工手長はそこに置いて行つたはずです。そうするとそれを使うのは、副工手長なり、あるいはその工事の上位にある人たちが使うのが当然だと思うが、電車が来たのにその信号旗を使わなかつたということは、どういうことで使わなかつたのか。危險でないと思つたから使わなかつたのか、それとも工手長がいないから、われわれはそんな責任はないんだというので使わなかつたのか、どちらですか。
  101. 白木龍夫

    白木証人 これは本人を調べた結果は、危險を認めておりません。
  102. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 危險を認めていないということなら、これはそれ以上聞いてもわかりません。それから、架線工事は深夜作業のものが、今はいろいろな技術も進歩したので晝やらせている。しかし安全なのは夜間作業だろうと思うのですが、予算関係でもない、ただ戰争中に空爆等があつて、夜火を使えないという習慣から、今日なお晝やることになつておるのか。あるいはまた仕事の時間的な問題とか、夜やるよりも晝やる方が本人のいろいろの都合もいいというようなことですか。万全を期すということになれば、やはり電車の通らぬときの作業の方が私らは当然であろうと思うが、今後はこういう点は安全をはかつて夜間作業をやるという御意思がありますかどうか、ひとつ承りたい。
  103. 白木龍夫

    白木証人 これは従来そういうやり方でやつて参つたのでありますが、ただいまのところは、とりあえず電車專用区間は全部夜間作業を停電時間にやつております。ただ東海道線あるいは中央線、特に東海道線でございますが、夜間停電のできない区間ですから、これはやはり十分な注意をする。しかしできれば夜間やる。時間さえとれれば停電をさせて列車をとめてやろうということの達しもあの事件が起つてから出しております。
  104. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そういうことがこの事件後の具体的な処置だろうと思うのです。ですから私は先ほどこれは夜間やるのが安全だという証言をいただきたかつた。今はつきりしましたが……。  それからあなたはこの事故発生と同時に現場をごらんになりましたね。現場をごらんになりまして、事故の発生はいろいろ不可抗力だということも言われるが、しかし連絡の不十分だつたという点でわれわれは遺憾に思うのです。事故が発生してからの運転手あるいは車掌、この方々のとられた行動に対しては非常に無責任だということが考えられます。先ほどから時刻の問題も出ておりますが、開閉器が十分でなかつたからパンタグラフを上げたり下げたりしたということは、もう意識的に戸をあけるという考え方だろうと思うのですが、戸をあけるのにふだん使つているものが使用できなかつたときのDコツクについては、今でもあなた方は單なる試験的にだけ使うというお考えでありますか。それともこれはどうしても開閉器のきかない最後の場合の裝置だというようにお考えになりますか、それをひとつお述べを願いたい。
  105. 白木龍夫

    白木証人 われわれといたしましては従来の考えをやめまして、あれは現在は大体一方に一箇所でございますが、これを一個増設いたしまして、十月一ぱいには下方に両側につきます。それから車内では、これはお客様に、あなた方の力であけるのだということを求めることは、わがままのようでございますが、今のいすの下にある開閉器は、いざという場合にはものの役に立たない。あるいはちよつとこんでおれば踏み倒される、いすの下に手が入らないということを考えまして、中央のドアのちようどわれわれの肩の高さに一つの窓をつくりまして、その中にコツクを一つ入れます。これは事故が起りましても、下からもあけてくれないという場合があるとすれば、それはガラス戸でございますから、ちよつとそのコツクを引けば全ドアがあくという裝置をやることにいたしております。
  106. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 それからいろいろなDコツクや開閉器の操作ができなかつた、そうして車掌並びに運転手は外へ出てお客さんが逃げ出すのを手伝つた程度ですか。燒けた電車をごらんになりましたね。
  107. 白木龍夫

    白木証人 はあ。
  108. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そのときに外部からこれを器物か何かをもつてあけようと努力したような形跡が見られましたか。
  109. 白木龍夫

    白木証人 話は聞いておりますけれども結果的には何も証拠の残つておるようなものはございません。
  110. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 これは桜木町駅の構内ですが、こうした大きな事故が発生していたときに、桜木町駅の職員はこの事故に対し、てあるいは救出作業等に対して、どういう処置をとられたかひとつ承りたい。
  111. 白木龍夫

    白木証人 申し上げます。桜木町のホームにいましたのは、信号掛が二人と助役と旅客掛、駅手の三人おるところが一人が下の方へ休憩に行つておりまして四人、合計六人でございます。それからあと数十人の人間は、例の貨物あるいは出札、改札等にいたのでありまして、この間も私駅長にじかに会いまして、あの当時でございますが、いろいろ聞きましたが、そのときに駅長がホームから電車が火事だという通知を受けて走つてつて行つたのは、おそらくあすこの距離から見て、五分くらいたつていたのではないか、四十七、八分じやなかろうか、こう申しておりました。そのあれと同時に、とりあえず駅長は自分のまわりにいる庶務掛、駅長室にいる人間だけはとりあえず連れて上つて行つた。見たところが駅長が上つたときには、すでに第一両目は全部火になつてつた、こう申しております。それでそのときにはすでに負傷者が——窓から出る人はなくて、すでにもう地上に数十人倒れておられた。これではたいへんだというので、さらにもどつて来て、すべての出札でありますとか改札でありますとか、こういう者を動員して上つて行つた。今度のこの事故の当時特に感ぜられますことは、非常に風が強かつたのと、電気が切れる時間が遅かつたために非常に早く燃えた。これは塗料の関係、その他いろいろの関係がございますが、風の問題、場所が高かつた。それから電車の向きがちようど——具体的に申しますと、あのときの風が南々西、わずかに南から西に寄つた風でありまして、当時の記録では十メートル強と出ております。南々西と申しますと、桜木町の駅はちようど南北でございます。ちようど電車が前を向いておる。あの電車は御承知のように前方から風を取入れる通風口がついておりまして、東京にありました車を使つておる場合は、東京にありました車は、冬中は全部前方の通風口をふさいであるのでございますが、たまたまあの電車は当時の一箇月くらい前にほかから来たばかりで、前があいておつた従つてちようどまつ正面から風が吹いておつた事故の発生が一時四十二分から三分の間とわれわれは推察しておるのでございますが、その間三分あるいは四分電気が切れなかつたというようなために、非常に大きな熱ができて、私病院の負傷者の方その他をおまわりして、軽傷の方、それから微傷の方にもお会いして聞いたのですが、あつという間であつたという御説明で、非常に火が早かつたということで、駅長に聞きましても、おそらくすぐ下から階段を上つて来て、ホームを走つて行つたのだから、どう考えても五分以上はたつていない。それにもかかわらず私が行つたときには、第一両目はほとんど下まで火がまわつてつたし、二両目にも火がついておつたということから、駅員が窓を割るとかそういうふうに動員される時間がなかつたわけでございまして、間に合わなかつた。従いまして当時人を助けた、あるいは手助けしたというものを聞きますと、中村運転士が一両目と二両目との間で三、四人お手伝いたしたように思う。金子検車掛が一両目で四、五人か出て来た人をひつぱつたように思う。大矢車掌がこれまた二両目のドア、その他で七、八人助けた。先ほどの石田という人夫長がこれが手伝つたというようなことでございまして、あと駅員は総計では、あの当時駅員は六名初めに行きまして、大体かけつけたのは駅員六名、すぐ下にあります東横浜の貨物ホーム、あすこから上つて行つたのが十八名、東横浜の駅から上つたのが四十名、計六十四名、その後かけつけたのは桜木町その他からで、非常に大きな数になつているのでありますが、駅長に聞いたところでは、自分行つたときは今申し上げましたように、あすこにいた人間運転士と検車掛、転轍手、車掌、これ以外にはだれもいなかつた。それでしかも自分行つたときは五分とたつていないが全部火になつていた。あとけつけた庶務掛は外に出たけがをした人を運ぶというようなことに没頭した、こういうように申しております。
  112. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 そこに同じ処置をとるにしても、われわれ精神的に非常に不満にたえないものがある。たとえば駅長が最初四、五人の者と出て行つた。そうしたらそのときにはのがれるというよりも、やけどした人がころがり落ちる。これではだめだというときに、もう一回もどつて行つたなどというようなことでは、もうそこにわれわれとしてはどうもふに落ちない。たとえば駅長みずから火の中に飛び込んで行つても助ける。あるいは大きな声を出してでも駅の構内だから聞えるでしよう。それをわざわざもどるという精神がわれわれふに落ちない。これが国鉄全体の精神かと思うと情ない。私が聞きたいのは、そういう状態でたとい死んでおるとしても、そこにはいろいろ枕木なり何なり器物があるはずである。それで外部から戸を破るというような処置があつたかどうかということをお聞きしたかつた。今お聞きしますと、そういう処置は全然やつていないというのがほんとうらしい。ある程度お助けした、お手伝いしたようなことを言つているが、お手伝いどころじやない、みずから身を犠牲にしてやるのがほんとうだと思う。そういうことについて非常に遺憾な点があるのです。私もう一つお聞きしたいのは、これからのいわゆる国鉄従業員の再教育の問題で、いろいろ塚原委員からお尋ねがあつたのですが、われわれとしては今後その教育をするにしても、汽車を走らせる、電車を走らせるということはもちろんそうですが、目的はいわゆる人を運ぶ、あるいは物を運ぶということでありますから、その教育の方針をどこに重点を置いて教育されるお考えか、それをひとつ承りたい。
  113. 白木龍夫

    白木証人 申し上げます。たとえば今度のことでわれわれ残念に思いますことは、昨日の供述を見ましても、車を助けることは習つたけれども、人の救助については助けることは訓練を受けておらなかつたという供述があるのですが、われわれ従来からの考えでは、事故を起さない、ぶつけない、間違つたことをしないというようなことが即お客を守ることである。列車をひつくり返さないことが人を守り貨物を守ることだというふうに真劍に考えて参つたのでありますが、人命については、事故取扱い規則などの方針から見ましても、たとえば普通の人の指導にいたしましても、居眠り事故は絶対だめだ。貨車を脱線させるとかそういうことは小さいが、人にけがをさすということは大問題だというふうにやつて来た。そうして指導して参つたのでございます。この人の救出あるいは今度の事故に対するこういうことについてわれわれ反省されますことは、そういつた供述、こういつた面でございます。これにつきましてはわれわれは今後こういう、何と申しますか、想定されるあらゆる場合につきまして、電車の火事あるいはホームにおけるそういう場合につきましてのあらゆる人命救助、たとえば消火器の使い方、こういつたことはほんとうに徹底した教育をやろうということに腹をきめております。
  114. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 最後に一つだけ。これは承るというよりも、まだ私はぴんと来ないのは、そういう事故発生とか何とかいうことでなしに、国鉄自体がただ電車を走らせるのだ、汽車を走らせるのだという考え方でなしに、人を動かすのだということになれば、それから起る事故だけじやない、たとえば待合室の問題にしてもあるいは改札口の問題にしても、すべての問題が改まつて来るのじやないかという考え方から私はお尋ねしているので、どうかそんな事故発生とか消火器の使い方、こういうことはやはりいろいろやらねばならぬのは当然ですが、今後国鉄として今までの考え方を一擲して、人を動かすのだという根本的な教育方針をとつてもらいたいということを申し上げまして、私の質問を終ります。
  115. 山口武秀

    ○山口(武)委員 証人は先ほどの委員の質問に対して、現場の心がけが問題である、それでこの事件を契機として根本的に問題を掘り下げて行きたい、鉄道人の心構えというものをここでつくり上げたい、こういうふうに言つておられましたが、この問題を現場の問題に解消してしまうのは、もちろん現場にもいろいろ問題があつたはずですが、しかしながら根本的な問題をして現場の問題に解消さしてしまうということは間違つているじやないか、こう考えております。それで、むしろこの問題からわれわれの考えなければならないことは、国鉄の幹部の仕事のやり方に問題があるのじやないか、それから経営の問題にむりがあるでないか、こういうことが考えられますので、二、三の点をお聞きしたいと思う。  とりあえずお尋ねしたいと思いますのは、中澤工手長それからその現場仕事をしておりましたところの工手、これらの人はどういうところに所属した人であつたのか。それから先ほど証人の話によりますと、臨時人夫というものがおつたというお話ですが、この臨時人夫というのはどういう人であるか。この点をまずお伺いしたい。
  116. 白木龍夫

    白木証人 ちよつと伺いますが、第一段のどういうところにいたということですか。
  117. 山口武秀

    ○山口(武)委員 問題を引起した現場に働いていましたところの中澤工手長、それからそれ以外の八名の者がどういう国鉄の所属になつているか。たとえば何々区の何々分会とか何とかあるでございましよう。
  118. 白木龍夫

    白木証人 わかりました。
  119. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それからなお臨時人夫が使われたというお話ですが、この臨時人夫というものはどういうわけで使われたか。いつもこういうことで使われることがあるかどうか。この点をまず……。
  120. 白木龍夫

    白木証人 中澤工手長初め電力工手大船電力工手でございます。それから臨時人夫のお尋ねでございますが、臨時人夫は、鉄道仕事というものは、必ずしも常に一定量がございませんので、人手の足らない場合には臨時に人をお雇いし、作業の繁閑によつてやめるというようなことになつております。
  121. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、この工事はだれの命令で始められたのか、その系統を明らかにしてください。
  122. 白木龍夫

    白木証人 こういう工事はすべて電力区長が計画いたしまして、実施は分区長がいたします。
  123. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうするとこの工事は直営工事であつたわけですね。
  124. 白木龍夫

    白木証人 はあ。
  125. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それは間違いないですね。
  126. 白木龍夫

    白木証人 はあ。
  127. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それではなおお伺いいたしまするが、直営工事と請負工事鉄道のこうした工事において行われるということになると思いまするが、この請負工事ということ、あるいは直営ということをきめて行くのには、どういうことによつてこれがきめられるのか、この点を伺いたい。
  128. 白木龍夫

    白木証人 原則といたしましては、いろいろな工事の性質でありますとか、私これは残念ながら電力工事のあまり專門のことを知りませんが、大体が、同じ鉄道部内でも、電気工事事務所がやります工事がありまして、これは大体改良工事、管理局がやりますのが鉄道工事の随修工事のほとんどでございます。この工事を請負でやるか直営でやるかということは、結局直営が最も能率的に動いて行く、その過剰な分だけを請負に出すという原則的なことしか知りませんので、それ以上のことは、数字につきましては私持つておりませんので、御了承願います。
  129. 山口武秀

    ○山口(武)委員 たとえば古くなつたものを年度計画に基いて架線の改修をやる、この場合には請負でやる。それから応急的の工事につきましては直営でやる。こういう現在の国鉄のこの関係の人員におきまして年度計画に基く改修というようなものを直営でやつて行くほどの人員が足らない事情にある、こういうことを聞いておりますが、これはいかがですか。
  130. 白木龍夫

    白木証人 ちよつと申し上げますが、私申し上げましたりは、改良費の仕事は大部分は管理局がやらないで電気工事事務所でやつて鉄道経費のいわゆる補修工事と申しますか、修繕工事と申しますか、それを管理局がやります。そして管理局がやるうちを、管理局のいわゆる業務能力の範囲を勘案して、さらに鉄道経費のうちを請負あるいは直営にする、それ以上の数字は存じないということを申し上げたのであります。従つて今も申されましたように、年度計画はこうであり、それ以外のものはこうであるというふうな画一的な差別はないと私は思つております。
  131. 山口武秀

    ○山口(武)委員 なるほど画一的な差別はないのかもしれません。しかしあなたの御答弁がわからないことになつてしまつたわけですが、鉄道管理局長ですから、私はこれはあなたに一番関係の深いことですし、あいまいな、あるいは不明確な答弁ということはあり得ることじやないと思うのです。現在のこうした工事につきまして、たとえば年度計画によつて架線の改修をやるにしても、あるいは突発的な故障によつて応急工事をやるにしても、これらを全部やられるだけの人員というものが現在あるのかないのか。
  132. 白木龍夫

    白木証人 それはおそらく全部網羅したものはないと思います。
  133. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、どれくらいまではやれる見込みなんですか。まさか仕事の計画すらわからないということはないでしよう。一年分の間にはこのくらいの工事ということはあらかじめ見通しが立つているわけだ。そうしますと、現在の人員から見てその何割くらいがやれる、その何割くらいは請負にまたなければならないということはわかつているはずなんですが……。
  134. 白木龍夫

    白木証人 今そのパーセントを私は存じておりませんが……。
  135. 山口武秀

    ○山口(武)委員 大体わかりませんか。
  136. 白木龍夫

    白木証人 はあ。
  137. 山口武秀

    ○山口(武)委員 東京鉄道管理局長ともあろう者が、仕事のそういう問題をわからないというようなことを言われるから、こういう問題を起すのです。私はこれでは事故の問題よりも、普通の仕事もできないのじやないかと思う。どこまでもわからないと言われるならやむを得ませんから、さらにお聞きしますが、仕事の請負があるということだけは御承知でしよう。
  138. 白木龍夫

    白木証人 はあ。
  139. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、この請負という場合にはどのような会社にやらせておりますか。
  140. 白木龍夫

    白木証人 これはたとえば電気でありますとか、いろいろたくさん会社がございまして……。
  141. 篠田弘作

    篠田委員長 山口委員にちよつと御注意いたします。これは桜木町駅で起つた国電事故に関する証人尋問でありますから、その問題に直接関係のない問題はひとつあとまわしにしてもらいたい。
  142. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほど現場の心がけの問題が出ておりましたが、現場の心がけ以上に関係のある問題と思つて私は聞いております。  それならば私の方からなおお聞きいたしまするが、日本電設工業株式会社というのがあるのは御存じでしよう。
  143. 白木龍夫

    白木証人 存じております。
  144. 山口武秀

    ○山口(武)委員 これが国鉄の退職者あるいはこれまでに国鉄を退職した元幹部によつて構成されておる、このことは御承知でしよう。
  145. 白木龍夫

    白木証人 はあ知つております。しかし旧幹部ばかりじやないと思います。退職者がいるということは知つております。
  146. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この会社が請負をやつていることも御承知でしよう。
  147. 白木龍夫

    白木証人 はあ。電設その他数十会社が請負を競争入札いたしますから、その一部に日本電設も入ります。
  148. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この会社には事務系統や会社の幹部というものはかなり多くおる。しかし現場員というものがほとんどいない。少くともその割合から見ればきわめて僅少である。そういうようないろいろな関係から、現在の国鉄の現職員、こういう人を仕事の請負の場合に現場に使つておる。国鉄の現職員は、国鉄の現職から上るだけの收入では足りないので、やむを得ずアルバイトというような形で、ここで時間的にも精神的にも、むりに働いているということは、どうですか。
  149. 白木龍夫

    白木証人 さあ、私らは勤務時間の点呼を全部とつておりますし、そういうことはないと思います。
  150. 山口武秀

    ○山口(武)委員 また大分何を聞いてもわからないという話ですが、こういうような仕事の方式があるとすると、工事自体にかなりむりがあるので、そういうような工事自体から誤りが起つて来る。問題の基本的なことはここにありはしないか。私の聞いたところによりますると、国府津の電力区の工手が、実はこの日本電設の請負つた仕事へ、アルバイトで働らきに行つているということを聞いておる。しかも内容まで申し上げますならば、これは茅ヶ崎と大磯間において電柱の立てかえ工事があつて、ここに現職員が出ておる。それから馬入川の鉄橋の振止め改修工事にも出ておる。国鉄の現幹部と日本電設という会社とのなれ合いのもとにこういうことがなされているのです。こういうような工事の方式が行われるとすれば、事故の起る原因は、こういうようなやり方自体にあるのではないだろうか。
  151. 白木龍夫

    白木証人 お言葉を返して申訳ないのですが、お話のような、国府津の電力区員が東京だとか、そこの電力区でない工事現場へ勤務中に働きに行くということは、私はあり得ないと思います。
  152. 篠田弘作

    篠田委員長 事実問題だけの証言を求めてください。
  153. 山口武秀

    ○山口(武)委員 一番大事な事実問題なんです。そうしますと、あなたはこの工事に対しては直接的な責任、最も重大な主任のある立場におきまして、日本電設というものの内容も知らない、そういうようなアルバイトの事実も知らない、こう言われるのですね。
  154. 白木龍夫

    白木証人 はあ。
  155. 山口武秀

    ○山口(武)委員 まあ、いいでしよう。
  156. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 私はあなたの無意識の証言を聞いていると、国鉄関係は今まで人を軽視し、乗客を軽視して、部内の責任観念がまつたくないということを、われわれははなはだ遺憾に思うのであります。説明を聞きましても、枝葉末節の技術の点に非常に詳細でありまして、職務観念ということについてはまつたくなくて遺憾に思います。この点につきまして、信号所の指揮命令の権限は……。
  157. 白木龍夫

    白木証人 駅長でございます。     〔委員長退席、佐々木(秀)委員長代理着席〕
  158. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 証言によりますと、駅長といい、あるいは助役といい、あるいは大きな駅には他の……。
  159. 白木龍夫

    白木証人 駅長と申しましても、たとえば小さい駅ですと、駅長がじかにやりまして、助役はその権限を代務いたします。そのほかの運転関係につきましては、運転掛という職名がございます。たとえばこの間の桜木町では、あのホームにおりました岩田という予備助役がおりますが、あれが指揮監督をすることができます。
  160. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それからあとに勤めている者が二、三人おる場合におきましては、それに対する責任者といいますか、指揮者というものがあるのですか。
  161. 白木龍夫

    白木証人 信号所ですか。
  162. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうです。
  163. 白木龍夫

    白木証人 ここでは高原と寺山と二人がおつたのです。代番でやつておりました。これは相手の休憩時間に代番があるのでありまして、桜木町信号所信号掛相互には、お互いに指揮監督関係はございません。但し、ほかの大きい信号所に行きますと、見張りという信号掛がおるのですが、その場合には、これはほかの信号掛を指揮いたします。
  164. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 つまり見張りとか何とかいろ、何と申しますか……。
  165. 白木龍夫

    白木証人 たとえば大きな駅に行きますと、てこが六十本、百本もある。そうすると、一人ではとても引けないので五人くらいでやります。そのてこを何番を引け、こういうさしずを列車を見ながらするのであります。これを通称見張信号掛と申しまして、これがほかの信号掛に命令する、その命令によつててこを引くということになつております。
  166. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 この前の証言におきましては、信号手はそういうふうに陳述しておりません。
  167. 白木龍夫

    白木証人 桜木町ではございません。桜木町では、先ほど申し上げましたように代番の関係にありまして、片一方が出ている間は片一方が休憩しておる、お互いに独立したポストでございますから、指揮監督関係はございません。
  168. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 ちよつと申し上げますが、対談的でなく、発言を求めてやつてください。
  169. 白木龍夫

    白木証人 はあ。
  170. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それからわれわれしろうとから言いますと、信号掛は最も機敏で、敏活に頭を働かせなければならぬと思うのですが、信号掛が鈍いということをあなたは当然視されているようなことを言つておられますが、そういうことは国鉄においては普通のことなんですか。
  171. 白木龍夫

    白木証人 ただ一般に、たとえば鉄道あたりもいろいろ職がございまして、線路工手、技工、それから出札、改札、車掌、いろいろある。これは大局論でございますが、お客に接する関係の人は、非常にスマートであり、機敏ですが、構内その他の関係の人は、どうしても人との人的な接触が少いものですから、対人的に話でもされる場合には、非常に皆さんには特にそういう点を感じられるのではないか、こういうふうに思います。
  172. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 その点私は一番信号というものは——私は信号でもつてこういうものは未然に防げたのだろうと思います。あなたのお話によると、そういうことはあたりまえのように言われるが、われわれ一同は非常にふに落ちぬ。そういうのは伝統と申しますか、そうでなければいけないものですか。
  173. 白木龍夫

    白木証人 当時あれは信号掛にとめてくれという一言があつたら簡單だつたと思いますが……。
  174. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 とめてくれと言つておるじやないですか。
  175. 白木龍夫

    白木証人 いいえ、電車をとめろという言葉があつたら簡單だつたと思います。そうではなくて、何と申しますか、上り下り、この言葉が両方で食い違つておるのです。信号掛下り電車はいいが、上り電車はいけない、こう聞いたと言う。中澤工手長下り線はいいが、上り線が悪い、こう言つたというのです。この言葉の食い違いがあるのですが、そのときに信号掛にとめろ——場内信号機があるのですから、とめろと言えば、信号手がすぐてこを引けばすぐとまつたのです。中澤工手長のあのときの心境を考えれば、曲らないでまつすぐ入れれば入るものですから、こつちに入れてくれというつもりで言つたのですね。ですからそういう点の言葉の食い違いが、ああいう重大な結果を起しておるのでありまして、あの当時信号掛がもう少し優秀であればと思います。もつと確実に聞き直してくれたらとこうわれわれ思うのでございます。
  176. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 何でございますか、あなたの話を聞きますと、われわれ委員長以下の一般の心証と違いまして、信号掛を非常に弁護されて、われわれがここにおいて最も責任感を果したと思われる工手長の、工手の系統を非常に非難されるような口吻が見えますが、管理局長としては工手の系統というものはあなたの管轄外でございますか。
  177. 白木龍夫

    白木証人 いいや、同じものでございます。
  178. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 最後に、構内の連絡のことを先ほど委員長があなたに質問されたときに、連絡会議で区長が集つてどうやつておるとか、組織としての連絡会議のことばかり言われたのですが、現実の日々の仕事で、時々刻々の、ああいう危險な人命に関する仕事をしておるその仕事の刻々の連絡というものは、現実にやつておるのか、やつていないのか。今までの証言では、ないということを言つておりますが、その点はどうでございますか。
  179. 白木龍夫

    白木証人 連絡と申しますのは、具体的に……。
  180. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 つまり助役とか駅長とか、どこではどういう作業をやつておる、どこではこういうことをやつている、駅の構内の時々刻々において電車行つたり来たり往復する場合における連絡といいますか、そういうことが非常に欠如しているような気がいたします。あなたの先ほどの証言によりますと、組織としての連絡会議とか何とか、そういうことばかりで、時々刻刻の危險作業についての連絡一つもないように思いますが、その点はどうですか。
  181. 白木龍夫

    白木証人 たとえば桜木町とか新橋でありますとか、こういう最も繁激なところでは、全部何分々々ということを、たとえば新橋駅長など、——報告しないというようなところもありますが、大体ホームではすべて記録をとつております。大きな駅でも駅長は少くとも一日三回ぐらいは構内をまわりますから、そのときに見れば電車運転は必ずわかる。しかしこれは駅長は三回ぐらいでありますが、そのそばに先ほど申し上げましたように、駅長の権力を代行する助役あるいは運転掛が必ずおりまして、指示するものは必ず近所におりますから、これは電車が三分遅れましても、何電車が遅れたという連絡をとつております。
  182. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 たとえばこの事故が起つて燃えておる最中に、三日間の証言によりますと、助役は工手長あたりを呼んでいろいろな相談をしておる。こういうふうな証言をわれわれ聞きましたが、あまりに悠長で、責任観念といいますか、連絡と申しますか、時々刻々の変化に即応するような措置というものは、あとの言い訳ばかり考えておつて、その場合の措置というものはあまり訓練ができていないように思いますが、どうですか。
  183. 白木龍夫

    白木証人 事故の場合でございましようか。
  184. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 いや、事故じやない、平時の場合……。
  185. 白木龍夫

    白木証人 平時は、たとえば新橋の例をとりますと、新橋の例は悪いかと存じますが、駅長は駅長室におります。それから電車ホームには電車ホーム助役、電車ホーム運転掛という者がおりまして、そのそばに電車を扱います信号掛がおりまして、常に記録をとつておる。大きな表に何電車々々々と全部書きまして、それを運転掛が常に監視しておる。こういうことになつておりまして、何か異常なことがあれば、すぐ運転掛から駅長に言つて、駅長から指令が出る。それと同時に列車に影響を及ぼすような事故でありますれば、各ホームには電鈴電話が入つておりますので、それからすぐ管理局に上つて来る、管理局はその事態によつて電車を運休する。あるいは回車する、こういう手配をとつておりまして、これはそういう日常の仕事につきましては非常に有機的にできておるのでございます。
  186. 加藤充

    ○加藤(充)委員 三段窓ないしはいわゆる六三型という電車は、全国でどのくらい使用されておるのですか、概略でいいです。
  187. 白木龍夫

    白木証人 たしか四百七、八十じやなかつたかと私は記憶しておりますが……。
  188. 加藤充

    ○加藤(充)委員 六三型というのではなくて、三段窓というようなものまで入れて……。何か委員会で配付した資料の一部には、七百台を突破しておるというふうに書いてあるのですが……。
  189. 白木龍夫

    白木証人 ちよつと資料を持ちませんので、調べてからお答えいたします。
  190. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 加藤君あとでこつちに……。この間それは証言があつたのですから……。
  191. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでは次の質問をいたします。標準設計と戰時設計というものの差は、構造上あるいは工作費上どのくらい、どこで違いが出て来るのですか。
  192. 白木龍夫

    白木証人 その点は私存じません。
  193. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたは、大体管理局というようなところでは、そのくらいなことを御存じないのですか。
  194. 白木龍夫

    白木証人 管理局はもつぱら運営と申しますか、実際の現場作業をやつておるのでございまして、車の製作、予算といつたようなものは、すべて本庁契約となりますので、よく存じません。
  195. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでは、おつつけまたえらい人が来たときに……。あなたは先ほどの証言の中でDコツクはいろいろ矢じるしをつけたりしてくふうしたけれども、現場にぶつかつた場合においては踏みつぶされたり、殺到したりするおそれがあるので、実際は役に立たぬというようなことを言われたと思うのですが、そうすると私どもまだ矢じるしの電車に大阪あたりから乗つて参りましたけれども、役に立たない矢じるしを一月も、応急措置ということを度外視してやつてつて、気やすめをしておつたというふうに解していいですか。
  196. 白木龍夫

    白木証人 訂正いたします。逆に私は役に立たない場合があるのじやないか、こういう意味で申し上げたのでありまして、役に立たぬという意味ではございません。
  197. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そうするとあなたもごらんになつたと思うのですが、委員会配付の資料の中に、桜木町駅の国電事故についてという、国鉄のまことに恐縮した言葉が連ねられている文書が出ていますが、この点でお尋ねいたします。電気配線で他の重要な部分については改造工事が進められ、今日では完全に標準設計のものになつているというくだりがあるのであります。標準設計のものになつているというのですが、設計を仕直して、現実的にいわゆる標準設計に基いて事故防止のための改造、改修がなされた台数というものはいかほどあるのか、お聞きいたします。
  198. 白木龍夫

    白木証人 私台数は明確に存じておりませんが、大体先ほども六三型の台数を四百七、八十台と申し上げましたが、これの大体の改造は全部完了しておるつもりでおります。現在六三とよく言われますが、車両の性能あるいは構造において、あるいは三段窓であるとかそういうことはございますが、機能その他においては六三とほかの電車との差というものはほとんどないように考えております。また従来の事故の実績から見ましても、ほかの傾向と六三型の傾向の車両故障の実績は、かえつて六三型の方が少いということも、私は技術当局から聞いております。
  199. 加藤充

    ○加藤(充)委員 私はここで機能一般をお尋ねしているのではありません。それからまた事故一般をお尋ねしているのではないのです。漏電によつて火災を起して、乗客——これが重点なんですが、乗客がいわゆる逃げ遅れたために、また逃げ遅れざるを得ないような客観的な構造を持つた車体の中にあつたために、非常に損害を大きくしたというような具体的な問題について私はお尋ねしているのでありまして、それを六三型とほかの車との機能が必ずしも遜色があるとかないとかいうことは私の質問の趣旨ではありません。そういう点で、それでは全部改修ができたというふうに聞きとつていいのですか。
  200. 白木龍夫

    白木証人 私六三にあげられた改修項目というものを存じませんので、全部できたということを確言をもつて申し上げられませんが、ただ現在私技術当局から聞くところによりますと、六三というものの大体の構造はわかつております。ほとんど改造が完了しておるというふうに聞いております。
  201. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そうするとあなたは先ほど恐縮であるとか、いろいろ対策を具体的に講じていますとか言つていますが、この文書はあなたもお読みになつたと思うのですが、この文書で六三型の戰時設計といつて、特徴的なものは、このたび起つた桜木町の災害と関連して二点あげられている。その一点は天井が張つてないということ、第二点は非常用のブザー・スイツチの設置が欠けておつたように思われる。これはブザー・スイツチがついていることが必ずしも万全でないにしても、六三型の電車の構造、いわゆる戰時設計とあわせて安全を保障するためには、非常ブザー・スイツチが必要だということを言つておるのですが、この二点だけ特徴的に取上げられておるのでありますか。あなたは、私が先ほど六三型のいわゆる戰時設計と標準設計との差異いかんということを聞いたときに、はつきりしたことは知らないと言つたり、あるいは大体において非常災害に対する措置は、桜木町事件に勘案してとられたというけれども、この二点についてあなたははつきり答弁ができますか。
  202. 白木龍夫

    白木証人 桜木町事故が起つてから後の対策は申し上げられます。とりあえず応急処置といたしましては、パンタグラフと申しますより、屋根にありますあの部分を、とりあえず木をもつておおいをかけることを、今月をもつて完了いたします。それからまた防火塗料、これは現在では科学的検査をやつておる段階でございますが、すぐきまります。六月中には全車両に防火塗料が、モーター・カーにはつけられると思います。それから第二段といたしましては、十月一ぱいあるいは十一月一ぱいまでには完了し得る項目は、連絡通路を設けること、それから先ほど申し上げましたCコツクを縁の下の両側につける増設、それから車内に一箇所ですべてのドアが使えるDコツクの代用を一つ設ける。それからパンタグラフの三重絶縁を完了する。それから屋根の鉄板のものは全部布をもつてカバーする。それから……。
  203. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 これはこの程度でいいですね。
  204. 加藤充

    ○加藤(充)委員 千三百万円くらいいわゆる標準設計の新車をつくるにはかかるけれども、桜木町事故を起しましたあの車の、今言つたような点の改修には、百万円くらいで一応済む、こういうような事柄であつて、百万円で千二百万円の代用川ができる、たまに事故が起きてもその方がはるかに有利だ、採算がとれるというような考え方が、いわゆる国鉄の新車なり造車なりの場合に貫かれておる方針になつておるのですか。
  205. 白木龍夫

    白木証人 私は先ほども申し上げますように、六三型の現在までまだ残つておるやつは、今度の事故にかんがみまして改造しておりますが、そのほか標準と六三の根本的の相違は、値段の点も存じませんし、でき上つたものを改造するということで、あるいはお金が節約になるかどうか、その点の判断は私は知りません。
  206. 加藤充

    ○加藤(充)委員 いろいろ聞いても存じませんと言うので、聞きませんが、根本的な対策についてのあなたの御見解を一、二確かめておきたいと思います。私はやはり車両までくるめて、先ほど問題になつたお客さん一般を運ぶんだぞ、営業なんだぞ、その精神が欠けておるのではないかという他の委員の御指摘があつたその通りですが、私は一段と掘り下げて、お客一般の中で、やつぱり一番乗つていただけるお客さんはだれか、あの比較的安い交通機関を利用せざるを得ない人たちはだれかといえば、明らかにこれは勤労者一般だということになるのです。あなたの方でも、お客さんのうちで最も人数の多い勤労者一般は、お客さんとしても大事な人々なんですが、この人たちに対して、予算をたくさん使つて、その人たちを優遇しながら收益を上げて行くという方針をとらずに——これは各新聞社なども指摘しているようですが、特殊な少数の高級な旅客の遊山的な、あるいはその人たちの便利だけをはかつた運営なり経営の方針がとられている。車両の製造あるいは改修などについても、そういうふうな方針がとられている。私はここに、この桜木町事件が起きて、多数の、百六名かの死者ができた、この人たちの職業別あるいは勤務先別、それから乗つたときの所用別、これは時間がずれて、ラツシユとは違いまするが、こういうような方面の資料をもつと確かめてみた上で、さらに御質問をしたいと思うのですが、その資料は今私の手にありませんからお尋ねするのですが、こういうふうなお客さんというものを、いま少し階層的に考えて運営をしないとなると、むしろ少数利用者の利益のために、多数者の物的な、同時に肉体的、生命的、身体的なものすらも犠牲になつて来る。この方針が現実に現われたのが桜木町事件だと私は思うのですが、この点いかがですか。
  207. 白木龍夫

    白木証人 先ほど申しましたように、管理局長という性格は、本庁から配属になります車両を使つて仕事をするというのでございまして、それ以前の、たとえば高級車を何両つくる、寢台を何両つくる、あるいは三等車を何両つくるということにつきましては、全然意見を申し上げる立場にもございませんし、また従つて批判する能力もないのでございます。
  208. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そういうお気の毒な人をいじめることはやめますが、もう一つ、あなたは気の毒な遺家族に対して、現場ないしはあの地域の電車区の人たちに、職権をもつて献金をやらしたのだと思うのですが、いわゆる被害者の冥福のための献金というようなものを数万円さして、それで非常に謹愼しているということを言つて、見てくれ、この程度に謹愼していると言つたが、大体私どもはあなたも含めて、あなたが具体的にその内容を知る、知らぬは別問題として、このたびの桜木町事件は、国鉄の当局として、具体的に言えば、高級職員を含めて、人民に対し、被害者に対し、大きく謹愼し、わびなきやいかぬと私は思うのです。少くとも道徳的にはそうだ、職制上はそうだと思うのですが、高級職員、あなたの経験でもよろしい、あなたはどういうふうな遺憾の意を物質的に表明されたか、表明されたことがあつたかないのか、その点を承りたいと思います。
  209. 白木龍夫

    白木証人 募金は先ほど申し上げましたように、いばつたのではございません。宣伝したのではございません。ただお聞きくださいましたから、われわれはいかにして謹愼を表しておるか、その一端として申し上げたのでございまして、私自身その献金の一人でございます。
  210. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これは私が地元で経験したことなんですが、皆さん御承知のように、あの近鉄奈良線の花園駅で、生駒山から急カーブを下りて来た電車が、花見どきに、制動機の故障で相当な大惨事を引起したのであります。そのときに近鉄の従業員は、これはもちろんまじめな気持で——そのことをあえて非難するつもりはないのですが、事故の後に、当然年中行事として行われる従業員の運動会を、しかも名古屋から大阪に至る近鉄全線の会社の従業員が、運動会というものを、謹愼の意を表明して返上した、会社は得たりかしこしとばかりに運動会をとりやめて、余つた数万円の予算はどこへ使つたかという問題になつて来ると——あそこの被害者というものは、ほとんど強腰になつてけんかして行つた者が、けんかと言つては語弊がありますが、泣き寢入りができないと言つてつた者には、相当な段々がありましたけれども、見舞金が行われましたけれども、なるべく見舞金などは踏み倒して出さないという方針を、会社はとつて行つたのであります、これは下級の現場職員が、謹愼の意を表明して、被害者にひたすらわびるという気持を、会社経営者側が、高級職員なり重役連中がこれに便乗して、いわゆる火災を起して、火災保險の保險金をもうけるみたいに、事故を起してもうけてしまつたという、ばかげた非人道的な結果が見られたのです。これはつくりごとではありませんが、こういうやり方をやつて行きますと、いくら戰陣訓をつくつてみたところで、いくら現場で黙祷を五分間を十分間にしてみたところで、上の連中がだめだつたら、東條が戰陣訓を読まして得意になつていたのと同じようなことで、こういうような精神訓練では一つも効果が上つて来ぬのです。こういうばかげたごまかしのやり方の中に責任を巧みに回避する。しかも事故は必ず繰返されて行く、そうして根本政策はそういうような形の上の精神的な黙祷と戰陣訓の朗読だというようなことでごまかされたのでは、事故の根本というものは、いつまでたつても明らかにならないのである。私が先ほどの質問の中で、精神的にはどうだといえば、下級職員の献金あるいは黙祷をやるつもりであるという。こんなばかげたことでは、また再び繰返すことになつて、根本的な対策にはならぬのですが、その点でも、大体において先ほど読み上げました「桜木町駅の国電事故について」というような問題についても、ここにうたわれている六三型の構造上の被害対策としての欠陷というものがあげられておる、そういうようなものについては、具体的にここにあげられておる措置をまつ先に実行しているか。ないか、あるいはそれはどういうふうなプログラムで実行されるのであるかというと、いつでも具体的にこの二点であるというから、それから先を私どもは聞くのですが、いつでも一般的にだらだらにあれも直す、これも直すといつて、こういう国鉄が責任をもつて委員会に出して来た文書にあげておる点は、ここはこうだということを具体的に対策としてあげない、証言しないということに、私は以上申し上げましたような非常に精神的にも根本的に反省もできておらぬし、事故に対する根本的な処置を持たないということを明らかに局長自身が表明したことと思いまして、はなはだ遺憾であります。
  211. 島田末信

    ○島田委員 大分時間も経過しておりますから、ごく簡單にお尋ねいたします。  昨日の井出証人証言によりますと、この事故は発生までに、いろいろな遺憾の点もあるし、それから発生後の処置についても、ずいぶん責任のない行動のあつたことも、井出証人ばかりでなく、われわれも認めておるのでありますが、その点で昨日の井出証人証言では、事故発生後、もし高速度回路遮断器が横浜変電区に——もともとあつたようでありますが、もしそれが現在もあつたならば、瞬時に電流は遮断されて、火災も即時に防止されたわけで、災害も最小限度に食いとめられただろうということを申しました。この点私は、この遮断器をとつておいたということは、はなはだ遺憾だと思うのですが、その後ただちに復活するような措置がとられておるかどうか、また国電全般を通じて、こういつた箇所がまだほかにあるかどうか、新設しなければならぬような点があるかどうか、これに対する措置はどういうふうにとられておるか、これをお伺いしたい。
  212. 白木龍夫

    白木証人 ただいまの御質問ですが、御指摘の通りに、かつてあのところには遮断器がありました。それでほかのところへ、ないときに一応転用いたしておつたのでありますが、われわれといたしましては、とりあえずあそこだけは仮設備が完了いたしまして二、三日うちには活動しようと思います。それからあとふやさなければならぬ箇所が数箇所ございます。事故発生以来いろいろ研究されておりまして、昨日最後の打合せをいたしたのでありますが、高速度遮断器をふやして行くか、それとも選択性遮断器をふやして行くか、本省の意向としては選択性遮断器をふやして行くということを決定したそうでございます。選択性遮断器と申しますのは、火花が出ましたときに働きます。今の遮断器ですと、火花であろうと普通の電流が多く流れようと、ある一定以上の電流が流れますと遮断器が働くのでありますが、選択性遮断器は火花が出ると働く、つまり高周波の電流が通つたときに働くわけであります。桜木町の遮断器につきましては、二、三日中には完成すると思います。
  213. 島田末信

    ○島田委員 たまたまそういう遮断器が取払われておつたために、あるいは事故発生後の運転手車掌あるいは検車掛その他駅長、助役以下駅の従業員の無責任きわまる行動が今回暴露せられて、殉職精神あるいは責任観念を高める教育をしなければならぬという結果を見たのでありますが、同時にただいまのように機械設備、科学的な施設は予算の許す限り万全を期してもらいたい。平常における事故は、大体電気事故による火災あるいは追突、衝突というようなことだろうと思いますが、これは従業員その他人間でありますから、いかに万全を期しましてもつい手落ちあるいはぬかつた点も考えられる、その場合機械力で補つていただきたいということを要望いたしまして私の質問を終ります。
  214. 中川俊思

    ○中川委員 私は他の委員の御質問にならなかつた点について一、二お伺いいたします。職員養成所鉄道教習所、これらの採用試験というものは一体どういうものを課しておられるのですか。
  215. 白木龍夫

    白木証人 いろいろ職別によつて採用試験は違つております。中等学校からすぐたとえば車掌に採用しようというときには、大体が今まで新規採用の場合は、学校のたとえば算数あるいは地歴、国語、こういう基本的なものだけでございます。それから入所する場合に一応前に現場作業——現場仕事がございますから、その程度に準じました規程あるいは技術というものを試験いたします。その程度でございます。
  216. 中川俊思

    ○中川委員 すると職員養成所なり鉄道教習所を終了した者は、全部国鉄職員として採用するのですか。
  217. 白木龍夫

    白木証人 はあ、これは卒業した者は——ただ、もともと採用した者しか入れませんです。
  218. 中川俊思

    ○中川委員 その場合、思想傾向については全然お考えにならないで、ただ技術であるとか学術であるとかいう面だけをやるのですか。
  219. 白木龍夫

    白木証人 その点は何と申しますか、大体身分については、いろいろ、長續きする人であろうか、あるいはすぐやめてしまう人であろうかというような点をよく勘案いたしまして、縁故者その他につきましても十分調査いたします。特に最近はそういう点は十分調査はいたしております。
  220. 中川俊思

    ○中川委員 この点は根本的にひとつ検討をしていただきたいと思う。先ほど来各委員によつていろいろ論ぜられております通り、殉職精神に欠けておる、いわゆる精神的に弛緩しておるというような面が、こういう事故の大きな原因だと思いますから、この点は根本的に改正をしていただきたい。ことにあなたは管理局長として運営であるとか作業であるとかいう面を担当しておられるのですが、いやしくも国鉄の最高幹部の一員であられるのですから、局長会議とか最高幹部の会合において、こういう部門を担当しておられる方に対しましても——その点は特に今後これが一番大きな問題だと思います。技術であるとか学術であるとかいうものは、その人その人の才能によつて異なる場合もありますけれども、いわゆる精神的に欠けておるという面が大きな問題です。これは先ほど来各委員が論ぜられておりますから重ねて言おうとは思いませんが、この点を特にお願いをしておきます。  それからいま一つちよつとふに落ちない点があるのですが、あの事故を起した所と、それから駅の構内との間はどのくらいの距離ですか。
  221. 白木龍夫

    白木証人 そこの図に書いてございますが、一番初めの事故、いわゆる電力工手架線を切りました所は、事故が起つた電車の車両に赤印が付いておりますが、あのポイントから右の方へ約百五十メートルほど離れております。それからまたホームの端から事故を起した場所までが約百メートルございます。
  222. 中川俊思

    ○中川委員 そうすると、そのときは電車はまだ走つていたわけですね。電車は駅の構内に滑り込むべく相当のスピードで走つていたわけですね、事故を起したときには。
  223. 白木龍夫

    白木証人 事故を起したときには、あの図に書いてありますポイントのところに五両編成の最後の車がとまつておりますが、あそこの制限速度は三十キロであります。当時進入した速度は、運転士証言では二十七キロと申しております。それで屋根にひつかけたので、すぐ非常制動を使つた従つてとまる距離は二十七、八キロといいますと二十四、五メートルであります。
  224. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 ちよつと中川君に御説明申し上げますが、この事故の発生箇所と駅の間は、六十三メートルだそうであります。
  225. 中川俊思

    ○中川委員 そこで私の不審にたえないことは、この運転士はスパークして音がしたときに、ボタンを押したり何とかして救助作業を講じようと考えた。ところがあなたのさつきの証言によりますと、スパークしたといつて運転士はすぐ飛びおりた、こういうことをおつしやつたが、電車は走つておるのに飛びおりるだけの余地があつたかどうか。すぐ飛びおりてうしろを見たということであつたが、むろん電車がとまつておれば飛びおりることもできるのだが、相当のスピードで走つておる電車から飛びおりることができるかどうかということです。あなたと運転士証言の食い違いがそこにある。その点承りたい。
  226. 白木龍夫

    白木証人 動いているときには外に出ません。瞬間に外に出たとはわれわれも想定いたしておりません。外へ出たとすればとまつてからであろうと想定いたします。
  227. 田渕光一

    ○田渕委員 委員長からお聞きなかつたので私伺うのですが、白木さんは東鉄局長になられる前はどちらの局長をされておつたのですか。
  228. 白木龍夫

    白木証人 東京陸運局長でございます。
  229. 田渕光一

    ○田渕委員 陸運局長の前は……。
  230. 白木龍夫

    白木証人 新橋管理部長でございます。
  231. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで伺いますが、あなたは技術出身ですか。
  232. 白木龍夫

    白木証人 技術出身でございます。
  233. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで東京鉄道管理局長というのは、管内の一切のものの監督権を持つておられるのですか。
  234. 白木龍夫

    白木証人 いわゆる管理局の業務につきましては一切持つております。資材、経理、こういつた営業面はございません。それ以外の一切は持つております。
  235. 田渕光一

    ○田渕委員 そうすると、今度の事故の最も大きな原因架線から来ているが、架線はあなたの直属……。
  236. 白木龍夫

    白木証人 今度の事故につきましては、全部私の責任範囲でございます。
  237. 田渕光一

    ○田渕委員 そうすると、陸運局長、その前は新橋管理部長というお話で、大分東京には長くおられたわけです。そこでこの東京を中心とする衛星圏、この近郊の人口の密度、少くとも京浜、埼玉、千葉における一千万近い人口の密度と、これに対する交通機関の関連性、この点からあなたの責任、地位というものは重いわけですね。日夜これだけの人口の密度の足をあずかつているあなただから、日々の訓練といいますか、すべての指導が完全でなければならぬわけです。あなたは技術出身と言われたが、そういう点があまり気がつかなかつたのじやないかと思います。少くとも大阪鉄道管理局とか名古屋鉄道管理局というものと大分違うところの、名誉と大きな責任を持つておる。私どもずつと二日間調べた証人を見ましても、いずれも責任観念がない。つまり上に立つ者のその一挙手一投足が、実は箱の中に入つておる踏切番にまで影響するところが大きい。あなたから下部に行き、下部からさらに下に行く。それらの点から見て、今回の事件は不可抗力による天災地変ではない。まつた人間の魂の欠陷から來ておると思う。そこらにあなたの日常の指導あるいは訓練というものが欠けておつたのじやないか。あなたも非常にざんげされておりますので、つつ込みませんが、先ほどあなたは技術的な証言をされて、事故が起きた後に、桜木町駅の燃えておる瞬間の風が南々西の風何メートルであつた、こういうようなことを研究されるならば、少くともこれだけの足をあずかつておるのだから、架線工事をなするなら、これをなぜ夜やることを研究されなかつたか、こう考える。なるほど予算的措置とか人的措置ということもありましようが、これは一月、二月の酷寒のときならば一応納得できますが、この陽気が暖かいときに、月明を利用してやることをあなたは技術者として考えなかつたか。今度の事故が起つた後に、南南西の風でどうであつたとかいうようなことを、責任のがれではなかろうが、おつしやる以上は、その起る前に、もう少しそういう方面も科学的あるいは気象的に考えることはできなかつたか、こう思うのですが、この点はどうですか。
  238. 白木龍夫

    白木証人 それは御指摘の通り、われわれとして先ほど申し上げましたのは、言い訳という気持はなかつたのでございまして、従来国鉄の電車関係についての対策と申しますか、関心と申しますか、これが低かつたことが、今回の事故を起した管理上の根本であり、また従事員の精神的訓練の点が不備であつた、と思います。  先ほどの御質問でございますが、事故後は、現在晝やる場合はやむを得ませんから、送電を切つてやります。それ以外のものは全部こういう仕事夜間作業として、あの事故の起りました二、三日あとからやつております。
  239. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 先ほど南々西の風十メートルだつたということですが、それはあなたの方でどこから調査されたのですか。
  240. 白木龍夫

    白木証人 横浜気象台でございます。
  241. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 こつちの方の横浜市警の調査によると、風速南々西でなく、南々東の風七メートルになつております。
  242. 白木龍夫

    白木証人 私の方には向うから開きましたのは、南々西と言つております。事故報告にもそうなつております。
  243. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 市警の方からそういう調査書が来ておるということだけ申し上げておきます。もしお間違いであつたら、あとから訂正していただきます。風速南々東七メートル、濃度三十度となつておりますから…。
  244. 田渕光一

    ○田渕委員 鉄道当局がここへ出て来て、関係者証言することは、われわれは何ものかを見出そうと思つておるのに、とかく責任のがれと事故後の処置に結びつける。今の風などにおいても、どうも火を消すことができなかつたというようなことで逃げるのでありますが、事故の起きた後にそういう科学的なことを考えられるならば、将来ひとつ御参考に、こういうことをお気づきであろうが、お考え願いたい。寒中に夜間作業をやらして能率が上るものではありませんが、今暖かいときに夜間作業をやらして月を利用するならば、十分できる。戰時中空襲を恐れて夜間作業を停止したというようなことを、依然として續けておることから目ざめなければならぬ。とかくエンジニア出身の人は、白木さんにそういうことを申し上げるのは失礼かもしれませんが、へんてつである。どつちかというと、視野が狭い。人の監督の地位に立つ上において万全を期するということは、往々にしてむずかしいのじやないかという点が考えられる。今度の事故に対しても、これがほんとうに天災地変によるならば、私はここまで申し上げない。もう少し敏捷な人間を使つてつたならばよかつた。たとえばあなたが横浜駅とか桜木町駅とか、そういうところをずつとまわられたときに、ここらに配置する人間はもつとしつかりした者を持つて来ることをお考え願つてつたらいいのじやないかと思う。われわれが汽車旅行をいたしておりましても、二等車に乗つても、すわつてつて席を讓らないのが鉄道の上級官吏に多い。まことに道義が落ちております。われわれは努めて三等車に乗ろうと思つても、席がないから、やむを得ず二等に乗る。二等に乗つても、客の検札に来ても、堂々と年寄りを立たせておく。すわつておるのは鉄道の高級官吏が多い。まつた鉄道職員が席を讓るというようなことはわれわれ旅行において見たことがない。あとで加賀山総裁が来るというから、聞こうと思つておるけれども、この間長崎に一等車をつけて行つたというようなことである。こういう連中が鉄道におるから、こういう事故を起すのだと思う。このなくなつた方に対する弔慰の方法に対して献金その他のことを伺いまして、私は同感でありますが、せめて東鉄管内は日本全国の中心になるのだから、あなたの管内において、全国に模範を示すようにやつていただきたいということを希望いたします。
  245. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員長代理 他に御質問がなければ、白木証人に対する訊問はこれをもつて終ります。白木証人には長い間御苦労さまで、ございました。  午後は二時から再開いたします。暫時休憩いたします。     午後一時三十分休憩      ————◇—————     午後二時二十八分開議
  246. 篠田弘作

    篠田委員長 休憩前に引續き会議を開きます。  小西桂太郎証人より証言を求めることにいたします。あらかじめ文書をもつて御通知いたしておきましたが、証人として証言を求むることに決定いたしましたので、さよう御了承願います。  ただいまより桜木町国電事故に関する件について証言を求むることにいたします。証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族または三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読を願います。     〔証人小西桂太郎朗読〕    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず又何事もつけ加えないことを誓います。
  247. 篠田弘作

    篠田委員長 では宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  248. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問しているときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  桜木町駅の国電事故に関しまして、数日来いろいろ関係者証人尋問を行つて来たのでありますが、事故原因その他についてはやや明瞭になつております。ただその事故発生後における職員のとつた処置につきまして、あなたは国有鉄道運輸総局長としてどういうふうに考えておられるか、その点をひとつお話願いたいと思います。
  249. 小西桂太郎

    ○小西証人 まず世間をお騒がせいたしましたこの大事故を起しましたことを心からおわび申し上げます。  それから事故原因並びに事故が起りましたときの職員のとりました行動につきましてはどうかという御質問でございますが、御承知のように、事故の直後直接の関係者が相当長く検察当局に拘置されて取調べを受けておりまして、ごく最近帰つて参りました。それからいろいろ取調べをいたしておりますが、関係者の言い分に根本的な対立もございまして、どこに責任がある、原因がどこにあるかということが明確にならない節もございますが、大体最初電力工手が誤つてメツセンジヤー・ワイヤーと横のビームをアースさせまして、そのためにメツセンジヤー・ワイヤーを切り、電車火災の誘因となつて事故を起したということははつきりいたしております。  今回の事故あとから考えてみますと、非常に悪条件の累積と申しまするか、非常に悪い条件が幾つも幾つも積み重なりましてあの大惨事を起しましたので、どれか一つどこかでとめ得られるチヤンスもあつたわけでございますが、あの大事故になりましたのには、非常に珍らしいくらいの悪条件の累積ということも言い得ると思います。ともかく電力工手長の言つておりますのは、問題になります渡り線のところに電車が入つた危險であるということをすぐ感知して、その連絡信号所へ参つた、こう申しておりますが、この点多少の疑いがあると思うのでございます。もしこれが正しいといたしますれば、列車がいつ入つて来るかということは実際問題としてわからぬわけでございますから、電力工手長としては、信号所へ参る前に、列車が来た場合に停止する措置を的確にとらせるということが非常に必要であつたと思います。その点あと電力工手長以下に、ただ頼む、簡單に頼むというだけで連絡に出かけましたので、頼まれた方の側としては、列車をとめることを頼まれたのか、あるいはまた落ちましたメツセンジヤーをつなぐことを頼まれたのか、その点明確を欠いた。従つて列車停止の何らの措置もとられなかつたということであります。それから信号扱所へ参りまして、言葉のやりとりの点で、一方は上り線という言葉を使い、一方は上り列車という言葉を使つておるように言つておりますが、実際その当時使いました言葉がどういう言葉でありましたか、その点は非常に疑問な点が多いと思いますが、いずれにいたしましても、渡りのところに危險がある、電車が入つて、何らかの事故を起す可能性があるということを的確に予知しておつたということが事案であつたといたしますれば、この線へ列車を入れてはいけないということをより的確にやる方法があつたんじやないかとも思われます。この点が連絡の不十分と申しますか、用語の不適切と申しますか、そういう点で事故を防ぐチヤンスを逸したというような状況です。  電車運転士の行動でございますが、これはその後夜間に奥地検証を行いまして、実際架線を切断いたしましたときの印象から申しますると、上り線架線がたるんでおつたということを認めましても、その影響が百五十メートル離れております渡り線のところにまで影響があるだろうということに想到し、また実際自分の目でそれが下つておることを現認することは、実際問題としてむずかしかつたんじやないかと思うのであります。従いまして、渡り線へさしかかりまして、パンタグラフをひつかけ、電車が発火いたしましたまでの運転士の処置という点から申しますると、特に責めにくいんじやないかという感じがしております。ただその後電車が燒け始めまして以後の従事員の措置につきましては、今にして考えますと、非常に遺憾な点が多かつた。その当時の火の状況と申しますか、火のまわりの早さというものは、非常に驚くべき早さでございまして、私どもああいう早い速度で、猛烈に、短時間に電車がああいう事故で焼けるということを想像いたしておりましたならば、いろいろ今まで考えられる点があつたのでございますが、その点そこまで当時思い及ばなかつたことは、今になつて非常に残念に思つておりますが、ともかくその後の運転手あるいは車掌その他現場にかけつけました電力工手その他にいたしましても、相当の努力はしたらしいのでございますが、身を挺して旅客の救助に当らなかつたという点は、実に残念なことと思つております。
  250. 篠田弘作

    篠田委員長 今のあなたの陳述によつてもわかる通りに、実際問題として非常にびつくりしてしまつたということが一つですね。これが船長とか船員であつたら、時化にあつたり、遭難したり、暗礁に乗り上げたという場合の救助についての心構えが違つております。船の場合は自分らが死んでもお客を守るという心構えができております。電車列車の場合はそういう心構えができていないということもありますが、もう一つ教育の不完全ということが非情にあるように思われるのであります。たとえばDコツクを引くことを忘れた、あるいはそういう設備があつたにかかわらず、これがただ検車の場合の設備としてあつただけで、ふだんからそれをどう取扱うかという訓練をしていなかつた。いろいろ悪条件が山積していたと言いますが、当時の悪条件ばかりでなく、日ごろからの悪条件が山積していたように考えられるわけであります。そういう意味合いにおきまして、将来の対策といたしまして、職員の養成、訓練あるいは再教育の問題もありましよう。あるいは施設に対する改善もありましよう。そのうち職員の養成、訓練あるいは再教育ということに対して、どういうふうに最高幹部として考えておられるか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  251. 小西桂太郎

    ○小西証人 その点につきまして、私どもああいう種類の事故がああいうふうな状態で起るということを想像いたしませんでしたことは非常に残念でございますし、そのために結果から見ますと、適切な措置がとられていなかつたという責めも甘受しなければならぬことは事実でありますが、また実際の問題といたしまして、今後の職員の養成、それから仕事のやり方その他につきましていろいろ考えております。すでに実施されたものもございますが、まず第一に作業のやり方といたしまして、ああいう架線作業列車が通る間あいにやるということに対する再検討、今後はできるだけ普通の線路と同じように、一定の時間閉塞いたしまして、列車を通さずに架線工事をできるだけやらせるようにする作業方法の改善。それからもう一つは、電車が通りません夜間にある程度作業を切りかえる。深夜に停電いたしまして、そうして作業をやるということもできるだけやる。そのためには勤務体制その他をかえなければなりませんが、これもできるだけやる。それからもう一つは、この間の場合はちようど電車区間でありましたので、深夜三時間くらいの間あいがございますが、東海道線等の列車区間におきましては、深夜三、四十分くらいの余裕しかない。そのほかは全部列車が通つておるという区間もありますので、これらの作業を全部深夜にのみ集中してやるということは不可能でございます。従いまして今申し上げましたように、晝間にできるだけ列車の間あいを見てやる。そうして列車を一定の時間閉塞いたしまして、そうして列車を通さないでやる建前にする。非常に簡易な作業でありまして、それほどの必要がない場合には、列車を通しながらやる場合もありますが、この場合には事故の起つた場合に必ず列車を停止することができますように、仕事をやつております場所の両側に見張人を適当なところに置きまして、いつでも列車を停止させることができるという処置をとらしてやる、こういうことに決定しまして、すでにそういうことをやらせております。  それからもう一つは、従事員の指導、教養、訓練の問題でありますが、御承知のように戰争後、これは一般的風潮でありますが、労働攻勢が非常に強くなりまして、いわゆる指導者、指導監督の地位にある者の威令が行われなかつたという時代がございます。国有鉄道もその例をのがれるわけには行かなかつた時代がございまして、終戰直後二十一年くらいまでは非常に事故も多いし、列車の運転等も非常に乱脈になつて世間の非難を浴びたこともございますが、この問題は次第に世の中の生活状態その他がよくなりますのと、例の下山総裁が非常に悲惨な最期を遂げました、その誘因になりました十何万の整理の問題を契機といたしまして、非常に情勢がかわつて参りまして、その後相当一般の労働意欲も上つて参りますし、指導者も指導力をとりもどして参つたのでありますが、しかしこれもまだ戰前と同じ程度まで完全にというわけには参りません。従いましてこの点につきましても、より一層従事員の指導、教養を強化いたしまして、安全、迅速、正確な、世界に誇つた鉄道にもどしたい、こういうことを念願しておるわけであります。このために非常に根本的な問題といたしまして、戰争中に採用いたしました従事員の素質の問題がございますが、これは一般的に戰時産業その他に非常に優秀な人間が参りまして、比較的素質の悪い従事員も入つております。従いましてこういう者に対する指導教養というものは一そう必要でございますので、これに対してもいろいろ指導、教養の強化をはかつて参ります。特に肉体的に列車の運転その他にさしつかえのある者、それからまた素質的にやはり列車の運転に従事する作業に不適格な者、こういう者はいろいろ考査をいたしておりまして、これによりまして直接列車の運転に携わらない仕事の方へそういう連中の配置転換をする、これは一人々々の点につきましては非常に苦しい点もあるかと思いますが、とにかく旅客の安全をはからなければならぬ鉄道といたしまして、やつて参らなければならない一つであります。こういうふうにいたしまして、従事員の素質の改善、指導、教養の強化という点にも力をいたして行きます一方、今回の車両がたまたま六三型でありましたので、非常な非難を浴びておりますが、今回の事故は六三型でありましたために窓の構造が三段窓になつておりまして、内部からそれを割つて外に出る、あるいはあけて出るということができなかつた点で、惨害を非常に大きくいたしておりますが、全般的な構造といたしまして、ほかの車両に特に劣つておるという点はないのです。従いまして六三型でなくとも同じような発火の事故は起つたわけであります。従いまして單に六三型ということに限定せずに、すべての電車に対して、今度のような原因で、今度のような発火の事故が起らないように、緊急対策といたしまして、十月までに完了する見込みでございますが、まず第一に直接火の起らないようにいたしますために、パンタグラフのとりつけを、現在は一重の絶縁になつておりますが、これを二重絶縁にする。それから万一絶縁が破懐されまして火事が起りましても、火が中へ直接入り込まないように、屋根の二重絶縁の点と、それからもう一つは今回の非常に早く電車の燃えました原因になりましたところの塗料の点でございますが、室内の天井の塗料を不燃性の塗料にする。それから問題になつておりますDコツク、これを両側につけまして——今までのDコツクは先ほども非難がございましたが、ある場所が非常に区々でありまして、床下にあるのでありますが、その場所がはつきり明示してなかつた。これは左右にそれぞれ対称につけまして、ある場所をはつきり明示させておく。そうしてこれに対する従事員の訓練、これは先ほど対策としてちよつと忘れましたが、全従事員に徹底いたしまして、今後ああいう事故が起つた場合には運転士車掌だけではありません。駅員にも全部これを徹底させまして、すぐだれでもあれを開くということに訓練しておりまして、すでにやらせておりますが、現在は一つしか床下につけておりませんが、これを左右につけましていつでもあけ得るようにする。そのほかに室内に同じようなコツクをもう一つ目に見えるところにつけまして、乗客が内部からもそれを操作できるようにする。その他すでに実行いたしまして現在あります腰掛の下の三万コツクの取扱い、これは乗客に周知徹底せしめまして、非常の場合に開き得るようにいたしております。そのほか湘南型のように、車両の中間をつなぎます幌をつけまして、火事等事故がありました場合に自由に他の車両へ移動できるようにする。これだけの措置を十月末に完成するつもりでやつております。約三億近くかかると思いますが、いずれ追加予算ということになりましようが、内部で融通いたしまして、ともかくその工事を進めて完了する予定であります。その他恒久的対策といたしましては、窓を全部普通の窓に改造いたしますとともに、それから先ほど申し上げました天井を全部鉄板にいたしまして、普通の電車のように、これは電球のついた明るいいい電車にする。その他車自体を普通の電車と同じように非常にいい状態にいたしますために手入れをする。電気部分につきましては、三鷹事件の当時非常に非難の的になつておりました下部配線はほとんど引きかえましたし、その下部配線がむき出しになつておりますものは全部被覆する、あるいはパイプの中に納めまして、危險のないように措置いたしておりますが、まだ一部分その当時の悪い材料のものが残つておりますので、これも全部スタンダードのものにかえてしまう、こういうような工事を全部完了いたしますのに約十二、三億かかるのでありますが、これは大体先ほどの緊急の工事をやりますれば、一応発火の心配などもなくなりますので、大体今の恒久対策の方は三、四年計画で実施いたしたい、こういうように思つております。
  252. 篠田弘作

    篠田委員長 委員諸君の中にたれか御質問ございませんか。
  253. 塚原俊郎

    ○塚原委員 戰いに破れた結果、各方面が非常な混乱に陷つたことはこれは当然であります。特に交通関係はわれわれの毎日の生活に密接な関係があるだけに、われわれは非常に混乱の極に達したというふうに考えているのであります。今証人のお話を承つておると、いろいろな努力をされまして大分回復されたが、まだ戰前の域には達していないというお話でありましたけれども、この原因は機構によるものですか、それとも人的構成によるものですかどちらですか。
  254. 小西桂太郎

    ○小西証人 この問題は非常にむずかしい問題でございまして、同時に非常に大きな問題であると私は考えております。と申しますのは、戰争中に鉄道が非常に大きなロードをかけられまして戰いに勝つために非常なむりをいたしたのでございます。例をあげて申し上げますと、十分な資材もなしに非常に大きな輸送力を発揮したということは、鉄道を非常に酷使した。施設を酷使し、車両を酷使したということは疑いない事実であると思います。その間補修に要しまする材料のごときもできるだけ節約いたしまして、ともかく最大の輸送力を発揮するようにやる。車もいたむし、施設もいたむし、線路もいたむ。それに対して枕木も十分入れられないし、器材の交換もやれないという時代が相当長く續きました。その後戰争に負けまして後、社会的な不安混乱が起りまして、鉄道に非常な旅客が殺到した。これは住宅事情その他非常にやむを得ないあれがありまして、これまた非常に大きな鉄道のロードになつた。一時はやみ屋のために列車をめちやくちやにこわされたり何かしたことがあつたことは御承知の通りでありますが、ああいう事情から鉄道が今まで回復して参りましたことを考えてみますると、ともかく戰災で非常にたくさんの車を燒かれ、戰争中に非常に車両と施設を酷使した、戰後は急激な旅客の要求もございまして、それに対する車両の増備をしなければならぬ、しかも金が十分でなかつた、一方先ほど申しましたように労働攻勢その他の問題がございまして、従事員の労働意欲も下つた、それから次第に回復して参ります過渡期にあるのでございますが、しかしたとえて申しますると、車両の平均の年齢にいたしましても、昭和十一年、戰争前に比べますと、非常に平均の車齢は延びております、またレールにいたしましても、戰争中十分に金をつぎ込めなかつたための疲労、それから国有鉄道が始まりましてすでに七十年になりますが、非常に古くつくられました隧道でありますとか、橋梁でありますとか、そういうものがちようど疲労期に達しておる、また戰争中に山林の濫伐その他がございましたために、非常に風水害の影響を受けまして鉄道がやられる機会が多くなつた、これがために非常に多くの金を費さなければならなくなつた。一方最近方々から問題が出ていますように、二百万トンの滞貨をかかえて輸送に非常に難澁いたしておりますが、急速に現在貨車をつくらなければならぬ、……。
  255. 塚原俊郎

    ○塚原委員 そういう御説明はあれですが、私が伺つたのは、一体機構によるために遅れているのか、あるいはまた人のために遅れているのか、そのことを簡單にお答え願いたい。
  256. 小西桂太郎

    ○小西証人 機構のために鉄道の復旧が遅れておるという点はないと思います。従事員の素質の問題につきましては、先ほど申し上げましたように、戰争中とりました従事員の素質が十分でありません、また非常に若い、そういう点で指導を強化して参りますればこれは戰前の域まで次第に達し得ると思います。
  257. 塚原俊郎

    ○塚原委員 今の証言で、現在の国鉄の機構で満足であるという意味証言がございましたが、われわれが聞いておるところによりますと、中二階的な存在とか、横の連絡が全然ないような仕組みになつておる現在の国鉄の機構に対して、あなたはこれが完全な姿だと思われますか。
  258. 小西桂太郎

    ○小西証人 その点いろいろ議論のある点でございまして、今の機構が完全であると申し上げたわけではございません。今御質問になりました横の連絡が不十分じやないかという点でございますが、この点は確かに新しい機構の一つの弱い点とは言い得ると思います。しかし一方新しい機構によりまして強くなつた面もございますので、その点と相殺してどちらがいいかという点を考えますれば、特に今度の機構が非常に悪いということはない、こういうふうに考えております。
  259. 塚原俊郎

    ○塚原委員 小西さんは運輸総局長として現在非常によい方向に向つているというお話でありましたが、大体戰前——戰前が最良のものとは思いませんが、戰前の域に達するのには、あと何年くらいかかつたならばその城に達するというふうに総局長としてお考えになりますか。
  260. 小西桂太郎

    ○小西証人 ちよつとお伺いいたしますが、その点は車両その他すべての……。
  261. 塚原俊郎

    ○塚原委員 全般を通じてでけつこうです。
  262. 小西桂太郎

    ○小西証人 これは先ほど申し上げましてとめられましたが、国有鉄道の財政の問題、大きく申しますれば、国全体の国力の問題と申しますか、そういうものとも関連いたしますので、的確に何年間で元のようになるということは申し上げかねると思います。ただ従事員の訓練教育程度、その他につきましては、そう長くかからないうちに従前の通りにしなければならぬと思つております。
  263. 篠田弘作

    篠田委員長 他に御質問がありますか。——質問がなければ小西証人に対する尋問はこれをもつて終了いたします。証人には御苦労さまでした。     —————————————
  264. 篠田弘作

    篠田委員長 次に足羽則之証人より証言を求むることといたします。  これより足羽則之証人より証言を求むることといたします。あらかじめ文書をもつて御通知いたしておきました通り、証人として証言を求むることに決定いたしましたのでさよう御了承願います。  ただいまより桜木町国電事故に関する件について証言を求むることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係にあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受くる者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定むるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読を願います。     〔証人足羽則之君朗読〕    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  265. 篠田弘作

    篠田委員長 では宣誓書署名捺印をお願いします。     〔証人宣誓書署名捺印
  266. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なおこちらから質問をしておるときはおかけになつていてよろしいですが、お答えの際は御起立を願います。  国有鉄道に対する運輸省の監督権というものはどういうふうに行われておるか、概略御説明を願いたい。
  267. 足羽則之

    ○足羽証人 国有鉄道に対する運輸省の監督権についての御質問でございますが、監督権の範囲について概略を申し上げたいと思います。  監督権の範囲を規定いたしますものは、主として日本国有鉄道法でございますが、なお公共企業体労働関係法その他、関連した法律がございますが、順次申し上げたいと思います。  まず日本国有鉄道法の関係について申し上げますと、日本国有鉄道法では、まず第五章に、国有鉄道に対する監督の規定がございますが、そこで「日本国有鉄道は、運輸大臣が監督する。」こういう一般規定がございます。その次には運輸大臣の許認可を受ける事項といたしまして、三項目あがつておるのでございますが、それは「鉄道新線の建設及び他の運輸事業の讓受」、第二が「日本国有鉄道に関連する連絡線航路又は自動車運送事業の開始、」第三が「営業線の休止及び廃止」であります。なおその次の条文には、監督上の命令及び報告という内容につきまして、「運輸大臣は、公共の福祉を増進するため特に必要があると認めるときは、日本国有鉄道に対し監督上必要な命令をすることができる。」こういう規定と、それからやはり「監督上必要があると認めるときは、日本国有鉄道に対し報告をさせることができる。」こういう規定がございます。以上の監督の章に書いてありまする三つの条文にあげてあるものが、まず最も基礎になるものでございますが、なお国有鉄道法を開いてみますと、それ以外に、随所にたとえばこの監理委員会の委員の任命あるいは、総裁の任命等につきまして、これは内閣が行うのでございますが、しかし国有鉄道に対する一般監督権は運輸大臣が持つておりますから、実質的には運輸大臣がこの内閣の行う任命についての実際の仕事をいたす者、こういうふうに考えております。なお予算の国会に対する提出あるいは予算の実施あるいは決算等々、予算に関連いたしまして運輸大臣の許認可を受け、あるいは運輸大臣に報告をし、あるいは運輸大臣の承認を求めるというふうなことが、予算に関する規定の随所に盛られておりますが、その詳細については省略をさしていただきます。  それから公共企業体労働関係法に、御承知の労働問題について公共企業体調停委員会及び公共企業体の仲裁委員会というものがあるのでございますが、この調停の開始及び仲裁の開始について、運輸大臣は日本国有鉄道に関するものにつきましては、その請求をすることのできることがきめられており、また仲裁委員の罷免につきましても運輸大臣が発動できるという、この三点が公共企業体労働関係法できめられております。  なお日本国有鉄道運賃法という規定があるのでございますが、運賃は法律をもつてきめられるのでありますが、ある軽微な運賃につきまして、法律をもつて定められない運賃につきましては、運輸大臣の承認を求め、許可認可を求めるということになつておりまして、それに関することがこの運賃法に定められております。大体運輸大臣の監督権の範囲につきましては、以上のことでございまして、なおそれに関して、その権限は運輸省の設置法に、以上に関連したことがそれぞれあげてあるわけでございまして、この監督権を行使する機関といたしましては、運輸省に鉄道監督局がございまして、鉄道監督局の中に国有鉄道部と民営鉄道部と二つにわかれておりますが、鉄道監督局の国有鉄道部が国有鉄道に対する監督仕事を行う、こういうふうになつております。
  268. 篠田弘作

    篠田委員長 公共の福祉のために特に必要がある場合には、国鉄に対し監督に必要なる命令を発することができるということになつておりますが、実際問題としてこの条文はどういうときに発動されておりますか。
  269. 足羽則之

    ○足羽証人 従来行われておる——国有鉄道が発足いたしましてまだ日は浅いのでございますが、いかなる場合に発動されておるかという事例につきましては、実はまだ範例と申しますか、慣行としてどの範囲までというほどケースは多くないのでございます。しかしあるいは非常災害が起りまして、それらの復旧について非常に公共の福祉に関係があるというような場合に、それに対する命令を出すということも可能でございましようし、あるいはそういう場合の理想について、運賃を減免するとか、あるいは無賃で運ぶとか、そういう命令を出すことも可能であろうと考えられますし、いろいろな事項につきまして、およそ公共の福祉を増進するために特に必要であるというふうに考えられる場合には、その命令を個々の場合にその具体的内容について検討をし、発動することは可能である、こう考えております。
  270. 篠田弘作

    篠田委員長 実際問題として、運輸大臣は国有鉄道の業務に対してもう少し立ち入つて監督する必要をお感じになるか、今の状態でけつこうであるとお思いになるか、もうちよつと国有鉄道の問題については運輸大臣の権限を拡大した方がいいか、それはどつちにお考えになりますか
  271. 足羽則之

    ○足羽証人 国有鉄道は、従来運輸省のもとに、鉄道特別会計として運輸大臣が、監督大臣の地位とともに企業運営の大臣として経営をして参つてつた。それが一昨年の六月から公共企業体として発足いたしたのでございますが、その当時におきます考え方としては、日本の国内の交通機関として公共的な使命を追求するという点について非常に大きな使命がある交通機関といたしましては、ひとしく公共的な使命を持つておるという点につきましては、あるいは私鉄ともかわりはないと考えられるのでありますが、しかし国の陸上交通の最大の機関である点から見ましても、非常に大きな人の集団であり、または非常に大きな物の消費者使用者である。いろいろな点から考えて、国有鉄道というものの一挙一動と申しますか、そういうものは特段の公共的な使命というものを考えなければいけない、こういう点は十分考えられると思うのでありますが、同時に一つの企業としての企業性の追究という点が、公共企業体が発足するときに考えられたわけでございます。つまり官庁としての経営の不便な面はそういう点で除去をして、そして経営の合理的な、能率的な運営を企図する。そして公共企業体の企業的な使命というものとの調和をはかる。こういう考え方で発足したわけでございますが、そうした企業体の面を改正にあたつて強調するについては、あるいは政治、あるいは行政、あるいは予算、いろいろそうした面からの独立ということがその当時強く言われた。そこで日本国有鉄道か発足するにあたりまして、ただいま説明をしました日本国有鉄道法によつて、大体の輪郭がきめられたのでありますが、しかしそれに対する一般の考え方はもつと自由な、驥足を伸ばした、企業体らしい方向に法律もきめられ、またそういう活動をすべきだ、こういう考え方が非常に強かつたわけであります。それは従来の国会の衆参両院の議事録をごらんになつていただけばおわかりいただけると思うのでありますが、ことにその問題は予算の運用の面につきまして、いろいろ具体的な要望事項となつて現われております。
  272. 篠田弘作

    篠田委員長 その問題はあとでこちらから質問します。
  273. 足羽則之

    ○足羽証人 では簡單に申し上げます。そこで会計の規定なんかもその方向に向つて改正いたしたのでありますが、現在ではそれと同時にもう少しそれに対する国家の監督が強くならなければいかぬじやないか、こういう意見も一面出ておりまして、本国会に自由党からの御提案として改正案が出まして、昨日衆議院を通過したことは御承知の通りでございます。私たちといたしましては、企業の内部に立入つてとやかく監督権を行使するということは、実はいかがなものか、こういうことはやはり一つの基本の線として考えなければいけないのじやないか、そこで現在の規定の運用にいたしましても、御承知のように現在では法律の規定をその通り運用することにつきましては多少の支障があるわけでございまして、国有鉄道が発足いたしましてからまだ日も浅いわけでありますから、今後現在の法規によつても、国有鉄道をうまく監督をして行くという慣行を樹立したい、こういう気持でやつているわけでございます。
  274. 篠田弘作

    篠田委員長 今回の国有鉄道法の一部改正は、あなたが今おつしやつた通り自由党でそういう案を出したのでありますが、問題は監理委員会の問題です。実際問題として監理委員会というものは、鉄道関係のある人はたつた一人で、あとの四人の人間はほとんど鉄道関係を持たない人ばかり、そういう人々が集まつて委員会をつくつて、総裁の任命であるとか、あるいは役員の任命であるとかいつたことを今日までやつて来ておるし、また国鉄の内部の重大なる問題についても、この監理委員会というものは相当の発言権を、まず絶対的といつていいくらい持つておる。しかし何か事故が起つたような場合には、何もこの監理委員会責任を持たない。こういう一つの制度に対して、運輸省の監督官として、あなたはどういうふうにお考えになつておられますか。
  275. 足羽則之

    ○足羽証人 ただいまの御質問に対してお答えをいたしたいと思います。昨日その点についての法案が通過をいたしましたので、あるいは私の立場として、それに対する批判を申し上げることは多少さしさわりがあるかと思いますが、しかし証人として喚問になつておるのでありますから、私の考えを申し述べさせていただきたいと思います。  この法律によりますと、監理委員会日本国有鉄道業務運営について、指導監督する権限と責任とを有する、こういうふうにきめられておるのであります。しかしそれ以外に監理委員会に関する規定は、いかなることをする機関かということになり、あるいはその性質を考える規定はないわけでありまして、その条文を基礎にして考えますと、監理委員会は国鉄の内部の機関であると思います。同時に総裁に関する規定があるのでありますが「総裁は、日本国有鉄道を代表し、その業務を総理する。」と規定してあるのでありますが、日本国有鉄道の業務の執行に対しましては、総裁が外部に対して日本国有鉄道を代表し、またその内部の業務を全部執行をする、こういう執行機関だと思うのであります。従つてこの国有鉄道の業務を運営して行く上の意思決定は総裁にあるのであります。従つて業務上のすべての問題は総裁が中心になる、外部に対しても内部に対しても総裁というものが中心になつて外に対して代表し、内部に対しては業務を総理する、こういう関係にあると思うのであります。そこで監理委員会は「日本国有鉄道業務運営を指導統制する権限と責任とを有する。」というのでありますが、今の総裁との関係を考えてみます場合に、重大な事項に関してこれをあるいは指導をし、統制をするという言葉が当てはまるような動き方はあると思うのでありますが、しかしそれが国有鉄道の行為として出る場合には、総裁の意思決定となり、総裁が日本国有鉄道を代表して外部に対しても折衝しあるいは内部に対してもこれを総理する、こういうことになるのでありまして、そういうふうな関係であると考えております。そこでしからば監理委員会を廃止すべきかどうかという問題でありますが、これは設立当初の多少の沿革もあるわけでありますが、商業、工業あるいは運輸業、そうした世間のいろいろな経済活動なり、社会活動の基盤になる、そうした広い面にわたる深い知識と経験とを有する人を監理委員として、国鉄の大体の動き方を内部機関として指導統制をさす、こういう内面指導の面にその働きがあるもの、そういう考えでおりまして、国有鉄道として動く場合には総裁があくまでも責任を負う。
  276. 篠田弘作

    篠田委員長 それはよくわかつているのですが、しかし総裁は任命されて初めて総裁であつて、総裁を任命する場合には、第二十条によつて、総裁は監理委員会が推薦した者につき内閣総理大臣が任命することになつているのだから、結局総裁が任命する権利も監理委員会が持つているわけです。しかるに監理委員会は無責任というとおかしいけれども、知識人は集まつているかもしれぬが、鉄道関係のあつた者は一人である、あとの四人は鉄道に関しては何も知らない。そういう人たちが集まつて、実際において鉄道の指導監督というものができるかどうか、もちろん鉄道の技術的な面ばかりではないでしようが、そういう面について監理委員会そのものに力を持たせるよりも、運輸大臣にもつと力を持たせる方がいいのじやないかという考え方が相当多いと思うのです。それに対するあなたの見解を簡單に言つてください。
  277. 足羽則之

    ○足羽証人 任命権者は内閣でありますから、当然の条理として任命権者に対して総裁も責任を負うと考えます。この条文にはそれは書いてないわけでありますが、当然の条理としてそういうふうに考えます。そこで監理委員会との関係は、監理委員会は特殊な存在でありますから、それとの関係をはつきりさせるために、監理委員会に対して総裁が責任を負うということは書いてありますが、これはその任命権者に対して総裁が責任を負うことを排除するものではないというふうに私は考えております。それからまた国有鉄道の運営につきましては、内部の非常に技術的な面はあるのでありますが、しかし国有鉄道がどういうふうに行くべきかというような、ほかの経済界との接触なり、社会との接触面において、そうした広い各方面に対する知識なり経験を有する人の監理委員会というものがありましても、これはあつていい機関ではないか。これがなければならぬ機関とは私は思わないのでありますが、現在あつてそれが働いております場合に、そういう意味においてあつていい機関ではないかと思つているのであります。
  278. 篠田弘作

    篠田委員長 別にじやまにはならぬという程度でありますか。
  279. 足羽則之

    ○足羽証人 そういう言い方には私は考えないのでありますが……。
  280. 篠田弘作

    篠田委員長 その点はもういいでしよう。それでは、国有鉄道が公共企業体になりまして、独立採算をとつたために、実際において国鉄の公共性というものとの間に矛盾が起る、あるいは無理が起るというようなことはないのですか。
  281. 足羽則之

    ○足羽委員 その点もいろいろ批判をされるのでありますが、あるいはそういうふうに映ずる面が相当あるであろうことは、私たちも事実として考えるのであります。しかし大局として、公共企業体になつたがゆえに、公共性の追求から非常にはずれて参つたとは考えておりません。
  282. 篠田弘作

    篠田委員長 いや、公共企業体になつたというよりも、独立採算制になつたということが、公共性というものと矛盾を来す、あるいは無理を来すような場合はないか。
  283. 足羽則之

    ○足羽証人 そういうことはないと思います。
  284. 篠田弘作

    篠田委員長 たとえば予算の面について、どうしてもここを直さなければならぬ、あるいはどうしてもでなくても、ここを直した方が安全だと思われるような場合でも、あるいは公共のためにはこの線を一つかけるとか、復元するとか、新設するということが必要だと思われた場合でも、独立採算制であるがゆえに、経済の面からそれが実行できないというような場合も相当あると思うのですが、そういう点はどうですか。
  285. 足羽則之

    ○足羽証人 それはむしろ従来の鉄道といたしましても、特別会計を持つてなされておつたというのは、一つの企業として観察される面があつたのでありますから、公共性を追求するという言葉によつて、いろいろな利害あるいは損益を度外視をして、あくまでもやつて行くという面については、やはり相当そうでなく進んだと思うのであります。従つて独立採算制をとる公共企業体になりましても、その面はあまりかわらない。むしろ鉄道のそうした公共企業体としての独立採算制という面を考えてできない場合には、あるいは一般会計からこれに対して——もちろんその内容によるわけでございますが、あるいは出資をするとか、あるいは交付をするとかいう方法によつても、国有鉄道の使命を達成さすために必要な場合もあり得ると考えるわけでありまして、必ずしもそういうことは矛盾をしないと考えております。
  286. 篠田弘作

    篠田委員長 今回の事件について、運輸省としての見解並びに今後の対策について承りたい。
  287. 足羽則之

    ○足羽証人 今回の一件につきましては、実は監督局で、国有鉄道部長を主査にいたしまして、国鉄部と民鉄部の技術関係課長が五、六人おるのでありますが、それを中心にして、この事故の調査を、あるいは現場につき、あるいは事故関係者につき、その他国鉄から資料の提出を求めまして、現在いたしております。まだ結論を得ませんので、その内容についての報告を申し上げる段階に本日まだなつていないのでございますが、私たちの多少でも鉄道関係を持つ者といたしまして、今回の事故は避け得られないものではなかつたという点から、これは鉄道責任であると考えまして、非常に恐縮に考えておる次第でございます。ひとり国鉄に対する関係だけでなく、運輸省といたしましては、国鉄と私鉄との監督行政を担当しておるわけでありまして、今回の事故について、その原因を深く糾明をいたしまして、それに対しての対策を今後に対して十分に立てなければならぬというふうに考えているわけであります。  なおそれに関連して申し上げたいことは、御承知のように輸送というものは、安全な輸送をするということが一番中心になる点でございまして、こうした事故が起つた場合に、そういうことを申し上げるのは非常にあるいはどうかと考えるのでありますが、事実輸送については安全ということがその中心の生命だと考えております、従来施設あるいは運転等に関する輸送関係の法規といたしましては、それぞれ省令に根拠がありまして、それぞれ監督いたしておるわけであります。しかしこの内容を、国鉄、私鉄全般に対して、施設の面あるいは運転の面に関して整備をし、最も統一的に安全の確保という見地からいたしたいと思いまして、実は一年ほど前から、鉄道の運転に関する安全法規と、鉄道の施設に関する基準の法規を検討いたしておる次第でございますが、今回のこの事故にもかんがみて、その内容を鋭意再検討いたしたいと考えておるわけであります。
  288. 篠田弘作

    篠田委員長 委員の方から何か御質問はありませんか。
  289. 島田末信

    ○島田委員 今回の事故を大体要約いたしますと、まず架線作業上の方法について大いに検討する必要があつたということが考えられます。それから架線が故障を起して以後のことについて、工手長のとつた態度や、信号手のとつた態度について欠陷がありはしないか。さらに事故発生後においては、運転手なり車掌なり、あるいは検車掛のとつた態度に、あるいは無責任であつた、あるいは応急措置をとる知識に欠けておつた等、いろいろ欠陷があると思うのでありますが、さらに今度は、今の電流遮断施設について、ここにも不備があつたということも考えられるし、また車体自体の構造についても、大いに研究しなければならぬ点があつたと考えております。ところがこれはそういつたことが事前に相当準備されておるというか、——あるいは整備されておるならば、こういう事故が発生しなかつたろうし、また発生したとしても、ただちにしかるべき応急措置もとられたろう、かように考えます。そうなつて参りますと、公共の福祉を基本とするこの国鉄に対して、監督指導の地位にある運輸省というものによつて、事前にこれらを監督し指導すべき万全の措置がとられていたとは思えないのでありまして、その点遺憾な点があつたのではないか、かようにわれわれは考えるのであります。そこで今の監理委員会であるとか運輸省であるとかいうものが、実際にこういつた夜間作業でやるべきものを晝間でやつてつたまた晝間でやつたとしても、列車を通さぬとか何とかいろいろな措置をしてやる方法もあつたろうし、そういう仕向け方をするということは、とにかく従来注意さるべきものではなかつたかと思うのであります。さらに従業員の訓練教育あるいは心構えといつたようなものについても、これはすでに人心が弛緩しているというか、そういうゆるみを感じておつたということが結果として現われておるのでありまして、これに対しても大いに監督し指導し万全を期すべき処置が事前にすでにとられておらねばならなかつたのではないか。また特に電流の遮断施設のごときは、これは当然そういつた場合に処置すべき方法として、すでに研究済みでなければならなかつたのであります。いろいろ予算関係もあり、また順位の関係もあつたのでありましようけれども、勢いこれは経済と並行してどう実現するかということがあろうし、そういつた点は監督者の立場から行けば、すでにその辺を注意し、また促進するという方法がとられていなければ、これは監督指導の地位にあるものとして遺憾がなかつたということは断言できないだろうとわれわれ考えるのであります。もちろん今後の対策として十分それらの措置がとられることは当然でありますが、従来のそういつた経緯から見て、はたして運輸省の監督指導の地位にあるものとして、そういう点にまでいろいろと十分な措置がとられておるかどうか。またこういう電気事故による火災ばかりでなく、いろいろな鉄道事故もあるでありましようし、またわれわれの予期せざるいろいろなことも今後発生しないとも限らないのでありますが、そういうことに対して、はたして技術の面やら、あるいは思想的な面やら、あるいは実際にそれらを監督指導し、公共の福祉を保全する上において十分な機構というか、また活動機関というものが備わつておるのかどうか。これらについて御見解を承りたいと思います。
  290. 足羽則之

    ○足羽証人 今回の事故原因につきましては、ただいま御指摘になりました点が一々競合をして今回の事故が起つたとも考えられるのでありまして、それの内容についてはただいま申し上げましたように、運輸省といたしましてもその原因の究明を鋭意いたしておるのでありますが、今回の事故の性質上、一般輸送上に関連して起る運転事故、あるいは施設上の事故、いろいろそうしたものにつきましては監督官庁としてはできる限りそれに備えるための監督法規の整備を十分に考えて行きたい。それについては、今回の事故なども十分それに対する一つの契機となり、あるいは具体的な内容を検討すべき一つのものになると考える次第でありますが、まず監督法規の整備、あるいはわれわれいつもよく考えておるのでありますが、運転従事員に対する考査制度というものをもつと万全ならしめたい。そういつた点について現在いろいろ検討いたしております。そうしたことと相まちまして、実際に業務運営を担当しておる国有鉄道なり、あるいはたくさんの私設鉄道がありますが、それがその監督法規に基いて実際に作業をし、あるいは施設をする基準をきめ、あるいは職員訓練をいたす。そして業務運営に当るわけでありますが、それと相まつて、今後こうした事故のなきことを期するようにわれわれとしては実際に指導もし、進んで検討もいたして参りたいと考えておるわけであります。
  291. 中川俊思

    ○中川委員 ちよつとお伺いいたします。運輸省としての国鉄に対する監督は、先ほど来いろいろ伺つておるところでありますが、国有鉄道運賃法であるとか、公共企業体労働関係法とか、たくさんあるようでありますが、今のお話を伺つてみますと、今回の事件にかんがみて監督法規の整備を急がなければならぬということで、まことにけつこうなことと思うのであります。しかしわれわれが考えることは、法規一点張りではなかなかうまく行かない。どうも日本の役所におきましては、先ほど来あなたのお話を伺つてつても、なるほど一点の非の打ちどころのない、立板に水を流すような、まことに名答弁をしておられる。これは日本の役所は何でもかんでも法規一点張りでやろうというところに非常に無理があるように私は考えておる。むろん法を守らなければならぬことは当然ですが、しかしそのほかに欠けているところがあるから今回のような事故も起きるのです。そういう点について具体的に今まで国鉄を監督なさつておる点、單に先ほど来お話のような、こういう法律によつた、こういう法規によつたということではなく、具体的にどういう監督を今までなさつてつたかということを、概略でよろしゆうございますから承りたい。
  292. 足羽則之

    ○足羽証人 きわめて概括的にお話申し上げるのに便宜と思いまして、根拠になる法規をあげて御説明申し上げたのでありますが、国有鉄道との関係について申し上げますれば、実は国有鉄道と運輸省がわかれてから非常に日も浅いわけであります。従つて実は私たちもこの監督的な立場にはありますが、しかし国有鉄道の事情には、少くとも現在のわれわれとしては相当に通じているつもりでございます。従つて單に法規の分野という面だけではなく、たとえば今回の事故にいたしましても、われわれとしてはむしろ同僚の事故のような感じもする次第であります。ふだんの接触面では主として予算の問題、あるいは運賃をいかにすべきか、新線の建設はいかにすべきか、いろいろ例をあげますれば大きな問題としてはそういつた問題があげられると思うのでありますが、あるいは今回の事故の問題につきましては、單に法規の命ずるところの執行というだけでなく、それが現実にどう妥当するか、合うかどうかという気持で、いろいろ国有鉄道の人とも接触し、よくその内容もただし、あるいはその対策についてもただし、あるいはこちらの意見も述べる。従つて單に命令一点張りという気持でなく、あるいは勧告という言葉を使つてよろしいですかどうですか、いろいろそうした気持でやつておりまして、單に形式的な監督の立場で進めて参るという気持ではいたしておらぬ次第でございます。
  293. 中川俊思

    ○中川委員 いや、私のお聞きしたのは、実際に人を運ぶ、荷物を運ぶところの鉄道が、事故の起きないように、完全に運ばれるようにするために、たとえばさつきお話のあつた運転従事員の考査はどういうふうにしたらいいか。事故が起きぬようにするためには、法規にはなるほどこうこうこういうことを守れと書いてあるが、それを具体的にどういうことを実際にやつておられるか。たとえば国鉄の従事員をときどき監督局長の立場にあるあなたがお集めになつて訓示でもされておるか、あるいはいろいろな事故が起つた場合に、今日までの事故原因を追究されて、こういうことは将来注意しなければならぬ、こういうふうにしなければならぬというような、具体的な注意をなさつておるかどうかということをお聞きしたのです。
  294. 足羽則之

    ○足羽証人 ただいま私たちの実際仕事をやつております心構えと申しますか、態度を申し上げたわけであります。しかしおのずからそこには監督官庁と実際の業務の運営に当つている別個の国有鉄道との、はつきりした違いがあるわけでありますから、従つてただいま考査の例をおあげになりましたが、試験なんかの個々の実施、あるいは直接に従事員に働きかけて行くというような問題は、これは国有鉄道の内部の運営の問題であります。御質問を御忖度申し上げると、あるいはお気に沿わぬかもしれませんが、そういう点については、われわれはむしろ役所としてはタツチしないという行き方であるべきではないか、こういうふうに考えております。
  295. 中川俊思

    ○中川委員 お話の通りです。監督局長が一々従事員を集めてどうということはないでしようが、従事員を監督しておるその上のポストの者を集めて命令をするとか、あるいは注意をするとかいうことはなさるでしよう。そういう具体的なことをなさつておるかどうか。由来日本の役所というものは、ただ單に法規一点張りで仕事を行うことが多い。そのために実際面において欠けておる点が多いのです。そういうことから今回のような事故も発生する場合があるのですから、私が申したのは、局長なり総裁が、一々従事員を局長の部屋に呼び、総裁の部屋に呼んで訓辞をされるとかどうとかということはないでしよう。国鉄の総裁なりあるいは局長なりあるいは部長なりに対して、こういうふうに従事員に対してやれというようなことはなさつておるんじやないですか、そういう連絡は平素ないんですか。
  296. 足羽則之

    ○足羽証人 それはおよそ国有鉄道といわず、あるいは私の関係する限りにおきましては、地方鉄道あるいは軌道に対しても同様に考えますが、企業の運営なり、いろいろの問題につきましては、その経営の首脳部といろいろな機会を設けて、あるいは役所に招致するとか、いろいろな機会に接触をして、十分実情をつまびらかにする、あるいはお互いに意見を交換する、そういうやり方をすることによつて、行政というと非常に言葉はかた苦しくなるわけでありますが、われわれ監督的な立場にある役所のする仕事がスムースに運ばれる、こういうふうに考えておりますので、そういう点につきましては、お言葉のように国有鉄道について申し上れば、首脳部とはいろいろな機会に意見を交換する機会は十分に持つておるつもりでございます。
  297. 中川俊思

    ○中川委員 それを伺つて非常にけつこうなことだと思うのですが、どうかただ意見の交換の機会だけでなく、機会を十分フルに利用していただいて、そういうふうな監督をしていただきたいということを強くお願いしておきます。  それから先ほど委員長からもちよつと質問があつたようですが、いわゆる企業の独立性ということは、公共企業体になつたので当然なさなければならぬことですが、企業の独立性を追求することが急であるために、いわゆる精神的方面の監督が欠けておるのではないか、たとえばこれは今日までたびたび幾人かの証人にここに来ていただいてお話を承りましても、いわゆる精神方面、いわゆる殉職精神と申しますか、職場のためには身命をなげうつてやるという気持が非常に欠けておるように思うのです。たとえばわれわれのことを言うとおかしいですが、われわれは選挙のときには夜二時ごろまで方々で演説をやる、朝早く出にやならぬというような場合とか、すぐ駅なら駅へ行つて演説をやるような場合には、ヒロポンを打つてとにかく演説をやるぐらいの緊張した気分になる。私は先般も地方選挙のためにある地方へ出かけたことがあるのだが、真晝間に駅長が大酒飲んで駅長室で倒れておる実情を、私はこの目で見ておる。そういうようないわゆる精神の弛緩と申しますか、そういう点が今回のような事件の大きな原因になつておるのではないかと私は思うんですが、ただいま申し上げましたような精神方面の監督も十分にしていただいて、ただ企業の独立性も、公共企業体でありますから、独立採算制の立場から考えても、採算がとれないということは、これはまた大きな問題でありますから、それもむろん考えなければならぬことですが、ただその方面ばかりに全力を傾注されて、ただいま申し上げましたような精神方面の監督が不徹底だということになりますと、またこういう事件を繰返すことになります。先ほど来あなたがいろいろ言われるようなりつぱな法律はたくさんありますが、法律があつてみたところで、法は御承知の通り人が運用するのですから、これを運用する人が、ただいま申し上げましたような精神を誤つてつたのでは何もならない、こういうことになるんですが、精神方面の監督と申しますか、ことに終戰後思想が非常に混乱して、共産主義が非常に蔓延して来た、そういうようなことから労働運動なども非常に激化して来たことは御承知の通りなんですが、そういうものに対する監督というものは、具体的にはどういうことをなさつておりますか。
  298. 足羽則之

    ○足羽証人 精神方面の指導、教養に対する具体的な監督というご質問は、遺憾ではございますが、実は私たちそういう面について、役所としてどうということはいたしておらないわけであります。ただしかし五十万の厖大なる職員を擁する団体として、職員の心構えなり、あるいは仕事のやり方に対する基本観念ということがどうかということは、非常に大切な問題でありまして、そうした問題につきましては、こうした事故が起りましたので、実は国有鉄道においても一言の弁解の余地もない、結果においてそういうふうに考えますので、十分にそういう点は心を沈潜さして、衷心から仕事をまじめにやつて行かなければいかぬという気持は十分持つておりますし、またわれわれといたしましても、かつて鉄道精神という一つのモツトーがあるわけでありますが、そうした仕事をやるのに非常に熱心な鉄道かたぎと申しますか、そういうものを仕事の上においてぜひとりもどしたいという気持で、お互いに話合つてそういうふうに進めて参りたい、こういうふうに常に考えてやつておるわけであります。
  299. 田渕光一

    ○田渕委員 二十四年六月の機構改革以後の事故と、その以前の事故、つまり何といいましようか、人為的に避け得られない天災、不可抗力というやつ、山くずれが急にあつて乗り上げたとか、あるいは溶岩に乗り上げたとかいうのは別として、こういうような事故が私鉄、国鉄両面から、改組以前に多かつたか、あるいは改組以後に多かつたかということを伺いたいと思います。
  300. 足羽則之

    ○足羽証人 実は私今ここにはつきり申し上げる資料を持ち合せませんので、お話に対してちよつと御返答いたしかねます。
  301. 田渕光一

    ○田渕委員 少くとも今日まで証人を調べましたのは、日本国有鉄道を主として、運輸省からはあなたが初めてです。五月八日の本会議における山崎運輸大臣の謹巖なあの遺憾の意を表されたことに対して、われわれ国会議員として一応了承しておるのですが、少くとも今日まで科学的あるいは技術的な監督と並行して、精神的な方面を監督する方法として、終戰後の道義の廃頽、ことに国有鉄道職員のあの総じて横着な態度に対して、精神的な訓練として宗教方面もしくは精神方面の指導監督といいましようか、講義あるいは精神のかてと申しましようか、修養講座というようなものをやつたようなことがございますか。
  302. 足羽則之

    ○足羽証人 運輸省といたしましてはそういう点はいたしません。ただわれわれが承知しております点では、鉄道のいろいろな業務に対する精神面の育成と申しますか、鍛え方と申しますか、心構えをつくつて行きますのには、あるいは従来なら管理部、今なら監督局でございますが、それぞれの現場で標語を持ちまして——ある標語に至つては開局以来十数年、現在に至るまでそれがずつと續いておるのもございますが、ただいまそれぞれの二つなり三つなり、これを根本理念としてやつて行くというような標語をつくつて、それを仕事の上に現わす、こういう行き方で仕事を通じて、仕事に真劍にぶつかる、こういう行き方をお互いに鍛え合つております。こういうわけでございますが、終戰後には、当時私もまだ鉄道仕事をやつてつたわけでありますが、終戰直後には遺憾ながらそうした行き方が少しゆらいで来ております。しかし逐次そうした風潮と申しますか、行き方が、だんだん一般の社会状態が落着いて参るに従つて、よくなつて、やはり仕事を通じて、お互いにひとつ仕事をやろうという気持を鍛え合おう、こういうふうに現在進んで参つておるというふうにわれわれは観察をいたしております。
  303. 田渕光一

    ○田渕委員 運輸省としてあなたが初めてでありますが、特にいろいろ伺いました点において、もう少し訓練がよかつたならば、避け得られたのではないかと思われることが避け得られなかつたのは、国有鉄道証人のことごとくが、ほんとうに責任感が欠如しておるからだと思うのであります。まつたくもう一つ中澤工手長が念を押し、もう一つそのときに大きな責任感、もう一歩踏み込んで赤旗でも振つてつたらこういうことはなかつたであろう、あるいはまた高原信号掛が、もう一つ念を押して、あのときに赤信号を出しておつたら、そういうことはなかつたであろう。今となつては隔靴掻痒の感がありますが、こういう点において私は精神修養が足りないのではないかと考えますので、こういう点特に国有鉄道にはなおさら嚴重に監督を願いたいこと、また地方をわれわれがまわりまして、各駅に参りましても、われわれは鉄道職員には感謝の意を表し、なお激励もいたしておりますが、とかく今おつしやつた標語を見ましても、独立採算制の企業体においては、これはやむを得なかつたこととは思うのでありますが、收入の表を見ても、貨物がどれだけあつた、何人の人員が乗つた、運賃が幾ら上つたという表しかない。客に対するサービスの不足、これは親切心の欠如であります。今日の青年諸君の、ことに若き鉄道従事員に対して、生やさしい一片の親切心を持つてやるのではだめなのです。これからは精神的な方面では宗教団体の講習とか、あるいは修養講座をつくるとか、たえずやつて行く方が、私は科学的な訓練も必要であるけれども、まずすべてを動かすものは人間の魂である。これにひとつしつかりとした監督を打込んでいただきたい、こういうことを要望しておきます。
  304. 篠田弘作

    篠田委員長 他に御発言がなければ、足羽証人に対する尋問はこれをもつて終ります。証人にはたいへん御苦労さまでした。     —————————————
  305. 篠田弘作

    篠田委員長 引續き加賀山之雄証人より証言を求めることにいたします。  あらかじめ文書をもつて御通知いたしておきました通り、証人として証言を求めることになりましたからさよう御了承願います。証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは二親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人、または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております、しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読を願います。     〔証人加賀山之雄君朗読〕    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  306. 篠田弘作

    篠田委員長 宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  307. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をいたしておりますときはおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  今回の桜木町駅の国電事故に関しまして、あなたは国鉄の総裁といたしましてどういうふうな感じを持つておられるか、それをまず第一番に、簡單でよろしゆうございますから……。
  308. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 お答えいたします。こまかい原因等につきましてはお聞きいただいたと存じますので、ただいま委員長の言われましたように、私として考えておりますことを申述べたいと存じます。  日本国有鉄道は終戰後の非常に困難な時期を、非常な戰争中の衰耗を克服するために努力して参つたのでありますが、ようやく今日になつて一応外観につきましてはやや衰耗の度も整備ができ、またサービス等の面においてもやや見るべきものがあるようになつたわけでありますが、今なお物心両面において戰前の国有鉄道に比しまして整備が完全に行つておるということは言えないのでございまして、私ども日夜それらの足らざるを知り、またこれをいかに整備して行くかということに全力を注いで来て参つたわけでございます。従いまして、これはおそらく国有鉄道の全職員の気持であろうと思うのでありますが、何とかしてこれを克服して、国民生活に寄与する、日本の経済産業に寄与するということを念願いたして参つたのが国有鉄道の姿であろうと存ずるのであります。今回の事故におきまして、まさしく弱かつた点をはつきりと現わして、しかもその上に、設備の上におきましても、また従業員の作業におきましても、さらに自然的条件におきましても、悪条件が重なりまして、その結果をより重大にしたということに相なりました。私はかように今回の事故について考えておるのでございまして、われわれの努力が今まで足らなかつた、実を結ばなかつたということにつきましては、きわめて残念に存ずるものであります。
  309. 篠田弘作

    篠田委員長 今回の桜木町駅の事故を見ますと、ただいまあなたがおつしやつた通り、われわれが見ましてももう少し従業員の精神が緊張しておる、あるいはまた国有鉄道そのものの教育なり、訓練なりがふだんから行き届いておれば、未然に防ぐことができればけつこうでありますが、事件を未然に防ぐことができなかつたとしても、その被害というものを非常に減少することができたように考えるのでありますが、これはあなたのおつしやつたようないろいろ回復途上にある国有鉄道としての人的あるいは設備の面における弱さというものを暴露したということははつきりしておりますが、同時に組織の上において、縦の連絡というものは相当密接にとれるけれども、横の連絡というものが円満に行われていないというような組織上の欠陷もあると思いますが、その点は総裁としてはどう考えられますか。
  310. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 国有鉄道には由来いわゆる横断主義、縦断主義という二つの考え方がございます。いわゆる縦からの機構、横に連絡する機構、この両方をうまく合せて織物のようにやつて参りませんと、運営がうまく行かない非常に複雑な機能を持つておるのでございます。従いましてこの縦割を主にするか、横割を主にするかということにつきましては、従来とも絶えず議論もありますし、またいろいろ国鉄といたしまして経験を積んで参つたところでございます。この日本国有鉄道という公共企業体になりまして行いました機構の改変におきましては、これを何と申しますか、縦割において十分責任の追究ができるようにし、責任体制を完全にするという意図と、それからただ輸送、運輸、運転という最も直接的な、軍隊で申しますとこれが実戰部隊に当るわけでございますが、実際に汽車を動かすという仕事は、これは最も重要なる任務であつて、また関係従業員はほとんど国有鉄道従業員の大部分を占めておる仕事でございますので、これを一つの形体にまとめて、中央におきましては運輸総局ということが総元締めになり、これを地方におきましては鉄道管理局に分割いたしまして、運輸、運転という現業仕事を担当いたしておるのでございます。その他の経理、資材、営業というような事務は、これは日々の列車運転には直接関係のある仕事ではございません。これを縦割にいたしまして、地方に至るまで経理事務所あるいは資材事務所をもつてその事務に当らしておる。従いましてただいま委員長の仰せられました点は、この地方における管理局と経理局なり資材局との結びつきの問題についておつしやつたかと存ずるのでありますが、この点でございますと、私は改変をいたしまして日が浅うございますために、地方におけるそういつた機関の連繋が非常に完璧であるということは申し上げられないと思います。しかしながら初めつくりましたときに比べますと格段の進歩をいたしまして、それぞれの業務が関連をもつてお互いに十分な連絡をとるようになつて来つつあるというふうに存じておるのであります。もう一つの問題として、直接列車を動かす運輸、運転をあずかるところの管理局の事務は、またこれを細分いたしますと、輸送でございますとか、あるいは施設でございますとか、あるいは車両でございますとか、あるいは通信、保安というような事務にわかれるわけでございまして、これがさらに現業におきましてそれぞれの分担に相なつておるということでございます。この現場に関する限りは管理局が一本になつてこれを管理監督いたしておりまして、その管理局長の下に施設長、輸送長というようなものがございましても、これはまつたく管理局長の補佐役にすぎないのでございまして、その点で申しますと管理局内にそういつたセクトがあるということは私どもとしては考えておらないのでございます。  なおもう一つ現場のこの問題を考えましても、駅あるいは電車区あるいは電力区、車掌区といつた関係連絡になりますと、これはもちろん組織の問題には違いございませんが、これは鉄道始まりまして以来のわけ方とかわつておりませんで、今日特にこの連絡が悪くなつたということは私はないように考えておるのでございます。
  311. 篠田弘作

    篠田委員長 過般の桜木町駅の事故によりまして、この事故の惨害が非常に大きい、またそのときのいろいろの状態を総合してみても、国民の国鉄に対する信頼というものは相当薄らいだと申しますか、あるいはある意味において、非常に不信任な気持が増大しておるというふうに考えられると思うのでありますが、あなたは総裁として、この国民の信頼をどうして回復されるか、そういう対策についてお話を願います。
  312. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 これはただ机の上で策を立てて、これを申し上げるだけでは何にもならぬと思うのでございまして、今後の鉄道全般の職員の働き方をもつて、これをお示しする以外に、私は根本的な方法はないと存じます。国鉄職員が従来やつてつたことについて、反省をすべきことあらば、この際十分に反省する。そうしてその反省して悪かつた点があるならば、この際すぐに改める。精神的の面におきましては、私はそれ以外にないと存じます。物的面におきましては、先ほどもちよつと申し上げましたように、施設におきまして、完全にまだ整備しておるということは申し上げられない段階でございまして、なお今後これには相当の予算をつぎ込んで整備をはかつて参らなければならないのでございますが、特に安全に関する事柄につきましては、この予算のとり方並びにこの使い方につきましては十分愼重に、しかも今までより以上に、この点につぎ込む必要がある。特に今回のような事故を考えます場合には、電車の設備もたしかに足りない点があつたのでございまして、これらの点につきましては、応急の措置といたしまして、この秋までに全車両を、われわれのこれでいいというところまで直すということを計画いたしまして、もうこれには着手いたしております。  なお従事員の心構えにつきまして先ほど申しましたが、なおこれが規程等において、さらにこれを明瞭にする必要がある点がございましたらば、この点を訂正いたしまして、さらに従事員に誤解がないように、これを直さなければならない、かように存じております。  ここで私特に御報告を申し上げたいことは、今回の事故につきまして、国鉄の現場を預かりまするところの現場長が、全国的に立ち上りまして、今回のことは一東京鉄道管理局の問題ではない、みんなの問題である。われわれの手で事故を絶対に防ぐ運動を起す、こう言つてつております。私はこのことが国民に対して一番申し上げたいことで、ひとつ失われた国鉄に対する信用をこの際何とかしてとりもどしたい。これは現場従事員の心からの念願であるということを御報告申し上げたいと存じます。
  313. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまあなたの証言によりまして、全国の現場長が、ただ東京管内だけではなくて、一斉に、この事件を契機として責任を感じ、また義務を遂行するように立ち上つたということは、災いを転じて福となすものでありまして、まことにけつこうであると思います。またあなたが非常に良心的な態度をとつて、総裁として声涙ともに下る証言をされたということは、委員長としてまことに満足であります。お互いに立場は違いますが、要するに問題の解決は誠意をもつて全力を盡すこと以外にはないと思いますので、私は委員長といたしまして、今まで新聞にいろいろ責任を感じてあなたが辞職するというようなことが出ておりましたが、結論として、今すぐやめるということによつてあなたの責任は解除せられるか、あるいは現場長というものが振い上つたことを契機として、六十万の鉄道従業員の精神を引締め、その施設をでき得る限り改善をして、国民に対して安全なる国鉄というものを建設して、そうしてあなたの責任を果すことが、より以上にあなたの責任を果すことになるかどうかという問題について、よくお考えくださらんことをお願いいたします。  委員諸君、何か御質問ありませんか。
  314. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 ただいま加賀山総裁から、その責任を痛感せられまして、国民に対しまして、国鉄を代表して心からなる謝罪の態度に出られましたことにつきましては、私たちも総裁の心中を察するに余りあるものがあるのであります。ただここで、もちろんあなたの立場としては非常につらい立場にありましようけれども、こうした事故を今後絶対になくするということに、われわれもともに努力しなければならないと思うのであります。そこで不幸にして今回事故発生をいたしました現場の方々が、検察庁におきまして、あるいはまた国鉄の幹部の取調べに当つて、その陳述が食い違つておるというようなことがあるのであります。こうした大きな問題が現場の直接その事故発生をした方々において、いまだに食い違いが解決されないというようなことであつては、国民に対してまことに相済まぬことだと思つております。そこでどうしてもわれわれといたしましても、犯罪者を出すということでなく、あの事故というものは、こういう行き違いであつたのだということを知らせることもわれわれの使命じやないかとも考え、またそれに対する今後の処置等も講じなければならないと思うのであります。そこで先般来いわゆる工手長であります中澤君、あるいは信号手であります高原君、こうした方々の食い違いに対しましては、検察庁といたしましても、いまだに判断をいたしかねております。どうか総裁として、そうした罪人をつくるという意味でなく、人情をもつて、あるいはあなたの部下のなさつたことの真相をきわめる意味におきまして、あなた御自身がこの二人の食い違つておることを二人に懇々と言い含めてはつきりさせる御意思があるかどうかということを承りたいのであります。
  315. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 その点につきましては、一昨日の委員会におきまして、たいへん御迷惑をかけたことにつきましても、私はまことに遺憾に存じておるのでございます。事件当時から本人たちはまことに相済まないという気持と、それからその後のいろいろな事柄のために、気も転倒している点もあろうと存ずるのでございまして、本人たちをおちつけて、われわれの手でほんとうのことを確かめたいと考えておりますが、まず第一段といたしまして、東京鉄道管理局長のもとで、この二人をよく聞きただす、そうして心をしずめて聞くということにいたしたいと存じておりますが、それでもなお真相が明らかにされない場合には、もちろん私もその場に参りまして、十分に二人の気持、二人の立場を聞いてやりたいと存じております。
  316. 佐々木秀世

    ○佐々木(秀)委員 ひとつこのことだけはぜひあなたが——もちろん管理局長において真相を糾明されることであればけつこうでございますが、ただいまのお話のように、みずからひとつ愛情をもつて、人情をもつて御解決あらんことを、私は切望するものであります。  それからこの事件を契機として、全国の現場責任者が立ち上り、なおかつ全職員が従来の国鉄のほんとうの姿を、国民の前に仕事をもつて示すのだという御覚悟で立ち上られたということにつきましても、私はまことに御同慶にたえないと思うのでありますが、たまたま遺憾な点は、事件発生後におきまして、先ほども私は申し上げたのでありますが、今回の地方選挙などにおきまして、労働組合とか何とかいう名前でやるならいざ知らず、堂々と日本国有鉄道というトラツクを走らせて、選挙に專念している姿を私は見て来ている。そういうことがあると、なおさら国民としては国鉄に対して、先般事故を起したにもかかわらず、しかもこうして国有鉄道というトラツクを動かして選挙などに走りまわつておるということになれば、せつかく現場人たちが立ち上つた国鉄の熱意が、また国民からいろいろな目で見られるのではないかと思われるのであります。仕事の休みのときなどというならいざ知らず、仕事の最中に、しかも日曜でもないのにああいうことをするということでは、総裁の気持が全鉄道員に熟知されていないということにもなるのであります。こういうことは直接の関係ではありませんが、いわゆる国鉄の従業員の国民に対する信頼をとりもどすという意味からいたしましても、十分こういうことのないようにあなたに申し上げて、これで終りたいと思います。
  317. 中川俊思

    ○中川委員 総裁の非常に良心的なる御決意に対しましては、満腔の敬意を表するものであります。私は今回の大きな事件にぶつかりまして、災いを転じて福となすという観点から、一、二さかのぼつてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  先般来従事員を証人としてここに来ていただいてお尋ねをしてみますと、あれだけにたくさんの人を運んでおる従事員に対する国鉄の平素の訓練というものが、車を大事にすることのみ、訓練を受けて、いざという場合に、大事な人を運び出さなければならぬというような訓練はあまり受けていない、こういうような陳述があつたのであります。この点につきまして、五十万の国鉄従業員に対しまして、総裁は平素いかなる訓練をなされておりますか、まずこの点をお聞きしたい。
  318. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 日本国有鉄道という企業体になります前から、いわゆる前の鉄道省時代からのことでございますが、この最大の目標は、安全、正確、迅速ということでございまして、安全ということを第一に置いております。次に正確ということでございますが、この正確も、もともと運転の安全を期するために、正確に運転をするという建前からできておるのでございまして、これらの点につきましては、まつた鉄道人の常識に相なつておるというふうに私は考えておつたのでございますが、はからずも過日の委員会におきましてそういう証言が出た以上は、私どもとして安心ができない、考え直さなければならないというように思うのでございます。しかしながら、先ほど常識になつておるということを申し上げたのでございますが、さらに例を引いて申し上げますならば、お客を助けるために殉職して参ります国鉄職員の数も、一年間には相当になつて、けがをする人に至りましては、かなりの数になつております。またお客を助けるということでなく、輸送の安全を確保するために殉職をいたします職員の数も、年々四百人に近いのでありまして、毎日一人平均、こうしている間にも職員が一人死んで行きはしないかというような状態なのでございます。これはまことにおはずかしい数字でございまして、私どもはこのように職員が生命をなげうつてつてくれるということは、非常にありがたいが、そういうことのないように努めているつもりでございますが、そういつた実情もあるということを申し上げたいのであります。  なお先日の証言に関する御不審の点も、まことにごもつともと存ずるのでありまして、私どもは今後におきまして、今まで常識として怪しまなかつた問題につきまして、さらに深く反省をいたしまして、施策の上にこれをはつきりと現わして行くという方策をとりたいと存ずる次第であります。
  319. 中川俊思

    ○中川委員 安全、正確、迅速ということは、これはかつて鉄道の標語といいますか、私どももよく見たのでありますが、この安全ということは單に車の安全ということでなく、いわゆる人の安全ということもこの中に含まれた大きな意味であろうと考えますので、この点につきましては、ただいま総裁からお話のあつたように、今後さらに万全を期すべく御努力を願いたいと存じます。  次に午前中の管理局長のお話で承つたのでありますが、今回の事件にかんがみて、国鉄といたしましては、ただちに緊急、恒久の二つの対策を立てられた。緊急対策として、屋根の二重絶縁をするとか、あるいは塗料を塗りかえるとか、あるいはDコツクを左右に明示するとか、いろいろあつたようであります。また恒久対策といたしましても、いろいろな問題があつたようでございますが、しかし今回の事件を顧みますとき、一番欠如をしておつたことは、いわゆる従事員の精神の面であると私どもは思つておるのであります。この点について、むろん従事員に対する訓練も緊急対策として考えておるというお話であつたのでありますが、そういう点について私は他の証人にもお伺いをしたのでありますが、第一は職員養成所であるとか、鉄道教習所であるとか、そういうところへ入れるときから、十分に人物考査と申しますか、そういう点をお考え願いたいと思うのであります。今後の対策として、單に技術面だけでなく、精神的な面においてどういうふうなことをやつて行つたらよろしいか、日本国有鉄道魂というようなものでも、五十万の従事員にたたき込むだけの御決意を持つておられるかどうか、もしそれを持つておられるとするならば、どういう方法をもつてこれをやられんとするか、この点につきましてお伺いいたしたいのであります。
  320. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 まことに言われたことに対しましては申し上げる言葉もないのでございますが、私といたしましては、先ほど物心と申しましたが、設備の欠陥があればこれをやはり科学的に検討いたしまして、これを十分に整備をして行くことも非常に大事だと存じます。しかしながら設備だけがよくても、精神的な力が弱ければせつかくの設備も何もならないのでございますから、この点につきましては特に力を入れてやつて行かなければならないと存じます。国鉄職員の再訓練につきましては、教習所も必要でございますが、私は何と申しましても現場長のしつけ教育が何よりもたつといものであるというふうに考えております。従いまして鉄道仕事鉄道管理局長から現場長、現場従事員というように血が通つた運営ができませんと、精神的面においては非常に物足りないことになるのであります。昔はこういつた点が現場長の間にも十分に意識され、またそれの薫陶を受ける従事員側にもこの気持が非常に強くて、そこにいわゆる国鉄精神というものがあつたと存ずるのでございます。先ほど私が現場長の自発的な申出を聞いて何よりもうれしいと申したのは、実はこの現場長が立ち上つてくれれば、そういつた面について百の教習所を持つよりはさらに力強い、かような考えから申し上げた次第でございまして、私はこの点に最も重点を置いて行くべきである、かように信じておるのであります。
  321. 加藤充

    ○加藤(充)委員 今総裁の証言で、問題の原因などについて行き違いがある。それについて調べる必要な部分については、東鉄の管理局長を中心に責任に当らしておるということであつたのであります。そこで私は今の言葉に関連して、午前中に証言していただきました管理局長の白木さんの証言と思い合せてお尋ねいたしたいと思います。  委員長自身お認めになつたように、声涙ともに下つた総裁の遺憾の意の表明は、まことに意を強うするに足るし、何をかこれに鞭撻を加えんかというような心境にまでなつておるのですが、私は冷酷のようですが、そういう言葉、態度だけでは桜木町事件の再発というものは防止できないと思うのであります。先ほどの御証言の中に、全国の現場長が無事故運動に立ち上つた、これが何よりも報告しなければならないことであり、総裁もこれに感激しておるということであります。私どももそれはけつこうなことだと思います。しかしながら先ほどの白木証人証言の中には、この事件原因を調べるために必要であつたのでありましようし、調べる責任にもあつたから調べたのだと思いますが、桜木町事件原因を調査するのに、臨時人夫を調べたというのであります。私はこのことについては詳しく申し上げませんが、なぜあの事故が起きたときに臨時人夫を調べなければならなかつたのか。国鉄の内情に深くタツチしておりませんのに、白木局長は調べたのであります。だから調べる必要があつたのでありましよう。そこでお尋ねするのですが、国鉄の旧幹部の横すべり会社のような、あるいはそういう人的構成を持つた国鉄の下請工事の請負商売人がおる。こういうふうな者は国鉄精神でいくら貫こうと思つてもできない。国鉄は独立採算制で、独立会計の公共企業体として営業を中心にするのでありましようが、さらにもつとひどい、天下晴れての悪徳高い鉄道工事請負人というものがどんなに弊害があつたかということは、これは公知の事実であります。そういう者に請負わせておるような工事のやり方、このこと自体を根本的に改めなければならぬ。桜木町事件臨時人夫まで調べなければならなかつたこの事態を、総裁が決意を持つて徹底的に処理しないならば、声涙ともに下つた態度の表明だけではだめだと思う。
  322. 篠田弘作

    篠田委員長 ちよつと加藤委員に御注意申し上げます。ただいまあなたのおつしやつたことは、これはもちろん速記録を調べてみなければわかりませんが、われわれがここで受取つた白木証人言葉は、その架線工事に一人臨時人夫がおつたということは申しましたが、この事故原因について、臨時人夫を調べたということは言つておらないと思うのですが……。
  323. 加藤充

    ○加藤(充)委員 いや、私は同僚の山口君が聞いたことに対して控えを持つておるのであります。
  324. 篠田弘作

    篠田委員長 それではそれは速記録を調べてからにしていただきたいと思います。
  325. 加藤充

    ○加藤(充)委員 いずれにしましても、鉄道の下請工事人というようなものがある。こういうなれ合い制度的な、たらいまわし的な請負制度を廃止するということによほどかたい決意を持つて立ち上らないと、私どもは桜木町のような事故の再発は防げないと思うのですが、この点いかがですか。
  326. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 ただいま例に出されました会社に限らず、工事につきましてはすべて国鉄の直轄でやるというわけには、実は人員等の関係よりして参らないわけでございます。また非常に波動のあります工事につきましては、これを請負に出すとかあるいは臨時に使うという方がかえつて経済的であり、能率的である場合が多くあるのでございまして、そのためにわれわれはそういつた機関を活用いたしておるという状態でございます。もちろん重要な部分は国鉄がこれを監督し、その手足としてやつて行く方針でありますので、御心配になるようなことは、今の問題に関する限りはないと私は確信しておるのであります。
  327. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それと関連してですが、そういう現場には、往々にして国鉄の従業員の諸君が給料が低いために、せつかくの非番——休養に充てらるべき時間をアルバイト的に雇われて行つて收入をはかつておるというような具体的な実例を私どもは知つておるのであります。私は大阪ですが、知合いの人で、名前は預りますが、大阪の国鉄のある駅に勤務した保線関係の電気技術を持つていた男です。事は旧聞に属することでありますが、終戰後のことであります。その男が東山トンネルの開鑿にせつかくの休養時間をアルバイトに行つて、親子三人の、しかも病弱の家族の家庭を維持していた実例を私は知つておるのでありますが、事故の根本的の対策の中には、やはり今言つたような国鉄従業員が、おちついて安心して働けるだけの給与制度の確立ということが裏づけられて来なければならないと思いますが、この点について総裁の御意見をお聞きします。
  328. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 仰せのごとくでありまして、私どもは先ほど従業員が非常に大切であるということを申し上げたのでございまして、ただ先ほどの物心両面がまだ完全に行つておらないと申し上げたことからいたしまして、設備もまた従事員の給与も完全に十二分であるということは申し上げられないのであります。従つて何もかもそこに国鉄の財政の現状からいたしまして、十二分と言えないものがあるということは申し上げられるのでありますが、しかしこれは單に一国鉄に限つたことではないのでありまして、特に給与の問題につきましては、ただ国鉄職員のみのことも言つておられない。従つて機会あるごとに、また余裕あるごとに従事員のべースは今日まで上げて参つておるのでございますが、なお今後におきましても経営の重要な問題の一つとして、従事員の給与は考えて参りたいと存じます。
  329. 加藤充

    ○加藤(充)委員 先ほど総裁の御証言の中に、非常にずぼらなことで事故を起したりする者がある反面には、非常に公共的な鉄道精神に基いて、危急を救うために身命を犠牲にするというような、いわゆる公傷者がふえておるという話でありました。まことにこれは私どもも聞き知つておる限り同感なのでありますが、最近朝鮮事変以来国鉄の運輸の輻輳、そしてまた物心両面における国鉄の施設としましても、あるいは従業員としましても非常な重荷がかかつておる。そのために公傷ないしは災害というようなものが従業員側に起きておると思うのですが、こういうような事柄もやはり身が立たなければ、他人の急にもなかなか本人としては及びがたいので、こういうようなものに対しても万全の策を講ぜられ、そしてまた労働強化のために公傷、災害というようなものがふえないようなはからいをすることが必要だと思うのであります。  それで最後に一点だけお尋ねするのですが、二十六年の五月五日付であなたの方から桜木町駅の国電事故による死傷者についてという文書を当委員会は受取つたのであります。その第二項の末尾の方になお死亡者の御遺族に対しては、正当な受領者が決定次第可及的すみやかに賠償金をお払いしということがあるのですが、この点についてのお尋ねを最後にいたします。私は文字通りにうかうか読めば、その通りになると思うのですが、正当な受領者が決定次第可及的すみやかにというこの文字の使い方に私は解せないところがあるのです。正当な受領者が決定次第ということになると、可及的すみやかにという言葉はいらないはずであつて、決定次第賠償金をお払いしということで、りつぱな文章であり、態度もりつばに表明されておると思うのです。決定次第可及的すみやかに賠償金をお払いしということでは、私はここにいささかの懸念を持たざるを得ないのですが、この死亡者の遺家族に対しての賠償金の支払いの今日までの実情をひとつ御報告願いたいと思います。
  330. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 ただいま読まれました言葉使いは、まことに私はまずい点であるということを率直に申し上げたいと思います。ただ趣旨は、この意味は、正当な受領者が決定するということだけでございませんで、その他各般の事情をお聞きした上で一定の標準に基いて算定をいたしまして、その大体の額がきまつて参る、それによつて御了解を得て差上げる、こういう段階になるわけでございまして、これの事務が決定いたしますれば、ただちにこれを従事員が持参いたしましてお宅へ参上するということに相なるわけでございます。ただいまの段階は、全部でたしか八班くらいにわかれておると存じますが、手分けをして一班は二名ないしは三名の者が各地へ参上いたしましてお目にかかり、また御收入がどのくらいであつたということについては、税務署等に調べを出してもらうよういろいろの事務がございます。それで大体においてこの今回の御遺族方の御様子は調査ができましたのでございます。これが一段階でございますので、ここで先ほど申しましたような基準に基く算定をいたしまして、これがきまればただちに御遺族の方にこれを持参いたしまして差上げることに相なるわけでございます。
  331. 加藤充

    ○加藤(充)委員 一定の標準の立て方というようなものが標準になることは私ども心得ておりまするが、このたびの桜木町事故、そのために幾多の死傷者が気の毒にも出て参りましたが、これは私どもは先般来の当委員会証人喚問等によりまして、不可抗力的な原因、従業員のだれそれがどういうふうにこまかい責任を負うというようなことではなくして、むしろ国鉄の機構全体の上に大きな原因を持つものであるという認識を私個人としては持つものなのであります。しかし私はそういう意味合において、原因が不可抗力的であるという認定あるいはそういう不可抗力的なものが強いという原因の認定と同時に、見舞金の算定などにつきまして、原因が不可抗力的なんだからこつちに責任はないのだから、だれが責任を負うということが明らかにならないのだからといつて、不可抗力を理由として見舞金がきわめて少額に削られるというようなことになつたのでは、私は声涙ともに下つたという総裁のその責任のほどが現実に示されないのではないかと思うのであります。従いまして一定の標準というのは、一体今まで通りの国鉄のああいうふうな桜木町事故のようなものでない事件を標準にしたものを一定の標準というのか、このたびのようなあれほど大きいああいう原因事故というものは桜木町が初めてであるので、この際は新しい標準を立てて、その立てられた新しい標準を一定の標準にして見舞金あるいは損害賠償金を算定なさるのか、その点をたしかめておきたいと思うのであります。
  332. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 不可抗力等によつての場合ではありませんで、明らかに鉄道責任であるということを前提として基準を算定するというふうに考えた次第であります。
  333. 篠田弘作

    篠田委員長 今の賠償金の問題でありますが、これは税金がかかるのですか。
  334. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 税金はかからないことになつております。
  335. 篠田弘作

    篠田委員長 それから賠償金を払つただけでは賠償金を使つてしまうというおそれもあるのですが、遺家族の中に鉄道で働きたいという希望を持つておる人があるとすれば、それは優先的に採用されますか。
  336. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 実はそういう御申出も受けておるのが具体的にございまして、これはひとつ何とか優先的に考えたいと存じております。
  337. 加藤充

    ○加藤(充)委員 なるべくそこらまで、結論まで声涙ともに下つていただきたいのであります。  なお最後に、私は文書いじりするようで非常に恐縮なんですが、あなたの方から出して来た「桜木町駅の国電事故について」という報告書の、十ページの終りから、十一ページの初めにかけてですが、「次に六三型の電車がいわゆる戰時設計であるため、世間から批判されてきたが、電気配線その他重要な部分については改造工事が進められていて、今日では完全に標準設計のものになおつている。」こうあるのであります。これを読みますと、標準設計のものに直つているというので、そういう設計に切りかえるという方針がきまつたのであるから、標準設計のものに直つてあるのだという已然形、すでにもう完了したような形の表現が用いられていると思うのでありますが、こういう文章の書き方は、この文書の最高責任をとられる総裁の声涙ともに下つた態度とは、私どもは少くとも受取り得ないのであります。いろいろ聞いてみますと、これは今年の九月になればでき上るとか、いろいろなことを言つているのですが、標準設計のものに直つておるというまやかし的な、あるいはまやかしでないにしても、どうでも受取れるような文書を、委員会に出す報告文書として使うということは、私は委員会を侮辱したものであり、国鉄の誠意を疑うに十分だと思うのですが、この点最後に総裁の御意見を一点承りたいと思います。
  338. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 たいへん恐縮でございますが、お読み違いしておるように思うのでございまして、それをずつと續けて読んでいただけばわかりますように、六三型がいけないと三鷹事件のとき等に言われましたのは、いわゆる電動機に関する部分の電気部分が十分でなかつた。つまり標準設計のものと非常に違うということが言われておつたためでありまして、その点につきましては、すでに標準設計と同じように直つておるのであります。これは過去において直つておりますので、さように記載をいたした次第でございまして、今後二重絶縁にいたしますとか、貫通式にいたしますとか、あるいはブザーをつける、あるいはコツクの位置を直してつけるというようなことはこれからのことでございますが、これは六三型だけに限らず、ほとんど全車両についてそういうことをこれからやるのでございます。その点お間違いないようにお願い申し上げたいと思います。
  339. 加藤充

    ○加藤(充)委員 この国電事故についての当委員会にあてられた文書の中心をなすものは、桜木町のような事故を再発しないためにあの非業な、大量的な死を、しかも突然瞬間的にやつてしまつた災害の防止のために、その点からいわゆる六三型の電車の問題も問題になるのでありまして、六三型の電車の問題を前面に出しながら、しかもDコツクの問題だとか、その他の問題については、あとの方に部分的に取扱われている。Dコツクの開閉その他を一般乗客者にまかせておつたかどうか、あるいは運転士車掌がやつたかどうかということ自体が、災害の質的な問題でないにしても、少くとも量的な安全弁になり得たということは、今や調べの結果明らかなのであります。今お読み違いのないようにということでありますが、読み違いのないようにこれからも注意いたしますが、こういうような問題のときに、国鉄が大きくこうむつている非難の弁解を先に出して来て、かんじんかなめの、人が死んでしまつた桜木町事件の災害の再発を防止するというような責任の具体的な処置を聞かれている場合に、弁解が先についてまわるというような態度がこの中から払拭できない感じを、少くとも私個人としては持つのであります。それで先ほどのような発言をいたした次第であります。
  340. 田渕光一

    ○田渕委員 私は簡單に申し上げておきます。先般総裁が事故犠牲者の慰霊祭の際に疊に頭をすりつけてあやまつた、こういう記事を見ましたときに、加賀山精神というものに対してわれわれは非常に感激したのであります。この加賀山精神ともいうべきあなたの率直なまじめさが、一般現場職員に実際に透徹していたならば、この人為的に避け得べき事故が未然に防止されたのではないか。これははなはだ遺憾でありますが、過ぎたことはいたし方ありません。死んだ子の年を数えてもしかたがありませんが、先ほどから委員各位が言いました通り、転禍化福であります。それにはこの災いを転機として幸いを迎うべく、物心両面——科学力、技術の力によつて、国鉄の許される予算範囲内で改造していただくこともけつこうでありますが、動かす主体は人間であります。この人間の動く魂であります。私たちはかつて少年時代、青年時代に、あの鉄道の制服を来た人たちが客車に腰をかけておつたのを見なかつたのであります。人が来れば、ただちに席を立つて席を讓る。ところが敗戰後のどさくさ、特に民主主義をはき違えた若き職員たちが、最近老幼を問わず、席を讓るというようなことを私は見受けません。むしろたぬき寢入りをしたり、往々にして横着をしている。これらも精神的な方面から行くならば、魂によいことを教え、行為としても、修養の道としても実践されて行くことが必要じやないか。これを契機として全国鉄道職員にあなたが一つの指令を出されて、少くともこの桜木町駅の事件を契機として、贖罪の意味でも、また加賀山精神を透徹する意味においても——現場従業員で疲れた者はいざ知らず、二等にも大きくなつてつておるし、三等に乗つておりましても、年寄り、子供に席を讓ることが一つもない。こういうようなことは、今回の事件を契機として、ほんとうにそういう精神的な方面から国鉄従業員の精神をたたき直してもらいたいということが一つ。  もう一つは、戰時中、戰争前は、各駅に参りましても、神だなにさかきが青々としてあつて、しかもほんとうの東洋の美俗、日本の美点ともいうべき、神仏の加護を祈つてつた。最近はいずれの駅に行きましても、さかきも見受けません。神だなを拝むようなまじめな鉄道職員も見受けません。かような点は、形式ばかりでなく、私は魂をいうのである。少くとも加賀山精神が徹底しておつたならば、中澤証人にしても、高原証人にしても、ああいう両方ではつきり食い違つたことを言うまいと思います。いずれか一人がうそを言つていると思います。さすれば加賀山精神が透徹していなかつた現場と直結していなかつたと思うのであります。現場長が立ち上つただけではいけません。現場長とあなたと結び、現場長がまたほんとうに鉄道精神というものをこの際たたき起さなければならない。あえて鉄道ばかりでありません。各方面にありますけれども、貴重な人命を輸送している部門であります。一般国民が安心して乗れる汽車であり、電車でなければならぬ。私もたくさんあなたに質問したいと思つておりましたが、あなたの声涙ともに下る、また委員長のあなたのまじめさに感激した態度によつて、私もこれ以上は言いませんが、少くともこの食い違いができたということも、あなたの精神が徹底していなかつたためであるというようなことも考えていただきたい。かようなあらゆる角度から考えまして、今までの証人を調べた結果、工手長に親切味と、もう一つのサービスがあつたならば、あの大きな事件が未然に防止されたように私は思います。くれぐれも申しますが、科学の力ばかりに頼れません。ロケツトで動かす電車でありませんから。国鉄従業員の精神の入れかえにうんと力を入れていただいて、この現場に立ち会うこと、あるいはまた東鉄管内の職員たちが献身的に出ていただくことはけつこうでありますが、ほんとうに全従業員にあなたの精神がはつきりわかるように、この委員会が取立てることを心に入れて、大いに緊張してやつていただくことはまことに有意義だと思います。あなたが辞職されたところで済むものではない。かつて明治天皇が時の内閣総理大臣が辞職を申し出たときに、お前はそれで済むが朕はどうするのかということを言われたということを私は聞いております。この精神をあなたに発揮していただいて、この際国鉄のこの惰弱、あるいは日本精神を失うておる国鉄の大部分の職員に対して、加賀山精神というものをたたき込んでもらいたい。これがなくなつた人たちに対するせめてものたむけではないかと思います。まだいろいろ聞きたいこともございますが、私もこれ以上あなたに聞くだけの何は出ません。でありますからどうかひとつこの際あらゆる面において具体的に、まず私は私のお願いする精神的方面にみつちりつ込んでいただくならば、この三日間にわたる証人証言によつて、新聞論調を見ても、国民の輿論というものは、国鉄は器物を大事にするが、われわれの身体というものは第二義的に置いておるという観念が浮んで来ておりますから、これをはつきり取返すべく、実質面に具体的にすみやかに、少くともわれわれは次の旅行において国鉄職員でいすに腰かけて横着しておる者がないように、ひとつお願いしたいと思います。
  341. 加賀山之雄

    ○加賀山証人 ただいまのおさとしに対しまして、まことにありがたく存ずるのでありますが、私といたしましてはますます慚愧にたえない次第でございまして、由来非常にりつぱであつた国鉄精神が、今日になつてゆるんでまずいところが出て来たということでございますならば、これはまつたく私の不徳のいたすところでございますので、先ほどのお言葉をそのまま私はお返し申し上げて、ただもちろんこのおさとしは、今後建て直すということにつきましては、全力をあげて幹部とともにこれに当るつもりでございます。なお大勢の従事員の中には、それらの徹底を欠く従事員もままあろうかと存ずるのでありますが、時日をおかしいただきまして、必ず鉄道の全員がほんとうに国民から信頼を受ける鉄道にするために、渾身の努力をするということを誓わせていただきまして、私のお礼の言葉とさしていただきたいと思います。
  342. 篠田弘作

    篠田委員長 他に御発言がなければ、加賀山証人に対する尋問はこれにて終ります。証人には長い間たいへん御苦労さまでした。  次会は明後二十五日午前十時より、不正入出国に関する件について、椎野悦郎君、有馬敬君及び古屋享君より証言を求めることにいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時十四今散会