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1951-05-21 第10回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十一日(月曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 島田 末信君 理事 塚原 俊郎君    理事 内藤  隆君 理事 猪俣 浩三君    理事 山口 武秀君    大泉 寛三君       岡延右エ門君    鍛冶 良作君       川本 末治君    田渕 光一君       中川 俊思君    中村  清君       福田 喜東君    柳澤 義男君       石田 一松君    椎熊 三郎君       藤田 義光君    久保田鶴松君       横田甚太郎君  委員外出席者         証     人         (国電蒲田電車         区運転士)   中村  嘩君         証     人         (国電東神奈川         車掌車掌)  大矢 治雄君         証     人         (国電電気工手         長)      中澤 重ニ君         証     人         (国電桜木町駅         信号手)    高原 豊秋君     ————————————— 五月二十一日  委員梨木作次郎君辞任につき、その補欠として  横田甚太君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  桜木町国電事故に関する件  証人出頭要求に関する件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。  この際お諮りいたします。先般来桜木町国電事故に関する件につきまして、事務局基礎調査を命じておつたのでありますが、一応の調査を終了いたしましたので、この際桜木町国電事故に関する件について、委員会において本調査に着手いたしたいと存じますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なきものと認めます。それでは調査することに決定いたします。     —————————————
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 なお本件につきましては、理事諸君の御了承を得まして、本日は国電運転士中村嘩君国電車掌大屋治雄君、電気工手長中澤重二君、駅信号手高原豊秋君、二十二日に横浜地検検事大津廣吉君、横浜市警捜査第一課長高橋一夫君、横浜市警鑑識係井出光正君、乗客平田善夫君、二十三日に東京鉄道局管理局長白木龍夫君、日本国有鉄道運輸局長小西桂太郎君、運輸省鉄道監督局長足羽則之君、日本国有鉄道総裁加賀山之雄君、以上十二名の諸君にそれぞれ本委員会に、出頭を求める手続をいたしておりますが、以上の諸君を本委員会証人として決定いたすことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なきものと認めます。それでは証人として決定いたします。     —————————————
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 それではこれより桜木町国電事故に関する件につき調査を進めます。証人証言を求めることにいたします。ただいまお見えになつている方は中村嘩さんですね。
  7. 中村嘩

    中村証人 はい。
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 これより桜木町国電事故に関する件につきまして証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられかつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の朗読を願います。     〔証人中村嘩君朗読〕    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  9. 篠田弘作

    篠田委員長 では宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  10. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は事務の整理上その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問をしておりますときはおかけになつていてけつこうですが、お答えの際は御起立を願います。  証人略歴について述べてください。
  11. 中村嘩

    中村証人 大正八年二月十日、東京大田区御園二丁目三十九番地に生れました。現住所、本籍地は現在のままです。大正十四年四月、東京大田矢口小学校に入学しました。それから昭和六年三月、東京大田矢口東小学校を卒業しました。昭和十一年三月、攻玉社中学校を卒業しました。昭和十二年六月二十八日、東京鉄道局品川電車勤務。十三年十一月一日、蒲田電車車両手を命ぜられまして蒲田電車区に転勤しました。十四年四月一日蒲田電車電車運転手になりました。十四年七月一日、東京鉄道局教習所勤務を命ぜられまして教習所に入所いたしました。十四年十月三十一日、同教習所電車運転手科を修了いたしました。十五年二月一日、静岡県浜松市の高射砲第一連隊入営、同年十二月二十五日、高射砲第十七連隊転属昭和十七年十二月十日再び高射砲一連隊転属のため満鮮国境通過
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 こまかいことはいい、略歴だから、いつ小学校を出て、何年から何年まで軍隊にいたということでいい。
  13. 中村嘩

    中村証人 同年十二月二十日現役満期除隊。それより鉄道へまた服務を命ぜられまして、昭和十八年三月二十九日、東京鉄道局蒲田電車電車運転手を命ぜられました。十八年十月五日、臨時召集
  14. 篠田弘作

    篠田委員長 それから何年まで軍隊にいたか。
  15. 中村嘩

    中村証人 二十一年七月二日召集解除。それ以後電車運転手を引続いてやつております。
  16. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは電車運転手として、教習所なりあるいはあなたの働いておる現場なりで、どういう教育を受けまたどういう実務をやつたか簡単に述べてください。
  17. 中村嘩

    中村証人 教育車両手見習教習所を出てから運転手見習として、その間電車運転手として必要な事項教育を受けました。
  18. 篠田弘作

    篠田委員長 何か事故が起つた場合の教育を受けておりますか。
  19. 中村嘩

    中村証人 受けております。
  20. 篠田弘作

    篠田委員長 どういうふうに受けておるか。
  21. 中村嘩

    中村証人 事故が起つた場合、月に大体二回くらい電車区として応急処置訓練をいたします。
  22. 篠田弘作

    篠田委員長 どういう応急処置
  23. 中村嘩

    中村証人 車が故障なつたときどういうふうにするかというおもに故障方面だけであります。
  24. 篠田弘作

    篠田委員長 今度のようなこういう事件に対する訓練とかあるいは教育というものは受けておられなかつた
  25. 中村嘩

    中村証人 おりません。
  26. 篠田弘作

    篠田委員長 一ぺんもない。
  27. 中村嘩

    中村証人 今度のような事件というのはありません。
  28. 篠田弘作

    篠田委員長 どういう事件ですか。
  29. 中村嘩

    中村証人 主回線の地気というような場合は、すぐパンタグラフを降下するとか、そういうような教育です。
  30. 篠田弘作

    篠田委員長 電車の中に火事が起つたというような場合の教育は受けなかつたか。
  31. 中村嘩

    中村証人 別にこれというものはやつておりません。
  32. 篠田弘作

    篠田委員長 電車の中に何か大きな事故が起つたときに、どういうふうにして乗客を救済するかというふうなことは、今まで訓練をしたり演習をしたりしたことはなかつたか。
  33. 中村嘩

    中村証人 ありません。
  34. 篠田弘作

    篠田委員長 今回の事故が発生したそのいきさつをひとつ述べてください。
  35. 中村嘩

    中村証人 今回の事故の起つたいきさつは、まあ結局……。
  36. 篠田弘作

    篠田委員長 君がいつ運転して出て行つたところが、どういう状態だとか、その状況からまず述べてください。
  37. 中村嘩

    中村証人 横浜を大体九分か十分遅で出発いたしました。
  38. 篠田弘作

  39. 中村嘩

    中村証人 はい、そこははつきりいたしません。それで場内信号機確認喚呼位置という標があります。その標で場内信号機確認するわけでありますが、そのときに二番線に注意信号現示を出しておりました。そのことは結局二番線へ入つてよろしいという信号であります。
  40. 篠田弘作

    篠田委員長 二番線というのは下り線だね。
  41. 中村嘩

    中村証人 桜木町山側の線です。それで確認喚呼位置の標で、場内信号機の反対の鉄塔付近架線工事をやつているらしいように思われた人が二、三人—人数はつきりいたしませんが二、三人見えました。場内信号機というのは運転手にとつて絶対信号機で、絶対によく注意しなければならない義務があるのです。それで自分といたしましては、場内信号機をずつと確認しながら進んで行つたわけです。場内信号機を通過するときでありました。そのときに架線が幾らかたるんでいたのは自分でも見えました。架線がたるんでいるということは架線工事があつて、そのために幾らかたるんでいるんだろうと自分思つていました。そのとき別にその工事している者が手信号なり防護措置はしなかつた。それから場内信号機もちろん二番線注意場内信号現示である。自分といたしましても、絶対大丈夫だろうと思つてつて行きました。それで自分渡り線を渡るときに、架線状態を一応確認いたしました。確認をいたしまして、それであとは、今度は転轍の開通状態、それを運転手として見る義務がありますからずつと転轍の状態を見ながら通つて行きました。結局上り線でありますが、上り線に入らんとするときに、大きな雷のような火花が出て、それでこれはたいへんだと思つて、すぐ非常制動をかけて電車をとめて、それと同時にパンタグラフを降下したのであります。それでそのときにパンタグラフを降下しても依然として火花が出ているのであります。それから目分としてもいつまでたつても消火できない。普通ならパンタグラフを降下すれば消えるわけなんでありますが、一向に火花が出て消火しないわけであります。
  42. 篠田弘作

    篠田委員長 火花はどこから出ている。
  43. 中村嘩

    中村証人 屋根であります。これはもうパンタグラフひつかかつたものと思つてひよつと後を振り向いたわけであります。そうしたら天井から猛烈に火がふいている。表を見ようと思つても、表は火の粉がばらばら降つて来て、とうてい顏も出せない状態。すぐ中の乗客を出さねばならぬとそのときに思いました。それでまたドアをあける手配をしなければならないと思つて、またパンタグラフ上昇用ひもがありますが、そのひもでもつてパンを上げたのでありますが、結局パンタグラフひつかかつて中腰のような状態で、その点はつきりわかりません。それでパンタグラフを上げる電磁弁を扱つたかどうかわかりません。それですぐ車掌スイッチをあけたかと思います。あけると同時にドラムスイッチ、それはどつちが前後したかはつきりわかりません。
  44. 篠田弘作

    篠田委員長 それはあがつていたわけだな、君が。
  45. 中村嘩

    中村証人 はあ。とにかく操作をやつたように覚えております。
  46. 篠田弘作

    篠田委員長 (略図の前に行き、示しつつ)そうすると、ここの線を直したんでしよう。
  47. 中村嘩

    中村証人 はい。
  48. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは、これから入つて来たんでしよう。
  49. 中村嘩

    中村証人 入つて来ました。
  50. 篠田弘作

    篠田委員長 ごのとき、ここで直した連中は信号も何もしなかつたか。
  51. 中村嘩

    中村証人 全然やつていません。
  52. 篠田弘作

    篠田委員長 信号機を認めて入つてもいいと思つてつて来た。
  53. 中村嘩

    中村証人 はい。
  54. 篠田弘作

    篠田委員長 そのときに架線がたるんでいたというのはここの架線でしよう。
  55. 中村嘩

    中村証人 いや、そこではありません。もつとずつと手前であります。
  56. 篠田弘作

    篠田委員長 それじや、たるんでいた架線は通過しちやつたの
  57. 中村嘩

    中村証人 いえ、自分の線は全然異状はありません。
  58. 篠田弘作

    篠田委員長 だけれども、たるんでいる架線パンタグラフを引つかけたんじやないの。
  59. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  60. 篠田弘作

    篠田委員長 だから、あなたが入つて来るときに、ここにたるんでいる架線を見ていたわけでしよう。
  61. 中村嘩

    中村証人 そこの架線はわからなかつた
  62. 篠田弘作

    篠田委員長 こつちの架線の下るのを見ていたわけだね。ここはわからなかつたわけだね。
  63. 中村嘩

    中村証人 そこはわかりません。見通したところが何ともないと思つた
  64. 篠田弘作

    篠田委員長 もう少し、事故か起つてからあなたが車外に飛び出すまでの状態を詳しく話してください。
  65. 中村嘩

    中村証人 はい。結局、火花を発したので、すぐ非常制動機をかけました。非常制動機をかけると同時に、パンタグラフを降下する手配をとりました。それで電車止つてから、パンをおろせば通常はアークが全部とれるわけですが、ところが一向にいつまでたつて火花がずつと出たままなんであります。そこでいつまでたつても、そこのところは何秒くらいたつたちよつとはつきりわかりませんが、それから今度ドアをあける手配をとりました。
  66. 篠田弘作

    篠田委員長 ドアをあけるというのは、ボタンを押して……。
  67. 中村嘩

    中村証人 そうであります。結局ドアをあけるというのには、パンタグラフを再び上昇させて、パンタグラフを上昇させるためにパン上昇用ひもがあります。そのひもひつばつたのであります。電車パンタグラフ電磁弁を押せば、その車が上つておればあくわけであります。そこの操作ちよつとはつきりいたしません。自分としてはやつたつもりでおります。
  68. 篠田弘作

    篠田委員長 それであかないから飛び出した。
  69. 中村嘩

    中村証人 それで今度はパンを上げてから車掌スイッチをあけて、ドラムスイッチを後位置にすれば、パンがついていればあがるわけなんです。それは車掌スイッチを先にやつたか、ドラムスイツチを先にやつたはつきりいたしませんけれども、とにかくやつたところがどうしてもあかなかつた。それからどうしてもだめだと思つたので、今度はうしろから運転台客室貫通ドアをあけようと思つたのですが、結局入口の方から火が猛烈に吹いているので、中へとうてい入れないと思つた。それで運転台腰かけの上へ上つてドアをあけて飛び出したわけであります。
  70. 篠田弘作

    篠田委員長 その客室ドアというのは、君の方からしめてあるのではないの。
  71. 中村嘩

    中村証人 私の方からしめてあります。
  72. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの方からあける以外に手はないんじやないの。
  73. 中村嘩

    中村証人 はあ。
  74. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたが運転しているところと客室の間にドアがあるのでしよう。それはあなたの方からしめてあるのでしよう。
  75. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  76. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたがそれをあけてやれば、客はあなたが飛び出したあとで、たとい火を吹いていても何人か逃げることができるでしよう。
  77. 中村嘩

    中村証人 一番前の一番向う側なんです。運転手と正反対の位置なんです。
  78. 篠田弘作

    篠田委員長 だけどここはわずかじやないの、あなたがパンタグラフを上げたりおろしたりしているひまがあれば、あけることができるんじやないの。
  79. 中村嘩

    中村証人 その運転手腰かけは非常に大きくて、ドアもちよつとあけにくいような状態なんです。それで運転手として中腰のようなかつこうで操作したのです。ちよつとなかなかあけることができないような状態です。
  80. 篠田弘作

    篠田委員長 あけることができなかつた
  81. 中村嘩

    中村証人 それでうしろを振り向いてガラス越しに見たのでありますが、そのときには入口のところで猛烈な火が吹いているのです。
  82. 篠田弘作

    篠田委員長 あけてもむだだと思つたからあけなかつたのか、それともあける努力だけはしたのかね。
  83. 中村嘩

    中村証人 努力はいたしません。努力しないわけじやないのですが、とうてい中へ入れないと思つて、すぐうしろからまわろうと思つたのです。
  84. 篠田弘作

    篠田委員長 うしろからというのはこつちの方だね。
  85. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  86. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしたらあかなかつたというのだな。
  87. 中村嘩

    中村証人 まだそつちの方は話していないのですが、それで運転室自分の方の貫通ドアをあけて飛び降りて山側へずつとまわつたのです。それから一両目と二両目に行つて、一両目の連結器の上に足をかけて、その連結器の上に上つて、一両目に入ろうと思つたのですが、そこはちよつとはつきりいたしませんけれども……。
  88. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたはあける努力はしたの。こつちのドアをあけようとしたのですか。
  89. 中村嘩

    中村証人 とにかくはつきりしないのですけれども、そのときたしか一両目と二両円のところから人が出ておつたのです。人が出ておつたので、結局そこの連結器の上におれば危険だと思つてニ両目の方を見たら、非常に騒いでおる。ニ両目お客ガラスやなんか割つて非常に混乱状態つたのです。
  90. 篠田弘作

    篠田委員長 二両目に火がついていたのかね。
  91. 中村嘩

    中村証人 まだ当時はついていなかつたと思います。それで二両目を見たら非常に騒いでいる。その二両目の方に若本気をとられて、二両目のドアをあけなければならぬ。二両目のドアコツクがありますが、そのコツクを四、五箇所あけたと思います。そうしてドアを二枚か三枚自分はあけたと思うのです。
  92. 篠田弘作

    篠田委員長 しかし燃えていない方のドアをあけて、燃えておる方のドアをあけないのはおかしいじやないか。
  93. 中村嘩

    中村証人 そのときには燃えている方から燃えない方に人が移つて来ました。たしかそのときにはあけられなかつただろうと思います。
  94. 篠田弘作

    篠田委員長 その間のいきさつはつきり記憶はないわけだね。
  95. 中村嘩

    中村証人 はあ。
  96. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとそういうときの教育は、さつきも言つたように全然鉄道—今は国有鉄道だが、前の鉄道省としてはしてないわけだね。
  97. 中村嘩

    中村証人 ありません。
  98. 篠田弘作

    篠田委員長 しかしドアというものは中からだけあけるようになつてないで、そとからあける方法がついてあるんじやないの。
  99. 中村嘩

    中村証人 あります。
  100. 篠田弘作

    篠田委員長 それをどういうわけであけない。
  101. 中村嘩

    中村証人 結局自分としては中へ入らなくてはならないものだと直観的に思つたわけです。気がつかなかつたのです。
  102. 篠田弘作

    篠田委員長 ほかのそとにいた駅員とか何とかいう者は、どうしてそとからあける措置があるにもかかわらず、それをあけなかつたのか。
  103. 中村嘩

    中村証人 わかりません。
  104. 篠田弘作

    篠田委員長 三万コツクというのはそとからあける措置でしよう。どういうふうになつているの。
  105. 中村嘩

    中村証人 三万コツクもたくさんあります。
  106. 篠田弘作

    篠田委員長 そとからもあけるようになつているの。
  107. 中村嘩

    中村証人 なつております。
  108. 篠田弘作

    篠田委員長 それはどういうの、ボタンか何か押す……。
  109. 中村嘩

    中村証人 いえやはり同じこういうコツクです。
  110. 篠田弘作

    篠田委員長 それをあければそとからあくんだね。
  111. 中村嘩

    中村証人 あくというのではなくて、結局エアを全部切つてしまうのです。
  112. 篠田弘作

    篠田委員長 だからエアを切れば自然とあくんだろう。
  113. 中村嘩

    中村証人 自然とあくんじやなく、やはり手でひつぱるのです
  114. 篠田弘作

    篠田委員長 エアドアを押えているから、何ぼひつつてもあかない、エアを切つちやえばあくんだろう。
  115. 中村嘩

  116. 篠田弘作

    篠田委員長 それはどういうわけでだれもあけなかつたか。あなたはあがつていてそれに気がつかなかつた車掌は最後まで腕を組んで燃えておるのを見ていたというのだけれども、あなたは確認しなかつたのですか。
  117. 中村嘩

    中村証人 車掌のことは全然わかりません。
  118. 篠田弘作

    篠田委員長 それであなたは発火すると同時に、今言つたようパンタグラフをまず下げた。そうしてみたところが火花がなかなかおさまらないので、うしろを見たところが燃えておる。そこでこれはいけないと思つてドアをあけるために、またパンタグラフを上げてスイツチを押したけれども、パンタグラフが途中でひつかかつたかどうかしてあかなかつた
  119. 中村嘩

    中村証人 スイッチでなくてひもであります。
  120. 篠田弘作

    篠田委員長 ひもを引いたところがあかなかつた。そこで自分は外へ飛び出して、うしろドアをあけなかつたわけですね。運転手の部屋と客室とのドアをあけないで飛び出したのだが、それに間違いないですね。
  121. 中村嘩

    中村証人 間違いありません。
  122. 篠田弘作

    篠田委員長 そのときに——あとの祭りだが、ドアをあけるのに気がつかなかつたのだね。
  123. 中村嘩

    中村証人 あけてもだめだと思いました。そこのところははつきりわかりませんけれども……。とにかく自分としては瞬間的に中に入れないと思つたので、うしろからまわつてあけようと思つたのです。
  124. 篠田弘作

    篠田委員長 逃げるつもりではないのだね。
  125. 中村嘩

    中村証人 そういうわけではありません。
  126. 篠田弘作

    篠田委員長 車掌スイッチを扱つたけれどもドアがあかなかつたというのは、証人が切りかえスイッチを切つたためだというのだが……。
  127. 中村嘩

    中村証人 それはどういうわけですか。切りかえスイッチ切つて電源があればあきます。
  128. 篠田弘作

    篠田委員長 それはパンタグラフが下つてしまつているから、電源がないからあかないというわけかね。
  129. 中村嘩

    中村証人 そうです。
  130. 篠田弘作

    篠田委員長 シヨートして電車が燃えておつても、電流はまだ通じておつたのではないかね。
  131. 中村嘩

    中村証人 通じておりました。
  132. 篠田弘作

    篠田委員長 電車の方には電流は通じておつたけれども、スイツチの方には電流は通じてなかつたというわけですか。
  133. 中村嘩

    中村証人 それは技術的な問題になります。
  134. 篠田弘作

    篠田委員長 片方はどんどん燃えておるが、電流は通じていたわけですね。
  135. 中村嘩

    中村証人 シヨートしておると、そこでもつて電圧というものは、ほとんどゼロに近い程度になつてしまいます。
  136. 篠田弘作

    篠田委員長 自然に燃えているわけだね。
  137. 中村嘩

    中村証人 自然でありません。
  138. 篠田弘作

    篠田委員長 どんどん電流が入つて来たのじやないか。
  139. 中村嘩

    中村証人 入つて来ております。
  140. 篠田弘作

    篠田委員長 言いかえれば電車の方は電流が入つておるのだね。
  141. 中村嘩

    中村証人 電車の方じやありません。
  142. 篠田弘作

    篠田委員長 どういうわけで。
  143. 中村嘩

    中村証人 結局アースしてしまうわけです。
  144. 篠田弘作

    篠田委員長 アースしてしまえば、電車が燃えないわけじやないのですか。そうじやないのですか。
  145. 中村嘩

    中村証人 最初の……。
  146. 篠田弘作

    篠田委員長 だから電車を通じてアースしているわけか。
  147. 中村嘩

    中村証人 アースでありますが、どういうぐあいにアースしたか自分としてもちよつとわかりません。
  148. 篠田弘作

    篠田委員長 結局電車を一つのあれとして通じているわけでしよう。電車を通じて燃えているわけでしよう。
  149. 中村嘩

    中村証人 はい。
  150. 篠田弘作

    篠田委員長 その電流はあなたの開こうとするスイッチの方には来なかつたというのですね。
  151. 中村嘩

    中村証人 自分の言うことですか。
  152. 篠田弘作

    篠田委員長 スイツチのところへ電流が来ていればあなたがボタンを押してもあくわけでしよう。
  153. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  154. 篠田弘作

    篠田委員長 それがあかないというのは、あなたの押そうとするスイッチの方には来てない、しかし燃えている電車の方には電流は依然として行つていた、こういうことでしよう。
  155. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  156. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたがうしろへまわつて行つたときに、うしろの窓からお客が出ようとしていたわけでしよう。
  157. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  158. 篠田弘作

    篠田委員長 それを何人かひつぱり出したか。
  159. 中村嘩

    中村証人 ひつぱり出しました。
  160. 篠田弘作

    篠田委員長 何人くらい。
  161. 中村嘩

    中村証人 自分連結器上つたときに、そのときに一両日から二両目へ出て来たのであります。
  162. 篠田弘作

    篠田委員長 うしろドアからガラスか何か破つて出ようとしているわけか。
  163. 中村嘩

    中村証人 そのときに、自分としてもはつきり記憶がないのであります。
  164. 篠田弘作

    篠田委員長 ドアはあいていないんごしよう。
  165. 中村嘩

    中村証人 結局窓のところです。
  166. 篠田弘作

    篠田委員長 窓を破つて出て来ようとしたのかね。
  167. 中村嘩

    中村証人 はい、それをひつぱり出したのです。
  168. 篠田弘作

    篠田委員長 何人くらいひつぱり出した。
  169. 中村嘩

    中村証人 自分としてもはつきりわかりませんけれども、四、五人くらいと思つているのです。
  170. 篠田弘作

    篠田委員長 あとはどうしてやめたのか。
  171. 中村嘩

    中村証人 結局火災がどんどんうしろへ来てしまつて……。
  172. 篠田弘作

    篠田委員長 うしろへ来てしまつて……。
  173. 中村嘩

    中村証人 連結器まで来てしまつたからです。中が結局煙と火とでわからないのです。
  174. 篠田弘作

    篠田委員長 もう一ぺん聞きますが、鉄道としてはそういうような事故というものは、珍しい事故ではあるけれども、しかしそういう事故が起つたときに対する措置とか、あるいはまた救済方法などについて、あなたは全然教育を受けたことはないというんだけれども、ほんとうにそういう教育を受けたことはないか。
  175. 中村嘩

    中村証人 別にそういうような事故に対してはありません。
  176. 篠田弘作

    篠田委員長 どういう事故のときにだけ教育を受けておるか。
  177. 中村嘩

    中村証人 結局車両が故障で、電車がえんこしてしまつたとか、そういうようなときには……。
  178. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは電車の方だから関係がないかもしれないが、なだれのような場合には……。汽車の運転は教わつたことはないのですか。
  179. 中村嘩

    中村証人 ありません。
  180. 篠田弘作

    篠田委員長 どなたか御質問ありませんか。塚原委員
  181. 塚原俊郎

    ○塚原委員 戦争後非常に速成の運転士がたくさん出ておるように思うのですが、あなたの経歴を伺つていると、相当長い間の教習所生活また訓練を受けておると私は思うのですけれども、大体国電の運転士をやるまでには、最小限度何箇年くらいの訓練を必要とするのですか。
  182. 中村嘩

    中村証人 初めからでありますと、大体一年半くらい、一年半か二年くらいであります。
  183. 塚原俊郎

    ○塚原委員 そうしますと、あなたは割にヴエテランの運転士であると私は考えておりますが、しかも先ほどの委員長の質問に対して、応急処置に対しては、月に二回現場において訓練を受けておるということをあなたはさつき証言されました。私らがうわさに聞いておるところによりますと、この月二回行う訓練というものは、きわめて形式的のものであつて、ほとんど身の入つた演習はしておらぬというふうに聞いておるのですが、髪際にどういう訓練をあなたは受けましたか。それを説明してください。
  184. 中村嘩

    中村証人 月に二回というのは、結局その一箇月くらい前あたり起つた事故を基準といたしまして、それを復習みたいに、その場合にはどうしたらいいか、そういうような状態であります。
  185. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それは学科の訓練ですか、それとも実地の訓練ですか。
  186. 中村嘩

    中村証人 学科も実地も両方やります。学科のときもあります。実地のときもあります。
  187. 塚原俊郎

    ○塚原委員 実地の場合には、実際に電車を持ち出して、そういう状態をつくつて、教官なりなんなりが説明して、あなた方運転士の一人々々が、そのときにはこういう操作をする、ああいう操作をするということを実際に教育を受けていましたか。
  188. 中村嘩

    中村証人 実際に仮設の故障をつくりまして、それで一人々々やらせます。そしてやつたあと、このときはこういうふうにするのである、ああいうふうにするのである、そういう指導であります。
  189. 塚原俊郎

    ○塚原委員 何名くらいを単位として訓練しましたか。
  190. 中村嘩

    中村証人 大体一日に七、八人ずつです。それは時間のあいまにやるのであります。
  191. 塚原俊郎

    ○塚原委員 あいまというと。
  192. 中村嘩

    中村証人 長い時間やるのじやなくて、乗務の時間のあいまを見てやるのであります。
  193. 塚原俊郎

    ○塚原委員 ですから世間でいわれている非常に形式的な訓練に落ちてしまつて、たとえば教える人が簡単な学科の訓練をして、そして解散してしまうというふうに私たちは聞いておるのですが、あなた方が実際に訓練をお受けになつて、身の入つた訓練であるとあなたは考えましたか。それとも、単に形式的にやる訓練であると考えましたか。どちらですか。
  194. 中村嘩

    中村証人 結局それはやる人の問題だと思います。教育を受ける人本人が、身を入れてやれば十分役に立つと思います。
  195. 塚原俊郎

    ○塚原委員 あなたはどう考えましたか。
  196. 中村嘩

    中村証人 自分は全部身を入れてやつていたつもりであります。
  197. 塚原俊郎

    ○塚原委員 話は前にさかのぼりますが、あなたは戦争中にも運転士をしておられましたね。
  198. 中村嘩

    中村証人 やつておりました。
  199. 塚原俊郎

    ○塚原委員 あのころ運転台のすぐうしろの方に乗つておると、いよいよ車が発車するときに、何か出発進行というようなことを自分で口ずさみながら出て行つておりましたね。戦争後ああいうことがなくなりましたね。
  200. 中村嘩

    中村証人 やつております。
  201. 塚原俊郎

    ○塚原委員 現在やつておりますか。
  202. 中村嘩

    中村証人 やつております。
  203. 塚原俊郎

    ○塚原委員 私は戦争の終つたあと、国鉄並びに一般民間の電車、すべてのものの士気が非常にたるんでおるということを聞きもし、また実際に自分でも見たことをはつきり言えると思うのですが、前にはあごひもをおろして——形だけで緊張したとは申しませんが、緊張した気持で大事な人命をあずかる操縦をしておつたと思うのですが、戦争後は何かくわえタバコで、しかもおそらく私の考えでは、人は乗せていけないという運転台に二、三の人を乗せて、話しながら運転するというような、きわめてふまじめであると思われるような状況も私は何回も見聞したのですが、あなた方が実際運転をやつておる場合、このようなたるんだ気持というものをわれわれにつかれて、何か心に考えることがございませんか。
  204. 中村嘩

    中村証人 自分としては戦前、戦後を通じて同じ気分でやつております。
  205. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それはあなたのまじめさというものがうかがえてまことにけつこうですが、世間一般の批評並びにまた私個人の見たところでは、いわゆるたるんでおる空気が非常に見えた、こういうことでは事故も起きるのではないかという不安をおそらく相当の人が持つてつたと思います。信号はあなたに関係ないでしようが、たとえば信号手あたりの動作を見ても、われわれいなかの方に住んでおりますが、いなかの小さな駅でお客が一人か二人しかないような場合でも、あれを下すところにだれも見ていないのに、雨の日でも自分で指をさしながら、それを下してそれを自分確認した、また駅長は汽車が出るまで直立不動の姿勢で、列車がホームからはずれろまでそれを見送つておるという、きわめてまじめな姿というものをわれわれはかつては見たのです。最近はそういう姿に接したことはありません。ですからわれわれは国鉄一般の人がたるんでおるということを言つてもさしつかえないと思う。しかもあなたの証言を聞いておりますと、気分において、またその他の点においても、あなたはまじめにやつておるということを聞いて私は安心いたしました。それだけのことをやりながらああいう事故が起きたということについて追究しようとは思いませんが、また追究することはあなたの心を痛めることでもありましよう。しかし先ほどの委員長の尋ねられた脱出作業、救出作業という点において、私にふに落ちない点が一つある。それは私らの見る点では、あなたが運転をしておるうしろドアというものは、あなたは大きないすがあつたからなかなかあかなかつたと言いますが、それだけの事態が起きているのでしたら、そのいすをどつかへけ飛ばして、そのドアをあけるだけのお気持にならなかつたのですか。
  206. 中村嘩

    中村証人 自分としては先ほど言いました通りであります。直感的に中へ入れないと思つて自分のところの貫通ドアをあけて出たのであります。
  207. 塚原俊郎

    ○塚原委員 直観的にあけられないということは、火がまわつているからという意味でしよう。
  208. 中村嘩

    中村証人 そこのところは、自分としてははつきりわからないのですが、窓ガラスがありまして、窓ガラスに猛烈に映つているのであります。
  209. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それならば、中の人がもだえ苦しんでいろということがあなたはわかるわけですね。非常な事態に立ち至つているということは、あなたはわかるわけですね。それをわざわざ反対側におりて、一両目と二両目の間に行つて——ドアをあけようと、石でも何でもいいから、その苦しんでいる人を助け出すために、ガラスを全部ぶちこわす気持は起らなかつたのですか。ガラスをこわせば一人でも二人でも、あるいは三人でも飛び出せるという気持にならなかつたのですか。
  210. 中村嘩

    中村証人 あのガラスからは、中から出られないのであります。狭過ぎて客席のガラスは出られないのです。
  211. 塚原俊郎

    ○塚原委員 しかも実際に三段のガラスをぶちこわして出た方があるのでしよう。
  212. 中村嘩

    中村証人 ドアガラスを破つて出ている人はありました。
  213. 塚原俊郎

    ○塚原委員 窓からは全然出られませんか。窓から出て助かつたという人の話を大分私は聞いておりますが、窓をこわして、われわれみたいに太つたものなら出られないでしよう。しかしあなた方ぐらいなら出られるでしよう。いくら三段でもこれくらいありますよ。ですからうしろに行くまでの間、石でも何でもいいからぶちこわしてやるだけの気持は当時持ちませんでしたか。
  214. 中村嘩

    中村証人 自分としてはそれよりも中のドアを……。中へ入つてやればもつと早くたくさんの人が出られると思つた
  215. 塚原俊郎

    ○塚原委員 しかしあなたがうしろを振り返つたときに中はどんどん火が入つている。そこをうしろにまわつたらそれだけ、三十秒なら三十秒かかつたら、それだけ火のまわりが早くなるのですから、一秒でも早く窓ガラスをぶちこわして人を助けたいという気持が起きなかつたかどうかということを聞いているのです。あがつてつたからそういうことを聞くのは無理かもしれませんが……。
  216. 中村嘩

    中村証人 持つた持たないは全然別として、自分としては全然気がつきませんでした。
  217. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それからこれは前にもどつて訓練の問題になりますが、あなた方は大事な人命を預かつている運転手さんなんでありますが、訓練の基本理念と申しますか、訓練の根本のものとしては、車両を大事にするか、あるいはお客を大事にするか、どつちに根本を置いて当局はあなた方に教育をしておりましたか。
  218. 中村嘩

    中村証人 自分たちが訓練を受けたときは、ほとんど車両が……。乗客ということは全然別個の問題として…。
  219. 塚原俊郎

    ○塚原委員 これは実に驚くべきことでありまして、なぜこういうことを聞くかというと、そのときの状況を目撃した人の話並びに新聞雑誌等で見ましても、中で生不動になつて苦しんでいる人を助けるよりも、車両を大事にするために、三両目以下の車両を切り離すことに汲々としておる国鉄職員の姿が、非常に不愉快に見えたということを見ております。今あなたから話を伺つておると、人よりも物という教育を受けたということでありますが、これは非常に大事な問題だと思います。これ以上あなたを追究してもしかたがありません。あなたの今非常に混乱したときに、こういうことをお聞きすることはどうかと思いましたけれども、一応国鉄がどういう気持であなた方を指導し、またあなた方がどういう気持で乗客を預かつておるかということを知りたいためにお伺いしたわけです。けつこうです。
  220. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 さいぜんから委員長の尋問に対するあなたの答弁を聞いておりましても、これは国鉄未曽有の惨事なんでありますが、いろいろのことをやつたと言われましたが、周章狼狽のあまり、ほとんど何もしないのではないのですか。
  221. 中村嘩

    中村証人 そういうことはありません。
  222. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それじや冷静であつたのですか。
  223. 中村嘩

    中村証人 冷静ということではまあないのでありますが、とにかく今お話いたしましたことはやりました。
  224. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 これはただ私の想像でありますが、あなたの答弁ぶりを見ておると、まことに正直な、りつぱないい人であると思いますが、この地獄のような光景を見るにつけても、自分の責任のみを考えて、実際の行動は、その責任に適合するような行動をとらなかつたように私には思われてならないのです。どうでしようかこの点は今から考えて……。
  225. 中村嘩

    中村証人 結局Dコツク、下のコックでありますが、あとから考えれば、それを切ればもつとよかつたのではないかと思う。冷静な立場から見たならば……。
  226. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 まん中にあるやつですね。そういうことをあとで気がついた、これは要するに訓練が足りなかつたこともありますね。それからもう一つ、この運転台にいたのはあなた一人でしたか。
  227. 中村嘩

    中村証人 いやもう一人おりました。
  228. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 二人でしよう。その人はどういう協力をしましたか。
  229. 中村嘩

    中村証人 別に協力というようなことはありませんでしたけれども、最後に車を分割するときに、車を切り離すときに……。
  230. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それは何ですか、やつぱり職員ですか。
  231. 中村嘩

    中村証人 検車掛です。
  232. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 検車掛が乗つてつた。それで協力のしぶりは、要するに二両目の車を離すことに協力したのですね。
  233. 中村嘩

    中村証人 そのときに一緒にやりました。
  234. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 その協力だけ……。
  235. 中村嘩

    中村証人 その協力、あとは全然別な行動で別に本人を見たわけではありませんけれども……。
  236. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 第一両目が阿鼻叫喚のちまたに化しておるというそういうときに、どこにおつたのです。
  237. 中村嘩

    中村証人 どこにおつたかわかりません。
  238. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 あとでその車を離す協力をしておつたことを見つけたのですか。
  239. 中村嘩

    中村証人 結局あとで救助作業を行つてつたときに、結局全部お話というものはいたしておりませんけれども、一両目が燃え切つて、中の救助作業が全然できなくなりまして、それから今度下へ倒れているお客とかそういうものをあとに運搬したのであります。
  240. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 運転台にそういう人が乗つてもいいのですか。
  241. 中村嘩

    中村証人 それは認められております。
  242. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 検車をする職員だから……。
  243. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  244. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうしてあとでそういう死骸とか負傷者の運搬を手伝つたのみですね、その人は。
  245. 中村嘩

    中村証人 それはよくわかりません。自分としては——一両目がだめで、二両目のお客は全部回避できました。それから自分としては今度一両目からおりたけがしたお客さんとか、倒れているお客さんとかを、ほかの元気なお客さんだとか、そういう人と一緒に安全な場所にかついだりなにかして、それからしばらくたつて……。
  246. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 その人の職務と姓名を言つてください。
  247. 中村嘩

    中村証人 姓名は、名はちよつとわかりませんが、金子であります。職務は当時は東神奈川電車区の桜木町派出検車掛としての仕事をやつておりました。
  248. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私、簡単に伺います、さつき委員長から聞かれたのですが、こういうような非常事態の訓練は、もちろんこんなことはめつたにあることではないから、やるわけはないと思うが、車内で火災が起つたということを想定しての訓練は全然なかつたのですか。
  249. 中村嘩

    中村証人 ありません。電車が火を発すれば、モーターとか、そういうようなところでありますが、そういうのは結局パンタグラフを降下すれば一切終るわけなんです。
  250. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いや、原因は何にしろ、中で火災が起つたというようなことを想定しての訓練は一ぺんもなかつたのですか。
  251. 中村嘩

    中村証人 ありません。
  252. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そういうことを考えついたこともないかね。ちよちよいあつたこともあると思うが……。
  253. 中村嘩

    中村証人 結局自分としても、今度のような架線事故というものは初めてぶつかつたのであります。モーターを焼いたとか、なんとかそういうような故障はありますけれども、そのときは全部パンタグラフを降下することによつて難なく治まつてつたのです。
  254. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それからスイッチ故障ドアがあかぬということは、今まででもちよちよいありましたろう。
  255. 中村嘩

    中村証人 結局ヒューズなんか飛べばドアが全然あかない。
  256. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そういうときは、どうしてあけておりましたか。
  257. 中村嘩

    中村証人 そういうときは、やはり電気的の関係でありますから、ヒユーズを交換するなり不良箇所を発見するなり……。
  258. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 中であかぬときには外からあけるという訓練はやつたことはないですか。
  259. 中村嘩

    中村証人 ありません。
  260. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 実際もあけたことはないかね。
  261. 中村嘩

    中村証人 実際も現在までずつとありません。みな中であけておりました。
  262. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると外であけられる。Cコツクを引いてやるということを知つてつたかね。
  263. 中村嘩

    中村証人 それは知つております。
  264. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それじやどういうときに使うのか。
  265. 中村嘩

    中村証人 結局Dコツクであります。そのDコツクというのは、自分としても、Dコツクというものはある、このコツクは検査か、中のエアを払つて掃除するときとか、そういうときにしか使わない、そういうような記憶であります。ただまああるという程度であります。
  266. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それを切ればあくものだということは知つていましたか。
  267. 中村嘩

    中村証人 知つておりました。
  268. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あけてみたことがありますか。
  269. 中村嘩

    中村証人 ありません。結局あけてみたいというより、ちよつと中間位置ぐらいにとつておれば、車掌ドアを扱つてドアが全部あかないのであります。
  270. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それからさつきの話でよくわからなかつたのですが、車掌ドアスイッチを扱つたがあかなかつたと言つておるそうだが、パンタグラフを下げておつたがためにあかなかつたのですか。どういうのです。もつとよく聞きたいのです。先ほどの説明ではよくわからないのです。
  271. 中村嘩

    中村証人 車掌ドアをあけようとした、それであかないというのは、おそらく自分の考えとしては、パンタグラフを下げたあとだろうと思います。
  272. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 何かあなたが切りかえスイッチ切つていたためと言つておるが、そういうことは。
  273. 中村嘩

    中村証人 いやそういうことはありません。切りかえスイッチですが、切りかえスイッチというものは、車掌の方にもありますし、また自分運転手の方にもあります。そのドアをあけるには、切りかえスイッチというのは、後と中と前と三つありますが、その後位置にしてドアをあける。車掌の方ではスイッチが後位置になつております。車掌の方から、電源があればあくわけであります。運転士の方でもドアをあけようと思えば、切りかえスイッチを後位置にして車掌スイッチを扱えば、運転士の方からでもあくわけであります。
  274. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それじやもつと順序を追つて聞きます。あなたは切りかえスイッチを切らなかつたか。
  275. 中村嘩

    中村証人 自分としては、車掌スイッチをあけて、切りかえスイッチを後にしてやつたか、それはどつちが先にやつたか、はつきり記憶に残つておりませんけれども、自分としてはやりました。
  276. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 切つたことは切つたのだね。
  277. 中村嘩

    中村証人 はい。
  278. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこでその次は、あなたが切つても、車掌の方からやろうと思えばやれるのだね。あなたの方で切つてつても、別なものでやれば、車掌の方であくのですか。
  279. 中村嘩

    中村証人 あきます。
  280. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすれば車掌が、あなたが切つたがためにあかなかつたというのは、車掌は間違つているのだね。
  281. 中村嘩

    中村証人 そうです。車掌の方は構造というものは知らないのだろうと思います。
  282. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それは間違いないね。
  283. 中村嘩

    中村証人 切りかえスイッチに関係なくあくわけであります。結局電源があれば、あくというわけであります。
  284. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それじやスイッチはそれでいいが、Dコツクをあけるというのは、あなたはやらなかつたが、車掌もやらなかつたか。
  285. 中村嘩

    中村証人 車掌は知りません。
  286. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほども委員長から聞いているが、車掌がどこにおつたかわからないか。
  287. 中村嘩

    中村証人 わかりません。
  288. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたが二両目のところへ行つたときも何も見なかつたか。
  289. 中村嘩

    中村証人 わかりません。
  290. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 何をしておつたか知らぬのか。
  291. 中村嘩

    中村証人 知りません。
  292. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 検車が一緒に乗つてつたと言つたね。その火の出たときにはあなたと一緒に運転台におつたのだね。
  293. 中村嘩

    中村証人 はい、一緒であります。
  294. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いつどうして出たか、覚えておらぬか。
  295. 中村嘩

    中村証人 覚えがありません。
  296. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたがうしろを見て飛び出す時分はもうすでにいなくなつてつた
  297. 中村嘩

    中村証人 自分がおりるときには、もちろんおらなかつた、おりてしまつたのであります。
  298. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 先ほどあなたが言う、うしろガラスを通して見ると、中に火が一ぱいになつてつたというときには……。
  299. 中村嘩

    中村証人 そのときはおりません。
  300. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 火が出ると同時にどこかへ行つてしまつたわけだね、どこにどう行つたかわからぬ、何しておつたかわからない。
  301. 中村嘩

    中村証人 わかりません。会えばわかりますけれども、自分としては、会つても夢中といいますか、一生懸命で、そこのところは覚えておりません。
  302. 山口武秀

    ○山口(武)委員 証人にお尋ねいたしますが、電車運転士として労働時間はどのくらいですか。
  303. 中村嘩

    中村証人 労働時間は大体八時間制になつておりますが、実乗務としては大体五時間三十分であります。
  304. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、その前日に、あなたはやはり八時間労働で、実時間五時間三十分働いて、あとは自宅か何かで全然休養しておつたという状況にあるわけでありますか。
  305. 中村嘩

    中村証人 はい。
  306. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それでは労働時間の関係から、あなたが精神的に、あるいは肉体的に疲労をしておつて、仕事に支障があるというような状況には全然なかつたわけですね。
  307. 中村嘩

    中村証人 ありません。
  308. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それからあなたはこの問題について勾留されたわけですね。
  309. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  310. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それはいつからいつまで勾留されたのです事。
  311. 中村嘩

    中村証人 二十四日の事故の日から十六日まで。
  312. 山口武秀

    ○山口(武)委員 その間に面会は自由でしたか。
  313. 中村嘩

    中村証人 面会は禁止です。
  314. 山口武秀

    ○山口(武)委員 全期間を通じて面会禁止ですか。
  315. 中村嘩

    中村証人 警察におつたときに、面会というよりか、着がえとが、そういうものを持つて来てもらいました。
  316. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうすると面会が禁止された理由というのは、どういうように説明されていましたか。
  317. 中村嘩

    中村証人 自分としてもよくわかりません。
  318. 山口武秀

    ○山口(武)委員 向うで説明しませんか。
  319. 中村嘩

    中村証人 しません。
  320. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは面会をしたいということを言いはしなかつたか、面会をしたいという希望も述べなかつたのですか。
  321. 中村嘩

    中村証人 それは、希望は起きましたけれども、接見文書禁止の札がかかつておるうちは、どうしてもだめだと監視の人がそう言つておりました。
  322. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなた自身に面会禁止という通知はなかつたですか。
  323. 中村嘩

    中村証人 ありました。それは拘置所に入つてからです。一日から接見文書禁止になつたからという通知がありました。
  324. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それから先ほどの質問に対して、月二回応急処置に関するところの訓練を受けたということを言つておられましたが、これはいつごろからそうなつたのですか。
  325. 中村嘩

    中村証人 終戦後、自分軍隊から帰つて来た当時だと思います。
  326. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、戦前にはそういうことはなかつたのですか、あるいは戦争中は。
  327. 中村嘩

    中村証人 戦争中はありました。ずつと戦争中からやつておりました。
  328. 山口武秀

    ○山口(武)委員 やはり月二回の訓練を。
  329. 中村嘩

    中村証人 大体講習修業という修業がありますが、それに当つた者はやつておりました。
  330. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それから、先ほどあなたは塚原君の質問の際に、大分重大なことを答弁されたようですが、それはあなたたちの訓練の場合に、事故が起つた場合、えんこした場合、そういう場合に対してだけの訓練を受けておる、それからその場合の考え方としては、車両を中心とした考え方である、お客を大事にするということは、この場合中心の問題になつていないのだということを言つておりますが、これは戦争中にこういう考え方が生れたものでないのですか。
  331. 中村嘩

    中村証人 戦争中はほとんど軍隊行つておりましたので、よくわかりません。
  332. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは昭和十二年ごろに、まだそれほど戦争が大きくならないころに、すでに品川電車区の方に入つておられるようですが、その当時からこういうような考え方があつたのですか。
  333. 中村嘩

    中村証人 自分は十二年ごろは職場が全然違うのです。運転関係じやありませんでしたから、わかりません。
  334. 山口武秀

    ○山口(武)委員 運転関係でないからわからないと言いますが、そういうような国鉄全体にあつた——当時は国鉄じやないかもしれませんが、たとえ運転手としてでなくても、考え方としては想像がつかなかつたのですか。
  335. 中村嘩

    中村証人 それはよくわかりません。
  336. 山口武秀

    ○山口(武)委員 戦争が終つて、特に終戦後になりましてから、運転手の心構えが戦争中とかえられなければならないということが、特に訓練されたというようなことはないのですか。
  337. 中村嘩

    中村証人 ありません。
  338. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうすると戦争中と引続いてのやり方が依然として続けられましたね。
  339. 中村嘩

    中村証人 結局車両故障の場合がおもだつたのです。
  340. 山口武秀

    ○山口(武)委員 戦争中の考え方、理念というものが、ずつと継続していたというふうに考えられますか。
  341. 中村嘩

    中村証人 自分としては考えられます。
  342. 島田末信

    ○島田委員 私は専門的なことをちよつとお聞きしますが、今の車内から火をふいた場合に、パンタグラフを下げれば通例火はとまるのですか。
  343. 中村嘩

    中村証人 とまります。
  344. 島田末信

    ○島田委員 それからとまらぬ場合には、どういうう故障だとか、どういう処置をすればいいということは、はつきりしておるのですか。
  345. 中村嘩

    中村証人 そういう処置はありません。自分としては習つたこともありませんし……。
  346. 島田末信

    ○島田委員 パンタグラフを下げても、さらに火をふいておるという場合には、何らの処置もないのですね。
  347. 中村嘩

    中村証人 はあ。
  348. 島田末信

    ○島田委員 そうすると手を盡す手段は全然ないわけなんですね。
  349. 中村嘩

    中村証人 これといつて一貫した教育は別に受けておりません。まあ本人の判断によつてやるわけであります。
  350. 島田末信

    ○島田委員 それは何かいい判断がありますか
  351. 中村嘩

    中村証人 別に自分としてもそういうことは夢にも考えておりませんでしたから……。
  352. 島田末信

    ○島田委員 それから、パンタグラフを下げてもさらに火をふいておるという場合に、ドアをあける装置が——かりにあけるような分別をしてみても、あかないというような故障があるのじやないですか。
  353. 中村嘩

    中村証人 結局電源がなければあかないわけです。まあ、パンタグラフ電源を得るために上げたのであります。
  354. 島田末信

    ○島田委員 それから事故の発生後、あなたが運転台から車外へ飛び出すまでの時間は、今冷静に考えてどのくらいな時間でありましたか。
  355. 中村嘩

    中村証人 自分もそれがはつきりしないのでありますが……。
  356. 島田末信

    ○島田委員 はつきりしないが、大体三分とか五分とか、これくらいだつたというような記憶はありませんか。
  357. 中村嘩

    中村証人 ちよつとわかりません。
  358. 島田末信

    ○島田委員 全然わかりませんか。
  359. 中村嘩

    中村証人 わかりません。
  360. 島田末信

    ○島田委員 どうでしよう、全然わからぬということはないはずだと思いますが、その当時の状況を冷静に判断して、大体五分くらいだつたろうとか、十分くらいだつたろうとか、三分くらいだつたろうというような、概略でいいのですが、ただわからないというだけではなく、何かそこに想像されるものがありはしないかと思うのでありますが……。
  361. 中村嘩

    中村証人 自分としては、火花を発して外へ顏を出すこともできなかつた状態でありますから……。
  362. 島田末信

    ○島田委員 その当時、事故発生後車外へ飛び出すまでの時間が、今考えてみても、全然どのくらいな時間だつたかわからないとあなたのおつしやることは、結局それがほんとうだと思います。心機転倒といいますか、これはとうていわれわれが現在考え得られない。あなたというものは、予期せざる事故にぶつかつて、びつくりぎようてんしたという立場が本来の姿でなかつたかと思うのです。もし多少とも冷静を失わずにいたならば、現在その時間に対してもある程度想像がつくだろうと思う。そうすると、あなたがパンタグラフを下げたとか、あるいは上げたとか、あるいは車掌スイッチをやつてみたとか、あるいは切りかえスイッチをやつてみたとかいうことは、ふだんの訓練から本能的にやつたようにも思われる。またあなたもやらねばならぬという気持はあつたろうと思うが、その間実際にそれが行われたものか。あるいは行われねばならぬという本能的な一つの感じで、現在もやつたような気がするというのか、これすらも、今あなたのお説をお聞きして、どちらがほんとうだつたか、私は判断に迷うという程度なんです。そうすると、この間もいわゆる周章狼狽したというのが本来の姿であつて、冷静は全然失われておつたというのが実際だつたろうと思うのです。それからあなたが、第一両目や第二両目に対して、車内に入りたいという気持が一ぱいで、その間これを救出するために他の具体的な手段というものはほとんどとられずに済んでおる。結局ドアをあけるために車内に入りたいという気持があつたのでしようか、それとも他に何か車内に入れば助けてあげられるのだというおぼろげな気持で客車内に入りたいという気持だつたのか、これを伺いたい。
  363. 中村嘩

    中村証人 自分としては、車内に入りたいというのは、ドアを早くあけたいという気持です。
  364. 島田末信

    ○島田委員 それ一つですね。
  365. 中村嘩

    中村証人 はあ。ドアをあければ、お客さんは何人か助かる、お客さんを出さなければならぬというその気持だけであります。
  366. 島田末信

    ○島田委員 それから、第一両目は火がまわつているので、とうてい入れないというので断念しておつた。第二両目はまだ十分火がまわつていないから、第二両目に入るためにかけつけたというふうに……。
  367. 中村嘩

    中村証人 自分としては第一両目に入るつもりでおりました。ところがそのときたしか第一両から出ていたので——もぐつて出て来たのだろうと思いますが、また二両目の方もがたがた騒いでいるので、二両目のドアをすぐあけなければならぬと思いました。それで二両目のドア自分で手動であけたのは、二つか三つかはつきりしないのですが、それであけて、それから今度二両目から一両目のお客ひつぱり出して、そのあけたドアから出すつもりでやりました。
  368. 島田末信

    ○島田委員 そのお客を三人か五人か出したというころには、多少とも冷静は回復しておつたわけですね。
  369. 中村嘩

    中村証人 そうであります。
  370. 島田末信

    ○島田委員 どうでしようか、この事故というものは、あなたの訓練や何かで従来考え及んだところから見て、全然予期しない事故つたのですか。またその事故は従来常識で考え得られないような発生事故でございましようね。
  371. 中村嘩

    中村証人 はあ、自分としては全然予期しておりませんでした。
  372. 島田末信

    ○島田委員 だから、雷みたいな大きな音がしたときに、もうびつくりぎようてんして、本能的にスイッチをやつてみたような気がするが、あとはさつそく運転台を飛び出したというのが事実じやないのですか。
  373. 中村嘩

    中村証人 いえ、違います。
  374. 横田甚太郎

    ○横田委員 この大惨事を起された当事者であるところのあなたにちよつと伺つてみたい。桜木町国電事故に対する昭和二十五年四月二十五日の日本国有鉄道の声明を見ましても、今後事件が起らないものだとは書いてない。起る起らないはしろうとにはわからないのですが、それから後に電車に乗つて私たちが見ておりますと、三段構えの窓は依然としてある。ただかわつているというのは、人のすわつているいすの下に穴をあけまして、矢じるしを書いて、この下をこういうふうにやつたドアがあくというふうに書いてあるのです。もし事故が起つた場合にはどうするということは、旅客の協力を求めて初めて旅客が完全にかつてに逃げられるという行き方になつていると思う。そこで私が聞きたいのは、しろうとであるわれわれが電車に乗りますときには、国電に金を払つて切符を買う、そして目的地に行く、これだけの関係なんです。それだけの関係でわれわれが何の協力をしなくても事故が起らないようにしてもらえばけつこうだが、国鉄の職員の責任持ちにおいてのみこういう事故が防げるような、あるいは起つた場合にも救済できるような方法があるかないかということを、あなたとしてはどういうふうに考えられるか。こういうことを一点述べてもらいたい。
  375. 中村嘩

    中村証人 結局自分としては車なんかもつと完全な車にしてもらいたいと思います。
  376. 横田甚太郎

    ○横田委員 完全な車というものは現在あるのですか。それともないのですか。世にいわれる六三型電車というのは非常に危険な電車だといわれておりますが、この六三型という電車と今あるところの電車とはどういうように違うか。この点について伺いたい。
  377. 中村嘩

    中村証人 この六三型というのは戦時中に設計してつくつた電車だそうであります。昔山手などに使つた古い三 ○型とか三二型とかいう車は、屋根が全部鉄板だとか、そういうような資材の面においてうんと違うのであります。
  378. 横田甚太郎

    ○横田委員 そういたしますと、現在六三型電車が依然として通つておりますね。国鉄の本線においては特別二等車が通つておりますね。この二つの汽車の形を見たときに、こういうような事故を起して、あなた方としてどういう気持がいたしますか。もし特別二等車に使う金があつたならば、六三型に使つたならば、こういう惨事は防げるだろうという気持が起る。もしそういう気持が起るとするならば、あなた方は国鉄労働組合という組合を持つておるのですから、国鉄に何らかの形において要求し、その民主的でないあり方について、人命を尊重しないあり方について、何らか団体的な交渉ができるんじやないですか。
  379. 中村嘩

    中村証人 自今としてはその点ははつきりいたしません。
  380. 横田甚太郎

    ○横田委員 どういうわけか。自分が機械を扱つておる。電車を扱つておるのですね。これには尊い人命が運ばれて行く。人が運ばれて行くのですね。あなたはそこに就職することによつて、給料を得て生活されるだけである。それでいいのだと思う。あなたが事故が起ると、そのことから警察へ入れられた場合においては面会も禁止になり、そうして行政監察委員会ひつぱり出されたとすれば、これはあなたは非常に重要なる仕事をしておると私は思う。そういうような場合においては、機械に対する責任は、あなた自身が要求しなければならないのが今後の行き方だと思う。と同時にこういうような事故が起つたときに、電車を通じて人を助けるという要求を欠いておられると思う。今後あなた方同僚にやつてもらうのに、どういうような方法が望ましいと思うか。あなたが今苦しんでおる立場から、どういうような気持かひとつ承りたい。
  381. 中村嘩

    中村証人 自分としては車をもつと早急に改造してもらいたいと思う。結局あのような事故が起つても、もつと最小限に食いとめられるように、結局中のお客さんに迷惑をかけないような状態にまで車を改善してもらいたいと思います。
  382. 横田甚太郎

    ○横田委員 それは先ほど一番最初に聞きましたように、その後あなた方が奉職しておられるところの国鉄においては、矢印をつけたポスターを張つただけじやないか。そういうことに対して非常な不満を持つておりませんか。あれではあぶない。あの事故桜木町だけで起つたものじやない。つい最近の選挙中におきましても、大阪の高槻付近におきましても電車が燃えております。幸い大火に至らなかつたからいいが、あのときはどういう意味か、上からでなしに下から燃えておる。こういうような事件は再三あるのだから、あなたが完全な電車にしてもらいたいと思うところの——国鉄は矢印を書いたポスターを張つただけだ。これに対して非常な不満を持つておるとすれば、従業員として今後どういうような態度をとられるか。これだけ伺つて、私の質問を終ります。
  383. 中村嘩

    中村証人 自分としてはそういう点はまだはつきりわかりません。
  384. 横田甚太郎

    ○横田委員 わかりません……。人を百何十人も焼いて殺しておるじやないですか。どういうようなわけで、そういうなまぬるい気持でおるのか。あなたが責任を追究されるのじやないですよ。
  385. 中村嘩

    中村証人 結局自分としてはやはりあれだけでは全然だめだと思います。
  386. 横田甚太郎

    ○横田委員 要はあなたじやないのであつて電車自体の構造の中に非常な欠陷があると思うのです。それに対するところの訓練も十分できておらない。これが大きな惨事の原因だつたろうと思うのです。だからあなた自身がもつと大きな気持において、こういうふうな電車を動かさないようにしてもらう、動いておる電車ならもつと安全にしてもらう、そういう運動をしない限り、あなたたちの上の人たちは、もうけるような形において特別二等車をこしらえるとか、アメリカのように非常に大きな貨車をつくるとかいうことよりほか、何もやつておらない。そういう点でよく考え直してもらいたい。
  387. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは証人にもう一ぺん聞きます。災害のいろいろな原因は、まず第一に四号線の架線故障ということ、これが最大の原因である。一番重要な原因である。その次にあなた方が下り線に入つて行くときに架線が下つておる、たるんでおるのを知らないで、あなたがそれを見ることができなくて、信号だけを見て入つて行つたから、パンタグラフひつかかつてなつたということが第二の原因。これは私らしろうとが考えてもそうだ。それから火災の起つた直後における処置としては、Cコツク、Dコツクというものがあつて、外部からあけるようになつてつた。その訓練はふだん受けておらなかつたけれども、そういうものの所在はあなた方は知つてつたろう。
  388. 中村嘩

    中村証人 知つております。
  389. 篠田弘作

    篠田委員長 しかしあなたは先ほどの陳述によつてわかる通り、狼狽して思いつかなかつたのであるということが災害の一つの大きな原因。それから検車係が同乗しておつて、その検車係というものは年中検車をしておるのだから、Cコツク、Dコツクのあけ方を知つておる。その検車係が飛びおりてしまつて、どこかに行つてしまつておらない。自分の身を安全に保つために、その最も専門家である検車係がそれをやらなかつた。これが一つの大きな原因。もう一つは窓を全部ふさいであつたということが大きな原因。こういうように考えてみたときに、今横田委員の言われたような車の構造一設備というものにも今度の災害の大きな原因がある。全然その車は処置のない車ではなくて、DコツクならDコツクというものをあければ、外からエア切つてあけ得るようになつているのにもかかわらず、あなた方がしなかつた、気がつかなかつたということが大きな原因の一つだ。そうでしよう。そういう場合、われわれが船に乗つた場合に、船長なり船員なりは、船に故障が起つたときにはお客を全部助けてから、船長は船とともに運命をともにするという心構えをしておるし、そういうことをした人も、日本においても外国においてもたくさんある。あなたは運転士だから船長のような気持を持つておらぬかもしれないが、それでもその船と同じように、一つの五両連結なら五両連結というものを預つておる。あなたがそういう場合に自分がこの車を預つているのだという一つの責任感、そういうものを持つておるか持つておらないか。
  390. 中村嘩

    中村証人 持つております。
  391. 篠田弘作

    篠田委員長 持つておるとするならば、あなたが一番最後にその車から逃げ出す、というと言葉は悪いかしらぬが、逃げ出すとすれば一番最後に逃げ出すべきものであり、一応飛びおりたとしても、ふだんからそういう考えを持つていたとするならば、あがつておるからDコツクが引けないというような、機械の構造だけでは済まされないと思う。自分の修養、未熟さについて今日何と考えておるか。
  392. 中村嘩

    中村証人 自分としてはほんとうになくなつた人に対しては申訳ないと思つております。
  393. 篠田弘作

    篠田委員長 そういう設備があるのに、その設備に気がつかなかつたということに対してどう思つているか。ふだんは知つておるのだがとつさの場合に忘れてしまつた、救助の方法がなかつたわけじやなくあるのだ、Dコツクというものを引けばエアが切れてドアがあいて、全部は救われないにしてもその何分の一かは救われたに違いない。あなたが狼狽してそれができなかつたということに対してどう考えるか。
  394. 中村嘩

    中村証人 自分としては先ほど申し上げましたように、中のドアコツクだけしか——中の騒いでいるお客に気をとられて、中のことにだけしか考え及ばなかつたということは、今から考えてみれば残念だと思う。
  395. 篠田弘作

    篠田委員長 相済まないと思うか。
  396. 中村嘩

    中村証人 Dコツクについては今から考えればほんとうに残念だと思う。
  397. 篠田弘作

    篠田委員長 ただ残念だけで済まされない問題だが、完全な車に改造してもらいたいということをあなたが言つたが、車が完全であつてもそういう事故の起つた場合に従業員があがつてしまつたらどうなのだ。もちろんこの車は不完全な車だが、全然救出の道がないとは考えられない。この車を完全にすると同時に、もつと従業員の精神的の訓練というか、修養というか、教育というか、そういう面に国鉄が真剣にならなければならぬし、あなた方自身ももつと真剣にならなければならないというように考えぬか。
  398. 中村嘩

    中村証人 そう思つております。
  399. 篠田弘作

    篠田委員長 車の改造と同時に、あなた方の精神的教育はもつと必要であると考えるか。
  400. 中村嘩

    中村証人 考えます。
  401. 篠田弘作

    篠田委員長 それからもう一つは、窓をふさいでおるということについては、今の横田委員の説明によると、今日まだ窓をふさいでいるそうですね。あれは終戦直後に、窓から飛入りをするお客を防御するためにやつたのだと思うが、今でも窓はそのままふさいでおりますか。
  402. 中村嘩

    中村証人 棒でやつたのは今ありません。
  403. 篠田弘作

    篠田委員長 三段に板が張つてありますね。あれはとりましたか。
  404. 中村嘩

    中村証人 現在は棒でふさいでいるというのはないです。
  405. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの乗つていたのは棒でふさいでおつたのでしよう。     〔「窓が三段になつているのだ」と呼ぶ者あり〕
  406. 篠田弘作

    篠田委員長 そうですか、なるほど……。何か御質問はありませんか。——他に御質問がなければ、これにて中村証人に対する尋問を終ります。証人にはたいへん御苦労さまでした。あと三人残つておりますから、一時まで休憩をいたして、一時に再開いたします。     午後零時三十二分休憩      ————◇—————     午後一時四十一分開議
  407. 篠田弘作

    篠田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  桜木町国電事故に関する件について大矢治雄君より証言を求むることにいたします。  大矢治雄さんですね。
  408. 大矢治雄

    ○大矢証人 はい。
  409. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまより桜木町国電事故に関する件について証言を求むることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百十二五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祈祷の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の朗読を願います。     〔証人大矢治雄君朗読〕    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  410. 篠田弘作

    篠田委員長 宣誓書署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  411. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また発言の際は議事の整理上その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なおこちらから質問しておりますときはおかけになつていてけつこうですが、お答えの際は御起立を願います。  証人の経歴を簡単に述べてください。
  412. 大矢治雄

    ○大矢証人 私は八王子中学校を卒業いたしまして、昭和二十二年三月三日鉄道に東神奈川車掌区列車手として入りました。同年の二十二年の九月の二十九日に車掌を拝命いたしまして現在に至りました。
  413. 篠田弘作

    篠田委員長 証人車掌としてどういうような教育を受けられたか、また実務についてどういう訓練を受けられたか、簡単にそれを述べてください。
  414. 大矢治雄

    ○大矢証人 車掌養成は約二箇月でした。その間教わりましたことは運転、旅客、貨物輸送、電気、車両、交通地理、遺失物、英語等であります。
  415. 篠田弘作

    篠田委員長 事故が発生した場合に、どういうことをするかというような教育は受けなかつたのですか。
  416. 大矢治雄

    ○大矢証人 臨機の処置、まあ火災等の場合は消火に努めるよう……。
  417. 篠田弘作

    篠田委員長 消火器はありますか。
  418. 大矢治雄

    ○大矢証人 備えてあるのもあります。
  419. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたの乗つていた電車には、消火器が備えてあつたの、なかつたの
  420. 大矢治雄

    ○大矢証人 気がつきませんでした。
  421. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは火災のときに消火しろといつてもできないじやないですか。自分の乗つている車に消火器があるかないかもわからないで、火災の起つたときに臨機の処置をして消火に努めるといつてみたところで、消火器がどこにあるかわからないでは、できないじやありませんか。
  422. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分お客さんの方を扱つておりますので、ああいう場合は、とにかくお客さんを待避させるのが一番だと思いました。
  423. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、運転手は運転をすることが主たる職分だし、あなたはお客を扱うことが職分だが、その場合、火事が起つたときにはどうするの。共同責任ということになるの。消火の場合は当然運転手は運転をとめるでしよう。事故の起つたところにかけつけることになるのですかね。
  424. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  425. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたもかけつける。
  426. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  427. 篠田弘作

    篠田委員長 その場合に消火器がどこにあるかわからなかつたら消火できないじやないか。自分の車の消火器があるかないかということは、乗る前に一応検査するのじやないの、そういうことはないの、あるいは全部の車のどこかにその場所をきめてあるのじやないですか。そういうことはないの。
  428. 大矢治雄

    ○大矢証人 きめてないです。
  429. 篠田弘作

    篠田委員長 電車によつて消火器がある電車もある、ない電車もあるのだね。
  430. 大矢治雄

    ○大矢証人 その点はそうです。
  431. 篠田弘作

    篠田委員長 車掌はそのありかを知らぬわけだね。
  432. 大矢治雄

    ○大矢証人 いや、電車によつて、そのついている場所がいろいろです。
  433. 篠田弘作

    篠田委員長 君の場合は、どこについておつたか、気がつかなかつた。……。
  434. 大矢治雄

    ○大矢証人 ええ。
  435. 篠田弘作

    篠田委員長 ついている場所は違つてつても、一応やはり運転手のすわつておるそばとか、車掌のすわつておるそばとか、一番手つ取り早く消火器が使えるようなところについているのじやないですか。
  436. 大矢治雄

    ○大矢証人 いや、そんなにそばにはついていないのです。
  437. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると運転台の中についているのですか。そばにといつても何も手を延ばすほどというのじやなくて、運転台の中にあるのじやないですか。
  438. 大矢治雄

    ○大矢証人 ついているのです。
  439. 篠田弘作

    篠田委員長 ついているのでしよう。あなたの場合は車掌台の中についてなかつたのですか。
  440. 大矢治雄

    ○大矢証人 気がつかなかつた……。
  441. 篠田弘作

    篠田委員長 そういうことに対してまつた注意をしておらぬというふうに解釈していいのですか。
  442. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分お客の方に重点を置きまして……。
  443. 篠田弘作

    篠田委員長 お客に重点を置くといつても、火事となつた場合には消火に努めろという教育は受けているでしよう。お客の何をやるのですか、切符を調べるとか……。
  444. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうじやないのです。その場合は早急にお客の方を待避させなければならないのです。
  445. 篠田弘作

    篠田委員長 ドアをあけるとか……。
  446. 大矢治雄

    ○大矢証人 はい。
  447. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたが電車に乗つていて事故が発生したときの状況、それから発生後におけるあなたのやつたことを述べてみてください。できるだけ記憶をたどつて詳しく述べてみてください。
  448. 大矢治雄

    ○大矢証人 まず桜木町場内信号機二番線注意確認した後、さらに停止を確認電車がその場内信号機を過ぎたころ自分うしろを見ますと、うしろでとまれのような合図をしていましたので、とまれの合図をしたとたんにスパークした。そのとき車掌弁をじやーつとひつつてしまつたのです。それでひよつと前を見ますと、どうも普通の状態と違つて火がひどいのです。それでこれはいけないと思つてすぐ車掌スイッチをあけたのです。そうしたらドアはもうあかなかつた。それで最後部のお客運転台からおりるようにすぐドアをあけて、そのまま夢中で前へ飛んで行つたのです。それから一両目と二両目の連結器から車内へ入ろうとした。そうしたら一両目は火がひどくて、危くて全然入れない。それですぐもどつて次の二両目と三両目の連結器から車内へ入つたのです。それで三万コツクを一つ切りまして、そこで電車からおりるお客と一緒に押し出されてしまつたものですから、下で降りる乗客を受けとめていたのです。
  449. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとあなたが急停車したということを確認してうしろを見たときに、線路工夫であつたかだれであつたかわからないが……。
  450. 大矢治雄

    ○大矢証人 いや急停車する前です。
  451. 篠田弘作

    篠田委員長 急停車の前にうしろを見たところが、停車をするようにという合図をしていたのだね。
  452. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。それですぐスパークしたのです。
  453. 篠田弘作

    篠田委員長 その合図は前からしておつたようでしたか、それともあなたが見た瞬間にしておつたようですか。
  454. 大矢治雄

    ○大矢証人 見た瞬間です。
  455. 篠田弘作

    篠田委員長 運転手はそういうことを全然気がつかないで進行していたのですか、こういう事故が起つたのだから、ちようどそこに工手長もおつたし、三、四人の工夫がおつたからとまれとか手を振る合図をしておつたかということが問題なのだが、あなたはとまれという合図をしておつたことを見たわけなんだな。
  456. 大矢治雄

    ○大矢証人 見たわけです。
  457. 篠田弘作

    篠田委員長 それですぐ車掌弁をとめたのですか。その車掌弁というものは運転手に急を知らせる弁ですか。
  458. 大矢治雄

    ○大矢証人 電車をとめる弁、うしろと前とでとめるようになつているのです。
  459. 篠田弘作

    篠田委員長 そのときは、とまつたのだね。
  460. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  461. 篠田弘作

    篠田委員長 それは運転手がとめる前にあなたがひつつたのですか。
  462. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分のとめる前は電車は走つておりました。
  463. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると運転手もとめたのだが、あなたもとめたのだね。
  464. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  465. 篠田弘作

    篠田委員長 そのときは電気は来ておつたわけですね。とまるくらいだから……。
  466. 大矢治雄

    ○大矢証人 あれは電気は来てなくつても、エアーですからとまります。
  467. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたがあとで一両目か二両目に走つて行つたとき、一両目に入ることができなかつた。あなたの車掌室から一両目に入るまでに何分くらい時間がかかりますか。
  468. 大矢治雄

    ○大矢証人 時間的にはわかりませんですが、一車が大体二十メートルくらいになつております。
  469. 篠田弘作

    篠田委員長 四両走つてつたのだから八十メートル走つて行つたわけですね。十二、三秒くらい走つていたのだね。そのときは火がまわつていた……。
  470. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  471. 篠田弘作

    篠田委員長 それでその後どういう処置をとりましたか。
  472. 大矢治雄

    ○大矢証人 それですぐうしろへもどつて、二両目と三両目の連結器の上から車内へ入つたのです。
  473. 篠田弘作

    篠田委員長 それはどういう意味……。
  474. 大矢治雄

    ○大矢証人 もうとびらはあかないのですから、お客を救うべく中へ入ろうとした……。それでドアがあかないからうしろから入つた
  475. 篠田弘作

    篠田委員長 その場合にあなたは、Dコツクひつぱるということは知らなかつた……。
  476. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分らは教わらなかつたから……。
  477. 篠田弘作

    篠田委員長 だれが知つているのですか、Dコツクがあるということは……。
  478. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分は今まで知りませんでした。
  479. 篠田弘作

    篠田委員長 車掌は全然知らない。
  480. 大矢治雄

    ○大矢証人 はい。
  481. 篠田弘作

    篠田委員長 それでここに五月十三日号の週刊朝日があるのだが、ここにこういうふうに書いてある。「救助に来た鉄道員の動作がいかにものろくさく、後尾の車掌室から、仕方なく火の納まるのを傍観している車掌の態度が、ひどくいらだたしく思われた。」というふうに書いてあるのだが、今話を聞くと、あなたはすぐ飛び出して行つたのだね。
  482. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。夢中でした、そのときは……。
  483. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると後尾の車掌室からだれか傍観していた車掌があつたのかね。それをあなたは知らない……。
  484. 大矢治雄

    ○大矢証人 知らないです。
  485. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたはこの事故というものは不可抗力、それとも何か事前に避ければ避けられるというふうに考えるか、どうですか。
  486. 大矢治雄

    ○大矢証人 防げば防げたと思います。
  487. 篠田弘作

    篠田委員長 どういうふうにして防いだら防げると思う……。
  488. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分信号が唯一の頼りなのです。だから信号が停止になつていればよかつたかと思います。
  489. 篠田弘作

    篠田委員長 信号が停止になつていればもちろんそこへ車は行かないわけだね。そうすると事故を防げる。それでそれは信号手の責任だから、なぜ停止信号を出さなかつたかということは、信号手に聞かなければわからないけれども、あなたはそのときにかけつけたということはわかるが、駅から五十メートルか百メートルきりないのだが、そのとき駅員の、いわゆる桜木町の駅の助役なり駅長なりがかけつけて来た時間はどのくらいだつたか気がつかなかつたのですか。
  490. 大矢治雄

    ○大矢証人 切り離すちよつと前です。
  491. 篠田弘作

    篠田委員長 切り離すちよつと前、何分くらいかかつたのですか。事故が発生してから切り離すまで、駅長さんや助役さんがかけつけて来るまで何分くらいかかつたのですか。正確な時間はもちろんわからぬだろうから、感じとしてどのくらいかかつたと思いますか。
  492. 大矢治雄

    ○大矢証人 五、六分か七、八分、そんなものですね。はつきりしたことはわからないのです。
  493. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたは六三型の電車に乗つてつて、ふだん何かというときこの電車では危険だというふうに感じておりましたか。
  494. 大矢治雄

    ○大矢証人 感じでいました。
  495. 篠田弘作

    篠田委員長 どういうふうに感じていましたか。
  496. 大矢治雄

    ○大矢証人 さつきゆうの場合は窓から逃げ出すのですが、あの場合は三段窓ですから、もし二枚窓になつていたら多少なりとも被害は少かつたと思います。
  497. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 この大惨事が発生した瞬間に、あなたは何両目の車におりましたか。
  498. 大矢治雄

    ○大矢証人 瞬間は一番最後。
  499. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 最後部ですか。
  500. 大矢治雄

    ○大矢証人 一番うしろです。
  501. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると規則は、車掌はその列車編成の一番うしろにおるものとなつておるのですか。
  502. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  503. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そこで、さいぜんの運転士の証言では、あなたの姿が見えなかつたというのだが、あなたは運転士を見ましたか。
  504. 大矢治雄

    ○大矢証人 見ませんでした。
  505. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それはもう混乱に陷つたので見当らなかつたというのですな。
  506. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうだと思います。
  507. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それからさいぜんの証言の中に、二箇月間教育を受けたということを証言されましたが、その通りですか。
  508. 大矢治雄

    ○大矢証人 二月です。
  509. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 一体わずか二月くらいで車掌の職務を十分に学び、これを研究し得るものでしようか。
  510. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分なんか教わつたのは二月ですが……。
  511. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 もつと長く教育を受けた者もおるのだね。
  512. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分らはよく知らないのですが、たいがい「二、三箇月だと思います。
  513. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 その二、三箇月の期間で十分車掌の職務は勤まりますか。
  514. 大矢治雄

    ○大矢証人 いろいろ自分でも研究しておりますので……。
  515. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 どんなふうに研究しておるのですか。
  516. 大矢治雄

    ○大矢証人 達しだとかいろいろ見て……。
  517. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 たとえば、今二箇月間のうちにどういう教育を受けたか、あなたは運転に関しての教育を受けておつたと言われたが、すると運転するだけの技術は持つておるのですか。
  518. 大矢治雄

    ○大矢証人 技術関係ではないのです。ただ自分たちは運転の信号とか……。
  519. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 運転に関するものなんで、運転するものではないのですね。
  520. 大矢治雄

    ○大矢証人 運転技術じやないのです。
  521. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そこでDコツクですが、これがあるということを知らなかつたのですか。
  522. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。全然教わらなかつたのです。
  523. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 これは大切なる機械だと思うのですが、そういうものに対しては全然教育を受けていないのですか。
  524. 大矢治雄

    ○大矢証人 全然ないのです。
  525. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうするとあなたは一番最後部におつて事故が発生したときにまず何を考えましたか。
  526. 大矢治雄

    ○大矢証人 もうお客を救い出さなければならない、燃え出したらドアが開かなかつたので、これはたいへんだと思つて、とにかくお客を救い出さなければならないというので……。
  527. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 客を救うことをまず第一に考えた。いわゆる人命の尊さを思つてその動作に移つたのですね。車両などを助けるというような気持はなかつたのですか。
  528. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分としてはお客の方が大事だと思いました。燃え出したらドアが開かなかつたものですから、これはたいへんだと思つたのです。
  529. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると車両のごときは燃えても、人命の方が大切だと思つてつたのですね。—それではまずあの燃えておる一番とつ端の車両に飛びつくべきですね。しかるにあなたは……。
  530. 大矢治雄

    ○大矢証人 飛びつくために前にかけたのです。そうすると火がまわつて手がつけられない、入れないのです。
  531. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そこで二両目と一両目の合に行かないで、三両目と二両目の合に行つたのですね。
  532. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  533. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 二両の方はどうなるのですか。
  534. 大矢治雄

    ○大矢証人 だから三両と二両の間から入つて、二両に入つたのです。一両とニ両は接近していて、連結から危くて入れないので、うしろから入つたのです。
  535. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 重ねて伺いますが、二月ということは、われわれどうも合点が参らないのですが、中には一年も受けた者がおるのですか。そういう者はいないのですか。皆んなたいてい二月くらいの教育車掌になるのですか—ともかくも車掌という職務は、運転その他に関しては運転士に信号を発したりいろいろありますが、あなたの仕事は客を扱うのでしよう。その場合に、事故が起きた場合に、今の証言では、まず一番人命が大切だと思つたから行つたという気持なんですね。その場合にDコツクというような重要な機械があるということを知らずして、どうして一体人命が救われるのですか。
  536. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分たちは技術関係ではないので、機械方面は教わらなかつたのです。
  537. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 全然……。
  538. 大矢治雄

    ○大矢証人 車体の下ですね、下の機械は教わらなかつたのです。
  539. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 車の構造は習わなかつたのですか。
  540. 大矢治雄

    ○大矢証人 構造は教わりました。
  541. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうしなければ話が合わないですね。そこに週間朝日がありますが、国鉄の労働組合の委員長なんかの談によりますと、乗客の機械に対する科学的知識がなかつたということもこの惨事を招いた一つの大きな原因である。だから乗客も少くともそういうような科学的知識があつてほしいということを述べておる。私はこれを読んだときに非常に義憤を感じたのだが、実際に車に乗つておるあなた方すら何も智ないのに、われわれがそういう科学的知識を持てるはずがない。そういうことを言うということは、むしろ罪をわれわれの方におつかぶせようとする態度であつて奇怪だと思うのですが、要するに教育は二月なんですね。
  542. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  543. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 だから未熟な教育だということを、あなた自身がこの大問題を前にして立つたとき、つくづく感ずるでしよう。どうです。
  544. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  545. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 よろしうございます。
  546. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 今の教育ですが、車掌になる前に二箇月の教育を受けるのですね。
  547. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  548. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 車掌になつてからもそういうことに対する訓練はあるのですか、ちよちよいやるのではないのですか。
  549. 大矢治雄

    ○大矢証人 訓練というものはないのです。
  550. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなたがさつきちよつと言われたが、事故発生のときの臨機の処置に対する訓練、火災の場合の消火の訓練ということを言われた……。
  551. 大矢治雄

    ○大矢証人 訓練はないのです。
  552. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どういうことですか。そういうことを聞かされておるだけですか。
  553. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  554. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そういうことを、ただ臨機の処置をやれ、火災が起きたら消せ、こういうことを言われただけですか。
  555. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  556. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ただそういう注意を与えただけですか。
  557. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  558. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうするとそれは二箇月の訓練中に聞かされたのですか。
  559. 大矢治雄

    ○大矢証人 もちろんそうです。
  560. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その後においてはないのだね。それでは火災のときはどうして消すかということは、一つも習つてもおらぬし、教えてもおらぬのですか。
  561. 大矢治雄

    ○大矢証人 どうして消すといいますと……。
  562. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 火災が起つたらどうして消火するか。
  563. 大矢治雄

    ○大矢証人 もちろん電気を断つて、それ以上燃えないようにして……。
  564. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そういうことを訓練したことはない、ただ聞かされただけか、それともこうしてやる……。
  565. 大矢治雄

    ○大矢証人 訓練したことはないのです。
  566. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それじや教えられたか。
  567. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  568. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 どういうふうに教えられたか。
  569. 大矢治雄

    ○大矢証人 ただ火災が起きた場合は消火に努めよ……。
  570. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それだけか、そうすると、具体的にどうして消すかは聞いたことはないんだね。今あなたは電気をとめるとか言われたが、あなたの常識でそういうことを考えておるだけか。
  571. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  572. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 消火器を用いて火を消せというようなことも教えられたことはないのか。
  573. 大矢治雄

    ○大矢証人 常識上でやつぱり。
  574. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 さつき消火器があるのもある。ないのもあると言われたが、あるのを見ましたか。
  575. 大矢治雄

    ○大矢証人 見ました。
  576. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 その使用方法は習つたことはないんだね。
  577. 大矢治雄

    ○大矢証人 習つたことはないです。
  578. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはどうして使うか知つてるのかね。
  579. 大矢治雄

    ○大矢証人 いや別に知つてないです。大体今まで使つたことはないのです。
  580. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 一体あなた方は、火を消さなければならぬ、消すときは消火器を使わなければならぬ、こういう気があれば、この車に消火器があるかないか、あつたらどうして使うかぐらいのことを考えなければならぬもんだが、そういうことを考えてみたこともないのか。
  581. 大矢治雄

    ○大矢証人 あの場合は……。
  582. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いやあの場合ではない、一般の場合のことを言つてるのです。あの場合のことはあとで聞きます。そういうことを考えてみたこともないのか。
  583. 大矢治雄

    ○大矢証人 どうして消火器を使つていいか……。
  584. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 消火器がある以上は、火を消すためにある。それを使わなければ消火にならない。そうすれば火を消すときは、これをこうして使わなければならぬというようなことを考えそうなもんだが、そういうことを考えてみたことはなかつたか。
  585. 大矢治雄

    ○大矢証人 考えてみましたが、使い方なんか教わつていなかつたんです。
  586. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そこで聞きたいんだが、あなたまさかのときは消火器を使つて消さなければならぬと思うならば、必ず消火器のあるところを見届けておるべきが、人命をあずかつておる車掌としての責務であろうと思うが、そこまで考えておるかどうか、それを私は聞きたいのです。
  587. 大矢治雄

    ○大矢証人 考えていました。
  588. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いたら、それでは車に乗るとき、これに消火器があるかないかを見なければならぬが、それはどうです。
  589. 大矢治雄

    ○大矢証人 その点気がつかなかつたのです。
  590. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうすると車に消火器があれば使つて消そうという考えはあるけれども、車には必ず消火器がある、あるいはこれを使わなければならぬということまでは考えていなかつたわけだね。
  591. 大矢治雄

    ○大矢証人 あの場合は……。
  592. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あの場合じやないですよ。一般の場合を言つてるのですよ。あなた方が毎日勤務するとき、車に消火器があるかどうか、あつた場合は必ず使うということを考えておつたか。あの場合のことはあとで聞きます。一般の場合です。
  593. 大矢治雄

    ○大矢証人 使おうと思つて……。
  594. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 思つていれば、消火器があるかないか見届けなければしようがないじやないですか。あるかないかもわからぬじや、そんなことを思つてみたつてどうしようもない。思つてみたらこの車には消火器があるか、ここにあるなあということを知つておらなければしようがない。大体車に乗るときは消火器のあるなしを現認して乗らないんだね。
  595. 大矢治雄

    ○大矢証人 しいて現認して乗らないんです。
  596. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 消火器はあるのが本則じやないのですか、あつてもなくてもいいのですか。
  597. 大矢治雄

    ○大矢証人 あるのが本則だと思いますが……。
  598. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 本則であると思うだけで、そういうことにきまつておるということは知らないんだね。
  599. 大矢治雄

    ○大矢証人 知らないのです。
  600. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 なくても別にあなた方は気にもとめないわけだね。
  601. 大矢治雄

    ○大矢証人 ええそうです。
  602. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それじやこの事故について聞きたいが、先ほど委員長から、この事故防止の方法はなかつたかと言われたら、あなたは信号のことを言われたが、それは火を吹いた原因なんだ。私がこれから聞くのは、火が出たときにあれほどたくさんの死傷者を出さずに済ませる方法はなかつたか、あなたはどう考えているか、それを聞きたい。
  603. 大矢治雄

    ○大矢証人 Dコックを知つておれば、コックを切つてできたんじやないかとも思います。
  604. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはわしらも知らぬが、一体Dコックというのはどこにあるのか。
  605. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分もよく知らないのです。
  606. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 Dコックというのは中側があかぬときに、外からあけるときのためにあるんでしよう。
  607. 大矢治雄

    ○大矢証人 ええそうです。
  608. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなた長年車掌をやつておるが、故障か何かのためにドアがあかぬことはなかつたか。
  609. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分たちはたいがい駅へ行つて、あかないときは駅で扱う。駅へ行つてあかない場合は車内へ入つて行つて腰かけの下の三万コックを切つていつもあけることになつております。
  610. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 外でやつたことはないのか。
  611. 大矢治雄

    ○大矢証人 ええ。
  612. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そうするとDコックなんというものは駅の者でなかつたら扱わぬごとになつておるのですか。
  613. 大矢治雄

    ○大矢証人 Dコックは自分なんかは全然それまで知らなかつたのです。
  614. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 一体駅の者が扱うものか、乗務員が扱うものか、どつちか。
  615. 大矢治雄

    ○大矢証人 Dコックですか。
  616. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 Dコツクに限らず、電車にある装置、ことに、外にある装置は……。
  617. 大矢治雄

    ○大矢証人 外にある装置はほとんど運転手が扱つております。
  618. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 事掌だつてつていいだろう。
  619. 大矢治雄

    ○大矢証人 車掌が下手に扱うと事故が増大しないとも限らないのです。自分たちは技術関係、機械関係は教わつていないですから……。
  620. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 中であけられぬときにはどうするというようなことを教えられたことはなかつたか。外であける必要があるというようなことを教えられたこともなかつたか。
  621. 大矢治雄

    ○大矢証人 なかつたです。
  622. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 あなた方自身考えてみたこともなかつたか。
  623. 大矢治雄

    ○大矢証人 自分たちがドアをあけるのはたいがい駅で、途中で車が悪い場合は、ほとんど運転手が機械の方は担当することになつております。
  624. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 それはそうだが、運転手だけで間に合わぬときは、乗客の人命に関するようなことがあれば車掌がやらなきやならぬじやないか。運転手でなければやれないのか。これ以上追究してみたつてしようがないが、われわれはそう思うのだ。運転手でなければそんなものには手をつけられないといつて、ただ手をこまぬいて見ておるわけにはいかぬだろう。
  625. 大矢治雄

    ○大矢証人 下手をやると事故増大のもとになると思つて……。
  626. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 そういうりくつよりか、中であけられぬときには外であけなければならぬということを考えてみたこともなかつたかということをお聞きしたい。
  627. 大矢治雄

    ○大矢証人 別にないのです。
  628. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 考えたこともなかつたか。
  629. 大矢治雄

    ○大矢証人 ええ。
  630. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 従つて措置も知らない、こういうわけですね。
  631. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  632. 石田一松

    ○石田(一)委員 ちよつと聞きますが、さつきあなたは車掌台にいて、うしろの方で工夫がストップの信号か何かしていたのを見たと言われましたね。
  633. 大矢治雄

    ○大矢証人 ええ。
  634. 石田一松

    ○石田(一)委員 それは工夫がいたのを電車のどれくらいうしろで見たのですか。
  635. 大矢治雄

    ○大矢証人 十メートルくらい……。
  636. 石田一松

    ○石田(一)委員 桜木町駅に入る少し前だからいろいろ注意されていただろうが、あなたはそのときうしろ向きになつていたのですか。
  637. 大矢治雄

    ○大矢証人 うしろ向きじやない、前向きになつていました。
  638. 石田一松

    ○石田(一)委員 前向きになつていて、自分車掌台のそばで、向うから信号していたのですか、それとも声を立てるとか、さわいだのでしよう。
  639. 大矢治雄

    ○大矢証人 いや別に声は聞かなかつた
  640. 石田一松

    ○石田(一)委員 ただあなたは偶然うしろを向いたら、とまれの信号をやつていた……。
  641. 大矢治雄

    ○大矢証人 ええ、そうです。
  642. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうすると、それは高架線というのですか、あれの修理のためか何かでやつていたのですか、それともそれは線路工夫ですか。   (委員長退席、内藤(隆)委員長代   理着席〕
  643. 大矢治雄

    ○大矢証人 さあそのところははつきりわからないのです。線路工夫であるか、修理の工夫であるか、その点はわからないのです。とにかくとまれの合図をしていたので、すぐとめたのです。
  644. 石田一松

    ○石田(一)委員 幾人くらい。
  645. 大矢治雄

    ○大矢証人 十二、三人くらいいました。
  646. 石田一松

    ○石田(一)委員 十二、三人いれば線路工夫じやない。線路工夫が普通の仕事をするのには、十二、三人は集まつてやらないから。そうすると、あなたはその人の合図を見て、それで電車をとめたの、それともスパークを発見したのでとめたの。
  647. 大矢治雄

    ○大矢証人 合図を見たと同時にスパークしました。
  648. 石田一松

    ○石田(一)委員 いや、そこのところをはつきり……。私はその工夫の人が電車にとまれというのには、ただ上の線がぶら下つているから危険だというくらいなことは、電気関係の工夫だから知つているでしようが、しかしあんな事故が起きるなんてちよつと想像がつきませんな。それであの電線がぶら下つているからとまれというような、あわてた信号はしないと思う。そのとき工夫は火をふいているのを見ているのじやないかな。
  649. 大矢治雄

    ○大矢証人 だけれども、自分はとめる前にスパークを見たのでとめたのです……。すごい何といいますか、ぱつとあたりが明るくなつたです。
  650. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうすると、あなたはその人の信号を……。
  651. 大矢治雄

    ○大矢証人 信号を見たとたんに、まわりがぱつと明るくなつたので、……だから線がかつと飛んじやつてたわけです。
  652. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうですか。
  653. 塚原俊郎

    ○塚原委員 運転士と車掌というものは一体になつて仕事をしなければならないと思うのですが、交替の時期は運転士も車掌も一緒ですか。
  654. 大矢治雄

    ○大矢証人 たしか違うと思います。所属が違いますから。
  655. 塚原俊郎

    ○塚原委員 そうすると、あなたは車掌として自分の交替の時期が来た、いよいよ勤務につくというときに、それは何千何百という命をあずかる車ですから、しかもその車はあなたと運転士さんの二人だけの手にまかされているわけですから、運転士さんとの間に、これから乗るぞとか、あるいはこういうふうにしようというような打合せはやられるのですか、やらないのですか。
  656. 大矢治雄

    ○大矢証人 そういう打合せはないですが、たいがい引継ぎの車掌から……。
  657. 塚原俊郎

    ○塚原委員 引継ぎの車掌はいいが、運転士との間に、おれが乗るとか、よろしく頼むとか、一緒によくやろうとかいうようなことを全然連絡しないわけですか。
  658. 大矢治雄

    ○大矢証人 ただブザー試験合図というのがあるのです。それは運転士から送るのが通常です。
  659. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それ以外に、二人で会つて、どうこうしようというようなことはしないわけですね。
  660. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  661. 島田末信

    ○島田委員 スパークしたときに、絶縁するというか、電気を遮断するような方法は、あなたの場合何かとられますか。
  662. 大矢治雄

    ○大矢証人 すぐパンタグラフを下げるわけです。
  663. 島田末信

    ○島田委員 下げましたか。
  664. 大矢治雄

    ○大矢証人 スパークしてとめたのです。自分はとにかくこれはたいへんだと思つてとめたのです。そうして前を見たところが、火がすごいので、とにかく絶縁する前にお客を救い出そうと思つて……。
  665. 島田末信

    ○島田委員 だから絶縁処置はとらなかつたというのですね。絶縁処置をとらずに、すぐ飛び出したというのです。ね。スパークすると同時に車をとめて、車をとめると同時に電気を遮断するような方法はとらずに、すぐ飛び出したというのですね。
  666. 大矢治雄

    ○大矢証人 結局何でスパークしたかということを一応……。
  667. 島田末信

    ○島田委員 見定めるために……。
  668. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  669. 島田末信

    ○島田委員 それで火災が起きているのを目撃して……。
  670. 大矢治雄

    ○大矢証人 すぐドアをあけたんです。車掌スイッチをあけるようにしたのです。
  671. 島田末信

    ○島田委員 電気による火災が起きた場合に、電気を遮断するということはよく御存じだつたはずだから、結局それに対する処置はとらなかつたんでしよう。あなたの場合はとらなかつたわけですね。
  672. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  673. 島田末信

    ○島田委員 それから飛び出して行つて一両目へ入ろうとしたが、とても火が大きくて入れないので、二両目と三両目の間にかけつけて、そこから中へ入つて、二両目の人々を救い出したというのですね。
  674. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  675. 島田末信

    ○島田委員 それから二両目の人は、あなたの関する限りは大体救出作業をやつて、全部二両目から脱出させてしまつたわけですね。
  676. 大矢治雄

    ○大矢証人 そうです。
  677. 島田末信

    ○島田委員 出してしまつたときに一両目の実情はどうだつたですか。やはり阿鼻叫喚というか、中で何とかして逃げ出そうと思つて一生懸命にもがいておつたはずですが、まだそういつた人々の動きが多かつたわけでしようね。二両目が出てしまつた場合……。
  678. 大矢治雄

    ○大矢証人 出てみたときは別に声は聞えなかつた
  679. 島田末信

    ○島田委員 二両目が出てしまつときは、一両目は事済みになつてつたわけですか。
  680. 大矢治雄

    ○大矢証人 大分下火になつていました。
  681. 島田末信

    ○島田委員 一両目の人々を救うためには何らかの処置が考えられるというか、何か方法をとれば少しでも救われるんじやないかという……。
  682. 大矢治雄

    ○大矢証人 だから窓から降りて来るのをひつつたのもありました。窓を割つて降りかかつているのを下からひつばつたのもありました。
  683. 島田末信

    ○島田委員 窓から飛び出そうとしている者を下からひつつてつたという程度で、あなた自身は、たとえば窓をぶち割るとか、あるいは何か、たといできてもできなくても、戸をあける処置を積極的に講じたというようなことはなかつたんですね。
  684. 大矢治雄

    ○大矢証人 そのときは夢中でした。
  685. 島田末信

    ○島田委員 結局寄りつけなかつたわけですか。
  686. 大矢治雄

    ○大矢証人 寄りついたんですが、お客が出ているのを夢中でひつつていた。
  687. 島田末信

    ○島田委員 さらに多くの人々を出すために、あそこをこうすればもつと出られるんじやないか、あそこをこうすればもう少し救えるんじやないかというような積極的な考えは、夢中でわからなかつたわけですな。
  688. 大矢治雄

    ○大矢証人 夢中でわからなかつたのです。
  689. 島田末信

    ○島田委員 大体成行きにまかせて、出て来る人々を下からひつぱり出したという程度ですね。実情はその通りですね。
  690. 大矢治雄

    ○大矢証人 夢中でしたから……。
  691. 島田末信

    ○島田委員 結局あなたは客の方をあずかつておるわけなんだが、ふだんから、火災が起きた場合に、電気による火災ならば、それを遮断する、それから普通の場合、たとえばタバコの火だとかいう場合には消火器を用いるということは知つてつたわけですね。
  692. 大矢治雄

    ○大矢証人 はい。
  693. 島田末信

    ○島田委員 ところが実際に臨んで、そういうような急激な突発事件つたから、いわゆるあわを食つたというか、上つてしまつて、そういう処置を実際にとれずにしまつた。しかし何とかして救いたいために飛び出したことは間違いなかつたが、飛び出した結果、火災もひどいし、それほど積極的にどうにもならなかつた。やつと二両目に入つて、その人々を救うことができたという程度ですね。その当時の実情はやはりその通りなんでしよう。それから今の停止信号ですが、正規の停止信号は全然なかつたわけですね。
  694. 大矢治雄

    ○大矢証人 停止信号というのはなかつたわけです。
  695. 島田末信

    ○島田委員 そこであなたが十メートルばかり後を見た場合に、工夫がとまれという信号をしておつたということは、停止信号を当然しなければならないという実情にありながら、停止信号が行われなかつたために手を振つたものか、それとももうすでに大きなスパークが出たために工夫があわてて手を振つたというのが実情ですか。
  696. 大矢治雄

    ○大矢証人 スパークする前ですね。
  697. 島田末信

    ○島田委員 スパークする前だとすれば、工夫が見て停止しなければならないという実情なら、責任ある者は当然正規の停止信号を上ぐべきだつたと思うのですが、その点はどうですか。
  698. 大矢治雄

    ○大矢証人 正規の停止信号ではなかつたです。
  699. 島田末信

    ○島田委員 なかつたけれども、停止信号をやるべき者が、工夫自身が停止させねばならぬというそれほどの場面ならば、当然停止信号を掲ぐべきだつたと思いますが、どうですか。
  700. 大矢治雄

    ○大矢証人 停止信号を何ですか。
  701. 島田末信

    ○島田委員 責任ある人がおるでしよう。停止信号をやらなければならぬ人が……。そういう工夫が見てさえ停止させねばならぬという場面に、正規の停止信号をやらなければならぬ人が、なぜ信号をやらなかつたかということになると、これはやはり手落ちですか。
  702. 大矢治雄

    ○大矢証人 まあそうでしような。
  703. 島田末信

    ○島田委員 たとえばスパークをしたということを目撃して、工夫が急に停止の手を振つたというのならばわかるのです。ところがあなたの言い分だとスパークする前に工夫が手で停止信号をしておつたというのだから……。そうするとスパークする前に、それほど危険を感じておつたものとすれば、当然停止信号をやるべき人が、正規の停止信号を実行せなければならぬ場面ではなかつたかと思いますが……。
  704. 大矢治雄

    ○大矢証人 まあそうでしようね。
  705. 島田末信

    ○島田委員 そうなつて来ると、停止信号をしなかつたことに、非常なる不注意があつたという結果になりますね。
  706. 大矢治雄

    ○大矢証人 ……。
  707. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 いいですか。—他に御質問ありませんか。
  708. 石田一松

    ○石田(一)委員 ちよつともう一つだけ……。車掌には服務紀律とかなんとか、車掌が覚えておかなければならない規則があるのではないですか。
  709. 大矢治雄

    ○大矢証人 あります。
  710. 石田一松

    ○石田(一)委員 それにはあなた方が一々こういう危急の場合にどういう処置をとる、こういうふうにしなければならぬ、こういう責任をとらなければならぬというようなことが、それぞれあるのではないですか。
  711. 大矢治雄

    ○大矢証人 服務紀律の中にはないです。
  712. 石田一松

    ○石田(一)委員 ただ仕事に関する何か——よく私は車掌区あたりに参りますと、乗務するときにそこの車掌区長というのですか、何かに対して事前に何か報告みたいな、誓いみたいなことをやつておりますね。出発するときにランプのようなものを持つて手信号を持つて、カバンを持つと同時に、区長のところに行つて、これから何号車に乗車しますとか、何とかかんとかで、どこそこにはどういう工事をしていて……。
  713. 大矢治雄

    ○大矢証人 いや工事関係の方は、全然自分たちには……。
  714. 石田一松

    ○石田(一)委員 いや、工事監督ではなく、車掌が、たとえば大宮、桜木町ならば、神奈川なら神奈川に工事場の現場がある。その現場のところは速力を時速何キロに落さなければならぬということなんかを言うのじやないですか。車掌運転手が乗る前に……。
  715. 大矢治雄

    ○大矢証人 乗る前にそういうことは言わないのです。
  716. 石田一松

    ○石田(一)委員 今は言わないのですか。そうですか。
  717. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 他に御質問がなければ、これにて大矢証人に対する尋問を終ります。証人には御苦労さまでした。     —————————————
  718. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 引続き中澤重二証人証言を求めることにいたします。  中澤重二さんですね。
  719. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  720. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 ただいまより、桜木町駅国電事件に関する件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には“その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または蒔肥の職にある者またはこれらの職にあつた者が、その職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の朗読を願います。   (証人中澤重二君朗読)    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  721. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 では宣誓書署名捺印を願います。   (証人宣誓書署名捺印
  722. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なお、こちらから質問しているときは坐つたままでようございますが、お答えの際には起立をして願います。  簡単でようございますから、あなたの経歴を述べてください。
  723. 中澤重ニ

    中澤証人 私は大正十一年六月一日に品川電力区の人夫として採用をされまして、八月十六日に試採用となりまして、その後品川電力区におりまして、昭和五年に東神奈川配電分区に在勤になりました。その後東神奈川にずつと長くおりまして、昭和二十五年の七月に保土ケ谷配電分区に転勤になりまして現在に至ります。
  724. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 そうすると約二十年間おられるわけですか。
  725. 中澤重ニ

    中澤証人 東神奈川の配電分区に約二十年ほどおります。
  726. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 工手長になられる前、電気工手としてどういう教育を、どれほどの期間受けられたかを述べてください。
  727. 中澤重ニ

    中澤証人 教育といいますと、私電力工手としての教育は約三箇月ぐらい教育をされております。
  728. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 その前に何か……。
  729. 中澤重ニ

    中澤証人 それは講習を三箇月ばかり受けたのです。
  730. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 その前に電気に関する何か専門の知識が学校その他によつてつたのですか。
  731. 中澤重ニ

    中澤証人 そういつたことはありません。
  732. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 全然電気の知識がないしろうとから入られて、三箇月の講習を受けられたのですか。
  733. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  734. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 あの大惨事が起つた事故当時、その現場における状況を述べてくれませんか。
  735. 中澤重ニ

    中澤証人 午前中から碍子の交換を引続いてやつておりました。それで十一時二十五分ころ、午前中の分は一旦終りまして、昼食のため桜木町から横浜へ出まして、横浜から横須賀線で保土ケ谷に一帰りまして昼食をとりました。十二時五十八分ころだと思います。またその詰所を川まして、市電で高鳥町駅まで来まして、高島町駅から桜木町まで東横線で行きまして、そのときは大体十三時半ころではなかつたかと思いますが、ホームへ着いたのが十三時半ころだと思います。それから工具材料も持つておりまして、大体現場に配置し、仕事にとりかかる現場へ行きまして、絶縁具を全部準備をしまして、それから仕事にかかりました。仕事の順序としましては、朝人員の点呼をやりました。仕事の組合せ、そういつたのも朝点呼をやつた順にやはり午前中の続きで午後からも仕事にかかりまして、仕事にかかつたのがやはり十三時半ころだと思います。そうして四号柱に上つて仕事を始めるまで私は見ておりました。それからこれでは大丈夫だと思いまして、今度五号、六号柱の方に上る作業員を見ておりました。そうしますと、急に大きな音とともにスパークがしましたので、ひよつと振り返つてみますと、今話したように大きなスパークとともに線が切れ、そうして作業員も一名墜落したのであります。私も約二十五、六メートルくらい離れていたところにいたと思います。それからすぐにそこに飛び降りまして、けがはなかつたか、こう私はどなつたのであります。そうしますと、けがはない、大丈夫だ、こういうふうに言われたので、私も安心したものの、もう上り線側には電車は入れることはできない、こう思いまして、自然とそこに集まつて来た工手に、それでは電車を止める手配をしよう、架線の復旧工具材料を心配して来るから、現場は頼む、こう言つて私は信号所へかけて行つたのであります。そうしてかけて行きまして、信号所に飛び込んで、やあやつちやつたと言つて飛び込みまして、それから今上り線で断線したので、もう上り線側には電車は入れることはできないから、電車を入れないように頼む、こういうふうに私が言いましたら、信号所では、上り線側がだめなら、下り線はどうか、こう言われましたので、下り線側に入れる分にはさしつかえない、こう私が言いましたら、そうか、こういう声があつたので、私は十分納得できないと思いまして、私の関係のところに、今桜木町で吊架線が断線したから、すぐにセビとクランプと割線を急いで持つて来い、こう言いましたら、それじやすぐに持つて行く、こういう何がありましたので、一旦そこで電話を切りまして、続いて大船電力当直に、今桜木町で吊架線を断線さしたから、急いで人員の手配をしてくれ、こう頼みましたら、人員はどのくらいやつたらいいか、こう言われたので、私今急にかけて来たので、人員がどのくらいいるかと言われてもそれはわからぬから、すぐに調べて来て報告する、こう言つて電話を一旦打ち切りました。そうして再び信号所を飛び出すときに、上り線側に電車を入れることはできないから頼む、こう言つて私は信号所を飛び出したのであります。飛び出して五号柱付近までかけて行きました。五号柱付近まで行きますと、電車は四号柱近くまで、すぐ目の前に来ました。その電車はあれほど信号所に言つて来たのであるから、まつすぐ行くものと信じていたのであります。それから私はちよつとその電車を見ていますと、急に上り線側の方に入りまして、これはたいへんなことになつたと思つているうちに、パンタはこわれ、大きな音とともに前車両の屋根上一ぱいに火の海となりまして、これはたいへんなことになつたと思いまして、急いでそこからまたかけて行きました。かけて行きましたら、屋根から車内にアークが吹き込んでいるので、中のお客さんもガラスをかく人、また体を半分窓から出して出られないでいる人、こういつたような状態で、中は混乱していたので、私もドアを開けようと思いましたけれども、そのときにはドアを開けることもできないで、そのときにまだ電気は相当のスパークがしておりますので、早く電気をとめなければこれはたいへんなことになると思いまして、すぐ信号所にまた飛び込みまして、至急電話で、早く電気をとめてくれというふうに大船電力当直にかけたのであります。そして電気は間もなくとまつたと思います。それから私はすぐにまた飛び出そうと思つたときに、信号所の二人が、今の事故はぼくの方は知らなかつたことにしてくれ、頼む、頼む、こう言われるので、私はあれほど上り線に入れては困ると言つておいたのにどういうわけか、私がこう言いましたら、信号所では、悪かつたから、まあ頼む、頼むと盛んに言うのであります。
  736. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 ちよつと待つてください。その信号所へあなたがかけつけて行つて、そして話したその相手方は何という人ですか。
  737. 中澤重ニ

    中澤証人 高原信号手です。そのときには名前はわかりませんでしたが、あと高原信号手ということがわかりました。
  738. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 それから、これは大事件だから、知らなかつたことにしてくれと言つたのはだれですか。
  739. 中澤重ニ

    中澤証人 それが高原です。
  740. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 同人ですね。
  741. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  742. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 二人おつたというのは……。
  743. 中澤重ニ

    中澤証人 二人おりましたのは、高山信号手でありますが、それが頼む、頼むと一緒に言いました。
  744. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 知らなかつたことにしてくれとは高山は言わなかつたのですか。
  745. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。そして二人で、ぜひ頼む、頼む、関係ないことにして、頼む、頼むと非常に言われましたので、私もそこでちよつと興奮しまして、あれほど言つておいたに、知らぬことはないだろう、どういうわけかと私が言いましても、ぜひ頼む、頼むと、こう言われますので、私はそんなことは知らぬ、私はこういうふうに言つたのであります。そうしましても、ぜひ頼む、頼むと言われるので、私はそこから出ようと思つたときに、どういう方か、制服を着た人でなく、私服の人だと思いますが、飛び込んで来たので、その話は一旦中止になりました。それから私は信号所からすぐ出まして、焼けている電車の方へと思つて行きましたら、もうそのときには電車は手のつけようもなく、私はその辺でまごまごしておりました。そうしますと高原信号手から、さつきから探していた、ホームの助役さんが用事があるからすぐ行つてくれ、こういうふうに話がありましたので、私もそこにいてももうどうすることもできないししますから、ホームの助役さんの所へ行きますと、どういうわけか、こういうふうにホームの助役さんに聞かれました。私はあれほど上り線に入れては困ると言つておいたのにどういうわけかと言つたのでございます。そうしますと助役さんからは、さつき信号所から電話があつて、すぐ横浜に電話をかけたけれども、間に合わなかつた、こういう返事がありました。それからお互いに困つたことをした、たいへんなことをしたということで、何も話もなく、助役さんとは別れました。
  746. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 そうするとその高原信号手からさような驚くべきことを頼まれたということを発表されたのは今初めてですか。
  747. 中澤重ニ

    中澤証人 いや、検察庁でも調べられて、はつきり言つております。  それから私はその助役さんとそこを出まして、また現場の方へ行こうと思つてホームを歩いていましたら、新聞社の方か、また警察の方かわかりませんが、三人ぐらいで私をつかまえまして、今の事故はどういう事故だ、原因を明かせと言われて、私もたいへん困つておりました。私はそんな事故はわからぬ、こう言つておりましたが、知らないことはないだろう、明かせ明かせと非常に言われたのでございます。私はそんな事故はわからないと言つて逃げるようにしてまた電車の方へ行つたのでございます。
  748. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 そこであなたの今の陳述から見ますると、要するに信号手信号手の務めを完全に果せば、こういう惨事は起らなかつたと認められますね。
  749. 中澤重ニ

    中澤証人 私はそう思います。そのときに一つスイッチを入れますと赤信号にもなりますし、ポイントも切りかえができたと思います。十分時間もありますし……。
  750. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 それから駅の構内で架線工事をするときは事前に駅長に連絡なんかをするのですか。
  751. 中澤重ニ

    中澤証人 そういう指示は一度も受けたことはありません。
  752. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 連絡していないで、駅長は何も知らないのですね。
  753. 中澤重ニ

    中澤証人 連絡して工事をやれという指示は一度も受けたことはないし、話も聞いたことはないのです。
  754. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 そうすると架線工事はだれの命令でやるのですか。
  755. 中澤重ニ

    中澤証人 私は私の所の分区長さんの命令によつてつております。
  756. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 その分区長と駅長とは連絡はありませんか。
  757. 中澤重ニ

    中澤証人 それもおそらくないと思います。
  758. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 それから架線が切断した場合にはとつさに電車をとめる方法を講ずべきだと思うが、それは一体どういう方法をとることになつておりますか。
  759. 中澤重ニ

    中澤証人 直接影響のある場合にはすぐに信号機を出してとめるということになつておりますが、あの場合は信号所が近いし、上り線電車も多少関係することもあると思いましたので、これは信号所に行きさえすれば電車はとめられるものだ、こういう気持で私はかけて行きました。
  760. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 その信号というのは赤旗ですか。
  761. 中澤重ニ

    中澤証人 いや信号所に……。
  762. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 とつさの場合に信号所に行く前に列車をとめる方法は赤旗を出すのですか。
  763. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  764. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 さいぜんの証人信号を見たというのですが、あなたは列車をとめる信号をしたのですか。
  765. 中澤重ニ

    中澤証人 私は朝の点呼で信号かたがた働けという指示をしておきましたので、私が信号しておつたわけではないので……。
  766. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 そうすると工手の中に信号した者がいたかもしれないのですね。
  767. 中澤重ニ

    中澤証人 はつきりそれはわかりませんが、朝からそういうふうに電車を見張りかたがた仕事をしろという指示をしておいたので、その場合架線が切れたことを気がついていて、その方は出したか出さないかということはあまりはつきりしておりません。
  768. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 だれかやつた者がおるかどうかわからないのですね。
  769. 中澤重ニ

    中澤証人 はあ、私には……。
  770. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 車掌は確かにその信号を見たというのです。大体あなたの話す道はまとまつておるようですな。  他に御質問はありませんか。島田君。
  771. 島田末信

    ○島田委員 先ほどの証言では、工夫が手でもつて停止信号のつもりでやつてつたということを、車掌電車が入構前十メートルばかりうしろで見たというふうに証言いたしておりますが、その工夫が手でもつて信号しておつたのは、電車が入構前からだつたでしようか、あるいは車掌が見たころからだつたでしようか、これはわかりませんか。
  772. 中澤重ニ

    中澤証人 車掌が手を振つたということは、もう最初の事故現場より電車はずつと先に行きまして、それで車掌に見えたと私は思います。
  773. 島田末信

    ○島田委員 工夫はあらかじめその架線がすでに切断されておつたことを知つてつたのであるから、電車が入つてはいけないということを、あなたと一緒に当然知つてつたはずですね。
  774. 中澤重ニ

    中澤証人 知つております。
  775. 島田末信

    ○島田委員 それで電車が入る前に気がついてそういう手でもつて信号しておつたのか、あるいはうつかりしておつて電車が入つて来てあわてて信号したのでしようか、どちらですか。
  776. 中澤重ニ

    中澤証人 それは私にはわかりません。
  777. 島田末信

    ○島田委員 確かめたことはありませんか。
  778. 中澤重ニ

    中澤証人 確かめたこともありません。全然わかりません。
  779. 島田末信

    ○島田委員 それから信号所ではすぐにあなたが注意したにもかかわらず、そういう信号をしなかつたということはいかにも不注意きわまると思うのですが、同時にあなたが電車が燃えてこれはたいへんだというのでさらに信号所にかけつけて、大船の発電所ですか、送電所ですか、そこに電話をかけて、電気をとめてもらつたという間は相当あつたと思うのですが、その信号所はその処置をとれれば、早く電気を切断して事故を大きくせずに済んだろうと思うのでが、これに対するお考えはどうでしよう。
  780. 中澤重ニ

    中澤証人 もうこれ以上は早く電気をとめてくれということはできないと思います。私はもう電車がとまると同時にすぐそばにかけて行きまして、その瞬間先ほど申しましたように電車の中にスパークが吹き込んでおるので、お客さんが飛び歩いている、そういつたときに瞬間的にドアを開けようと思いましたけれども、早くそれより電気をとめなければたいへんなことになる、こう思いまして、急いで信号所に飛び込みましたので、もうこれ以上は電気を早くとめることはできないと思います。
  781. 島田末信

    ○島田委員 あなたの場合はずいぶん努力をせられ、それ以上電力を早くとめることはできなかつたと思いますが、信号所におる者は、あなたがそのスパークしたのを見つけて電車のそばまで行つてドアでもあけてみたいという気持がどうにもならず、それでさつそく引返して信号所に行つて電話をかけたというこの時間は、何分かあつたろうと思いますが、その間信号所が機転をきかして、最初に目撃するごく手近にあつたようですが、信号所がすぐに大船へ電話して電気をとめたら、相当事故の惨劇が少くて済んだのではないですか。
  782. 中澤重ニ

    中澤証人 その点は信号所の方には電気をとめるというようなことはちよつとわからないと思います。
  783. 島田末信

    ○島田委員 そういうふうにふだん教育されていないのですか、責任外というわけですか。
  784. 中澤重ニ

    中澤証人 信号所の方はそういう方面に全然経験がないと思います。
  785. 島田末信

    ○島田委員 知識がないというわけですね。
  786. 中澤重ニ

    中澤証人 そうだと思います。
  787. 島田末信

    ○島田委員 かりにもし知識があれば、不注意さえなくて、すぐに電話しておけば、よほど手まわしよく電気がとまつただろうということになるわけですね。
  788. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  789. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 もう一、二点伺いますが、電車の運行の頻繁なそういう場所の架線工事は、電車の運転中は危険だからやらないで、深夜にそういう架線工事をやるというようなことはないのですか。
  790. 中澤重ニ

    中澤証人 そういつたこともあります。今度の場合は、私は一度そう言つたこともありますが、この工事はどこでもやつておるから昼間やつてくれ、こういうふうに命令されてやつていたのでございます。
  791. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 するとその命令は何か予算の関係か、あるいはまた人の関係か……。
  792. 中澤重ニ

    中澤証人 そういつたことは私には全然わかりません。ただこういつた仕事をしてくれ、こういうので、仕事の方だけはやつておりましたが、どういう関係でやるのか、私には全然わかりません。
  793. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 それからあなたもしくは電気の工夫が、電車事故が発生した後、乗客の収容に努められたかどうか。そこにおつた人々が……。
  794. 中澤重ニ

    中澤証人 その方も私には全然わかりません。
  795. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 あなたはただ信号所の方に急いでおつてあとの方はどうしたかということはわからないのですね。
  796. 中澤重ニ

    中澤証人 わかりません。
  797. 塚原俊郎

    ○塚原委員 先ほどからの証言を聞いておりまして、あなたが部下に命じた工事が故障を来した。これでは上り線電車が入ることは非常に危険である、入れてはいけないという気持から、信号所にその旨の連絡をされたことは事実ですね。
  798. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  799. 塚原俊郎

    ○塚原委員 そのとき、あなたは相当強い信念で信号所に連絡されたのですか。
  800. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。私は下りから上り側に入りますと、これは間違いなく事故になるということを信念して、信号所に飛び込んで、一番先に、上り側に入れては困る、これを強く言つたのでございます。
  801. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それであなたは信号所に連絡して、また現場にもどつて来られて、それからその問題の電車桜木町にずつと入つて来るのを見られたわけですね。
  802. 中澤重ニ

    中澤証人 それは見たときには、現場の前三、四十メートルまで来ていたと思います。すぐ目の前に来ていた。
  803. 塚原俊郎

    ○塚原委員 そうしてそれが上り線に入つて行つたわけですね。あなたが上り線に入れていけないということを強く言つたのは、上り線に入るとえらいことになると直感されて……。
  804. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  805. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それからあの大惨事が起きるまでは何秒くらいあつたですか。
  806. 中澤重ニ

    中澤証人 そうですね、三、四十秒くらいじやないかと思います。
  807. 塚原俊郎

    ○塚原委員 そうすると、こういうことをお聞きするのは無理かもしれませんが、三・四十秒あれば、ポイントを切りかえて、上り線に入つて来た、これはたいへんなことになる、あなたはそこでとつさに車をとめるだけの措置を講ずる気持はなかつたですか。
  808. 中澤重ニ

    中澤証人 それが私は、そのポイントがまつすぐに入つておるものと信じておりました。まつすぐに電車が行くものと思つておりました。
  809. 塚原俊郎

    ○塚原委員 ところがそれが上り線に入つた。入つてからその事件が起きるまでの間は三、四十秒あつたのでしよう。
  810. 中澤重ニ

    中澤証人 いいえ、そのときにはもう、時間でいいますと、どのくらいといいますか、十秒か十五、六秒くらいじやないかと思います。
  811. 塚原俊郎

    ○塚原委員 すると、進路をとにかく上り線に入れて来て、あなたが困つたと思うとすぐバーンと行つたわけですか。
  812. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  813. 塚原俊郎

    ○塚原委員 その間にあなたはこれをあわててとめるというような措置は、講ずる余地がなかつたわけですね。
  814. 中澤重ニ

    中澤証人 それは電車が私の前をほとんど半分以上も通り過ぎてからのことでございますから、どうすることも私にはできなかつたのであります。
  815. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それから先ほど前の委員が聞いたときに、電気工手が信号したということが問題になつておるのですが、あなたのおられた所と、ほかの電気工夫のおられた場所は同じ場所ですか。
  816. 中澤重ニ

    中澤証人 幾らか違います。
  817. 塚原俊郎

    ○塚原委員 あなたが信号所から現場へもどつて来る途中ですか。
  818. 中澤重ニ

    中澤証人 元の現場へ三十メートルくらいでもどれるところ……。
  819. 塚原俊郎

    ○塚原委員 八号柱と九号柱とありますね。ここが信号所ですが、あなたはどつち側に……。
  820. 中澤重ニ

    中澤証人 私は向う側、信号所の反対側におりました。
  821. 塚原俊郎

    ○塚原委員 電車上り線に入つたときの、あなたの位置は……。
  822. 中澤重ニ

    中澤証人 五号柱付近です。
  823. 塚原俊郎

    ○塚原委員 ほかの工夫の方は。
  824. 中澤重ニ

    中澤証人 四号柱くらいのところ……。
  825. 塚原俊郎

    ○塚原委員 先ほどの証人は、この付近で何かとまれとまれという合図を工夫の連中がしておるのを発見して、急いでとめる処置をしたということを後部車掌が言つたわけですが……。
  826. 中澤重ニ

    中澤証人 車掌さんは四号柱の事故の現場にいたんですが、しかし電車の進行して来るときには車掌さんには全然わからないのです。車掌さんは信号のあるこつち側の窓だけ見ておるので、車掌さんには全然わからないと思います。
  827. 塚原俊郎

    ○塚原委員 それから信号扱所がありますが、こちらに入れとか、まつすぐに入れとかいう信号はどこに出ますか。
  828. 中澤重ニ

    中澤証人 四号柱の付近の信号燈です。
  829. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 証人に一、二点お伺いいたしますが、五号柱と信号所までどのくらい距離がありますか。
  830. 中澤重ニ

    中澤証人 三十五メートルくらいじやないかと思います。
  831. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたが信号所に飛び込みまして、えらいことになる、上り線電車を入れてはだめだと言われたのですが、そのとき信号所におきまして——われわれしろうとですからよくわかりまんけれども、信号所はスイツチ一つで、信号所自身で上り線に入れないような措置ができるのですか。
  832. 中澤重ニ

    中澤証人 できます。できると思います。
  833. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それを怠つたわけですね。
  834. 中澤重ニ

    中澤証人 怠つたか怠らないか、私にはわかりません。
  835. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたがそういうことを言つたのは、電車が来る……。
  836. 中澤重ニ

    中澤証人 全然見えないときです。
  837. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それから第二点は、あの騒ぎの最中に助役があなたを呼びに来たと言いましたね。
  838. 中澤重ニ

    中澤証人 はい。
  839. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それは電車に火がついてどんどん燃え出してからですか。
  840. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  841. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 発火してからどのくらいたつて……。
  842. 中澤重ニ

    中澤証人 発火して、時間でどうもはつきり私もどれくらいという時間の予測が立ちませんが、助役さんが来てくれというときには、相当時間がたつたと思います。
  843. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 助役ははたして自分で呼んだのですか、だれかに呼ばせたのですかわかりませんか。
  844. 中澤重ニ

    中澤証人 それはどうかわかりませんが、信号手が、さつきから見つけていたが、助役さんが用事があるから早く行つてくれ、こう、いました。
  845. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 助役がそのときにあなたに言つたのは、現場で何か事故を起した、だから火事を鎮火さすとか、あるいは応急措置を講ずることを命じたのですか。
  846. 中澤重ニ

    中澤証人 いやそうではないと思います。
  847. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 どういうことを言つたのですか。
  848. 中澤重ニ

    中澤証人 その事故の原因を、大体どういうことで事故が起つたかということを、助役さんは聞いたのではないかと思います。
  849. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 事故の原因を聞いただけで、応急措置を講ずることを何ら指令はしなかつたわけですか。
  850. 中澤重ニ

    中澤証人 何にも指令はありません。
  851. 田渕光一

    ○田渕委員 架線が落ちて、これはえらいことをしたと思つてあなたが信号所に行かれたときに、今から考えてみると、もう少しきつく、えらいことになつた、すぐ電車をとめる信号を出せと言つたら、信号手はやつたのではないですか、どうでしよう。
  852. 中澤重ニ

    中澤証人 私が一旦現場はみな頼むと言つた意味は、私のいないときには、副長というものが全部私のかわりに責任を持つて架線の方も見てくれる、また電車が来たらとめてくれる、こういうふうにやつてくれるものと思つて、私は現場を頼むと言つてつたのであります。
  853. 田渕光一

    ○田渕委員 ところが信号手が——もちろんあとで知らなかつたと隠すことはよくわかるのですけれども、この場合にあなたが、自分の権限あるいは職場を越すかもわからないけれども、とにかく自分架線の方をやつているので、その架線が切れた、電車がえらいことになる、だから何としてもここで電車をとめなければならぬのだからというわけで、信号手におとなしい態度で、えらいことをした、ちよつと電車をとめてくれ、こう言うのと、たいへんなことだ、すぐこれをやらなければ大事が起るというようにきつく言うのと、信号手の受ける感じが非常に違うと思うのですが、それはどうでしようか。
  854. 中澤重ニ

    中澤証人 私の力を入れたところは、一旦現場を頼む、とこう言つてつたのであります。
  855. 田渕光一

    ○田渕委員 それはあなたの部下に言つたことで、高原信号手にあなたが言つたときに、あなたが、えらいことをした、とめてくれ、こう言うのと、たいへんなことになつてしまつた、こう言つて叱責するようにきつく言うのと、そこの違いですが……。
  856. 中澤重ニ

    中澤証人 信号手ですか。
  857. 田渕光一

    ○田渕委員 ええ、きつくばばつとすぐにも信号に手をかけるくらいに……。
  858. 中澤重ニ

    中澤証人 それはやはり飛び込んだときに、私は一番先にそれを強く言つたのであります。
  859. 田渕光一

    ○田渕委員 相当大きい声で……。
  860. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。もう入られたらこれは最後だと思いまして、飛び込むとすぐに、上り線が断線したので、上り線側に入れてもらつては困る、頼む、とこう力を入れて言いましたら、上りがだめなら下り線はどうかと向うでも力を入れてこう聞きましたから、私は、下り線に入れる分にはさしつかえない、こう言つたのに対して、信号所の方は、そうかとまた向うも力を入れたのであります。ですから私としては十分納得ができた、こう思いまして、話を一応打切つたのであります。
  861. 田渕光一

    ○田渕委員 それは、そのときの様子とすれば相当熱心に言われたことと思いますが、信号手はそのときにいすに腰かけておつたのですか。立つておりましたか。
  862. 中澤重ニ

    中澤証人 一人の専任の信号手は立つておりました。一人の信号手の方は、あまりはつきりはしませんが、腰かけていたように思われます。
  863. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この架線改修工事はいつから始められたのですか。
  864. 中澤重ニ

    中澤証人 それは四月の初めころかと思いますが、日はあまりはつきりわかりません。四月の初めころから始めたと思います。
  865. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この架線改修工事は年度計画に基いての改修であるのか、それとも突発的にそこに故障が生じていたのに対する応急的な工事であるのか、いずれでしようか。
  866. 中澤重ニ

    中澤証人 それは私にはわかりません。
  867. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは工手長でして、しかも先ほどからの話を聞いておりますと、長くこの仕事に従事しておりまして、架線の状況から見ても、それが年度改修であるか、それとも突発的な故障によつてそれの応急措置を講じたのか、見わけがつかないと言われるのですか。
  868. 中澤重ニ

    中澤証人 私はただこういう工事に対して、碍子をとりかえてくれとかいうことを指示されてとりかえるだけでありまして、年度計画の工事か、応急工事かということは、私にはよくわかりません。
  869. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私はあなたの答弁は、ちよつと常識では納得の行かないものがあると思うのです。なぜかと申しますと、長く工事をしておりますれば、当然そういうことは普通の仕事の状況を見てもわかるはずですし、それから仕事の流れて来る系統というものから見ても、当然あなたの方で教えられるか、あるいは教えられなくとも察知できるはずだと思いますが、それがわからないとおつしやられるのはどういうことですか。
  870. 中澤重ニ

    中澤証人 私は、どういうためにとりかえるかということはあまりよくわかりませんが、碍子が大分老朽になつておるので、そのためにとりかえをしろということだけだと思います。
  871. 山口武秀

    ○山口(武)委員 普通この架線の改修をやります場合に、年度計画の場合には請負いでやらせる、それから突発的な応急工事の場合には直営でやる、こういうようにわれわれは聞いたのでありますが、この工事はどうなつておりますか。
  872. 中澤重ニ

    中澤証人 私にもあまりそういつたことはわかりませんので……。
  873. 山口武秀

    ○山口(武)委員 きわめて重大な問題なんですが、あなたはわからない、わからないと言われますが、これは当然私は職場にある人として、こういう問題がわからないというのは少し納得が行かない。たとえばあなたはこういうことを知つておらないですか。この改修をなされる場合に、請負いをするという場合に、日本電設何とかという会社があります。これはこれまで国鉄の中に勤めておりまして、退職した人たちが関係して行つている会社でありますが、それが国鉄からそういう仕事を請負わされて仕事をしているということを御承知でありますか。
  874. 中澤重ニ

    中澤証人 あまりそういつたことは知りません。どういう関係でこの碍子とりかえ工事が起つていたかということは、まつたく私にはわからない。ただその碍子をとりかえてくれ、こういう指示があつてつていただけであります。
  875. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは日本電設会社とかいうものを御存じありませんか。
  876. 中澤重ニ

    中澤証人 日本電設工事会社というものは知つております。
  877. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この会社が、国鉄の退職者の人の手によつて大体構成されているということを御存じですか。
  878. 中澤重ニ

    中澤証人 私にはわかりません。
  879. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうするとあなたは、この会社の社長も、専務も知りませんか。
  880. 中澤重ニ

    中澤証人 知りません。
  881. 山口武秀

    ○山口(武)委員 名前ぐらい知つておりませんか。
  882. 中澤重ニ

    中澤証人 名前も知りません。
  883. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私はあなたがこういう仕事をやつてつて、しかもあなたに一番関係のある会社について、その内容も知らない、きわめて大ざつぱなことすらも知らないというのは、たいへんふしぎに思うのですが、どういうものでしようか。
  884. 中澤重ニ

    中澤証人 工事は随修でやつておるのか、また工事で起してやるのか、まつたく私にはわからない。
  885. 山口武秀

    ○山口(武)委員 たとえばあなたたちが夜営で工事をされるときに、それが応急工事であるというようなことが、当然これはわかるはずです。これがわからないということは、常識で普通考えてもあり得ないはずです。しかも工手長としての常識からいつても、これは知ることが必要でもあります。そういう仕事をあなたたちがなされている、それ以外の請負の場合に、そういう日本電設というようなものがやるというようなことになりますれば、当然想像されてもわかることではありませんか。
  886. 中澤重ニ

    中澤証人 想像すればわかりますかもしれませんが、どういうことになつているのかまつたく私にはわからないのです。
  887. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうすると、あなたはやつて来いと言われた以外のことはほとんど何も知らないのですか。
  888. 中澤重ニ

    中澤証人 知りません。
  889. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうするとあなたは現在国鉄の総裁をだれがやつておるかということも知りませんか。
  890. 中澤重ニ

    中澤証人 知りません。
  891. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは加賀山総裁すらも知らないのですか。
  892. 中澤重ニ

    中澤証人 知つております。
  893. 山口武秀

    ○山口(武)委員 今知らないと言つたのは何ですか。(「ちよつと聞き違えました」と呼ぶ者あり)
  894. 中澤重ニ

    中澤証人 今ちよつと聞き違えました。
  895. 山口武秀

    ○山口(武)委員 何を聞き違えたのですか。(「何を言つているか全然わかりません」と呼ぶ者あり)
  896. 中澤重ニ

    中澤証人 何を言つているのか全然わかりません。
  897. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは今ほかの委員が言つたことをそのまま言つている。それはきわめて不謹愼な答え方と思うのですが、どうなんですか。
  898. 中澤重ニ

    中澤証人 会社のことを聞かれたと思つたので……。
  899. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私は会社のことは言つていないのですが、日本電設の社長がどういう人だとかいう問題と国鉄の加賀山総裁の名前ぐらいのことは同じことです。(「じようだん言うな」「違うよ」と呼び、その他発言する者多し)
  900. 中澤重ニ

    中澤証人 ……。
  901. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは工手長をやつておられてあなたの部下があるはずですね。部下はおりませんか。
  902. 中澤重ニ

    中澤証人 部下はおります。
  903. 山口武秀

    ○山口(武)委員 何名くらい使つておりますか。
  904. 中澤重ニ

    中澤証人 十二名おります。
  905. 山口武秀

    ○山口(武)委員 この十二名の人などが、日本電設会社というようなものが年度計画において架線の改修を請負つたという場合に、そこヘアルバイトに行つてつたというような話を聞いておりませんか。
  906. 中澤重ニ

    中澤証人 そういつたことも全然知りません。
  907. 山口武秀

    ○山口(武)委員 全然聞きませんか。
  908. 中澤重ニ

    中澤証人 聞きません。
  909. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それならば、あなたの部下以外の人がそういうところにアルバイトに行つておるといつたような話は聞いたことありませんか。
  910. 中澤重ニ

    中澤証人 ありません。
  911. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうしますと、あなたはそういうような工事関係の人がアルバイトに行つているというようなことは全然ないと思いますか。
  912. 中澤重ニ

    中澤証人 アルバイトというのはどういう意味ですか。
  913. 山口武秀

    ○山口(武)委員 たとえばあなたたちのところできめられた仕事をしていて、それから、その仕事以外の時間に向うの請負会社の仕事にさらに使われて仕事をする。
  914. 中澤重ニ

    中澤証人 そういうことは知りません。私はただ随修の仕事でやる、こう思つていたのでございます。
  915. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは私と別な答え方をしているのですが、あなたは、あなたの方の仕事の関係者で、そういうようなアルバイトへ出ているというような場合は完全にないと思うのか。  (「アルバイトというのがわからないんだ」と呼ぶ者あり)
  916. 中澤重ニ

    中澤証人 ありません。
  917. 山口武秀

    ○山口(武)委員 アルバイトというのがわかりませんか。
  918. 中澤重ニ

    中澤証人 アルバイトといいますと、自分の勤めのほかに行つて何か仕事——内職という意味でしよう。——そういうことは全然ありません。
  919. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは工手長ですが、工手がおられるわけですが、この人たちの俸給というのはどのくらいもらつているのですか。
  920. 中澤重ニ

    中澤証人 それは年功にもよつて違うから一様には言えません。
  921. 山口武秀

    ○山口(武)委員 普通の標準を言つてください。
  922. 中澤重ニ

    中澤証人 まあ私のすぐ下の人あたりで八千円から九千五、六百円くらいだと思うのです。
  923. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたのすぐ下では、これはかなり古い人でしようから、もつと新しい人、もつと低い人のことを……。     〔「基準を言つたらいいじやないか」「初任給か」と呼び、その他発言する者多し〕
  924. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 就職して新しいものの大体の俸給はどうかということですか。
  925. 山口武秀

    ○山口(武)委員 常識での標準ということを聞いているのですが、年限ということになると、何年いる人が何人というようなことになるから、そういうややつこしいことを言わないで、普通大ざつぱに幾らぐらい……。(「それはむりだ」と呼ぶ者あり)じや、こう聞こう。あなたは十二人いると言われたですね。
  926. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  927. 山口武秀

    ○山口(武)委員 その一番古い年功の人は何年勤めておりますか。
  928. 中澤重ニ

    中澤証人 一番古い私は二十九年、二十八年と十箇月くらいであります。それから私の下の者が二十七年くらい、その下の人が二十五、六年くらい、それからさらにずつと下りまして十二、三年くらい、五、六年くらい、三年くらい、こういうような順になつております。
  929. 山口武秀

    ○山口(武)委員 大体まん中の十二、三年くらい勤めている人はどのくらいとつておりますか。
  930. 中澤重ニ

    中澤証人 六千円くらいじやないかと思います。
  931. 山口武秀

    ○山口(武)委員 その人たちは家族を持つているのですか。家族を持つているとすれば、それで生活が立つて行くとあなたは考えますか。
  932. 中澤重ニ

    中澤証人 それは私としてはあまりわかりませんが、そういう、生活が立つて行けるかどうかということはわかりません。
  933. 山口武秀

    ○山口(武)委員 最後に少しはつきり聞いておきたい。あなたは、あなたのような仕事をしている方で、日本電設というような会社がたとえば講負している場合に、そこヘアルバイトに出ている人はないということをはつきり申しておりましたが、これはまたあとで私はあなた以外の人が出て来たとき、より明確に聞きたいと思うのですが、そういうようなアルバイトに出ているというようなことがかりにあつたとすれば、それはそれであなたは仕事の監督上から見てよいと思いますか。
  934. 中澤重ニ

    中澤証人 よくないと思つております。私としては、私の知つている限りはそういうことがあれば特に注意します。またもし私に隠れてないしよで行く分には、私には全然そういつたことはわかりません。
  935. 石田一松

    ○石田(一)委員 ちよつとお尋ねしますが、架線があなたたちが工事しているときに切れたのは、あの事故のあつた当日の何時ごろですか。
  936. 中澤重ニ

    中澤証人 切れたときには十三時——大体わかりませんが、私の想像では、十三時半ごろに仕事の準備にかかりまして、それからチエンを張つたり、また手袋をはめたりし、また道具それから材料というようなものを準備して上つて、あれまでの時間になるにはそこにどうしても七、八分ぐらいはかかる、こう思つております。
  937. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうすると、その架線が切れたというのは、これはふなれのためですが、それとも、自然に老朽していつて碍子に触れて切れたのですか。
  938. 中澤重ニ

    中澤証人 まつたくそれは誤つたと私は考えております。
  939. 石田一松

    ○石田(一)委員 その工手が誤つて架線を切つたのですか。
  940. 中澤重ニ

    中澤証人 そうだと思います。
  941. 石田一松

    ○石田(一)委員 すると、碍子があぶなくて切れそうだというときには、何かバイスみたいなものではさんでいますね。そして一応かりに切れないようにしておいて工事しているですね。それが切れたということは、工手の方の一応不注意はあつたと私は思うのですけれども……。
  942. 中澤重ニ

    中澤証人 まあ線が切れるというようなことはほとんどないと思います。
  943. 石田一松

    ○石田(一)委員 碍子のところが切れたのですな。それで私が次にお聞きしたいのは、あなたはそれが切れたので、現場を、自分の下の区長ですか、それに頼むと言つていらつしやつたのですね。
  944. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。私は電車をとめる手配と、それからその復旧の手配をとつて来るから、一旦頼む、こう言つて私は行つたのであります。
  945. 石田一松

    ○石田(一)委員 それでは区長は、あなたが電車をとめる手続をとりに行つたということを知つていたわけですね。
  946. 中澤重ニ

    中澤証人 そうだと思います。
  947. 石田一松

    ○石田(一)委員 しかし、あなたが電車をとめるために信号手にそれを報告に行つているのだけれども、あと現場を頼むと言われた区長は、一応電車なんかが来ればやはり—さつき見張つておるとおつしやつたけれども、見張りを置いておくのでしような。
  948. 中澤重ニ

    中澤証人 それは朝からもそういうことで指示してありますから、もちろん電車の来るのは見ているものと私は思つております。
  949. 石田一松

    ○石田(一)委員 それで、今あなたのおつしやつたその信号所から第四号柱ですか、あれまでどのくらいあるのですか。
  950. 中澤重ニ

    中澤証人 約二百メートルくらいあるのじやないかと思います。これは私は別にはかつてみませんが、大体……。
  951. 石田一松

    ○石田(一)委員 そういたしますと、第四号柱からあそこのシグナルのあるところは、ほんとうに複線のまたがつた程度近いところですな。
  952. 中澤重ニ

    中澤証人 信号機は、四号柱から二メートルか三メートル離れているだけだと思います。
  953. 石田一松

    ○石田(一)委員 あなたが、信号所に行つて電車をとめる処置をとつて、ほかのいろいろな道具を持つて来るように手配するから、あとを頼むぞと言つていらしやつたときに、区長はそれを引受けて、電車の見張りまでしているのですから、四号柱のところから、シグナルがかわつたかかわらないかということは、二メートルか三メートルだつたらわかるはずですね。
  954. 中澤重ニ

    中澤証人 私にはわかりません。
  955. 石田一松

    ○石田(一)委員 あなたは別だけれども、現場にいる人から見えませんか、あそこは……。
  956. 中澤重ニ

    中澤証人 見えると思います。
  957. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうすると、要するに電車を見張つているというのは、あなたのおつしやつたように上り線ですか、向うに入つて行く、これが危険だということは、あとを頼むと言われて引受けた区長さんにはわかるわけですか。
  958. 中澤重ニ

    中澤証人 わかると思います。
  959. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうすると、あなたは電車をとめに行くと言つたんだから、電車の入る見張りをしている人は、あなたはなるほど電車をとめるために信号所に行つたけれども、はたして信号がかわつているかどうかということを見れば、このときはかわつていなかつたのですから、そうすると、見張りがあの信号所に来る前に四号柱から—そのときは三号柱あたりのところに見張りがいて、その信号を見ながら、その信号が赤になればもちろん安心してこつちへ帰つていいが、いつも青かつたら—私は手旗信号を持つていらつしやるのじやないかと思うのだが、そのときにあなただつたら、それくらいはやるはずですが、区長という人はあとは何もやらなかつたのですか。
  960. 中澤重ニ

    中澤証人 どうですか。私が信号所に行つたあとのことは、やつたかやらなかつたかということは、私には全然わからない。
  961. 石田一松

    ○石田(一)委員 あなたはあとを頼むぞと言つて……。
  962. 中澤重ニ

    中澤証人 私が一旦あとは頼むぞと言つたことは、もし私の帰つて来るまでに電車が来たら、とめてくれるということに私は思つていたんです。
  963. 石田一松

    ○石田(一)委員 もちろんそれはそうなんでしよう。こつちの上り線に入れば確かに事故になると、あなたは確信を持つていらつしやる。しかも今の山口君の質問に答えられたところによると、あなたのすぐ下の人は二十五年か、二十七年か、長い経験があり、あなたと一年くらいしか違わない。そうだとすれば、相当の事故になるということはよく御存じなんだから、二年しか長く勤めた経験を持たないあなたの方が、電車が来ればすぐ必ず自分のかわりにとめてくれるだろうと思つていたのに、とまらないで、そのまま入つて来るということになると、その人は電車の見張りをしていたかどうかわからないように私は思うのですがな。
  964. 中澤重ニ

    中澤証人 私もそれは……。
  965. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 結果から見ればそういうことですね。
  966. 石田一松

    ○石田(一)委員 それをあなたに聞くのはへんだが、そうすると、信号所と四号柱のところは二、三メートルのところで、そこで電車を見張りしていて、あなた自身はとめるだろうと思つていた。要するに見張りをしている人の、実際の点から言えばできてはいないけれども、これはとめるべきである、私たちはそう考えてもいいですな、あなたがそう思つていらつしやるのですから。現場で電車の見張をしていらつしやる方は、電車が入つて来ればとめるべきである。あなたが信号所に行つたのだから、信号がストップになつているかどうかということを確認して、ストップになつていれば安心して現場に帰つていいがさもなければ、少くとも五十メートル、百メートルの先にいて、そして信号注意して、青くなつていれば上り線に入らないようにとめる、そういう連絡が少くともなされなければならぬと思うのですが、あなたがお考えになつていかがですか。そういうふうなことをやつてくれればよかつたなということをお考えじやありませんか。
  967. 中澤重ニ

    中澤証人 そういうふうには思います。
  968. 石田一松

    ○石田(一)委員 私今お話を聞いていて、あなた自身を責めるわけじやないので、あなたは万全の処置をおとりになつたと思うのですが、しかし、あなたと同じような経験を持つていらつしやる区長という人は、頼むぞと言われて頼まれたのに、まるで信号所に行つているあなたのやつた結果が信号に現われたかどうかを見もしないで、そして電車が過ぎたあと—さつき車掌の方が、手でとまれという合図をしていたと言う、それでは手旗信号もしていなかつた、こういうことになる。さつきのあなたの証言では、車掌はいつもこちらに顏を出しているから、ほとんど見えないとおつしやるのだが、どうもそうなると何か食い違いがあるように思うのですがな。
  969. 中澤重ニ

    中澤証人 車掌さんに手を振つたということは、もう事故が起きて、その現場を通り過ぎて、そのうしろで合図したのではないかと思うのです。
  970. 石田一松

    ○石田(一)委員 私も実はさつきそう聞いたのですがそうでないと言うのです。
  971. 田渕光一

    ○田渕委員 あなたの部下が架線を切断されたということは過失であつた、こうあなたが直感された。あとを頼むぞというときにさらに、そこへ行つて電気もひとつ切つてくれというような次善の策まで言うてやればよかつたのだというようなことを今お気づきになりませんか。
  972. 中澤重ニ

    中澤証人 そういうことはあとでは思いましたが、そのときには思いませんでした。
  973. 田渕光一

    ○田渕委員 ただとつさの場合であり、動揺しておつて、非常に興奮した態度であつたから言えなかつたのですか。それとも自分は二十何年の経験を持つておる、ところがこういうような事故が、かつてはなかつたかしらぬけれども、われわれは将来こういう事故防止のためにお願いするのですが、そこに何か物足りない人事を盡した点が足りなかつたのではないかというようなことを思うのです。今から考えるのでなく、絶えず自分らの職域を—なわ張りといいましようか、よけいなことさえしなければ事故は起きない、あるいは自分がうるさくないのだ、普通のことさえやつていればいいのだというような水くさい意味でなくして、ちよつと出過ぎるけれども、信号所のやつにすぐ電気を切るようにせよ、お前ら出て来いと言つて、多少きつくても、大勢の乗つている電車架線が切れたのだから、必ず大きな事故が起きるというくらいの直感はあつたのでしようね。
  974. 中澤重ニ

    中澤証人 ありました。
  975. 田渕光一

    ○田渕委員 そのときに、私はいつも考えるのですが、当時すぐ電気を切らせるという方法があれば、ここまで来なかつたのじやないか、ただ信号手が悪いばかりでなく、こういうような点も、そこに幾分足りないところがあつたのではないか。
  976. 中澤重ニ

    中澤証人 信号所では、電気を切れといいましても、その手配はできないと思います。
  977. 田渕光一

    ○田渕委員 電話はありませんか。
  978. 中澤重ニ

    中澤証人 電話はありますけれども、電気方面のことは全然関係がないのでございますから、そのときに電気を切れといつても、信号所の方には全然その手配はとれないと思います。
  979. 田渕光一

    ○田渕委員 それではもう一つ伺いますが、あなたが工事されるときには、そこにいるばかりではなく、一町とか二町とかあるいは千メートルくらいのところに赤旗と青旗と両方持たして、もし危険があつた場合には、赤旗を振るといういうな配置でもしておく、多くは昼間頻繁な電車の運転時間にやるのだから、そういう次善の策もとられなかつたのですか。
  980. 中澤重ニ

    中澤証人 とつさの場合で、それは私はできなかつた
  981. 田渕光一

    ○田渕委員 とつさの場合ではない。少くとも頻繁に電車が動いているのですから、架線をやつている間は、相当先の方に事前に配置しておいて、もしも過失があつた場合というような予定のために、一人ぐらい千メートルぐらい先に置いて、故障が出たらすぐ赤旗でも振る、あるいは連絡をするというような配置はいつもしてありませんか。
  982. 中澤重ニ

    中澤証人 いや、しております。その現場によつてそれはやつております。現場によりますと、電車の見通しの悪いところというようなところは、二段信号とか、一人ずつと先に置いて、まだそれでも見えないというときには、さらにその先に一人置いてやつております。
  983. 田渕光一

    ○田渕委員 将来の災害を防止せんがために努めて国会は動いておると思います。私もそう考えますが、今日までの御経験上、そういう場合には、今も伺い、またあなたからもお答えになつたような手配は、いつもやつておるのですか。
  984. 中澤重ニ

    中澤証人 やつております。
  985. 山口武秀

    ○山口(武)委員 関連して。念のために一つ聞いておきたいことがあるのです。それは先ほどの証人証言の際に、架線の取りかえ作業中に、工夫があやまつて線をおろしたために、上り架線が切断した。その際あなたは、あとを頼むと言つて信号所にかけて行つた
  986. 中澤重ニ

    中澤証人 そうです。
  987. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そのあとを頼むと言つて信号所にかけて行かれたというのは、電車が来たならばとめるようにというような意味であつたのです。こうおつしやいました。
  988. 中澤重ニ

    中澤証人 私は架線の方の応急処置電車が来ても一旦はとめるということを総合して、その意味は言つたのであります。
  989. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたはさつきそこまではつきりは言わなかつたのですが……。電車だけをとめる——だけをとは言わなかつたでしようが、電車をとめることを、あとを頼のむと言つて行つた
  990. 中澤重ニ

    中澤証人 あとを頼むと言つた意味は、私の思うところは、一旦あとを頼むと言つたことは、電車もとめる意味だし、また架線の方の応急処置もまかせる、こういう意味で私は言つたのでございます。
  991. 山口武秀

    ○山口(武)委員 信号所へかけつけるということが、すでにあなたは電車をとめるという目的でかけて行つた応急処置ということの方が、あとを頼むと言つた意味では強かつたのじやないですか。常識的にはそうとれるのです。
  992. 中澤重ニ

    中澤証人 私はあまりはつきりそのことはわかりませんが、私とすれば、総合して現場を見てもらうという意味で、あとを頼むと言つたのであります。
  993. 山口武秀

    ○山口(武)委員 今私が聞いたのは、先ほどの証人証言が不明瞭だつたから開いたのです。
  994. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 現場で作業を始める時間は——電車へ乗つて高島町から桜木町まで行かれたということですが、作業開始の時間というのは、その日はきまつてつたのですか。
  995. 中澤重ニ

    中澤証人 時間はきまつておりません。
  996. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 一時半から始めるとかなんとか、そういうことはなかつたのですか。電車で行かれたのは……。
  997. 中澤重ニ

    中澤証人 十二時五十八分ごろだと思いますが、詰所を出まして、それから市電で高島町まで行きまして、高島町から桜木町まで東横線で行きまして、それでホームをおりますと、あそこのところは二百メートルか、二百四、五十くらいの距離でございますから、そこまで行つてつたのであります。
  998. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうすると作業開始の時間は別にきまつているわけではないのですね。
  999. 中澤重ニ

    中澤証人 きまつておりません。
  1000. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そのときの事故を受けた人の中に、これは焼け死んだ前に感電死もあつたということを言う人がありますが、そういうことが考えられますか。
  1001. 中澤重ニ

    中澤証人 考えられません。
  1002. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員長代理 他に御質問がなければ中澤証人に対する尋問はこれにて終ります。証人には御苦労様でありました。     〔内藤(隆)委員長代理退席、塚原   委員長代理着席〕
  1003. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 次に高原豊秋証人証言を求めることにいたします。  高原豊秋さんですね。
  1004. 高原豊秋

    高原証人 私、高原豊秋です。
  1005. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 ただいまから桜木町国電事故に関する件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者一四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書の朗読を願います。     〔証人高原豊秋君朗読〕    宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  1006. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 署名捺印してください。   (証人宣誓書署名捺印
  1007. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 これより証言な求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また発言の際は、その都度委員長の許可を得てなされるようお願いいたします。なおこちらから質問をしておる場合はおかけになつていてよろしゆうございますが、お答えの際は御起立を願います。  高原豊秋さんは、お幾つですか。
  1008. 高原豊秋

    高原証人 四十八歳であります。
  1009. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 簡単でけつこうですから、証人の経歴を述べてください。
  1010. 高原豊秋

    高原証人 大正十年九月十六日に田端駅の駅夫として入りましてから今日に至つております。
  1011. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 学校は……。
  1012. 高原豊秋

    高原証人 学校は巣鴨商業第二本科を卒業しました。これは業務の余暇に行つたのです。夜学です。
  1013. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それから大正十年九月十六日に田端の駅夫になられてから、そのあとのことを簡単でけつこうですから、述べてください。
  1014. 高原豊秋

    高原証人 それから田端の連結手になりまして、それから池袋、十条、品川車掌区、五反田、大久保、高田馬場、大船と転勤しました。
  1015. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 その間は何をやつておられたのですか。
  1016. 高原豊秋

    高原証人 その間は池袋駅にはわずかしかおりませんでしたが、駅夫というわけで入りまして、それで連結の仕事をやりました。それから今度十条駅の駅手になつて行きました。それから十条駅の駅手から踏切着手をやりまして品川車掌区の列車手に転勤しました。それで列車手を少しもやらずに今度列車荷扱手になつて、それから今度五反田駅の、もとは警手といいましたが、警手という職についておりました。それから転轍担務になりました。それから車掌見者いを品川車掌区でやつたこともあります。それで、車掌見習いが終つて大久保駅の改札に行きまして改札から今度大船駅へ、夏のうち少し行きました。今度は高田馬場に、案内掛かと思いましたが、行きまして、それから今度信号掛になつたのです。
  1017. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 その信号掛になつたのはいつですか。
  1018. 高原豊秋

    高原証人 信号掛になつたのは、月日ははつきり覚えておりませんが、昭和十九年だろうと思います。十九年の、七月ごろから二箇月半ばかり逗子の海の家で二箇月講習を受けました。そうして講習が終りまして、東京駅の信号掛になりました。それで昨年九月ごろだと思いますが、桜木町の駅の信号掛に転勤したわけです。そうして今日に至つております。
  1019. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そうすると、あなたが信号手として教育を受けたのは、その逗子における二箇月だけですか。
  1020. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1021. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 あなたは大正十年から鉄道におられるのですが、信号手になるためには、普通の人は現在何箇月くらいの教育を受けて信号手になれるわけですか。
  1022. 高原豊秋

    高原証人 それはいろいろありましようか……。
  1023. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 最短期間です。一番短かい期間はどのくらいですか。
  1024. 高原豊秋

    高原証人 二箇月くらいが最短期間じやないかと思います。
  1025. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 一番長いのは。
  1026. 高原豊秋

    高原証人 長いのは三箇月以上じやないかと思います。
  1027. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そうすると二箇月ないし三箇月の教育で、信号手としての免許というか、その資格がつくわけですね。
  1028. 高原豊秋

    高原証人 つくと思います。
  1029. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 これはどうなんですか、学科が主なのですか。術科が主なのですか。
  1030. 高原豊秋

    高原証人 術科が主です。
  1031. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そうすると、あなたが十九年の七月に信号掛になつて……。
  1032. 高原豊秋

    高原証人 十九年の七月に信号掛になつたのではないのです。七月から講習を受けて、九月ごろから東京駅の信号掛になつたと思います。
  1033. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それから今日まで、あなたの仕事は全部信号掛ですか。
  1034. 高原豊秋

    高原証人 その間において、東京駅で、信号の免許は持つておりましたが、少し警備掛をやつてくれというので、警備掛を少しやつたことがあります。
  1035. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 実際信号の仕事をしたのは、あなたは今まで何年ぐらいありますか、概略でいいですが……。
  1036. 高原豊秋

    高原証人 概略六年ぐらいと思います。
  1037. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 常識から見て、六年の経験を持つ信号手というのは、そう多くはないのですか。六年信号手をやつたという人は、相当古い方ですか。
  1038. 高原豊秋

    高原証人 古い方じやありません。
  1039. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 新しい方ですか。
  1040. 高原豊秋

    高原証人 新しい方でもないと思います。
  1041. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 中間ぐらいですか。
  1042. 高原豊秋

    高原証人 中間ぐらいだろうと思います。
  1043. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 駅の信号手の職務というものについて簡単に説明してください。
  1044. 高原豊秋

    高原証人 信号手は、直属系統は駅長さん、あるいは助役さん、運転掛が直属系統になつております。
  1045. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 どつちですか。いま一度言つてください。直属系統は駅長ですか。
  1046. 高原豊秋

    高原証人 直属系統は駅長さん、あるいは駅長さんから運転取扱いの方。駅長あるいは助役、助役さんかあるいは運転掛……。
  1047. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 あるいはというのは、駅長がとにかく直属長官でしよう。
  1048. 高原豊秋

    高原証人 駅によりまして助役さんと駅長さんばかりいらつしやる所もある。それで信号掛がいるとすれば、その当務に当つた駅長さんの指揮を受けなければならない。それから反対番の助役さんがいらつしやるときの信号掛の場合は、助役さんの指揮を受けるということになつております。
  1049. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 今の桜木町の駅であなたがやつている仕事はだれの指揮を受けるのですか。
  1050. 高原豊秋

    高原証人 当日は助役の指揮を受けておりました。
  1051. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 つまり駅長の出番のときには駅長、駅長の非番のときにはそのかわり出て来た助役の指揮を受ける、こういうのですか。
  1052. 高原豊秋

    高原証人 そうです。ただいま申し上げたのは、一つの駅に駅長さんと助役さんがいる場合です。東京駅のようにたくさんいる所では、指揮者は運転掛ということになつております。
  1053. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それでそういう人より指示を受けて毎日どういう仕事をなさるわけですか。
  1054. 高原豊秋

    高原証人 信号所に詰めましてダイヤと時間によつて電車あるいは汽車の運行に注意をしながらやることになつております。
  1055. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 あなたは現在桜木町駅でこういう仕事をされておる信号手としては一番上ですね。
  1056. 高原豊秋

    高原証人 いやそうじやありません。あそこには五人おりますが、あそこの所とすれば四番目くらいです。
  1057. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 高山という方は……。
  1058. 高原豊秋

    高原証人 寺山さんですか。
  1059. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 高山という方はおりませんか。
  1060. 高原豊秋

    高原証人 高山という方はおりません。
  1061. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 信号の一番の責任者はたれですか。
  1062. 高原豊秋

    高原証人 信号の責任者というのは、あるようでないようです。
  1063. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 一番古い人はどなたです。
  1064. 高原豊秋

    高原証人 よくわかりませんが、古い人は—信号掛の古い人は、あそこの駅では寺山さんだろうと思います。
  1065. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 普通何人ぐらい信号所に詰めているのですか。
  1066. 高原豊秋

    高原証人 毎日二人ずつ詰めております。
  1067. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 この間桜木町駅でああいう大きな事件があつたのですが、そのときに詰めておつたのはあなたとどなたですか。
  1068. 高原豊秋

    高原証人 高原と寺山です。
  1069. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 あの事件の状況を簡単に説明してください。
  1070. 高原豊秋

    高原証人 当日八時五十分から点呼が始まりまして、九時ごろ点呼が終つて、寺山さんと高原信号所に行きました。それで前日の人と交代しました。午前中は高原は転撤器の掃除、油をくれたり雑用をしておりました。寺山さんは午前中信号の仕事をやつておりました。それでポイント掃除は十一時ごろ終つたと思います。十一時ごろ終りまして、詰所へ帰つて来て、油の手なんかを洗つて一服吸つて、道具を洗つて、そうして寺山さんと十一時三十分ごろお昼をとりました。それから十二時ごろだと思います。まあ十二時、ずれても五分かそこらぐらい。十二時ごろごはんが終つて、今度は私が交代したのです。私は十二時から二時まで信号勤務することになつて、十二時から午後二時まで、鉄道では十四時と申しますが、その間十四時まで高原は、信号の仕事をすることになり、寺山さんは十四時まで、仕事になるまで休養することになつて、詰所におりました。それで四〇〇一という不定期電車があるという電話が岩田助役の方から——ホームの方から来たので——不定期の電車があるという通知がホームの方からありまして、そうして不定期があるなと思つておりました。ところが四〇〇一というのが十三時二十六、七分ごころになつて—二十六分よりもつと過ぎておりました。その時分になつてホームから、不定期の電車はとりやめになつた、そういう電話がありました。そのときに、不定期の電車四〇〇一というのは一番に入るということになつておりました。当日は午前から午後にわたつて、自動的に二番線に到着して二番線から発車するようなダイヤになつてつたのです。それでそれがてこによつて自動的に出入りするようになつてつたのですけれども、不定期電車があるというので、その自動を切りかえて、そうして自動でなくして—六Rの自動てこでなく、一RLという一番に入るように——不定期の一四〇一は一番に入るようなダイヤですから、一番の方へ向けておつたのです。そうしたところが十三時二十六、七分ごろ、やめになつたというので、今度元の自動てこに切りかえて、そして二番の方へ向けたのです。その時間はわかりませんが……。それで十三時三十四、五分ごろだと思います。その時分にホームの方から一二七一Bは東神奈川を八、九分遅れるという電話がありました。それで遅れるかと思つていた。そのうちに、ちようど十三時四十分前後だと思いますが、その時分に、電力の工手長が信号所へ入つて来ました。
  1071. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それは中澤さんですね。
  1072. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんです。その当時は電力の工手長か何か、あまり工手長ということは知らなかつたんだけれども、その中澤さんという名前も知らなかつたのです。まあ今は中澤さん、知つておりますが、中澤さんが入つて来て、それで、やつちやつたと言いました。信号所に入つて来て……。
  1073. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 何と言つたつて
  1074. 高原豊秋

    高原証人 やつちやつたと言いました。そういうふうに聞えました。それから私は何かあつたのかいと尋ねました。そうしたら中澤さんが言うには、上りの電車を出すのをちよつと待つてくれと言いました。それからどうしたのだい、到着の電車を入れてもいいのかい、入れてもいいだろうなと言いましたら、着は大丈夫だ、到着の電車は入れてもいいのかと私が聞いたものですから、着は大丈夫だというのです。
  1075. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 つまり上り線に入れてもいいというのですか。
  1076. 高原豊秋

    高原証人 上り線に入れてもいいという意味なんです。
  1077. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 その点非常に大事なところなんですがね。ひとつ間違いなく言つていただきたいのです。やつちやつた、それであなたがどうしたかと聞いたわけですね。
  1078. 高原豊秋

    高原証人 そうです。何かあつたのかと聞いたのです私が……。そうしたら上りの電車を出すのをちよつと待つてくれというのです。
  1079. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そこであなたが上り線に入れてもかまわないかと言つたら、本人はいいと言つたのですか。
  1080. 高原豊秋

    高原証人 いや、まあ申し上げますが、上りの電車を出すのをちよつと待つてくれというのです。それから私が到着の電車は入れてもいいのか、入れてもいいのだろうなと言つたら、着は大丈夫だというのです。着というのは到着のことです。着は大丈夫だというのです。それで中澤さんは電話にかかりました。どこへか——どこへかではない、私中澤さんがかけた電話の内容はよくもわかりませんでしたが、大船の電力区らしいところへ電話をかけておつたようでした。——かけておつたようじやない、かけました。それで電話が終りまして、出て行こうとしたから、私がどうしたのだいと言つてまた聞き直したのです。そうしたら、それには答えないで、私と一緒におる同僚が、下りの電車行つてもいいのだろうな、上りの電車は出してはだめなんだな、そういうふうに言つておるように私には思えたのです。それで中澤さんが出て行つてしまつた。それで私がホームの助役さんの方に工手長が来た旨を告げべく、ホームに電話をかけたのです。そうしたら相手方は——乗客の方だろうと思いましたが、それは乗客の方ではなくて、神田という駅手だつたそうですが、その人が出まして、私が工手長が来て、上りの電車を出すのをちよつと待つてくれと言つたことを言つたら、何かあつたのかと言いました。何かあつたのかというから何だな、工手長は言わないのだけれども、上りの電車を出すのをちよつと待つてくれと言うから、工手長が来て言つたのだから、多分これは架線にどこか悪いところでもありはしないかと思いまして、どこか架線が悪いのだろうなと言つたら、今度は助役さんがその電話を神田からとつて、そうしてもしもし岩田ですが何ですかと言うから、今工手長が来て、上りの電車を出すのをちよつと待つてくれと言つた。どうしたのだと言うから、どうしたのだな、はつきりしねえのだけれども、何でも架線が悪いらしいのだと言つたら、はつきりしないじや困るじやないか、早く知らせなくちや、確かめてしろ、それでまあ私は腰をかけておりましたが、ちよつと浮かしてみましたところが、だれか、保線の今行つた工手だとそのときは思つたのですけれども、私の信号所の方に向いて来るように思いました。それで私がそのとき助役さんとの応答の電話を切つたかどうか知りません。忘れましたけれども、腰をこう浮かして、こうやつて見ておつた。そのうちに電車が見えた。見えたなと思つてずつと見ておりましたら、ぱつとパンタグラフの付近から火が出たように思えたです。それでその電話を切つたかあるいはかけたかはつきり記憶がないのですが、ああたいへんだ、火が出ちやつたと助役さんの方へかけました。
  1081. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 その辺でいいです。その中澤工手長が信号所へかけつけて来て、やつちやつたと言うときに、あなたは何をやつたかという反問、質問はしなかつたわけですか。
  1082. 高原豊秋

    高原証人 それですから何かあつたのかいと聞いたのです。
  1083. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それに対する答えはなかつたのですか。
  1084. 高原豊秋

    高原証人 それに対する答えはないです。
  1085. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 たとえば架線が切れたとか……。
  1086. 高原豊秋

    高原証人 それは何も聞きません。
  1087. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 何も言わない。それでその上り線に入れては絶対に困る、絶対に入れてはいけないということを信号所に強く言つた中澤さんは言うのですがね。
  1088. 高原豊秋

    高原証人 聞きません。
  1089. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 聞かない……。これは大事なところですが、あなたはうそをついてはいけません。やつちやつた、上りの電車を出すのを少しの間、一時ちよつてつてくれ……。
  1090. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1091. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それだけですか。
  1092. 高原豊秋

    高原証人 それだけです。
  1093. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それに聞違いありませんか。
  1094. 高原豊秋

    高原証人 間違いありません。
  1095. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そうするとあなたはやつちやつたというだけで、それが架線切断であるということは気がつかなかつたのですか。
  1096. 高原豊秋

    高原証人 気がつかなかつたのです。
  1097. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そうすると大した故障ではないと思つたわけですね。
  1098. 高原豊秋

    高原証人 工手長が、今申し上げた通り、上りの電車を出すのはちよつと待つてくれと言いますから、大したことじやない—ちよつと申し上げますが、午前中に私がポイント掃除をやつている当時、ポイントよりもずつと先、もつと先の方で、横浜寄りの方で工手が絶縁物の取付けか何かのちよつとしたことで上りの電車を出すのを待つのだと思いました。
  1099. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 その場合、やつちやつた、何をやつた架線切断であるということを、あなたがもし質問してそういう答えを受けたとしたら、あなたは信号手としては一応電車は全部とめなければならぬという決心はされましたか。
  1100. 高原豊秋

    高原証人 しました。
  1101. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 やつちやつた、それは何だ、それが架線の切断であることがわかれば、あなたは信号手として全部赤の信号を出してしまいますね。その点はどうですか。
  1102. 高原豊秋

    高原証人 それは全部出すとは限らないと思います。やはりその状況によつて、まあ、たとえばどこそこが悪いのだと中澤さんから聞いたとして、それは危険だなと思えば臨機の処置をとりますが、中澤さんが横浜桜木町の中間あたりが切れているのだというのでは、それはやはりそのときの状況によつて仕事をすると思います。
  1103. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 われわれの常識で考えて、あなたがポイントの掃除か何かしているすぐそばでやつていることは、この地図で見てもわかる。しかも中澤工手長が飛んで来て、やつちやつたと言えば、すぐそばで事件が起きたということはおわかりになるでしよう。それ以外のところで事件が起きたとは思わないでしよう。その辺であなたは碍子の切りかえか何かやつているということを知つているのでしよう。
  1104. 高原豊秋

    高原証人 午前中見て知つているのです。
  1105. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そこへ飛んで来たなら、すぐそばであつたということをお気づきになるでしよう。
  1106. 高原豊秋

    高原証人 その辺といつても相当遠いと思います。
  1107. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 遠くないでしよう。この地図で見たら、あなたはここの信号所におられて、その工事をされておつたところまでは、せいぜい二、三百メートルでしよう。
  1108. 高原豊秋

    高原証人 工事をされたところはずつと先の方のように思えたのです。
  1109. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 思えたのですか。
  1110. 高原豊秋

    高原証人 はあ。
  1111. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それじやあなたは、中澤工手長が言つて来たときには、この近所のできごとじやない、ずつと横浜駅に寄つたところだろうと考えておられたのですか。
  1112. 高原豊秋

    高原証人 そんなに遠くだとは思いませんが、場内信号機よりかも相当外方の方のように思いました。
  1113. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 なぜこういうことを聞くかといいますと、われわれは専門のことはわかりませんが、常識として、架線が切断されたという連絡を信号手が受けたときには、一応電車をとめる信号を出すというのがあたりまえじやないかとわれわれは考えるのです。
  1114. 高原豊秋

    高原証人 それは臨機の処置をとりますが、架線が切れたということは少しも聞かなかつたのです。
  1115. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 さつきあなたはそう言いましたね。しかし上りを出さないでくれということは、電車を出せば危険だということはあなたもおわかりになるわけでしよう。
  1116. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1117. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それを、下りを上り線に入れるような信号を出しておつたということが、われわれにはわからないのですが……。
  1118. 高原豊秋

    高原証人 それですから私は、到着の電車は入れてもいいのかと聞きました。
  1119. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 その点はあと委員からも聞くでしようが、中澤工手長からあなたが連絡を受けて、それから問題の電車が入つて来るまでの間はどれくらいの時間がありましたか。
  1120. 高原豊秋

    高原証人 中澤工手長から連絡を受けて、問題の電車が来るまでというものは幾らもなかつたと思います。
  1121. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 大体、何秒とか何分とかわかりませんか。
  1122. 高原豊秋

    高原証人 あまり時間のことははつきりしませんが、二、三分くらいと思います。
  1123. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そうするとあなたは、当然上り線に入れるだけの信号の処置は、そのとき講じておつたわけですね。
  1124. 高原豊秋

    高原証人 到着の電車は……。
  1125. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それはわかつていますよ。大丈夫だと言われたから、その間何の不安もなく上り線に入れるだけの信号を出していたわけですね。
  1126. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1127. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 どなたか委員の方で御質問がありましたら……。
  1128. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 さいぜん田淵委員からも詳細に前の証人に聞いておつたのですけれども、その信号所へ中澤工手長が来たときに、そういうなまぬるい話だつたのですか。なまぬるいというと語弊があるが、そういう簡単な事故であるとあなたが受取る程度の言葉ですか。
  1129. 高原豊秋

    高原証人 私は何かあつたのかいと聞いたのです。
  1130. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 中澤君の語気はどうですか。
  1131. 高原豊秋

    高原証人 中澤君の語気は普通とかわらないと思いました。
  1132. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 その点は今田淵委員からも聞かれたから、私は多く触れません。それからもう一つ、さいぜんの証人から聞くと、いよいよあの大悲惨事が起つたとき、あなたはしきりに中澤さんを探しておつたのですね。
  1133. 高原豊秋

    高原証人 探しておりません。
  1134. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると、その大事故が起つたときに、今電車が盛んに燃えつつあるわけですが、中澤君とどの辺で会いましたか。
  1135. 高原豊秋

    高原証人 会いません。
  1136. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 事件が起つて死骸なりその他を収集しても会わなかつたのですか。
  1137. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんとその後会いましたのは、多分信号所だろうと思います。
  1138. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 信号所は最初に会つたでしよう。中澤君が飛び込んで来たでしよう。
  1139. 高原豊秋

    高原証人 そうですが、その後事件後に来ました。
  1140. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 事件後何時間くらいたつてからですか。
  1141. 高原豊秋

    高原証人 何でも火が燃えちやつたあとだろうと思いますが、中澤さんが見えました。
  1142. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 中澤さんの方から足を運んで信号所に来たわけですね。
  1143. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1144. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そのとき何と言つておりましたか。
  1145. 高原豊秋

    高原証人 私と寺山さんのどつちに言つたのか私は知らないけれども、中澤さんが言つた全部はわかりませんでしたが、耳にはさんだのは、君らにも責任がかかるかもしれないから、電車が入つたと同時に架線切つて火を吐いちやつたというようにしようじやないか、そうすればおれの方も旗を出さないで済むからとか何とか、聞えたようでした。
  1146. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると、さいぜんの証人と今のあなたの陳述とはたいへんな食い違いがある。食い違いどころではない。私は唖然として言うところを知らないほどの気持になりますが、そういう大惨事を見ながら、あなた方両者は、何とかしてこれを双方とも責任のないような立場をつくるために会合したのですか。
  1147. 高原豊秋

    高原証人 私らは絶対にそんなことは言いません。
  1148. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 中澤君と会つた場所は聞かなかつたが、あなた方は探して歩いた……。
  1149. 高原豊秋

    高原証人 探しません。
  1150. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうして何と言つたかというと、あなた方は中澤君に、これは知らないことにしておいてくれということを哀訴嘆願しておつた……。
  1151. 高原豊秋

    高原証人 そういうことは絶対にありません。
  1152. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 私らはここで犯罪をつくるのじやないですよ。ここは要するに裁判所じやないのです。ここはもつと大きな心から事件の真相を調べて行くところなのですから……。
  1153. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんに嘆願するとか頼むとかいうことは絶対にありません。
  1154. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 ということは、中澤君が信号所へ飛び込んで来て、大声で列車の入らぬように信号を出してくれと言つたというのですな。
  1155. 高原豊秋

    高原証人 そんなことも言いません。
  1156. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 ところがあなたの方でその信号を出しておればこの惨事はない。
  1157. 高原豊秋

    高原証人 絶対にそういうことは聞きません。
  1158. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 信号を出さなかつたがためにこういうことになつて悲惨事を起した。だから出さなかつたという責任を感じて、あなた方はこの中澤君に会つて、どうか知らないことにしてくれと頼んだ……。
  1159. 高原豊秋

    高原証人 そういうことはありません。絶対にありません。それは断言します。
  1160. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 百何十名という死傷者を出すというのはまことに大きな問題です。単にあなた方の責任を追究する、そういう問題ではない。もつと国鉄そのものに関するもので、それは基本的なものであると考えておるわけです。だからここでほんとうにないということをあなたりつぱに証言できますな。
  1161. 高原豊秋

    高原証人 証言できます。
  1162. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それからやつちやつたということは、何をやつちやつたと思われましたか。
  1163. 高原豊秋

    高原証人 何をやつちやつたのかわからないから、何かやつたのと私は聞いたのです。
  1164. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうしたら。
  1165. 高原豊秋

    高原証人 そうしたら上りの電車を出すのをちよつと待つてくれと言いました。
  1166. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすると、上りの電車をとめることがやつちやつたことですか。
  1167. 高原豊秋

    高原証人 あるいは何かわかりませんけれども、私が何かあつたのつて聞いたら、上りの電車を出すのをちよつと待つてくれと言いました。
  1168. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 しかし上りの電車を出すことを待つてくれと言うほどの大きな事故があつたとすれば、やつちやつたと聞いた途中で何をやつちやつたのかと反問するのではありませんか。
  1169. 高原豊秋

    高原証人 だからその場合数回どうしたんだい、どうしたんだいと聞いたのですが、それに答えなかつた
  1170. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 なぜ答えない。
  1171. 高原豊秋

    高原証人 それはわからない。中澤さんの気持ですから。
  1172. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 まるつきりその点は食い違つている。これはまことに重要な証言の食い違いです。
  1173. 高原豊秋

    高原証人 私は決してそれをつくろつたとか、うそを言つたとかいうことは少しもありません。
  1174. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 双方の証人はそういう立場をとりますね。しかしわれわれ常識で考えても、その工手長があなたの信号所までかけつけるということ、そのことがすでにあなたの印象に深く刻まれなかつたのですか。
  1175. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんが来たのは信号所に来て初めて知つたわけです。どんなふうにかけて来たのか、普通に少いて来たのかわからなかつたのです。
  1176. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それでそのとき血相でもかえておつたのかね。
  1177. 高原豊秋

    高原証人 別にそんなようでも……。
  1178. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 平生通りにのこのこ入つて来たのですか。
  1179. 高原豊秋

    高原証人 そうでもないようです。さつさつと入つて来た。ごく狭いところですから、いくらもないところですから、そんなに飛んで歩くほどのところでもないから、ささつと入つて来て、すぐ電話でもかけるというふうにして、やつちやつたと言いながら、すぐ私の前の方へ来て、電話をかけようとした。何かあつたのつて私が聞いたら、上りの電車を出すのはちよつと待つてくれと言いました。
  1180. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 いやその辺になると、双方そのときの記憶とか、あるいはああいう大事件になつたので、双方が自分の立場を考えての証言かもしれませんからそれ以上突いてもしかたがないと思います。
  1181. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 証人に二、三点お伺いしますが、あなたはさつきこういうことを言われましたが、信号所の中で大船かどこかに電話を中澤さんがしたが聞えなかつた。何を言つているかよくわからなかつた。あなたのさつきの話では、信号所は狭いところだ。電話をかけるのに、あなたが信号所の責任者でありながら、その電話で連絡をするのにどんな話なのかわからなかつたのですか。
  1182. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんの電話の内容は……。
  1183. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そんな狭いところでわからないのですか。—あなたさつきは大船かどこかに……。
  1184. 高原豊秋

    高原証人 大船か、電力区かへ、何でもけが人か何かの救護関係の材料の……。
  1185. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 大船へけが人の救護やなんか電話するのは普通ですか。事故かあつたときに。
  1186. 高原豊秋

    高原証人 それは知りません。
  1187. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それを想像するのはどういうわけですか。
  1188. 高原豊秋

    高原証人 それははつきりわからなかつたのだけれども、工手長が自分のつめ所へかけたのだろうと思いました。
  1189. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたは、中澤氏が飛んで来て上りの電車を出すのを待て、着は大丈夫だと言つたというのですが、そのとき信号所から見て上りの電車は駅におりましたか。
  1190. 高原豊秋

    高原証人 おりません。
  1191. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 着は大丈夫だと言つたが、着の電車が来ておるか来ていないか見えましたか。信号所から見えるでしよう。
  1192. 高原豊秋

    高原証人 着ですか。着の電車はまだ入つておりません。
  1193. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 上りの電車を出すのを待てと言つたということですが、桜木町駅には上りの電車はいなかつたのですか。
  1194. 高原豊秋

    高原証人 いなかつた
  1195. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それをふしぎに思わなかつたのですか。
  1196. 高原豊秋

    高原証人 その七一Bという事故なつ電車は八分ないし九分遅れるというホームの方からの通知を受けまして、それがすでに四十分にもなつているし、時間が遅れて来るというと後続電車ということも考えなければなりませんから、下りの電車——上りの電車——そういう場合には後続電車ということを考えなくちやなりません。後続電車は……。
  1197. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そういう後続電車とか何とかということを工手長が言うて来ますか。
  1198. 高原豊秋

    高原証人 工手長は言うて来ません。私のところでそれを考えてたのです。
  1199. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたの方で考えるのはかつてに考えるのですが、そういうことを考えるのはおかしいことです。工手長はそういうこと、電車が七一Bか何が来るかわからないでしよう。
  1200. 高原豊秋

    高原証人 工手長には七一Bとか後続電車とかということは話はしません。
  1201. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 国電の指揮命令と申しますか、組織と申しますか、これは非常に重要な問題だと考えるので、ひとつ観点をかえてお尋ねしますが、信号所の責任者は一体だれかきまつているのですか。
  1202. 高原豊秋

    高原証人 責任者は、その信号に携る者が重大な責任を持つことになる。
  1203. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あそこに信号取扱所とか何とか書いてありますが、あれについて責任者はだれもいないのですか。二人おりまして……。
  1204. 高原豊秋

    高原証人 二人おりまして、当日……。
  1205. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 当日ではない。責任者はいないのですか。
  1206. 高原豊秋

    高原証人 信号所の責任者というのはさまつてないと思います。
  1207. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたは何もそれについて上司から話を聞いたことも、命令を受けたこともないのですか。
  1208. 高原豊秋

    高原証人 ありません。
  1209. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それじやあそこへ行つて、請負か何かで仕事をやつているように、指揮命令も何も、そんなことをいささかも気にとめずにやつて来たのですか。どういう気持であそこで働いておつたのですか。
  1210. 高原豊秋

    高原証人 どういう気持つていいますと……。
  1211. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 その信号所それ自身の責任者、それから上司の指揮命令系統はきまつていない、自分も知らぬとあなたはさつき言つたが、普通駅長から助役さんの場合もあるし、東京駅みたいなところは信号掛とか、そういう人がやつているということを聞きましたが、その指揮命令の系統はきまつていないのですか。
  1212. 高原豊秋

    高原証人 指揮系統はきまつているのです。
  1213. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたはさまつておらぬと言うたが……。
  1214. 高原豊秋

    高原証人 先ほど申し上げました信号所の中の責任者というのは、つまり当日の二人でやつていて、そうしてどつちでも信号に携わつた者信号に対する責任を持つことになつております。
  1215. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 信号に携わつた者はその信号に対して責任を持つでしよう。私が言うのは、信号所の責任者とか、指揮命令については、上司からそういう訓練も何も受けていないかというのです。
  1216. 高原豊秋

    高原証人 大体において当日の信号所の中の責任者は寺山さんでしよう。
  1217. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 でしようといつて、当日はどうかしりませんが、一般について何もそういうことはないのですか。
  1218. 高原豊秋

    高原証人 やはり責任者はあるんでしようけれども、これが責任者だとか何とかいうことは聞きませんでした。
  1219. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたあすこでどういう気持で働いているのですか。国電の運転が自今の信号によつてこういう事故が起きるということを意識しておられたのですか。そういうふうな気持で自分の責任は痛感しておられるのですか。
  1220. 高原豊秋

    高原証人 それは細心の注意をしております。
  1221. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 細心の注意といつて、さつきからのあなたの証言を聞いていると、ちつともそういう心証を得られません。  それじや証人にお尋ねしますが、あなたは職務上の事故で懲戒とか処罰とかを受けたことはありませんか。
  1222. 高原豊秋

    高原証人 受けたことはありません。
  1223. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 事故を起したことはありませんか。
  1224. 高原豊秋

    高原証人 事故らしい事故を起したことはないと思います。
  1225. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 ないと思いますというけれども自分のことですから……。ありませんか。
  1226. 高原豊秋

    高原証人 ないと思います。
  1227. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それからもう一つ。あなたはずいぶん長くこういう仕事をやつておりますが、職務上鉄道職員の熱心さとか職務に対する責任感というものは、最近と戦時中と戦前とでは非常に違いやしませんか。
  1228. 高原豊秋

    高原証人 違うように思います。
  1229. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 どういうふうに違いますか。
  1230. 高原豊秋

    高原証人 戦前は非常にりつぱなような観念を持つていたと思います。それから戦時中ややだれぎみで、戦後はまたよくなつたと思います。
  1231. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 あなたはどういう気持で働いておられますか。普通と同じような気持ですか。
  1232. 高原豊秋

    高原証人 私は誠心誠意働いております。
  1233. 石田一松

    ○石田(一)委員 私は帰りがけたのですが、気になつたからもう一ぺん聞きたいのですが、あなたは中澤工手長がやつちやつたといつて信号所へ来たときに、どうしたんだねと聞いたら、中澤工手長は上りの電車を出すのをちよつと待つてくれ、こう言つたというのですね。
  1234. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1235. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうしますと、その中澤工手長が上りの電車を出すのをちよつと待つてくれと言つたときには、上りの電車はあつたのですか。
  1236. 高原豊秋

    高原証人 ありません。
  1237. 石田一松

    ○石田(一)委員 一番線にもありませんね。
  1238. 高原豊秋

    高原証人  ありません。
  1239. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうだとしますと、あなたは出す電車がないからそれで安全だと思つていましたか。
  1240. 高原豊秋

    高原証人 いやそうじやありません。そう思いません。
  1241. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうだとしますと、中澤工手長は電気の電線架線の方の工事をやる人ですよ。ちよつとさつきも聞きますと、あなたは経歴からいつて運輸系統とかそういう信号系統とかいうことをちよつと勉強していらつしやるので、中澤氏が着はいいと言つたのは、下り線をまつすぐ行つて、ポイントをかえないで一番線の方へ入つて行くのはいいと言つたのでしよう。それをポイントをかえて二番線の方へ入つて行くのはいいということにあなたが考えるということは、これは常識的に考えてもどうも私には割切れない。要するに上りを出すのは待つてくれと言つたつて、上りはないのですから、着はいいと言つたのを、上りはないから着もいい、こう飛躍して考えるのはどうかと思う。だから着はいいというのは、直線コースヘポイントを切りかえて、二番線に曲らないで下り線の着はいいと言つたのを、あなたの考え方では、そのときに判断が間違つたのじやありませんか。
  1242. 高原豊秋

    高原証人 それは現場へ行つてよくお見になつていただけばわかると思います。
  1243. 石田一松

    ○石田(一)委員 そこに図がありますよ。私いま一ぺん聞くのですが、横浜の方からこの下りが桜木町駅へ向つて来るでしよう。上りを出すのは待つてくれというのに、こつちからもこつちからも両方の線へ入れることはいけませんね。それを上りを出すのは待つてくれと言つたのは、こつちからもこつちからも上りを出してはいかぬというのではなく、要するに上りの線、この線を利用することはいけないと工手長は言つたので、あなたが着はいいかと言つたら、工手長が着はいいと言つたのは、工手長は運輸系統じやないから、横浜の方から来て直線に一番線の方に入る着がいいということを言つたのでしよう。そのとき両方に車がないのに上りを出してくれちやいかぬと言つたのは、上り線の方を便つたらいかぬということですよ。それをあなたが考えて、着はいいと言つたからといつて、自動ポイントを切りかえてこつちに入れるということでは、あなたの答が何だかわからなくなつて来たので聞くのですが、ここに上りの電車が入つていたというのならいい。片一方に入つていて着はいいと言つたら、入つてない方にもう一台に入れるというのなら話はわかるが、両方ともからつぽなんだ。工手長の方は入つている電車があるかないか知らないから、上りを出すのを待つてくれと言つた電車が両方ないのだから、どういつでもいいわけです。工手長は架線の方の工事をやる責任者であるから、運転径路のことは詳しくないから、直線の下りに入る着はいいということを……。
  1244. 高原豊秋

    高原証人 私の同僚も下りの電車は入れてもいいんだな、上りの電車は出しちやだめなんだな、そういうふうに……。
  1245. 石田一松

    ○石田(一)委員 そうでしよう。それは下り線に入れるのはいいのですよ。それを下りのポイントを切りかえて、出しちやいかぬという上りの方に入れて行くことは、両方に電車がいないときであるだけに、ちよつと私はあなたの責任上、変だと思うのです。
  1246. 高原豊秋

    高原証人 この信号器からこちらへ入るときにも下りになつておるのですし、それからこちらへ入るのも下りになつておるのです。
  1247. 石田一松

    ○石田(一)委員 間違いなく事実はそうでしようけれども、中澤工手長が上りの電車を出すのは待つてくれと言つたときに、現に上りの出る電車がないのです。あなたはないことをよく知つておるんだから、しかも臨時電車四〇 ○一が出ることになつてつたのがなくなつたりして、この線路はからつぽなんで、そのからつぽの電車を出すのを待つてくれと言つたつて、上りの電車なんかないよと言えばすぐ話は解決することじやないか。上りを出そうと思つても出されはしません、ないのだから……。着はいいのかというようなことは聞かなくてもいいわけなんです、上りを出すにもないんだから……。それなら着はいいかどうか聞く必要はない。
  1248. 高原豊秋

    高原証人 到着の電車は入れてもいいのかと聞いたら、着は大丈夫だと言つた
  1249. 石田一松

    ○石田(一)委員 それは下り線というのは、このことを言うのですよ。
  1250. 高原豊秋

    高原証人 工手長はそう思つたのかどうかしれませんが、私の方とすれば、着とか、下りはいいのかというのはこつちです。
  1251. 石田一松

    ○石田(一)委員 あなたがそう考えたのならしようがない。それでいいけれども、ちよつとおかしい。ありがとうございました。
  1252. 田渕光一

    ○田渕委員 高原さんに伺いますが、二つともホームに入つて来るのが下りというのですね。横浜の方に行くのが上りというのですね。桜木町の方が終点ですから、二つとも入つて来るのが下り、横浜の方へ向いて出るのを上りと、こういうのでしよう。
  1253. 高原豊秋

    高原証人 そうです。桜木町へ入るときには信号機から内側へ入るのは下りになつております。それから出る場合は—出る場合というのは発車する場合ですね、その発車する場合は出発信号機から先へ出て行くのを上りと申します。
  1254. 田渕光一

    ○田渕委員 そこでさつき私はちよつと伺つたのですが、中澤さんがあなたの信号所へ入つて来て言つたやつちやつたという言葉はどのくらいの大きな声でしたか。私はさつきどなつたのかどうかと聞いたのですが、これは相当きつく言つたという……。
  1255. 高原豊秋

    高原証人 やつちやつたというのはそんなに大きくは聞えません。普通とかわりはないと思いました。それはこんなふうです。これが信号所の戸とします、がらつとあけて入つて来て、こんちはとも何とも言うわけじやありません、「やつちやつたい」と、こんなかつこうです。それでちよつとまたいで、電話器でもつかむようなかつこうでいますから、何かあつたのか、と私は聞いたのです。そしたら、上りを出すのをちよつと待つてくれ、と言つて、すぐ電話をかけようとしたから、たたみ込むように、どうしたのだ、到着の電車は入れてもいいのか、いいんだろうな、と言つたら、着は大丈夫だよ、それですぐ……。
  1256. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで高原さんに伺うのですが、どうも着をとめに行つている中澤さんが着は入れても大丈夫だと言うたというのは、あなたの錯覚か、言うたか言わないか、私どもはそれを聞くのじやないのですが、ただ中澤さんがさつきここで、とにかく隠してくれ、知らなかつたと言つてくれ、頼むと言つたということをはつきり言うたのですが、これはうそですか。
  1257. 高原豊秋

    高原証人 全然うそです。絶対うそです。それは断言します。
  1258. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで私伺いますが、これは私どもはどちらがおつしやつたことがほんとうか証拠をとるわけじやないのですが、あなたが大正十年に田端の駅に入られてから約三十年ですね。
  1259. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1260. 田渕光一

    ○田渕委員 その三十年の間に九箇所ほど転々とされておるというのは、何かあなたに過失でもあつたのか、事故でもあつてかわられたのですか。それとも長い間ですからいろいろとかわつて行かれたのですか。この点だけ伺いたいのですが。
  1261. 高原豊秋

    高原証人 そうじやないと思います。それは上司が転勤させるのですからはつきりわかりませんが、私はそうじやないと思います。
  1262. 田渕光一

    ○田渕委員 もう一つ伺います。高原さんに今伺うと、電話をかけておつた、その電話を、私が先ほど中澤さんに言うたのですが、あなたに信号をとめてくれと言うと同時に、さらに私は中澤さんに早く絶縁してくれと言うてほしかつたと思います。そうすればよかつたと思うのですが、そういうような意味で電話をしておつたのじやないのでしようか。
  1263. 高原豊秋

    高原証人 お話の通り、私のところに来たんですが……。
  1264. 田渕光一

    ○田渕委員 電車をとめに行つたのじやないでしようか、それともあなたに信号をとめてくれと言いに行つたのですか、あなたはどつちにとられますか。
  1265. 高原豊秋

    高原証人 私に信号をとめてくれとは言わないのですから、ただいま申し上げたことよりほかに言わなかつたのであります。中澤さんが私のところへ来たのは、自分の詰所にでも電話でもかけるのじやないか、かけるのだろうと私はそう思つただけです。
  1266. 田渕光一

    ○田渕委員 あなたは「やつちやつたい」というのを、線をやつている工手でも落ちて殺したというぐあいにとつたのですか。それとも大きな断線をしというようにとつたのですか。その点はどうですか。その感じですね。
  1267. 高原豊秋

    高原証人 落ちたような、何かけが人でも出たようなふうに思つたのです。
  1268. 田渕光一

    ○田渕委員 「やつちやつたい」というのは。
  1269. 高原豊秋

    高原証人 そうです。何かけが人でも出たようなふうにも見えたんです。
  1270. 田渕光一

    ○田渕委員 着は入れていいかい、着は入れて大丈夫だというふうなことになれば、そこにそういうような感じも出ないわけですね。何かそこに断線というような、ぱつとそのときにお気づきにならなかつたでしようか。
  1271. 高原豊秋

    高原証人 私は、それですから、上りの電車を出すのを待つてくれと言うから、これは何かあつたなと思つた。上りの電車を出すのを待てと言うから、午前中絶縁物の工事をやつていたからそれについて……。大したことじやないんだと思つた
  1272. 田渕光一

    ○田渕委員 それは大したことじやないのだと思つたから、信号の方をただちに切りかえるというような、そのときの頓知といいましようか、機転をきかすといいましようか、ぱつと上りをとめておかないと、下り線のホームに入つて来るのをとめなければならぬというような感じは起きなかつたのですね。
  1273. 高原豊秋

    高原証人 それに私が数回聞いても言わなかつたし、私の同僚も下りの電車は入れてもいいんだろうな、上りの電車は出してはだめなんだなというふうに私には聞えたんです。そうしたらそれは大丈夫だというふうに言つたので……。
  1274. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 高原さんにお聞きしますが、やつちやつたということに対して、さつき私の質問に対しては、私は何も質問しなかつたと言いましたね。今は数回にわたつて聞いたというふうに言いますが、それはどつちなんですか。
  1275. 高原豊秋

    高原証人 さつき聞いたのはどうお聞きになつたか知りませんが……。
  1276. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 さつき聞いたのは、やつちやつたということに対してどういうことを言つたかということをあなたに聞いたんです。何もしなかつたと言つたでしよう。
  1277. 高原豊秋

    高原証人 それはこういう意味なんです。私は何かあつたのかい、何かあつたのかい、と言つたわけです。そうしたら、上りの電車を出すのをちよつと待つてくれと言うから、到着の電車を入れてもいいのか、いいんだな、と言つて、そのほか、どうしたんだい、と聞いたわけです。これが二、三回聞いたわけです。
  1278. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 それに対する返事はなかつたというんですか。
  1279. 高原豊秋

    高原証人 なかつたです。そのことです。
  1280. 田渕光一

    ○田渕委員 着は入れても大丈夫だということは、あなたが問うたから中澤さんが言つたんですね。何かあつたのかい、いやこうだ、ああだといろいろ話があつて着は入れても大丈夫だ、こう中澤さんが言うたと、あなたはさつきおつしやつたが、着は入れても大丈夫だということは、電車が入つて来るということですね。
  1281. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1282. 田渕光一

    ○田渕委員 中澤さんがそれをとめに来たんですから、着は入れていい、大丈夫だというのは……少くともわれわれの常識では、あなたをたずねに行つたことは、とめに行つたことと考えられますがね。
  1283. 高原豊秋

    高原証人 いや私のところに来たのは、とめに来たんじやないかと思います。
  1284. 田渕光一

    ○田渕委員 霊話をかけに行つたのか、それとも……。
  1285. 高原豊秋

    高原証人 電話をかけに来たように私には思えたんです。
  1286. 山口武秀

    ○山口(武)委員 今のお答えで、ほぼ問題はわかりましたが、ちよつと私念のために聞いておきたいのは、あなたは、やつちやつたということがどういうことか知らなかつた、ましてそれが架線が切断されたということだとは全然わからなかつた、こう言うんですね。
  1287. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1288. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それから中澤君がどういう意図をもつてつたかどうかということは別問題として、上りの電車は動かすことは待つてくれ、その言葉で着はいいということになりますと、これは下り上りという意味で着の電車はいい、そうするとそういうことを鉄道の人が普通に判断する場合には、先ほど石田君の話がありましたが、これがまつすぐ入ろうと、横から次のところに入ろうと、いずれにしても着は着ですね。
  1289. 高原豊秋

    高原証人 着は着になりますね。
  1290. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうむずかしく考えなくても、やはり着は着なんでしよう。それ以上に考えようはないでしよう。
  1291. 高原豊秋

    高原証人 一番に着しても着、二番に着しても着です。そのときのダイヤも、二番線に入るようなダイヤになつてつたのです。
  1292. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それ以上に中澤君の言葉は解釈のしようがないのだ。こう言われているのですね。たとえばまつすぐ入るならば着になる、上に入るならば着でないというようにややこしいことは、あなたとしては受取れない。
  1293. 高原豊秋

    高原証人 私の方は、着といえば、そのときは二番に入るのが着だと思つておりました。
  1294. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そのときはそうでしようが、一般の普通の用語でいいますと、それが一番に入つても着、二番に入つても着、どつちにしても着ですね。
  1295. 高原豊秋

    高原証人 一番に入つても、二番に入つても、着は着です。それで同僚がいて念を押した。下りの電車は入れてもいいだろうなあというふうに聞えたのだけれども、やはり横浜の方から桜木町に入るのでしたら上り線といつて、今委員長さんがおつしやつたけれども、その事故電車が入るように入りますね。そつちに入つても下りのわけです。
  1296. 山口武秀

    ○山口(武)委員 こう考えていいでしよう。上りということに対して着ということを言われた。だから出発ということを到着するということにあなたは解釈した。
  1297. 高原豊秋

    高原証人 ……。     〔「着ということをどういうふうに考えているのかということだ」と呼ぶ者あり〕
  1298. 高原豊秋

    高原証人 着ということは到着のことです。(大声)
  1299. 山口武秀

    ○山口(武)委員 上りというものは出発であつて、着は到着だ、その点が明らかになれば、それでよろしい。  それから先ほどあなたは田淵さんの質問の際に、私はよく聞きとれなかつたのですが、電車が大体燃えてしまつてから中澤君が信号所に来て、君らにも責任がかかるかもしれないが云々と言われましたが、君らにも責任がかかるかもしれないが、それから何と言われたのですか。
  1300. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんがいうには、責任がかかるかもしれないから、電車が入つたと同時に架線切つて火を吐いた——火を吐いたのというのは火がついたことでしよう。——というようにしようじやないか、そうすれば、おれの方も旗も何も出すひまがなかつたというふうに言えるというようなことを言つておりました。
  1301. 山口武秀

    ○山口(武)委員 その電車が入つて架線が切れたということは、電車が切つたというように言おうと言つたのですか。
  1302. 高原豊秋

    高原証人 そうでしよう。それは中澤さんが言つているのですから、わからない。
  1303. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そのときの中澤君の顔色、語気というものはどうなんですか。
  1304. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんはやはり真剣なんでしようね。(笑声)
  1305. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そのとき、信号所にほかにはどなたもおりませんでしたか。
  1306. 高原豊秋

    高原証人 私と寺山さんがいたことは門違いありません。
  1307. 山口武秀

    ○山口(武)委員 その寺山さんという人は、中澤君の言われた今の言葉を聞いているでしようか。
  1308. 高原豊秋

    高原証人 聞いていると思います。
  1309. 山口武秀

    ○山口(武)委員 寺山何というのですか。
  1310. 高原豊秋

    高原証人 寺山良平と申します。
  1311. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたは、この電車の火災が起つたときに、信号所から外へ出ましたか。
  1312. 高原豊秋

    高原証人 火災が起つているときもすか。—起つているとき出ました。
  1313. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それからすぐ信号所に帰られたのですか。
  1314. 高原豊秋

    高原証人 外に出たというのは、信号所の前に水が二はいくんでありますから、それを持つて火事の現場にかけて行つたわけです。
  1315. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それからすぐ帰つたのですね。
  1316. 高原豊秋

    高原証人 それからすぐ帰りました。
  1317. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたのそのときの仕事に対する観念からすれば、あなたはその信号所にいなくてはならないということになつておりましたか。信号所を留守にするということが許されるような状況だつたのですか。
  1318. 高原豊秋

    高原証人 信号所を留守にすることが許されないことは、いつでも思つております。
  1319. 山口武秀

    ○山口(武)委員 火事が起つたから現場へ行かれるのもやむを得なかつたでしよう。それからすぐ信号所に帰つた。その間に、駅の方のどこかの事務所か何かに行つたというようなことはありませんか。
  1320. 高原豊秋

    高原証人 行きません。
  1321. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 火事場というか、大惨事を起しているときに、あなたは水を持つて行つたでしよう。その水をどうしたんです。
  1322. 高原豊秋

    高原証人 負傷者や何か見えたから水を持つてつたのですけれども、小さなバケツで二はいぐらいでどうにもならないで……。
  1323. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 その水は何の目的で持つてつたのですか。
  1324. 高原豊秋

    高原証人 火事だから持つてつたのです。
  1325. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 いやしくもあなたは三十年も電車に関係をしておられるのだが、バケツ二はいの水ぐらいで、この電車が燃えている大惨事がとめられると思つたのですか。
  1326. 高原豊秋

    高原証人 火のついた人が窓から落ちるようなふうに見えたから、持つて行つたわけです。
  1327. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 負傷者が燃えているのを消すような意味ですな。
  1328. 高原豊秋

    高原証人 着物に火がついている人が落ちるように見えたから、水を持つて行つたわけです。
  1329. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それからもう一つ聞きますが、その時分はもう阿鼻叫喚の巷でしよう。
  1330. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1331. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 負傷して火までもかぶつた者が出て来るのでしよう。そのときあなたが信号所に帰つたのは何の意味ですか。おそらく普通の人間なら、職務ということも大事ですけれども、しかしながら現実にそこに累々として死骸ができ……。
  1332. 高原豊秋

    高原証人 だから私はそこにバケツを置いて負傷者の火を払つてつたりなんかしてやつた
  1333. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 どれほど働いた。
  1334. 高原豊秋

    高原証人 それはわかりません。
  1335. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 わからぬことはないでしよう、働いた時間ぐらい、大体の想像はつくでしよう。
  1336. 高原豊秋

    高原証人 どのくらいか時間的にわかりませんが、棒切れや何かで払つたように思つたのです。
  1337. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 棒切れで払つた
  1338. 高原豊秋

    高原証人 水も何もないからです。道具は何もないんですから……。
  1339. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それではその信号所へ帰られたのは、どういう気持で帰られました。
  1340. 高原豊秋

    高原証人 もう信号所へ帰つた時分には、たいてい負傷者も何もいない、そこのところは記憶はなくなつていました。
  1341. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 しかしその惨状を見て、一体信号所へのこのこと帰られるものでしようか。私らちよつと小さな火事を見ても、火が消えてポンプが最後のサイレンを鳴らすまでぐらいは、現場へかけつけた以上はわれわれはおる。それをあなたは行つてまだ死骸も出ない、ぼうぼうと燃えておるのでしよう、そうして窓口から二、三飛び出した者を、棒切れで火を払つて、水をかけて、それから信号所へ帰るというそれがどうもわからない。どうでしよう。
  1342. 高原豊秋

    高原証人 そのときの気持は忘れました。
  1343. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 もう一つお伺いしますが、あなたはその三十何年間の鉄道職員としての生活中、何か組合活動に参加したことはありますか。
  1344. 高原豊秋

    高原証人 ありません。
  1345. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 しかし組合には入つておられるでしよう。
  1346. 高原豊秋

    高原証人 組合には入つております。
  1347. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 どんな地位ですか。
  1348. 高原豊秋

    高原証人 私は普通の組合員です。
  1349. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 普通の組合員ですか、別に幹部といつたようなものではありませんか。
  1350. 高原豊秋

    高原証人 ありません。
  1351. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 各駅に勤務されてもですね。
  1352. 高原豊秋

    高原証人 ありません。
  1353. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 これもまあ大したことではないが、何か特定の政党でも支持しておられますか。
  1354. 高原豊秋

    高原証人 支持しておりません。
  1355. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 それからもう一つ、あなたの今までの陳述を聞きますと、いかにも責任のなすり合いをしておるような印象を与えてしかたがない。これはどうです。現在の心境ですよ、これほど百数十名の死傷者を出したという、国鉄未曽有の大惨事なんだ。この際単に自分のことのみを考えないで、もう少し何か大所高所から、自分のあのときの行動はこう間違つてつたとか、またこうすべきだつたとかいうことを、今心静かに考えておりませんか。
  1356. 高原豊秋

    高原証人 責任のなすり合いなんというのは少しもいたしておりません。責任を人にかぶせようとか、うそを言おうとか、そういう気持はありません。
  1357. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そういう気持がないとすれば、さいぜんの中澤証人とあなたとの証言の食い違いというものは、たいへんなものなんだ。私は別に今ここで犯罪をどうこうという意味じやないですけれども、しかしながら非常な食い違いをここに発見したので、委員長として何か適当な御処置をお考え願いた。
  1358. 柳澤義男

    ○柳澤委員 簡単にお尋ねします。先ほど申された中で、この事故が起きてから、中澤証人はあなたに、何かあつたときに君らにも責任がかかるかもしれないから、電車が入つたと同時に架線切つて火を吐いたことにしよう、そういうような申入れを受けたと言いましたね。
  1359. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1360. 柳澤義男

    ○柳澤委員 それに対してあなたは一体何とお答えになつたか。
  1361. 高原豊秋

    高原証人 私は何とも答えません。
  1362. 柳澤義男

    ○柳澤委員 何とも答えない。不審に思いませんか。そういうでたらめなことの申入れがあつて——。何とも答えないと申しましても、何か態度には現わしませんでしたか。否定をしたか、肯定をしたか。
  1363. 高原豊秋

    高原証人 私はそれに対しては何とも言いません。それはあそこの信号所の私より古参の寺山さんがすぐそばにいたしするから、それに対して別にとやかく言うことも、私は桜木町駅では寺山さんよりもずつと新しいのだし、ですからもう……。
  1364. 柳澤義男

    ○柳澤委員 そんなことはどうでもいい。いずれにしても何とも答えなかつたというのですね。寺山という人がそばにいたし、それが先輩であるしするから……。そうすると寺山さんは何と答えられたですか。
  1365. 高原豊秋

    高原証人 寺山さんが何と言つたかどうか気がつかなかつたのです。
  1366. 柳澤義男

    ○柳澤委員 証人は、先ほど二人いるところで、電車架線を切つたようなことを言われたという文句は、先ほど来数回ほかの委員の質問に対してはつきりと答えておる。それを聞いておつて、あなたは先輩がいるから答えなかつたという意味合いなら、その先輩が何と答えたかぐらい——これは最も重大な問題でしよう、責任を回避するかどうか大きな問題でしよう。
  1367. 高原豊秋

    高原証人 あそこに電話が三本ありまして、その当時しきりに電話が鳴つていまして、私は電話にかかつたので、あとは……。
  1368. 柳澤義男

    ○柳澤委員 かりに電話にかかつて、あなたはその話をそのときに直接聞かなかつたとおつしやろうというのですね。そうしたところで、これほど重大な、自分が当然刑事責任を負うかどうかのせとぎわになつておる大きな問題を、あとにしたところで、寺山が何と答えたかということを聞かなかつたのですか。
  1369. 高原豊秋

    高原証人 工手長が私のところに来て、到着の電車を入れてもいいのか、入れてもいいのだな、着は大丈夫だというので……。
  1370. 柳澤義男

    ○柳澤委員 そんなことは今の話ではない。お聞きすることに直截簡明に答えてもらいたい。あなたは電話にかかつていたから、寺山と中澤の対話が聞けなかつたという意味を言われたのですが、これはしかし重大な問題なんで、あなたは宣誓をしているのですよ。でたらめな返事をされては困るのです。いずれにしても人がたくさんいることなんだから、あとでわかることですから、明確に答えていただきたい。寺山からあとで聞かなかつたかどうか、その話の回答を何としたかということは、あなた自身は回答しない意味合いのことを今言われたが、寺山はしからば何と答えたか知らなかつたのですか。
  1371. 高原豊秋

    高原証人 それは知りません。
  1372. 柳澤義男

    ○柳澤委員 全然聞いてもみなかつたか。
  1373. 高原豊秋

    高原証人 全然聞いてみません。
  1374. 柳澤義男

    ○柳澤委員 気がかりにもならなかつたか。
  1375. 高原豊秋

    高原証人 あとで工手長はこんなことを言つたのだということを—こういうことを言つたようにも思いますけれども……。
  1376. 柳澤義男

    ○柳澤委員 こういうことというのはどういうことですか。
  1377. 高原豊秋

    高原証人 つまり今言つたような何ですね。
  1378. 柳澤義男

    ○柳澤委員 今言つたというのはどういうことですか。
  1379. 高原豊秋

    高原証人 電車が入つたとたんに火がついた—。
  1380. 柳澤義男

    ○柳澤委員 しかしそのことは、あなたは先ほど来数名の委員の質問に対してはつきりと、自分と寺山のいる前で言われたということを申し述べられておるではないか。今それをくつがえされることを聞いているのではない、私はその答えを聞いているのです。ところが中澤氏の証言では、あべこべに上り線に入れては困ると言つておいたのに、どうして入れたといつて、いわばあなたに抗議を申し込んだということを申しておる。
  1381. 高原豊秋

    高原証人 いや、そういうことは絶対ありません。
  1382. 柳澤義男

    ○柳澤委員 ところがそれに対してあなたは、知らなかつたことにしてくれ、頼む頼むと何べんも言つたと言つているのだ、そういう重大なものに対して、あなたはそうでない、先ほど来言われたようなことを申し込まれたということになれば、これに対して何か返事をするということは、当然考えられることでしよう。全然自分も返事をしなかつたし、寺山が何て言つたかも知らなかつたし、あとでも聞いてみなかつたということを、宣誓した証人として言えますか。全然間違いないというのならそれでいいですけれども、何か合づちを打つて返事をしたのではないですか。
  1383. 高原豊秋

    高原証人 寺山さんは助役さんの方へ話したと思います。そのことは。
  1384. 柳澤義男

    ○柳澤委員 そのことというのはどういう……。何か返事をしたでしよう。
  1385. 高原豊秋

    高原証人 何か聞くかどうかして、工手長がそういうことを言つて、寺山さんに何か言つて、そのことを助役さんの方へ……。
  1386. 柳澤義男

    ○柳澤委員 そのことはわかつているが、その返事について、全然なかつたかどうか、態度が明確でないから聞いておるのです。全然ないというならないでいいです。
  1387. 高原豊秋

    高原証人 私は工手長には何とも言わない。
  1388. 柳澤義男

    ○柳澤委員 何とも言わないということは、あなたはさつきから言つているが、寺山に何も聞いてみなかつたかどうか、そうして寺山が何にも言わなかつたかということを聞いている。そうしておこうとかあるいは何とかかんとか、そんなばかなことはできないとか、何か言つたのではないか。
  1389. 高原豊秋

    高原証人 私は手山さんに何とも言わなかつたと思います。
  1390. 柳澤義男

    ○柳澤委員 あなたが何とも言わないこと自体も無責任だな。こういうインチキな相談を持ちかけられて、おれはそんなことはできない、いやおれはたしかにこうだということを何とも言わなかつたですか。
  1391. 高原豊秋

    高原証人 私は何にも言わなかつたと思います。
  1392. 柳澤義男

    ○柳澤委員 思いますじやない、あなたのはつきり知つている事実を聞きたいのだけれども、どうしてもその点が明確にされないならば、されないでもしかたがない、もう一点お尋ねしますが、ほかの方も聞かれたことでもありますが、工手長がわざわざ言いに来たということは、確かなんですね。初めにもどりますが、あそこは高くなつておるでしよう、段が。はしごか何かで上つて行くのですか。平らなんですか。
  1393. 高原豊秋

    高原証人 はしごで上るほど高くありません。三、四段の階段になつております。
  1394. 柳澤義男

    ○柳澤委員 わざわざ上つて来たことは間違いないんだね。あなたが見たところ。
  1395. 高原豊秋

    高原証人 そうでしよう。
  1396. 柳澤義男

    ○柳澤委員 そうすると、平素名前も職も知らなかつた——今では知つておるけれども、工手長の名前も、工手長であるかということも知らなかつたということを、先ほど申し述べられたですね。
  1397. 高原豊秋

    高原証人 知らなかつたです。
  1398. 柳澤義男

    ○柳澤委員 あなたが名も職も知らないような人が、わざわざ重要な任務についておる、そういうところへ階段を上つてまでやつて来たということについては、あなたの方でもやつちやつたという言葉だけでも、相当な事故だということがぴんと頭にひらめきが来なかつたかね。
  1399. 高原豊秋

    高原証人 それですから何かあつたのかと言つて……。
  1400. 柳澤義男

    ○柳澤委員 そんな、何かあつたのではないかというような程度ではない。これはたいへんだと——少くともポイントーつでもつて、人命をそこなうかもしれないところの、重要な任務にあるということだけは、いつも認識していなければならぬわけですね。そういう立場にあれば、わざわざ来たこともない工手長が飛び込んで来たということに対して、しかもわざわざ階段を上つてつて来た、たとい三、四段にしたところで。相当な事故だということがぴんと来ないというのは、人命をあずかつておる職場に非常に不忠実じやないかね。そういう立場にあれば、すぐにそういうことに感づかなければならぬはずですが、感づかなかつたかね。
  1401. 高原豊秋

    高原証人 それですから、私は何かあつたのかと言つて尋ねたのです。
  1402. 柳澤義男

    ○柳澤委員 何かというのは、ずいぶん簡単な話ですね。
  1403. 高原豊秋

    高原証人 向うで何も言わなかつたけれども、何かあつたかと言つたら、やつちやつたというだけで、あとは電話がかかつて……。
  1404. 柳澤義男

    ○柳澤委員 先ほど何かあつたということについてほかの方の質問に対して、けが人でもできたかということを考えたということを言つたでしよう。それは速記録にある。私も写してある。けが人といつて、人命を損傷するというようなけが人ができたぐらいなことは何でもないことですか。
  1405. 高原豊秋

    高原証人 話はもどりますが、何かあつたのかと言つたときに、それはけが人ができたとも何とも——何かあつたのだなということは、工手長に問うべく何かあつたのかと……。
  1406. 柳澤義男

    ○柳澤委員 それに対して先ほどは、けが人でもできたのではないかということを考えたと答えられている。それは取消しますか、そんな重大に考えなかつたということですか。  私はここで何も刑事責任の問題を追究しようというのではないのですが、今あなたの証言を聞いていると、工手長もやつちやつたと言つて、そこであなたがまねたように、きわめて漫然たる態度をとつているようであつて、しかもあなたの言うのでは、普通の態度だつた、のようだつたとも言われておる。あなたの答えを聞いても、多数の人命をあずかる人の、こういう重大な事故に対する解答のようなものは一つもつかめないのですよ。そこでしかもあなた方の多くは、あるいは設備が悪いとか何とかいう証言を、先ほど来ほかの人も繰返しているのです。ところがそれどころの話じやないですよ、最近における鉄道職員の中には、設備におかまいなしに荷物をひん抜いておるのさえたくさんある。現に私は多数の方について弁護をしておる事実がある。そうしてしかもその責任者をとらえて証人に呼んでみると、かつて鉄道というものは、くぎ一本でも私するということのない、非常に厳格な気持でもつてつてつた。今日こういう事実があるということは、まことに遺憾だと言うてどなたでも証言していますよ、これはひとり設備の問題じやありはしません。人間の精神の問題ですよ、われわれが国会でこういうものを取上げて、こうして手間ひまをかけているというのも、こういうような多数の人の従業するところの、しかも尊い人命を取扱つて、輸送の重大任務にある者の精神が、今の証言でみると、あなたの証言自体も少しの緊張感も与えておらぬ、人がまつ赤になつて焼け死ぬのに、ぶらぶら二はいバケツなんかさげて行かれるものではない、それからまた中澤証人つて、やつちやつた、なんと言つてかけ上つて行つておるどころではないでしよう、八方手配する、しかも相当の人数がいるのであるから、それが送電をとめ、一方には信号手配するというような、あらゆる手を打つているという事実がないのです。こうしたことに対して、われわれは今あなたの言うことに対しても追究のメスを加えているの託すよ、ひとり設備ばかりではない、設備よりもむしろこの事件のすべての人が、人命の大切なものをあずかつている輸送任務の重大さを認識している者が、一人もないと言つてよろしいと私どもは考えるのであるから、この事件を取上げおる。ここにわれわれがこれを取上げる重大さがある。今後こういうようなことでは、とうてい国民は安心して汽車に乗れない、電車にも乗れない、それが問題なんです。小さな一つの、ささたるあなたの刑事事件—あなたをひつくくるというような問題ではない。そういう点から行くならば、もう少し率直に、なすり合いをしないと言うけれども、現実になすり合いなんです。まるつきり責任を負うたところの答弁ではない、どなたに聞いても。こに対してわれわれはこんな反省のないことではまことに困る。これだけ重大な問題に対しては、国鉄の職員は、ことに直接衝に当つた者としては、もう穴があつたら入りたいくらいの、いつでも腹が切りたいくらいの敬慶な気持というものを国民の前に表わしてもらつて、そうして答弁も率直簡明に責任を負うて、国鉄の再建に向つて努力してもらいたいのが、この委員会の終局の目的なんですよ。そういう点からいつて、今まで述べられたことは、まつたく遺憾にたえない。私はこの点だけを指摘してあなたの答弁に対していくら追究しても答えられないので、きわめて重大な点がありますけれども、これ以上は申し上げないことにします。
  1407. 横田甚太郎

    ○横田委員 上り、下り、着こういうことをはつきりしておきたいのですが、上りというのは上り線のレールの最後まで、下り線というのは、下り線のレールの最後までを言うのではないのですか。着というのは、上り線に着、下り線に着というのが正確な用語じやないのでしようか。私はそう考えるのですが、その場合に着ということを上り、下りという以外に使つて仕事をしているということが、こういうような混乱の原因になるのではないのですか、その点はどうです。
  1408. 高原豊秋

    高原証人 その辺ははつきりわかりませんが、下りというのも着というのも、下りというのは桜木町へ進入する場合は一番に入つても下り、それから場内信号機から内側へ入つても下り……。
  1409. 横田甚太郎

    ○横田委員 桜木町信号の一切はあなたが責任持つてつておられるのでしよう。
  1410. 高原豊秋

    高原証人 そうでありません。
  1411. 横田甚太郎

    ○横田委員 あなたのところの電車はどこに着くかわからぬのですか。下り線に着けろ、上り線につけろ、それが着なのでしよう。われわれはしろうとなのですから、乗る場合に上り線の何番ホームへ行つてくれ、下り線の何番ホームへ行つてくれ、これを見て行くのです。その何番ホームになるというこれは、すなわちあなたのところに連絡して行くのでしよう。だから私が非常にふしぎに思いますのは、中澤なる男に着はよろしいかと言うて聞くこと、これ自体がすでに変だと思うのです。こんなことはあなたが判断すべきであつて、ここにもこういうことが出ていますね、これは週刊朝日ですが、ここには、小西運輸総局長という人が国鉄におりますね。この人の言によりますと、架線が切れたとき、すぐ赤旗でも出せばよかつた。赤旗は自由党の人はきらいなのですが、この場合は必要なのです。どういうわけで赤旗をこの工事の場合に持つて行かなかつたのですか、私の知つておる限りにおいては、青い信号が出ている。そこへ電車が入つて来る場合がたくさんあります。それで事故が起つた場合に赤旗を出すと、汽車がとまり、電車がとまるのです。そうしたら、あなたと中澤君の関係は何も言葉に基いて話するのではなくて、こういうような事故が起つた場合にどうして赤旗を出さないのですか。現に運輸総局長自体が赤旗を持つておれば事故は起らぬと言つておるじやないか。これと、着、上り、下り、この言葉が非常にあいまいなので、国鉄の職員が仕事をされる点において非常に私はふに落ちないところがあるのです。しかもこれを読んでみますと、こういうことを言うております。あなたの労働組合ですね、国鉄の労働組合の齋藤鐵郎君はこう言つております。「この際言つておきたいのは、乗客の皆さんも科学をもつと身につけておく必要があるということだ。」科学を身につけて電車に乗るなんていう、そんなことで、なんでわれわれ電車に乗れますか。こういうようなことを考えますと、この三つのことはみんな一つなのです。だから私があなたに聞きたいのは、上り線に着下り線に着というのが正確な言葉ではないかということと、それから同時に中澤君とあなたとの関係は、中澤君が赤旗を出せばあなたの信号を赤にしたらいいのであつて中澤君が言葉で言うて来たときに—中澤君というものにあなたが面識があるのかないのかさえ疑わしい。面識がないのにその言葉を聞いてするんだつたら、帝銀事件と何らかわりはないことになるんですよ。あなたは何を考えてぽかんとしているのか、証人に来ておるのであなたはぽかんとしているのだと思つていたけれども、おそらく信号しているときにもそうして、そんなような態度で、いつもぽかんとしておるのじやないのですか。その点あなたの答弁をはつきり聞きたいと思います。
  1412. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 答えませんか。質問の要旨がわかりませんか。
  1413. 高原豊秋

    高原証人 質問の要旨が、そう長々と言われたんではわからなくなつてしまう。
  1414. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そうしたら横田君簡単に一つ一つ言つてください。
  1415. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは一つ一つ言います。上り線は上りのレール、この線が切れるここまでが上り線ですね。下り線は下りのレールが切れるまでの、最後から最後までが下り線ですね。
  1416. 高原豊秋

    高原証人 上り線と言つたつてもどうも……。
  1417. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 そうであるかないとか答えればいいのです。今の質問に対して……。
  1418. 高原豊秋

    高原証人 上り線というのは東京の方に向いて行くのが上り線なのです。それがたまたま場内信号機がありますが、場内信号機の外方……。
  1419. 横田甚太郎

    ○横田委員 ちよつと待つてください。そうすると、ここに掲げてある図に線が一本引いてありますね。下の方が上りですか、下りですか。
  1420. 高原豊秋

    高原証人 上の方が上り線になつております。
  1421. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうすると上の一番端は上りですか、下りですか。
  1422. 高原豊秋

    高原証人 こちらの方ですか。あの桜木町と書いてある下の方ですか。
  1423. 横田甚太郎

    ○横田委員 これが上り線ですね。下り線ですか。
  1424. 高原豊秋

    高原証人 今さしているその辺は上り線とは言いません。
  1425. 横田甚太郎

    ○横田委員 これは下り線ですか。
  1426. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1427. 横田甚太郎

    ○横田委員 ここからこつちは線がまた違うのですか。
  1428. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1429. 横田甚太郎

    ○横田委員 これが上り線でこれが下り線ですか。
  1430. 高原豊秋

    高原証人 そうです。
  1431. 横田甚太郎

    ○横田委員 それじやこつちはどうなるのです。あなたは電車がここから入るときは下りで、ここから出て行くときは上りと言うのでしよう。私の言うのは、ここからここまでが上り線でしようというのです。
  1432. 高原豊秋

    高原証人 その辺は上りとは言わないのです。電車が入つて来る場合は……。
  1433. 横田甚太郎

    ○横田委員 出る場合はどうなんです。
  1434. 高原豊秋

    高原証人 出る場合も、出発信号機の外方に向つて、出発信号機から越えて横浜の方に向いて行かなければ上りとは言わない。
  1435. 横田甚太郎

    ○横田委員 それはあなたは電車のことを言つておる。こつちへ行く電車は上りだという。そうではなくて、私はレールのことを言つておる。レールは動かないのですよ。はつきり言いなさい。そんなことだつたら、あなたまた電車燃やしてしまうぜ。これが重大問題になつて来るんだ。あなたの言うようにかつて電車をつけるというのだつたらどうなるのですか。
  1436. 高原豊秋

    高原証人 ……。
  1437. 横田甚太郎

    ○横田委員 それからこの惨事の責任はどこにあるかということです。こういうことを言つたら、また国鉄にあると言うのでしようが、あなたはこの事件に対して責任があると思うか、ないと思うか。もしあるとすれば、一体どういうような責任があると思つておられるか、これを聞きたい。
  1438. 高原豊秋

    高原証人 それはわかりません。
  1439. 横田甚太郎

    ○横田委員 責任ないのですね。あるのですか。電車はかつてに燃えたつて、あなたが火をつけたんじやないからわからないのですか、わからなかつたらいいです。  次にやつちやつたということは、国鉄職員の中ではどういうようなときに使つておるのですか。これはしよつちゆうなのですか。そのとき初めて使つたのですか。そういうことは何回も聞きましたか。
  1440. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんがどういう気持かわからないです。
  1441. 横田甚太郎

    ○横田委員 中澤さんのことを言つておるのではないのです。あなたが聞いたのは初めてか、何回もこういうことを聞くかということです。
  1442. 高原豊秋

    高原証人 こういうことを、何回も……。
  1443. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうしますと、国鉄の事故とか惨事とかいうようなもののうちで、今度の事故の程度は、一体どのくらいのものだとあなたは思つておられますか。
  1444. 高原豊秋

    高原証人 相当大きかつたと思います。
  1445. 横田甚太郎

    ○横田委員 そうでしよう。それに対しては責任はないのですね。
  1446. 高原豊秋

    高原証人 そいつはわかりません。
  1447. 横田甚太郎

    ○横田委員 いいです。
  1448. 田渕光一

    ○田渕委員 高原さんに伺います。中澤さんとの間に非常な食い違いがあることは、これはよろしいのですが、やはり検事局であなた方が、調べられたときに、対質尋問と言いましようか、あなたと先ほどの工手長と会つたようなことはございますか。
  1449. 高原豊秋

    高原証人 ありません。
  1450. 田渕光一

    ○田渕委員 両方とも陳述が違うから、どつちがほんとうだというようなことでやつたことはございませんか。
  1451. 高原豊秋

    高原証人 ありません。
  1452. 田渕光一

    ○田渕委員 私はどちらとも、神様でないからわかりませんので、判断は自由でありますから言いませんが、少くとも先ほど柳澤委員から聞いた通り——あとでもう一人寺山さんですか、あなたと一緒におられましたですね。寺山さんから、中澤というやつはひどいことを言うやつだよ、電車が入つて、そうして架線が切れて火がついたなんということを言うて来た、ということを聞いて、けしからぬことを言うやつだというような感じは受けませんでしたか。
  1453. 高原豊秋

    高原証人 そのときの気持は、今記憶はありません。
  1454. 田渕光一

    ○田渕委員 あれほどの大きな事故を起したのですから、結局伺うのはこれなんです。あなたの責任とか、だれの責任とかいうのではないが、中澤さんが、電車が入つて来て火をふいたというようにしてくれろ、こういうふうにしようじやないかということを寺山さんから聞いたとき、中澤というやつはひどいことを言うやつだ、自分らでかつて架線切つておいて、そうして火がふいたというように言おうじやないかとは、妙なことを言うやつだということを思いませんでしたか。
  1455. 高原豊秋

    高原証人 そう思いました。
  1456. 田渕光一

    ○田渕委員 あなたにひどいことを言うやつだなということを寺山さんから話はありましたか。
  1457. 高原豊秋

    高原証人 私には別になかつたと思います。
  1458. 田渕光一

    ○田渕委員 ただあなたはひどいことを言うやつだなとお思いになつた。そこで今あなたの心境を伺うのですが、あなたが頼む頼む、知らなかつたことにしてくれ、頼む頼むと言うたと先ほど帰つた中澤さんが言つている。
  1459. 高原豊秋

    高原証人 私は絶対に言いません。
  1460. 田渕光一

    ○田渕委員 これはあなたは何と思いますか。
  1461. 高原豊秋

    高原証人 今中澤さんが言つたということを承つて、私がどういう気持かということですか。
  1462. 田渕光一

    ○田渕委員 そうです。
  1463. 高原豊秋

    高原証人 ずいぶんひどい野郎だと思います。
  1464. 田渕光一

    ○田渕委員 あなたはこれに対して、中澤さんが入つて来たときに、自分が気をきかして、あのときにぱあつと赤信号でも出してやれば、あんな惨状を起さなかつたであろうというようなことをあとで思いませんか。
  1465. 高原豊秋

    高原証人 中澤さんがあのとき来て、しつかりした通告をしてくれれば、どういう手でも打つたと思います。当然打たなければならぬと思います。
  1466. 田渕光一

    ○田渕委員 そこで中澤さんがはつきり大きな声でぎゆつと言つてくれればよかつたが……。
  1467. 高原豊秋

    高原証人 いや、架線が切れてどこどこが危険だと言えば……。
  1468. 田渕光一

    ○田渕委員 長年の経験上……。
  1469. 高原豊秋

    高原証人 わかるのです。
  1470. 田渕光一

    ○田渕委員 これは電車を入れてはいかぬとわかる。そのときに架線が切れた、何らか自分注意して折返して聞いてやるという点でも、自分に親切が足りなかつたということも——これは刑事問題でも何でもない。あなたの責任感を疑いたいから聞くのですが、自分もそのとき責任感が足りなかつたというような感じは起りませんか。
  1471. 高原豊秋

    高原証人 それですから、私は何かあつたのかということを聞いたんです。
  1472. 田渕光一

    ○田渕委員 それはわかつている。そんなことはここで言わない。検事廷じやないのですから。そのときもう一つ聞いておいてやれば、あれだけの惨事は起らなかつたのに、というように今考えておられませんか。
  1473. 高原豊秋

    高原証人 今はもう少し強くあれこれ言えばよかつたと考えますが、そのときには考えが……。
  1474. 田渕光一

    ○田渕委員 そこであなたの責任をどうこう言うんじやありませんが、先ほど中澤証人が非常に相済まぬことをしたというように言うておられますが、ともあれ災難と言おうか因縁と言おうか、その時間に寺山がおればこれはどでもなかつたろうに、寺山が十二時までおつて、あなたが一時までおつた、その間に大きな事故にぶつかつた。そこで自分はやはりそのときにおつた責任者として、これだけの惨事を起して、犠牲者に相済まぬというような感情はおありになりますか。
  1475. 高原豊秋

    高原証人 気の毒なことをしたと思います。
  1476. 田渕光一

    ○田渕委員 気の毒だと思うが、相済まぬというような感じはおありになりませんか。
  1477. 高原豊秋

    高原証人 気の毒だと思います。
  1478. 田渕光一

    ○田渕委員 気の毒だというだけで、三十年も奉公し勤めさせてもらつたことに対して、自分が相済まぬというような—気の毒だというような同情よりも、そこで信号でも出しておけば、あんな惨事は起らなかつた、相済まぬというような気におなりになりませんか。
  1479. 高原豊秋

    高原証人 それは済みませんと思います。
  1480. 田渕光一

    ○田渕委員 けつこうです。
  1481. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 申し上げますが、先ほどの中澤証人と今の高原証人との証言の食い違いにつきましては、さらに同じところにおられたという春山良平君の喚問も必要と思われますので、そういつた取扱いにつきましては、次の理事会において協議の上決定したいと存じます。
  1482. 田渕光一

    ○田渕委員 それに関連して……。そこで私は高原証人に聞いたんですが、これを調べた検察庁が、これだけの食い違いの証言に対して対質尋問をやつておりません。そこでこの次の証人を呼ぶか呼ばぬかの問題のときに、さらに両証人を呼んでここでやるかどうかということも理事会でお諮り願いたい。
  1483. 塚原俊郎

    ○塚原委員長代理 明日の証人には検事局の方が相当おられますから、その際ついていただきたいと思います。ほかに御質問がなければ、高原証人に対する尋問はこれで終ります。長時間にわたり御苦労さまでした。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時四十七分散会