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1951-03-28 第10回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十八日(水曜日)     午前十一時二十六分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 島田 末信君    理事 塚原 俊郎君 理事 山口 武秀君       大泉 寛三君    岡延右エ門君       鍛冶 良作君    志田 義信君       中川 俊思君    福田 喜東君       八木 一郎君    大森 玉木君       藤田 義光君    坂本 泰良君       加藤  充君  委員外出席者         証     人         (海上保安庁警         備救難部長)  松野 清秀君         証     人         (国家地方警察         本部警備部長) 柏村 信雄君     ————————————— 本日の会議に付した事件  密出入国に関する治安行政機関監察の件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 会議を開きます。密出入国に関する治安行政機関監察の件について、さつそく証人より証言を求むることにいたします。松野清秀さんですね。
  3. 松野清秀

    松野証人 そうです。
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまから密出入国に関する治安行政機関監察の件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に、証人に一言申し上げますが、昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者、またはこれらの職にあつた者がその職務知つた事実であつて黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  松野さん宣誓を願います。     〔証人松野清秀君朗読〕   宣誓書  良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、反何事もつけ加えないことを誓います。
  5. 篠田弘作

    篠田委員長 では宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 それではこれから証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際はその都度委員長許可を得てなされるようお願いいたします。なおこちらから質問をしているときはおかけになつていてよろしいですが、お答えの際は御起立を願います。  証人はただいま海上保安庁でどういう仕事をしておられますか。
  7. 松野清秀

    松野証人 警備救難部長をしております。
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 それはどういう仕事ですか。
  9. 松野清秀

    松野証人 警備救難部所掌事務を指揮監督いたしておりますが、警備救難部所掌事務といたしましては、海上保安庁法の第二條に定められておりまする海上保安庁所管事務のうち、主として海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕海難救助等であります。
  10. 篠田弘作

    篠田委員長 海上保安庁の組織と、現在どういう職員を採用しておられるかということを、簡単でけつこうですから説明してください。
  11. 松野清秀

    松野証人 まず海上保安庁機構について申し上げますると、中央機構は現在総務部船舶技術部警備救難部海事検査部水路部及び燈台部の六部でありまして、そのほかに付属機関として航路啓開所海上保安学校海上保安訓練所がございます。なお全国を九つの管区にわけまして、各管区ごと管区海上保安本部を置いております。この管区海上保安本部の所在地は、小樽、塩釜、横浜、名古屋、神戸、広島、門司、舞鶴及び新潟であります。さらにその下部機関といたしまして大阪に海上保安監部さらに小樽ほか三十八箇所に海上保安部があります。さらにまたそのほかに三十四箇所の警備救難所船舶検査事務所が四箇所、水路観測所が八箇所ございます。なお現在海上保安庁行政機関職員定員法によります定員は一万九百四十五名でありますが、本年三月一日の現在員は九千六百五十三名だと記憶しております。なおその職員のうち警備救難業務関係のありまする職員は約三千七百名でありまするが、この大部分は主として商船学校出身商船経験者が占めております。
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 海軍はおりませんか。
  13. 松野清秀

    松野証人 海軍はおりますが、これは旧海軍の艦船の保管に関することと、機雷の掃海に関する方面に若干旧海軍の軍人が入つております。
  14. 篠田弘作

    篠田委員長 警察官はどうですか。
  15. 松野清秀

    松野証人 警察官出身者もむろんおりますが、これはごく小数だと思つております。
  16. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると仕事の面におきまして、そういう海軍とか、商船学校とか、警察官上りという者が、派閥をつくつて仕事能率をはばむというようなことはないわけですか。
  17. 松野清秀

    松野証人 そういうことはないと思つております。
  18. 篠田弘作

    篠田委員長 不正出入国及び密貿易の取締に関する海上保安庁権限並びに業務について述べてもらいたい。それで海上保安庁国警または自治警察との間に権限が重複したりあるいはまた事務的に重なつたりして、そのために摩擦が起きるとか能率がはばまれるということがあるかないかという点について説明してもらいたい。
  19. 松野清秀

    松野証人 先般出入国管理庁が発足いたしまして以来、不法出入国者逮捕海上保安庁及び警察機関が担当しておるのでありまして、海上保安官不法出入国者逮捕いたしました際には、その逮捕した保安官が立件送致するのを建前といたしておりますが、いろいろの事情によりまして、場合によつて警察に引継ぐ、あるいは入国警備官に引継ぐことができることにいたしております。なお不法入国者強制送還については、海上保安庁は被送還者護送、船内における警備を担当いたしておる次第であります。なお余力があります場合には、収容所から護送船までの護送、これは入国警備官がやるのが建前でありますが、保安官がやる場合には、入国警備官に協力いたします。概略を申し上げますと、今申し上げましたような次第であります。
  20. 篠田弘作

    篠田委員長 海上保安庁海難救助に忙殺されて、不正出入国取締りに手がまわらないというようなことはありませんか。
  21. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁といたしましては、特に遭難船救助重点を匿いて、不法出入国取締りの点をおろそかにしておるというような事実はないのであります。ただ御承知のように現在海上保安庁が持つております巡視船の勢力が非常に劣勢でありまして、あらゆる海難救助その他取締りの面におきまして十分な業務を行うだけの船艇を持つていないがために、たとえば人命救助というような事件密航密輸というような事件とが同時に起つて、船が一隻よりないというような際には、まず人命救助に行けということを指示いたしておる程度でありまして、別段不法出入国取締りを軽んじておるというような事実は絶対にないと思います。
  22. 篠田弘作

    篠田委員長 手のまわらなかつたという事実はありますか。
  23. 松野清秀

    松野証人 そういう事実はあります。
  24. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは海上保安庁の今までに検挙した密出入国者の数であるとか、その他の状況について一応述べてください。
  25. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁といたしましては、特に昨年六月朝鮮事変が勃発いたしまして以来、相当の密入国があるだろうということを予想いたしまして、当時持つておりました船艇の約三割程度のものを九州方面へさきまして、極力不法出国の防止、検挙に努力をいたして参つたのでありますが、実績から見ますると、予期したような異常な入出国はないようでありまして、海上保安庁検挙いたしました実績を申し上げますと、昭和二十五年一年間におきまして、不法出国検挙件数は、百七十件でありまして、検挙人員は九百二十二名であります。また密貿易、これも若干密航関係あるものもありますので、ついでに数字を申し上げますと、密貿易に関しましては、検挙件数は百十九件、検挙人員は五百八十三名に達しております。
  26. 篠田弘作

    篠田委員長 その検挙及び送検手続きについて、国警あるいは自警、検察庁との連絡はどういうふうになつておりますか、またその手続は現在のままでよろしいか、あるいは何か改善しなければならぬ点があるかどうか。
  27. 松野清秀

    松野証人 現上海上保安庁でとつております送検手続について申し上げますと、海上保安庁法によりまして海上保安官は、刑事訴訟法による司法警察職員としての職務を行うことができることになつておりますので、海上保安官自分捜査した事件につきましては、みずから送検することができますが、海上保安庁といたしましては、現在においては、保安上庁達によりまして、取調べ送致に関する事務は、海上保安部及び警備救難所に勤務する海上保安官に処理させるようにいたしておりますので、実際においては海上保安部長または警備救難所長名送致いたしております。また巡視船捜査した事件につきましても、取調べ並びに送致事務に関しましては、これは原則として海上保安部または警備救難所に引継ぐのを建前としておりますので、巡視船の船長に対しましては、送致責任を免除いたしておるわけであります。また管区本部警備救難部長等がみずから捜査したような事件につきましては、警備救難部長名をもつて送致できることにもいたしておりますが、実際においてはそういうような例はほとんどないのが現況であります。
  28. 篠田弘作

    篠田委員長 何か改善するようなものがあるかないか。
  29. 松野清秀

    松野証人 現在のところ特に改善を必要とするような点は認めておりません。
  30. 篠田弘作

    篠田委員長 不正出入国者取扱いについて、出入国管理庁との間に何か業務協定行つておるそうですが、どういう業務協定ですか。
  31. 松野清秀

    松野証人 その業務協定の内容は、先ほど申し上げたことと重複するようでありますが、業務協定の骨子は、入国警備官被疑者逮捕を行わない、つまり海上保安官海上逮捕を行うということと、先ほど申し上げましたように、被送還者収容所から本船までの間の護送に、海上保安官余力があつた場合は協力するということと、強制退去令書の執行に当りまして事務の引継ぎの時期をはつきりいたしておるのでありますが、それは、護送する本船において被送還者の点呼が済んだときこういうことを協定いたしておる次第であります。おもなる点はそれらのことであります。
  32. 篠田弘作

    篠田委員長 そうしますと、たとえば函館なら函館に、一方において海上保安庁保安部があつて、片一方に自治警察水上警察があるという場合には、その仕事の割振りというか、権限というか、連絡というか、それはどういうふうになつておりますか。
  33. 松野清秀

    松野証人 両者の協定によりますと、港内におきましては、そういう事件水上警察が主として行つております。但し現行犯の場合は、むろん海上保安官もできることに協定いたしております。要するに、港内におきましては海上保安庁職務海上法令の励行に関することに重点を置いて、その他の犯罪につきましては水上警察、こういうようなことになつております。
  34. 篠田弘作

    篠田委員長 それから難破のために緊急避難して来る、いわゆる旅券を持たない入国者にはどういう取扱いをしておりますか。
  35. 松野清秀

    松野証人 そういうものにつきましては、今のところ実ははつきりした法的根拠が何もないようであります。海上保安庁におきましては、やむを得ず、こういうものにつきましては、関係各庁とも協議いたしまして、現在においては船がそのまま帰れるものはそのまま帰すようにいたし、また積荷なんかを処理して簡単に修理して帰れるようなものにつきましても、同様にそういうような措置をとらして帰らしております。それもできないような、つまり非常に船が大破して用にたえない、あるいは非常に修理がかさんでそれもできないというようなケースにつきましては、一応便宜的に外国人登録令違反として送検いたしまして、強制送還者と同様な径路で送還するようにいたしております。むろんこの場合には不法入国者とは言えないのでありますから、こういう者の取扱いについては十分の注意をするように指令いたしております。
  36. 篠田弘作

    篠田委員長 たとえば偽装して緊急避難をしたという場合でもやはり同様の取扱いをするるわけですか。
  37. 松野清秀

    松野証人 遭難を装つて入国するというようなこともむろん予想されますので、そういう点につきましては、現地におきまして海上保安官十分注意を喚起いたしまして、そういうような偽装をして入つて来るのではないかどうかという点について、十分取調べをするように指令いたしております。なおそういう点については、現地におきましては検察庁とも十分連絡いたしてそういうようなケースを見のがさないように十分な注意はいたしておる次第であります。
  38. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、密出国取締りについて海上保安庁のよつておる法規、それはさつきあなたが言われた海上保安庁法というものですか、それとも別な法律によつてあなた方が活動するのですか。
  39. 松野清秀

    松野証人 むろん海上保安庁法、それから外国人登録令等関係があります。
  40. 篠田弘作

    篠田委員長 いや、密出国の場合です。行つたり来たりしておる者がたくさんおるですね、その出て行つた場合ですね。入つて来る者は外国人登録令によるが……。
  41. 松野清秀

    松野証人 成規手続をとらないで出て行くものが密出国でありまするが、こういうものにつきましては、現在政令第三百二十五号によつて措置しております。
  42. 篠田弘作

    篠田委員長 出て行く者はどこで密出国であると認めますか。
  43. 松野清秀

    松野証人 それは出て行く者は出入国の管理に関する政令がありますが、それによつて出国する場合は所定の手続を経なくちやならぬ……
  44. 篠田弘作

    篠田委員長 だけれども、魚をとりに行くようなかつこうで出て行つてしまえばわからないじやないですか。
  45. 松野清秀

    松野証人 お説の通りでありまして、積荷も何もなしに出て行くようなものを実際立入検査をしましても、証拠を得ることは非常に困難でありまして、密出国者捜査逮捕ということは、実際上非常に困難を来たしておる次第であります。こういうものは、むしろ向う行つて、帰りに何か荷物でも積んで帰るというようなものを押えるという場合を除いては捜査上非常に困難があると思うのであります。
  46. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、何か密貿易でもやつているような形で、たくさんの積荷でも持つて行くもの以外には、出て行く場合はあまり押えられないということですね。
  47. 松野清秀

    松野証人 非常に困難であるということです。
  48. 篠田弘作

    篠田委員長 たとえば集団的な密出入国というものがあるでしよう。請負でもつてそういうことをやるとか、あるいは計画的にたくさんでもつて何らかの目的で日本に来る、あるいは北鮮から来るというような場合が非常にあると思うのだが、そういう計画に対しては、特別な取締りの対策とか措置を講じておりますか。
  49. 松野清秀

    松野証人 そういう問題につきましては、従来も若干情報の入つたこともありまするが、現在までそういうものを検挙した実績はないのであります。そういうような集団的な密航とか、密入国というようなものがあることは十分予測されますので、そういう点につきましては、警察その他関係行政庁とも十分連絡を密にしまして、なお情報収集というような点にも極力努力いたしておる次第であります。
  50. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、集団的な計画をもつて密入国した者を、今までに検挙した実績がないわけですか。
  51. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁におきましては、今までそういうような集団的なものを検挙したことは……。
  52. 篠田弘作

    篠田委員長 海上保安庁ではないというわけですね。よその役所ではありますか。
  53. 松野清秀

    松野証人 よく聞いてはいないのでありまするが、ただいままで、そういうような集団的な入出国があつたというような事例は私は聞いておりません。
  54. 篠田弘作

    篠田委員長 そうですが。もつとも集団というと、あなた方はどの程度までを集団と解釈していますか。
  55. 松野清秀

    松野証人 現在海上保安庁検挙しておりますものは、たとえば朝鮮関係でありますると、大体二、三トンから五トンぐらいの小さい船で日本へやつて来るというような事件でありますが、やはり集団的といえば、もう少し大きな船を使う、あるいは船で来る場合にも、一隻ぐらいで来るということでなしに、もつとたくさんで行われる。大きな船で来るか、あるいはそれがもし一隻ずつであつたにしましても、何か背後的なグループがありまして、そうして計画的にやるというような場合が集団的と言えると思いますが、要するにそういうようなものは、海上保安庁としては検挙した実績がまだないと思います。
  56. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、大きな船で来るか、あるいは小さい船をたくさん集めて来るか、何か背後的なものがあつて来る場合は、少数でも集団と認める、こういう意味ですか。
  57. 松野清秀

    松野証人 そうです。
  58. 篠田弘作

    篠田委員長 そういうものは今までは海上保安庁では検挙した事例はない、発見したこともない、そういうことですか。
  59. 松野清秀

    松野証人 ありません。
  60. 篠田弘作

    篠田委員長 それでは私の質問をこれで打切りまして、委員佐々木君。
  61. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 海上保安庁は、遭難あるいは密出入国等もありましようが、また密漁なども取締られているのだと考えますが、今年の二月に起りましたうぐいす丸事件というものを御存じすか
  62. 松野清秀

    松野証人 たしか二月十九日であつたと思うのでありますが、海上保安庁巡視船うぐいす丸野母岬西方沖合——これは禁止区域でありますが、そこで密漁中の第一泰山丸及び第二泰山丸を発見しまして、停船命令を出したのでありまするが、相手の漁船はたとえば船名を隠蔽するとか、あるいはロープその他を流して妨害しながら逃走する、あるいは巡視船が第一泰山丸に近づいたときに、乗組員がほうちようのようなものを振りかざして来た。そこで巡視船うぐいすは危険を感じて拳銃を発射した事実があるのであります。発射した職員数は九名であります。それから発射弾数は二十三発、それがために第一泰山丸通信士一名、それから甲板員一名が全治五日ないし一週間の負傷をした事件があつたことは事実であります。
  63. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 その二名の負傷者を出したというので、発砲総数が二十三発ということを海上保安庁の方では発表しているようですが、その発砲数にいろいろな疑惑があるというので、長崎地検においてこれが問題となつているというようなことを聞いているのでありますが、このことについて、もう少し詳細にお話が願いたい。
  64. 松野清秀

    松野証人 この事件につきまして、長崎保安部では長崎地検連絡をいたしたのでありまするが、長崎地検の意向としましては、このような事件は最近常に愼重に取扱つておるし、またたとい拳銃が正当に使用された場合でありましても、他に傷害を及ぼしたような場合は、すべて一件送致するようにしてもらいたい、こういう意見でありましたので、長崎保安部におきましては拳銃を使用した者全員を送致いたしております。
  65. 篠田弘作

    篠田委員長 自分保安官検事局に送つているわけですね。
  66. 松野清秀

    松野証人 そうです。
  67. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 それで、地検においては取調べ中というようなことを聞いているのですが、そうすると、発砲総数に食い違いがあつたというので取調べを受けているのですか、それともただ単に発砲したというだけで一応送検して、その事実を取調べているということでありますか、どつちでありますか。
  68. 松野清秀

    松野証人 拳銃を使用したことが正当であるかないかということを、取調べておるのであります。
  69. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そのことは地検でやつているのですから、この委員会においてはそれ以上究明することもどうかと思いますが、ただ要するに、この第一泰山丸と第二泰山丸密猟をやつたというのですか。そしてその密猟区域外行つてつていたのか、それとも別な密獵ですか、その点をもう少し明らかにしていただきたい。
  70. 松野清秀

    松野証人 禁止区域内において底びきをやつていたものであります。
  71. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そうすると、その船は要するに水産庁において一応認めている漁船であることは事実なんですか。それとも全然そういうのは認めていない船であつて、単なる密輸密獵をやつている、底びきをやつている密獵船団であるか、密獵団であるか、それともふだん正式に許可されている漁船ではあるが、区域外に入つていたというのですか、その点をもう一回お聞きしたい。
  72. 松野清秀

    松野証人 その点ちよつと私今はつきりしませんが、これは正規の許可を得ている漁船である……。
  73. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そうすると、区域外つたということだけですか。
  74. 松野清秀

    松野証人 禁止区域内だつたということであります。
  75. 篠田弘作

    篠田委員長 ちよつと関連して聞きますが、漁船人間がほうちよう様のものを振りまわしたと今あなた言われましたね。
  76. 松野清秀

    松野証人 ええ。
  77. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、逮捕するために保安官向う漁船に乗り込んだときに発砲が起つたのですか。格闘が起つたのですか。
  78. 松野清秀

    松野証人 発砲したのはむろんその前であります。
  79. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると、ほうちようを振りましたということですと、船と船とは離れているのですから、別に危険はないですね。ほうちようを持つてつたといつても、それは綱を切るために持つたうちようであるか、あるいは別の考えで持つたうちようであるか、とにかくその船に乗り込んで行つたときにほうちようを持つておると、危険だけれども、船と船がある距離を持つている場合には、ほうちようを持つているということは何も危険はないのだが、どういうわけで九人の人間……。
  80. 松野清秀

    松野証人 ほうちようを振りまわす前と申しましたが、ほうちようをふりまわしたのはその前後です。
  81. 篠田弘作

    篠田委員長 アンカーでも切つて逃げようとしたのではないか、ほうちようを振りまわしたということは。
  82. 松野清秀

    松野証人 そういうことはないです。
  83. 篠田弘作

    篠田委員長 危害を加えるために……。
  84. 松野清秀

    松野証人 乗船しようとするのを……。
  85. 篠田弘作

    篠田委員長 乗船をしようとしたときにですか、そうずると、やはり向うの船にとつついていたのですか。
  86. 松野清秀

    松野証人 そうです。
  87. 篠田弘作

    篠田委員長 わかりました。
  88. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 ただいまのは説明を聞けばいろいろあるでしようが、乗船をしようというときの危害つたろうと考えますが、それはそれとしまして、次にお聞きしたいと思うのであります。  これは非常に遺憾なことを私たちは聞いたのですが、海上保安庁事務官でありますが、保安官でありますか、しかも海上保安庁秘書課の次長をし、情報主任をしていたといわれる高田進という人が密輸入に関係していたということで、あげられた事実があるのです。それはどういう事実か、御承知であればお聞きしたいし、またその後の経過及びそうしたことの責任はどうなるかということをお聞かせ願いたいと思います。
  89. 松野清秀

    松野証人 ただいまお尋ねの事件は、去年の六月の中ごろと存じますが、八幡市の築地町七番地ですか、そこの番地高田進あての何か貨車二台に積んだ貨物が、八幡のどこかの駅の日通の支店に到着したときに、たまたまその八幡市警におきまして、その番地には高田進という人間はいないということと、その到着した荷物密輸出品らしいということで、実は捜査を始めたわけであります。その当日高田進がその荷物を船に積載する現場に現われたところを八幡市警逮捕されまして、たしか翌月の七月の十五日と思いますが、八幡市警から福岡地検に選られまして、福岡地検で起訴しております。これは関税法違反の容疑でたしか起訴していると思いますが、そこで海上保安庁といたしましては同日付で休職処分にいたしております。なおこの事件は現在福岡の地方裁判所の小倉支部に係属いたしておりまして、高田進本人は今申し上げましたような事実関係を極力否認しているようであります。これが裁判の結果どうなりますか、予測はできませんが、あるいは無罪になるのじやないかというようなことむい言われてるように聞いておりまして、その点はまだはつきりいたしておりません。
  90. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そうすると、それは地検取調べてはいるが、海上保安庁としては、そうした事実があつたかどうかというようなことを本人から調べられたことはあるのですか。それともその事件が起きたので、ただちに逮捕されたのですか。
  91. 松野清秀

    松野証人 そうです。
  92. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そうすると、保安庁としては取調べる時間もなかつたということになるでしようが、少くとも海上保安官であるものがこういうものの疑惑を受けることについては、過去にその人を使つていた上官の人たちは、大体ふだんの行動などはわかるはずだと思うのですが、今無罪になるかどうかという前において、われわれも一応疑つて言うわけじやないが、とりあえず問題になつているとすれば、この人はどういう経歴の人か、それとも海上保安庁に入つたのはいつころか、あるいは前歴がわかりましたら、ひとつお知らせ願いたいと思います。
  93. 篠田弘作

    篠田委員長 それからこの問題に関連してちよつとお尋ねいたしますが、この高田進という人は、海上保安庁秘書課の次長か、情報主任をやつてつて情報をとるためにそういう密獵船を使つて向う情報を集めていたというのであるから、という意見が海上保安庁の中に相当あるそうですね。そういう意見をお聞きになつたことがありますか。
  94. 松野清秀

    松野証人 そういうふうな意見は聞いておりません。
  95. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 さきほどのその人の前歴を……。
  96. 松野清秀

    松野証人 実は私高田進の前歴についてはよく存じておりません。
  97. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 海上保安庁に入つてからはどのくらいですか。
  98. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁の創設当時から入つております。私実は昨年の六月本庁へ参つたので、しばらく顔を合せておつたのですが、その前歴についてはまだ存じておりません。
  99. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 この人については今問題になつておりますから、白になるか黒になるかわからないが、そのほかに海上保安官密輸入団に関係したとか、あるいは疑いを狭まれたとかいうような事実がありますか、承わりたいと思います。
  100. 松野清秀

    松野証人 海上保安官密輸とか、密航に通謀しているようなうわさは二、三度耳に入つたことがありまして、その都度よく調査いたして参つたのでありますが、いずれも事実無根の中傷である、かように信じております。
  101. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 汽車で輸送する場合も、船で輸送する場合も同じだろうと思いますが、輸送の証明書などというものには、海上保安庁関係しておりませんですか。
  102. 松野清秀

    松野証人 関係しておりません。
  103. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 そうですか、それならばよろしゆうございます。
  104. 篠田弘作

    篠田委員長 佐々木委員に申し上げますが、ただいまの御質問、若松の税関で調べた高田進の前歴がありますが、ちよつと読み上げましようか。
  105. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 はあ。
  106. 篠田弘作

    篠田委員長 陸軍司政官として支那及び南方方面に在勤、終戦後九州海運局海務課長を経て、昭和二十三年五月海上保安庁に転入、現在海上保安官として総務部秘書課次席の職にあるものである、こういうことになつております。
  107. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員 わかりました。
  108. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 松野さんにちよつとお伺いしたいのですが、例のうぐいす丸事件でございますが、これは伝え聞くところによりますと、現地の西日本新聞の支局長が書いて、非常にセンセーシヨンを起した記事だということをわれわれは承わつておりますが、この内容につきまして、長崎地検海上保安庁との間に、何か意見の食い違いがあるようなことがありませんか。つまり言いますと、長崎地検がその立件送致を強制したというような事実、あるいはまた保安部がその立件送致を自発的にやつた。つまり地検当局と保安部との間に本事件につきまして食い違いがあるというようなことはなかつたかどうか、それが一点。もう一つは、この追跡を受けた船の方におきまして、いささか保安官に対してからかつた、いたずらが過ぎたのであつて保安部の方がそれをまじめに受取り過ぎて、こういう問題を起したというようなことは、あなた方実際そういうことは感じられないか、こういう点を一つお尋ねしてみたいと思います。
  109. 松野清秀

    松野証人 第一点のお尋ねにつきましては、私は長崎海上保安部地検との間にこの事件取扱いについて何ら食い違いはないと存じております。長崎海上保安部におきましては、この事件がありました当時、ただちに地検事件の経過を報告いたしておりまして、その事件送致いたしましたのも、長崎地検の意向に沿つてつたものでありまして、別にその間に何ら食い違いはないと存じております。
  110. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 もし松野さんの御答弁の通りでございましたならば、あなたが先刻の御答弁の中に、取調べのために地検がこれを起訴したのであるということをちよつと伺つたのでございまするが、これは事件取調べた上、勾留とかなんとか、そういうことをやるというようなことは、それは今の刑事訴訟法建前上私たちふに落ちないのでありますが、その点はどうか。それから第二点として、拳銃使用に関するあなたのところの長官の訓令というものがあるだろうと思いますが、そういうことがあつたならば、それの規定に従つてつたということであるならば、こういうふうな問題となる点が、ちよつと見たところでは考えられないのでございます。その間についていささか疑惑もあるので、御答弁をいただきたいと思います。
  111. 松野清秀

    松野証人 先ほども申し上げましたように、長崎地検におきましては、ともかく最近拳銃の使用に関しては相当愼重に取扱つておりまして、たといそれが正当であつても、他に傷害を及ぼしたような場合には、すべて立件送致してもらつて、いずれにしてもそれが正当であつたかどうかということをはつきりさしておきたい、こういう意向のようでありまして、その意向に沿いまして、送致しておる次第であります。
  112. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 立件送致されたと言われましたが、これは今起訴されておるのですか。
  113. 松野清秀

    松野証人 ええ、そうです。
  114. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 公訴の提起があつたのですか。
  115. 松野清秀

    松野証人 ええそうです。
  116. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 拳銃使用に関する長官の訓令というようなものはあるのですが、ないのですか。
  117. 松野清秀

    松野証人 拳銃の使用につきましては、海上保安庁法にありまするように、もつぱら警察官職務執行法の第七條を準用することになつております。
  118. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 だから、その準用というのが、つまり訓令のかわりになるのですか。
  119. 松野清秀

    松野証人 そうです。
  120. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 それに従つてつたのなら、立件送致はいいとして、起訴まで行くということはちよつと考えられないのですが、公訴の提起があつたということについて、あなた方少しもそれをふしぎと思われないのですか。
  121. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁の見解としましては、今度の拳銃使用については正当であると解釈いたしておりますので、われわれとしましては当然不起訴になるものと予期しておつたのであります。
  122. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 不起訴になつたのですか。起訴されたというのでは非常にふに落ちかねるのでありますが、ではこの程度でやめます。
  123. 島田末信

    ○島田委員 先ほど証人証言によりますと。昭和二十五年度において検挙密入国百七十件、九百二十二名、密貿易百十九件、五百八十三名となつておりますが、これを目的の上から分類すると、どういうことになつておりますか。
  124. 松野清秀

    松野証人 目的と申しますと……。
  125. 島田末信

    ○島田委員 密入国密貿易をどういう目的でやつてつたかということです。
  126. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁検挙したものにつきましては、たとえば朝鮮あたりでは生活が苦しい、日本へ来た方が生活は楽だ。あるいは日本へ来て勉学したいというようなものが多いようであります。
  127. 島田末信

    ○島田委員 先ほどは背後的な関係を持つような計画性を持つた種類のものはまだ検挙されていないというふうな御答弁でありますが、大体私の聞くところでは、検挙した数よりも逃げた人の方がよほど多いようなことを伺つておるので、むしろそういつたものが逃げた方面にいるようなことはないか、あるいは不可能というとおかしいが、もしあつたとしても、そういう連中は簡単につかまるまい、かように考えますが、ひとつそういつた見解をお伺いしたい。
  128. 松野清秀

    松野証人 むろん密出入国にしましても、私どもが検挙しているものはおそらくごく一部分にすぎないのでありまして、そのほかにたくさんあると思いますが、要するに現在の保安庁の勢力におきましては、従来の実績から見ましても、まず精一ぱいのところであろうと思います。
  129. 島田末信

    ○島田委員 それから二月上旬に海上保安庁の第四管区本部では、在日北鮮系の朝鮮人約三百名が北鮮共産軍援助と南鮮後方撹乱を企てて、モーゼル短銃で武装した南鮮ゲリラ部隊特別工作隊というものを編成して、富山県の伏木港、石川県の七尾港などの裏日本港湾付近に集結中の情報を得たということが伝えられておりまするが、この情報は事実であるかどうかお伺いしたい。
  130. 松野清秀

    松野証人 そういうような情報は事事でありません。
  131. 島田末信

    ○島田委員 この情報に基いて保安庁としては、堺、新潟各海上保安部に二号警備三分の二の招集を指令したと言われておりますが、これはどうでありますか。
  132. 松野清秀

    松野証人 第九管区本部におきまして、七尾、伏木方面で非常配備をしいたことはあります。しかしながらこれはやはりそういうようなうわさでも耳に入れば、保安庁といたしましては非常に現在人員も少いので、当然一応は非常配備をしくということになるのであります。
  133. 島田末信

    ○島田委員 そうすると最初の第四管区本部で得た情報というものが事実かどうかということを一応確めた結果、それはうわさであつたということになつておるので、一応そういうことが事実であつた場合を考慮してそういう指令を発したということも、これはその当時あり得たということですね。
  134. 松野清秀

    松野証人 科の記憶ではたしかそういうような記事が新聞に載つたと思いますが、その情報がどこから出たか、私はよく存じません。新聞では大阪か何かのようなことを書いていたようでありますが、そういう情報の出所は今おつしやるような第四管区本部ではなくて、どこかほかからそういうようなうわさがあつたものと考えております。
  135. 島田末信

    ○島田委員 密入国の防止については相当手配をなされ、またいろいろ努力されておるようでありますが、この密出国に対して、どうもまだその辺ずさんなというか、十分なる努力が払われていないように思いますが、その対策をひとつ承りたいと思います。
  136. 松野清秀

    松野証人 先ほど申しましたように、密出国の場合は特に証拠を得ることについて非常に困難を感じておる次第でありまするが、いずれにしましても海上保安庁の対策といたしましては、あくまでやはり船艇を増強して立ち入り検査をもつと励行することと、なお海上保安官の証拠蒐集能力をもつと向上する必要を考えまして、現在そういうような方面の教育も極力強化いたしておる次第であります。
  137. 島田末信

    ○島田委員 次に最近海上オルグが実在するといううわさがひんぴんと伝わつておるのでありますが、これに対して海上保安庁は実態を把握せられておるかどうか、またこれに対する対策はどういうふうにしておられるか、承りたい。
  138. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁としましても一、二情報を聞いたこともありまするが、しかしその信頼性につきましては確実であるかどうかはつきりいたしておりません。なお海上保安庁といたしましては、思想面につきましては、第一義的には特審局の活動にまかすことといたしまして、今後ともそういう思想面におきましては、特審局に協力するというような態度で進んで行きたいと考えております。むろんそれに関連して密輸密航もありましようが、密輸密航等につきましては先ほど来申し上げましたように、そういうものの取締りにつきましては、一般の密輸密航と同様に厳重に取締つて行きたい、かように存じております。
  139. 島田末信

    ○島田委員 去年の七月に広島県で、元海軍特務少尉三谷修一という日本共産党広島県芸南地区委員が勅令一号違反で特審局中国支局に出頭を命ぜられたにかかわらず、木造機帆船天神丸六十トンに乗つて遁走をしたという事実がありまして、その際特審局から第六管区海上保安部捜査依頼があつたと聞いておりますが、その跡始末はどうなつたか承りたい。
  140. 松野清秀

    松野証人 その問題につきましては今記憶いたしておりませんので、残念ですけれどもちよつとお答えいたしかねます。
  141. 加藤充

    ○加藤(充)委員 松野さんは今海上オルグというようなもののうわさを聞いたかと言つたら一、二聞いたことはあるというのですが、あなたが理解した海上オルグというものの理解の仕方並びに一、二聞いたことがあるという内容をお聞かせ願いたい。     〔委員長退席、佐々木(秀)委員長   代理着席〕
  142. 松野清秀

    松野証人 その点ちよつとお答えいたしかねます。
  143. 加藤充

    ○加藤(充)委員 あなたは海上オルグについて一、二うわさを聞いたことがあるというのですが、何を聞いたのかわからないことになりますが、それでいいのですか。また海上オルグというものをあなたはどういうふうに理解して御答弁になつたのですか。海上オルグのうわさについて聞いた内容はと聞いたらそれはわからない。海上オルグは一体何者かと言つたら御答弁がないということになると、聞いたか聞かないかということがさつぱり価値を持つて来ないことになる。
  144. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 加藤君どうですか、お答えがないようですが。
  145. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それじや先ほどの御答弁は全然撤回するということになりますか、撤回する気持はないのですか。あなたはうわさを聞いたと言うが……。
  146. 松野清秀

    松野証人 先ほどの一、二聞いたという点だけを撤回いたします。
  147. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それではあなたは聞いたという御返答は撤回されたのですか。海上オルグというものの……。
  148. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 ちよつと待つてください。今松野君の方から撤回したとはつきり一言つておりません。ただ聞いたということだけを申し上げているということですから、その点は撤回したわけじやないのですね。松野君、聞いたら聞いたで、取消すなら取消すで、それをはつきりひとつ……。
  149. 松野清秀

    松野証人 一、二うわさを聞いたということは、内容までよく聞いておるのでありませんので、取消します。
  150. 加藤充

    ○加藤(充)委員 その事実の取消しというものはいいのですが、あなたは今海上オルグというものについて質問を受けたのです。海上オルグという質問を受けたときに、あなたは海上オルグというものに対してどういうふうに理解したのですか。
  151. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 これは取消したのだから……。
  152. 加藤充

    ○加藤(充)委員 この行政監察委員会に出て来ていろいろな意見なり、証言をするということはきわめて重大なのです。この委員会における発言が無責任で権威を持たない、こういうふうな、何を理解してどう答えたかわからぬというものが記録に載つたり、行政監察委員会仕事の中に持ち込まれたりすることは、一党一派の問題でなしに、当委員会を侮辱するのはなはだしきものだという見地に立つて、あえてその質問をいたしているのであります。
  153. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 それだから私はそれをはつきりさせるために今証人に言つたら、証人はその事実を詳しく聞いてない、ただオルグという……。
  154. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それはそうじやない、委員長が……。
  155. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 私はそれを整理しているので……。
  156. 加藤充

    ○加藤(充)委員 撤回したといつておるじやないか。
  157. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 それを聞いたところが、撤回すると言つたのだから、撤回によつてこれが処理されたのじやないかということを言おうとしていたのです。それはそれでいいじやないか、こういうことを私は申し上げたい。
  158. 加藤充

    ○加藤(充)委員 いいじやないかというのは不見識だ……。
  159. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 加藤君、もう一度聞きたいのなら発言を許します。
  160. 加藤充

    ○加藤(充)委員 海上オルグという言葉をどういうふうに理解されて発言をされたか、その点を聞いておきたい。
  161. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 御発言ありませんか。
  162. 松野清秀

    松野証人 私はその点の解釈を誤つておるかもしれませんが、ただ海上における思想的な活動ということで、実は先ほど御答弁をいたしました。
  163. 加藤充

    ○加藤(充)委員 これは発言者の意思とも違うだろうと私は想像するのです。またあなたが理解されたところは、発言者の言わんとしたところと離れて、どうも一般の理解とも常識とも異なると思うのですが、そのことについてはあえてここで具体的な問題を持ち出しませんが、いやしくも発言に答えて責任のある言葉を発する場合においては、いま少しく常識的な言葉の意味、そういうものをここで特定して、そしてその上に立つて発言をしてもらいたいと思います。それは当委員会の権威のために、私どもがいたずらなる発言をいたし、いたずらなる無責任な言葉を速記録にとどめたり、それに基いて仕事をしたりするために当行政監察委員会はないものだということを強調しておきたいと思います。  もう一点お尋ねしたいのは、長崎県の大村にありまする出入国管理庁の指揮監督を受ける収容所があるようですが、その収容所からそれぞれの本国に送還を受ける者に対して、海上においては結局送還の実務を海上保安庁で担当することになつていると思うのですが、その点いかがですか。
  164. 松野清秀

    松野証人 お説の通りであります。
  165. 加藤充

    ○加藤(充)委員 それでお尋ねするのですが、それではそれぞれの本国に送還をされる者をあなたの方で受取つて、それを受領者の方に届ける具体的な経過を、あなたの官庁で御経験になつた実例をもつてお答え願いたいと思います。     〔「委員長、島田委員質問続行中だ」と呼ぶ者あり〕
  166. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 加藤君、さつきのオルグの問題であなたは関連して質問されたのだから、一応これを答えてもらつて、島田君の方に続行してもらいますから……。
  167. 加藤充

    ○加藤(充)委員 了解しました。
  168. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁は先ほど申しましたように、送還船の船内で点呼が済んで以後、海上保安官が武装警備をして護送して行くわけです。現在まで朝鮮にはたしか二回送還しておりますが、二回の経験から言いまして、別段申し上げるような事件は何も起つておりません。
  169. 加藤充

    ○加藤(充)委員 問題が起きた起きないでなしに、そういうものはどこで受取つてどこで渡すのか、そういうふうな手続なり具体的な事実をひとつ教えていただきたい。
  170. 松野清秀

    松野証人 それは送還船の船内で点呼が済んで以後、つまり入国警備官から引受けまして、そして釜山に着いて朝鮮の官憲の方に渡すことになつております。
  171. 加藤充

    ○加藤(充)委員 そうすると釜山の陸地まで持つて行くのですか。何か向うの了解で別の船に渡すというようなことはないのですか。
  172. 松野清秀

    松野証人 むろん向うに着きまして、向うの官憲と打合せまして、書類と一緒に船から陸の官憲の方に渡します。
  173. 加藤充

    ○加藤(充)委員 よろしゆうございます。
  174. 島田末信

    ○島田委員 先ほどの続きですが、国内に船籍を持つている船舶とかあるいは二重、三重に船籍を持つている船舶というものが、わが国の周辺に相当周航しておるように聞いておりますが、そういう実態は十分調査ができておりますか。
  175. 松野清秀

    松野証人 御承知のように、海上保安庁は常時哨戒をやつておりまして、通行船舶並びに港内にある船舶につきましても、極力立入り検査をやるようにしておりまして、海事法令関係につきましては、特に注意をいたしておりますが、中に成規の毒類を持つていないというようなものがありまして、そういうようなものにつきましては調査はいたしておりますが、しかし今おつしやるような二重、三重の国籍を持つておるとか、あるいは国籍が日本に全然ないものとかいうような事件は、海上保安庁で取扱つたものについてはないと考えております。
  176. 島田末信

    ○島田委員 それではそういう船籍を持たない船舶だとか、二重、三重に船籍を持つておるような船は、まだつかまえたこともなければ、そういうものが大体どの程度の数が日本の周辺を周航しておるかということについての調査も、できておらぬというわけですね。
  177. 松野清秀

    松野証人 今おつしやるような無国籍の船、あるいは二重、三重に船籍を持つている船の調査表というようなものはできておりません。
  178. 島田末信

    ○島田委員 それを調査する方針はありますか。また調査したくても調査できないというような実情でありますか。
  179. 松野清秀

    松野証人 むろん立入り検査をやつておりますが、そういうものがあれば、むろん記録にとどめておくようにいたしたいと考考えおります。
  180. 島田末信

    ○島田委員 たとえば密入国とか、密輸入というものに従事する船舶というものは、そういつた種類のものが大半を占めておるのではないか、かように想像されるのです。そこでほんとうにこれを取締るという点から申しまするならば、その調査、あるいはそういつた船の実態をつかむということは、最も重点的に行われなければいかぬ。この点について十分方針を確立していただきたいと思いますが、それに対しての対策は何らか考慮されますか。
  181. 松野清秀

    松野証人 御説の通りでありますので、今後そういう点について、できるだけひとつ努力して調査したいと考え  ております。
  182. 大森玉木

    ○大森委員 私は簡単にお尋ねいたしておきたいと思います。私は北陸の地方でありまするが、今のお話の密輸入などと関係のある朝鮮とは、特に近い関係を持つておる。そこで海上保安庁にわれわれが信頼を持つておるのであるが、しかし大体昨年だけでも、私どもの海岸に五、六回も密入国者が入つて来たことがあります。なお続続そうした傾向があるのでありますが、海上保安庁は、北陸地方のいわゆる裏日本方面にはどういうような配備ができておりますが、お聞かせ願いたいと思います。
  183. 松野清秀

    松野証人 現在裏日本と申しますと、船川、秋田、それから酒田、この三箇所に私どもの方の保安部あるいは警備救難所を設けておりまして、大体現在この三箇所に巡視船三隻を配置いたしておりますが、御承知のように、海上保安庁も昨年八月のマツカーサー書簡によりまして、緊急に整備をすることになりまして、最近着々新造船をつくつております。できるだけ早い機会にその方面にも巡視船を増配いたしたい、かように考えております。
  184. 大森玉木

    ○大森委員 そうすると、福井、石川、富山、この三県の方面には保安庁のいわゆる駐在所とか出張所とか、そうしたものはないのでありますか。
  185. 松野清秀

    松野証人 石川県には今七尾に警備救難所があります。それから近く石川県の西岸の福浦、あそこに新しく警備救難所を設置することにいたしております。なお敦賀にも警備救難所がありまして、現在七尾には巡視船が一隻、それから今度できます福浦の新しい警備救難所には、近くできる内火艇を二隻ばかり置きたいと考えております。なお敦賀にも今港内艇を加えまして二隻ありますが、これらのところにもむろん新造船のできるに従いまして、船艇の増加もいたしたい、かように考えております。     〔佐々木(秀)委員長代理退席、委   員長着席〕
  186. 大森玉木

    ○大森委員 そこでお尋ねをし、なおはつきりした御方針を承つておきたいと思います。それは先ほど島田委員からお話があつたように、私どもの地方においてはいわゆる三百名の共産軍が来るというようなことで、大げさにずつとビラを張つている。これは共産党が張つたということでありますが、かようにして地方乱をやる。そのような問題が起きた場合に、今のように拳銃を撃つたことが起訴されるということでありますれば、何をもつて防衛するのであるか、この点私ははつきりとあなた方の御方針を承りたい。私はこういう場合においてこそ、海上保安庁というものにたよるべきだと思う。この前のときには、私は七尾市で消防をやつているのですが、今言う三百名が入つて来た場合にはどうして防ぐかということで警察も総動員をしておるというような問題もあつたのであります。そういう問題があつたので、事実各地にビラを張つた。いよいよ三百名の共産軍が入つて来る、たいへんなことだということで、騒がしたのであります。だから先ほどどなたかお話があつたように、まつた拳銃を発射して、それがために起訴されたということであれば、こういう場合には一体何をもつてやるのか、そういう者がもしも入つて来た場合には、どうして防ぐのか、あなた方の警備拳銃などを撃つてはならぬのかどうか、こういうことを承つておきたいと思います。
  187. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁は今お話がありましたように、拳銃だけを今持つておるのでありますが、むろんそういうように大挙して入つて来ましたような場合、正当に使用しなければならぬような事態がありますれば、当然むろん拳銃は使つていいことになつておるわけであります。
  188. 大森玉木

    ○大森委員 しからばそういう場合には拳銃だけでありますか。まだ何かはかのそれに備えるものがあるかどうか。私は何か海上保安庁としては拳銃以外に、これらに備えるべきものがなければならない、こういうふうに考えるのでありますが、これに対してはどうでありますか。
  189. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁は現在拳銃以外に何も武器というようなものは持つておりません。
  190. 大森玉木

    ○大森委員 それであるならば、あなた方は責任者としてそれを要求する意思はないかどうか。ただ名前だけの保安庁ではないか、われわれが信頼している保安庁が、拳銃のみによつて、そうした事態が起きたときに守れるかどうかということに対して考えておられるかどうか、この二点を承りたいと思います。
  191. 松野清秀

    松野証人 拳銃のほかに何か対抗するようなものを持つ考えがあるかどうかというお話でありますが、この問題につきましては、今ちよつとお話できる時期でないと考えております。
  192. 加藤充

    ○加藤(充)委員 人間拳銃だけなのですが、警備船なんかの種類、並びに警備船の武装はどういう状態になつておるのでありますか。ピストルは船につけるわけには行かないし、船をピストルにつけるわけにも行かない。警備船というのはどういうことになつておりますか。
  193. 松野清秀

    松野証人 現在保安庁の船は、乗組の保安官拳銃を持つている以外、何も武装はいたしておりません。
  194. 山口武秀

    ○山口(武)委員 先ほど委員長質問がありましたが、海上保安庁海難救助に忙殺されて、不法入国に手がまわらない事実はないかということに対して、松野君の答えは、おろそかにしていることはない、さらにそれに続いての質問がありまして、手がまわらないようなことがあるかということに対して、手のまわらないようなことはあると言われておりましたが、少々私には受取りがたい点があるのであります。といいますのは、手のまわらないというようなことを言いますと、これはだれにしても手のまわらないことになります。手のまわらないということは、どこの職場でも、どこの職場でも、手がまわるわけではありません。あなたが手のまわらないということを言われたのは、どういう意味で手がまわらないと言われたか、この点をはつきりしておいていただきたいと思います。
  195. 松野清秀

    松野証人 現在保安庁には船舶数が非常に少いのでありますが、御承知のように、ことに冬季などは海難が非常に多いのでありまして、多いときには一日に三十件というようなケースがありまして、これはやはり人命救助の必要があると認めるような場合には、密航密入国取締りをさしおいてでも、人命救助に急遽出動するというような状態でありますので、船が少いために、結局海難救助等のために、そういう密航入国の方に手がまわらない場合もあるということを申し上げたのであります。
  196. 山口武秀

    ○山口(武)委員 手がまわらないというのですか、手がまわらない場合もあるというのですか。
  197. 松野清秀

    松野証人 今申し上げたように、船さえ十分あれば、同時に海難救助もできる取締りの方にも船を向けることができるのでありますが、非常に船が現在少いために、そういう場合が起り得るというのであります。
  198. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それは一時的にそういう問題が輻湊した場合にはあり得るでありましようが、そういう一時的なことで問題が一般化されることはないと思うのであります。それで最近の昭和二十一年からの国内の潜入者の数を見ましても、最近は大分減少しているはずなのであります。毎年々々減少しているはずであります。不正入国というものが減少していて、なぜ、まだそういうことを言わなければならぬか、こういう点を伺いたい。
  199. 松野清秀

    松野証人 検挙数が多いとか少いとかいうことと、手のまわるまわらぬということとは、別問題であると考えますが、私どもの方としては、要するに海上密航密入国捜査というものは、やはり船によるわけでありますから、むろんいつも手がまわらぬというわけでなしに、今申し上げたように、場合によつて海難等との関係でまわらぬことがあるということであります。なお検挙件数が非常に減つておるということは事実かもしれませんが、これは実態がはたしてどらであるか、そういう点はちよつと予測できぬと考えております。
  200. 山口武秀

    ○山口(武)委員 あなたはそういうことを言われますが、本委員会事務局の調査によりますと、単に上陸地の検挙が減つているばかりでなく、逃走認定の件数も減つている。このことは、不正密入国の問題というものは事件が減つているのだ。そうすれば、そういう問題のために特に手がまわらないということは受取りがたい。  さらにお伺いしたいと思いますのは、昨年朝鮮事変が起りましてから、海上保安庁においてこの事変のために特に新しい仕事がふえたかどうか、そういうために手のまわらぬというような問題が生じたかどうかという点をお聞きしたい。
  201. 松野清秀

    松野証人 朝鮮事変が勃発したがために特に業務がふえたということはありません。ただわれわれは哨戒を一層厳重にやるというようなことは考えております。
  202. 山口武秀

    ○山口(武)委員 ではさらに念のために聞きます。朝鮮事変が起りましてから、海上保安庁におきまして特別の仕事がふえた、あるいはそのために特別の任務が生じたということは全然ない、こう言われてもさしつかえないですね。
  203. 松野清秀

    松野証人 その通りであります。
  204. 大森玉木

    ○大森委員 私どもの方は機雷がたくさん流れて来るのであります。この機雷のために、この間も何人か一ぺんに死んで、毎日のようにひつかかつて来る。これに対する応急処置とかなんとかいうことはむろんやつておられるではありましようが、特に考えていただきたい。あなた方はこれに対してはどういうような処置をとつておられますか。非常に多いのです。
  205. 松野清秀

    松野証人 お話の通り、ことに一月ごろから機雷数が激増いたしております。これに対して海上保安庁としては、特に最近機雷の捜査隊を編成いたしまして、機雷の掃海に使つておりました船八隻をこれに充てまして、計画的に島根県、鳥取県、福井県、あの辺の海面並びに富山、新潟の沖、その辺の捜査を厳重にやらしておる次第であります。それから単に掃海船ばかりでなしに、巡視船が哨戒する場合も、特にそういうような浮遊機雷の存在について、これを早期発見するよう極力努力するように、地方の官庁に対しまして指令をいたしておる次第であります。
  206. 大森玉木

    ○大森委員 この機雷の出所でありますが、一体機雷は何者が出しておるのか。まつたく漁師のごとき、何ら関係のない者がたくさん犠牲となつておる。こういうものを流したり何かしておる国あるいは人があるとするならば、それこそは非人道的なものである。こういうものに対しては、その元を究明しておられるかどうか。私ども実にこれを遺憾に思うておる。もしもこういう者がわかりますならば、できるものならば、ただちに銃殺、はりつけ、すべてをやりたいのであるが、あなた方はどういうふうに考えておられるか。これは大体われわれは想像はついておる。またわが日本でも、それを知つておる人はあるだろうと考えておる。しかしながらそれをあかされぬということをわれわれは遺憾に思うておるので、それをどういうふうにあなた方が究明しておられるかということを、ちよつとお尋ねいたしておます。
  207. 松野清秀

    松野証人 どうも繋雑機雷が切れて流れて来るように思います。しかしどこから流れて来るのか、その点は実は私どももまだはつきり何もつかんでいないのであります。
  208. 大森玉木

    ○大森委員 機雷というものは、海に自然的にできるものでありましようかどうか。(笑声)やはりどこかの国がつくつてつて、それを人に危害を加えるために流すのだと思う。あなた方の想像でもいいが、大体どの辺の国のものが流しておるかということくらいはおわかりじやないですか。おわかりならばひとつ教えていただきたい。
  209. 篠田弘作

    篠田委員長 大森君の御質問は想像というお話でありますが、これは想像では述べられない問題だと思います。ほかにだれか御質問ありますか。
  210. 志田義信

    ○志田委員 海上保安庁の方にお尋ね申し上げますが、不法入国者等の取扱いにつきましては、海上保安庁出入国管理庁との間に業務協定がある。その業務協定の内容を今拝見したのでありますが、今まで業務執行中に逃亡した不正入国者がどのくらいあるか。それをひとつ……。
  211. 松野清秀

    松野証人 海上保安官業務の執行中に逃亡したものはありません。
  212. 志田義信

    ○志田委員 そうしますと、護送還の途中、海上保安庁が船内その他で護送を担当するかと思いますが、そういう場合に逃亡されたものがございませんか。それをひとつ……。
  213. 松野清秀

    松野証人 ありません。
  214. 志田義信

    ○志田委員 強制執行を受けて、それに対してあなたの方が業務執行の場合において逃亡されたものがあるか、それを伺いたい。
  215. 松野清秀

    松野証人 ございませんです。
  216. 志田義信

    ○志田委員 その点がないといたしますれば、もう一つお尋ね申し上げたいのは——今私が聞いてみたいと思うことは朝鮮人でありまするが、登録している者が六十万人というふうに、私は先般治安自衛特別調査会で承つたのでありますが、なおそうした登録をしておらない朝鮮人が二十万人からおるという話であります、こういう者の出入に対しては、海上保安庁はどういうお考えと、どういう対策を持つておられるか、それをひとつ承りたい。
  217. 松野清秀

    松野証人 海上保安庁としましては、不正の入出国に対しましては、れは力の及ぶ限り努力いたしておる次第でありまして、結局船舶の立入り検査によりまして、あるいは情報によりまして、ある特定の船を検査いたしまして、そして乗つている者が政府の登録説明書を持つておるかどうか、これによつて不正入国者逮捕する以外に道はないわけであります。
  218. 志田義信

    ○志田委員 それでは今までに、船舶その他の検査におきまして、海上保安庁逮捕した出入国者は、出入国管理長官にその名簿を作成して、あなたの方で送付するのでありますが、送付した後の処置につきましては、あなたの方は全然関知しておらないのでありますか。それを承りたい。
  219. 松野清秀

    松野証人 関知いたしておりません。
  220. 志田義信

    ○志田委員 それでは、海上保安庁が知らずに、国内潜入をしました朝鮮八につきまして、それが何らかの機会で、あなたの方の調査にひつかかつた場合には、あなたの方は単独でこれを調査し、あるいは、業務の執行をやつておるのでありますか。それともこれについては、出入国管理庁との間に、何らかの業務協定ないしはとりきめによつて連絡をしてやつておられるのでありますか。その点をひとつ承りたい。
  221. 松野清秀

    松野証人 今のお尋ねは、海上保安庁検挙できなくて潜入した者が……。
  222. 志田義信

    ○志田委員 情報提供その他を受けた場合に、それをどうしてつかまえるかということです。
  223. 松野清秀

    松野証人 すでに国内に入つてしまつて、これは実は潜入したものであるということがわかつた場合には、海上保安庁としましては、その逮捕につきましては、その地方を管轄する国警なり自治警なりに手配するようにいたしております。
  224. 志田義信

    ○志田委員 そうすると、もしそれが同じ上陸地で検挙されるような状態においても、なおかつあなたの方は、自主的には活動しないで、そして国警ないしは自警に、その業務の執行を依頼するという形になるのですか。
  225. 篠田弘作

    篠田委員長 志田君、あなたは遅れていらしたから御存じないかもしれませんが、それは、重複しております。海上保安庁海上における逮捕を担当しておるということを前に証言しておりますから、御参考までに……。
  226. 志田義信

    ○志田委員 海上における逮捕はやつておるだろうけれども、漏らした者はどうなるのですか。また海上に逃げてつかまつた場合には、つかめる状態のときにはそうするのですか、それを聞いておるのです。
  227. 松野清秀

    松野証人 再び海上でつかまつた場合は海上保安官がやるし、また陸上におることがはつきりしておつて、これは潜入したというような情報があつた場合には、あとからそういう情報がありましても、海上保安官逮捕するというわけではなしに、その地方を管轄する警察官にやらせるということになるのであります。
  228. 志田義信

    ○志田委員 それでは最後にお尋ねしますが、そういうことで非常に両者の間に業務連絡に欠けるところがあつたり、あるいはぐあいのわるいことが非常に起きておるように私たちは聞いておるのですが、それに対しては、海上保安庁としてはどういうふうにお考えになつておられますか。その点をひとつお尋ね申し上げておきたいと思います。
  229. 松野清秀

    松野証人 お説のように、実際上は事件捜査関係行政庁と競合するような場合が非常に多いのでありますが、この点につきましては、保安庁といたしまして、海上保安庁法の第三章に規定しております共助の精神にのつとりまして、関係の行政庁と実は緊密に連絡をとりまして、事件の共同捜査をやるとか、あるいは事件の引継ぎとか、その内容等につきましても、その個々の事件につきまして無理のないように実際上は運用いたしておる次第でありまして、さしあたり現在特に支障があるとは認めておりません。
  230. 志田義信

    ○志田委員 そういう場合を聞くのですが、送還をしようとする場合に、あるいは内地に居留させてもいい朝鮮人であるというように、意見の対立する場合に、あなたの方はどういうふうにするかということを聞いておるのです。
  231. 篠田弘作

    篠田委員長 密入国者は全部送還するでしよう。
  232. 松野清秀

    松野証人 そうです。
  233. 篠田弘作

    篠田委員長 密入国者は全部送還するという送還の手続のことはさつき話があつたのです。
  234. 志田義信

    ○志田委員 全部送還しない場合もあるでしよう。事情によつては酌量して、そして海上保安庁出入国管理庁との間で話合いをして、希望によつては残しておる場合があるでしよう。
  235. 松野清秀

    松野証人 そういうような問題の話合いはいたしておりません。
  236. 篠田弘作

    篠田委員長 他に御質問がありますか。——なければこれにて松野証人に対する尋問は終了いたしました。  大体二時まで休憩いたしまして、次の証人の尋問をいたしたいと思います。     午後一時十四分休憩      ————◇—————    開後二時三十六分開議
  237. 篠田弘作

    篠田委員長 休憩前に引継き会議を  開きます。  証人の尋問を続行いたします。  柏村信雄さんですか。
  238. 柏村信雄

    ○柏村証人 そうです。
  239. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいまから密出入国に関する治安行政機関監察の件について証言を求むることになりますが、証言を求める前に、証人に一言申し上げますが、昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宜誓をさせなければならぬことに相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは。証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者、またはこれらの職にあつた者が、その職務知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以上には証言を拒むことはできないことになつております。しかして、証人が正当の理由がたくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宜誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知なつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書を朗読してください。     〔証人柏村信雄君朗読〕     宣 誓 書   良心に従つて、真実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  240. 篠田弘作

    篠田委員長 では宣誓書署名捺印を願います。     〔証人宣誓書署名捺印
  241. 篠田弘作

    篠田委員長 それではこれから証言を求むることになりますが、証言証言を求められた範囲を越えないこと、また御発言の際はその都度委員長許可を得てなされるようお願いいたします。なおこちらから質問しておるときはおかけになつてよろしいのですが、お答えり際は起立して願います。  証人は現在どういう仕事をしておられるかそれについて簡単に説明してください。
  242. 柏村信雄

    ○柏村証人 私は現在国家地方警察本部の警備部長の職にあります。警備部の仕事といたしましては、警備部のもとにありまする警備課、警邏、交通課並びに通信関係の四課の事務を掌理いたしておるのでありまして、警備課におきましては、警衛、警備、外国人、登録令違反の捜査等の仕事をいたしております。警邏交通課におきましては、外勤警察官の警邏活動、交通取締り等の仕事をいたしております。通信関係におきましては警察通信の事務を取扱つております。
  243. 篠田弘作

    篠田委員長 不正出入国及び密貿易検挙状況について述べてください。
  244. 柏村信雄

    ○柏村証人 わが国と朝鮮、中国、台湾、沖縄等の間に行われておりまする密航密貿易の事犯は、終戦後におきまして、政治的、経済的な事情から、急激に増加をいたしておるように思うのであります。なかんずく日鮮間のこの種事犯は、その首位を占めておりまして、国内治安上きわめて大きな影響を与えておるように考えるのであります。  まず密入国について申し上げますと、終戦から本年に至るまで、上陸地におきまする、いわゆる現行犯としての密入国者検挙数は、昭和二十一年が一万七千七百三十三人、昭和二十二年が五千二百三十九人、昭和二十三年が六千百六十人、昭和二十四年が六千三百二十四人、昭和二十五年が千五百七十二人二十六年に入りまして、二月末までの調べが三百五十四人ということになつております。なお警察が上陸地におきまして逃走したものと認定いたしました者は、昭和二十一年三千六百八十三人、昭和二十二年千四百六十七人、二十三年二千四十六人、二十四年二千七百十人、二十五年千百七十人、二十六年が、二月末まで百四十九人というふうになつております。さらに密入国に成功をいたしまして後、強盗、窃盗等によりまして検挙され、その余罪追究の結果として密入国者であることが判明した者、あるいまた不審尋問にかかりまして、その際密入国者と判明した者の数は、昭和二十二年七百七十一人、二十三年四百六十人、二十四年千二百四十九人、二十五年五百三十三人という数を示しておるのであります。従いまして、密入国者検挙総数は、昭和二十二年六千十人、二十三年六千六百二十人、二十四年七千五百七十三人、二十五年二千百五人というふうになるわけであります。私どもといたしましては警察取締りの網をくぐりまして密入国に成功いたした者、あるいは逃走して検挙をまぬがれました者が、このほか相当数に上つておると思われますので、これらに対する取締りを一段と強化して参りたいという考えを持つておるわけであります。  次に密貿易検挙件数でございますが、昭和二十三年が百七十九件、これは輸入が七十五件、輸出が百四件でございます。二十四年が六百十七件、うち輸入が四百七十九件、輸出が百三十八件、二十五年が五百七十件、うち輸入が四百八十件、輸出が九十件、二十六年は、二月末までに二十二件、うち輸入が十五件、輸出が七件ということになつておるわけであります。このうち国籍別の検挙人員について考えますと、日本人が一番多く、次が朝鮮人、それから中国、台湾人という順序になつております。なお押収物件の見積り額は、昭和二十三年が約三億五千万円、二十四年が約八億三千万円、二十五年が約三億二千万円ということになつております。  密貿易の対象となりまする物資は、輸入品といたしましては、薬品、砂糖、外国タバコ、海人草、スクラツプ、皮革、生ゴム等であります。最近におきまして阿片、麻薬等の額が相当増加しているように考えております。輸出品といたしましては、食糧品、繊維品、文房具、雑貨、機械類等であります。以上簡単でございますが……。
  245. 篠田弘作

    篠田委員長 不正出入国者の中で検挙された者の数は、ただいま証人が読み上げたことでわかりましたが、検挙されない者の数が相当数に上るという今のお話ですが、相当数とは、どのくらいを推定しておられるか、それをひとつ……。
  246. 柏村信雄

    ○柏村証人 ただいま相当数に上ると申し上げましたが、われわれ遺憾ながらこれに対する取締りの力が現在十分でないというふうに考えておりますし、また平常の犯罪捜査の上において浮び上つて来る者がぼつぼつ出て参るというような点から、かなり多い数に上つていると申し上げたわけでありますが、どの程度にいるかという推定数については、ちよつとわかりかねる次第でございます。
  247. 篠田弘作

    篠田委員長 国家地方警察は、この取締りに対してどういう機構、あるいはどういう機関を配置しているか、また特に監視哨の配置というようなものをもつてつておるのかどうかということをひとつ……。
  248. 柏村信雄

    ○柏村証人 密航取締りのためには、国家地方警察といたしましては、ただいま申し上げましたように、一般警察官によりまする常時の取締りをできるだけ励行いたしておりまするが、そのほかに、海岸を持つておりまする三十四府県方面隊に二百八十七箇所の監視哨を設置いたしておりまして、監視哨員として千三百十四名をこれに配置いたしておるわけであります。監視哨は、北九州、山陰に現在のところ重点的に配置いたしておるわけでありますが、監視哨員は、警察の監督のもとに固定的な監視または遊動的な監視をいたしまして、密航密貿易の容疑船を発見いたしました場合、またこれらが上陸いたしました場合におきまして、警察署または駐在所にこれを通報いたしまして、警察官がその捜査に当るという仕組みにいたしておるわけであります。このほか警察といたしましては、沿岸の漁業組合に対しまして、密航防止協力組合を監視哨単位に設置し、その協力を求めるようにいたしておるわけであります。また密航船の取締りのため、あらかじめ漁船等の不時の際における借上げを臨時的にできるような契約をいたしておきまして、この借上げ船舶によつて検挙捜査に当るというようなことを考えておるわけであります。客観情勢からいたしまして、現在の施設人員のみではなお十分でないと考えられますので、この面におきましてもできるだけ増強をはかりたいというふうに考えておるわけであります。
  249. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると監視哨というものは警察官を監視哨に配置しておるのではなく、人を雇つて監視哨に配置しておるのでありますか。
  250. 柏村信雄

    ○柏村証人 さようでございます。
  251. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると不正出入国取締りなどについて、出入国管理庁であるとか、海上保安庁、自治体警察といつたようなものとの連絡関係はどういうふうになつて、おりますか。
  252. 柏村信雄

    ○柏村証人 この密航取締りにつきましては、国家地方警察のほかに自治体警察がその管轄区域について取締り責任に当つておるわけであります。そのほかに出入国管理庁という役所が昨年できまして、これが総括的な主管庁として設置いたされておるわけでございます。そのほか税関、海上保安庁等もこれに関係をするわけでありまして、これらの各機関と緊密な連絡をとつて、事態に対処して行かなければならないというふうに平常考えておるわけでありますが、まず出入国管理庁との関係について申し上げますと、昨年十月一日に出入国管理庁が発足いたしまして直後、国警出入国管理庁との間に不法入国者等の取扱いに関する業務協定というものを締結いたしまして、検挙は主として警察が行う、そうして退去強制事務入国警備官が主体となつて、警察はこれに対して必要な協力的援助をするという建前にいたしておるわけであります。この出入国管理庁もまだ発足日なお浅いために、必ずのも十分な活動がされておるというふうには、人様のことでありますが、申しかねると思うのであります。この出入国管理庁ができましたゆえんを考えましても、総括的なこの事務を処理するという出入国管理庁の設置の趣旨にかんがみ、またそれは一面に警察ができるだけ本来の警察事務に専念するという趣旨も含んでおると考えますので、できるだけ連絡を緊密にし、相助けて出入国管理庁設置の趣旨に沿うように努力したいというふうに考えておるわけであります。
  253. 篠田弘作

    篠田委員長 その出入国管理庁というものができたことによつて取締り関係上非常に煩雑になつたというような話も聞くのですが、そういうことはありませんか。
  254. 柏村信雄

    ○柏村証人 従来は警察一本でやつておりましたために、そういう意味から申しますると、手続その他において一貫性を持つておるという便利はあつたと思うのであります。しかしながら御指摘のような、非常に現在まで困つたという事態が頻発しておるとは私考えておりません。これは先ほど申し上げましたように、出入国管理庁の設置の趣旨が総括的にここで仕事をする、また警察にはできるだけ警察本来の仕事をさせるという趣旨もあると考えますので、設置後なお日の浅い現在までの経過によつて、これが非常にじやまになるというような結論を出すのは、まだ当らないのではないかというふうに私は考えております。
  255. 篠田弘作

    篠田委員長 国警でもつて検挙して検察庁に送つたものが、検察庁で起訴猶予とか、不起訴になるものが大分多いというのですが、事実ですか。
  256. 柏村信雄

    ○柏村証人 警察の側におきましては、これは密航者であるという認定をした場合、警察の立場から相当に証拠も固めてやつておるつもりでありますが、検察庁とされましては、公訴の維持という観点からさらに正確な証拠というものが要求されるという建前もありまして、警察から立件送致したものが起訴されずに済んでおるというようなものも相当あるようであります。ただいまここに数字的なものを持ち合せておりませんが、事例としては相当あるようであります。これにつきましては、警察の側におきましても、非常にむずかしいことではありまするが、密航につきましての証拠固めという面において、警察官の教養その他警察技術の進歩発達のために、十分今後努力をして行きたいと考えております。それから先ほどの出入国管理庁について申し上げましたときのほかの官庁との関係ですが、海上保安庁海上取締り責任を持つておるわけであります。海上保安庁におかれても、その機構であるとかあるいは船舶数量であるとか、そういうものがこの取締りのためには必ずしも十分でないというふうに考えられますので、海上において密航者をつかまえるということはなかなか困難であります。従つて沿岸または上陸後において警察でこれを取締るということになる部面が非常に多いように思うのであります。海上保安庁の応援を要請することもしばしばあるわけでありますが、これについてはなかなか船の関係等で要求に応じていただけないこともあるのであります。自治体警察との関係でございますが、自治体警察はその警察署の管内の密貿易事犯取締りという責任を持つておるわけでありまして、おおむね自治体においてもそういう点においては努力されておると思うのであります。ともすればこの密航密貿易というものは、その管轄の自治体に必ずしも深い利害関係がないということから、ほかのことが忙しい場合においては、ややもすれば自治体警察としてはこれに対しての関心が薄くなるということも考えられるわけでありまして、そういう点においても、機関の間に一貫性がないということが、こうした事犯についての取締りを円滑にする面において、不都合な面もあるというふうに考えられるわけであります。なお費用の負担等についても、自治体警察におきましては、先ほど申し上げましたようなその自治体に直接した利害関係が薄いということから、多大の費用を費してまでこれに従事するということは、少くとも小さい自治体においては非常に困難になるのではないかと考えておるわけであります。
  257. 篠田弘作

    篠田委員長 それから紀栄丸事件というのがありますね。その紀栄丸の事件というのはどういう事件つたかひとつ説明してください。
  258. 柏村信雄

    ○柏村証人 紀栄丸事件と申しますのは、昨年の十二月十三日に北海道の目梨郡羅臼港を出発いたしまして十二月の二十日に根室港に寄港いたしました紀栄丸という船があるのであります。この船は六トンばかりの漁船でありまして、その所有者は北海道根室町琴平町の紀ノ国常吉という者であります。その際に乗り組んでおりましたのが船長の富樫光雄、二十九才、機関士の丹島信夫、十八才、この両名が乗り組んでおつたわけでありますが、この紀栄丸が十二月十二日にさきに申し上げました羅臼港に停泊しておりまする際に、自称今川英男と申す者がその船を訪れまして十五日までに帰る予定であるが、バスでは間に合わないから根室まで送つてもらいたいという依頼をいたしまして、翌日の十三日の午前二時半ころその今川という男が他の男一名を同伴いたしまして乗船し、出港をいたしたわけであります。ところが約四十分くらい航行いたしまして、標津郡の茶志骨というところの沖合に参りました際に、今川の連れの男が船主以下五名に対して拳銃をつきつけまして、国後島に航行せよというふうに威嚇をして国後島に向けて進航したのであります。途中ソ連の監視船の誘導を受けまして同日の午前九時ころ国後島のゼンベコタンというところに入港したのであります。この紀栄丸は十三日から二十日までの間二回ほどソ連の官憲から羅臼、根室の戸数、人口、警察官数、進駐軍部隊の状況、羅臼、根室の近海の状況、船舶の状況等について取調べを受け、船員は監視付で船内に留置されていた、こういうことが船主及び船員から届出があつたわけであります。警察といたしましては、右の二名につきまして警察において調査いたしましたところ——ここでちよつと申し落しましたが、さきに乗船を申し込みました今川英男も連れの男に連れられて国後島に上つてしまつたわけであります。そこでこの国後島に上りました二人の便乗者について調査をいたしましたところ、今川英男と申しますのは、北大の農学部の経済学教室に勤務している者で、三十才、もう一人は兵庫県武庫郡元山村岡本というところの住所で、雑誌記者という職業を記載しているわけでありますが、名前は村尾啓一郎、四十才というふうに、旅館において調べたところわかつたわけであります。その他記栄丸の船員につきましては、密出入国に関しまして特別に背後関係があるかどうかということを種々調査いたしましたが、現在のところ容疑はございません。
  259. 篠田弘作

    篠田委員長 それから羅臼を出て四十分後というのは四時間の間違いじやないのですか。四十分ですか。
  260. 柏村信雄

    ○柏村証人 これは四十分だつたと記憶いたしております。
  261. 篠田弘作

    篠田委員長 それではそれはそのままになつてしまつたわけですね。結局二人の者が向うに脱走してしまつて国警としても手がつけられないでそのままになつてしまつているわけですか。
  262. 柏村信雄

    ○柏村証人 向うに渡りました二人の者については、どうもいたし方ないので、この事件はこのままになつております。
  263. 篠田弘作

    篠田委員長 そういつたような小型の漁船でもつて脱出するというような問題については、国警にしても、海上保安庁にしても、自治警にしても、どういう取締りをしていますか。手がちよつと下せないというような実情にあるのじやないですか。
  264. 柏村信雄

    ○柏村証人 北海道のその地方の地理的な状況から申しまして、海上保安庁にいたしましても、国家地方警察の立場にいたしましても、事前にそういうことを察知することができれば、これ阻止することも可能かと思いますが、なかなかそこまで目が届きませんので、こういう事案については今のところどうともいたし方ないような状況でございます。
  265. 篠田弘作

    篠田委員長 北海道の場合は出て行くのも簡単に出て行くけれども、入つて来るのも簡単じやないのですか。
  266. 柏村信雄

    ○柏村証人 これは委員長のお話のようにきわめて簡単にできることではないかと考えます。
  267. 篠田弘作

    篠田委員長 そう簡単に密出入国ができるということになると、その取締りのために現地警察官権限というか、そういうものがある程度拡張されて、たとえば外国渡航証をすぐ見せろとか、あるいは漁船乗組員についても登録証を提示させるとか、そういうような内地では普通やらないようなことでもやるようになつているのですか、なつていないのですか。
  268. 柏村信雄

    ○柏村証人 ただいま御指摘の点は警察官においてその必要ありと認めれば、そういう提示を求めることもできるわけでありますが、むしろそれよりも警察官の数が非常に稀薄であるという点から、十分に個々の問題について捜査を進めることがむずかしいということが実情ではないかと考えております。
  269. 篠田弘作

    篠田委員長 これは表面的に見ると、ただ富樫という船長に頼んで脱出したというかつこうになつておるが、実際には冨樫の父仁八という人は、二十一年に千島から引揚げて来たが、抑留中は密偵の任務を負わされて来た、それで船長がそういう者を乗せて向うにまわつて、また無事にもどつて来たということについても、相当世間でも疑問を持つているのだが、あなた方の方では調べた結果、冨樫船長については疑いは晴れておりますか。
  270. 柏村信雄

    ○柏村証人 現在のところ調査した結果そういう容疑はございません。
  271. 藤田義光

    ○藤田委員長 それから紀栄丸というのは、これは漁船ですか、それとも積荷でも積んでおる船ですか。
  272. 柏村信雄

    ○柏村証人 先ほど申しましたように、六トンほどの漁船でございます。
  273. 篠田弘作

    篠田委員長 運送船だという説があるが、そうではないのですか。
  274. 柏村信雄

    ○柏村証人 私どもの調べた範囲におきましては、漁船ということになつております。
  275. 篠田弘作

    篠田委員長 六トンというと相当の船だが、漁をするということになると二人や三人では漁はできないはずなんですが、そういう点はどうですか、調べてありますか。
  276. 柏村信雄

    ○柏村証人 本来漁船でありましても、常時漁業に従事しているというわけでもなく、羅臼に行つて、そこから根室に回航するという状況にあつたのだと考えます。
  277. 篠田弘作

    篠田委員長 それは漁をして羅臼に行つたのですか。
  278. 柏村信雄

    ○柏村証人 その当日の状況はただいま私記憶にございません。
  279. 篠田弘作

    篠田委員長 これはあなた方は警察の下部組織の報告をそのまま受けておるのだと思うが、北海道ではこれは計画的に行われたのではないかという評判が相当あるわけです。それでこれは漁船ではなくて運送船だ、その運送船が全然積荷もしないで人だけのつけて出て行つたということについては、これはある程度計画的に行われたものではないかという疑いが相当濃厚だというが、あなたの方では自分自身で調べるわけではないだろうが、下部組織からの報告ではそういう疑いが全然ないということで、あなた方もまたそれを信用しているわけですか。
  280. 柏村信雄

    ○柏村証人 ただいま委員長のお話の通り、われわれは現地からの報告によつて、現在のところそれを信用しております。
  281. 篠田弘作

    篠田委員長 漁船とすればどういう漁船であつたかということを調べましたか、何をとつておる船であるか。
  282. 柏村信雄

    ○柏村証人 そこまでは私の手元まで調査は参つておりません。
  283. 篠田弘作

    篠田委員長 あなたはこの密出入国に対する国警としては最高の責任者ですね。
  284. 柏村信雄

    ○柏村証人 最高の責任者は長官でありますが、所管としましては私が所管の部長になつておるわけであります。
  285. 篠田弘作

    篠田委員長 だから国警としての最高の責任者は長管であることはわかつておるけれども、この密入国事務担当者としてはあなたが一番上のわけだね。
  286. 柏村信雄

    ○柏村証人 さようでございます。
  287. 篠田弘作

    篠田委員長 そうすると六トンの漁船で三人乗つていたということになりますが、六トンというものは漁船としてはもちろん大型ではないけれども、そこらで乗つている機船のようなものではないということはわかつていますね。そうすると沿岸の漁業としては六トンといえば大きい方だろうと思うが、そういう船に三人乗つてどういう漁をしておつたか、またどういう器具を積んでおつたかということについては、国警には何も報告はないわけですね。
  288. 柏村信雄

    ○柏村証人 この点ははなはだうかつでありますが、私自身がそれを承知しておらないということを申し上げるしかないのでありますが、ただいまお話のこともありますので、なおよくその点も詳細調査したいと思います。
  289. 篠田弘作

    篠田委員長 報告は見ておらないのですか。
  290. 柏村信雄

    ○柏村証人 私は見ておりません。
  291. 篠田弘作

    篠田委員長 そのほかに徐祐相事件というのがあるそうだが、それはどういう事件ですか。
  292. 柏村信雄

    ○柏村証人 この徐祐相事件と申しますのは、紀栄丸事件に関連いたしまして、羅臼、根室町の旅館その他付近を捜査いたしておりましたときに、先に申し上げました今川と何らか関係があるというふうに考えられまする朝鮮人で、自称徐洪一という者が、根室町の岬町五の十九朝鮮人中元助之という者のところに、昨年の十一月七日から約二週間宿泊しておる。その間同人が拳銃を所持していたこと、なお函館方面の朝鮮人の来訪を受けていたということがわかりました。さらにまた同人は中元方から衣類を窃取し逃走しているということが判明いたしましたので、これを指名手配によりまして、昨年の十二月二十七日に青森県下において逮捕をいたしたのであります。その結果この徐洪一なるものは金正道という名前を使つておりますが、本名は徐祐相という者である。本籍は慶尚南道昌原郡鎭海洞徳山里、それから前の住所が茨城県筑波郡板橋村字門前大城基治というところにおつたということがわかつたわけであります。なお同人は朝鮮の鎭海中学を卒業いたしまして、昭和二十一年の四月ごろに日本の引揚者にまぎれて下関に上陸し、それから前住所におりました実兄の大城基治のところに居住をいたしまして、昭和二十二年から、一昨年在日朝鮮人民主青年同盟というものが解散されたときまで、民主青年同盟の幹部として活躍しておつた。その後各地を転々といたし、主として青森、函館方面に居住しておつたということがわかつたわけであります。同人は警察取調べに対しまして昨年五月ごろから共産党の地下組織の結成並びにソ連地区との連絡責任者として北海道、函館、根室、稚内方面で活躍をいたし、その間日本の共産党員と秘密会議を持ち、武器を入手し、将来北海道を革命勢力の基盤とするように工作していたというふうに自供してしおります、この自供に基きまして警察においてその裏づけ捜査をいたして参つたのでありますが、現在までのところ、そうした符合する事実は必ずしも認められておらぬわけであります。  なおその後の調査によりまして、紀栄丸事牛とも特に関係がないということがわかつたわけであります。この徐祐相は窃盗容疑者といたしまして、根室の簡易裁判所に一件送付いたし、本年の一月二十九日に裁判所において、窃盗罪として懲役六箇月に処せられたのでありますが、ただちに控訴いたしまして、現在保釈出所中でございます。
  293. 篠田弘作

    篠田委員長 現在保釈出所中だというと、現在の住所はわかつておるわけですか。
  294. 柏村信雄

    ○柏村証人 こちらにはその所在はわかつておりません。
  295. 篠田弘作

    篠田委員長 こちらにわかつておらぬということは、地方の地元の警察でわかつていますか。
  296. 柏村信雄

    ○柏村証人 これは根室町の警察署の所管でありまして、根室町の方でどういう取扱いなつておるか、そこまでは承知いたしておりません。
  297. 篠田弘作

  298. 柏村信雄

    ○柏村証人 さようでございます。
  299. 篠田弘作

    篠田委員長 窃盗事件の判決を受けた徐祐相は日本共産党の秘密書類の所在を知つておるというので、根室町の警察刑事が二人つき添つて茨城県に連行の際、当人は行方不明となつたということになつておるのだが、それはどうですか。
  300. 柏村信雄

    ○柏村証人 本人が根室町の署員につれられて茨城県に行く途中逃亡したということは私聞いておりません。
  301. 篠田弘作

    篠田委員長 それではあなたは、どこかにおるに違いない、正式に保釈されて住んでおる、こう思つているわけなんだね。
  302. 柏村信雄

    ○柏村証人 それは保釈一般の問題でございますが、保釈中に逃亡するという事案もかなりあるように聞いておりますので、そこまで安心をしておるわけではございません。
  303. 篠田弘作

    篠田委員長 そういう意味ではなしに、刑事がつき添つて茨城県に連行の際に行方不明となつた。要するに逃亡したということになつておるだから、刑事がつき添つて行く途中から逃げたわけだ。そうするとそういう連絡はあなたの方にはないわけですか。これを一番最初につかまえたのは根室の自治警察ですか。
  304. 柏村信雄

    ○柏村証人 私もそこのこまかいところを十分知つておらないのでございますが、おそらく指名手配で根室の町の署員が青森県下におもむいて逮捕したのであろうと思います。
  305. 篠田弘作

    篠田委員長 指名手配したのはどこですか。
  306. 柏村信雄

    ○柏村証人 指名手配を申し出たのは根室町署であります。
  307. 篠田弘作

    篠田委員長 その徐祐相の保釈金の一万円は根室町の役場から支出しているということだが、そういうことはあるのですか。
  308. 柏村信雄

    ○柏村証人 そういう事実は私は承知しておりません。
  309. 篠田弘作

    篠田委員長 そうするとあなたは何も知らぬということになるね。——そうすると、これは国警自治警察というものが現実にいかに連絡が悪いかという一つの証拠になるのだが、こういう点についてはあなたはどういうふうに考えておりますか。
  310. 柏村信雄

    ○柏村証人 ただいまのお話でありますが、私が聞き漏らしておつたか、あるいは書類として出たのを詳細に読んでいないために知らなかつたかもしれませんので、これだけで国警、自治警の連絡不十分と御判定にならぬようにお願いしたいと思います。
  311. 篠田弘作

    篠田委員長 ぼくが特別に考えるわけではないけれども、実際問題として、あなたはここへこういう問題について証人として喚問されて来ているのであるから、その下準備として相当いろいろなものを調査して来ているはずであるが、そのあなたがわからないということであれば、書類が来ておつたけれども読まなかつたというようにはわれわれは解釈できない。結局あたは十分に準備して来ておる。その準備をして来ておるにもかかわらずわからぬということは、連絡が悪かつたと解釈する以外にないから、その点を聞いておるのでありまして、個人の怠慢であるとか、そういうことを聞いておるのではない。自治警と国警連絡あるいは将来改全すべきものがあればどういうふうにすべきかということを聞いておるので、あなた一人で何もかぶる必要はない。  その次に第三朝日丸事件というのがあるそうですがそれはどうですか。
  312. 柏村信雄

    ○柏村証人 第三朝日丸事件と申しますのは、これに関係いたします、おもなる人間といたしまして崔武甲というものがおります。     〔委員長退席、佐々木(秀)委員長代理着席〕 この崔武甲というものが北鮮との連絡のために、第三朝日丸という船を買い受けまして、昭和二十五年の四月三十日に北海道の松前港を出帆いたし、五月五日に北鮮の元山に到着し、元山におきましてドラムかん十二本、うにのたる詰百七十箇を積載いたしまして、朝鮮人三、四名を便乗させて五月二十六日に元山を出港いたし、山形県の酒田港を経まして秋田県の土崎港に到着したわけであります。そこで密輸品を陸揚げいたしました後に、本人はここに上陸いたしまして荷物を東京に発送して、みずから上京してその荷を受取ろうとする際に検挙をしたわけであります。一方第三朝日丸は五月三十日に土崎港を出帆いたしまして、翌三十一日に北海道の函館港に入港したところを検挙されたものであります。  本件の首謀者であります崔武甲と船主の長谷四郎、船長の才門勒四路、これらはいずれも日共の党員でありまして、特に崔武甲というのは朝連の岡山県本部の副委員長とか書記長を歴任した男であります。今回の事件におきまして、出港前に準備金として長谷に対して四十万円を手渡しておるということがいわれております。また元山に碇泊中におきましても、北鮮の政治局員と称するものの来船もしばしばあつた模様であります。なおこの船はウラジオストツクの方にもおもむいたということを、取調べのうちに漏らしておるものがありますが、崔武甲とか長谷の両人はこれを否認いたしております。なおこの船には、朝連の中央総本部の中央委員でありますところの朴龍鎬というものが家族とともに便乗して、元山に行つて下船しておるということがいわれておるわけであります。  これらの処分の状況でありますが、昭和二十五年八月二十九日に函館地方裁判所におきまして、崔武甲は懲役三年、長谷四郎は懲役一年、才門勒四路は懲役一年、同船者の高田繁一、金澤某というのは懲役十箇月ということになつております。別に追徴金として一万四千七百九十四円を各人に供料し、船舶は没収されたわけであります。これに対しまして、長谷を除きます四名は八月三十一日に札幌高等裁判所函館支部に控訴手続をとりました。その後これを取下げて、現在札幌刑務所において服役中であります。長谷四郎は九月四日に札幌高裁に控訴いたしましたが、十二月十八日に棄却され、同月の二十六日に最高裁判所に対しまして上告して現在に至つている状況であります。
  313. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 それでは次に不正入国者発見の手段の一つである外国人登録証明書について述べていただきたいのですが、その第一として、現行規定ではその書きかえが三年に一度である。これは三年に一度では不十分じやないかというような意見もあるのですが、あなたのお考えをひとつ述べていただきたい。
  314. 柏村信雄

    ○柏村証人 現行規定におきましては、有効期間が三年ということになつておるわけでありますが、警察取締りの面からいたしますると、三年というのは少し長いのではないかというふうに私ども考えておるわけであります。と申しますのは、その間登録証明書の様式が一定しておりますので、これの偽造が行われるおそれもありまするし、また三年という長い間にわたりまして常時携帯しているということから、相当破損をする、従つて識別が困難になるというふうにも考えられますので、警察取締りの面からいたしますると、なるべく期間は短かい方が適当である。しかしながらいろいろその他の事情もありましようから、短かいと申しましても極端にこれを縮めることもできないと思いまするが、われわれとしては立場上そういうふうに考えております。
  315. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 それではもう一つ。相当数の証明書を扱つておるでしようから、紛失されて再交付願いが相当数あるだろうか思うのですが、再交付をするときの手続があまりにも簡単過ぎるじやないかと思われるような点があることもあるのですが、今のような手続では簡単過ぎるかどうかというようなことについてお考えを述べていただきたい。
  316. 柏村信雄

    ○柏村証人 紛失、盗難等を理由とする再交付申請が相当にございます。昨年四月以降本年一月までの毎月の平均を見ますと、大体三百件程度なつております。このうちには相当数虚偽の申請もあると思われるわけでありますが、従来ややもすると市町村役場等において比較的簡単に再交付をいたしておつたような事情もありましたので、これを悪用する者も少くなかつたというふうに考えられるわけであります。そこで国家地方警察といたしましては、出入国管理庁と協議をいたしまして、三月七日付をもちまして、出入国管理庁よりは市町村に対し、また国家地方警察からは全国の警察に対しまして連絡をいたしまして、愼重にこれを取扱う。たとえば市町村役場において申請がありました場合には、単に紛失盗難届出の証明書に依存するばかりでなくて、市町村独自の立場で十分これを再調査するようにしてほしい。また警察の側におきましては、紛失盗難の届出を受理した場合においては、その真実性をあくまでも調査いたし、そうして居住の事実を確めまして紛失の事実を明らかにしまして、その上で証明をするようにするというふうに、十分慎重を期するように連絡をいたしておるわけであります。
  317. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 しかし発行責任者は市村長になつておりますが、現在の市町村におきましては、経費その他の関係でこの複雑なる事務を十分にやり得ない点がある。でその調査を厳密にやるべきは当然であるが、経費その他係官の不足等によつて厳密なる調査ができないように考えられる点もあるのですが、現在市町村長を責任者として担当させておりますが、現在のような状況ではたして十分であるかどうかという点についてのお考えをひとつ述べていただきたい。
  318. 柏村信雄

    ○柏村証人 ただいま御指摘のありましたように、陣容その他において十分であるとは申し上げがたいと思うのでありますが、特にわれわれといたしましては、警察において、この紛失、盗難の証明を正確にする方法が講ぜられまするならば、もちろん市町村が独自の見解でやるという建前をくずすわけではございませんが、その証明に相当の信頼性を持つてもらうこともできるのではないか、われわれ警察の立場といたしましては、そういう面に強く今後注意を払つて行きたいと考えております。
  319. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 そこでもう一つお伺いしませが、そうすると警察責任を持つて調査をし、れからその証明書を配付するまでの調査事務警察がやる、それに基いて市町村長が証明書を発行した方が的確に行くんじやないかというお考えですか。
  320. 柏村信雄

    ○柏村証人 現在におきましても、両者協力いたしまして、警察が届出によつて証明書を出しその証明書のついたものに再交付するという行き方にはいたしておるわけでありますが、これがややもすれば形式に流れたきらいがあるということから、警察が実質的な調査を十分遂げたい、ただ警察にばかりたよるという考え方はやめていただいて、町村としても当面の責任としてやはり調査をしていただくことは留保したいという考えであります。
  321. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 それから相当偽造物や変造等があるということも聞いておりますし、その偽造もなかなか上手になつているのです。そこで今のような方法じやいかぬ、ひとつ一人一人指紋をとつて置いたらいいじやないかというような意見も、きのうあつたように私記憶するのですが、あなたとしては、指紋をとつた方がいいか悪いかにつきましてひとつお考えを述べていただきたい。
  322. 柏村信雄

    ○柏村証人 外国人登録証明書につきまして、指紋をとることは、この制度ができまする当時においてもある程度の研究はされたわけでありますが、指紋は、現在の一般の市民の感情として、何か犯人扱いをするような印象を与えるというようなことが、おそらく主たる理由でなかつたかと思うのでありますが、現在写真だけにいたしておるわけであります。しかしながら、指紋をとることは、外国においてもそういう例があるようでございますし、御承知のように、指紋は万人不同である、しかもこういうものについては、必ずしも十指の指紋を必要としない、あるいは指をきめておいて、一本の指紋でも必ずしも不適当だということにもならないかと思いますので、われわれとしましては、指紋までこれにつけ加えることが、偽造、変造を防ぐ最もよい方法であろうというふうに考えておるわけであります。なおこのことは、決して朝鮮人に対してこれを犯罪者扱いにするという趣旨ではなくて、むしろそうすることが義良なる朝鮮人の人権を保護し、尊重するゆえんにもなるのではないかというふうに考えております。
  323. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 今柏村証人は、朝鮮人ということのお言葉がありましたが、これは外国人登録証明書全般についてお聞きしているのですが、朝鮮人と限つてですか、それとも指紋は全般に外国人全体の指紋というのですか。どつちの意味ですか。
  324. 柏村信雄

    ○柏村証人 これは外国人全体について、そういう考え方をとりたいと思います。
  325. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 まあ外国人登録証明書はそれくらいにしておきますが、次に不正入国者の検疫についてどういう処置をとられているか、ひとつ述べていただきたいと思います。
  326. 柏村信雄

    ○柏村証人 従来不正入国者に対します検疫につきましては、立法的措置が特にとられておられなかつたわけでありまして、警察なり海上保安庁なりの取締り機関におきまして、自主的に厚生省の各関係機関と連絡をとつて実施をして来たわけであります。しかしながら朝鮮動乱の発生によりまして、不正入国者が激増するおそれがある、またこれに伴う各種の伝染病の流入ということも必然的に予想いたされましたので、これが対策につきまして、厚生省、海上保安庁等と協議をいたしました結果、不法入国者臨時衛生措置要領というものを決定いたしまして、昨年の七月十一日と八月十六日に、全国の各府県にこの要領を示したわけであります。その要領と申しますものの概要は、警察または海上保安庁不法入国者検挙いたしました場合は、なるべくすみやかにもよりの保健所にこれを連絡して検診せしめる、検診によつて患者を発見したときは、ただちに隔離、収容する、癩患者を発見いたしました場合は、癩予防法によつて措置する、なお不法入国者全部について予防接種を行う、それから不法入国者乗船いたしました船、不法入国者の着衣、所持品等には、必ず消毒を実施するというような措置を講ずることといたしたわけであります。
  327. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 そこで癩患者が相当朝鮮から日本に入つているというようなうわさも聞くのですが、あなた方の今まで取扱つて来た中で、癩患者というはつきりした病名のついた不法入国者がどのくらいありますか。御記憶がありましたら述べていただきたいと思います。
  328. 柏村信雄

    ○柏村証人 癩患者について、私正確な今数字を記憶しておりませんが、警察において関係して処理した事件二件だけは記憶にございます。
  329. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 それでは委員各位から……。
  330. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 昨日のこの委員会におきまして、出入国管理庁の第一部長は、現在月平均二百名くらいの朝鮮人の不法入国者逮捕しておる。もちろん逮捕されない者の数はどのくらいかはつきりわからないという証言行つておるわけでございまして、しかもその二百名のうちの三分の一は長崎県である。長崎県のうちでもその大部分がまた対馬方面である、こういう証言を昨日されたのでありますが、実は対馬の地形は、御承知の通りあなたの部下である山口警視も去年本多国務大臣に随行して視察されたことがあるから、報告等によつて御存じでありましようが、日本の内地、福岡からは七時間かかるのに、朝鮮からは四時間しかからぬ、要するに朝鮮の方がはるかに近いというような地理的状態にありまして、私もその当時その行に同行したのでありますが、われわれが佐須奈という対馬の一番北にありますところの警察署を視察したその日、たつた一日で八十名つかまつたというような状況でございまして、密輸品等は警察署に山積しておるというような状況をわれわれは目撃したのであります。どう見ましても警備力が薄弱であるという感じを受けたのでありますが、あなたはこの警備力に対してどういうお考えを持つておるか、これは昨年一月のことでありましたが、山口警視もおそらく私と同じような感じを持たれただろうと思うのであります、話の片鱗においてもそういうことが受取れたのであります。その後あなたもそういうお考えであるか、またその後若干の補強をされたかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  331. 柏村信雄

    ○柏村証人 ただいま岡委員の御質問でありますが、確かに密航者の最も集まりますところが対馬でございます。ところがこの対馬におきましては、現在警察署が国警の地区署が二署ありまして、警察官数が二つの地区署合せまして七十五名自治体警察は一つでありまして、ここが十二名の定員でございます。合計八十七名という警察官でありまして、ただいま御指摘のように、密航に対する警備力としては非常に手薄であるというふうに考えますので、今後この対馬方面における警備力の強化ということにつきましては、できるだけの努力を払つて万全を期して参りたいと考えておるわけであります。
  332. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 朝鮮人の問題では、長崎県は非常に迷惑しておるのであります。きのうもここの中心の話題に上つたのでありますが、御承知の通りたつた一つ朝鮮人の収容所というものが長崎県の大村にある。そこでこの間北鮮の共産系の扇動によつて、暴動を起したりしたような事実もございますが、おそらくそういう報告をお受取りになつておると思いますけれども、そういう際、地元の大村の自治警察なり、あるいは長崎国家地方警察なりが、とにかく取締りその他において非常に迷惑を受けられた、ですからそういう点もあわせて、これは日本にたつた一つしかない機関でありますし、また先ほど委員長からの質問にもありましたが、癩患膚等が来たりして、そういう点でも迷惑を受ける、こういつたようなことがあるのでありますから、それらのことについて、国家としても相当なお考えをしていただきたいと思うのでありますが、そういう用意があるか、どうか、伺いたい。
  333. 柏村信雄

    ○柏村証人 長崎県が密航その他これに関連した意味において、非常に警備上重要なところであるということは、ただいま御指摘の通りでありまして、われわれとしてもこれに対する万全の備えをしたいといいうふうに考えておるわけであります。もつとも大村の収容所に対しましては、直接的には先ほど来出ております出入国管理庁においてこれを警備することになつておりまして、これの外郭的警備というような意味において、われわれとして考える必要があるものと思いますが、この収容所に関しては、出入国管理庁において十分やつていただきたいというふうに考えておるわけであります。なおただいまのお話のように長崎県が密航関係において非常に重要であるということとあわせて、全体の警察の力というものが、私どもとしましても、どうも陣容においてもまた能率においても、十分に発揮されていないように考えますので、この点につきましても、今後できるだけの努力をして参りたいと考えておるわけであります。
  334. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 柏村君に一、二点お伺いいたしたいと思いますが、武器密輸取締りに関する事柄であります。  去る二十三日ころの東日所載の外電によりますと、最近イタリアで共産党員が、革命の自衛手段と称して多量の武器をソ連より入手していたことが発見されたと伝えられておるのでございます。わが国におきましても、もちろん密輸取締りをおやりになつておることとは承知いたしておりまするが、比較的警備の手薄な新潟とか秋田とか、あるいは富山の沿岸に船で持つて来て、さらに北上しまして北海道に陸揚げをして、ソ連製武器を共産党員に送るという方法が、主として旧朝鮮人連盟及び民主青年同盟を通じて行われているといううわさを聞きますが、かかる事実があるかないか、またこれがうわさによると、北海道辺区人民政府というものに対して、いろいろな関連を持つておるということもちらほら聞くのでありますが、こういう事実があるかないか、この二点についてひとつ承りたいと思います。
  335. 柏村信雄

    ○柏村証人 武器密輸の点でございますが、これらに関しまする情報は非常に多くあるわけでありまするが、ただ現在までのところ確実に密輸されてこれが多量に隠匿されておるという事実をつかんでおらないわけであります。  なお北海道辺区人民政府の問題は、先般週報にも登載されておりましたが、これにつきましても現在調査中ではございますが、確実なものとして認める段階には至つておりません。
  336. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 二つのものについては、あまり証拠資料として関連があるということはないわけですか。まだ手がかりなども言つて来ないわけでございますか。
  337. 柏村信雄

    ○柏村証人 これは情報としましてはいろいろ耳に入るのでありますが、これが裏づけの調査をいたしました結果においては、これを確認する段階に至つておらない、十分に今後注意をして参りたいというふうに考えております。
  338. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 本年の二月二十六日でありましたか、東京都の深川署で逮捕した朝鮮人の朴吉桂、これがソ連製のMT二八一九、一九四九年型のピストル一挺を所持しておつたと伝えられておりまするが、こういう事実は明らかにソ連製の武器がどこかから密輸入されておるということを証明しておるのではないかと思いますが、この点について柏村君の御意見を承りたい。
  339. 柏村信雄

    ○柏村証人 私もその話は耳にいたしておりますが、直接取調べに当つておりませんので、どの程度確実なものであるか現在承知いたしておりません。
  340. 島田末信

    ○島田委員 不法出入国者及び密貿易を取締る機構といたしましては、出入国管理庁を総括的主管庁として、あるいは国警なり自治警なりあるいは海上保安庁だとか、税関だとかいうものがおのおの協力してこれを実行するというのでありますがどうもいろいろお話を聞かされたり調査した範囲内では、出入国者管理庁は独力ではとうていこの取締りの任に当るだけの力を持たない、しかもこれに協力するという上から見れば、いかにも形式はうまくできておるようだが、そこに緊急な連絡が十分にとり得ない立場にあるのではないかと思う。かつまたいろいろ調査した結果では、ほんとうに取締る実力を持つているのは、いわゆる国警が随一であり、また大部分国警によつて処理せられるべきものではないかというふうに考えられるのですが、実際に効果を上げる上において、はたして今の機構組織でいいのであろうか、あるいはまたこれを実際的に活動する上から、国家地方警察というようなものがむしろ主導権を握つてすべてをやつて行かなければなかなか実効が上らないのではないかというふうに観察もいたしておるのです。これに対するあなたの御見解をお述べ願いたいと思う。
  341. 柏村信雄

    ○柏村証人 ただいまお話の点は現在におきまして海上保安庁海上における取締りに船舶その他の関係から十分に活動できない。また出入国管理庁も独力でこれを完全に遂行することができないということは、私事実であると思います。ただ先ほどから申し上げておりますように、出入国管理庁も発足まだ日浅いのでありましてしばらくかすに時をもつてして、その実積を見ていただかなければならないのではないか、またその設置の趣旨が、こういう問題についてできるだけ総合的な官庁において取扱う、警察警察独自の問題に専念するようにしたいという趣旨もあるわけでありまして、現在の時点をつかまえまして、どういうことが一番いいかということになりますれば、率直に申しまして国警が一貫してこれを処理するということが能率的であるということは申し上げられるかもしれませんが、将来にわたつての問題を考えますと、現在はまだその結論の時機ではないのではないかというふうに考えておるわけであります。
  342. 島田末信

    ○島田委員 それから最近の国際情勢なりあるいはまた日本の置かれた立場なども総合して考えますると、どうも密航だとかあるいは密貿易だとかいうふうなできごとが、単なる個人的な営利観念といいますか、利害本能から来るいわゆる一もうけをするというふうな考え方だけでやつておる者ももちろんあるでありましようが、その間に便乗するといいますか、あるいはそういつた一つのできごとの中に介在して、あるいは背後関係のある相当計画的な一つのできごとが、この中に常に動いておるのではないかというふうなことも強く推測されるのでありますが、最近の不法出入国者並びに密貿易関係者の検挙された者、あるいは検挙されずして逃亡した者、そういうできごとの中に、こういう陰謀的な計画がひそんでいる模様があるかどうか、こういうことについての一応の御観察を伺いたいと思います。
  343. 柏村信雄

    ○柏村証人 密航密貿易の背後関係についてのお尋ねでございますが、確かに御指摘のように、これが単に個人的な生活の問題とか、あるいは商売上の問題であるとかいうようなことだけで、この問題が行われておるとは考えられない節も出て参つておるのであります。先ほど申し上げましたように、その目的が那辺にあつだかということははつきりいたしませんが、とにかくもある思想的な見解を持つた者によつて密航が企てられておるという事実も具体的に出ておるわけであります。しかしながら、そうした思想的、政治的な意味において直接的に行われたものであるかどうかということは、ここで断言し得ないわけであります。そういうことがあり得るということについては、われわれも十分注意をいたしまして、今後の取締りに当つて参りたいと考えておるわけであります。
  344. 島田末信

    ○島田委員 先ほども福田君からちよつと話が出ましたが、北海道における辺区人民政府の樹立というような、情報といいますか、デマといいますか、こういうことにつきましても、もしそういう陰謀的な計画が着々と進みつつあるというようなことでもありますならば、われわれ国民としても、たいへんな重大問題であり、また一日もゆるがせにできない問題であります。これに対しても、先ほどまだ十分その実態がつかまれていないようなお話でありましたが、私はこういう問題が、たといデマであるといたしましても、一部に伝わつておる今日、一日もすみやかにその実態をつかまえなければいかぬのではないか、そういう計画が隠密のうちに進められておるかどうか。あるいはまたこれがにせ情報であつて、単にわが国民の神経戦をねらつた一つの仕事であるかどうか。さらにまたこういうにせ情報を一つの売りものにして、生活のかてにしておるようなばかものもあるかもしれないし、いずれに真相があるかということも、特に今日国家警察の任にある者といたしましては、その真相をきわめて国民を一応安心させるとか、あるいは進むべき方針をはつきりさせるということが大切だと思うのであります。これらと関連して、今の密航密輸入というような問題につきましても、その間どうもこういうえたいの知れないいろいろのデマが飛ぶとか、あるいはまた実際に国民の側からいえば、あるいはそういうことが隠密のうちに何か計画されておるのではないかというふうな、非常な不安も持つておるときにおいて、これらすべて——特に不法入国者につきましては、最も関心が置かるべき問題じやないかと思うのであります。これに対して国家警察、特に実力を持つておる機関といたしましては、十分ここに対策が樹立さるべきであるというふうに考えるのでありますが、これらの総合的な問題について、あなたの御見解を承つておきたいと思います。
  345. 柏村信雄

    ○柏村証人 ただいま御指摘の点は、一々ごもつともに承わるけであります。現在のごとき国際情勢また国内の情勢からいたしまして、そうした事案が現実にあるということになれば、非常に大きな問題でありまするし、かりにそうしたことが現実になくても、そうしたことによつて人心が不安になるということは、治安上重要な問題だと考えておるわけでありまして、警察の力の限りを盡しまして、十分にこうした情報についての確度を明確にし、そうして、もしそういう計画がされるということであれば、これをできるだけ未然に防ぐ、あるいは小規模のうちに除去するということが考えられなければならぬし、またそういう事態がないということであれば、できるだけすみやかな機会において、正確な資料に基いて人心の不安を一掃することに努めなければならないと考えるわけであります。ただいまお話の点は、私どもも十分に肝に銘じて平常心がけておる問題でありますので、この際申し上げておきます。
  346. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 最後に柏村さんにもう一点伺つておきますが、日本週報に載つております北海道辺区人民政府に関する記事をお読みでございましようか。
  347. 柏村信雄

    ○柏村証人 私はそういうものが出ておるということは承知しておりますが、こまかにこれを通読はいたしておりません。
  348. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 今あなたの御発言の中にもありましたが、こういう記事の内容が真実か虚偽か、いずれにしろこういうものが出るということは、人心を非常に撹乱し、かつまた治安に対して非常に憂うべき不安動揺を与える、こういうことをおつしやいましたが、われわれもまことに同感でございまして、私といたしましては、治安の任にあるあなた方がこういう記事をすみやかに読まれまして、そうして現在までの情報なり、捜査の過程においては、実態はかくかくであるということを国民に知らして、そして国民の協力を求め、治安の将来につきまして遺憾なからしむるように、ぜひ万全の措置を講じていただきたい、これは希望でございます。
  349. 大森玉木

    ○大森委員 最後に私も一言お尋ねして、さらに強硬な意見を申し上げたいと思う。先ほどからお話がありましたように、私どもは、地方では武器の密輸入がされておるというようなことを聞いておる。それは情報はあるけれども、そういうことはまだわかつていないというふうに御答弁になつたのであります。この点は国家の治安をあずかるあなた方としては、よく考えていただきたいと思う。まず御承知のように、共産党員が八名ですか、これが地下にもぐりましてから今日までそれを逮捕することができない。そうすると密貿易でいわゆる軍需品が来ておつたといたしましても、かくのごとき有様であつたならばわれわれは非常に不安なのであります。でありますから、もう少しあなた方においてもひとつ強硬な態度で、しかも望めるならば、もう少し何か力強い方法をもつて捜査に当つていただきたい。先ほどからいろいろお話がありましたが、実は私どもの方のやはり海岸地帯であつて一番ねらわれるのが石川県の能登半島である。ここが一番上陸しやすい。こう考えておるのでありますが、これを手引きするのは何を申しましても共産党の人たちである。こう申し上げても私は過言ではないと思います。こうした危険な人たちがおるのであるから、これらに対してあなた方は、今は特高というようなものがなくなつたのであるけれども、一時間もこうした人たちの身辺から目を離してはならぬのではないか。すでに地下にもぐつてから数箇月になるけれども、まだこれを逮捕することができない。貧弱な警察というと語弊があるかもしれませんが、非常に貧弱であるということを申し上げなければならぬ。これでは私ども治安を託’しておる国民といたしましては、非常に心もとない気持がするのであります。であるから、あなた方の現在の力においては、これはどうにもならないんだというのであるならば、国家に要求して、予算なり、人をふやすなり何かして、われわれが安心して、枕を高くして寝れるような方法を講じなければならぬのじやないか、あなた方が確信を持つておられるならばいいのである。しかしながら私どもこれに参画して、しかもこれを決議をし、これをきめられるところの立場におる者どもが、ただ不安々々といつて、あなたにたよつてばかりおつてはならない、だからこれはあなた方が、どうしてもいかぬのならいかぬということを責任者として言つてくれれば、われわれが何か講じなければならないということがここに初めて生れて来ると思うのであります。そういう点に対してあなた方の確信はどうかということをお尋ねいたす次第でございます。
  350. 柏村信雄

    ○柏村証人 警察警備力の不十分ということについてただいま御指摘があつたわけでありまして、これは私ども努力の足りない点を痛感いたしまして、まことに申訳なく存ずるわけでありますが、われわれは現在の限られた陣容におきましても、過去においてこの警備力強化という点についてできるだけ努力をし、現在もこれに努めて曲るわけであります。力の及ぶ限りは努力をいたしたいと考えております。ただいまもお話のありましたように、こうした国内の情勢に対処するためには、やはり警察力、警備力といたしまして、どうしてももつと組織の上においても強化するようにおはからいが願いたいということが、私どもの一つの念願でございます。ただこれは国政においてお定めになることでありますので、われわれは与えられる範囲におきまして十分の力をいたしたい、こういう覚悟を申し上げておきます。
  351. 大森玉木

    ○大森委員 それでよくわかつたのでありまするが、なおここは立法府でありますから、そういう点に対してわれわれがこれを考えなければならぬということは当然であります。しかしながら今私ども聞くところによると、この警備隊の中にも、あるいは警察の幹部の中にも、まだ共産党員が残つておるようなことを聞くのです。そういうことであるならば、これほど恐るべきものはないのであります。この間も新聞で見ましたけれども、警察予備隊へ入つて行つた学生か練習生か何かが、共産党の幹部の仲間であつたということも聞いております。なおまだいろいろた風説によりますると、警視庁あたりでも、まだそうしたものが残つておるというようなことも聞くのでありまするが、こうした点に対しては、あなた方は一層の調査をするとか、気構えをもつて一掃されぬことには、これほど危険なものはない。あなた方の捜査の中そういうものがおるということでありまするならば、これはもつてのほかだ、それこそ何をこさえてもだめだ、いかに人員が完備しましても、あるいは武器が完備しましても、その扱う人が反対の方であれば味方を撃つのである、こういうことではならないのでありまするから、この点をよくあなた方に注意をしていただいて、そうした者がないように、そうしてわれわれがまくらを高くして寝れるような方法を講じていただきたいという希望を申し上げておきます。
  352. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 それではあと二点ばかり私の方からお伺いして終りとしますが、先ほどの第三朝日丸のことにつきまして、その船長である才門という人は北海道の道南地区と申しますか、道南の共産党海上オルグの責任者として、第三路線を利用する党輸送物資の任に当つていたということが判明したと言われておるのですが、これは事実でありますか、お答え願います。
  353. 柏村信雄

    ○柏村証人 これらのものを取調べておる過程におきまして、そういうことが判明したということは事実でございます。
  354. 佐々木秀世

    佐々木(秀)委員長代理 もう一つ、これは私の方で気のついたことですが、午前中に海上保安庁からおいでを願いましていろいろ喚問したのですが、海上保安庁の方では、二十五年度における不法入国者の総件数が、取扱つたのが百七十件、その人員が九百二十二名というような御証言があつたのですが、先ほどあなたの証言によりますと、国内において不法入国者として逮捕された者が、二十三年は六千何百名、二十四年は七千四百名ということでありますが、不法入国者というのは海上で押えることが一番なのであるが、その数字からいうと、押える方は何分の一というような事情をわれわれは知つたのです。こういう点につきまして、海上保安庁等と十分連絡をとつて、陸上にあがらないうちに押えることが、不法入国者のいわゆる取締りとしては最も適当な処置ではないかと考えまするので、海上保安庁あたりと十分連絡をとつて万全を期していただきたいということを申し上げまして、本日の柏村証人に対する尋問は、これで終了いたします。柏村証人には非常に御苦労様でございました。  本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもつておしらせいたします。     午後四時十七分散会