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1951-03-27 第10回国会 衆議院 行政監察特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十七日(火曜日)     午後二時二十五分開議  出席委員    委員長 篠田 弘作君    理事 佐々木秀世君 理事 島田 末信君    理事 塚原 俊郎君 理事 内藤  隆君    理事 小松 勇次君 理事 山口 武秀君       井手 光治君    大泉 寛三君       岡延右エ門君    鍛冶 良作君       中川 俊思君    中村  清君       福田 喜東君    久保田鶴松君       高倉 定助君  委員外出席者         証     人         (出入国管理庁         第一部長)   田中 三男君     ————————————— 本日の会議に付した事件  証人出頭要求に関する件  密出入国に関する治安行政機関監察の件     —————————————
  2. 篠田弘作

    篠田委員長 これより会議を開きます。  密出入国者に関する治安行政機関監察の件につきましては、事務局におきまして基礎調査中でありましたが、基礎調査も完了いたし、ただいまお手元に差上げてある調査報告書もでき上りましたので、理事会におきまして協議の結果、本委員会において証人を喚問して調査を行うことに意見の一致を見ました。  証人として、本日は出入国管理庁第一部長田中三男君、明二十八日は、海上保安庁警備救難部長松野清秀君、国警警備部長柏村信雄君の主君を喚問いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 篠田弘作

    篠田委員長 御異議なければ、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 篠田弘作

    篠田委員長 それではこれより証人田中三男君の証言を求むることといたします。  田中三男君ですね。——ただいまより密出入国に関する治安行政機関監察の件について証言を求めることになりますが、証言を求める前に証人に一言申し上げます。昭和二十二年法律第二百二十五号議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合には、その前に宣誓をさせなければならぬことと相なつております。  宣誓または証言を拒むことのできるのは、証言証人または証人配偶者、四親等内の血族もしくは三親等内の姻族または証人とこれらの親族関係のあつた者及び証人の後見人または証人の後見を受ける者の刑事上の訴追または処罰を招くおそれのある事項に関するとき、またはこれらの者の恥辱に帰すべき事項に関するとき、及び医師歯科医師、薬剤師、薬種商、産婆、弁護士、弁理士弁護人公証人、宗教または祷祀の職にある者またはこれらの職にあつた者がその職務上知つた事実であつて、黙秘すべきものについて尋問を受けたときに限られておりまして、それ以外には証言を拒むことはできないことになつております。しかして証人が正当の理由がなくて宣誓または証言を拒んだときは、一年以下の禁錮または一万円以下の罰金に処せられ、かつ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処せられることとなつておるのであります。一応このことを御承知になつておいていただきたいと思います。  では法律の定めるところによりまして証人宣誓を求めます。御起立を願います。  宣誓書朗読を願います。     〔証人田中三男朗読〕     宣誓書   良心に従つて、直実を述べ、何事もかくさず、又何事もつけ加えないことを誓います。
  5. 篠田弘作

    篠田委員長 署名捺印してください。     〔証人宣誓書署名捺印
  6. 篠田弘作

    篠田委員長 これより証言を求めることになりますが、証言は、証言を求められた範囲を越えないこと、また発言の際は、その都度委員長許可を得てなされるようお願いいたします。なお、これから証言を求める場合はおかけになつていてけつこうですが、お答えの際は御起立を願います。  証人はただいまどういう仕事をしておられますか。
  7. 田中三男

    田中証人 出入国管理庁第一部長の職についております。
  8. 篠田弘作

    篠田委員長 不正入国者の数及びその取締り状況について述べて下さい。
  9. 田中三男

    田中証人 不正入国者は、現在月に約二百名内外ございます。この二百名内外のうちの約七、八割は、登録令第三條の違反、すなわちいわゆる不法入国者でございます。そのうちの二、三割が、登銀令第十六條によります外国人登録令手続違反者でございます。現在の法令の定めるところによりますと、これらの者は一応刑事手続をまず経ることになつておりまして、検察庁の手で起訴されて刑務所に服役する者、服役の終つた者、並びに起訴猶予になりました者が、出入国管理庁の方にまわりまして、これをわれわれの手で退去令書を出しまして、一応長崎県の大村市にございます収容所に収容いたしまして、送還船を待ちましてこれを本国送還いたしております。しかしこれは大体韓国人及び中国人の場合でございまして、欧米人につきましては、横浜が主でございまするが、目下のところわれわれの方に収容所がございませんので、警察留置所をお借りいたしましてこれに収容して、便船を待つて本国送還いたしております。
  10. 篠田弘作

    篠田委員長 ただいま月二百名内外と言われたのは、それは検挙された数字ですね。
  11. 田中三男

    田中証人 これはただいま申しましたように、現在の手続では刑事先行主義になつておりまして、一応検事の手で起訴するか起訴しないかがまずきまるわけであります。そのあとでわれわれの方が退去を強制するという手はずになつておりますので、今申しましたように、起訴された者及び起訴猶予を含むわけであります。
  12. 篠田弘作

    篠田委員長 ですから言いかえれば、検挙された者だけが二百名内外というわけですね。
  13. 田中三男

    田中証人 さようでございます。
  14. 篠田弘作

    篠田委員長 そのほかに検挙されないで、未逮捕のまま国内に潜人する者が相当あると思われますが、そういう者は大体推定どのくらいあると思われますか。
  15. 田中三男

    田中証人 この数字は実はまつたくわからないのでございますが、いろいろの風評は耳にするわけでございまして、風評によればたとえば韓国から日本に密入国する場合に、日本警察の手につかまるのは三回に一度である、あるいは四回に一度であるというようなことを言つておるそうでありますが、しかしわれわれの手ではその正確な数字はわかつておりません。
  16. 篠田弘作

    篠田委員長 たとえば三人一緒に密入国して一人はつかまつたという場合には、二人はつかまらなかつたということがわかるわけです。
  17. 田中三男

    田中証人 私の手元では、正確な数字はわかりません。
  18. 篠田弘作

    篠田委員長 もちろん正確な数字は、つかまらないのですからわかるわけはない。だけれども、大体どのくらい——つた者が全部つかまつているわけじやないでしよう。
  19. 田中三男

    田中証人 まあ、二対一くらいな割合じやないかと思います。
  20. 篠田弘作

    篠田委員長 その逮捕されない理由は、おもな原因はどこにありますか。
  21. 田中三男

    田中証人 逮捕されない原因と申しますると、現在海岸地でただちにつかまる者と、国内に潜入いたしまして、半年なり一年なりたつた後に、他の事件逮捕されて取調べた結果、一年前あるいは半年前に密入国して来たということが判明する者と両方あるわけであります。その比率も正確にはわかりませんが、およそ二対一か、三対一の程度で、現場でつかまる者の方がやや少いと思うのでございます。このほかに逮捕に至らないもので、今お尋ねのような件数が他にあるわけであります。
  22. 篠田弘作

    篠田委員長 その未逮捕理由は、上手に入つて来るからつかまらないのか、あるいはあまりたくさんどつと入つて来るので手がまわらないか、あるいは組織欠陥があつてつかまらないのか、そういう面についてあなたはどういうふうに考えられますか。
  23. 田中三男

    田中証人 沿岸哨戒、これは海上並びに陸上における哨戒がやはり不十分であるということに原因があるのぢやないかと思います。
  24. 篠田弘作

    篠田委員長 出入国管理庁が設置されるまでのいきさつ及びその統合した在来の機関、どういう機関を統合して出入国管理庁ができたか、説明してください。
  25. 田中三男

    田中証人 一昨年の六月に総司令部から従来進駐軍の方で直接管理しておつた外国人出入国日本政府の手でやるように、こういう覚書日本政府に参りまして、これに基きまして、外務省入国管理部が設置せられたのであります。そうして一昨年の十一月一日から正規の、すなわち旅券を持つて来た外国人出入国管理が、外務省入国管理部で行われるようになつたのであります。ところがそれと前後いたしまして、さらに総司令部から不法入国についても日本政府においてこれを防止する措置をとるように、こういう覚書参つたのであります。この覚書は二、三出ておるのでありますが、最後の覚書は昨年の二月に出ておるわけであります。この覚書によりますると、正規不正規を問わず外国人出入国についての管理取締りをやるように、こういうことでございまして、これに基きまして、日本関係官庁でいろいろ協議があつたのでございますが、その結果昨年の八月二十九日外務省の外局として出入国管理庁を設置する、こういう閣議決定があつたわけであります。それとまた相前後いたしまして、昨年の九月十五日に総司令部からあらためて出入国管理に関する覚書が参りまして、これは従来の覚書の趣旨をほとんど敷衍いしたものでございますが、日本沿岸から不法に入つて来る外国人防止するために、新しい機関、従来の警察あるいは検察庁と別個の、独立したしかも一元的な機関を、早急につくるようにというメモが参つたのであります。この結果昨年の十月一日から出入国管理庁発足を見るに至つたのであります。この出入国管理庁は、従来法務府でやつておりました退去令書の発布の事務、並びに警察の手で行つておりました不法入国者護送、並びに収容所経理事務、それから引揚援護庁でやつておりました収容所維持管理等事務が、統合せられましてでき上つたのでございます。
  26. 篠田弘作

    篠田委員長 多少今のお答えと重複するかもしれませんが、出入国管理庁組織権限、その業務の一端については、今述べられましたが、そういうものについて話してください。
  27. 田中三男

    田中証人 出入国管理庁業務一つは、先ほど申しましたように、正規出入国管理でございます。これは全国三十七箇所の開港場、これには二つの室港を含むわけでございますが、これに現在約百二十名の出入国管理官を配属いたしておりまして、この百二十名の出入国管理官が、外国から正規旅券を持つてつて来る者の旅券の取調べ、並びに日本から帰つて行く出国の登録をやつておるわけであります。これが正規出入国管理でございます。それから先ほどちよつと説明が漏れたのでございますが、外国人登録令が施行されておるわけであります。これは従来法務府で所管されておつたのが、われわれの方に参りまして、外国人登録令事務を所管いたしております。それから第三には不正規出入国防止不法入国者送還事務でございます。さらにこの不法入国と性質は異なるのでございますが、北緯三十度以南の南西諸島すなわち琉球方面でございまするが、琉球方面に本籍を有する人々は、日本内地に渡航する場合に、総司令官許可がいることになつておるのであります。この許可なしに日本に入つて来まする南西諸島人に対しましても、これは外国人ではないのでありまするが、義務として出入国管理庁としては退去強制を実施いたしております。以上でございます。
  28. 篠田弘作

    篠田委員長 不正入国取締りについて、たとえば国家地方警察であるとか、自治体警察海上保安庁税関検察庁市町村といつたような機関とどういう連絡をとつていますか。
  29. 田中三男

    田中証人 まず都道府県並びに市町村でございまするが、これは登録令関係におきまして、地方自治庁業務委讓をいたしておるわけであります。これは法務府時代も同様でありますが、そういう意味登録義務都道府県市町村にやつていただいておるわけであります。それから法務府との関係は、従来退去強制法務府の手でやられておりましたような関係があるのであります。その事務出入国管理庁が引継いだわけでありまするけれども、最初に申し上げましたように、まず不法入国者につきましては、検事が先に取調べる関係もございまして、一々の事件について密接な連絡を願つておるわけであります。さらに出入国管理庁としましては、発足後間もなくて、いろんな施設を持つておりませんので、特に法務府に依頼いたしまして、法務府の電信施設を利用さしていただいております。各事件がありました際に、地方から法務府の電信を利用して、われわれの方に一々通報していただき、またわれわれの方の訓令も、法務府の電信を利用して地方に流すというふうにお願いをいたしております。国警並びに自治体警察に対しましては、不法入国者の捕逮と立件送致についてもつぱらお願いをいたしておるわけであります。出入国管理庁の持つておりまする入国警備官も、司法職員としての権限を持つておるわけでありますけれども、現在きわめて人数が少くて手がまわりませんので、この方は主として自治体警察並びに国家警察お願いをいたしておるわけであります。海上保安庁は、海上における不法入国防止に専念をしていただいておるわけでありますが、さらに送還の際には、われわれは舟艇その他を持ち合せませんのと、海上の勤務になれておりませんので、海上における選還は海上保安庁お願いをいたしております。税関につきましては、先ほど申し上げました各開港場におきまする出入国監理官というのは、実は身分は税関職員になつておりまして、出入国管理庁長官税関長を通じて出入国管理事務を監督いたしておるわけであります。そういう意味におきまして、正規出入国管理というのは、税関一身同体になつておるわけであります。さらに引揚援護庁との間にも、われわれの方では業務協定をいたしまして、引揚者にまじつてつて来るおそれのある不法入国者取締りについて協定をいたして、相協力して入国防止に当る、こういうふうにやつております。
  30. 篠田弘作

    篠田委員長 出入国管理庁長官は、司法警察事務を担当する部下職員に対して、特にその職務遂行必要な素質経歴、そういうものを調べて採用したり、あるいは配置したりしておるかどうか。また特にそういうことに必要な訓練を与えておるかどうか。この点について……。
  31. 田中三男

    田中証人 出入国管理庁は現在三百四十名足らずの入国警備官を持つておるわけであります。これも正確には数字を記憶しておりませんが、このうち約百名は従来警察経歴を持つた者から採用いたしております。これが入国警備官幹部を構成いたしております。残りの二百四、五十名は早急の間でもありましたので、人事院と連絡の上一般公募によつて募集をいたしたのであります。かなり多数の応募者がございまして、一例をあげますれば、鹿児島においては約十名の警備官を募集した際に、約六百名の応募者があつたわけであります。かようにきわめて多数の応募者各地であつたわけでありましたので、かなり素質の点においては厳選をいたしたつもりでおります。その後の訓練状況につきましては、まず最初に一箇月間幹部国家警察に依頼いたしまして警察学校訓練をいたしました。     〔委員長退席塚原委員長代理着席〕  未験者につきましては、これはわれわれの手で——しかしながらその指導官は主として国家警察経験者お願いいたしまして、訓練をいたして、昨年の暮れからそれぞれ実務につかしておるわけでありますが、一箇月だけの訓練ではまだ十分とは言えませんので、この三月末から第二回目の訓練を、これは全員一度にというわけには行きませんので、各出張所警備官を適当に選抜いたしまして、目下実行いたしております。順次これを重ねましてこれを国家警察なり、自治体警察が従来やつておられますように、最小限度六箇月間の訓練を早く全員について実施いたしたい、かように考えております。
  32. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 不正入国者護送中、または収容所から逃亡したというような事件を聞いておるのですが、こういう点について、どういうところに欠陥があるか……。
  33. 田中三男

    田中証人 大村収容所警備は、昨年の十二月の二十日前後から、われわれ入国警備官国家警察の手から引継いたのであります。さらに各地からの不法入国者収容所への護送は、本年の一月一日から実施をいたしておるのであります。その後今日までに、護送の途中で護送者を逃亡させました事件が二件ございます。一件は、神戸から大村護送の途中であります。他の一件は、福岡から大村護送の途中であります。さらに収容所内におきまして逃亡させました事件が七件ございます。合計今日まで九件の事件、九名の送還者を逃がしたわけなのでございまするが、そのうち神戸から護送の途中の者、及び大村収容所から逃亡させました七件のうち三件は逮捕いたしました。結局五名逃亡して、今日まだ逮捕に至つておらないのでありまするが、その原因は率直に申し上げまして、いずれも警備官経験未熟に原因するものと認めております。ただスキヤンダル等のために逃がした事件一つもございません。すべて警備官の未経験のために逃がしたものばかりでございます。その点においてさらにいろいろな訓練の必要を痛感いたしております。
  34. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 未経験というのはどういうのですか。
  35. 田中三男

    田中証人 未経験と申しますのは、先ほどお答えしましたように、今まで警察経験のない者を募集いたして採用しましたそういうものが逃がしたのでございます。
  36. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 この二件のうち、神戸から大村福岡から大村と言いましたけれども、何名くらいの者を何名くらいが送つて行つたのですか。
  37. 田中三男

    田中証人 神戸からの場合にも、福岡からの場合も、それぞれ一名の送還者をそれぞれ二名の警備官護送して行きました。
  38. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 常識で考えて、一名に二名がついていたら、いかに未熟者でも逃がすようなことはないと思うのですが、その間先ほどスキヤンダルは全然ないと言われましたけれども……。
  39. 田中三男

    田中証人 これはいずれも夜中に手錠をはめずにおつて、両方とも便所へ行くのを——一人はまだ原因はよくわからないのでありまするが、便所へ行く途中にデッキへ出て振り落されたというように称しておるのが一件と、他の一件は便所の中に入つて、中からかぎをかけて逃げたというのが一件、いずれも手落ちでございます。
  40. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 まあ、おかしいですが、しようがないですな。  入国警備官警察官または警察吏員との間の連絡、協同がうまく行つていないというふうに聞いておるのですが、その点はいかがですか。
  41. 田中三男

    田中証人 私どもは連絡の点は、全体においてはうまく行つておるように考えておるわけであります。中央におきまして国家警察なり、自治体警察のそれぞれの幹部の方とは始終連絡をとり、非常な協力、援助を得ております。また大村収容所におきましても、たとえば送還の当時は大村自治警から三、四十名の警察官を応援に出していただく、こういうわけで非常に協力を得ておりまするので、全体としては連絡協力もうまく行つておると思うのでありますが、しかし末端におきましては、まだ昨年の暮れから仕事を始めたばかりのために、まずい点も多少あるのでございます。これらの点はよく注意をして、連絡をよくし、相互に協力関係を密にして行くように指導したい、こう考えております。
  42. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 次に出入国管理庁職員、たとえば入国審査官あるいは入国警備官出入国監理官というようなものがありますが、これらの職員の中には、不正出入国取締りに関して、法規上相当の権限が与えられておるというふうに聞いておりますが、これを実際現実に行使しておるのですか、もしも行使していないとするならば、その理由について述べてください。
  43. 田中三男

    田中証人 税関等に配置しておりまする出入国監理官につきましての権限は、旅券等に証印を押して、その真偽を確かめるというのが主たる任務でありまして、これは大した権限はないとも言えるわけであります。一番大きな権限を持つておるのは入国審査官でございます。この入国審査官が、現在は退去令書を出しておるわけであります。しかしこれは長官請訓をして、長官訓令によつて退去令書を出しておるわけであります。その意味において、権限は大きいと言えるかと思うのでありますが、一々長官請訓をして訓令を出しておるわけであります。
  44. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 今のお言葉の中で、入国審査官というのが一番権限を持つておるのですか。
  45. 田中三男

    田中証人 現在退去令書を出しておりますのは、この入国審査官名前で出しておるわけであります。
  46. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 入国警備官というのはどういうことをするのですか。
  47. 田中三男

    田中証人 入国警備官は、主として不法入国者護送不法入国者収容所警備にあたる人です。
  48. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 これはどういうものを携行しておりますか。
  49. 田中三男

    田中証人 ピストルの携帯を許されております。
  50. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 それの使用は自由ですか。
  51. 田中三男

    田中証人 使用につきましては、きわめて厳重な訓令をいたしております。
  52. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 どういう訓令ですか。
  53. 田中三男

    田中証人 これは非常の場合以外は使用を許しておりません。
  54. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 非常の場合というのは、どういうふうに解釈されますか。
  55. 田中三男

    田中証人 これはもう自分の身に危害が加わるというような場合に大体認めております。
  56. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 次に不正入国者退去強制令書に対する不服申立てを審理する地方及び中央審査会の運営はどういうふうになつているか、御説明してください。
  57. 田中三男

    田中証人 現在の政令では、退去令書が出ました際には、これに対して陳情をする手があるだけでございます。この陳情は、従来は総司令部地方民事部と、それから各府県知事を通ずるものと、二つのルートにおいてなされておつたわけでありまするが、ごく最近でありますが、総司令部の方では、地方民事部を通ずる陳情は取上げないように、指令が出た模様であります。と同時に、三月一日から従来府県知事名前で出しておりました退去令書を、先ほど説明しましたように、出入国管理庁入国審査官名前で出すようになると同時に、この陳情出入国管理庁の各出張所及び収容所を通じて陳情書が一本になつて来ることになつております。この陳情に対しましては、本庁におきまして関係者が愼重に調査いたしました上で、これを取継ぐべきであると思うものは、一々これを総司令部の方に取継いでおります。これを許可する、許可しないの権限日本政府には現在まだ与えられておりません。一々取継ぐだけでございます。
  58. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 次に検疫の問題になりますが、不正入国者の中には、らいとかあるいは天然痘というような非常に危険な伝染病患者があると私は考えるのですが、こういうものに対する検疫はどういう方法で、どういう施設のもとでやつておるか、御説明願います。
  59. 田中三男

    田中証人 検疫につきましては、これは最初に申し上げました総司令部覚書の中にも、検疫税関手続を十分履行させるようにという覚書が出ておるのであります。そういう意味におきまして、不法入国者に対する密輸の取締り検疫については、国内のそれぞれの取締り機構と密接に連絡をして、それぞれの手続をふませることにしております。ただわれわれのところで取扱つておりまする伝染病といたしましては、収容所の中にかなり重患の結核患者がおります。これは大村国立病院の方にお願いいたしまして隔離療養をさしております。  それからこれまた国内でつかまつた不法入国者で昨年の十二月に送還した者の中に一名らい患者がおりました。これは出入国管理庁の設立以前から熊本恵楓園に依頼して療養中であつた者であります。これを昨年十二月の十日過ぎに送還いたしたのでありまするが、特別の列車を買い切りまして、特別の看護婦を付添わせまして、乗船させ、船内でも消毒した別室に入れて送り返したわけであります。さらに四月の十日ごろに、現在京都の刑務所に入つておりまする不法入国者が一名らい患者であるということでありまするので、目下われわれの方では国鉄等連絡をとりまして、特別の貨車を買い切りまして、これに警備員看護婦を乗つけて、今申しました熊本国立癩療養所に送り届けて、次回の送還船が出るまで、ここへ収容して、そから前回と同様にまた特別の方法をもつて本国送還したい、かように考えて目下準備中でございます。
  60. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 そうすると今日までのところ、いわゆるらい患者というのは二名だけですか。
  61. 田中三男

    田中証人 出入国管理庁の手で扱いました件は、昨年の十二月に送還いたしました一名のらい患者と、まだ刑務所から引取つておらない、近く引取るらい患者と二名だけであります。
  62. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 そうすると、あなた方以外の手で扱つたらい患者というのは何名ぐらいありますか。
  63. 田中三男

    田中証人 その方の正確な数字はまだ十分調査いたしておりません。
  64. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 われわれはらい患者が非常にたくさん入つているというので、これはゆゆしい問題だと思つているのですが、正確な数字は言えないといたしましても、あるということは耳にしているのですか。
  65. 田中三男

    田中証人 あるということを耳にいたしておりまするし風評によりますると、日本では非常にいいらいの治療薬ができたというふうなうわさが半島に伝わつて、半島のらい恵者は日本へ行けば治療してもらえるというふうな風評まで韓国では行われておるというようなうわさも耳にいたしております。しかし真偽はわかりません。
  66. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 外国人登録証明書の発行または再交付を担当しているのは、市町村並びに府県とさつきあなたはおつしやいましたが、これに特に十分な調査と愼重な取扱いを要求あるいは注意するというようなことはやつておるのでしようね。
  67. 田中三男

    田中証人 登録令関係は、実は出入国管理庁第二部の所管になつておるわけで、私の直接の所管ではございませんが、この登録事務はかなり市町村に負担をかけておるのであります。われわれの調査によりましても、最小限度見ましてもかなりの負担をかけておりまするので、この委任業務に対しましては、現在年間約二千五百万円の交付金を出しておるわけでありまするが、さらにこれに加えて最小限度五千円ばかりの交付金が必要である。われわれの方でかなり査定を加えた金額でありまするが、これが必要であると認めて、予算の際に大蔵省方面にもよく説明いたしておるのでありまするけれども、今日まで十分目的を達しておりません。そういう意味において、非常に重い負担を市町村にかけておる。登録事務についてはもちろん遺漏のないようにお願いをいたしておるのでありまするが、そういう難点が一つあるわけであります。
  68. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 交付金が非常に少いというために市町村協力が非常に薄いのじやないですか、そういうことはございませんか。
  69. 田中三男

    田中証人 市町村の方はそれぞれ一生懸命にやつていただいておると思うのであるますけれども、われわれはこの話をするたびに交付金の少いことを言われて、管理庁としてはいつも苦しんでおるわけであります。
  70. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 あなた方が見て現存市町村は完全なる仕事をやつておるというふうに解釈しているのですか。
  71. 田中三男

    田中証人 非常に答えにくいのでありまするが、完全とは言えないかもしれないと思います。
  72. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 完全になるのには金をよけいにやればいいということですか。
  73. 田中三男

    田中証人 金だけではありません。登録に関しましては実はわれわれもいろいろ——これは主として第二部の方で考えておるのでありますが、やはり指紋をとるということと、それから現在は登録証明書の有効期間が三年になつておりまするが少くともこれを一年にしまして、毎年登録の切りかえをやるという二つのことを実行しなければこの完璧は期しがたい、かように考えております。しかしいずれもかなりの予償を伴う仕事であつて、それらの点についてまだ十分の目的を達しておらぬと思ます。
  74. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 少しタブるかもしれませんが、登録証明書に関する現行の規定または実際の取扱いで、こういう点を改正した方がいい、こういう点を改めた方がいいという点について、あなたのお考えを伺いたいと思います。
  75. 田中三男

    田中証人 これは管理庁といたしましては、今御説明申し上げましたように、登録証明書の三年間の有効期限は長過ぎる、かなりその間に移動も行はれておるのでありまするし、うわさによれば売買も行われておるというふうな事実もあるようであります。これを一年ごとに切りかえて、毎年登録をさせるということと、それからこれはアメリカの実例等を調べましても、指紋をとるようになつてから、そういう偽造その他の例が非常に激減したというふうなことも判明いたしておりまするので、指紋をとるということをあわせて実行する必要がある、かように考えております。
  76. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 委員の方で御質問がありましたら……。
  77. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 この登録事務の点は二部長権限だというお話でございましたけれども、私の承知しているところでは、あなたの役所は官房一課二部制というきわめてささやかな機構でございまして、あなたもそういう点は御存じだろうと思いますから、あらためて二部長を呼ばないでもいいと思いますから、一応お伺いいたします。  外国人登録事務について都道府県知事がこれを取扱う根拠は、われわれの知識程度では非常に薄いような気がいたします。外国人登録令及び同施行規則中には何らその明文がないのであります。しいて求めると、同令第四條第二項に申請期間の伸長規定があり、第九條に、港湾または飛行場において国外に退去する外国人より登録証明書の返還を受くべく、官公吏る都道府県知事が指定すべきことをきめてあるくらいであります。事務取扱要領などにおいても、市町村長対出入国管理庁の中継的役割を規定している程度でありまして、本事務都道府県知事が取扱わねばならないという根拠はきわめて薄弱なように思われます。従つて今後において都道府県知事に本事務を執行させるということになりますと、予算措置等の関係から、この法令を根本的に改正する必要があるのではないかと思いますが、あなたはこれに対してどういうふうにお考えになりますか。
  78. 田中三男

    田中証人 登録令仕事——今の御質問私よくわからなかつたのでありますが、外国人登録令ではつきり規定してあるわけでございます。外国人登録令によつて都道府県並びに市町村登録事務をやつていただくように規定ができておるわけであります。出入国管理庁において登録事務をやるのが本筋かと思うのでありまするが、現在のような微々たる機構では、また将来におきましても、全国に散在いたしておりまする外国人登録をわれわれ主務官庁だけの手で行うということは予算その他の点で事実上不可能ではないか、かように考えておりますので、やはり私どもの見解では市町村お願いせざるを得ないじやないか。そのかわりに市町村に現在多大の負担をかけておるのを、国家の方でこれを負担して行くというふうな方向へ進むのがよいんじやないか、かように考えております。
  79. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 方向としてはそれがけつこうだと思うのですが、どうしてもこれを完全に施行する意向があるとするならば、御承知の通り地方財政法によつて都道府県並びに市町村に対し、国庫から必要かつ十分の経費を交付することが当然であるということになるのであります。もちろん今のやり方では、現在二千五百万円を出しておる、あと五千万円ほどを要望している。こういうふうな先ほどのお答えでありましたけれども、これをたとえば大村収容所のある長崎県の例等から見ましても、必要経費と国が出しておる経費があまり幅が多過ぎる。たとえば長崎県の例ですが、昭和二十五年度におきまして、一年間の必要経費は、見積額が県並びに出先機関の合計百十五万二千五百円、これに対して国の交付金は三十五万二千円である。こういうふうな状態です。また県下市町村百六十一箇所については、その必要経費は百四十万五千円であつたのに対し、国の交付金はわずかに十三万四千円、すなわち十分の一にも満たないというような実情であります。ちよつとついででありますが、これを申している間に証人に伺いたいのでありますが、二百名内外不法入国者の一番筆頭は、県としてどこでありますか。
  80. 田中三男

    田中証人 不法入国者は、これも概数でございまするが、約三分の一が長崎県でございます。しかもこれはやはり対馬を経由して入つて来る者が特に多いわけであります。約三分の一が長崎県、他の三分の一が福岡県及び山口県、その他が全国集めて残りの三分の一、大体概数でございますが、そういう状況になつております。
  81. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 わかりました。全国の三分の一の多量生産、まことにありがたくもない多収穫でございますが、その長崎県がこういうように非常に迷惑をしておるわけです。それで過去におきましても、県及び市町村に要する費用として合計二百七万六千円を、法務総裁あるいは外務大臣あるいは大蔵大臣、地方自治庁長官等に、数回にわたつて詳細に具申しておるのであるが、一向応諾の措置がない。非常にそれで迷惑しておるというような実情にあるのであります。その点に対して第一部長はどういうふうにお考えになりますか。
  82. 田中三男

    田中証人 長崎県からはたびたび陳情も受けておりまするし、われわれも非常に理由があることと考えまして、できるだけの努力を続けておるわけでありまするが、現在までのところ十分その希望を満たすことができないことを非常に遺憾に思つております。今後さらに努力をいたしまして、少しでも負担が軽くなるように努力を続けて行きたい。かように考えております。
  83. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 そういつたような経費の点もありますので、先ほど委員長から質問がありました通り、市町村長の協力が非常に薄いのではないかというふうに一般に見られておりますし、また未登録者あるいは不法入国者等を発見したときは、検察庁または警察連絡して処置してもらうことになつておりますが、警察、特に小さな地方自治警察等におきましては、この登録令に関する関心も非常に稀薄であると一般に思われております。また一部外国人団体などによるところの無形の圧迫感にもよるのであろうというふうに想像されておるのでありますが、非常に取締りの点に遺憾なことが多いと見られておるのでありますが、どうですか。
  84. 田中三男

    田中証人 登録事務等について非常に迷惑をかけており、またそういう煩雑な、経費のかさむ仕事であるために、不十分に思われる点もあるかと思うのでありますが、これはさらにわれわれの方で努力をいたしまして、一層協力お願いするように努力をいたしたいと思うのであります。  なお今特に長崎県のお話があつたのでありますが、先ほど申しまするように、長崎県に対しましては、不法入国に関してあらゆる面で非常に迷惑をかけておることが多いのであります。われわれとしましても、警備官の配置等については特に長崎県方面に重点を置いて、この不法入国者取締りに備えたい。特に対馬方面は、今のところまだ警備官も数名しか配置しておらぬのでありますが、今後人員の余裕ができますれば、できるだけ増強をして、長崎県の迷惑のないように努力したい、かように考えます。
  85. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 外国人退去強制事務というのは、御承知の通り二月十八日をもつて出入国管理庁に知事の手から移管されたのでありますが、移管前後における出入国管理庁事務の処理に、非常に遺憾の点があつたというふうに一般に見られております。すなわち不法入国者に対する強制退去ということはもちろん当然でありますけれども、その不法入国者に対して、事情のいかんによつては、GHQの承認を受けて入国させることが、将来日韓親善の上からいつても好影響をなすとも考えられておりまして、たとえば長崎県がこれを管理しておつた場合、あなたの役所に引継ぐ直前でありますが、在留特別承認嘆願書を具備して処理中のものが九件、十三名あつた。たまたま二月二十八日に送還船が出ることになつたので、これら未処理のものについては、外務大臣あて二回、それから出入国管理庁第一部第二課長、これはあなたの部下であります。この二課長あてに二回残留方の申請をしたのですが、一回の回訓もなく、そのまま送還されたという事実があるのであります。また別途に民事部方面にも嘆願した者、直接に出入国管理庁に嘆願した者二名が、残留の措置をされたような次第であります。それは今まで管理しておつた県が、これは日韓親善上むしろ残留させるべきだという認定を下しておつたのを、あなたの方の事務処理の怠慢か何か知りませんが、こういつたような事実があつたということをあなたは御存じですか。
  86. 田中三男

    田中証人 お尋ねの具体的な事件については、あるいは私の記憶が間違つておるかもしれないのでありますが、陳情につきましては、われわれの方での従来の取調べを率直に申し上げますると、取扱われました検事の意見と、それから退去命令を発布されました府県知事の意見と、両方求めておりまして、取扱われた検事の意見と、退去命令を出されました府県知事の意見が、ともに入国を許してやるべきだという意見のあつたものについてのみ、われわれはこれを横文字に直しまして司令部に取次いでおりました。ところが中には県知事の方からは入国を許すべきであるという陳情が来ておるのに対して、検事側からは、これは退去を命ずべきだという反対の意見が出ておるケースがあるわけであります。また逆の場合もあるわけであります。こういうケースにつきましては、われわれは正直に申しまして、取次いでおらないわけであります。ただ取次ぎましたケースにつきましては、従来のところかなり司令部の方から許可を得ておるわけであります。今お尋ねの件につきましては、そのいずれに該当しておつたかわからないのでありますが、さように取扱つております。さらに三月二日の送還船の際に、長崎県知事から出ました陳情の点につきましては、まだ送還を見合しておるように記憶いたしておるのでありますが、お尋ねの具体的なケースと、あるいは私の申し上げたのと食い違つておるかもしれませんが、とにかく長崎県から陳情の出ました数名の件につきましては、送還を見合しておるはずなのであります。
  87. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 これは私が直接聞いておる一つのケースでありますが、先ほども申しました通り、朝鮮人といえどもりつぱな人があるのでありまして、日本に残留してもらつた方がむしろいい方もあることは御承知の通りであります。ところがこういうケースがあるわけなんです。それは日本に相当の事業を残して、朝鮮が一応ああいうふうに平和になつたので、南鮮に仮引揚げをした。ところがああいう動乱が起りましたので、内地に残した事業がかわいくもあり、やむを得ず不法入国をした。ところが若干何かほかの事件もあつたと思うのですが、つかまつて実刑の判決を受けて服役中である。現在はもちろん法務庁、裁判所の管轄でありますから、あなたの手ではどうにもできないでしようが、これの刑期が切れた直後に、何か事業の処理くらいをさせてもらうことはできないか、こういつた要望があるのです。これはちよつと今の事件とは違うかもしれませんが、そういうことはあり得るものですか。たとえば一週間とか十日とか、事業の整理をさせてやるといつたような寛大な取扱いも、例外的にあり得るものかどうか。
  88. 田中三男

    田中証人 ちよつと重複するかもしれませんが、不法入国者に対しての陳情の取扱いなんでありますが、今まで許可を得ております実例を見ますると、人道上非常に気の毒だ、たとえば子供が終戦後韓国へ勉強に行つた。ところが動乱のために学業を捨てなければならなくなつた。両親はまだ日本におつて、りつぱな生業についておられる。こういうふうな場合には、許可になるようでありますが、政治的な意味は考慮に入つておらぬようであります。要するに今のところは、正当な手続を経て日本に帰つて来るべきである、正当な手続を経ないものは、どういう身分の者でも、どういう目的でも、もう一度正当な手続をし直して入つて来るように、こういうのが趣旨であるように考えられるのであります。ただ、今お尋ねのようなケースにつきましては、その送還の日を延ばすとか、次の船まで延ばすとか、あるいは逃亡のおそれの全然ない者、また一時釈放しても国内の治安その他に悪い影響のない者につきましては、一時仮釈放、仮放免をするというような、そういう新しい措置を今後実施するように努力したい、かように考えております。
  89. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 田中証人は本年の二月二十四日、大村収容所におきまして、大体北鮮系の者が扇動してやらした事件だというふうに一般に受けとられておるのでありますが、要するに俗に申しますと、収容所幹部をつるし上げたという事件があつたはずですが、承知しておられますか。
  90. 田中三男

    田中証人 承知しております。
  91. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 どういう事件であつたか、ひとつ説明願いたいと思います。
  92. 田中三男

    田中証人 一応収容所内の全般の空気をまず御説明いたしたいのでありますが、送還船が出ることが間近に迫つて参りますると、たいていの強制送還者は帰りたくない者が多いのであります。特に朝鮮の動乱以後、朝鮮に送還されました際に、向うで徴兵されるとか、あるいは悪質な、ことに徴兵忌避のために日本に行つた、すなわち韓国を密出国したという者については、かなり向うでも取調べなり、処罰があるといううわさでありまするが、そういうことも手伝いまして、送還船が出る前には、収容者は送還をいやがりまして、非常に収容所内の空気が険悪になるのであります。これはいつもそうでありまして、昨年の十二月の十日過ぎに出しました際も、私は現地に行つたのでありますが、私自身も代表者等から、たびたびつるし上げに近い陳情攻めにあつたのであります。そういう空気がいつも起るのであります。ちようど二月の終りにも、二月二十八日に送還船が出るということになりまして、それが収容所内に伝わりますと、いろいろと強制送還を忌避するために逃亡を企てる者とか、あるいはいろんないやがらせをやるというふうな事件が続出しておつたのであります。ちようどそのとき、二十四日であつたと思いますが、面会人が参つたようであります。その面会人に対しましては、送還船の出る前で非常に業務が混雑しておつたために、時間を三十分に制限をして、面会を許した。さらに面会の場合は、日本語を使用することをいつも希望しておるのでありますが、この際は三十分の時間を超過しても面会を終らない。さらに途中で朝鮮語で話をするというふうなことがあつたために、警備官が再三注意をした模様でありますが、かなり時間が超過したために、面会の時間の打切りを申し渡しまして、収容者を収容所内に追い返したわけなんです。この際に収容者が非常に憤慨をいたしまして、ばかやろうとか、いろいろ罵詈雑言を用い、さらに収容所内に入る際に、警備官をけり上げたというようなことがあつたようであります。これに対しまして警備官も、若い警備官であつたために、警備官の権威を傷つけられたというか、どうもこういうことでは収容所内の秩序が保てないというので、当日の午後になつて、その収容所でそういう罵詈雑言をしたり、暴行を働いた者に対して説明を求めたらしいのでありますが、この際けんかになりまして、そこで警備官と収容者との間に乱闘騒ぎが起つたのであります。この乱闘騒ぎが収容所内に伝わりまして——収容者は当時約五百名おつたのでありますが、若い収容者約二百数十名が、これに対して警備官の謝罪あるいは収容所長の辞職その他を要求した騒ぎが起つたのであります。当時収容所長は公務のために福岡の方に主張しておつたので、次長がこの中に立ちまして、数時間にわたつて努力いたしました結果、ようやく円満に解決いたしました。私その事件を耳にいたしましてすぐ現場に急行いたしたのでありますが、私が参りました二十八日の朝には、もう全部平静に返つてつたのです。送還船は二十八日の予定でありましたのが、司令部韓国側との連絡関係上二日遅れまして、三月の二日に出て行つたのであります。この際私も送還者の帰るのを見たのでありますが、全部きげんよく、何らの事故もなしに送還を終了いたしたようなわけであります。大体以上のような経過であります。
  93. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 御承知の通りに朝鮮人というのは、悪い人になりますと、あの連中が団結すると非常に暴民化する、しかも体力的にも非常に強いということは御承知の通りでありますが、警備官の定員等、現在のあれで十分なのですか。その点に遺憾の点はなかつたのですか。
  94. 田中三男

    田中証人 警備官の数につきましては、私どもは現在大村に約百五十名の警備官を配置いたしておるわけであります。大村収容所は、実は針尾にあつたのを、昨年の暮れに大村に移転いたしたのでありますが、針尾にありました当時は、国家警察は約七、八十名で警備に当つておられたのであります。もつともあそこは御承知のように警察予備隊が入つております関係上、この周囲の治安はいいわけなのであります。そういう環境は異なつておるのでありますが、それに比べまして約倍近い警備官を配置しておるわけであります。もつともこれは単に収容所警備だけではなく、一般の他の警備護送に関する事務をやつておりまするし、さらに福岡、下関、鹿児島、九州から西日本にかけまして、必要の際始終大村から護送のために出て行つておるわけであります。そういうわけで、警備だけではなく、護送の方もやつておるわけであります。針尾当時の国警は七、八十名でありますが、もつぱら収容所警備に当つてつたのでありまして、われわれの方ではその警備をさらに必要の際福岡、対馬から山口、九州一円、必要の場合は東京の方まで護送に応援に来ておるわけでありますが、この警備護送と両方やつておるわけであります。しかし必要の際には、護送の方をやめれば、百五十名がそのまま収容所警備に当れるこういう状態にありますので、警備の手薄の点はあまりないのじやないかというふうに考えております。
  95. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 この事件は、北鮮系の不正入国者が計画的にやつた、その指導者は比較的少数のようであつたのですが、これらのことは事前にわかつていなかつたのでしよか。
  96. 田中三男

    田中証人 先般の事件につきましては、先ほど説明しましたように、送還日を前に控えた収容所内の空気が非常に動揺しておつた——実はその際に収容所から逃亡者を出したわけでありますが、そういうふうに非常に空気が動揺しておつたということはあるのでありますが、ああいう事件なつたという導火線は、今言つたように少数の警備官と、ごく少数の収容者との間に乱闘騒ぎが起つたというのが発火点になつたようでありまして、ああいうことが起るということは、事前にはだれにもわからなかつたわけでございます。
  97. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 要注意者という者がもしあつたとすれば、それらの身柄調査書というふうなものが国警から来ておらなかつたのですか。
  98. 田中三男

    田中証人 それはその都度いただくようにしておるのでありますが、導火線は今言つたような事柄でありまして、多数の者がいろいろ要求を提げて来たのですが、収容所の次長をてこずらせたという首謀者は今お尋ねのような種類の韓国人が中心になつてつたのであります。これらにつきましては、われわれの手で一々警察なり刑務所から出る際に身元調査をとりまして、その写しを本人、送還者につけて大村の方に一々送つておりますので、大村収容所においては、今までの性格なりその他は大体わかつておることになつておるはずでございます。
  99. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 事件発生当時及びその善後措置をするまでにおける国警及び大村自治警察の協力状況はどうだつたのですか。
  100. 田中三男

    田中証人 大村市は非常に協力的でございまして、実はその事件が起りましたときも、大村自治警から約四十名の警察官収容所に来てくれまして、徹宵警戒に当つてくれたわけであります。さらにその後でありますが、収容所内で放火をして、そうして集団逃亡をするというふうな——これもうわさに終つたのでありますが、風評も伝わりましたので、ただちに収容所の方から大村市にお願いをいたしまして、消防隊も出動していただきまして、送還前一晩、二晩徹宵収容所のそばで警戒に当つていただいた、こういうわけで、自治体警察並びに大村市の消防署には非常に協力をしていただいたわけであります。
  101. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 その場合の国警なり自治警大村は御承知の通り五、六万の小さな市ですから、経費の上において非常に迷惑をすると思うのでありますが、それらの関係はどういうふうになつておりますか。
  102. 田中三男

    田中証人 こういう事件は初めてでございます。今後なるべく起らないように全員注意をいたしておるわけであります。経費等につきましては、出入国管理庁は別段負担をしておらないわけであります。
  103. 岡延右エ門

    ○岡(延)委員 それからあの建物ですね、実は私も他の目的に使つておるときに、これを見たことがあるのでありますが、これは元海軍の役所であつて、実に堂々たる建物ではありますけれども、収容所向きにつくつていない。そこでもしあれに大改造をしていないとすれば、これは今後逃亡その他のおそれが多分にある。またこういう暴動を起す可能性も今後出て来ると思う。建物そのものの構造がいかぬと思うのですが、その点もし大改浩を加えて、それに向くようにしてなかつたとすれば、これは出入国管理庁の重大なる怠慢だと思いますが、どういうふうになつておりますか。
  104. 田中三男

    田中証人 建物については、お説の通り実にりつぱな建物でありますが、中の施設につきましては、針尾におきます収容所状況を勘案いたしまして、ほとんどそれをまねてつくつたわけなのでありますが、しかしわれわれといたしましては、この収容所の中には、現在もそうでありますが、いろいろの種類の人を収容しておるわけであります。いずれも不法入国者でありますけれども、たとえば南鮮の戦争避難民等もまざつておるわけであります。しかもこれは刑務所とは性質を異にしております関係上、なるべくならばできるだけ——もちろんこれは警備その他の條件を満たしての上のことでありますが、なるべく明るい、また自由な空気のもとに収容所を維持管理して行きたいという理想を持つております関係上、刑務所等とはやはり異なつておるわけであつて、そういう点がああいう事件の起りました際に、やはり不十分な欠陥も出て来るわけなのですが、しかし今回の事件にかんがみまして、これに所要の改造を加えまして、身元調査等によりまして性質の悪い者は、その同じ収容所内の別室になるべくこれを分離して収容し、そのかわり婦女子であるとか、あるいは避難民であるとか、あるいは難船をして来た人々であるとか、こういう人々に対しては、なるべく自由な、明るい待遇を与えるように、収容所内で区別するような施設と処置を考えることにしたい、こう考えております。
  105. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 二、三点お伺いしたいと思います。  第一に、かように密入国者が多いということについて、終戦後の生活苦、社会不安におののいておる日本に、ことさらに密入国者が多くなつたという理由は、一体どこにあるのか、そういう御研究をなされたかどうかを承りたい。
  106. 田中三男

    田中証人 密入国者の数は、必ずしもふえておるということは、これはごく最近の統計でありますが、はつきりはわからないのでありますけれども、三、四年前がやはり一番多かつたのでありまして、三、四年前は年間一万六、七千名を送還しております。これがむしろだんだん減つて来ておるような傾向になつておるわけであります。最近は、先ほど申し上げましたように、月約二百名内外つて来ております。もちろんこれは月によつて違いがあるのでありまして、ある月には三百名を越えることもあるし、ある月には百二、三十名という月もあるのでありますが、そういうわけで必ずしもふえておるとも言えないように思うのであります。  それからもう一つ、これは非常に奇異なのでありますが、朝鮮動乱が起きてから、むしろふえたければならないようにわれわれ常識上考えますが、この数字も必ずしもふえておらないのです。これは朝鮮海峡の警戒が非常に厳重になつておるとか、あるいは韓国方面で徴兵その他の関係で特に出国を厳重に取締つておるとか、いろいろな原因があるであろうと思いますが、朝鮮の戦争のために常識上考えればふえなければならぬようなものでありますが、必ずしも実際の数字はふえておらないように思われるのであります。
  107. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 数の増減の問題でなく、密入国者が敗戦日本というか、ともかくも物資の足らない、しかも社会不安の多いこの日本に向つて、さような数字の密入国者があるという、その原因がどこにあるかです。またその密入国の目的が一体どこにあるのか、それをお聞きしたいのであります。
  108. 田中三男

    田中証人 密入国者は、もちろん韓国人には限らないわけであります。欧米人等もあるわけなのであります。しかしこれは数においてきわめて少いわけでありまして、われわれが強制送還いたしております大部分の者は韓人であります。これはやはり日本に非常に縁故があるとか、あるいは日本に従来住んだことがあるとか、そういうふうに土地になじみが多いこと、あるいは朝鮮海峡との間が地理的に非常に近いこと、さらにわれわれの想像いたしますのに、日本も非常に生活苦でありますが、韓国の実情は日本以上に、特に戦争後は日本以上の生活苦のために、日本をあこがれて来る者が多いのではないか、こういうふうに考えられるのであります。
  109. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 要するにどさくさまぎれに日本に入り込んで、そうして日本の社会あるいは経済界を混乱に陥れた一種のやみ屋というようなものが多いんじやないかと思いますが、その点いかがですか。
  110. 田中三男

    田中証人 密入国者の大部分は、今お尋ねのような種類の者であります。ただ朝鮮戦争後、戦争避難民というふうな、政治的亡命者までは行かないのでありますが、そういうのに似た種類の、要するに戦争を避けてのがれて来たというふうな人が出て来たわけでありますが、こういう人は収容所内でも非常にりつぱな態度であり、われわれの待遇に対しても常に感謝をされておる。その他の大部分を占めまする送還者は、今お尋ねのような種類の者であるという実情であります。
  111. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 朝鮮動乱以後の密入国者は、戦火をのがれて来た悲惨な人もおるということは想像し得るのですが、その中に思想的に、あるいはもつと端的に申しますと、共産党の指令等に基いて日本に入り込んで、一種の暴力革命の要素となつておるような者がいないでしようか。
  112. 田中三男

    田中証人 現在出入国管理庁で取扱いました強制送還者の中に、具体的に今お尋ねのような種類の者ははつきりはつかまつておりません。
  113. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 そうすと、その密入国者をお調べになるときに、思想的な何かそういつたことの調査はされないのですか。
  114. 田中三男

    田中証人 現在の私どもが基準にして働いておりまする登録令によりますると、連合国総司令官許可なくして日本に入国し、かつ滞在した者に対してこれを退去強制するということになつておりまして、目的であるとか動機というものは、実は現在の出入国管理庁においては取調べの範囲外になつておるわけなのであります。ただ形式的というと悪いのでありまするが、大体形式的に正式の許可なしに入つて来、また正式の許可なくして日本に滞在している者を国外に強制送還する。これが趣旨になつておりまして、目的であるとか動機であるとかいうことは問題にはなつておらないのでありまして、そういう意味において取調べもいたしておらないのであります。
  115. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 すると、そういう点について法務庁や国警との間に全然連絡はしないのですか。
  116. 田中三男

    田中証人 思想その他の点について、現在のところは先ほど申しましました身元調査等ではいたしておりますが、退去強制原因とは別であります。
  117. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 次にお尋ねいたしたいのは、さいぜん入国警備官警察官または警察吏員との間の連絡協同が円満に行つているかどうかという委員長の質問に対して、あなたは大体において円満に行つておる、こうおつしやいましたが、もし円満に、円滑にそれが行つておれば、さような密入国者を多数入れたり、あるいはまた逃亡者を出したりするはずがないと思うのですが、その間警備盲あるいは警察官素質等が低下しておるとか、あるいはまた今そういう制度があるかどうか知りませんが、たとえば密入国者を検挙した場合に、これに褒賞を与えるというような、何かそいう奨励的なことでもやつておいでになるかどうか、その点を伺います。
  118. 田中三男

    田中証人 国警、自治警との協力、これは特にわれわれの方が援助を受けでおる点が多いのでありますが、必要の場合十分の協力を受けておると申してさしつかえないと思うのであります。先ほど申しましたように二、三の逃亡者を出しました際に、それぞれの土地の自治警及び国警は全力をあげて協力をしていただいております。そういう意味において、十分協力をしていただいておると、こうわれわれは見ておるのであります。事務連絡の点、むしろわれわれの方からの連絡の点に遺憾の点がないかということに対しましては、実は昨年の暮れから事務を始めたばかりでありまするので、間々さような点はあるだろうと思いますが、これは今後注意をいたしまして、漸次連絡をよくするように今後とも努力を続けたい、かように思つておるのであります。  なお今申されましたように、密入国者の逮捕等に協力した者に対して、これを奨励する等の方法を講じておることはないかというお尋ねでありましたが、これに対しましてもわれわれとしては努力をして、さような措置もとるように考えたいと思つておるのでありますが、現在われわれに配付されておりまする予算ではほとんどさような方面に使用する予算はないのであります。しかしこの点は大いに研究して、できるならばさようなことも今後実行するようにいたしたい、かように思つております。
  119. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 この密入国者の基点は、長崎県の壱岐、対馬が朝鮮からの基点のようになつております。これは非常に重要な地点であろうと思うが、この両島における警備施設あるいはその構成員数等を、簡単でよろしゆうございますから伺いたい。
  120. 田中三男

    田中証人 実はおはずかしいのですが、まだ十分の措置はやつておらないのでございます。最近福岡出張所から、四名の警備官を対馬の方に常駐させるようにいたしましたが、四名ではとうてい足りませんので、できるならばあそこにも出張所を設けなければならぬ、かように考えておるのでありますが、出張所を設けるまでの間は、できるならば福岡出張所の対馬の支所をあそこに置くことにして、少くとも十数名の警備官は常駐させるようにいたしたい。かように考えておるわけでございますが、これまた予算と定員の関係等もある。しかしその範囲内においてなるべく早くできるだけの今申しましたような支所でも設けまして、警備宮を増強しなければならぬ、かように考えております。現状はわずかに四名の警備官を常駐させて、必要のある際は福岡並びに大牟田の方からそれぞれ対馬に派遣をいたしておるわけでありますが、やはり相当数の警備官を常駐させる必要がある、かように考えておる次第であります。
  121. 内藤隆

    ○内藤(隆)委員 最後にともかくも不正入国者中には癩または天然痘の患者が多いということは想像し得るのであります。こういう者どもが入つて来るときに、四名くらいの常駐の警備員を置く程度で、これを防止し得るとは何人も考えておりません。しかもこれはあなたに質問する意味ではございませんが、今月の初め、天然痘が非常に流行しておりました対馬を拠点として、その天然痘の患者を乗せた漁船が十五日間にわたつて玄海灘一帯に漁業をしておつた。ちようどこれは天然痘の黴菌を玄海灘へまいて歩いたようなものだ。しかもこれを発見しまして、長崎県から対馬の方へ警告を与え、対策を講ずるために電報を打つたか、あるいはまた無電で行つたか、こう調べると、そうでない、速達でやつた。速達は四日もかかる。そういうふうな程度の警備状態では、なかなか密入国者に対する対策というものは立つものではないと思う。この点われわれ国会においても相当に認識を深めて、ここに施設しなければならぬ、予算的措置を講ずることもまた必要であろうと思うが、しかしお役所にしてもかような点はこれこれこういう意味で重要だというて、熱意をもつて予算を請求されるならば、われわれも十分にこれを審議して行きたいと考えております。私はこれで終ります。
  122. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 私は二、三点法律上の点をお伺いしたいと思います。最近不法入国というのは、密入国みたいなもので入つて来た者のうち、登録令違反の者はみんな不法入国者として扱つておるわけですか。
  123. 田中三男

    田中証人 強制送還者であるという意味で、一般に不法入国とか、不正入国者とか言つておりますが、実際法律的な意味では、われわれはこれを密入国不法入国者と、手続違反者という二つの種類にわけて区別いたしております。すなわち密入国者というのは、登録令第荘條の違反者、すなわち総司令官許可なくして本邦に入国し、または滞在している者、それといわゆる外国人登録令手続違反者、こういうふうに密入国者と手続違反港というものを区別いたしておるわけでありますが、一般にはそれぞれ強制送還の対象になる者でありますから、不正入国者として、あるいは不法入国者、こういうふうに言つておるわけです。
  124. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうすると不法入国者登録令違反の者も、ともに強制送還の対象となるわけですか。
  125. 田中三男

    田中証人 登録令の第三條が、今申しました密入国でありまして、第二十六條がすなわち手続違反者であります。
  126. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 手続違反の者は、規定をとつくり読まないとわかりませんが、必ず強制送還する場合でもあるまいと思いますが、その強制送還をなす場合に、スキヤツプに対する嘆願とか、警密官憲その他と結びついて、法律的、個人的差別待遇をして、ある場合は送還する、ある場合は送還しない、こういうふうな便宜の措置を講ずることがあるやに聞きますが、そういうことはありますか。
  127. 田中三男

    田中証人 現在のところわれわれ出入国管理庁の手で裁量する余地はほとんどないといつてよろしいと思います。
  128. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 ずつと戦前あるいは戦時中からおりました韓国人、台湾人、そういうふうな連中で登録令手続を怠つた者、あるいは手続をやつた者はそういう問題は起らないかもしれませんが、概括的にいつて、それは国籍はどうなつておりますか。それからまたわれわれが承知しております限りにおきましては、共通法がまだ戦前と同じように適用されておるやにわれわれ承知しておりますが、この点はどうなつておりますか。
  129. 田中三男

    田中証人 実は国籍の問題といたしましては、朝鮮人も日本国籍をまだ持つておるわけであります。台湾人も国籍は日本国籍を持つておるわけであります。そういう意味で、いわゆる日本国籍を持たない者を外国人、とこう申しますれば、朝鮮人も台湾人も外国人にはならないわけでありますが、登録令では特に本令の実施に関する限り、朝鮮人とそれから本邦に居住しておる台湾人で、中華民国の駐日代表団の登録証明書を持つている者は、これを外国人とみなすということになつておるわけでありまして、そういうふうに登録令関係上、朝鮮人と台湾人は外国人とみなされておるわけであります。国籍の問題はまだ決定しておらないわけでありますから、そういう意味で国籍上はまだ日本人であるということが言えるのであります。登録令関係では外国人とみなされて、この登録令の適用を受けておるわけであります。
  130. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうすると国籍の点においてはまだ日本人である、こういうことですか。
  131. 田中三男

    田中証人 国籍の問題はまだ決定しておらないわけでありますから、日本人も言えるわけであります。
  132. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 共通法はまだ生きているわけですか。
  133. 田中三男

    田中証人 まだそのまま手を触れておらないと思います。
  134. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 そうすると強制送遅の根拠法規というのはスキヤツプの命令だ、こういうふうに解していいわけですね。
  135. 田中三男

    田中証人 われわれの基準にしておりますのは登録令でございます。
  136. 福田喜東

    ○福田(喜)委員 いや強制送還の根拠は……。
  137. 田中三男

    田中証人 やはり登録令退去を強制するということになつておるわけであります。
  138. 島田末信

    ○島田委員 私は不法出入国者に対する取締りの完璧を期することは非常に重大だと思いますが、先ほど来証人の御説明を聞いておりますと、現在の取締り程度では非常にずさんといいますか、網の目があら過ぎて、よほど不運な者か、とんまな連中以外にはどうもつかまりようがないような程度にしか聞えないのであります。しかも今日の実情をもつてしては予算面や何かの関係もありましようが、十分なことができないのだという投げやりな気持も存在しておるやに見えるのであります。そこでわれわれは当然その程度では捨ておけないのでありまして、あらゆる角度から改善すべきものは改善するし、また機動力の発揮できるものは発揮して行くということで、また拡大強化しなければならぬ点があれば、これも一応大いに考えなければならぬ、いずれにいたしましてもこの不法出入国者の取締りに対しては万全を期したいと考えますが、私の気づいた点をお尋ねしたいとしいます。  まず検挙取締りについてでありますが、密航監視所が現在の状況ではいろいろ設備の足りない点があり、市町村の所有物をお借りしたり、あるいは電話の施設がないとかいろいろ不便が多いようでありますが、こういう点については、現在何らか急速に実際取締りのできるような設備やらそういう方法を改一善して行きたいというようなことで実行しつつあるかどうか。またそういう点についてはすでにお気づきの点があるかどうかお尋ねしたいのであります。
  139. 田中三男

    田中証人 現在の出入国管理庁はこういう建前ででき上つておるのであります。というのは、不法入国者をつかまえてそれが一応検事の手に移つたものについて退去令書を出し、これを護送し、送還するというのが出入国管理庁仕事になつておるのであります。そういう建前でわれわれの人員と予算がとつてあるわけなのであります。と申しますのは、不法入国防止するということについては、実はわれわれの方の予算と定員ではそういう予算も定員もとつてないのであります。これは従来国警と自治警でやつておられました際は、全国で十数名の警察官がおられまして、さらに海上は数万の海上保安庁の保安隊員がやつておるわけで、われわれはとうていこれを全部引受けるわけには行かないので、実はそういう不法入国者に対しては、海上にありますれば海上保安庁お願いし、陸上の面においては従来通り国家警察なり自治体警察なりにやつていただいて、そういう不法入国者がつかまつたときに、われわれのところに移して、これを強制送還することができる。こういう建前で予算と人員が現在のところ組んであるわけであります。そういう意味で、警備員もわずかに三百二、四十名、しかもそのうちの百五十人は大村収容所、残るものは二百名足らずで、九州本州、北海道を含めて全国に、わずか百八、九十名が配置してあるにすぎないのであります。これで不法入国へを防止するとか、あるいは内地に潜入している不法入国者を一々検挙するということは、とうてい不可能なのであります。しかし将来の問題としましては、単に警察あるいは検事局のところから渡つたものだけをわれわれのところで引継いで行くというだけでは、不法入国防止の目的を十分に達するわけには行かないので、予算と定員をさらにできるだけふやしていただいて、それらの面にも警察並びに海上保安庁に積極的に御協力を願い、こちらからも協力して、完璧を期するように努力したい、かように考えております。現状においては、今申しますように、直接密入国者の防止であるとか、これを積極的に検挙するというだけの、人員と予算を持つておらないのであります。  それから今御質問がありました監視所の問題でありますが、これも山口県であるとか、長崎県であるとか、これらの県においては、かなりの費用と努力をされまして、この不法入国者の監視、防止に当つておられるようであります。将来はもし予算等が許すならば、われわれの主務官庁の手で、これらも引継ぎ、さらにこれを増強して、不法入国防止の完璧を期さなければならないと思つておりますが、現状においては、われわれはそこまで手が届いておらないのであります。状況につきましては、それぞれ報告をいただき、また出張所からの調査も多少持つておるのでありますが、具体的な監視所等の点についての案は、今のところ管理庁では持ち合せておらない状況であります。
  140. 島田末信

    ○島田委員 ただいまの御説明では、出入国管理庁独力でしては、とうていこれを防止できない、結局国家警察とか、自治警察とか、あるいは海上保安庁協力を得なければ、完全に防止することができないのだという御説でありますが、現在保安庁にいたしましても、国警、自治警にいたしましても、決してその数は減つていないはずでございます。またその力も決して減殺されていないわけであります。要はその連絡が非常に不十分であり、また協力すべき態勢が十分整つていないのじやないか。そこに大きな欠陥があるようにも思われるのであります。しかもその欠陥は、たとえばまだ管理庁が出発以来日が浅いとか、あるいは訓練が足りないとか、いろいろ不備欠陥がありましようが、同時にまたこの管理庁の役割と、協力をしなければならぬ保安庁とか、国警、自治警といつたものの間に、いわゆる人間同士の一つの立場として、責任上ともどもにこれを負担しなければならないというふうな、緊密な協力を得るところまで行つていないのじやないか。これは私はごく俗な例だと思いますが、たとえば管理庁の警備員などは服装もりつぱだし、なかなか外見的にもいい身なりをしておるようだが、一面また国警なり自治警なりから見れば、少しおしやれ過ぎるじやないかとか、あるいは少し誇りがましいじやないかという、ねたみといいますか、そういう点も伴いやすいものであります。同時に責任の所在がはつきりしないと、人のお手伝いをすることは、どちらかと申せば手軽になつて、決して本腰が入らない。いわゆる士気の上にも非常に影響するという点があるだろうと思うのであります。たとえば警察官不法入国有を逮捕し、これを受つ取た場合には、警備官の方ではこれを引渡してもらつて立件送致するというような建前になつておるように聞いておるのでありますが、実情は決してそういうふうになつておらない。立件送致に至るまで、すべて警察官がやらなければならないということらしいのであります。これも先ほど申したように、定員が少いとかあるいはまた教養が足りないとか、訓練が足りないとかあるいは電話であるとか、その他設備の不備という点もあるでありましようが、こういう欠陥と同時に、人情に即してお互いにぴつたりと呼吸が合つていないということが、非常な障害を来しておるのじやないか、かように考えるのであります。そういうことについて、ひとつあなたの今後の方針なり、またそういう不備をどう補うべきかという御意見を、お聞きたいと思います。
  141. 田中三男

    田中証人 出入国管理庁、特に地方におります警備官なり審査官などは、まだ開設当初で、事務所も完備しておらないようなところもあるわけで、今おつしやいましたように、それぞれの地方関係当局との間に人的にもしつくり行つておらないという点もあるかと思うのでありますが、これは順次よく訓練をしまして、連絡を密にして行くようにいたしたい、こう考えております。  さらに出入国管理庁の現在まだ表には出ておらないのでありますが、われわれが理想としておりますところは、不法入国者に対してはもちろんあくまでも厳正に、かつ厳密に処置をしなければならないのでありますけれども、同時にわれわれの取扱います相手がすべて外国人であるという点におきまして、その取扱いぶりその他については、国内警察官以上に、その態度その他の点について注意を必要とする、かように考えておるのであります。この取調べの手続等につきましては、目下実はその研究に忙殺されておるような実情なのでありますが、さらに民主的なやり方でそういう手続も考えて行きたいと思つて、研究を進めておるわけであります。実はわれわれの仕事につきましては、特に総司令部が先般米国から専門家を招聘してくれまして、いろいろ指導を受けておるわけであります。今日も朝から二十名ばかりその講義を受けておるわけなのでありますが、その冒頭におきましても、諸君はともかく日本に入つて来る外国人に第一印象を与える役目であるから、特に注意をするということが、結局日本の印象を海外によくすることであるというふうな訓示を受けて、いろいろ指導されておる。こういうわけなのであります。そういうわけで、不法入国に対しては厳正に事に処さなければならぬと同時に、その取扱いについて、また不法入国者と一応目しましても、よく調べてみれば、不法入国者でない者もあり得るのであります。その点については特に親切にやらなければならぬ、こういうように考えております。すなわち一方では厳正に事に処すると同時に、またその態度なり手続は努めて親切で民主的でなければならぬ、こういう二つの理想をもつて、今後出入国管理庁の確立整備を期して行きたい、かように考えておる次第であります。
  142. 島田末信

    ○島田委員 これは実例でありますが、昭和二十五年十一月十三日、福岡県糟屋郡志賀岡海岸に漂着した漁船漁成号は、取調べた結果、遭難船であつて、密入国者でなかつたということがはつきりしたにかかわらず、本人の早く国に帰りたいという気持をここに取入れずに、かえつて純密入国者というような取扱いでもつて、その後身柄を収容するし、船もまだ送らせずに、そのまま置いたというような話を私聞いておるのですが、その実情と、その処置について、ちよつとお聞きしたいと思います。
  143. 田中三男

    田中証人 出入国管理庁事務を引継ぎまする以前におきましては、海難者も、やはり最高司令官許可なくして本邦に入つた者として、不法入国者として、退去令書の発布を受け、強制送還をされておつたのであります。しかし私どもから見ますると、海難者につきましては、国際的な條約もあ力、慣行もあり、これらの者を不法入国者として退去命令を出し、強制送還をするということは、国際的にもおもしろくない、かように考えまして、この措置について、将来海難者であることが判明した場合には、出入国管理庁としては退去命令は出さない、同時に従つてわれわれの収容所にも収容しなければ、強制送還もしないという方針を確立いたしまして、関係方面にその方針を通達したのであります。ところが実際の問題になりますると、海難者を装つて密入国を企てる者も多いわけでありまして、実際の判例はむずかしいというのが実情のようであります。しかし管理庁としては、その判別がむずかしいということと、実際の海難者に対する取扱いを別にするということは、截然と区別してやらなければならぬ、かように考えて、われわれは海難者とはつきりした者に対しては、退去令書を出さない、強制送還従つてしない、こういう方針をきめまして、行政庁に対してかような海難者に対する新しい措置について研究を依頼いたしております従つて今後はそういう海難者に退去令書を出すというようなことはないはずであります。この間三月二日に強制送還いたしました中に、実は三十名ばかり海難者がおつたのであります。しかしこれは実は海難者であるかどうか最後的にはつきりしないものもあつたわけでありますが、海難者である者もおつたわけであります。これに対しましては、管理庁は時に海難証明書を管理長官名前で渡しまして、これを持参せしめて、送還船に特に便乗させて、釜山に選り届けたわけであります。今後は海難者に対しては別の措置をとることにいたしておるわけであります。
  144. 島田末信

    ○島田委員 最後に、ただいままでの御説明によつて、ともかくも管理庁が現在の組織機構でもつて最善を盡すというためには、いろいろな面からさらに大いに改善しなければならぬ点もあるし、また訓練しなければならぬ点も多いと考えますが、同時にその機構の面におきましても、たとえば他の関係官庁といかに緊密な連絡をするかとか、あるいは退去強制命令の実施について、地方検察庁と十分緊密な連絡の上で間違の起らないようにするとか、あるいは今の海難者等のあとの措置についても、迅速にこれを措置する上において、いまだその能力を発揮する点が十分でないというようなことを、いかに改善して行くかというふうな点から見まして、たとえば現在の管理庁の出張所といつた程度のものではなかなかそういうことが具体的に実行されないのではないか。あるいはこれを局として大いに責任のある者を置き、さらにまた関係盲あたりにつきましても、いわゆる連絡指導に当る者もさらに多少は増員しなければどうにもならぬのでありまして、こういうふうな考えを持つのであります。すなわち審査官一、二名に対しては、必ず警備官をある程度配置して常駐させておくとか、いろいろ考考え直す点があると思います。こういう点について、こうすればもう少し具体的に——万全を期し得られないまでも、よほど現在の能力をさらに増して行けるというふうなお考えがあるかどうか、これを最後に承つておきたいと思ます。
  145. 田中三男

    田中証人 まつたく実は早急の間に管理庁を設置し、しかもまたわれわれ全部がこういう新しい役所に対して十分の知識経験を持つておらなかつたというために、多少スタートの点で、間違つたというわけではないのでありますが、きわめて消極的であつたという点は、私どもも認めておるわけであります。たとえて申しますと、各出張所には約二十名内外警備官を配置しておるのであります。一回に七、八名の護送者が出ますと、ほとんどその出張所警備官がからになるというふうな状況でありまして、これではとうてい国内関係官庁との連絡も十分できないというふうな点は、われわれも認めておるわけであります。そういう意味合いにおきまして、どうしても警備官の数をかなりふやさなければならぬ。同時に今お話のございましたように、単なる出張所程度では、海上保安庁なり国警、自治警の上級幹部との連絡も十分でないというふうなことも考えられましたので、これらの出張所をさらに強化して、今仰せになりましたように、これを局等にするというふうなことも、おいおい考えて行きたい、かように考えております。とりあえず、目下現在のところでは、この手続令の実施に関連いたしまして、相当数の人員の増加と予算の増加を大蔵省側と折衝中であります。ただいま議会開会中で、いろいろ予算の技術その他の関係のために遅れておりますが、われわれとしては警備官を約倍数程度にふやす案をもちまして、大蔵省の係の方と折衝を開始いたしておる状況であります。
  146. 塚原俊郎

    塚原委員長代理 ほかに質疑はありませんか——他に質疑がなければ、これをもつて田中君に対する尋問を終ります。長時間にわたり御苦労様でした。  明日は午前十時から開会いたします。本日はこれにて散会いたします。   午後四壁二十九分散会