○慶松
政府委員 まず大体この問題につきまして、主管局といたしまして私から最初に御答弁申し上げます。この勧告は昭和二十四年の九月十三日に、厚生当局に渡されたものでございます。しかしこれは英文で渡されましたので、四十五條の浩瀚なるものにわたり、かつ全文が非常に長い上に、一々の
説明がついてございます。これを誤りなく翻訳することに相当時間をとりまして、約一月半ぐらいかか
つておると思います。従いまして、
厚生省におきまして実際の検討に入りましたのは、十一月ごろからだと私は記憶いたしております。この勧告のおもな点は、その勧告の前にサムス准将から、
厚生省に対しまして、送達書が来ております。その中に書いてある通りでございまして、第一は、法的及び教育的手段により、医薬をすみやかに分離せしめることにより、医師は診断し処方し、薬剤師は、医薬品を確保、貯蔵し、医師の処方箋に基き調剤投薬する
目的を達すること、すなわち今回問題にな
つておりますところの医薬分業ということを、アメリカの人々の客観的な
立場から見まして、当然
日本において行われなければならない、こういうことを申しておるのでございます。第二の点といたしましては、薬科大学の学科課程内においては、理論的及び実際的の薬学、特に調剤投薬あるいは生物科学あるいは薬局の経営あるいは薬業の倫理ということを、十分にひ
とつ現在より以上にや
つてもらいたいということでございまして、まことにいずれももつともなことでございます。第三といたしましては、医薬品を調剤投薬する者は、すべて教育、免許及び設備に関し、同等の必要
條件に適合すべきこと、すなわちこれは薬局あるいは病院の薬局においてもすべて同等の設備あるいは同等の免許を必要とするということでございます。
そのほかの点といたしましては、次に劇毒薬に対しては処方箋をも
つて販売せしめる
ようにする。次は
薬事法の中に、薬事
審議会が主として薬剤師をも
つて組織さるべき
ように
規定すること。それから次は有資格薬剤師のみが、
政府諸機関における薬事活動の取扱いに関する主要地位に任命せらるべきこと申すまでもないという
ようなこと、あるいは模範の製薬工場をつくれという
ようなこと等がございまして、すなわちかくのごとく多方面にわた
つての勧告があるわけでございます。従いまして、これらの勧告につきまして、一々私
どもの方といたしましては検討をいたした次第でございます。その中で今回問題にな
つておりますところの医薬分業に関しまする点は、第一條、十九條、二十一條、二十四條、二十七條、三十條等がございまして、これらの点に関しましては、
厚生省内部において十分検討いたしたのでございますが、さらにこの点を実際に実行に移しますには、これらの点に実際に当りますところの医師、歯科医師あるいは薬剤師等の協力理解なくしては、この点の解決が困難であるということを私
どもも痛感いたしまして、そうして各団体等に働きかけましたところが、各団体におきましても、いわゆる三志会なるものを組織いたしまして、この問題の解決に当ろうということに
なつたのでございます。そうこういたしておりますうちに、この問題に関しまして、サムス准将から三志会に対しまして勧告がございまして、もしも三志会において、専門の職を持
つておる者の間においてこれを解決しない際には、他の力がこれを解決する
ようになるから、従
つてこの問題は専門の人々、すなわち三志会の間において解決することが最も適当であるという勧告があ
つた次第でございます。従いまして、その三志会においていろいろな話合いがあ
つたのでございますが、遂にこの点が成功せずして、しからば
厚生省において
審議会なるものを組織して、この問題の解決に当
つたがよかろうというサムス准将からの話があ
つた次第でございます。もちろん准将からの話がございまし
ようがございませんでし
ようが、
厚生省といたしましては、この問題は長年にわたる懸案でございまして、その解決には常々心を碎いてお
つた次第でございますが、幸いそれらの勧告がございましたがゆえに、この問題を急速に解決するという意味で、先ほど来
お話のございました
審議会両調査会が設けられた次第でございます。
なおそのほかの点につきましては、たとえば教育の点あるいは薬事
審議会の点。教育の点につきましては、四條から十六條及び四十三條、四十四條でございますが、この点につきましては、文部省と十分連絡し、また教育
審議会で勧告の線を生かします
ように私
どもも協力し、努力いたしている次第でございます。
なおそのほかの條項におきましては、
審議会の構成及び国家試験の点がございます。
——国家試験というのは、薬剤師の国家試験でございますが、これにつきましては、
審議会における勧告の線に沿う
ように、薬剤師の点をふやし、また国家試験についても勧告の趣旨を生かしている次第でございます。
さらにそのほかの点につきましては、製造の問題、あるいは薬の価格の問題、あるいは監視の問題がございまして、製造の点につきましては、先般申し上げました通り、
外国の技術導入に関しまして、いろいろな
措置をと
つておるのでございます。技術者を派遣いたし、また
厚生省におきます技術者も派遣いたし、また民間からも派遣いたし、あるいは技術の提携をいたし、あるいは製造場におきましての規格薬品の機能を高めるという
ようなことをや
つておりまして、現に非常に優秀な注射薬の製造工場等がわが国においてもできておる次第でございます。そのほか
厚生省の
改正につきましては、すでに昨日も申し上げました通り、第六
改正薬局方を三月一日に発行した次第でございますが、また国民医薬品集につきましては、全面的に
改正すべく目下検討中でございます。なお製造に関しまする監視、すなわち医薬品その他衛生資材の純度を確保いたしますために、監視員の増員を本年度の
予算に盛
つておる次第でございます。
以上の通り、この勧告書にございます各條項ごとに私
どもの方といたしましては愼重に検討いたしまして、とるべき点は十分取上げておるつもりでございまして、その中の一つといたしまして、今日最も期待をいただいておりますところの医薬分業の問題があるという次第でございます。