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1951-03-24 第10回国会 衆議院 厚生委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年三月二十四日(土曜日)     午前十一時五十七分開議  出席委員    委員長 松永 佛骨君    理事 青柳 一郎君 理事 丸山 直友君    理事 亘  四郎君 理事 福田 昌子君       大西 禎夫君    高橋  等君       田中  元君    中川 俊思君       松井 豊吉君    山村新治郎君       金子與重郎君    堤 ツルヨ君       井之口政雄君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 黒川 武雄君  出席政府委員         厚生事務官         (社会局長)  木村忠二郎君  委員外出席者         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     高田 浩運君         厚生事務官         (社会局庶務課         長)      黒木 利克君         專  門  員 川井 章知君         專  門  員 引地亮太郎君         專  門  員 山本 正世君     ————————————— 三月二十三日  委員金子與重郎辞任につき、その補欠として  小林運美君が議長指名委員に選任された。 同月二十四日  委員小林運美辞任につき、その補欠として金  子與重郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十三日  社会福祉事業法案内閣提出第一〇二号)(参  議院送付) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  社会福祉事業法案内閣提出第一〇二号)(参  議院送付)  厚生省設置法の一部を改正する法律案に関する  件     —————————————
  2. 松永佛骨

    松永委員長 これより会議を開きます。  まず厚生省設置法の一部を改正する法律案について、厚生省総務課長より発言を求められておりますので、これを許します。高田総務課長
  3. 高田浩運

    高田説明員 厚生省設置法の一部を改正する法律案でございますが、正式には内閣委員会の方で御審議願つておりますので、一応内容について説明させていただきたいと思います。内容といたしましては、こまごましたものがございますが、大体大きな点は二点ございます。その一つは、検疫所につきまして支所あるいは出張所を設けることにいたしたいということと、それから第二は、麻薬取締りにつきまして、全国ブロツクについて地区麻薬取締官事務所を設けることにいたしたい、そういう点でございまして、あとはこまかい字句の整備程度のものでございます。  初めから一応申し上げますと、「第五條第二十四号中「並びに船舶汽車及び電車検疫」を削り、同條第五十一号を次のように改める。五十一 特定の医薬品、用具及び化粧品規格を定め、又はこれらの検定を行うこと。」ということになつております。前者は従来船舶汽車電車検疫を行うについては、都道府県知事厚生大臣認可を受けて行うということになつておりましたが、その認可という制度を取払いましたので、従つてそれに対する條文整備でございます。次に薬の関係につきましては、昨年の十二月に御審議をいただきまして、薬事法の一部改正が行われたのでございますが、それに基きまして用具化粧品規格を定め、またはこれの検査を行うという規定にいたしまして、その辺の権限厚生省設置法の方でも明らかにいたいという趣旨でございます。  その次に「第十五條中「国立健康保險療養所」を削る。」御承知のように千葉に国立健康保險療養所がございますが、今度これを国立をやめまして、団体に移すということにいたしたいと思つておりますので、これに伴う改正でございます。と申しますのは、この療養所ができました当時は、療養所のベツドが一般的に少く、健康保險に関して特殊のこういう施設を設ける必要がありましたが、その後結核対策進捗等に伴いまして、特に健康保險だけについての国立のこういう施設を置いておく必要がない、そういうように考えられるに至りましたので、こういうような措置をとることにいたしたのであります。  それから検疫所につきましては、現在全国十四の検疫所がございます。開港場は御承知のように六十近くあるのでございます。従いまして、外国から船が入りまして検疫を受けるについては、地理的にいつてちよつとひまのかかるような場合もございますので、正式の検疫所以外に、適当なところに検疫所支所または出張所を置きまして、そういうところでも検疫が行えるようにして、船舶運航能率を上げるというような意味をもちまして、今申しましたような支所なり出張所を置けるようにいたしたいというのであります。  それからあとこまごましたことが書いてございますが、第一は駐在防疫官事務所関係でございますが、北海道地区駐在防疫官事務所をやめまして東北と一本にする。これは北海道地区だけでは事務量も少うございますし、東北と一本に運営することが適当と考えられますので、その辺を一本にいたしたい。そういう意味において、北海道地区駐在防疫官事務所をやめる。  それから麻薬取締官事務所全国ブロツクに設けるということでございますが、麻薬取締りにつきましては、御承知のように昨年の四月だつたと思いますが、御審議をいただきまして、府県の吏員から国の官吏に取締官がかわつたのでございます。従つて知事やあるいは衛生部長指揮系統から離れたわけでございます。その麻薬取締官が三百二十二名現在あるわけでございますが、これが各府県に置かれておるわけでございます。何しろ取締りということでございますし、事柄は非常にむずかしい、大切のことでございますので、この各府県にあります麻薬取締官を本省一本で身分上の監督もし、あるいは業務上の指揮監督もするということにつきましては、円滑を欠くきらいが過去の経験に徴しましてありますので、八ブロツクに一応締めくくりまして、これを通じて身分上の監督なり、あるいは業務上の指揮監督、搜査上の連絡調整をはかつて行きたいというのが、この地区麻薬取締官事務所を設けようとする趣旨でございます。この麻薬取締官事務所をこしらえるにつきましては、予算関係については一つもふえない。すなわち従来の定員でまかなつて行くし、それから従来の事務所をそのまま使つて行くということで、予算はふえないで、既存定員既存予算でやつて行く、そういうような考え方であります。  大体以上のような趣旨改正をいたしたいと考えておる次第でございます。
  4. 松永佛骨

    松永委員長 本件について何か御発言はありませんか。
  5. 高橋等

    高橋(等)委員 ちよつとお伺いいたしますが、厚生省令検疫所支所または出張所を設けるのに、現在どういう場所が必要になつておりますか。御計画がありますか。あればお伺いしたいのです。
  6. 高田浩運

    高田説明員 その点はまだはつきりきまつているわけではございませんが、一応心組みといたしておりますのは、横須賀大阪羽田、呉、四日市若松、そういつたところは置きたいと思つております
  7. 高橋等

    高橋(等)委員 それは支所ですか。
  8. 高田浩運

    高田説明員 間違いました。横須賀大阪支所でございまして、羽田、呉、四日市若松出張所でございます。その他はいろいろ土地の希望もございますし、その辺の関係十分考慮に入れまして決定いたしたいと考えております。
  9. 高橋等

    高橋(等)委員 この支所または出張所を設けられるにつきまして、定員関係はどうなつておりますか、先ほどの麻薬取締官事務所の設定については、定員は従来のままだということで、非常にけつこうと思いますが、せつかく整理をしましてもいつの間にやら人がふえて数年たつとせつかく苦心した官庁定員がまた元へもどるというのは、従来の歴史がはつきり示しておるところであります。われわれはできるだけ定員増加を防ぎたいという考えでおるのでありますが、この支所出張所を設けるにあたつてどの程度定員がふえますか。あるいはふやさずにやれるのか、その点お答えを願いたい。
  10. 高田浩運

    高田説明員 さしあたり二十六年度の予算におきましては、このために特に定員の増を求めておりません。お話のように定員がいたずらに増加することは、国家財政上の見地からも非常に好ましくないことでございますから、できるだけ少数の人間をもつて能率を上げて行かなければならぬと考えておりますので、その趣旨を体して今後とも参りたいと思います。
  11. 高橋等

    高橋(等)委員 定員をふやさないで支所出張所をつくるということは、私ちよつとわからないのですが、どういうようなやり方をなさるつもりでありますか。
  12. 高田浩運

    高田説明員 御承知のように従来は検疫所におきまして検疫することになつてつて、そこには相当数人間がおるわけでありますが、支所なり出張所なりが、正式に置かれるようなかつこうになりませんと、その検疫所のあるところでしか検疫が行えない。従いまして、たとえば神戸検疫所がございますので、大阪に行く船もまつすぐ大阪に行けないで、神戸検疫を受けなければならないというかつこうになるわけでございます。その辺のところが、かりにこの改正によりまして支所大阪に置けることになりますと、大阪支所がその権限に基きまして検疫を行いますから、わざわざ神戸に寄らなくても済むことになるのでございます。
  13. 高橋等

    高橋(等)委員 それは非常にけつこうなんですが、定員をふやさないで支所出張所をつくられるということになると、従来の検疫所の人をその方へ差繰つておやりになるおつもりであるか。あるいは支所出張所をつくるために将来増員をするのか。この点を伺いたいと思つて今申し上げたのであります。
  14. 高田浩運

    高田説明員 今神戸検疫所の話をいたしましたが、さしあたり従来神戸におります人間の一部を大阪にやる。その結果におきましては、神戸検疫をする船の一部を大阪検疫するわけですから、従つてそれだけ神戸検疫所における事務量大阪の方に移るというかつこうに見ていいと思いますそういう意味においてさしあたり従来の定員で融通をする、かように考えます。
  15. 高橋等

    高橋(等)委員 先ほども申し上げましたように、官庁定員増加ということは、現在官庁におられます人の待遇の改善ということを考慮に入れます場合には、できるだけふやさないので押えて、皆さん能率を上げていただくということでなければならぬと考えております。最近もいろいろ統制の撤廃その他が行われるので、厚生省方面でもそういうような影響を受けて、人が浮いて来るような場合もあると思います。いろいろと御勘案願いまして、できるだけ定員増加を防ぐということを、これは皆さんのためにもお考えくださつて特に希望申し上げておきます。     —————————————
  16. 松永佛骨

    松永委員長 次に参議院より送付されました社会福祉事業法案を議題とし、質疑を通告順に許します。青柳委員
  17. 青柳一郎

    青柳委員 まず第一に承りたい点は、社会保障制度審議会によつて行われました勧告の中にも、社会事業運営に関する部面があるのでありますが、それと今回提案になつております社会福祉事業法に盛り込まれておるものとの間の異同の点を承りたいと存じます。
  18. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 社会保障制度審議会におきまする勧告の線におおむね沿つて規定をいたした次第でございますけれども、その異なつておりますおもな点は、福祉に関する事務所を設置する際におきまして、社会保障制度審議会勧告によりますれば、おおむね人口十万の地域に民生安定所をつくり、ここで現業の仕事をやらせるというふうになつておりますが、現在の地方自治状況等にかんがみまして、現在の地方制度の線に沿うようにいたしますために、市町村行政並びに都道府県におきます中間の行政機構でありますところの、地方事務所支所という行政やり方といつたようなものを勘案いたしまして、市及び地方事務所の区域を原則といたしまして、その他町村におきましても、この事務所を設けることのできる能力のありますところにおきましては、この事務所を設けさせることができることにいたしました。一方地方行政調査委員会議勧告もございますので、両者を勘案して措置いたした点でございます。その他の点につきましてはおおむね勧告の線に沿つてやるように考えております。
  19. 青柳一郎

    青柳委員 次に承りたいのは第十九條、第二十條に、職員に対する訓練並びに事務に対する指導監督がうたつてあるのでございますが、これらを行おうとされるには、相当な御用意があろうと思うのであります。いかなる程度指導監督並びに訓練を行うか、それについての予算は十分であるかというような点につきましてお尋ねをいたします。
  20. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 こういう専任職員にあります行政を充実して行く面におきましては、その訓練指導監督の面が、きわめて重要であるというふうに考えまして、特に日本におきましては、この方の仕事に入つて来ます者の数が、明年度中に約四千人全国的に増加する。もちろんこの中には従来町村でやつておりました人が、県の方に入るということも相当あろうかと存じますけれども、従来資格のなかつた人が相当この仕事の方に入つて来るように相なろうと思いますので、この資格を得ますための教育につきましては、明年度中におおむね一応の指導ができますだけの準備をいたしてございます。これにつきましては、それに必要なる予算措置を講じてあるわけでございます。なおこういう資格を与えますための特別な訓練のほかに、その仕事についておるまま、仕事の点を通しまして訓練をするということ、及び仕事内容指導査察するという査察指導制度を強化いたしまして、仕事に即したところの指導訓練が行われるようにいたしたいと考えまして、これにつきましては、その訓練は平素の仕事につきながらするわけでございますので、そう多額の経費を要することなくして、これが実施できる見込みでございます。これにつきましても一応の準備をいたしまして、そのやり方等につきましても、先般来たびたびの講習をいたしまして、そういうふうに仕事につきながら訓練をいたしますやり方を、地方に徹底するように努力いたした次第でございます。なおそういう指導につきましては、これは各法律施行事務内容ということにもなりますので、特に生活保護施行が最も中心をなしておりますので、生活保護法の方におきまして、明年度におきましては新たにこの査察指導に必要なる事務費を、予算に計上いたしまして、これが総額三億数千万円という金額を新たに国庫補助をもつていたすことにいたしております。従つて明年度におきましては、おおむね所期の目的が達せられるだけの予算的な準備ができておると考えております。もちろんこれにつきましては、やればやるほどいいということは言うまでもないのでありますので、今後におきましてもこれが内容が十分よくなりまして、そうしてこの専任職員がいわゆる官僚化することなく、ほんとうに生活に困ります人人、その他の社会福祉の面で、いろいろお世話しなければならない人々のためになるようにいたしたいと考えております。
  21. 青柳一郎

    青柳委員 この法律社会事業運営並びにその能率の増進をねらいとするものであると思うのであります。そういう点から申しまして、人を得る、人を訓練するということが一番の中心題目であると思うのであります。御当局におきまして相当な御準備があることを聞いて、安心はしておるのでございますが、ことにこの訓練につきまして、よく実情に即した指導なり保護ができるように、十分な訓練のほどを切にお願いする次第であります。  次に承りたいのは、第二十五條に「社会福祉法人は、その経営する社会福祉事業支障がない限り、その収益社会福祉事業の経営に充てるため、収益目的とする事業を行うことができる。」こうあるのであります。御当局のお考えでは「社会福祉事業支障がない限り」というのは、いかなることを考えておるか、その点について承りたいと思います。
  22. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 社会福祉事業が、収益事業を行いますと、その収益事業の方に主眼点が移りまして、そのために社会福祉事業そのものが、おろそかになるというおそれが多分にございます。特に社会福祉法人におきまして、社会事業を経営いたしております場合におきまして、それに付随して収益事業をやつておりますと、その収益事業の方が、どちらかと申しますと、えてして重点を置かれやすいという危險がございます。従いまして社会福祉事業そのもの運営がうまく行かないという場合がありますから、ここで支障があるというふうに考えた次第でございます。
  23. 青柳一郎

    青柳委員 結局御当局のお考えでは、収益にあまり重点を置かないようにという程度のお考えであるというふうに考えられるのでありますが、社会福祉事業をやるのにつきましては相当な金がいる、その金を生み出すのに、方法として残されたものは、寄付金募集なりあるいは共同募金の金をもつて充てるよりほかに方法がないのでございますが、この点をあまりに嚴重に考えられますと、手も足も出ないということに相なるおそれがあるし、現実には手も足も出ないような、非常な苦境に陷つておる状態をわれわれは見るのであります。この点につきまして、そういう点を十分お考えを願いたいと思いますが、今までに比しまして、これによつてどういううまみを発揮するというようなお考えでもありますれば、お話を願いたいと思います。
  24. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 従来社会事業をいたしております各種法人が、収益事業をやつておりますことにつきましては、これに対する明文がございませんので、隠れてやつておるといいますか、もぐつてつておるといいまか、そういうような関係がございまして、その関係からどうも公明を欠くためにかえつてその収益事業がうまく行かないという点が多々あつたように思います。従いまして本案におきましてはこれを明らかにいたしまして、収益事業を堂々とさせる。しかもこれをガラス張りの中でさせることにいたしまして、それに伴うところの各種の弊害も防げますし、またこれがその名に隠れまして、収益事業が主でありながら、社会事業を看板にするようなもののないようにするということでもつて、法の信用を増しますと同時に、これに対します各方面からの援助が十分に行くようにいたしたい、かようにしたいのでありまして、この収益事業によつて得られました収益を、社会福祉事業に充てます場合におきまして、これに対する税の免除において、従来よりもその免税の控除額を拡大するということについて、大蔵省当局との話合いがつきまして、近くこの法律案施行になりますと同時に、その旨が出されるように話合いをつけておる次第であります。
  25. 青柳一郎

    青柳委員 二十四條に「社会福祉法人は、社会福祉事業を行うに必要な資産を備えなければならない。」とあります、この資産程度につきまして、どういうことを考えておられますか。
  26. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この資産につきましては、社会福祉事業を営みます事業内容によりまして異なるわけでございまして、最初行おうとする事業収容施設でありまして、必要なるある一定の人間を収容いたしまして、ここで保護するということになつておりますれば、その保護しようするところの対象となつている人を入れるに、十分なだけの設備を持たなければなりませんし、またこれを経営して行く上におきまして、必要なる経費を生み出すだけの財源も持たなければならぬ。つまりそれだけの資産を必要とするというふうに一応考えております。従いましてこれにつきましては、一応の基準は別途立てなければならぬというふうに考えております。
  27. 青柳一郎

    青柳委員 次に五十六條でありますが、社会福祉法人の経営する社会福祉事業施設に対して、国または地方団体補助金を支出し、また有利な條件貸付金を支出する條項があるのであります。これは私の解釈によりますと、そういう施設が破損した場合において、緊急にこれを復旧する必要があると認められるときのみに限られておるようでありますが、さよう解釈さるべきものでございましようか、また御当局のお考えでは、これらの場合以外にも、そういう措置が必要になつて来る場合が起る、そういう場合につきまして、国からの補助金または地方団体補助金は全部とざされるものでありましようか、何らかの力がほしいという場合があり得ると思うのでございますが、その辺につきましての御意向を聞きたいと思います。
  28. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この社会福祉事業に対します補助の問題は、関係方面の示唆によりまして、現在これができないことになつておるのでございます。これに対しましては先般生活保護法改正によりまして、生活保護法におきましてはその一部を解除いたしまして、生活保護法保護施設につきまして、新設の場合を除きまして、これらの補助ができるようにいたしたわけでございます。なおその他の法令におきましては、そういう補助規定ができておりません。今回は災害復旧の場合におきましては、一般的に補助ができるような規定を設けまして、さらにこの点を広めたわけでございます。なお従来憲法八十九條の規定によりまして、一般社会事業に対します補助、助成というものがとざされておつたわけでございますけれども、この規定によりまして、一応憲法の点につきましては解除されるということが明らかにせられたわけであります。将来われわれといたしましては、民間社会福祉事業実情に応じまして、逐次これが拡張されるように考えて参りたいと思つております。
  29. 青柳一郎

    青柳委員 次に六十九條、寄付金募集でありますが、この許可基準につきまして承りたいと思います。
  30. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これにつきましては、やはりそこでやつておりまする社会福祉事業が、寄付金募集してやることが必要である、しかもこれにつきまして世間一般が認められるだろうというものについて、許可いたしたいと考えております。もちろん共同募金制度ができておるわけでございますから、共同募金というものの発達という点を、十分考慮いたさなければなりませんから、共同募金と重複しないという点を十分考慮しなければなりません。これらの点につきまして十分考慮いたしました上で、いたしたいと考えております。
  31. 青柳一郎

    青柳委員 今回のこの法案によりまして、多数の職員社会福祉事業に従事することに相なるのでありますが、従前からあります民生委員は、今まで長い間社会福祉事業のために、非常に貢献した人々であります。その熱意などにつきましても、私どもいつも頭の下る思いがする場合が多々あるのでありますが、この法案が成立いたしました後におきまして、民生委員の運命というものにつきましては、どういうふうにお考えになつておるのでございますか。
  32. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 民生委員につきましては、先般生活保護法改正いたしましたときに、民生委員は、その公共的な色彩と申しますか、公務員的な色彩をできるだけ除去いたしまして、民間人としてもう少し自由に活躍できるようにいたしたいと考えた次第でございます。本法案が成立いたします場合におきましても、この点については同様でございます。従いまして本法案におきましては、民生委員の問題は、触れなかつたわけでございますが、いずれ民生委員法自体がすでに改正をしなければならぬ必要に迫られておりますので民生委員法改正いたしまして、将来民生委員法によりまして、従来民生委員法に見えておるような公務員的な色彩を非常に強くいたしました点を除去いたしまして、純然たる民間のヴオランテイアといたしまして、働き得るような内容法律にいたしたい。そういたしまして、法律といたしましては民生委員法は残すようにいたしたいとわれわれは考えております。
  33. 青柳一郎

    青柳委員 民生委員法改正をお考えになつておられるようでありますが、私はその時期のできるだけ早いことを望むのでありますが、その時期はいつごろというふうに考えておられるのでありますか。
  34. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この法案がもし通過いたしまして、実施になりましたならば、実際の状況等も見合せまして、できるだけ早い機会に改正をしなければならぬというふうに考えております。
  35. 青柳一郎

    青柳委員 私ここに民生委員法を持つておらぬのでございますが、民生委員法には任期が書いてあると思うのであります。その任期が切れて、民生委員ならざる者が、だんだんできて来ると思うのでありまして、法律を急速に改正する必要があると思うのであります。それから任期が切れて民生委員の数が減つて行くというようなことは、民生委員の気持に非常に悪い点を残すと思う。当局はこの点につきまして、いかにお考えになつておられるか。
  36. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 民生委員の任期が一応切れますのは大体今年の夏になると思つております。しかしながらもしそれまでに法律ができませんようならば、一応従来の手続を使いまして、依嘱するような方法をいたしまして、その後に法律ができることになろうと思います。もしその前にうまく法律ができますれば、新しい法律によつてやるようにいたしたい、かように考えております。私どもとしましては、なるべく早くこれを改正するようにいたしたいと思つております。
  37. 青柳一郎

    青柳委員 最後にお尋ねいたしますが、私は社会保障制度が、いろいろな批判はありますが、着々と現内閣によつてその制度整備し、実現しつつあるものと考えておる一人であります。ことに社会保障は社会保險と国家扶助と、その二本の足の上に立つものであり、しかも国家扶助の面においては、先般生活保護法改正があり、また今回社会福祉事業法律ができることになりまして、ここに非常にりつぱな社会保障制度の一本の方の足ができ上ることに相なる次第でありますそこで私は考えるのでありまするが、生活保護法につきまして、資産状況をしんしやくする問題並びに市町村の負担の問題、この二つを何とかしてこの際解決しますれば、日本の社会保障制度の一本の足であるところの国家扶助はりつぱなものができ上る、こう思うのでありまして、その一日も早からんことを望んでおるものでありますが、資産状況しんしやくの問題並びに市町村の負担の問題につきまして、その後御当局の御研究が進んでおりまするか。進んでおりまするならば、その状況につきまして承りたいと存じます。
  38. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 生活保護法におきまするところの保護費の問題につきましては、われわれとしましては、一応この基準の引上げをできるだけすみやかにいたしたいと考えまして、これにつきましては、各般の準備を進めておるのであります。一応二十六年度予算といたしましては、その内容の増額といいますか、基準内容をふやすということをいたしたいと考えまして、一応の予算は組んだのでございまするが、その後の物価の騰貴等の事情もございまするので、これらを勘案いたしまして、できるだけ妥当なものをつくりたいと思つております。  なおただいま御質問のございました資産の問題でありまするが、資産につきましても、逐次基準をつくりつつあるわけでございまして、それらの運用につきまして、地方指導いたして参りたいというふうに考えております。最近これにつきまして一応の解釈につきましたものにつきましては、先般一般に対しまして適当なる印刷物をと思いまして、大部のものを出しまして、ここでもつて相当の解釈は明らかになつておると思いまするし、なお近くこれにつきましてこのわれわれの現在の取扱いについての考え方というようなものも、印刷物にいたしまして、地方に十分徹底させるようにいたしたいというように考えておりまするし、なおこの問題につきましては、今後実際の実情に応じまして、十分研究を進めまして、全般的に遺憾のないようにいたしたいと考えております。  なお都道府県、市町村の負担の問題でありまするが、今回の改正によりまして、大体負担区分は二つにいたしたいと考えております。従来都道府県、市町村及び国、この三段の負担をいたしておつたのでありますけれども、これを実施する機関と国との二段で負担するようにいたしたいと考えております。従いまして、市町村と国で負担する場合がございまするし、また都道府県と国で負担する場合があるようにいたしたい。かようにいたしまして、あまりあいまいな点がないように、つまり二、三の箇所でいろいろと財政的な面で考慮される面を、できるだけ少くいたしたいと思つております。なお負担の率の問題につきましては、今後十分に検討いたしてみたいと思つております。
  39. 青柳一郎

    青柳委員 負担の問題は、実施機関と国との二つで負担するということになりますると、当然今の八・一・一の負担は変更を見ることに相なると思います。その際に国が八であつて、実施機関が二になるのか、あるいは国が九であつて、実施機関が一になるのか、そこらの辺につきまして、現在お考えになつておられる点があるならば、お漏らしを願いたいと思います。
  40. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 現在のところにおきましては、国が八、実施機関が二ということに一応考えておりまして、そういうふうな運びで準備をいたしております。これにつきましては、国が九にするがいいかどうかという点の問題もあるわけでございまするけれども、さしあたり今回は事務費を、先ほど申しましたようなことで、国におきまする負担額を新たにいたしまして、それによつて地方の負担がある程度軽減されるという點をはかつた次第であります。
  41. 青柳一郎

    青柳委員 社会保障制度審議会勧告は、市町村の負担を、現実に生活保護を受ける人に対する保護費を市町村からできるだけ円滑に出させよう、こういう考え方であります。私どもの考え方からいたしますると、実施機関の負担分をやはり減らしていただきたい、こういう考えであります。その點もとくと御了察願いまして、案の立案に当られたいことを希望いたします。これをもつて私の質問を終ります。
  42. 井之口政雄

    ○井之口委員 ちよつと二、三お尋ねいたします。今日実施されております生活保護法によりますと、社会福祉主事はすでに置かれていることになつていると思うのであります。これは昭和二十五年の法律第百八十二号によつて、この実施が決定されていると思うのでありますが、聞くところによりますれば、その実施がほとんど行われていないというふうに承つております。これがもし行われていないとすれば、生活保護法の適用に対してかなりおろそかになるじやなかろうか。法文はあつてもその運用が、名あつて実なきものとなつている状態ではなかろうかと思うのであります。現在の生活保護法の実施の状態並びに社会福祉主事の今日置かれている状態等について、ごく簡単なものでよろしゆうございますから、全国的な点を御報告願いたいと思います。
  43. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 社会福祉主事設置に関します法律は、昨年五月に制定されまして、市につきましては八月一日から実施しているのであり、町村につきましては今年四月一日から実施ということになつております。従いまして、市におきましては現在おおむねこの設置を了して、仕事をしております。町村につきましては四月一日から実施することになつておりますけれども、この法案によりますれば、今回町村におきましては、そういう仕事を一応いたさないという建前を、原則としてとつております。しかしてこの仕事をいたしまする事務所全国的に設けまするので、福祉に関する事務所を設けます町村においては置きまするが、その他の町村におきましてはこれを設けないということに相なつて、おります。従つて四月一日からこの法律施行いたしまして、町村におきまする社会福祉主事の設置は、これを延期いたしたいという建前に考えております。なおその間におきます仕事につきましては、従来と同様民生委員に協力を求めまして、市町村事務職員等を十分動かしまして、努力いたして参りたいと考えております。もちろん社会福祉主事を完全に実施いたしました場合と比べますと、その間過渡期の期間におきまして、その目標としておりますところと比べまして、若干仕事は劣るだろうと思いますけれども、現状が悪くなるとは私どもとしては現在考えておりません。また現状を悪くしないように、この点につきましては十分配慮いたして参りたいと思つております。
  44. 井之口政雄

    ○井之口委員 現状といたしましては、市町村に今までのところ社会福祉主事は置いてない、そのために若干施行に対して劣つているというふうなお考えで述べられたようであります。それなら、今度出ますこの社会福祉事業法案によつて、むしろ置かないことを合法化してしまうということになつたら、悪くはならないだろうが、悪い状態をそのまま持続するということに結論的にはなるじやないでしようか。こういう福祉事業というものは、これを単に民生委員の協力によつてやるというふうなことでは、なかなか不十分と思う。なおただいまも仰せられた通り、民生委員には公務員としての、性格をとつてしまつて、ヴオランテイアとしての性格を強くするというふうになりますと、おのおのその職業を持ち、自分の生活のために忙がしい人たちが社会福祉の、こういう非常にめんどうで、親切心を要し、熱心を要するような仕事に対して、はたしてこれがうまく行くでしようか、その点お伺いしたいと思います。
  45. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 社会福祉主事につきましては、従来よりもこれをふやして参りつつあります。本年度におきまして二千人余りの増員をいたしておりまするし、明年度におきまして約四千人ばかりの増員、——増員と申しましても、純増にはならないと思います。他の仕事をやつておりましたものを、こちらにまわすということもあろうかと思いますけれども、少くともこの仕事をいたしますものといたしましては、それだけの数はふえて来るわけであります。従つて従来やつておりましたより悪くなることはまずなかろうと思います。ただ私どもの方で社会福祉主事を全面的に置いて、仕事をやらそうと思つておりますその目標に達するには、もしこれが結論を施行されれば、十月一日から施行されることになりまするが、その状態に達するまでにはまだ至つていない。しかしこれが施行されるようになりましたならば、さらに一段と仕事内容は進展いたすだろうと思つております。  民生委員制度につきましては、先ほど公務員的色彩を除去すると申しましたけれども、これは逐次除去しつつあるわけであります。従いまして、一挙にこの制度をかえるといつたようなことはいたさないのであります。逐次人員を整備されましたところからこれを純ヴオランテイアの方に移すというやり方をいたしておりまして、制度を、一挙に変革するというのではなく、順次変革しつつある。現在その変革の過程にありまするので、それを御説明申し上げることは、相当時間がかかるんじやないかと思います。
  46. 井之口政雄

    ○井之口委員 それなら民生委員の方を逐次減少させ、そしてこの社会福祉事業法による増員の方を、今年の十月までに完成するという予定になりますが、今日からすると、どれくらいふえて参りますか。その点をお伺いしたい。
  47. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 民生委員は減少するのではございません。民生委員の数には手は触れません。ただ民生委員に役所の仕事を委託してやつておりますものを、逐次はずして行くというだけでございます。従いまして、その方の手が抜けるということはないのでありまして、むしろ民生委員の方は仕事を抜けば抜くだけ手が強化されて来る。つまり手があいて参りますから、実際の仕事の方は強化して来るわけであります。なお一方増員されますものは、明年度におきまして約四千人増加を見込んであります。本年度におきましては、すでに二千余人の人間増加しております。この後におきましては、全体として約一万人の人が仕事に従事することに相なるかと思います。
  48. 井之口政雄

    ○井之口委員 この生活保護法の適用につきまして、われわれが観察することは、生活保護法の適用を受けなければならないような現実にある人がたとい申し込みましても、その申込みを受付口ではねのけて受付けない、こういうことがしばしば見えるのであります。のみならず、たとい受付けましても、それが適用基準が非常に弾力性があるために、なかなか思うように要求者の希望を満足させることができないというふうに思われます。前者は受付口ですでにはねのけてしまいますものですから、一体申込み人が日本全国において、実際上何人あつたかというふうなことがわからない。従つてそのわからない数から実際適用された人間の率をあんばいして参りますと、これは適用した人間の率を多く見せるような詐欺的な仕組みになつている、この点を政府の方ではどう考えておられるか、かつ今実際受付けているものがどれくらいで、それを実行しているものがどれくらい、かつこういうふうにすれば、相当程度生活保護法の適用が満足に行われると思うような数を、ひとつ概数でよろしゆうございますから、お知らせ願いたいと思います。
  49. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 ただいまの御質問に対しまして、これはおそらく十分にお答えができないだろうと思つております。と申しますのは、私どもといたしましては、大体その必要がありますものにつきましては、現在ではみな一応やつておるということを言つてさしつかえないじやないかと思つております。もちろん中にはたくさんのことでございますから、若干はなすべきもので漏れているものが一つもないとは言えませんが、大多数のものは、必要があります場合に、その適用を受けているというふうにわれわれは考えております。これに対しまして、申込みはいたしましたけれども、受付ではねのけられたというお話が今ありましたが、申込みを受付けた場合に、これははねないということをわれわれとしては建前といたしております。すべて申込みを受付けましたものは一応相談する、相談した上で、本人がやめるならやめる、本人がそれではとても自分は適用が受けられないということがわかれば、本人がやめる。それからあと手続いたしまして、本人が適用さるべからざるものであるということがはつきりいたしましたならば、これに対しまして、本人にその旨を通知いたしまするし、なおこれに対しまして不服がありまするときには、異議の申立てができることを本人に通知いたします。こういうふうにいたしまして、事務的にきちつとやつておきませんと、従来民生委員さんがやつておりましたものでは、あとから見て、はたして申請があつたのかなかつたのか、あるいは手続がうまく行われておつたのか、いなかつたのかという点についての立証すべきものが残りません。従つて今回新たに改正いたしまして、事務所におきましては、それらの手続全部を記録にして残すようなやり方をとらせようとしたのであります。これにつきましては、事務的の機構ができないとそれができません。従つて全国的に今できておりますのは、大都市から逐次及ぼしまして、現在市におきましては、大体そういう組織ができ上つているといつてもよいような状態になつております。従いまして、それらの地域におきましては、全部それのあとをたどつて行く、あとづけることはできるというような状態にあります。町村におきましては、まだそれだけの事務組織ができておりませんので、国全体としてどういうふうな組織ができるかといいますと、まだあとづけのできないものがたくさんあるので、これにつきましては、今回の改正によりまして、これをいつでも行つて見れば最後までわかるようにいたしたいと考えております。
  50. 井之口政雄

    ○井之口委員 今日受付数が幾らぐらいであるか、それからそれを実施適用した数が幾らぐらいであるか、お知らせ願いたい。
  51. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 先ほど申しましたように、そういうあとづけをいたすようなふうになつておりませんから、その点はお答えいたしかねるというふうに考えておる次第であります。
  52. 井之口政雄

    ○井之口委員 もし官吏においてこれを受付けないというような場合には、官吏服務紀律かなんかによつて、懲罰とか罰則に該当するのですか。
  53. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これは官吏じやございません。やつております者は市町村職員でございます。従いましてこれがやるべきことをやらないということになりますれば、当然その業務の規律に違反することにはなります。しかし官吏服務紀律には関係ございません。それぞれ公務員法によりまして、いろいろと手続きはされるだろうと思つております。  それからわれわれの方といたしましては、現場に行つて、それぞれの点についてよく拔き調査をいたしまして、実際に停止、廃止されたものがはたして妥当に廃止されておるかどうか、つまり廃止されざるものが廃止されていないか、それから扶助さるべからざるものが、扶助されていないかということを、現場に行つてよく拔き調査いたしております。また府県に対しましては、県並びに地方事務所を通しまして、町村でやつておりますものについても、監査をいたすようにしております。これらにつきましては、われわれといたしまして、その点は最も重点を置かなければならぬところと考えて、その仕事をやつておるのでありますが、先ほど申しましたように、事務的に現在まで手続がまだ十分でないという状況でございますので、今回この法律改正いたしまして、その辺をあとから見て、はたして妥当であつたかどうかということがわかるだけの事務組織をつくりたいというのが今回ここに新たに法案を提出いたしました事由の一つでございます。
  54. 井之口政雄

    ○井之口委員 監督して調査されたそうでありますが、その調査報告によつて注意を与えたような件数は、どのくらいありますか。
  55. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 厚生省といたしましては、大体各県に毎年一回は参りまして、その県内のどこかを見るということにいたしております。これにつきましては、その見ました結果について、一々具体的に指示いたします。その件数がどのくらいあつたかと申しますと、そういう統計はつくつておりませんから数字はわかりませんけれども、それほどひどいものがたくさんあるというふうには考えません。全体回数といたしまして間違いが多いということは考えられる。しかし調査によりましては、はなはだ間違つたような措置をとつておるようなところがありまして、これに対しましては嚴重なる措置をとつております。
  56. 井之口政雄

    ○井之口委員 非常に嚴重な調査をされて、措置をとつておられるそうでありますが、去年でございましたか、神戸において神戸事件というのが起きております。これは神戸の長田区のあの近所におります朝鮮人約三万ぐらい——三万でしたか、たしか万という数であつたと思いますが、その朝鮮人が、従来統制経済の時分には、いろいろ小さなやみ商売というふうなもので、細々と生活を立てておつたがそれもできなくなつた。あるいは職安の仕事は一ぱいでできなくなつた。こういうのでどうにもこうにも生活ができなくなつた。そこでその人たちが集団的に委員を選んで、長田区の役場に行つて区長さんに交渉した。それを官憲が非常に弾圧して例の神戸事件というものが起つた。私は現地に行つて調査したのでありますが、こういうふうなことに対して、厚生省として十分あの事件を調査なすつていらつしやいますか。長田区の区長のやり方が正しかつたか、かつ向うでは今そうした特殊の状態にある人たちに、生活保護法の適用がうまく行つているのか。また生活保護法を受けている人たちに対しても、市民税の賦課が参つております、というのが、あの時分のみんなの異口同音に申したところであります。そういう点などは厚生省としては一考を煩わされないのですか。
  57. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 神戸の長田の事件を初めといたしまして、集団的に保護を申請するということは、絶対に私の方では認めておりません。保護はあくまでも個々の世帯を対象にいたすことにいたしております。従いまして集団的に申し込んで参りましても、これは相手にいたしません。全部個別的な申請をとりまして、その申請に基いて処理いたしております。神戸の長田事件におきましては、集団的に参りましたのでありますけれども、これに対しましては相手にしないのがあたりまえでありまして、これを相手にしたらかえつて違法でございます。われわれといたしましては、その後の状況を聞いておりまするが、必要なものにつきましては、非常に困難な調査であつたにもかかわらず、全部調査いたしまして、これについて必要なる保護をいたしておるというふうに、私の方では調査ができております。なおこの場合におきまして、特に朝鮮の方々におきまして御協力を願わなければならぬ点があると思つておるのでありますが、調査に対しまして非常に不協力的であつたという点、われわれとしましてそれを調査した結果、遺憾であると思つております。少くとも生活保護というものが権利であります以上は、保護を受けます者におきまして、各種の調査に対して十分なる協力をしなければならぬにもかかわらず、この調査を非常に阻害した。協力しないだけでなく調査をはばんだという点が、多々見受けられるのであります。これらの点につきましては、われわれといたしましては、そういうふうなものでも非常に苦労をいたしまして調査をいたしました結果、やりましたやり方につきまして、それほど悪いとは私は思つておりません。非常によくやつてくれたと思つております。
  58. 井之口政雄

    ○井之口委員 集団的なものはやる必要がない、こういうのでありまするが、集団的というふうなものでも、たとえば非常に貧しい生活に困窮している人たちが、自分自身でそういう法律のあることも知らず、かつその手続も知らず、またいろいろな交渉の仕方ということも知らない。その場合にその人たちが集まつて、相談して、そうしておれもこんなに苦しい、あれもこんなに苦しい。しからばその中でいろいろ知識を持つている人が、その相談に応じて、そうしてこうこうこういう生活保護法が今日できているのだから、これをひとつ政府の方において急速にどうにかしてもらいたいということを、代表の資格で交渉する。弁護士の資格で交渉する、これはあり得ることである。そういうものも違法と思われるのでありますか。もとより三井や岩崎、こういう人たちと、あるいは朝鮮人の貧しい人たちと一緒に集団で、そうしてこれに全部に生活保護を適用せよというたならば、それはあるいは個々の世帯を見て、三井や岩崎の人たちに何も生活保護を適用する必要はない。それはあなたの今おつしやるようなこともありますでしようが、まつたく貧しい人たち、生活困窮者が知識を持ち寄つて、民主的にそこの中から世話人を選んで交渉する、一人々々行つたらそれこそ集団的な暴動だと言われる、代表を選んでやつてもまだ厚生省の方においては、それを集団的なものであるという。もしそうとすれば、ほとんど交渉の道がない。そういう社会的な、一定の條件のもとにおいて多くの者が哀れな生活環境に置かれて、同じような原因から大量的に生活保護を受けなければならぬような者が出て来た場合に、これに対して厚生省一つ一つつて行く、やつて行くうちに、もう月日はたつてしまう、調査は不十分である、しかも非協力だ、こう言う。こうしたならば、その人たちの生活を真に安定させてやるということは、不可能なことになるのじやないか。われわれはこれを官僚主義としか思えないのでありますが、その辺を政府の方においては、あたたかい心持で生活保護法を適用するには、どういう方法でやつたらいいか、それに対して考えておることを伺いたい。
  59. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 集団的に参りますものは非合法だと申しました。しかし代表者が来まして、その衷情を訴えることは何も非合法だとは申しておりません。しかし訴えたからそのまま適用するということはいたしません。やはり個々に調査しなければならぬということでございます。集団的にたくさん集まりまして、がやがやいたしたのでは調査ができません。それにつきましては、その人名を受取りまして、それを個々に調査する、そういうふうな手続はいたしております。従いまして長田区の事件におきましても、全面的に拒否したわけではないのであります。調査した結果はちやんと保護いたしております。従つてこれにつきましては、違法なものがあつたとは思いませんし、またその調査にひまがかかつたと申しましても、これは調査に対する協力が非常に不十分であつたという点で、ひまがかかつたという点もありますけれども、しかしこれにつきましても、そうはなはだしいひまがかかつておるとは考えられません。
  60. 井之口政雄

    ○井之口委員 その内容についても今簡単な御報告を承りたいのですが、それはお持合せないだろうと思いますので、あとで機会があるときにお聞きすることにいたしまして、この長田区の場合には代表を出して行つて、本人ら自身が協力する態勢をとつておるのに警察権でもつてこれをかけ散らして弾圧して——二十人や三十人くらいが集まつて行動する場合には、たとえば種痘する場合だつて、学校の子供らが二十人や三十人集まつてわいわいすることはやることです。そういうふうなことを一々弾圧しておいて、そうしてこれを協力しないというふうなことになつたら、朝鮮のこの人たちは立つ瀬がないと思う、そういう点について政府は十分考慮されておるのか。
  61. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 警察権が弾圧したかどうかということは私は存じません。警察におきましては、警察独自の見解でもつておやりになつたことだろうと思います。従いましてわれわれといたしましては、そこでやりました仕事のやりつぷりがよかつたかどうかという点だけでございます。その点につきましては、われわれは遺憾な点はなかつた。それからなお代表の人では世帯の実相はわかりません。個々の世帯は個々の世帯につかなければわかりません。従いまして代表の人が個々の世帯を代弁するということは、われわれとしては認めておらないのであります。
  62. 井之口政雄

    ○井之口委員 そういう点は、もう少し親切にやつてもらいたいというのが、われわれの希望であります。  さてその次に、今度社会福祉事業法によりますと、町村自体よりも県の統制が強くなるような傾向を見受けるのであります。これに対しては、どういう趣旨のもとにこうした県の統制を強めるような方向へこれを持つてつたか、この点の意図を伺いたい。
  63. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 この法案には別に統制の規定はないのでありまして、特に県に統制が強くなつたようなことはなかろうと思います。少くとも社会福祉に関します統制はサービスでございます。従いまして、ここではサービスをどんなふうにやつたら一番うまく行くかということは考えておりますが、ここでもつて統制をするというようなことは何ら考えておりませんので、そういうような規定はないのじやないかと思つております。
  64. 井之口政雄

    ○井之口委員 第一、福祉地区の設定を規定する場合も、六箇月前に知事の承認を必要とする。それから町村においては福祉主事を置くことを得というのであつて、置かぬでもよろしいというふうで、そうして、しかしまたは県の方へこれを吸収してしまうというような点、それからあるいは福祉法人認可に対しても、小さなものは、新しく立つて行こうとするものをなかなか許さないで、やはり知事の承認によるというふうな点は、大いに官僚的な機構を強めるのではなかろうか、こう思いますが……。
  65. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 町村福祉に関する事務所を設置する場合に、知事の承認を受けなければならないことにしてありまするのは、これは町村が自由に設置廃止いたしますると、設置した場合におきまする仕事の重複ができます。それから廃止した場合におきましては、仕事の穴が明きます。その場合に、府県におきましてはただちにその穴を埋めなければなりません。従つてあらかじめその承認を受けておかなければ、これはできないことになりますので、その辺の事務支障がございますので、この承認をするだけでございます。従いまして一定の基準のものを町村がつくります場合に、その町村でそれができるという場合におきましては、これでもつて何ら阻害するつもりはないのであります。これは何ら統制の規定ではないのでありまして、そういう穴の明いた場合、ただちにその穴を埋めるだけの手続を、府県にさせるだけの用意を与えるために、こういう規定を設けただけでございます。  それから小さな社会福祉事業は、別に社会福祉法人にする必要はございません。ここに規定してあります通りに、小さなものにつきましては、この法律の適用を除外いたしております。従いましてこれは自由にできるのでございます。ここでやりますのは、相当程度の規模を持ちますれば、これに対しまして十分な監視をいたしませんと、事人権に関する問題でございますので、この点をよく見ておく必要があるという点から、それを都道府県知事の許可を要することにいたしたわけでございます。なお福祉事業で特に許可を受けなければならぬといたしましたものにつきましては、これは福祉事業のうちの一部分であつて、特別に人権に関係がありますとか、あるいはそこに入つておる弱いものを搾取いたしますとかいうおそれがありますものについてだけ、特別な嚴重な規定を設けてあるだけでありまして、その他につきましては割合に自由にいたしてあるわけでございます。
  66. 井之口政雄

    ○井之口委員 小さいものに対して禁止はしていないが、小さいものこそ最も援助を必要とするものであつて、たいがいこうした福祉事業は、大きくなればなるほど営利的に経営されがちなものである。それに対しては嚴重なる監督を必要とするでしようが、小さいものに対しては援助して、むしろこれを育成するという方針が最も適当じやなかろうかと思います。小さい福祉事業をやられる人たちは、いろいろな宗教関係だとか、まじめな信仰を持たれる人、あるいはそうした人道的な立場からやられる人たちが多いのであります。その点政府においてはまま子扱いしておるのじやないかと思います。
  67. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 小さな事業につきましては、私の方といたしましては、大体自由にしておくのが最も適当である。これに対しまして干渉を加えるよりも、むしろ自由なる発達を待つのが適当であろうと考えております。大きくなりますると、弊害がありました場合にも非常にその弊害が大きくなりまするし、またこれに不慮の災害等の起りました場合におきまして、これに対するあとの復旧等につきましても、非常に重大な問題が出て来るわけです。そこに入つておる人たちが、弱い人でありまするからして、そういう点に対する援助がなければこれが復旧できないということになる、そういうような関係からいたしまして、大きなものに対してのみ一応のことをしております。ここで小さいというのは、個人的にやつておるという程度のものが、ほとんど除外されておるわけであります。大体宗教団体の人がおやりになるとか、宗教家の人々がある程度の規模を持つておやりになるというものにつきましては、この規定の適用を受けることに相なろうかと思います。
  68. 井之口政雄

    ○井之口委員 たとえば今日共同募金をみんなに分配するような場合でも、もしこの法案が出ると、今までもらつていたものでも振り落されるのが、相当出て来るのでしようが、実際上の適用の場合はどうなりますか。
  69. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 共同募金につきましては、この法案にございますように、共同募金民間の自主的なものということにいたしまして、それから出て来る弊害を防止する規定だけしか設けておりません。従いましてどういうところに配分するか、どういうふうにこれを運営するかという点につきましては、共同募金の基本となる原則以外は、何ら規定しておりません。従つて従来配分があつたものが配分を受けられなくなるかどうかということは、共同募金会の方が自主的におきめになることだろうと思います。
  70. 井之口政雄

    ○井之口委員 共同募金に対しては、世間でいろんな非難を聞いております。非常に費用がかかる。たとえばこれを集めるために打合会だとか相談会というふうなものに費すところの費用、あるいは交通等に要する費用、これが相当多額に上つておりまして、大部分がそれに消費されるというふうな非難も受けておるのでありますが、共同募金に対して、今日やはり厚生省監督をやつておるのか、そうして実際上その費用をとる率は、全募集額に対してどんなふうな率になつていますか、お伺いいたします。
  71. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 御承知の通りにこの募金の金額並びに募金の配分につきましては、これを公示いたしております。募金を始める前にも公示いたしますし、募金が終りました後にも公示いたします。その公示いたしましたものが実際と違つております場合に、私の方でこれを監査いたします。現在までうその公示をいたしておるという事実はございません。従いましてその数字によりますれば、現在大部分の金が事務費に使われているということはございません。現在まででは、募金の各種の費用を全部入れまして、募金総額の一割以内にとどまつております。
  72. 井之口政雄

    ○井之口委員 共同募金募集に対して、これがほとんど徴税的な性格を帯びて来ているという非難が、しばしば聞かれるのであります。そういう手段をとつてでなければこの募金は集まらないのかどうか、お伺いします。
  73. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 徴税的とおつしやるのが、どういうのが徴税的であるのか、私にはわからないのでございまするが、この目標額がどのくらいということがきまりますれば、この募金を集めるための努力はしなければなりません。従つてこれに応ずることを勧誘することはやむを得ないことではないかと思います。勧誘せずにはこれは集まるわけのものではないのでありまして、この勧誘を強制とお間違えになる人がございましたならば、これはお間違えになる人の方が、間違つておられるのではないかと思います。それで募金をいたします場合に、暴力を振つたり、あるいは威嚇をしたりいたしましたならば、これは確かに適当でないと思いまするけれども、勧誘をいたしまして、社会事業趣旨を話しましてお願いするということは、当然のことではなかろうかと思つております。特に今回の法案におきましては、この点を強調するために第七十七條におきまして、「共同募金は、寄附者の自発的な協力を基礎とするものでなければならない。」ということを明らかにいたしております。この点につきましては、われわれとしまして、そういう強制的な行為があつたかどうかということにつきまして、具体的な事実がございましたならば、嚴重なる処置をとらなければならぬと思つております。なお募金の目標額がきまつておりますると、その目標額を達成いたしまするために、大体一戸当り幾らくらいになるか、一人当り幾らくらいになるかという点はこれは言うのはあたりまえだと思つております。それを言いましたからといつて、出さなければならぬということではないのであります。大体募金はこのくらいになつておりまするから、皆さんもこの範囲内においてお考え願いたいということを申すだけでございます。これもそういうことを言うことが強制になるということになりますれば、一切募金ということはできないと思います。少くとも計画的な募金をいたそうということになりますれば、大体の目標をきめ、その目標によりましてどのくらいの割合を出したら、ちようど一人前になるのだということが一応わかるということだけはいたさなければならぬ。ただ募金を出さない方に対しまして、何らかの行為に出るということになりますれば、これは問題だと思います。
  74. 井之口政雄

    ○井之口委員 この共同募金のわくをきめて、そうして一戸当りこれをやつて来る、たとえば隣組や市町村長の手を通じてやつて来るというふうなのが、人民にしてみればやはり徴税的な性格を帯びて来るのであります。この点で世間では非常に苦情がこの問題に対して起つて来るのであります、たとえば徴税の場合にしても、税務署に対して額を割当ててやつたのが、これに非難が出まして、額は割当てないということになりまして、やめました。徴税の場合でさえもそういう方針をとつておる。いわんやこうした寄付金の場合は、額をきめて割当てるというふうなことをするのは、たといその意図のいかんにかかかわらず、強制的な性格を帯びて来はしないかと思います。なお、たとえば警察費のごときものでも、以前は寄付金によつてまかなう、足し前をするということをやつておりましたが、この弊害のためにこれも最近はやめるような措置に進めて参つております。次第に社会福祉事業というものも各法案を充実することによつて、むしろこの共同募金は純然たるほんとうの自主的な意思によつて集まるだけというふうに募集することが、正しいのではなかろうかと考えるのですが、この点はどうですか。
  75. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 これはもちろん無理に集めるものでありませんから、大体幾らになるということを言うだけでありまして、あなたは幾ら出してくださいということは言わない。大体一戸当りどのくらいになりますかと言えば、このくらいになりますということを言うだけ、これを世間に発表するだけ、従つてあなた方は幾ら出してくださいということを言つて歩くことはなかろうと思います。またこれはわれわれが集めるのではなくて、民間共同募金会というものが集める。われわれといたしましては、集める場合には何か不当なことはしないか、また集めた金が不当に使われていはしないかということを監督すればいいだけで、集め方、集めた額、集めたものをどうわけるかにつきましては、われわれはこれを監督する必要はない。むしろこういうふうに集めますと言つたことと違つたことをした場合、それから発表したことと実際が違つた場合というような点を取締るのがわれわれの仕事でありまして、われわれといたしましては、共同募金をわれわれがやつておるのではない、これは民間共同募金会でやつておる、それを間違いを起さないようにするのが、われわれの仕事なのであります。
  76. 井之口政雄

    ○井之口委員 警察の寄付金募集も警察協力会という民間団体がやるのだというふうになつてつた。それでいて実際やる場合はなかなかそれがそうならない。そういう弊害は法文上からはわかつて来ないのであつて、実際に即していないとこの弊害がなかなかわからぬ。しかし政府の方針がそうであるとすれば、われわれはそう聞いておきます。しかしこの内容監督について、これはおたくの方でも監督されるでしようが、会計検査院か何かでも、その立場からまた検査しますか。
  77. 木村忠二郎

    木村(忠)政府委員 会計検査院は国の会計を検査するのでありまして、民間でやつておりますものを検査いたさない、あるいは国の金が入つておりますれば、おそらく検査するだろうと思いますが、そうでないところにはやることはないであろうと思つております。これらの内容につきましてたれが見ておるかということは、これは共同募金を会監視する国民が見ております。従いまして国民が共同募金会を信用できないということになりますれば、国民は募金に応じないだけであります。
  78. 松永佛骨

    松永委員長 他に本案についての御質疑はございませんか。——他に本案についての御質疑もないようですが、本案についての質疑を終了したものと認めるに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 松永佛骨

    松永委員長 御異議がなければ本案についての質疑を終了したものと認めます。  次に本案の討論に入ります。通告順によりまして金子委員
  80. 金子與重郎

    ○金子委員 この社会福祉事業法案は、今まで多岐にわたつておりますところの各種社会事業を実行して行くにあたりまして、これをより整然と完璧を期するような方向に持つて行くための法案でありますので、法案自体のあり方としては問題はないのでありまするが、ただこの法律を今後施行して行きます上に、二、三要望を申し上げたいと思います。  まず第一にこの法律施行にあたりまして考えなければならぬことは、最初に出発しました民生委員の時代から、だんだん制度化されて参りましたので、そこに一つの特徴も見出されるのでありますが、同時に月並に言いますならば、官僚化して来る、こういうふうなきらいが出て来ると思うのであります。そこで今後民生委員の問題が、再び取上げられなければならぬような段階に来ると思いますが、そのときに民生委員の働く領分と、それから今度の福祉法案によりましてできましたこの福祉事務所の機関とが、密接な活動ができるような組合せをしてほしい、そうでありませんと、官僚的とは明文にはないけれども、実質上そういうふうな運用になりまして、もちろんかつて民生委員仕事の過程におきまして、一面必要以上の情実だとか、いろいろの弊害がないではないかということを私は認めますけれども、しかしながらまた役所へ行つて物を言うことよりも、自分たちの代表に言う方が言いやすい。この人たちの要求があまりいい問題を取上げるのではないので、はずかしいという必要はないけれども、実際上そういうふうな問題を取上げる事業の性質からいたしまして、かつて民生委員のよかつた点を十分活用して、今度の事務所と協力して、一体になつてこの成果を上げてもらえるように、今後考えてもらいたい、これが第一点であります。  それからこれは具体的な問題ではありませんけれども、最近社会保障の問題について、特に全国のこの種の事業団体事業状態を見ましたり、あるいは民主主義というものが非常にやかましく言われて、憲法第二十五條による生活の保障ということを取上げてからの、社会的な傾向として考えなければならぬことは、食えないことが国民の一つの権利だ、病気になつたことが国民の権利だ、こういうふうな傾向がややもすると出つつあるわけであります。これはたいへん間違つたことでありまして、たとえば生活保護法によつて保護されているというようなことは、なるほど憲法からいつたら権利であるけれども、一面道義的には、自分は不幸にしてこういうふうな状態になつて国費を使つているが、いつかは自分は再びそういう人たちを助ける立場に行かなければいけない、これは大きな社会的な道義的な借金だという考え方を持てないようであるならば、国費を何ぼ使つても、この社会事業というものは満足に行かないのであります。でありますからこれを運用する上に、今の傾向がだんだん進ん参りまして、病気することが一つの権利であつたり、貧乏であることが国民の一つの権利であるかのような主張をされて行くようになりますと、これは非常に問題が大きくなつて来る。こういうことを私は常に心配をしておるのであります。でありますからそうしないのにはどうしたらいいかというと、その組織をなるべくお互国民同士がよく監視し合える平たく言うならばあの人は生活保護法によつてつているけれども、ある人たちよりもおれの方が苦しいないしはこちらの方が苦しいということは、事務所の調査よりも常識的に近所の人が一番よくわかる。その点からいつてこの運営民間的にすると、その弊害が少くなつて来る。これを役人の方に頼みさえすれば、一つ制度によつて自分が恩典に浴するのだ、それが国費だということになりますと、社会連帯の道義感というものが、非常に低くなつて来るのであります。その点ほんとうから言いますならば、地方自治体で、こういうふうなものも比較的多くの角度を持ちたいのでありますが、それは財政的に許されないのであつて、これを国費というものに依存する分を経済の面で多くしたい。しかしながら国費の面で大きく依存いたしますと、国の費用を使うということに関しては、そこに社会連帯の考え方がだんだん低くなる。この二つの矛盾がありますので、これは当局が今後この事業運営にあたつて民間の監視と民間の意思ということを、できるだけ多く入れることによつて、だんだんその弊害が取除かれるのだ、こういうふうに私は考えておりますので、この事業運営上、一般の国民の考え方から離れて、そうして官僚的な方向へ行くきらいがありますので、それをくれぐれもそう行かないように、運営上の万全の策を講じていただきたい、こういうことをお願いしまして賛成したいと思います。
  81. 松永佛骨

  82. 堤ツルヨ

    ○堤委員 私は日本社会党を代表いたしまして、本法案に賛成の意を表するものでございますが、今日までの福祉事業の足跡を顧みまして、政府に強く要望事項をこの際附帶いたしたいと思うのでございます。  第一に、御存じの通り一部の少数の人たちを除いては、社会福祉事業の重要性ということに対する認識が、非常に私は足りないように思うのでございます。でありますから、一般国民のもつと強力な支援、いわゆる協力態勢というものを確立することが、今日以後この法案を生かす面から見ましても重要でございますので、この協力態勢をいかに確立して行くかということは、政府が真剣に考えなければならないということでございます。  さらに第二に、政府が社会福祉事業の振興に関して、根本的な計画を持たなければならないということでございます。地方公共団体をして、その地区実情に即した社会福祉事業振興計画というものが、政府の手によつて立てられなければ、私は今日以後もなおこの目的を進歩向上せしめて、福祉国家を実現することができないと思うのでございます。この点強く政府に要望いたしたいのでございます。  次に私たちの全国を歩きました今までの体験から勘案いたしまして、第三に要望いたしたいことは、不良の社会事業、これを粛正しなければならないということと同時に、逆に優良な社会福祉事業が助成されておらないということでございます。公的な社会福祉事業施設の改善向上に努めるとともに、今秋の指摘いたしましたこの二点を、特に政府において施策を盛られたいと思うのでございます。  第四番目に要求いたしたいと思いますことは社会福祉事業に従事いたしております人たちの処遇並びに功労者などにつきましては、特別の措置を講じて、これを政府が今後の社会福祉事業のよりよき一つの基盤にされたいということでございます。  なお第五に、経営者に対する委託費というものがございますが、国または地方公共団体の委託費が、今まで非常に少うございまして、遺憾な点が多うございますので、この大幅の増額を早急に考えられなければならないと思うのでございます。  なお第六番目に要求いたしたいのは、社会福祉事業施設に対する課税の問題でございます。公平に事業内容を検討いたしまして、免税を私は拡大してもらわなければならないということを申し上げたいと思うのでございます。なお非常に今日社会問題になつておりますところの、戦争犠牲者に対する問題にいたしましても、この法案の立法と相まつて、すみやかに適切なる方法を講ずることを、政府にお考え願いたいと思うのでございます。  なおただいま民主党の金子委員、共産党の井之口委員も御指摘になりましたように、本法案によりまして、民生委員の件につきましても、官僚臭くなる憂いが多分にあるのでございまして、この点今後の運営に十分なる御配慮を願いたいと思うのでございます。  最後に私は現在の国民水準におけるところの、日本の社会福祉事業というものに対しまして、金子委員からも御説明がございましたが、惰民の類いに属する人が、非常に多いということでございます。国民の血肉にひとしいところの税金、またはいろいろな犠牲によつてなされますところの社会事業福祉の恩典に浴する人たちの道義的な見解におきまして、まことにおはずかしいものがあると思うのでございます。政府が笛を吹きたいことをたたいて、今私が要望いたしました国民の協力態勢を整えようといたしましても、この恩典に浴する人たちの心がけいかんによつては、それは効を奏さないのであります。でありますから、この点も私が第一に要望いたしましたことと相まちまして、当然の権利かのごとく考えておる要保護の立場にある人たち、または福祉事業の恩典に浴しておる人たちに対して、啓蒙的な教育をなされたいということ、これをつけ加えまして、本法案に賛成の意を表したいと思います。
  83. 松永佛骨

    松永委員長 次は井之口君。
  84. 井之口政雄

    ○井之口委員 私は日本共産党を代表いたしまして、この法案に反対するものでございます。  第一、社会福祉を受けること、並びに保護を受けることを権利であるかのごとく考えているような弊害を除去する考えのもとに、従来いろいろな法案がつくられたのであります。たとえば生活保護法にしてもしかり、児童福祉法にしてもしかり、身体障害者福祉法においても、そうした思想が根本的な建前になつてつくられております。これに対して共産党はもとより反対であります。今日の労働者、農民、一般大衆の貧困あるいは疾病その他のいろいろな障害というものは、これは本人がなまけたいからではなく、社会制度それ自体が悪いからであります。それだからわれわれは社会制度の改革をして、その原因をとりのけることによつて、人民の生活がゆたかになるということが、根本的な思想であると、われわれは思つておるものであります。社会党もおそらくそうではなかつたろうかと思つておるのですけれども、ただいまのような発言では、そうでもないようでございます。われわれはこういう趣意からいたしまして、この障害を除去して、人間らしい生活をするということは、憲法においても保障されていることだし、国民の大きな権利だと思つている。この根本の方針に従つていろいろな生活保護法ももつと改善せられなければならぬし、児童福祉法も、身体障害者福祉法も改善せられなければならぬと思う。しかもこれらの法案と関連いたしまして、また社会福祉事業法案もこれではだめだと思うのであります。この法案をもつていたしましたならば、かえつて官僚的な政府の統制が強化されて、真に人民的な福祉の増進ということは望まれないのであります。われわれはこまかな点に対しましても、いろいろの意見もございまするが、それは申しません。しかし予算面において十分な処置を講ぜず、単に空論的ないろいろな規定をもつてしても、それは目的を達するものではないという点を考慮して、この法案の名目的なこうした規定に対して、私は反対せざるを得ないのであります。
  85. 松永佛骨

    松永委員長 以上で討論は終局いたしました。  これより社会福祉事業法案の採決をいたします。本案を原案の通り可決することに賛成の諸君の御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  86. 松永佛骨

    松永委員長 起立多数。よつて本案は原案の通り可決いたされました。  なお議長に提出する本案に関する報告書の作成に関しましては、先例により、委員長に御一任願いたいと存じますから、さよう御了承願います。  なおこの際黒川厚生大臣より発言を求められております。これをお許しいたします。黒川厚生大臣
  87. 黒川武雄

    ○黒川国務大臣 ただいま社会福祉事業法案の可決をいただきまして、まことに感謝にたえません。御審議中におきまするいろいろの御要望につきましては、十分に善処いたしたいと考えます。  なおこの法律によりまして社会保障制度の組織的基礎の一つができ上るのありまして、今後一層その整備をはかりますとともに、社会保障制度の確立に努力いたしたいと存じます。
  88. 松永佛骨

    松永委員長 次会は二十七日火曜日の午後一時より開会することとし、本日はこれをもつて散会いたします。     午後一時四十一分散会