○
山口(正)
政府委員 ただいまお
手元に差上げました
資料につきまして、一応御説明申し上げたいと存じます。
まず最近の
法定伝染病の
発生状況について
概略御説明申し上げたいと存じます。
お
手元に差上げました
資料一の方でございますが、表題は「
昭和二十四年、
昭和二十五年
伝染病患者比較表」というのがございます。そのうちの五枚目を、ごらんいただきたいと思います。その五枚目の表は、大正二年から
昭和二十五年に至る間の
法定伝染病の
患者の
発生数を示してございます。これの最後の欄の総計のところをごらんいただきますと、
わが国の
法定伝染病の
発生状況は、その
数字にも現われておりますように、
昭和十九年、
昭和二十年、
昭和二十一年、その
あたりが、一番多数
発生いたしておりまして、
昭和二十年には総数が二十六万一千百五十一というふうに
なつております。それがその後いろいろの
対策を
実施いたしまして、また
国民各位の協力によりまして、漸次減少いたして参りまして、
昭和二十二年には九万七千、二十三年には五万三千、二十四年には五万四千、二十五年にはやや
増加いたしまして八万一千というふうな
数字を示しておるのでございます。すなわち
終戦直後に比べまして、最近の
わが国の
法定伝染病の
発生状況は、ただいま申しましたようなぐあいに、漸次減少して来ておるのでございます。ただお
手元に差上げましたただいまの
資料の中で、
昭和二十五年には、二十四年に比べまして
赤痢が二倍以上の
数字を示しております。また発診
チフスが非常な
増加を示しております。
日本脳災が、これまた四倍近くの
数字に
なつているのでございます。
赤痢につきましては
あとで申し上げたいと存じます。発疹
チフスは、昨年の冬から春にかけまして、
京浜地区を中心といたしまして、非常に多数
発生いたしました。しかしその後幸いにも終熄を来しまして、本年に入りましては、わずかに二名
発生があつただけでございます。
日本脳災の方は、これは従来真症のみをこの
統計にあげてお
つたのでございますが、昨年は
疑似症も含めて
統計にあげましたために、こういう数に
なつているのでございます。
以上が、逐年に見ました
急性伝染病の大体の
発生状況でございますが、本年に入りましてから、昨年に比べましてどういうふうな
状態に
なつておるかと申しますと、お
手元に差上げました第二の
資料の中の一番上に出ております「
昭和二十六年
伝染病患者発生数の前年に対する
比較」というのをごらんいただきたいと存じます。第一週、第二週、第三週、第四週、第五週まで
とつておりまして、各週の欄の左側が本年、右側が昨年というふうに
なつております。その第五週までの累計をいたしましたものを昨年と本年と
比較してみますと、
赤痢が依然として昨年に比べまして三倍近くの
数字を示しております。その他の
伝染病は、幸いにいたしまして相当数減少いたしております。ことに先ほど申し上げましたように、発診
チフスは昨年は約千名の
発生を見たのでございますが、本年はただいま
ちようど流行期に入
つておりますが
——昨年の今ごろには、非常に猖獗をきわめてお
つたのでございますが、辛いにして二名しか
発生していないのでございます。ただこの表に現われておりませんが、
痘瘡が、これも
あとで申し上げたいと存じますが、最近三十四名
発生いたしているのでございます。すなわち
赤痢、
痘瘡が昨年より
増加いたしております。そのほかは昨年より全部減少いたしております。
なおこのほかに
——もちろんこの
数字の中に含まれておるのでございますが、最近集団的に二、三の
伝染病が
発生しております。それは主として
赤痢でございまして、そのほかにジフテリアが一件、それから先ほど申し上げました
痘瘡が
兵庫県、
福岡県に集団的に
発生いたしております。
赤痢の集団的な
発生状況につきましては、お
手元の
資料の第二の二枚目の「
昭和二十六年
赤痢集団発生状況」というのに、やや詳しく記載いたしまして、お
手元に差上げたわけでありますが、私
どもの
手元に集ま
つております
報告によりますと、本年に入りましてから、
赤痢の
集団発生が、そこに記載いたしましたように、全部で六件ございまして、その
発生状況あるいは
発生の
原因と思われるものをそこに記載したのでございます。この集団的に
発生いたしておりますものの特徴と考えられますのは、初めの
患者がきわめて軽症でありましたために、つい見のがされて、それから他へ感染いたしたというのが、非常に多いのでございます。またその
原因となります菌の種類、菌の型もそこに書いてございますが、大部分が
駒込B3という型でございまして、これはいわゆる
赤痢の
特効薬として今まで言われました
サルフア剤に対して、
比較的
抵抗の強い菌でございまして、
サルフア剤によ
つて徹底的に
治療ができない、
治療がなかなか困難であるという
菌種でございます。主としてそれによ
つて伝播されておるというような
状況でございます。この
赤痢がこういうふうに、昨年は一昨年に比べ、また本年は昨年に比べて非常に
増加して来ております
原因につきましては、いろいろな因子が考えられると思うのでございますが、ただいまも申し上げましたように、
終戦後
赤痢が相当
流行いたしまして、そのときに
特効薬として
サルフア剤が登場したのでございます。一時はそれが非常に効を奏して
赤痢の激減を来し、またそのほかの
衛生対策な
どもそれに伴
つて進みましたために、減少したのでございますが、ただいま申しましたように、特殊の型の菌がこの
サルフア剤に
抵抗力が非常に強いというようなことで、しかもそれが初めは激烈な
症状を出さないで、軽い
症状で始ま
つて、次から次へ広がるというようなことのために、
流行を見ているのではないかということも考えられるのであります。また
食糧事情の好転によりまして、食
生活が楽になり、外食の
機会が非常にふえたことも、
一つの
原因ではないかというふうに言われているのであります。また
腸チフスのように、今までのところはつきりした
予防接種が
実施せられないというようなことも、その
一つの
原因ではないかというふうに考えているのでございます。
痘瘡につきましては、昨年わずかに五名でありまして、
国内にごく散発的に
発生してお
つたのでございますが、本年
兵庫県に十三名、
福岡県に十九名、愛知県に一名、鳥取県に一名
患者が
発生しております。その
系統につきましてはいろいろ調べておりますが、まだ的確な
系統をつかみ得ないのでございますが、昨年
国内に非常に少かつたという点から考えまして、あるいは
海外から持ち込まれたものではないかというふうにも考えているのでございます。
次に、これらの
伝染病に対する
対策、特にただいま申し上げました
赤痢、
痘瘡というように、本年に入りまして昨年に
比較して
比較的多数
発生しておるようなものに対しまする
対策といたしましては、昨年夏の
流行期に際しまして、その
流行の
状況、ことに
駒込B3というような
サルフア剤に
抵抗力が非常に強い菌の存在という点から考えまして、今後も相当
流行するおそれがあるということを予測いたしまして、すでに昨年の秋から暮れにかけまして、
全国の注意を喚起いたしまして、今年の
流行期に備えるようにいたしておるのでございます。その
対策のおもなものといたしましては、この
伝染病の性質上、
飲食店に対する
指導強化、あるいは
患者の家族、あるいは食品の
取扱い者に対する保菌の検査、あるいは
集団給食場の
炊事人の
指導監督、あるいは、最も重要なことと考えられるのでありますが、
衛生教育による
個人衛生、食べものを取扱うときに清潔にする、また手をよく洗う、それによ
つて病毒が口の中に入るのを防ぐというようなこと、そういう点につきまして、一般の
人たちに十分理解させ、そうしていろいろの
対策に協力してもらうということをや
つているのでございます。残念ながら、今までのところ、まだその
効果は現われて参りませんで、先ほど申し上げましたように、本年は昨年に比べまして、なお
増加の
状況にあるのでございます。われわれといたしましても、今後この
赤痢対策につきましては、特に力を入れてや
つて行かなければならないいろいろな面を研究し、かつ
効果のあると思われるものを、
実施に移して行きたいと考えておるわけでございます。
痘瘡に対しましては、
病毒が侵入するおそれのある
対象者に対しまして、
種痘を励行しておるのでございます。今年の二月の初めから今日まで、すでに
全国に七百五十万人分の
痘苗を配付してございます。今後四月一日までに約一千万人分の
痘苗が生産されるわけでございまして、これによりまして、もし
発生するおそれのあるような場合には、ただちに手を打ち、あるいは
発生するおそれのある場合にはあらかじめ
予防のための
種痘を
実施するということをや
つて行きたいと思
つているのでございます。
なお
種痘につきましては、
昭和二十四年に
臨時種痘を
実施いたしまして、
昭和二十四年、二十五年にわたりまして、約六千百万人に対しまして
種痘が
実施されているのでございます。その二十四年、二十五年に
実施いたしました
臨時種痘の
効果は、現在なお相当残
つておると、私
どもは考えているのでございますが、それに漏れた者に特に重点を置き、あるいはまた
海外から来る人に直接接触するような
機会の多い者に、まず重点的に
種痘を
実施して、今後の
蔓延を防ぎたいというふうに考えておるわけであります。
はなはだ簡単でありますが、
概略は以上の
通りであります。