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1951-05-25 第10回国会 衆議院 公職選挙法改正に関する調査特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月二十五日(金曜日)     午前十一時九分開議  出席委員    委員長 水田三喜男君    理事 川本 末治君 理事 寺本  齋君    理事 橋本 龍伍君 理事 門司  亮君       宇野秀次郎君   岡村利右衞門君       鍛冶 良作君    島田 末信君       田渕 光一君    中川 俊思君       野村專太郎君    山口六郎次君       並木 芳雄君    立花 敏男君  出席政府委員         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         総理府事務官         (全国選挙管理         委員会事務局         長)      吉岡 惠一君         国家地方警察本         部警視長         (刑事部長)  武藤 文雄君  委員外出席者         総理府事務官         (全国選挙管理         委員会選挙課         長)      金丸 三郎君         検     事         (法務検務局         総務課長)   宮下 明義君         衆議院法制局参         事         (第一部長)  三浦 義男君         参  考  人         (東京警視庁         刑事部搜査第二         課長)     島田純一郎君     ————————————— 本日の会議に付した事件  閉会中審査に関する件  参考人招致に関する件  公職選挙法改正に関する件     —————————————
  2. 水田三喜男

    水田委員長 これより会議を開きます。  本日は公職選挙法改正に関する件を議題とし、これに関して全国選挙管理委員会及び取締り当局より、過般行われました地方選挙実情を聽取し、あわせて選挙法改正についての参考意見を聽取することといたします。本日出席されておりますのは、全国選挙管理委員会事務局長吉岡惠一君、同選挙課長金丸三郎君、国家地方警察本部長官斎藤昇君、刑事部長武藤文雄君、法務検務局総務課長宮下明義君、以上であります。     —————————————
  3. 水田三喜男

    水田委員長 この際参考人に関する件についてお諮りいたします。ただいま申し上げました政府関係者以外に、自治体警察取締り当局者より意見を聞く必要があると認められますので、理事会申合せにもよりまして、東京警視庁捜査第二課長島田純一郎君の出席を求めてありますが、同君を参考人として意見を聞くことに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 水田三喜男

    水田委員長 御異議なしと認めます。そのように決しました。     —————————————
  5. 水田三喜男

    水田委員長 ではまず吉岡惠一君よりお願いいたします。
  6. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 私どもの方から、このほど選挙の結果について御報告を申し上げます。ただいまから申し上げますことは、的確な資料に基いたものでありませんで、地方から上京した者や、あるいは間接に聞いた人の話等から、大体今度の選挙についての大あらましの観察でございますから、そのつもりでお聞きを願います。  今度の選挙で最も注意をすべき事項と申しますのは、今度の選挙が非常に競争激甚選挙であつて、その結果投票率等も非常によかつたということは言えると思います。投票率のいいことにつきましては、いろいろほかの原因も考えられるかと存じますが、市町村が九一%、府県が八三%弱という数字は、従来行われておりました地方選挙に比較いたしましても、相当いい数字であります。もつとも新聞等でごらんになりました数字は、従来の数字というものが、たいがい国選挙だけの数字でございまして、地方選挙数字投票率割合に出ておりません。従つて一般にはあまり御理解がないかと思いますが、従来から地方選挙投票率はよかつたのであります。県、市町村というぐあいに、下の団体に行くに従つて投票率がよかつたのであります。投票率が九〇%以上というのは、市町村選挙については、相当普通に見られる現象つたのであります。そういうことを頭に置きながら御観察をいただきたいと思います。  それから手續的な点の問題でございますが、この前の国会におきまして、選挙法改正になりましたが、割合選挙間近になつて改正になりました関係上、選挙法改正趣旨徹底が十分参りませんで、地方によつてはまだ旧法のままのつもりで選挙をやつたようなところがなきにしもあらず、趣旨徹底に十分の余裕がなかつたということは、言えると思うのであります。  それから各論的な事柄を次に申し上げますが、各党の御意見の中にも出ております通り不在者投票制度、あるいは代理投票、つまり代筆の投票でありますが、こういう制度が悪用をされた向きがある。相当いろいろの話を聞くのでありますが、不在者投票制度を今回は悪用された向きが相当多いように見受けられるのでございます。  それから次は、公務員立候補制限でありますが、これは受付の際、公務員立候補制限制度が非常に複雑なために、十分の取扱いができないで、いろいろ問題を起した点があります。従来の国あるいは府県等選挙でありますれば、割合に受付ける機関が限られておりますので、数が少いので、趣旨徹底が十分でありますが、市町村になりますと、趣旨徹底が十分参つておりませんと、どうしてもまごつく場合があるのであります。無効な届出を受付けたというような場合も、相当数多く見られたのであります。  それから次は、私どもが聞きました一般の声でありますが、選挙運動期間が長過ぎたということがいわれておるのであります。今度の選挙は、市町村については二十日前、府県については二十七日前に告示があつた、この期間が相当長過ぎたという話を聞く向きが相当あります。  それから次は、無効投票が相当多く見られました。参議院選挙等では、相当無効投票が多かつたのでありますが、市町村あるいは府県選挙におきましては、單独選挙の場合は、割合候補者を知つております関係上、無効投票がそう大した数字には上らなかつたのであります。無効投票は、やはり同時選挙であつた関係上、相当多かつたように思われるのであります。その数字につきましては、私どもの方の手元によく資料が集まつておりませんので、申し上げるまでに至つておりませんが、感じとして多かつたように思います。  それから事前選挙に関する動きと申しますか、それが非常に活発でございました。これは新聞等でも一般にいわれておりましたが、非常に活発でありました。中には事前運動と考えられるような行動もあつたように聞いております。これは事前運動として取締る場合には、技術的に非常に困難な問題もあろうと思いますが、事前選挙に関する動きが非常に活発であつたということは言えると思います。  それから次に戸別訪問でありますが、戸別訪問制限候補者だけについて、ある限定された範囲に認められておるのでありますが、これが一般に與えました感じとしては、戸別訪問は許されたんだというような感じを受けたのであります。その結果、候補者でない者も戸別訪問をやつたように考えられます。戸別訪問事例は相当多かつたように考えられるのであります。  それから次は、今度の選挙の最も大きな特色としていわれます連呼行為に、選挙運動重点が置かれたということであります。これは片方におきまして、文書による候補者の紹介ということが割合制限を受けて、ただ連呼行為あるいは演説という面が割合に自由になつておるのでありますが、この連呼行為重点を置いて、連呼するために労務者を雇う、これが投票確保一つ方法であるということで、相当この方面へ重点が置かれたように考えられる。選挙行き方として感心しない行き方であるのでありますが、ここに自由があつたために、勢いこちらの方に重点がかかつて来たということが言えると思います。  次は文書図画制限の問題でありますが、この連呼行為と関連しまして、ああいうどなるばかりの選挙では困るから、もう少し候補者がわかるようにしてもらいたい。もつとも町村選挙では、これは候補者は大体顔は知つている人でありますので、その必要はないかと思いますが、町なかにおきましては、やはり知らない候補者が相当あります。投票所行つて、初めて候補者を考えて投票するというような現象が、町なかでは相当あつたのではないかということを考えます。その結果文書図画制限を緩和するとか、あるいは選挙公報を、もう少し広く町村会議員選挙あたりまでやつたらどうかという声を相当聞くのであります。  それから次は、今度の選挙におきましては、政党活動が非常に活発でありました。選挙に関連しての政党活動言論戰のみならず文書戰も相当活発のように見受けられました。  それから次は、新聞活動が非常に活発でありまして、記事として相当いろいろなことが書かれた。場合によつては、どうかと思われるような新聞活動も相当あつたように考えられます。ことに事前におきまする人気投票というような事柄は、現行法解釈としては、選挙違反とは言えぬと思いますが、行き方として感心したことでない事柄が相当盛んに行われたように考えます。  それから選挙運動費用制限がきつ過ぎるので、届出をする際、だれもうそをつかなければならぬということが一般にいわれているようでありまして、これを実情に合せてもらいたいという声は、相当聞いたところであります。  大体以上が私ども中央選挙関係をしておりまして聞いた声でございまして、ただいま申し上げましたことは、的確な資料に基いたものでないことは前に申した通りでありますが、またわれわれの方の委員会として、正式にこういうふうだという決定を見たものでもない。ただ関係者として一応私が見ました感じを、御参考までに申し上げた次第であります。
  7. 水田三喜男

    水田委員長 それでは次に、国警本部刑事部長武藤文雄君にお願いいたします。
  8. 武藤文雄

    武藤政府委員 今回の選挙につきまして、現在まで中間的に報告がまとまつているものにつきまして、気のつきました点をお話申し上げたいと思います。  選挙違反に関しまして五月二十日——中には若干それより前の分もありますが、大体五月二十日現在におきまして選挙違反検挙になりましたのが四万五千名ございます。そのうち大ざつぱにわけまして、広い意味買收に関する人員が三万五千人以上を占めておるということでございます。総数のうちの大体七割八分八厘は買收であつたということであります。かように今回の選挙では、非常に買收事犯が多かつたということがうかがわれるのであります。前回参議院選挙におきましては、候補者の数その他選挙内容等からいつても違いますので、ただちにこれを比較することは不適当かと思いますが、試みに数字について考えてみますと、昨年の参議院選挙に対しまして、今回の選挙人員は、総数についてみますと二倍七分六厘になつております。ところが買收といたしましては、六倍七分で、今回の選挙は非常に買收が多かつたということに気がつくのであります。これに次ぎまして自由妨害があります。これも今回は件数総数においてこそ少うございますが、割合に多かつた。これまた前回参議院選挙に比べますと、六倍の増加を示しておる。総数においては少うございますが、ふえておる。かようなことが、今回の取締りを通じてみて気がつく特徴でございます。  その次に気がつきますことは、地方選挙特色といたしまして、非常に競争がはげしい。ほんとうに一票、二票を争うことになる結果、おのずから競争が非常にはげしくなつて来て、その結果かどうか存じませんが、今回の選挙においては、先ほど吉岡政府委員からも御説明がありましたように、不在者投票制度、あるいは代理投票制度を悪用して詐偽投票する。たとえばお医者さんの虚偽の診断書を悪用する。あるいは偽造投票といつて代理投票を依頼された者が、かつてに都合のいい名前を書く。かような不在者投票制度代理投票制度を悪用するという事例が出ております。それと先ほど申し上げましたが、暴行その他による選挙妨害の多かつたことも、やはり競争激甚の結果、感情的になつて現われて来たものではないかと考えるのであります。  今回四つの選挙が行われたのでありまして、もちろんその立候補者数もそれぞれ非常な違いがありますので、これまたただちに比較することは不適当かとも存じますが、何といつても今回の選挙違反の多かつたものは、市町村会議員選挙に圧倒的に多うございました。今回の選挙に対しまして特に感じました点は、先ほどお話がございましたが、この法律周知徹底といつた点において、もう少し努力をすべきではなかつたか。たとえて申しますれば、選挙法趣旨——選挙法においてどういうことはいけないことになつているんだといつた点をよく選挙民に知らせる。言葉は不適当かもしれませんが、啓蒙防犯措置、これは選挙法の六条においてもうたわれておりますが、こういつた面がもう少し積極的であつた方がよかつたのではないか。棄権防止という点では相当行われておりますが、もう少し法の趣旨を知らせて、少しでも違反を少くするということの啓蒙が必要ではなかつたかということを感じます。  次に警察といたしまして気がつきます点は、先ほども申し上げましたように、今回は非常に買收事犯、悪質な犯罪が多かつたので、警察はそれに忙殺をされておるという状況でございます。  問題となりますいろいろの形式犯でありますが、これについて考えられます点は、法律が非常に詳細にできているにかかわらず、それをくぐつて脱法行為が行われる、あるいはこれを無視してやるという事例も決して少くなかつたのでありまして、従来もこういつた事案については、法の実体と現実とがどれだけ符合しおるか、われわれとしてもこの法の適正な運用には留意をいたしておるのでありますが、実際問題といたしまして、形式犯については従来大部分が起訴猶予になつている、あるいは不起訴処分になつている。かりに起訴になりましても、裁判に非常に時間がかかる。昭和二十四年一月の衆議院選挙の第一審判決がこのごろぼつぼつ出ておるという状況おりますので、こういう形式犯についてはいかなる方法をとるのが一番よろしいか。これあたりは、私どもとしてはただちに結論を出すわけではございませんが、いろいろ考えていただきたい問題だと存じます。以上今回の選挙状況感じた点を申し上げました。
  9. 水田三喜男

    水田委員長 次に法務検務局宮下総務課長にお願いいたします。
  10. 宮下明義

    宮下説明員 ただいま全国の検察庁におきまして、今回の地方選挙に際しての選挙違反事件を鋭意処理いたしておるのでありまするが、その違反事件を通しまして考えておりまする点を二、三申し上げまして、御参考に供したいと思います。最初に総括的な概観を申し上げまして、そのあとで二、三個々の選挙運動規定について、主として取締り観点から御意見を申し上げたいと存じます。  ただいま武藤君から申し上げましたように、今回の選挙でまず第一に気のつきます点は、違反件数が従来の選挙に比して非常に多かつたという点であります。終戰後各種選挙が行われましたが、今回の選挙ほど違反の多かつたのは初めてであります。この点はいろいろ考えさせられておる問題であります。  第二といたしましては、ただいまお話のありましたように、買收利害誘導饗応等の悪質な実質犯が非常に多かつたのであります。しかもそれがかなり露骨な態様で行われておる事犯が多かつたという点、非常な関心を持つて眺めております。  第三には代理投票不在投票等制度について欠陷があるためか、あるいは非常に小さい自治体における選挙でありますので、わずかの票の狂いによつて当落が左右されるというような関係もありましたためか、代理投票不在投票をめぐつて不正投票が行われた事例が、相当数に上つておるのであります。これらの点は将来の問題として、研究を要する点と考えております。  その次に一般的な問題といたしまして、従来からいろいろにいわれておつたのでありまするが、今回の選挙においても、自治体警察における検挙率が依然として低いのであります。この点は従来からもいろいろに論議されておる点でありまして、たとえば東京大阪等の大きい自治体でありまして、独自の力を持つておりまする自治体はよろしいのでありまするが、小自治体になりますると、しかも特殊の関係にある選挙違反がなかなか検挙できないという点は、研究を要する問題ではないかと思つております。それにつきまして、今回のように多数の選挙が一時に行われまして、違反件数も非常に多発が予想されております場合において、検察当局においては警察と十分協力いたしまして、その検挙の主力を買收事犯に向けたのでありますが、その結果いわゆる選挙運動に関する形式犯検挙というものが非常に少いのであります。実際問題といたしまして、警察の態勢から申しまして、小さい形式犯を一々検挙しておれない。また選挙期日前の検挙というものについては愼重な考慮を拂わなければならない関係上、こういう選挙運動規定形式犯はほとんど検挙されておらないわけであります。こういう点を考え合せますると、私ども取締り当局といたしましては、この際むしろ形式的な選挙運動取締り規定を大幅に整理して、ゆるめるべきではないかという意見を持つておるのであります。前回この委員会各党の御意見を拜聽いたしたのでありまするが、その御意見によりますると、各党改正要望といたしましては、むしろ選挙運動規定をさらに巖格化するという方向の御意見のように承つたのでありますが、ただ私ども取締りという面から見ますると、非常に巖格にいたしました取締り規定が必ずしも実行しにくいという状況にある。結局非常に誠実に選挙法規を守られた候補者が損をして、ある程度法を無視した候補者が得をするという結果を見るのでありまして、これらの点については、むしろ選挙運動規定を緩和して行くべきではないかということを考えておるのであります。  次に小さい点につきまして、選挙運動規定について二、三の御意見を申し上げたいのでありまするが、その第一は戸別訪問規定であります。私どもといたしましては、この戸別訪問禁止規定は、従来のように全面的に禁止してしまうか、あるいは全面的に許してしまうか、いずれか一方の立法の形をとつていただきたいのであります。改正されました戸別訪問規定によりますと、候補者平素親交間柄にある知己、その他密接間柄にあるものを戸別訪問するのが許されるのでありますが、今回の選挙のような小自治体になりますると、ほとんどすべての者が候補者知己であり、密接間柄にある者でありますので、ほとんど戸別訪問禁止規定意味をなさなくなつておるのであります。結局こういう但書がありますると、本文の戸別訪問禁止規定が無意味になりますので、全面的に禁止するか、あるいは許すか、いずれか一をとつていただきたいのでありまするが、根本的な気持としては、やはり全面的な禁止の方がいいのではないかというふうに考えております。  次は街頭演説及び連呼行為についてでありますが、街頭演説について現在制限規定がございませんために、單なる氏名連呼のようなものも街頭演説解釈せざるを得ないのであります。街頭演説解釈いたしますると、その際に立札等が認められるわけでありまして、こうなりますると、法の第百四十三条の趣旨徹底しなくなるわけであります。今回の選挙におきましては、いわゆる人海戰術——人の波の戰術がとられまして、多数の労務者的選挙運動者を使いまして、まつたく無定見に候補者氏名等をただ連呼して歩く、こういう戰術がとられたわけでありまするが、こういう点を考え合せまして、街頭演説及び連呼行為についてしかるべき改正が願いたいと思うのであります。  第三には、最初に触れましたように、代理投票不在者投票規定の整理であります。武藤君も述べられましたように、今回の選挙一つ特徴としまして、この二つの制度がいろいろに悪用されたわけでありまするが、ことに医者が患者を診断いたしませんで、虐偽の診断書を濫発いたしまして、不正な不在者投票が行われた事例が非常に多いのであります。これらの点についても、適当な改正をお願いいたしたいと思うのであります。  なおそれに関連いたしまして、これはまつたく捜査機関としてのお願いでありますが、現在憲法で投票の祕密の規定があるわけであります。しかしながらこのような詐欺投票等事犯がありました場合には、投票されましたものを捜査上押收等の手續をとりまして、その内容を見ませんと犯罪の証明ができませんので、この点についても、選挙法上適当な除外規定が設けられてしかるべきではないかと考えております。  次に新聞紙等による報道の自由に関する規定についてでありまするが、現行法においては、新聞紙雑誌等については報道自申が認められておりまするが、公職選挙法新聞紙雑誌掲示規定がございません。また新聞紙法等もございませんために、何が新聞紙であり雑誌であるかという解釈が非常にむずかしいのであります。今回の選挙に際しましても、まつたく特定候補の当選を得しむる目的のみで新聞紙を発刊いたしまして、これを頒布したと認めざるを得ないような事案も起きておるのでありまして、これらの弊害の点については、適当な御配慮を願いたいと思います。  次には人気投票署名運動などの選挙期日に近い投票類似行為について、適当な制限をしていただきたいのであります。今回の選挙特色といたしまして、新聞社等が営利の目的で、選挙期日に切迫いたしまして、人気投票あるいは署名運動というようなことをいたした事例が少くないのでございまするが、申し上げるまでもなく、これらの行為弊害が大きいので、選挙の公正を維持する観点から、適当な御配慮を願いたいと思うのであります。  次には、労務者的選挙運動者制限規定を御考慮願いたいのであります。さいぜんも申し上げましたように、今回の選挙特色といたしまして、労務者のような選挙運動者を多数雇い入れまして、人海戰術がとられ、街頭演説が横行いたしまして、そのために一般国民もいろいろと迷惑したことでありましようし、またそのために選挙費用も相当多額に上つておるものと考えるのでありまするが、このような無定見な、内容のない、選挙運動というものは、将来の選挙運動としてしかるべく御配慮を願いたいのであります。あるいは労務者の数を制限するとか、適当な考慮がなされてしかるべきではないかと考えております。  最後に、ある特定組織が、特定候補のためにいたしまする選挙運動について、何らかの考慮が拂えないものかという点を考えております。一定の組織特定候補のために選挙運動をいたしまする場合には、政治資金規正法あるいは団体等規正令届出を要することはもちろんでありまするが、同時にその選挙運動のために費用を支出いたしまする場合には、出納責任者文書による承諾がなければ支出できないわけでありまするが、実際問題といたしまして、その組織の中の活動であるのか、選挙運動であるのか、取締り観点からははなはだ判別しにくく、また立証しにくいのであります。しかしながらこのような一つ特定組織特定候補を全面的に応援し、そのために費用をたくさん使うということになりますると、非常に選挙の公正を害することが大きいのではないかと考えております。まだその方法について、どのような立法形式がしかるべきかという結論を得ておりませんが、一つ研究問題として御考慮を願いたいと考えております。
  11. 水田三喜男

    水田委員長 それでは次に警視庁捜査第二課長島田純一郎君。
  12. 島田純一郎

    島田参考人 選挙取締りに当りました警視庁状況につきまして御説明申し上げます。全般的なことにつきましては、先ほど国警武藤刑事部長並びに法務府の宮下課長から御説明がありましたのと大体大同小異であります。警視庁選挙違反として検挙しましたものにつきましては、大体これも先ほど武藤刑事部長の方からお話がありましたように、前回昭和二十二年の選挙の場合と比較しますことは、いろいろ問題があることでありまするが、一応前回昭和二十二年に行われました選挙と比較いたしますと、非常に選挙違反がふえておるというような状況に相なつております。概略から申しますと、前回選挙の場合には、衆議院議員の選挙参議院議員の選挙も一緒になつておりまして、その当時は警視庁がまだ自治体とその他の地域とにわかれていなかつた時代でありますが、その当時三多摩地方、島嶼を含めました違反検挙件数に比較いたしましても、大体倍数にふえております。従つてこれを特別区の区域内のものと比較いたしますと、約三倍の多い数に上つております。またその大部分のものが買收饗応であるということも、先ほど説明がありました一般的な状況と同じ状況でありまして、大体七分ないし八分近いものが買收饗応の悪質事犯という状況に相なつております。形式犯についても、取扱いましたものは約一万件近いものに相なつておりますが、これらにつきましても、前回のものと比較することは、必ずしも適当ではありませんけれども前回のものに比べまして、非常に違反がふえておるということも、一般状況と何ら異ならないのであります、ただこの中で、こういつた違反がどうして多いのかというような点を、取締りの面を通じまして感じた点につきまして二、三申し上げますれば、前回昭和二十二年の場合と比べますと、今回の選挙の場合には、経済的な状況が非常に違つておるということが、今回の選挙におきまして買收、饗応が非常に多いという原因の一つではないかと思います。と申しますのは、昭和二十二年当時に比べますと、酒の状況であるとか、あるいは食糧関係の事情がよほど違つておりますので、従つてそういう関係で、何といいますか、買收あるいは饗応というような違反が非常に大きく出て来ておるのではないかというような感じもいたします。  それからもう一つは、今回の選挙特色といたしまして、ちようど年末、年始あるいは会計年度の年度末を控えておつたというようなことのために、儀礼的な、あるいはそういつた定期の会合に藉口した意味のいろいろな会合が行われた、あるいは饗応関係がそれに介在して行われたというようなことも、これの一つの原因ではないかというふうにも考えられます。また公職選挙法趣旨が十分に徹底しないで、昨年の参議院選挙の場合と多少混同したようなきらいがありまして、率直に申しますと、事前運動禁止規定につきましての一般の認識、あるいは理解、こういうものが乏しかつたために、ちようど年末とか年始とか、あるいは年度末とかいうことを関連いたしまして、事前運動が非常に多く行われたというようなことも、これらの一つの原因ではないかと思われます。また先ほどから何回も御説明がありましたように、戸別訪問につきまして若干法的に緩和せられたという関係が、一般戸別訪問は自由だという考え方を、どうかすると巻き起しまして、それに関連をしまして、やはりそういつた買收とかいうような関係事案がふえたものではないかと思われます。形式違反状況等につきましても、特別警視庁だけで非常に異なつたというような状況は出ておりません。やはり戸別訪問の問題であるとか、ポスター関係違反の問題だとか、あるいはその他文書関係違反等につきましては、特別警視庁だけに特異であるというような状況は別段見当りません。ただ国警自治体警察とがわかれました場合に、自治体警察でこういつた関係違反取締りが非常に困難であるというような状況につきましては、先ほどもちよつと申し上げましたように、警視庁状況だけから申し上げますと、必ずしもそういう状況ではありませんで、前の警視庁がまだ東京都全部を管轄しておりました場合に比べますと約二倍、現在の担当する区域に比較しましても約三倍の増加を示しております。もちろんこれは社会的、経済的な状況が全部違いますので、一律に比較することは困難でありますけれども、このために特に取締りが非常に困難であつたというような状況につきましては、必ずしも当らないかと思います。ただ自治体警察全般の問題につきましては、私どもの方でも何ら正確な資料を持つておりませんし、きわめて小さい自治体等につきましては、今回の選挙地方議員の選挙でありますために、取締り上多少の問題を起したというような点もあるかもわかりませんが、私の方の担当するところでは、格別そういう事例は、今のところ起つておらないようであります。非常に簡單でありますが、私の方の説明を終らせていただきます。
  13. 水田三喜男

    水田委員長 次に、ただいま御発言された全国選挙委員会及び取締り当局に対し御質疑はございませんか。
  14. 中川俊思

    ○中川委員 吉岡さんにちよつとお尋ねいたしますが、無効投票の非常に多かつたこと、この点は同時選挙であつたというお話であるのですが、ごもつともで同時選挙でありましたために、無効投票が非常に多かつたと思うのです。同時に、私どもが考えられますことは、たとえば府県会議員にいたしましても、市町村会議員にいたしましても、同姓の候補者なんかが出た場合に、現行法では御承知の通り、ただ姓だけ書くとこれが無効になる。こういうようなことから、これらの点も直さなければならぬのじやないかというふうに考えておるのでありますが、その点についてこれを直す上においてどういうふうに管理委員会の方ではお考えになつておるか、その点ちよつとお伺いいたします。
  15. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 お答え申し上げます。ただいまの点は、同姓の候補者が二人ある場合等は非常にむずかしい問題で、この前の公職選挙法の制定のときの参議院の議論で、按分をしたらどうかというような議論がある。しかしながらこれは按分をいたすとしまして、県会議員あるいは衆議院等の場合、どこの範囲をつかまえて按分するのか非常にむずかしい問題である。これは按分というのはなかなか行きにくいじやないか。結局そういう場合に、書き方を門違えないように、あるいは名前まで書く、あるいは同姓同名の場合にはなお困るのですが、住所あるいは肩書等を書くとか、いろいろのことが考えられます。しかしながらそれを指導いたしますと、その同姓の候補者に特に有利になります。そういうことが非常にむずかしいのであつて、結局やはりプリンテツド・パロツト、投票用紙にあらかじめ候補者名をつけておいて、それに記号をつけるということで防止するよりいたし方ないのであります。特に今回のように、四つの選挙が大体期間を同じくして行われ、やむを得ず二つにわけるというような場合には、どうしてもやはり将来は記号式の投票を考える必要がある。私どもの方でも、資料は多少準備はいたしておりますが、ただいまの考えは、そういうことをして防ぐよりいたし方ないじやないかというふうに考えております。
  16. 中川俊思

    ○中川委員 按分が非常にむずかしいということでありますが、これは実は、この前の選挙法改正のときにも衆議院でも問題になつたのでありますが、私はそうむずかしくないと思います。たとえば二人の同姓の候補者があつた場合に、片方は五万票とり、片方は四万五千票とつた場合、その比率に応じてわけるとか、あるいはまたそれが問題があるとするならば、まつ二つにわける、要するに私どものこの前選挙法改正委員会で問題になりましたことは、たとえば中川という候補者が二人出たと仮定する。非常に中川という字は書きいいが、下の名前が書きにくい。こういう場合に棄権をするな、清き一票を行使せよという声に応じて、有権者は投票所に行くのであります。ところが、たまたま名前を書こうとしたが、どちらも名前がわからぬというときに、ただ中川とだけ書く、しかしその有権者は、どちらかの中川に投票する意思を持つて書く、だから、せつかく清き一票を行使したその有権者の意思を無視することはよくないことであるから、何とかして有効投票にするようにわれわれの方でも研究すると同時に、選挙管理委員会の方においても研究していただきたいということを申し上げておいたのであります。なおそれらの点については、ひとつ研究をお願いいたしたいと思います。  それから宮下さんにお尋ねしますが、先ほどお話の中に、自治体警察検挙率が低い、これは実は私どもも、この点を痛感したのであります。なおただいま警視庁島田さんのお話によりますと、東京都等においてはさようには考えていないと言われた、これも一応読めるのであります。大体東京都のような大都市と地方の小さな市町村におきまする自治体警察というものの性格が私どもの目から見ると、全然違つておる。これは一応了承できるのでありますが、しからばそれに対する対策として、特に宮下さんにお願いするのですが、法務府として何か御研究になつておりましようか、具体的にどうしたらいいかということについて、もし御研究になつておれば、一応承りたいと思います。
  17. 宮下明義

    宮下説明員 警察法そのものの性格論は別問題といたしまして、一応現在の制度のもとにおいて、このような傾向をどうして行つたらいいかという問題につきましては、法務府といたしましてもいろいろ研究し、苦慮しておるわけであります。それで今回の選挙につきましては、過日の全国の次席検事会同等におきましても、自治体警察の諸君の合同等を催しまして、その志気の高揚をはかると同時に、検察庁の方が、その自治体警察官内における各種の選挙違反について積極的に出て参りまして、指導をするような方針をとつたわけでありまするが、今の制度のもとにおいては、そのような制度でカバーして行く以外に、方法はないのではないかというように考えております。
  18. 寺本齋

    ○寺本委員 私は各党から出しました試案を見まして、どの党の試案にも戸別訪問禁止ということがございます。この戸別訪問ということについて、きようは幸い全国選挙管理委員会初め取締り当局の皆さんも見えておりますので、考え方を統一しておきたいと思うのでございます。現行選挙法の第百三十八条に「何人も、選挙に関し、投票を得若しくは得しめ又は得しめない目的をもつて戸別訪問をすることができない。」ここまではだれも異論がないと思います。「但し、公職の候補者が親族、平素親交間柄にある知己その他密接間柄にある者を訪問することは、この限りでない。」これがありましたために、先ほど皆さん方の御説明を伺いましても、戸別訪問が緩和されたという感じ一般に與えて、今度の戸別訪問が非常に乱雑になつたのだと思います。そこで各党から出ておりますのは、戸別訪問禁止と出ておりまして、絶対戸別訪問禁止しなければなりませんが、たとえば国会議員の場合にこれはよく出ますが、衆議院なら衆議院の候補者が久しぶりに、何年ぶりかでその村に行つて、そこに自分の親戚がある、つまりこの後段にあります親戚であるとか、親交の間柄にある知己があるというようなところに一軒か二軒立ち寄つたものも、これを戸別訪問と認めるかどうか。お話によりますれば、この前の選挙法改正委員会では、これを警察なんかでは戸別訪問と認めるという解釈をとられたために、こういう条項を入れたということを前の選挙管理委員会の委員から伺つたのですが、そういうことになつて、やはりこの後段が生きて来たんじやなかろうかと思います。そこで、何年かぶりかで行つて、たまたまその村の親戚、知己のところを一軒か二軒尋ねた。私たちの考え方からいえば、戸別訪問というものは何軒かの家を訪問することが戸別訪問だと思います。それが、二軒か三軒の特殊の関係があるところに候補者がたまたま顔を出したのは、戸別訪問とは認められないのじやないかと思います。そういう解釈をとれば、戸別訪問というものは絶対禁止していいんじやないかと思いますが、今申し上げたような、百三十八条の後段にあるようなものを戸別訪問と認めるか認めないかによつて解釈が違つて来ると思います。この考え方を、私が私見として申し上げましたように、戸別訪問と認めないということになれば、戸別訪問は絶対に禁止してしまつでいいんじやないかと思いますが、この考えを、ひとつきよう御出席の皆さんから意見を統一していただきたいと思います。
  19. 宮下明義

    宮下説明員 但書がない場合の戸別訪問解釈といたしましては、その戸別訪問をいたしまする者に、特定候補者の投票を得または得しめる目的が内心になければならぬことは申すまでもございませんが、それ以外に、その者が継續して戸別に訪問する意思が現われておらなければ、戸別訪問にならないと思うのであります。従いまして、ただいまお述べになりましたように、その国会議員が久々で御里にお帰りになつて、親戚あるいは親交の間柄にある者をたまたまお尋ねになつただけでは、個別訪問にはならないと思います。
  20. 中川俊思

    ○中川委員 もう一つ吉岡さんにちよつとお尋ねしたいのですが、今日われわれが選挙法改正を思いつきましたのは、先ほど来皆さんによつていろいろ述べられたような弊害が、今日の地方議会の選挙に非常に多かつた。しかも一番私どもが苦々しく感じておりますことは、費用が莫大にかかつたということ、従つて今回の選挙法改正にあたつては、次の選挙費用がなるべくかからないように、また一方できるだけ公営を拡充したいという二つの大きなテーマをもつて選挙法改正各党が試案を出していることだと、私は考えているのであります。そのためにちよつと参考までにお伺いするのでございますが、私どもも、同時選挙はなるべく避けたいと思います。そこで市町村の長並びに議員、都道府県の首長並びに議員、これをたとえば今日の選挙におきまして、まだ計算がつまびらかにできていないか存じませんが、市町村長並びに議員の選挙にどのくらい費用がかかつたか、また都道府県の首長並びに議員の選挙にどのくらい費用がかかつたか。これと、先ほど申し上げましたように、これを別々に行う場合の費用はおよそどのくらいを要するかということの資料がもしございましたら、ちよつとお聞かせ願いたいと思います。
  21. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 ただいまのお話は、的確な数字は今ちよつと手元に持つておりませんのでお答えいたしかねますが、今度の選挙には全部で二十五億ばかりの選挙費用で、それを別々に行う場合には、私は三十五、六億じやないかと思いますが、正確な記憶でありませんので、なおあとでよく調査してお答えいたします。
  22. 中川俊思

    ○中川委員 これは私の調査でありますが、昨年でしたか、参議院議員の選挙のときに大体二十億かかつているらしいのでありまして、一人頭平均八百万円、これは公報であるとか、パスであるとか、会場費であるとか、途中の雑費、それから兵庫県の例でありますが、補欠選挙のときに、一人の参議院議員を選出するのに二千五百万円かかつていると言つているのです。そういたしますと、むろんまだはつきりした何はつくつてありますまいが、このたびの市町村長並びに議員、都道府県の首長並びに議員全部合せまして二十五億というのはちよつと少いように思うのですが、参議院選挙とはまた違う点があるでしようか。
  23. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 さつきお話参議院の昨年の選挙費用は十億でございます。それから参議院選挙でよく補欠選挙がございますが、これは府県の大小によつて違いますが、おおよその見当で二千万円前後一人選挙するためにかかるとお考えになつていただけば、大体間違いないと思います。
  24. 門司亮

    ○門司委員 二、三点聞いておきたいと思います。現行選挙法でも、これが完全に良心的に行われれば、私はそう悪い法律ではないと思います。選挙費用は限られた範囲を必ず各候補者が嚴守するという建前に立てば、選挙はきわめて自由に、公平にやつた方がいいと私は考える。ところが金がかかつたということは、お互いが選挙費用のわくというものを考えないで、自由の面だけを非常に強く出したことのために、今度のような選挙が行われたと私は考える。従つて問題になりますのは、一応参考に聞いておきたいと思いますことは、選挙運動費の制限がはつきりいたしておりまするが、この費用制限を越えると思われるような費用の実際上の使い方をしておる者に対して、選挙管理委員会としては何か全国的に警告をされたようなことがあるかどうかということであります。このことをひとつ先に聞いておきたいと思います。
  25. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 門司委員のただいまのお一話の、選挙運動費用制限額を越えたことがはつきりわかるというような事例は、選挙管理委員会として的確な資料を集め得ないためにそういう警告を発した事例はございません。
  26. 門司亮

    ○門司委員 その次に聞いておきたいと思いますことは、自動車あるいは拡声器の使用は、大体一台を限つて許されておつたのでありまするが、しかもそれには、許されておるということのために実際上の許可証をつけておるわけであります。それでこの許可証は必ず一台を使つておるということが明瞭にわかるようにつかつておるのであつて、もしそれ以外に使つておるとすれば、この許可証はないはずでありまするが、こういう問題についても、取締りの当局としてはこれを全体に調べるといいますか、あるいはこれを調査するというような方途をとられたことがあるかどうか。これは検察庁でも警察でも、どちらでもいいですが……。
  27. 武藤文雄

    武藤政府委員 お話のような場合、警察としても注意いたしております。そして悪意なく、ほんとうにちよつと間違つて知らないためにやつたというものに対しては警告を発する。しかし悪意の者に対してはそれぞれの処置をするということにしております。
  28. 門司亮

    ○門司委員 どうも抽象的ですが、そういう事例がどこにあるか、事例があつたら示していただきたいと思います。  その次にもう一つ聞いておきたいと思いますことは、選挙演説は自由でありまするが、ただ演説会場と書いた例の立看板であるとか、あるいはのぼりとかというものが相当たくさん出ておつたのでありまするが、これについても、全国選挙管理委員会からは何か注意をされたようなことがあつたかどうか。
  29. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 今のお話は、正式に注意をしたことはございませんが、具体的に話をしたことは多少あつたように思つております。
  30. 門司亮

    ○門司委員 だんだん話を聞いておりますと、選挙法というもの自体、選挙費用のわくをきめたということも、ほとんど取締りの当局も事例がないからということでけで、これが放置されるということになれば、これは私は何もならぬと思います。それからその他の取締りについても、ほとんどこれは放任状態であつたというようなことがわれわれにも考えられるのでありますが、こういう状態でありますと、選挙法をどんなに改正して参りましても、なかなかその実効は私はあげられないと思うのです。選挙を行う者がほんとうに良心的に行わない限りにおいては、選挙法自体をいかにやかましく規定をしても、結局何もならないと思います。  そこでちよつと聞いておきたいと思いますことは、当局の考えておりまする選挙干渉と、選挙取締りの限界でありますが、おそらくこういう問題が注意もされなかつた、あるいは取締りも十分行えなかつたというようなことは、当局としては選挙干渉になるというようなことで、あとで問題を起すということになると困るというので、こういう引込み思案が結局こういう結果になつたのじやないかと私は思う。鑑札をつけていない自動車があれば、鑑札をつけることになつておるのだからと、これに注意をすることは、私は選挙干渉ではないと思うのだが、そういう考え方で、選挙干渉と選挙違反取締りというこの限界が非常にむずかしいために、当局は今度のような選挙をそのまま私はお見のがしになつたと思う。これは選挙費用等を嚴密に調査をされて、嚴密にこれが考えられるならば、おそらく今度の選挙候補者で満足な者は一人もなかつたと私は思う。万人が認めて、全部がやつているのだから、これはどうにも手がつけられないというような事態が起つております。従つて選挙干渉と選挙取締りというこの限界を当局はどの辺に置かれているか、一応参考に聞いておきたいと思います。
  31. 武藤文雄

    武藤政府委員 お答えいたします。選挙取締りを巖正に執行することは当然でございますが、やはりそれが選挙に不当の妨げを與えるということは、取締りとしては十分考えなければならない点でございます。従つてその間の扱いを愼重にするということは、われわれといたしまして十分に注意をいたしております。しかしそれかといいまして、お話のように引込み思案になつてしまうということでありますれば、これはまた取締りの巖正を期することはできないわけでございます。そこでおのずから事案の状態に従いまして、形式犯等でただいまお話のあつた非常に軽微なものである、しかもほとんど気がつかずにやつたというものについては警告の程度でやつておる。いたずらにそういうものに苛酷になるということは、われわれとしてまた十分注意をしなければならない点だと存じます。従つて一律にどこで線を引くということは、その事案内容によつて具体的に考えます。ただ選挙取締りのために、しかもそれが軽微な犯罪のために、これを取締る、これによつて不当に選挙に妨げを與えるということは、われわれとしては十分巖正に愼重にしなければならない。お言葉のように、それによつて取締りが萎縮するという点があつては、これまたいけない問題であります。ただ門司委員がおいでになります前に、私実は御説明申し上げたのでありますが、今回の選挙あたりましては、買收饗応等の悪質な犯罪が非常に多かつた、警察といたしましては、それに忙殺されておつた、といつて形式犯を閑却するわけではありませんが、しかし先ほども私申し上げたように、形式犯は従来検察庁においてほとんど起訴猶予あるいは不起訴になつておる。またそれが裁判にかかつても、先ほども申し上げましたように、二十四年一月の衆議院選挙のものが最近になつて判決が出るというようなことで、せつかく法で所期したところがどういうようになつておるか、こういうふうに形式犯罪、しかもこれはいわゆる自然犯とは違う、こういつた法定犯についての扱いをどうするか。承るところによりますと、減票制というようなことも伝えられておるようでありますが、こういつた手續上の犯罪については、あるいは犯罪という言葉を避けて、他の方法によるということも考えられるかもしれない、また判決が非常に長引いて行くということによつて、結局実効の点も疑われて来ることすら起つて来るということを考えて、こういつたものについて扱いをどうするかということは、十分に考えなければならない問題である。またぜひこのあたりの点をお考え願いたいということを申し上げておきます。
  32. 川本末治

    ○川本委員 先刻からの各位の御意見は、一様に今回の選挙で、非常に違反件数が多かつたということでありまするが、特にそのうち本庁の宮下さんにお尋ねしたいと思いますが、自治体警察検挙数がきわめて少かつた、いなかが少かつたというお話は、反面国警の方が非常に検挙件数が多かつたということになりまするが、巷間伝えるところによりますると、検察庁の方では、今回の選挙違反検挙国警に対して報奨制度によつて奨励をしておるということでありまするが、そういう事実がありますかどうか。
  33. 宮下明義

    宮下説明員 中央におきまして、全国の検察庁にそのようなやり方をするようにという指示をしたこともございませんし、お話のような事例を、私は耳にいたしておりません。
  34. 武藤文雄

    武藤政府委員 ただいまのお話でございますが、新しい警察法におきましては、警察捜査機関として独自の行動をいたします。従来の訴訟法のごとく、検事の指揮に従つて、その手下となつて働くものとは根本的に建前をかえております。もちろん公訴の提起なり遺棄な検事の仕事であります。また法令の解釈適用について、お互いに十分の打合せ、緊密な連絡をとるということは当然のことでありますが、いやしくも国警に対して、金をもつてつるというようなことは絶対にありません。御了承を願います。
  35. 川本末治

    ○川本委員 ところが末端の警察官はそういうことを現在公言して、そうして選挙違反検挙している事実があるのであります。こういうものに対しまして、いかなる方法をおとりになるか、まず最初にお伺いいたします。
  36. 武藤文雄

    武藤政府委員 ただいま申し上げましたように、緊密な連絡をとつて仕事を進めて行くということ以上に出て、ただいま末端でそういうことがあつたというお話でございますが、もし事実とせば重大な問題でありますので、後ほどとくと承りたいと思います。私どもとしては、さようなことを指示もいたしませんし、またそういうことがあつてはならないものと考えております。
  37. 川本末治

    ○川本委員 そういたしますると、宮下さん、武藤さんに同時に承つておきたいと思いますが、現在国警検挙いたしました選挙違反の中には、相当行き過ぎの人権蹂躙にひとしいような方法をもつて検挙しておるというような点を——現在検挙最中であるとは思いますが、そういう点につきましてお聞き及びになつておることがあるかないか、また選挙違反の摘発に対しては、ただいまの御答弁によりますると、行き過ぎのないように十分御注意をしておられるということでありまするが、事実、事例を私ははつきり申し上げますが、愛知県の愛知地区警察署などにおきましては、明らかに地方検察庁の方から巖命があるから、この程度のものをみなひつぱらなければならぬといつて、現在續々と検挙しつつある、それから一方今承ると、警察の方と検察庁の方とはおのずから建前が異なつておるから、緊密な連絡はとつておるけれどもさようなことはない、こう言われておるのですが、事実そうした事実があるのでありまするが、そういう点につきまして、私どものしろうとの考えから行きますると、明らかに選挙干渉の域にまで入つておるのではないか。もう一つ大きく言いますれば、人権蹂躙になるような問題を平然として行つておる。中には暴行を加えてまでそういうことをしておるという事実を、現在加えられた者から、私どもは聞き及んでおりまするが、そういう点につきましては、今までお聞き及びになつている点がございますか。
  38. 宮下明義

    宮下説明員 いつの選挙に際しても同様でございまするが、中央におきましては、選挙の都度上司から各検察官に対して、十分に人権を尊重して捜査を遂行するように、また愼重を期して、選挙期日前に軽々に選挙違反検挙に手をつけて、選挙干渉のそしりを受けないようにという注意を十分にいたしておるのでありまして、ただいまお尋ねのありましたような事例については、まだ承知いたしておりません。しかしながら具体的に例をお引きになつての御質疑でありますので、そのような事例があるかどうか、調査いたしたいと考えております。
  39. 立花敏男

    ○立花委員 宮下さんの発言は非常に重大な問題だと思いまするので、特に三点だけお尋ねをいたします。  一つ特定組織選挙運動に関する問題でございますが、特定組織特定候補者を支持し、推薦することに関しての選挙運動、これに関する取締りの問題を考慮せなければならないという御意見でございますが、これは私ども大衆組織の上に動いております。政党といたしましては、非常に重大な問題でありまして、どういう具体的な事実に基いて、どういうふうなお取締りのお考えを持つておられるのか、この際ひとつ参考に聞かしていただきたいと思います。  もう一つ署名運動禁止に関する規定はやるべきじやないかというような御意見でございますが、これも非常に重大な問題でございまして、私どもといたしましては、今全面講和の署名運動、平和の署名運動をやつております。これは社会党の方でもおやりでございますし、労働組合が全部やつておるわけでございますが、これは決して選挙を目標としてやつたものではございません。全世界的な動きとしてやつておるわけでございますが、宮下さんの言われました署名運動が、こういうものをもお含めの上で発言なさつておられるのか、あるいは選挙のときに限りまして、特定の時期、特定の問題を限りまして、たとえば道路の改修とか、あるいはその他の問題で一時期に限つて特定の問題に限つて署名運動でございましようか。その点を明らかにしておいていただきたい。  それからもう一つは、新聞に関するやはり制限規定の問題でございますが、これも非常に重要な問題でございまして、この前の国会でございましたか、選挙法改正の場合には、やはり言論機関の表現の自由の問題が非常に大きな問題になりまして、結局各言論機関からの申入れもありましてあれから後になりまして、一応の自由が認められておるわけでございます。これをさらにどういうふうに制限なさるようなお考えなのか、また実際どういう弊害があつたのか、具体的にお示しを願いたい。私ども実はきのう新聞に載つておりましたように、共産党の新聞だと申しまして、アカハタ後継紙だということで、多数の新聞が処分されておるわけですが、たとえば労働者と申しますような新聞は、決してアカハタの後継紙でも何でもなしに、独自に出しておつた新聞でございますが、それがアカハタ後継紙だということで、ぽかぽかとやられておるのですが、大体新聞というものに対して、どういうお考えをお持ちなのか、またそれと合せまして、参考に労働者をアカハタ後継紙と見なされました理由をひとつつておきたいと思います。
  40. 宮下明義

    宮下説明員 お答えいたします。ある特定組織を背景として立候補される候補者が、そのような背景を持たない候補者に比して非常に有利であるということは、申すまでもないことと考えるのでありますが、私ども検察面から事を考えておる者といたしましては、その組織の中で、明らかに選挙運動費用として金が使われます場合に、それが公職選挙法違反を構成いたします場合には、この点を十分に考えなければならないということを考えておるわけであります。実際問題といたしましては、その組織の中の組織自体の金の使い方なのか、選挙運動としての金の使い方なのか、非常に見わけにくい場合がございますので、愼重な御配慮をお願いいたしたわけであります。  次に第二の署名運動は、さいぜんも申し上げましたように、選挙期日に切迫いたしまして署名運動が行われます。ると、何と申しましても、選挙に影響をもつて来るわけでありますので、このような選挙期日に切迫した署名運動というものについては、適当な御配慮を願いたいと申し上げたわけであります。  新聞紙につきましては、新聞紙による言論の自由を尊重しなければならないことは、申すまでもないところでありますが、今回の選挙に際しましても、ある特定候補者のために、ほとんどこの条文を濫用しているとしか考えられな方法で、新聞という形式で、特定候補を推薦支持する文書を発行いたしまして、しかもこれを無料でその有権者の管内に配布するというような事例があるのでありまして、これは明らかにこの規定の濫用ではないかと考えておるのであります。このような場合については、しかるべく御配慮を願いたいと思います。その他の点については、直接本日の問題に関係がないと思いますので、答弁をごかんべん願いたいと思います。
  41. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私おそく来ましたので、あるいは前に質問があつたかもしれませんが、この委員会として、まず大前提として聞いておかなければならぬ点があります。先ほど武藤部長からのお話を聞きますると、このたびの選挙は、非常に違反が多かつたということです。われわれもそのように痛感しております。この前の府県会の選挙、その後行われました二回にわたる衆議院の選挙等で、非常に選挙が粛正せられて、たいへんにいい傾向だと思つておつたにもかかわらず、今回は目にあまるものが出て参りましたことは、あなた方も認められておる通りですが、これは一体どういうところからこうなつたと認めておられるのか、これを第一番にお伺いしておかなければならぬと思う。これは選挙管理委員会においてもどう見ておられるか、また取締り当局においてもどう見ておられるか、両方面の方々からまずその原因を承りたいと思います。
  42. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 ただいまの御質問でありますが、私どもは結局競争がはげしかつたからだと見ております。
  43. 武藤文雄

    武藤政府委員 非常にむずかしい御質問で、いろいろ原因等も考えられると思います。新しい選挙のあり方、正しい選挙のあり方、新憲法の施行以来、国民として相当選挙に対する関心は高まつて来た。その喜ばしい傾向がますます助長されるときにあたつて、今回のように非常に違反の多かつたということは、私どもとして残念であります。どうしてか。あるいは直接のお答えにはならないかもしれませんが、今われわれとして、国民としても反省しなければならない点、そして特に選挙関係者として考えなければならない点は、違反の防止、公職選挙法の六条にもございますが、選挙趣旨徹底といつたような、言葉は適当でないかもしれませんが、啓蒙と申しますか、そういつた点において、もう少し努力すべきでなかつたか。棄権防止の点なんかはかなり行われたようでありますが、国民に正しい選挙のあり方、こういうことは違反になるということを、もう少しやはり知らすべきではなかつたかということは考えられます。法の六条にもその規定がございます。そういつた点をもう少し関係者において努力すべきだと思います。なお今回の選挙に関しては、私も最初のときに申し上げましたように、地方選挙が非常に狭い区域内において競争者がたくさん出て、従つて勢い競争がはげしくなる。狭いところでたくさんの候補者が一票、二票を争うという結果、おのずから競争激甚の結果、いろいろの弊害が出たということは、今回の選挙についての大きな原因だと思います。
  44. 宮下明義

    宮下説明員 まだ十分な結論も出しておりませんので、雑駁なお答えになるかもしれませんが、私といたしましても、今度の選挙違反が非常に多く、しかもそれがかなり露骨な形で悪質違反が行われております原因については、先ほどお話のありましたように、小自治体において非常に競争がはげしく、しかもわずかな票の違いで当落が決定されますので、自然に無理がかかつたのではないか。單に買收だけでなくて、詐欺投票等も非常に多いのであります。無理をして何とかして当選しようという、この無理がかかつて来た結果、このような違反が多くなつたのではないかというふうに考えております。それからもう一つは、あるいはおしかりを受けるかもしれませんが、小自治体等におきまして、候補者あるいは選挙運動者等も、必ずしも遵法精神が万全ではなかつたのではないか。全般的に申し上げまして、無理をしてまでも出て行きたいというような人も、中には立候補されておつたのではないかというふうに考えております。
  45. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 私はなはだどうも不本意な答弁を承るもので、ことに管理委員会からそういう答弁があろうとは、まことにあきれざるを得ない。これはそうなると論争になりますが、この競争率がはげしかつたという具体的な例を示してもらいましよう。いつもどれだけの候補者が立つて、このたびはどれだけの候補者が立つて、どういうところではげしかつたか。われわれはそういうことを聞いておるのではない。もつと真劍なことを聞いておる。そういう答弁をされるなら、私はそう言わざるを得ない。
  46. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 今のお話は、競争率がはげしかつたということを数字を示せということであります。私ども競争が激しいと申しますのは、選挙すべき定員に対する立候補者が多いという意味ではないのであります。先ほども申されましたように、村会議員等の選挙でありますと、一票、二票を争う競争になるのであります。従つてやる場合に手段を選ばないでやる。どうしてもそういう傾向がありがちだ、こういう意味で申したのであります。
  47. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 選挙というものはいつもそういうものですよ。今から四年前の二十二年だつて同じことだつた。みな一緒にやつたのです。町村会議員町村の首長、それから府県会の首長と府県会議員、おまけに参議院、知事、衆議院とあつたのですよ。しかるにそのときは選挙がはげしくなくて、このたびは選挙がはげしかつたとは、一体どこから出て来るか。いつの選挙つて、一票、二票を争うということはあたりまえのことです。同点で抽籤でやることもしばしばある。そのことは今回に限つてあることではありません。われわれはもつとあなた方が真劍に考えるべきだと思う。われわれはこのたびの選挙法改正しようと思つて一生懸命になつておるが、あなた方からは不要と見られるというほかはありません。われわれはその点を聞いておるのであります。われわれは選挙法に対してあなた方が真劍に考えておられると思うから、あなた方の意見参考にしようと思つて聞いておる。それが何もないのだ、法には関係がないのだ、競争が激しかつたからだと言われるなら、一体お前らは何のために選挙法改正しようとするのかというような頭があるのではありませんか。まずそれからお聞きしよう。
  48. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 どうもたいへんおしかりをこうむつて恐縮でありますが、私どもはそういう意味ではないのでありまして、やはりああいうことをやつた一番大きな原因は、私はそこにあると思う。なお付随的ないろいろな社会情勢の変化とか、それから選挙運動員が多い結果、いろいろ研究して、拔け道を考える。そういうことで結局ああいうことになつたと思いますが、私は何と申されても、一番大きな原因はそこにあると考えております。この前の選挙でもそうだとおつしやいますが、それは社会情勢のいろいろな変化から来ておるので、選挙法のどこが悪かつたからああいうふうになつたとは、私ども考えていない。それから選挙法改正が必要でないという頭があるとおつしやいますが、私は決してそうは考えていない。
  49. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 遵法精神が足らぬということは、これは非常に重大なことです。これは根本の問題だと思いますが、しかしこれにつきましても、この前の昭和二十二年のときから見て、今日特に遵法精神に欠けているというようなこともないと思います。もしそれがあるというならば、どういうことでそういう精神が欠けたと思つておられるか、これを宮下さんから承りたいと思います。
  50. 宮下明義

    宮下説明員 その原因までまだ十分に結論を持つておりません。
  51. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 ではもつと具体的に申しましよう。公職選挙法は昨年改正せられましたために、この選挙法欠陷があつたと思いません。それから先ほど言われたように、拔け道を考えるというようなことは、この選挙法には拔け道が非常に多いのだ、こういう考え方をお持ちになつておりませんか。それを承りたいと思います。これは三人ともに承りたい。
  52. 宮下明義

    宮下説明員 最前も申し上げましたように、戸別訪問規定等は、たやすく脱法的な行為がなされ得るような形になつておりますが、その他の点については、各種の脱法行為禁止する規定もございますので、法律の形としては、この公職選挙法が脱法しやすい形にできておるものとは考えておりません。
  53. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 大体宮下委員の御意見とそう大した違いはございません。
  54. 武藤文雄

    武藤政府委員 選挙法の字句の解釈等について、われわれ非常に苦しむ場合がある。今の法規でいろいろ詳細に規定できております。ただたとえて申しますれば、当選を得しめる目的をもつて、というふうな字句が使つてあるところがございます。こういう場合に、われわれとしてはそういう目的を持つておつたということを立証しなければならない。そういう点で捜査技術上苦労をいたす場合などがございます。
  55. 鍛冶良作

    ○鍛冶委員 いま一つ先ほど詐欺投票が非常に多かつたという言葉がありましたが、これについて現行法上、今まででもこれは絶無とは申しませんが、このたびの選挙ほど大きな弊害があつたことはありません。これに対して何らかの法律上その他の原因があるとお認めはなかつたと思いますが、先ほど詐欺投票と言われました。われわれもこのたびの選挙の上において弊害のあつた最も大きな一つと心得ております。この点に対するお考えを伺いたいと思います。
  56. 武藤文雄

    武藤政府委員 不在投票制度とか、代理投票制度を利用いたしまして、詐欺投票をする。たとえばお医者さんに虚偽の診断書を書いてもらう。あるいはお医者さんが書く。そうして不在者投票に持つて行くというふうなことでございます。
  57. 門司亮

    ○門司委員 今の鍛冶委員との間の質疑応答を聞いておりますと、どうもはつきりしないようでありますから、私からももう一応聞いておきたいと思います。選挙のこういう事態になつたということは、法自体に欠陷があるということをわれわれも十分考えなければなりませんが、私はむしろ率直に認めていただきたいと思いますことは、この前昭和二十二年の選挙の際は、かなりきゆうくつな選挙であつた。それがこの前の改正で、かなり大幅に自由が認められた。この間において選挙をいたします者が、非常にきゆうくつであつたものが、非常に自由になつたということだけを覚えておつて取締りの方は、あるいは規定されているものを忘れたのではないか。従つて選挙が放逸に流れて、どうにも收拾のつかない状態になつておる。それに選挙管理委員会等にも、私が質問いたしましたようなことについては、ほとんど注意がされていない。そこで問題が起つたと思いますので、われわれは選挙法の中で悪い点については、これから十分話合いをいたしまして直したいと思いますが、私は今度の選挙が特に悪かつたというのは選挙法というよりも、むしろ選挙管理委員会選挙法のかわつたということ自体を選挙民に十分に知らせなかつたところに、大きな原因がなかつたか。いわゆる啓蒙運動が足りなかつたんじやないか。たとえば戸別訪問にいたしましても、前には禁じてあつた。ところが候補者だけに許したらよかろうということで、許したところが、これが悪用せられて、相手方が知ろうと知るまいと、候補者が知つておるといえば、全部これを友人知己ということで戸別訪問しておる。しかしそうではなかつた。さつきの良識的の戸別訪問を認めるのだということが徹底していなかつたのではないか。また連呼の問題にしても、非常にたくさんの人が使われた。また推薦の演説は自由であるが、そこにはおのずから限界があつて選挙費用等の関係もある。これらはやはり法定選挙費用に加算されるということが十分徹底していなかつたのではないかと考える。この点は全国選挙管理委員会においても率直に認めてもらいたい。これが認められないで、どこまでも選挙した者が悪いということになると、選挙した者も悪いかもしれません。あるいは競争のはげしかつたというようなことは理由にはならぬ。選挙競争はつきものでありまして、競争のない選挙などないと思う。従つてそういうことでなくして、管理委員会の方も率直に、啓蒙が十分でなかつたという点を認められるならば、われわれはやはりそういう点を十分考慮して、将来の選挙法改正に当らなければならぬ。もしそういうことが考えられないで、とにかく選挙法が悪いのだということになると、やはりそのつもりで、一切の自由というものを束縛するような形が、選挙法改正の上におのずと現われて来る。これは今の民主主義の社会において、時代と沿わない選挙法をこしらえなければならないことになると思う。その点について、もう一応今度の選挙がこういう事態になつたという点についての当局の御意見をお聞かせ願いたい。
  58. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 ただいまのお話でありますが、先ほど申し上げましたのは、われわれが一番の原因だ考えておることを申し上げたのであります。選挙法趣旨徹底が十分でなかつたということも確かであります。ただ私どもが考えましたのは、選挙法改正になりました場合、選挙を施行する場合の啓発宣伝の方法といたしまして、選挙運動違反規定に特に重点を置いて考えるか、あるいは投票に行くとか、人物の選択について考えるとか、重点の置きどころがあると思います。ただいまお話のように、こうこうすれば選挙違反になるのだということを啓発宣伝の際重点にしますと、どうしても選挙というものが暗くなるのであります。あれをやつてはいかぬ、これをやつてはいかぬということで、非常に暗くなるのであります。そこで御承知のことかと思いますが、今度は明るい選挙ということを申しました関係上、明らかに意識して、選挙違反という点について重点を置いて啓発宣伝をやつておりません。その点ははつきり申し上げられると思います。
  59. 門司亮

    ○門司委員 議論になりますけれども、それはおかしいと思います。選挙啓蒙運動をする場合、何でもやつていいということになると、必ずこういうことになる。選挙民全体がこういう行為はいけないのだということを知つておれば、たといやる人がありましても、あの行為は悪いという判定ができる。たとえば戸別訪問の範囲はこの範囲が大体許されておるのだということを常識的にみなが知つておれば、戸別訪問を受けた場合、これはおかしいじやないかという気持が起きる。あるいは買收にしても饗応にしても、選挙にはこういうものははつきり禁止せられておるのだということが十分にわかつており、あるいは演説会をいたしましたあとも、演説会場と書いてあるビラがそのまま張りつぱなしになつているとか、あるいは一ぺんも演説会をしないところに演説会場というポスターを張つて、そのままにしておるのはいけないということを、全部の選挙民が知つておるならば、選挙違反を起す候補者に対しては、懲戒とはいえないが、選挙民自身がこれに対して、相当醜い選挙をしておるものだと忌避する考え方を必ず持つて来る。そうして選挙民にきらわれると思う。これが選挙民にわかつておりませんから、看板をどこへ立ててもいい。あの人は看板の立て方が少いということを実際に言つて来る人がある。相手方があんなにたくさん立てておるのに、お前の方は演説会場のポスターを立てていない。おれの方に一枚くれということを言つて来る人がある。それは選挙民自身が知らないからです。選挙民自身が知らぬのだから、どんどん選挙違反を起すようなことになつておる。こういう最も悪い面を出しておると思う。それを今の選挙管理委員会は、そういうことはなるべく教えないで、明朗に、ほがらかにということを教えたということであるが、選挙管理委員会の教え方がおかしいと思う。どろぼうが悪いということを全体が知つておれば、どろぼうをするものは少くなる。全体がいいのか悪いのかわからないということでは、一向なくならない。選挙管理委員会啓蒙運動は、そういうことを明らかにすることが必要なのであつて取締り等も将来行わるべきだと思います。ただいまの管理委員会の御意見にはわれわれ承服することができませんが、それについてどういうふうにお考えを願つておるか、もう一度お伺いしたい。
  60. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 お答えをいたします。ただいまの点を修正して申し上げます。重点をそういう明るい選挙という点に置いたのでありまして、違反防止の点について全然啓蒙をやつていないというわけではございません。それから今の御意見でありますが、私どもは多少考えを異にしておりますので、啓発宣伝の重点は、りつぱな人物を選ぶということを住民に教えるのが私は第一だと思います。もちろんそこまで手が及びますればそれに越したことはありませんが、重点をりつぱな人物を選ぶということに置きますと、どうしても違反防止ということは二の次になりがちだと思います。それから私どもが啓発宣伝の重点としておりますのは、どうしても一般国民に呼びかけることを第一としておりますから、選挙運動関係者に呼びかけることは二の次にならざるを得ない。もちろん選挙運動関係者には、こういうことは違反になるという、選挙運動の心得式のものを配つて用意はしておりますが、第一はどうしても一般住民がりつぱな人を選ぶということに重点を置かざるを得ぬと思います。多少御意見と異なると思つております。
  61. 門司亮

    ○門司委員 そういう答弁では選挙法改正をやるわけには行かない。いい人を選ぶということは、結局違反を犯さぬ人ということだと思います。違反を犯さぬようにするには、全国民がこういうことはよくないことだということを知ることが一番大事だと思う。よくないということを知らないで、積極的に公然と選挙違反をやつてもその人が出るということは、いい選挙でないと考える。実例をあげて申し上げますならば、今度の選挙では各党ともおそらく同じようにお考えだと思いますが、当然当選するであろう、この人は間違いないというような人が落ちておるのであります。それの実態を調べてみますと、いまさら選挙違反までやることは自分のプライドというか、自尊心が許さぬ。若い者と一緒になつてああいうみにくい戸別訪問はできない。車も何も制限された以上、いまさらわしが出すということはおかしいじやないかということで、比較的自信を持ち、公正にやつたという人が落ちておるのであります。良心的にやつた人が落ちて、金をたくさんお使いになつた人が当選率が多かつた。金をたくさん使つたということは、法の上から言えば違反でありまして、間違いなく失格者である。悪口を言えば失格者だけ当選して、失格者でない人が落選しているということになりはしないか。こういう面は選挙管理委員会では今後改めていただきたい。そうしてりつぱな人を選ぶには、出るときから選挙違反を起さないような人がりつぱな人だということを、選挙管理委員会でも御考慮願いたい。
  62. 中川俊思

    ○中川委員 一言吉岡さんにお願いしておきたいと思うのです。ただいま私がお願いしますことは、今度の選挙法改正についての参考資料にしたいと思いますので、このたびの選挙で管理委員会がたとえば二十五億円なら二十五億円、三十億円なら三十億円費用がかかつたとしまして、そのうち事務費がどの程度とか、あるいは啓蒙宣伝費がどうとかいうような大体の何でよろしゆうございますが、資料がありましたら、今でなくてもよろしゆうございますから、ひとつ御調製おきを願いたいと思います。
  63. 吉岡惠一

    吉岡政府委員 今の点ちよつとお断りを申し上げておきますが、今度の選挙地方選挙でありまして、地方公共団体で負担しておりますので、これにつきまして実際的確にどれだけ使つたかはわかりませんが、地方財政平衡交付金の基礎になる費用として見込んだものを、ただいまは持つておりませんが、あとで提供いたしたいと思います。
  64. 中川俊思

    ○中川委員 全国選挙管理委員会で使つたものだけでいいですから……。
  65. 水田三喜男

    水田委員長 それでは今次選挙についての実情並びに参考意見の聽取は、この程度をもつて終ります。
  66. 水田三喜男

    水田委員長 この際閉会中審査申出の件についてお諮りいたします。本委員会がすでに決定いたしました委員会の運営方針によりまして、閉会中も継續して審査を行い、来る臨時国会には改正案を提案できるようにするという方針に従いまして、公職選挙法改正に関する調査の件につき、閉会中もなお継續して審査を行いたい旨の申出書を議長に提出いたしたいと思いますが、このようにとりはからうことに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  67. 水田三喜男

    水田委員長 御異議なしと認めます。よつてそのようにいたします。     —————————————
  68. 水田三喜男

    水田委員長 次に閉会中の委員派遣の件についてお諮りいたします。これは先刻議長に申し出ることと決しました閉会中審査すべき案件が院議によりまして委員会に付託され、閉会中審査を行うようになつた場合のことでありますが、選挙法改正に関するいろいろの調査のために委員を派遣して、実地に各地方実情を調査する必要が生ずる場合があり得ると考えられるのであります。この場合に、委員会を開いて本件につき御決定を願うことは、閉会中のことでもありますので、諸種の事情によりまして開会することができない場合も考えられますので、特に必要のあるときは委員会を開会してお諮りすることにいたしますが、一応あらかじめ閉会中の委員派遣につきましては、派遣委員の人選、派遣地、派遣の期間等は、委員長及び理事に御一任願つておきたいと思うのでありますが、このようにとりはからうことに御異議ございませんか     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 水田三喜男

    水田委員長 御異議なしと認めます。そのように決定いたしました。  次会は公報をもつてお知らせいたします。本日はこれにて散会いたします。     午後一時五分散会