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1951-05-30 第10回国会 衆議院 建設委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十六年五月三十日(水曜日)     午後一時二十五分開議  出席委員   委員長 藥師神岩太郎君    理事 内海 安吉君 理事 鈴木 仙八君    理事 田中 角榮君 理事 村瀬 宣親君    理事 前田榮之助君       逢澤  寛君    淺利 三朗君       今村 忠助君    小平 久雄君       瀬戸山三男君    内藤  隆君       西村 英一君    増田 連也君       寺崎  覺君  出席政府委員         土地調整委員会         事務局長    豊島  陞君         建設事務官         (管理局長)  澁江 操一君  委員外出席者         議     員 坂本 泰良君         参議院議員   岩沢 忠恭君         建設事務官         (管理局総務課         長)      高田 賢造君         日本国有鉄道理         事         (施設局長)  立花 次郎君         衆議院法制局参         事         (第二部長)  福原 忠雄君         参議院法制局参         事         (第三部長)  岡田 武彦君         参  考  人         (埼玉宝珠花         村長)     森   進君         参  考  人         (東京大学教         授)      金澤 良雄君         専  門  員 西畑 正倫君         専  門  員 田中 義一君     ――――――――――――― 五月二十八日  委員平澤長吉辞任につき、その補欠として今  村忠助君が議長の指名委員に選任された。 同月二十九日  委員坂本泰良君及び河田賢治辞任につき、そ  の補欠として佐々木更三君及び池田峯雄君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月三十日  土地収用法案参議院提出参法第二三号)  土地収用法施行法案参議院提出参法第二四  号) の審査を本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  土地収用法案参議院提出参法第二三号)  土地収用法施行法案参議院提出参法第二四  号)     ―――――――――――――
  2. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 それではこれより会議を開きます。  ただいま本付託になりました土地收用法案参議院提出参法第二三号、及び土地収用法施行法案参議院提出参法第二四号を一括議題といたします。  本日は前回の委員会決定に基き、参考人意見を聴取することにいたします。本日招致いたしました参考人方々は、東大教授金澤良雄さん、埼玉宝珠花村村長森進さん、国鉄の施設局長立花次郎さん、以上三名の方々でございます。  ちようど二時ごろから自由党の方は議員総会をやるらしいので、今出席がよくありませんが、参考人の御出席を願つておりますから、その御説明をまず承ることにいたしたいと思います。しかる後に質疑を行うことにいたしますが、順序といたしましては、立花施設局長さんから御意見を拝聴いたしたいと思います。
  3. 立花次郎

    立花説明員 国有鉄道は全国に網をめぐらして、おります関係上、各地にいろいろな問題が起りますし、毎年数十件の土地収用法に関する適用を受けておるわけでございまして、そういう立場から事業主の側からの意見を申し上げてみたいと存じます。  今回の法案を拝見いたしまして、全体といたしましては非常によくできておつて旧法に比べまして疑義がほとんどなくなつておる、あるいは調停というような制度を設けられまして、非常に民主的な立場をとつておられ、私どもも心から敬意を表する次第でございます。法律そのものにつきましては、さようなわけで何ら疑義を申し上げるところを持つておりませんが、ただ私ども運用上多少心配いたしております点を申し上げまして、今後のこの法律運用解釈に全きを期したい、こういう点につきまして記録に残しておいていただきまして、今後の運用がうまく行くようにしていただきたいと考えております点について二、三申し上げます。  まず第一に、法案の第三条第一項の起業者の問題でございます。これは非常にこまかくおかれておりまして、まつた疑義がなくて、この点申し分ないと存ずるのでございますが、ただ非常にこまかくおかれております関係上、たとえば国有鉄道事業主になりまして、線路の工事をする場合に、土地收用できるのは鉄道だけというふうにちよつと見えるのでございますが、こういう場合普通は道路及び水路をつけかえたりするようなことが必ず伴つて起るのでございまして、そういうような道路及び水路のつけかえにつきましても、この土地収用心要が起つた場合に、同時に事業認定国有鉄道立場からできるというふうに解釈していただかないと非常に困るのではないか、これは今後の運用の問題でございまして、この法律そのものの問題ではないのでございますが、私どもとしてはぜひそういうふうにこの運用をお考え願いたいと思つておる次第でございます。  それから第二に全体を見ましての感じは、非常に広汎なりつぱなものができておるのでございますが、ただ従来に比べまして運用が遅れる、すなわち土地収用委員会の裁決が非常に遅れやしないかというようなことを非常に恐れているのでございます。それで鉄道事業のごとく、はつきり災害が起りまして、そして何はともあれこれを直さなければならぬという場合には、災害適用がございますが、そうでなくて非非に災害が起りやすい状態になつた従つてこれを未然に防ぐために応急にいろいろな仕事をして、この次の洪水期までには間に合せるというような問題がかなりございます。そういう場合に百二十三条に緊急の使用の問題がございまするが、単にこれだけではなくて、補償額を供託あるいは本人に支払う。そして収用または使用の時期を同時に早く決定するというような特例が開かれないものだろうか、こういうような希望を持つ次第でございます。結局ある意味では、この百二十三条の運用の問題だと存ずるのでございまするが、こういう点について、あまりに一定の順序方法をとつておりますると、非常にだらだらと仕事が長くなつてしまつて、従来の法律に見るような迅速なる解決はできないのではないか、従つて百二十三条のような場合の適用を十分お考え願いたい、こういう点を希望する次第でございます。  最後に従来なかつた問題といたしまして、替地の提供の問題――これは本案では八十二条でございますが、替地による補償という問題が一つございます。この八十二条は土地所有者または関係人事業主所有地というものを指定いたしまして、または指定しないでも事業主以外の者の所有地替地として要求することができるということになつております。事業主が提供し得る替地を持つておりますれば、事前に交換ができるのでありますから、この收用にかけて、そうして替地の問題が起りますのは、普通一般におきましてはそういう簡単な替地がない場合が多いのであります。従つて換地がないので任意買収をしようというような場合が多いのでございますから、非常に替地の問題はむずかしいではないか、いなかの方でございまして、国有地が非常に大きいところがあるとか、未開地があるというような場合はよいと思うのでありますが、都市付近におきましては、なかなかこの問題はむずかしいのではないか。また替地を提供するといたしましても、この替地も、收用法適用を受けない、事業に賛成されまして、別の人がどんどん売られた、それを今度は收用法にかけた人がとれるというような点もちよつと疑義があるように思うのであります。この八十二条のうち、特に委員会が勧告するというような条項がございます。たとえば八十二条の三項、こういうような点は御修正をいただいた方があるいはいいのじやないだろうか。替地そのものの問題を議論するのではございませんが、この三項のような勧告という点はない方がいいのじやないかということを私ども考える次第でございます。  いずれにいたしましても、ころいう法律運用は、結局委員会の裁定なり、あるいは仲裁という場合にこれを担当なさいます人の問題でございまして、收用委員会委員にどういう委員を選ぶか、あるいはその適格条件というようなことについて、あまり詳しい規定はないのでございますが、もちろんこういう点については、十分に御審議して御決定になると思いますが、特にこの適用よろしきを得るために、收用委員会委員りつぱな人を選んでいただくという点について希望を申し上げたい。以上四点ばかり、おもに運用の問題でございますが、意見を申し上げる次第でございます。
  4. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 質疑あとへまわしまして、続いて森宝珠花村長さんのお話を承りたいと思います。森村長
  5. 森進

    森参考人 私は埼玉県のごく東のはずれ、利根川の分流の江戸川の右岸に住んでおるものであります。今度の利根流域改修によりまして、私の村は全面積の三分の一を提供しなければならぬというような立場に置かれました。そういう関係から河川を対象にしましたこの法案につきまして、二、三の意見を申し上げたいと思うのであります。  従来のこうした改修伴つた土地收用と申しますと、ほとんど一方的に犠牲をしいられる、こういう結果に終始しておると思うのであります。私が従来こうした関係に直面しまして知つております限り、そうしたことが繰返されております。最も大正の初めから大正八年ごろまでかかりました大改修でございます。このときにも相当多くの犠牲払つた者があります。その後部分的に改修は毎年のように繰返されております。それらがみな一方的な犠牲であつた、こう申し上げて過言でないと思われます。收用いたしますことを考えますと、これは大体において非常に広範囲な受益者があるということを申し上げることができると思います。一部の犠牲によつて広範囲な多くの受益者を生み出します。そういうような意味から犠牲になるところの人たち大乗的立場に甘んじて、この犠牲になる、こういうふうに思われるのであります。そういう意味から申しますと、この犠牲者に対しましてはできるだけの、もうこれ以上ない、そうした優遇をしてもらわなければならぬと思うのでございます。また一方考えますときに、広範囲な社会的な福利をもたらすのでありますから、それに対してどんなに多くの補償をいたしましても、これは国家的に考えましても社会的に考えましても、相当にプラスになるところが多いのじやないかと思うのでございます。今後に起りますこうした收用関係のことは十分な補償を裏づけにいたしまして予算を立てられ、その上に計画をしてもらわなければ、犠牲者はいつになつて犠牲者として終らなければならぬ、ころいうふうに考えられます。旧法は明治三十三年に定められたと伺つております。こうした古い法令をもつて運営して行つたとするならば、当然封建的な、一方的な仕事でもつて終始されるのだ、こんなふうに考えます。民主憲法下の現在においては、こうした考えは絶対に適用を受けるものでないと思うのでございます。大体今回の改修に際しまして、收用を受けるわれわれの立場から特に要求する点がございます。その二、三を申し上げますと、企業者と被收用者との完全なる了解のもとに計画を樹立してもらいたいということであります。次は損失補償に対しましては、あらゆる角度から検討してもらいたい。従来は金銭をもつて一部を負担するというだけに終始しておつたと思います。たとえますと、農民に対しては特に農地の替地補償していただきたい。ただいまも立花説明員から、これは非常にむずかしいことであるということを申されましたが、犠牲者立場を考えたならば、何らかの方法によつてこれはやり遂げていただかなければならぬと思うのであります。もし替地を欲するならば、北海道へ行つて新しい農業経営しろというような、こうしたことは絶対にないようにしなければならぬ。先祖伝来住みなれたところの土地を多くの人のために提供するのであります。しかもその後においてもう農業経営ということは絶対にできない立場に置かれてしまうのであります。そういう意味から、替地の問題は農家にとつて実に大きな問題である、こう思うのであります。次は商家に対しましては店舗の補償あるいは営業補償と申しますか、これらを十分にしていただきたい。これは金銭ばかりではありません。店の構造、あるいは店の向き、こういうことにまで検討していただかなければならぬと思うのであります。次はその立場に置かれました町村の今後の経営、これが完全にできますように、こうしたことがあるために一つ町村が存立することができないというような状況に置かれますということは、これはやはり重大な問題ではないかと思われるのでありまして、この点も十分に考慮していただかなければならぬと思います。なお従来は收用される直接の土地、物件にのみ対して補償をされたのであります。今後におきましては附帯的な事件にまで完全に補償をしていただく、こういう方法をおとりいただきたいと思うのであります。そうして進められたならば、被收用者も喜んで收用に応ぜられると思うのであります。今後は犠牲者などという言葉が抹消されるような法令をわれわれは要望するのでございます。今度の改正法案を拝見いたしますと、今私が申し上げましたあらゆる点が網羅されております。これならばたいへんに被收用者も助かると痛感いたしまして、非常に喜んだ次第でございます。なおつけ加えますが、今度のわれわれが受けました江戸川改修に際しまして、建設省並びに県、そうした方たちが非常にこの改正法案趣旨をそのまま生かしてくださいまして、いろいろとめんどうを見てくださつております。この点もこの席上から申し上げまして、法律そのものはまだ改正されておらなかつた、けれども実際には改正されたと同じような行き方が行われておつた、こうしたことについてわれわれは敬意を表しておるのでございます。こまかいことになりますと、法案について私はよくわかりません。大体以上申し上げましたような点で、こうした法案が一日も早くでき上りますことを切望いたしまして、私の感じを申し上げました。以上でございます。
  6. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 どうも御苦労ざまでございました。  それでは最後に、金沢東大教授の御意見を承ることにいたしたいと思います。
  7. 金澤良雄

    金澤参考人 私は東京大学におきまして、経済法を専攻しておる者でございます。なかんづく経済行政法につきましていささか研究を続けておるわけでございます。特に終戦後は、例の住宅問題その他につきまして、收用必要性いかんという問題についていささか研究をいたしましたほか、経済安定本部資源委員会専門委員といたしまして、総合開発に伴う損失補償問題を研究することとなりまして、ここに数年間その問題に携わつて参つた次第であります。従いまして土地収用法改正につきましては、少からざる関心を持つてつたわけであります。  そこで私は大体三つのことにつきまして申し上げたい。第一は総括的な感想であります。第二は具体的な改正検討であります。第三は施行、実施その他に関連した一般的、補足的な見解であります。  まず第一に総括的な感想を申し上げたいと思います。收用制度存在の意義は、申すまでもなく、私有財産制度確立ということと、公共福祉のための利用ということをどう調整するかという点にあると思うのであります。つまり一方におきましては、公共福祉のためには、私有財産権をも強制的に取上げなければならない、しかし他方においては、同時にそれに対しては、正当な完全補償が行われなければならないという点にあると思うのであります。このことは憲法第二十九条の趣旨に従うところであります。つまり強制はするが損はかけないというのが、收用根本義と考えられます。従いまして、もし收用が適正に行われるならば、公共福祉確立ということと、私権確保ということとは相反するのではなくて、むしろそれが調和されるのである、また調和されることとなるはずであります。ところが従来の例を見ますと、それがうまく行かない。土地収用法はいわゆる伝家宝力、抜かざる太力の功名というわけで、あまり頻繁に発動されたということを聞きません。そうして実際はどのようなことが行われておつたかと申しますと、不当に安い価格で泣寝入りさせたり、また買収価格の間に非常にアンバランスがあつたり、むだな運動費が費やされたり、またしばしば当事者間にボス的存在が介在いたしまして、不当ら上前をはねるというようなことが行われておるようであります。こういうことでは、ひとり私権の適正な確保ができないのみならず、公共事業の適正な発展を望むこともできないのであります。そこで 收用法という伝家宝刀は、むしろ大いにこれを抜き、被收用者側においても、むしろそれを恐れることなく、これによつて真に適正な私権確保をはかるべきでありまして、また企業者側におきましても、これによつて公共的事業の適正円滑な進捗をはかるべきであると思うのであります。かくてこそ初めて法による正義の発現と確保が行われなければならない。先ほど森参考人さんから、もし適正な補償があるならば、被收用者は喜んで收用に応ずる気持だということを申されましたが、事さにその気持にこたえるべき收用法ができなければならないのであります。かくてこそ法治国的な意味における私権確保が完成ざれるのであります。ところが従来の土地収用法は、伝家宝刀といたしますのにはあまり切れ味がよくなかつた従つてまた抜きにくくもあつたということは事実であろうと思うのであります。そこでもしこの法律改正するならば、現在の諸事情に照しまして、その切れ味をもつとよくするということと、また抜きやすくするということでなければならないと思うのであります。つまり私権確保公共福祉確保はより適正に行われ両者が調和されるようなものでなければならない、こういうふうに思うのであります。このような観点から、実は今回の改正案を拝見いたしましたわけでありますが、少くとも法制面におきましては、公平に見まして、現行法と比べ、はるかにこの方向に向つての改善の努力が行われておるように思われます。こまかい点は後に譲りまして、大ざつぱに見ましても、従来疑義のあつた点を明確にしたとか、あるいは権利に関する收用補償についての規定を明確にしたとか、損失補償における補償の限界を拡張したとか、その他当事者意見の尊重を十分にはかるとか、さらにまた官僚的な收用審査会を、客観的にして、公正中立的な収用委員会に改めるとか、あらゆる点においてこうした方向への努力が見られるのであります。これらの改正点は、要するに私権確保をはかるべき方法を十分に取入れまして、伝家宝刀切れ味あるいは切つたあと味をよくする。そうしてそれだけ抜きやすいものにしたと申すことができるのであります。今回の改正案は、概して私権保護の点に重点が置かれ、これが全面的に現われておるようであります。このことは一見しますと、起業者の側から言えば非常に困るというような考え方もあろうかと思うのでありまするが、私権確保保護を十分に期することは、とりもなおさず收用法を発動しやすいということでもありまして、従つてそれはまた起業者側にも有利であるということも考えてみなければならないと思うのであります。このように見ますと、今回の改正案は、概して私権保護公共的事業の推進による公共福祉確保との調和をはかろうとする、またはかるべき收用法本来の使命により近づいたものだと考えられます。以上が総括的な感想であります。  第二に、改正点についての具体的検討でございますが、この点はすでに十分今まで御審議あるいは御研究が行われておることと思いますので、詳細な検討は省略いたしまして、注目すべき点であるとか、多少問題になるというような点について、重点的に申し上げたいと思うのであります。  その一点は、收用権を与えられる、つまり事業の範囲、本案第三条でありますが、これは今までの現行法規定が非常に抽象的であるという点を非常に具体化いたしまして、これを明確に示し、收用権の発動の前提的な条件を縛るという趣旨と解せられます。従つてそれは私権保護確保するという意味に合致するわけであります。ただここで多少問題になるということは、たとえばこれが非常に固定的である、つまり融通性がないというような点が、あるいは問題にされるかもしれない。しかし私権の保障ということからいえば、やはり法律で明記すべきでありまして、政令への委任というようなことは避けなければならない。たとえば都市計画法十六条によりましては、政令をもつて指定する施設に関する都市計画事業について、收用を認めるというような場合がありまするが、新憲法のもとにおきましては、できるだけ政令への委任というようなことは避けて、やはり法律で、本案三条のように具体的に明記ざれることが望ましいと考えられます。  次には権利收用に関する本案五条の規定であります。権利收用に関する規定は、現行法にもございますが、改正案におきましては、それが非常に具体的に示されて来たという点において注目せられます。この権利收用に関する規定が具体的に規定されて来たということは、従来の争いを立法的に解決しつつ、私権のより確実なる確保をはかるという線に、まさに沿うものと考えられます。特に水に関する権利につきまして、電源開発総合開発等に関連して、今後大いに起るだろうと考えられますが、従来争いのありました漁業権入漁権というようなものを、具体的に明示せられました点、及びその他の水の利用に関する権利というものをあげられました点、つまり従来は、水の使用というような規定であつたのでありますが、これを水そのもの使用でなしに、水の利用に関する権利というふうに、非常に注意深く改正せられておると思うのであります。  次には事業認定の問題であります。本案十六条以下であります。この事業認定につきましては、認定機関が問題になります。本案におきましては、建設大臣認定機関、それから一地方のものは、都道府県知事認定機関、しかしそれに対しては、建設大臣のチエツクが行われるように規定せられておるわけであります。この事業認定ということは、ある一つの見方からいえば、つまり收用法を発動すべきその母体となる各種の事業計画というものに対する行政官庁の監督は、各庁に実はおかれておるわけでありまして、従いましてそういうことから考えれば、むしろ総理府あるいは総理大臣認定権を持つて行くべきであるという考え方が出て来るのでありますが、しかし本案におきましては、関係行政機関との連絡調整ということについて、非常に注意が払われておるようであります。たとえば改正案の十八条、二十一条というような規定であります。十八条二項四号、五号、二十一条一項、二項、こういうようなことがうまく運営せられますならば、本来本件について、つまり事業認定收 用ということにつきまして、最も専門的な行政官庁といつていいと考えられる建設大臣において、事業認定を行われるということは、うなずけると思うのであります。また次には認定方法及び手続が非常に慎重化せられている。この点も注目すべき規定であります。  こまかいことは省略いたしまして、次は収用委員会の組織であります。従来の官僚的な收用審査会というものを、客観的な、公正中立的な収用委員会に改められたということは、これはこの改正の最も大きな一つの眼目であろうと思われるのでありますが、ここに選ばれて来る收用委員というものは、具体的には実際問題としてどういう人がなるかということについて、いささか問題が出て来るだろうと思うのであります。従つて不適当な人が出て来た場合に、その人を何とかしてやめざすということが、可能かどうかということが考えられるのでありますが、その点は身分保障の規定、つまり五十五条の一項二号によりまして、「收用委員会の議決により職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認められたとき。」、この運営によつて救われると思うのであります。ただしかしその委員の任命権は知事にありますので、いわゆるリコール制度というようなものは認められなくてもしかたがないと思われます。  次に収用委員会の運営機能に関しまして申し上げたいと思いまするが、その一は、収用発動以前に各種の解決方法をはかつておることであります。たとえば調停制度、百八条以下、あるいは和解制度、五十条というようなものでありまして、またさらにその他、協議の確認の制度を百十六条以下で認めております。これらの機能によりまして、收用という強権発動がむやみやたらに、いわゆる伝家宝刀を抜かず、認定の後においてもいろいろの手段方法によつて当事者の利益あるいは意見を尊重しようとする立場がはつきり現われておるのでありまして、これらの運営いかんによりましては、先ほど最初に申しましたように、收用法はより抜きやすいということが裏づけられておると思うのであります。  その二は、裁決及び審理手続に関してでありまするが、この点につきましては、特にたとえば四十五条二項の準関係人意見書の提出を認めるとか、当事者意見を述べる権利等を認めるという六十三条の点は、現行法によりますと、審査会の方から必要があつた場合に聴取するという程度にすぎないのであります。積極的に当事者意見を申し立てる、つまり司法的、裁判的、手続的なものが十分に取入れられ、私権保護収用の審理の段階においても行われるということは、注目すべき改正だと思われます。またその審理は公開の原則をとつたという六十二条も、これまた現行法に比べて注目すべき改正であります。ただここで裁決の期間につきまして、現行法によりますと、開会してから原則として一週間にこれをしなければならないという二十七条の規定があるのでありますが、改正案によりますと、それがないように思われるのであります。この点はつまり先ほど立花さんが申されましたように、そのほかの点でいろいろございますが、要するに改正案においては審理や手続が非常に遅れるのではないかということであります。しかしこの点はもう一度裏返して考えてみなければならない。つまり現行の收用法によりましては、收用に一旦かかつてしまえば、そこから先はできるだけ手取り早くやつてしまう。だから開会してから一週間のうちに原則として裁決してしまえというようなことになる。早く進捗するという点においてはけつこうでありますが、それによつて私権確保保護が完全に行われない危険が非常に多いのでありまして、私の考えといたしましては、つまり事業認定などをできるだけ手取り早くやりまして、つまり收用法にできるだけ早く載つけてしまう、そして收用法という一つの法によつて整備、発展、確保をはかるという立場をとりますならば、むしろこの収用委員会における審理なり裁決が相当慎重に行われなければならないのであります。従つて現行法による裁決による裁決の期間の規定改正案において削除されたという点は、大いに意義のあることだと考えております。  次には損失補償でありますが、損失補償につきましては、まず第一に損失補償が拡張せられた。先ほどのお話にも出ましたように、替地その他の金銭補償以外の方法が考えられて来たことでありますが、これはまことにけつこうなことであります。つまり私権確保保護という点にできるだけ万全を期する、つまり補償方法として、従来は金銭賠償しかなかつたが、しかし被收用者補償方法についての選択の自由を与えるということは、大いにけつこうなことだと思います。また補償の範囲、対象についても、これを拡張しあるいは明確化したいということであります。たとえば九十三条による收用地以外の土地に関する損失の補償、これは非常に注目せられる点であります。従来の補償が、大体におきまして、いわゆる買収に伴う直接補償的な補償に限られて来ておるようでありますが、これによりまして、従来の事業損失、あるいは企業損失といわれておるところのものにも一歩を進めて補償しようとするという態度が、ここに現われておるのであります。この九十三条の規定は、必ずしもそういう企業損失についての十分な補償ではないと考えられますが、しかしまず今回の改正におきましては、従来に比して注目すべき改善だと思われます。また通常受ける損失の補償につきまして、これを具体的に明確に規定した八十八条であります。たとえば雑作料、営業権の補償というようなことが、従来はただ抽象的な規定で、その解釈上で、取扱われておつたのでありますが、それを明記されたということであります。  以上で具体的な改正点検討を終りまして、次に第三に、補足的な意見を申し上げたいと思います。  以上申しましたように、今回の改正案は確かに現行法に比べまして、收用法本来の使命に向つて一歩あるいはむしろ数歩を進めたということは争えない事実だと思われます。しかし公共的事業の実施とこれに伴う損失補償の問題は、ただ土地収用法あるいはそれに盛られた法文上の機能だけでは解決しないものがありまして、さらに総括的な見地から適正妥当な解決方法がとられることが望ましいのであります。この点につきまして若干申し上げたいと思います。  その一は、收用委員会の運営に関する点であります。収用委員会は、なるほど客観的な立場にある学識経験者等によつて構成せられるということはまことにけつこうでありまするが、その運営にあたりましては、十分な調査あるいは研究を行われることが必要なのでありまして、そのためには損失補償に関する各般の問題の研究なり基礎的、一般的な資料の利用なりが必要となると思われます。改正案によりますと、收用委員会の庶務につきましては、都道府県の局部において処理するという規定があるのみでありまして、これは改正案五十八条にありまするが、この都道府県の局部においては、おそらくこういつた点にまで機能を果すということは不十分だろうと考えられます。従いまして私の意見といたしましては、こういうつまり收用及び補償に関するあらゆる問題のインフオーメーシヨンをやるような、そういうビューローがどこかにありまして、これは中央にあるか、各府県あるいは地区別にあるか知りませんが、そういうようなものがありまして、こういつた機関をバツクとして初めて収用委員会の機能が十分に発揮せられ、適正な運営が行われるということが望ましいと考えられるのであります。  その二は、收用による財産権の完全補償ということと被收用者の生活あるいは生存の保障――この保障はギヤランテイーでありますが、保障ということとの問題であります。今回の改正によりまして、各般の点において私権保護が上り確実にはかられることになるのでありますが、收用法における補償の建前は、何といたしましても原則として過去あるいは近き将来における経済的損失、補償する、つまり憲法第二十九条に基く財産権の補償を中心としていることにはかわりがないのであります。しかしこの憲法第二十九条による財産権の補償という考え方は、職業の自由、つまり職業選択の自由と就職機会の自由でありますが、これを前提として、その上に初めて認められるべき財産権の補償意味するというふうに解したいのであります。つまり職業の自由が現実の問題として客観的に十分与えられていないような、そういうようなもし社会的地盤があるとすれば、そういう場合においてもなおかつ收用による財産権の補償でおつぱなしてしまう。つまり損はかけないという程度で済むかどうかという問題であります。ただこの問題は、もとより収用なりそれに伴う補償なりのおくの外の問題として考えられなければならない。たとえば失業保険制度の再検討などの社会政策の問題として考えられなければならないと思うのでありますが、收用法の整備とともに、この点についての再検討をあわせて考うべきことをこの際一言申し上げておきたいと思うのであります。  その三は、これまた多少收用法プロパーの問題からそれるのかもしれませんが、公共的事業の実施に伴う損失の補償ということは、現行法にむきましても、また改正收用法におきましても、それによつて解決せられるものと解決せられないものとがあるのであります。つまり直接の買収による損失の補償と、いわゆる事業損失の補償その他があるのであります。損失補償当事者から申しますならば、そのいずれによつてウエイトが違うというようなものではなくて。いずれもひとしく損失の補償なのであります。それを前者についてのみ收用法に持込んで、これで解決する、あとは最終的には司法的解決に待つのみだということでいいかどうかという問題があると思うのであります。改正点におきましては、先ほど申しましたように、この点につきましてある程度の事業損失あるいは企業損失といわれるところのものにも食い込んで来たということは注目せられるべき点なのでありまするが、さらに何らかの方法によつてこれらの全般的な損失の補償についての考え方が、つまり適用を受けるものの側としての考え方法律を裏返したような考え方が必要になると思われるのであります。以上の諸点は特に最近やかましくなつて参りました総合開発に関連いたしまして一層痛感せられる点なのであります。しかし今日は総合開発に伴う損失補償一般の問題につきましては立ち入ることを差控えたいと思いますが、要するに今回の土地収用法改正の意義、また收用法には收用法の限られた役割があるということを認めるといたしましても、今後はなお総合開発、その他事業関係法の改正なり、さらに社会政策的な適正な施策の実施なりと相まちまして、初めて今回の改正案の実質的な意味もまた画竜点睛を得ることになるであろうと思われるのであります。以上私の意見を終わります。
  8. 藥師神岩太郎

    藥師神委員長 どうも御苦労さまでした。参考人説明は以上で終ります。     〔委員長退席、内海委員長代理着席〕
  9. 内海安吉

    ○内海委員長代理 これより土地収用法案並びに土地収用法施行法案を一括して質疑に入ります。政府側より管理局長渋江政府委員管理局総務課長高田説明員、なお提案者代表として岩沢忠恭参議院議員が見えております。法制局側より衆議院法政局第二部長福原忠男君、参議院法制局第三部長岡田武彦君が出席されております。通告順によりまして質疑を許します。村瀬宣親君。
  10. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 質疑に入ります前に本法案の提案者はどうなつておりましようか。
  11. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 先般の村獺さんの御注意もありましたから、時日がありましたので、各党に説明をいたしまして、六人ばかり追加してその手続をとりまして、こちらへはやはり私外六名という提案者になつております。
  12. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 逐条的にお尋ねいたしたいのでありますが、その前に総括的に要点をまず伺つておきたいと思います。この法律案によりますると、都道府県に收用委員を設けることとなつておるのでありまするが、中央に中央収用委員会というようなものを設けるというような構想はお持ちでなかつたかどうかという点であります。これは御承知の通り鉱業法の裏づけといたしまして、土地調整委員会設置法なるものがあるのでありまして、これらとの関係もいろいろ出て来ると思いまするので、まず提案者から伺つておきたいと思います。
  13. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 鉱業法の関係につきましては、その鉱業法についての意見を徴するために土地調整委員会意見を聞くというのは、本文二十七条、ほか二条ばかりあります。そうして御存じの通りに従来收用審査会というものが中央だけにとどまつてつたのでありますけれども、実際問題としてただ一地方に関連するような小さい問題をいつも中央に持つて来ることは、現在における状態から考えてどうか、少くとも国の事業とかあるいはまた二府県にわたるような事業については建設大臣事業認定をいたしていい、また一府県に関係するのは知事だけにこれをまかす、これは民主的にやつた方がかえつてその事情もよくわかつておるし、すべてが円滑に行くのじやないか、こういうように考えて今度の事業認定については今申し上げましたような二種類にわけた、こういうことなんです。
  14. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 二種類というのはどういう意味ですか。
  15. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 建設大臣が国の事業並びに二府県以上にまたがつたものについての事業認定をする、それから一府県に対する事業認定は当該の知事が認定する、こういうことなんです。
  16. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 私のお尋ねいたしましたのは、むしろ鉱業法をバツクとする土地調整委員会というような片寄つたものよりも、幸いにここに土地収用法が新たにできるのでありまするから、この際中央に中央収用委員会というようなものをつくつて土地調整委員会のごとく、ただ鉱業法の裏づけとしただけのものよりも、もつと広い中央収用委員会というようなものをつくつて置くのが万般の施策にあたつて摩擦がなく、また公正でいいのではないか、そういう構想をお持ちにならなかつたかどうかということをお尋ねしておるのであります。
  17. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 現行法におきましても、今お話のような趣旨の中央收用審査会といいますか、そういうものはないのでありまして、この改正にあたりましても、今お示しのような趣旨は全然織り込んでおらぬのであります。
  18. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 織り込んでおらないのは、この法案を見ますればわかるのであります。私はこの最後の結論を出すまでにそういう構想があつたようにも伺つておるのであります。またそれは非常にいい思いつきではないかと私は感ずるのであります。そこで具体的にお尋ねいたしますが、かりに一つのダムをつくる。これは総合開発の点でも、また電源開発でも必ず起る問題でありますが、水底に没する幾町村かも生ずるということは想像されるわけであります。ところがその一角に山が出て来ておりまして、そこに鉱業権があつたといたします。そういたしますと、この法案によりまするならば、收用委員会はできるが、それは鉱業権に関する限り土地調整委員会意見を聞かねばなりませんから、その方が優先することになりまして、さらにそのダムを建設することが進捗をしないというようなことも考え得られるのであります。この土地収用法によりまして府県ごとにできる収用委員会があつても、別に鉱業法をバツクとした土地調整委店員ができておりますと、その間にいろいろな支障が起るのでないか。また運営の敏速をとうとぶ場合に、非常に遅れるのではないかということも考えられるのであります。これがもし中央に収用委員会というものができておりまして、鉱業法をバツクとした土地調整委員会をも吸収して行くということになりますならば、非常に円滑な運営と公正な結論が出るのではないふと思うのでありまして、ことにこの法案ができ上るまでには、そういう構想も一度はあつたやに聞きまするので提案者に伺つておる次第であります。
  19. 澁江操一

    ○澁江政府委員 ただいま鉱業法関係の中央土地調整委員会関係の問題、それに関連しまして收用法における中央審査会的なものを置く必要はないか、あるいはそれについての考えはどうか、こういうお尋ねのように拝聴いたしました。実はただいま提案者からお話になりましたように、これは従来の土地収用法を踏襲いたしたもので、なぜそういう踏襲の形をとつたかにつきまして若干御説明いたしたいと存じます。  御承知のように、收用の手続といたしましては、事業認定、それからそれ以後の收用の手続の二段にわかれております。由来事業認定については二段構えの方法行つてつたのであります。しかし收用の手続そのものにつきましては、收用の裁決、これは各地方の收用審査会の全部専決事項でございます。従いましてかりに中央に地方の收用審査会に相当すべきものを置くとするならば、これはやはり覆審機関的なものにならざるを得ない。鉱業法に基きますところの中央土地利用調整委員会も、やはり覆審的な機関であります。收用法の覆審的な機関といたしましては、今の建設大臣が地方の收用委員会決定に対します異議の申立て、その他を覆審するという建前になつておりますが、中央の建前といたしましては、鉱業法の関係土地利用調整委員会收用法関係においては建設大臣、こういう建前になつております。村瀬委員のお話をさらにもう一段つつ込んで参りますれば、それでは建設大臣が専決するのではなくて、そういう委員会式のものになるかどうかということにつきましては、考え方が若干かわつて参ります。この法律の建前といたしましては、これにつきましては、利害関係者、関係行政官庁、あるいは公聴会といつたような手続によつて、できるだけ各方面の意見を徴して建設大臣がきめる、こういう仕組みで考えた次第であります。  もう一点、利用調整委員会との合併といいますか、一体となつたものを考えた、こういうお話のように伺いましたが、これは実は土地利用調整委員会そのものの性格と、收用の手続におきます建設大臣の役割というものと若干異なつておるのでありまして、土地利用調整委員会は、設けられました趣旨からいたしまして、鉱業と農業との利害関係土地問題について調整するというのが主体でございまして、従いまして、土地収用におけるような各種の公共事業全般に関する收用收用問題を取扱うという仕組みになつて参つておりません。委員会の組織そのものもそういうかつこうでございまして、つくられました動機からいつてもそういつたようなかつこうでございまして、これは将来の問題として研究する価値はあると思いますけれども、現在の段階ではその点については、ただいまこの法案に盛つてございますように、覆審的な場合におきましては、利用調整委員会意見も一応聞き、そして建設大臣收用法上の手続をやつて、それで解決する、こういう方法で調整をとる仕組みであります。
  20. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 土地調整委員会は、鉱業権と農業関係との調整をする局部的なものであるから、これを一つにまとめるということは今度はしなかつたという御答弁でありますが、ここに土地収用法という画期的な法律を新たにつくるのでありますから、その際にはそういう特殊な、これに類似したようなものは一つに統一するのが、こういう法律を根本的に改正するときの任務だと私は思うのであります。漁業権漁業権で別に調整するものを置いておいてもよいというようなものではないのであつて漁業権であろうと、農業であろうと、鉱業権であろうと、幸いに土地収用法という全般的なものができ上る際には、そういう分派的なものはできるだけ一つにまとめるのが立法の精神に合うと私は考えるのであります。  そこでもう一度お尋ねするのでありますが、建設大臣がこれは最後をきめるのだ、こうおつしやいますけれども土地調整委員会意見はどうあろうと、建設大臣でその前後の関係を考えて最後決定ができるものでありますか、どちらが優先するものであります。
  21. 澁江操一

    ○澁江政府委員 土地収用に関する限り、これは建設大臣の考えによつて決定し得る、かように考えておりますれば、もし土地利用調整委員会建設大臣と考えが対立したときには、どういう解決がはかられるかというふうにも思われるのでございますが、できるだけそういうことのないようにいたすことはもちろんでございますが、万一そういう場合があつたといたしました場合に、法律上の問題といたしましては、これは土地収用法に関する限りは、建設大臣が権限を持たされておる。建設大臣の所見に従つて問題を解決する、これでさしつかえない、かように考えております。
  22. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 かなり大胆な御答弁であつたと思うのでありますが、しからばもう一つつつ込んでお尋ねをいたしておきます。この土地調整委員会は、何度も申します通り、鉱業法を主眼としてできたものであります。そこでこれは鉱業権を十分に擁護するといいますか、鉱業権を主にするでありましようし、鉱業と農業との調整ということになつておるわけでありますが、これに片寄つたとは言わぬにいたしましても、それを主眼とした意見が出て来るのは当然であります。立法の当初からのそういう歴史を経てできた土地調整委員会の設置法なんでありますから、当然なことでございます。  そこでただいまの御答弁は、この土地収用法ができて、建設大臣收用については最後の体定をするのであるから、たとい土地調整委員会意見がどのようにあつても、真に公共のために必要なりと認めたときには、建設大臣は必ずしも土地収用委員会意見通りしなくてもよい、こう政府ではお考えになつておるか。
  23. 高田賢造

    ○高田説明員 この法案におきまして、土地調整委員会意見を聞くという規定がございますが、この意見建設大臣意見が異なつた場合には、どちらに決定権カあるかという御質問の御趣旨と存じますが、さような場合におきましては、もちろん決定権は建設大臣にあるわけでございます。あくまでも意見を聞くという形でございまして、法律上の拘束力はございません。もつとも建設大臣の処分が、また別途訴訟、つまり裁判所においてその行政処分の効力が争われますことは、これは一般の行政訴訟法等の規定からいたしますと当然でありまして、最終的には裁判所の判断に服するわけであります。
  24. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 そういうことでありますならば、この際土地調整委員会というものを廃止して、それにかわるような、この土地収用法に中央委員会を設けて置くならば、その間の処分は非常に円滑に行くと思うのでありますが、何かそれには非常に支障があると考えておられますか。
  25. 高田賢造

    ○高田説明員 この法案の立案に建設省といたしましても大いに参画もいたしましたので、今の御質問の点に関しまして一言御説明申し上げたいと思います。  先ほど提案者からも御答弁がございましたように、新収用法案は、お尋ねの点に関しましては、現行收用法をそのまま踏襲いたしております。先ほど来参考人の御説明もございましたように、現行法をずいぶん思い切つてかえたところもございますが、その骨組みにおきましては現行法を踏襲しておるわけであります。従つて現行法を踏襲した結果、現行法と同じように、その種の委員会を中央に設ける法律上論理上の必要がなかつたわけでおります。その点を一応先ほど提案者から御説明があつたわけでございますが、やや法律技術的に一言御説明を申し上げまして、御了解をいただきたいと思います。  この現行收用法を踏襲したということをさらに附加して申し上げますと、御承知のように、現行收用法は、事業認定ということを、普通の行政官庁、つまり実務上は建設大臣がやつておるわけでございます。事業認定ということは、早く申しますと公益性の決定ということでございます。憲法二十九条にある公共のためということの、公益性の決定の第一義的の処分官庁の建設大臣ということでございます。  第二は、現行法のとつておりますところの特色は、補償決定を中心とする事柄でございます。補償決定は、事業認定という公益性の決定を行う機関と別個の機関が当つております。これは現行法におきましては、收用審査会でございます。この点、つまり事業認定ということを一般の行政府において行い、しかして公益性の決定と離れました補償決定は、今私が申し上げました公益性の決定を行う機関と別個の機関が当ることになつておりますが、この点は新収用法もとつておるのでございますが、けだし收用法においては、公益性の決定ということと、補償決定ということとは、截然と区別するべきところでございまして、あらゆる立法例が、いずれも公益性の決定ということを行う機関と、補償決定を行う機関とは、まつたく別個のものが扱うという仕組みになつております。つまり補償当事者の対等の原則によりまして、中立の機関がこれを行うのが最も適当でございまして、改正法におきましても、收用委員会という中立公正な機関が行うことにいたしております。公益性の決定におきましては、さような委員会が当るべきではなく、やはり現行法通りの建前を踏襲いたしきております。ただその事業認定の手続におきましては、きわめて愼重な手続をとりまして、現行法の不備を補つたのでございます。この点は改正法におきましてもとつたところでございまして、收用法制度の上からいたしまして最も適当であると確信をいたしております。さような建前をとりました以上は、あと事業認定機関につきまして、中央にさような機関を設けることは、かえつて何の必要もないことでございます。ただ考えられます事柄は、地方の補償決定機関に対する訴訟でありますが、補償金というものの決定は、中央に新しく委員会を設けるということが現行法にはないのでございます。補償決定という事柄は、損失の事実が幾ばくのことであるかというような純粋な民事事件的性質を持つておるのでございまして、これは現地に近い裁判所にすぐ訴えを起す、もしそれに不服がありましたならば、第二審はすぐ裁判所に持つて行かせることが最も適当であるということになりますので、さような事からいたしますと、中央に委員会をつくる必要がなかつたわけでございます。ことに財政上等の理由からいたしまして、いたずらに行政機関意味なくして置くことは避けなければなりませんし、收用法制度の上からいたしましても、今申し上げましたような結論に到達いたしたわけでございます。ことに一番問題は、補償決定ということと、公益性の決定ということは、別個の機関が扱わなければならぬという建前が、一番の基本でございまして、さようなことから現行法を踏襲いたしたわけでございます。なお土地調整委員会との関係についても一言だけ申し上げておきますが、土地調整委員会法がすでに国会で可決されまして、公布されておりますが、御承知の通り鉱業権の設定または鉱業権の取消しに対しますところの第二審機関でございます。当初第一審機関といたしましては、通産局長が鉱業権の設定または取消しを行つたのでありますが、それに対しまして、受審期間としていろいろな特別ないきさつから、二審機関として土地調整委員会が設けられたのであります。     〔内海委員長代理退席、田中委員長代理着席〕 この案ができまするについて、いろいろの論議もあつたのでありますが、いろいろの事情で、やむを得ずつくつたように私どもつておりますが、その土地調整委員会の性質というものと、これとは特別に深い関係はないのでありまして、これを一緒にするということが法の論理上考えられないことでございますので、これは合併するというようなことは、とうていまた考えられなかつたのでございます。これはいわば純粋に法律の技術的な問題でもありますので、こまかい説明は省略をさしていただきたいと思いますが、さような経緯からいたしまして、土地調整法は鉱業権の設定または取消しに伴いまして、ことに鉱業権の場合は、農業関係する場合が多いのでございまして、しかも鉱業の方は、これは完全なるパブリツクのものではございません。他方農業の方も私企業とはいいながら食糧とか、いろいろな関係で非常に重要性が増して参りますので、その間におきまして、通産局長に対する、処分に対しまして、特別の機関を設けることは、鉱業権の設定並びに取消しに対応いたしまして、起り得ることでございます。またさようないきさつからいたしまして、土地調整委員会ができたわけでございますが、その行政機関が、たまたま鉱業のための收用をやるということでございますが、この点も多少の説明を申し上げますと、鉱業のための收用ということは、收用法にいう收用とは、法律的に申しますと実は非常に違いがあるのであります。鉱業法でごらんの通り、收用の要件というものが、一般法であるこの收用法とは全然違つておる、そこにやはり鉱業のための收用というものが、旧鉱業法では收用が認められずに、ただ使用権だけしか認められなかつたところに特色があるわけでございますが、たまたまさような性質を持つ鉱業のための收用、または使用制限された特殊の收用使用というものが、鉱業権の設定または取り消しということと不可分の関係にきまして、あわせてそこで扱うというように、無理に收用法の一般原則にこれを合併する必要はない、かような実際的な要求からいたしまして、また法律技術上から申しましても、必ずしも不都合ではないのでございまして、鉱業関係のものは、土地調整委員会にある程度再審を認める、これはあたかも鉱業権の設定と不可分という事実上の関係がございますので、これはあちらの方に再審して行くということはやむを得ないのである、かような経緯からいたしまして、收用法との関係におきましては、截然としてこちらが一般法、あれが一種の特別法というかつこうでできておりますので、これを無理に合併することはきわめて実情に適さないものがございますので、かような結果になつたのでございます。
  26. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 御説明を承りますと、最初の部分は、明治三十三年に出た收用法をそのまま踏襲するという関係もあつたから、この中央の收用委員会というものはつくらなかつたのだというのが、主眼点のようでありましたが、御説明を聞いて行くうちに、やはり鉱業法を裏づけとした土地収用委員会は、これを統一すべき土地調整委員会と一緒にはならない方がよいという意見であつたようであります。私はそれに対しまして、いささか疑義を持つものであります。  そこで私は委員長にこの際お願い申し上げるのでありますが、ただいまの政府委員の御答弁によりますと、建設大臣は必ずしも土地調整委員会に拘束されることなしに、裁定をすることができるというような御答弁でありましたが、これは立案にあずかつた政府側の一員としての御意見であろうと思いますので、明白でも土地調整委員会事務局長なり適当な人を呼んで、この点ただいまの御答弁を了解するかどうか、確めておきたいと思うのであります。そうでないことにはこの法案ができ上りましたときに、必ずこれは運営上いろいろな支障を来すおそれもありますので、その点を委員長にお願いしておきたいと思うのであります。この点は明日土地調整委員会関係委員によつて了解するのでありまして、土地調整委員会というものは、この收用法に対しては非常に弱いもので、何ら意味がないということでありますならば、私のこの心配は一応解消するわけでありますから、これは明日に譲ることにいたします。  そこでこの問題に関連をして、提案者でも政府委員でもよろしいのでありますがお伺いいたしたいのであります。この法案に基きまして、いろいろな問題を解決しようとする場合に、公共の利害が相反する場合が生ずると思うのであります。ダムをつくるときに、鉱区の問題もそうでありますが、あるいは国立公園の中へ道路をつくりたいというような場合も、風致保存の関係で、同じく意見が対立するでありましよう。またいろいろな文化財といいますか、たとえば今現に問題になつております群馬、福島、新潟、三県境の尾瀬沼にダムをつくろうといたしましても、あの付近には毛氈ごけか何かあるそうでありまして、そういうものはぜひおいておかなければならぬというような問題も起ると思うのであります。こういう同じ公共の利害が一致しがたいというような場合に、この收用法によつて敏速に、円満に解決し得るとお考えでありますかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  27. 高田賢造

    ○高田説明員 御質問の要点は、この法文の技術的な点にもわたりますので、一言お答えしておきたいと思います。新収用法の第十八条の二項にございますように、收用ということが起ります前に、案は関係行政機関のいろいろな処分が先に行われるわけであります。たとえば尾瀬沼に、発電所のダムをつくるという場合には、收用収用ということは事務の順序から申しますとあとになるわけでありまして、そこに電気事業の許可とか認可とかいう事柄が先行するわけであります。そのことは第十八条の第二項の四号、五号で添付書類を要求いたしておるところでもおわかりのように、すでにその事業施行に関しまして政府部内でいろいろな意見が統一された上で、いろいろな行政機関の認可あるいは許可があるのでございます。その後におきまして收用という問題が起つて参るのでございまして、御心配の点のような各行政機関意見の調整という問題は、すでに收用の発動せられる以前に解決をされておらなければならぬ問題でありまして、さような問題が解決されない以上は、事業の申請、認定書を提出するというようなことは、法の建前から申しますとあり得ないということになるのでございます。
  28. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 ただいまの御答弁にも私は必ずしも全幅の了承はできかねるのでありますが、事業認定をするときに万般の問題を解決してからでなければ認定しないということが確立されておりますならば、ただいまの御答弁もけつこうと思うのでありますが、私は全部必ずしもそういうふうに仕合せに行くかどうかはわからぬと思うのであります。従来行き方の問題でいろいろ問題が起つた場合にも、そういう問題は通産省は通産省だけの観点から、まず第一歩の問題を片づけろというような点で、あとに問題を残して許可をするという例もあつたわけであります。私は将来ともそういう問題が全然ないとは考えません。その点をお尋ねいたしたのでありますが、本日御出席の方にお尋ねしても御答弁は困難かと思いますので、この点はこの程度に問題をあとに残しておきます。  そこで私はきよう出席の方の顔ぶれを見まして御答弁のできる範囲内のお尋ねをしてみたいと思うのでありますが、第八条の定義におきまして、收用及び使用という言葉がありますが、これの定義はいたされておらないようであります。しかし全般を通じて盛んに収用または使用にかかる土地というようなことが方々に出て参りまするので、これは法律運営上はつきりしておく必要があろうと思いますが、この内容を明確にしていただきたいと思うのであります。
  29. 高田賢造

    ○高田説明員 收用使用の定義の問題につきまして御質問でございまして、きわめて法律技術的な問題でもございますので、私から簡単にお答えいたしたいと思います。お説のように、法律の形をできるだけわかりやすくいたしまする建前をとりましたので、むろん收用使用という言葉の定義を、できればつくることが好ましいのでございまして、その点立案の過程におきまして、率直に申し上げますが、いろいろくふうをいたしたのでございます。これはでき得る限りの努力を払いましてやつたのでございますが、收用收用使用の定義といたしまして掲げる法律的な必要性というものがきわめて少かつたこと、と申しますのは、收用使用ということの内容は第一章の規定趣旨なりあるいは收用の効果という第七章の規定趣旨から、自然法律的に出て参るわけでございます。それを短かい言葉で定義を書きますと、きわめて不正確な定義になりまして、不正確な定義をつくりますと、かえつて法律運用の際にも誤りを起します。さような関係からいたしまして、実は今のお尋ねのように、いろいろ過程におきましてはくふうをいたしたのでございますが、これはむしろ使わない方がよかろう、その実益もないということの意見が有力になりまして、さような次第で実は定義が載つておらぬのでございます。
  30. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 收用または使用を定義することが実益がないとおつしやるが、この法案の審議をまかせられておりまする建設委員の私は、それの必要を感ずるのであります。法文には非常に長くなるとおつしやるならば、法文へ入れなくてもこれは了承いたします。しかし速記にははつきり残しておいていただきたい。これは法文に書くと長くなりますと困るから書いてなかつたのであるが、この第八条にかかれておる收用とはこれこれである、どんなに長くなつてもよろしい、速記に載せる。收用とはこういう意味である、立案者はこうであるということをはつきりお示しができないとすれば、もはやこの法案の審議を進めることはできません。法律をつくつた以上は、その内容が長くて書きにくかつたということは、それはよろしゆうございますが、答弁ができぬということはないのであります。長くてもよろしゆうございますから、收用とはこうである、使用とはこれこれであるということをお答え願います。
  31. 高田賢造

    ○高田説明員 長くて書けなかつたということを実は私申し上げたのではないのでございまして、あるいはそういうふうにおとりになりましたら、私の説明が非常に悪かつたのではないかと思いますが、長くて書けなかつたということではありませんで、法律技術的に非常にむずかしかつたのでございます。これは先ほど申しました通り、收用の効果というものは、收用の他と識別し得る正確な定義というものを書きますことが、これをもし誤りますと、かえつて聞違いを起すことの困難があつたのでございます。またもう一つはこれは当然のことでございますが、御説明を申し上げますと、收用という言葉はすでに最近いろいろな、たとえば工業法で收用という文字を使つておりますが、その他の戦後の立法におきましても、すでに使われておる言葉でございまして、これはむしろある意味におきましては熟した言葉ではないか、一般的に十分わかるのではないか。ただ收用というものが、法律的にいかなる効果を発生するのであるかということをおつしやいますと、これは法律の上で明記はしておるのでございますが、さような経過からいたしましてお答え申し上げたのでございまして、必ずしもそういうわけではなかつたのであります。
  32. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 私は收用という字ならば中学校の二年ごろ習つたのです。だから收用だけなら御説明を聞きません。また使用という単独の日本語なら小学校時代に習つておりますから、御説明を要しません。ここにことさらに「收用又は使用」と書いてあるところが何箇所も出て参るのであります。でありますから、法文上技術的にむずかしければむずかしいでよろしい。しかしその收用はどういう意味であるか。五十行でも六十行でもよろしい、收用とはこういう意味だということをそこで御答弁になれば、速記になるのでありますから、それでいいのであります。提案者で困難であれば、全国民はなおさら困難であります。そこをはつきりしていただきたい。
  33. 澁江操一

    ○澁江政府委員 たとえて申しますと、今の村瀬委員の御質問になりました土地收用と申しますれば、土地の所有権の完全な支配権を結局取得するということのように私ども常識的に考えております。それから使用ということでありますれば、完全な所有権は一応別にいたしまして、結局必要とする目的に応じた権限を行使するという意味の地上権の行使であります。目的によつてそれぞれ異なつて参ると思いますけれども、今申し上げた程度の差異が收用使用との間にある、こういうふうに考えるのであります。なお御質問がございましたら申し上げたいと思います。
  34. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 私は今の御答弁では必ずしも全部ではないと思うのでありますが、なお適当な機会に、この收用というのはこういう意味であり、使用とはこういう意味である、今たとえばというお言葉をお使いになりましたが、たとえばでなく、定義的に一応はつきりしておいていただきたいと思うのであります。本日はこれ以上お尋ねすることは無理だと思いますのでお尋ねいたしません。というのは收用使用については、学説が種々わかれておるのであります。法律の中に使用する場合には定義づける必要があるのでありますが、第八条(定義)とありながらお書きにならなかつたのは、学説が区々にわかれておつて書きにくかつたのだろうと思う。書きにくければ、なお書いておかなければならぬと思うのであります。学説はどうあろうと、この法律ではこう解釈しておるのだということを一応はつきりしておく必要がある。われわれが建築基準法をつくりましたときには、最もわかりやすい「建築物」という定義まで下しておるのであります。これが親切な立法の態度であるのであります。征つてこの点につきましては、適当な機会に、はつきりした定義をお示し願いたいと思うのであります。  次にお尋ねいたしたいのは、これはこの法案全体に関係することでありますが、主として第三条であります。これは一つずつ箇条をあげて駐車場、放送施設、電気工作、ガス工作というように、一々についてお尋ねしたらいいのでありますが、時間をとりますからこういうお尋ね方をいたします。土地收用し、または使用することができる事業については、新法と旧法との事業範囲にどのくらい違いがあるか、詳細な御説明を承りたい。なお私の質問がはつきりせねば、第何号の何と聞いて参りますけれども、こういうお尋ねをした方が、お答えになる方も要を得たお答えができるかと思いますから、この点についてお答えを願いたい。
  35. 澁江操一

    ○澁江政府委員 大体におきまして、提案説明の際に提案者から申されました通り、三条の趣旨といたしましては、各收用し得る事業を、それぞれ法律的な根拠をできるだけ求めまして規定いたしましたのと、それから各事業の内容、ことに施設等の範囲につきまして、具体的に明示する方法をとりましたのであります。これが第一号から三十三号まで全体に通ずる共通の立法趣旨でございます。それから旧法とこの新しい法案との間で、しからばどういう事業が新しく追加され、もしくは削られたかという差異の点でございますが、これも若干御説明申し上げた通りでございまして、旧法の、皇室の陵墓の建造ないしは神社の建設に関する事業、さらに国防その他軍事に関する事業、これは削除いたしてあります。  なお新しく追加したものといたしましては、第一号の「公共の用に供する駐車場」これが一つ、それから八号の「無軌条電車の用に供する施設」、それから十六号に参りまして「放送法による放送事業の用に供する放送設備」、それから三十号に参りまして、「国又は地方公共団体」が一定の地域におきまして「自ら居住するため住宅を必要とする者に対し賃貸し、又は譲渡する目的で行う五十戸以上の一団地の住宅経営」、さらにこまかい点について若干実質的に追加したと思われます点は、第六号に掲げてございまするように、国、都道県または土地改良区が行います土地改良事業施行に伴い設置する用排水機または地下水源の利用に関する施設、それからもう一点申し上げておきたいと思いますことは、十号に掲げてございます「漁港法による漁港施設「これらが実質的に追加せられたものでございます。
  36. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 実は漁港法などは、はつきりしておりますが、私はそのほかの部面の内容をお聞きしたかつたのであります。ただ箇条書だけをおあげになりましたけれども、たとえば三十号の「五十戸以上の一団地の住宅経営」というようなものを加えておることは、建築行政の面から考えまして、非常に画期的なよい点でもありましようが、またこれは、実際の運営にあたつては、立案者の趣旨をただしておかねばならぬ問題と思うのであります。われわれは耐火建築助成法案でこういう問題で現に論議を重ねつつあるのであります。「五十戸以上の一団地」といいますのは、坪数等は全然制限がないのであるかどうか。またいつも議論になるのでありますが、その五十戸を建てまする場合、敷地等は右側へ広げても左側へ広げてもよいわけであります。右側にあります分は、左側をとつてくれと言うのでありましようし、左側にあります分は、右側をとつてくれという場合も生ずるでありましよう。こういう点の内容をひとつつておきたいと思います。
  37. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 ただいまの御質問ですが、御存じの通りに、近来庶民住宅は、社会において最も関心を持つておるのでありまして、住宅政策上、これを遂行する上におきましては、国または公共団体の事業として遂行せねば、この問題は解決しないというような現状に相なつておるのであります。そこで先般御審議に相なりました公営住宅法案につきましても、この団地経営につきましては、公益的の要素が多分に含まれておるのでありまして、従つて従来庶民住宅を経営する場合において、常に問題が起りまして、住宅が建たないということは、結局この敷地の獲得というものが、非常に困難であつたということは御存じの通りだと思います。そこでこの住宅敷地の取入れというようなことにつきましては、すでに都市計画にいて、都市計画事業として收用することができるということになつておるのでありますけれども、これが都市計画事業なるがゆえに、非常にめちやくちやに敷地を買収するというようなことは、やはり私権をあまりに蹂躪するというような関係から、今回のこの土地収用法におきましては、大体五十戸以上の一団地を、国または公共団体が経営する場合において收用することができる一つの対象といたしたのであります。お示しの通りに、家は五十戸だけに指定して、敷地はどれくらいになるかということを明示したらいいじやないかということでありますが、これはごもつともなところで、現在におきましては、大体庶民住宅は一戸当りが十二坪でありますから、今の建築基準法によりますと、大体その敷地として四十坪くらいを想定いたしておりますから、かりに五十戸といたしますれば、二千坪の敷地を、この際收用する対象にしておるのであります。しかしながら、今後あるいは一戸当り四十坪、この十二坪というものが、もつと大きい庶民住宅というようなことになれば、この五十戸というものを当然また変更して行かなければならぬと考えております。
  38. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 もう少し詳しく伺いたいのですが、一戸四十坪とすれば二千坪、それは一坪も国または公共団体の土地がなくても、ここに建てるといつて、ぽつつと二千坪の一画を收用できるという意味でありますか、二千坪のうち千坪は、国または公共団体が持つておる、そこでもう千坪つくつて五十戸の一団地にしたいという場合に、それを收用できるということにお考えになつたのでありますか。いわゆる何にもないところでも、ここに建てるのだといつてよいというお考えから出ておりますか、こういう点についても伺つておきたい。
  39. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 その敷地はやはり住宅地域として指定せられた区域を一応は大まかにさしておるのであります。今お示しの通り、国または公共団体がそこを持つているかいないかということは問題外にしているのです。従つてこれが適地であるという場合におきましては、この收用法にかけて、二千坪なりあるいは所要の坪数を收用しようと、こういうような考えであります。
  40. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 ずいぶん思い切つた立法だと私は思うのであります。そういたしますと、もう一度伺つておきますが、この建築基準法の第四十八条第一条の規定による指定された地域内は、いつ国または地方公共団体が收用にかけようと思つてもかけ得る。そういう法律が新たにできたのだというふうに解釈をしてよろしゆうございますか。
  41. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 いや、これはやはりこの收用法にかけるというのは、最後の段階であつて従つてこの基準法によつて住宅地域として指定したものが、その所有者と十分話し合つて、これなら提供をしようというような場合においては、これは当然この問題には触れないのですが、まあ大体この土地が庶民住宅の一団地経営として適当である。しかしながらこの所有者がどうも応じないというような場合におきましては、この法律を発動する、こういうことなんです。
  42. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 われわれの社会通念をもつていたしまするならば、二千坪必要とする場合に、少くとも千坪か千二百坪はそこに国または地方公共団体が持つておる。しかしそれではどうもりつぱな一団地の住宅経営ができないから、せめて最小限を五十戸くらいにはしたい、もう八百坪なり千坪足らぬ、いろいろ交渉してみたが、どうも応じない。そういう場合に発動するのがわれわれは正しい立法の趣旨ではないかと思うのでありまするが、立案者の御趣旨は、そこに種となる土地が全然なくとも、一坪もなくても、必要とあればこの第三条の第三十号を発動できるという御趣旨のもとに、この法律をおつくりになつたのでありますか。もう一度伺いたい。
  43. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 今お示しの国または地方公共団体が土地を持つていて、不足の分をやるということは、ある場合におきましては起り得るかもしれませんが、しかしながらある場合においては、全然国または公共団体が土地を持つていないというようなことも起り得るだろうと思います。その後段におきましては、何もかもすべてのものを、全面積を收用するということは当然起るだろうと思います。
  44. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 これはまあ多少意見になるかもしれませんが、私はそういう今御答弁の場合━━全然なかつたが、買おうとしかけたところが、半分くらい、千坪くらいは買うのに応ずるらしい。今持つていないが、事実上千坪か千二百坪の所有権は国または地方公共団体に手軽く移るらしいけれども、どうもあと八百坪か千坪がなかなかむずかしいという場合にのみ、この第三条の三十号は発動される、こういうような法律が至当であると、われわれは考えるのでありまするが、その点もう一度立案者のお考えをお伺いしておきます。
  45. 田中角榮

    田中委員長代理 ちよつと村瀬君、その条項が済みましたら、先刻委員長に対して出席を要求してありました土地調整委員会事務局長の豊島陞君が出席しておりますから、御質問を願います。
  46. 岩沢忠恭

    ○岩沢参議院議員 お話の通りに、そういう村瀬さんのような場合が最も望ましいことでありますけれども、われわれは最悪の場合においては、やはりこの全体の土地收用せざるを得ないという場合が往々にして生ずるのではないかと考えておるのです。その場合においては、やはりこの法律適用して、所定の面積を收用にかけてやる。やはりある特定の人はこの集団経営土地を承諾するという場合が生じて、ほんとうに残るものはわずかだということが実際問題としては起り得るだろうと思います。何もかも、そこの指定した五千坪なりあるいは二千坪の所有者が一致団結してこれを拒否するというようなことはほとんど起り得ないと思いますけれども、そういう最悪の場合でも、この住宅の集団経営として最も適地であるという認定をいたした場合においては、これを收用してもよろしいと、かように考えております。
  47. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 土地調整委員会事務局長にお尋ねをいたしまするが、ただいま議題となつて上程されておりまする土地収用法の審議にあたりまして、土地調整委員会意見を聞いて建設大臣決定をするという条項が出て参りましたので、私は政府委員に質問をいたしましたところ、この土地調整委員会というものは、鉱業法の裏づけとしてできたものであつて、ここに土地収用法が成立するならば、それはあくまでも建設大臣最後の裁定権はまかされるのである、土地調整委員会はただ意見を聞くだけである、従つて土地調整委員会意見のいかんにかかわらず、建設大臣は公正な裁定を最後にすることができるというような御答弁であつたのでありまするが、こういう解釈に土地調整委員会としては御了解ができておるかどうかを、この委員会において明らかにした上で、この法案の審議を進めたいと思います。御答弁名願います。
  48. 豊島陞

    ○豊島政府委員 ただいまの御質問に対してお答えいたしたいと思います。一応土地調整委員会は、御承知のように鉱業法と採石法を基礎にいたしまして委員会が発足いたしております。それで現在のところといたしましては、鉱業法に基きます問題、それから採石法に基きますいろいろな問題とあわせまして、土地収用に関しましても、鉱業と採石業に関連いたしました土地収用についての問題だけを一応取扱つております。今回土地収用法改正に当りまして、私どもといたしまして一応考えましたことは、今後のいろいろな場合におきまして、鉱業と採石業とほかの産業との調整をはかるといつたような部面におきまして、完全にそういう仕事をやつて行きたいというためには、ほかの方の関係におきまする土地利用に関しましても、調整委員会といたしましてある程度関与して行つた方がいいじやないか、しかしながら全面的に今すぐ関与して行きますることはどうかと思いまするので、委員会といたしましては一応土地収用法におきましては、建設省には全面的な権限がありますので、われわれといたしましてはその意見を十分に聞いていただくという建前をとつております。但し意見を聞くということでありますので、あるいは先ほどお話のありました通り、私の方の意見がいれられるかいれられないかといつたような問題につきましては、もちろん建設省で最後決定をなさることとは思いますが、しかし聞かれます以上は十分に尊重していただけるというつもりで、この法案に同意いたしまして提出いたした次第であります。
  49. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 土地調整委員会は発足以来非常に閑散で、いろいろなことを研究されておるということを聞いておるのでありまするが、この土地収用法が成立をいたしました場合には、当然すべての土地収用に関することは、この法律に統一されるべきものであると思うのであります。そこで土地調整委員会設置法は、鉱業法に裏づけされてでき上つたものなのでありまするが、ただいまの御答弁によりますと、聞かれる以上は意見を尊重してくれるだろうということではありましたが、しかし、むろん尊重してよいときもありまするし、また全体から考えまして、尊重することによつて事業の進捗が遅れるということもあり得るのであります。尊重してくれるだろうから同意したという御答弁のようでありましたけれども法案自体としては尊重する場合もあるし、やむを得ず尊重することのできない場合も生ずると思うのでありまするが、この法案が成立した場合には、当然そういうことを了解されておるという御答弁だつたと了解してさしつかえありませんか。
  50. 豊島陞

    ○豊島政府委員 鉱業と採石業と、ほかの産業、一般鉱業との土地利用調整をやるということが、土地利用調整委員会のできました大きな目的であります。従つてそれだけやつておれば、あるいはそれでその目的は達し得るのではないかというふうにも考えられますけれども、われわれといたしましては、鉱業と採石業と、ほかの産業との利用調整をやります場合に、ほかの方の産業同士の間の利用調整といつたような部面に関連した部面を知つておかなければ、完全に仕事ができない場合があるのではないかといつたことも考えられますので、今の土地収用法の場合におきましても、一応われわれの意見を聞いていただきたいというふうにしたのであります。
  51. 村瀬宣親

    ○村瀬委員 私は質問を保留しまして、明日また続けさしていただきます。
  52. 西村英一

    ○西村(英)委員 私も今のに関連して……。御説明いろいろありましたが、土地調整委員会との関連で私も疑いを持つてつたのです。どうして意見を聞かなければならぬのか、そういう場合は訴願の裁決をやり直す場合のみです。土地調整委員会は鉱業法に基いたことをやるので、それ以上は出ない。建設大臣がやつたらいいと思うのです。その辺ちよつとわかりませんから……。
  53. 澁江操一

    ○澁江政府委員 いろいろ土地利用調整委員会との関連のお尋ねでございましたが、御質問にありましたように、これは鉱業ないしはただいま事務局長がお話になつたように、採石業との関係が大きな問題であります。これはあるいは土地利用調整に関する問題が出て来ないかもしれぬ。しかしその問題に関する限りは、土地利用調整委員会は一応最終的な覆審機関としての働きをしております。そういう関係において、どの案件がそれに相当し、どの案件がそれに相当しないという関係にも必ずしも参りませんので、一応土地利用調整委員会意見を聞いて建設大臣が処置をとる、こういう建前にいたしたのであります。これはりくつから申しますれば、両者一緒にしたらいいじやないかという御議論もあろうと思いますし、別個に働いてもよろしいじやないかという御議論もあるかと思いますが、これはその沿革からいたしまして、土地利用調整委員会というものは、一応鉱業法に基いて発足したのであります。その後に土地収用法改正問題が起つた前後の経緯からいたしまして、そういう相互の調整をとるという、いわば一つの妥協の産物としてこういつたようなかつこうに一応政府部内といたしましては、協議をまとめたわけであります。その間に若干御疑問を持たれる点はごもつともだと思いますが、それらの運用につきましては、できるだけこの法律趣旨に従いまして、そうした調整をとるということはもちろんでございます。将来の運用の結果を見て、またいろいろ考究すべき問題は土地利用調整委員会とも協議して考究して行きたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  54. 西村英一

    ○西村(英)委員 村瀬さんから質問になりました中央の審査会を省略して、それから土地調整委員会をこの中に入れて、鉱業法に関係があつたりすればいいでしようが鉱業法に関係ないのに調整委員会を入れて、その調整委員会最後決定機関になりますならばいいが、最後決定はやはり建設大臣だというように、ただ意見を聞くというのは、この辺に何かどうもすつきりしないところがあるように思う。私もよくわかりませんが、どうもおかしい。非常にあいまいなところがあるのです。私は意見を聞かぬでもいいだろうと思う。大体鉱業法に関係があるなら、それは意見を聞かなければならないだろうが、しいて関係のないところまで意見を聞いて、そうしてその意見を尊重されるのならいいが、少しも強制力はないのだというようなことになれば、何のためにその意見を聞くのかちつともわからないことになるというような感じがいたします。
  55. 高田賢造

    ○高田説明員 土地調整委員会意見を聞くという点でございますが、事業認定または裁決に関しまして第二審でございます裁判所へ持つて行く前に行政庁としての一応の再審を、第二審として慎重な決定を行います際に、できるだけ慎重な方法で第二審、つまり訴願でございますが、この決定をするということを考えたのが一つでございます。そういたしますと、やはりただいまできております土地調整委員会は鉱業にも関係がありますが、農業のこともあわせて考えておるわけでございます。農地の問題等いろいろ土地調整委員会としては研究をしておることと存じます。收用の場合には農地にかかる場合が多いのでございます。また農地でない場合におきましても、土地調整委員会は、農地に限らず、やはりいろいろの土地につきまして多少の研究をしておるというかつこうに相なりますので、慎重を期しますために、第二審におきましては、さらにていねいにその意見を聞くことにいたしたのでございます。もつともこの意見を聞くことにせずに、先ほど村瀬委員からの御意見にもあつたと存じますが、土地調整委員会決定権を持たせるということがどうかというような御趣旨だと思うのでございます。村瀬委員の御意見は、むしろ決定権を与えたらいいじやないかというようなことが御質問の裏にあるのじやないかと存じますが、大臣がやりましたことを他の行政機関がこれを決定するということが、現在の法律制度の上から申しますと、どうも困難である。ことに内閣の一員である建設大臣がやりましたことを、行政委員会がこれの決定権を持つということが非常に不都合な結果になりますので、意見を聞くということにいたしたのでございます。むろん意見を聞く以上これを尊重することはもちろんでございます。以上のような次第でございます。
  56. 田中角榮

    田中委員長代理 この際お諮りいたします。議員坂本泰良君より委員外の発言の申し出があります。これを許可することに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 田中角榮

    田中委員長代理 御異議なしと認めます。よつて発言を許可いたします。坂本泰良君。
  58. 坂本泰良

    坂本泰良君 総論的の点を一、二点お伺いいたしたいと思います。  第一に、先ほどからの説明で大体了解したのでございますが、確認したい点は、土地収用法案は独立法であるか、あるいは現行土地収用法改正法であるか、その点を確認しておきたいと思います。
  59. 岡田武彦

    ○岡田参議院法制局参事 独立法というお言葉をお使いになつたのでございますが、これは現行土地収用法を廃止いたしまして、いわば実質的に申しますると、改正的な意味におきまして、新しくこの土地収用法案を立案するという関係に相なつております。従いまして、土地収用法施行令をごらんになりますと、事実上におきまして、現行の土地収用法を廃止するという規定があるのであります。そういう関係になつております。
  60. 坂本泰良

    坂本泰良君 その点で先ほどから問題になつておる点がはつきりするのではないかと思いますが、この鉱業法、採石法との関係と、現在の土地収用法との関係は、これはその土地収用法の制定の沿革からしましても、鉱業法、採石法は土地収用法から完全に独立しておるのではない。それと今度新たに定められましたこの本案は、その沿革をここにはつきりして、鉱業法、採石法の関係とは全然別個のものにして、これを取扱つたんじやないか、その前提から参りますと、この土地調整委員会の権限と、それから土地収用法による收用審査会並びに建設大臣の権限との関係においては、もし矛盾ができたとすれば、もちろん意見を聞くようなことはこれは事務上の問題と思いますが、その点の争いが生じた場合に、ただちに訴願並びに行政訴訟法の方に持つて行くという順序になりはしませんかと思いますが、その点の御見解を承りたいと思います。
  61. 澁江操一

    ○澁江政府委員 その点は先ほど若干御説明申し上げたわけでありますが、建設大臣決定処分、これが鉱業法その他の規定に照して違法の処分というようなことになりますれば、これは土地収用法及び行政訴訟法の問題になり得るとは存じております。しかし收用法自体の規定から申しますれば、これは一応意見を徴しまして、その決定については鉱業法に抵触しない限りはこれは一応確定するというふうに考えていいじやないかと思います。
  62. 坂本泰良

    坂本泰良君 鉱業法並びに採石法に関係しない範囲においての土地収用法であるとすると、先ほど私が申し上げましたように、これは收用収用法と全然別個のものである。そういうふうに了解し、解釈していいかどうか。
  63. 澁江操一

    ○澁江政府委員 大体議員の御意見の通りだと考えております。
  64. 坂本泰良

    坂本泰良君 次にお伺いいたしたいと思いますのは、この土地収用法が実質的、便宜的に適用の範囲、收用対象物の範囲が非常に拡大されておりますが、この土地收用権者の主体はどこにあるのですか、その点をまずお聞きしたい。
  65. 澁江操一

    ○澁江政府委員 これは私どもといたしましては、一応こういう解釈をとつております。收用権の主体はやはり国家にあるというふうに考えるのであります。
  66. 坂本泰良

    坂本泰良君 そういたしますと、今度のこの土地収用法一つの国家の行政処分と考えておられるか、あるいは公法上の契約によつてやるものであるか、どちらに考えられておりますか。
  67. 澁江操一

    ○澁江政府委員 御意見の通り、これは一応公法上の処分というふうに考えている次第でございます。
  68. 坂本泰良

    坂本泰良君 そういたしますと、この法案の至るところにおいて、まず当事者間の納得によるところの契約によつて、いわゆる民法上の契約によつてこれを処置し、そうしてそれがまとまらない場合において、收用審査会、そういうのにかけて、そうして最後は国家の行政処分としてこれをやるのである、かように了解していいかどうか。
  69. 澁江操一

    ○澁江政府委員 大体お説の通りに考えております。
  70. 坂本泰良

    坂本泰良君 そこで国家の行政処分というふうに決定いたしますと、府県を主体にしての收用審査会、これはやはり国家の機関としての府県単位の收用審査会、こういうふうになるかどうか。
  71. 澁江操一

    ○澁江政府委員 收用審査会はやはりこれは一つの国家の機関であります。ただ地方の機関でございまして、これに対しまして、国の権限を委任しておるというふうに解釈して行きたいと思います。
  72. 坂本泰良

    坂本泰良君 もう一点お伺いしたいのは、本法によつて收用または使用ということがありまして、先ほど村瀬委員の質問の際にまだはつきりしていないようでありましたが、収用の場合は所有権が移転すると考えればそれでいいのですが、使用の場合においては使用権のみを收用する、そうしますとその所有権はまだ個人にあるわけです。だからその際においては民法上の賃貸借の関係が出て来るか、あるいは使用貸借という関係が出て来るか、この使用の場合の法律関係の点についてお伺いしたい。
  73. 澁江操一

    ○澁江政府委員 十分な学問的な解釈は私ども承知いたしておりませんが、私ども考え方といたしましては、これはつまり收用によります公用徴収と申しますか、そういう一応公法上の制限に服した所有権というふうに考えて、これを一つの賃貸借というような関係でなくて、所有権が、そういう土地収用法による使用処分、これが設定された範囲内において存在しておる、こういうふうに考えるべきではないかというふうに考えております。
  74. 坂本泰良

    坂本泰良君 それでそういうふうに考えた際において、所有権との関係において、そこに賃貸借という場合が生ずるか、あるいは使用貸借という場合が生ずるか、単に使用権のみを收用して、その他のものをそのままにしておくといえば、そこに国家と個人との間に、あるいは無償による使用貸借によるか、あるいはその使用の範囲が少くて、所有権に基く利用価値が残つておるとすれば、そこに幾分かの賃料を払う賃貸借という関係をもつてやるか、単に收用使用という言葉だけではいかぬと思うのです。ですから、その点がはつきりしないから、先ほどの村瀬君の御質問の点がはつきりしないのじやないかと思うのですが、そこの使用の点についてのはつきりした解釈が出て来るならば、従つてこの收用使用関係がはつきりして来るじやないかと思うのですが、その点についての御見解を伺いたいと思います。
  75. 高田賢造

    ○高田説明員 この新法におきまして、地上権とか、あるいは使用貸借による権利、あるいは賃借権というようなものを收用いたしますのは、第五条の第一号でございます。この場合のことでないかと存ずるのでございますが、この第五条第一号によりまして、使用権、地上権とかあるいは賃貸借権というようなものを收用いたしますのは、これはいわゆる消滅收用でございまして、この場合の收用は消滅させる、または制限するということにいたしておるのでございます。その効果といたしましては、やはり目的は消滅または制限の目的で收用するわけでございます。その結果、收用の効果といたしまして発生するのは、当該使用権が消滅または制限されるのでございます。  またもう一点でございますが、土地使用するというお尋ねの点は、条文で申しますと、第二条の終りの方にございます使用でございます。この使用法律上の効果がどういう効果があるのかという点の御質問でないかと思うのでございますが、この場合の使用の効果は、先ほどお尋ねもございましたように、所有権に対しまして公法上の権利の制限があるという効果が発生する。このことは第七章の收用または使用の効果のところに明記してございまして、そこに所有権に対する一つの公法上の制限が発生するのでございます。それに対しましては、民法上の賃貸借または使用賃借の規定適用になるのではございません。これは民法の適用ではないのでございまして、それに対応いたしまして、使用料としての補償使用料という名前におきまして補償金を支払うという関係になるのでございます。あくまで收用法関係の効果でございまして、民法の適用はないことにいたしております。
  76. 坂本泰良

    坂本泰良君 どうもその点がはりきりしないのですが、御指摘の第五条の第一号は地上権、永小作権、地役権、質権、こういう権利がある場合に、この権利そのものを收用するから、その権利者に対してはことに消滅をするわけです。ところが質権とかあるいは永小作権なんかは、この権利の奥に所有権というものがあるわけです。そこで所有者とこの永小作権者の間においては、ここに土地については小作料であるとか、あるいは家屋については賃料とかいう関係がある。その関係がどうなるかということをお聞きしておるわけです。
  77. 高田賢造

    ○高田説明員 この地上権の背後にございます所有権との関係は、この收用によつて全部消滅いたします。ただそれによつてこうむる損失は土地収用法規定によつて補償等も起るわけでございます。
  78. 坂本泰良

    坂本泰良君 そうなると、結局使用権の收用ということはないことになるわけですね。ただそれでこういう地役権とか、抵当権なんかを收用すれば、その権利はお説のように消滅收用によつて消滅する。そこでそれが国家の手に移るから、国家と個人の所有者の間の関係がどうなるか、その点をお聞きしている。今のように全部消滅して、所有権までも消滅するという御意見によると、收用になつて使用ということはなくなりはしないか、こう考えられる。
  79. 高田賢造

    ○高田説明員 私の説明が足りなかつたのですが、地上権を第五条の第一項の一号によつて收用いたしますと地上権は消滅いたしますが、その地上権の設定いたしましたもとの所有権、これは收用用の対象になつておりませんから、これはそのまま存続するのでございます。ただこの地上権だけが消滅するという趣旨なのでございます。
  80. 坂本泰良

    坂本泰良君 それは説明の通りです。そこで国家が使用権を收用した場合において、国家が個人の所有者に対して賃料を払うかどうか、その点の法律関係までも消滅するように聞くから、そこをはつきりしてもらいたい。
  81. 澁江操一

    ○澁江政府委員 前段の問題は御了解願つたのでございますが、要するに新しく収用法に基いて使用権を取得いたしました国家あるいは起業者、それと従来の土地所有者との関係、これは收用法に基きます一つの民法上の契約関係でなく、この收用法に基く一つ法律関係というふうに解釈いたします。それに対します賃料その他の問題は、この法律に基きまして、補償料その他使用料という形で支払う、こういうふうに考えておるわけでございます。
  82. 坂本泰良

    坂本泰良君 そうしますと各事業認定しまして━━事業のためにこの收用があるわけでございますが、そうしますと国家がその收用の主体であるならば、国家が賃料を払わなければならぬようになる。しかしながら実際上考えますと、私設鉄道をつくる場合において、その鉄道会社が今後使用料を払うということになる。そうすれば処分自体は国家でやつていいのだけれども土地收用の主体は国家だと、一率に限定していいかどうか、この点についての疑問が起るわけですが、その点を伺いたい。
  83. 澁江操一

    ○澁江政府委員 先ほども申しました改用権の主体が国家であるということは、改用権という公法上の権限のもとと申しますか、源泉は国にある。しかしこれを起業者にそれぞれ付与するための一つの処分は、これは公法上の処分であるから、この收用法によつて解決して行く、こういうふうに考えて、その公法上の処分の結果として付与された收用権、それに基く具体的な効果は、それぞれ起業者が持つ、こういうふうに考えます。
  84. 坂本泰良

    坂本泰良君 最後にもう一点だけ伺つておきますが憲法二十九条それから民法一条、二百六条との関係ですが、土地の所有権は使用、収益処分になつております。この場合の先ほどの金澤氏の証言に私有財産制度確立完全補償の点がマツチしておるという証言があつたわけですが、この私有財産制度確立について、いわゆる所有権の問題はあまりに領土的の方面に考えると、この土地収用法は非常に了解できない点が相当あると思うのです。ですからこれを経済的方面に重点を置いて、使用、収益処分を経済的方面から考えて、土地の移転とかこういう点についての領土的考えを━━これは先ほどの説明によつて全然旧法を廃して新しい法をつくると、施行法の規定で明確になつておりますから、その点が提案理由その他で收用の範囲の拡張あるいは收用審査会運用を合理化して事業の範囲の拡張、その対象物の拡張といろいろありますが、根本的に土地の所有権、いわゆる私有財産制度の所有権の観念を領土的に考えずにもつと経済的方面に重点を置いて考えたならば、この法律案が合理的の解釈ができると思うのですが、やはり廃止されても旧法いわゆる土地収用法の観念による領土的土地その他の所有権の考えでおられるか、あるいは使用、収益、処分というのを経済的方面に重点を置いて新法を合理的に解釈しようとしておられるか、その点についての発案者の御見解を承つておきたい。
  85. 岡田武彦

    ○岡田参議院法制局参事 お答えいたします。御質問の中に、憲法第二十九条をお引きになつたのでありますが、憲法第二十九条は「財産権の内容は、公共福祉に適合するように、法律でこれを定める。」というのが一つの点でございまして、さらに「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」この憲法の大精神は、もちろんこの新立法にあたりまして、これに適合いたしますようにいたしたのでございまして、この新法で申しますと、「公共の利益の増進」と第一条にありますが、この公共の利益の増進をいかにして円滑にはかつて行くかという観点からと、それと憲法に保障されております私有財産権補償、この両者をなるべくうまいぐあいに調整いたしまして、たとえば御指摘のごとく收用使用し得る事業の範囲を比較的拡張いたしますとともに、土地収用裁決に至りますまでの手続につきまして、質権の保護に十分留意いたしまして、また補償の点につきましても現行法金銭だけの補償になつておりますが、その替地補償とか、とられます者の便宜を考えまして、両者の調整をはかつているわけでございます。
  86. 坂本泰良

    坂本泰良君 私がお聞きいたしましたのは、憲法二十九条も、旧憲法法律の範囲内においての使用、収益、処分をなすというので、これも大体同じだと私は思います。ただ考え方がかわらなければならない、というのは、現行の土地収用法というのは領土的考えでこの收用法ができているから、従つて先ほど申しました鉱業法とか採石法とかが分離されまして、新たな立法ができた沿革がある。というのは土地収用法土地については領土の観念を非常に強くしてこれを收用した関係がある。ですからその点から考えますと、今おつしやいました二十九条の第三項も公共のために用いるときは正当な補償で私有財産を剥奪するとなつておりますからそこは同じなのです。ただ問題はこの使用、収益、処分について事業の範囲を拡張し、並びにその收用の対象物を━━收用にしましても使用にしてもその対象物をここに拡張して完全補償をなして、ここに收用を進めるという点から考えるとこれはむしろ領土的の考えはなくて、土地利用価値から考える、経済的の考えからこれを立法したというふうに考える、こういうふうに考えると現在の法案が合理的に行くと考えられるのですが、そういう考えをもつてこの立法に当られたかどうか、その点をお聞きしたわけです。
  87. 澁江操一

    ○澁江政府委員 今の御質問非常にむずかしい問題で、はたして私のお答えがそれにあてはまるかどうかわかりませんが、憲法上の問題としては二つの原則があります。一つ私有財産権の内容というものは公共福祉に適合するように法律できめるという建前になつております。一方私有財産制度そのものを認め、それに対する正当な補償をしなければならない、こういう二つの原則があるわけであります。それでその公共福祉に適合するようにという部面につきましては、この收用法一つの新しい見方をとつておる、これは御了解願えると思います。ただしかし私有財産そのものに対する補償、これは一方に、私法上の各種の権利につきましては、民法その他で規定しているわけでありまして、これらの規定の建前に対して收用法は触れているわけではございません。その点は従来の民法なり何なりの解決にまたなければならぬ問題でございます。この既存の法律の建前の上に立ちまして、補償問題を取上げる、こういうふうな考え方をとつておる次第であります。
  88. 坂本泰良

    坂本泰良君 終りました。
  89. 田中角榮

    田中委員長代理 明三十一日午後一時より委員会を開き、本案についての審議を続行することとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時十一分散会