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西村(英)
委員 ただいま
議題になりました
河川法の一部を
改正する
法律案につきまして、
提案者を代表して、
提案の
理由を御説明申し上げます。
現行河川法は、
明治二十九年に制定を見たものでありまして、きわめて古い
法律であります。これを政治、社会、
経済の各般にわたり着々とその
民主化が進められている今日から見ますれば、
時代に即応しないものが多く、その全面的な
改正を考慮しなければならない趨勢にありますことは御承知の
通りであります。なかんずく同法第三十二条は、
河川に関する
工事の
費用分担を規定している
条文でありまして、
河川そのものの
工事と、
河川工事を
施行することによ
つて必要となる種々の
附帯工事、たとえば
鉄道橋梁の
蒿上あるいは
径間拡張とか、
道路橋の
蒿上あるいは
径間拡張とか、
農事用用排水施設の変更というような
附帯工事がある場合の
費用負担を定めてある
条文であります。この場合、
現行河川法の
建前は、原則として
附帯工事の
管理者がその
附帯工事に必要なる
費用を負担するというように規定されております。ただ
政令によ
つて、これを三分の二まで
補助することができるということにな
つているのであります。すなわち一例を
町村管理の
用排水施設にとりますと、
河川改修に伴うこれらの
施設の
移築改築等が必要なる場合は、その
管理者である
町村が負担する
建前でありまして、
政令によりまして、三分の二の
補助を受けられる場合でも、三分の一は
管理者が負担することとなるのであります。この思想は、
現行河川法がきわめて古い
時代のもので、
国家権力のはなはだ強い
時代の考え方でありまして、これを今日から見ますれば、はなはだしく
時代に即応しないものがあると考えられる次第であります。ゆえに本
法律案の
改正趣旨は、かような場合においては、その
工事の必要を生ぜしめた原因者が負担することが妥当でありまして、特にその
管理者に受益がある場合は、その限度で、受益者一部を負担するように
改正しようとするのであります。現行法案第三十二条の適用は、
河川改修工事のすみやかなる進行が要望されております今日、むしろ工
事促進をはばむ原因ともなりますので、同条を原因者負担の精神に
改正せんとする次第であります。以上が本
法律案の大要であります。
次に、その
理由をいま少し詳細に申し上げたいと存じます。第一の
理由としては、
現行河川法第三十二条は、第一項と第二項から成
つておりまして、これをよく検討いたしますと、同条第一項と第二項とは矛盾し、大いに均衡を失しているのであります。すなわち第一項は、他の
工事によ
つて河川工事の必要を生じた場合、この
河川工事費の負担は、その原因者が、負担するとしてあるにかかわらず、第二項は、
河川工事によ
つて必要を生じた他の
工事、いわゆる
附帯工事の
費用は、この
附帯工事の
管理者をして負担せしむることとしているのでありまして、両者の間にはあまりにも均衡を失し、公平の精神に反するといわざるを得ないのであります。かくのごとく
河川法自体においてはなはだ矛盾せる考え方がなされておりますのは、最前も申し上げましたように、
国家権力によ
つて一方的に強制しているような感じがいたすのでありまして、現在の社会情勢にかんがみまして、第一項の精神と同様、第二項も原因者負担とすべきが当然でありまして、もし
附帯工事の
施行によ
つて特定の
利益が
管理者にある場合には、その受益の限度によ
つて、その者に
費用の一部を負担せしむることが、
費用負担の公平の精神に合致するものと考えるのであります。
第二の
理由といたしては、現行
道路法と比較しての矛盾についてであります。御承知のように、現行
道路法は、大正八年制定されまして、
河川法に比しては新しい
法律でありますが、同法におきましては、第四十一条において、
道路附帯工事の
費用は、
道路工事の
費用負担者が負担する。すなわち原因者負担の
建前をと
つておるのであります。
河川法の場合と原則を逆にしておるのでありまして、近代法の精神が、かような場合に原因者負担であることは明瞭であり、また公平の精神にも合致するものと存ずるのであります。
河川法と
道路法においては、かくのごとく関連法規間の矛盾がありますが、この場合、
道路法の原因者負担の精神を貫いているのであります。すなわち
河川の
附帯工事がもし
道路である場合は、
河川法によりますれば、この附帯
道路工事の
費用は、
道路管理者の負担となり、
道路法の原則たる原因者負担と相反することとなるので、
道路法第六十三条第八号によりまして、かかる場合でも
河川法第三十二条は適用しないことといたしまして、原因者負担の精神を一貫させているのであります。
第三の
理由としては、
現行河川法第三十二条の規定は、その取扱い上、首尾一貫せず、行政上好ましくない点があると思うのであります。すなわち
河川附帯工事に対しましては、
政令によりまして三分の二まで
国庫補助をなし得ることといたしまして特別の場合、全額
補助をなし得るようにな
つておりますが、
河川附帯工事は、市
町村あるいは公共組合
管理の
用排水施設がその件数において大半を占めておりますが、地方財政困窮の今日におきましては、その特例が一般例とな
つておるところもあり、あるいは三分の一負担せしめられている場合もありまして、当事者の考え方次第で負担に差異を生ずるような次第でありまして、行政上好ましいことではないのでありまして、これを
費用負担の原則を、原因者負担という、すつきりした合理的
改正を行いますれば、その取扱いも公正を期し得られると考えるのであります。
第四の
理由としては、
現行河川法第三十二条第二項の規定は、
河川改修の
促進に対しまして、支障を来しているという点であります。昨今
河川災害は激増の一途をたどりつつありますとき、
河川改修のすみやかなる進捗が要請されておりますので、その
附帯工事の
費用を、一方的な考え方によ
つて地方鉄道、あるいは地方
公共団体等にその
工事費を負担せしむることは、かなり無理なる場合が多く、ために
河川改修に一大支障を来しているのであります。御承知の
通り河川改修は、公害を除去するために、一貫してすみやかに
施行することによりまして、その効果を上げ得るのであります。現行法第三十二条第二項の一方的な取扱いでは、その円滑なる進捗を期しがたいのでありまして、これを原因者負担として、
河川工事を、一貫した精神によ
つて行うことが、
河川改修の円滑なる
促進をはかるものと確信するものであります。
以上が、本
法律案を
提案いたしましたおもなる
理由でございます。
最後に、本
法律案は
河川法全文と文体等を歩調を合せるために、かなり読みにくいようには感ぜられますが、これは、以上申し上げましたような
理由によりまして、御了承を願いたいと存ずる次第であります。何とぞ愼重御審議の上、すみやかに御賛成あらんことをお願いし、
提案理由の説明にかえたいと思います。